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統合失調症の陰性症状有病率、脳波や睡眠状態が関連か

 統合失調症の研究では、臨床的な不均一性が混乱を招いていることを踏まえ、米国・ウェイン州立大学のNash N. Boutros氏らは、Deficit Syndrome(DS)を考慮した統合失調症の陰性症状集団の特定を試みた。統合失調症症候群に含まれる疾患として欠損型統合失調症(deficit schizophrenia)が提唱されており、欠損症候群診断基準(SDS;Scale for the Deficit Syndrome)の活用により持続的な陰性症状を特徴とするサブグループの特定が可能とされている。しかし長年にわたり、統合失調症の陰性症状集団の電気生理学的な相互作用を検討した研究は報告されているが、DSに焦点を当てた研究はごくわずかしかないのだという。Clinical Schizophrenia & Related Psychoses誌オンライン版2013年2月21日号の掲載報告。 研究グループは、PubMedおよびMedlineにて、「陰性症状」および「Deficit Syndrome」、電気生理学的評価ツール(「脳波検査(EEG)」「Evoked Potentials(EPs)」「睡眠ポリグラフ(PSG)」のうち1つ)が、インデックスとして付けられているすべての研究報告を検索した。 主な知見は以下のとおり。・この研究はまだ揺籃期にあるが、2つの有意な傾向が明らかになった。・第1に、EEGのスペクトル研究により、覚醒中の徐派(slow wave)活性の増大と陰性症状の有病率が結び付くこと。・第2に、睡眠研究が、徐波睡眠(slow-wave sleep)の減少と陰性症状の有病率との関連を示していることである。・また、数例の研究で陰性症状とα派活性の低下との関連も示されていた。・感覚情報のゲーティングやP300 attenuationなどその他の異常については、ほとんど報告がなかった。・DSの電気生理学的特性を対象としていた研究は2件であった。いずれの研究も、DSは統合失調症とは異なる疾患であり、単なる重症型ではない可能性を示唆するエビデンスが示されていた。関連医療ニュース ・抗精神病薬投与前に予後予測は可能か? ・長時間作用型注射製剤は、統合失調症患者の入院減少と入院期間短縮に寄与 ・統合失調症患者の再発を予測することは可能か?

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(62)〕 第二世代ステントの中期成績の比較試験、その名もCOMPARE II

循環器のカテーテル治療で薬剤溶出性ステント(Drug-Eluting Stent; DES)が用いられるようになってから久しい。第1世代のCypher/Taxusから始まり、現在は第2世代のXience(Promus)/Endeavorが用いられるようになっている。その第2世代のDESの中で、corrugated ring構造を採用し、非常に柔軟性に富んだDESとして注目されているのが、COMPARE II試験で対象となったNoboriである。 このDESの世代間における違いは、一言で言えば塗る薬剤のプラットフォームの違いである。●第1世代のステントは、「普通」の金属製のステントに抗がん剤(シロリムスやタクロリムス)を塗布したものである。Cyperでは数ヵ月、Taxusでは数年間この抗がん剤が溶出し、再狭窄を防ぐように働く。このときにステントのコーティングに使われるポリマーは持続性ポリマーであり、抗がん剤が溶出した後もずっと残る。●持続性ポリマーの問題点は、生体適合性が低く、長期的には血管内皮障害を引き起こすことがあり、遅延性のステント血栓症を引き起こすこともあるという点である。これは時に致死的となる。●第2世代のステントでは、ステントのプラットフォームが改良され、PC(ホスホリルコリン)やPLA(ポリラクチド)コーティングという生体適合性に優れたポリマーが用いられるようになっている。Noboriも生体吸収性 のPLAポリマーをコーティング基材に用い、薬剤の効果が消失した後でポリマーも消失するようになっており、予後の改善が期待された。●なお、第2世代のステントでは、塗布される抗がん剤も変更され、ゾタロリムス(Endeavor)、エベロリムス(Xience)、バイオリムス(Endeavor)が用いられている。 このCOMPARE IIは第2世代のステント同士の比較であり、生体吸収性のポリマーを用いたNoboriと生体適合性が高いPCをコーティングポリマーに用いたEndeavorとの比較を行っている。1年間の中期的な成績は互いに一歩も譲らず、再狭窄率やステント血栓症発症率はまったくの同等であった。いわばNoboriの安全性が担保されたカタチとなったが、ステント血栓症についてはさらに長く追跡しなければ結論をだすことはできない。 それにしてもRotterdamを中心とした臨床研究のネットワークは素晴らしい。完全に余談だが、ニューデバイスに対して前向きの研究をこうして次々に打っていける信頼されたシステムが確立されていることは、国民にとっても大きな財産であり、わが国も見習うべきところは多い。

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摂食障害、成人期と思春期でセロトニン作動系の特徴が異なる!

