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潰瘍性大腸炎の症状を抑えるグセルクマブ皮下注への期待/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、潰瘍性大腸炎(UC)の治療薬グセルクマブ(商品名:トレムフィア)の皮下注製剤の製造販売承認事項一部変更の承認取得に伴い、都内でメディアセミナーを開催した。グセルクマブは、IL-23のp19サブユニットに結合してIL-23を阻害する医薬品として初めて承認された完全ヒト型モノクローナル抗体であり、わが国では尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬などの治療薬としてすでに承認を得ている。皮下注製剤は、中等症~重症のUCの寛解導入療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)の治療薬として、2026年2月19日に製造販売承認事項一部変更の承認を取得した。 セミナーでは、UCの病態、診療、グセルクマブの臨床試験結果などの解説のほか、UC患者の声などが語られた。患者にも医療者にもメリットがあるグセルクマブ皮下注製剤 「潰瘍性大腸炎における課題とトレムフィア皮下注製剤による導入療法に期待すること」をテーマに久松 理一氏(杏林大学医学部消化器内科学 教授/炎症性腸疾患包括医療センター長)が、UCの疾患概要、診療などの講演を行った。 炎症性腸疾患(IBD)とは消化管に炎症が起こる疾患の総称であり、原因不明のものを「非特異性炎症性腸疾患」といい、UCやクローン病がある。UCでは、主に大腸に炎症が起こり、重症化すると大腸全体に及ぶ。主な症状としては、下痢、血便、腹痛、便意の切迫感などのほか、重症になると体重減少や発熱、貧血などもある。また、病勢としては、病状が落ち着く「寛解」と病状が悪化する「再燃」を繰り返し、寛解状態を維持するために継続的な治療と定期的な診療が必要となる。 わが国では患者数は年々増加しており、UCでは約31万人の患者数が推定されている(参考までにクローン病は約9.6万人と推定される)。発症年齢は、男性で20~24歳、女性で25~29歳にピークがあり、IBD全体では30~40代の働き盛りの世代に多く発症する。この年代はまさに就業中枢の世代であり、かつ、人生ではさまざまなイベントが発生する時期であり、患者のQOLが阻害されることになる。 UCの治療としては、5-ASA製剤をベースに重症度に応じて、ステロイド、免疫調節薬、免疫抑制薬などが使用されるほか、近年では抗TNF-α抗体薬、JAK阻害薬、抗α4β7インテグリン抗体製剤が登場し、中等症~重症のUCで使用されている。今回、皮下注製剤による導入療法の適応が追加されたグセルクマブは、中等症~重症の寛解導入療法の治療薬として期待されている。 グセルクマブの臨床試験では、点滴静注での導入によるプラセボとの二重盲検ランダム化比較試験である「QUASAR試験」と皮下注での導入によるプラセボとの二重盲検ランダム化比較試験である「ASTRO試験」が実施された。 主要評価項目である12週時点での臨床的寛解について、QUASAR試験ではグセルクマブ群(n=421)が22.6%に対し、プラセボ群(n=280)は7.9%だった。ASTRO試験ではグセルクマブ群(n=279)が27.6%に対し、プラセボ群(n=139)は6.5%だった。12週時点での臨床的改善について、QUASAR試験ではグセルクマブ群(n=421)が61.5%に対し、プラセボ群(n=280)は27.9%だった。ASTRO試験ではグセルクマブ群(n=279)が65.6%に対し、プラセボ群(n=139)は34.5%だった。12週時点での内視鏡的改善(MES 0~1)について、QUASAR試験ではグセルクマブ群(n=421)が26.8%に対し、プラセボ群(n=280)は11.1%だった。ASTRO試験ではグセルクマブ群(n=279)が37.3%に対し、プラセボ群(n=139)は12.9%だった。両試験の結果から皮下注であっても点滴静注と同程度の寛解の効果があることが示唆された。また、安全性では、両試験ともに死亡に至った有害事象はなく、発疹、頭痛のほかASTRO試験では注射部位の紅斑などが報告されている。 グセルクマブの投与スケジュールとして、既存治療で効果不十分な中等症~重症のUCで導入療法から使用できるだけでなく、維持療法では導入療法終了4週後以降に1回200mgを4週間隔で皮下投与することもできる。 今後、グセルクマブが使えることで、患者では病院での滞在時間の短縮につながり、医師では導入から維持療法へのスムーズな移行ができる。そして、医療従事者では薬剤調整・ルート確保などの業務削減につながることが期待されている。 まとめとして久松氏は「グセルクマブは皮下注導入で適応追加となり、点滴静注と一貫性ある導入効果が証明されたことで患者の在院時間の短縮、施設の処置時間の短縮につながる」と述べ、講演を終えた。治療の選択肢が増えることは安心できる UC患者の声として一宮 亜美氏が、自身の疾患経験と生活上の課題や診療への思いなどを語った。一宮氏は、12歳のときにUCを発症し、いくつかの診療科を経て、小児科に入院したときにUCと確定診断された。中学生のころから生物学的製剤をスタートしたが、ステロイド治療では効果に抵抗性があったという。食生活では摂取制限もあり、摂取できない食品リストを作成し、とくに脂質の多いものやカレーなどの刺激の強いものは避けていると説明した。学生時代は、周囲には「おなかの病気」とだけ伝えており、社会人になってからはとくに伝えていないという。医療機関への受診は土曜日に行い、「医師には疑問があったら質問する」「普段から病状をメモして伝えるなどを行っている」と述べた。 最後に一宮氏は「治療の選択肢が増えることで安心できる。病状がコントロールできないときに、内科的治療の選択肢はあることがうれしい」と治療薬への期待を語った。

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第290回 はしか急増、3月末で全国に197人 接種歴確認と2回接種が急務/厚労省

<先週の動き> 1.はしか急増、3月末で全国に197人 接種歴確認と2回接種が急務/厚労省 2.中東情勢悪化で医療現場に不安 EMIS活用して在庫把握へ/厚労省 3.医師偏在に現場が危機感、4割が開業規制支持 地域格差是正へ/日経新聞 4.オンライン診療を医療法に明記 96項目の遵守事項で安全確保/厚労省 5.OTC類似薬に25%負担 医療保険改革が審議入り、応能負担強化へ/政府 6.看護専門学校の定員割れ深刻化 2040年見据えた人材確保策を議論/厚労省 1.はしか急増、3月末で全国に197人 接種歴確認と2回接種が急務/厚労省麻疹(はしか)の感染拡大が続いている。国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、2026年第13週までの全国累計患者数は197人に達し、前年同時期の3倍超と、2020年以降で最も速いペースで増加している。東京都48人、鹿児島県24人、愛知県23人が多く、海外流行地からの持ち込みを起点に国内感染が広がった可能性が高い。麻疹は空気感染し、免疫のない人は同じ空間にいるだけで感染し得るうえ、肺炎や脳炎など重い合併症を招くこともあるが、特効薬はない。唯一有効な予防策はワクチン接種で、MRワクチン2回接種が基本となる。日本感染症学会も、流行防止には2回接種率95%以上が必要だと注意喚起をしている。東京都では4月10日時点の患者数が速報値で97人に達し、昨年同時期の10倍超となった。10~30代が約9割を占め、接種歴が1回のみ、あるいは不明な若年成人の脆弱性が浮き彫りになっている。千葉県では今年22例目が確認され、昨年通年に並んだほか、川崎市でも4月だけで複数例が報告された。厚生労働省は、発熱や発疹がある場合は事前に医療機関へ連絡し、公共交通機関を避けて受診するよう求めている。接種歴の確認と未完了者への追加接種が急務となる。 参考 1) 感染症発生動向調査(IDWR)2026年第13週(国立健康危機管理機構) 2) 麻しん(はしか)が世界・国内で増加しています(日本感染症学会) 3) 空気感染するはしか、増加続く 厚労省が接種徹底と注意呼びかけ(Science Portal) 4) はしか患者3月までに197人、コロナ禍後最多だった前年同時期の3倍以上…子どものワクチン接種呼びかけ(読売新聞) 5) はしかの全国感染者数 1週間の新たな感染者30人 感染者数高止まり(日テレNEWS) 2.中東情勢悪化で医療現場に不安 EMIS活用して在庫把握へ/厚労省中東情勢の悪化を受け、石油由来原料を使う医薬品、医療機器、医療物資の供給不安が医療現場で強まっている。厚生労働省と経済産業省の対策本部によると、4月8日時点で医療機関やメーカー・卸業者からの相談は計543件に上り、このうち16件が安定供給に影響ありと判断された。透析回路や医療用手袋など10件はなお対応検討中であり、政府は流通段階の「目詰まり」解消を急ぐとしている。政府は現時点で「直ちに供給が滞る状況ではない」と説明する一方で、医療7団体は買い占めや過剰発注が連鎖すれば、供給不足や価格上昇を招きかねないと懸念を表明した。上野 賢一郎厚生労働大臣との意見交換では、需給見通しの正確な情報発信や、必要量に見合った発注の徹底、医療機関同士で物資を融通できる体制整備を求める声が相次いだ。とくに医療用手袋など日常的に消費する物資への警戒感が強い。厚労省は10日から、災害時に使う広域災害救急医療情報システム(EMIS)を活用し、全国約1万3,000の病院などから在庫や受け入れ状況をオンラインで把握する体制を開始した。今後は定点観測や相談窓口、EMISによる情報収集を通じて需給逼迫の兆候を早期に捉え、厚労・経産両省と医療団体が連携して、安定供給を維持する構え。焦点は、実際の不足が起きる前に冷静な発注行動と情報共有で市場不安を抑え込めるかにある。 参考 1) EMISポータルサイト(厚労省) 2) 医師会ら “医療用物資の需給情報発信し安定的な確保”要請(NHK) 3) 厚労省 医療用物資の調達 災害時にシステム活用で経産省と連携(同) 4) 医療機関1.3万ヵ所から物資の供給状況把握へ 厚労省 災害時システムで10日から情報収集(CB news) 5) 医療物資の供給把握 厚労省、システム運用 全国1.3万の病院(日経新聞) 3.医師偏在に現場が危機感、4割が開業規制支持 地域格差是正へ/日経新聞医師の地域偏在・診療科偏在が深刻化する中、医師自身の間でも自由開業の規制を求める声が強まっている。日本経済新聞と日経メディカルの共同調査では、「開業規制が必要」との回答は42%で、「必要ない」の21%を大きく上回った。地域偏在を深刻とみる回答は46%、診療科偏在も47%に達し、現場の危機感が明確となった。偏在の認識は地域で差が大きく、東京23区では29%にとどまる一方、町村では65%に達する。人口10万人当たり医師数などを基にした偏在指標でも、東京都と岩手県で約2倍の格差があり、西日本に多く東日本に少ない「西高東低」の傾向も続く。勤務医ほど規制支持が強く、病院勤務医では46%が必要と回答したのに対し、開業医では賛否が拮抗した。こうした背景には、現行の自由開業制の下で都市部・人気診療科への集中が進み、地域医療の持続性が揺らいでいる現状がある。厚生労働省の医師確保計画見直しでは、医師偏在は「地域」と「診療科」の二重構造で進行し、とくに外来中心の診療所医師が都市部に偏在している点が課題とされている。政府は改正医療法に基づき、2026年4月から「外来医師過多区域」を設定し、新規開業者に対し在宅医療や夜間対応、医師不足地域での診療などを要請できる制度を開始した。応じない場合には保険医療機関の指定期間短縮というディスインセンティブも設けたが、あくまで要請ベースにとどまる。その一方で、厚労省の資料では、医師確保は単なる配置の問題にとどまらず、勤務環境やキャリアパス、地域医療構想との整合的な政策が不可欠とされる。そのため、単純な規制だけではなく、地域勤務へのインセンティブやタスクシフト、医療提供体制の再編といった総合的な対策が求められている。先述のアンケートの自由回答でも「自由開業制を続ける限り偏在は解消しない」との声がある一方で、「過疎地への誘導策が重要」との指摘も多い。規制と誘導の最適な組み合わせが、今後の医師偏在対策の焦点となる。 参考 1) 野放図な開業を医師も危惧、4割「規制を」 大都市・診療科の偏り加速(日経新聞) 2) 医師の42%が「開業規制が必要」と回答、「不必要」にダブルスコア(日経メディカル) 3) 外来医師過多区域に係る候補区域の公表について(厚労省) 4) 医師確保計画の見直し等に向けたとりまとめ(同) 5) 医師偏在解消に向け、2026年4月から外来医師過多区域・重点医師偏在対策支援区域を設定し対応を強化-地域医療構想・医療計画検討会(Gem Med) 4.オンライン診療を医療法に明記 96項目の遵守事項で安全確保/厚労省2026年4月1日、改正医療法に基づくオンライン診療の関連規定が施行され、これまで通知や指針を中心に運用されてきたオンライン診療が、医療法上明確に位置付けられた。厚生労働省は施行に先立ち、医療機関向けチェックリストを通知し、計96項目の遵守事項と14項目の推奨事項を整理。オンライン診療の提供面では34項目、提供体制では62項目を求め、安全性と適正実施の徹底を図る。新ルールでは、オンライン診療は対面診療の代替ではなく補完とされ、医師は診療の都度、医学的観点から実施の可否を判断し、不適切な場合は速やかに対面診療へ切り替える必要がある。患者への事前説明と同意取得も必須で、触診ができず得られる情報が限られること、対面診療を組み合わせる必要があること、診療計画や急変時対応などを説明しなければならない。初診からのオンライン診療は原則として「かかりつけ医」が行うが、休日夜間やかかりつけ医不在時など例外的に他医師が行う場合は、診療前相談を経た上で、対面診療へ確実につなぐ体制整備が求められる。処方では初診時の麻薬・向精神薬投与や長期処方を制限し、メールやチャットのみで完結する診療も認めない。加えて、通信環境やセキュリティ対策も厳格化され、システムの安全性確認やアクセス管理、情報漏洩対策などが医療機関の責務として明確化された。今回の法改正では、患者がオンライン診療を受ける場所として「オンライン診療受診施設」も制度化された。公共施設などを活用した受診環境整備が可能となる一方で、広告規制も拡大され、受診施設に関する表示も新たな規制対象となる。こうした制度整備の背景には、医療アクセス改善への期待がある。日経新聞・日経メディカルの調査では、医師の51%が「オンライン診療は地域偏在の緩和に寄与する」と回答した。ただ、届け出医療機関はなお限定的で、導入コストや対面より低い診療報酬が普及の壁として残っている。今後は安全確保と普及促進をどう両立させるかが焦点となる。 参考 1) (医療機関向け)基準等遵守の確認をするためのチェックリスト(厚労省) 2) オンライン診療の実施に際し患者に対して説明すべき内容のチェックリスト(同) 3) オンライン診療の基準、厚労省がチェックリスト 順守事項に計96項目挙げる(CB news) 4) 医師の51%が遠隔診療に期待 地域偏在対策、普及へ報酬増求める声(日経新聞) 5) 改正医療法によるオンライン診療規制に伴う医療広告規制の変容~その1 医療広告規制と「オンライン診療受診施設に関する広告」規制~(のぞみ総合法律事務所) 5.OTC類似薬に25%負担 医療保険改革が審議入り、応能負担強化へ/政府4月9日、政府が国会に提出した健康保険法等改正案が衆議院本会議で審議入りした。今回の改革は、増大する社会保障費と現役世代の保険料負担の抑制を背景に、「給付と負担の見直し」と「制度の持続可能性確保」を柱とするものである。最大の焦点は、市販薬と同等の効能を持つ「OTC類似薬」に対する新たな患者負担の導入だ。対象は解熱鎮痛薬や抗アレルギー薬など約77成分・1,100品目に及び、薬剤費の4分の1を保険給付から外し、追加負担として患者に求める仕組みを創設する。これは「一部保険外療養」として制度化され、現役世代の保険料負担を年間2,600億円程度軽減する効果が見込まれている。その一方で、がんや難病患者、小児、長期使用が必要な患者などには負担を課さない方向で検討が進められている。また、後期高齢者医療制度では、株式配当などの金融所得を保険料や窓口負担に反映させる仕組みを強化する。現行制度では申告方法により負担に差が生じる問題があり、金融機関からのデータ提出を義務化することで「応能負担」の徹底を図る。さらに、出産費用については、全国一律の基本単価を設定し、保険で全額給付する仕組みへの転換を進める。従来の出産育児一時金では費用上昇に追いつかず自己負担が残る課題があり、現物給付化と情報の見える化により負担軽減と選択の透明性向上を目指す。このほか、高額療養費制度では長期療養者への影響配慮を明文化し、医療機関の業務効率化や勤務環境改善を支援する新たな基金事業も創設される。DXや生成AI活用などによる効率化も政策的に後押しされる点が特徴となっている。政府は「世代間・世代内の公平性確保」と「限られた財源の効率的活用」を強調する一方で、野党からは「患者負担増による受診控え」や「治療遅延のリスク」が指摘されており、制度設計の妥当性が今後の審議の焦点となる。 参考 1) 健康保険法等の一部を改正する法律案について(厚労省) 2) 健保法等改正案が衆院で審議入り 高市首相「不断の改革に取り組む」 上野厚労相「負担の公平性確保」(ミクスオンライン) 3) OTC類似薬の追加負担「がんや入院中の患者には求めず」 上野厚労相(日経新聞) 6.看護専門学校の定員割れ深刻化 2040年見据えた人材確保策を議論/厚労省厚生労働省は4月10日、「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」の初会合を開き、2040年ごろの看護職員の需給を都道府県別に推計する方針を示した。新たな地域医療構想の実現に向け、看護人材の確保と資質向上は不可欠であり、秋ごろまでに養成・確保策と推計方法を議論し、冬ごろに取りまとめる見通し。背景には、看護人材確保を巡る状況の悪化がある。厚労省の調査では、3年制看護専門学校の2025年度入学者は2万868人で、定員充足率は79.5%と初めて8割を下回った。2017年度をピークに減少傾向が続いており、大学入学者は増えているものの、専門学校と大学を合わせた入学者総数も5年連続で減少している。専門学校卒業生は地元就職率が高いとされ、地方の看護師確保への影響が懸念されている。実際、地域では養成基盤の縮小が進む。埼玉県では看護専門学校44校のうち少なくとも7校が募集停止を表明し、少子化や志願者減、4年制大学志向の強まりが経営難に拍車をかけている。人口10万人当たり看護師数が全国最下位の同県では、地域医療への影響に強い危機感が広がる。秩父地域では唯一の看護師養成校の存続も不透明となっている。厚労省の検討会では、若年人口減少に加え、現在の就業者の多くを占める45歳以上が2040年には高齢化することを踏まえ、退職増や高年齢者就業も見込んだ推計を行う。加えて、訪問看護の深刻な人手不足や領域偏在、ICT活用による業務効率化、育児・介護との両立支援、ハラスメント対策など勤務環境の改善も主要な論点となる。看護師不足は、単なる人数の問題ではなく、地域偏在、領域偏在、養成基盤の弱体化が重なった構造的な問題として対策が求められている。 参考 1) 第1回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会:資料(厚労省) 2) 看護専門学校の入学者、定員比で初めて8割下回る…学生離れ進み地方で不足との指摘も(読売新聞) 3) 看護職員の40年ごろの需給を地域別に推計へ 厚労省、養成・確保対策の検討会が初会合(CB news) 4) 埼玉県内の看護専門学校 本年度以降、7校が学生募集停止 志願者減少で経営難(東京新聞)

