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アトピー性皮膚炎児、喘息リスクは全員が一律に高いわけではない

 アトピー性皮膚炎と喘息との関連について、アレルゲンを多く有する子どものほうが喘息リスクが有意に高いことが明らかにされた。英国・Microsoft Research CambridgeのN. Lazic氏らが機械的に任意に抽出した2つの出生コホートを分析して報告した。従来定義の小児アトピー性皮膚炎患児のうち、喘息リスクが高いと判明したのは、3分の1以下であったという。アトピー性皮膚炎は喘息との関連が強いリスク因子の一つだが、その関連性はほとんど明らかになっていなかった。Lazic氏らは、アトピーといっても多様なサブタイプがあり、それぞれ喘息との関連は異なるのではないかと仮定し本検討を行った。Allergy誌2013年6月号(オンライン版2013年4月29日号)の掲載報告。 本研究は、英国の2つの異なる地域ベースの出生小児コホート(マンチェスターとワイト島)を対象に、機械学習法にて行われた。小児期および思春期を通じて実施したプリックテストとアレルゲン特異的IgE検査に基づき、教師なし学習を用いてアトピー性感作によりそれぞれクラス分類し、各群の質的特性と喘息および肺機能との関連性を調べた。 主な結果は以下のとおり。・両コホートのデータは、それぞれ5クラスに分類できた。それら分類クラスの内容は両コホートで非常に類似していた。・非感作群と比較して、多様なアレルゲン感作を有するクラスの子どものほう(従来定義の小児アトピー性皮膚炎児の3分の1以下)が喘息を有する傾向が認められた[補正後オッズ比aOR(95%信頼区間[CI]) マンチェスター:20.1(10.9~40.2)、ワイト島:11.9(7.3~19.4)]。・喘息と従来定義のアトピー性皮膚炎との関連は弱かった[同 マンチェスター:5.5(3.4~8.8)、ワイト島:5.8(4.1~8.3)]。・両コホートにおいて、これらのクラスの子どもの肺機能は有意に低く(FEV1/FVC低下はマンチェスター群4.4%、ワイト島群2.6%、p<0.001)、気道感作、呼気NO値(FeNO)高値、喘息による入院が有意に多かった(p<0.001)。

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慢性リンパ性白血病に対して国内初の分子標的薬

 白血病の1つである慢性リンパ性白血病(CLL)は、わが国の患者数が約2,000人と推計されている希少疾病である。治療はフルダラビンやシクロホスファミドを用いた化学療法が第一選択であるが、これらに効果がない場合や再発した場合の新たな治療選択肢として、分子標的薬であるアーゼラ(一般名:オファツムマブ)が今年5月24日に発売された(適応は「再発または難治性のCD20陽性のCLL」)。  7月9日に東京都内で開催された記者発表会では、CLL治療の現状と課題についてがん研有明病院血液腫瘍科 部長 畠 清彦氏が、また、アーゼラの試験成績について東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科 准教授・診療科長 小川 吉明氏が講演した(主催:グラクソ・スミスクライン株式会社)。■白血病は分子標的治療薬で治療成績が飛躍的に向上しつつある 畠氏はまず、白血病は死に至るイメージが強いが、近年、移植療法の進歩や分子標的治療薬の登場により、治療成績が飛躍的に向上しつつあることを紹介した。白血病は、骨髄性とリンパ性、慢性と急性により4つのタイプに分けられる。患者数の割合は、急性骨髄性白血病(AML)が約6割と最も多く、慢性骨髄性白血病(CML)と急性リンパ性白血病(ALL)が約2割ずつ、CLLは約3%と少ない。また、日本人におけるCLL罹患率は10万人に約0.5人と、欧米の約4.4人に比べてきわめて少ないことから、わが国では他のタイプの白血病に比べて、新たな治療法の研究・開発が遅れていた。実際、AML、CML、ALLではすでに分子標的治療薬が使用されているが、CLLではアーゼラが日本で初の分子標的治療薬となる。■CLLの治療と課題 CLLの初期は自覚症状がなく、健康診断でみつかる場合が多い。症状の進行に伴ってリンパ節腫脹、易疲労感、盗汗、発熱、体重減少、易感染性、貧血、血小板減少などが認められる。症状のない低リスク(Rai病期分類0やBinet病期分類A)の場合は経過観察を行い、貧血/血小板減少の進行・増悪、脾腫、リンパ節腫脹、リンパ球増加、自己免疫性貧血・血小板減少症、全身症状が発現した場合に治療を開始する。 日本における薬物治療の第一選択は、フルダラビン単剤療法、フルダラビンを中心とした多剤併用療法、シクロホスファミドと他の薬剤の併用療法であるが、今回、再発または難治性のCD20陽性のCLLに対してアーゼラが承認された。 日本におけるCLL治療の課題として、畠氏は、CLLは薬物療法では治癒が難しく再発することの多い難治性の血液腫瘍であること、CLLに適応を有する薬剤が少なく治療選択肢が限られていること、再発または難治性のCLLに対する標準的な治療法が確立していないことを挙げ、「標準治療の確立のため、ガイドラインの作成が急がれる」と結んだ。■再発・難治性のCLLの新たな治療選択肢として期待 続いて、アーゼラの作用機序と臨床成績について小川氏が紹介した。 アーゼラは、CLLの腫瘍性B細胞の表面に発現しているCD20抗原を標的とした、完全ヒト型のモノクローナル抗体である。CD20は大ループと小ループの2つのループから成るが、アーゼラは両ループに結合することにより補体依存性細胞傷害作用を示す(in vitro)。 日韓共同で実施された第I/II相試験では、過去に1レジメン以上のCLL治療を受けた経験のある、再発または難治性のCLL患者10例(日本人9例、韓国人1例)に対して、アーゼラを単剤で投与(点滴静注、全12回)したところ、10例中7例に奏効を認めた(部分寛解7例、安定3例)。また、10例中8例は病勢進行が認められなかった。主な副作用は、血球減少症、インフュージョンリアクションであった。インフュージョンリアクションについては、多くは1回目と2回目の投与時に認められたが、5~7回目にも発現していることに注意が必要、と小川氏は指摘した。 最後に小川氏は、「再発・難治性のCLL患者さんに対して、アーゼラ単独療法で高い効果が期待できる。有効な治療選択肢がなく、無治療や現状維持を目指していたCLL患者さんに対しても積極的に治療が検討できる新たな治療選択肢となる」と期待を示した。

