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「2015年までに妊産婦死亡率を1990年の1/4に」は達成できるのか

 妊産婦の死亡はほとんどが回避可能であり、それゆえ国連のミレニアム開発目標(Millennium Development Goals; MDGs、http://www.undp.or.jp/aboutundp/mdg/)のターゲットのひとつとなっている。これは、2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の1/4に減少させるというものだが、データの脆弱性のため進捗状況のモニタリングに問題が起きているという。 2006年、評価法の改善を推進するために新たなワーキンググループが設立され、2005年度の妊産婦死亡率を改めて推計し、1990年以降のトレンドの解析を行った。Harvard Center for Population and Development Studies(アメリカ、ケンブリッジ市)のKenneth Hill氏が10月13日付Lancet誌上で報告した。さまざまな方法を開発して解析Hill氏らは、対象となる国を利用可能なデータのタイプ別に8つのカテゴリーに分けて個々に解析を行うなどさまざまな方法を開発し、これらを用いて同一カテゴリーの国や地域レベル、およびグローバルなレベルで2005年度の妊産婦死亡率を算出し、1990~2005年のトレンドを評価した。妊産婦死亡のほとんどがサハラ以南のアフリカ、アジアに集中2005年度の世界の妊産婦死亡数は545,900人、妊産婦死亡率は10万出生あたり402人であった。そのほとんどが、サハラ以南のアフリカ(270,500人、約50%)およびアジア(240,600人、約45%)に集中していた。1990年から2005年にかけて妊産婦死亡率は年平均2.5%減少(p<0.0001)していたが、サハラ以南のアフリカでは有意な減少は認めなかった。MDGターゲットの達成には開発途上地域の妊娠/分娩医療の改善が急務Hill氏によれば、MDGのターゲット「2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の1/4に減少させる」の達成に要する妊産婦死亡率の低下率は年平均5.5%であり、現在の2.5%のままでは不可能という。同氏は、「1990年以降、妊産婦死亡数の減少にある程度の進展がみられた地域もあるが、サハラ以南のアフリカの死亡率は高いままであり、過去15年間に改善のエビデンスはほとんどない」と指摘し、「MDGターゲットの実現には、開発途上地域の妊娠/分娩医療の改善に重点を置いた持続的な施策が急務である」と強調している。(菅野 守:医学ライター)

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人工妊娠中絶の世界的現況――MDG 5の達成に向けて

「人工妊娠中絶は現代の最高度の人権に関わるジレンマであるがゆえに、科学的かつ客観的な情報が必須である」と著者は記す。そして、「微妙な問題であるためデータソースが限られ、正確な情報の入手が困難」とも。 望まない妊娠の低減を目的とする指針の策定には、人工妊娠中絶数の情報が重要である。また、妊婦の罹病および死亡の主な原因は安全でない妊娠中絶であることから、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals; MDGs、http://www.undp.or.jp/aboutundp/mdg/)のひとつ「妊産婦の健康の改善」(MDG5)の達成に向けた進捗状況のモニタリングには危険な中絶の発生状況の把握も重要である。Guttmacher Institute(アメリカ・ニューヨーク市)のGilda Sedgh氏らは中絶率を世界規模で推計し、望まない妊娠や危険な中絶を減少させ安全な中絶を増加させる方策について考察を加えた。10月13日付Lancet誌掲載の報告から。1995~2003年の中絶数、中絶率を世界および地域レベルで解析各国の公式発表システムや調査報告、および公表された研究報告を用いて2003年度に実施された安全な人工妊娠中絶数を世界および地域レベルで算出した。危険な中絶の施行率の算出には病院データ、調査、その他の研究報告を用いた。中絶数の推計、中絶率の算出には人口統計学的方法を用いた。女性集団および出生数は国連の推計値を、地域の定義には国連分類を使用し、1995~2003年の中絶数、中絶率を解析した。中絶数、中絶率は低下、危険な中絶は増加、危険な中絶は途上国に集中1995年の中絶数4,600万件に対し、2003年は4,200万件に減少していた。2003年の人工妊娠中絶率は15~44歳の女性1,000人あたり29件であり、1995年の35件よりも低下していた。中絶率は、西ヨーロッパが1,000女性あたり12件と最も低く、北欧が17件、南欧が18件、北米(アメリカ、カナダ)が21件であった。全中絶のうち危険な中絶の割合は1995年の44%から2003年には48%に増加し、その97%以上が開発途上国で行われていた。2003年の全世界における100出生あたりの中絶率は31件であり、地域別には東欧で最も頻度が高かった(100出生あたり105件)。妊産婦死亡率低減の実現に向け、避妊の必要を満たし、中絶の安全を確保せよSedgh氏によれば、人工妊娠中絶の根本的な原因は望まない妊娠であるが、開発途上国では1億800万人の既婚女性が必要な避妊を行えず、避妊法を使用できない女性が毎年5,100万件の望まない妊娠をしているという。同氏は、「1995年から2003年にかけて全体の中絶率は開発途上国と先進国で同等であったが、危険な中絶は途上国に集中していた」「妊産婦死亡率の本質的な低減を実現し、妊産婦の健康を保護するには、避妊の必要を満たし、すべての中絶の安全を確保する必要がある」と総括している。(菅野 守:医学ライター)