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英語で「感染性胃腸炎」、患者に説明するには?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第57回

医学用語紹介:感染性胃腸炎 infectious gastroenteritis「感染性胃腸炎」を表す医学用語はinfectious gastroenteritisですが、患者さんに説明するときは、どのように伝えたらよいでしょうか?講師紹介

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4月9日 子宮頸がんを予防する日【今日は何の日?】

【4月9日 子宮頸がんを予防する日】〔由来〕「し(4)きゅう(9)」(子宮)の語呂合わせから、「子宮頸がん」予防の啓発活動を行っている「子宮頸がんを考える市民の会」(東京)が制定。この日を中心に「子宮頸がん」についてのセミナーなどを開催している。関連コンテンツ乳がんと婦人科がん、診断の多い年齢層と検診内容【患者説明用スライド】4価HPVワクチン、浸潤性子宮頸がんリスクを長期抑制/BMJ月経血によるHPV検査、子宮頸がん検診に有望/BMJ女性のがん、39ヵ国の診断時期・治療を比較/LancetHPVワクチンのHPV16/HPV18感染予防効果、1回接種vs.2回接種/NEJM

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子どものこころの診療-小児科医が挑む子どものこころの臨床

「子どものこころ」の問題に小児科医、精神科医が連携して挑む「小児診療 Knowledge & Skill」第4巻「子どものこころ」の問題は社会状況の変化に伴い、年々その重要性が高まっている。小児科外来では「こころ」の健康に関する臨床機会が増加しているが、「こころ」の診療は専門性が高く多岐にわたる知識と技術が求められる。小児科、精神科の連携は必須であり、本書は「子どものこころ」の臨床に携わる小児科医と精神科医のエキスパートによる、それぞれの専門性を活かした最新の知見を詳解。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する子どものこころの診療-小児科医が挑む子どものこころの臨床定価8,800円(税込)判型B5判(並製)頁数320頁発行2026年3月総編集加藤 元博(東京大学)専門編集田中 恭子(順天堂大学)共同編集者岡田 俊(奈良県立医科大学)/金生 由紀子(全国療育相談センター)/石﨑 優子(関西医科大学)/永光 信一郎(福岡大学)ご購入はこちらご購入はこちら

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年収2,000万円以上の割合は? 地域・診療科による違いは?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2026年3月に会員医師1,000人(男性883人、女性117人)を対象として「年収に関するアンケート」を実施した。その結果、1,000万~2,000万円の割合は58.0%、2,000万円以上の割合は24.0%であり、8割超が1,000万円以上であった。最も多い年収帯は2,000万~2,500万円 全体で最も多い年収帯は2,000万~2,500万円(全体の13.7%)で、次点が1,400万~1,600万円(13.3%)であった。2016年に実施した調査結果と比較すると、1,000万円以下、1,000万~2,000万円、2,000万円以上の割合は、2016年がそれぞれ21.2%、58.8%、20.0%であったのに対し、2026年がそれぞれ18.0%、58.0%、24.0%であり、やや年収の上昇傾向がみられたが、大きな変化はなかった。 年代別にみると、46~55歳、56~65歳のうち2,000万円以上と回答した割合は、いずれも35.0%となった。35歳以下で1,000万円以上の割合は75.0%であった。2,000万円以上は男性26.0%、女性8.5% 男女別にみると、昨年度の年収が1,000万円以上と回答した割合は男性が84.4%であったのに対し、女性は63.2%であった。2,000万円以上に絞ると、それぞれ26.0%、8.5%であった。地域別の傾向は? 地域別にみた昨年度の年収が2,000万円以上の割合は、以下のとおり。・北海道・東北(113人):31.0%・関東(298人):24.8%・中部(161人):24.8%・近畿(214人):23.8%・中国(61人):18.0%・四国(34人):11.8%・九州・沖縄(119人):21.0%診療科別の傾向は? 診療科別にみた昨年度の年収が2,000万円以上の割合は、以下のとおり(30人以上の回答が得られた診療科を抜粋)。・脳神経外科(37人):40.5%・循環器内科(67人):38.8%・消化器外科(34人):32.4%・精神科(78人):29.5%・消化器内科(53人):28.3%・放射線科(32人):28.1%・整形外科(55人):23.6%・神経内科(30人):23.3%・内科(197人):21.8%・呼吸器内科(34人):20.6%・糖尿病・代謝・内分泌科(31人):16.1%・小児科(52人):11.5% その他、詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2026【第1回】昨年度の年収

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第289回 在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省