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リチウムが気分障害患者の自殺リスクを低減/BMJ

 リチウムは気分障害患者における自殺リスクの抑制に有効な治療法であることが、イタリア・ベローナ大学のAndrea Cipriani氏らの検討で示された。精神疾患の中でも、単極性障害(うつ病エピソード)および双極性障害(躁病もしくは軽躁病で、通常、中等度のうつ病エピソードを伴う)からなる気分障害は自殺リスクが最も高いとされる。自殺予防戦略における薬物療法の役割は相対的に小さいが、抗精神病薬の効果は過小評価されている可能性があるという。気分障害患者におけるリチウムの自殺や自傷の予防効果は、これまで知られていなかった。BMJ誌オンライン版2013年6月27日号掲載の報告。自殺、自傷行為の予防効果をメタ解析で評価 研究グループは、単極性および双極性の気分障害患者におけるリチウムによる自殺、自傷行為の予防効果を評価するために、系統的なレビューとメタ解析を行った。 文献の収集には、医学文献データベース、ウェブベースの臨床試験レジストリー、主要教科書、製薬会社のウェブサイトなどを利用し、重要論文の著者や専門家にも問い合わせた。対象は、2013年1月までに発表された、気分障害の長期治療においてリチウムとプラセボまたは実薬を比較した無作為化対照比較試験とした。 主要評価項目は、自殺完遂、意図的自傷行為の実行、全死因死亡であった。全般的に実薬より良好な傾向も 1968~2013年までに発表された48件の無作為化対照比較試験の論文から抽出された6,674例が解析の対象となった。対照は、プラセボ(24件)のほか、アミトリプチリン、カルバマゼピン、バルプロ酸など14の実薬(24件)であった。フォローアップ期間中央値は19.1ヵ月。 プラセボ対照試験の解析では、自殺者数はリチウム群が244例中0例と、プラセボ群の241例中6例に比べ有意に低下した(Peto法によるオッズ比[OR]:0.13、95%信頼区間[CI]:0.03~0.66、p=0.01)。 全死因死亡数もリチウム群が392例中5例と、プラセボ群の390例中14例よりも有意に良好であった(OR:0.38、95%CI:0.15~0.95、p=0.04)が、自傷行為者数はそれぞれ623例中10例、608例中16例で、リチウムによる明確な予防効果は認めなかった(同:0.60、0.27~1.32、p=0.21)。 単極性障害に限定した解析では、自殺者数はリチウム群が143例中0例、プラセボ群は137例中5例(OR:0.13、95%CI:0.02~0.76、p=0.02)、全死因死亡数はそれぞれ291例中4例、286例中12例(同:0.36、0.13~0.98、p=0.04)であり、いずれもリチウム群で有意に良好であった。 実薬対照試験の解析では、全般的にリチウム群は他の実薬よりも有用性が良好な傾向が認められたが、リチウムが統計学的に有意に優れたのはカルバマゼピンと比較した試験の自傷行為数のみであった(139例中0例 vs 146例中5例、OR:0.14、95%CI:0.02~0.83、p=0.03)。 著者は、「リチウムは気分障害患者における自殺リスクの低減に有効な治療法である」と結論づけ、「リチウムは、気分障害の再発を抑制することで抗自殺作用を発揮する可能性があるが、攻撃性や衝動性を低下させるとのエビデンスがあることから、抗自殺作用を誘導する他の付加的メカニズムも考慮すべき」と指摘している。

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中断機能が付いたインスリンポンプ、夜間低血糖イベントを37.5%減少/NEJM

 低血糖の閾値を感知する機能が付いたインスリンポンプは、毎日複数回を要するインスリン注射に匹敵する血糖管理の利点を有するが、重篤な夜間低血糖リスクを有意に低下するかについては明らかではなかった。そこで米国・Park Nicollet国際糖尿病センターのRichard M. Bergenstal氏ら研究グループは、あらかじめ設定した血糖値でインスリン注入が一時的に停止する中断機能(最長2時間)を加えて、その有用性を検証する無作為化試験を行った。その結果、同機能を加えることで、夜間低血糖が有意に低下したことを報告した。NEJM誌オンライン版2013年6月22日号掲載の報告より。インスリンポンプ中断機能あり群となし群で安全性、有効性を比較 閾値感知機能付きインスリンポンプについて、中断機能有無別にみた低血糖リスク低下の有用性を検証した多施設共同無作為化対照オープンラベル試験は、夜間低血糖記録のある1型糖尿病患者(適格条件:16~70歳、罹病期間2年以上、HbA1c値5.8~10.0%)を対象に行われた。試験期間は3ヵ月間だった。 被験者247例が無作為に、中断機能あり群(121例)と中断機能なし(対照)群(126例)に割り付けられた。主要安全性アウトカムは、HbA1c値の変化であり、主要有効性アウトカムは、平均曲線下面積(AUC)で評価した夜間低血糖イベント発生の有無であった。インスリンポンプ中断機能あり群の平均感知血糖値は92.6±40.7mg/dL 主要安全性アウトカムは両群で同程度だった。 夜間低血糖イベントに関する平均AUCは、中断機能あり群(980±1,200mg/dL×分)が対照群(1,568±1,995mg/dL×分)より、有意に37.5%小さかった(p<0.001)。 夜間低血糖イベントの発生は、中断機能あり群(1.5±1.0回/患者・週)が対照群(2.2±1.3回/患者・週)より、有意に31.8%低かった(p<0.001)。 中断機能あり群の夜間血糖感知の割合は、50mg/dL未満で57.1%、50~60mg/dL未満で41.9%、60~70mg/dL未満は26.8%、それぞれ有意に低かった(いずれもp<0.001)。 夜間2時間のポンプ中断中に示された1,438例の感知血糖値の平均値は、92.6±40.7mg/dLだった。 試験期間中に重篤な低血糖イベントは4例で発生したが、すべて対照群だった。糖尿病性ケトアシドーシスを呈した被験者はいなかった。

