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フレイルのチェックリスト

心身の状態をチェックするさまざまな方法基本チェックリスト(厚生労働省) 8項目以上該当でフレイル 4~7該当でプレフレイルツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会 秋下 雅弘先生講演資料より心身の状態をチェックするさまざまな方法フレイルの評価方法(J-CHS基準*一部改訂)3項目以上に該当: フレイル、 1~2項目に該当: プレフレイル、 該当なし: ロバスト(健常)(Satake S, et al. Geriatr Gerontol Int. 2020; 20(10): 992-993. )ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会 秋下 雅弘先生講演資料よりより簡単にセルフチェックできる方法1つでも該当するとフレイルの可能性あり世界的にCHS基準(The Cardiovascular Health Study)が使われています。日本の医療機関ではこの基準を改変した「日本版CHS基準(J-CHS基準)」を用いてチェックが行われます。本サイトでは、J-CHS基準をもとに、より身近な事例へ一部表現を変更しております。(監修医師:秋下雅弘先生)ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会 秋下 雅弘先生講演資料よりペットボトルチェックフレイルの兆候が無いか、簡単にチェックできる方法の1つフレイルの1症状である筋力低下の目安として握力を ペットボトルのふたを開けるという動作 で確認できるチェック方法筋力低下をはかる一つの目安が握力といわれており、男性は28kg以下、女性は18kg以下(J-CHS基準よりだとフレイルの可能性があるといわれています。https://www.jstage.jst.go.jp/article/pttochigicon/26/0/26_051/_pdf/-char/ja)ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会秋下 雅弘先生講演資料より

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コロナは続く【Dr. 中島の 新・徒然草】(568)

五百六十八の段 コロナは続く寒い、寒すぎる!一時は暖かい日が続いていたのに、再び冬の寒さが戻ってきました。外を歩くと風が顔に当たるし、吸う空気まで冷たいです。今朝も出勤時に車に乗ろうとしたところ、フロントガラスがバリバリに凍りついていました。お湯をかけて溶かそうとしたのですが、一度では足りず。結局、家とパーキングを2往復する羽目になりました。いつになったらこの寒さが終わるのでしょうか。さて、先日の脳外科外来。定期的に通院しているご夫婦がお見えになりました。ご主人はいろいろな病気を持っているのですが、私が担当しているのは外傷性てんかん。3ヵ月ごとの抗痙攣薬処方ですね。ところでこのご主人、昨年に新型コロナウイルスに感染してしまったのです。別の病院のICUに入院しているということで、奥さんから私に電話がありました。奥さん「主人がコロナにかかり、気管切開をして人工呼吸器につながれているんです。主治医の先生から『もし心臓が止まったら心臓マッサージをしますか』って尋ねられたんですが、どう返事したらいいのでしょうか?」突然の相談に私も驚きましたが、ご主人の50歳という年齢を考えると、まだまだ諦めるわけにはいきません。中島「まだ若いのですから、諦めないで! 必要な時には心臓マッサージもしてもらいましょう」そうお伝えしました。幸いにもご主人は回復し、リハビリ病院経由で自宅に戻ることができました。退院当初は多少の麻痺が残っていましたが、自転車に乗るようになったらなぜか少しずつ回復してきたとのこと。仕事への復帰にはまだもう少しかかりそうではありますが、何と言ってもご本人の努力、奥さんの協力があったからこそでしょう。感動した私は「それもこれも奥さんの支えがあったからですよね!」とご主人に言ったのですが、その反応はあっさりしたものでした。「そうなんですかね」とだけ。中島「いやいやいや、そこは『家内がいたからここまで回復できたんです!』と言ってくださいよ。声に出して練習しましょう」そう励ましてみましたが、ご主人の反応は今ひとつ。照れくさいのかもしれませんが、やはり感謝の気持ちは言葉で伝えてこそ。ご主人を励ました後で、私は奥さんのほうにも声をかけました。中島「奥さんもですね、次に『心臓マッサージしますか?』と尋ねられたら即座に『お願いします。どんな後遺症が残っても私が全部背負って生きていきます!』と言ってみたらどうですか」するとニコニコしながらも奥さんからはあっさりした反応が返ってきました。奥さん「あまり大きな後遺症が残ってもちょっと困りますから」何だか私1人が感動物語を作ろうと空回りしているみたいでした。とはいえ、これまで何度もご主人の大病を経験している奥さんのこと。「後遺症」という言葉ひとつにも重みが違います。口調は淡々としていますが、いつも献身的に外来受診に付き添う姿には感心せざるを得ません。忘れてはならないのがコロナ治療をした病院です。「心臓マッサージしますか」と尋ねられたりしたということで冷たい印象を持つ人もいるかもしれませんが、気管切開してまで救命したのですから大したものです。感謝しかないですね。それとは別に驚いたことがありました。私の処方していた抗痙攣薬が、コロナ治療中から中止されっぱなしだったのです。いろいろ考えた末の決断なのか、単に再開するのを忘れていただけなのか。それは謎です。とはいえ、数ヵ月間の服薬中断にもかかわらず、一度も痙攣は起きていないとのこと。経緯はどうあれ、投薬が減るのならありがたいことです。いずれにせよ、新型コロナウイルスとの戦いはまだ終わったわけではありません。今後も引き続き、気を引き締めつつ診療を続けていく必要がありますね。最後に1句ご夫婦と コロナを語る 冬の朝 

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成人CAR-T療法の実際【Oncologyインタビュー】第46回

出演:京都大学医学部付属病院 血液内科 北脇 年雄氏CAR-T療法は今や造血器腫瘍治療に欠かせないものとなった。その一方、複雑な治療工程や有害事象の管理など照会元施設にとって押さえておくべき情報は多い。成人のCAR-T療法の基本について、京都大学附属病院の北脇年雄氏に解説いただいた。参考CAR-T細胞療法のトリセツ(中外医学社)血液内科治療のトリセツ(中外医学社)

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テレビドラマ「説得」【親が輸血だめなら子供もだめ!?(医療ネグレクト)】Part 1

皆さんは、宗教上の理由で、輸血を拒む人をどう思いますか? 輸血自体にウイルス感染症などのリスクもあるため、たとえ輸血しなければ死んでしまうとしても、最終的には患者の自己決定権が優先されます。しかし、親が自分の子供への輸血を拒んでいる場合はどうでしょうか? そして、輸血しなければ死んでしまう場合はどうでしょうか?今回は、医療ネグレクトをテーマに、かつてのテレビドラマ「説得」を取り上げます。このドラマは、実際の事件をドラマ化しており、そのやり取りにはリアリティがあります。そして、この輸血拒否に対しての学会の対応ガイドラインと2023年までに出された厚労省の指針もご紹介します。さらに、輸血をどうするかという医療倫理としてだけでなく、子供にはどうするかという「子育て倫理」としても一緒に考えてみましょう。なんで輸血がだめなの?主人公は荒木。脱サラして小さな書店を妻と一緒に営んでいます。3人の子供にも恵まれ、ごく普通の家庭生活を送っていました。そんななか、ある日、2番目の子供の健が交通事故に遭います。荒木夫妻は医師から複雑骨折をして出血多量であるため、輸血して手術をすれば助かると言われます。ところが、荒木夫妻は輸血を頑なに拒みます。荒木は「宗教上の問題です」「私たちの宗教は輸血を禁じているんです」と説明します。代わる代わるに医師たちが説得を試みるのですが、荒木夫妻は一貫して「輸血しないで手術してください」と懇願するのです。別室での待機中、荒木夫妻は聖書の教えを唱え始めます。「あらゆる肉なるものの魂は、その血であり、魂がその内にあるから、いかなる肉なるものの血も食べてはならない。すべて、それを食べるものは断たれる」と。そして、妻が「私たちは委ねたんじゃない。あなたも私も健も、神の教えに従うって。それでいいって」と言います。荒木が「だけど、健にもしものことがあったら?」と戸惑っていると、妻は「わかってくれると思う、あの子は」と言い切ります。そしてとうとう救急車で運ばれてから数時間後、健は、目の前に輸血の点滴が準備されている手術台の上で、輸血されることのないまま、手術されることのないまま、息を引き取ります。荒木夫妻が悲しみに暮れていると、中学生の長女が駆けつけてきて、「健ちゃんかわいそうよ。大丈夫よ。健ちゃんは天国に行って必ず復活するんだもの。永遠の命を授かるんだもの」とたしなめるのでした。輸血拒否の論理は、血=命である。肉を食べることはできるが、その血は地に注いで神に返さなければならない。血を食べてしまうと、神から見放されてしまい、死んで天国に行けなくなるということです。そして、輸血も血を食べることになり禁じられます。ただし、自己血輸血や、主要成分ではないアルブミンや免疫グロブリンは受け入れる信者もいて、解釈が分かれています1)。それにしても、苦悩しながらも自分の子供の命よりも信仰を優先する言動には、あまりにも不合理に思われます。一方で、説得する医師の1人は「人間は信仰のためには死にもするし、殺しもするんです。今世界中で宗教上の違いから、どれだけの紛争や戦争が起こっているか」と述べ、理解を示そうとします。このセリフから、信仰とはそもそも不合理なものであり、それを文化的に受け入れられているかどうかの問題であることがわかります。そして、文化的に受け入れられない場合、精神医学的には妄想と呼ばれます。つまり、信仰と妄想は紙一重であり、表裏一体であることもわかります。実際の画像研究においても、信仰(宗教体験)と妄想状態(統合失調症)は、同じ脳領域が過活動になっていることがわかっています2)。なお、信仰と妄想の類似性の詳細については、関連記事1をご覧ください。次のページへ >>

