お知らせがあります

サイト内検索|page:4

検索結果 合計:3144件 表示位置:61 - 80

61.

第322回 薬局への「ポイント付与制限」は誰のなんのため?

INDEX薬局を真剣に選ぶとき薬局選択、多くは質ではなく…ポイント規制への拭えぬ違和感年を取ったせいもあってか、私も医療機関・薬局のお世話になることが増えた。より詳細に説明すると、年ゆえにちょっと気になる症状があると、医療機関受診を選択することが増えたというのが正確だ。そのような中、先日処方箋を持って行ったある薬局で、決済にQRコード払いを選択したところ、薬剤師から次のように告げられた。「あっ、7月から現金以外の決済手段は当薬局のポイントが付かなくなったんですよ。すみません」「ははーん」と思った。医療者ならばご存じの先生も多いと思うが、6月23日に厚生労働省保険局医療課が発出した事務連絡「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第2条の3の2第1項に規定する経済上の利益の提供による誘引の禁止について」1)の影響であることは明らかだった。通知内容を簡単に要約すると、一部の保険薬局が保険調剤に伴う自己負担支払い時に薬局独自ポイント、あるいはVポイントなどの共通ポイントを付与する際は、決済手段で付与されるポイントと併せて1%超になるのは罷りならんというものである。この法的根拠は、通知内にもあるように保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(療担規則)で「保険薬局は、患者に対して、第四条の規定により受領する費用の額に応じて当該保険薬局における商品の購入に係る対価の額の値引きをすることその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、当該患者が自己の保険薬局において調剤を受けるように誘引してはならない」となっているからである。要は調剤技術料や薬価は公定であり、そこへのポイント付与は医療保険制度が有する公的な性格上馴染まないこと、また薬局は機能や業務の質によって選択されるべきものであり、その選択を経済的な利益で誘導してはならないという理屈だ。ただし、前出のように保険薬局でクレジットカード払いなどキャッシュレス支払いが可能な場合はそれによるポイント付与があるのはよく知られたこと。ただ、この場合のポイント付与者はあくまで決済事業会社であり、薬局側が経済的利益で誘導をしているものではないので許容されている。もっとも決済ポイントも通知内での「患者の支払いの利便性向上又は保険薬局における事務の効率化の観点から、当面、やむを得ないものとして取り扱ってきたところ」という記述からもわかる通り、「認めたくはないが、仕方がない」というのが厚生労働省のスタンスである。私のケースは、薬局独自ポイント、QRコード決済のポイントがそれぞれ1%なのでこれまでは合計2%であり、厚生労働省の「けしからんライン」を超えてしまう。この薬局で現金払いのみ、今後もポイントが付与されるのは、このラインの中に納まるからだろう。薬局を真剣に選ぶときちなみに私がこの薬局を選択したのは、とあるお薬手帳アプリの使用を開始した際、アプリに登録されている薬局で処方を受け、お薬手帳にQRコードでデータを取り込むと、ポイントが付与される仕組みに乗っかったからである。厚生労働省の見解に沿えば、最もけしからん奴だろうし、読者からもお叱りを受けるかもしれない。ただし、この選択には私なりの理由がある。実は5年ほど前まではまったく別のお薬手帳アプリを使用していたが、これが使いにくかったのである。それはアプリ上でかかりつけにする薬局(調剤報酬上のかかりつけ薬剤師とは無関係)を選ぶ際、アプリ提供企業が各薬局に対して発行していたコード番号を入力しなければならなかったのだ。これを行わないと、処方箋写真の画像送信機能などは使えない仕組みだった。そしてこの制約のために私はヒヤッとさせられたことがあった。ある時、処方箋画像を送信しようとしたところ、なぜか送信不能だった。理由はすぐに判明した。このアプリは、登録したかかりつけ薬局の休業期間と処方箋送信機能が連動しており、私がかかりつけとしていた薬局がこの時、休業中だったのだ。間の悪いことに処方箋は薬局の休業期間中に失効してしまう見込みだった。焦ってアプリでほかの薬局を検索したのだが、アプリ内だけでかかりつけ薬局の変更はできず、そのうえ新たな薬局でそこのコード番号を教えてもらって再登録しなければならなかった。しかも、この時期はあいにくほかの薬局も休業期間中。ただ、近隣の薬局で1ヵ所だけ、私の処方箋の有効期限の最終日に営業を再開するところがあり、この時はその日に朝一番に薬局に赴き、何とか事なきを得たのである。この苦い経験とコロナ禍中に起きたジェネリック医薬品の供給問題もあり、次に中長期的な処方を受ける場合は、薬局とお薬手帳アプリはより真剣に選ぼうと思っていた。たまたま今回選定するに当たって複数の候補の中から当該アプリを選んだのは、前述のようなお薬手帳への処方薬登録でポイントがもらえることも一因だった。ただ、これとて「ポイントもゲット!」などというウキウキしたものではない。医療者の皆さんには申し訳ないが、私だけでなく多くの人はなるべくなら医療機関のお世話になりたくないのが本音だ。しかし、やむを得ずそうなっているネガティブな気分を少しでも緩和できるのが、少なくとも私にとってはポイントだった。そしてそのアプリから現在の薬局を選んだのは、大手ドラッグストアの調剤部門であるため、営業日が多く、供給不安の中でも相応に在庫を確保していると思われたからである(これとて個店薬局の皆さんからは苦々しく思われるかもしれない)。それが冒頭で触れた薬局である。結果としてみれば、私にとってこの選択は当たりだった。詳しくは過去の本連載(第265回)を参考にしていただきたいが、私が椎間板ヘルニアで処方されたプレガバリンの中止後に現れた睡眠障害の副作用を必死に調べて教えてくれたのが、冒頭の薬剤師だったのだ。これ以降、今のところこの薬局・薬剤師に私は満足しており、この薬局では取り寄せが予想される薬の処方箋もすべて集約している。きっかけはポイントだが、ポイントが付与されなくなった今後も薬局・薬剤師を変えるつもりはない。ただ、こうした巡り会わせはやや珍しいかもしれない。薬局選択、多くは質ではなく…たとえば、2021年に内閣府が公表した「薬局の利用に関する世論調査」2)によると、「あなたは、薬局を一つに決め、薬剤師を一人に決めていますか」との問いに「かかりつけ薬剤師・薬局を決めている」あるいは「薬局は一つに決めているが、かかりつけ薬剤師は決めていない」を合わせた回答割合は26.0%に対し、「病院や診療所ごとにその近くにある薬局に行く」が57.7%。要は患者の薬局選択の最大の理由は「立地」である。ほかの同種調査などを見ても結果は同じであり、この点は医療者も多くが納得するだろう。逆に異なる調査結果があったら教えてほしいくらいだ。多くの人は薬局を立地で決める。私の場合はたまたまお薬手帳アプリとそのポイントが一因となった点は違うものの、結局のところ機能や提供される医療の質で薬局を選択している人のほうが少数派と言い切っても言い過ぎとは思わない。さらに言えば、患者にとって医療機関と違い、薬局を選ぶ術は多くはない。医療機関の場合はまず診療科が分かれ、加えて診断と治療方針を決めるという、ほかのどの医療提供施設にもない絶対的な“技術力”が存在する。そのため、受診前に医療機関の情報を調べる患者は多いだろう。この点で薬局はかなりディフェンシブである。薬局はどの医療機関からの処方箋でも原則応需義務があり、結果としてゼネラリストにならざるを得ない。この性格上、患者にとって薬局の差はきわめてわかりにくいのだ。たとえば「当薬局は小児科医院の近くにあるため、小児科の処方で用いられる医薬品を幅広く備蓄しています」という広告は、今の広告規制でも不可能ではないだろうが、これが患者に響くだろうか? そもそも前述のように多くの患者が“距離”で薬局を選択している中で、各薬局がそうした独自の広告・広報をホームページなどで行っても見てもらえるだろうか? それ以前に薬局に行く前にネット上で検索して調べるだろうか? おそらくどれも可能性としては低い。そもそも機能や質で薬局を選べと言われても、多くの患者はどうしていいかわからないだろう。「ならば『医療情報ネット(ナビイ)』3)があるじゃないか」との声も聞こえてきそうだ。確かに、ナビイは市区町村から薬局検索ができ、可能な調剤業務、設備、さらには駐車場・駐輪場の有無まで事細かに条件を設定して薬局を検索できる。優れモノとは言えるかもしれないが、逆に作り込み感があり過ぎるというのが個人的な感想である。患者にとっては各条件に設定されている調剤業務や設備の意味から検索して調べなければならない可能性がある。そしてこの作り込みのせいか、ページが重い。だが、最も残念なことは知名度の低さである。2021年度厚生労働科学研究「医療の質評価と医療情報の提供に関する調査研究」4)によると、一般住民での認知度はわずか11%にとどまる。厚生労働省や都道府県がその認知度向上に向けた取り組みを行っているという話も、私自身は記憶がない。さらに言うと、病院ならば日本医療機能評価機構の病院機能評価という第三者評価があるが、薬局にはない。結局、患者にとって機能や質で薬局を選ぶ方法は事実上あってないようなものなのだ。この状況で、「出る杭は打て」よろしく、ことさらポイントをあげつらうのは、やはり納得がいかないのである。ポイント規制への拭えぬ違和感そもそも患者の自己負担は患者自身の懐から拠出されるものであり、ポイント付与の原資は付与する側が負担するので、医療保険財政には悪影響は及ぼさない。さらに言えば、厚労省が渋々認めている決済事業者によるポイント付与には1.5%を超えるケースもあることは多くの人が知っているだろうし、薬局が独自ポイントや共通ポイントを付与しても1~2%に過ぎない。たかだか5%未満のポイントがそれほど問題なのだろうかと個人的には思ってしまうのだ。“放言”(少なくとも本人はそう思っていない)ついでに言えば、厚労省は決済事業者が付与するポイントも半ば苦々しいと思っているのであろうことは前述したが、にもかかわらずナビイの検索条件にはキャッシュレス決済の検索項目を設定している点にも矛盾を感じざるを得ない。いずれにせよ複数回の改正は経ているとはいえ、1957年という洗濯機の家庭普及率が約20%だった時代の療養担当規則を金科玉条にするのは、やはり時代遅れ感がありすぎる。さてここで厚労省の皆さんや薬局によるポイント付与に極めて否定的な皆さまにお伺いしたい。皆さまはどのような基準で薬局を選んでいますか? もちろんポイントということはないでしょう。まさか「距離」ではないでしょう。そして薬局が距離で選ばれるようになった遠因、つまり病院前の門前薬局はなぜ乱立することになったのでしょうか?参考1)厚生労働省保険局医療課:保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第2条の3の2第1項に規定する 経済上の利益の提供による誘引の禁止について(令和8年6月 23日)2)内閣府政府広報室:「薬局の利用に関する世論調査」の概要(令和3年2月)3)医療情報ネット(ナビイ)4)厚生労働科学研究成果データベース:医療の質評価と医療情報の提供に関する調査研究