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肺の生活習慣病COPD

2007年10月23日、COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療薬スピリーバ承認取得3周年を機に、発売元である日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社/ファイザー株式会社が日本医科大学呼吸器内科教授、同大学呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞氏(写真)およびCOPD患者ご夫妻を迎え、記念記者会見を開いた。講演および会見の内容を「肺の生活習慣病COPD」、「多彩な併存症を持つ全身性疾患であるCOPD」、「COPD患者の生の声」の3回に分けて掲載する。わが国の喫煙率は高く、主に喫煙を原因とするCOPDは、まさしく「肺の生活習慣病」である。COPDは世界の死亡原因第4位に挙げられ(*1)、わが国でも2000年に死因の第10位に初めて登場した(*2)。木田氏によると、COPDは初めに断続的な咳、痰が生じ、やがて息切れの出現、息切れの増悪を経て、呼吸困難のため在宅酸素療法に頼り、死亡する経過を辿る。特に進行は非常に緩徐であるため、歳のせいなどと誤解され、医師も、患者も気づかないことが多い。そのため、わが国の推定COPD患者が530万人いるにもかかわらず(*3)、実際に22.3万人しか治療を受けていない(*4)。またCOPDが進行すると、患者のQOLが大きく低下し、運動能力が落ち、やがて寝たきりとなり、大きな問題となる。一方、COPDは急性増悪と呼ばれる急激な症状の悪化が繰り返し起こり、COPDの進行を助長させる恐れがある。中等症以上の患者は急性増悪が起きると、多くの場合は入院治療が必要となり、その費用は1回平均69万円で、医療費を考えても早期な診断と治療が望ましい。木田氏は、COPDの診療には、基幹病院とプライマリ・ケアの医療連携が必要と力説した。さらに、木田氏はCOPDが喘息と誤診されることがしばしばあるが、両者の発症原因はまったく異なる疾患で、異なった治療が必要と説明した。3年前、1日1回吸入する抗コリン薬であるスピリーバ(チオトロピウム)の登場で、COPD患者のQOLを大きく改善することが可能になった。その主な治療効果は、気管支拡張効果により、息切れ回数の減少、身体活動の向上、急性増悪の軽減をもたらす。また抗炎症作用によって、全身性炎症反応を阻害することも考えられる。最後に、木田氏はCOPDが治療できる病気、予防できる病気とのWHOのメッセージを紹介し、COPD治療の必要性を訴えた。(ケアネット 呉 晨)

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スタチン臨床試験WOSCOPSの延長追跡調査結果

スタチン(プラバスタチン)とプラセボとで比較した、英国スコットランド西部で行われた無作為化臨床試験WOSCOPS(West of Scotland Coronary Prevention Study)は、心筋梗塞の既往のない高コレステロール血症の男性6,595例を対象としたもので、平均追跡期間は約5年。冠動脈疾患および非致死性心筋梗塞の複合死亡が、スタチン群では7.9%から5.5%まで減少した(P

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小児喘息リスクは新生児期の細菌定着で増加する

小児喘息では一般に先行して、繰り返す喘息様症状=喘鳴(recurrent wheeze)がみられる。デンマーク・コペンハーゲン大学のHans Bisgaard氏らは、重度の繰り返す喘鳴を呈する幼児の気道に病理学的にみられる細菌定着と、喘息の起因との関連を示唆してきた。その関連を明らかにするスタディを実施。NEJM誌10月11日号に結果が報告された。無症候の新生児下咽頭からの吸引液を培養し5歳児までモニタリング検証が行われたのは、無症候の新生児の下咽頭の細菌定着と、5歳時までの喘鳴・喘息・アレルギー発現との関連。喘息の母親から生まれ、コペンハーゲン小児喘息前向き研究(CPSAC:Copenhagen Prospective Study on Asthma in Childhood)に登録された小児が対象となった。無症候の新生児(生後1ヵ月の乳児)の下咽頭部位から吸引液を採取し、肺炎球菌、インフルエンザ菌、Moraxella catarrhalisと黄色ブドウ球菌を培養。5歳児まで喘鳴の評価が前向きにモニタリングされ、日記に記録。4歳時に血中好酸球算定と総IgE、特異的IgE測定を行い、5歳時に肺機能の評価および喘息の診断が行われた。肺炎球菌、Moraxella catarrhalis、インフルエンザ菌の1つ以上の定着がリスク増加培養されたサンプル数は321例。乳児の21%が、肺炎球菌、Moraxella catarrhalis、インフルエンザ菌、あるいは複数の細菌が定着していた。黄色ブドウ球菌の定着はみられなかった。細菌定着(黄色ブドウ球菌を除く1つ以上の)と持続的な喘鳴とのハザード比は2.40、喘鳴の急性かつ重度の増悪とのハザード比は2.99、喘鳴による入院は3.85で、有意に関連していることが明らかとなった。またこれら細菌定着がみられた小児には、4歳時の好酸球数、総IgE値に有意な増加がみられた。特異的IgE値には有意な影響がみられていない。β2作動薬投与後5歳時の、喘息有病率と気道抵抗性の可逆性は、新生児期に細菌の定着がみられた小児 vs みられなかった小児でそれぞれ33% vs 10%、23% vs 18%と、いずれも細菌定着がみられた小児で有意に高いことが判明した。Bisgaard氏らは、「肺炎球菌、Moraxella catarrhalis、インフルエンザ菌の1つ以上の定着がある新生児は、幼児期に繰り返す喘鳴と喘息のリスクが増加する」と結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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仕事の負担は繰り返す冠動脈心疾患のリスク増加と関連する

