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第25回 公立病院事業934億円の赤字、前年度からさらに増加/総務省

<先週の動き>1.公立病院事業934億円の赤字、前年度からさらに増加/総務省2.医師の労働時間短縮、派遣医師の引き上げ防止など対策案が進む3.新型コロナワクチン接種、全国民に努力義務で無料実施へ4.2021年度予算編成、新型コロナ対策を含めた効率的な予算配分へ5.上手な医療のかかり方アワード、今年も開催/厚労省1.公立病院事業934億円の赤字、前年度からさらに増加/総務省総務省は、9月30日に発表した2019年度の地方公営企業決算の概要の中で、公立病院事業の赤字が934億円に上ることを明らかにした。地方公営企業など全体の総収支は7,472億円の黒字で、前年(2018年)度に比べ5,107億円(40.6%)減少しているものの、引き続き黒字であった。病院事業は、地方公営企業など全体の決算規模では5兆8,450億円と3割以上の規模を占めているが、赤字額は前年度840億円から934億円と増加が見られ、さらに累積欠損金の金額では1兆9,907億円と、過去5年にわたって増加していることが明らかとなり、経営の健全化が求められている。(参考)令和元年度地方公営企業決算の概要(総務省)2.医師の労働時間短縮、派遣医師の引き上げ防止など対策案が進む厚生労働省は、9月30日に開催された「医師の働き方改革の推進に関する検討会」において、医師の労働時間短縮などに関する大臣指針を策定した。2035年度末を目途に(B)水準(年間1,860時間)を解消するために、「すべての(B)水準対象医師が到達することを目指すべき時間外労働(休日労働を含む)の上限時間数の目標値」を3年ごとに設定して、医師の時間外労働短縮に取り組むことが提案され、了承された。また医師の副業・兼業問題では、大学病院・地域医療支援病院について、地域医療提供体制の確保の観点から、大学医局からの要請で医師を派遣するなど、派遣元が(A)水準を適用した場合、時間外・休日労働時間を(B)水準まで可能とすることで、派遣医師の引き上げを防止する方向性が了承された。今後、関連する法改正を行い、告示される見込み。(参考)副業・兼業を行う医師に関する地域医療総合確保暫定特例水準の適用について(厚労省)医師の労働時間短縮等に関する大臣指針について(同)第9回医師の働き方改革の推進に関する検討会 資料(同)3.新型コロナワクチン接種、全国民に努力義務で無料実施へ厚労省は2日に開催された「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会」において、新型コロナウイルスワクチンについて、接種を原則として努力義務とし、全国民を対象に無料で実施する方針を決めた。すでに9月8日の閣議決定にて、ワクチン購入の費用は国費で賄うことが承認されており、米ファイザーや英アストラゼネカとの間でワクチン供給について合意している。今月下旬に招集予定の臨時国会において、関連法案を提出し法案成立後、承認後の接種実施体制構築に取り組む。(参考)第17回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料(厚労省)4.2021年度予算編成、新型コロナ対策を含めた効率的な予算配分へ財務大臣の諮問機関「財政制度等審議会・財政制度分科会」が1日に開催され、2021年度政府予算の編成を開始した。9月30日に締め切られた国の来年度予算案の概算要求では、新型コロナ対策のため、各省庁からは予算額が不明のまま項目のみの事項要求が相次いだことを考慮し、より効率的な予算配分に取り組む方針を明らかにした。また麻生 太郎財務相は、現役世代が減少して高齢者が増えても、社会保障制度を借金なしに維持できるように見直す必要性を指摘した。(参考)財政制度分科会(令和2年10月1日開催)資料一覧(財務省)5.上手な医療のかかり方アワード、今年も開催/厚労省厚労省は、2019年度から医師・医療従事者の負担軽減や突然の病気や怪我への対応などを目的に、「上手な医療のかかり方プロジェクト」を推進・啓発している。今年も「いのちをまもり、医療をまもる」有用な取り組みを表彰し、全国で共有するために『第2回 上手な医療のかかり方アワード』を開催することとなった。去年はブラザー工業のような企業や健康保険組合のほか、飯塚病院や横須賀市立うわまち病院などが行った地域住民に対する取り組みが表彰されている。第2回アワードの応募は今年の11月30日(金)まで。(参考)第2回「上手な医療のかかり方アワード」開催(厚労省)上手な医療のかかり方.jp

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新型コロナ、唾液PCR検査の感度9割を実証/北海道大

 北海道大学大学院医学研究院の豊嶋 崇徳教授ら研究グループは、9月29日の記者会見で、新型コロナウイルスのPCR検査について、約2,000例の症例で唾液と鼻咽頭スワブの診断精度を比較した結果、いずれも感度は約90%、特異度は両者とも99.9%だったと発表した。PCR検査を巡っては、唾液による検査が簡便かつ医療従事者の感染リスク防止の観点で有用と考えらえるが、感度は未知数であり、鼻咽頭スワブでも70%程度と見られていた。今回の結果は、従来の見立てを大きく上回り、PCR検査の信頼性を裏付ける形となった。研究をまとめた論文は、Clinical Infectious Diseases誌2020年9月25日号に掲載された。 本研究では、国際便での空港検疫および保健所での濃厚接触者で、無症状の1,924例について、唾液および鼻咽頭スワブを採取し、PCR検査を実施した。その結果、陽性例が唾液で48例、鼻咽頭スワブで46例確認され、感度は唾液で92%(95%信頼区間[CI]:83~97%)、鼻咽頭スワブで86%(95%CI:77~93%)、特異度は両者共に99.9%超であった。また、陽性例のウイルス量は両者で同等に検出されたという。 研究グループは、従来不明瞭であったPCR検査の精度が、唾液と鼻咽頭スワブいずれも高い信頼性に基づくものであることが本結果により実証されたと同時に、鼻咽頭スワブの採取よりも安全かつ簡便で、採取者の感染リスクや被採取者の不快感も少ない自己唾液採取が、スクリーニング検査の標準法として推奨できると結論付けている。

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統合失調症患者のCOVID-19による院内死亡率

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により入院が必要となる統合失調症患者の特徴やアウトカムに関する情報は限られている。フランス・エクス=マルセイユ大学のG. Fond氏らは、COVID-19に罹患した統合失調症患者の臨床的特徴およびアウトカムを明らかにするため、統合失調症でない感染者との比較検討を行った。L'Encephale誌オンライン版2020年7月30日号の報告。 本検討は、南フランス・マルセイユの4つの公的支援急性期医療病院に入院したCOVID-19患者の症例対照研究として実施した。入院を必要とするCOVID-19患者は、鼻咽頭サンプルのPCR検査および/または胸部CTの陽性結果で確認した。主要アウトカムは院内死亡率とし、副次的アウトカムはICU入室とした。 主な結果は以下のとおり。・対象感染者数は、1,092例であった。・院内死亡率は、全体で9.0%であった。・COVID-19に罹患した統合失調症患者は、統合失調症でない感染者と比較し、死亡率が高かった(26.7% vs.8.7%、p=0.039)。このことは、年齢、性別、喫煙状況、肥満、合併症で調整した後の多変量解析でも確認された(調整オッズ比:4.36、95%CI:1.09~17.44、p=0.038)。・COVID-19に罹患した統合失調症患者は、統合失調症でない感染者と比較し、ICU入室率が低かった。・COVID-19に罹患した統合失調症患者の63.6%は、施設に入所しており、死亡した患者は、すべて施設に入所していた。また、これらの患者は、がんや呼吸器疾患の合併症を有する割合が高かった。 著者らは「COVID-19に罹患した患者の中で、統合失調症患者の適切な評価がなされていない可能性が示唆された。統合失調症患者では、COVID-19による死亡リスクが高く、身体合併症などの有無を確認する必要がある」としている。

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第26回 「死の病」克服患者の訃報でよぎる、コロナ禍脱却の道しるべ

