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ニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H/dMMR大腸がんに迅速承認/BMS

 Bristol-Myers Squibb社は、2018年7月11日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)3mg/kgとイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)1mg/kgの併用療法が、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療後に病勢進行したMSI-HまたはdMMRの転移を有する大腸がん(mCRC)患者(成人および12歳以上の小児)の治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得したことを発表。 この承認は、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、またはイリノテカンを含む化学療法による治療歴を有するMSI-Hまたは dMMRのmCRC患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法を評価した進行中の第II相CheckMate-142試験のデータに基づくもの。同併用療法は、FDAのブレークスルーセラピーに指定され、優先審査の対象となっていた。 CheckMate-142試験の同併用療法コホートには、1ライン以上の治療が行われたMSI-H/dMMRのmCRC患者が組み入れられ、ニボルマブ3mg/kgとイピリムマブ1mg/kgを3週ごと4回投与され、その後ニボルマブ単剤3mg/kgを2週間ごと、病勢進行または忍容できない有害事象が認められるまで投与された。有効性解析は、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療歴を有する患者(全119例中82 例)および全登録患者の両方において実施された。 フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療歴を有する患者82例の、独立放射線評価委員会(IRRC)の評価によるニボルマブ・イピリムマブ併用療法のORRは46%(82 例中38 例、CRは3例3.7%、PRは35例43%)であった。全登録患者119例でのORRは、49%(119例中58例、CR5例4.2%、PRは53例45%)であった。奏効が得られた58例のDOR中央値は未達(1.9~23.2+ヵ月)、奏効患者の83%で6ヵ月以上、19%で12ヵ月以上奏効が持続した。 なお、ニボルマブ単剤療法についても、同様の対象患者に対し、2017年8月に迅速承認されている。■参考Bristol-Myers Squibb社プレスリリースCheckMate-142試験(JCO)CheckMate-142試験(Clinical Triakls.gov)■関連記事ニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H大腸がんで有効性/ASCO-GI2017ニボルマブ、MSI-H転移性大腸がんに迅速承認/FDA いよいよ臨床へ、がん種を問わないMSI-H固形がんをどう診断し、治療していくか

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NSCLC 1次治療、化療にペムブロリズマブ併用でQOL改善(KEYNOTE-189)/日本臨床腫瘍学会

 未治療の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対する国際共同無作為化第III相試験(KEYNOTE-189)のQOL評価で、ペムブロリズマブ+化学療法化学療法単独と比べてQOLを維持・改善することが示された。関西医科大学の倉田 宝保氏が、第16回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月19~21日、神戸)のセミプレナリーセッションで発表した。 KEYNOTE-189は、未治療の非扁平上皮NSCLC患者616例を、ペムブロリズマブ群(ペムブロリズマブ200mg+ペメトレキセド500mg/m2+カルボプラチンAUC5またはシスプラチン75mg/m2、3週ごと4サイクル、その後はペムブロリズマブ200mg+ペメトレキセド500mg/m2を3週ごと)と、プラセボ群(ペムブロリズマブ群のペムブロリズマブをプラセボに置き換え)に2対1に無作為に割り付けた試験である。主要評価項目である全生存と無増悪生存は、それぞれハザード比(HR)が0.49、0.52と、ペムブロリズマブ群で有意に改善、副次評価項目の全奏効率も47.6%とプラセボ群の18.9%に対して有意に高く、有害事象はほぼ同様であったことが報告されている。 今回、KEYNOTE-189において、患者報告アウトカム(PRO)を1回以上報告した602例を対象に、欧州がん治療研究機構(EORTC)のQOLに関するアンケートQLQ-C30およびQLQ-LC13を用いてQOLを評価した。主要評価項目は、12週および21週のQLQ-C30 全般的健康状態(GHS)/QOLスコアのベースラインからの変化と、QLQ-LC13咳嗽・胸痛・呼吸困難の複合スコアの悪化までの期間。 その結果、QLQ-C30 GHS/QOLスコアの12週での変化は、ペムブロリズマブ群で+1.0、プラセボ群で-2.6、その差は3.6(95%CI:-0.1~7.2、p=0.053)であった。また、21週での変化の差は5.3(95%CI:1.1~9.5、p=0.014)とプラセボ群が有意に低かった。咳・胸痛・呼吸困難の複合スコアの悪化までの期間の中央値は、ペムブロリズマブ群が未到達(95%CI:10.2ヵ月~未到達)、プラセボ群が7.0ヵ月(95%CI:4.3ヵ月~未到達)で、HRは0.81(95%CI:0.60~1.09、p=0.161)であった。■関連記事NSCLC 1次治療、ペムブロリズマブ併用でOS延長:第III相試験/NEJM

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ASCO2018レポート 消化器がん(肝胆膵)

