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成人遅発型ポンペ病に2種類併用の治療薬を発売/アミカス

 アミカス・セラピューティクスは、成人遅発型ポンぺ病を対象とする新規併用療法の治療薬であるシパグルコシダーゼ アルファ(商品名:ポムビリティ)とミグルスタット(同:オプフォルダ)を8月27日に発売した。 ポンぺ病(糖原病II型)は、ライソゾーム内のグリコーゲンの分解に関与する酵素である酸性α-グルコシダーゼ(GAA)をエンコードする遺伝子の突然変異によって起こる希少疾病。この酵素の機能障害により、ライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し、細胞機能の障害が進行し、筋力、運動および肺機能が低下する。患者は、全世界で5,000~1万人と推定され、わが国では約130人とされている。 今回発売されるシパグルコシダーゼ アルファは、点滴静注剤であり、遺伝子組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ製剤となる。マンノース-6-リン酸受容体への結合親和性が高い糖鎖を付加することで、細胞への酵素の取り込みの促進が期待される。また、ミグルスタットは経口剤であり、中性環境の血中で不活化されやすいシパグルコシダーゼ アルファを安定化させ、活性を維持させた状態で血中に長くとどまることを可能にする。これにより、シパグルコシダーゼ アルファ単剤と比較し、細胞への取り込み量を増加させることが期待される。 両剤の併用により、細胞内への酵素取り込み効率と標的組織への到達性の向上が見込まれ、とくに筋組織においてポンぺ病の主要な貯蔵物質であるグリコーゲンを減少させる作用が期待されている。【シパグルコシダーゼ アルファ製品概要】一般名:シパグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)販売名:ポムビリティ点滴静注用105mg効能または効果:遅発型ポンペ病に対するミグルスタットとの併用療法用法および用量:ミグルスタットとの併用において、通常、体重40kg以上の成人にはシパグルコシダーゼ アルファとして、1回体重1kg当たり20mgを隔週点滴静脈内投与する。薬価:20万4,251円薬価収載日:2025年8月14日発売日:2025年8月27日製造販売元:アミカス・セラピューティクス【ミグルスタット製品概要】一般名:ミグルスタット販売名:オプフォルダカプセル65mg効能または効果:遅発型ポンペ病に対するシパグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)との併用療法用法および用量:シパグルコシダーゼ アルファとの併用において、通常、成人にはミグルスタットとして体重40kg以上50kg未満の場合は1回195mg、体重50kg以上の場合は1回260mgを隔週経口投与する。なお、食事の前後2時間は投与を避けること。薬価:6,038.2円薬価収載日:2025年8月14日発売日:2025年8月27日製造販売元:アミカス・セラピューティクス

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第277回 コロナの今、感染・入院・死亡者数まとめ

INDEX定点報告数推移入院・重症化例死亡者数新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)が感染症法の5類に移行したのが2023年5月8日。それから丸2年以上が経過した。現在、全国的に感染者が増加していると報道されているが、先日の本連載でも報告したように地域の基幹病院では、流行期に苦境を迫られているのが現実だ。もっとも世の中全体が新型コロナについて「喉元過ぎた熱さ」化した今、5類移行以後の新型コロナがどのような経過をたどってきたかについての認識は、医療者の中でも差があるだろう。私自身は医療者ではないが、隠さず言ってしまえば、まさに喉元過ぎた熱さ化しつつあるのが実際である。ということで、自省も込めてこの段階で、5類移行から現在に至るまでの新型コロナの状況について経過をたどってみることにした。今回は感染者数、入院者数、死亡者数についてまとめてみた。定点報告数推移まず、5類移行後の一番大きな変化としては感染者報告が定点報告1)となった点である。その最初となった2023年第19週(5月8~14日)は全国で2.63人。この後は第35週(8月28日~9月3日)の20.50人まで、途中で第31週(7月31日~8月6日)と第32週(8月7~13日)に前週比で若干減少したことを除けば、ひたすら感染者は増加し続けた。ただ、ここからは急速に減少し、わずか4週後の第39週(9月25日~10月1日)には8.83人まで減少。第44週(10月30日~11月5日)には第19週の水準を下回る2.44人となった。16週間かけてピークまで増加した感染者数が9週間で減少したことになる。最終的には第46週(11月13~16日)の1.95人で底を打った。もっともここからは再び増加に転じ、この年の最終週の第52週(12月25~31日)には5.79人と6週間で約3倍まで増加した。2024年第1週(1月1~7日)は6.96人で始まり、第5週(1月29日~2月4日)に16.15人。以後は第18週(4月29日~5月5日)の2.27人まで一貫して減少したが、第19週(5月6~12日)からは2.63人と反転し、第30週(7月22~28日)の14.58人まで増加を続けた。そしてこれ以降は再び減少し始め、第45週(11月4~10日)の1.47人がボトムとなり、最終週の第52週(12月23~29日)は7.01人。7週間で5倍弱に増加した。2025年は第1週(2024年12月30日~2025年1月5日)が5.32人と2024年最終週からは減少したものの、翌第2週(1月6~12日)は7.08人と跳ね上がり、これが冬のピーク。この後は緩やかに減少していき、第21週(5月19~25日)、第22週(5月26日~6月1日)ともに0.84人まで低下。そこから再び一貫した上昇に転じ、最新の第33週(8月11~17日)が6.30人である。このデータを概観すると、1月中が冬のピークで、その後は感染者が減少。5月中下旬から感染者が増加し、7~8月にピークを迎え、そこから11月中旬にかけてボトムとなり、再び増加に転じるという流れが見えてくる。現時点において、この夏まで4つの波が到来している形で、年々ピークの感染者数は低下している。もっとも、これは以前書いたようにウイルスの感染力が低下しているわけではなく、次第に多くの人がコロナ禍を忘れ、喉の痛みや鼻水が大量に出るなどの呼吸器感染症の症状が出ても受診・検査をしていないケースが増えているからだろう。また、注意が必要なのが定点報告医療機関数の変化である。2025年第14週(3月31日~4月6日)までは約5,000医療機関だったが、これが再編されて第15週以後は約3,000医療機関に変更されていることだ。その意味ではもはや定点報告数は大まかに流行を捉えるという位置付けにすぎないといえるだろう。そうした中でこの流行の波形を見ると実は特徴的な地域がある。沖縄県だ。同県の場合、ほかの都道府県に見られる冬期の波がほとんどない。これは同県が日本では唯一の亜熱帯に属する県であることが理由だろう。すなわち冬に暖房を使って屋内に籠ることがほとんどないということだ。つまるところ「暑さや寒さでエアコンを使い換気が悪くなる時期に各地で感染者が増加する」という従来からの定説を如実に裏付けているともいえる。実際、夏前の流行の立ち上がり時期を見ると、九州・沖縄地方は全国傾向と同じ毎年第19週前後だが、北海道や東北地方は第25週前後である。逆に冬期は北海道、東北地方は第42週前後に感染者が増加し始めるが、九州地方では第49週前後である。入院・重症化例最も医療機関にとって負荷がかかるのは新型コロナによる入院患者の増加であることはいうまでもない。厚生労働省では医療機関等情報支援システム(G-MIS)2)のデータから週報とともに重症化事例も公表している。当然ながら、定点報告の感染者数のピーク前後で入院事例が増えると考えられるため、各ピーク期に絞ってその状況を取り上げる。まず、2023年については、夏のピークだった第35週の直前である第34週(8月21~27日)の全国の新規入院患者数1万3,972人がピークである。この時の7日間平均でのICU入院中患者数が228人、ECMOまたは人工呼吸器管理中が140人である。ICU入院中の患者数は第33~36週までは200人超である。2024年の冬季の感染者数ピークは第5週だが、入院患者のピークはその前の第3週(1月15~21日)の3,494人である。夏に比べて一気に入院患者数が減少したようにもみえるが、これは2023年9月25日より、入院患者数をG-MISデータ(約3万8,000医療機関)から全国約500ヵ所の基幹定点医療機関からの届出数に変更したためである。その代わり、この時点から入院患者の年齢別などの詳細が報告されるようになっている。この2024年第3週の入院患者の年齢別内訳を見ると、60歳以上の高齢者(同データは65歳以上の区分なし)が83.1%を占めている。これ自体は驚くことではない。ただ、10歳刻みの年齢区分で見ると、60歳以降の3区分と50~59歳の区分に次いで多いのが1歳未満である。また、この時の入院時のICU入室者は117人、人工呼吸器利用者は57人である。さらに同年夏の入院患者数ピークは、感染者数ピークの第30週の翌週である第31週(7月29日~8月4日)の4,590人。この時も60歳以上の高齢者が84.4%を占め、第3週前後の時と同様に60歳以降の3区分と50~59歳の区分に次いで1歳未満の入院患者が多い。この週のICU入室者は187人、人工呼吸器の利用者は80人。2025年冬の入院患者数ピークは、感染者数ピークと同様の第2週で2,906人。60歳以上の高齢者割合は86.0%。年齢階層別の入院患者数で1歳未満が高齢者層に次ぐのは、この時も同じだ。この週のICU入室者は120人、人工呼吸器の利用者は54人だった。死亡者数人口動態統計3)の年次確定数で見ると、2023年の新型コロナによる死亡者数は3万8,086人。前年の2022年が4万7,638人である。ちなみに2023年のインフルエンザの死亡者数が1,383人である。2024年(概数)は3万5,865人、2025年については現在公表されている3月までの概数が1万1,207人である。ちなみに前年の1~3月は1万2,103人であり、やや減少している。ここでまたインフルエンザの死亡者数を挙げると、2024年が2,855人、2025年1~3月が5,216人である。今年に入りインフルエンザの死亡者は増加しているものの、新型コロナの死者は2023年でその27.5倍、2024年で12.6倍にも上る。この感染症の恐ろしさを改めて実感させられる。次回は流行株の変遷とワクチン、治療薬を巡る状況を取り上げようと思う。 参考 1) 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等) 2) 厚生労働省:医療機関等情報支援システム(G-MIS):Gathering Medical Information System 3) 厚生労働省:人口動態調査

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LP.8.1対応組換えタンパクコロナワクチン、一変承認を取得/武田

 武田薬品工業は8月27日のプレスリリースで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株LP.8.1を抗原株とした組換えタンパクワクチンの「ヌバキソビッド筋注1mL」について、厚生労働省より一部変更承認を取得したと発表した。ヌバキソビッド筋注は、同社がノババックスから日本での製造技術のライセンス供与を受けたもので、LP.8.1対応ワクチンは9月中旬以降に供給が開始される予定。 2025年5月28日に開催された「厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会 季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会」において、2025/26シーズンの定期接種で使用する新型コロナワクチンの抗原組成は、WHOの推奨と同様に、「1価のJN.1、KP.2もしくはLP.8.1に対する抗原又は令和7年5月現在流行しているJN.1系統変異株に対して、広汎かつ頑健な中和抗体応答又は有効性が示された抗原を含む」とされている1)。 今回の承認は、抗原株の変更に係るデータに加え、LP.8.1を抗原株としたヌバキソビッド筋注が、直近の新型コロナ変異株(LP.8.1、LP.8.1.1、JN.1、KP.3.1.1、XEC、XEC.4、NP.1、LF.7およびLF.7.2.1)に対しても中和抗体を産生することが認められた非臨床データに基づく。 本剤は、6歳以上を対象とした初回免疫(1、2回目接種)および12歳以上に対する追加免疫(3回目接種以降)の適応を取得している。用法・用量は、12歳以上には1回0.5mLを筋肉内に接種する。また、6歳以上12歳未満には、初回免疫として、1回0.5mLを2回、通常、3週間の間隔をおいて、筋肉内に接種する。

