サイト内検索|page:12

検索結果 合計:3085件 表示位置:221 - 240

221.

直腸異物はどの年齢に多いか?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第292回

直腸異物はどの年齢に多いか?私は普段直腸異物を診ていないのですが、直腸異物に関する論文はたぶん消化器科医よりたくさん読んでいると思います。それはそれでコワイな…。高位まで移行した物体では直腸穿孔や腹膜汚染を伴うことがあり、これらは出血や敗血症性ショックに至る重篤な合併症を引き起こしかねません。Bhasin S, et al. Rectal foreign body removal: increasing incidence and cost to the NHS. Ann R Coll Surg Engl. 2021;103:734-737.これは、イギリスにおいて2010~19年で直腸内異物除去のために病院で処置を受けた患者を対象とした研究です。イギリス国内で合計約3,500例、1年間で約389例に相当するとされています。国内では、年間約348ベッド日が使用されたと報告されています。直腸異物の患者さん、約85%が男性であり、年齢分布は20代前半と50代前半にピークがありました。10代から20代に変わるタイミングで爆増しているので、性的嗜好が大きく影響していることが推察されます。50代で多くなる理由はちょっとわかりません…。高齢化とともに便秘などの問題が増えることで、排便困難を解決しようとする過程で意図せず異物が挿入されてしまう、といったことが推測されますが、これも想像の域を出ません。小児(10~14歳)の小さなピークも観察されており、もしかすると虐待なども含まれているのかなと邪推しますが、これも理由は不明です。医療資源への財政負担もこの論文では提示されており、著者らは年間の保守的な推計で約34万ポンド(約6,800万円)と算出しています。公衆衛生的観点では、著者らは本事象の増加はインターネット上でのポルノの普及や多様な性具の入手と関連している可能性があるとしています。ただ、この統計データは手術コードに依存するため、因果まで推定できるわけではありません。確実なのは、20代で急に増えるということくらいでしょうか。

222.

ADHDに対する神経刺激薬治療後の精神疾患発症リスク〜メタ解析

 注意欠如・多動症(ADHD)患者は、神経刺激薬による治療後に精神疾患や双極症を呈することがある。しかし、その発現の程度は不明であった。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのGonzalo Salazar de Pablo氏らは、ADHD患者における神経刺激薬治療後の精神疾患または双極症の発現を定量化し、その影響を調節する可能性のある因子を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年9月3日号の報告。 DSMまたはICDで定義されたADHD患者を対象に精神疾患または双極症のアウトカムを評価した、あらゆるデザインの研究を対象とした。2024年10月1日までに公表された対象研究を、PubMed、Web of Science、Ovid/PsycINFO、Cochrane Central Register of Reviewsより言語制限なしで検索した。PRISMAおよびMOOSEガイドラインに従い、プロトコールを登録し、ニューカッスル・オタワ尺度およびCochraneバイアスリスクツール2を用いて質評価を行った。ランダム効果メタ解析、サブグループ解析、メタ回帰分析を実施した。主要アウトカムは、精神症状、精神病性障害、双極症を発症した患者の割合とし、エフェクトサイズおよび95%信頼区間(CI)を算出した。アンフェタミンとメチルフェニデートの比較についても評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は16研究(39万1,043例)で、平均年齢12.6歳(範囲:8.5〜31.1歳)、男性28万8,199例(73.7%)であった。・神経刺激薬を処方されたADHD患者のうち、精神症状、精神病性障害、双極症を発症した患者は、次のとおりであった。【精神症状】2.76%、95%CI:0.73〜9.88、10研究、23万7,035例【精神病性障害】2.29%、95%CI:1.52〜3.40、4研究、9万1,437例【双極症】3.72%、95%CI:0.77〜16.05、4研究、9万2,945例・研究間で有意な異質性が認められた(I2>95%)。・アンフェタミン治療患者では、メチルフェニデート治療患者よりも、精神疾患発症リスクが有意に高かった(オッズ比:1.57、95%CI:1.15〜2.16、3研究、23万1,325例)。・サブグループ解析では、北米の研究およびフォローアップ期間の長い研究において、精神症状の有病率が有意に高かったことが示唆された。・精神疾患発症率の上昇と関連していた因子は、女性の割合の高さ、サンプルサイズが小さいこと、高用量の神経刺激薬であった。 著者らは「本解析の結果、神経刺激薬治療を行ったADHD患者において、精神症状、精神病性障害、双極症の発症率は無視できないレベルであることが明らかとなった。アンフェタミン治療は、メチルフェニデート治療と比較して、精神疾患発症率が高いことが示された」とし、「対象とした研究では因果関係を立証できず、ランダム化臨床試験や神経刺激薬使用の有無により比較するミラーイメージ研究など、さらなる調査の必要性が浮き彫りになった。とはいえ、臨床医は神経刺激薬治療について患者と話し合う際に、精神疾患や双極症の発現率上昇について説明し、治療全体を通してこれらの症状をシステマティックにモニタリングする必要がある」とまとめている。

223.

小児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)【すぐに使える小児診療のヒント】第7回

小児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)は、2000年ごろから急速に認知が広がった比較的新しい疾患概念であり、新生児・乳幼児を中心に増加しています。嘔吐や下痢を主訴に受診する乳児では、感染症や外科的疾患に加えて、食物蛋白誘発胃腸症を鑑別に挙げることが重要です。今回は、代表的な新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症の一型である食物蛋白誘発胃腸炎(Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome:FPIES[エフパイス])を中心に解説します。症例2ヵ月、男児。授乳2時間後に大量に嘔吐を繰り返したため救急外来を受診。普段は完全母乳栄養だが、本日は祖母に預けるため普段は使わない人工乳を使用したとのこと。受診時には活気良好で、腹部所見なし。食物蛋白誘発胃腸症の特徴と分類一般的に食物アレルギーというと、蕁麻疹や呼吸症状を伴う即時型(IgE依存型)アレルギーを想起するでしょう。しかし、食物蛋白誘発胃腸症はIgEが関与せず、主に消化管粘膜で炎症反応が起こる非即時型(非IgE依存型)アレルギーです。食物摂取後、数時間~数日かけて症状が出現し、皮膚症状や呼吸器症状を伴わないことが大きな特徴です。新生児・乳児の消化管アレルギーはわが国独自の疾患概念として扱われていましたが、小児の消化器分野や国際的な概念を鑑みて「食物蛋白誘発胃腸症」として再定義されました。食物蛋白誘発胃腸症は経過や症状から下記のようにいくつかのサブグループに分けられます。画像を拡大する最も代表的なものはFPIESです。日本での有病率は約1.4%と報告されており、決してまれな疾患ではありません。FPIESは経過により急性型と慢性型に分けられます。急性型は原因食物摂取後1~6時間に反復する強い嘔吐が出現し、顔色不良やぐったりするなど全身状態の悪化を伴うこともあります。重症例では、輸液やステロイド投与による全身管理が必要になることがあります。なお、急性期の対応として即時型アレルギーのようにエピネフリン筋注を行っても効果は期待できません。一般的には摂取を中止すると数時間で速やかに改善し、経過は短いのが特徴です。一方、慢性型は原因食物の摂取を続けることで数日~数週かけて嘔吐や下痢、体重増加不良が現れ、除去後も改善までに時間を要します。画像を拡大する実際には症状が重なり合っているためサブグループに分けられないことがしばしばあり、そのために診断や治療に支障を来す場合も見受けられます。日本ではNomuraらによる「嘔吐と血便の有無」で4群に分けるクラスター分類が提唱され、臨床的な整理に有用です。原因となる食物原因となる食物は国や地域によって異なりますが、国際的には乳、魚、鶏卵、穀物、大豆の順になっています。日本の13施設による多施設共同研究(成育医療センター・筑波大学ほか)では、食後1~4時間以内に遅延性の嘔吐を呈した小児225例を対象に解析を行った結果、FPIESの原因食物は鶏卵が最も多く(58.0%)、続いて大豆・小麦(各11.1%)、魚(6.6%)、牛乳(6.2%)でした。鶏卵では94%が卵黄によるものでした。牛乳が原因で発症した児の月例の中央値は1ヵ月と最も早い結果でした。原因食物の違いは各国の離乳食事情によるようで、初期に摂取するものが原因になりやすいと考えられています。診断と治療の基本FPIESには、下記のような診断基準が設けられています。臨床的には、(1)被疑食物を除去して症状が改善すること(食物除去試験)、(2)再度摂取することで症状の再現性があること(食物負荷試験)、(3)他の疾患に当てはまらないこと、を確認します。とくに、小児領域では腹部症状や体重増加不良を来す疾患が多数あるため、他疾患がないか十分に確認することが重要です。FPIESを含む食物蛋白誘発胃腸症は非IgE依存性であるため、一般的なIgE依存性の食物アレルギーで行うような血液検査やプリックテストでは診断できません。末梢血好酸球数、アレルゲン特異的リンパ球刺激試験(ALST)、便粘液好酸球検査、消化管内視鏡検査などを補助的に行うこともありますが、いずれも条件が限定されており、その所見のみで確定診断できるほど有用な検査ではありません。画像を拡大する治療の基本は原因物質の除去です。人工乳(乳)が原因の場合には、代わりに加水分解乳やアミノ酸乳といった栄養剤を使用します。食物除去によって栄養素が不足しないよう、病院の管理栄養士と相談しながら、適宜栄養素の内服や補助食品などを併用します。一般的にFPIESの予後は良好と考えられています。寛解率や時期は原因食物によって異なりますが、幼児期のうちに治ることが多いと報告されており、除去している原因食物が食べられるようになったかどうか、定期的な食物負荷試験で確認します。冒頭の症例では、追加の問診で「半月ほど前にも一度祖母に預けた際に人工乳を使用して2~3時間後に大量に嘔吐した」との情報があり、症状の再現性が確認されました。人工乳の使用を一旦中止し、これまで母乳では症状が出ていなかったため母乳での対応を継続しました。母が不在で母乳の供給が困難な場合には、アレルギー用ミルクである加水分解乳(ニューMA1など)を選択しました。その後、症状の反復がないこと、体重増加が良好であることなどを確認し、症状寛解後数ヵ月を経て経口負荷試験を行いました。離乳食の進み具合に合わせて、他の食材に関しても相談しながら通院中です。保護者への対応の工夫発症予防として、妊娠中の食物制限や離乳食の開始時期を遅らせることは、医学的根拠に乏しく推奨されません。また、「なんとなく怖いから卵はまだ与えていない」といった安易な食物摂取制限も避けるべきです。過度な制限は成長や発達に影響を及ぼすこともあるため、そのリスクを共有し、バランスのとれた摂取を勧めましょう。食物蛋白誘発胃腸症に限らず、食物アレルギーは子供の成長・発達や将来にも関わるため、保護者の心理的負担は非常に大きいものです。長期的な予後や今後の方針を丁寧に共有することで、不安の軽減につながります。FPIESは多くの場合、1~3歳ごろまでに自然寛解することが知られています。日本の報告では、卵黄、乳、小麦、大豆などの原因食品を対象とした場合、発症から12ヵ月後には約半数の児が寛解し、24ヵ月後にはおよそ8~9割が耐性を獲得していました。とくに乳製品が原因の場合、耐性を獲得する月齢の中央値は約17ヵ月と報告されています。冒頭の症例のように乳が原因の場合、乳児の栄養源の中心であるため成長に直結する大きな課題となります。保護者の不安に寄り添いながら、現実的な栄養管理の方法を一緒に模索していくことが重要です。次回は、絶対に見逃してはならない疾患の1つ、「精巣捻転」について取り上げます。夜風が涼しくなり、ようやく過ごしやすい季節になってきました。季節の変わり目、どうぞお身体にお気をつけてお過ごしください。ひとことメモ:よくあるQ&A妊娠中に特定の食物を控えれば、子供のアレルギー発症を抑えられるって本当?発症予防を目的とした母の妊娠・授乳中の抗原食物の制限、除去は推奨されない。完全母乳栄養であれば、赤ちゃんのアレルギー発症を予防できるって本当?母乳中には食物由来ペプチド、サイトカインが含まれており、児が食物に対して寛容を誘導するのに適している。ただし、母乳が原因で食物蛋白誘発胃腸症を発症することもある。他のアレルギーの可能性は?他の即時型アレルギーとは別の疾患概念であるため、必ずしも他の食物アレルギーを発症する可能性が高いとは限らない。離乳食の開始を遅らせると、アレルギー発症を防げるって本当?離乳食を遅らせることは予防・治療には繋がらず、むしろ成長を妨げることもあるため、安易に遅らせるべきではない。参考資料1)食物アレルギー診療ガイドライン20212)Nomura I, et al. J Allergy Clin Immunol. 2011;127:685-688.3)国立成育医療研究センターホームページ4)好酸球性消化管疾患(新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎)(指定難病98)/難病情報センター5)早野 聡ほか. 浜松医科大学小児科学雑誌. 2025;5:12-18.

