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日本人のCOVID-19による血栓症発症率は?

 合同COVID-19関連血栓症アンケート調査チームによる『COVID-19関連血栓症に関するアンケート調査』の結果が12月9日に発表された。それによると、日本人での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連血栓症の発症率は、全体では1.85%であることが明らかになった。 この調査は、COVID-19の病態の重症化に血栓症が深く関わっていることが欧米の研究で指摘されていることを受け、日本人COVID-19関連血栓症の病態及び診療実態を明らかにすることを目的として行われたもの。2020年8月31日までに入院したCOVID-19症例を対象とし、全国の病院399施設のうち109施設からCOVID-19患者6,082例に関する回答が寄せられた。なお、合同調査チームは厚生労働省難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究」班、日本血栓止血学会、日本動脈硬化学会の3組織合同によるもの。 主な調査結果は以下のとおり。・Dダイマーは症例全体の72%で測定され、入院中に基準値の3~8倍の上昇を認めたのはそのうちの9.5%、8倍以上の上昇を認めたのは7.7%と、多くの症例で血栓傾向がみられた。・血栓症は1.85%(血栓症に関する回答のあった5,687例のうち105例)に発症し、発症部位は(重複回答を可として)、症候性脳梗塞22例(血栓症症例の21.0%)、心筋梗塞7例(同6.7%)、深部静脈血栓症41例(同39.0%)、肺血栓塞栓症29例(同27.6%)、その他の血栓症21例(同20.0%)であった。・血栓症は、軽/中等症の症例での発症が31例(軽/中等症症例の0.59%)、人工呼吸器/ECMO使用中の発症が50例(人工呼吸/ECMO症例まで要した重症例の13.2%)であった。・症状悪化時に血栓症を発症したのは64例だったが、回復期にも26例が血栓症を発症していた。・抗凝固療法は、76病院で6,082例のうち880例(14.5%)に実施された。治療法の主な内訳は、未分画ヘパリン591例(880例中の67.2%)、低分子量ヘパリン111例(同13.0%)、ナファモスタット234例(同26.6%)、トロンボモジュリンアルファ42例(同4.8%)、前述の薬剤併用138例(同15.7%)、直接経口抗凝固薬[DOAC]91例(同10.3%)、その他42例(同4.8%)だった。・予防的抗凝固療法の実施について回答した49施設によると、予防的投与を行った患者背景として、Dダイマー高値、NPPV(非侵襲的陽圧換気)/人工呼吸患者、酸素投与患者などが挙げられた。

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新型コロナ感染症におけるIgGモノクローナル抗体治療に対する疑問(解説:山口佳寿博氏)-1326

 新型コロナに対する治療の一環として、Spike蛋白のS1領域に存在する受容体結合領域(RBD)に対するIgGモノクローナル抗体(bamlanivimab[LY-CoV555]、Eli Lilly社)に関する第II相多施設二重盲検ランダム化対照試験(RCT)の結果が発表された(BLAZE-1 trial、Chen P, et al. N Engl J Med. 2020 Oct 28. [Epub ahead of print])。このモノクローナル抗体は、1人の患者の回復期血漿から分離されたS蛋白IgG1抗体の構造解析を基に作成された物質である。BLAZE-1 trialの結果を主たる根拠として、2020年11月9日、米国FDAはbamlanivimabの緊急使用を許可した(本邦:現時点では未承認)。S蛋白に対するモノクローナル抗体カクテル(REGN-COV2、Regeneron Pharmaceuticals社)は、10月初旬にトランプ大統領が新型コロナに感染した時に投与されたことから世間の注目を浴びるようになった。しかしながら、BLAZE-1 trialの結果は、本療法が他の療法に比べとくに有効であると結論できるほどの医学的根拠を示していない。それ故、本論評ではIgGモノクローナル抗体療法の源流である回復期血漿治療までさかのぼり、IgGモノクローナル抗体療法の問題点を整理したい。 患者の回復期に得られた血漿を新たな患者に輸血する方法はエボラ出血熱、SARS、MERS、鳥インフルエンザなど種々の感染症において施行されてきた。新型コロナにあっても、ニューヨーク州Andrew Cuomo知事は回復期血漿を新たな感染者に投与することを表明した(2020年3月24日)。これを受け、米国FDAは回復期血漿の緊急使用を後出しで承認した(3月25日)。米国における動向を受け、本邦の厚労省も回復期血漿投与を保険適用外治療として承認した。非盲検化観察研究では回復期血漿投与を有効とする報告が多いが、RCTによる検討結果は本療法の臨床的効果を必ずしも肯定するものではなかった。 インド39施設におけるRCT(PLACID Trial、中等症の患者が対象、対照群:229例、血漿投与群:235例)では、輸血後7日以内のウイルス陰性化率は血漿投与群で有意に高く臨床所見も改善することが示された(Agarwal A, et al. BMJ. 2020;371:m3939.)。しかしながら、経過観察中の中和抗体価、種々の炎症マーカー(LDH、CRP、D-dimer、Ferritin)、28日以内の重症化率、死亡率は両群間で有意差を認めず、回復期血漿投与の臨床的効果は非常に限られたものであることが示唆された。アルゼンチンの12施設で施行されたRCT(PlasmAr trial、肺炎を認めた中等症患者が対象、対照群:105例、血漿投与群:228例)では、血中のウイルスに対するIgG抗体価は輸血後2日目において血漿投与群で有意に高値であったものの、それ以降では対照群との間で有意差を認めなかった(Simonovich VA, et al. N Engl J Med. 2020 Nov 24. [Epub ahead of print])。輸血30日後の臨床所見、死亡率は両群で差がなく、血漿投与の臨床的に意義ある効果は確認されなかった。PlasmAr trialで得られた興味深い知見は、血漿として1回投与されたIgG抗体は2日前後で分解され長期に血中に残存しないことを示していることである。この結果は、IgGモノクローナル抗体投与時にも成立する事象であり、1回投与されたIgGモノクローナル抗体は2日前後で生体内において分解/処理されると考えなければならず、血漿投与あるいはIgGモノクローナル抗体投与が本当に1回のみでよいかに関して疑問を投げかける。 BLAZE-1 trialは米国41施設で施行された軽症・中等症患者(非入院)を対象としたRCTで、IgG単回投与量の差による臨床効果の差を解析している(対照群:143例、700mgのIgG投与群:101例、2,800mgのIgG投与群:107例、7,000mgのIgG投与群:101例)。試験開始11日目のウイルス量は2,800mgのIgGモノクローナル抗体投与群において対照群より有意に低下していたが、他の用量では対照群と差を認めなかった。2~6日目の臨床所見はIgG投与群全体(3つの投与群を一括)で対照に比べ有意に改善していた。さらに、入院または救急外来を受診した患者の割合は、対照群で6.3%であったのに対してIgG投与群全体では1.6%と少ない傾向を認めた(ただし、統計学的有意差検定の結果は論文中に示されていない)。以上の結果より、BLAZE-1 trialの著者らは、IgGモノクローナル抗体の投与量は2,800mgが至適であると結論した。 BLAZE-1 trialに加えbamlanivimabを用いた治験として、ACTIV-2(非入院の軽症・中等症患者220例を対象)、ACTIV-3(入院中の比較的重症患者300例を対象)、BLAZE-3(介護施設の入居者、職員を対象とした感染予防効果の検証)などが終了、中止、あるいは進行中である。しかしながら、多人数を対象とした第III相試験は計画されていない。以上のような現状であるにもかかわらず、米国FDAはIgGモノクローナル抗体、bamlanivimabの緊急使用を許可した。薬物投与の対象は非入院の軽症・中等症患者(12歳以上)にあって重症化危険因子(たとえば、65歳以上の高齢) を有するものであり、発症後10日以内に可及的速やかにbamlanivimabを700mg単回投与することが推奨された。一方で、入院あるいは酸素投与が必要な患者(重症例)は適用外であり、これらの患者へのIgGモノクローナル抗体投与は病状を逆に悪化させる可能性があるとFDAは警告している。 IgGモノクローナル抗体の緊急使用許可には種々の疑問点が存在する。(1)IgGモノクローナル抗体の単回投与では、おそらく数日以内にIgG抗体は生体内で分解/処理されるはずであり、コロナ感染初期に自然なIgG抗体価が上昇し難い患者に使用対象を絞るべきである(たとえば、免疫不全患者など)。(2)FDAの緊急使用許可の主たる根拠となったBLAZE-1 trialで決定された投与量は2,800mgである。それにもかかわらず許可されたのは700mgであった。この点に関しても十分な説明がなされていない。(3)IgGの生体内残存時間からは単回投与でよいかどうかに関して疑問が残る。初回投与数日後に2回目のIgGモノクローナル抗体を投与した場合の検討が必要と思われる。(4)FDAは重症例への投与によって病状が悪化することを懸念しているが、これは、投与されたIgGモノクローナル抗体によって“抗体依存性感染増強(ADE:Antibody-dependent enhancement of infection)”が発生する可能性を危惧したものと思われる。ADE発生の可能性を検討する目的でT細胞系反応(Th-1サイトカインとTh-2サイトカインのバランス)に関する解析を追加すべきである。 以上のようにIgGモノクローナル抗体療法には不明な要素が多々存在し、費用対効果の面からこのような高額治療を臨床の現場で施行すべきかどうかについて冷静な判断が求められている。

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Long-COVID:専門医が語る新型コロナ後遺症の実態