 摂食障害の発症にセロトニン作動系が関与していることは、確立した知見である。ただし、これまでの血小板セロトニン・トランスポーターに関する研究で示されている結論は、平均年齢20歳以上の患者を対象とした検討結果に基づくものであった。スウェーデン・ウメオ大学のJeanette Sigurdh氏らは、思春期の摂食障害患者におけるセロトニン作動系の関わりについて検討した。その結果、成人患者で得られている知見とは異なり、思春期の患者では同年代の健常対照と比べ血小板セロトニン・トランスポーター密度が高く、5-HT2A受容体密度が低いことを報告した。International Journal of Neuroscience誌オンライン版2013年2月19日号の掲載報告。 本研究での目的は、成人の摂食障害患者における従来の知見が、摂食障害を発症してまもない思春期の患者にも当てはまるかどうかを検討することである。摂食障害を認める思春期女性15例(神経性無食欲症11例、神経性無食欲症の基準を満たさないものの、明らかに拒食症の摂食行動を示す患者4例)ならびに健常対照32例を対象とし、血小板セロトニン・トランスポーターに結合する[3H]パロキセチンおよび5-HT2A受容体に結合する[3H]リゼルグ酸ジエチルアミド([3H]LSD)について検討を行った。主な結果は以下のとおり。・摂食障害患者におけるセロトニン・トランスポーター密度は、同年齢の健常対照に比べて有意に高かった([3H]パロキセチン結合タンパク:775±165 vs. 614±111 fmol/mg、p=0.003)。・摂食障害患者における5-HT2A受容体密度は、同年齢の健常対照に比べて有意に低かった([3H]LSD結合タンパク:215±59 vs. 314±151 fmol/mg、p=0.005)。・これら血小板セロトニン・トランスポーター密度の増加、5-HT2A受容体密度の低下は、成人患者で示されている結果とは異なるものであった。・結果が異なった要因として、本研究の被験者(低年齢で罹病期間が短い)における、ストレスに関連する精神的および生物学的要因の多様性が考えられる。・既知の知見とは異なるものであったが、本結果は摂食障害におけるセロトニン作動性要因に関わる情報の厚みを増し、本疾患におけるセロトニン作動系の制御に患者特性および経過に関連する因子が影響を及ぼす可能性を示唆するものである。関連医療ニュース ・EPA/DHAはADHD様行動を改善する可能性あり? ・摂食てんかんの特徴が明らかに ・双極性障害とADHDは密接に関連

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日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき

 日本人労働者を対象とした研究の結果、抑うつ度は、教育レベルならびに収入と有意な関連があり、栄養面では葉酸摂取と有意な関連があることが明らかにされた。国立国際医療研究センターの宮木幸一氏らが、本邦初の研究報告として発表したもので、「葉酸の摂取増を図る運動が、メンタルヘルスに関する社会的格差の問題解消に結びつく可能性がある」と報告した。Nutrients誌2013年2月18日号の掲載報告。 世界的に、社会経済状況(SES)と健康アウトカムとの関連は注目されており、これまで、低SES群は高SES群と比べて健康によいとされる栄養成分の摂取量が低いことなどが報告されていた。食事摂取量に関する先行研究では、葉酸と心血管疾患や大腸がん、うつ病、認知機能との関連を示す報告が複数ある。研究グループは、葉酸の摂取は収入による影響を受けることが考えられるとして、SESと葉酸摂取量および健康アウトカムとの関連を調べることを目的とした。なお先行研究では、収入などと葉酸摂取量を検討したものはあるが、教育との関連を検討したものはないという。本研究は、文部科学省助成研究であるJ-HOPE研究(Japanese study of Health, Occupation and Psychosocial factors related Equity:労働者コホート「仕事の健康に関する調査」)の参加者(13コホート、1万4,534人)のうち、製造業の大企業(京都に本社があり全国に21支社がある)の従業員約2,500人に本検討参加への同意を呼びかけ行われた。SESは自己記入式質問票を、葉酸摂取量はBDHQを用いて調査した。摂取量と交絡因子との関連性の評価にあたっては重回帰分析と層別解析を行い、摂取量が健康アウトカムに及ぼす影響を表すためにパス解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・研究対象の日本人労働者コホート(同意を得た)は、2,266人であった。平均年齢は43.4±9.8歳、平均BMI値は23.1±3.3、女性は241人(10.6%)であった。・教育レベルと世帯収入は、葉酸摂取量および抑うつ度(日本語版K6スケールで評価)と有意に関連していた(p<0.05)。・年齢、性、総エネルギー摂取量で補正後、教育年数は葉酸摂取量に有意な影響を及ぼしていることが認められた(β=0.117、p<0.001)。・構造方程式モデリング(SEM)解析の結果、葉酸摂取量は、教育レベルならびに抑うつ度について、統計的に有意で強い間接的な影響があることが示唆された(p<0.05、直接的影響は56%)。・被験者のうち、日本人に推奨される葉酸の1日の摂取量(RDA)240μg/日を摂取していた人は63.6%であった。関連医療ニュース ・うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」 ・統合失調症患者の脳組織喪失に関わる脂肪酸、薬剤間でも違いが ・認知症の進行予防にビタミンEは有効か?