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変形性脊椎関節症による慢性腰痛に対するグルコサミンの効果は確立されていない

 変形性脊椎関節症による慢性腰痛患者の症状や機能に対する、グルコサミン経口投与の効果を確認するシステマティックレビューを、英国・イーストアングリア大学のReena Sodha氏らが行った。既存の報告は、データが不十分かつ研究の質が低いため、慢性腰痛患者に対し経口グルコサミンは臨床的に有用であるともないとも証明できなかった。BMJ Open誌オンライン版6月14日号の掲載報告。 Medline、AMED、CINHAL、Cochrane LibraryおよびEMBASEにて、2011年3月までに発表された無作為化比較試験の論文ならびに参考論文を検索した。灰色文献(the grey literature)についてもOpenSIGLEで検索した。 コクラン腰痛レビューグループの評価項目を1つ以上用いて評価した試験で、12週以上の腰痛を有する18歳以上の患者を対象とし、変形性脊椎関節症の画像所見の変化についても記載がある試験を適格とした。 検索にて同定された148件のうち、3件の無作為化比較試験(309例)がレビューに組み込まれた。 主な結果は以下のとおり。・3件すべての試験において、ローランド-・モリス障害質問票スコア(RMDQ)に変化はなく、機能に対するグルコサミンの効果は認められなかった。・バイアスリスクが高いと判定された1件の試験では、グルコサミン投与により疼痛スコアが有意に改善したが、2件の試験はグルコサミン投与群と対照群とで差はみられなかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説

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アルツハイマー病およびその他の認知症疾患が中国社会に及ぼす影響は甚大である(コメンテーター:粟田 主一 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(110)より-

厚生労働省より示される介護保険 要介護認定調査(認知症高齢者の日常生活自立度II以上)に基づく認知症高齢者数推計値は、2010年の段階では280万人(65歳以上の9.5%)であったが、このほど、厚生労働科学研究の調査結果に基づき、439万人(15%)に上方修正された。認知症疾患がわが国の社会に及ぼす影響は、従来の予想をはるかに上回るものである。 しかし、急速な経済発展、平均寿命の延伸、一人っ子政策などによって高齢化が急速に進む中国においては、認知症疾患が社会経済に及ぼす影響はさらに甚大である。このことはインド、ブラジル、南アフリカなどの低~中所得国においてもあてはまる。 本研究は、急速に高齢化が進む中国の今後の保健政策決定の基礎資料を得ることを目的に、1990年~2010年までの中国のアルツハイマー病および他の認知症疾患に関する疫学調査をレビューしたものである。採用基準に適合した89文献、対象者数34万247例(うちアルツハイマー病患者3,543例)のデータを系統的に分析した結果、中国における認知症患者数は 1990年で368万人、2000年で562万人、2010年で919万人、アルツハイマー病患者数は1990年で193万人、2000年で371万人、2010年で569万人、認知症発症率は1,000人・年当たり9.87、アルツハイマー病発症率は同6.25、血管性認知症発症率は同2.42であり、認知症患者の標準化死亡率の中央値は健常者の1.94倍であった。 本研究では、この数値が従来の国家予測をはるかに上回るものであり、政府の迅速かつ効果的な対応が必要であることを強調している。人口14億人、高齢化率9%の中国において、この数値は決して驚くべきものではない。しかし、中国の高齢化率は2050年には約30%に達する。21世紀の前半に、認知症は、確実に、国家を超えた保健医療福祉施策の最大の課題となる。

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統合失調症患者へのセロトニン作動薬のアドオン、臨床効果と認知機能を増大

