サイト内検索|page:78

検索結果 合計:5821件 表示位置:1541 - 1560

1541.

映画「スプリット」(続編)【なんで記憶喪失になっても一般常識は忘れないの?なんで多重人格になっても人格が入り交じることはないの?(記憶機能)】Part 1

今回のキーワード記憶喪失(解離性健忘)多重人格(解離性同一症)意味記憶エピソード記憶認知症PTSD皆さんは、3歳までの記憶がない理由を考えたことはありませんか? 記憶喪失(解離性健忘)の人が自分の名前や生い立ちを全部忘れているのに、一般常識は覚えているのを不思議に思ったことはありませんか? そして、多重人格(解離性同一症)の人のそれぞれの人格は入れ代わるだけで、なぜ入り交じることがないのかを考えたことはありませんか?記憶喪失や多重人格などの解離性障害の特徴や起源については、以前の記事で掘り下げましたが、実はこれらの謎は残っていました。今回は、前回の記事の文法(統語機能)の起源をヒントに、再び映画「スプリット」を通して、記憶機能に関するこれらの3つの謎を解き明かします。なんで3歳までの記憶がないの?前回の記事から、進化心理学的に考えれば、人類は約700万年前以降に単文(意味記憶)をつくり、約20万年前以降に文脈(エピソード記憶)をつくったことがわかりました。発達心理学的にも、幼児は1歳以降で単語を覚え(意味記憶)、4歳以降でお話をすること(エピソード記憶)がわかりました。つまり、系統発生的にも個体発生的にも、意味記憶がエピソード記憶のベースになっていることがわかります。また、この2つの記憶機能が進化した時代の違いと発達する時期の違いから、意味記憶とエピソード記憶は、「記憶」として括られていますが、実はまったく別々の能力(機能)であることがわかります。以上より、3歳までの記憶がない訳は、エピソード記憶の発達が始まるのが4歳以降だからです。逆に言えば、3歳までは意味記憶を発達させるために脳がコストをかけているということです。3歳までは、ちょうど夢を見ているのと同じように、バラバラな記憶の断片がランダムに出てくることはあっても、時系列で連続的なつながり(ストーリー)としてその後に長く記憶できないのです。ちょうど、夢で見た内容を朝起きてしばらくすると思い出せなくなる状況にも似ています。エピソード記憶が未発達だからこそ、幼児は何度も同じ本の読み聞かせをねだるのです。エピソード記憶は、ひとかたまりのストーリーになっています。だからこそ、その後に誰かに会ったり何かを見たりする状況(刺激)によって、これまでの似たような経験の記憶(関連するエピソード記憶)として、芋づる式(連想的)に次々と思い出すことができるのです。しかも、それらのエピソードの時間的な前後関係も正しく並べ替えることができるのです。この点で、エピソード記憶の本質は、「時系列の連想記憶」であることがわかります。次のページへ >>

1542.

映画「スプリット」(続編)【なんで記憶喪失になっても一般常識は忘れないの?なんで多重人格になっても人格が入り交じることはないの?(記憶機能)】Part2

なんで記憶喪失になっても一般常識は忘れないの?この映画の主人公のケビンには、23の人格が1つの体に宿り、それぞれが別々の名前を名乗っているというキャラ設定でした。そして、基本的にお互いの人格の記憶にはアクセスできません。この点で、彼は1つの人格からしたら記憶喪失になっているとも解釈できます。つまり、多重人格とは、それぞれの人格の記憶喪失であるとも言い換えられます。記憶喪失(解離性健忘)では、自分の名前や生い立ち(エピソード記憶)をまったく思い出せないのに、一般常識(意味記憶)は覚えています。その訳は、エピソード記憶は、意味記憶に比べて進化の歴史が浅い(発達の時期が遅い)ため、脆く失われやすいからと説明することができます。これは、約10万年前に進化した認知能力(概念化)が、約300万年前に進化した非認知能力(社会脳)よりも脆く失われやすいことと似ています。なお、ある能力について進化の歴史が長い(発達の時期が早い)ほど身につきやすい理由については、嗜癖性の起源として、関連記事1をご覧ください。情報化された現代でこそ、記憶喪失になると大騒ぎになります。しかし、よくよく考えると、20万年前よりも以前の原始の時代では、そもそもエピソード記憶の能力自体がはっきりあるわけではなく、その瞬間をその日暮らしで反射的に生きていました。これも、まさに夢を見ている時と同じです。私たちは、夢を見ているその瞬間に昔のことを思い出したり、先々のことを計画することはまずありません。この点で、近代(産業革命)の合理主義の価値観が浸透するまでは、記憶喪失が起こったとしても、何も困らないどころか、記憶喪失のきっかけとなった重度ストレスを含んだすべてのエピソード記憶をいったん忘れることで、もう一度周りとうまくやっていくことができます。これは、記憶喪失の適応戦略であると考えることができます。なお、記憶喪失の「記憶」は、エピソード記憶に限定されたものであり、失うのではなく思い出せないだけなので、厳密な表記は「エピソード記憶再生障害」とした方が誤解を招かないでしょう。また、このエピソード記憶の脆さから、認知症では、出来事の記憶(エピソード記憶)を忘れやすく、一般常識(意味記憶)は忘れにくいことを説明することができます。つまり、認知症は、出来事を思い出すことがもうできなくなった記憶喪失、つまり不可逆的な「エピソード記憶再生障害」と言えそうです。実際に、認知症の人に年齢を聞くと、認知症が進んでいる人ほどより若い年齢を答えます(若返り現象)。その訳は、脳は持っている記憶に基づいて現実世界という意識をつくり出しているからです。もはや若い頃の記憶しか残っていなければ、若い頃の自分の「現実世界」しか認識できないわけです。私たちも、昼寝して起きた時に「あれ、今いつだっけ?」と思ったり、旅行や出張などで自分のいつもの部屋ではない場所で朝起きた時に「あれ、ここどこだっけ?」とぼんやり思うことがあります。これは、一過性の見当識障害ですが、その後に周りを見ることですぐにそれ以前の記憶が蘇ってきて、それを頼りに自分の状況を認識できるので、困ることはありません。ただ、記憶に依存している点では、これは一時的な記憶喪失、つまり一過性の「エピソード記憶再生障害」とも言えそうです。逆に、「エピソード記憶の過剰再生」は、PTSDのフラッシュバックです。なお、フラッシュバックは、もともと哺乳類が危険を回避するために進化させた記憶能力ですが、意味記憶やエピソード記憶などの記憶機能の原型とも言えるでしょう。また、これらの記憶の学習は夢を見ている時(レム睡眠時)に行われます。夢は記憶の学習の副産物にすぎないと同時に、その起源は哺乳類が生まれた約3億年前に遡ります。この点で、先ほど触れたように、夢は起きてしばらくすると思い出せなくなったり、夢を見ている瞬間は昔のことを思い出したり、先々のことを計画したりすることはないわけです。なお、夢の詳細については、関連記事2をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

1543.