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テレビドラマ「説得」【親が輸血だめなら子供もだめ!?(医療ネグレクト)】Part 2

輸血禁止の教えに子供はどうすればいいの?荒木夫妻は、以前に健が宿題の読書感想文を家で音読していた時のことを回想します。健は「…王子はお父さんをとても尊敬していたのです。僕も王子のようにお父さんの言うことをよく聞いて、信仰の道にがんばりたいと思います」と誇らしげに締めくくっていました。また、事故が起きる3週間前にも、母親が「交通事故起こしても、輸血してあげられないんだから」「本当に気を付けてね」と念押ししていました。健は「うん、いいよ」と軽く言っていました。これらのやり取りをもとに、荒木夫妻は、自分たちだけでなく、健も輸血を拒否する意思を持っていると考えていました。最後の最後で医師たちが健に直接確認しようと、「生きたいだろ?」と大声で呼びかけます。しかし、時すでに遅く、彼は返事をしません。そこに立ち会っていた荒木は、あとで「健は生きたいって。生きたいって言ったんだ。おれにはわかった」と打ち明けます。実際の事件では、その男の子は、医師から「輸血してもらうようにお父さんに言いなさい」と呼びかけられると、「死にたくない。生きたい」と訴えていました。当然ながら、小学5年生の子供が、いくら信仰心があるからといって、そのために死を選ぶことは考えにくいです。彼が信仰の道に頑張ると宣言し、輸血禁止に同意していたのは、そうでもしなければその家で生きていけないと思っていたからでした。つまり、子供には、最初から選択肢などないのでした。彼の言動は単純で、教えに沿った発言をしたら親が喜ぶから、ただそうしているだけでしょう。逆に、教えに少しでも疑問を抱いたことを口走ればどうなるでしょうか?ドラマでは描かれていませんでしたが、実際には、親から「お前はサタンだ」と激怒され、むち打ち(これも教えの1つ)が行われます1)。明らかに、親が宗教を子供に強要しています。これは、宗教的虐待と呼ばれています。また、このような親に育てられた子供は、「宗教2世」「カルト2世」と呼ばれています。なお、一般的な子供虐待の詳細については、関連記事2をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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テレビドラマ「説得」【親が輸血だめなら子供もだめ!?(医療ネグレクト)】Part 3

輸血拒否に医療はどうすればいいの?健が死んで1ヵ月後、担当していた医師が、荒木に再会し、言います。「心臓外科が専門なんですが、手術しても社会に復帰できない子がたくさんいるんです。宗教的に言えば、神がそういうふうにつくったとしか…それを手術して、神の意思に反してるんじゃないかって気がする時も。そう言いながらも、やはり今手術しないと死んでしまうと言えば、やはり…あの直後、うちの病院では、今後(子供には)承諾が取れなくても、医師の判断で輸血をするという決定をしました」と。実際に、2008年に日本輸血・細胞治療学会と日本小児科学会は合同でガイドラインを出しました。そして、2022年と2023年に厚労省は、このガイドラインを踏まえて、宗教的虐待と医療ネグレクトに関する指針を出しました3,4)。なお、医療ネグレクトとは、医師が必要と判断した医療を親が子供に受けさせないことです。このガイドラインでは、年齢を3つの時期に区切り、場合分けをしています。まず、18歳以上は当然ながら、本人の意思が尊重されます。逆に、14歳以下は、拒否が親や本人にあったとしても、なるべく輸血しないとしつつも、最終的には輸血は可能になります。注目すべきは、15歳から17歳の年齢です。本人と親がどちらも拒否した場合のみ、輸血は不可になります。たとえば、長女は「教えを守れば天国に行ける」と確信していたので、中3で15歳になっているとすると、彼女に輸血することはできません。逆に、どちらかしか拒否しなかった場合は、なるべく輸血しないとしつつも、最終的には輸血は可能になります。なお、15歳で分けている理由は、15歳が民法で遺言の効力が生まれる年齢と定められているからです。また、知的障害などによって医療に関する判断能力がない場合は、14歳以下と同じく、輸血は可能になります。さらに、輸血を含めて治療が親によって阻害される場合は、児童相談所に虐待通告し、児童相談所で一時保護のうえ、家庭裁判所による親権停止の審判を受けて、治療を行うことができます。緊急性がある場合は、審判確定までの間に権利を保護する暫定的な処分(保全処分)を申し立てることで、すぐに効力が発生する措置がとられます。実際に、2021年に親権停止が認められたのは107件で、医療ネグレクトが原因とされるものは21件でした1)。また、輸血拒否をする教団(「エホバの証人」)の広報によると、2017年から2022年の5年間で、親権停止などの法的措置がとられたのは13件でした1)。「説得」とは?このドラマは、親の信仰によって子供の命が救えなくなるという、宗教と医療の衝突を生々しく描いていました。そして、信仰とは、妄想と同じく不合理で訂正不能であるため、いくら理屈をこねたり情に訴えたりして説得しようとしても、納得が得られないものであることもわかりました。学会のガイドラインや厚労省の指針のおかげで、親の信仰によって子供の命が救えなくなることはなくなりました。しかし、まだ問題が残っています。それは、命にかかわる急性疾患とは違い、すぐに命にかかわらない慢性疾患や、担当した医師が言っていたように手術しても必ずしも治るとは限らない疾患についてです。たとえば、実際に、子供が精神的に不調でも親が偏見やいわゆる根性論から児童精神科を受診させないケースは、時々見受けられます。このような場合は、司法が親権停止の判断を出すのが難しくなります。つまり、どこまでが医療ネグレクトでどこまでが親の裁量とするかという線引きの問題がまだ残っています。これは、医療を含む子育て全般にも言えることです。この線引きのために、信仰を押し付けるのはもっての外ですが、経験則や自分の思い入れ、思い込みではなく、アカデミックな視点が必要です。それは何より、子供の不利益にならないようにするためだからです。これからは、医療だけでなく、子育てにも倫理観が必要な時代になってきます。これは、医療倫理を超えて、子育てのあり方にも広がる「子育て倫理」と呼べるでしょう。なお、今回は治療をさせない親がテーマでしたが、逆に治療をさせすぎる親については、関連記事3をご覧ください。1)宗教と子供p.106、p.118、p.122、pp.124-125、pp.149-153:毎日新聞取材班編、明石書店、20242)宗教の起源p.246:ロビン・ダンバー、白揚社、20233)宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A:厚生労働省子供家庭局長通知、20224)宗教の信仰等を背景とする医療ネグレクトが疑われる事案への対応について:厚生労働省子供家庭局長、2023虐待についての関連記事教育虐待そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】教育ネグレクト映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 1<< 前のページへ■関連記事映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その1)【宗教体験と幻覚妄想は表裏一体!?(統合失調症の二面性)】Part 1Mother(続編)【虐待】映画「ラン」(前編)【なんで子供を病気にさせたがるの?(代理ミュンヒハウゼン症候群)】Part 1

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抗菌薬による虫垂炎治療、虫垂切除の回避率は?~メタ解析

 個々の患者データを用いたメタ解析の結果、急性虫垂炎に対する抗菌薬治療によって、最初の1年間で約3分の2の患者が虫垂切除を回避できたものの、虫垂結石を伴う場合は合併症のリスクが高まったことを、オランダ・アムステルダム大学のJochem C. G. Scheijmans氏らが明らかにした。Lancet Gastroenterology & Hepatology誌2025年3月号掲載の報告。 これまでのランダム化比較試験によって、合併症のない急性虫垂炎に対する抗菌薬は、虫垂切除術に代わる効果的で安全な治療とされている。しかし、これらの試験はそれぞれの包含基準が異なり、アウトカムや合併症の定義も異なっている。そこで研究グループは、個々の患者データのメタ解析を実施し、虫垂切除術と比較した抗菌薬治療の安全性と有効性を評価した。 PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsをデータベースの開設から2023年6月6日まで検索し、画像診断で急性虫垂炎が確認された成人(18歳以上)の治療として、虫垂切除術と抗菌薬治療を比較したランダム化比較試験を抽出した。合併症に関する1年間の追跡データがない試験は除外した。主要アウトカムは1年間の合併症発生率とし、重要な副次アウトカムは1年間の虫垂切除率であった。 主な結果は以下のとおり。・887件の論文がスクリーニングされ、8件が組み入れ対象となり、そのうち6件のランダム化比較試験の2,101例が解析対象となった。抗菌薬群は1,050例、虫垂切除術群は1,051例であった。・1年間の追跡期間で合併症が認められたのは、抗菌薬群57例(5.4%)、虫垂切除術群87例(8.3%)であった(オッズ比[OR]:0.49[95%信頼区間[CI]:0.20~1.20]、リスク差:-4.5%ポイント[95%CI:-11.6~2.6])。・介入前の画像診断で虫垂結石を認めた集団では、抗菌薬群のほうが虫垂切除術群よりも合併症リスクが高かった(193例中29例[15.0%]vs.190例中12例[6.3%]、OR:2.82[95%CI:1.11~7.18]、リスク差:13.2%ポイント[95%CI:2.3~24.2])。・抗菌薬群で虫垂切除術を受けたのは356例(33.9%)であった。・抗菌薬群の虫垂結石を認めた集団で虫垂切除術を受けたのは193例中94例(48.7%)と多かった一方、抗菌薬群の虫垂結石を認めなかった集団では857例中262例(30.6%)であった。 研究グループは、「これらのデータは、共同意思決定(Shared Decision Making)における重要な要素となるだろう」とまとめた。