225.

青年期のデジタル依存症が健康に及ぼす影響~メタ解析

 スマートフォン、コンピュータ、ソーシャルメディアプラットフォームなどのデジタル機器の過度かつ強迫的な使用を特徴とする青年期のデジタル依存症は、世界的な懸念事項となっている。中国・Xuzhou Medical UniversityのBlen Dereje Shiferaw氏らは、デジタル依存症について包括的に捉え、それらの青年期におけるサブタイプとさまざまな健康アウトカムとの関連性を調査する目的でシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Behavioral Addictions誌2025年9月30日号の報告。 Chinese National Knowledge Infrastructure(CNKI)、Wanfang、PubMed、Web of Scienceのデータベースより、青年期のデジタル依存症に関連する健康アウトカムを報告した研究を包括的にレビューし、事前に定義された包含基準と除外基準を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・デジタル依存症の若者では、過体重または肥満(オッズ比[OR]:1.25、95%信頼区間[CI]:1.03~1.48)、自己評価による健康状態不良(OR:1.75、95%CI:1.42~2.08)を報告する傾向がより高かった。・また、不眠症(OR:1.46、95%CI:1.33~1.59)、睡眠の質の低下(OR:1.50、95%CI:1.37~1.64)などの睡眠障害を経験している傾向があった。・デジタル依存症の若者は、自殺傾向(OR:2.63、95%CI:2.36~2.90)、抑うつ症状(OR:1.76、95%CI:1.68~1.83)、ストレス(OR:2.15、95%CI:1.79~2.52)、不安(OR:2.14、95%CI:1.99~2.28)などの精神衛生上の懸念についても高いオッズを示した。・さらに、喫煙(OR:1.55、95%CI:1.41~1.68)、問題のあるアルコール摂取(OR:1.47、95%CI:1.33~1.60)、薬物使用(OR:1.94、95%CI:1.44~2.44)の傾向も高かったことが示唆された。 著者らは「青年期におけるデジタル依存症は、身体的、精神的、行動上の問題を含む、重大かつ広範な健康への悪影響をもたらすことが示唆された」としている。

226.

小児喘息の発作治療、ブデソニド・ホルモテロールvs.SABA/Lancet

 軽症喘息の小児において、ブデソニド・ホルモテロール配合薬による発作治療はサルブタモールと比較して、喘息発作の予防効果が有意に優れ、安全性プロファイルはほぼ同様であることが、ニュージーランド・Victoria University WellingtonのLee Hatter氏らCARE study teamによる第III相試験「CARE試験」の結果で示された。成人喘息の発作治療では、短時間作用型β2作動薬(SABA)に比べ吸入コルチコステロイド・ホルモテロール配合薬は喘息発作を有意に低減することが知られている。研究の成果は、Lancet誌2025年10月4日号で報告された。5~15歳の無作為化対照比較試験 CARE試験は、研究者主導型の52週間の実践的な非盲検無作為化対照比較優越性試験(Health Research Council of New Zealandなどの助成を受けた)。2021年1月28日~2023年6月23日にニュージーランドの15の臨床試験施設で参加者の適格性を評価した。 年齢5~15歳、喘息と診断され、吸入SABA単剤による発作治療を受けている患児360例(平均年齢10歳[SD 2.9]、女児178例)を対象とした。 被験者を、吸入ブデソニド(50μg)・ホルモテロール(3μg)配合薬の2回吸入を頓用する群(179例)、またはサルブタモール(100μg)の2回吸入を頓用する群(181例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、患児1例当たりの喘息発作の年間発症率であった。重症喘息発作には差がない 患児1例当たりの喘息発作の年間発症率(主要アウトカム)は、サルブタモール群が0.41であったのに対し、ブデソニド・ホルモテロール群は0.23と有意に良好であった(喘息発作の相対的比率[RR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.35~0.86、p=0.012)。5~11歳(0.72[0.46~1.12])より12~15歳(0.06[0.01~0.43])、女児(0.94[0.52~1.68])より男児(0.30[0.15~0.58])で、ブデソニド・ホルモテロール群の治療効果が高かった。 また、少なくとも1回の喘息発作を発症した患児の割合は、サルブタモール群の32%(58例)に比べ、ブデソニド・ホルモテロール群は17%(30例)であり、有意に低かった(オッズ比[OR]:0.43、95%CI:0.24~0.75、p=0.0060)。 一方、患児1例当たりの重症喘息発作の年間発症率は両群間に有意な差がみられなかった(ブデソニド・ホルモテロール群0.11、サルブタモール群0.18、RR:0.60、95%CI:0.32~1.14、p=0.11)。有害事象の発現頻度は同程度 少なくとも1件の有害事象が発現した患者の数は、ブデソニド・ホルモテロール群で162例(91%)、サルブタモール群で167例(92%)と両群間に差を認めなかった(OR:0.79、95%CI:0.35~1.79)。また、少なくとも1件の重篤な有害事象が発現した患者の数は、それぞれ5例(3%)および8例(4%)だった(0.62[0.17~2.24])。 成長速度(身長の平均群間差:-0.35cm、95%CI:-0.93~0.24、p=0.24)、喘息で授業が受けられなかった日数(RR:0.68、95%CI:0.44~1.04、p=0.075)、子供の喘息のケアで親が仕事をできなかった日数(RR:0.87、95%CI:0.49~1.56、p=0.64)は、いずれも両群間に差はなかった。 著者は、「これらの知見を先行研究のエビデンスと合わせると、現在SABA単剤による発作治療を受けている5~15歳の喘息患者は、吸入ブデソニド・ホルモテロール配合薬単剤に切り換えることで、より良好な喘息発作予防効果が得られると示唆される」とまとめている。 また、「年長児での高い治療効果は、年少児は吸入器の使用に支援を要したり、保護者が喘息の悪化を認識するのが遅れて治療開始が遅くなることで効果が低下する可能性があるが、年長児は独立して吸入器を使用できたためこの遅れがないという事実で説明が可能と考えられる」「男児での高い治療効果はこれまで報告がなく、喘息のアウトカムは思春期前の女児に比べ男児で不良であることから重要な観察結果となる可能性がある」としている。

228.

第264回 「2040年を見据えた地域医療構想」医師はどう乗り越えるか?

地域医療構想が実現した日本の医療の姿厚生労働省が地域医療構想に着手して10年が経過しました。当時、厚労省は2025年の医療需要を踏まえた全国の二次医療圏ごとに必要病床数を定め、各都道府県に対して、病床機能報告をもとに4つの病床機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)で必要病床数119.1万床が、2023年度で119.2万床となったため、行政サイドはほぼ目標を達成したとしています(日本医師会雑誌2025年7月号)が、コロナ禍が収束した現在、多くの急性期病院の課題は、稼働率が以前のレベルまで回復せず、大学病院や公立病院を含めて大幅に赤字となっており経営危機が叫ばれています。すでに地域によっては医師や看護師不足のフェーズから、外来患者数の減少や入院患者の減少が予想より早く訪れており、大都市を除くと医師や看護師不足のフェーズから人口減少のため「患者不足時代」に突入したことが明らかになっています。これから迎える高齢患者増加の未来に、地域の医療機関は対応していく必要性があることは間違いありません。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する2040年に向けた新たな地域医療構想とは厚労省の令和7年版厚生労働白書によれば、2040年の日本の人口は、生産年齢人口(15~64歳)を中心に1,000万人減少する一方、85歳以上を中心に高齢者数は2040年まで増加し続け、高齢化率が35%を超えると見込まれています。少子化の加速で、労働人口が減少するため、医療・介護ニーズは増えてもそれを支える人材が不足する社会に変化することが明らかになっています。とくに85歳以上の高齢者は医療・介護の複合ニーズを有するため、85歳以上人口の増加によって85歳以上の高齢者の救急搬送は、2020年と比較して、75%増加し、85歳以上の在宅医療の需要は62%も増加することが見込まれています。(注:新たな地域医療構想に関するとりまとめ)このため高齢化によって手術などの急性期医療のニーズが減少すると、慢性期や在宅医療へ医療需要が変化するため、現状の医療提供体制のままでは持続不可能となってしまいます。画像を拡大する平成4(1992)年の段階(第8次医療計画及び地域医療構想に関する状況)で、すでに全国の外来患者数は2025年にピークを迎えることが予想され、今後は外来患者のうち65歳以上が占める割合はさらに上昇し、2040年には約6割となることが見込まれています。そして、すでに2020年までに214の医療圏では外来患者数のピークを迎えていると見込まれている一方、在宅医療の需要のピークは2040年以降と推測されています。このため厚労省では、今年の7月24日から「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」を立ち上げています。その第1回の資料(地域医療構想及び医療計画等に関する検討会)によれば、救急医療、小児科、周産期など提供体制について討議。次の第9次医療計画に反映されるよう、地域医療構想の策定状況や医療計画などの課題を国と県で共有することを目的として、検討を開始しています。厚労省は2029年度までの「第8次医療計画」や、「新たな地域医療構想ガイドライン」で、「治す医療」から「治し支える医療」への構造転換を明確に打ち出しています。また、厚労省は各都道府県に命じて、二次医療圏ごとに医療計画の立案を行うと同時に、地域医療構想で、急性期・回復期・慢性期・在宅の病床機能を明確化し、将来、必要とされる病床数を推計して、地域で完結できる体制を整えることを求めています。つまり地域社会の人口構成が変化することに応じて、病院もクリニックも、変わるべきタイミングが訪れてきていることがわかります。今後の人口減少によって、人口30万人を下回る二次医療圏では急性期拠点の集約化を進め、少なくとも1ヵ所の「急性期拠点病院」を確保することが指針とされています。これによって、2040年までに中小病院の統廃合・機能転換が加速し、勤務医の配置・専門医研修にも直接的な影響が及んできます。具体的にどういった動きが医師のキャリアや働き方に影響が出るかみていきましょう。地域医療構想の進捗における課題1)急性期医療の集約化と地域偏在中央社会保険医療協議会(中医協)の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」によれば、急性期病棟で最上位の急性期一般入院料1を届け出る病院は近年減少傾向にあり、とくに人口20万人未満の二次医療圏では、急性期充実体制加算を持つ病院が存在しない地域が約8割に上っています。このため、救急医療・手術・産科・小児などの医療人材が不足している地域では、1~2の中核病院への集約が不可避となってきます。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するすなわち地域の拠点病院に重症患者や医師を集めて、高度医療の中核的な病院を作って、周辺の病院には、(従来は回復期リハビリテーション病棟や地域包括医療・ケア病棟が新たに呼称変換されます)「包括期病棟」を備え、回復期の患者や軽症の救急患者の対応や、医療・介護連携の強化に動くことが求められます(新地域医療構想、「急性期拠点病院の集約化」「回復期病棟からsub acuteにも対応する包括期病棟への改組」など行う-新地域医療構想検討会[Gem Med])。このような病院の再編は、医療資源の効率化を狙う一方で、勤務医にとっては地域医療を守るために、マルチモビディティ(多疾患併存)の高齢患者のために総合的・全人的にアプローチしていく「総合的な診療能力」を持つ医師の働き方が求められるようになります。2)小児・周産期医療の地域完結は困難集約化で問題になるのは「小児・周産期医療」です。少子化により出生数は2024年時点で68万人台にまで落ち込み、分娩を扱う医療機関数も20年間で半減しています。すでに地域によっては分娩取扱施設が10ヵ所未満となり、二次医療圏外への妊産婦の救急搬送が発生している自治体も出てきているはずです。このため、産婦人科・小児科医の偏在と負担集中が顕著化し、都市部の周産期センターでは24時間体制維持が困難となっています。地域の医療提供体制の再編の過程で、産科・小児科の閉鎖や統合が進む地域では、勤務医の確保策と合わせて、医師の労働環境だけでなく、キャリア支援・女性医師復帰支援が課題となってくると思われ、その対応が急がれると思います。本年10月から厚労省は「小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ」を立ち上げており、今後の議論の推移を見守る必要があると感じています。3)都道府県での医師の偏在対策厚労省は2020年度以降、全国の二次医療圏・三次医療圏ごとに、医師の偏在の状況を全国ベースで客観的に示すために、「医師偏在指標」を算出し、上位3分の1を医師多数区域、下位3分の1を医師少数区域として区分しています。このデータをもとに、都道府県に対して医師の確保の方針を踏まえ、目標医師数を達成するための具体的な施策「医師確保計画」を策定し、3年ごとにPDCAを回す仕組みが導入されています。この「医師確保計画」では、短期的には大学医局からの医師派遣調整、中長期的には地域枠・地元出身枠の増加により地域定着を図る方針が明記されています。しかし、「医師少数区域への医師派遣」は大学医局に依存しており、大学側の派遣余力の限界もあり、地域の高度急性期病院にも医師派遣機能を求めるなど対策が強化される見込みです。画像を拡大する4)養成段階での地域偏在是正大学側も医師の偏在対策のため、医学部の「地域枠」や「地元枠」の拡大や奨学金貸与により医師育成数の増加も相まって、若手医師の地方病院での研修医が増えるなど、改善の傾向がみられるものの、若手医師にとっては勤務地域・診療科の拘束が強まり、キャリア選択の自由度が減少しています。また、専門研修として、日本専門医機構によって、専攻医シーリング(診療科・都道府県別上限)が設けられたことで、女性に人気のマイナー診療科では入局待機など都市部での定員が厳格化されたことで、選択肢が少なくなってしまう可能性があります。しかし、これらの方策によって、地域での若手医師の定着率は一定の改善がみられますが、診療科での医師偏在(産科・小児・救急・外科医不足)は依然として深刻なため、若手医師のキャリア志向やQOL重視のライフスタイルとの乖離が広がっているという見方もあり、これについてはさらに見直されると思います。地域医療再編と医師への影響1)医療再編の「担い手リスク」地域医療構想に基づく病床再編は、病院間連携や統廃合を前提としていますが、その過程で医師の異動や配置転換が行われる見込みです。とくに人口20万未満の医療圏では、救急・外科系医師の不足が慢性化し、医師によっては複数施設を兼務する勤務形態が制度的に定着する可能性もあり、医師の働き方改革(時間外960時間上限)との両立が困難となり、結果的に地域医療を支える医師の離職リスクを伴っていますが、地方で医師が充実するには時間がかかるため、大学など派遣側からの協力で耐えるしかないと考えます。画像を拡大する2)医療機関の機能転換とキャリア再構築回復期リハビリテーションや在宅医療への転換が進む中で、急性期医療中心で育成された医師が、慢性期病棟や「包括期病棟」を備えた病院に配置転換されるケースが増加していくとみられます。こうした医師に対し、自治体や医学部が「キャリア形成プログラム」を策定し、医師不足地域勤務と能力開発の両立を支援する仕組みを整えていますが、まだ実際の運用は都道府県による地域差が大きく、実質的には「大学医局による医師派遣の延長線」に留まることも多いなど、さらに再考の余地はあると思われます。今後の重点課題と展望大学と自治体の連携による医師供給調整の実効性では、大学の医局依存から脱却し、地域医療支援センターを中心とした医師配置調整を強化する必要があります。とくに女性医師や家庭のある医師の地域勤務継続支援が鍵となるとみられます。1)医師のキャリアパスの一体化「医師養成-専門研修-配置」の全段階を通じ、地域医療経験を評価するキャリアモデルを確立しなければ、地域勤務は恒常的な人材流出に陥ります。2)医療機関再編と診療科維持の両立急性期集約化の中で、産科・小児・外科を維持できる体制を構築するには、複数の圏域連携型の周産期・小児医療ネットワーク化が必要になると思いますが、まだ地域によっては再編が進まず自治体ごとに周産期医療を開設しようとする動きもあり、地方への働きかけも必要と考えます。3)医師労働環境改革との整合医療再編と同時に、長時間労働の是正と夜間救急体制維持という難題をどう解決するかが最大の焦点となります。結論-将来の地域医療構想は広く医療環境を再編すべき2040年に向けた地域医療構想は、単なる病床数調整ではなく、医師の再配置・育成・労働環境改革を包括する「医療人材の再編」の一環と考えるべきです。人口が減少した地域では医療機関の統廃合は避けられず、医師の勤務場所・診療領域・働き方に直接的な影響を与えると思います。したがって、今後の医療提供体制改革の成否は、医師偏在対策の実効性と、再編後も医師が持続的に働ける場所やキャリア設計にも重要な転換点に差しかかっていると考えます。地域医療構想の最終的な目的は「均質な医療提供」ではなく、限られた医師資源を最適に循環させ、地域の生活インフラである地域医療を絶やさない仕組みの再構築にあると考え、われわれ医師もその流れに乗っていく必要があると感じています。参考 1) 地域医療構想と地域包括ケア-2025と2040(日医雑誌) 2) 地域医療構想及び医療計画等に関する検討会【第1回】(厚生労働省) 3) 新たな地域医療構想に関するとりまとめ(同) 4) 新たな地域医療構想策定ガイドラインについて(同) 5) 医師確保計画を通じた医師偏在対策について(同) 6) 医師偏在対策について(同) 7) 第1回小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ(同) 8) 新地域医療構想、「急性期拠点病院の集約化」「回復期病棟からsub acuteにも対応する包括期病棟への改組」など行う-新地域医療構想検討会(Gem Med)

