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肥大型心筋症、ハイリスク因子1つで植込型除細動器の検討に値する

近年、肥大型心筋症(HCM)での突然死予防を目的とする、植込型除細動器(ICD)の装着が推進されている。しかし、その効果とどのような患者に適切なのかという課題は未解決のままである。アメリカ・ミネアポリス心臓研究所財団HCMセンターのBarry J. Maron氏らは、その評価を見極めるべく多施設共同無作為化試験を行った。JAMA誌7月25日号で報告された。ICD装着506例を追跡調査対象は、1986年から2003年の間にICD多施設共同研究に参加登録した506例。アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアの42機関にわたる、HCMとは関係なく突然死のリスクが高いと判断されICDを装着した患者である。平均年齢は42歳(SD 17)と総じて若く、またほとんど(87%)がHCMの症状がないか、あってもごくわずかな症状の経験でICD装着に至っていた。それら患者を追跡調査し、臨床リスク像と発生率との関連を調べ、HCMに対するICD介入の有効性を評価した。突然死の臨床像を正確に把握するため、リスク因子として、突然死の家族歴、広範囲に及ぶ左心室肥大(壁厚30mm以上)、ホルター心電図による非持続性心室頻拍、不明な失神の既往を含んで行われた。平均追跡期間は3.7年(SD 2.8)。主要評価項目は、ICD介入が適切に心室頻拍あるいは心室細動の発作を収めたかどうか。ICD介入の可能性は、リスクマーカーが1つでも複数でも有意差なし主要評価項目は2割(103例)で認められた。ICD介入率は、心停止を経験した二次予防目的の装着患者で10.6%/年[5年累積率39%(SD 5)]、一次予防目的の装着患者では3.6%/年[5年累積率17%(SD 2)]。介入が装着後5年以上経ってから初めてあったのは27%(SD 7)、最高は10年だった。一次予防目的患者で実際にICD介入を経験したのは51例で、そのうち18例(35%)は1つの危険因子だけで装着をしていた。一方でICD介入の可能性は、リスクマーカーが1つでも2つでも、3つ以上でも有意差はなかった(P=0 .77)。なお、ICDの故障による突然死が1例、ICD合併症によるショックは136例(27%)となっている。これら結果からMaron氏らは、「リスクの大きいHCM患者に対するICD介入は非常に効果的である。特に注目すべきは、ICD介入がリスク因子1つの一次予防装着患者でも起きていたことだ。したがって、HCM患者が予防目的でICD装着を選択する際には、1つのハイリスク指標があれば十分検討に値する」と結論付けた。(武藤まき:医療ライター)

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ヒッププロテクターの股関節骨折予防の効果見られず

アメリカでは年間34万件の股関節骨折(90%が転倒による)が発生しており、ナーシングホーム入所者の罹患率が最も高いという現状がある。しかし一方で、ナーシングホーム入所者を対象とする、股関節骨折予防のためのヒッププロテクター装着の有効性に関する過去のスタディは、相反する結果を有してきた。 ボストンにあるInstitute for Aging Research のDouglas P. Kiel氏らは、ヒッププロテクター装着の有効性についてHIP PRO(Hip Impact Protection PROject)と称する多施設共同無作為化試験を行った。JAMA誌7月25日号からの報告。衝撃分散・吸収両タイプを用い多施設共同無作為でヒッププロテクターには、衝撃を分散させるタイプと、吸収するタイプがある。本研究ではいずれかを用いるのではなく両タイプを使い、37施設のナーシングホーム入所者を対象に無作為に、左右いずれか片方だけに装着してもらうよう割り付けた。また先行研究の反省点として遵守率に留意し、参加者は事前に2週間、装着遵守した者だけを登録し試験対象とした。さらに試験中も週3回、アポなし訪問で装着遵守率が確認された。試験期間は2002年10月~2004年10月の2年間。主要評価項目は、プロテクターを装着した側としなかった側それぞれの臀部の股関節骨折事象の発生。左右臀部プロテクター装着の有無、高い遵守率群でも罹患率に有意差なし本研究は追跡調査期間20ヵ月(観察676人年)で効力の欠如により終了となった。参加者は1,042人(平均年齢85歳;SD 7、女性79%)、平均参加期間は7.8ヵ月。有害事象は特に起きなかった。結果は、プロテクターの有無の違いによる左右の股関節骨折の罹患率に有意差は見られなかった(P=0.70)。プロテクター装着の遵守率は73.8%。遵守率80%を超える334人の群についても、左右のプロテクター有無による罹患率の有意差は見られなかった(P=0.42)。Kiel氏らは、「プロトコルの良好な遵守にもかかわらず、我々は股関節骨折のリスクに対するヒッププロテクター装着の有効性を見出すことができなかった。本研究は、股関節部骨折の予防には有効ではないというエビデンスを補強する結果ものだった」と結論付けた。(武藤まき:医療ライター)

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インスリン不使用2型糖尿病患者では血糖値自己測定の有用性に疑問符

血糖値を自己測定しても血糖コントロールは改善されない可能性が示唆された。イギリス・オックスフォード大学のAndrew Farmer氏らが無作為化オープン試験であるDiGEM(Diabetes Glycemic Education and Monitoring)スタディの結果としてBMJのサイトにて早期公表した(6月25日付オンライン版、本誌掲載は7月21日号)。 血糖値の自己測定を推奨している米国糖尿病学会(ADA)による2007年ガイドラインなどを見直す必要性が示唆された形となった。1週間に2回血糖値を自己測定本スタディでは、インスリンを使用していない2型糖尿病患者を対象に、通常の血糖コントロール(通常治療群:152例)と、1週間に2日、3回/日(空腹時×1、食事2時間前・食後2時間値のいずれか×2)の血糖自己測定がHbA1cに及ぼす影響が比較された。血糖自己測定群はさらに、血糖測定後に低血糖または高血糖が認められた時に医師とコンタクトをとる「単純自己測定群」(150例)と、血糖値に応じた対処法を指導される「積極的自己測定群」(151例)に無作為化されている。対象患者の平均年齢は65.7歳、罹病期間中央値は3年間、HbA1c平均値は7.5%だった。1年後のHbA1cに有意差なし1次評価項目である1年後のHbA1c値は、しかし、3群間に有意差はなく、通常治療群7.49%、単純自己測定群7.28%、積極的自己測定群7.36%という結果だった(p=0.12)。試験開始時からの変化率で比較しても、3群間に有意差はなかった(p=0.38)。本試験の対象のように、すでにかなり良好な血糖コントロールが得られているインスリン不使用の2型糖尿病患者では、コスト等を考えるとルーチンな血糖自己測定は推奨できない──と筆者らは結論している。(宇津貴史:医学レポーター)