62.

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療薬への期待/中外

 中外製薬は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する国内初の再生医療等製品として、デランジストロゲン モキセパルボベク(商品名:エレビジス点滴静注)を2026年2月20日に発売した。この発売によせて、本剤の概要や治療における臨床的位置付けなどについて、発売後の適正使用推進体制の説明と合わせてメディアセミナーを開催した。 DMDは、筋肉に関わるタンパク質のジストロフィン産生に影響を及ぼすDMD遺伝子の突然変異が原因で発症する希少遺伝性疾患。幼少期に発症し、徐々に筋力が低下していくことで日常生活に大きな影響を及ぼすため、早期からの適切な治療介入が求められる。未治療だと呼吸不全などを起こし、生命予後に影響する。 デランジストロゲン モキセパルボベクは、短縮型ジストロフィンの発現を介してDMDの原因に働きかけるようデザインされた薬剤である。2025年5月13日に条件及び期限付承認を取得し、2026年2月20日に薬価収載・販売された。筋機能を改善し、筋力の低下を防ぐ治療薬 はじめに同社からデランジストロゲン モキセパルボベクの製品説明が行われた。本薬剤の構造は、機能的な短縮型ジストロフィンであるデランジストロゲン モキセパルボベク マイクロジストロフィン(以下「マイクロジストロフィン」)をコードする遺伝子を含む非複製型の遺伝子組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであり、骨格筋および心筋での発現を最適化するα-ミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7(MHCK7)プロモーター/エンハンサーにより制御する。 本薬剤の作用機序としては、搭載されたマイクロジストロフィン遺伝子が骨格筋および心筋で発現すると考えられる。また、マイクロジストロフィンが筋細胞で発現することで、筋機能を改善し、筋力の低下を防ぐと考えられている。本薬剤はすでに薬価収載・販売されているものの、条件及び期限付承認であり、第III相試験が現在行われている。生命予後が40歳に届くのが難しい希少疾病 「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の疾患と治療、遺伝子治療の診療体制、適正使用と臨床的位置づけについて」をテーマに小牧 宏文氏(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター センター長)が疾患概要について、講演を行った。 DMDは、ジストロフィンの欠損などにより筋肉が壊れやすく、かつ不可逆的な変性により、筋肉の再生ができない疾患。2~4歳ごろに症状が現れ始め、自然歴では5歳ごろをピークに運動能力が低下、ガワーズ徴候などがみられ、10歳前後に歩行能喪失となり車椅子が必要になる。未治療では呼吸器筋や心筋に影響があり、生命予後は10代とされる。現在でも、患者の生命予後はいまだ30歳前後を超える程度であり、根本治療が求められている。ただ、近年では、専門の医療施設で30代後半まで生命予後が延長しており、最近は大学生も多くなったほか、就労している患者もいる。 治療は、プロアクティブかつ包括的な多職種連携の診療が集学的治療(ベース治療)として確立され、患者の社会参加や就労・就学の実現に向けて治療が行われている。具体的には、呼吸管理として非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の適切な導入と定期的モニタリング、呼吸リハビリテーションがなされ、身体機能管理として関節可動域訓練、姿勢管理、拘縮などの予防が行われている。薬物療法としてはステロイド投与による歩行可能期間の延長、全身管理としてACE阻害薬などを用いた心機能ケア、栄養指導、嚥下機能評価などが行われている。 とくに薬物治療について、2026年6月現在でステロイド、ビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)、そして、デランジストロゲン モキセパルボベクを用いることができる。デランジストロゲン モキセパルボベクのような遺伝子治療が求められる医学的背景として、病状管理の継続を前提としつつ、「根本原因(ジストロフィン欠損)へと直接アプローチする次世代治療の導入が臨床現場における長年の課題であった」と小牧氏は説明した。投与前、投与後でも適切なフォローが必要なデランジストロゲン モキセパルボベク デランジストロゲン モキセパルボベクによる治療の流れとしては、投与前のスクリーニングにおいて、抗AAVrh74抗体が陰性であることの確認に加え、禁忌となる特定の遺伝子変異(エクソン8および/または9の欠失)の除外が行われる。さらに、免疫抑制および有害事象予防を目的に、本薬剤の投与前よりプレドニゾロンの投与が開始される。投与後は免疫介在性筋炎などのモニタリングのために、投与後3ヵ月は継続的な血液検査が行われる。投与後は免疫抑制作用があるので基本は自宅療養となる。 本薬剤の承認のために国際共同第III相臨床試験EMBARK試験パート1が行われた。遺伝子変異が確認された4~7歳の歩行可能な男児125例を対象に、安全性と有効性を評価した国際共同第III相ランダム化二重盲検クロスオーバープラセボ対照試験。主要評価項目はノース・スター歩行能力評価(NSAA)総スコアのベースラインから52週までの変化量、主な運動機能に関連する副次評価項目は、床からの立ち上がり時間(TTR)、10m歩行/走行(10MWR)を評価した。 その結果、高いほど良好を示すNSAAによる総スコアについて、52週時点でデランジストロゲン モキセパルボベク群は2.57ポイントの向上だったのに対し、プラセボ群は1.92ポイントの向上だった(群間差:0.65、p=0.24)。また、副次評価項目であるTTR時間のベースラインから52週までの変化量では、デランジストロゲン モキセパルボベク群が-0.27秒、プラセボ群が0.37秒、群間差は-0.64秒だった(p=0.0025[名目上のp値])。 本剤では厳格な適格性確認とモニタリングが求められる継続的な管理が必要とされる。とくに投与後約90日間は肝酵素、心筋逸脱酵素、血小板などを週1回程度測定し、異常検知時はBRIDGE-NMD(神経筋疾患遺伝子治療安全性最適化ネットワーク)と即時連携がされる。その理由として、米国で非歩行患者への投与で急性肝不全が発生し、その後死亡した症例の報告があったためとされる。 わが国では、安全対策の強化として全国の患者、全国の医師と日本小児神経学会などに所属する医師をつなぎ、専門的な助言や情報提供・相談、患者への適正な治療の提供ができる体制を「Eコンサルテーション」として構築している。 今後は、レジストリを活用した長期的なエビデンス構築とともに、免疫介在性反応、海外の重篤な有害事象を集め、施設要件と適応の厳格化、BRIDGE-NMDによる全例事前評価、投与後の集中モニタリングなどを通じて、安全性リスクに対して構造的に対応する。 最後に小牧氏は、「固有のリスクを客観的に評価し、個人の経験則ではなく、国レベルの構造的なインフラによって安全性を管理する体制が稼働している。非常に今回良かった点としては、産官学連携がうまくいっていることであり、今後もしっかり安全性を重視しながら、この体制を維持していきたい」と抱負を述べ、講演を終えた。

63.

猫との同居は小児喘息を悪化させる?