仕事の負担によって冠動脈心疾患(CHD)イベントのリスクが増すことは明らかとなっているが、初回心筋梗塞(MI)後の繰り返すCHDイベントの危険度と仕事の負担との関連については不明のままである。 そこで仕事の負担がCHDイベントの危険度を増すかどうか、前向きコホート研究がカナダ・ケベック州にあるUniversite LavalのCorine Aboa-Eboule氏らによって行われた。JAMA誌10月10日号掲載の報告より。仕事の負担度を4区分設定し調査対象は、1996年2月10日~2005年6月22日の間に、初回MIを発症後職場復帰を果たした35~59歳までの男女972例。職場復帰までの期間は平均6週間。調査は面談形式で、復帰後2年後時点と6年後時点の仕事の負担について聞き取りが行われた。仕事の負担は、「負担が大きい(high strain)」:要求が高度で自由裁量の幅もない、「積極的であることが求められる(active)」:要求は高度だが自由裁量の幅がある、「受動的である(passive)要求は低度だが自由裁量の幅がない)、「負担は小さい(low strain)」:要求が低度で自由裁量の幅がある、の4区分が設定された。仕事の負担が慢性的なものかどうかは、2回のインタビューに基づき、1回のインタビューで高負担に曝されていると判定できたものと、2回のインタビューで高負担に曝されていると判定できたものとに分けられた。生存率分析は、2.2年以前と2.2年以降の2区分に分け行われた。職場復帰後2.2年以降でハザード比2.20主要アウトカム指標とされたのは、致命的なCHD、非致死性のMI、不安定狭心症の複合で、結果として206例の患者で実証され、慢性的な仕事の負担は2.2年以降の区分で、繰り返すCHDと関連していることが明らかとなった(ハザード比2.20、95%信頼区間:1.32-3.66)。慢性的な仕事の負担に曝されている患者のCHDイベント発生率は6.18/100人年、曝されていない患者は2.81/100人年だった。多変量モデル解析後も、また結果を混乱させている可能性のある26のCHDリスク因子について補正後も、ハザード比は2.00(95%信頼区間:1.08-3.72)で、「慢性的な仕事の負担」は繰り返すCHDイベントの独立予測因子であることが示された。この結果を踏まえEboule氏らは、「初回MI後の慢性的な仕事の負担は、繰り返すCHDのリスク増加と関連していた」と結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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メディケード加入者は医療格差に曝されている

アメリカでは近年、営利保険とは対照的に、管理医療型(マネジドケア)のHMOに加入するメディケード受益者の比率が増加し続けている。マネジドケアHMOでは、重篤あるいは高コストの合併症などを防ぐために予防とルーチンケアを一律に組み込むなど、低所得者や移民が多いメディケード加入者にとってメリットがある半面、必要な医療サービスが制限されるなど“格差”をもたらす可能性も指摘されてきた。 ハーバード・メディカル・スクールのBruce E. Landon氏らは、マネジドケアプランの3パターン間の治療の質を比較。JAMA誌10月10日号で格差の実態について報告した。383のヘルスプランの治療の質を比較治療の質を比較したのは、「メディケード・オンリー・プラン(主にメディケード加入者に供給)」と「営利保険・オンリー・プラン(主に営利保険加入者に供給)」と「メディケード/営利保険適用プラン(実質的に両方の加入者多数に供給)」の3タイプ。比較対象となったのは、2002~2003年にNational Committee for Quality Assuranceで報告された383のヘルスプラン。37が「メディケード・オンリー・プラン」、204が「営利保険・オンリー・プラン」、142が「メディケード/営利保険適用プラン」(メディケード・営利保険加入者データは別々に報告)だった。質の評価には、メディケード集団に適用可能なHEDIS(Healthcare Effectiveness Data and Information Set)の11の指標が用いられた。営利保険加入者のほうが優位メディケード加入者間での11の指標パフォーマンスは、「メディケード・オンリー・プラン」と「メディケード/営利保険適用プラン」で違いはなかった。同様に営利保険加入者間で、「営利保険・オンリー・プラン」と「メディケード/営利保険適用プラン」でパフォーマンスの違いは実質的になかった。全体的に見ると、1つを除く全ての指標で営利保険加入者のパフォーマンスがメディケード加入者より上回っていた。高血圧症コントロールでは4.9%の差(営利保険加入者58.4%対メディケード加入者53.5%、P=0.002)があり、分娩後の適切な治療に関しては24.5%(同77.2%対52.7%、P=0.001)に上る。同程度の格差は、同一のヘルスプランで治療を受けた営利保険加入者とメディケード加入者の間で観察された。Landon氏らは、「メディケード・マネジドケア加入者は、営利保険・マネジドケア加入者より質の低い治療を受けている」と結論。「国家として治療における相違を減らすことが米国ヘルスケアシステムの重要な目的とするのなら、マネジドケアは万能薬でない」と述べ、現状システムの改善を提起した。(武藤まき:医療ライター)

