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血管撮影後の脳梗塞で死亡したケース

脳・神経最終判決判例タイムズ 971号201-213頁概要右側頸部に5cm大の腫瘤がみつかった52歳女性。頸部CTや超音波検査では嚢胞性病変が疑われた。担当医は術前検査として腫瘍周囲の血管を調べる目的で頸部血管撮影を施行した。鎖骨下動脈、腕頭動脈につづいて右椎骨動脈撮影を行ったところ、直後に頭痛、吐き気が出現。ただちにカテーテルを抜去し検査を中断、頭部CTで脳内出血はないことを確認して脳梗塞に準じた治療を行った。ところが検査から約12時間後に心停止・呼吸停止となり、いったんは蘇生に成功したものの、重度の意識障害が発生、1ヵ月後に死亡となった。詳細な経過患者情報52歳女性経過1989年8月末右頸部の腫瘤に気付く。1989年9月7日某病院整形外科受診。右頸部の腫瘤に加えて、頸から肩にかけての緊張感、肩こり、手の爪の痛みあり。頸部X線写真は異常なし。9月18日頸部CTで右頸部に直径5cm前後の柔らかい腫瘤を確認。9月21日診察時に患者から「頸のできものが時々ひどく痛むので非常に不安だ。より詳しく調べてあれだったら手術してほしい」と申告を受ける。腫瘍マーカー(CEA、AFP)は陰性。10月5日頸部超音波検査にて5cm大の多房性、嚢腫性の腫瘤を確認。10月17日手術目的で入院。部長の整形外科医からは鑑別診断として、神経鞘腫、血管腫、類腱鞘腫、胎生期からの側頸嚢腫などを示唆され、脊髄造影、血管撮影などを計画。10月18日造影CTにて問題の腫瘤のCT値は10-20であり、内容物は水様で神経鞘腫である可能性は低く、無血管な嚢腫様のものであると考えた。10月19日脊髄造影にて、腫瘍の脊髄への影響はないことが確認された。10月23日血管撮影検査。15:00血管撮影室入室。15:15セルジンガー法による検査開始。造影剤としてイオパミドール(商品名:イオパミロン)370を使用。左鎖骨下動脈撮影(造影剤20mL)腕頭動脈撮影(造影剤10mL):問題の腫瘤が右総頸動脈および静脈を圧迫していたため、腫瘤が総頸動脈よりも深部にあることがわかり、椎骨動脈撮影を追加右椎骨動脈撮影(造影剤8mL:イオパミロン®370使用):カテーテル先端が椎骨動脈に入りにくく、2~3回造影剤をフラッシュしてカテーテルの位置を修正したうえで、先端を椎骨動脈分岐部から1~3cm挿入して造影16:00右椎骨動脈撮影直後、頭痛と吐き気が出現したため、ただちにカテーテルを抜去。16:10嘔吐あり。造影剤の副作用、もしくは脳浮腫を考えてメチルプレドニゾロン(同:ソル・メドロール)1,000mg、造影剤の排出目的でフロセミド(同:ラシックス)使用。全身状態が落ち着いたうえで頭部CTを施行したが、脳出血なし。17:00症状の原因として脳梗塞または脳虚血と考え、血液代用剤サヴィオゾール500mL、血栓溶解薬ウロキナーゼ(同:ウロキナーゼ)6万単位投与。その後も頭痛、吐き気、めまいや苦痛の訴えがあり、不穏状態が続いたためジアゼパム(同:セルシン)投与。10月24日02:00血圧、呼吸ともに安定し入眠。03:00急激に血圧上昇(収縮期圧200mmHg)。04:20突然心停止・呼吸停止。いったんは蘇生したが重度の意識障害が発生。11月21日死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.血管撮影の適応頸部の腫瘤で血管撮影の適応となるのは、血管原性腫瘤、動脈瘤、蛇行性の右鎖骨下動脈、甲状腺がん、頸動脈球腫瘍、脊髄腫瘤などであるのに、良性の嚢胞性リンパ管腫が疑われた本件では血管撮影の適応自体がなかった。もし血管撮影を行う必要があったとしても、脳血管撮影に相当する椎骨動脈撮影までする必要はなかった2.説明義務違反検査前には良性の腫瘍であることが疑われていたにもかかわらず、がんの疑いがあると述べたり、「安全な検査である」といった大雑把かつ不正確な説明しか行わなかった3.カテーテル操作上の過失担当医師のカテーテル操作が未熟かつ粗雑であったために、選択的椎骨動脈撮影の際に血管への刺激が強くなり、脳梗塞が発生した4.造影剤の誤り脳血管撮影ではイオパミロン®300を使用するよう推奨されているにもかかわらず、椎骨動脈撮影の際には使用してはならないイオパミロン®370を用いたため事故が発生した病院側(被告)の主張1.血管撮影の適応血管撮影前に問題の腫瘤が多房性リンパ管腫であると診断するのは困難であった。また、頸部の解剖学的特性から、腫瘍と神経、とくに腕神経叢、動静脈との関係を熟知するための血管撮影は、手術を安全かつ確実に行うために必要であった2.説明義務違反血管撮影の方法、危険性については十分に説明し、患者は「よろしくお願いします」と答えていたので、説明義務違反には該当しない3.カテーテル操作上の過失担当医師のカテーテル操作に不適切な点はない4.造影剤の誤り明確な造影効果を得るには濃度の高い造影剤を使用する必要があった。当時カテーテル先端は椎骨動脈に1cm程度しか入っていなかったので動脈内に注入した時点で造影剤は希釈されるので、たとえ高い浸透圧のイオパミロン®370を使用したとしても不適切ではない。しかも過去には、より濃度の高い造影剤アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン(同:ウログラフィン)を脳血管撮影に使用したとの報告もあるので、単にイオパミロン®370のヨード含有濃度や粘稠度の高さをもって副作用の危険性を判断することは妥当ではない裁判所の判断1. 血管撮影の適応今回の椎骨動脈撮影を含む血管撮影は、腫瘍の良悪性を鑑別するという点では意義はないが、腫瘍の三次元的な進展範囲を把握するためには有用であるため、血管撮影を施行すること自体はただちに不適切とはいえない。しかし、それまでに実施した鎖骨下動脈、腕頭動脈の撮影結果のみでも摘出手術をすることは可能であったので、椎骨動脈撮影の必要性は低く、手術や検査の必要性が再検討されないまま漫然と実施されたのは問題である。2. 説明義務違反「腫瘍が悪性であれば手術をしてほしい」という患者の希望に反し、腫瘍の性質についての判断を棚上げした状態で手術を決定し、患者は正しい事実認識に基づかないまま血管撮影の承諾をしているので、患者の自己決定権を侵害した説明義務違反である。3. カテーテル操作上の過失、造影剤の選択椎骨動脈へ何度もカテーテル挿入を試みると、その刺激により血管の攣縮、アテロームの飛散による血管の塞栓などを引き起こす可能性があるので、無理に椎骨動脈へカテーテルを進めるのは避けるべきであったのに、担当医師はカテーテル挿入に手間取り、2~3回フラッシュしたあとでカテーテル先端を挿入したのは過失である。4. 造影剤の誤りイオパミロン®300は、イオパミロン®370に比べて造影効果はやや低いものの、人体に対する刺激および中枢神経に対する影響(攣縮そのほかの副作用)が少ない薬剤であり、添付文書の「効能・効果欄」には「脳血管撮影についてはイオパミロン®300のみを使用するべきである」と記載されている。しかも、椎骨動脈撮影の際には、造影剤をイオパミロン®370から300へ交換することは技術的に可能であったので、イオパミロン®370を脳血管撮影である椎骨動脈撮影に使用したのは過失である。結局死亡原因は、椎骨動脈撮影時カテーテルの刺激、または造影剤による刺激が原因となって脳血管が血管攣縮(スパズム)を起こし、あるいは脳血管中に血栓が形成されたために、椎骨動脈から脳底動脈にいたる部分で脳梗塞を起こし、さらに脳出血、脳浮腫を経て、脳ヘルニア、血行障害のために2次的な血栓が形成され、脳軟化、髄膜炎、を合併してレスピレーター脳症を経て死亡した。原告側合計4,600万円の請求に対し、3,837万円の判決考察本件は、良性頸部腫瘤を摘出する際の術前検査として、血管撮影(椎骨動脈撮影)を行いましたが、不幸なことに合併症(脳梗塞)を併発して死亡されました。裁判では、(1)そもそも脳血管撮影まで行う必要があったのか(2)選択的椎骨動脈撮影を行う際の手技に問題はなかったのか(3)脳血管撮影に用いたイオパミロン®370は適切であったのかという3点が問題提起され、結果的にはいずれも「過失あり」と認定されました。今回の事案で血管撮影を担当されたのは整形外科医であり、どちらかというと脳血管撮影には慣れていなかった可能性がありますので、造影剤を脳血管撮影の時に推奨されている「より浸透圧や粘調度の低いタイプ」に変更しなかったのは仕方がなかったという気もします。そのため、病院側は「浸透圧の高い造影剤を用いても特段まずいということはない」ということを強調し、「椎骨動脈撮影時には分岐部から約1cmカテーテルを進めた状態であったので、造影剤が中枢方向へ逆流する可能性がある。また、造影されない血液が多少は流れ込んで造影剤が希釈される。文献的にも、高濃度のウログラフィン®を脳血管撮影に用いた報告がある」いう鑑定書を添えて懸命に抗弁しましたが、裁判官はすべて否認しました。その大きな根拠は、やはり何といっても「添付文書の効能・効果欄には脳血管撮影についてはイオパミロン®300のみを使用するべきであると記載されている」という事実に尽きると思います。ほかの多くの医療過誤事例でもみられるように、薬剤に起因する事故が医療過誤かどうかを判断する(唯一ともいってよい)物差しは、添付文書(効能書)に記載された薬剤の使用方法です。さらに付け加えると、もし適正な使用方法を行ったにもかかわらず事故が発生した場合には、わが国では「医薬品副作用被害救済基金法」という措置があります。しかし、この制度によって救済されるためには、「薬の使用法が適性であったこと」が条件とされますので、本件のように「医師の裁量」下で添付文書とは異なる投与方法を選択した場合には、「医薬品副作用被害救済基金法」は適用されず、医療過誤として提訴される可能性があります。本事案から学び取れるもう1つの重要なポイントは、(2)で指摘した「そもそも脳血管撮影まで行う必要があったのか」という点です。これについてはさまざまなご意見があろうかと思いますが、今回の頸部腫瘤はそれまでのCT、超音波検査、脊髄造影などで「良性嚢胞性腫瘤であるらしい」ことがわかっていましたので、(椎骨動脈撮影を含む)血管撮影は「絶対に必要な検査」とまではいかず、どちらかというと「摘出手術に際して参考になるだろう」という程度であったと思います。少なくとも造影CTで血管性病変は否定されましたので、手術に際し大出血を来すという心配はなかったはずです。となると、あえて血管撮影まで行わずに頸部腫瘤の摘出手術を行う先生もいらっしゃるのではないでしょうか。われわれ医師は研修医時代から、ある疾患の患者さんを担当すると、その疾患の「定義、病因、頻度、症状、検査、治療、予後」などについての情報収集を行います。その際の「検査」に関しては、医学書には代表的な検査方法とその特徴的所見が列挙されているに過ぎず、個々の検査がどのくらい必要であるのか、あえて施行しなくてもよい検査ではないのかというような点については、あまり議論されないような気がします。とくに研修医にとっては、「この患者さんにどのような検査が必要か」という判断の前に、「この患者さんにはどのような検査ができるか」という基準になりがちではないかと思います。もし米国であれば、医療費を支払う保険会社が疾患に応じて必要な検査だけを担保していたり、また、DRG-PPS(Diagnostic Related Groups-Prospective Payment System:診療行為別予見定額支払方式)の制度下では、検査をしない方が医療費の抑制につながるという面もあるため、「どちらかというと摘出手術に際して参考になるだろうという程度」の検査をあえて行うことは少ないのではないかと思います。ところがわが国の制度は医療費出来高払いであるため、本件のような「腫瘍性病変」に対して血管撮影を行っても、保険者から医療費の査定を受けることはまずないと思います。しかも、ややうがった見方になるかもしれませんが、一部の病院では入院患者に対しある程度の売上を上げるように指導され、その結果必ずしも必要とはいえない検査まで組み込まれる可能性があるような話を耳にします。このように考えると本件からはさまざまな問題点がみえてきますが、やはり原則としては、侵襲を伴う可能性のある検査は必要最小限にとどめるのが重要ではないかと思います。その際の判断基準としては、「自分もしくはその家族が患者の立場であったら、このような検査(または治療)を進んで受けるか」という点も参考になるのではないかと思います。脳・神経

