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女性の尋常性ざ瘡、スピロノラクトンが有効/BMJ

 尋常性ざ瘡の女性患者の治療において、カリウム保持性利尿薬スピロノラクトンはプラセボと比較して、12週時の尋常性ざ瘡特異的QoL(Acne-QoL)の症状スコアが良好で、24週時にはさらなる改善が認められ、標準的な経口抗菌薬の代替治療として有用な可能性があることが、英国・サウサンプトン大学のMiriam Santer氏らが実施した「SAFA試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年5月16日号に掲載された。イングランド/ウェールズの実践的な無作為化試験 SAFAは、イングランドおよびウェールズの10施設で実施された実践的な二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年6月~2021年8月の期間に参加者の募集が行われた(英国国立健康研究所[NIHR]の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、顔面のざ蒼が6ヵ月以上持続し、担当医によって経口抗菌薬による治療を要すると判定され、担当医の全般的評価(IGA)が2(軽症または悪化)の女性患者であった。 被験者は、スピロノラクトン(50mg/日)またはプラセボを6週間経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。忍容性が確認された場合は、100mg/日に増量し、24週まで投与が継続された。両群とも、通常の外用薬の使用は容認された。 主要アウトカムは、12週の時点でのAcne-QoLの症状サブスケールスコア(0~30点、点数が高いほどQoLが良好)であった。副次アウトカムには、24週時のAcne-QoL症状サブスケールスコア、患者の自己評価による改善度、IGAに基づく治療成功、有害事象などが含まれた。患者自己評価による改善度も、24週には有意に良好 410例(平均[SD]年齢29.2[7.2]歳、軽症46%、中等症 40%、重症 13%)が登録され、スピロノラクトン群に201例、プラセボ群に209例が割り付けられた。主要アウトカムのデータは342例(スピロノラクトン群176例、プラセボ群166例)で得られた。 平均Acne-QoL症状スコアは、スピロノラクトン群がベースラインの13.2(SD 4.9)点から12週後には19.2(6.1)点に、プラセボ群は12.9(4.5)点から17.8(5.6)点にいずれも上昇し、ベースラインの変量で補正後の平均差は1.27点(95%信頼区間[CI]:0.07~2.46)と、スピロノラクトン群で改善度が大きかった。 24週時には、スピロノラクトン群が21.2(SD 5.9)点、プラセボ群は17.4(5.8)点へとそれぞれ上昇し、補正平均差は3.45点(95%CI:2.16~4.75)と、12週時よりも差が大きくなり、スピロノラクトン群で改善度が高かった。 患者の自己評価による全般的改善度(6段階Likert scaleの3~6点の達成率)は、12週時がスピロノラクトン群72%、プラセボ群68%(補正後オッズ比[OR]:1.16、95%CI:0.70~1.91)と両群間に有意差はなかったが、24週時にはそれぞれ82%、63%(2.72、1.50~4.93)となり、統計学的に有意な差が認められた。 12週時の治療成功(IGA分類)の割合は、スピロノラクトン群が19%(31/168例)、プラセボ群は6%(9/160例)だった(補正後OR:5.18、95%CI:2.18~12.28)。 有害事象の頻度(64% vs.51%、p=0.01)はスピロノラクトン群で高く、とくに頭痛(20% vs.12%、p=0.02)とめまい(19% vs.12%、p=0.07)が多かったが、ほとんどが軽度であった。試験薬に関連した重篤な有害事象の報告はなかった。 著者は、「スピロノラクトンは、第1選択の局所治療で効果がない持続性のざ蒼を有する女性において、経口抗菌薬に代わる有用な選択肢となる可能性がある」とまとめ、「スピロノラクトンは妊娠に注意を要し、参加者は受診時に避妊に関する助言を受けたが7件の妊娠が報告された。スピロノラクトンは、若年女性で頻用されているテトラサイクリン系の経口抗菌薬に比べ催奇性は低いと考えられ、通常の治療ではとくに避妊以外の制限は必要ないだろう」と指摘している。

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膵頭十二指腸切除後の手術部位感染予防、TAZ/PIPCが有用/JAMA

 適応症を問わず、開腹による膵頭十二指腸切除術後の手術部位感染(SSI)の予防において、セフォキシチン(国内販売中止)と比較して、広域スペクトラム抗菌薬ピペラシリン・タゾバクタムは、術後30日の時点でのSSIの発生率を有意に抑制し、術後の敗血症や膵液瘻の発生頻度も低いことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのMichael I. D'Angelica氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年5月9日号に掲載された。北米のレジストリ連携型非盲検多施設無作為化第III相試験 本研究は、レジストリ連携の実践的な非盲検多施設無作為化第III相試験であり、2017年11月~2021年8月の期間に、米国とカナダの26施設(外科医86人)で患者の登録が行われた(米国NIH/NCIがんセンター研究支援助成などの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、適応症を問わず待機的な開腹膵頭十二指腸切除術を受けた患者が、ピペラシリン・タゾバクタム(各施設の基準に従い3.375または4.5g、静脈内投与)またはセフォキシチン(2g、静脈内投与、対照)の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。試験薬は、切開開始から60分以内に初回投与が行われ、手術終了まで2~4時間ごとに追加投与され、術後は24時間以内に投与を終えることとされた。 主要アウトカムは、術後30日以内のSSIの発現であった。30日死亡率、臨床的に重要な術後の膵液瘻、敗血症の発生などが、副次アウトカムに含まれた。 本試験は、事前に規定された中止基準に従い、2回目の中間解析により有効中止となった。30日死亡率には差がない 778例が登録され、ピペラシリン・タゾバクタム群に378例(年齢中央値66.8歳、男性61.6%)、セフォキシチン群に400例(68.0歳、55.8%)が割り付けられた。456例(58.6%)が術前に胆管ステントを留置され、273例(35.1%)が術前化学療法もしくは放射線療法を、488例(62.7%)が膵がんの切除術を受けていた。 30日の時点におけるSSIの発生率は、セフォキシチン群が32.8%(131/400例)であったのに対し、ピペラシリン・タゾバクタム群は19.8%(75/378例)と有意に低かった(絶対群間差:-13.0%[95%信頼区間[CI]:-19.1~-6.9]、オッズ比:0.51[95%CI:0.38~0.68]、p<0.001)。 術後の敗血症(4.2% vs.7.5%、群間差:-3.3%[95%CI:-6.6~0.0]、p=0.02)および臨床的に重要な術後の膵液瘻(12.7% vs.19.0%、-6.3%[-11.4~-1.2]、p=0.03)の発生率は、いずれもピペラシリン・タゾバクタム群で有意に低かった。 一方、30日死亡率(1.3% vs.2.5%、群間差:-1.2%[95%CI:-3.1~0.7]、p=0.32)には、両群間に有意な差はみられなかった。 著者は、「術後SSIリスクの低減は、術前の胆道ステント留置の有無にかかわらず認められた。本試験の結果は、開腹膵頭十二指腸切除術後のSSI予防における標準治療としてのピペラシリン・タゾバクタムの使用を支持する」としている。

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誤嚥性肺炎予防に黒こしょうが効く?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第234回

誤嚥性肺炎予防に黒こしょうが効く?Unsplashより使用咳嗽を誘発するものは、誤嚥性肺炎に対して予防的に働くことが知られています。ACE阻害薬は、副作用の咳嗽が誤嚥性肺炎を予防する効果があるとされています。さて今回紹介する論文で検証されたのは、黒こしょうです。黒こしょうは咽頭へのサブスタンスPの放出を増加させることによって、嚥下反射を改善して誤嚥を予防することが示されています。山口 学ほか.療養型病棟における黒胡椒を用いた誤嚥性肺炎予防.日本気管食道科学会会報. 2018;69(1):13-16.この研究では、療養型病床群に入院している患者32例を2群に分け、60日ごとに黒こしょうを使用する群と非使用群にクロスオーバーして黒こしょうを使用し、誤嚥性肺炎の発生率を調べました。研究期間中に37.5℃以上の発熱があった症例は28例で、2日以上の発熱と誤嚥性肺炎があり、抗菌薬を使用した症例は11例でした。黒こしょうを使用した群は、発熱例11例、抗菌薬使用例は2例であり、有意に抗菌薬の使用頻度および治療日数を抑制することが示されました。これと同じメカニズムで、黒こしょうオイルを吸入してもらうことで、脳卒中後遺症の105例に嚥下反射の改善がみられたという報告があります1)。なんかクシャミ出そうなので、個人的には、あまり黒こしょうは吸いたくない気もしますが…。1)Ebihara T, et al. A randomized trial of olfactory stimulation using black pepper oil in older people with swallowing dysfunction. J Am Geriatr Soc. 2006 Sep;54(9):1401-1406.

