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新型鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染による死亡3例の臨床像/NEJM

 中国・疾病管理予防センターのRongbao Gao氏らは、2013年3月に新型の鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスに感染していることが同定された3例の患者について、臨床像、患者背景、ウイルス学的情報について報告した。3例は上海および安徽の住民で、いずれも死亡に至った感染例である。NEJM誌オンライン版2013年4月11日号掲載の報告より。N9亜型のヒトへの感染報告は初めて H7ウイルスの鳥への感染はこれまでにも世界各国で報告されているが、同型のヒトへの感染が報告された高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)ウイルス例の報告は、オランダで急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を併発し死亡に至ったH7N7ウイルスのみであったという。その発症も1例のみで、H5N1ウイルス感染による累積死亡率約60%(2003年以降)とは対照的であった。アジアではH7ウイルスの哺乳類への感染報告はほとんどなく、N9亜型のヒトへの感染報告はこれまで世界中どこからもなかったという。高熱、咳、呼吸困難の症状が共通 中国でH7N9ウイルス感染が同定された3例は、いずれも急速に進行した下気道感染症がみられ、発熱、咳、呼吸困難の症状が共通していた。具体的には、患者1(上海87歳男性、COPD・高血圧)は、初期には咳と痰の症状を報告し、その1週間後に高熱と呼吸困難を発症。患者2(上海27歳男性、HBs抗原陽性B型肝炎歴)は高熱と咳で入院。患者3(安徽35歳女性、うつ病・B型肝炎感染症・肥満歴)も高熱と咳を呈した。患者1は症状発現前2週間に生きた鳥と接した痕跡はなかったが、患者2は鳥を含む屠殺処理場のある食肉市場で働く豚肉販売業者で、患者3は発症1週間前に鳥肉市場を訪れていた。 その他の特徴的な臨床像としては、胸部X線検査で、びまん性の陰影および浸潤影が認められたこと、合併症としては3例ともにARDSを呈し、患者3は敗血症性ショックと急性腎障害を呈している。 3例には、抗菌薬併用療法、糖質コルチコイド、免疫グロブリン静注が行われた。抗ウイルス薬治療は発症後6~7日後に開始された。しかし患者1はICU搬送後に挿管、発症から13日後に難治性低酸素血症で死亡。患者2はICU入室後48時間後にARDSの進行で挿管となり4日後に難治性低酸素血症で死亡した。患者3は発症後6日後にARDSと敗血症性ショックを発症し、ICU入室後ECMO(体外式膜型人工肺)が開始されたがその後死亡(4月9日)に至ったという。ウイルスはヒトに感染しやすく変化? 3例の感染ウイルス同定は、咽頭スワブ法で入手した検体を用いて、リアルタイムRT-PCR法、ウイルス培養、塩基配列解析にて行われた。その結果、3例ともに共通した新型の再集合体鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスが同定された。また、塩基配列解析により、3例のウイルスとも鳥由来のものであること、内部遺伝子として鳥インフルエンザA(H9N2)由来の6つの遺伝子を有していることが明らかになり、3例のウイルスからは赤血球凝集素(HA)遺伝子に突然変異体や5つのアミノ酸欠損が認められたことなども報告されている。

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"かぜ"と"かぜ"のように見える重症疾患 ~かぜ診療の極め方~

vol.1 “かぜ”のような顔をしてやってくる重症患者vol.2 “かぜ”をグルーピングしよう !vol.3 気道症状がない“かぜ”に要注意 ! (E)高熱のみ型vol.4 気道症状がない“かぜ”に要注意 !    (F)微熱・倦怠感型 (G)下痢型 (H)頭痛型(髄膜炎型)vol.5 積極的に“かぜ”を診断する   (A)非特異的上気道炎型(せき、はな、のど型)vol.6 どうする ? 抗菌薬 (B)急性鼻・副鼻腔炎型(はな型)vol.7 どうする ? 抗菌薬 (C)急性咽頭・扁桃炎型(のど型)vol.8 怖い咽頭痛vol.9 レントゲン撮る? 撮らない? (D)気管支炎型(せき型)vol.10 フォローアップを忘れずに !column1 悪寒戦慄とCRP column2 プロカルシトニンの使い方 column3 “かぜ”に抗菌薬は効くのか ? かぜ診療のプロになろう !「かぜ」。クリニックや一般外来でこれほど多く診る疾患があるでしょうか。ところが、この“かぜ”についての実践的な指導を受けた医師はほとんどいないのです。たかが“かぜ”と侮る事なかれ。命に関わる病気が隠れていることもあれば、安易に抗菌薬を処方すべきではない場合も多々あります。これを見れば、あなたも「かぜ診療」のプロに !薬剤師、看護師の皆さんにもオススメ !ドクターだけでなく、コメディカルの皆さんにも知って欲しい知識です。「かぜをひいた」と言う患者さん、薬が欲しいと言う患者さんに適切なアドバイスができるようになります !理解を深める確認テスト付 !各セッションごとの確認テストで知識が身についたかチェックできます。【収録タイトル】vol.1 “かぜ”のような顔をしてやってくる重症患者“かぜ”だと思って来院する患者さんは、やはりほとんどがウイルス性上気道炎。しかしその中に、まれに肺炎や髄膜炎、ときには心内膜炎、急性喉頭蓋炎、あるいは肝炎やHIVであることも。それはまるで広大な地雷原を歩いていくようなもの。その地雷を避けるにはどうしたらいいのでしょう?気鋭の山本舜悟先生が明解に解説します。vol.2 “かぜ”をグルーピングしよう !重篤な疾患を見逃さないために“かぜ”をタイプ別に分け、リスクの高い患者さんをグルーピングしましょう。8つのタイプに分類すれば、それぞれにどんな危険な疾患が隠れているのか、抗菌薬はどうしたらいいのか、すっきり理解でき、“かぜ”と戦いやすくなります。vol.3 気道症状がない“かぜ”に要注意 ! (E)高熱のみ型“かぜ”の中で一番気をつけておきたいのはこの“高熱のみ型”です。もちろんインフルエンザやウイルス感染であることが多いのですが、実は危険な菌血症・敗血症が隠れていることも。気道症状がないのに軽々しく“かぜ”と言わない。これが鉄則です。vol.4 気道症状がない“かぜ”に要注意 ! (F)微熱・倦怠感型 (G)下痢型 (H)頭痛型(髄膜炎型)気道症状がない“かぜ”は、実は“かぜ”でない疾患が隠れていることがあります。微熱と倦怠感が続く“かぜ”、いわゆるお腹の“かぜ”、頭痛と発熱だけの“かぜ”。これらには要注意。それぞれどんな疾患を考えどう対応したらいいか解説します。vol.5 積極的に“かぜ”を診断する (A)非特異的上気道炎型(せき、はな、のど型)“かぜ”は除外診断。重篤な疾患を除外して初めて診断できるもの。確かにそうなのですが、自信を持ってこれは“かぜ”だといえる病態もあります。「せき、はな、のど」に同時に症状があれば、これは、いわゆる“かぜ”、つまりウイルス性上気道炎。抗菌薬は不要です !vol.6 どうする ? 抗菌薬 (B)急性鼻・副鼻腔炎型(はな型)副鼻腔炎自体の診断はそれほどむずかしくないでしょう。しかし、それが「細菌性なのか、ウイルス性なのか」、「抗菌薬は必要なのか不要なのか」については迷うところ。これらを臨床的にどう判断するかを解説します。vol.7 どうする ? 抗菌薬 (C)急性咽頭・扁桃炎型(のど型)咽頭炎で頭を悩ませるのは抗菌薬を使うかどうかです。従来は、「A群溶連菌による咽頭炎だけを抗菌薬治療すればいい」と言われてきましたが、今日的にはそれでいいのしょうか ?  Centorの基準を参考に、誰にどんな抗菌薬を使うか詳しく解説します。vol.8 怖い咽頭痛咽頭痛を訴える患者さんには、ときとして非常に危険な疾患が隠れていることがあります。扁桃周囲膿瘍、そして急性喉頭蓋炎です。これらを見逃さないためのレッドフラッグを覚えましょう。喉頭ファイバーが使えないときのvallecula signも紹介します。vol.9 レントゲン撮る ? 撮らない ? (D)気管支炎型(せき型)咳を主体とする気管支炎型の“かぜ”は、肺炎を疑って胸部X線を撮るか撮らないかが悩ましいところです。Diehrのルールなど参考にすべきガイドラインもありますが、医師自身による判断が重要です。どのように考えたらいいのか解説します。vol.10 フォローアップを忘れずに !ここまでの話でかなり“かぜ”を見極められようになったと思いますが、それでも除外診断である“かぜ”を100%診断するのは不可能です。よって必要になるのはフォローアップ。「また来てください」だけでなく、具体的な指示をどうしたらいいか、実例を元に解説します。column1 悪寒戦慄とCRPたいていの血液検査で測られているCRP。感度や特異度はそれほど高いわけでなく、場合によっては計測自体に意味がないこともあります。しかし、使いようによっては思わぬピットフォールを避ける武器にもなります。悪寒戦慄と合わせて、CRPの使い方を覚えましょう。column2 プロカルシトニンの使い方最近話題のプロカルシトニン。新しい指標としてさまざまな議論がなされていますが、今現在の臨床ではどのように使えるのでしょうか ? 診療の現場での実際の使い道を解説します。column3 “かぜ”に抗菌薬は効くのか ?“かぜ”に抗菌薬、実は効果があります。え ? と思うかも知れませんが、だからといって“かぜ”に一律の抗菌薬を処方することは考えものです。どんな人に、どれくらいの効果があるのかに注目しましょう。NNTの概念で抗菌薬の有用性を検証します。

