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進まない追加接種…日医の見解は?

 オミクロン株の急拡大に伴い、首都圏を含む13都県に「まん延防止等重点措置」が決定した中、日本医師会・中川 俊男会長は、3回目の追加接種やエッセンシャルワーカー(社会機能維持者)への優先的対応、オミクロン株の特徴的な症状などについて、国内の現況や諸外国のデータを踏まえ、記者会見で見解を示した。副反応を懸念か、モデルナ製ワクチンに正しい理解を 中川会長は、伸び悩む3回目接種の実施割合に関して、「ワクチンの供給や配送の問題もあるが、比較的確保できているモデルナ製ワクチンについて、国民の理解が十分でないのも(追加接種が進まない)原因の1つかもしれない」と懸念を表した。 モデルナ製ワクチンは、ファイザー製ワクチンと比較して10~20代男性の心筋炎・心膜炎リスクが高いとの報告がある。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に比較するとその可能性は軽微であり、副反応の多くは軽症で済むことが知られている。 会長は、(1)他年代の男性や女性においてそのようなリスクは見られないこと、(2)1・2回目と種類の異なるワクチンを接種すること(交互接種)も可能で、むしろ中和抗体が高くなることなどを説明し、モデルナ製ワクチンの安全性と有効性に正しい理解を求めた。参考)10代・20代の男性と保護者へのお知らせ~新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎について~(厚労省)生活を支えるためには教育現場への優先的対応も不可欠 社会機能を維持するためエッセンシャルワーカーへの追加接種や濃厚接触者の待機期間短縮(10日→6日)など、優先的な対応が呼び掛けられている。政府が示す「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」には、継続が求められる主な業種が示されているものの、医療・福祉関係者ほか具体的な対象は地方自治体や各事業者に任されている現状だ。 中川会長は、東京都で直近1週間の10代以下の感染者数が前の週の6倍に上っていることを挙げ、「保育・教育現場に感染が広がると、(エッセンシャルワーカーを含む)保護者が業務に従事できなくなる恐れがある」と懸念。教育現場を支える学校の教職員や保育士などもエッセンシャルワーカーに含まれることを明確化するよう要請した。 また、小児のワクチン接種について、「子供から家庭感染に広がる懸念もあり、これまで対象とならなかった11歳以下、とくに重症化リスクがある基礎疾患がある子供達に対しても新型コロナワクチンの接種を進めていく必要がある」と指摘した。現在、ワクチン接種を希望する5~11歳の子供が速やかに接種できるような体制整備が進められている。オミクロン株の「軽症」を甘く考えるべきではない 中川会長はオミクロン株の症状について、海外や国内の症例報告を参考に以下の特徴を説明した。(1)嗅覚障害や味覚障害を訴える割合が少なく、発熱・倦怠感・上気道症状が多い(2)割合として重症化率は低いものの、日本の重症度分類を知っておく必要がある 中等症Iは呼吸困難や肺炎所見を示し、中等症IIは酸素投与が必要な症例、重症は人工呼吸器管理またはICUへの入室が必要な症例とされる。よって、肺炎所見がなければ医学的には軽症に分類されるが、個々人にとっては高熱や全身症状、上気道症状など、つらい症状が多い。  続いて同氏は、高齢者の感染者数が少ないことから、現時点で高齢者の重症化リスクは判断すべきでないとし、オミクロン株の重症化リスクはデルタ株の2~3分の1との報告もあるが、COVID-19自体の重症化リスクがインフルエンザより二桁高いことを考慮すると、危機感を持つべき感染症であることは変わらないと説明。 その上で、オミクロン株の感染力の強さから、医療従事者への感染などから医療の提供体制を制限せざるを得ない状況も生じているとし、「今後発生する多数の軽症者に対する医療提供体制を整備するなど、これからもCOVID-19の収束を目指して粘り強く邁進していく」とまとめた。

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第92回 救済策が仇!? 看護・介護職員の給与引き上げが新たな格差引き起こす皮肉

岸田政権が掲げる「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を受け、看護職員や介護職員の処遇改善のため、2月から給与額が引き上げられる。ただ、対象施設が限定されていたり他職種とのバランスも考えたりしなければならないため、病院経営者からは不安や懸念の声が上がっている。看護職員については、地域で新型コロナウイルス感染症医療など、一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員が対象だ。賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提に、収入を段階的に3%程度引き上げていく。まず2月から収入を1%程度(月額4,000円)引き上げるための措置として、医療機関に補助金が交付される。これには「看護補助者、理学療法士・作業療法士などのコメディカルの処遇改善に充てることができるよう柔軟な運用」も認められているが、病院経営者にとっては喜んでばかりもいられないようだ。病院の持ち出しで多職種の給与引き上げへ日本病院会の相澤 孝夫会長は1月11日の定例記者会見で、謝意を示す一方で、懸念される不安を漏らした。それは、賃金を引き上げる職種と引き上げない職種が混在すると院内に不平不満が起きるため、コメディカルの中に含まれていない薬剤師や事務スタッフの給与引上げについては病院の持ち出しで行わざるをえず、結果的に経営が厳しい中でのコスト増になる点だ。現在は、新型コロナウイルス感染症対策関連の補助金があるが、コロナが収束すれば補助金も停止され、経営は一層厳しくなることが予想される。そのような中、10月からは診療報酬による看護職員の処遇改善に切り替わる。人件費を一度引き上げると、下げることは難しい。すでに、「10月以降、経営危機に陥るのでないか」との声が会員から多数出ているという。介護職員についても、介護職員処遇改善加算(I・II・III)を取得する事業所を対象に、介護職員の収入を3%(月額9,000円)程度引き上げるための補助金が2月から交付されるが、ほかの職員の処遇改善に充てることが事業所の判断で可能だ。こちらも、10月以降は介護報酬などによる処遇改善に切り替わる。病院介護職員の不足に拍車をかける懸念も人手不足の介護業界には朗報かもしれないが、病院にとっては“悪夢”のようだ。日本慢性期医療協会の武久 洋三会長は、1月13日の定例記者会見で、病院介護職員の危機的状況について述べた。まず、病院に勤務している介護職員は「看護補助者」と呼ばれ、その専門性がないがしろにされていると指摘。介護職員には「介護福祉士」という国家資格を持つ人も含まれているが、専門性が認められない病院に勤務する介護福祉士は、大きく減少している現状を示した。また、介護保険施設に勤務する介護職員には処遇改善加算があるが、病院に勤務すれば加算はなく、給与面でも差別されているという。介護職員にとっては、病院に勤務したいという意欲が大きく削がれるため、医療現場ではすでに介護職員が集まらず、看護師がみなし看護補助者として介護業務にあたっている実情を明かした。武久会長は、「このまま冷遇されるならば、この先、病院に勤務する介護職員はいなくなるだろう。日本の医療はそれでよいのだろうか」と疑問を投げ掛けた。コロナ禍で頑張っている医療機関や医療・介護職種の支援とはいえ、単純な給与引き上げが別の問題を引き起こす事態となることは想定できていなかったのではないか。救済策が新たな格差や不満の温床となるようでは、本末転倒と言わざるを得ない。

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医療従事者への3回目接種、コロナ感染リスク99%減/JAMA