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米国の小児におけるインフルエンザ関連急性壊死性脳症(IA-ANE)(解説:寺田教彦氏)

 本報告は、米国2023~24年および2024~25年シーズンにおける小児インフルエンザ関連急性壊死性脳症(IA-ANE)の症例シリーズである。 IA-ANEは、インフルエンザ脳症(IAE)の重症型で、米国2024~25年シーズンのサーベイランスにおいて小児症例の増加が指摘されていた(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2025 Feb 27)。同レポートでは、小児インフルエンザ関連死亡例の9%がIAEによる死亡と報告され、早期の抗ウイルス薬使用と、必要に応じた集中治療管理、インフルエンザワクチン接種が推奨されていた。 本研究では、2024~25年シーズンで大規模小児医療センターの医師からIA-ANEが増加していると指摘があり、主症状、ワクチン接種歴、検査結果および遺伝学的解析結果、治療介入、臨床アウトカム(修正Rankinスケールスコア)、入院期間、機能的アウトカムを主要アウトカムとして調査結果が報告された。詳細は「インフルエンザ脳症、米国の若年健康児で増加/JAMA」に記載のとおりである。 本研究のdiscussionでは、サーベイランス結果と同様に、速やかな診断と集中治療管理、ならびにインフルエンザワクチン接種の有用性が強調されている。前者については、死亡例の多くが入院後1週間以内(中央値3日)に発生し、主因が脳浮腫に伴う脳ヘルニアであった点から指摘されている。後者については、米国における2023~24年および2024~25年シーズンの小児インフルエンザワクチン接種率がそれぞれ55.4%、47.8%であったのに対し、本研究に登録されたIA-ANE患者で接種歴を有したのは16%にとどまっていた点から指摘されている。 また、本研究では、アジア系の子供で急性壊死性脳症(ANE)が多かった。日本を中心としたアジアではANEが多い可能性が指摘されており、日本では2015~16年シーズン以降、IAEは新型コロナウイルス感染症の世界的な流行期間を除き毎年約100~200例が報告されており、2023~24年シーズンは189例が報告されていた(「インフルエンザ流行に対する日本小児科学会からの注意喚起」日本小児科学会)。本研究でもアジア人が登録された割合は高かったが、ANEに関連する可能性があるRANBP2やその他の遺伝的変異はアジア系の子供で多いわけではなく、非遺伝的要因が関与している可能性がある。 ANEは健康な小児でも発症することがあり、頻度は低いが壊滅的な神経学的合併症を来し、死亡することもある疾患である。日本での急性脳症の予後の報告でも、平成22年度の報告書では、急性脳症全体/急性壊死性脳症(ANE)で治癒56%/13%、後遺症(軽・中)22%/2%、後遺症(重)14%/33%、死亡6%/28%、その他・不明1%/3%だった。 本報告は米国におけるANEの臨床像と深刻さを明確に示すとともに、日本においても適切なワクチン接種の実施、IA-ANEの早期診断と集中管理、治療プロトコルの標準化が急務であることを再確認させられた。

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富裕層の医師はどれくらい?/医師1,000人アンケート

 野村総合研究所が2025年2月に公開したレポート1)によると、2023年の日本の富裕層・超富裕層の世帯数は前回調査(2021年)から11.3%増加し、合計約165万世帯となった。これは全体の約3%に当たる。では、医師のなかに富裕層・超富裕層はどれくらいいるのだろうか。そこで、CareNet.comでは20~60代の医師1,005人を対象に、世帯年収・純金融資産額に関するアンケート調査を実施した(2025年7月27日~8月2日実施)。本アンケート調査では、世帯年収と純金融資産額を調査し、富裕層・超富裕層の割合を算出した。また、資産運用の成功/失敗のエピソードも募集した。世帯年収1,400万円以上は53.1%、3,000万円以上は16.1% 野村総合研究所が2025年2月に公開したレポート1)では、共働きで世帯年収1,500万円以上の家庭を「パワーファミリー」、都市部居住の共働きで世帯年収3,000万円以上の家庭を「スーパーパワーファミリー」としている。 では、医師の世帯ではどうだろうか。CareNet.comが実施したアンケート調査では、世帯年収1,400~3,000万円が49.8%、3,000万円以上が10.8%であった。この数字には、既婚かつ片働きの世帯(431人)や独身世帯(177人)が含まれている。そこで、共働き世帯(397人)に絞ってみると、世帯年収1,400~3,000万円が53.1%、3,000万円以上が16.1%であった。すなわち、共働き世帯のうちパワーファミリー相当は7割近くに上り、スーパーパワーファミリー相当も2割弱ということになる。富裕層・超富裕層は約13% 次に、世帯の純金融資産保有額※について聞いた。富裕層・超富裕層は純金融資産保有額に基づいて定義され、富裕層は「1億円以上5億円未満」、超富裕層は「5億円以上」である。野村総合研究所のレポート1)では、日本の富裕層は153.5万世帯(2.8%)、超富裕層は11.8万世帯(0.2%)とされている。 こちらも医師の世帯をみてみると、富裕層に当たる「1億円以上5億円未満」は11.2%、超富裕層に当たる「5億円以上」は2.0%であった。富裕層と超富裕層を合わせると13.2%に上り、日本全体の3.0%を大きく上回った。 富裕層・超富裕層の割合を開業医・勤務医別にみると、開業医では19.3%、勤務医では7.2%であり、開業医が高かった。また、共働き世帯は富裕層・超富裕層の割合が高く17.2%であった。片働き世帯は10.4%、独身世帯は11.3%であった。年代別にみると、年代が上がるほど富裕層・超富裕層の割合が高く、60代では18.3%に上った。※ 純金融資産は、現金・預金や株式などの金融資産総額から住宅ローンなどの負債総額を差し引いたものを指す。不動産や車などは含まない。資産運用の実施、20~40代は7割超 資産運用の実施状況を聞いた。その結果、運用中と回答した割合は、全体では64.7%であった。しかし、年代別にみると20代、30代、40代がそれぞれ71.4%、78.5%、75.6%と高かった一方で、50代、60代はそれぞれ55.1%、54.7%と低い傾向にあった。また、50代、60代の3割超が、資産運用を一度も実施したことがないと回答した。日本株、オルカンやS&P500などの投資信託が人気 資産運用の内訳をみると、運用対象は「日本株」が最も多く(60.0%)、次いで「投資信託/ETF(全世界):オールカントリーなど」(46.7%)、「投資信託/ETF(米国):S&P500など」(43.8%)であった。不動産(12.4%)、金・プラチナ(12.4%)、暗号資産(8.4%)なども一定数を占めた。 また、「投資・資産運用の成功/失敗エピソード」を募集したところ、成功例として「新型コロナ流行期の押し目買い」「S&P500の長期積立」「ドルコスト平均法」などが挙げられた。一方、失敗例としては「証券会社や銀行の勧誘で購入した商品の暴落」「FXなどでの大損」「株式を保有していた会社の倒産」などが目立った。【成功エピソード】・コロナショックの時、日本株を買いあさって、5,000万円の含み益がある(50代、腎臓内科)・駅直結の新築マンションを購入したら、期待通りに値上がりした(50代、その他)・S&P500を堅実に積み立てており、元本の倍くらいになっている(40代、精神科)・2022年ごろから、ひたすらドルコスト平均法。失敗は感じていない(20代、眼科)【失敗エピソード】・証券会社に勤める患者さんに勧められて人生で初めて購入した株があっという間に値下がりし、現在は100分の1になっている。その患者さんは来なくなった(50代、内科)・投資会社に勧められた株を買ったあと暴落した。すぐに損切りしてしまったが、その後10年経って株価が上がった。塩漬けでも持っておけばよかったと思った(60代、糖尿病・代謝・内分泌内科)・FXなどで一瞬で5,000万円くらい溶かしたことがあるので、リスクの高い投資は行わないようにしている(50代、産婦人科)・トルコリラの投資をしたら1/3になった(50代、泌尿器科)・株式を保有していた会社が倒産した(60代、内科)・研修医時代にワンルームマンションに投資。売却したがとんとんだった。苦労のほうが多い(40代、皮膚科)・最近株を盗まれた(60代、腎臓内科)・かなり前に株で大損して(2,000万円くらい)以後株の世界から足を洗った(60代、内科)・いつも損ばかり(60代、内科)【その他のエピソード】・知らないものには手を出さない(40代、内科)・投資信託に現金を使い過ぎて、給料日まで現金がギリギリとなり、ひもじい日々を過ごした(30代、放射線科)・株を買ったら買いっぱなし。その後の株価を見ることもない(60代、泌尿器科)・損失が怖くて大きなお金は株式投資できない(40代、脳神経外科)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師の世帯年収・資産はどれくらい?/医師1,000人アンケート(ケアネット 佐藤 亮)■参考文献・参考サイトはこちら1)株式会社野村総合研究所ニュースリリース(2025年2月13日)

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第278回 いよいよ本格化するOTC類似薬の保険外し議論、日本医師会の主張と現場医師の意向に微妙なズレ?(後編)

