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新型コロナ、マスク着用率95%で米国死者数は3分の1に?

 米国では、2020年2月初旬に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による初の死亡者が記録されて以来、9月21日までの累計死者数は19万9,213人と報告されている。そんななか、米国ではマスクの着用について今でも論争の的となっており、米国居住者で“常に”公共の場でマスクを着用しているのはわずか49%である。州レベルで見ると、バージニア州、フロリダ州、カリフォルニア州での着用率は60%超の状況である。このように人口全体でのマスク着用率95%の達成および維持は高い閾値のように見えるが、ニューヨーク州のように達成している地域もある。 今回、社会的距離の確保やマスク着用などさまざまな生活規制がどのような効果を生み出すのかを検証するため、米国・IHME* COVID-19 Forecasting Teamの研究員らが独自のCOVID-19死亡数予測モデルを作成した。その結果、米国全土で2021年2月28日までにCOVID-19による累積死亡者数は51万1,373人(46万9,578~57万8,347)にのぼると予測された。*:IHME=Institute for Health Metrics and Evaluation 一方で、マスクの着用が普遍的となれば、2020年9月22日~2021年2月末までの間に12万9,574(8万5,284~17万0,867)の命を救うことができると研究者らは明らかにした。仮にマスク着用率を85%とした場合は、着用率95%よりは少なくなるものの、9万5,814人(6万731~13万3,077)の命を救うことができることから、公共の場でのマスク着用率95%、つまりユニバーサルマスクの達成が多数の州での流行復活の最悪な状況の打開策になることが示された。Nature Medicine誌オンライン版10月23日号掲載の報告。 まず、予測モデルを構築するために研究者らは3つの境界シナリオを確定。1つ目は州が社会的距離の規制を緩和し、人と人との接触の数が増加した場合の結果を予測した。2つ目は、州が再び社会・経済活動を人口100万人あたり8人の死亡率、つまり90パーセンタイルの閾値でロックダウンすると仮定して、パンデミックの進展を予測した。ここでは州が過去に社会的距離の規制を実施したときに観測された分布を分析し、社会的距離の規制が6週間で緩和することを前提とした。さらに、マスクの有効性に関する新たなデータが利用可能になったことから、3つ目にユニバーサルマスク実施時の予測を加えた。ここでの“ユニバーサル”を公共の場でのマスク着用者95%と定義したのは、これまでのCOVID-19パンデミック時の世界(とくにシンガポール)でのマスク着用の報道に基づいている。  このなかで、州が社会的距離の緩和を行ったという予測モデルでは、米国全体の累積死亡者数は2020年9月22日~2021年2月28日までに105万3,206人(75万9,693~145万2,397)に達する可能性があることも明らかにした。その死亡者の約3分の1はカリフォルニア州で14万6,501人(8万4,828~22万1,194)、フロリダ州で6万6,943(4万0,826~9万6,282)、ペンシルベニア州で4万6,943(4万826~9万6,282)と3州で発生することが見込まれていた。 研究者らはユニバーサルマスクや社会的距離の維持を達成すれば、多数の州で経済への損害を最小限に抑えながら多くの命を救える可能性があるとしている。

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第34回 「静かなマスク会食」前に正しいマスクの着脱法を身に付けよ

第3波とも言われる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者増加で、Go Toトラベルの札幌市、大阪市の除外、東京都では11月28日から3週間の酒類を提供する飲食店の営業時間短縮が決定した。今の局面を考えればやむなしというところだが、これに関連して最近時々報じられる、あるキーワードに強烈な違和感を覚えている。そのキーワードとは「マスク会食」である。提唱者は神奈川県知事の黒岩 祐治氏らしいが、菅 義偉首相もこれに便乗(?)して「静かなマスク会食」を呼びかけ、国が率先して宣伝までしている。そもそも今訴えるべきは、家族やごく親しい少人数の友人など、有体に言えば、万が一互いに感染して死の危険にさらされることがあっても恨みっこなしといえる関係がある者同士での最低限の会食以外は控えて欲しいということではないのか? もっとも好意的に解釈するならば、年末年始にかけて飲食機会の増加が避けられないことを踏まえた苦肉の策なのかもしれない。しかし、かなり実効性に乏しいのは多くの人の目から見て明らかだろう。食事中に会話をする時だけマスクをして、食べる時は外してなどという面倒なことを誰がするだろうか? 多少気を付けたとしても、飲酒で気分が高揚すれば、マスクはそっちのけの飛沫排出しまくりの会話になるのは目に見えている。それでも流行り言葉を使って「『静かなマスク会食』こそニューノーマルだ」としたり顔で言う御仁もいるかもしれない。だが、COVID-19パンデミック収束時、それまでニューノーマルと呼ばれた行動の中で真っ先にすたれるものは何か考えてみるといい。私ならば「マスク着用」を挙げる。同じような答えをする人は多いのではないだろうか? その意味でマスク着用はニューノーマルというより「テンポラリーノーマル」なものと言える。そのうえで今現在の市中でのマスク使用実態を思い起こしてみよう。屋外で誰とも会話しないと考えられる局面ですらマスクを着用している人だらけ。ちょっとコンビニで買い物をするだけの人が店内で会話をするのはせいぜいレジ前ぐらいで、レジカウンター前にはシールドが設置され、店員、客ともに飛沫を吸い込む危険性はほどんどない。だが、その局面でも客も店員も多くはマスクをしている。スポーツジムで壁に向かって設置され、左右に仕切りがあるトレッドミル(ランニングマシン)で走るならば、多少呼吸が荒くなっても他人の飛沫を吸い込む可能性はかなり低いはずだが、ジム側はマスク着用を義務づけている。極端な言い方をすれば限りなく3密に近い電車内でも、会話をせずに咳エチケットを徹底するならマスクは着用しなくとも限りなく感染リスクは低いはずだ。店舗の入口の客に対する呼びかけポスターに「咳エチケットを守りましょう」と「マスクの着用をお願いします」の両方が記載されているものを時々見かけるが、そもそも「咳エチケット」はマスクを着用していない人が突発的な咳やくしゃみの飛沫を他人に吸い込ませないための対策であり、細かいことを言えばこの2つの対策を並立で表記するのは矛盾しているといえる。さらに「静かなマスク会食」を訴えている現内閣閣僚の記者会見開始時のマスク着脱の様子をよく見てみよう。マスクの紐の部分ではなく、マスク正面外側を素手でつまんで外しているのを見かけることは少なくない。しかし、この着脱方法は接触感染予防対策から考えれば完全NGだ。何が言いたいかというと、マスクに関してこれだけメリハリのない使用実態が蔓延している中で、「静かなマスク会食」なるものは極めてハードルが高い行動様式なのである。掛け算の九九すら満足に覚えていない人に微分・積分を計算させるがごときである。医療従事者でも「不適切なマスク着用」や「過剰なマスク着用」に対する懸念を発信している人は一部にはいる。そしてその他の医療従事者や官公庁関係者でも、こうした発信には内心頷いている人も少なくないだろう。だが、こと過剰なマスク着用、つまりマスクをつけなくても良い局面に関しては情報発信量に変化があったという印象はない。その理由は単純に「感染リスクが低い局面が分かっていても、リスクはゼロではないから、断言的な発言で揚げ足を取られたくない」あるいは「一般人にとって感染対策やった感が満載のマスク着用で細かいことを言っても耳を貸してもらえない」と思うからではないだろうか。その気持ちは分からないわけではない。しかし、無症候感染者が一定割合で存在し、かつ症状発現前に感染性のピークがあるCOVID-19に関して、完全な防御は困難である。また、昨今、開発中のワクチンに関しては肯定的なデータも報告も多いが、これとて効果持続期間などを考えたらさらに未知数である。いずれにせよこのウイルスの特性を考慮して限りなくゼロリスクを求めるとするならば、私たちはこの先、生涯にわたってマスク着用を続けなければならなくなる。そんなこんなを考えると、この「静かなマスク会食」というある種、馬鹿馬鹿しい提唱がなされている今こそ、どのような局面ではマスクを着用しなくていいのかという情報発信量も高めていくことが必要なのではないか、メリハリのあるマスクの使用方法を推進することこそが真のニューノーマルなのではないかと個人的には感じている。