229.

若年2型糖尿病に対するチルゼパチドの検討(解説:小川大輔氏)

 若年発症の2型糖尿病は、成人発症と比べて早期に糖尿病合併症を発症することが知られている。そのため食事療法や運動療法、薬物療法を組み合わせて適切な糖尿病治療を行うことが必要とされる。今回、10歳から18歳までに2型糖尿病を発症した患者99例を対象に、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの効果を検討した第III相試験の結果が発表された1)。従来の治療で血糖コントロール不十分であった若年発症の2型糖尿病患者において、チルゼパチドはプラセボと比較し、血糖コントロールや肥満を改善することが報告された。 若年発症の糖尿病といえば1型糖尿病やMODY(Maturity-Onset Diabetes of the Young)、ミトコンドリア糖尿病など遺伝性糖尿病が知られているが、今回の試験では対象が2型糖尿病に限定されている。患者背景を確認すると、BMIの平均値が35.4であり、高度の肥満を合併している症例が多く含まれていたことがわかる。試験前の治療としては、メトホルミンが92%、インスリンが31%の症例で使用されていた。しかしベースラインのヘモグロビンA1c値は8.04%とコントロール不十分の状態で、チルゼパチドあるいはプラセボを30週間投与し効果を検討した。その結果、チルゼパチド投与群では30週時のヘモグロビンA1c値変化量は-2.23%、BMI変化率は-9.3%であり、プラセボ群より有意な減少を認めた。主な有害事象は胃腸障害であったが軽度から中等度であった。 若年発症2型糖尿病患者の治療法を比較検討した研究(TODAY2追跡試験)の参加者では、2型糖尿病診断後15年以内に60%が糖尿病関連合併症を発症し、約3分の1が複数の合併症を発症していたと報告された2)。つまり若年発症例は成人発症例と比べてより早期に複数の糖尿病合併症を発症することが明らかになり、合併症の予防や進行抑制のために発症時から厳格な血糖コントロールが重要であることが示唆された。今回の研究により、チルゼパチドが若年2型糖尿病に対する治療の選択肢の1つとなりうることが報告された。今後さらにGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬の検討が進むことを期待したい。

230.

ADHDとASDに対するビタミン介入の有効性〜メタ解析

 ビタミン介入は、自閉スペクトラム症(ASD)および注意欠如・多動症(ADHD)のマネジメントにおいて、費用対効果が高く利用しやすいアプローチとして、主に便秘などの消化器症状の緩和を目的として用いられる。最近の研究では、ビタミンがASDやADHDの中核症状改善にも有効である可能性が示唆されている。しかし、既存の研究のほとんどは患者と健康者との比較に焦点を当てており、臨床的に意義のあるエビデンスに基づく知見が不足していた。中国・浙江大学のYonghui Shen氏らは、ASDおよびADHD患者におけるビタミン介入に焦点を当て、メタ解析を実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2025年8月30日号の報告。 PubMed、Web of Science、Cochrane Libraryより対象研究を検索した。ASDおよびADHD患者におけるビタミン介入に焦点を当て、メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ビタミン補給は、ASDおよびADHDの両方の症状を有意に改善することが示唆された。・その効果は、ビタミンの種類や障害によって違いがあることが明らかとなった。・ビタミンB群のサプリメントは、とくにASD関連症状の軽減に有効であり、ビタミンD群のサプリメントは、ADHD症状の改善により有効であることが示唆された。 著者らは「さまざまなビタミンが、疾患特異的な治療効果を発揮することが示唆された。ASDおよびADHDに対する個別化された臨床介入を行ううえで、これらのビタミンが役立つ可能性がある」としている。

231.

直近5年、アクセプトされた論文があると答えた医師は何割?/医師1,000人アンケート

 オンラインジャーナルやオープンアクセスジャーナルの普及に加え、生成AIを活用した検索や翻訳・要約も広まりつつあり、論文の閲覧・執筆を取り巻く状況が大きく変化している。今回CareNet.comでは会員医師約1,000人を対象に、論文閲覧・執筆の最近の状況についてアンケートを実施した(2025年8月26~27日実施)。論文検索の手段、PubMed以外で多かったのは 興味のある論文を見つけるための主な手段について、76.5%の医師がPubMedと回答し、医中誌(39.1%)、ケアネット・m3・日経メディカルなどの論文紹介記事(38.4%)、所属する学会の学会誌(19.6%)などが続いた。 年代別にみると、PubMedとの回答が最も多いのは共通していたが、20~50代では75%以上を占めたのに対し、60代では59.0%と若干低い傾向がみられた。一方、ケアネット・m3・日経メディカルなどの論文紹介記事との回答は20~50代では40%以下だったのに対し、60代では51.2%であった。そのほか、XなどのSNSからの情報との回答は全体で4.0%と低いものの、20~30代では10.9%と他世代と比較して高かった。ひと月に読む平均論文数は、アブスト・本文ともに1~5本との回答が最多 アブストラクトのみおよび本文全体について、平均して月何本の論文を読むか聞いた質問では、ともに1~5本との回答が最も多く、アブストラクトのみ1~5本は49.6%、本文全体を1~5本は28.6%であった。 年代別、所属する施設の病床数別にみた結果に大きな差はみられなかったが、月に本文全体を6本以上読むと回答した医師は、200床以上の医療機関に勤務する医師で多い傾向がみられた(12.1%)。 論文を読む主な目的としては、専門領域の情報収集が79.2%と最も多く、他科領域の情報収集(25.7%)、論文執筆・学会発表・講演準備のため(24.4%)、個人的な興味関心(18.5%)が続いた。直近5年、筆頭著者としてアクセプトされた論文がある医師は約4割 直近5年に“筆頭著者”としてアクセプトされた論文の本数は、1~3本(29.2%)、4~6本(5.2%)、7~10本(2.2%)、11本以上(1.7%)と続き、総計すると1本以上との回答は38.3%であった。同じく直近5年に“責任著者”としてアクセプトされた論文の本数は、1~3本(5.5%)、4~6本(1.9%)、7~10本(0.8%)、11本以上(1.7%)と続き、総計すると1本以上との回答は9.9%であった。 年代別にみると、“筆頭著者”としてアクセプトされた論文数が1本以上あると回答した割合は年代が高くなるにつれ減少し、20~30代(51.3%)、40代(49.4%)、50代(34.0%)、60代(20.1%)であった。一方“責任著者”としての論文数が1本以上あると回答した割合は50代で最も高く(13.9%)、60代・40代(9.0%)、20~30代(7.0%)であった。 病床数別にみると、“筆頭著者”および“責任著者”としてアクセプトされた論文数が1本以上あると回答した割合は200床以上の施設に勤務する医師で最も高く、それぞれ48.2%、14.6%であった。自由回答で最近の変化を聞いた質問では、「医局を離れて縁がなくなった(60代、消化器内科)」、「倫理委員会を求められるので、大学などの組織にいないと研究の論文が出せない傾向について、是正したくない人たちも多いことを感じる(60代、小児科)」といった意見が寄せられ、所属施設による影響もうかがわれた。 医学論文を執筆・投稿する主な目的について聞いた質問では、専門医や指導医、学位などの取得・更新のためが最も多く38.5%を占めた。次に多かったのは医学論文を執筆・投稿することはない(34.5%)で、この回答を年代別にみると、60代で最も多く49.6%、50代(35.6%)、40代(28.6%)、20~30代(23.5%)であった。 このほか、診療科別にみた論文閲覧状況、自由回答で聞いた最近感じている変化など、アンケート結果の詳細は以下のページにて公開している。『医師の論文閲覧&執筆状況』

232.