 猫を飼うと子どもの喘息が悪化するのではないかとの懸念がある中、その関連は認められないとする研究結果が報告された。スウェーデンの3万人以上の子どもを対象にした新たな研究で、猫と同居していても、子どもや10代の若者の喘息の重症度は悪化しないことが示された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のResthie Putri氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Allergy」に6月10日掲載された。Putri氏はニュースリリースの中で、「猫と暮らす子どもと猫と暮らしていない子どもとの間で、喘息の重症度、増悪、喘息コントロール、肺機能に違いは見られなかった。飼っている猫の数や性別、年齢による喘息アウトカムの違いも確認されなかった」と述べている。 動物のフケが小児喘息の誘因となったとする親の報告がある一方で、猫の飼育と小児喘息との関連を検討した研究結果は一貫しておらず、明確な結論は得られていない。今回の研究では、スウェーデンの全国登録データを用いて、2006年から2020年の間に出生し、喘息または気道アレルギーと診断された4~17歳の子ども3万277人(年齢中央値9.5歳、女子38.6%)を対象に、猫の飼育と喘息アウトカムの関連を検討した。喘息アウトカムは2023~2024年に評価し、喘息増悪および中等度~重度喘息を主要評価項目とした。さらに、データが得られた対象者(1,428人)については、1秒量(FEV1)および喘息コントロールテスト(ACT)も評価した。 対象者のうち9.4%(2,862人)が自宅で猫を飼育していた(猫曝露群)。喘息発症後1年以内の処方薬に基づき重症度を分類したところ、中等度~重度の喘息を有する割合は、猫曝露群19.5%、非曝露群20.6%で、群間差は認められなかった。追跡期間中に喘息増悪が生じた割合は、猫曝露群3.3%、非曝露群3.5%(調整オッズ比1.12、95%信頼区間0.90~1.39)、また、中等度~重度の喘息が認められた割合は同順で9.6%、10.1%(調整オッズ比0.96、95%信頼区間0.84~1.10)であり、いずれのアウトカムについても有意差は認められなかった。さらに、FEV1zスコアとACTについても群間差は認められなかった。 Putri氏は、「これらの結果を説明し得る要因の一つとして、猫アレルゲンが家庭外の環境にも広く分布しており、日常的な曝露は珍しくないことが考えられる。自宅で猫を飼育していない子どもでも、学校や公共交通機関などの共有環境で猫アレルゲンに曝露している可能性があり、これが群間差が明確にならなかった一因なのかもしれない」と説明している。

65.

小児の脳発達、最も強く影響するのは社会経済的要因

 9〜10歳の小児約1万2,000人を対象にした新たな研究で、小児の脳の構造や働きに最も強く関係するのは世帯収入や居住地域の社会経済的環境などの社会経済的要因であることが示された。米ワシントン大学医学部Mallinckrodt Institute of RadiologyのNico Dosenbach氏らによるこの研究結果は、「Science」に6月11日掲載された。 脳全体の関連研究(BWAS)は、脳MRI画像を用いて、知能指数(IQ)や精神症状などの個人特性、あるいは社会経済的地位などの生活環境の個人差と、脳の機能や構造との関連を網羅的に評価する研究である。過去のBWASでは、主にIQや精神病理と脳との関連が評価され、環境や経験が脳の発達に及ぼす潜在的な影響は十分に考慮されていなかった。しかし近年の研究では、小児期の貧困や慢性ストレス、その他の逆境体験が、脳の発達や心身の健康に影響を及ぼすことが示されている。 そこでDosenbach氏らは、BWASを拡大することを目的に、脳MRI画像と12のカテゴリーに分類される649種類の要因との関連を評価した。12のカテゴリーは、社会経済的要因、スクリーンタイム、認知能力、文化・環境要因、社会人口統計学的特徴、身体的健康、精神的健康、社会的適応、物質使用・曝露、養育環境、パーソナリティ特性、医療歴であった。その上で、これらの要因が脳機能や脳構造にどのように反映されるのか、また、これまで報告されてきたIQスコアと脳との関連が真の関連なのか、それとも他の要因の影響を受けているのか、という2つの問いを検証した。評価には、9~10歳の小児1万1,878人のMRI画像が用いられた。 解析の結果、脳機能との関連が認められた上位40個の要因のうち37個、および脳構造との関連が認められた上位40個の要因のうち35個は社会経済的要因であった。それらの中で特に関連が強かったのは、世帯収入、持ち家の有無、地域の貧困率、交通機関へのアクセスであった。また社会経済的要因以外の要因では、睡眠、スクリーンタイム、ストレスの影響が強かった。 研究グループによると、特に影響を受けていたのは運動・感覚系の脳領域だった。これらの領域は、睡眠やストレスの日々の変動の影響を強く受ける。一方、認知機能や問題解決に関わる脳領域との関連は弱かった。このことから、社会経済的要因は思考に関わる脳領域を直接変化させるというよりも、身体感覚や運動に関わるシステムを介して子どもの脳に影響を及ぼしている可能性が考えられる。これらのことを踏まえて研究グループは、認知能力における脳の違いのように見えるものは、実際には知的能力の違いというよりも、疲労や慢性ストレスといった日常的な負担の違いを反映している可能性が高いとの見方を示している。 一方、過去の研究で示唆されていた脳とIQスコアとの関連については、社会経済的要因の影響を調整して解析すると、関連の約70%が統計学的に有意ではなくなった。さらに、社会経済的地位の高い家庭の小児のMRI画像を用いて解析すると、IQと脳の構造または機能との間に有意な関連は認められなかった。 論文の筆頭著者であるMallinckrodt Institute of RadiologyのScott Marek氏は、「小児の脳画像から、家庭の社会経済的地位や睡眠時間、スクリーンタイムは分かっても、IQについては、少なくとも社会経済的要因を調整すると推測することはできない」とし、IQは脳の生物学的特徴に直接根ざしたものではなく、環境要因の影響を強く受ける可能性があるとの見解を示している。その上で、「睡眠やストレスは改善可能な要因であり、それらを改善することで小児の脳の健康を向上できる可能性がある」と述べている。

66.

exa-cel細胞療法、小児の輸血依存性βサラセミア・鎌状赤血球症に有効/NEJM

 エクサガムグロゲン オートテムセル(exagamglogene autotemcel:exa-cel)は、体外でのCRISPR-Cas9法を用いた遺伝子編集により、BCL11A遺伝子の赤血球特異的エンハンサー領域で、胎児型ヘモグロビン合成を再活性化するように改変した自家CD34+造血幹細胞と前駆細胞を用いた細胞療法である。米国・Children’s Hospital at TriStar CentennialのHaydar Frangoul氏らは「CLIMB THAL-141試験」および「CLIMB SCD-151試験」において、exa-celの静脈内投与により、輸血依存性βサラセミアのすべての小児で輸血からの離脱が、鎌状赤血球症のすべての小児で重度の血管閉塞性発作の解消が達成され、その一方で全例にGrade3または4の有害事象が発現することを示した。研究の成果はNEJM誌オンライン版2026年6月11日号で報告された。5ヵ国の非盲検第III相試験 CLIMB THAL-141試験およびCLIMB SCD-151試験は、年齢5~11歳の小児患者を対象に、2022年5月に5ヵ国(カナダ、ドイツ、イタリア、米国、英国)の8施設で開始された進行中の非盲検第III相試験(Vertex PharmaceuticalsとCRISPR Therapeuticsの助成を受けている)。 CLIMB THAL-141試験の対象は、輸血依存性βサラセミアと診断され、スクリーニング前の2年間に、少なくとも100mL/kg体重/年の赤血球輸血を受けていた患者15例(平均年齢7.5[SD 2.2]歳、女児5例[33%])であった。CLIMB SCD-151試験の対象は、鎌状赤血球症と診断され、登録前の2年間に年2回以上の血管閉塞性発作を発症した患者11例(平均年齢8.5[SD 2.6]歳、女児6例[55%])だった。 被験者は、exa-cel投与前にブスルファンを用いた骨髄破壊的前処置を受けた。exa-celは、ブスルファン投与から2~7日目に、中心静脈カテーテルを介して1回、静脈内投与した。 主要エンドポイントは、輸血依存性βサラセミアでは12ヵ月以上持続する輸血からの離脱、鎌状赤血球症では12ヵ月以上持続する重度血管閉塞性発作の解消であった。全例で好中球の生着を達成、編集BCL11A遺伝子アレルも安定的に推移 exa-cel投与後の追跡期間中央値は、CLIMB THAL-141試験16.0ヵ月(範囲:2.2~32.1)、CLIMB SCD-151試験16.9ヵ月(7.6~33.1)であった。 CLIMB THAL-141試験では、全例で好中球の生着(生着までの期間中央値30日、範囲:19~38)が達成され、生着前に死亡した1例を除く全例で血小板の生着(51日、22~82)が得られた。また、CLIMB SCD-151試験では、全例で好中球の生着(28日、範囲:20~37)および血小板の生着(47日、24~78)が達成された。 16ヵ月以上追跡した輸血依存性βサラセミアの8例では、全例が12ヵ月以上持続する輸血からの離脱を達成した。残りの7例は評価不能であった。輸血非依存となった8例の平均輸血非依存期間は23.4ヵ月(範囲:13.3~28.5)で、輸血中止までの平均期間は1.3ヵ月(0.5~2.4)だった。 6ヵ月時の平均(±SD)胎児型ヘモグロビン濃度は10.8(±1.7)g/dLであった。編集されたBCL11A遺伝子アレルの割合の平均値は、3ヵ月以降は60%以上で維持されていた。6ヵ月時の骨髄のCD34+細胞における編集されたBCL11A遺伝子アレルの割合の平均値は77.4(±8.5)%で、これ以降は安定的に維持された。 一方、16ヵ月以上追跡した鎌状赤血球症の8例では、全例が12ヵ月以上持続する血管閉塞性発作の解消を達成し、残りの3例は評価不能だった。血管閉塞性発作が解消した8例の平均発作消失期間は19.0ヵ月(範囲:13.2~30.1)で、exa-cel投与後の連続する12ヵ月以上、本症による入院を認めなかった。 総ヘモグロビンに占める胎児型ヘモグロビンの割合の平均値は、3ヵ月時が38.1(±8.3)%、6ヵ月時は49.5(±6.4)%で、これ以降は45%以上で維持された。末梢血中の編集されたBCL11A遺伝子アレルの割合の平均値は、3ヵ月時が67.9(±7.3)%で、これ以降は66%以上で維持された。6ヵ月時の骨髄のCD34+細胞における編集されたBCL11A遺伝子アレルの割合の平均値は84.5(±4.9)%で、これ以降は安定的に維持された。2例に前処置関連の重度静脈閉塞性肝疾患 すべての小児患者で、少なくとも1件のGrade3または4の有害事象が発現した。輸血依存性βサラセミアの2例で重度の静脈閉塞性肝疾患を認めたが、いずれもブスルファンによる前処置に関連すると判定された。このうち1例が死亡した。 著者は、「この新しい自家遺伝子治療は、移植片対宿主病や移植片拒絶のリスクがないため移植後の免疫抑制療法を必要としない。これは、患者の約80%が適切な同種ドナーを持たない輸血依存性βサラセミアおよび鎌状赤血球症の小児にとって重要である」としている。

67.

