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降圧薬の有害事象による中止、薬剤クラスで差/JAMA

 降圧薬に関する短期の二重盲検無作為化試験における有害事象や治療中止の発現は、薬剤クラスやレジメンによってばらつきがあり、一部の併用療法では単剤療法と比べて忍容性が優れることが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のNelson Wang氏らによるネットワークメタ解析の結果で示された。レジメンの中には、プラセボよりも有害事象による治療中止率が低く、症状の改善が示されたものもあった。得られた知見について著者は、「試験レベルに基づく結果であり、またネットワークメタ解析の前提条件に依存しているため、すべての患者に適用されるものではない」と述べている。JAMA誌オンライン版2026年5月28日号掲載の報告。4~26週のRCTデータをネットワークメタ解析で評価 研究グループは、短期臨床試験における主要5クラスの降圧薬(ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬)とそれらの併用療法について、有害事象と治療中止について評価した。 創刊日~2024年12月31日のCochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、Epistemonikosを検索し、主要5クラスの降圧薬またはそれらの併用療法に関する二重盲検無作為化試験(追跡期間は4~26週)を特定した。 2人のレビュワーがそれぞれデータを抽出し、固定効果ネットワークメタ解析にて薬剤クラスごとにデータを統合し、オッズ比(OR)と95%信用区間(CrI)および累積順位曲線下面積(SUCRA)を用いて要約を行った。 最終統計学的解析は、2026年4月に実施された。主要アウトカムは、有害事象による治療中止(無作為化された治療の中止と定義)。副次アウトカムは、頭痛、めまい、浮腫、咳の発現などであった。5つの併用療法、2つの単剤療法がプラセボよりも忍容性が優れ、症状を改善 計716試験が解析対象に含まれた。平均追跡期間は8.6(SD 5)週間、被験者は計15万9,362例であり、平均年齢は54.6(SD 7)歳、女性44%、ベースラインの平均血圧値は158/100mmHgであった。12試験に日本人が含まれた。 プラセボとの比較において、有害事象による治療中止率が有意に増加したのはCa拮抗薬(OR:1.43[95%CrI:1.23~1.67]、リスク群間差[RD]:1.2%[95%CrI:0.6~2.0])、ACE阻害薬+Ca拮抗薬(OR:1.46[1.13~1.87]、RD:1.1%[0.2~2.4])、β遮断薬+サイアザイド系利尿薬(OR:1.58[1.04~2.47]、RD:1.7%[0.1~4.3])であった。 ARBを含むすべてのレジメンは、プラセボとの比較において、有害事象による治療中止例が少なかった。統計学的に有意差が認められたのは、ARB単剤(OR:0.73[95%CrI:0.61~0.86]、RD:-0.8%[95%CrI:-1.3~-0.4])、ARB+Ca拮抗薬(OR:0.61[0.47~0.79]、RD:-1.2%[-1.8~-0.6])であった。 ネットワークメタ解析により、5つの併用療法と2つの単剤療法が、有害事象による治療中止に関してプラセボよりもSUCRA値が高く(上位からARB+Ca拮抗薬、ARB+β遮断薬、ARB単剤、Ca拮抗薬+サイアザイド系利尿薬、ARB+サイアザイド系利尿薬、サイアザイド系利尿薬、ARB+Ca拮抗薬+サイアザイド系利尿薬)、プラセボと比較して全般的な症状改善が示唆された。 プラセボと比較して、すべてのレジメンでめまいが有意に増加したが、頭痛はCa拮抗薬を含む3レジメン(Ca拮抗薬、ACE阻害薬+Ca拮抗薬、β遮断薬+Ca拮抗薬)を除いて、すべてのレジメンで有意に減少した。

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心不全のカリウム至適範囲は4.2〜5.0mmol/L/EHJ

 心不全患者における安全なカリウム至適範囲について、左室駆出率(LVEF)が低下した心不全(HFrEF)と駆出率が保たれた心不全(HFpEF)で同じであるかは明らかにされていない。今回、英国・グラスゴー大学の小野 亮平氏らが心不全患者を対象とした12のランダム化比較試験の個別患者データを用いてメタ解析を実施。その結果、HFrEFおよびHFpEFのいずれにおいても、カリウムの至適範囲は4.2〜5.0mmol/Lであることが示された。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2026年5月28日号掲載の報告。 心不全患者においては神経体液性因子の活性化や薬剤(利尿薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬[MRA]など)、併存疾患(腎機能障害など)によって血清カリウム値の変動を来すが、これまでに実施されてきた研究では、LVEF別の層別化は行われておらず、一般的な低カリウム血症(3.5mmol/L未満)・高カリウム血症(5.5mmol/L)の基準値が、心不全患者の臨床アウトカムとどのように関連しているかは不明であった。 研究グループは、HFrEFに関する7つの試験(CHARM-Added、CHARM-Alternative、EMPHASIS-HF、ATMOSPHERE、PARADIGM-HF、DAPA-HF、GALACTIC-HF)およびHFpEFに関する5つの試験(CHARM-Preserved、I-PRESERVE、TOPCAT Americas、PARAGON-HF、FINEARTS-HF)から、計4万6,069例(HFrEF:3万2,346例、HFpEF:1万3,723例)の個別患者データを取得。ベースラインの血清カリウム値(mmol/L)を6つのカテゴリー(3.5未満、3.5以上4.0未満、4.0以上4.5未満、4.5以上5.0未満、5.0以上5.5未満、5.5以上)に分類して統合解析した。主要評価項目は全死因死亡であった。 主な結果は以下のとおり。・HFrEFとHFpEFの各試験における追跡期間中央値は、それぞれ24.2ヵ月と36.8ヵ月であった。・HFrEFでは血清カリウム値とアウトカムの間に逆J字型の関連が認められた。4.0~4.5mmol/Lを基準とした場合、3.5mmol/L未満群では、全死因死亡の大幅なリスク上昇と強く関連していた(調整ハザード比[aHR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.27~1.76)。また、心血管死(aHR:1.58、95%CI:1.32〜1.88)、突然死(aHR:1.58、95%CI:1.18〜2.12)、ポンプ不全死亡(aHR:1.71、95%CI:1.29〜2.25)も、3.5mmol/L未満群で最も高かった。・HFpEFのリスク曲線は、HFrEFと比べ緩やかなU字型で、全体的なイベント発生率も低かった。また、全死因死亡リスクが最も高かったのは5.5mmol/L以上群(aHR:1.29、95%CI:0.96〜1.74)であったが、基準群との差は緩やかであった。心血管死やポンプ不全による死も同様の傾向であり、突然死との関連はさらに緩やかであった。・全アウトカムを考慮した結果、最もリスクが低いベースラインの血清カリウム値の範囲は4.2~5.0mmol/Lであったが、軽度高カリウム血症に該当する5.0~5.5mmol/L群(HFrEFの約13%、HFpEFの約10%)であっても、多変数調整後は死亡や心不全入院のリスク上昇と有意に関連していなかった。・初回心不全入院、ならびに複合アウトカム(心不全入院または全死因死亡、心不全入院または心血管死)についても、全死因死亡や心血管死と同様の関連が認められた。 研究者らは、「HFrEFにおいて、低カリウム血症は予後不良と強く関連していた。安全性の観点から、いずれの心不全表現型であっても最適な血清カリウム値は4.2〜5.0mmol/Lの範囲に維持することが望ましい。また、5.0〜5.5mmol/Lであってもガイドライン推奨治療薬(MRAなど)を一律に中止するのではなく、ほかの原因の排除や厳密なモニタリング実施などのアプローチ検討が望まれるかもしれない。本結果より、心不全患者における「低カリウム血症」の定義を4.0mmol/L未満に再定義することを検討すべきであるという議論も支持される」としている。

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症候性リウマチ性心疾患、ジゴキシン追加は有用か/JAMA

 リウマチ性心疾患(RHD)は、低・中所得国(LMIC)の若年層における罹患および死亡の重要な原因で、駆出率が保たれた心不全の25%を占め、死亡の大部分は心不全に関連するとされる。RHD患者の心不全症状は、主にさまざまな程度の僧帽弁狭窄によって発生し、とくに心房細動の発症に伴い悪化する。インド・All India Institute of Medical Sciences(AIIMS)のGanesan Karthikeyan氏らDig-RHD Investigatorsは「Dig-RHD試験」において、症候性RHD患者では経口ジゴキシンの連日投与により、全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムのリスクが軽減し、毒性の発現は少ないことを示した。ジゴキシンは、その陽性変力作用が逆流性病変や心室機能障害を有する患者にも有用である可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2026年5月10日号掲載の報告。インドの研究者主導型無作為化プラセボ対照比較試験 Dig-RHD試験は、インドの12施設で実施した研究者主導型の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Indian Council of Medical Researchの助成を受けた)。2022年2月~2024年8月に、年齢18歳以上、心エコー図検査でRHDと確定され、すでにジゴキシンの投与を受けているか、心不全、心房細動または心房粗動を有する患者1,769例を登録した。 被験者を、通常治療に加え、ジゴキシン(0.125~0.25mg)を1日1回、経口投与する群(885例)またはプラセボ群(884例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、36ヵ月以内または試験終了までに発生した全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合であった。全死因死亡には差がない 主解析には試験薬の投与を1回以上受けた1,759例(ジゴキシン群880例、プラセボ群879例)が含まれた。ベースラインの全体の平均年齢は46歳、72%が女性で、70%が心房細動または心房粗動を有し、90%がNYHA心機能分類クラスII~IV、85%が中等度~重度の僧帽弁狭窄症を有していた。平均左室駆出率は58%で、34%がすでにジゴキシンの投与を受けていた。 主要複合アウトカムのイベントは、プラセボ群の312例(35.5%)で発生したのに対し、ジゴキシン群は276例(31.4%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.70~0.97、p=0.02)。 主要複合アウトカムの構成要素のうち、心不全の新規発症・悪化の発生率はジゴキシン群で有意に低かった(227例[25.8%]vs.257例[29.2%]、HR:0.82、95%CI:0.69~0.98、p=0.03)。心不全の悪化のほとんどは、入院を要することなく、利尿薬(経口または静脈内投与)の増量で治療された。 一方、全死因死亡の発生には両群間に有意な差を認めなかった(88例[10%]vs.91例[10.4%]、HR:0.94、95%CI:0.70~1.26、p=0.69)。死亡のほとんどが心不全によるものだった。安全で安価な治療法となる可能性 副次アウトカムのうち、心不全関連死または心不全の新規発症・悪化の複合はジゴキシン群で有意に良好であった(249例[28.3%]vs.284例[32.3%]、HR:0.82、95%CI:0.69~0.97、p=0.02)。 心不全関連死または心不全による入院の複合(ジゴキシン群80例[9.1%]vs.プラセボ群86例[9.8%]、p=0.49)、心不全関連死(41例[4.7%]vs.53例[6%]、p=0.16)、突然死(20例[2.3%]vs.16例[1.8%]、p=0.56)には両群間に差はなかった。 24例で、ジゴキシンが原因と疑われる毒性が発現した(ジゴキシン群17例、プラセボ群7例)。このうち11例(10例[1.1%]、1例)で、試験薬の投与が恒久的に中止された。 著者は、「通常治療として、β遮断薬とカルシウム拮抗薬を使用した基礎治療を受けている症候性RHD患者において、ジゴキシンの追加は全死因死亡または心不全の新規発症・悪化の複合アウトカムのリスクを低減した。この良好な結果は、心不全の新規発症・悪化の減少によってもたらされた」「ジゴキシンは、死亡リスクを増加させずに、心不全の悪化を軽減する安全で安価な方法と考えられる」としている。 また、「サブグループ解析では、ベースライン時にジゴキシンを服用していた患者(HR:0.61、95%CI:0.46~0.81)や心房細動を呈していた患者(HR:0.75、95%CI:0.62~0.90)で、ジゴキシンの有益性が大きかったが、この効果の差が生じた理由は不明である」「ジゴキシンが原因と疑われる毒性の発現が少なかったが、これは患者が比較的若く、併存疾患が少なく、腎機能も良好であったことで説明可能と考えられる」と指摘している。

