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インフルエンザワクチンに心血管イベント抑制効果(コメンテーター:西山 信一郎 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(144)より-

従来からインフルエンザ感染が心血管イベントに関連することが指摘されていた。 今回著者らは3つの医学データベースを用いて、質が高いと判定した無作為試験の論文を検索し、6,735例を対象にメタ解析を行った。対象の内訳は平均年齢67歳、女性51.3%、心疾患の既往歴を有するもの36.2%で、平均追跡期間は7.9ヵ月であった。 その結果、1年以内の複合心血管イベントの発生率は、インフルエンザワクチン施行群が2.9%と、非施行群の4.7%に比べて36%有意に低かった。さらに割り付け前1年以内にACSの既往歴のある患者と既往のない安定した患者で比較すると、安定した患者ではインフルエンザワクチン接種により有意な複合心血管イベントの抑制効果は見られなかったのに対し、ACS既往歴のある患者では複合心血管イベントが55%低下していた。 今回の検討では、ワクチン接種施行の有無で1年以内の心血管死および全死亡には有意の差を認めていないが、心筋梗塞や脳卒中など、非致死的な個々のエンドポイントの評価はなされていない。 現在わが国でも、インフルエンザに罹患すると重症化しやすい心臓の機能に障害のある患者には、インフルエンザワクチンの摂取が勧められているが、今回の結果を参照すると、心機能が低下していなくても、ACSの既往を有するなど高リスクと考えられる患者には積極的にワクチン接種を勧めるのがよいと考える。

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新規の抗てんかん薬16種の相互作用を検証

 英国・UCL Institute of NeurologyのPhilip N. Patsalos氏らは、1989年以降に臨床導入された16種の新規の抗てんかん薬について、製剤間の薬物動態学的および薬力学的な相互作用に関するレビューを行った。てんかん患者の治療は生涯にわたることが多く、また複数の抗てんかん薬が処方されているのが一般的である。そのため相互作用がとくに重要になるが、今回のレビューでは、より新しい抗てんかん薬では相互作用が少ないことなどが明らかにされた。Clinical Pharmacokinetics誌2013年11月号の掲載報告。 本レビューの対象となった16種の抗てんかん薬は、レベチラセタム(イーケプラ)、ガバペンチン(ガバペン)、ラモトリギン(ラミクタール)、ルフィナミド(イノベロン)、スチリペントール(ディアコミット)、トピラマート(トピナ)、ゾニサミド(エクセグラン、エクセミド)、プレガバリン(本疾患には国内未承認)、エスリカルバゼピン酢酸塩、フェルバメート、ラコサミド、オクスカルバゼピン、ペランパネル、レチガビン、チアガビン、ビガバトリン(以上、国内未承認)であった。研究グループは、特定の相互作用の臨床的重要性の可能性について、わかりやすく相互作用試験の詳細を述べた。 主な知見は以下のとおり。・薬力学的相互作用は、主として相乗作用の副作用に関するものであったが、主な薬物動態学的相互作用は、肝酵素誘導または阻害に関するものであった。ただし、相乗作用の抗けいれんの例も存在した。・全体として、新しい抗てんかん薬は相互作用が少ないようであった。理由は大半が、腎に排出され肝代謝はされず(例:ガバペンチン、ラコサミド、レベチラセタム、トピラマート、ビガバトリン)、ほとんどが肝代謝誘導や阻害をしない(または最小限である)ためであった。・抗てんかん薬間の薬物動態学的相互作用については、総計139の詳述があった。・ガバペンチン、ラコサミド、チアガビン、ビガバトリン、ゾニサミドは、薬物動態学的相互作用が最も少なかった(5例未満)。・一方、多かったのは、ラモトリギン(17例)、フェルバメート(15例)、オクスカルバゼピン(14例)、ルフィナミド(13例)であった。・現時点では、フェルバメート、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、ペランパネル、プレガバリン、レチガビン、ルフィナミド、スチリペントール、ゾニサミドは、あらゆる薬力学的相互作用が認められていなかった。関連医療ニュース 難治性の部分発作を有する日本人てんかん患者へのLEV追加の有用性は? 検証!向精神薬とワルファリンの相互作用 抗精神病薬アリピプラゾール併用による相互作用は?