終わりの見えない新型コロナウイルス感染症の蔓延。現在、われわれができる対策は、3密の回避、手洗いの励行、マスクの着用という極めてプリミティブなものばかりだ。これまで本連載で書いてきたように治療薬もまだ決定打と言えるものがなく、ワクチンも開発が進んできたとはいえ、先行きはまだ不透明である。医療従事者の中にも、またそれを見守る周囲の中にまだまだ閉塞感が充満しているだろうと思う。そんな最中、私はあるニュースに接し、勝手ながら個人的に光明を感じている。そのニュースとは世界で初めてHIVを克服したとされ「ベルリンの患者」と称されたティモシー・レイ・ブラウン氏の訃報である。他人の訃報を喜んでいるわけではない。今回ブラウン氏の訃報に接することで、「あのHIVも一部は克服ができていた」という忘却の彼方にあった事実を改めて思い出したからである。そしてこの訃報をきっかけに思い出したHIV克服にやや興奮してしまうのは、私がこの病気を長らく取材してきたからかもしれない。私が専門紙記者となったのは1994年である。そしてこの年、駆け出しの記者としていきなり国際学会の取材という重荷を負わされた。それが横浜市で開催された第10回国際エイズ会議である。当時はHIV感染症の治療は逆転写酵素阻害薬が3製品しかなく、薬剤耐性により治療選択肢は早々に尽き、最終的にはエイズを発症して亡くなる「死の病」の時代だった。また今でもHIV感染者に対する差別が根強いことは、昨年判決が下されたHIV感染者内定取り消し訴訟でも明らかだが、当時はそれ以上の偏見・差別が蔓延しており、感染者のプライバシーに配慮するとの観点から国際エイズ会議では感染者向けのセッションは報道関係者立ち入り禁止。当該セッション中の部屋に一歩でも立ち入った場合は記者証没収という厳しい措置が敷かれていた。これに加え日本の場合、当時のHIV感染者の多くが非加熱血液製剤を介して感染した、いわゆる「薬害エイズ」の被害者である血友病患者だったことも、この病気の負のイメージを増幅させていた。その結果、国内のHIV専門医は、一部の感染症専門医を除くと、もともとの感染原因を作った血友病専門医が多くを占めた。当時話を聞いたHIV感染血友病患者が「自分の住む地域では、そもそも血友病の専門医が限られているので、感染させた主治医であっても離れることはできず、同時に彼がHIVの主治医。正直言うと、主治医の前で顔では笑っていても腹の底には押し込めた恨みが充満しているよ」と語ったことが忘れられない。そして横浜での国際エイズ会議の翌年である1995年に、アメリカで新たな抗HIV薬としてプロテアーゼ阻害薬のサキナビルが上市。そこから後続の治療薬が相次いで登場すると、現在のHAART療法と呼ばれる多剤併用療法につながっていく。ちょうどこの頃、HIVの逆転写酵素阻害薬の開発者でもあり、当時は米・国立がん研究所内科療法部門レトロウイルス感染症部長だった満屋 裕明氏(後に熊本大学医学部第二内科教授)が日本感染症学会の講演で、「今やHIV感染症はコントロール可能な慢性感染症になりつつある」と語った時は、個人的にはややフライング的な発言ではと思ったものの、実際に今ではそのようになった。そして今回訃報が報じられたブラウン氏のように、血液がんの治療で行われる造血幹細胞移植によってHIVを克服した2例目が、昨年3月に科学誌ネイチャーで報告されている。HIV発見から10年強、医学は敗北を続けたものの、そこからは徐々に巻き返し、現在ではほぼコントロール下に置いたと言ってもいい状態まで達成している。現在、新型コロナの治療薬が抗ウイルス薬のレムデシビル、抗炎症薬のデキサメタゾンのみで、ここに前回紹介したようなアビガン、アクテムラが今後加わっていくことになるだろうが、まだ「いずれも決定打」とは言えない。ただ、この状況は2割打者同士の切磋琢磨から3割打者が登場する前夜の状況、過去のHIV治療で見れば逆転写酵素阻害薬3製品時代と同じなのかもしれないと、ふと思ったりもする。どうしても記者という性分は物事を悲観的に捉えすぎるきらいがある。しかし、あのHIVに苦戦していた当時から考えれば、医学も創薬技術も大きく進歩している。やや感傷的過ぎるかもしれないが、COVID-19もある臨界点を超えれば、思ったよりも早く共存可能なレベルに制御されてくるかもしれないとも考え始めている。まあ、逆にそう考えてしまうほど、自分も閉塞感に満ち満ちた状態で事態を眺めているからかもしれないが。

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マスク着用時の口臭対策の基本とは?専門家がアドバイス

 新型コロナウイルス感染症流行の長期化に伴い、マスクを着けることが日常化している。マスク装着時に気になるのが自分の口臭の問題だ。乳酸菌食品メーカーであるオハヨーバイオテクノロジーズは「マスクの中の“臭い”気になりませんか?」と題したプレス資料の中で、口臭の原因と対策について解説している。マスク装着時の口臭対策は着用直前の口腔ケア 口臭の原因は、大きく分けて2つ。1つ目は「体」に原因がある場合で、消化不良や肝機能低下、糖尿病などが考えられる。2つ目は「口の中」に原因がある場合で、歯や舌の汚れや虫歯、歯周病などが要因となる。口臭のうち8割以上が口の中に原因があるとされ、とくに舌の上が白くなる舌苔の増加と歯周病菌による歯茎の炎症やメチルメルカプタンの発生による口臭が代表的な要因だ。 オハヨーバイオテクノロジーズの研究に協力する歯科医・日本大学客員教授の若林 健史氏は、「マスクの装着が常態化したことによって通常時よりも話す機会・時間が少なくなると口周りの動きが減る。それによって唾液の分泌が減少し、口内の循環が減ることで、悪玉菌が留まりやすくなって口内環境が悪化しやすくなる。マスクをしながらの会話は口呼吸になりやすいので口内に乾燥が起こることも考えられる」と述べる。 マスク着用時の口臭対策としては、「マスクを着用する直前に口腔ケアを徹底することが効果的。とくに舌苔を取り除き、増殖を抑制することが大切になる。舌ブラシで舌をきれいにし、歯ブラシ、歯間ブラシでブラッシングを徹底、さらに洗口液でうがいを行うとよい」(若林氏)。加えて、マスク着用の直前に匂いのきついものを食べないようにする、口内環境を整える良質な乳酸菌を食品などから摂り入れることも手軽にできるマスク着用時の口臭対策という。 医療者として、受診患者や入院患者の口臭に気づいた場合はどうすればよいか。「院内や関係医療機関の歯科衛生士を紹介して欲しい。入れ歯をしている方であれば、入れ歯の手入れを食事のすぐあとに徹底して行うことが効果的。口臭は原因によって対処方法が異なるので、専門家に相談することを薦めていただきたい」と若林氏はアドバイスする。 口臭対策品の広告等において、「日本人は欧米人に比べて口臭を持つ人が多い」とされることがあるが、「日本人の歯周疾患の保有率は上昇しているが1)、他国と比べて有意に多いというデータはない」(若林氏)という。多くの場合、口臭の原因は口内にあるため、ブレスケア製品でごまかすのではなく、しっかりとした歯磨きと舌ブラシでのケアがマスク着用時の口臭対策の基本になるという。

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COVID-19急性呼吸不全への副腎皮質ステロイド薬投与について(解説:小林英夫氏)-1289