レポーター紹介2018年度のASCOも例年と同様に、コーミックプレイス@シカゴにて開催された。消化器がんの中でも肝胆膵領域における注目演題についていくつか報告する。肝細胞がん肝細胞がんにおいて、最も注目された演題は、肝細胞がんにおける2次治療としてラムシルマブとプラセボを比較した第III相試験のREACH-2試験である。ラムシルマブは、以前にも肝細胞がんのソラフェニブ不応・不耐の症例を対象としてプラセボと比較した第III相試験を行い、主要評価項目である生存期間は達成しなかったが、AFPが400ng/mL以上の症例で良好な生存期間の延長が示され、今回、AFPが400ng/mL以上の症例を対象としたやり直しの第III相試験を行った。あまり例のない第III相試験であるが、今回は生存期間の有意な延長(生存期間の中央値:ラムシルマブ群8.5ヵ月 vs.プラセボ群7.3ヵ月、ハザード比0.710(95%CI:0.531~0.959)を認め、主要評価項目を達成した。しかも、全体で292例、ラムシルマブ群197例、プラセボ群97例と、比較的少ない患者数で、ポジティブな結果が得られている。また、生存期間のサブグループ解析を見ても、女性以外ではほぼラムシルマブで良好であり、ソラフェニブの2次治療として有用性が示された。無増悪生存期間もラムシルマブで有意に良好(中央値:2.8ヵ月 vs.1.6ヵ月、ハザード比0.452、95%CI:0.339~0.603、p<0.0001)であり、奏効割合もラムシルマブ群4.6%、プラセボ群1.1%と良好で、病勢制御割合もそれぞれ59.9%と38.9%であり、有意に良好であった。Grade3以上の有害事象はラムシルマブ群で高血圧を高率に認めたが(ラムシルマブ群10.7% vs.プラセボ群3.2%)、忍容性は良好であった。ラムシルマブは、肝細胞がんにおいてバイオマーカーでセレクトした患者を対象として、初めて延命効果を示した薬剤であり、また、マルチキナーゼ阻害薬以外の抗体薬である。そのほか、注目された演題としては、Poster Presentationではあるが、切除不能な肝細胞がんに対するVEGFR阻害薬と抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体の併用療法で、ベバシズマブとアテゾリズマブの併用療法とレンバチニブとペムブロリズマブの併用療法である。ベバシズマブとアテゾリズマブの併用療法は、まだ23例と限られた対象での解析であるが、奏効割合(RECIST1.1)が65%と驚異的な成績が示されている。これまでの標準治療であるソラフェニブの奏効割合5~10%と比べると、約10倍の奏効割合である。また、全Gradeの有害事象も食欲減退33%、疲労33%、蛋白尿26%、高血圧21%と、他剤と比べて忍容性も良好であった。これらの有望な結果から、現在、肝細胞がんの初回化学療法例を対象として、ベバシズマブとアテゾリズマブの併用療法とソラフェニブを比較した第III相試験(NCT03434379)が進行中である。レンバチニブとペムブロリズマブの併用療法は、さまざまながん腫において有効性が期待され開発が進行中である。腎細胞がんではBreakthrough TherapyとしてFDAでも取り上げられており、肝細胞がんに対しても期待されて、第Ib試験が行われた。第I相パートにおいて、6例の患者で投与量規制毒性がないことを確認し、拡大コホートで、初回化学療法の患者24例に投与された。主な有害事象は食欲減退、高血圧であった。最良効果判定にて、増悪と判定された例はなく、ほとんどすべての症例で縮小傾向であった。また、多くの症例で、奏効が長期間続いており、いわゆる“durable response”も認められた。このように、これまでの標準治療であるソラフェニブでは、延命効果は得られるが、なかなか腫瘍縮小効果が得られないと言っていた時代から、約半数の症例で縮小が期待できる時代に突入した。今後の肝細胞がんの化学療法は、これらのVEGF阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が中心に開発が進んでいくことが予測されている。胆道がん進行胆道がんに対する1次化学療法のゲムシタビン+シスプラチン併用療法(GC)とゲムシタビン+S-1併用療法(GS)を比較した第III相試験(JCOG1113)がPoster Discussionで日本から報告された。生存期間(中央値)は、GC療法13.4ヵ月、GS療法15.1ヵ月(ハザード比0.945、95%CI:0.777~1.149、p=0.0459 非劣性)と非劣性が示され、胆道がんの初回化学療法の1つのoptionとして位置付けられた。そのほか、胆道がんの初回化学療法例を対象として、GC+ナブパクリタキセルとGC療法を比較する第III相試験がSWOGで進行中であり、今後の有望な併用療法として注目されていた。膵がん膵がん術後の補助療法として、modified FOLFIRINOXとGEMを比較した第III相試験、切除可能膵がんとBorderline resectable(切除可能境界)膵がん患者における術前化学療法と術前化学放射線療法の有用性を検討した第III相試験、転移性膵がんの1次治療としてFOLFIRINOXを増悪まで継続するか、FOLFIRINOX後5-FU+ロイコボリンの維持療法に移行するか、ゲムシタビンとFOLFIRIの逐次治療のどれが良いかを検討するランダム化第II相試験の3演題がOral Presentationとして報告された。術後補助療法としては、海外では、ゲムシタビンが標準治療として行われている。今回は、R0切除が行われた膵がん切除後の患者を対象として、modified FOLFIRINOX(イリノテカンの投与量を150mg/m2に減量したレジメン)とゲムシタビンを比較した第III相試験の結果が報告された。主要評価項目である無病生存期間(中央値)は、modified FOLFIRINOX群で21.6ヵ月、ゲムシタビン群で12.8ヵ月(ハザード比0.58、95%CI:0.46~0.73、p<0.0001)であり、有意に良好な結果が示された。また、生存期間(中央値)もmodified FOLFIRINOX群で54.4ヵ月とゲムシタビン群で35.0ヵ月(ハザード比0.64、95%CI:0.48~0.86、p=0.003)であり、有意に良好な結果であった。有害事象に関して、下痢、末梢神経障害、疲労、嘔吐、口内炎、手足症候群やG-CSFの使用率はmodified FOLFIRINOX群で高率に認められていたが、忍容性はあり、十分に管理可能であった。したがって、全身状態の良好な膵がん切除後の患者に対する補助療法として、modified FOLFIRINOXは標準治療として位置付けられるであろうと報告された。では、日本でも術後補助療法はmodified FOLFIRINOXが標準治療になるだろうか? 日本では、術後補助療法として、S-1とゲムシタビンを比較した第III相試験が行われており、S-1群で、有意に良好な無再発生存期間(中央値:S-1 22.9ヵ月、ゲムシタビン11.3ヵ月、ハザード比0.60、95%CI:0.47~0.76、p<0.0001)と生存期間(中央値:S-1 46.5ヵ月、ゲムシタビン25.5ヵ月、ハザード比0.57、95%CI:0.44~0.72、p<0.0001)が報告されている。S-1単剤でもmodified FOLFIRINOXと同様の成績が得られていること、有害事象はS-1が良好であることを考慮すると、日本において標準的な補助療法がmodified FOLFIRINOXにすぐに置き換わることはないと思われる。しかし、今後、切除不能膵がんにしか適応がないFOLFIRINOXを切除後の補助療法として使用できるように試みることは必要かもしれない。切除可能膵がんとBorderline resectable膵がん患者における術前化学療法と術前化学放射線療法の有用性を検討した第III相試験(PREOPANC)が報告された。切除可能膵がんとBorderline resectable膵がんが約半数ずつ含まれるような対象に対して、まず切除を行い、術後補助化学療法としてゲムシタビン6サイクルを行う群(immediate surgery群)127例と、術前にゲムシタビンを2回投与後、ゲムシタビン併用放射線療法(ゲムシタビン1,000mg/m2にて3投1休、放射線36Gy/15 fraction)を行い、再度ゲムシタビンを2回投与して切除し、術後に補助化学療法としてゲムシタビンを4サイクル行う群(術前療法群)119例を比較した第III相試験である。切除割合は、それぞれ72%と60%であり、immediate surgery群でやや高率であったが、R0切除割合は、それぞれ31%と63%であり、術前療法群で有意に高率であった(p<0.001)。無病生存期間、遠隔転移再発までの期間、局所再発までの期間も、術前療法群で良好であった。生存期間はまだpreliminaryな結果ではあるが、それぞれ13.7ヵ月と17.1ヵ月であり、ハザード比0.74、p=0.074と術前療法群で良好な傾向が示されており、最終解析が期待される結果であった。ただし、本試験では、切除可能膵がんとBorderline resectable膵がんが混在した試験であり、評価が難しい。Borderline resectable膵がんに対しては、すでに第II/III相試験の結果、術前治療の有用性も報告されているが(Jang JY, et al. Ann Surg. 2018;215-222.)、切除可能膵がんにおける術前治療の有用性は明らかにされていない。今後、切除可能膵がんとBorderline resectable膵がんのそれぞれのコホートでの解析も行われると思われるが、切除可能膵がんにおける術前治療の有用性に関して十分な回答が得られない可能性もある。転移性膵がんの1次治療としてFOLFIRINOX 12サイクル後、経過観察する群(FOLFIRINOX群)、FOLFIRINOX 8サイクル後5-FU+ロイコボリンの維持療法に移行し、増悪時にFOLFIRINOXを再開する群(FOLFIRINOX/5-FU群)、ゲムシタビンとFOLFIRI3を2ヵ月ごとに交互に投与する群(FOLFIRI3/Gem群)のいずれが良いかを検討するランダム化第II相試験(PANOPTIMOX)がOral Presentationとして報告された。この試験のコンセプトは、大腸がんでのオキサリプラチンの“stop and go”の投与方法が膵がんでも示すことができるかどうかを検討したものである。主要評価項目である6ヵ月の無増悪生存割合は、FOLFIRINOX群47.1%、FOLFIRINOX/5-FU群44.0%、FOLFIRI3/Gem群34.1%で、FOLFIRINOX群とFOLFIRINOX/5-FU群は同等であり、FOLFIRI3/Gem群は有効性が低いことが示された。また、Grade3~4の末梢神経障害は、FOLFIRINOX群で10.2%に対して、FOLFIRINOX/5-FU群で18.7%と高率であったが、結果的にFOLFIRINOX/5-FU群でオキサリプラチンの投与量が増え、治療強度が強くなったためと考察されている。進行膵がんの1次治療として、FOLFIRINOXによる導入化学療法を4ヵ月行い、5-FU+ロイコボリンの維持療法を行うことは、実施可能で有効な可能性が示され、今後、FOLFIRINOXとFOLFIRINOX+5-FU+ロイコボリンの維持療法を比較する第III相比較試験が必要であると結論付けられた。この試験の結果、FOLFIRINOXにおけるオキサリプラチンの“stop and go”の投与方法は、今後、検討されるべき課題の1つだと思われた。膵神経内分泌腫瘍テモゾロマイドとカペシタビンの併用療法(CAPTEM)とテモゾロマイド単独(TEM)を比較したランダム化比較第II相試験が報告された。これまでに、CAPTEMは30~70%と非常に高い奏効割合が報告され、注目されてきたレジメンである。標準治療であるエベロリムスやスニチニブ以外の化学療法歴がなく、12ヵ月以内に進行が確認された切除不能膵神経内分泌腫瘍の患者142例が対象として行われた。主要評価項目である無増悪生存期間(中央値)は、CAPTEM群22.7ヵ月、TEM群で14.4ヵ月、ハザード比0.58(95%CI:0.36~0.93)、p値も0.023と有意に良好であった。生存期間もCAPTEM群で有意に良好であった(中央値:CAPTEM群 未到達、TEM群38.0ヵ月、ハザード比0.41(95%CI:0.21~0.82、p=0.012)。この試験は、有望視されていたCAPTEM療法が、ランダム化比較試験において、無増悪生存期間の延長のみならず、生存期間の延長まで示されたものであり、今後、膵神経内分泌腫瘍の治療の重要な選択肢の1つとなるものと思われる。まとめASCO2018では、肝細胞がんの2次化学療法におけるラムシルマブ、膵がん切除後の補助療法としてのmodified FOLFIRINOXが、今後、標準治療として位置付けられてくることが予測される。また、そのほかにも有望な治療法の開発も進行中であり、肝胆膵領域の化学療法の開発も活気づいている。