 抗精神病薬治療中の統合失調症患者に対し、選択的セロトニン5-HT6受容体拮抗薬の追加併用療法は、抗精神病効果および一部の認知機能(注意力)を増大することが、ロシア医科学アカデミー国立精神保健センターのMorozova MA氏らによるパイロット試験の結果、報告された。CNS Spectrums誌オンライン版2013年6月17日号の掲載報告。 統合失調症患者へのアドオン治療として、セロトニン作動薬は有望視されている。研究グループは、抗精神病薬治療により症状が安定している統合失調症患者において、選択的セロトニン5-HT6受容体拮抗薬のAVN-211(CD-008-0173)が、臨床的および認知機能的効果を増大するかを明らかにすることを目的に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験のパイロット試験を4週(4r-week)にわたって行った。治療効果は、臨床的評価スケールと注意力テストにて測定した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は47例(試験薬追加併用群21例、プラセボ併用群26例)であり、そのうち併用群17例、プラセボ群25例が試験を完了した。・陽性・陰性症状スケール(PANSS)について、ベースラインでは両群に差はみられなかったが、試験終了時点では陽性サブスケールスコアについて有意差が認められ(p=0.058)、試験薬併用群の症状がより改善していた。・PANSS陽性サブスコア(p=0.0068)、臨床上の医師の印象による重症度(CGI-S)スコア(p=0.048)は、治療群のみにおいて有意な変化がみられた。・プラセボ群だけでみられた有意な変化は、カルガリー抑うつ評価スケール(CDRS)総スコアであった。・注意力テストの結果は試験終了時においても両群間の差を認めなかった。ただし、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)のサブテストVIIIの結果は例外であり、試験薬群において有意に変化が大きかった(p=0.02)。・試験薬併用群内のみにおいて、選択的および持続的注意力の有意な変化が認められた。標準注意検査法(CAT)において、総正解率(p=0.0038)、反応時間(p=0.058)で有意な変化がみられた。関連医療ニュース 精神科薬物治療で注目される5-HT1A受容体 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か?:藤田保健衛生大学 抗精神病薬へのNSAIDs追加投与、ベネフィットはあるのか?

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英国民、新硬貨発行でニッケルアレルギーが増大?

 英国では2013年に新硬貨が発行となった。このうち5ペンスと10ペンスは従来、銅ニッケルであったものが、鉄製でニッケルメッキを施したものに変更されたという。スウェーデン・カロリンスカ環境医学研究所のAnneli Julander氏らは、新たな鉄ニッケルメッキ硬貨と従来の銅ニッケル硬貨のアレルギーリスクを比較する検討を行った。その結果、新硬貨のニッケル曝露は従来硬貨の4倍であるなど、アレルギーリスクの増大が起きていることを報告した。Contact Dermatitis誌2013年6月号の掲載報告。 検討は、6例のボランティア被験者において、コインを手で握った時の皮膚曝露と金属放出を人工汗の下で評価した。 主な結果は以下のとおり。・鉄ニッケルメッキの新硬貨を手に握った時に皮膚に堆積したニッケル量は、1時間当たり7.5μg/cm2であった。この量は、銅ニッケル硬貨を握った時の量よりも4倍多かった。・鉄ニッケルメッキ硬貨のニッケルの皮膚曝露が高いのは、表面に含まれるニッケル量が多いことが要因であった。・初期のニッケル放出率は、1週間で放出される割合の10~27倍高かった。このことは、短期間に繰り返し新硬貨を握ることで、有意なニッケル曝露に結びつくとの考えを強調するものであった。・上記の結果を踏まえて著者は、「鉄ニッケルメッキの新硬貨は、銅ニッケル硬貨よりも高値のニッケルを皮膚へと堆積させる。そのため、アレルギーリスクの増大を引き起こしている」と結論した。・なお、人工汗への1週間の放出試験は、硬貨を手に握った時のリスク評価としては適切ではないと述べている。・そのうえで、ニッケル皮膚線量のリスクアセスメントが推奨されるとして、「英国民は現在、この硬貨の入れ替わりのため、皮膚への不必要に高度なニッケル曝露に曝されている。これは公衆衛生上、問題である」とまとめている。

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赤肉や加工肉の摂取は大腸がん発症率だけではなく発症後の予後にも影響

 赤肉(red meat;牛、羊、豚などの成獣肉)や加工肉の摂取は、確実に大腸がん発症率に相関しているが、大腸がん診断後の予後への影響は不明である。米国がん協会のMarjorie L. McCullough氏らは、がん診断前および診断後の自己申告による赤肉・加工肉の消費量と、転移のない浸潤性大腸がんの男女における全死因死亡率と原因別死亡率との関連を検討した。その結果、転移のない大腸がん患者において、診断前の赤肉や加工肉の摂取量が多い場合、全死因による死亡リスクが高いことが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2013年7月1日号に掲載。 がん予防研究II栄養コホートにおいて、1992~1993年、1999年、2003年のベースライン時の食事とその他の因子について参加者が報告し、ベースライン時から2009年6月30日までに大腸がんと診断された参加者について2010年12月31日まで死亡率を調査した。 主な結果は以下のとおり。・大腸がんと診断された2,315例のうち、追跡期間中に966例が死亡した(うち、大腸がんによる死亡413例、心血管疾患による死亡176例)。・多変量補正Cox比例ハザード回帰モデルでは、大腸がん診断前の赤肉・加工肉の摂取量は、全死因による死亡リスク(最上位四分位vs最下位四分位、相対リスク[RR]:1.29、95%CI:1.05~1.59、傾向のp=0.03)と心血管疾患による死亡リスク(RR:1.63、95%CI: 1.00~2.67、傾向のp=0.08)に相関していたが、大腸がんによる死亡リスクには相関しなかった(RR:1.09、95%CI:0.79~1.51、傾向のp=0.54)。・大腸がん診断後の赤肉・加工肉消費量は死亡率に相関しなかったが、摂取量が診断前後ともに多かった(中央値以上)患者は、診断前後とも少なかった患者に比べて、大腸がんによる死亡リスクが高かった(RR:1.79、95%CI:1.11~2.89)。