若年1型糖尿病へのATG、β細胞機能低下を抑制/Lancet

 発症から間もないステージ3の1型糖尿病の若年患者において、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)の2.5mg/kgおよび0.5mg/kgの投与はプラセボと比較して、β細胞機能の低下を有意に抑制することを、ベルギー・ルーベン大学のChantal Mathieu氏らが第II相試験「MELD-ATG試験」の結果で報告した。これは、低用量で安全、安価なATGがこの患者集団における疾患修飾薬となる可能性を示すものだという。研究の成果は、Lancet誌2025年9月27日号で発表された。用量範囲を決定する無作為化プラセボ対照多群比較試験 MELD-ATG試験は、アダプティブデザインを用いてATGの用量範囲を検討する二重盲検無作為化プラセボ対照多群比較試験であり、欧州を中心とする8ヵ国14施設が参加した(欧州連合革新的医薬品イニシアチブ2共同事業体INNODIAの助成を受けた)。 2020年11月24日~2023年12月13日に、年齢5~25歳で、治療開始の3~9週間前にステージ3の1型糖尿病と診断され、Cペプチド濃度0.2nmol/L以上、少なくとも1つの糖尿病関連自己抗体(GADA、IA-2A、ZnT8)が陽性の患者117例(女性63例[54%]、5~9歳21例[18%]、10~17歳76例[65%]、18~25歳20例[17%])を登録した。 被験者を、プラセボ群(31例)、ATG 0.1mg/kg群(6例)、同0.5mg/kg群(35例)、同1.5mg/kg群(12例)、同2.5mg/kg群(33例)に無作為に割り付けた。試験薬は連続2日間で2回に分けて静脈内投与した。 主要アウトカムは、12ヵ月の時点における2時間混合食負荷試験(MMTT)中の刺激Cペプチド濃度の曲線下面積(AUC)の平均値(AUC C-peptide+1)とした。 中間解析により、0.1mg/kg群と1.5mg/kg群は試験から除外された。12ヵ月時のCペプチド濃度平均AUCが高い 主要アウトカムである12ヵ月の時点におけるAUC C-peptide+1の平均値は、プラセボ群が0.411(SD 0.032)nmol/L/分であったのに対し、ATG 2.5mg/kg群は0.535(SD 0.032)nmol/L/分と有意に高(平均群間差:0.124nmol/L/分、95%信頼区間[CI]:0.043~0.205、p=0.0028)、β細胞機能の低下を抑制することが示された。 また、12ヵ月時のATG 0.5mg/kg群のAUC C-peptide+1の平均値は0.513(SD 0.032)nmol/L/分であり、プラセボ群に比べて有意に高く(平均群間差:0.102nmol/L/分、95%CI:0.021~0.183、p=0.014)、β細胞機能低下の抑制効果を認めた。0.5mg/kgは有効で、安全性が高い 有害事象のほとんどはGrade1または2であり、Grade3が11例(ATG 0.5mg/kg群3例、同1.5mg/kg群4例、同2.5mg/kg群4例)、Grade4は2例(いずれも重度低血糖、プラセボ群1例、0.5mg/kg群1例)で発現した。リンパ球減少症が39例(34%)にみられ、用量が高くなるに従って発生率が上昇したが、感染症の発生率に群間の差はなかった。 サイトカイン放出症候群は、プラセボ群では認めなかったが、ATG 2.5mg/kg群で11例(33%)、同0.5mg/kg群で8例(24%)に発現した。血清病もプラセボ群ではみられなかったが、ATG 2.5mg/kg群で27例(82%)、同0.5mg/kg群で11例(32%)に発現した。また、緊急にマスキングの解除(非盲検化)を要する事象が2件(血清病の疑いによる入院[重篤な有害反応]1件、注射部位の皮下感染[重度有害事象]1件)発生した。 著者は、「本試験では、プラセボに比べ2.5mg/kgのATGは機能性β細胞量の減少を効果的に防止し、ATGの最小有効用量は0.5mg/kgであることが示された」「ATG 0.5mg/kgでは、プラセボと比較してHbA1c値が低く、2.5mg/kgと比較して副作用(とくにサイトカイン放出症候群と血清病)が少なかった」「これらの知見は、発症からの時間経過が長くないステージ3の1型糖尿病の小児・青年患者における安全な治療薬としてのATGの可能性を強化するものである」としている。

233.

第263回 インフルエンザ全国で流行入り、ワクチンは11月末までに接種を/厚労省

<先週の動き> 1.インフルエンザ全国で流行入り、ワクチンは11月末までに接種を/厚労省 2.公立・大学病院の赤字拡大が過去最大に、人件費高騰で持続性に黄信号/総務省 3.機能強化型在支診・在支病を再定義へ 緊急往診・看取りなどの評価へ/中医協 4.周産期・小児医療の集約化が本格議論へ、地域単位での再編を/厚労省 5.医療事故調査制度創設10年、医療事故判断のプロセスを明文化へ/厚労省 6.有料老人ホーム、囲い込み禁止へ 登録制で参入規制強化へ/厚労省 1.インフルエンザ全国で流行入り、ワクチンは11月末までに接種を/厚労省厚生労働省は、9月22日~28日のインフルエンザの定点報告で患者数4,030人、定点当たり1.04人とし、全国流行入りを公表した。昨季より約5週早く、過去20年で2番目の早さである。定点1を超えたのは15都府県で、沖縄8.98、東京1.96、鹿児島1.68などが高かった。保育園・学校などの休校・学級閉鎖は135施設(前週比増)、東京都内でも9月だけで61件の集団感染が報告された。流行前線は、観光地を含む関東・関西・九州・沖縄で目立ち、今季は台湾・香港で夏に流行したA型(H3N2)が国内でも主流になる可能性が指摘されている。インバウンドや海外渡航を介したウイルス流入が早期流行に影響したとの見方が有力。一方、新型コロナの定点は5.87(前週比0.85倍)と2週連続の減少で、呼吸器感染症の鑑別と同時流行への備えが求められる。新型コロナウイルスの流行は例年どおり12月末~2月と見込まれているが、寒冷化とともに患者は増えるため、高齢者・基礎疾患・小児にはワクチン接種を推奨する。なお、インフルエンザワクチンとして、2~18歳には、経鼻生ワクチン(商品名:フルミスト)が昨季から接種可能で、発症リスクを約28.8%低下させる国内成績がある。副反応は、鼻閉・咳などが多く、妊娠・免疫不全・重度喘息、授乳や同居に免疫不全者がいる場合は不活化ワクチンを用いる。基本対策(手洗い、混雑場面でのマスク、体調不良時の外出回避)を徹底し、学齢期の動向に留意した上で、重症化リスクへの早期介入(抗インフルエンザ薬の適応判断、合併症監視)を行いたい。なお、定点数縮小に伴い今季は「流行レベルマップ」と全国推計患者数の公表が停止されている。 参考 1) インフルエンザ全国で流行入り 厚労省、過去20年で2番目の早さ(日経新聞) 2) インフルエンザ、はや流行期入り 昨シーズンより5週早く 厚労省(朝日新聞) 3) インフルエンザ流行入り、2023年除き2番目の早さ…専門家「訪日客の増加が影響」(読売新聞) 2.公立・大学病院の赤字拡大が過去最大に、人件費高騰で持続性に黄信号/総務省総務省が明らかにした地方公営企業決算によると、2024年度の公立病院事業の経常赤字は3,952億円と過去最大(前年2,099億円の約2倍)となった。844病院のうち83.3%が赤字に陥った。要因は賃上げによる人件費の増加、医薬品や診療材料費の上昇、エネルギー価格の高騰で、2025年度の経営状態について、各団体の試算・発言からは厳しい発言が相次いでいる。四病院団体協議会の定期調査でも、2025年6月単月の経営は前年同月よりさらに悪化しており、24年度通年も医業収支・経常収支とも悪化し、赤字病院割合の上昇が報告された。大学病院の打撃はより深刻とされており、全国医学部長病院長会議の集計では、81大学病院の24年度経常赤字は計508億円に拡大(医薬品費+14.4%、診療材料費+14.1%、給与費+7.0%)している。国立大学病院は25年度、経常赤字が400億円超へ拡大する見通しで、42病院中33病院が現金収支赤字に転落する見込み。このため医療機器の更新や建物整備の先送りが常態化し、高度医療や医学研究や人材育成に支障が出始めている。赤字拡大を受けて、病院団体からは2026年度の診療報酬改定に向けて診療報酬の引き上げ要求が相次いでいる。物価・賃金上昇の「2年分」を本体に反映する大幅プラス改定(四病協・大学病院団体は10%超~約11%を要望)、必要なら期中改定の実施も求めている。このほか、急性期の入院基本料や救急・周産期・小児などの基礎コストを底上げし、夜間・時間外、救急搬送受け入れ、重症患者対応の評価を拡充も求めている。さらに働き方改革に伴う人件費増(医師時間外上限、看護職の処遇改善など)を恒常費として補填も求めている。さらに医薬品・診療材料の市況高騰を包括点数や出来高評価に機動的に転嫁(DPC包括の原価乖離補正、材料価格スライド)するほか、高額な医薬品については費用対効果評価の厳格化・再算定を進め、真に臨床的価値の高い薬剤の適正評価を求めている。また、緊急の補正予算による機器更新・老朽施設更新の原資を確保するほか、地域医療構想のために、地域医療が弱体化しないように、過疎・離島や大学の医師派遣機能に配慮した加算の新設を求めている。同じく大学病院団体側は「このままでは高度医療・人材育成・研究の基盤が損なわれる」とし、診療報酬と公的支援の両輪による早期の資金手当てを求めている。今後、患者負担・給付と負担の議論が行われ、次年度の改定を前に政府で社会保障費について検討される見込み。 参考 1) 令和6年度地方公営企業等決算の概要(総務省) 2) 「令和6年度大学病院の経営状況」(国立大学病院長会議) 3) 全国の公立病院、24年度は過去最大の赤字 人件費増が重荷に(日経新聞) 4) 病院経営がさらに悪化、「かなり深刻」四病協調査 6月単月で(CB news) 5) 国立大病院の赤字、今年度は過去最大400億円超の見通し 物価高や人件費上昇(産経新聞) 6) 81大学病院の経常赤字は昨年より悪化、計508億円の赤字に(日経メディカル) 7) 2024年度に大学病院全体で「508億円の経常赤字」、22年度比で医薬品費が14.4%増、診療材料費が14.1%増と経営圧迫-医学部長病院長会議(Gem Med) 3.機能強化型在支診・在支病を再定義へ 緊急往診・看取りなどの評価へ/中医協厚生労働省は、10月1日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)の総会で、2026年度改定に向け在宅医療の評価見直しを議論した。2020年から2040年にかけて、85歳以上の救急搬送は75%増加し、85歳以上の在宅医療需要は62%増加することが見込まれ、これに対して在宅医療の質的な充実が求められている。連携型の機能強化型在支診・在支病について、24時間往診体制の「実質的な貢献度」に応じた評価を導入すべきだと支払側が主張する一方、診療側は撤退誘発を懸念し、反対した。厚労省提示のデータでは、連携型在支診の往診体制時間は「常時」と「極めて短い」で二極化しており、緊急往診・看取り実績は在宅緩和ケア充実加算の要件超えが多数認められ、重症患者比率が高い施設も一定数あった。これらを踏まえ、(1)地域の中核として、十分な医師配置を行い、在宅での看取りや重症対応を実施して他機関を支援し、さらに医育機能も担う在宅医療機関を評価すること、(2)在宅緩和ケア充実加算を統合して再設計すること、の2点を主要論点として位置付けた。一方、診療側は、要件を強化したり医育機能を加算の要件に組み込んだりする案に反対を示した。併せて、包括的支援加算の算定にばらつきが生じていることから、要介護度の低い患者の割合を報酬に反映させる支払側の提案に対して、診療側は「要介護度が低くても、通院困難で在宅医療が必要な患者が多数存在する」ため、要介護度のみに着目した評価に反対した。へき地診療所については、派遣元が時間外対応を担う場合に在医総管・施設総管を算定できるようにする方向で双方が賛同した。さらに、退院直後の訪問栄養食事指導を新たに評価することも検討し、入退院支援から急変対応・看取りに至るまで在宅医療を整備し、評価にメリハリを付ける方針を、改定の論点として示した。今後、これらの論点についてさらに検討の上、来年度の改定に盛り込まれる見込み。 参考 1) 中央社会保険医療協議会 総会(厚労省) 2) 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループにおける検討事項等について(同) 3) 訪問診療の報酬に「患者の状態」反映、厚労省案 要介護度低い割合など(CB news) 4) 「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」の初会合が開催(日経メディカル) 5) 24時間往診体制への貢献度に応じた評価に意見が分かれる(同) 4.周産期・小児医療の集約化が本格議論へ、地域単位での再編を/厚労省厚生労働省は、10月1日に「小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ」を開催し、少子化と医師偏在の進行を踏まえ、周産期医療と小児医療の提供体制を抜本的に見直す方針を示した。従来の二次医療圏にこだわらず、地域の実情に応じて柔軟に医療圏を設定し、分散した医療資源を集約化する方向性である。小児医療・周産期医療のワーキンググループ(WG)で論点が示され、2025年度末までに一定の取りまとめを行う見通し。周産期医療では、ハイリスク分娩に限らず、一般的な分娩を含む医療圏の再編が検討される。出産件数の減少により、分娩取扱施設は全国で減少傾向にあり、とくに地方では産婦人科医や小児科医、助産師の確保が課題となっている。厚労省は、263ヵ所ある周産期医療圏を再構築し、妊婦健診や産後ケアを担う施設との連携を強化するとともに、周産期母子医療センターの整備や無痛分娩の安全提供体制も検討課題とした。参加した委員からは出生数が減ると分娩を取り扱う医療機関の経営が成り立たなくなるとの指摘もあり、さらに分娩施設の急減は安全確保に影響する可能性があり、早期の結論が求められている。一方、小児医療では、全国1,690病院のうち約48%が常勤小児科医2人以下にとどまり、医療資源の薄い分散配置が明らかとなった。厚労省は「小児医療圏」単位での集約化・重点化を提案し、2030年度から始まる第9次医療計画で具体化する考えを示した。小児医療圏は現行306ヵ所で、救急機能を含め常時小児診療を提供できる体制の確保を求める方針。また、地域で小児科の診療所が不足する場合には、病院の小児科が一般診療に参加し、内科医との連携やオンライン診療、「#8000」電話相談などを組み合わせて医療提供体制を維持する方策も提示された。厚労省は、今後の議論を通じて、人口減少下でも「安全に産み育てられる地域医療体制」の再構築を進める方針である。 参考 1) 第1回小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ(厚労省) 2) 常勤小児科医2人以下の病院が約半数 厚労省(CB news) 3) 周産期医療、ハイリスク分娩以外も集約化へ 年度末をめどに取りまとめ 厚労省(同) 5.医療事故調査制度創設10年、医療事故判断のプロセスを明文化へ/厚労省厚生労働省は、10月1日に開いた「医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会」で、医療事故調査制度の創設から10年を迎えるのに合わせ、医療機関が医療事故を判断する体制や手順を自ら定め、医療安全管理指針に明記する方針を示した。患者の予期せぬ死亡が「医療に起因するか」について医療機関と遺族が対立する事例が相次いでおり、判断の質と透明性を高める狙いがある。同制度は2015年に導入され、病院や診療所、助産所で医療に起因する、またはその疑いがある予期せぬ死亡が発生した場合、第三者機関への報告を義務付けている。しかし、事故に該当するかの判断を管理者が単独で行うことが多く、施設間で判断基準にばらつきがあった。今回の見直しでは、全死亡例を対象としたスクリーニング体制を構築し、疑義がある場合の検討過程を記録として残すことを求める。新たな指針では、医療事故に該当するかの検討を行う際の工程や、遺族からの申し出に応じて再検討する仕組みを明文化する。さらに、判断に至った理由、遺族への説明経過などを保存し、事後検証可能な形で管理することを義務付ける方針。また、厚労省は、管理者に対して医療事故調査制度の研修受講を促すとともに、未修了の場合は修了者である医師や看護師など実務担当者が支援できる体制を整えるとした。日本病院会の岡 俊明副会長は、「全死亡例を対象にスクリーニングし、判断根拠を明確に残すことが制度の信頼性向上につながる」と述べている。同制度は今年3月末までに3,338件の報告があり、厚労省は今後、関連指針の改訂を進める方針。 参考 1) 第4回医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会(厚労省) 2) 医療事故の判断、指針明記へ 遺族対応も、調査制度創設10年(共同通信) 3) 医療事故の判断プロセス、安全管理指針に明記へ 判断理由の記録も保存を 厚労省(CB news) 6.有料老人ホーム、囲い込み禁止へ 登録制で参入規制強化へ/厚労省厚生労働省は、10月3日に「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」を開き、有料老人ホームをめぐる規制強化の方針を示した。中重度の要介護者や医療ケアが必要な高齢者を受け入れる施設の一部について、現行の「届け出制」から「登録制」へ移行する方向で検討を進める。事業計画の不備や虐待などの行政処分歴がある事業者の参入を拒否できる仕組みを設け、質の担保と安全性確保を狙う。これまで届け出制では、行政が開設を拒めないことから、不適切な事業者が参入し、給与未払い・集団退職・転居強要などのトラブルも相次いだ。登録制では、参入要件を満たさない事業者に対し、開設制限をかけることが可能になる。同時に、介護サービス事業者との「囲い込み」の是正も進める。住宅型ホームで、入居契約時に提携する居宅介護支援事業所や介護サービスの利用を条件としたり、家賃優遇などで自法人サービスを誘導したりする行為を禁止する。さらに、かかりつけ医やケアマネジャーの変更を迫る行為も明確に禁止される。厚労省は、契約の透明化と利用者の選択権を守る観点から、契約締結・ケアプラン作成手順のガイドライン整備を義務付け、行政が事後的にチェックできる仕組みを設ける方針。今後、パブリックコメントを経て報告書をまとめ、老人福祉法改正を視野に制度化を進める。医療現場への影響としては、入居者の医療的ケア連携が明確化され、外部医師の関与が阻まれるリスクが減る点が挙げられる。今後は、地域医療連携室や在宅医が入居後も継続的に介入できる体制が求められ、医療と介護の分断是正に資する動きとなりそうだ。 参考 1) 有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会 とりまとめ素案(厚労省) 2) 重度者向け老人ホームに登録制検討 厚労省、質懸念なら参入拒否(日経新聞) 3) 老人ホーム「囲い込み」是正 ケアマネ変更の誘導・強要を禁止 厚労省 ルール厳格化へ(JOINT) 4) 有料老人ホーム、家賃優遇の条件付け禁止へ「囲い込み」対策 厚労省(CB news)

