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地中海食は乾癬の重症化を遅らせる?

 乾癬は、慢性炎症性疾患である。地中海食(MEDI-LITE)は慢性炎症を軽減し、メタボリックシンドロームおよび心血管イベントのリスクに対し有益である。これに伴い、フランス・パリ・エスト・クレテイユ大学のCeline Phan氏らは、乾癬の発症や重症度にMEDI-LITEが強く影響することを仮説立てた。その検証の結果、重症乾癬患者では地中海食に対する順守度が低いことが明らかになった。著者は、「今回の結果は、地中海食が乾癬の進行を遅らせる可能性があるという仮説を支持するものである。この知見が確認されれば、中等症~重症乾癬の日常管理にMEDI-LITEの順守を組み込むべきである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年7月25日号掲載の報告。 研究グループは、2009年5月にフランスで開始されたウェブでのアンケートによる観察コホート研究NutriNet-Santeプログラム(現在も進行中)を利用した。また、本究は、NutriNet-Santeプログラムの枠組み内で行われ、2017年4~6月の間に収集・分析されたデータを使用した。 検証済みのオンライン自己記入アンケートにより乾癬患者を特定し、「重症乾癬」「非重症乾癬」「乾癬なし(非乾癬)」と、病態を重症度別に分類した。プログラムへの参加から最初の2年間の食事摂取量(アルコールを含む)に関するデータを収集して、MEDI-LITEスコア(まったく順守していない[0]~最大限順守[18])を算出した。潜在的な交絡因子(年齢、性別、身体活動、BMI、喫煙、心疾患罹病歴)についても記録された。 多項ロジスティック回帰分析を用い、非乾癬者と比較した重症乾癬または非重症乾癬患者のリスクを推定した。 主な結果は以下のとおり。・NutriNet-Santeプログラムの参加者15万8,361例中、乾癬に関するアンケートの回答が得られたのは3万5,735例(23%)であった。・回答者の平均年齢±SDは47.5±14.0歳で、2万7,220例(76%)が女性であった。・回答者のうち、3,557例(10%)が乾癬に罹患していると回答した。・そのうち、重症乾癬は878例(24.7%)だった。また、299例(8.4%)はコホートに参加し2年以上経過の後に発症した。・交絡因子補正後に、MEDI-LITEスコアと重症乾癬への罹患の間に有意な逆相関が認められた。 ●MEDI-LITEスコアの第2三分位群(スコア8~9)のオッズ比(OR):0.71(95%信頼区間[CI]:0.55~0.92) ●同スコアの第3三分位群(スコア10~18)のOR:0.78(95%CI:0.59~1.01)

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1日1回服用のMAO-B阻害パーキンソン病治療薬「アジレクト錠1mg/0.5mg」【下平博士のDIノート】第6回

1日1回服用のMAO-B阻害パーキンソン病治療薬「アジレクト錠1mg/0.5mg」今回は、「ラサギリンメシル酸塩錠(商品名:アジレクト錠1mg/0.5mg)」を紹介します。本剤は、セレギリン(商品名:エフピーOD錠)に続く2剤目の選択的モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬です。セレギリンと同様に、レボドパ含有製剤併用の有無にかかわらず使用できますが、アンフェタミン骨格を有さないため、覚せい剤原料の規制を受けないなど薬剤管理上のメリットがあります。<効能・効果>パーキンソン病の適応で、2018年3月23日に承認され、2018年6月11日より販売されています。本剤は、MAO-Bと非可逆的に結合することで、脳内のドパミンの分解を抑制し、シナプス間隙中のドパミン濃度を高めることにより、パーキンソン病の症状を緩和します。<用法・用量>通常、成人にはラサギリンとして1mgを1日1回経口投与します。肝臓に軽度の障害がある患者、低体重の患者、高齢の患者では、副作用が発現する可能性があるため、低用量での投与を考慮します。セレギリン塩酸塩、トラマドール塩酸塩、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI、SNRIなどと併用すると、相加・相乗作用などによって、重篤な副作用発現の恐れがあるため併用禁忌となっています。<承認>2018年3月時点で50以上の国または地域で承認されています。<副作用>国内臨床試験において、696例中346例(49.7%)に臨床検査値の異常を含む副作用が認められています。主な副作用は、ジスキネジア(8.0%)、転倒(3.7%)、鼻咽頭炎(3.2%)でした(承認時)。重大な副作用として起立性低血圧、傾眠、突発的睡眠、幻覚、衝動制御障害、セロトニン症候群、悪性症候群が報告されています。本剤は、レボドパ含有製剤と併用されることもありますが、海外臨床試験における併用時の副作用は544例中299例(55.0%)と頻度が高まるため注意が必要です。<患者さんへの指導例>1.本剤は脳内でドパミンの分解を抑えることで脳内のドパミン濃度を増加させ、パーキンソン病の症状を改善します。2.めまい、立ちくらみ、ふらつきなどの症状が現れたらお知らせください。3.眠気、前兆のない急な眠り込みが現れることがありますので、服用中は自動車の運転や機械の操作、高い所での作業など危険を伴う作業はしないでください。4.レボドパ含有製剤と併用することで、副作用が強まることがあります。意志に反して舌や口が動いたり、体が動いたりする症状(ジスキネジア)が現れた場合にはすぐに連絡してください。5.喫煙や、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含有する健康食品を摂取すると、本剤の作用が弱まることがあるので控えてください。6.チーズ、ビール、赤ワインなど、チラミンを多く含む飲食物の摂取により、血圧上昇が報告されているため摂取は控えてください。<Shimo's eyes>本剤は、すでに海外ではパーキンソン病治療の中心的な薬剤の1つとして幅広く使用されており、医療上の必要性が高い薬剤として「未承認薬・適応外薬の要望」が日本神経学会より出されていました。「パーキンソン病診療ガイドライン2018」(日本神経学会監修)において、「早期パーキンソン病患者に対する運動症状改善効果は、セレギリンとラサギリンで差はないが、オフ時間の短縮にはラサギリンより高いエビデンスがある」と記載されており、患者さんのQOL改善が期待されます。覚せい剤原料の規制を受けると、厳重な保管管理のほか、廃棄の際は保健所職員(覚せい剤監視員)の立ち会いが必要であったり、1錠でも紛失した際は「覚せい剤原料事故届」の提出が必要であったりするなど、管理や手続きが煩雑でした。本剤は覚せい剤原料に指定されておらず、流通上の規制を受けないため、大変取り扱いが簡便です。薬力学的相互作用については、併用薬との相加・相乗作用によるセロトニン症候群などへの注意が必要です。また、薬物動態学的相互作用については、本剤はCYP1A2で代謝されますので、喫煙によるCYP1A2の誘導などに注意する必要があります。患者さんの併用薬や生活習慣に気を配り、適切な服薬指導ができるようにしましょう。■参考日本神経学会 パーキンソン病診療ガイドライン2018

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腹部大動脈瘤スクリーニングは無益、では健診が有効な疾患は何か?(解説:中澤達氏)-894

 スウェーデン人を対象としたレジストベースのコホート研究で、腹部大動脈瘤(AAA)スクリーニングは、AAA死亡の減少に寄与していないことが明らかにされた。スウェーデン人男性のAAA死亡率(65~74歳男性10万人当たり)は、2000年初期は36例であったが、2015年には10例に減少していた。死亡率の減少は全国的にみられ、AAAスクリーニング実施の有無に関係していなかった。今回の検討で、減少した要因の大半は他の因子によるもので、おそらくは喫煙の減少によることが示唆された。 AAAスクリーニングを受けた男性が回避可能なAAA死亡は、1万人当たり2例であった。また、待機的手術のリスク増大や、過剰診断の恐れとの関連が認められ、死亡や罹患リスクを増大した回避可能な手術がそのうちの19例に行われていたという。ベネフィットは小さく、有益性と有害性のバランスは非常に悪く、スクリーニングの正当性に対する疑念を深める結果であった。 これが真実であるとすると、スクリーニングは行うべきでなく偶然指摘されたAAAを治療することのみが死亡率低下に寄与することになる。10万人当たり10例の死亡という希少で、生活習慣病予防で死亡率も低下傾向の疾患であることが原因であろう。 同様なことが内科系の慢性疾患にも日本の誇る職場健診で生じている可能性がある。つまり、予防が徹底されその疾患の有病率が低下している局面では、早期発見し治療を開始しても生存率に影響がないどころか、投薬の副作用のみが起こるということだ。この点もぜひビッグデータで解明してもらいたい。

