ショック時の昇圧薬、第一選択はドパミンかノルエピネフリンか?

提供元:ケアネット

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公開日:2010/03/17

 



ショック時における昇圧薬の第一選択薬は、ドパミン、ノルエピネフリンいずれが優れているのか。コンセンサス・ガイドラインでは両剤ともが第一選択薬と推奨されているが、ドパミン使用の方が死亡率が高いとの試験報告がある。しかしノルエピネフリンが優れているとの試験報告はないことから、ベルギー・Erasme大学病院病院集中治療部門のDaniel De Backer氏らの研究グループは、ノルエピネフリンの方が死亡率が低いのかどうかを評価する多施設共同無作為化試験「SOAP II」を行った。NEJM誌2010年3月4日号掲載より。

28日後の死亡率を主要転帰に比較




試験は2003年12月~2007年10月に、ベルギー、オーストリア、スペインの3ヵ国・8施設で、ショック症状を起こした患者(心原性ショック、敗血症性ショック、乏血性ショック)を対象、血圧を回復・維持するため第一選択の昇圧薬としてドパミン(20μg/体重kg/分)またはノルエピネフリン(0.19μg/体重kg/分)のいずれかを投与するよう割り付けられ行われた。患者は、割り付けられたドパミンまたはノルエピネフリンで血圧が維持できなかった場合は、ノルエピネフリン、エピネフリンまたはバソプレシンを非盲検で追加投与された。

試験には1,679例の患者が登録され、そのうち858例がドパミン群に、821例がノルエピネフリン群に割り付けられた。ベースライン時の特性は両グループで同様だった。

主要転帰は、無作為化後28日の死亡率。副次エンドポイントには、代用臓器を必要としなかった日数、有害事象の発生などを含んだ。

死亡率に差はないが、有害事象はドパミンで有意に増加




28日時点の死亡率は、ドパミン群52.5%、ノルエピネフリン群48.5%で、両群間に有意差はみられなかった(ドパミン群のオッズ比:1.17、95%信頼区間:0.97~1.42、P=0.10)。

しかし、不整脈性イベントについて、ドパミン群(207件24.1%)の方がノルエピネフリン群(102件、12.4%)より多かった(P<0.001)。

また、28日時点の心原性ショック患者280例のサブグループ解析の結果、ドパミンはノルエピネフリンと比べて死亡率の上昇が認められた(カプランマイヤー解析によるP=0.03)。しかし、敗血症性ショック(1,044例、同P=0.19)、乏血性ショック(263例、同P=0.84)では関連が認められなかった。

研究グループは、「ドパミンを投与された患者と、ノルエピネフリンを投与された患者との間で死亡率に有意差はみられなかったが、ドパミン投与群の方が有害事象の増加が認められた」と報告した。

(医療ライター:朝田哲明)