234.

小児・青年期の医用画像による被曝、血液がんリスクへの影響は?/NEJM

 小児・青年期における医用画像診断による放射線曝露は、わずかではあるが血液がんのリスク増加と有意に関連していることが、米国・カリフォルニア大学のRebecca Smith-Bindman氏らによる後ろ向きコホート研究「Risk of Pediatric and Adolescent Cancer Associated with Medical Imaging retrospective cohort study:RICコホート研究」で示された。小児・青年期における医用画像診断による放射線誘発性血液がんのリスクを評価することは、画像検査の実施に関する意思決定を支援することにつながる。NEJM誌2025年9月17日号掲載の報告。米国・カナダの小児約370万人で医用画像診断と血液がんの関連性を評価 研究グループは、1996年1月1日~2016年4月30日に出生し、米国の6つの統合医療システム(Kaiser Permanente北カリフォルニア・北西部・ワシントン・ハワイ、Marshfield Clinic、Harvard Pilgrim Health Care)またはカナダ・オンタリオ州健康保険制度のいずれかに生後6ヵ月間継続加入しており、生後3ヵ月以内に1回以上受診し、生後6ヵ月時点で生存かつがんを発症していない372万4,623例の小児を対象とした。 対象児を、出生時からがんまたは良性腫瘍の診断、死亡、オンタリオ州からの転出または米国医療システムからの脱退後6ヵ月、21歳、または研究終了(2017年12月31日)のいずれか早い時点まで追跡調査した。 医用画像診断による活性骨髄の放射線被曝量を定量化し、6ヵ月のラグを設けて累積被曝線量を算出して、層別Cox比例ハザードモデルを用い時間依存性累積放射線量と血液がんとの関連を、被曝なしとの比較において推定した。骨髄への累積放射線量は血液がんのリスクと有意に関連 3,571万5,325人年(1人当たり平均10.1年)の追跡期間中、2,961件の血液がんが診断された。内訳は主にリンパ腫(2,349例、79.3%)、骨髄系または急性白血病(460例、15.5%)、組織球または樹状細胞腫瘍(129例、4.4%)であった。 1mGy以上の放射線に被曝した小児の平均(±SD)被曝量は、全体で14.0±23.1mGy(参照として、頭部CTスキャン1回当たりの被曝量は13.7mGy)、血液がんを発症した小児では24.5±36.4mGyであった。 累積線量の増加とともにがんのリスクが増加し、相対リスク(被曝なしと比較)は1以上5mGy未満で1.41(95%信頼区間[CI]:1.11~1.78)、15以上20mGy未満では1.82(1.33~2.43)、50以上100mGy未満では3.59(2.22~5.44)であった。 骨髄への累積放射線量は、すべての血液がんのリスク上昇と関連しており(100mGy当たりの過剰相対リスク:2.54[95%CI:1.70~3.51]、p<0.001、30mGy vs.0mGyの相対リスク比:1.76[95%CI:1.51~2.05])、ほとんどの腫瘍サブタイプでも同様であった。 30mGy以上(平均57mGy)被曝した小児では、21歳までの血液がんの過剰累積発生率は、1万人当たり25.6であった。 本コホート研究では、血液がんの10.1%(95%CI:5.8~14.2)が医用画像診断による放射線被曝に起因する可能性があり、とくにCTなどの高線量医用画像診断によるリスクが高いと推定された。

235.

