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2012年度10大ニュース~心房細動編~ 第1位

解説者のブログのご紹介『心房細動な日々』国内海外国内1位 多学会、多科、多職種にまたがる連携がますます必要にこれまで見てきたように、とくに抗凝固療法においては、循環器系の学会だけでなく、神経内科、血液内科、消化器内科、歯科など多科にわたる連携の動きが見られるようになっています。前述の消化器内視鏡診療ガイドラインの策定メンバーもそうですが、たとえば日本循環器学会、日本脳卒中学会、日本血栓止血学会などでは、それぞれの分野のエキスパートが出席してのシンポジウムが増えています。心房細動患者の増加とともに、プライマリ・ケア医の抗凝固療法に占める役割はますます大きくなり、プライマリ・ケア医と専門医との連携もさらに重要さを増していくでしょう。血栓と出血というリスクのバランスをどう考え、どう対処するか。この問題は単に医師間で調整する問題ではなく、もちろん患者さんと医師、医療者との間でどう合意形成をするかの問題です。そこに看護師、薬剤師も含めた多職種で関わって行くことが、今後ますます必要になってくると思われます。海外1位 ESCガイドラインの改定~抗凝固薬の敷居を明確に規定1位は何といっても、昨年(2012年)8月に欧州心臓病学会(ESC)の心房細動マネジメントガイドライン1)がアップデートされたことです。このガイドラインの最大の特徴は、抗凝固療法の敷居が低く設定されたということです。従来頻用されていたCHADS2スコアは姿を消し、CHA2DS2-VAScスコア1点以上の患者のほとんどに抗凝固薬が推され、しかもより新規抗凝固薬に推奨度の重みが付けられたものとなっています。一方で同スコア0点(女性のみが該当する例も含む)には抗凝固療法は推奨されないことも明確に述べられています。もうひとつ同ガイドラインの特徴は、今回も「65歳以上の患者における時々の脈拍触診と、脈不整の場合それに続く心電図記録は、初回脳卒中に先立って心房細動を同定するので重要」と改めて強調するなど、プライマリ・ケア医の視点に立ったものであるということです。新規抗凝固薬を推し過ぎの感もありますが、今後の抗凝固療法の方向性を明確に示した、必読のガイドラインと思われます。 また米国胸部専門医学会(American College of Chest Physicians ;ACCP)の抗血栓療法ガイドラインやカナダの心血管協会(CCS)のガイドラインも改訂されていますが、いずれも抗凝固薬の適応を拡大する内容になっています。 来年度はいよいよ日本のガイドライン改訂が待たれるところです。1)Camm AJ, et al. Europace. 2012; 14: 1385-1413.

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募集した質問にエキスパートが答える!心房細動診療 Q&A (Part.1)

今回は、4つの質問に回答します。「高齢者への抗凝固療法」「抜歯、手術、消化器内視鏡時の抗凝固療法」「新規抗凝固薬の違い、使い分け」「新規抗凝固薬のモニタリング」新規抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)の違い、使い分け方法について教えてください。確かに大変気になるところです。新規抗凝固薬は超高齢社会に突入した日本において、今後ニーズが高くなる薬剤でしょう。新規抗凝固薬はいずれもワルファリンを対照薬とした臨床試験によって、その効果と副作用が明らかになりました。しかしながら、この3つの新規抗凝固薬は、機序や内服回数が異なるうえ、いずれも異なる臨床背景を持つ症例を対象に臨床試験が行われています。いわば「土俵」が違うのです。このため、3剤の使い分けの指針はありません。下記に示す表1に従って禁忌症例に注意し、腎機能によって投与量を選択するとともに、薬剤特有の副作用に注意してください。たとえば、ダビガトランに特有の副作用はディスペプシアです。コップ一杯の水とともに内服するようにし、それでもディスペプシアの症状が出る場合は、プロトンポンプ阻害薬や消化管運動賦活剤(イトプリド塩酸塩、商品名:ガナトンなど)などが有効であるとも聞きます。表1.新規抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)の違い、使い分け画像を拡大するなおアピキサバンは、「80歳以上、血清クレアチニン(Cr)1.5 mg/dL以上、体重60kg以下」のうち2項目以上に該当する場合は低用量(1回2.5㎎を1日2回)とするよう記載があります。新規抗凝固薬はまだ十分な使用経験がないので、出血事象が危惧されるような高齢者、低体重者、腎機能低下者、抗血小板薬併用者を避け、このような因子が複数ある場合にはワルファリンを使用するべきと思います。心不全などで利尿剤を服用している場合は腎機能が大きく変動することがあります。まず、安全性の高い症例への投与経験を積んで持ち寄ることが重要と思います。新規抗凝固薬のコントロール指標、検査の間隔、薬剤量調節方法について教えてください。表1に一般の病院や医院で測定可能な出血モニター指標をまとめました。凝固線溶系マーカーの基準値は試薬によって異なるため、外注の場合は同一ラボに依頼すべきでしょう。検査の間隔についてのエビデンスは少ないようです。ただし、少なくともワルファリンのように毎月測定する必要はありません。腎機能が保たれている場合には年に1~2回の採血で良いのではないでしょうか。高齢者や利尿剤を内服している場合には、腎機能の悪化によって新規抗凝固薬の効果が高まることも予想されるため、もう少し頻回に調べるべきでしょう。ダビガトランはaPTTでモニターします。心臓血管研究所の報告ではaPTT値は個人差が大きく、低用量(220mg/日)であっても、~70秒に延長する症例もあるようです。多くの症例では、内服2~3時間後の血中濃度ピーク時に測定すると45~50秒位となり、トラフ時は~40秒となるようです。内服開始1週間以内にピーク時を狙って1度は測定し、aPTT高値例では減量やワルファリンへの切り替えを検討するべきでしょう。リバーロキサバンのモニターはPT-INRで行います。内服2~3時間後位のピーク時のPT-INRは~2が多いようですが、中には2.5を超えることもあります。PT-INRが2を常時超えるとなると出血事象が増加すると思いますので、その際には減量かワルファリンへの切り替えが良いと思います。アピキサバンも理論的にはPT-INRが指標になりますが、リバーロキサバンと比べてPT-INRはあまり上がらないようです。まずは、安全性の高い症例に投与してその経験を持ち寄り、日本人のエビデンスをつくることが重要と思います。高齢者への抗凝固療法について薬剤選択や投与量の注意点、決定方法について教えてください。また、何歳まで抗凝固療法を行うべきか(効果はあるか)? 逆に、何歳で抗凝固療法をやめるべきでしょうか? 教えてください。大変悩ましい問題です。ワルファリンは、Net clinical benefitの考えで計算すると、若年者より高齢者の方が塞栓症の予防効果が高く算出されます。しかしながら、超高齢者に継続投与するのが現実的かどうか、症例ごとの判断が必要でしょう。私の外来でワルファリンを処方している最高齢者は88歳の発作性心房細動の男性で、CHADS2スコア2点です。この方は78歳時に前医によってワルファリンが開始され、その後も続けています。ADLは保たれ、内服薬の自己管理は完璧で、幸いこれまで出血事故は経験していません。対照的な症例として、3ヵ月前にワルファリンを中止した75歳の女性がいます(CHADS2スコア2点)。この方は70歳時にワルファリンが開始されましたが、2年間に3度の出血事故を起こしたために中止しました。老老介護のため内服管理が困難で、決められた錠数が守れなかったり、転倒して眼窩出血を起こしたりしたほか、感冒や感染で抗炎症剤や抗生剤を長期連用して消化管出血と鼻出血で来院したなど、を経験しました。逆説的ですが、出血の既往は大出血の危険因子です。何らかの出血事象を経験した症例は、その後も出血を繰り返す確率が上がります。高齢者に抗凝固療法を開始する場合には(個人的には私は80歳が1つのラインかと思っていますが・・・)、全身状態やADL、認知症の有無などを総合的に判断し、家族を含めた話し合いを行うべきでしょう。抜歯、消化器内視鏡検査時や外科的手術施行時に、抗凝固療法はどのようにするべきでしょうか? 教えてください。外科的処置の侵襲度と患者さんのCHADS2スコア、とくに塞栓症既往の有無などを勘案しなければいけません。抜歯の際にワルファリンを中止すると1%の確率で塞栓症を発症するとされます。このため、ワルファリンは中止しない、あるいは若干の減量で対処し、PT-INRが2未満となったことを確認して抜歯していただくとよいと思います。もちろん、日頃のPT-INR値が1.6位と低い場合にはそのまま抜歯が可能でしょう。しかし、地域によっては歯科医院の数に限りがあり、ワルファリンを中止しないと治療は行わないとする先生もあると聞いています。その際には、ワルファリンを中止したらとくに脱水に留意するとともに、止血が確認できたら速やかにワルファリンを(中止前の錠数で)再開するなどの処置をとってください。CHADS2スコアが高い場合には、紹介入院の下で処置をお願いすることも考えてください。ビガトランの場合は、薬剤半減期が短いので治療の1日前に中止すれば血中濃度が下がりますが、腎機能が低下している場合には2日前に中止することが推奨されます(図1)。しかしながら、塞栓症リスクの高い場合は、1日完全にやめてしまうことに不安を感じます。そのような場合には、血中濃度が下がっている時間帯に治療を行うとよいでしょう。朝食後の内服を中止し午前中に抜歯し、就寝直前に1回内服する。あるいは朝食後に内服した場合は、午後の遅い時間帯に抜歯し、就寝直前に2回目を内服する、などの方法により止血困難な時間帯を避けられるのではないかと考えます。リバーロキサバンの場合は、内視鏡による生検や内視鏡下での観血的処置を実施する場合には、処置当日のみ中止し、その翌日より再開するとよいとされます(図2)(手技終了後に出血のないことを確認し、さらに後出血の危険がないと考えられる時点で速やかに再開する)。2012年(平成24年)7月に日本消化器内視鏡学会から、「抗血栓薬服用患者に対する消化器内視鏡診療ガイドラン」が刊行されました。抗血栓薬を継続して使用することによる消化管出血だけでなく、休薬による血栓塞栓症発症にも配慮されています。ただし、消化管出血に対する緊急内視鏡には適応されません。下記に抗凝固薬服用者の治療の流れを示します(図3、4)。内視鏡検査の侵襲度に応じて「休薬なし」から「ヘパリン置換」まで変わります。PT-INRが治療域越えの場合には治療域に入ったことを確認してから検査とするようご配慮ください。また施設によっても対処が変わるかと思います。科をまたいだ連携が必要でしょう。他に抗血小板薬を用いる場合も掲載されておりますが、紙面の都合上割愛致しました。図1.手術等を行う場合の中止手順画像を拡大する図2.抜歯等の侵襲的処置を行う場合の対応画像を拡大する図3.フローチャート画像を拡大する図4.出血危険度による消化器内視鏡の分類画像を拡大する

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第12回 添付文書 その1:「添付文書」の解釈、司法と臨床現場の大きな乖離!