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第4回 GERDを発症・増悪させにくいCa拮抗薬は?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 胃酸などの胃の内容物が食道に逆流して生じる胃食道逆流症(Gastroesophageal reflux disease:GERD)の原因の1つに、「下部食道括約筋(Lower esophageal sphincter:LES)」の機能低下があります。LESは胃と食道のつなぎ目にあり、胃酸の逆流を防ぐ筋肉ですが、加齢に伴う機能低下だけでなく、嗜好品や生活習慣および薬剤によっても緩まることがあります。GERDは頻度の高い疾患ですので、これらの悪化要因を把握しておくと服薬指導にとても有用です。MSDマニュアルには、下記の記載があります。「逆流をもたらす要因として、体重増加、脂肪食、カフェイン含有飲料、炭酸飲料、アルコール、喫煙、薬物がある。LES圧を低下させる薬物には、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬、カルシウム拮抗薬、プロゲステロン、硝酸薬がある」(参考文献1)より引用)実際、アムロジピンの服用開始後にGERDの症状が悪化したと訴え、医師からの指示でアムロジピンを中止したところ症状が改善した患者さんに、私も会ったことがあります。その件の因果関係は不明ですが、今回はCa拮抗薬とGERDの関連について検討した後ろ向きコホート研究を紹介します。Do calcium antagonists contribute to gastro-oesophageal reflux disease and concomitant noncardiac chest pain?Hughes J, et al. Br J Clin Pharmacol. 2007;64:83-89.対象となったのは、虚血性心疾患や硝酸薬の使用歴がなく、Ca拮抗薬を使用していた高血圧患者で、GERDの既往の有無および、Ca拮抗薬服用前と服用後でGERD症状に変化があったかどうかについてアンケート調査を行っています。15軒の薬局(地域薬局14軒、病院薬局1軒)から371例が登録され、平均年齢64歳、女性51.2%、男性48.8%でした。信頼度が高い方法というわけではありませんが、地域の薬局で研究を行うには現実的な方法ではないでしょうか。Ca拮抗薬服用前後におけるGERD症状の変化は下表のとおりです。画像を拡大するCa拮抗薬服用前からすでにGERDの症状がある130例中59例(45.4%)で、Ca拮抗薬服用により症状の悪化がみられています。症状の悪化の頻度がもっとも高かった薬剤がアムロジピン(61.3%、p<0.0001)で、もっとも低かったのがジルチアゼム(12.5%)という結果でした。Ca拮抗薬服用前にGERD症状がなかった241例においては、85例(35.3%)がCa拮抗薬服用によりGERDを発症しており、もっとも頻度が高かったのがベラパミル(39.1%、p=0.001)で、もっとも低かったのがジルチアゼム(30.7%)という結果でした。ニフェジピンの増悪リスクはジルチアゼムの4.22倍発症・増悪リスクがもっとも低かったジルチアゼムを基準とした場合の、GERD症状の増悪頻度のオッズ比は下表のとおりです。ニフェジピンやアムロジピンにおいて有意にGERDが増加しています。二フェジピンやアムロジピンの添付文書を参照すると、嘔気・嘔吐や腹部不快感、腹部膨満などGERDに類する副作用症状の記載はありますが、明示的にGERDの記載があるわけではないため見落としに注意が必要です。交絡因子を調整しきれる研究ではないため解釈に注意が必要ですが、血管平滑筋を緩めるCa拮抗薬がLESまで緩めてしまう可能性があることは、患者さんの症状を聞き取る際に頭の片隅に入れておくとよいでしょう。1)MSDマニュアル 胃食道逆流症(GERD)(2018年7月16日参照)2)Do calcium antagonists contribute to gastro-oesophageal reflux disease and concomitant noncardiac chest pain?Hughes J, et al. Br J Clin Pharmacol. 2007;64:83-89.

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統合失調症患者における自殺のリスク因子に関するメタ解析

 統合失調症患者の自殺に関連する生涯リスクは、自殺で5%、自殺企図では25~50%といわれている。米国・テキサス大学健康科学センター ヒューストン校のRyan Michael Cassidy氏らは、統合失調症患者の自殺率に関連するリスク因子を明らかにするため、メタ解析を実施した。Schizophrenia bulletin誌2018年6月6日号の報告。 PubMed、Web of Science、EMBASEより検索を行い、参考文献リストについても併せて検索を行った。自殺念慮または自殺企図を有する統合失調症患者、自殺していない患者との比較を報告した研究を選択基準とした。また、補足分析としてコホート研究のメタ解析も行った。 主な結果は以下のとおり。・分析対象として、96研究、8万488例が抽出された。・自殺念慮を有する統合失調症患者では、抑うつ症状が重く(p<0.0001)、PANSS総スコアが高く(p<0.0001)、精神科入院回数が多かった(p<0.0001)。・自殺企図との関連に最も一致した変数は、以下であった。 ●飲酒歴(p=0.0001) ●精神医学的疾患の家族歴(p<0.0001) ●身体合併症(p<0.0001) ●うつ病歴(p<0.0001) ●自殺の家族歴(p<0.0001) ●薬物使用歴(p=0.0024) ●喫煙歴(p=0.0034) ●白人(p=0.0022) ●抑うつ症状(p<0.0001)・最初の2項目(飲酒歴、精神医学的疾患の家族歴)は、コホート研究のメタ解析においても有意な差が認められた。・自殺との関連に最も一致した変数は、以下であった。 ●男性(p=0.0005) ●自殺企図歴(p<0.0001) ●若年(p=0.0266) ●高い知能指数(p<0.0001) ●治療アドヒアランスの不良(p<0.0001) ●絶望状態(p<0.0001)・最初の3項目(男性、自殺企図歴、若年)は、コホート研究のメタ解析においても有意な差が認められた。 著者らは「本調査結果は、将来の自殺の予防戦略において役立つであろう。今後の研究では、多変量予測分析法を用いて上記の因子を組み合わせることで、統合失調症における自殺率を客観的に層別化することが可能となるであろう」としている。■関連記事日本人統合失調症患者の自殺、そのリスク因子は:札幌医大統合失調症の自殺にプロラクチンは関連するのか日本成人の自殺予防に有効なスクリーニング介入:青森県立保健大

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切除後NSCLCの再発および生存に対する体細胞変異の影響(JME)/ASCO2018

 次世代シークエンス(NGS)により、手術後の非小細胞肺がん(NSCLC)における体細胞変異を検討した、本邦の多施設前向き肺がん分子疫学研究JME(Japan Molecular Epidemiology for lung cancer)。副次評価項目である、体細胞変異と無再発生存期間(RFS)および全生存期間(OS)との関係について、近畿中央胸部疾患センター 田宮 朗裕氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会ASCO2018で発表した。 研究対象はStage I~IIIBのNSCLC。2012年7月~2013年12月までに43施設から集められた876の外科的切除標本で、48のがん関連遺伝子と5つのがん関連遺伝子増幅が評価された。追跡期間中央値は48.4ヵ月。 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は70歳。男性が876例中419例。・病期はStage Iが 618例でもっとも多く、II、III、IV はそれぞれ131例、104例、23例であった。・2つ以上の体細胞変異を有する患者は876例中146例であった。・術後化学療法は876例中309例に実施された。・RFSの予後因子は、変異数(0または1つ対2つ以上、HR:0.609、p<0.0105)、年齢(70歳未満対70歳以上、HR:0.641、p=0.0008)、性別(男性対女性、HR:1.460、p=0.0381)、病理病期([Stage I対II、HR:0.332、p<0.0001]、[I対IIIまたはIV、HR:0.157、p<0.0001]、[II対IIIまたはIV、HR:0.486、p<0.0001])であった。・OSの予後因子は年齢(70歳未満対70歳以上、HR:0.590、p=0.0025)、アジュバント化学療法の施行(なし対あり、HR:2.029、p=0.0001)、EGFR変異(陰性対陽性、HR:2.223、p<0.0006)、病理病期([Stage I対II、HR:0.408、p<0.0001]、[I対IIIまたはIV、HR:0.151、p<0.0001]、[II対IIIまたはIV、HR:0.371、p<0.0001])であった。 RFSの長さに影響するのは、早期Stageと若年齢、変異数。OSの長さに影響するのは、早期Stageと若年齢とともに、EGFR変異陽性、アジュバント化学療法施行であった。とくに病期はRFS、OSの双方に影響が大きく、肺がんの進行度合いは、遺伝子変異以上に予後に影響を及ぼすことが明になった。筆頭著者である田宮 朗裕氏との1問1答【この研究を実施した背景は?】 JME研究は、喫煙者と非喫煙者のdriver mutationを含む体細胞変異との相関をみている試験ですが、今回はその中で遺伝子変異が予後に対して、どう影響するかを調べたものです。【結果についてコメントいただけますか】 体細胞変異が多いほど予後も悪いのではないかという想定していました。RFSについては、想定通り、体細胞変異が多いほど予後不良でしたが、OSについては想定通りの結果にはなりませんでした。その1つの理由としては、EGFR-TKIの有効性が高いことから、EGFR変異陽性患者の予後が良好であったことが影響していると考えられます。また、術後化学療法の有無が大きく予後に影響したことも想定外でした。【今回の研究の成果についてコメントいただけますか】 早期肺がんの発がんに関係する研究は従来後ろ向きのものが多かったのですが、今回は前向きで解析しています。今回の前向き研究で、体細胞変異と予後の関係を多変量で解析できたこと、そして術後確定病理と予後の関係が前向きに証明されたことは意義があると思います。■参考ASCO2018 AbstractJME研究(JCO)※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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米国成人の肥満率、非都市圏で高率/JAMA