 イスラエルの医療従事者を対象に行った試験で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)の3回接種者は2回接種者に比べ、中央値39日の追跡期間における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染リスクが有意に低かったことが示された(補正後ハザード比:0.07)。イスラエル・Tel Aviv Sourasky Medical CenterのAvishay Spitzer氏らが医療従事者1,928例を対象に行った前向きコホート試験の結果で、著者は「今回の所見が永続的なものかを確認するために、サーベイランスを続行することが求められる」と述べている。先行研究で、60歳以上へのBNT162b2の3回目接種(ブースター接種)がSARS-CoV-2感染のリスクおよび疾患の重症化を有意に低減することは示されていたが、若年者や医療従事者についてはデータが不足していた。JAMA誌オンライン版2022年1月10日号掲載の報告。イスラエル3次医療センターで、医療従事者1,928例を対象に調査 研究グループは、BNT162b2の2回接種を完了した医療従事者におけるBNT162b2ブースター接種とSARS-CoV-2感染の関連を調べるため、イスラエルのテルアビブにある3次医療センターで、BNT162b2の2回接種歴があり、免疫能が正常の医療従事者1,928例を対象に前向きコホート試験を行った。被験者登録は2021年8月8日~19日に行い、最終フォローアップは同年9月20日だった。 SARS-CoV-2感染の有無は14日ごとの検査で確認し、ベースラインと登録1ヵ月後に、抗スパイク蛋白受容体結合部位IgG抗体力価を測定した。時間依存解析を伴うCox回帰モデルを用いて、BNT162b2のブースター接種者と2回接種者(ブースター未接種)のSARS-CoV-2感染に関するハザード比を求めた。10万人年当たりSARS-CoV-2感染、ブースター接種群12.8、2回接種群116 被験者1,928例は、年齢中央値44歳(IQR:36~52)、女性71.6%(1,381例)で、BNT162bの2回目接種を受けてから試験開始までの日数中央値は210日(IQR:205~213)だった。そのうち、ブースター接種を受けたのは1,650例(85.6%)だった。 中央値39日(IQR:35~41)の追跡期間中に、SARS-CoV-2感染は44例(罹患率:60.2/10万人年)で発生し、うち症候性は31例(70.5%)だった。 感染例の内訳は、ブースター接種群が5例、ブースター非接種群は39例で、罹患率はそれぞれ12.8/10万人年、116/10万人年だった。 時間依存Cox回帰分析では、SARS-CoV-2感染に関する、ブースター接種群のブースター非接種群に対する補正後ハザード比は0.07(95%信頼区間:0.02~0.20)だった。

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塩野義製コロナワクチンの国内第III相試験開始、年度内実用化目指す

 塩野義製薬は1月17日付のプレスリリースで、開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン(S-268019)について、国内で第III相中和抗体価比較試験を開始したことを発表した。2回接種後の免疫原性を指標として、S-268019と既承認ワクチンの比較検証が目的。国内における最終段階の臨床試験となる。同社は、本ワクチンについて3月末までの実用化を目指すとしている。 本試験では、成人および高齢者1,000例を対象に、開発中のワクチンまたは対照薬のアストラゼネカ社の既承認ワクチン(バキスゼブリア筋注)の2回目接種から28日後のSARS-CoV-2に対する中和抗体価について比較検証する。 同社は本試験と並行して、2021年12月25日より、発症予防効果を検証するグローバル第III相臨床試験をベトナムで実施している。今後、国内での承認申請に向けて、これらの試験の進捗と結果に基づき、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)などと継続した協議を行うとしている。 新型コロナウイルスワクチンの開発を巡っては、これまでに発症予防効果の検証を目的とした大規模な臨床試験が実施されてきたが、すでに有効なワクチンが流通し、接種が進む中で、プラセボ対照臨床試験を実施することが困難になりつつある。しかし、世界的にはワクチンの供給量はいまだ十分ではなく、引き続き安全で有効な新規ワクチンの開発が必要とされている。こうした状況の下、ワクチン接種後の中和抗体価を発症予防効果の代替指標として、既承認ワクチンと比較することで、新規ワクチンの評価を行う中和抗体価比較試験を認める流れとなってきている。

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抗原検査による偽陽性、どのくらい検出される?/JAMA

 抗原検査が一般市民でも手軽にできるようになった今、懸念されるのは偽陽性の発生割合ではないだろうかー。今回、カナダ・トロント大学のJoshua S Gans氏らが調査した結果、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対しカナダ国内で使用されているすべての迅速抗原検査では、全体的に“偽陽性”の割合が非常に低く、その結果はほかの研究結果とも一致していたと示唆された。ただし、抗原検査のタイミング(感染段階で早すぎる/遅すぎる)や抗原検査キットの品質問題が原因で正しくない結果が報告される可能性もあることから、1つの集団から偽陽性がクラスターとして発生するには、実装ではなく製造上の問題もあるのではとも言及している。JAMA誌2022年1月7日号オンライン版のリサーチレターでの報告。偽陽性はすべて特定の抗原検査キットによるものだった 本研究では、カナダ全土における無症候性の労働者を対象に、新型コロナの連続的スクリーニングに使用される迅速抗原検査の大規模サンプルから偽陽性結果の発生率を調査した。迅速抗原検査は、Creative Destruction Lab(CDL) Rapid Screening Consortiumにより職場での感染制御の一環として実施された。 2021年1月11日~10月13日の期間、無症候性の従業員は週2回にわたり抗原検査を実施。その際の出社は任意で、一部の従業員は自宅やオンライン上で抗原検査を行った。なお、カナダはこの期間のうち、3~6月と8~10月に2つのデルタ変異株の感染拡大に見舞われていた。 抗原検査結果には、匿名化されたレコード識別子、雇用場所、検査、および(オプションで)ロット番号が記録された。抗原検査結果が陽性の場合、患者は24時間以内にPCR検査を完了させる必要があったためにすぐさま医療機関を紹介された。 抗原検査の大規模サンプルから偽陽性結果の発生率を調査した主な結果は以下のとおり。・537施設の職場で90万3,408件の迅速抗原検査が実施され、陽性は1,322件(0.15%)だった。そのうち1,103件はPCR検査の情報を有していた。また、約3分の2の症例はロット番号で追跡可能だった。・偽陽性の抗原検査結果数は462件だった(抗原検査のうちの0.05%、PCR検査を含む陽性結果の42%)。そのうちの278件(60%)は、2021年9月25日~10月8日に特定の企業(675km離れた2つの職場のみ)の従業員で報告された。・これら2つの職場の偽陽性の結果は、すべて特定の抗原検査キットによるものだった。 なお、研究者らは「研究の限界として、職場の便宜的サンプルが含まれ、PCR確認結果の報告とロット番号の特定は必須ではなかった。さらに、これらの結果はカナダの疫学を反映しているため、新型コロナの発生率において異なる経験をしている他国には一般化できない可能性がある」としている。

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COVID-19のための初の経口抗ウイルス薬「ラゲブリオカプセル200mg」【下平博士のDIノート】第90回