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小児・青少年の運動促進に有効手段は確立しているのか

小児や青少年の肥満が問題になりつつあるが、身体活動改善に有効な手段は示唆こそされているものの、確立されているとは言えないようだ。Addenbrooke's Hospital(英国)のEsther M F van Sluijs氏らは対照試験の体系的レビューの結果をBMJ誌で報告した(オンライン版9月20日付、本誌10月6日号)。57の対照試験を体系的にレビューvan Sluijs氏らは、小児あるいは青少年を対象に何らかの介入が身体活動に及ぼす影響を検討した、57の対照試験を体系的にレビューした。小児(12歳未満)対象が33試験、青少年(12歳以上18歳未満)が24試験だった。その結果、「健康教育」だけでは、小児・青少年とも身体活動は増加しないと考えられた。また「運動教育プログラムの改善」(授業の増加、専門教師による教育、設備増設など)は、小児に対しては一定の効果があるが青少年への有効性は不明だった。一方、上記に限らず様々な形で介入する「多面的介入」は少なくとも青少年に対しては有効だと考えられた。次に、青少年では「学校+地域、家庭」において介入することが「学校」や「地域」、「家庭」のみで介入するよりも有効だが、小児に対する有効性は確認できなかった。また社会経済状態別介入の有効性が小児を対象とした検討では有効性が一部確認されているが、青少年では結論できず、人種別介入は小児・青少年とも無効だった。また小児では無効だった男女別介入が青少年では有効である可能性も示されている。van Sluijs氏らはこの領域に関するデータの蓄積が重要だと主張している。(宇津貴史:医学レポーター)

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高血圧性心肥大の除外に心電図は不適

大規模試験おける一般的な左室肥大検出法である心電図だが、臨床において左室肥大の「除外」に用いるのは必ずしも妥当ではない可能性が出てきた。University of Bern(スイス)のDaniel Pewsner氏らが体系的レビューとしてBMJ誌HPにて早期公表した(8月28日付、その後本誌10月6日号に掲載)。感度は最高で21%Pewsner氏らは高血圧患者を対象に左室肥大を心電図と心エコーの両方で評価している21試験、5,608例のデータを用い、心電図による左室肥大検出の正確さを検討した。心電図上左室肥大の指標としては Sokolow-Lyon index、Cornell voltage indexなど6種、それぞれ別個に検討された。すると心電図による左室肥大検出は、特異度こそ高い(中央値:89~99%)が、感度は低かった(中央値:10.5~21%)。陽性尤度比は最低で1.90という低値もまた陰性尤度比(特異度/偽陰性率)は0.85~0.91(中央値)とバラツキが小さい一方、陽性尤度比(感度/偽陽性率)は Romhilt-Estes scoreの5.90からSokolow-Lyon indexの1.90まで多様にわたった(中央値)。ちなみに最も古いSokolow-Lyon indexよりも明らかに優れている規準は、存在しなかった。JNCはどう変わるかこれらよりPewsner氏らは「左室肥大の除外に心電図を用いるべきではない」と結論する。現在の米国高血圧ガイドラインJNC7では治療開始前のルーチンな心電図検査は推奨しているが心エコーには言及がないため、心電図による心肥大評価を推奨しているようにも読める。次回改訂でこの点に変化があるか興味深いところである。(宇津貴史:医学レポーター)

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標準治療+サリドマイドは高齢の多発性骨髄腫の治療に進歩の時代を開く

1960年代から多発性骨髄腫の治療に用いられてきたメルファラン+プレドニゾン(MP)療法は、大量化学療法が施行できない高齢患者の標準治療として現在も広範に使用されている。一方、サリドマイドは再発あるいは治療抵抗性の多発性骨髄腫に対して実質的な抗腫瘍効果を示すことが報告されているが、新規例における有効性は明らかにされていない。 フランス骨髄腫研究グループ(IFM)のThierry Facon氏らは、未治療の高齢患者を対象に、MP療法、MP+サリドマイド(MPT)療法、中等量メルファラン(100mg/m2)+自家造血幹細胞移植(MEL100)(ミニ移植)の有用性を比較検討するために無作為化試験(IFM 99-06)を実施した。10月6日付Lancet誌掲載の報告から。65~75歳の症例を3つの治療群に無作為割り付け対象は、未治療のstage II~III(Durie-Salmon判定基準)の多発性骨髄腫で、年齢65~75歳の症例とした。65歳未満でも大量化学療法適応外の症例およびstage Iのうち高リスクstage Iの基準を満たす症例は試験に含めた。2000年5月~2005年8月までに447例が登録され、MP群に196例、MPT群に125例、MEL100群に126例が無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存率、副次評価項目は奏効率、無増悪生存期間(PFS)、病勢進行後の生存期間、有害事象とした。MPにサリドマイドを併用すると、生存期間がMPよりも約1.5年延長フォローアップ期間(中央値)51.5ヵ月の時点における生存期間中央値は、MP群が33.2ヵ月、MPT群が51.6ヵ月、MEL100群が38.3ヵ月であった。PFSは、MP群が17.8ヵ月、MPT群が27.5ヵ月、MEL100群が19.4ヵ月であり、病勢進行後の生存期間はそれぞれ11.4ヵ月、13.4ヵ月、14.1ヵ月であった。生存期間は、MPTレジメンがMP(ハザード比:0.59、p=0.0006)およびMEL100(同:0.69、p=0.027)よりも有意に優れていた。MEL100とMPの間には有意な差は認めなかった(同:0.86、p=0.32)。Facon氏は、「MP+サリドマイド療法を未治療の高齢多発性骨髄腫患者の治療の基準とすべき強力なエビデンスがもたらされた」と結論し、「標準的MP療法よりも優れた治療法を発見する試みは40年間も失敗してきたが、MPT療法は高齢患者に対し進歩の時代を開くものだ」と記している。(菅野 守:医学ライター)