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関節疾患にみる慢性疼痛

関節痛の概要・特徴痛みを呈する関節で最も多いのが膝関節、次いで肩こりを含めた肩関節が多い。股関節では骨形成不全などがあると痛みが発症するが、膝関節や肩関節に比べて頻度は低い。また、肩関節、手関節および肘関節の痛みの訴えはそれ以上に少なく、治療上も問題になることは多くない。関節痛の原因としては変形性関節症が最も多く、次に痛風、偽痛風、関節リウマチなどの炎症性関節炎、そして感染性関節炎となる。関節痛の多くは、慢性的なケースが多く、継続して痛みがあるか亜急性的に痛みが悪化する患者さんが多い。関節痛のリスク因子には、下肢(股関節、膝関節、足関節)のアライメントの異常(関節の歪み)や肥満、筋力低下がある。日本人にはO脚が多いため、膝の内側が摩耗しやすく、体重増や筋力低下により摩耗が進むと関節痛がさらに悪化するというのはその典型といえる。関節痛の原因関節痛についても、痛みの原因を明らかにし、その原因に対処していくことが必要である。変形性関節症の場合、過労時や荷重時の痛みが多く、安静時痛がない。ちなみに、安静時痛のある場合は、関節リウマチや痛風などの炎症性関節炎や細菌感染などの化膿性関節炎などのこともあるので注意が必要である。炎症性関節炎の場合、痛みの原因となる内科疾患を明らかにする必要がある。痛風であれば熱感や発赤が認められるが関節液の濁りは少なく、採血でCRPおよび尿酸値の高値が認められる。偽通風であれば関節液からピロリン酸が検出される。炎症性関節炎では、感染性関節炎と鑑別しにくい場合もある。化膿性関節炎では、熱感、発赤が非常に強く、白血球は10万レベルになる。一方、炎症性関節炎であれば上がっても白血球は数千から1万程度である。また、化膿性関節炎の関節液では白色の膿が確認されるが、炎症性関節炎の関節液は少し濁っている程度である。炎症性、感染性が除外された場合、単純X線所見と併せて変形性関節症と診断することになる。また、胆嚢疾患や心疾患などの内科疾患が原因で肩関節が痛む関連痛が報告されているが、整形外科に来院する場合もあるので注意が必要である。変形性関節症の特徴的X線所見骨棘形成関節裂隙の狭小化軟骨下骨の硬化関節裂隙の消失関節痛の治療変形性関節症はセルフリミティングな疾患であり、ある程度までしか進行せず自然治癒力が期待できるため治療の緊急性は少ない。NSAIDsで効果を期待できるため、治療初期の2週間ほどはNSAIDsを処方して様子をみて、運動療法を行う。長期にわたり鎮痛効果が必要な場合は、NSAIDsの長期服用による腎障害や胃潰瘍の発現を考慮し、弱オピオイド鎮痛薬の併用あるいは切り替えを検討する。また、変形性関節症ではX線の所見と痛みの程度は必ずしも一致せず、進行した例でも薬物療法や運動療法が有効な場合がある。関節破壊が進展し十分な保存療法を行っても症状の改善が得られず、患者さんの希望するレベルの生活に障害がある場合などは手術の適応を検討する。炎症性関節炎の場合、原因となる内科疾患、関節リウマチであればその治療を、痛風であれば尿酸値を下げるなど、その疾患の治療を行う。感染性疾患は治療に緊急性を要する場合が多い。たとえば化膿性関節炎では、関節破壊が進行し、さらに敗血症で死亡する危険があるため緊急手術を要する。運動療法の積極導入ある程度痛みが軽減したら、運動療法、筋力トレーニング、関節可動域改善のトレーニングを行う。痛みがあると、その部位の筋力が低下していることが多く、運動療法で筋力を回復するだけでも随分痛みが改善することが多い。変性疾患で軟骨が摩耗している変形性膝関節症であれば、むしろ運動療法することでが機能が回復するとされている1)。「痛み=安静」という意識を変え、症状改善のためには、少し痛みが残っていても動くことを勧めるのも治療選択肢であろう。代表的な運動療法としては、肩関節周囲のコッドマン体操や滑車体操、膝関節の大腿四頭筋訓練、股関節の股関節周囲筋筋力体操などがある。いずれの場合も運動療法を導入する際は、管理下の運動療法といって、PTや整形外科医の指導・監視下で行うことが基本であり、その際には、整形外科医との連携を図っていただくべきであろう。高齢者の肩の腱板断裂関節痛とは異なるが整形外科では高齢者の肩の腱板断裂という疾患が近年多くみられるため紹介する。この疾患は、急に肩が動かなくなり、夜も寝られない程の肩の痛みを訴える。しかしながら、単純X線検査では診断がつきにくく、内科からの紹介も多い。検査としてはドロップアームサインがある。腕を上げてバンザイはできるが、肩の腱板が切れているため腕をおろしてゆくと保持できず途中でドロップする。つまり、棚の上の物が取れなくなるが、腕をおろした状態では問題がないため字は書ける。治療として、NSAIDsで痛みをある程度軽減してから、手術療法が必要なければ運動療法により肩の可動域を保持する。症例ごとに最適の疼痛診療を目指す整形外科領域の疼痛の診療にはさまざまなピットフォールがあるが、どんな場合でも痛みの原因を明らかにし、それぞれの症例に適した診療が必要となる。また、疼痛患者さんはどの診療科を受診するかわからず、他診療科からの紹介も多い。整形外科と他診療科が連携して、患者さんの痛みをうまくコントロールしていくことが、超高齢化社会に入っていくこれからの医療には重要なのではないだろうか。参考文献1)岩谷 力 (監修)ほか 変形性膝関節症の保存的治療ガイドブック;メジカルレビュー社2006年

