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前立腺がんのルーチンスクリーニングは支持できない:メタ解析から

前立腺がんスクリーニングは、診療ガイドラインで推奨されているが、スクリーニングが全体としての死亡率や、患者にとって最も重要なアウトカムである疾患特異的な死亡率を改善するかどうか、さらにスクリーニングの有益性ががんの過剰検出や過剰診療が招く有害およびコストを上回るかどうかについては明らかにされていない。米国フロリダ大学泌尿器・前立腺センターのMia Djulbegovic氏らの研究グループは、前立腺がんスクリーニングの有益性と有害さのエビデンスを検討するため、これまでに発表されている前立腺がんスクリーニングに関する無作為化試験のシステマティックレビューとメタ解析を試みた。BMJ誌2010年9月18日号(オンライン版2010年9月14日号)より。6件の無作為化試験データを解析Djulbegovic氏らは、Medline、Embase、CENTRALなどの電子データベースで2010年7月までにリストアップされた中から、前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング(直腸診の有無にかかわらず)群と非スクリーニング群との比較した無作為化試験を選び検討した。データ抽象化と方法論的な質の評価はGRADEアプローチ法を用い、2人の独立したレビュアーによって評価し、主たる研究者によって検証が行われた。マンテル‐ヘンツェル検定法とランダム効果モデル下での相対リスクと95%信頼区間検定が行われた。計6件の無作為化試験の、基準を満たした38万7,286例が解析対象となった。スクリーニングの有意な効果認められずスクリーニングは、前立腺がんと診断される可能性の増大(相対リスク:1.46、95%信頼区間:1.21~1.77、 P

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女性への教育の増加により、子どもの死亡率が改善

過去40年間に女性の教育期間が著しく増加し、多くの国では男性を凌駕しており、子どもの死亡率の低下に大きく寄与している可能性があることが、アメリカ・ワシントン大学(シアトル)のEmmanuela Gakidou氏らが行った系統的な解析で明らかとなった。教育は、経済発展において根本的な役割を担い、健康にも強い影響を及ぼすことが示されており、母親の教育レベルと子どもの死亡率の関連を強く示唆する報告もある。これまでに、一定期間の教育の影響を評価した研究はあるものの、低所得国において性別、年齢別に、経時的に行われた検討はないという。Lancet誌2010年9月18日号掲載の報告。子どもの死亡率の低下と、女性の教育の改善の関連を評価研究グループは、以前に実施した教育の影響に関する系統的な評価について最新データを用いて再検討を行い、過去40年間(1970~2009年)の子どもの死亡率の低下に対し、女性の教育の改善がどの程度貢献したかを推算した。175ヵ国から915の国勢調査および国が実施した調査を収集し、年齢別および性別の平均教育年数を算出した。first-differencesモデルを用いて、子どもの死亡率と女性の教育期間の関連を解析し、一人当たりの所得および血清HIV陽性率で調整した。さらに、1970~2009年における各国の子どもの死亡率の反事実的予測値(counterfactual estimate)を年ごとに算出した。女性への教育が実質的に増加、半数の国でジェンダー・ギャップが逆転1970年から2009年までに、平均教育年数は、男性(25歳以上)が4.7年(95%不確かさ区間:4.4~5.1年)から8.3年(同:8.0~8.6年)に、女性(25歳以上)は3.5年(同:3.2~3.9年)から7.1年(6.7~7.5年)に増大した。開発途上国の出産可能年齢(15~44歳)の女性の学校教育年数は、2.2年(同:2.0~2.4年)から7.2年(同:6.8~7.6年)に増加した。2009年までに、87ヵ国で男性(25~34歳)よりも女性(25~34歳)の方が、教育期間が長くなった。1970年から2009年までに、5歳未満の子どもの死亡数は820万人減少しており、このうち420万人(51.2%)は出産可能年齢女性の教育期間の増加による可能性が示された。著者は、「特に女性における教育の実質的な増加と、教育におけるジェンダー・ギャップの逆転が、健康のみならず女性の社会的地位や役割に対し重要な意義を持つことが示された」と結論し、「最貧国であっても、教育期間の持続的な増加によって『ミレニアム開発目標4(2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)』の迅速な進展がもたらされる可能性が示唆される」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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妊娠中の体重増加、子の出生時体重増加に関連:妊婦51万人と子116万児の解析

妊娠中の妊婦体重の増加が、遺伝素因とは無関係に子どもの出生時体重を増加させることが、アメリカ・ボストン小児病院のDavid S Ludwig氏らが行ったコホート試験で示された。近年、生活習慣病の胎生期起源に関する研究が盛んに行われ、妊娠中の低栄養状態や低出生時体重が、子どもが成人期に達した際の糖尿病や心血管疾患のリスクを増大させるとの仮説を支持する有力なエビデンスが存在する。一方、妊娠中の過度の体重増加が子どもの出生時体重や後年の肥満リスクを増大させることが観測されているが、これは遺伝素因など他の交絡因子が原因の可能性もあるという。Lancet誌2010年9月18日(オンライン版2010年8月5日号)掲載の報告。同一女性の複数妊娠中の体重増加の差と出生時体重の違いを評価研究グループは、州ベースの出生レジストリー(一人の母親の個々の妊娠状況が比較可能)を用いて妊娠中の体重増加と出生時体重の関連を評価する地域住民ベースのコホート試験を行った。人口動態統計の出生記録を用いて、1989年1月1日~2003年12月31日までのミシガン州とニュージャージー州の全出生について検討を行った。データベースから単胎以上の分娩の初期サンプルを抽出し、次いで妊娠期間37週未満および41週以上、妊婦が糖尿病、子どもの出生時体重が500g未満および7,000g以上、妊娠中の体重増加のデータがない場合を除外した。交絡を最小化するために被験者内デザイン(within-subject design)を使用し、2回以上の妊娠を経験した女性の各妊娠中の体重増加の差から子どもの出生時体重を推定した。妊婦の体重増加が、子どもの肥満予防策のターゲットに51万3,501人の妊婦とその子ども116万4,750児が解析の対象となった。固定効果モデルによる評価では、妊娠中の体重増加と出生時体重の間には一貫した関連が認められた(β:7.35、95%信頼区間:7.10~7.59、p<0.0001)。すなわち、妊娠中に24kg以上の体重増加がみられた女性の子どもは、体重増加が8~10kgの女性(対照)の子どもに比べ出生時体重が148.9g重かった。条件付きロジットモデルによる解析では、出生時体重が4,000g以上の子どもが生まれる頻度は、妊娠中の体重増加が24kg以上の女性が、8~10kgの女性の2倍以上であった(オッズ比:2.26、95%信頼区間:2.09~2.44)。著者は、「遺伝素因とは無関係に、妊娠中の体重増加は子どもの出生時体重を増加させる」と結論し、「出生時体重と成人体重の明白な関連を考慮すると、妊娠中の女性をターゲットとした肥満予防策が、将来的に子どもにベネフィットをもたらす可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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重症ARDS患者への筋弛緩薬早期投与、90日生存率を改善