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n-3系多価不飽和脂肪酸、乳がんリスクを抑制/BMJ

 食事に含まれる海産物由来のn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)の摂取量が増えるほど、乳がんリスクが低減することが、中国・浙江大学のJu-Sheng Zheng氏らの検討で示された。2008年の世界的ながん統計調査では、乳がんは全がん患者の23%、全がん死の14%を占めている。また、疫学研究では魚類やn-3 PUFAの摂取は乳がんの発症に対し予防的に働くことが示唆されているが、この知見と矛盾する観察試験の結果があるという。BMJ誌オンライン版2013年6月27日号掲載の報告。魚類、n-3 PUFA摂取とリスクの関連をメタ解析で評価 研究グループは、魚類およびn-3 PUFAの摂取と乳がんのリスクの関連について検討し、摂取とリスクの用量反応関係を評価するために、前向きコホート試験の系統的レビューとメタ解析を行った。 医学文献データベースを検索し、2012年12月までに発表された論文とその関連文献から、魚類およびn-3 PUFAの摂取量やバイオマーカーに基づく乳がんの相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)の記載のあるものを選出した。 21件の前向きコホート試験に関する論文26編(乳がん患者:2万905例、参加者:88万3,585例)が解析の対象となった。米国と欧州の論文が11編ずつで、4編はアジアの試験であった。n-3 PUFA最大摂取群でリスクが14%低下、魚類、αリノレン酸は関連せず 魚類摂取に関するものが11編(乳がん患者:1万3,323例、参加者:68万7,770例)、海産物由来のn-3 PUFA摂取が17編(同:1万6,178例、52万7,392例)で、12編(同:1万4,284例、40万5,592例)はαリノレン酸摂取についても検討していた。 n-3 PUFA摂取量が最も多い群は、最も少ない群に比べ乳がんの発症リスクが14%低く(RR:0.86、95%CI:0.78~0.94)、n-3 PUFAを食事(RR:0.85、95%CI:0.76~0.96)およびバイオマーカー(RR:0.86、95%CI:0.71~1.03)で評価した場合のRRは類似していた。 サブグループ解析では、n-3 PUFA摂取量と乳がんリスクの逆相関関係は、BMI未調整の試験(RR:0.74、0.64~0.86)のほうが、BMIで調整済みの試験(RR:0.90、0.80~1.01)に比べ、より明確に認められた。 摂取量とリスクの用量反応解析では、食事によるn-3 PUFA摂取量が0.1g/日増加するごとに乳がんリスクは5%低下し(RR:0.95、95%CI:0.90~1.00)、n-3 PUFAの1日の摂取エネルギーに占める割合が0.1%増加するごとにリスクが5%抑制された(RR:0.95、95%CI:0.90~1.00)。 魚類およびαリノレン酸の摂取と乳がんリスクには有意な関連は認めなかった。 著者は、「食事による海産物由来n-3 PUFAの摂取量が増えるに従って乳がんリスクが低減することが示された。魚類、αリノレン酸と乳がんリスクとの関連については、さらなる前向きコホート試験で確認すべきと考えられる」と結論し、「これらの知見は、食事やライフスタイル介入による乳がん予防に、公衆衛生上の有益な示唆を与えるもの」と指摘している。

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クロピドグレル追加、TIA患者の脳卒中を予防/NEJM

 一過性脳虚血発作(TIA)および軽症虚血性脳卒中の患者において、クロピドグレル(商品名:プラビックス)+アスピリン併用療法はアスピリン単独療法に比べ脳卒中再発の予防効果が有意に優れることが、中国・首都医科大学附属北京天壇病院のYongjun Wang氏らが実施したCHANCE試験で示された。懸念された出血リスクの増加は認めなかった。中国では毎年、約300万人が新規に脳卒中を発症し、その約30%が軽症脳卒中であり、TIAの発症は毎年200万人以上に上るという。脳卒中は、TIAや軽症脳卒中から数週間以内に発症することが多く、パイロット試験ではクロピドグレル+アスピリン併用はアスピリン単独よりも脳卒中再発の予防効果が高い可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2013年6月26日号掲載の報告。再発予防効果を無作為化プラセボ対照比較試験で評価 CHANCE試験は、TIA、軽症脳卒中患者の脳卒中予防におけるクロピドグレル+アスピリン併用療法とアスピリン単独療法の有用性を比較する二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験。高リスクTIAまたは軽症急性虚血性脳卒中を発症後24時間以内の40歳以上の患者を対象に実施した。 併用群はクロピドグレル初回用量300mgを投与後、75mg/日を90日間、アスピリンは75mg/日を21日間投与した。単独群にはプラセボとアスピリン75mg/日を90日間投与した。両群とも、第1日目に非盲検下にアスピリン75~300mg(用量は担当医が決定)が投与された。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における90日以内の脳卒中(虚血性、出血性)の発症とした。脳卒中発症を32%抑制 2009年10月~2012年7月までに中国の114施設に5,170例が登録され、クロピドグレル+アスピリン併用療法群に2,584例、アスピリン単独療法群には2,586例が割り付けられた。 全体の年齢中央値は62歳、女性が33.8%で、イベントはTIAが27.9%、軽症脳卒中が72.1%、発症から割り付けまでの時間中央値は13時間であり、高血圧が65.7%、糖尿病が21.1%にみられ、喫煙経験者は43.0%であった。 90日以内の脳卒中発症率は併用群が8.2%(212/2,584例)と、単独群の11.7%(303/2,586例)に比べ有意に低下した(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.57~0.81、p<0.001)。致死的あるいは回復不能な脳卒中は、併用群の5.2%(135/2,584例)、単独群の6.8%(177/2,586例)にみられた(0.75、0.60~0.94、p=0.01)。 副次的評価項目のうち、脳卒中・心筋梗塞・心血管死の複合アウトカム(8.4 vs 11.9%、HR:0.69、95%CI:0.58~0.82、p<0.001)および虚血性脳卒中(7.9 vs 11.4%、0.67、0.56~0.81、p<0.001)の発症率が、併用群で有意に少なかった。心血管死(0.2 vs 0.2%、1.16、0.35~3.79、p=0.81)や全死因死亡(0.4 vs 0.4%、0.97、0.40~2.33、p=0.94)は両群で同等だった。 中等度~重度の出血の発症率は併用群が0.3%(7/2,584例)、単独群も0.3%(8/2,586例)であった(p=0.73)。出血性脳卒中は両群とも8例ずつに認められ、発症率はいずれも0.3%だった(p=0.98)。 著者は、「発症後24時間以内の高リスクTIA、軽症虚血性脳卒中患者において、クロピドグレル+アスピリン併用療法はアスピリン単独療法に比べ90日脳卒中リスクを32%抑制し、懸念された出血リスクの増加は認めなかった」と結論している。