 国立国際医療研究センターの研究チームが、COVID-19回復者を追跡調査し、後遺症に焦点を当てた論文が10月に発表された(新型コロナ後遺症、4ヵ月後も続く例や遅発性の脱毛例も/国際医療研究センター)。それによると、発症から120日超の時点でも依然続く呼吸苦や倦怠感、咳などを訴えたり、数ヵ月後になって脱毛を経験したりした人がいたことがわかった。国内においては、COVID-19感染者の増加数において3度目のピークを迎えているとみられる昨今。臨床では急性期への対応が間違いなく喫緊の課題だが、感染症専門医らが「きわめて特異的」と評するCOVID-19回復後に長く続く後遺症、いわゆる“Long-COVID”はどのようなものなのか。冒頭論文の責任筆者である森岡 慎一郎氏(国際感染症センター)に話を伺った。倦怠感、呼吸苦、脱毛…回復者外来での多種多様な訴えで新型コロナ後遺症の研究に着手 Long-COVIDという言葉は包括的な概念で、10月ごろに英国から出てきたと記憶している。世界的なトレンドとしては、7月あたりからCOVID-19の後遺症にフォーカスした研究が出始めていた。ただ、先駆けた1~2本目の研究論文では、発症から14日や21日、もしくは60日経過した時点におけるピンポイントの聞き取り調査だった。 一方、われわれの研究のきっかけは、回復者外来で罹患後かなり経過しても症状が続いているという訴えが少なくなかったこと。エボラやデング熱でも一部後遺症はあるが、COVID-19ではどうなのか、正確なデータを客観的に収集しようということになった。 インフルエンザならば、「2週間前は大変だった」という感じで、症状が出ている時期と回復後は大きく異なる。しかしCOVID-19の場合は、症状が長く後を引き、倦怠感や呼吸苦があって仕事に行けないなど日常生活に影響を及ぼす症状が多く、大きな社会的問題にもなりうるので、その点は懸念していた。その中でも、「髪が抜ける」という訴えで来院する患者さんが相当数確認されていた。患者さんの多くは、脱毛がCOVID-19罹患と関係があるとは思っていない様子だった。われわれ医療者側も、当初は脱毛とCOVID-19とがすぐには結び付かなかった。しかし、そういう人が増えてくるにつれて、COVID-19の晩期症状の1つとしてあり得るのではないかという考え方にシフトしていった。そこで、晩期症状としての脱毛を検証しようという方針になった。 新型コロナ後遺症の研究をまとめたのは8月上旬だったが、その時点ではまだCOVID-19の後遺症としての脱毛に焦点を当てた論文はなかった。ところが、査読結果が出た9月中旬時点では、すでに脱毛についてはかなり認知されていて、具体的にどういう症状なのか(円形脱毛症か、AGA型かなど)、どの程度なのかという点まで深堀りしなければ、論文として新規性がないと指摘された。7月下旬の時点ならば世界に先駆けていたのに、わずか1ヵ月半で当たり前になっている。これが世界のCOVID-19を巡る研究のスピードなのかと痛感した。 研究に着手する段階で、これまでのCOVID-19の診療経験から仮説を立ててカプランマイヤーを描き、共同研究者たちにもイメージを共有していたが、おおむね研究前に思い描いていた通りの結果が得られた。ただ、仮説と大きく異なるレベルではないが、研究対象者の24.1%、ほぼ4人に1人という割合で脱毛が見られたのは、個人的には予想以上の頻度であり、驚きであった。また、罹患後120日経っても嗅覚障害を訴える人が10%程度いたのも、長引く後遺症の1つとして注目すべき点である。 今回の新型コロナ後遺症の研究では、120日時点でひとまず調査を打ち切っている1)。そのため、インタビュー時にも継続していた症状が、その後どのくらいの期間続いたのかは不明である。もし、調査を継続していたらカプランマイヤーがどのようなカーブになったのか―。それについては、追加調査でより多くの患者さんの協力を得て、年明け(2021年)以降に開始する予定で、おおむね1年間の追跡期間で、新型コロナの後遺症がどれだけ続くかという観点でより深い調査を実施したいと考えている。「正しく知り、正しく恐れる」森岡医師が提言するLong-COVIDとの付き合い方 COVID-19を巡っては、人によってこれほど多様な症状や期間の後遺症が出てくるという意味で、非常に特異的である。私自身の実感としては、COVID-19は、まさに100年に一度現れるかどうかの社会を揺るがす感染症であり、恐らくほかの医療者たちにも共通した認識だと思う。SARSやMERSのようにほぼすべての感染者が発症する感染症であれば、封じ込めも可能であろう。だが、COVID-19は無症状であるケースも多く、水際で100%防ぎきれない。どれだけ症状を詳しく聞き、発熱に注意したとしても、ウイルス排泄は発症の2日前から始まり、0.8日前にはピークを迎えている。そういう意味で、COVID-19はきわめてたちが悪く、感染対策という点で対応しづらいウイルスであることを実感している。 開業医の先生方は今後、新型コロナの後遺症フォローという観点でいかに急性期病院と連携し、ケアを進めるかというフェーズが重要になってくると思われる。まずは患者さんの話をよく聞いていただき、そういう症状や後遺症もあるということを認めてあげるというのが大事なポイントになってくる。当初は、われわれも回復者外来で患者さんが訴える症状について、「気のせいではないか」という受け止めだった。具体的には、COVID-19回復後のうつ症状や記銘力低下、無気力などだが、さまざまな知見の蓄積により、徐々にそれらがLONG-COVID-19の概念として認知されつつある。 また、新型コロナに罹患した方は、経済的、社会的、家庭的にかなり追い込まれている。そこに加えて後遺症が重なると、最悪のケースとして自殺も懸念される。そうしたことも踏まえ、まずは「大変でしたね」と患者さんを受容することは非常に重要である。 メディアなどでは、元気だった人がCOVID-19感染や後遺症によって何もできなくなったという極端なケースが象徴的に報じられることがある。いたずらに恐怖を煽るようなニュース番組も散見されるので、実際に新型コロナに罹患したどのくらいの人が、どの程度、どんな後遺症がどのくらいの期間続くのかという客観的データを収集し、エビデンスに基づいた情報提供をすることがわれわれの使命だと思っている。医療者側も患者側も、「正しく知り、正しく恐れる」ことが非常に重要。患者さんがメディアの情報などに惑わされ過度に恐れている場合には、客観的なデータを示し、できる限り不安を取り除いていただきたい。

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コロナは将来の肺がん死亡者数にも影響を及ぼす!?

 2020年11月30日、アストラゼネカ株式会社は、「緊急提言 新型コロナウイルス感染症流行下におけるがん検診の重要性~つづけよう、がん検診~」と題し、コロナ禍の肺がん検診の現状に関するメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、光冨 徹哉氏(近畿大学)、弦間 昭彦氏(日本医科大学)、小西 宏氏(日本対がん協会)が登壇し、トークゲストとして三遊亭 圓楽氏が参加した。コロナ拡大に伴う受診控えにより肺がん発見に遅れ 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2020年1月~7月のがん検診の受診者数が前年比で55%減少した。同年4月の緊急事態宣言発出時に、厚生労働省ががん検診の受診延期を要請したが、宣言解除後も受診者数が前年同期の水準まで回復していない。この現状について、光冨氏は、コロナ拡大で検診の受診を控えたために肺がんの発見が遅れ、将来、肺がんによる死亡者数が増加する事態を懸念した。 肺がんの病期別5年生存率はIII期、IV期で著しく低下するため、早期発見・早期治療が重要となる。しかし2020年の4月〜5月、DPC病院では肺がんの新規診断患者数と手術件数が減少しており、検診の受診控えは肺がん発見数の減少や手術ができる患者(潜在的に完治が見込める患者)の減少につながっているといえる。これに対して同氏は「コロナも怖いけれども、肺がんは待ってくれない」と警鐘を鳴らした。コロナ禍でも安心して肺がん検診の受診を とくに、肺腺がんなどの肺野型のがんは症状が発現しにくいが、比較的早期からX線やCT等の検査で発見されるケースも多い。肺腺がんはI期〜III期の一部は手術の対象となるため、検診を実施して早期に発見・治療することが重要となる。 弦間氏は、「コロナの蔓延期にがん検診を受けるのは怖いと思う方も少なくないと思われる」と述べたうえで、日本肺癌学会が検診実施時の新型コロナウイルス感染症対策について周知していることに言及し、「各施設で対策を実施しているので、安心して肺がん検診を受診してほしい」と呼び掛けた。 また、自身も肺がんの治療・復帰を経験している三遊亭 圓楽氏は、「がんの治療法はどんどん進歩している。数年後には怖がる必要のない病気になっていると思う。早く見つけちゃったほうが得」と話し、早期発見・早期治療の重要性を訴えた。

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インフルとの鑑別を追記、COVID-19診療の手引き第4版/厚生労働省

 12月4日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4版」を公開した。 同手引きは診療の手引き検討委員会が中心となって作成され、第1版は3月17日に、第2版は5月18日に、第3版は9月4日に公表され、随時最新の内容に更新している。 今回の改訂では、日本産科婦人科学会の協力を得て、臨床像や院内感染対策の更新を図ったほか、検査法、薬物療法などに関する新しい知見や行政対応に関する情報を反映させている。 同委員会では「これまでと同様に医療現場で参考にされ、患者の診療ケアの一助となることを期待する」と述べている。主な改訂点【臨床像】・「臨床像」の画像所見の紹介点数が重症度別に追加された・「重症化のリスク因子」で妊婦が削除された・「合併症」で「二次性細菌・真菌感染症」が追記された・「症状の遷延(いわゆる後遺症)」で日本の知見が追記された・「妊婦例の特徴」が1項目追記された【症例定義・診断・届出】・「抗原検査」の「各種検査の特徴」など図表が刷新された・「インフルエンザとの鑑別」が1項目追記された【薬物療法】・「薬物療法」中の「その他の薬剤例」でアドレノメデュリン、イベルメクチン、バリシチニブが追記された・同じく「薬物療法」中で「回復者血漿など」が1項目追記された【院内感染対策】・「死後のケア」中で「個別の場面における主な関係者」の表が追記された

