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バンクーバーの医療安全国際学会【Dr. 中島の 新・徒然草】(185)

百八十五の段 バンクーバーの医療安全国際学会今回はカナダ・バンクーバーの医療安全関連の学会で、先日、我々が発表した内容を紹介いたします。この学会はレジリエント・ヘルス・ケア・ネットワーク・ミーティングというもので、新たな考え方に立って医療安全を推進するものです。つまり、従来の安全の考え方(Safety-I)というのは「物事がうまくいかないのは、正しく行わなかったからだ」という単純な因果律に縛られており、犯人探しに終始してしまっています。現実の世界はそんなに単純なものではなく、因果関係のはっきりしない複雑適応系を前提とした物の見方が重要になってきます。そこでレジリエント・ヘルス・ケア・ネットワーク・ミーティングでは、常にあらゆるものが変動している中で、現在や未来をうまく制御しよう(Safety-II)としているのです。提唱者のエリック・ホルナゲル教授は原子力発電所の安全マネジメントなどで有名な人で、医療にも同じ考え方を応用できるはずだ、ということでずっと活動をしてきました。さて、この学会における日本からの我々の発表は、某病院の薬剤取り違え事件をキッカケにしたものです。薬剤取り違えを起こした某病院院内調剤部門では、(1)2つの薬剤を離して配置する(2)ダブルチェックではなく、トリプルチェックを行う(3)バーコードリーダーを導入するという、極めて Safety-I 的な再発予防策を考えました。このような力業ではなかなかうまくいかない、というのは読者の皆様も薄々感じておられることと思います。そこで、その某病院の医療安全部門が院内調剤部門の日常業務の観察を行いました。その結果分かった事は、膨大な数の院内処方があり、調剤(ピッキング)や鑑査の件数は時間帯によって変動する。その状況に対応するために院内調剤室だけではなく、化学療法室や病棟の薬剤師に応援を要請している。1日3便あるトレインで薬剤を病棟に搬送するため、これに間に合わせる形で業務を行っている。調剤、鑑査の合間に平均3分毎に電話が鳴り、平均11分毎にカウンター業務が割り込む。加えて新人薬剤師への指導や実習薬学生への教育がある。ということで、常に変動する状況の中でも薬剤師さん達はスーパーマンのように働き、また薬剤部の中でのマンパワーのやりくりで何とか凌いでいることが分かりました。で、この観察で我々が潜在的脅威として見出したのは電話への応答とカウンター業務です。院内調剤部門では、電話での問い合わせに対してはテキパキと即答、カウンターもニコニコ対応をしていました。そのこと自体は立派ですが、歯止めのないポジティブフィードバックは得てして暴走しがちです。頻繁にかかってくる電話の内容は、処方した薬剤はいつくるのか、取りに行ってもいいのか、といったものばかりで、薬学の知識を要するものはほとんどありません。その一方、薬剤師さん達はいつも爽やか対応なので、皆が気軽に頼ります。結局、電話とカウンター業務が暴走し、いつしか院内調剤部門が破綻してしまうのではないか、ということが懸念されました。薬剤部もこの状況をよく理解しており、薬剤師をもっと増やして下さい不要不急の電話はやめて下さいというアピールをしているのですが、当然のことながら全く効果はありません。これに対し、Safety-II の観点からの観察を終えた我々は以下の2つの対策を提案しました。処方した薬剤の状況の「見える化」を図る:薬剤の調剤・搬送状況を電子カルテで見ることのできるシステムがサードパーティーから市販されているので、それを利用する。これがあれば、院内調剤部門に電話をかける必要がなくなります。1日3便のトレイン搬送をもっと増やす:担当の業者さんによれば、トレインの便数にはまだまだ余裕があるのだとか。配送の便数が増えれば、病棟から薬をとりにくる必要がなくなり、カウンター業務が激減するはずです。このような考えのもと、試しに医療安全部門所属の薬剤師が院内調剤部門に1週間出向いて、電話対応とカウンター業務をすべて肩代わりしたところ、「なんだか今日は凄く気持ち良く仕事ができた!」と現場の薬剤師さんたちに感謝されたそうです。それなら薬剤師を1人増やせば解決するのかというと、そうではありません。潜在的脅威がなくならない限り、これが暴走して部門が破綻する危険性が残っているからです。したがって、薬剤部だけで何とかしようとするのではなく、薬剤部の業務に影響を与える他部門とともに全体最適化を図りつつ解決するべきだと思います。ということで、英語の苦手な日本人が4人がかりでやった発表が会場から万雷の拍手をいただきました。前夜までスライドを修正し、当日朝まで英語の練習をした甲斐があったというものです。そして、なんと2年後の学会は日本で開催されることになりました。それまでに、英語でのやりとりもスムーズにできるようになっておきたいものです。帰国後の1句ニコニコと 爽やか対応 自滅する

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PARP阻害薬olaparib、卵巣がんの適応を拡大/FDA

 AstraZeneca(本社:英国ロンドン、CEO:Pascal Soriot)およびMerck&Co., Inc.,(本社:米国ニュージャージー)は2017年8月17日、米国食品医薬品局(FDA)が PARP阻害剤olaparibに対し下記の通り承認を付与したことを発表した。・BRCA遺伝子変異の有無を問わず、プラチナ製剤ベースの化学療法後に奏効を示している再発上皮性卵巣がん、卵管がんあるいは原発性腹膜がん成人患者に対する維持療法。・olaparib錠の新たな承認(従来はカプセル)。・olaparib錠が3レジメン以上の化学療法治療歴を有する病的変異または病的変異疑いに分類される生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性の進行卵巣がん患者の治療薬としても正式に承認された(現在の迅速承認からの変更)。 今回の新規承認および当初単群試験に基づく迅速承認から正式承認への変更は、SOLO-2 試験、19試験の2つの無作為化試験に基づいている。 SOLO-2試験はgBRCA遺伝子変異陽性プラチナ製剤感受性再発卵巣がん、卵管がんおよび原発性腹膜がん患者を対象としたolaparib錠の単剤維持療法の有効性をプラセボと比較した無作為化二重盲検多施設共同第III相試験。患者は2レジメン以上のプラチナベース化学療法でCRおよびPRを示したBRCA1または2遺伝子変異を有する295例。結果、olaparibのベネフィットが確認され、olaparibは病勢進行あるいは死亡リスクを70%低減し(治験担当医師評価、HR:0.30、95%CI: 0.22~0.41、p<0.0001)、無増悪生存期間(PFS)をプラセボ群の5.5ヵ月に対し、19.1ヵ月に改善した。 19試験は16ヵ国82施設における高悪性度再発卵巣がん患者を対象としてolaparibの有効性と安全性を比較した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験。結果、olaparibはBRCA遺伝子変異状況を問わず、病勢進行あるいは死亡リスクを65%低減した。PFSをプラセボ群の4.8ヵ月に対しolaparib群8.4ヵ月と有意に改善した(HR:0.35、95%CI:0.25~0.49、p<0.0001)。さらに、全生存期間(OS)の中央値は、プラセボの27.8ヵ月に対し、29.8ヵ月を示した (HR:0.73、95% C:0.55~0.95)。■参考アストラゼネカ株式会社プレスリリースAstraZeneca(米国)プレスリリースFDAニュースリリースSOLO-2試験■関連記事遺伝性の卵巣がん治療とPARP阻害薬の可能性オラパリブ、BRCA変異陽性卵巣がんの病勢進行リスクを70%低減:アストラゼネカ

