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乳がんの術後補助ホルモン療法の早期中止は予後不良に関連~九州大学

 ホルモン受容体陽性乳がんの再発率と死亡率を減少させるには、ホルモン療法を完遂することが重要である。九州大学の武谷 憲二氏(現飯塚病院)らは、自院での術後補助ホルモン療法の完遂率と早期中止に関連する因子を検討したところ、5年間の術後補助ホルモン療法の完遂率は90%以上であり、早期中止した患者のほうが無再発生存率が低かったことが示された。Surgery Today誌オンライン版2013年10月19日号に掲載。 著者らは、術後補助ホルモン療法を受け、5年以上追跡調査された女性145例について、ホルモン療法の完遂率と早期中止に関連する因子を調べた。無再発生存率は完遂群と中止群で検討した。 主な結果は以下のとおり。・術後補助ホルモン療法の完遂率は90.6%であった。・5年以内に術後補助ホルモン療法を中止した主な理由は、関節痛などの副作用であった。・早期中止と有意に関連していた因子は年齢(40歳未満)であった。・無再発生存率は中止群で有意に低かった(p=0.025)。 これらの結果から、著者らは「術後補助ホルモン療法の完遂率を向上させるには、副作用の発生を軽減させるために支持療法を行うこと、妊娠を希望する若い女性に気を付けることが重要である」と結論している。

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ステント留置後の非心臓手術における危険な患者のタイプ/JAMA

 冠動脈ステント留置術後の非心臓手術における、主要有害心イベントのリスク因子は、非待機的手術入院や術前6ヵ月以内の心筋梗塞、改訂心リスク指標が2超などであることが明らかになった。非心臓手術の実施時期やステントの種類は、同イベント発生との関連については低かった。米国・アラバマ大学のMary T. Hawn氏らによる検討の結果、明らかになったもので、JAMA誌2013年10月9日号で発表された。現行のガイドラインでは、冠動脈ステント留置術後の非心臓手術の実施時期について、薬剤溶出性ステント(DES)は1年後、ベアメタルステント(BMS)は6週間後に延期することを推奨しているが、その根拠となるエビデンスは限られていた。30日MACE発生率を主要アウトカムに検討 研究グループは、冠動脈ステント留置後24ヵ月以内に手術を受けた4万1,989例の退役軍人(VA)および非VAの全米患者を対象とした後ろ向きコホート試験を行った。試験は、冠動脈ステント留置後に非心臓手術を受けた患者における有害心イベント発生のリスク因子を特定することを目的とした。 コホートについて、患者・術式・心リスク因子で補正した主要有害心イベント(MACE)の発生と手術のタイミング・ステントの種類との関連について、非線形一般化加法モデルにより分析し、また、コホート内ケースコントロール試験により、周術期抗血小板薬投与中止とMACEとの関連についても評価した。 主要アウトカムは、全死因死亡・心筋梗塞・心血行再建術の複合とした術後30日MACE発生率だった。 対象コホートのうち、冠動脈ステント留置術を受けていたのは12万4,844例(DES:47.6%、BMS:52.4%)だった。そのうち術後24ヵ月以内に非心臓手術を受けていたのは2万8,029例(22.5%、95%信頼区間[CI]:22.2~22.7%)で、うち術後30日MACE発生例は1,980例(4.7%、95%CI:4.5~4.9%)だった。非待機的手術入院でMACEリスクは4.8倍に ステント留置術を実施してから非心臓手術をするまでの期間が短いほど、MACE発生率は高く、6週間未満では11.6%、6週間~6ヵ月は6.4%、6~12ヵ月は4.2%、12~24ヵ月は3.5%だった(p<0.001)。 ステントの種類では、DESを使用した人の同発生率は4.3%で、BMSを使用した人の5.1%に比べて低率だった(p<0.001)。 補正後、MACE発生に最も関連していた因子は、非待機的手術入院(補正後オッズ比[AOR]:4.77)、術前6ヵ月以内の心筋梗塞(同:2.63)、改訂心リスク指標が2超(同:2.13)だった。 モデルに含まれた12変数のうち、「手術の実施時期」は関連性が5番目、「ステントの種類」は最下位と、いずれもMACEとの関連性が低かった。DESはMACEとの関連はみられず(AOR:0.91)、またDES、BMSともに、MACEリスクはステント留置術後6ヵ月以降は安定した。 284例の適合ペアによるコホート内ケースコントロール分析の結果、抗血小板薬の周術期投与中止とMACE発生との関連は認められなかった(OR:0.86)。 結果を踏まえて著者は、「DESとBMSのステントタイプおよび手術のタイミングについて強調している、現行のガイドラインについて再評価する必要がある」と提言している。

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急性期病院で高齢者専門医療を受けた患者の退院後の転帰/BMJ