 2013~16年における米国成人の肥満および重症肥満の年齢調整有病率が、米国大都市統計地域(metropolitan statistical area:MSA)で示される都市化のレベルで異なっていること、また、MSAの都市圏に比べ非MSA地域で有意に高いことを、米国疾病予防管理センターのCraig M. Hales氏らが報告した。米国成人における肥満の有病率については、これまで性別、年齢層別、人種/ヒスパニック系別の報告はあったが、都市化のレベル別ではほとんど研究されていなかった。JAMA誌2018年6月19日号掲載の報告。2013~16年の肥満の有病率と、都市化レベル別での過去12年間における傾向を分析 研究グループは、20歳以上の米国成人を対象とした、身長と体重の測定値を含む米国民健康栄養調査(NHANES)の2001~16年のデータを用い、性別、年齢層、人種/ヒスパニック系、教育レベル、喫煙状況および都市化レベル別に肥満の有病率を解析した。 主要評価項目は、全体およびサブグループ別の2013~16年における肥満(BMI≧30)および重症肥満(BMI≧40)の有病率と、都市化レベル別の同有病率の2001~04年から2013~16年の傾向であった。 都市化レベルは、米国健康統計センター(NCHS)のMSA/非MSA分類に基づき、本検討では、1)大規模MSA(人口100万人以上)、2)中/小規模MSA(人口25万人以上100万人未満/人口25万人未満)、3)非MSA(人口2,500~5万未満などMSAに分類されない地域)に分けて評価した。 解析対象は、身長、体重および都市化レベルの完全なデータが得られた1万792例(平均年齢48歳、女性51%)であった。男女とも都市化レベルが低いほうが肥満の有病率は高い 2013~16年における米国成人の肥満の有病率は38.9%(95%信頼区間[CI]:37.0~40.7%)、重症肥満が7.6%(95%CI:6.8~8.6)であった。 都市化レベル別の肥満の年齢調整有病率は、男性の場合、大規模MSAが31.8%、中/小規模MSAが42.4%、非MSAが38.9%であり、大規模MSAと比較し中/小規模MSAで有意に高かったが(補正群間差:9.8ポイント、95%CI:5.1~14.5)、大規模MSAと非MSAに有意差はなかった(補正群間差:4.8ポイント、95%CI:-2.9~12.6)。女性の場合は、大規模MSA、中/小規模MSAおよび非MSAでそれぞれ38.1%、42.5%および47.2%であり、中/小規模MSA(4.3ポイント、95%CI:0.2~8.5)および非MSA(4.7ポイント、95%CI:0.2~9.3)のいずれも、大規模MSAより有意に高かった。 重症肥満の年齢調整有病率は、男女いずれの場合も、大規模MSAより中/小規模MSAならびに非MSAで高いことが認められた。 肥満/重症肥満の年齢調整有病率は、年齢層、人種/ヒスパニック系、教育レベルでも違いがみられ、そのパターンは男性と女性で異なっていた。 なお、都市化レベル別における肥満/重症肥満の年齢調整有病率は、全レベルとも、男女別ならびに全体のいずれの場合も、2001~04年から2013~16年にかけて有意に増加していることが認められた。

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腹部大動脈瘤スクリーニングは有益か/Lancet

 腹部大動脈瘤(AAA)スクリーニングは、AAA死亡の減少に寄与していないことが、スウェーデン・イエーテボリ大学のMinna Johansson氏らによる、スウェーデン人を対象としたレジストベースのコホート研究で明らかにされた。AAA発症およびAAA関連死亡にみられる大幅な減少を、スクリーニングに関する無作為化試験の結果で評価するのは時代遅れではないかとの指摘があったが、今回の検討で、減少した要因の大半は他の因子によるもので、おそらくは喫煙の減少によることが示唆されたという。著者は、「ベネフィットは小さく、有益性と有害性のバランスは非常に悪く、スクリーニングの正当性に対する疑念を深める結果であった」とまとめている。Lancet誌2018年6月16日号掲載の報告。スクリーニング群vs.非スクリーニング群の疾患別死亡率、罹患率、手術を比較 研究グループは、スウェーデンにおけるAAAスクリーニングの疾患別死亡率、罹患率、および手術に関する影響を推定する検討を行った。2006~09年にスクリーニングを受けた同国65歳男性コホートを対象に、AAA罹患、AAA死亡、AAA手術に関するデータを集め、年齢で適合した非AAAスクリーニングのデータと比較した。また、ナショナルデータベースを利用して1987年1月1日~2015年12月31日の40~99歳男性に関するデータも分析し、背景傾向を調べた。 交絡因子の調整は、コホート年、婚姻状態、教育レベル、収入、またベースラインでのAAA診断有無に関するロジスティック回帰モデルから得た傾向スコアを用いた重み付け分析法により行った。差異に関する調整も、スクリーニング後6年のコホートに残る逆確率を用いた重み付け分析法で行った。また、一般化推定方程式を用いて、反復測定および重み付けによる分散を調整した。スクリーニング6年後、死亡減少とスクリーニングに有意な関連みられ スウェーデン人男性のAAA死亡率(65~74歳男性10万人当たり)は、2000年初期は36例であったが、2015年には10例に減少していた。死亡率の減少は全国的にみられ、AAAスクリーニング実施の有無に関係していなかった。 スクリーニングの6年後の分析では、AAA死亡率の減少とスクリーニングに有意な関連はみられなかった(補正後オッズ比[aOR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.38~1.51)。この時点で、AAAスクリーニングを受けた男性が回避可能なAAA死亡は、1万人当たり2例(95%CI:-3~7)であった。 スクリーニングは、AAA診断のオッズ増大と関連していた(aOR:1.52、95%CI:1.16~1.99、p=0.002)。また、待機的手術のリスク増大(同:1.59、1.20~2.10、p=0.001)や、過剰診断の恐れとの関連(スクリーニング受診1万人当たり49例[95%CI:25~73例])が認められ、死亡や罹患リスクを増大した回避可能な手術がそのうちの19例(95%CI:1~37)に行われていた。

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1日1回の牛乳摂取がサルコペニア予防に有効か~鳩山/草津コホート研究