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抗CD20抗体obinutuzumab、濾胞性リンパ腫に承認申請

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役会長CEO:永山 治)および日本新薬株式会社(本社:京都、代表取締役社長:前川重信)は、「CD20陽性のB細胞性濾胞性リンパ腫」を対象として国内で共同開発を進めていた抗CD20モノクローナル抗体obinutuzumabについて、中外製薬が2017年8月23日、製造販売承認申請を厚生労働省に行ったと発表した。 今回の申請は、ロシュ社が実施し、国内からも参加した国際共同第III相試験(GALLIUM試験)などの成績に基づいている。GALLIUM試験は、1,401例の未治療のCD20陽性進行期低悪性度非ホジキンリンパ腫患者を対象に、リツキシマブ・化学療法併用の導入療法後にリツキシマブ維持療法を継続した群(リツキシマブ群)に対する、obinutuzumab・化学療法併用の導入療法後にobinutuzumab維持療法を継続した群(obinutuzumab群)の有効性と安全性を比較した非盲検無作為化国際共同第III相試験。GALLIUM試験の主要評価項目は、主治医評価による濾胞性リンパ腫患者(1,202例)における無増悪生存期間(PFS)であった。副次的評価項目は独立評価委員会判定によるPFS、全生存期間(OS)、および安全性など。 GALLIUM試験の主要評価項目において、obinutuzumab群はリツキシマブ群と比較して34%、統計学的に有意に減少させたが(HR:0.66、95%CI:0.51~0.85、p=0.0012)、PFS中央値は未達である。副次的評価項目については未達であったが、病勢進行・再発・死亡のリスクはobinutuzumab群で29%減少した(HR:0.71、95%CI:0.54~0.93、p=0.0138)。OSは両群とも未達であった。GALLIUM試験において両群で発現した有害事象はこれまでに報告されたものと同様であったが、リツキシマブ群に比べobinutuzumab群で5%以上高く認められたGrade 3以上の有害事象は、好中球減少(43.9%対37.9%)であった。■参考中外製薬株式会社ニュースリリースGALLIUM試験(Clinical Trials.gov)

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悪性脳腫瘍に対するテモゾロミド療法の役割は?/Lancet

 新たに診断された1p/19q非欠失の退形成星細胞腫患者において、テモゾロミドアジュバント療法により、顕著な生存ベネフィットを得られることが、第III相無作為化非盲検試験「CATNON(EORTC study 26053-22054)」の中間解析として報告された。オランダ・エラスムスMCがん研究所のMartin J van den Bent氏らが、Lancet誌オンライン版2017年8月8日号で発表した。同患者に対するテモゾロミドによる化学療法は、1p/19q欠失の退形成星細胞腫よりも有効性は低く予後は不良とされているが、その役割は明確にはなっていなかった。放射線療法と併用またはアジュバント療法について評価 研究グループは、1p/19q非欠失の退形成星細胞腫成人患者における放射線療法と併用またはアジュバント療法として行うテモゾロミド化学療法を評価するため、2×2要因デザインを用いた検討を行った。適格患者は、18歳以上、1p/19q非欠失退形成星細胞腫を新規診断され、WHO全身状態スコアが0~2とした。 患者を、電子的EORTCウェブベースORTAシステムで、次の4群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。放射線治療(59.4Gy:1.8Gyずつの33分割)単独治療群、放射線治療+テモゾロミドアジュバント療法(1日目~5日目に150~200mg/m2投与を4週間サイクルで12回)群、放射線治療+テモゾロミド併用療法(75mg/m2/日)群、放射線治療+テモゾロミド併用+テモゾロミドアジュバント療法群。 主要エンドポイントは全生存率(OS)で、全身状態スコア(>0 vs.0)、年齢(50歳未満 vs.50歳以上)、1pヘテロ接合欠失(あり vs.なし)、オリゴデンドログリアの存在(あり vs.なし)、MGMT遺伝子プロモーター領域メチル化状態(メチル化 vs.メチル化していないが不明瞭または不明 vs.非メチル化)で補正を行いintention to treat解析を行った。 当初計画では、219例(41%)の死亡が発生した時点で中間解析を行い、有効性の帰無仮説を検証する予定であった(リジェクション閾値はp<0.0084)。アジュバント療法を行った群のOSに関するハザード比は0.65 2007年12月4日~2015年9月19日の間に、1,407例がスクリーニングを受け、748例が治療群に無作為に割り付けられていた。中間解析の条件に達したのは2015年5月。データをロックした同年8月31日時点で、登録完了していたのは745例(99%)であった。 追跡期間中央値は27ヵ月(95%信頼区間[CI]:25~30)。2015年5月31日までに、病勢進行は344例(46%)、死亡は221例(30%)であった。死亡の内訳は、テモゾロミドアジュバント療法を受けなかった群が129/372(35%)、受けた群は92/373(25%)であった。OSに関するハザード比(HR)は、テモゾロミドアジュバント療法を用いた群で0.65(99.145%CI:0.45~0.93、p=0.0014)であった。5年時点のOSは、テモゾロミドアジュバント療法を使用した群で55.9%(95%CI:47.2~63.8)、非使用群は44.1%(同:36.3~51.6)であった。 Grade3-4有害事象の発生は、テモゾロミド投与群に割り付けられた患者549例中8~12%で報告されたが、血液学的なものまたは可逆的な事象が主なものであった。 結果を踏まえて著者は、「さらなる分析で、テモゾロミド併用の役割と分子レベルの役割解明が必要である」と述べている。

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非小細胞肺がん化学放射線同時併用療法(CCRT)のアンメットニーズ 第3回【肺がんインタビュー】

