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妊娠中のST合剤予防投与、出生アウトカムを改善せず/NEJM

 ジンバブエ・Zvitambo Institute for Maternal and Child Health ResearchのBernard Chasekwa氏らが、同国で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Cotrimoxazole for Mothers to Improve Birthweight in Infants(COMBI)試験」において、妊娠中のトリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST合剤)の予防投与は、児の出生時体重を有意に増加させなかったことを報告した。有害な出生アウトカムの根底には、母体感染がある。妊娠中の抗菌薬投与は出生アウトカムを改善する可能性があるが、エビデンスにはばらつきがあり、また、試験の多くは高所得国で行われ、投与は特定の妊娠期間の短期間に限定され、検討されている薬剤も限られている。ST合剤は、サハラ以南のアフリカ諸国、とくにHIV感染者に使用され、薬剤耐性が広がっているものの有効性を維持している。しかし、妊娠中の予防投与が出生アウトカムを改善するかどうかは不明であったことから、研究グループは本検討を行った。NEJM誌2025年6月5日号掲載の報告。HIV感染の有無にかかわらず妊婦をST合剤群とプラセボ群に無作為化 試験は、マラリアが流行していないジンバブエ中央部に位置するシュルグウィ地区の産婦人科クリニック3施設において実施された。尿妊娠検査が陽性で、HIV感染状況が判明しており、ST合剤を現在投与されていないまたは適応のない妊婦を募集し、適格者をST合剤(960mg/日)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、妊娠14週以降出産または流産まで1日2回投与した。 主要アウトカムは出生時体重で、ITT解析を実施した。副次アウトカムは、低出生体重児(<2,500g)の割合、妊娠期間、早産(在胎37週未満)の割合、在胎不当過小児の割合、胎児死亡(流産または死産)、母親の入院または死亡、新生児の入院または死亡、および出生後6週時の年齢別体重・身長・頭囲のzスコアであった。出生時体重、その他の副次アウトカムに差はなし 2021年12月17日~2023年4月23日に計1,860例がスクリーニングを受け、適格者1,428例(76.8%)のうち1,000例が登録・無作為化された。ITT集団は、超音波検査で非妊娠子宮であることが確認された7例を除く993例(ST合剤群495例、プラセボ群498例)であった。 参加者のベースライン特性は、年齢中央値24.5歳、登録時妊娠週数中央値は20.4週、HIV感染者は131例(13.2%)で、ST合剤群495例中458例、プラセボ群498例中458例が試験薬の投与を受け、初回投与時の妊娠週数中央値は21.7週(四分位範囲:17.3~26.4)であった。 ITT集団において、出生時体重(平均値±SD)はST合剤群3,040±460g、プラセボ群3,019±526gであった(平均群間差:20g、95%信頼区間:-43~83、p=0.53)。副次アウトカムも、ほとんどが両群で同等であった。 有害事象の発現は両群で同程度であった。重篤な有害事象は、母親においてST合剤群31件(死亡例なし)、プラセボ群33件(死亡2例)、乳児においてそれぞれ22件(死亡14例)、20件(死亡12例)が報告された。

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乳児期の保湿剤使用でアトピー性皮膚炎の発症率低下、非高リスク集団ほど

 リスクに基づく選別を行っていない乳児集団における、アトピー性皮膚炎の1次予防を目的とした保湿剤(emollient)による介入を評価した研究はほとんどない。今回、リスクに基づく選別のない米国の代表的な乳児集団において、生後9週未満から毎日保湿剤を全身に塗布することで、生後24ヵ月時点におけるアトピー性皮膚炎の累積発症率が低下することが示された。米国・Oregon Health & Science UniversityのEric L Simpson氏らによるJAMA Dermatology誌オンライン版2025年7月23日号掲載の報告。 研究者らは、米国の4州におけるプライマリケア診療ネットワーク(practice-based research networks)に属する25の小児科・家庭医診療所から、1,247組の乳児と保護者を対象に、プラグマティック無作為化分散型臨床試験を実施した。参加者の募集は2018年7月~2021年2月に行い、追跡調査は2023年2月までに完了した。 乳児と保護者のペアは、1)生後9週目未満までに毎日の全身への保湿剤塗布を開始した保湿剤使用群、あるいは2)保湿剤の塗布を控える対照群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、生後24ヵ月までに患者の診療記録に記載された医師診断によるアトピー性皮膚炎の発症。参加者は3ヵ月ごとに電子アンケートに回答し、有害事象の報告やアトピー性皮膚炎診断の有無を研究チームに通知した。訓練を受けた研究コーディネーターが、参加者の診療記録から情報を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・1,247人の乳児のうち、553人(44.3%)が女児で、無作為化時の平均(SD)日齢は23.9日(16.3)であった。・24ヵ月時点でのアトピー性皮膚炎の累積発症率(SE)は、保湿剤使用群で36.1%(2.1)、対照群で43.0%(2.1)であり、相対リスク(RR)は0.84(95%信頼区間[CI]:0.73~0.97、p=0.02)であった。また、アトピー性皮膚炎の非高リスク集団では、より高い効果がみられた(RR:0.75、95%CI:0.60~0.90、p=0.01)。・また、家庭内に犬がいる場合には保護効果が有意に増強された(RR:0.68、95%CI:0.50~0.90、p=0.01)。・皮膚に関連する有害事象の発生率に群間差は認められなかった。

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ファイザー・ビオンテック、LP.8.1対応コロナワクチンの承認取得

 ファイザーおよびビオンテックは8月8日付のプレスリリースにて、オミクロン株JN.1系統の変異株であるLP.8.1に対応した新型コロナウイルスワクチンについて、8月7日に厚生労働省より製造販売承認を取得したことを発表した。承認されたのは「コミナティ筋注シリンジ12歳以上用」「コミナティRTU筋注5~11歳用1人用」「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用3人用」の3製品。これらのワクチンは2025~26年秋冬シーズンで使用される予定。 今回の承認は、両社が開発した新型コロナワクチンの安全性と有効性を示した臨床、非臨床およびリアルワールドデータを含むさまざまなエビデンスに基づいている。申請データには、品質に係るデータに加え、LP.8.1対応ワクチンが、XFG、NB.1.8.1、LF.7、および現在流行している他の変異株に対し、昨年度のJN.1対応ワクチンより優れた免疫反応を示した非臨床試験データなどが含まれている。 また、ワクチンの抗原株の変更と合わせて、以下の承認事項も変更された。・有効期間の延長:冷蔵(2~8℃)において8ヵ月から12ヵ月へ延長・包装単位の追加:1シリンジ包装に加え、5シリンジ包装を追加

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早過ぎる子どものスマホデビューは心の発達に有害

 子どもの心身の健康を大切に思うなら、子どもがティーンエイジャーに成長するまではスマートフォン(以下、スマホ)は与えないほうが良いかもしれない。新たな研究で、18~24歳の若者のうち13歳未満でスマホを与えられた人では、自殺念慮、攻撃性、現実からの乖離感、感情調節困難、自己肯定感の低下などのリスクが高いことが示された。米Sapien LabsのTara Thiagarajan氏らによる詳細は、「Journal of Human Development and Capabilities」に7月20日掲載された。 Thiagarajan氏は、「われわれのデータは、早期からのスマホの所持と、それに伴うソーシャルメディアの利用が、成人期早期の心の健康とウェルビーイングに大きく影響することを示している」とジャーナルの発行元であるTaylor & Francis社のニュースリリースの中で話している。その上で、「当初は研究結果が強力であることに驚いた。しかし、よく考えてみれば、発達段階にある若い心は、その脆弱性や人生経験の少なさからオンライン環境からの影響を受けやすいというのは当然のことかもしれない」と述べている。 Thiagarajan氏らは今回、現代社会がメンタルヘルスに与える影響を評価することを目的としたグローバル・マインド・プロジェクト(Global Mind Project)の一環として、世界の10万人以上の若年成人のデータを分析した。参加者は、社会的、感情的、認知的、身体的なウェルビーイングの状態を示す「心の健康指数(Mind Health Quotient ;MHQ)」を評価するための質問票に回答していた。本研究では、1997~2012年に生まれ、幼少期からスマホとソーシャルメディアのある環境で育った「Z世代」に着目して解析を行った。 その結果、13歳になる前からスマホを所持していた若年成人は、13歳以降にスマホを持つようになった人と比べてMHQ(Mental Health Quotient)のスコアが低く、自殺念慮に加えて、攻撃性や現実からの乖離感、幻覚などの深刻な症状が多く報告されていた。こうした傾向は、スマホを所持し始めた年齢が低いほど顕著であった。例えば、5、6歳でスマホを持つようになった女性の約半数(48%)が自殺念慮を報告していたのに対し、13歳時からスマホを持ち始めた女性ではその割合は28%にとどまっていた。さらに、低年齢時からスマホを持っていた女性は、セルフイメージや自己肯定感が低く、自信がなく、感情面のレジリエンス(立ち直る力)も弱い傾向が認められた。一方、低年齢時からスマホを持っていた男性では、精神的な安定性や自己肯定感、共感力が低い傾向が見られた。 これらの結果の原因を探ったところ、低年齢からのスマホの所持と早期成人期のメンタルヘルス状態の悪化との関連の約40%は早期のソーシャルメディア利用により説明できることが示された。また、ネットいじめ(10%)、睡眠の乱れ(12%)、不良な家族関係(13%)などもメンタルヘルス悪化の要因として挙げられた。 Thiagarajan氏は、「これらの結果とともに、世界各国で初めてスマホを手にする年齢が13歳未満となっている現状を踏まえ、われわれは政策立案者に飲酒や喫煙と同様の予防的アプローチを採用することを強く要求する。具体的には、13歳未満でのスマホ利用の制限、デジタルリテラシー教育の義務化、企業の説明責任の徹底を求める」と提言している。 なお、Thiagarajan氏によると、フランス、オランダ、イタリア、ニュージーランドなどでは、すでに学校でのスマホ使用を禁止または制限しているという。また米国でも、州によっては学校でのスマホの使用を制限または禁止する法律が可決されている。