 本論文はCOVID-19による急性呼吸不全症例に対するヒドロコルチゾンの治療効果を検討する目的で開始されたが、デキサメタゾンによるCOVID-19死亡率抑制効果が国際的に認証されたため、中断となった報告である。副腎皮質ステロイド薬の種類により治療効果に大きく差が生じる可能性は低いだろうと予想されるので、試験中止は妥当な選択であったのかもしれない。中断試験であるのでその結果解釈にバイアスが大きいが、プラセボ群との間で治療効果に有意差を検出できなかった点、投与群中約4割で効果を認めなかった点、には留意しておくべきであろう。副腎皮質ステロイド薬が治療効果をもたらさない症例が存在することはデキサメタゾンでも同様である。 2020年9月2日、世界保健機関(WHO)はCOVID-19重症患者を対象に、副腎皮質ステロイド薬の使用を推奨する治療ガイダンスを公表した。同じく厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部による『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第3版』でもデキサメタゾンに予後改善効果がある論文を引用している。副腎皮質ステロイド薬による効果発現機序については、抗炎症作用説、サイトカインストーム抑制説や免疫応答改善説などがみられるが、懐疑論もあり、いまだ完全に解決できていないのが実情である。ただし、実臨床で使用することへの反論の声は少ない。同時に、WHOを含めた推奨意見の対象は重症呼吸不全症例であり、非重症者への効果は不明で推奨されていないことも認識しておきたい。また、投与薬剤・量・方法も何が最善なのか明確ではない。デキサメタゾンの使用報告が先行したため推奨対象となっているが、ほかの副腎皮質ステロイド薬との優劣やパルス療法の妥当性も不明である。ちなみに、本邦のパルス療法はメチルプレドニゾロン1,000mg/回/日を3日間投与とするのが一般的だが、米国の呼吸器教科書では250mg/1回を1日4回、3日間投与となっている。 本論文はJAMA誌2020年9月2日online号の掲載で、この号にはCOVID-19への副腎皮質ステロイド効果について計3本の論文とそれらへの論評が掲載されている。本論文単独を参照されるよりも、論評を読まれることをお勧めさせていただく。

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COVID-19、18~34歳の臨床転帰と重症化因子

 米国や日本では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の若年者における感染が拡大している。しかし、COVID-19は高齢者に影響を及ぼす疾患として説明されることが多く、若年患者の臨床転帰に関する報告は限られる。米国・ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJonathan W. Cunningham氏らは、COVID-19により入院した18~34歳の患者約3,000例の臨床プロファイルと転帰について、JAMA Internal Medicine誌オンライン版2020年9月9日号リサーチレターで報告した。 2020年4月1日から6月30日に、米国の1,030病院を含む病院ベースのPremier Healthcare DatabaseでICD-10に基づきCOVID-19による入院が記録された18~34歳の患者が対象。COVID-19による最初の入院のみが含まれた。対象者のうち、妊婦(1,644例)は除外された。併存症および入院中の転帰については、診断、診療行為、ICD-10の請求コードにより定義された。集中治療の有無は、集中治療室の利用あるいは人工呼吸管理の請求コードにより定義された。 死亡または機械的換気の複合アウトカムに関連する独立因子は、多変量ロジスティック回帰分析を用いて特定した。両側検定p<0.05で有意と設定された。  主な結果は以下の通り。・2020年4月1日~6月30日の間に退院した78万969例のうち、6万3,103例(8.1%)がCOVID-19のICD-10コードを保有しており、そのうち3,222例(5%)が妊娠していない若年患者(18~34歳)で、米国の419病院に入院していた。・平均(SD)年齢は28.3(4.4)歳。1,849例(57.6%)は男性で、1,838例(57.0%)は黒人またはヒスパニック系であった。・1,187例(36.8%)は肥満(BMI≧30)、789例(24.5%)は高度肥満(BMI≧40)、588例(18.2%)は糖尿病、519例(16.1%)は高血圧を有していた。・入院中、684例(21%)が集中治療を、331例(10%)が機械的換気を必要とし、88例(2.7%)が死亡した。・217例(7%)で昇圧薬または強心薬、283例(9%)で中心静脈カテーテル、192人(6%)で動脈カテーテルが使用された。・入院期間中央値は4日(四分位範囲:2~7日)。・生存例のうち、99例(3%)が急性期後、ケア施設に退院した。・高度肥満(調整オッズ比[OR]:2.30、95%信頼区間[CI]:1.77~2.98、vs. 肥満なし;p<0.001)および高血圧(調整OR:2.36、95%CI:1.79~3.12、p<0.001)の患者のほか、男性(調整OR:1.53、95%CI:1.20~1.95、p=0.001)患者は、死亡または機械的換気を要するリスクが高かった。・死亡または機械的換気のオッズは、人種や民族によって大きく変化しなかった。・死亡または機械的換気を必要とした患者のうち140例(41%)に高度肥満があった。・糖尿病患者は、単変量解析で死亡または機械的換気を要するリスクが高かった(OR:1.82、95%CI:1.41~2.36、p<0.001)が、調整後に統計学的有意差に達しなかった(調整OR:1.31、95%CI:0.99~1.73、p=0.06)。・複数の因子(高度肥満、高血圧、糖尿病)のある患者は、これらのない8,862例のCOVID-19中高年(35~64歳)患者(非妊娠)と同等の死亡または機械的換気を要するリスクを有していた。 著者らは、2.7%という院内死亡率は、COVID-19の高齢患者と比較すれば低いが、急性心筋梗塞の若年者の約2倍であるとし、この年齢層のCOVID-19感染者の増加率を考慮すれば、若年者における感染防止対策の重要性を強調する結果だとしている。

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TNF阻害薬・MTX服用者、COVID-19入院・死亡リスク増大せず

 COVID-19の治療法確立には、なお模索が続いている。米国・ウェストバージニア大学のAhmed Yousaf氏らは、エビデンスデータが不足している生物学的製剤および免疫抑制剤のCOVID-19関連アウトカムへの影響を、多施設共同リサーチネットワーク試験にて調べた。5,351万人強の患者の医療記録を解析した結果、腫瘍壊死因子阻害薬(TNFi)および/またはメトトレキサート(MTX)曝露のあるCOVID-19患者は非曝露のCOVID-19患者と比べて、入院や死亡が増大しないことが示されたという。結果について著者は「COVID-19と生物学的製剤の使用に関する現行ガイドラインは、厳密な統計学的解析ではなく主として専門家の見解(opinion)に基づくものである。今回のわれわれの試験結果は、TNFiやMTXの使用を継続することを支持し、COVID-19関連アウトカムが不良となる可能性の懸念による治療の中断に異を唱えるものである」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年9月11日号掲載の報告。TNF阻害薬および/またはMTX治療群と非治療群を3万2,076例で比較 研究グループは、TNF阻害薬および/またはMTXを服用する患者について、COVID-19関連アウトカムのリスクが増大するかどうかを調べる大規模比較コホート試験を行った。 試験では、リアルタイム検索と解析で、COVID-19と診断された成人患者について、TNF阻害薬および/またはMTX治療群と非治療群を比較。入院および死亡の尤度を、交絡因子に関する傾向スコアマッチングの有無別群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・5,351万1,836例の患者記録を解析した。・そのうち3万2,076例(0.06%)が、2020年1月20日以降にCOVID-19に関連する診断を受けたことが記録されていた。・214例のCOVID-19患者が、TNF阻害薬またはMTXへの最近の曝露が確認され、3万1,862例のCOVID-19患者は、TNFiまたはMTXに非曝露であった。・傾向マッチング後、入院および死亡の尤度について、TNF阻害薬および/またはMTX治療群と非治療群で有意差はなかった。入院のリスク比は0.91(95%信頼区間[CI]:0.68~1.22、p=0.5260)、死亡のリスク比は0.87(0.42~1.78、p=0.6958)であった。・本検討は、すべてのTNF阻害薬が同様の影響をもたらすとは限らない、という点で限定的である。

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第27回 日本のCOVID-19死亡率が低いのはα1-アンチトリプシンのおかげ?