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第37回 どこにでもある薬のCOVID-19重症化予防効果を調べる試験がアフリカで始まった

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に効く薬を見つけるための数多の試験が世界のあちこちで実施されていますが、アフリカではこれまでほぼ皆無でした。しかしこの9月から、とても価値があるのにほとんど手つかずな使命を帯びた大規模試験がアフリカで始まっています1)。その使命とは、COVID-19患者が重症化して入院せずに済むようにする安くてどこでも手に入る薬を見つけ出すことです。ANTICOVという名称のその試験2,3)では、今さらという感がありますが、世界保健機関(WHO)のSolidarity試験や英国でのさらに大規模なRecovery試験でCOVID-19入院患者にはっきりと無効だったマラリア薬・ヒドロキシクロロキンが最初に検討される試験薬の一つとなっています4)。ANTICOVはいまのところコンゴ共和国でのみ進行中ですが、やがては13ヵ国で軽度~中等度のCOVID-19患者2,000~3,000人が参加する予定です。C型肝炎薬ソホスブビル、駆虫薬nitazoxanideやイベルメクチン、痛風薬コルヒチンなどの多数の薬の検討が予定されていますが、まず試されるのは上述のヒドロキシクロロキンとHIV薬・カレトラ(ロピナビル/リトナビル)です4)。理由はどうあれ病院に来た患者にCOVID-19検査を受けてもらい、感染が確認されて酸素飽和度(SpO2)94%以上などの選択基準を満たした患者を試験に招待します。試験参加を了承した患者は対照薬・アセトアミノフェン(パラセタモール)か試験薬のいずれかを決められた期間服用し、アプリへの入力や電話への回答で症状が毎日記録されます。主要転帰はこの上なく明確で、薬の割り当てから3週間(21日間)以内に酸素飽和度が93%以下に陥ることです。そうなったら服用薬が効かなかったと判断され、国によってはWHO主催の入院患者対象Solidarity試験などに参加することができます。先週のScienceのニュース1)によると、コンゴ共和国に続いて今週にはケニアで患者募集が始まります。300人のデータが揃った時点で最初の中間解析が実施され、その後は新たに加わった300人のデータが揃うたびに途中解析が順次実施されます4)。試験で検討される薬は今後追加され、中間解析で有効か無効の判定基準を満たした薬は試験を卒業していきます。ANTICOV試験でまず検討されるヒドロキシクロロキンは入院患者に明らかに無効だったことに加えて予防効果や軽症への効果もなかったとする報告もあり、ヒドロキシクロロキンから始めるなんてことは自分ならしないと英国のSolidarity試験を率いた医師の一人Martin Landray氏は言っています1)。しかしANTICOV試験のガーナ担当を率いるJohn Amuasi氏は試す価値があると考えています。同剤を標準薬とするアフリカの国は依然として多く3)、ANTICOV試験で無効と判明すればその効果への期待を断つことができるのです。それに、利益相反を考慮の上でこれまでの試験一揃いを解析した最近の報告では早めのヒドロキシクロロキン投与に軍配が上がっており5)、効果の望みは全くないというわけではなさそうです。ヒドロキシクロロキンは先鋒にふさわしくなさそうとはいえ、Landray氏はANTICOVのような試験の価値を認めています。誰もがいかなるときにも使えていざという時に大量に供給可能な治療薬は見つけておく必要があるからです。参考1)First-of-its-kind African trial tests common drugs to prevent severe COVID-19/Science2)ANTICOV/DNDi3)Largest clinical trial in Africa to treat COVID-19 cases before they become severe is launched in 13 countries/DNDi4)ANTICOV試験プロトコール5)Mechanism of action of chloroquine/hydroxychloroquine for COVID-19 infection /EurekAlert

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COVID-19パンデミック時の休校、子供の寿命に影響か

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時、学校が休校となった国が多いが、子供たちの健康への影響はないのだろうか。米国・ワシントン大学のDimitri A. Christakis氏らが、COVID-19パンデミックに関連して生じうる損失生存年数(years of life lost:YLL)を米国の小学校の休校もしくは開校継続の条件で推定したところ、開校継続が支持される結果となった。JAMA Network Open誌2020年11月12日号に掲載。 この決定分析モデルでは、米国の疾病予防管理センター(CDC)、社会保障局、国勢調査局の2020年のデータを含む公的に利用可能なデータを使用し、休校と学歴低下との関連、学歴低下と平均余命との関連を推定した。また、COVID-19による死亡率、開校を継続してCOVID-19が増加した場合に生じうる死亡率の増加も推定した。主要アウトカムはYLL。 主な結果は以下のとおり。・2020年のパンデミックで、計2,420万人の5〜11歳の子供が通っていた公立学校が休校となり、中央値で54日間(四分位範囲:48〜62.5)の授業が失われた。・休校による平均YLLは、男子で0.31年(95%信頼区間[CI]:0.10~0.65)、女子で0.21年(同:0.06~0.46)であった。人口全体における休校に関連したYLLは、553万年(同:188~1080万年)と推定された。・CDCの報告では、米国では2020年5月末までにCOVID-19で8万8,241人が死亡していることから、YLLは150万年(95%CI:123〜185万年)と推定された。もし開校を継続した場合のYLLの上乗せは、休校とパンデミック蔓延の減少の関連を検討した研究結果に基づくと147万年(同:45~259万年)と予測され、計297万年(同:188〜430万年)となる可能性が示された。・「開校」と「休校」の両条件において推定されたYLLの分布を比較・分析すると、開校継続では休校時よりも合計YLLが低いことが98.1%の確率で観察された。 著者らは、「この決定分析モデルでは開校継続が支持された。今後、パンデミック中の休校の決定は、教育の混乱と予想される寿命短縮との関連を考慮し、休校によって子供の健康に生じうるアウトカムを重視する必要がある」と結論している。

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最前線の医療従事者におけるCOVID-19発生による不安・抑うつへの影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、人々の健康やウェルビーイングに深刻な影響を及ぼしている。最前線でCOVID-19への対応が求められる医療従事者では、その影響はさらに大きくなると考えられる。中国・山東大学のLi-Qun Xing氏らは、最前線で勤務する医療従事者の不安、抑うつ、ストレスに対するCOVID-19の心理的影響を明らかにするため、検討を行った。The International Journal of Social Psychiatry誌オンライン版2020年10月24日号の報告。 中国・済南市にある病院において最前線で勤務する医療従事者を対象に、横断的調査を実施した。基本的な人口統計データ、10項目のCOVID-19によるストレスに関する質問票、自己評価式不安尺度(SAS)、うつ性自己評価尺度(SDS)を含む自己評価質問票を用いて、対象者よりデータを収集した。COVID-19による不安、抑うつ、ストレスのリスクと頻度を推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象者309人中、不安症は88人(28.5%)、うつ病は172人(56.0%)であった。・多変量ロジスティック回帰分析において、不安または抑うつと独立して関連が認められた因子は以下のとおりであった。【不安との関連】 ●30歳以下(OR:4.4、95%信頼区間[CI]:1.6~12.2) ●31~45歳(OR:3.1、95%CI:1.1~8.8) ●COVID-19隔離病棟での勤務(OR:2.3、95%CI:1.4~4.0) ●消毒対策が不十分だと感じる(OR:2.5、95%CI:1.5~4.3)【抑うつとの関連】 ●30歳以下(OR:3.8、95%CI:1.8~7.8) ●31~45歳(OR:2.7、95%CI:1.3~5.7) ●看護師(OR:2.5、95%CI:1.1~5.6) ●消毒対策が不十分だと感じる(OR:2.1、95%CI:1.3~3.5) 著者らは「最前線の医療従事者では、COVID-19発生により、不安や抑うつ症状の有症率が増加していた。とくに若年スタッフや看護師では、心理的ケアの必要性が高かった。専門家による感染予防対策は、医療従事者の心身の健康を守るために重要である」としている。

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第35回 メディアも市民も「新型コロナに有効」研究の餌食に過ぎない?