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SSRI治療を受けている大うつ病若年患者に、認知行動療法の併用は有効か

若年者の大うつ病に対する至適治療法は確立されていない。選択的セトロニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、若年者のうつ病において自殺傾向を招く恐れがあるが、短期的には有効な可能性がある。NICE(National Institute for Health and Clinical Excellence)ガイドラインは、認知行動療法(CBT)などの特異的な心理療法とSSRIの併用を提唱している。 イギリス・ケンブリッジ大学精神科発達精神医学のIan Goodyer氏らは、中等度~重症の大うつ病の若年者において、臨床的ケアとSSRIによる治療にCBTを併用する群としない群を比較する無作為化試験を実施した。BMJ誌6月7日付オンライン版、7月21日付本誌掲載の報告から。11~17歳の中等度~重症の大うつ病患者でSSRIとSSRI+CBTを比較対象は、初回の簡易的介入に反応しなかった11~17歳の中等度~重症の大うつ病あるいは大うつ病に進展する可能性のある若年うつ病患者208例。自殺傾向や行為障害のあるものも対象に含めた。2000~2004年の間に、SSRIとルーチンのケアを受ける群(SSRI群:103例)あるいはSSRI、ルーチンのケアとCBTを受ける群(SSRI+CBT群:105例)に無作為に割り付け、12週間の治療ののち16週間の経過観察を行った。SSRIに認知行動療法を併用しても短期的ベネフィットは得られない12週の治療終了時におけるHealth of the Nation outcome scales for children and adolescentsのスコアの変化(主要評価項目)は-0.64[95%信頼区間-2.54~1.26、p=0.50]であり、有意差は認めなかった。副次評価項目(mood and feelings questionnaire、children’s depression rating scale改訂版、children’s global assessment scale、clinical global impression improvement scale)は、いずれも有効性に関する有意差は示せなかった。全体として自殺念慮や自傷行為には減少傾向が見られたが、CBTによる自殺念慮、自殺行動の予防効果は確認できなかった。治療終了後16週までに、SSRI群の61%、SSRI+CBT群の53%が、「たいへんよい」「きわめてよい」まで症状が改善していた。Goodyer氏は、「SSRIとルーチンの臨床ケアを受けている大うつ病の若年患者にCBTを併用しても短期的なベネフィットは得られなかった」と結論している。(菅野 守:医学ライター)

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ARB+レニン阻害薬で降圧作用は増強

初めての経口レニン阻害薬として注目されているaliskiren(日本未承認)の降圧作用はARBバルサルタンと同等で、またバルサルタンとの併用により降圧作用がさらに増強されることが明らかになった。アメリカ・アラバマ大学のSuzanne Oparil氏らがLancet誌7月21日号で報告した。バルサルタン+aliskiren併用のコンプライアンスは良好本検討の解析対象となったのは、随時血圧で拡張期が95mmHg以上、110mmHg未満、自由行動下昼間8時間の血圧平均値が90mmHg以上である18歳以上の男女1,797例。バルサルタン群(455例)、aliskiren群(437例)、バルサルタン+aliskiren併用群(446例)とプラセボ群(459例)に無作為割り付けされ、8週間二重盲検にて追跡された。バルサルタンは単独・併用を問わず160mg/日より開始し、4週間後に320mg/日へ増量、aliskirenも同様に150mg/日から開始して、4週間後に300mg/日へ増量した。1,797例中196例(11%)が脱落したが、脱落率が最も高かったのはプラセボ群(14%)で、最小はバルサルタン+aliskiren併用群の8%だった。8週間で17.2/12.2mmHg降圧1次評価項目である「服用開始8週間後の随時血圧」は、バルサルタン群で試験開始時に比べ12.8/9.7mmHg、aliskiren群で13.0/9.0mmHg低下しており、いずれもプラセボ群(4.6/4.1mmHg)に比べ有意に高値だった(p<0.0001)。さらにバルサルタン+aliskiren併用群では試験開始時に比べ17.2/12.2mmHgという著明な降圧を認め、この値はバルサルタン単独、aliskiren単独よりも有意に大きかった(p<0.0001)。24時間自由行動下血圧で検討しても同様の結果であり、ARBとaliskiren併用の臨床的有用性を検討すべきだとOparil氏らは結論している。(宇津貴史:医学レポーター)

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フルダラビン+シクロホスファミド併用は慢性リンパ性白血病の標準治療