「調査対象に偏りが見受けられるため、調査結果については詳細な分析が必要」と日本医師会こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。いろいろあった夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)も終わり、野球はNPBとMLBのポストシーズン進出争いにその焦点が移ってきました。気になるのはMLBのロサンゼルス・ドジャースの夏に入ってからの失速ぶりです。この週末のサンディエゴ・パドレスとの3連戦では1勝2敗と負け越し、結果、パドレスにナショナル・リーグ西地区首位に並ばれました(現地8月24日現在、25日には再び首位に)。投手陣、とくにリリーフ陣の弱さがポストシーズンに向けて最大の弱点になっています。大谷 翔平選手で視聴率を稼いできたNHKも気が気でないでしょう。開幕時はワールドシリーズ出場間違いなしと言われたスター軍団のあと1ヵ月余りの戦いぶりと、ダルビッシュ 有投手擁するパドレスのさらなる追い上げに注目したいと思います。さて、今回も前回に引き続き、三党合意(自民・公明・維新)で決まったOTC類似薬の保険外しについて書いてみたいと思います。前回は、日本医師会が8月6日の記者会見で、OTC類似薬の保険外しの動きに対し強い反対の意向を改めて表明、その理由として「経済的負担の増加」と「自己判断・自己責任での服用に伴う臨床的なリスク」を挙げたこと、その一方で、今年7月、日本経済新聞社と日経メディカル Onlineが共同で医師に対して行った調査では「OTC類似薬の保険外しに医師の賛成6割」という意外な結果が出たことについて書きました。日本医師会は、記者会見でこの結果に対し、「調査対象に偏りが見受けられるため、調査結果については詳細な分析が必要」と苦言を呈したのですが、そんなに”偏った”調査だったのでしょうか。もう少しその内容を見てみましょう。「保険適用から外してもよい」と考える薬効群分類は「総合感冒薬」「湿布薬」「ビタミン剤」など日経メディカル Onlineは7月30日付けで「医師7,864人に聞いたOTC類似薬の保険適用除外への賛否」という記事を配信しました。対象は日経メディカル Onlineの医師会員で総回答者数は7,864人、調査期間は参議院選挙前の2025年7月1~6日です。同記事によれば、調査に回答した医師の過半数である62%が「OTC類似薬の保険適用除外」に対し賛成(「賛成」20%、「どちらかと言えば賛成」42%の合計)でした。なお、回答した医師の内訳は、病院勤務医70.1%、診療所勤務医15.2%、病院経営者1.5%、診療所開業医10.8%、研究者・行政職1.1%、その他2.4%です。病院勤務医が7割と最も多く、診療所開業医が実際の割合(病院長含め開業医の割合は医師全体の約2割程度)よりも若干低かったのですが、大きな「偏り」というほどのものではないでしょう。立場別での賛否では、病院勤務医が「賛成」の率が最も高く(69%)、次いで診療所勤務医(54%)、病院経営者(51%)の順でした。診療所開業医は「賛成」36%、「反対」が63%でした。「反対」が多いとはいえ約4割が保険適用除外に「賛成」とは、ある意味意外な結果でした。OTC類似薬のうち、「保険適用から外してもよい」と考える薬効群分類について聞いた質問では、「総合感冒薬」(51%)、「外用消炎鎮痛薬(湿布薬)」(41%)、「ビタミン剤」(37%)、「外用保湿薬(ヘパリン類似物質など)」(31%)が上位を占めました。保険適用から除外してよいと考える理由については、「増え続ける国民医療費を抑制するため」52%、「医薬品目的で受診する人を減らすため」31%、「OTC薬と効果に大きな違いがないため」27%、「多忙な診療業務の負担を軽減するため」16%という結果でした。つまり、勤務医を中心に現場の医師たちの実に半数が、増え続ける医療費をなんとかせねばと考えており、さらに、医師の働き方改革や医師偏在によって多忙を極める医師たちの一定数が、OTC類似薬の保険適用除外は医薬品目的で受診する人を減らし、診療業務を効率化するためにプラスになると考えているわけです。日本医師会の主張と現場の医師の意向のズレは、「軽症でも患者を手放さず、初診料・再診料を柱に診療報酬を確保する」ことを第一義とする(診療所開業医中心の)日医と、「本当に診療が必要な患者だけを効率的に診たい」現場医師との間にある、”診療方針のズレ”といえるかもしれません。OTCよりも危険な処方薬ですらきちんと説明が行われず、ポリファーマシーによる健康被害も起こっている日本医師会は「自己判断・自己責任での服用に伴う臨床的なリスク」を反対の理由に挙げ、「OTC類似薬の保険適用除外は、重複投与や相互作用の問題等、診療に大きな支障を来たす懸念がある」とその危険性を指摘していますが、現実問題として重複投与や相互作用を常に気にしながら処方箋を書いている医師はどれくらいいるのでしょうか。以前(第270回 「骨太の方針2025」の注目ポイント[後編])にも書いたことですが、そもそも現状、処方箋を発行する医師は薬の説明をほぼ薬局薬剤師に丸投げし、その薬局薬剤師も印刷された薬剤情報提供書を右から左へ受け流しているだけ、というところが少なくありません(私や家族の経験からも)。OTCよりも危険な処方薬ですらきちんと説明が行われず、ポリファーマシーによる健康被害も起こっている状況はそのままに、「OTC類似薬の保険適用除外は、診療に大きな支障を来たす懸念がある」とはやや言い過ぎではないでしょうか。「経済的負担の増加」は税制などの制度変更とマイナ保険証を活用したDXで改善できるのでは?OTC類似薬の保険適用除外のもう一つの問題と言われる患者の「経済的負担の増加」ですが、こちらは税制などの制度変更とマイナ保険証を活用したDXで改善できるのではないでしょうか。今年5月の三党協議の場で、使用額が大きいOTC類似薬の上位6品目と湿布薬1品目について、通常の使用日数で患者負担額がどれくらい違うかについての厚生労働省の試算が示されています。それによれば、「ヘパリン類似物質クリーム」で市販薬はOTC類似薬の5.4倍、その他の薬でも1.1〜3.4倍という結果でした。日本医師会の江澤 和彦常任理事は8月6日の記者会見でOTC類似薬を保険適用外にすることで、患者の自己負担額で比較すると30倍以上になると指摘、「経済的な問題で国民の医療アクセスが絶たれる」と懸念を示しています。しかし、患者負担の面からみれば増加ですが、国の医療費負担の面からは削減になるわけで、セルフメディケーション税制(特定市販薬を年1万2,000円超購入した場合、超過分を8万8,000円まで控除できる制度)の限度額や対象薬剤を拡充したり、医療費控除との併用を認めるような改革を行ったりすれば、患者の経済的負担増はいくらでも軽減できると思います。セルフメディケーション税制は現行の医療費控除の「特例」のため、重複控除を避ける必要があるため「選択適用」となっていますが、それこそ今の時代に合っていない制度と言えるでしょう。なお、セルフメディケーション税制については2026年12月に制度の期限を迎えるものの、国は制度の恒久化と対象薬剤(インフルエンザ検査を追加など)の拡大を検討しています。3党合意と骨太の方針でOTC類似薬の保険適用除外が決まっているのですから、それに合わせて同制度の抜本的な見直しを期待したいところです。セルフメディケーション推進で職能の重要性が増すと考えられる薬剤師、しかし日本薬剤師会はOTC類似薬の保険適用除外になぜか「反対」また、薬局等でOTCを購入しているのが患者本人なのか、家族など第三者用なのか、というチェック等もマイナンバーカードを活用し、お薬手帳の情報などと紐付けることで、より効率的に行うことができるのではないでしょうか。さらに、セルフメディケーション税制に基づく所得控除の申告もe-Tax(国税電子申告・納税システム)で簡単にできるようにすれば、OTCの活用は今まで以上に進むはずです。要はそうした制度・仕組みをつくろう、セルフメディケーションを推進しようという意欲や熱意が国や各ステークホルダーにあるかどうかだと思います。その意味では、診療と処方権を絶対に手放したくない日本医師会はさておいて、セルフメディケーション推進でその職能の重要性が増すと考えられる薬剤師を束ねる日本薬剤師会が、OTC類似薬の保険適用除外に対して「今までの仕組みを壊すことになる」(岩月 進・日本薬剤師会会長)などとして「反対」の立場を表明(2025年2月段階)しているのがまったく解せません。薬剤師は自分たちの職能を高めたり、仕事を増やしたりすることが嫌いなのでしょうか。AIやロボットに仕事を奪われてもいいのでしょうか。OTC類似薬の保険適用除外は、2025年末までの予算編成過程を通じて具体的な検討を進め、早期に実現可能なものは2026年度から実行される予定です。そうした動きを阻止するべく日本医師会、日本薬剤師会など守旧派勢力が今後、どんなアクション起こすかが注目されます。

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幼児期の重度う蝕、母親の長時間インターネット使用と関連か

 育児に関する情報をインターネットから得ることは、現代では一般的な行動となっている。しかし、画面に向かう時間が長くなりすぎることで、子どもの健康に思わぬ影響が及ぶ可能性がある。最近の研究により、母親の長時間インターネット使用と、3歳児における重度う蝕(Severe early childhood caries :S-ECC)の発症との間に有意な関連が示された。母親が仕事以外で1日に5時間以上インターネットを使用していた場合、そうでない場合と比較して、子どもがS-ECCになるリスクが4倍以上高まる可能性が示唆されたという。研究は島根大学医学部看護学科地域老年看護学講座の榊原文氏らによるもので、詳細は「BMC Pediatrics」に7月2日掲載された。 本研究では、幼少期の口腔ケアが主に親の責任であることに着目し、母親の長時間インターネット使用が育児時間を圧迫し、子どもの口腔ケアの軽視を招く可能性があるという仮説を立てた。口腔ケアは育児の中で優先度が低くなりがちであるため、母親の長時間インターネット使用によって浸食されやすい育児行動である可能性が高く、これがS-ECCリスクの増加につながると考えられた。従来の研究では、親のメディア使用とECCとの関連については、横断研究が1件報告されているのみであり、十分に検討されていない。以上の背景を踏まえ、本研究では、子どもの1歳半時点における母親の長時間インターネット使用と、3歳時点におけるS-ECCとの関連を検証することを目的に、後ろ向きのコホート研究を実施した。 本研究では、2016年4月から2017年9月の間に島根県松江市へ妊娠の届出を行った母親とその子どもを対象とし、1歳6か月児健診および3歳児健診時のデータを用いて、1,938件の記録を解析対象とした。子どもの3歳時点のS-ECCは、虫歯、喪失歯、または処置歯の合計が4本以上と定義した。1日5時間以上のインターネット使用は、「問題のあるインターネット使用」と関連するとの報告がある。そのため本研究では、1歳6か月児健診時における母親のインターネット使用時間に関するアンケートで、「1日5時間以上」と回答した場合を「長時間インターネットを使用している」と定義した(仕事でのインターネット使用時間は含めないものとした)。 子どもの1歳半時点における母親のインターネット使用時間が1日5時間を超えていた割合は2.0%だった。母親がインターネットに最も多くの時間を費やした目的としては「情報収集」が最多であり、全体の59.5%を占めた。一方で、1日5時間以上インターネットを使用していた母親に限ると、「情報収集」に最も時間を費やしていた割合は26.3%にとどまった。また、子どもの3歳時点における虫歯の有病率は13.5%であり、S-ECCと判定された子どもの割合は2.6%だった。 子どもの3歳時のS-ECCと1歳半時点の母親のインターネット利用時間との関連について、前者を従属変数、後者を独立変数として単変量のロジスティック回帰分析を行った。その結果、1歳半時点の母親の1日5時間以上のインターネット使用は、3歳時点のS-ECCと有意に関連していた(オッズ比〔OR〕 4.64、95%信頼区間〔CI〕 1.58~13.60、P=0.005)。この傾向は、1歳半時点の親による仕上げ磨きと親の喫煙を共変量として追加した多変量解析でも維持された(調整OR 4.27、95%CI 1.42~12.86、P=0.010)。 著者らは、本研究には単一都市のデータによるサンプルバイアスや、自己申告に基づく情報バイアスの可能性があること、母親のみを対象としていることなどの限界点を挙げた上で、「母親の長時間インターネット使用がS-ECCに関連する新たな要因である可能性を示した点で、本研究には意義がある。今後の研究では、こうした限界を克服した研究デザインを採用し、対象に父親を含め、親の長時間インターネット使用と子どもの発育・発達との関連について、さらなるエビデンスの蓄積が求められる」と述べている。