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第296回 ナフサ不足で医療資材逼迫、医療用手袋5,000万枚を放出/政府

<先週の動き> 1.ナフサ不足で医療資材逼迫、医療用手袋5,000万枚を放出/政府 2.血管炎薬アバコパンで死亡20例、添付文書に「警告」新設/厚労省・キッセイ薬品 3.AIを悪用したサイバー攻撃に備え、医師会や病院団体と対策を協議/厚労省 4.マイナカード「任意」から義務化検討へ、全員保有を提言/自民党 5.禁忌の抗菌薬処方でSJS発症か、患者死亡で遺族に補償へ/三重県 6.東大医学系研究科の贈収賄事件、元特任准教授に有罪判決/東京地裁 1.ナフサ不足で医療資材逼迫、医療用手袋5,000万枚を放出/政府中東情勢の悪化を背景に、石油由来原料を使う医療資材の供給不安が医療現場に広がっている。政府は5月23日、感染症などの流行に備え国が備蓄していた医療用手袋のうち、まず5,000万枚の放出を開始した。都内の歯科診療所には同日、第1弾が到着。受け取った院長は「診療所は在庫を抱えられない。購入できて安心した」と語った。放出対象は、病院、診療所、訪問看護事業所、薬局、助産所など。在庫量が「今後1週間の想定消費量から購入見込み量を差し引いた数」の4週間分を下回る場合、医療機関等情報支援システム(G-MIS)を通じて申請できる。販売は1,000枚単位で、価格は1セット5,980円、1枚当たり約6円。購入可能数は想定消費量の2週間分を基準に決まり、条件を満たせば複数回の申請も可能とされる。21日時点で2,000を超える医療機関が対象となっており、茨城県でも第1弾として63医療機関から27万1,000枚の購入申し込みがあった。ただ、逼迫しているのは手袋だけではない。ナフサ価格の上昇を受け、廃液回収容器、投薬瓶、軟こう容器、点眼瓶、松葉杖、透析回路、医薬品包装用フィルムなどでも値上げや納期遅延、受注制限が相次いでいる。調剤薬局では小児用シロップ容器が不足し、粉薬での処方を依頼する例も出ている。医療資材卸では4月以降、平均2~3割の値上げが行われ、製品によっては1.5~2倍の値上げ要請もあるという。診療報酬や薬価は公定価格であり、医療機関や製薬企業は一般産業のようにコスト上昇分を価格転嫁しにくい。物価高、人件費高、光熱費高に加え、資材不足が中小医療機関の経営をさらに圧迫している。政府は追加放出も検討するとしているが、手袋の使用量は月9,000万枚規模ともされ、備蓄放出だけで不安を払拭するのは難しい。医療提供体制を維持するには、資材供給の安定化に加え、物価変動を診療報酬や薬価に反映する仕組みの検討が求められる。 参考 1) 医療用手袋の政府備蓄品が到着 厚労省、都内歯科で公開(日経新聞) 2) 国が備蓄している医療用手袋 購入要請があった医療機関にきょうから配送開始 中東情勢の影響を受けて放出(TBS NEWS) 3) ナフサ不足で医療資材逼迫 軟こう容器・松葉杖・手袋…中小医院資材逼迫で苦境(日経新聞) 4) 中東情勢悪化に伴う医療用グローブの国家備蓄放出、「医療機関在庫が不足する」場合に購入可能-厚労省(Gem Med) 2.血管炎薬アバコパンで死亡20例、添付文書に「警告」新設/厚労省・キッセイ薬品厚生労働省は5月21日、選択的C5a受容体拮抗薬アバコパン(商品名:タブネオスカプセル10mg)について、製造販売元のキッセイ薬品に対し、添付文書に「警告」欄を新設し、医療関係者へ安全性速報(ブルーレター)を発出するよう指示した。同薬の服用後、肝臓の胆管がなくなる「胆管消失症候群」を含む重篤な肝機能障害が報告され、国内で20例の死亡があったことを受けた措置。ブルーレターの発出は5年ぶりで、迅速な安全対策が必要と判断された。アバコパンは、顕微鏡的多発血管炎と多発血管炎性肉芽腫症を対象とする飲み薬で、いずれも国の指定難病。ステロイド使用量を減らせる薬として期待され、国内では2022年6月に発売され、直近1年間で推定約8,500例に使用された。死亡した20例は60~90代で、19例は投与開始から3ヵ月以内に肝機能障害を発症。胆管消失症候群は22例報告され、このうち13例が死亡しており、とくに深刻な副作用とみられている。改訂後の添付文書では、投与開始前と投与中の定期的な肝機能検査を求める。投与開始後3ヵ月間は少なくとも2週間に1回、その後3ヵ月間は少なくとも4週間に1回、6ヵ月以降も定期的に検査する。ALTまたはASTが基準値上限の3倍を超えた場合は投与を中断し、8倍超、5倍超が2週間以上続く場合、総ビリルビンやALPの上昇、黄疸やかゆみなどがあれば中止する。胆管消失症候群が疑われる場合も速やかに中止することを求めている。キッセイ薬品は、新規患者への投与を控えるよう注意喚起していたが、その後は頻回の検査を前提に新規投与も可能とされた。すでに服用中の患者には、自己判断で中止せず、体調変化があれば医師や薬剤師に相談するよう呼びかけている。その一方で、米国食品医薬品局(FDA)は有効性や承認申請資料を巡る疑義から米国での承認撤回を提案しており、厚労省も海外当局と連携し、有効性や安全性の確認を進める。 参考 1) タブネオスの安全性確保のための注意喚起について(キッセイ薬品) 2) タブネオスにブルーレター発出、添付文書の「警告」欄を新設(日経ドラッグインフォメーション) 3) 血管炎治療剤タブネオス 安全性速報を発出-添付文書に「警告」新設 キッセイ薬品(CB news) 4) キッセイ薬品工業が「ブルーレター」発出 タブネオス服用後の死亡患者20人報告で(中日新聞) 5) 投与患者20人死亡の血管炎治療薬、添付文書に「警告」欄を新設・頻繁な肝機能検査を要請…厚労省(読売新聞) 6) キッセイ薬品の血管炎薬、添付文書に「警告」欄 有効性に疑義も(朝日新聞) 7) キッセイ薬品、血管炎治療薬で安全性速報 死亡報告で厚労省指示(日経新聞) 3.AIを悪用したサイバー攻撃に備え、医師会や病院団体と対策を協議/厚労省厚生労働省は5月22日に、AIを悪用したサイバー攻撃への懸念が高まっているとして、医療機関や病院団体とサイバーセキュリティ対策に関する意見交換会を開いた。背景にあるのは、米アンソロピックが4月に発表した高性能AI“Claude Mythos”(クロード・ミュトス)で、ソフトウエアの脆弱性を自律的に検出し、攻撃プログラムの生成にもつながり得るとされる。国家サイバー統括室は18日、AIの急速な進展により攻撃の規模が拡大する恐れがあるとして、医療や金融など重要インフラ15分野に注意を呼びかけていた。意見交換には上野 賢一郎厚労相、厚労省や国家サイバー統括室の担当者、全国自治体病院協議会、全日本病院協会、日本病院会、日本医療法人協会などの関係者が出席した。上野厚労相は、医療現場では日々の診療や運営に追われ、サイバー対策が後回しになりがちだと指摘し、「現場任せではなく経営層の主体的な関与が不可欠」と強調。「サイバー攻撃の脅威はさらに増大する。必要な対応を速やかに進める」と述べた。医療機関ではこれまでも電子カルテが使えなくなり、診療を一時中断する被害が発生している。出席した医療機関側からは、「対策に充てる財源が乏しい」や「専門人材を確保できないこと」への不安が示され、国による財政的・技術的支援を求める声が上がった。厚労省は、医療情報システムの安全管理ガイドラインに基づく基本対策の徹底、攻撃を受けた場合の事業継続計画作り、補助金や経営層向け研修の活用を呼びかけた。政府は重要インフラ15分野ごとに安全基準を整備する方針で、厚労省も医療分野の実情に応じた対策を具体化する。今後、関係機関に事務連絡を出し、医療機関の機能停止が国民生活に重大な影響を及ぼさないよう、医療現場と連携して実効性ある体制作りを進める。診療継続を支える経営課題として、各病院の備えが問われる。 参考 1) ミュトス対応 医療機関と意見交換、厚労省 セキュリティー対策具体化へ(CB news) 2) 医療機関にサイバー攻撃対策を要請 厚労省、AI「ミュトス」念頭(日経新聞) 3) 新型AI「ミュトス」 厚生労働省と医療機関が意見交換 上野大臣「必要な対応を速やかに進める」 サイバー攻撃で診療一時中断も 「財源ない」「専門人材いない」の声も(TBS NEWS) 4) 「医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策に関する厚生労働省との意見交換」を開催します(厚労省) 4.マイナカード「任意」から義務化検討へ、全員保有を提言/自民党自由民主党は5月19日、マイナンバーカードの取得義務化の検討を政府に求める政策提言「デジタル・ニッポン2026」を公表した。国民全員がカードを保有することを前提に、行政サービスの拡充や民間利用を進める狙いで、早ければ来年の通常国会で関連法改正を目指す。現在、マイナンバーカードの取得は任意で、4月末時点の保有率は82.7%。提言では、取得を法的に義務付ける必要性や実効性を検討すべきとするが、罰則は設けない方針。背景には、中低所得の現役世代支援として検討される「給付付き税額控除」や迅速な現金給付への活用がある。提言では、給付に必要な公金受取口座の登録義務化の検討も盛り込み、マイナカードを「デジタル社会のパスポート」と位置付けている。党デジタル社会推進本部長の平井 卓也衆院議員は、交付開始当初に比べ肯定的に受け止める人が増えたとして、「持っていることを前提に政策を組み上げる」と説明した。その一方で、個人情報の漏えいや目的外利用、プライバシー侵害への懸念はいまだに根強い。マイナ保険証の原則化を巡っては、医療機関の受付負担や高齢者の利用困難、資格確認書の併存などから「事実上の義務化」との批判もある。会計検査院の調査では、2025年7月末までに本人希望で廃止されたカードが累計93万枚に上り、トラブルへの不安や利便性を実感できないことが背景にあるとの見方も出ている。コンビニ交付や本人確認で「期待通りの使い勝手になっていない」との指摘もあり、普及策の妥当性が問われている。松本 尚デジタル相は22日の会見で、義務化について「法的に縛り付けることは議論が必要だ」と述べ、必要性への明言を避けた。カードを持ちたくない人が納得できる根拠や、どの政策と一体で進めるのかを検討する必要があるとの認識を示した。利便性向上と行政効率化を掲げる政府・与党に対し、制度への信頼回復と不安払拭が課題となる。 参考 1) デジタル・ニッポン2026ー責任あるアジャイル・ガバナンスー(自民党) 2) マイナカード、取得義務化を提言 自民「来年国会で法改正めざす」(朝日新聞) 3) マイナカード義務化「必要性もう少し議論」 松本デジタル相(日経新聞) 4) 任意だったのに…「マイナカード義務化」自民が提言へ 給付付き税額控除の議論が「絶好のラストチャンス」(東京新聞) 5) 「93万枚」が廃止されていたマイナンバーカード このままでは“第2の住基カード”に? 「多くの人が“便利さ”を感じていない」(デイリー新潮) 5.禁忌の抗菌薬処方でSJS発症か、患者死亡で遺族に補償へ/三重県三重県桑名市の地方独立行政法人 桑名市総合医療センターは5月21日、気管支喘息で入院した60代男性に禁忌薬を誤って処方し、男性が重い薬剤アレルギーとみられる症状を発症後、3月23日に死亡したと発表した。病院側は薬剤投与ミスを認め、遺族に謝罪するとともに補償する方針を示している。男性は2月中旬、喘息発作で同センターに入院し、ステロイド治療に伴う感染症予防のため、担当医が抗菌薬トリメトプリム スルファメトキサゾール(商品名:バクトラミン)を処方した。男性は退院後に服用したが、高熱や全身の発疹、皮膚や口腔内のただれなどを起こし、愛知県内の病院に搬送された。その後、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)を発症したとみられ、より重篤な中毒性表皮壊死症(TEN)の可能性も指摘されている。最終的には腸閉塞を伴う敗血症性ショックなどで死亡した。バクトラミンは、スルファメトキサゾール・トリメトプリムを成分とするST合剤で、男性は過去に同じ成分を含む別の商品名の抗菌薬でアレルギー症状を起こしていた。電子カルテには投与禁忌の記載があったが、担当医は商品名の違いから同一成分だと認識せず、成分確認を十分に行わなかったという。一部報道では、医師がアレルギー歴を別系統の薬剤と誤認していたともされる。病院は、誤投薬とアレルギー反応との関連性は極めて高いと説明する一方で、死亡との直接の因果関係については病理解剖の結果や外部専門家を含む調査で検証する方針。県医師会には医療事故として報告しており、院内事故調査委員会や第三者委員会で原因究明と再発防止策を検討する。山田 典一病院長は記者会見で「痛切に責任を感じている」と謝罪し、「全職員がリスクを感じたら拾い上げる体制に変えなければならない」と述べた。 参考 1) 桑名市総合医療センターで男性に禁忌薬処方、難病発症 別の病院に転院後死亡(中日新聞) 2) 禁忌薬誤投与後に患者男性が死亡 三重の医療センター 因果関係調査(産経新聞) 3) 抗菌薬誤投与で難病発症、患者死亡 医師が成分確認せず-三重・桑名市総合医療センター(時事通信) 4) 桑名市総合医療センターの患者死亡 薬剤の投与ミス認める(NHK) 6.東大医学系研究科の贈収賄事件、元特任准教授に有罪判決/東京地裁東京大学大学院医学系研究科の共同研究を巡る贈収賄事件で、収賄罪に問われた元特任准教授の吉崎 歩被告(46)に対し、東京地裁は5月22日、懲役1年、執行猶予2年、追徴金約196万円の有罪判決を言い渡した。求刑は懲役1年2ヵ月、追徴金約196万円で、吉崎被告は公判で起訴内容を認めていた。判決によると、吉崎被告は2023年3月から2024年8月にかけて、東京大学大学院医学系研究科皮膚科学分野の元教授、佐藤 伸一被告(62)とともに、一般社団法人日本化粧品協会の代表理事だった引地 功一被告(52)から、都内の高級クラブや性風俗店などで30回にわたり、計約196万円相当の接待を受けた。接待は、皮膚疾患に対する大麻草由来成分カンナビジオール(CBD)の有効性などを調べる「臨床カンナビノイド学社会連携講座」の設置や共同研究の推進で便宜を図る見返りだったとされた。吉崎被告は同講座の講座長として、佐藤被告と日本化粧品協会との間に入り、研究実務や接待の段取りを調整していた。弁護側は、吉崎被告が佐藤被告を師と仰ぎ、強い影響下にあったため異を唱えることは難しかったと主張。判決も、上司である佐藤被告の意向に反することが困難だった点は認めた。その一方で、吉崎被告が接待の調整役を担い、単独で接待を受けたこともあり、自ら積極的に接待を受けたい意向があったとして、「刑事責任は軽視できない」と指摘した。遊興接待の内容についても、職務の廉潔性を害したことは明らかだとした。判決はさらに、東大の社会連携講座についても言及。大学の看板を営利目的で利用しようとする企業に悪用されかねない側面があり、公益的な研究として適切に運用されるかどうかが、講座を統括する担当教授のモラルに大きく依存していたと指摘した。産学連携を進める上で、研究費の受け入れや企業との距離感を個人の倫理観に委ねる危うさが改めて浮き彫りになった形。しかしながら、吉崎被告が事件後に東大を退職し、犯行を認めて反省していること、再び公職に就く可能性が低く再犯の可能性も低いことなどから、執行猶予付き判決が相当と判断された。事件では、佐藤被告も収賄罪で起訴されているほか、贈賄罪に問われた引地被告の判決は5月26日に予定されている。東大では別件でも医療機器選定を巡る収賄事件が起きており、大学病院における企業連携と利益相反管理のあり方が厳しく問われている。 参考 1) 東大病院汚職、元特任准教授に有罪判決 風俗店やクラブで接待受ける(朝日新聞) 2) 東大院汚職で元特任准教授に有罪判決 東京地裁(日経新聞) 3) 懲役1年執行猶予2年、性接待などを受け 東大病院の収賄事件、「教授の強い影響下にあった」元特任准教授に有罪判決(日経メディカル)