1990年代に、クロランブシルは慢性リンパ性白血病(CLL)に対する標準的治療法であった。2001年、アメリカ・MDアンダーソンセンターの研究グループは第II相試験において未治療のCLLに対するフルダラビン+シクロホスファミド併用療法の有効性を報告している。 イギリス・サットン市の研究所血液腫瘍科のCatovsky氏らは、以前の試験よりも増量したうえで、フルダラビン+シクロホスファミド併用療法をクロランブシル単剤、フルダラビン単剤と比較する多施設共同無作為化第III相試験(LRF CLL4試験)を実施した。7月21日付Lancet誌掲載の報告から。併用群は、完全寛解率、全体の奏効率、無増悪生存率が有意に優れる1999年2月~2004年10月の間に136施設に未治療のCLL 777例が登録され、フルダラビン群(194例)、フルダラビン+シクロホスファミド群(196例)、クロランブシル群(387例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存率(OS)、副次評価項目は奏効率(RR)、無増悪生存率(PFS)、安全性、QOL。フォローアップ期間中央値は3年5ヵ月。OSは3群間で有意な差を認めなかった。完全寛解率(CR)、全体のRRはフルダラビン+シクロホスファミド群がフルダラビン群よりも有意に優れており(CR:38 vs. 15%、RR:94 vs. 80%、それぞれp<0.0001)、クロランブシル群との間にも有意差を認めた(CR:7%、p=0.006、RR:72%、p=0.04)。5年PFSも、それぞれ36%、10%、10%と併用群が有意に優れた(p<0.00005)。既報データとのメタ解析でPFSに関する併用療法のベネフィットを確認好中球減少および入院日数は、クロランブシル群に比べ併用群、フルダラビン群で多かったが、溶血性貧血は併用群が両単剤群よりも少なかった。QOLは奏効例で良好であったが、初期解析では3群間に有意な差は見られなかった。さらに、本試験の結果と既報の2つの第III相試験(GCLLSG、E2997)のデータについてメタ解析を行ったところ、PFSに関するフルダラビン+シクロホスファミド併用の一致したベネフィットが確認されたという。Catovsky氏は、「フルダラビン+シクロホスファミド併用療法はCLLに対する標準的治療法とすべきであり、モノクローナル抗体を併用する新たなプロトコールの基盤となる」としている。なお、17p(p53)欠失例は本レジメンが奏効しない可能性が高いため推奨されないという。(菅野 守:医学ライター)

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経口抗凝血薬+抗血小板薬の併用療法は重篤な出血を増加する

アテローム硬化型末梢動脈疾患は、心筋梗塞や脳卒中および心血管系に起因する死亡リスクの増加と関連しており、抗血小板薬がこのリスクを低下するが、経口抗凝血薬が心血管系合併症の予防においてどのような役割を果たすのかはわかっていない。 WAVE治験グループ(Warfarin Antiplatelet Vascular Evaluation Trial)が、両剤併用療法の効果を判定する無作為化試験を行い、NEJM誌7月19日号で報告した。2,161例を併用療法群と単独療法群に無作為割り付け試験は末梢動脈疾患患者2,161例をランダムに、抗血小板薬+経口抗凝血薬の併用療法群[目標国際標準比(INR)2.0~3.0]と、抗血小板薬単独療法群とに割り付け行われた。主要評価項目は心筋梗塞、脳卒中、心血管系に起因する死亡、副次評価項目は心筋梗塞、脳卒中、緊急介入が必要な末梢または冠動脈の重篤な虚血、そして心血管系に起因する死亡とした。平均フォローアップ期間は35ヵ月だった。併用療法の合併症予防効果は認められず主要評価項目の発現は、併用療法群12.2%(132/1,080例)、抗血小板薬単独療法群13.3%(144/1,081例)で、相対リスク比(RI)は0.92(95%信頼区間0.73-1.16、P = 0.48)。副次評価項目については、併用療法群15.9%(172/1,080例)、抗血小板薬単独療法群17.4%(188/1,081例)で、RI 0.91(95%信頼区間0.74-1.12、P = 0.37)であり、合併症予防における併用療法の効果は認められなかった。一方で重篤な出血が、抗血小板薬単独療法群で1.2%(13/1,081例)だったのに対して、併用療法群では4.0%(43/1,080例)生じた(RI 3.41、95%信頼区間1.84-6.35、 P<0.001)。研究グループは、「末梢動脈疾患患者における抗血小板薬と経口抗凝血薬の併用療法は、抗血小板薬単独療法より有効であることが確認できなかったばかりか、重篤な出血増加に関連することが明らかとなった」とまとめた。(朝田哲明:医療ライター)

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クローン病治療に対するcertolizumab pegolの有効性

治験薬剤である抗腫瘍壊死因子(抗TNF)治療薬certolizumab pegol(CZP)については現在、クローン病と関節リウマチ(RA)についてそれぞれ臨床試験が継続されている。クローン病に対する同剤の臨床試験プログラムはPRECISEと呼ばれているが、本報告は、アメリカ・メイヨークリニックのWilliam J. Sandborn氏らによるPRECISE 1 Study:クローン病治療におけるCZPの有効性を検証する無作為二重盲検プラセボ対照試験の結果。NEJM誌7月19日号に掲載された。中等度~重度のクローン病患者662例を対象試験対象は、成人で中等度~重度のクローン病患者662例。患者をC反応性蛋白(CRP)の濃度レベルで階層化し、0週目、2週目、4週目と、その後は4週間ごとに、CZP 400mgとプラセボが皮下投与されるようランダムに割り付けられた。主要エンドポイントは、6週時点での奏功率と、6週目、26週目それぞれの時点での奏功率とした。わずかな有効性は認められるが緩解率の有意差は認められず母集団のうちCRPレベルが10mg/L以上の患者について、6週時点で「response」[CDAI(Crohn’s Disease Activity Index)スコアが100以下を達成した場合と定義]が認められた患者はCZP群37%、プラセボ群26%だった(P= 0.04)。また、6週、26週それぞれの時点で「response」が認められたのはCZP群22%、プラセボ群12%だった(P = 0.05)。母集団全体で見ると、6週時点はCZP群35%、プラセボ群27%(P = 0.02)、また、6週、26週各時点で認められたのはCZP群23%、プラセボ群16%(P = 0.02)だった。一方、緩解率(緩解:CDAIスコアが150以下を達成した場合と定義)については、6週時点と26週時点において両群に有意差は認められなかった(P = 0.17)。重篤な有害事象の発生はCZP群で10%、プラセボ群で7%の患者で報告され、重篤な感染症はそれぞれ2%、1%未満と報告された。また、CZP群のうち8%の患者で本剤への抗体が出現し、2%で抗核抗体が出現した。これらから研究グループは、「中等度~重度のクローン病患者へのCZP投与はプラセボと比較して、導入療法および維持療法いずれにおいてもわずかではあるが奏功率の向上が認められた。ただし緩解率について有意差は認められなかった」と結論付けた。(朝田哲明:医療ライター)