 毎日普通乳を飲む習慣が、高齢者におけるサルコペニアの予防につながる可能性が示唆された。東京都健康長寿医療センター研究所の成田 美紀氏らが、日本の地域在宅高齢者を対象に、牛乳の摂取頻度とサルコペニアの有無との関連を検討したコホート研究により明らかにしたもの。第60回日本老年医学会学術集会(2018年6月14日~16日)において発表された。 本研究の対象は、鳩山コホート研究の2012年追跡調査対象者、および草津町研究の2013年高齢者健診受診者のうち、70歳以上でかつ簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)による食品摂取調査を行い、有効回答を得た810例(鳩山405例、草津405例)。牛乳の摂取状況は、普通乳あるいは低脂肪乳について、摂取頻度ごとに3群に分けて評価し、サルコペニアの診断にはAWGSの診断基準を用いた。 牛乳の摂取頻度とサルコペニアの有無との関連性は、多重ロジスティックモデルを用いて解析し、性、年齢、対象地域、総エネルギー摂取量(BDHQから推定)に加え、BMI(21.5未満、21.5以上25.0未満、25.0以上)、生活習慣(飲酒、喫煙および運動の習慣)、食品摂取の多様性スコア(牛乳の摂取頻度以外)および既往症(脊椎系疾患、骨粗鬆症の有無)について調整した。 主な結果は以下のとおり。・サルコペニア罹患者の割合は10.4%であった。・牛乳の摂取頻度(毎日1回以上、毎日1回未満、飲まない)の割合は、普通乳でそれぞれ52.9%、28.5%、18.6%、低脂肪乳で18.1%、16.4%、65.5%であった。・多変量解析の結果、普通乳を「飲まない」群に対する「毎日1回未満」と「毎日1回以上」の摂取群のサルコペニア保有リスク(多変量調整オッズ比)は、それぞれ0.47(95%信頼区間[CI]:0.22~1.03、p=0.059)、0.41(95%CI:0.20~0.83、p=0.013)となり、「毎日1回以上」摂取群で有意に低かった。・同じく低脂肪乳については、オッズ比はそれぞれ0.82(95%CI:0.36~1.85、p=0.627)、0.54(95%CI:0.20~1.47、p=0.225)であった。・サルコペニア罹患と有意な関連がみられたほかの要因は、高年齢1.16(95%CI:1.11~1.22、p<0.001)、BMI低値2.78(95%CI:1.56~4.96、p=0.001)、BMI高値0.41(95%CI:0.17~0.97、p=0.041)および脊椎系疾患の既往2.05(95%CI:1.08~3.91、p=0.029)であった。 発表者の成田氏は、「普通乳を飲む頻度が高い人では、総エネルギー摂取量や体重1kg当たりのタンパク質量が多く、PFC比におけるタンパク質・脂質比が上昇し、炭水化物比が減少している傾向がみられた。縦断研究で検証していく必要があるが、普通乳を毎日1回以上摂取することは、サルコペニア罹患に防御的であることが示唆された。高齢期における乳・乳製品の継続的な摂取は、筋肉量や身体機能の低下を抑制する可能性がある」とまとめた。

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禁煙開始4週前からのニコチンパッチ、長期的効果は?/BMJ

 英国では、喫煙を中止した日以降は禁煙を補助する薬物療法が推奨されるが、喫煙中止日前の薬物療法(preloading)の長期的なベネフィットのエビデンスは明確ではないという。英国・オックスフォード大学のPaul Aveyard氏らは、ルーチンの診療における禁煙開始前のニコチン投与について検討した。その結果、明らかな長期的有効性は認めなかったものの、ニコチン前投与により禁煙開始後のバレニクリンの使用が減少し、これによってニコチンの効果がマスクされた可能性があると報告した。研究の成果は、BMJ誌2018年6月13日号に掲載された。禁煙前4週投与の長期的有効性を評価 研究グループ(Preloading Investigators)は、長期的な禁煙の達成における禁煙開始前4週間のニコチンパッチ使用の有効性を評価する非盲検無作為化対照比較試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。 対象は、ニコチン依存がみられる毎日喫煙者(daily smoker)であった。被験者は、前投与群または対照群にランダムに割り付けられた。前投与群は喫煙を中止する前に21mgニコチンパッチ(1日1回)を4週間使用し、対照群は通常治療と行動支援を受けた。 主要アウトカムは、6ヵ月時の生化学的に確定された禁煙とし、副次アウトカムは、4週および12ヵ月時の禁煙であった。 2012年8月~2015年3月の期間に、イングランドのプライマリケア施設および禁煙クリニックに1,792例が登録され、前投与群に899例、対照群には893例が割り付けられた。バレニクリン使用で補正すると有意な効果 ベースラインの全体の平均年齢は48.9(SD 13.4)歳、男性が52.6%であった。既製タバコの使用者が68.2%、手巻きタバコの使用者が31.0%であり、平均1日喫煙本数は18.9(SD 9.3)本、過去6ヵ月以内に禁煙支援を受けた者は32.5%であった。 6ヵ月時の生化学的に確定された禁煙の達成率は、前投与群が17.5%(157/899例)、対照群は14.4%(129/893例)であった(群間差:3.0%、95%信頼区間[CI]:-0.4~6.4%、オッズ比[OR]:1.25、95%CI:0.97~1.62、p=0.08)。 両群間で、禁煙開始後の治療における禁煙補助薬バレニクリンの使用のバランスがとれておらず、対照群で多く用いられていた(22.1 vs.29.5%)。事前に計画された補正を行うと、ニコチン前投与の効果のORは1.34(95%CI:1.03~1.73、p=0.03、群間差:3.8%、95%CI:0.4~7.2)となり、有意な差が認められた。 4週時におけるバレニクリン使用で未補正の禁煙効果のORは1.21(95%CI:1.00~1.48)、群間差は4.3%(0.0~8.7%、p=0.05)であり、補正後のORは1.32(1.08~1.62、p=0.007)であった。また、12ヵ月時の未補正のORは1.28(0.97~1.69)、群間差は2.7%(-0.4~5.8、p=0.09)であり、補正後のORは1.36(1.02~1.80、p=0.04)であった。 前投与群の5.9%が不耐のためニコチンパッチを中止した。消化器症状(主に悪心)は、前投与群のほうに高い頻度(4.0%)で認められた。重篤な有害事象は前投与群が8例、対照群も8例にみられた(OR:0.99、95%CI:0.36~2.75)。 著者は、「21mgニコチンパッチによるニコチンの禁煙開始前4週投与は、長期の禁煙において期待された効果を発揮し、安全で耐用可能と考えられるが、最も効果の高い禁煙補助薬であるバレニクリンの使用を抑制する可能性がある」とし、「この非意図的な結果を克服できれば、前投与は長期的な禁煙達成の増加に、価値のある効果をもたらす可能性がある」と指摘している。

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カフェインの早期曝露と喫煙やアルコール使用障害との関連

 小児・思春期でのカフェイン摂取は、悪影響を伴うにもかかわらず、中学生の間で広まっている。横断的研究によると、カフェイン摂取と他の物質使用障害との関連が明らかになっている。しかし、カフェイン摂取によって物質使用障害に対する脆弱性が高まる可能性については、プロスペクティブな調査が行われていない。米国・ウエストバージニア大学のAlfgeir L. Kristjansson氏らは、ベースライン時のカフェイン摂取は、アルコール摂取、酩酊、喫煙、電子タバコ使用の増加と正の相関があるとの仮説を検証した。Addiction誌オンライン版2018年4月30日号の報告。 ベースラインをフォローアップから分離した12ヵ月のプロスペクティブコホート研究を行った。ウエストバージニア州の3つの群の中学生(第6学年、第7学年)3,932例を対象に、ベースライン時およびフォローアップ12ヵ月後のデータを収集した。対象者は、複数の出どころ(たとえば、ソーダ、エナジードリンク、コーヒー、紅茶)からのカフェイン摂取、喫煙、電子タバコ使用、アルコール摂取、酩酊について自己報告を行った。 主な結果は以下のとおり。・各物質使用カテゴリの交差遅延モデルは、データに適していた。・ベースライン時の人口統計変数および他の物質使用でコントロールした後、T1におけるカフェイン摂取は、T2における喫煙(β=0.27、p=0.001)、電子タバコ使用(β=0.21、p=0.001)、アルコール摂取(β=0.17、p=0.001)、酩酊(β=0.15、p=0.001)と正の相関が認められた。・逆に、T1における4つの物質のうちの3つと、T2におけるカフェイン摂取との間に、有意な関連は認められなかった。・T1における電子タバコ使用とT2におけるカフェイン摂取との間に、正の相関が認められた(β=0.07、p=0.006)。・これらの知見は、すべての物質を含むオムニバスモデルにより支持された。具体的には、T1におけるカフェイン摂取とT2におけるすべての物質使用アウトカムとの間に有意な関連が認められたが、時間が経過すると有意な関連は認められなかった。 著者らは「中学生世代の青少年におけるカフェイン摂取は、他の物質使用障害を早期に促進する可能性がある」としている。■関連記事青年期の喫煙、電子タバコ使用開始とADHD症状との関連統合失調症のカフェイン依存、喫煙との関連に注意小児および青年期の重度な精神疾患発症率と薬理学的治療