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整形外科領域にみる慢性疼痛

整形外科疼痛の特徴腰痛・関節痛といった整形外科領域の疼痛は慢性疼痛の3割以上を占め最も多い1)。なかでも腰痛が多く、肩および手足の関節痛がこれに続く2)。整形外科での痛みの発生頻度は年齢および性別により偏りがあるが、多くは変性疾患が原因となっていることから、50歳代頃から増加し60歳代、70歳代ではおよそ3割近くが痛みを訴える。高齢者においては、もはやコモンディジーズといっても過言ではないであろう。整形外科領域の痛みは慢性の経過をたどるものが多い。患者さんの訴えは「突然痛みが起こりました」と急性を疑わせるものが多いが、単純X線所見ではかなり時間経過した骨の変形が確認されることもしばしばであり、長期間にわたって徐々に進行し最終的に痛みが発症するケースが多いと考えられる。変性疾患の多くは荷重関節に生じ、加齢に伴い関節に痛みが起こる。日本人はO脚が多いため痛みは負荷がかかる膝関節に多くみられるのが特徴である。近年、食生活や生活習慣の変化に伴って肥満が多くなり、その傾向に拍車がかかっていることから、膝人工関節手術は年約10%の割合で増加している。また、肥満や運動不足との関係もあり、生活習慣病などの内科疾患との関連も深くなっている。一方、股関節の痛みは減少傾向である。出生時から足を真っすぐにしてオムツをしていた時代、日本人には臼蓋形成不全が多かったが、現在は紙おむつで足を開いている。その結果、臼蓋形成不全も先天性股関節脱臼も減少している。国民性の変化は整形外科治療に大きな影響をもたらしているといえるだろう。一昔前であれば、膝が曲がっていてもあきらめて治療を受けなかったが、今では膝が曲がっていると見た目も悪いし、痛いから手術したいという人が多くなっている。また、痛みがあれば家で寝ている人が多かったが、痛みを改善して運動や旅行をしたいなど積極的に治療を受ける患者さんが、多くなっている。慢性疼痛の病態慢性疼痛には、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、非器質性疼痛の三つの病態があるが、整形外科の患者さんでは約8割に侵害受容性疼痛の要素がみられる。疼痛の原因として多い変性疾患は軟骨の摩耗が原因であり、滑膜の炎症が併発して痛みを引き起こす。神経障害性疼痛も侵害受容性疼痛ほどではないが、整形外科領域でみられる痛みである。これは神経の損傷により起こる痛みであるが、以前はその詳細について十分に解明されておらず、また有効な治療薬がなかったため疼痛非専門医には治療が困難であった。しかし現在ではMRIなどの検査で診断可能であり、プレガバリンが末梢性神経障害性疼痛に効能・効果を取得したことにより、広く認知されてきた。侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛といった器質的疼痛のほかに機能性疼痛症候群がある。機能性疼痛症候群は諸検査で器質的所見や病理所見が明らかにできず、持続的な身体愁訴を特徴とする症候群である。その中には中枢機能障害性疼痛があり、線維筋痛症はその代表と考えられる。全身の筋肉、関節周囲などにわたる多様な痛みを主訴とし、種々の随伴症状を伴うが、その病態は明らかになっていない。治療アプローチ痛みの治療にあたっては、症状だけをみてに安易にNSAIDsで治療するのではなく、痛みの原因を明らかにすることが重要である。痛みの原因となるものには前述の変性疾患以外にも炎症性疾患や感染性疾患があるが、いずれによるものかを明らかにして、適切な評価と適切な原疾患の治療を行う。変性疾患の進行は緩徐であるため、極端にいえば治療を急がなくてもとくに大きな問題はない。炎症性疾患では、痛風やリウマチなど内科疾患の診断を行い、それぞれの適切な治療を速やかに行うことになる。感染性疾患は治療に緊急性を要し、中には緊急手術が必要となる場合もある。痛みの原因を調べる際には、危険信号を見逃さないようにする。関節疾患の多くは、触診、採血、単純X線検査などで診断がつき、内臓疾患との関連は少ないが、脊椎疾患では重大な疾患が潜在するケースがある。とくに、がんの脊椎転移は頻度が高く注意を要する。よって、高齢者で背中が痛いという訴えに遭遇した場合は、結核性脊椎炎などに加え、がんも念頭にておく必要がある。さらに、高齢者で特定の場所に痛みがあり、なおかつ継続している場合もがんである事が少なくない。また、感染性脊髄炎では、早期に診断し適切な治療を行わないと敗血症により死にいたることもある。このような背景から、1994年英国のガイドラインでred flags signというリスク因子の概念が提唱された。腰痛の場合、この危険信号をチェックしながら診療にあたることが肝要である3)。red flags sign発症年齢<20歳または>55歳時間や活動性に関係のない腰痛胸部痛癌、ステロイド治療、HIV感染の既往栄養不良体重減少広範囲に及ぶ神経症状構築性脊柱変形発熱腰痛診療ガイドライン2012より治療期間、治療目標、治療効果を意識すべし疼痛の治療期間は痛みの原因となる疾患によって異なる。たとえば変形性腰椎症など不可逆的な疾患では治療期間は一生といってもよく、急性の疾患であれば治療期間も週単位と短くなる。初診時にどのような治療がどれくらいの期間必要で、薬はどのくらい続けるかなどについて患者さんに説明し同意を得ておく必要がある。疼痛の診療にあたり、治療目標を設定することは非常に重要である。急性の場合は痛みゼロが治療目標だが、慢性の場合は痛みをゼロにするのは困難である。そのため、痛みの軽減、関節機能の維持、ADLの改善が治療目標となる。具体的には、自力で歩行できる、以前楽しんでいた趣味などが再開できる、買い物などの外出ができる、睡眠がよくとれる、仕事に復帰できる、などのようなものである。痛みは主観的なものであり、本人の感覚で弱く評価したり、疼痛(顕示)行動で強く訴えたりする。そのため、効果判定はADLの改善を指標として行う。患者さんへの聞き方として、少し歩けるようになったか、家事ができるようになったか、以前よりもどういう不自由さがなくなったかなどが具体的である。患者さんの痛みの訴えだけを聞いて治療しているとオーバードーズになりがちであるが、ADLの改善をチェックしていると薬剤用量と効果、副作用などのかね合いが判定できる。たとえば、痛みが少し残っていてもADLの改善が目標に達していれば、オーバートリートメントによる薬剤の副作用を防止できるわけである。痛みと寝たきりの関係寝たきり高齢者の医療費や介護費は一人年間300~400万といわれる。日本では寝たきりの高齢者が非常に多い。この高齢者の寝たきりの原因の第2位は痛みであることをご存じだろうか。痛みによりADLが落ち、寝たきり傾向になる。すると筋肉や関節機能が低下して痛みがより悪化し、重度の寝たきりになっていくという悪循環に陥る。寝たきりから自立するためには、痛みを減らして動いてもらうことが重要なのである。動くことで筋力がつき姿勢が矯正され痛みが改善する。バランスも良くなるので寝たきりの原因となる転倒も減るという好循環を生み出す。痛みの診療における運動の重要性は近年非常に注目されている。参考文献1)平成19年度国内基盤技術調査報告書2007;1-222)平成22年9月 厚生労働省「慢性の痛みに関する検討会」今後の慢性の痛み対策について(提言)3)矢吹省司:ガイドライン外来診療2012:P.243

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心原性ショック合併の急性心筋梗塞、IABPでも死亡率減少できず

 心原性ショックを合併する急性心筋梗塞の患者に対し、大動脈内カウンターパルセイション(IABP)を行っても、30日死亡率はおよそ4割と、行わない場合と比べ有意な低下はみられなかったことが報告された。ドイツ・ライプチヒ大学心臓センターのHolger Thiele氏らが、約600例を対象とした多施設共同オープンラベル無作為化対照試験の結果、明らかにしたもので、NEJM誌2012年10月4日号で発表した。現行の国際臨床ガイドラインでは、心原性ショック合併の急性心筋梗塞に対し、IABPがクラスIの治療法に位置づけられている。だが、裏付けとなるエビデンスは患者登録データによるものが多く、無作為化試験に基づくものは少なかったという。598例を無作為化、IABP実施と非実施で30日死亡率を比較研究グループは、心原性ショックを合併症に持つ急性心筋梗塞の患者598例を、無作為に2群に分け、一方にはIABPを行い(300例)、もう一方は対照群としてIABPを実施しなかった(298例)。被験者は全員、早期血行再建術と至適薬物治療が予定されていた。主要有効性エンドポイントは、30日全死因死亡率だった。安全性に関する評価項目は、重大出血、末梢虚血性合併症、敗血症、脳卒中だった。30日死亡率、血流安定やICU滞在期間、大出血率などいずれも両群で同等その結果、試験開始30日時点での死亡は、IABP群119人(39.7%)に対し、対照群123人(41.3%)と、両群間で死亡率に有意な差はみられなかった(IABP群の対照群に対する相対リスク;0.96、95%信頼区間:0.79~1.17、p=0.69)。血流安定までの時間、ICU滞在期間、血清乳酸値、カテコールアミン療法の用量や期間、腎機能などの副次エンドポイントについても、両群間で有意差はなかった。重大出血の発生は、IABP群3.3%に対して対照群4.4%(p=0.51)、末梢虚血性合併症の発生はそれぞれ4.3%と3.4%(p=0.53)、敗血症は15.7%と20.5%(p=0.15)、脳卒中は0.7%と1.7%(p=0.28)と、いずれも両群間で有意な差は認められなかった。

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敗血症が退院後のQOLにもたらす影響とは?