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ASCO2018レポート 乳がん-2

レポーター紹介高齢者におけるトラスツズマブ単独治療の意義:RESPECT試験高齢のHER2陽性乳がん患者に対して術後補助療法として、トラスツズマブ単独または化学療法と併用した群とで比較した本邦からの無作為化第III相試験である。これは名古屋大学の澤木 正孝先生がPIとなって進めていた試験である。一般的に無作為化比較試験の対象から除外されている70歳以上(80歳以下)の方を対象としている点が特筆すべきポイントである。PSにもよるが高齢者ではやや化学療法を行いにくい、しかしHER2陽性乳がんは予後不良なためできるだけ治療は行いたいという臨床上のジレンマがある。もしトラスツズマブ単独でも化学療法併用と同等の効果があれば、わざわざ毒性の高い治療を選択しなくてもいいのではないかという思いは皆持っているかも知れない。また高齢化社会がますます進んでいく中で、70歳以上の割合は明らかに増加していくため、このような試験の立案はとても重要にみえる。本試験は優越性試験でも非劣性試験でもなく、主要評価項目の優劣の判定域を臨床医のアンケート結果に基づいて設定したという点もユニークである。統計学的有意性=臨床的有用性ではないことはどのような試験であっても理解しておかなければならないが、本試験ではまさに臨床上の実を取ったという訳である。計275例の患者が割り付けされ、StageIが43.6%、StageIIAが41.7%、リンパ節転移陰性が78.5%と比較的早期がんが多くを占めていた。HR陽性は45.9%とやや少なかった。3年のDFSはH+CT94.8%に対してH単独89.2%で有意差はなかった(HR:1.42、0.68~2.95、p=0.35)。いずれの群もイベント数が少なく予後良好であった。H単独でも十分な治療効果があったのか、もともと予後が良かったのかは明らかではないが、HER2陽性乳がんの性質を考えると、H単独でも高齢者において比較的良い予後改善効果があったというべきだろうか。QOLに関しては術後1年ではHのほうが良いが3年では差がなくなっていた。最近注目されているDe-escalationという考え方からすると非常に良い結果だったとは言える。PSの良い70代は、本来さらに生存が期待できるので、3年より長期の経過も知りたいところである。QOLは化学療法レジメンによっても多少異なる可能性があり、近年では3cm以下のn0では、個人的にはPTX+HER12サイクルのみのレジメンも積極的に用いていて、しびれがなければ高齢者でも比較的使いやすい印象がある。論文化されるのを待ちたいが、少なくとも早期HER2陽性乳がんの一部ではHRの状況にかかわらず、H単独のオプションを提示してもよいだろう。アントラサイクリンとタキサンの順序は重要か?局所進行HER2陰性乳がんに対してAとTの順序の違いを比較する第II相試験で、NeoSAMBA試験と呼ばれる。ブラジルからの報告である。FAC(500/50/500)3サイクルおよびドセタキセル(100)3サイクルを、A先行とT先行で比較するため118例の患者が無作為に割り付けられた。HR陽性が70%以上であった。結果は、中断、輸血、G使用は同等であったが、減量はT先行で少なかった。Grade3以上の有害事象は、T先行で急性過敏反応が多く、A先行で高血圧、感染、筋関節痛が多かった。pCRはT先行で高く、DFS(HR:0.34、1.8~0.64、p<0.001)、OS(HR:0.33、0.16~0.69、p=0.002)ともにT先行で良好であった。本試験は単施設の第II相試験であり、局所進行がんに限定されている。しかし、薬剤の送達やpCR率は、過去の試験でも一貫してT先行で良好であり、やはりT先行を術前術後の化学療法の標準と考えたほうが良さそうである。ただし、経験上注意点が1つある。増殖率のきわめて高いTNBCでは、ときにタキサンでまったく効果がなく、治療中に明らかな増大を示すものがある。そのため、T開始から1~2サイクルでそのような傾向がみられたら、ちゅうちょせずにAに変更することが勧められる。DC(ドセタキセル75/シクロホスファミド600)の有用性ドイツから、HER2陰性乳がんにおける2つの第III試験であるWSG Plan B試験(ECx4-Dx4 vs.DCx6)とSUCCESS C試験(FECx3-Dx3 vs.DCx6)の統合解析の結果が報告された。Aを含む群2,944例、DC群2,979例と大規模である。中央観察期間62ヵ月でDFSにまったく差はなかった。サブタイプ別にみても、Luminal A-like、Luminal B-like、Triple negativeともにまったく差は認められなかった。ただし、pN2/pN3ではAを含む群でDFSは良好であった(HR:0.69、0.48~0.98、p=0.04)。SABCS2016の報告で、DBCG07-READ試験(ECx3-Dx3 vs. DCx6)の結果を紹介したが、一貫したデータである。したがって、pN2/pN3以外では、もはやAは不要かもしれない。また、以前から述べていることだが、乳がん術後補助療法において、4サイクル以上行って優越性を示しているレジメンは今のところみられず、DCは4サイクルで十分なのではないかと考えている。6サイクルのTCは毒性の面からやはり相当大変だと思われる。パクリタキセル類似の微小管重合促進作用を持つutideloneの有用性アントラサイクリンとタキサン不応性の転移性乳がんに対してカペシタビン(CAP)のみとutidelone(UTD1)を追加した群を比較した中国における第III相試験で、OSの結果が報告された。utideloneはepothiloneのアナログで、微小管を安定させ、血管新生を阻害する薬剤である。UTD1+CAPがCAP単独に比べてPFS、ORRがを改善していることはすでに報告されている。対象としては化学療法レジメンが4つまでと規定している。UTD1+CAPではCAPは1,000mg/m2(CAPのみの群では1,250)であり、UTD1は30mg2を最初の5日間ivを行い3週を1サイクルとしていて、患者は2:1に割り付けられている(CAP+UTD1 270例、CAP 135例)。PFSはUTD1+CAPで著明に改善しており(HR:0.47、0.37~0.59、p<0.0001)、OSもUTD1+CAPで良好であった(HR:0.72、0.57~0.93、p<0.0093)。安全性に関してはグレード3以上の末梢神経障害の割合がUTD1+CAPで25。1%と高い(CAP0.8%)。すでにFDAで認可されているixabepiloneでは、治療終了後6週間で末梢神経障害は改善しているようだが、UTD1においてはどうだろうか。また、安全性プロファイルも限られた情報しか提示されていなかったため、もう少し詳細をみてみたい。しかし、これだけ少数例の検討にもかかわらず明確にOSに差が出ていたため紹介することとした。今後同薬剤がどのように使われていくのか見守りたい。未発症BRCA保有者における乳房MRIの重要性未発症のBRCA変異保有者に対して、乳房MRIによるサーベイランスがリスク低減手術に代わるオプションとなりうるかを検討した試験(トロントMRIスクリーニング試験)である。1997年7月~2009年6月までに乳がんや卵巣がん未発症のBRCA変異保有者380例が登録され、年1回のマンモグラフィとMRIが行われた。研究中40例(41腫瘍)に乳がんが発見された(BRCA1/2各20例、年齢中央値48[32~68]歳)。18例は以前に卵管・卵巣摘出術が行われていた。がん診断までの期間中央値は14(8~19)年であり、脱落例はなかった。発見契機はMRI 38例、マンモグラフィ6例、中間期1例でありTステージは大半が1cm以内の発見であった(2cm以上は1例のみ)。n+は4例に認められた。化学療法は13例に行われた。遠隔再発による死亡は2例、他がんによる死亡が4例(自殺1例、卵巣がん1例、腹膜がん2例)で、遠隔転移を来した2例の腫瘍の特徴はBRCA1/3cm/グレード2/ER+PR-HER2-/n1、およびBRCA2/0.7cm/グレード2/ER+PR-HER2-/n0であった。カプラン・マイヤー法による10年間の乳がん特異的生存率は94.6%と良好であり、乳房MRIスクリーニングはリスク低減手術に代わる重要なオプションであることが証明されたと結んでいる。この研究は、未発症のBRCA1/2保有者に今後の対策について話し合う際に非常に貴重な資料となる。Li-Fraumeni症候群における全身MRIによるがん早期発見の評価:LIFSCREEN試験フランスからの報告である。乳がんの約1%に認められることが知られているLi-Fraumeni症候群(TP53胚細胞変異)では、小児期からさまざまな悪性腫瘍を発症しやすく、有効なスクリーニングの手段が必要である。がん発症リスク上昇の懸念から被曝は極力避けたいため、以前から全身MRIの有用性が報告されているが、本研究は国を挙げての無作為化比較試験であり、実に素晴らしいと言わざるを得ない。アームAは身体所見、脳MRI、腹部-骨盤超音波検査、乳房MRI+乳房超音波、血算であり、アームBはアームAの検査に全身MRI(拡散強調画像)を加えたものである。計105例が無作為に割り付けられ、18歳以上が80%以上、女性が70%以上を占め、家族歴のない患者が約半数であった。少なくとも3年以上の経過観察が行われた。全身MRIでは肺がん3例、脈絡叢がん1例(肺転移)、副腎皮質がん1例(超音波でも同定)、乳がん3例(乳房MRIでも同定)、脊髄グリオーマ1例が発見され、一方、骨髄腫1例、顎の骨肉腫1例、乳がん1例が発見されなかった。3年という短期間では両群でOSに差はなかった。全身MRIではとくに肺がんの発見率が良いようである。フランスでは、本試験の結果を基に、全身MRIをスクリーニング手段としてガイドラインに追加している。しかし多くの放射線科医が全身MRIの読影に慣れていないという大きな問題が存在する。また、全身MRIのプロトコールはさまざまであり、放射線科医は見逃しを少しでも減らし疾患の鑑別をしたいがために、どうしても長い撮像時間のプロトコールを組みたがるが、腫瘍があることが前提の精密検査ではなくスクリーニングであることを十分認識し、受診者負担、撮影装置の占有時間を少しでも減らすため撮像時間を可能な限り短縮したいものである。本報告では具体的な撮像法がわからなかったため、論文化された時点で撮像法の詳細を確認したい。

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ホルモン抵抗性乳がんへのアベマシクリブ+フルベストラント(MONARCH-2)/ASCO2018

 ホルモン受容体(HR)陽性乳がんでは、エストロゲンの刺激によりサイクリンD1が発現し、CDK4/6が活性化され、その結果として細胞周期が進行する。選択的CDK4/6阻害薬であるアベマシクリブは、1日2回連日投与される経口薬であり、CDK4/6を持続的に阻害することで、細胞周期の停止が持続し、腫瘍細胞の老化やアポトーシスがもたらされると考えられる。 アベマシクリブは、HR陽性HER2陰性の進行乳がん患者において、単剤(MONARCH-1試験)、フルベストラントとの併用(MONARCH-2試験)、非ステロイド性アロマターゼ阻害(NSAI)との併用(MONARCH-3試験)による有効性および忍容性が示されている。ベルギー・University Hospitals LeuvenのPatrick Neven氏は、今回、MONARCH-2試験の参加者のうち、閉経前/閉経期の患者における有効性と安全性のデータを報告した。 MONARCH-2試験は、HR陽性HER2陰性進行乳がん女性において、アベマシクリブ+フルベストラントとフルベストラント単剤の有用性を比較する国際的な二重盲検プラセボ対照ランダム化第III相試験である。1ラインの術前内分泌療法中または術後内分泌療法中か終了後1年以内に再発し、化学療法歴のない患者を対象とした。 被験者は、アベマシクリブ(150mg[試験開始時は200mg、後に修正]、1日2回、経口、連日投与)+フルベストラント(500mg、筋肉内注射、1サイクルを28日とし、1サイクル目のDay1、15、2サイクル目以降はDay1)またはプラセボ+フルベストラントを投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、治験医判定による無増悪生存(PFS)とした。副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、臨床的有用性率(CBR)、安全性などであった。 本試験には、2014年8月~2015年12月に、日本を含む19ヵ国142施設に669例が登録された。このうち、閉経前/閉経期の患者は114例で(年齢60歳未満で自然月経がみられる患者はGnRHアゴニストの投与が求められた)、アベマシクリブ群が72例、プラセボ群は42例だった。追跡期間中央値はそれぞれ20.4ヵ月、19.6ヵ月。ベースラインの年齢中央値は、アベマシクリブ群が46歳、プラセボ群は47歳であり、アジア人がそれぞれ70.8%、57.1%、白人が19.4%、38.1%を占めた。 全体のITT集団(669例)における治験医判定のPFS期間中央値は、アベマシクリブ群が16.4ヵ月と、プラセボ群の9.3ヵ月よりも7.1月延長した(HR:0.553、95%CI:0.449~0.681、p<0.0000001)。独立中央判定委員会による盲検下の評価でも、アベマシクリブ群にPFSのベネフィットが認められた(HR:0.460、95%CI:0.363~0.584、p<0.000001)。  閉経前/閉経期集団(114例)の治験医判定PFS期間中央値は、アベマシクリブ群は未到達であったが、プラセボ群の10.5ヵ月との間に有意な差が認められた(HR:0.446、95%CI:0.264~0.754、p<0.002)。独立中央判定委員会の盲検下の評価でも、アベマシクリブ群でPFSのベネフィットが確認された(HR:0.432、95%CI:0.236~0.793、p<0.005)。また、アロマターゼ阻害薬の投与歴のない閉経前/閉経期集団(92例)における治験医判定PFS期間中央値は、アベマシクリブ群は未到達であったものの、プラセボ群の11.3ヵ月に比し有意に良好であった(HR:0.451、95%CI:0.245~0.833、p=0.009)。 閉経前/閉経期集団におけるアベマシクリブ群の腫瘍縮小効果は深く、かつ高度であった。すなわち、ORRは、ITT集団(114例)ではアベマシクリブ群が43.1%(CR:2.8%)、プラセボ群は19.0%(CR:0%)、測定可能病変例(79例)ではそれぞれ60.8%(CR:0%)、28.6%(CR:0%)であった。また、CBRは、ITT集団がそれぞれ77.8%、69.0%、測定可能病変例では、74.5%、71.4%であった。Neven氏は、「われわれが知る限り、これは内分泌療法抵抗性乳がんにおける最も良好な結果である」と指摘している。 閉経前/閉経期集団における有害事象による治療中止は、アベマシクリブ群が4例(5.6%)、プラセボ群は0例、減量はそれぞれ28例(39.4%)、1例(2.4%)にみられた。重篤な有害事象は、アベマシクリブ群が8例(11.3%)、プラセボ群は2例(4.8%)にみられた。 アベマシクリブ群では治療関連有害事象が98.6%に発現し、そのうちGrade 3が56.3%、Grade 4は5.6%であった。アベマシクリブ群で頻度の高い有害事象として、下痢(87.3%)、好中球減少(59.2%)、白血球減少(43.7%)などがみられた。Grade 3の下痢の割合は11.3%で、Grade 4は認めず、好中球減少はそれぞれ39.4%(発熱性好中球減少の1例を含む)、2.8%に発現した。 Neven氏は、「アベマシクリブ+フルベストラント+GnRHアゴニスト療法は、閉経前/閉経期の患者において、実質的なPFSの改善と腫瘍縮小効果をもたらし、化学療法の導入を遅らせることが示された。下痢は管理可能で、可逆的であり、GnRH追加による新たな有害事象は認めなかった」とまとめた。■参考ASCO2018 Abstract※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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閉経前乳がん術後ホルモン療法は何を選択すべきか-SOFT+TEXT統合解析から(解説:矢形寛氏)-884