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ほとんどの医療機関が上限額の補助対象、厚労省支援金の活用を/日本医師会

 厚生労働省の「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」については、補助の対象となる経費が感染防止対策に関係するものに限定されるのではないかとの疑義があった。しかし感染防止対策の取り組みを行う医療機関であれば、同省が公表している例示に加え、日常診療業務に必要な幅広い費用が対象となりうることが、明確となった。11月25日の日本医師会定例記者会見で発表された。消耗品のほか、光熱費や保険料なども補助対象となりうる 「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」1)は、新型コロナウイルス感染症の院内等での感染拡大を防ぐための取り組み(下記に例示)を行う医療機関(病院、診療所、薬局、訪問看護ステーション、助産所)を対象として、感染拡大防止対策や診療体制確保などに要する費用を補助する。感染拡大を防ぐための取り組みの例(例示であり、これに限られるものではない)・共通して触れる部分の定期的・頻回な清拭・消毒などの環境整備・予約診療の拡大、整理券の配布等を行い、患者に適切な受診の仕方を周知・ 発熱等の症状を有する新型コロナ疑いの患者とその他の患者が混在しないよう、動線の確保やレイアウト変更、診療順の工夫など・ 電話等情報通信機器を用いた診療体制等の確保・ 感染防止のための個人防護具等の確保・ 医療従事者の感染拡大防止対策(研修、健康管理等) しかしこれまで、その対象となる経費が感染防止対策に関係するものに限定されるのではないかとの疑義があった。今回、日本医師会では同省への働きかけを行い、公表されている例示に加え、以下のような経費も対象となりうることが明確となった2)。同事業の補助対象となりうる経費の例:需用費・日常業務に要する消耗品費(固定資産に計上しないもの)・日常診療に要する材料費(衛生材料、消毒費など) ※直接診療報酬等を請求できるものは除外・喚気のための軽微な改修(修繕費)・水道光熱費、燃料費役務費・電話料、インターネット接続等の通信費・医療施設・設備に係る火災保険、地震保険、不動産保険の保険料・休業補償保険の保険料・受付事務や清掃の人材派遣料で従前からの契約に係るもの委託料・受付事務や清掃の外部委託費で従前からの契約に係るもの使用料および賃借料・既存の診療スペースに係る家賃・既存の医療機器・事務機器のリース料 日常診療業務に必要な幅広い費用が対象となることから、感染防止対策を行うほとんどすべての保険医療機関で、上限額(無床診療所100万円、有床診療所200万円、病院200万円+5万円×病床数)の補助を受けられるものと考えられるという。登壇した松本 吉郎常任理事は、「真水に近い形で医療現場の支援とすることができると明確になった」とし、改めて同事業の有効活用を呼び掛けた。日医独自の休業補償制度を緊急創設、掛け金には支援事業を活用可能 医療従事者が新型コロナウイルスに感染した場合の休業補償については、国による補償制度3)が11月9日よりすでに募集を開始している。今回、この制度に加え、日本医師会として独自の補償制度4)が創設され、今村 聡副会長がその概要を解説した。掛け金は上述の厚労省補助金の対象となり、実質負担なしで加入することも可能となる。<新型コロナウイルス感染症対応『日本医師会休業補償制度』>支払い要件(3要件すべて満たす必要あり):1)日本医師会会員が開設または管理する医療機関に勤務する医療従事者が、新型コロナウイルスに感染もしくは濃厚接触すること2)医療従事者の新型コロナウイルス感染に伴い、当該医療機関で外部業者による消毒が行われること(消毒料金の多寡は不問)3)医療従事者の新型コロナウイルスの感染および消毒の実施に伴い、休診日を含む連続7日(7営業日ではない)以上閉院もしくは外来を全面閉鎖すること補償金:・100万円(保険期間中に1回のみ)掛け金(1年間):・1施設あたり48,000円加入方法:・日本医師会が開設する申込専用WEBページにアクセスして申込手続を実施 ※申込専用WEBページは12月早々に開設予定・その後、掛金を日本医師会が指定する口座に振込 ※請求書および加入者証は、申込手続き後に登録メールアドレスへ送信される・加入申込みは12月より募集を開始し、1月1日保険始期とする。毎月1日付で中途加入可能(中途加入掛金は月割計算)

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新型コロナ流行時、新生児集中治療が減少/日本の大規模診療データ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時、わが国の新生児集中治療の入室日数および早産の件数が減少傾向にあったことがわかった。国立成育医療研究センターの前田 裕斗氏らの共同研究チームが、メディカル・データ・ビジョンの保有する大規模診療データベースを用いて分析した結果を報告した。Archives of disease in childhood-Fetal and neonatal edition誌オンライン版2020年11月23日号に掲載された。 当初、COVID-19流行により妊婦の心身ストレスが増加し、周産期疾病や新生児集中治療の件数が増えると懸念されていた。しかし、海外ではむしろ極低出生体重児(出生体重 1,500g未満)が減少しているとの報告もあり、日本でも同様の結果を示すかどうか、全国186のDPC病院を対象に分析した。 2020年の第2~9週(1月6日に始まる週から、政府がCOVID-19への基本方針を策定した2月25日から始まる週まで)と2020年の第10~17週(3月2日に始まる週から、政府が緊急事態宣言を全都道府県に拡大した4月16日を含む4月13日に始まる週まで)のNICU(新生児特定集中治療室)、GCU(回復治療室)の各入室日数、および早産(妊娠34~37週および34週以前)を年・月のトレンドを調整し比較することで、 COVID-19流行第1波期間中の変化を分析した。 その結果、NICU入室日数は2020年第2~9週目から2020年第10~17週目で24%減少(95%CI:11~35%)、GCU入室日数は29%減少(同:25~34%)した。病棟の閉鎖や利用控えなども理由として考えられるが、妊娠34週未満の早産は29%(同:0~50%)、34~37週の早産は15%(同:2~26%)減少しており、少なくとも新生児集中治療を要するような新生児の数が減ったことも一因として示唆される。 責任著者である東京大学の宮脇 敦士氏は、「今後、なぜこのような減少が見られたのか、さらなる研究が期待される」と述べている。