<先週の動き> 1.在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省 2.医療事故調査制度の地域差なお顕著 報告の質と迅速性向上が課題/医療安全調査機構 3.再生医療の安全管理に警鐘 死亡事例と法令違反受け制度見直しへ/厚労省 4.汚職対応に第三者委員会が厳しい報告 「自浄作用の放棄」と批判/東大 5.胸部CTで肺がん見落とし死亡 37mm腫瘤見逃しで医療事故/神戸市立医療センター 6.医師による性犯罪相次ぐ 実刑判決を受け行政処分の遅れに厳しい視線 1.在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省厚生労働省は3月31日に、先日公表した2026年度の診療報酬改定について、疑義解釈(その2)で在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の往診体制に関する施設基準を大幅に明確化し、とくに往診代行サービスの利用に厳しい要件を課すことを明らかにした。厚労省は、24時間往診体制を第三者サービスに依存する場合でも、患者への説明責任と医療の継続性確保を重視し、「体制内医師」であることを厳格に求める姿勢を示した。具体的には、往診担当医の氏名および担当日を患者・家族に文書で事前提示することが必須とされ、氏名の非開示は認められない。また、当該医療機関と雇用契約のない医師を往診担当医として記載することも不可とされた。さらに、やむを得ず事前に氏名を提示していない医師が往診を行う場合であっても、往診前日までに当該医療機関を訪問し、常勤医と対面で面談を行い、診療方針や患者情報を共有していることが条件となる。オンラインでの情報共有のみでは要件を満たさない点も重要である。共有すべき内容としては「患者の最新の病状や急変リスク」「今後の診療方針、緊急時の入院先や地域医療体制」「医療機関内の電子カルテや医療資材の運用方法」など、実務レベルまで具体的に示された。これにより、形式的な雇用契約のみでは要件を満たさず、対面での面談や診療方針の共有も必要となっている。従来の往診代行サービスは、外部医師のスポット対応や業務委託契約を前提とするモデルが多く、「誰が来るかわからない」体制でも運用されてきた。しかし、今回の解釈では、こうした外部プール型の仕組みは原則として施設基準を満たさない可能性が高く、実質的に継続困難とみられる。対応策としては、非常勤を含めた雇用契約の締結、連携医療機関としての正式な組み込み、自院内での当直体制強化などが挙げられるが、いずれも人的コストの増加は避けられない。今回の見直しは、責任の所在の明確化や医療の質担保という点では合理性を持つ一方で、小規模な在宅療養支援診療所にとっては24時間体制維持のハードルが一段と高まり、在宅医療提供体制の再編を促す可能性がある。制度上は在宅医療の推進が掲げられてきた中で、実運用面では「外注依存から体制内完結へ」の転換が強く求められる局面に入ったといえる。 参考 1) 疑義解釈資料の送付について(その2)(厚労省) 2) 在支診・在支病の施設基準、往診代行を使う場合は常勤医との対面での面談が必須に(日経メディカル) 2.医療事故調査制度の地域差なお顕著 報告の質と迅速性向上が課題/医療安全調査機構日本医療安全調査機構が公表した2025年年報によると、医療事故調査制度が始まった2015年10月~2025年末までの累計報告件数は3,633件に達し、このうち88.9%で院内調査が完了した。2025年単年では375件、月平均31件超で、前年よりやや増加した。都道府県別の人口100万人当たり報告件数は全国平均2.9件で、大分県と京都府がともに4.9件で最多、続いて三重県4.6件、宮崎県4.5件だった。その一方で、福井県1.1件、埼玉県1.6件、和歌山県1.7件など低い地域もあり、地域差が続いている。ただし、報告件数の多寡は直ちに医療安全水準を示すものではなく、報告文化や制度理解の差を反映している可能性がある。事故の起因となった医療内容では、分娩を含む手術が158件で全体の43.9%を占め、依然として最大の割合を占めた。処置は39件、10.8%だった。有床診療所では事故の起因となった医療内容の75.7%が手術関連で、帝王切開を含む分娩が多い点が目立った。手術の内訳では、経皮的血管内手術、内視鏡下手術、開腹手術が上位を占めた。事故発生から院内調査結果報告までの平均期間は494.4日で、前年より延びた。発生から報告まで100.1日、報告から院内調査結果報告まで394.3日で、迅速化にはなお課題が残る。2025年に完了した院内調査は360件で、累計3,230件となり、コロナ禍前の水準に戻りつつある。外部委員の参加は81.4%、解剖・死亡時画像診断(Ai)実施は49.4%だったが、いずれも前年より低下した。2026年4月からは制度見直しにより、医療事故判断プロセスの記録保存、管理者らの研修受講、遺族申し出への組織的対応などが求められる。報告の質と調査の透明性を高め、再発防止に結びつける運用強化が、今後の医療安全の焦点となる。 参考 1) 医療事故調査・支援センター 2025年 年報(日本医療安全調査機構) 2) 2025年の「人口100万人あたり医療事故報告件数」最多は大分と京都、手術・分娩関連の死亡事故が依然多い-日本医療安全調査機構(Gem Med) 3.再生医療の安全管理に警鐘 死亡事例と法令違反受け制度見直しへ/厚労省自由診療で行われる再生医療を巡り、死亡事例や法令違反が相次いでいる。厚生労働省の資料では、2025年8月に都内クリニックで自己脂肪由来間葉系幹細胞の投与中に患者が急変し死亡した事案を受け、提供の一時停止命令や立入検査を実施し、製造施設には改善命令を出した。提供医療機関側でも、救急体制の不備、適切な救急措置の未実施、原因究明に必要な投与残余物の廃棄などが課題として示された。別の都内のクリニックでも、計画に記載のない医師や医薬品・試薬による実施、未届出疾患への提供、疾病など報告の未実施などが確認され、改善命令が出されている。問題の背景には、自由診療の再生医療が「認定再生医療等委員会の審査・届出を経ている」ことで、患者側に国が有効性や安全性を評価したかのような誤認が生じやすい構造がある。厚労省の見直し資料も、美容やがん治療などで妥当性が明確でない再生医療が増え、健康被害や信頼性低下のリスクが顕在化していると整理している。日本再生医療学会も2026年3月に「科学的根拠が不十分な自由診療の拡大は深刻な課題だ」と表明している。厚労省は今後、再生医療等安全性確保法の見直しに向け、リスク分類の再検討、自由診療の妥当性評価、提供医師・医療機関の適格性確保、認定委員会の審査の質向上、患者フォローアップや監査体制の強化、国民へのわかりやすい情報提供などを検討する。医師にとっては、自由診療であっても「届出済み」では十分ではなく、科学的妥当性、救急対応、合併症発生時の検体保全、説明責任まで含めた実施体制が厳しく問われる局面に入った。 参考 1) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく行政処分等について(厚労省) 2) 再生医療等安全性確保法の見直しに関する今後の検討方法について(同) 3) 「再生医療」事故や違反相次ぐ 自由診療、安全性に課題 厚労省、制度見直しへ(時事通信) 4.汚職対応に第三者委員会が厳しい報告 「自浄作用の放棄」と批判/東大東京大学医学部・附属病院を巡る一連の汚職事件について、第三者のプロセス検証委員会は4月3日、大学側の対応を「組織の自浄作用と説明責任の放棄」と厳しく批判する報告書を公表した。問題の中心となったのは、内部通報があったにもかかわらず、警察の捜査を理由に学内調査を約7ヵ月間事実上停止した対応で、委員会は「真相究明を警察に委ねる姿勢は、『大学の自治』を自ら毀損する危うさをはらむ」と指摘した。報告書は、東大本部の初動の遅れに加え、総長を含む執行部の危機意識の不足、部局や研究室が互いに干渉しない組織風土、重要会議で議事録を残さないなど運営プロセスの軽視を根本要因に挙げた。また、「東大は悪いことをしない」という無謬性への思い込みと、不祥事が大学全体に及ぼす影響を十分に想像できない体質が、対応の後手を招いたと分析している。そのうえで委員会は、外部第三者による継続的なモニタリング、内部監査・監事監査・会計監査の連携強化、最高リスク責任者(CRO)の配置、対内外コミュニケーションの活性化、教員懲戒制度の迅速化と抜本的見直しの5点を提言した。東大では報告書を受け、近日中に改革策を示すとしている。今回の報告は、医学部に限らず大学全体のガバナンス不全を問う内容であり、東大の信頼回復には、再発防止策だけでなく、自浄能力を備えた組織文化への転換が不可欠だといえる。 参考 1) プロセス検証委員会報告書について(東大) 2) 東大汚職事件めぐり第三者委員会が調査結果を公表(NHK) 3) 東大収賄事件「総長の危機意識不足」、第三者委が報告 初動も問題視(朝日新聞) 4) 東京大院汚職「組織の自浄作用発揮できず」 検証委が報告書(日経新聞) 5.胸部CTで肺がん見落とし死亡 37mm腫瘤見逃しで医療事故/神戸市立医療センター神戸市立医療センター西市民病院で、CT画像に写っていた肺がんを見落とした医療事故が発生し、70代女性患者が死亡した。同院によると、女性は2024年5月、階段からの転落による外傷評価のため整形外科を受診し、CT検査を実施。画像には右肺に最大約37mmの腫瘤影が認められていたが、放射線科医がこれを指摘せず、整形外科医側でも十分な確認が行われなかった。その後、女性は2025年10月に呼吸困難と大量胸水で再受診し、精査の結果、同部位に肺がんが判明。すでにステージIVまで進行しており、手術による根治は困難な状態だった。化学療法が行われたものの全身状態が悪化し、同年12月に死亡した。初回CT画像の再検証により見落としが明らかとなった。病院は今回の事案について過失を認め、遺族に謝罪。補償については現在検討中としている。見落としの背景として、外傷評価が主目的であったため肺野の読影が不十分であったこと、ならびに読影結果の共有・確認体制の不備があったと説明している。再発防止策として、放射線科医と各診療科医師によるダブルチェックの徹底、ならびにAI読影支援ソフトの活用強化を掲げた。今回の事例は、偶発的に撮影された画像所見であっても全身的な異常の見落としを防ぐ体制の重要性を示すものであり、読影責任の所在や多職種間の情報共有の在り方が改めて問われる結果となった。 参考 1) CT画像で肺がん見落とし70代の女性患者死亡 神戸市立・西市民病院、遺族に謝罪(産経新聞) 2) CT検査で肺がん見落とし70代女性死亡 神戸市立病院で医療事故(朝日新聞) 3) 神戸市立医療センター西市民病院で医療事故 外傷診断目的で受診・70代女性患者のCT撮影した際に放射線科医が『がん』見落とす 女性患者はがんが進行して死亡(FNNプライムオンライン) 6.医師による性犯罪相次ぐ 実刑判決を受け行政処分の遅れに厳しい視線美容外科医が麻酔や睡眠薬を悪用し、無抵抗状態にした女性患者や職員らに対して長期間にわたり性的暴行を繰り返していた事件で、東京地裁は被告人の男性医師に懲役25年の実刑判決を言い渡した。犯行は約9年間に及び、被害者は21人、うち未成年が4人、最年少は9歳と極めて重大である。患者の多くは手術中や処置後の麻酔下にあり、医療行為そのものが加害の機会として利用されていた点が特徴。また、同一被害者に対する複数回の加害行為や、犯行の様子を撮影するなど、計画性と執拗性も認定された。判決は、医師という立場を利用した「悪質で卑劣な犯行」と断じ、常習性と規範意識の著しい欠如を強く非難している。求刑27年に対し25年の量刑となったが、被害の規模と内容から極めて重い判断といえる。被告は起訴事実を認めつつも量刑不当として控訴している。本件は、医療機関という本来安全であるべき場において、患者の身体的・心理的脆弱性が悪用された点で社会的衝撃が大きい。加えて、捜査段階から余罪の可能性も指摘されており、押収された記録媒体には他の被害をうかがわせる映像が含まれていたとされる。事件の実態は、判決で認定された範囲をなお上回る可能性がある。さらに、別の精神科医による患者への不同意性交事件も発覚しており、診察後に施錠された空間で逃げ場を奪われた状況での犯行が疑われている。この医師は過去の逮捕・有罪事案を経ても、診療を継続していたことが明らかとなり、行政処分の遅れに対する制度的問題も浮上している。一連の事件を受け、世論は極めて厳しく、「医師免許制度は機能しているのか」「なぜ再犯を防げなかったのか」といった批判が噴出している。とくに、刑事罰や行政処分が抑止力として十分に機能していない実態に対し、制度の見直しを求める声が強まっている。医療は患者の信頼の上に成り立つが、その信頼を根底から覆す行為が繰り返されたことは、医療界全体の倫理と統治の在り方を問い直す事案となっている。 参考 1) 美容外科医が麻酔で無抵抗の女性患者らに性犯罪、9歳児含む21人が被害…「悪質で卑劣な犯行」懲役25年判決(読売新聞) 2) 女性にわいせつ行為容疑、医師を逮捕 10人以上の被害状況を撮影か(朝日新聞) 3) 「まだ診察ある」経営する心療内科で20代女性患者に不同意性交 容疑で医師の男を逮捕(産経新聞) 4) 患者の女性を閉じ込め不同意性交か 歌舞伎町の精神科医を逮捕(毎日新聞) 5) 新宿・歌舞伎町“有名精神科医”が不同意性交の疑いで7回目の逮捕…20年にわたり犯罪を繰り返してきた激ヤバ医師の「数々の悪行」(現代ビジネス) 6) なぜ6回逮捕でも医師免許は剥奪されないのか…女性患者を襲い続けた歌舞伎町の精神科医を守る「歪んだ制度」の正体(同)

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第307回 2026年4月より定期接種に加わったワクチンは?

INDEX妊婦の7割、「無料であれば接種をする」イレギュラーな定期接種ワクチン妊婦の7割、「無料であれば接種をする」4月1日から2026年度がスタートした。フリーランスの私にとって3月31日と4月1日は、単なる1日違い以上の意味はないのだが、世の中はそうではない。医療業界もこの日を境にいろいろと変わることがある。その1つがワクチンの定期接種である。2026年4月1日から妊婦に対するRSウイルスワクチン接種が予防接種法に基づくA類疾病として定期接種に加わった。これまでは任意接種だったため、約3~4万円の自己負担が必要だったが、これが原則無料となる。国立成育医療研究センターのグループが2024年7月〜2025年8月に出産した1,279例の女性を対象としたオンライン全国調査では、妊娠中のRSウイルスワクチン接種率は約11.6%(95%信頼区間[CI]:9.8〜13.3%)。同ワクチンを公費負担で接種できる米国や英国の接種率の約30〜50%と比べれば、かなり低い水準である。同調査では未接種者にその理由を尋ねているが、「予防効果を知らなかった」(28.9%)、「ワクチンの存在を知らなかった」(27.3%)、「自費での支払額が高過ぎる」(18.7%)など。このうち77.5%は「無料であれば接種をする」と回答したことも明らかになっている。また、接種した人でも接種費用について「やや高い」または「とても高い」と回答した人は87.2%に上っており、やはり高額なワクチン接種費用は接種率向上の大きなハードルになっていることは確実と言ってよい。今後は少なくとも前出の11.6%よりは接種率が高くなると考えられる。もっともこの調査で未接種であった人の15.0%が、「無料でも受けたくない」と回答していることのほうが大きな問題かもしれない。イレギュラーな定期接種ワクチンそもそも今回のRSウイルスワクチン自体が既存の定期接種ワクチンの中では異質である。接種対象者が単なる健常者ではなく妊婦限定であることに加え、接種した妊婦の体内で産生された抗体が胎盤を通じて胎児に移行し、出生直後の乳児のRSウイルス感染を防御するというやや分かりにくいものだからだ。少なからぬ人が経験しているだろうが、妊娠期間中の女性は自身だけでなく胎児の健康を慮るあまり、体内に入る薬や食品などには、平時以上に神経質になりがちである。その意味ではVaccines誌に掲載されたサハラ以南で行われた妊婦の新型コロナウイルスワクチンに関する研究1)が興味深い。同研究はアフリカのサハラ以南というやや特殊な地域で行われ、例数も少ないが、妊婦と非妊婦の年齢マッチングを行ったうえでの研究である。それによると妊婦は非妊婦に比べ有意にワクチンを受ける可能性が低いことがわかっている(オッズ比[OR]:0.12、95%信頼区間[CI]:0.06~0.27、p<0.001)。また、学歴が低いほど接種率が有意に高く(OR:0.04、95%CI:0.01~0.18、p<0.001)、一時“流行”した新型コロナワクチンにマイクロチップが含まれているという誤情報を信じる人ほどワクチン接種率が有意に低いという結果だ(OR:3.63、95%CI:1.12~11.79、p=0.032)。一瞬、これを読むと頭が混乱するかもしれないが、ここはやや補足が必要だ。まず、この研究では、いわゆる高学歴は被験者全体の92.6%を占め、低学歴者の割合は極端に低い。このため学歴による有意差は表面的な結果と受け止められる。また、たとえば新型コロナワクチンがDNAに変化を与えるという誤情報を信じる割合は、妊婦が79.6%、非妊婦が76.6%で有意差はない。むしろシンプルに妊婦のほうが非妊婦に比べ、何事も慎重になりやすい、考え過ぎるゆえにワクチンに対しても忌避傾向がみられることを示唆していると解釈したほうがいいだろう。一方、ワクチン接種については従来から医療者による推奨などが接種率に大きな影響を与えることが知られている。米国疾病予防管理センター(CDC)の「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」2023年9月29日号に掲載された妊婦に関するワクチン接種に関する調査結果2)では、2022年10月~2023年1月の間に妊娠していたと報告した1,814人の女性でのインフルエンザワクチン接種率は47.2%(95%CI:44.4~50.1)に過ぎなかったが、医師による推奨があり、その場で接種が可能だったケースでの接種率は61.4%(同:58.0~64.7)。これに対し、推奨のみでは22.7%(同:15.0~32.0)、推奨なしでは10.8%(同:7.5~14.9)で、各群間では有意差(p<0.05)が認められたとしている。その意味で新たに定期接種に加わったRSウイルスワクチンの接種率向上については、限られた診療時間内で医療者がどのように妊婦に情報提供できるかにかかっているともいえる。もちろんこの点を医療者側も重々承知しているであろうことは、日本産婦人科医会のホームページ3)にRSウイルスワクチン接種に関する医師・患者向け資材が掲載されていることからもうかがい知れる。同時に私たちメディアにもそうした責任は向けられているのだと、新年度を迎え、心新たにもしている。1)Amiebenomo OM, et al. Vaccines (Basel). 2023;11:484.2)Razzaghi H, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2023;39:1065-1071.3)日本産婦人科医会:RSウイルスに関するご案内