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精神科再入院に対する各抗うつ薬の影響比較

 うつ病患者は、健康状態が悪化することが少なくない。さらに、複数の入院を経験した患者は、予後不良である傾向が高まる。うつ病に対する第1選択治療は、依然として抗うつ薬治療であるが、各抗うつ薬が精神科再入院リスクに及ぼす影響を評価したデータは、限られている。米国・ラトガース大学のHannah Mei氏らは、精神科入院うつ病患者における退院時の抗うつ薬選択と再入院率との関連を評価した。Cureus誌2024年12月22日号の報告。 対象は、抗うつ薬治療により退院した成人うつ病患者。対象患者の精神科再入院率を評価するため、単一施設レトロスペクティブカルテベースレビューを実施した。主要アウトカムは、抗うつ薬治療による30日間の精神科再入院率の比較とした。副次的アウトカムには、抗うつ薬治療による6ヵ月および1年間の精神科再入院率を含めた。オッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)、p値を算出し、各抗うつ薬治療により退院した患者とそれ以外の抗うつ薬で治療した患者における再入院のORを比較した。 主な結果は以下のとおり。・この研究で用いられていた抗うつ薬は、bupropion、デュロキセチン、エスシタロプラム、fluoxetine、ミルタザピン、パロキセチン、セルトラリン、トラゾドン、ベンラファキシン。・退院時にセルトラリンで治療されていた患者は、他の抗うつ薬または複数の抗うつ薬を併用していた患者と比較し、30日以内の精神科再入院リスクが約4分の1であった(OR:0.228、95%CI:0.053〜0.978、p<0.05)。・退院時に抗うつ薬を併用していた患者は、単剤治療していた患者と比較し、再入院リスクが高かった(OR:4.517、95%CI:1.581〜12.908、p<0.05)。 著者らは「精神科入院うつ病患者に対する抗うつ薬の選択は、症状の再発や再入院リスクに影響を及ぼす可能性があり、慎重に検討する必要があることが示唆された。うつ病患者の精神科再入院リスクに及ぼす可能性のある他の因子を評価するためにも、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

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急性期脳梗塞、EVT+高気圧酸素治療vs.EVT単独/Lancet

 血管内血栓除去術(EVT)が可能であった主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者において、高気圧酸素治療(normobaric hyperoxia treatment)の追加は、EVT単独の場合と比較して90日時点の機能的アウトカムが優れ、安全性に関する懸念はみられなかった。中国・首都医科大学のWeili Li氏らOPENS-2 Investigatorsが多施設共同無作為化単盲検シャム対照比較試験の結果を報告した。EVTは急性期虚血性脳卒中の再開通率を改善するが、EVTを受けた患者の約半数は良好な機能的アウトカムを得られない。研究グループは、EVT+高気圧酸素治療が、機能的アウトカムに及ぼす影響を評価した。Lancet誌2025年2月8日号掲載の報告。90日時点のmRS順序スコアを比較 研究グループは中国の総合脳卒中センター26施設において、発症後6時間以内のEVT治療が可能であった18~80歳の主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者を対象に試験を行った。 適格患者をEVT+高気圧酸素治療を受ける群またはEVT+シャム高気圧酸素治療を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは、双方向Web応答システムを用いた最小化プロセスに基づき、各試験センターでの割り付けのバランスを全体的にとるとともに、年齢・性別・閉塞部位・静脈内血栓溶解薬の使用のベースラインカテゴリに応じた層別化も行った。被験者および評価者は、治療割り付けをマスクされた。 高気圧酸素治療では、100%酸素を非再呼吸マスク(non-rebreather mask)装着下で流量10L/分にて4時間投与、または挿管を要した患者には吸入酸素濃度(FiO2)1.0で投与した。シャム治療では、100%酸素を流量1L/分にて、またはFiO2 0.3で投与した。 主要アウトカムは、ITT集団(治療割り付けを受けた全患者を含む)で評価した90日時点の修正Rankinスケール(mRS)の順序スコアの比較とした。安全性は、あらゆる酸素療法を受けた全患者で評価した。mRSスコアの補正後共通オッズ比は1.65で有意に改善 2021年4月22日~2023年2月5日に、473例がスクリーニングを受け、282例(ITT集団)がEVT+高気圧酸素治療群(140例)またはEVT+シャム高気圧酸素治療群(142例)に無作為に割り付けられた。年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:57~71)、75/282例(27%)が女性、207/282例(73%)が男性であり、282例(100%)全員が中国の漢民族であった。 90日時点で、mRSスコア中央値は、EVT+高気圧酸素治療群が2(IQR:1~4)、EVT+シャム高気圧酸素治療群は3(1~4)であった(補正後共通オッズ比:1.65[95%信頼区間[CI]:1.09~2.50]、p=0.018)。 90日時点で、死亡は、EVT+高気圧酸素治療群で14/140例(10%)、EVT+シャム高気圧酸素治療群では17/142例(12%)報告された(補正後リスク差:-0.02[95%CI:-0.09~0.06])。重篤な有害事象の発現は、それぞれ28/140例(20%)、33/142例(23%)であった(補正後リスク差:-0.03[95%CI:-0.12~0.07])。

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活動性ループス腎炎、オビヌツズマブ+標準治療の有効性を確認/NEJM

 活動性ループス腎炎の成人患者において、タイプIIのヒト化抗CD20モノクローナル抗体オビヌツズマブ+標準治療は標準治療単独と比較して、完全腎反応をもたらすのに有効であることが、米国・Northwell HealthのRichard A. Furie氏らREGENCY Trial Investigatorsが行った第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果で示された。オビヌツズマブは、標準治療を受けているループス腎炎患者を対象とした第II相試験において、プラセボと比較して有意に良好な腎反応をもたらすことが示されていた。NEJM誌オンライン版2025年2月7日号掲載の報告。76週時点の完全腎反応を評価 試験は15ヵ国で行われ、生検で活動性ループス腎炎と診断された18~75歳の成人患者を、オビヌツズマブを2種類の投与スケジュール(1,000mgを1日目、2週目、24週目、26週目、50週目、52週目に投与もしくは50週目は投与しない)のいずれかで投与する群、もしくはプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。全患者は無作為化時にミコフェノール酸モフェチルと経口prednisoneによる標準治療を開始し、経口prednisoneは12週目までに7.5mg/日、24週目までに5mg/日を目標用量として投与した。 主要エンドポイントは76週時点の完全腎反応とし、尿蛋白/クレアチニン比<0.5(尿蛋白、クレアチニンともmg単位で測定)、推算糸球体濾過量(eGFR)値がベースライン値の85%以上、および中間事象(レスキュー治療、治療失敗、死亡または早期の試験中止など)がないことと定義した。 76週時の重要な副次エンドポイントには、64~76週目のprednisone投与量が7.5mg/日以下で完全腎反応を得られていたこと、尿蛋白/クレアチニン比<0.8で中間事象がないことなどが含まれた。完全腎反応はオビヌツズマブ群46.4%、プラセボ群33.1%で有意差 計271例が無作為化され、135例がオビヌツズマブ群(全投与スケジュール群)に、136例がプラセボ群に割り付けられた。ベースライン特性は両群でバランスが取れており、平均年齢(±標準偏差)はオビヌツズマブ群33.0±10.5歳、プラセボ群32.7±10.0歳、女性がそれぞれ114例(84.4%)および115例(84.6%)であった。また、ループス腎炎の初回診断時からの期間中央値は36.6ヵ月と34.3ヵ月、尿蛋白/クレアチニン比は3.14±2.99および3.53±2.76、eGFR値は102.8±29.3および101.9±32.2mL/分/1.73m2などであった。 76週時点で完全腎反応が認められた患者の割合は、オビヌツズマブ群46.4%、プラセボ群33.1%であった(補正後群間差:13.4%ポイント[95%信頼区間[CI]:2.0~24.8]、p=0.02)。 64~76週目のprednisone投与量が7.5mg/日以下で76週時点に完全腎反応が認められた被験者は、オビヌツズマブ群がプラセボ群と比較して有意に多かった(42.7%vs.30.9%、補正後群間差:11.9%ポイント[95%CI:0.6~23.2]、p=0.04)。また、尿蛋白/クレアチニン比<0.8で中間事象がなく76週時点に完全腎反応が認められた被験者は、オビヌツズマブ群がプラセボ群と比較して有意に多かった(55.5%vs.41.9%、補正後群間差:13.7%ポイント[2.0~25.4]、p=0.02)。 新たな安全性シグナルは確認されなかった。重篤な有害事象は、主として感染症およびCOVID-19関連イベントで、COVID-19関連肺炎はオビヌツズマブ群(7例)がプラセボ群(0例)と比較してより多く報告された。