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自由行動下血圧測定(ABPM)は24時間が望ましい:IDACO

前向きコホート研究データベースIDACOでは自由行動下血圧と予後の関係を検討しているが、血圧測定は夜間だけでなく24時間行うべきだという。Universidad de la Republica(ウルグアイ)のJose Boggia氏らがLancet誌10月6日号で報告した。 住民研究データを解析IDACO(International Database on Ambulatory blood pressure monitoring in relation to Cardiovascular Outcomes)は国際データベースで、自由行動下24時間血圧と致死性・非致死性予後の相関を検討した前向き住民研究のデータが集積されている。今回の解析対象は平均年齢56.8歳(標準偏差:13.9歳)の7,458例。随時血圧平均値は132.4/80.1mmHg、24時間平均血圧は124.8/74.0mmHgだった。追跡期間中央値は9.6年間だった。 昼間血圧のみでは予後予知力が減弱収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)は昼間、夜間血圧を問わず1標準偏差上昇により心血管系死亡が有意に増加していた。ただし、非心血管系死亡の有意な増加と相関していたのは夜間血圧の上昇だった(いずれも、コホート、年齢、性別、降圧薬服用の有無などで補正後)。同様にSBP、DBPの夜間/昼間血圧比増加(1標準偏差)も、心血管系・非心血管系死亡を有意に増加させていた。夜間降圧度はさほど予後に影響せず?興味深いのは夜間降圧と心血管系予後の関係だろう。夜間/昼間血圧比「0.8~0.9」を正常、「0.8未満」をいわゆる"extreme dippier"、「0.9~1.0」を"non-dipper"、「1.0以上」を"riser"とすると、正常に比べ"riser"と"non-dipper"では総死亡と非心血管系死亡は有意に増加していたものの、心血管系死亡が有意に増加していたのは"riser"だけだった。心血管系イベント(致死性・非致死性)も同様で、"riser"では正常に比べ「全心血管系イベント」、「脳卒中」のリスクが有意に増加していたが、「冠動脈イベント」、「冠動脈イベント+心不全」は増加傾向にとどまった。また"extreme dippier"と"non-dipper"では正常に比べリスクが有意に増加しているイベントはなかった(年齢等補正後)。上記の通り夜間血圧のみでも予後予知が可能だが筆者らは、夜間/昼間血圧比の増加と心血管系死亡・非心血管系死亡の相関に着目し、「自由行動下血圧は夜間だけではなく24時間測定すべきだ」と結論している。(宇津貴史:医学レポーター)

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アルツハイマー病治療薬ドネペジルは興奮症状に対し効果がない

コリンエステラーゼ阻害薬ドネペジルは、アルツハイマー病患者の認知機能障害を改善するとされるが、行動障害に関する有益性については明らかになっていない。 キングズ・カレッジ・ロンドン附属精神医学研究所のRobert J. Howard氏らは、アルツハイマー病患者に共通してみられる興奮症状に対して、本剤が効果的かどうかを検証した。NEJM誌10月4日号掲載報告より。1日10mgを12週投与、評価はCMAIスケールで臨床的に明らかな興奮症状を呈し、短期の心理社会的な治療プログラムでも改善がみられなかった272例のアルツハイマー病患者を、ドネペジル10mg/日投与群(128例)とプラセボ投与群(131例)にランダムに割り付け行われた。投与期間は12週間。12週時点の結果評価は、CMAIスケール(Cohen-Mansfield Agitation Inventory:スケールスコアは29~203。スコアが高いほどより興奮状態であることを示す)が用いられ、スコアの変化が測られた。プラセボ投与群との有意差なし基線から12週へのCMAIスコアの変化に、ドネペジル投与群とプラセボ群で有意差は見られなかった。変化の推定平均差(ドネペジル値-プラセボ値)は-0.06(95%信頼区間:-4.35~4.22)。CMAIスコアが30%以上改善した患者は、プラセボ投与群で22/108例(20.4%)、ドネペジル投与群で22/113(19.5%)で、むしろプラセボ投与群のほうが0.9ポイント上回っていた(95%信頼区間:-11.4~9.6)。両群スコアには、Neuropsychiatric Inventory、Neuropsychiatric Inventory Caregiver Distress ScaleまたはClinician's Global Impression of Changeの各スケールを用いても有意差はみられなかった。Howard氏らは、この12週試験では、アルツハイマー病患者の興奮症状に対してドネペジルは効果がなかったと結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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大腸検診でCT大腸検査と内視鏡検査ではどちらが有益か?