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大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか?

 大うつ病性障害(MDD)の小児と思春期の若者に対し、SSRIの処方は、リスクよりもベネフィットが大きく上回ることが、スペイン・ナバラ大学のCesar Soutullo氏らによるレビューの結果、示された。Current Psychiatry Reports誌2013年7月15日号の掲載報告。 小児と思春期若者のMDDは公衆衛生上の問題であり、エビデンスベースの治療が必要とされる。Soutullo氏らは、小児・思春期MDDの抗うつ薬(とくにSSRI)治療の安全性と有効性について、PubMed検索により入手可能であった研究報告および短報サマリーについてレビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬の有効性について評価していた試験が、少なくとも19件存在した。15件は対プラセボ試験、4件は非SSRI(新しい世代の抗うつ薬)との比較試験であった。被験者は小児・思春期合わせて3,335例であった。・15試験についてSSRIの種類別にみると、フルオキセチン(国内未発売)5件、エスシタロプラム2件、セルトラリン2件、シタロプラム(国内未発売)2件、パロキセチン4件であった。・レビューの結果、小児・思春期MDDの治療において、フルオキセチンとエスシタロプラムは、いずれも安全であり、症状改善および寛解/反応率について有効であった。しかしながらその反応率は、非OCD不安障害(強迫性障害ではない不安障害)の治療に対するよりも低かった。・セルトラリンも、1試験(2試験からプールされた結果を解析した)において有効性が示された。・MDDの治療必要数(NNT)は10例であった。一方、自殺傾向の有害必要数(NNH)は112例であった。・研究方法についての主な限界は、プラセボ反応率が高率であること、試験場所が複数であること、患者がより若く、MDD重症度がより低いことであった。・治療は、再発防止のため、寛解後約1年は継続すべきであることが示された。・FDA承認のフルオキセチンとエスシタロプラムは、小児MDDの治療において安全性と有効性が認められた。セルトラリンも、有効性と安全性を支持するデータが一部において認められるが、FDAの承認は得られていなかった。・以上のことから著者は、「臨床医は、一部の患者においてごくわずかな自殺念慮の増加があることを知っておかなくてはならない。しかし、中等度~重度MDDにおけるSSRI使用のリスク対ベネフィットの比率は1対11.2と良好である」と結論している。関連医療ニュース 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 小児および思春期うつ病に対し三環系抗うつ薬の有用性は示されるか 抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮  担当者へのご意見箱はこちら

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医師自ら医賠責に加入 その背景にあるものは?

 病院賠償責任保険(以下、医賠責)は施設側が加入するのが通常であるが、個人で加入する医師が増えているという。ケアネットが12日に行ったケアネット・ドットコム会員の勤務医1,000人へのアンケート調査から、勤務医の7割以上が医賠責に個人で加入していることがわかった。その背景には、いつどんな場面で訴訟に巻き込まれるかわからず、病院のみならず担当医も連名で告訴されるなど、患者サイドから訴訟の対象とされる行為の多様化があるという。 アンケート結果概要は以下の通り。 医賠責の加入(保険料自己負担のもののみ)の有無について尋ねたところ、全体の73.4%が「加入している」と回答。年代別に見ると、60代以上で51.2%、30代以下80.0%と、若年層ほど加入率が高い結果となった。また所属施設別では20~99床の施設で54.4%、100~499床で71.3%、500床以上で76.2%、大学病院で91.3%と、施設規模に比例して高い加入率を示した。 「加入している」とした医師に理由を尋ねると、「(病院でなく)自分自身が訴訟の対象になるのが不安」が最も多く72.1%、次いで「いざとなったら勤務先が守ってくれるとは思えない」「複数施設で勤務しているため」がそれぞれ50.1%。「自分の専門科は訴訟リスクが高いため」との回答は加入医師の7.6%で、診療科に関係なく『患者側に不幸な転機をすべて“医療ミス”にしたがる風潮がある』『高度な医療をする医師がいなくなるのでは』といった意見が多く見られた。 「(現時点で)加入していない」とした医師の理由としては「病院が加入する保険で足りていると思うため」が最多となり77.1%であった。一方「侵襲的な診療行為をしていないため」は9.0%、「自分の専門科は訴訟リスクが高くないと思うため」は4.9%。医賠責非加入の医師に関しても“自身が訴訟に巻き込まれる可能性は低いから”との考えは少数派であり、回答者全体で見ると9割以上が“ある程度の訴訟リスクを想定”していることが明らかとなった。【詳しくはこちら】もはや他人事じゃない?医療訴訟―勤務医に聞く”こんな時代の医賠責”事情

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HER2陽性乳がんのトラスツズマブ至適投与期間は?/Lancet

 HER2陽性乳がんの術後補助療法において、HER2阻害薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)の投与期間を標準的な1年投与から2年投与に延長しても有効性は改善されないことが、欧州腫瘍学研究所(イタリア、ミラノ市)のAron Goldhirsch氏らが行ったHERA試験で示された。乳がんの約15~20%にHER2遺伝子の過剰発現や増幅がみられる。トラスツズマブは、これらHER2陽性早期乳がんに対する有効性が確立され、術後補助療法として広く用いられている。現在の標準的な投与期間は1年とされるが、至適な投与期間は確立されていない。Lancet誌オンライン版2013年7月18日号掲載の報告。投与期間延長の有効性を無作為化試験で評価 HERA試験は、HER2陽性乳がんに対するトラスツズマブの至適投与期間の決定を目的とする無作為化第III相試験。対象は、標準的な術前または術後補助化学療法、あるいはその両方を受けたHER2陽性の浸潤性早期乳がんであった。 患者は、標準的な1年投与を行う群、1年延長して2年間投与する群、または非投与の観察群のいずれかに無作為に割り付けられた。初回投与量は8mg/kgとし、その後は6mg/kgを3週ごとに静脈内投与した。 主要評価項目は無病生存期間(DFS)とし、フォローアップ期間中央値8年における1年投与群と2年投与群のランドマーク解析および1年投与群と観察群のintention-to-treat解析を行った。DFSに差なく、有害事象は長期投与で多い 2001年12月7日~2005年6月20日までに5,102例が登録され、1年投与群に1,703例、2年投与群に1,701例、観察群には1,698例が割り付けられた。 ランドマーク解析の対象となったのは3,105例(1年投与群1,552例、2年投与群1,553例)であった。このうち1,588例(51.1%)がホルモン受容体陽性で、1,471例(92.6%)が術後ホルモン療法を受けた。2,772例(89.3%)は術後補助化学療法のみを受け、術前補助化学療法は受けていなかった。 DFSイベントは1年投与群の367例、2年投与群の367例に認められ、両群間に差はなかった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.85~1.14、p=0.86)。 Grade 3~4の有害事象は1年投与群が16.3%、2年投与群は20.4%、左室駆出率低下はそれぞれ4.1%、7.2%であり、いずれも2年投与群で頻度が高かった。 初回解析結果の報告後に観察群の52%(884例)がトラスツズマブ投与群へクロスオーバーされたにもかかわらず、観察群に対する1年投与群のHRは、DFSが0.76(95%CI:0.67~0.86、p<0.0001)、全生存(OS)も0.76(0.65~0.88、p=0.0005)であり、1年投与群が有意に良好であった。 著者は、「1年よりも短い投与期間と1年投与との同等性はまだ確かめられていないことから、現時点でのトラスツズマブの投与期間は、従来の1年が事実上の標準である」と指摘している。