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多発性骨髄腫の新規治療開発を加速するMRDに基づくエンドポイント/JCO

 多発性骨髄腫(MM)の新たな治療の早期承認を実現するためには、臨床試験を迅速化するための早期エンドポイントが必要である。今回、米国・メイヨークリニックのQian Shiらは、新規診断の移植適格患者・移植不適格患者、再発/難治性(RR)の多発性骨髄腫患者において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の中間エンドポイントとして微小残存病変(MRD)陰性完全奏効(CR)の可能性を検討した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年2月12日号に掲載。 本解析では、20の多施設無作為化試験から個々の患者データを収集した。十分なデータを有する11試験(4,773 例)を解析し、9 ヵ月または 12 ヵ月における10-5を閾値としたMRD陰性CRがPFSとOSに関する臨床的有用性を予測できるかどうかを評価した。全体的なオッズ比(OR)は二変量Plackett Copulaモデルを用いて推定した。さらに、MRD陰性CRとPFS/OSにおける治療効果の相関を、線形回帰(R2加重最小二乗)モデルおよびCopula(R2Copula)モデルで評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析の結果、新規診断の移植適格患者、新規診断の移植不適格患者、再発/難治性MM患者において、9 ヵ月および 12 ヵ月におけるMRD陰性CRが、患者レベルでPFSと強い相関を示した。 ・全体的なORは3.06~16.24の範囲であり、95%CIはすべて1.0を含まなかった。・3つの集団の統合により、有望な試験レベルの相関(R2:0.61~0.70)がみられ、新規診断集団ではより強い相関(R2:0.67~0.78)がみられた。・OSについても同様の結果がみられた。 著者らは、「今回の結果は、新規診断の移植適格患者および移植不適格患者、再発/難治性MM患者を対象とした今後の臨床試験において、早期承認のための中間エンドポイントとして、治療開始後9ヵ月または12ヵ月に10-5を閾値としたMRD陰性CRを使用することを支持するもの」とした。

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米国ではCOVID-19が依然として健康上の大きな脅威

 新型コロナウイルスは依然として米国人の健康に対する脅威であり、インフルエンザウイルスやRSウイルスよりも多くの感染と死亡を引き起こしていることが、新たな研究で示唆された。米国退役軍人省(VA)ポートランド医療システムのKristina Bajema氏らが「JAMA Internal Medicine」に1月27日報告したこの研究によると、2023/2024年の風邪・インフルエンザシーズン中に米国退役軍人保健局(VHA)で治療を受けた呼吸器感染症患者の5人中3人(60.3%)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患していたという。 この研究でBajema氏らは、呼吸器感染症の2022/2023年シーズンと2023/2024年シーズンのVHAの医療記録を後ろ向きに解析し、COVID-19、インフルエンザ、RSウイルス感染症の重症度を比較した。対象は、2022年8月1日から2023年3月31日、または2023年8月1日から2024年3月31日の間に、COVID-19、インフルエンザ、RSウイルス感染症の検査を同日に受け、いずれかの診断を受けたが入院はしなかった退役軍人とした。 その結果、2022/2023年コホート(6万8,581人)の66.2%、2023/2024年コホート(7万2,939人)の60.3%がCOVID-19の診断を受けていたことが明らかになった。一方、インフルエンザとRSウイルス感染症の診断を受けた割合は、2022/2023年コホートでそれぞれ24.7%と9.1%、2023/2024年コホートで26.4%と13.4%であった。2023/2024年シーズンにおける診断から30日間での入院リスクは、COVID-19で16.2%、インフルエンザで16.3%と同程度であった(RSウイルス感染症では14.3%)。 2022/2023年シーズンにおける診断から30日間の死亡率は、COVID-19で1.0%、インフルエンザで0.7%、RSウイルス感染症で0.7%であり、COVID-19の死亡率はインフルエンザやRSウイルス感染症をわずかに上回った。しかし、2023/2024年シーズンでの同死亡率は、それぞれ0.9%、0.7%、0.7%であり、COVID-19の死亡率はインフルエンザやRSウイルス感染症と類似していた。 一方、180日間の累積死亡率は、両シーズンともCOVID-19で最も高く、2022/2023年シーズンでは3.1%、2023/2024年シーズンでは2.9%に達した。2022/2023年シーズンでは、COVID-19とインフルエンザの180日間の死亡リスク差(RD)は1.1%(95%信頼区間0.6〜1.5)、COVID-19とRSウイルス感染症のRDも1.1%(同0.6〜1.4)、2023/2024年シーズンでは、それぞれ0.8%(同0.3〜1.2)、0.6%(同0.1〜1.1)と推定された。これに対し、インフルエンザとRSウイルス感染症の180日間の死亡リスクに有意な差は見られなかった。 このほか、両シーズンとも、COVID-19ワクチンの未接種者は、インフルエンザワクチンの未接種者よりも死亡リスクが高い傾向にあったことも示された。一方、ワクチン接種者の間では、COVID-19とインフルエンザの死亡リスクに有意な差は認められなかった。 Bajema氏は、「新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスやRSウイルスよりもはるかに多くの感染者を出し、短期入院リスクや死亡リスクの上昇など、より重篤な転帰をもたらした」と話す。研究グループは、「ワクチン接種は今も、ウイルス性の呼吸器疾患、特に新型コロナウイルスのオミクロン株の影響を最小限に抑えるための重要な戦略である」と結論付けている。

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脳の健康維持のために患者と医師が問うべき12の質問とは?

 米国神経学会(AAN)の「脳の健康イニシアチブ(Brain Health Initiative)は、人生のあらゆる段階において脳の健康に影響を与える12の要因についてまとめた論文を、「Neurology」に2024年12月16日発表した。論文には、神経科医が患者の脳の健康を向上させるために活用できる、スクリーニング評価や予防的介入の実践的アプローチに関する内容も含まれている。 脳の健康に関わる12の要因、およびそれを評価するための質問は、以下の通りである。これらについて自分自身に問うとともに、医師とも話し合うとよいだろう。1. 睡眠:「睡眠により十分に体を休めることができていますか?」 日中の眠気、シフトワークの影響、夜間の痛み、不眠症、昼寝の習慣などについて医師と話し合おう。2. 感情、気分、メンタルヘルス:「自分の感情、気分、ストレスについて心配がありますか?」 医師は患者の抑うつや不安を評価するべきだが、患者が自分から相談できるよう準備しておくことも大切だ。3. 食品、食事、サプリメント:「十分な量の食品や健康的な食事の確保に心配がありますか?サプリメントやビタミンの摂取について聞きたいことはありますか?」4. 運動:「生活の中に運動を取り入れられていますか?」 身体活動に加え、動き、バランス、自立性を維持する方法について医師と相談しよう。5. 支えとなる社会的つながり:「親しい友人や家族と定期的に連絡を取り合っていますか?周りの人から十分なサポートを受けていますか?」6. 事故や外傷の回避:「運転時にシートベルトやヘルメットを着用していますか?子どもがいる人はチャイルドシートを使用していますか?」 職業上のリスクがある人は、それについて話し合うことも重要だ。7. 血圧:「自宅で高血圧に気付いたり、病院で高血圧を指摘されたりしたことはありますか?血圧の治療や家庭用血圧計について疑問がありますか?」 高血圧の二次的原因や薬と血圧の関係について医師に相談しよう。8. 遺伝的リスクと代謝的リスク:「血糖値やコレステロール値のコントロールに問題がありますか?神経疾患の家族歴がありますか?」 遺伝的リスクを調べて認識し、必要に応じて脂質や糖尿病の管理、健康的な体重の維持について質問すること。9. 医療のアフォーダビリティ(支払いのしやすさ)とアドヒアランス:「薬代が大きな負担になっていませんか?」 保険の支払いに関わり得る年齢の変化については医師が確認を取るはずだが、保険内容に変更がある場合は必ず医師に伝えること。10. 感染症:「ワクチンは最新のものを接種していますか?また、それらのワクチンについて十分な情報を持っていますか?」11. 悪影響のある曝露:「喫煙、1日に1~2杯以上の飲酒、市販薬の使用、井戸水の摂取、空気や水の汚染が知られている地域に居住、これらの中に該当するものはありますか?」 毎回の診察は、喫煙、飲酒、市販薬の使用に関する問題を評価する機会となる。12. 健康の社会的決定要因:「住居、交通手段、医療や医療保険へのアクセス、身体的または精神的な安全性について心配がありますか?」 この論文の筆頭著者である米ミシガン大学アナーバー校のLinda Selwa氏は、「科学的研究への資金提供や医療へのアクセス改善などに向けた神経科医の継続的な取り組みは、国家レベルで脳の健康を改善する。われわれの論文は、脳の健康を個人レベルで改善する方法が数多くあることを示している。新年に脳の健康改善を決意することは、素晴らしい第一歩だ」とAANのニュースリリースで述べている。