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重症アルコール性肝炎に抗菌薬予防投与は有効か?/JAMA

 重症アルコール性肝炎の入院患者に対する抗菌薬の予防的投与のベネフィットは明らかになってないが、フランス・Lille大学のAlexandre Louvet氏らが292例を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、60日全死因死亡率を改善しないことが示された。著者は、「今回示された結果は、重症アルコール性肝炎で入院した患者の生存改善に対して抗菌薬の予防的投与を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2023年5月9日号掲載の報告。Maddrey機能スコア32以上、MELDスコア21以上の患者を対象 研究グループは2015年6月13日~2019年5月24日に、フランスとベルギーの医療センター25ヵ所で、生検で確認された重症アルコール性肝炎の患者292例を対象に試験を開始した。被験者のMaddrey機能スコアは32以上、末期肝疾患モデル(MELD)スコアは21以上だった。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはプレドニゾロン+アモキシシリン・クラブラン酸(145例)、もう一方にはプレドニゾロン+プラセボ(147例)をそれぞれ投与した。追跡期間は180日で、最終フォローアップは2019年11月19日だった。 主要アウトカムは、60日時点の全死因死亡率だった。副次アウトカムは、90日、180日時点の全死因死亡率、60日時点の感染症、肝腎症候群、MELDスコア17未満のいずれも発生率、および7日時点のLilleスコア0.45未満の患者の割合だった。60日全死因死亡率、アモキシシリン群17%、プラセボ群21%で有意差なし 被験者292例の平均年齢は52.8歳、女性80例(27.4%)で、284例(97%)が解析に含まれた。 60日死亡率は、アモキシシリン群17.3%、プラセボ群が21.3%で統計的有意差はなかった(補正前絶対群間差:-4.7ポイント[95%信頼区間[CI]:-14.0~4.7]、ハザード比[HR]:0.77[95%CI:0.45~1.31]、p=0.33)。 60日時点の感染症発生率は、アモキシシリン群(29.7%)がプラセボ群(41.5%)より有意に低かった(補正前絶対群間差:-11.8ポイント[95%CI:-23.0~-0.7]、サブHR:0.62[95%CI:0.41~0.91]、p=0.02)。その他の副次的アウトカムは、両群で有意差はなかった。 最も多くみられた重篤有害イベントは、肝不全関連(アモキシシリン群25例、プラセボ群20例)、感染症(同23例、46例)、胃腸障害(同15例、21例)だった。

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RA系阻害薬やアンピシリン含有製剤など、使用上の注意改訂

 厚生労働省は5月9日、RA系阻害薬(ACE阻害薬、ARB含有製剤、直接的レニン阻害薬)、アンピシリン水和物含有製剤およびアンピシリンナトリウム含有製剤(アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウムを除く)の添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。RA系阻害薬-妊娠する可能性のある女性への注意事項を追加 RA系阻害薬の添付文書には「9.4 生殖能を有する者」の項が新設され、“妊娠する可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する旨、及び妊娠する可能性がある女性に投与が必要な場合の注意事項”を以下のように追記した。(1)本剤投与開始前に妊娠していないことを確認すること。本剤投与中も、妊娠していないことを定期的に確認すること。投与中に妊娠が判明した場合には、直ちに投与を中止すること。(2)次の事項について、本剤投与開始時に患者に説明すること。また、投与中も必要に応じ説明すること。・妊娠中に本剤を使用した場合、胎児・新生児に影響を及ぼすリスクがあること。 ・妊娠が判明した又は疑われる場合は、速やかに担当医に相談すること。 ・妊娠を計画する場合は、担当医に相談すること。[妊娠していることが把握されずアンジオテンシン変換酵素阻害剤又はアンジオテンシンII受容体拮抗剤を使用し、胎児・新生児への影響(腎不全、頭蓋・肺・腎の形成不全、死亡等)が認められた例が報告されている] 今回、妊娠中の調査対象医薬品の曝露による児への影響が疑われる症例(児の副作用関連症例)の集積状況を評価した結果、添付文書で妊婦に投与しないよう注意喚起しているにもかかわらず症例の報告が継続していることが明らかとなり、妊娠する可能性のある女性への使用に関する注意が必要であると判断された。抗菌薬のアンピシリンなどは肝機能障害に注意 また、アンピシリン水和物含有製剤およびアンピシリンナトリウム含有製剤については、投与後の肝機能検査値の最悪値が有害事象共通用語規準(CTCAE v5.0)Grade3以上に該当する肝機能障害関連の国内症例を評価し、本剤と肝機能障害との因果関係の否定できない国内症例が集積したことから、以下のように使用上の注意を改訂することが適切と判断された。1.「重要な基本的注意」(新記載要領)又は「重大な副作用」(旧記載要領)の項に定期的な肝機能検査を行う旨を追記する。2. 「重大な副作用」の項に「肝機能障害」を追記する。

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小児への抗菌薬処方、多面的介入で減らせるか/BMJ

 急性咳嗽および呼吸器感染症(通常はウイルス性疾患)の小児は、プライマリケアにおいて最大の患者集団であり、半数近くが抗菌薬治療を受けている。そのような現状を背景に、英国・ブリストル大学のPeter S. Blair氏らは、抗菌薬適正使用支援の多面的介入の効果を無作為化試験で検証した。小児への無分別な抗菌薬使用の重大要因として、予後不良に関する不確実性があることなどを踏まえて介入効果を検証したが、全体的な抗菌薬投与を減らしたり、呼吸器感染症関連の入院を増やしたりすることもなかったことを報告した。BMJ誌2023年4月26日号掲載の報告。呼吸器感染症で受診していた0~9歳児への抗菌薬の処方調剤率と入院率を評価 研究グループは、呼吸器感染症でプライマリケアを受診した小児について、使いやすい多面的介入が、呼吸器感染症関連の入院を増やすことなく抗菌薬の処方調剤率を減らすかどうかを、効率的実臨床クラスター2アーム(介入vs.通常診療)非盲検無作為化試験で評価した。定性的および経済的評価を伴う日常的なアウトカムデータを用い、イングランドのEMIS電子医療記録システムを使用している一般診療所に、COVID-19パンデミック前および期間中に呼吸器感染症で受診していた0~9歳児をクラスター化して評価した。 介入は、(1)診察中に保護者の懸念を誘発、(2)受診した小児の30日以内の入院リスク(極めて低い、標準、高い)を予測するための臨床医向け診療アルゴリズムと抗菌薬処方ガイダンスの提供、(3)セーフティネットのアドバイスなどが示された介護者向けリーフレットの提供であった。 主要アウトカムは2つで、12ヵ月の試験期間中に処方されたアモキシシリンおよびマクロライド系抗菌薬の処方調剤率(比較群との優越性を評価)、呼吸器感染症による入院率(比較群との非劣性を評価)であった。介入の効果はみられず 一般診療所310ヵ所のうち、イングランドの全登録0~9歳児の5%が受診していた294ヵ所(95%)が無作為化された(介入群144ヵ所、対照群150ヵ所)。このうち12ヵ所(4%)は、その後に退いた(6ヵ所はパンデミックによる)。診療所当たりの介入利用中央値は70であった(臨床医中央値9人による)。 介入診療所(155[95%信頼区間[CI]:138~174]剤/年/1,000児)と対照診療所(157[140~176]剤/年/1,000児)で、抗菌薬の処方調剤率が異なるというエビデンスは認められなかった(率比:1.011、95%CI:0.992~1.029、p=0.25)。 事前規定のサブグループ解析において、処方看護師が少ない介入診療所で処方調剤の減少が示唆された。この示唆は単施設(多施設との比較において)で、社会経済的貧困レベルは低い地域の診療所でみられ、さらなる調査が必要である可能性があった。 事前規定の感度解析では、介入診療所の年齢の高い小児において処方調剤率の減少が示唆された(p=0.03)。 事後解析では、パンデミック前の介入診療所のほうが処方調剤率は低いことが示唆された(率比:0.967、95%CI:0.946~0.989、p=0.003)。 介入診療所の呼吸器感染症に関する入院率(13[95%CI:10~18]の入院/1,000児)は、対照診療所の同入院率(15[12~20]の入院/1,000児)に対して非劣性であった(率比:0.952、95%CI:0.905~1.003)。 結果を踏まえて著者は、「いくつかのサブグループとシチュエーション(たとえば非パンデミック下)で、介入によりわずかに処方調剤率の減少がみられたが、介入が臨床的に妥当な手法といえるものではなかった」とまとめている。

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釣り針が刺さった【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第2回