第30回 なぜトランプ氏は「タイレノールが自閉症の原因」と発言したのか?専門家報酬、訴訟、SNS…科学的根拠なき主張の裏側を徹底解剖

トランプ大統領と保健福祉長官であるロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は、世界中の妊婦やその家族を震撼させる警告を発しました1)。「タイレノールを飲んではいけない」「それを避けるために必死で戦ってほしい」。その理由は、妊娠中のタイレノール(主成分:アセトアミノフェン)の使用と、子供の自閉症との間に因果関係があるというものでした。 この発言は、長年、妊娠中の痛みや発熱に対して最も安全な選択肢の一つとされてきたアセトアミノフェンへの信頼を根底から揺るがし、大きな混乱と不安を引き起こしました。しかし、彼らが「科学的根拠」として提示した証拠は、信頼に足るものだったのでしょうか。本記事では、これまでの報道内容を基に、この主張がいかにして構築され、なぜ発せられたのか、その裏側を掘り下げていきたいと思います。「ハーバード大学学部長」の研究が根拠? 覆された「科学的証拠」の実態トランプ政権が主張の最大の拠り所としたのは、ハーバード大学公衆衛生大学院の学部長であるアンドレア・バッカレッリ氏らによるレビュー論文でした2)。現役のハーバード大学学部長の名前が挙がったことで、多くの人々がその主張に一定の信憑性を感じたかもしれません。しかし、その背景を調べると、単純な科学的見解とは言い難い複雑な事情が浮かび上がってきます。バッカレッリ氏は、タイレノールの製造元を相手取った集団訴訟で、原告側の「専門家証人」として、少なくとも15万ドル(約2,250万円)の報酬を受け取っていたことが、裁判資料から明らかになっています3)。彼は訴訟のための専門家報告書の中で、アセトアミノフェンと自閉症などの神経発達障害との間に「因果関係がある」と断定的な見解を記していました。しかし、最も重要な事実は、彼が関わったこれらの訴訟が、連邦裁判所の判事によって「信頼できる科学的証拠の欠如」を理由に棄却されていたことです。判事は判決の中で、バッカレッリ氏が「研究結果を都合よく抜き出し(チェリー・ピッキング)、誤って伝えている」とさえ指摘しています。つまり、トランプ政権が「根拠」とした専門家の意見は、司法の場においてすでにその信頼性を否定されていたのです。事実、これまで因果関係を明確に示した研究は報告されていません。また興味深いことに、ホワイトハウスでの会見後、バッカレッリ氏自身が出した声明は、訴訟での断定的な態度から一転し、「因果関係を決定するためにはさらなる研究が必要」と、非常に慎重なトーンに変わっていました。この一貫性のなさは、彼の見解が置かれた立場によって揺れ動く可能性を示唆しています。世論を揺さぶる情報戦――古いSNS投稿の利用と専門家たちの反論科学的根拠が揺らぐ中、政権側は世論を味方につけるための情報戦を仕掛けます。保健福祉省やホワイトハウスの公式Xアカウントは、タイレノールの公式アカウントが2017年に行った「妊娠中に我々の製品を摂取することはお勧めしません」という古い投稿を、「キャプションは不要」という一言と共に再投稿しました4)。これは、あたかも製造会社自身が2017年からすでに危険性を認めているかのような印象を与える巧みな手法でした。しかし、タイレノールの親会社であるKenvue社は即座に声明を発表。この投稿は、ある顧客からの問い合わせに対する断片的な返信であり、「文脈から切り離されている」と反論しました。そして、「アセトアミノフェンは妊娠全期間を通じて、妊婦にとって最も安全な解熱鎮痛薬の選択肢」であるという公式見解を改めて示し、ただし「どんな市販薬であっても、使用前には医師に相談すべき」という、医学の基本原則を付け加えました5)。つまり、過去の投稿はあくまで、医師に相談せずに買える市販薬(=「われわれの製品」)を自己判断で摂取することをお勧めしないという内容だったのです。この騒動に対し、米国の産科婦人科学会(ACOG)をはじめとする専門学会は、トランプ政権の主張に強く反発しました6)。「信頼できるデータに裏付けられていない」「妊娠中のアセトアミノフェン使用が神経発達障害を引き起こすと結論づけた信頼できる研究は一つもない」と断言。さらに、妊娠中の高熱を放置すること自体が、胎児の神経管閉鎖障害などの先天異常リスクを高めることは何十年もの研究で知られており、アセトアミノフェンはそのリスクを管理するための数少ない安全な手段であると強調しました。科学より「個人の信念」――トランプ氏の発言の背景にあるもの信頼できる科学的証拠が乏しく、医学界の総意とも異なる主張を、なぜトランプ氏はこれほど強く推し進めるのでしょうか。その答えは、彼の個人的な信条と政治スタイルにありそうです。報道によれば、この問題はトランプ氏にとって「個人的な関心ごと」であり、彼は以前から自閉症やワクチンに対して、科学的コンセンサスとは異なる強い持論を持っていたことで知られています7)。そして、今回、保健福祉長官に任命されたロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は、長年にわたりワクチンと自閉症の関連を主張してきた、反ワクチン運動の最も著名な活動家の一人です。この人選自体が、政権の方向性を物語っています。つまり、今回の発言は、特定の科学論文を客観的に評価した結果というよりも、トランプ氏とケネディ氏が共有する「既存の医療や科学の権威に対する不信感」という世界観の表れと見るのが自然でしょう。彼らの言動は、科学的データよりも個人の信念や逸話を重視し、複雑な問題を単純な「敵」と「味方」の構図に落とし込むことで支持者からの共感を呼ぶ、という政治戦略の一環なのです。このような単純化は、このSNS時代に共感を呼びやすいことをよく理解したうえでやっていると思います。結論として、タイレノールに関するトランプ政権の警告は、司法に退けられた「専門家」の意見を根拠とし、文脈を無視したSNS情報を利用して増幅され、医学界の明確な反対を押し切る形で行われました。この一件は、科学的真実が、個人の強い信念や政治的思惑によっていかに歪められ、公衆の健康をいたずらに危険にさらしうるかを示す、象徴的な事例といえるのではないでしょうか。 参考文献・参考サイト 1) BBC. Trump makes unproven link between autism and Tylenol. 2) Prada D, et al. Evaluation of the evidence on acetaminophen use and neurodevelopmental disorders using the Navigation Guide methodology. Environ Health. 2025;24:56. 3) The New York Times. Harvard Dean Was Paid $150,000 as an Expert Witness in Tylenol Lawsuits. 4) The White House. X投稿. 2025 Sep 24. 5) Kenvue. Should I be concerned about acetaminophen and autism? 6) ACOG Affirms Safety and Benefits of Acetaminophen during Pregnancy. 2025 Sep 22. 7) The New York Times. Trump Issues Warning Based on Unproven Link Between Tylenol and Autism.

236.

チルゼパチド、血糖コントロール不良の若年2型糖尿病患者に有効/Lancet

 メトホルミンや基礎インスリンで血糖コントロール不十分の若年発症2型糖尿病患者において、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの週1回投与はプラセボと比較し、血糖コントロールおよびBMIを有意に改善し、その効果は1年間持続した。米国・Indiana University School of MedicineのTamara S. Hannon氏らがオーストラリア、ブラジル、インド、イスラエル、イタリア、メキシコ、英国および米国の39施設で実施した、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SURPASS-PEDS試験」の結果で示された。若年発症2型糖尿病に対する治療選択肢は限られており、成人発症2型糖尿病と比較し血糖降下作用が低いことが知られている。若年発症2型糖尿病患者に対するチルゼパチドの臨床エビデンスは不足していた。Lancet誌オンライン版2025年9月17日号掲載の報告。チルゼパチド(5mg、10mg)群とプラセボ群を比較 SURPASS-PEDS試験の対象は、10歳以上18歳未満、体重50kg以上、BMI値が当該国または地域の年齢・性別集団の85パーセンタイル超の2型糖尿病患者で、メトホルミン(1,000mg/日以上)や基礎インスリンによる治療で血糖コントロールが不十分(スクリーニング時のHbA1c値6.5%超11%以下)の患者であった。 研究グループは、最長4週間のスクリーニング期の後、適格患者をチルゼパチド5mg群、10mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、30週間の二重盲検投与期にそれぞれ週1回皮下投与した。無作為化では、年齢層(14歳以下、14歳超)および血糖降下薬使用状況(メトホルミン、基礎インスリン、その両方)で層別化した。 チルゼパチドは2.5mgから開始し、割り付けられた用量まで4週ごとに2.5mgずつ増量した。二重盲検投与期に引き続き、22週間の非盲検延長期に移行し、プラセボ群の患者にはチルゼパチド5mgを投与した。 主要エンドポイントは、チルゼパチド併合(5mgおよび10mg)群とプラセボ群との比較におけるベースラインから30週時までのHbA1c値の変化量であった。 主要な副次エンドポイント(第1種過誤を制御)は同HbA1c値の変化量のチルゼパチド各用量群とプラセボ群の比較、ベースラインから30週時までのBMI値の変化率(チルゼパチド各用量群および併合群とプラセボ群との比較)などであった。主要エンドポイントおよび副次エンドポイントは52週時においても評価した。30週時のHbA1c値変化量は-2.23%vs.+0.05%、BMI値変化率は-9.3%vs.-0.4% 2022年4月12日~2023年12月27日に146例がスクリーニングされ、99例が無作為化された(チルゼパチド5mg群32例、10mg群33例、プラセボ群34例)。患者背景は、女性60例(61%)、男性39例(39%)、平均年齢14.7歳(SD 1.8)、ベースラインの平均HbA1c値は8.04%(SD 1.23)であった。 30週時におけるHbA1c値の変化量は、チルゼパチド併合群で平均-2.23%に対し、プラセボ群では+0.05%であり、チルゼパチド併合群の優越性が検証された(推定群間差:-2.28%、95%信頼区間:-2.87~-1.69、p<0.0001)。チルゼパチドの血糖降下作用は52週まで持続し、52週時におけるHbA1c値の変化量は、チルゼパチド5mg群で-2.1%、10mg群で-2.3%であった。 30週時におけるBMI値の変化率は、チルゼパチド併合群-9.3%、5mg群で-7.4%、10mg群で-11.2%、プラセボ群-0.4%であり、チルゼパチド群はいずれもプラセボ群より有意な減少であった(対プラセボ群の併合群のp<0.0001、5mg群のp=0.0001、10mg群のp<0.0001)。 二重盲検期における有害事象の発現率は、プラセボ群44%(15/34例)、チルゼパチド5mg群66%(21/32例)、10mg群70%(23/33例)であった。チルゼパチド群で最も頻度の高かった有害事象は胃腸障害で、いずれも軽度~中等度であり、用量漸増期に発現し、経時的に減少した。投与中止に至った有害事象はチルゼパチド5mg群で2例(6%)に認められた。チルゼパチドの安全性プロファイルは成人での報告と一致した。試験期間中の死亡例は報告されなかった。

237.

搾乳した母乳は採乳時間に合わせて授乳すべき

 母親が朝に搾乳した母乳を乳児に夕方に与えると、母乳が持つ本来のリズムと異なる合図を乳児に与えてしまう可能性があるようだ。母乳の中には、乳児の睡眠・覚醒リズムに関与すると考えられるホルモンや免疫因子なども含まれているが、それらは日内で変動することが、新たな研究で明らかにされた。このことから研究グループは、午前中に搾乳して保存した母乳を午後や夕方に与えると、意図せず乳児の休息を妨げる可能性があると警告している。米ラトガース大学栄養科学分野のMelissa Woortman氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Nutrition」に9月5日掲載された。 Woortman氏は、「母乳は栄養価の高い食品だが、搾乳した母乳を乳児に与える際には、タイミングを考慮する必要がある」と話している。また、論文の上席著者であるラトガース大学生化学・微生物学分野教授のMaria Gloria Dominguez-Bello氏は、「このような情報を受け取るタイミングは、幼少期、とりわけ、体内時計がまだ発達段階にある乳児期には特に重要だろう」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 医師は母乳を、乳児の免疫システムの構築や成長中の身体の栄養を助けるビタミン、ミネラル、化合物を豊富に含む「スーパーフード」と見なしている。母乳は乳児にとって最良の栄養源であると広く考えられている。しかし、1日を通して常に直接授乳することができないため、搾乳して保存しておいた母乳を後で与える母親は少なくない。 今回の研究は、38人の授乳中の母親から、1日(24時間)の中で4つの異なる時間帯(午前6時、正午、午後6時、午前0時)に採取した母乳サンプルを収集し、その成分の変動を解析した。調べた成分は、メラトニン、コルチゾール、オキシトシン、免疫グロブリンA(IgA)、ラクトフェリンで、いずれもELISA法を用いて濃度を測定した。また、微生物組成は16S rRNA解析により評価した。 メラトニンとコルチゾールは、いずれも睡眠・覚醒リズムに関与するホルモンであり、メラトニンは夜間に分泌が増えて睡眠を促し、コルチゾールは朝に分泌が増えて覚醒を促す。オキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれ、母子の絆形成に関与するとされる。IgAは免疫系によって産生される抗体の一種であり、ラクトフェリンは糖タンパク質で乳児をさまざまな感染症から守る働きを持つ。これらはいずれも乳児の免疫機能や消化器系の発達などに影響を与える。 解析の結果、メラトニンとコルチゾールの濃度には明確な日内変動が認められ、メラトニンは真夜中、コルチゾールは早朝に濃度がピークに達することが明らかになった。この結果についてWoortman氏は、「血液中のホルモンは概日リズムに従って変動する。授乳中の母親では、それが母乳に反映されやすい。メラトニンやコルチゾールなどのホルモンも、概日リズムに従って母体循環から母乳に移行する」と説明している。他の成分は、1日を通してほぼ安定していた。一方、母乳中の微生物組成は昼夜で変動し、夜間には皮膚由来の細菌、日中には環境由来の細菌が増加することが示された。 研究グループは、「この結果は、搾乳した母乳はできるだけ採乳・保存した時間帯に合わせて与えるべきであることを示唆している」と述べている。Dominguez-Bello氏は、「搾乳した母乳に『朝』『午後』『夕方』のラベルを貼り、それに応じて授乳すれば、搾乳と授乳のタイミングをそろえ、母乳本来のホルモン・微生物組成や概日リズムの情報を保つのに役立つ可能性がある」とアドバイスしている。一方、Woortman氏は、「母親が1日中乳児と一緒にいることが難しい現代社会において、授乳時間と搾乳時間を合わせることは、搾乳した母乳を与える際に母乳のメリットを最大限に引き出すシンプルで実用的な方法だ」と述べている。

238.

