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トラスツズマブ+化学療法が、新たな進行胃がんの標準治療に:ToGA試験

ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2、あるいはERBB2とも呼ばれる)陽性の進行胃および胃・食道接合部がんの一次治療として、分子標的治療薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)をフッ化ピリミジン系薬剤+シスプラチン(同:ブリプラチン、ランダなど)による化学療法と併用する治療法が有用なことが、国立ソウル大学医学部のYung-Jue Bang氏らが行った無作為化第III相試験で示された。トラスツズマブはHER2を標的とするモノクローナル抗体で、すでに早期および転移性乳がんの有効な治療薬として確立されており、胃がんの前臨床試験ではカペシタビン(商品名:ゼローダ)やシスプラチンとの併用により少なくとも相加的な抗腫瘍効果が確認されている。乳がんでは良好な耐用性が示され、また胃がん患者のHER2陽性率は乳がん患者とほぼ同等だという。Lancet誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載の報告。トラスツズマブの化学療法への上乗せ効果を評価ToGA試験の研究グループは、HER2陽性進行胃および胃・食道接合部がんの一次治療としてのトラスツズマブ+化学療法併用の有用性を評価する国際的なオープンラベル無作為化第III相試験を実施した。24ヵ国122施設から、免疫組織化学検査でHER2蛋白の過剰発現、あるいはFISH(fluorescence in-situ hybridisation)法でHER2遺伝子の増幅が確認された胃および胃・食道接合部がん患者が登録された。これらの患者が、化学療法[カペシタビン+シスプラチンあるいはフルオロウラシル(商品名:5-FU)+シスプラチン]を3週ごとに6サイクル施行する群あるいは同様の化学療法にトラスツズマブ静脈内投与を併用する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、無作為割り付けの対象となり一回以上の治療を受けた全患者の全生存期間(OS)とした。OS中央値が有意に26%延長594例(トラスツズマブ+化学療法群:298例、化学療法単独群:296例)が登録され、主要評価項目の解析の対象となったのは584例(それぞれ294例、290例)であった。フォローアップ期間中央値は、それぞれ18.6ヵ月(四分位範囲:11~25ヵ月)、17.1ヵ月(同:9~25ヵ月)であった。OS中央値は、トラスツズマブ+化学療法群が13.8ヵ月(95%信頼区間:12~16ヵ月)と、化学療法群単独群の11.1ヵ月(同:10~13ヵ月)に比べ有意に延長した(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.60~0.91、p=0.0046)。最も頻度の高い有害事象は、両群ともに悪心[トラスツズマブ+化学療法群:67%(197/294例)、化学療法単独群:63%(184/290例)]、嘔吐[それぞれ50%(147/294例)、46%(134/290例)]、好中球減少[53%(157/294例)、57%(165/290例)]であった。グレード3または4の有害事象の頻度[それぞれ68%(201/294例)、68%(198/290例)]および心毒性の頻度[6%(17/294例)、6%(18/290例)]は両群間に差を認めなかった。著者は、「トラスツズマブと化学療法の併用療法は、HER2陽性の進行胃および胃・食道接合部がんの新たな標準治療となる可能性がある」と結論している。なお、本試験の参加者の53%が日本人を含むアジア人である。(菅野守:医学ライター)

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boceprevir追加により、C型慢性肝炎の持続的ウイルス陰性化率が約2倍に

未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)ジェノタイプI型感染患者では、標準治療であるペグインターフェロンα-2b(商品名:ペグイントロン)+リバビリン(同:レベトール、コペガス)による導入療法後にboceprevirを追加する治療法が、標準治療単独に比べ持続的ウイルス陰性化率(SVR)を約2倍にまで改善することが、アメリカ・インディアナ大学医学校のPaul Y Kwo氏らが実施した無作為化第II相試験(SPRINT-1試験)で示された。標準治療は免疫系を刺激することで非特異的にウイルスの複製を抑制するもので、SVRは50%以下にすぎない。NS3プロテアーゼ阻害薬であるboceprevirはウイルス複製に重要な蛋白を阻害する「直接作用的抗ウイルス薬」と呼ばれる薬剤の一つであり、標準治療による導入療法の薬剤血中濃度が最適化された時点でこれを追加併用投与するアプローチの有用性に期待が集まっているという。Lancet誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月9日号)掲載の報告。boceprevirの4種類の投与法を標準治療と比較、低用量リバビリンも評価SPRINT-1試験の研究グループは、C型慢性肝炎に対する標準治療であるペグインターフェロンα-2b+リバビリン併用療法と、これにboceprevirを追加する治療法の有効性を比較する無作為化第II相試験を行った。試験にはアメリカ、カナダ、ヨーロッパの67施設から未治療のHCVジェノタイプ1感染患者595例が登録され、二つのパートに分けて実施された。パート1(520例)では、ペグインターフェロンα-2b 1.5μg/kg+リバビリン800~1,400mg/日を48週投与する群(PR48群:104例)を対照とし、同様の治療を4週施行後にboceprevir 800mg×3回/日を追加して24週投与する群(PR4/PRB24群:103例)あるいは44週投与する群(PR4/PRB44群:103例)、ペグインターフェロンα-2b 1.5μg/kg+リバビリン800~1,400mg/日+boceprevir 800mg×3回/日を28週投与する群(PRB28群:107例)あるいは48週投与する群(PRB48群:103例)の全5群に無作為に割り付けられた。パート2(75例)では、PRB48群(16例)あるいはリバビリンを400~1,000mgに減量した低用量PRB48群(59例)に無作為に割り付けられた。いずれのパートも、治療割り付け情報は試験関係者と患者に知らされた。主要評価項目は、治療終了後24週における持続的ウイルス陰性化率(sustained virological response:SVR、HCV RNA非検出例の割合)とした。対照群38%、PRB28群54%、PR4/PRB24群56%、PRB48群67%、PR4/PRB44群75%4つのboceprevir追加群は、いずれも対照群に比べSVRが有意に優れていた。すなわち、対照群(PR48群)のSVRが38%(39/104例、95%信頼区間:28~48%)であったのに対し、PRB28群は54%(58/107例、同:44~64%、p=0.013)、PR4/PRB24群は56%(58/103例、同:46~66%、p=0.005)、PRB48群は67%(69/103例、同:57~76%、p<0.0001)、PR4/PRB44群は75%(77/103例、同:65~83%、p<0.0001)であった。リバビリンを減量した低用量PRB48群では、ウイルス再燃(viral breakthrough、HCV RNAが最低値から≧2 log10上昇あるいは≧50,000IU/mL上昇)の割合が27%(16/59例)と高率であった。低用量PRB48群の再発(治療終了時にHCV RNA非検出で、24週のフォローアップ後に検出された例)の割合は22%(6/27例)であり、対照群の24%(12/51例)と同等であった。boceprevir追加群は、対照群に比べ貧血[55%(227/416例) vs. 34%(35/104例)]、味覚障害[27%(111/416例) vs. 9%(9/104例)]が多くみられた。著者は、「未治療のHCVジェノタイプ1感染患者においては、標準治療であるペグインターフェロンα-2b+リバビリンによる4週の導入療法後にboceprevirを追加する治療法が、標準治療単独に比べSVRを約2倍にまで改善する可能性が示唆される」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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分子標的薬としてのエベロリムスの多発性嚢胞腎への効果は?