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タブネオスの肝機能障害にブルーレター発出/厚労省

 2026年5月21日、厚生労働省は選択的C5a受容体拮抗薬アバコパン(商品名:タブネオスカプセル10mg)について、添付文書の「警告」を新設し、「重要な基本的注意」などを改訂するとともに、「安全性速報(ブルーレター)」により医療関係者などに対して速やかに注意喚起を行うようキッセイ薬品工業に対し指示した。 アバコパンは顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症に対する治療薬で、承認申請時に提出された臨床試験成績を踏まえ、2021年9月の承認当初から、添付文書において重大な副作用として肝機能障害に関する注意喚起がなされていた。2022年6月の発売開始以降、本剤を服用した患者で「胆管消失症候群」を含む重篤な肝機能障害が発現した症例が報告されており、死亡に至った症例が国内で20例報告*されたという。なお、2025年2月~2026年1月の国内の年間推定使用患者数は8,503例に上る。*2026年4月27日時点、キッセイ薬品工業の安全性データベースの集計(本剤との因果関係が不明なものを含む) 添付文書の追記は以下のとおり。【警告】(新設)胆管消失症候群を含む重篤な肝機能障害があらわれることがあり、死亡に至った例も報告されているので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。本剤投与中に重篤な肝機能障害がみられた場合には、本剤の投与を中止する等の適切な処置を行うこと。【重要な基本的注意】(下線部が追加)肝機能障害があらわれることがあるので、以下の点について十分注意すること。多くの場合、これらの事象は投与開始後3ヵ月以内に発現している。 本剤の投与開始前、投与開始後3ヵ月間は少なくとも2週間に1回、その後の3ヵ月間は少なくとも4週間に1回、その後も投与期間中は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。 本剤投与中に基準値上限の3倍を超えるALT又はASTの上昇が認められた場合には、本剤の投与を中断し、速やかに患者の状態を評価すること。また、以下に該当する場合は本剤の投与を中止すること。・ALT又はASTが基準値上限の8倍を超える場合・ALT又はASTが基準値上限の5倍を超える状態が2週間を超えて持続した場合・総ビリルビンが基準値上限の2倍を超える場合・ALPが基準値上限の2倍以上の場合・黄疸やそう痒等の肝機能障害の徴候又は症状が認められる場合なお、胆管消失症候群が疑われる場合には、速やかに本剤の投与を中止すること。  なお、今回発出されたブルーレターでは、胆管消失症候群を含む重篤な肝機能障害の早期発見や重症化防止のため、肝機能検査の実施タイミングや頻度、投与中止基準などが明記。医療関係者に対して、以下のような注意喚起が示された。―――■胆管消失症候群を含む重篤な肝機能障害にご注意ください。■多くの場合、投与開始後3ヵ月以内に発現しています。肝機能障害の早期発見や重症化防止のため、以下の点に十分ご注意ください。○以下のタイミングで、肝機能検査を実施ください。・投与開始前・投与開始後3ヵ月間:少なくとも2週間に1回・その後3ヵ月間:少なくとも4週間に1回・6ヵ月目以降:定期的○以下の所見が見られた場合は、適切な対応をお願いいたします。なお、胆管消失症候群が疑われる場合には、速やかに本剤の投与を中止してください。・基準値上限の3倍を超えるALT又はASTの上昇が認められた場合 →本剤の投与を中断し、速やかに患者の状態を評価ください・ALT又はASTが基準値上限の8倍を超える場合・ALT又はASTが基準値上限の5倍を超える状態が2週間を超えて持続した場合・総ビリルビンが基準値上限の2倍を超える場合・ALPが基準値上限の2倍以上の場合・黄疸やそう痒等の肝機能障害の徴候又は症状が認められる場合 →本剤の投与を中止してください■患者の状態を十分に観察し、自他覚症状の発現に注意してください。異常が認められた場合はただちに医師・薬剤師に相談するよう、患者に対してご指導ください。―――