皆さんは釣りをしますか? 私は学生時代に釣りの楽しさを知り、よく遠征していました。「魚の引き」に快感を覚えるタイプで、学生時代はカジキマグロ、福井で働いているときは玄達瀬でアジ科最大種のヒラマサを釣り上げました。地域にもよると思いますが、救急外来で働いていると釣り針が刺さった患者を診る機会がしばしばあります。一般の方は釣り針が刺さったときに何科を受診したらよいかわからないため、かかりつけ医や意外な診療科にふらっとやって来ることもあります。そういうときに対処方法やコツを知らないと本当に困ることになりますよ! 下記は私が経験した苦い経験です。指に釣り針の刺さった強面のお兄さんが受診。疑似餌を用いて釣りをしていたようで、ゴム製の疑似餌が付いたままであった。除去しようとして疲れたのか、ややイライラしながら「痛くないようにしてくださいよ!」とプレッシャーをかけてくる。String pull technique(後述)による抜去に慣れてきたころだったのでトライしてみたが、緊張のためか変な力が入って釣り針はうまく抜けない。激しい痛みが生じたようで、顔をゆがめながらものすごい目つきでこちらを見てくる…。皆さんなら初めの段階に、もしくはこの後どうされますか? このようなことにならないように、今回は釣り針が刺さったときの対処方法とそのコツを紹介します。釣り針の構造釣りをされる方であれば一度は経験すると思いますが、釣り中に釣り針が服に引っ掛かって取れなくなってしまうことがあります。服を傷つけないように取ろうとしてもなかなか難しいですよね。釣り針には下図のように「カエシ」という突起があり、釣り針を抜こうとするとカエシが引っかかって抜けない仕組みになっています。強引に抜こうとすると皮下組織を損傷してしまい、かなりの痛みが伴います。また、餌が外れにくくするための突起である「ケン」にも注意しなければいけません。これらの複雑な構造が釣り針の抜去を難しくしています。画像を拡大する釣り針の抜去方法4選一般的に指に刺さった釣り針を抜去する手法は4つあります1)。(1)Retrograde techniqueRetrograde techniqueは、釣り針を刺さった方向と逆向きにそのまま引き抜くという方法です。釣り針を指側に押して、カエシが引っかからないように抜去します。報告によると成功率は74%とありますが、私の印象ではなかなかこの方法で釣り針を抜去することは難しいです2)。魚を簡単に逃がさないための人類の工夫ですので簡単に取れても困りますもんね…。画像を拡大する(2)String pull techniqueString pull techniqueは、最も傷が小さいと言われる方法です。釣り針を糸で結び、指側に押しながら、釣り針が刺さった方向と逆向きに糸を引っ張ります。屋外でもできることが利点ですが、しっかりとした固定が必要なので耳たぶなどの固定が難しい部位では行えません。画像を拡大する(3)Needle cover techniqueNeedle cover techniqueは、釣り針の針穴に18Gの注射針を挿入し、内腔にカエシを入れ、カエシが皮下組織に引っ掛からないようにカバーしながら抜去する方法です。注射針の先端を直接見ることができないのが難点で、成功率は高くない(47%)という報告があります。私は一度トライしましたが、カエシに注射針が入っているのかよくわからず、「かぶさった」という感覚があったものの結局皮下で引っかかって断念しました。それ以降はやっていません。画像を拡大する(4)Advance and cut techniqueAdvance and cut techniqueは、釣り針を刺さった方向に押し進め、カエシを皮膚から出してペンチなどで切断する方法です。カエシの手前で釣り針を切りますが、切った瞬間に断端が飛んでしまう危険があるため、私は釣り針をガーゼなどで覆ってから切るようにしています。カエシがなくなれば釣り針は逆向きから簡単に抜けるようになります。デメリットは釣り針による穴が2ヵ所できることでしょうか。画像を拡大するケンがある釣り針の場合は注意が必要で、刺さった方向に押し進める際に最初の針穴にケンが入り込んでしまうとそこで抜けなくなります。そのため、あらかじめケンを切っておくか、釣り針の根元を切断して、そのまま刺さった方向に押し進めて針先側から釣り針を抜く方法もあります。画像を拡大する私は基本的には(1)か(2)をトライしてダメなら(4)で抜去しています。(4)で抜けないということはまずないです。鎮痛釣り針の抜去の手技には痛みが生じることが多いため、私は処置の前に局所麻酔(1%キシロカイン)で鎮痛しています。(2)の処置では鎮痛は必要ないとも言われていますが、失敗したときの痛みはかなりのものなので私は鎮痛しています。インターネットで「String pull technique, fish hook」と検索すると動画が見れますが、なかなか簡単にはいきません。なお、痛みを抑えるコツは釣り針を素早く引っ張ることです!抗菌薬と創部処置抗菌薬に関しては基本的に推奨されていません。しかし、免疫抑制状態や糖尿病、肝硬変がある場合や、釣り針が関節内や靭帯や皮下の深いところまで到達している場合は予防投与が検討されます。予防の目的の1つに最近注目を集めるようになったエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)があります。これは淡水、河口部、海水に広く常在するグラム陰性の通性嫌気性桿菌であり、治療にはフルオロキノロンが適応となります。海や川で使用した釣り針で傷を負い、抗菌薬の予防投与が必要な場合はフルオロキノロンを検討しましょう。また、患者の予防接種歴を確認し、基礎免疫がある場合は最終接種から5年以上経過している場合は破傷風トキソイドを投与し、基礎免疫がない場合は破傷風トキソイドに加えて抗破傷風人免疫グロブリンの投与を検討します3)。創部処置では、針穴を密閉すると感染リスクが高まるので控え、軟膏を塗布もしくは通気性がよいガーゼなどで保護します1)。もし、院外で釣り針が刺さった患者に遭遇した場合、私は(2)のString pull techniqueはあまり推奨しません。冒頭の苦い経験のように、うまくいかないとどうしても強い痛みが生じるからです。院外で遭遇したら無理をせず病院受診を促し、院内ではどの手法を使うにしても鎮痛をしっかりしたほうがよいでしょう。ちなみに、冒頭の強面のお兄さんの釣り針は、結局(4)のadvance and cut techniqueで抜去しましたが、最後に一言「最初からこれでやれよ」と言われてしまいました。ものすごい目つきでにらまれた記憶が今でも残っています…。1)Gammons MG, et al. Am Fam Physician. 2001:63;2231-2236.2)McMaster S, et al. Wilderness Environ Med. 2014:25;416-424.3)Callison C, et al. In:StatPearls [Internet]. Tetanus Prophylaxis. Treasure Island(FL):StatPearls Publishing. 2022.

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第160回 岡山大教授の論文不正、懲戒解雇で決着も論文撤回にはまだ応じず