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COVID-19の血栓症発生率、他のウイルス性肺炎の3倍

 血栓症は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の際立った特徴だが、COVID-19以外のウイルス性呼吸器疾患による血栓症の発生率は不明である。今回、米国・ニューヨーク大学のNathaniel R. Smilowitz氏らが、米国でCOVID-19以外の急性ウイルス性呼吸器疾患で入院した患者における血栓症の発生率を調べた結果、2020年にニューヨークにおいてCOVID-19で入院した3,334例での血栓症発生率より有意に低かった。American Heart Journal誌オンライン版2020年11月9日号に掲載。 本調査の対象は、2002~14年にCOVID-19以外のウイルス性呼吸器疾患で入院した18歳以上の成人で、主要アウトカムは、ICD-9による心筋梗塞(MI)、急性虚血性脳卒中、静脈血栓塞栓症(VTE)などの静脈および動脈血栓イベントの複合とした。 主な結果は以下のとおり。・2002~14年にウイルス性呼吸器疾患で入院した95万4,521例(平均年齢62.3歳、女性57.1%)のうち、動脈または静脈血栓症の発生率は5.0%であった。・各血栓イベントの発生率は、急性MIが2.8%、VTEが1.6%、虚血性脳卒中が0.7%、その他の全身性塞栓症が0.1%であった。・血栓症を合併した患者は合併していない患者より院内死亡率が高かった(14.9% vs.3.3%、p<0.001)。・血栓症を合併した患者の割合は、2020年のCOVID-19患者(年齢中央値64歳、女性39.6%)に比べ、2002~14年のウイルス性呼吸器疾患の患者のほうが有意に低かった(5.0% vs.16.0%、p<0.001)。

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日本におけるCOVID-19発生時の医療従事者のメンタルヘルス

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界中に蔓延している。日本赤十字社医療センターの粟野 暢康氏らは、COVID-19パンデミック中の日本における医療従事者の不安症、うつ病、レジリエンス、その他の精神症状について評価を行った。Internal Medicine誌2020年号の報告。うつ病を発症した医療従事者は27.9% 2020年4月22日~5月15日に日本赤十字社医療センターの医療従事者を対象にメンタルヘルスの調査を実施した。不安症、うつ病、レジリエンスの評価には、それぞれ日本語版の不安尺度GAD-7、うつ病自己評価尺度CES-D、レジリエンス測定尺度CD-RISC-10を用いた。さらに、以下の3要素化からなる独自のアンケートを追加した。(1)感染に対する不安や恐れ(2)隔離および不当な扱い(3)職場でのモチベーションと逃避行動 COVID-19パンデミック中の日本における医療従事者のメンタルヘルスを評価した主な結果は以下のとおり。・調査対象は848人。その内訳は、医師104人、看護師461人、その他医療スタッフ184人、事務職員99人であった。・全調査対象者のうち、中等度~重度の不安症を発症した医療従事者は85人(10.0%)、うつ病を発症した医療従事者は237人(27.9%)であった。・感染に対する不安や恐れ、隔離および不当な扱い、職場でのモチベーションと逃避行動に関する問題は、非うつ病者よりもうつ病者でより高かった(CES-D合計スコア16以上)。・医療従事者のうつ病リスク因子は、看護師、GAD-7合計スコアの高さであった。・年配およびレジリエンスの高い医療従事者は、うつ病の発症リスクが低かった。 著者らは「COVID-19の流行により、多くの医療従事者が精神症状に苦しんでいた。医療従事者の健康を守るためにも、心理的支援と介入が求められる」としている。

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COVID-19へのヒドロキシクロロキン投与、効果を認めず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による呼吸器症状を伴う入院患者において、ヒドロキシクロロキンを用いた治療はプラセボと比較して、14日時点の臨床状態を有意に改善しなかった。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのWesley H. Self氏らが、米国内34病院で行った多施設共同プラセボ対照無作為化盲検試験の結果を報告した。ヒドロキシクロロキンはCOVID-19治療に効果的なのか、そのデータが求められている中で示された今回の結果について著者は、「COVID-19入院成人患者の治療について、ヒドロキシクロロキンの使用を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2020年11月9日号掲載の報告。新型コロナへのヒドロキシクロロキンの有効性を14日時点で評価 研究グループは、米国内34ヵ所の医療機関で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による呼吸器症状が確認された成人入院患者を対象に試験を行い、ヒドロキシクロロキンの有効性を検証した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはヒドロキシクロロキン400mgを初日は1日2回、その後4日間は200mgを1日2回、それぞれ投与した。もう一方にはプラセボを投与した。 計画では被験者数を新型コロナ患者510例とすること、ヒドロキシクロロキンとプラセボの各群102例の登録後に中間解析の実施が予定されたが、4回目の中間解析でヒドロキシクロロキンの無益性が確認され、被験者数479例の時点で試験は中止となった。 主要アウトカムは、7段階の臨床的重症度を分類する順序尺度(1[死亡]~7[退院し通常の活動が可能])による14日時点での評価だった。評価については、多変量比例オッズモデルで解析し、補正後オッズ比(aOR)を算出して1.0超の場合に、ヒドロキシクロロキンはプラセボよりもアウトカムが良好であると定義した。副次アウトカムは、28日死亡率など12項目について評価した。ヒドロキシクロロキン群は14日時点の臨床状態、28日死亡率も改善せず 被験者登録は2020年4月2日~6月19日に行われ、最終アウトカムの評価は2020年7月17日に行われた。 被験者479例(ヒドロキシクロロキン群242例、プラセボ群237例)の平均年齢は57歳、女性は44.3%、ヒスパニック/中南米系37.2%、黒人23.4%であり、また集中治療室での治療を要したのは20.1%で、46.8%が陽圧なしの補助酸素投与を受け、11.5%が非侵襲的換気または高流量鼻カニュラ酸素療法を、6.7%が侵襲的換気または体外式膜型人工肺(ECMO)による治療を受けた。 433例(90.4%)が14日時点の主要アウトカム評価を完了した(残りは評価前に[退院]のカテゴリーに帰属)。無作為化前に症状を呈していた期間の中央値は5日(四分位範囲[IQR]:3~7)だった。 14日時点の評価スコアに基づく臨床状態は、ヒドロキシクロロキン群とプラセボ群で有意な差はみられなかった。スコア中央値(IQR)は両群ともに6(4~7)で、aORは1.02(95%信頼区間[CI]:0.73~1.42)だった。 副次アウトカム12項目についても、両群で有意差はなかった。無作為化後28日時点で報告された死亡は、ヒドロキシクロロキン群25/241例(10.4%)、プラセボ群25/236例(10.6%)だった(絶対差:-0.2%[95%CI:-5.7~5.3]、aOR:1.07[95%CI:0.54~2.09])。