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IgA腎症へのtelitacicept、第III相試験の中間解析結果/NEJM

 疾患進行のリスクが高いIgA腎症患者において、新規開発中のtelitaciceptの投与により、プラセボと比較し、39週時点の24時間尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)が有意に低下した。中国・北京大学第一医院のJicheng Lv氏らTELIGAN Investigatorsが、同国72施設で行われた第III相の二重盲検プラセボ対照無作為化試験の、事前規定の中間解析の結果を報告した。telitaciceptは、IgA腎症の病態に関与するB細胞活性化因子(BAFF)および増殖誘導リガンド(APRIL)の両方を標的とする組み換え融合タンパク質製剤で、IgA腎症への有効性が期待されている。NEJM誌2026年5月14・21日号掲載の報告。39週時点の24時間UPCRを対プラセボで検証 試験は、最適な支持療法を受けているものの、生検でIgA腎症と診断され、蛋白尿(尿蛋白値1.0g/日以上)の持続が認められる患者を登録して行われた。 研究グループは被験者を、週1回telitacicept 240mgを皮下投与する群またはプラセボ投与群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、ベースラインと比較した39週時点の24時間UPCRとし、幾何平均比(GMR)で評価した。安全性も評価した。UPCRの変化率は、telitacicept群-58.9%、プラセボ群-8.8% 2023年4月~2025年2月に、318例がtelitacicept群(159例)またはプラセボ群(159例)に無作為化された。全被験者が少なくとも1回、試験薬を投与され、有効性および安全性の解析集団に包含された。今回の中間解析の時点で、それぞれ154例(96.9%)、150例(94.3%)が39週の試験期間を完了していた。 ベースラインの両群の被験者特性は類似しており、平均年齢は38.2歳、女性が53.8%であり、eGFRの平均値は75.5mL/分/1.73m2、24時間UPCRの中央値は1.26であった。また、全例がACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を使用しており、telitacicept群の35.2%およびプラセボ群の34.6%がSGLT2阻害薬を使用していた。 39週時点の24時間UPCRのベースラインからの変化率は、telitacicept群-58.9%、プラセボ群-8.8%であり、相対的群間差は-55.0%(95%信頼区間[CI]:-61.3~47.6、p<0.001)と実薬群で良好であった。 ベースラインと比較したeGFRの変化率は、telitacicept群-1.0%(95%CI:-3.2~1.2)、プラセボ群-7.7%(95%CI:-9.9~-5.4)であった。 有害事象は、telitacicept群のほうがプラセボ群よりも多くみられた(89.3%vs.78.6%)が、重篤な有害事象の発現頻度は低かった(2.5%vs.8.2%)。telitaciceptに関する予期せぬ安全上の問題は報告されなかった。

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75歳以上の降圧薬、ARB vs.Ca拮抗薬~日本人大規模データ

 75歳以上の高齢者では高血圧が多くみられ、心血管疾患や死亡のリスク因子となる。降圧治療の第1選択薬として、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)やカルシウム拮抗薬(CCB)が多く用いられるが、高齢者におけるエビデンスは限られている。そこで、野間 久史氏(統計数理研究所/総合研究大学院大学)、福田 治久氏(九州大学大学院医学研究院)らの研究グループは、本邦の全国規模の医療ビッグデータを用いて、target trial emulationの手法により75歳以上の高齢者におけるARBを含む治療とCCBを含む治療を比較した。その結果、ARBを用いた群はCCBを用いた群と比較して、全死亡、心不全入院、心筋梗塞、脳卒中、主要心血管イベント(MACE)のリスク低下と関連することが示された。本研究結果は、Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2026年4月26日号に掲載された。 研究グループは、全国の医療情報を統合した500万例以上の大規模データベース(LIFE Study)を用いて、後ろ向き観察研究を実施した。対象は、2014年4月~2024年9月のデータに含まれる75歳以上のうち、過去12ヵ月間にARBまたはCCBの処方がなく、新たにARBまたはCCBを開始した2万9,822例とした(ARB群1万37例、CCB群1万9,785例)。主要評価項目は全死亡、副次評価項目は心不全入院、心筋梗塞、脳卒中、MACE、腎アウトカムなどとした。治療開始時点を起点とする新規使用者デザインを用いて、target trial emulationの手法により両群を比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は、ARB群81.7歳、CCB群81.8歳で、女性の割合はそれぞれ57.2%、57.1%であった。追跡期間中央値は4.0年。・追跡期間中に3,487例が死亡した。死亡はARB群1,141例、CCB群2,346例に発生し、ARB群はCCB群と比較して全死亡リスクが有意に低かった(ハザード比[HR]:0.885、95%信頼区間[CI]:0.823~0.951)。5年死亡率はARB群12.7%、CCB群14.8%で、絶対リスク差は-2.1%ポイント(95%CI:-3.1~-1.0)であった。・副次評価項目の心不全入院、心筋梗塞、MACEについてもARB群がCCB群と比較してリスクが低く、脳卒中についてもわずかながらARB群でリスク低下がみられた。一方で、腎アウトカム(持続的なeGFR 40%以上低下、末期腎不全または透析導入)については、両群間で有意差はみられなかった。各評価項目のHR(95%CI)は以下のとおり。 心不全入院:0.843(0.774~0.918) 心筋梗塞:0.867(0.795~0.945) 脳卒中:0.931(0.869~0.998) MACE:0.889(0.848~0.931) eGFR 40%以上低下:1.110(0.773~1.593) 末期腎不全/透析導入:0.611(0.354~1.056) 本研究結果について著者らは、「75歳以上の成人において、ARBを用いた降圧治療はCCBを用いた降圧治療と比較して、全死亡および心不全入院のリスク低下と関連し、心筋梗塞および脳卒中のリスクについても、小さいながら有意な低下が認められた。これらの知見は、75歳以上の高齢者に対して降圧治療を開始する際の薬剤選択に直接関わるエビデンスであり、この集団においてARBを優先的な選択肢として考慮する根拠となる可能性がある」とまとめた。一方で、本研究はtarget trial emulationの手法を用いることでバイアスの低減を図っているものの、観察研究であり、生活習慣や服薬遵守、医師の処方判断などの未測定要因の影響を完全には排除できないことも指摘している。

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「エンレスト」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第87回

第87回 「エンレスト」の名称の由来は?販売名エンレスト®錠50mg、100mg、200mgエンレスト®粒状錠小児用12.5mg、31.25mg一般名(和名[命名法])サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(JAN)効能又は効果<錠50mg・100mg・200mg>成人慢性心不全ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。小児慢性心不全<錠100mg・200mg>高血圧症<粒状錠小児用12.5mg・31.25mg>慢性心不全用法及び用量<慢性心不全>通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として1日2回経口投与する。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量する。1回投与量は50mg、100mg又は200mgとし、いずれの投与量においても1日2回経口投与する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。通常、1歳以上の小児には、サクビトリルバルサルタンとして下表のとおり体重に応じた開始用量を1日2回経口投与する。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に目標用量まで増量する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。小児における用量表(1回投与量)画像を拡大する<高血圧症>通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最大投与量は1回400mgを1日1回とする。(参考)画像を拡大する警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.アンジオテンシン変換酵素阻害薬(アラセプリル、イミダプリル塩酸塩、エナラプリルマレイン酸塩、カプトプリル、キナプリル塩酸塩、シラザプリル水和物、テモカプリル塩酸塩、デラプリル塩酸塩、トランドラプリル、ベナゼプリル塩酸塩、ペリンドプリルエルブミン、リシノプリル水和物)を投与中の患者、あるいは投与中止から36時間以内の患者3.血管性浮腫の既往歴のある患者(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬又はアンジオテンシン変換酵素阻害薬による血管性浮腫、遺伝性血管性浮腫、後天性血管性浮腫、特発性血管性浮腫等)4. アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者(ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く)5.重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者6.妊婦又は妊娠している可能性のある女性※本内容は2026年5月21日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2025年9月改訂(第10版)医薬品インタビューフォーム「エンレスト®錠50mg、100mg、200mg/エンレスト®粒状錠小児用12.5mg、31.25mg」

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Ca拮抗薬、ARBで降圧不十分な場合には低用量のサイアザイド系利尿薬がきわめて有効であるが、合剤は高齢者では慎重に(解説:桑島巖氏)

 TRIDENT研究は、脳出血発症後、収縮期血圧が130~160mmHgに安定した状態の1,670例(平均年齢58歳)を、テルミサルタン20mg、アムロジピン2.5mg、インダパミド1.25mgの1つの合剤治療(ピル)群とプラセボ群に1:1にランダム化して追跡した国際試験である。 結果としては、2.5年間の追跡期間中に、主要エンドポイントである脳卒中の再発は合剤(ピル)群は38例(4.6%)であり、プラセボ群の62例(7.4%)に比して有意に少なかったというものである。追跡中の血圧値はピル群127mmHg、プラセボ群138mmHgであった。重大な有害事象には両群で差がなかったが、試験の中止の理由は合剤群で血清クレアチニンレベルが有意に上昇したためであると報じている。 本試験の結果は、以下の2点について示唆的である。1つは、脳出血の最初には積極的な降圧が重要である点。そしてそのためには、ARB、ACEなどのRA系抑制薬にサイアザイド系類似薬インダパミドを加える降圧治療がきわめて有用であることはPROGRESS試験でも証明されている。ただし、本試験の合剤は、テルミサルタン20mg、アムロジピン2.5mg、インダパミド1.25mgであるが、わが国では1.25mgは発売されておらず、1mg・2mg錠のみである。さらに、高齢者の多いわが国では、インダパミドは高齢者では低ナトリウム血症や低カリウムなどを来すため、0.5mg(1錠の半分)で安全かつ十分な効果を発揮できる。また、本試験の中断の要因となったクレアチニン値の上昇が可逆性とはいえ使いづらい。したがって、本試験で用いられているピルは、日本人では副作用による用量調整が困難となり、適用は困難である。わが国のガイドラインで示されているように、カルシウム拮抗薬、RA系で降圧不十分な場合、積極的にサイアザイド系利尿薬を少量追加するのが妥当である。本試験のようにインダパミド1.25mgを含有する合剤をいきなり処方することは、高齢者では慎重であるべきである。まずは0.5mgから開始し、電解質異常が発生しないことを確認しながら処方すべきである。 近年、ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)であるエンレストが降圧薬としてかなり処方されているというが、本来は心不全治療薬であり、欧米では降圧薬としては認可されていない。製薬会社は、心不全に比べて高血圧市場のほうが圧倒的に多いという事情から、降圧薬としての高血圧治療の認可を取得したが、最近発表された日本高血圧学会のガイドライン2025では、ステップ1段階では、カルシウム拮抗薬、ARB/ACE阻害薬、少量のサイアザイド系利尿薬、β遮断薬のみに限定し、それでも降圧不十分な場合にのみARNI、MR拮抗薬を用いるべきとの指針を示している。南江堂の『今日の治療薬』にも、エンレストは慢性心不全の治療を受けている患者に限定して用いると明記、強調されている点は立派である。 その指針に従わない場合には、保険審査により査定される可能性があることは忘れてはならない。ARB/ACE阻害薬に少量のサイアザイド系利尿薬を追加するのみで、かなりの降圧効果が得られることは念頭に置くべきである。 本試験の奇異に感じる点は、オーストラリアや英国などの先進国にスリランカ、ナイジェリアなどの発展途上国を交えた国際試験であることだが、60歳未満ですでに脳出血に罹患している例が多いことは、発展途上国では健康管理がいまだ不十分な症例が多いことをうかがわせる。