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ADHDの薬物療法、自殺・犯罪リスクも減少/BMJ

 注意欠如・多動症(ADHD)の薬物療法は、コア症状だけでなく自殺行動、物質乱用、交通事故、犯罪行為の発生を有意に低減することが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のLe Zhang氏らの調査で示された。ADHDの治療において、薬物療法はコア症状の軽減に有効であることが無作為化対照比較試験で示されているが、自殺行動や物質乱用などの、より広範で重要な臨床アウトカムに関するエビデンスは十分でないという。研究の成果は、BMJ誌2025年8月13日号に掲載された。5つのアウトカムをtarget trial emulation研究で評価 研究グループは、経験者との協議の下で、ADHDの影響を受ける人々の現実的なニーズに合わせて選出した5つのアウトカムに関して、薬物療法の有効性を評価する目的で、target trial emulation研究を行った(Swedish Research Council for Health, Working Life and Welfareなどの助成を受けた)。 スウェーデン居住者で、2007年1月1日~2018年12月31日に、年齢6~64歳でADHDの初回診断を受けた患者を対象とし、2年間追跡した。診断から3ヵ月以内に薬物療法を開始し、追跡期間中も処方薬の使用を継続した群(開始群)と、薬物療法を開始しなかった群(非開始群)を比較した。 研究期間中に同国でADHDの治療薬として承認を受けていたのは、アンフェタミン、デキサンフェタミン、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート(以上、中枢神経刺激薬)、アトモキセチン、グアンファシン(以上、中枢神経非刺激薬)の6剤であった。 主要アウトカムとして、ADHDの診断から2年間における5つのアウトカム(自殺行動、物質乱用、不慮のけが、交通事故、犯罪行為)の初発および再発イベントの発生を評価した。同国で刑事責任能力および運転能力が問われる最低年齢は15歳であることから、交通事故と犯罪行為の評価は15~64歳のサブコホートで行った。イベント既往歴を有する患者で、より良好な結果 ADHD患者14万8,581例(年齢中央値17.4歳[四分位範囲:11.6~29.1]、女性41.3%)を解析の対象とした。このうち8万4,282例(56.7%)が薬物療法を開始し、開始時に最も多く処方されたのはメチルフェニデート(7万4,515例[88.4%])で、次いでアトモキセチン(6,676例[7.9%])、リスデキサンフェタミン(2,749例[3.3%])の順だった。 ADHDの薬物療法により、5つのアウトカムのうち次の4つで初発率の有意な改善を認めた。自殺行動(1,000人年当たりの重み付け発生率:開始群14.5 vs.非開始群16.9、補正後発生率比:0.83[95%信頼区間[CI]:0.78~0.88])、物質乱用(58.7 vs.69.1、0.85[0.83~0.87])、交通事故(24.0 vs.27.5、0.88[0.82~0.94])、犯罪行為(65.1 vs.76.1、0.87[0.83~0.90])。一方、不慮のけが(88.5 vs.90.1、0.98[0.96~1.01])には、両群間に有意差はみられなかった。 過去に5つのアウトカムのイベント既往歴のない患者では、薬物療法により自殺行動(発生率比:0.87[95%CI:0.79~0.95])、交通事故(0.91[0.83~0.99])の発生率が有意に改善した。これに対し、イベントの既往歴を有する患者では、薬物療法により5項目すべてが、より顕著かつ有意に改善し、発生率比の範囲は自殺行動の0.79(95%CI:0.72~0.86)から不慮のけがの0.97(0.93~1.00)にわたっていた。再発への効果が顕著、刺激薬でより良好な結果 再発率は、以下のとおり、5つのアウトカムのすべてで薬物療法により有意に改善した。自殺行動(1,000人年当たりの重み付け発生率:開始群22.7 vs.非開始群24.3、補正後発生率比:0.85[95%CI:0.77~0.93])、物質乱用(166.1 vs.201.5、0.75[0.72~0.78])、不慮のけが(119.4 vs.122.8、0.96[0.92~0.99])、交通事故(31.6 vs.37.2、0.84[0.76~0.91])、犯罪行為(111.3 vs.143.4、0.75[0.71~0.79])。 また、中枢神経非刺激薬と比較して中枢神経刺激薬は、初発率および再発率とも5つのアウトカムのすべてで有意に良好であった。初発率の発生率比の範囲は、物質乱用の0.74(95%CI:0.72~0.76)から不慮のけがの0.95(0.93~0.98)まで、再発率の発生率比の範囲は、犯罪行為の0.71(0.69~0.73)から不慮のけがの0.97(0.95~0.99)までだった。 著者は、「この全国的な登録データを用いたtarget trial emulation研究は、実臨床の患者を反映したエビデンスをもたらすものである」「これらの知見は、ADHD患者全体において、広範な臨床アウトカムに対するADHD治療薬の有益な効果を示している」「本研究は、現在の無作為化比較試験では捉えきれていない、有益性に関する重要な情報を提供する」としている。

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小児心停止における人工呼吸の重要性、パンデミックで浮き彫りに

 「子どもを助けたい」。その一心で行うはずの心肺蘇生だが、コロナ流行期では人工呼吸を避ける傾向が広がった。日本の最新研究が、この“ひと呼吸”の差が小児の救命に大きな影響を与えていたことを明らかにした。コロナ流行期では、胸骨圧迫のみの心肺蘇生が増加し、その結果、死亡リスクが高まり、年間で約10人の救えるはずだった命が失われていた可能性が示唆されたという。研究は岡山大学学術研究院医歯薬学域地域救急・災害医療学講座の小原隆史氏、同学域救命救急・災害医学の内藤宏道氏らによるもので、詳細は「Resuscitation」に7月4日掲載された。 子どもの院外心停止はまれではあるが、社会的に大きな影響を及ぼす。小児では窒息や溺水などの呼吸障害が心停止の主な原因であることから、人工呼吸を含む心肺蘇生(Cardiopulmonary resuscitation:CPR)の実施が強く推奨されてきた。一方、成人では心疾患が主な原因であることに加え、感染対策や心理的・技術的ハードルの高さから、蘇生の実施率を高める目的で「胸骨圧迫のみ」のCPR(Compression-only CPR:CO-CPR)が広く普及している。また、成人においては、新型コロナウイルス感染症の流行下では、たとえ講習やトレーニングを受けた市民であっても、感染リスクを理由に人工呼吸の実施を控えるよう促される状況が続いていた。しかしながら、こうした行動変化が小児の救命にどのような影響を及ぼしたかについては、これまで十分に検証されてこなかった。このような背景をふまえ著者らは、全国データを用いて、コロナ流行前後における小児の院外心停止に対する蘇生法の変化と、それが死亡や後遺症に与えた影響を検証した。 解析のデータベースには、総務省消防庁が管理し、日本全国で発生した院外心停止の事例を記録・収集する「All-Japan Utstein Registry(全国ウツタイン様式院外心停止登録)」が用いられた。解析には、2017~2021年にかけて発生した17歳以下の小児の院外心停止7,162人が含まれた。主要評価項目は30日以内の死亡率とした。 2017~2021年の間に、目撃者によってCPRが実施されたのは3,352人(46.8%)だった。そのうち人工呼吸を含むCPRが実施された割合は、コロナ流行前(2017~2019年)には33.0%だったが、コロナ流行期(2020~2021年)には21.1%と、11.9%の減少が認められた。 次に、CO-CPRと臨床転帰(30日以内の死亡など)との関連を評価するため、交絡因子を調整したうえで、ロバスト分散付きPoisson回帰モデルによる多変量解析を実施した。解析の結果、CO-CPRは30日以内の死亡(調整後リスク比〔aRR〕1.16、95%信頼区間〔CI〕1.08~1.24)や不良な神経学的転帰(aRR1.10、95%CI 1.05~1.16)と有意に関連していた。この傾向は、呼吸原性心停止(呼吸の停止が原因で心臓が停止する状態)で顕著だった(aRR1.26、95%CI 1.14~1.39)。 また、コロナ流行期にCO-CPRが増加したことによる影響を、過去のリスク比をもとに概算したところ、人工呼吸の実施率の低下によって、2020年~2021年の2年間で計21.3人(年間換算で10.7人)の小児が救命されなかった可能性があると推定された。 本発表後に行われた追加解析では、この人工呼吸の実施率の低下は緊急事態宣言解除後の2022年(16.1%)から2023年(15.0%)にかけても維持されていた。これは、コロナ流行期に人工呼吸を伴うCPRからCO-CPRへの移行が加速し、流行後もその傾向が続いていることを示唆している。 本研究について著者らは、「本研究は、小児の心停止患者に対して、人工呼吸が極めて重要であることをあらためて裏付けるものであり、今後の小児向け蘇生教育のあり方、感染対策を講じた安全な人工呼吸法の手技の確立、人工呼吸補助具(例:ポケットマスクなど)の開発や普及啓発など、社会全体で取り組むべき課題が多々あることを示している」と述べている。 さらに、人工呼吸の実施については、「国際蘇生連絡委員会(ILCOR)や欧州蘇生協議会(ERC)などでは、小児に対する最適なCPRとして胸骨圧迫と人工呼吸の両方を行うことが強調されている。しかしパンデミック以降、人工呼吸に対する心理的・技術的なハードルが一層高まり、ガイドラインを周知するだけでは実施が進みにくい状況にある。そのため、安心して子どもを救える社会を実現するには、CPRトレーニングプログラムを活用するなど、平時からの準備と理解の促進に取り組むことが重要である」と付け加えた。

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第257回 新型コロナ感染9週連続増加 変異株「ニンバス」拡大、百日咳も同時流行/厚労省