 重症敗血症敗血症性ショックは、長期生存率を低下させるだけでなくQOLに重大な悪影響を及ぼすことがブラジルの後ろ向き試験で明らかになった。Westphal GA氏らがRevista Panamericana de Salud Pública誌2012年6月号に報告した。 本試験は、2005年8月から2007年11月の間に重症敗血症または敗血症性ショックにより入院した患者217例について、年齢が近く、最近の入院歴がない同地区住民と対照比較した。2009年6月から11月にかけて、Short-Form 36(SF-36)を用い、退院後のQOLに重症敗血症敗血症性ショックがどのような影響を与えるのか検討している。主な結果は以下のとおり・217例中、生存し退院し得た患者は112例(51.6%)・退院後の生存率は、180日後:41.02%、1年後:37.4%、1年半後:34.3%、2年後:32.3%・SF-36の結果  身体機能:59 ± 32 vs 91 ± 18; p < 0.001  活力:48 ± 13 vs 59 ± 14; p< 0.008  心の健康:48 ± 13 vs 59 ± 14; p < 0.03  体の痛み:50 ± 26 vs 76 ± 16; p < 0.001  全体的健康感:53 ± 18 vs 67 ± 13; p < 0.004  日常生活役割機能(身体):67 ± 45 vs 85 ± 34; p < 0.05  社会生活機能:70 ± 28 vs 90. ± 16; p < 0.05上記のように、重症敗血症敗血症性ショックの既往は、有意にこれらの項目を悪化させた。

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重症敗血症、HES 130/0.42輸液蘇生は死亡リスクが高い

重症敗血症に対するヒドロキシエチルデンプン(HES)130/0.42を用いた輸液蘇生は、酢酸リンゲル液を用いた患者と比較して90日時点の死亡リスクが高く、腎代替療法を必要とする割合が高いことが、多施設共同無作為化試験の結果、明らかにされた。HES 130/0.42は、ICUでの輸液蘇生に広く使われているが、安全性と有効性は立証されていなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のAnders Perner氏らによる報告で、NEJM誌2012年7月12日号(オンライン版2012年6月27日号)で発表された。4ヵ国26のICUで無作為化試験、HES 130/0.42 vs.酢酸リンゲル液試験は、2009年12月23日~2011年11月15日の間にデンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランドの4ヵ国のICU施設26ヵ所から被験者を登録して行われた多施設共同並行群間比較盲検無作為化試験だった。患者は重度敗血症患者で、スクリーニング後、輸液蘇生に6%HES 130/0.42を用いる群と、酢酸リンゲル液を用いる群に無作為に割り付けられた。最大投与量は、33mL/kg標準体重/日だった。主要評価項目は、無作為化後90日時点の死亡または末期腎不全(透析に依存)とした。無作為化された患者は804例で、そのうち798例が修正intention-to-treat解析された。両介入群のベースラインでの患者特性は同等だった。相対リスク、90日時点死亡1.17、腎代替療法1.35、重度出血の発生1.52結果、無作為化後90日時点での死亡は、酢酸リンゲル液群172/400例(43%)に対し、HES 130/0.42群の201/398例(51%)だった(相対リスク:1.17、95%信頼区間:1.01~1.36、P=0.03)。末期腎不全は、両群とも1例ずつだった。また90日間で腎代替療法を要したのは、酢酸リンゲル液群は65例(16%)に対し、HES 130/0.42群は87例(22%)だった(同:1.35、1.01~1.80、P=0.04)。重度出血は、HES 130/0.42群38例(10%)、酢酸リンゲル群25例(6%)だった(同:1.52、0.94~2.48、P=0.09)。これらの結果は、既知の死亡・急性腎障害のリスク因子についてベースラインで補正した多変量解析においても支持された。

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重症敗血症、症例数の多さと良好なアウトカムは関連しない

英国の成人重症敗血症患者の一般集中治療室への入院症例数と患者アウトカムの間に関連はないことが、カナダ・McGill大学のJason Shahin氏らの検討で示された。過去30年以上にわたり、種々の外科的、内科的疾患において、治療例数と患者アウトカムの関連の評価が行われている。腹部大動脈瘤の修復や特定のがん種、小児の心疾患の手術など複雑な手技では、症例数とアウトカムの間に強い関連を認め、AIDSや心筋梗塞などの内科的疾患でも症例数の多い施設での治療はアウトカムの改善が確認されている。症例数と人工呼吸器の使用や重症敗血症との関連や、重症敗血症における症例数-アウトカム関連を示唆する研究結果もあるという。BMJ誌2012年6月16日号(オンライン版2012年5月29日号)掲載の報告。集中治療室入院症例数と患者アウトカムの関連を後ろ向きに評価研究グループは、英国の成人敗血症患者の一般集中治療室への入院における、症例数と患者アウトカムの関連について検討するために、統合データベースを用いたレトロスペクティブなコホート試験を実施した。客観的で標準化された重症敗血症の判定基準を満たし、2008~2009年に集中治療室に入院した患者を対象とし、救急病院からの最終的な退院時の死亡率について評価した。症例数と重症度、人工呼吸器装着との間にも関連なし一般化推定方程式を用いた多変量ロジスティック回帰分析で、入院症例数と院内死亡率の関連を評価したところ、英国の成人重症敗血症患者の一般集中治療室への入院症例数と患者アウトカムに関連はなかった。サブ解析にて症例数と疾患の重症度、人工呼吸器装着との交互作用の検定を行ったところ、これらの間にも有意な関連は認めなかった。著者は、「本試験では、成人重症敗血症患者の一般集中治療室への入院症例数と患者アウトカムに関連はみられなかった」とし、「今後は、症例数や一般集中治療室以外の要素に焦点を当てた検討を行うべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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世界の5歳未満児死亡の最新動向:2000~2010年

 2000~2010年の最新の世界の5歳未満児死亡率の動向調査の結果、全体に減少はしていたものの、医学的に死因が特定され割合が約3%であったこと、減少には感染症による死亡減少が大きく寄与していたことなどが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学(米国)のLi Liu氏らによる調査の結果で、「小児生存戦略はもっと、感染症や新生児期の主因など死亡原因へ目を向けなくてはならない。2010~2015年以降の減少をより迅速なものとするには、最も頻度の高い共通した死因、特に肺炎と早産の合併症の減少を促進することが必要だ」と報告。「質の高いデータを集めて推定方法を強化する継続的努力が、将来の改善にとって必須である」と結論している。「Lancet誌2012年6月9日号(オンライン版2012年5月11日号)掲載報告より。5歳未満児死亡の約4割が新生児、死因別では64%が感染症で死亡 Liu氏らは、2000~2010年の最新の世界の5歳未満児死亡率の動向を調査するため、生後0~27週間の新生児、1~59ヵ月の5歳未満児の死亡総数のアップデートデータを集めて解析した。データは各国固有の死因区分が適用されているため、各国間のデータ適合を図ったり、死亡率が高い国に対して同様の多変量ロジスティック回帰モデルなどを作成適用するなどして調整を図り、インドと中国に関しては、国別モデルを作成し検討した。 集計結果から地域と世界の推定値を導き出した。 結果、2010年の5歳未満児死亡760万人のうち、64.0%(487万9,000人)は感染症が原因であった。また死亡の40.3%(307万2,000人)は新生児だった。医学的に立証できた5歳未満児の死亡原因はわずか2.7% 新生児死亡の主な原因は、早産の合併症[14.1%、107万8,000人、誤差範囲(UR):0.916~1.325]、分娩関連合併症(9.4%、71万7,000人、UR:0.610~0.876)、敗血症または髄膜炎(5.2%、39万3,000人、UR:0.252~0.552)だった。 幼児では、肺炎(14.1%、107万1,000人、UR:0.977~1.176)、下痢(9.9%、75万1,000人、UR:0.538~1.031)、マラリア(7.4%、56万4,000人、UR:0.432~0.709)が最も多かった。 一方で、関連データ同定の努力にもかかわらず、2010年に医学的に立証できた5歳未満児の死亡原因はわずか2.7%(20万5,000人)にとどまった。 2000~2010年の間の世界の5歳未満児死亡の減少は200万人で、肺炎(45万1,000人減)、はしか(36万3,000人減)、下痢(35万9,000人減)が全体的な減少に寄与していた。 国連のミレニアム開発目標4(2015年までに5歳未満乳幼児死亡率を1990年の3分の1に低減)達成に十分な年率で減少していたのは、破傷風、はしか、AIDS、マラリア(アフリカ)のみであった。