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女性における非空腹時TG値は心血管イベントとの強い関連示す

食後高トリグリセリド(TG)血症はアテローム性動脈硬化症を引き起こす重要な役割を果たす可能性がある、など論争の的になっているTG値と心血管疾患との関連について、アメリカ・ボストンのブリガム&ウーマン病院Sandeep Bansal氏らの研究グループが研究報告を行った。JAMA誌7月18日号の掲載報告から。米国女性26,509例を対象とした前向き研究Bansal氏らが行ったのは、空腹時と非空腹時それぞれのTG値と将来的な心血管イベントリスクとの関連を評価するというもの。Women's Health Studyに健康状態良好で参加登録した米国女性26,509例(1992年11月~1995年7月の間に登録、追跡調査期間中央値11.4年)を対象とした前向き研究で、TG値は、登録時の血液サンプル測定値が用いられた(空腹時群20,118例、非空腹時群6,391例)。主要評価項目は心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的虚血性発作、冠動脈再建または心血管死亡)の発生ハザード比。追跡期間中央値11.4年の間に心血管イベントを経験した参加者は1,001例(非致死的心筋梗塞276例、虚血性発作265例、冠動脈再建628例、心血管死亡163例)で、総発生率は3.46/1,000人年だった。空腹時TG値は独立した関連性を示さない空腹時群および非空腹時群の各TG値からの心血管イベントの予測は、年齢、血圧、および喫煙とホルモン療法について加味した補正後モデルにおいては、いずれも可能だった。しかし、さらに総コレステロール、HDLコレステロール、インスリン抵抗性を加味した補正後モデルでは、空腹時群TG値と心血管イベントとの関連は弱まってしまった。これに対して非空腹時群では強い関連を示し続けた。また2次解析の結果、食後2~4時間での測定TG値が、最もよく心血管イベントとの関連を示し、空腹時間が長くなるほど減少することも明らかとなった。これら結果からBansal氏らは、女性において、非空腹時TG値は、従来の心血管リスク因子や他の脂質レベル、インスリン抵抗性マーカーとは別個の、心血管イベントとの関連を示す強力な因子であると結論づけた。なお同日号で、「男性および女性における非空腹時TG値と心筋梗塞、虚血性心疾患および死亡とのリスク」と題するデンマークからの報告も寄せられており、合わせて読むと知見が深まる。(武藤まき:医療ライター)

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心臓CTが発リスクを顕著に高めるキーワード

CT冠動脈造影(CTCA)は一般的な検査法となったが、これに付随した発リスクについてのデータはほとんど示されていない。米科学アカデミーによる放射線の生物学的影響に関する最近の報告(BEIR VII phase 2)では、CTCA検査の放射線照射と発生率の生涯寄与リスク(LAR)を推計するためのフレームワークを提供しているが、どのような影響があるかについての報告が、アメリカ・コロンビア大学のAndrew J. Einstein氏らの研究グループらによってJAMA誌7月18日号に寄せられた。男女別人体模型を使ってシミュレーション本研究はCTCA検査による放射線照射がLARに及ぼす影響について、年齢、性、スキャン・プロトコル別(標準的な心臓CTCA、ECTCM:心電図波形に同期して管電流を変調させる撮像法、心臓と大動脈の両方を評価するなど)にリスクを評価するというもの。コンピュータを組み込んだ標準的な男女の人体模型を使って、標準的なスパイラルCTプロトコルを用いた64スライスCTCAによる線量を、モンテカルロ・シミュレーション法を用いて臓器別に推計。乳房(女性のみ)、肺など10臓器別の発生LARを、BEIR VIIのアプローチで年齢別、性別に推計し、それらを合計して全身のLARを算出し評価を行った。主要評価項目は、全身および臓器別発生のLAR。「女性」「若年患者」「心臓+大動脈評価スキャン」で顕著に高いLAR結果として、年齢・性・プロトコル別でLARは大きな差異が見られた。標準的な心臓CTCAによるLARは、20歳女性では1/143に上ったが、80歳男性では1/3,261。しかしこの数値は、ECTCMによる場合はそれぞれ1/219と1/5,017に減少しており、プロトコルによりリスクの違いがあることも明らかとなった。また同じプロトコル(ECTCM)でも60歳女性と60歳男性の推定LARはそれぞれ1/715と1/1,911で、性別間での差異もあった。なおプロトコル別では、心臓と大動脈の評価の組み合わせで最もLARが高まることが確認された(20歳女性の1/114が最高)。臓器別で最もLARが高率だったのは、より若い女性での肺と乳だった。シミュレーション・モデルではあるがこれらの推計は、64スライスCTCAの使用がのLARと少なからず関連していることを示唆しており、女性、若年患者、また心臓と大動脈評価を組み合わせたスキャンで、顕著に高いことが明らかになったとEinstein氏らは結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

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プロバイオティクス飲料が、高齢入院患者の抗生物質および感染による下痢を予防