<先週の動き> 1.新型コロナ感染9週連続増加 変異株「ニンバス」拡大、百日咳も同時流行/厚労省 2.消化器外科医、2040年に約5,000人不足 がん手術継続に黄信号/厚労省 3.医療ネグレクト対応、緊急時の同意なし医療に法的責任問わず/こども家庭庁 4.往診5年で4割増 高齢者中心に需要拡大も過剰提供を懸念/厚労省 5.末期がん患者に未承認治療3千件超 都内クリニックに措置命令/厚労省 6.がん治療後の肝炎再活性化で患者死亡、情報共有不足が背景に/神戸市 1.新型コロナ感染9週連続増加 変異株「ニンバス」拡大、百日咳も同時流行/厚労省新型コロナウイルスの感染者が全国的に増加している。厚生労働省によると、8月11~17日に約3,000の定点医療機関から報告された感染者数は2万2,288人で、1医療機関当たり6.3人となり、9週連続で前週を上回り、入院患者も1,904人と増加した。例年、夏と冬に流行のピークがあり、今年もお盆や夏休みの人の移動を背景に感染拡大が続いている。流行の中心はオミクロン株の派生型「NB.1.8.1」で、俗称「ニンバス」と呼ばれる株。国立健康危機管理研究機構によれば20日時点で国内検出の28%を占め、同系統を含めると全体の8割以上になる。感染力は従来株よりやや強いが、重症化リスクは大きく変わらないとされている。症状は、発熱や咳に加え「カミソリを飲み込んだような強い喉の痛み」が特徴で、筋肉痛や関節痛を伴う例も報告されている。ワクチンは重症化予防に有効と考えられており、WHOも監視下の変異株に指定している。都道府県別では、宮崎が最多の14.7人、鹿児島12.6人、埼玉11.5人と続き、東京や大阪など大都市圏では比較的低水準に止まっている。厚労省は「手洗いや咳エチケット、エアコン使用時の換気など基本的な感染対策を徹底してほしい」と呼びかけている。新学期開始で人の動きが再び活発化する9月中旬ごろまで増加が続く可能性が指摘される。一方、百日咳も同時流行しており、8月10日までの週に3,211人が報告され、年初からの累計は6万4千人超となった。子供を中心に長引く咳を呈し、乳児では重症化するリスクが高い。国内外で増加傾向にあり、厚労省は原因を分析中。コロナと百日咳が並行して拡大する中、専門家は体調不良時には早めに医療機関を受診し、感染拡大防止に努めるよう求めている。 参考 1) 変異ウイルス「NB.1.8.1」“感染力やや強い”(NHK) 2) 新型コロナ感染者、全国平均で9週続けて増加 例年夏に流行 厚労省(朝日新聞) 3) “カミソリをのみ込んだような強烈な喉の痛み” 新型コロナ「ニンバス」感染拡大 百日せきも流行続く(読売テレビ) 2.消化器外科医、2040年に約5,000人不足 がん手術継続に黄信号/厚労省厚生労働省の「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」は、2040年にがん手術を担う消化器外科医が約5,000人不足するとの推計をまとめた。需要側では初回手術を受ける患者数が2025年の約46万5千人から40年には約44万人へ微減する一方、供給側の減少が急速に進む。外科医の約7割を占める消化器外科では、日本消化器外科学会の所属医師(65歳以下)が25年の約1万5,200人から40年に約9,200人へ39%減少し、需給ギャップは5,200人規模に拡大すると見込まれている。背景には若手医師の敬遠がある。消化器外科は10時間を超える食道がん手術や夜間・休日の救急対応など負担が大きい一方、給与水準は他科と大差がない。修練期間も長く、労働と報酬のバランスが「割に合わない」とされ、2002年から20年間で医師数は2割減少した。他方、麻酔科や内科は増加しており、診療科間での偏在が深刻化している。こうした現状に、学会や大学病院は人材確保策を模索する。北里大学は複数医師で患者を担当し、緊急時の呼び出しを減らし、富山大学は長時間手術の交代制を導入、広島大学は若手の年俸を1.3倍に引き上げた。学会は拠点病院への人材集約により休暇確保や経験蓄積を両立させたい考えを示している。報告書はまた、放射線治療では、装置の維持が難しくなる可能性や、薬物療法では地域格差が生じやすい点にも言及。今後は都道府県単位で医療機関の集約化やアクセス確保を検討し、効率的な医療提供体制を整える必要があるとしている。高齢化が進み85歳以上のがん患者は、25年比で45%増えると見込まれる中、医師不足は治療継続に直接影響し得る。厚労省は、就労環境や待遇改善に報酬面での配慮を進め、がん医療の持続可能性確保に向けた施策を急いでいる。 参考 1) 2040年を見据えたがん医療提供体制の均てん化・集約化に関するとりまとめ(厚労省) 2) がん手術担う消化器外科医、2040年に5000人不足 厚労省まとめ(毎日新聞) 3) 消化器外科医の不足深刻…厳しい勤務で若手敬遠、「胃や腸のがん患者の命に関わる」学会に危機感(読売新聞) 4) 消化器外科医「5,000人不足」 がん診療「病院集約を」厚労省検討会、40年推計(日経新聞) 3.医療ネグレクト対応、緊急時の同意なし医療に法的責任問わず/こども家庭庁こども家庭庁は8月、保護者の思想や信条を理由に子供に必要な医療を拒否される「医療ネグレクト」について、緊急時に医療機関が保護者の同意なく治療を実施した場合でも、刑法や民法上の責任は基本的に問われないと定め、7日付の事務連絡で明示するとともに、法務省とも協議済みとしている。救命手術などで同意が得られなくても「社会的に正当と認められる医療行為」であれば刑事責任は生じず、急迫の危害を避ける行為であれば悪意や重大な過失がない限り、民事責任も免れると解説している。背景には医療現場からの実態報告がある。こども家庭庁が救命救急センターを有する88医療機関を対象に行った調査では、2022年4月~24年9月までに24機関から計40件の医療ネグレクト事例が報告された(回答施設の3割弱に相当)。多くの事例では保護者への説明を尽くし同意を得る努力が行われたが、同意取得が不可能または時間的猶予がない場合、医療機関の判断で治療が行われていた。調査では対応の工夫として「児童相談所と事例を共有」が75%、「日頃から顔の見える関係作り」が59%と挙げられた。一方で、児相との「切迫度認識の差」や「帰宅可否を巡る判断の齟齬」など課題も指摘された。児相のノウハウ不足を補うため、具体的事例や対応方法を管内で共有することの重要性も強調されている。こども家庭庁は、平時からの地域ネットワーク構築や事例共有を通じ、迅速かつ適切な対応体制の整備を自治体に要請。現場の医師にとっても、緊急時に同意がなくとも治療に踏み切れる法的整理は大きな後押しとなるが、児相との連携強化や判断基準の共有が今後の課題となる。 参考 1) 令和6年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業の報告書の内容及びそれを踏まえた取組(こども家庭庁) 2) 緊急時の保護者同意ない医療「法的責任負わず」こども家庭庁(MEDIFAX) 3) 救命救急センターの3割弱で医療ネグレクトの報告 思想などに起因する事例、22年4月-24年9月に40件(CB news) 4) 令和6年度 保護者の思想信条等に起因する医療ネグレクトに関する調査研究報告書(三菱UFJ) 4.往診5年で4割増 高齢者中心に需要拡大も過剰提供を懸念/厚労省厚生労働省の統計によると、医師が自宅を訪ねる往診が過去5年で1.4倍に増加した。2024年は月27万5,001回と前年比11.2%増で、とくに75歳以上の高齢者が利用の8割を占め、前年比19.6%増の23万件超となった。在宅高齢者の急変時対応や有料老人ホームなどでの需要が増え、夜間・休日対応を外部委託する医療機関の広がりが背景とみられる。一方、コロナ禍では15歳未満の往診が急増。外来受診制限や往診報酬の特例引き上げにより、2023年には月1万7,000件を超えた。深夜の乳幼児往診では1回5万円弱の報酬が得られるケースもあり、自治体の小児医療無償化と相まって都市部で利用が拡大した。しかし、2024年度の報酬改定で特例は縮小され、15歳未満の往診は63.8%減少した。往診の拡大は救急搬送の抑制につながる利点がある一方、診療報酬目的で必要性の低い往診を増やす事業者がいるとの指摘もある。厚労省もこの問題を把握しており、必要に応じて中央社会保険医療協議会(中医協)で、在宅医療報酬の見直しを議論する考えを示している。訪問診療は計画的に実施される在宅医療の柱で、2024年は月208万回、患者数110万人。これに対し往診を受けた患者は約20万人に止まる。往診の増加が高齢社会に不可欠な在宅医療の充実につながるのか、それとも過剰提供の温床となるのか、制度の在り方が問われている。 参考 1) 令和6年社会医療診療行為別統計の概況(厚労省) 2) 医師の往診5年で4割増 高齢者の利用拡大、過剰提供の懸念も(日経新聞) 5.末期がん患者に未承認治療3千件超 都内クリニックに措置命令/厚労省厚生労働省と環境省は8月22日、東京都渋谷区の「北青山D.CLINIC」(阿保 義久院長)に対し、カルタヘナ法に基づく措置命令を出した。自由診療に対する同法の命令は初めて。同院は2009年以降、末期がん患者らに「CDC6shRNA治療」と称する遺伝子治療を提供してきたが、必要な承認を得ていなかった。治療には遺伝子を組み込んだレンチウイルスが用いられ、製剤は院長が中国から個人輸入していた。これまでに3千件以上行われたが、有効性や安全性は科学的に確認されていない。患者への同意文書では「がん細胞に特異的に発生するCDC6というたんぱくを消去する遺伝子を投与する」と説明されていた。両省は製剤の不活化・廃棄と再発防止策の報告を命じた。現時点で健康被害や外部漏洩は確認されていないという。クリニックは6月以降治療を中止しており、今後は法に基づき申請するとしている。厚労省によると、自由診療での遺伝子治療は、科学的根拠が不十分なまま患者が全額自費で受けるケースが国内で広がっている。昨年の法改正で「再生医療等安全性確保法」の対象にも加わったが、今回の事例は十数年にわたり違法状態が続いていたことを示している。厚労省は今後、医療機関に法令順守の徹底を求めている。 参考 1) 「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に基づく措置命令について(厚労省) 2) 未承認「がん遺伝子治療」に措置命令 カルタヘナ法、自由診療で初(毎日新聞) 3) がん自由診療に措置命令 都内クリニック手続き怠り(東京新聞) 4) がんに対する自由診療の遺伝子治療めぐり、厚労省などが措置命令(朝日新聞) 6.がん治療後の肝炎再活性化で患者死亡、情報共有不足が背景に/神戸市8月21日、神戸市立西神戸医療センターは、70代男性患者が医療事故で死亡したと発表した。男性は2023年10月に悪性リンパ腫と診断され、B型肝炎ウイルスを保有していることを自ら申告していた。化学療法にはB型肝炎ウイルスを再活性化させる作用を持つ薬が含まれるため、予防目的で核酸アナログ製剤が併用処方されていた。しかし、2024年に悪性リンパ腫が完全寛解した後、担当医が患者のB型肝炎感染を失念し、薬の処方を中止。継続されていたウイルス量の検査でも増加傾向を見落とし、2025年1月に男性は急性肝炎を発症し、入院から18日後に死亡した。男性の担当医は免疫血液内科の医師で、B型肝炎治療を専門とする消化器内科ではなかった。事故後、病院は消化器内科以外の医師が核酸アナログ製剤を処方できない仕組みを導入するなど再発防止策を取っている。北垣 一院長は会見で「重大な結果を招いたことは大変残念で、深く反省している」と謝罪、遺族にも経緯を説明し、理解を得たとしている。B型肝炎の再活性化をめぐっては、化学療法や免疫抑制療法の患者における発症リスクが広く知られており、定期的な検査と予防的投薬の継続が学会ガイドラインでも推奨されている。今回の事故は、がん治療後も必要な薬の中止と検査結果の見落としが重なり、致死的転帰を招いた典型例となった。同様の事故は他施設でも発生しており、今年5月には名古屋大学医学部附属病院で、リウマチ治療を受けていた70代女性が検査不備によりB型肝炎再活性化で死亡していたことが公表されている。専門家は、複数診療科にまたがる患者管理における情報共有とチェック体制の徹底が再発防止に不可欠だと指摘している。 参考 1) B型肝炎ウイルス感染を失念、投薬を誤って中止し患者死亡…西神戸医療センターが遺族に謝罪(読売新聞) 2) 薬剤処方を誤って中止、患者死亡 神戸の市立病院が謝罪(共同通信) 3) 「担当医が患者の申告を失念」 70代男性が急性肝炎で死亡 神戸(朝日新聞)

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乳児の脊髄性筋萎縮症、発症前にリスジプラムが有効/NEJM