コロナは文字通り“普通の風邪”へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。5月8日、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「5類」に移行しました。これに伴い、3年3ヵ月余りにわたって設置されていた政府の対策本部も廃止されました。また、WHOのテドロス事務局長は5月5日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症をめぐる世界の状況について、2020年1月に発表した「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の終了を宣言しました。これで、新型コロナウイルス感染症の流行はほぼ“終息”し、文字通り“普通の風邪”となったと言えるでしょう。ただ、日本においてこの3年間で浮き彫りになった医療提供体制や医療連携の課題がすべて解決したとは到底言えません。“喉元過ぎれば熱さを忘れる“ではないですが、次のパンデミックにおいても同じような失敗、ドタバタを繰り返さぬよう、政府や医療関係者にはこの3年間の徹底した検証とパンデミック対策の更新を行ってほしいと思います。ところで、WHOのデータによれば、これまでに世界人口(約80億人)の1%弱が新型コロナウイルス感染症に感染(診断された確定例の累積)し、0.1%弱が死亡したと報告されています(途上国などを考慮すると、実際はより多くが感染し、0.25%超が死亡したとの見方もあります)。今から100年前、世界的大流行を引き起こしたA/H1N1型のスペインインフルエンザ(いわゆるスペイン風邪)では、1918〜1920年の3年間に3度の流行の波が押し寄せたと言われています。そして、当時の世界人口(18億〜20億人と推定)の25〜30%が感染し、2〜5%が死亡したと推計されています。当時は、抗生物質やワクチンはおろか、インフルエンザウイルスの存在すらわかっておらず、医学・医療のレベルも低かったので、全人口に対する死亡率の差はこんなものだろうと思われますが、終息までに同じく約3年かかっている点がとても興味深いです。どれだけ医学が進歩しても、「新興感染症によるパンデミックの終息には3年はかかる」ということなのでしょうか。誰かにこの謎を解き明かしてもらいたいと思います。岡山大、細胞生理学分野の教授を懲戒解雇さて今回は、岡山大学医学部での論文不正について書きます。岡山大学・学術研究院医歯薬学域の神谷 厚範教授(医学部・細胞生理学分野)が2019年7月にnature neuroscience電子版に発表したがん治療に関する論文1)に実験に使ったマウスの数などの捏造や画像の使い回しが113ヵ所確認も確認された問題で、同大は4月17日、神谷教授を懲戒解雇処分とした、と発表しました(処分は4月14日付)。AMEDもプレスリリース、全国紙も大きく報道した研究この事件、たびたび発覚する医学部や生命科学系の研究者による論文不正ではあるのですが、2019年に発表したのがnature neuroscienceという一流誌であったため、研究資金を提供した日本のAMED(国立研究開発法人 日本医療研究開発機構)も論文掲載当時、「がんに自律神経が影響することを発見!がんの神経医療の開発へ」と題するプレスリリース(最近までAMEDのサイトに掲載されていましたが4月27日に取り下げられました)を出し、全国紙やNHKもその成果を大きく報道しました。そうした経緯もあってか今回の懲戒解雇を報道したメディアの数も心なしか多かった印象です。研究成果を“誤報”したことへのメディア自身の反省もあったのかもしれません。全国紙各紙は、今回の懲戒解雇報道の末尾に2019年の記事を取り消す旨を記しています。たとえば読売新聞は「2019年7月9日の朝刊社会面で、神谷教授らによる論文について『乳がん 交感神経で悪化?』の見出しで報じました。岡山大などが論文不正を認定し、日本医療研究開発機構も研究費の一部返還と、神谷教授に対する新たな研究申請の停止を決めたことから、記事と見出しを取り消します」と記しました。交感神経の働きを止めるとがんの進行も抑えられることを、マウスを使って確認神谷元教授が発表した論文は、交感神経をがんの中で活発に働かせたところ腫瘍が大きくなるなどがんが進行し、交感神経の働きを止めるとがんの進行も抑えられることを乳がんのマウスを使った実験で確認した、という内容でした。マウスにヒトの乳がん組織を移植し、乳がん組織内の交感神経を刺激し続けると、60日後、刺激しないマウスと比較して刺激したマウスのがんの面積は2倍近く大きくなり、転移数も多かったそうです。一方、遺伝子治療で交感神経の活性化を止めると、60日経ってもがんの大きさはほとんど変化せず、転移もなかったとのことです。当時の朝日新聞の記事によれば、神谷元教授は「不安や怒りなどをうまくコントロールし、交感神経を刺激し過ぎないようにすることで、良い影響を与えられるかも知れない」と話していました。AMEDに論文に関する匿名の告発が届き不正発覚「精神の状態ががんの転移にも影響する…」。一般人にも極めてわかりやすいロジックゆえ、マスコミも飛びつきやすかったこの研究ですが、2020年9月にAMEDに対し同論文に関する匿名の告発があったことで事態は急転します。告発を受け取ったAMEDは、元教授が論文の実験を行った前任地、国立循環器病研究センターと岡山大に研究不正の予備調査実施の要請を行いました。翌2021年には、それぞれで調査委員会が立ち上げられ、本格的な調査がスタートしました。国立循環器病研究センターの調査報告書2)は2023年3月2日に、岡山大学の調査報告書3)は3月24日にそれぞれ公表されました。実験に用いたとするマウス、ラットの数と実際に使用できた数が大きく乖離それらの調査結果によれば、論文ではマウス914匹、ラット368匹を実験に用いたとしていましたが、神谷元教授が購入するなどして実際に使用できたとみられるのはそれぞれ72匹、35匹しかいなかったとのことです。こうした動物の使用数に関する捏造が108ヵ所に上り、「論文の実験は不可能」と結論付けています。ほかにも実験結果を示す画像5ヵ所の捏造も認定されました。たとえば自律神経の操作でマウスのがんの増殖が抑制されたとした実験では「0日目」と「60日目」の画像がいずれも同じ日に撮影されていました。調査報告書は、露光時間を変えることで見かけ上、がんの大きさを調整したとみられるとしています。調査委員会の調べに対し、神谷元教授は「2018年6月の大阪府北部地震でハードディスクが落下して故障し、データを失った」として実験データを提供しませんでした。捏造の指摘についても「マウスは再利用していた」「画像の取り違いがあった」などと説明し、不正を認めていないとのことです。岡山大が懲戒免職という重い処分を下したのに対し、AMEDは神谷元教授が論文執筆時に所属していた国立循環器病研究センターに対し、研究費の一部約11万8,000円の返還を求めました。AMEDによると、神谷教授が同センターで研究所室長などとして活動していた2015~2018年度、計約4,700万円の研究資金を提供。このうち、不正が確認された論文に直接関係する費用として、英文の校正費(2017年度)について返還を求めたとのことです。同センターは返還に応じる方針です。研究所時代の成果を引っさげ、教授に就任神谷元教授は1994年に浜松医科大学医学部卒業、2000年に名古屋大学大学院医学系研究科博士課程を修了しています。名古屋大学環境医学研究所助手を経て2002年より国立循環器病研究センター研究所・循環動態機能部室員となり、2017年には同循環モデル解析研究室長となっています。同研究所時代の研究成果を引っさげ、2018年に岡山大学の教授に就任しました。2019年にnature neuroscienceに発表した論文は、国立循環器病研究センター研究所の室長時代に行った実験によって得られた成果を発表したものであり、そのためもあって、同センターによる調査報告書は50ページ(岡山大学は10ページ)と長く、不正の背景や原因をより詳しく分析した内容となっています。研究姿勢が「科学者としてあるべき真摯さや誠実な姿勢からかけ離れたものであった」その中で、論文不正の社会的影響については、「論文I(nature neuroscience掲載の論文)については、2019年7月5日に岡山大学をはじめ5機関の連名で記者発表され、複数の新聞で報道されるとともに、元室長により複数回学会等で発表されている。また、元室長により、この論文と関連する別の研究が開始されている。加えて、この論文の被引用回数は2022 年8月4日現在で100回を超えており、すでに相当数の論文で引用がなされている状況である。掲載された『Nature Neuroscience』は、影響力の大きな科学雑誌であり、この論文を基に、新たな研究を着想している研究者がいることも十分に想定される。以上より、患者を対象とした新たな臨床研究等がスタートしているような状況でないものの、このような論文において、極めて不適切な研究が行われた事実が当該分野の研究の進展に与える悪影響は大きいと言わざるを得ない」と書いています。さらに、発生要因については、「今回の事案が発生した要因として、まず、元室長の研究に対する姿勢が、科学者としてあるべき真摯さや誠実な姿勢からかけ離れたものであった点を挙げざるを得ない。科学者として当然に備えるべき『科学界に対して真正なる結果を報告する』という意識、倫理観が欠如していたことが、今回の事案が引き起こされた最大の要因と言える。科学雑誌では、科学的根拠となる実験手法を正確に記載して、再検証ができるようにすることが求められているが、元室長による論文の記載は、それとはかけ離れたものであった」と、元室長個人の研究者としての姿勢を厳しく糾弾しています。さらに、「元室長が、調査の過程において、科学者が第三者的な立場から本実験結果を評価する上で考えもしない独自の主張を繰り返すとともに、『共著者や学術誌の査読者と編集者も気付かずに、そのまま出版されてしまいました』と他に責任を転嫁するような主張を行い、また、『大量の図の中においてこのエラーに気付くのは困難でした』と、図表が大量であれば、過失が許されるかのような主張をしたことも、上記の意識の欠如を裏付けるものである」とも書いています。2020年には別の国立循環器病研究センター室長による論文不正もそれにしても、論文不正が発覚すると、研究が行われた前職・元職の研究所や大学だけではなく、現職の職場でも調査を行わなければならないので大変です。今回は、国立循環器病研究センターの調査委員会は5人、岡山大の調査委員会では7人が調査を担当しています。数本の論文の捏造や改ざんのためにそれだけの時間と労力(外部有識者には費用も)が割かれたわけです。大変な無駄遣いと言えるでしょう。そう言えば、国立循環器病研究センターの論文不正としては、2020年8月にも別の事案が発覚し(「第22回 大阪大論文不正事件の“ナゾ” NHKスペシャル「人体」でも取り上げられた臨床研究の行方は?」参照)、大きなニュースになりました。この時も、同センターで室長を務めていた医師が発表した論文5本に捏造・改ざんが確認されています。論文を量産することでどこかの大学教授のポストをなんとか狙いたい“室長”という微妙な地位が、不正に走らせる一因となっているのでしょうか。なお、nature neuroscienceの論文について、岡山大は撤回するよう神谷元教授に対して勧告を行いましたが、まだ撤回は行われていません。参考1)Kamiya A, et al. Nat Neurosci. 2019;22:1289-1305.2)研究活動の不正行為に関する調査結果報告書/国立循環器病研究センター3)研究活動の不正行為及び倫理指針不適合に関する調査結果報告について/岡山大学