プロバイオティクスは、「十分な量を投与された場合に宿主の健康にベネフィットをもたらす生きた微生物」と定義され、Streptococcus thermophilus、腸球菌種、サッカロミセス種、多くの種の乳酸菌やビフィズス菌などがある。感染性および抗生物質に起因する下痢などの消化器症状に、プロバイオティクスが有効であることを示すエビデンスが蓄積されつつある。 インペリアル・カレッジ・ロンドン医学部栄養学のMary Hickson氏らは、抗生物質およびClostridium difficileによる下痢の予防におけるプロバイオティクス飲料の有効性を評価するためのプラセボ対照無作為化試験を実施した。BMJ誌6月29日付オンライン版、7月14日付本誌掲載の報告から。高齢入院患者がカゼイ菌などを含むプロバイオティクスを飲用対象は、ロンドン市内の3施設に入院中で抗生物質の投与を受けている高齢患者135例(平均年齢74歳)。これらの症例が、抗生物質投与中および投与終了後1週間、カゼイ菌、ブルガリア菌、Streptococcus thermophilusを含むプロバイオティクス飲料100g(97mL)を1日2回飲用する群(69例)あるいは長期保存用の滅菌ミルクセーキ(プラセボ)を飲用する群(66例)に無作為に割り付けられた。評価可能例は113例(プロバイオティクス群57例、プラセボ群56例)であった。主要評価項目は抗生物質に関連する下痢の発生とし、副次評価項目はdifficile毒素および下痢の発現とした。ルーチンな飲用により抗生物質関連の下痢の発現が低下、医療費抑制も抗生物質に関連する下痢の発生率は、プロバイオティクス群がプラセボ群に比し有意に低かった(12 vs. 34%、p=0.007)。プラセボ群に対するプロバイオティクス群のオッズ比は0.25[95%信頼区間:0.07-0.85]と有意であった。抗生物質による下痢の予測因子として、血漿ナトリウム値上昇(オッズ比:0.84、95%信頼区間:0.75-095)、血清アルブミン値上昇(オッズ比:0.82、95%信頼区間:0.73-0.92)が挙げられた。また、C. difficileによる下痢の発現もプロバイオティクス群で有意に低下していた(0 vs. 17%、p=0.001)。プロバイオティクス飲料は抗生物質およびC. difficileによる下痢の発生を低下させることが明らかとなった。Hickson氏は、「プロバイオティクス飲料はコンプライアンスが良好であり、ルーチンに飲用することで50歳以上の症例の下痢の発生を予防するため医療費が抑制され、死亡率も低下する可能性がある」としている。(菅野 守:医学ライター)

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糖尿病性神経障害による疼痛に、経口三環系抗うつ薬と従来の抗けいれん薬が有効

糖尿病性神経障害は糖尿病の主な合併症であり、一般に神経障害性の疼痛を伴う。厳格な血糖値のコントロールにより糖尿病性神経障害の進行が遅くなることが示されており、現在のガイドラインでは疼痛の治療には抗うつ薬および新世代の薬剤(SSRI、SSNI)を含む抗けいれん薬の使用が推奨されている。 香港・キリスト教総合病院看護部のMan-chun Wong氏らは、糖尿病性神経障害による疼痛の治療効果に関する体系的なレビューを行い、BMJ誌6月11日付オンライン版、7月14日付本誌において報告した。選出したプラセボ対照無作為化試験のデータを体系的に解析Wong氏らは、いくつかのキーワードに基づいてMedlineなど4つのデータベースから二重盲検無作為化試験の論文を抽出した。さらに、糖尿病性神経障害による疼痛を有する成人を対象とした局所適用製剤および経口薬に関するプラセボ対照無作為化試験を選出した。主要評価項目は疼痛の50%の減少(中等度改善)とし、副次評価項目は疼痛の30%の減少および有害事象による投与中止とした。それぞれの疼痛緩和効果および投与中止のオッズ比を算出した。選出された25編の論文で使用されていた薬剤は、抗けいれん薬(1,270例)、抗うつ薬(94例)、オピオイド(329例)、イオンチャンネル遮断薬(173例)、N-methyl-D-aspartate(NMDA)拮抗薬(14例)、duloxetine(805例)、カプサイシン(277例)、二硝酸イソソルビドスプレー(22例)であった。新世代薬剤は50%疼痛緩和のオッズ比が低い、治療アルゴリズムを提唱50%疼痛緩和のオッズ比は、従来の抗けいれん薬が5.33(95%信頼区間1.77-16.02)、新世代の抗けいれん薬が3.25(同2.27-4.66)、三環系抗うつ薬が22.24(同5.83-84.75)であった。有害事象に関連した投与中止のオッズ比は、それぞれ1.51(同0.33-6.96)、2.98(同1.75-5.07)、2.32(同0.59-9.69)であった。以上の結果から、短期的な疼痛の緩和には、経口三環系抗うつ薬と従来の抗けいれん薬による治療のほうが新世代の抗けいれん薬よりも優れることが示された。Wong氏は、「これらの薬剤の長期的効果は明らかにされていない。今後は、オピオイド、NMDA拮抗薬、イオンチャンネル遮断薬などのさらなる検討が必要」とした上で、これまでの知見に基づいて糖尿病性神経障害による疼痛の治療アルゴリズムを提唱している。(菅野 守:医学ライター)

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進行結腸・直腸に対するCAIROレジメン投与、同時or逐次どちらが有用か?

