電子カルテの自由記述から導出した患者安全指標、従来ツールより良好:米国

提供元:ケアネット

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公開日:2011/09/06

 



電子カルテシステム導入が進む中、その自由記述欄から自然言語処理にて導き出した患者安全指標の精度に関する検討が、米国・Tennessee Valley Healthcare SystemのHarvey J. Murff氏らにより行われた。術後合併症を特定するかどうかについて、現状ツールである退院コーディング情報をベースとした指標と比べた結果、感度では優れ、特異度は若干劣ったものの90%以上と非常に高い値が示されたという。電子カルテデータを活用した患者安全特定の方法は、現状では診療データコード(ICD)に依存している。研究グループは、それよりも自由記述から導き出した指標のほうが、高い検出力を示すのではないかと仮定し検討を行った。JAMA誌2011年8月24日号掲載報告より。

術後合併症の特定力について、退院コーディング情報ベースの指標と比較




Murff氏らは、1999~2006年の3州6ヵ所の退役軍人医療センターで外科的手術を受けた患者2,974例に関する断面調査を行った。

電子カルテデータから特定された、透析を要した急性腎不全、深部静脈血栓症、肺塞栓症、敗血症、肺炎または心筋梗塞の術後発生を、VASQIP(VA Surgical Quality Improvement Program)で再評価し、それら合併症を特定する自然言語処理アプローチの感度と特異度を求め、退院コーディング情報をベースとした患者安全指標とのパフォーマンスを比較した。

感度、特異度ともに優れる




各合併症発生率は、透析を要した急性腎不全2%(39/1,924例)、肺塞栓症0.7%(18/2,327例)、深部静脈血栓症1%(29/2,327例)、敗血症7%(61/866例)、肺炎16%(222/1,405例)、心筋梗塞2%(35/1,822例)だった。

急性腎不全例を正確に特定する感度は、従来患者安全指標が38%(95%信頼区間:25~54%)であったのに対し、自然言語処理アプローチは82%(同:67~91%)だった(p<0.001)。深部静脈血栓症(59%vs 46%、p=0.30)、敗血症(89%vs 34%、p<0.001)、肺炎(64%vs 5%、p<0.001)、心筋梗塞(91%vs 89%、p=0.67)についても同様の結果が得られた。

特異度は、自然言語処理アプローチが従来患者安全指標よりも低値を示したが、いずれも90%以上と非常に高かった。急性腎不全(94%vs 100%)、深部静脈血栓症(91%vs 98%)、敗血症(94%vs 99%)、肺炎(95%vs 99%)、心筋梗塞(95%vs 99%)だった(すべてp<0.001)。

(武藤まき:医療ライター)