本邦では免疫抑制薬(商品名:サーティカン)、分子標的薬としては腎細胞がんへの抗がん薬(商品名:アフィニトール)として製剤が承認されているエベロリムスの、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に対する有効性を検討した試験の結果が報告された。ドイツ・フライブルグ大学病院のGerd Walz氏らによる。ADPKDは緩徐に進行する遺伝性疾患で、ほとんどが末期腎不全に至る。数年前に、遺伝子突然変異が基因にあることが同定されたが、嚢胞肥大を抑え腎不全を予防するための有効な治療法は開発されていない。そうした中、嚢胞肥大に哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)が重要な役割を演じていることが示唆されたことから、mTORを選択的に阻害する分子標的薬としてのエベロリムスに期待が寄せられた。NEJM誌2010年8月26日号(オンライン版2010年6月26日号)より。主要転帰は基線から12ヵ月、24ヵ月時点までの総腎容積の増加プラセボとの対照で有効性を検討した無作為化二重盲検試験は、433例のADPKD患者を対象に、2年間にわたって実施された。主要転帰は、MRI測定による、基線から12ヵ月時点、24ヵ月時点までの総腎容積の変化とした。結果、12ヵ月時点までの総腎容積の変化は、エベロリムス群102mL増加、プラセボ群は157mL(P=0.02)の増加だった。24ヵ月時点までについては、それぞれ230mL、301mLの増加だった(P=0.06)。肥大は緩徐となるも腎機能障害進行は緩徐とはならずまた、嚢胞容積については、12ヵ月時点まではエベロリムス群が76mL、プラセボ群が98mLの増加で(P=0.27)、24ヵ月時点まではそれぞれ181mL、215mLの増加だった(P=0.28)。腎実質容積は、12ヵ月時点まではエベロリムス群が26mL、プラセボ群が62mLの増加で(P=0.003)、24ヵ月時点まではそれぞれ56mL、93mLの増加だった(P=0.11)。24ヵ月時点の推定糸球体濾過量の平均減少量は、エベロリムス群が8.9mL/分/1.73m2、プラセボ群は7.7mL/分/1.73m2であった(P=0.15)。薬剤特異的有害事象はエベロリムス群でより多くみられたが、感染症の発生率は2群とも同程度だった。以上の結果を踏まえ研究グループは、「エベロリムスはプラセボとの比較で、ADPKD患者の総腎容積の増加は緩徐となったが、腎機能障害の進行は緩徐とはならなかった」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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妊娠初期の単純ヘルペスや帯状疱疹の治療薬服用、先天性欠損症リスクを増大せず

母親が妊娠初期に、単純ヘルペスや帯状疱疹の治療薬である、アシクロビル(商品名:ゾビラックスなど)、バラシクロビル(同:バルトレックス)、ファムシクロビル(同:ファムビル)の抗ウイルス薬のいずれかを服用しても、出産児の先天性欠損症リスクは増大しないことが報告された。デンマークStatens Serum Institut疫学研究部門のBjorn Pasternak氏らが、約84万児を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月25日号で発表した。生後1年間の先天性欠損症発症を追跡同氏らは、1996年1月1日~2008年9月30日にデンマークで生まれた83万7,795児について、既往歴コホート研究を行った。染色体異常や遺伝的症候群、原因の明らかな先天異常症候群、先天的ウイルス感染症のいずれかが認められる乳児は、被験者から除外した。生後1年間で見つかった主な先天性欠損症と、母親の妊娠初期のアシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルの服用について、その関連を分析した。抗ウイルス薬服用群と非服用群、先天性欠損症発症率はともに2.2~2.4%と同等母親が妊娠初期に、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルのいずれかを服用していた1,804件の妊娠のうち、主な先天性欠損症が認められたのは、40児(2.2%)だった。一方、母親が妊娠初期にいずれかの抗ウイルス薬も服用していなかった妊娠のうち、主な先天性欠損症が認められたのは1万9,920児(2.4%)で、服薬の有無間での発症リスクに、有意差はみられなかった[補正後罹患率オッズ比(POR):0.89、95%信頼区間:0.65~1.22]。3種の抗ウイルス薬別にみても、同発症リスクの増加は認められず、アシクロビル群(1,561児)のうち先天性欠損症は32児(2.0%)で補正後PORは0.82、バラシクロビル群(229児)は7児(3.1%)で補正後PORは1.21、服薬が稀だったファムシクロビル群(26児)は1児(3.8%)で補正後PORは1.63で、いずれも有意差は認められなかった。予備解析の結果でも、妊娠初期の抗ウイルス薬服用と13種の主な先天性欠損症の間には、有意な関連は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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左室機能不全や重度冠動脈疾患へのPCI前IABP挿入、術後アウトカムを改善せず