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日本人の急性冠症候群と脳卒中、患者背景の違いは

 急性冠症候群(ACS)と虚血性脳卒中の患者の臨床的特徴の違いについて、順天堂大学の内藤 亮氏らが全国多施設レジストリのデータを分析したところ、患者背景の特性が有意に異なり、男女で違いがあることが認められた。Internal Medicine誌オンライン版2018年6月6日号に掲載。 著者らは、ACS(PACIFIC)および虚血性脳卒中(EVEREST)に関する2つの多施設レジストリのデータを分析し、臨床的特徴を調査した。 主な結果は以下のとおり。・計6,878例(PACIFIC:3,426例、EVEREST:3,452例)を評価した。・患者背景の特性は、2つの集団間で有意に異なっていた。・ACS患者のほうが脳卒中患者より若年傾向で、BMIが高く、糖尿病および脂質異常症の有病率が高く、現喫煙者が多く、虚血性心疾患の既往歴がある人が多かった。・高血圧の有病率は、ACS 患者より脳卒中患者で高かった。・男性ではACS患者と脳卒中患者の特性の違いはサンプル全体と同様であったが、女性における高血圧有病率は、サンプル全体とは異なりACS患者と脳卒中患者で同様であった。

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主観的な睡眠の質は認知症と関連せず

 睡眠と認知症リスクは関連しているが、主観的な睡眠の質との関連ははっきりしない。今回、オランダ・エラスムス医療センターのThom S. Lysen氏らがロッテルダム研究で検討したところ、主観的な睡眠の質の低さと認知症リスクの関連は認められなかったという。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2018年5月31日号に掲載。 本研究は集団ベースの前向き研究で、2002~06年に4,835人(平均年齢72歳、女性58%)に対して、睡眠の質を評価するために自宅でピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を含むインタビューを行った。2015年まで、参加者自身のスクリーニングや医療記録の継続的モニタリングを通して、認知症の発症について追跡調査を行った。年齢、性別、教育、喫煙、雇用状況、コーヒー摂取、飲酒、日常生活動作、心血管リスク因子、不安、うつ症状、認知力、いびきについて調整し、Cox回帰モデルを用いて睡眠の質と認知症リスクの関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・4万1,385人年(平均8.5年)の間に、420人が認知症を発症し、そのうち320人がアルツハイマー病であった。・より低い主観的な睡眠の質は、認知症全体のリスク(PSQIスコアのSD増加当たりのハザード比[HR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.82~1.02)およびアルツハイマー病のリスク(HR:0.92、95%CI:0.81~1.05)と関連していなかった。・PSQIの個々の要素についても、認知症と関連していなかった。

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バージャー病〔Buerger's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義動脈閉塞症の1つである。バージャー病(Buerger's disease)の呼称は、本疾患を閉塞性血栓血管炎(thromboangiitis obliterans:TAO)として初めて記述したLeo Buerger(ドイツ語読みではビュルガー)氏に由来する。四肢末梢の主として下腿以遠や前腕以遠の動脈に、分節的に炎症性の血栓閉塞を生じ、しばしば肢端に潰瘍や壊死を来す。動脈のみならず、皮下静脈にも移動性かつ再発性の血栓性静脈炎(逍遥性静脈炎/遊走性静脈炎)を生じる。発病や経過には喫煙が深く関与する。■ 疫学20~40代の喫煙者に好発し、男性患者が大半である。動脈病変が生じる頻度は、下肢のほうが上肢よりも高い。元より希少疾患であるが、先進国ではさらに減少し、わが国でも1970年代から減少の一途をたどっている。一方で、中国、インド、トルコなどでは依然として比較的多くの発症がみられる。■ 病因病因は未解明だが、喫煙は発病の強力な誘因であり、病気の進行を助長する。感受性遺伝子や免疫機序の関連を指摘した報告もある。近年では、歯周病菌感染の関与が注目されている。■ 症状初診時の症状は、足趾や手指の冷感、感覚異常、疼痛、虚血性紅潮やチアノーゼ、レイノー現象が多く、すでに潰瘍や壊死を生じている患者も少なくない。間歇性跛行や労作時痛は、初期には足底筋や手部に生じるが、患者にはあまりはっきりと自覚されないことが多く、虚血による症状とも気付かれにくい。あるいは整形外科的な疾患と判断されがちである。虚血のせいで、爪周囲のささくれや靴擦れなどささいな傷が、治りにくく易感染性で、しばしば急速に潰瘍形成や壊死へと進行する。潰瘍や壊死部には、強い疼痛を伴うことが多い。逍遥性静脈炎は、動脈病変に先行することも、後から生じることもある。皮下に索状の有痛性硬結を生じる。■ 予後喫煙が影響する。病勢は禁煙によって寛解することが多く、逆に喫煙を続ければ進行性で、肢の大切断への危険が高まる1)。肢の大切断は、患者の運動機能を低下させ、生活を著しく阻害する。通常は四肢以外の臓器が侵されることはなく、生命予後は良好とされるが、患者を生涯観察したデータは少ない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)特異的な診断マーカーがないため、臨床診断、すなわち症状および臨床所見と動脈の画像所見に基づき、他疾患を除外して診断を行う。若齢発症、喫煙歴、逍遥性静脈炎の既往は、本疾患の診断を後押しする2)。■ 臨床所見前述のような慢性虚血の症状や、逍遥性静脈炎がみられる。身体診察では、患肢の末梢部での皮膚温低下や、動脈拍動の減弱・消失をみる。下肢の虚血を確認する検査には、足関節血圧や足関節上腕血圧比(ankle brachial index:ABI)の測定がある。ただし、本疾患では足関節以遠に病変を有することが多く、ABIだけでは評価が不十分なこともありうる。したがって、手足の指尖容積脈波、足趾血圧や足趾上腕血圧比(toe brachial index:TBI)、手指血圧も測定する。皮膚灌流圧(skin perfusion pressure:SPP)や経皮酸素分圧(transcutaneous oxygen tension:tcPO2)などの微小循環検査も虚血の重症度評価に役立つ。レイノー現象の再現には、冷水負荷でのサーモグラフィー検査が有用である。■ 動脈の画像所見通常、下腿以遠や前腕以遠の動脈に病変がある。病変部には、動脈硬化性の壁不整(虫食い像、石灰化沈着など)がない。閉塞は途絶状や先細り状が多く、多発的分節的閉塞を呈する。また、しばしば二次血栓による閉塞の延長を伴う。慢性閉塞であるため側副血行路が発達し、コルクの栓抜き状(コイル状)や樹根状、ブリッジ状を呈する3)。ただし、これらは動脈硬化のない慢性動脈閉塞に共通の非特異的な所見であり、膠原病などでも類似の所見がみられる。膠原病では側副血行路の発達が乏しいとされるが、画像だけから両疾患を鑑別するのは難しい。■ 鑑別すべき疾患とくに閉塞性動脈硬化症との鑑別が重要である。病理組織学的には明らかに異なる疾患であるが、動脈の組織診を行うのは容易ではないため、画像検査で罹患部位に動脈硬化の所見がないことが、1つの重要な鑑別点である。患者が動脈硬化の危険因子を喫煙歴以外に有さないことも、鑑別診断の材料になる。しかし、近年は若年者でも脂質代謝、耐糖能、血圧の異常を有することが多い。加えて、動脈硬化は10代から始まるともいわれる。さらに、画像診断が進歩し、微細な初期変化を捉える可能性もあるため、診断にはより慎重な判断が求められる。全身性エリテマトーデスや強皮症などの膠原病との鑑別のためには、発熱や体重減少などの全身症状、他臓器の血管炎症状、免疫学的血液検査の所見などを評価する。外傷性動脈血栓症との鑑別には外傷歴が重要で、慢性外傷の可能性も念頭に、職業歴やスポーツ歴など患者の訴えに上がらないことも含め、多方面から病歴聴取を行う。とくに上肢で近位部に病変がある場合は、胸郭出口症候群による血栓症や塞栓症も疑う。下腿の虚血性疾患として、膝窩動脈捕捉症候群や膝窩動脈外膜嚢腫との鑑別には、膝窩部の触診と、動脈周囲の軟部組織を含めた画像検査を行う。動脈と静脈の両者を侵す疾患である血管ベーチェット病とは、口腔内アフタや陰部潰瘍など、他の皮膚症状や眼病変、動脈瘤の検索などを行い鑑別する。心房細動や心筋梗塞後の左室瘤に起因する血栓塞栓症との鑑別には、心エコー図検査が有用である。動脈瘤からの飛散血栓による塞栓症や、動脈壁の不整形粥腫に起因するコレステリン塞栓症などとも鑑別を要する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)バージャー病の治療目標は、救肢ならびに疼痛からの解放である。耐え難い疼痛は患者の精神をむしばむことがあり、若年での肢切断は生活と将来に多大なダメージを与える。治療における最重要かつ最難関の課題は、「禁煙」である。タバコは本疾患の誘発および増悪因子であるため、すべての患者で最初に行うのは禁煙を含めた保存的治療である。禁煙を厳守し続ければ、それだけで病状の寛解は期待できる。逆に、喫煙を続ければ、指趾や肢の切断に至る危険が高まる。保存的治療で重症虚血が軽快しない患者では、外科的治療を考慮する。いかなる治療も、有効性は禁煙を継続できるか否かによって左右されうる。■ 保存療法本疾患の炎症を抑える特効薬はない。禁煙を徹底し、受動喫煙も回避する。手足に傷や靴擦れをつくらないよう保護し、清潔を保つ。履物にも注意し、手足の皮膚に異常がないかを患者自身でも観察してもらう。本疾患の発症には歯周病菌の関与も示唆されており、口腔内の衛生も保つ。潰瘍や壊死、安静時痛がなく、ある程度の距離を歩行できる患者では、運動療法も間歇性跛行の歩行距離の延長に効果がある。血流改善を目的とした薬物治療では、プロスタグランジン製剤(アルプロスタジル注、リポPGE1、リマプラスト、ベラプロスト)が有効といわれる。ただし高いエビデンスは示されておらず、無効例も少なくない。経口投与で効果が不十分な場合は、経静脈投与やカテーテル留置による経動脈投与も考慮する。■ 外科的治療保存療法で安静時疼痛や潰瘍・壊死が改善しない場合は、血行再建術を考慮する。ただし、下肢では病変が下腿以下の細径動脈に多発し、良好なrun-offを期待できる開通先がないことが多い。下腿以下へのバイパス手術では、代用血管に自家静脈の使用が勧められるが、自家静脈が静脈炎で荒廃し、利用できない場合もある。近年では血管内治療について、再狭窄率が高く反復治療を要するものの、肢切断の回避率はバイパス術と劣らず、バイパス手術が不可能な患者に対しては選択可能との見解もある4)。血行再建術が不可能な患者では、上肢では胸部の、下肢では腰部の交感神経遮断術を考慮する。虚血が改善しない肢には、激しい疼痛を伴うことが多い。一般の鎮痛薬では疼痛制御が困難なことが多く、オピオイド系鎮痛薬がしばしば必要になる。フェンタニル貼付薬は、保険診療にて使用可能である。これらの治療で改善しない潰瘍や疼痛、広範囲な壊死や荷重部の壊死、制御できない感染を伴う場合などは、肢切断もやむを得ない。上肢では交感神経遮断で症状が落ち着くことが多く、血行再建術や大切断を要することは少ない。4 今後の展望血管内治療のデバイスや技術の進歩は、近年目覚ましい。バイオテクノロジーを駆使した、各種の血管新生療法(遺伝子治療、細胞移植療法など)5)や、抗血栓性に優れた人工血管の開発も著しい進展をみせており、本疾患の肢虚血でも治療の向上が期待される。また、病因の解明が進めば、本疾患の予防や根治的な治療にもつながりうる。5 主たる診療科血管外科、心臓血管外科、循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター バージャー病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金・難治性疾患等政策研究事業 難治性血管炎に関する調査研究(医療従事者向けの情報)患者会情報北海道バージャー病友の会(患者とその家族向けの情報)1)Shigematsu H, et al. Int Angiol. 1999;18:58-64.2)Shionoya S. Cardiovasc Surg. 1993;1:207-214.3)塩川優一 編集. 厚生省特定疾患系統的血管病変に関する調査研究班臨床分科会報告書.厚生省公衆衛生局難病対策課;1977.p.1-38.4)Ye K, et al. J Vasc Surg. 2017;66:1133-1142.5)Kondo K, et al. Circ J. 2018;82:1168-1178.公開履歴初回2018年06月12日