 遺伝学的に脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断された未発症の生後6週までの乳児において、SMA発症前のリスジプラムの投与は、自然経過研究における未治療SMA乳児と比較し、12ヵ月時および24ヵ月時の機能的および生存アウトカムが良好であった。米国・St. Jude Children's Research HospitalのRichard S. Finkel氏らRAINBOWFISH Study Groupが、同国と欧州など7ヵ国で実施した第II相非盲検試験「RAINBOWFISH試験」の結果を報告した。リスジプラムは、経口投与可能なmRNA前駆体スプライシング修飾薬で、臨床症状を有するSMA患者に対する有効な治療薬であるが、無症状の患者における有効性および安全性は不明であった。今回の結果を踏まえて著者は、「リスジプラムによる症状発現前の治療の相対的な有効性と安全性をさらに理解するために、より大規模な無作為化比較試験および長期追跡調査が必要である」とまとめている。NEJM誌2025年8月14日号掲載の報告。SMAと診断されたが症状を呈していない生後6週までの乳児を対象に試験 RAINBOWFISH試験の対象は、スクリーニング時に5番染色体長腕(5q)に変異がある常染色体劣性のSMA(遺伝学的SMA)との診断を有するが、SMAを強く示唆する臨床徴候または症状が認められない、初回投与時の年齢が生後1~42日(在胎期間は単胎で37~42週、双胎で34~42週)の乳児とした。SMN2遺伝子のコピー数は問わないこととしたが、SMN2遺伝子のコピー数が2でベースラインの複合筋活動電位(CMAP)振幅が1.5mV以上の患者(主要有効性解析対象集団)を、少なくとも5例に達するまで登録を継続した。自然経過研究では、SMN2遺伝子のコピー数2を有する未治療の乳児の大半は、重症SMAの表現型(I型)で、自立座位が不可であったり、永続的な人工呼吸管理および摂食支援を要する、あるいは生後13ヵ月までに死亡することが示されている。 研究グループは、適格登録患児全例にリスジプラムを平均血漿曝露量約2,000ng×時間/mLとなるよう1日1回経口投与した。最初の3例は0.04mg/kgで投与を開始し、薬物動態データに基づき投与開始後3~8週以内に全例0.2mg/kgに調整した。投与期間は、非盲検投与期を24ヵ月としてその後は非盲検延長期に移行し、計5年間とした。 主要アウトカムは、主要有効性解析対象集団における投与12ヵ月時点での、支持なし5秒以上の座位保持可能(BSID-IIIの項目22に基づく)な患児の割合とした。副次アウトカムは全例における臨床症状を伴うSMAの発症、生存期間、呼吸支援、発達マイルストーンおよび運動機能、栄養摂取などであった。支持なし5秒以上の座位保持可能な患児の割合は80% 2019年8月7日に最初の患児が登録され、SMN2遺伝子のコピー数が2、3または4以上の患児計26例が登録された(クリニカルカットオフ日は、主要解析[投与12ヵ月時]2023年2月20日、投与24ヵ月時2024年3月27日)。 投与12ヵ月時に、21例(81%)が支持なし30秒以上座位保持が可能、14例(54%)が起立可能、11例(42%)が自立歩行可能であった。 主要アウトカム(主要有効性解析対象集団5例)については、4例(80%、95%信頼区間:28~100)が支持なし5秒以上の座位保持が可能で、事前規定の達成基準5%(未治療I型SMA患者の自然経過研究に基づく)を上回った。 投与12ヵ月時の評価後に3例が試験を中断した(親または介護者によってオナセムノゲンアベパルボベクによる遺伝子治療に切り換えたため)が、24ヵ月間の治療を完了した23例は全例が永続的な人工呼吸管理および摂食支援なしで生存していた。 24ヵ月間に、7例の乳児で9件の治療関連有害事象が報告されたが、いずれも重篤ではなかった。

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第276回 医学誌側が拒否!ケネディ氏がワクチン論文に要請したこと

INDEX今さら何を…医学誌編集部がケネディ氏へ抵抗示す職権の乱用が過ぎる今さら何を…「私はこれまで『反ワクチン』や『反産業』と呼ばれてきましたが、それは事実ではありません。私は反ワクチンではありませんし、反産業でもありません。私は安全を重視する立場なのです」「私の子どもたちは全員、ワクチンを接種しています。ワクチンは医学において極めて重要な役割を果たしています」上記の発言は、米国・保健福祉省長官のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(以下、ケネディ氏)が米連邦議会上院財務委員会の指名承認公聴会で述べた発言だ。同公聴会は大統領が指名する閣僚の承認是非を検討するプロセスの入口である。以前からケネディ氏のことは本連載(第264回、第267回、第274回参照)で同氏によるACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)の委員全員の解任、mRNAワクチン研究の縮小などを取り上げ、なかば「週刊ケネディ」状態になっているが、それはこれほど突っ込みどころの多い人物もそうそういないからである。昨今の報道からもこの人のワクチン懐疑主義は筋金入りであり、前述の公聴会発言は長官承認を得るための方便に過ぎなかったのだと改めて思っている。医学誌編集部がケネディ氏へ抵抗示すその昨今の報道とは「ケネディ米厚生長官のワクチン研究撤回要請、医学誌が拒否」というロイター電である。要約すると、“デンマーク国立血清学研究所(SSI)が行った小児用ワクチンに含まれるアジュバントのアルミニウムと50種類の疾患(自閉症、喘息、自己免疫疾患を含む)との関連性を調べた大規模コホート研究の結果、これら疾患の増加とアルミニウム・アジュバントとの関連は認められなかったという研究に対して、ケネディ氏が撤回を要求し、掲載した『Annals of Internal Medicine』誌編集部が拒否した”というものだ。この研究1)、中身を見ると個人的にはなかなかのものと感じる。まず研究に使用したデータはデンマークの国民健康登録データで、デンマークでの小児用ワクチン接種プログラムが始まった1997~2018年までに生まれ、2歳時点まで国内に居住していたすべての子どもを対象にしている。移住、死亡、特定の先天性疾患や先天性風疹症候群、呼吸器疾患、原発性免疫不全症、心不全または肝不全などの既往例を除外した最終的な解析対象は122万4,176例と極めて規模が大きい。ちなみにデンマークのワクチンプログラムは、2歳までにジフテリア・破傷風・百日咳、不活化ポリオの混合ワクチンとヒブワクチンの3回接種とMMRワクチンの1回目を完了させるもので、2007年からは肺炎球菌ワクチン(2010年までは7価、それ以降は13価)が加わっている。この研究結果によると、アルミニウム・アジュバントの曝露量は出生年代によって異なり、総アルミニウム曝露量の中央値は3mg(四分位範囲2.8~3.4)。最終的な生後2年間のワクチン接種によるアルミニウム累積曝露量1mg増加当たりの調整ハザード比は、自己免疫疾患が0.98(95%信頼区間:0.94~1.02)、アトピー性またはアレルギー性疾患が0.99(同:0.98~1.01)、神経発達障害が0.93(同:0.90~0.97)という結果だった。レトロスペクティブな研究ではあるが、これだけ大規模であることを考えれば、その欠点はかなり補えていると言える。また、この研究の特徴は日本より先行して導入されたデンマーク版マイナンバーであるCPR(Central Persons Registration)番号を利用しているため、親の経済状況などの交絡因子などは可能な限り調整されているはずだ。職権の乱用が過ぎるこの研究についてケネディ氏は「製薬業界による欺瞞的なプロパガンダ」と評し、対照群がないことなどを批判したらしいが、研究の筆頭著者は「デンマークでのワクチン未接種率は2%未満のため、統計学的に意味のある対照群設定は困難」と反論している。世界の大国・アメリカの閣僚とは言え、そもそも学術誌に掲載された査読済み論文を自らの要請だけで撤回させられると本気で思っているならば、相当な破廉恥だと思うのは私だけではないはずだ。 1) Andersson NW, et al. Ann Intern Med. 2025 Jul 15. [Epub ahead of print]

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官民学で肥満対策に取り組む千葉市の事例/千葉市、千葉大、ノボ

 国民の健康維持や医療費の削減などのため、肥満や過体重に対するさまざまな取り組みが行われている。今回、千葉市とノボ ノルディスク ファーマは、官民学連携による肥満・肥満症対策の千葉モデルの実施について「肥満・肥満症対策における課題と実態調査から見る官民学連携による千葉モデルの展望」をテーマに、メディアセミナーを開催した。セミナーでは、千葉市との連携の経緯やその内容、肥満症に関する講演、肥満症に関係する課題や今後の取り組みなどが説明された。官民学で千葉市から始まる新しい健康作りの流れ 同社が2024年9月に実施した全国47都道府県9,400人へのアンケート調査「肥満と肥満症に関する実態調査」によれば、「太っていることが原因で他人からネガティブなことを言われた内容」について、「体型が好ましくない」(57.6%)、「運動不足である」(45.5%)、「だらしない、怠惰である」(34.5%)の順で多かった。また。「『肥満』を解消するために医療機関を受診しなかった理由」では、「肥満は自己責任だと思うから」(39.8%)、「医療機関に行くとお金がかかるから」(35.4%)、「相談するほどの肥満だと思っていないから」(25.0%)の順で多く、肥満や肥満症に関するスティグマ(偏見)、社会的偏見の存在が確認されたという。 そこで、こうした課題に対し、2024年10月に千葉市と肥満および肥満症に関する環境を整備し、千葉市がより健康な社会を実現するモデル都市になることを目指すことを目的に協定を締結した。具体的には、地域住民・保健医療関係者の肥満・肥満症の理解向上、関連疾患の分析、子供の健康応援などの事項について連携を行うとされている。 はじめに千葉市長の神谷 俊一氏が、千葉市は最重要政策の柱の1つに「市民一人ひとりの健康寿命を伸ばし、誰もが豊かに暮らせる地域社会を作ること」を掲げていること、そのために「市民の健康に関する意識の向上を図り、行動変容を促し、健康作りに取り組みやすい社会環境を作る行動の後押しとしたい」と語り、今後は、三者が相互に協力しながら、市民の健康増進に取り組んでいき、「千葉市から始まる新しい健康作りの流れが全国へ波及していく第一歩となることを願う」と抱負を語った。肥満者の約4割が医師に相談は不要と回答 続いて基調講演として「肥満および肥満症 千葉市民の実態調査結果を踏まえて」をテーマに千葉大学学長の横手 幸太郎氏が、肥満症診療の要点と実態調査の内容などを解説した。 「わが国では20歳以上の肥満者は男性31.7%、女性21.0%とされ、年々BMI35以上の高度肥満も増えている」と疫学を示した上で、肥満と肥満症、メタボリックシンドロームは、概念が個々で異なり、肥満はBMI25以上、肥満症は、肥満(BMIが25以上)かつ、(1)肥満による耐糖能異常、脂質異常症、高血圧などの11種の健康障害(合併症)が1つ以上ある、または(2)健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合に肥満症と診断されている。また、肥満症は治療が必要な疾患とされ、治療では食事、運動、行動、薬物療法、外科的療法が行われている。 そして、肥満・肥満症の原因としては、自己責任だけでなく、現在の研究では、遺伝的要因、職業要因などさまざまな要因により起こることが指摘されており、肥満・肥満症になることでスティグマや経済的問題、睡眠不足やメンタルヘルスなどの疾患など課題もあると説明した。 次に2025年3月に千葉市が市民に行った「肥満および肥満症に関する実態調査」について触れ、この調査は、千葉市民の男女2,400人(年齢20~70代)にインターネットで調査したもので、肥満症の認知について、「知っている」という回答は16.9%に止まり、医師への相談意向についても「思う・やや思う」で31.0%だった。その理由としては「相談するほど肥満だと思っていない」が43.4%で1番多かった。また、「肥満の人への印象」では、「運動不足である」が45.5%で1番多かった。 これらの調査を踏まえて横手氏は、「肥満はリスクであり、肥満症は病気である。一方、肥満・肥満症は自己責任だけでなくさまざまな要因が関連している。今回実施した千葉市民の肥満・肥満症に関する実態調査でも、千葉市民における肥満・肥満症に対する正しい理解の不足、そしてスティグマが存在することが明らかになった。予防だけでなく、治療を通して長きにわたる良い管理をして健康を保つためにも、スティグマの払拭が必要。自分で抱えることなく、それを社会でサポートして、リスクを認知し、どうやってそれを乗り越えて元気で長生きを実現するかが必要であり、今千葉市でこうした動きが出ている」と語り、講演を終えた。子供の健康応援を全世界で実施 次に「プロジェクトの進捗」について、同社の広報・サステナビリティ統括部の川村 健太朗氏が、今回の連携で行われている施策を紹介した。 3月4日「世界肥満デー」に合わせた疾患啓発として、千葉市の『市政だより』やSNSで肥満や肥満予防に関する記事の発信のほか、先述の実態調査を行ったこと、市民公開講座を実施したこと、大阪万博での発表などの取り組みが紹介された。 とくに3回にわけて行われた「ロゴ・スローガンの開発ワークショップ」では、官民学連携による新しい肥満・肥満症対策の取り組みが議論され、「みんなで気づく、みんなで動く。千葉市肥満と肥満症をほっとかない! プロジェクト」のローンチとロゴが決定されたことを紹介した。 最後に「今後に向けて」をテーマに同社の医療政策・渉外本部長の濱田 いずみ氏が同社の今後の取り組みを説明した。 肥満症の克服には社会的な連携が必要であること、そして、幼児期から思春期に肥満の子供は、成人後に肥満になる可能性が5倍高く、不安障害やうつ病のリスクも高いことが研究で示されていることから、今回の連携協定では「子供の健康応援」が含まれ、子供が健康に育つために運動と食事改善、地域に根ざした多様なアプローチなど仕組み作りを行うという。この取り組みは、世界5ヵ国(カナダ、スペイン、ブラジル、南アフリカ、日本)で展開しており、千葉市もその一環であることが説明され、「今後も肥満症を始めとする深刻な慢性疾患の克服に全社を挙げて取り組んでいく」と決意を述べた。