第3回 非小細胞肺がん化学放射線同時併用療法(CCRT)のアンメットニーズStage III非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、化学放射線同時併用療法(CCRT)の適用レジメンについて検討した「TORG1018試験」。この試験に関する記事が、肺がん治療医師の方々からの高い関心を集めている。そこで、NSCLCのCCRTに適用する化学療法、そしてTORG1018試験について、日本医科大学の久保田 馨氏に聞いた。CCRTの適応になる患者さんは、どの程度おられますか?縦郭リンパ節転移があるStage IIIAおよびStage IIIBでは、化学放射線同時併用療法(CCRT)が治療の中心になります。内科的治療対象の3~4割程度になると思います。III期NSCLCにおけるCCRTのアンメットニーズは高いのでしょうか?画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するTORG1018試験のStudyデザインおよび主要結果CCRTに適用するレジメンとして確立したものがなかった、というのが現状だと思います。おそらく皆さん、どのレジメンを用いるか悩んでおられると思います。Stage IIIで根治を期待する場合は、やはりCDDPレジメンが中心になります。2000年代初めまでは、MVPレジメン(MMC+Vindesine+CDDP)を用いていました。1999年以降、プラチナ製剤と第3世代抗がん薬との併用がIV期に対する標準レジメンとなりましたが、第3世代抗がん薬は、毒性のため放射線とのfull doseでの同時併用が困難でした。減量する、weekly投与にする等の工夫がなされましたが、明らかな優位性をもったレジメンは現れませんでした。そのような中、day 1、8に分割したDTX+CDDPは岡山大学の研究で、Stage III切除不能局所進行NSCLCのCCRTにおいて、MVPレジメンとの比較試験を行い、良好な成績を収めていました。また、S-1+CDDPは進行NSCLCに対する標準化学療法レジメンの1つであるとともに、CCRTにおける良好な成績も報告されていました。TORG1018試験の結果は、臨床にどのように反映できると思われますか?TORG1018試験は、ランダム化第II相試験として、CCRT施行患者に対しDTX+CDDPとS-1+CDDP、それぞれの成績を評価しました。GEM、PTX、DTXなどはIV期のfull doseを使えないというのが難点でしたが、本試験でのDTX+CDDPレジメンはfull doseに近く、前述の研究からも高い有効性が期待されます。一方のS-1+CDDPレジメンも同様にfull doseで使用でき、アクティビティが期待できます。試験の結果、主要評価項目である2年OSはS-1+CDDP群79%、DTX+CDDP群が69%でした。数字としては、S-1+CDDP群がDTX+CDDP群を上回っていました。また、肺障害を含めた有害事象もS-1+CDDP群で少ないという結果でした。このように、有効性および安全性の双方ともS-1+CDDPは良好であり、実臨床では、このS-1+CDDPを化学放射線同時併用療法の標準化学療法として日常臨床で用いることができる、と言えるでしょう。今後、S-1+CDDPはCCRTの適用レジメンとして、どのように拡大していくと思われますか?アジアでのトライアルで、S-1+CDDPレジメンを評価することができると思います。また、今後、CCRT後の免疫チェックポイント阻害薬維持療法が、標準治療となることが期待されています。S-1+CDDPレジメンは、比較的副作用が軽度で、免疫チェックポイント阻害薬の効果を、より引き出すことができるかも知れません。免疫チェックポイント薬併用のベースレジメンとしての位置付けも期待できると思います。■関連記事III期NSCLCの化学放射線同時併用療法に適用するレジメンは?本邦のランダム化試験の結果発表/ASCO2017

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肝がん1次治療、レンバチニブ対ソラフェニブREFLECT試験の日本人データ/日本臨床腫瘍学会

 レンバチニブ(商品名:レンビマ)は、VEGFR1~3、FGFR1~4、PDGFRα、RET、KITを標的とした経口マルチキナーゼ阻害薬であり、進行肝細胞がん(HCC)において、従来の標準治療薬であるソラフェニブ(商品名:ネクサバール)に対する非劣性が国際無作為化オープンラベル第III相非劣性試験REFLECT試験で示されている。第15回日本臨床腫瘍学会では、同試験の日本人集団の解析結果が、国立がん研究センター東病院池田 公史氏より発表された。 REFLECT試験は、全身化学療法治療歴のない切除不能な肝細胞がん患者954例を対象とし、レンバチニブ群とソラフェニブ群に1:1に無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存期間(OS)非劣性の検証、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、客観的奏効率(ORR)、安全性であった。全集団のOSはレンバチニブ群で13.6ヵ月、ソラフェニブ群では12.3ヵ月。HRは0.92、95%CIは0.79~1.06であり、主要評価項目の非劣性マージン1.08を達成し、PFS、TTP、ORRの有意な改善を示した。 日本人集団のOSは、レンバチニブ群17.6ヵ月(12.2~23.0)、ソラフェニブ群17.8ヵ月(11.9~19.5)であった。HRは0.90、95%CIは0.62~1.29であり、全集団に比べ若干長い傾向であった。日本人集団のORRはレンバチニブ群29.6%(19.7~39.6)、ソラフェニブ群6.9%(1.6~12.2)と、レンバチニブ群で有意であった(p=0.00006)。 レンバチニブ群の有害事象発現率は、下痢、疲労感を除き全集団に比べ、日本人集団で多くみられた。■参考REFLECT試験(Clinical Trials.gov)

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切除不能大腸がん、FOLFOX6/CapeOX対S-1+CPT-11/日本臨床腫瘍学会