卵の早期導入で乳児の卵アレルギーが減少

 乳児期の早い段階に卵を与え始めることで、卵アレルギーの発症を減らせる可能性があることが、新たな研究で示された。この効果は、特に湿疹のある乳児で顕著であったという。クイーンズランド大学(オーストラリア)小児アレルギー学・疫学分野のJennifer Koplin氏らによるこの研究結果は、「JAMA Pediatrics」に6月8日掲載された。 卵アレルギーは、多くの国で幼児に最も多く認められるIgE介在性食物アレルギーである。研究グループによると、2016年に発表されたメタアナリシスでは、複数のランダム化比較試験の統合解析により、生後6カ月までに卵を導入した場合、それ以降に導入した場合と比べて卵アレルギー発症リスクが約44%低いことが示された(リスク比0.56)。この結果を受けて、複数の国・地域のアレルギー予防ガイドラインは生後6カ月頃からの卵の導入を推奨するようになったという。これは、「食物アレルギーの原因となる卵などの食物の摂取は1~3歳頃まで避けるべき」としてきた1990年代~2000年代初頭の考え方とは大きく異なる。 オーストラリアでは2016年にアレルギー予防ガイドラインが改訂され、卵を含む主要なアレルゲンを生後1年以内に導入することが推奨された。今回の研究では、このガイドライン改訂の前後で、卵アレルギーの有病率がどのように変化したのかが検討された。対象は、メルボルンの予防接種センターで12カ月時の予防接種を受けた月齢11~15カ月の乳児で、ガイドライン改訂前(2007~2011年)と改訂後(2018~2019年)に同一の方法で募集された。最終的に、改訂前コホート5,276人(月齢中央値12.4カ月、男児50.8%)と改訂後コホート1,933人(月齢中央値12.5カ月、男児51.8%)を解析対象とした。 卵の導入時期の中央値は、改訂前コホートで生後8カ月、改訂後コホートで生後6カ月であった。既知のアレルギーのリスク因子を調整して解析した結果、卵アレルギーの有病率は、改訂前コホートで9.2%であったのが、改訂後コホートでは7.6%に低下していた(調整絶対差−1.6パーセントポイント、95%信頼区間−3.3~−0.005)。このような有病率の低下は、特に乳児期早期に湿疹を発症した児で顕著であり、卵アレルギーの有病率は34.6%から21.9%へ低下していた(調整絶対差−12.7パーセントポイント、95%信頼区間−20.0~−5.4)。 Koplin氏は、「本研究結果は、卵の早期導入を推奨する乳児栄養ガイドラインの改訂が乳児における卵アレルギー有病率の明確な低下につながったことを示すエビデンスである」と結論付けている。さらに研究チームは、「ランダム化比較試験の結果に基づいて改訂されたガイドラインは、適切に実施されれば、食物アレルギーの有病率低下につながる可能性があることを示唆する結果でもある」との見方も示している。 本研究には関与していない米ノースウェル・ヘルスのアレルギー・免疫学専門医であるGina Coscia氏はニュースリリースの中で、「免疫系に関して分かっていることは、アレルゲンが最初に皮膚を介して体内に入ると、体がアレルギー反応を起こすということだ。一方、食物アレルゲンが最初に口から摂取される場合には、そのアレルゲンに対して保護的な免疫応答が誘導される。これが、アレルギーを起こしやすい固形食品の早期導入が広く推奨されるようになった科学的根拠である。バリア機能が損なわれた皮膚に食物が接触する前に口から食物を摂取すれば、食物アレルギーを予防できる可能性がある」と説明している。 Coscia氏はまた、湿疹のある乳児でより大きな効果が見られたことは、この考え方をさらに裏付けるものだとしている。同氏は、「湿疹のある乳児は皮膚のバリア機能が低下しているため、食物アレルギーに対して特に脆弱であることが分かっている。このような乳児で食物アレルギー有病率の低下がより顕著に認められたことは極めて重要であり、アレルゲンの早期導入の重要性について、保護者への啓発をより強く後押しする根拠となる」と述べている。

68.

保護者の料理スキル、子どものレジリエンスや思いやり行動と関連

 子どもの心の健康には、家庭環境や親子関係が大きく関わることが知られている。今回、日本の小学生と保護者を対象とした縦断研究により、保護者の料理スキルが高いほど、子どものレジリエンス(困難への対処力)や向社会的行動(思いやり行動)が高い傾向にあることが示された。さらに、食に関する家庭習慣や親子の関わり、家族の結び付きが、この関連に一部関与している可能性も示唆された。研究は、東京科学大学大学院医歯学総合研究科公衆衛生学分野の谷友香子氏らによるもので、詳細は5月1日付の「BMC Psychology」に掲載された。 思春期は多くの精神疾患が発症し始める時期とされ、この時期にレジリエンスや向社会的行動を育むことは、その後のメンタルヘルスに重要と考えられている。これまで、家族の結び付きや親の関わりなどの家庭環境が、子どもの心理的発達に関与することが報告されてきた。なかでも食事や調理は、親子のコミュニケーションや家族のつながりを生む日常的な活動とされる。日本の「おふくろの味」という言葉にも家庭料理への情緒的価値観が表れている。こうした背景から、著者らは保護者の料理スキルと子どものレジリエンスや向社会的行動との関連を検討した。 著者らは、東京都足立区の全69公立小学校に通う小学4年生と保護者を対象とした「A-CHILD研究」のデータを解析した。2018年のベースライン調査参加者を2年間追跡(追跡率87%)し、最終的に3,641組を解析対象とした。保護者の料理スキルを4群に分け、2年後の小学6年時点における子どものレジリエンスや向社会的行動との関連を検討した。解析ではベースライン時点の心理指標や家庭背景因子を調整したほか、食に関する家庭習慣や親子の関わり、家族の結び付きが、この関連を媒介するかも解析した。 多変量解析の結果、ベースライン時点で保護者の料理スキルが高いほど、2年後の子どものレジリエンスおよび向社会的行動のスコアが高いことが示された。交絡因子を調整した解析では、料理スキルが最も低い群と比べ、最も高い群ではレジリエンススコアが8.75点高く(95%信頼区間〔CI〕 7.38~10.1)、向社会的行動スコアが9.51点高かった(95%CI 7.68~11.3)。これらの関連は、ベースライン時点の各スコアを調整後も維持され、料理スキルが高い群ほどスコアが段階的に高くなる傾向が認められた。さらに、この関連は世帯収入や子どもの性別によらず一貫していた。 また、保護者の料理スキルが高い群では、子どもの野菜摂取頻度や親子で一緒に料理する頻度、学校生活について親子で会話する頻度なども高かった。この関連について媒介分析を行ったところ、食に関する家庭習慣や親子の関わり、家族の結び付きが関連の一部を説明していた。 著者らは、「保護者の料理スキルは単なる調理技術ではなく、家庭内の関係性や生活習慣を通じて子どもの精神的発達に影響し得る『修正可能な家庭資源』であり、調理教育などの支援を通じて思春期のメンタルヘルス向上につながる可能性がある」と述べている。 なお、著者らは本研究の限界として、保護者1名による評価や自己報告バイアスの可能性、食事の質の未評価、残余交絡や因果関係の不確実性、COVID-19の影響、単一地域調査による一般化可能性の制約などを挙げている。

69.