■今回のテーマのポイント1.医薬品の使用において、添付文書の記載に反した場合には、特段の合理的理由がない限り、過失が推定される2.「特段の合理的理由」の該当性判断は、判例により幅があることから、一定のエビデンスを確保したうえで行うことが安全といえる3.その場合においては、インフォームド・コンセントの観点から、患者に対し適切な説明がなされるべきである事件の概要7歳男性(X)。昭和49年9月25日午前0時30分頃、腹痛と発熱を訴え、救急車にてA病院を受診し、経過観察及び加療目的にて入院となりました。その後、同日午後3時40分まで保存的治療を行っていたものの、化膿性ないし壊阻性の虫垂炎と診断されたため、虫垂切除手術を行うこととなりました。Y医師は、自身と看護師3名、看護補助者1名とで、Xに対する虫垂切除術を行うこととしました(麻酔科医不在)。Y医師は、同日午後4時32分頃、Xに対し腰椎麻酔として0.3%のジブカイン(商品名: ペルカミンS)1.2mLを投与しました。Y医師は、A看護師に対しては、Xの脈拍を常時とるとともに、5分ごとに血圧を測定して自身に報告するよう指示し、B看護師に対しては、Xの顔面等の監視にあたるよう指示し、午後4時40分より執刀を開始しました。午後4時45分頃、Xの虫垂の先端が後腹膜に癒着していたため、Y医師が、ペアン鉗子で虫垂根部を挟み、腹膜のあたりまで牽引したところ、Xが「気持ちが悪い」と訴えました。同時に、A看護師が「脈拍が遅く弱くなった」と報告しました。Y医師が、Xに対し、「どうしたぼく、ぼくどうした」と声をかけましたが、返答はなく、Xの顔面は蒼白で唇にはチアノーゼ様のものが認められ、呼吸はやや浅い状態で意識はありませんでした。A看護師から、血圧は触診で最高50mmHgであると報告されました。午後4時47分には、Xは心肺停止となり、Y医師および応援に駆け付けた医師らによる蘇生処置が行われた結果、午後4時55分には、Xの心拍は再開し、自発呼吸も徐々に回復しましたが、残念ながらXの意識が回復することはありませんでした。Xは、その後、長期療養を行いましたが、脳機能低下症のため意思疎通は取れず、寝たきりのため全介助が必要な状態となりました。これに対し、Xおよび両親は、A病院およびY医師らに、9,400万円の損害賠償の請求を行いました。第1審では、検査、腰麻の選択、手術方法、術中の管理、救急措置のいずれにおいても、過失を認めることはできないとして請求を棄却しました。第2審においては、Xの血圧低下は、Y医師が虫垂をペアン鉗子で挟んだことによる迷走神経反射が起因しているとして、その場合、仮にペルカミンS®の添付文書記載通り2分ごとに血圧を測定していたとしても、午後4時45分以前にはXの血圧に異状は認められないことから、添付文書の記載に従わなかったこととXの血圧低下との間には因果関係がないとして原告らの請求を棄却しました。この原審に対し、原告らが上告したところ、最高裁は、午後4時45分に脈拍が低下した時点で、Xの唇にチアノーゼ様のものが認められたことから、Xの血圧低下の原因は、迷走神経反射だけでなく、ペルカミンS®による腰麻ショックも存在していたとし、下記の通り判示し、原判決を破棄し、原審に差し戻しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過7歳男性(X)。昭和49年9月25日午前0時30分頃、腹痛と発熱を訴え、救急車にてA病院を受診し、経過観察および加療目的にて入院となりました。その後、同日午後3時40分まで保存的治療を行っていたものの、化膿性ないし壊阻性の虫垂炎と診断されたため、虫垂切除手術を行うこととなりました。Y医師は、自身と看護師3名、看護補助者1名とで、Xに対する虫垂切除術を行うこととしました(麻酔科医不在)。Y医師は、同日午後4時32分頃、Xに対し腰椎麻酔として0.3%ペルカミンS® 1.2mLを投与しました。 なお、麻酔実施前のXの血圧は112/68mmHg、脈拍は78/分であり、麻酔後3分(午後4時35分)の血圧は124/70mmHg、脈拍は84/分でした。Y医師は、A看護師に対しては、Xの脈拍を常時とるとともに、5分ごとに血圧を測定して自身に報告するよう指示し、B看護師に対しては、Xの顔面等の監視にあたるよう指示し、午後4時40分(40分時点での血圧122/72mmHg)より執刀を開始しました。午後4時45分頃、Xの虫垂の先端が後腹膜に癒着していたため、Y医師が、ペアン鉗子で虫垂根部を挟み、腹膜のあたりまで牽引したところ、Xが「気持ちが悪い」と訴えました。同時に、A看護師が「脈拍が遅く弱くなった」と報告しました。Y医師が、Xに対し、「どうしたぼく、ぼくどうした」と声をかけましたが、返答はなく、Xの顔面は蒼白で唇にはチアノーゼ様のものが認められ、呼吸はやや浅い状態で意識はありませんでした。この時点で、A看護師から、血圧は触診で最高50mmHgであると報告されました。午後4時47分には、Xは心肺停止となり、Y医師および応援に駆け付けた医師らによる蘇生処置が行われた結果、午後4時55分には、Xの心拍は再開し、自発呼吸も徐々に回復しましたが、残念ながらXの意識が回復することはありませんでした。Xは、その後、長期療養を行いましたが、脳機能低下症のため意思疎通は取れず、寝たきりのため全介助が必要な状態となりました。事件の判決「本件麻酔剤の能書には、「副作用とその対策」の項に血圧対策として、麻酔剤注入前に1回、注入後は10ないし15分まで2分間隔に血圧を測定すべきであると記載されているところ、原判決は、能書の右記載にもかかわらず、昭和49年ころは、血圧については少なくとも5分間隔で測るというのが一般開業医の常識であったとして、当時の医療水準を基準にする限り、被上告人に過失があったということはできない、という。しかしながら、医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである。そして、前示の事実に照らせば、本件麻酔剤を投与された患者は、ときにその副作用により急激な血圧低下を来し、心停止にまで至る腰麻ショックを起こすことがあり、このようなショックを防ぐために、麻酔剤注入後の頻回の血圧測定が必要となり、その趣旨で本件麻酔剤の能書には、昭和47年から前記の記載がされていたということができ(鑑定人によると、本件麻酔剤を投与し、体位変換後の午後4時35分の血庄が124/70、開腹時の同40分の血圧が122/72であったものが、同45分に最高血圧が50にまで低下することはあり得ることであり、ことに腰麻ショックというのはそのようにして起こることが多く、このような急激な血圧低下は、通常頻繁に、すなわち1ないし2分間隔で血圧を測定することにより発見し得るもので、このようなショックの発現は、「どの教科書にも頻回に血圧を測定し、心電図を観察し、脈拍数の変化に注意して発見すべしと書かれている」というのである)、他面、2分間隔での血圧測定の実施は、何ら高度の知識や技術が要求されるものではなく、血圧測定を行い得る通常の看護婦を配置してさえおけば足りるものであって、本件でもこれを行うことに格別の支障があったわけではないのであるから、Y医師が能書に記載された注意事項に従わなかったことにつき合理的な理由があったとはいえない。すなわち、昭和49年当時であっても、本件麻酔剤を使用する医師は、一般にその能書に記載された5分間隔での血圧測定を実施する注意義務があったというべきであり、仮に当時の一般開業医がこれに記載された注意事項を守らず、血圧の測定は五分間隔で行うのを常識とし、そのように実践していたとしても、それは平均的医師が現に行っていた当時の医療慣行であるというにすぎず、これに従った医療行為を行ったというだけでは、医療機関に要求される医療水準に基づいた注意義務を尽くしたものということはできない」(最判平成8年1月23日民集50号1巻1頁)ポイント解説今回と次回は添付文書の法的意義について解説いたします。第1回のポイント解説で示したように、民事医療訴訟における過失とは、一般的には「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」に満たない診療のことをいいます。しかし、この文言をいくら眺めたところで、具体的な事例についての線引きの基準を導き出すことはできません。したがって、例えば、本件における腰椎麻酔下での虫垂切除術において血圧測定を何分間隔で行うことが「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」なのかは、個別具体的に判断せざるを得ません。しかし、裁判官は、医学知識を有しているわけではありませんし、当然、医療現場を経験したこともありません(ロースクール制度により、最近、医師として医療現場を経験した裁判官が生まれるようになりましたがわずか数名です)。したがって、民事医療訴訟において、そういった個別具体的な事例における医療水準を決定する際に用いられるのが、今回のテーマとなる添付文書や次々回のテーマであるガイドラインであったり、医学文献、教科書、意見書、鑑定等です。添付文書は、薬事法52条(医療機器については63条の2)によって下記のように定められています。 (添附文書等の記載事項)第52条  医薬品は、これに添附する文書又はその容器若しくは被包に、次の各号に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。一用法、用量その他使用及び取扱い上の必要な注意二日本薬局方に収められている医薬品にあつては、日本薬局方においてこれに添附する文書又はその容器若しくは被包に記載するように定められた事項三第四十二条第一項の規定によりその基準が定められた医薬品にあつては、その基準においてこれに添附する文書又はその容器若しくは被包に記載するように定められた事項四前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項 そして、添付文書の記載については、「医療用医薬品添付文書の記載要領について」(薬発第606号平成9年4月25日厚生省薬務局長通知、薬安第59号厚生省薬務安全課長通知)「医療機器の添付文書の記載要領について」(薬食発第0310003号平成17年3月10日厚生労働省医薬食品局長通知)があり、記載内容、方法について詳細に定められています。同通知別添に記載されている添付文書作成の目的は、「医療用医薬品の添付文書は、薬事法第52条第一号の規定に基づき医薬品の適用を受ける患者の安全を確保し適正使用を図るために、医師、歯科医師及び薬剤師に対して必要な情報を提供する目的で当該医薬品の製造業者又は輸入販売業者が作成するものであること」となっています。このようなことから、古くから裁判所は、医薬品の使用に関する医療水準の判断について、添付文書の記載を他の証拠と比べ重視していました。そのような背景の中で出された、本判決の特徴は、「医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである」と示されるとおり、医薬品の使用に関しては、特段の合理的理由がない限り、添付文書の記載がすなわち医療水準となるとしたことです。確かに、高度の専門性を有する医療訴訟の判断をすることは、裁判所にとって非常に困難でありストレスであることは理解できますし、医師がいつでも手に取って読むことができる添付文書の記載さえ遵守していれば、医薬品の使用に関しては違法と問われることがないという意味においては、適法行為の予見可能性を高めるものであり、医師にとって有利なのかもしれません。しかし、皆さんご存知の通り添付文書の記載には、臨床の実情を反映しているとはいえない記載がしばしば見受けられます。そのような場合、医師が、患者に最善の治療を提供しようと添付文書記載に反する治療を行うことに躊躇してしまう(萎縮効果)こととなり問題といえます。特にわが国では、ドラッグラグが問題となっており、世界標準の治療薬の半数程度しか保険適用されていない現状において、未承認薬や適用外処方が原則違法であるとすることは、医学的に不当な結論といえます。このような医療界からの指摘を受け、現在では、例外となる「特段の合理的理由」を広く解することにより適切な判断をするように対応している判例が複数認められます。「添付文書の内容に違反した場合に,医師に過失が推定されるのは,製造業者や輸入販売業者は,当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有しており,それが添付文書に反映されているという事情に基づくものであるところ,本件においては,ベサコリン散の添付文書に,パーキンソン病の患者に対して禁忌であると記載がされたことについては,販売元の株式会社○○に対する調査嘱託の結果,厚生労働省からの指導によるものであって,株式会社○○自身が裏付けとなる研究結果等に基づいて記載したものではないことが判明しており,禁忌とされた根拠は必ずしも明確ではない。その上,ベサコリン散の成分は血液脳関門を通過しないからパーキンソニズムを悪化させることはないものとの考えが一部の出版物にも掲載されており,また,ベサコリン散のインタビューフォームにも,ベサコリン散の成分は血液脳関門を通過しない旨の記載がある。以上によれば,本件におけるベサコリン散の投与については,添付文書の記載内容には違反しているものの,原告に対してベサコリン散を投与すべき必要性が認められる反面,添付文書上の禁忌の根拠が明確でなく,むしろY医師自身は禁忌の根拠はないものと考えてあえて投与を行っていたものといえる。したがって,添付文書に反していても,本件においてはそこに合理的理由があるものといえ,直ちにY医師に過失があるものということはできない。パーキンソニズムの患者に対し、添付文書においてパーキンソン病の患者には禁忌であると記載されているベサコリン散を投与したとしても、当該患者に対してベサコリン散を投与すべき必要性が認められる反面、添付文書上の禁忌の根拠が明確でなく、当該医師が禁忌の根拠はないものとあえて投与を行っていたときには、当該投与が添付文書に反していても、そこには合理的な理由があるものといえるから、直ちに当該医師に過失があるものということはできない」(横浜地判平成21年3月26日判タ1302号231頁)とした判決や、ステロイド抵抗性の喘息患者に対し、適用外となる免疫抑制剤の投与を行った事案において、「ガイドラインに『難治性喘息に対する治療法として,免疫抑制剤の併用を考慮する場合がある』とされていることや有効性を示す症例報告が複数存在することを理由にただちに違法とはならない」とした判決(京都地判平成19年10月23日)などがあります。とはいえ、本件最高裁判決はまだいきていますので、適用外処方を行う場合には、事前にガイドラインや複数の医学文献等エビデンスを確保したうえで行うことが望ましいといえます。また、適用外処方をする場合には、インフォームド・コンセントの観点から、患者に対し、「(1) 当該治療方法の具体的内容、(2) 当該治療方法がその時点でどの程度の有効性を有するとされているか、(3) 想定される副作用の内容・程度及びその可能性、(4) 当該治療方法を選択した場合と選択しなかった場合とにおける予後の見込み等について、説明を受ける者の理解力に応じ、具体的に説明し、その同意を得た上で実施」(前掲京都地判平成19年10月23日より引用)すべきといえます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)最判平成8年1月23日民集50号1巻1頁横浜地判平成21年3月26日判タ1302号231頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。 京都地判平成19年10月23日

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第11回 転医義務:「妊婦たらい回し事件」から考える周産期救急体制とは!