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第255回 「専門医シーリング」、医師の偏在解消に効いてる?-偏在是正と医師のキャリアを読み解く

お盆休みに入り、のんびり過ごされている会員の先生も多いかと思いますが、今回は医師の偏在を左右するお話についてお届けします。さて、「専門医シーリング」って聞くと当事者の専攻医や研修医以外には関係がない印象がありますが、実は医師の働き方や進路に直結する重要な制度です。最近の審議会資料をもとに、医師偏在やキャリア形成の今後を一緒にのぞいてみましょう。同じ診療科にどれだけ残る? 男女差が見える「生残率」最初は、7月24日に開かれた医道審議会医師分科会医師専門研修部会で示された「診療科別生残率」や「病院・診療所勤務医師の平均勤務時間」です。これらは厚生労働科学特別研究「専門研修の募集定員設定のための都道府県別・診療科別の医療ニーズの算出に係る研究」の結果から引用されており、各診療科の医師の労働時間、専門医としてどれくらい同じ診療科を続けられるかという興味深いものでした。ここで述べられている診療科別生残率とは、医籍登録から3年後をスタートにして、「この診療科に何年残っているか」を年ごとに追ったもので、医師のキャリア選択と定着の実態を示唆する重要な指標となります。男女別に比較すると、生残率には顕著な差が見られており、とくに女性医師の離脱率の高さが一部の診療科では顕著であることが読み取れます(図1、2)。図1 診療科別生残率(男性)画像を拡大する図2 診療科別生残率(女性)画像を拡大するまず、外科系診療科(外科、整形外科、脳神経外科など)では、男性の生残率が比較的高いのに対し、女性はキャリア早期から離脱する傾向があり、登録後5〜10年で大きく低下する傾向があります。これには、当該診療科の医師の長時間労働や当直の頻度、技術習得のハードルの高さなどが背景にあると考えられます。加えて、外科系は男性医師が多いことから、女性にとって目標となるようなロールモデルが乏しく、育児や家庭を抱えながらキャリアを継続する意欲が阻害される環境要因も影響していると考えられます。その一方で、皮膚科や眼科、小児科などでは男女の生残率に大きな差が少なく、むしろ女性の方が高くなる診療科もあります。これらの診療科は、比較的勤務時間が安定しており、子育てや家庭生活との両立が可能とされるため、女性医師にとって継続しやすい職場環境が整っている可能性があります。近年では女性医師の数自体が増加しており、女性向きの診療科を選択をする傾向をさらに強めていると考えられます。興味深いのは、内科も例外ではなく、男女差が見られる点です。女性は一定期間までは生残率が高いものの、10年以降に大きく減少します。これは、内科領域でも勤務時間や責任の重さが影響していることに加え、専門医取得後に勤務形態の見直しや転科、開業を選択するケースがあるためと考えられます。このような傾向を踏まえると、専門医シーリング制度を運用する際には、単に医師数の需給だけでなく、性別による定着率の違いを考慮することが不可欠であると思われます。とくに女性医師のキャリア継続支援(時短勤務や復職支援、当直負担軽減など)は、診療科ごとの医師数の安定供給を図る上で欠かせない政策的課題といえるでしょう。医学部定員と専門医シーリングの今後次は8月6日に開催された「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」の『医師の確保・偏在対策における医学部臨時定員の方針等について』です。35歳未満医師数の割合と医師偏在指標(図3)を見ると、都道府県別の医療施設従事医師数に占める35歳未満医師数の割合では、栃木、千葉、東京、岡山、和歌山が高く、医師多数県であっても熊本、徳島は15%未満と低くなっています。図3 35歳未満医師数の割合と医師偏在指標画像を拡大するこのような医師偏在の対策の一環として導入された医学部の臨時定員制度は、今後も地域偏在の是正と専門医制度の地域定着強化のため、運用の見直しと恒久定員内での地域枠強化が図られる見通しです。とくに女性医師の働き方と都市部への若手集中という2つの課題は、制度設計において避けて通れない論点となっています。女性医師への配慮として、将来の出産・育児などによる勤務形態の変化や離職を前提としたキャリア設計が重要です。検討会では、恒久定員内への地域枠導入の加速が示されていますが、女性医師の地域定着率を高めるためには、地元出身女性を対象とした地域枠や、地域に戻りやすい仕組み作りがカギとなりそうです。たとえば柔軟な研修や、地元での復職を後押しする制度などがあると、安心して戻れるはずです。一方、若手医師の都市集中は依然として解消が難しい問題であり、現行の専門医シーリング制度では東京や大阪などの「医師多数県」において募集定員を制限する方針が維持される見通しです。今後のシーリング枠の改定で、足下の医師数に加えて「35歳未満医師割合」や「75歳以上医師割合」といった年齢構成指標を取り入れる方針が示されており、若手の集中度が高い都道府県では、より厳格な定数制限が導入される可能性があります。また、資料からは、医師多数県から医師少数県への「恒久定員の移し替え」や「地元大学を持たない県への大学間地域枠の設置」が打ち出されており、都市部に集まりやすい若手医師の進路誘導が進められる見込みです。さらに、都道府県知事が大学に地域枠設置を要請できる法制度がすでに整備されており、今後はより強制力を伴う運用が想定されます。総じて、今後のシーリング制度と医学部定員政策は、(1)女性医師のキャリア継続支援と、(2)若手医師の地域定着強化を両輪として再構築されていくことになります。今後、女性医師の働き方の多様化や、若手医師の都市集中といった課題に向き合う制度設計が求められます。とくに、専門医制度や人事交流を通じて、「地域で育て、地域で活躍できる」そんなキャリアの選択肢がもっと広がれば、働き方も未来も変わってくるかもしれません。 参考 1) 2025年度プログラム募集シーリング数(日本専門医機構) 2) 令和9(2027)年度のシーリングについて[医道審議会医師分科会医師専門研修部会](厚労省) 3) 厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)令和6年度 総括研究報告書 専門研修の募集定員設定のための都道府県別・診療科別の医療ニーズの算出に係る研究(同) 4) 医師の確保・偏在対策における医学部臨時定員の方針等について(同)

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小児白血病の最新診療

小児科領域新シリーズ誕生!裏付けされたKnowledge&Skillで日常の小児科診療に自信を持つ「小児診療 Knowledge & Skill」第1巻特色は小児科診療に不可欠な8テーマから構成。各分野のエキスパートが培った臨床眼により小児科診療の本質を展開。エビデンスとエクスペリエンスを融合させた「知(knowledge)」と「技(skill)」により、最適な方針を提供。箇条書きでテーマの要点をまとめ、脚注やコラムで専門用語の解説、二次元コードにより関連サイトへリンク、キーポイントの詳細情報、逸話などを収載。冒頭のQuick Indexで、特異的な切り口でテーマの概略を紹介。となっている。第1巻で取り上げた小児白血病はコモンな疾患ではない。白血病を疑ったときは速やかに専門医に紹介しなければならない。それでも知れば身近な疾患になる。重篤な疾患に特定の遺伝子が胎生期から関わっていることは、ポストゲノム時代を迎えたいま、揺るぎない事実として眼前にあり、小児科学ほど分子生物学に親和性が高い領域はない。小児白血病を通して拓かれたmolecular pathobiologyの扉が小児診療の本質を提供してくれる。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児白血病の最新診療定価9,350円(税込)判型B5判(並製)頁数216頁発行2025年7月総編集加藤 元博(東京大学)専門編集富澤 大輔(国立成育医療研究センター)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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「風邪のときのスープ」に効果はある?