幼少期の逆境体験が多いほど肥満リスク上昇、支える大人が保護因子の可能性

 幼少期の逆境体験が多いほど、小児期の肥満リスクが高いという関連が報告された。米ロサンゼルス小児病院のVictoria Goldman氏、米ジョージア大学のShana Adise氏らの研究の結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に12月4日掲載され、2月17日にジョージア大学からリリースが発行された。 この研究では、幼少期に経験した虐待や両親の離婚、貧困、ネグレクト、いじめなどの逆境的小児期体験(adverse childhood experiences;ACEs)が多いほど、BMIが有意に高いという関連性が示された。ただし、子どもの周囲に支えとなる大人が存在していれば、この関連性が薄れる可能性があるという。論文の筆頭著者であるGoldman氏は、「支えとなる存在は必ずしも家族である必要はない。教師やコーチ、あるいはほかの誰であれ、少なくとも1人の支えとなる大人がそばにいるだけで、子どもの成長に非常に大きな影響を与える可能性がある」と、大学発のリリースの中で語っている。 Goldman氏らは、米国で行われている小児の成長・発達に関する研究(Adolescent Brain and Cognitive Development〔ABCD〕Study:ABCD研究)のデータを用いて、ACEとBMIの関連を横断的に解析した。解析対象者数は5,435人で、女子が48.5%、平均月齢143.1±7.6月(約12歳)であり、過体重または肥満(BMIが85パーセンタイル以上)が34.4%だった。4人に3人(74.6%)が少なくとも1つのACEを経験しており、体験したACEの種類の数を意味するACEスコアは、平均1.8±1.7だった。なお、先行研究では、ラテン系やヒスパニック系の子どもではACEの多いことが報告されているが、本研究でも同様の傾向が認められた。ラテン系やヒスパニック系の子ども(全体の21.0%)のACEスコアは2.1±1.7であり、その他の子ども(79.0%)のスコア(1.7±1.7)より有意に高かった(P<0.01)。 BMIに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、保護者の教育歴など)を調整後、体験したACEが2種類増えるごとにBMIが約0.5高くなるという関連が認められた。より詳しくは、ACEスコアが1標準偏差に当たる1.7ポイント高くなるごとに、BMIが0.43(95%信頼区間0.30~0.57)増加した(P<0.001)。ただし、ラテン系やヒスパニック系の子どもの中で、「日常生活において、思いやりのある大人がそばに1人はいる」と答えた子どもたちは、たとえACEスコアが高くても、BMIが比較的低い傾向が観察された。この傾向は、解析対象全体では認められなかった。 研究者らは一連の結果を、「子どもたちのACEをスクリーニングして、必要なケアとサポートを提供する必要性が示された」と総括している。また論文の上席著者であるAdise氏も、「幼少期に体験したことに関連する健康課題を抱えたまま、子どもが成長していくことを、われわれは望んでいない。臨床でのスクリーニングは、それを防ぐための貴重な機会である」と強調。さらに、「子どもの支えとなる大人がそばにいるか否かという違いが、逆境体験のある子どもの健康に大きな影響を及ぼし得る」と付け加えている。

70.

新規作用機序の蕁麻疹経口薬「ラプシド錠25mg」【最新!DI情報】第66回

新規作用機序の蕁麻疹経口薬「ラプシド錠25mg」今回は、慢性蕁麻疹治療薬「レミブルチニブ(商品名:ラプシド錠25mg、製造販売元:ノバルティスファーマ)」を紹介します。本剤は慢性蕁麻疹の新規経口薬であり、既存治療で効果不十分な慢性蕁麻疹患者にとってより利便性の高い治療選択肢となると期待されています。<効能・効果>特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)の適応で、2026年6月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはレミブルチニブとして1回25mgを1日2回経口投与します。<安全性>副作用として、上気道感染、点状出血(いずれも1~5%未満)、紫斑、挫傷、斑状出血、鼻出血、歯肉出血(いずれも1%未満)、結膜出血(頻度不明)があります。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、蕁麻疹の症状を誘発する原因が特定されない蕁麻疹に用いられる治療薬です。ブルトン型チロシンキナーゼを阻害することで、蕁麻疹の症状を引き起こす物質や炎症を起こす物質の放出を抑えて症状を緩和します。 2.抗ヒスタミン薬の増量など適切な治療を行っても、日常生活に支障を来すほどの症状を繰り返して継続的に認められる場合に追加で使用します。 3.妊娠する可能性がある人は、この薬を使用している間および最後に使用してから1週間は、適切な避妊をしてください。 4.この薬を使用している間は生ワクチン(麻しん、おたふくかぜ、風しん、水痘など)の接種はできません。 <ここがポイント!> 慢性特発性蕁麻疹(CSU)は、明確な原因や誘因が特定できない蕁麻疹が6週間以上持続する疾患です。蕁麻疹による紅斑やそう痒、膨疹などの症状は、肥満細胞からヒスタミンなどの炎症性ケミカルメディエーターが放出されることによって引き起こされます。蕁麻疹の治療には、原因や悪化因子の除去・回避が重要となりますが、これらが不明なCSUでは薬物療法が治療の中心となります。薬物療法では、主に第2世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬が用いられますが、一部の患者では症状が残存することがあります。第2世代抗ヒスタミン薬で効果不十分な場合には、生物学的製剤であるオマリズマブやデュピルマブが治療の選択肢となります。しかしながら、これらの薬剤はいずれも皮下投与製剤であり、自己注射や通院に伴う身体的・心理的負担が生じる場合があります。レミブルチニブは、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)に対して高い選択性を示すBTK阻害薬です。本剤はIgEまたはIgG自己抗体によりFcイプシロン受容体Iの架橋が誘発されて生じるシグナル伝達を阻害することで、肥満細胞および好塩基球からのヒスタミンなどの炎症性メディエーターの放出を抑制します。本剤は1日2回服用の経口薬であるため、既存の生物学的製剤で必要となる自己注射や定期的な通院に伴う負担はなく、患者にとってより利便性の高い治療選択肢となり得ます。第2世代抗ヒスタミン薬で効果不十分な18歳以上のCSU患者を対象とした国際共同第III相試験(A2301試験、REMIX-1試験)において、主要評価項目である投与12週後の週間蕁麻疹活動性スコア(UAS7)のベースラインからの変化量は、本剤群で-20.02±0.716、プラセボ群で-13.79±0.980でした。本剤群とプラセボ群の群間差は-6.22(95%信頼区間:-8.45~-4.00)であり、本剤群はプラセボ群と比較して蕁麻疹症状(そう痒および膨疹)を統計学的に有意に低減しました(反復測定混合モデル、調整済みp<0.001)。

71.

子どものうそ、大半は将来の問題行動につながらず

 「犬が宿題を食べてしまった」「妹が先に始めた」「携帯電話の充電が切れていた」−−。子どもがつくこんなうそに、大人はいら立ちを覚えがちだ。しかし、子どもが時々うそをつくのはよくあることであり、大半は成人後の深刻な問題につながらないことが新たな研究で示された。一方で、うそをつく行動が持続したり、年齢とともに頻度が増加したりする子どもは、6歳時の攻撃性や12歳時の衝動性が高い傾向が見られ、若年成人期に反社会性パーソナリティ症の診断や犯罪歴との関連が認められたという。マギル大学(カナダ)教育・カウンセリング心理学教授のVictoria Talwar氏らによるこの研究結果は、「Development and Psychopathology」に5月27日掲載された。 Talwar氏は、「子どもが皆、同じような発達パターンでうそをつくわけではない。今回の研究では、大半の子どもが、経時的に見るとうそをつく頻度が低いままで推移するか、あるいは減少していた。ほとんどの子どもにとって、うそは問題行動ではない」とニュースリリースで述べている。 この研究では、長期追跡研究(Quebec Longitudinal Study of Kindergarten Children;QLSKC)の参加者であり、1986~1987年と1987~1988年にカナダ・ケベック州で幼稚園に通っていた3,017人の子どもが対象とされた。QLSKCでは、保護者と教師が、子どものうそをつく行動やその他の行動について、6歳から19歳まで継続的に報告していた。研究グループはそのデータを用いて、年齢が上がるにつれうそをつく頻度がどのように推移したか(うその軌跡)に基づき潜在的な軌跡クラスを抽出し、それぞれの軌跡と、攻撃性などの特性との関連を解析した。さらに、22歳時点で反社会性パーソナリティ症の診断の有無を評価するとともに、25歳までの犯罪歴を調査し、これらと軌跡クラスとの関連を検討した。 保護者と教師の評価を別々に分析した結果、いずれも3つの潜在的な軌跡クラスが認められた。教師による評価に基づく潜在的な軌跡クラスは、初期からうそをつく頻度が低いまま推移する「低頻度群」(73%)、初期の頻度が低頻度群より高く、その後も増加する「増加群」(22%)、初期には頻度が最も高いが、その後減少する「減少群」(5%)であった。これらの軌跡クラスと関連する要因について検討した結果、6歳時の攻撃性や12歳時の衝動性が高い子どもは、増加群または減少群に属しやすいことが示された。また、低頻度群は他の2群と比べて19歳時の攻撃性が有意に低く、25歳までの犯罪歴も少なかった。一方、増加群は低頻度群に比べて反社会性パーソナリティ症のリスクが高かったが、増加群と減少群との間に有意差は認められなかった。 保護者の評価では、全期間を通じて時々うそをつくレベルで推移する「時々うそをつく群」(58%)、6歳時からうそをつく頻度が低く、19歳までにはほとんどうそをつかなくなる「低頻度群」(30%)、6歳時には中程度の頻度でうそをつき、その後頻度が高くなるが急激に低下し、19歳までにほぼうそをつかなくなる「増加後に減少する群」(12%)の3つの軌跡クラスが認められた。これらの軌跡クラスと関連する要因について検討した結果、6歳時の攻撃性や12歳時の衝動性が高い子どもは低頻度群以外の群に属しやすく、特に時々うそをつく群では、19歳時の攻撃性や25歳までの犯罪歴、反社会性パーソナリティ症の基準該当数も他の2群より有意に多かった。 Talwar氏は、「この研究は、正常な発達過程と、早期の支援が有益となり得るパターンを区別して理解する第一歩となる。また、うそに対するスティグマ(偏見)を軽減するとともに、将来的な悪影響を防ぐための予防策の改善にも役立つ」と説明している。その上で、「長期間にわたってうそをつき続けたり、うその頻度が増加したりする場合、とりわけ攻撃性や衝動性を伴う場合には、単に罰を与えるのではなく、早期の支援や介入が必要であることを示すサインかもしれない」と付け加えている。

72.