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外来での立ち往生【Dr. 中島の 新・徒然草】(631)

六百三十一の段 外来での立ち往生日が長くなってきました。考えてみれば、あと1ヵ月少しで夏至。そりゃあ、日も長くなるはずです。さて、先日の脳外科外来でのこと。若者の男性患者さんがこんなことをおっしゃっていました。 患者 「実は、こないだ救急室に運ばれたんですよ」 電子カルテを調べてみると、確かに数週間前に当院に救急搬入されています。 患者 「蕎麦を食べたら身体が赤くなって、息も苦しくなってきて」 カルテには「蕎麦を食べて15分後に皮膚の発赤、呼吸苦」とあります。これはまずい!が、この患者さんはのんびりしたものです。 患者 「でも、薬を使われるのは嫌だったんで、そのまま帰ってきました。薬っていろいろと副作用があるんでしょう」 はあ?何を言ってるの!副作用がどうとかいう屁理屈に、私は思わず説教を始めてしまいました。 中島 「それ、死にますよ。生きていたのは単にラッキーだっただけです」 カルテの記載はこうです。ご本人は生理食塩水以外の薬剤投与を拒否、入院も拒否したため帰宅とする。ただし、再び皮膚の発赤・発疹や呼吸困難などが見られたら、すぐに医療機関を受診するよう説明した。確かに昨今は、患者さんの意思に逆らってまで治療を無理強いしない傾向にあります。が、あっさりし過ぎじゃないですかね、これ。私の思いを無視して、患者さんは無邪気に尋ねてきます。 患者 「薬って、どんなのを使うんですか?」 中島 「まずはアドレナリンで、あとは抗ヒスタミン薬やステロイドですね」 患者 「救急室に着いた時にはもう症状が良くなってきていたんですが、それでも薬を使わないといけないんですか?」 中島 「えっ?」 思わぬ質問に、私は反論できなくなってしまいました。 患者 「そもそもヒスタミンって、人体にあるものですよね。どんな役割があるんですか?」 中島 「ぐぬぬ」 ヒスタミンといえば、胃潰瘍に関係したりアレルギー性鼻炎を起こしたり、悪いイメージしかありません。普段はどんな働きをしているのだったかな? 中島 「それを説明し始めたら、いくら時間があっても足りません」 患者 「そうなんですか」 中島 「あとは『アナフィラキシー』と『ヒスタミン』というキーワードで、ネットか何かを使ってご自分で調べてください」 そう強弁して終えました。でも、本当はどう答えればよかったのでしょうか?抗ヒスタミン薬やステロイドはともかく、症状が改善しつつある状況でアドレナリンまで使うべきなのか。躊躇してしまうのも無理はありません。が、後でいろいろ調べてみると「皮膚の発赤と呼吸困難という複数系統の症状がそろった時点でアナフィラキシーと判断し、症状が改善しつつある状況でもアドレナリンを使うべし」ということになっていました。その主要な理由として、蕎麦が胃の中に残っているのでアナフィラキシー症状が再燃する可能性が十分にある若さゆえの代償機構で何とか血圧を保っているものの、急変する可能性があるアドレナリンが肥満細胞からのヒスタミン放出を抑制するということがあるようです。また「ヒスタミンは普段どんな働きをしているのか?」という質問にもうまく答えられず。これも調べてみると、脳の覚醒作用、胃液を介しての食物消化作用、免疫システムの一部という働きがあることがわかりました。考えてみれば、抗ヒスタミン薬で眠くなる、H2受容体拮抗薬が胃酸分泌を抑制する、アナフィラキシーではヒスタミンが大量放出される、という常識から導き出される当然の結果でしたね。ぬかった!というわけで、外来での何げないやり取りから、あれこれ考えさせられたというお話でした。多少は自分も賢くなったと思えば、それも良しとしておきましょう。最後に1句 夏来たる 年を取っても 日々勉強

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高齢者の不眠症治療、非ベンゾジアゼピン系催眠薬vs.オレキシン受容体拮抗薬

 世界的な高齢化の加速に伴い、高齢者の不眠症は、公衆衛生上の大きな課題となっている。高齢者の不眠症では、認知行動療法が第1選択治療であるにもかかわらず、薬物療法も依然として広く用いられている。しかし、高齢者に対する従来の非ベンゾジアゼピン系鎮静催眠薬(非BZRA)の使用には重大な安全性上の懸念が存在する。一方、新しい二重オレキシン受容体拮抗薬(DORA)の長期的な実臨床における安全性に関するエビデンスは依然として限られている。このエビデンスのギャップを埋めることは、高齢者における安全な薬剤使用を導くうえで、きわめて重要である。中国・Nanjing Youan HospitalのShuqing Gao氏らによる、Frontiers in Pharmacology誌2026年3月10日号の報告。 米国食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(FAERS)データベースを用いて、医薬品安全性監視研究を実施した。対象期間は2004年第1四半期から2025年第2四半期。65歳以上の患者で、主要な疑わしい薬剤として非BZRAまたはDORAが記載されている症例報告を対象とした。報告オッズ比(ROR)、比例報告比(PRR)、情報成分(IC)、経験的ベイズ幾何平均(EBGM)を用いて、偽陽性を最小限に抑えるための厳格な閾値を設定し、包括的な不均衡分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・高齢患者に関する報告5,447件を分析した。・本研究により、2つの薬剤クラス間で明確な有害事象プロファイルの違いが明らかになった。・非BZRA、とくにエスゾピクロンは、治療失敗(例:薬剤無効、不眠症)に関連する最も強いシグナルを示し、さらに味覚異常に関する特異的なシグナルも示した。・一方、DORAは、睡眠覚醒調節機構に合致する夢の異常事象(悪夢、異常な夢、幻覚など)について、強く一貫したシグナルを示した。・特筆すべきは、今回のデータセットにおいて、いずれの薬剤も転倒に関する統計的に有意なシグナルを示さなかった。・器官系分類分析の結果、精神および神経系疾患の発生率が最も高いことが示された。 著者らは「これらの結果は、非BZRAとDORAの安全性プロファイルの違いを明確に示した。非BZRAは治療失敗と味覚異常に関連しているのに対し、DORAは悪夢や幻覚などの神経精神症状と関連していた」としている。

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プラチナ抵抗性卵巣がん、relacorilant+nab-PTXでOS改善(ROSELLA最終解析)/Lancet

 イタリア・Humanitas UniversityのDomenica Lorusso氏らは「ROSELLA試験」の最終的な解析結果において、プラチナ製剤抵抗性卵巣がん患者に対するrelacorilant+nab-パクリタキセルの併用はnab-パクリタキセル単独と比較して、全生存期間(OS)の有意な改善をもたらすことを報告した。コルチゾールはグルココルチコイド受容体を介して作用し、がん細胞に生存シグナルを供給することで抗アポトーシスタンパク質の発現を増加させる。relacorilantは、コルチゾールの生存シグナルを阻害し、いくつかのクラスの細胞毒性化学療法に対する腫瘍の感受性を高めるfirst-in-classの選択的グルココルチコイド受容体拮抗薬。研究の成果は、Lancet誌2026年4月18日号に掲載された。14ヵ国の無作為化第III相試験 ROSELLA試験は、14ヵ国117施設で実施した非盲検無作為化第III相試験(Corcept Therapeuticsの助成を受けた)。2023年1月~2024年4月に、年齢18歳以上、1~3ラインのがんに対する全身療法を受け、プラチナ製剤抵抗性(最終投与日から6ヵ月以内に病勢が進行)の卵巣がん女性381例を登録した。 被験者を、relacorilant(nab-パクリタキセル投与の前日・当日・翌日に150mgを経口投与)+nab-パクリタキセル(1サイクルを28日とし、1・8・15日目に80mg/m2を静脈内投与)の併用療法を受ける群(188例)、またはnab-パクリタキセル単独療法(前述と同じ投与スケジュールで100mg/m2を静脈内投与)を受ける群(193例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)とOSの2つであった。このうちPFSについてはすでに、有意な改善(ハザード比[HR]:0.70、p=0.0076)が示されたことを報告している。OSが4.1ヵ月延長、2次的PFSも有意に良好 ベースラインで全例がベバシズマブの投与を受けており、167例(44%)が3ラインの治療を、234例(61%)がPARP阻害薬の投与を受けていた。47例(12%)はBRCA変異陽性の卵巣がんだった。 追跡期間中央値24.8ヵ月の時点で、OS中央値は、nab-パクリタキセル単独群が11.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.0~13.8)であったのに対し、relacorilant併用群は16.0ヵ月(95%CI:13.0~18.3)と4.1ヵ月有意に延長した(死亡のHR:0.65、95%CI:0.51~0.83、両側層別log-rank検定のp=0.0004)。 12ヵ月時のOS率は、relacorilant併用群が60%、nab-パクリタキセル単独群は50%で、18ヵ月OS率はそれぞれ46%および27%であった。 全身療法による後治療は、relacorilant併用群の68%、nab-パクリタキセル単独群の72%が受けた。後治療レジメンでは、ゲムシタビン(34%)、ペグ化リポソームドキソルビシン(22%)、治験中の治療(15%)、カルボプラチン(14%)の割合が高かった。 担当医評価による2次的PFS(無作為化から後治療時の病勢進行または全死因死亡のうち先に発生したイベントまでの期間)は、relacorilant併用群で有意に良好だった(HR:0.73、95%CI:0.58~0.90、両側層別log-rank検定の名目上のp=0.0037)。安全性プロファイルは主解析時と一致 OSの最終解析時のrelacorilant併用群の安全性プロファイルは、主解析時と一致していた。relacorilant併用群で投与期間中に発現した有害事象では、好中球減少症(64%)、貧血(61%)、疲労感(54%)、悪心(44%)の頻度が高かった。 重篤な有害事象は、relacorilant併用群で35%、nab-パクリタキセル単独群で24%にみられた。relacorilant併用群でrelacorilantの投与中止に至った有害事象は10%(19例)に認めた。主解析以降の追跡期間中に、新たな安全性シグナルの発生はなかった。有望な新たな作用機序 著者は、「これらの結果は、relacorilant+nab-パクリタキセル併用療法を、プラチナ製剤抵抗性卵巣がん患者に対する、バイオマーカーによる選別を必要としない新たな標準治療の選択肢として位置付けるもの」としている。また、「2次的PFSの有意な改善は、relacorilantの追加による治療効果が、後治療にも及ぶことを示唆する」「選択的グルココルチコイド受容体拮抗作用は、腫瘍学の多くの領域において有望な新たな作用機序として位置付けられる」と指摘している。