異物除去(6):鼻腔異物(2)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q150

異物除去(6):鼻腔異物(2)Q150外勤先の診療所での4歳男児の鼻腔異物の症例。「mother’s kiss」を試みたが除去できなかった。外勤先には耳鏡があるが、耳鼻科用鑷子などの使えそうなデバイスがない。あるのは一般的な事務用品くらいだ。何か使えるものはあるだろうか。

239.

絞扼性イレウスの見落とし?【医療訴訟の争点】第15回

症例絞扼性イレウスは、緊急の開腹手術が第1選択となり、機を逃すと致死的な結果を招くにもかかわらず、鑑別が容易でないことも珍しくない。本稿では、診療過程における絞扼性イレウスの見落としが争点となった東京地裁令和3年11月29日判決を紹介する。<登場人物>患者男児(8歳)原告患者の両親被告大学病院事案の概要は以下の通りである。平成28年2月20日(土)患児は、夜から嘔吐を繰り返す。2月21日(日)午前10時8分休日診療所を受診。受診時、嘔気と嘔吐を訴え、体温は38.3度、下痢なし、咽頭・胸部異常なし、インフルエンザ検査は陰性。同診療所で診察した医師は、急性胃腸炎と診断し、第二次救急医療機関であるA医療センターを紹介した。正午頃A医療センターを受診受診時、患児は、心拍数210回/分、体温38度、腸音通常で、腹部はやや硬く全体的に圧痛が認められた。A医療センターの医師は、PSVT(発作性上室頻拍)を認めて処置を行ったが、A医療センターでの薬物治療および原因検索は困難であるとして、PSVTの治療をお願いする旨の申し送りをし、第三次救急医療機関である被告病院に転送した。午後5時頃被告病院に到着。到着時、茶褐色の嘔吐。午後5時28分頃12誘導心電図検査を実施。このときの心拍数は200回/分午後5時35分頃茶褐色の嘔吐をした。診察した医師は、超音波検査および診察を行い、劇症型心筋炎の可能性は低いと判断。午後5時56分頃PSVT治療のため、午後5時56分頃にアデホス0.1mL、同日午後5時58分頃にアデホス0.2mL、同日午後6時2分頃にアデホス0.4mL、同日午後6時31分頃にアデホス0.5mL、同日午後6時44分頃にワソラン0.5アンプルの静注を行った。午後6時15分頃不穏な言動をするなどして意識障害様の症状がみられる。午後6時52分頃茶褐色の嘔吐。午後8時30分頃頭部および胸腹部の単純CT検査(本件CT検査)を実施。胃および小腸の著明な拡張ならびに腹水貯留が認められており、「イレウス疑い・腹水貯留」と診断午後9時1分頃PEA(無脈性電気活動、心停止)状態午後10時25分心臓マッサージ開始午後11時24分死亡死亡後本件患者の死因につき、絞扼性イレウスも考えられることを原告らに対し説明実際の裁判結果原告側は、繰り返す嘔吐、腹痛といった所見から、絞扼性イレウスを疑うべきであった、腹部単純X線や超音波検査を行えば異常が把握でき、緊急手術により救命できた可能性が高い旨を主張した。これに対し、被告病院は、搬送時から頻拍・低血圧が続き、心筋炎や循環動態不全が強く疑われる状況であった、嘔吐も循環器疾患や感染症に伴う可能性があり、腹部疾患に直ちに結びつく特異的所見ではない旨を主張した。具体的には、以下のタイミングで、腹部検査(単純レントゲン検査、単純CT検査、造影CT検査および超音波検査など)を行う義務があったかが争われ、裁判所は以下のとおり判断した。(1)「傷病名胃腸炎、受診前日より腹痛・嘔吐を認める」旨が記載された診療情報提供書が送付され、被告病院に到着し、嘔吐があった時(2月21日午後5時10分)の検査義務について裁判所は、以下の点を指摘し、「まず行うべき処置は、PSVTを含む循環器疾患に対する処置であり、本件患児が被告病院に到着した平成28年2月21日午後5時10分頃の時点において、被告病院の医師が絞扼性イレウスを含む腹部疾患を疑って、直ちに本件腹部検査を行うべきであったとはいえない」とした。前医(A医療センター)は、傷病名をPSVT、急性胃腸炎とし、上室性頻拍に対する迷走神経刺激手技などの治療を行っていること前医(A医療センター)での上記治療が行われるも、頻脈が持続し、A医療センターでの薬物治療と原因検索は困難であるとして、被告病院に紹介していることA医療センターの医師は、被告病院の医師に電話でPSVTの治療をお願いする旨の申し送りをしていること循環器疾患の中でも、心筋炎は、発熱、腹痛、嘔吐の前駆症状を伴うことが多く、また、細菌やウイルスなどによる感染起因のものが多く何らかの感染症に罹患している可能性もあること。循環器疾患が強く疑われていたことを踏まえると、急性胃腸炎との傷病名や腹痛・嘔吐などの経過報告の記載は循環器疾患に付随する情報提供と考えることが合理的であること(2)再度の茶褐色の嘔吐があり、心エコーおよび診察にて劇症型心筋炎の可能性が低いと判断された時(2月21日午後5時40分)の検査義務について裁判所は、以下の点を指摘し、「循環器疾患の原因として感染症が疑われることや循環動態の悪化が継続したことによる嘔吐も考えられ、嘔吐は消化器以外に原因があることが少なくないことを踏まえれば、本件患児の場合、嘔吐が認められたからといって、腹部疾患を疑って本件腹部検査をすべきであったとはいえない」とした。劇症型心筋炎の可能性は低いと判断されたものの、本件患児の心拍数は、2月21日午後5時28分頃の12誘導心電図検査の段階で200回/分と、非常に高値であったこと12誘導心電図では、PSVTと矛盾しない所見が得られている上、初診時に認めた発熱、低血圧などの所見は、PSVTや心筋炎の所見と矛盾なく、循環器疾患の疑いはなお強い状態であったこと被告病院医師の初診時、本件患児の腹部は平坦で軟であり圧痛はなく、腹部超音波検査時にも腹部の張りや筋性防御を認めなかった上、明確な腹痛の主訴もなかったこと(3)アデホスを3回投与したが頻脈が治らない一方、嘔吐を繰り返している時(2月21日午後6時2分)の検査義務について裁判所は、以下の点を指摘し、「本件腹部検査をすべきであったということはできない」とした。アデホスは、短時間作用性のため繰り返し使用できる一方で、再発の可能性も高く、頻拍の再発があったからといって、循環器疾患を否定できるものではないこと2月21日午後5時39分頃の血液検査によれば、心筋炎症マーカーが高値となっており、急性心筋炎が強く疑われる状態であったこと(4)アデホスを4回投与した上、ワソランを投与したが頻脈が治らない一方、さらに嘔吐した時(2月21日午後6時52分)の検査義務について裁判所は、以下の点を指摘し、「被告病院の医師をして、絞扼性イレウスを含む緊急性のある腹部疾患を疑って本件腹部検査をすべきであったとはいえない」とした。本件患児は急性心筋炎が強く疑われる状態であり、被告病院の医師は、種々の細菌検査、複数回の12誘導心電図検査、アデホスとワソランの投与などを行っていること急性心筋炎は感染起因が多いこと、急性心筋炎には繰り返しの心電図検査が肝要であること、アデホスとワソランはPSVTの薬物治療として有用であることから、被告病院で行われた検査や治療はいずれも適切であったことアデホスとワソランの薬物治療が奏功しなくても、急性心筋炎といった緊急性のある循環器疾患は否定できないものであること発熱、意識障害を伴う嘔吐は中枢神経疾患の鑑別に重要であることから、感染を原因としてウイルス性脳炎などの可能性を疑ったことにも不適切な点はないこと午後6時52分頃まで、本件患児の病状が絞扼性イレウスの所見と矛盾しない症状を呈していたことは認められるものの、非特異的所見であること絞扼性イレウスをとくに示唆する腹部膨満や激しい腹痛は午後6時52分の時点においても認められず、他方で急性心筋炎、感染症、脳炎などを疑う症状もあったこと。とくに急性心筋炎は本件患児の臨床症状や検査結果からその存在を積極的に疑うべき状態に変わりはなかったこと注意ポイント解説本判決は、小児の消化器症状を循環器疾患とどう峻別すべきかが焦点となった事例である。繰り返す嘔吐は腹部疾患を疑わせるものであるが、必ずしも特異的ではなく、心筋炎などでも同様の症状を呈し得るものであること、診療情報の流れや臨床所見から循環器疾患がより強く疑われたことから、裁判所は、腹部検査を直ちに行うべき注意義務を否定した。また、本件では、死亡の数時間前の午後8時30分頃に撮影されたCTにて、胃および小腸の著明な拡張ならびに腹水貯留が認められており、「イレウス疑い・腹水貯留」と診断されているものの、解剖やCTによる死後画像造影が行われておらず、死因としては、急性心筋炎、脳症、絞扼性イレウスなどが考えられ、絞扼性イレウスであったと特定することができないこともまた、上記の判断に影響した部分があると思われる。このため、仮に、前医から腹部疾患を強く疑われる旨の診療情報が提供されていたり、非特異的な所見にとどまらず、腹部膨満や激しい腹痛などの絞扼性イレウスを示唆する所見が確認されていたりする場合には、異なる判断となった可能性がある点に留意する必要がある。なお、上記のとおり、本件患児の死因は、急性心筋炎、脳症、絞扼性イレウスなどの複数が考えられ、特定ができない中、「イレウスが死因かもしれない」旨の説明を受けることで、見落としへの不信を募らせたために訴訟に至っていると思われる。このため、顛末報告の説明は必要であるが、限られた情報の中で、誤解や不信感を抱かれないよう、丁寧に説明をする必要があることが改めて確認される事案でもある。医療者の視点本判決は、小児の非特異的な症状から重篤な疾患を鑑別する、臨床現場の難しさを反映したものと考えられます。裁判所は、頻拍や低血圧といった循環器系の異常を重視し、そちらの検査・治療を優先すべきであったと判断しました。これは、生命維持に直結する循環・呼吸の安定化を最優先するという救急医療の原則に合致しており、臨床医の判断プロセスと非常に近いものです。一方で、実臨床では、一つの疾患に絞って診断を進めるわけではありません。循環器疾患の治療を行いながらも、「嘔吐が続く」という情報から消化器疾患の可能性を常に念頭に置き、状態の変化を注意深く観察します。訴訟では特定の時点での「検査義務」が問われますが、現場では治療と並行して、どのタイミングで次の検査に踏み切るかという、より動的で連続的な判断が求められます。とくに、本件のように循環動態が不安定な患児をCT室へ移動させることには大きなリスクが伴います。そのため、まずはベッドサイドでできる治療や検査を優先するという判断は、実臨床ではやむを得ない、むしろ標準的な対応と言えるでしょう。この症例は、非特異的な症状であっても、絞扼性イレウスを示唆する腹部膨満や圧痛といった特異的な所見を見逃さないために、繰り返し身体所見をとることの重要性を改めて教えてくれる事例です。

240.