 急性期病院で高齢者専門医療を受けた高齢者の、退院後のアウトカムが不良であることが明らかにされた。高齢者専門医療の提供は、退院後のアウトカムや二次的ケア、長期ケアに影響していないことが明らかになったという。英国・ノッティンガム大学のJudi Edmans氏らによる無作為化試験の結果、示された。BMJ誌オンライン版2013年10月8日号掲載の報告より。退院前評価と外来管理の介入を受ける群または通常ケア群に割り付け90日間追跡 多くの急性期病院で、急性期ケアユニットに緊急処置を要する患者を受け入れているが、それら急性期ケアユニットから退院する高齢者は一般に、アウトカムが不良であり(英国の1調査例:1年以内に再入院58%、死亡29%)、高度なリソース使用を要する(3ヵ月以内に76%が死亡・再入院・要介護度アップ等の有害アウトカムを1つ以上有する)。その状況に対して、高齢者専門医療の提供により、有害アウトカムの発生および関連する高度なリソース使用を抑制することが期待されていた。 研究グループは、その効果について調べる無作為化試験を行った。試験は2010年10月~2012年2月に、ノッティンガムとレスターの2つの病院で被験者を募り介入群と通常ケア(対照)群に無作為に割り付け行われた。被験者は、急性期ケアユニットに搬送されてから72時間以内に退院した、Seniors At Riskツールのスコアが2以上の70歳以上高齢者433例だった(介入群216例、対照群217例)。 介入群には、高齢者医療の専門医による急性期ケアユニットからの退院前評価と、さらに、プライマリ・ケアサービスのアドバイスや支援などの外来管理の提供を受けた。 主要アウトカムは、無作為化後90日間の、「自宅で過ごした期間」(自宅から入院した人)または「同一のケア施設で過ごした期間」(介護施設から入院した人)とした。副次アウトカムは、90日時点で評価した死亡率、より高度な要介護施設への入所率、要介護度、精神状態、QOL、医療・ソーシャルケアサービスの利用などであった。自宅で過ごせた期間、死亡、要介護施設移行などについて両群間に有意差なし 両群のベースライン時特性は同等だった。また試験からの脱落者の割合も同様だった(5%)。 90日間の追跡期間中、自宅(同一施設含む)で過ごした期間は介入群79.7日、対照群80.2日だった。介入による効果の平均差は-0.5日(95%信頼区間[CI]:-4.6~3.6日、p=0.31)だった。追跡期間中に自宅で過ごした人は全被験者の半分超だった(介入群52%、対照群57%)。 その他の副次アウトカムも両群間の有意差は認められなかった。死亡は全体で26例(介入群14例、対照群12例)、継続的介護を提供する施設に移行した人は9例(介入群5例、対照群4例)だった。 また、全被験者のうち226例(54%)が1回以上病院に受診をしていた。受診回数は介入群のほうが有意に増大していた(平均受診回数:対照群0.94回、介入群1.20回、比率比の95%CI:1.01~1.74、p=0.05)。

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中等度~重度乾癬患者はCKDに注意/BMJ

 米・ペンシルベニア大学のJoy Wan氏らは、英国でコホート内断面研究を行い、乾癬患者の慢性腎臓病(CKD)発症リスクについて調査した。その結果、乾癬の重症度が高いほど、CKD発症リスクが増加することが示された。 これまでの研究で乾癬は、糖尿病、メタボリックシンドローム、心血管疾患の発症と関連することが報告されていたが、腎臓疾患の発症との関連については検討が十分ではなかった。BMJ誌2013年10月15日掲載報告。 著者らは、英国の電子カルテデータベースを用いて、人口ベースのコホート研究を行った。被験者は18~90歳の乾癬患者14万3,883例で、そのうち軽度は13万6,529例、重度は7,354例であった。対照群は、乾癬罹患の記録がなく、年齢、治療、来院時期で適合させた68万9,702例であった。メインアウトカムは、中等度から高度(ステージ3~5)のCKD発症であった。 その後、コホート内断面研究であるiHOPE試験(Incident Health Outcomes and Psoriasis Events study)を実施した。被験者は25~64歳の乾癬患者8,731例で重症度別に登録され、対照群は乾癬罹患の記録がなく、年齢と治療で適合させた8万7,310例であった。メインアウトカムは、ベースラインでのCKDの有病率であった。 主な結果は以下のとおり。・コホート研究において、性別、年齢、心血管疾患、糖尿病、高血圧、脂質異常症、NSAIDsの使用、BMIで補正後、重度乾癬群ではCKD発症リスクが高かった(全患者のハザード比[HR] :1.05、95%信頼区間[CI] :1.02~1.07、軽度乾癬群のHR:0.99、95%CI:0.97~1.02、重度乾癬群のHR:1.93、95%CI:1.79~2.08)。・重度乾癬群を年齢別にみたところ、若年であるほどCKD発症リスクが増加していた(30歳のHR:3.82、95%CI:3.15~4.64、60歳のHR:2.00、95%CI:1.86~2.17)。・iHOPE試験において、性別、年齢、心血管疾患、糖尿病、高血圧、脂質異常症、NSAIDsの使用、BMI、観察期間で補正後、CKDの発症リスクは乾癬の重症度が高いほど増加していた(軽度乾癬群のオッズ比[OR]:0.89、95%CI:0.72~1.10、中等度乾癬群のOR:1.36、95%CI:1.06~1.74、重度乾癬群のOR:1.58、95%CI:1.07~2.34)。

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筋骨格系の疼痛は障害年金支給の予測因子

 筋骨格系の疼痛は、労働能力の損失による障害年金支給に影響を及ぼしていることが知られている。フィンランド・東フィンランド大学のAnnina Ropponen氏らは、23年間にわたる前向きコホート研究から、労働能力を障害している筋骨格系の疼痛は、変形性関節症や腰痛に起因した障害年金支給の早期かつ直接的な予測因子であることを明らかにした。Pain誌2013年10月号(オンライン版2013年5月24日号)の掲載報告。 研究グループは、筋骨格系疾患に関連した疼痛が障害年金支給の予測因子となりうるか、また、どのような因子が疼痛と障害年金支給との関連に影響を及ぼすかについて調査した。 対象は1958年以前に生まれた双生児1万1,224人(うち完全なペアは4,399組)で、1975年および1981年に実施された労働能力と筋骨格系(腰部、頸部、肩)疼痛に関するアンケート調査のデータ、ならびに2004年までの年金記録のデータを解析した。 主な結果は以下のとおり。・23年の追跡期間中、筋骨格障害で508件、変形性関節症で166件、腰痛の診断で162件の障害年金支給が行われた。・6年の間を空けた2回の調査とも、労働能力が障害されるような1ヵ所もしくは複数ヵ所の疼痛があると、筋骨格障害、変形性関節症または腰痛による障害年金支給のリスクが増大することが認められた。・疼痛と障害年金支給との関連は、家族性の交絡因子(遺伝的特徴あるいは家族の背景因子など)や、その他の影響があると思われる背景因子(頭痛、片頭痛、鎮痛薬・睡眠薬または精神安定薬の使用、生活満足度、教育と結婚の状態)とは独立していた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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統合失調症患者とのコミュニケーションは十分に行われているのか

