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初発うつ病患者の抑うつ/不安症状と血圧との関係

 抑うつ症状および不安症状は、うつ病患者によくみられる症状である。しかし、未治療うつ病患者におけるこれらの症状と血圧との関連は、これまで十分に解明されていなかった。中国・南京医科大学第二附属医院のQi Qian氏らは、初回発症・未治療のうつ病患者における抑うつ症状および不安症状と血圧との間の潜在的な関連を検討するため、本研究を実施した。Scientific Reports誌2026年2月10日号の報告。 対象は、初回発症・未治療のうつ病患者1,718例。抑うつ症状はハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)、不安症状はハミルトン不安尺度(HAMA)を用いて評価した。収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)をアウトカム変数とした。多重線形回帰分析を用いて、人口統計学的特性および臨床変数を調整したうえで、HAMD-17スコアおよびHAMAスコアと血圧との関係を評価した。 主な内容は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は34.87±12.43歳、女性の割合は65.77%であった。・HAMD-17平均スコアは30.30±2.94、HAMA平均スコアは20.80±3.47であった。・平均SBPは119.48±10.91mmHg、平均DBPは75.95±6.74mmHgであった。・両変数を同時に含めた完全調整モデルでは、HAMD-17スコアはSBP(β=0.80、95%信頼区間[CI]:0.63~0.98、p<0.001)およびDBP(β=0.36、95%CI:0.24~0.49、p<0.001)との有意な相関を示した。・HAMAスコアはSBPとの有意な関連は認められなかったが(β=0.13、95%CI:-0.02~0.28、p=0.079)、DBPとの有意な関連は認められた(β=0.15、95%CI:0.04~0.26、p=0.006)。 著者らは「初回発症・未治療のうつ病患者において、うつ症状はSBPおよびDBPと独立して相関していたが、不安症状はDBPとのみ有意な関連を示した。これらの研究結果は、うつ病患者において、抑うつ症状および不安症状は心血管系パラメーターとそれぞれ異なる関連性を有する可能性を示唆している」としている。

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日本における多剤併用の診療報酬改定が睡眠薬の長期処方に及ぼした影響

 神戸大学の木村 丈司氏らは、日本における多剤併用に関する診療報酬改定が高齢患者の睡眠薬の長期処方に及ぼす影響を評価するため、本研究を実施した。Geriatrics & Gerontology International誌2026年2月号の報告。 対象は、50歳以上の外来および入院患者。JMDC医療機関データベースを用いて分析を行った。対象とした睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬(BZD)、Z薬、ラメルテオンおよびオレキシン受容体拮抗薬(ラメルテオン/ORA)。2015~22年の各月における、外来および入院患者1万人当たりの睡眠薬新規処方率(4週間以上)を算出した。診療報酬改定が行われた2020年4月を介入点として、中断時系列分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・2015~22年までのデータベースにおける外来および入院の平均患者数は、1ヵ月当たり82万8,510例であった。・2015年1月から2022年12月にかけて、BZDとZ薬の処方率は、それぞれ210から125、111から78.6へと徐々に減少していた。しかし、ラメルテオン/ORAの処方率は、7.41から54.4へと増加していた。・介入時点では、BZDの処方率は1.08倍(95%信頼区間[CI]:1.02~1.13)、Z薬の処方率は1.12倍(95%CI:1.08~1.16)の有意な増加を認めた。しかし、介入後には傾斜の変化に有意な減少が認められた(BZD:0.990倍[95%CI:0.988~0.992]、Z薬:0.994倍[95%CI:0.993~0.996])。・ラメルテオン/ORAは、増加傾向にあった傾斜の変化が、介入後に有意な減弱を認めた(0.991倍[95%CI:0.986~0.995])。 著者らは「多剤併用に関連する診療報酬改定は、BZD、Z薬、およびラメルテオン/ORAの長期的な処方傾向を有意に減少する方向へと転換させていた」としている。

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慢性片頭痛に対するオナボツリヌス毒素A+抗CGRP抗体~メタ解析

 オナボツリヌス毒素Aと抗CGRP抗体による二重標的療法は、単剤療法で効果が不十分な慢性片頭痛患者に対する潜在的な治療選択肢として浮上している。個々の観察研究報告からのエビデンスにおいて有益性が示唆されているが、利用可能な研究の規模、一貫性、方法論的な質については依然として不明である。イラン・テヘラン医科大学のAbbas Sarvari Soltani氏らは、慢性片頭痛におけるオナボツリヌス毒素Aと抗CGRP抗体の併用療法の有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。European Journal of Medical Research誌オンライン版2026年2月20日号の報告。 オナボツリヌス毒素Aと抗CGRP抗体の併用療法を評価した観察研究をシステマティックに検索した。選択基準を満たした研究10件のうち6件の研究から抽出可能な定量データが得られた。アウトカムには、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、50%以上および75%以上の治療反応率、頭痛関連機能障害(MIDAS、HIT-6)、急性期の薬物使用を含めた。ランダム効果モデルを適用し、異質性、サブグループパターン、出版バイアスを評価した。適格基準を満たした10件の研究のうち、併用療法に関する抽出可能な定量データを提供し、プール解析に含められたのは6件のみであった。 主な結果は以下のとおり。・併用療法によりMHDは、プール平均で7.9日短縮した(95%信頼区間[CI]:-10.2~-5.7)。・プール平均における50%以上の治療反応率は0.51(95%CI:0.37~0.66)、75%以上の治療反応率は0.19(95%CI:0.10~0.34)であった。・障害指標の改善が認められ、MIDASの減少は47.4ポイント(95%CI:-65.7~-29.1)、HIT-6の減少は8.2ポイント(95%CI:-10.9~-5.5)であった。・急性期の薬剤使用は、1ヵ月当たり4.3日減少した(95%CI:-6.1~-2.5)。・アウトカム間の異質性は中等度から高度であった。・年齢と性別によるサブグループ解析では、おおむね一貫した方向性が示された。・Funnel plotの検査とEgger検定では、顕著な出版バイアスは認められなかった。 著者らは「オナボツリヌス毒素Aと抗CGRP抗体の併用療法は、観察コホート全体において、頭痛頻度、障害、急性期の薬剤使用において臨床的に意義のある減少を示した。異質性が高く、対照比較デザインが存在せず、サブグループデータが限られていることを踏まえ、解釈には慎重さが求められる。複数の研究で分散指標が補完されているため、統計的精度が過大評価されている可能性があり、効果量は決定的なものではなく概算値として解釈すべきである。患者選択、利益の持続性、費用対効果、アクセスの公平性を明らかにするためには、より大規模なプロスペクティブ研究が必要である」としている。

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「知らんがな」カード【Dr. 中島の 新・徒然草】(626)