 風邪症候群や咽頭炎、インフルエンザ様疾患などの急性気道感染症の症状を和らげるために、温かいスープを飲むと良いとされることがある。この伝統的な食事療法の有効性を検討することを目的に、英国・University of the West of ScotlandのSandra Lucas氏らが、システマティックレビューを実施した。その結果、スープの摂取は、急性気道感染症の症状緩和や炎症抑制をもたらす可能性が示唆された。本研究結果は、Nutrients誌2025年7月7日号で報告された。 本研究では、急性気道感染症に対するスープの効果を評価した研究を対象として、システマティックレビューを実施した。2024年2月までに公表された論文を対象に、MEDLINE、Embase、Scopus、CINAHL、CENTRAL、Cochrane Database of Systematic Reviewsなどを用いて文献を検索した。適格基準を満たした4件の無作為化比較試験(対象342例)を抽出し、メタ解析は行わずナラティブ統合を行った。解析対象となった研究で用いられたスープは、鶏肉ベースのスープに野菜やハーブを追加したものが主なものであった。評価項目は、症状重症度、罹病期間、炎症マーカーなどとした。 主な結果は以下のとおり。・3試験において、スープ摂取群は鼻閉、咽頭痛、咳といった急性気道感染症の症状がわずかながら軽減した。・1試験において、スープ摂取群は罹病期間が1~2.5日短縮した。・2試験において、スープ摂取群でC反応性タンパク(CRP)、IL-6、TNF-αといった炎症マーカーが低下する傾向がみられた。・小児を対象とした1試験において、免疫グロブリン(IgA、IgG、IgM)値の上昇など、免疫機能の改善を示唆する結果が得られた。 著者らは、「スープは水分補給、栄養補給、抗炎症作用の相乗効果により、急性気道感染症の症状軽減、全体的な健康の維持に寄与する可能性がある。ただし、研究間の異質性や標準化されたプロトコールの欠如などの限界が存在するため、より厳密かつ多様な研究による検証が求められる」とまとめた。

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8月7日 鼻の日【今日は何の日?】

【8月7日 鼻の日】〔由来〕「は(8)な(7)」の語呂合わせから、鼻の病気を減らすことを目的に、1961年に日本耳鼻咽喉科学会が制定。同会では、この日に全国各地で専門医の講演会や無料相談会などを行っている。関連コンテンツ長寿の村の細菌がうつ病や鼻炎に有効【バイオの火曜日】鼻血を繰り返す患児、最初にするべき検査は?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】最新の鼻アレルギー診療ガイドラインの読むべき点とは/日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会1日1杯の緑茶が花粉症を抑制か~日本人大規模コホート鼻茸を伴う難治性慢性副鼻腔炎、テゼペルマブ追加が有効/NEJM

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胃腸炎を伴う重度急性栄養失調児、経口補液vs.静脈内補液/NEJM

 胃腸炎を伴う重度急性栄養失調児に対して、経口補液療法と静脈内補液療法の間に、96時間時点の死亡率に関して差異があるとのエビデンスは認められなかった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKathryn Maitland氏らGASTROSAM Trial Groupが非盲検優越性無作為化試験の結果を報告した。国際的な勧告では、体液過剰への懸念から重度急性栄養失調児への静脈内補液療法は推奨されていないが、その懸念を裏付けるエビデンスは不足していた。一方で、現行勧告下での高い死亡率から、静脈内補液療法戦略を選択肢の1つとすることによるアウトカム改善への可能性が期待されていた。NEJM誌オンライン版2025年6月13日号掲載の報告。アフリカの4ヵ国6病院で生後6ヵ月~12歳児対象の無作為化試験 研究グループは、アフリカの4ヵ国6病院(ウガンダ2、ケニア2、ニジェール1、ナイジェリア1)で、静脈内補液療法(急速または緩徐)が標準的な経口補液療法と比べて死亡率低下と結び付くかを評価する、治験担当医師主導の要因デザインを用いた多施設共同非盲検無作為化優越性試験を実施した。 胃腸炎かつ脱水症状を伴う重度急性栄養失調の生後6ヵ月~12歳児を、2対1対1の割合で次の3種類の補液戦略のいずれか1つを受けるよう割り付けた。(1)経口補液+ショックに対する静脈内ボーラス投与(経口群)、(2)乳酸リンゲル液100mL/kgを3~6時間で投与+ショックに対するボーラス投与(急速静注群)、(3)乳酸リンゲル液100mL/kgを8時間で投与(緩徐静注群) 主要エンドポイントは、96時間時点の死亡率であった。96時間時点の死亡、経口群8%、静注群7% 2019年9月2日~2024年10月27日に計272例が無作為化された(経口群138例、急速静注群67例、緩徐静注群67例)。被験児の年齢中央値は生後13ヵ月であり、28日間追跡調査(最終フォローアップ)を受けた。4例(1%)が中途で脱落したが、全例をすべての解析に組み入れた。経鼻カテーテルを用いた補液が、経口群126/135例(93%)、静注群82/126例(65%)で行われた。ショックに対するボーラス投与が入院期間中に行われたのは経口群12例(9%)、急速静注群7例(10%)、緩徐静注群はなしであった。 96時間時点で死亡は、経口群11例(8%)、静注群9例(7%)(急速群5例[7%]、緩徐群4例[6%])で報告された(リスク比:1.02、95%信頼区間[CI]:0.41~2.52、p=0.69)。 28日時点における死亡は、経口群17例(12%)、静注群14例(10%)(急速群8例[12%]、緩徐群6例[9%])であった(ハザード比:0.85、95%CI:0.41~1.78)。 重篤な有害事象の発現は、経口群32例(23%)、急速静注群14例(21%)、緩徐静注群10例(15%)で報告された。肺水腫、心不全、体液過剰のエビデンスは認められなかった。

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インフルエンザ脳症、米国の若年健康児で増加/JAMA

 米国では2024~25年のインフルエンザシーズン中、大規模な小児医療センターの医師たちから、インフルエンザ関連急性壊死性脳症(IA-ANE)の小児患者数が増加したと報告があった。このことから、同国・スタンフォード大学のAndrew Silverman氏らIA-ANE Working Groupは、全米を対象とした直近2シーズンの症例集積研究を実施。主として若年で直前までは健康であった小児の集団において、IA-ANEの罹患率および死亡率が高かったことを明らかにした。急性壊死性脳症(ANE)は、まれだが重篤な神経系疾患であり、疫学データおよび治療データは限られていた。JAMA誌オンライン版2025年7月30日号掲載の報告。2024~25年インフルエンザシーズンのANE小児を調査 研究グループは、IA-ANEと診断された米国の小児における臨床症状、介入およびアウトカムを明らかにするため、ANEと診断された小児を対象に多施設共同集積研究にて長期追跡調査を行った。 症例募集は、学会、公衆衛生機関を通じたほか、同国内76の大学医療センターの小児専門医に直接コンタクトを取り、2023年10月1日~2025年5月30日の症例の提供を要請して行った。 対象基準は、放射線学的な急性視床障害および臨床検査によりインフルエンザ感染が確認された21歳以下の急性脳症患者とした。 主要アウトカムは、主な症状、ワクチン接種歴、検査値および遺伝学的所見、介入、臨床アウトカム(修正Rankinスケールスコア[0:症状なし、1~2:軽度障害、3~5:中等度~重度障害、6:死亡]など)、入院期間、機能的アウトカムであった。39例(95%)がインフルエンザAに感染 提供された58例のうち、23病院からの41例(女児23例、年齢中央値5歳[四分位範囲[IQR]:2~8])が対象基準を満たした。31例(76%)は重大な病歴を有していなかったが、5例(12%)は複雑な疾患を有していた。 主な臨床症状は、発熱38例(93%)、脳症41例(100%)、けいれん発作28例(68%)であった。39例(95%)がインフルエンザA(A/H1pdm/2009:14例、A/H3N2:7例、サブタイプ不明:18例)、2例がインフルエンザBに感染していた。 検査所見で異常値が認められたのは、肝酵素の上昇(78%)、血小板減少症(63%)、脳脊髄液タンパク質の上昇(63%)などであった。 遺伝子検査を受けた32例(78%)のうち、15例(47%)にANEリスクに関連する可能性がある遺伝的リスクアレルがあり、11例(34%)はRANBP2変異を有していた。季節性インフルエンザワクチンの接種を受けていたのは6例(16%)のみ ワクチン接種歴が入手できた38例のうち、年齢に応じた季節性インフルエンザワクチンの接種を受けていたのは6例(16%)のみだった。 ほとんどの患者は複数の免疫調節療法を受けていた。メチルプレドニゾロン(95%)、免疫グロブリン静注(66%)、トシリズマブ(51%)、血漿交換(32%)、anakinra(5%)、髄腔内メチルプレドニゾロン(5%)などであった。 ICU在室期間中央値は11日(IQR:4~19)、入院期間中央値は22日(7~36)。11例(27%)が症状発症から中央値3日(2~4)で死亡し、主な死因は脳ヘルニア(91%)であった。90日間の追跡調査を受けた生存児27例のうち、17例(63%)が中等度以上の障害(修正Rankinスケールスコア3以上)を有していた。