 米国・カリフォルニア大学のSteven Potkin氏らは、受診時の患者との会話の内容を基に、長時間作用型注射製剤(LAI)抗精神病薬に関連する情報を分析した。その結果、多くの精神科医が患者に対してLAIを提示しておらず、大半の患者と介護者が抗精神病薬治療の決定に関わっていないことを報告した。BMC Psychiatry誌オンライン版2013年10月16日号の掲載報告。 本研究は、LAIを用いた抗精神病薬療法に対する処方者、患者および介護者の認識を把握し、それらによるLAI使用への影響を検討することであった。クリニックにおいてこれらの認識を把握しておくことは、統合失調症患者の治療目標達成につながる可能性がある。2011年8月~2012年2月の受診記録にあった、処方者と患者の会話69件(地域のメンタルヘルスセンター[CMHC]での精神科医との会話60件、ナースプラクティショナーとの会話9件)の非ランダムサンプルから情報を収集し、その内容を書き起こして解析した。事前に既定した11のCMHCでのトピックに従ってディスカッションの内容を分類した。CMHC 4施設では、CMHC受診前に家庭訪問(患者15例)を行い、注射を受けている患者およびスタッフとの交流の状況を観察した。LAIに関するディスカッション、処方または使用についてさらに情報を収集するため、精神科医、患者および介護者に電話でさらに深く聞き取り調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・精神科医と患者の会話60件中40件(67%)で、患者または介護者への情報提供がないまま抗精神病薬治療の決定が行われていた。・患者または介護者は、経口抗精神病薬(60件中5件[8%])に比べてLAI治療(60件中15件[25%])のほうが、その治療決定により大きく関わっていた。・経口抗精神病薬服用中の患者22例中11例(50%)では、精神科医とLAIに関するディスカッションが行われていなかった。・LAIを提示された際、より多くのLAI未治療患者が、好ましい(19例中3例[16%])あるいは好ましくない(19例中7例[37%])というよりは、むしろ中立的な反応(19例中9例[47%])を示した。・LAIについてディスカッションする際に処方者は、患者の注射に対するよくあるネガティブな印象ゆえの抵抗感の一方で、潜在的な治療関係への影響と副作用を最も懸念していることが明らかになった。・精神科医は、初期の抵抗に対処することで、LAIに対する患者の反対を乗り越えることができる。・LAI未治療患者の半数以上(19例中11例[58%])が、来院後にLAI治療の開始に同意していた。・患者評価では、経口薬と比べたLAIのベネフィットとして、症状の速やかな改善と全体的な有効性を挙げていた。・本試験から、多くの精神科医がLAIを提示しておらず、大半の患者と介護者が抗精神病薬治療の決定に関わっていないことが明らかとなった。 ・統合失調症患者に対する、より個別化したアプローチとして、患者が積極的に関わる機会を増やすこと、抵抗感への対応、剤形選択のアドバイス、そしてLAIに関するより適切な情報提供があることが示された。関連医療ニュース 非定型抗精神病薬のLAIを臨床使用するためには 精神疾患患者は、何を知りたがっているのか 統合失調症へのアリピプラゾール持効性注射剤、経口剤との差は?

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運動器慢性痛の最適な治療を考える

運動器慢性痛の頻度は高い運動器とは、身体活動を担う筋・骨格・神経系の総称で、筋肉、腱、靭帯、骨、関節、神経(運動・感覚)、脈管系などの身体運動に関わるいろいろな組織・器官により構成される機能的連合のことである1)。この運動器に生じる慢性的な痛みが今、問題となっている。わが国においてもこの運動器の慢性痛は多く、その有症率は全国平均で15.4%との報告がある。これは、耐えられない痛みを10とするVASで5以上の疼痛が6ヵ月以上続く人の比率であるが、年齢分布をみると30代~50代で高く、部位別には腰、肩、頸に多いとことがわかってきている2)。画像を拡大するわれわれが同じ基準で愛知県尾張旭市市民に行ったアンケート調査(n=2,685)では、運動器慢性痛の有症率は17.2%であった。痛みの部位別にみると腰痛症(23.2%)、肩こり(17.5%)、変形性膝関節症(13.2%)、五十肩・肩関節周囲炎(13.2%)の順となっている。この調査では同時に生活環境も調査しており、一人暮らしの人に慢性疼痛の発生率が高く、それらの方では不安尺度の数値も高かった。画像を拡大するまた、先のNakamuraらの調査では治療傾向は、痛みの治療のために病院や診療所を受診した人が19%、鍼灸マッサージなど民間療法を受けた人が20%、両方にかかった人が3%、残りの55%は治療を受けていなかったことが明らかになった。さらに、治療を受けた人の満足度は低く、治療機関を変更した人が49%いた。変更の理由として、「前の治療機関に満足できなかったから」と40%が回答している。運動器手術の目的と患者さんの理解のずれが生み出すもの運動器慢性痛では治療に不満を感じている人が比較的多いことは、FBSS(failed back surgery syndrome)調査でも示されている。これまでに腰椎の手術を受けたことがある2,035人に行ったインターネット調査では、手術前に腰に痛みがあった人が94%いた。これらについて「手術によって腰の痛みはどのように変わりましたか」という質問では、「手術後に消失した(25%)」「手術後に軽くなった(64%)」「手術後も変わらなかった(9%)」「手術後に強くなった(2%)」という結果となった。見方を変えると、手術を受けても痛みが残っている人が75%もいることになる。現在の治療技術の中で、痛みを完全になくすことは困難ではあるが、ここで問題視したいのは、腰椎手術の目的が患者さんに十分理解されていないという点である。腰椎手術の目的は第一義的には腰痛の改善ではなく、脚や膀胱、直腸などの腰部の神経系の機能障害を改善し、通常の生活が営めるようにすることである。しかし、多くの患者さんが手術は腰痛の改善を得られると考えている。医師サイドが考える手術目的と、患者さんの理解にずれがあるのだ。手術で少なからず腰の筋肉に侵襲を与えれば、その結果痛みも出てくる可能性はある。手術を受けても腰はまだ痛いかもしれないが、以前は歩けなかったのが手術により歩けるようになっている。このことを術前に外科医が十分に説明し、患者さんにしっかりと理解してもらうべきである。運動器慢性痛診療の原則は動かすこと運動器慢性痛の患者さんの約半数は「動かすと痛い」と訴える。安静にして動かさなければ痛まないわけだが、運動器は動かさないと関節拘縮や筋固縮が起こる。関節滑膜の癒着、軟骨圧迫壊死、線維脂肪織の増生、筋線維のタイプの変化といった病理学的変化は不動化開始から10日程度で起こり始めることもわかっている。そのような状態になってしまうと、動かすこと自体に労力がかかり、また使わず廃用状態になった筋などの運動器を動かすことで痛みはさらに強くなり、ついには本当に動かなくなってしまう。痛いからといって動かさないでいると、このような悪循環が生じてさまざまな弊害が起ることを、患者さんにしっかり伝えるべきである。運動器は痛くても動かさなくてはいけない。これは大原則である。運動器慢性痛の治療ゴールは、「動かしても痛くない」状態にすることが理想ではある。しかし急性期疼痛と異なり、ただちに痛みを取ることを治療のゴールにすべきではない。慢性疼痛の痛みは脳に記憶されるので、さまざまな刺激や環境の変化が脳での痛み経験を引き起こしてしまう。不安、抑うつ、ストレスなどが重なることで痛みは長引きやすい。慢性痛患者さんで最も問題となるのは、痛みを治すことだけが人生の目標になっている方である。仕事や趣味はなく、頭の中は痛みだけに支配されてしまう。実現可能な具体的目標があり、痛みがあっても何とかできるようにしていくことこそ価値が高いのである。痛くてもゴルフに行ってみた。痛みはあったけれど楽しかったからまた行こうと思う。かつて、米国メイヨークリニック医科大学精神科教授であった丸田 俊彦先生は「痛みのある“人”と痛みのある“患者”は違う」とおっしゃっておられた。「痛みがあっても生活できる、趣味を楽しめる」ということを治療のゴールにすべきであろう。薬剤で痛みを抑えることができても、ベッドで寝ていることしかできないのでは治療ゴールを達成したとはいえない。痛みの訴えがあるからと薬剤だけによる安易な解決を目指さず、その患者さんに合った目標を設定して治療を行うことが重要だといえる。参考文献1)運動器の10年ホームページ(http://www.bjd-jp.org/)より2)Nakamura M, et al. J Orthop Sci. 2011; 16: 424-432.