六百二十六の段 「知らんがな」カード今年は桜の開花が早かったようです。先日、4月5日の日曜日にちょっとした花見に出かけました。前日の雨で多少は散っていたものの、何とか踏みとどまった花びらでほぼ満開。例によって、朝からビニールシートで場所取りをしている方々もおられました。さて、今回は外来診療の話です。私の場合、1日に20〜25人ほど。診察後にまだ余力が残る日もあれば、ぐったりと消耗する日もあります。では、その差はどこにあるのか。振り返ってみると、どうやら患者さんからの愚痴の量が関係しているようなのです。患者さんが訴える症状に対して、医師が答えるべきことは大きく2つ。「なぜ起こっているのか」と「どうやって解決するのか」です。前者が診断、後者が治療、と言い換えてもよいでしょう。ところが、外傷後の不調となると話は単純です。原因は明白、車にはねられたから。治療も慢性期に入れば、薬物療法とリハビリが中心になります。ということは、外来での会話はシンプルなもの。「調子はいかがですか」「薬を調整しましょう」「リハビリ、頑張りましょうね」この3つで十分に完結するはずなのです。しかし現実はそう簡単ではありません。どうしても「なぜ」に執着される患者さんが何人かおられます。「こっちは青信号だったのに」「保険会社が障害を認めない」「裁判所がこの辛さをわかってくれない」「相手の弁護士が嘘をつく」気持ちはわかります。わかるのですが、それは医療の守備範囲外です。少なくとも外来の限られた時間で扱う話ではありません。本来、焦点を当てるべきは「これからどうするか」です。たとえばリハビリであれば、ゴールを設定し、現状を評価し、介入を続けて再評価する。この一連の流れは、どこか大学受験にも似ています。模擬試験を受け、勉強を続け、あらためて模擬試験を受けて本番に備える。過去にこだわる患者さんは、いくらこちらが未来志向の話をしても、いつのまにか元に戻ってしまいます。話題はループし、時間だけが浪費される。さすがにこれでは生産性がありません。そこで思い付いたのが、「知らんがな」カードです。愚痴モードに入ったなと思った瞬間に黙って提示する。 患者 「向こうが信号無視しよったんですよ」 中島 「……」(カード提示) 患者 「うっ」 患者 「裁判所が全然わかってくれなくて」 中島 「……」(カード提示) 患者 「ぐぬぬ」 説明する代わりに、カード1枚で要点を示す。最短最速のコミュニケーションです。その上で、強引に未来の話に持っていく。外来診療での医師の役割は、愚痴の聞き役ではありません。もっとも、このカードが実際に機能するかどうかは未知数です。本当に患者さんが過去への執着から抜け出せるでしょうか。逆に火に油を注ぐ可能性もあります。ひょっとすると、診察室が修羅場になるかも。そう考えると、ちょっと怖いですね。それでも、試してみたい気持ちもあります。うまくいくのか、相手を怒らせてしまうのか。あるいは予想外の展開になるかもしれません。医学そのものと同じで、対人関係も仮説と検証の繰り返しです。ということで、次にこのような場面に遭遇したら……ご本人に軽く説明したうえで「知らんがな」カードを試してみたいと思います。とはいえ、本当にできるかどうか、ちょっと心配ですね。最後に1句 桜花(さくらばな) 過去を散らせる 潔さ

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日本の精神科診療におけるデキストロメトルファン乱用者の特徴

 近年、日本の精神科臨床現場において、市販薬(OTC)の乱用が増加している。千葉病院の谷渕 由布子氏らは、日本におけるコデイン(COD)乱用者とデキストロメトルファン(DXM)乱用者を比較することにより、DXM乱用者の臨床的特徴を明らかにし、この集団に必要な支援策を検討するため、本研究を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌2026年3月号の報告。 本研究では、2024年の精神科入院施設における薬物関連障害に関する全国調査のデータを使用した。データベースから、主にCODを含むOTC薬(COD群)とDXMを含むOTC薬(DXM群)を乱用している患者を抽出した。人口統計学的特性、ICD-10のサブカテゴリー、併存する精神疾患を調査し、Fisherの正確確率検定を用いて両群間の比較を行った。DXM乱用に関連する因子は、多変量ロジスティック回帰を用いてさらに分析した。 主な結果は以下のとおり。・COD群160例、DXM群72例を分析に含めた。・COD群と比較し、DXM群では女性と若年層の割合が高く、過去1年以内の薬物使用率、自傷行為または自殺企図の既往歴も高かった。・また、DXM群では、ICD-10に基づく「急性中毒」および「気分障害(F3)」の併存率が有意に高かった。・多変量ロジスティック回帰分析では、若年(調整オッズ比[aOR]:2.558、95%信頼区間[CI]:1.218〜5.371)、急性中毒(aOR:2.73、95%CI:1.254〜5.942)、併存する気分障害(aOR:2.201、95%CI:1.146〜4.227)がDXM乱用と有意に関連していた。 著者らは「これらの知見は、DXM乱用者を支援するうえで、急性期管理、併存する精神疾患の評価、そして自殺リスク評価を含む介入の重要性を浮き彫りにしている。さらに、メンタルヘルスに焦点を当てた自殺予防の視点を取り入れた予防教育および市販薬の販売に関する規制措置が緊急に必要である」と結論付けている。

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第310回 診療所の開業規制いよいよスタート、厳密な意味での「規制」となっておらず実効性に疑問

私立医大の入試女子一律減点をモチーフにしたドラマこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。年度変わりの日曜日(4月5日)からNHK BSで興味深い連続ドラマが始まりました。夜10時から放送の「対決」です。私立医大の入試女子一律減点疑惑を、検察担当の女性記者が追うというストーリー。2018年の東京医大一般入試で発覚した文科省の前局長の子息への不正な点数加点事件と、それをきっかけに次々と明らかになった複数大学での女子や複数年浪人生に対する不利な選抜がモチーフになっています。女子差別や医師偏在、パワハラ・セクハラなど、多くの要素を詰め込み過ぎた感はありますが、ヒーローばかりが登場する民放の医療ドラマとは一線を画する作品になりそうです。有名俳優演じる医大の理事たちのダメさぶりも見どころです。原作は月村 了衛、新聞記者を松本 若菜、事務方上がりの医大理事を鈴木 保奈美が演じています。第1回の再放送は4月11日(土)午後6時15分からあるようなので、興味のある方はぜひ。さて今回は、4月から外来診療を担う医師が多い東京都心や大阪市など、9つの二次医療圏を対象候補とする「開業規制」がスタートしたので、それについて書いてみたいと思います。先のNHK BSのドラマも、事件の根本的な背景に「医師偏在」があります。「開業規制」は都市部と地方の医師の偏在是正につなげるというのが制度の趣旨ですが、本当に偏在是正に効果があるのでしょうか?武見元厚労相の発言をきっかけにまとめられた「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」の中の一策2026年4月1日から、改正医療法と改正健康保険法を組み合わせた制度として、外来医師過多区域での診療所の開業規制がスタートしました。元々は、武見 敬三・元厚生労働大臣が2024年4月のNHKの番組で「医師の偏在を規制によってきちんと管理していくことをわが国もやらなければならない段階に入ってきた」と突如発言したことをきっかけに検討が始まり、厚生労働省が突貫工事で改革案をまとめ上げ、2024年12月に公表した「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」の中の一策です。「パッケージ」には「外来医師過多区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請等」と記されていました。公表当時、本連載「第245回 『医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ』まとまる、注目された『規制的手法』は大甘、『経済的インセンティブ』も実効性に疑問」ではこの制度について、「武見前厚労相が強調していたいわゆる『規制的手法』です。しかし、既存の医療機関はそのままに、新規だけを対象としている点に対策の限界を感じます。また、訪問診療など足りない医療機能の提供を求めると言っても、そうした機能を“外部委託”するなどして、いくらでも抜け道はできそうです」と書きました。武見元厚労相の発言からちょうど丸2年、実効性のある制度に仕上がったのでしょうか。都道府県知事の要請や勧告に従わない場合、施設名の公表や保険医療機関の指定期間短縮も「開業規制」の根拠条文は、医療法第30条の18の6で、都道府県知事が「外来医師過多区域」を指定し、その区域で無床診療所を開設する者に対して事前届出(6ヵ月前までに都道府県へ)や協議・要請を行えるとしています。届出時に、地域でとくに必要とされている外来医療を提供する意向や、提供しない場合はその理由などを示さなければなりません。提供しない意向の場合、都道府県知事は協議の場への参加や説明を求めることになります。さらに、都道府県知事の要請や勧告に従わない診療所は施設名を公表できるとしています。施設名の公表は、全国の医療機関等情報を掲載する「医療情報ネット(ナビイ)」でも行われる予定です。あわせて健康保険法第68条の2により、都道府県知事の要請や勧告に従わない診療所について、保険医療機関の指定期間を短縮できるとしています。指定期間は通常6年のところ、要請・勧告を受けた場合や保険医療機関の再指定時に勧告に従わない状態が続いた場合は3年、再々指定時以降も勧告に従わない状態が続いた場合は2年に短縮できるとしています。厚労省は9つの二次医療圏を候補として提示「外来医師過多区域」の基準は省令で、外来医師偏在指標が「全国平均値+標準偏差の1.5倍」以上、かつ可住地面積あたり診療所数が全国の上位10%以上に該当する場合とされており、厚労省からはすでに以下の9つの二次医療圏が候補として示されています。1)東京都の区中央部(該当区市町村:千代田区、中央区、港区、文京区、台東区)2)東京都の区西部(新宿区、中野区、杉並区)3)東京都の区西南部(目黒区、世田谷区、渋谷区)4)京都府の京都・乙訓(京都市、向日市、長岡京市、大山崎町)5)大阪府の大阪市(大阪市)6)福岡県の福岡・糸島(福岡市、糸島市)7)東京都の区南部(品川区、大田区)8)東京都の区西北部(豊島区、北区、板橋区、練馬区)9)兵庫県の神戸(神戸市)兵庫県は区域指定に向け神戸市や医師会と協議を始めるこれらはあくまで厚労省が示した「候補」です。都道府県が最終的に区域指定をするかどうか、対象区域を二次医療圏内でさらに狭めるかどうかは、各都道府県の判断となります。また、各都道府県はあらかじめ各地域において「とくに必要とされる外来医療(地域外来医療)」について、協議の場で定め公表しなければなりません。候補となった地区では、今後それらの検討が進められることになります。3月28日付の神戸新聞は、「厚生労働省は神戸市を医師が過剰に多い『外来医師過多区域(医師過多区域)』の候補に選んだ。兵庫県は区域指定に向け、神戸市や医師会と協議を始めた。指定区域で開業を希望する医師は、救急や在宅医療など不足している機能を提供することが要請される」と、兵庫県がすでに協議に入ったことを報じています。各地域において「とくに必要とされる外来医療」は、専門診療科というよりは、兵庫県のように「一次救急」や「在宅医療」などが入ってくることになりそうです。「外来医師過多区域」での規制、「重点医師偏在対策支援区域」での経済的インセンティブともに「制度のための制度」にしか見えない制度の詳細を読んでわかることは、今回の「開業規制」は厳密な意味での「規制」にはなっていない点です。「外来医師過多区域」であっても、診療所の開業を全面禁止はしていないからです。外来医師が集中している地域で、開業前に地域医療への対応を求め、従わない場合に保険診療上の不利益を課すだけです。全面禁止にすると、日本国憲法第22条1項が規定する「職業選択の自由」に抵触するためかもしれません。となると、「外来医師過多区域」で開業する際、各地域においてとくに必要とされる外来医療を示された場合、とりあえず「やります」と答え、それなりの体制を整えた風を装うだけで、問題なく開業できることになります。また、都道府県知事の要請や勧告を受けたとしても、「対応する」風を装うことも難しくはなさそうです。「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」には医師不足地域向けの対策も盛り込まれています。都道府県が指定する「重点医師偏在対策支援区域」で診療所を開業しようとする場合に、施設整備費、設備整備費、開業後の定着支援費などを補助する仕組みです。しかし、そもそもこれからも患者が激減していくであろう地域で、敢えて開業する医師が現れるでしょうか。こちらの施策の実効性にも疑問符がつきます。「外来医師過多区域」での規制、「重点医師偏在対策支援区域」での経済的インセンティブ、ともに設計が甘く、制度のための制度にしか見えないと感じるのは私だけでしょうか。