映画「スプリット」(続編)【なんで記憶喪失になっても一般常識は忘れないの?なんで多重人格になっても人格が入り交じることはないの?(記憶機能)】Part3

なんで多重人格になっても人格が入り交じることはないの?映画の中では、ケビンの中にある複数の人格がお互いを認識し合ってケンカしているように描かれていました。さすがに、これはこの映画の演出であり、実際の臨床ではお目にかかりません。ちなみに、複数の人格が頭の中でケンカし合うような症状は、多重人格とはまったく別の病態になります。それは、統合失調症の二重心という病態です。多重人格(解離性同一症)では、人格が交代することはあっても、共存することはないです。その訳は、それぞれの人格がいるように見えるのはそれまでのエピソード記憶がバラバラのままであるだけでつながらない(連想できない)からと説明することができます。とくに幼少期の虐待などの重度のストレスによって、記憶喪失(解離性健忘)が繰り返されると、その複数のエピソード記憶が脳内のネットワークとして潜在(ローカルスリープ)することになります。この詳細については、関連記事3をご覧ください。そして、その眠っていたエピソード記憶はその後、関連する状況(刺激)によって蘇らず、ランダムに代わる代わるに蘇ってくるようになります。この点で、多重人格の表記は、厳密には「エピソード記憶交代再生」とした方が誤解を招かないでしょう。つまり、多重人格の本質は、実は「人格」そのものではなく、エピソード記憶が交代的に再生することです。逆に、エピソード記憶がつながってすべて再生できるようになれば、これは、1つのつながったエピソード記憶(人格)として自分を認識できるようになったと捉えることができます。この点で、それぞれの人格が共存するようになったとは捉えることができません。実は、私たちは、思い出せる限りの一つひとつのエピソード記憶をつなぎ合わせて人生と呼び、1つの人格として社会生活を送っています。これも、個人主義を重んじる近代(産業革命)以降の考え方です。それまでは多重人格が起こったとしても、先ほどの記憶喪失と同じように、その出てきた「人格」(エピソード記憶)で周りに合わせていただけでしょう。その時代や文化によっては、「シャーマン」や「憑き物」として社会に溶け込んでいたでしょう。つまり、多重人格も1つの適応戦略であったと考えることができます。そもそも、人格が1つであるというのは、その考え方が現代社会にフィットしているだけで、私たちの思い込みかもしれないです。そもそも、私たちの心(脳)が原始の時代に形作られたと考えると、人格は1つである必要がないからです。なお、エピソード記憶の起源が約20万年前であることから、エピソード記憶に関連した障害である記憶喪失や多重人格の起源も、同じく約20万年前であると推定することができます。<< 前のページへ■関連記事そして父になる(続編・その2)【子育ては厳しく? それとも自由に? その正解は?(科学的根拠に基づく教育(EBE))】Part 1パプリカ【夢と精神症状の違いは?】スプリット【なぜ記憶がないの?なぜ別人格がいるの?どうすれば良いの?(解離性障害)】

1544.

日本における統合失調症、うつ病患者に対する向精神薬処方実態

 日本の精神疾患の治療では、メインとなる治療薬(たとえば、統合失調症に対する抗精神病薬、うつ病に対する抗うつ薬)に加えて向精神薬の多剤併用が一般的に行われている。北海道大学の橋本 直樹氏らは、施設間での差異を減少させながら、日本における向精神薬の処方を国際基準と一致させることを目的に、精神疾患患者の入院時および退院時の処方実態の比較を行った。BMC Psychiatry誌2023年6月28日号の報告。 2016~20年の入院時および退院時における処方箋データを収集した。データに基づき患者を次の4群に分類した。A群(入院時および退院時:主薬単剤療法)、B群(入院時:主薬単剤療法、退院時:多剤併用療法)、C群(入院時および退院時:多剤併用療法)、D群(入院時:多剤併用療法、退院時:主薬単剤療法)。向精神薬の投与量および数を4群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症、うつ病のいずれにおいても、入院時に主薬単剤療法を行っていた患者は、退院時に主薬単剤療法を行っている可能性が高く、その逆も同様であった。・統合失調症では、A群よりもB群において、多剤併用が行われることが多かった。・処方がまったく変更されなかった患者は、10%以上であった。 結果を踏まえて著者らは、「ガイドラインに準拠した治療を確実に行うためには、多剤併用療法を減らしていくことが重要となる」とし、日本全国の270以上の精神科医療施設が参加する「EGUIDEプロジェクト(精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究)」の講義後、主薬による単剤療法率が上昇することが期待される、とまとめている。

1545.

慢性片頭痛の診断率~6ヵ国の比較

 米国・アッヴィのAubrey Manack Adams氏らは、世界6ヵ国における慢性片頭痛患者の評価に基づいた詳細調査を実施した。その結果、6ヵ国ともに、片頭痛の過小診断の割合が高いことが示唆された。Cephalalgia誌2023年6月号の報告。 カナダ、フランス、ドイツ、日本、英国、米国において、Webベースの横断的観察コホート研究を実施した。最初のスクリーニング調査では、代表的なサンプルより一般的な健康管理情報を収集し、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)基準に基づき片頭痛の有病率を特定した。検証済みの片頭痛特有の評価に基づき詳細調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニング調査に回答した9万613人中1万4,492人が片頭痛基準を満たしていた。・片頭痛基準を満たした人の平均年齢は、40~42歳であった。・1ヵ月当たりの頭痛日数の中央値の範囲は2.33~3.33日であり、中等度から重度の片頭痛(頭痛障害度評価尺度:MIDAS基準)の割合は、日本の30%からドイツの52%の範囲であった。・1ヵ月当たりの頭痛日数が15日以上であった割合は、フランスの5.4%から日本の9.5%の範囲であった。・片頭痛基準を満たした人の診断率は、半数未満であった。

1546.