大腸検診および大腸予防の主要なターゲットである進行腫瘍の検出率を、CT大腸(CTC)検査と大腸内視鏡(OC)検査との並行スクリーニングプログラムで比較するという研究が、米国ウィスコンシン大学放射線科のDavid H. Kimらによって行われた。NEJM誌10月4日号掲載報告より。進行腫瘍の検出率と切除したポリープ総数を比較比較対象となったのは、初回CTC検査が行われた連続した成人3,163例(平均年齢58.1±7.8歳)と初回OC検査が行われた連続した成人3,120例(同57.0±7.2歳)。主要評価項目は、進行腫瘍(腺腫および腫)の検出率と切除したポリープ総数とされた。CTCで6mm以上のポリープが発見された患者に対してはOCポリープ切除術が勧められたが、1~2個と少数のポリープ(6~9mm)の場合には、オプションとしてCTCサーベイランスも提示された。一方、初回OC検査で見つかったポリープはすべて、診療指針やサイズに関係なく切除された。検出率に有意差なし、切除・合併症リスクを鑑みてまずはCTCを?CTC検査では123個の進行腫瘍が見つかり、そのうち14個が浸潤だった。OC検査では121個が見つかり、そのうち4個が浸潤だった。初回CTC検査によるOC紹介率は7.9%(246/3,120例)。進行腫瘍が確認されたのは、CTC群3.2%(100/3,120例)、OC群3.4%(107/3,163例)だった。これらには、CTC検査で6~9mmのポリープが発見され、切除をせずにサーベイランス中だった患者158例・193個は含まれていない。切除されたポリープ総数は、CTC群で561個、OC群で2,434個だった。またCTC群ではみられなかったが、OC群では7つの結腸穿孔が生じていた。Kim氏らは、「CTC検査およびOC検査の進行腫瘍の初回時検出率は同程度だったが、ポリープ切除術と合併症数はCTCスクリーニング群のほうが圧倒的に少なかった」点を強調しながら、「これらの所見は治療的なOCの前に、初回スクリーニングとしてCTCを行うことを支持するものだ」と結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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植込型除細動器使用は女性で低い

JAMA誌10月3日号に寄せられた本論は、植込型除細動器(ICD)使用の性差に着目した、複数年にわたる患者追跡調査を踏まえた研究報告で、米国デューク医科大学クリニカルリサーチ研究所のLesley H. Curtis氏らによる。一次あるいは二次予防目的使用群ごと複数年にわたって検証Curtis氏らは、心突然死の一次予防もしくは二次予防を目的にICD使用が適用された患者群を追い検証した。連邦機関の一つであるCMMS(Centers for Medicare & Medicaid Services:旧保健医療財政局)から得られた1991年~2005年の間の調査定義可能な5%相当の全国サンプルを解析。メディケアに該当する65歳以上患者で、急性心筋梗塞、心機能不全あるいは心筋症と診断された(心停止、心室頻拍は除く)男性65,917例、女性70,504例を一次予防コホート群として、心停止または心室頻拍と診断された男性52,252例、女性47,411例を二次予防コホート群として解析が行われた。主要評価項目は、1999年から2005年までの1年ごとのICD治療の受療状況と全死亡率。ICD治療群と未治療群との死亡率の有意差が少ないのは性差のせい?2005年時の一次予防コホート群で、コホートエントリー1年以内でICD治療を受けていたのは男性が32.3/1,000例、女性は8.6/1,000例。多変量解析によって、男性のほうが女性よりもICD治療を受けている傾向が強かった(ハザード比3.15、95%信頼区間2.86-3.47)。またコホートエントリー180日時点で存命のICD未治療群とICD治療群との、1年以内の死亡率に有意差はなかった(ハザード比1.01、95%信頼区間0.82-1.23)。一方、2005年時の二次予防コホート群は、男性102.2/1,000例、女性38.4/1,000例がICD治療を受けていた。人口統計学的変数および共存症の有無で調整後、男性のほうが女性よりもICD治療を受けている傾向が強いことが明らかとなった(ハザード比2.44、95%信頼区間2.30-2.59)。またコホートエントリー30日時点で存命だったICD未治療群とICD治療群との、1年以内の死亡率は、治療群のほうが有意に低かった(ハザード比0.65、95%信頼区間0.60-0.71)。Curtis氏らは、メディケア集団においては、一次予防もしくは二次予防目的いずれでも、女性のほうがICD治療を男性よりも受けていないという性差が見いだされたと報告。これまでの報告ではギャップは少ないとされていたが、性差があると認識することが死亡率改善のためにも必要だと述べている。(武藤まき:医療ライター)

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植込型除細動器使用は治療指針適格患者の35.4%

JAMA誌10月3日号に寄せられた本論は、植込型除細動器(ICD)使用の性・人種差に着目した研究報告で、米国デューク医科大学クリニカルリサーチ研究所のAdrian F. Hernandez氏らによる。指針適格患者13,034例を調査本研究は、ICD治療指針で「心不全で左室駆出率30%以下」とされている治療適格患者間の、実際の使用の性差および人種差を明らかにすることを目的に行われた。解析対象となったのは、心不全・左室駆出率30%以下で退院後、米国心臓協会のGet With the Guidelines-Heart Failure質改善プログラムを受けている患者13,034例。患者は2005年1月~2007年6月の間に217の病院で治療を受けている。主要評価項目は、退院時までにICD治療を受けた、もしくは計画されていたこととした。「女性」「黒人患者」で有意に低いICD治療適格患者のうち退院までにICD治療を受けていたのは4,615例・35.4%だった。内訳は、新規ICD治療1,614例、計画527例、ICD治療既存2,474例。ICD使用率を人種・性別に見ると、黒人女性では28.2%(375/1,329)、白人女性は29.8%(754/2,531)、黒人男性33.4%(660/1,977)、白人男性43.6%(2,356/5,403)となっている(P