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経口CGRP受容体拮抗薬「アクイプタ錠」、片頭痛発作の発症抑制の適応で発売/アッヴィ

 アッヴィは2026年4月17日に、アクイプタ錠(一般名:アトゲパント水和物)を発売したと発表した。適応は「片頭痛発作の発症抑制」である。 本剤は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬であり、1日1回経口投与する。CGRPとその受容体は片頭痛の病態生理に関与しており、片頭痛発作時にCGRP濃度が上昇することが示されている。現在、世界60ヵ国以上で片頭痛の予防治療薬として承認されており、国内においては2026年2月19日に、片頭痛患者に対する片頭痛発作の発症抑制に関して製造販売承認を取得した。 国内の疫学研究では、15歳以上の片頭痛の有病率は8.4%と報告されており1)、患者の労働生産性の低下や社会的活動への制限が大きな課題となっている2,3)。また、同社は2025年12月に、本剤の片頭痛発作の急性期治療に関する製造販売承認も申請している。 『頭痛の診療ガイドライン2021』では、片頭痛発作が月に2回以上、あるいは生活に支障を来す頭痛が月に3日以上ある患者に対して、予防療法の実施を検討することが推奨されている4)。本剤が新たな選択肢に加わることで、より多様な予防治療ニーズに応えることが期待される。【製品概要】商品名:アクイプタ錠10mg、同30mg、同60mg一般名:アトゲパント水和物効果・効能:片頭痛発作の発症抑制用法・用量:通常、成人にはアトゲパントとして60mgを1日1回経口投与する製造販売承認日:2026年2月19日薬価基準収載日:2026年4月15日発売日:2026年4月17日製造販売元:アッヴィ合同会社

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日本における多剤併用の診療報酬改定が睡眠薬の長期処方に及ぼした影響

 神戸大学の木村 丈司氏らは、日本における多剤併用に関する診療報酬改定が高齢患者の睡眠薬の長期処方に及ぼす影響を評価するため、本研究を実施した。Geriatrics & Gerontology International誌2026年2月号の報告。 対象は、50歳以上の外来および入院患者。JMDC医療機関データベースを用いて分析を行った。対象とした睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬(BZD)、Z薬、ラメルテオンおよびオレキシン受容体拮抗薬(ラメルテオン/ORA)。2015~22年の各月における、外来および入院患者1万人当たりの睡眠薬新規処方率(4週間以上)を算出した。診療報酬改定が行われた2020年4月を介入点として、中断時系列分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・2015~22年までのデータベースにおける外来および入院の平均患者数は、1ヵ月当たり82万8,510例であった。・2015年1月から2022年12月にかけて、BZDとZ薬の処方率は、それぞれ210から125、111から78.6へと徐々に減少していた。しかし、ラメルテオン/ORAの処方率は、7.41から54.4へと増加していた。・介入時点では、BZDの処方率は1.08倍(95%信頼区間[CI]:1.02~1.13)、Z薬の処方率は1.12倍(95%CI:1.08~1.16)の有意な増加を認めた。しかし、介入後には傾斜の変化に有意な減少が認められた(BZD:0.990倍[95%CI:0.988~0.992]、Z薬:0.994倍[95%CI:0.993~0.996])。・ラメルテオン/ORAは、増加傾向にあった傾斜の変化が、介入後に有意な減弱を認めた(0.991倍[95%CI:0.986~0.995])。 著者らは「多剤併用に関連する診療報酬改定は、BZD、Z薬、およびラメルテオン/ORAの長期的な処方傾向を有意に減少する方向へと転換させていた」としている。

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62万人の解析で見えてきた、日本人のバレット食道リスクとは

 「バレット食道」は、胃酸などの逆流によって食道の粘膜が本来とは異なるタイプの細胞(円柱上皮)に置き換わる状態を指す。この状態は、将来的に食道腺がんの発生母地になることが知られている。今回、日本人約62万人の大規模データを解析した研究から、胃食道逆流症(GERD)や食道裂孔ヘルニアなどが、日本人におけるバレット食道のリスク因子である可能性が示された。研究は、静岡県立総合病院消化器内科の平田太陽氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏、名古屋市立大学大学院医学研究科の中谷英仁氏らによるもので、詳細は2月6日付で英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。 近年、欧米を中心に食道腺がんの増加が報告されており、その主要な前段階とされるバレット食道への関心が高まっている。日本を含む東アジアでは、長い範囲に及ぶ長区域バレット食道(LSBE)や、それを背景とした食道腺がんは従来まれと考えられてきたが、近年は増加傾向が指摘されている。これまで、バレット食道のリスク因子として、高齢、男性、肥満、喫煙に加え、GERDや食道裂孔ヘルニアなどが報告されてきた一方、ヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ菌)感染は保護的に働く可能性も示唆されている。しかし、生活習慣やピロリ菌の疫学は欧米と日本で異なり、日本人集団における大規模な検証は限られていた。そこで本研究では、日本人一般集団62万人超のデータを用い、バレット食道の発症率とリスク因子を検討した。 健康保険請求データや健診情報などを統合した静岡県市町国保データベース(SKDB)を用い、後ろ向きコホート研究を実施した。対象は2012年4月~2021年9月に市町村国保へ加入し、12カ月以上の連続加入が確認され、バレット食道の既往がない個人とした。新規発症は保険請求データで定義し、年齢、性別、併存疾患、生活習慣、GERDや食道裂孔ヘルニア、ピロリ菌感染歴、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)、ならびにヒスタミン-2受容体拮抗薬(H2RA)などの酸分泌抑制薬の使用を調整した、時間の経過を考慮して発症リスクを評価する統計手法(Cox比例ハザードモデル)を用いて解析した。 本研究の最終的な解析対象は62万125人となり、追跡期間の中央値は6.2年だった。観察期間中に1,577人がバレット食道と診断され、新規発症率は10万人年あたり46.4例だった。 まず1つずつの因子との関連を検討し(単変量解析)、そのうえで複数の要因を同時に調整した解析(多変量解析)を行った。GERDと酸分泌抑制薬使用は互いに関連が強い(強力な酸分泌抑制薬であるPPI/P-CABはGERDの第一選択薬である)ため、両者を別々に含めた2つの解析モデルで検討した。その結果、年齢(50~79歳)、男性、末梢血管疾患、肝疾患、食道裂孔ヘルニア、ならびにGERDまたはPPI/P-CAB使用が一貫して発症リスクの上昇と関連していた。一方、ピロリ菌感染歴やH2RA使用については、モデルによって関連の有無が異なった。なお、酸分泌抑制薬使用やピロリ菌感染歴がリスク上昇と関連した点について著者らは、薬やピロリ菌そのものが直接リスクを高めると単純に解釈すべきではないとし、背景にあるGERDの重症度や、ピロリ菌除菌後の胃酸分泌の変化などが影響している可能性を指摘している。また、身体活動は単変量解析では関連したものの、多変量解析では有意差を示さなかった。 著者らは、「バレット食道の発症リスク因子について、本研究においては肥満や喫煙、飲酒といった生活習慣因子は他の要因を調整すると明確な関連は認められず、GERDや食道裂孔ヘルニアなどの逆流関連因子の影響がより重要である可能性が示唆された」と述べている。これらの結果は、日本人における内視鏡サーベイランスの対象選択に新たな視点を与える可能性があるとしている。 本研究での発症率(10万人年あたり46.4例)は、数値上は欧米の報告と同程度だが、診断基準の違いに注意が必要である。日本では、全長の短い短区域バレット食道(SSBE)が主流で、内視鏡医の判断で1cm未満の非常に短いものまで診断に含まれることがある。一方、欧米では一般に1cm以上の長さと組織検査による確認という厳格な基準が用いられる。そのため、発症率やリスク因子の単純な国際比較には慎重な解釈が求められる。 なお、本研究の限界として、診断は保険請求データに基づいており、組織学的情報が含まれていない点や、短区域バレット食道(SSBE)と長区域バレット食道(LSBE)の区別ができない点、診断漏れの可能性などが挙げられる。また、家族歴や遺伝的素因といった臨床情報や、ピロリ菌感染状態(現在感染か除菌後かなど)を詳細に評価できていない点も限界である。さらに、本研究は観察データに基づくものであるため、因果関係を断定することはできない。