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肥満期間が長いと冠動脈心疾患リスクは増大する?/JAMA

 若年期から肥満がみられ肥満期間が長いほど、冠動脈石灰化(CAC)が促進され、中年期の冠動脈心疾患リスクの増大につながることが、米国・国立心肺血液研究所(NHLBI)のJared P Reis氏らの検討で示された。米国では過去30年間に肥満率が成人で2倍、青少年では3倍に上昇しており、若年の肥満者ほど生涯を通じて過剰な脂肪蓄積の累積量が多く、肥満期間が長くなるが、肥満の長期的な転帰に関する研究は少ないという。また、脂肪の蓄積量にかかわらず、全身肥満の期間が長期化するほど糖尿病罹患率や死亡率が上昇することが示されているが、肥満期間が動脈硬化の発症や進展に及ぼす影響については、これまで検討されていなかった。JAMA誌2013年7月17日号掲載の報告。大規模な長期の前向きコホート試験のデータを使用 研究グループは、全身および腹部肥満の期間と、冠動脈心疾患の予測因子であるCACの進行との関連をプロスペクティブに検討した。 米国の4都市(バーミンガム、シカゴ、ミネアポリス、オークランド)で行われた地域住民ベースの縦断的コホート試験(CARDIA試験)の参加者のうち、1985~1986年に登録された当時18~30歳の非肥満の黒人および白人を対象とした。全身肥満はBMI≧30、腹部肥満はウエスト周囲長(WC)が男性>102cm、女性>88cmと定義した。 CACは15、20、25年後にCT検査で評価し、肥満の評価は2、5、7、10、15、20、25年後に行った。CACの進行は、15年後(2000~2001年)から25年後(2010~2011年)の10年間におけるCACの増加またはAgatston法によるCACスコアの20点以上の上昇とした。肥満期間が延長するに従いCACの発症、進行が増加 解析の対象となった3,275例のうち、黒人が45.7%、女性は50.6%であった。フォローアップ期間中に40.4%が全身肥満、41.0%が腹部肥満をきたし、平均肥満期間はそれぞれ13.3年、12.2年、初回肥満発症年齢は35.4歳、37.7歳だった。 1,000人年当たりのCACの発症率は、全身肥満がない場合の11.0に比べ全身肥満が20年以上に及ぶ場合は16.0(調整ハザード比[HR]:1.84、95%信頼区間[CI]:1.25~2.70、p=0.001)、腹部肥満はそれがない場合の11.0に比し20年以上継続する場合は16.7(同:2.48、1.53~4.01、p<0.001)であり、いずれも有意に増加した。 15年後から25年後の10年間に、21.6%でCACの進行が認められた。CAC進行は、非全身肥満の20.2%から全身肥満20年以上では約25.2%へ、非腹部肥満の19.5%から腹部肥満20年以上では約27.7%へ上昇した。 肥満期間5年延長ごとのCAC発症の調整HRは全身肥満が1.02(95%CI:1.01~1.03)、腹部肥満は1.03(同:1.02~1.05)であり、同様にCAC進行の調整オッズ比(OR)は全身肥満が1.04(同:1.01~1.06)、腹部肥満が1.04(同:1.01~1.07)であった。これらの有意な関連性は、中等度の影響を及ぼす可能性のある因子(血圧、糖尿病、降圧薬、脂質低下薬など)でさらなる調整を行っても、わずかに減弱はするものの、ほぼ保持されていた。 著者は、「若年成人期の肥満を予防あるいは少なくとも遅延できれば、中年期の動脈硬化発症リスクが低減すると考えられる」と指摘している。

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低血糖の閾値を感知する機能が付帯したインスリンポンプの有用性(コメンテーター:吉岡 成人 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(119)より-

1型糖尿病患者を対象とした大規模臨床研究であるDCCT(Diabetes Control and Complications Trial)の発表以来、厳格な血糖管理によって糖尿病患者のQOLに大きな影響を与える細小血管障害の発症・進展が抑止しうることが確認されている。糖尿病のケアにおいて、内因性インスリン分泌能が枯渇した1型糖尿病患者であっても、出来うるかぎりの厳格な血糖管理をめざすことが必要である。しかし、厳格な血糖管理と低血糖、とくに、第三者の助けを借りなくてはいけないような重症低血糖は表裏一体の関係にあり、低血糖を起こさずに厳格な管理をめざすという「綱渡り」のような「名人芸」が求められている。 インスリンポンプのメーカーである米国メドトロニック社では、持続血糖測定器と同様の血糖値のセンサーを付帯し、あらかじめ設定した閾値以下の血糖値となるとインスリンの注入が自動的に停止されるポンプ(MiniMed 530Gシステム)を開発した。欧州ではすでに臨床応用され、米国でも食品医薬品局(FDA)の承認をめざしている。その有用性を検討したのが本試験であり、2013年6月の第73回米国糖尿病学会で報告され、6月23日にはNew England Journal of Medicine 誌にEpub ahead of print として掲載された。 夜間低血糖の既往がある247例の1型糖尿病(17歳から70歳、罹病期間は2年以上、HbA1c値5.8~10.0%)を対象とした、多施設共同無作為化対照オープンラベル試験であり、3ヵ月間の試験期間における有用性を検討した成績である。主要安全性アウトカムはHbA1c値の変化であり、主要有効性アウトカムは夜間低血糖の発生についての曲線下面積(AUC:Area Under the Curve, mg/dL×分, 低血糖の程度と持続した時間の積)で評価している。 その結果、両群でHbA1cに差はなかったものの、低血糖の閾値を感知してインスリンの注入を中断する機能が付帯したポンプでは、平均AUCが980±1,200mg/dL×分(対照群では1,658±1,995mg/dL×分) と有意に少なく、70mg/dL未満の低血糖の頻度についても、夜間であっても終日であっても、低血糖の閾値を感知するポンプで有意に少なかった。また、夜間においてインスリンポンプが停止した1,438例の、停止2時間後の平均血糖値は92.6±40.7mg/dLであり、糖尿病ケトアシドーシスを発症した例は1例もなかったと報告されている。 日本におけるfeasibilityについては今後の検討課題であるが、低血糖を感知してインスリン注入を自動停止する機能をもつインスリンポンプは、CSII(Continuous Subcutaneous Insulin Infusion)を行っている患者に新たなる福音をもたらす可能性があるものとして期待される。

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もはや他人事じゃない?医療訴訟―勤務医に聞く”こんな時代の医賠責”事情