 FOLFOXおよびCapeOXレジメンは切除不能大腸がん(mCRC)の1次治療として最も多く用いられる。しかし、オキサリプラチンベースレジメンの有害事象である末梢神経障害は、治療中断の原因となり、またQOLの低下をもたらす。一方、S-1+イリノテカン(CPT-11)療法は、2次治療におけるFOLFIRIレジメンとの非劣性が証明されているものの、1次治療での有用性は確立していない。大崎市民病院の蒲生 真紀夫氏は、S-1+CPT-11+ベバシズマブ(Bmab)のmFOLFOX6/CapeOX+Bmabに対する非劣性および優越性を検証する無作為化第III相試験TRICOLORE試験を実施し、その結果を第15回日本臨床腫瘍学会で発表した。 TRICOLORE試験では、化学療法未施行のmCRC患者を、mFOLFOX6/CapeOX+Bmab(A群1:mFOLFOX6+Bemab 2週ごと、A群2:CapeOX+Bmab 3週ごと)またはS-1+CPT-11+Bmab(B群1:CPT-11+Bmab 3週ごと、S-1 14日間投与7日間休薬、B群2:TS-1+CPT-11+Bmab 4週ごと、S-1 14日間投与14日間休薬)に無作為に割り付けた。主要評価項目はPFSとし、A群とB群のPFS中央値をそれぞれ11ヵ月、12ヵ月と想定し、ハザード比(HR)の非劣性マージンを1.25とした。 2012年6月~2014年9月に487例が登録され、A群244例、B群243例に割り付けられた。PFS中央値は、A群10.8ヵ月、B群14.0ヵ月(HR:0.84、95%CI:0.70~1.02)と、非劣性が証明された(非劣性p<0.001)。優越性p値は0.082であった。治療成功期間は、A群7.7ヵ月、B群9.6ヵ月と、B群で有意に良好であった(p<0.002)。全生存期間はA群33.6ヵ月、B群34.9ヵ月であった(p=0.28)。 Grade3以上の全有害事象発現はA群64.9%、B群58.6%であった。Grade3以上の主な項目はA群B群でそれぞれ、白血球減少2.5%と8.8%、好中球減少13.6%と24.3%、下痢6.6%と13.4%、末梢神経障害21.9%と0.0%、手足症候群6.2%と0.8%であった。 同第III相試験において、S-1+CPT-11+BmabはmFOLFOX6/CapeOX+Bmabに対するPFS非劣性を証明。mCRCに対する1次治療レジメンとなりうることが示された。

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第4回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター、同院腫瘍化学療法外科、同大学院未来がん医療プロフェッショナル養成プラン、同大学院臨床腫瘍学分野、同大学院応用腫瘍学講座は、2017年10月1日(日)に、第4回「がんを考える」市民公開講座を開催する。本講座は、同院が地域がん診療連携拠点病院の活動の一環として、がんに関するさまざまなテーマで開催する公開講座の4回目となる。今回は『正しく知ろう!「化学療法」』をテーマに、化学療法の目的と効果、さまざまなサポートについて広く知ってもらうための内容となっており、各種ブース展示や体験コーナーなど、楽しく学べる企画が多数予定されている。 開催概要は以下のとおり。【日時】2017年10月1日(日)《セミナー》13:00~16:35 《ブース展示》12:00~17:00【場所】東京医科歯科大学 M&Dタワー2F 鈴木章夫記念講堂〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45現地キャンパスマップはこちら【参加費】無料(※参加申し込み不要)【テーマ】正しく知ろう!「化学療法」【予定内容】《セミナー》13:00~16:35 鈴木章夫記念講堂司会:坂下 博之氏(東京医科歯科大学大学院 臨床腫瘍学分野)13:00~13:05 開会挨拶 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長)13:05~13:30 講演1 「化学療法」ってどんなもの? 何のため? 石黒 めぐみ氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科)13:30~14:00 講演2 最近話題の治療について、解説します(免疫療法/プレシジョンメディシン) 池田 貞勝氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター)14:00~14:20 医科歯科大のがん治療 update(1) 「がん疼痛の治療」の進歩と現状 野里 洵子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター)14:20~14:40 医科歯科大のがん治療 update(2) 大事です! 化学療法中の「口腔ケア」 古屋 純一氏(東京医科歯科大学歯学部附属病院 口腔ケア外来)14:40~15:00 休憩15:00~16:00 パネルディスカッション 化学療法をしながらの生活 《パネリスト》  石川 敏昭氏(同院 腫瘍化学療法外科)  橋爪 顕子氏(同院 がん化学療法看護認定看護師)  有本 正子氏(同院 臨床栄養部)  山田 麻記子氏(同院 腫瘍センター 社会福祉士)16:00~16:30 講演3 治療を受ける際の意思決定のサポート 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長)16:30~16:35 閉会挨拶 川﨑 つま子氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 看護部長)《ブース展示》 12:00~17:00 講堂前ホワイエ■がんと栄養・食事 (東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部)■お口の楽しみ、支えます (東京医科歯科大学歯学部 口腔保健学科)■ウィッグ・メイクを楽しもう! (アプラン東京義髪整形/マーシュ・フィールド)■在宅治療の味方 皮下埋め込みポートって何? (株式会社メディコン)■がん患者さんの家計・お仕事に関するご相談 (特定非営利活動法人 がんと暮らしを考える会)■がん患者と家族へのピアサポートの紹介 (特定非営利活動法人 がん患者団体支援機構)■看護師よろずミニ相談 (東京医科歯科大学医学部附属病院 専門・認定看護師チーム)■がん相談支援センター活用のすすめ (東京医科歯科大学医学部附属病院 がん相談支援センター)■「もっと知ってほしい」シリーズ冊子 (認定NPO法人 キャンサーネットジャパン)【お問い合わせ先】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45TEL:03-5803-4886(平日 9:00~16:30)【共催】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科東京医科歯科大学大学院 臨床腫瘍学分野東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学講座東京医科歯科大学大学院 未来がん医療プロフェッショナル養成プラン【協力】認定NPO法人キャンサーネットジャパン【後援】東京医科歯科大学医師会東京都医師会/東京都第4回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座 詳細はこちら

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進行子宮頸がんのベバシズマブ併用、第III相試験の最終解析/Lancet