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ベンゾジアゼピン使用は自殺リスクに影響しているのか

 ベンゾジアゼピン(BZD)は、精神疾患の治療に広く用いられているが、BZD使用開始が自殺行動に及ぼす影響については、これまでの研究で明らかにされていない。米国・インディアナ大学のMarianne G. Chirica氏らは、BZD使用開始前後の自殺行動の時間的ダイナミクスを調査し、患者のサブグループにおけるリスクパターンを検証した。Psychiatry Research誌2026年3月号の報告。 2016~19年の匿名化されたデータベースであるOptum Clinformatics Data Martから得られたBZD使用歴のある患者69万1,517例(年齢範囲:13~64歳)を対象に調査を行った。開始直前(60日前)および薬物治療期間中(開始後1~30日および31~365日)の自殺行動リスクを、開始前3~12ヵ月のベースライン期間と比較した。これにより、すべての時間的に安定した交絡因子が考慮された。自殺行動は、救急外来受診時および入院中の自殺企図および意図的な自傷行為とし、ICD-10-CMで定義した。他の薬剤や心理社会的治療など、測定された時間変動性共変量について統計的に調整した。さらに、異なる患者集団におけるリスクを評価するため、精神医学的診断別に層別化した解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時と比較し、BZD使用開始前の期間における自殺行動リスクは上昇していた(オッズ比[OR]:3.54、95%信頼区間[CI]:3.23~3.89)。・自殺行動リスクは、BZD使用開始後30日間でさらに増加し(OR:5.05、95%CI:4.41~5.77)、開始後31~365日の間でも高水準を維持した(OR:3.62、95%CI:3.08~4.26)。・診断別に層別化しても、同様の時間的パターンが認められた。 著者らは「自殺行動リスク上昇は、BZD使用開始前に発生していたことが明らかになった。その後、リスクは短期治療中に最も高かったが、長期治療中でも高水準を維持していた。BZD使用開始の薬理学的効果や開始理由に関連する要因など、その根底にあるメカニズムを理解するためには、さらなる研究が必要である」と結論付けている。

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早期アルツハイマー病、経口セマグルチドは進行を抑制せず/Lancet

 2型糖尿病患者などでは、GLP-1受容体作動薬の投与により認知症およびアルツハイマー病のリスクが低下することを示唆する実臨床研究のエビデンスがある。米国・ネバダ大学のJeffrey L. Cummings氏らは、「evoke試験」および「evoke+試験」において、経口セマグルチドは早期の症候性アルツハイマー病の臨床的な進行を遅らせる効果を有さず、安全性や忍容性は他の適応症を対象とした試験の結果と一致することを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年3月19日号で報告された。2つの無作為化プラセボ対照試験 evoke試験およびevoke+試験は、40ヵ国566施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年5月~2024年9月に参加者を登録した(Novo Nordiskの助成を受けた)。 年齢55~85歳、アミロイド病変が確認されたアルツハイマー病で、軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病に起因する軽度認知症を有する患者を対象とした。evoke+試験では、顕著な小血管病変を有する患者も対象に含めた。 被験者を、セマグルチド14mg(可変用量)またはプラセボを1日1回、最長で156週間経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、無作為化された全患者における臨床的認知症評価尺度-Sum of Box(CDR-SB)スコアのベースラインから104週までの変化量とした。CDR-SB、ADCS-ADL-MCIスコアの変化量に差はない 3,808例を登録した。このうち1,855例(セマグルチド群928例、プラセボ群927例)がevoke試験、1,953例(976例、977例)がevoke+試験の参加者だった。ベースラインの全体の平均年齢は72.2(SD 7.1)歳、女性が1,998例(52.5%)で、平均CDR-SBスコアは3.7(SD 1.6)点だった。2,746例(72.1%)がMCI、1,034例(27.2%)が軽度のアルツハイマー型認知症であった。evoke+試験では、54例(2.8%)が小血管病変を有していた。 evoke試験およびevoke+試験における、ベースラインから104週までのCDR-SBスコアの平均変化量は、セマグルチド群で2.3(SE 0.1)点および2.2(0.1)点、プラセボ群で2.3(0.1)点および2.1(0.1)点で、推定群間差は、evoke試験が-0.08(95%信頼区間[CI]:-0.35~0.20、p=0.57)、evoke+試験が0.10(95%CI:-0.17~0.38、p=0.46)であり、両試験とも両群間に有意な差を認めなかった。 また、同期間におけるAlzheimer’s disease Cooperative Study Activities of Daily Living-MCI(ADCS-ADL-MCI)スコアの平均変化量の両群間の差は、evoke試験が-0.25(95%CI:-1.22~0.72)、evoke+試験は-0.03(95%CI:-0.97~0.91)と、いずれも有意差を示さなかった。消化器症状と体重減少が多い 試験治療下での有害事象は、両試験を合わせたセマグルチド群では1,896例中1,729例(91.2%)に、プラセボ群では1,902例中1,613例(84.8%)に発現した。セマグルチド群で頻度の高い有害事象は、体重減少(36.5%)、食欲減退(33.1%)、悪心(24.3%)であった。 試験薬の恒久的な投与中止に至った有害事象の割合は、セマグルチド群で16.9%とプラセボ群の8.4%に比べて高く、重篤な有害事象はそれぞれ20.4%および23.8%にみられた。担当医判定による治療関連死は5例に発生し、セマグルチド群で1例(出血性脳卒中)、プラセボ群で4例であった。 著者は、これらの結果と実臨床のエビデンスの乖離の説明として、(1)全原因による認知症ではなく、生物学的に定義されたアルツハイマー病患者を対象としたこと、(2)治療開始時に無症状の2型糖尿病患者集団におけるアルツハイマー病の発症率の低下ではなく、症状のあるアルツハイマー病患者集団における進行遅延を調査したことなどを挙げ、「アルツハイマー病の病変がより軽度で、無症状の患者に、より早期の段階で同様の介入を行うことで、治療効果が期待できる可能性がある」と指摘している。