触診・内診が“セクハラ“に?!えっ私にも説明責任があるの?患者でなく、交通事故被害者に巨額の保険金を支払った保険会社から訴えられる!…などなど、いつどんな場面で訴訟に巻き込まれるかわからない今の世の中。通常は病院が「病院賠償責任保険」に加入していますが、個人でも「医師賠償責任保険」(医賠責)に加入する勤務医も増えているとか。今回は勤務医の先生方に限定して、医賠責そして医療訴訟について思うことをお尋ねしました。他の先生は入っているのか?加入している先生&していない先生、その理由は?コメントはこちら結果概要勤務医の7割以上が医賠責に加入、若年世代・病床数が多い施設ほど加入率が高い医賠責の加入(保険料自己負担のもののみ)の有無について尋ねたところ、全体の73.4%が「加入している」と回答。年代別に見ると、60代以上で51.2%、30代以下80.0%と、若年層ほど加入率が高い結果となった。また所属施設別では20~99床の施設で54.4%、100~499床で71.3%、500床以上で76.2%、大学病院で91.3%と、施設規模に比例して高い加入率を示した。加入の理由、「自分自身が訴訟対象になるのが不安」「いざとなったら勤務先から守ってもらえない?」「加入している」とした医師に理由を尋ねると、「(病院でなく)自分自身が訴訟の対象になるのが不安」が最も多く72.1%、次いで「いざとなったら勤務先が守ってくれるとは思えない」「複数施設で勤務しているため」がそれぞれ50.1%。「自分の専門科は訴訟リスクが高いため」との回答は加入医師の7.6%で、診療科に関係なく『患者側に不幸な転機を全て“医療ミス”にしたがる風潮がある』『高度な医療をする医師がいなくなるのでは』といった意見が多く見られた。加入していない医師の約8割、「病院が加入する保険で足りているはず」「(現時点で)加入していない」とした医師の理由としては「病院が加入する保険で足りていると思うため」が最多となり77.1%であった。一方「侵襲的な診療行為をしていないため」は9.0%、「自分の専門科は訴訟リスクが高くないと思うため」は4.9%。医賠責非加入の医師に関しても“自身が訴訟に巻き込まれる可能性は低いから”との考えは少数派であり、回答者全体で見ると9割以上が“ある程度の訴訟リスクを想定”していることが明らかとなった。設問詳細「医師賠償責任保険」についてお尋ねします。現在、医療訴訟は、診療上の過失を問われるものが大半を占めています。しかし昨今は、触診・内診をセクハラと誤解するケース、チーム医療における説明責任が問われるケース、また患者サイドではなく交通事故被害者に保険金を支払った保険会社が原告となり病院の過失を訴えるケースなど、従来になかった例も出ているのが実状です。通常、病院は「病院賠償責任保険」に加入していますが、病院だけでなく担当医も共同被告として連名で告訴されるケースもあり、個人で「医師賠償責任保険」(医賠責)に加入する医師も増えています。そこで先生にお尋ねします。Q1.先生は、個人で医師賠償責任保険に加入していますか?(学会・同窓会などを経由した申込み含め、保険料をご自分で支払っているものに限ってお答え下さい)加入している以前加入していたが現在は加入していない加入していないQ2.(Q1で「加入している」とした医師のみ)加入している理由として当てはまるものをお選び下さい(複数回答可)いざとなったら勤務先が守ってくれるとは思えないため(病院でなく)自分自身が訴訟の対象になることが不安なため施設・医局で勧められたため学会で勧められたため自分の専門科は訴訟リスクが高いと思うためいつ医療ミスが発生してもおかしくない状況(疲労度・勤務時間など)にあるため自身の留意に関わらずトラブルに巻き込まれる場合もあるため複数の施設で勤務しているため(アルバイト含む)勤務施設の保険加入状況に不安があるためなんとなくその他Q3.(Q1で「加入していない」「以前加入していたが現在は加入していない」とした医師のみ)加入していない理由として当てはまるものをお選び下さい(複数回答可)病院が加入する保険で足りていると思うため常勤の施設以外では勤務していないため臨床の現場にいないため侵襲的な診療行為をしていないため自分の専門科は訴訟リスクが高くないと思うため費用がかかるため医賠責について考えたことがないその他Q4.コメントをお願いします。2013年7月12日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員の勤務医コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「内科医で、直接患者に侵襲を与える検査や治療も行わないので訴えられる可能性は非常に少ないが、この世の中では何で訴えられるか判らないので、安心料と思って払っています」(60代以上,膠原病・リウマチ科,大学病院)「医療行為を通常通り行っても、患者さんからの満足度が少なく訴えられそうになったことや、 高齢者の手術後の合併症と一般的に理解されるべきものも、医療ミスとして訴える風潮を感じるため」(40代,整形外科,一般病院[100~499床])「最近は理解に苦しむ訴訟や、避けられないことまで訴えられることが多い。また、裁判では裁判官の知識不足が目につき、医療の常識が通らないことも多い。国民には、『医療とは不確かな科学』という認識を持ってもらいたい」(40代,外科,一般病院[20~99床])「医療事故を見聞きするたびに、明日は我が身と思います」(40代,外科,一般病院[20~99床])「勤務先は全くあてにならない。オーナー、事務長とも保身のみ、いいかげん極まりない。開業までは自分の身は自分で守る必要があるため」(40代,精神科,一般病院[100~499床])「入っていない。精神科医で身体管理はあまりしないのと、治療関係を結ぶ前に常にリスクについて説明し、何かあっても訴えられないような信頼関係を構築し、訴えられないように注意しているため。外科や産婦人科などと比べはるかに訴訟リスクは少ないので、保険料が安ければ考えても良いとは思う」(50代,精神科,一般病院[100~499床])「日々慎重に診療していますが、不可抗力はあるでしょうし、コメディカルのミスも主治医に責任が来ると思うと保険は必須です。入らないと万が一の時に自分のすべてが失われるかもしれないし」(50代,内科,一般病院[20~99床])「病院が、個人もカバーするタイプの保険に入ってくれているので、それまでの保険はやめました」(50代,消化器内科,一般病院[100~499床])「勤務医の身なので、個人でというより病院でかけてもらうのが自然と思います。それなりのリスクと責任を負っていて、待遇良くもないので、それぐらいは当然病院でお願いします」(40代,泌尿器科,一般病院[500床以上])「個人での加入は高価」(50代,外科,一般病院[100~499床])「加入している一番の理由は、司法が‘正しい者’を護ってくれると思えないため、です。 この国はオカシイ!」(40代,糖尿病・代謝・内分泌内科,大学病院)「患者側に、訴訟のチャンスをうかがう姿勢が時々見られる」(40代,内科,一般病院[100~499床])「たとえ自分に非がなくても、巻き込まれることはあります。その上で、医療現場を知らない裁判官が理不尽な判決を出すことも多いです」(50代,麻酔科,一般病院[100~499床])「私の知る限り、加入していない医師は見当たらない。医療訴訟は原告側にも被告側にも得られるものはほとんどないし、素人の弁護士、裁判官による医療裁判ほど茶番はない。早く公的に医療事故調査委員会が設立、機能することを望む」(60代以上,消化器内科,一般病院[100~499床])「勤務医は結局あとで病院から請求されたりする。味方に撃たれる感じですな」(50代,消化器内科,一般病院[100~499床])「現在は訴訟リスクの低い診療内容を担っているが、以前行っていた訴訟リスクの高い診療内容に関して寝耳に水的な係争が生じる可能性があることを鑑み、向こう5年間は保険に加入しておこうと考えている」(40代,リハビリテーション科,一般病院[100~499床])「医師の解釈と患者さんやその家族の解釈が異なることはよくありますので、常に訴訟のリスクはあると思っています。」(30代以下,整形外科,一般病院[100~499床])「万が一のときに、精神的なストレスを抱えて仕事をすることを避けるため」(40代,脳神経外科,一般病院[500床以上])「入っていない。真剣に考えたら心配な面はあるが、何となく大丈夫だろうという根拠のない理由で自分をごまかしている気がする」(50代,内科,一般病院[100~499床])「直接責任からは遠い位置におりますので不要。ただ、何故こんなに訴訟対策をしなければいけないのかが疑問」(40代,リハビリテーション科,一般病院[100~499床])「病院が訴訟に負けた場合、病院が医師に損害賠償を請求してくる恐れがあります」(40代,眼科,一般病院[100~499床])「医者になった当初から現在まで加入しています。(今は公的病院なのでもしかしたら必要ないのかもしれませんが)やはり勤務先が守ってくれるとは限らないという意識が強いです。(以前勤務した病院で、私には全く責任のない、看護師と患者とのトラブルを危うく私の責任にされかかったことがあるため)」(50代,消化器内科,一般病院[500床以上])「小児科なのでリスクが高いと思って」(30代以下,小児科,一般病院[500床以上])「現在は加入していない。訴訟などを含め、医療におけるイザコザは、患者に対する接遇が原因と考えるから。接遇に気をつけていれば、理不尽な患者でない限り問題は生じず、理不尽な患者ならば当方が法的に負ける事はないと考えるから」(30代以下,総合診療科,大学病院)「正直、(医賠責について)あまり深く考えていなかった」(40代,精神科,一般病院[500床以上])「周囲では、常勤施設以外でも勤務されている先生は加入されていると思います」(40代,内科,一般病院[100~499床])「友人の外科医が訴訟になり、大変な苦労をしていたため」(30代以下,外科,一般病院[100~499床])「自分の身を守るため加入しています。そもそも、医療における事故・リスクはヒューマンエラーである以上、ゼロになりません。裁判という形以外での、事故が減るような医療事故をフォローする体制を望みたいものです」(50代,総合診療科,一般病院[100~499床])「上級医として、部下の監督責任なども生じてくることを感じます」(40代,形成外科,大学病院)「公的病院だと訴訟に関しては顧問弁護士がいて、交渉をしてくれるから加入していない」(60代以上,消化器内科,一般病院[100~499床])「医療訴訟の多くが医学の本質的でない部分で争っていることが多く,原告(患者)やその弁護士の「言葉遊び」や「揚げ足取り」に過ぎないことがほとんどである.こうした悪意あふれる法曹界の医療に対する態度へのせめてもの防御として,保険に加入している」(40代,血液内科,一般病院[500床以上])「個人では入っていないが、冷静に考えてみると、病院が加入している保険のみでは、万が一の時に対応できないと感じる」(40代,消化器内科,一般病院[100~499床])「アルバイトで当直をしています。何かあったら不安なので加入しています」(40代,脳神経外科,一般病院[100~499床])「現在の状況は訴訟が多すぎる。自分の子供には、臨床医は勧められない」(50代,腎臓内科,一般病院[100~499床])「主勤務先は国の機関であるが、外勤先がクリニックであるためリスクを考える必要があるため」(40代,リハビリテーション科,大学病院)「医療の不確実性を一般の方に理解していただきたい」(50代,消化器内科,大学病院)「当直などの緊急対応での医療事故が一番気になる。加えて、昨今、患者側に不幸な転機を全て医療ミスにしたがる風潮があり、医療訴訟は増加すると考えられる。訴訟になって支払いが生じた場合、病院で支払えない金額の場合もあると考え、個人的に医師賠償責任保険へ加入している」(40代,血液内科,一般病院[100~499床])「現施設では、訴訟リスクの高い侵襲的治療は極力避けている」(50代,消化器外科,一般病院[100~499床])「いつ訴訟をおこされてもおかしくない時代ですので、やはり医賠責は必要不可欠だろうと思います。私のところは医局員全員が入っています。年間5万円ぐらいですが、自動車保険のように、事故がなければ安くなるシステムがあれば、もっとありがたいです」(50代,膠原病・リウマチ科,一般病院[500床以上])「どんなことでも賠償していたら度な医療をする医師がいなくなることを、患者と司法関係者に理解してもらわなければならない」(40代,外科,一般病院[100~499床])「専門外を診ているとき。全てを専門家にお願いするのは(つまり全ての細かいトラブルの都度、紹介状を書くのは)非現実的なので、専門外でも緊急性がない軽症であれば自分で処方・処置する事もある。しかし、専門外で対応したために悪化する、診断を困難にするなどがあったらどうしよう…とはよく思う」(40代,内科,一般病院[100~499床])「精神科です。医療行為での訴訟リスクも当たり前ですが、それ以外でのリスクも大変心配しています」(40代,精神科,一般病院[100~499床])「最近は病院だけなく医師個人も訴えられている。精神科医は患者の自殺で訴訟の対象になりうる。保険料は痛いがやむを得ない」(40代,精神科,一般病院[100~499床])「多少トラブルに対しての不安があるが、臨床現場から徐々に遠ざかりつつあるので今後は必要ないかなと考えています。」(60代以上,内科,一般病院[100~499床])「都立病院勤務中は個人で加入していたが現在は病院が加入してくれている。 小児科は病気の進行が早かったり、親の思いがあったりして、保護者によっては訴訟の可能性は高くなると思う」(60代以上,小児科,一般病院[100~499床])「医療訴訟の大半は、医療と患者の間の人間的トラブル。技術的な問題以上の、人間関係構築が重要と思われる」(50代,消化器内科,一般病院[100~499床])「昔に比べると医療現場が医療従事者より患者“様”を重視する姿勢が強くなり、患者がクレームを言いやすくなったことも問題にあると思う」(40代,アレルギー科,一般病院[100~499床])「勤務先を全面的に信頼して、いざという時にはしごを外されたら対処できないため」(40代,消化器外科,一般病院[100~499床])「公立病院に勤務していますが、個人が訴訟の対象になりうるため。 脊椎外科が専門でありリスクが高い。」(40代,整形外科,一般病院[500床以上])「きちんと説明しトラブルなどに対し謙虚に対応していれば訴訟になることはほとんどないと思う。実際、訴訟リスクを感じたことはほとんどない」(40代,整形外科,一般病院[500床以上])「現役の小児外科医で、執刀もしているので新生児手術などかなりリスクの高い状態にあります。保険は必須であると感じています」(50代,その他,一般病院[500床以上])「『病院が責任をもつ』と言ってくれているため、本当にそれで十分なのか?と心配しながらも、惰性で加入しないまま時が流れています」(50代,循環器内科,一般病院[100~499床])「実際にどの程度の保証が得られるのか不明ですので、2つ加入しています」(50代,呼吸器内科,一般病院[500床以上])「学会関連の医師賠償責任保険に加入しています。これは、医局の先輩から勧められて入りました。年数千円ですが、安心感があります」(50代,放射線科,一般病院[100~499床])「勤務先と同じ保険会社に加入している。保険会社間の争いに巻き込まれないため」(50代,麻酔科,大学病院)「病院として保険に加入している事、侵襲的な手技を行っておらず賠償請求の可能性は低いと考えている事から、加入していない」(60代以上,循環器内科,一般病院[20~99床])「勤務先の病院より半ば強制的に加入させられましたが、現在は入っていてよかったと思います。これまで訴訟に巻き込まれたことはありませんが、今後いつそのようなことになるかはわかりませんから」(40代,呼吸器内科,大学病院)「自分の専門科(糖尿病内科)は訴訟リスクはそれほど高くないが、クレーマー的患者に遭遇することがありトラブルに巻き込まれることもありうるために加入。 アルバイト先で、慣れない小児科の患者を診察することもあり不安である」(50代,糖尿病・代謝・内分泌内科,一般病院[500床以上])「これまでに訴訟になったことはないが、なりそうになったことは2回ほどあります。入ってないと不安で臨床はできないと思います」(40代,循環器内科,一般病院[100~499床])「今まで毎年必ず加入していましたが、現在の病院から”この病院内での診療において発生したトラブルについては病院が守る”と言われているので現時点では加入していません。正直なところ心配もありますが、費用もバカにならないため」(40代,腎臓内科,一般病院[100~499床])「訴訟対象が病院だけでなく個人に向けられる傾向があること、また、病院も賠償金の一部を勤務医に支払うように求めてくる傾向は今後も続くと思われ、個人で保険に加入する意義は大きい」(30代以下,麻酔科,一般病院[100~499床])「産婦人科をしていると、分娩による脳性麻痺に遭遇する可能性がある。現在の医療訴訟は敗訴するケースが多く、賠償金も高額化しているため」(50代,産婦人科,一般病院[20~99床])「たまたまモンスターペイシェントに遭遇する可能性もあり、そういった相手となんらかのトラブルになることが怖いので加入している。現在は救急診療をしておらず専門分野のみの診察であり、訴訟のリスクは全体には低いと感じている」(30代以下,皮膚科,一般病院[20~99床])「加入しないでいる人の気がしれない」(30代以下,泌尿器科,一般病院[100~499床])「大学医局に所属しているが、研修医当時から個人でも加入するように勧められていたので、加入するのが当然と思っていた。今のところは個人を対象とした訴訟はないが、今後増えそうな危惧があり、補償額をワンランク上げた」(40代,内科,大学病院)「意図せずに起こる偶発症や、ある程度の確率で生じる合併症と思われる事例でも訴訟になり、医療者側が敗訴している例が少なからず認められる。このままでは特に手術を含め侵襲的な医療行為を行うことに躊躇してしまいかねず、患者の不利益になる。元々が健康体ではなく症状を有する患者に行った治療行為で、結果が悪ければ訴えるというのはいかがなものか」(30代以下,外科,一般病院[100~499床])「医学的に見たら仕方ないと思えることでも、患者さんが期待していたのと異なる転機をたどった場合に訴訟を起こされるリスクが高いと思う。医学的な知識がほとんどない人が外部からあれこれ口をだし、医療者側へ怒りを向けるように仕向けているように思えるケースもある」(30代以下,小児科,一般病院[100~499床])「勤務する地域により訴訟のリスクも変動するように感じている。現在の勤務地ではそのリスクが高いように思われ、周囲では加入者が多い」(30代以下,小児科,一般病院[500床以上])「20年前に医療訴訟で4年間かかって勝訴した経験あり、平素の診療に常に気をつけているつもりです。 診療に際しては治療のリスクを説明して家族の承諾の上で行っています」(60代以上,消化器内科,一般病院[20~99床])「よそでアルバイトをするなら保険が必要と思うようになって、アルバイトをやめました」(40代,産婦人科,一般病院[100~499床])「必要とは思いますが、非侵襲的な検査しかしておらず訴訟リスクが低い医師も、通常と同じ保険費用の負担が必要なのが納得いかず加入していません」(50代,循環器内科,一般病院[100~499床])「侵襲的検査や治療の説明を行う時は、常に訴訟のことを意識して、合併症に重きを置いて説明してしまう」(30代以下,循環器内科,一般病院[500床以上])「リスクは確かに高いが、いたずらに不安を煽って加入させる手もどうかと思う」(40代,精神科,大学病院)「医療訴訟が多い時代、医賠責に入らないでいる人の方が不思議。誰しもがヒヤリハットすることがある。訴訟になっても仕方のないミスも多いのが現状だが、不可避なものやリスクを背負ってでも行わなければならない治療に対してまで訴訟を起こされることは、判決如何にかかわらず、医療者や患者・その関係者と多くの人に遺恨を残すことになり望ましくない」(30代以下,脳神経外科,大学病院)「以前勤務していた病院でトラブルに巻き込まれて以来加入している。そのときは幸い大きな問題にはならなかったが、まだ加入していなかったため不安であった」(30代以下,呼吸器内科,一般病院[500床以上])「病院が加入している保険が今年から個人も対象となるため、個人で加入している保険をどうしようか考えています」(40代,呼吸器内科,一般病院[100~499床])