「またか」と思わずため息が出てしまった。お茶が新型コロナウイルスに有効という、この記事のことだ。まあ、読めばすぐわかるが、試験管内、in vitroの話である。一応、発表した奈良県立医科大学側のリリースによると、3種類のお茶とコントロールの生理食塩水を、一定のウイルス感染価を有する新型コロナウイルス溶液と1:1で混合して静置し、1分後、10分後、30分後にそれぞれの溶液を培養細胞に接種してウイルス感染価を測定したというもの。確かにリリースを見ると、うち1種類のお茶では1分後の時点でウイルス感染価を計算すると99.625%も低下している。これ自体は事実なのだろう。だが、今発信すべき情報なのかという点では大いに疑問がある。こう書くと、「それはメディアが不勉強だから」と言われるのは分かっている。だが、もしそれを前提にするならば、不勉強な相手への発表なのだから、発信する側もそのやり方次第で責任を問われるべきものなのではないかと従来から考えている。実際、日常的に一般紙ではこの手のin vitroの研究やマウス、ラットレベルのin vivoの研究結果を、言い方は悪いが「誇大広告」のごとくに報じているのをよく見かける。これがどのような経緯で生み出されているかの構造は、実はかなり単純である。端的に言えば、ネタが欲しくて仕方がない記者と世間に少しでも成果をアピールしたい研究者・大学の利害が一致した結果だ。ただ、大手紙と地方紙、大都市圏と地方都市などの環境によって利害状況はやや異なる。大手紙の科学部記者などはin vitro、in vivoの研究に無条件に飛びつくことは少ない。だが、専門性のない社会部記者などは科学部記者よりも「読者にインパクトを与える見出しが立つようなネタかどうか?」に、より軸足が置かれる。また、大手紙地方支局や地方紙の場合、大手紙の科学部レベルの専門性がある記者がいないことも多いうえに、日常的に地元大学の研究者や広報部門と面識があれば、半分お付き合いも兼ねて大学発表の記事化に前向きになりがちである。ちなみにこの手の記事は一般的に年度末が近くなると増える傾向がある。新たな予算獲得や既に獲得した予算の成果を大学や研究者も外部にアピールしたいからだ。今回の記事に前述のような事情があるかどうかは定かではない。だが、この記事が出てきた背景により考えを巡らせるなら、さらに2つのファクターが考えられる。まず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは既に1年近く社会機能をマヒさせ、決定打となる対処法は今のところない。ワクチンはようやくイギリスで緊急承認になったが、全世界に供給されるまでにはまだ時間を要する。感染時に使用できる承認薬は日本国内では抗ウイルス薬のレムデシビルと抗炎症薬のデキサメタゾンのみでいずれも「帯に短し、たすきに長し」である。結局のところAI実用化の現代なのに、今現在できる対策は3密回避、手洗い励行、屋内でのマスク着用という、まるでインテリジェントビルの中で暖を取るのに火打ち石で火を起こして焚火をしているかのごとくである(別に3密対策、手洗い励行、屋内でのマスク着用を馬鹿にしているわけではない)。記者とて医療者とて、この打つ手のなしの状況に何らかの光明を見いだしたい気持ちは同じだろう。そこに今回のお茶のニュースはピタッとはまってしまう。しかも、社会を混乱に陥れているCOVID-19に対抗する「武器」が誰もが身近で手にできるお茶なのだから、不特定多数に発信するメディアにとっても読者にとっても好都合である。やや余談になるが、がんの診療にかかわった経験がある医療従事者の方は、「がんに効く」とのキャッチフレーズにひかれて特定の食品や料理や健康食品にはまるがん患者に遭遇した経験があるだろう。実際、Amazonなどで一般向けのがんに関する書籍の売れ筋ランキングを見ると、上位にはかなりの頻度で「○○を食べたらがんが消えた」という類の本が登場する。特定の食品で発症したがんを治療できないことは医療従事者ならば誰もが承知のこと。しかし、がんに対する三大治療といわれる手術、放射線、抗がん剤はいずれも患者の手の届かないところにある。結局、今現状を何とかしたいと思うがん患者に手が届く対策が食事であり、そこに走ってしまうのはある意味やむを得ないこととも言える。つまり大学・研究者、メディア、一般人の鉄のトライアングルともいえる利害の一致が今回のお茶の記事を生み出していると言える。だが、この中で試験管内での現象がヒトの体内でどれだけ再現できるか、あるいはそれをヒトでより端的に効果を証明するための手法が何かを知っているのは誰だろう? それは間違いなく大学・研究者であるはずだ。だからこそまだまだヒトでの効果を期待するのは程遠い今回のファクトを発表した大学・研究者には疑問どころか軽い怒りさえ覚える。ちなみに9月に柿渋が新型コロナウイルスに有効という情報が一部メディアで流れたことがあるが、これも今回のお茶と同じ奈良県立医科大学で研究者も同じである。ちなみに大学のHPにはその後、柿渋に関して共同研究先を募集する告知が行われている。はっきり言うが、要はメディアもその読者も大学や研究者のアピール、共同研究先開拓の片棒を担がされたに過ぎない。しかも今回のケースでは特定の施設・研究者が繰り返し行っている。この手の一瞬は夢を与える耳障りのいいと情報を連発し、いつの間にか雲散霧消で実用化せずということを繰り返すことは、医学に対する不信感も醸成しかねないと敢えて言っておきたい。

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医師が選ぶ「2020年の顔」TOP5!(文化・芸能人、コメンテーター部門)【ケアネット医師会員アンケート結果発表】

新型コロナの国内発生と流行、緊急事態宣言、東京五輪延期…本当にいろいろあった2020年―。今年を振り返ってみて思い浮かぶのは誰の顔でしょうか。ケアネットでは医師会員にアンケートを実施。535人の先生方にご協力いただき、選ばれた「今年の顔」は?今回は、文化・芸能人部門とコメンテーター部門のTOP5をご紹介します!医療人部門、政治家部門はこちら!文化・芸能人部門(敬称略)第1位 志村 けん最も多くの人が挙げたのが、新型コロナウイルス感染症で今年3月に死去した志村けんさんでした。幅広い年齢層に親しまれた偉大なコメディアンの突然の訃報は、大きく深い悲しみをもたらしただけでなく、国民レベルで新型コロナへの向き合い方を改める契機になるほどのインパクトを与えました。  「志村 けん」を選んだ理由(コメント抜粋)突然のことでとても驚いた。コロナの恐ろしさを身近に感じた。(40代 腎臓内科/大分県 他多数)新型コロナウイルスの危険性が一般に認知されるきっかけとなった。(30代 内科/東京都 他多数)お笑いのレジェンド。いつまでもいる人だと思っていた。(40代 脳神経外科/兵庫県 他多数)第2位 三浦 春馬まさに今を生きていた現役俳優の急逝も、多くの方の記憶に残ったようです。芸能界ではこの後、三浦さんのほかにも自ら命を絶つ人が相次ぎました。さまざまな憶測がメディアで報じられましたが、本当のこと、真相は誰にもわかりません。ただただ、彼らが持ち合わせた才能や輝きが失われたことが惜しまれます。 「三浦 春馬」を選んだ理由(コメント抜粋)自殺対策をやっている身としては印象的だった。(30代 精神科/福岡県 他多数)コロナ禍で自殺する人が増え、衝撃的だった。(20代 麻酔科/三重県 他多数)同世代の有名俳優だったから。(30代 臨床研修医/東京都)第3位 フワちゃん今回、唯一明るさを感じられたのが「フワちゃん」のランクインでした。お笑いタレントでYouTuberの彼女は、突き抜けた破天荒キャラが受けて今年大ブレイク。動けばバラエティー番組に取り上げられ、喋ればネットニュースの記事になるようなフルスロットルの活躍ぶりでした。実は、帰国子女で英語が堪能だったり、文学部で中国哲学を学んでいたり、という意外な二面性も。 「フワちゃん」を選んだ理由(コメント抜粋)ブームで、テレビで見ない日はなかった。(20代 糖尿病・代謝内分泌科/青森県 他多数)どの番組にも出演している印象(40代 消化器内科/京都府 他多数)インパクトがすごい(30代 病理診断科/東京都)第4位 竹内 結子 「竹内 結子」を選んだ理由(コメント抜粋)人気女優で、よくドラマを観ていた(40代 内科/東京都 他多数)突然の訃報で、あまりに衝撃だった(30代 呼吸器内科/茨城県 他多数)青春の一幕だった(40代 消化器内科/愛知県)第5位 渡部 建 「渡部 建」を選んだ理由(コメント抜粋)良くも悪くもニュースでよく見かけた(30代 内科/千葉 他複数)「不倫」で真っ先に思い浮かんだ(40代 小児科/沖縄)コメンテーター部門(敬称略)第1位 忽那 賢志新型コロナの最前線で診療に当たる臨床家の忽那先生が、「コメンテーター」として最も評価されたのは意外な感もありますが、Yahoo!ニュースでの詳細かつ明快なコロナ解説記事や、メディアに対する丁寧な取材対応をご覧になった先生方には、納得の第1位なのでしょう。CareNet.comにも不定期ですが連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」掲載中ですので、この機会にぜひ! 「忽那 賢志」を選んだ理由(コメント抜粋)しっかりした科学的根拠に基づき、コメントに信頼性がある(50代 耳鼻咽喉科/三重県 他多数)臨床に従事しているので、コメントに偏りがない(40代 精神科/滋賀県 他多数)現場で得た知見を的確に提供してくれた印象(40代 糖尿病・代謝内分泌科/京都府 他複数)第2位 尾身 茂今年のメディア登場回数において、群を抜いた存在であることは間違いないでしょう。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長や分科会長として、医療者の知見や懸念を政府へ根気強く訴えると共に、国民に対してもわかりやすくかつ的確にメッセージを発信し続けてくださいました。 「尾身 茂」を選んだ理由(コメント抜粋)慎重ながら、必要時には信頼できるコメントが目立った(40代 血液内科/宮城県 他多数)コロナ対策に真摯に向き合っている姿勢(50代 産婦人科/大分県 他複数)コロナ関連で最もまともな発言、啓蒙をされていた(30代 整形外科/神奈川県)第3位 二木 芳人新型コロナを巡っては、多くの医療人がメディアでさまざまなコメントを述べてきましたが、ワイドショー番組などでも、出演者らの挑発(?)に乗ることなく、冷静に自身の見解を述べる姿に、医療人としての信頼性を感じた人も多かったのではないでしょうか。当たり前だけど大事なことをわかりやすく伝えられるコメントスキルも高評価だったようです。 「二木 芳人」を選んだ理由(コメント抜粋)コメントがとても受け入れやすくわかりやすい(30代 膠原病・リウマチ科/岡山県)落ち着いたトーンに好感(50代 消化器外科/茨城県)感染症対策にとどまらず、日本を俯瞰的に見ている(60代 循環器内科/佐賀県)第4位 岩田 健太郎 「岩田 健太郎」を選んだ理由(コメント抜粋)クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号を巡る対応とコメント(30代 救急科/北海道 他多数)コロナ関連で、データに基づいた解説をしてわかりやすかった(40代 病理診断科/島根県 他複数)第5位 岡田 晴恵 「岡田 晴恵」を選んだ理由(コメント抜粋)メディアでの露出がとても多かった印象(50代 内科/広島県 他多数)良くも悪くも発言がよく取り上げられていた(50代 耳鼻咽喉科/広島県)★アンケート概要★アンケート名 :『2020年振り返り企画!さまざまな分野の「今年の人」を挙げてください』実施日    :2020年11月12日~19日調査方法   :インターネット対象     :CareNet.com会員医師有効回答数  :535件