COVID-19のための初の経口抗ウイルス薬「ラゲブリオカプセル200mg」今回は、抗ウイルス薬「モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオカプセル200mg、製造販売元:MSD)」を紹介します。本剤は外来でも使用可能な経口剤であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を防ぐことで、医療逼迫回避の一助となることが期待されています。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2021年12月24日に特例承認されました。なお、重症度の高い患者に対する有効性は確立していません。<用法・用量>通常、18歳以上の患者には、モルヌピラビルとして1回800mg(4カプセル)を1日2回、5日間経口投与します。COVID-19の症状が発現してから速やかに投与を開始する必要があります。<特記事項>1.対象患者についてSARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有するなど、本剤の投与が必要と考えられる患者さんが投与の対象です。投与対象は重症化リスク因子を有する患者が中心ではあるものの、審査報告書では、高熱や呼吸器症状など相当の症状を呈し重症化の恐れがある場合なども、投与対象になり得るとしています。2.包装について包装は40カプセルのバラ包装のみで、1瓶を1回分として使い切れるようになっています。3.投与に際しては同意が必要RMP資材として同意説明文書が用意されており、処方の際には患者本人に内容を確認してもらったうえで、患者・医師双方がサインして保管することになっています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、新型コロナウイルスのRNAに取り込まれることによって、ウイルスの増殖を阻害して抗ウイルス作用を示します。2.症状が改善しても指示どおりに5日分を飲み切ってください。3.下痢、悪心・嘔吐、めまい、頭痛などの症状が現れることがあります。これらの症状が生じた場合であっても自己判断で中止せず、医師または薬剤師に相談してください。4.(女性に対して)妊婦または妊娠している可能性がある人はこの薬を使用できません。授乳中の人は注意が必要ですので、服用開始前に相談してください。妊娠する可能性のある女性は、服用中および服用後4日間は適切な避妊を行ってください。<Shimo's eyes>本剤は、軽症~中等症COVID-19患者に使用できる国内初の経口抗ウイルス薬です。これまで、軽症患者を対象とした治療薬としては、中和抗体製剤のカシリビマブ/イムデビマブ注射液セット(商品名:ロナプリーブ)とソトロビマブ点滴静注液(同:ゼビュディ)の2剤が承認されていて、中等症患者を対象とした治療薬としては、抗ウイルス薬のレムデシビル点滴静注用(同:ベクルリー)が承認されています。経口剤では、中等症IIと重症患者を対象としたJAK阻害薬のバリシチニブ錠(同:オルミエント)とステロイド薬のデキタメタゾンが使用されていますが、抗ウイルス薬としては本剤が初めての薬剤となります。本剤の作用機序はウイルス複製阻害であり、オミクロン株に対してもこれまでの変異株と同様の効果が期待できると考えられています。投与の対象となるのは、以下のような重症化リスク因子を1つ以上有する軽症~中等症Iの患者です。《国際共同第II/III相試験(MOVe-OUT試験)の組み入れ基準》61歳以上の高齢者活動性のがん(免疫抑制または高い死亡率を伴わないがんは除く)慢性腎臓病慢性閉塞性肺疾患肥満(BMI 30kg/m2以上)重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患または心筋症)糖尿病重症化リスクのある非重症COVID-19患者を対象に本剤またはプラセボを投与した多施設共同第III相試験の中間解析において、プラセボ群の重症化(29日目までの入院・死亡)が377例中53例(14.1%)であったのに対し、本剤群では385例中28例(7.3%)と、相対的リスクが48%減少しました(p=0.0012)。なお、臨床試験において有効性が確認されたのは発症から5日以内に投与を開始した感染者であり、6日目以降における有効性のデータは得られていません。副作用としては、下痢、悪心・嘔吐、浮動性めまい、頭痛が発現率1%以上5%未満で報告され、重要な潜在的リスクには、骨髄抑制および催奇形性が示されています。動物実験で催奇形性が認められており、妊娠しているまたは妊娠している可能性のある女性には投与できません。なお、本剤は2022年9月より一般流通され、保険適用となりました。※2022年9月、一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 ラゲブリオカプセル200mg

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第95回 ワクチン非接種妊婦のCOVID-19は死産等の一大事をとりわけ招く

妊娠中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)は妊婦自身や赤ちゃんを害し、妊婦がワクチン非接種だととりわけ危険であることが英国・スコットランドのおよそ9万人の追跡調査で示されました1,2)。同国でCOVID-19ワクチン接種が始まった2年前2020年12月8日以降に妊娠したそれら妊婦8万7,694人のうち昨年2021年10月末までにその接種を1回は済ませていたのは2割ほどの1万8,457人のみでした。同国で去年の10月といえばCOVID-19ワクチン接種が広く普及して数ヵ月経ちますが、その月に決まりの回数2回のCOVID-19ワクチン接種を済ませて出産に至った女性の割合は3人に1人足らずの32.3%(1,311/4,064人)です。対照的に、スコットランドの一般人口の出産適齢(18~44歳)女性は実に8割近い77.4%が2021年10月31日までに2回のワクチン接種済みであり、世界のあちこちで生じているのと同様に妊婦がCOVID-19ワクチンを躊躇する厄介な事態に同国も陥っていました2)。しかし妊婦がCOVID-19ワクチンを接種しないのは得策ではなさそうです。調べられたスコットランドの妊婦のうちSARS-CoV-2感染開始から日が浅い間(28日以内)に出産した620人中14人の胎児や新生児が死亡し、それらの死亡のすべてはSARS-CoV-2感染判明時にCOVID-19ワクチンを接種していなかった妊婦に生じていました。ワクチン非接種は妊婦自身にとっても危険です。妊娠中にSARS-CoV-2感染して集中治療(critical care)が必要になった女性のほぼ全員98%がワクチン非接種でした。また、入院が必要になったSARS-CoV-2感染妊婦もほとんど(91%)がワクチン非接種でした。時を同じくして先週13日に発表された別の試験でも同様の結果が得られています3,4)。COVID-19ワクチン接種がまだ普及していない頃の米国の妊婦2万人近く(1万8,335人)が調べられ、それらワクチン非接種の妊婦のSARS-CoV-2感染は早産、死産、普通より小さな赤ちゃん(small for gestational age)の出産により陥りやすいことと関連しました。世界的に妊婦の多くはCOVID-19ワクチン接種に乗り気ではありません。妊婦のCOVID-19は危険と広く認識されていたにもかかわらず認可申請前のワクチン臨床試験では妊婦が除外されており、ワクチン接種開始時点では妊婦ワクチン接種方針に必要な裏付けに事欠いていたことがそのためらいに影響しているかもしれません1)。出産までもう少しの胎児や出産後すぐの新生児の死亡(周産期死亡)がワクチン接種で生じ易くなるなどの誤った情報の流布が妊婦に接種を躊躇させている恐れも指摘されています2)。しかし今や認可後のデータが集まっており、妊婦のCOVID-19ワクチン接種の効果は妊娠していない人と概ね同様なことが示唆されています。スコットランドでの試験でも予防効果が裏付けられており、SARS-CoV-2感染妊婦にワクチン接種済みはほとんどおらず僅か11%ほどで、感染の大半(77.4%)は感染発生時点でワクチン非接種の妊婦に生じていました1)。それに、COVID-19ワクチンの臨床試験参加中に図らずも妊娠した女性のデータ5)や接種の普及で蓄積したデータで妊婦への接種の安全性に心配はなさそうなことが今や判明しています。スコットランドの試験でも同様で、接種妊婦全般や出産前の28日以内に接種した妊婦の周産期死亡や早産は幸いにも増えておらず、妊婦一般と大差ありませんでした。妊婦のワクチン接種は妊婦自身と赤ちゃんをCOVID-19の害から守るのに不可欠だと著者は言っています6)。参考1)Stock SJ,et al. Nat Med. 2022 Jan 13.2)COVID-19 starkly increases pregnancy complications, including stillbirths, among the unvaccinated, Scottish study shows / Science3)Piekos SN, et al. Lancet Digit Health. 2022 Jan 13.4)Maternal COVID-19 infection increases risks of preterm birth, low birth weight and stillbirth / Eurekalert5)Hillson K, et al.. Lancet. 2021 Nov 6;398:1683-1684.6)Covid-19 linked to complications during pregnancy / University of Edinburgh

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新型コロナウイルス感染におけるDOACの意味:ランダム化比較試験か観察研究か?(解説:後藤信哉氏)

 観察研究にて、新型コロナウイルス感染による入院中の血栓イベント予防におけるDOACの価値は限定的とされた。血栓イベントリスクは退院後も高いと想定される。退院後の低分子ヘパリンの継続の根拠も確立されていない。本研究ではVTE risk 2~3以上、あるはD-dimer 500以上の症例を対象として抗凝固療法なしと1日10mgのrivaroxabanを比較するオープンラベルのランダム化比較試験である。退院後の抗凝固薬として標準治療は確立されていない。しかし、無治療と10mg rivaroxabanの比較試験の施行根拠を明確に説明することも難しい。本研究はブラジルの14の施設にて施行された。 一般的にランダム化比較試験は仮説検証試験として施行される。本研究は1国の、比較的少数(n=320)の仮説を生み出す研究である。血栓イベントリスクの高い症例が選択されているが、抗血栓薬なしの症例群でも退院後35日以内の血栓イベント発現率は9%(160例中15例)であった。この値には価値があると思う。今まで真剣に考えていなかったが、新型コロナウイルス感染の症例では退院後も油断はできない。血栓イベントリスクを評価して適切な対応が必要である。 さて、本試験では10mg/日のrivaroxabanと比較された。rivaroxaban群の血栓イベントは3%(159例中3例)と対象群よりも低かった。両群の出血イベントには差がなかった。 本研究成果を見て皆さんはどう考えるだろうか? ランダム化比較試験であるため実験的研究である。研究に必要な費用はrivaroxabanメーカーであるBayer社が負担している。オープンラベルの本研究の成果により新型コロナウイルスによる入院後の血栓リスクの高い症例の血栓イベント予防の適応にてrivaroxabanを承認するのは難しいと思われる。 ランダム化比較試験は標準治療の転換に用いられる。標準治療の転換を目指すランダム化比較試験でもボランティアは自らリスクをとって参加することになる。試験の結果に応じて次世代の標準治療が転換される。医師・患者のみならず企業、規制当局も国際共同ランダム化比較試験による科学的根拠が標準治療の転換に必要と考えている。筆者は、本研究はランダム化比較試験とするよりも新型コロナウイルス感染後の血栓イベントリスクの高い症例の観察研究でよかったと思う。観察研究では企業の資金を得られなかったかもしれない。前向き国際共同観察研究にて、新型コロナウイルス感染後の血栓イベントリスクの高い症例の血栓イベントが10%程度あることを確認し、その後に薬剤介入の効果を検証するランダム化比較試験ができればよかった。本研究には価値はあるが、筆者は被験者にはなりたくないと思ってしまう研究であった。