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飲酒と心血管疾患・脳卒中、関連は逆?/BMJ

 アルコール摂取は、非致死的な冠動脈疾患(CHD)と負の相関がみられた一方、複数の脳卒中サブタイプとは正の相関が認められたことが、WHO国際がん研究機関のCristian Ricci氏らによる検討の結果、明らかにされた。著者は、「示された結果は、アルコール摂取と心血管疾患(CVD)の関連は種々存在することを強調するものであり、アルコール摂取の低減方針のエビデンスを強化するものである」とまとめている。BMJ誌2018年5月29日号掲載の報告。ヨーロッパの8ヵ国3万2,549例について前向きコホート研究 これまで多くの前向きコホート研究では、アルコール摂取に関して、コホート登録時のみ評価がされていた。それらの検討において、中程度のアルコール消費は、CHDの低リスクと関連しており、がんや全死因死亡の高リスクと関連することが示唆されている。また、アルコール消費は全脳卒中の高リスクとの関連が示唆されているが、脳卒中サブタイプに関するエビデンスは限定的であった。 研究グループは、多施設共同ケースコホート研究で、アルコール消費(ベースラインおよび一生涯について評価)と、非致死的・致死的なCHDおよび脳卒中との関連を調べた。 ヨーロッパの8ヵ国で被験者を募ったEuropean Prospective Investigation into Cancer and nutrition cohort(EPIC-CVD)内で、CVD決定因子の試験を設定。CVDイベント発生例、および下位コホートを含むベースラインで非CVDの3万2,549例について、非致死的・致死的なCHDおよび脳卒中(虚血性・出血性脳卒中含む)の発生を評価した。CHDとは負の相関、脳卒中とは正の相関 発生イベント件数の内訳は、非致死的CHDが9,307例、致死的CHDが1,699例、非致死的脳卒中は5,855例、致死的脳卒中は733例であった。 ベースラインにおけるアルコール摂取と非致死的CHDには負の相関が認められ、摂取量12g/日増加当たりのハザード比(HR)は0.94(95%信頼区間[CI]:0.92~0.96)であった。 また、ベースラインアルコール摂取と致死的CHDリスクにはJ曲線の関係がみられた。総アルコール摂取量0.1~4.9g/日群と比較したHRは、5.0~14.9g/日群が0.83(0.70~0.98)、15.0~29.9g/日群が0.65(0.53~0.81)、30.0~59.9g/日群が0.82(0.65~1.03)であった。 対照的に、非致死的および致死的脳卒中リスクとは正の相関がみられ、ベースラインアルコール摂取量12g/日増加当たりのHRは、非致死的脳卒中が1.04(1.02~1.07)、致死的脳卒中が1.05(0.98~1.13)であった。虚血性および出血性脳卒中別にみても、おおよそ類似の所見が認められた。 ベースラインアルコール摂取と生涯平均アルコール消費の心血管アウトカムとの関連は、試験が行われた8ヵ国すべてにわたって、おおよそ類似していた。 CVDイベントリスクへのアルコール摂取と喫煙状態の交互作用に関する強いエビデンスはなかった。