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第35回 コロナ+インフル対応の診療・検査医療機関、9割が「不安」訴え

新型コロナウイルス感染症流行の第3波が押し寄せる中、新型コロナと季節性インフルエンザの両方の検査などを行う「診療・検査医療機関」の指定が進んでいる。東京都に次いで感染者が多い大阪府の保険医協会が、11月下旬、会員医療機関約4,000件にアンケートを実施。それによると、回答のあった527件のうち「診療・検査医療機関」は府全体の12%に当たる131件(大阪市内192件、市外335件)で、9割超の128件が「不安がある」と回答していたことが明らかになった。不安の内容(複数回答)のトップは「院内感染」(99件)で、2番目は「スタッフ・家族の2次感染」(95件)だった。「休業した場合の補償」「風評被害」も80件に上った。また、指定前の協力要請に「手を挙げなかった」会員は75%の395件に上った。その理由(複数回答)としては、「導線が確保できない」(230件)が最も多く、「陽性者の待機場所確保」(190件)、「換気などの環境整備ができない」(123件)が続いた。ビルのテナントとして入居するクリニックなど、自助努力で対応策を講じるのが難しいという構造上の問題も浮上した。一方、「手を挙げなかった」会員の18%は、理由が解決すれば「手を挙げる」と回答した。例えば、開業地の自治体で検査センターや発熱外来センターがあれば協力するかとの質問には、条件付きを含めて34%が「協力する」と回答した。実際、大阪府・市への希望(複数回答)として、トップの「患者の受け入れ体制」(293件)に次いで、「PCR検査センターの設置」(289件)、「保健所の機能強化」(261件)などが挙がった。大阪市内の会員に限って見ると、人口270万人の市内に1つしかないせいか、最も多かったのは「保健所の機能強化」だった。アンケート結果から、本来は行政の責任で実施すべき発熱外来センターやPCR検査センターの整備を一般医療機関が担っている実態が明らかになった。この状況では、インフルエンザ流行期の新型コロナ対応は到底難しいだろう。とくに大阪市では、体制整備が喫緊を要する状況にもかかわらず、PCR検査センターは現段階でも4ヵ所にとどまっている上、検査委託の集合契約も府下の市町村と比べ大きく遅れており、市独自の感染対策をほとんど講じていない結果が露呈した。協会は、今回の結果を受けて「地域医療をギリギリの状態で支えている医療機関への支援を早急に講じるべき」と訴えている。もっともな意見であり、師走を襲う新型コロナの大波を乗り越えられるか否かは、この切実な訴えを行政がどれだけ真摯に受け止めるかにかかっている。

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新型コロナ、感染6ヵ月後も抗ウイルス抗体・中和抗体を保有/横浜市立大

 『新型コロナウイルス感染症回復患者専用抗体検査PROJECT』を立ち上げていた横浜市立大学の山中 竹春氏率いる研究グループは、12月2日に行った「新型コロナウイルス感染6ヵ月後における抗ウイルス抗体保有および中和抗体保有調査に関する中間報告」の記者会見で、感染症回復者のほとんどが6ヵ月後も抗ウイルス抗体および中和抗体を保有していることを明らかにした。 日本初の国内最大規模の回復者データに基づく本研究は、COVID-19回復者の一定期間後の追跡調査として『コロナ回復者専用抗体検査PROJECT』で参加者を募集。8~9月に617名の参加希望者が集まり、そのうち10月26日までに採血して検体測定を完了した376例のデータを解析した。今回の中間報告では、抗体保有率のほか、COVID-19回復者のうち酸素投与を要した中等症・重症例のほうが軽症例よりも中和活性が高い傾向であることも示唆された。 これまでの海外の報告では「中和抗体の活性が検出限界以下、もしくは非常に低い感染者がいる」「抗ウイルス抗体が早期に消失する」などと言われているが、今回の結果によれば、感染から中長期後の回復者の体内に中和抗体が確認されれば、そうでない場合に比べて再感染する可能性は低くなる。今後、回復者の1年後の状態が調査されるほか、厚生労働省主導の抗体保有率疫学調査が12月19日から東京都、大阪府、愛知県、福岡県の各3,000人を対象に実施されることから、これらの調査結果の報告が待たれる。

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第35回 著名病院の整形外科医に巨額リベート、朝日スクープを他紙が追わない理由とは?

病院の整形外科医に売り上げの10%前後をキックバックこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。全国で新型コロナ感染症の患者増が止まりません。病床利用率など、医療体制の逼迫も深刻さを増しそうです。東京都は28日から、酒を提供する飲食店などを対象に営業時間の短縮要請を始めました。というわけで、私も今週末は外出自粛をしようと思ったのですが、9月半ばから苦しんでいる四十肩(肩関節周囲炎)が一向に軽快せず、夜間痛で眠れなくなってきたので、近所の鍼灸院まで行ってきました。「医療記者が鍼かよ…」と言われそうですが、これまで通っていた整形外科医院の院長は「とにかく肩を動かして下さい!」と言って、ロキソニンとケトプロフェンパップを処方するだけで、この2ヵ月半、まったく完治への展望がみえなかったため、止む無くの選択です。それにしても、整形外科の専門医より、鍼灸師のほうが言葉巧みで説明もわかりやすく、完治の期待を持たせる、というのはいささか問題ではないでしょうか。世の中で代替療法がはびこるわけです。と書きながら、私も整形外科に通うのはしばらく止め、鍼治療に専念しようかと思っています。ということで、今回は整形外科医の話題です。11月24日、朝日新聞は米国の医療機器メーカー・グローバスメディカルの日本法人が、同社の機器を購入した病院の医師に対し、売上の10%前後をキックバックしていた、と報じました。朝日新聞の独自ネタであるこの記事は、朝刊一面に大きく掲載されました。慈恵医大や岡山済生会の医師など20数人と報道同記事によれば、キックバック額は昨年1年間で少なくとも20数人に対し、総額1億円超となっており、医師本人ではなく、各医師や親族らが設立した会社に振り込むかたちで行っていた、とのことです。グローバスメディカル日本法人は、背骨や腰の治療で使う脊椎インプラントなどを販売する、整形外科専門の医療機器メーカーです。前身の会社、アルファテック・パシフィックも米国の医療機器メーカー、アルファテック・スパインの日本法人でした。2016年に米国で親会社がグローバスメディカルに買収され、日本でも同年よりグローバスメディカルの日本法人として営業活動を行っています。同法人の関係者の話や内部資料を基にしたという朝日新聞の報道によれば、同法人は、医師本人やその親族らが設立した会社と「販売手数料」を支払う契約を締結。この契約は病院が医療機器を購入するたびに販売額の10%前後を医師側の会社の口座に振り込むという内容で、医師側が昨年1年間で受け取った「手数料」は、1人あたり百十数万円から2千数百万円にものぼった、とのことです。なお、20数人の医師は関東や関西、九州の大規模な民間病院に勤務していたとのことで、同紙の続報では、東京慈恵会医科大学病院や岡山済生会病院などの名前が上がっていました。日本ではリベートは罰せられないさて、有名病院の整形外科医への巨額リベート発覚。朝日新聞がスクープし、続報では病院名も出ており、他紙も後追いするかと思われました。しかし、他紙はほとんど報道していません。いったいなぜでしょうか? 私の個人的な想像ですが、おそらく、リベート供与を罰する法律が日本にはまだ整備されていないため、企業も医師も「何の罪も犯していない」からだと思われます。朝日新聞の報道では、「医療機器会社の利益からもらっているという認識」であると、リベートを認める医師がいる一方で、「アドバイザリー契約の対価」と説明する医師もいたそうです。ただ、医師本人やその親族らにわざわざ会社を作らせてお金を振り込む手法からは、同法人にも医師側にも、なんらかのやましさがあったのは確かでしょう。日本には、過大な景品提供などによる不公正な取引を防ぐため、個々の業界が定めた自主規制ルールである「公正競争規約」があります。同規約は景品表示法第31条に基づくものではありますが、あくまで業界の自主ルールのため、そこに法律違反は発生しません。一方、米国にはリベートを罰する法律があり、受け取った医師も罰せられます。「機器の購入費用は医療費で賄われている」朝日新聞の報道を読んだ他紙の社会部記者が「これ追いましょうか」とデスクに相談したものの、「それ、罪になるの?」と言われ、「いや、日本では罪になりません」と答えたところ、「じゃあ、今はコロナに専念しなさい」とでも指示されたのではないでしょうか。朝日新聞の記者もそこはわかった上で、「機器の購入費用は、公的な財源からなる医療費で賄われている。医師への不当なリベートを日本でも規制することは、治療を受ける患者の立場だけでなく、国民の立場からも必要ではないか」と問題提起するかたちで結んでいます。医療機関は、購入した医療機器や医療器具を保険診療で使用することで診療報酬を得て、採算を取り、利益を得ます。その利益をまた機器購入の代金に回すわけですが、もし機器の価格にリベートが予め含まれているとしたら、それは確かに由々しき問題でしょう。リベートを出せるなら機器の価格をもっと下げろ、特定保険医療材料なら償還価格を下げろ、となるかもしれません。また、リベートをもらっている医師ともらっていない医師が存在するならば、それは機器メーカーによる医師のランク分けということになり、それはそれで、また別の問題が生じそうです。医療機器業公正取引協議会は調査に乗り出す朝日新聞の報道を受け、医療機器の業界団体でつくる医療機器業公正取引協議会は、グローバスメディカルの日本法人の調査に乗り出すことにしたそうです。また、東京慈恵会医科大学病院も調査に乗り出すとのことです。超高齢社会の到来で、整形外科は当面はニーズが高まり続ける診療科です。変形性脊椎症、脊柱側弯症、変形性脊椎症、骨折などの疾患において用いられる脊椎インプラントは、市場規模も大きく、販売競争も厳しいと見られます。医薬品業界よりも医療機器業界のほうが「公正競争規約」などの自主規制ルールやその運用自体が“緩い”とみる専門家もいるようです。今後、同社以外の“不適切事例”もひょっとしたら出てくるかもしれません。

