2型糖尿病患者への積極的治療は動脈硬化を退縮するが…

提供元:ケアネット

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公開日:2008/04/22

 



心血管疾患(CVD)リスクの高い2型糖尿病患者の、リスク因子コントロールの目標値について、MedStar Research Institute(米国)のBarbara V. Howard氏らの検証結果が発表された。JAMA誌2008年4月9日号より。

動脈硬化進行を「積極的治療群」と「標準治療群」とで比較




本研究は2型糖尿病を有する40歳以上の米国原住民(American Indians)男女が対象。「SANDS」(Stop Atheroschlerosis in Native Diabetics Study)と呼ばれる。CVD履歴のない参加者499例をLDLコレステロールと収縮期血圧(SBP)の目標値をそれぞれ、「70mg/dL以下」「115mmHg以下」に定めた「積極的治療群」(n=252)と、「100mg/dL以下」「130mmHg以下」に定めた「標準目標治療群」(n=247)とに無作為に割り付け、無症状アテローム性動脈硬化症の進行が比較された。

実施場所はオクラホマ州1、アリゾナ州2、サウスダコタ州1の計4つのクリニカルセンター。追跡期間は2003年4月~2007年7月にわたる間の3年。

主要エンドポイントは総頸動脈内膜中膜厚(IMT)により評価されるアテローム性動脈硬化の変化。副次エンドポイントは、他の頸動脈、心臓超音波検査、CVDイベント発生とされた。

介入後のLDL・SBPの平均値(最低12カ月間)は、「積極的治療群」では72mg/dL・117mmHg(95%信頼区間:69~75、115~118)、「標準目標治療群」は104mg/dL・129mm Hg(101~106、128~130)で、両群とも治療目標値はほぼ達成維持された。

CVDイベント発生に有意差なし、「積極群」の降圧薬に関する有害事象多しで…




「積極的治療群」ではIMTの退縮(-0.012mm)が認められた。一方の「標準目標治療群」は進行(0.038mm)していた(P<0.001)。

「積極的治療群」には頸動脈断面積(単位:mm2)の退縮(-0.02)も認められ(「標準目標治療群」1.05、P<0.001)、左室重量(単位:g/m2.7)も「標準目標治療群」に比べより大きく減少していた(-2.4 対-1.2、p=0.03)。

しかしCVDイベント発生率について両群間に有意差は認められなかった(1.6/100人年 vs 1.5/100人年、p=0.87)。有害事象および重篤な有害事象は降圧薬と関連するもので発生し、「積極的治療群」のほうが発生率は高い[有害事象:38.5% vs 26.7%(p=0.005)、重篤な有害事象:0.2% vs 0.004%(p=0.18)]。

Howard氏らはこの結果を受けて、「積極的な治療はIMTと左室重量を退縮したが、CVDイベント発生率の低下は期待していたものより低く有意差が認められなかった。より長期にわたるCVDイベント発生率低下の検証と、費用対効果、リスク対効果について、さらなる追跡調査が必要だ」と結論している。

(朝田哲明:医療ライター)