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糖尿病患者へのベスト降圧薬は?/BMJ

 糖尿病患者における腎保護効果はACE阻害薬のみで認められ、ARBがACE阻害薬と比べて良好な効果を示すというエビデンスはみつからなかったことが、台湾・亜東記念医院のHon-Yen Wu氏らによるシステマティックレビューとベイズネットワークメタ解析の結果、報告された。結果を踏まえて著者は「薬剤コストを考慮した場合、今回の知見において、糖尿病患者の降圧薬の第一選択はACE阻害薬とすることを支持するものであった。そして十分な降圧が得られない場合は、ACE阻害薬+Ca拮抗薬の併用療法とするのが好ましいだろう」と結論している。BMJ誌オンライン版2013年10月24日号掲載の報告より。単独・併用を含む降圧治療についてベイズネットワークメタ解析 コストを考慮しない場合、主要なガイドラインでは、糖尿病を有する高血圧患者の降圧薬の第一選択は、ACE阻害薬またはARBを提唱している。しかしこれまでACE阻害薬とARBを比較した臨床試験は稀有であり、糖尿病患者に関する両薬剤間の腎保護効果の差は不確定で、RA系阻害薬との併用療法の選択についてコンセンサスは得られていなかった。 研究グループは本検討で、糖尿病患者における異なるクラスの降圧薬治療(単独・併用含む)の、生存への影響および主要腎転帰への効果について評価することを目的とした。 PubMed、Medline、Scopus、Cochrane Libraryの電子データベースで2011年12月までに公表された文献を検索した。適格とした試験は、糖尿病高血圧患者を対象とし、追跡期間が12ヵ月以上の降圧治療(ACE阻害薬、ARB、α遮断薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、利尿薬、およびこれらの併用)の無作為化試験で、全死因死亡、透析導入または血清クレアチニン濃度倍増を報告していたものとした。 ベイズネットワークメタ解析では、直接的および間接的エビデンスを組み合わせ、治療間の効果の相対的評価、および保護効果に基づく治療ランキングの見込みを算出した。死亡抑制の最善治療はACE阻害薬+Ca拮抗薬 解析には、63試験・3万6,917例が組み込まれた。死亡例は2,400例、透析導入は766例、血清クレアチニン濃度倍増報告例は1,099例だった。 血清クレアチニン濃度倍増について、プラセボとの比較で有意に減少したのは、ACE阻害薬のみであった(オッズ比[OR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.32~0.90)。治療戦略間の比較(ACE阻害薬vs. ARB)では有意差は示されなかったが、最善の治療である確率はACE阻害薬が最も高かった。 末期腎不全(ESRD)への降圧治療の効果については、その転帰に関して治療間の有意差はみられなかったが、ESRD発生を最も抑制したのはACE阻害薬であった(OR:0.71)。次いでわずかな差でARBが続いていた(OR:0.73)。 死亡率で有意差が示されたのは、β遮断薬のみであった(同:7.13、1.37~41.39)。 ACE阻害薬の薬効は必ずしも有意ではなかったが、3つのアウトカムについて一貫してARBよりも効果が優れることを示す高位の位置を占めていた。 プラセボと比較した死亡を抑制する最善の治療は、ACE阻害薬+Ca拮抗薬が、統計的有意差は示されなかったが最も高率(73.9%)であることが示された。次いで、ACE阻害薬+利尿薬(12.5%)、ACE阻害薬(2.0%)、Ca拮抗薬(1.2%)、そしてARB(0.4%)であった。

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中国でのH7N9感染、家禽市場閉鎖がヒトへの感染予防に効果/Lancet

 中国での鳥インフルエンザA(H7N9)のヒトへの感染について、家禽市場の閉鎖によって大きな抑制効果が上がることを、中国疾病管理予防センター(CDC)のHongjie Yu氏らが報告した。感染者データを基に分析を行い明らかにしたもので、著者は「生きた家禽やヒトへのH7N9の感染が認められた場合には、ただちに家禽市場を閉鎖すべきである」と報告をまとめている。上海では2013年3月31日に、H7N9の最初の確定感染者が報告され、4月に家禽市場を閉鎖していた。Lancet誌オンライン版2013年10月31日号掲載の報告より。統計モデルにより、ヒトへの伝播経路パターンを分析 Hongjie Yu氏らは、CDCのデータベースから、中国の上海、杭州、湖州、南京の4都市で、今年6月7日までに発生し、検査で確定したH7N9感染者について調査を行った。 統計モデルにより、ヒトへの伝播経路パターンについて分析した。具体的には、感染者の年齢、性、所在地、地域のタイプ(農村または都市部)、発症日を入手し、家禽市場の情報は公式ソースから入手し、各市で報告された発生症例パターンを調べるため、家禽市場閉鎖前および閉鎖後のそれぞれの想定感染力に基づき統計モデルを作成した。家禽市場閉鎖により感染者数は97~99%減少 4都市で報告されたH7N9への感染者は85例であり、そのうち60例について分析を行った。その結果、家禽市場閉鎖により1日当たり平均感染者数は、上海で99%減少(95%信頼区間:93~100)、杭州でも99%減少(同:92~100)した。湖州では97%減少(同:68~100)、南京でも97%減少(同:81~100)した。 H7N9の感染確認例の感染経路は、大部分が家禽市場を経由していたことから、同研究グループはH7N9の潜伏期間について、平均3.3日(同:1.4~5.7)と推定した。 研究グループは、家禽市場の閉鎖はH7N9のヒトへの感染リスク抑制に効果的であったとしたうえで、「生きた家禽やヒトへのH7N9の感染が認められた場合には、ただちに家禽市場を閉鎖すべきである」とまとめている。

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テストステロン補充療法により死亡・心筋梗塞・脳卒中のリスクが増加/JAMA