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第34回 コロナ禍の意外な恩恵? インフル・喘息大幅減、受診抑制も体調変化なし…

コロナ禍が他疾患の発症抑制に働くこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。大方の人の予想通り、冬の到来を前に新型コロナウイルス感染症の感染者が各地で急増しています。というわけで、この3連休、私は「Go Toトラベル」「Go Toイート」にも乗らず、自宅でのんびりスポーツ観戦をして過ごしました。大相撲の千秋楽の貴景勝と照ノ富士の本割相撲と優勝決定戦を堪能、小倉で行われた競輪祭における郡司 浩平選手(神奈川)のG1初制覇に感動しました。今ひとつだったのは日本シリーズの第1、2戦です。巨人の情けないほどの弱さは、今のセ・リーグ全体の弱さとも言えます。この問題については、また日を改めて。さて、今回は、コロナ禍における他疾患の動向や患者の受療行動の動向に関するニュースです。クラスター発生や医療機関のコロナ患者の受け入れ態勢が逼迫している、といった報道の陰で、コロナ禍がほかの疾患の発症抑制にも働いている、といった報告や報道が散見されるようになってきました。喘息による入院数が劇的に減少11月16日のNHKニュースは、「コロナ拡大以降 “ぜんそく入院患者 大幅減”マスク着用影響か」と題し、今年2月以降、喘息のため入院する患者が例年に比べて大幅に減ったとする調査結果を東京大学大学院医学系研究科の宮脇 敦士助教らのグループが発表した、と報じました。それによると、全国 272 ヵ所の急性期病院における入院診療データを分析した結果、新型コロナウイルス感染症の流行期間(2020年2月24日以降)は、前年までの同時期に比べて、喘息による入院数が劇的に減少(55%減)していた、とのことです。同グループは、新型コロナウイルス感染症の流行期間中の生活様式の変化により、喘息患者が増悪要因に曝される機会が減少し、喘息のコントロールが改善したためと考えられる、としてます。なお、肺がんや気胸など、新型コロナウイルスの影響を受けない呼吸器の病気では大きな変化は見られなかったそうです。同研究は、10月14日付で、米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)の公式機関誌Journal of Allergy and Clinical Immunologyのウェブサイトに掲載1)されています。インフルエンザ、流行期に入らず?季節性インフルエンザについても、その発症は例年より大幅に少ないとの報告が出ています。厚生労働省が11月20日に発表した、 11月9~15 日の1週間のインフルエンザの発生状況(全国およそ5,000ヵ所の定点医療機関から報告があった患者数)は前週から1人減り、わずか計23人でした。インフルエンザは、1医療機関当たりの1週間の患者数が全国で1人を超えると「全国的な流行期」入りとされます。しかし、この時点では0.005人とこの基準を大きく下回っています。まだまだ楽観視はできないものの、今シーズンはインフルエンザの大流行は来ないかもしれません。受診抑制の7割が「体調が悪くなったとは感じない」このように、マスク着用や3密回避といった人々の行動変容が、従来からあった疾患の様相を変える事例は、今後も多く出てくるかもしれません。日本医師会は11月5日に最新の診療所の経営状況を発表しました。その中で、とくに小児科と耳鼻咽喉科で入院外の総件数・点数が大きく落ち込んでおり(小児科で約3割、耳鼻咽喉科で約2割前後)、経営が深刻な状況にあるとの見解を示しています。しかし、小児科と耳鼻咽喉科はそもそも感染症やアレルギー性疾患の患者が多く、単にコロナ禍だけではなく、疾患そのものが減っていることも大きな要因であることも認識する必要があるでしょう。そんな折、11月5日、健康保険組合連合会(健保連)が興味深い調査結果を発表していました。「新型コロナウイルス感染が拡大していた今年4~5月に、持病があって通院を控えた人の7割が『体調が悪くなったとは感じない』と考えていることが、調査結果から明らかになった」というのです。健保連は大企業などがつくる健康保険組合の全国組織です。この調査は、全国の20~70代の男女4,623人を対象に今年9月、オンラインで実施されました。その結果、高血圧症や脂質異常症といった持病をもつ3,500人のうち、865人(24.7%)が通院の頻度を少なくしたり、取りやめたりして受診を抑制していました。そして、受診抑制した人の69.4%が「体調が悪くなったとは感じない」と回答。さらに、10.7%が「体調が少し悪くなったと感じる」、1.5%が「体調がとても悪くなったと感じる」と答えた一方で、「体調が回復した」とする人も7.3%いたとのことです。つまり、「受診控え」で体調悪化する人の増加が懸念されていたにもかかわらず、実際に体調悪化を感じたとの回答は1割に過ぎなかったのです。老人保健施設で元気になった高齢者「できるだけ医療機関を受診して欲しくない(医療費負担を減らしたい)」という思惑のある健保連の調査である、というバイアスはあるものの、これはとても面白い結果です。私は今から約30年前、老人保健施設が創設された頃のエピソードを思い出しました。ご存じのように、老人保健施設は薬剤費が包括化されており、薬を使えば使うほど施設側の持ち出しになる、という制度設計になっています。そのため、当初老人病院から老健施設に転所した高齢者の多くが、病院入院時よりも投与する薬を大幅に減らされました。結果、どうなったか…。認知症が改善したり、むしろ元気になったりする高齢者が続出したのです。今回のコロナ禍は、ひょっとしたら外来診療における過剰診療・過剰投薬を改めて浮き彫りにするかもしれません。コロナ禍における外来患者の受療動向や、診療内容、病態の経緯などについて、専門家による詳細な分析結果を早く知りたいところです。参考1)Abe K , et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2020 Oct 14.[Epub ahead of print]新型コロナ流行時に喘息入院が減少、生活様式の変化が奏功か

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孤独を感じる人のCOVID-19に対する予防行動とは?