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便秘が心不全再入院リスクと関連―DPCデータを用いた大規模研究

 心不全による再入院のリスクに便秘が関与している可能性が報告された。東京都立多摩総合医療センター循環器内科/東京大学ヘルスサービスリサーチ講座の磯貝俊明氏らの研究によるもので、詳細は「Circulation Reports」11月号に掲載された。 便秘は血圧変動などを介して心不全リスクを高める可能性が想定されているが、心不全の予後との関連を調べた研究は限られている。磯貝氏らは、便秘が心不全による再入院リスクに関連しているとの仮説の下、診断群分類(DPC)医療費請求データベースを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。 解析対象は、2016年4月~2022年3月に国内のDPC対象病院へ心不全のために初回入院し、生存退院した20歳以上の患者から、先天性心疾患、血行再建術や心臓移植が施行された症例、末期腎不全合併症例などを除外した55万6,792人(平均年齢80.0±12.3歳、女性49.2%)。退院時に下剤が処方されていた患者を「便秘あり」と定義すると22.0%が該当した。便秘あり群は高齢で(82.7±10.1対79.2±12.8歳)、女性が多かった(53.5対48.0%)。 主要評価項目として設定した「退院後1年以内の心不全による再入院」は、10万2,221人に発生しており、発生率は便秘あり群24.0%、なし群18.6%だった。副次評価項目として設定した「退院後1年以内の心不全による再入院および全ての再入院中の死亡」という複合エンドポイントは11万4,661人に発生し、発生率は前記の順に26.6%、20.6%だった。 60項目の共変量(年齢、性別、BMI、併存疾患、入院中の管理・治療、退院時処方薬、入院した年度、入院期間、退院時の日常生活動作〔ADL〕、病院の特徴〔大学病院か否か、年間心不全入院患者数〕など)を調整したCox比例ハザードモデルでの解析により、便秘あり群は便秘なし群に比べ、高い心不全再入院リスクと関連していた(調整後ハザード比〔aHR〕1.08〔95%信頼区間1.06~1.10〕)。また、死亡も含めた副次評価項目についても便秘と有意な関連が認められた(aHR1.09〔1.07~1.10〕)。 著者らは、本研究がDPCデータに基づく解析のため把握不能な臨床指標があること、退院後の増悪時に初回の入院先とは異なる病院に入院したケースを追跡できていないことなどを研究限界として挙げた上で、「心不全患者の便秘有病率は高く、便秘を有することは再入院リスクと関連している。今後の研究では、便秘に対する介入が再入院リスクの抑制につながるかどうかの検証が求められる」と総括している。 なお、便秘が心不全の増悪リスクを高める機序については、排便時のいきみによる血圧上昇、不快感のストレスによる交感神経系の亢進、便秘に伴う腸内細菌叢の変化を介した動脈硬化の進展などが考えられるという。

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フレイルの定義と対策

そもそも フレイルとはフレイルとは、「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」を表す “frailty” の日本語訳として日本老年医学会が提唱した用語である。自立フレイルは、要介護状態に至る前段階として位置づけられるが、頑健・健常フレイル加齢要介護身体的脆弱性のみならず精神・心理的脆弱性や社会的脆弱性などの多面的な問題を抱えやすく、自立障害や死亡を含む健康障害を招きやすいハイリスク状態を意味する。適切な対策で、健康な状態に戻ることも可能です。「フレイル診療ガイド 2018 年版」(日本老年医学会/国立長寿医療研究センター、2018)ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会  秋下 雅弘先生講演資料よりフレイル対策 3つの基本栄養運動社会参加ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会  秋下 雅弘先生講演資料よりフレイル対策 栄養朝、昼、晩バランスよく食べる。筋肉をつくる「たんぱく質」と骨の発育に大切な「ビタミンD」を摂る。栄養口の中を清潔に保ち、定期的に歯科を受診する。ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会  秋下 雅弘先生講演資料よりフレイル対策 運動ウォーキングや水泳などの「有酸素運動」。筋力トレーニングのような「レジスタンス運動」。運動体調や体力に合った運動を継続する。ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会  秋下 雅弘先生講演資料よりフレイル対策 社会参加休日は外出をして体のリズムを整える。趣味や習い事などの楽しみをつくる。社会参加人とのつながりをもち脳に刺激を与える。ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会  秋下 雅弘先生講演資料より

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妊娠可能年齢の女性と妊婦を守るワクチン 前編【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第7回