日本、中国、韓国、タイ、ベトナム、カンボジア、マレーシア等のアジアの国で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡率が比較的低いことに関心が集まっていますが、理由はいまだ不明です。サハラ以南アフリカのいくつかの国でCOVID-19発症やその死亡率が低いことも注目に値します。おそらくその背景にはSARS-CoV-2の検査が広まっていないことや海外からの入国者が少ないことがあるでしょうが、それぞれの国に特有の遺伝的特徴も寄与しているかもしれません。SARS-CoV-2はヒト細胞のセリンプロテアーゼTMPRSS2の助けを借りて別の細胞表面タンパク質ACE2に結合して細胞に侵入します。セリンプロテアーゼ阻害薬・ナファモスタットやカモスタットはTMPRSS2を阻害することが分かっており、COVID-19患者へのそれら薬剤の臨床試験が進行中です。ヒトの血液中の主なセリンプロテアーゼ阻害タンパク質・α1-アンチトリプシン(AAT)もナファモスタットやカモスタットと同様にTMPRSS2を阻害することが最近の研究で確認されています1)。遺伝子変異のせいでAATが乏しい人が多いイタリアのロンバルディ地域ではCOVID-19感染率が高く2)、AAT欠乏の人の割合とCOVID-19感染率が関連するのではないかと考えられています。そこでイスラエルのテルアビブ大学の研究者3人は67ヵ国のデータを使い、AAT欠乏を招く一般的な遺伝子変異とCOVID-19流行の関連を世界規模で調べてみました。その結果イタリアでの疫学データと同様の傾向があり、AAT欠乏変異保有者が多い国ほどCOVID-19死亡率が高く、逆に少ない国ほどCOVID-19死亡率が低い事が示されました3,4)。たとえばスペインはCOVID-19死亡率が高く、100万人あたり640人がCOVID-19で死亡しており、1,000人あたり17人がPiZという主たるAAT欠乏変異を有していました。イタリアも同様で、100万人あたり620人がCOVID-19で死亡し、1,000人あたり13人に変異がありました。一方、COVID-19死亡率が世界で最も低い国々の一つ日本のPiZ変異保有は無視できるほど少なく、COVID-19死亡率はスペインの71分の1の100万人あたり9人です。興味深いことに、日本でCOVID-19が少ないことやCOVID-19重症化阻止との関連が示唆されているBCGワクチン接種は血中のAATを増やします5)。AATは抗ウイルス作用に加えて抗炎症作用もあります。副腎皮質ステロイド(コルチコステロイド)・デキサメタゾンはCOVID-19入院患者の死亡を防ぐことが示されていますが、AATの抗炎症作用はどうやら副腎皮質ステロイドの上を行きます6)。AATが生理濃度でヒト気道上皮へのSARS-CoV-2感染を阻害することも確認されており7)、COVID-19患者への吸入AAT投与の臨床試験(NCT04385836)8)がサウジアラビアで進行中です。参考1)Alpha 1 Antitrypsin is an Inhibitor of the SARS-CoV2-Priming Protease TMPRSS2. bioRxiv. May 05, 20202)Vianello A,et al. Arch Bronconeumol. 2020 Sep;56:609-610. 3)Shapira G, et al. FASEB J. 2020 Sep 22.4)Carriers of two genetic mutations at greater risk for illness and death from COVID-19 / Eurekalert 5)Cirovic B, et al. ell Host Microbe. 2020 Aug 12;28:322-334.e5. [Epub ahead of print]6)Schuster R,et al. Cell Immunol. 2020 Oct;356:104177.7)Alpha-1 antitrypsin inhibits SARS-CoV-2 infection. bioRxiv. July 02, 2020. 8)Trial of Alpha One Antitrypsin Inhalation in Treating Patient With Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2)(ClinicalTrials.gov)

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COVID-19重症化予測する5つの血中マーカー同定/国際医療研究センター

 国立国際医療研究センターは9月24日、COVID-19患者から得られた経時的な採血検体により予後予測が可能な分子マーカーの探索を進めた結果、重症・重篤化するケースに共通する5つの因子を特定したと発表した。COVID-19を巡っては、患者の約8割が軽症のまま回復し、残りの約2割が重症・重篤化することがわかっているが、現段階では予後を予測する有効な手段がないため、COVID-19患者全員を隔離もしくは入院させて経過を観察する必要がある。本結果により、重症・重篤化予備軍に注力した経過観察が可能になり、医療資源の有効活用につながることが期待される。研究をまとめた論文は、2020年9月14日付(日本時間)でGene誌オンライン版に掲載された。 本研究では、COVID-19患者28例の採血検体を使い、病態の経過に沿った液性因子の経時的変化について網羅的解析を実施した。その結果、軽症回復者と重症化患者を分けることが可能な因子として、CCL17、IFN-λ3、CXCL9、IP-10、IL-6を同定した。CCL17は、将来の重症者では、感染初期の軽症時から基準値よりも低く、その後重症化するまで低い値が続いた。一方で、軽症者では健常者とほぼ同じ値だった。残りの4因子は、感染初期では軽症者と将来の重症者に違いはないものの、重症化した患者では、数日前から急激に値が上昇することがわかった。 併せて、これら5つの因子がCOVID-19重症化に特異的かどうかについて、ほかの疾患群(C型慢性肝炎、児童精神疾患、2型糖尿病、慢性腎不全、慢性心不全、間質性肺炎、関節リウマチ)から得られた血液で確認した。その結果、CCL17が低い値を取るのは、COVID-19重症者のみだった。IFN-λ3は、C型慢性肝炎で一部高い値を示したが、COVID-19重症者で統計学的に有意に高い値を示した。CXCL9とIP-10についても、COVID-19重症者で特徴的に高い値を示した。IL-6は関節リウマチで高い値を示すことがあったが、COVID-19重症者で統計学的に有意に高い値を示した。これらの結果からも、5つの因子がCOVID-19重症化患者を早期発見および囲い込みに有用である可能性が示された。 同センターでは今後、国内において多施設共同による前向き試験を実施し、実臨床での有効性についてさらに検証を進めていく予定。

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第24回 マイナンバー普及へスピードアップ、医療機関は迅速にシステム準備を