 孤独感がCOVID-19予防行動の低下に関連していることが、早稲田大学のAndrew Stickley氏らの研究によって明らかとなった。Journal of Public Health誌オンライン版2020年9月3日号の報告。 孤独感と健康行動の悪化との関連性について数多くの報告があるが、孤独感とCOVID-19予防行動の関連性についてはほとんど研究されていない。 孤独感とCOVID-19予防行動の関連性について、2020年4月と5月に2,000人の日本人を対象にオンライン調査を実施した。孤独感は3項目の孤独尺度にて評価し、孤独感と予防行動の関連性については二変量線形回帰分析を、孤独感と予防行動13件(外出後/食事前の手洗い、マスク着用、うがい、咳やくしゃみ時のティッシュ使用、物に触れた後に顔に触ることを避ける、触れるものを頻繁に消毒する、外出/旅行のキャンセル、予定していたイベントのキャンセル、人込みを避けて自宅にいる、集会やパーティーへの参加を控える、病人/高齢者への接触を避ける、風邪の場合に家族以外への接触を避ける、2メートル以上の距離を保つ)それぞれとの関連性についてはロジスティック回帰分析を実施した。 孤独感の割合、孤独感とCOVID-19予防行動の関連性については以下のとおりである。・人口統計学的変数とメンタルヘルス変数を調整した線形回帰モデルでは、二分法と継続的な測定の両方で、孤独感にはCOVID-19予防行動への関与と負の関連があった。・さらにロジスティック回帰分析では、孤独感は、マスクの着用で0.77倍、手の消毒で0.80倍、屋外での社会的距離で0.75倍と、個別のCOVID-19予防行動の低下にも関連していた。 著者らは、「マスクの着用や手の消毒、社会的距離などの予防行動の低下に孤独感が関連することから、パンデミックにおいては孤独感の防止または改善が、新型コロナウイルスの蔓延と闘ううえでは必要である」と示唆している。

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乾癬患者における、COVID-19の重症化因子は?

 COVID-19への決定的な対策はいまだ見いだされていないが、入院・重症化リスクを捉えることで死亡を抑え込もうという世界的な努力が続いている。本稿では、乾癬患者のCOVID-19に関する国際レジストリ「PsoProtect」へ寄せられた25ヵ国からの臨床報告に基づき、英国・Guy's and St Thomas' NHS Foundation TrustのSatveer K. Mahil氏らが乾癬患者の入院・重症化リスクを解析。「高齢」「男性」「非白人種」「併存疾患」がリスク因子であることを明らかにした。また、乾癬患者は複数の疾患負荷と全身性の免疫抑制薬の使用によってCOVID-19の有害アウトカムのリスクが高まる可能性があるとされているが、これまでデータは限定的であった。今回、著者らは「生物学的製剤の使用者は、非使用者と比べて入院リスクが低かった」とも報告している。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌オンライン版2020年10月16日号掲載の報告。 研究グループは、乾癬患者におけるCOVID-19の臨床経過を明らかにし、入院と関連する因子を特定するため、国際レジストリ「PsoProtect」を通じて、COVID-19確認/疑いと臨床医が報告した乾癬患者を対象に、多重ロジスティック回帰法にて、臨床/人口統計学的特性と入院との関連を評価した。また、患者自身が報告する別のレジストリ「PsoProtectMe」のデータから、リスクの回避行動を明らかにした。 主な結果は以下のとおり。・評価は、臨床医からの報告症例である25ヵ国374例(確認例172例[46%]、疑い例202例[54%])の患者を対象に行われた。36%が英国、21%がイタリア、15%がスペインの患者で、年齢中央値は50歳、男性61%、白人種85%であった。喫煙歴なし54%、現在喫煙者は15%だった。・71%の患者が生物学的製剤による治療を受けていた。非生物学的製剤による治療を受けていた患者は18%、全身療法が行われていなかったのは10%だった。・COVID-19から完全に回復したのは348例(93%)であった。入院を要したのは77例(21%)、死亡は9例(2%)であった。・入院リスクの増大因子は、高齢(多変量補正後オッズ比[OR]:1.59/10歳、95%信頼区間[CI]:1.19~2.13)、男性(2.51、1.23~5.12)、非白人種(3.15、1.24~8.03)、慢性肺疾患の併存(3.87、1.52~9.83)であった。・入院率は、生物学的製剤使用患者よりも非使用患者で高率だった(OR:2.84、95%CI:1.31~6.18)。生物学的製剤のクラスの違いによる有意差はなかった。・患者報告のデータ(48ヵ国1,626例)から、生物学的製剤使用患者と比べて非使用患者はソーシャルディスタンスのレベルが低いことが示唆された(OR:0.68、95%CI:0.50~0.94)。

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AZ社の新型コロナワクチン有効率最大90%、貯蔵はより容易か/第II/III相試験中間解析

 アストラゼネカ社は、COVID-19に対するウイルスベクターワクチンAZD1222の第II/III相および第III相試験の中間分析の結果、最大90%の有効率が示されたことを11月23日に発表した。2つの異なる投与レジメンで有効性が示され、平均70%の有効率が示されている。条件付きまたは早期承認のためのデータを世界各国の規制当局に提出し、承認取得次第、2021年に最大30億回分のワクチンを製造できるよう準備を進めているという。 AZD1222は、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質の遺伝物質を含む、複製欠損および弱毒化されたチンパンジー由来の風邪アデノウイルスを用いて作製される。ワクチン接種後スパイクタンパク質が生成され、感染した場合に免疫系を刺激し、SARS-CoV-2ウイルスを攻撃する。 第II/III相COV002試験は英国の12,390人の参加者を対象に、第III相COV003試験はブラジルの10,300人の参加者を対象に実施されている。ともに参加者は18歳以上で健康あるいは医学的に安定した慢性疾患を有する患者。COV002では、半用量(〜2.5×1010ウイルス粒子)または全用量(〜5×1010ウイルス粒子)のAZD1222、対照群として髄膜炎菌ワクチンMenACWYを1回または2回筋肉内投与。COV003では、全用量のAZD1222またはMenACWYが2回投与される(対照群では1回目にMenACWY、2回目はプラセボとして生理食塩水を投与)。 中間分析では計131例のCOVID-19発症が確認された。今回発表された結果のうち、1回目に半用量を投与後、少なくとも1か月間隔で全用量を投与した2,741人では、90%の有効率を示した。少なくとも1か月間隔で全用量を2回投与した8,895人では、62%の有効率を示している。両投与レジメンの11,636人についての複合解析では、平均70%の有効率が示され、これらの結果はすべて統計的に有意であった(p≦0.0001)。 独立データモニタリング委員会は、2回投与を受けてから14日以上後に発生するCOVID-19からの保護を示す主要評価項目を満たしたと判断し、今回の結果が発表された。AZD1222に関連する重大な安全イベントは確認されておらず、AZD1222投与群ではCOVID-19による入院や重症例は報告されていない。 なお、AZD1222の臨床試験は、米国、日本、ロシア、南アフリカ、ケニア、ラテンアメリカでも実施されており、他のヨーロッパやアジアの国々でも試験が計画されている。また、同社はAZD1222の貯蔵について、標準的な家庭用または医療用冷蔵庫の温度である2~8℃(36~46°F)で少なくとも6ヵ月間保管、輸送、および取り扱いでき、既存の医療環境で投与可能としている。