本稿では「妊娠可能年齢の女性と妊婦を守るワクチン」について取り上げる。これらのワクチンは、女性だけが関与するものではなく、その家族を含め、「彼女たちの周りにいる、すべての人たち」にとって重要なワクチンである。なぜなら、妊婦は生ワクチンを接種することができない。そのため、生ワクチンで予防ができる感染症に対する免疫がない場合は、その周りの人たちが免疫を持つことで、妊婦を守る必要があるからである。そして、「胎児」もまた、母体とその周りの人によって守られる存在である。つまり、妊娠可能年齢の女性と妊婦を守るワクチンは、胎児を守るワクチンでもある。VPDs(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで予防ができる病気)は、禁忌がない限り、すべての人にとって接種が望ましいが、今回はとくに妊娠可能年齢の女性と母体を守るという視点で、VPDおよびワクチンについて述べる。ワクチンで予防できる疾患(疾患について・疫学)妊娠可能年齢・妊婦にとってワクチン接種が重要な理由は下記3つである。(1)妊婦がVPDに感染すると、重症化しやすい感染症がある。また、胎児に感染すると胎児に健康問題が生じ、最悪の場合、流産/早産を含め、胎児の生命に関わることがある。(2)一方で、あらかじめワクチンで予防できていれば、高確率でVPDによる上記の事態を免れる。(3)しかし、妊婦は生ワクチンを接種できないため、「妊娠前」に(計画的な)接種が必要である。上記の理由以外に、妊婦が免疫をつけておくと新生児のVPD感染や、それによる重症化を予防することにもつながるVPDもある。つまり、女性1人のワクチン接種の有無が、その女性(妊婦)以外に、胎児、産後の新生児の健康問題にまで関りうるという点において、本稿の重要性は高い。妊娠前に免疫をつけておくべきVPDを表に示す。表 感染症に罹患した場合の胎児および母体への影響画像を拡大する上記以外のあらゆる感染症でも、流早産のリスクが伴うどのワクチンも世界的に安全性と有効性が確かめられているワクチンの概要(効果・副反応・生または任意・接種方法)妊婦に生ワクチンの接種は禁忌である。そのため妊娠可能年齢の女性には、事前に計画的なワクチン接種が必要となる。しかし、妊娠は予期せず突然やってくることもある。そのため、日常診療やライフステージの変わり目などの機会を利用して、予防接種が必要なVPDについての確認が重要となる。一方、不活化ワクチンは妊娠中でも接種が可能である(詳細は後編で詳述する)。以下に生ワクチン(麻疹、風疹、水痘、ムンプス)について説明する。1)麻疹、風疹、水痘、ムンプス(生ワクチン)これら4つの生ワクチンはしばしばMMRV(Measles Mumps Rubella Varicella)と略して表現されることが多い、重要性の高いVPDである。MMRVそれぞれのワクチンについての共通点としては、1歳以上でそれぞれ計2回の接種を受けていることが必要であることが挙げられる。また、感染症としても基本再生産数(R0)*1が高く、麻疹・水痘は空気感染するなど、その感染性の高さも共通項といえる(R0:麻疹12-18、風疹6-7、水痘8-10、ムンプス4-7)。いずれも子供の感染症であるという印象を持つ医師も少なくないかもしれないが、現代においては、小児は定期接種で予防されている割合が格段に増えた。そして、幼少期に定期接種になっていなかったがために、ワクチンを接種する機会がなく、かつ、感染機会もないまま、キャッチアップの機会に恵まれなかった、「置いてけぼりの成人」が主に罹患する感染症であると心得たい。*1基本再生産数(R0:アールノート)集団にいるすべての人間が感染症に罹る可能性をもった(感受性を有した)状態で、1人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表す。つまり、数が大きいほど感染力が強い。それぞれの疾患やワクチンの詳細については、本コンテンツのバックナンバーを参照していただきたい。MRワクチン(麻疹・風疹)水痘、帯状疱疹ワクチン流行性耳下腺炎(ムンプス)妊婦に関連する内容を下記に述べる。(1)麻疹麻疹は先進国でも死亡率0.1%の重症感染症である。また、命をとり止めたとしても、呼吸器(肺炎、中耳炎など)や消化器(下痢、口内炎)の合併症が多い。頻度は少ないが神経系合併症は予後不良で、感染してから数週間、数年、数十年後に発症するものもある。胎児が麻疹に感染しても奇形などを来すことはないが、妊婦が感染することで、妊婦の重症化やそれに伴う流・早産のリスクが伴う。わが国での麻疹発生数は、コロナ禍はその感染対策の影響で年間10例以下であったが、いわゆる「コロナ明け」に伴いその数は徐々に増加傾向にある。世界全体では継続的に毎年12~15万人の死者が出ている。麻疹感染の発端はそのほとんどが輸入麻疹(海外から持ち込まれた麻疹のこと:日本人が渡航先で感染して帰国するパターンや、麻疹に感染した海外の人がわが国で発症するパターンなどが代表例)である。インバウンド(海外からの旅行客)が確実に回復し、増加傾向である以上、再度感染者数が増えるのは想像に難くない(図)。図 麻疹累積報告数の推移 2017~2024年(第1~47週)画像を拡大する感染症発生動向 2024年第47週(2024/11/27) 国立感染症研究所より引用麻疹の年代別感染者の割合は、例年20~30代が約半数以上を占めており、女性では妊孕性の高い年代といえる。2000(平成12)年4月2日以降に生まれた人(2024年4月1日時点で23歳以下)は、予防接種制度で2回のワクチン接種を推奨されていた年代であるが、それ以外(24歳以上)は、接種回数が不足している可能性がある*2。妊娠可能年齢の女性には、日常診療での積極的なワクチン接種歴の確認が望ましい。*2 2008(平成20)年4月1日から行われた特例措置(5年間)では、1990(平成2)年4月2日~2000(平成12)年4月1日生まれの人に対して、MRワクチン2回目接種が行われた。そのため、この24~33歳(2024年4月1日時点)で特例措置を受けている人は2回接種していることになる。(2)風疹妊婦が妊娠初期に風疹に感染すると、高い確率で胎児にも感染し、先天性風疹症候群(Congenital Rubella Syndrome:CRS)の赤ちゃんが生まれる可能性がある。CRSの3大症状は、難聴、心疾患、白内障だが、その他、精神や身体の発達の遅れなどもある。感染時期が、妊娠初期であればあるほど胎児に異常が認められる確率は高くなるが、妊娠20週以降では異常がないことが多いと報告されている1)。また、成人でも15%程度不顕性感染があるため、母親が無症状であってもCRSは発生し得ることにも留意したい。2012~13年の風疹大流行時には45例のCRSの赤ちゃんが生まれた。その後のフォローアップ調査でCRS児の致命率は24%、CRSを出生した母親の中で風疹含有ワクチンを2回接種した人は0人であった2)。CRSを出生した母親の多くは、単に「風疹ワクチンの必要性や重要性について知らなかった」「誰かが教えてくれていたら…」という、自身の無知に対する後悔の念を述べている3)。妊娠可能年齢の女性やそのパートナーへの事前の情報提供がいかに重要か、また、他人事ではなく、自分事として考えることの難しさについて考えさせられる体験談をぜひご一読頂きたい。なお、風疹流行時の首座は、幼少期に予防接種の機会がなかった40~50代の成人男性である。その年代に対して2019年4月から実施された風疹第5期定期接種は2024年度末まで延期されたが、2024年11月時点で抗体検査を受けた人は500万人弱(対象男性人口の32.4%)、ワクチン接種を受けた人は107万人強(対象男性人口の7.0%)*3と、目標には程遠い結果である。残りの期間(抗体検査は2月末、定期接種は3月末まで)でどこまで接種率が伸びるか、これにはわれわれ医療従事者の啓発力が試されるかもしれない。*3 風疹に関する疫学情報 2025年1月29日現在(3)水痘水痘は2014年10月に1~2歳児での2回の接種が定期接種化され、患者数は大幅に減少した。しかし、そんな中でも国立感染症研究所(感染研)のレポートでブレイクスルー水痘による集団感染事例が報告されるなど、気が抜けない感染症である。水痘は小児に比し、成人で重症化しやすく、中でも妊婦は重症化しやすいハイリスク者である。風疹は妊娠初期の感染でCRSとなるリスクが高いと述べたが、水痘は妊娠中だけでなく、周産期の母児に対しても大きな影響を及ぼす。たとえば、水痘に対する免疫がない妊婦が妊娠中に初感染すると、10~20%で水痘肺炎を発症し、時に致死的となる。その他、妊娠中期の感染で胎児が先天性水痘症候群(Congenital Varicella Syndrome:CVS)を発症するリスク(2%程度の頻度で出生)があり、周産期(分娩5日前~2日後)では重篤な新生児水痘を生じ得る。妊娠前のブライダルチェックなどで、麻疹・風疹についてはよく議論に上がりやすいが、水痘はなぜか忘れられがちである。妊娠前に接種記録を確認し、1歳以降で2回の接種歴が確認できない場合は不足分の接種を推奨したい。次回、後編では、不活化ワクチンなどの概要、接種のスケジュール、接種時のポイントなどを説明する。参考文献・参考サイト1)病原微生物検出情報 (IASR) 先天性風疹症候群に関するQ&A(2013年9月)2)2012~2014年に出生した先天性風疹症候群45例のフォローアップ調査結果報告. 国立感染症研究所.3)体験談「妊娠中に風疹になって~予防の大切さを伝えたい!~」(風疹をなくそうの会 「hand in hand」)講師紹介

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認知症リスク因子のニューフェイス【外来で役立つ!認知症Topics】第26回

Lancetが報告した修正可能な14のリスク因子世界的な医学雑誌Lancetは、2017年から認知症のリスク因子について最先端のデータを発表してきた。第2報告は2020年、そして最新報告は2024年に発表された1)。これら3回の報告の内容は少しずつ変化してきた。なお、示された結果は、この作業部会が継続的に最新の報告などを吟味してその結果をまとめたものである。それだけに古典的なリスク因子、たとえば運動不足、教育不足、飲酒や喫煙といったもの以外に、いわばニューフェイスが現れてきた。そのようなものとして最も有名なのは2017年の発表2)でデビューした「中年期からの難聴」だろう。また、大気汚染、最新の報告では視力低下と低密度リポタンパク質(LDL;Low Density Lipoprotein)コレステロールの高値が加わった。そして2024年の報告にある14のリスク因子のすべてに対応できたら、認知症発症は45%抑制できるとされる。画像を拡大する本稿では、こうしたリスク因子がなぜ悪いのかに注目してみる。古典リスク因子として、まず若年期の教育不足。これは基本的な神経回路の成長が十分なされないということだろう。中年期のリスク因子については、頭部外傷と難聴以外は、脳血管に悪影響を及ぼすとまとめられるだろう。頭部外傷に関しては、ボクサー脳などさまざまなスポーツ外傷や交通事故による後年の害が知られてきた。外傷から10年以上も後に、認知症が発症してくるとされる。また老年期のうつ、社会的交流の乏しさについては、社会的な存在である人間がそれらしい活動を失うということかもしれない。運動不足については、神経細胞や脳血管の新生につながらないことが大きいのだろう。さらに糖尿病では、インスリンとアミロイドβの両方を分解するインスリン分解酵素が注目されてきた。大気汚染比較的新しいリスク因子の大気汚染については、PM2.5(PM;Particulate Matter)が注目されている。これは大気中を浮遊する径2.5ミクロン以下の微粒子であり、従来は呼吸器系や循環器系への悪影響が注目された。これは脳にも悪影響を及ぼすとされる。また近年では大気汚染は、地球の温暖化や緑地の減少などと相乗的な悪循環を形成するといわれる。中年期からの難聴さて2017年にいわば衝撃のデビューをした「中年期からの難聴」だが、この発表中の全リスク因子のうちで最も影響が大きいと報告された。2024年の報告でも影響力7%とやはり最強である。このような難聴がなぜリスク因子になるかについての考え方は、以下のようにまとめられている3)。(1)蝸牛とその上行経路(難聴)および海馬など側頭葉内側(認知症)のいずれもアルツハイマー病病理で侵される。(2)難聴による音刺激の欠乏が1次聴覚野と海馬の形態変化をもたらし認知予備能を減らすことで準備状態を作る。(3)本来記憶などの認知機能に費やすべき知的エネルギーを、難聴者は聴覚理解に回す必要がある。(4)聴覚的理解用のエネルギー増加がシナプスに悪影響する。より単純ながら、聴覚刺激が入らないことは、たとえば社会交流をしても脳に対する重要な刺激が届かないことになるという考えもある。高LDLコレステロール2024年には新たなリスク因子についても報告された1)。まず生化学的な知見として、中年期からの「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールの高値である。これは以前から脳動脈硬化の促進因子として有名であった。つまり動脈を詰まらせ、柔軟性を低下させる堆積物であるプラークの構築に寄与するため悪玉と呼ばれる。このLDLコレステロールが100以上、また「善玉コレステロール」といわれるHDL(High Density Lipoprotein)コレステロールのレベルが40以下の場合、アルツハイマー病(AD)発症の可能性が増加するとされる。AD発症のリスクを高めるだけでなく、「悪玉コレステロール」は脳の一般的な認知機能を損なうこともわかっている。またLDLコレステロール値が高いと、そうでない人に比べて記憶に障害がありがちで、脳動脈がアテローム性動脈硬化症を発症して脳卒中のリスクを高める。さらにLDLコレステロール値が高くなることで、脳内の血流が減少し、白質の密度が低下する状態につながる可能性もある。視力低下次に老年期の視力低下である。その原因では、白内障と糖尿病性網膜症が重視され、緑内障と加齢性黄斑変性症は関連しないとされる。英国では200万人が視力低下していると推定される。加齢とともに視力障害は多くなるだけに、視力障害を持つ人々のほぼ80%は65歳以上である。視力低下の程度と認知症のリスクは相関する。もっともこれは未矯正・未治療の視力喪失者には当てはまり、矯正・治療すればリスクは高まらない。たとえば、白内障の手術をした人は、しない人に比べて認知症になる可能性が30%低いとした報告もある。ところで、ヒトの情報の80%は目から入る、それに対して耳からは20%以下だといわれる。だから筆者には、視力喪失がリスク因子とされたのが遅いとも思われるのだが、聴覚と視覚が認知症という大脳の変化にもたらす影響は、それぞれが持つ情報量とは別なのかもしれない。参考1)Livingstone G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.2)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care. Lancet. 2017;390:2673-2734.3)Ray M, et al. Dementia and hearing loss: A narrative review. Maturitas. 2019;128:64-69.