<先週の動き>1.マイナンバー普及へスピードアップ、医療機関は迅速にシステム準備を2.菅新内閣、厚労大臣に田村氏が再任、三原氏が副大臣に3.厚労省、令和3年度の概算要求は過去最大規模に4.病院における看護師の特定行為、広告が可能に?5.福祉医療機構、経営難の医療機関へ貸付限度額引き上げを発表1.マイナンバー普及へスピードアップ、医療機関は迅速にシステム準備を菅首相は、25日に行われた行政のデジタル化を推進する会議において、マイナンバーカードの普及をさらに加速させるために、未取得者に対してQRコードを送付するなど対策を行い、2022年度末にほぼ全員が所持する対策を進めることとした。医療機関においては、マイナンバーカードを使ってのオンライン資格確認等システムの稼働を来年度から本格的に始動させることがすでに決まっており、データヘルス改革が本格化するとみられる。なお、オンライン資格確認や特定健診情報の閲覧は2021年3月から、薬剤情報の閲覧は2021年10月から開始される。さらにその2年後には介護保険被保険者証としての利用開始も予定されている。オンライン資格確認を円滑に導入するため、医療機関・薬局での初期導入経費(システム改修など)については、医療情報化支援基金による補助金を活用できるため、診療所、薬局は1台まで、病院は3台まで無償提供される。この申込み手続きを行うため、支払基金は医療機関・薬局向け専用ポータルサイトを今年7月に開設しており、2021年3月までに顔認証付きカードリーダーを確実に届けてもらうためには、下記のサイトからアカウント登録を行い、申請が必要。(参考)オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)(厚労省)オンライン資格確認・医療情報化支援基金関係 医療機関向けポータルサイト(社会保険診療報酬支払基金)2.菅新内閣、厚労大臣に田村氏が再任、三原氏が副大臣に安倍 晋三前首相の退任後、第99代 内閣総理大臣に任命された菅 義偉首相は、厚生労働大臣に田村 憲久氏を再入閣させ、副大臣には参議院議員である山本 博司氏と三原 じゅん子氏をそれぞれ指名した。田村大臣は17日の記者会見で、今後の厚労省の取り組みについて、オンライン診療の恒久化の検討を進めるほか、不妊治療の保険適用、後期高齢者の医療費の自己負担、新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行などの対策を進めることを明らかにした。(参考)令和2年9月17日付 田村大臣会見概要(厚労省)3.厚労省、令和3年度の概算要求は過去最大規模に2021年度の政府予算編成に当たり、厚労省の概算要求額が過去最大規模となることが報道により明らかとなった。一般会計は、前年度当初予算比34億円増の32兆9,895億円で、新型コロナへの緊急対応に必要となる経費は未定で、金額については今後、財務省との折衝の後決定される見込み。なお、医政局の要求額は2,247億8,500万円と2020年度の当初予算額に比べて、16億3500万円増。この中には、医師の地域間・診療科間偏在などの対策として、認定制度を活用した医師少数区域などにおける勤務の推進事業のほか、地域医療構想の実現のために必要とされる病床機能再編支援事業、かかりつけ医機能の強化・活用にかかる調査・普及事業など、新規項目も見られ、今後の展開が注目される。(参考)令和3年度 概算要求の概要(厚生労働省医政局)4.病院における看護師の特定行為、広告が可能に?24日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、チーム医療の促進や働き方改革の推進の一環で、看護師の特定行為(看護師が手順書に従って実施する診療補助)について、広告可能とする議論がされた。2024年度から規制される医師の時間外労働時間の上限規制が適用されるため、チーム医療と医師業務のタスクシフトを進めるためと考えられるが、一部の構成員から「一般の患者が深く理解できるか」といった懸念が出され、再検討した上で次回の会議に再提示することとなった。このほか、新たな報告項目の追加・修正を検討項目として、外国人患者受け入れ体制の中で、「外国人患者の受け入れに関する総合的な対応の実施有無」、「診療時に対応することができる外国語の種類」、「多言語音声翻訳システムの利用有無」について、最初の項目は病院のみ義務化、残る2つは診療所、歯科診療所、助産所も含めすべて義務とする内容が議論されたが、これについても構成員から意見が出され、次回に持ち越しとなった。(参考)第15回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会(厚労省)看護師の特定行為、業務内容が広告可能に 厚労省検討会で大筋合意、詳細ルールは次回以降(CBnewsマネジメント)5.福祉医療機構、経営難の医療機関へ貸付限度額引き上げを発表新型コロナウイルスの影響で経営難に直面する医療機関に対して、政府系金融機関の独立行政法人 福祉医療機構(WAM)は、長期運転資金の医療貸付の融資条件を拡充した。医業収益が前年同月と比べて3割以上減少した月が1ヵ月以上ある医療機関への貸付金の限度額として、病院は10億円まで(従来は7.2億円)、診療所は5,000万円(従来は4,000万円)まで引き上げた。また無利子貸付の上限枠や無担保貸付の上限枠に関しても、病院に対してはそれぞれ2億円、6億円と引き上げを行っている。医療機関に対する支援は福祉医療機構のほか、経済産業省の持続化給付金のほか、日本政策金融金庫、全国信用保証協会、商工組合中央金庫などさまざまな団体が受け付けている。(参考)福祉貸付における新型コロナウイルス感染症対応のための経営資金のお手続きのごあんない(WAM)【助成金・給付金・融資など情報一覧】新型コロナウイルス感染拡大により影響を受ける事業者様へ(CBnews編集局作成)

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キャリアアップに毎月支出する金額は?/医師1,000人に聞きました

 例年ならば秋の学術集会が盛んに開催されている季節だが、新型コロナウイルス感染症は、WEB学会という新しい形の学術集会を誕生させ、夏から順次開催されている。こうした学術集会などを通じ医師や医療従事者は、知識・知見の収集と学習、技術の習得を行っているが、実際、医師の学習やキャリア形成はどうしているのか。8月20日(木)~26日(水)に会員医師1,000人に協力をいただき、その実態を聞いた。 下記にアンケートの概要を報告する。20・30代の医師の目標は「学位」より「専門医」 回答年代別では、50代が29%と1番多く、次いで40代(24%)、30代(19%)の順だった。診療科では、一般内科(240人)、消化器科(88人)、循環器内科/心臓血管外科(73人)の順で多かった。 質問として20・30代の医師(n=250)に「今一番興味のあるキャリアに関することは何ですか」(単回答)と聞いたところ、「専門医資格の取得」(113名)、「診療技術・手技など技術の習得」(52名)、「博士などの学位の取得」(38名)の順で多かった。学位よりも臨床上の実績・経験を研鑽したいという傾向が見受けられた。また、開業や起業に興味を持つ会員医師も10名以上みられた。 同じ対象群に「専門・非専門のキャリア向上のため、どのような学習をされていますか」(複数回答)と聞いたところ「専門書籍・国内外のジャーナルで独学」(128名)が1番多く、ついで「所属学会・研究会の講習会に参加」(114名)、「CareNet.comなどの医療者向けウェブサイトで学習」(63名)の順で多かった。また、「キャリア形成などに1ヵ月にどのくらいお金をかけていますか」(単回答)という質問では、「1万円以内」(147名)が1番多く、毎月の学習費は抑えられている傾向がみられた。 自由回答として「キャリア形成で参考にしている動画サイトや書籍を教えてください」では、CareNet.comをはじめとする医療系サイトのほか、Lancetなどの有名ジャーナルが並んだが、中にはYouTubeのお金に関するコンテンツやTwitterなどSNSからという回答もあった。医師の半数の学習は「所属学会・研究会の講習会」が主体 質問として全医師(n=1,000)に「専門・非専門のキャリア向上のため、どのような学習をされていますか」(複数回答)と聞いたところ「所属学会・研究会の講習会に参加」(468名)と1番多く、ついで「専門書籍・国内外のジャーナルで独学」(427名)、「CareNet.comなどの医療者向けウェブサイトで学習」(396名)の順番だった。 また、「キャリア形成などに1ヵ月にどのくらいお金をかけていますか(単回答)では、「1万円以内」(644名)が1番多く、年代を問わずキャリア形成への支出は少なかった。 40代以上の会員医師(n=750)に「医師以外のキャリアで考えている職種などはありますか」(単回答)という質問では、「医師以外のキャリアは考えたことがない」(376名)が1番多く、ついで「キャリアは作らず悠々自適の生活を過ごす」(131名)、「趣味を仕事にする転職」(51名)の順番だった。とくに60代以上の会員医師では、「キャリアは作らず悠々自適の生活を過ごす」(59名)の選択も多かったことから、医師の引退も考えている会員も多いことがわかった。自由回答として「キャリア形成で参考にしている動画サイトや書籍を教えてください」と聞いたところ、20・30代の会員医師と同じ傾向の記載のほか、医療系のウェブサイトでは各専門学会のサイト、一般のウェブサイトでは金融系のサイトを挙げる会員医師が多かった。中にはYouTubeで番組を持っているYouTuber会員もいた。

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第25回 新型コロナ治療薬の治験結果が続々、選択の軸となる意外な条件とは