 テストステロン補充療法による心血管転帰や死亡率への影響は明らかになっていない。米国テキサス大学のRebecca Vigen氏らは、テストステロン補充療法が退役軍人男性における全死因死亡や心筋梗塞、脳卒中と関連するか、またその関連性が、基礎疾患の冠動脈疾患により変化するかどうかを検討した。その結果、冠動脈造影を受け血清テストステロンが低値であった男性コホートにおいて、テストステロン補充療法が有害転帰リスク増加と関連していたことが示された。JAMA誌2013年11月6日号に掲載。 本研究は、2005年から2011年の間の退役軍人省のヘルスケアシステムのデータを基にしたレトロスペクティブな全国コホート研究である。対象は、冠動脈造影を受けた、テストステロン低値(300ng/dL未満)の男性、主要アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合アウトカムである。 主な結果は以下のとおり。・総テストステロン値が300ng/dL未満の男性8,709人のうち、1,223人が冠動脈造影後531日(中央値)後にテストステロン補充療法を開始した。・アウトカムの1,710イベントの内訳は、死亡748人、心筋梗塞443人、脳卒中519人であった。テストステロン補充療法を受けていない7,486人において、死亡681人、心筋梗塞420人、脳卒中486人、テストステロン補充療法を受けた1,223人において、死亡67人、心筋梗塞23人、脳卒中33人であった。・絶対的イベント発生率は、テストステロン補充療法なし群19.9% 対テストステロン補充療法あり群25.7%で、冠動脈造影後3年時点の絶対リスクの差は5.8%(95%CI:-1.4%~13.1%)であった。・冠動脈疾患の存在を補正したCox比例ハザードモデルにおいて、時間変動型共変量として評価したテストステロン補充療法使用は有害転帰リスク増加と関連していた(ハザード比:1.29、95%CI:1.04~1.58)。・テストステロン補充療法の効果の大きさについて、冠動脈疾患の有無による有意な差は認められなかった(交互作用の検定、p=0.41)。

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膝関節の軟骨変性や関節炎を関節表面の電位で評価する新しい技術

 electroarthrography(EAG)は、関節負荷によって誘発される膝表面の電位を測定する新しい方法である。カナダ・モントリオール理工科大学のAnne-Marie Preville氏らは、EAGの信号は、圧縮された関節軟骨において生成された流動電位から発生していることを明らかにした。そのうえで「EAGは関節軟骨の変性や関節炎を非侵襲的に評価するための有望な新技術である」とまとめている。Osteoarthritis and Cartilage誌2013年11月号(オンライン版2013年7月9日号)の掲載報告。 研究グループは、EAGが関節軟骨の変性の評価に有用かどうかを検討する目的で臨床試験を行った。 対象は、無症状の被験者(対照群)20例、片側のみ人工膝関節置換術(TKR)を受けた両側性変形性膝関節症患者(OA群)20例であった。 片膝の内側4ヵ所(関節ラインに2ヵ所、その上に1ヵ所および下に1ヵ所)、外側4ヵ所(同上)、計8ヵ所に電極を装着し、関節に負荷がかかるよう他方の足から体重を移動してEAGを記録した。OA群では、TKRを施行した膝と、もう一方の膝の両方でEAGを測定した。 主な結果は以下のとおり。・反復測定によりEAGの再現性が確認された。・内側の3ヵ所(関節ラインの2ヵ所と、その下の1ヵ所)の電位はOA群に比べ対照群で有意に高かった。・TKRを施行した膝の電位はゼロであった。・対照群において、EAG振幅と年齢、体重、身長またはBMIとの間の相関関係や、EAG平均値の男女差は認められなかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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ケアネット白書~糖尿病編2013

1.調査目的と方法本調査の目的は、糖尿病診療に対する臨床医の意識を調べ、その実態を把握するとともに、主に使用されている糖尿病治療薬を評価することである。2型糖尿病患者を1ヵ月に10人以上診察している全国の医師496人を対象に、(株)ケアネットのウェブサイトにて、アンケート調査への協力を依頼し、2013年3月25日~4月1日に回答を募った。2.結果1)回答医師の背景回答医師496人の主診療科は、一般内科が40.5%で最も多く、次いで糖尿病・代謝・内分泌科で30.6%、循環器科で11.5%である。それら医師の所属施設は、病院(20床以上)が70.2%、診療所(19床以下)が29.8%となっている。医師の年齢層は50-59歳が最も多く35.9%、次いで40-49歳が35.1%、39歳以下が23.4%と続く。40代から50代の医師が全体の7割以上を占めている(表)。

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大腸内視鏡検診の是非と日本のがん検診(コメンテーター:勝俣 範之 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(143)より-

大腸がん検診として、便潜血によるスクリーニング法は、確立されている。一方、内視鏡による検診として、S状結腸内視鏡検診は、5つのRCT(ランダム化比較試験)のメタアナリシスにより、大腸がんの罹患率、死亡率を減少させることの有効性が示されている1)。しかし、全大腸内視鏡の検診の有効性に関してはまだ証明されていないところである。 今回の研究は、コホート研究の結果であるが、全大腸内視鏡検診群は、大腸がん発生率、死亡率を共に減少させ、また、S状結腸内視鏡検診群と比べて、近位大腸がんによる死亡をより減少させる結果が得られた。対象がランダム化されていないこと、医療従事者のみを対象としていること、コントロール群が便潜血法による検診群でないことなどから、この結果は、すぐに一般臨床に応用できるまでのエビデンスではないが、全大腸内視鏡検診の有用性を初めて証明した研究としては注目に値すると思われる。米国では、現在大腸がん検診として、便潜血、S状結腸内視鏡、大腸内視鏡検診が推奨されているが(http://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/uspscolo.htm)(日本は便潜血のみ)、今回の結果は、この推奨の後押しとなる結果であったと思われる。 現在、全大腸内視鏡検診の有用性を検証するために、便潜血による検診法と全大腸内視鏡検診を比較したランダム化比較試験が、米国・欧州で2つ行われており、結果が期待されるところである。 振り返ってわが国の現状を考えると、日本で最も発症数が多い胃がん検診に関しては、これまでランダム化比較試験は行われたことはない。胃がん検診として推奨されているバリウム検診に関しても、実際には、ケースコントロール研究の結果でしかない。胃内視鏡検査の方が精度が高く、人間ドックや職場検診などで、多く用いられているのであるが、残念ながら、胃内視鏡検査が検診として有効であるかどうか検証されたことはない。ランダム化比較試験を遂行していくのは大変なことではあるが、国民にとって本当に利益のあることなのか、科学的に検証するということは大切な作業であると思う。勝俣 範之先生のブログはこちら