左室機能不全や重度冠動脈疾患に対する、経皮的冠動脈血管形成術(PCI)前の大動脈内バルーンパンピング(IABP)は、術後アウトカムの改善にはつながらないことが報告された。英国King's College London循環器部門のDivaka Perera氏らが、前向きオープン多施設共同無作為化試験を行って明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月25日号で発表した。これまでの観察研究では、PCIに先立つIABPは、術後アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。退院時までの主要有害心・心血管イベントをエンドポイントに同研究グループは、2005年12月~2009年1月にかけて、英国内17ヵ所の心臓医療センターでPCIを行った301人を対象に試験を行った。被験者は、左室機能不全(駆出分画率30%以下)で、危険度スコア8/12以上の重度冠動脈疾患だった。被験者は無作為に、PCI実施前にIABPを実施する群(IABP群)と、IABPなしでPCIを実施する群(対照群)に割り付けられた。主要エンドポイントは、退院時(最大28日)までの死亡、急性心筋梗塞、脳血管イベント、血行再建術の再実施のいずれかと定義した、主要有害心・心血管イベント(MACCE)だった。また副次エンドポイントには、6ヵ月時点の全死因死亡、主要術中合併症、出血、穿刺部位合併症が含まれた。MACCEリスクは両群同等、術中合併症リスクはIABP群が0.11倍結果、MACCEはIABP群151人中23人(15.2%)に対し、対照群は150人中24人(16.0%)と、その発症率に両群で有意差はなかった(P=0.85、オッズ比:0.94、95%信頼区間:0.51~1.76)。また、6ヵ月時点の全死因死亡率も、IABP群4.6%に対し、対照群7.4%で、有意差は認められなかった(P=0.32、オッズ比:0.61、95%信頼区間:0.24~1.62)。一方、主な術中合併症発生率については、対照群が10.7%に対しIABP群が1.3%と、IABP実施群で有意に低率だった(P

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大人のADHD患者には、服薬治療とともに認知行動療法を

注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、成人においてもみられるようになっている。成人期ADHDは薬物療法だけでの治療は難しく、一方で心理社会的治療のエビデンスは十分ではない。そこで米国マサチューセッツ総合病院のSteven A. Safren氏らは、認知行動療法の有効性を検討する無作為化試験を行った。JAMA誌2010年8月25日号より。認知行動療法かリラクセーション法を受けてもらい追跡研究グループは、薬物療法を受けているが臨床症状が改善していないADHD成人患者86例を対象に、認知行動療法の有効性を評価する無作為化比較対照試験を行った。被験者は、認知行動療法または問題行動に対して教育的支援で行動修正を図っていくリラクセーション法のいずれかの治療を受ける群に無作為化され、12回の個別セッションを受けた。試験は2004年11月から2008年6月(追跡調査は2009年7月まで)にかけて実施された。無作為化された86例のうち治療を完了したのは79例、追跡評価まで完了したのは70例だった。主要評価項目は、ベースライン時、治療後、6~12ヵ月時点でのADHD症状(ADHD評価スケールとClinical Global Impressionスケールによる)とされた。なお評価者には、どちらの治療を受けたかは知らされなかった。副次評価項目は、ADHD症状の自己報告とした。認知行動療法の方がADHD症状を改善認知行動療法群の治療後スコアは、リラクセーション法群と比較して、Clinical Global Impressionスケール(-0.0531、95%信頼区間:-1.01~-0.05、P=0.03)、ADHD評価スケール(-4.631、95%CI -8.30~-0.963、P=0.02)のいずれも低かった。治療全体を通して、自己申告による症状は、認知行動療法群がより有意に改善されていた(β=-0.41、-0.64~-0.17、P

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隠された代替アウトカムが、誤った結論を誘導する?

無作為化臨床試験のうち主要アウトカムとして代替アウトカム(surrogate outcome)を用いたものは17%に及ぶが、その使用を明記し、妥当性につき考察を加えた試験は約3分の1にすぎないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のJeppe Lerche la Cour氏が行ったコホート研究で示された。代替アウトカムは、無作為化試験において主要アウトカムの代わりに使用可能な場合があるが、不用意に用いると誤解を招いたり、有害な介入が実施されてしまう可能性があるという。欧米では、代替アウトカムに基づいて新薬の市販承認が行われる場合があり、その危険性を指摘する声もある。BMJ誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月18日号)掲載の報告。主要6誌掲載の代替アウトカムを用いた無作為化臨床試験を評価研究グループは、無作為化臨床試験に関する論文の著者が代替アウトカムの使用を告げているか、およびその妥当性を考察しているかについて検討するコホート研究を実施した。2005~2006年に発行された主要な医学ジャーナル6誌(JAMA、New England Journal of Medicine、Lancet、BMJ、Annals of Internal Medicine、PLoS Medicine)に掲載された無作為化臨床試験のうち、主要アウトカムとして代替アウトカムを用いた試験を抽出した。代替アウトカム使用試験:17%、使用報告:57%、妥当性解析:35%この2年間に6誌に掲載された無作為化臨床試験の論文の総数は626編であった。そのうち、109編(17%)が主要アウトカムとして代替アウトカムを使用していた。109編中、代替アウトカムの使用を明確に記載していたのは62編(57%、95%信頼区間:47~67%)のみであった。さらに、代替アウトカム使用の妥当性について考察を加えていたのは38編(35%、95%信頼区間:26~45%)にすぎなかった。著者は、「代替アウトカムを用いた無作為化臨床試験は多いが、その使用を妥当性の考察とともに明記した試験は約1/3にすぎなかった」と結論し、「誤った結論を誘導したり、新たな治療法を不用意に容認しないためには、代替アウトカムの使用につき、より適切に報告すべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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複合アウトカムを信用してはいけない?