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の話ばかりが続いて恐縮だが、この1週間で新型インフルエンザ治療薬のアビガン(一般名:ファビピラビル)、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体で抗リウマチ薬のアクテムラ(同:トシリズマブ)に関して、それぞれCOVID-19を対象とした企業治験(第III相試験)の結果が公表された。いずれも公表ベースではポジティブな結果である。主要評価項目を達成したアクテムラまず、9月18日にスイス・ロシュ社がアクテムラの第III相試験「EMPACTA」を公表した。試験の対象となったのは新型コロナウイルスへの感染が確認され、人工呼吸器管理を必要としない酸素飽和度(SpO2)94%未満の18歳以上の入院患者389例。試験デザインは無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験である。主要評価項目は28日目までの死亡または人工呼吸器の装着を必要とする患者の累積割合で、アクテムラ投与群が12.2%、プラセボ群が19.3%となった。ハザード比(HR)は0.56 (95%信頼区間[CI]:0.32~0.97、p=0.0348)となり、死亡・人工呼吸器装着に至るリスクはアクテムラ群で44%有意に低下した。ちなみに副次評価項目の一つである28日目までの死亡率は、アクテムラ群10.4%、プラセボ群8.6%(p= 0.5146)で有意差は認められず、そのほかの副次評価項目である28日目までの退院準備期間、臨床的改善に要した期間、臨床的悪化までの期間も有意差は認められていない。つまりアクテムラの投与では、少なくとも人工呼吸器の装着を避けられる可能性はあるということだ。なおアクテムラ投与群での有害事象は、便秘が5.6%、不安が5.2%、頭痛が3.2%などで従来のアクテムラ投与と比べて新たな有害事象は確認されていない。非重篤例で有意に症状改善したアビガンアビガンに関しても9月23日付で治験結果の一部が公表された。こちらの対象は非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者で、解析対象156例の無作為化単盲検プラセボ対照比較試験である。主要評価項目は発熱、SpO2、胸部画像といった症状の軽快かつウイルス陰性化までの期間で、公表された結果ではこの期間がアビガン投与群で11.9日、プラセボ投与群では14.7日となり、調整後HRは1.593 (95%CI:1.024~2.479、p=0.0136) となり、アビガン投与群で有意に症状を改善する可能性が示された。安全性については新たな有害事象は確認されていないと述べるにとどまっている。一方、アビガンに関しては過去に本連載でも触れた藤田医科大学での無症候・軽症者のCOVID-19に対する臨床研究では、ウイルス消失率で有意な差は認めていない。今後の各社対応あれこれちなみにロシュ側は今回のEMPACTA試験の結果を受けて米・FDAなどの規制当局と結果を共有するとし、富士フイルムは10月中に国内で承認申請するとしている。アクテムラの場合は、既に欧米でCOVID-19による重症肺炎患者を対象に実施した第III相試験「COVACTA」で主要評価項目とした臨床状態の改善、死亡率のいずれもプラセボと比較して有意差が認められなかったと発表している。その一方で、現在、COVID-19による重症肺炎患者を対象に、日本国内では承認を受けている抗ウイルス薬のベクルリー(同:レムデシビル)との併用療法をプラセボ対照で比較する無作為化二重盲検の第III相試験「REMDACTA」など複数の治験が進行中である。この点は、過去のがん領域でのアバスチン(同:ベバシズマブ)で見せた、途中でネガティブな結果が出ようとも、さまざまながん種で単剤から併用療法まで数多くの治験を行ってきたロシュらしい周到さがにじみ出ている。ここで今回の企業治験で示された結果を持って、アクテムラとアビガンが承認された場合を仮定して国内でどのような状況になるかを考えてみたい。その場合、使える治療薬は既存のベクルリー、ステロイド薬のデキサメタゾンに加えて4種類となる。少なくとも死亡率低下が認められているのはデキサメタゾンのみであることや、残る3種類では死亡率低下効果が示せていない点を考えると、重症肺炎例で選択肢となるのはデキサメタゾンのみとなる。また、3種類に関しては治験の対象患者群などから考えると、いずれも公表されている「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第3版」での重症度分類にある「中等症I呼吸不全なし」(93%<SpO2<96%)に適応となることが予想される。ただ、率直に言えば、3種類の治験結果は「どんぐりの背比べ」と言っても過言ではないだろう。では、臨床での使い分けはどのようになるだろうか?この場合、選択肢の軸となりうるものが個人的には2つ思い浮かぶ。1つは供給量である。3種類の中でもっとも供給量に不安があるのは、今回のCOVID-19パンデミックで初めて世に出たベクルリーである。これに加え製薬会社の地理的条件や製造労力を考えると、供給量はベクルリー<アクテムラ<アビガンとなる。もう1つは安全性である。製造が比較的容易とは言え、アビガンによる催奇形性や尿酸値上昇の副作用が指摘されている以上、妊娠・挙児を希望する若年の男女、高齢者を中心とする尿酸値が高めの患者には使いにくい。アクテムラはこれまでの症例蓄積などから肝炎ウイルスキャリアや心血管疾患のある人、ベクルリーは腎機能低下例には不向きである。こうしてみると、臨床現場としては使い分けがやや悩ましいのではないだろうか、と勝手に想像している。

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COVID-19へのアビガン第III相試験、有意な改善効果を確認/富士フイルム富山化学

 9月23日、富士フイルム富山化学は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象とした抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビル(商品名:アビガン)における第III相試験で主要評価項目を達成したと発表した。今後、詳細なデータ解析を進めるとともに、10月中にもファビピラビルの製造販売承認事項一部変更承認申請を行う予定だという。 今回の発表は、今年3月から行われていた第III相試験の解析結果を受けたもの。COVID-19患者を対象とした本試験は156例をファビピラビル群とプラセボ群に無作為に割り付け、主要評価項目としてCOVID-19の症状(体温、酸素飽和度、胸部画像)の軽快かつウイルスの陰性化までの時間を見た。主要評価項目の中央値はファビピラビル群11.9日、プラセボ群14.7日でファビピラビル群が有意に短かった(p=0.0136)。調整後のハザード比は1.593 (95%信頼区間:1.024~2.479) 、安全性上の新たな懸念も認められなかった。 7月に発表された暫定解析結果(参考記事)では、ファビピラビル群はウイルス消失傾向が高かったものの、有意差を示すには至っていなかった。

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オンライン学会のプレゼンビデオ作成【Dr. 中島の 新・徒然草】(342)

三百四十二の段 オンライン学会のプレゼンビデオ作成大阪では秋晴れの爽やかな日々が続いています。こういった過ごしやすい季節も1ヵ月ほどでしょうか?四季とは言うものの、近年は夏と冬がメインになったような気がします。さて、秋の学会シーズン。新型コロナの影響で、オンラインとかハイブリッドが主体になっています。現地で発表する場合でも、あらかじめ発表内容をアップロードしなくてはなりません。つまり、パワーポイントで作ったスライドに音声入力してビデオにするのです。いつもならスライドを作って学会場に持って行くだけです。あとは漫談調でしゃべって終わり。時に脱線し、時には余計なことまで言ってしまうのも一興。しかし、誰でも何度でも視聴できるオンライン学会ではそうはいきません。うっかり口を滑らせて炎上したら大変なことになります。なので原稿を用意して、スライドごとに慎重に音声入力。なんか、下手なアナウンサーみたいなビデオができてしまいました。私の周囲の先生方も色々苦労しており、次第にノウハウができつつあります。たとえば、音声つきスライド作成のソフトです。パワーポイントを使うのは当然で、2016年版より2019年版の方が遥かに楽だとか。動画入りで50分くらいのプレゼン作成の場合、前者では何かと不具合が出たそうです。それに比べて後者はストレスフリー。いや、1つだけストレスがありました。「スライドショーの記録」で音声入力の際に参照するノートの欄が小さすぎます。でも、そのほかはとくに不具合もなく、あっさり済んでしまいました。読み原稿を修正しつつ、何度も音声入力を繰り返してついに完成!これを「mp4 ファイル」に変換していざ学会ホームページにアップロード。と思いきや、COI(利益相反)スライドを入れ忘れたことに気付きます。「まあ、スライド1枚加えてビデオに変換するだけだから」と思っていたら甘かった!テンションの高いしゃべりの中に1枚だけフラットな調子の音声が入ってしまいました。木に竹を接ぐ、とはまさにこのこと。でも、この時点で疲労困憊していたので、そのままアップロードしました。読者の皆様も、プレゼンビデオ作成の際にはぜひお気をつけ下さい。発表ビデオをアップロードした後も、未知のことがいろいろ待ち受けています。オンラインでのディスカッションとか、現地でもう一度しゃべるとか。それぞれの試行錯誤の末に、次第に学会の新たな型ができていくのでしょう。私にとってはいい経験でした。コロナ時代の学会、これからどうなっていくやら。最後に1句スライドは 秋の夜長に 音入れる

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第25回 中川日医にはネック!?新政権のキーマンと3つの方針