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意欲低下と抑うつの併存、高齢者の多面的フレイルと関連か

 高齢者のフレイルは身体機能だけでなく、認知、社会、口腔など多面的な側面を持つことが知られている。今回、地域在住高齢者を対象とした研究で、意欲低下(アパシー)と抑うつ症状はいずれも身体・認知・社会フレイルと関連し、両者を併存する場合には口腔を含む多面的フレイルとの関連が示唆された。研究は、島根大学医学部内科学講座内科学第三の黒田陽子氏、同大学地域包括ケア教育研究センター(CoHRE)の安部孝文氏らによるもので、詳細は2月6日付で「Geriatrics & Gerontology International」に掲載された。 日本の超高齢社会では健康寿命の延伸が重要課題であり、フレイルは加齢に伴う生理的予備能の低下によりストレスへの抵抗力が弱まった状態で、要介護や転倒、入院、死亡などと関連することが知られている。日本では多面的評価を可能とする「後期高齢者の質問票(Questionnaire for Medical Checkup of the Old-Old:QMCOO)」が導入されたが、各フレイル領域との関連、とくに情動機能との関係は十分に検討されていない。抑うつはフレイルとの関連が報告されている一方、アパシーとフレイルの関連や両者の違いは不明な点が多い。本研究は、地域在住高齢者を対象に、アパシーと抑うつ症状を独立して評価し、身体・口腔・認知・社会の各フレイル領域との関連を明らかにすることを目的とした。 本研究は、2024年のShimane CoHRE Studyに参加した島根県雲南市在住の75歳以上の高齢者465人を対象とした横断研究として実施された。アパシーは日本語版Starkstein Apathy Scale(やる気スコア)で16点以上、抑うつ症状はSelf-rating Depression Scaleで40点以上を基準に定義した。フレイルは、身体・認知・社会・口腔の各領域についてQMCOOを用いて評価した。解析では、年齢、性別、BMI、Multimorbidityで調整したロジスティック回帰分析を行った。 参加者の年齢中央値は78歳(四分位範囲76.0~82.0)、女性は約半数(49.7%)を占めた。参加者におけるアパシー、抑うつ症状、および両者の併存の有病割合は、それぞれ30.8%、29.9%、14.6%であった。二変量解析では、アパシー群は非アパシー群と比べて認知的フレイル(特に時間の見当識障害)や社会的フレイル(相談相手の不在など)の割合が高く、抑うつ症状群では身体機能低下を中心とした身体的フレイルとの関連が目立った。 多変量解析では、アパシーおよび抑うつ症状はいずれも身体的フレイル、運動習慣の欠如、認知的フレイル、記憶障害、社会的交流の不足と独立して関連していた。さらに、アパシーは時間の見当識障害、社会的フレイル、閉じこもり、相談相手の不在と関連し、抑うつ症状は咀嚼機能低下や身体機能低下との関連が特徴的であった。 また、アパシーと抑うつ症状の併存群では口腔・身体・認知・社会のすべてのフレイル領域と有意な関連が認められた。 著者らは、アパシーと抑うつ症状は共通して身体的・認知的フレイルと関連する一方、アパシーは特に社会的フレイルとの関連が示唆されたと結論づけている。また、「両者が併存する場合には口腔領域を含む複数のフレイル領域と関連し、多面的な脆弱性が強まる可能性がある。フレイル予防には情動機能の評価と個別化された対応が重要であり、因果関係の解明には今後の縦断研究が求められる」と述べている。 なお、本研究の限界として、横断研究デザインのため因果関係を検討できない点や自己報告によるバイアス、QMCOOのみでのフレイル評価、健診受診者に限定された集団による一般化可能性の制限などを挙げている。

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薬局と連携しよう【非専門医のための緩和ケアTips】第121回

薬局と連携しよう在宅緩和ケアではさまざまな専門職が患者の療養を支えています。薬剤師も重要な役割を担っていますが、医師が薬剤師との連携の仕方を学ぶ機会は多くはありません。今日の質問先日、調剤薬局の薬剤師から、訪問薬剤指導について案内がありました。重要な取り組みだと思うのですが、実際にどのように連携すればよいのかイメージが湧きません……。緩和ケアにおける薬剤師の役割は非常に大きく、日本緩和医療薬学会という専門学会があり、緩和薬物療法認定薬剤師という認定資格も設けられています。薬剤師と医師が上手に連携するために、私が感じていること、意識していることをお話しします。薬剤師が関わることで、緩和ケアにおける薬物療法の安全性と質が向上します。安全性では、緩和ケアの患者は腎・肝機能が低下していたり、高齢者だったりと用量調整が必要なことが多くあります。また、多剤併用で薬物相互作用に気を付ける必要があるケースも多くあります。薬剤師は、医師が処方した薬剤について、患者に期待される効果が安全に得られるよう確認してくれます。質の向上では、患者が内服しやすい剤形を提案したり、飲み忘れを防ぐ服薬カレンダーを工夫したりといったことがあります。こうしたことを医師1人で行うのは難しく、実務経験を通じて培った、きめ細かさが求められる分野です。医師はあまり意識しませんが、薬剤師の重要な役割として、薬剤の流通管理があります。医師が処方しても、実際の薬剤が地域の薬局になければ患者には届きません。できるだけ早く薬がほしい状況にもかかわらず、医薬品卸業者に発注してから、となると時間を要します。このような状況では、在宅療養を希望する患者でも「薬剤が提供できない」という理由で入院が必要になります。今回の質問のように地域の在宅緩和ケアを支える薬局は、こうしたことがないよう、在宅医療で使用する薬剤が適切に患者に届くよう、薬剤の在庫管理を行っています。今後さらに薬剤師に期待される役割は、ケアのコミュニケーションに参加してもらうことです。患者の価値観や希望に沿った医療とケアを提供するうえで、各職種が支援者として関わり、患者にとっての最善を共に考えることが求められています。私が研修医だったころは、薬剤師がベッドサイドに行く光景は見たことがありませんでした。しかし、今は薬剤師がどんどん患者と接点を持つようになっています。緩和ケアで重要な役割を持つ薬剤師と相互理解を図り、良い関係を築ける医師が必要ですし、私もそうした医師を育成できるよう取り組んでいます。ぜひ、良い連携を築きながら、質の高い緩和ケアを提供できるよう、取り組んでいきましょう。今日のTips今日のTips診療している地域の薬剤師とネットワークを構築すると、在宅緩和ケアの質も向上します。

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子どものこころの診療-小児科医が挑む子どものこころの臨床

「子どものこころ」の問題に小児科医、精神科医が連携して挑む「小児診療 Knowledge & Skill」第4巻「子どものこころ」の問題は社会状況の変化に伴い、年々その重要性が高まっている。小児科外来では「こころ」の健康に関する臨床機会が増加しているが、「こころ」の診療は専門性が高く多岐にわたる知識と技術が求められる。小児科、精神科の連携は必須であり、本書は「子どものこころ」の臨床に携わる小児科医と精神科医のエキスパートによる、それぞれの専門性を活かした最新の知見を詳解。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する子どものこころの診療-小児科医が挑む子どものこころの臨床定価8,800円(税込)判型B5判(並製)頁数320頁発行2026年3月総編集加藤 元博(東京大学)専門編集田中 恭子(順天堂大学)共同編集者岡田 俊(奈良県立医科大学)/金生 由紀子(全国療育相談センター)/石﨑 優子(関西医科大学)/永光 信一郎(福岡大学)ご購入はこちらご購入はこちら