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神経刺激療法、早期パーキンソン病のQOLを改善:EARLYSTIM試験/NEJM

 視床下核刺激術による神経刺激療法は、重度の運動合併症が発現する前の、比較的早期のパーキンソン病患者の治療として、内科的治療のみを行う場合に比べQOLを有意に改善することが、フランス・パリ第6大学のWM Michael Schuepbach氏らの検討で示された。視床下核刺激療法は、レボドパ治療によって誘発された重度の運動合併症がみられる進行期パーキンソン病患者の運動障害を軽減し、QOLを改善することが知られている。同氏らは、早期パーキンソン病患者を対象としたパイロット試験で、神経刺激療法のQOL改善効果を確認しているという。NEJM誌2013年2月14日号掲載の報告。早期患者に対する有用性を無作為化試験で検証 EARLYSTIM試験は、神経刺激療法は早期のパーキンソン病にも有用との仮説を検証する多施設共同無作為化試験。 対象は、年齢18~60歳、罹病期間4年以上、Hoehn-Yahr重症度分類Stage 1~3で薬物療法を受けており、早期の運動障害がみられる症例とした。これらの患者が、神経刺激療法(視床下核刺激術)と内科的治療を施行する群または内科的治療のみを行う群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、パーキンソン病質問票(PDQ-39)のサマリー指標(0~100でスコア化、スコアが高いほど機能障害が重度)で評価したQOLとした。主な副次的評価項目は、パーキンソン病運動障害[統合パーキンソン病評価尺度(UPDRS)-IIIスコア]、日常生活動作(ADL、UPDRS-IIスコア)、レボドパ誘発性運動合併症(UPDRS-IVスコア)、移動能が良好でジスキネジアがみられない期間などであった。2年後のQOL平均スコアが8.0ポイント改善 2006年7月~2009年11月までにフランスの8施設とドイツの9施設から251例が登録され、神経刺激療法群に124例(平均年齢52.9歳、男性75.8%、平均罹病期間7.3年)が、内科的治療単独群には127例(52.2歳、66.9%、7.7年)が割り付けられた。 ITT集団におけるQOLの平均スコアは、神経刺激療法群が7.8ポイント改善され、内科的治療単独群は0.2ポイント増悪した(ベースラインから2年後までの変化の平均値の差は8.0ポイント、p=0.002)。 神経刺激療法群は内科的治療単独群に比べ、運動障害(p<0.001)、ADL(p<0.001)、レボドパ誘発性運動合併症(p<0.001)、移動能が良好でジスキネジアがみられない期間(p=0.01)が有意に優れていた。 重篤な有害事象は、神経刺激療法群の54.8%、内科的治療単独群の44.1%に発現した。電極の埋め込み術や神経刺激デバイス関連の重篤な有害事象の発現率は17.7%だった。専門家委員会により、内科的治療の診療ガイドライン遵守率は神経刺激療法群が96.8%、内科的治療単独群は94.5%と判定された。 著者は、「視床下核刺激術による神経刺激療法は、重度の運動合併症が発現する前の、比較的早期のパーキンソン病患者の治療として、内科的治療単独よりも優れていた」と結論し、「神経刺激療法は現行の勧告よりも早期の患者の治療選択肢となる可能性がある」と指摘している。

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SYNTAX中・高スコア患者の標準治療はCABGとすべき/Lancet

 左冠動脈主幹部病変および3枝病変を有する患者を対象として、冠動脈バイパス術(CABG)と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を比較した無作為化試験「SYNTAX」の最終5年フォローアップの成績が、ドイツ・Herzzentrum Universitat LeipzigのFriedrich W Mohr氏らにより発表された。同試験についてはこれまで、1年時点(主要エンドポイントMACCEについてPCI群はCABG群に対して非劣性を達成せず)、3年時点(MACCEほか心筋梗塞発生、血行再建術がPCI群で有意に高い)の各成績が示されていた。今回の5年時点でも両群のイベント発生率の格差が認められたこと、とくに心筋梗塞発生、血行再建術がPCI群で有意に高いことなどが示された。研究グループは「SYNTAXスコアが中あるいは高の複雑病変患者の標準治療はCABGとすべきである」と結論し報告をまとめている。Lancet誌2013年2月23日号の掲載報告。3枝病変あるいは左冠動脈主幹部病変患者をCABGまたはPCIに無作為化 SYNTAX試験は、欧米85の施設で被験者を登録して行われたネステッド無作為化試験で、心臓外科医とインターベンション専門医の医療チームがスクリーニング時に、いずれの治療にも適合性があるとみなした患者は無作為に割り付け、どちらか一方のみが適切であると判断した患者についてはその治療群に割り付けた。 適格となった患者は無作為に1対1の割合で、第1世代パクリタキセル溶出性ステントによるPCIを受ける群またはCABGを受ける群に割り付けられた。PCIが適切と判断された患者はPCI群へ、CABGが適切と判断された患者はCABG群へ割り付けられた。 主要エンドポイントは、主要心臓・脳血管有害イベント(MACCE)であり、Mohr氏らはintention-to-treatをベースとしたKaplan-Meier解析で5年時点の成績を分析した。5年時点もMACCE、心筋梗塞、血行再建がPCI群で有意に高い 適格被験者は1,800例であり、CABG群に897例が、PCI群に903例が割り付けられたが、無作為化後CABG群50例、PCI群11例が試験参加の同意を取り下げた。ベースラインでの両群被験者の特性はほぼ同等であり、SYNTAXスコアはCABG群29.1(SD 11.4)、PCI群28.4(同11.5)だった。追跡1年目の抗血小板薬の服用はPCI群で高かったが、5年時点ではアスピリン服用者の割合について両群の有意差はなかった。ただし抗血小板併用療法を受けている患者はPCI群で高かった。 5年時点のKaplan-Meier解析によるMACCEは、CABG群26.9%、PCI群37.3%だった(p<0.0001)。 心筋梗塞(CABG群3.8% vs PCI群9.7%、p<0.0001)、血行再建(同13.7% vs 25.9%、p<0.0001)は、PCI群で有意に高かった。 全死因死亡(同11.4% vs 13.9%、p=0.10)、脳卒中(同3.7% vs 2.4%、p=0.09)については両群で有意な差はみられなかった。 SYNTAXスコア別に解析した結果、低スコア(0~22)群ではMACCEは、CABG群28.6%、PCI群32.1%と有意差はみられなかった(p=0.43)。 なお、左冠動脈主幹部病変の患者についても、5年時点のMACCEについて有意差はみられなかった(CABG群31.0%、PCI群36.9%、p=0.12)。 一方、SYNTAXスコアが中スコア(23~32)群、高スコア(≧33)群ではPCI群でMACCEの発生が有意に高かった。中スコア群の発生率はCABG群25.8%、PCI群36.0%(p=0.008)、高スコア群では26.8%、44.0%(p<0.0001)だった。 以上の結果を踏まえて著者は、「複雑な病変(SYNTAX中・高スコア)患者についてはCABGを引き続き標準治療とすべきである」と結論。また「病変部がそれほど複雑でない(SYNTAX低スコア)患者や左冠動脈主幹部病変の患者(SYNTAX低・中スコア)では、PCIは選択肢となりうる」と述べ、「複雑な多枝冠動脈疾患を有する患者については必ず、心臓外科医とインターベンション専門医の両者による考察と話し合いを行い、至適治療のコンセンサスを得るようにしなければならない」と提言している。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(61)〕 他人の糞便注入によるクロストリジウム・ディフィシル腸炎の治療に、明白な有効性を証明!