■今回のテーマのポイント1.転医義務には、大きく分けて(1) 医療連携のための転医義務、(2) 専門外診療時の転医義務、(3) 診療不能時の転医義務の3種類がある2.転医義務は手段債務(転医先を探すこと)であり、結果債務(転医先を見つけること)ではない3.救急医療の整備・確保は、医師個人の努力によってカバーするものではなく、国や地方自治体の最も基本的な責務である事件の概要32歳女性(X)。妊娠41週2日。出産予定日を渡過したため、分娩目的にてY病院に入院しました。ところが、Xは午前0時頃からこめかみの痛みを訴え、同0時14分頃に意識消失しました。産科医であるA医師は、当直していた内科医であるB医師に診察を依頼したところ、B医師は失神であると診断し、経過観察をするよう助言しました。しかし、経過観察をしていたところ、午前1時37分頃、血圧上昇(200/100mmHg)に引き続きけいれん発作が生じたため、A医師は、救急車を要請しました。ところが、深夜の上に意識障害を伴う妊婦の処置ができる施設は限られていることから、転送先の確保に時間がかかり、結局、県外にある転送先病院(D病院)がみつかるまで約3時間かかってしまいました。Xは、D病院に搬送され、脳出血と診断され開頭血腫除去術および帝王切開術が行われました。しかし、児は無事に娩出されましたが、母体(X)の脳出血は脳室穿破しており、血腫除去は行われたものの、8日後に死亡しました。Xの夫および子は、Y病院およびA医師に対し、「Xの転院が遅延した過失がある」として約8,900万円の損害賠償請求を行いました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過32歳女性(X)。妊娠41週2日。出産予定日を渡過したため、分娩目的にてY病院に入院しました。ところが、Xは午前0時頃からこめかみの痛みを訴え、同0時14分頃に意識消失しました。産科医であるA医師は、当直していた内科医であるB医師に診察を依頼しました。B医師はXのJCS100~200点であるものの、神経所見に異常はなく、バイタルサインも問題なかったことから、陣痛による精神的な反応から来る心因的意識喪失発作であり、このまま様子をみるのが相当と判断しました。その後、モニターを設置し、助産師が10分おきに経過観察をしていました。その間、Xは、意識がない状態が続いていたものの、バイタルサインに問題はなく、陣痛発作時に四肢を動かしたり、顔をしかめたりしていました。しかし、午前1時37分頃、モニター上、血圧が上昇したことから、助産師と看護師がXのもとに赴いたところ、Xは、いびきをかいており、四肢をつっぱったような形で反り返ったような姿勢を示しており、血圧は200/100mmHgでした。助産師は直ちにA医師に連絡し、駆け付けたA医師が診察したところ、Xの瞳孔は中程度の散大固定をしており、対光反射は消失していました。応援に駆け付けたB医師は、A医師に対し、頭部CT検査を行うか尋ねましたが、Y病院では、夜間にCT検査を行う場合、実際に撮影するまでに40~50分程度かかることから、A医師は、検査をするより、直ちに転送した方がよいと考え、午前1時50分頃、同県の周産期医療情報システムに則って、C大学病院に受け入れ依頼をしました。ところが、C大学病院は、ベッド満床のため受入れ不能であったことから、C大学病院の方で、他の病院を探して見つかった時点でY病院に連絡することとなりました。しかし、通常は、長くても1時間程度で搬送先が決まっていたところ、1時間たっても2時間たっても見つかりませんでした。結局、4時半頃になり、隣県のD病院が受け入れ可能であるとの連絡があり、Xは、搬送されることとなりましたが、その時点で舌根沈下が生じていたことから、気管内挿管がなされ、午前4時49分に搬送開始となりました。午前5時47分に、Xは、D病院に到着し、頭部CT検査を行ったところ、右被殻から右前頭葉に及ぶ巨大脳内血腫(約7×5.5×6 cm)が認められ、著明な正中偏位があり、脳室穿破し、脳幹部にも出血が認められると診断されました。臨床症状、CT所見とも脳ヘルニアが完成した状態であり、Xの救命は極めて厳しいと考えられましたが、Xの夫らからの強い希望もあり、午前7時55分頃、緊急開頭血腫除去術および帝王切開術が行われました。しかし、児は無事に娩出されたものの、母体(X)は、8日後に死亡しました。事件の判決問題となるのは、原告らが主張するように、頭部CT検査をしなかったために、脳出血の診断が遅れ、脳圧下降剤を投与する機会を逸したことをもって過失といえるかという点である。確かに、午前1時37分ころには脳に何らかの異常が生じていることを認識することは可能であり、現に被告A医師らにおいて認識していたと考えられるのであるから、通常直ちにCT検査を実施すべきであったといえる。しかし、被告A医師において、午前1時37分ころの時点で、一刻を争う事態と判断し、CT検査に要する時間を考慮すると、高次医療機関にできるだけ迅速に搬送することを優先させ、直ちにC大学病院に対し受入れの依頼をしているところであって、頭部CT検査を実施せずに搬送先を依頼したことが不適切であったといえるものではない。もっとも、結果的には、午前1時50分ころにC大学病院に対し受入れの依頼をし、D病院への搬送が開始されたのは午前4時49分であるから、約3時間を要しているところ、被告病院においてCT検査は40~50分程度で実施可能であることからすると、CT検査を行うことができたということができ、それにより脳に関する異常を発見してグレノール(脳圧下降剤)の投与等の措置をとることができた可能性は否定できない(ただし、本件ほどの血腫の場合、脳圧下降剤の効果があるかは疑問視される)。しかし、被告A医師のそれまでの経験では搬送先が決まるまで長くても1時間程度であったことからすると、CT検査を実施すると、その実施中に搬送先が決まる可能性が高く、その場合には、CT検査の実施が早期の搬送の妨げとなることも考えられるところであって、CT検査を実施するよりも早期に搬送することを選択した被告A医師の判断は、十分な合理性を有しているということができる。そして、CT検査は極めて有用ではあるが、検査に出室させることによるリスクや検査中不測の事態をも考慮し施行時期を慎重に選択することが重要であるとされているところであって、まず受入れを依頼し、搬送先の病院に検査をゆだねた被告A医師の判断が不適切であったということはできない。・・・・・・・(中略)・・・・・・・原告らは、Xが8日午前零時14分ころに意識を消失してから数分経過した時点で頭部CT検査を実施していれば、午前1時までには脳出血の存在が明らかになっており、脳外科救急機関は数多くあることから、搬送先を確保することは困難ではなく、より早期に治療を受けることができたとして、転送を遅延させた過失を主張し、N意見も同旨を述べる。しかしながら、CT検査を実施し、脳出血であるとの診断ができたとしても、現に分娩進行中であるから、産婦人科医の緊急措置が必須であることに変わりはなく、子癇の疑いとして搬送先を探した場合に比べて受入施設の決定がより容易であったとはいいがたい。仮に、原告において、脳外科の医療機関を希望したとしても、現に分娩が進行中であり、脳外科医が分娩を放置してXの脳出血の治療のみに専念するとは考えがたく、脳外科と産婦人科の双方の対応が可能な医療機関に転送することがやはり必要であり、CT検査を実施し、脳出血であるとの診断がついていたとしても、早期に搬送先の病院が決まったということはできない。以上のとおり、被告A医師らにおいてCT検査を実施せず、転送が遅れた過失を認めることはできない。(大阪地判平成22年3月1日判タ1323号212頁)ポイント解説今回は、転医義務についてです。医療法1条の4第3項は、「医療提供施設において診療に従事する医師及び歯科医師は、医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携に資するため、必要に応じ、医療を受ける者を他の医療提供施設に紹介し、その診療に必要な限度において医療を受ける者の診療又は調剤に関する情報を他の医療提供施設において診療又は調剤に従事する医師若しくは歯科医師又は薬剤師に提供し、及びその他必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定めています。皆さんご存知の通り、病院には、その診療機能別に一次医療機関(風邪等軽症の患者の対応をする施設(診療所等))、二次医療機関(入院、手術が必要な患者の対応をする施設(病院))、三次医療機関(重症であり、高度の医療を必要とする患者の対応をする施設(特定機能病院等))に分けられており、各医療機関が相互に連携することでそれぞれの役割を十全に果たすことが求められています。転医義務にはこのような、患者の病態が重篤であること等からより高次の医療機関へ患者を紹介する場合((1) 医療連携のための転医義務)だけでなく、「保険医は、患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるとき、又はその診療について疑義があるときは、他の保険医療機関へ転医させ、又は他の保険医の対診を求める等診療について適切な措置を講じなければならない。」(療担規則16条)というような場合((2)専門外診療時の転医義務)や、入院ベッド満床や医師が他の患者の診療にあたっている等物的・人的診療能力に欠く場合((3) 診療不能時の転医義務)等があります。転医義務についての判例としては、本判決以外にも「開業医の役割は、風邪などの比較的軽度の病気の治療に当たるとともに、患者に重大な病気の可能性がある場合には、高度な医療を施すことのできる診療機関に転医させることにある」(最判平成9年2月25日民集51巻2号502頁)や、「患者の上記一連の症状からうかがわれる急性脳症等を含む重大で緊急性のある病気に対しても適切に対処し得る、高度な医療機器による精密検査及び入院加療等が可能な医療機関へ患者を転送し、適切な治療を受けさせるべき義務があったものというべき」(最判平成15年11月11日民集57巻10号1466頁)としたもの等があります。本事例は、「妊婦たらい回し事件」としてマスコミにより大々的に報道され世間の耳目を集めました。地方の医療提供体制の不備という医療政策上の問題を現場の医師の怠慢のように報道した本件報道により産科医療は大きな被害を受けました。実際、本事例を契機に同病院では、分娩の扱いを中止しており、その結果、本判決がでた時点(平成22年)においてまで同県南部には分娩施設がないという状況が生まれました。本件訴訟においては、転医義務が争われましたが、「事件の判決」で引用したように転医義務違反が認められなかったばかりか、原告が主張する午前1時37分時点で除脳硬直が生じていたとすると、その時点ですでにXの救命は著しく困難となりますので、原告の主張をすべていれてもXは救命不能であったという何とも不可思議な訴訟でした。ただ、本判決の重要な意義として転医義務は、より高度な医療が必要な場合や専門家の診療が必要な場合等に「適切な転医先を探そうとする義務」であり、適時に転医先を探し始めた以上、結果として転医先が見つからなかった又は、見つかるのが遅れたとしても、直ちに転医義務違反になることはないということです。これを法的に表現すると転医義務は手段債務(転医先を探すこと)であり、結果債務(転医先を見つけること)ではないということになります。また、本判決の特徴として、通常、裁判所が書く判決には、個別具体的な紛争解決に必要かつ最小限を記載するにとどまるところ、本件事件を含めたマスメディアや司法による医療バッシングにより、現実に医療が崩壊したことを受け、付言として、下記の様にわが国の救急医療体制や1人医長制度について言及していることがあげられます。本事件及び福島大野病院事件を契機に裁判所がようやく医療に対して本質的理解をするよう努力し始めたという点で、本判決は歴史的な判決ということができます。■判決付言「現在、救急患者の増加にもかかわらず、救急医療を提供する体制は、病院の廃院、診療科の閉鎖、勤務医の不足や過重労働などにより極めて不十分な状況にあるともいわれている。医療機関側にあっては、救急医療は医療訴訟のリスクが高く、病院経営上の医療収益面からみてもメリットはない等の状況がこれに拍車をかけているようであり、救急医療は崩壊の危機にあると評されている。社会の最も基本的なセイフティネットである救急医療の整備・確保は、国や地方自治体の最も基本的な責務であると信じる。重症患者をいつまでも受入医療機関が決まらずに放置するのではなく、とにかくどこかの医療機関が引受けるような体制作りがぜひ必要である。救急医療や周産期医療の再生を強く期待したい」*   *   *「本件で忘れてはならない問題がもう一つある。いわゆる1人医長の問題である。被告病院には常勤の産科医は被告A医師のみであり、出産時の緊急事態には被告A医師のみが対処していた。1人医長の施設では連日当直を強いられるという過重労働が指摘されている。本件で、被告A医師は夜を徹して転送の手続を行い、救急車に同乗してD病院まで行った後、すぐに被告病院に戻り、午前中の診察にあたっている。平成20年に日本産科婦人科学会が実施した調査では、当直体制をとっている産婦人科の勤務医は月間平均で295時間在院している。こうした医療体制をそのままにすることは、勤務医の立場からはもちろんのこと、過労な状態になった医師が提供する医療を受けることになる患者の立場からしても許されないことである。近時、このような状況改善の目的もあって、医師数が増加されることになったが、新たな医学生が臨床現場で活躍するまでにはまだ相当な年月を要するところであり、それまでにも必要な措置を講じる必要があるものと思う。近年女性の結婚年齢や出産年齢が上がり、相対的に出産の危険性が高まることになる。より安心して出産できる社会が実現するような体制作りが求められている。愛妻を失った原告の悲しみはどこまでも深い。Xは我が子を抱くことも見ることもなくこの世を去った。子は生まれた時から母親がいない悲しみを背負っている。Xの死を無駄にしないためにも、産科等の救急医療体制が充実し、1人でも多くの人の命が助けられることを切に望む」*   *   *本件においては、原告、病院、医師にとって非常に残念な経緯を辿りましたが、これを契機に、司法と医療の相互理解の促進が一歩ずつでも進んでいくことが強く望まれます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)大阪地判平成22年3月1日判タ1323号212頁最判平成9年2月25日民集51巻2号502頁最判平成15年11月11日民集57巻10号1466頁

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子どもの母斑をダーモスコピーで見分けるコツ

 米国・ニュージャージー医科歯科大学のElena C. Haliasos氏らは、小児皮膚科医のためのダーモスコピー上のメラノサイト系病変所見の特徴に関するレビュー論文を発表した。小児のメラノサイト系病変は、本人および両親、医師に不安を喚起することがある。Haliasos氏らは、小児の母斑についてダーモスコープでみられる良性パターンと、メラノーマのダーモスコピー上の10の最も頻度の高い構造について考察した。Pediatr Dermatology誌オンライン版2012年12月18日号の掲載報告。 メラノサイト系母斑は、青色母斑、Spitz母斑、先天性および後天性母斑など種々の病変を含む。これらの母斑は、時にメラノーマ様の臨床形態学的特徴を呈している可能性があり、小児におけるそのような母斑の存在は、本人および両親、医師に不安を引き起こす。 ダーモスコピーは、メラノーマの高い診断精度を有し、母斑との区別に有用であることが示されており、生検を行うべきかの意思決定プロセスの最終的な判断材料となる。またダーモスコピーは、小児のメラノサイト系病変の評価において、無痛性であること、また適正な治療判断をもたらす重大情報を医師に提供するという点で、パーフェクトな器具である。 本レビューでは、母斑で認められる最も頻度の高いダーモスコピー上の良性母斑パターンを明確にするとともに、10の最も頻度の高いメラノーマ構造について考察した。 主な内容は以下のとおり。・ダーモスコピー上で良性パターンを呈し、メラノーマに特異的な構造を有していなければ、その母斑は切除する必要はなく、安全に経過観察が可能である。・対照的に、メラノーマなら、良性母斑パターンがみられることが常になく、メラノーマに特異的な次の10の構造のうち少なくとも1つを呈する所見が認められる。「非対称性の網目状組織(atypical network)」「暗褐色の網目状組織(negative network)」「線条(streaks)」「結晶構造(crystalline structures)」「均一でない小点・小球(atypical dots and globules)」「不揃いの斑点(irregular blotch)」「青白色ベール(blue-white veil)」「自然消褪構造(regression structures)」「辺縁のブラウン色構造領域(peripheral brown structureless areas)」「非定型の血管構造(atypical vessels)」。・幼児期のメラノーマは通常、臨床的ABCD特色を呈しないという事実を認識していることが重要である。それよりも、多くの場合は、対称性で、メラニン色素がなく、結節状の病変である。・臨床的印象は警告されない可能性があるが、ダーモスコピーによって、メラノーマには常に少なくとも1つの特異的な構造が認められる可能性があり、その最も頻度の高い所見は、非定型の血管構造と結晶構造である。

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「潰瘍性大腸炎の治療における医師と患者の意識比較」について