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第313回 臨床試験でデクスメデトミジンがアルツハイマー病関連タンパク質除去を促進

脳の老廃物処理機能を後押しして、アルツハイマー病と関連するタンパク質がより除去されるようにする薬の組み合わせの効果が臨床試験で裏付けられました1,2)。「一線を画す進歩であり、神経変性疾患患者を助けうることに留まらず、健康な人が脳の機能を最大限にするのにも役立つかもしれない」とアミロイドβ(Aβ)検出化合物を研究するハーバード大学の准教授Shiju Gu氏は今回の成果を評しています。脳は代謝で生じる老廃物を血管に沿って流れるグリンパティック系を介して排出します。グリンパティック系からリンパ系へと運ばれた老廃物は、次に血液に至って処分されます。グリンパティック系はアルツハイマー病関連タンパク質のAβやタウの除去を促すことがげっ歯類の検討で示されています。その働きは睡眠中にとくに盛んで、睡眠不足はAβやタウの除去を滞らせます。ヒトの脳にもグリンパティック機能があり、やはり睡眠中に活動し、睡眠中にAβやタウが脳から排出されることに一役買っていることが神経画像解析で判明しています。残念なことにグリンパティック系は老化で衰え、アルツハイマー病ではとくに不調になるようです。一方幸いにも、脳の青斑核(LC)から伸びる神経のノルアドレナリンの働きを制するいくつかの手段で、睡眠中のグリンパティック機能を高めうることも示されています。たとえば、外科処置の際の鎮静によく使われるα2アドレナリン作動薬デクスメデトミジンは、LCの活動を抑制することでグリンパティック機能を高めることがげっ歯類の検討で示されています3)。デクスメデトミジンにはアルツハイマー病を模すマウスの認知機能低下を遅らせる効果もあります4)。そこで米国の製薬会社Applied Cognitionに勤めるPaul Dagum氏らは、ヒトではどうかを試すべく臨床試験でデクスメデトミジンのグリンパティック機能やAβとタウの除去への作用を調べることにしました。試験には平均年齢60歳の19人が参加し、試験室で寝ないで1晩を過ごした後にデクスメデトミジンと同剤につきものの副作用である低血圧を防ぐα1アドレナリン作動薬ミドドリンの投与を受けました。Applied社はその組み合わせをACX-02という名称を付けて開発しています。被験者には1週間後に再び試験室で一晩を寝ないで過ごしてもらいます。しかしその後が1回目の徹夜とは違い、ACX-02ではなくプラセボが投与されました。プラセボ投与との比較の結果、喜ばしいことにげっ歯類での検討と同様の効果が示されました。すなわちACX-02はグリンパティック機能を高めてAβとタウが脳から血液へと排出されるのを促す効果がありました。アルツハイマー病治療として承認済みのアミロイド除去抗体と違って、ACX-02ならAβとタウの両方の除去を促せそうであり、認知機能により有益かもしれません。Dagum氏らのチームは初期アルツハイマー病患者を募る試験でACX-02に一層の取り柄があるかどうかを調べるつもりです。パーキンソン病などの異常に折りたたまれた(ミスフォールド)タンパク質の蓄積による他の脳疾患にもACX-02は役立つかもしれません。もっというと、寝不足後の注意欠如の解消にも使えるかもしれない、と研究チームの1人は言っています2)。 参考 1) Dagum P, et al. Pharmacological enhancement of glymphatic function in humans increases the clearance of Alzheimer’s disease-related proteins. medRxiv. 2026 Mar 12. 2) The brain's cleaning system can be boosted to rid Alzheimer's proteins / NewScientist 3) Hablitz LM. et al. Sci Adv. 2019;5:eaav5447. 4) Ma K, et al. Drug Des Devel Ther. 2024;18:5351-5365.

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日本のアルツハイマー病患者における介護者負担と神経精神症状との関係

 地域在住のアルツハイマー病患者を対象とした先行研究では、認知症における重度の神経精神症状(NPS)と介護負担との関連が報告されている。鹿児島県・あいらの森ホスピタルの永田 智行氏らは、日本における地域在住のアルツハイマー病患者の家族介護負担、認知症のNPS、介護サービスの利用状況の現状を調査した。Psychogeriatrics誌2026年3月号の報告。 地域在住のアルツハイマー病患者の同居家族介護者を対象に、2023年11月13~27日にウェブベースの質問票を用いて調査を実施した。パネルデータに登録された8,108人の参加者の中から、705人の家族介護者(年齢範囲:19~79歳)を抽出した。参加者は、神経精神医学的評価尺度(Neuropsychiatric Inventory-Brief Questionnaire)の日本語版に回答した。 主な結果は以下のとおり。・家族介護者の平均年齢は、54.6±11.5歳、男性の割合が56.9%であり、84.0%がアルツハイマー病の親または義理の親を介護していた。・アルツハイマー病患者の平均年齢は、84.2±8.8歳、男性の割合が26.2%であった。NPSを有する患者は90.6%、そのうち73.4%に多動性(焦燥、脱抑制、易刺激性、異常な運動行動)が認められた。・NPSを有する患者の介護者による週当たりの平均介護時間は、NPSのない患者の場合と比較し、長かった(24.1±22.1時間vs.17.6±14.0時間)。・NPSを有する患者の介護者では、NPSのない患者の介護者よりも、看護ケア支援サービスへの不満が高かった。・多動性のマネジメントのために、介護者の11.3%が投薬を行い、11.5%が患者を静かな環境に移動させた。一方、16.6%の介護者は対処方法がなかった。・多動性への対応として「投薬を行った」と回答した介護者のうち、32.1%が介護スタッフまたは医療従事者を呼んで経口薬を投与し、18.9%が患者を医療機関に連れて行き、注射または点滴治療を受けさせていた。 著者らは「NPSを有するアルツハイマー病患者の介護は、NPSのない患者と比較し、介護期間の延長、看護ケアサービスの利用率の高さ、看護ケア支援サービスへの不満との関連が認められた」としている。

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年収2,000万円以上の割合は? 地域・診療科による違いは?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2026年3月に会員医師1,000人(男性883人、女性117人)を対象として「年収に関するアンケート」を実施した。その結果、1,000万~2,000万円の割合は58.0%、2,000万円以上の割合は24.0%であり、8割超が1,000万円以上であった。最も多い年収帯は2,000万~2,500万円 全体で最も多い年収帯は2,000万~2,500万円(全体の13.7%)で、次点が1,400万~1,600万円(13.3%)であった。2016年に実施した調査結果と比較すると、1,000万円以下、1,000万~2,000万円、2,000万円以上の割合は、2016年がそれぞれ21.2%、58.8%、20.0%であったのに対し、2026年がそれぞれ18.0%、58.0%、24.0%であり、やや年収の上昇傾向がみられたが、大きな変化はなかった。 年代別にみると、46~55歳、56~65歳のうち2,000万円以上と回答した割合は、いずれも35.0%となった。35歳以下で1,000万円以上の割合は75.0%であった。2,000万円以上は男性26.0%、女性8.5% 男女別にみると、昨年度の年収が1,000万円以上と回答した割合は男性が84.4%であったのに対し、女性は63.2%であった。2,000万円以上に絞ると、それぞれ26.0%、8.5%であった。地域別の傾向は? 地域別にみた昨年度の年収が2,000万円以上の割合は、以下のとおり。・北海道・東北(113人):31.0%・関東(298人):24.8%・中部(161人):24.8%・近畿(214人):23.8%・中国(61人):18.0%・四国(34人):11.8%・九州・沖縄(119人):21.0%診療科別の傾向は? 診療科別にみた昨年度の年収が2,000万円以上の割合は、以下のとおり(30人以上の回答が得られた診療科を抜粋)。・脳神経外科(37人):40.5%・循環器内科(67人):38.8%・消化器外科(34人):32.4%・精神科(78人):29.5%・消化器内科(53人):28.3%・放射線科(32人):28.1%・整形外科(55人):23.6%・神経内科(30人):23.3%・内科(197人):21.8%・呼吸器内科(34人):20.6%・糖尿病・代謝・内分泌科(31人):16.1%・小児科(52人):11.5% その他、詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2026【第1回】昨年度の年収