 米国・カリフォルニア大学のKrishnansu S. Tewari氏らが、進行子宮頸がん患者を対象に血管新生阻害薬ベバシズマブ併用の有効性と安全性を評価した「米国婦人科腫瘍グループ(GOG)240試験」の、全生存期間(OS)と有害事象に関する最終解析結果を報告した。2012年の第2回中間解析でOSの改善が認められ、その結果に基づき2014年8月14日、米国で進行子宮頸がんに対するベバシズマブの使用が承認されたが、今回の最終解析においても、ベバシズマブ併用の有用性が全生存曲線により示され、追跡期間が延長しても持続していることが確認された。また、ベバシズマブ投与中に増悪しベバシズマブの投与を中止しても、その後の生存期間が化学療法単独療法中止後より短縮するという負のリバウンド作用は認められなかった。Lancet誌オンライン版2017年7月27日号掲載の報告。化学療法へのベバシズマブ追加の有効性を2×2要因デザインで評価 GOG240試験は、米国・カナダ・スペインの81施設にて実施された第III相無作為化非盲検比較試験。対象は、転移あり(Stage IVB)または治療抵抗性または再発の子宮頸がん患者で、シスプラチン(1日目または2日目に50mg/m2)+パクリタキセル(1日目に135mg/m2または175mg/m2)投与群、トポテカン(1~3日目に0.75mg/m2)+パクリタキセル(1日目に175mg/m2)投与群、および各化学療法にベバシズマブ(1日目に15mg/kg)を併用する群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、疾患の増悪や許容できない毒性の発現、患者の同意撤回または完全奏効に達するまで21日を1サイクルとして治療を継続した。なお、割り付けは、GOG PS(0 vs.1)、放射線増感剤としてのプラチナ製剤治療歴(有 vs.無)、病勢(再発/治療抵抗性 vs.転移あり)で層別化した。主要評価項目は、OS(intention-to-treat解析)および有害事象(解析対象は治療を受けた全患者)とした。 2009年4月6日~2012年1月3日に452例が登録され(化学療法単独群225例[50%]、ベバシズマブ併用群227例[50%])、2014年3月7日までに348例が死亡、最終解析のデータカットオフ基準(被験者450例、死亡346例)は満たしていた。最終解析でも化学療法+ベバシズマブ併用群のOS延長が持続 ベバシズマブ併用群では、化学療法単独群と比較しOSの有意な改善が持続していることが認められた(ベバシズマブ併用群16.8ヵ月 vs.化学療法単独群13.3ヵ月、ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.62~0.95、p=0.007)。骨盤内放射線療法歴がない患者の最終OSはそれぞれ24.5ヵ月および16.8ヵ月であった(HR:0.64、95%CI:0.37~1.10、p=0.11)。増悪後のOSは、ベバシズマブ併用群と化学療法単独群で有意差は確認されなかった(8.4ヵ月 vs. 7.1ヵ月、HR:0.83、95%CI:0.66~1.05、p=0.06)。 瘻孔(全Grade)は、ベバシズマブ併用群220例中32例(15%)、化学療法単独群220例中3例(1%)にみられた。全例が放射線療法歴を有する患者であった。Grade 3の瘻孔は13例(6%)vs.1例(<1%)であった。緊急手術、敗血症または死亡に至った瘻孔はなかった。

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乳がん関連リンパ浮腫リスクに影響する因子

 乳がん治療関連リンパ浮腫(breast cancer-related lymphedema:BCRL)は、乳がん治療中の女性にとって重大な合併症である。米国・メイヨークリニックのToan T. Nguyen氏らが大規模集団コホート研究でBCRL発症とリスク因子を調べたところ、化学療法、放射線療法、腋窩リンパ節郭清(ALND)、進行したStage、高いBMIの因子を持つ患者でBCRL発症率がより高いことがわかった。BCRLは多様な治療による後遺症であり、リスク因子も多様であることが示唆された。Annals of surgical oncology誌オンライン版2017年8月1日号に掲載。 本研究では、1990~2010年のOlmsted County Rochester Epidemiology Project Breast Cancer Cohortを利用し、BCRLとリスク因子を調べた。BCRL発症率の推定には累積発症率推定を使用し、多変量解析のために競合リスク回帰を使用した。 主な結果は以下のとおり。・Stage0~III乳がん1,794例をフォローアップした(フォローアップ期間中央値10年)。・5年以内のBCRL診断の累積発症率は9.1%であった(95%CI:7.8~10.5%)。・腋窩手術を受けていない患者では、BCRLは発生しなかった。・腋窩手術を受けた患者(n=1,512)において、BCRLの5年発症率は、センチネルリンパ節生検(SLN)実施患者で5.3%、ALND実施患者で15.9%であった(p<0.001)。・手術のみで治療された患者では、ALNDとSLNとでBCRL発症率に差がなかった(5年で3.5%および4.1%、p=0.36)。・ALND実施患者において、乳房もしくは胸壁への放射線照射の追加によりBCRL発症率が倍増した(5年で3.5 vs.9.5%、p=0.01)。・リスクが最も高い群(>5年で25%)はすべて、リンパ節領域放射線照射および/またはアントラサイクリン/サイトキサン+タキサン化学療法を伴うALNDを実施していた。・何らかの腋窩手術を受けた患者の多変量解析によると、ALND、化学療法、放射線療法、肥満がBCRLと有意に関連していた。

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ペルツズマブはHER2陽性乳がんの再発を有意に減少させる(解説:下村 昭彦 氏)-706

 HER2陽性乳がんに対する術後薬物療法としてのトラスツズマブの有用性については広く知られており、実臨床で必須の標準治療となっている。また、ペルツズマブの上乗せはHER2陽性転移再発乳がんの1次治療として、ドセタキセル+トラスツズマブに対して有意に予後を改善させることが広く知られている1)。 今回の大規模臨床試験は、HER2陽性乳がんに対する標準術後薬物療法である化学療法+トラスツズマブに対し、ペルツズマブの上乗せを検証した二重盲検ランダム化比較第III相試験である2)。腫瘍径1cm以上、または腫瘍径0.5~1.0cmでハイリスクの条件を満たすもの(組織/核Grade3、ホルモン受容体陰性、35歳未満)を対象とした。中間解析でイベント数が少ないことが予想されたため、3,655例の症例が登録された段階で、リンパ節転移陽性のみを適格とするようプロトコール変更が行われた。主要評価項目は3年無浸潤疾患生存率(invasive disease free survival:IDFS)で、プラセボ群の89.2%に対しペルツズマブ群が91.8%(ハザード比:0.75)を仮説とし、各群379イベントが必要とされた。 2011年11月~2013年8月に2,400例がペルツズマブ群に、2,405例がプラセボ群に割り付けられた。3年IDFSはペルツズマブ群で94.1%、プラセボ群で93.2%(ハザード比:0.81、95%CI:0.66~1.00、p=0.045)であり、ペルツズマブ群で有意に良好であった。サブグループ解析では、リンパ節転移陰性では97.5% vs.98.4%(ハザード比:1.13、p=0.64)、リンパ節転移陽性では92.0% vs.90.2%(ハザード比:0.77、p=0.02)と、リンパ節転移陽性ではペルツズマブ群で有意に良好であったものの、陰性では両群に差は認めなかった。 術後薬物療法におけるペルツズマブの有効性が示されたものの、その絶対リスク減少は3年IDFSで0.9%であり、真に上乗せ効果の期待できる症例の絞り込みが必要である。

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PD-L1高発現NSCLC1次治療、ペムブロリズマブKEYNOTE-024試験の日本人データ/日本臨床腫瘍学会