11月29日(木)、「潰瘍性大腸炎の治療における医師と患者の意識比較」をテーマに、丸ビルコンファレンススクエア(東京・千代田区)においてメディアセミナーが開催された(主催:キョーリン製薬ホールディングス株式会社)。今回のテーマは、患者数が増加を続ける「潰瘍性大腸炎」。この診療の第一線で活躍する渡辺守氏(東京医科歯科大学大学院消化器病態学消化器内科 教授)を迎え、その疫学、最新の診療、「医師と患者の意識の差」調査結果を述べるとともに、後半では患者との対談を行った。増加する「潰瘍性大腸炎」の現状講演では、渡辺氏が「潰瘍性大腸炎」について、症状として下痢や血便、腹痛があること、20~30歳代の若年で好発すること、再燃と寛解を繰り返し、ADLを著しく下げること、厚生労働省難治性疾患であり、推定患者数も14万人を超えることなどが説明された。次に、渡辺氏が行った医師と患者の治療への意識調査の結果について、次のように報告した。●対象医師=354名(同疾患患者を5名以上診療している消化器内科、外科、大腸肛門科の医師)患者=206名(定期的に受診し、薬物療法を受けている同疾患の患者)●目的患者、医師の意識比較を行うことで患者満足度が高い対応やコミュニケーションを導く●方法インターネットでのアンケート●結果(主に差異が大きい点について)「最初に診断された時の『潰瘍性大腸炎』に関する説明は?」では、医師は「治りにくい慢性疾患」と説明しているのに対し、患者は「難病ではあるが、治りにくいとは思っていない」と回答。「医師からの病気や治療について、十分な説明があったかどうか」では、医師が認識しているよりも、患者は十分な説明を受けていると実感しており、医師が思う以上に理解度が高いことがわかった。「医師に対する不満や不安」では、医師は対応の不十分さを強く認識する傾向がある半面、患者の6割以上は不満や不安をもっていないことがわかった。「(患者は)医師に伝えたいことをどの程度伝えられているか」では、医師は「伝えることができている」と考えているのが半数以下であるのに対し、患者は7割以上が「伝えることができている」と認識していることがわかった。「潰瘍性大腸炎治療における患者満足度(10点満点で評価)」について、医師が考えている(6.4点)よりも患者(6.9点)は現状の治療・診療行為に満足していることがうかがえた。「(治療薬である)5-ASA製剤の服薬状況」については、多くの医師が患者は処方された通り服用していないと考えているのに対し、患者の7割は処方された通りに服用していることがわかった。「5-ASA製剤を処方どおりに服薬しない理由」については、医師が症状軽快による患者の自主的な中断と考えているのに対し、患者は単純な飲み忘れと回答。以上、アンケートでわかった医師と患者の意識のギャップを比べると、医師が思うほど患者は悲観的ではなく、疾患をよく理解しており、服薬コンプライアンスも守られていることが示唆された。治療へのモチベーションが上がる言葉とは次に、渡辺氏が診療をしている患者との対談となり、医師と患者の意識の違いについてテーマに沿った内容の話合いが行われた。最初に患者の治療経過について説明が行われ、血便が端緒となり一般内科での診療後に専門医に紹介。そこで行われたステロイドの頻回使用でひどく治療が難渋したことが話された。「診断されて病名の告知がされた時の心境について」尋ねたところ、「悩んだ時期もあり、なかなか受け入れられなかったが、よくなる病気といわれて気持ちが軽くなった」と答えた。さらに「治療に関して」尋ねたところ、現在は薬の継続服用の徹底指導を受けているとのことで、ステロイドからメサラジンへ移行したとのことであった。診療で一番印象に残った言葉について尋ねると「『よくなる病気』という言葉で、治療へのモチベーションが上がった」と答えた。続いて診療でのコミュニケーションについての話題となり、渡辺氏が「治療で大変なことは何ですか」と尋ねたところ、「肉体的に精神的にも治療成果が出てこないとつらい」との回答だった。薬の服用に関して、「1日2回ではどうか」と尋ねたところ、「現在服用に支障はないので、3回でも2回でも変わりはない」との回答。また、「日常生活について」聞いたところ、「食生活もその他のことも今まで通りできている。とくに食事制限もない」とのことであった。「医師とのコミュニケーションで大事なこと」については、「医師の指導を守ること。特に服薬に関しては厳守した方がよい」と回答を述べた。最後に渡辺氏より、「患者は医師を信用して、服薬コンプライアンスを守るようにして欲しい。自己流で治療をしないこと、自分で判断して服薬の中断などをしないことが大切。中断した場合は医師にきちんと伝えるようにしていただきたい」と述べ、セミナーを終えた。

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生活保護受給者の「医療費一部負担案」、いかがお考えですか?

不正受給問題に端を発し、生活保護のあり方が議論されている中、現在窓口負担がゼロである医療費について患者の一部負担を求める、あるいは後発医薬品の使用を義務付けるという案も出ています。今回の「医師1,000人に聞きました!」ではこれを踏まえ、現場の立場でこの問題がどのようにとらえられているのか尋ねてみました。コメントはこちら結果概要医師の7割以上が生活保護受給者の医療費一部負担に賛成医療費一部負担案に賛成したのは全体の73.1%。勤務形態別に見ると病院医師では76.2%、一般診療所医師では64.9%と、窓口業務まで管理する立場である一般診療所医師は若干低い結果となった。賛成派からは「年金生活者や、働きながら保険料を納め医療費の一部負担をしている低所得者がいることを考えると、生活保護受給者のみ全て無料というのは不公平」といった意見が見られた。「違った方法を考えるべき」医師、『いったん支払い、後日返還しては』など次いで15.6%の医師が「違った方法を考えるべき」と回答。コスト意識を持ってもらうために『いったん支払ってもらい返還する形に』、複数の施設を回って投薬を受ける患者や、悪用する施設の存在を踏まえた『受診施設の限定』などが挙げられた。「現状のままで良い」医師、『理念を維持しながら受給認定を厳密に』一方「現状のままで良い」とした11.3%の医師からは、『生活保護の本質まで変えるべきではない』『受給認定を厳格にすることで対応すべき』といった意見のほか、『現実に支払ができなければ病院の負担になるのが見えているので』といった医師もいた。"後発医薬品の使用義務付け"、病院医師の約6割が賛成、一般診療所医師では意見割れる薬の処方にあたり、生活保護受給者へは価格の安い後発医薬品を義務付けるという案に対しては全体の54.1%が賛成、「現状のままで良い」とした医師は28.9%であったが、一般診療所医師に絞ると賛成40.3%、現状維持37.3%と割れる結果となった。賛成派からは、『後発品は国が「先発品と同等」としているので問題ない』、現状維持派からは『必ずしも薬効が同じとは限らないと考えるため』『院内処方で扱いがない場合がある』『処方の裁量権は医師にある』といったコメントが寄せられた。設問詳細生活保護受給者の医療費負担についてお尋ねします。現在、生活保護受給者が医療サービスを受ける場合、その費用は直接医療機関に支払われ本人負担はありません。市町村国保の被保険者などと比べて生活保護受給者1人当たりの医療費のほうが高いことなどを理由に、適正化のための取り組みを強化すべきだという意見も挙がっています。これに関し、10月23日の日本経済新聞では『三井辨雄厚生労働相は23日の閣議後の記者会見で、生活保護の医療費の一部を受給者に負担させることに関して「自己負担を導入すれば必要な受診を抑制する恐れがあり、慎重な検討が必要だ」と述べた。価格が安い後発医薬品の使用を義務付けることについては「一般の人にも義務付けられていないのに生活保護受給者だけに義務付けるのは難しい」との認識を示した。 生活保護受給者の医療費は全額公費で負担しており、生活保護費の約半分は医療費が占める。財務省は22日の財政制度等審議会の分科会で、医療費を抑制するために医療費の一部自己負担の導入と後発医薬品の使用を受給者に義務付けることを提案していた。』と報じられています。そこで先生にお伺いします。Q1. 医療費適正化のため、生活保護の医療費の一部を受給者に負担させることについて、いかがお考えですか。賛成違った方法を考えるべき現状のままで良いQ2. 生活保護受給者に後発医薬品の使用を義務付けることについて、いかがお考えですか。賛成違った方法を考えるべき現状のままで良いQ3. コメントをお願いします(Q1・2の選択理由、「違った方法を考えるべき」とした方は代替案、その他患者さんとの具体的なエピソード、など、どういったことでも結構です)2012年10月26日(金)実施有効回答数:1,000件調査対象:CareNet.com医師会員CareNet.comの会員医師に尋ねてみたいテーマを募集中です。採用させて頂いた方へは300ポイント進呈!応募はこちらコメント抜粋 (一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「先発品と後発品の効果がまったく同じと保証できない現状では後発品の義務は困難。感冒薬程度なら問題ないが高度医療を必要とするような患者さんでは問題が出ると思う。」(50代診療所勤務,消化器科)「全くの無料は無駄の原因。工夫の余地をなくす。」(50代病院勤務,内科)「後発品をとるか否かは自由意志とすべき、その代り 医薬品の5%(0.5割負担)でも徴収すべきと思う。そうすれば、安い方を望むなら自ら選択することになる。」(60代以上病院勤務,血液内科)「一部負担は、真面目な方には受診抑制になって、重症化する可能性が出る。生活保護に甘えている方は病院で怒って現場の混乱を生むだけで何の意味もない。それよりは、医療費の適正化をすすめるべきである。求められても不要なお薬は出さない。出さないからと暴れたり、怒ったりする方へのペナルティを明確化する方が良い。後発品義務付けは、治療内容の権利の侵害に当たる可能性があるので勧奨程度にすべき。例えば、糖尿病の治療であっても同じようにHbA1cを下げる薬はあるが、合併症などを防ぐそいう視点で新薬が使用できない場合、将来の合併症を増やし結局医療費の高騰につながる」(40代病院勤務,呼吸器科)「一部負担にしたとして、お金を払ってくれない人を診療拒否できるのなら生保の負担金をつくっても良い。」(50代診療所勤務,内科)「不正受給ばかりが報道されているが、大多数の受給者は後ろめたさから声を上げられないと思います。もちろんどんな医療機関にもフリーに何度でも受診できるということは良くないので、受診可能な機関を一定の生活圏内に制限することや、通院手段を制限するなどの方策も考えられます。」(40代病院勤務,内科)「救急外来への頻繁な来院はペナルティがあっても良い。」(50代診療所勤務,小児科)「負担がないことですべて許されていると考えている受給者が多く、一人ひとりに理解させることは極めて困難であり、一律に決めるべきである」(50代病院勤務,外科)「受給金をパチンコで使い果たし無料で入院、なんてことができないよう方策を考えてほしい。」(50代診療所勤務,腎臓内科)「医療費の負担増加とこれに対する原資の増加を期待する事の難しい情勢からみてやむを得ない事と思います。逆にそのことで負担が少しでも軽減されるのではないかと思います。」(50代病院勤務,産婦人科)「抗けいれん剤を後発品に変更して、ずっと起こっていなかった発作が起こったことがある。後発品を義務づけるなら、特定の薬品に限定すべきと思う。」(50代病院勤務,リハビリテーション科)「一部負担といっても幅があるのでどの程度負担させるのかによって意見が違うと思う」(60代以上病院勤務,腎臓内科)「先発薬と後発薬両方を揃えるのは医療機関に負担となるので反対。」(40代診療所勤務,腎臓内科)「一般の患者は医療費負担は上限ありになっている。生活保護者も基本的には同じ枠組みで良い。上限額に配慮するとか、いったん支払いさせて申請後(部分的に)返ってくるとか。」(40代病院勤務,耳鼻咽喉科)「自己負担をつけても支払いをたぶんしないで病院の負担になるので、現状のままでよい」(50代病院勤務,循環器科)「一律というのは如何か。生活保護を必要としてないのに受給されている人と 本当に必要な人がいることがそもそもおかしいのだが。この両者は区別して、必要ない人は切って欲しい」(40代病院勤務,消化器科)「医療費一部負担は受診抑制に繋がる。また、後発品を使用していない当院では、診察できないことになる。いまだに後発品に不安要素がある事を先に改善すべき。」(50代診療所勤務,内科)「最低保証賃金より保護費の方が高い現状は異常。ワーキングプアの方々が強いられている窮状は、生活保護の方々にも受け入れていただく必要がある。」(40代病院勤務,精神・神経科)「当院受診の生活保護者の半分は疑問に感じる人が多いのは事実、「魚釣りに行って風邪をひいた、点滴をしてくれ」などざら」(50代病院勤務,神経内科)「目に余るケースがあるから、と言って生活保護の本質まで変えるべきではない。取り締まるには人件費などかかるので、現状のままのほうがよい。」(60代以上診療所勤務,精神・神経科)「服薬指導を徹底させ、薬の無駄を少なくすることが大切だと思います。みんながその費用を負担していることを自覚する必要があります。生保患者さんが立て替えで支払うことも一つの案だと思います。」(50代診療所勤務,内科)「後期高齢の生活保護者は無料のままで、若年者は就労を図る意味でも有料化すべき。」(60代以上診療所勤務,内科)「今ほど生保の継続が必要な時期はない」(50代診療所勤務,内科)「他の患者さん同様に窓口負担分をとって、還付を検討すべきでしょう。」(40代病院勤務,内科)「『生活保護で自己負担がないから先発品を処方してくれ』と堂々と言う患者がいて腹が立った」(50代診療所勤務,整形外科)「生活保護でも本当に働きたい人もおり、そういう方はむしろ病気があってもギリギリまで我慢してしまう傾向が強いと思います。元々自分は生保でもそうでなくても基本的に必要不可欠なことしかせず、差はつけていない。この議論自体がおかしいと思う。」(40代診療所勤務,内科)「薬代がタダなので、あまり必要の無い薬を「念のため・・」などと言ってもらって無駄にしていることが有る。」(40代病院勤務,内科)「受診できる病院を限定するとか、カルテを1つにするとか、不正な薬剤処方をなくしたり、不要な受診を減らしたりの工夫が必要」(30代以下病院勤務,小児科)「コンビニ受診は避けるべきだが、本当に加療の必要なひとには受診萎縮にならないようすべき」(50代診療所勤務,口腔外科)「低収入であるが故に受診を控えて病状の悪化を招いたり、経済的理由で後発医薬品しか選択できない勤労者が存在することを考えれば、生活保護受給者が何の躊躇もハンディも無く医療を求めることは問題である」(40代診療所勤務,呼吸器科)「行政側から患者(生保受給者)に説明し、後発品使用を了解(同意)させ、医療機関にその旨「書面で」申し出る。しかし、その場合も最終的には医師の処方権は留保される。」(60代以上診療所勤務,消化器科)「小額でも一部負担とすることで、毎日不要な点滴をしたりする方は減るでしょう。」(40代病院勤務,内科)「薬品は、好みもあり人によっては効果の違いもあるので、義務付けは賛成しかねます。」(50代病院勤務,整形外科)「働ける様な若者も生活保護を受け、日中ぷらぷらしやたらと必要以上に病院へ来る方、結構見かけます。生活保護を受ける基準や負担額なども細かく等級を設けて、等級に応じて設定したらいいのではないか。」(40代診療所勤務,内科)「生活保護を受けている割に子供にピアス、アクセサリーがジャラジャラ・・・本当に必要な家族への受給を充実させ、このような家庭へ受給はしないようにしっかりした制度設計をやり直すべき」(40代病院勤務,小児科)「『どうせタダなんだから薬だしてよ、検査してよ、病院のもうけになるんでしょ』という患者もいる。町のドラッグストア感覚(それよりも手軽)みたいに思っている。一部でも自己負担させるべき。後発品は合う・合わないもあるので義務づけはちょっと乱暴。」(40代診療所勤務,内科)「どの医院も薬局もすべてのものに対応できるものではないので、義務付けではなく、やはり努力目標にせざるを得ないと思う」(50代診療所勤務,泌尿器科)「生活保護になりやすくなっている状態を検討すべき。ならなくていい人もなっている感じと一度生活保護になってしまった人がぬけたくなるような部分も必要なのではないか」(40代病院勤務,血液内科)「『おいしい』ことはなるべく少なくしていくことで、本当に必要な人が「仕方なく受ける」最後の砦にするべき。」(40代病院勤務,内科)「薬を貰うために何軒も医療機関を回るので、公的な指定医療機関を設置しては」(50代診療所勤務,循環器科)「生活保護一歩手前の患者様(化学療法中)を何人か診ているが、その方のほうが、よっぽど生活は苦しいと思います。高額の治療を断念している方もおられます。生活保護受給者は、医療に関しては恵まれすぎ!です。生保以外の方で後発薬を希望される方は多いですし、私自身も抵抗はありません。一部でも自分で負担できないなら後発薬で我慢するべきだし、一時金を払うことは、むやみな受診の抑制に効果あると思います。 上記のような何らかの対策をとらないと、さらに他の人たちの負担が増えてしまうと思います」(40代病院勤務,外科)「一部負担といっても現実に負担できない患者がいれば、それは結局支払われずに病院の負担になる。末端の医療機関への責任転嫁である。現状の後発品制度には多大な問題がある。制度自体に根本的な議論がなされない限り簡単に賛成とはいえない。」(50代病院勤務,循環器科)「国策として後発医薬品の使用を推進するのであれば、先発品にこだわる必要はないはず。生活保護とはあくまでも援助なのだから受給者に選択権はないはずである。」(40代病院勤務,皮膚科)「一旦納付→後日給付にすべき.疾患によっては(アレルギー疾患等)後発薬を使うことは避けるべきで全て義務付けというのは不適切」(40代病院勤務,内科)「風邪などの軽症疾患は自己負担を導入し、慢性疾患や重症疾患はこれまでどおりにしては。」(30代以下病院勤務,小児科)「生活保護が本当に必要な人もいることを忘れてはいけない。」(40代病院勤務,精神・神経科)「働いて健康保険料などを納め、医療費の一部負担をしている、生活保護とあまり年収のかわらない人もいるのだから、何らかの負担は必要と思います」(50代診療所勤務,内科)「ともに、大いに賛成です。 現場の目から見て、「生保だから必要のない受診を気軽に繰り返している人がいる」ということは明白。必要な受診を抑制する可能性も皆無とは言えませんが、本当に必要な場合には、収入や家庭環境などについて綿密な精査を行った上で、自己負担金の免除を決める制度を別途設ければ良いと思います。 もっといえば、不適切受診の内容や明らかに贅沢な生活実態などを医師側から通報できる制度があれば良い」(30代以下病院勤務,循環器科)「基本は後発品とし、医師の判断で変更できればと思います。一部負担で受診抑制を心配するのであれば、その前にワーキングプアといわれきちんと保険料を収めているのに窓口負担を心配して受診できない方々に補助すべきだ。生活保護は最低限の生活を保証すればよいのだから、そうしたものをもらわず働くワーキングプアの方々以上の保護は要らないはず。」(30代以下病院勤務,小児科)「一部の不心得者のために、真に保護が必要な人への援助を削るべきではない。マクロの視点しか持っていない役人やマスコミの怠慢が世の中をどんどん歪めている。不正受給をなくすべく、役人がきっちりと精査することだ」(50代診療所勤務,内科)「生活に必要なお金を受給されているのだから、医療機関の受診、薬代も他の方と同様に支払うべきである。」(40代病院勤務,内科)「不必要に多くの薬をもらって余っていてもなくなったと主張し、さらに多く持って帰る患者がいる。量や種類の制限は必要と思う。」(30代以下病院勤務,整形外科)「経済的理由からジェネリックを希望する人が多い中、全額免除の人だけが高い薬を使うのはヒトとして納得できない。」(30代以下病院勤務,呼吸器科)「生活保護受給者は高価な治療薬を使えるが、通常の被保険者はお金の関係で使いたい薬も使わないでいることがある。何かおかしいです。」(50代病院勤務,呼吸器科)「生活保護受給者が時間外に不必要な受診をすることが度々みうけられるので、時間外受診料などに自己負担を導入すればよいと思う」(30代以下病院勤務,整形外科)「多くの人に不正がないと信じるが、隣人などから薬をもらうよう頼まれてくる人もいるようである。」(50代診療所勤務,内科)「望ましいことではないが、すべてのことについて性悪説にたった制度が必要になってきていると思う。」(50代病院勤務,内科)「生活保護がsafety-netとしての役割を担っていることを考えると、生活保護の医療費の一部を受給者に負担させることは少し賛成しにくい。しかし生活保護を延々と受け取って無料であることを良いことに薬の処方を欲しがる患者がいることは事実であり、それを悪用して薬を無駄に処方させている病院があるのも事実なので、必要以上の処方を行なっていると判断された医師に厳罰が発生するような仕組みのほうが抑制効果があるのではないかと思う。ただし、その基準を明確にする必要があるが、その基準は非生活保護受給者よりも厳しい基準であるべきだと思う。」(30代以下病院勤務,外科)「生活保護の患者さんがブランド物のバッグをもって受診しましたが、このような人に私たちが支払った税金が使われていると思うと、憤りを感じます。」(50代診療所勤務,内科)「もともと、病気で仕事ができないことによる生保受給が多く、一般人に比べ医療費が高くなるのは当然だと思います。 むしろ、何万円ものタクシー代や、飛行機利用を許した対応など、自治体側の対応の仕方が不適切なことの方が問題かと思います。」(50代診療所勤務,消化器科)「医療費の膨張に歯止めをかけるためにはやむを得ないと思う。ただ、原疾患で働けなくて生活保護になっている人は別に扱う事が必要。」(50代診療所勤務,皮膚科)「後発品の場合、特に呼吸器系後発医薬品に変更した際に効果が落ちる例も経験している。効果が落ちた場合は、受診回数の増加や時間外受診の発生などに繋がる場合があるので、義務づけはあまり賛成できない。」(30代以下その他医師,呼吸器科)「奈良の山本病院の事例を含め悪用が目に余り歯止めが利かない」(50代診療所勤務,内科)「利益を享受する分の負担は当然」(30代以下病院勤務,神経内科)「本当に医療を必要とする患者の医療費公費負担と、無料をよいことに安易に行なわれる受診やそれを食い物にする医療機関を選別する方法が必要である。」(50代病院勤務,内科)「低所得者、年金生活者などの方たちは、少ない収入の中で保険料も払い、さらに医療費の何割かを負担している。生活費を切りつめてもいるわけで、生活保護費を丸々自由に使える生活保護者と比べると非常に不公平。 後発医薬品は、無料であるならば選択の自由はなくしてもいいと思っています。厚労省の認可していない薬ならいざ知らず、認可されている薬品なので義務付けてもいいのではないでしょうか。 」(50代病院勤務,泌尿器科)「薬を多めにもらっては売って酒代に換える患者がいますし、月の前半でパチンコをして下旬はお金がなくなり栄養失調の病名で入院、月が変わった受給日には必ず退院する無料の宿泊施設としている患者もいます。ごくごくわずかでも良いので自己負担とすれば少しは抑制できるのでは。本当に必要な人の負担にならないくらいわずかな手数料が必要。」(30代以下病院勤務,脳神経外科)「無料では不必要受診を生む。昔のお年寄りの健康保険無料化のときと同じ弊害。 後発医薬品は薬効が低いというわけではないので、生活保護に関しては当然安い薬に限定するべきでしょう。」(50代病院勤務,その他診療科)「生活保護に限らずまるっきりただはよくない。 ワンコインでも負担すべき」(50代病院勤務,小児科)「タダだからとビタミン剤や感冒薬、睡眠薬などの無駄な薬や検査など何でも要求してくる。負担金を取ったほうが医療費の抑制になる。」(50代病院勤務,内科)