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第85回 オミクロン株の濃厚接触者、待機期間10日に短縮/厚労省

<先週の動き>1.オミクロン株の濃厚接触者、待機期間10日に短縮/厚労省2.COVID-19入院・死亡リスク89%減、経口薬パクスロビドを承認申請3.令和2年度の救急車出動件数が減少、大きく減少したのは?4.令和4年度の診療報酬改定について諮問/厚労省5.2020年度の保険医療機関の指定取り消し19件、前年から微減6.東京大学で刺傷事件、逮捕されたのは医学部志望の高校生1.オミクロン株の濃厚接触者、待機期間10日に短縮/厚労省政府は14日に、新型コロナウイルス「オミクロン型」の濃厚接触者における待機期間を、現在の14日間から10日間に短縮すると決め、通知を出した。医療従事者などについては、待機6日目のPCR検査が陰性であれば待機を解除することも可能としている。これにより、エッセンシャルワーカーの感染増によって社会機能が低下するのを防ぐ。海外でも同様に、オミクロン株の潜伏期間が短い点から、アメリカでは感染者の隔離期間を10日間から最短5日間に変更しており、濃厚接触者でもワクチン接種を3回受けていて無症状ならば隔離を不要としている。(参考)濃厚接触者の待機期間短縮など 全国の自治体に通知 厚生労働省(NHK)新型コロナ 6日目陰性、待機解除 警察・消防・介護などの濃厚接触者(毎日新聞)濃厚接触者の待機、10日に短縮 米英より制限厳しく(日経新聞)新型コロナウイルス感染症の感染急拡大が確認された場合の対応について(厚労省 事務連絡 令和4年1月14日一部改正)2.COVID-19入院・死亡リスク89%減、経口薬パクスロビドを承認申請ファイザーは14日、COVID-19に対する経口抗ウイルス薬候補「PF-07321332/リトナビル錠(商品名:パクスロビド)」の製造販売承認を厚労省に申請した。今回の申請は特例承認を目指し、日本人も参加している国際共同第II/III相EPIC-HR試験の結果に基づいている。同試験では、外来治療の対象となる重症化リスクの高いCOVID-19患者において、本剤が入院または死亡のリスクをプラセボと比較して89%(症状発現から3日以内の服用)および88%(同5日以内)減少させることが示された。また、有害事象の発現割合は本剤とプラセボで同程度(23%vs.24%)だった。承認が得られた場合、200万人分の治療薬を供給することを日本政府と合意している。(参考)新型コロナ ファイザー、飲み薬申請 「パクスロビド」 承認なら2例目(毎日新聞)ファイザー、コロナ飲み薬を承認申請 来月にも国内承認(日経新聞)3.令和2年度の救急車出動件数が減少、大きく減少したのは?消防庁は「令和3年版 救急・救助の現況」を発表した。昨年度の救急出動件数(消防防災ヘリコプターを含む)は593万5,694件(対前年比10.6%減)で、搬送人員は529万5,727人(同11.4%減)だったことを明らかにした。うちほとんどを救急自動車による救急出動が占める。救急自動車による救急出動件数の内訳を事故種別ごとにみると、急病が64.9%(前年65.3%)、一般負傷が16.0%(同15.3%)、交通事故が6.2%(同6.5%)などとなった。前年と比較すると、軽症(外来診療)が大きく減少したとされる。救急出動件数・搬送人員ともに12年ぶりに減少していた一方で、現場到着所要時間は全国平均で約8.9分(前年比+0.2分)、病院収容所要時間(入電から医師引継ぎまでに要した時間)は約40.6分(前年比+1.1分)と延伸していた。(参考)救急車搬送人員、前年比で68万4,178人減 総務省消防庁総務省消防庁が「救急・救助の現況」公表(CBnewsマネジメント)4.令和4年度の診療報酬改定について諮問/厚労省厚労省は2022年度診療報酬改定に向けて、「議論の整理案」を12日の中医協総会で提出し、14日に出した修正版が了承された。これに対しては21日まで意見募集を行い、公聴会をオンラインで開く予定。中には、急性期病床の「医療・重症度・看護必要度」の心電図モニターの項目など、詳細が決まっていないものもあり、今後変更される可能性がある。(参考)22年度診療報酬改定を諮問、厚労相「議論の整理」了承、21日まで意見募集(CBnewsマネジメント)2022年度改定の項目固まる!急性期一般1の新加算、看護必要度、かかりつけ医機能評価などの行方は?―中医協総会(1)(Gem Med)令和4年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(厚労省)5.2020年度の保険医療機関の指定取り消し19件、前年から微減厚労省は13日、「令和2年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況について」を公表した。コロナウイルスの感染拡大のため、指導・監査の件数は大幅減少したものの、保険医療機関の指定取り消しなどは19件と前年度の21件から微減にとどまり、指定取り消しの原因の内訳(架空請求、付増請求、振替請求、二重請求など)に大きな変化はなかった。厚労省は、個別指導、新規個別指導、適時調査の実施を見合わせており、実施件数は大幅に減少しているが、21年度の個別指導などは状況を見ながら実施しているという。(参考)保険医療機関の指定取り消し、20年度も例年並み 厚労省、コロナ対応で集団的個別指導はゼロ(CBnewsマネジメント)コロナ禍で指導・監査の件数は大幅減少したが、保険指定取り消し等に大きな変化なし―2020年度指導・監査実施状況(Gem Med)6.東京大学で刺傷事件、逮捕されたのは医学部志望の高校生15日、大学入学共通テストの受験生が集まる東京大学において、医学部進学を希望する高校2年生が、会場にいた高校生の男女2人と成人男性の背中を相次いで切り付けたとして殺人未遂容疑で逮捕された。医学部進学実績で有名な名古屋の私立高校に通う17歳の少年で、前日から自宅に戻らないと両親が警察に捜索願を出していた。犯行前、東京メトロ・南北線の東大前駅の複数箇所でぼや騒ぎが発生しており、少年は刃渡り12センチの包丁、ナイフ、折り畳み式ののこぎり、着火剤、可燃性の液体を所持していたという。本人は容疑を認めており、「医者になるために東大を目指して勉強を続けてきたが、1年ぐらい前から成績が上がらず自信をなくしてしまった」と学業不振を悩んでの犯行をほのめかしている。(参考)《東大刺傷》「俺は東大を受験するんだ!」凶行に及んだ男子生徒(17)は医学部進学実績全国No.1の超エリート男子校生だった(文春オンライン)「人殺して切腹しようと考えた」名古屋の17歳少年を現行犯逮捕 東大前で受験生ら刺傷事件 包丁、ナイフ、のこぎりも所持(東京新聞)東大前刺傷で逮捕の少年、直前にメトロ車内で放火図る…「うまくいかなかった」(読売新聞)