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モデルナのLP.8.1対応コロナワクチン、一変承認を取得

 モデルナ・ジャパンは8月5日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルスワクチン「スパイクバックス筋注シリンジ 12歳以上用」および「スパイクバックス筋注シリンジ 6ヵ月~11歳用」について、2025~26年秋冬シーズン向けのオミクロン株JN.1系統の変異株LP.8.1対応とする一部変更承認を、8月4日に厚生労働省より取得したことを発表した。6ヵ月~11歳用については、生後6ヵ月以上4歳以下を対象とした追加免疫に関する一部変更承認も7月29日に取得した。 これらの承認により、2025年10月から開始予定の定期接種の対象者だけでなく、生後6ヵ月以上のすべての世代で、LP.8.1対応の本ワクチンを接種することが可能となる。12歳以上用は定期接種開始前の9月中、6ヵ月~11歳用は10月に供給開始の予定。 2025~26年秋冬シーズンの定期接種の対象者は、65歳以上、および60~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人となっている。定期接種は各自治体において設定された自己負担額が発生する。 厚生労働省が8月1日付で発表した新型コロナの発生状況では、2025年第30週(7月21~27日)の定点報告数は全国平均で1医療機関当たり4.12人となり、沖縄県を除く全都道府県で増加している。

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小児の熱中症【すぐに使える小児診療のヒント】第5回

小児の熱中症暑い日が続いていますね。今回は小児の熱中症についてお話します。近年、「熱中症」という言葉の認知度は大きく高まりました。学校や保育施設では暑さ対策が徹底され、保護者の多くにも「熱中症=命に関わる疾患」として理解されるようになっています。これは、予防意識の向上という点で非常に重要であり、歓迎すべき変化です。しかしその一方で、「夏の体調不良はすべて熱中症」とみなしてしまう風潮が広がっているようにも感じます。症例3歳、男児。発熱と倦怠感、頭痛があり、外来を受診。母「今日、公園で遊んだあとから、ぐったりしてきました。暑かったのでやっぱり熱中症でしょうか?」夏の外来では、このような保護者の訴えとともに小児が受診することが増えます。「熱中症」というワードが広く知られるようになって15年ほどになりますが、熱中症診療ではどのような点に注意すればよいのでしょうか。小児が熱中症にかかりやすい理由小児は、大人に比べて熱中症にかかりやすく、さらに重症化もしやすいと言われています。その背景には、いくつかの身体的・行動的な特徴があります。体温調節機能の未熟さ乳幼児は汗腺の発達が不十分であるため、体内に熱がこもりやすく、体温が急激に上昇してしまうリスクがあります。身体的な特徴体重に対して体表面積が大きいため、外気温の影響を受けやすいです。また、地面に近い位置にいるぶん、大人よりも地面からの照り返し(輻射熱)の影響を強く受けます。体調変化を伝えるのが困難喉の渇きやしんどさを訴えることができず、そのまま無理をして遊び続けてしまうこともあります。小児の熱中症では見た目の元気さに惑わされず、小児の様子をよく観察し、大人が先回りして声かけや水分補給、環境調整を行うことが重要です。熱中症の病態と診療のポイント熱中症の病態は、大きく「暑熱障害」と「脱水」に分けられます。暑熱障害は高体温の遷延により神経細胞が障害される病態です。一方、脱水では発汗や水分摂取不足により循環血液量が減少し、臓器虚血を引き起こします。細胞障害によって放出されるDAMPs(Damage-associated molecular patterns)が免疫系を刺激し、炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1β、IL-6など)や組織因子の産生を促進することで血管内皮障害を引き起こし、播種性血管内凝固(DIC)や多臓器不全へと進行することもあります。診断は「暑熱環境にいる、あるいはいた後」に出現する症状(立ちくらみ、生あくび、大量発汗、意識障害、高体温など)に基づき、感染症や中枢性高体温、甲状腺クリーゼなど他の原因疾患を除外して行います。2024年に改訂された日本救急医学会のガイドラインでは、最重症のIV度(深部体温40.0℃以上かつグラスゴー・コーマ・スケール[GCS]≦8)が新たに追加され、重症度がI〜IV度の4段階に分類されるようになりました。画像を拡大する熱中症では発汗や不感蒸泄による水・電解質の喪失が顕著なため、塩分を含む経口補水液(Oral rehydration solution:ORS)の使用が重要です。経口摂取困難時や意識障害がある場合は点滴治療が必要であり、重症例では迅速な深部体温測定と積極的な冷却(Active Cooling)が予後を左右します。初期対応の遅れが重症化を招くため、的確な病態理解と迅速な対応が求められます。「熱中症」という名前の強さとその影熱中症の認知度が高まったことは歓迎すべきことですが、すべての「夏の不調」が熱中症として扱われてしまうという懸念もあります。たとえば「暑い日に屋外で遊んでいた」「運動後にぐったりした」といった状況があると、医療者でさえ熱中症を第一に想起し、他の鑑別診断が後回しになる場面がみられます。熱中症と類似の臨床像(高体温、嘔吐、意識障害など)を示す小児疾患は少なくありません。一般的なウイルス感染症から、急性脳炎・脳症、髄膜炎、尿路感染症、胃腸炎、甲状腺疾患や頭部外傷まで、幅広い疾患が鑑別に挙がります。とくに小児では、「不機嫌」や「活気低下」など非特異的な症状が中心となるため、早々に熱中症と決めつけてしまうことは非常に危険です。診断においては、特定の病態に引き寄せられすぎず、バイタルサイン・身体所見・病歴を丁寧に積み上げていく姿勢が大切です。「本当に熱中症なのか?」「他の病態を見逃していないか?」という視点を持ち続けることが、適切な診断と介入につながると考えます。症例(続き)冒頭の症例では、状況を鑑みると熱中症も疑われましたが、咳嗽や咽頭発赤などの上気道症状を認めたため、迅速検査を行ったところインフルエンザと診断されました。小児の熱中症に向き合うには、医療者と保護者、それぞれの立場からの気づきと行動が大切です。医者は症状に先入観なく向き合い、見逃してはならない他疾患を見極める姿勢を持ち、保護者には予防の基本と受診の目安をわかりやすく伝えていくことが求められます。暑い季節だからこそ、より一層冷静な診療を心がけたいものです。次回は小児の外傷処置についてお話します。ひとことメモ:保護者に伝えたい予防と初期対応小児は、自分で暑さから逃れる行動をとることが難しく、体調の異変にも気づきにくいものです。そのため、まわりの大人の対応が大切です。診療時にはぜひ以下の点を保護者に伝えてみてください。■予防のポイント喉が渇く「前に」こまめな水分や塩分補給を涼しく通気性のよい服+帽子の着用、日陰や屋内での定期的な休憩ベビーカーを日なたに置かない■気づいてほしい変化顔が赤い/元気がない/汗が多すぎるor少ない/ぼーっとしている/生あくびなど■初期対応と受診の目安すぐに涼しい場所へ、衣類をゆるめて脇や首を冷たいタオルや氷嚢で冷却(冷えピタは意味なし!)経口補水液が飲めれば少量ずつ補給反応が鈍い、けいれん、ぐったりしている場合は迷わず救急車を参考資料 1) 日本救急医学会:熱中症診療ガイドライン2024 2) こども家庭庁:みんなで見守り「こどもの熱中症」を防ぎましょう! 3) Courtney W, et al. Pediatr Rev. 2019;40:97–107. 4) 日本救急医学会熱中症に関する委員会編.小児における熱中症 2018年改訂版.へるす出版;2018.