菅 義偉内閣がスタートし、さっそく社会保障や新型コロナウイルス対策を見直す動きが出てきた。日本医師会(日医)会長選を巡る遺恨はいまだ根深く残り続けており、2022年度診療報酬改定にまで何らかの影響を及ぼしそうな上、菅氏が打ち上げた3つの方針は中川日医にとってネックになる様相だ。中川 俊男会長の障壁となっているのは、社会保障費を差配する麻生 太郎・副総理兼財務大臣の存在だ。菅首相が新政権において「極めて重要人物」と評した麻生氏は、福岡が同郷の横倉 義武・日医前会長(現・名誉会長)と昵懇で、横倉氏の引退を翻意させたと言われる。そんな背景もあり、日医会長選で横倉氏と競り合った中川氏に対し、麻生氏が良い感情を持っていないだろうことは容易に想像できる。実際に今月、第2次補正予算の予備費から支出が決まった新型コロナウイルス対策で、日医が要望していた新型コロナ患者を診療しない医療機関への支援策が見送られたのは、中川日医への当て付けと見られている。横倉氏が会長在任中、安倍 晋三前首相との長年の付き合いを活かし、診療報酬の本体部分ではプラス改定を認められてきた。一方、政権中枢へのパイプがほとんどない中川氏が日医会長に就いたことを奇貨として、医療費抑制を目指している財務省は、2022年度診療報酬改定で本体部分のマイナス改定を目指しさっそく動き始めている。菅氏が打ち上げた「縦割り打破」「デジタル庁新設」「不妊治療への保険適用」のうち、「縦割り打破」については、「行政の縦割り、既得権益、悪しき前例主義を打ち破って規制改革を進める」と述べている。つまり、これまで続いた「診療報酬本体部分のプラス改定」こそ、菅氏が考えるところの既得権益、前例主義に当たるのではないか。また、「デジタル庁新設」というキーワードから噂されていた、オンライン診療の恒久的な全面解禁も検討されることになった。新型コロナの感染拡大を受け、オンライン診療は今年4月から受診歴のない初診の患者も含めて時限的に全面解禁されていた。中川氏は今月17日の記者会見で「都道県単位の協議会で実績を評価することになっている。結果をしっかり検証してほしい」と牽制し、「医療のデジタル化には賛成だが、拙速に進めてはいけない」と主張。「不妊治療への保険適用」についても、「一気に保険適用ではなく、専門家による検証と審議会・検討会での十分な議論と合意形成をしながら進めてほしい」と慎重な姿勢を示した。これまでの強面のイメージから一転、守勢に立った印象が拭えなかった。中川派の病院長は「中川氏の年齢なら、日医会長職は3期までいける」と話すが、診療報酬本体がマイナス改定に転じれば、再選も難しいだろう。中川氏は、菅氏の地元・神奈川県の医師で有力な後援者でもある人物を通して、菅氏と会食したことがあるという。しかし、菅氏は社会保障に対しかねてから「無駄が多い」と見ており、会食をしたぐらいの関係性では、日医に融和的な対応をとるようには思えない。菅氏が厚労政策に奮起するほど、中川日医には向かい風となるあたり、残念ながら今回の政権交代はあまり相性が良くなさそうだ。

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COVID-19関連肺炎へのアクテムラ、第III相試験で主要評価項目達成/ロシュ

 ロシュ社(スイス)は9月18日、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体アクテムラ(一般名:トシリズマブ)について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連肺炎における有効性を評価する第III相EMPACTA試験で主要評価項目を達成したことを発表した。 EMPACTA試験は、新型コロナウイス(SARS-CoV-2)感染が確認され、SpO2<94%で、非侵襲的または侵襲的な機械的換気を必要としない、18歳以上の入院患者が対象。米国、南アフリカ、ケニア、ブラジル、メキシコ、ペルーから389例が登録された。 主要評価項目は、28日目までに死亡または機械的換気が必要となった患者の累積比率。副次評価項目は、28日目までの死亡率、退院または退院準備までの期間、臨床的成功期間(死亡、機械的換気、ICU入室、脱落のいずれか早く起こった事象までの期間)とされた。 今回発表された結果は以下の通り。・アクテムラと標準治療を受けた患者は、プラセボと標準治療を受けた患者と比較して、機械的換気または死亡に至るリスクが44%低下した(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.32~0.97、ログランク検定p=0.0348)。・28日目までに人工呼吸または死亡に至った患者の累積比率は、アクテムラ群で12.2%、プラセボ群で19.3%であった。・28日目までの退院または退院準備までの期間に有意差はなかった(中央値:アクテムラ6日 vs.プラセボ7.5日、HR:1.16、95%CI:0.90~1.48、ログランク検定p=0.2456)。・28日目までの臨床状態の改善までの期間に有意差はなかった(中央値:6日vs.7日、HR:1.15、95%CI:0.90~1.47、ログランク検定p=0.2597)。・28日目までの臨床的成功期間は、プラセボ群と比較してアクテムラ群で長かった(中央値:推定不可(NE)vs. NE、HR:0.55、95%CI:0.33~0.92、ログランク検定p=0.0217)。 ただし、他の主要な副次的評価項目が満たされていないため、この差は統計的に有意であるとはみなされない。・28日目までの死亡率に統計的有意差はみられなかった(10.4% vs. 8.6%、差:2.0%[95%CI:-5.2%~7.8%]、p=0.5146)。・28日目までの感染症発生率は10% vs. 11%、深刻な感染症発生率は5.0% vs. 6.3%であった。 アクテムラ群で多くみられた有害事象は、便秘(5.6%)、不安(5.2%)、頭痛(3.2%)であった。EMPACTA試験では、アクテムラの新しい安全性信号は確認されていない。 EMPACTA試験の結果は、今後査読付きジャーナルに掲載される予定。

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バリシチニブ、レムデシビルと併用でCOVID-19回復期間を有意に短縮/米・リリー

 米国のイーライリリー・アンド・カンパニーは9月14日、同社の成人関節リウマチ治療薬バリシチニブとレムデシビル(ギリアド・サイエンシズ、商品名:ベクルリー点滴静注液)の併用により、COVID-19の入院患者の回復期間が、レムデシビル単独と比べ中央値で約1日短縮されたと発表した。これは、米国・国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の主導で5月8日から始まったCOVID-19に対するアダプティブデザイン試験(ACTT-2試験)から得られた最初のデータとなる。バリシチニブとレムデシビルの併用療法の有効性および安全性を比較 ACTT-2試験は、COVID-19の入院患者1,000例超を組み入れ、バリシチニブ4mg 1日1回とレムデシビルの併用療法の有効性および安全性をレムデシビル単独療法と比較評価するもので、主要評価項目は回復までの期間短縮。本試験では、投与開始から29日時点で退院するのに十分な健康状態である(入院中でも酸素投与や継続した治療が不要、もしくは29日時点で退院している)ことを回復の定義とした。 その結果、バリシチニブとレムデシビル併用療法群ではレムデシビル単独療法群と比較して、回復までの期間の中央値が約1日短縮し、統計学的にも有意な差が認められた。また、投与開始から15日時点における転帰について、「完全な回復」から「死亡」までを8段階で評価するスケールで比較した副次的評価項目も達成した。 バリシチニブは、イーライリリーがインサイト社からライセンス供与され、「オルミエント」の商品名で販売するJAK1/2阻害剤で、中等度~高度疾患活動性の成人関節リウマチ治療薬として70ヵ国以上が承認、日本では「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」を適応症として承認されている。

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第24回 新型コロナワクチンの開発中断が他ワクチン推奨をも阻む?