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新生児のフェニルケトン尿症に対応する治療薬発売/PTCセラピューティクス

 PTCセラピューティクスは、フェニルケトン尿症(PKU)の治療薬セピアプテリン(商品名:セピエンス)顆粒分包を2026年3月18日に発売した。 PKUは、まれに起こる先天性代謝異常疾患であり、フェニルアラニン(Phe)と呼ばれる必須アミノ酸を分解できないことが特徴で、神経学的症状やその他の症状を引き起こす。未治療や管理が不十分な状態が続き、Pheが体内に有害なレベルまで蓄積した結果、長年にわたり知的障害、痙攣発作、発達遅延、認知能力低下、行動および感情の問題など、重度かつ不可逆的な障害が生じる。現在、新生児ではスクリーニングで診断が行われており、世界中で約5万8,000人の患者が推定されている。 セピアプテリンは、フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)のきわめて重要な補酵素であるBH4の天然前駆体であり、その作用機序により、Phe濃度を効果的に低下させることで、幅広くPKU患者の治療ができることが期待されている。<製品概要>一般名:セピアプテリン販売名:セピエンス顆粒分包 250/1,000mg効能又は効果:フェニルケトン尿症効能又は効果に関連する注意:BH4欠損症に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない用法及び用量又は使用方法:通常、セピアプテリンとして、以下の用量(省略)を1日1回食後又は食事とともに経口投与する。なお、忍容性が認められない場合、6ヵ月以上2歳未満では1日7.5mg/kgまで、2歳以上では1日20mg/kgまでの範囲で適宜減量すること。承認日:2025年12月22日発売開始日:2026年3月18日薬価:セピエンス顆粒分包 250mg 1万6,989.4円/包セピエンス顆粒分包 1,000mg 6万7,957.1円/包製造販売元:PTCセラピューティクス株式会社

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初の人乳由来母乳強化剤が承認、超早産児の栄養管理に新たな選択肢/クリニジェン

 2026年3月18日、「極低出生体重児等の体重増加不全を呈する新生児及び乳児の栄養管理」を効能又は効果とする、プリミーフォート経腸用液が薬価収載され、2026年4月下旬の発売が予定されている。プリミーフォート経腸用液は、極低出生体重児等の栄養管理を目的とした人乳由来母乳強化剤の医薬品として、本邦で承認された初めての製品となる。クリニジェンは同日「超早産児の新しい栄養管理とNICUの未来~本邦初の完全人乳栄養による経腸栄養の可能性~」と題したメディアセミナーを開催。水野 克己氏(昭和医科大学小児科学講座)が登壇し、超早産児の栄養管理の考え方と同製品の役割について解説した。早産児栄養管理戦略の変遷と人乳由来母乳強化剤の位置付け 超早産児に対する母乳は、量依存性に壊死性腸炎、後天性敗血症、慢性肺疾患、未熟児網膜症、神経発達異常などの罹患率・重症度の低下、NICU退院後の再入院リスクの低下と関連することが報告されており1,2)、母親の母乳が児にとって最適なことは疑う余地がない。しかし、母乳が得られるまで静脈栄養のみを続けることは、腸管粘膜の萎縮や炎症、感染症のリスクとなる3)。一方で、いつでも使用できる人工乳は、腸管透過性、腸管粘膜の炎症、腸内細菌叢の問題から慎重な使用が求められる4)。 こうした背景を踏まえ、2019年、日本小児医療保健協議会(日本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児科医会、日本小児期外科系関連学会協議会)は、自母乳が得られるまで絶食とするNICU施設が散見される、生後早期からの経腸栄養開始による短期予後の改善が報告されているなどとして、「早産・極低出生体重児の経腸栄養に関する提言」5)において、以下の3項目を提言として発表した:1.早産・極低出生体重児にとって自母乳は最適な栄養であり、NICUにおいても母乳育児を推奨し支援すべきである。2.自母乳が不足する場合や得られない場合、次の選択肢は認可された母乳バンクで低温殺菌されたドナーミルクである。3.将来的には、母乳と人乳由来の母乳強化で栄養するEHMD(完全人乳由来栄養[Exclusive Human Milk Diet])が早産・極低出生体重児に与えられることが望ましい。 提言3で将来的な実現が期待されていたEHMDが、今回初めて承認・発売に至った形となる。母乳強化が必要な理由 胎児において、脳の成長スパートは妊娠28週ころから始まり、おおよそ2歳まで続く6)。水野氏は、「23週と39週では、脳の発達状況に大きな差がある。単に生存退院を目指すのではなく、可能な限り正期産児に近い発達状態での退院を目指すべきである」として、早産児における適切な栄養介入の重要性を指摘した。 母乳強化による効果については、いくつかエビデンスが報告されている。超低出生体重児における母乳栄養下での十分なタンパク強化により、頭囲成長や2歳時の神経発達予後が改善し、静脈栄養期間および入院期間が短縮したという報告7)や、極低出生体重児にEHMDを与えることで網膜症や敗血症、慢性肺疾患が減少したという報告がある8)。 現在、本邦で販売されているのは牛乳由来強化物質のみで、牛乳アレルギーのリスクがあるほか、結石が形成された症例が報告されている。水野氏は、EHMDがとくに必要と考えられるケースとして、消化管手術後の超早産児を挙げた。また、実際の症例として、胎便関連性腸閉塞と高インスリン性低血糖を有する症例で、EHMDを与えることにより体重増加のほか低血糖の改善もみられた症例を提示し、その臨床的有用性について言及した。プリミーフォートの有効性と安全性を評価した第III相試験の結果 JASMINE(JApanese Study of an Exclusive Human MIlk Diet in Premature Neonates)試験9)は、極低出生体重児を対象としたEHMDにおける成長および安全性評価のための多施設共同無作為化比較対照試験。新生児集中治療室に入室している極低出生体重児147例を対象に、EHMD群(プリミーフォートを母乳またはドナーミルクに添加)と標準栄養群(母乳、ドナーミルク、牛乳由来の人工乳および栄養強化剤を使用)の成長速度を比較した。主な結果は以下のとおり。・試験参加者の背景は両群でおおむね同様であったが、在胎期間22~25週で出生した新生児割合は、標準栄養群27.1%に比べ、EHMD群では36.4%と多かった。・主要評価項目である出生から在胎34週0日までの体重増加速度は、標準栄養群に対しEHMD群で有意に速かった(11.96g/kg/日vs.13.44g/kg/日、p=0.0063)。・副次評価項目である出生から経腸栄養確立(160mL/kg/日)までの日数はEHMD群で有意に短く(25.90日vs.20.00日、p=0.03)、身長増加速度(0.67cm/週vs.0.83cm/週、p=0.0016)および頭囲増加速度(0.58cm/週vs.0.66cm/週、p=0.0312)はEHMD群で有意に速かった。・発現頻度の高かった試験治療下における有害事象(TEAE)は感染症で、標準栄養群8.6%、EHMD群10.4%に認められたが、「母乳強化物質との因果関係はなし」と判断された。・重篤な有害事象および死亡に至ったTEAEはそれぞれ標準栄養群2.9%、EHMD群3.9%に認められたが、「母乳強化物質との因果関係はなし」と判断された。・EHMD群で試験中止に至ったTEAEのうち、「母乳強化物質との因果関係あり」とされたのは、胃腸障害関連のTEAE(2例、うち1例が重度)、130mL/kg/日の栄養不耐症(1例)であった。<製品概要>・販売名:プリミーフォート経腸用液6、8、CF・効能又は効果:極低出生体重児等の体重増加不全を呈する新生児及び乳児の栄養管理・用法及び用量: 本剤を電子添文の表のとおり母乳と混合して強化乳を調製し、経管又は経口投与する。通常、「強化乳6」を50mL/kg/日から投与開始し、徐々に投与量を増やし、100mL/kg/日に到達後は必要に応じて強化乳の切替えを行う。栄養補給量は160mL/kg/日まで継続的に漸増する。また、必要に応じて160mL/kg/日より増量することもできる。なお、強化乳の投与開始時期、投与経路及び投与速度は、児の在胎期間、体重、症状、栄養状態等を考慮して決定する。また、強化乳の増量及び切替えは、体重増加速度、在胎期間、子宮内発育遅延の有無、補給時間、水分制限の要否、タンパク質及びエネルギーの必要量等を考慮して行う。・薬価:プリミーフォート経腸用液6(15mL1瓶29,171.30円、30mL1瓶58,199.30円)、8(40mL1瓶77,580.50円)、CF(10mL1瓶14,079.50円)・製造販売承認日:2025年12月22日・薬価基準収載日:2026年3月18日・発売日:2026年4月下旬・製造販売元:クリニジェン株式会社■参考文献・参考サイトはこちら1)Meier PP. Nestle Nutr Inst Workshop Ser. 2019;90:163-174.2)Quitadamo PA, et al. Foods. 2024;13:649.3)Quiroz-Olguin G, et al. Eur J Clin Nutr. 2021;75:1533-1539.4)Rao K, et al. Front Pediatr. 2022;10:902798.5)水野克己ほか. 日本小児科学会雑誌. 2019;123:11086)Dobbing J. Am J Dis Child. 1970;120:411-415.7)Mariani E, et al. Front Public Health. 2018;6:272.8)Assad M, et al. J Perinatol. 2016;36:216-220.9)JASMINE試験(JRCT)

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第288回 患者減少が迫る構造転換、小児医療は県境越えて連携へ/厚労省