 臨床試験で使用される複合アウトカム(composite outcome)は、多くの場合、個々のアウトカムを組み合わせる根拠が不十分で、定義に一貫性がなく、報告も正確性を欠いていることが、デンマーク・コペンハーゲン大学のGloria Cordoba氏らによる系統的なレビューによって明らかとなった。複合アウトカムによる評価では、個々のアウトカムのうち最も重要な項目の有効性が最低だったり、重要性が低い項目の有効性が最も高くなる場合が多いが、複合アウトカムの結果が統計学的に有意な場合、このデータを見た臨床医は有効性が低いにもかかわらず重要アウトカムを予測しがちだという。複合アウトカムを用いる主な利点は、統計学的に十分なイベント数を確保してサンプル数を少なくし、コストと時間を節減することだが、統計学的な有意性を確実なものにするには、複合アウトカムに含める個々のアウトカムの選択基準を確立すべきとの見方もある。BMJ誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月18日号)掲載の報告。複合アウトカムの定義、報告、解釈を系統的にレビュー 複合アウトカムは、いつくかのアウトカムを統合して単一の測定項目とした指標である。研究グループは、複合アウトカムがいかに定義され、報告され、解釈されたかについて系統的なレビューを行った。 2008年に発表され、数値データとして表記された測定項目から成る複合アウトカムが設定されたパラレルグループ無作為化臨床試験の論文を解析の対象とした。2名の研究者が標準化されたデータシートを用いて個々にデータの抽出を行った。さらに、別の2名の研究者が、当該試験の結果を知らされない状態で、最も重要なアウトカムを選定した。複合アウトカムの定義が試験中に変更されていた 対象となった40試験のうち29試験(73%)が循環器領域の研究で、24試験(60%)は資金のすべてあるいは一部が製薬会社の拠出であった。 複合アウトカムに含まれた個々のアウトカム数の中央値は3(範囲:2~9)であった。33試験(83%)では、死亡あるいは心血管死が最も重要なアウトカムとされていたが、個々のアウトカムの選択に関する十分な理論的根拠が示された論文はわずか1編のみであった。 28試験(70%)については、個々のアウトカムの重要度に関する見解が、論文の筆者とレビューを行った評価者で一致しなかった。このうち20試験では、「死亡」と「入院」が一つの複合アウトカムに統合されていた。 さらなる重大な問題点としては、(1)抄録、方法、結果のそれぞれに記載された複合アウトカムの定義が変更されている(13試験)、(2)データが消失、あいまい、解釈不能(9試験)、(3)事後的に複合アウトカムを設定(4試験)、が挙げられた。 複合アウトカムと個々のアウトカムについて信頼性の高い評価が行われていたのは24試験(60%)のみであり、個々のアウトカムの臨床的重要性が同等あるいは同等と推察され、かつ信頼に足る評価が行われていたのは6試験(15%)にすぎなかった。 複合アウトカムに統計学的有意差を認めたとする16試験のうち11試験では、抄録の結論において、個別の最重要アウトカムの有効性は低かったにもかかわらず、有効であったかのように虚偽の印象を与える表現がなされていた。 これらの知見を踏まえ、著者は「臨床試験における複合アウトカムの使用には問題がある。多くの場合、個々のアウトカムを組み合わせる根拠が不十分であり、定義に一貫性がなく、報告に正確性を欠いている」と結論し、「これらの問題は多くの読者を混乱に陥れ、介入による効果の程度について実際よりも誇大な印象を与えかねない」と指摘している。

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20代は献血に消極的? 「献血と血液製剤」認識・意識調査より

 株式会社QLifeは25日、『献血と血液製剤に関する生活者の認識・意識実態調査』の結果を発表した。調査はインターネット上で行われ、全国の生活者7,803人から有効回答を得た。 調査結果によると、20代は献血経験率が39%と、他年代(全体で63%)に比べ大幅に低いことがわかった。また、自身や家族が輸血など血液製剤を使った治療の恩恵を受けた経験がある人でも、特に献血に積極的になるわけではないことも調査結果から示唆された。 一方、血液製剤に関しては、「輸血用の血液製剤が100%国産である」ことをきちんと理解していたのはわずか10%であったが、「なんとなく」知っていたという回答は47%と約半数だった。 また、輸入品を使うことには、輸入を否定する理由は「なんとなく」という多数意見も含め、安全性に対する不安が多かったためと推測できる。ただし、国内の血液製剤事業に対しては「安全性」「管理」「情報開示」を望む声が多く、国産を希望する人が「強く」60%、「どちらかというと」32%と回答者の90%以上が答えており、強い拒否反応がアンケートから見て取れた。詳細はこちらhttp://www.qlife.co.jp/news/1382.html

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患者のニーズが複雑化 “医療”より“経営”について考えることが増えた開業医が8割以上

株式会社QLifeは26日、同社のの患者満足度調査サービスに参加した開業医に対して、医院経営環境の変化認識について簡易アンケート調査を行った。有効回答数は66院。アンケート結果によると、以前に比べ「患者さんの要求内容が複雑化した」と考えるという回答が「とてもそう思う」(36%)、「ややそう思う」(50%)と、合わせて86%に上っていた。また、「医院間の競争が激しくなった」と考える院長が、「とてもそう思う」(52%)、「ややそう思う」(27%)と79%、それに伴い、「医療よりも経営について考える」ことが以前に比べ増えたと回答した院長は、「とてもそう思う」(50%)、「ややそう思う」(33%)と、合計で83%だった。詳細はこちらhttp://www.qlife.co.jp/news/1401.html