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第35回 母乳保育は子にCOVID-19防御免疫を授けうる

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)後の出産女性の大半の母乳にはSARS-CoV-2への抗体反応が備わっており1)、それらの女性の母乳保育は子に抗ウイルス免疫を授けうると示唆されました。ニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学(Icahn School of Medicine at Mount Sinai)の免疫学者Rebecca Powell氏等はPCR検査でSARS-CoV-2が検出された8人と検査はされなかったけれども感染者との濃厚接触などがあって恐らく感染した7人の感染期間終了から数週間後の母乳を集めてSARS-CoV-2への抗体を調べました。その結果15人全員の母乳にSARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質に反応する抗体が認められました。また、15人中12人(80%)の母乳には細胞感染阻止(neutralization)に重要なSタンパク質抗原決定基・受容体結合領域(RBD)への結合抗体も認められました。目下のCOVID-19流行の最中(2月30日~4月3日)に41人の女性からCOVID-19経験の有無を問わず集めた母乳を解析した別の試験2)でもSタンパク質反応抗体がほとんどの女性から検出されています。それらの女性のSARS-CoV-2感染の有無の記録はなく、SARS-CoV-2に反応する抗体の出処は不明ですが、SARS-CoV-2以外のウイルスの貢献が大きいようです。Sタンパク質に反応するIgG抗体レベルは先立つ1年間に呼吸器ウイルス感染症を経た女性の方がそうでない女性に比べて高く、SARS-CoV-2へのIgAやIgM抗体の反応はSタンパク質に限ったものではなさそうでした。2018年に採取された母乳でもSARS-CoV-2タンパク質へのIgAやIgM抗体反応が認められ、目下のCOVID-19流行中に採取された母乳と差はなく、どうやらSARS-CoV-2以外のウイルスに接したことがSARS-CoV-2にも反応する抗体を生み出したようです。母乳中に分泌される抗体はSARS-CoV-2への抵抗力を含む幅広い免疫を授乳を介して子に授けうると研究チームの主力免疫学者Veronique Demers-Mathieu氏は言っています3)。この8月にJAMA誌オンライン版に掲載された試験でCOVID-19感染女性の母乳から生きているウイルスは検出されておらず4)、今回の結果も含めると、女性はCOVID-19流行のさなかにあっても少なくとも安心して母乳保育を続けることができそうです。もっと言うなら母乳保育は子にCOVID-19疾患の防御免疫を授ける役割も担うかもしれません。マウントサイナイ医科大学のPowell氏等は次の課題として母乳中の抗体がSARS-CoV-2の細胞感染を阻止しうるかどうかを調べます。また、母乳中のSARS-CoV-2反応抗体はCOVID-19疾患を予防する経口の抗体薬となりうる可能性を秘めており2)、Powell氏等のチームはCOVID-19を食い止める抗体を母乳から集める取り組みをバイオテック企業Lactigaと組んで進めています3)。参考1)Fox A, et al. iScience. 2020 Nov 20;23:101735.2)Demers-Mathieu V, et al. J Perinatol. 2020 Sep 1:1-10c3)Breastmilk Harbors Antibodies to SARS-CoV-2/TheScentist4)Chambers C, et al. JAMA. 2020 Oct 6;324:1347-1348.

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COVID-19の予防に対する意識が低い人とは?

 COVID-19に対する予防措置を講じても、約20%の人が適切な実施に対して消極的であることが、東京大学医科学研究所の武藤 香織氏らの研究によって明らかとなった。消極的な人の特徴として、男性、若年(30歳未満)、未婚、低所得世帯、飲酒または喫煙の習慣、外向性の高さが挙げられた。PLOS ONE誌2020年6月11日号の報告。 COVID-19に対して予防措置や自制の呼び掛けといった対策を講じ、協力を要請した状況下で、予防的行動がいつ、どのように変化したか調査した。クォータサンプリングに基づき、オンラインプラットフォームで実施された横断調査のミクロデータ(20~64歳、回答者数合計1万1,342人)を使用した。 全国調査の結果については以下のとおりである。・社会的距離の測定は、約85%が実践しており、女性、高年齢の割合が高かった。・頻繁な手洗いは全体の86%(女性の92%、40歳以上の87.9%)で実践されていた。・予防措置に影響を与えた要因に、2020年2月初旬に発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」での感染が影響していた。・適切な予防措置の実施に約20%が消極的であり、その特徴は、男性、若年(30歳未満)、未婚、低所得世帯、飲酒または喫煙の習慣、外向性の高さであった。 著者らは、「日本での感染拡大を防ぐためには、さまざまな手段を用いて行動の変化を促すことが不可欠である」としている。

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日本人のマスク率が高いワケ

 マスクを着用することで不安は解消されるが、リスク軽減の期待には影響しないことが、同志社大学の中谷内 一也氏らが行った日本人対象の研究によって明らかとなった。Frontiers in Psychology誌2020年8月4日号の報告。 COVID-19に対するマスクの着用は、着用者の感染を防ぐことではなく、ほかの人への感染を防ぐことでパンデミックの蔓延を抑える。日本ではパンデミックの初期段階からマスクを着用する習慣が広まり、マスクの供給不足を引き起こした。なぜ日本では他国と比較しても、COVID-19パンデミックでマスクを着用する人が多いのか、マスクを着用する6つの考えられる心理的理由を基に調査した。 全国調査の結果については以下のとおりである。・マスクを着用することで社会の規範に準拠し、不安が解消された。・リスク軽減の期待に、マスクの着用は影響しなかった。 著者らは、「COVID-19パンデミックと闘うためには、マスク着用の社会的動機を考慮して戦略を検討すべきである」と示唆している。

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Pfizer社の新型コロナワクチン有効率、最終解析で95%/第III相試験

 Pfizer社とBioNTech社は2020年11月18日、COVID-19に対するmRNAベースのワクチン候補であるBNT162b2の第III相試験の有効性の最終解析で、主要有効性評価項目をすべて達成したと発表した。本ワクチンの1回目の接種から28日以降のCOVID-19発症について、SARS-CoV-2感染歴のない参加者でワクチン有効率が95%(p<0.0001)を示し、さらにSARS-CoV-2感染歴を問わない場合でも同様であった。有効率は年齢、性別、人種、民族で一貫しており、65歳以上での有効率は94%を超えていた。COVID-19重症例は10例で、9例がプラセボ群、1例がBNT162b2群だった。両社は20日、米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可(EUA)を申請した。 本ワクチンの安全性については、第II/III相試験における18歳以上の8,000人以上の参加者のランダム化されたサブセットからなる最終解析から、非盲検の反応原性データをレビューした結果、忍容性が良好であることが示された。発現率が2%以上のGrade3の有害事象は、2回目の接種後における倦怠感(3.8%)と頭痛(2.0%)であった。 BNT162b2の第III相試験は2020年7月27日に開始され、現在までに4万3,661人が登録され、11月13日時点で41,135人が2回目の投与を受けている。本試験の有効性と安全性のデータ収集はさらに2年間継続する予定。 課題とされる輸送・保管時の温度管理について、Pfizer社とBioNTech社は、ドライアイスを用いて-70℃±10℃の温度を維持するための特別に設計された温度管理シッパーを開発しており、ドライアイスを補充することにより15日間の一時保管ユニットとして使用可能としている。