尿検査で自閉症をスクリーニングできる可能性

 簡単な尿検査によって、自閉症スペクトラム症(ASD)の可能性が高い子どもを早期にスクリーニングできる可能性があることが、新たな研究で示された。研究グループは、「ASD児の腸内細菌叢に認められる特徴が、ASD児と定型発達児の識別に役立つ可能性がある」と述べている。米アリゾナ州立大学(ASU)Biodesign Center for Health Through Microbiomes工学教授James Adams氏らによるこの研究の詳細は、「Molecular Psychiatry」に5月26日掲載された。 過去の多くの研究において、一部のASD児では、p-クレゾール硫酸やインドキシル硫酸といった微生物由来代謝物(MDM)の尿中濃度が異常に高いことが確認されている。Adams氏らは、これらのMDMが脳腸相関を介して神経発達に影響を及ぼす可能性があり、また特徴的な腸内細菌叢のバランスの乱れ(ディスバイオシス)が多くのASD児に認められるのではないかという仮説を立てた。 この仮説を検証するために、今回の研究では、まず2~11歳のASD児52人と定型発達児47人(対照群)を対象に、尿中のMDM濃度を半定量的に解析した。その結果、90%のASD児において、少なくとも1種類のMDMの濃度が対照群で測定された最高値を上回っており、中には100~1,000倍もの高値を示すものも確認された。平均すると、ASD児では対照群の最高値を上回るMDMが3.3種類認められた。高値を示した代謝物には、フェニルアラニンやトリプトファンの代謝に関連する化合物が含まれていた。また、酵母や真菌の腸内活動と関連する化合物も確認された。 次に研究グループは、半定量解析で評価した17種類のMDMを用いて、対照群での最高値を上回るMDMが1種類でも存在する場合にASDスクリーニング陽性と判定する尿中スクリーニングシステム(MDM system)を構築した。その結果、ASD識別の感度が90%、特異度が100%であった。さらに、定量解析に基づく評価でも同様の傾向が確認され、感度78%、特異度100%であった。論文の筆頭著者であるASU Biodesign Center for Health Through MicrobiomesのChristina Flynn氏は、「この検査によって、ASDと診断されるリスクが高い子どもを特定できる可能性がある。また、すでに診断を受けた子どもについても、その子に合った治療方針を考えることで、より良い人生を送る支援につなげることができるだろう」とニュースリリースの中で述べている。 現在のASDの検査は子どもの行動観察に基づき行われるため、家族が子どもの診断結果を知るまで長期間を要する場合が多い。しかし、できるだけ早期に診断されることで、保護者はより早く適切な支援を開始できると研究グループは指摘する。 自身もASD児の親であるFlynn氏は、「この疾患に対するスティグマや恥の意識が少しでも軽減されることを願っている。診断をためらうのは、親が『自分は親として不十分だ』と感じたり、周囲から批判されていると感じたりすることが原因である場合もある。だが、実際はそうではない。尿検査でASDをスクリーニングできる可能性が示されたということは、ASDが生物学的な基盤を持つ状態であることを示唆している。このことによって、治療を受けることや早期に治療を開始することに対する親のためらいがなくなることを願っている」と話している。 ただし、研究グループは、この尿検査の有効性を確認するため、さらなる研究が必要であるとの見解を示している。

73.

7月6日 ワクチンの日【今日は何の日?】

【7月6日 ワクチンの日】〔由来〕1885年の今日、細菌学者のルイ・パスツール(フランス)が開発した狂犬病ワクチンが、少年に接種されたことを記念し、ワクチンの大切さを多くの人に知ってもらうことを目的に日本ベクトン・ディッキンソンが制定。関連コンテンツ今、知っておきたいワクチンの話麻しん・おたふくかぜ・風しんの3種混合生ワクチン「ミムリット皮下注用」【最新!DI情報】ワクチン接種率向上のための介入、有効な要素は?/BMJ新規インフルワクチンの第III相試験、mRNA-1010 vs.従来型ワクチン/NEJM市中肺炎で検出された肺炎球菌、ワクチンカバー率は?/感染症学会・化学療法学会

74.

日本における小児ADHDに対する薬物療法の現状、最も好まれる薬剤は?

 小児の注意欠如多動症(ADHD)は、日本において増加傾向にある神経発達障害である。ADHDの治療において、薬物療法は重要な治療法の1つであるにもかかわらず、ADHD治療薬の処方実態はこれまで十分に解明されていなかった。北里大学の鈴木 龍太郎氏らは、日本の17歳以下の小児および青年におけるADHD治療薬の処方パターンを調査し、性別、年齢、診療科といった患者背景に基づいて薬剤選択の傾向を分析した。BMC Psychiatry誌オンライン版2026年5月14日号の報告。 本研究は、日本の大規模健康保険請求データベースを用いたレトロスペクティブデータベース研究である。2018年4月~2023年8月のADHD治療薬の処方パターンを分析した。4種類のADHD治療薬(徐放性経口メチルフェニデート[OROS-MPH]、アトモキセチン[ATX]、グアンファシン[GXR]、リスデキサンフェタミン[LDX])のそれぞれについて、患者における処方割合、併用パターン、新規処方割合を、異なる人口統計学的グループおよび診療科別に検討した。処方割合の経時的変化を評価するため、Jonckheere-Terpstra傾向検定を用いた。精神科と非精神科での診療における単剤療法処方割合の時系列データを比較するために、マン・ホイットニーのU検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・2018~23年にかけて、OROS-MPHの処方割合は64.7%から47.5%へと有意に減少した。・一方、GXRの処方割合は19.3%から46.4%へと有意に増加した。・GXRは、女児および6~12歳の小児に最も多く処方されていた。・新規患者においては、2019年後半以降、GXRの処方割合がOROS-MPHの処方割合を上回り始め、2023年には新規処方の41.3%を占めるようになった。・単剤療法を受けている患者の割合は82.3%から79.6%に減少し、OROS-MPHとGXRの併用療法が最も一般的であった。 著者らは「日本では、GXRのADHD治療薬として使用頻度が増加しており、とくに女児および6~12歳の小児においてその傾向が顕著であった。2019年後半以降、GXRの新規処方数はOROS-MPHを上回っている。この傾向は、GXRが中枢神経刺激薬と同様の流通規制の対象とならないことや、他のADHD治療薬とは異なる独自の薬理作用機序を持つことに起因すると考えられる。治療選択肢が進化し続ける中で、処方慣行の継続的なモニタリングが求められる」としている。

75.

ピボキシル基を有する小児用抗菌薬、低カルニチン血症に伴う重篤な低血糖を「重要な基本的注意」に追記/厚労省

 2026年6月30日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、ピボキシル基を有する小児用抗菌薬4成分に対し、「重要な基本的注意」の項に低カルニチン血症に伴う重篤な低血糖に関する注意事項が追記された。対象となる一般名および主な販売名は以下のとおり。<対象医薬品>・セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物(商品名:フロモックス小児用細粒100mgほか)・セフジトレン ピボキシル(商品名:メイアクトMS小児用細粒10%ほか)・セフテラム ピボキシル(商品名:トミロン細粒小児用20%)・テビペネム ピボキシル(商品名:オラペネム小児用細粒10%)改訂後の内容「重要な基本的注意」の項が新設され、主に以下の内容が追記された。・小児(とくに乳幼児)において、本剤を含むピボキシル基を有する抗生物質の投与後に、低カルニチン血症に伴う重篤な低血糖、痙攣、脳症等を起こすおそれがある。・本剤の必要性を含む薬剤の選択や投与期間等については、最新のガイドライン等を参考にすること。・痙攣、意識障害等の低血糖症状が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう家族等に指導すること。 これまでも、ピボキシル基を有する小児用抗菌薬による低カルニチン血症に伴う低血糖については、すでに「使用上の注意」の「重大な副作用」および「小児等」の項において注意喚起がなされていた。しかしながら、近年においても当該薬剤との因果関係を否定できない症例が報告されており、直近の報告では死亡に至った症例も認められたことから、追加の安全対策措置の要否について検討が行われた。 低カルニチン血症に伴う低血糖は主に乳幼児で報告されており、症状が急速に進行し重篤化するおそれがある。専門委員の意見も聴取した結果、投与の必要性や期間について最新のガイドライン等を参照し適切に判断すること、また低血糖症状発現時の速やかな受診につなげる観点から、医療従事者より家族等へ適切な指導を促すことが適正使用に不可欠と判断され、今回の改訂に至った。

76.