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第38回 交通事故の原因は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)外傷は受傷機転を意識しよう!2)ショックの初動を理解しよう!3)ショックの鑑別に「初動を変える原因」を1度は考えよう!【症例】63歳男性。軽自動車を運転中、スピードはそれほど出ていなかったものの、電柱に追突した。目撃した通行人が救急要請。●受診時のバイタルサイン意識1/JCS血圧80/48mmHg脈拍108回/分(整)呼吸24回/分SpO293%(RA)体温36.5℃瞳孔3/3mm +/+既往歴心筋梗塞ショックの原因今回の症例、皆さんであればどのように対応するでしょうか。交通事故の傷病者ですから、外傷に伴う出血などを念頭に精査するでしょうか。少なくとも血圧の低下、頻脈を認めショックであることはすぐにわかると思います。外傷の初期診療としては、JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)などにのっとって、まずABC(気道・呼吸・循環)の安定化を図ります。大量出血の可能性のある胸腹部外傷や骨盤骨折などを念頭に対応することになりますが、今回の症例では、目撃者情報からも、高エネルギー外傷ではなく、本人にも明らかな疼痛の訴えはありませんでした。ショックは大きく、(1)血液分布異常性ショック(Distributive shock)、(2)循環血液量減少性ショック(Hypovolemic shock)、(3)心原性ショック(Cardiogenic shock)、(4)閉塞性ショック(Obstructive shock)に分類されます。このうち頻度が高いのは、(1)の血液分布異常性ショック、とくに敗血症性ショックでしょう1,2)(表1)。一方で、今回のような外傷では、当然ながら出血に伴う(2)循環血液量減少性ショックも考える必要があります。表1 ショックの原因@ER画像を拡大するショックの鑑別:評価すべきHi-Phy-Vi細かな原因まで同定できなくても、病態として4つのうちどれに該当するのかは、病歴(History)、身体所見(Physical examination)、バイタルサイン(Vital signs)を意識して評価すれば、おおよそ見当をつけることができます。最低限、以下の事項は迅速に確認しましょう。病歴では、今回のような外傷や吐下血、血便などのエピソードがあれば、出血に伴う(2)循環血液量減少性ショックを考えます。数時間から数日の経過で発症し、とくに発熱など感染を示唆する所見があれば、敗血症に代表される(1)血液分布異常性ショックを考えます。また、胸痛や呼吸困難などの症状が突然、あるいは急性に出現し、ショック徴候を伴う場合には、(3)心原性ショックだけでなく、(4)閉塞性ショックも念頭に置く必要があります。身体所見では、頸部や皮膚所見に注目します。(1)と(2)では、絶対的あるいは相対的に血管内ボリュームが不足するため、頸静脈は臥位でも虚脱していることが多いです。その一方で、(3)や(4)では頸静脈怒張を認めることがあります。バイタルサインでは、多くの場合、頻呼吸、頻脈、血圧低下を認めますが、脈圧にも注目しましょう。脈圧が収縮期血圧の25%未満であれば、心拍出量低下が示唆され、心原性ショックを考える手がかりになります。超音波が使用可能であれば、RUSH(Rapid Ultrasound in Shock)プロトコルなどを用いて、ショックの鑑別を体系的に評価しましょう。超音波は術者の技量に依存しますが、だからこそ普段から意識して技術を磨き、ショック患者に対しても迅速かつ自信を持ってプローブを当てられることは大きな強みになります。FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)陰性を確認するだけで安心してはいけません。1度は早期に考慮すべきショックの原因多くのショックは、細胞外液投与を行い、それでも目標血圧を達成できなければノルアドレナリンなどの昇圧薬を用いることで、ある程度バイタルサインを安定化させることができます。しかし、それだけでは対応できないショックの原因もあります。私は表2の5つを意識しています。表2 ショックの「初動を変える原因」(1)アナフィラキシーアナフィラキシーの治療はアドレナリンが第1選択です。成人であれば、大腿外側に0.5mgを筋注します。細胞外液投与も必要ですが、アドレナリンを早期かつ適切に投与できるかどうかが予後を左右します。(2)出血外傷や消化管出血による大量出血では、細胞外液投与だけでは対応できません。失っているのは血液ですから、細胞外液は過量にならないよう注意しつつ、輸血を早期に考慮する必要があります。(3)中毒中毒では、解毒薬や拮抗薬が存在する場合があります。頻度は高くありませんが、通常のショックとは反応が異なると感じた場合には、鑑別として意識しておくとよいでしょう。(4)閉塞性ショックショックの4分類の1つですが、決して頻度は高くありません(表1)。しかし、脱気や心膜穿刺などの処置が必要になるため、必ず1度は考える必要があります。(5)ショック+徐脈ショックでは通常、頻脈になります。それにもかかわらず、血圧低下やショック徴候を認めているのに徐脈である場合には、表3のような病態を考える必要があります。とくに、高K(カリウム)血症、徐脈性不整脈、下壁梗塞では迅速な対応が求められます。心電図と血液ガス検査は早期に確認しましょう3)。表3 ショック+徐脈今回の症例では、来院後に身体所見をくまなく確認したところ、下腹部から臀部、さらに下腿にかけて皮疹を認め、強制呼気で喘鳴を聴取しました。そうです。原因は「アナフィラキシー」だったのです。アナフィラキシーに伴う意識消失とショックによって事故を起こしていたのでした。外傷後であり、さらに心筋梗塞の既往もあったため、現場の救急隊はショックの原因として出血や心原性は考慮していたものの、アナフィラキシーは鑑別に挙がらず、皮疹の存在にも気付いていませんでした。アナフィラキシーでは、約10%で皮疹を認めないとされますが、多くの症例では皮膚症状を伴います。ただし、疑って皮膚所見を探しにいかなければ、その存在に気付かないことも少なくありません。急性発症の皮膚症状に加えて、呼吸器症状(喘鳴など)、循環器症状(失神など)、消化器症状(嘔気・嘔吐、腹痛など)を認める場合には、1度はアナフィラキシーの可能性を意識し、病歴と身体所見を丁寧に評価しましょう。 1) Standl T, et al. Dtsch Arztebl Int. 2018;115:757-768. 2) Cecconi M, et al. Intensive Care Med. 2014;40:1795-1815. 3) 坂本 壮. 救急外来ただいま診断中 第二版. 中外医学社. 2024.

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手術不能進行胃がんに対する初期治療と維持療法における免疫チェックポイント阻害薬の有用性と日本の課題について(解説:上村直実氏)

 食道胃接合部腺がんを含む手術不能進行胃がんに対する初期薬剤治療は、CAPOX療法などの代謝拮抗薬(フッ化ピリミジン系)とプラチナ製剤の併用療法が標準治療となっていたが、最近、遺伝子診断の進歩と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)や新たな分子標的薬の登場により劇的に変化している。 日本胃癌学会が遺伝子診断に関するバイオマーカーとして推奨しているのは、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、Programmed cell Death Ligand 1(PD-L1)、マイクロサテライト不安定性/ミスマッチ修復(MSI/MMR)、Claudin(CLDN)18の4検査である。なかでも、HER2蛋白の有無により初期治療が選別されている。すなわち、HER2陽性胃がんに対しては抗HER2抗体であるトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)を追加した3剤併用レジメンが初期治療の第1選択となり、さらにICIを追加した4剤併用療法も使用されつつある。一方、胃がんの80%以上を占めるHER2陰性胃がんに対しては、標準化学療法にニボルマブやペムブロリズマブなどのICIを加えた、化学療法と免疫療法による3剤併用治療が標準的な初期治療として確立している。さらに、血管新生阻害薬(VEGFR阻害薬:ベバシズマブ)やCLDN18陽性胃がんに対してはCLDN18を標的とした抗体薬(ゾルベツキシマブ)も承認されている。 今回、中国の多施設共同研究として、HER2陰性切除不能胃がんに対する初回治療としてCAPOX+ICI(camrelizumab)の3剤併用療法を行った後、維持療法としてCAPOX単独、camrelizumab単独およびcamrelizumab+血管新生阻害薬(apatinib)の3群について有用性の指標としての全生存期間(OS)と安全性を比較した結果、camrelizumabを用いた群のOSがCAPOX単独群に比べて有意に延長した。維持療法にニボルマブやペムブロリズマブを使用すると化学療法単独に比べてOSが延長するとした以前の報告を支持するものであった。しかし、apatinibの追加はcamrelizumab単独群と比較してOSの延長がなく、有害事象が増加した結果、ICIに血管新生阻害薬を併用する意義は高くないことが示唆された(BMJ誌2026年3月12日号)。 今後、ICIを含めた最適な維持療法の確立が期待される。 最後に、わが国における手術不能進行がんに対する薬物療法に関する課題を述べておく。1つは、個別化医療推進に伴う課題であり、分子標的薬など新規薬剤の薬価の高騰および、治療レジメンを選択するためのHER2などのバイオマーカーの検査およびコンパニオン診断薬のコストである。国民皆保険制度による国の負担がこれ以上大きくなると、保険制度自体の存続が困難となる可能性が危惧される。次は、最近の臨床研究、とくに高精度のRCTに関する日本からの発信はがんセンター中心に限られつつあるのに対して、中国や韓国からの報告の多さが顕著となっている点である。今回の研究も中国の75施設が共同で行ったRCTであるが、現在の日本では多施設共同RCTの実施自体が難しいことから、この分野においてさらに遅れていく可能性も危惧される。

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「心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン」をフォーカスアップデート/日本循環器学会