 ホルモン受容体陽性乳がんにおいて、ホルモン治療は生存率向上に重要な役割を果たしている。しかし、閉経前ではその治療法にタモキシフェン単独(TAM)、タモキシフェン+卵巣機能抑制(TAM+OFS)、そしてアロマターゼ阻害剤+卵巣機能抑制(AI+OFS)の3通りがあり、どれを選択するかは悩ましい。なぜなら、後者になるにつれて治療効果も上がりそうであるが、一方で、短期的有害事象のみならず、長期的な身体への影響も大きくなりうるからである。したがって、治療効果が高いのでなければ、有害事象の少ない治療法を選択する方向で考えることになる。 本研究では、SOFT試験とTEXT試験を統合解析したもので、今後の臨床に重要な知見を与えてくれるものである。この解釈についてはすでにケアネットの学会報告サン・アントニオ乳がんシンポジウム2017のところで述べたが、再確認しておきたい。 まず治療効果においてとくに重要なのは、遠隔再発と全生存率である。8年間の遠隔再発の差はTAM+OFSとAI+OFSで2%であり、統計学的有意差が認められた。しかし全生存率はまったく差はみられていない。サブ解析も含めてトータルに考えると、いわゆる一般的な予後因子が不良であるほど治療効果の差は開くことになる。40歳未満あるいは40代前半で化学療法を行うようなハイリスクに対して、OFSの上乗せを提案するというスタンスでよいであろう。40代後半では、化学療法によりほぼ閉経状態となり、TAM単独でも問題ないだろう。さらに腫瘍径も大きくリンパ節転移個数が多いとなれば、AI+OFSを選択する根拠となる。明確な選択基準はないが、専門医はバランスよく治療方針を決定するのが賢明である。

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転移のある大腸がんの3次治療、新たなVEGFR阻害薬が有効/JAMA

 転移を有する大腸がんの3次治療の選択肢は少ない。中国・同済大学上海東病院のJin Li氏らは、2ライン以上の化学療法を施行後に病勢が進行した転移を有する大腸がんの治療において、経口血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)阻害薬fruquintinibが、プラセボに比べ全生存(OS)期間を統計学的に有意に延長することを示した(FRESCO試験)。研究の成果は、JAMA誌2018年6月26日号に掲載された。fruquintinibは、高い選択性を持つVEGFR-1、-2、-3の低分子阻害薬であり、腫瘍の増殖と関連する血管新生を抑制する。中国人患者で有効性と安全性をプラセボと比較 FRESCOは、中国の28施設で行われた二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験である(Hutchison MediPharmaなどの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、全身状態(ECOG PS)が0/1で、2ライン以上の前化学療法歴がある、転移を有する大腸がん患者であった。VEGF阻害薬やEGFR阻害薬による前治療は許容されたが、他のVEGFR阻害薬の前投与歴のある患者は除外された。 被験者は、fruquintinib(5mg/日)またはプラセボを1日1回経口投与する群に、2対1の割合でランダムに割り付けられた。治療は、1サイクルを28日として21日間投与後7日間休薬し、病勢進行、耐用不能な毒性の発現、試験脱落となるまで継続された。 主要エンドポイントはOSであった。有効性の副次エンドポイントは、無増悪生存(PFS:ランダム割り付け時から病勢進行または死亡までの期間)、客観的奏効率(ORR:完全奏効[CR]+部分奏効[PR])、病勢コントロール率(DCR:CR+PR+8週以上持続する安定[SD])とし、奏効期間(DOR)、安全性の評価も行った。 2014年12月~2016年5月の期間に、416例(平均年齢54.6歳、女性38.7%)が登録され、fruquintinib群に278例、プラセボ群には138例が割り付けられた。404例(97.1%)が試験を完遂した。OSが約3ヵ月、PFSが約2ヵ月延長、1例でCR ベースライン時に、男性がプラセボ群で多かった(56.8 vs.70.3%)。両群とも、ほとんどの患者が複数の転移巣(95.3 vs.97.1%)を有し、肝転移(66.5 vs.73.9%)を有する患者が多かった。VEGF阻害薬(30.2 vs.29.7%)およびEGFR阻害薬(14.4 vs.13.8%)の投与歴、K-ras変異の頻度(56.5 vs.53.6%)は両群で同等だった。 OS期間中央値は、fruquintinib群が9.3ヵ月と、プラセボ群の6.6ヵ月に比べ有意に延長した(死亡のハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.51~0.83、p<0.001)。OSのサブグループ解析では、ほぼすべてのサブグループでfruquintinib群が良好であった。 PFS期間中央値も、fruquintinib群が3.7ヵ月と、プラセボ群の1.8ヵ月に比し有意に長かった(病勢進行と死亡のHR:0.26、95%CI:0.21~0.34、p<0.001)。PFSのサブグループ解析では、すべてのサブグループでfruquintinib群が優れた。 ORR(4.7 vs.0%、p=0.01)およびDCR(62.2 vs.12.3%、p<0.001)も、fruquintinib群が有意に優れ、同群ではCRが1例、PRが12例に認められた。データカットオフ日に、奏効例のほとんどが病勢進行に至らず治療継続中であり、それゆえDOR中央値には未到達であった(データカットオフ時点でのDORは5.6ヵ月)。 Grade3/4の治療関連有害事象は、fruquintinib群が61.2%、プラセボ群は19.7%に発現した。重篤な有害事象はそれぞれ15.5%、5.8%に認められ、入院または入院の延長を要する重篤な有害事象は14.4%、5.1%にみられた。fruquintinib群で頻度の高いGrade3/4の治療関連有害事象として、高血圧(21.2%)、手足皮膚反応(10.8%)、蛋白尿(3.2%)が認められた。 著者は、「中国以外の地域での有効性を評価するために、さらなる検討を要する」としている。

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オラパリブ・アビラテロン併用で去勢抵抗性前立腺がんのPFS改善/ASCO2018

 既治療の転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対して、抗アンドロゲン薬・アビラテロンにPARP阻害薬オラパリブを上乗せする効果を対プラセボで比較した無作為化第II相臨床試験の結果を、英国・The Christie and Salford Royal HospitalのNoel Clarke氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で報告した。 同試験の対象はドセタキセルの前治療を受けたmCRPCで、化学療法施行は2ライン以内、第2世代抗アンドロゲン製剤での治療歴のない患者。登録患者はアビラテロン1日1回経口1,000mg服用をベースに、オラパリブを1日2回300mgを併用したオラパリブ群とプラセボを併用したプラセボ群に割り付けられた。主要評価項目は画像診断上の無増悪生存期間(rPFS)、副次評価項目は相同組み換え修復遺伝子変異(HRRm)別のrPFS、2次治療までの無増悪生存期間(PFS2)、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、末梢血中循環腫瘍細胞陽性転化率、安全性。登録症例は142例で、両群に71例ずつ割り付けられた。 rPFS中央値はオラパリブ群が13.8ヵ月、プラセボ群で8.2ヵ月で、オラパリブ群で有意な延長が認められた(HR:0.65、95%CI:0.44~0.97、p=0.034)。 HRRmは21例(全体の15%)で認められた。HRRm症例でのrPFS中央値はオラパリブ群が17.8ヵ月、プラセボ群が6.5ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.26~2.12)、生殖細胞検査と血漿検査のいずれか、あるいは双方で変異がないと診断された野生型(HRRpc)のrPFS中央値はオラパリブ群が13.1ヵ月、プラセボ群が6.4ヵ月(HR:0.67、95%CI:0.40~1.13)、生検腫瘍組織で変異がないと診断された野生型(HRRwt)のrPFS中央値はオラパリブ群が15.0ヵ月、プラセボ群が9.7ヵ月(HR:0.52、95%CI:0.24~1.15)。HRRmの有無とrPFSに相関は認められなかった。 また、PFS2中央値はオラパリブ群が23.3ヵ月、プラセボ群で18.5ヵ月(HR:0.79、95%CI:0.51~1.21、p=0.28)、OS中央値はオラパリブ群が22.7ヵ月、プラセボ群で20.9ヵ月であった(HR:0.91、95%CI:0.60~1.38、p=0.66)。 ORRはオラパリブ群が27%、プラセボ群が32%、末梢血中循環腫瘍細胞陽性転化率はオラパリブ群が50%、プラセボ群が46%であった。 Grade3以上の有害事象発現頻度はオラパリブ群が54%、プラセボ群が28%。オラパリブ群で発現頻度が高かった主な有害事象は悪心、貧血、背部痛、便秘、無力症などで、Grade3以上としては貧血が最も多かった。 Clarke氏は「オラパリブとアビラテロンの併用は、アビラテロン単剤に比べ、有意なrPFS延長効果が得られた一方、有害事象の発現頻度は高まった。この結果を基に第III相試験を計画している」と説明した。※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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ASCO2018レポート 肺がん-1