 近年、抗菌薬投与に伴うクロストリジウム・ディフィシル(C.ディフィシル)腸炎が欧米で流行し、binary toxin産生やニューキノロン耐性株による、重篤例・再燃例の増加が注目されている。本邦では、このような強毒株の流行はみられないものの、C.ディフィシル腸炎自体は広くみられており、院内感染対策上の重要な課題と捉えられている。 本症は、投与された抗菌薬により腸管内の正常細菌叢が抑制され、毒素産生性のC.ディフィシルが異常増殖して発症するものであり、重症例では偽膜性大腸炎の形をとる。C.ディフィシルは、遺伝子レベルで少数存在する例を含めれば、過半数の人の腸管に常在するが、病院や高齢者施設では、芽胞汚染による院内感染の事例も知られている。本症の治療には、C.ディフィシルに抗菌力を示すバンコマイシンやメトロニダゾールを投与すれば良いのだが、これらは栄養型には抗菌力を示すが、芽胞化して生き残るため、バンコマイシン治療を終えると芽胞から出芽し、再燃してくる。また、乾燥や消毒剤にも抵抗性の芽胞が病院を汚染し、二次感染を引き起こす事例も知られている。 C.ディフィシルは、正常な菌叢においては、乳酸菌やバクテロイデス、ユウバクテリウムなどの優勢菌に競りまけて、辛うじて細々と生きている。バンコマイシンを含め、抗菌薬を投与すると、これらの優勢菌種は大幅に減少し、C.ディフィシルなどの耐性化しやすい菌種が異常増殖するのである。すなわち、常在菌を復活させてC.ディフィシルを相対的に少数勢力に追い込むことが、永続的治癒には必要である。これまで、種々のプロバイオティクスが、常在菌の正常化、C.ディフィシル腸炎の再燃予防に試みられてきたが、必ずしもエビデンスのある結果は得られていない。 他人の常在菌を移植することが、最も手っ取り早く常在菌を復活させ、腸炎の治癒に導けるはずだと多くの専門家は予想してきた。しかし、他人の糞便を注腸することには患者さん自身に相当な心理的抵抗があり、また、移植による別の病原体による感染も危惧され、実際に行うことはかなり困難であった。1958年以来、85症例が散発的に報告され、75~85%の有効性が報告されてきているが、比較試験でのまとまった成績は報告されていなかった。 今回報告された論文は、2008~2010年にアムステルダムのAcademic Medical Centerが計画し、ドナーグループと移植細菌叢液を準備し、オランダ国内の病院に呼びかけて行った“open label randomized trial comparing donor feces infusion to 14days of vancomycin treatment for recurrent C.difficile infection”の報告である。 本試験では患者を以下の3 群に割り付けた。(1)バンコマイシン(500mg 1日4回、4日間)に続き、4Lのマクロゴールで腸洗浄後、糞便菌叢移植(2)14日間のバンコマイシン治療(3)14日間のバンコマイシン治療後、腸洗浄 除外規定(原疾患による予後3ヵ月以内、重症例など)に当てはまらない、承諾の得られた患者を、コンピューターで患者背景に偏りがないようにrandomに割り付けている。オランダの周到な実験計画による研究の報告である。すなわち、多くの感染因子の陰性を確認したドナーグループを編成し、ドナーの糞便採取直後に糞便溶液(多数の生きた嫌気性菌菌液)をセンターで調整し、6時間以内に該当病院に輸送して、十二指腸内に管で注入する方法である。C.ディフィシル腸炎の再燃であることが立証された例にバンコマイシンによる栄養型の除菌を行ったうえで、移植を行っている。比較対照群として、バンコマイシン投与のみの症例、バンコマイシン投与後腸洗浄例を用意しているが、効果に有意差が出るためには、各群最小40例必要と見なし、計140症例について試験が計画された。エンドポイントは再燃の有無であり、腸内フローラの経時的定量培養、血液検査も計画されている。 これだけの周到な準備のうえ、比較試験は開始されたが、各群十数例の検討を行い、糞便移植群で93.8%、対照群で23.1~30.8%という歴然とした有効率の差が観察された時点で、コントロール群に対する倫理性が問題とされ、比較試験は42/120例行ったところで中止された。また、コントロール群の希望者には糞便移植を行い、良好な成績を得ている。副反応としては、投与初日の下痢が目立つだけで、重篤なものはなかった。また、糞便菌叢の検討により、ドナーと同様な菌叢の定着が確認されている。 有効性が証明できず、非劣性を証明することにきゅうきゅうとしてきた中で、夢のような話である。プロトコール、付随資料も公表されており、試験の全容がよく理解できる重要な論文である。■「糞便移植」関連記事糞便移植は潰瘍性大腸炎の新たな治療となるか/Lancet