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小児および思春期うつ病に対し三環系抗うつ薬の有用性は示されるか

 オーストラリア・トーマスウォーカー病院のPhilip Hazell氏らは、小児および思春期うつ病に対する三環系抗うつ薬の有効性を評価することを目的に、Cochrane reviewの最新版について報告を行った。その結果、小児うつ病の治療に三環系抗うつ薬は有用でなく、思春期患者に対してはその使用を支持するエビデンスはわずかであることを報告した。成人のうつ病に三環系抗うつ薬は有効であるが、小児および思春期患者を含む個別の研究においては疑問の余地が残されており、これら患者集団への処方は一般的ではない。研究グループは、小児および思春期のうつ病に対する三環系抗うつ薬の有効性を正確に評価することは、同世代のうつ病における他の薬剤治療の有効性と比較するうえでも有用であるとして本レビューを行った。Cochrane database of systematic reviewsオンライン版2013年6月18日の掲載報告。 小児および思春期うつ病に対する三環系抗うつ薬の効果をプラセボと比較検討するとともに、これら患者集団で三環系抗うつ薬に対する反応性に相違があるか否かを評価することを目的として、Cochrane reviewを行った。同様の検討は2000年に最初の報告がなされ、以降2002年、2006年、2010年と更新されており、本報告は最新版である。2013年4月12日までのCochrane Depression, Anxiety and Neurosis Review Group's Specialised Register(CCDANCTR)を基に検索を行った。CCDANCTRには、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(すべての年)、EMBASE(1974~)、MEDLINE(1950~)およびPsycINFO(1967~)などの文献データベース中の無作為化対照試験が含まれる。過去に発表されたレビュー文献および未発表の研究について言及している文献についてクロスチェックを行った。また、米国児童思春期精神医学学会(American Academy of Child and Adolescent Psychiatry)の学会誌において関連する抄録にもあたり、1978~1999年の同学会誌を手作業で検索した。そして、これらの中から6~18歳のうつ病患者を対象に、経口三環系抗うつ薬とプラセボを比較検討している無作為化対照試験を選択した。 主な結果は以下のとおり。・14試験の590例を解析対象とした。主要アウトカム(プラセボと比較した有効性)において全般的に相違はみられなかった(リスク比[RR]:1.07、95%信頼区間[CI]:0.91~1.26、9試験、454例)。・うつ症状のわずかな軽減が認められたが(標準平均差[SMD]:-0.32、95%CI:-0.59~-0.04、13試験、533例)、エビデンスの質は低かった。・サブグループ解析では、うつ症状の若干の軽減が思春期患者で認められ(SMD:-0.45、95%CI:-0.83~-0.007)、小児においてはごくわずかな変化にとどまった(SMD:0.15、95%CI:-0.34~0.64)。・三環系抗うつ薬群では、めまい(RR:2.76、95%CI:1.73~4.43、5試験、324例)、起立性低血圧(RR:4.86、95%CI:1.69~13.97、5試験、324例)、振戦(RR:5.43、95%CI:1.64~17.98、4試験、308例)、口渇(RR:3.35、95%CI:1.98~5.64、5試験、324例)がプラセボ群に比べ高頻度に認められたが、その他の有害事象の発現に差はみられなかった。・信頼区間の幅が広かったことから、有害事象に対するエビデンスの質は非常に低いと考えられた。・年齢、治療方法、三環系抗うつ薬の種類、アウトカム指標などに関して試験間で不均質性がみられた。・うつ症状の軽減に対し統計学的な不均質性が確認されたが、寛解または有効率については確認されなかった。・このように、統合データの解析結果については慎重に評価すべきである。・これら試験においては、バイアスのリスク、高い脱落率、評価手段、アウトカムの臨床的意義など、各試験で異なることの多いこれらについて情報が限られており、いずれの試験もバイアスのリスクが低いとは判断しなかった。・以上より、三環系抗うつ薬は小児うつ病の治療に有用ではなく、思春期患者に対してはその使用を支持するわずかなエビデンスがあると言える。関連医療ニュース 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき SSRI+非定型抗精神病薬の併用、抗うつ作用増強の可能性が示唆

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こどものみかた<下巻> ~シミュレーションで学ぶ見逃せない病気~

