腹部大動脈瘤スクリーニングは有益か/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2018/06/28

 

 腹部大動脈瘤(AAA)スクリーニングは、AAA死亡の減少に寄与していないことが、スウェーデン・イエーテボリ大学のMinna Johansson氏らによる、スウェーデン人を対象としたレジストベースのコホート研究で明らかにされた。AAA発症およびAAA関連死亡にみられる大幅な減少を、スクリーニングに関する無作為化試験の結果で評価するのは時代遅れではないかとの指摘があったが、今回の検討で、減少した要因の大半は他の因子によるもので、おそらくは喫煙の減少によることが示唆されたという。著者は、「ベネフィットは小さく、有益性と有害性のバランスは非常に悪く、スクリーニングの正当性に対する疑念を深める結果であった」とまとめている。Lancet誌2018年6月16日号掲載の報告。

スクリーニング群vs.非スクリーニング群の疾患別死亡率、罹患率、手術を比較
 研究グループは、スウェーデンにおけるAAAスクリーニングの疾患別死亡率、罹患率、および手術に関する影響を推定する検討を行った。2006~09年にスクリーニングを受けた同国65歳男性コホートを対象に、AAA罹患、AAA死亡、AAA手術に関するデータを集め、年齢で適合した非AAAスクリーニングのデータと比較した。また、ナショナルデータベースを利用して1987年1月1日~2015年12月31日の40~99歳男性に関するデータも分析し、背景傾向を調べた。

 交絡因子の調整は、コホート年、婚姻状態、教育レベル、収入、またベースラインでのAAA診断有無に関するロジスティック回帰モデルから得た傾向スコアを用いた重み付け分析法により行った。差異に関する調整も、スクリーニング後6年のコホートに残る逆確率を用いた重み付け分析法で行った。また、一般化推定方程式を用いて、反復測定および重み付けによる分散を調整した。

スクリーニング6年後、死亡減少とスクリーニングに有意な関連みられ
 スウェーデン人男性のAAA死亡率(65~74歳男性10万人当たり)は、2000年初期は36例であったが、2015年には10例に減少していた。死亡率の減少は全国的にみられ、AAAスクリーニング実施の有無に関係していなかった。

 スクリーニングの6年後の分析では、AAA死亡率の減少とスクリーニングに有意な関連はみられなかった(補正後オッズ比[aOR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.38~1.51)。この時点で、AAAスクリーニングを受けた男性が回避可能なAAA死亡は、1万人当たり2例(95%CI:-3~7)であった。

 スクリーニングは、AAA診断のオッズ増大と関連していた(aOR:1.52、95%CI:1.16~1.99、p=0.002)。また、待機的手術のリスク増大(同:1.59、1.20~2.10、p=0.001)や、過剰診断の恐れとの関連(スクリーニング受診1万人当たり49例[95%CI:25~73例])が認められ、死亡や罹患リスクを増大した回避可能な手術がそのうちの19例(95%CI:1~37)に行われていた。

(ケアネット)

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コメンテーター : 中澤 達( なかざわ たつ ) 氏

社会福祉法人 聖母会 聖母病院 院長

J-CLEAR評議員