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小児の熱傷面積62%以上で死亡リスクが増大

小児の重度熱傷では、受傷面積が大きくなるほど不良な予後のリスクが増大し、熱傷面積が全体表面積の62%を超えると死亡のリスクが有意に上昇することが、米国・テキサス大学医学部シュライナー小児病院のRobert Kraft氏らの検討で示された。1998年、Ryanらは熱傷患者の予後予測モデルを開発し、不良な予後の予測因子として熱傷面積が全体表面積の40%に及ぶ場合を提唱した。しかし、その後の10年で熱傷治療は大きな発展を遂げ、生存および予後はさらに改善されたという。Lancet誌2012年3月17日号(オンライン版2012年1月31日号)掲載の報告。小児の熱傷面積と合併症罹患率、死亡率の関連を前向きに評価研究グループは、小児における熱傷面積と合併症罹患率、死亡率の関連を評価するために、単施設におけるプロスペクティブな観察コホート試験を実施した。解析には全体表面積の30%以上の熱傷を受けた小児の臨床データを用いた。熱傷面積30~100%の患児を10%ごとに7群に分け、各群の予後を比較した。カットオフ値の算出には、受信者動作特性(ROC)分析を用いた。熱傷面積60%以上の患児は直ちに熱傷専門施設へ1998~2008年までに、テキサス大学医学部シュライナー小児病院(ガルベストン)に952例の重度熱傷患児が入院した。全体の平均年齢は7.3歳で、男児が628例(66%)であった。123例(13%)が死亡し、そのうち熱傷面積30~39%の群の死亡率が3%(5/180例)であったのに対し、90~100%の群は55%(28/51例)と有意に高かった(p<0.0001)。154例(16%)が多臓器不全をきたしたが、熱傷面積30~39%群の6%(10/180例)に比べ90~100%群は45%(23/51例)と有意に高値であった(p<0.0001)。敗血症は9%(89例)が発症し、30~39%群の2%(3/180例)に対し90~100%群は26%(13/51例)と、やはり有意差を認めた(p<0.0001)。死亡に関するROC分析では、熱傷面積が62%を超えると死亡リスクが有意に上昇した(オッズ比:10.07、95%信頼区間:5.56~18.22、p<0.0001)。著者は、「熱傷後の合併症罹患や死亡リスクの受傷面積閾値はおよそ60%であった」とし、「これらの知見に基づき、熱傷面積60%以上の患児は直ちに熱傷専門施設に搬送することが推奨される。さらに、熱傷面積が大きくなると不良な予後のリスクが増大することから、熱傷専門施設では最大限の注意を払って治療を進め、さらなる治療法の改善に努めるべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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開発中のENB-0040酵素補充療法、重篤な低ホスファターゼ症を改善

重篤な低ホスファターゼ症の乳幼児に対し、開発中のENB-0040による酵素補充療法が、肺および身体機能を改善することが報告された。米国・シュライナーズ小児病院(ハワイ州)のMichael P. Whyte氏らによる多国間オープンラベル試験の結果で、治療24週でX線上の所見での骨格改善が認められた。くる病や骨軟化症に至る低ホスファターゼ症は、組織非特異型アルカリホスファターゼアイソザイム(TNSALP)の遺伝子変異により生じる。重篤な乳児では、進行性胸部変形を呈し呼吸機能不全を来し死亡に至ったり、また骨疾患が持続する場合が多いが、承認されている内科的治療法はいまだない。ENB-0040は、骨を標的とする遺伝子組換えヒトTNSALPで、マウス試験で低ホスファターゼ症の症状発現を抑えることが認められていた。NEJM誌2012年3月8日号掲載報告より。重度の低ホスファターゼ症患者11例を対象にオープンラベル試験被験者として応募したのは、生後2週~3歳の生命が危機的状態にあるまた衰弱が激しい低ホスファターゼ症の乳幼児11例(女児7例、男児4例)だった。そのうち10例が6ヵ月のENB-0040治療を完了し(1例は試験同意後撤回)、9例は1年間治療が行われた(1例は治療開始7.5ヵ月後に敗血症により死亡)。試験の主要目的はくる病の治癒とし、X線所見で評価した。運動と認知の発達、呼吸機能、安全性、ENB-0040の薬物動態と薬力学についても評価が行われた。6ヵ月治療でくる病治癒、発達指標と肺機能も改善6ヵ月治療を完了した9例ではくる病の治癒が認められ、発達指標および肺機能の改善も認められた。基線で高値であったTNSALP基質の無機ピロリン酸とピリドキサール5’-リン酸塩値も、ともに低下が認められた。また骨格の治癒とともに、血清副甲状腺ホルモンの上昇が認められ、頻繁に食事性カルシウム・サプリメントを必要とした。低カルシウム血症、異所性石灰化、薬物関連の重大有害事象の所見は認められなかった。4例に低値の抗ENB-0040抗体が出現したが、治療48週時点での明らかな臨床的、生化学的、自己免疫の異常は認められなかった。(朝田哲明:医療ライター)

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術前の貧血は非心臓手術患者の予後を増悪させる

非心臓手術を受ける患者では、術前の貧血はたとえそれが軽度であっても術後30日以内の合併症や死亡のリスクを上昇させることが、レバノンAmerican University of Beirut医療センターのKhaled M Musallam氏らの検討で示された。心臓手術前に貧血がみられた患者は、術後の合併症の罹患率および死亡率が増大することが知られているが、非心臓手術における術前の貧血が予後に及ぼす影響は不明であった。術中の輸血は、少量であっても合併症率、死亡率を上昇させることが報告されており、術前貧血は術中輸血の機会を増大させるためリスク因子とみなされるという。Lancet誌2011年10月15日号(オンライン版10月6日号)掲載の報告。術前貧血が術後アウトカムに及ぼす影響を後ろ向きに評価するコホート試験研究グループは、非心臓手術を受ける患者において、術前の貧血が術後の合併症率、死亡率に及ぼす影響をレトロスペクティブに評価するコホート試験を実施した。「米国外科学会の手術の質改善プログラム(American College of Surgeons’ National Surgical Quality Improvement Program)」のデータベース(世界211病院からプロスペクティブに集められたアウトカムのレジストリー)を用い、2008年に主な非心臓手術を受けた患者のデータについて解析した。30日合併症率および30日死亡率(心臓、呼吸器、中枢神経系、尿路、創傷、敗血症、静脈血栓塞栓症)、人口学的因子、術前・術中のリスク因子に関するデータを収集した。貧血は軽度(ヘマトクリット値が男性29~39%、女性29~36%)および中等度~重度(男女ともヘマトクリット値<29%)に分けた。リスク因子(65歳以上、心疾患、重度COPD、中枢神経疾患、腎疾患、がん、糖尿病、敗血症、肥満)に基づくサブグループにおいて、貧血が術後のアウトカムに及ぼす影響について多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した。術後30日合併症率、死亡率が有意に上昇非心臓手術を受けた患者22万7,425例のうち6万9,229例(30.44%)に術前の貧血が認められた。術後の30日死亡率は、術前非貧血患者よりも貧血患者で有意に高く(調整オッズ比:1.42、95%信頼区間:1.31~1.54)、この差は軽度貧血(同:1.41、1.30~1.53)および中等度~重度貧血(同:1.44、1.29~1.60)に一致して認められた。術後30日合併症率も、術前非貧血患者に比べ貧血患者で有意に高く(調整オッズ比:1.35、95%信頼区間:1.30~1.40)、死亡率と同様に軽度貧血(同:1.31、1.26~1.36)および中等度~高度貧血(同:1.56、1.47~1.66)で一致していた。著者は、「非心臓手術を受ける患者では、術前の貧血はたとえそれが軽度であっても術後30日以内の合併症や死亡のリスクを上昇させる」と結論し、「この知見は、年齢、性別、手術手技にかかわらず一貫して認められ、貧血が既知のリスク因子と併存すると、リスク因子がアウトカムに及ぼす影響がさらに増大した」としている。(菅野守:医学ライター)

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新生児敗血症への免疫グロブリン静注療法、転帰を改善せず

新生児敗血症に対する免疫グロブリン静注療法は、転帰に対する効果がないことが明らかにされた。国際新生児免疫療法試験(INIS)共同研究グループは、9ヵ国113施設で約3,500例の被験児を対象に行った結果による。新生児の主要な死因であり合併症をもたらす敗血症は、抗菌薬治療に加えた有効な治療が必要とされる。そうした患児に対して免疫グロブリン静注療法は全死因死亡を減らすことがメタ解析の結果、示されていた。しかし解析対象であった試験は小規模で、試験の質もバラバラであったことから、INIS共同研究グループが、国際化多施設共同二重盲検無作為化試験を行った。NEJM誌2011年9月29日号掲載報告より。9ヵ国113施設3,493例を対象に二重盲検無作為化試験試験は、2001年10月~2007年9月に、イギリス、オーストラリア、アルゼンチンなど9ヵ国113施設から、重度感染症が疑われるか、または認められ抗菌薬治療を受けていた新生児合計3,493例が登録され行われた。被験児は無作為に、多価IgG免疫グロブリン静注投与(投与量500mg/kg体重)群(1,759例)か、プラセボ群(1,734例)に割り付けられ追跡された。投与は2回ずつ行われ、1回目と2回目の間隔は48時間だった。主要アウトカムは、2歳時点の死亡または重度障害とした。2歳時点の死亡または重度障害、両群に有意差認められず結果、主要アウトカムの発生率について、両群に有意な差は認められなかった。免疫グロブリン静注群は39.0%(686/1,759例)、プラセボ群は39.0%(677/1,734例)で、相対リスク1.00(95%信頼区間:0.92~1.08)だった。その後の敗血症エピソードの発生率など、副次アウトカムの発生率についても同様に有意差は認められなかった。2歳児フォローアップにおいても、重度・非重度障害または有害事象の発生率に有意差は認められなかった。(武藤まき:医療ライター)