第4回「もう大丈夫!子どもの喘鳴」第5回「これですっきり!嘔吐のみかた」第6回「子どもの腹痛 便秘と重症疾患の見極め!」 小児科医でなくても、日常診療や夜間救急・輪番で「こどもを診る」機会のある一般内科医や看護師も多いのではないでしょうか。そんな時、慌てずに対応できていますか?本DVDは、診療所に緊急度の高い小児救急患者が訪れた場面のシミュレーションをふまえ、適切なトリアージ、処置、診断、家族への病状説明、小児専門医への搬送などを身に付ける、小児救急の実践的プログラムです。第4回「もう大丈夫!子どもの喘鳴」小児の小急性疾患のひとつ喘鳴を取り上げます。レクチャーにおける到達目標は3つです。1)小児の喘鳴の鑑別疾患を5つ挙げることができる 2)緊急性を判断し小児科に相談ができる 3)喘鳴の鑑別診断と初期治療を行うことができる番組では、症例動画を参考に喘鳴患者の見た目と呼吸音を理解し、ロールプレイをとおして病歴聴取法やバイタルサインの確認法など学習していきます。本シリーズ恒例のおさらいクイズで喘鳴診療の学習度をチェックしましょう。第5回「これですっきり!嘔吐のみかた」子どもの救急外来で「発熱」に次いで多いのが「嘔吐」です。高熱でお腹が張り嘔吐、咳が出てむせこみ嘔吐、泣きすぎて嘔吐…などコモンな症状に関わらずその原因は様々で、緊急度の高い疾患も潜むため、嘔吐の診断は的確さが求められます。とはいえ焦る必要はありません。ABC(見た目)の確認、バイタルサインの数値化、的確な問診・診察を行い、胃腸炎、腸重積、虫垂炎、髄膜炎、代謝性など嘔吐をきたす疾患を見極める術を学びます。そしておさらいクイズで学習度をチェック!第6回「子どもの腹痛 便秘と重症疾患の見極め!」小児救急の3大主訴のひとつ「腹痛」です。乳幼児は大人のように腹痛を訴えることができません。不機嫌、哺乳力低下、啼泣など子どもの様子から迅速かつ的確にトリアージしなくてはなりません。小児になると便秘による腹痛が大半です。便が出ていても便秘!?激痛が浣腸だけで収まる!といったことも珍しくありません。このように小児の腹痛は便秘や胃腸炎などが多いのですが、虫垂炎、腸重積、鼠径ヘルニア、精巣捻転、紫斑病などを念頭に鑑別する必要があります。ABCで見た目の異常を確認し、虫垂炎や腸重積などの特徴を念頭に便秘と重症疾患を見極める術を学びます。最後のおさらいクイズで学習度をチェックしましょう。

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アスピリン喘息の患者に対し解熱消炎薬を投与し、アナフィラキシーショックで死亡したケース