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小児用ワクチン中のアルミニウム塩は慢性疾患と関連しない

 120万人以上を対象とした新たな研究で、小児用ワクチンに含まれるアルミニウム塩と自閉症、喘息、自己免疫疾患などの長期的な健康問題との間に関連は認められなかったことが示された。アルミニウム塩は、幼児向け不活化ワクチンの効果を高めるためのアジュバントとして使用されている。スタテンス血清研究所(デンマーク)のAnders Hviid氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に7月15日掲載された。 アルミニウム塩はワクチンのアジュバントとして長年使われているものの、アルミニウム塩が慢性自己免疫疾患やアトピー性皮膚炎、アレルギー、神経発達障害のリスクを高めるのではないかとの懸念から、ワクチン懐疑論者の標的にもなっている。 今回Hviid氏らは、デンマークで1997年から2018年の間に生まれ、2歳時にデンマークに居住していた122万4,176人の児を対象に、ワクチン接種によるアルミニウム塩への累積曝露量と慢性疾患との関連を検討した。対象児は2020年まで追跡された。アルミニウム塩の累積曝露量は生後2年間に接種したワクチンに含まれる成分から推算し、曝露量1mg増加ごとのリスクを検討した。アウトカムとした慢性疾患は、以下の3つの疾患グループに分類される50種類の疾患であった。すなわち、自己免疫疾患として皮膚・内分泌・血液・消化管に関わる疾患とリウマチ性疾患が36疾患、アトピー性またはアレルギー性疾患として喘息、アトピー性皮膚炎、鼻結膜炎、アレルギーなど9疾患、神経発達障害として自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症など5疾患である。 その結果、生後2年間のアルミニウム塩の累積曝露量は、対象とした50種類の疾患のいずれについても、発症率の増加とは関連していないことが示された。疾患グループ別に見ると、アルミニウム塩曝露量が1mg増加するごとの調整ハザード比は、自己免疫疾患で0.98(95%信頼区間0.94~1.02)、アトピー性・アレルギー性疾患で0.99(同0.98~1.01)、神経発達障害で0.93(同0.90~0.97)であった。 Hviid氏は、「これらの結果は、アルミニウム塩に対する懸念の多くに対処し、小児用ワクチンの安全性について明確かつ強固なエビデンスを提供している」と述べるとともに、「この結果は、親が子どもの健康のために最善の選択をする必要があることを示すエビデンスでもある」と付け加えている。 なお、この研究は、2022年に米疾病対策センター(CDC)の資金提供を受けて実施された、アルミニウム塩含有ワクチンと喘息の関連性を示唆した研究に対する反論として実施された。同研究はその後、ワクチンに含まれるアルミニウム塩と、食品、水、空気、さらには母乳など他の発生源由来のアルミニウムを区別できていなかったとして批判されている。  米フィラデルフィア小児病院ワクチン教育センター所長のPaul Offit氏も、「ワクチンによるアルミニウム塩曝露量が多い人と少ない人を比較する場合、交絡因子をコントロールし、これらの人が摂取したアルミニウム塩供給源がワクチンに限定されていることを知る必要がある」と指摘している。 米国では、アルミニウム塩はジフテリア・破傷風・百日咳(DTaP)ワクチンのほか、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)、B型肝炎ワクチン、肺炎球菌ワクチンにも使用されている。接種したアルミニウム塩は大部分が2週間以内に体内から排出されるが、微量のアルミニウム塩は何年も体内に残ることがある。専門家らは、単一の研究で何かが安全であると証明することはできないものの、この研究は、ワクチンに含まれるアルミニウム塩が無害であることを示してきた過去の研究成果に加わるものであるとの見解を示している。

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U=Uは、母子感染予防にも適応できるか?(解説:岡慎一氏)

 HIVの母子感染予防を論じた論文である。その前に、U=Uについて簡単に解説しておく。U=Uとは、「治療で血中のウイルス量(VL)が検出限界以下(<50copies/mL)になれば、HIVはうつらない:Undetectable equals Untransmittable」を略したものである。U=Uは、782組の片方がHIV+で治療を受けていてVLが検出限界以下、片方がHIV-のゲイカップルが、2年間に7万6,088回のコンドーム無しの肛門性交を行っても感染はゼロであったという、臨床試験の結果から導き出された結論である。 今回の論文は、「最も感染リスクが高いコンドーム無しの肛門性交でもうつらないのであるから、母子感染も大丈夫ではないか?」という疑問に答えるものである。母子感染には、妊娠中、出産時、授乳時という3つの場面がある。4,675例の妊婦の出産データから、妊娠前からHIVがわかっており、治療により妊娠期間中VLが検出限界以下の場合、母子感染はゼロで、出産に関してはU=Uが示された。出産方法に関しては、経膣分娩でも帝王切開でもウイルス量にかかわらず感染率に差はなかった。また、データが不十分ではあるが、母乳に関しては、ウイルスが検出限界以下でも、感染率は0.1%と非常に低いもののゼロではなかった。 日本では、感染妊婦への治療は行われており、帝王切開で出産し、新生児への6週間のAZT投与を行い人工乳で育てることが多い。母子感染リスクだけで言うならば、帝王切開に関しては、見直してもよいのかもしれない。また、U=U出産新生児には、AZTは不要かもしれない。幸い日本では、感染妊婦は少ない。このため、本邦における限られたデータでは、独自のガイドライン作成は困難である。今後の日本の母子感染予防ガイドラインを改訂する際に参考にすべき論文である。

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電話相談って困るんだけど…【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第9回