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電子カルテの自由記述から導出した患者安全指標、従来ツールより良好:米国

電子カルテシステム導入が進む中、その自由記述欄から自然言語処理にて導き出した患者安全指標の精度に関する検討が、米国・Tennessee Valley Healthcare SystemのHarvey J. Murff氏らにより行われた。術後合併症を特定するかどうかについて、現状ツールである退院コーディング情報をベースとした指標と比べた結果、感度では優れ、特異度は若干劣ったものの90%以上と非常に高い値が示されたという。電子カルテデータを活用した患者安全特定の方法は、現状では診療データコード(ICD)に依存している。研究グループは、それよりも自由記述から導き出した指標のほうが、高い検出力を示すのではないかと仮定し検討を行った。JAMA誌2011年8月24日号掲載報告より。術後合併症の特定力について、退院コーディング情報ベースの指標と比較Murff氏らは、1999~2006年の3州6ヵ所の退役軍人医療センターで外科的手術を受けた患者2,974例に関する断面調査を行った。電子カルテデータから特定された、透析を要した急性腎不全、深部静脈血栓症、肺塞栓症、敗血症、肺炎または心筋梗塞の術後発生を、VASQIP(VA Surgical Quality Improvement Program)で再評価し、それら合併症を特定する自然言語処理アプローチの感度と特異度を求め、退院コーディング情報をベースとした患者安全指標とのパフォーマンスを比較した。感度、特異度ともに優れる各合併症発生率は、透析を要した急性腎不全2%(39/1,924例)、肺塞栓症0.7%(18/2,327例)、深部静脈血栓症1%(29/2,327例)、敗血症7%(61/866例)、肺炎16%(222/1,405例)、心筋梗塞2%(35/1,822例)だった。急性腎不全例を正確に特定する感度は、従来患者安全指標が38%(95%信頼区間:25~54%)であったのに対し、自然言語処理アプローチは82%(同:67~91%)だった(p<0.001)。深部静脈血栓症(59%vs 46%、p=0.30)、敗血症(89%vs 34%、p<0.001)、肺炎(64%vs 5%、p<0.001)、心筋梗塞(91%vs 89%、p=0.67)についても同様の結果が得られた。特異度は、自然言語処理アプローチが従来患者安全指標よりも低値を示したが、いずれも90%以上と非常に高かった。急性腎不全(94%vs 100%)、深部静脈血栓症(91%vs 98%)、敗血症(94%vs 99%)、肺炎(95%vs 99%)、心筋梗塞(95%vs 99%)だった(すべてp<0.001)。(武藤まき:医療ライター)

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重症感染症児への輸液ボーラス投与、48時間死亡率を上昇

 ショック患者への急速早期の輸液蘇生術は、救急治療ガイドラインに示されており、小児科における生命維持訓練プログラムでも支持されている。しかし、処置法、用量、輸液の種類に留意したエビデンスはなく、集中ケア施設がまず利用できないアフリカのような、医療資源が限られた環境下でのショック患児や生命に関わるような重症感染症児への治療に対する輸液蘇生の役割は確立されていない。そこでケニア中央医学研究所(KEMRI)のKathryn Maitland氏らは、アフリカ東部3ヵ国で輸液蘇生の効果を調べる無作為化試験を行った。NEJM誌2011年6月30日号(オンライン版2011年5月26日号)掲載より。アルブミンボーラス、生食ボーラスと対照群の3群に無作為化し48時間後の転帰を比較 研究グループは、ウガンダ、ケニア、タンザニアで、重症熱性疾患と循環不全で入院した小児を、5%アルブミン溶液20~40mL/kg体重ボーラス投与(アルブミンボーラス群)もしくは0.9%生食液20~40mL/kg体重ボーラス投与(生食ボーラス群)する群か、ボーラス投与しない群(対照群)の3群に無作為に割り付け検討した(A層試験)。このA層試験では、重症低血圧の小児は除外されB層試験にて、いずれかのボーラス投与群に無作為に割り付けられ検討された。 >被験児は全員、ガイドラインに基づく、適切な抗菌薬治療や静脈内維持輸液ならびに生命維持のためのトリアージや救急療法を受けた。なお、栄養失調または胃腸炎の患児は除外された。 主要エンドポイントは、48時間時点の死亡率とし、副次エンドポイントには、肺水腫、頭蓋内圧亢進、4週時点の死亡または神経学的後遺症の発生率などが含まれた。 A層試験は3,600例の登録を計画していたが、3,141例(アルブミンボーラス群1,050例、生食ボーラス群1,047例、対照群1,044例)が登録された時点でデータ安全モニタリング委員会の勧告により補充が停止された。 マラリアの保有率(全体で57%)、臨床的重症度は全群で同程度だった。ボーラス後48時間死亡率が有意に上昇 A層における48時間死亡率は、アルブミンボーラス群10.6%(1,050例中111例)、生食ボーラス群10.5%(1,047例中110例)、対照群7.3%(1,044例中76例)だった。生食ボーラス群 vs. 対照群の相対リスクは1.44(95%信頼区間:1.09~1.90、P=0.01)、アルブミンボーラス群vs.生食ボーラス群の相対リスクは1.01(同:0.78~1.29、P=0.96)、両ボーラス群vs.対照群の相対リスクは1.45(同:1.13~1.86、P=0.003)だった。 4週時点の死亡率は、それぞれ12.2%、12.0%、8.7%だった(両ボーラス群vs.対照群の相対リスクは1.39、P=0.004)。神経学的後遺症発生率は、2.2%、1.9%、2.0%だった(同1.03、P=0.92)だった。肺水腫または頭蓋内圧亢進の発生率は、2.6%、2.2%、1.7%だった(同1.46、P=0.17)。 B層では、死亡率がアルブミンボーラス群69%(13例中9例)、生食ボーラス群56%(16例中9例)だった(アルブミンボーラスの相対リスク:1.23、95%信頼区間:0.70~2.16、P=0.45)。 これらの結果は、施設間、サブグループ間(ショック重症度や、マラリア、昏睡、敗血症、アシドーシス、重症貧血の状態に基づく)で一貫して認められた。 研究グループは「医療資源が限られたアフリカでの重症循環不全児に対する輸液ボーラスは、48時間死亡率を有意に高める」と報告をまとめている。

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膵体尾部切除術後のステープル創閉鎖、膵液瘻の予防効果を改善せず:DISPACT試験

膵体尾部切除術後の創閉鎖にステープルを用いても、縫合糸による閉鎖に比べて膵液瘻の発生率は減少しないことが、ドイツ・ハイデルベルク大学のMarkus K Diener氏らの検討で明らかとなった。膵体尾部切除術後の膵液瘻の形成は、主な術後合併症の原因となっており(13~64%)、腹腔内膿瘍、創感染、敗血症、吸収不良、出血などの、さらなる合併症を引き起こすことが、系統的レビューによって示されている。手術手技や施術医の技能が膵液瘻のリスク因子とされ、切除や残存膵閉鎖の手技によって瘻孔形成に差があることが報告されているが、最適な膵断端閉鎖法は確立されていないという。Lancet誌2011年4月30日号(オンライン版2011年4月27日号)掲載の報告。ステープル閉鎖と縫合糸閉鎖を比較する無作為化対照比較試験DISPACT試験の研究グループは、膵体尾部切除術後の膵液瘻の予防における、標準化されたステープルによる創閉鎖と縫合糸による閉鎖の有効性を比較する、多施設共同無作為化対照比較試験を行った。ヨーロッパの21施設から、膵体部および尾部の疾患で膵体尾部切除術の適応とされた患者が登録され、ステープル閉鎖を行う群あるいは縫合糸閉鎖を行う群に無作為化に割り付けられた。主要評価項目は、術後7日までの膵液瘻または死亡の発生率の複合エンドポイントとし、患者および予後評価者には治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目:32% vs. 28%2006年11月16日~2009年7月3日までに450例(ステープル閉鎖群:221例、縫合糸閉鎖群:229例)が登録され、そのうち352例(それぞれ177例[女性92例、男性85例、平均年齢59.8歳]、175例[女性99例、男性76例、年齢59.8歳])が評価可能であった。術後7日までの膵液瘻または死亡の発生率は、ステープル閉鎖群が32%(56/177例)、縫合糸閉鎖群は28%(49/175例)であり、両群間に差を認めなかった(オッズ比:0.84、95%信頼区間:0.53~1.33、p=0.56)。縫合糸閉鎖群の1例が術後7日以内に死亡したが、ステープル閉鎖群には死亡例は認めなかった(p=0.31)。重篤な有害事象の発生率は両群に差はなかった(膵液瘻:ステープル閉鎖群20% vs. 縫合糸群22%、膿瘍/膵液貯留:16% vs. 9%、出血:7% vs. 9%、創感染:2% vs. 7%など、p=0.25)。重篤な有害事象による死亡率も同等であった(13% vs. 15%、p=0.69)。著者は、「ステープル閉鎖は、縫合糸閉鎖に比べ膵体尾部切除術後の膵液瘻の発生率を低下させなかった」と結論し、「膵体尾部切除術に伴う有害なアウトカムを抑制するには、革新的な手術手技など新たな治療戦略の開発が求められる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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重度敗血症は高齢者の自立を損なう