レポーター紹介2018 ASCO(American Society Clinical Oncology)Annual Meetingが、2018年6月1日~5日、米国・イリノイ州シカゴで開催された。第54回を数える今回の年次総会には、世界中からがん医療に関わる医師、看護師、薬剤師、患者、製薬企業などが多数参加しており、がんに関する幅広い研究成果や教育講演に接することができた。ここ数年、肺がん領域は毎年標準治療を変えるエビデンスが創出されているが、今年のASCOでもその勢いは続き、今年のガイドラインに掲載されうるエビデンスが多数報告された。免疫療法の到達点非小細胞肺がんの2次治療において、ニボルマブがドセタキセルに対して歴史的な勝利をおさめて3年ほどで、PD-L1高発現の患者集団の1次治療においてペムブロリズマブがプラチナ併用療法を凌駕することが示された。そして昨年末のESMO IO、今年に入ってからのAACR、そしてASCOと立て続けに、PD-L1の発現によらず、免疫チェックポイント阻害薬が1次治療を席巻するエビデンスが報告された。KEYNOTE-042PD-L1 TPS 1%以上の進行非小細胞肺がん患者を対象に、ペムブロリズマブとプラチナ併用療法を比較した第III相試験である。同様の患者集団に対しては、すでにニボルマブを用いたCheckMate 026試験が実施されており、ニボルマブは化学療法と同等であったが優越性を示すことはできなかった。KEYNOTE-042においてはそれに反して、hazard ratio 0.81(95%信頼区間:0.71~0.93)と統計学的にも有意に、ペムブロリズマブ単剤が化学療法に勝る結果が報告された。生存期間中央値では、ペムブロリズマブ群が16.7ヵ月、化学療法群が12.1ヵ月であった。CheckMate 026との違い、とくにニボルマブとペムブロリズマブの薬剤としての有効性の違いがあるのか、という点に注目が集まる結果である。試験の詳細を比較すると、KEYNOTE-042試験において、PD-L1 TPS 50%以上の患者集団の割合が高いこと、試験が免疫チェックポイント阻害薬未承認の国を中心として実施されているため、後治療でのクロスオーバーの割合が低いこと、などの点を考慮すると、薬剤の違いよりも他の相違点が結果に影響しているという考察がなされている。また、PD-L1 TPS 1~49%のサブセットにおいては、ペムブロリズマブの有効性は必ずしも化学療法よりも明らかに優れる結果ではなかったことから、化学療法実施不可の患者を除き、KEYNOTE-189で示された化学療法+ペムブロリズマブの選択が妥当とする見解が主流である。いずれにせよ、PD-L1陰性を除き、すべての非小細胞肺がん患者に対して免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の使用を支持する結果が得られたことに高い評価が集まった。Pembrolizumab(pembro)versus platinum-based chemotherapy(chemo)as first-line therapy for advanced/metastatic NSCLC with a PD-L1 tumor proportion score(TPS)≧1%:Open-label, phase 3 KEYNOTE-042 study.(Abstract No: LBA4)Gilberto LopesKEYNOTE-407AACRで非扁平上皮非小細胞肺がんに対して実施されたKEYNOTE-189試験の結果が報告され、PD-L1の発現によらずプラチナ併用療法+ペムブロリズマブが新たな標準治療となる方向性が示された。KEYNOTE-407試験は、扁平上皮非小細胞肺がんに対して、PD-L1の発現によらずプラチナ併用療法+ペムブロリズマブの有効性を検証した第III相試験である。559人の患者を登録した本試験の結果、Co-primary endpointのOSとPFSともにペムブロリズマブ併用群が有意に生存を延長するという結果が得られた。OSではhazard ratio 0.64(95%信頼区間:0.49~0.85)、PFSではhazard ratio 0.56(95%信頼区間:0.45~0.70)であった。サブセット解析ではPD-L1の発現割合が高いほど有効性が増す傾向が示されたものの、PD-L1の発現によらない全集団でのOS、PFSの優越性が認められていることの意義は大きく、扁平上皮非小細胞肺がんの新たな標準治療が創出された試験となった。Phase3study of carboplatin-paclitaxel/nab-paclitaxel(Chemo)with or without pembrolizumab(Pembro)for patients(Pts)with metastatic squamous(Sq)non-small cell lung cancer(NSCLC).(Abstract No: 105)Luis G. Paz-AresIMpower 131PD-L1阻害薬であるアテゾリズマブとプラチナ併用療法を用いた試験のうち、扁平上皮非小細胞肺がんを対象としたものがIMpower 131試験である。本試験はアテゾリズマブ、カルボプラチン、パクリタキセルのArm A、アテゾリズマブ、カルボプラチン、アブラキサンのArm B、カルボプラチン、アブラキサンのコントロールとしてのArm Cを含む、3群のランダム化試験である。今回報告されたのは、その中でもArm BとArm Cの比較である。primary endpointであるPFSのhazard ratio 0.71(95%信頼区間:0.60~0.85)と、統計学的に有意な無増悪生存期間の延長が示された。一方、OSの中間解析も併せて報告されたがイベント数が不足しており、若干アテゾリズマブ群が良い傾向がみられたが、最終解析の結果を待つ必要がある結果であった。IMpower131: Primary PFS and safety analysis of a randomized phase III study of atezolizumab + carboplatin + paclitaxel or nab-paclitaxel vs carboplatin + nab-paclitaxel as 1L therapy in advanced squamous NSCLC.(Abstract No: LBA9000)Robert M. JotteCheckMate 227ニボルマブ、イピリムマブ併用療法、ニボルマブ、化学療法の併用療法、そして標準治療としての化学療法の3群のランダム化試験であるCheckMate 227試験からは、今回PD-L1陰性の進行非小細胞肺がん患者において化学療法化学療法+ニボルマブを比較した解析結果が報告された。PFSのhazard ratioが0.74(95%信頼区間:0.58~0.94)と、ニボルマブと化学療法の併用によって、PD-L1陰性の患者集団においても無増悪生存期間が延長されるという結果が示されている。CheckMate 227試験に関しては、AACRにおいてTumor Mutation Burden(TMB)が高い患者集団におけるニボルマブ、イピリムマブ併用療法の良好な成績が報告されるなど、さまざまな解析が進行中である。最も重要な全集団におけるニボルマブ+化学療法の有効性に関する解析結果はまだ行われておらず、結果が待たれる。Nivolumab(Nivo)+platinum-doublet chemotherapy(Chemo)vs chemo as first-line(1L)treatment(Tx)for advanced non-small cell lung cancer(NSCLC)with<1% tumor PD-L1 expression:Results from CheckMate-227.(Abstract No: 9001)Hossein Borghaei

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切除後NSCLCの再発および生存に対する体細胞変異の影響(JME)/ASCO2018

 次世代シークエンス(NGS)により、手術後の非小細胞肺がん(NSCLC)における体細胞変異を検討した、本邦の多施設前向き肺がん分子疫学研究JME(Japan Molecular Epidemiology for lung cancer)。副次評価項目である、体細胞変異と無再発生存期間(RFS)および全生存期間(OS)との関係について、近畿中央胸部疾患センター 田宮 朗裕氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会ASCO2018で発表した。 研究対象はStage I~IIIBのNSCLC。2012年7月~2013年12月までに43施設から集められた876の外科的切除標本で、48のがん関連遺伝子と5つのがん関連遺伝子増幅が評価された。追跡期間中央値は48.4ヵ月。 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は70歳。男性が876例中419例。・病期はStage Iが 618例でもっとも多く、II、III、IV はそれぞれ131例、104例、23例であった。・2つ以上の体細胞変異を有する患者は876例中146例であった。・術後化学療法は876例中309例に実施された。・RFSの予後因子は、変異数(0または1つ対2つ以上、HR:0.609、p<0.0105)、年齢(70歳未満対70歳以上、HR:0.641、p=0.0008)、性別(男性対女性、HR:1.460、p=0.0381)、病理病期([Stage I対II、HR:0.332、p<0.0001]、[I対IIIまたはIV、HR:0.157、p<0.0001]、[II対IIIまたはIV、HR:0.486、p<0.0001])であった。・OSの予後因子は年齢(70歳未満対70歳以上、HR:0.590、p=0.0025)、アジュバント化学療法の施行(なし対あり、HR:2.029、p=0.0001)、EGFR変異(陰性対陽性、HR:2.223、p<0.0006)、病理病期([Stage I対II、HR:0.408、p<0.0001]、[I対IIIまたはIV、HR:0.151、p<0.0001]、[II対IIIまたはIV、HR:0.371、p<0.0001])であった。 RFSの長さに影響するのは、早期Stageと若年齢、変異数。OSの長さに影響するのは、早期Stageと若年齢とともに、EGFR変異陽性、アジュバント化学療法施行であった。とくに病期はRFS、OSの双方に影響が大きく、肺がんの進行度合いは、遺伝子変異以上に予後に影響を及ぼすことが明になった。筆頭著者である田宮 朗裕氏との1問1答【この研究を実施した背景は?】 JME研究は、喫煙者と非喫煙者のdriver mutationを含む体細胞変異との相関をみている試験ですが、今回はその中で遺伝子変異が予後に対して、どう影響するかを調べたものです。【結果についてコメントいただけますか】 体細胞変異が多いほど予後も悪いのではないかという想定していました。RFSについては、想定通り、体細胞変異が多いほど予後不良でしたが、OSについては想定通りの結果にはなりませんでした。その1つの理由としては、EGFR-TKIの有効性が高いことから、EGFR変異陽性患者の予後が良好であったことが影響していると考えられます。また、術後化学療法の有無が大きく予後に影響したことも想定外でした。【今回の研究の成果についてコメントいただけますか】 早期肺がんの発がんに関係する研究は従来後ろ向きのものが多かったのですが、今回は前向きで解析しています。今回の前向き研究で、体細胞変異と予後の関係を多変量で解析できたこと、そして術後確定病理と予後の関係が前向きに証明されたことは意義があると思います。■参考ASCO2018 AbstractJME研究(JCO)※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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PD-L1発現1%未満のNSCLC1次治療、ニボルマブ+化学療法でPFS改善(CheckMate-227)/ASCO2018

 ニボルマブおよびニボルマブベースのレジメントと化学療法を比較した、無作為化オープンラベル第III相CheckMate-227試験。本年の米国がん研究会議年次集会(AACR2018)およびN.Engl.J.Med誌にて、高腫瘍変異(TMB-H)患者においてニボルマブ+イピリムマブ群が化学療法単独に比べ有意にPFSを改善した結果が発表されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)では、米国Fox Chase Cancer CenterのHossein Borghaei氏により、PD-L1(TPS)1%未満の患者におけるニボルマブ+化学療法化学療法単独群を比較した無増悪生存期間(PFS)の結果が発表された(最低追跡期間は11.2ヵ月)。試験デザイン・試験対象:PD-L1発現1%以上および1%未満のStageIVまたは再発NSCLCの初回治療患者・試験群:ニボルマブ+イピリムマブ群     ニボルマブ単独群(TPS1%以上)     ニボルマブ+化学療法群(TPS1%未満)・対照群:化学療法(組織型により選択)単独・評価項目 [複合主要評価項目]高TMB(≧10/メガベース)患者におけるニボルマブ+イピリムマブ群対化学療法群のPFS、PD-L1発現(≧1%)患者におけるニボルマブ+イピリムマブ群対化学療法群の全生存期間(OS) [副次評価項目]高TMB(≧13/メガベース)かつPD-L1発現(TPS1%以上)患者におけるニボルマブ単独群対化学療法群のPFS、高TMB(≧10/メガベース)患者におけるニボルマブ+化学療法群対化学療法群のOS、PD-L1なしまたは低発現(TPS1%未満)患者におけるニボルマブ+化学療法群対化学療法群のPFS。そのほか奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者はニボルマブ+化学療法群177例と化学療法単独群186例に割り付けられた・全体のPFSは、ニボルマブ+化学療法群5.6ヵ月に対し、化学療法単独群4.7ヵ月、1年PFS率はそれぞれ、26%と14%であった(HR:0.74、95%CI:0.58~0.94)・PFSをTMB別にみると、TMB-H(10mut/メガベース以上)では、それぞれ6.2ヵ月と5.3ヵ月、1年PFS率は27%対8%(HR:0.56、0.35~0.91)であり、低TMB(TMB-L=10mut/メガベース未満)では、両群共に4.7ヵ月、1年PFS率は18%対16%であった(HR:0.87、0.57~1.33)・全体のORRは、ニボルマブ+化学療法群36.7%に対し、化学療法単独群23.1%であった。・ORRを腫瘍変異負荷(TMB)別にみると、TMB-Hでは、それぞれ60.5%と20.8%、TMB-Lでは27.8%と22.0%であった・全Gradeの治療関連有害事象は、ニボルマブ+化学療法群92%に対し、化学療法単独群では77%。Grade3/4ではそれぞれ52%と35%であった