ガソリンスタンドの近くに住む子どもはがんリスク上昇の可能性

 ガソリンスタンドの近くに住む子どもは、白血病やその他の小児がんを発症するリスクが高い可能性のあることが報告された。モントリオール大学(カナダ)のStephane Buteau氏らの研究の結果であり、詳細は「Environmental Pollution」に4月1日掲載された。 この研究から、自宅からガソリンスタンドまでの距離が近いほど、子どものがんリスクが高い傾向が示された。統計学的には明確な有意差は認められなかったものの、100m以内ではリスクの上昇が認められた。また、研究者らによると、蒸気回収システム(給油時などに気化したガソリンが大気中に放出される量を減らす装置)の設置を義務付ける条例がある地域では、リスク上昇は小さい傾向がみられたという。 Buteau氏は、「蒸気回収システムのような対策は、設置が容易でコストもあまりかからず、地域住民の有害成分への曝露量を減らして、健康面に大きなメリットをもたらす」と述べている。なお、本論文中の研究背景には、「ガソリンには白血病との関連が指摘されている既知の発がん性物質であるベンゼンが含まれている」と記されている。ベンゼンは、車両への給油時や、タンクローリーから地下タンクへガソリンを移す際に、蒸発して環境中に放出される。 Buteau氏らの研究では、カナダのケベック州の新生児82万4,414人の健康状態を追跡し、自宅の近隣のガソリンスタンドまでの距離と発がんリスクとの関連を検討した。対象は自宅から半径500m以内の全てのガソリンスタンドまでの距離の逆数を合計し、その四分位数で4群に分類された。自宅から500m以内にガソリンスタンドがない家庭の子どもを基準として、交絡因子(出生時の性別、母親の年齢と併存疾患、妊娠中の大気汚染や高圧送電線への曝露、都市化レベル、近隣の社会経済的地位など)を調整した上で、がんリスクを検討した。 その結果、第4四分位群(自宅から半径500m以内にあるガソリンスタンドの数が上位25%〔最も多い層〕)の子どもは白血病リスクが34%高く(ハザード比〔HR〕 1.34〔95%信頼区間1.01~1.77〕)、全てのがんのリスクも18%高い傾向がみられた(HR 1.18〔同1.00~1.38〕)。 また、自宅から100m以内にガソリンスタンドが存在する家庭の子どもは、500m以内にガソリンスタンドが存在しない家庭の子どもよりも、発がんリスクが高い傾向が認められた(白血病はHR 1.35〔0.74~2.47〕、全てのがんではHR 1.14〔0.80~1.63〕)。この傾向は、ガソリンスタンドに蒸気回収システムの設置が義務化されているモントリオール市を除外した場合により顕著だった(白血病はHR 1.55〔0.72~3.30〕、全てのがんではHR 1.42〔0.93~2.18〕)。 この結果を基にButeau氏は、「蒸気回収システムの設置義務がどの程度順守されているのかは、正確には分からない。しかし、この施策が実際に大気中への有害成分の排出量を減らすという仮説を裏付ける、説得力のある知見が得られた」と話している。 研究者らは、「本研究結果は、ガソリンからの排出物を小児がんの潜在的なリスク因子として考慮すべきであることを示唆している」と結論付けている。なお、Buteau氏は、「これまでの研究で、小児がんのうち遺伝的要因のみに起因するものはわずか5~10%であり、残りは他の要因、特に環境要因によるものだ」との解説を加えている。

77.

病名や薬物治療手順を一部変更、「蕁麻疹診療ガイドライン」改訂/日本皮膚科学会

 国際ガイドラインの改訂や病態解明の進展、新たな生物学的製剤の登場などを背景に、8年ぶりの改訂版となる「蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)」が2026年4月に公開された。病型分類および病名の一部変更や治療アルゴリズムのアップデートが行われた今回の改訂について、ガイドライン策定委員会の委員長を務めた福永 淳氏(大阪医科薬科大学)が第125回日本皮膚科学会総会で講演した。慢性蕁麻疹→慢性特発性蕁麻疹、アスピリン蕁麻疹→NSAID誘発蕁麻疹へ 蕁麻疹の病型について、特発性の蕁麻疹、刺激誘発型の蕁麻疹、血管性浮腫、蕁麻疹関連疾患という4つの大分類に変更はないが、その下の分類や病名がいくつか変更された。まず、特発性の蕁麻疹は「急性特発性蕁麻疹(発症後6週間以内)」と「慢性特発性蕁麻疹(発症後6週間超)」に、“特発性”という言葉を加える形に病名が変更された。 刺激誘発型の蕁麻疹は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーがアレルギー性蕁麻疹の一部であるという考え方に基づき、別分類されていた2018年版から、アレルギー性の蕁麻疹(食物依存性運動誘発アナフィラキシーを含む)という表記に変更された。またアスピリン蕁麻疹は、アスピリンでのみ生じるという誤解を生む可能性があることから、NSAID誘発蕁麻疹と改めた。 血管性浮腫に関しては、「マスト細胞起因性」および「非マスト細胞起因性」という中分類を新たに設け、非マスト細胞起因性の病型の1つとして「メディエーター不明の血管性浮腫」が追加された。 さらに、病態に関する記述も最新の知見をもとに大きくアップデートされた。その中で最大の特徴といえるのが、すべての文言において「肥満細胞」という名称を削除し、「マスト細胞」に統一した点である。「脂肪細胞(肥満に関わる細胞)」と混同することを避けるための配慮であり、疾患の正しい理解を促進する狙いがあるという。日本独自の疫学データを追加、慢性特発性蕁麻疹患者のボリュームゾーンは40〜50代 これまでの日本のガイドラインでは、蕁麻疹に関する詳細な疫学データが不足していたが、今回の改訂では新たに医療情報データベースなどを用いた研究結果が追加された。日本人の慢性特発性蕁麻疹の推定有病率は1.2〜1.6%であり、全国でおよそ200万人の患者が存在すると推測される。新規発症率はおよそ0.7〜0.8%である。 福永氏は、「慢性特発性蕁麻疹の有病率はヨーロッパ諸国と比較して、東アジアでより高い傾向がある。年齢分布を見ると、実は0〜9歳の小児期に新規発症の大きなピークが存在する。しかし、この年代の多くは自然治癒に向かうため、実際に医療機関で継続的な治療を要する患者のボリュームゾーンは40~50代となる。また、男女比は2対3で女性に多いことも明らかになった」と語った。網羅的検査の実施は推奨されない 検査に関しては、2018年版から「原因検索のための網羅的な検査」を推奨しない方向性であることに変更はないが、今回その姿勢をより明確に打ち出している。I型アレルギーの検査実施については、1型アレルギーが疑われる詳細な問診・病歴がある場合にのみ、疑わしい抗原に対して個別の検査を選択的に行うべきとされた(CQ1)。急性特発性蕁麻疹(CQ2)および慢性特発性蕁麻疹(CQ3)に対する検査についても、全例でルーチンに実施する必要はないとしたうえで、推奨文では以下のように記載された。急性特発性蕁麻疹:発熱などの全身症状を伴い,細菌やウイルスの感染が疑われる場合には血算・血清・生化学検査などの一般的な検査を行ってもよい慢性特発性蕁麻疹:非定型的な症例、難治性の症例などで、背景因子、合併症の存在が疑われる場合は抗ヒスタミン薬やオマリズマブの反応性を予測できる可能性があり、それらに応じた検査(血清総IgE値,甲状腺自己抗体,CRPの測定)を行ってもよいPROMs活用を推奨し、治療の第1目標を変更 今回のガイドライン策定委員会で全員一致で推奨に強い合意が得られたのが、UAS7(Urticaria Activity Score over 7 days)や、UCT(Urticaria Control Test)などの患者報告アウトカム尺度(PROMs:Patient-Reported Outcomes Measures)を用いた疾患コントロール状態の客観的評価である。治療の第1目標は、2018年版での「治療により症状が現れない状態」から「治療により生活に支障がない状態」と変更された。またその目安をUCTのスコアで表しており、第1目標(治療により生活に支障がない状態)がUCT12点以上、第2目標(治療により症状が現れない状態)がUCT16点と明記された。福永氏は、「日常診療のアセスメントの際には、ぜひUCTを活用して客観的な評価を行っていただきたい」と呼びかけた。薬物治療はStep 2にオマリズマブまたはデュピルマブ、ステロイドは「急性増悪時のみ」 治療手順については、急性と慢性でアルゴリズムが明確に分けられた。急性は主に救急外来などでの短期間の対応を想定している。薬物治療手順は、慢性特発性蕁麻疹について以下が示された。Step 1:第2世代抗ヒスタミン薬Step 2:Step1に追加してオマリズマブまたはデュピルマブStep 3:Step1に追加してシクロスポリンまたは試行的治療 2018年版でStep 2とされていたH2-拮抗薬、抗ロイコトリエン薬、トラネキサム酸については、国際ガイドラインやエビデンスレベルの低さなどを背景に、Step1の補助的治療としての位置付けに変更された。 また、Step 3に含まれていた副腎皮質ステロイドに関しては、「急性増悪時のみ」とされて、プレドニゾロン換算量0.2mg/kg/日未満で2週間以内の使用に限定することが明記された。

78.