自己免疫疾患最終判決判例タイムズ 750号221-232頁、786号221-225頁概要気管支喘息の検査などで大学病院呼吸器内科に入院していた42歳女性。入院中に耳鼻科で鼻茸の手術を受け、術後の鼻部疼痛に対し解熱消炎薬であるジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタレン)2錠が投与された。ところが服用後まもなくアナフィラキシーショックを起こし、呼吸困難から意識障害が進行、10日後に死亡した。詳細な経過患者情報42歳女性経過1979年(39歳)春痰を伴う咳が出現し、時に呼吸困難を伴うようになった。12月10日A病院に1ヵ月入院し、喘息と診断された。1981年夏安静時呼吸困難、および喘鳴が出現し、歩行も困難な状況になることがあった。8月11日再びA病院に入院し、いったんは軽快したがまもなく入院前と同じ症状が出現。1982年2月起坐呼吸が出現し、夜間良眠が得られず。体動による喘鳴も増強。6月近医の紹介により、某大学病院呼吸器内科を受診し、アミノフィリン(同:ネオフィリン)などの投与を受けたが軽快せず。9月7日A病院耳鼻科を受診し、アレルギー性鼻炎を基盤とした重症の慢性副鼻腔炎があり、鼻茸を併発していたため手術が予定された(患者の都合によりキャンセル)。9月27日咽頭炎で発熱したためA病院耳鼻科を受診し、解熱鎮痛薬であるボルタレン®、およびペニシリン系抗菌薬バカンピシリン(同:バカシル、製造中止)の処方を受けた。帰宅後に両薬剤を服用してまもなく、呼吸困難、喘鳴を伴う激しいアナフィラキシー様症状を起こし、救急車でA病院内科に搬送された。入院時にはチアノーゼ、喘鳴を伴っていて、薬剤によるショックであると診断され、ステロイドホルモンなどの投与で症状は軽快した。担当医師は薬物アナフィラキシーと診断し、カルテに「ピリン、ペニシリン禁」と記載した。この時の発作以前には薬物による喘息発作誘発の既往なし。1983年2月3日A病院耳鼻科を再度受診して鼻茸の手術を希望。この時には症状および所見の軽快がみられたので、しばらくアレルギー性鼻炎の治療が行われ、かなり症状は改善した。5月10日気管支喘息の原因検索、およびコントロール目的で、某大学病院呼吸器内科に1ヵ月の予定で入院となった。5月24日不眠の原因が鼻閉によるものではないかと思われたので同院耳鼻科を受診。両側の鼻茸が確認され、右側は完全閉塞、左側にも2~3の鼻茸があり、かなりの閉塞状態であった。そこで鼻閉、およびそれに伴う呼吸困難の改善を目的とした鼻茸切除手術が予定された。5月25日教授回診にて、薬剤の既往症をチェックし、アスピリン喘息の可能性を検討するように指示あり。6月2日15:12~15:24耳鼻科にて両側鼻茸の切除手術施行。15:50病室へ戻る。術後に鼻部の疼痛を訴えた。17:00担当医師が学会で不在であったため、待機していた別の当番医によりボルタレン®2錠が処方された。17:30呼吸困難が出現。喘鳴、および低調性ラ音が聴取されたため起坐位とし、血管確保、およびネオフィリン®の点滴が開始された。17:37喘鳴の増強がみられたため、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム(同:サクシゾン)、ネオフィリン®の追加投与。17:40突然チアノーゼが出現し気道閉塞状態となる。ただちに気管内挿管を試みたが、筋緊張が強く挿管困難。17:43筋弛緩薬パンクロニウム(同:ミオブロック4mg)静注し再度気管内挿管を試みたが、十分な開口が得られず挿管中止。17:47別の医師に交代して気管内挿管完了。17:49心停止となっため心臓マッサージ開始。エピネフリン(同:ボスミン)心注施行。17:53再度心停止。再びボスミン®を心注したところ、洞調律が回復。血圧も維持されたが、意識は回復せず、まもなく脳死状態へ移行。6月12日07:03死亡確認となる。当事者の主張患者側(原告)の主張1.問診義務違反アスピリン喘息が疑わる状況であり、さらに約8ヵ月前にボルタレン®、バカシル®によるアナフィラキシーショックを起こした既往があったのに、担当医師は問診を改めてやっていないか、きわめて不十分な問い方しかしていない2.過失(履行不完全)問診により発作誘発歴が明らかにならなくても、鼻茸の手術前に解熱鎮痛薬を使用してよい患者かどうか確認するために、スルピリンやアスピリンの吸入誘発試験により確実にアスピリン喘息の診断をつけるべきであった。さらに、疼痛に対しいきなりボルタレン®2錠を使用したことは重大な過失である3.救命救急処置気管内挿管に2度失敗し、挿管完了までに11分もかかったのは重大な過失である病院側(被告)の主張1.問診義務違反アスピリン喘息を疑がって問診し、風邪薬などの解熱鎮痛薬の発作歴について尋ねたが、患者が明確に否定した。過去のアナフィラキシーショックについても、問題となった薬剤服用事実を失念しているか、告知すべき事実と観念していないか、それとも故意に不告知に及んだかのいずれかである2.過失(履行不完全)スルピリン吸入誘発試験によるアスピリン喘息確定診断の可能性、有意性はきわめて少ない。アナフィラキシーショックを予防する方法は、適切な問診による既往症の聴取につきるといって良いが、本件では問診により何ら薬物によるアナフィラキシー反応の回答が得られなかったので、アナフィラキシーショックの発生を予測予防することは不可能であった3.救命救急処置1回で気管内挿管ができなかったからといって、けっして救命救急処置が不適切であったことにはならない裁判所の判断第1審の判断問診義務違反患者が故意に薬剤服用による発作歴があることを秘匿するとは考えられないので、担当医師の質問の趣旨をよく理解できなかったか、あるいは以前の担当医師から受けた説明を思い出せなかったとしか考えられない。適切な質問をすれば、ボルタレン®およびバシカル®の服用によってショックを起こしたことを引き出せたはずであり、問診義務を尽くしたとは認めがたい。このような担当医師の問診義務違反により、アスピリン喘息の可能性を否定され、鼻茸の除去手術後にアスピリン喘息患者には禁忌とされるボルタレン®を処方され、死亡した。第2審の判断第1審の判断を翻し、入院時の問診で主治医が質問を工夫しても、鎮痛薬が禁忌であることを引き出すのは不可能であると判断。しかし、担当医師代行の当番医が、アスピリン喘息とは断定できないもののその疑いが残っていた患者に対してアスピリン喘息ではないと誤った判断を下し、いきなりボルタレン®2錠を投与したのは重大な過失である。両判決とも救命救急処置については判断せず。6,612万円の請求に対し、3,429万円の支払命令考察本件では第1審で、「ボルタレン®、バシカル®によるアナフィラキシーショックの既往歴を聞き出せなかったのは、問診の仕方が悪い」とされました。この患者さんは弁護士の奥さんであり、「患者は知的で聡明な女性であり、医師のいうことを正しく理解できたこと、担当医師との間には信頼関係が十分にあった」と判決文にまで書かれています。しかも、この事件が起きたのは大学病院であり、教授回診で「薬剤の既往症をチェックし、アスピリン喘息の可能性を検討するように」と具体的な指示までありましたので、おそらく担当医師はきちんと問診をしていたと思われます。にもかかわらず、過去にボルタレン®およびバシカル®でひどい目にあって入院までしたことを、なぜ患者が申告しなかったのか少々理解に苦しみますし、「既往歴を聞き出せなかったのは、問診の仕方が悪い」などという判決が下るのも、ひどく偏った判断ではないかと思います。もっとも、第2審ではきちんとその点を訂正し、「担当医師の問診に不適切な点があったとは認められない」とされました。当然といえば当然の結果なのですが、こうも司法の判断にぶれがあると、複雑な思いがします。結局、本件はアスピリン喘息が「心配される」患者に対し、安易にボルタレン®を使ったことが過失とされました。ボルタレン®やロキソプロフェンナトリウム(同:ロキソニン)といった非ステロイド抗炎症薬は、日常臨床で使用される頻度の高い薬剤だと思います。そして、今回のようなアナフィラキシーショックに遭遇することは滅多にないと思いますので、われわれ医師も感冒や頭痛の患者さんに対し気楽に処方してしまうのではないかと思います。過去に薬剤アレルギーがないことを確認し、そのことをカルテにきちんと記載しておけば問題にはなりにくいと思いますが、「喘息」の既往症がある患者さんの場合には要注意だと思います。アスピリン喘息の頻度は成人喘息の約10%といわれていますが、喘息患者の10人に1人は今回のような事態に発展する可能性があることを認識し、抗炎症薬はなるべく使用しないようにするか、処方するにしてもボルタレン®やロキソニン®のような酸性薬ではなく、塩基性非ステロイド抗炎症薬を検討しなければなりません。自己免疫疾患

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