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米空母内の新型コロナ感染リスク、甲板上より船内で高い/NEJM

 米原子力空母セオドア・ルーズベルト(乗組員4,779人)において、2020年3月23日~5月18日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクが発生、U.S. Navy Bureau of Medicine and SurgeryのMatthew R. Kasper氏らがその調査結果をまとめた。SARS-CoV-2の感染は、狭苦しい閉鎖的な空間で無症状および症状発現前の感染者によって促進され、空母内で急速に拡大したという。SARS-CoV-2陽性と判定された乗組員の約半数は、無症状であった。NEJM誌オンライン版2020年11月11日号掲載の報告。COVID-19の1例目発生後、全乗組員にPCR検査を実施、10週間以上追跡 研究グループは、リアルタイム逆転写DNAポリメラーゼ連鎖反応(rRT-PCR)の検査結果を含めた、全乗組員の臨床および人口統計学的データを解析した。全乗組員は、検査結果や症状の有無にかかわらず、最低10週間の追跡調査を受けた。 乗組員は平均年齢27歳で若者が多く、男性が78.3%を占め、全般的に健康状態は良好で、米海軍の海上任務基準を満たしていた。 当初、3人の乗組員がCOVID-19を示唆する症状で医療部を受診し、rRT-PCR検査の結果、3人全員がSARS-CoV-2陽性と判定された(2020年3月23日)。その後、24時間以内に有症状者および濃厚接触者を特定、同艦が3月27日にグアム海軍基地に到着後、入院・隔離措置が取られた。SARS-CoV-2陽性者は26.6%、陽性判明時点で76.9%は無症状 乗組員全員にrRT-PCR検査が行われ、アウトブレイク期間中にSARS-CoV-2陽性が確認された乗組員は1,271人(26.6%)であった。このうち1,000人以上が最初の感染確認から5週以内に確認された。さらに、60人(1.3%)は、rRT-PCR検査は陰性であったが専門委員会によるCOVID-19の臨床基準を満たしており、感染が疑われた。 SARS-CoV-2陽性が確認された1,271人中、978人(76.9%)は、陽性と判明した時点では無症状で、699人(55.0%)は臨床経過中のいずれかの時点で症状が現れた。 COVID-19疑い/確定の1,331人中、23人(1.7%)が入院し、4人(0.3%)が集中治療を受け、1人が死亡した。後ろ向きに調べたところ、2020年3月11日という早い時期に症状が発現していた乗組員がいた。機関室や船内の狭い空間で任に就いていた乗組員のほうが、甲板上の乗組員よりも感染のリスクが高かった。

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人生の最終段階を見事に描いた作品が大賞受賞/医療マンガ大賞2020

 医療に関するコミュニケーションギャップの改善を目的に、患者や医療従事者それぞれによる“視点の違い”を描く「医療マンガ大賞」を、昨年度に続き横浜市が開催した。2回目となる今回は、新型コロナ対策に取り組む医療従事者の想いや視点の違いを描くテーマなど9つのエピソードを用意。結果、募集期間内に78本の作品応募(第1回は55本の応募)があり、その中から大賞1作品・入賞8作品が選出された。 第2回の大賞は、「人生の最終段階」をテーマに、患者視点の戸惑いや葛藤、家族への想いを優しいタッチで描いた、ちえむ氏の作品に決定した。11月20日(金)17時より、その他受賞作品を含め、医療マンガ大賞特設WEBサイト(https://iryo-manga.city.yokohama.lg.jp/)にて審査員からのコメントとともに全編ご覧いただける。なお、審査員からの要望により、事前に告知していた大賞・入賞に併せ、13作品を特別賞として同サイト内で紹介している。 ケアネットでは事前に、「心がふるえた 医療現場のエピソード」をテーマに、会員医師・薬剤師よりアンケートにて公募を行った。ケアネット部門のマンガ大賞は、原作のニュアンスを活かしつつ、絶妙なオリジナリティが加わり、テンポがスピーディ-でありながら、最後ほろりとする感じがステキな作品を描いたchiku氏が受賞した。 今後、採用エピソードと受賞漫画作品を掲載する予定。

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第33回 今一つ広がらないオンライン診療、課題はどこに?

コロナ禍で注目されるオンライン診療。関連サービスを提供している企業とオンライン診療を行っている医療機関が11月7日、都内で開かれた「現場からの医療改革推進協議会」シンポジウムのセッションで、現状と課題を報告した。そこから診療報酬点数、医療機関の体制づくりや医師の意識、システム上の課題などが明らかになった。最初に登壇した北村 直幸氏(霞クリニック院長)は、遠隔画像診断システム「LOOKREC」を今年4月から無償提供しているエムネス(広島市)の副会長を務める。北村氏は、開業医が新型コロナの疑いがある患者の診断に迷った時、LOOKRECがあれば遠隔地の専門医と画像を共有し相談できるが、医師の反応は乏しかったという。なぜだろうか。オンライン診療に関する調査によると、「常勤で自施設の遠隔読影・治療計画が不可能」との回答が約7割に上った。その理由として、「遠隔読影の体制を整えたいが、病院上層部や医療情報部の理解・協力が得られない」「遠隔診断環境構築を診療報酬で評価してほしい」「遠隔診断を導入すれば、平時でも24時間読影対応を要求されそうで踏み出せない」といった意見が挙げられた。それでも北村氏は、オンライン診療により、高度診断技術をへき地にも提供できたり、産休育休中の医師が在宅で読影できれば医師不足の緩和に繋がったりすると指摘。コロナ禍でリモートワークが一気に広がったように、遠隔画像診断もスタンダードになることを信じて模索を続けているという。次に登壇した多田 絵梨香氏は、オンライン診療サービス「クロン」を提供しているMICIN(東京都千代田区)のパブリックアフェアーズ部プロデューサー。クロンは、予約から問診・受診、決済、処方箋の受け取りまでスマホを使ってオンラインで完結できるサービスである。多田氏によれば、オンライン診療自体は2018年度の診療報酬改定で保険適用されたものの、利活用は進まなかったという。その原因として、(1)診療報酬上の対象疾患の制約(2)点数の低さ(3)厳格な実施要件(4)服薬指導の対面原則―を挙げた。しかし今年2月以降、順次、疾患制限が撤廃されたり、初診でのオンライン診療が可能になったりしたことで受診者は増加傾向にあり、これまで利用できなかった小児科、皮膚科、婦人科、精神科の受診者が増えているという。調査によれば、医師側は、患者の不要不急の外出を防ぎ、医師やスタッフの感染リスクを抑えられたことに新たな価値を見出し、患者側の9割超が診療に安心感を持ち、8割が対面診療以上に相談がしやすかったと回答したという。多田氏は「さらなる技術革新により、診療の質を高める部分にもアプローチが可能になる」と述べた。コロナ禍による引きこもりの影響で、中高生の妊娠が増えていると言われる中、医療法人社団鉄医会(東京都立川市)の久住 英二理事長は、首都圏に展開するナビタスクリニックで行っている緊急避妊薬(アフターピル)のオンライン診療について紹介した。まず、ベンダーごとに一長一短がある点を指摘。月額固定料金の有無、スマホやタブレットに特化/パソコンでも利用可能か、電子カルテとのパッケージなどによる差異を挙げた。また、クレジットカード決済がメインなので、未成年者や低所得者のオンライン診療はクレジットカード登録がハードルだと指摘。「たとえば、LINE Payで支払うことができれば、中高生でも利用できる」と述べた。今回のシンポジウムで上がった診療現場の声の多くは、山積するオンライン診療の課題の指摘だったが、解決できれば急拡大に転じるヒントでもある。国はこうした声に真摯に耳を傾け、体制整備を急いでほしい。コロナや来年の五輪開催など、先延ばしできる猶予はどれほどもない。