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感染経路が不明なCOVID-19症例は診断が遅れやすい/日本での調査

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の診断の大きな遅れ(long diagnostic delays:LDD)は、その後の患者隔離の効果が減少する可能性がある。わが国では当初、軽症の場合は発症から4日間待機という基準が示されたことから、茨城県土浦保健所の緒方 剛氏らは、曝露経路が不明なCOVID-19症例ではLDDが大幅に増加したと想定し、COVID-19症例のLDDの割合と曝露経路検出の関連を調査し報告した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌オンライン版2020年11月21日号に掲載。 本研究は、2020年3月22日(第12週の終わり)時点で30例を超えるCOVID-19症例が報告された8都道府県から、曝露経路に関するデータを取得できなかった東京と大阪を除外し、北海道、埼玉、千葉、神奈川、愛知、兵庫を対象とした。これらの道県で、症状発現日が2月24日~3月15日(第9~11週)のCOVID-19症例と、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2陽性例のうち、無症候性の症例と症状発現日が欠落している症例を除外した。LDDは、症状発現日からPCR検査によるSARS-CoV-2陽性の確認日までの期間が6日以上とした。 主な結果は以下のとおり。・364例のCOVID-19症例のうち、男性が190例(52%)、60歳以上が196例(54%)だった。曝露経路がわかっていた症例(経路既知例)は209例(57%)、曝露経路不明な症例(経路不明例)は118例(32%)、他国からの輸入症例(輸入例)は37例(10%)だった。・COVID-19患者の診断の遅れは平均6.28日(95%CI:5.8~6.8)で、標準偏差(SD)は4.57日(95%CI:4.1~5.0)だった(bootstrap)。・LDDの割合は、全体で51%、経路既知例で38%、経路不明例で65%、輸入例で73%だった。9週目に症状発現した症例と比較したLDDの調整オッズ比は、10週目に発現した症例で0.31(95%CI:0.170~0.58)、11週目に発現した症例で0.17(95%CI:0.090~0.32)だった。・経路既知例と比較したLDDの調整オッズ比は、経路不明例で2.38(95%CI:1.354~4.21)、輸入例で3.51(95%CI:1.418-8.75)だった。調整オッズ比は、愛知県の症例よりほかの5道県の症例で有意に高かった。 著者らは「曝露経路が不明な患者のLDD割合は65%であり、経路既知例よりも有意に高かった。症状発現から早期のPCR検査とPCR検査実施能力の強化が推奨される。また、COVID-19患者数のその後の増加に対するLDDの影響を検討するために、さらなる調査が必要」と結論している。

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約6割が第3波の原因はGo to関係と回答/アイスタット

 冬の到来を迎え新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、いわゆる「第3波」への対応が早急に模索されるとともに、全国的な感染患者、陽性者の増加が懸念されている。 株式会社アイスタット(代表取締役社長 志賀 保夫)は、11月24日に「COVID-19 第3波に関するアンケート調査」を行った。 アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール“Freeasy”に登録している会員で20歳~69歳、北海道、東京都、大阪府のいずれかの居住者を対象に調査を実施したもの。 同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2020年11月24日対象:セルフ型アンケートツール“freeasy”の登録者300人(20歳以上)アンケート結果の概要・新型コロナウィルス感染症拡大が「怖い」と回答した割合を経過月でみると、今回の第3波(11月24日)は76.7%で、第1回(3月20日)の69.7%より上回ったものの、第2回(4月20日)の92.0%、第3回(5月20日)の81.0%より低かった。・第3波が起きたと思う理由1位は、「Go to eatやGo to トラベルキャンペーンの開始」と半数(58.0%)以上が回答した。・第3波防止のために自粛要請や緊急事態宣言を出した方が良いと思う割合は55.7%だった。・新型コロナウィルス感染症の予防対策を「実施している」と回答した割合を経過月でみると、今回の第3波(11月24日)は79.7%で、第1回(3月20日)の58.7%より上回ったものの、緊急事態宣言中の第2回(4月20日)の84.7%、第3回(5月20日)の83.0%より低い結果だった。アンケート結果の詳細 「COVID-19の第3波についてどう思うか」という質問(11月24日時点)では、「非常に怖い」が39.7%で最も多く、「非常に怖い」「やや怖い」を足し合わせた「怖い」の割合でみると76.7%で、約8割に近い回答者が「怖い」と思っていることがわかった。属性別でみると「非常に怖い」を回答した割合は「60代・女性・既婚・北海道」で最も多い結果となった。 「COVID-19が拡大し始めた(第3波到来)と思う理由」という質問では、「Go to eatやGo to トラベルキャンペーンの開始」が58.0%で最も多く、次に「空気が乾燥する季節になってきたから」が57.3%、「気候が寒くなってきたから」が49.3%と続いた。「COVID-19(第3波)防止のために、国や自治体が警戒レベルをあげ、自粛要請や緊急事態宣言を出した方が良い思うか」という質問では、「出した方が良いと思う」が34.7%で最も多く、「すぐに出した方が良いと思う」「出した方が良いと思う」を足し合わせた「出した方が良い」の割合でみると55.7%を示し、過半数を越えた。 「COVID-19拡大の収束は、いつぐらいだと思うか」という質問では、「2022年以降」が46.0%で最も多く、約5割弱の人が1年以上は現在の状況が続くという結果だった。 「COVID-19の予防対策を実施しているか」を5段階評価で聞いたところ、「やや対策を実施している」が41.7%で、最も多い結果だった。また、「きちんと実施」「やや実施」を足し合わせた「実施」の割合は79.7%を示し、過半数を超える人が何らかの予防対策を実施していた。 「具体的にCOVID-19の予防対策」としては、「手洗い」が87.7%で最も多く、次に「マスク着用」が86.3%、「アルコール・エタノール消毒の利用」が70.0%と続いた。 「現在のCOVID-19の予防対策の意識は、緊急事態宣言のときと比べてどうか」を5段階評価で聞いたところ、「きちんと予防対策」「やや予防対策」が共に36.0%で、最も多く、「きちんと予防対策」「やや予防対策」を足し合わせた「対策している」の割合は72.0%で、約7割は緊急事態宣言のときと変わらず、意識して予防対策をしている結果だった。 「仮にPCR検査を受けたとき、免疫(陽性)があると思うか」という質問では、「わからない」が49.7%と最も多く、「ないと思う」が39.3%と続いた。

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第33回 日医・中川会長「社会保障のやさしさがない」75歳以上の患者負担、議論保留