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肥満者は反復性片頭痛を起こしやすい

 反復性片頭痛は肥満者で起こりやすく、この傾向はとくに50歳未満の若年者、白人、女性で強い関連性があることが、米国・ジョンズ・ホプキンス大学B Lee Peterlin 氏らの調査によって示された。Neurology誌2013年10月8日号掲載の報告。 調査対象は、国立併存疾患調査レプリケーション(NCS-R)において問診が行われた白人と黒人を含む3,862人の成人。目的は、反復性片頭痛と肥満の関連と、年齢・人種・性別の影響について調べることであった。反復性片頭痛については、国際頭痛分類に基づいて診断された。対象をBMI値によって、低体重(<18.5kg/m2)、標準体重(18.5~24.9kg/m2)、過体重(25~29.9kg/m2)、肥満(≧30kg/m2)の4群に分類した。反復性片頭痛の補正オッズ比と95%信頼区間の算出には、ロジスティック回帰分析を用いた。患者背景を年齢(50歳未満/50歳以上)、人種(白人/黒人)、性別(男/女)に階層化した。 主な結果は以下のとおり。・合計188名が反復性片頭痛の診断基準を満たしており、反復性片頭痛のオッズ比は、標準体重群と比較し肥満群で81%高かった(オッズ比:1.81、95%信頼区間: 1.27~2.57、p=0.001)。・標準体重、過体重、肥満群においては、特に体重が増加しつつある患者で反復性片頭痛が起こりやすいことがわかった(p=0.001)。・トレンド検定の結果、標準体重群と比較し肥満群では以下の患者背景で有意に反復性片頭痛のオッズ比が上昇することがわかった。1) 年齢:50歳未満(オッズ比:1.86、95%信頼区間:1.20~2.89、p=0.008)2) 人種:白人(オッズ比:2.06、95%信頼区間:1.41~3.01、p≦0.001)3) 性別:女性(オッズ比:1.95、95%信頼区間:1.38~2.76、p≦0.001 )

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メトグルコ錠の小児2型糖尿病への用法・用量追加を申請

 大日本住友製薬は24日、経口血糖降下剤「メトグルコ錠250mg/500mg」(一般名:メトホルミン塩酸塩)について、2型糖尿病における小児の用法・用量を追加する一部変更承認申請を同日付で行ったと発表した。 メトグルコは、肝臓における糖新生抑制作用、末梢組織における糖取り込み促進作用、小腸における糖吸収抑制作用等を介して血糖降下作用を示すビグアナイド系経口血糖降下剤である。メトホルミン製剤は2型糖尿病の第一選択薬として幅広く用いられている。 2型糖尿病におけるメトグルコの小児の用法・用量の追加については、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討結果を受けて、2010年に厚生労働省より同社に対して開発要請がなされた。同社はこの要請を受け、メトグルコの小児の用法・用量を追加するための臨床試験を実施し、今回の申請に至ったとのこと。詳細はプレスリリースへ(PDF)