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倫敦通信(第2回)~医療と護身術

星槎大学客員研究員インペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院客員研究員越智 小枝(おち さえ)2012年11月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。先日一時帰国した際、薩摩の野太刀自顕流の伝承者である島津義秀さんとお話しさせていただく機会がありました。攻撃してくる相手を倒すための実践的なお話を色々聞けたので、「看護学部でも是非教えてあげたいですね」と言ったところ、「そんなに必要ですか?」とすこし驚かれたご様子でした。病院で起こる暴力行為は世間ではまだあまり認識されていないのかな、という印象を受けました。女性のスタッフが増えた昨今、夜間休日の病院で暴力行為に対応する管理職も男性とは限りません。私自身、当直中に病棟からこんな電話を受けたことがあります。「先生、○号室の意識障害の患者さんがボールペンを持って暴れていて…でも担当の先生が帰ってしまって…」確かに問題ですが、女医の私にどうしろと、という状況です。半ばやけくそで「つまり私にとり押さえてほしいってこと?」と聞くと、「はい。」とのお返事。さすがに苦笑しながら病棟まで行き、患者さんからボールペンを取り上げて転落防止を確認した上でご家族へ連絡しました。その後の署名などは全てフェルトペンを使いました。意識障害で病室から走り出してきた患者さんを「膝カックン」で転ばせ、看護師さんが噛みつかれている間にとり押さえたこともありますし、裸で暴れる若い男性を女性看護師と4人がかりでベッドに押し倒した(!)こともあります。この時は妊娠中の看護師さんが危うくお腹を蹴られるところでした。やり返すことは言語道断ですが、力の差がある上に防戦一方、という状況には辛いものがあります。ここで大事なことは、これらはいずれも一般病棟で起こったということ、患者さんは心神喪失状態であり、こちらの態度などで避けられる事件ではなかったということです。救急外来になると喧嘩の負傷者や酔っぱらい患者も多いため、状況はさらに悪化します。私の同僚だけでも救急外来で患者さんに殴られた女医さんが何人かいます。日本看護協会の調査では、身体的暴力・言葉の暴力を合わせると4人に1人の看護師が「暴力を受けたことがある」と回答しており、身体的暴力の96%は患者さんからの暴力だったとのことです(参照1)。英国でも状況は同様です。2000年に英国で行われた職種別の犯罪調査(British Crime Survey)によると、看護師が暴力行為を受ける確率は5.0%で、警備職(11.4%)の約半分のリスク。介護士は2.6%でこれも全職業の平均値の2倍以上となっており、医療関係者のリスクの高さがわかります(参照2)。言葉の暴力にいたると50%の病院職員が経験しており、暴力行為による医療費の喪失は年間6900万ポンドになるそうです(参照3)。英国NHS(参照4)では2001年からNHS Protectというプロジェクトを立ち上げてこれに当たっていますが(参照5)、驚くことに、その英国においても医療機関での迷惑行為が犯罪として認定されたのはつい最近の2009年であり、医療従事者が患者の暴力から保護されていない実情がうかがわれます。ではなぜ医療機関では暴力行為が多いのでしょうか?1つには、患者・医療者両方の精神的ストレスが挙げられます。入院生活や外来での待ち時間は、体調が悪い患者さんにとっては大変な精神的苦痛です。また、医療行為への恐怖が高まった結果、逆に医療に対する過剰な期待が裏切られた結果、暴力行為に至ってしまうこともあるそうです。それに対して医療関係者側でも、長時間勤務の過労状態の時に不適切な発言が増えるため、特に体力のないスタッフが衝突してしまう例が多い、と感じます。もう1つの原因は患者さんの意識状態の変容です。例えば急性アルコール中毒や急性薬物中毒による酩酊状態がこれにあたります。しかしこの「酩酊状態」はなにも中毒でなくとも起こり得ます。例えば痴呆、重症の肝臓疾患や甲状腺機能異常などの患者さんの意識障害は時折みられるケースです。また、24時間外に対して開けている病院という施設では、患者さん以外の方が乱入して暴力をふるう、という事件も起こり得ます。以前の勤務先では患者さんの家族が刃物を持って暴れている所を医師が確保した、などという話も聞きました。ではこのような行為に対して、どのような対策が取られているのでしょうか。多くのガイドラインで提示されているのは・相談窓口、報告システムの設置・警備員による巡回・診察室や待合室の間取りや物の配置・暴力行為を起こさないような環境作りといったものです。しかし、暴力行為の現場でスタッフ自身が身を守る方法については、あまり詳しく述べられていません。護身術の教育が病院単位でなされているところもありますが、学校教育としては導入されていないのが現状です。これについてNHSは「トレーニングと教育は重要だが、どのようなトレーニングが有効かというエビデンスは確立されていない」という大変英国らしいコメントを添えています。要するに費用対効果がよいかどうか分からない、ということでしょう。エビデンスを待つまでもなく、実際の現場では、一人ひとりが身を守る知識を持つことは最低限の職業訓練だと思います。腕や肩をつかまれた時に振り払う方法、暴れている患者さんから危険物(点滴台、置時計、ペンなど)を遠ざけること、横になっている人は額を押さえると暴れにくいこと、など。実践しないまでも、これらを知っているだけでもスタッフ自身の態度が変わります。怯えたり立ちすくむ新任スタッフはどうしても攻撃されることが多いため、これはとても大切なことなのです。また管理職の方は、看護師さんに暴力を振るう患者が、男性や医師(性別に関わらず)の前で急におとなしくなることも多い、ということも知っておく必要があります。これを把握していないと、「スタッフの態度が悪かったのだ」と解釈したり、暴力行為の危険性を低く見積もってしまうことがあるからです。暴力行為の危険は、専門・階級に関わらず、医療者にとって他人事ではありません。中学校では武道が必修化されましたが、医療系の学校でも、武道でなくとも最低限の護身術は教育してほしいな、というのが個人的な感想です。<参照>1.http://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/bouryokusisin.pdf2.http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200203/cmselect/cmpubacc/641/641.pdf3.http://www.designcouncil.org.uk/Documents/Documents/OurWork/AandE/ReducingViolenceAndAggressionInAandE.pdf4.NHS:National Health Service。イギリスの国営医療サービス5.http://www.nhsbsa.nhs.uk/Protect.aspx略歴:越智小枝(おち さえ)星槎大学客員研究員、インペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院客員研究員。1999年東京医科歯科大学医学部医学科卒業。国保旭中央病院で研修後、2002年東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科入局。医学博士を取得後、2007年より東京都立墨東病院リウマチ膠原病科医院・医長を経て、2011年10月インペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院に入学、2012年9月卒業・MPH取得後、現職。リウマチ専門医、日本体育協会認定スポーツ医。剣道6段、元・剣道世界大会強化合宿帯同医・三菱武道大会救護医。留学の決まった直後に東日本大震災に遭い、現在は日本の被災地を度々訪問しつつ英国の災害研究部門との橋渡しを目指し活動を行っている。

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君も医師として「国際協力師」にならないか?