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てんかん患者、脳内ネットワークの一端が明らかに

 てんかん症状を呈する脳内ネットワークの特性の一端が明らかにされた。チェコ共和国・Central European Institute of TechnologyのIvan Rektor氏らが、てんかん患者と健常者の脳内を機能的MRIにて比較検証した結果で、てんかん患者では脳中央部にある被殻と表面部にある皮質との機能的結合(FC)が阻害されていることが明らかになったという。Rektor氏は「このことが大脳基底核(BG)機能の変質に反映している可能性がある」と示唆した。Brain Topography誌オンライン版2013年2月12日号の掲載報告。 てんかんは、安静時においても被殻と皮質の間の結合性に影響を及ぼす可能性が指摘されていた。被殻は、大脳基底核安静時ネットワーク(BG-RSN)の一部であり、健常被験者ではデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と逆相関の関連がみられる。研究グループは、DMNに関与する皮質領野である被殻、およびBG-RSNに関与する皮質領野の主要な体運動性皮質における、脳の機能的結合を調べることを目的とした。てんかんを有する患者と健常対照者の入手データを用いて比較した。 主な解析手順、結果は以下のとおり。・てんかん患者24例(外側頭葉てんかん14例、側頭葉てんかん10例)と健常対照者10例について、機能的MRI(fMRI)を行った。・1.5 T Siemens Symphonyスキャナーを用いて安静時fMRIデータを入手し、独立的成因分析のためにGroup ICA of fMRI Toolbox(GIFT)プログラムを用いて解析した。被殻と主要な体運動性皮質との機能的結合について、BG-RSN内の被殻の結合性を評価した。・また第2レベル解析では、SPMソフトウエアを使用しグループ間の差異を評価した。・てんかん患者では健常対照者と比較して、DMNでの被殻と脳領域との逆相関性が有意に低かった。・相関性は、健常対照者では陰性方向へと結びつくものであったが、外側頭葉・側頭葉てんかん患者では陽性方向への結びつきがみられた。・てんかん患者の大脳基底核の機能的結合の阻害は、健常対照者と比較して、左右の被殻と左右の体運動性皮質との結合性、すなわちBG-RSNに関与している部位との結合性が有意に減少していることによって例証された。関連医療ニュース ・側頭葉てんかんでの海馬内メカニズムの一端が明らかに ・摂食てんかんの特徴が明らかに ・妊娠可能年齢のてんかん女性にはレベチラセタム単独療法がより安全?

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(60)〕 The WOEST study:長期間抗凝固療法を受けている患者にPCIを行う際には、アスピリンは不要でクロピドグレルのみの併用で良い

PCIを施行する際には、血栓症を予防するためにアスピリンとチエノピリジン系の抗血小板薬を併用することが標準とされてきた。 一方、65歳以上の年齢層の8%に非弁膜症性の心房細動が発症することが知られている。心房細動の治療は、心原性血栓による脳塞栓症と心房細動性頻拍症の持続による心不全の予防が基本であり、抗凝固薬とβ遮断薬の併用が標準治療とされている。抗凝固薬を服用中の患者にPCIを行う際の抗血小板薬の組み合わせは、臨床上きわめて重要な問題である。 本研究は、ベルギーとオランダの15の施設で抗凝固療法を受けている573人の患者をクロピドグレルとアスピリンの3剤併用群とクロピドグレルだけの2剤併用群に無作為に割り付けた。試験期間は3年で主要評価項目はPCI後1年以内の出血の合併症である。 PCI後1年のデータが得られた症例数は、2剤併用群で279例(98.2%)、3剤併用群で284例(98.3%)であった。出血の合併症の頻度は2剤併用群で54例(19.4%)で、3剤併用群の126例(44.4%)よりも有意(p<0.0001)に低かった。また、多発性出血と輸血の頻度についても、2剤併用群は3剤併用群よりも有意(p=0.011)に低いことが示され、また血栓症の増加もなかった。 以上の結果から、抗凝固療法を長期にわたって受けている患者にPCIを行う際には、アスピリンを併用せずにクロピドグレルのみを抗凝固薬と併用することが効果は同等で安全性に優れているという、臨床上きわめて有用な薬の使い方が示唆された。