電話相談って困るんだけど…Point受診時期、受診可能な施設、搬送手段が明確になるような相談をしよう。相手の現状理解や、今後どう行動するかを確認する丁寧な対応を心がけよう。電話相談で診断をつけず、病態から予想されうる疾患の徴候を伝えて、再相談・受診の目安をわかりやすく伝えよう。症例その日の深夜帯は忙しく、立て続けに心筋梗塞やクモ膜下出血が搬送され、当直帯のスタッフは処置につきっきりだった。そんな時、2歳男児の母親から受診相談の電話がかかってきた。その日の午後に近医を受診し、嘔吐、下痢、腹痛で受診し胃腸炎と診断されたが、まだ、痛がっているので救急外来に受診したい旨の電話だった。母親によると前日に男児の4歳の姉も胃腸炎と診断され、姉は元気になったが、兄は痛がって寝つけないため心配だとの相談だった。当直医は処置に追われていることもあり、すでに診断されて内服薬もあるのだから大丈夫だろうと、やや早口で「胃腸炎でしたら、様子をみてもらえば大丈夫です」とだけ告げて電話を切った。翌日に小児科を受診し、腸重積と診断されそのまま入院となった。男児の両親から、「すぐに入院が必要な状態だったのに前日の電話対応はなんだ」と怒りのクレームを受けることになった。おさえておきたい基本のアプローチ昨今、電話救急医療相談(救急安心センター事業#7119)は全国的に広まりつつあり、日本国民の79%をカバーしている1)。一方で、多くの地域ではサービスが利用できず、またかかりつけ医に直接電話で相談する患者もいるだろう。夜中の電話相談は、なかなか難しいものだ。診察なしに、患者本人や家族からの情報だけで適切な判断を求められる、「これは何かの罠だろうか? あー、早く偉い人がAIとか進歩させて患者相談が全自動になって、この原稿もお役御免にならないかなー」と流れ星に願いをかけてみるも、もうしばらくは電話相談と付き合っていかなければならなさそうだ。そもそも、電話相談で大事なポイントは何だろうか? 相談相手が適切な受診行動をとることが最重要だ。(1)受診時期、(2)受診可能な施設、(3)搬送手段が相手に伝わるようにしよう。まず、受診時期については、病態の緊急度が相関する。今すぐに治療が必要な病態で、急いで救急外来を受診すべき状態か、今すぐの受診は必要ないが2、3日以降にかかりつけ医を受診して診察・治療が必要な状態か、かかりつけ医の次の予約外来の診察で間に合うのか、われわれの判断で患者の受診行動が大きく変わり、患者の転帰が変わることもある。前医の診断を鵜呑みにして判断すると、痛い目にあうのが電話相談の大きな落とし穴だ。実際に診察しないと、はっきりしたことは言えないとしっかり電話越しに伝える必要がある。夜中だと電話を受ける側も楽な疾患に飛びつきやすく、バイアスに陥りやすいものだ。受診可能な医療機関については、その地域ごとのルールを参照してほしい。とくに精神科、小児科、歯科については特別なルールがあることが多いだろう。かかりつけ医での対応なのか、対応する専用の施設があるのか、輪番病院での対応なのか。また、休日や夜間帯によっても、対応施設が変わるので、そこも考慮してほしい。搬送手段についても病態に応じたアドバイスが必要だ。酸素投与やルート確保も必要で救急車による搬送が考慮される病態、公共交通機関で受診が可能な病態、病態は緊急ではなくともADLの低下などで歩行不可能な高齢者で民間の介護タクシーなどの手段が必要な病態などが考えられる。病態に応じた搬送手段を提案しよう。上記を考慮に入れた電話相談のポイントを表に示す。表 電話相談のポイント画像を拡大する落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls「電話対応で心配いらない旨を伝えたのですが、もう一度電話がかかってきて、別のスタッフにまた同じ相談をしていました賢明な読者は、普段の病状説明では紙に病名や対応を大きな文字でわかりやすく書き、ときに図示して工夫されていることだろう。一方、電話相談では音声でのコミュニケーションに限られる(今後オンライン診療やWeb会議システムで相談が置き換わるようであれば変わるかもしれないが)。普段は文字で書けば通じる言葉でも、音声だと一気に難易度アップ! まして、難聴の高齢者からの電話相談ではなおさらだ。ちゃんとこちらの伝えたい意図が伝わっているかを確認するうえで、現在の状態をどう理解したのか、これからどう行動するのかを相手から言ってもらって(復唱してもらって)、相談の終わりに確認しよう。これで不要な受診や電話が減って、平和な夜が過ごせること請け合いだ。Point電話相談は音声伝達であるため、相手の理解、どう行動するかを確認しよう話を聞いたら、前医で診断、処方があって外来でのフォロー予定も入っていたので、そのまま経過をみるように伝えました前医で診断を受け処方をされ外来でのフォローの予定が決まっていても、何か様子が変わったところがあったり、別の症状が出現したりで、心配になり電話をかけてきたのだろう。その心配な点を聞かずに、ただ経過を見なさいでは、相談者も納得がいかないだろう。相手の不安な点、ニーズを丁寧に聞き取ると、実は見逃してはいけない疾患が隠れていたなんてこともあるだろう(いや、これが結構あるんだよ。今回の症例でも腹痛がメインになる「胃腸炎」なんて誤診もいいところ!)。前医の診断をそもそも電話で聞いただけで信じてはいけない。診察なしに診断なんてできないと、明確に電話相談者に伝えるべきである。でもつっけんどんに冷たくあしらうのではダメ。共感的声色をもって対応しよう。落とし穴にはまらないよう、カスタマーセンターのスタッフになったつもりで聞いてみよう。日中、自分の病院にかかっている場合は、日中見逃されていた可能性もあり、ハイリスクと考えて受診してもらうほうが無難なんだよ。Point相手の不安に思う点を丁寧に聴取して、解消に努め、必要があれば再受診を促そう前医の診断は疑ってかかれ!不眠の訴えで電話があったので、翌日受診をお勧めしたのですが、自殺企図で救急搬送されました不眠の訴えの裏に、うつ病などの希死念慮を伴う精神疾患が存在することもある。緊急性のある精神疾患が隠れていないか確認して、場合によっては精神科救急への受診を勧めることも必要になる。また精神疾患があっても、生命を脅かすのは器質的疾患や外因によるものだから、精神疾患で片づけてしまってはいけない。Pointメンタルヘルスの電話相談にも緊急性のある疾患を考慮して適切に受診を促す電話で小児の母親から「嘔吐と下痢と腹痛があって周囲に流行もある」と聞いたので感染性胃腸炎と診断し、伝えましたあくまで電話相談では、現在の病態が受診すべきどうかを判断して、受診時期や施設、搬送手段についてアドバイスすることが求められる。限られた情報での診断は難しいし危険である。疑われる疾患やありうる疾患と徴候などを伝え、どうなったら再相談、受診したほうがよいのかを丁寧にアドバイスしよう。そのうえで、実際に診察しない電話だけでは診断はなかなかわからないものなので、適切なアドバイスができなくてすみませんと伝えよう。「どうせ電話でなんて診断がわかるわけがないんだから、心配ならきちんと受診しなさいよ!」なんて高圧的な態度で対応するのはダメチンだよ。また、高齢者や小児の家族からの相談は自分でうまく症状が伝えられないことが多く、訴えが聴取しにくい。高齢者では急にいつもと様子が違う状態になったならば、感染症などの背景疾患からせん妄になっていることも考えられるため、高齢者の受診の閾値は下げるべきだ。高齢者では、症状をマスクする解熱鎮痛薬、循環作動薬、抗凝固薬、抗血小板薬、抗がん薬やステロイドなどの免疫抑制薬を定期内服していることも多い。カルテなどの情報がなければ、内服の丁寧な聴取も病態判断に重要だ。また、小児では予備能が低く血行動態が破綻しやすいため、重症になるまでの時間が成人よりも急激であることが多い。症状が持続しているならば受診を勧めよう。親にとって、子供は自分の命に代えても大事な宝物なのだから。Point電話相談だけで診断はつけられない。予想される疾患や再相談や受診の目安を伝えようワンポイントレッスン電話相談の小ネタ〜これであなたも電話相談したくなる!?電話相談では、どんな相談が多い?スウェーデンの80歳以上の高齢者の電話医療相談の研究では、全体の17%が薬剤関連で、自分の入院に関連した情報(既往歴や内服などの情報照会)、尿路関連、腹痛といった相談が続く2)。薬剤関連が多いのは高齢者という特性が大きく関連しているだろうが、皆さんの実感とも近いだろうか。電話相談で不要な診察はどのくらい減らせる?デンマークの研究では、電話相談による介入で不適切な頻回受診が16%減らせるとの報告がある3)。また、英国の電話相談サービス“NHS111”にかかってきた救急外来受診相談にgeneral practitionerが介入することで、73%が救急外来受診以外の方針(1次医療機関や軽傷対応施設の受診:45.2%、経過観察など:27.8%)となったことが報告された4)。適切な電話相談で相当数の不要不急の診察が減らせそうだ。電話相談だけで済ませることになっても有害事象は起こっていない?電話相談を行っている地域と行っていない地域とで比較した報告によると、有害事象や死亡の転帰をたどった率はそれぞれ、0.001%、0.2〜0.5%だった3)。適切な電話相談が行われれば、相談者に有害な転帰をたどる可能性はきわめて低いといえる。 電話相談による医療コストは減らせる?これだけ不要な診察を減らして有害事象も起こさない電話相談なら、医療費削減にもよいのでないかと思うだろう。しかし、現在のところ英国の研究によれば、議論の余地があるところだ。救急医療コストの29%を減らしたとする一方、そのうちの75%は電話相談サービスの運営コストで相殺される。今後AIなどの発達によって相談サービスのコストが削減できると結果は変わってくるだろう。電話相談で患者の救急医療の満足度は変わる? 認識は変わる?電話相談によって大幅なコストダウンは見込めないが、患者満足度はどうだろうか?イギリスの電話相談サービス“NHS 111”のあるエリアとないエリアで比較して、救急外来を受診した患者の満足度や救急医療に対する認識に変化があるか調査したが、救急医療への満足度、認識に変化はないとの報告だった5)。こちらも相談サービスの質向上によって改善しうるだろう。勉強するための推奨文献 Ismail SA, et al. Br J Gen Pract. 2013;63:e813-820. Knowles E, et al. BMJ Open. 2016;6:e011846. 石川秀樹 ほか. 日本臨牀. 2016;74:p.303-313. 参考 1) 総務省消防庁HP. 救急安心センター事業(#7119)関連情報 2) Dahlgren K, et al. Scand J Prim Health Care. 2017;35:98-104. 3) Ismail SA, et al. Br J Gen Pract. 2013;63:e813-820. 4) Anderson A, Roland M. BMJ Open. 2015;5:e009444. 5) Knowles E, et al. BMJ Open. 2016;6:e011846. 執筆