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うつ病治療、行動療法の意義はどの程度か:京都大学

 うつ病に対する行動療法とその他の心理療法の有効性は同程度(低~中の質のエビデンス)であることが明らかにされた。京都大学大学院医学研究科社会医学系専攻健康増進・行動学分野の篠原 清美氏らが25件の試験をレビューし報告した。行動療法は現在うつ病治療に臨床活用されている心理療法の1カテゴリーである。しかし、他の心理療法と比較した行動療法の有効性および受容性は不明なままであった。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2013年10月号の掲載報告。 研究グループは本レビューにおいて、急性うつ病に対する、(1)全行動療法アプローチとその他の全心理療法アプローチとの有効性を比較すること、(2)行動療法アプローチ別(行動療法、行動活性化療法、生活技能訓練、リラクゼーショントレーニング)に、その他の全心理療法アプローチとの有効性を比較すること、(3)心理療法アプローチ別(認知行動療法[CBT]、third wave CBT、精神力動的療法、人間主義的療法、統合心理療法)に、全行動療法アプローチとの有効性を比較した。Cochrane Depression Anxiety and Neurosis Group Trials Specialised Register(2013年7月31日時点)を検索し、関連無作為化試験をCochrane Library(全発行年)、EMBASE(1974~)、MEDLINE(1950~)、PsycINFO(1967~)から組み込んだ。また、CINAHL(2010年5月)、PSYNDEX(2010年6月)、さらに参照文献リストの試験や関連する発表・未発表の試験のレビューも組み込み、成人の急性期うつ病において行動療法とその他心理介入法を比較した無作為化対照試験を検索した。 主な結果は以下のとおり。・レビューに組み込まれたのは25試験(行動療法とその他心理療法5つのうち1つ以上と比較)、被験者合計955例であった。・大部分の試験はサンプルサイズが小さく、バイアスリスクが不明もしくは高いにもかかかわらず評価が行われていた。・行動療法の寛解率は、その他の全心理療法と比較して有意差はなかった(18試験、690例、リスク比[RR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.86~1.09)。受容性も有意差はみられなかった(15試験、495例、全脱落のRR:1.02、95%CI:0.65~1.61)。・個別に心理療法と比較しても同様で、認知行動療法が行動療法よりも寛解率が優れるというエビデンスは低く(15試験、544例、RR:0.93、95%CI:0.83~1.05)、一方で行動療法が精神力動的療法よりも寛解率が優れるというエビデンスは低かった(2試験、110例、RR:1.24、95%CI:0.84~1.82)。・統合心理療法と人間主義的療法との比較は1試験のみで、解析では行動療法との間に有意差は示されていなかった。・以上のように、行動療法とその他心理療法の有効性は同程度であるという低~中のエビデンスがみつかった。行動療法の相対的な有益性と有害性を評価する現状のエビデンスベースは非常に弱いものであった。・本検討の治療に対する反応と中止に関連したキーアウトカムに関して、効果サイズと精度はいずれも信頼に限りがある。試験参加者が大規模で、試験デザインと治療に対する精度が改善されれば、本レビューにおけるエビデンスの質は改善されるだろう。関連医療ニュース 認知機能トレーニング/リハビリテーションはどの程度有効なのか? ヨガはうつ病補助治療の選択肢になりうるか うつ病の寛解、5つの症状で予測可能:慶應義塾大学

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軽度認知障害に有効な介入法はあるのか

 認知症の前兆として頻度が高い軽度認知障害(MCI)。MCIを呈する患者に対し、障害の増悪を抑制する方法は明らかにはなっていない。英国ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのClaudia Cooper氏らは、無作為化試験のシステマティックレビューを行い、認知的、神経精神病学的、機能的、全体的アウトカム、生活の質および認知症発症におけるMCIへのあらゆる介入効果について評価した。British Journal of Psychiatry誌2013年10月号の掲載報告。 研究グループは、無作為化試験のシステマティックレビューを行い、認知的、神経精神病学的、機能的、全体的アウトカム、生活の質および認知症発症におけるMCIへのあらゆる介入効果について評価した。事前規定に適合した41本の試験をレビューし、プラセボ対照試験において、チェックリストを用いて有効性を評価し、標準化アウトカムを算出し、主要アウトカム所見の順位付けを行った。主な結果は以下のとおり。・解析の結果、最も強力なエビデンスは、コリンエステラーゼ阻害薬は認知症発症を抑制しないということであった。・認知機能について、以下についてそれぞれ1試験のみで改善が示された[6ヵ月間にわたる異なる種類による集団心理療法の試験、3ヵ月間にわたるドパミン作動薬ピリベジル(国内未承認)の試験、48週間にわたるドネペジルの試験]。・ニコチンの6ヵ月間介入は、注意障害を改善した。・Huannao Yicongが認知機能と社会的機能を改善するというエビデンスはあるが不確かであった。・以上のように、有効であるという複数のエビデンスがある介入は1つもなかった。・コリンエステラーゼ阻害薬とロフェコキシブ(国内未承認)には、認知症の予防効果はない。・質の高いさらなる無作為化試験が必要であり、予備的エビデンスが得られている集団心理療法とピリベジルの試験を含むべきであることが示唆された。関連医療ニュース 治療介入により認知症発症率はどこまで減らせるか? 認知症予防のポイント!MCIへのアプローチ 認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学  担当者へのご意見箱はこちら

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第1回国際ミトコンドリア学術集会開催のお知らせ(11月6~7日、東京)

 第1 回国際ミトコンドリア学術集会が、2013年11月6日(水)~7 日(木)、東京にて開催される(学術集会ホームページ)。世界のミトコンドリア研究における人と知識の融合を推進し、ミトコンドリア探索治療の発展に貢献することが期待されている。今回は、順天堂大学脳神経内科(大会長:服部信孝氏)が主催であるため、パーキンソン病などの難治性神経変性疾患についても中心的な演題として取り上げられる予定である。<学術集会概要>■会期 2013年11月6日(水)~11月7日(木)(2 日間)■会場 六本木アカデミーヒルズ49 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー49 階 TEL: 03-6406-6220■学術集会大会長 服部信孝(順天堂大学脳神経内科 教授)■事務局 順天堂大学脳神経内科 担当 佐藤栄人 TEL:03-3813-3111(内3328)/ FAX:03-5800-0547(直通)■会議の目的と開催意義1)ヨーロッパ、アメリカ、アジア、オセアニアの地域ミトコンドリア研究ユニットから第一線の研究者を招き交流の場を設けることにより、今日まで実現困難であった世界ユニット形成の先駆けとする。2)ミトコンドリア関連疾患に関する病因研究と臨床研究を融合させ、ミトコンドリア探索治療の可能性を探る。3)次世代シークエンサーなどの新技術をトピックスとして取り上げ、さらなる病態研究に向けて世界規模での連携を推進する。■テーマ 『Prelude to the Translational Research in Mitochondrial Diseases』■学術プログラム1) 特別講演2) シンポジウム  神経変性疾患の分子病態から治療法に迫る  ミトコンドリア脳筋症の病態機序 日本から発信するミトコンドリア治療法3) ワークショップ  次世代シークエンサーを用いた病院遺伝子探索の紹介  ミトコンドリア関連疾患の病態機序と新規治療の検討4) 一般演題(ポスター)5) ランチョンセミナー など