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統合失調症の陰性症状と関連する「努力コスト」の障害とは?

 統合失調症の陰性症状である動機づけ障害は、努力コスト(effort cost)の算出機能の障害と関連している可能性を、米国・メリーランド大学のJames M. Gold氏らが報告した。結果を踏まえて著者は「努力コストは、徐々に意欲を蝕む可能性があるようだ」と結論している。Biological Psychiatry誌2013年7月15日号の掲載報告。 意思決定の研究において、「努力コスト」が影響する反応では、選択的な反応が認められることが示されている。努力コストは、前帯状皮質やドパミンニューロンの皮質下ターゲットなどの分散処理神経回路を介して算出されていると考えられているという。研究グループは、統合失調症ではこれらシステムが障害されているというエビデンスに基づき、努力コストの算出機能が、統合失調症患者では障害されていること、およびその障害が陰性症状と関連しているかについて調べる、努力コストの意思決定評価を行った。統合失調症患者と人口統計学的に適合した対照被験者について、コンピュータタスクの試験を行った。連続30試験を提示し、20ボタンを押せば1ドルを、100ボタン以上を押せば3ドルから7ドルを得られる選択肢が与えられた。また、報酬レシートの確実性という試験で、確実(100%)または非確実(50%)な報酬が努力コストという発想に基づく意思決定に影響を与えたかどうかについても評価を行った。 主な結果は、以下のとおり。・患者群44例、対照群36例を対象とした。・患者群は対照群と比較し、報酬が100%確実であるという環境下において、高い努力コストの選択肢を選ぶことが少なかった。とくに支払対価が高い選択肢(6ドル、7ドルなど)で少なかった。・報酬が50%確実であるという環境下においても、同様の結果が得られた。・さらに、これらの努力コスト算出の障害は、陰性症状が高い患者において、最も大きかった。・ハロペリドールの投与量との関連はみられなかった。関連医療ニュース 統合失調症の陰性症状有病率、脳波や睡眠状態が関連か 陰性症状改善に!5-HT3拮抗薬トロピセトロンの効果は? 統合失調症では前頭葉の血流低下による認知障害が起きている:東京大学

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大豆プロテインの連日服用、前立腺がんの再発リスクを減少しない/JAMA