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小児期ビタミンD不足で、将来のCVDリスク増

 ビタミンD不足は心血管イベントと関連するという既報があるが、小児期におけるビタミンD値低下も成人後のアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスク増と関連している可能性があることが、新たな研究で示唆された。フィンランド・トゥルク大学のJussi Niemela氏らによる研究はEuropean Journal of Preventive Cardiology誌オンライン版2025年4月29日号に掲載された。 研究者らは、「若年フィンランド人における心血管リスクの前向き研究」(Young Finns study)の参加者を対象に、25-OHビタミンD濃度と従来の小児期のリスク因子(BMI、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、収縮期血圧、果物・野菜・魚の摂取量、身体活動、社会経済的地位、喫煙歴)を調査し、フィンランド国民全員をカバーする全国登録データベースを用いてASCVDアウトカムを追跡調査した。これらのデータから小児期のビタミンDレベルと成人発症のASCVDイベントとの関係を評価した。 主な結果は以下のとおり。・3,516例(平均年齢10.5歳、女子50.9%)が組み入れられた。参加者が3~18歳時の1980年に採取・保存された冷凍サンプルから、25-OHビタミンDの血清濃度を測定した。ビタミンD欠乏症のカットポイントは30nmol/L未満とした。・2018年までに95例(2.7%)が、少なくとも1回のASCVDイベントの診断を受けた。初回のイベント発生時の平均年齢は47歳だった。・小児期のビタミンDの低レベルは、37nmol/L(調整ハザード比[aHR]:1.84)、35nmol/L(aHR:2.19)、33nmol/L(aHR:1.76)、31nmol/L(aHR:2.07)それぞれのカットポイントで、成人期のASCVDイベントのリスク増加と有意に関連していた。・これらの結果は、従来の小児期のリスク要因の調整後、成人のビタミンDレベル調整後、ビタミンD欠乏のカットポイント30nmol/L未満を使用した場合、いずれにおいても一貫していた。 著者らは「この結果は、約40年間の追跡調査において、小児期の25-OHビタミンD濃度が37nmol/Lに満たないことが、成人期におけるASCVDイベントと関連していることを示した。小児期の最適化されたビタミンD補給を支援することで、CVDリスクを簡単かつ費用対効果の高いかたちで軽減できる可能性がある」と記している。

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帯状疱疹ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第17回

ワクチンで予防できる疾患帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の初感染後、脊髄後根神経節、脳神経節に潜伏感染しているVZVが再活性化によって、支配神経領域に疼痛を伴う水疱が集簇して出現する疾患である。合併症として発症後3ヵ月以上にわたり痛みが持続する帯状疱疹後神経痛(post herpetic neuralgia:PHN)のほかに髄膜炎、脳炎、ラムゼイ・ハント症候群といった生命の危険や神経学的後遺症を来す疾患が知られている。国内で実施されている大規模疫学調査にて、1997~2020年の間で帯状疱疹は年々増加傾向を認め、罹患率は50代から上昇し、70代(2020年度10.45/千人・年)でピークを示した。別の調査では、50歳以上の帯状疱疹患者の19.7%がPHNを発症し、年齢別では80歳以上で32.9%と高齢になるほど発症しやすい傾向を認めた。ワクチンの概要帯状疱疹ワクチン接種の目的は、「帯状疱疹発症率を低減させ、重症化を予防すること」である。国内で2つのワクチンを使用することができるので表に概要を示す。表 帯状疱疹ワクチンの概要画像を拡大する2025年度から、65歳の方などへの帯状疱疹ワクチンの予防接種が、予防接種法に基づく定期接種の対象となった。接種の対象者は、以下に該当する方である。65歳を迎える方60~64歳で対象となる方(※1)2025~29年度までの5年間の経過措置として、その年度内に70、75、80、85、90、95、100歳(※2)となられる方※1ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方※2100歳以上の方については、2025年度に限り全員対象となる。帯状疱疹発症、年齢以外のリスク因子帯状疱疹は、前述した年齢のほかに罹患率を上げるリスクが知られている。HIV/AIDS(相対リスク[RR]3.22)、悪性腫瘍(RR2.17)、SLE(RR2.08)などの免疫不全疾患だけではなく、慢性疾患としての心血管疾患(RR1.41)、COPD(RR1.41)、糖尿病(RR1.24)。他にも精神的ストレス(RR1.47)、身体的外傷(RR2.01)、家族歴(RR2.48)もリスク要因としてあげられる。リスク因子のある方に帯状疱疹が発症した場合は、生命を脅かす疾患となってくるため、ワクチン接種を推奨する意義は高い。免疫不全状態では、生ワクチンは接種不適当であり、シングリックスが推奨される。今後の課題・展望2025年4月からすべての国民で65歳時以降に定期接種として帯状疱疹ワクチンを接種する機会を得ることになった。喜ばしいことではあるが、任意接種としてでも接種を勧めたい対象者が65歳まで接種を待ってしまう可能性が出てくる。前述した高リスク群の方々(とくに免疫不全疾患)には、定期接種を待つことのデメリットを伝え、適切な時期に接種を勧めることも重要である。近年、帯状疱疹と水痘の流行様式に変化がみられる。2014年に小児水痘ワクチンが定期接種となり、水痘患者数の減少と罹患年齢の上昇傾向がある。水痘は罹患年齢が上がるほど重症化する。妊婦が水痘に罹患すると流産や先天性水痘症候群になるリスクがある。接種率の低い任意接種期間でかつ低年齢期に水痘に罹患しなかった若者が、重症化リスクの高い年齢になってきている。2021年9月の国立健康危機管理研究機構(旧国立感染症研究所)の報告によると入院水痘患者は成人割合が71.2%となっており、もはや水痘は麻疹・風疹と同じく成人疾患として重要になりつつある。留意すべきは感染経路であり、水痘感染源として帯状疱疹の割合が増加傾向を認める。増加する帯状疱疹患者から重症水痘患者を発生させないためには、小児期に水痘に罹患せずかつ水痘ワクチン接種も受けていない若者に対する水痘ワクチンのキャッチアップ推奨と中高齢者に対しては今後も帯状疱疹ワクチンを推奨していくことが、今後しばらくの間のVZV感染症対策として必要である。参考となるサイト1)帯状疱疹ワクチンファクトシート 第2版2)こどもとおとなのワクチンサイト 帯状疱疹ワクチン3)乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」添付文書4)シングリックス筋注用 添付文書5)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト 水痘ワクチン定期接種化後の水痘発生動向の変化~感染症発生動向調査より・2021年第26週時点~講師紹介

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子どもの死亡・疾患有病率、米国で悪化/JAMA

 米国・フィラデルフィア小児病院のChristopher B. Forrest氏らは、複数の統計および調査データを用いて包括的な健康指標について解析し、米国の小児の健康状態(死亡率、慢性の身体的・発達的・精神的健康状態、肥満、睡眠健康、思春期早発症、活動制限、および身体・情動性症状)は2007~23年の間に悪化していることを明らかにした。著者は、「健康状態を基本的に悪化させている根本原因を特定し、対処する必要がある」と強調している。JAMA誌オンライン版2025年7月7日号掲載の報告。2007~23年の小児の健康状態を分析 研究グループは、米国ならびに経済協力開発機構(OECD)に加盟する人口規模が大きな高所得国18ヵ国(OECD18:オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイス、英国)の死亡統計と、米国の5つの代表的な全国調査および10の小児医療システム(PEDSnet)の電子カルテデータを用い、反復横断分析を行った。 解析対象集団は20歳未満で、年次サンプル数(非加重値)の範囲は、死亡統計(2007~22年、Human Mortality Database、WHO Mortality Data)が米国で8,190万~8,320万人、OECD18で1億1,840万~1億2,110万人、PEDSnet(2010~23年)が102万6,926~211万4,638人、5つの全国調査が1,623~9万5,677人であった。 主要アウトカムは、慢性の身体的・発達的・精神的健康状態、機能的状態および症状に関する有病率と死亡率の率比(RR)と年間発生率とした。米国の小児、死亡率はOECD18の約1.8倍、有病率は過去12年で増加 2007~22年において、米国ではOECD18と比較した死亡率が、乳児(1歳未満)では1.78倍(95%信頼区間[CI]:1.78~1.79)、1~19歳では1.80倍(1.80~1.80)高かった。米国とOECD18の間で正味の差が最も大きかった死因2つをみると、1歳未満児では早産(RR:2.22[95%CI:2.20~2.24])と乳幼児突然死(SUID、2.39[2.35~2.43])、1~19歳では銃器関連事件(15.34[14.89~15.80])と自動車事故(2.45[2.42~2.48])であった。 2011~23年に米国の3~17歳の慢性疾患の年次有病率は、PEDSnet(97種類の慢性疾患)については39.9%から45.7%に増加(RR:1.15[95%CI:1.14~1.15])しており、National Survey of Children's Health(15種類)については25.8%から31.0%に増加(1.20[1.20~1.20])していた。 また、米国の小児では肥満、月経の早期開始(12歳未満)、睡眠障害、慢性疾患による活動制限、身体症状(医師によって診断された腹痛、疲労、咳、便秘など27種類)、抑うつ症状(悲しみや絶望感を感じる)、孤独感の年次有病率も、調査期間中に増加した。