 KEYNOTE-024試験は、未治療のPD-L1高発現(TPS50%以上)非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブの1次治療を評価する国際共同無作為化第III相試験。全集団の解析では、無増悪生存期間(PFS)のHRが0.50(p<0.001)、全生存期間(OS)のHRも0.60(p=0.005)と、標準化学療法(SOC)群に対するペムブロリズマブ群の優越性が示されている。第15回日本臨床腫瘍学会では、同試験の日本人患者集団の解析結果が、兵庫県立がんセンター里内美弥子氏より発表された。 KEYNOTE-024試験では、全集団305例が登録された。そのうち日本人は40例で、ペムブロリズマブ群に21例、SOC群に19例が割り付けられた。患者背景は全集団と同様であった。フォローアップ期間(中央値11.2ヵ月)の化学療法からペムブロリズマブへのクロスオーバーは、全集団の44%に対し、日本人では37%であった。 日本人集団のPFSは、ペムブロリズマブ群で未達、SOC群で4.1ヵ月(HR:0.35、95%CI:0.14~0.91、p=0.013)であった。日本人集団のOSは、ペムブロリズマブ群で未達、SOC群では21.5ヵ月で、HRは0.40(95%CI:0.10~1.61)であった。また、最新のOS中間解析によれば、HRは0.36(95%CI:0.12~1.01)と、クロスオーバーの多さにも関わらず、その差は大きくなっている。長期使用により、ペムブロリズマブ群でさらに有望な結果が得られる可能性が示唆される。奏効率(ORR)は、全集団でペムブロリズマブ群44.8%、SOC群27.8%であったのに対し、日本人集団では、ペムブロリズマブ群57.1%、SOC群21.1%という結果であった。 Grade3~4の有害事象は、全集団ではペムブロリズマブ群26%、SOC群51%であったのに対し、日本人集団ではペムブロリズマブ群33%、SOC群47%であった。 KEYNOTE-024試験においては、全集団の結果と同様、日本人集団でも未治療のPD-L1高発現の非小細胞肺がんに対し、ペムブロリズマブの有効性と安全性が示された結果となった。■参考KEYNOTE-024試験(Clinical Trials.gov)■関連記事ペムブロリズマブ単剤で肺がん1次治療に有効KEYNOTE-024試験/NEJMPD-L1高発現NSCLCの初回治療はペムブロリズマブ?KEYNOTE-024のPFS2データ/ASCO2017肺がん特集

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肺がんMYSTIC試験、durvalumab・tremelimumab併用の一部結果を発表

 AstraZenecaとその生物製剤研究開発拠点MedImmuneは2017年7月27日、未治療のStageIV非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療選択において、抗PD-L1抗体durvalumab単独療法またはdurvalumab・tremelimumab(抗CTLA-4抗体)併用療法と、プラチナベースの標準化学療法(SoC)をそれぞれ比較した、第III相MYSTIC試験の無増悪生存期間(PFS)の結果を発表。 durvalumab・tremelimumab併用療法は、PD-L1発現25%以上の患者におけるSoCとの比較で、主要評価項目であるPFSの改善を達成しなかった。また、正式には検証されていないが、副次評価項目であるdurvalumab単独療法のPFSベネフィットも閾値を満さない可能性がある、としている。 MYSTIC試験は、無作為化オープンラベル多施設共同試験。主要評価項目は、durvalumab・tremelimumab併用療法のPFSおよびOS、durvalumab単独療法のOSの3つ(いずれもSoCとの比較)である。今回の発表は、そのうちの1つ併用療法のPFS。残り2つの主要評価項目も引き続き評価され、最終のOSデータは、2018年前半に発表される予定。 AstraZenecaのGlobal Medicines Development and Chief Medical OfficerであるSean Bohen氏はプレスリリースの中で、StageIVのNSCLCにおけるMYSTIC試験のPFSの結果は残念なものだが、この試験はOSを評価するよう設計されており、残りの主要評価項目である単独療法と併用療法双方のOSの評価に期待している、としている。 MYSTIC試験は、本邦も含む欧米およびアジアの世界17ヵ国167施設で実施されている。■参考AstraZeneca(グローバル)プレスリリースMYSTIC試験(ClinicalTrials.gov)

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新たなエビデンスを生み続けるMAMS(解説:榎本 裕 氏)-704

 STAMPEDE試験といえば、2016年のLancet誌に出た報告が記憶に新しい。未治療の進行前立腺がんに対し、標準的なADTにドセタキセル(DTX)化学療法を6コース追加することで全生存率の有意な改善を示したものである。前年に同様の結果を報告したCHAARTED試験とともに、未治療進行前立腺がんの治療を変容しつつある(本邦では保険適応の問題から、普及にはまだ遠いが)。 STAMPEDE(Systemic Therapy in Advancing or Metastatic Prostate cancer: Evaluation of Drug Efficacy)は、初回ホルモン治療(ADT)を行う局所進行ないし転移性前立腺がん患者を対象とした前向き臨床試験で、複数のRCTを同時進行で行うMAMS(multiarm, multistage)プラットフォームを特徴としている。今回の報告は、ADT単独療法を対照として、アビラテロン(ABI)+プレドニゾロン(PSL)の追加がOSを改善するかどうかを検討した。 STAMPEDEでは、未治療転移性がんだけではなく、未治療局所進行がん、さらには前立腺全摘や根治照射後の再発例も対象に含んでいる。今回の解析対象患者のうち再発症例は4~7%のみであるが、遠隔転移がなく根治照射を予定している患者が41%程度含まれていることは注意が必要だ。遠隔転移のある症例では病勢進行までADT(またはADT+ABI+PSL)が継続されるが、遠隔転移がなく根治照射を行った例では病勢進行がない場合、薬物治療は最長2年間となっている。 今回の試験結果では、転移性がんではABI+PSLの追加が有意なOS改善をもたらした(HR:0.61)。この結果は、同時に発表されたLATITUDE試験の結果を再現している。転移のない症例でもOSは改善傾向であったが、40ヵ月という追跡期間では十分な差を出せていない。転移性がんについていえば、ADT+DTXが引き続き今後の標準治療になるのか、ADT+ABI+PSLが取って代わるのか、はたまたADT+DTX+ABI+PSLの併用に進んでいくのか、今後の研究に期待したい。

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転移性前立腺がんの初期治療の行方は?(解説:榎本 裕 氏)-702