第175回 コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始

コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)を治療しうる手段をいくつかに分類して次々に検討する第II相試験の2つが米国で始まりました1)。それら試験はCOVID-19の長期経過の把握、治療、予防を目指す米国国立衛生研究所(NIH)の取り組みであるResearching COVID to Enhance Recovery(RECOVER)の一環として実施されています。早速始まった2試験の1つはRECOVER-VITAL2)と呼ばれます。ウイルス感染の持続、ウイルスの再活性化、過剰あるいは慢性的な免疫反応や炎症がlong COVIDに寄与し、ウイルスの除去や炎症の抑制をもたらす治療でlong COVIDが改善しうるという仮説の検証を目的としています。RECOVER-VITAL試験でプラセボと対決する治療の先鋒として白羽の矢が立てられたのはファイザーの抗ウイルス薬であるニルマトレルビル・リトナビル(日本での商品名:パキロビッドパック)です。より長期(25日間)の同剤投与によるlong COVID症状改善効果の検討への被験者組み入れはすでに始まっています。RECOVER-VITALとともに始まったRECOVER-NEURO3)という名称のもう1つの試験は遂行機能や注意などのlong COVID絡みの認知機能の低下を改善しうる治療手段の検討を目当てとしています。RECOVER-NEUROで検討される手段はすでに3つが決まっています。1つはインターネットを介した脳トレで、BrainHQと呼ばれます。BrainHQは認知障害の改善手段としてすでに普及しています。もう1つはPASC-Cognitive Recovery(PASC CoRE)と呼ばれ、BrainHQと同様にインターネットを介した脳トレであり、注意や遂行機能を改善する効果があります。3つ目は脳の活動や血流増加を助けることが知られるSoterix Medical社の製品を利用した脳の電気刺激です。同社の経頭蓋直流刺激(tDCS)製品は自宅で簡単にできるように作られています。睡眠や自律神経に注目した2つの試験RECOVER-SLEEPとRECOVER-AUTONOMICも準備段階にあり、間もなく始まります。RECOVER-SLEEPはコロナ感染後に変化した睡眠習慣や寝付きに対処しうる手段を検討します。同試験の一環として過眠や日中の過度の眠気への覚醒促進薬2種の効果がプラセボと比較されます。また、入眠や睡眠の維持の困難などの睡眠障害に睡眠の質を改善する手段が有効かどうかも検討されます。準備段階のもう1つの試験はRECOVER-AUTONOMICと呼ばれ、心拍、呼吸、消化などの生理機能ひとそろいを制御する自律神経系の失調と関連する症状への対処法を調べます。心拍異常、めまい、疲労などの症状を特徴とする体位性頻脈症候群の治療手段いくつかが手始めに検討されます。免疫疾患治療薬とプラセボの比較がその1つで、心拍亢進を伴う慢性心不全の治療薬とプラセボの比較も予定されています。運動できなくなることや疲労への手段を検討する試験も患者や専門家からの意見を取り入れて開発されています。今後次々に始まっていくRECOVER試験はlong COVIDの影響が最も大きい地域を含めて被験者を募っていきます。試験参加施設は自治体と協力してlong COVIDについての理解を促し、RECOVER試験への参加の普及に努めます。効果的な治療や手当てを検討する臨床試験はlong COVIDへの政府の取り組みの肝であり、苦労が絶えない患者やその家族が楽になるように努力していくと米国政府の役員は言っています1)。参考1)NIH launches long COVID clinical trials through RECOVER Initiative, opening enrollment / NIH 2)RECOVER-VITAL試験(ClinivalTrials.gov) 3)RECOVER-NEURO試験(ClinivalTrials.gov)

1547.

日本におけるアルコール摂取、喫煙と認知症リスク~村上健康コホート研究

 飲酒や喫煙は、生活習慣病リスクに影響するが、認知症への影響については依然としてよくわかっていない。新潟大学のShugo Kawakami氏らは、日本人中高年におけるアルコール摂取や喫煙と認知症リスクとの長期的な関連性を調査するため本研究を実施した。その結果、中程度までのアルコール摂取は認知症リスクが低下し、喫煙は用量依存的に認知症リスク増加との関連が認められた。また、多量のアルコール摂取と喫煙との間に認知症リスクとの相互作用が確認された。Maturitas誌オンライン版2023年6月14日号の報告。 研究デザインは、8年間のフォローアップによるコホート研究。参加者は、40~74歳の地域在住の日本人1万3,802人。2011~13年に自己記入式アンケートを含むベースライン調査を実施した。アウトカムは、介護保険データベースから収集した認知症発症、予測因子は、アルコール摂取量および喫煙とした。共変量は、人口統計、ライフスタイル要因、BMI、一般的な健康状態、脳卒中歴、糖尿病歴、うつ病歴とした。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は、59.0歳。・1週間当たりのエタノール量が1~149g、150~299g、300~449gの群は、対照群と比較し、調整ハザード比(HR)が有意に低く、有意な線形関連性は認められなかった。・飲酒歴、健康状態が不良、病歴を有する人を除外した場合、HRは1に向かい増加が認められた(各々、HR:0.80、0.66、0.82)。・喫煙レベルが高いほど、用量依存的にHRが高く(調整p for trend=0.0105)、1日当たり20本以上の喫煙群では、調整HRが有意に高かった(HR:1.80)。・多量飲酒者(1週間当たりのエタノール量:449g以上)において、喫煙習慣のある人は認知症リスクが高かったが(p for interaction=0.0046)、喫煙習慣のない人では影響が認められなかった。

1548.

境界性パーソナリティ障害と全般不安症の併存率

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、感情、衝動性のコントロール、対人機能において重度の不安定さを特徴とする精神疾患である。これまでの研究でBPD患者は不安症などの他の精神疾患の併発リスクが高いと報告されているにもかかわらず、全般不安症(GAD)とBPDとの関係はあまり調査されていなかった。カナダ・マクマスター大学のAimun Qadeer Shah氏らは、成人におけるBPDとGAD併存の臨床アウトカムに関する報告を統合するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、BPDにGADが併発する頻度は高く、この併存疾患がBPDの症状の重症度に関連している可能性が示唆された。Journal of Psychiatric Research誌2023年8月号の報告。 2021年10月27日の時点で、PsycINFO、PubMed、Embaseの3つのデータベースより検索を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象研究24件(併存疾患の有病率に関する報告21件、併存疾患に関する臨床アウトカムの報告4件)が抽出され、そのうち9件をメタ解析に含めた。・BPD患者における現在のGADの有病率は、入院患者で16.4%(95%信頼区間[CI]:1.9~66.1%)、外来および地域在住患者で30.6%(95%CI:21.9~41.1%)であった。・BPD患者におけるGADの生涯有病率は、入院患者で11.3%(95%CI:8.9~14.3%)、外来および地域在住患者で13.7%(95%CI:3.4~41.4%)であった。・BPDとGADの併存と関連していた因子は、BPD重症度、衝動性、怒りっぽさ、絶望感などの測定値の悪化であった。 しかし、著者らは、統合された有病率の信頼区間の幅が大きいことを考慮し、本結果は慎重に解釈する必要がある、としている。

1549.

日本人アルツハイマー病患者の日常生活に影響を及ぼすリスク因子

 日常生活動作(ADL)を維持することは、アルツハイマー病(AD)患者およびその介護者にとって非常に重要な問題である。エーザイの赤田 圭史氏らは、日本人AD患者の診断時のADLレベルおよび長期(3年以内)治療中のADL低下と関連するリスク因子を明らかにするため、本検討を行った。その結果、低い体格指数(BMI)、脳卒中、骨折を伴う日本人AD患者では、ADL低下リスクが高いことから、これらリスク因子を有する患者では、ADLを維持するためのリハビリテーションなどの適切な介入が求められることを報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年6月30日号の報告。 日本の健康保険請求データベースより、AD患者の医療記録をレトロスペクティブに分析し、ADLレベルおよびADL低下と関連するリスク因子を特定した。ADLの評価には、バーゼルインデックス(BI)を用いた。ADL低下のリスク因子は、年齢とBIによる傾向スコアマッチングを用いて、ADL維持群と低下群を比較することにより、性別ごとに分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、日本人AD患者1万6,799例(診断時の平均年齢:83.6歳、女性の割合:61.5%)。・女性患者は、男性患者と比較し、高齢(84.6歳vs.81.9歳、p<0.001)、低BI(46.8 vs.57.6、p<0.001)、低BMI(21.0kg/m2 vs.21.7 kg/m2、p<0.001)であった。・BI60以下の障害は、80歳以上で増加がみられ、女性のほうが有意に高かった。・入浴および身だしなみにおける障害が最も頻繁に認められた。・男性のADL低下は、BMI21.5 kg/m2未満、脳卒中、大腿骨近位部骨折と有意に関連しており、高脂血症との逆相関が認められた。・女性のADL低下は、BMI21.5 kg/m2未満、椎体骨折、大腿骨近位部骨折と有意に関連しており、腰痛との逆相関が認められた。

1550.