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抗うつ薬は長期の体重増リスク/BMJ

 抗うつ薬処方と体重増加の関連を10年間フォローアップした結果、抗うつ薬処方は長期にわたる体重増のリスクと関連している可能性が示された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのRafael Gafoor氏らが、同国のプライマリケア・データベースを利用した住民ベースのコホート研究の結果、明らかにしたもので、BMJ誌2018年5月23日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「抗うつ薬治療の必要性を示す場合は、体重増加の可能性を考慮すべきである」とまとめている。肥満は世界的な課題で、抗うつ薬の使用は広がりつつある。これまで短期試験において、抗うつ薬使用と体重増加の強い関連性が示されているが、個々の抗うつ薬に関する長期的リスクのデータは存在していなかった。英国プライマリケア・データベースで住民コホート研究 研究グループは、英国内にある一般診療所のデータを集めたUK Clinical Practice Research Datalinkの2004~14年のデータを用いて、抗うつ薬処方と体重増加の長期的な関連性を調べた。被験者は、BMIに関する3つ以上の記録があった男性13万6,762例、女性15万7,957例。 主なアウトカムは、抗うつ薬処方、5%以上体重増の発生率、過体重または肥満への移行であった。年齢、性別、うつ病の記録、併存疾患、同時に処方された抗てんかん薬または抗精神病薬、所得レベル、喫煙、食事療法のアドバイスについて補正後のPoissonモデルを用いて、補正後率比を推算し評価した。5%以上の体重増、処方群は非処方群の1.21倍、体重増リスクは6年間以上持続 試験開始年において、抗うつ薬を処方されていたのは、男性1万7,803例(13.0%)、女性3万5,307例(22.4%)で、平均年齢は51.5歳(SD 16.6)であった。 フォローアップ183万6,452人年において、5%以上体重増の新たなエピソード発生率は、抗うつ薬非処方群で8.1/100人年、処方群で11.2/100人年と有意差が認められた(補正後率比:1.21、95%信頼区間[CI]:1.19~1.22、p<0.001)。 体重増のリスクは、フォローアップ中、少なくとも6年間は増大が続いていた。治療2年目に、抗うつ薬治療群で5%以上体重増の新たなエピソードを認める被験者数は、27例(95%CI:25~29)であった。また、試験開始時に正常体重であった被験者で、過体重または肥満に移行した被験者の補正後率比は、1.29(1.25~1.34)、過体重だった被験者が肥満に移行した同率比は、1.29(1.25~1.33)であった。 体重増加との関連について、抗うつ薬のクラス間には大きなばらつきがみられた。 著者は、関連には因果関係がない可能性があり、残余交絡因子が関連の過大評価に寄与している可能性があるとしている。

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進行肺がん1次治療へのアテゾリズマブ併用療法 、OSハザード比0.78(IMpower150)/ASCO2018

 米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で、アテゾリズマブの第III相臨床試験IMpower150における全生存期間(OS)の中間解析結果を、フロリダ・ホスピタル・キャンサー・インスティテュートのMark A. Socinski氏が発表した。IMpower150は、Stage IV非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療として、化学療法(パクリタキセル+カルボプラチン)±ベバシズマブへのアテゾリズマブ併用療法の有効性と安全性を検討するオープンラベル無作為化多施設共同試験。 本試験では、1,202例の患者を以下の3群に1:1:1の割合で無作為に割り付け、各群の投与レジメンに従い3週に1回間隔で薬剤を投与した。A群:アテゾリズマブ(1,200mg)+カルボプラチン(AUC6)+パクリタキセル(200mg/m2)B群:アテゾリズマブ(1,200mg)+カルボプラチン(AUC6)+パクリタキセル(200mg/m2)+ベバシズマブ(15mg/kg)C群:カルボプラチン(AUC6)+パクリタキセル(200mg/m2)+ベバシズマブ(15mg/kg) 主要評価項目は、EGFRまたはALKの遺伝子変異陽性患者を除くITT解析集団(ITT-WT)ならびにT細胞活性調整因子(Teff)の遺伝子発現により層別化した集団におけるPFS、およびITT-WT におけるOS。 主な結果は以下のとおり。・A群に349例、B群に359例、C群に337例、ITT-WTの患者が組み入れられた。年齢中央値は63歳、62%が男性、85%が現在あるいは過去の喫煙者で、42%がECOG PS:0であった。・データカットオフ(2018年1月22日)の追跡期間中央値は約20.0ヵ月。・B群とC群の比較において、OS期間中央値は、B群が19.2ヵ月と、C群の14.7ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.64~0.96、p=0.0164)。 ・PD-L1高発現患者(TC3またはIC3;136例)のOSは、B群25.2ヵ月、C群15.0ヵ月 (HR:0.70)、低発現患者(TC1/2またはIC1/2;226例)のOSは、それぞれ 20.3ヵ月と16.4ヵ月(HR:0.80)、発現なし(339例)のOSは、それぞれ 17.1ヵ月と14.1ヵ月(HR:0.82)であった. ・EGFR/ALK遺伝子変異陽性患者(104例)のOSは、B群NE、C群 17.5ヵ月であった(HR:0.54)。 ・ITT-WT集団のうちベースライン時に肝転移のあった患者(94例)におけるOSは、 B群13.2ヵ月、C群9.1ヵ月であった(HR:0.54)。・A群とC群の比較において、OSは、A群が19.4ヵ月と、C群14.7ヵ月に比べ延長傾向が確認された(HR:0.88、95%CI:0.72~1.08、p=0.2041)。・全患者において、Grade3以上の治療関連有害事象発現率は、A群43%、B群57%、C群49%であった。 この結果は、同時にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。■参考ASCO2018 AbstractSocinski MA, et al.N Engl J Med. 2018 Jun 4.[Epub ahead of print]■関連記事アテゾリズマブ併用療法、進行肺がん1次治療でPD-L1発現、遺伝子ステータスに関わらずPFSの改善示す(IMpower-150)/AACR2018抗PD-L1抗体アテゾリズマブ国内発売、肺がん治療に※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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米国の若年肺がん罹患率、女性のほうが高い/NEJM

 歴史的には男性のほうが女性よりも肺がん罹患率は高い傾向にあったが、1960年代半ば以降に生まれた非ヒスパニック系白人とヒスパニックでは逆転していることが示された。この理由は喫煙では説明できず、今後、若年女性で肺がん罹患率が高い理由を明らかにするための研究が必要だという。米国がん協会のAhmedin Jemal氏らが、北米がん中央登録所協会(NAACCR)のデータを分析し、報告した。先行研究において、米国における若年の肺がん罹患率は男性より女性で高いことが示唆されていたが、この傾向が現代の出生コホートでも認められるか、その場合、喫煙行動で十分説明できるかどうかは不明であった。NEJM誌2018年5月24日号掲載の報告。NAACCRのデータに基づく肺がん罹患率と国民健康調査での喫煙率を解析 研究グループは、NAACCRのデータを用い、性別、人種/民族別(白人、黒人、アジア・環太平洋、ヒスパニック)、年齢別(30~34歳、35~39歳、40~44歳、45~49歳、50~54歳)、出生年別および診断年別(1995~99年、2000~04年、2005~09年、2010~14年)に、全国の人口に基づいた肺がん罹患率(10万人年当たり)と女性と男性の罹患率比を算出した。また、米国国民健康聞き取り調査(National Health Interview Survey)のデータを用い、1970~2016年の喫煙率も同様に調査した。喫煙率との関連はみられず 過去20年、全人種/民族を含む年齢別の肺がん罹患率は、全年齢群で男女とも低下したが、低下幅は男性のほうが大きかった。結果として、50~54歳群を除く年齢群で女性の男性に対する罹患率比が1.0を上回った。たとえば、40~44歳群における女性vs.男性の罹患率比は、1995~99年は0.82(95%信頼区間[CI]:0.79~0.85)だったが、2010~14年は1.13(同:1.08~1.18)になっていた。 また、出生コホート別に年齢別罹患率をみると、男性では一貫して低下がみられたが、女性では1950年頃から1960年頃の出生コホートで、上昇後に低下していた。その結果、女性の罹患率は男性を上回っていた。たとえば、45~49歳群の罹患率(10万人年当たり)は、1950年頃の出生コホートでは、女性は27.0、男性は36.5であったが(女性vs.男性の罹患率比:0.74、95%CI:0.72~0.76)、1965年頃の出生コホートでは、女性が24.9、男性が23.1と逆転していた(同罹患率比:1.08、1.05~1.11)。 さらに、診断年別・出生コホート別の年齢別罹患率を人種別にみると、女性の肺がん罹患率上昇は、白人とヒスパニックにおいて確認された。たとえば、40~44歳群での女性vs.男性の罹患率比は、白人において1995~99年は0.88(95%CI:0.84~0.92)であったが2010~14年は1.17(同:1.11~1.23)に、ヒスパニックは0.79(同:0.67~0.92)が1.22(同:1.04~1.44)になっていた。出生コホート別では、1950年頃の出生コホートで白人とヒスパニックがそれぞれ0.81、0.64であったが、1965年頃の出生コホートでは1.13、1.12であった。 性別罹患率のクロスオーバーは、1965年以降に出生の非ヒスパニック系白人で起きていた。 1965年以降の出生群では、女性の喫煙率は男性との差が縮まったが、全般的に男性の喫煙率を上回ってはいな