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日本のワクチン史を変えた煉獄さん【Dr.倉原の“俺の本棚”】第50回

【第50回】日本のワクチン史を変えた煉獄さん著者の木下 喬弘先生は、”手を洗う救急医Taka”というTwitterアカウントで有名な人です。AbemaTVに出たり、議員と会ったり、いろいろな活動をされているので、目にしたことがある人も多いはずです。彼は、「こびナビ」と「みんパピ!」の副代表をされていますが、ここ最近の目標には、新型コロナワクチンの情報を適切に正しく国民に伝えること、そしてHPVワクチンの積極的勧奨の再開を進めること、がありました。後者については、「みんパピ!」の尽力もあって、本当に勧奨が再開されることになりました。政府を動かすってすごい話ですよ、みなさん。『みんなで知ろう! 新型コロナワクチンとHPVワクチンの大切な話』木下 喬弘/著. ワニブックス. 2021年11月発売Taka先生は、とにかく行動力と発言力の炎上力の塊のような人で、私には持っていないものばかりを持っているカリスマ性があります。昔はよくSNSで炎上していましたが、炎上した炎を体にまとって煉獄 杏寿郎ばりに「俺の責務を全うする!」と言いながら強くなっちゃいますから、結構無敵です。この本は、帯以外には炎は出てきませんので、落ち着いて読めます。さすがTaka先生、国民にわかりやすく丁寧な文章で書いてくれています。また、決してエビデンスを押し付けた感じにならず、ワクチンの歴史を踏まえ、どのように今後みなさんに理解してもらうかまでの戦略が細かく書かれてあります。個人的には、HPVワクチンの積極的勧奨に際し、ワクチン接種後に車いす生活になった女性の手紙を掲載しているのが心に刺さりました。数年、数十年経って、あのときワクチン事情ってこうだったんだよ、という振り返りにも役立ちそうな1冊です。『みんなで知ろう! 新型コロナワクチンとHPVワクチンの大切な話』木下 喬弘 /著.出版社名ワニブックス定価本体1,300円+税サイズ四六判刊行年2021年

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N95マスク、医療従事者が知っておきたいこと

 オミクロン株の急拡大が進み、早くも医療現場の逼迫が見えている中、マスクは最も重要な個人防護具の1つである。わが国では、マスクの品質管理の一環として、日本産業規格(JIS)が2021年6月に制定された。しかし、適切な基準を満たさない製品も多く流通していることが懸念され、医療機関それぞれが対策しなければならない。そこで、N95マスクについて医療従事者が知っておくべき基本事項をまとめた。N95マスクの「N95」とは米国の防塵マスクの規格 国立感染症研究所が作成した「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(2020年6月2日改訂版)」では、N95マスクはエアロゾルが発生する可能性のある手技(気道吸引、気管内挿管、下気道検体採取等)を行う際に装着し、使用に際しては、事前のフィットテストと着用時のシールチェックが推奨されている。正しい着用方法はN95マスクを開発したスリーエム(3M)作成の「医療従事者のためのN95マスク適正使用ガイド」が参考になる。 なお、N95マスクの「N95」とは、米国の労働安全衛生研究所で定められた防塵マスクの規格(NIOSH-42CFR84)だが、わが国では以下に示す他規格の製品についても、品質を確認し問題がなければN95マスクと同等に扱うとされている。・DS2(日本規格:厚労省2018)※労働安全衛生法に基づく防塵マスクの性能規格・FFP2、FFP3(欧州規格:EN149-2001)・KN95(中国規格:GB2626-2006) ただし、海外のN95マスクはFDAで緊急使用承認を受けたものに限られる。また、DS2マスクは、患者の血液や体液等が浸透する恐れのある手術や処置を行う場合には使用できない(検体採取は該当しないので使用可)。 安全なマスク製品かどうかの確認方法については、医療用感染防護具の適正使用を支援する一般社団法人 職業感染制御研究会が「KN95等の不良品マスクを見分ける方法」を公開している。同会ホームページでは、フィットテストの解説動画やマスクの再利用、サージカルマスクの規格基準などについても、網羅的に情報提供している。 マスクの国際規格について、3Mの技術情報によると、韓国の規格「KF94(KMOEL-2017-64)」や、オーストラリア・ニュージーランドの規格「P2(AS/NZA 1716:2012)」などもN95マスクに近い性能を持つとされるが、わが国の資料には記載されていない。

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経口コロナ治療薬の国内製造販売承認を申請/ファイザー

 ファイザーは1月14日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) に対する経口抗ウイルス薬候補「PF-07321332/リトナビル錠」(米国での商品名:Paxlovid)の製造販売承認を厚生労働省に申請したことを発表した。日本も参加した国際共同第II/III相試験(EPIC-HR)の結果に基づくもので、特例承認による迅速な使用開始を目指す。 EPIC-HR試験は、重症化リスクが高く、入院していないCOVID-19成人患者を対象としたランダム化二重盲検試験。EPIC-HR試験の最終データでは、外来治療の対象となる重症化リスクの高い COVID-19患者において、本剤がプラセボと比較して入院または死亡のリスクを89%(症状発現から3日以内)および88%(症状発現から5日以内)減少させることが示された。有害事象の発現割合は、本剤(23%)とプラセボ(24%)では同程度であり、おおむね軽度だったという。 ファイザーでは、本剤の承認が得られた場合、200万人分を供給することを日本政府と合意している。本剤を巡っては、米国や韓国、イスラエルなどで昨年12月、相次いで緊急使用が認められ、EUにおいても加盟国の使用を容認する見解が発表されており、各国で薬剤確保の動きが進んでいる。

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第91回 モルヌピラビル承認報道、新聞各紙が伝え損ねた重要ポイント