アルツハイマー型認知症の予防薬第二の扉(解説:岡村毅氏)

 前回のコラムでは扉がこじ開けられつつあると書いた。すなわち「認知症の初期の人」の症状進展を止める薬剤が出てきたと述べた。そうなると次は、第二の扉だ。アミロイドが溜まっているが、発症していない段階(プレクリニカル期)で止められないかが次の課題だと書いた。 イーライリリーは「第一の扉」で大変苦戦しており、期待されたsolanezumabは初期認知症に対するEXPEDITION試験が失敗した。そしてエーザイに先を越された。しかし次に控えていたdonanemabが、初期認知症に対するTRAILBLAZER-ALZ試験で挽回した。 この論文は、先行するsolanezumabのプレクリニカル期(第二の扉)に対する効果を見ている。アミロイド修飾薬としては世界初ではないかと思う。 残念ながら有意差はなかったようだ。とはいえ、次鋒として第一の扉をこじ開けたdonanemabに期待したいところである。 ここで筆者の立場を改めて開示しておくと、東京都健康長寿医療センター研究所で「認知症共生社会」の研究をしている。こう書くと、予防や薬剤開発とは対立するように思う人もいるが、それは誤解である。ヒトにとって最も重要な資産、つまり「時間」を延ばしてくれる良い薬が出てくることを切望している。創薬に関わっている仲間もたくさんいる。 将来、僕らはおそらく脳内の変化(たとえばアミロイドの増加)が中年期の健診でわかると、予防薬を飲むことになるだろう。そうすると、たとえば65歳で認知症になっていた人が68歳で認知症になる。さらに未来には75歳で認知症になる。死期も延びる。ヒトの時間資産が延びるわけだ。望ましいことである。 一方で、第一に「とはいえ」僕らは、いつかは認知症になるわけだから、認知症になったときにひどい扱いを受けたり、希望を失ったりしないような仕組みを作らねばならない。第二に認知症にならずに生きる期間が延びたけど、つまらない人生だし、冷たい社会だし、長生きが全然楽しくないというのでは意味がない。こうした課題に対して、すべての人が希望と尊厳をもって生きることができる社会を作るのが、東京都健康長寿医療センター研究所でのわれわれの仕事である。 というわけで、予防と共生は、仲は悪くないので誤解なきようにお願いします。

1551.

ナルコレプシータイプ1、経口OX2受容体作動薬の第II相試験データ/NEJM

 ナルコレプシータイプ1の患者において、経口オレキシン(OX)2受容体選択的作動薬のTAK-994はプラセボと比較して8週間にわたり眠気およびカタプレキシー(情動脱力発作)を大きく改善したが、肝毒性との関連が認められた。フランス・モンペリエ大学のYves Dauvilliers氏らが、北米、欧州およびアジアで実施された第II相無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。ナルコレプシーは、日中の過度の眠気を特徴とするまれで慢性的な中枢神経系の過眠障害で、カタプレキシー、入眠時または出眠時幻覚、睡眠麻痺などを伴うことがある。ナルコレプシーはタイプ1とタイプ2に大別され、タイプ1は視床下部外側野に局在するオレキシン産生ニューロンの著しい欠乏によって引き起こされることが明らかになっていた。NEJM誌2023年7月27日号掲載の報告。平均睡眠潜時をプラセボと比較 研究グループは、睡眠障害国際分類第3版に基づきナルコレプシータイプ1と診断された18~65歳の患者を、TAK-994の30mg群、90mg群、180mg群またはプラセボ群に1対1対1対1の割合に無作為に割り付け、それぞれ1日2回経口投与した。 主要エンドポイントは、覚醒維持検査(Maintenance of Wakefulness Test:MWT)による平均睡眠潜時(入眠に要する時間)(範囲:0~40分、正常:20分以上)のベースラインから8週目までの変化量であった。副次エンドポイントはエプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale:ESS)スコア(範囲:0~24、正常:10未満、スコアが高いほど日中の眠気が強いことを示す)の変化量、1週間当たりのカタプレキシー発現頻度、および安全性とした。有効性は認められるも、肝毒性により早期中止 2021年1月16日~2021年9月9日に154例がスクリーニングを受け、うち73例が無作為化され少なくとも1回試験薬を投与された(30mg群17例、90mg群20例、180mg群19例、プラセボ群17例)。 本試験は、後述のように肝毒性が数例に認められたため早期中止となり、主要エンドポイントのデータが入手できたのは41例(56%)であった。 評価可能症例において、MWTによる平均睡眠潜時の8週目までの変化量(最小二乗平均値)は、30mg群23.9分、90mg群27.4分、180mg群32.6分、プラセボ群-2.5分で、プラセボ群との差(最小二乗平均差)はそれぞれ26.4分、29.9分、35.0分であった(すべての比較でp<0.001)。 ESSスコアの8週目までの変化量(最小二乗平均値)は、30mg群-12.2、90mg群-13.5、180mg群-15.1、プラセボ群-2.1で、プラセボ群との差(最小二乗平均差)はそれぞれ-10.1、-11.4、-13.0であった(すべての比較でp<0.001)。8週目のカタプレキシー発現頻度は30mg群0.27、90mg群1.14、180mg群0.88、プラセボ群5.83であった(プラセボに対する発生率比はそれぞれ0.05、0.20、0.15)。 TAK-994投与群56例中44例(79%)に有害事象が認められ、主なものは尿意切迫感または頻尿であった。また、5例でALT値またはAST値の臨床的に重要な上昇を認め、Hy's Law(ALT/ASTの正常値上限の3倍を超える上昇とビリルビンの正常値上限の2倍を超える上昇)の基準を満たす薬物性肝障害が3例認められた。

1552.