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肥満でも痩せすぎでも心血管疾患死、増大-東アジア人84万人のデータ-/BMJ

 東アジア人では、BMIと心血管疾患死リスクとの関連は、BMI値が高すぎる場合も低すぎる場合も同リスクが高まる、U型カーブの関連を示すことが明らかにされた。米国・ニューヨーク大学のYu Chen氏らが、東・南アジア人約112万人を対象としたアジアコホート連合(Asia Cohort Consortium)のデータを解析して明らかにしたもので、BMJ誌オンライン版2013年10月1日号で発表した。なお南アジア人では同様の傾向はみられず、BMI高値と心血管疾患死リスクの関連は弱かったという。東アジア84万人、南アジア29万人を平均9.7年追跡 研究グループは、東アジア人(83万5,082人:中国、台湾、シンガポール、日本、韓国)と南アジア人(28万9,815人:インド、バングラディシュ)が参加している20の前向きコホート、被験者合計112万4,897人のデータについてプール解析を行った。 心血管疾患、冠動脈性心疾患、脳卒中などによる死亡リスクと、BMIとの関連を分析した。 ベースライン時の被験者の平均年齢は、53.4歳、平均追跡期間は9.7年だった。その間の心血管疾患死の発生は、東アジア人コホートで4万791人、南アジア人コホートで8,393人、合わせて4万9,184人だった。東アジア人コホートで、BMI 25以上、17.4以下で心血管疾患死リスクがいずれも増大 東アジア人でBMIが25以上の人は、22.5~24.9の人に比べて、心血管疾患死に関するハザード比は1.09~1.97と有意に増大した。具体的には、BMIが25.0~27.4のハザード比は1.09(95%信頼区間:1.03~1.15)、27.5~29.9が1.27(同:1.20~1.35)、30.0~32.4が1.59(1.43~1.76)、32.5~34.9が1.74(同:1.47~2.06)、35.0~50.0が1.97(同:1.44~2.71)だった。 同様の関連は、冠動脈性心疾患死や虚血性脳卒中による死亡についても認められ、また脳出血による死亡については、BMI 27.5以上で有意に高かった。 一方、BMIが低値の人についても、心血管疾患死リスクの増大が認められ、BMI 15.0~17.4の人のハザード比は1.19(同:1.02~1.39)、15.0未満では2.16(同:1.37~3.40)だった。 南アジア人では、BMIと心血管疾患死リスクとの関連性は弱く、BMIが35超の人で22.5~24.9の人に比べ、冠動脈性心疾患死に関するハザード比が1.90(同:1.15~3.12)に上昇する関連がみられただけだった。

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慢性脳脊髄静脈不全、多発性硬化症の有無にかかわらず有病率は2~3%/Lancet

 慢性脳脊髄静脈不全(CCSVI)の有病率について、多発性硬化症患者(MS)とその非罹患兄弟姉妹、さらに非血縁の健常者を対象に調べたところ、いずれも2~3%とまれではあるが同程度であり、MS患者における有病率の増大などは認められなかった。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のAnthony L Traboulsee氏らが行った、ケースコントロール試験の結果、明らかにされたもので、CCSVIはこれまで、多発性硬化症患者においてのみ発症し健常者では発症しないとされていた。なお、50%超の静脈狭窄を呈する患者の割合はいずれも約7割と同程度で、著者は「MS患者において静脈狭窄を呈する割合が高い理由はわからないままである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2013年10月9日号掲載の報告より。静脈撮影でCCSVI診断基準により評価 研究グループは、2011年1月~2012年3月にかけて、カナダの3ヵ所の医療センターを通じ、合計177例を対象に試験を開始した。被験者はいずれも成人であり、MS患者が79例、非罹患兄弟姉妹55例、非血縁の健常者(コントロール群)が43例だった。 内頸静脈・奇静脈の狭窄について、カテーテル静脈撮影と超音波検査を行い、Zamboni氏らにより提唱されたCCSVI診断基準で評価を行った。大静脈50%超の狭窄は多発性硬化症にかかわらず約7割 その結果、カテーテル静脈撮影の結果が得られた被験者のうち、CCSVI診断基準で陽性だった人は、MS患者65例中1例(2%)、非罹患兄弟姉妹46例中1例(2%)、コントロール群32例中1例(3%)と、いずれも同程度だった(すべての比較のp=1.0)。 また、大静脈のいずれかに50%超の狭窄が認められた人の割合も、MS患者65例中48例(74%)、兄弟姉妹47例中31例(66%)、コントロール群37例中26例(70%)と、いずれの群でも高率で認められ、群間の有意な差はみられなかった(p=0.82)。 一方、超音波検査によりCCSVI診断基準陽性だった人の割合は、MS患者79例中35例(44%)、兄弟姉妹54例中17例(31%)、コントロール群38例中17例(45%)で、群間の有意差はみられなかった(p=0.98)。超音波検査による、カテーテル静脈撮影の静脈50%超の狭窄に関する感度は、0.406(95%信頼区間:0.311~0.508)、特異度は0.643(同:0.480~0.780)と、いずれも低かった。 著者は、「本研究により、CCSVIはMS患者、健常者ともに発症はまれであることが示された。脳脊髄静脈の50%超狭窄は、いずれの患者においても頻度が高かった。また、超音波検査は感度も特異度も低かった」と述べ、「MSにおいてなぜ静脈狭窄が起きるのかは不明なままである」とまとめている。