<先週の動き> 1.患者減少が迫る構造転換、小児医療は県境越えて連携へ/厚労省 2.新たな地域医療構想、2040年を見据えて急性期集約と外来偏在対策を加速/厚労省 3.人材紹介料が医療経営を圧迫 厚労省に上限規制を要請/日医・四病協 4.紹介状が「全国で閲覧可能」に 医療・介護連携DXを加速/厚労省 5.原油高が医療崩壊リスクに 資材不足と経営悪化で緊急要望/保団連 6.手術中に麻酔科医が不在30分 薬剤抜き取り・自己使用で懲戒免職/川崎市 1.患者減少が迫る構造転換、小児医療は県境越えて連携へ/厚労省厚生労働省は、3月26日に「小児がん拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」を開き、少子化と専門医不足のため、小児医療の提供体制を都道府県単位から広域連携へ転換する方針を明らかにした。小児の集中治療や心臓手術など高度医療は症例減少により各都道府県単独での維持が困難となっており、県外搬送や遠隔相談を前提とした体制整備、財政支援、将来的な集約化を検討する。これらの政策は第9次医療計画への反映が見込まれ、医師不足地域では他科医との連携やオンライン診療、小児科医派遣による維持策も示された。小児がん領域でも体制見直しが進む。高度治療や研究開発を担う拠点病院は集約化しつつ、全都道府県に標準治療を提供する「県拠点病院」を新設、さらに連携医療機関を整備する三層構造へ再編する。症例数減少と分散、ドラッグ・ラグ、アクセス格差が背景にあり、質とアクセスの両立を図る。2027年から新体制が開始される予定。その一方で、人口減少は医療提供体制全体に影響を及ぼす構造問題として顕在化しており、人口減少問題を議論する「未来を選択する会議」の白書では社会保障費増大やインフラ維持への危機感が8割超に達し、出生減少の要因として経済負担や性別役割意識の影響が指摘された。人口減少は、地域差・世代差を伴いながらも全国各地で進行しており、医療政策も広域化・集約化とともに社会制度改革と不可分の課題となっている。 参考 1) 小児がん拠点病院等について(厚労省) 2) 今後の小児がん拠点病院等の指定の考え方について(同) 3) 小児医療、県またぎ連携 厚労省、心臓手術など 少子化や専門医不足で(日経新聞) 4) 小児がん診療体制を大きく見直し、「拠点病院の集約化」とともに「全都道府県に県拠点病院を指定」へ-小児がん拠点病院指定要件WG(Gem Med) 5) 人口減少問題 有識者団体が報告書 “社会経済全般の改革必要”(NHK) 6) 人口減に50歳以上の7割が「危機感」、未来選択会議が初の「人口問題白書」…少子化対策のヒントも(読売新聞) 7) 民間組織「未来を選択する会議」が人口問題白書を発行、人口減見据え(朝日新聞) 8) 人口問題白書2025(未来を選択する会議) 2.新たな地域医療構想、2040年を見据えて急性期集約と外来偏在対策を加速/厚労省厚生労働省は、3月26日に社会保障審議会医療部会を開き、2040年を見据えた新たな地域医療構想のガイドラインを4月中に公表し、都道府県は2026~28年度に新構想を策定することを明らかにした。構想区域は「人口20万人以上」を基本としつつ、地域の実情に応じ柔軟に設定。区域内では医療機関の機能分担や病床再編を協議し、急性期拠点機能は人口20~30万人に1ヵ所を目安に集約化を進める方向である。社会保障審議会での議論では、ガイドラインはあくまで参考とし、地域実情を優先すべきとの意見や、老朽病院の建て替え支援、都道府県への技術的・財政的支援を求める声が相次いだ。あわせて外来医師偏在対策も具体化し、外来医師過多区域で2026年10月以降に新設される無床診療所について、地域で不足する医療機能の提供状況や要請・勧告の有無を「医療情報ネット(ナビイ)」で公表する方針が了承された。スマホ対応マイナ保険証、RSウイルスワクチン、指定難病対応などの情報も追加される。その一方で、「要請・勧告といったネガティブ情報の公開は制度趣旨とずれる」「不公平を生む」との慎重論も出た。医療機関の定期報告率は全国平均72.4%だが、都道府県差が大きく、入力負担軽減と周知徹底が課題とされた。今後、オンライン診療受診施設の広告規制や不適切広告対策の強化も進められ、外来・在宅・介護連携まで含めた医療提供体制の再構築が本格化する。 参考 1) 地域医療構想及び医療計画等に関する検討会とりまとめについて(厚労省) 2) 地域医療構想「人口20万人以上」 40年見据えガイドライン骨子 厚労省(時事通信) 3) 新地域医療構想等のガイドライン、医療部会意見も踏まえて「2026年4月中」に作成・公表、急性期機能等の集約化を地域で推進(Gem Med) 4) 地域医療構想策定ガイドラインは4月に 社保審・医療部会(CB news) 5) 全国の医療機関情報掲載する「ナビイ」に外来医師過多区域での医療機能提供などの情報も公表-医療機能情報提供制度等分科会(Gem Med) 3.人材紹介料が医療経営を圧迫 厚労省に上限規制を要請/日医・四病協3月24日に日本医師会と四病院団体協議会は、医療・介護分野の人材紹介サービスの適正化に向け、紹介手数料の上限規制導入や返戻金制度の義務化を求める要望書を上野 賢一郎厚生労働大臣に提出した。背景には、近年の人材紹介手数料の高騰と早期離職の増加があり、医療機関の経営を圧迫している実態がある。とくに紹介手数料の総額は2023年度に1,000億円を超え、その多くが公的医療保険を原資として支払われている点が問題視されている。医療機関にとっては、診療報酬が公定価格という環境で、採用コストを価格転嫁できず、地方や中小医療機関ほど影響が大きく、地域医療提供体制の持続性にも関わる課題となっている。さらに医療・介護分野では入職後6ヵ月以内の早期離職が多く、採用のたびに高額手数料が発生する構造が経営リスクを増幅させている。要望では、早期離職時の返戻金制度を義務化し、その水準を標準化することで、紹介会社にも一定の責任を負わせる仕組みを提案した。ただし、返戻期間の単純延長では離職の後ろ倒しを招く可能性もあり、実効性ある設計が必要とされる。また、離職実態の可視化として6ヵ月超1年以内の離職データ報告義務化や、求職者が紹介手数料の実額を把握できる仕組みの導入も求めた。加えて、ハローワークやナースセンターなど無料職業紹介の活用促進も提言。民間紹介への依存が進めば人材の都市部集中や地域偏在が加速する懸念がある。これら一連の提言は、単なるコスト問題にとどまらず、人材確保と医療提供体制の持続性に直結する構造課題への対応を求めるもの。厚生労働省では、まず実態把握を進める姿勢を示しており、今後の制度設計が医療経営に与える影響は大きい。 参考 1) 高額な紹介手数料、「原資は公的医療保険」と指摘 日医会長が問題視、緊急対応を要望(CB news) 2) 医療・介護の人材紹介手数料に上限規制を 医師会と病院団体、上野厚労相へ要望書(Joint) 3) 有料職業紹介事業の適正化とハローワークの機能強化に関する要望書(四病院団体協議会・日本医師会) 4) 有料職業紹介事業に関するワーキンググループ報告書~医療分野における人材確保と有料職業紹介事業等の適正化に向けた提言~(同) 4.紹介状が「全国で閲覧可能」に 医療・介護連携DXを加速/厚労省厚生労働省は、3月18日に「健康・医療・介護情報利活用検討会」の医療等情報利活用ワーキンググループと介護情報利活用ワーキンググループの合同会議を開催し、医療と介護の情報連携を強化するため、「全国医療情報プラットフォーム(PF)」を活用し、診療情報提供書や訪問看護指示書・計画書・報告書を医療・介護関係者間で共有する方針を示した。これまで医療分野では電子カルテ情報共有サービス、介護分野では介護情報基盤の整備が進められてきたが、両分野をまたぐ情報共有の具体像は整理されていなかった。今回、標準様式が存在する文書から連携を開始し、将来的にはリハビリ計画書や入退院情報などへ拡大する方向で検討を進める。電子カルテ情報共有サービスでは、診療情報提供書や退院時サマリーなどの「3文書6情報」を全国で共有できるものとし、2027年初頭の本格運用が見込まれる。その一方で、介護情報基盤も要介護認定情報やLIFEデータ、ケアプランなどの共有を2026年度から段階的に開始する予定であり、両基盤を接続することで多職種連携の高度化が期待される。背景には、高齢化の進展に伴い医療と介護の複合ニーズを持つ患者が増加している現状がある。情報連携により入退院時の引き継ぎや在宅療養支援の質向上、災害時対応の強化などが見込まれる一方で、同意取得の在り方や情報セキュリティ、介護側のICT環境整備、標準化の難しさなど課題も多い。とくに介護情報は生活背景や主観的評価を含むため、医療情報との整合性確保が重要となる。今後、合同ワーキンググループでは、詳細設計を進め、2026年夏に開発方針を取りまとめる予定。医療・介護の分断を埋める基盤整備は、地域包括ケアの実効性を左右する鍵となる。 参考 1) 「全国医療情報プラットフォーム」における医療介護連携の進め方について(厚労省) 2) 健康・医療・介護情報利活用検討会 第30回医療等情報利活用ワーキンググループ、及び第10回介護情報利活用ワーキンググループ資料について(同) 3) 医療と介護の情報共有、診療情報提供書などから 全国医療情報プラットフォームで 厚労省案(CB news) 4) 医療・介護連携を「情報面」からも進めるため、まず【診療情報提供書】【訪問看護指示書・計画書・報告書】の電子的共有を検討(Gem Med) 5.原油高が医療崩壊リスクに 資材不足と経営悪化で緊急要望/保団連中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の急騰を受け、全国保険医団体連合会(保団連)は政府に対し、医療資材の供給確保と財政支援を求める緊急要望書を提出した。背景には、イランを巡る中東情勢の悪化とホルムズ海峡の機能不全による世界的な原油供給不安があり、医療現場にも直接的な影響が及び始めている。医療用ガウンやグローブ、注射器、点滴バッグ、カテーテルなど、原油由来のプラスチック製品を中心にコスト上昇と供給不安が顕在化しており、基礎的医薬品を含めた医療資材の不足は診療継続そのものに直結するリスクとなる。加えて、在宅医療では燃料費の上昇が訪問コストを押し上げ、結果として患者負担の増加につながる可能性も指摘される。医療機関の経営面でも、光熱費や材料費の高騰が収益を圧迫しており、2026年度診療報酬改定で盛り込まれた物価対応分(+0.76%)は今回の急激な原油高を想定したものではなく、十分な対応とは言えないとの批判がある。さらに改定施行が6月である点も、足元の急激なコスト上昇への対応としては遅いとされる。こうした状況を踏まえ、保団連は医療資材および基礎的医薬品の国内在庫確保と安定供給、診療報酬の期中改定や補助金の拡充による即時的な財政支援を要請した。医療機関が機能不全に陥る前の早期対応を求める内容であり、原油高は単なるコスト問題を超え、地域医療の持続性を揺るがす構造リスクとして顕在化している。今後の政策対応は、医療経営の安定のみならず、患者アクセス維持の観点からも重要な局面を迎えている。 参考 1) 【要望】原油価格高騰に伴う医療資材の不足等への緊急対応を(保団連) 2) 「原油急騰で機能不全に陥る前に…」医師団体が政府に緊急の要望書 医療資材の在庫確保など求める(弁護士JPニュース) 6.手術中に麻酔科医が不在30分 薬剤抜き取り・自己使用で懲戒免職/川崎市川崎市立川崎病院は、麻酔薬を自己使用し患者への投与量を改変したとして、28歳の麻酔科医を懲戒免職とした。医師は不眠に悩み、「麻酔で眠る患者を見て自分も眠りたかった」と供述している。事件は2025年12月、手術中に無断で手術室を離れ、麻酔薬プロポフォールを自己注射したことに始まる。この間、約30分間にわたり麻酔科医不在の状態で手術が継続され、後に別の医師が対応した。さらに2026年1月の復職後、患者に使用予定の麻酔薬から一部を抜き取り、自身の使用目的で持ち去ろうとした上、生理食塩水で希釈した薬剤を患者に投与する不正行為が発覚した。翌日にも同様の行為を試みたが看護師が発見し、事態が明るみになった。患者への健康被害は確認されていないものの、医療安全および倫理の観点から重大な問題と判断され、病院は懲戒免職とともに窃盗容疑で警察に被害届を提出した。この事件により、病院の薬剤管理体制の脆弱性のみならず、医師の健康管理や勤務環境の問題も浮き彫りにした。長時間手術や慢性的な睡眠不足の中で、適切なサポート体制が機能していたかが問われる。医療機関における薬剤管理、職員のメンタルヘルス対策および医療安全体制の再点検が求められる事案といえる。 参考 1) 「不眠に悩み」患者の麻酔薬一部持ち去り自己注射 28歳医師処分(毎日新聞) 2) 不眠に悩む麻酔科医「患者にこんなに効くなら…」抜き取って自分に注射、患者には薄めて 川崎市立病院、懲戒免職(東京新聞) 3) 手術室離れて麻酔薬を自分に注射 「少しでも寝たかった」医師を免職(朝日新聞)

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専門医が総合診療を使って成長する秘訣――50代からの学び直しのコツを教育のプロに聞く【ReGeneral インタビュー】第6回