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ノバルティス  国内ワクチンメーカーと日本における狂犬病ワクチンの開発・供給について契約締結

ノバルティス ファーマ株式会社は8月24日、スイス・ノバルティス社と一般財団法人化学及血清療法研究所(以下、化血研と略)が、同社が海外で販売している精製ニワトリ胚細胞培養狂犬病ワクチン(海外での製品名:Rabipur)について、日本における開発・供給および販売に関する契約を締結したと発表した。この契約締結により、化血研は、ノバルティスのドイツ・マルブルグ工場で製造される狂犬病ワクチンの日本での開発を行い、製造販売承認の取得を目指すという。製造販売承認の取得後、化血研は本製品を輸入し販売を行う予定で、ノバルティスも日本で本製品の販売を行うオプション権を有しているとのこと。狂犬病は、日本では1956年以降発症例はないが、狂犬病流行国で犬に咬まれ帰国後に発症した輸入感染事例が、1970年にネパールからの帰国者で1例、 2006年にフィリピンからの帰国者で2例報告されている。狂犬病は日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドなどの一部の国々を除いて、全世界で発生しており、特に日本と交流の多い、アジア地域での死亡者が半数以上を占めているという。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2010/pr20100824.html

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5価経口生ロタウイルスワクチン、アジアの開発途上国の乳幼児にも有効

5価経口生ロタウイルスワクチン(商品名:RotaTeq ※国内未承認)は、アジアの開発途上国の乳幼児に対し安全に接種可能で、重症ロタウイルス胃腸炎に対し有効なことが、バングラデシュ・国際下痢性疾患研究センターのK Zaman氏らが行った無作為化試験で示された。WHOの試算では、2004年の世界のロタウイルスによる死亡例数は52万7,000例で、そのうちアジアの開発途上国6ヵ国で21万5,896例を占める。先進国では、乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎の予防にロタウイルスワクチンが有効なことが証明されているが、アジアの開発途上国では同ワクチンの有効性に関する試験は行われていないという。Lancet誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月6日号)掲載の報告。バングラデシュ、ベトナムの生後4~12週の乳幼児に3回接種研究グループは、バングラデシュおよびベトナムにおいて、乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎の予防における5価経口生ワクチンの臨床効果を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。対象は、バングラデシュの農村地域であるMatlabおよびベトナムのNha Trangの都市部と近郊農村部で生まれ、消化管疾患の症状のみられない生後4~12週の乳幼児であった。これらの乳幼児が、生後6週、10週、14週の3回、ポリオウイルスワクチンなどのルーチンの乳幼児ワクチンとともに、5価ロタウイルスワクチンを経口接種する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。医療施設を受診した乳幼児に胃腸炎の症状がみられた場合には、医療スタッフあるいは親の記憶に基づいて報告することとした。主要評価項目は、3回目の接種後14日が経過して以降、試験終了時(2009年3月31日、生後約21ヵ月)までに発現した重症ロタウイルス胃腸炎(Vesikariスコア≧11)とし、per-protocol解析を行った。ワクチン有効率は、[(1-ワクチン群の人・時当たりの重症ロタウイルス胃腸炎発生率)÷プラセボ群の発生率]×100と定義した。ワクチン有効率48.3%、有害事象は同等2,036人が登録され、5価ロタウイルスワクチン群に1,018人が、プラセボ群にも1,018人が割り付けられた。このうち解析の対象となったのは、ワクチン群が991人、プラセボ群は978人であった。3回目の接種後14日から最終的な処置までのフォローアップ期間中央値は498日(IQR:480~575日)であった。ワクチン群では1,197人・年以上のフォローアップ期間中に38例の重症ロタウイルス胃腸炎が報告されたのに対し、プラセボ群では1,156人・年以上で71例に発現し、約2年間におけるワクチン有効率は48.3%(95%信頼区間:22.3~66.1%)と有意な効果が認められた(0%以上の有効性との比較におけるp=0.0005)。各回の接種後14日以内にみられた重篤な有害事象は、ワクチン群が2.5%(25/1,017人)、プラセボ群は2.0%(20/1,018人)であった(intention-to-treat解析)。最も高頻度にみられた重篤な有害事象は肺炎であった[ワクチン群:1.2%(12/1,017人)、プラセボ群:1.5%(15/1,018人)]。著者は、「アジアの開発途上国の乳幼児において、5価経口生ワクチンは安全で、かつ重症ロタウイルス胃腸炎に対し有効であった」と結論し、「これらの知見はWHO勧告の拡張を支持するものであり、本ワクチンの世界的な使用を推し進めるべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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小児がん患児に対する骨盤内照射で、将来の死産、新生児死亡のリスク増大