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今シーズンのタミフル供給計画が発表される

 中外製薬は24日、スイスのF. ホフマン・ラ・ロシュ社から輸入し、製造・販売している抗インフルエンザウイルス剤「タミフルカプセル75」「タミフルドライシロップ3%」(一般名:オセルタミビルリン酸塩/以下、タミフル)について、2013-2014年シーズン(以下、今シーズン)に向けての供給計画がまとまったと発表した。 今シーズンのタミフル供給計画(2013年10月24日時点)は以下のとおり。 タミフルカプセル75   500万人分 タミフルドライシロップ3%  300万人分 合計   800万人分 同社は、インフルエンザウイルスの流行拡大の状況に応じて追加供給も検討するという。詳細はプレスリリースへ

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NSAIDsにより消化性潰瘍が穿孔し死亡したケース

消化器概要肺気腫、肺がんの既往歴のある67歳男性。呼吸困難、微熱、嘔気などを主訴として入退院をくり返していた。経過中に出現した腰痛および左足痛に対しNSAIDsであるロキソプロフェン ナトリウム(商品名:ロキソニン)、インドメタシン(同:インダシン)が投与され、その後も嘔気などの消化器症状が継続したが精査は行わなかった。ところがNSAIDs投与から12日後に消化性潰瘍の穿孔を生じ、緊急で開腹手術が行われたが、手術から17日後に死亡した。詳細な経過患者情報肺気腫、肺がん(1987年9月左上葉切除術)の既往歴のある67歳男性。慢性呼吸不全の状態であった経過1987年12月3日呼吸困難を主訴とし、「肺がん術後、肺気腫および椎骨脳底動脈循環不全」の診断で入院。1988年1月19日食欲不振、吐き気、上腹部痛が出現(約1ヵ月で軽快)。4月16日体重45.5kg5月14日症状が安定し退院。6月3日呼吸困難、微熱、嘔気を生じ、肺気腫と喘息との診断で再入院。6月6日胃部X線検査:慢性胃炎、「とくに問題はない」と説明。6月7日微熱が継続したため抗菌薬投与(6月17日まで)。6月17日軟便、腹痛がみられたためロペラミド(同:ロペミン)投与。6月20日体重41.5kg、血液検査で白血球数増加。6月24日抗菌薬ドキシサイクリン(同:ビブラマイシン)投与。6月26日胃もたれ、嘔気が出現。6月28日食欲低下も加わり、ビブラマイシン®の副作用と判断し投与中止。6月29日再び嘔気がみられ、びらん性胃炎と診断、胃粘膜保護剤および抗潰瘍薬などテプレノン(同:セルベックス)、ソファルコン(同:ソロン)、トリメブチンマレイン(同:セレキノン)、ガンマオリザノール(同:オルル)を投与。7月4日嘔気、嘔吐に対し抗潰瘍薬ジサイクロミン(同:コランチル)を投与。7月5日嘔気は徐々に軽減した。7月14日便潜血反応(-)7月15日嘔気は消失したが、食欲不振は継続。7月18日体重40.1kg。7月19日退院。7月20日少量の血痰、嘔気を主訴に外来受診。7月22日腰痛および膝の感覚異常を主訴に整形外科を受診、鎮痛薬サリチル酸ナトリウム(同:ネオビタカイン)局注、温湿布モムホット®、理学療法を受け、NSAIDsロキソニン®を1週間分投与。以後同病院整形外科に連日通院。7月25日血尿が出現。7月29日出血性膀胱炎と診断し、抗菌薬エノキサシン(同:フルマーク)を投与。腰痛に対してインダシン®坐薬、セルベックス®などの抗潰瘍薬を投与。7月30日吐物中にうすいコーヒー色の吐血を認めたため外来受診。メトクロプラミド(同:プリンペラン)1A筋注、ファモチジン(同:ガスター)1A静注。7月31日呼吸不全、嘔気、腰と左足の痛みなどが出現したため入院。酸素投与、インダシン®坐薬50mg 2個を使用。入院後も嘔気および食欲不振などが継続。体重40kg。8月1日嘔吐に対し胃薬、吐き気止めの投薬開始、インダシン®坐薬2個使用。8月2日10:00嘔気、嘔吐が持続。15:00自制不可能な心窩部痛、および同部の圧痛。16:40ブチルスコポラミン(同:ブスコパン)1A筋注。17:50ペンタジン®1A筋注、インダシン®坐薬2個投与。19:30痛みは軽快、自制の範囲内となった。8月3日07:00喉が渇いたので、ジュースを飲む。07:30突然の血圧低下(約60mmHg)、嘔吐あり。08:50医師の診察。左下腹部痛および嘔気、嘔吐を訴え、同部に圧痛あり。腹部X線写真でフリーエアーを認めたため、腸閉塞により穿孔が生じたと判断。15:00緊急開腹手術にて、胃体部前壁噴門側に直径約5mmの潰瘍穿孔が認められ、腹腔内に食物残渣および腹水を確認。胃穿孔部を切除して縫合閉鎖し、腹腔内にドレーンを留置。術後腹部膨満感、嘔気は消失。8月10日水分摂取可能。8月11日流動食の経口摂取再開。8月13日自分で酸素マスクをはずしたり、ふらふら歩行するという症状あり。8月15日頭部CTにて脳へのがん転移なし。白血球の異常増加あり。8月16日腹腔内留置ドレーンを抜去したが、急性呼吸不全を起こし、人工呼吸器装着。8月19日胸部X線写真上、両肺に直径0.3mm~1mmの陰影散布を確認。家族に対して肺がんの再発、全身転移のため、同日中にも死亡する可能性があることを説明。8月20日心不全、呼吸不全のため死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張慢性閉塞性肺疾患では低酸素血症や高炭酸ガス血症によって胃粘膜血流が低下するため胃潰瘍を併発しやすく、実際に本件では嘔気・嘔吐などの胃部症状が発生していたのに、胃内視鏡検査や胃部X線検査を怠ったため胃潰瘍と診断できなかった。さらに非ステロイド系消炎鎮痛薬はきわめて強い潰瘍発生作用を有するのに、胃穿孔の前日まで漫然とその投与を続けた。病院側(被告)の主張肺気腫による慢性呼吸器障害に再発性肺がんが両肺に転移播種するという悪条件の下で、ストレス性急性胃潰瘍を発症、穿孔性腹膜炎を合併したものである。胃穿孔は直前に飲んだジュースが刺激となって生じた。腹部の術後経過は順調であったが、肺気腫および肺がんのため呼吸不全が継続・悪化し、死亡したのであり、医療過誤には当たらない。