年末からここ最近にかけてどうにも報道での扱いが気になって仕方がないものがある。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の軽症患者でも使える世界初の経口薬・モルヌピラビル(商品名・ラゲブリオ)のことである。これまで軽症者で使える経口薬がなかったせいもあり、メディアではまさにフィーバー状態だ。一方、SNS上では虚実入り混じった情報が飛び交う。正直溜息が出て仕方がない。まず、各社の第一報を見てみよう。「『モルヌピラビル』新型コロナの飲み薬として正式に承認」(NHK)「メルク製のコロナ飲み薬を厚労省が特例承認 軽症者向け、国内初」(朝日新聞)「国内初、コロナ飲み薬を承認 米メルク製」(産経新聞)「厚労省、コロナ飲み薬初承認 軽症、中等症向けモルヌピラビル」(毎日新聞)「コロナ軽症飲み薬、国内初承認 週明けにも使用開始」(日本経済新聞)「国内初のコロナ飲み薬『モルヌピラビル』を特例承認…厚労省、年内分として20万回分配送へ」(読売新聞)ご存じのようにモルヌピラビルは(1)軽症・中等症I、(2)重症化リスク因子が1つでもある、(3)発症から5日以内の投与に限定、(4)催奇形性があるため妊婦には使えない、という縛りがある。私個人がもし第一報を書くとしても、この4点は最低限であり、かつ読者に具体的にイメージを沸かせるためには、重症化リスクは最低でも1つは例示し、催奇形性についても噛み砕いて触れることをポイントに挙げる。これらを踏まえたうえで、4項目に各1点、合計4点満点で各社の第一報を採点すると、満点はなく3点がNHK、2点が朝日新聞、読売新聞、1点が産経新聞、毎日新聞、日本経済新聞。NHKは重症化の具体例にまったく言及がなく、朝日新聞は発症から5日以内の点と催奇形性の表現への甘さ、読売新聞は重症化リスクの具体例の言及がなく、催奇形性に具体的には言及していないところが減点。残りの3社には言及するのも疲れる。多くの人が知っているように、読者は記事を読み流すので一度に全部書いたとて覚えてはくれない。たとえば、繰り返し“重症化リスクがある人のみ”と書いても、重症化リスクがない新型コロナの軽症感染者が「先生、あの新聞に書いてあった飲み薬出してください」というのは目に見えている。それだからこそ重要な点については繰り返し触れる必要があり、第一報はそれなりに情報を盛り込んでおかねばならないはずだ。また、読者に与える印象からも表現は問われる。たとえば、発症から5日以内の部分も読売新聞の「発症5日目までに飲み始める必要がある」と、朝日新聞の「発症から5日以内で効果が期待できる」では読者の受ける印象は相当違う。ちなみに私は今回の件で『重症化リスクの具体例提示』と『発症5日以内の服用開始必須』を一般読者に伝えることはかなり重要だと思っている。というのも重症化リスクのある人が、新型コロナを疑われる症状を自覚しながら放置や我慢で受診を先延ばしすると、せっかくの服用機会を逃し、ワクチン未接種者では致命的になる恐れさえもあるからだ。だからこそ報道は読者自身が「重症化リスクのある人間に該当するかどうか」をイメージできる具体例が必要であり、5日以内という切迫感も伝えねばならない。また、流通が律速段階になることも忘れてはならない。新型コロナ患者が発生する可能性がある医療機関や薬局は国から供給委託を受けたMSD社が開設した「ラゲブリオ登録センター」に事前登録し、必要になったらセンターに供給を依頼して、1~2日で医薬品卸を通じて薬が届けられるという「タイムラグ」がある。これを考慮すると余計のこと、発症から5日目までの服用という情報は大きな意味を持つ。さて、一方SNS上では、「まあよくもそんなモノを…」と思いたくなる重箱の隅突きのような情報も飛び交っている。こうした情報は「アンチ・モルヌピラビル派=ファビピラビル・イベルメクチン礼賛派」による「外資系薬叩き」が主なものだ。その第一の槍玉にあげられているのが「催奇形性」である。実際、モルヌピラビルの添付文書では、妊娠したラットでの実験から、器官形成期のラットで、ヒトでのモルヌピラビル代謝成分(NHC:N-ヒドロキシシチジン)の臨床曝露量の8倍で催奇形性や胚・胎児の死、3倍以上で胎児の発育の遅れ、器官形成期の妊娠ウサギでは18倍以上で胎児体重が低値になることがわかっている。一般的に催奇形性実験では、ヒトで臨床曝露量の10倍以内で催奇形性が示される場合は要注意であることは確かだ。その意味ではモルヌピラビルでは注意が必要で、実際妊婦や妊娠している可能性がある女性での投与は禁止されている。また、同じ理由で妊娠可能な女性が服用する際は投与中と投与終了後一定期間(臨床試験段階では最低4日間)の避妊が求められている。もっともこうしたモルヌピラビルを批判する人たちの一部が擁護するファビピラビルでも催奇形性が指摘されているのは周知のことで、しかもこちらの場合はヒトの臨床曝露量以下でマウス、ラット、ウサギに加え、ヒトに近い霊長類のサルでも催奇形性が認められているのだからはるかに危険である。また、やはりSNS上で騒がれているのが、モルヌピラビルの変異原性試験の結果である。ご存じのように遺伝子に突然変異を起こす可能性、いわば発がん性を評価する試験だが、添付文書では細菌を使って行うと陽性反応が認められ、げっ歯類を用いた2種の変異原性試験で変異原性は認められず、in vitroとラットで染色体異常を起こすかどうか調べた小核試験は陰性だったことが記載されている。もともと細胞の世代交代の早い細菌ではごくごく小さな突然変異は起こりやすい。しかし、細胞の世代交代が遅い齧歯類で実験した結果では異常は認められないため、この試験結果があってもヒトではとくに問題がないと考えるのが妥当な解釈である。さらに言えば、モルヌピラビルの服用期間が最大5日間ということを考えても、突然変異が継続して発がんに至る可能性は極めて低いということになる。いやはや皆さん、こんな揚げ足取りをするのだと感心してしまったが、逆に言えば報道がより正確な情報を伝えるためには、場合によってこうした非臨床試験の結果にも目を配り、その解釈も伝える必要があるという点では冷ややかに横目で眺めているわけにもいかないと、気を引き締め始めている。

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コロナワクチンの感染抑制効果、デルタ株では低下/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのワクチン接種について、アルファ変異株と比較してデルタ変異株のほうが感染減少が少なく、ワクチンの有効性は経時的に低下したことが示された。また、感染発端患者の診断時PCRサイクル閾値(Ct)値は、感染減少を部分的に説明するのみであることも明らかにされた。英国・オックスフォード大学のDavid W. Eyre氏らが、後ろ向き観察コホート研究の結果を報告した。SARS-CoV-2のデルタ(B.1.617.2)変異株の出現以前は、ワクチン接種によりウイルス量が減少し、感染したワクチン接種者からのSARS-CoV-2の伝播が抑制したとみなされていた。ワクチン接種により感染リスクはさらに低下しているが、デルタ変異株に感染したワクチン接種者と未接種者のウイルス量は同程度であることが判明し、ワクチン接種が感染をどの程度予防するのか疑問視されていた。NEJM誌オンライン版2022年1月5日号掲載の報告。SARS-CoV-2感染患者約11万人とその接触者約15万人について解析 研究グループは、英国の接触者検査データを用い、SARS-CoV-2に感染した成人患者(発端患者)と、その接触者を対象に後ろ向き観察コホート研究を実施した。 多変量ポアソン回帰法により、ウイルス感染とワクチン接種状況(発端患者および接触者について)の関連を調べるとともに、この関連性がアルファ(B.1.1.7)変異株およびデルタ変異株で、また2回目のワクチン接種からの経過期間によってどう変化するのかを検討した。 発端患者10万8,498例と、その接触者で検査を受けた14万6,243例のうち、5万4,667例(37%)がPCR検査でSARS-CoV-2陽性であった。ワクチン接種後の感染患者からの感染減少は、アルファ変異株と比べデルタ株で低下 ワクチン接種済みでアルファ変異株に感染した発端患者では、BNT162b2ワクチン(Pfizer/BioNTech製)またはChAdxOx1 nCoV-19(AZD1222)(AstraZeneca製)の2回接種は、いずれのワクチンでもワクチン未接種者と比較し、接触者のPCR陽性率の低下と関連していることが認められた(BNT162b2の補正後率比:0.32[95%信頼区間[CI]:0.21~0.48]、ChAdxOx1 nCoV-19の同0.48[0.30~0.78])。 ワクチン接種によるデルタ変異株の感染減少は、アルファ変異株と比較して小幅であった。その感染減少幅は、BNT162b2ワクチン2回接種後(未接種者と比較した補正後率比:0.50、95%CI:0.39~0.65)のほうが、ChAdxOx1ワクチン2回接種後(0.76、0.70~0.82)より大きかった。 ワクチンに関連した2つの変異株の感染率低下について、発端患者のCt値(ウイルス量の指標)の変化が占める割合は7~23%であった。デルタ変異株の感染減少は、ワクチン2回接種後に経時的に低下し、ChAdxOx1 nCoV-19ワクチン接種を受けた発端患者では12週までにワクチン未接種者と同等レベルとなり、BNT162b2ワクチン接種を受けた発端患者では大幅な減弱が認められた。接触者におけるワクチン予防効果は、ワクチン2回接種後3ヵ月間で同様に低下した。

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3回目接種でオミクロン株への中和抗体が大きく増加/NEJM