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で人工呼吸器を装着した患者に対する、新しい筋弛緩薬である神経筋遮断薬cisatracurium besylateの早期投与が、臨床転帰を改善したことが、フランスUniversite de la Mediterranee Aix-MarseilleのLaurent Papazian氏ら「ACURASYS」研究グループにより報告された。神経筋遮断薬投与は酸素化を改善し、人工呼吸器によって誘発された肺損傷を改善する可能性の一方、筋力低下を招く可能性が懸念されていたが、Papazian氏らによる多施設共同プラセボ対照二重盲検無作為化試験の結果、筋力低下を招くことなく90日生存率が改善したことが認められたという。NEJM誌2010年9月16日号より。340例をプラセボ対照で無作為割り付け試験は、2006年3月~2008年3月にフランス国内20施設のICUに、48時間以内に収容された重症ARDS患者340例を、神経筋遮断薬cisatracurium besylate(178例)またはプラセボ(162例)のいずれかを、48時間にわたって投与するよう無作為に割り付けられた。重症ARDSの定義は、動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入酸素濃度(FiO2)150未満、呼気終末陽圧5cmH2O以上、1回換気量6~8mL/kg予測体重とされた。主要評価項目は、退院前または試験登録後90日以内に死亡した患者の割合(90日院内死亡率)とした。あらかじめ定義された共変量とベースラインの群間差はCoxモデルを用いて補正された。90日生存率を改善、呼吸器を外す時間も増加プラセボ群との比較によるcisatracurium群の90日死亡のハザード比は、PaO2/FiO2・呼気プラトー圧・重症度スコア(Simplified Acute Physiology II score)をベースラインで補正後、0.68(95%信頼区間:0.48~0.98、P=0.04)だった。90日粗死亡率は、cisatracurium群が31.6%(95%信頼区間:25.2~38.8)、プラセボ群が40.7%(同:33.5~48.4)(P=0.08)。28日死亡率は、cisatracurium群23.7%(同:18.1~30.5)、プラセボ群33.3%(同:26.5~40.9)(P=0.05)だった。ICUでの後天性の不全麻痺の発生率は、2群間で有意差は認められなかった。これらの結果から研究グループは、重症ARDS患者への神経筋遮断薬による早期投与は、筋力低下を招くことなく、補正後90日生存率を改善し、人工呼吸器を外す時間が増したと結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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禁煙法施行で小児喘息入院が著明に減少:スコットランド

スコットランドでは2006年3月に禁煙法が施行され、公共の場における喫煙が全面的に禁止された。これまでの研究では、施行後、パブで働く従業員における呼吸器症状が減少したとの報告がなされている。本論は、英国グラスゴー大学公衆衛生部門のDaniel Mackay氏らによる、職場などに限定することなく受動喫煙曝露のなくなった集団において呼吸器疾患が減少したかどうかを調査した初の報告で、小児喘息による入院率減少を評価した結果、関連が認められたと報告している。NEJM誌2010年9月16日号より。禁煙法は小児喘息による入院を減らしたかを評価Mackay氏らは、人口510万人のスコットランドの急性期病院で普及している入院診療データ記録SMR01から、2000年1月~2009年10月までの15歳以下の小児喘息による全入院記録を収集した。データは、年齢群、性別、社会経済水準五分位群、居住地域(都市部か地方か)、月、年別で補正後、負の二項回帰モデルを適合し、小児喘息による入院率の検討が行われた。喘息による入院は年5.2%増から18.2%減と著明に減少禁煙法施行前、喘息による入院は1年につき平均5.2%(95%信頼区間:3.9~6.6)の割合で増加していた。一方、禁煙法が施行された2006年3月26日時点の入院率と比較して、法施行後は1年につき平均18.2%減少した(同:14.7~21.8、P

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研修医時代の自己犠牲の思い出が、メーカーからの金品受理を寛容に

医師の、医薬品・医療機器業界からの金品受理に対する許容度は、研修医時代に費やした自己犠牲を思い出すと増大するという。この傾向は、自己犠牲について思い出させた上で、それが金品受理の根拠になるとの合理的理由を提示すると、さらに強まるという。米国Carnegie Mellon大学のSunita Sah氏らが、米国レジデント医約300人について行った無作為化比較対照試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月15日号で発表した。小児科医と家庭医のレジデントを3群に分け調査Sah氏らは、2009年3~7月にかけて、小児科と家庭医のレジデント医、合わせて301人を無作為に3群に分け、企業からの金品受理に関して調査を行った。一群には、研修医時代に払った自己犠牲を再確認してもらうような質問をした上で、企業からの金品受理に関する許容度の質問をした(自己犠牲群:120人)。別の一群には、同様に自己犠牲に関する質問をした上で、それが企業からの金品受理の合理的理由付けになると示唆する質問を行い、金品受理に関する許容度の質問をした(合理性群:121人)。さらに対照群として、企業からの金品受理に関する許容度の質問のみを行った(対照群:60人)。金品受理の寛容さ、自己犠牲再確認で1.8倍、合理性提示でさらに1.5倍にその結果、自己犠牲群では、企業からの金品を許容するとした医師の割合が47.5%(57人)と、対照群の21.7%(13人)に比べ有意に大きかった(オッズ比:1.81、95%信頼区間:1.27~2.58、p=0.001)。さらに金品受理の合理性を示した合理性群では、医師の多くが質問項目に示された合理性の理由には同意しなかったものの、自己犠牲群よりも金品を許容するとした割合は大きく、60.3%(73人)だった(自己犠牲群に対するオッズ比:1.45、同:1.22~1.72、p

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MCATスコアが低いほど、医師資格試験は初回不合格の確率大

米国で医学部を卒業しながら医師資格試験に初回受験で不合格である確率は、「MCAT(Medical College Admission Test)スコアが低い」「白人に比べ非白人の方が」「学費の借金が5万ドル以上ある」で、増大する傾向があるという。米国ワシントン大学のDorothy A. Andriole氏らが、医学部に入学した10万人弱について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月15日号で発表した。卒業生の88.7%が初回で医師試験に合格、成績理由で退学は入学生の1.2%Andriole氏らは、1994~1999年にかけて米国の医学部に入学した9万7,445人について、2009年3月まで、後ろ向きに追跡調査を行った。その結果、データが得られた8万4,018人(86.2%)のうち、医学部を卒業したのは、96.7%にあたる8万1,237人で、成績が理由で医学部を退学したのは1,049人(1.2%)、成績以外の理由による退学は1,732人(2.1%)だった。卒業生のうち、初回受験で米国医師資格試験(ステップ1・2)に合格したのは7万4,494人(88.7%)で、不合格は6,743人(8.0%)だった。MCATスコアが18~20だと、初回不合格の確率13倍、成績不振で退学の確率11倍米国医科大学入学のための共通テスト「MCAT」のスコアと、初回受験で米国医師資格試験に不合格となる補正後オッズ比についてみたところ、同スコアが18~20(被験者の2.9%)の群では、同スコア29超の群に比べ、補正後オッズ比は13.06(95%信頼区間:11.56~14.76)だった。また、同スコアが21~23(5.6%)の同オッズ比は7.52(同:6.79~8.33)、24~26(13.9%)の同オッズ比は4.27(同:3.92~4.65)だった。MCATスコアと、成績理由による退学との関係は、同スコアが18~20の群では、29超の群に比べ、補正後オッズ比が11.08であり、同スコアが21~23の同オッズ比は5.97、24~26の同オッズ比は3.56だった。人種別では、アジア・環太平洋人の、白人に対する初回受験で米国医師資格試験に不合格となる補正後オッズ比は2.15、成績理由による退学に関する補正後オッズ比は1.69だった。また医学部進学のための借金が5万ドル以上ある場合も、同補正後オッズ比はそれぞれ1.68、2.33と高かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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「聞いたことがない」70%以上 双極性障害に対する認知・理解いまだ不十分 〈市民インターネット調査結果〉

9月17日、日本イーライリリー株式会社は、双極性障害の一般市民における認知調査の結果を発表した。調査は10歳代から70歳代の一般市民に行われ、有効回答1294のうち1270サンプルを解析している。セミナーの中で、長崎大学名誉教授であり出島診療所所長の中根允文氏は下記のように解説した。まず、双極性障害について知っているかという質問に対し、対象者の72.9%が「聞いたことがない」と回答した。それに対し、うつ病は87.8%が「病気あるいは治療法まで知っている」と回答しており認知度の差が大きいことがわかる。疾患の特徴については、双極性障害を「自殺の可能性が高い」「再発しやすい」と回答したのは、それぞれ19.7%、8.1%に留まり、疾患に対する正しい情報が浸透していない事がわかる。さらに、「双極性障害の患者さんが隣に引っ越しても良い」「結婚して家族の一員なっても良い」については、それぞれ59%、54.7%が否定的な回答を示しており、市民が患者に対して社会的距離を置く傾向にあることがわかった。疾患に対する誤解と社会的距離の拡大を引き起こす大きな要因は、情報の不足と考えられる。さらに中途半端な情報は、誤解と社会的距離の更なる拡大を示す。市民に対し、早急に適切かつ十分な啓発が必要であると考えられる。また、精神科医に対しても双極性障害治療の難易度に対応できるトレーニングが必要である。そして、日本双極性障害団体連合会(NPO法人として16日認可)代表であり、自らも双極性障害患者でもある佐藤諦吉氏は、患者同士のPeerコンサルティングの有用性を述べるとともに、精神科医に対する双極性障害診療の啓発を要望した。双極性障害の生涯有病率は、0.6%であり稀有な疾患とはいえない。一方、この疾患の再発率は90%以上といわれ、生涯にわたる薬物療法等の治療が必要である。さらに、25~50%の患者が自殺を試みたとの報告もあり、そのリスクはうつ病を超えるといわれる。しかし、現在、日本で使用できる薬剤は、躁病治療薬である炭酸リチウム(リーマス)、気分安定薬のバルプロ酸ナトリウム(デパケンほか)とカルバマゼピン(テグレトール)だけであり、その選択肢は狭い。有望な新薬の登場が今後待ち望まれている。詳細はプレスリリースへhttps://www.lilly.co.jp/pressrelease/2010/news_2010_23.aspx(ケアネット 細田 雅之)