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変形性関節症への全人工関節置換術、心血管保護効果を確認/BMJ

 股関節または膝関節の中等度~重度変形性関節症患者に対する待機的全人工関節置換術により、重症心血管イベントの発生リスクが低下することが、カナダ・トロント大学のBheeshma Ravi氏らの検討で示された。身体活動性の低下は心血管リスクを増大させる因子であることが示唆されている。65歳以上の40%以上に身体活動性の低下がみられ、その原因の多くを変形性関節症が占める。全人工関節置換術は変形性関節症患者の疼痛、運動能、歩行能、QOL、全般的な身体機能を改善するが、心血管リスクへの影響は不明であった。BMJ誌オンライン版2013年10月30日号掲載の報告。心血管リスクの抑制効果をランドマーク解析で評価 研究グループは、股関節または膝関節に対する全人工関節置換術が、中等度~重度の変形性関節症患者における重症心血管イベントを抑制するかを検証するために、傾向スコア・マッチング法を用いたランドマーク解析を行った。 1996~1998年に、カナダ・オンタリオ州で年齢55歳以上の股関節または膝関節の変形性関節症患者2,200例(年齢中央値71歳、女性72.0%)を登録し、死亡または2011年まで前向きに追跡した。ベースラインから3年以内に、待機的な初回全人工関節置換術を受けた患者と、受けなかった患者において、重症心血管イベントの発生状況を比較した。 傾向スコアをマッチさせたコホートとして、153組の置換術施行例と非施行例、合計306例が解析の対象となった。試験開始日をランドマークとして、中央値7年間追跡した。イベントが約40%低下、絶対リスク減少率は約12% 7年間に、全体で111件(36.3%)の心血管イベントが発生した。 3年以内に全人工関節置換術を受けた患者は、非施行群に比べ重症心血管イベントの頻度が有意に低かった(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.43~0.74、p<0.001)。また、7年間の絶対リスク減少率は12.4%(95%CI:1.7~23.1)で、治療必要数(NNT)は8例(95%CI:4~57)であった。 膝関節の全人工関節置換術を受けた94例は、非施行の94例に比べ重症心血管イベントの頻度が有意に低かった(HR:0.46、95%CI:0.29~0.75、p=0.0017)。しかし施行群で男性が有意に多く(26.6 vs 19.1%、standardized difference:18%)、両群間のバランスがとれていなかった。一方、股関節の全人工関節置換術を受けた49例は、非施行の49例に比べ重症心血管イベントの頻度が有意に低かった(HR:0.61、95%CI:0.38~0.99、p=0.0442)が、施行群で年齢が高く(70 vs 68歳、standardized difference:16%)、また平均BMIも高い値を示し(32.8 vs 29.2、standardized difference:32%)、バイアスの可能性が残された。 著者は、「股関節または膝関節の中等度~重度変形性関節症患者に対する3年以内の待機的初回全人工関節置換術の心血管保護効果が確認された」とまとめ、「本研究は観察試験であるが、傾向スコア・マッチング法を用いることで交絡因子を調整し、有効性を示すことができた。われわれの知る限り、これは全人工関節置換術の心血管保護効果を示した初めての研究である」と報告している。

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自家幹細胞移植、中悪性度非ホジキンリンパ腫の地固め療法として有効/NEJM