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第161回 糞から集めた細菌が中身の経口薬を米国が承認

適格なヒトの糞から集めた細菌を成分とするクロストリジオイデス・ディフィシル(C. difficile)感染症(CDI)の再発予防経口薬・Vowst(SER-109)が米国FDAに承認されました1,2)。米国でCDIは最も一般的な医療関連感染症の1つで、毎年1万5,000人~3万人がそのために亡くなっています。人の腸には数百万種もの微生物がいます。抗菌薬の服用などによってその共存の均衡が崩れてはびこったC. difficileが分泌する毒素が下痢、腹痛、発熱、果ては臓器不全や死をもたらします。CDIはひとたび回復しても再発することがあり、再発が増えるごとに再発しやすさも上昇するという悪循環があり、残念ながら再発CDIの治療は限られています。先週4月26日に承認されたVowstのような糞中微生物の補給は腸微生物の均衡回復を助けてCDIの再発を予防すると考えられています。米国のバイオテクノロジー企業であるSeres Therapeutics社が開発したVowstはヒトの糞から集めた生きた細菌を含むカプセル剤です。1日1回4カプセルを3日間連続して服用することでCDI再発を予防します。その効果は先立つ1年間にCDIを3回以上経験し、標準的な抗菌薬治療でひとまず症状が収まっている患者を募った第III相試験3)で裏付けられています。試験には182例が参加し、Vowst投与群89例の8週間のCDI再発率は12%でした。すなわち9割近い88%が8週時点を再発なしで迎えることができました。一方、プラセボ群では半数近い40%が8週後までに再発し、無再発患者の割合は60%でした。よってVowst投与群の無再発率は差し引きでプラセボ群を28%上回りました。Vowst投与群の再発率はその後も低いままで、6ヵ月経っても約8割(79%)の被験者が無再発を保っていました。プラセボ群では半数を超える53%が6ヵ月後までに再発しています。Vowstの原料である糞やその糞の提供者に伝染性病原体一揃いが含まれていないことは検査されますが、感染源の混入の恐れはあります。また、食物アレルギー源を含んでいるかもしれません。とはいえ幸いなことに試験でVowstと関連する重篤な有害事象は認められていません。世界に名立たる食品メーカーNestlé(ネスレ)の栄養科学事業Nestlé Health ScienceがSeres社と協力してVowstを米国で販売します。排泄物から作るとはいえ開発費や製造などの諸々の手間を考慮すると安上がりとは言えないらしく、3日間の同剤治療の値段は1万7,500ドル(240万円ほど)です4)。ヒトの糞から集めた微生物が成分の薬の承認はVowstが初めてではありません。スイスのFerring社のCDI再発予防薬Rebyotaが昨年の暮れに米国承認に至っています5,6)。ただしRebyotaは浣腸薬であり、経口薬のVowstの方が使いやすいかもしれません。また、第III相試験での単回のRebyota浣腸の8週間無再発率は71%でプラセボとの差し引きの効果増分は13%であり7)、間接比較なのであまり頼りになりませんが上述したVowstの第III相試験での効果増分28%の方が見栄えします。参考1)FDA Approves First Orally Administered Fecal Microbiota Product for the Prevention of Recurrence of Clostridioides difficile Infection / PRNewswire2)Seres Therapeutics and Nestl? Health Science Announce FDA Approval of VOWSTTM (fecal microbiota spores, live-brpk) for Prevention of Recurrence of C. difficile Infection in Adults Following Antibacterial Treatment for Recurrent CDI / BUSINESS WIRE3)Feuerstadt P, et al. N Engl J Med. 2022;386:220-229.4)Seres and Nestl? take on Ferring in C diff / Evaluate5)FDA Approves First Fecal Microbiota Product / PR Newswire6)Ferring Receives U.S. FDA Approval for REBYOTA®(fecal microbiota, live-jslm) - A Novel First-in-Class Microbiota-Based Live Biotherapeutic / BusinessWire7)Khanna S, et al. Drugs. 2022;82:1527-1538.

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静脈血栓塞栓症治療中の肺動脈塞栓を伴う右室内腫瘤の治療方針【見落とさない!がんの心毒性】第20回

※本症例は、患者さんのプライバシーへの配慮と、臨床経過の円滑な理解を進めるため、一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別50代・女性受診までの経過子宮頸がんに対する化学放射線療法後、無再発で経過していたが、5年目のCT検査にて右腸骨静脈の下大静脈合流部から右下腿までの広範囲な静脈血栓症と静脈周囲の炎症所見があり(図1)、深部静脈血栓塞栓症と血栓性静脈炎の合併として、当科に診療依頼があった。血栓性静脈炎が出現するまでは、日常生活になんら支障がない日常生活動作(ADL)であった。(図1)造影CT検査【既往症】子宮頸がん3B期当院にて5年前に全骨盤外照射 50Gy+CDDP 35mg/m2/week× 6回、両側内腸骨リンパ節および傍大動脈リンパ節領域10Gy、その後、エトポシド25mg/day 内服3週間、休薬1週間を合計21cycle追加し、当科初診時までの5年間無再発。当科初診時、右下肢広範囲の発赤腫脹を認め、血液検査ではD-dimer 7.4μg/mL、抗カルジオリピン抗体は陰性であった。下肢全体の腫脹と疼痛は強かったが、CT検査にて肺動脈血栓塞栓症は認めず、抗凝固療法を開始して1ヵ月ほどでD-dimerが0.8μg/mLと正常化し下肢腫脹も改善した。4ヵ月後にD-dimerの再上昇傾向を認め下肢腫脹が再燃したが、CT検査では、明らかな子宮頸がんの再発や転移を認めず、大腿静脈血栓はほぼ消失したものの、腸骨静脈血栓が残存している状態であった。他院循環器病院へ薬剤抵抗性のDVT後遺症として血管内治療も含めてセカンドオピニオンしたところ、現行の治療継続指示であった。6ヵ月後に軽度の貧血、断続的な発熱と炎症反応高値が出現したため、精査目的に当科入院となった。【入院時所見】WBC 5,900/μL、Hb 8.2g/dL、CRP 14mg/dL、BNP 113.8pg/mL、D-dimer 5.5μg/mL、SCC抗原 0.3ng/mL、新CYFRA 1.0ng/mL、CEA < 0.5ng/mL、心電図は洞調律、III・aVF・V2-3誘導にてT波異常。感染性心内膜炎のスクリーニングとして血液培養を提出し、心臓超音波検査を施行したところ、右室心尖部に可動性の乏しい26×42mmの腫瘤像を認めた(図2)。(図2)心臓超音波検査【入院後経過】貧血に対しては上下部内視鏡検査を予定した。入院時の心エコー検査にて、半年前には認めなかった右室内腫瘤を認め、CT検査では明らかな感染源や、明らかな子宮頸がんの局所再発や主要な他臓器転移も認めなかったものの、右室内に腫瘤が疑われた。また、右腸骨静脈と右肺動脈に造影欠損像を認めた。心臓MRI検査では、右室腫瘤像を認めるが、その腫瘤の質的診断は出来なかった。冠動脈カテーテル検査では、右冠動脈からの栄養血管を認めたが、病理学的な検査は行えなかった。PET-CT検査は、当時の当院では撮影困難であった。【問題】右室腫瘤の精査加療方針として、最も適切と判断した選択肢はどれか。a.不明熱と炎症反応高値を認めるため、感染性疣贅として抗生剤治療を4~6週間施行し、その治療反応性をみてから治療方針を再検討する。b.静脈血栓塞栓症の治療中の肺動脈血栓症の出現があるため、抗凝固療法を2ヵ月施行しその治療反応性をみてから治療方針を再検討する。c.原発性心臓腫瘍の中では発生確率が高い良性腫瘍を疑うが、可動性が乏しいため3ヵ月後に再検する。d.原発性心臓腫瘍や転移性心臓腫瘍、感染性疣贅、血栓などの診断がつかないが、何かしらの悪性腫瘍の可能性があるため、がん薬物治療を開始する。e.明らかな他臓器転移がない状態で診断がつかず肺動脈塞栓症を伴う粗大な心腔内腫瘤であり、開胸右室生検、ならびに右室腫瘤摘出術を施行する。悪性の(原発性、転移性)心臓腫瘍は稀な疾患だが、腫瘍が増大傾向を示す場合などは重要な鑑別疾患である。がんの既往歴の問診や心臓超音波、CT、MRIなどの画像検査、血栓塞栓症合併などのアセスメントは診断の補助となるが、組織学的検査による確定診断が最も重要である。本例のように、外科的切除も含めた心臓腫瘍の診断・治療について、循環器内科、心臓外科、腫瘍内科、放射線科による連携が必要である。1)北原 康行ほか. 呼吸と循環. 2016;64:889-903.2)Butany J, et al. Can J Cardiol. 2005;21:675-680.3)Lam KY, et al. Arch Pathol Lab Med. 1993;117:1027-1031.4)Amano J, et al. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2013;61:435-447.5)Silvestri F, et al. G Ital Cardiol. 1997;27:1252-1255.6)Klatt EC, et al. Cancer. 1990;65:1456-1459.【謝辞】本文作成にあたり、丸山 雄二氏(日本医科大学付属病院心臓血管外科准教授)、金政 佑典氏(都立駒込病院腫瘍内科医長)、向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター成人病ドック科部長)、大倉 裕二氏(新潟県立がんセンター新潟病院循環器内科部長)、草場 仁志氏(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 腫瘍内科部長)、志賀 太郎氏(がん研有明病院腫瘍循環器・循環器内科部長)にご指導とご監修いただきました。ここに深く感謝申し上げます。講師紹介