小児がん患児の性腺系への放射線照射は、将来、男児の場合はその子どもに重篤な有害作用をもたらすことはないが、女児では子宮や卵巣への照射によって死産、新生児死亡のリスクが有意に増加することが、アメリカ・国際疫学研究所(ロックビル)のLisa B Signorello氏らによるコホート研究で明らかとなった。近年、小児がんに対する積極的な治療により生存期間の改善が得られているが、変異原性の治療法である放射線治療は生殖細胞に障害をもたらし、この有害な作用は患児の子どもにも遺伝する可能性が示唆されている。しかし、受胎前の放射線曝露が死産、新生児死亡に及ぼす影響は不明だという。Lancet誌2010年8月21日号(オンライン版2010年7月23日号)掲載の報告。照射線量と死産、新生児死亡リスクの関連を評価する後ろ向きコホート研究研究グループは、不良な妊娠アウトカムのリスクを調査することにより、小児期に放射線治療や化学療法を施行された小児がん生存者からその子どもへの生殖細胞系の障害の遺伝リスクを間接的に評価するレトロスペクティブなコホート研究を行った。本研究は、小児がん生存者の子どもの死産および新生児死亡のリスクに関するコホート研究であるChildhood Cancer Survivor Study(CCSS)の一環として実施された。対象は、初回診断時に21歳未満で、アメリカの25施設およびカナダの1施設で治療を受け、診断後5年以上生存した患者であった。これらの患者に投与された化学療法薬および受胎前に睾丸、卵巣、子宮、下垂体に照射された線量を定量化し、この量と死産、新生児死亡のリスクとの関連につきポアソン回帰分析を用いて解析した。睾丸、下垂体への照射、アルキル化薬は関連なし、子宮、卵巣への照射でリスク増加対象となった小児がん生存者は女性が1,657人、男性が1,148人であり、妊娠数は4,946件であった。以下の項目は、死産、新生児死亡リスクの上昇とは関連がなかった。睾丸への照射[照射を受けた生存者の子ども1,270人のうち死産、新生児死亡は16人(1%)、補正相対リスク:0.8(95%信頼区間:0.4~1.6)、平均線量:0.53Gy(SD 1.40)]、下垂体への照射[17/510人(3%)、線量20.00Gy以上の場合の相対リスク:1.1(95%信頼区間:0.5~2.4)、女性の平均線量:10.20Gy(SD 13.0)]、アルキル化薬による化学療法[女性:26/1,195人(2%)、相対リスク:0.9(95%信頼区間:0.5~1.5)、男性:10/732人(1%)、相対リスク:1.2(95%信頼区間:0.5~2.5)]。子宮および卵巣への照射については、線量が10.00Gy以上になると、死産、新生児死亡のリスクが有意に増加した[5/28人(18%)、相対リスク:9.1(95%信頼区間:3.4~24.6)]。初潮前に放射線治療を受けた女性は、1.00~2.49Gyの低線量であっても死産、新生児死亡のリスクが有意に増加していた[3/69人(4%)、相対リスク:4.7(95%信頼区間:1.2~19.0)]。著者は、「男性の場合、性腺系への照射を受けても、その子どもが死産、新生児死亡となるリスクに影響を及ぼす遺伝性の変化はないことが示唆された。一方、子宮および卵巣への照射は子どもに対し重篤な有害作用をもたらし、これは子宮の障害が原因と推察された」と結論し、「思春期前に高線量の骨盤内照射を施行された女性が妊娠した場合は、注意深いマネジメントが必要である」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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肺がん患者への早期緩和ケア導入はQOL、精神症状、余命を改善

転移性の非小細胞肺がん患者には、早期緩和ケア導入のベネフィットが大きいことが明らかにされた。QOL、精神症状を有意に改善し、標準的ながん治療を受けた患者と比較して積極的治療は少ないにもかかわらず、生存期間がより長かったという。米国マサチューセッツ総合病院のJennifer S. Temel氏らの報告によるもので、NEJM誌2010年8月19日号に掲載された。転移性非小細胞肺がんはつらい症状に苦しむ上に、末期でも積極的治療を受ける場合がある。早期緩和ケア群と標準治療群に無作為化しQOL、精神症状を評価研究グループは、新たに転移性非小細胞肺がんと診断された患者を、標準的ながん治療と併せて早期緩和ケアを行う群(77例)と、標準的ながん治療のみを行う群(74例)に無作為に割り付け、ベースラインから12週までのQOLと精神症状の変化について追跡評価した。各評価には、QOLにはFACT-L(Functional Assessment of Cancer Therapy-Lung)スケール(スコア:0~136、より高いスコアほどQOLが良好であることを示す)が、精神症状にはHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)が用いられた。主要評価項目は、12週時点におけるQOLの変化とした。末期医療に関するデータは電子カルテから集められた。QOL、精神症状、余命とも早期緩和ケア群が良好被験者151例のうち、12週までに27例が死亡に至り、評価が完遂されたのは12週時点で生存していた患者124例の86%に当たる107例だった。早期緩和ケア群のQOLは、標準的治療群より良好だった(FACT-Lスケールの平均スコア98.0対91.5、P=0.03)。加えて、早期緩和ケア群は標準的治療群より、抑うつ症状がより少なかった(16%対38%、P=0.01)。積極的な末期医療を受けた患者の割合は、早期緩和ケア群より標準的治療群が多かった(33%対54%、P=0.05)にもかかわらず、生存期間の中央値は早期緩和ケア群が、より長かった(11.6ヵ月対8.9ヵ月、P=0.02)。(朝田哲明:医療ライター)