 前立腺がんの治療として根治的前立腺摘除を受け、再発リスクの高い人が、大豆蛋白質を主成分とするサプリメント(大豆プロテイン)を毎日服用しても、2年までの生化学的再発リスクを低下する効果はなかったことが示された。米国・イリノイ大学シカゴ校のMaarten C. Bosland氏らが、約180例について行った、プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、JAMA誌2013年7月10日号で発表した。これまでの観察研究から、大豆の摂取が、前立腺がんの発症または再発リスクを減らすことは示唆されていた。しかし、実際に前立腺がんをエンドポイントとした無作為化試験において、同効果は実証されていなかったという。術後4ヵ月から2年間、大豆プロテイン飲料を毎日摂取 研究グループは、1997年7月~2010年5月にかけて、全米7ヵ所の医療機関を通じ、前立腺がんによる根治的前立腺摘除を受け、再発リスクが高い177例の男性について、試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方には大豆蛋白質の粉末20gを飲料に混ぜたサプリメントを投与し(87例)、もう一方の群はプラセボとしてカゼインカルシウムのサプリメント飲料を投与した(90例)。服用は術後4ヵ月以内に始め、2年後まで続けられた。 主要評価項目は、術後2年以内のPSA値0.07ng/mL以上で規定した前立腺がんの生化学的再発率と、再発までの期間だった。効果がみられず試験は中断、前立腺がん再発率は全体の28% 本試験は、治療効果が上がらないために、途中で中止となった。 介入群81例、プラセボ群78例の結果を集計したところ、試験開始2年以内に前立腺がんの生化学的再発が認められたのは、全体の28.3%だった。 そのうち介入群は22例(27.2%)、プラセボ群は23例(29.5%)だった。再発に関するハザード比は、0.96(95%信頼区間:0.53~1.72、ログランク検定のp=0.89)と、両群間で有意差は示されなかった。 服用のアドヒアランスは90%超で、明らかな有害作用は認められなかった。

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尿酸値の低下は虚血性心疾患を予防?/BMJ

 尿酸値の低下による心血管疾患予防効果が示唆されている。観察試験では尿酸値上昇と虚血性心疾患や血圧との関連が示されているが、交絡要因やバイアス、逆因果性のため解釈は困難だという。英国・ウォーリック大学のTom M Palmer氏らは、メンデル無作為化(Mendelian randomization)解析を用いて、これら観察試験の知見を検証し、尿酸と虚血性心疾患の因果関係を示すエビデンスは得られなかったとの結果を、BMJ誌オンライン版2013年7月18日号で報告した。2つのコホート試験のデータを用いたメンデル無作為化分析 メンデル無作為化分析は、リスク因子と強く相関する遺伝子型を操作変数(instrumental variable)とすることで、未測定の交絡要因や逆因果性の調整が可能であり、リスク因子とアウトカムの因果効果の検証に有用とされる。SLC2A9遺伝子は、循環血中の尿酸値との強い関連が確認されており、操作変数に適すると考えられている。 研究グループは、血漿尿酸値と虚血性心疾患、血圧との関連の評価を目的にメンデル無作為化分析を行い、尿酸値に対する交絡因子としてのBMIの可能性について探索的検討を実施した。 メンデル無作為化分析では、尿酸の操作変数としてSLC2A9(rs7442295)を用い、BMIとの強い関連が示されているFTO(rs9939609)、MC4R(rs17782313)、TMEM18(rs6548238)をBMIの操作変数として使用した。デンマークの2つの大規模コホート試験(Copenhagen General Population Study:CGPS、Copenhagen City Heart Study:CCHS)からデータを収集した。BMIへの介入で尿酸関連疾患が改善する可能性が CGPSには5万8,072例(平均年齢57歳、男性45%、尿酸値0.30mmol/L、高尿酸血症12%、血圧143/84mmHg、BMI 26)が登録され、そのうち虚血性心疾患が4,890例(8%)含まれた。CCHSの登録数は1万602例(60歳、44%、0.31mmol/L、16%、140/86mmHg、25)、虚血性心疾患は2,282例(22%)だった。 観察的検討では、尿酸値の1SD上昇と虚血性心疾患の関連が認められ(調整ハザード比[HR]:1.21、95%信頼区間[CI]:1.18~1.24)、高尿酸血症と虚血性心疾患との関連も確認された(調整HR:1.41、95%CI:1.32~1.51)。尿酸値、高尿酸血症と収縮期/拡張期血圧との間にも同様の関連がみられた。 その一方、SLC2A9(rs7442295)変異の解析では、尿酸値と虚血性心疾患(CGPS=HR:0.99、95%CI:0.95~1.04、CCHS=0.96、0.89~1.03)、収縮期血圧(CGPS:0.17、-0.17~0.51、CCHS:0.12、-0.50~0.73)、拡張期血圧(CGPS:0.11、-0.07~0.29、CCHS:0.40、0.00~0.80)の間の因果関係を示す強力なエビデンスは得られなかった。 BMIの交絡因子としての可能性に関する遺伝子学的解析では、BMIが尿酸値に影響を及ぼすことが示された。BMIが4単位上昇するごとに尿酸値が0.03mmol/L(95%CI:0.02~0.04)増加し、高尿酸血症のリスクが7.5%(95%CI:3.9~11.1)増大した。 著者は、「観察的な知見に反し、尿酸値と虚血性心疾患、血圧の因果関係のエビデンスは得られなかったが、BMIと尿酸値、高尿酸血症との関連が示唆された」とまとめ、「BMIや肥満への介入により、高尿酸血症や尿路結石などの尿酸関連疾患が改善される可能性がある」と指摘している。

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有痛性の糖尿病性神経障害の医療費低減の鍵はプレガバリンと服薬アドヒアランスの向上

 有痛性糖尿病性末梢神経障害(pDPN)の治療において、高齢で服薬アドヒアランスが高く維持されている患者の場合で医療コストを比較した結果、プレガバリン(商品名:リリカ)の服用患者で総医療費が低いことが明らかになった。米国・ファイザー社のMargarita Udall氏らが、保険データベースのデータを用いて、デュロキセチン(同:サインバルタ)、ガバペンチン(同:ガバペン)、アミトリプチリン(同:トリプタノールほか)服用と比較解析した結果で、同患者で薬剤経済学的なメリットを得るには、プレガバリンと服薬アドヒアランスの向上が鍵となることが示唆されたとまとめている。Pain Practice誌7月号(オンライン版2012年11月14日)の掲載報告。 保険請求データベースMarketScanを用い、2008年にプレガバリン、デュロキセチン、ガバペンチンまたはアミトリプチリンが処方され、処方開始日から60日以内に1回以上pDPN診断の請求があり、処方開始日の前後各1年連続して保険に加入していた患者を特定し、傾向スコアがマッチした患者群を解析対象とした。 解析対象は、プレガバリンが処方された987例のうち、デュロキセチンとの比較が349例、同様にガバペンチンが987例、アミトリプチリンが276例であった。 平均治療日数カバー比率(PDC)が80%以上および65歳以上の患者について、処方開始日前後の医療費の変化を比較した。 主な結果は以下のとおり。・全体コホートでみた処方前後の総医療費の変化は、同程度であった。  プレガバリンvs. デュロキセチン:3,272ドルvs. 2,290ドル(p=0.5280)  プレガバリンvs. アミトリプチリン:3,687ドルvs. 5,498ドル(p=0.5863)  プレガバリンvs. ガバペンチン:3,869ドルvs. 4,106ドル(p=0.8303)・しかし、高PDCおよび高齢の患者集団における処方前後の総医療費の変化は、プレガバリンが他の群と比較していずれも有意に低かった(p<0.001)。  プレガバリンvs. デュロキセチン:3,573ドルvs. 8,288ドル  プレガバリンvs. アミトリプチリン:2,285ドルvs. 6,160ドル  プレガバリンvs. ガバペンチン:1,423ドルvs 3,167ドル~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説

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うつ病に対する重点的介入により高齢者の死亡率が低下する(コメンテーター:小山 恵子 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(118)より-

高齢者のうつ病は、高齢者の自殺と密接に関連するばかりでなく、さまざまな身体疾患や健康問題への影響が指摘されている。うつ病患者において、糖尿病や心血管疾患に対する治療やセルフケアへのアドヒアランスが不良になること、身体活動が低下することなどの要因が、死亡率を高めることにつながると考えられている。 本研究では、米国3ヵ所のプライマリ・ケア医療機関20施設を、通常治療群(10施設)と介入群(10施設)に無作為に割り付け、うつ病高齢患者に対する重点的ケアによる死亡リスク抑制効果について検証している。結果として、うつ病治療専門員(depression care manager; ソーシャルワーカー、看護師、心理士などからなる)が重点的に関わってプライマリ・ケア医の治療をサポートすることにより、うつ病患者の死亡率が低下することが示されている(フォローアップ期間中央値98ヵ月)。 わが国においても高い自殺率への危機意識から、かかりつけ医を対象としたうつ病対応力向上研修講座が行われたり、高齢者のうつを予防し、早期発見・早期治療に資することを目的としてうつ予防・支援マニュアルが作成されたりなど、さまざまな保健医療サービス資源を巻き込んだ取り組みが地域でなされるようになっている。こういった取り組みが、要介護・要支援高齢者の減少やひいては死亡率の減少につながっていくのかどうかについての検証はこれからだが、本論文はうつ病高齢者への重点的な取り組みを鼓舞する結果を示していると言えよう。 ただし、本研究では、一定の教育を受けたうつ病治療専門員が症状や薬の副作用、治療へのアドヒアランスなどについてモニタリングするだけではなく、標準的ガイドラインに沿って抑うつ症状の改善度に応じて抗うつ薬の増量や変更を検討するなど、かなり踏み込んだ役割を果たしていることに注意が必要である。医療体制が異なるわが国において、財源や人的資源とのバランスも考慮してどのような介入ができるのかは、今後の検討課題であろう。