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重症市中肺炎、ヒドロコルチゾンが死亡を抑制/NEJM

 集中治療室(ICU)で治療を受けている重症の市中肺炎患者では、ヒドロコルチゾンの投与はプラセボと比較して、全死因死亡のリスクを有意に低下させ、気管挿管の割合も低いことが、フランス・トゥール大学のPierre-Francois Dequin氏らCRICS-TriGGERSepネットワークが実施した「CAPE COD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年3月21日号で報告された。フランスの無作為化プラセボ対照第III相試験 CAPE COD試験は、フランスの31施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2015年10月~2020年3月の期間に患者の登録が行われた(フランス保健省の助成を受けた)。 重症の市中肺炎でICUに入室した年齢18歳以上の患者が、ヒドロコルチゾンの静脈内投与を受ける群、またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 ヒドロコルチゾンは、200mg/日を4日間または8日間投与した時点で、臨床的改善度に基づき、その後の総投与日数を8日間または14日間と決定し、用量を漸減した。すべての患者が、抗菌薬と支持療法を含む標準治療を受けた。 主要アウトカムは、28日時点で評価した全死因死亡であった。 予定されていた2回目の中間解析の結果に基づき患者の登録が中止された時点で、800例が無作為化の対象となり、このうち795例のデータが解析に含まれた。400例がヒドロコルチゾン群(年齢中央値67歳、男性70.2%)、395例がプラセボ群(67歳、68.6%)であった。ICU内感染、消化管出血の頻度は同程度 28日目までに、死亡の発生はプラセボ群では395例中47例(11.9%、95%信頼区間[CI]:8.7~15.1)であったのに対し、ヒドロコルチゾン群は400例中25例(6.2%、3.9~8.6)と有意に少なかった(絶対群間差:-5.6ポイント、95%CI:-9.6~-1.7、p=0.006)。 90日時点での死亡率は、ヒドロコルチゾン群が9.3%、プラセボ群は14.7%であった(絶対群間差:-5.4ポイント、95%CI:-9.9~-0.8)。また、28日時点でのICU退室率はヒドロコルチゾン群で高かった(ハザード比[HR]:1.33、95%CI:1.16~1.52)。 ベースラインで機械的換気を受けていなかった患者のうち、28日目までに気管挿管が導入されたのは、ヒドロコルチゾン群が222例中40例(18.0%)、プラセボ群は220例中65例(29.5%)であった(HR:0.59、95%CI:0.40~0.86)。 ベースラインで昇圧薬の投与を受けていなかった患者では、28日目までに昇圧薬の投与が開始されたのは、ヒドロコルチゾン群が359例中55例(15.3%)、プラセボ群は344例中86例(25.0%)であった(HR:0.59、95%CI:0.43~0.82)。 ICU内感染(ヒドロコルチゾン群9.8% vs.プラセボ群11.1%[HR:0.87、95%CI:0.57~1.34])と消化管出血(2.2% vs.3.3%[0.68、0.29~1.59])の頻度は両群で同程度であった。一方、ヒドロコルチゾン群では、治療開始から1週間のインスリン1日投与量(35.5 IU/日vs.20.5 IU/日、群間差中央値:8.7 IU/日[95%CI:4.0~13.8])が多かった。 著者は、「先行試験やメタ解析では、グルココルチコイドの薬力学的作用と一致する高血糖の発生率の増加が報告されている。この高血糖の増加は通常、一過性のものだが、今回の試験では確認していない」としている。

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SJS/TENの28%が抗菌薬に関連、その内訳は?

 抗菌薬に関連したスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)および中毒性表皮壊死症(TEN)は、全世界における重大なリスクであることを、カナダ・トロント大学のErika Yue Lee氏らがシステマティックレビューおよびメタ解析で明らかにした。抗菌薬関連SJS/TENは、死亡率が最大50%とされ、薬物過敏反応のなかで最も重篤な皮膚障害として知られるが、今回の検討において、全世界で報告されているSJS/TENの4分の1以上が、抗菌薬関連によるものであった。また、依然としてスルホンアミド系抗菌薬によるものが主であることも示され、著者らは「抗菌薬の適正使用の重要性とスルホンアミド系抗菌薬は特定の適応症のみに使用し治療期間も限定すべきであることがあらためて示唆された」とし、検討結果は抗菌薬スチュワードシップ(適正使用)、臨床医の教育と認識、および抗菌薬の選択と使用期間のリスク・ベネフィット評価を重視することを強調するものであったと述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年2月15日号掲載の報告。 研究グループは、全世界の抗菌薬に関連したSJS/TENの発生率を調べるため、システマティックレビューを行った。著者によれば、初の検討という。 MEDLINEとEmbaseのデータベースを提供開始~2022年2月22日時点まで検索し、SJS/TENリスクを記述した実験的研究と観察研究を抽出。SJS/TENの発症原因が十分に記述されており、SJS/TENに関連した抗菌薬を特定していた試験を適格とし抽出した。 2人の研究者が、各々試験選択とデータ抽出を行い、バイアスリスクを評価。メタ解析は、患者レベルの関連が記述されていた試験についてはランダム効果モデルを用いて行い、異質性を調べるためサブグループ解析を行った。バイアスリスクは、Joanna Briggs Instituteチェックリストを用いて、エビデンスの確実性はGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチを用いて評価した。 抗菌薬関連SJS/TENの発生率(プール割合)を95%信頼区間(CI)とともに算出した。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューで64試験が抽出された。メタ解析は患者レベルの関連が記述された38試験・2,917例(単剤抗菌薬関連SJS/TEN発生率が記述)が対象となった。・抗菌薬関連SJS/TENのプール割合は、28%(95%信頼区間[CI]:24~33)であった(エビデンスの確実性は中程度)。・抗菌薬関連SJS/TENにおいて、スルホンアミド系抗菌薬の関連が最も多く、32%(95%CI:22~44)を占めていた。次いで、ペニシリン系(22%、95%CI:17~28)、セファロスポリン系(11%、6~17)、フルオロキノロン系(4%、1~7)、マクロライド系(2%、1~5)の順であった。・メタ解析において、統計学的に有意な異質性が認められた。それらは大陸別のサブグループ解析で部分的に説明がついた。Joanna Briggs Instituteチェックリストを用いてバイアスリスクを評価したところ、全体的なリスクは低かった。

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治療前の抗菌薬で免疫チェックポイント阻害薬の有効性が低下/JCO

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療前の抗菌薬曝露は、腸内細菌叢の変化を通じて転帰に悪影響を及ぼす可能性があるが、大規模な評価は不足している。ICI開始前の抗菌薬が全生存期間(OS)に与える影響を評価したカナダ・プリンセスマーガレットがんセンターのLawson Eng氏らによるレトロスペクティブ・コホート研究の結果が、 Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年2月24日号に掲載された。 著者らは、カナダのオンタリオ州で2012年6月~2018年10月にICIによる治療を開始した65歳以上のがん患者を、全身療法投与データを用いて特定した。このコホートをICI治療の1年前と60日前の両方における抗菌薬の処方請求データを得るためにほかの医療データベースとリンクし、多変量Coxモデルにより曝露とOSの関連性を評価した。患者のがん種は肺がんが最多(53%)、メラノーマ(34%)、腎臓がん、膀胱がんがそれに続いた。ICIはニボルマブとペムブロリズマブが一般的だった。 主な結果は以下のとおり。・ICIを投与されたがん患者2,737例のうち、ICI治療の1年前に59%、60日前に19%が抗菌薬を投与されていた。・OSの中央値は306日であった。ICI投与前1年以内のあらゆる抗菌薬への曝露はOSの悪化と関連していた(調整ハザード比[aHR]:1.12、95%信頼区間[CI]:1.12~1.23、p=0.03)。・抗菌薬のクラス解析では、ICI投与前1年以内(aHR:1.26、95%CI:1.13~1.40、p<0.001)または60日以内のフルオロキノロン系抗菌薬への曝露(aHR:1.20、95%CI:0.99~1.45、p=0.06)はOSの悪化と関連しており、1年間の総被曝週数(aHR:1.07/週、95%CI:1.03~1.11、p<0.001)および60日(aHR:1.12/週、95%CI:1.03~1.23、p=0.01)に基づいて用量効果がみられた。 著者らは「ICI治療前の抗菌薬、とくにフルオロキノロン系抗菌薬への曝露が高齢のがん患者のOS悪化と関連していた。ICI治療前の抗菌薬への曝露の制限、もしくは腸内細菌叢を変化させ免疫原性を高めることを目的とした介入が、ICIを受ける患者の転帰を改善するのに役立つ可能性がある」としている。

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尿路感染症疑い高齢者への抗菌薬、医師への適正使用支援で6割減/BMJ

 尿路感染症が疑われる70歳以上のフレイル高齢者について、医療者に対して適切な抗菌薬使用決定ツールの提供や教育セッションなどの多面的抗菌薬管理介入を行うことで、合併症や入院の発生率などを上げずに、安全に抗菌薬投与を低減できることが示された。オランダ・アムステルダム自由大学のEsther A. R. Hartman氏らが、ポーランドやオランダなど4ヵ国の診療所などで行ったプラグマティックなクラスター無作為化試験の結果を報告した。ガイドラインでは限定的な抗菌薬使用が推奨されているが、高齢患者においては、処方決定の複雑さや異質性のため推奨使用の実施には困難を伴うとされていた。BMJ誌2023年2月22日号掲載の報告。38クラスターを対象に7ヵ月追跡 研究グループは2019年9月~2021年6月にかけて、ポーランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの一般診療所(43ヵ所)と高齢者ケア組織(43ヵ所)のうち、1ヵ所以上を含む38クラスターを対象に、ベースライン期間5ヵ月、追跡期間7ヵ月のプラグマティックなクラスター無作為化試験を行った。 被験者は70歳以上のフレイル高齢者1,041例(ポーランド325例、オランダ233例、ノルウェー276例、スウェーデン207例)で、追跡期間は411人年だった。 介入群の医療者には、多面的抗菌薬管理介入として、適切な抗菌薬使用の決定ツールや教材の入ったツールボックスを提供。参加型アクションリサーチ・アプローチのほか、教育・評価セッションや、介入の地域に即した変更を行った。対照群では、医療者が通常の治療を行った。 主要アウトカムは、尿路感染症疑いのある患者への抗菌薬処方数/人年だった。副次アウトカムは、合併症率、全原因による紹介入院、全原因による入院、尿路感染症疑い後21日以内の全死因死亡、全死因死亡などだった。尿路感染症疑いへの抗菌薬投与、介入で0.42倍に 尿路感染症が疑われた患者への抗菌薬処方数は、介入群54件/202人年(0.27/人年)、対照群121件/209人年(0.58/人年)だった。介入群の被験者は、対照群の被験者と比べて尿路感染症疑いで抗菌薬の処方を受ける割合が低く、率比は0.42(95%信頼区間[CI]:0.26~0.68)だった。 合併症率(介入群0.01未満/人年vs.対照群0.05/人年)、紹介入院率(0.01未満/人年vs.0.05/人年)、入院率(0.01/人年vs.0.05/人年)、尿路感染症疑い後21日以内の死亡(0/人年vs.0.01/人年)、全死因死亡(両群とも0.26/人年)は、両群で差はみられなかった。