「医師のキャリアパスを考える医学生の会」主催(代表:秋葉春菜氏〔東京女子医科大学医学部4年〕)の第17回勉強会が、2012年8月19日(日)、東京医科歯科大学・湯島キャンパスにおいて開催された。当日は夏休みの期間中にも関わらず医学生、社会人を中心に約40名超が参加した。今回は医師でNPO法人宇宙船地球号代表の山本敏晴氏を講師に迎え、「海外で、国境を越えて活躍している医療関係者達~宇宙船地球号にご搭乗中の皆様へ~」と題し、講演を行った。国際協力を俯瞰するはじめに山本氏の自己紹介のあと、「国際協力とは何か」と題して、現在の国際協力の種類や体制、これからの展開についてレクチャーが行われた。最も強調されていた内容は、『国際協力』は、無給のボランティアとして行うだけではなく、有給の仕事として行う方法もある、ということだった。その就職場所となる組織は、大きく分けて4つある。〔1〕国際機関(国連(WHO、ユニセフ等)など)、〔2〕政府機関(外務省の国際協力機構(JICA)など)、〔3〕民間のNGO(非政府組織)、〔4〕民間の企業(開発コンサルタント会社など)。以上の、いずれの組織でも、医師などが雇用され、有給の仕事として国際協力を行っている人が多数いるという。〔1〕の国連職員等の場合、アメリカの国家公務員に準じた給与が支払われ、勤務年数と昇進に伴い増額されていく。〔2〕の日本のJICA専門家などの場合、日本の一般的な勤務医と同等か、それ以上の給与が支払われる。〔3〕のNGOの場合、薄給または無給である。例えば、山本氏がかつて所属した「国境なき医師団」の場合は、2012年現在、毎月約13万円程度が支払われる。〔4〕は日本政府の外務省から国際協力事業を受注する「会社」で、医療・公衆衛生分野の事業を実施する場合もある。その場合、医師なども雇用される。〔1〕国連職員等と〔2〕JICA専門家等の場合、国家公務員と同等以上の待遇で途上国等へ派遣されるので、待遇(給与、年金、保険など)は国内並みに安定する。また、国際協力と聞くと、途上国の田舎で、電気も水道もない生活を送ると思っている人が多いが、そのようなことはなく、(〔1〕と〔2〕の場合は)派遣国の首都にいくことが多く、そこにある高級ホテル等に泊まることが多い。業務は派遣先の国の(医療・公衆衛生に関わる)政策立案(及びその政策の実施補助)などが主体であるなどと述べた。一方で、〔3〕のNGOでのボランティアの場合、収入は低いため、仮にそれに参加したとしても、自分や家族の生活費を捻出できないため、持続的な活動を行うことはできず、半年から2年程度で止めてしまう人が多い。このため、継続的に国際協力を行っている人の8割以上は、〔1〕、〔2〕、〔4〕のいずれかの方法で、有給のプロとして国際協力を行っているという。ただし、〔1〕、〔2〕、〔4〕では途上国の保健省(日本の厚生労働省に相当)への政策提言・アドバイスが、主な仕事となるため、医師が自分で患者の診察や治療をすることは、ほぼない。このため、「自分で直接、患者さんを診療するタイプの国際協力」を行いたい場合、お金にはならないが、〔3〕のNGOのボランティアとして行うしかない。中庸案としては、日本赤十字社が日本各地で運営する病院で、普段は勤務をしておき、自然災害が途上国で起きた際に、それに対する(日赤からの)緊急援助として(短期間の間だけ)出動する、という方法もある。いずれにしても、「『なんらかの形で持続的に国際協力に従事している人々』のことを、山本氏は『国際協力師』と呼び、数年前から、その概念を普及しているのだ」と語った。シエラレオネの現実次に「世界で一番いのちが短い国 シエラレオネ」の説明が行われた。銀座・新宿等で多数の写真展を開催している山本氏が、自ら撮影した写真を示しつつ、現地の内戦の様子や「なぜ平均寿命が短いのか?」が語られた。だがまず、山本氏は、同国の「素晴らしさ」について、触れだした。意外なことに、「持続可能な社会」という意味では、日本の方が「途上国」で、シエラレオネの方が「先進国」だと言う。同国の田舎では、日本の江戸時代のような生活をしており、電気などはない。このため、高度な医療はできない。よって、悪く言えば、近代文明から遅れていると言えるが、よく言えば、「(将来枯渇してしまう石油などのエネルギーに依存しないため)持続可能な生活を、ずっと営んでいるのだ」と言う。このためむしろ、「同国に国際協力をしてあげる」というよりも、「日本人が(江戸時代までは行っていたのに)忘れてしまった「持続可能な社会」(未来まで、ずっと続けていける(医療も含めた)生活のスタイル)を思い出させてくれる国であった」と山本氏は言う。次に、山本氏は、シエラレオネが、ボロボロになっていった経緯を説明した。シエラレオネでは、ダイヤモンドが採れる。これを狙って、欧米の営利企業が、その採掘を巡り同国で紛争を起こした。内戦だけでなく、隣国リベリアからの軍事侵攻も発生し、人々の生活は崩壊していった。多くの医療施設が破壊され、多くの医師や看護師が、国外に逃亡してしまった。その結果、乳児死亡率も、5歳までに子どもが死んでしまう割合(5歳未満子ども死亡率)も、ともに「世界最悪」という国になってしまった(2000年頃)。また、5歳まで生き残った子どもたちも、争う軍事組織らのいずれかに「子ども兵」として雇われ、麻薬漬けにされたまま、「戦争の道具」(生きた兵器)として戦場に連れていかれる。こうして、平均寿命34歳(2002年ユニセフの統計で世界最低)という国ができあがってしまった。こうした現状に対し、山本氏は、自らが現地で医療活動を行うだけでなく、自分が日本に帰ってしまった後も、未来永劫、シエラレオネで続けていけるような「医療システム」の構築を目指した。現地で医療機関(病院と診療所、さらにその連携制度など)を創設し、そこで働く医療従事者の人材育成を行った。そして、これからこうした国々へ支援にいこうという聴講者へ「現地の言葉を覚えること」、「現地の文化と伝統医療を尊重すること」、「西洋医学や日本の医療の手法を、一方的に押し付けないこと」など、体験者ならではのアドバイスを送った。アフガニスタンの現実続いてアフガニスタンに赴任した時の話題となり、同地では、(患者を診る医師としてではなく)プロジェクト・リーダー(コーディネーター)として、同国北部領域における母子保健のシステム構築に従事していたことを語った。同国では現在も(政府とタリバーン等の軍閥間での)紛争が続いており、「世界で一番、妊産婦死亡率が高い」ことと、その理由などが述べられた。国際協力師として世界に関わらないか最後に再び、国際協力を行っていく形として、民間NGOの無給のボランティアとして途上国に派遣されるだけでなく、有給のプロとして、例えば、JICAなどの専門家として赴任する選択肢もあることを強調した。また、今後国際協力を行っていこうという聴講生に向けて、(最も医療が遅れているとされる)アフリカ諸国で国際協力をやりたいのであれば、フランス語を習得した方がいいという助言をした。アフリカ諸国は、昔、フランスの植民地だった国が多いためである。さらに、(途上国の病院等の見学ツアーである)「スタディーツアー」や「ワークキャンプ」を一度は体験してみるのもよいと勧めた。その他、公衆衛生分野(予防、水と衛生など)であれば、医師でなくとも参加できるので医師以外の方でも大学院で「公衆衛生学修士」をとって、参加して欲しいと述べた。それに関連して、「世界を見て思ったことは、予防医学こそが究極の医療ではないかと思う」と述べ講演を終えた。質疑応答次のような質問が、山本氏に寄せられ、一つ一つに丁寧に回答されていた。――援助や支援の在り方について国際協力には、(1)地震などの自然災害の直後や、紛争地帯の中に入っていく「緊急援助」と、(2)それらが落ち着き、途上国の政府や地方自治体が、ある程度、正常に機能している時に行う、「開発援助」がある。(1)と(2)では、まったく違うことをする。(1)は、直接的な(狭義の)医療を行うことが多いが、(2)では、途上国政府への政策提言など、医療システムや公衆衛生の構築(広義の医療)をすることが多い。貧しい途上国への開発援助は、昔は、(マラリアや肺炎などに対する)感染症対策と母子保健(乳児死亡率の改善、妊産婦死亡率の改善など)の改善を目的としていた。ところが、(国連が定めたミレニアム開発目標の終わる)2015年以降、WHOは、大きく方針を変える予定だ。今後は、途上国でも、糖尿病、高血圧などの生活習慣病(いわゆる成人病)が増える傾向にあるため、それらに対する対策(治療と予防)が、主流になる可能性が高い。ちなみに、国際協力の世界では、そうした疾患のことを、「非感染性疾患(NCD)」と言う。――現在の山本氏の活動について現在は、直接的な国際協力(狭い意味での国際協力)からは離れ、『国際協力師』を増やすことを主な活動としている。運営しているNPOの活動は3つある。(1)『国際協力師』を直接的に増やすために、本を執筆したり、啓発するためのさまざまなサイト(ホームページ、ブログ、ツイッター等)を制作している。(2)『お絵描きイベント』という、ちょっと変わった活動もしている。世界中の人々に「あなたの大切なものは何ですか?」と質問をし、その絵を描いてもらい、そこから導き出される、その国の『社会背景に眠っている問題点』を洗い出し、各国の問題をわかりやすく説明し、さらにそれに対し各組織が行っている国際協力活動を紹介する事業を行っている。世界の約70ヵ国・地域で実施した。書籍版が4冊(小学館等から)出版されており、またウェブサイトとしても公開している。(3)一般の企業に対して、「企業の社会的責任(CSR)」のランキングを付けている。利益を追求するだけでなく、環境への配慮を行い、社会貢献も実施するような企業を増やしていくためだ。2年に一度、ウェブサイト上で公開している。同様に、「病院の社会的責任(HSR)」に関するランキングも、現在、検討中である。要するに、すべての組織に、「持続可能性」への配慮を行うように啓発をしている。――国連のミレニアム開発目標(MDGs)2015の評価と意義についてMDGsは大体達成できていると思うが、数字的には、妊産婦死亡率の低下と乳児死亡率の低下が達成できていない。これはこれからの課題だと思う。ただ、この目標を定めたことで先進国が巨額のお金を出資し、資金ができ、一定の効果はあったので評価できると思う。――海外の地域医療で役立ったこと、また逆に日本に持ち込んで役立ったことは?アフリカの田舎では、医師がいないか、足りない。このため、看護師(または、普通の村人で、ある程度の研修を受けた人)が、病気を診断したり治療したりしている。看護師や村人では判断できない、難しい症例の場合は、携帯電話のSMS(ショート・メッセージ・サービス)を使って、首都などにいる医師に連絡をする。こうしたことは、途上国で当たり前のように行われている。日本では、医師法があるため、「医師でなければ診断や治療をしてはいけない」ことになっているが、日本の無医村や離島も、アフリカの田舎に近い場合がある。よって、アフリカの真似をして、日本でも、IT機器(携帯電話やパソコン等)を使って、遠隔地医療を「医師でない人が行って、どうしても医師が必要な場合は、医師がIT技術でアドバイスを送る」ということも考えられる。日本では、毎年、医療費が増加しており、国の借金も膨らんでいる。今後、さらに高齢化社会になるため、毎年1兆円ずつ、国の社会保障費(医療・公衆衛生・年金など)が増えていくことがわかっている。その理由の一つが、医者の人件費が高いことである。一般の日本人の平均年収は430万円だが、医師のそれは1,500万円をはるかに超える。このような「高い」人件費を使わずに、今後の日本の医療を実施していく必要がある。「お金をかけないで行う」、あるいは「費用対効果」を考えるということも、これからの医師には必要だ。2000年から導入された介護保険制度は、まさにこれである。高齢化社会を迎え、また国の財政が破綻しかかっている中、医療従事者であっても、「患者さんにその時点で最高の医療を(予算などまったく気にせず)提供する」ことだけを考えるのではなく、なるべく、お金をかけず、環境にも優しく(電気をあまり消費せず、ゴミをあまり出さないように配慮して)医療システムが未来まで続けていけるように配慮することが必要である。最後にスタッフの伊藤大樹氏(東京医科歯科大学医学部4年)が「国際協力の貴重なお話を有難うございました。これからも充実した勉強会を開催していきますのでよろしくお願いします。また、会では協力いただけるスタッフを募集しています。気軽に参加ください」と閉会挨拶をのべ、3時間にわたる勉強会を終了した。■講演者略歴■関連リンクNPO法人「宇宙船地球号」山本敏晴ブログ* * * * * *医師のキャリアパスを考える医学生の会