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胎児超音波検査での医療者の言葉が親子関係に影響か

 もうすぐ親になるという人たちにとって、初めてわが子の姿を目にする機会は超音波検査であることが多い。こうした超音波検査で病院のスタッフがお腹の中の子どもについて発した言葉が、その後の育児に良い影響を与えたり、逆に悪い影響を与えたりする可能性のあることが、新たな研究で示唆された。米ノートルダム大学心理学分野のKaylin Hill氏らによるこの研究の詳細は、「Communications Psychology」に5月5日掲載された。 Hill氏らはまず、妊娠11~38週の妊婦320人を対象に聞き取り調査を実施し、その時点でお腹の赤ちゃんがどんな子であると感じているかを尋ねた。その後、生後18カ月の時点で、子どもの行動面や情緒面の問題について評価してもらった。173人が生後18カ月の追跡調査を完了した。 その結果、妊娠中に赤ちゃんに対してポジティブな見方を持っていた母親は、生後18カ月の時点で子どもに情緒的な問題や行動的な問題が少ないと評価する傾向が認められた。一方で、親の評価が妊婦健診での経験と関連している場合には、評価のトーンがネガティブになりがちであった。また、ネガティブな評価は子どもの将来の行動的・情緒的問題と関連していた。ただし、そうしたネガティブな評価が妊婦健診に由来するかどうかはこの関連に影響していなかった。 次にHill氏らは、161人の研究参加者を対象に実験を行い、妊婦健診での超音波検査中に聞いた言葉が、これらの傾向に関係している可能性を検討した。実験では、検査技師から妊婦に超音波画像の質の悪さについて、1)技術的な問題が原因でうまく撮れなかった、2)胎児が「協力的でない」ために画像がうまく撮れなかった、3)心配する必要はなく、その後の超音波検査で良い画像を得られるだろう、のいずれかの言い方で伝えられた。その結果、胎児が「協力的でない」と言われた母親は、他の2つのパターンの説明を受けた母親と比べて、その後、子どもに対して否定的な見方をしがちになる傾向が認められた。 こうした結果を受けてHill氏は、「胎児の発達に関する専門家であると見なされている超音波技師などが検査中に使った言葉はそのまま親に受け止められ、赤ちゃんが生まれる前から『自分の子どもはこういう子だ』という認識に影響を与える」と言う。Hill氏によれば、このような早い段階に自分の子に対して抱いた印象は、女性の産後うつのリスクにも、わずかではあるが重要な影響を及ぼす可能性があるという。 Hill氏は、「もちろん、われわれは親をサポートしたいと考えている。この研究が示しているのは、妊婦との重要なやり取りの中で使われる、一見些細に思われる言葉の選び方の違いがいかに大きく影響するかということであり、その点について、まずは医療従事者と話し合うことが大事だということだ」と話している。 Hill氏は「産前産後の時期は身体的にも心理的にも、また社会的にもさまざまなレベルで変化が起こる時期であり、抑うつリスクが最も高まる時期の一つだ。もし超音波検査での経験が子どもに対する見方に影響を与えるのであれば、それによって親子関係のさまざまな面にも影響が及ぶ可能性がある。このことは親と子の双方の将来にとって極めて重要だ」と述べている。

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オセルタミビルは小児の神経精神学的イベントを減少させる

 インフルエンザウイルス感染症では、オセルタミビルなどの治療薬による神経精神学的リスクの増大が懸念されている。しかし、インフルエンザ感染や治療薬が小児の神経精神学的イベントとどのように関係するのか不明な点も多い。この課題について、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJames W. Antoon氏らの研究グループは、インフルエンザ、オセルタミビル、および重篤な神経精神学的イベントとの関連性を検討した。その結果、インフルエンザ罹患時のオセルタミビル治療は、重篤な神経精神学的イベントのリスク低減と関連することがわかった。この結果は、JAMA Neurology誌オンライン版2025年8月4日号で公開された。オセルタミビルは、重篤な神経精神学的イベントのリスク低減と関連 研究グループは、テネシー州の医療扶助事業(メディケイド)に加入している5~17歳までの小児・青年を対象に、2016~17年および2019~20年のインフルエンザシーズン中に、人口ベースの外来診療設定にて後ろ向きコホート研究を実施した。追跡はインフルエンザシーズンの初日から開始され、アウトカムイベントの最初の発生、登録解除、死亡、18歳到達、シーズンまたは研究終了のいずれか早い時点まで継続された。 主要なアウトカムは入院を要する神経精神学的イベントであり、イベントは検証済みのアルゴリズムを使用して特定。ポアソン回帰分析で発生率比(IRR)を推定した。感度分析では、曝露とアウトカムの定義の代替案、時間依存的なアウトカムリスク、負のコントロールアウトカム、未測定の交絡要因に対する結果の頑健性を検討した。データ分析は2023年7月~2025年3月に行われた。 主な結果は以下のとおり。・69万2,975人の小児・青年のうち69万2,295人(年齢中央値[四分位範囲]:11[7~14]歳、女子50.3%)が対象となった。・1,968万8,320人週の追跡期間中に、1,230件の重大な神経精神学的イベント(神経学的898件、精神学的332件)が発生した。・12万9,134例の個人が15万1,401件のインフルエンザエピソードを経験し、そのうち66.7%(95%信頼区間[CI]:66.5~67.0)にオセルタミビルが処方された(インフルエンザ合併症の高リスク群では60.1%、95%CI:59.6~60.6)。・全体で最も頻度の高かった神経精神学的イベントは、気分障害(36.3%)と自殺または自傷行為(34.2%)だった。・未治療のインフルエンザ群と比較し、オセルタミビル治療中群(IRR:0.53、95%CI:0.33~0.88)および治療後群(IRR:0.42、95%CI:0.24~0.74)では神経精神学的イベント率は低かった。・サブ解析では、この結果は精神学的イベント(IRR:0.80、95%CI:0.34~1.88)よりも神経学的イベント(IRR:0.45、95%CI:0.25~0.82)の減少によるものであることが示唆された。 研究グループでは、「インフルエンザ罹患時のオセルタミビル治療は、重篤な神経精神学的イベントのリスク低減と関連していた。これらの結果は、インフルエンザ関連合併症の予防におけるオセルタミビルの使用を支持するもの」と結論付けている。

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第256回 新型コロナ感染者8週連続増 「ニンバス株」拡大とお盆の人流が影響/厚労省