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ChatGPTが医師の代わりに?抗菌薬処方の助言を求めると…

 人工知能(AI)言語モデルを用いたチャットサービス『ChatGPT』は、米国の医師免許試験において医学部3年生に匹敵する成績を収めるなど、注目を集めている。そこで、抗菌薬への耐性や微生物の生態、臨床情報を複合的に判断する必要のある感染症への対応について、8つの状況に関する質問をChatGPTへ投げかけ、得られる助言の適切性、一貫性、患者の安全性について評価した。その結果、ChatGPTは質問の状況を理解し、免責事項(感染症専門医へ相談することを推奨)も含めて一貫した回答を提供していたが、状況が複雑な場合や重要な情報が明確に提供されていない場合には、危険なアドバイスをすることもあった。本研究は英国・リバプール大学のAlex Howard氏らによって実施され、Lancet infectious diseases誌オンライン版2023年2月20日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 臨床医がChatGPTに助言を求めるという設定で、以下の8つの状況に関する質問を投げかけた。・第1選択薬で効果不十分な蜂窩織炎・腹腔内膿瘍に対する抗菌薬による治療期間・カルバペネマーゼ産生菌に感染した患者の発熱性好中球減少症・複数の薬剤が禁忌の患者における原因不明の感染症・院内肺炎に対する経口抗菌薬のステップダウン・カンジダ血症の患者の次の管理ステップ・中心静脈カテーテル関連血流感染症の管理方法・重症急性膵炎の患者に対する抗菌薬の使用 主な結果は以下のとおり。・ChatGPTによる回答は、スペルや文法に一貫性があり、意味も明確であった。・抗菌スペクトルとレジメンは適切であり、臨床反応の意味を理解していた。・血液培養の汚染などの問題点を認識していた。・基本的な抗菌薬スチュワードシップ(細菌感染の証拠がある場合のみ抗菌薬を使用するなど)が盛り込まれていた。・治療期間については、一般的な治療期間は適切であったが、治療期間の延長の根拠とされる引用が誤っていたり、無視されたりするなど、ばらつきがみられた。・抗菌薬の禁忌を認識していなかったり(Tazocin[本邦販売中止]とピペラシリン/タゾバクタムを同一薬と認識せずに重度のペニシリンアレルギー患者に提案する、カルバペネム系抗菌薬とバルプロ酸ナトリウムの相互作用を認識していなかったなど)、患者の安全性に関する情報を見落としたりするなど、危険なアドバイスが繰り返されることがあった。 本論文の著者らは、ChatGPTを臨床導入するための最大の障壁は、状況認識、推論、一貫性にあると結論付けた。これらの欠点が患者の安全を脅かす可能性があるため、AIが満たすべき基準のチェックリストの作成を進めているとのことである。また、英国・リバプール大学のプレスリリースにおいて、Alex Howard氏は「薬剤耐性菌の増加が世界の大きな脅威となっているが、AIによって正確かつ安全な助言が得られるようになれば、患者ケアに革命を起こす可能性がある」とも述べた1)。

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第149回 今の日本の医療IoT、東日本大震災のイスラエル軍支援より劣る?(後編)

2月6日に発生したトルコ・シリア大地震のニュースを見て村上氏は東日本大震災時のイスラエル軍の救援活動を思い出します。後編の今回は、現在の日本が顔負けのIoTを駆使したイスラエル軍の具体的な支援内容についてお伝えします。前編はこちら 仮設診療所エリアには内科、小児科、眼科、耳鼻科、泌尿器科、整形外科、産婦人科があり、このほかに冠状動脈疾患管理室(CCU)、薬局、X線撮影室、臨床検査室を併設。臨床検査室では血液や尿の生化学的検査も実施できるという状態だった。ちなみにこうした診察室や検査室などはそれぞれプレハブで運営されていた。一般に私たちが災害時の避難所で見かける仮設診療所は避難所の一室を借用し、医師は1人のケースが多い。例えて言うならば、市中の一般内科クリニックの災害版のような雰囲気だが、それとは明らかに規模が違いすぎた。当時、仮設診療所で働いていたイスラエル人の男性看護師によると、これでも規模としては小さいものらしく、彼が参加した中米・ハイチの地震(2010年1月発生)での救援活動では「全診療科がそろった野外病院を設置し、スタッフは総勢200人ほどだった」と説明してくれた。この仮設診療所での画像診断は単純X線のみ。プレハブで専用の撮影室を設置していたが、完全なフィルムレス化が実行され、医師らはそれぞれの診療科にあるノートPCで患者のX線画像を参照することができた。ビューワーはフリーのDICOMビューアソフト「K-PACS」を使用。検査技師は「フリーウェアの利用でも診療上のセキュリティーもとくに問題はない」と淡々と語っていた。実際、仮設診療所内の診療科で配置医師数が4人と最も多かった内科診療所では「K-PACS」の画面で患者の胸部X線写真を表示して医師が説明してくれた。彼が表示していたのは肺野に黒い影のようなものが映っている画像。この内科医曰く「通常の肺疾患では経験したことのない、何らかの塊のようなものがここに見えますよね。率直に言って、この診療所での処置は難しいと判断し、栗原市の病院に後送しましたよ」と語った。ちなみに東日本大震災では、津波に巻き込まれながらも生還した人の中でヘドロや重油の混じった海水を飲んでしまい、これが原因となった肺炎などが実際に報告されている。内科医が画像を見せてくれた症例は、そうした類のものだった可能性がある。診療所内の薬局を訪問すると、イスラエル人の薬剤師が案内してくれたが、持参した医薬品は約400品目にも上ると最初に説明された。薬剤師曰く「持参した薬剤は錠剤だけで約2,000錠、2ヵ月分の診療を想定しました。抗菌薬は第2世代ペニシリンやセフェム系、ニューキノロン系も含めてほぼ全種類を持ってきたのはもちろんのこと、経口糖尿病治療薬、降圧薬などの慢性疾患治療薬、モルヒネなども有しています」と説明してくれ、「見てみます?」と壁にかけられた黒いスーツカバーのようなものを指さしてくれた。もっとも通常のスーツカバーの3周りくらいは大きいものだ。彼はそれを床に置くなり、慣れた手つきで広げ始めた。すると、内部はちょうど在宅医療を受けている高齢者宅にありそうなお薬カレンダーのようにたくさんのポケットがあり、それぞれに違う経口薬が入っていた。最終的に広げられたカバー様のものは、当初ぶら下げてあった時に目視で見ていた大きさの4倍くらいになった。この薬剤師によると、イスラエル軍衛生部隊では海外派遣を想定し、国外の気候帯や地域ブロックに応じて最適な薬剤をセットしたこのような医薬品バッグのセットが複数種類、常時用意されているという。海外派遣が決まれば、気候×地域性でどのバッグを持っていくかが決まり、さらに派遣期間と現地情報から想定される診療患者数を割り出し、それぞれのバッグを何個用意するかが即時決められる仕組みになっているとのこと。ちなみに同部隊による医療用医薬品の処方は南三陸町医療統轄本部の指示で、活動開始から1週間後には中止されたという。この時、最も多く処方された薬剤を聞いたところ、答えは意外なことにペン型インスリン。この薬剤師から「処方理由は、糖尿病患者が被災で持っていたインスリン製剤を失くしたため」と聞き、合点がいった。ちなみにイスラエルと言えば、世界トップのジェネリックメーカー・テバの本拠地だが、この時に持参した医薬品でのジェネリック採用状況について尋ねると、「インスリンなどの生物製剤、イスラエルではまだ特許が有効な高脂血症治療薬のロスバスタチンなどを除けば、基本的にほとんどがジェネック医薬品ですよ。とくに問題はないですね」とのことだった。この取材で仮設診療所エリア内をウロウロしていた際に、偶然ゴミ集積所を見かけたが、ここもある意味わかりやすい工夫がされていた。感染性廃棄物に関しては、「BIO-HAZARD」と大書されているピンクのビニール袋でほかの廃棄物とは一見して区別がつくようになっていたからだ。大規模な医療部隊を運営しながら、フリーウェアやジェネリック医薬品を使用するなど合理性を追求し、なおかつ患者情報はリアルタイムで電子的に一元管理。ちなみにこれは今から11年前のことだ。2020年時点で日常診療を行う医療機関の電子カルテ導入率が50~60%という日本の状況を考えると、今振り返ってもそのレベルの高さに改めて言葉を失ってしまうほどだ。