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いよいよ本丸!病態把握と鑑別にChatGPTを使う【誰でも使えるChatGPT】第2回

皆さん、こんにちは。近畿大学皮膚科の大塚です。前回は、Googleレビューの辛辣なコメントに、ChatGPTを用いて感情的にならずに対応するためのプロンプトをご紹介しました。クリニックに寄せられる不条理なクレームに対して、冷静かつ誠実な回答を自動的に生成することで、医療現場の負担を軽減する活用法を提案しましたが、いかがでしたでしょうか。さて、今回はシリーズ第2回として、より直接的な臨床場面での活用例をご紹介したいと思います。前回は「口コミ対応」に焦点を当てましたが、今回は日常の診療行為、つまり「病態把握と鑑別診断」を助けるためのプロンプトです。医療現場では、患者さんの主訴や随伴症状などを総合的に判断し、鑑別診断を考える作業が不可欠です。とりわけ皮膚科では、「似ているものの、まったく異なる疾患」が多く存在し、一般内科や他科領域に及ぶ症候を伴うことも少なくありません。こうしたとき、ChatGPTに相談することで、見落としがちな疾患や、一般的な鑑別疾患を素早くリストアップすることができます。もちろん、最終的な責任は医師である私たち自身にあり、AIが示す情報をうのみにしてはなりません。しかし、情報整理の一助として、あるいは診断プロセスを考える際の「ブレーンストーミング・パートナー」として、ChatGPTを使う手はあると思います。関連サイトChatGPT(臨床症状)から考えられる鑑別診断は?ここで、(臨床症状)の部分には、実際に手元にある患者さんの主訴や身体所見を具体的に入力します。たとえば、「顔面に境界明瞭な紅斑が出現し、そう痒と軽度の落屑を伴う」といった皮膚症状を入力することで、ChatGPTはその記述を基に鑑別診断リストを提案してくれます。20代女性、頬部に2週間続く境界明瞭な紅斑と軽度の落屑があり、そう痒感を訴えています。皮疹は環状を呈し、拡大傾向にあり、中心部はやや色素沈着が生じています。このような臨床所見から考えられる鑑別診断を、一般的な皮膚科疾患を中心に列挙し、それぞれの疾患について特徴的な所見や鑑別のポイントを簡潔に示してください。以下がChatGPTからの想定回答例です。この症例の臨床所見(頬部の境界明瞭な紅斑、軽度の落屑、そう痒感、環状の拡大傾向、中心部の色素沈着)から考えられる主な鑑別診断を以下に列挙し、それぞれの特徴的所見と鑑別ポイントを示します。白癬(体部白癬)環状紅斑、辺縁部の微細落屑が典型的。KOH検査で菌要素の確認が可能。乾癬境界明瞭な紅斑と落屑が特徴だが、環状配列はややまれ。肘・膝伸側や頭皮も要注意。紅斑性狼瘡(頬部紅斑)蝶形紅斑など特有の分布があり、日光過敏症や関節痛など全身所見を確認。類乾癬(pityriasis rosea)クリスマスツリー様配列や母斑を確認。軽度のそう痒が多い。多形滲出性紅斑病変がターゲット状を呈することある。他の全身症状や粘膜病変の有無もチェック。脂漏性皮膚炎頭皮や鼻唇溝など脂漏部位での落屑性紅斑が多いが、環状になることは少ない。こちらの頭の中になかった鑑別診断や、追加で確認すべき検査所見を思い出すきっかけになります。また、これに「鑑別を絞るために必要な追加情報」や「検査のオプション」などを尋ねるプロンプトを続けて入力することで、さらに洗練させることができます。今回のプロンプトは、クリニックや病院で日々行われる「鑑別診断の初期スクリーニング」をサポートするためのものです。ChatGPTを医師の「セカンドオピニオン的な存在」として活用することで、見落としを減らし、より効率的で的確な診療プロセスを追求する手掛かりとなるでしょう。次回からは、さらに一歩進んで、治療戦略やガイドラインに基づくマネジメントプランをChatGPTに助言させる活用法など、より専門的な使い方をご紹介していく予定です。お楽しみに。

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第251回 “タカる”厚生労働省(前編) 「課税のような形で製薬企業に拠出義務」の創薬支援基金(仮称)構想、最終的に財源は国費と「任意」の寄付で決着