急性期統合失調症に対する長時間作用型注射剤抗精神病薬~メタ解析

 長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、統合失調症の再発予防効果が期待できるが、急性期患者においてもベネフィットをもたらす可能性がある。ドイツ・ミュンヘン工科大学のDongfang Wang氏らは、急性期統合失調症患者に対する第2世代抗精神病薬(SGA)のLAIに関するエビデンスのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、急性期統合失調症に対し、SGA-LAIは効果的な治療選択肢であることを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2023年6月23日号の報告。 急性期統合失調症を対象にSGA-LAI(オランザピン、リスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾール)とプラセボまたは経口抗精神病薬を比較したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビュー、およびメタ解析を実施した。統合失調症の精神症状を主要アウトカムとし、有効性および忍容性の23項目のアウトカムを分析した。ランダム効果、ペアワイズメタ解析、サブグループ解析を行った。研究の質の評価には、Cochrane-Risk-of-Bias-Tool ver.1を用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析には、66の研究、1万6,457例を含めた。・内訳は、SGA-LAIとプラセボを比較した研究は11件、SGA経口抗精神病薬とプラセボを比較した研究は54件、SGA-LAI(アリピプラゾール)と経口抗精神病薬を比較した研究が1件であった。・4種類のSGA-LAIは、プラセボと比較し、全体的な症状改善効果が認められた。 【オランザピン】標準化平均差(SMD):-0.66(95%信頼区間[CI]:-0.90~-0.43) 【アリピプラゾール】SMD:-0.64(95%CI:-0.80~-0.48) 【リスペリドン】SMD:-0.62(95%CI:-0.76~-0.48) 【パリペリドン】SMD:-0.42(95%CI:-0.53~-0.31)・SGA-LAIの副作用プロファイルは、経口剤で確認されている既知の副作用と同様であった。・プラセボと比較したサブグループ解析では、一部の副作用における経口剤とLAIとの顕著な違いは認められなかった。・LAIでは、一部の副作用が経口剤よりも低い可能性があるものの、間接的な比較であるため、今後の直接比較によるRCTが求められる。

1553.

認知症予防の扉がこじ開けられつつある(解説:岡村毅氏)

 歴史的に眺めてみよう。20世紀にはアルツハイマー型認知症は臨床的にのみ診断され、死後に解剖されて初めて確定診断されていた。人類には何もできなかった。しかし21世紀に入り、生きているうちから診断するための技術が徐々に開発・実装された。2004年に米国で大規模画像プロジェクトADNIが始まり、脳内で何が起きているのかがわかってきた。死後脳に溜まっているアミロイドが、だんだんと溜まっていくさまが確認され、アミロイドカスケード仮説は、生体でも確認された。そして2011年の新しい診断基準で、PETや髄液検査による診断が可能になった。これにより、プレクリニカル期(症状がないが病理がある)、MCI期のアルツハイマー型認知症、そしてアルツハイマー型認知症という病期が確立した。 ようやく扉、そして鍵穴が見つかったのである。 一方で上記とはまったく別の話であるが、認知症の薬物治療は、ドネペジルが2007年から使用されている。言うまでもなくこれは対症療法薬であり、前頭葉を元気にして認知機能を向上させる薬剤である。決して悪い薬ではないが、「根本治療薬じゃない」という思いからずいぶん気軽に処方される一方で、徐脈(コリンを分解する酵素の邪魔をするのだから当然ですよね)や興奮(前頭葉を賦活するから当たり前ですよね)がしばしばあり、最近はすっかり評価を落としている。 さて、ADNIによりアミロイドの病理を止めることができれば根本的な治療薬が開発できるのではないかと考えることは自然であり、2010年代にはさまざまなアミロイド関連の薬剤が開発されてきた。大変な生みの苦しみがあったことは周知のとおりだが、ようやくエーザイが開発に成功した。ドネペジルを開発したのもエーザイであるから、常に最先端にいるという稀有な会社である。 とはいえエーザイもとてつもない苦労をしてきた。aducanumabは2つの試験(すなわちEMERGE試験とENGAGE試験)ではCDR-SBで有意差がなかったが、2つを合わせると高用量では有意差があった。紆余曲折があったが米国では条件付き承認された。鍵穴がこじ開けられたのだ。その後エーザイのlecanemabがClarity AD試験でCDR-SBで有意差があり、米国で承認された。扉が開いたと言えよう。なおCDRとは臨床的な認知症のステージ分類であり、その和(sum)がSBである。とても臨床的によく使う尺度だ。 イーライリリーは大変苦戦していた。期待されたsolanezumabはEXPEDITION試験でADAS-cogで有意差が得られず失敗に終わった。しかし捲土重来を期したdonanemabがTRAILBLAZER-ALZ試験でiADRSを改善した。それがこの論文である。なおiADRSとは判断のために作られた、いくつかの尺度を合わせたものである。PETの所見も有意であり、確かにアミロイドに当たっている。 個人的にはスタディ名が出現、関与、鮮やか、開拓者、遠征といったキラキラネームばかりでとても気になる。もはや略称ですらない…。 なお、アミロイドを排出することで起こるとされているアミロイド関連画像異常(ARIA)がこれらの薬の重大な有害事象であり、lecanemabでは12.6%に起きているがdonanemabでは24%と報告されている(ただし症状があったのは4分の1程度)。良薬口に苦し、であろう。 認知症予防の扉がこじ開けられつつあるが、今後はどのようなことが課題なのだろうか? まずは何といっても、いずれ出てくるであろうプレクリニカル期のスタディ結果が気になる。これまではなんだかんだ言っても、すでに認知症と診断された人が対象であった。症状はないがアミロイドの病理がある、という状態で投薬した場合どれほどの効果を得られるのだろうか? これが次の扉であることは明らかだ。 次に、今ある治療薬は血管内投与(点滴)である。経口薬はいつ出てくるのかも気になるところだ(すでに開発が進められているようだ)。 またARIAへの対応などから、遺伝子診断やMRIがある大きな施設でなければ安全に治療を受けられないため、医療提供体制が大きな課題である。スムーズにいくだろうか? 最後にきわめて臨床的な(とくに精神科的な)ことを指摘しておこう。第一に、いつ治療を終えるのかという点である。もう効果がないという状態になっても「税金を払っているのになぜ処方してくれないんだ!」という方やご家族は今もたまにおられる。第二に、早期診断を求めてきた人で、大変困っているようだが、アルツハイマー型認知症ですらない人への対応をどうするかである。先に述べたように、疾患修飾薬は限られた施設でしか対応できないため、効率だけ考えれば他の認知症等に割ける資源はもうない。とはいえ「あなたは新薬の対象外だからもう来ないでください」というのは倫理的ではなく、他の機関等との連携体制が必要だろう。

1554.

摂食障害の薬物療法に関するWFSBPガイドライン2023

 摂食障害の薬物療法に関する世界生物学的精神医学会連合(WFSBP)のガイドライン2023では、診断および精神薬理学的進歩、エビデンスレベル、推奨度などの評価に関して、最新の推奨内容に更新されている。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのHubertus Himmerich氏らは、本ガイドラインの更新内容のレビューを行った。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2023年4月24日号の報告。摂食障害の薬物療法に関するガイドラインで神経性過食症にトピラマート推奨 摂食障害のWFSBPタスクフォースは、関連文献をレビューし、エビデンスレベルおよび推奨度のランク付けを行った。 摂食障害の薬物療法に関するガイドラインの更新内容のレビューを行った主な結果は以下のとおり。・神経性やせ症に関しては、利用可能なエビデンスが体重増加に限定されており、精神病理に対するオランザピンの影響もあまり明確ではないことから、オランザピンに対する推奨度は限定的であった。 【神経性やせ症】オランザピン(エビデンスレベル:A、推奨度:2)・神経性過食症に関しては、現在のエビデンスにおいてfluoxetineおよびトピラマートが推奨された。 【神経性過食症】fluoxetine(エビデンスレベル:A、推奨度:1) 【神経性過食症】トピラマート(エビデンスレベル:A、推奨度:1)・過食性障害に関しては、リスデキサンフェタミンおよびトピラマートが推奨された。 【過食性障害】リスデキサンフェタミン(エビデンスレベル:A、推奨度:1) 【過食性障害】トピラマート(エビデンスレベル:A、推奨度:1)・回避・制限性食物摂取症(ARFID)、異食症、反芻症/反芻性障害に対する薬物療法のエビデンスは、非常に限られていた。・オランザピンやトピラマートは、これらのエビデンスがあるにもかかわらず、摂食障害での使用に関していずれの医薬品規制当局からも承認を取得していない。

1555.