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緑茶は口腔関連QOLに好影響~亀岡スタディ

 緑茶とコーヒーはどちらも健康によい効果をもたらすことが知られているが、口腔健康に関連する生活の質(OHRQoL)との関連は不明である。今回、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の南里 妃名子氏らは、高齢者コホートでの調査で、緑茶摂取量がOHRQoLと関連することを報告した。とくに男性では、1日3杯以上の摂取でOHRQoL不良リスクが減ることが示唆された。一方、コーヒー摂取量との関連は示されなかった。European Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2018年5月23日号に掲載。 著者らは、京都亀岡スタディ(亀岡市在住高齢者を対象としたコホート研究)において、2012年のベースラインの横断的データを分析した。参加者は65歳以上の日本人7,514人(男性3,563人、女性3,951人)で、緑茶とコーヒーの摂取頻度などの自記式調査票に回答した。OHRQoLの評価には、高齢者の口腔健康問題を調べる自己申告のGeneral Oral Health Assessment Index (GOHAI)を用いた。GOHAIスコアが50点未満の場合、OHRQoL不良とした。 主な結果は以下の通り。・年齢、BMI、総エネルギー摂取量、飲酒、喫煙、薬剤服用、コーヒー摂取量、果物・野菜摂取量の調整後、男女とも緑茶摂取量の増加がGOHAIスコアと強い正相関を示した(男女とも、傾向のp<0.001)。・一方、コーヒー摂取量は、すべての因子を調整後、男性(傾向のp=0.538)、女性(傾向のp=0.607)とも、GOHAIスコアとの間に統計的に有意な関連はみられなかった。・OHRQoL不良の多変量オッズ比(95%信頼区間)は、緑茶摂取が「なし」「1日1杯未満」「1日1~2杯」「1日3杯以上」の順に、男性が1.00、1.01(0.80~1.27)、0.95(0.74~1.21)、0.78(0.61~0.99)(傾向のp=0.024)、女性が1.00、1.19(0.90~1.57)、0.98(0.74~1.29)、0.86(0.67~1.12)(傾向のp=0.014)であった。

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これからの心不全治療、認識新たに【東大心不全】

高齢化に伴い急増する心不全。今後も、より大きな問題となる心不全に、どう対応していくべきか。東京大学循環器内科学 教授 小室一成氏に聞いた。わが国の心不全の現状について教えてください。画像を拡大する画像を拡大する日本の心不全患者数は、現在、推計100万人。その数は2030年まで増え続け、130万人を超えるといわれています。増加は日本だけでなく、米国、欧州などの先進諸国やアジア、アフリカ諸国でもみられます。理由は高齢化です。心不全の発症は高齢者、とくに65歳を超えると急増します。わが国は高齢化が最も進んでいますので、心不全が今後大きな問題になることは間違いないといえます。わが国の心不全治療の現状について教えていただけますか。心不全の治療は、あらゆる疾患の中で最も確立されています。心不全リスク群であるステージAおよびBでは、器質的心疾患の発症・進展予防を、症候性の心不全であるステージCでは、症状コントロールを行います。とくに、ACE、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、心不全に対する複数の大規模臨床試験によって、生存予後を20~30%改善するというエビデンスがあります。また、最重症のステージDでは、適応があれば、心臓移植となりますが、わが国はこの分野でも成績は良好で、海外の心移植後5年生存率が8割程度なのに対し、日本では9割を超えます。さらに、移植待機中のLVAD治療についても良好な結果を示しています。しかし、問題点もあります。薬剤は有効であるものの、すべて対症療法です。移植についても、わが国ではドナーが少なく、移植までの待機期間は平均3年。世界でも飛び抜けて長いといえます。この待機期間は今後さらに伸びると予想され、ドナーを増やすよう活動していく必要があると思っています。学会としての取り組みについて教えていただけますか。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する一昨年(2016年)、日本循環器学会と脳卒中学会を中心に「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」を作成しました。“健康寿命の延伸”と“5年で5%の死亡率減少”を大目標とし、5戦略(医療体制の充実、人材育成、予防・国民への啓発、登録事業の促進、臨床・基礎研究の強化)と3疾患を定めました。3疾患は脳卒中、血管病、そして、現在、循環器疾患の死亡で最も多い心不全です。心不全における5戦略、1つ目は医療体制の構築です。心不全患者さんの多くは、入院治療により改善して退院しますが、退院後の生活習慣、服薬指導が重要なのです。これを怠ると、急性増悪を繰り返しながら悪化し、最終的に命を落とすことになります。これを防ぐためには、専門病院から慢性期、在宅までの診療をシームレスに行える、心不全を念頭に置いた医療体制を作ることが必要です。2つ目は人材育成です。このように心不全は退院後が非常に重要なので、患者さんと密接な関係にある、実地医家の医師やメディカルスタッフの人材育成が重要になります。画像を拡大する3つ目は、予防・国民への啓発です。心不全は重症度に応じて4つの予防チャンスがあります。塩分・脂質過多、喫煙、多量飲酒、運動不足といった生活習慣の改善による0次予防。肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常の改善による心臓病にならないための、ハイリスク群の1次予防。そして、心不全の早期治療と再発予防による2~3次予防。最後は突然死の予防です。しかし、このチャンスも、患者さんに“心不全は予防できる”、ということをご理解いただかないと活かせません。そのために、アニメキャラクター「ハットリシンゾウ」を啓発大使とし、「シン・シン(心臓・身体)健康プロジェクト」を展開しています。そこでは、一般の方にわかりにくかった心不全の定義を「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」とし、疾患としての認知促進を図っています。4つ目は登録事業の促進です。前述のとおり、日本の心不全患者数は100万人とされますが、この数字は新潟県佐渡市の統計から推計したものです。正確な統計ではありません。心不全患者がわが国に何人おり、どのような治療が行われていて、どのような地域差があるのか、こういった実態をレジストリで明らかにすることを考えています。5つ目は基礎研究です。これも前述のとおり、心不全の治療薬は有効であるものの、対症療法です。心不全発症の分子機序を解明して、それに基づいた新薬や新デバイスの開発をしないと、急増する心不全を減らすことはできません。そのためにも、メカニズムを明らかにする基礎研究が重要だと考えています。今年(2018年)の日本循環器学会学術集会で、「急性・慢性心不全診療ガイドライン」の改訂が発表されました。今回のガイドラインの大きな改訂ポイントは、急性と慢性の統合、ステージングの明確化、予防の重要性の強調です。急性と慢性を統合した理由は、急性心不全の多くは慢性心不全の増悪であるからです。心不全では、急性期に入院し、回復して退院しますが、その状態は慢性心不全の継続です。状態は入院前よりも悪化しています。それが理解されないと、入退院の繰り返しにつながります。今回のガイドラインでは、症状とリスク因子などを示し、患者さん自身が、どのステージングにおり、何をすべきか一目でわかるように工夫しています。東京大学での取り組みについて教えていただけますか。わが国の心臓移植は、東京大学、大阪大学、国立循環器病研究センターの3施設で8割、東京大学では、全国の4分の1を担っています。また、東京大学は交通の便が良いこともあり、遠方からも多くの心不全患者さんが受診されます。そのような中、2017年12月、新病棟に高度心不全治療センターを開所しました。同センターでは、移植待機、移植後など多くの重症心不全患者さんを、心臓外科と循環器内科がワンフロアで診療しています。場合によっては、3~4年入院して移植を待つこともあるため、快適な病室やリハビリテーション設備に工夫を凝らしています。また、東京大学では、循環器内科と心臓外科が一体となって、心不全を含めたあらゆる循環器疾患の最後の砦になるため、ほかの施設では治療できない重症患者さんを引き受けて治療しています。多くの施設から相談を受けますが、必要があれば、施設に伺って患者さんを拝見させていただきますし、場合によっては当院への入院を勧めています。最後に先生方にメッセージをお願いします。大学・大病院では心不全の急性増悪患者さんを診療します。それらの患者さんの多くは退院されますが、2度と急性増悪しないことが、最も重要です。とはいえ、退院していったケースは、大学や大病院では十分に管理できません。患者さんと密接な関係にある実地医家の方々に、患者さんの日常生活や服薬などを注意していただくことで、初めて急性増悪が防げるのです。このように、心不全治療は、専門施設と実地医家が連携を深め、一体となって行う必要があります。実地医家の先生方にも心不全をご理解いただき、共に診療にあたっていただければと思います。講師紹介

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