 自家幹細胞移植は、高中リスクおよび高リスクのびまん性中悪性度(aggressive)非ホジキンリンパ腫(NHL)の地固め療法として有効であることが、米国・ロヨラ大学医療センターのPatrick J Stiff氏らが行ったSWOG9704試験で示された。NHL治療は、「リツキシマブ時代」と呼ばれる状況下で、さらなる予後改善に向けさまざまな治療アプローチの探索が進められている。国際予後指標(IPI)により、診断時に持続的寛解の可能性が50%未満の患者の同定が可能となり、自家幹細胞移植の早期治療への導入が図られているが、高リスク例に対する地固め療法としての有効性は、その可能性が指摘されながらも長期にわたり確立されていなかった。NEJM誌2013年10月31日号掲載の報告。導入療法奏効例での有用性を無作為化試験で評価 SWOG9704試験は、米国のSWOG、ECOG、CALGBおよびカナダNCIC-CTGに所属する40施設が参加した無作為化試験。対象は、年齢15~65歳、生検でNHLが確認され、IPIで年齢調整リスクが高中または高と判定されたびまん性aggressive NHL患者であった。 1999年8月15日~2007年12月15日までに397例が登録され、導入療法としてシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン(prednisone)(CHOP)療法またはリツキシマブ+CHOP(R-CHOP)療法が5コース施行された。このうち奏効が得られた患者が、地固め療法としてさらに3コースの導入療法レジメンを施行する群(対照群)または1コースの導入療法レジメン施行後に自家幹細胞移植を行う群(移植群)に無作為に割り付けられた。 有効性に関する主要エンドポイントは、2年無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)であった。高リスク群では、OSも有意に改善 適格基準を満たした370例のうち、導入療法が奏効した253例が無作為割り付けの対象となった(移植群125例、対照群128例)。370例の患者背景は、年齢中央値51(18.3~65.9)歳、男性59%で、B細胞リンパ腫が89%、T細胞リンパ腫は11%であった。 追跡期間中に病態が進行または死亡した患者は、移植群が46/125例、対照群は68/128例で、推定2年PFSはそれぞれ69%、55%であった。リスクスコアで調整したCox回帰モデルによる多変量解析では、ハザード比(HR)は1.72(95%信頼区間[CI]:1.18~2.51、p=0.005)であり、移植群が有意に良好だった。 死亡例数は移植群が37例、対照群は47例で、2年OSはそれぞれ74%、71%であり、両群に差は認めなかった(HR:1.26、95%CI:0.82~1.94、p=0.30)。 探索的解析では、高中リスク例と高リスク例で治療効果が異なることが示された。すなわち、高中リスク群の2年PFSは、移植群が66%、対照群は63%と同等であった(p=0.32)が、高リスク群ではそれぞれ75%、41%であり、有意差が認められた(p=0.001)。2年OSも、高中リスク群では移植群が70%、対照群は75%と差は認めなかった(p=0.48)のに対し、高リスク群では移植群が82%と、対照群の64%に比べ有意に良好だった(p=0.01)。 予測されたように、移植群では対照群に比べGrade 3/4の有害事象が多くみられた。治療関連死は移植群が6例(5%)(肺障害3例、出血と腎不全1例、感染症1例、多臓器不全1例)、対照群は3例(2%)(心血管障害1例、感染症1例、原因不明1例)に認められた。 著者は、「自家幹細胞移植の早期導入により、導入療法で奏効が得られた高中および高リスク患者のPFSが改善された」とまとめ、「対照群の再発例62例(48%)のうち29例(47%)にサルベージ療法として化学療法や移植が行われており、これがOSに有意差がなかった理由と考えられる」と指摘している。

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認知度が4割しかない1型糖尿病を支援する-日本イーライリリープレスセミナー 

 11月5日(火)、日本イーライリリー株式会社は、11月14日の「世界糖尿病デー」に先駆け、「多様化する糖尿病と患者さんの支援の重要性」と題して、プレスセミナーを開催した。 前半では、「多様化する糖尿病 ~多様化する患者さん一人ひとりの、糖尿病への向き合い方とその治療~」として内潟 安子氏(東京女子医科大学 糖尿病センター長/ 内科学第三講座主任教授)を講師に迎え、糖尿病の概要についてレクチャーが行われた。 厚生労働省の統計資料によれば、わが国の糖尿病患者数は、依然として増加を続け、成人の約3割が糖尿病かその予備群であり、約4割は未治療のままである。内潟氏からは糖尿病の類型について、とくに1型糖尿病に焦点を絞り説明がなされた。一般に糖尿病は、生活習慣などの乱れから発症する2型糖尿病がほとんどと考えられている中で、1型糖尿病は、小児期から思春期での発症が多く(成人での発症数も多い)、遺伝的素因や免疫学的異常などによる発症がある、とコンパクトに解説が行われた。 そのうえで、医療者は、患者さんの「良好な血糖コントロールを行うこと」と「合併症を予防すること」を念頭に診療にあたっていること、その一方で、患者さんは治療のために、日常生活の中で食事時間や内容、そのカロリー、そして、定期的なインスリン注射、治療薬の服用と毎日の規則正しい生活を行っていることを述べた。そして、周りの方にも糖尿病患者さんへの理解を深めてもらいたい、とレクチャーを終えた。 後半では、同社の綱場 一成氏(糖尿病・成長ホルモン事業本部 事業本部長)が、「糖尿病治療におけるベストパートナーとして」と題し、同社の取り組みと今後の展望を説明した。1923年よりわが国でインスリンを発売してきた同社は、小児糖尿病患者のサマーキャンプなど、これまで社会貢献活動などを活発に行ってきている。 綱場氏は、先ごろ行われた「1型糖尿病の認知度調査」の結果について、次のように概略を発表した(調査は、20代以上の各年代から男女100名ずつを選出。1,000名にインターネットで調査したもの)。その結果、「1型糖尿病」という名称さえ聞いたことがない人が約6割。1型糖尿病を知っている人でもその半数以上が、発症原因として「食べ過ぎ、運動不足などの生活習慣」と回答したほか、患者タイプを「肥満型の人がなりやすい」と回答した人が約3割、発症により「日常生活の中で活動の制限を受ける」と回答した人が約9割に及び、認知度の低さ以外にも、さまざまな誤解があることが浮き彫りになった。 同社では、こうした状況を受けて、1型糖尿病患者のライフステージに応じて幅広いサポートをするため啓発小冊子を作成した。今後、医療機関で配布していくことで、1型糖尿病と診断された患者さんの心のケアに活用してもらい、糖尿病診療に寄与していきたいと抱負を語った。詳しくは、 日本イーライリリー(糖尿病・内分泌系の病気) ケアネットの特集「糖尿病 外来インスリン療法」 