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経口避妊薬はむしろ発リスクを低下させる

経口避妊薬は、1960年代初期に導入されて以来、3億人以上の女性が使用していると考えられる。経口避妊薬使用者は非使用者に比べ乳、子宮頸、肝のリスクが増大するとの研究結果がある一方で、子宮内膜、卵巣、結腸・直腸のリスクが低下するとの報告もあり、全体としての発リスクへの影響は明確でない。 イギリス・アバディーン大学一般医療・プライマリケア科のHannaford氏らは、経口避妊薬に関する長期試験のデータを用い、非使用者に比べ使用者では全体として発のリスクが低下するとの仮説の検証を行った。BMJ誌9月11日付オンライン版、9月30日付本誌掲載の報告。1968年に開始された試験のデータを用いて発リスクを評価解析にはRoyal College of General Practitioners’ oral contraception studyのデータを用いた。本試験は1968年に開始され、14ヵ月にわたりイギリス全土の約1,400名の一般医が23,377名の経口避妊薬使用者と23,796名の非使用者を登録した。2004年までの主要データセットと、1996年までのより小さなデータセットについて解析した。婦人科の併発をはじめ種々のについて経口避妊薬使用者と非使用者における補正相対リスクの評価を行った。標準化変数は年齢、喫煙歴、社会的地位、ホルモン補充療法などであり、サブ解析として、使用者の背景因子、使用期間、使用中止後の経過時間による相対リスクの変化について評価した。経口避妊薬は発リスクを増大させず、むしろベネフィットをもたらす非使用者に比べ使用者では、大腸/直腸、子宮体部、卵巣、部位不明の、婦人科の併発などの発現率が有意に低下していた。使用期間が長くなるに従って、子宮頸、中枢神経系あるいは下垂体のリスクは有意に増大し、子宮体部、卵巣のリスクは有意に低下していた。より小さなデータセットでは発全体の相対リスクの低下には有意差はなかった。卵巣および子宮体部の相対リスクの低下は使用中止後も長期間にわたって観察されたが、部分的には有意差を認めなかった。主要データセットでは、使用者における発の絶対リスクの予測低下率は45/10万人年であり、加齢に伴ってベネフィットはむしろ増大した。より小さなデータセットの予測低下率は10/10万人年であった。これらの知見をふまえ、Hannaford氏は、「経口避妊薬は全体として発のリスクを増大させず、むしろベネフィットをもたらす可能性が示唆された」と結論し、「発のリスクとベネフィットのバランスは経口避妊薬の使用パターンや個々のの発症率などによって各国ごとに異なる可能性があり、死亡率への影響も含めさらなる検討が必要である」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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胸痛治療室の導入は入院率を低減させるか

イングランド/ウェールズでは急性の胸痛に対する救急診療部による治療が年間約70万件に達しており、これは緊急入院全体の約1/4に相当する。胸痛治療室での管理により入院率が低下することが確認されているため、国民医療サービス(NHS)を通じた胸痛治療室の設立によって緊急入院が低減する可能性が示唆されている。 イギリス・シェフィールド大学Medical Care Research UnitのGoodacre氏らは、胸痛治療室におけるケアが、治療後30日以降の救急診療部による再治療や入院を増加させずに緊急入院を低減できるかを検討するクラスター無作為化試験を実施、BMJ誌9月18日付オンライン版、9月30日付本誌にて報告した。14施設を介入群と対照群に無作為に割り付け、介入前後の入院率などを評価2004年10月~2005年6月に14施設が登録され、胸痛治療室におけるケアを実施する介入群に7施設が、ルーチンの治療を行う対照群に7施設が無作為に割り付けられた。全体として、介入の前年には胸痛により37,319例が43,642回の治療を受け、介入後の年には40,951例に47,767回の治療が施行された。入院に至った胸痛治療の割合、治療後30日以降の再治療および入院、全原因による1日の緊急入院数、胸痛による救急診療部の受診率について評価した。胸痛治療室の導入は入院率を低下させず、むしろ救急治療が増大胸痛治療室の導入は、ルーチン治療に比べ胸痛による救急診療部の受診率を増大させる傾向が認められた(p=0.08)。入院に至った胸痛治療の割合は両群間で同等であった(p=0.945)。治療後30日以降の再治療(p=0.083)および入院(p=0.036)は、ともに介入群でわずかに増加する傾向が見られ、後者には有意差を認めた。1日の緊急入院数は介入群で有意に増加する(p<0.001)とのエビデンスが得られたが、この知見は欠測値の処理法に対する感受性が高く、別の方法を用いた場合は結果も変わる可能性がある。Goodacre氏は、「胸痛治療室におけるケアの実施は入院率を低下させず、かえって胸痛に対する救急診療部の治療を増大させる可能性がある」と結論し、「適切な患者を選択すればベネフィットをもたらす可能性が残されているとはいえ、既報とは異なりNHSを通じた胸痛治療室の設立は全体として緊急入院の増大を招く可能性があると指摘せざるをえない」としている。(菅野 守:医学ライター)

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グリタゾン系薬により心不全増加するも心血管系死亡率は不変:メタ解析