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葉物野菜を摂るほど2型糖尿病リスクは有意に低下

世界の糖尿病有病率は現在、6.4%と推定されており、なかでも新規2型糖尿病患者はこの20年間で激増しているという。糖尿病において食事は、重要かつ潜在的に修正可能なリスク因子とされ、これまで炭水化物や食物繊維の役割に関する研究はされてきたが、果物や野菜の摂取量と2型糖尿病発症率との因果関係は十分には解明されていなかった。そこで、英国レスター大学のPatrice Carter氏らの研究グループは、システマティックレビューとメタ解析を行い両者の因果関係について検討した。BMJ誌2010年9月11日号(オンライン版2010年8月19日号)より。果物、野菜、果物+野菜の摂取量と2型糖尿病の発症率Carter氏らは、Medline、Embase、CINAHL、British Nursing Index(BNI)、コクラン・ライブラリをデータソースとして、「糖尿病」「糖尿病前症(prediabetes)」「果物」「野菜」を用いて論文タイトルおよびキーワード検索を行い、専門家による見解と、関連する論文の参照リストが調べられた。本研究の対象となったのは、「果物」「野菜」「果物と野菜」の摂取量と2型糖尿病の発症率に関して行われた前向きコホート研究が選択された。結果、検索ヒットした3,446研究のうち6つが本研究に適格と判断された。葉物野菜の摂取量増加が2型糖尿病リスクを低下6つの研究のうちの4つは、葉物野菜の摂取に関して個別に結果(キャベツ、レタス、ほうれんそう別になど)を提供するものだった。研究グループは、「果物」「野菜」「果物と野菜」「葉物野菜」のそれぞれの多量摂取群と少量摂取群に着目し分析を行った。結果、「葉物野菜」について、多量群の方が少量群に比べて2型糖尿病リスクが14%低下する関連が示された(ハザード比:0.86、95%信頼区間0.77~0.97、P=0.01)。「果物」「野菜」「果物と野菜」の摂取量と2型糖尿病の発症率低下については、有意な関連は認められず、多量に摂取することの有益性も有意ではなかった。これらの結果から研究グループは、「葉物野菜の1日の摂取量の増加は2型糖尿病のリスクを有意に低下させることができる。さらなる検討が必要だ」と結論している。

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経口ビスホスホネート製剤と食道がんリスクとの関係

 骨粗鬆症の予防や治療に用いられる経口ビスホスホネート製剤を服用する患者には、消化不良、吐き気、腹痛、びらん性食道炎、さらに食道潰瘍といった副作用が一般にみられることは報告されている。さらに最近の症例報告では、食道がんリスクの増加が示唆されている。英国オックスフォード大学のJane Green氏らのグループは、「経口ビスホスホネート製剤服用者において食道がん(胃・大腸ではない)リスクは増加する」との仮説検証を目的に、UK General Practice Research Databaseを用いたコホート内ケース・コントロール解析を行った。BMJ誌2010年9月11日号(オンライン版2010年9月1日号)より。英国40歳以上住民を対象にケース・コントロール解析を実施 解析に用いられたデータベースは、英国のプライマリ・ケア対象住民約600万人を擁する。その中から、ビスホスホネート製剤の処方記録のあった40歳以上男女で、1995~2005年に、食道がん(2,954例)、胃がん(2,018例)、大腸がん(1万641例)と診断された人をケース群とし、ケース群1症例につき、年齢、性、一般医療、観察期間で合致した各5例を対照群とし検証が行われた。 主要評価項目は、喫煙、飲酒、BMIで補正後の、食道・胃・大腸がん発生の相対リスクとした。「10回以上」「5年以上」服用者の食道がん発病率は、非服用者の倍と推計 経口ビスホスホネート製剤を過去に1回以上処方されたケースでは、処方されたことのないケースと比較して食道がんの発病率は高まった(相対リスク:1.30、95%信頼区間:1.02~1.66、P=0.02)。 食道がんリスクは、1~9回処方されたケース(同:0.93、0.66~1.31)と比べて10回以上処方されたケース(同:1.93、1.37~2.70、不均一性P=0.002)で、また3年以上服用していたケースで有意に高かった(平均5年、処方なしのケースに対する相対リスク:2.24、95%信頼区間:1.47~3.43)。 食道がんリスクは、ビスホスホネート製剤のタイプによる有意な違いはなかった。 10回以上処方された場合のリスクは、年齢、性、喫煙、アルコール摂取、BMIによる変動はなかった。また、骨粗鬆症、骨折、上部消化器疾患、さらに制酸薬、NSAIDsやステロイドの処方による変動もなかった。 胃がんと大腸がんは、ビスホスホネート製剤処方との関連は認められなかった。「1回以上処方」対「処方なし」の相対リスクは、0.87(95%信頼区間:0.64~1.19)、0.87(同:0.77~1.00)だった。 研究グループは、「食道がんに関する特異性は試験の方法論的な限界の反証となる」としつつ、「食道がんリスクは、経口ビスホスホネート製剤の10回以上の処方、または5年以上にわたる処方によって増加する」と結論し、「ヨーロッパと北米の60~79歳の食道がん発病率は、非服用者は5年で人口1,000対1だが、服用者では1,000対2に倍増することが見込まれる」と述べている。

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洞結節抑制薬ivabradine、心拍数低下により心不全の予後を改善:SHIFT試験

 選択的洞結節抑制薬ivabradineの心拍数低下効果により、心不全の臨床予後が有意に改善されることが、スウェーデン・Gothenburg大学のKarl Swedberg氏らが実施した無作為化試験(SHIFT試験)で明らかとなった。この20年で、既存の心不全治療法の効果は確立されているが、依然として予後は極めて不良なことから、新たな治療法の開発が最重要課題とされている。SHIFT試験では安静時心拍数の上昇は心不全における不良な予後のリスク因子であることが示されており、ivabradineは洞結節のIf電流を特異的に阻害することで心拍数を低下させ、β遮断薬とは異なり収縮能が低下した患者でも心筋収縮や心臓内伝導に影響を与えないという。Lancet誌2010年9月11日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。左室駆出率≦35%の症候性心不全患者の心拍数低下の効果を評価 SHIFT試験の研究グループは、選択的洞結節抑制薬ivabradineの心拍数低下作用が心不全のアウトカムに及ぼす効果を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。 心不全の症状がみられる左室駆出率≦35%の患者で、心拍数≧70/分の洞調律を保持し、過去1年以内に心不全による入院歴があり、忍容可能な場合はβ遮断薬などによる治療で病態が安定している者を対象とした。これらの患者が、ivabradine(最大で7.5mg×2回/日まで漸増)を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、心血管死および心不全の増悪による入院の複合エンドポイントとし、intention-to-treat解析を行った。心不全の病態生理における心拍数の重要性を確認 6,558例(ivabradine群:3,268例、プラセボ群:3,290例)が対象となり、そのうち6,505例(3,241例、3,264例)が解析可能であった。フォローアップ期間中央値は22.9ヵ月(四分位範囲:18~28ヵ月)であった。複合エンドポイントのイベント発生率は、ivabradine群が24%(793/3,241例)と、プラセボ群の29%(937/3,264例)に比べ有意に低かった(ハザード比:0.82、95%信頼区間:0.75~0.90、p<0.0001)。 イベントの多くが、心不全の増悪による入院[ivabradine群:16%(514/3,241例)、プラセボ群:21%(672/3,264例)、ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.66~0.83、p<0.0001]および心不全による死亡[3%(113/3,241例)、5%(151/3,264例)、0.74、0.58~0.94、p=0.014]であった。 重篤な有害事象は、ivabradine群が3,388件と、プラセボ群の3,847件よりも有意に少なかった(p=0.025)。症候性徐脈はivabradine群の5%(150/3,241例)にみられ、プラセボ群の1%(32/3,264例)に比べ有意に高頻度であった(p<0.0001)。視覚異常(眼内閃光)はivabradine群の3%(89/3,241例)に認め、プラセボ群の1%(17/3,264例)よりも有意に多かった(p<0.0001)。 著者は、「これらの知見は、ivabradineによる心拍数の低下効果が心不全の臨床的予後の改善に寄与することを示唆しており、心不全の病態生理における心拍数の重要性が確認された」と結論している。