重度敗血症を発症し、回復した人は、その後中等度から重度の認知障害を発症するリスクが3倍超に増大することが報告された。また同発症後には、新たに現れる身体機能の制約数も増えるという。米国ミシガン大学医学校内科部門のTheodore J. Iwashyna氏らが、敗血症で入院した高齢者約1,200人について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月27日号で発表した。重度敗血症の罹患率は高く、また増加傾向にあるものの、その後の長期的な認知能力や身体機能に与える影響については、これまでほとんど調査されていなかった。重度敗血症後の中~重度認知障害リスク、3.34倍に同氏らは、1998~2006年に50歳以上の米国住民を抽出し行われた全米調査「HRS(Health and Retirement Study)」のうち、認知能力や身体機能などに関する情報の得られた9,223人のデータを元に、前向きコホート試験を行った。HRSコホートのうち、重度敗血症で入院した人は1,194人、入院件数は1,520件だった。そのうち、回復した人は516人(入院時の平均年齢は76.9歳)だった。一方、被験者のうち重度敗血症以外で入院した人は、4,517人だった。重度敗血症で入院した人は、中等度から重度の認知障害の罹患率が、発症前6.1%から発症後16.7%へと、10.6ポイント増加していた。多変量回帰分析の結果、重度敗血症は中等度から重度の認知障害リスクを、3.34倍(95%信頼区間:1.53~7.25)増大することがわかった。敗血症以外の入院では認知障害リスクは増大せず同様に身体機能の制約についても、重度敗血症後に新たな制約が高率にみられた。発症前に制約がみられなかった人において、発症後には新たな制約数が平均1.57(95%信頼区間:0.99~2.15)となっていた。また発症前に軽度から中等度の身体機能の制約がみられた人でも平均1.50(同:0.87~2.12)の新たな制約がみられた。一方で、敗血症以外の理由による入院と、中等度から重度の認知障害発症リスクとには関連がみられなかった(オッズ比:1.15、95%信頼区間:0.80~1.67、重度敗血症との差に関するp=0.01)。退院後に現れた身体機能の制約数は、敗血症による入院の場合に比べ少なく、平均値は発症前に制約がなかった人で0.48(p<0.001)、軽度から中等度の制約があった人で0.43(p=0.001)だった。また、認知能力や身体機能の低下は、最低8年間継続していた。著者は、「高齢者における重度敗血症は、新たな認知障害および身体機能障害を引き起こす独立した因子である。そのもたらす障害の影響は大きく、自立した生活能力を損なうことに結びついているようだ」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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鳥谷部俊一先生 [追加記事] 床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!

1979年東北大学医学部卒業。東北大学医学部第二内科、鹿島台町国民健康保険病院内科、慈泉会相澤病院 統括医長、至高会たかせクリニック 顧問を経て、現職に至る。床ずれ治療「ラップ療法」の創案者。追加記事掲載について形成外科専門医の方から「ラップ療法」の危険性について指摘いただきました。<指摘内容>閉鎖療法は簡便なので、医療従事者が取り掛かりやすい。しかし創傷に精通したものでないと症状を悪化させる場合がある。傷の中には感染を伴っている状態のものがあり、これにラップ療法を行ったため、細菌が中で繁殖し、敗血症に陥った例がある。この点に関して、鳥谷部先生からのコメントを追加記事として掲載いたします。鳥谷部先生からのコメント「2010年に、『いわゆる「ラップ療法」に関する日本褥瘡学会理事会見解』が発表されました。http://www.jspu.org/jpn/info/pdf/20100303.pdf『褥瘡の治療にあたっては医療用として認可された創傷被覆材の使用が望ましい。非医療用材料を用いた、いわゆる「ラップ療法」は、医療用として認可された創傷被覆材の継続使用が困難な在宅などの療養環境において使用することを考慮してもよい。ただし、褥瘡の治療について十分な知識と経験を持った医師の責任のもとで、患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである。』2011年、ラップ療法(食品用ラップまたは穴あきプラスチックフィルムを貼付する処置と標準治療(学会ガイドラインに準拠した処置)を比較したランダム化比較研究が行われ、両群の治療成績が同等であるとの結果が学会誌に発表されました*1。この結果をうけ、近く改訂される日本褥瘡学会ガイドラインでは、「"いわゆる"ラップ療法(食品用ラップや穴あきプラスチックフィルムを貼付する処置)」が推奨度C1の処置法として掲載される見通しです。学会ガイドライン検討委員会は、ラップ療法のリスクが高いことを考慮して「十分な知識と経験を持った医師の責任のもとで、患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである」との文言を付け加えたようですが、それならばむしろ「医師の目の届きにくい在宅などではなく、病院に入院している患者に限定して行い、入院患者の治療に習熟した医師が在宅患者を治療すべきである」とするべきでしょう。そもそもラップ療法のランダム化試験は大部分が入院患者を対象にした臨床研究です。そのエビデンスを入院患者ではなくあえて在宅患者に限定適用しガイドラインに書き込んだのは、諸般の事情があったのでしょうか。筆者が日本医師会雑誌(2000年)に発表したラップ療法を追試した方々の多くは、それまでの外用剤とガーゼによる処置法で苦労を重ね、創感染治療に習熟した医師たちでした。最初の何例かは慎重を期して入院管理下で行い、医師自ら毎日処置を行いました。創感染など合併症の管理は当然のことでしたが、それでも従来の治療法よりは比較的容易に対処できたと伝え聞いています。ラップ療法が普及するに従い、従来の治療経験なくして最初からラップ療法を行う医師あるいは非医師があらわれたのでしょうか。ラップ療法(ラップや穴あきポリエチレンを貼付)は、素人目には「簡単な治療」に見えるため、ややもすると安易に行われ、医師の目の届かないところで行われているうちに重症感染を併発し、対応が遅れて敗血症のため亡くなった事例があったのではないかと危惧しております。ラップ療法の臨床研究によると、ラップ療法が他の治療法に比べて特別に創感染を起こしやすいという傾向は認められなかったそうです*1。創感染については筆者は以下のように対応していますので参考にしてください。『褥瘡周囲の熱感,浮腫,滲出液増加,疼痛,発熱,白血球増多,CRP上昇を認めた場合は,感染あるいは持続感染と考え,第一,第二世代のセフェム系あるいは合成ペニシリン系抗生剤,マクロライド,アミノグリコシドなどを全身投与する.創面を細菌培養すると,創感染の有無にかかわらず,大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌が検出される.創面より培養された菌の多くは耐性菌で前述の抗生剤は無効と思われるのだが,実際のところ感染兆候は消失し創所見は改善する.感染終息後に細菌培養をすると,これらの耐性菌が検出される.すなわち,創の表面にいる菌は創感染とは無関係であり,起炎菌は創の深部に存在し,その多くは耐性菌ではないのだろう.褥瘡を有する患者が肺炎や尿路感染を起こすと,創感染がなくても創の状態が悪化(浮腫,滲出液の増加,肉芽壊死)することが多い.発熱時は全身状態を評価し,感染を疑った場合は積極的に抗生剤を全身投与して治療してほしい.』褥瘡の治療は、ラップ療法であれ、学会標準治療であれ、いずれの場合でも創傷治療に経験のある医師が十分な注意を払って行うべきものです。褥瘡治療の経験に乏しい医師は、入院患者を対象に、感染のない浅い褥瘡を医療用ドレッシング(モイスキンパッド・白十字)で治療し、経験を積んでください。3度の褥瘡に対しては早期のデブリードマンを行って創感染を未然に防いでください。感染の兆候(発熱、熱感、腫脹、疼痛、膿性浸出液)を認めたら、早期に抗生物質を全身投与して感染の進展を防ぎましょう。感染が深部に及ぶ症例、骨壊死を伴う症例、閉塞性動脈症を伴う足病変は、しかるべき専門医のいる病院に入院させて治療してください。以上の事例に習熟してから、ラップや穴あきポリエチレンを貼付する「"いわゆる"ラップ療法」に挑戦したり、在宅患者の治療をしていただきたい。褥瘡を発症するような患者はもともと重篤な基礎疾患を合併しており、一旦感染が重症化すると敗血症のため亡くなる可能性が高いのはご承知のことと存じます。患者・家族には、褥瘡がしばしば致死的な疾患であることを十分に説明し、同意を得たうえで治療してください。筆者は2002年以来同意書書式例を公開しておりますので、ぜひ活用してください。*1 文献:水原章浩,尾藤誠司,大西山大 ほか:ラップ療法の治療効果~ガイドラインによる標準法との比較検討.褥瘡会誌, 13:134-141,2011. 褥瘡の予防・治療に関する説明書(例)褥瘡(じょくそう)・床ずれとは、ふとんに接触している皮膚が、すれや圧迫によって血のめぐりが悪くなってできる傷です。自力で寝返りを打てない状態になると、一定の部位に力が加わり続け、皮膚には血液が流れなくなり壊死が生じます。これが褥瘡です。○○○病院では褥瘡対策委員会をつくり、病院内のみならず地域での褥瘡の予防と治療および研究に取り組んでいます。最近褥瘡の研究が進み、次のようなことがわかってきました。圧力を分散させるエアマットレスや体位変換などによって褥瘡の発生を減らすことができるが、最大限の努力をしても患者の全身状態が悪ければ発生を免れない。病院を受診する前にできかかっていた褥瘡が受診または入院後に完成して、あたかも受診後(入院後)にできたように見える経過をたどる例がある。褥瘡の治療法はこの数年間で大きく進歩したが、患者の全身状態が悪ければ必ずしも治らない。褥瘡の治療法はいまだ発展途上である。○○○病院では褥瘡の患者さまにラップ療法を実施しております。(鳥谷部俊一,末丸修三:食品包装用フィルムを用いるⅢ-Ⅳ度褥瘡治療の試み,日本医師会雑誌2000;123(10):1605-1611.水原章浩,尾藤誠司,大西山大 ほか:ラップ療法の治療効果~ガイドラインによる標準法との比較検討.褥瘡会誌, 13:134-141,2011.)ラップ療法は、日本褥瘡学会ガイドライン(次回改訂)に掲載が予定されており、すでに多くの施設で実施されておりますが、非医療材料(食品用ラップや穴あきプラスチックフィルム)を用いますので患者さま(ご家族)の同意が必要です。同意をいただけない場合は厚生労働省の承認をうけた医療材料を用いた方法で治療します。また安全性と有効性を確認するための検査、記録をしております。許可いただければ結果を外部に発表させていただきます。発表に際して、個人のプライバシーは十分に保護されるよう配慮されます。どのようなかたちで発表されるかについては、担当医または院長にお尋ねください。発表にご協力いただけるかどうかは全く自由です。同意いただいた後の撤回もいつでも可能です。また、ご協力いただけなくてもあなたの診療に不利益を生ずることはありません。日付   年   月   日○○○病院 院長私は、褥瘡の予防治療に関し口頭及び文書を用いて説明を受け、その内容を十分理解いたしました。本人  氏  名生年月日代理人 氏名 続柄説明者 職名 氏名ラップ療法を実施することについての同意書検査結果、記録などの学術発表についての同意書私は、褥瘡の治療にラップ療法を実施することについて、および○○○病院における診療で得られた検査結果、記録(写真を含む)の学術発表への利用について、口頭及び文書を用いて説明を受け、その内容を十分理解いたしました。私は、次のように判断いたします。私の褥瘡の治療においてラップ療法をおこなうことに、1 同意します。2 同意しません。診療後、検査結果、記録(写真を含む)の学術発表への利用について、1 同意します。2 同意しません。日付   年   月   日○○○病院 院長-------------------------------------※本記事は、追加記事です。ページ下部にある[質問と回答を見る]をクリックすると、前回と同じ「質問と回答ページ」が表示されます。予めご了承ください。質問と回答を公開中!