 『2026年JCS/JSOGガイドラインフォーカスアップデート版 心血管疾患患者の妊娠・出産の適応と診療』1)が第90回日本循環器学会学術集会(2026年3月20~22日)会期中の3月20日に発刊された。本ガイドラインの研究班長を務めた神谷 千津子氏(国立循環器病研究センター循環器病周産期センター)と桂木 真司氏(宮崎大学産科・婦人科 主任教授)が本学術集会プログラム「ガイドラインを学ぶ2」において、妊娠を避けることを強く望まれる心疾患、妊産婦に注意が必要な循環器用薬を中心に解説した。 本書では、新規薬物治療をはじめとした循環器診療の進歩、思春期以降の男女を対象にしたプレコンセプションケアの取り組み、国内外からの心血管疾患合併妊娠を中心に、シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)を支えることも目標として作成され、今回のアップデート版では以下の7項目を主に取り扱う。そこで本稿では、とくに押さえておきたい項目として、「妊娠を避けることを強く推奨する疾患、病態」「妊娠中、授乳中の循環器薬物治療の安全性」にフォーカスする。―――――――――――――――――――・日本の疫学(周産期データベース、妊産婦死亡症例検討)・プレコンセプションケアと妊娠関連ハートチーム(PHT)・妊娠を避けることを強く推奨する疾患、病態・妊娠中、授乳中の循環器薬物治療の安全性・周産期管理:産科(分娩方法の選択、妊娠高血圧症候群)・周産期管理:麻酔科(麻酔方法の選択、硬膜外麻酔)・産後の注意点―――――――――――――――――――周産期の死亡原因として挙がる心大血管疾患とは 日本産婦人科学会の周産期データベースによると、2014~23年に登録された母体約220万人のうち、基礎疾患に何らかの心疾患を有したのは1.2%(2万6,894例)であった。神谷氏は「心疾患を有する母体は基礎内科疾患がない者と比較して、無痛分娩率、帝王切開率、帝王切開時の全身麻酔率、分娩時出血量、転科率、そして母体死亡率が高い傾向にある」と指摘。また、日本産婦人科医会による妊産婦死亡症例登録システムのデータでは、心大血管疾患は間接産科的死亡*1の第1位であり、大動脈解離、周産期心筋症、肺高血圧症などが原因であることが明らかになっている。同氏は「周産期に初めて診断され、産科と内科の連携が不十分な場合もある。これを解消するために循環器医ができることとして、コンサルテーションの閾値を低く、速やかな検査・治療が求められる」と強調した。*1 妊娠前から存在した疾患または妊娠中に発症した疾患により死亡したもの2)妊娠を避けることを強く望まれる心疾患 妊娠の際に厳重な注意を要する、あるいは妊娠を避けることが強く望まれる心疾患は、第2版までは6項目にとどまっていた。今回、大幅にアップデートがなされ、10項目が表13(p.25)に示された。・高度な体心室機能低下(LVEF<30%、体心室RVEF<40%)や心不全(NYHA心機能分類III~IV度)・重症閉塞性肥大型心筋症(HOCM)・周産期心筋症の既往と左心室機能低下の残存・中等度から重度のPAH(アイゼンメンジャー症候群含む)・重症僧帽弁狭窄(MS)・妊娠前から症状を伴う重度流出路狭窄(大動脈弁高度狭窄:平均圧較差≧40mmHg)・マルファン症候群(上行大動脈拡張期径>45mm、高リスク症例では≧40mm)や大動脈二尖弁を伴う大動脈疾患(大動脈径>50mm)・症状、有意な合併症のあるフォンタン術後・未修復の重症大動脈縮窄症・重症チアノーゼ性心疾患(SpO2<85%) 第3章では上記に対する推奨がCQ1~7とFRQ1で示されている*2。主な変更点について「妊娠を避けることを推奨する左室駆出率(LVEF)が以前は35~40%未満であったが、30%未満へと引き下げた(CQ1)。肺高血圧症患者では、血行動態の重症度が中等度~重度の場合は妊娠を避けることを強く推奨するが、状態の安定した軽症例であれば、妊娠を前向きに考えることが可能と、世界に先駆けてリスク分類した(CQ2)。また、機械弁置換後のリスクは抗凝固療法に起因するものであるため、強く妊娠を希望する場合は、周産期の抗凝固療法に習熟した専門施設での妊娠・分娩管理を強く推奨する(CQ3)。ただし、状態の安定した軽症の肺高血圧症患者や機械弁を有する患者が妊娠継続を希望する場合、各専門施設で周産期管理が求められるため、施設要件が合致した場合にのみ前向きに検討が可能である(p.25、表14)点には留意してほしい」と解説した。 続けて、「流出路狭窄がある場合には、妊娠前から症状を伴うような重症例では妊娠を避けることを強く推奨する一方で、平均圧較差が40~50mmHgで無症状の場合は主治医と相談しながら検討していくことが推奨される(CQ4)。さらに、有症状、有意な合併症をもつフォンタン術後の場合は妊娠リスクを避けることが推奨される(CQ6)。周産期心筋症の既往をもつ場合、LVEF50%未満が継続する患者では妊娠を避けることを強く推奨する(CQ7)」と説明した。*2 CQ:クリニカルクエスチョン、FRQ:フューチャーリサーチクエスチョン なお、これらは妊娠についての意思決定を支える推奨であり、医療的「介入」ではないため、推奨強度は付記しない方針とされている点には注意が必要である。妊娠中に選択できる循環器薬、アテノロールは実は危険! 心疾患合併妊娠のリスク因子のなかで、調整可能な因子の1つに薬剤選択が挙げられる。今回アップデートされた薬剤クラスには、抗凝固薬、降圧薬、利尿薬、抗不整脈薬、肺高血圧症や心不全、脂質異常症の治療薬がある。このなかで特筆すべきはβ遮断薬のアテノロールで、これまで妊娠中の禁忌記載がないβ遮断薬であったにもかかわらず、近年ではアテノロールが最も胎児へのリスクが高いと報告された3)ため、「使用可能だが、在胎不当過小児(SGA)のリスクが最も大きく、他剤への変更が推奨される」と変更した(p.58、表23)ことを強調した。 スタチンについては「添付文書上は禁忌であるが、家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)患者や2次予防目的について、FDAでは使用を勧告している。本フォーカスアップデートでもその旨を記載した」と述べ、DOACについては、「妊娠中の安全性は未確立だが、リバーロキサバンにおいては授乳安全性が確立されつつある」とコメント。降圧薬のうちCa拮抗薬については、前版よりニフェジピン、アムロジピン、カルベジロール、ビソプロロールが妊娠中禁忌から有益性投与に変更している。ACE阻害薬やARBは妊娠中に禁忌であるが授乳中の安全性は確立しているため、「出産後に速やかに再開処方することは可能」と話した。 続いて桂木氏は、薬剤選択・用量・投与速度が妊娠中や分娩前後で調節が可能であること、循環器・産科・麻酔科で情報共有・管理することが重要である点に触れ、「妊娠中の薬物は禁忌も多いが、一律に禁忌ではなく症例に応じた病態別評価が必要であり、妊娠は循環器治療を止める理由ではない。また、母体へのリスクは即時的で致死的なものが多いため、母体のベネフィットと胎児リスクを比較して代替薬の選択を検討してほしい」とコメントした。さらに、「薬剤管理は母体死亡を減らす鍵となる。そのためには、妊娠中の循環器薬剤は“中止”より“最適化”を目指してほしい。産科薬剤は循環動態に影響するため、投与を慎重に判断し、分娩前から循環器・産科・麻酔科による情報共有を行ってほしい」と強調した。これまでのガイドラインと改訂の経緯 これまで、心血管疾患患者の妊娠中の病態について取り扱ったガイドラインは、2005年に初版が発刊、2018年に第2版となる『心血管疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン』が日本産科婦人科学会と合同で作成されていた。それから8年が経過し、新たなエビデンスが集積したことから、今回は前版の内容に補足するかたちで作成・公表がなされた。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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日本の心房細動患者、1年後の死亡・脳卒中・血栓塞栓症の発生率は?

 日本の心房細動患者は、経口抗凝固薬の使用率が81%と高く、1年後の全死亡率は0.1%と低く、脳卒中/血栓塞栓症の発生率も0.1%と低いことが、APHRS-AFレジストリ(Asia-Pacific Heart Rhythm Society Atrial Fibrillation Registry)の日本人における1年時の解析で示された。日本医科大学の淀川 顕司氏らがJournal of Arrhythmia誌2026年2月8日号で発表した。 APHRS-AFレジストリはアジアの大都市圏における前向き研究で、心房細動患者のベースライン特性、治療、臨床アウトカムについて重要な情報を提供する。今回、本レジストリに登録された日本人患者の1年間の追跡調査データを解析した。 主な結果は以下のとおり。・登録された4,666例のうち、794例が2015~17年に日本の主な循環器センター28施設から登録された。平均年齢は65.7歳、男性が69.0%で、主な併存疾患は高血圧(37.5%)、脂質異常症(29.0%)、心不全(15.9%)、糖尿病(15.0%)であった。平均CHADS2スコアは1.0、CHA2DS2-VAScスコアは2.0、HAS-BLEDスコアは1.1であった。・登録時の経口抗凝固薬の使用率は81%で、そのうち7%がビタミンK拮抗薬、74%が直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を処方されていた。患者の57.8%がカテーテルアブレーション施行予定であった。・1年間の追跡調査を実施した743例において、1年全死亡率は0.1%(1例、心不全)で、脳卒中/血栓塞栓症発生率も0.1%(1例、肺塞栓症)であった。大出血イベントは0.7%(5例[頭蓋内出血3例、下部消化管出血1例、軟部組織出血1例])に認められた。

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1日1回経口投与の片頭痛発作の発症抑制薬「アクイプタ錠60mg/30mg/10mg」【最新!DI情報】第59回

1日1回経口投与の片頭痛発作の発症抑制薬「アクイプタ錠60mg/30mg/10mg」今回は、経口CGRP受容体拮抗薬「アトゲパント水和物(商品名:アクイプタ錠60mg/30mg/10mg、製造販売元:アッヴィ)」を紹介します。本剤は、1日1回経口投与の片頭痛の予防治療薬です。片頭痛発作の発症を抑制することで、患者さんの健康や生活の質の向上、社会における生産性の向上が期待されています。<効能・効果>片頭痛発作の発症抑制の適応で、2026年2月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはアトゲパントとして60mgを1日1回経口投与します。なお、本剤投与開始後3ヵ月を目安に治療上の有益性を評価して症状の改善が認められない場合には、本剤の投与中止を考慮します。3ヵ月以降も本剤投与を継続する場合には、定期的に投与継続の要否を検討し、頭痛発作発現の消失・軽減などにより日常生活に支障を来さなくなった場合には、本剤の投与中止を考慮します。<安全性>重大な副作用として、過敏症反応(頻度不明)があります。その他の副作用として、悪心、便秘、食欲減退、傾眠、体重減少、ALT/AST増加(いずれも1%以上)、疲労、そう痒症(いずれも0.1~1%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、経口CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)受容体拮抗薬で、片頭痛発作の発症抑制に用いられます。片頭痛発作時の治療だけでは日常生活に支障を来している人に使用されます。2.CGRPがCGRP受容体へ結合することを阻害し、片頭痛に関与するシグナルの伝達を阻害することで、片頭痛発作の発症を抑制します。3.この薬は起こってしまった頭痛発作を和らげる薬ではないので、この薬を服用中に頭痛発作が起こった場合には、必要に応じて頭痛発作治療薬を頓用で使用してください。<ここがポイント!>片頭痛は慢性の神経疾患であり、わが国における15歳以上の有病率は8.4%と報告されています。片頭痛が日常生活に及ぼす影響は、「いつも寝込む」が4%、「ときどき寝込む」が30%、「寝込まないが支障あり」が40%であり、全体の74%が何らかの形で日常生活に支障を来しています。このように日常生活への影響が認められる場合は、積極的な治療介入が必要です。片頭痛の治療は、発作に対する急性期治療および予防療法に大別されます。急性期治療薬としては、アセトアミノフェンやNSAIDs、トリプタン系薬剤、ラスミジタン、リメゲパント、エルゴタミン、制吐薬などが用いられます。予防療法は、片頭痛発作が月に2回以上、あるいは生活に支障を来す頭痛が月に3日以上認められる患者において、積極的に実施を検討する必要があります。CGRPは、片頭痛の病態において重要な役割を果たす神経ペプチドです。三叉神経終末から放出されたCGRPがCGRP受容体に結合することで、硬膜血管周囲の血管拡張や神経原性炎症を引き起こし、片頭痛発作につながります。アトゲパント水和物は選択的経口CGRP受容体拮抗薬であり、CGRPの作用を阻害することで血管拡張や炎症を抑制し、片頭痛発作を予防します。本剤は経口CGRP受容体拮抗薬としてはリメゲパントに次ぐ2番目の薬剤ですが、今回承認された適応症は「片頭痛発作の発症抑制」のみであり、急性期治療に使用できない点に注意が必要です。なお、2025年12月に片頭痛発作の急性期治療に関する製造販売承認申請が行われており、近いうちに急性期治療にも使用できる可能性があります。本剤を調剤する際は、常に最新の情報を確認し、適応症を把握したうえで処方監査を行うことが重要です。慢性片頭痛患者を対象とした国際共同第III相試験(PROGRESS:3101-303-002試験)において、主要評価項目である投与開始12週間における平均月間片頭痛日数(MMD)のベースラインからの変化量は、本剤60mg群で-6.88日(95%信頼区間[CI]:-7.67~-6.08)、プラセボ群との差は-1.82日(95%CI:-2.89~-0.75)であり、プラセボ群に対する優越性が検証されました(p<0.001)。また、日本人反復性片頭痛患者を対象とした国内第II/III相試験(RELEASE:M22-056試験)においても、投与開始12週間における平均MMDのベースラインからの変化量は、本剤60mg群で-3.34日(95%CI:-3.83~-2.85)、プラセボ群との差は-2.10日(95%CI:-2.78~-1.43)であり、プラセボ群に対する優越性が検証されました(p<0.001)。

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