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医療用医薬品の患者向け広告が米国では問題になっている(解説:折笠秀樹氏)

 品物を販売する企業には販売促進費(広告宣伝費)があります。いくら良い品物でも宣伝しないと広く使われないためでしょう。販売促進費(販促費と略す)の総売上に対する割合は、分野によってずいぶん異なります。自動車・教育・外食産業などの数パーセント程度に対して、医薬品は5~15%程度と少し高いようです。最も高いとされるのが化粧品のようです。 医療用医薬品は医師の処方箋が必要な医薬品で、それが主の企業では5~10%程度のようですが、一般用医薬品が主の企業では10~15%と少し高めです。一般用医薬品はドラッグストアなどで気軽に買えるということで、広告宣伝にかなり力を入れているのでしょう。処方箋なしで買える医薬品はOTC医薬品と呼ばれ、薬剤師の関与が必要なものと必要ないものに分かれています。後者がいわゆる一般用医薬品です。従来は大衆医薬品と呼んでいたものです。 今回の調査は米国で流通している、医療用医薬品150品目に関するものです。販促費の割合ではなく、患者や市民へ向けた直接販売広告費(DTC広告費と呼ぶ)に注目しています。一般用医薬品はテレビなどでDTC広告を目にしますが、医療用医薬品について日本ではDTC広告はほぼないと思います。せいぜい疾患啓発広告・治験広告・企業PR広告くらいでしょう。米国ではこのDTC広告が増えているようなのです。今回の調査でも、販促費の中でDTC広告費の割合は13.5%と報告されました。これで驚くなかれ、何と80%を超えている品目数が12品目もあったのです。その中にはオプジーボも含まれていました(DTC広告割合92%)。オプジーボの売上高はほぼ4,000億円、販促費はその数パーセントに当たる約100億円のようです。その大半が医療関係者向けではなく、患者向けに充てられていたわけです。 DTC広告費の割合が高い要因としては、売上高が高い・医療的価値が低い・最近の発売・生物製剤・抗感染症薬のようでした。注目すべきは、医療的価値の低いお薬ほどDTC広告に頼っていることでした。価値が高ければ何もしなくても使用するからでしょう。抗菌薬の営業は派手な印象をもっていましたが、やはり宣伝広告に費やしていることがわかりました。その種類も多く、耐性菌ゆえ新規のお薬が出やすいことも関係しているのでしょう。 日本では医療用医薬品に関する宣伝広告は医療関係者向けがほとんどだと思いますが、患者らに直接訴えかける宣伝広告が増えていくかもしれません。患者向け医薬品ガイドというような資料をホームページ上では見かけますが、そこまで患者さんやご家族が目にしているとは思えません。現代の医療は、患者や家族の意見も取り入れながら治療法を決めていく時代になりつつあります。そうなると、もっと患者や家族へ直接訴えかける広告宣伝が増えるのは目に見えています。テレビやYouTubeなどに宣伝広告が登場すれば、その影響力は大きくなることでしょう。

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複雑性虫垂炎の術後抗菌薬投与2日間vs.5日間/Lancet

 複雑性虫垂炎に対する術後抗菌薬静脈内投与は、90日以内の感染性合併症または死亡に関して、2日間投与が5日間投与に対して非劣性であることが示された。オランダ・エラスムス大学医療センターのElisabeth M. L. de Wijkerslooth氏らが、同国15施設で実施したプラグマティックな非盲検無作為化非劣性試験「APPIC(antibiotics following appendicectomy in complex appendicitis)試験」の結果を報告した。複雑性虫垂炎に対する術後抗菌薬の適切な投与期間は明らかになっていない。抗菌薬耐性の脅威が世界的に高まっていることから、抗菌薬の使用を制限する必要があり、それによって副作用、入院期間や費用も削減できるとされている。著者は、「今回の結果は、豊富な資源がある医療環境で実施される腹腔鏡下虫垂切除術に適用される。この戦略により、抗菌薬の副作用の減少や入院期間の短縮が期待できる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年1月17日号掲載の報告。術後90日以内の感染性合併症または死亡の複合で評価 研究グループは、年齢8歳以上、米国麻酔科学会の術前状態分類がI~IIIの複雑性虫垂炎(術中評価で壊死、穿孔または膿瘍を認める)患者を、2日間投与群または5日間投与群に施設で層別化して1対1の割合に無作為に割り付け、セフロキシム(1,500mgを1日3回)またはセフトリアキソン(2,000mgを1日1回)+メトロニダゾール(500mgを1日3回)を静脈内投与した。初回投与は虫垂切除術後8時間以内に行うこととし、小児(8~17歳)では体重により投与量を調節した。 主要エンドポイントは、虫垂切除術後90日以内の感染性合併症(米国疾病予防管理センターの定義に基づく腹腔内膿瘍および手術部位感染)または死亡の複合エンドポイントとし、年齢と虫垂炎の重症度を調整した絶対リスク差(95%信頼区間[CI])を求め、非劣性マージンは7.5%と設定した。 アウトカムの評価は電子患者記録、ならびに虫垂切除術後90日の電話による構造化面接相談に基づいて行った。有効性は、intention-to-treat(ITT)およびper-protocol集団で解析。安全性アウトカムは、ITT集団にて解析した。イベント発生率は2日間10% vs.5日間8%で非劣性 2017年4月12日~2021年6月3日の間に、1万3,267例がスクリーニングされ、適格基準を満たした1,066例が無作為に割り付けられた(2日間群533例、5日間群533例)。このうち、募集または同意に過誤のあった症例を除く1,005例(2日群502例、5日群503例)がITT解析集団となった。1,005例中955例(95%)で腹腔鏡下虫垂切除術が行われた。電話による追跡調査は1,005例中664例(66%)で完了した。 主要エンドポイントのイベントは、2日間群で51例(10%)、5日間群で41例(8%)発生した。年齢と虫垂炎の重症度で調整した絶対リスク差は2.0%(95%CI:1.6~5.6)であり、2日間投与の5日間投与に対する非劣性が示された。 合併症と再介入の割合は、2日間群と5日間群で同程度であった。 抗菌薬の副作用(主に悪心・嘔吐、下痢)は、2日間群9%(45/502例)、5日間群22%(112/503例)であり、2日間群が少なかった(オッズ比[OR]:0.344、95%CI:0.237~0.498)。一方、再入院は2日間群(12%、58/502例)が5日間群(6%、29/503例)より高頻度であった(OR:2.135、95%CI:1.342~3.396)。治療に関連した死亡例はなかった。

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敗血症-感染症と臓器障害への対応

敗血症のさまざまな病態に対応できる実践力をつける1冊!敗血症の原因となるさまざまな細菌やウイルスなどによる感染症の管理と、敗血症性ショックや急性腎障害などの臓器障害の管理について解説。抗菌薬のTDM、血液浄化法などの敗血症を管理するための工夫を取り上げ、「日本版敗血症診療ガイドライン」やCOVID-19についても盛り込んだ。本書の特長として(1)集中治療の現場で対応が求められる急性期の病態を中心に取り上げ、実際の診療をサポート。(2)写真・イラスト・フローチャート・表を多用し、視覚的にも理解しやすく構成。(3)ポイントを簡潔かつ具体的に提示。(4)関連する診療ガイドラインの動向を踏まえた内容。(5)最近の傾向、最新のエビデンスに関する情報もわかりやすく解説。(6)専門医からのアドバイスや注意点などを適宜コラムで紹介。(7)サイドノートや補足情報も充実。が挙げられる。敗血症をより深く理解して、敗血症による臓器障害を早期発見し重症化させない、これからの敗血症診療を見据える1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する敗血症-感染症と臓器障害への対応シリーズ名 救急・集中治療アドバンス定価13,200円(税込)判型B5判頁数512頁発行2023年1月専門編集松田 直之(名古屋大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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終わらない結核、結核菌の新たな生き残り戦略

 結核は、世界で最も死亡率の高い感染症の1つである。毎年、約1,060万人が結核に罹患し、160万人が死亡する。その背景の1つとして、抗菌薬の普及により薬剤耐性を有する結核菌が増加し、治療が困難になっていることがあるといわれる。そこで、米国・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのQingyun Liu氏らの研究グループは、結核患者から単離された結核菌のゲノム解析を行った。その結果、転写因子resR遺伝子に変異があると、抗菌薬への曝露終了後に急速に再増殖を開始することが明らかになった。本研究結果は、Science誌2022年12月9日号に掲載された。 結核患者から単離された結核菌51,229株のゲノム解析から、必須転写制御因子のRv1830(resRと呼ぶ)遺伝子の変異が発見された。resR遺伝子変異を有する結核菌は、抗菌薬に対する応答性には変化がなく、耐性は示さなかったものの、抗菌薬への曝露終了後に急速な増殖が可能となっていた(この表現型を著者らは“antibiotic resilience”と呼んでいる)。また、resRは、細胞の増殖や分裂を制御する他の転写因子とともに機能することから、これらの転写因子にも変異がみられた。なお、今回発見された遺伝子変異は、抗菌薬による治療の失敗や一般的な薬剤耐性の獲得とも関連していた。

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