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心拍数は慢性心不全の治療ターゲットか?:SHIFT試験

 心拍数高値は心不全のリスク因子であり、ivabradineによる選択的な心拍数低下療法は心血管アウトカムを改善することが、ドイツUniversitatsklinikum des SaarlandesのMichael Bohm氏らによる無作為化試験(SHIFT試験)で判明した。心拍数の上昇は心血管リスクの強力なマーカーとされる。SHIFT試験では、すでにivabradine投与による心拍数の低下が、症候性心不全患者における不良な臨床予後を低減することが示されており、これは心拍数がリスクのマーカーのみならずリスク因子でもあることを示唆するという。Lancet誌2010年9月11日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。ベースラインと治療28日の心拍数でそれぞれ5群に分けて解析 SHIFT試験は慢性心不全に対する選択的洞結節抑制薬ivabradineの効果を検討するプラセボ対照無作為化試験。研究グループは、今回、心拍数上昇は心不全における心血管イベントのリスク因子であるとの仮説を立て、その検証を行った。 慢性心不全の症状がみられ左室駆出率≦35%、心拍数≧70bpmの洞調律が保持された患者6,505例(ivabradine群:3,241例、プラセボ群:3,264例)が登録された。ベースラインの心拍数で70~71bpm(987例)、72~74bpm(1,364例)、75~79bpm(1,545例)、80~86bpm(1,287例)、≧87bpm(1,318例)の5群に分けた。 主要評価項目は、心血管死および心不全の増悪による入院の複合エンドポイントとした。ivabradine群では、治療28日の心拍数と予後の関連について解析した。ivabradineの直接的なリスク低下の作用機序としての心拍数について検討するために、心拍数の変化に基づく補正解析を行った。1bpmの上昇でリスクが3%増大、治療後の最低心拍数群でリスクが最低 プラセボ群の複合エンドポイントのイベント発生数は、最も心拍数が高い群(≧87bpm、682例)が286件と、最も低い群(70~71bpm、461例)の92件の2倍以上に達した(ハザード比:2.34、95%信頼区間:1.84~2.98、p<0.0001)。 プラセボ群では、ベースラインの心拍数が1bpm上昇するごとに複合エンドポイントのリスクが3%ずつ増大し、5bpmの上昇ごとに16%増大した。 ivabradine群では、治療28日の心拍数と心臓アウトカムの間に直接的な関連が認められた。すなわち、治療28日の心拍数が<60bpmに低下した患者(1,192例)の複合エンドポイントのイベント発生率は17.4%(95%信頼区間:15.3~19.6%)であり、60~64bpmの23.8%、65~69bpmの23.0%、70~74bpmの26.5%、≧75bpmの32.4%に比べ低かった(p<0.0001)。 治療28日までの心拍数の変化で補正を行ったところ治療効果が中和されたことから(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.85~1.06、p=0.352)、ivabradineの効果は心拍数の低下で説明できることが示された。 著者は、「心拍数が高いことは心不全のリスク因子であり、ivabradineによる選択的な心拍数低下療法は心血管アウトカムを改善する」と結論し、「心拍数は心不全の重要な治療ターゲットである」と指摘する。

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「感染症対策は一医療者、一大学病院だけで解決する問題ではない」 帝京大学への警察捜査に懸念 全国医学部長病院長会議

全国医学部長病院長会議(会長:横浜市立大学医学部長 黒岩義之氏)は9月17日記者会見を開き、帝京大学医学部附属病院で発生した院内感染問題に関して、警視庁が関係者へ任意での事情聴取を始めたことに対して懸念を抱いていることを発表した([写真右]会長:横浜市立大学医学部長 黒岩義之氏 [写真左]副会長:東京慈恵会医科大学病院長 森山寛氏)。会見では、9月14日に文部科学省高等教育局、厚生労働省医政局、東京都福祉保健局に提出した声明文を読み上げ、医療現場における刑事捜査はその対象を明らかな犯罪や悪意による行為に限るべきであり、現在行われている警視庁による刑事責任の追及を目的とした捜査は医療現場を萎縮させる。司法警察当局には医療現場における謙抑的姿勢を貫かれるよう強く要望すると主張した。また、今回の帝京大学での感染症問題は外部から持ち込まれた菌によるもの。重症例やがん終末期のような免疫力低下症例が多い大学病院では、このようなリスクに脅かされる機会はどの施設でも高いため、今回の事例を教訓として早急に対策を講じなければならない。そのためには、各大学間で新規感染症の治療に関する迅速かつ有効な情報共有体制の構築が必要である。全国医学部長病院長会議としては、国立大学や公立大学、私立大学に協力を呼び掛けていくと表明した。会見の中では「とある大学病院での例」として感染症対策費の試算が発表され、現在の診療報酬制度では感染症対策費を賄いきれない、不足分は各大学病院の持ち出しで補っているという現場の苦しい状況が示された。感染症の専門家の養成についても、従来AIDSや結核、熱帯病などが感染対策の対象だったため、感染制御部を設置している大学病院は少なかった。ここに来て、耐性菌、緑膿菌、レジオネラなど対象が増えたため感染制御部が整備されるようになってきたが、認定看護師(感染管理)も含めて、まだまだ専門家の養成には時間と財源が必要である。これらの観点からも、感染症対策は一医療者、一大学病院だけで解決する問題ではない。予算や専門家の養成も含めて、国家的な規模で対策を講じる必要があると訴えた。《関連リンク》 全国医学部長病院長会議http://www.ajmc.umin.jp/ 「帝京大学医学部附属病院で発生した多剤耐性アシネトバクターによる院内感染問題について」声明文(PDF)http://www.ajmc.umin.jp/22.9.14seimei.pdf(ケアネット 戸田 敏治)

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結核菌とリファンピシン耐性菌が短時間で検出可能に?

スイス・ジュネーブにあるInnovative New Diagnostics基金のCatharina C. Boehme氏らは、ヒト型結核菌(MTB)感染とリファンピシン(RIF)耐性の有無を同時に検出する自動分子検査機器「Xpert MTB/RIF」の性能について検証した結果、「未処理の喀痰からでも、最短で2時間以内に感度の高い検出結果が得られる」ことを報告した。NEJM誌2010年9月9日号(オンライン版2010年9月1日号)掲載より。世界的な結核の制圧は、特に薬剤耐性菌株の出現と、HIV感染患者において喀痰塗抹検査では時間がかかる上、診断精度も低いことによって進んでいない。結核による死亡率を低下させ、伝播を防ぐには一刻も早い検出が必須だが、感度の高い検出法は複雑でインフラ整備も必要なため、普及と効果の享受には限界があるとされている。1,730例の患者でMTB/RIF法と他の検査法を比較「Xpert MTB/RIF」は、喀痰を採取し専用カートリッジに入れ機器にセットする以外は、完全に自動化された検体処理システムである。研究グループは、「Xpert MTB/RIF」の性能を検討するため、薬剤感受性の菌株か多剤耐性菌株が疑われる1,730例の患者を被験者に評価を行った。適格患者はペルー、アゼルバイジャン、南アフリカとインドで集められ、被験者は各々三つの喀痰検体を提供した。二つの検体は検査前にN-アセチル-L-システインと水酸化ナトリウムで処理された上で、顕微鏡検査と固体・液体培養法、MTB/RIF法検査に用いられ、残りの一つの検体は未処理のまま顕微鏡検査とMTB/RIF法検査に使われた。未処理検体でも2時間以内に検査可能培養検査陽性患者において、1回の直接MTB/RIF検査で結核陽性と同定されたのは561例中551例(98.2%)で、陰性と同定されたのは171例中124例(72.5%)だった。結核ではないと同定したのは609例中604例で、検査の特異度は99.2%だった。喀痰塗抹陰性、培養検査陽性患者において、追加MTB/RIF検査2回目で感度が12.6ポイント、3回目で5.1ポイント、トータルで90.2%まで高まった。表現型薬物感受性検査と比較して、MTB/RIF検査は、リファンピシン耐性菌を有する患者205例のうち200例(97.6%)を正確に同定し、リファンピシン感受性菌を有する患者は514例中504例(98.1%)を正確に同定した。塩基配列決定は二つの症例を除いてMTB/RIF分析を支持した。(朝田哲明:医療ライター)