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糖尿病患者、約8割に皮膚疾患

 糖尿病患者の皮膚疾患と皮膚以外の疾患との関連について、同患者における皮膚疾患は約8割に認められ、そのうち半数近くが皮膚感染症であったこと、また腎障害との関連が深い皮膚疾患の特徴や、血糖値と皮膚疾患との関連などが明らかにされた。トルコ・Ataturk Training and Research HospitalのDuriye Deniz Demirseren氏らが、患者750例を前向きに登録調査し報告した。結果を踏まえて著者は、「皮膚疾患は、糖尿病患者において微小血管合併症の有無を知る手がかりとなりうるだろう」と結論している。American Journal of Clinical Dermatology誌オンライン版2013年10月18日号の掲載報告。 糖尿病患者における皮膚疾患とそれ以外の疾患との関連は明らかになっていない。研究グループは、同患者における皮膚疾患と糖尿病性神経障害、腎症、網膜症との関連を調べることを目的に、750例の患者を前向きに登録し分析した。 人口統計学的および臨床的特性、皮膚疾患、HbA1c値および神経障害、腎症、網膜症について調べた。 主な結果は以下のとおり。・被験者(750例)のうち、38.0%の患者が神経障害を、23.3%が腎症を、22.9%が網膜症を有していた。・皮膚疾患を有していた患者は79.2%(594例)であった。・皮膚疾患のうち最も多かったのは、皮膚感染症(47.5%)、次いで乾皮症(26.4%)、炎症性皮膚疾患(20.7%)であった。・腎症を有する患者においては、皮膚感染症、真菌性感染症、糖尿病性足病変、ルベオーシス(顔面)、色素性紫斑が、腎症を有さない患者と比べて多かった。・神経障害を有する患者では概して、皮膚感染症、糖尿病性足病変、ルベオーシス(顔面)、糖尿病性皮膚障害がみられた。・網膜症を有する患者では、真菌性感染症、糖尿病性足病変、ルベオーシス(顔面)、糖尿病性皮膚障害、色素性紫斑の頻度が高かった。・HbA1c値が8mmol/mL以上の患者では、同値が8mmol/mL未満の患者より皮膚疾患を有する患者が有意に多かった(p<0.05)。

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抗うつ薬の効果発現を加速するポイントは

 一般的に、抗うつ薬が効果を発現するまでには2週間程度を要するといわれている。そのようななか、選択的セロトニン2C(5-HT2C)拮抗薬は、中脳皮質のドーパミン作用シグナリングを強化する作用により、速やかな抗うつ効果の発現を呈することが明らかにされた。米国・シカゴ大学のM D Opal氏らがマウス試験の結果、報告した。現在の抗うつ薬は、治療効果がみられるまでに数週間の投与を必要とする。Molecular Psychiatry誌オンライン版2013年10月29日号の掲載報告。 研究グループは、マウス試験により、5-HT2C拮抗薬の抗うつ効果の発現について、発現までの期間や作用機序について検討した。 主な知見は以下のとおり。・5-HT2C拮抗薬の抗うつ効果の発現までの期間は5日と、現在の抗うつ薬の14日よりも速やかであった。・5-HT2C拮抗薬による亜慢性治療(5日間)により、抗うつ行動をもたらす効果があることが、慢性強制水泳検査(cFST)、慢性軽度ストレス(CMS)パラダイム、嗅球摘出パラダイムにおいて認められた。・また同治療により、抗うつ活性の従来マーカーである、cAMP応答配列結合タンパク(CREB)の活性、内側前頭前皮質(mPFC)における脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現にも変化がみられた。・これらの効果発現は、プロトタイプの選択的セロトニン再取り込み薬(SSRI)シタロプラム(国内未承認)の亜慢性治療ではみられなかった。・mPFCにおけるBDNFの誘発には、中脳腹側被蓋野への5-HT2C拮抗薬の局注で十分であった。一方でドーパミンD1受容体拮抗薬治療は、5-HT2C拮抗薬の抗うつ活性効果を阻害することが認められた。・また、5-HT2C拮抗薬は、哺乳類において標的となるmPFCにおけるラパマイシン(mTOR)と真核生物伸長因子2(eEF2)を惹起することにより、迅速な抗うつ活性に結びついていた。・さらに、5-HT2C拮抗薬は、CMSによって誘発されたmPFC錘体神経細胞の萎縮を改善した。・亜慢性SSRI治療(抗うつ行動の効果をもたらさない)も、mTORとeEF2を活性化し、CMSによって誘発された神経萎縮を改善したが、これらの効果は抗うつ効果の発現として認めるには不十分なものであった。・以上のように、5-HT2C拮抗薬は、中脳皮質のドーパミン作用シグナリング強化という作用により、一般に考えられているように効果が速やかな抗うつ薬であることが明らかにされた。関連医療ニュース 難治性うつ病にアリピプラゾールはどの程度有用か うつ病に対するアリピプラゾール強化療法、低用量で改善 セロトニン3受容体、統合失調症の陰性症状改善に期待:藤田保健衛生大学

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第20回 診療ガイドライン その3:望まれる診療ガイドラインのかたち