 1941年のHuggins and Hodgesの報告以来、転移性前立腺がん治療の中心はアンドロゲン除去療法(ADT)であった。近年、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に対する治療薬が次々に登場し、治療戦略が大きく変容しているが、転移性前立腺がんの初期治療に関しては70年以上にわたってほとんど進歩がなかった。第1世代の抗アンドロゲン薬(ビカルタミド、フルタミドなど)を併用するMAB(maximum androgen blockade)療法が広く行われているが、OSに対するベネフィットを示す報告は少ない。 この状況に風穴をあけたのが2015-16年に報告されたCHAARTED試験、STAMPEDE試験である。未治療の進行前立腺がんに対し、標準的なADTにドセタキセル(DTX)化学療法を6コース追加することで全生存率の有意な改善を示した。CRPCに対して予後改善効果のある薬剤をホルモン感受性のうちに「前倒しして」投与することでPFSのみならずOSまで改善するという報告は強いインパクトを与えた。 今回の報告は、ホルモン感受性の転移性前立腺がんに対し、第2世代の抗アンドロゲン薬であるアビラテロンをADTに併用するプラセボ対照の前向きRCTである。アビラテロンの追加は、死亡リスクを有意に低下させた(HR:0.62)。直接比較はできないものの、この数値はDTX追加によるベネフィット以上である可能性があり、非常に有望なアプローチといえる。一方、長い治療期間(DTX 6コースは18週間だが、アビラテロンは2年以上)による副作用とコスト増は懸念されるところであろう。とくにアビラテロンではプレドニゾロンの併用が必須であり、ステロイドによる副作用も懸念される。より長期間の追跡調査が必要である。 さらに、ADTにアビラテロンとDTX両方を上乗せする臨床試験が行われている。作用機序の異なる薬剤の併用は、さらなる予後改善をもたらすのか? 続報に期待したい。

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第42回

第42回:新たな肺がんレジメン、カルボ・ペム・ペムとは?キーワードペムブロリズマブMSI-H固形がん肺がんNSCLC1次治療におけるペムブロリズマブ+化学療法の追跡結果/ASCO2017Langer CJ,et al.Carboplatin and pemetrexed with or without pembrolizumab for advanced, non-squamous non-small-cell lung cancer: a randomised, phase 2 cohort of the open-label KEYNOTE-021 study.Lancet Oncol.2016;17:1497-1508.MERCK社 KEYTRUDA prescribing information

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inotuzumab ozogamicin、CD22+前駆B細胞性ALLに欧州で承認

 米国ファイザー社は2017年6月30日、inotuzumab ozogamicinが「再発または難治性のCD22陽性前駆B細胞性急性リンパ性白血病(ALL)」の成人患者に対する単剤療法として欧州委員会より承認を受けたことを発表した。今回の適応には、フィラデルフィア染色体陰性(Ph-)だけでなく、同陽性(Ph+)の再発または難治性の前駆B細胞性ALLも含まれている。Ph+のCD22陽性前駆B細胞性ALLの場合、少なくとも1種類以上のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療が奏効しなかった成人患者を適応とする。 inotuzumab ozogamicinは、ファイザー社とセルテック社(現UCB社)が協力して生み出した抗体薬物複合体(ADC)。ほぼすべてのB細胞性ALLに発現するCD22を標的とするモノクローナル抗体および細胞傷害性化合物で構成されており、悪性腫瘍のCD22抗原と結合すると、細胞障害性を有するカリケアマイシンが放出されて細胞を破壊する。 欧州委員会によるinotuzumab ozogamicinの承認は、再発または難治性の前駆B細胞性ALL成人患者326例を対象に、inotuzumab ozogamicinを標準化学療法と比較し第III相INO-VATE ALL試験の結果に基づく。本試験では、2つの独立した主要評価項目(血球数の回復の有無を問わない血液学的完全寛解率(CR/CRi)および全生存期間(OS))が設定された。 ALLは、未治療のままでは数ヵ月のうちに致死的となりうる。再発または難治性(抵抗性)ALLにおける治療目標は、生存率の延長が期待できる治療法として現在最も支持されている造血幹細胞移植や維持療法などに移行できるよう、過度の毒性を伴わずに完全寛解を達成すること。再発または難治性の患者における現在の標準治療は強力な化学療法だが、化学療法が有効である患者は50%にも及ばない。また、これらの治療は長期生存率が低い、毒性が高い、入院期間が長い、持続点滴時間が長いといったことも指摘されている。■参考ファイザー株式会社プレスリリース