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鍼灸の現状と問題(2) 保険外併用療養費の考察

北海道鍼灸マッサージ柔整協同組合 理事 健保対策委員長NPO法人 全国鍼灸マッサージ協会 理事 広報/渉外局 健保推進担当渡邊 一哉2012年6月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 鍼灸が現状の健康保険法の87条、療養費の枠組みで健保の支払いが償還払いになって久しい。昭和の30年代には日本鍼灸師会が健保の推進を掲げて運動している事からそれ以前、戦後マッカーサーが鍼灸禁止の発令をしようと、日本の医療者と論議になっているのが昭和25年前後と思われる事から、それから数年で健康保険を使っての鍼灸が始まってる事になる。 現在の日本の鍼灸は医業行為とは呼ばれず、法的には医業類似行為と言われている。これに不服を感じ、医業になるべきだ、医療行為となぜ言われないのか?と鍼灸の業界団体もまた、ここ数年で相次いで設立された鍼灸系の大学などでも、盛んに研究が行われ、EBMの確立に躍起になっている。 おそらく、数年の後にはある程度EBMの確立を生むかもしれない。それはそれで素晴らしい事だし、そうなる事を願ってはいる。鍼灸が病院内医療として行われ、それが患者さんに使われる事で、医療経済の側面からも薬剤や、リハビリテーションと並び、鍼灸は強力な武器にもなる可能性がある。 製薬会社から妨害があるのではないか?とか、薬剤師会と対立するのではないか?と言うような声もあるにはあるが、だとしても医療の選択肢として患者さんが医師と話し合いの上で、もしくは患者の意思を尊重してとなるのであれば、それはそれで問題のある事だとは思えない。 仮にEBMが確立をして医療に参入するとなるとどういう事が起こってしまうのか。病院内で行われる医療行為はすべて医師法に遵守した形で行われている。1.医師法第17条 医師でなければ、医業をなしてはならない。第18条 医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。 このように医師に業務独占、名称独占を与えている。今の病院医療は、医師が業務独占があるために、他のメディカルスタッフはすべて医師の処方で業務をこなしている。しかも請求は保険給付である。現物給付と言われる給付の方法で請求は医師が行うのはご承知の通りである。 あまり今のところ、鍼灸の医療参入に関してはせいぜい混合診療の問題が発生しているくらいのもので、鍼灸という業務としての問題を提起する方はいない。 今の時点で鍼灸が健保を適応しているのは制度上は健康保険法の第87条の療養費の部分である。(療養費)第八十七条 保険者は、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給(以下この項において「療養の給付等」という。)を行 うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合におい て、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる。 この療養費の87条は療養の給付が困難であると認める時と条文上では書かれている。現在のこの条文に関しての運用は、厚労省から通知がでている。 最新の厚労省の鍼灸に関しての疑義解釈資料(平成24年2月13日発布)によれば、療養の給付等が困難な場合とは慢性病であり、医師による適当な医療手段のないもので主として神経痛、五十肩、腰痛など他類焼疾患となっており、漫然と医療を受け続けても、治癒に至らないものとされている。 この解釈を巡っては様々な論議があるが、今のところは医師の同意書が発行されれば、その条件に関してはあまり言わない保険者が大半を占める。一部、保険医療機関担当規則を持ち出してくる保険者もいるにはいるが、そもそも日本の行政は裁量行政であり、その場その場、時代時代に、条文を無理矢理都合を合わせて行く事が日本の行政であり、そうでないと時代が移行する度に、条文改正や、国会での論議という事になるのは大変な事で、それである程度、幅を持たせて解釈をしている。 時に拡大し過ぎ、飛躍し過ぎという話もあるが、それをある程度調整をつけていくのが医療であれば厚労省の役割でもあろうと思う。 話を戻すが、この療養費は、償還払いが原則で、現物給付は請求権は医師にあるのに対し、償還払いは被保険者請求である。 それを代理請求して鍼灸師、もしくは第3者が行っている現状がある。これはこれで複雑で煩雑な書類を被保険者が行う手間を、慣れている者が行うことでガードが下がり国民の受療が進むというメリットはある。 これがEBMが進み、医療になるとすると、医師以外は医療を行えないという医師法の原則からいくと鍼灸師は医師の処方下でないと鍼灸治療が行えなくなるという現実がある。あくまで条文を条文通りに行くとという事であるが。 事、医師法に関しては、他の法律と違い、かなりコンプライアンスを守らなければいけないし、医師法は日本の医療に関しては統治している法律である。ここの医師以外で医療を行うという部分に鍼灸師が参入する事を医師はおろか、他の医療関連職種も黙っているわけには行かないだろうと思う。 この問題は、くしくもEBMがある程度確立し、日本で鍼灸が認められ、病院内医療として行われ始めると同時に発生する。 この問題をいったいどうしていくのがいいのか。日本の現存の開業鍼灸師は、病院内医療が始まるとどうなるのか?ここに解決の道はないのか。 私案であるが、保険外併用療養費に鍼灸を選定療養としてでも入れる事で、病院内では保険外併用療養費として、病院外では健康保険法87条の療養費払いとして、支払う事が可能になるのであれば、病院医療と開業鍼灸師との共存が可能である。あくまで法律上ではあるが。 保険外併用療養費に鍼灸が認められれば、混合診療問題も鍼灸に関しては除外される事になる。鍼灸が医療参入できないのはひとつには混合診療問題からだと言われている事からそれは問題回避する事ができる。 現在の保険外併用療養費は下記になる。●評価療養(7種類)・先進医療(高度医療を含む)・医薬品の治験に係る診療・医療機器の治験に係る診療 ・薬事法承認後で保険収載前の医薬品の使用・薬事法承認後で保険収載前の医療機器の使用・適応外の医薬品の使用・適応外の医療機器の使用●選定療養(10種類)・特別の療養環境(差額ベッド)・歯科の金合金等・金属床総義歯・予約診療・時間外診療・大病院の初診・小児う触の指導管理・大病院の再診 ・180日以上の入院・制限回数を超える医療行為 この指定は厚労大臣が認定して行う事になっていて、そこに鍼灸が参入というのはもっとも今の法律を変えず、開業鍼灸師も打撃を大きくはうけず、病院医療で行う事からさらにEBMの確立に向けていけると思うし、国民のアクセスのしやすくなる。 医療経済的にどうなのか?と問われれば、やってみないとわからない事が多く、予想としては薬剤やその他の医療と基本的には併用はできない仕組み作りにして行くと経済効果もあるとは思うのだが、厚労省側で、一部地域やもしくは時限的にとかで選定療養としてやってみないと医療経済的にはわからない。 とりあえず、地域を限定してやってみるというのも方法である。その際、開業鍼灸師には、同意書の発行など医師が渋る事のないように便宜をはかる必要があり、あくまで、選択は患者さんが、国民にあるという姿勢で行く事が必要ではないかと思われる。料金的にも保険外併用療養費であれば、はり術きゅう術 電療合わせて1525円になり、開業鍼灸師であれば、その割合負担が患者さんの負担である。厚労省の裁量行政でなんとかなる話なのである。

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第111回日本皮膚科学会総会

2012年6月1日~3日、国立京都国際会館にて、第111回日本皮膚科学会総会が開催された。昨年開催予定だった第110回総会が東日本大震災のために中止となり、2年ぶりの開催となった今回は、「進化する皮膚科:知と技を磨く」というテーマのもと、皮膚科学の様々な疾患をカバーする数多くのセッションが企画された。ここでは、その中からいくつかのセッションをレポートする。レポート教育講演「分子標的薬の現状と展望―副作用対策を含めて―」メーカー紹介株式会社レザック歯科等の炭酸ガスレーザー、フラクショナルCO2レーザーはレザック。グラファ ラボラトリーズ株式会社エビデンスに基づく製品開発を実践します。株式会社サンソリット信頼できるピーリングを。ピーリングのパイオニア サンソリットルートロニックジャパン株式会社Technology for Beauty and Healthアラガン・ジャパン株式会社アイケア、神経科、皮膚科、美容医療、泌尿器科などの専門領域に特化したグローバルヘルスケア・カンパニーサイノシュアー株式会社Be transformed株式会社ファンケル毎日心地よく肌のお手入れができるように。皮膚科専門医との共同研究から生まれた、「無添加FDR」のご紹介キャンデラ株式会社ひとにやさしく、未来につながる技術。株式会社おんでこおんでこ ダーモスコープ エピライトエイト ONDEKO DERMOSCOPE (EPI LIGHT×8) のご紹介パロマジャパン株式会社FROM LIGHT COMES BEAUTYマルホ株式会社敏感肌や乾燥肌のためのスキンケアをサポートする2e(ドゥーエ)。製品に込められた、その想いをお伝えしますマーシュ・フィールド株式会社痣・火傷痕・傷痕・白斑などのカバー専用化粧品、並びに低刺激性スキンケアの企画販売レキットベンキーザー・ジャパン株式会社フットケアの専門ブランド  ドクター・ショール(Dr.Scholl)日本ロレアル株式会社ラ ロッシュ ポゼ 皮膚科医が採用する敏感肌のためのスキンケア株式会社ケイセイ医療機関を対象に化粧品・医薬部外品の企画・開発・販売を実施

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被災地の医療従事者が必要としている情報に、福島と岩手で違いあり

 ファイザーは20日、東日本大震災の被災地に向けた支援のひとつとして、昨年7月から被災者へのPTSD(Post-traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)の治療を支援することを目的として日本トラウマティック・ストレス学会と共同で展開している「東日本大震災 こころのケア支援プロジェクト」活動報告のまとめを発表した。 今回の調査は、岩手県137名、福島県117名の医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護スタッフに、講演会終了時アンケート回収、および聞き取りによって行われた。調査期間は、2011年9月20日~12月14日。各項目について、対象者には「非常に関心がある(3点)」「まあまあ関心がある(2点)」「あまり関心がない(1点)」「まったく関心がない(0点)」の4段階で点数化もらった。 岩手県、福島県で医療従事者が必要としている情報に関して調査を実施したところ、被災地における医療従事者のニーズに違いがあることがわかった。岩手では不眠や認知行動療法など、より具体的なケアに関心が集まり、福島では放射能による影響とストレス、さらに子供のPTSDについて関心が高いという結果であった。 日本トラウマティック・ストレス学会 会長の前田正治氏は、「震災後1年を経過しましたが、今般の震災の規模から考えるとメンタルヘルス上の問題は今なお大きいと考えざるを得ません。特に被災地で働く医療スタッフなど専門職支援者の疲弊も強く、今後はこの面での配慮が必要となります。また原発事故にみまわれた被災地では、より事態が複雑化していると考えられ、長期的なケアが必要となります。」と述べている。

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診療報酬改定セミナーのご案内 3月に4都市で開催(医療経済研究機構)

医療経済研究機構は15日、3月に開催する厚生労働省保険局医療課担当官からの「平成24年 診療報酬改定セミナー」の申し込み受け付けを開始した。開催地は東京、札幌、大阪、福岡の4都市。《平成24年 診療報酬改定セミナー【東京】》 【日 時】平成24年3月7日(水) 13:00 ~ 16:00 (開場12:30)【テーマ】「平成24年診療報酬改定について(医科・歯科・調剤)」【講 師】厚生労働省保険局医療課 担当官【会 場】ニッショーホール     東京都港区虎ノ門2丁目9番16号     TEL:03-3503-1486     会場地図>>http://www.nissho.or.jp/nissho-hall/kyoukai.html【参加費】会員:2,000円 / 非会員:5,000円《平成24年 診療報酬改定セミナー【札幌】》 【日 時】平成24年3月10日(土) 15:00 ~ 17:00 (開場14:30)【テーマ】「平成24年診療報酬改定について(医科)」【講 師】厚生労働省保険局医療課 担当官【会 場】TKPガーデンシティ札幌 きょうさいサロン 7階 飛鳥     北海道札幌市中央区北四条西1丁目 共済ビル7階     TEL:011-252-3165     会場地図>>http://kyosaisalon.net/access.shtml【参加費】会員:1,000円 / 非会員:3,000円《平成24年 診療報酬改定セミナー【大阪】》 【日 時】平成24年3月10日(土) 15:00 ~ 17:00 (開場14:30)【テーマ】「平成24年診療報酬改定について(医科・調剤)」【講 師】厚生労働省保険局医療課 担当官【会 場】TKP大阪梅田ビジネスセンター 4階 ホール4A     大阪府大阪市福島区福島5-4-21 TKPゲートタワービル4階     TEL:06-4797-6610     会場地図>>http://tkpumeda.net/access.shtml【参加費】会員:1,000円 / 非会員:3,000円《平成24年 診療報酬改定セミナー【福岡】》 【日 時】平成24年3月17日(土) 15:00 ~ 17:00 (開場14:30)【テーマ】「平成24年診療報酬改定について(医科・調剤)」【講 師】厚生労働省保険局医療課 担当官【会 場】TTKP天神シティセンター 8階 S-1     福岡県福岡市中央区天神2丁目14番8号 福岡天神センタービル8階     TEL:092-720-8003 会場地図>>http://tkptenjin.net/access/【参加費】会員:1,000円 / 非会員:3,000円主催:医療経済研究機構申し込みは、医療経済研究機構ホームページ(https://www.ihep.jp/)「各種講演会お申し込み」から受け付ける。その他セミナーに関する問い合わせは、こちらまで。============================================一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構 企画渉外部TEL:03-3506-8529 FAX:03-3506-8528E-mail: info@ihep.jp〒105-0003東京都港区西新橋1-5-11 第11東洋海事ビル2F============================================