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カルシウムの摂りすぎ、女性の死亡率を高める?/BMJ

 カルシウムの過剰摂取は女性の全死因死亡や心血管死のリスクを増大させる可能性があることが、スウェーデン・ウプサラ大学のKarl Michaelsson氏らの調査で示唆された。ごく一般的な摂取量(600~1,400mg/日)であれば問題はなさそうだという。カルシウムの摂取不足により高齢者の骨折率が上昇し、脳卒中や致死的な虚血性心疾患のリスクが増大する。一方、無作為化試験のメタ解析ではカルシウム補助食品の使用により虚血性心疾患や脳卒中のリスクが増大し、観察試験では全死因死亡や心血管死の低下とともに心血管疾患の発症増加が確認されている。BMJ誌オンライン版2013年2月13日号掲載の報告。カルシウム摂取量と死亡との関連を前向きコホート試験で評価 研究グループは、食事や補助食品による長期的なカルシウム摂取と、全死因死亡や疾患特異的死亡の関連をプロスペクティブに検討する縦断的コホート試験を行った。 対象は、1987~1990年にマンモグラフィ検診を受けたスウェーデン人女性6万1,433人(1914~48年生まれ)で、中央値で19年のフォローアップが行われた。この間の全死因死亡数は1万1,944件(17%)で、心血管死は3,862件、虚血性心疾患死は1,932件、脳卒中死は1,100件だった。 ベースライン時(6万1,433人)と1997年(3万8,984人)に食事に関する調査を行い、カルシウムの摂取状況を推定した。総カルシウム摂取量は食事と補助食品に含まれる総量とし、1日摂取量で4群(<600mg、600~999mg、1,000~1,399mg、≧1,400mg)に分けて解析を行った。食事由来摂取量が多く、かつ錠剤の使用者で死亡リスクが高い <600mg/日群が2,058人(3.3%、登録時の平均年齢54.9歳、平均BMI 24.9kg/m2)、600~999mg/日群が3万8,388人(62.5%、53.9歳、24.7kg/m2)、1,000~1,399mg/日群が1万9,746人(32.1%、53.3歳、24.8kg/m2)、≧1,400mg/日群は1,241人(2.0%、53.6歳、24.3kg/m2)であった。 食事由来のカルシウム量に基づく解析では、600~999mg/日群を基準とすると、全死因死亡の調整ハザード比(HR)は、<600mg/日群が1.38[95%信頼区間(CI):1.27~1.51]、1,000~1,399mg/日群が1.00(同:0.96~1.04)、≧1,400mg/日群は1.40(同:1.17~1.67)であり、低摂取群と高摂取群で有意に死亡リスクが高かった(U字カーブ)。 同様に、心血管死の調整HR[<600mg/日群:1.63(95%CI:1.42~1.87)、1,000~1,399mg/日群:1.01(同:0.94~1.09)、≧1,400mg/日群:1.49(1.09~2.02)]および虚血性心疾患死の調整HR[1.65(1.36~2.01)、1.03(0.93~1.15)、2.14(1.48~3.09)]も、低摂取群と高摂取群で有意に死亡リスクが高値を示した。一方、脳卒中死では、高摂取群の死亡リスクは低かった[1.50(1.14~1.97)、1.02(0.89~1.17)、0.73(0.33~1.65)]。 総カルシウム摂取量に基づく解析でも、食事由来摂取量の場合と同様の死亡リスクの傾向がみられたが、リスクの増大は主に補助食品由来のカルシウムに起因していた。周辺構造モデルなどを用いて感度分析を行ったところ、食事由来カルシウムの低摂取群(<600mg/日群)や、総カルシウムの低摂取群と高摂取群の高い死亡リスクは有意ではなくなった。 カルシウムの錠剤(500mg/錠含有)の使用者が6%おり、平均的には全死因死亡や疾患特異的死亡との関連はみられなかったものの、食事由来のカルシウム摂取量が≧1,400mg/日の錠剤使用者では全死因死亡のHRが2.57(95%CI:1.19~5.55)と有意に高かった。 著者は、「カルシウムの摂りすぎは全死因死亡や心血管死のリスクを増大させる可能性が示唆されたが、ごく一般的な摂取量である600~1,400mg/日では死亡リスクへの影響はなかった。低摂取群(<600mg/日群)の死亡リスクの上昇は、時間依存性の交絡因子によるバイアスの影響が考えられる」と結論している。

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結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の治療に新たな選択肢