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原発性骨髄線維症〔 primary myelofibrosis 〕

1 疾患概要■ 概念・定義原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis)は、造血幹細胞レベルで生じた遺伝子異常により骨髄で巨核球と顆粒球系細胞が増殖し、骨髄に広範な線維化を来す骨髄増殖性腫瘍である。本疾患は骨髄組織における異型性のある巨核球の過形成を伴う、広範かつ過剰な反応性の膠原線維の増生による造血巣の縮小と骨硬化、および脾腫を伴う著明な髄外造血を特徴とする。■ 疫学わが国における推定新規発症例は年間40~50例で、患者数は全国で約700人と推定される。本疾患は高齢者に多く、発症年齢中央値は65歳、男女比は1.96:1である。■ 病因原発性骨髄線維症の40~50%には、サイトカインのシグナル伝達に必須なチロシンキナーゼであるJAK2において、617番目のアミノ酸がバリンからフェニルアラニンへ置換(V617F)される遺伝子変異が生じ、JAK2の活性が恒常的に亢進する。その結果、巨核球が腫瘍性に増殖し、transforming growth factor-β(TGF-β)やosteoprotegerin(OPG)を過剰に産生・放出し、二次的な骨髄の線維化と骨硬化を生じるものと考えられる。JAK2以外には、c-MPL(トロンボポエチンのレセプター)に遺伝子変異を有する症例が5~8%存在し、ほかにはTET2、C-CBL、ASXL1、EZH2などの遺伝子変異が報告されている。■ 症状初発症状のうち最も多いのが動悸、息切れ、倦怠感などの貧血症状であり、40~60%に認められる。脾腫に伴う腹部膨満感、食欲不振、腹痛などの腹部症状を20~30%に認め、ときに臍下部まで達する巨脾を来すことがある。ほかには紫斑、歯肉出血などの出血傾向や、発熱、盗汗、体重減少が初発症状になりうる。一方、20~30%の症例は診断時に無症状であり、健康診断における血液検査値異常や脾腫などで発見される。■ 分類骨髄線維症は骨髄に広範な線維化を来す疾患の総称であり、骨髄増殖性腫瘍に分類される原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis)と、基礎疾患に続発する二次性骨髄線維症(secondary myelofibrosis)に分けられる。二次性骨髄線維症は、骨髄異形成症候群、真性多血症、原発性血小板血症などの血液疾患に続発することが多く、ほかには固形腫瘍、結核などの感染症、SLEや強皮症などの膠原病に続発することもある。本稿では原発性骨髄線維症を中心に述べる。■ 予後わが国での原発性骨髄線維症466例(1999~2009年)の後方視的な検討では、5年生存率38%、平均生存期間は3.4年である。しかし、原発性骨髄線維症の臨床経過は均一ではなく、症例間によるばらつきが大きい。わが国での主な死因は、感染症27%、出血6%、白血化15%である。2008年にInternational Working Group for Myelofibrosis Research and Treatmentから発表された予後不良因子と、後方視的に集積したわが国での70歳以下の症例を用いた特発性造血障害に関する調査研究班(谷本ほか)による解析を表1に示す1,2)。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)増殖した巨核球や単球から産生される種々のサイトカインが骨髄間質細胞に作用し、骨髄の線維化、血管新生および骨硬化、髄外造血による巨脾、無効造血、末梢血での涙滴状赤血球(tear drop erythrocyte)の出現、白赤芽球症(leukoerythroblastosis)などの特徴的な臨床症状を呈する。骨髄穿刺の際、骨髄液が吸引できないことが多く(dry tap)、このため骨髄生検が必須であり、HE染色にて膠原線維の増生を、あるいは鍍銀染色にて細網線維の増生を証明する。2008年のWHO診断基準を表2に示す。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)低リスク群は支持療法のみでも長期の生存が期待できるために、無症状であればwatchful waitingの方針が望ましい。中間群および高リスク群では、適切なドナーが存在する場合には、診断後早期の同種造血幹細胞移植を念頭に治療にあたる。■ 薬物療法症状を有する低リスク群、移植適応のない中間群および高リスク群では、貧血や脾腫の改善などの症状緩和を期待して薬物療法を選択する。蛋白同化ホルモンであるダナゾール(商品名: ボンゾール:600mg/日)や酢酸メテノロン(同: プリモボラン:0.25~0.5mg/kg/日)は、30~40%の症例で貧血改善に有効である。少量メルファラン(同:アルケラン、1日量2.5mg、週3回投与)、サリドマイド(同:サレド、50mg/日)+プレドニゾロン(0.5mg/kg/日)、レナリドミド(同:レブラミド、5~10mg/日、21日間投与、7日間休薬)+プレドニゾロン(15~30mg/日)は、貧血、血小板減少、脾腫の改善効果が報告されている(保険適用外)。■ 脾臓への放射線照射・脾臓摘出脾腫に伴う腹部症状の改善を目的に脾臓への放射線照射を行うと、93.9%に脾腫の縮小が認められ、その効果は平均6ヵ月(1~41ヵ月)持続した。主な副作用は血球減少であり、23例中10例(43.5%)に出現した。脾摘に関しては、脾腫による腹部症状の改善や貧血に対し効果が認められているが、周術期の死亡率が9%と高く、合併症も31%に生じていることから、適応は慎重に判断すべきである。■ 同種造血幹細胞移植原発性骨髄線維症は薬物療法による治癒は困難であり、同種造血幹細胞移植が唯一の治癒的治療法である。しかし、移植関連死亡率は27~43%と高く、それに伴い全生存率は30~40%前後にとどまっている。治療関連毒性がより少ない骨髄非破壊的幹細胞移植(ミニ移植)は、いまだ少数例の検討しかなされておらず長期予後も不明ではあるが、移植後1年の治療関連死亡は約20%、予測5年全生存率も67%であり、期待できる成績が得られている。現時点では、骨髄破壊的前治療と骨髄非破壊的前治療のどちらを選択すべきかの結論は出ておらず、今後の検討課題である。4 今後の展望今後、わが国での臨床試験を経て実地医療として期待される治療としては、pomalidomide、JAK2阻害薬などがある。新規のサリドマイド誘導体であるpomalidomideの第II相試験が行われており、pomalidomide(0.5mg/日)+プレドニゾロン投与により、22例中8例(36%)に貧血の改善がみられた。現在開発中のJAK2阻害薬であるINCB018424(Ruxolitinib)は、腫瘍クローンの著明な減少・消失は来さないものの、脾腫の改善、骨髄線維症に伴う自覚症状の改善がみられている。ただし、生命予後の改善効果の有無は、今後の検討課題である。わが国での臨床試験が待たれる薬剤として、ほかにはCEP-701(Lestautinib)、TG101209などがある。5 主たる診療科血液内科、あるいは血液・腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)特発性造血障害調査に関する調査研究班(診療の参照ガイドがダウンロードできる)1)Cervantes F, et al. Blood. 2009; 113: 2895-2901.2)Okamura T, et al. Int J Hematol. 2001; 73: 194-198.

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てんかん合併アルツハイマー病患者、より若年で認知機能が低下

 米国・カリフォルニア大学のKeith A.Vossel氏らは、健忘型軽度認知機能障害(aMCI)患者またはアルツハイマー病(AD)における、てんかん合併の影響について検討を行った。その結果、てんかんを有する場合はてんかんのない患者に比べ、より若年で認知機能低下が発症することを報告した。著者は結果を踏まえて、「そのような患者を注意深く選別して治療することで、臨床経過を改善できる可能性がある」と結論している。JAMA Neurology誌2013年7月号の掲載報告。 ADに関連するてんかん性活動は、患者に有害な影響を及ぼすことや、認識されないまま未治療の状況になりやすいこと、また、その他の疾患を起こす病態プロセスを反映する可能性があることなどから関心が高まっている。実地臨床で役立つAD関連発作とてんかん波形様活動の主な特徴を報告するとともに、ADとトランスジェニック動物モデルでみられる同様の現象について着目する。研究グループは、てんかんまたは無症候性てんかん波形様活動を認めるaMCI患者または早期AD患者の、臨床的特徴と治療アウトカムを明らかにすることを目的に、後ろ向き観察研究を行った。カリフォルニア大学記念エイジングセンターにおいて、2007~2012年にaMCI+てんかん(12例)、AD+てんかん(35例)、AD+無症候性てんかん波形様活動(7例)の計54例を対象とした。臨床人口動態データ、脳波(EEG)、抗てんかん薬の効果を評価した。 主な結果は以下のとおり。・てんかんを有するaMCI患者は、てんかんのないaMCI患者に比べ、6.8歳早く認知機能低下症状がみられた(64.3 vs 71.1歳、p=0.02)。・てんかんを有するAD患者は、てんかんのないAD患者に比べ、5.5歳早く認知機能低下がみられた(64.8 vs 70.3歳、p=0.001)。また、無症候性てんかん波形様活動を認めるAD患者も、認知機能低下が早く始まっていた(58.9歳)。・aMCIおよびAD患者における発作発現のタイミングは不均一で(p<0.001)、認知機能低下発現時期に近いところに集中していた。・てんかんの大半は複雑部分発作で(47%)、半分以上は非痙攣性てんかん重積状態であった(55%)。・発作間欠期および無症候性てんかん波形様活動の検出には、通常の脳波よりも連続または延長脳波モニタリングが、より有効であった。・てんかんは主に片側性で、側頭葉てんかんであった。・一般に処方されている抗てんかん薬のうち、ラモトリギンとレベチラセタムは、フェニトインに比べ治療アウトカムが良好であった。・以上のように、aMCIまたはADに関連するてんかんの主な臨床的特徴として、若年で認知機能低下がみられる、早期に発作を認める、片側性側頭葉てんかんが多い、一時的な認知機能障害、ラモトリギンとレベチラセタムは良好な発作コントロールと忍容性を示すことなどがわかった。関連医療ニュース アルツハイマー病、46.8%で不適切な薬剤が処方 難治性の部分発作を有する日本人てんかん患者へのLEV追加の有用性は? てんかん患者、脳内ネットワークの一端が明らかに