創薬と医師偏在の2つの施策で民間に資金拠出を求めるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、神奈川県の丹沢山塊にある鍋割山に足慣らしに行ってきました。鍋割山と言えば、山頂にある小屋で出す「鍋」にちなんだ鍋焼きうどんが有名です。我々も売り切れ前に食そうと、午前9時前には麓の大倉に着いて歩き始めたのですが、登山道前の林道歩きが結構長く、登り始める前に少々飽きてしまいました。それでも、昼前には山頂に到着、名物の鍋焼きうどんと富士山の眺望を楽しむことができました。それにしてもこの山、鍋焼きうどんがなかったらその魅力は半減というか3分の1かもしれません。夏季はヤマビルがうようよいますし……。というわけで、登るのは春か晩秋がお薦めですが、春の週末は大混雑で鍋焼きうどんの売り切れ時間も早まるようです。登られる方はご注意を。さて今回は、厚生労働省の“タカり”とも取れる最近のいくつかの動きについて書いてみたいと思います。一つは、厚生労働省が創薬スタートアップ育成に向けて「創薬支援基金(仮称)」を作ろうと画策し、製薬企業に強制的に資金拠出を求めようとした”事件”です。そしてもう一つは、昨年末に厚労省が決定した「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」の中の「経済的インセンティブ」の対策で、「重点医師偏在対策支援区域における支援のうち、当該区域の医師への手当増額の支援については、全ての被保険者に広く協力いただくよう保険者からの負担を求める」と、保険者(健保組合等)からの資金拠出を求める決定をしたことです。どちらも厚生労働省の医政局マターです。どうしてこんなタカり(ある経済誌は「国家的な”カツアゲ”」と表現)まがいの施策が続くのでしょうか?武見 敬三前厚生労働相が突然明かした「創薬力強化機構」構想「創薬支援基金(仮称)」の構想が表沙汰になったのは昨年末でした。2024年12月11日付の日刊薬業は、「創薬力強化機構、日本橋に設置へ 武見前厚労相、来年1〜2月にも」という記事を掲載、武見 敬三前厚生労働相が12月10日に都内で開かれたイベントで「創薬力強化機構」の構想を明かしたと報じました。同記事によれば武見氏はこの機構について「創薬に特化して、シーズに関わる研究開発力を強化するためのファイナンスの仕組み」と語ったとのことです。この機構の構想については、12月17日付の「日経バイオテク」が配信した「武見前厚生労働相、『創薬基盤の強化に向け、2025年1月下旬から2月に『創薬力強化機構』を設立する』」と題するインタビュー記事がもう少し詳しく報じています。同記事によれば、武見氏は、「官民が連携して、創薬の基盤を我が国に再構築することを目的」として「創薬力強化機構」を創設すると語り、「そのために必要な基金を設立することを目指して、2025年の通常国会に法案を提出するべく、現在検討の最終段階」で、「比較的自由度の高い組織体にするため、一般社団法人として設立する予定」と語っています。そして、「機構への出資企業は既に決まっているのか」という記者の質問に対して、「これからのことなのでまだ分からないが、日本の製薬企業はそれほど積極的に乗ってきているわけではないだろう。日本の製薬企業は、基本的に個社で対応しようとする傾向があるのと、1社当たりの資本が大きくはないからだ」と話していました。米国研究製薬工業協会と欧州製薬団体連合会が資金拠出を半ば強制的に求められていると明かすこの時点での武見氏の一見余裕ありそうな発言からは、厚労省担当者(医政局医薬産業振輿・医療情報企画課)が関係企業や関係団体を回って、機構設立に向けての資金集めを着々と進めていたと想像できます。しかし、世の中はそうは甘くなかったようです。12月25日に米国研究製薬工業協会(PhRMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)が突然共同声明を出し、厚生労働省から「創薬支援基金(仮称)」への資金拠出を半ば強制的に求められていることに対し、強い反対を表明したのです。「2025年度(令和7年度)薬価中間年改定、費用対効果評価 及び義務的な創薬支援基金に関する共同声明」1)と題されたこの声明は、その前半で「岸田政権は、日本のエコシステムを回復し、ドラッグ・ロスを防止するための重要な第一歩を踏み出した」ものの、石破政権になってからの方針転換で2025年度中間年改定において革新的医薬品の薬価引下げのルールが拡大、「予期せぬ決定により、企業の中には、10年以上前から長らく策定してきた綿密な投資回収計画の見直しを迫られ、数百億円もの損失を被る可能性がある」と中間年改定の政策を強く批判しています。そして後半で、「私たちは、最近になって、政府が『創薬支援基金(仮称)』を創設」しようとしていることを知ったが、その仕組みが「新薬創出等加算品目(日本において臨床的に革新的な医薬品として厚生労働省が加算を付与したもの)を有する企業の収益に応じ、課税のような形で強制的に拠出義務を課すことで、開発初期段階のパイプラインを有するスタートアップ企業を支援する意向」であることから、「市場の魅力を更に低下させることになる当該『創薬支援基金(仮称)』への投資を企業に義務付けることに反対します。活力のある投資環境の創出は、義務・命令によって達成できるものではありません。今回の決定は、日本が創薬力の低下とドラッグ・ロスを生じさせた道に再び後退させるものです。(中略)私たちは、厚生労働省がこの度決定した誤った政策を撤回するまでの間、これらの取組みへの参加を留保することと致しました」と、この基金への参加の留保を表明したのです。AMEDだけでは不十分というのが武見氏、そして厚労省の考え「企業の収益に応じ、課税のような形で強制的に拠出義務を課す」というのは、どう考えても筋の悪い政策で、確かにいただけません。製薬会社から批判が出るのも頷けます。ところが、12月の時点で表立った批判がPhRMAとEFPIAからしか出てこなかったというのも、なかなか興味深いものがあります。日本の製薬企業も厚労省から同様の説明、要請を受けていたはずだからです。「お上(厚労省)の言うことには逆らえない」と考えていたのかもしれません。あるいは、この構想のそもそもの発案者の一人が中外製薬の永山 治名誉会長であることも、無碍に反対できないという忖度を招いたのかもしれません。ちなみに、1月7日付の日刊薬業は、日本製薬団体連合会の岡田 安史会長(エーザイ代表執行役)が同紙のインタビューで、「日本製薬工業協会が昨年11月末ごろに厚生労働省から『創薬支援基金(仮称)』に関する説明を受けたことを明らかにした」と報じています。同記事によれば、「岡田会長は、政府が日本の創薬エコシステム強化に向けた姿勢を示していることは評価しつつも、基金の具体的な運営方法や組織体制、拠出の在り方などについては、製薬業界と十分に議論し、合意を形成しながら進めてほしいと訴えた」と書いています。外資系企業とはまったく異なる厚労省寄りの発言と言えます。「創薬支援基金(仮称)」はスタートアップやベンチャーへの支援を目的としていますが、同様の役割を担う機関として内閣府所管の国立研究開発法人・日本医療研究開発機構(AMED)があります。AMEDだけでは不十分というのが武見氏、そして厚労省の考えだったようです。当初の「創薬力強化機構」構想は潰え、「革新的医薬品等実用化支援基金」で決着結局、この「創薬支援基金(仮称)」構想、最終的に「革新的医薬品等実用化支援基金」という名称で、10年間の基金を設立することになりました。同基金はスタートアップ向けのインキュベーションラボや動物実験施設などに資金を出すとのことです。財源は国費のほか、製薬会社からの「任意」の寄付を募るということで決着、当初検討していた製薬会社に強制的に拠出義務を課す案は見送られました。革新的医薬品等実用化支援基金は国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所に2026年度に設置予定で、関連法案(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案)が2月12日閣議決定され、今国会に提出されています。2月12日付の日経バイオテクは「白紙に戻った『創薬力強化機構』構想」と題する記事を配信、厚労省が義務的な拠出金は諦めたことや、2月4日の国民民主党の衆議院議員の質問主意書に対する政府答弁で創薬力強化機構構想について「『政府によって設立』することは検討していない」と否定的な見解が示されたことなどで、この構想は「事実上、白紙に戻ったと業界では受け止められています」と書くとともに、「インキュベーション施設や動物実験施設の整備に活用するといった計画が聞こえていますが、基金でないとできない事業なのかどうか、判然としない印象です。(中略)業界関係者は、『厚労省は、日本の創薬力強化に向けて機運を高めてきたのに、突然出てきた基金と機構の構想で全部ぶち壊しになった感じだ」と嘆いていました。今回の騒動は、今後の創薬力強化の取り組みに長く傷痕を残す可能性もあります』と今回の一連の流れを総括しています。創薬について疎い私などは、AMEDを単純にテコ入れするという施策ではダメだったのかと思うのですが、そうはならなかった(あるいはしたくなかった)ところに、本来の「創薬力アップ」という目的とは別の政治家、政党、省庁間の微妙な力関係が垣間見えます。次回は、厚労省のもう一つの”タカリ”政策とも言われている、医師偏在是正のための「経済的インセンティブ」の対策における、保険者からの資金拠出を求める決定について書いてみたいと思います。(この項続く)参考1)2025年度(令和7年度)薬価中間年改定、費用対効果評価 及び義務的な創薬支援基金に関する共同声明/米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)

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クロルヘキシジン含浸ドレッシング材はCVC関連感染症予防に有効【論文から学ぶ看護の新常識】第3回

クロルヘキシジン含浸ドレッシング材はCVC関連感染症予防に有効クロルヘキシジン含浸ドレッシング材は中心静脈カテーテル(CVC)関連感染症予防に有効であり、組織接着剤は固定の持続時間を延長させる効果が示された。Hui Xu氏らによる研究で、International Journal of Nursing Studies誌の2024年1月号に掲載された。中心静脈カテーテル関連合併症予防のためのドレッシング材および固定器具の有効性:システマティックレビューとメタアナリシス研究グループは、CVCに関連する合併症を予防するためのドレッシング材および固定器具の効果を、システマティックレビューとメタアナリシスで評価した。46のランダム化比較試験(RCT)が含まれ、対象者は1万54例。主な評価指標をカテーテル関連血流感染症(CRBSI)、カテーテル先端の細菌感染、皮膚の刺激や損傷、固定の失敗率などとした。コクランの基準に従って、Cochrane Wounds Trials Registerなど6つのデータベースを2022年11月まで検索。ランダム効果モデルでメタアナリシスを実施。クロルヘキシジン含浸ドレッシング材は、従来のポリウレタン製ドレッシング材と比較して、CRBSIの発生率を低減する可能性が示された(リスク比[RR]:0.60、95%信頼区間[CI]:0.44~0.83、低確実性)。また、クロルヘキシジン含浸ドレッシング材は、カテーテル先端の細菌感染も減少させる可能性がある(RR:0.70、 95%CI:0.52~0.95、非常に低確実性)。組織接着剤については、ドレッシング材と比較して、皮膚刺激のリスクを増加させる可能性があるが(RR:1.88、95%CI:1.09~3.24、低確実性)、固定の持続時間を延長する効果もあった(平均差[MD]:43.03時間、95%CI:4.88~81.18、中等度確実性)。臨床現場での適切なデバイス選択の指針として役立つ結果が得られた。ドレッシング材と組織接着剤を用いたCVC固定について言及した論文です。まず、クロルヘキシジン含浸ドレッシングは感染率を下げるというのは、みなさん納得の結果でしょう。組織接着剤の論争の背景の一つとして、原材料のシアノアクリレートにはホルムアルデヒドが含まれており、炎症を誘発することからも、この論文を含むさまざまな議論が行われています。この背景知識からも予想できるように、当然の結果とも言える皮膚刺激となる可能性、固定の持続時間を延長する効果が示されました。この研究の考察で述べられているのですが、どの固定がよいか(組織接着剤を用いた方がよいかなど)に関しては、エビデンスを示せるレベルに達していません。その根拠は、一部の研究に結果が引っ張られているような状況が生じています。よって、今後どちらがよいかは大きく変わってくる可能性があります。臨床看護師の感覚のように、その場その場に応じて固定方法を考えていくことが今は大事だということがある意味示されているように思います。1点注目すべきは、心臓外科術後の状態においては、CVC固定は縫合を行わず組織接着剤の固定を行っていたが、安全性の理由から縫合を行うようになっているような研究があり、この研究はこの領域では比較的規模が大きい研究であることからも、心臓外科術後の固定は縫合が必要と考えさせられる結果でもあります。論文はこちらXu H, et al. Int J Nurs Stud. 2024;149:104620.

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