■今回のテーマのポイント1.検察官には診療ガイドラインの「行間」を読むことはできない2.したがって、素人が読んでも理解できるようなガイドラインを作成することが肝要である3.システムエラー型であることを明記した事故報告書を作成しても、刑事訴追されるのがわが国の現状である。速やかにWHOドラフトガイドラインに即した事故調査制度に変更しなければならない事件の概要44歳女性(X)。乳がんと診断されたため、平成20年4月、左乳房部分切除術実施目的にてA病院に入院しました。手術当日午前8時55分。Xに対し、麻酔科医であるY医師が麻酔導入を行いました。その結果、Xは、人工呼吸器管理下に置かれ、自発呼吸のできない意識消失・鎮痛・筋弛緩状態となりました。Y医師は、Xに対する麻酔導入が終わり、バイタルサインも安定したことから、インチャージ(責任者)として別の手術室で後期研修医の麻酔導入を指導・補助するため、9時7分頃、手術室を出ました。なお、Y医師は、連絡用のPHSを携帯しており、手術室を出る際、看護師に対し、「インチャージのため退室するが、何かあったら知らせてほしい」と告げていました。9時15分頃、執刀医であるZ医師は、Y医師が不在のまま、看護師に手術台の高さおよび角度の調整をさせ、手術を開始しました。9時16分頃、Xに酸素を供給していた蛇管が麻酔器の取付口から脱落し、Xへの酸素供給が遮断されてしまいました。しかし、蛇管の脱落あるいはそれによるXの状態の異変に気が付く者はいませんでした。9時31分頃、看護師が、モニター上にSpO2の表示がないことに気付き、執刀医であるZ医師に伝えるとともに、PHSでその旨をY医師に伝えました。連絡を受けたY医師は、直ちに手術室に引き返したところ、蛇管が麻酔器から脱落しているのを発見しました。9時34分頃、直ちに用手換気に切り替えるなど応急措置を行いましたが、9時37分頃、Xは心肺停止となりました。Z医師や応援に駆け付けた医師らによる蘇生措置により、心拍の再開は得られたものの、Xには、低酸素脳症による高次脳機能障害および四肢不全麻痺が残ることとなりました。これに対し、横浜区検は、Y医師を「Xの身体の状態を目視するほか、同人に装着されたセンサー等により測定・表示された心拍数・血圧・酸素飽和度等を注視するなどの方法で同人の全身状態を絶え間なく看視し、異変があれば適切に対処すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、同日午前9時7分頃、漫然と同室から退室して約27分間にわたって前記手術室を不在にし、その間、同人の全身状態を看視するなどせずに放置した過失により、Xに完治不能の低酸素脳症に基づく高次脳機能障害及び四肢不全麻痺の傷害を負わせた」として、起訴(刑事訴追)しました。事件の判決検察官は、(1)麻酔担当医である被告人は、Xに全身麻酔を施したことにより、Xを自発呼吸のできない意識消失・鎮痛・筋弛緩状態にしたのであるから、Xの生命維持のため、呼吸管理をするなどして、Xの全身状態を適切に維持・管理することが不可欠となった、(2)したがって、被告人には、Xの身体の状態を目視するほか、Xに装着されたセンサー等により測定・表示された心拍数等を注視するなどの方法で、Xの全身状態を絶え間なく看視すべき業務上の注意義務があると主張するので、これについて付言する。(1)の点は、一般論としては、全くそのとおりである。しかも、(1)でいう、患者の全身状態を適切に維持・管理することが、麻酔担当医の役割であることも、異論はない。ここまでは、弁護人も認めるところである。しかし、そうであるからといって、(2)のように、麻酔担当医が、常時、手術室にいて、患者の全身状態を絶え間なく看視すべきであるとして、具体的な注意義務を導くのは、余りにも論理が飛躍しているというほかない。(1)のような事情は、別に本件に特有のものではなく、他の全身麻酔が行われる場合にも、共通していえることである。それでは、我が国の麻酔担当医が、当該医療機関での職務の体制や患者の容態、麻酔や手術の進行状況を問わず、全身麻酔をした患者に対し、手術室にいて絶え間ない看視をしているかといえば、決してそうではない(少なくとも、そうであるとの立証は、本件では全くされていない。)。確かに、検察官が援用する日本麻酔科学会作成の「安全な麻酔のためのモニター指針」によると、麻酔中の患者の安全を維持確保するため、「現場に麻酔を担当する医師が居て、絶え間なく看視すること。」という指針の記載がある。しかし、このモニター指針は、モニタリングの整備を病院側に促進させようという目的から作成されたものであり、麻酔科学会として目標とする姿勢、望ましい姿勢を示すものと位置づけられている(甲医師証言)。すなわち、この指針に適合せず、絶え間ない看視をしなかったからといって、許容されないものになるという趣旨ではない。なお、乙医師及び丙医師は、麻酔科医は絶え間ない看視を行うべきであるとの見解を、証人として述べているが、これは、麻酔科医が専門家として追求すべき手術中の役割は何かといった観点からの見解であって、我が国での麻酔科医の実情を述べるものではない。以上みてきたところによると、手術室不在という被告人の行動は、その不在時間の長さ(手術室に戻るまでに約27分間、蛇管が外れたときまででも、約9分間)からして、インチャージの担当として後期研修医の指導・補助をしていたという事情があったとはいえ、いささか長過ぎたのではないかとの問題がなくはないが、被告人の置かれた具体的状況、更には当時の我が国の医療水準等を踏まえてみたとき、刑事罰を科さなければならないほどに許容されない問題性があったとは、到底いいがたい。したがって、本件事故について、被告人には、検察官が主張するような、常時在室してBの全身状態を絶え間なく看視すべき業務上の注意義務を認めることはできない。以上のとおりであるから、被告人には、本件事故について過失は認められないから、本件公訴事実については、犯罪の証明がないことに帰着し、刑訴法336条により、被告人には無罪の言渡しをする。