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大腸手術時のゲンタマイシン・コラーゲン・スポンジの感染予防効果

埋め込み型局所用抗菌薬ゲンタマイシン・コラーゲン・スポンジについて術後感染予防の効果は認められないとの報告が、米国デューク大学臨床研究所のElliott Bennett-Guerrero氏らによる第3相臨床試験の大規模多施設共同試験の結果、報告された。術後感染予防を目的とした抗菌薬全身投与はルーチンになっているが、大腸手術後の感染症罹患率もかかる医療コストも高いままである。ゲンタマイシン・コラーゲン・スポンジの外科的埋め込みは世界54ヵ国で承認されており、1985年以降、100万例以上の患者が埋め込みを受けているという。NEJM誌2010年9月9日号(オンライン版2010年8月4日号)より。術後60日以内の感染症イベント率で判定研究グループは、全米39施設で開腹または腹腔鏡下の大腸手術を受けた602例の患者を被験者とし、縫合時、筋膜上に二つのスポンジを挿入する群(スポンジ群)と、挿入しない群(対照群)のいずれかに無作為に割り付け追跡した。すべての患者は予防的な抗菌薬全身投与を含む標準ケアを受けた。プライマリーエンドポイントは、術後60日以内に起きた手術部位感染症とされた。判定は、試験割り付けを知らされていない臨床イベント分類委員会によって行われた。予防どころか、有意により多くの感染症を招いている手術部位感染症の発生率は、スポンジ群(300例中90例・30.0%)の方が対照群(302例中63例・20.9%)より高かった(P=0.01)。表層部の手術部位感染症は、スポンジ群20.3%、対照群13.6%で発生し(P=0.03)、深部の手術部位感染症はそれぞれ8.3%と6.0%(P=0.26)だった。スポンジ群は、創関連の徴候または症状で救急外来や外科外来を受診する頻度(19.7%対11.0%、P=0.004)、手術部位感染症のための再入院(7.0%対4.3%、P=0.15)のいずれも、より高かった。有害事象の頻度は、両群間で有意差はなかった。研究グループは、「大腸手術における手術部位感染症予防目的でのゲンタマイシン・コラーゲン・スポンジ埋め込みは、効果的ではないことが示された。逆説的にむしろ、有意により多くの手術部位感染症をもたらすと思われる」と結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

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顧問 鳥谷部俊一先生「床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!」

1979年東北大学医学部卒業。東北大学医学部第二内科、鹿島台町国民健康保険病院内科科長を経て2004年4月より慈泉会相澤病院 統括医長を勤め、現職に至る。床ずれ治療「ラップ療法」の創案者。ラップで床ずれを治す!それが「ラップ療法」だ床ずれを治癒できるのがこのラップ療法です。しかも簡単な方法で治そうというのがラップ療法の考え方です。まず、ラップを用意していただきます。床ずれを水で洗い、ラップを当ててテープで貼るだけでいいのです。簡単でしょう?今まで外用薬を試す、体位変換をする、栄養管理をするなどの対応で治らなかった床ずれがラップを貼るだけで治ったということで、驚かれています。それも約3ヵ月で治癒するというデータが出ています。ラップ療法を創案する以前は、床ずれは治癒することなく悪化して死亡退院する患者さんを見ることが、ほとんどでした。しかし、この方法で患者はある程度快方に向かうことができます。ポイントは消毒と、ガーゼを貼布しないことです。特にガーゼを当てることで傷口とガーゼが固まってしまい、交換する際にまた傷口を作ってしまうという悪循環をなくすことです。このラップ療法は3ヵ月で治癒するということから患者さんのためにもなり、また看護する側も今まで以上の負担が少ないというのが一番の特徴です。そして、痛みもなく簡単にできるラップ療法は、患者、家族、看護師にも好評であることを実感しました。ラップ療法の効果を広く知ってもらうために、論文・雑誌で発表したり、全国に向けて講演で紹介するようになりました。在宅でも床ずれが治療できるラップ療法は「ラップを貼るだけの治療」という受け止め方をされがちですが、床ずれ治療の新しい考え方を提案しているのです。ラップ療法以前の床ずれ治療は、消毒してガーゼを貼り、またガーゼを貼り直すという処置の繰り返しでした。ラップ療法で入院患者の床ずれが治れば、次は在宅で治療されている患者さんの番です。訪問治療先で1年以上治らない床ずれの患者さんにラップ療法を試してもらうため、ご家族にお願いしました。まず、ラップと洗剤の空き容器を用意してもらいました。次にお湯で洗ってラップをテープで貼るということを毎日やってもらいました。だんだんと治ってくると、ご家族も喜んで続けてくださいます。これも3ヵ月で治りました。その評判に最も敏感だったのが訪問診療をしている開業医の先生方でして、ラップ療法の指導で往診を頼まれたり、勉強会を開催したりするようになりました。ラップ療法はこうして生まれた一見簡単そうなラップ療法ですが、学会に認められるまでは長い道のりでした。それまでは、軟膏を塗ってガーゼを当てるというのが治療の定番でした。ヨード系の外用薬が使えるようになって、床ずれのMRSAや緑膿菌感染は治療できるようになりましたが、床ずれが治るという手ごたえを実感できませんでした。1996年、看護師が床ずれの研修会に出席して、創傷被覆材のサンプルをもらってきました。看護師たちが試してみたいというので許可しました。パンフレットを読んでみると、「湿潤療法」という言葉が書いてあり、使ってみると少しずつ治ってくるんですね。治るまで使いたかったのですが、直径15センチもある床ずれが3ヵ所あって、1日の治療費が5000円、1ヵ月では15万円になる計算で、保険請求したら審査に引っかかるかもしれないし、そもそも3週間分しか請求できないというんですね。残念ながら当時は、病院経営の点から床ずれの治療は以前の軟膏とガーゼ治療に逆戻りしました。それから、創傷被覆材の代用品を探した末、たどり着いたのが食用品ラップでした。さっそく食用品ラップを買ってきて床ずれに貼ってみました。始めは軟膏も使っていました。すると、1週間たって、ずいぶん良くなることが実感。だいたい3ヵ月で治ってしまいました。他にも床ずれの患者さんに何人かラップ療法を試してみたところ、ほとんどみんな治ってしまいました。なぜ「ラップ療法」が話題なのか?軟膏を使い分けたり、創傷被覆材を使い分けたりと、苦労してもなかなか治らなかった床ずれが、水で洗ってラップを貼るだけの簡単なやり方で治ってしまう、というところに尽きます。学会や講演会でこの話をすると、はじめのうちはほとんど信用されませんでしたね。床ずれの写真を見せられて半信半疑でやってみた方からは、「目から鱗」という評価をいただきました。簡単で、病院でも、訪問診療先でも、どこでもできて、患者家族にわかりやすい、指導しやすいと評判を獲得することができました。実は床ずれが治ってくると家族の心が癒される、とよく言われます。ラップ療法は、そんな方々の手で育ってきたと思います。ラップ療法の普及には、インターネットの役割は大きかったですね。ホームページを立ち上げたのは、2001年のことでした。床ずれに関しては素人の内科医が思いついた治療法が、わずか10年余りで全国に普及したのは、インターネットで直接発信し続けたおかげだと思います。ラップ療法が衛生材料として商品化されたため、社会的認知が早まった台所用品を使うという手軽さがラップ療法の売りである反面、医療安全を第一に考える病院などでは、拒否反応というか、嫌悪感が強いですね。医療用ラップが使えれば、ラップ療法と同じ考え方で治療してもらうことができます。そこで、医療用ラップを商品化してもらうべく、食品用ラップのメーカーや、被覆材のメーカーに相談しましたが、どこからも相手にされませんでした。採算などを考えれば無理な相談だったと思います。2005年に、水切り袋と紙おむつを組み合わせた「床ずれパッド」を使い始めました。それまでのラップを使った治療法と比べたら格段の進歩でした。臭いは少ないし、かぶれも少ない、使用感もよくなりました。床ずれパッドを商品化しようと考えて、ガーゼ類のメーカーに相談しました。試作品を何度か作り直した末に完成したのが、「モイスキンパッド」です。衛生材料なので、ガーゼと同じようにどこの病院でも安心して使えます。入院中から退院後まで一貫してモイスキンパッドを使って治療するのは当然ですが、退院後は床ずれパッドを使うように指導すれば、患者の負担も少なくて済みます。ラップ療法に「食わず嫌い」だった方にはモイスキンパッドをお使いいただき、ラップ療法の治療の考え方(Open Wet-dressing Therapy; OpWT)の良さを実感していただければいいなと思います。OpWTという創傷治癒理論が、国内のみならず海外でも広く認められるようになることを願っております。編集部追記:ラップ療法の危険性への指摘があったため、鳥谷部先生より見解をいただき、2011年9月15日に追加記事を掲載しました。質問と回答を公開中!