 結節性硬化症は、遺伝子(TSC1、TSC2)の異常により、全身に良性の腫瘍が形成され、それに伴い、さまざまな症状が引き起こされる遺伝性の希少疾患である。胎児期から成人まで、年齢に応じて特徴的な腫瘍がさまざまな部位に発生するため、それぞれの腫瘍に対してすべて1つの科で診療することはできず、小児から成人に至る過程で発生する腎血管筋脂肪腫などを見逃す可能性がある。その現状と課題について、ノバルティス ファーマ メディアフォーラム(2013年2月26日開催)にて、大阪大学泌尿器科 教授 野々村 祝夫氏が講演した。その内容をレポートする。■結節性硬化症は症状の個人差が大きい 結節性硬化症は、脳(上衣下巨細胞性星細胞腫、脳室上衣下結節、大脳皮質結節、てんかん発作、発達遅延、自閉症など)、眼(網膜過誤腫)、心臓(心横紋筋腫)、肺(肺リンパ脈管筋腫症など)、腎臓(腎血管筋脂肪腫、腎嚢胞など)、皮膚(白斑、顔面血管線維腫など)など、全身性に腫瘍が形成され、さまざまな症状が現れる疾患である。潜在患者数は、日本では1~2万人とされる。問題となる症状の発症時期は年齢期ごとに異なり、心臓や脳の腫瘍は10歳未満、腎臓の腫瘍は10~40歳、肺の腫瘍は20歳以上に注意する必要がある。また、症状の個人差が大きく、多くの症状が現れる場合もあれば、生涯を通じて症状が現れない場合もある。 これまで対症療法しかなかったこれらの腫瘍のうち、腎血管筋脂肪腫と上衣下巨細胞性星細胞腫に対して、2012年11月、mTOR阻害薬であるエベロリムス(商品名:アフィニトール)が承認された。■結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の治療 腎血管筋脂肪腫は浸潤・転移をしない良性腫瘍であるが、次第に大きくなること、出血などのさまざまな症状が出現すること、腎機能が低下することが問題となる。腫瘍径が4cmを超えると出血や側腹部痛などの臨床症状が呈することが多く、また、破裂した腫瘍は4cmをすべて超えていたという報告がある。 腎血管筋脂肪腫のマネージメントの基本方針は、腎機能を温存しつつ出血のリスクを減らすことであり、出血した場合は速やかに止血する必要がある。 治療は、腫瘍径が4cm以上であれば症状が出る前に予防的に、4cm未満なら症状が出てから行う。この治療介入の必要性を判断するために、野々村氏は、定期的なモニタリングの重要性を指摘した。治療には、血管内治療である塞栓術と手術(腎摘、腎部分切除)が施行されている。塞栓術は効果的でよく施行されるようになってきたが、壊死に伴う発熱や痛みなどの合併症や、再発(約30%)の問題がある。■薬物治療が治療選択肢の1つに このような状況のなか、昨年、初めて薬物治療としてエベロリムスが承認され、新たな選択肢が加わった。結節性硬化症においては、TSC1またはTSC2遺伝子の変異によりmTORの活性を制御するTSCタンパクが抑制され、mTORが過剰に活性化することにより腫瘍の形成や症状が発生する。エベロリムスはmTOR活性を阻害することにより、腫瘍の増大や症状を抑制する。 結節性硬化症あるいは孤発性リンパ脈管筋腫症における腎血管筋脂肪腫患者に対するエベロリムスの効果をプラセボと比較したEXIST-2試験では、エベロリムス群(79例、うち日本人7例)の奏効率が41.8%(95%信頼区間:30.8~53.4)と、プラセボ群(39例、うち日本人3例)の0%(95%信頼区間:0.0~9.0)に対して、有意(p<0.0001)に高い結果が得られた。 有害事象は、口内炎、ざ瘡、高コレステロール血症などがエベロリムスに特徴的であり、これまでの忍容性プロファイルと一致していた。また、野々村氏は、22歳女性の症例で腫瘍の縮小とともに自閉症の症状も改善したことを紹介し、結節性硬化症の他の症状にも効果が期待できることを示した。■どのように組み合わせて治療するかが課題 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の今後の治療戦略として、野々村氏はまず、4cm以上の腫瘍では症状がなくても、動脈瘤などからの出血リスクが高い場合には、エベロリムスあるいは塞栓術による積極的治療を実施することを提唱し、どちらを先に行うかはこれから解決すべき課題であると述べた。また、4cm以下の腫瘍でも症状があれば、エベロリムスあるいは塞栓術による何らかの治療が必要であり、手術は、塞栓術あるいはエベロリムスが無効な場合に考慮するとした。 一方、エベロリムスが治療の選択肢に加わったとはいえ、課題として、長期投与のデータが乏しいこと、高価(約70万円/月)であること、投与方法に関する工夫の必要性などを挙げ、今後、実際の臨床の場で情報を出して行く必要があると述べた。 最後に野々村氏は、結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の治療に薬物療法という選択肢が増えたが、今後、これをどのように組み合わせて治療していくか、課題として投げかけられていると述べ、講演を締めくくった。関連ページ ケアネット 希少疾病ライブラリ(毎週木曜日更新)

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原発性自然気胸の再発をミノサイクリン胸膜癒着術が抑制/Lancet