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COVID-19への初期診療の手引きVer.3.0公開、改訂点は?/日本プライマリ・ケア連合学会

 日本プライマリ・ケア連合学会(理事長:草場 鉄周)は、11月12日の同連合学会のホームページ上で冬季の診療に対応するために改訂した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療の手引き Ver.3.0」(ダウンロード可能)を公開した。新型コロナウイルス感染症でプライマリ・ケア従事者がすべきこと3点 今回の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療の手引き」の改訂では、最新の疫学データのほか、PCR検査を希望する患者への説明、各種検査法、医療従事者が暴露した場合の対応、参照資料の充実など変更されたほか、各章の図表などもアップデートされている。 手引きを作成した同学会の予防医療・健康増進委員会 感染症プロジェクトチームは、新型コロナウイルス感染症に関してプライマリ・ケア従事者がすべきこととして以下の3点と強調するとともに「医療体制の中で、プライマリ・ケアがゲートキーパーとしての役割を担う際に、プライマリ・ケアでの新型コロナウイルス感染症対策として、本手引きを適宜ご活用いただきたい」と期待を寄せている。〔プライマリ・ケア従事者がすべきこと〕・地域住民や患者に、感染拡大防止と健康被害を最小限にするための啓発を行う・発熱などの症状がある患者に、適切に診断検査治療を行う・私たち医療従事者自身が、新型コロナウイルスに感染しないよう努める また、同学会では、本手引きは重要な情報更新があり次第、できるだけ迅速な改訂を予定している。■主な改訂・追記点・新型コロナウイルスPCR検査を希望する患者への説明について「検査適応がないと判断した場合は患者に対して自宅療養の継続を適切に指導します」などプライマリ・ケアでの視点で記述。また、具体的な患者への説明内容を記載。・新型コロナウイルスの各種検査法について現在行われている「核酸増幅検査」「抗原定量検査」「抗原定性検査」の概要の説明のほか、検体として「鼻咽頭拭い液」「鼻腔拭い液」「唾液」の特徴と検体管理の注意点などの説明を記載。・医療従事者が新型コロナウイルスに曝露した可能性があるときについて適切な感染防護なしに患者を診察、看護もしくは介護した場合、または新型コロナウイルス感染症を疑う症状を自覚した場合は、就業を制限し自宅隔離および健康監視を開始。観察期間および就業制限中の検査についてはリスクや症状に応じて実施するとし、職場復帰の基準も感染が確定している場合(発症後8日以降経過または解熱後および症状消失後3日以上経過)と確定していない場合(一定の退院基準を満たす)に分けて示している。

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新型コロナ、どの国のワクチンを希望する?医師1,000人アンケート

 新型コロナワクチン接種の優先対象について、厚生労働省は11月9日の厚生科学審議会において、高齢者や基礎疾患がある人を優先的に接種する方針を固めた。今後はどのような基礎疾患を有する人を対象にするのかが話し合われる予定だ。今回の話し合いでは医療者への優先接種が見送りとなったが、医療者では接種を求める者と接種に抵抗を示す者はどの程度いるのだろうかー。そこで、ケアネットでは10月15日(木)~21日(水)の期間、会員医師1,000人に対し「医師のワクチン接種に対する心境について」に関するアンケートを実施。その結果、全回答者のうち接種を希望するのは61.2%だった。 本アンケートでは30代以上の医師(勤務医、開業医問わず)を対象とし、新型コロナワクチン接種希望の有無や投与する際の懸念点などについて調査、集計結果を年代や病床数、診療科で比較した。接種を希望する医師の年代や診療科に違いはほとんど見られなかったが、脳神経外科(44%)、神経内科(42%)、糖尿病・代謝・内分泌内科(46%)、救急科(36%)で接種希望者が半数を下回っていた。  このほか、「どこの国が開発したワクチンを希望するか」「接種したくない理由」「接種希望者が投与する上で気になること」「これまでのインフルエンザウイルスワクチンの接種状況」などを聞いた。どこの国が開発したワクチンを希望するかで最多は国内開発 接種を希望すると回答した629例(61.2%)に対し「どこの国が開発したワクチンを希望するか(複数回答可)」を聞いたところ、日本国内で開発を進めるアンジェスに票を投じたのは396人、続いて英国(アストラゼネカ/GSK)231人、米国(ファイザー/モデルナ)222人と続いた。どこ国が開発したワクチンがいいかのアンケートでは、国内開発ワクチンへの期待の高さが伺えた。 接種したくない理由、接種希望者が投与する上で気になることについては、安全性などのエビデンス不足と回答した方が863人と圧倒的に多かった。次いで、安定性の供給(151人)、投与量・投与回数の問題(134人)と続いた。ワクチン接種優先対象の基礎疾患を有する医師は約2割 今回、ワクチン接種の優先対象に基礎疾患がある人が含まれたことを踏まえ、基礎疾患を有する医師数を把握するため「医師の持病の有無」についても調査した。その結果、持病があると回答したのは26.7%(274人)だった。年代別で見ると、30代、40代ではそれぞれ15%程度に留まっていたが、50代では30%、60代では47%、70代以上では半数の46%が持病を抱えながら医療に携わっていることが明らかになった。インフルエンザワクチンは医師の9割が毎年接種 インフルエンザワクチンの接種状況が新型コロナワクチン接種の希望にどの程度影響するかを見るため、これまでのインフルエンザワクチンの接種状況を聞いたところ、年代や診療科を問わず約9割の医師が毎年接種していた。 アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中

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