<先週の動き>1.日医・中川会長「社会保障のやさしさがない」75歳以上の患者負担、議論保留2.地域医療構想、一人当たり医療費の地域差半減を/経済財政諮問会議3.年末年始に連絡可能な新型コロナ相談窓口の公表などを都道府県に要請/厚労省4.常勤医師の不在、秋田の介護老人保健施設の開設取り消し5.生殖補助医療の民法特例法案が成立、提供卵子でも産んだ母親と親子に6.外来機能報告制度、医療計画の見直しで2022年から開始1.日医・中川会長「社会保障のやさしさがない」75歳以上の患者負担、議論保留12月2日、「第15回 国民医療推進協議会総会」がテレビ会議システムにて開催され、後期高齢者の患者負担割合2割への引き上げについて、「慎重に対応するよう、強く要望する」との決議文が採択された。この日の総会には、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会など41団体が参加した。日医・中川会長は「このような時期に後期高齢者の患者負担割合を1割から倍にするという議論事態が社会保障としてのやさしさをまったく感じられない」と強調した。これにより、12月4日に開催される予定であった全世代型社会保障検討会議が取りやめになった。政府が求める年収170万円以上の人を対象とする方針に対し、公明党は年金生活者である高齢者にとっては負担が大き過ぎるとして、年収240万円以上とするよう求めていた。政府は今週明けに、「全世代型社会保障検討会議」を開いて結論を出す予定だが、来年は引き上げの対象範囲や実施時期などで、さらに議論が重ねられる見込み。(参考)国民医療推進協議会 後期高齢者の患者負担割合で決議「慎重に対応を」(ミクスonline)75歳以上の医療費2割負担 対象範囲めぐり調整難航(NHK)2.地域医療構想、一人当たり医療費の地域差半減を/経済財政諮問会議政府は4日、「経済財政諮問会議」を開催した。社会保障について、経済・財政一体改革の推進により、一人当たり医療・介護費の地域差縮減を求める資料が提示された。地域医療構想の実現には、後発医薬品の使用割合の上昇などを必須目標として医療費適正化計画が盛り込まれ、目標達成のために都道府県へのインセンティブ強化、毎年度の医療費見込みの改訂、保険者協議会の役割強化などを求めている。田村厚生労働大臣からは、2024年度からの第4期医療費適正化計画に向け、都道府県の意見を聞きながら、国と地方が連携し医療費の適正化のために取り組む事項や効果的なPDCA管理ができる新たな仕組みなどについて検討を行い、医療等データの利活用、介護ロボット、ICTなどの活用推進を通して、医療・福祉サービスの生産性向上などを検討することが発表された。2022年度以降の後期高齢者の増加による社会保障費の急増対策として、今後もさまざまな政策立案が進むだろう。(参考)諮問会議 医療費の地域間格差是正はデータの可視化から 医療費適正化計画に後発品使用割合など明示(ミクスonline)令和2年 第18回 経済財政諮問会議 議事次第・資料(内閣府)3.年末年始に連絡可能な新型コロナ相談窓口の公表などを都道府県に要請/厚労省厚生労働省は2日に、新型コロナウイルス感染症対策推進本部などから各都道府県ならびに保健所設置市に対して、年末年始は例年の対応以外に、発熱患者などへの診療・検査を担う医療機関や救急・入院患者の受け入れ医療機関について、十分な医療提供体制を整備できるよう、各地の医療機関や医師会などと事前に調整を行っておくことを求める事務連絡を発出した。年末年始の受診、電話相談、受診調整に対応可能な医療機関を事前に調整のうえ、確保しておくこと。また、発熱患者等が円滑に相談できるよう、年末年始に連絡可能な相談窓口などの公表を行うことを要請している。発熱患者などが医療機関を受診した場合の流れについては、2020年10月16日付けの事務連絡も参考にするように求めている。(参考)年末年始に向けた医療提供体制の確保に関する対応について(令和2年12月2日 事務連絡)(厚労省)次のインフルエンザ流行に備えた発熱患者等が医療機関を受診した場合の流れについて(令和2年10月16日 事務連絡)(同)4.常勤医師の不在、秋田の介護老人保健施設の開設取り消し3日、秋田県は、介護老人保健施設「男鹿の郷」が、2億4,000万円の介護報酬を不正受給していたため、施設の開設許可を取り消した。処分を受けた施設は、介護保険法により老健施設で定められる常勤医師の勤務時間(1週間当たり32時間以上)に従わず、2018年2月から今年6月まで、医師の勤務時間が十数時間と短時間であったにもかかわらず、常勤と偽って請求し、不正受給を受けていた。(参考)介護報酬2億4千万円を不正受給 男鹿の老人保健施設(秋田魁新報)5.生殖補助医療の民法特例法案が成立、提供卵子でも産んだ母親と親子に第三者から精子や卵子の提供を受けて、生殖補助医療によって子供を授かった場合の親子関係を定める民法特例法案が4日、衆院本会議で可決・成立した。生殖補助医療によって、親子関係が不安定にならないよう法律で定めるのが狙いで、議論を重ねてきた。法案成立により、卵子提供では産んだ女性が母、精子提供では夫が父となる。親子関係部分の施行は公布から1年後から。なお、生まれた子が自分の出自を知る権利や、代理母出産をめぐる規制については、今後おおむね2年をめどに必要な法制上の措置を講じるとされた。海外で認められている生殖補助医療の対象の範囲に同性パートナーや独身女性を含むのかなど、今回の法案には含まれなかった論点についてはさらに議論が必要となる。(参考)社説:生殖医療法成立 ルール整備の出発点にしたい(読売新聞)生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案(衆議院)6.外来機能報告制度、医療計画の見直しで2022年から開始3日に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」で、外来機能報告制度について「外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等に関する報告書」が取りまとめられ、2022年度から開始されることが承認された。現在、各医療機関について医療機能情報提供制度もあるが、患者側から見ると、外来医療の機能についての情報が十分に得られにくいこと、再診患者の逆紹介が十分に進んでいないことなどがある。一部の医療機関の外来患者が多くなることによる、患者の待ち時間や勤務医の外来負担などの課題を解消するため、地域での協議で各医療機関が「手上げ」して、「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」を明確化することになった。対象となる医療資源を重点的に活用する外来としては(1)医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来(2)高額等の医療機器・設備を必要とする外来(3)特定の領域に特化した機能を有する外来(紹介患者に対する外来等)が想定されている。病床機能報告と同様に、外来機能報告制度にも診療レセプト情報や特定健診等情報データベース(NDB)を活用して、国から各医療機関に対して、当該医療機関の「医療資源を重点的に活用する外来」に関する実施状況のデータを提供することになっている。今回の報告書は、次回の社会保障審議会医療部会に報告され、医療法等の改正となる見込み。(参考)外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等に関する報告書(厚労省)第24回 医療計画の見直し等に関する検討会(同)

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第36回 PfizerやModernaの第III相試験成功でmRNAワクチンの展望が開けた

先月11月の早くに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防ワクチン2つの期待の持てる発表がありました。広く報じられている通り、1つはPfizer/BioNTech、もう1つはModernaの開発品のどちらも第III相試験の途中解析でCOVID-19の9割超を防いだのです。2つのワクチンはどちらも90%超の有効性を引き出したことに加えて別の共通項も有します。それは成分がどちらもメッセンジャーRNA(mRNA)ということです。投与されたmRNAは体内で細胞にウイルスタンパク質を作らせ、そのタンパク質の起源であるウイルスへの免疫反応を備わらせます。理論的にはmRNAで作れないタンパク質はありません。それにmRNAは昔なじみのワクチンで使われている弱毒化ウイルスやタンパク質より手軽に製造でき、有望視されてきました。mRNAワクチンの端緒となる取り組みは30年以上前から続いており、すでに1990年にはDNAやRNAをマウスの筋肉に注射してタンパク質を作らせることに成功したことを米国の研究チームが報告しています1)。しかし単にmRNAを注射しただけではすぐに分解されてしまい、タンパク質はほんの僅かしか作られません。それにRNAはそれが生み出すタンパク質への目当ての免疫反応とは別の余計な免疫反応の心配があります。ペンシルバニア大学のmRNAワクチン研究専門家Norbert Pardi氏によるとRNAを単に注射したのでは非常に深刻な炎症を引き起こしかねません2)。2つの技術の進歩がそれらの課題を克服し、Pfizer/BioNTechやModernaのCOVID-19ワクチン誕生へと通じるmRNAワクチン開発の道を開きました。1つは体内でタンパク質をより作り、mRNA自体への免疫反応を生じ難くするようにRNA構成要素・ヌクレオシドを加工する技術が生み出されたことです。免疫分野ジャーナル最高峰のImmunity誌に2005年に報告されたその成果3)は仲間内では大手柄となっているとInternational Society for Vaccinesの会長Margaret Liu氏は科学ニュースTheScientistに話しています2)。2つめの進歩はmRNAを脂質ナノ粒子(LNP)と呼ばれる脂肪の細かな泡に封入して体内で分解されにくくする技術が開発されたことです4)。LNPのおかげで細胞内へのmRNAの輸送が改善しました。それら技術の甲斐あってmRNAワクチンは人へ投与できるまでに至り、小規模ながら狂犬病・インフルエンザ・ジカウイルス(ZIKV)などへのmRNAワクチンの試験が実施できるようになりました。しかしそれらmRNAワクチンの先駆けはどういうわけかCOVID-19へのPfizer/BioNTechやModernaのmRNAワクチンほどの効果はなく、なぜCOVID-19へのそれらmRNAワクチンがとりわけ有効なのかは今後調べていく必要があります。また、COVID-19へのmRNAワクチンの安全性も隈なく調べねばなりません。それにmRNAワクチンを世界の隅々に届けるのには保冷設備の準備も必要です。ModernaのワクチンmRNA-1273は2~8℃で30日間、マイナス20℃なら最大6ヵ月安定なので標準的な冷蔵/冷凍庫があれば事足りそうですが、Pfizer/BioNTechのmRNAワクチンBNT162b2はいまのところマイナス70℃もの低温で保管しなければなりません。そのような解決が必要な課題があるとはいえ、Pfizer/BioNTechやModernaの開発品の第III相試験のひとまずの成功はmRNAワクチンの明るい展望を切り開きました。英国はPfizer/BioNTechのBNT162b2を数日以内に承認し、注文済みの4,000万回分の投与が早ければ今月7日から始まると同国の経済紙ファイナンシャル・タイムズ(FT)が先月28日に報じています5)。英国はModernaのワクチンの段階的承認審査も進めており、合計700万回投与分を注文済みです6)。mRNAワクチンはCOVID-19をはじめとする感染症への使用に加えてがんへの免疫反応を引き出す用途の開発も複数進んでおり7)、今後は多くの企業がmRNAワクチンに関心を示すだろうとCOVID-19ワクチン助成組織・Coalition for Epidemic Preparedness Innovations(CEPI) の企画/技術リーダーNick Jackson氏は言っています2)。参考1)Wolff JA, et al. Science. 1990 Mar 23;247:1465-8.2)The Promise of mRNA Vaccines / TheScientist3)Kariko K, et al. Immunity. 2005 Aug;23:165-75.4)Reichmuth AM, et al. Ther Deliv. 2016;7:319-34.5)UK set to approve Pfizer-BioNTech Covid vaccine within days / FINANTIAL TIMES6)Moderna Announces Amendment to Current Supply Agreement with United Kingdom Government for an Additional 2 Million Doses of mRNA Vaccine Against COVID-19 (mRNA-1273) / businesswire7)Pardi N, et al. Nat Rev Drug Discov. 2018 Apr;17:261-279.