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物質使用障害(SUD)のリスク低減にGLP-1受容体作動薬は有効か(解説:小川大輔氏)

 物質使用障害(SUD:Substance Use Disorder)は、特定の物質の使用を制御できなくなり、健康上の問題や社会生活への支障があっても使用を続けてしまう慢性・再発性の疾患である。アルコール(お酒)やタバコ(ニコチン)のほか、処方薬(睡眠導入剤、鎮痛剤など)、覚醒剤、大麻、コカイン、オピオイドなど、脳に作用するさまざまな物質によって引き起こされる。 今回、GLP-1受容体作動薬と米国退役軍人の糖尿病患者におけるSUDリスクの関係を調査した研究結果が発表された1)。電子カルテのデータを用いて、各種SUDの新規発症と、既存SUD患者の臨床アウトカム(救急外来、入院、死亡、過量摂取、自殺念慮・試み)を調査したところ、GLP-1受容体作動薬の使用は新規および既存のSUDのリスク低減に関連している可能性が報告された。 この研究により、GLP-1受容体作動薬はSUDの予防と治療の両面で有望な役割を果たす可能性が示唆された。しかし、対象が米国退役軍人という特定集団に限定されるため一般化には注意しなければならない。またSGLT2阻害薬を比較薬とした観察研究であるため、今後さらなる臨床試験が必要である。 SUDの治療は、単に物質の使用をやめるだけでなく、心身の健康や社会生活の回復を目指す多角的なアプローチが必要である2)。それはSUDが「意志の弱さ」から生じるものではなく、脳の機能が変化した疾患であるからである。SUDは専門的な治療と継続的なサポートが不可欠な疾患であり、GLP-1受容体作動薬はその治療の一助になるかもしれない。

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第289回 在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省