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HR+HER2-リンパ節転移-乳がん患者における化学療法の意義(TAILORx)/ASCO2018

 米国では、乳がん全体の約半数をホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性、リンパ節転移陰性乳がんが占め、治療として術後化学療法が推奨されているが、多くの患者が過剰治療を受けている可能性がある。21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)を用いた再発スコア(RS)の妥当性を検証する前向き試験では、低RSの場合は内分泌療法(ET)単独でも再発率は低く、高RSでは化学療法(Chemo)併用のベネフィットが大きいことが示されているが、RSが中間値の患者における化学療法のベネフィットは不明であった。 米国・Montefiore Medical CenterのJoseph A. Sparano氏らは、HR陽性HER2陰性リンパ節転移陰性乳がんの治療におけるバイオマーカーに基づくChemo治療パラダイムの確立を目的に、21遺伝子アッセイによるRSが中間値の患者において、ET単独とET+Chemoを比較する第III相試験(TAILORx試験)を実施した。 2006年4月〜2010年10月の期間に、年齢18〜75歳の浸潤性乳がんで、HR陽性HER2陰性、リンパ節転移陰性の患者が登録され、RSによって低RS(0〜10点、1,629例、ET単独、A群)、中間RS(11〜25点、6,711例)、高RS(26〜100点、1,389例、ET+Chemo、D群)に分けられた。さらに、中間RSの患者は、ET単独を施行する群(B群)またはET+Chemoを施行する群(C群)にランダムに割り付けられた。 主要エンドポイントは、ランダム化の対象となった中間RS(B群、C群)における無浸潤性乳がん生存(IDFS)であった。非劣性デザインとし、IDFSのハザード比(HR)の非劣性マージンは1.322とした。 中間RSの患者の年齢中央値は55歳、33%は50歳以下であった。63%は腫瘍サイズが1~2cm、57%は組織学的悪性度が中等度であり、MINDACT基準による臨床的リスクは、74%が低リスク病変、26%は高リスク病変だった。 追跡期間中央値7.5年におけるIDFSのHRは1.08(95%CI:0.92~1.24、p=0.26)で、事前に規定されたHRの非劣性マージン(1.322)を超えなかったことから、B群のC群に対する非劣性が確認され、主要エンドポイントは満たされた。同様に、遠隔無再発生存期間(DRFI)(HR:1.10、95%CI:0.85〜1.41、p=0.48)、無再発生存期間(RFI)(HR:1.11、95%CI:0.90〜1.37、p=0.33)、全生存期間(OS)(HR:0.99、95%CI:0.79〜1.22、p=0.89)についても、B群のC群に対する非劣性が示された。 9年時の遠隔再発のイベント発生率は、A群が3%、B+C群が5%、D群は13%であった。また、B群とC群のIDFS率、DRFI率、RFI率、OS率の差は、いずれも1%未満だった。 RS 11〜25点(B群、C群)の50歳以下の患者(2,216例)においてChemoのベネフィットの評価を行ったところ、RS 16〜20点の患者ではB群に比べC群でIDFS率が9%低く、RS 21〜25点の患者ではIDFS率が6%低かった。RS 11〜15点の50歳以下の患者では、Chemoによるベネフィットのエビデンスは認められなかった。 Sparano氏は、「RSが11〜25点の患者では、ET単独のET+Chemoに対する非劣性が示され、RS 0〜10点ではET単独による9年時の遠隔再発率はきわめて低かった(2〜3%)が、25〜100点では術後にET+Chemoを行っても再発によるイベント発生率が高く、より有効性の高い治療の探索が求められる。RS 16〜25点では、50歳以下の患者にある程度のChemoのベネフィットが認められ、このうち21〜25点の患者でChemoによる遠隔再発の抑制効果が高かった」とまとめ、「Chemoのベネフィットが期待できないサブグループでは、意思決定過程を共有し、ベネフィットとリスクについて注意深く話し合ったうえで、Chemoを控えるようにすべきである」と指摘した。■参考ASCO Abstract■関連記事ASCO2018乳がん 会員聴講レポート※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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膵がんアジュバントにおけるmFOLFIRINOXの可能性(PRODIGE 24/CCTG PA.6)/ASCO2018

 切除後の膵臓がんでは、術後補助化学療法を行ったにもかかわらず、7割の患者が2年以内に再発するとされる。そのため、より良好な成績の術後補助化学療法が求められている。この術後化学療法として、フルオロウラシルのボーラス投与を省いたmodified FOLFIRINOX(mFOLFIRINOX)療法とゲムシタビン単剤療法を比較した第III相試験PRODIGE 24/CCTG PA.6が行われ、その結果をフランス・Institut de Cancérologie de LorraineのThierry Conroy氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で発表した。 試験の登録患者はR0、R1切除施行、術後12週間以内の腫瘍マーカーが180U/mL未満で化学療法、放射線療法の治療歴のないPS 0~1の膵がん患者。患者は、mFOLFIRINOX(オキサリプラチン85mg/m2、レボホリナート200mg/m2、イリノテカン180mg/m2、フルオロウラシル2,400mg/m246時間持続投与)を2週間ごと最大12サイクル施行したmFOLFIRINOX群と、ゲムシタビン1,000mg/m2を3または4週間ごとを最大6サイクル施行するゲムシタビン群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は無病生存期間(DFS)、副次評価項目は毒性、全生存期間(OS)、3年時点のがん特異的生存率(SS)、無転移生存期間(MFS)とした。 2012年4月~2016年10月に493例が登録され、mFOLFIRINOX群は247例、ゲムシタビン群は246例であった。追跡期間中央値は33.6ヵ月。 DFS中央値は、mFOLFIRINOX群が21.6ヵ月(17.7~27.6)、ゲムシタビン群が12.8ヵ月(11.7~15.2ヵ月)と、mFOLFIRINOX群で有意に延長した(HR:0.58、95%CI:0.46~0.73、p

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オラパリブ、BRCA変異陽性乳がんに国内適応拡大

 アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:ステファン・ヴォックスストラム)は2018年7月2日、オラパリブ(商品名:リムパーザ)が、「がん化学療法治療歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌」を適応症とする製造販売承認事項一部変更の承認を取得したと発表。 リムパーザの処方は、コンパニオン診断プログラムである「BRACAnalysis 診断システム」による、生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異の判定結果に基づき決定される。■関連記事オラパリブ、BRCA変異陽性乳がんにおける全生存期間の最新データを発表/AACR2018オラパリブの乳がんコンパニオン診断プログラムが国内承認FDA、BRCA変異転移乳がんにオラパリブ承認

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ASCO2018レポート 乳がん-1

レポーター紹介2018年ASCOのテーマは、”Deliverling Discoveries:Expanding the Reach of Precision Medicine”であった。その言葉どおり、プレシジョンメディスンの言葉が随所に散りばめられていた。まさに遺伝子解析から治療を選択する時代に突入している。がん種によらず腫瘍の遺伝学的特徴から治療を決めることは当たり前の状況になっていくであろう。それに伴い、胚細胞遺伝子変異、すなわち、遺伝性腫瘍との関わりも重要視されてきており、先駆けて臨床遺伝専門医制度の指導医まで獲得しておいて良かったと思うと同時に、日本家族性腫瘍学会において家族性腫瘍専門医制度が開始されたことも時代の要請だろう。免疫療法の話題も増加している。すでにFDAが複数のがん種においてペムブロリズマブやニボルマブを認可しており、一般病院への影響についてのレクチャーもあったくらいである。乳がんというくくりでは、まだ第III相試験が行われている段階ではある。TAILORx試験最初はなんといってもプレナリーセッションからである。TAILORxは、ER+/HER2-リンパ節転移陰性乳がんに対してOncotype Dxでの中間リスクを、化学療法を追加する群としない群に分けて予後をみた大規模無作為化比較試験である。発表と同時に論文化されている(Sparano JA, et al. N Engl J Med. 2018Jun 3. [Epub ahead of print])。それ以前に低リスクでは、化学療法の追加の意義はなく、内分泌療法だけで良いことが示されている。本研究での中間リスクはリスクスコア11~25としていて、メーカーが設定しているスコアとは範囲が異なることは注意する必要がある。非劣性試験であり、全6,711名の患者が割り付けられた。化学療法はTCが56%でアントラサイクリン含むレジメンは36%であった。63%は腫瘍径1~2cm、57%は腫瘍グレードが中間であった。結果は主要評価項目である浸潤DFS、副次評価項目である遠隔RFIともまったく差はなく、非劣性が証明された。もちろんRFI、OSも非劣性である。発表の中では、探索的分析が行われており、年齢50歳以下では、リスクスコア16~25で2群間の差は浸潤DFS 9%、遠隔再発2%、21~25で浸潤DFS 6%であった。結論として、リスクスコア16~25では50歳以下で化学療法のベネフィットがあるかもしれないと要約している。しかしこれは後付けの解析であることから、さまざまな因子のサブ解析の中で、たまたま年齢だけ差が出た可能性もあり、あくまで参考程度にみておくのが良いだろう。また、化学療法群で18.4%が化学療法を受けておらず、非化学療法群で5.4%が化学療法を受けていたところが気にはなる。ASTRRA試験ASTRRA試験は化学療法後に卵巣機能が残っている方に対して、タモキシフェン(5年)に卵巣機能抑制(2年)を追加することの効果をみたもので、韓国からの報告である。化学療法後2年のうちに卵巣機能が回復したり、生理がある方をそれぞれ無作為に割り付けしている。症例数の蓄積に時間がかかったようで登録期間は2年から5年に延長された。計1,293名が割り付けされた。年齢中央値は40歳で、50%以上がn+であった。またHER2陽性が10%以上存在した。化学療法はAC-Taxaneが50%以上であった。5年DFSは有意に卵巣機能抑制群で優っていた(HR=0.686、0.483~0.972、p=0.033)。サブ解析でも一定の傾向はみられなかった。OSも卵巣機能抑制群で有意に優れていた(HR=0.310、0.102~0.941、p=0.029)。SOFT試験と比較するというより、SOFT試験と組み合わせて治療方針を練ると、卵巣機能抑制の適応をより選択的に決めることであろう。すなわち、化学療法により卵巣機能が抑制されなかった、あるいは抑制されていても2年のうちに回復したハイリスク患者に対してLHRHaを用いる価値があるものと思われる。しかし、問題点はタモキシフェンを使用していると卵巣機能の回復がわかりにくいことであるが、本試験ではFSH<30U/mLを卵巣機能ありとしている。BRCA変異を有する早期乳がん患者における術前タラゾパリブタラゾパリブはPARP阻害剤であり、第III相試験であるEMBRACA試験において、医師選択の化学療法と比較して有意にPFSを延長したことが報告されている。また初期のfeasibility試験においてタラゾパリブは腫瘍量を2ヵ月で88%減少させていた。今回は術前治療としてタラゾパリブを6ヵ月内服し、手術を行った結果が報告された。BRCA1変異が17名、BRCA2が3名であり、TNBCが15例であった。pCRは53%であり、pCRまたはほぼpCRは63%であった。BRCA1か2かにかかわらず、またTNBCかHR+かにかかわらず良い効果を示していた。安全性に関しては貧血、好中球減少が主なもので、非血液毒性はほぼ軽微であった。輸血例も8例いた。9例で減量を要していた。かなり高いnear pCR率であり、早期乳がんの補助療法におけるPARP阻害剤の役割が今後注目を集めていくであろう。本剤の至適使用期間も課題である。PERSEPHONE試験PERSEPHONE試験はHER2陽性乳がんに対して術前術後補助療法としてのトラスツズマブ6ヵ月と12ヵ月を比較する、サンプルサイズ4千例の大規模な非劣性試験である。4年DFSが12ヵ月のトラスツズマブで80%と評価され、非劣性として3%を下回らないことが条件である。片側有意差5%、検出力85%である。実際に4,089例がリクルートされ、4,088例が解析された。ER陽性が69%と高くアントラサイクリンベースが41~42%、アントラサイクリン-タキサンベースが48~49%であった。トラスツズマブのタイミングは同時が47%、逐次投与が53%であった。また、58~60%がリンパ節転移陰性であった。結果は中央値5.4年でDFSが非劣性であった(HR=1.07、0.93~1.24)。予定されていたサブ解析では目立つものはなかったが、タキサンベースまたはトラスツズマブ同時投与で12ヵ月投与が良好であった。もちろんOSも完全に非劣性である。心毒性のためにトラスツズマブを中止したのは6ヵ月投与で4%、12ヵ月投与で8%であった。今まで複数のトラスツズマブ投与期間に関する試験の結果が明らかとなっており、はじめて非劣性が証明された。しかし、今回のPERSEPHONE試験の結果をもって診療が変わるわけではない。ASCO2017の報告でトラスツズマブ1年投与の適応について詳しく述べており、またSABCS2017の報告でメタアナリシスとSOLD試験の結果をまとめているので参照してほしい。