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(横浜地判平成25年9月17日)ポイント解説予定では、各論の4回目となるところでしたが、診療ガイドラインに関する重要な判決が出ましたので、今回は「診療ガイドライン その3」として紹介させていただきます。本事例では、日本麻酔科学会が作成した「安全な麻酔のためのモニター指針」に、麻酔中の患者の安全を維持確保するため、「現場に麻酔を担当する医師が居て、絶え間なく看視すること」と記載されていたことから、検察は、Y医師を刑事訴追したものと考えられます。しかしながら、判決にも記載されているように、医師不足が問題となっているわが国の医療現場において、同ガイドラインが勧告する「麻酔科医が絶え間なく看視すること」をすべての医療機関・手術室において実施することが不可能であることはご存じのとおりです。したがって、少しでも医療現場を知っている者が本ガイドラインを読めば、このガイドラインが述べているのは「あるべき理想的な姿」であって、将来的にそれに近づくことが望まれるものの、現在の医療現場においてそれを義務づけると、行える手術件数が著しく低下する結果、手術が受けられず死亡する患者が多数生じてしまうことから、現状における本ガイドラインの記載は、あくまで「目標」、「道標」に過ぎないと読み取ることができます。ですが、検察は、医療の素人ですし、医療現場を知りませんので、この医療従事者ならば当然把握できる「行間」を読むことができません。その結果、検察は、本ガイドラインの字面だけを捉え、Y医師を刑事訴追してしまったのです。裁判の結果、Y医師は無罪となりましたが、裁判中のY医師の心労は計り知れないものであったと思われます。このような不幸な事態が生じないよう、ガイドラインの作成に当たっては、その記載内容が医療従事者以外の者、特に検察官、弁護士に読まれることを十分に意識して作成する必要があるといえます。なお、報道によると、「毛利晴光裁判長は、言い渡しの後、『捜査が十分ではないのに起訴した疑いが残る。このような捜査処理がないことを望む』と検察側に注文をつけた」(読売新聞 2013年9月17日)と報道されており、現在でも裁判所が、医療現場に対する刑事司法の介入に謙抑的な姿勢を持っていることがうかがえます。本事例では、院内事故調査が行われ、事故調査報告書が公表されています。平成20年12月に作成された事故調査報告書では、「7.再発防止に向けた提言」において、1麻酔科医、外科医、看護師間の役割分担、連携が十分でなかったこと。さらに、麻酔科医不在時における全身管理の取り決めがないこと2麻酔器及び生体情報モニターに関する教育が不足していたこと3医師は経験を優先し、マニュアル等を重要視しないことがあること以上3つの根本原因を前提に、次のとおり再発防止策を提言する。と示しており、「8.終わりに」において、「今回の事故は、技術の巧拙の問題ではなく、それぞれの職種間あるいは個人の間の連携や意思疎通が十分でなかったこと、麻酔器モニターなど機器への慣れや過信等が根本的な原因であると考え、再発防止策を提言した。今後、病院をあげてこうした取組を進め、安全で安心な医療を確立しなければならない。特に医師は、指針やマニュアルが継続して遵守され、質の高い医療を提供していくよう、その中心となって取り組むよう要請する」と示し、本事例は、システムエラー型の事案であり、誰か特定の個人の責任に帰せしめることは適当ではない旨を示していたものの、残念ながら刑事訴追がなされてしまいました。本事故調査報告書に記載されているように、今後、同種事例が発生しないためにも、医療機関において改善すべき点はいくつもあります。したがって、本事例は広く知識として共有されるべきものと思われます。しかしながら、当事者が正直に話した結果、刑事訴追されるとすれば、だれも事故調査において正直に話せなくなってしまいます。本事例のような事故調査報告書の記載でも、刑事訴追がなされるのであれば、現状の事故調査システム自体に欠陥があると言わざるを得ません。「WHO draft guidelines for adverse event reporting and learning systems」にも明記されているとおり、報告制度によって処罰されないこと(non-punitive)、そのためには情報が秘匿(confidential)されなければならないことという世界標準に沿った事故調査システムが、速やかに構築されなければいけません。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)横浜地判平成25年9月17日

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01)ブルーライトアップの意味は?【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者昨日は東寺がブルーになっていました。あれは何ですか?医師実は昨日は「世界糖尿病デー」なんです。患者世界糖尿病デー?医師そうです。11月14日は世界糖尿病デーなんです。患者どうして、11月14日なんですか?医師11月14日はインスリンを発見したカナダ人のバンティング先生の生まれた日なんです。みんなで糖尿病を克服していこう、という日なんです。患者そうなんですか。どうしてブルーなんですか?医師ブルーは、国連や空を象徴するブルーみたいですね。みんなで糖尿病を克服していこうということで、ブルーの輪がシンボルマークとなっています。患者わかりました。私も頑張ってみます。●ポイント「今日は何の日」などの話題から、療養指導の話が広がります

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