専門医が総合診療を使って成長する秘訣――50代からの学び直しのコツを教育のプロに聞く2018年の総合医育成プログラムの立ち上げ時、講師として関わったことをきっかけに、プログラム運営チームリーダーとして関わり続けている菅家 智史氏(福島県立医科大学 総合内科・総合診療学講座)。総合医育成プログラムのほかにも卒前から卒後まで一貫して総合診療教育に携わっている菅家氏に、プログラムの本質と、年齢を重ねてから飛躍する医師の共通点を聞きました。――総合医育成プログラムに関わるようになったきっかけを教えてください2018年に総合医育成プログラムを立ち上げるときに、講師の1人として声をかけていただいたのがきっかけです。その後、2020年以降の対面からオンラインへの移行、2025年には、同期型と非同期型にわけて集合研修時間の短縮といった、ほとんどすべての変遷に関わってきました。経歴としては2012年から福島県立医大におりまして、医学部での講義、初期研修医の教育、ローテート指導、専攻医の教育プログラム責任者など、卒前から卒後まで幅広く教育に携わっています。現場の困りごとに強くなる――臨床に直結する学びの仕組み――医学生・研修医の教育と比較して、総合医育成プログラムの特徴は?一番の違いは、実臨床に即した内容に絞っていることです。 医学部では理論的な講義が多く、専攻医では高度専門的な知識や技術に関する研修が中心となりますが、このプログラムは “現場で困るところ”を確実に扱うこと、未経験の領域でも診療に踏み出せる内容を大切にしています。例えば耳鼻科では、鼻血が止まらない、整形外科なら怪我やねんざ、それから動物にかまれたなど、医学部でもあまり学ばないのに、実臨床で遭遇すると対応に困るようなものを多く扱っています。各領域の講義はプライマリ・ケアの現場のニーズをよく知っている専門医の先生にお願いし、日本プライマリ・ケア連合学会のプロジェクトチームで細かく内容調整して作っています。――未経験の領域でも取り組みやすい工夫とは、具体的にどのようなことをされているのでしょうか医学部卒業後、初めてその領域を学ぶ方を前提に講義を構成しています。言い換えると、専門の方が聞くと“つまらない”くらいのレベル感です。そんなに?と思われるかもしれませんが、それが狙いです。 私たちは、できるだけ総合的な診療に携わってくださる先生方を増やしたい。そのためには、専門の先生からみたら初歩的だと思えることを、安心して学び質問してもらえる環境がとても大切だと考えています。基本的であり実践的な内容を勉強し、質問を正直にぶつけられる。それがこのプログラムの最大の強みだと思っています。――なぜ質問を重視されるのでしょうかわからないことを身につけていただくのが、このプログラムの役割だからです。そして、わからないことは悪いことではありません。どのテーマでも、お1人の困りごとは、ほかの受講生の困りごとでもあります。ですから、オンラインで集まる同期型学習では、講師の先生方には内容を少し削ってでも質疑の時間を確保できるようお願いしています。1テーマ3時間のセッションで60〜70の質問をいただくので、当日答えきれないときには後日テキストなどで回答いただいています。そのくらい、質問に価値を置いています。わからないことを恥ずかしいと思ったら学びは深まりません。毎年、いただいた質問や困っている事柄を伝えてもらうことでプログラムの内容に反映し続けています。だから、恥ずかしいといったことは一切考えずに、どんどん疑問をぶつけてほしいと思います。年齢を味方にする学び方――受講者に共通する伸びる力――受講生に共通する資質はありますか?これまでの受講者平均年齢は50代付近ですが、受講する皆さんの共通は「何か新しいこと、自分が今まで知らなかったことを使ってチャレンジする気持ち」を持っておられることだと思います。自分は総合診療をしてみたい!と飛び込んでみて、うまくいかなくて試行錯誤して、診療に出ておられる方。今もプログラムの中身も使って頑張っていますというような方。ご自身のおかれた状況で、自分ができることやろうと思う方は、プログラムを上手に使っていただけると思います。プログラムの中で、「診療に活用できる道具を増やしましょう」という雰囲気でお伝えすることが多いのですが、各分野の知識も、ノンテクニカルスキルも道具です。道具が増えるとやれることも増えます。プログラムで道具を教えてもらったから使ってみようとチャレンジしていただけると、どんどん患者さんにとってもプラスになる効果が生まれるんじゃないかなと思います。――なるほど。とはいえ、新しいことを学びはじめることに二の足を踏む方も多かったのではないでしょうかそうですね、多くの受講生から、受講前は近くに似た考えの方がおらず、こんなことを考えていていいのかな?という不安があったということを聞いています。周りにそういう人がいないと尻込みしてしまいますよね。でも、この総合育成プログラムには同じような境遇の方が集まります。 一歩踏み出してみると、「似た思いの人がここにいた」「勇気づけられた」 という声がとても多いです。一歩踏み出しさえすれば、仲間がたくさんいます。ということをお伝えしたいですね。――受講者同士の交流も重視していると伺いましたはい、講師・受講生間だけでなく、受講生同士の相互作用を意識してライブ研修を組んでいて、ケーススタディやグループディスカッション、ロールプレイなど、受講生がお互いに学びを得る機会を多く作るよう意図しています。 たとえばロールプレイでは医師役・患者役・観察役を担い、「この言い方がよかった」「こういう話の持っていき方がよかった」といった具体的なフィードバックをし合ってもらいます。グループディスカッションでお互いに状況を知って悩みを相談したり、励ましあったりできて、背中を押してもらったというような感想もいただきます。2025年にライブ研修を6時間から3時間に短縮しましたが、それでも受講生同士の交流の密度や熱量を保つように毎年改善を続けています。専門医が“総合診療”を使いこなすためのマインドセット――受講後、総合診療の実践に移す際のハードルはありますか?どうしても、勉強したことと実践の間には、一歩分のハードルがあります。そこで、スモールステップを意識して講義内容を構成しています。「まずはここから」「これくらいならできる」「さらに踏み込めるときはこれもできる」と段階を示して、まずはひとつやってみようと、初めの一歩を踏み出しやすいようにしています。例えば小児科では、まずワクチン相談を受けてみる。受診した子どもの様子から“危ない/危なくない”の判断ポイントを押さえる。救急外来で帰せるかどうかを判断する。といった最初の段階にだけフォーカスした内容をお願いしています。最初から全部できなくてもまったく問題ありません。修了生の中塚先生が仰っていたように、「総合医育成プログラムで総合診療の地図を手に入れる」と思ってもらうといいかもしれません。――ご自身の専門と、総合診療スキルを両立して、うまく診療をされる方に共通することはありますか?物事を柔軟に捉えていただける方でしょうか。自分が今まで触れてこなかった概念や手法に出会ったときに「そういう考え方もあるよね」と、柔軟に考えられる方は、総合医育成プログラムで学んだことをご自身の診療に上手に活用いただけていると思います。専門診療と総合診療にはマインドセットの違いがある気がしていて、医師は医学で疾患を治療するだけじゃないという考え方を持っていただけると、ご自身の専門と同時に総合診療の道具をとてもうまく使っていただけると思います。――疾患を治療するだけではない、というのは総合診療のキーワードのように感じましたがいかがですかそうですね。疾患を治療するのが医師の仕事なので、当然行うべきものなのですが、ただそれだけではない。疾患を治療するだけだと対応が難しい患者は、社会にたくさんいらっしゃる。 そこで医学だけを道具にしていると、行き詰ってしまいます。そこで医学以外の道具があればできることが増える。それから、総合診療では他科の医師、看護師、そのほか医療者、地域や患者家族など、他の人の力を借りることも必要です。ノンテクニカルスキルコースで学ぶ、こういった道具は医学部でも専門医教育でもあまり扱いません。これらのスキルを身に付けることは、医師自身の働きやすさにもつながると思います。 累計500名の受講生とともに描く、次のステップ――今後の展望を教えてください同期型学習の相互交流や学習の熱量をさらに上げたいと思っています。 また、JPCAの学術大会でアルムナイ(卒業生)の集いを開催することも考えています。2018年の開始から500名ほどに受講いただいていますが、2020年からは完全オンラインで、受講生同士、実際にお会いしていない方がほとんどです。リアルに会う機会が新しい刺激になるのではないかと思っています。それから、プログラム以外に、総合診療を学びたい先生方へ、オーダーメイドの教育やコンサルティング、伴走の仕組みを整えていけたらと考えています。――受講を迷っている方へ、メッセージをお願いしますとにかく、一歩踏み出してください。私たちは全力でサポートします。一歩踏み出していただければ、多分、いや、絶対に、診療の幅を広げるお役に立てるプログラムです。

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妊娠後期の抗てんかん薬曝露、児の神経発達障害との関連は?/BMJ

 米国・ブリガム&ウィメンズ病院のLoreen Straub氏らは、米国の2つの医療利用データベースを用いて、妊娠後半期の抗てんかん薬への曝露が出生児の神経発達障害(NDD)のリスクに及ぼす影響を解析し、妊娠中のバルプロ酸曝露による児のNDDリスク増加についてさらに強固なエビデンスが得られたことを報告した。「ゾニサミドも複数のアウトカムとの関連性が示唆されたが、さらなる評価が必要である。他の抗てんかん薬についても、複数の比較やまれなアウトカムにおいて潜在的なシグナルが観察されているが、データの蓄積と確認が必要である」と述べている。BMJ誌2026年3月11日号掲載の報告。NDD(ADHD、ASD、学習障害など)のリスクを曝露群vs.非曝露群で検証 本検討には、米国における公的および民間の医療保険加入者の医療利用データ(Medicaid Analytic eXtract/Transformed Medicaid Statistical Information System Analytic Files[MAX/TAF]の2000~18年、およびMerative MarketScan Commercial Claims and Encounters Database[MarketScan]の2003~21年)が用いられた。 解析対象は、妊娠の3ヵ月以上前から出産後1ヵ月まで継続して保険に加入していた12~55歳のてんかんを有する女性とその児で、児の出生から保険加入期間終了、対象となるNDDの診断、研究期間終了または死亡のいずれか早い時点まで追跡した。 妊娠後半期に少なくとも1回の抗てんかん薬の処方(単剤療法または併用療法)を受けた妊婦とその児を曝露群、てんかんと診断されているが妊娠の3ヵ月以上前から出産後1ヵ月まで抗てんかん薬の投与を受けていない妊婦とその児を非曝露群とした。 抗てんかん薬は、カルバマゼピン、ラコサミド、ラモトリギン、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、トピラマート、バルプロ酸、ゾニサミドを対象とした。バルプロ酸はNDDとの関連が確立されていることから陽性対照として、ラモトリギンは一般的にNDDリスクと関連していないため陰性対照として用いた。 主要アウトカムは、検証済みのアルゴリズムを用いて特定されたNDD(ADHD、ASD、行動障害、発達性協調運動障害、知的障害、学習障害、発話または言語障害のいずれかを有すると定義)で、曝露群と非曝露群のNDDリスクを比較した。バルプロ酸とゾニサミドは複数のアウトカムと関連 解析対象は、MAX/TAFの1万7,590例(非曝露群7,245例、曝露群1万345例)、MarketScanの6,290例(それぞれ1,642例、4,648例)で、曝露群の個々の曝露件数はラコサミドの219例からレベチラセタムの5,261例の範囲にわたった。 ほとんどのNDDが診断されると予想される8歳時点でのNDDの累積発生率は、非曝露群で34.3%(95%信頼区間[CI]:32.0~36.7)に対し、曝露群ではラコサミド曝露の22.7%(95%CI:12.2~39.8)からゾニサミド曝露の42.6%(95%CI:31.9~55.3)にわたった。 バルプロ酸とゾニサミドは複数のアウトカムとの関連を示したが(補正後ハザード比[HR]の範囲:1.26~4.50)、レベチラセタムとフェニトインはいずれのアウトカムとも関連していなかった。 いくつかの薬剤は知的障害のリスクが増加したが、当該障害児が少なく正確な推定値を得られなかった。トピラマートとラモトリギンは、ほとんどのアウトカムにおいて有意な関連は認められなかったが、知的障害(両薬剤)および学習障害(トピラマートのみ、少数例に基づくHR:1.23)については潜在的なシグナルが認められた。 カルバマゼピンとオクスカルバゼピンは、ADHDおよび行動障害のリスクが中等度に増加した(HRの範囲:1.23~1.40)。 これらの結果は、ラモトリギンを対照薬として用いた場合を含む複数の感度解析においても一貫していた。

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第287回 医師国試合格率91.6%と低下、新卒合格者も9千人割れ/厚労省