ロキソニン®には長期投与で潰瘍形成することはあっても、本件のように短期間の投与で潰瘍形成する可能性は少なく、胃穿孔の副作用の例はない。インダシン®坐薬の能書きには消化性潰瘍の可能性についての記載はあるが、胃潰瘍および胃穿孔の副作用の例はない。たとえ胃潰瘍の可能性があったとしても、余命の少ない患者に対し、腰痛および下肢痛の改善目的で呼吸抑制のないインダシン®坐薬を用いることは不適切ではない。裁判所の判断吐血がみられて来院した時点で出血性胃潰瘍の存在を疑い、緊急内視鏡検査ないし胃部X線撮影検査を行うべき注意義務があった。さらに検査結果が判明するまでは、絶食、輸液、止血剤、抗潰瘍薬の投与などを行うべきであったのに怠り、鎮痛薬などの投与を漫然と続けた結果、胃潰瘍穿孔から汎発性腹膜炎を発症し、開腹手術を施行したが死亡した点に過失あり。原告側合計4,188万円の請求に対し、2,606万円の判決考察今回のケースをご覧になって、「なぜもっと早く消化器内視鏡検査をしなかったのだろうか」という疑問をもたれた先生方が多いことと思います。あとから振り返ってみれば、消化器症状が出現して入院となってから胃潰瘍穿孔に至るまでの約60日間のうち、50日間は入院、残りの10日間もほとんど毎日のように通院していたわけですから、「消化性潰瘍」を疑いさえすればすぐに検査を施行し、しかるべき処置が可能であったと思います。にもかかわらずそのような判断に至らなかった原因として、(1)入院直後に行った胃X線検査(胃穿孔の58日前、NSAIDs投与の45日前)で異常なしと判断したこと(2)複数の医師が関与したこと:とくにNSAIDs(ロキソニン®、インダシン®)は整形外科医師の指示で投与されたことの2点が考えられます(さらに少々考えすぎかも知れませんが、本件の場合には肺がん術後のため予後はあまりよくなかったということもあり、さまざまな症状がみられても対症療法をするのが限度と考えていたのかも知れません)。このうち(1)については、胃部X線写真で異常なしと判断した1ヵ月半後に腰痛に対して整形外科からNSAIDsが処方され、その8日後に嘔吐、吐血までみられたのですから、ここですぐさま上部消化管の検査を行うのが常識的な判断と思われます。しかもこの時に、ガスター®静注、プリンペラン®筋注まで行っているということは、当然消化性潰瘍を念頭に置いていたと思いますが、残念ながら当時患者さんをみたのは普段診察を担当していない消化器内科の医師でした。もしかすると、今回の主治医は「消化器系の病気は消化器内科の医師に任せてあるのでタッチしない」というスタンスであったのかも知れません。つまり(2)で問題提起したように、胃穿孔に至る過程にはもともと患者さんを診ていた内科主治医消化器系を担当した消化器内科医腰痛を診察しNSAIDsを処方した整形外科医という3名の医師が関与したことになります。患者側からみれば、同じ病院に入院しているのだから、たとえ診療科は違っても医者同士が連絡しあい、病気のすべてを診てもらっているのだろうと思うのが普通でしょう。ところが実際には、フリーエアーのある腹部X線写真をみて、主治医は最初に腸閉塞から穿孔に至ったのだろうと考えたり、前日までNSAIDsを投与していたことや消化性潰瘍があるかもしれないという考えには辿り着かなかったようです。同様に整形外科担当医も、「腰痛はみるけれども嘔気などの消化器症状は内科の先生に聞いてください」と考えていたろうし、消化器内科医は、「(吐血がみられたが)とりあえずはガスター®とプリンペラン®を使っておいたので、あとはいつもの主治医に任せよう」と思ったのかも知れません。このように本件の背景として、医師同士のコミュニケーション不足が重大な影響を及ぼしたことを指摘できると思います。ただしそれ以前の問題として、NSAIDsを処方したのであれば、たとえ整形外科であっても副作用のことに配慮するべきだし、もし消化器症状がみられたのならば内科担当医に、「NSAIDsを処方したけれども大丈夫だろうか」と照会するべきであると思います。同様に消化器内科医の立場でも、自分の専門領域のことは責任を持って診断・治療を行うという姿勢で臨まないと、本件のような思わぬ医事紛争に巻き込まれる可能性があると思います。おそらく、各担当医にしてみればきちんと患者さんを診察し、(内視鏡検査を行わなかったことは別として)けっして不真面目であったとか怠慢であったというような事例ではないと思います。しかし裁判官の判断は、賠償額を「67歳男性の平均余命である14年」をもとに算定したことからもわかるように、大変厳しい内容でした。常識的に考えれば、もともと肺気腫による慢性呼吸不全があり、死亡する11ヵ月前に肺がんの手術を行っていてしかも両側の肺に転移している進行がんであったのに、「平均余命14年」としたのはどうみても不適切な内容です(病院側弁護士の主張が不十分であったのかもしれません)。しかし一方で、そう判断せざるを得ないくらい「医師として患者さんにコミットしていないではないか」、という点が厳しく問われたケースではないかと思います。今回のケースから得られる教訓として、自分の得意とする分野について診断・治療を行う場合には、最後まで責任を持って担当するということを忘れないようにしたいと思います。また、たとえ専門外と判断される場合でも、可能な限りほかの医師とのコミュニケーションをとることを心掛けたいと思います。消化器

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診療よろず相談TV

ケアネットでは、スペシャリストドクターを回答者に迎えたQ&Aコーナーを開始します。毎月テーマを決めてCareNet会員医師からの質問を募り、CareNeTV、CareNet.comでおなじみのスペシャリストドクターが回答する、その名も「診療よろず相談TV」。臨床上のQ&Aは、白黒をつけられないものも多く、活字でニュアンスを伝えるのは困難でした。そこで当コーナーでは回答者の生の声を収録し、回答のニュアンスまでお伝えします。

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