第262回 風疹流行から10年 ワクチン推進で日本が「排除」認定/WHO

<先週の動き> 1.風疹流行から10年 ワクチン推進で日本が「排除」認定/WHO 2.全国で「マイナ救急」導入、救急現場で医療情報を共有可能に/消防庁 3.分娩可能な病院は1,245施設に、34年連続減少/厚労省 4.高額レセプトの件数が過去最高に、健康保険組合は半数近くが赤字/健保連 5.アセトアミノフェンと自閉症 トランプ大統領の発表で懸念拡大/米国 6.救急搬送に選定療養費 軽症患者が2割減、救急車の適正利用進む/茨城・松阪 1.風疹流行から10年 ワクチン推進で日本が「排除」認定/WHO厚生労働省は9月26日、「わが国が風疹の『排除状態』にあると世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局から認定を受けた」と発表した。「排除」とは、国内に定着した風疹ウイルスによる感染が3年間確認されないことを指し、わが国では2020年3月を最後に土着株の感染例が報告されていなかった。風疹は、発熱や発疹を引き起こす感染症で、妊婦が感染すると先天性風疹症候群を発症した子供が生まれるリスクがある。国内では2013年に約1万4千人が感染し、2018~19年にも流行が発生。過去には妊婦の感染により、45例の先天性風疹症候群が報告されていた。流行の中心は予防接種の機会がなかった40~50代の男性であり、国は2019年度からこの世代を対象に無料の抗体検査とワクチン接種を実施した。その結果、2021年以降は年間感染者数が10人前後に抑えられ、感染拡大は収束した。今回の認定はこうした取り組みの成果を示すもので、厚労省は「引き続き適切な監視体制を維持し、ワクチン接種を推進する」としている。一方で、海外からの輸入例は依然としてリスクが残る。今後も免疫のない世代や妊婦への周知徹底が課題となる。風疹排除はわが国の公衆衛生政策の大きな成果だが、維持のためには医療現場と行政が協力し続ける必要がある。 参考 1) 世界保健機関西太平洋地域事務局により日本の風しんの排除が認定されました(厚労省) 2) 風疹の土着ウイルス、日本は「排除状態」とWHO認定…2020年を最後に確認されず(読売新聞) 3) WHO 日本を風疹が流行していない地域を示す「排除」状態に認定(NHK) 4) 日本は風疹「排除状態」、WHO認定 土着株の感染例確認されず(朝日新聞) 2.全国で「マイナ救急」導入、救急現場で医療情報を共有可能に/消防庁救急現場での情報確認を迅速化する「マイナ救急」が、10月1日から全国の消防本部で導入される。マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」を活用し、救急隊員が、患者の受診歴や処方薬情報を即時に確認できる仕組みである。患者本人や家族が説明できない状況でも、カードリーダーで情報を読み取り、オンライン資格確認システムに接続して必要な医療情報を閲覧できるようになる。これにより、救急隊は持病や服薬を把握した上で適切な搬送先を選定し、受け入れ先の医療機関では治療準備を事前に進めることが可能となる。患者が意識不明の場合には、例外的に同意なしで情報参照が認められる。2024年5月から実施された実証事業では、救急隊員から「服薬歴の把握が容易になり、搬送判断に役立つ」との評価が寄せられた。わが国では高齢化に伴い、多疾患併存やポリファーマシーの患者が増加している。救急現場での服薬歴不明は治療遅延や薬剤相互作用のリスクにつながるため、本制度は臨床現場の安全性向上に資する。その一方で、救急時に確実に活用するためには、患者自身がマイナ保険証を常時携帯することが前提となる。厚生労働省と消防庁は「とくに高齢者や持病のある方は日頃から携帯してほしい」と呼びかけている。マイナ保険証の登録件数は、2025年7月末時点で約8,500万件に達しているが、依然として所持率や利用登録の偏りは残る。医師にとっては、救急現場から搬送される患者情報がより早く共有されることで、初期対応の迅速化や医療安全の強化が期待される。他方、情報取得の精度やシステム障害時の対応など、運用上の課題にも注意が必要となる。「マイナ救急」は、地域を越えて情報を共有し、救急医療の質を底上げする国家的インフラの一環であり、今後の運用実績を踏まえ、医療DXの具体的成果として浸透するかが注目される。 参考 1) あなたの命を守る「マイナ救急」(総務省) 2) 救急搬送時、マイナ保険証活用 隊員が受診歴など把握し適切対応(共同通信) 3) 「マイナ救急」10月から全国で 受診歴や服用薬、現場で確認(時事通信) 3.分娩可能な病院は1,245施設に、34年連続減少/厚労省厚生労働省が公表した「令和6年医療施設(動態)調査・病院報告」によれば、2024年10月1日現在、全国の一般病院で産婦人科や産科を掲げる施設は計1,245施設となり、前年より9施設減、34年連続の減少で統計開始以来の最少を更新した。小児科を有する一般病院も2,427施設と29施設減少し、31年連続の減少となった。全国的に病院数そのものが減少傾向にあり、とくに周産期・小児医療を担う診療科の縮小は地域医療体制に大きな影響を及ぼすとみられる。調査全体では、全国の医療施設総数は18万2,026施設で、うち活動中は17万9,645施設。病院は8,060施設で前年比62施設の減、一般病院は7,003施設と62施設の減、診療所は10万5,207施設で微増、歯科診療所は6万6,378施設で440施設の減となった。病床数でも全体で約1万4,663床減少し、とくに療養病床と一般病床が減少した。病院標榜科の内訳をみると、内科(92.9%)、リハビリテーション科(80.5%)、整形外科(69.1%)が多い一方で、小児科は34.7%、産婦人科15.0%、産科2.8%にとどまる。産婦人科と産科を合わせた比率は17.8%であり、地域により分娩を担う施設が極端に限られる状況が続いている。また、病院報告では、1日当たりの外来患者数が前年比1.7%減の121万2,243人と減少した一方、在院患者数は113万3,196人で0.8%増加し、平均在院日数は25.6日と0.7日短縮した。医療需要は依然高水準である一方で、入院期間短縮と医療資源の集約化が進む姿が浮かんだ。今回の結果は、産科・小児科医師の偏在や医師不足が長期的に続いている現実を裏付けるものであり、医師にとっては、地域における出産・小児救急の受け皿が細り続ける中で、救急搬送の広域化や勤務負担の増大が避けられない。各地域での分娩体制再編や周産期医療ネットワーク強化の重要性が一層高まっている。 参考 1) 令和6年医療施設(動態)調査・病院報告の概況(厚労省) 2) 産婦人科・産科が最少更新 34年連続、厚労省調査(東京新聞) 3) 産婦人科・産科がある病院1,245施設に、34年連続の減少で最少を更新 厚労省調査(産経新聞) 4.高額レセプトの件数が過去最高に、健康保険組合は半数近くが赤字/健保連健康保険組合連合会(健保連)は9月25日、「令和6年度 高額医療交付金交付事業における高額レセプト上位の概要」を発表した。1ヵ月の医療費が1,000万円を超える件数は2,328件(前年度比+8%)で10年連続の最多更新となり、過去10年で6倍超に増加した。上位疾患の約8割は悪性腫瘍で、CAR-T療法や遺伝子治療薬などの登場が背景にある。最高額は約1億6,900万円で、単回投与型の薬剤を用いた希少疾患治療が占めた。これらの薬剤は患者に新たな治療選択肢を提供し、長期生存やQOL改善につながる一方で、健保組合の財政に直結する。健保連の制度により高額事例は共同で負担される仕組みだが、件数増加は拠出金を押し上げ、結果として保険料率や現役世代の負担増につながる。実際に2024年度の平均保険料率は9.31%と過去最高となり、1/4の組合は「解散ライン」とされる10%を超えた。臨床現場にとっても影響は現実に及ぶ。新規薬剤を希望する患者からの説明要請が増えており、医師は「なぜこの薬が高額なのか」「自分に適応があるのか」「高額療養費制度でどこまで自己負担が軽減されるのか」といった質問に直面している。加えて、長期投与が前提となる免疫療法や分子標的薬では、累積コストや再投与リスクについても説明が欠かせない。患者や家族が治療継続の是非を判断する際、経済的側面を含めた十分な情報提供が求められる。今後は、がん免疫治療の投与拡大、希少疾患への新規遺伝子治療薬導入などにより、高額レセプトはさらに増加すると予測される。薬価改定で一定の調整は行われるが、医療費全体に占める薬剤費の比重は確実に高まり、制度改革や患者負担の見直し議論は避けられない。現場の医師には、エビデンスに基づく適正使用とともに、経済的影響を含めた説明責任がより重くのしかかる局面にある。 参考 1) 令和6年度 高額医療交付金交付事業における高額レセプト上位の概要(健保連) 2) 高額レセプト10年連続で最多更新 24年度は2,328件 健保連(CB news) 3) 「1,000万円以上」の高額医療8%増 費用対効果の検証不可欠(日経新聞) 4) 綱渡りの健康保険 組合の4分の1、保険料率10%の「解散水準」に(同) 5) 健保1,378組合の半数近く赤字、保険料率が過去最高の月収9.3%…1人あたりの年間保険料54万146円(読売新聞) 6) 健保連 昨年度決算見込み 全体は黒字も 半数近くの組合が赤字(NHK) 5.アセトアミノフェンと自閉症 トランプ大統領の発表で懸念拡大/米国米国トランプ大統領は9月22日、解熱鎮痛薬アセトアミノフェン(パラセタモール)が「妊婦で自閉スペクトラム症(ASD)リスクを大幅に上げる」として服用自粛を促した。これに対し、わが国の自閉スペクトラム学会は「十分な科学的根拠に基づく主張とは言い難い」と懸念を表明している。米国産科婦人科学会(ACOG)も「妊娠中に最も安全な第一選択肢」と反論。WHO、EU医薬品庁、英国規制当局はいずれも「一貫した関連は確認されていない」とし、現行推奨の変更不要とした。一方、米国の現政権は葉酸関連製剤ロイコボリンのASD治療薬化にも言及したが、大規模試験の根拠は乏しい。わが国の医療現場にも余波は広がり、妊婦・家族からの不安相談が増加する懸念や、自己判断での服用中止による解熱の遅延、SNS起点の誤情報拡散が想定されている。妊娠中の高熱は、胎児に不利益を与え得るため、わが国の実務ではアセトアミノフェンは適応・用量を守り「必要最小量・最短期間」で使用するのが原則となっている。他剤(NSAIDs)は妊娠後期で禁忌・慎重投与が多く、安易な切り替えは避けるべきとされる。診療現場では、現時点で因果を支持する一貫した証拠はないこと、高熱の速やかな改善の利点、自己中断せず受診・相談すること、市販薬も含む総服薬量の確認を丁寧に説明することが求められる。ASDの有病増加には、診断基準変更やスクリーニング拡充も影響し、単一因子で説明できない点もあり、過度な警告は受療行動を阻害し得る。医師には、ガイドラインや専門学会の公的見解に基づく対応が求められる。 参考 1) 自閉症の原因と治療に関するアメリカ政府の発表に関する声明(自閉スペクトラム学会) 2) WHO アセトアミノフェンと自閉症「関連性は確認されず」(NHK) 3) トランプ政権“妊婦が鎮痛解熱剤 自閉症リスク高” 学会が反対(同) 4) トランプ氏「妊婦の鎮痛剤、自閉症リスク増」主張に日本の学会が懸念(日経新聞) 5) 解熱剤と自閉症の関連主張 トランプ大統領に批判集中(共同通信) 6) 「鎮痛剤が自閉症に関係」 トランプ政権が注意喚起へ(時事通信) 6.救急搬送に選定療養費 軽症患者が2割減、救急車の適正利用進む/茨城・松阪救急搬送の「選定療養費」徴収を導入した2つの自治体で、適正利用の進展が確認された。三重県松阪地区では、2024年6月~2025年5月に基幹3病院で入院に至らなかった救急搬送患者の一部から7,700円の徴収を開始した。1年間の救急出動は1万4,184件で前年同期比-10.2%、搬送件数も-10.6%。軽症率は55.4%から50.0%へ-5.4ポイント、1日50件以上の多発日は86から36日へ減少した。搬送1万4,786人(乳幼児193人を含む)のうち帰宅は7,585人(51.3%)、徴収は1,467人(全体の9.9%)。疼痛・打撲・めまいなどが多かった。並行して1次救急(休日・夜間応急診療所)受診が31%、救急相談ダイヤル利用が34%増え、受診先の振り分けが進んだ。茨城県の検証(2025年6~8月)でも、対象22病院の徴収率は3.3%(673/20,707)と限定的ながら、県全体の救急搬送は-8.3%、うち軽症などは-19.0%、中等症以上は+1.7%と、救急資源の選別利用が進んだ。近隣5県より減少幅が大きく、呼び控えによる重症化や大きなトラブルの報告は認められなかった。なお、電話相談で「出動推奨」だった例は徴収対象外とし、誤徴収は月1件程度で返金対応としている。現場の医師は、徴収対象と除外基準の周知徹底、乳幼児や高齢者などへの配慮のほか、1次救急・電話相談との連携による適正振り分け、会計時の説明の一貫性などが課題となる。今後は「安易な利用抑制」と「必要時にためらわず利用できる安心感」の両立を、医師と行政が協働して救急現場に反映させることが問われている。 参考 1) 救急搬送における選定療養費の徴収に関する検証の結果について(概要版)(茨城県) 2) 一次二次救急医療体制あり方検討について(第四次報告)(松阪市) 3) 軽症者の救急搬送19%減 茨城県が「選定療養費制度」を検証(毎日新聞) 4) 選定療養費 軽症搬送、前年比2割減 6~8月 茨城県調査「一定の効果」(茨城新聞) 5) 救急搬送の一部患者から費用徴収、出動件数は1年間で10.2%減 松阪市「適正利用が進んだ」(中日新聞) 6) 救急車「有料化」で出動数1割減 「持続可能な医療に寄与」と松阪市(朝日新聞)

検索結果 合計:3085件 表示位置:221 - 240