進行結腸・直腸に対する化学療法の至適レジメンについては、first-line治療のみならずsecond-line、third-line治療をも視野に入れ、最も有効な薬剤の組み合わせとその効果的な投与法の探索が進められている。進行結腸・直腸に対する標準的治療薬であるフルオロウラシル(5-FU)に、塩酸イリノテカン(CPT-11)およびオキサリプラチン(L-OHP)を併用するアプローチは生存期間の延長など臨床的ベネフィットをもたらすことが示されている。 オランダ・ラドボウド大学ナイメーヘン医療センターのMiriam Koopman氏らは、5-FUの代わりに経口フッ化ピリミジン薬であるカペシタビン(CAP)を用い、CPT-11、L-OHPの3剤の組み合わせ(CAIRO)に関する2つの投与法の有用性を評価する無作為化第III相試験を実施した。7月14日付Lancet誌に掲載された報告から。CAP→CPT-11→CAP+L-OHP vs. CAP+CPT-11→CAP+L-OHP2003年1月~2004年12月の間に、オランダの74施設から進行結腸・直腸820例が登録され、次の2つのレジメンに無作為に割り付けられた。(1)first-line:CAP、second-line:CPT-11、third-line:CAP+L-OHP(逐次投与群、410例)、(2)first-line:CAP+CPT-11、second-line:CAP+L-OHP(同時投与群、410例)。主要評価項目は全生存率とした。生存期間中央値は、逐次投与群が16.3ヵ月、同時投与群が17.4ヵ月であり、有意な差は認められなかった(p=0.3281)。逐次投与群に対する同時投与群のハザード比は0.92(95%信頼区間:0.79-1.08、p=0.3281)と有意差は認めなかった。また、1年生存率も、それぞれ64%、67%と同等であった(p=0.38)。first-line治療においては、同時投与群で無増悪生存期間(5.8 vs. 7.8ヵ月、p=0.0002)、全体の奏効率(CR+PR)(20 vs. 41%、p<0.0001)、腫瘍増殖抑制率(CR+PR+SD)(74 vs. 87%、p<0.0001)が有意に優れていた。CAIROの逐次投与法は確立された治療法全体のgrade 3~4の有害事象は、grade 3の手足症候群の頻度が逐次投与群で有意に多く見られたが(13 vs. 7%、p=0.004)、それ以外については両群間に差は認めなかった。first-line治療に限ると、重篤な有害事象の頻度は逐次投与群のほうが少なかった。これらの結果から、Koopman氏は「CAIROの同時投与法の全生存率が逐次投与法を凌駕することはなかった。逐次投与法は結腸・直腸に対する確立された治療法であることが改めて確認された」と結論している。また、同氏は「分子標的治療薬の導入によって進行結腸・直腸の治療選択肢や転帰は大きく変化しているが、全身療法の根幹が抗剤であることに変わりはない」と考察している。(菅野 守:医学ライター)

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torcetrapib、混合型高脂血症の頸動脈肥厚抑制でも有用性示せず

昨年12月に開発が中止されたHDL増加剤torcetrapibは、混合型高脂血症患者の頸動脈壁肥厚抑制においてもスタチンに追加する有用性が認められなかった。オランダ・University Medical Center UtrechtのMichiel L Bots氏らがLancet誌7月14日号においてRADIANCE 2試験の結果として報告した。 CETP阻害薬torcetrapibの抗動脈硬化作用を否定する臨床試験はILLUSTRATE、RADIANCE 1に次いで本報告で3つ目となる。 2年間弱の頸動脈壁肥厚抑制作用はプラセボと同等本試験の対象患者は、トリグリセライド(TG)が150mg/dL以上、LDLコレステロール(LDL-C)値が米国脂質ガイドライン(NCEP ATP III)において薬物治療対象となる18~70歳の男女。4週間の脂質低下薬中止導入期間後、全例がアトルバスタチンを服用し、原則としてLDL-CがATP III目標値を達成するまで増量した。この導入期間を完遂できた752例をアトルバスタチン服用のまま、torcetrapib群(377例)とプラセボ群(375例)に無作為化した。平均22ヵ月の追跡期間後、1次評価項目である「頸動脈壁内膜・中膜最大厚」はtorcetrapib群で「0.025mm/年」増加しており、プラセボ群の「0.030mm/年」と有意差はなかった(p=0.46)。HDL-Cが著明増加、血圧は軽度上昇試験が早期終了したため平均追跡期間は22ヵ月となったが、24ヵ月追跡できた681例で検討すると、torcetrapib群のHDLコレステロール(HDL-C)値は47.6mg/dLから77.4mg/dLに増加し、プラセボ群(46.8mg/dL)よりも有意に高値となっていた。またLDL-Cの変化率もプラセボ群が4.4%増加したのに対しtorcetrapib群では13.3%低下していた(群間差:p<0.0001)。一方、血圧はこれまでに報告されているILLUSTRATEやRADIANCE 1と同様、torcetrapib群で有意に上昇していた(127.9/77.1mmHg、プラセボ群:121.2/75.4mmHg、p<0.0001)。研究者らはこの血圧の差が、torcetrapibによる脂質代謝改善がもたらす頸動脈肥厚抑制を相殺した可能性を指摘している。他社が現在開発中とされる2つのCETP阻害薬には昇圧作用がないと言われており、それらを用いた臨床試験の結果が待たれる。(宇津貴史:医学レポーター)

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HCV患者へのペグインターフェロンα-2a+リバビリン16週投与の効果

C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型が2型または3型に感染した患者に対し24週間、ペグインターフェロンとリバビリンを投与すると、約80%の患者でウイルス学的反応率が持続する。では投与期間を16週とした場合でも、この効果が持続するのだろうか。その効果を判定する大規模無作為化多国籍非劣性試験が、ACCELERATE研究グループによって行われた。NEJM誌7月12日号の報告から。16週投与群と24週投与群で無作為化非劣性試験を実施HCV遺伝子型2型または3型を有する患者1,469例に対してランダムに、16週または24週にわたって、リバビリン800mg(1日1回)とペグインターフェロンα-2a 180μg(週1回)を投与するよう割り付けた。持続的なウイルス学的反応とは、治療終了24週の時点で、血清HCV RNAが検出不能なレベル(<50 IU/mL)であることと定義された。16週投与群は24週投与群より持続的ウイルス学的反応率は有意に低かった結果は、16週群の持続的なウイルス学的反応率は、24週群と比べて有意に低かった(62%対70%、オッズ比0.67、95%信頼区間0.54-0.84、P<0.001)。また、再発(治療終了後にHCV RNAが検出不能であった患者で、フォローアップ中に検出可能なレベルになること)率は、16週群で有意に高かった(31%対18%、P<0.001)。しかし本研究で、16週投与が24週投与に対して非劣性であることは証明するには至らなかったともしている。治療前の血清HCV RNAレベルが400,000IU/mL以下の患者の持続的なウイルス学的反応率は、16週群で82%、24週群では81%だった。迅速な抗ウイルス効果(治療終了後第4週までHCV RNA検出不能)を示した患者では、持続的なウイルス学的反応率は16週群で79%、24週群では85%だった(P = 0.02)。これらから研究グループは、16週処方は、標準的な24週処方と比べ全体的に持続的ウイルス学的反応率は低いと結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