<先週の動き> 1.在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省 2.医療事故調査制度の地域差なお顕著 報告の質と迅速性向上が課題/医療安全調査機構 3.再生医療の安全管理に警鐘 死亡事例と法令違反受け制度見直しへ/厚労省 4.汚職対応に第三者委員会が厳しい報告 「自浄作用の放棄」と批判/東大 5.胸部CTで肺がん見落とし死亡 37mm腫瘤見逃しで医療事故/神戸市立医療センター 6.医師による性犯罪相次ぐ 実刑判決を受け行政処分の遅れに厳しい視線 1.在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省厚生労働省は3月31日に、先日公表した2026年度の診療報酬改定について、疑義解釈(その2)で在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の往診体制に関する施設基準を大幅に明確化し、とくに往診代行サービスの利用に厳しい要件を課すことを明らかにした。厚労省は、24時間往診体制を第三者サービスに依存する場合でも、患者への説明責任と医療の継続性確保を重視し、「体制内医師」であることを厳格に求める姿勢を示した。具体的には、往診担当医の氏名および担当日を患者・家族に文書で事前提示することが必須とされ、氏名の非開示は認められない。また、当該医療機関と雇用契約のない医師を往診担当医として記載することも不可とされた。さらに、やむを得ず事前に氏名を提示していない医師が往診を行う場合であっても、往診前日までに当該医療機関を訪問し、常勤医と対面で面談を行い、診療方針や患者情報を共有していることが条件となる。オンラインでの情報共有のみでは要件を満たさない点も重要である。共有すべき内容としては「患者の最新の病状や急変リスク」「今後の診療方針、緊急時の入院先や地域医療体制」「医療機関内の電子カルテや医療資材の運用方法」など、実務レベルまで具体的に示された。これにより、形式的な雇用契約のみでは要件を満たさず、対面での面談や診療方針の共有も必要となっている。従来の往診代行サービスは、外部医師のスポット対応や業務委託契約を前提とするモデルが多く、「誰が来るかわからない」体制でも運用されてきた。しかし、今回の解釈では、こうした外部プール型の仕組みは原則として施設基準を満たさない可能性が高く、実質的に継続困難とみられる。対応策としては、非常勤を含めた雇用契約の締結、連携医療機関としての正式な組み込み、自院内での当直体制強化などが挙げられるが、いずれも人的コストの増加は避けられない。今回の見直しは、責任の所在の明確化や医療の質担保という点では合理性を持つ一方で、小規模な在宅療養支援診療所にとっては24時間体制維持のハードルが一段と高まり、在宅医療提供体制の再編を促す可能性がある。制度上は在宅医療の推進が掲げられてきた中で、実運用面では「外注依存から体制内完結へ」の転換が強く求められる局面に入ったといえる。 参考 1) 疑義解釈資料の送付について(その2)(厚労省) 2) 在支診・在支病の施設基準、往診代行を使う場合は常勤医との対面での面談が必須に(日経メディカル) 2.医療事故調査制度の地域差なお顕著 報告の質と迅速性向上が課題/医療安全調査機構日本医療安全調査機構が公表した2025年年報によると、医療事故調査制度が始まった2015年10月~2025年末までの累計報告件数は3,633件に達し、このうち88.9%で院内調査が完了した。2025年単年では375件、月平均31件超で、前年よりやや増加した。都道府県別の人口100万人当たり報告件数は全国平均2.9件で、大分県と京都府がともに4.9件で最多、続いて三重県4.6件、宮崎県4.5件だった。その一方で、福井県1.1件、埼玉県1.6件、和歌山県1.7件など低い地域もあり、地域差が続いている。ただし、報告件数の多寡は直ちに医療安全水準を示すものではなく、報告文化や制度理解の差を反映している可能性がある。事故の起因となった医療内容では、分娩を含む手術が158件で全体の43.9%を占め、依然として最大の割合を占めた。処置は39件、10.8%だった。有床診療所では事故の起因となった医療内容の75.7%が手術関連で、帝王切開を含む分娩が多い点が目立った。手術の内訳では、経皮的血管内手術、内視鏡下手術、開腹手術が上位を占めた。事故発生から院内調査結果報告までの平均期間は494.4日で、前年より延びた。発生から報告まで100.1日、報告から院内調査結果報告まで394.3日で、迅速化にはなお課題が残る。2025年に完了した院内調査は360件で、累計3,230件となり、コロナ禍前の水準に戻りつつある。外部委員の参加は81.4%、解剖・死亡時画像診断(Ai)実施は49.4%だったが、いずれも前年より低下した。2026年4月からは制度見直しにより、医療事故判断プロセスの記録保存、管理者らの研修受講、遺族申し出への組織的対応などが求められる。報告の質と調査の透明性を高め、再発防止に結びつける運用強化が、今後の医療安全の焦点となる。 参考 1) 医療事故調査・支援センター 2025年 年報(日本医療安全調査機構) 2) 2025年の「人口100万人あたり医療事故報告件数」最多は大分と京都、手術・分娩関連の死亡事故が依然多い-日本医療安全調査機構(Gem Med) 3.再生医療の安全管理に警鐘 死亡事例と法令違反受け制度見直しへ/厚労省自由診療で行われる再生医療を巡り、死亡事例や法令違反が相次いでいる。厚生労働省の資料では、2025年8月に都内クリニックで自己脂肪由来間葉系幹細胞の投与中に患者が急変し死亡した事案を受け、提供の一時停止命令や立入検査を実施し、製造施設には改善命令を出した。提供医療機関側でも、救急体制の不備、適切な救急措置の未実施、原因究明に必要な投与残余物の廃棄などが課題として示された。別の都内のクリニックでも、計画に記載のない医師や医薬品・試薬による実施、未届出疾患への提供、疾病など報告の未実施などが確認され、改善命令が出されている。問題の背景には、自由診療の再生医療が「認定再生医療等委員会の審査・届出を経ている」ことで、患者側に国が有効性や安全性を評価したかのような誤認が生じやすい構造がある。厚労省の見直し資料も、美容やがん治療などで妥当性が明確でない再生医療が増え、健康被害や信頼性低下のリスクが顕在化していると整理している。日本再生医療学会も2026年3月に「科学的根拠が不十分な自由診療の拡大は深刻な課題だ」と表明している。厚労省は今後、再生医療等安全性確保法の見直しに向け、リスク分類の再検討、自由診療の妥当性評価、提供医師・医療機関の適格性確保、認定委員会の審査の質向上、患者フォローアップや監査体制の強化、国民へのわかりやすい情報提供などを検討する。医師にとっては、自由診療であっても「届出済み」では十分ではなく、科学的妥当性、救急対応、合併症発生時の検体保全、説明責任まで含めた実施体制が厳しく問われる局面に入った。 参考 1) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく行政処分等について(厚労省) 2) 再生医療等安全性確保法の見直しに関する今後の検討方法について(同) 3) 「再生医療」事故や違反相次ぐ 自由診療、安全性に課題 厚労省、制度見直しへ(時事通信) 4.汚職対応に第三者委員会が厳しい報告 「自浄作用の放棄」と批判/東大東京大学医学部・附属病院を巡る一連の汚職事件について、第三者のプロセス検証委員会は4月3日、大学側の対応を「組織の自浄作用と説明責任の放棄」と厳しく批判する報告書を公表した。問題の中心となったのは、内部通報があったにもかかわらず、警察の捜査を理由に学内調査を約7ヵ月間事実上停止した対応で、委員会は「真相究明を警察に委ねる姿勢は、『大学の自治』を自ら毀損する危うさをはらむ」と指摘した。報告書は、東大本部の初動の遅れに加え、総長を含む執行部の危機意識の不足、部局や研究室が互いに干渉しない組織風土、重要会議で議事録を残さないなど運営プロセスの軽視を根本要因に挙げた。また、「東大は悪いことをしない」という無謬性への思い込みと、不祥事が大学全体に及ぼす影響を十分に想像できない体質が、対応の後手を招いたと分析している。そのうえで委員会は、外部第三者による継続的なモニタリング、内部監査・監事監査・会計監査の連携強化、最高リスク責任者(CRO)の配置、対内外コミュニケーションの活性化、教員懲戒制度の迅速化と抜本的見直しの5点を提言した。東大では報告書を受け、近日中に改革策を示すとしている。今回の報告は、医学部に限らず大学全体のガバナンス不全を問う内容であり、東大の信頼回復には、再発防止策だけでなく、自浄能力を備えた組織文化への転換が不可欠だといえる。 参考 1) プロセス検証委員会報告書について(東大) 2) 東大汚職事件めぐり第三者委員会が調査結果を公表(NHK) 3) 東大収賄事件「総長の危機意識不足」、第三者委が報告 初動も問題視(朝日新聞) 4) 東京大院汚職「組織の自浄作用発揮できず」 検証委が報告書(日経新聞) 5.胸部CTで肺がん見落とし死亡 37mm腫瘤見逃しで医療事故/神戸市立医療センター神戸市立医療センター西市民病院で、CT画像に写っていた肺がんを見落とした医療事故が発生し、70代女性患者が死亡した。同院によると、女性は2024年5月、階段からの転落による外傷評価のため整形外科を受診し、CT検査を実施。画像には右肺に最大約37mmの腫瘤影が認められていたが、放射線科医がこれを指摘せず、整形外科医側でも十分な確認が行われなかった。その後、女性は2025年10月に呼吸困難と大量胸水で再受診し、精査の結果、同部位に肺がんが判明。すでにステージIVまで進行しており、手術による根治は困難な状態だった。化学療法が行われたものの全身状態が悪化し、同年12月に死亡した。初回CT画像の再検証により見落としが明らかとなった。病院は今回の事案について過失を認め、遺族に謝罪。補償については現在検討中としている。見落としの背景として、外傷評価が主目的であったため肺野の読影が不十分であったこと、ならびに読影結果の共有・確認体制の不備があったと説明している。再発防止策として、放射線科医と各診療科医師によるダブルチェックの徹底、ならびにAI読影支援ソフトの活用強化を掲げた。今回の事例は、偶発的に撮影された画像所見であっても全身的な異常の見落としを防ぐ体制の重要性を示すものであり、読影責任の所在や多職種間の情報共有の在り方が改めて問われる結果となった。 参考 1) CT画像で肺がん見落とし70代の女性患者死亡 神戸市立・西市民病院、遺族に謝罪(産経新聞) 2) CT検査で肺がん見落とし70代女性死亡 神戸市立病院で医療事故(朝日新聞) 3) 神戸市立医療センター西市民病院で医療事故 外傷診断目的で受診・70代女性患者のCT撮影した際に放射線科医が『がん』見落とす 女性患者はがんが進行して死亡(FNNプライムオンライン) 6.医師による性犯罪相次ぐ 実刑判決を受け行政処分の遅れに厳しい視線美容外科医が麻酔や睡眠薬を悪用し、無抵抗状態にした女性患者や職員らに対して長期間にわたり性的暴行を繰り返していた事件で、東京地裁は被告人の男性医師に懲役25年の実刑判決を言い渡した。犯行は約9年間に及び、被害者は21人、うち未成年が4人、最年少は9歳と極めて重大である。患者の多くは手術中や処置後の麻酔下にあり、医療行為そのものが加害の機会として利用されていた点が特徴。また、同一被害者に対する複数回の加害行為や、犯行の様子を撮影するなど、計画性と執拗性も認定された。判決は、医師という立場を利用した「悪質で卑劣な犯行」と断じ、常習性と規範意識の著しい欠如を強く非難している。求刑27年に対し25年の量刑となったが、被害の規模と内容から極めて重い判断といえる。被告は起訴事実を認めつつも量刑不当として控訴している。本件は、医療機関という本来安全であるべき場において、患者の身体的・心理的脆弱性が悪用された点で社会的衝撃が大きい。加えて、捜査段階から余罪の可能性も指摘されており、押収された記録媒体には他の被害をうかがわせる映像が含まれていたとされる。事件の実態は、判決で認定された範囲をなお上回る可能性がある。さらに、別の精神科医による患者への不同意性交事件も発覚しており、診察後に施錠された空間で逃げ場を奪われた状況での犯行が疑われている。この医師は過去の逮捕・有罪事案を経ても、診療を継続していたことが明らかとなり、行政処分の遅れに対する制度的問題も浮上している。一連の事件を受け、世論は極めて厳しく、「医師免許制度は機能しているのか」「なぜ再犯を防げなかったのか」といった批判が噴出している。とくに、刑事罰や行政処分が抑止力として十分に機能していない実態に対し、制度の見直しを求める声が強まっている。医療は患者の信頼の上に成り立つが、その信頼を根底から覆す行為が繰り返されたことは、医療界全体の倫理と統治の在り方を問い直す事案となっている。 参考 1) 美容外科医が麻酔で無抵抗の女性患者らに性犯罪、9歳児含む21人が被害…「悪質で卑劣な犯行」懲役25年判決(読売新聞) 2) 女性にわいせつ行為容疑、医師を逮捕 10人以上の被害状況を撮影か(朝日新聞) 3) 「まだ診察ある」経営する心療内科で20代女性患者に不同意性交 容疑で医師の男を逮捕(産経新聞) 4) 患者の女性を閉じ込め不同意性交か 歌舞伎町の精神科医を逮捕(毎日新聞) 5) 新宿・歌舞伎町“有名精神科医”が不同意性交の疑いで7回目の逮捕…20年にわたり犯罪を繰り返してきた激ヤバ医師の「数々の悪行」(現代ビジネス) 6) なぜ6回逮捕でも医師免許は剥奪されないのか…女性患者を襲い続けた歌舞伎町の精神科医を守る「歪んだ制度」の正体(同)