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線維筋痛症に太極拳が有効

 線維筋痛症には太極拳が有用な治療である可能性が、米国ボストンにあるタフツ大学リウマチ科のChenchen Wang氏らの研究グループによる無作為化試験の結果、報告された。線維筋痛症治療ガイドラインでは、薬物療法、認知行動療法と並んで、健康教育と運動療法を含む集学的治療が提唱されている。なかでも運動は線維筋痛症に有効とされ、治療の中心的な構成要素として提唱されてきたが、患者の多くは診断後、何年にもわたって重篤な疼痛に悩まされ、症状のコントロールに薬物療法を必要としている。Wang氏らは、これまでの研究で太極拳が線維筋痛症に効果があるとの示唆を受け、試験を行った。NEJM誌2010年8月19日号より。太極拳と従来療法の2群に無作為化 Wang氏らは、線維筋痛症(米国リウマチ学会の1990年診断基準で定義)患者66例を対象に、伝統的な楊式太極拳を治療に取り入れた群(1セッション60分を週2回12週間継続、太極拳群、33例)と、健康教育とストレッチからなる従来療法群(対照群、33例)とを比較する、単純盲検無作為化試験を行った。 主要評価項目は、12週の介入が終わった時点の、繊維筋痛症質問票(Fibromyalgia Impact Questionnaire:FIQ)スコア(スコア:0~100ポイント、スコアが高いほど症状が重いことを示す)の変化とした。副次評価項目は、SF健康調査票(SF-36)の身体的および精神的項目のサマリースコアとした。また、効果の持続性を確かめるため、24週時点にも全員に対する評価が行われた。FIQスコア、SF-36スコアとも太極拳に軍配 結果、太極拳群33例には、FIQスコアおよびQOLにおいて臨床上重要な改善がみられた。FIQスコア平均値(±SD)のベースラインと12週の値は、太極拳群は62.9±15.5と35.1±18.8だったのに対し、対照群は68.0±11と58.6±17.6で、太極拳群のベースラインからの変化の差の方が対照群の同変化の差よりも18.4ポイント大きかった(P

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20年前と比べ、米国青少年の聴覚障害が増大、約2割に

米国の12~19歳の聴覚障害罹患率が、20年前と比べて増加傾向にあることが明らかになった。1988~1994年調査時の罹患率は約15%だったが、2005~2006年調査時は約20%になっていたという。米国ブリガム&ウィメンズ病院Channing LaboratoryのJosef Shargorodsky氏らが、全米健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)のデータを分析し明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月18日号で発表した。著者らは、「増加の要因と、回避・防止し得るリスクファクターを特定することが必要」と提言している。5,000人弱について、聴覚障害の種類や程度、リスク因子を調査Shargorodsky氏らは、NHANESの1988~1994年時の12~19歳被験者2,928人のデータと、2005~2006年時の同1,771人のデータについて検討した。被験者は、聴力測定器によって聴覚障害の有無を調べられ、聴覚障害の程度について、片耳もしくは両耳、低周波(0.5、1、2kHz)または高周波(3、4、6、8kHz)、軽度(15超~25未満dB)か中等度~重度(25以上dB)に分類された。また、聴覚障害とそのリスク因子についての相互関係についても分析調査された。近年の聴覚障害は片耳、高周波が高率結果、1988~1994年の聴覚障害罹患率は14.9%(95%信頼区間:13.0~16.9)だったのに対し、2005~2006年の同率は19.5%(同:15.2~23.8)と、有意に増加していた(p=0.02)。05~06年の聴覚障害は片耳が多く、その罹患率は14.0%(同:10.4~17.6)で、88~94年の同11.1%(同:9.5~12.8)に比べ高率だった(p=0.005)。また05~06年は、高周波聴覚障害の罹患率が16.4%(同:13.2~19.7)と、88~94年の同12.8%(同:11.1~14.5)に比べ高率だった(p=0.02)。聴覚障害のリスクは、連邦政府が定める貧困層の子どもで有意に高く、罹患率は23.6%(同:18.5~28.7)であり、そうでない場合の18.4%(同:13.6~23.2)に比べ有意に高率だった(補正後オッズ比:1.60、95%信頼区間:1.10~2.32)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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STEMI患者へのPCI、システム1時間遅延ごとに死亡率1割上昇

ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者の、救急通報を受けてからの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施までの所要時間(システム遅延)が、1時間増すごとに、死亡率が1割上昇することが明らかにされた。デンマークAarhus大学病院循環器部門のChristian Juhl Terkelsen氏らが、6,000人超を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月18日号で発表した。STEMI患者が、医療機関に到着してから再潅流治療を受けるまでの、いわゆる「ドアからバルーンまで」(door-to-balloon)の遅延とアウトカムに関する研究はこれまでにも発表されているが、救急通報時点から医療機関到着までの時間を含む、システム遅延とアウトカムに関する研究は、これが初めてという。6,209人を中央値3.4年追跡研究グループは、2002年1月1日~2008年12月31日にかけて、デンマーク内で多数の症例数をこなす3ヵ所のプライマリPCIセンターで、発症から12時間以内にPCIを実施した、合わせて6,209人を対象に試験を行った。救急通報を受けてからPCIのガイド・カテーテル挿入までの所要時間を「システム遅延」、通報からPCIセンター到着までの所要時間を「前病院遅延」、PCIセンター到着からカテーテル挿入までの所要時間を、「ドアからバルーンまで遅延」と定義した。追跡期間の中央値は、3.4年(四分位範囲:1.8~5.2)だった。システム遅延、前病院遅延、ドアからバルーンまで遅延のそれぞれが長期死亡の独立因子結果、システム遅延が0~60分までの群(347人)では、長期死亡率が15.4%(43人)だった。システム遅延が増大するにしたがって同死亡率も増加し、61~120分(2,643人)では23.3%(380人)、121~180分(2,092人)では28.1%(378人)、181~360分(1,127人)では30.8%(275人)だった(p

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認知症の抑制に、果物/野菜摂取の増進とうつ病/糖尿病の予防が有望