 新型コロナウイルスのmRNAワクチン2回接種から6ヵ月以降に3回目の接種を受けると、オミクロン株に対する中和抗体価が大きく上昇することが、米国・ロックフェラー大学のFabian Schmidt氏らの研究で示された。また、ワクチン未接種の既感染者においても、mRNAワクチンの接種によりオミクロン株に対する中和抗体価が大きく上昇した。NEJM誌オンライン版2021年12月30日号のCORRESPONDENCEに掲載。 著者らは、新型コロナウイルスのワクチン接種または感染、もしくはその両方で曝露された47人における169の血漿検体において、武漢株とオミクロン株に対する中和抗体価を測定した。 主な結果は以下のとおり。・mRNAワクチンのBNT162b2(ファイザー製)もしくはmRNA-1273(モデルナ製)を2回接種後1.3ヵ月における血漿検体では、オミクロン株に対する50%中和抗体価(NT50)は武漢株に対するNT50に比べ127±66(平均±SD)倍低く、接種後5ヵ月では27±17倍低かった。しかしながら、2回目接種から約6ヵ月後に3回目接種を受けた約1ヵ月後には、武漢株に対するNT50が26倍、オミクロン株に対するNT50は38倍と大きく増加した。・ワクチン未接種の既感染者の血漿検体では、オミクロン株に対するNT50は武漢株に対するNT50に比べ、感染後1ヵ月で58±51倍低く、感染後6ヵ月で32±23倍低かった。しかしながら、既感染者にmRNAワクチンを接種すると接種前に比べ、武漢株に対するNT50が238倍、オミクロン株に対するNT50が154倍と大きく増加した。・既感染者でワクチンを接種していない人の多くと、mRNAワクチン2回接種のみの人は、オミクロン株に対するNT50は低いもしくは検出不能であった。

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「3高」から「4低」、そして「3生」へ【Dr. 中島の 新・徒然草】(408)

四百八の段 「3高」から「4低」、そして「3生」へついに新型コロナの第6波がやってきました。大阪医療センターの職員の中にも、PCR陽性者や濃厚接触者が出始めていて、現場から人が足りなくなりつつあります。ちょっと前の沖縄を追いかけている感じと言いましょうか。コロナ患者の数自体は多くないのに、医療者の数が不足して通常医療ができなくなる、そういったタイプの医療崩壊なのかもしれません。ワクチンを打ち、細心の注意を払っている人にまで感染してしまうオミクロン、恐るべし!さて、タイトルの「3高」や「4低」について述べましょう。「3高」というのは、私くらいの年代の人間がバブルの頃によく使っていた言葉です。女性が男性に求める要素のことで、「高学歴、高身長、高収入」のことを指しました。さすがにイケイケドンドンの時代だったので、ポジティブな言葉が並んでいます。最近知ったのは、「4低」という言葉。これまた不景気な現代を反映しているのか、ネガティブな響きが否めません。中身は「低姿勢、低燃費、低依存、低リスク」というものだそうです。「低姿勢」というのは、他人に対して威張らない人というもの。たとえば、買い物などでやたら店員さんに偉そうにしゃべる男性は減点されてしまいます。逆に、誰に対しても低姿勢な人は好感度大! 次に「低燃費」というのは、飲み会などにあまり参加せず、酒やタバコにもお金を使わない人。確かに、昭和の頃は「家1軒分飲んでしまった」みたいな話は珍しくありませんでしたが、令和の時代には流行りません。「低依存」というのは、妻に依存しない人のこと。これまた昭和の時には「家の事はなにもしない」という男性ばかりでしたが、今は掃除洗濯炊事などの家事をどんどんやる男性が好まれます。当然といえば当然ですね。そして「低リスク」。公務員とか大きな会社勤めなど、不況でも失業する可能性の低い職業が好まれるということです。強気な「3高」に比べると、「4低」のほうはいかにも弱気な印象ではありますが、時代が進んでより現実的になった気もします。というのは、いくら高収入だったとしても、それを全部アルコールやギャンブルに費やしていたら何も残らないわけですから。あと、本人の努力でどうにかなるものの割合が「3高」と「4低」との間で違っているというのもポイントかもしれません。3高だと、高学歴こそ本人の努力次第ですが、高身長はいくら努力してもどうにもなりません。一方、「4低」のうち、低姿勢、低燃費、低依存は、3つともちょっとした心掛けで実現可能です。低リスクについても、「公務員だったら何でもいい!」というなら何とかなりそうですね。ところが「4低」という言葉も少し古くなり、今は「3生」が求められる時代なのだとか。これは生存力、生活力、生産力の3つを合わせたものだそうです。生存力とは「家庭内でトラブルが起こったときに対処できる力」、生活力とは「妻に依存したり親に頼ったりせずにやっていける力」、そして生産力は「何もないところから新しいものを生み出す力。人脈があり人望が厚い」と説明にはありました。生存力をもう少しわかりやすく説明すると、「人間関係のトラブルや経済問題、健康問題など、家庭で起こった事に対処する力」だと思います。一方、生産力というのはピンと来ません。説明文からイメージすると「勤めていた会社が倒産して無職になってしまっても、その状況から人脈や人望を生かして食べていけるだけの収入を得る力」ということでしょうか。そういう力があれば重宝するのは確かです。でも、私なら生産力の代わりに生命力を持ってくるかな。「心身共にタフで、ちょっとやそっとの事でめげないタフさ」といった意味を込めて。調べてみると、ほかにも「3平」「3温」「3強」「3優」など、今までにもいろいろな言葉が提唱されてきたようです。これらも知っておくと、何かの雑談に使えるかもしれませんね。ということで最後に1句「3生」を 学んで1つ 年が明け

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第91回 米軍基地のコロナ感染拡大で露呈した水際対策の“合法的抜け道”

米軍基地内のクラスターとオミクロン株の感染急拡大により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は第6波の様相を呈してきた。沖縄、山口、広島の3県には、1月9日から「まん延防止等重点措置」が適用された。とくに沖縄県は、2020年7月にも米軍基地のクラスターと軌を一にする感染拡大が起きており、当時も米軍基地が感染源として疑われていた。2020年の感染拡大では感染研は米軍基地感染源説を否定しかし、政府の新型コロナ感染症対策分科会会長代理の脇田 隆字氏(国立感染症研究所所長)は2020年8月、分科会後の記者会見で、沖縄県の感染状況を分析したところ東京由来のものだったと説明し、米軍基地の感染源説を否定した。発言の根拠となったエビデンスは不明だが、感染源説が否定されたことで米軍基地はノーマークとなってしまった。沖縄県では新規感染者が急増する中、1月11日現在、医師や看護師ら500人超も感染や濃厚接触者の認定を受け欠勤、15医療機関で救急患者の受け入れを制限するなど、医療体制が崩壊し始めている。2020年の感染拡大時、すべての感染経路不明者に対しゲノム検査などを実施し、米軍基地由来の感染者の洗い出しをきちんとしていたら、その後の感染対策に何らかの手立てがあったのではないかと考えずにいられない。検査・隔離なしの米軍基地から感染者が続々昨年末に発生したキャンプ・ハンセン(沖縄県)でのクラスターでは、米軍兵士が検査・隔離なしで自由に出入国していたことが発覚。沖縄県以外でも、佐世保基地(長崎県)、岩国基地(山口県)、キャンプ富士(静岡県)、横須賀基地(神奈川県)などで感染が拡大したことで、米軍基地由来の新型コロナの存在がようやく明るみに出た。在日米軍の発表(1月7日時点)によれば、7都県の11基地で計約2,100人の感染者が確認されているという。日本政府がいくら水際対策の厳格化に胸を張っても、世界で報告される1日の新規感染者の約3人に1人の割合を占める米国から、基地が抜け道となって国内に新型コロナウイルスが運ばれていたわけだ。実際、キャンプ・ハンセンで感染が広がってから沖縄県内で感染が急拡大するまで、米軍は感染状況を積極的に発信せず、対策も怠った。日本政府もすぐには外出規制や情報提供を求めなかった。そこに科学的合理的な感染対策はない。同じく米軍基地のある韓国やオーストラリアでは、米軍兵士に対する検査や隔離は徹底されている一方で、日本政府の甘い対応が米国や米軍の日本軽視に繋がっているように思える。日米の合意で1月10日から24日まで、すべての米軍基地を対象にした外出制限が発令されたが、「必要不可欠な活動」は認められた。「必要不可欠な活動」とは、米軍側がいかようにも言い訳できるような表現だ。「コロナ対策での喫緊の課題は公務員改革」の真意昨年11月下旬、東京で開かれた第16回「現場からの医療改革推進協議会シンポジウム」に出席した元厚生労働大臣の塩崎 恭久氏は「コロナ対策での喫緊の課題は公務員改革だ」と述べた。塩崎氏が問題視したのは、日本のコロナ対策の非科学性だった。「官僚組織で最優先されるのはムラ社会の理屈で、科学的合理性は二の次。非科学的でも、ムラ社会の対面を保った官僚が出世する」と批判した。年明け早々に起きた米軍基地由来の感染拡大。世界がコロナとの共存に本腰を入れて取り組むフェーズにある中、日本の科学的かつ合理的な感染対策の不在は、もっと問題視されるべきだと思うのだが―。

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ブースター接種、オミクロン株に対する発症・入院予防効果は?