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リチウムが高齢の軽度認知障害患者の言語記憶低下を抑制か

 気分障害の治療に用いられるリチウムは、抑うつや不安などに有効であるだけでなく、脳にも利点をもたらすようだ。予備的な臨床試験で、低用量のリチウムの錠剤が、軽度認知障害(MCI)がある高齢者の言語記憶能力の低下を遅らせる可能性が示された。米ピッツバーグ大学精神医学分野のAriel Gildengers氏らが実施したこの試験の詳細は、「JAMA Neurology」に3月2日掲載された。Gildengers氏らは、「今回の臨床試験の結果は決定的なものではないが、より大規模な追加試験を実施する必要性を示すには十分な有望な兆候が得られた」と説明している。 論文の研究背景によると、先行研究では、アルツハイマー病で見られる脳の変性の背景にリチウム不足が関与している可能性が示唆されている。Gildengers氏は、「過去の研究で、長期間リチウムを使用している双極症(双極性障害)の高齢者では、脳の統合性を示すマーカーがより良好な傾向が認められた。そこで新たな疑問として浮かび上がったのが、そうした神経保護作用が気分障害以外にも及ぶのか、また、それを前向き臨床試験で厳密に検証できるのかということだった」と説明する。 今回の臨床試験では、60歳以上の高齢者83人を、2年間にわたって低用量リチウムを使用する群(41人)とプラセボを使用する群(42人)のいずれかにランダムに割り付け、リチウムが脳の機能や構造に与える影響を評価した。参加者は、認知機能検査と脳画像(MRI)検査を受けた。最終的に、実際に治療を受けたリチウム群41人(平均年齢72.93歳、女性56%)とプラセボ群39人(平均年齢71.22歳、女性56%)の80人が解析に含められた。 その結果、言語記憶評価テスト(CVLT-II)のスコアの毎年の低下幅は、リチウム使用群で0.73ポイントだったのに対し、プラセボ群では1.42ポイントであった(1年当たりの差0.69ポイント、95%信頼区間0.01〜1.37、P=0.05)。一方、脳画像検査では、両群ともに、記憶を司る脳領域である海馬の体積と脳皮質体積が時間の経過とともに縮小していたが、有意な群間差は認められなかった。探索的解析では、アルツハイマー病と関連する有害なタンパク質として知られるアミロイドβの脳内蓄積量が多い人では、リチウムによる保護効果がより大きい可能性が示唆された。 論文の筆頭著者であるGildengers氏は、ニュースリリースの中で、「重要なのは、リチウムが失われた記憶を回復させるわけではないという点だ。もし今回の結果が確かなものであれば、リチウムは記憶力の低下を遅らせる働きをしている可能性がある」と述べている。 この臨床試験が開始されたのは2018年である。その当時、アミロイドβを調べる血液検査は存在しなかった。そのため、参加者は臨床症状のみに基づき試験に登録されており、アミロイド陽性だったのは参加者の一部だった。Gildengers氏らは、「このことが、こうした患者群でリチウムのより強い効果を明らかにする同試験の力を弱めた可能性がある」との見方を示している。Gildengers氏は、「もし現時点でこの試験を計画するなら、最初からアミロイドβの状態に基づいて参加者を登録するだろう。実際、次の研究ではそのような方法で実施する予定だ」と話している。 また、今回の臨床試験では低用量のリチウムが高齢者でも安全に使用できることが示された。研究グループは現在、より大規模で決定的な臨床試験の実施に向けて支援を求めている。Gildengers氏は、「今回の臨床試験は、このアプローチが実行可能で安全であり、さらに追究する価値があることを示している。一方で、特にこれほど重要な問題を扱う場合には、慎重に計画された十分な検出力を有する臨床試験が不可欠である理由を改めて認識させられた」と述べている。

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うつ病患者の死亡リスク低下に有効な食事パターンは?

 食事は、うつ病の発症に重要な役割を果たしている。しかし、食習慣がうつ病患者の死亡率に及ぼす影響は、これまで明らかになっていなかった。中国・中南大学のHonghui Yao氏らは、成人うつ病患者における6つの食習慣とすべての原因による死亡率および死因別死亡率との関連性を調査した。European Journal of Nutrition誌2026年2月12日号の報告。 対象は、英国バイオバンクの参加者のうち、うつ病と診断され、診断後24時間食習慣評価を1回以上受けた5,368例(2006~10年に登録)。食事データは、ベースライン時および4回のオンラインフォローアップ調査を通じて収集した。高血圧予防のための食事療法(DASH)、食事性炎症指数(DII)、健康的な食事に関する食品指数2019(HEFI-2019)、健康的な植物性食事指数(hPDI)、地中海式食事スコア(MDS)、世界がん研究基金/米国がん研究財団(WCRF/AICR)食品スコアの6つの食事スコアを算出した。Cox比例ハザード回帰分析を用いて、全死亡率、心血管疾患(CVD)、がんによる死亡率のハザード比(HR)、95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値約4,370日の間に、342例が死亡した。そのうち57例がCVD、159例ががんによる死亡であった。・DASH(HR:0.92、95%CI:0.85~0.99)、HEFI-2019(HR:0.90、95%CI:0.83~0.97)、MDS(HR:0.90、95%CI:0.83~0.97)の各五分位増加は、全死亡率の低下と関連していた。・HEFI-2019はCVDによる死亡率の低下とも有意に関連が認められた(HR:0.79、95%CI:0.64~0.96)。・死亡率の低下は、主に魚の摂取量の増加および非全粒穀物、脂肪、遊離糖、ナトリウムの摂取量の減少と関連していた。 著者らは「うつ病患者において、MDSとHEFI-2019への順守率の高さは、死亡率の低下と関連していた。これらの知見は、健康的な食生活がうつ病患者の長期的な健康を支える役割を果たす可能性を示唆している」と結論付けている。

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幻聴が病気の場所を教えてくれた1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第303回

幻聴が病気の場所を教えてくれた1例「私は今、お前の脳内に直接語りかけている……」──誰もが一度はそんな中二病全開の妄想を抱いたことがありますよね?えっ、ないですか?静まり返った教室や一人きりの自室で、自分にだけ特別な能力が備わっていると信じて疑わなかったあの黒歴史。しかし、それが単なる妄想ではなく、現実の出来事だったとしたらどうでしょう。今回は、そんな漫画やアニメのような展開が本当に起こってしまった、驚愕の症例報告をご紹介します。Azuonye IO. A difficult case: Diagnosis made by hallucinatory voices. BMJ. 1997 Dec 20;315(7123):1685-1686.症例は、精神疾患の既往もなく身体的にも健康であった40代前半の女性です。ある日、自宅で一人で本を読んでいたところ、突然頭の中に声が聞こえ始めました。「―――怖がらないでください。こんな風に話しかけられて驚いているでしょうけれど、これが一番簡単な方法だったのです」その声はさらに続き、ロンドンにある特定の病院の放射線科に行くようにと具体的な指示を出しました。「あなたには脳腫瘍があり、治療が必要です」。幻聴の内容は、驚くほど具体的でした。恐怖を感じた女性は精神科を受診しました(ちなみに当時の担当医は本論文の筆頭著者)。幻聴に対して投薬とカウンセリングが開始され、症状は一時的に消失しました。しかし、休暇で海外に滞在中、再び声が聞こえ始めたのです。「―――早く帰国して、脳腫瘍の治療を受けるべきだ」さすがに不安を抑えきれなくなった女性は、帰国後すぐに病院を再受診しました。担当医は、彼女を安心させる目的も兼ねて頭部CT検査をオーダーしました。ところが、検査の結果…、なんと幻聴が指摘したとおり、髄膜腫が発見されたのです。ただちに脳神経外科で腫瘍摘出術が施行されました。そして、彼女が術後に意識を取り戻した直後、あの声が最後にこう語りかけてきたと記録されています。「―――あなたを助けることができて嬉しいです。さようなら」これ以降、幻聴が再び出現することはありませんでした。この信じ難い症例について、明確なメカニズムは現在も解明されていません。

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