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鳥谷部俊一先生の答え

ラップ療法の患者家族への説明方法患者さんを自宅で介護している家族の方へ、ラップがガーゼよりも有効である旨を説明するときに上手く伝える方法はあるのでしょうか?また先生のご経験で、このように伝えると上手くいく。というノウハウがございましたら是非教えて頂きたいと考えております。宜しくお願いします。このような場合は、モイスキンパッドをお勧めします。「ガーゼの替わりにバンドエイド、キズパワーパッドを貼るのが時代の先端。治りも早く、痛くない。モイスキンパッドをよく見てください、巨大なバンドエイドですよ」。こんなふうに説明してください。モイスキンパッドで良くなってきたら、床ずれパッドを見せて、「そっくりでしょ。しかも安いんです」とお話しましょう。アトピー性皮膚炎のラップ療法アトピー性皮膚炎でもラップ療法が有効であるとか有効でないとか、賛否両論のようですが、先生はどのようにお考えでしょうか?また、有効である場合に、どのような点に気をつければ宜しいでしょうか?ご教示宜しくお願いします。ラップ療法は、床ずれの治療法です。「アトピー性皮膚炎にドレッシング療法が有効か」という質問にお答えできる立場ではありません。アトピー性皮膚炎に対するドレッシング療法の可能性の問題は興味深く、論議が深まることを期待します。モイスキンパッドはじめまして。日々、「皮膚・排泄ケア認定看護師」とともに床ずれの診療をさせていただいている一皮膚科医です。以前、形成外科の先生が手作りで、「モイスキンパッド」と同様なものを使用されていました。「皮膚・排泄ケア認定看護師」は、あまりいい顔をしていませんでした。実際、ある程度褥瘡は改善するものの、その周囲にかぶれを起こしたり、体部白癬に罹患する患者さんが後を立ちませんでした。結局、ラップ療法を中止することとなりました。これについて、先生はどのようにお考えになりますか?どのようにすれば、こうした皮膚トラブルを避けられますか?改善点はありますでしょうか?ご教示いただけるとありがたいと思います。ご質問ありがとうございます。いろいろ工夫してラップ療法を試みたことに敬服します。ラップ療法や、モイスキンパッド処置では、抗真菌剤を塗布して真菌症を簡単に治療することができます。2000年の医師会雑誌に書いたラップ療法の論文では、合併した「カンジダ症2例を抗真菌剤で治療した」と明記しております。夏など暑い季節には、予防的に抗真菌剤を塗ります。クリーム類がお勧めです。ラップ療法や、モイスキンパッド処置ではドレッシングを絆創膏で固定しないで毎日交換するので、外用薬を毎日塗るのが容易です。真菌は湿潤環境で増殖しますので、吸水力の高いモイスキンパッドを使って皮膚を乾燥させることをお勧めします。手作り「モイスキンパッド」の吸水力についてはデータがありませんのでコメントできません。既成のドレッシングや軟膏ガーゼの治療の場合も真菌感染を生ずるのですが、なぜか話題になることが少ないようです。高齢者の足をみると、ほとんどの方の爪が白く濁って変形しております。白癬症です。爪白癬がある人をよく観察すると、全身に角化した皮疹が見られます。掻痒感があれば、爪で引っかいた痕跡や、体を捩って背中を擦り付ける動作があるでしょう。足ユビ、足底、足背、下腿、膝、臀部、背部、後頭部、手、上肢などをよく調べれば、白癬菌が検出されます。皮膚を湿潤環境にすると、真菌類(カンジダ、白癬)が増殖しやすくなります。抗真菌外用薬(クリーム)を積極的に使用して治療します。基礎疾患が重篤な場合は?現場の知恵を洗練していく先生に敬意を持っております。通常の免疫能がある患者さんにおいては、水道水による洗浄と湿潤環境で軽快するというのはわかりますが、がん治療に伴い免疫不全状態にある患者さん、糖尿病のコントロールがうまくなくこれも免疫不全のある患者さん等、表在の細菌、真菌に弱いと考えられる患者さんにも同様に適応し、効果を期待できるのでしょうか。こうした患者さんにはある程度の消毒なり軟膏治療が必要になるのではないでしょうか。困難な症例に取り組むご様子に敬服します。基礎疾患が重篤な症例に対するラップ療法の有効性は確立しておりません。よって、このような症例には、「ガイドライン」に従った治療をするのが安全であると考えます。ただし、「こうした患者さんに消毒・軟膏治療が有効である」というエビデンスが無いのが現状です。また、「基礎疾患が重篤な患者にこそ、消毒や軟膏による有害事象が生じ易いのではないか」という観点からの検討も必要です。床ずれに対するラップ療法の治癒の機序床ずれはもともと血流障害ですが、これがラップ療法で治癒する機序は何でしょうか。創傷治療の本質に迫るご質問、ありがとうございます。既存の軟膏ガーゼ処置は、「厚い小さなドレッシング」が外力(圧力/ずれ力)を床ずれに加えるため、血流障害をおこして治癒を遷延させます。ラップ療法は、「薄い大きななドレッシング」が外力(圧力/ずれ力)を打ち消すことにより、血流を改善して治癒を促進する湿潤療法です。床ずれの原因は、「外力による血流障害」です。一方、下腿潰瘍などの末梢動脈疾患(PAD)は、「外力によらない血流障害」です。床ずれは、外力(圧力/ずれ力)を取り去ることにより血流が改善して治癒に向かいます。例えば、仙骨部の床ずれは、「腹臥位」で圧迫を防ぐことにより治癒した、という報告があります。要するに、「圧迫さえ無ければ床ずれは普通の切り傷と同じような治り方をする」ということです。圧迫を減らすための工夫が、体圧分散マットレス、体位変換、ポジショニングなどです。ラップ療法は、外力を分散するドレッシング療法・湿潤療法です。感染がある 虚血がある感染症があれば、抗菌作用のパスタ剤や、感受性のある抗菌軟膏やソフラチュールなどは一定期間必要じゃないでしょうか。血流を高めるPG剤も必要では。また、化学的デブリードメントにあたるプロメラインなども必要ではないでしょうか。ラップ療法を実践している医療者の多くは、感染症は抗生剤全身投与で、血流改善は(必要に応じて)PG剤全身投与で治療しております。デブリードメントは、外科的デブリードメントと湿潤療法による自己融解を行なっており、化学的デブリードメント剤は使っておりません。「学会ガイドライン」を参照したところ、ご指摘の外用剤はガーゼとの組み合わせでエビデンスが証明されているようですが、ラップ療法やモイスキンパッドとの組み合わせによるエビデンスはございません。今後、エビデンスが集積されてから併用されることをお勧めします。ラップで治療困難な症例の判別皮膚所見をみた当初から、外科治療、皮弁手術が必要かどうかは、判別可能でしょうか。ある程度ラップしたあとで、考慮するのでしょうか。もちろん他の疾患の管理をし栄養、感染など評価をした場合として。ラップ療法は床ずれの保存療法です。外科治療、皮弁手術を考慮される場合は、「学会ガイドライン」に従った治療をお勧めします。2010年の日本褥瘡学会での議論を拝見した限りでは、外科治療、皮弁手術の適応症例は減っているようでした。感染症に対して抗生剤と抗真菌薬の外用と全身投与について感染症には抗生剤の全身投与は理解できるのですが、表在真菌感染症に抗真菌薬の外用が効くのはどうしてでしょうか?抗生剤の外用はなぜ不適切なのでしょうか?ご教授よろしくお願いします。一部の領域(皮膚科、耳鼻科、歯科など)を除き、細菌感染症の治療は抗生剤全身投与が標準治療です。創感染に対する抗生剤外用は、耐性菌誘発リスクなどの理由から、CDCガイドラインなどは推奨しておりません、「学会ガイドライン」にも推奨の記載が見当たりません。表在真菌感染症は、表皮が感染の舞台なので、抗真菌外用剤がよく効きます。抗生剤の外用は無効です。細菌感染の舞台は真皮や皮下組織、あるいはさらに深部の組織です。閉鎖療法の場合は、創を閉鎖して組織間液が深部組織に逆流する結果抗菌薬が感染部位に到達すると想像されますが、ラップ療法・開放性湿潤療法では、創を開放するので組織間液の逆流は起きず、抗菌剤は感染部位に到達しないと考えます。全身投与された抗生物質は、血流を通じて感染部位に到達します。糖尿病性神経症、ASO合併の下肢壊疽80歳、女性、糖尿病で血液透析の患者です。3年前 右足趾を壊疽で切断。今回は左下足に足趾を中心に踵まで、壊疽、深い、汚染の褥瘡様潰瘍があります、悪臭がします。切断は拒否しています。ラップ療法は有効でしょうか?ラップ療法は、床ずれの治療法です。よって、この症例はラップ療法の適応外です。PADのガイドラインに従った治療をお勧めします。血管治療、デブリドマン後のドレッシング材としてモイスキンパッドが有効であったとの報告があります。このような処置は、ラップ療法とではなく、ドレッシング療法、湿潤療法と呼称すべきです。病院皮膚科形成外科との調整病院内科勤務医です。当院では褥瘡ケアは皮膚科の褥瘡ケアチームが回診しています。形成外科は陰圧吸引療法の高価な機械を使いますが患者の一部費用負担はあるものの病院としては赤字になるようです。どのようにして病院全体の褥瘡ケアを統一改善していったらよいでしょうか。アドバイスをお願い申し上げます。かつて同様の立場にあった内科医として、同情申し上げます。1999年に日本褥瘡学会でラップ療法の発表をして12年になりますが、2009年の学会シンポジウムで「ラップ療法と学会ガイドラインは並立する」と(私が)宣言したことが、「在宅のラップ療法を条件付で容認する」という2010年の学会理事会見解につながったようです。「褥瘡ケアの統一」は、学会ガイドラインで統一するか、ラップ療法で統一するかの選択問題ですが、未だ結論が出ておりません。より多くの方がラップ療法を支持するようになれば、学会がラップ療法を受容する日がいずれ来るでしょう。皆様のお働きを期待申し上げます。総括医学の歴史を紐解くと、新しい考え方が「専門領域の侵害」と受け止められ、いろいろな形で抵抗を受けてきたことが分かります。ゼンメルヴァイスの「消毒法」が医学界で受け入れられたのは、ゼンメルワイスの死後のことです。ラップ療法はインターネットの時代に遭遇して、学会よりも一般社会で先に普及しました。情報化社会では、権威者よりも一般社会が先に一次情報を入手することができます。そうした中にあって、情報の真贋を見抜く力(情報リテラシー)が必要であり、そうした能力が専門家と呼ばれる人々に求められております。MediTalkingという場でラップ療法の議論が深められたのはこうした時代の反映であり、有意義なものと考えます。顧問 鳥谷部俊一先生「床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!」