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食品への葉酸補強義務化で神経管欠損症が減少

1998年、さまざまな穀類製品に葉酸の補強が義務付けられたカナダでは、歴史的に神経管欠損症の有病率が、西部よりも東部で高い傾向を有するという。カナダ・ケベック州ラバル大学Philippe De Wals氏らの研究グループは、葉酸補強が義務付けられた前後の神経管欠損症有病率の変化について調査を行い、葉酸補強の効果を検証した。本報告はNEJM誌7月12日号に掲載された。補強前・部分的補強後・全面的補強後の3期間で2,446例を比較検証研究母集団には、1993年から2002年までカナダの7つの州(東からニューファンドランド・ラブラドール、ノバスコシア、プリンスエドワードアイランド、ケベック、マニトバ、アルバータ、ブリティッシュコロンビア)に在住していた妊婦(出生数190万)で、胎児性形成異常(奇形)を伴う生児出産・死産・妊娠中絶となったケース2,446例が含まれた。公表されている赤血球中の葉酸濃度の検査結果に基づき、研究期間は補強前期間、部分的補強期間、全面的補強期間の3つに分けられた。研究グループは、州ごとに神経管欠損症のベースライン有病率と、補強が実施された後の減少の規模との関係を評価した。神経管欠損症率は葉酸補強後で46%減少神経管欠損症の有病率は出生1,000件につき、補強前は1.58だったが、全面的補強期間後は0.86と46%の減少を示した(95%信頼区間40-51)。減少の規模は各州で補強前ベースライン有病率に比例し、補強後には地域差はほとんど解消されていた。観察された有病率の低下は、二分脊椎の低下(53%)が無脳症と脳ヘルニアの低下(各38%、31%)を上回っていた。研究グループは「食品への葉酸補強はカナダにおいて、神経管欠損症の有病率の減少に密接に関連していることが明らかになり、有病率が高い地域ほど減少の程度は大きかった」と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

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小児生存者は有害事象リスクの負荷に応じた医学的監視が必要

小児患者の生存率は、治療に付随する多発性の晩期障害を伴いながらも改善をみている。しかし、小児生存者に関する研究の大半は、1つの晩期障害にだけ着目されていた。そこでオランダ・Emma Children's Hospital/Academic Medical CenterのMaud M. Geenen氏らの研究グループは、生存者の大規模かつ長期的な医学的追跡調査を行い、小児治療後のすべての健康予後悪化のリスクを評価することを試みた。JAMA誌6月27日号の報告から。5年生存患者を専門クリニックで追跡調査研究グループは、1966年から1996年の間に1つの施設で治療を受けた小児患者のうち、5年生存者1,362例について後ろ向きコホート研究を実施した。治療後有害事象を医学的に評価するため、全生存者を晩期障害の専門クリニックに招き、2004年1月以前に出現した有害事象をすべて重症度に応じて等級分けした。主要評価項目は、調査終了時の重症度別有害事象の治療特異的有病率と、等級分けで「serve」あるいは「high」にスコアされた疾患と各治療法との相対リスク。この追跡調査の終了時の生存者は94.3%(追跡調査期間中央値17.0年)、年齢中央値は24.4歳だった。特に放射線療法受療生存者は「serve」「high」な晩期障害の負荷を有する生存者の75%に1つ以上の有害事象があり、24.6%に5つ以上の有害事象があった。加えて40%の生存者で、少なくとも1つの「重篤な」あるいは「致命的・障害を伴う」有害事象が見られた。「serve」あるいは「high」のスコア群には、放射線療法だけを受けた生存者が55%、化学療法だけを受けた生存者が15%観察された、これらの補正相対リスクは、手術療法だけを受けた生存者群(25%)と比較して、それぞれ2.18(95%信頼区間:1.62-2.95)、0.65(95%信頼区間:0.46-0.90)だった。また、骨腫瘍の生存者(64%)が最も多く観察され、最も少なかったのは白血病またはウィルムス腫瘍(各12%)だった。小児生存例のかなりの割合、特に放射線療法後のケースにおいて、青年期にはすでに「serve」あるいは「high」にスコアされる晩期障害に苦しんでいることが明らかになったことからGeenen氏らは、「小児生存者のリスクに応じた生涯にわたる医学的監視の必要性を強く意味づける結果だ」と結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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小児の反復性UTIに抗菌薬予防投与は効果なし

小児の反復性尿路感染(UTI)の危険因子と、抗菌薬の予防投与の有益性に関する十分な証拠は得られていない。そのためアメリカ・ペンシルベニア大学のPatrick H. Conway氏らのグループは、小児科プライマリ・ケア・コホートで反復性UTIの危険因子を同定すること、また抗菌薬の予防投与と反復性UTIとの関連性を評価すること、さらに反復性UTIに見られる耐性の危険因子を同定することを目的にtime-to-event解析を行った。本研究報告はJAMA誌7月11日号に掲載された。約7万5,000例を対象にtime-to-event解析を実施研究対象は、フィラデルフィア子供病院で管理されるelectronic health record(EHR)を共有する3つの州(デラウェア、ニュージャージー、ペンシルベニア)に分布する27の小児科プライマリ・ケア診療所のネットワークから集められた。診療所は都市部、郊外、準田園地帯と異なるエリアに点在している。反復性UTIの危険因子、抗菌薬の予防投与と反復性UTIの関連性を評価するためtime-to-event解析法が、また反復性UTI患児における耐性菌感染症の危険因子同定には、ネステッド・ケースコントロール研究が実施された。主要評価項目は、反復性UTIに至る時間と病原体の抗菌薬耐性。抗菌薬予防投与は反復性UTIに効果なく、耐性菌リスクを増大小児74,974例のうち、611例(0.007/人年)で初回UTIを、83例(初回UTI後、0.12%/人年)で反復性UTIが見られた。反復性UTIのリスク増加と関連する因子は、「白人」0.17/人年(ハザード比1.97、95%信頼区間1.22-3.16)、「3~4歳」0.22/人年(2.75、1.37-5.51)、「4~5歳」0.19/人年(2.47、1.19-5.12)、「膀胱尿管逆流(grade IV~V)」0.60/人年(4.38、1.26-15.29)で、「性別」および「膀胱尿管逆流(grade I~III)」は再発リスクとの関連は認められなかった。また抗菌薬の予防投与を行っても反復性UTIリスクは有意に低下せず(1.01、0.50-2.02)、むしろ抗菌薬耐性菌をもたらす危険因子の一つとなっていた(7.50、1.60-35.17)。このことからConway氏らは、「小児へのUTIに対する抗菌薬予防投与は、反復性UTIのリスクを減らすどころか、耐性菌感染症のリスクを増加させる」と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