 オミクロン株に対するワクチンの有効性について、発症予防効果はデルタ株と比較して低く、投与後の期間に応じてさらに低下する一方で、入院予防効果は2回目接種後6ヵ月以降も約50%となり、3回目接種により約90%まで高まるというデータが報告された。英国・UK Health Security Agency(UKHSA)が2021年12月31日にオミクロン株に関する大規模調査結果を公開した。オミクロン株感染者の発症に対するワクチン有効率は?(種類・回数・経過期間ごと) デルタ株と比較したオミクロン株の症候性COVID-19に対するワクチン有効率(VE)が、診断陰性例コントロールデザインを用いて推定された。2021年11月27日~12月24日までに検査を受けたオミクロン株感染20万4,036例とデルタ株感染16万9,888例のデータを使用している。 ファイザー製、モデルナ製、アストラゼネカ製の各社ワクチンごとの2回目および3回目接種後(交互接種含む)の発症予防効果は以下の通り:2回目接種後・すべてのワクチン、すべての期間において、発症予防効果はデルタ株と比較してオミクロン株で低かった。・アストラゼネカ製ワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果は、2回目投与10~14週間後には約30%だったが、20週間後にはなくなっていた(VE=0%以下)。・ファイザー製またはモデルナ製ワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果は2回目投与2~4週間後には約60~70%だったが徐々に低下し、20週間後には約10%だった。3回目接種後・1~2回目をアストラゼネカ製、3回目にファイザー製またはモデルナ製接種の場合、オミクロン株に対する発症予防効果は3回目投与2~4週後に約60~70%となり、5~9週間後には約50~60%だった。・1~2回目をファイザー製、3回目にファイザー製またはモデルナ製接種の場合、オミクロン株に対する発症予防効果は3回目投与2~4週後に約65~75%となり、5~9週間後には約55~70%だった。オミクロン株感染者の入院に対するワクチン有効率は?(回数・経過期間ごと) オミクロン株感染による症候性COVID-19入院に対するワクチン有効率(VE)が推定された。ワクチンの種類を問わず(全種類の統合データ)、接種回数と経過期間ごとのワクチンによる入院予防効果は以下の通り:・1回目接種後≧4週間:52%・2回目接種後2~24週間:72%・2回目接種後≧25週間:52%・3回目接種後≧2週間:88%オミクロン株による入院リスク、ワクチン接種状況による違いは? 入院リスクの評価には、2021年11月22日~12月26日までに英国で発生したオミクロン株感染52万8,176例とデルタ株感染57万3,012例のデータが使用された。うちオミクロン株感染3,019例とデルタ株感染1万3,579例が、検体採取から14日以内に救急受診または入院していた。 ワクチン接種状況ごとの、陽性後14日以内の救急受診・入院に対するハザード比(HR)は以下の通り(未接種/1回目のワクチン接種から<28日のHR1.00を対照として):1回目のワクチン接種から≧28日オミクロン株:HR1.02(95%CI:0.72~1.44)/デルタ株:HR 0.42(95%CI:0.36~0.48)2回目のワクチン接種から≧14日オミクロン株:HR0.35(95%CI:0.29~0.43)/デルタ株:HR 0.18(95%CI:0.17~0.19)3回目のワクチン接種から≧14日オミクロン株:HR0.19(95%CI:0.15~0.23)/デルタ株:HR 0.15(95%CI:0.13~0.16) 上記より、オミクロン株感染で入院するリスクは、ワクチン接種を受けていない人と比較して、ワクチンを2回接種した人の方が65%低く、3回のワクチン接種を受けた人の間ではさらに低かった(81%)。なお、これらの分析において併存疾患や重症度は反映されていないことに注意が必要。

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単回投与の中国製コロナワクチン、予防効果は57.5%~第III相試験/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルス5型ベクターワクチン「Ad5-nCoV」(中国・カンシノ・バイオロジクス[康希諾生物]製)の単回投与について、健康な18歳以上成人における有効性および安全性が示された。接種後28日以降のPCR検査確定・症候性COVID-19の予防効果は57.5%であり、また、重篤有害事象の発生率は0.1%でプラセボと同等であったという。カナダ・ダルハウジー大学のScott A. Halperin氏らが、第III相の国際二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2021年12月23日号掲載の報告。ワクチン接種後28日以降の症候性COVID-19予防効果を検証 試験は、アルゼンチン、チリ、メキシコ、パキスタン、ロシアの試験センターで18歳以上を登録して行われた。被験者は、不安定または重度の内科的・精神的基礎疾患がなく、検査確定の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染歴が認められず、妊娠または授乳中でない、アデノウイルス・ベクター、コロナウイルス、またはSARS-CoV-2ワクチンの未接種者だった。 研究グループは、インフォームドコンセントによる了承を得たのち、全参加者から全血を採取(25mL)、参加者を無作為に1対1の割合で2群に分け、一方にはAd5-nCoVワクチンを(5×1010vp/mLを0.5mL)、もう一方にはプラセボを、それぞれ投与した。試験担当者および参加者は割り付けを知らされなかった。 被験者とは毎週連絡を取り(eメール、電話またはテキストメッセージ)、あらゆるCOVID-19の症状を申告してもらい、申告があった場合は症状の種類を問わず、SARS-CoV-2検査を行った。 主要な有効性評価目的は、2021年1月15日時点でワクチン接種後28日以上であった全参加者について、ワクチン接種後28日以降の、PCR検査で確定された症候性COVID-19に対する予防効果。主要な安全性評価目的は、試験ワクチンを接種された全参加者における、ワクチン接種後の重篤有害事象または診療を要した非特定有害事象(MAAE)の発生とした。症候性COVID-19予防のワクチン有効性は57.5% 試験登録は、パキスタンで2020年9月22日に、メキシコは11月6日、ロシアとチリは12月2日、アルゼンチンは12月17日に、それぞれ開始された。2021年1月15日にエンドポイント例が150例に達した時点で、最終的な主要有効性解析が行われた。 Ad5-nCoVワクチンの1回投与の、接種後28日以降のPCR検査確定・症候性COVID-19に対する有効性は57.5%(95%信頼区間[CI]:39.7~70.0、p=0.0026)だった(参加者2万1,250例、追跡期間中央値45日[IQR:36~58])。 有効性解析時点で行われた安全性の主要解析(参加者3万6,717例)では、重篤有害事象の発生率は、プラセボ群0.1%(1万8,354例中10例)、Ad5-nCoV群0.1%(1万8 ,363例中14例)で有意差はなく、MAAEの発生率もそれぞれ2.2%(同411例)、2.4%(同442例)で有意差は認められなかった。なお、重篤有害事象で試験ワクチンに関連すると考えられるものは両群ともに報告されなかった。 安全性に関し、より詳しく追跡した拡張コホートでは、非自発的な全身性有害事象の報告について有意差が認められた(Ad5-nCoV群1,004/1,582例[63.5%]、プラセボ群729/1,572例[46.4%]、p<0.0001)。うち頭痛の頻度が最も高かった(Ad5-nCoV群699例[44%]、プラセボ群481例[30.6%]、p<0.0001)。 また、注射部位の有害事象に有意差がみられ(Ad5-nCoV群971/1,584例[61.3%]、プラセボ群314/1,573例[20.0%]、p<0.0001)、そのうち頻度が最も高かったのは注射部位疼痛だった(Ad5-nCoV群939例[59%]、プラセボ群303例[19%])。

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