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鳥谷部俊一先生 [追加記事] 床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!

1979年東北大学医学部卒業。東北大学医学部第二内科、鹿島台町国民健康保険病院内科、慈泉会相澤病院 統括医長、至高会たかせクリニック 顧問を経て、現職に至る。床ずれ治療「ラップ療法」の創案者。追加記事掲載について形成外科専門医の方から「ラップ療法」の危険性について指摘いただきました。<指摘内容>閉鎖療法は簡便なので、医療従事者が取り掛かりやすい。しかし創傷に精通したものでないと症状を悪化させる場合がある。傷の中には感染を伴っている状態のものがあり、これにラップ療法を行ったため、細菌が中で繁殖し、敗血症に陥った例がある。この点に関して、鳥谷部先生からのコメントを追加記事として掲載いたします。鳥谷部先生からのコメント「2010年に、『いわゆる「ラップ療法」に関する日本褥瘡学会理事会見解』が発表されました。http://www.jspu.org/jpn/info/pdf/20100303.pdf『褥瘡の治療にあたっては医療用として認可された創傷被覆材の使用が望ましい。非医療用材料を用いた、いわゆる「ラップ療法」は、医療用として認可された創傷被覆材の継続使用が困難な在宅などの療養環境において使用することを考慮してもよい。ただし、褥瘡の治療について十分な知識と経験を持った医師の責任のもとで、患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである。』2011年、ラップ療法(食品用ラップまたは穴あきプラスチックフィルムを貼付する処置と標準治療(学会ガイドラインに準拠した処置)を比較したランダム化比較研究が行われ、両群の治療成績が同等であるとの結果が学会誌に発表されました*1。この結果をうけ、近く改訂される日本褥瘡学会ガイドラインでは、「"いわゆる"ラップ療法(食品用ラップや穴あきプラスチックフィルムを貼付する処置)」が推奨度C1の処置法として掲載される見通しです。学会ガイドライン検討委員会は、ラップ療法のリスクが高いことを考慮して「十分な知識と経験を持った医師の責任のもとで、患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである」との文言を付け加えたようですが、それならばむしろ「医師の目の届きにくい在宅などではなく、病院に入院している患者に限定して行い、入院患者の治療に習熟した医師が在宅患者を治療すべきである」とするべきでしょう。そもそもラップ療法のランダム化試験は大部分が入院患者を対象にした臨床研究です。そのエビデンスを入院患者ではなくあえて在宅患者に限定適用しガイドラインに書き込んだのは、諸般の事情があったのでしょうか。筆者が日本医師会雑誌(2000年)に発表したラップ療法を追試した方々の多くは、それまでの外用剤とガーゼによる処置法で苦労を重ね、創感染治療に習熟した医師たちでした。最初の何例かは慎重を期して入院管理下で行い、医師自ら毎日処置を行いました。創感染など合併症の管理は当然のことでしたが、それでも従来の治療法よりは比較的容易に対処できたと伝え聞いています。ラップ療法が普及するに従い、従来の治療経験なくして最初からラップ療法を行う医師あるいは非医師があらわれたのでしょうか。ラップ療法(ラップや穴あきポリエチレンを貼付)は、素人目には「簡単な治療」に見えるため、ややもすると安易に行われ、医師の目の届かないところで行われているうちに重症感染を併発し、対応が遅れて敗血症のため亡くなった事例があったのではないかと危惧しております。ラップ療法の臨床研究によると、ラップ療法が他の治療法に比べて特別に創感染を起こしやすいという傾向は認められなかったそうです*1。創感染については筆者は以下のように対応していますので参考にしてください。『褥瘡周囲の熱感,浮腫,滲出液増加,疼痛,発熱,白血球増多,CRP上昇を認めた場合は,感染あるいは持続感染と考え,第一,第二世代のセフェム系あるいは合成ペニシリン系抗生剤,マクロライド,アミノグリコシドなどを全身投与する.創面を細菌培養すると,創感染の有無にかかわらず,大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌が検出される.創面より培養された菌の多くは耐性菌で前述の抗生剤は無効と思われるのだが,実際のところ感染兆候は消失し創所見は改善する.感染終息後に細菌培養をすると,これらの耐性菌が検出される.すなわち,創の表面にいる菌は創感染とは無関係であり,起炎菌は創の深部に存在し,その多くは耐性菌ではないのだろう.褥瘡を有する患者が肺炎や尿路感染を起こすと,創感染がなくても創の状態が悪化(浮腫,滲出液の増加,肉芽壊死)することが多い.発熱時は全身状態を評価し,感染を疑った場合は積極的に抗生剤を全身投与して治療してほしい.』褥瘡の治療は、ラップ療法であれ、学会標準治療であれ、いずれの場合でも創傷治療に経験のある医師が十分な注意を払って行うべきものです。褥瘡治療の経験に乏しい医師は、入院患者を対象に、感染のない浅い褥瘡を医療用ドレッシング(モイスキンパッド・白十字)で治療し、経験を積んでください。3度の褥瘡に対しては早期のデブリードマンを行って創感染を未然に防いでください。感染の兆候(発熱、熱感、腫脹、疼痛、膿性浸出液)を認めたら、早期に抗生物質を全身投与して感染の進展を防ぎましょう。感染が深部に及ぶ症例、骨壊死を伴う症例、閉塞性動脈症を伴う足病変は、しかるべき専門医のいる病院に入院させて治療してください。以上の事例に習熟してから、ラップや穴あきポリエチレンを貼付する「"いわゆる"ラップ療法」に挑戦したり、在宅患者の治療をしていただきたい。褥瘡を発症するような患者はもともと重篤な基礎疾患を合併しており、一旦感染が重症化すると敗血症のため亡くなる可能性が高いのはご承知のことと存じます。患者・家族には、褥瘡がしばしば致死的な疾患であることを十分に説明し、同意を得たうえで治療してください。筆者は2002年以来同意書書式例を公開しておりますので、ぜひ活用してください。*1 文献:水原章浩,尾藤誠司,大西山大 ほか:ラップ療法の治療効果~ガイドラインによる標準法との比較検討.褥瘡会誌, 13:134-141,2011. 褥瘡の予防・治療に関する説明書(例)褥瘡(じょくそう)・床ずれとは、ふとんに接触している皮膚が、すれや圧迫によって血のめぐりが悪くなってできる傷です。