AHA・ADAによるコンセンサスガイドライン(2003年)では、「インスリン療法例」と「多リスクファクター例」以外では「心不全発症リスクが極めて低い」とされたグリタゾン系薬剤だが、約20,000例を対象としたメタ解析の結果、プラセボ・他剤に比べ心不全発症リスクの有意な増加が確認された。ただし心血管系死亡の有意な増加は認められていない。Lancet誌9月29日号に米国Lahey Clinic Medical CenterのRodrigo M Lago氏らが報告した。心不全発症は有意に増加対象となったのは前糖尿病・2型糖尿病患者においてグリタゾン系薬剤が検討された無作為化二重盲検試験。7試験、20,191例(rosiglitazone:5試験、14,491例、ピオグリタゾン:2試験、5,700例)で解析が行われた。平均29.7ヵ月の追跡期間中、360例の心不全発症が報告されており、グリタゾン系群における発症リスクは対照群の1.72(95%信頼区間:1.21-2.42)倍と有意に増加していた。Rosiglitazone群、ピオグリタゾン群に分けて解析しても同様で、心不全発症リスクの増加は有意だった。心血管系死亡は減少傾向しかし心血管系死亡のリスクはrosiglitazone、ピオグリタゾン群いずれも、対照群に比べ低下傾向を示していた。このため筆者らは「グリタゾン系により増加する心不全が左室リモデリングを伴う通常の心不全と異なる可能性」を示唆するとともに「心不全から死に至るには追跡期間が短すぎる」点も認めている。なお現在、rosiglitazoneによる心血管系イベントへの影響を検討する大規模試験RECORDが進行中である。(宇津貴史:医学レポーター)

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重症精神疾患患者に対する個別就労支援(IPS)のヨーロッパにおける有用性を確認

個別就労支援(individual placement and support; IPS)プログラムは、アメリカで開発された重症精神疾患患者を対象とした援助付きの雇用のモデルである。従来の“train-and-place(訓練を受けてから就労する)”ではなく“place-and-train(就労後に訓練を受ける)”との考え方に基づき、患者の希望に応じて迅速に仕事を探し、精神健康サービス部門の就労専門職員が患者および雇用者を継続的にサポートする。 イギリス・オックスフォード市Warneford病院のTom Burns氏らは、ヨーロッパにおけるIPSの有用性を検証し、個々の国の労働市場および福祉制度におけるIPSの効果を評価する目的で無作為化試験を行った。9月29日付Lancet誌掲載の報告。ヨーロッパの6施設が参加、競合的職業への就労率を評価対象は、18歳以上、2年以上の病歴を有する地域居住の重症精神疾患患者で、競合的職業への就労歴がなく、それを望む者とした。2003年4月~2004年5月にヨーロッパの6施設(イギリス、ドイツ、イタリア、スイス、オランダ、ブルガリア)に312例が登録され、IPS群に156例が、対照群に156例が無作為に割り付けられた。フォローアップ期間は18ヵ月であった。主要評価項目は競合的職業への就労率とし、地域福祉制度や労働市場におけるIPSの効果を検討するためにプロスペクティブなメタ解析を行った。IPS群は就労率が高く、ドロップアウト率および入院率が低い就労率(少なくとも1日以上就労できた患者の割合)は、対照群が28%であったのに対しIPS群は55%と約2倍に達していた。ドロップアウト率は対照群45%に対しIPS群13%、入院率は対照群31%に対しIPS群20%と、いずれもIPS群で良好であった。また、地域の失業率の差がIPSの効果の不均一性と有意な相関を示したことから、社会経済状況の影響も明らかとなった。Burns氏は、「少なくともアメリカと同等の有用性がヨーロッパにおいて確認された」と結論しており、「アメリカで蓄積されてきたエビデンスに今回のヨーロッパの知見を加えれば、IPSが精神健康医療において有効なアプローチであることが確証されるだろう。IPSは出資に値し、さらなる調査が必要である」としている。(菅野 守:医学ライター)

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LDL-C値<70mg/dLにおいても、HDL-C値は心血管イベントの予測因子と成り得るか?

本研究はスタチン治験・TNT(Treating to New Targets study)の事後解析の1つ。高比重リポタンパク(HDL)コレステロール値と心血管イベントとの間にみられる強い逆相関性が、低比重リポタンパク(LDL)コレステロールの極低値との間でもみられるかを検証したもの。オーストラリア心臓血管研究所のPhilip Barter氏らTNT研究グループによる報告は、NEJM誌9月27日号に掲載された。研究ターゲットはLDL値が70mg/dL未満解析はまず、最近終了したTNTスタディ参加患者9,770例のHDLコレステロール値でその予測能が評価された。主要評価項目は、主な心血管イベント(虚血性心疾患、非致死性・非処置の心筋梗塞、心停止後蘇生、致死性あるいは非致死性の脳卒中による死亡)の初回発症までの時間で、スタチン投与後3ヵ月目のHDLコレステロール値との予測的な関係について単変量・多変量解析が行われた。そして同様の評価が、LDLコレステロール値が70mg/dL(1.8mmoL/L)未満である特定の治験者層に対しても行われた。心血管イベントのリスクが少ないことが観察されたTNT試験コホート全体でみると、HDLコレステロールを連続変数とみなした時も、被験者をHDLコレステロール値の五分位数によって階層化した場合も、スタチン治療群のHDLコレステロール値から心血管イベントを予測することは可能だった。また、スタチン治療群をLDLコレステロール値によって階層化し分析したところ、HDLコレステロール値と心血管イベントとは有意な関連がみられ(P=0.05)、LDLコレステロールが70mg/dL未満の患者でも、HDLコレステロール値が最大五分位群の患者は最小五分位群の患者より心血管イベントのリスクが少ないことが見受けられた(P=0.03)。研究グループは、「HDLコレステロール値はスタチン治療患者における主な心血管イベントの予測因子であることが確認され、その関係は70mg/dL未満のLDLコレステロール値の患者でも観察された」と結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

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