<先週の動き> 1.医師国試合格率91.6%と低下、新卒合格者も9千人割れ/厚労省 2.はしか患者100人超、若年層中心に増加、感染拡大に警戒/厚労省 3.移植医療を集約化と体制強化、報酬を4倍加算、逼迫した現場を支援/厚労省 4.「新たな地域医療構想」機能選択で病院の再編・集約本格化/厚労省 5.2027年度専攻医シーリング決定、偏在是正へ都道府県連携強化/厚労省 6.薬剤アレルギー既往見落としで死亡事故が発生、市民病院を提訴/愛知県 1.医師国試合格率91.6%と低下、新卒合格者も9千人割れ/厚労省厚生労働省は2026年3月16日、第120回医師国家試験の合格者を発表した。受験者9,980人のうち合格者は9,139人で、合格率は91.6%と前回から0.7ポイント低下した。合格者数は前年より347人減少し、とりわけ新卒合格者は8,716人(合格率94.7%)と313人減少となり、3年ぶりに9,000人を下回った。医師供給動向に変化が生じている可能性が示唆される。試験は2026年2月に実施され、合格基準は必修問題で200点満点中160点以上、一般・臨床問題で300点満点中224点以上、禁忌肢3問以下とされた。近年と同様の基準であるが、合格率の微減と新卒者数の減少が今回の特徴となっている。大学別では、自治医科大学が新卒・既卒ともに合格率100%を達成したほか、北海道大学、京都大学も新卒で100%を記録した。平均合格率は国立93.0%、公立93.5%、私立92.5%と大きな差はないものの、既卒者を含むその他区分では54.8%と低水準にとどまった。男女別では女性92.4%、男性91.1%と女性が上回った。合格者数はコロナ禍以降、回復傾向にあったが、今回の減少は医学生数の変動や受験動向の影響が考えられる。医師偏在や地域医療構想の議論が進む中、今後の医師供給の量と質のバランスが一層重要となる。とくに新卒者数の減少は初期研修医確保にも影響を与える可能性があり、今後もこの傾向が続けば、各医療機関や自治体にとっても注視すべき事態となる。 参考 1)第120回医師国家試験の合格発表について(厚労省) 2)第120回医師国家試験の学校別合格者状況(同) 3)第120回医師国家試験合格者の状況(大学別合格者数)-9,139人が合格、合格率は91.6%(医事新報) 4)医師国家試験、合格率91.6%-新卒合格者は3年ぶりに9千人下回る(CB news) 5)2026年医師国家試験大学別合格率…合格率100%は自治医科大学(リセマム) 2.はしか患者100人超、若年層中心に増加、感染拡大に警戒/厚労省国内の麻疹(はしか)報告数が増加し、厚生労働省は注意喚起を強めている。2026年第9週までの累計報告数は87例、第10週時点では100例に達し、新型コロナ禍以降で最多となった。前年同期の22例を大きく上回る水準で、感染拡大の兆しがみられる。近年、わが国では土着株による感染は確認されておらず、2015年には世界保健機関(WHO)から排除状態と認定されている。現在の流行は、海外から持ち込まれたウイルスを起点に、国内で2次感染が広がる構図となっている。事例として、愛知県の高校での集団感染をはじめ、各地で散発的な発生が報告されており、都市部を中心に感染が拡大している。患者の約7割は10~30代で、ワクチン接種歴の不十分な層の影響が示唆されている。麻疹は空気感染を起こす極めて感染力の高い疾患であり、同一空間にいるだけで感染する可能性がある。発熱、咳、鼻水に続き発疹を呈し、重症例では脳炎を合併するリスクもある。その一方で、予防の柱であるMRワクチンの接種率は低下傾向にある。2024年度の接種率は1期92.7%、2期91.0%と、目標の95%を下回った。コロナ禍以降の接種控えが影響しているとみられ、集団免疫の維持に懸念が生じている。厚労省は、渡航前の接種歴確認や帰国後の健康観察を呼びかけるとともに、疑わしい症状がある場合は事前連絡のうえ医療機関を受診するよう求めている。感染再拡大を防ぐには、早期診断とワクチン接種率の回復が急務である。 参考 1)麻疹報告数、コロナ禍以降最多 厚労省が注意喚起(MEDIFAX) 2)はしか患者数、2026年累計100人に 25年同期22人を上回る(日経新聞) 3)感染症発生動向調査週報 2026年第9週第9号(国立健康危機管理研究機構) 3.移植医療を集約化と体制強化、報酬を4倍加算、逼迫した現場を支援/厚労省厚生労働省は、脳死下臓器提供の増加を背景に、移植医療の集約化と体制強化に舵を切った。今回の診療報酬改定で、多くの移植手術を担う施設を「拠点病院」として位置付け、人的・設備面の支援を検討する方針を打ち出している。臓器提供数は近年増加し、2025年には150例を超えたが、心臓や肺、肝臓など複数臓器の同時対応が求められるため、実施可能な施設は一部大学病院に限られている。その一方で、突発的な手術対応により手術室や看護師の確保が困難となり、受け入れ断念例も生じている。こうした現場の逼迫は深刻で、東京大学病院では移植件数が年間100例を超える中、ICUベッドに余裕があっても人員不足で受け入れられない状況や、病院経営への負担が指摘されている。実際、移植医療は従来、手術準備や人員確保のコストが大きく、病院側の持ち出しが問題となっていた。このため2026年度診療報酬改定では、臓器移植実施体制確保加算が新設され、手術料の実質4倍相当の評価が行われる。大学病院の試算では、従来は肺移植1例当たり約400万円の赤字だったが、新加算によりほぼ解消可能とされる。また、ドナーコーディネーターの業務も評価対象とし、院内での同意取得体制強化を促す。背景には、体制不足により移植を受けられなかった患者が2024年に延べ662人に上った現状がある。国立大学病院全体でも今回の改定により年間443億円の増収が見込まれ、赤字解消に寄与すると評価されている。しかし、紹介・逆紹介要件の厳格化による減収も予測され、経営改善には引き続き対応が求められる。移植医療は高度化・集約化が不可避な領域であり、今後は拠点化と財政支援を軸に、持続可能な提供体制の構築が問われる局面に入ったと言える。 参考 1)臓器移植支援へ一部病院を拠点化 厚労省、東大病院「経営苦しく」(朝日新聞) 2)脳死者の臓器移植に診療報酬加算へ…ドナーコーディネーターの働きも評価、報酬を手厚く(読売新聞) 3)国立大学病院長会議 26年度診療報酬改定年間443億円増収で赤字解消へ 外科医療確保や臓器移植加算を評価(ミクスオンライン) 4.「新たな地域医療構想」機能選択で病院の再編・集約本格化/厚労省厚生労働省は、2040年を見据えた「新たな地域医療構想」のとりまとめ案を示し、2028年度末までに各医療機関の「主たる機能」を明確化する方針を打ち出した。従来の病床機能報告に加え、新たに医療機関機能報告を導入し、各病院が担う役割を整理することで、再編・集約化と病床削減を一層進める構えである。新構想では、「医療機関の機能を急性期拠点」「高齢者救急・地域急性期」「在宅医療等連携」「専門等機能」の4区分に整理し、各施設が2040年に向けて担う機能を選択・報告する。複数機能の併存は認めつつも、急性期拠点については手術件数や救急対応などの実績要件を設け、実質的に高度急性期病院の集約を図る。人口20~30万人に1施設程度とする考え方が示され、全国では400~600施設に集約される見通しである。また、人口減少地域では構想区域の広域化を求め、より広い圏域で医療資源を維持する方向性も示された。その一方で、急性期以外の救急医療や夜間手術機能についても集約が検討されており、地域によってはアクセス低下への懸念が指摘されている。病床数の算定では、在宅医療の強化や早期リハビリによる在院日数短縮、医療DXによる効率化を前提に必要病床数を低く見積もる仕組みが採用される。急性期病床の稼働率も78%から84%へ引き上げられ、将来的な病床削減圧力が強まる見通しである。さらに、リハビリテーションでは、入院から在宅までの連続的な提供体制を支える「地域インフラ」として位置付けられ、栄養管理や口腔ケアとの一体的な取り組みも明記された。2026年10月からの機能報告を経て、各都道府県が調整を行い、医療機関ごとの役割分担が具体化する。医療提供体制の再構築が本格化する中、地域医療への影響が注視される。 参考 1)新たな地域医療構想に関するとりまとめ(厚労省) 2)新たな地域医療構想とりまとめ案 28年度末までに病院の「主な機能」を決定(保団連) 3)「新たな地域医療構想」とりまとめを了承、リハビリテーションは「地域のインフラ」へ(PT-OT-ST.NET) 5.2027年度専攻医シーリング決定、偏在是正へ都道府県連携強化/厚労省厚生労働省は、2026年3月18日に開催した「医道審議会医師専門研修部会」で、2027年度に専門研修を開始する専攻医の採用上限、いわゆるシーリング数案を了承した。新たに加算対象となった都道府県診療科から提出された指導医派遣実績を踏まえ、日本専門医機構が算定したもので、委員から大きな異論は出なかった。今後、6月下旬以降に都道府県へプログラム情報を提供し、各都道府県知事の意見や厚生労働大臣の要請を反映した修正を経て、11月の募集開始を予定している。今回のシーリングでは、最新の必要医師数と足下の医師数を用いて対象都道府県を設定し、特別地域連携プログラムと都道府県限定の連携プログラムを統合した点に特徴がある。特別地域連携プログラムの受け入れ可能数は全領域で採用上限を上回り、地域偏在是正に向けた受け皿整備は一定程度進んだ。その一方で、通常プログラム加算は実績に応じて付与されるが、加算上限を下回る領域もあり、制度運用はなお調整段階にある。あわせて部会では、2040年を見据えた医療需要の変化に対応する専門医養成も論点となった。85歳以上人口の増加、高齢者救急の拡大、生産年齢人口の減少を踏まえ、各基本領域学会に対し、将来重要となる疾患や患者像、専門医制度上の課題を尋ねるアンケート調査を実施する方針が示された。専攻医以降のキャリアチェンジやリカレント教育の必要性も指摘された。さらに、医師偏在対策では都道府県、大学医学部、大学病院の連携強化が不可欠とされた。地域枠、広域連携型臨床研修、専門研修連携プログラム、総合診療医育成などを医師確保計画に明確に位置付け、地域定着を後押しする方向で議論が進む。専攻医シーリングは、単なる採用枠調整にとどまらず、地域医療を支える医師養成全体を再設計する局面に入った。 参考 1)令和7年度第5回医道審議会医師分科会 医師専門研修部会(厚労省) 2)2027年度の専攻医シーリング数が決定、募集開始に向けた調整進む(日経メディカル) 3)医師偏在是正策の強化に向け「都道府県・大学医学部・大学病院の連携」をこれまで以上に強化せよ-医師偏在対策検討会(Gem Med) 6.薬剤アレルギー既往見落としで死亡事故が発生、市民病院を提訴/愛知県愛知県の西尾市民病院で診療を受けた70代女性が、薬剤アレルギー既往のある薬を処方・服用後に死亡したとして、遺族が市と調剤薬局を相手取り約2,541万円の損害賠償を求め提訴した。訴状によれば、女性は2025年2月に受診し、処方箋を受け取り、院外薬局で調剤された薬剤を服用後、約41日後に死亡した。遺族側では、医療機関はアレルギー既往歴を把握可能であったにもかかわらず看過したと主張している。その一方で、市側はアレルギー薬剤の処方自体は認めつつも、死亡との因果関係には争いがあるとしている。この事件は単なる確認漏れが原因ではなく、電子カルテおよびオーダリングシステムにおけるアレルギー情報の管理・共有体制が問題の根幹にある。日本医療機能評価機構は、医療安全情報の分析レポートで、アレルギー情報が「登録されているが参照されない」「画面上で視認性が低い」「更新が不十分」といった要因により、処方時に活用されない事例が発生していることを繰り返し指摘している。また、院内で把握されていた情報が院外薬局に十分伝達されないケースや、薬局側での最終確認が機能しなかった事例も報告されている。院外処方が一般化してから、医療機関と薬局の間の情報連携不足は構造的リスクとなっており、患者申告に依存した運用には限界がある。電子カルテ上のアレルギー情報については、入力の標準化、警告アラートの強化、処方時の確認が不可欠である。このためマイナ保険証の活用のほか、2重3重のチェック体制をどのように実効性ある形で運用するかが問われている。今回の訴訟は、医療安全について「情報があること」と「実際に使われること」の乖離を改めて浮き彫りにした。現場での確認フローの見直しなど再発防止策が求められる。 参考 1)「薬のアレルギーで死亡」70代女性遺族、愛知県西尾市などを提訴(中日新聞) 2)電子カルテ・オーダリングシステムを用いた薬剤アレルギーの情報共有に関連した事例(日本医療機能評価機構) 3)電子カルテ・オーダリングシステムを用いた薬剤アレルギーの情報共有に関連した事例(日本医療機能評価機構)

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医師夫妻の年収最大化計画(後編)

FPとして、医師夫婦の方にお伝えしたいこと(再掲)内容を読む今回は、医学部で同級生だったご夫婦の相談事例をお届けします。ケース:同級生夫婦夫:山本ゆうじ(32歳)循環器内科・大学病院医員(年収:手取り1,000万円)妻:山本まき(32歳)消化器外科・大学院生(年収:手取り353万円)子:山本ひなた(2歳)大学病院の院内保育を利用子:山本りん(1歳)大学病院の院内保育を利用2人は医学部の同級生で、卒業と同時に結婚しました。夫のゆうじさんは循環器内科医として、妻のまきさんは消化器外科医として研鑽を積んでいます。まきさんは外科専門医を取得後に大学院に進学し、来年には博士号を取得予定です。大学院に入学後、長女と次女を出産し、現在は研究と育児の両立で忙しい毎日です。今の悩み大学院は比較的時間の融通が利くので、「今しかない」と思って年子で妊娠・出産をしました。外科のスキルを保つために当直や外来などのアルバイトをやっています。学位取得後はフルで現場に復帰し、消化器外科専門医の取得を目指そうと思っています。しかし、大学病院では「研究・臨床・教育」と求められることが多く、子育てしながらやっていけるのか不安です。まきさんは、大学病院にいることに魅力を感じていらっしゃるんですね。そうなんです。大学にいるからこそ獲得できるキャリアがあると思うので。大学院進学もその一環でしたが、アルバイトは抑えめにすることで、何とか子育てと両立できています。収入は激減しましたが夫の収入に支えられています。私は初期研修後、医局のローテーション人事に従って経験を積み、今は循環器内科専門医の取得を目指しているところです。子供が生まれる前は、それぞれのキャリアを優先し、「家事はできるほうがやればいい」という感じでやってきました。お子さんが生まれた後は、家事や育児はお二人でなさっているんですか。当直のアルバイトの時は、夫の当直日と重ならないよう調整しましたが、あまり入れ過ぎないようにしていたので、今のところはほとんど私1人でこなせています。1ヵ月に4~5日程度、実家の両親に泊まり込みで来てもらっていることも助けになっています。学位取得後は、できるだけ多くの手術を経験してスキルアップを図りたいし、研究も進めたいのですが、意気込みだけで果たして両立できるのか不安です。子供が小学校に入学するくらいまでは非常勤医になったほうがいいのか、とも考えています。これまで自分のキャリアのことだけを考えてきましたが、妻が今後のキャリアについて悩んでいることを初めて知りました。

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ベジタリアン家庭の幼児の成長が阻害される可能性は低い

 菜食主義(ベジタリアン)の家庭に生まれた子どもに、発育上の問題が現れる可能性は高くないことが報告された。出生体重は非菜食主義(雑食)の家庭の新生児よりも低く有意差が認められるものの、2歳時点での体重の差は有意ではなくなるという。ネゲヴ・ベン・グリオン大学(イスラエル)のKerem Avital氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に2月5日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「われわれの研究結果は、適切な環境であれば、植物性食品中心の食事は乳児の発育を損なわないことを示している」と述べている。 この研究の背景として著者らは論文の中で、植物性食品を重視する食生活は西側諸国で一般的になりつつあり、心臓病やその他の健康リスクの低下と関連付けられていると指摘。しかし、その一方で、特にビタミンB12、鉄分、ヨウ素、ビタミンD、カルシウム、長鎖オメガ3脂肪酸に関しては、妊娠中や乳幼児期に十分な量を摂取できているのかという懸念が依然として指摘されている。 研究には、イスラエルの子どもの約70%の発育状況が記録されている同国保健省の追跡データのうち、2014~2023年の記録が用いられた。在胎32週以降に出生した単胎児119万8,816人(平均在胎期間39.2±1.5週、男児53.2%)を解析対象とした。なお、重度の先天性疾患を有する子どもや極低出生体重児は対象から除外されている。 全体として98.5%の乳幼児は雑食の家庭で育てられ、1.2%はベジタリアンの家庭、0.3%はビーガン(完全菜食主義)の家庭で育てられていた。解析の結果、食事スタイルにかかわらず、どの家庭の子どもの成長パターンも類似したものだった。 具体的には、出生体重については雑食家庭の新生児が3.3±0.5kgであるのに対して、ベジタリアンやビーガン家庭の新生児はいずれも3.2±0.5kgであり有意に低かった。また生後60日時点で低体重であることの調整オッズ比(aOR)は、雑食家庭を基準としてベジタリアン家庭では1.21(95%信頼区間1.11~1.32)、ビーガン家庭では1.37(同1.15~1.63)だった。 しかし、この差は時間とともに縮小し、2歳時点での発育不全の割合は、雑食3.1%、ベジタリアン3.4%、ビーガン3.9%であり、有意差はなかった。また2歳時点では、低体重や過体重の有意差も認められなかった(低体重のaORはベジタリアンが0.80〔0.55~1.15〕、ビーガンは1.06〔0.50~2.23〕、過体重は同順に1.01〔0.86~1.18〕、0.91〔0.61~1.35〕)。 著者らは、「これらの研究結果はビーガン食であっても乳児の成長を阻害しないことを示唆している。しかし、妊娠中の母親や乳児期の子どもの栄養に関する指導が、子どもたちの発育をどのようにサポートし得るかを明らかにするために、さらなる研究が必要とされる」と結論付けている。