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COVID-19と精神疾患、相互に発症リスク高める

 COVID-19患者において精神疾患の後遺症リスクが高く、また精神疾患がCOVID-19の独立したリスク因子である可能性が、英国・オックスフォード大学のMaxime Taquet氏らによる電子健康記録ネットワークコホート研究で示唆された。Lancet Psychiatry誌オンライン版2020年11月9日号に掲載。 本研究は、米国の54施設の患者6,980万人の電子健康記録から匿名化データを収集しているTriNetX Analytics Networkを使用した。TriNetXには2020年1月20日~8月1日にCOVID-19と診断された6万2,354人のデータが含まれ、COVID-19および他のさまざまなイベントを発症した患者コホートを作成し評価した。傾向スコアマッチングを用いて、COVID-19のリスク因子による交絡と重症度を調整した。COVID-19診断後14〜90日における精神疾患、認知症、不眠症の発症率とハザード比(HR)を調べた。 主な結果は以下のとおり。・精神疾患歴のない場合、COVID-19の発症は他の6イベントと比較して、診断後14~90日における精神疾患の発症率の増加と関連した(すべてp<0.0001)。 - インフルエンザに対するHR:2.1、95%CI:1.8~2.5 - 他の呼吸器感染症に対するHR:1.7、95%CI:1.5~1.9 - 皮膚感染症に対するHR:1.6、95%CI:1.4~1.9 - 胆石症に対するHR:1.6、95%CI:1.3~1.9 - 尿路結石症に対するHR:2.2、95%CI:1.9~2.6 - 大きな骨の骨折に対するHR:2.1、95%CI:1.9~2.5・不安障害、不眠症、認知症のHRが最も高かった。・COVID-19診断後14〜90日における何らかの精神疾患の発症率は18.1%(95%CI:17.6~18.6)、うち新規発症では5.8%(95%CI:5.2~6.4)であった。同期間における認知症の新規発症率は、65歳以上で1.6%(95%CI:1.2~2.1)であった。・前年に精神疾患と診断された人は、COVID-19発症率が高かった(相対リスク:1.65、95%CI:1.59~1.71、p<0.0001)。このリスクはCOVID-19の既知の身体的リスク因子とは独立していたが、社会経済的因子による残留交絡の可能性を排除できない。

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手洗い・マスク着用、一般市民は何割が実施?/感染症に関する意識・実態調査

 日本感染症学会(理事長:舘田 一博)と日本環境感染学会(理事長:吉田 正樹)は、感染症予防連携プロジェクト「FUSEGU2020」の活動として「感染症に関する意識・実態調査」と題し、首都圏に住む20~60代の男女1,000名を対象としたアンケート調査を実施。その結果、感染症予防の基本対策(手洗い、マスクの使用、手の消毒)を多くの人が実施し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を機にほかの感染症に対する関心が高まった人が6割以上に上ることが明らかとなった。手洗い87.7%、マスク使用87.4%という意識・実態調査の結果 この感染症に関する意識・実態調査は、COVID-19拡大の大きな波を経て手洗いやマスクの使用など感染症予防のための行動が浸透しているか、2~3月に実施した調査結果と比較し実態を把握することとともに、東京オリンピック・パラリンピック開催などに向け、発生・流行する可能性のあるさまざまな感染症に対する意識を調べることを目的に実施された。 手洗いやマスクの使用など、感染症に関する意識・実態調査の主な結果は以下のとおり。・アンケートはWEB調査で、2020年10月9日~12日に実施された。・感染予防策として実施していたのは、手洗いが87.7%、マスクの使用が87.4%、手の消毒が65.9%だった。・感染予防策それぞれについて「大切である」との意識は女性で高く、若い男性で低い傾向だった。・自身に発熱がある場合、「人にうつる病気であることを意識する」人が4.5割から7割に増加した。・COVID-19などの「感染症をうつされるかもしれない」と警戒心が引き締まるのは、同居する家族12.4%、別居している家族25.6%、友人33.9%、職場の同僚 39.6%で、家族間の意識が低い傾向だった。・ほかの感染症に対する関心が高まったという人が6割以上だった。・感染症への関心が高まる一方で、COVID-19以外に対する認知・理解は進んでいなかった。・ワクチン接種を感染症の予防手段の1つとして考えている人は6割以上だった。・実際にワクチン接種を受けたり、検討したりした人は約4割にとどまった。・インフルエンザ以外の感染症については、ほとんどの人がワクチン接種を受けていない、もしくは検討していなかった。

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第32回 新型コロナと向き合う医療従事者を守る制度が発足

<先週の動き>1.新型コロナと向き合う医療従事者を守る制度が発足2.財政制度等審議会、受益者と負担のバランスを求める建議を提出3.政府、後期高齢者の窓口2割負担へ見直しに議論を加速4.経済財政諮問会議で、厚生労働大臣、令和3年度介護報酬改定に向けた方針を発表5.コロナ感染拡大第3波、患者団体から要望書相次ぐ6.医療計画の見直し、新興感染症に対する医療を6事業目に追加1.新型コロナと向き合う医療従事者を守る制度が発足新型コロナウイルス感染に対応する医療機関で働く医療従事者を支援する「新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度」が新しく11月より発足した。この制度は、新型コロナウイルスと向き合う医療従事者の支援として寄せられた寄付金を活用して、万が一コロナウイルスに感染した場合でも一定の収入を補償することを目的に、新型コロナウイルス感染症患者に対応した医療従事者が感染し休業した場合の支援制度(医療従事者支援制度)に対する補助を要望して発足したもの。医療機関の開設者・管理者から加入の申し込みによって、政府労災などの認定を受けて4日以上休業した場合、休業補償保険金20万円、死亡すれば死亡補償金最大500万円を受け取れる。保険料は医療従事者1名あたり1,000円/年と負担も軽く、医療資格者以外も補償対象となる。加入できるのは国内の病院や診療所(共に保険医療機関)、介護医療院、助産所、訪問看護ステーションで、募集期間は4期に分かれ、最終締め切りは2021年2月15日。詳細は下記を参照されたい。(参考)日本医療機能評価機構新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度特設サイト2.財政制度等審議会、受益者と負担のバランスを求める建議を提出財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会は、11月25日に2021年度予算の編成に向けて「秋の建議」をまとめ、麻生財務相に提出した。この中で、社会保障については、2022年に団塊の世代が後期高齢者となることを見据え、給付が高齢者中心・負担は現役世代中心となっている患者負担の仕組みの見直しを求め、後期高齢者の自己負担を、可能な限り広範囲で8割給付(2割負担)の導入と現役世代の拠出金負担の軽減を求めている。また、薬価については2021年度から毎年改定を行うため、初年度にあたっては全品改定の実施を求めている。このほか都道府県医療費適正化計画の見直し、国保の都道府県単位化の趣旨の徹底やデジタル化の推進、医療扶助については、頻回受診や長期入院への対策を求める内容となっている。(参考)令和3年度予算の編成等に関する建議3.政府、後期高齢者の窓口2割負担へ見直しに議論を加速11月24日、菅内閣は全世代型社会保障検討会議を首相官邸で開催し、75歳以上の後期高齢者が医療機関で支払う窓口負担をめぐる問題について議論を行い、1割負担から負担増となる後期高齢者の対象範囲について、菅総理からは「能力に応じた負担」について、年内に取りまとめる最終報告を求めた。日本医師会からは、後期高齢者は1人当たり医療費が高いので、患者負担の割合はすでに十分に高いとし、患者負担の引き上げによって、受診控えや負担増による必要な医療を遠慮する可能性を指摘していた。厚生労働省は11月26日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、医療保険制度改革について討論し、現状の75歳以上の後期高齢者医療を支援するために、現役世代の保険料で負担を見直さないままでいると、今年度6兆8,000億円が5年後には8兆2,000億円になるという見通しを示した。会議では、現状の高齢者医療の持続可能とするために、現役世代の負担軽減を図る改革は待ったなしの課題としており、現行の窓口負担1割のままでは現役世代の負担が急増することから先送りは認めない、とする意見も出たものの、コロナ感染拡大の中、国民の不安を増す制度改正について異論が出され、結論は出ないまま引き続き検討を行なうこととなった。(参考)全世代型社会保障検討会議(第11回)配布資料 令和2年11月24日第135回社会保障審議会医療保険部会 資料 令和2年11月26日4.経済財政諮問会議で、厚生労働大臣、令和3年度介護報酬改定に向けた方針を発表11月27日、内閣府は経済財政諮問会議を開催し、この中で田村 憲久厚生労働大臣が医療・介護分野の取り組みを発表した。コロナ感染拡大下でも「地域医療構想」は、基本的な枠組み(病床必要量の推計等)を維持した上で、着実に取り組みを実施し、病床機能再編支援制度等に消費税財源を充当するなどの対応を実施するとした。また令和3年度介護報酬改定については、感染症や災害への対応力強化、地域包括ケアシステムの推進、自立支援・重度化防止の取組の推進、介護人材の確保・介護現場の革新を実現し、制度の安定性・持続可能性の確保を求めるために改訂を行っていくことを明らかにした。このほかオンライン資格確認、オンライン診療、後発薬の使用促進などについて述べた。(参考)第17回経済財政諮問会議  田村臨時議員提出資料 令和2年11月27日 令和3年度予算に向けた社会保障の課題・取組と今後の雇用政策の方向性第17回経済財政諮問会議 令和2年11月27日 会議資料5.コロナ感染拡大第3波、患者団体から要望書相次ぐ急速な新型コロナウイルスの感染拡大により、大学病院などの病床が逼迫しつつあることなどを背景に、がん患者や難病患者の団体は、治療継続が困難にならないよう、国に対策を求める要望書を提出した。2020年11月25日は難病患者の団体である日本難病・疾病団体協議会が、27日には全国がん患者団体連合会が、国に対し「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急要望書」を提出している。要望書では、感染対策強化と、手術や検査、オンライン診療の実施と拡充を求め、コロナ対策の病床確保のためにがん患者が転院せざるを得ない状況を回避するために、速やかに必要な施策をとることを求める内容となっている。(参考)全国がん患者団体連合会 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急要望書2020年11月27日日本難病・疾病団体協議会 緊急要望書2020年11月25日6.医療計画の見直し、新興感染症に対する医療を6事業目に追加厚生労働省は11月19日に「医療計画の見直し等に関する検討会」を開催し、現行の医療計画の5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患.)・5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児救急医療を含む小児医療)に、新たに「新興感染症等の感染拡大時における医療」への対応を6事業目として加えることで合意した。今後は、医療法の改正し、2024年度に策定する第8次医療計画に盛り込まれることになる。また「外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等について」も議論され、医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関を明確にするために、各医療機関から都道府県に、外来機能のうち、「医療資源を重点的に活用する外来」(仮称)に関する医療機能の報告(=外来機能報告〈仮称〉)を行うこととし、これにより、地域ごとに、どの医療機関で、どの程度、「医療資源を重点的に活用する外来」が実施されているかの明確化を図ることになる。(参考)第23回 医療計画の見直し等に関する検討会 令和2年11月19日

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