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第274回  文科省「今後の医学教育の在り方」検討会と厚労省「特定機能病院あり方検討会」の取りまとめから見えてくる大学病院“統廃合”の現実味(後編)

病院の建物は新しいが臨床研究棟はボロボロの大学医学部こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。3ヵ月ほど前になりますが、ある取材で私立の医科大学を3大学ほど訪れました。中部地方2大学、九州地方1大学です。驚いたのは医学部の教室が入っている建物(いわゆる臨床研究棟と呼ばれているもの)がどこもボロボロだったことです。ある大学など築50年近く経っていたのではないでしょうか。いずれの医科大学も患者が訪れる病院の建物は比較的新しく、医療機器も最新機器に更新されているようですが、教授陣以下、医学部で研究する人々の環境は“昭和”の時代のまま止まっているようでした。それだけ、医科大学の経営が厳しいということなのでしょう。加えて、どこの大学の教授室にも何のチェックもなくスルスルと辿り着けたのも気になりました。経費削減のためと思われますが、企業の取材ではほぼあり得ないことです。大学医学部は研究面だけでなく、防犯面でも課題がありそうだと感じた次第です。さて、前回、国立大学病院長会議が7月9日に発表した2024年度の決算(速報値)について書きました。全国42国立大学病院のうち、減価償却などの費用を含む2024年度経常損益では29病院が赤字であり、42大学の経常損益の合計額は過去最大の285億円マイナスという驚くべき数字でした。そして、東京科学大学病院や筑波大学附属病院など赤字の国立大学病院が、病床稼働率の向上や手術件数の増加といった、涙ぐましい経営努力をしている現状も紹介しました。そんな中、文部科学省は7月14日、「今後の医学教育の在り方に関する検討会」による「第三次取りまとめ」1)を公表しました。同検討会は2023年5月から15回にわたって議論を行い、これまでに「第一次中間取りまとめ」(2023年9月)、「第二次中間取りまとめ」(2024年6月)を公表しています。「第一次中間取りまとめ」をきっかけに、文科省は2024年3月に「大学病院改革ガイドライン」を策定、国立・私立ともに今後6年間に取り組む「改革プラン」の策定を各大学に求めました。今回の「第三次取りまとめ」は、医師の働き方改革をきっかけに激変した大学病院の経営環境を踏まえ、どう医学部・大学病院の教育研究環境を確保し、同時に大学病院の経営改善を図っていくかについて、今後の方向性を取りまとめたものです。大学病院を全国一律に捉えず、それぞれ必要とされる分野で機能・役割分化を促していく、というなかなか興味深い内容になっています。「全ての大学病院が一様に同じ役割・機能を同程度持ち続けることは難しいといった指摘がある」「第三次取りまとめ」でまず気になったのは、「II.医学部・大学病院を巡る状況と今後の方向性について」の章にある「大学病院の役割・機能として、診療だけでなく、教育や研究も欠かすことができないが、所在する地域の状況や医師の働き方改革等大学病院を取り巻く様々な環境の変化によって、全ての大学病院が一様に同じ役割・機能を同程度持ち続けることは難しいといった指摘がある」の一文です。その上で、「文部科学省が各大学病院の病院長と行った意見交換では、全ての大学病院が教育・研究・診療を担うことは重要と考えている一方で、全ての役割を一様に最大限に取り組むことには限界があり、地域の医療提供体制や各病院の財政状況、組織体制等に応じて、担うべき役割のエフォート配分を検討する必要があるとの意見も多くあった」と書かれています。つまり、「大学病院=教育・研究・診療が揃っているもの」という一律的な捉え方はもはや古く、教育に重点を置く大学病院、研究に重点を置く大学病院、診療に重点を置く大学病院というように、機能分化せざるを得ない状況だと断言しているのです。実際、今年2月に開かれた「第11回 今後の医学教育の在り方に関する検討会」で配布された「医師の働き方改革施行後の大学病院の現状と課題について」と題された資料を見ると、臨床医学分野の論文数・Top10%補正論文数や、競争的研究費の新規獲得状況などで全国の大学医学部には大きな開き、格差があることがわかります。現状、「研究」が行われているのは旧帝大や一部の私大に集中しており、それ以外の大学は教育(人材養成)と診療(地域医療)に注力しろ、というのが文科省の本音と言えそうです。「第三次取りまとめ」、地域医療構想と特定機能病院見直しにも言及そうした意味から、「第三次取りまとめ」では地域医療構想と特定機能病院見直しにも言及しています。まず、地域医療構想については、「厚生労働省の『新たな地域医療構想に関するとりまとめ』において、大学病院本院が担う『医育及び広域診療機能』を含む医療機関機能を、新たに位置付けることとしているなど、人口減少や高齢化が急速に進む中で地域の医療提供体制を維持していくために、大学病院は、都道府県に対し、地域医療構想の推進に関して様々な形で協力・貢献することが一層求められており、大学病院における組織的かつ主体的な取組が求められる」と、積極的に関わっていくことを求めています。「大学病院は、全ての診療科をそろえた総合的な医療提供体制の確保や、地域医療構想とも整合した地域貢献といった機能を担っている」「特定機能病院見直し」とは、厚生労働省の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」で議論が進む、特定機能病院の要件見直しのことです。同検討会では、特定機能病院について、全大学病院本院が満たすべき「基礎的基準」を設定すると共に、個々の大学病院が地域の実情も踏まえて自主的に実施している取り組みを「発展的(上乗せ)基準」によって評価する案が検討中です。文科省の「第三次取りまとめ」はこの案について、「大学病院は、地域によっては、高難度の外科手術や難治性疾患の治療のような高度な医療のほか、全ての診療科をそろえた総合的な医療提供体制の確保や、地域医療構想とも整合した地域貢献といった機能を担っているものがある。このことも踏まえ、国は、大学病院の在り方の検討等を含めた取組について、特定機能病院の見直しや本取りまとめの趣旨に留意しながら、引き続き進めることが重要である」としています。つまり、大学病院は高度医療も重要だが、地域医療構想に即してほかの医療機関とも連携して地域の医療提供体制の構築に貢献することも重要な役割、と言っているのです。2040年を目標年とする「新たな地域医療構想」は大学病院のリストラも迫るものとなると、これからとくに500床以上あるような地域の基幹病院と大学病院との差別化が問題となってきそうです。新たな地域医療構想では、さらなる病床の機能分化が進められ、なおかつ人口規模が小さ過ぎる構想区域は統合されることになります。人口減が急速に進む中、病院の統廃合は今まで以上に加速することになるでしょう。そうした統廃合の流れから大学病院だけが守られるとは考えられません。「構想区域の統合」はやがて「大学病院の統廃合」にもつながっていくでしょう。医師の養成機能はどうするんだ、と言われそうですが、そもそも人口減で医師の需要も減っていくわけですから(専門医の需要はとくに)、医学部の統廃合のほうが先になるかもしれません。文科省の「第三次取りまとめ」の中の「III.大学病院の機能等別の課題と対応方策等」の章の「1.運営、財務・経営改革」の項目では、持続可能な大学病院運営のため、大学全体だけではなく病院単独の貸借対照表を作成するなど、詳細な資産状況を把握する取り組みを促すことが重要だと提言しています。これは、うがった見方をすれば、「将来起こるであろう統廃合や買収の準備をしておけ」ということかもしれません。田中 角栄が50年以上も前に唱え実現した「一県一医大」は、今となっては国にとって大きな財政負担、お荷物になってきています。2040年を目標年とする「新たな地域医療構想」は大学病院、医学部のリストラも迫る政策だということを、大学医学部関係者はしっかりと肝に銘ずるべきでしょう。参考1)今後の医学教育の在り方に関する検討会 第三次取りまとめ/文部科学省

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