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液状化細胞診(LBC)は子宮頸の検出に有用か:大規模無作為化試験の結果

液状化細胞診(liquid based cytology:LBC)は子宮頸のスクリーニング法として広く用いられている。しかし、その診断の正確度(accuracy)を検証した研究のほとんどが非無作為化試験あるいは1人の女性に2つの検査を実施して比較するものであり、無作為化試験は小規模な研究が1つあるのみだという。 イタリア・トリノ市の予防センター腫瘍疫学のGuglielmo Ronco氏らは、子宮頸のスクリーニングにおける従来法とLBCの正確度を比較する大規模な無作為化試験を実施した。BMJ誌5月21日付オンライン版、7月7日付本誌に掲載された報告。25~60歳の約45,000名の女性を対象とした無作為化試験対象は、2002~2003年にイタリアの9つのスクリーニングセンターに登録された25~60歳の女性。22,466名がスメアによる従来法に、22,708名がLBCおよびヒトパピローマウイルス(HPV)検査を実施する群に無作為に割り付けられた。LBCで異型細胞が見つかった場合はコルポスコピーを施行した。LBCが正常でHPV陽性のうち35~60歳の女性はコルポスコピーを、25~34歳の女性は1年後に再検査を行ったが、これらの結果は今回の解析には含めなかった。従来法群は、軽度以上の扁平上皮内病変を有する場合にコルポスコピーを施行。細胞診とHPV検査の結果を評価して病変が疑われる場合は生検を実施し、組織学的に子宮頸部上皮内腫瘍が確認された場合には盲検下に細胞診の結果の評価を行った。LBCの検出感度は従来法と同等、不適正スライドの頻度は有意に低下LBC群のgrade 2以上の子宮頸部上皮内腫瘍の検出感度(sensitibity)は従来法群と有意な差はなかったが、陽性予測値は有意に低下していた。LBC群ではgrade 1以上の病変が有意に多く検出され、特に25~34歳の女性における検出率が高かったが、grade 3以上の病変の検出率には有意差は見られなかった。不適正なスライドが少なくとも1つ以上作製された女性の頻度はLBC群で有意に少なかった。Ronco氏は、「LBCの主な利点は不適正スライドが少ないことである。さらに、LBCでは診断に要する時間が短縮され、1つの試料でHPVだけでなく他の分子の検索も可能である」としている。(菅野 守:医学ライター)

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液状化細胞診(LBC)は子宮頸の検出に有用か:非無作為化プロスペクティブ試験の結果

数十年にわたり、子宮頸および前病変のスクリーニングには子宮頸部のスメアによるマニュアル式の検査が行われてきたが、多くの国ではコンピュータを用いた液状化細胞診(liquid based cytology:LBC)へ移行しつつある。LBCはヒトパピローマウイルス(HPV)を検出でき、診断の迅速化、自動化によるコストの削減が可能とされるが、従来法よりも正確度(accuracy)が優れることを示すエビデンスは十分ではない。 オーストラリア・シドニー大学環境衛生学部のElizabeth Davey氏らは、子宮頸の指標としての子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の診断の正確度について、従来法とLBCを比較するためのプロスペクティブな検討を行った。BMJ誌6月29日付オンライン版、7月7日付本誌掲載の報告から。1検体から従来法とLBCのスライドを作製し、診断の正確度を比較2004年8月~2005年6月の間に、55,164検体についてLBCおよび従来法による検査を行い、診断の正確度を評価した。1回の採取で得られた検体から、まず従来法でスライドを作製し、次いでLBCによるスライド作製を行い、それぞれ診断を実施した。主要評価項目は子宮頸部の扁平上皮病変検出の正確度とし、副次評価項目は不適正なスライドが作製される割合などとした。LBCは高度CIN病変の診断正確度が高く、不適正スライドの割合も低い不適正なスライドは従来法に比べLBCで有意に少なかった(p<0.001)。LBCによって異常と診断されたスライドは、全体(7.4% vs 6.0%)およびgrade 1以上のCIN(2.8% vs 2.2%)の双方ともに多い傾向が見られた。LBCでgrade 1以上のCIN、従来法ではgrade 1以下とされ診断が一致しない550検体のうち、380の生検検体を組織学的に評価したところ、133検体が組織学的にgrade 2以上の高度CINと診断された。一方、LBCでgrade 1以下、従来法ではgrade 1以上とされた294検体のうち、210の生検検体の組織学的評価でgrade 2以上の高度CINと診断されたのは62検体であった。したがって、LBCは従来法よりも組織学的に高度な病変を71例も多く検出したことになる。Davey氏は、これらの知見をまとめ、「コンピュータを用いたLBCで作製されたスライドを診断する方法は、従来のマニュアル式の診断法に比べ1,000名当たりの高度病変の検出率が1.29倍高く、正確度に優れることが明らかとなった」としている。(菅野 守:医学ライター)

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