自力で寝返りを打てない状態になると、一定の部位に力が加わり続け、皮膚には血液が流れなくなり壊死が生じます。これが褥瘡です。○○○病院では褥瘡対策委員会をつくり、病院内のみならず地域での褥瘡の予防と治療および研究に取り組んでいます。最近褥瘡の研究が進み、次のようなことがわかってきました。圧力を分散させるエアマットレスや体位変換などによって褥瘡の発生を減らすことができるが、最大限の努力をしても患者の全身状態が悪ければ発生を免れない。病院を受診する前にできかかっていた褥瘡が受診または入院後に完成して、あたかも受診後(入院後)にできたように見える経過をたどる例がある。褥瘡の治療法はこの数年間で大きく進歩したが、患者の全身状態が悪ければ必ずしも治らない。褥瘡の治療法はいまだ発展途上である。○○○病院では褥瘡の患者さまにラップ療法を実施しております。(鳥谷部俊一,末丸修三:食品包装用フィルムを用いるⅢ-Ⅳ度褥瘡治療の試み,日本医師会雑誌2000;123(10):1605-1611.水原章浩,尾藤誠司,大西山大 ほか:ラップ療法の治療効果~ガイドラインによる標準法との比較検討.褥瘡会誌, 13:134-141,2011.)ラップ療法は、日本褥瘡学会ガイドライン(次回改訂)に掲載が予定されており、すでに多くの施設で実施されておりますが、非医療材料(食品用ラップや穴あきプラスチックフィルム)を用いますので患者さま(ご家族)の同意が必要です。同意をいただけない場合は厚生労働省の承認をうけた医療材料を用いた方法で治療します。また安全性と有効性を確認するための検査、記録をしております。許可いただければ結果を外部に発表させていただきます。発表に際して、個人のプライバシーは十分に保護されるよう配慮されます。どのようなかたちで発表されるかについては、担当医または院長にお尋ねください。発表にご協力いただけるかどうかは全く自由です。同意いただいた後の撤回もいつでも可能です。また、ご協力いただけなくてもあなたの診療に不利益を生ずることはありません。日付   年   月   日○○○病院 院長私は、褥瘡の予防治療に関し口頭及び文書を用いて説明を受け、その内容を十分理解いたしました。本人  氏  名生年月日代理人 氏名 続柄説明者 職名 氏名ラップ療法を実施することについての同意書検査結果、記録などの学術発表についての同意書私は、褥瘡の治療にラップ療法を実施することについて、および○○○病院における診療で得られた検査結果、記録(写真を含む)の学術発表への利用について、口頭及び文書を用いて説明を受け、その内容を十分理解いたしました。私は、次のように判断いたします。私の褥瘡の治療においてラップ療法をおこなうことに、1 同意します。2 同意しません。診療後、検査結果、記録(写真を含む)の学術発表への利用について、1 同意します。2 同意しません。日付   年   月   日○○○病院 院長-------------------------------------※本記事は、追加記事です。ページ下部にある[質問と回答を見る]をクリックすると、前回と同じ「質問と回答ページ」が表示されます。予めご了承ください。質問と回答を公開中!

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新型インフル発症者、香港型と比べ低年齢だったが入院リスクなどは同等だった

2009年パンデミックA(H1N1)型インフルエンザ(新型インフル)を発症した人は、H3N2型インフルエンザ(香港型)を発症した人に比べ、年齢は低いが、入院リスクなどは同等だったことが報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のEdward A. Belongia氏らが、A型インフルエンザを発症した約7,000人について、タイプ別に(新型インフル、季節性H1N1、H3N2型)調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月8日号で発表した。新型インフルについて、他のA型インフルエンザの症状と直接比較した報告はこれが初めてという。発症者の年齢中央値、新型インフルは10歳、H3N2型は25歳研究グループは、2007~2008年と2008~2009年の各インフルエンザ・シーズンと、2009年5~11月にかけて、米国ウィスコンシン州内14地域(郵便番号で選定)の医療機関で、被験者を30日間追跡する調査を行った。発熱、寒気、咳などの症状が8日未満続いた患者に対し、外来・入院の際に同意を得たうえでA型インフルエンザの検査が行われた。試験に同意した患者は6,874人だった。感染が同定されたのは、新型インフル患者は545人、季節性H1N1患者は221人、H3N2患者は632人だった。それぞれの群の年齢中央値は、新型インフル群が10歳、季節性H1N1群が11歳だったのに対し、H3N2群は25歳と有意に高かった(p

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医師の力量評価スコア、無保険者や英語が話せない患者が多いと低スコア傾向に

医師のクリニカルパフォーマンス・スコアは、患者の中に無保険者や英語が話せない人の割合が多いと、低スコアになる傾向があることが明らかにされた。米国マサチューセッツ総合病院総合診療部門のClemens S. Hong氏らが、同一の医師グループに帰属するプライマリ・ケア医162人と、その患者約12万5,000人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月8日号で発表した。高スコア群医師の患者は低スコア群より、高齢で合併症も多い傾向研究グループは、2003年1月1日~2005年12月31日にかけて、同一の医師グループ(9つの病院診療所と4つの地域保健センター)に属するプライマリ・ケア医162人のパフォーマンス・スコア「Health Plan Employer and Data Information Set」(HEDIS)と、その患者12万5,303人の属性との関連について、調査を行った。患者のカルテは、共通の電子カルテシステムで管理されていた。結果、スコアが低い方から三分位の医師の患者の平均年齢は46.6歳だったのに対し、高い方から三分位の医師の患者は51.1歳と、より高齢だった(p

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