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【JSMO2017見どころ】緩和・支持療法

 2017年7月27日(木)から3日間にわたって、第15回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、プレナリーセッションをはじめ、「免疫・細胞療法」「Precision medicine」「AYA世代のがん治療」「緩和・支持療法」の4つのテーマにおける注目トピックが紹介された。 このうち、「緩和・支持療法」については西森 久和氏(岡山大学病院 血液・腫瘍内科 助教)が登壇した。以下、西森氏のコメントと注目演題を紹介する。【西森 久和氏コメント】 緩和・支持療法とは、がんに伴うさまざまな苦痛や症状、抗がん薬の副作用などを和らげるための治療である。がんを告知された患者さんは、がんに伴う痛みだけでなく、精神的にも不安やいらだちを感じ、社会的にも仕事を継続できなくなるなどの問題を抱えており、医療者は「苦痛」を全人的に捉えたうえで、サポートをしていく必要がある。がん対策基本法での緩和ケアの推進により、よりよい緩和医療が提供されるようになってきているが、いまだ不十分な点も多いのが現状といえる。本学会では、最新の緩和ケアに関するトピックスに加え、現状を直視したうえでよりよい方向性を見出すためのシンポジウムを数多く準備している。 医学の進歩により、さまざまな抗がん薬が開発され、それに伴う副作用も多様化している。一般的な抗がん薬による治療のイメージは、吐き気や嘔吐がつらい、脱毛など美容上の問題がある、などネガティブなものが多いかと思われるが、新しい制吐薬の開発など支持療法の分野も進歩しており、より効果的な抗がん薬をより安全に、やさしく患者さんに投与できる時代になってきている。本学会では支持療法に関しても、エビデンスに基づき患者さんの生活の質を保つことのできる情報を多く提供する予定である。 また、会期中神戸国際会議場では「患者・家族向けプログラム~いつでも、何処でも、最適のがん医療を受けるために~」が開催され、その模様がJunko Fukutake Hall(岡山大学鹿田キャンパス)でライブ中継される。各日午後には、両会場で相互交流を図る患者発のプログラムが予定されており、医療者にとっても「患者目線」を知ることができる機会となっている。 【注目演題】合同シンポジウム(日本緩和医療学会 / 日本臨床腫瘍学会)「緩和ケアに関わるガイドラインの変更と解説」日時:7月28日(金)10:20~12:20場所:Room 4(神戸国際展示場1号館2F Hall A)セミプレナリーセッション「「予後2年」の望ましい伝え方:どのようながん患者がどのような台詞を好むか?」日時:7月29日(土)8:20~10:20場所:Room 4(神戸国際展示場1号館2F Hall A)シンポジウム「症状スクリーニングと緩和治療―早期からの緩和ケアを目指して―」日時:7月27日(木)14:50~16:30 場所:Room 3(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール北)「口腔のケア・がん口腔支持療法を推し進めるために―論拠に基づいた実践を目指して」日時:7月28日(金)8:20~10:20場所:Room 5(神戸国際展示場1号館2F Hall B)「口腔のケア・がん口腔支持療法を推し進めるために―人材を養成する体制から在り方を問う」日時:7月28日(金)10:20~12:20 場所:Room 5(神戸国際展示場1号館2F Hall B)「Whole Person Care 〜 Care for cancer patients 〜」日時:7月28日(金)17:00~18:30 場所:Room 4(神戸国際展示場1号館2F Hall A)「チームで取り組む分子標的薬の副作用マネジメント 患者へベネフィットをもたらす支持療法」日時:7月29日(土)10:20~12:20 場所:Room 2(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール南)「外来がんリハビリテーション エビデンス&プラクティス」日時:7月29日(土)15:00~17:00場所:Room 2(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール南)ワークショップ「緩和ケア病棟転院時の患者・家族の見捨てられ感について~安心して転院できますか」日時:7月27日(木)9:20~11:00 場所:Room 3(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール北)「がん治療中の患者の decision making のサポート―がん治療する?しない?―」日時:7月27日(木)13:00~14:40 場所:Room 3(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール北)教育講演「がん患者とのコミュニケーション」日時:7月27日(木)14:00~14:30場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「緩和ケアにおける EBM」日時:7月29日(土)9:20~9:50 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「がん化学療法後のB型肝炎ウイルス再活性化のリスクとその対策」日時:7月29日(土)9:50~10:20 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「がん連携における在宅支持療法」日時:7月29日(土)10:20~10:50 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「がんのリハビリテーション」日時:7月29日(土)10:50~11:20 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)「がん患者の家族へのサポート」日時:7月29日(土)11:20~11:50 場所:Room 10(神戸国際会議場1F メインホール)【第15回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2017年7月27日(木)~29日(土)■会場:神戸コンベンションセンター、Junko Fukutake Hall(岡山大学鹿田キャンパス)■会長:谷本 光音氏(岡山大学大学院 血液・腫瘍・呼吸器内科 特任教授)■テーマ:最適のがん医療— いつでも、何処でも、誰にでも —第15回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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バイオマーカーが大きな意義を持つ、今後の大腸がん治療

 2017年6月、Lilly Oncology大腸がんメディアセミナーにて、静岡県立静岡がんセンターの山崎健太郎氏が、大腸がんの遺伝子関連検査と治療最前線について、解説した。増える大腸がんバイオマーカーの重要性 1990年代後半から、多くの新規薬剤が臨床導入され、大腸がんの治療は大きく変化した。さらに、分子標的薬の登場が拍車をかけ、世界の大腸がん予後は今では30ヵ月を超える。とはいえ、分子標的治療薬もすべての大腸がん患者に奏効するわけではない。バイオマーカーの探索が重要になっている。大腸がんのバイオマーカーとしては、RAS変異検査が最も普及しており、抗EGFR抗体の効果予測因子として切除不能例に日米欧で推奨されている。それ以外に最近注目されているのが、BRAF V600遺伝子変異とMSI(マイクロサテライト不安定性)である。BRAF V600E変異、MSIと大腸がん BRAF V600E変異は、大腸がんの8%程度に認められ、効果予測因子・予後因子である。同変異を有する患者は化学療法の効果が乏しい。また、予後不良で、同変異を有していると、増悪リスクは34%、死亡リスクは91%増加し、全生存率(OS)は約1年という報告がある。しかし、近年ではBRAF変異例へのFOLFOXIRI+ベバシズマブの4剤併用療法で、増悪リスク、死亡リスク共に4割以上減少するという研究も出てくるなど、治療法の開発も進んでいる。 MSIは、DNA複製時の塩基の不対合であるミスマッチを修復する、MMR(mismatch repair)機能の欠損をみる指標である。マイクロサテライト不安定性が高度(MSI-H)になると、遺伝子の異常が蓄積し、がん化が促進される。MSI-Hは、遺伝性大腸がんであるリンチ症候群の9割に認められるが、大腸がん全体でも一定の割合で存在する。欧米では、12~16%、本邦では6~7%の大腸がんがMSI-Hだといわれている。MSI-Hは遺伝性大腸がんの指標だけではなく、広く大腸がんの予後規定因子でもある。MSI-Hを有する切除可能なStageII大腸がんでは、予後良好である(術後アジュバントを行うと逆に予後が悪化するという報告がある)。一方、切除不能例では、非常に予後が悪いことが明らかになっている。このように、BRAFやMSIといった検査情報を得るだけでも、治療方針は大きく変わる可能性がある。患者への提言にも変化を及ぼす。大腸がんバイオマーカーの臨床応用の実情 大腸がんバイオマーカーの臨床応用は、どういう状況なのだろうか。BRAF検査は、効果予後予測因子・予後因子として、欧米では全大腸がん患者で推奨されている。MSIについても、欧米では大腸がんと診断された患者全員にリンチ症候群のスクリーニング目的として推奨されている。一方、本邦では大腸がんに対するBRAF検査は保険適応になっておらず、MSIについても、遺伝性大腸がんであるリンチ症候群が疑われた場合のみ適応となっている。ドラッグ・ラグも解消され、海外と同様の治療が実施できるようになったものの、バイオマーカーの臨床導入は遅れているのが、本邦の状況である。大腸がんに診療おける遺伝子検査のガイダンスの発刊 このような状況のなか、日本臨床腫瘍学会は「大腸がんに診療おける遺伝子検査のガイダンス(第3版)」を発刊した。このガイダンスではBRAF検査、MMR機能欠損に対するMSI検査について、どのように実施し、治療に反映するのか、基本的要件を明らかにした。具体的には、切除不能・再発大腸がん1次治療前のBRAF検査、切除後のStageII結腸がんへのMSI検査、切除不能・再発大腸がん1次治療前のMSI検査などが盛り込まれている。 大腸がんの治療は、今後、バイオマーカー等で細分化されていくであろう。今回発刊されたガイダンスが、現状とのギャップを埋める一助になれば、と山崎氏は述べる。

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