第174回 アルツハイマー病治療に役立ちうる変異タウ除去タンパク質TRIM11を同定

アルツハイマー病治療に役立ちうる変異タウ除去タンパク質TRIM11を同定微小管結合タンパク質タウを含有する細胞内の繊維状の塊を特徴とするアルツハイマー病やそのほか20を超える認知症や運動疾患はひっくるめてタウ病と呼ばれます。ゆらゆら浮かぶ独り身の単量体タウが繊維状の塊を形成する仕組みはこれまで謎でした。その謎を解き明かすべく、「TRIM」というタンパク質ひとそろいとタウ病のつながりが調べられました。TRIMは多すぎたり傷んだりして邪魔なタンパク質の除去、タンパク質の折り畳みの逸脱や凝集の予防、すでに凝集してしまったタンパク質の解散にどうやら携わることが知られています。70を超えるヒトのTRIMの解析のかいがあり、病気と関連するタウ変異体の凝集を阻止する3種類のTRIMが突き止められました1)。それら3種類の1つであるTRIM11の変異タウ除去作用はとりわけ強力でした。死後脳組織を調べた結果、アルツハイマー病患者23例のTRIM11はそうでない対照群14例に比べてだいぶ減っていました。ほかの2つのTRIM(TRIM10とTRIM55)はアルツハイマー病患者群と対照群の死後脳で大差ありませんでした。そうであるならTRIM11を増やすことでアルツハイマー病やそのほかのタウ病を治療できるかもしれません。どうやらその可能性はあるようで、タウ病を模したマウスにTRIM1遺伝子を導入して脳でのその発現を増やしたところタウ病変や神経炎症が抑制され、認知機能や身のこなしが改善しました。TRIM11の特徴からしてその発現を経口摂取可能な低分子薬で底上げすることは可能なようです。TRIM11が乏しくなることはタウ病に一枚かんでいるようであり、低分子薬などでのTRIM11発現回復は効果的な治療手段となりうると著者は言っています2)。筋肉増強サプリメントでアルツハイマー病治療TRIM11の発現を増やす経口薬の実現はまだまだ時間がかかりそうですが、筋肉美を追求するボディビルダーが筋肉増強のために常用することで知られる経口サプリメントにアルツハイマー病治療効果があるかもしれません。β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)は運動で筋肉量を増やしたり筋力を高めるのを助けたり運動能力を改善するためにボディビルダーや運動選手(アスリート)が常用するサプリメントとして知られています。HMBはおよそ無害で、たとえ長期間服用しても副作用もありません。Cellの姉妹誌Cell Reportsに今月中頃に発表された細胞やマウスでの研究の結果、HMBは脂肪酸代謝に寄与する核内受容体PPARαを活性化することで脳の海馬の機能を向上するとわかりました3)。また、HMBは脳のアミロイド病変を減らし、アルツハイマー病マウスの記憶や学習を改善しました。PPARαを欠如している海馬神経やマウスではHMBの有益効果は認められず、HMBはPPARαを介した仕組みで神経保護作用をもたらすようです。HMB補給をボディビルダーやアスリートだけのものとするのはもったいない話かもしれません。HMBはアルツハイマー病患者の記憶を守り、病気の進行を食い止める最も安全で手軽な手段となりうると研究者は言っています4)。参考1)Zhang ZY, et al. Science. 2023;381:eadd6696.2)Tau-regulating protein identified as a promising target for developing Alzheimer’s disease treatment / Eurekalert3)Paidi RK, et al. Cell Rep. 2023;42:112717.4)Bodybuilding supplement may help stave off Alzheimer’s / Eurekalert

1556.

双極性障害の5年間の再発率とそれに関連する要因~レトロスペクティブコホート研究

 双極性障害患者の再発率に関するエビデンスは、とくに英国において不足している。英国・バーミンガム大学のDanielle Hett氏らは、英国の健康保健サービスより定期的なケアを受けている双極性障害患者を対象に、5年間の再発率および関連性の評価を行った。その結果、英国で2次的メンタルヘルスサービスを受けている双極性障害患者の約4人に1人は、5年間で再発を経験していた。トラウマ、自殺傾向、精神症状の残存、併存疾患などは、双極性障害患者の再発と関連していることから、再発予防の観点からもこれらの因子を考慮し、対処することが求められると報告した。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月30日号の報告。 匿名化された電子健康記録を用いて、双極性障害患者を抽出した。再発の定義は、2014年6月~2019年6月における入院または急性期メンタルヘルスサービスへの紹介とした。5年間の再発率を算出し、再発経験および再発回数に対する独立した社会人口学的因子および臨床的因子の特定を試みた。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害と診断され2次的メンタルヘルスサービスを受けた患者2,649例中、676例(25.5%)が5年間に1回以上の再発を経験していた。・再発回数は、60.9%が1回のみ、残りは複数回経験していた。・5年間のフォローアップ期間中に死亡した患者は、7.2%であった。・共変量で調整後、再発経験と関連していた因子は、次のとおりであった。 ●自傷行為/自殺傾向歴(OR:2.17、95%信頼区間[CI]:1.15~4.10、p=0.02) ●併存疾患(OR:2.59、95%CI:1.35~4.97、p=0.004) ●精神症状(OR:3.66、95%CI:1.89~7.08、p<0.001)・共変量で調整後、再発回数と関連していた因子は、次のとおりであった。 ●自傷行為/自殺傾向歴(β:0.69、95%CI:0.21~1.17、p=0.005) ●外傷歴(β:0.51、95%CI:0.07~0.95、p=0.03) ●精神症状(β:1.05、95%CI:0.55~1.56、p<0.001) ●併存疾患(β:0.52、95%CI:0.07~1.03、p=0.047) ●民族性(β:-0.44、95%CI:-0.87~-0.003、p=0.048)

1557.