認知症の発症を最大限に抑制するアプローチとして、結晶性知能(crystallized intelligence)と果物/野菜の摂取の増進およびうつ病と糖尿病の予防が有望なことが、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)La Colombiere病院のK Ritchie氏らによるコホート研究で示された。認知症の臨床的、環境的なリスク因子は多岐にわたり、修正可能なことが一般人口を対象とした試験で示されている。そこで、認知症に特異的なリスク因子を検出し、これを除去することで発症を抑制するアプローチが進められている。BMJ誌2010年8月14日号(オンライン版2010年8月5日号)掲載の報告。認知症特異的リスク因子の除去によって発症率はどの程度低減するか研究グループは、特異的なリスク因子の除去による認知症発症率の低減効果の評価を目的に、7年間に及ぶプロスペクティブなコホート研究を実施した。対象は、フランス南部の都市モンペリエ在住の65歳以上の住民1,433人[ベースラインの平均年齢72.5(SD 5.1)歳]であった。これらの一般住民に対し、標準化された神経学的検査を施行し、軽度認知障害および認知症の診断を行った。公衆衛生プログラムにおける優先項目が明らかにハザード比を算出し、認知症の修正可能なリスク因子の交絡因子や相互作用を検出するためにCoxモデルを構築した。7年間における軽度認知障害および認知症の発症率のブートストラッピングにより、平均人口寄与割合(PAF)を95%信頼区間とともに算出した。最終的に得られたCoxモデルを用いて多変量解析を行い、補正PAFを算出したところ、以下の項目が軽度認知障害および認知症の有意なリスク因子であった。結晶性知能(過去の学習経験の高度な適用によって得られる判断力や習慣)(ハザード比:1.72、95%信頼区間:1.41~2.09、p<0.001、%PAF:18.1、95%信頼区間:10.9~25.4)、うつ病(1.39、1.13~1.71、p=0.002、10.3、3.7~17.2)、果物と野菜の摂取(1.26、1.02~1.56、p=0.04、6.5、0.2~13.1)、糖尿病(1.85、1.34~2.56、p<0.002、4.9、1.9~8.0)、アポリポ蛋白E遺伝子のε4対立遺伝子(1.47、1.16~1.86、p=0.001、7.1、2.4~12.0)。これらのデータに基づき、著者は「結晶性知能と果物/野菜の摂取を増進させ、うつ病と糖尿病を予防することで、認知症の発症が最大限に抑制される可能性があり、そのインパクトは既知の主要な遺伝学的リスク因子の除去の影響を凌駕する」と結論し、「確実な因果関係は不明だが、これらの知見は公衆衛生プログラムにおいて優先すべき項目を示唆すると考えられる」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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外気温の低下により心筋梗塞リスクが増大

心筋梗塞のリスクは外気温が低下するごとに増大するが、外気温が高いこととは関連がないことが、イギリス・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のKrishnan Bhaskaran氏らがMyocardial Ischaemia National Audit Project(MINAP)のレジストリーについて実施した解析で明らかとなった。外気温は短期的な死亡率増加のリスクに影響を及ぼし、暑い日も寒い日にも死亡率は増大することが示されている。一方、外気温が心筋梗塞のリスクに及ぼす影響については明らかにされていないという。BMJ誌2010年8月14日号(オンライン版2010年8月10日号)掲載の報告。外気温の1℃の変化ごとの心筋梗塞リスクの変動を評価研究グループは、イングランドとウェールズの15の大都市圏において外気温と心筋梗塞のリスクの短期的な関連について検討するために、時系列的な回帰分析を行った。対象は、2003~2006年のMyocardial Ischaemia National Audit Projectに登録された心筋梗塞入院患者8万4,010例で、イベント発生数中央値は57件/日であった。外気温の1℃の変化ごとの心筋梗塞リスクの変動を、その後28日にわたり検討した。心筋梗塞のリスクが高い集団への介入で、外気温低下によるリスク増大を抑制可能外気温と心筋梗塞の発症には、平滑化されたグラフとして直線的な関連が認められ、外気温の閾値とは無関係に対数線形モデルによって良好な相関関係が確認された。すなわち、1日の平均外気温が1℃低下するごとに、直近およびその後28日間の心筋梗塞リスクが2.0%(95%信頼区間:1.1~2.9%)ずつ累積的に増大した。最も強い影響は2~7日と8~14日の中間期に生じると予測され、外気温1℃の低下ごとに心筋梗塞リスクがそれぞれ0.6%(95%信頼区間:0.2~1.1%)、0.7%(同:0.3~1.1%)増加した。外気温が高いことは心筋梗塞に対し有害ではなかった。75~84歳の高齢者は85歳以上を含む他の年齢層よりも外気温の1℃低下による心筋梗塞の相対リスクが有意に高く(相互作用のp<0.001)、冠動脈心疾患の既往歴のある患者は既往歴のない患者に比べ相対リスクが有意に高かった(相互作用のp=0.001)。これに対し、アスピリン服用者は、非服用者に比べ心筋梗塞の相対リスクが有意に低かった(相互作用のp=0.007)。著者は、「外気温の低下による心筋梗塞のリスク増大は、寒さに関連した死亡率増加の促進因子の一つと考えられるが、外気温が高いことは心筋梗塞のリスクを増大させない」と結論し、「外気温低下の予報をきっかけとして、的を絞ったアドバイスを行うなどの介入法によって、心筋梗塞のリスクが高い集団におけるリスク低減が可能となるだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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テレビが患者・医療現場に与える影響は?

株式会社QLifeは20日、全国の生活者2,198人に対して行った『テレビの「薬」情報が患者・医療現場に与える影響 実態調査』の結果を発表した。調査結果によると、生活者が「医療情報」を最も得ているメディアとしては、テレビが1位であり、かつ最も「行動に影響がある」ことがわかった。生活者にとっては、NHKの方が民放よりも医療情報を得る場合の信頼性が高いという結果が出た。また、テレビが自分や家族が使う薬の「副作用」を話題にしていた場合、13%が医療者に相談せずに「まず、服用を中止」してしまうと回答した。ただしほとんどの人は、医師や薬剤師に相談をするという。日頃から医師や薬剤師による「薬の説明」は不十分と感じているため、テレビが適切な内容で薬の情報を発信した場合には、患者・医療者間のコミュニケーションが促されるという構図が明らかになった。詳細はプレスリリースへhttp://www.qlife.co.jp/news/1375.html

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