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90歳代高齢者の認知機能とADL、10年前世代と比べて有意に良好/Lancet

 90歳代高齢者の身体機能と認知機能について、出生年が10年離れている2つのコホート(1905年生まれと1915年生まれ)を比較した結果、後に生まれた年代コホート(1915年生まれ)のほうが日常生活動作(ADL)スコアも認知機能テストの結果も、有意に良好であったことが示された。南デンマーク大学のKaare Christensen氏らがデンマーク人を対象としたコホート研究の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2013年7月10日号掲載の報告より。1915年生まれと1905年生まれを比較 高所得国では、100歳代まで生存する人々の割合が急速に増大している。たとえば米国でも90歳代以上人口は、1980年は72万人だったが、2010年には150万人に倍増しているという。このような長寿の傾向の下、超高齢者が虚弱や身体的不自由な状態で生存しているという懸念が広がっているが、65~85歳コホートを対象とした研究で、若い年代ほど健康に老いていく可能性があることが示唆された。そこで研究グループは、90歳代で出生年が10年離れている2つのコホートを対象に、同様の傾向が認められるかを検討した。 第1コホートは1905年生まれの2,262例で93歳時に評価を、第2コホートは1915年生まれの1,584例で95歳時に評価が行われた。被験者の適格性について、居住タイプは問わなかった。 両コホートの生存についての評価は、同一のデザインとツールを用いて行われ、有効回答率は63%とほぼ同一だった。 認知機能評価はMMSE評価や5つの認知機能テストの複合結果により行われ、年齢変化による感度を調べた。身体機能評価は、ADLスコアと運動テスト(握力、いすからの立ち上がり、歩行速度)で評価した。1915年生まれの90歳代高齢者のほうが、MMSE最高スコアの獲得割合が10ポイント高い 93歳まで生存する可能性は、1915年生まれのほうが1905年生まれより28%高かった(6.50%対5.06%)。また、95歳まで生存する可能性も1915年生まれのほうが32%高かった(3.93%対2.98%)。 MMSE評価のスコアは、1915年生まれのほうが有意に良好だった[22.8(SD 5.6)対21.4(同6.0)、p<0.0001]。最高スコア(28~30ポイント)を獲得した被験者の割合は大幅に有意に高率だった(23%対13%、p<0.0001)。 同様に、認知機能テスト複合のスコアも有意に良好だった[0.49(SD 3.6)対0.01(同3.6)、p=0.0003]。 運動テストの結果には一貫した差異は認められなかった。しかし、1915年生まれのほうがADLスコアは有意に良好だった[2.0(SD 0.8)対1.8(同0.7)、p<0.0001]。

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MERSはSARSに比べ伝播力は弱く、パンデミックの可能性は低い/Lancet

新しいコロナウイルスである中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)と比べると、ヒトからヒトへの伝播力は弱く、パンデミックとなる可能性は低いことが報告された。フランス・パスツール研究所のRomulus Breban氏らが、世界保健機関(WHO)の報告書などを基に調べ明らかにしたもので、Lancet誌2013年7月5日号で発表した。MERS-CoV感染症は、臨床的にも疫学的にも、またウイルス学的にも、SARS-CoV感染症との類似点が多い。研究グループは、既報のSARS-CoVパンデミック報告を入手し、両者を比較し、MERS-CoV感染症の伝播力と流行の可能性を調べた。ベイジアン解析で基本再生産数を割り出す 研究グループは、2013年6月21日までに報告されたMERS-CoV感染症確定者のうち、55例について、WHOの報告書などを基に、ヒト-ヒト間の伝播力を調べた。 ベイジアン解析により、基本再生産数(R0)を求め、SARS-CoV感染症の場合と比較した。MERS-CoVクラスターサイズについて解釈を変えることで、悲観的・楽観的の2通りのシナリオ予測値を算出した。悲観的シナリオでもMERS-CoVのR0値は0.69 その結果、最も悲観的なシナリオの場合、MERS-CoVのR0予測値は0.69(95%信頼区間:0.50~0.92)だった。最も楽観的なシナリオでは、MERS-CoVのR0予測値は0.60(同:0.42~0.80)だった。 一方、SARS-CoVのR0値は0.80(同:0.54~1.13)で、それに比べ、MERS-CoVは悲観的シナリオの場合でも、パンデミックとなる可能性は低いことが示された。 解析の結果を受けて著者は、「今回の解析結果は、MERS-CoVはまだパンデミックとなる可能性は低いことを示すものでる。同時に、サーベイランスの強化、および感染源である動物宿主およびヒトへの感染ルートの探索を活発化することを推奨すべきことを確認するものとなった」と結論している。

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ニコルスキー現象と広範囲にわたる浸潤を認めたら

 フランス・アンリモンドール病院群パリ公立支援病院(APHP)のJ. Chanal氏らは、線状IgA水疱性皮膚症(LABD)について、薬剤誘発性と自然発症的なものとの比較を行った。その結果、薬剤誘発性LABDのほうがより重篤であり、病変部は中毒性表皮壊死症に似ていることなどを明らかにした。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年7月1日号の掲載報告。 LABDは、IgAの線状沈着で特徴づけられる自己免疫性表皮水疱症であり、まれな疾患である。直接蛍光抗体法(DIF)検査により、表皮真皮境界部に沿ってIgA線状沈着を認めることで診断は確定される。 LABDは通常、自発性か薬剤誘発性に分類されるが、研究グループは、両者の臨床的および組織学的特性について比較検討した。 1995年1月1日~2010年12月31日に単施設でLABDと診断された28例について、後ろ向きコホート研究を行った。薬剤誘発性か自発性かの評価を行い、臨床的および組織学的特性について盲検解析法にて比較した。 主な結果は以下のとおり。・28例のうち、自発性は16例、薬剤誘発性は12例であった。・自発性よりも薬剤誘発性LABDのほうが、ニコルスキー現象と広範囲にわたる浸潤の頻度が有意に高かった(それぞれp=0.003、p=0.03)。・紅斑プラーク、標的(様)病変、小水疱の配列(string of pearls)、部位、粘膜関連や組織学的特色については、両群間で格差はなかった。・以上から、薬剤誘発性LABDのほうが自然発症例よりも重篤であり、病変部は中毒性表皮壊死症に類似していた。著者は、「LABDは多様で時には生命に関わる可能性もある。したがって、ニコルスキー現象と広範な浸潤を認める全患者に対して、DIF検査を行うことが推奨される」とまとめている。

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ICUでのMRSA感染症を防ぐために有効な方法とは?(コメンテーター:吉田 敦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(117)より-

MRSAは、医療関連感染(Healthcare Associated Infections)の中で最も重要な微生物といっても過言ではなく、とくにICUでは問題になることが非常に多い。米国ではスクリーニングとして、ICU入室時に鼻腔のMRSAを調べ、接触感染予防策を徹底するよう義務づけている州がある。鼻腔にMRSAを保菌しているキャリアーからの伝播を防ぐ方法として、(1)抗菌薬であるムピロシンの鼻腔内塗布や、(2)消毒薬のクロルヘキシジンをしみ込ませた布での患者清拭を行って、除菌decolonizationできるかどうか検討され、それぞれ有効性が示されてきたが、誰にいつの時点で行えばよいかは不明であった。 そこで米国43病院、74箇所のICUを対象として、以下の3群に割りつけた。●グループ1:入室時に鼻腔のMRSAスクリーニングを行い、陽性者や過去にMRSA感染症の既往があった者は接触感染予防策を行う。●グループ2:グループ1と同様のスクリーニングを行うが、保菌・感染が判明した患者はムピロシンと2%クロルヘキシジンによる除菌と接触感染予防策を行う。●グループ3:スクリーニングは行わないで、入室者全例に除菌と接触感染予防策を行う。 この3群において、MRSA検出率と血流感染発生率を比較した。 全く対策を行わなかった時期と比べると、MRSA検出率はグループ1で8%、グループ2で25%、グループ3で36%減少し、血流感染率はグループ1で1%、グループ2で22%、グループ3で44%減少し、全例除菌の効果が最も著しかった。なお、血流感染では、MRSAによるものとその他の微生物によるものの両方が減少し、減少幅はグループ3で最も大きかった。 ムピロシンにより鼻腔の保菌が少なくなったこと、クロルヘキシジン清拭により皮膚の細菌数が少なくなったこと、さらに入室時から対策を開始できたことがグループ3での効果に結びついたと考えられる。対象を絞った対策よりも、ユニバーサルな除菌が効果的であったというのは、培養でとらえきれない(培養感度以下である)MRSAの存在や、多くの人が接し、患者・スタッフ間で伝播が生じやすいICUの環境を考えると理にかなっているといえよう。 日本ではかつてクロルヘキシジンによるアレルギー例が報告され、それ以来その使用に対して慎重であり、用いられている濃度も低い。今回の検討では、クロルヘキシジンの使用後に7例で局所の掻痒や発疹が出現したが、いずれも中止により改善したという。 本邦で通常行われている、対象を絞った方法では限りがあることも示されたわけであるが、今回の検討では、その後にMRSAの検出率が増加しなかったかも気になるところである。これまで、ユニバーサルなムピロシン使用は1年以内の短期的な抑制効果にとどまっていた例が報告されている。感染予防に対する職員個人の意識が持続できなければ、除菌を行っても早期に破綻してしまう。その意識をどのように維持させていくかが、最も重要かつ工夫しなければならない課題である。

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