<先週の動き> 1.新型コロナ感染者8週連続増 「ニンバス株」拡大とお盆の人流が影響/厚労省 2.SFTS感染、全国拡大と過去最多ペース 未確認地域でも初報告/厚労省 3.AI医療診断を利用した大腸内視鏡検査、システム活用によるデメリットも明らかに/国立がん研ほか 4.医療DX推進体制整備加算、10月から基準引き上げへ/厚労省 5.医師・歯科医師20人に行政処分 強制わいせつ致傷で免許取消/厚労省 6.人口30万人以下の地域の急性期は1拠点化? 医療機能の再編議論が本格化/厚労省 1.新型コロナ感染者8週連続増 「ニンバス株」拡大とお盆の人流が影響/厚労省新型コロナウイルスの感染が全国で再び拡大している。厚生労働省によると、8月4日~10日の1週間に全国約3,000の定点医療機関から報告された新規感染者数は2万3,126人で、1医療機関当たりの平均患者数は6.13人となり、8週連続の増加となった。前週比は1.11倍で、40都道府県で増加。宮崎県(14.71人)、鹿児島県(13.46人)、佐賀県(11.83人)と、九州地方を中心に患者数が多く、関東では埼玉、千葉、茨城などで上昇が顕著だった。増加の背景には、猛暑による換気不足、夏季の人流拡大に加え、オミクロン株派生の変異株「ニンバス」の流行がある。国内の感染者の約4割がこの株とされ、症状として「喉にカミソリを飲み込んだような強い痛みを訴える」のが特徴。発熱や咳といった従来の症状もみられるが、強烈な喉の痛みで受診するケースが多い。医療機関では、エアコン使用で喉の乾燥と勘違いし、感染に気付かず行動する患者もみられる。川崎市の新百合ヶ丘総合病院では、8月14日までに陽性者70人を確認し、7月の100人を上回るペース。高齢者の入院も増加しており、熱中症と区別が付きにくいケースもある。都内の感染者数も8週連続で増加し、1医療機関当たり4.7人。東京都は、換気の徹底や場面に応じたマスク着用などの感染対策を呼びかけている。厚労省は「例年、夏と冬に感染者が増える傾向がある」として、基本的な感染対策の継続を求めている。とくに高齢者や持病のある人は重症化リスクが高いため、早期の受診や感染予防の徹底が重要とされる。 参考 1) 2025年8月15日 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について(厚労省) 2) 新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移(同) 3) 新型コロナ 東京は8週連続で患者増加 医師「お盆に帰省した人が発熱し感染広がるおそれも」(NHK) 4) 新型コロナウイルス 1医療機関当たり平均患者数 8週連続で増加(同) 5) 新型コロナ「ニンバス」流行 カミソリを飲んだような強烈な喉の痛み(日経新聞) 6) 新型コロナ変異株「ニンバス」が流行の主流、喉の強い痛みが特徴…感染者8週連続増(読売新聞) 2.SFTS感染、全国拡大と過去最多ペース 未確認地域でも初報告/厚労省マダニ媒介感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の国内感染者数は、2025年8月3日時点で速報値で124人に達し、すでに昨年の年間120人を超え、過去最多の2023年(134人)を上回るペースで増加している。感染報告は28府県に及び、高知県14人、長崎県9人など西日本が中心だが、北海道、茨城、栃木、神奈川、岐阜など従来未確認だった地域でも初感染が報告された。SFTSはマダニのほか、発症したイヌやネコや患者の血液・唾液からも感染する。潜伏期間は6~14日で、発熱、嘔吐、下痢を経て重症化すると血小板減少や意識障害を起こし、致死率は10~30%。2024年には抗ウイルス薬ファビピラビル(商品名:アビガン)が承認されたが、治療は主に対症療法である。高齢者の重症例が多く、茨城県では70代男性が重体となった事例もあった。感染拡大の背景には、里山の消失による野生動物の市街地進出でマダニが人の生活圏に侵入していること、ペットから人への感染リスク増大がある。とくにネコ科は致死率が約60%とされる。富山県では長袖・長ズボン着用でも服の隙間から侵入した事例が報告された。専門家や自治体は、草むらや畑作業・登山時の肌の露出防止、虫よけ剤の使用、ペットの散歩後のブラッシングやシャンプー、マダニ発見時の医療機関受診を呼びかけている。SFTSは全国的な脅威となりつつあり、従来非流行地域でも警戒が必要。 参考 1) マダニ対策、今できること(国立健康危機管理研究機構) 2) マダニ媒介の感染症 SFTS 全国の患者数 去年1年間の累計上回る(NHK) 3) 感染症SFTS 専門医“マダニはわずかな隙間も入ってくる”(同) 4) 致死率最大3割--“マダニ感染症”全国で拡大 「ダニ学者」に聞く2つの原因 ペットから人間に感染する危険も…対策は?(日本テレビ) 3.AI医療診断を利用した大腸内視鏡検査、システム活用によるデメリットも明らかに/国立がん研などポーランドなどの国際チームは、大腸内視鏡検査でAI支援システムを常用する医師が、AI非使用時に前がん病変(腺腫)の発見率を平均約20%低下させることを明らかにした。8~39年の経験を持つ医師19人を対象に、計約2,200件の検査結果の調査によって、AI導入前の腺腫発見率は28.4%だったが、導入後にAI非使用で検査した群では22.4%に低下し、15人中11人で発見率が下がったことが明らかになった。AI支援システムへの依存による注意力・責任感低下など「デスキリング」現象が短期間で起きたとされ、とくにベテラン医師でも回避ができなかった。研究者はAIと医師の協働モデル構築、AIなしでの定期的診断訓練、技能評価の重要性を強調している。一方、国立がん研究センターは、新たな画像強調技術「TXI観察法」がポリープや平坦型病変、SSL(右側結腸に好発する鋸歯状病変)の発見率を向上させると発表した。全国8施設・956例の比較試験では、主解析項目の腫瘍性病変発見数で有意差はなかったが、副次解析で発見率向上が確認された。TXIは明るさ補正・テクスチャー強調・色調強調により微細な変化を視認しやすくする技術で、見逃しがんリスク低減と死亡率減少が期待される。ただし、恩恵を受けるには検診受診が前提で、同センターは便潜血検査と精密内視鏡検査の受診率向上を強く訴えている。両研究は、大腸内視鏡の質向上におけるAI・新技術の有用性とリスクを示すものであり、機器性能の進化と医師技能の維持を両立させる体制構築が今後の課題となる。 参考 1) AI利用、 医師の技量低下 大腸内視鏡の質検証(共同通信) 2) AI医療診断の落とし穴:医師のがん発見能力が数ヶ月で低下(Bignite) 3) Study suggests routine AI use in colonoscopies could erode clinicians’ skills, warns/The Lancet Gastroenterology & Hepatology(Bioengineer) 4) 大腸内視鏡検査における「TXI観察法」で、ポリープや「見逃しがん」リスクとなる平坦型病変の発見率が向上、死亡率減少に期待-国がん(Gem Med) 5) 大腸内視鏡検査の新規観察法の有効性を前向き多施設共同ランダム化比較試験で検証「見逃しがん」のリスクとなる平坦型病変の発見率改善に期待(国立がん研) 4.医療DX推進体制整備加算、10月から基準引き上げへ/厚労省厚生労働省は8月7日付で、2024年度診療報酬改定で新設された「医療DX推進体制整備加算」について、2025年10月と2026年3月の2段階でマイナ保険証利用率の実績要件を引き上げる通知を発出した。小児患者が多い医療機関向けの特例や、電子カルテ情報共有サービス参加要件に関する経過措置も2026年5月末まで延長する。改正後の施設基準では、マイナ保険証利用率の基準値は上位区分で現行45%から10月に60%、来年3月に70%へ、中位区分で30%から40%・50%へ、低位区分で15%から25%・30%へ段階的に引き上げる。小児科特例は一般基準より3ポイント低く設定され、10月以降22%・27%となる。いずれも算定月の3ヵ月前の利用率を用いるが、前月または前々月の値でも可とする。加算はマイナ保険証利用率と電子処方箋導入の有無で6区分に分かれ、電子処方箋導入施設には発行体制や調剤結果の電子登録体制の整備を新たに求める。未導入施設は電子処方箋要件を課さないが、加算区分によっては算定不可となる場合がある。電子カルテ情報共有サービスは本格稼働前のため、「活用できる体制」や「参加掲示」を有しているとみなす経過措置を来年5月末まで延長。在宅医療DX情報活用加算についても同様の延長措置が適用される。通知では、これらの要件は地方厚生局長への届出不要で、基準を満たせば算定可能と明記。厚労省は、マイナ保険証利用率向上に向けた患者への積極的な呼びかけや掲示の強化を医療機関・薬局に促している。 参考 1) 「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」及び「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」の一部改正について(医療 DX 推進体制整備加算等の取扱い関係)(厚労省) 2) 医療DX推進体制整備加算、マイナ保険証利用率基準を「2025年10月」「2026年3月」の2段階でさらに引き上げ-厚労省(Gem Med) 5.医師・歯科医師20人に行政処分 強制わいせつ致傷で免許取消/厚労省厚生労働省は8月6日、医道審議会医道分科会の答申を受け、医師12人、歯科医師8人の計20人に行政処分を決定した。発効は8月20日。別途、医師8人には行政指導(厳重注意)が行われた。処分理由は刑事事件での有罪確定や重大な法令違反が中心で、医療倫理や信頼を揺るがす事案が目立った。免許取り消しは三重県松阪市の58歳医師。2015年、診察室で製薬会社MRの女性に対し胸を触る、額にキスをする、顔に股間を押し付けようとするなどの強制わいせつ行為を行い、逃れようとした被害者が転落して視神経損傷の重傷を負った。2020年に懲役3年・執行猶予5年の有罪判決が確定していた。医師の業務停止は最長2年(麻薬取締法違反)から2ヵ月(医師法違反)まで幅広く、過失運転致傷・救護義務違反、児童買春、盗撮、迷惑行為防止条例違反、不正処方などが含まれた。戒告は4人に対して行われた。歯科医師では、最長1年10ヵ月(大麻取締法・麻薬取締法・道交法違反)から2ヵ月(詐欺幇助)までの業務停止が科され、診療報酬不正請求や傷害、廃棄物処理法違反も含まれた。戒告は2人だった。厚労省は、これら不正行為は国民の医療への信頼を損なうとし、再発防止と医療倫理向上を求めている。 参考 1) 2025年8月6日医道審議会医道分科会議事要旨(厚労省) 2) 医師と歯科医20人処分 免許取り消し、業務停止など-厚労省(時事通信) 3) 医師、歯科医師20人処分 厚労省、免許取り消しは1人(MEDIFAX) 4) 医師12名に行政処分、MRに対する強制わいせつ致傷で有罪の医師は免許取消(日本医事新報) 6.人口30万人以下の地域の急性期は1拠点化? 医療機能の再編議論が本格化/厚労省厚生労働省は8月8日、第2回「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」を開催し、2026年度からの新たな地域医療構想の柱として「医療機関機能報告」制度の導入を提案した。各医療機関は、自院が地域で担うべき4つの機能(急性期拠点、高齢者救急・地域急性期、在宅医療連携、専門など)について、救急受入件数や手術件数、病床稼働率、医師・看護師数、施設の築年数といった指標をもとに、役割の適合性を都道府県へ報告する。中でも議論を呼んだのが、救急・手術を担う「急性期拠点機能」の整備基準である。厚労省は人口規模に応じた整備方針を示し、人口100万人超の「大都市型」では複数の医療機関の確保、50万人規模の「地方都市型」では1~複数、30万人以下の「小規模地域」では原則1ヵ所への集約化を目指すとした。しかし、専門病院や大学病院がすでに存在する中核都市などでは、1拠点に絞るのは非現実的との声も上がっている。また、医療機関の築年数も協議指標として活用する案に対しては、公的病院と民間病院の間で資金力に格差がある中、基準化すれば民間病院の淘汰を招く恐れがあるとして、慎重な検討を求める意見も出た。実際、病院建築費は1平米当たり2011年の21.5万円から2024年には46.5万円と倍増し、全国には築40年以上の病棟が約1,600棟(16万床分)存在する。このほか、在宅医療連携機能には訪問診療・看護の実績や高齢者施設との協力体制、高齢者救急機能には診療所不足地域での外来1次救急や施設搬送の体制が求められる。人材面では、医師の地域偏在や診療科偏在だけでなく、今後10年で最大4割減少も予測される看護師不足が最大の制約要因として指摘された。 参考 1) 新たな地域医療構想策定ガイドラインについて(厚労省) 2) 急性期拠点機能の指標に「築年数」厚労省案 救急・手術件数や医療従事者数も(CB news) 3) 人口規模に応じた医療機関機能の整備を提示(日経ヘルスケア)

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母親の産前、産後うつ病と子供の自閉スペクトラム症との関係〜メタ解析

 母親の産前、産後うつ病や周産期うつ病と子供の自閉スペクトラム症(ASD)との関係については、相反する結果が報告されている。オーストラリア・カーティン大学のBiruk Shalmeno Tusa氏らは、母親の産前、産後うつ病や周産期うつ病と小児および青年期におけるASDリスクとの関連についての既存のエビデンスを検証し、統合するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BJPsych Open誌2025年6月4日号の報告。 2024年2月21日までに公表された研究を、PubMed、Medline、EMBASE、Scopus、CINAHL、PsycINFOよりシステマティックに検索した。ランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施し、サマリー効果推定値はオッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)として算出した。異質性の評価には、Cochranの Q検定およびI2検定を用いた。対象研究における潜在的な異質性の要因を特定するため、サブグループ解析を行った。出版バイアスの評価には、ファンネルプロットとEggerの回帰検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・最終分析には、160万組超の母子を対象とした12件の研究が含まれた。・ランダム効果メタ解析では、子供におけるASD発症リスクは、妊娠前にうつ病を経験した母親の場合52%(OR:1.52、95%CI:1.13〜1.90)、産前うつ病の場合48%(OR:1.48、95%CI:1.32〜1.64)、産後うつ病の場合70%(OR:1.70、95%CI:1.41〜1.99)それぞれ増加していることが明らかとなった。 著者らは「メタ解析の結果、出産前、周産期、出産後にうつ病を経験した母親から生まれた子供は、ASD発症リスクが高いことが判明した。ASDリスクの子供に対する早期スクリーニングおよびターゲットを絞った介入プログラムの必要性が示唆された」と結論付けている。

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