病院機能集約化の賛否は年代・病床数・診療科で異なる?/医師1,000人アンケート

 地域医療構想に基づき、地域内に点在している複数の病院が有する特定の医療機能を拠点となる一部の病院に集め、医療資源を効率的に配置する病院機能の集約化が進められている。それにより、医療の質の維持・向上や、医療者の労働環境の改善が期待されるが、集約化の対象となる診療科に勤務する医師は好意的に捉えているのか。CareNet.comでは、20床以上の病院の内科、外科、小児科、産婦人科、腫瘍科、救急科勤務の医師1,000人を対象に「医療機関の経営状況や病院機能の集約化」に関するアンケートを行った(実施日:2026年5月18~19日)。施設規模が大きくなるにつれて経営状況が不良に Q1では、まず2025年度の勤務先の病院の経営状況について聞いた(単一回答)。全体では、「良好である」が31%、「良好ではない」が50%、「わからない」が19%であり、ちょうど半数の医師が経営状況に不安を感じていることが明らかになった。 病床数別では、20~99床の施設は「良好である(38%)」と「良好ではない(37%)」がほぼ同数であったが、「良好ではない」が100~199床では43%、200床以上では54%と、施設規模が大きくなるにつれて経営状況の悪化が目立った。年代別では、20~50代の医師の勤務先は「良好ではない」が53~54%と半数を超えていたが、60代以上では40%と低かった。これは、本調査の回答者は、年代が上がるにつれて、大規模病院から中小規模病院に勤務する割合が増えていたことに起因すると考えられる。 診療科別では、「良好ではない」は小児科(60%)、外科(57%)、救急科(55%)、腫瘍科(55%)で半数以上であり、全体(50%)よりも高い選択率であった。「良好ではない」が最も少ないのは内科(43%)であった。勤務先の経営状況への危機感が最も強いのは腫瘍科 Q2では、勤務先の今後の経営状況について危惧しているかどうかを聞いた(単一回答)。全体では「危惧している」が35%、「どちらかというと危惧している」が43%、「どちらかというと危惧していない」が16%、「危惧していない」が6%であり、「危惧している」+「どちらかというと危惧している」を合わせて78%が危機感を抱いていた。 なお、Q1で勤務先の病院の経営状況が「良好である」と回答した医師の「危惧している」+「どちらかというと危惧している」の割合は64%であったのに対し、「良好ではない」と回答した医師では92%とやはり危機感が顕著であった。 年代別の「危惧している」+「どちらかというと危惧している」の割合は、20~30代が80%、40代が84%、50代が81%と高かったが、60代以上になると68%と大きく減少した。病床数別では、施設規模が大きくなるほど「危惧している」+「どちらかというと危惧している」の割合が増えた(20~99床:70%、100~199床:74%、200床以上:80%)。 診療科別ではばらつきが大きく、「危惧している」+「どちらかというと危惧している」が最も少ないのは産婦人科(68%)であった。一方、最も多いのが腫瘍科(90%)で、「危惧している」が55%、「どちらかというと危惧している」が35%と、非常に強い危機感を抱いていることが示唆された。若い世代ほど病院機能の集約化に強く賛成 Q3では、地域医療構想に基づく病院機能の集約化に賛成か反対かを聞いた(単一回答)。全体では「賛成」が28%、「どちらかというと賛成」が54%、「どちらかというと反対」が16%、「反対」が2%であり、82%の医師が賛成派であった。すべての年代で「賛成」+「どちらかというと賛成」は75%を超えていたが、若い世代ほど「賛成」が多く、より強固な支持を集めていた(20~30代:33%、40代:32%、50代:29%、60代以上:18%)。 病床数別では、施設規模が大きくなるほど「賛成」および「どちらかというと賛成」のいずれも右肩上がりに増えていった。診療科別の「賛成」+「どちらかというと賛成」が最も多かったのは小児科と救急科(いずれも92%)であった。腫瘍科では「賛成」が50%に上り、とくに強い支持を集めていた。病院機能の集約化の最大の懸念は「医療アクセスの低下」 Q4では、病院機能の集約化の問題点があるとしたら何かを聞いた(複数選択[3つまで])。全体では、「医療アクセスの低下」「地域間の医療格差の拡大」「地域医療の弱体化」「大病院への負担集中」「医療者の偏在」「医療者の業務負担増加・働き方の悪化」「調整・統合に伴う医療機関の負担や対立」「患者の不安増大」「患者の医療機関選択の制限」と続いた。 「地域医療の弱体化」は若い世代ほど選択率が高く、「医療者の偏在」は年代が上がるにつれて選択率が高まった。「調整・統合に伴う医療機関の負担や対立」は20~30代および60代以上と比較して40代・50代で多く選ばれており、実務の中心を担う世代ならではの懸念がうかがえた。 病床数別では、「大病院への負担集中」は200床以上の施設の医師で選択率が高く、勤務先の施設では負担が増大すると予想しているようであった。「地域間の医療格差の拡大」「地域医療の弱体化」も施設規模が大きくなるほど多くなった。「医療アクセスの低下」「調整・統合に伴う医療機関の負担や対立」は20~99床で多かった。 診療科別では、「医療アクセスの低下」「医療者の偏在」が産婦人科で突出して多かった。救急科では「大病院への負担集中」「医療者の業務負担増加・働き方の悪化」、腫瘍科では「地域間の医療格差の拡大」「地域医療の弱体化」が全体を大きく上回っていた。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。 医療機関の経営状況や病院機能の集約化/医師1,000人アンケート

80.

夜間の熱波で喘息リスクが上昇

 猛暑は喘息増悪の引き金となる可能性があり、特に夜間の熱波は喘息増悪リスクの上昇と関連することが、新たな研究で示唆された。米ボルティモアの病院データを解析したところ、熱波の発生後には喘息関連で救急外来(ED)を受診する患者が増加することが明らかになったという。米ジョンズ・ホプキンス大学地球惑星科学教授のBenjamin Zaitchik氏らによるこの研究の詳細は、「GeoHealth」に5月6日掲載された。 研究では、猛暑が夜間まで続いた場合に喘息増悪リスクが特に高まることが明らかになったという。Zaitchik氏は、「夜間に屋外が暑いと、エアコンのないタウンハウス(長屋)の2階の寝室は息が詰まるほど蒸し暑くなる。これは生死に関わる問題だといえる。なぜなら、人によっては致死性の喘息増悪を経験する可能性があるだけでなく、生活の質(QOL)や幸福感、子どもが子ども時代を楽しむ力にも影響を及ぼすからだ」とニュースリリースの中で述べている。 研究グループは今回、2016~2022年の夏季にボルティモアで発生した成人819件、小児695件の喘息増悪によるED受診を対象に、患者の居住地ごとに、土地利用や都市構造を基に推定した高解像度の日中・夜間気温データを割り当てた。熱波の定義は研究により異なるため、本解析では、11種類の既存の熱波指標を用いた。これらの指標における熱波の判定には、ボルティモア空港で取得された1991~2020年の30年間の気温データの統計分布が基準として用いられた。その上で、これらのデータを基に、暑さと喘息増悪との関連を解析した。 その結果、地域レベルの気温データを用いた解析では、夜間の最低気温がその地域として異常に高い場合に、喘息関連のED受診との強い関連が認められた。小児患者の場合、夜間の熱波後に喘息増悪のリスクが28~38%上昇し、成人患者でも26~40%の上昇が見られた。また、小児患者では地域差が見られ、特に社会的に脆弱な地域ではリスク上昇が顕著だった。一方、空港の気象観測データを用いた熱波指標では、夜間よりも昼間の極端な暑さとの関連が示されたが、ボルティモア市の猛暑警報(コードレッド)に用いられている指標では有意な関連は認められなかった。 研究グループによると、連夜にわたって暑さに長時間さらされ続けると、喘息症状が増悪する可能性があるという。論文の上席著者であるジョンズ・ホプキンス大学医学部の喘息プレシジョンメディシンセンター長のMeredith McCormack氏は、「喘息の増悪や喘息発作は、咳や胸の圧迫感、息切れなどの症状の増加から始まることがある。EDを受診する前に、吸入薬の使用回数を増やすなどの方法を試す患者もいるだろう。そのため、ED受診を要するほど症状が悪化するまで、数日間のタイムラグが生じる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。 また、McCormack氏によると、夜間の暑さは身体が休息し回復する機会を奪うため、喘息患者に大きな負担を与えるという。さらに、身体の防御機能の一部は夜間に低下する。例えば、気管支拡張作用を持つアドレナリンの血中濃度は周期的に午前3時前後に自然に低下するため、この時間帯には喘息症状を抑える働きが弱まる。 研究グループは、今回の研究の結果を踏まえ、日中の気温予測に基づいた猛暑警報システムでは、本来の効果が発揮されていない可能性があるとの見方を示している。また、現在は、地域の気象局観測所で測定された単一の気温データが市全体の代表値として用いられているが、都市部では地域ごとに気温を測定する方が住民の助けになる可能性があるとも指摘している。論文の筆頭著者であるBianca Corpuz氏は、「暑さへの曝露量は地域によって大きく異なり、その違いは健康にも影響する。地域単位で気温を測定すると、広域の気象データでは捉えきれない傾向が見えてくる。各都市が脆弱な地域社会をしっかりと守るためには、こうした地域レベルの情報が極めて重要になる」と述べている。

検索結果 合計:3144件 表示位置:61 - 80