難聴高齢者の補聴器、認知機能低下を予防できる集団は?/Lancet

 認知機能が正常で難聴を有する高齢者において、補聴器を用いた聴覚介入は、認知機能低下のリスクが高い集団では3年後の認知機能の低下を抑制したが、低リスクの集団ではこのような効果はない可能性があることが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のFrank R. Lin氏らが実施した「ACHIEVE(Aging and Cognitive Health Evaluation in Elders)試験」で示唆された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年7月18日号で報告された。観察研究の参加者を含む米国の無作為化試験 ACHIEVE試験は、米国の4つの地域の研究施設で実施された非盲検無作為化対照比較試験であり、2017年11月~2019年10月に参加者のスクリーニングが行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 対象は、未治療の両側性難聴を有し、認知機能障害のない70~84歳の高齢者であり、進行中の縦断研究であるARIC研究(心疾患と脳卒中のリスク因子、および心血管系と認知機能の関連の解明を目的とする)の参加者と、同一の地域で新たに募集したボランティアが含まれた。 被験者は、聴覚介入(聴覚カウセリングと補聴器の提供)を受ける群、または対照として健康教育(健康教育を行う医療従事者との個別の面接で、慢性疾患の予防に関するトピックスを学習)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、6ヵ月ごとにフォローアップが行われた。 主要エンドポイントは、包括的な神経認知機能評価バッテリーを用いた、標準化された因子に関する総合認知機能スコアのベースラインから3年目までの変化量(SD単位)であった。ARICと新規コホートで効果が異なる 977例(ARICコホート238例[24%]、新規コホート739例)を登録し、介入群に490例、対照群に487例を割り付けた。全体の平均年齢は76.8(SD 4.0)歳、523例(54%)が女性、858例(88%)が白人だった。ARICコホートは新規コホートに比べ、年齢が高く、認知機能低下のリスク因子が多く、ベースラインの認知機能スコアが低かった。 ARICコホートと新規コホートを合わせた主解析では、3年間の総合認知機能スコアの変化量(SD単位)は、対照群が-0.202(95%信頼区間[CI]:-0.258~-0.145)であったのに対し、介入群は-0.200(-0.256~-0.144)であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:0.002、95%CI:-0.077~0.081、p=0.96)。 一方、事前に規定された感度分析では、3年後の認知機能の変化量に関して、認知機能低下のリスクが高いARICコホートは低リスクの新規コホートに比べ、聴覚介入の効果が有意に高かった(pinteraction=0.010)。また、全コホートで使用された分析パラメータを変えた別の感度分析では、主要エンドポイントの結果に実質的な変化はなかった。 両群とも、予想外の有害事象や、この試験に起因する重大な有害事象の報告はなかった。 著者は、「認知機能低下のリスクが高い難聴の高齢者に聴覚介入を行うと、3年以内の認知機能低下を抑制できる可能性がある」とまとめ、「これらの知見を統合すると、難聴は、認知症の予防の取り組みにおいて、とくに重要な世界的な公衆衛生の対象となる可能性が示唆される」と指摘している。

1558.

急性期うつ病治療における21種の抗うつ薬の睡眠への影響~ネットワークメタ解析

 抗うつ薬による急性期治療中に見られる睡眠関連副作用は、コンプライアンスの低下や寛解を阻害する要因となりうる。中国・北京大学のShuzhe Zhou氏らは、抗うつ薬の睡眠関連副作用の種類、抗うつ薬の用量と睡眠関連副作用との関連を評価するため、本検討を行った。その結果、ほとんどの抗うつ薬において、プラセボと比較し、不眠症または傾眠のリスクが高かった。また、抗うつ薬の用量と睡眠関連副作用との関係は、さまざまであった。結果を踏まえて著者らは、「抗うつ薬による急性期治療中には、睡眠関連副作用の発現に、より注意を払う必要がある」としている。Sleep誌オンライン版2023年7月9日号の報告。 2023年4月までに公表されたうつ病に対する二重盲検ランダム化比較試験をPubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Scienceより検索した。短期間の抗うつ薬単剤療法中の睡眠関連副作用を報告した研究を解析に含めた。ネットワークメタ解析により睡眠関連副作用のオッズ比(OR)を算出した。用量反応性を評価するため、ベイジアンアプローチを用いた。研究間の不均一性の評価には、τ2およびI2統計を用いた。感度分析は、バイアスリスクの高い研究を除いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、6万4,696例(216試験)であった。・13種類の抗うつ薬において、プラセボと比較し、傾眠の高いORが確認された。最も高いORが認められた薬剤は、フルボキサミンであった(OR:6.32、95%信頼区間[CI]:3.56~11.21)。・11種類の薬剤は、不眠症リスクが高く、最も高かった薬剤は、reboxetineであった(OR:3.47、95%CI:2.77~4.36)。・傾眠または不眠症との用量反応曲線は、直線形、逆U字形、その他が含まれていた。・研究間に有意な不均一性は認められなかった。・ネットワークメタ解析結果のエビデンスの質は、非常に低い~中程度(GRADE)であった。

1559.

solanezumab、前臨床期アルツハイマー病の進行を遅延せず/NEJM

 前臨床期のアルツハイマー病患者において、solanezumabはプラセボと比較し、約4.5年間で認知機能低下を遅延しなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のReisa A. Sperling氏らが、米国、日本、カナダおよびオーストラリアの67施設で実施した無作為化比較試験「Anti-Amyloid Treatment in Asymptomatic Alzheimer's Disease:A4試験」の結果を報告した。アルツハイマー病の異なる病期において、さまざまな形態のアミロイドを標的とするモノクローナル抗体の臨床試験が行われているが、結果はまちまちである。solanezumabは、可溶性のアミロイドβ単量体を標的としていた。NEJM誌オンライン版2023年7月17日号掲載の報告。solanezumab vs.プラセボで240週後の複合的認知機能尺度(PACC)スコアを比較 研究グループは、65~85歳で、臨床的認知症尺度(CDR)の全般的スコアが0(スコア範囲:0[認知機能障害なし]~3[重度認知症])、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが25以上(スコア範囲:0~30、スコアが低いほど認知機能の低下を示す)、ウエクスラー記憶検査の論理的記憶の遅延再生(LMDR)スコアが6~18(スコア範囲:0~25、スコアが低いほど思い出される詳細が少ない)、および18F-florbetapir PETで脳内にアミロイドを認める前臨床期アルツハイマー病を有する人を登録し、solanezumab(最大1,600mgを4週ごとに静脈内投与)群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、複合的認知機能尺度であるPreclinical Alzheimer Cognitive Composite(PACC)スコア(4種の認知機能検査のzスコアの合計、スコアが高いほど認知機能が良好)の240週後の変化であった。PACCスコアの変化量に有意差なし 適格基準を満たした1,169例が、solanezumab群(578例)およびプラセボ群(591例)に無作為化された。平均年齢は72歳、女性が約60%で、75%に認知症の家族歴があった。 240週時におけるPACCスコアのベースラインからの補正後平均変化量は、solanezumab群-1.43、プラセボ群-1.13、補正後平均群間差は-0.30(95%信頼区間[CI]:-0.82~0.22、p=0.26)であった。 脳アミロイドPET画像では、アミロイドはsolanezumab群で平均11.6センチロイド、プラセボ群で19.3センチロイド増加した。 浮腫を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA)は各群とも1%未満であった。微小出血またはヘモジデリン沈着症を伴うARIAは、solanezumab群で29.2%、プラセボ群で32.8%に発現した。

1560.

NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(後編)【言葉は噂をするために生まれたの!?(統語機能)】

今回のキーワード意味記憶入れ子構造(ワーキングメモリー)前後関係エピソード記憶因果関係階層関係論理性概念化皆さんは、人類が言葉を単語ではなく複雑な文章にして話すように進化したのは噂をするためだったと聞いたら、どう思いますか? にわかには信じられないですよね。前回(中編)は、噂好きの心理の起源に迫りました。その起源とは、人類が原始の時代に集団の適応度を高めるために、フリーライダー(反社会性パーソナリティ)をあぶり出すことでした。今回は、この起源と実は関係している文法(統語機能)の起源に迫ってみましょう。どうやって文法は生まれたの?実際に、人類が言葉を単語ではなく複雑な文章にして話すように進化したのは噂をするためであったという仮説があります5)。どういうことでしょうか? ここから、文法(統語機能)の起源を3つの段階に分けて迫ってみましょう。なお、この文法がわかること(統語)に、発音ができること(発語)と言葉の意味がわかること(象徴)を合わせた3つの機能によって、私たちは言葉を流暢に話すことができます。発語と象徴の詳細については、関連記事8、関連記事9をご覧ください。(1)単文をつくる約700万年前に、チンパンジーと共通の祖先から人類は分岐したわけですが、当時から、鳴き声やしぐさによるサイン言語を使うことによって、簡単な文法でコミュニケーションをしていたことが考えられます。なぜなら、チンパンジーも鳴き声やしぐさによるサイン言語を使い、とくに鳴き声については2つまたは3つを組み合わせて発することで、たとえば服従的な挨拶をするなどのコミュニケーションをすることがわかっているからです6)。1つ目の段階は、単文をつくることです。単文とは、「主語+述語」のように、述語が1つだけの文です。そのためには、サイン言語による簡単な単語の意味を覚えている必要があります。これは、意味記憶の起源です。発達心理学的には、2歳から「パン ちょうだい」「わんわん いた」などの二語文を話します。3歳から「ママ ごはん つくる」「パパ おもちゃ とって」などの三語文になります。これらは、すべて単文です。(2)複文をつくる約300万年前に人類は部族をつくったわけですが、フリーライダーのあぶり出しのために、当時から徐々に「 『タロウがバナナを盗んだ』とパパが言ってた」「『ジロウがハナコを寝取った』とヨシコが言ってた」「『湖にライオンが来てる』とママが言ってた」などの噂をサイン言語によって伝えていたことが考えられます。主語の名前程度なら、発声の言い分けや聞き分けができていた可能性も考えられます。2つ目の段階は、複文をつくることです。複文とは、文のなかに文が入り込んでいる重複した文です。日本語で「~と言う」「~と聞いた」という伝聞表現であり、いわゆる英語の「that節」に当たります。専門的には、入れ子構造(階層構造、回帰的構造)などとも呼ばれます7,8)。これは、聴覚性のワーキングメモリーの起源です。なお、この詳細については、関連記事10の後半をご覧ください。発達心理学的には、相手の視点に立てるようになる3、4歳から「きょうあめって ママいってた」「パパがつくったごはん おいしくない」などの複文を話します。なお、相手の視点に立つことができないチンパンジーは複文をつくることができません9)。つまり、チンパンジーの知能は、人間の4歳を超えられないということです。なお、厳密には、相手の視点に立つ心理(心の理論)が始まる時期は、男児が4歳であるのに対して、女児は3歳で1歳早いです。この訳は、原始の時代の当時、男性たちが一緒に狩りに出かけて動き回っている間に、女性たちは1ヵ所にとどまって一緒に子育てをしていたからでしょう。この共同育児をスムーズにするためには、類人猿の毛づくろい(グルーミング)のような心地良さ(社会的報酬)が必要です5)。体毛を失っていった人類(とくに女性)が代わりにするようになったことが、挨拶やかけ声でお互いにリズムを取ったり、一緒に子守唄を歌ったりすることだったでしょう。さらに、「誰と誰がけんかした」「誰と誰が浮気した」などの噂話だったでしょう。そのために、男性よりも女性の方が心の理論がより早く発達するようになったと考えられます。だからこそ、現代でも、男性よりも女性の方が他愛のないおしゃべりを好み、噂好きであるという訳です。(3)文脈をつくる約20万年前に現生人類は、言葉の発音(発語)が明瞭にできるようになり、ようやく発音のバリエーションによって、あらゆることに名前をつけて世界を細かく分けることができるようになりました。さらに、この名付けとすでに進化していた入れ子構造(ワーキングメモリー)によって、いくつかのものごとの前後関係を細かくつなげて説明できるようになりました。3つ目の段階は、文脈をつくることです。文脈とは、接続詞による文と文の流れ(脈)であり、「誰が・いつ・どこで・誰と・何を・どのように」のように出来事(エピソード)がまとまっていることです。これは、エピソード記憶の起源です。発達心理学的には、4歳以降に「きょう〇〇したの。それでね○○もしたの、でもね○○だったの」などのように徐々に自分のお話(エピソードトーク)をするようになっていきます。このように、だんだん時系列でものごとを順番に考えることです。これは、時間感覚の起源です。現代に生きる私たちは、これを当たり前のようにしています。しかし、約20万年前よりも以前は、その瞬間を反射的に生きているだけで、ほとんど時間感覚はなかったでしょう。実際に、幼児が同じ話の本の読み聞かせを何度もねだるのは、親として辟易するわけですが、その訳は、幼児は大人のようにエピソード記憶の機能が完全ではないため、話の前後のつながりを覚えきれないからです。つまり、何度もねだるのは、エピソード記憶の機能を鍛えていると言えます。さらに、名付け+入れ子構造(ワーキングメモリー)によって、2つのものごとの因果関係や階層関係も説明できるようになりました。たとえば、「きょう〇〇したの、だってね○○だったから」と理由を認識することです。これは、論理性の起源です。また、「おててとあんよをあわせてからだ」「○○ちゃん(自分)とママとパパといっしょでかぞく」のように、分類し体系化することです。こうして、世界の仕組みをより理解できるようになりました。これは、概念化の起源です。なお、幼児が「なんで○○なの?」と質問攻めをする「なぜなぜ期」にも辟易しますが、これも因果関係や階層関係を知ることで概念化の機能(統語機能)を鍛えていると考えれば納得がいきます。ちなみに、1、2歳頃から「これなあに?」と質問攻めをする「なになに期」があるのは、冒頭で触れた言葉の3要素の1つである象徴機能を鍛えていると言えます。以上より、単文をつくる(意味記憶)、複文をつくる(ワーキングメモリー)、そして文脈をつくる(エピソード記憶)という心(脳)の進化の歴史を踏まえると、人類は噂をするために文法(統語機能)を進化させたという仮説に納得できるのではないでしょうか。5)ことばの起源 猿の毛づくろい、人のゴシップP8、P113:ロビン・ダンバー、青土社、20166)チンパンジーが390もの構文を使って会話をしていることが鳴き声5000回の録音から示唆される:GIGAZINE、20227)ヒトの心はどう進化したのかP220:鈴木光太郎、ちくま新書、20138)ひとのことばの起源と進化P52:池内正幸、開拓社、20109)こころと言葉P48:長谷川寿一、東京大学出版会、2008■関連記事NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 1伝記「ヘレン・ケラー」(前編)【何が奇跡なの? だから子どもは言葉を覚えていく!(象徴機能)】Part 1ペコロスの母に会いに行く【認知症】

検索結果 合計:5821件 表示位置:1541 - 1560