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3疾患を追加し8年ぶりに改訂「自己炎症性疾患診療ガイドライン2026」

 自己炎症性疾患とは、自然免疫系の遺伝子の異常で発症し、症状として発熱と眼、関節、皮膚、漿膜などに及ぶ全身炎症を特徴とする疾患である。その概念は比較的新しく1999年から提唱されている。現在では、診療技術の進歩などにより疾患分類なども整備されている。そして、その疾患の多くは希少疾病や難病として知られている。2017年に『自己炎症性疾患診療ガイドライン 2017』(編集:日本小児リウマチ学会)が発行され、遺伝学的検査など検査が一般的となり、日本免疫不全・自己炎症学会も創設された。その後、厚生労働科学研究などの研究班研究により、掲載疾患の改訂と新規疾患のガイドライン作成作業を経て『自己炎症性疾患診療ガイドライン2026』が発刊された。本稿では、本ガイドラインの統括委員長である西小森 隆太氏(久留米大学医学部小児科学講座 教授)にガイドライン作成の意義や改訂のポイントを聞いた。非専門医も通読し、早く疾患に気付いてもらうことに期待--ガイドライン作成の工夫と3団体連携の意義について 今回のガイドラインの形式は、2017年版から大きな変更はなく、治療を基盤としたクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、Minds診療ガイドライン作成指針に準拠して作成した。本ガイドラインに掲載された遺伝性疾患では、小児期から成人期まで継続的な診療を要する患者が多く、疾患の性質上、現時点の治療法で完治に至ることは容易ではない。成人後も長期的な診療継続が必要であり、とりわけ小児期から成人期への移行期診療の重要性は近年ますます強調されている。こうした背景を踏まえ、本ガイドラインは日本リウマチ学会、日本免疫不全・自己炎症学会、日本小児リウマチ学会の承認を得て発刊された。--ガイドライン作成で腐心した点について 掲載疾患の多くは希少疾患であり、利用可能なエビデンスが限られているという課題があった。ランダム化比較試験(RCT)が乏しい、あるいは存在しない状況を踏まえ、ケースシリーズや症例報告も含めて文献検索を行い、現時点で示し得る見解を、Minds診療ガイドライン作成指針に準拠した手順を踏んで本ガイドラインを作成した。--今回の改訂のポイントについて 新しい疾患としてA20ハプロ不全症(HA20)、化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群(PAPA症候群)、中條・西村症候群(プロテアソーム関連自己炎症性症候群)の3つを追加した。また、家族性地中海熱(FMF)、周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・頸部リンパ節炎症候群(PFAPA)は、前回の内容からCQを立て、エビデンスの見直しと更新を行った。クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、メバロン酸キナーゼ欠損症(高IgD症候群・メバロン酸尿症)(MKD)、ブラウ(Blau)症候群の4疾患については、疾患の説明などのアップデートを行い、改訂した。--非専門医が読むときのポイントや今後の展望について 遺伝性疾患を対象としているため、非専門の先生方にはやや読み進めにくい部分もあるかもしれない。ただし、本ガイドラインは丁寧かつ正確を期して記載しているので、ぜひ一度通読いただければ幸いである。とくにFMFについては、診断基準を明確化するとともに、その背景についても丁寧に解説しており、読後には本疾患への理解をより深めていただけるものと考えている。 次回改訂や今後の展望としては、比較的患者数の多い疾患を中心に検討を進める予定である。たとえば、自己炎症性疾患のうち成人患者の多いVEXAS(vacuoles、E1 enzyme、X-linked、autoinflammatory、somatic)症候群は重要な対象と考えている。近年、同疾患に関するエビデンスも着実に集積されつつあり、次回のガイドライン改訂で追加できることを期待している。 そのほか、非専門の医師が自己炎症性疾患に早期に気付き、適切に専門医へ紹介できるよう、自己炎症性疾患サイトを開設し、疾患および診療に関する啓発を行っている。さらに、自己炎症性疾患を診療できる若手医師の育成や、病態解析による創薬を行っているAMEDなどの研究班や治療薬の開発を担う企業との連携も、今後一層推進していきたいと考えている。【目次】・CQ・根拠の確かさ一覧・略語一覧・作成組織・委員一覧第1章 ガイドラインについて I 背景・目的と使用上の注意 II 本診療ガイドライン作成組織 III 重要臨床課題・アウトカムとクリニカルクエスチョン IV システマティックレビュー,エビデンスの質の評価と推奨の作成第2章 疾患の解説と推奨 A A20ハプロ不全症(HA20) B 化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群(PAPA症候群) C 中條・西村症候群(プロテアソーム関連自己炎症性症候群) D 家族性地中海熱(FMF) E 周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・頸部リンパ節炎症候群(PFAPA)・文献検索式・スコープ自己炎症性疾患診療ガイドライン2017年版より F クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS) G TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS) H メバロン酸キナーゼ欠損症(高IgD症候群・メバロン酸尿症)(MKD) I ブラウ(Blau)症候群・2017年版 文献検索式より・2017年版 スコープより・索引

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小児のドラベ症候群、zorevunersenが有望/NEJM

 ドラベ(Dravet)症候群は、主にSCN1A遺伝子のハプロ不全によって引き起こされる重篤な発育性てんかん性脳症であり、てんかんを有する一般集団と比較して、てんかんによる予期せぬ突然死および認知機能障害のリスクが高いとされる。米国・Northwestern University Feinberg School of MedicineのLinda Laux氏らは、2つの臨床試験(MONARCH試験およびADMIRAL試験)と、その延長試験(SWALLOWTAIL試験およびLONGWING試験)において、zorevunersenの投与により、痙攣発作の頻度が大幅に低下し、有害事象の多くは軽度または中等度であったことを示した。zorevunersenは、ドラベ症候群の基盤となるチャネル病(channelopathy)を標的とし、NaV 1.1ナトリウムチャネルの発現を亢進するようデザインされたアンチセンスオリゴヌクレオチドである。研究の成果は、NEJM誌2026年3月5日号に掲載された。米国と英国の非盲検第I/IIa相試験+延長試験 MONARCH試験およびADMIRAL試験は、それぞれ米国および英国で実施した多施設共同非盲検第I/IIa相試験(Stoke Therapeuticsの助成を受けた)。MONARCH試験は2~18歳、ADMIRAL試験は2~<18歳のドラベ症候群で、標準的な抗痙攣薬による治療を受けている患者を対象とした。 MONARCH試験は、単回投与の用量漸増コホート(5つの用量[10、20、30、45、70 mg]のzorevunersenを1日目に髄腔内投与)および複数回投与の用量漸増コホート(3つの用量[20、30、45mg]のzorevunersenを1、29、57日目に髄腔内投与)から成る。ADMIRAL試験は、複数回投与の用量漸増コホート(3つの用量[30、45、70mg]のzorevunersenを1、57、85日目に髄腔内投与)を擁する。 これらの試験を完了し、適格基準を満たした患者を、それぞれの非盲検延長試験であるSWALLOWTAIL試験およびLONGWING試験に登録し、4ヵ月ごとにzorevunersen(≦45mg)の投与を継続した。 主解析では、zorevunersenの安全性と薬物動態を評価し、臨床効果の評価も行った。腰椎穿刺後症候群が25%に発現 2つの第I/IIa相試験に合計81例(平均年齢9.9[±5.1]歳、女児40例[49%])を登録し、2025年5月30日現在、延長試験に合計75例(10.4[±5.0]歳、37例[49%])を登録した。第I/IIa相試験のベースラインにおいて、患者の81%が3種以上の抗痙攣薬の投与を受けていた。 第I/IIa相試験の78例(96%)および延長試験の75例(100%)に有害事象が発現したが、ほとんどが軽度または中等度であった。第I/IIa相試験で最も頻度の高かった有害事象は腰椎穿刺後症候群(25%)であり、延長試験では脳脊髄液(CSF)中タンパク質濃度上昇(45%)の頻度が最も高かった。 予期せぬ重篤な有害反応が疑われる患者が1例、試験中止に至った有害事象が1例、てんかんによる予期せぬ突然死が2例、栄養失調による死亡が1例に認められた。 複数回投与の用量漸増コホートでは、最終投与後3ヵ月時のCSF中zorevunersen濃度が、初回または2回目投与後1ヵ月時よりも高値を示した。この所見は、月1回または2ヵ月ごとの投与で、CSF中へのzorevunersenの蓄積が生じることを示唆する。延長試験で、臨床状態、生活の質、適応行動も改善 第I/IIa相試験でzorevunersen 70mgを投与され、その後延長試験で最大45mgの投与を受けた患者では、延長試験開始後20ヵ月間における、1ヵ月ごとの痙攣発作の頻度のベースラインからの変化量中央値は、-58.82%から-90.91%の範囲にあり、どの時点でも大幅に低下していた。 延長試験における最長36ヵ月間の継続治療では、全般的な臨床状態、生活の質、適応行動の改善が、データによって裏付けられた。 著者は、「患児の介護者は、新しい治療法では発作以外の症状の緩和が重要と指摘しており、zorevunersenによる全般的な臨床状態や適応行動の変化について、さらなる検討を進める必要がある」「本研究の良好な安全性プロファイルと初期の臨床的改善は、ドラベ症候群に対する疾患修飾治療薬として、zorevunersenの開発を続けることを支持するものである」としている。 現在、zorevunersenの初回投与量70mg、継続投与量45mgによる第III相試験が進行中だという。

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子どもの食物アレルギー、原因は遺伝だけではない

 子どもが食物アレルギーを発症するかどうかを決める要因は、遺伝子だけではないようだ。新たな研究で、抗菌薬の使用や他の免疫疾患の存在、アレルゲンとなる食品の導入が遅れることも、子どもの食物アレルギーの発症に関与している可能性のあることが示された。マクマスター大学(カナダ)のDerek Chu氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Pediatrics」に2月9日掲載された。Chu氏は、「われわれの研究結果は、食物アレルギーの傾向を遺伝だけで完全に説明することはできず、遺伝子、皮膚の健康、マイクロバイオーム、環境要因が重なり合って食物アレルギーの発症に関与していることを示している」とニュースリリースで述べている。 この研究では、6歳未満の子どもを対象にした世界40カ国の190件の研究データ(対象者は総計280万人)が分析された。食物経口負荷試験を用いた16件の研究を統合して解析した結果、IgE媒介性アレルギーの6歳までの平均発症率は4.7%と推定された。176件の研究で342種類のリスク因子が特定されていたが、エビデンスの確実性が高く、IgE媒介性アレルギーとの関連が最も強いと判断されたのは、乳児期のアレルギー性疾患の既往であった。具体的には、生後1年以内のアトピー性皮膚炎(オッズ比3.88)、アレルギー性鼻炎(同3.39)、喘鳴(同2.11)が、いずれも大幅なリスク上昇と関連していた。 また、食物アレルギーの家族歴もリスク因子であり、特に、両親(同2.07)やきょうだい(同2.36)にアレルギーがある場合にはリスクが2倍以上に上昇した。さらに、ピーナッツ、ナッツ類、卵などのアレルゲン食品の導入が遅いことも関連因子であり、例えば、1歳を過ぎてからピーナッツを食べた場合にピーナッツアレルギーになるオッズは2倍以上であった(同2.55)。このほか、妊娠中の母親の抗菌薬使用(同1.32)や、生後1カ月以内(4.11)、または1年以内(1.39)の乳児の抗菌薬使用でもリスク上昇が見られた。 一方で、食物アレルギーに関与すると疑われていた多くの要因、例えば低出生体重や予定日超過の出産、母乳育児をしていないこと、母親の妊娠中の食事やストレスとIgE媒介性アレルギーとの間に有意な関連は認められなかった。 研究グループは、「これらの結果は、食物アレルギーのリスクがある乳児を特定し、早期予防に役立つ可能性がある」と述べている。また、Chu氏は、「この結果は、食物アレルギーに対するわれわれの理解を広げるものだ。今後の研究では、同じ主要因子を測定・調整し、より多様な集団を対象とし、食物経口負荷試験をもっと活用すべきだ」と述べている。さらに同氏は、「今回の発見を実際に活かすためには、新たなランダム化臨床試験とガイドラインを早急に更新することが必要だ」と付け加えている。

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