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術後輸血戦略は制限的輸血が妥当

術後輸血戦略について、非制限的に行う輸血(自由輸血)が制限的輸血と比較して、術後の死亡率を低下したり回復を促進はしないことが、股関節手術を受けた心血管リスクの高い高齢患者を対象とした無作為化試験の結果、明らかにされた。また被験者の特性の一つでもあった心血管疾患の院内発生率も抑制できなかったことも示された。術後輸血については、ヘモグロビン閾値が論争の的となっている。そこで米国・ニュージャージー医科歯科大学のJeffrey L. Carson氏らは、より閾値の高い輸血者のほうが術後回復が促進されるかどうかについて検証した。NEJM誌2011年12月29日号(オンライン版2011年12月14日号)掲載報告より。術後患者をヘモグロビン閾値8g/dL未満と10g/dLに無作為に割り付け試験は2004年7月~2008年2月の間に、米国とカナダの47の医療機関で被験者を登録して行われた。被験者は、心血管疾患の既往歴またはリスク因子のいずれかを有し、股関節骨折で手術を受け、術後ヘモグロビン値が10g/dL未満の50歳以上の患者2,016例(平均年齢81.6歳、年齢範囲:51~103歳)であった。研究グループは被験者を無作為に、自由輸血戦略群(ヘモグロビン閾値10g/dL)または制限的輸血戦略群(貧血症状があるか医師の裁量でヘモグロビン閾値<8g/dL)に割り付け追跡した。主要転帰は、追跡調査60日後の死亡または人の介助を受けずには部屋の端から端まで歩くことができない(自由歩行不能)の割合とした。副次転帰は、院内心筋梗塞・院内不安定狭心症・すべての院内死亡の複合とした。輸血自由戦略群、いずれの指標も改善できず輸血赤血球単位の中央値は、自由輸血戦略群で2単位、制限的輸血戦略群は0単位であった。主要転帰の発生率は、自由戦略群35.2%、制限戦略群34.7%で、自由戦略群のオッズ比は1.01(95%信頼区間:0.84~1.22、P=0.90)、絶対リスク差は0.5ポイント(95%信頼区間:-3.7~4.7)だった。オッズ比は男女差が認められ(P=0.03)、男性(オッズ比:1.45)が女性(同:0.91)よりも有意であった。追跡調査60日後の死亡率は自由戦略群7.6%、制限戦略群6.6%で(絶対リスク差:1.0%、99%信頼区間:-1.9~4.0)だった。また、副次転帰の発生率は、自由戦略群4.3%、制限戦略群5.2%(絶対リスク差:-0.9%、99%信頼区間:-3.3~1.6)であった。その他の合併症の発生率は両群で同程度だった。結果を踏まえてCarson氏は、「我々の所見は、貧血症状がない場合やヘモグロビン値が8g/dL以下に減少していない場合、さらには心血管疾患やリスク因子を有する高齢患者では、術後患者での輸血は控えることが妥当なことを示唆する」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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リウマチ膠原病セミナー

⑦「Lupus for dummies」⑧「免疫抑制剤の使い方と副作用~知っておくべきこと~」⑨「日和見感染症の予防と治療」特典映像「症例検討会」 リウマチ膠原病セミナー臨床に携わるジェネラリストとして知っておかなければならない情報について、あまり難しいことは抜きにして分かりやすく解説します。ループスを疑う患者へのアプローチ法・検査・診断の進め方、そして病態生理にも触れてよりループスの理解が深まるように進めます。また、日常診療で頻度の高い「免疫抑制剤」、免疫抑制剤とは切っても切れない、感染症の中でも特に知っておきたい「日和見感染症」について詳しく解説します。特典映像では症例提示を元に診断・治療戦略をディスカッションします。※本DVDに収録したセミナーは、2009年6月に亀田総合病院にて収録されたものです。⑦「Lupus for dummies」講師 : 高田 和生氏(東京医科歯科大学 膠原病・リウマチ内科 講師)⑧「免疫抑制剤の使い方と副作用~知っておくべきこと~」講師 : 萩野 昇氏(帝京大学ちば総合医療センター 血液・リウマチ内科)⑨「日和見感染症の予防と治療」講師 : 細川 直登氏(亀田総合病院 総合診療・感染症科 臨床検査科 部長)

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リピート処方の質と安全に、受付・事務スタッフの創造的判断が貢献

リピート処方(repeat prescribing)、いわゆるDo処方について、受付または事務スタッフが、質および安全性に対して重大な「隠れた」貢献を行っているとの研究結果が報告された。英国・バーツ&ロンドン医科歯科大学校のDeborah Swinglehurst氏らによる。BMJ誌2011年11月12日号(オンライン版2011年11月3日号)掲載報告より。リピート処方をめぐる質・安全への貢献および障壁について調査Swinglehurst氏らは、GP(general practice)におけるリピート処方に関して、組織業務の様子を描出、調査、比較検討することで、質および安全に対する貢献者および障壁を特定する研究を行った。研究対象となったのは、電子患者記録を使用しており、患者への処方が準オートメーション化されている英国4都市の組織形態が多様なGP。395時間にわたって民族誌学的事例研究の手法でスタッフ(医師25人、看護師16人、ヘルスアシスタント4人、マネジャー6人、受付・事務スタッフ56人)を観察し、28の文書と、リピート処方に関わる部分的、全体的な人為的な現象について調べた。主要評価項目は、患者安全や良好な診療の特徴に対する潜在的な脅威とした。研究グループは、医師、受付・事務スタッフがリピート処方について、どのような貢献をしているか、また協同しているかを観察し、処方作業をマッピングすること、組織的実践を描出すること、それらを一緒に話し合って描画しているかなどについて解析した。これらは社会的モデルとして知られるもので、ICT(information and communications technologies)により形成化されているものであった。これからの患者安全の研究は、テクノロジーサポートを研究することが大切調査・解析の結果、リピート処方は複雑で、患者安全に重大な影響を有し、医師とスタッフの協働が求められるテクノロジーサポート・ソーシャルプラクティスであることが明らかになった。リピート処方の半数以上が、受付スタッフによって“例外”と判断されていた。大半は、電子リスト上にあったものと異なる薬、投与量、タイミングなどの理由によるものであった。形式的な処方プロトコルと、リピート処方を書くことにはギャップが存在する。そのギャップを埋める作業として、医師が知らないうちに、受付・事務スタッフの創造的な判断が貢献していた。Swinglehurst氏は、「一見、平凡で、標準的で、自動化されていると見られるテクノロジーサポート・ルーチンワークは、実際には高度な部分的な調整や判断が最前線のスタッフによって求められる。それらを研究することが、患者安全研究の新たなアジェンダになっていくだろう」と結論している。

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医師の専門性認定、患者や同僚医師の評価に基づく判定は慎重に

医師の専門性を患者や同僚医師の評価に基づいて判定する場合、当該医師や評価者の背景因子に起因する組織的バイアスが生じる可能性があるため注意を要することが、英国・ペニンシュラ医科歯科大学のJohn L Campbell氏らの調査で示された。王立医師協会(GMC)は、イギリスの医師が医師免許を継続して保持するには妥当性を再確認する必要があり、そのためには最新かつ実臨床に即した医療を提供可能なことを示すよう提言している。医師による認定の申請を判定するには、患者や他の同僚医師からの多岐にわたる評価がエビデンスの重要な情報源になるという。BMJ誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月27日号)掲載の報告。医師の専門能力評価に影響する予測因子を調査研究グループは、医師の専門性を評価する際にみられる組織的バイアス(多くの個別の条件下で評価が行われるため、実際の価値とはずれが生じること)の原因に関して質問票を用いて横断的に調査し、得られたデータについて解析を行った。調査対象は、イングランドとウェールズのさまざまな専門領域の非研修段階にある医師1,065人と、その同僚医師1万7,031人および患者3万333人であった。GMCによる患者および同僚医師への質問票を用いて当該医師の専門能力を評価し、医師自身と患者、同僚の背景因子に起因する可能性のある予測因子について検討した。多くの情報源からの医師の評価は慎重に解釈すべき医師および患者の背景因子で調整したところ、ヨーロッパ以外の国で学位を取得した医師に対する患者の評価が低いことが示された。すなわち、これらの医師では、1)特に精神科医として診療業務を行っている医師の評価が低い、2)質問票を提出した白人患者が少ない、3)当該医師の診察を「たいへん重要(very important)」とした患者が少ない、4)「かかりつけ医に診てもらう」と回答した患者が少ない、などの傾向が認められた。同僚医師の評価は、イギリスおよび南アジア以外の国で学位を取得した医師において低かった。これらの医師では、1)代理医師として雇用、2)GPあるいは精神科医として診療、3)非専門的職員(staff grade)、準専門医(associate specialist)あるいは他の同等職種として雇用、4)医師と毎日あるいは毎週、専門的な交渉を行っていると答えた同僚が少ない、などの事例が確認された。完全調整後のモデルによる解析では、当該医師の年齢、性別、人種は、患者や同僚医師による評価の独立の予測因子ではなかった。患者や同僚の年齢、性別も、当該医師の評価の予測因子ではなく、同僚の人種も関連はなかった。これらの結果を踏まえ、著者は「医師の専門性に関する患者や同僚医師の評価を考慮する際は注意が必要である。標準化された専門性の評価法がない場合は、多くの情報源からの意見に基づく医師の評価は慎重に解釈すべき」と警告し、「専門家としての医師の評価には、評価者や評価対象医師の背景因子に起因する組織的バイアスが存在する可能性がある。医師としての妥当性の再確認を目的に、GMCの患者/同僚質問票を用いた調査を行う場合、多くの情報源からの評価は少なくとも初期段階においては「形成的評価」として行われるべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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内視鏡手術のトレーニング用システム2点を開発 11月の日本神経内視鏡学会にて発表へ

外科医向け精密削開練習用骨モデルを製造・販売する大野興業は14日、内視鏡下における水頭症手術(第3脳室底開窓)および経蝶形骨手術(下垂体腺腫)のトレーニング用システムを開発したことを発表した。同トレーニングシステムは、大平 貴之氏(慶應義塾大学 脳神経外科)監修のもとで行われた。水頭症患者の脳室内形状を軟質素材でリアルに再現した「水頭症手術モデル」は、第三脳室底開窓術トレーニングを可能にした。また、鼻腔内鼻甲介や頭蓋底大脳血管などの器官を硬質軟質各種素材でリアルに再現した「経蝶形骨手術モデル」は、粘膜切開剥離と軟骨折除からトルコ鞍底部骨除去に至る内視鏡トレーニングが可能だという。なお、経鼻内視鏡による手術は、脳神経外科と耳鼻咽喉科によるコラボレーションが一般的なため、鼻腔内の再現については、角田 篤信氏(東京医科歯科大学 耳鼻咽喉頭頸部外科)も監修に加わっている。同社は、これら2点のトレーニングシステムは練習者が内視鏡を用いて患者を施術する感覚を繰り返す練習とより深い手技の理解と習得に役立ち、これから内視鏡手術を学ぶ多くの若いドクターにとっても有効なツールになるのではと述べている。また、今回のシ新モデルの開発については、2011年11月17日・18日に岡山にて開催される第18回 日本神経内視鏡学会で発表される予定。プレスリリースはこちらhttp://www.atpress.ne.jp/view/23744第18回 日本神経内視鏡学会Webサイトhttp://www.congre.co.jp/jsne2011/

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リウマチ膠原病セミナー

⑩関節炎所見から膠原病を見分ける⑪不明熱とスティル病⑫多発性筋炎、皮膚筋炎 リウマチ膠原病セミナー日常診療で最低限の初期診断、フォローアップができるように、リウマチ・アレルギー専門医があまり難しいことは抜きにして、臨床に役立つ情報を提供します。病歴・身体診察は、「8割は診断がつく!」と言われほど重要です。まずは関節炎の症状から日常診療で膠原病を見分けるポイントを伝授します。病態が不明な点が多いスティル病には発熱に特徴があり、その発熱のパターンを覚えておくと診断に役立つでしょう。そして、多発性筋炎、皮膚筋炎の関連疾患情報のアップデートや症状・原因・治療に関する基礎知識について解説します。※本DVDに収録したセミナーは、2010年1月に聖路加看護大学にて収録されたものです。⑩関節炎所見から膠原病を見分ける講師 : 岸本 暢将 氏(聖路加国際病院 アレルギー膠原病科〔成人,小児〕)副医長⑪不明熱とスティル病講師 : 松井 和生 氏(亀田総合病院 リウマチ・膠原病内科)⑫多発性筋炎、皮膚筋炎講師 : 高田 和生 氏(東京医科歯科大学 膠原病・リウマチ内科)

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2008年英国NICEの勧告による、歯科治療での抗菌薬予防的投与中止の影響

感染性心内膜炎のリスクが高いと思われる患者に対する抗菌薬の予防的投与は、いまだ多くの国で行われているが、英国国立医療技術評価機構(NICE)は2008年3月に、歯科の侵襲的治療に先立って行われる同抗菌薬予防的投与の完全中止を勧告した。シェフィールド大学臨床歯科学部門のMartin H Thornhill氏らは、このNICEガイドライン導入前後の同処置変化および感染性心内膜炎発生率の変化を調査した。BMJ誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月3日号)掲載より。ガイドライン後、予防的投与は78.6%減少、症例・関連死の増加傾向がストップ英国では全入院患者について、1次的退院診断名と最大12の2次的診断名がデータベース化されている。Thornhill氏らは、そのデータから、1次的退院診断名および2次的診断名として、急性または亜急性の感染性心内膜炎のデータがある患者を対象に、ガイドライン導入前後の比較研究を行った。主要評価項目は、予防的投与に用いられたアモキシシリン(商品名:サワシリンなど)3g単回経口投与またはクリンダマイシン(同:ダラシン)600mg単回経口投与の1ヵ月間の処方数、感染性心内膜炎の毎月の症例数、同疾患関連による病院死または口腔レンサ球菌によると考えられる感染性心内膜炎の症例数とした。結果、NICEガイドライン導入後、抗菌薬予防的投与の処方数は、月平均1万277例(標準偏差:1,068)から2,292例(同:176)と、78.6%(P<0.001)減少という有意に大きな変化がみられた。一方で、ガイドライン導入前にみられていた感染性心内膜炎の普遍的な増加傾向が、導入後は一転してみられなくなっていた(P=0.61)。非劣性試験の結果、ガイドライン導入後、症例増加については9.3%以上、また感染性心内膜炎関連の病院死増加については12.3%以上を削減した可能性が示された。ハイリスク患者への予防的投与についてはさらなる検証をThornhill氏は、「NICEガイドライン導入後、抗菌薬予防的投与の処方は78.6%も減少したにもかかわらず、導入後2年間の感染性心内膜炎の発症例または死亡率の増加を大きく削減していた。このことはガイドライン支持に寄与するが、今後もデータのモニタリングを行い、さらに臨床試験によって、特にハイリスク患者を感染から守るには抗菌薬予防的投与が有用であるのかどうか決定する必要がある」と述べている。

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