 原発性自然気胸に対する単純吸引+ドレナージ施行後のミノサイクリンを用いた胸膜癒着術は、安全に実施可能で、単純吸引+ドレナージ単独よりも再発抑制効果が高いことが、国立台湾大学のJin-Shing Chen氏らの検討で明らかとなった。原発性自然気胸の標準的な初回治療は単純吸引とドレナージだが、文献的な1年後の再発率は約30%(16~52%)に達する。そのため、さまざまな治療アプローチの開発が進められており、化学物質の胸腔内注入による胸膜癒着術は手術患者、非手術患者の双方で再発を抑制することが示されている。Lancet誌オンライン版2013年2月18日号掲載の報告。原発性自然気胸に対する胸膜癒着術追加の再発抑制効果を検討 研究グループは、原発性自然気胸に対する標準的な初回治療である単純吸引+ドレナージ施行後の、ミノサイクリンを用いた胸膜癒着術の追加による再発抑制効果を評価するプロスペクティブな非盲検無作為化対照比較試験を実施した。 対象は、15~40歳、原発性自然気胸の初期症状[胸部X線画像で2cm以上のエア像(rim of air)]がみられ、ピッグテールカテーテルによるドレナージ施行後は肺が完全に拡張し吸気の漏出を認めず、血液学的所見が適正で、腎機能および肝機能が正常な症例とした。 これらの原発性自然気胸の患者が、ピッグテールカテーテルによる単純吸引+ドレナージ施行後に、ミノサイクリン胸腔内注入による胸膜癒着術を行う群またはそれ以上の治療は行わない群(対照)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は1年後の気胸再発率とした。1年後の気胸再発率:29.2% vs 49.1% 2006年12月31日~2012年6月30日までに台湾の2施設から214例が登録され、ミノサイクリン群に106例(平均年齢21.7歳、男性87.7%、平均身長1.72m、平均体重57.4kg、平均BMI 19.2kg/m2)が、対照群には108例(同:22.0歳、88.9%、1.73m、58.6kg、19.4kg/m2)が割り付けられた。 割り付け後7日以内の治療不成功例が、ミノサイクリン群で14例、対照群では20例認められた。1年後の気胸再発率は、ミノサイクリン群が29.2%(31/106例)と、対照群の49.1%(53/108例)に比べ有意に良好であった(p=0.003)。 鎮痛薬(ペチジン)の投与を要した患者(67.9% vs 19.4%、p<0.0001)や用量(34.0mg vs 10.2mg、p<0.0001)はミノサイクリン群で多かったが、施術時間(73.0分 vs 70.3分、p=0.76)や術後入院期間(3.2日 vs 3.6日、p=0.24)、総入院期間(5.0日 vs 5.2日、p=0.45)は両群で同等だった。治療に関連する合併症は両群ともにみられなかった。 著者は、「原発性自然気胸に対する単純吸引+ドレナージ施行後のミノサイクリン胸膜癒着術は安全に実施可能で、単純吸引+ドレナージ単独よりも高い再発抑制効果を示した」と結論し、「再発率抑制の結果として、胸腔鏡手術を要する患者も減少した。今後、ミノサイクリン胸膜癒着術は標準治療の補助治療とすべきと考えられる」と指摘している。

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患者評価の変形性関節症治療の疼痛改善報告、実臨床と臨床試験で異なる

 疼痛管理をより適切に行うため患者自身による治療効果評価(Patient-reported outcomes;PRO)尺度が開発されているが、フランス・INSERM/パリ第5大学のSerge Perrot氏らによる多施設前向きコホート研究の結果、患者が容認できる症状状態(patient acceptable symptom state:PASS)スコアならびに疼痛が改善したと報告した患者の疼痛スコアの変化の最小値(minimal clinically important improvement:MCII)は、実臨床と臨床試験とで異なっていることが明らかとなった。疼痛を伴う変形性関節症の治療効果は関節症の部位に左右される可能性があるという。個々の患者に応じた疼痛管理を行うため、治療効果の評価は患者の特性や日常生活に適したものでなければならない、とまとめている。Pain誌2013年2月号(オンライン版2012年10月30日号)の掲載報告。 変形性膝関節症または変形性股関節症に対する日常の疼痛管理におけるPASSおよびMCIIのカットオフ値を決めることが目的であった。 対象は、一般開業医を受診し7日以上治療を要した50歳以上の疼痛を有する変形性膝関節症または変形性股関節症患者2,414例である(男性50.2%、平均年齢67.3歳、BMI 27.9kg/m2、変形性股関節症33.5%)。 主な結果は以下のとおり。・治療7日後のPASSスコアは、変形性膝関節症患者および変形性股関節症患者のいずれも疼痛の数値評価スケール(以下、疼痛スケール)で安静時4ならびに動作時5と推定された。これは、臨床試験におけるPASSより高値であった。・PASSを得られやすかったのは、変形性膝関節症では男性、非高齢患者、治療開始時において安静時または動作時の疼痛スケールが低い非高齢者、特にスポーツ活動での疼痛の影響が最も大きかった患者、変形性股関節症では治療開始時の安静時疼痛スケールが低かった患者および非肥満患者であった。・治療7日後のMCIIは、変形性膝関節症患者および変形性股関節症患者のいずれも、安静時ならびに動作時ともに疼痛スケールで-1であった。この改善の度合いは、ランダム化比較試験で記録された値より小さかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中! ・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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