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2008年の5歳未満の子どもの死亡数、死因:MDG4達成に向けて

2008年の世界193ヵ国における5歳未満の子どもの死亡数は879万5,000人、その死因の68%が感染症であることが、アメリカJohns Hopkins Bloomberg公衆衛生大学院のRobert E Black氏らによる系統的な解析で示された。子どもの死亡率は、社会経済的な発展や子どもへの生存介入が実行された結果として世界的に低下しているが、いまだに毎年880万人が5歳の誕生日を迎えられずに死亡している。ミレニアム開発目標4(MDG4)の目的は、「2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する」ことであるが、特に南アジアとサハラ砂漠以南のアフリカ諸国では達成が難しい状況にあり、その改善には子どもの死因に関する最新情報の収集が重要だという。Lancet誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月12日号)掲載の報告。2008年の193ヵ国における原因別の死亡数を算出研究グループは、5歳未満の子どもの主な死亡原因について、2008年の最新の推定データを報告した。多原因比例死亡モデル(multicause proportionate mortality model)を用いて生後0~27日の新生児、1~59ヵ月の小児の死亡を推定し、死因が予測可能な場合は単一原因死亡モデルを用い、健康状態登録データの解析を行った。中国とインドの新データは、以前に実施されていた統計モデルに基づく予測に代わって、これらの国で使用されている全国データを採用した。193ヵ国における死亡原因を推定し、5歳未満の子どもの国別の死亡率および出生率にこれらの推定値を当てはめることで、国、地域、世界の原因別の死亡数を算出した。死因の68%が感染症、41%が新生児、5ヵ国で49%を占めた2008 年における世界の5歳未満の子どもの死亡数は879万5,000人と推定され、そのうち68%(597万人)は感染症が原因で死亡しており、肺炎が18%(157万5,000人)、下痢が15%(133万6,000人)、マラリアが8%(73万2,000人)であった。死亡した子どもの41%(357万5,000人)が新生児であり、その最も重大な原因として早産合併症が12%(103万3,000人)、出生児仮死が9%(81万4,000人)、敗血症が6%(52万1,000人)、肺炎が4%(38万6,000人)を占めた。5ヵ国(インド、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、パキスタン、中国)で、5歳未満の子どもの死亡の49%を占めた。著者は、「これら国別の子どもの主な死因の推定値は、国の計画や援助国の支援の焦点をどこに置くべきかを検討するうえで役立つであろう」とまとめ、「MDG4の達成は、妊婦、新生児、小児の健康状態への介入によって多大な死亡数の抑制に取り組むことでのみ可能となる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ショック時の昇圧薬、第一選択はドパミンかノルエピネフリンか?

ショック時における昇圧薬の第一選択薬は、ドパミン、ノルエピネフリンいずれが優れているのか。コンセンサス・ガイドラインでは両剤ともが第一選択薬と推奨されているが、ドパミン使用の方が死亡率が高いとの試験報告がある。しかしノルエピネフリンが優れているとの試験報告はないことから、ベルギー・Erasme大学病院病院集中治療部門のDaniel De Backer氏らの研究グループは、ノルエピネフリンの方が死亡率が低いのかどうかを評価する多施設共同無作為化試験「SOAP II」を行った。NEJM誌2010年3月4日号掲載より。28日後の死亡率を主要転帰に比較試験は2003年12月~2007年10月に、ベルギー、オーストリア、スペインの3ヵ国・8施設で、ショック症状を起こした患者(心原性ショック、敗血症性ショック、乏血性ショック)を対象、血圧を回復・維持するため第一選択の昇圧薬としてドパミン(20μg/体重kg/分)またはノルエピネフリン(0.19μg/体重kg/分)のいずれかを投与するよう割り付けられ行われた。患者は、割り付けられたドパミンまたはノルエピネフリンで血圧が維持できなかった場合は、ノルエピネフリン、エピネフリンまたはバソプレシンを非盲検で追加投与された。試験には1,679例の患者が登録され、そのうち858例がドパミン群に、821例がノルエピネフリン群に割り付けられた。ベースライン時の特性は両グループで同様だった。主要転帰は、無作為化後28日の死亡率。副次エンドポイントには、代用臓器を必要としなかった日数、有害事象の発生などを含んだ。死亡率に差はないが、有害事象はドパミンで有意に増加28日時点の死亡率は、ドパミン群52.5%、ノルエピネフリン群48.5%で、両群間に有意差はみられなかった(ドパミン群のオッズ比:1.17、95%信頼区間:0.97~1.42、P=0.10)。しかし、不整脈性イベントについて、ドパミン群(207件24.1%)の方がノルエピネフリン群(102件、12.4%)より多かった(P

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