世界が固唾を呑んで見守っている新型コロナウイス(SARS-CoV-2)に対するワクチン開発。その中で最も先行していると言われる英国・アストラゼネカ社とオックスフォード大学が共同開発中の「AZD1222」に関して副作用を疑われる症状を呈した患者が報告されたという不穏なニュースが飛び込んできてから1週間が経つ。各種報道によるとフェーズ3の参加者の1人で横断性脊髄炎(TM:transverse myelitis)を発症したことが報告されたという。正直、私個人は一般向けに正確に伝えることが非常に難しい問題だと感じている。まず、一般向けメディア各社の第一報を見てみよう。アストラゼネカのワクチン治験が中断 深刻な副反応疑い(朝日新聞)英製薬大手、新型コロナの臨床試験中断 副作用疑いの事例(産経新聞)被験者に神経障害か ワクチン治験中断 専門家「生命に関わる可能性」(毎日新聞)英アストラゼネカ、コロナワクチンの臨床試験を中断…参加者が原因不明の病気発症(読売新聞)今回のニュースに接した医療従事者の中には「とりあえず有害事象があったということで、そんなに騒ぐことじゃないんじゃない?」と思った人も少なくないはずだ。実は私もほぼ同じ感覚である。ところがまさにこの感覚が一般向けには伝えにくい点なのである。そもそも上記記事を見ればよく分かるが、今回の横断性脊髄炎に関する扱いに関して朝日は「副反応」、産経、毎日は「副作用」、読売は「安全性に関する問題」と表現している。たぶん医学的厳格さを重視すれば、産経、毎日のように「副作用」という表記をすることに違和感があるだろう。釈迦に説法だが、改めて整理すると、薬剤・ワクチンの臨床試験中に起こった好ましくない身体症状を「有害事象」と呼び、このうち薬剤・ワクチンとの因果関係が否定できないものが「副作用」と称されるが、ワクチンに関しては化学物質である薬剤と違い、その化学作用ではなく、ヒトの免疫機序に伴い有害な反応が起こることもあるため「副反応」と表記することになっている。一般市民にはとりあえずの「副作用」表記ところが、一般向けには「有害事象」と「副作用」「副反応」の違いを理解させるよう説明することはかなり困難な作業なのである。そもそもレガシー・メディアと呼ばれる新聞・テレビは1つのニュースに使える文字数・時間というリソースは限られている。「有害事象」と「副作用」「副反応」の違いのような、ややまどろっこしい説明をしている余裕がないのが現実だ。さらにいえば新聞・テレビと比べ、文字数・時間制約が少ないはずのネットメディアでもこのような丁寧な説明は難しい。現在、一般向けネットメディアでの記事1本当たりの文字量は3000~4000字くらいが相場だ。簡単に言えば、長いモノは読まれない、「丁寧な説明」はむしろ「回りくどい」と受け取られる可能性のほうが高いのである。だからメディアの多くは一番わかりやすい「副作用」という言葉に飛びついてしまう。ちなみにワクチン接種に伴う重篤な副反応の発現頻度については「〇万回接種当たり△人」という表現も一般向けにはやや分かりにくいことが多く、「それは〇万人当たり△人ですよね」と聞き返されることもしばしば。もっともこちらのほうは「ワクチンの場合、種類によっては1人で2回以上打つことで接種スケジュールが完了するものも少なくないので、回数で表すんです」と言えば分かってもらえることがほとんどである。しかも、ワクチンの場合、疾病に罹患している人への対応ではなく、あくまで健康な人が対象になる。そしてここで期待される効果は予防という証明がしにくいもので、なおかつ多くは注射という侵襲を伴うため、余計のこと副反応については敏感になりやすい。ワクチンと言えば、反ワクチン勢力が湧いて出てくるのはこうした特殊性ゆえである。つまるところ、ワクチンに関する情報発信というのは、ベースに一定の反対勢力を抱え、そこで使われる用語が込み入っているという二重苦を抱えている極めて不利な分野である。実際、Twitterで「アストラゼネカ」のキーワード検索で表示される「話題のツイート」などを見ると、この報道を機にワクチンに関するネガティブな情報の拡散が進んでいることをうかがわせる。副反応の横断性脊髄炎にビビるべき?とはいえ、とりあえず有害事象だとしても今回の横断性脊髄炎はやや気になるのも現実である。横断性脊髄炎は脊髄のある場所で横方向に炎症を起こす神経障害。主な症状は背部痛、足のしびれなどの感覚異常などで、そこから急速に下半身の麻痺や排せつ障害などに発展することもある。原因はいまだ不明だが、ウイルス感染症などに伴い発症するともいわれる自己免疫性疾患である。従来から既存のワクチンでも起こる副反応として知られているが、たとえばアメリカでの4価HPVワクチンでの発現頻度は10万接種当たり0.04であり、極めてまれな副反応である。一応、イギリスではいったん中断された臨床試験は再開されたようだが、日米ではまだ慎重に様子を見ている状況である。その意味では今回のAZD1222での報告が単なる有害事象の範疇なのか、それとも一歩進んで副反応と判定されるかは非常に気になるところではある。もし、副反応と判定されれば、まだ数万人程度の中での発生ということでかなり頻度としては高いという判断も成り立つ。そしてこれはアストラゼネカ社にもオックスフォード大学にも罪はないのだが、もしワクチン開発で先頭を走る今回のAZD1222の臨床試験が失敗に終わると、それは単なる現在の閉そく感を打破する希望の光を失うという意味を超えて、今後私たちは非常に複雑で入り組んだ問題を抱えることになる。それはワクチン全体への不信感とそれに伴う既存の有用なワクチンの接種勧奨が困難を増すという事態である。

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唾液を用いたCOVID-19の検査の注意点/4学会合同ワーキンググループ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査では、鼻咽頭などからのぬぐい液からのPCR検査、抗原検査が行われているが、検体採取者に感染のリスクを伴うこと、個人防護具やスワブを消費することなど、感染対策においてのデメリットが指摘されてきた。 本年6月に唾液検体を保険適用とする厚生労働省の通知がなされ、また、7月にはPCR検査および抗原定量検査について、唾液検体を用いた検査の対象を無症状者(空港検疫の対象者、濃厚接触者など)にも拡大する方針を示したことにより唾液による新型コロナウイルスの検査は今後、増えるものと予想されている。 こうした現況に鑑み、新型コロナウイルス検査における4学会(日本臨床検査医学会/日本臨床微生物学会/日本感染症学会/日本臨床衛生検査技師会)合同ワーキンググループは、9月8日に「唾液を用いたPCRや抗原検査における検体採取や検査の注意点」を策定し、公表した。PCRや抗原検査での唾液採取の注意点 唾液を用いたPCRや抗原検査は被検者自身が採取するため、方法を正しく理解してもらう必要がある。消化酵素により、感度が低下することが指摘されており、飲食前に採取することが望ましい。ウイルスの物理的除去を避けるため、採取前に歯磨きやうがい、飲食を行わないように指導する。 どうしても避けられない場合は目安として最低10分、可能であれば30分ほど空ける。 検体容器(滅菌スクリュースピッツ)に唾液を直接たらすように自然に出す。十分な検体量(1~2mL程度)が取れるまで複数回繰り返す。 被検者の採取の場合には容器外壁を汚染する可能性があるので、採取容器は、可能であれば被検者自身が酒精綿で清拭する。核酸検査の際は、検体の粘性が強い場合は、溶解液を添加し遠心分離後、上清を用いて核酸を抽出する。ただちに検査を実施するか外部の検査機関に提出する。すみやかに検査が実施できない場合は冷蔵庫(4℃)で保管し、なるべく早く提出する。48時間以内に検査を開始する。簡易キットの抗原検査には唾液検体が使用できない 新型コロナウイルス感染症発症9日目以内の有症状者であれば、PCR(LAMP法含む)検査などの核酸検査と抗原定量検査は、唾液を用いることができる。簡易キットの抗原検査には唾液検体が使用できないことに注意。濃厚接触者のスクリーニングなど、偽陰性を減らすことが優先される場合には、核酸検査を行うことが推奨される。唾液を用いたPCRや抗原検査の解釈上の注意点 唾液を用いたPCRや抗原検査で陰性となった場合は、「検体に核酸検査あるいは抗原定量検査で検出できるコピー数のSARS-CoV-2が含まれていなかった」ことを意味する。そのため、検査で陰性であればSARS-CoV-2感染を否定できるわけではなく、コピー数が少ないと考えられる感染初期の可能性もある。無症状者では比較的ウイルス量が少ないと想定されることから、唾液と鼻咽頭検体では、核酸検査、抗原定量検査それぞれに結果の乖離が出る可能性もある。疑ったにもかかわらず抗原定量検査が陰性の場合には、必要に応じて唾液を用いた核酸検査、あるいは鼻咽頭による検査も考慮にいれる。

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