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小細胞肺がんへのペムブロリズマブ単独投与、PD-L1陽性例でより高い効果(KEYNOTE-158)/ASCO2018

 ペムブロリズマブは、PD-L1陽性固形がんに対するマルチコホート第Ib相試験KEYNOTE-028で、化学療法歴のある小細胞肺がん(SCLC)に対する有効性と高い忍容性が認められている。このKEYNOTE-028に続く試験として、SCLCを含む10種類とMSI-Hの固形がんを対象としたマルチコホート第II相試験KEYNOTE-158が行われた。そのSCLCの解析結果を、韓国・延世大学医学部延世がんセンターのHyun Cheol Chung氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で発表した。 試験に登録されたSCLC患者は107例。患者は、3週ごとにペムブロリズマブ200mgを最大2年間投与された。追跡期間中央値は9.3ヵ月(0.5~22.3ヵ月)。前治療歴は1次治療が42%、2次治療が34%、3次治療以上が23%。PD-L1陽性は39%、陰性が47%、不明が14%であった。主要評価項目は客観的奏効率(ORR)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、安全性。 主要評価項目のORRは18.7%(95% CI:11.8~27.4%)。PD-L1発現状況別ORRは、陽性が35.7%(21.6~52.0%)、陰性が6.0%(1.3~16.5%)、MSI-H以外が91%を占めた。 副次評価項目は、全症例でのPFS中央値が2.0ヵ月(1.9~2.1ヵ月)。PD-L1発現状況別では陽性が2.1ヵ月(2.0~8.1ヵ月)、陰性が1.9ヵ月(1.6~2.0ヵ月)。また、全体のOS中央値8.7ヵ月(5.6~12.0ヵ月)、PD-L1陽性では14.9ヵ月(5.6ヵ月~未達成)、陰性が5.9ヵ月(3.3~10.1ヵ月)。DORは未達成。 治療関連有害事象の発現率は60%で、発現率10%以上のものは疲労感(14%)、皮膚掻痒(12%)、甲状腺機能低下症(12%)、食欲不振(10%)、悪心(10%)。Grade3~4の有害事象発現率は12%で、頻度が多かったものは急性膵炎(2%)だった。 ■参考ASCO2018Abstract※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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チオ硫酸Na、シスプラチン誘発難聴予防に有効/NEJM

 標準リスク肝芽腫の小児において、チオ硫酸ナトリウムをシスプラチンによる化学療法終了後に追加投与することで、全生存と無イベント生存に影響することなく、シスプラチン誘発難聴の発生率が低下した。英・Great Ormond Street HospitalのPenelope R. Brock氏らが、シスプラチンによる聴覚障害に対するチオ硫酸ナトリウムの予防効果を検討した評価者盲検無作為化第III相臨床試験(SIOPEL6試験)の結果を報告した。標準リスク肝芽腫の小児に対するシスプラチンと外科手術は有効な治療法であるが、多くの患者に不可逆的な聴覚障害を引き起こすことが知られていた。NEJM誌2018年6月21日号掲載の報告。シスプラチン単独投与とチオ硫酸ナトリウム追加投与で、最小可聴値を評価 研究グループは、2007~14年に12ヵ国52施設において、生後1ヵ月超~18歳未満の標準リスク肝芽腫(肝病変3区域以下、転移なし、α-フェトプロテイン値>100ng/ml)小児116例を登録し、シスプラチン単独投与群(80mg/m2体表面積を6時間以上かけて投与)と、チオ硫酸ナトリウム追加併用投与群(シスプラチン投与終了6時間後に、20g/m2体表面積を15分以上かけて静脈内投与)に無作為に割り付け、いずれも術前4クールおよび術後2クール投与した。 主要評価項目は、最低年齢3.5歳時における純音聴力検査による最小可聴値で、聴覚障害はBrockグレード(0~4、グレードが高いほど聴覚障害が重度)で評価した(中央判定)。主な副次評価項目は、3年全生存および無イベント生存などであった。チオ硫酸ナトリウムの追加投与により、聴覚障害の発生率が半減 登録された116例中113例が無作為化され、不適格症例を除く109例(チオ硫酸ナトリウム追加併用群57例、シスプラチン単独群52例)が解析対象(intention-to-treat集団)となった。 絶対聴覚域値の評価可能症例101例において、Brockグレード1以上の聴覚障害の発生率はチオ硫酸ナトリウム追加併用群33%(18/55例)、シスプラチン単独群63%(29/46例)であり、チオ硫酸ナトリウム追加併用により聴覚障害の発生が48%低下することが確認された(相対リスク:0.52、95%信頼区間[CI]:0.33~0.81、p=0.002)。追跡期間中央値52ヵ月における3年無イベント生存率は、チオ硫酸ナトリウム追加併用群82%(95%CI:69~90)、シスプラチン単独群79%(95%CI:65~88)、3年全生存率はそれぞれ98%(95%CI:88~100)および92%(95%CI:81~97)であった。 重篤な副作用は16例に認められ、このうちチオ硫酸ナトリウムと関連があると判定されたのは8例(Grade3の感染症2例、Grade3の好中球減少2例、Grade3の輸血を要する貧血1例、腫瘍進行2例、Grade2の悪心嘔吐1例)であった。

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EGFR変異肺がんにおけるエルロチニブ・ベバシズマブ併用第III相試験(NEJ026)/ASCO2018

 StageIVのEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)では、1次治療としてEGFR-TKIが標準療法であるが、無増悪生存期間(PFS)中央値は1年程度である。サバイバルのため、さまざまな併用療法が試みられている。そのようななか、エルロチニブとベバシズマブの併用は、第II相試験JO25569試験において、EGFR変異陽性NSCLCのPFS中央値を16.0ヵ月と有意に改善した。このエルロチニブ・ベバシズマブ併用をエルロチニブ単剤と比較した第III相試験NEJ026の結果を、聖マリアンナ医科大学呼吸器内科の古谷直樹氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で発表した。 同試験の対象は、化学療法歴のない術後再発あるいはStageIIIB~IVでPS 0~2のEGFR変異陽性NSCLCで、エクソン19欠失変異あるいはL858R点突然変異を有する患者。無症候性脳転移を有する症例は登録可能とした。患者は、ベバシズマブ3週ごと投与+エルロチニブ連日投与群(BE群)とエルロチニブ単独連日投与群(E群)に無作為に割り付けられた。主要評価項目はPFSで、副次評価項目は全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、奏効期間、安全性、QOLであった。 2015年6月3日~2016年8月31日に228例の患者が登録された(BE群、E群ともに114例)。追跡期間の中央値は12.4ヵ月で、PFS解析のデータカットオフ日は2017年9月21日。 主要評価項目であるPFS中央値は、BE群が16.9カ月(14.2~21.0ヵ月)、E群が13.3カ月(11.1~15.3ヵ月)で、BE群で有意な延長効果が確認された(HR:0.605、95%CI:0.417~0.877、p=0.0157)。 副次評価項目のうち、ORRはBE群が72.3%、E群が66.1%、DCRはBE群が94.6%、E群が96.4%で両群間に有意差はなかった。 Grade3以上の有害事象発現率は、BE群が56.3%、E群が37.7%でBE群のほうが高かった。Grade3以上の有害事象としてはBE群でベバシズマブに関連する高血圧症が22.3%、蛋白尿が7.1%とE群に比べて有意に高い発現率(高血圧症はp<0.001、蛋白尿がp<0.01)だったが、その他はエルロチニブに伴う皮疹(BE群が20.5%、E群が21.1%)などで両群間に差はなかった。また、全GradeではBE群で出血が25.9%と、E群に比べて有意に高い発現率だった(p<0.001)。 これらの結果から、古谷氏は「エルロチニブとベバシズマブの併用療法はエルロチニブ単独に比べ有意にPFSを延長しており、EGFR陽性NSCLCの新たな標準治療と考えられる」との見解を示した。■参考ASCO2018 Abstract※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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第2回 「抜歯したら抗菌薬」は本当に必須か【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 先日、歯科医師の友人から、抜歯後に抗菌薬を処方しなかったことで薬剤師からクレームを受けた、という話を聞きました。次のような経緯だったようです。・某日午前、ある女性患者さんの上顎第3大臼歯(親知らず)の残根を抜歯し、術後疼痛対策としてアセトアミノフェンを処方したが、抗菌薬は処方しなかった。・同日夕方、救急外来にこの女性患者さんの旦那さんである薬剤師からクレームの電話が入り、「抜歯したのになぜ抗菌薬を処方しないのか」と言われた。はたして抜歯をする際は感染症を予防するための抗菌薬は必須なのでしょうか。今回は、抜歯時の抗菌薬の有用性について検討したコクランのシステマティックレビューを紹介します。Antibiotics to prevent complications following tooth extractions.Lodi G, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;11:CD003811.論文では、「抜歯処置を受ける患者さんが、術前あるいは術後に抗菌薬を服用すると、抗菌薬なしまたはプラセボ服用に比べて、感染症の発生リスクが下がるか」という疑問が検討されています。本論文で組み入れられた研究では、主にアモキシシリン(±クラブラン酸)、エリスロマイシン、クリンダマイシンなどが投与されています。なお、日本感染症学会、日本化学療法学会による「JAID/JSC感染症治療ガイドライン2016―歯性感染症―」でも、歯性感染症ではペニシリン系、リンコマイシン系、マクロライド系などが推奨されています。日本ではルーティンで第3世代セフェム系薬を処方する歯科医師が多いと感じていますが、これらは必ずしも歯性感染症に適するわけではないですし、概して吸収率も高くはありません。抗菌薬を服用すると12例中1例で感染予防さて、システマティックレビューの評価ポイントはいくつかあります。過去の研究を網羅的に集めているか、集めた研究の評価が適切になされているか、それらの研究の異質性は検討されたか、出版バイアスはないか、情報は適切に統合されたか、などの点を確認することが大切です。本論文では1948年~2012年1月25日までにMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、CHSSSといったデータベースに登録されている関連論文を網羅的に集めています。集められた試験のデザインはランダム化比較試験で、うち1件はインターバルが6週間以上のクロスオーバーランダム化比較試験です。クロスオーバーは同じ被験者がウォッシュアウト期間を十分に設けた後に、異なる介入を受けることを意味します。そう何回も抜歯をやるの? という疑問もあるかもしれませんが、スプリットマウスデザインという、同一被験者の口内の左右では条件差がさほどないことを利用して、左右の歯でウォッシュアウト期間をおいて抜歯を行ったものと考えられます。出版バイアスの有無はファンネルプロットを用いて検討されていますが、術後および術前・術後におけるプロットが少ないため判定がやや難しいところです。なお、コクランのハンドブックによれば、一般的にプロットの数が10個以下だとファンネルプロットの左右対称性から出版バイアスを見極めることは難しいとされています。集められた各研究の評価は、2人のレビュアーにより独立して行われ、解釈に食い違いが生じた場合には議論のうえで合意を形成しているため、一定の客観性があると考えてよさそうです。なお、レビュアー名を検索したところ、両名とも歯科医師のようです。最終的に、集められた研究のうち、18件(患者合計2,456例)の研究が採用され、15件がメタ解析されています。システマティックレビューの結果は、通常Summary of Findings(SoF)テーブルとフォレストプロットにまとめられているので、ここを真っ先に見るとよいでしょう。エンドポイントに関する結果を紹介します。抗菌薬を投与した場合、プラセボと比較して抜歯後の局所感染症を約70%減らす(相対リスク:0.29、95%信頼区間:0.16〜0.50)とあり、エビデンスの質としては中程度の確信となっています(p<0.0001)。これは、約12例で抗菌薬を服用すれば、1例は感染症を予防できるという割合です。痛み、発熱、腫れには有意差はありませんでした。有害事象に関しては、抗菌薬投与でほぼ倍増(相対リスク:1.98、95%信頼区間:1.10~3.59)しますが、軽度かつ一時的ということ以外の具体的な内容は本文献ではわかりません。抗菌薬の必要性は侵襲性の程度や患者要因で変わりうるシステマティックレビューは既存の知見を網羅的に集めて質的評価を行い、統計学的に統合することから、しばしばエビデンスの最高峰に位置付けられますが、統合することで対象患者などの細かいニュアンスが省略されるため、その結果を応用する際は外的妥当性を十分に考えねばなりません。本結果を素直に解釈すれば、感染予防のベネフィットがややあるものの、抜歯処置の侵襲性の程度や感染症リスクによっては抗菌薬が処方されないことも十分考えられます。もし服用を検討するのであれば、アレルギーや副作用歴がない限りはペニシリン系やクリンダマイシンなどが比較的妥当な選択となりそうです。現実には下痢の頻度や抗菌薬アレルギーのリスク、冒頭の例であれば歯科医師と患者の関係なども抗菌薬が必要かどうかの考慮事項となりうるでしょう。いずれにせよ、短絡的に抜歯=抗菌薬と断定するのではなく、患者の状態や歯科医師の意図をくみ取ったうえで適切なアクションをとりたいものです。画像を拡大するAntibiotics to prevent complications following tooth extractions.Lodi G, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;11:CD003811.

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ASCO2018レポート 消化器がん

レポーター紹介本年度の米国臨床腫瘍学会年次総会が、2018年6月1日~5日まで例年どおり米国シカゴで開催された。消化器がん領域における注目演題についてレポートする。とくに胃がん領域においては、本邦より2人もの演者がoralで発表されており、日本人として大変誇らしく感じた。JACCRO GC-07 trial本邦の実臨床に最もインパクトがあった演題として、pStageIII胃がんにおけるドセタキセル+S-1(DS)併用療法のS-1療法に対する優越性が証明されたJACCRO GC-07 trialをまずは報告する。本邦では、pStageIII胃がんに対する術後補助化学療法として、S-1療法1年またはCapeOX療法6ヵ月を行うことが標準治療として位置付けられている。しかしながら、ACTS-GC試験のサブグループ解析では、手術単独群に対するS-1療法群の全生存期間におけるHR(ハザード比)がpStageIIIAで0.67、StageIIIBで0.86と報告されており、いずれも効果が不十分と考えられてきた。そこで、根治切除(胃切除+D2郭清)を行ったpStageIII胃腺がんを対象として、S-1療法に対するDS療法の優越性を検証したJACCRO GC-07 trialが行われた。主要評価項目は3年無再発生存(RFS)であり、S-1療法群の3年RFSを62%、HRを0.78とし、両側検定α=5%、検出力80%を確保するために、必要な症例数は1,100例と算出された。2回目の中間解析において(登録患者915例、イベント数216)、3年RFSがS-1療法群49.5%vs.DS療法群65.9%(HR=0.632、p=0.007)と、DS療法群で有意に良好であったことから、2017年9月に効果安全評価委員会において有効中止の勧告がなされた。登録された両群の患者背景には明らかな差が認められず、また明らかな交互作用は観察されなかった。再発部位は、リンパ節、腹膜、血行性転移いずれもDS療法群で少ない傾向であった。有害事象に関しては、白血球減少、好中球減少、発熱性好中球減少症がDS療法で多かったもののマネージメントは十分可能な範囲であった。演者らは、本試験の結果をもって、根治切除後のpStageIII胃がんに対して、DS療法は新たな術後補助療法の標準治療として推奨されると結論付けた。会場では、S-1療法群の成績が従来の本邦からの報告よりやや悪いことが指摘されていた。個人的には、本邦で行われた良質な第III相試験であること、昨年公表された欧州での第III相試験でFLOT療法(DTX+5FU+L-OHP)の有効性が示されていること、エビデンスレベルという点からも、術後DS療法は標準治療として位置付けられると考えられ、今後は実地臨床にも広く用いられることになるだろう。また、用量強度やOSのupdate解析などの報告にも注目したい。KEYNOTE-061試験現在、本邦では胃がん領域においても2017年9月から免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブが実地臨床で用いられている。また、米国においては、ペムブロリズマブが既治療の胃がんに対してFDAで承認を受けている。本試験は、切除不能進行再発胃がん/食道胃接合部がんにおける2次化学療法として、ペムブロリズマブ療法とパクリタキセル療法をHead-to-Headで比較した第III相試験として実施された。当初は、PD-L1発現の有無にかかわらず患者が登録されたが、登録途中でPD-L1陽性(CPS≧1)のみを登録することに変更となった(CPS:combined positive score、PD-L1陽性の細胞数[腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージ]/全生存細胞数×100)。主要評価項目は、PD-L1陽性例におけるOSとPFSとし、試験全体の片側α=0.025、OSにおける優越性を示すにはp<0.0135を達成する必要がある統計設計で実施された。登録された患者背景に両群で差は認めなかった。PD-L1陽性例における生存期間中央値(MST)は、ペムブロリズマブ療法9.1ヵ月vs.パクリタキセル療法8.3ヵ月、HR 0.82、片側p=0.042であり、両群で有意差はなかった。ただし、解析時点でペムブロリズマブ群では15例が投与継続(パクリタキセル群は0例)されており、実際に12ヵ月生存割合は39.8%vs.27.1%、18ヵ月生存割合は25.7%vs.14.8%とペムブロリズマブ群で長期生存例が多かった。PD-L1発現別の解析では、CPSが高いほどペムブロリズマブの効果が高まることが示された。また、MSI-High例(全体の5%)では、ペムブロリズマブ療法群でOS、奏効割合がともに良好であった(OSは未達、奏効割合46.7%)。主要評価項目であるPD-L1陽性例におけるOSにおいて、統計学的有意差は示せない結果となった。ただし、今後の進行胃がんの化学療法を考えるうえでは、非常に重要かつ示唆に富む結果が得られたと個人的に感じている。具体的には、先のATTRACTION-2試験(ニボルマブとプラセボを比較した、胃がんにおけるSalvage lineの第III相試験)では、PD-L1発現の有無ではニボルマブの効果予測は困難であったが、CPSというPD-L1陽性の定義を用いると免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ができるかもしれない点や、既報と同様にやはりMSI-Hでは胃がんであっても高い奏効割合、治療効果が示される点などである。ディスカッサントからも指摘があったように、今後は、免疫チェックポイント阻害薬同士の併用療法や化学療法との併用療法などの結果が注目され、胃がん化学療法の進歩に期待したいところである。なお、本結果は発表同日にLancet誌に掲載され、インパクトあふれる発表であった。PRODIGE 24/CCTG PA.6試験膵がんの術後補助化学療法は、従来はゲムシタビン療法が標準治療として位置付けられていたが、近年、本邦で実施されたJASPAC-01試験の結果から本邦ではS-1療法が、欧米ではゲムシタビン+カペシタビン療法が確立された。また、遠隔転移を有する膵がんにおいては、FOLFIRINOX療法(5-FU+LV+イリノテカン+L-OHP)が標準治療として用いられている。そこで、切除後膵がんに対する術後補助療法としてのゲムシタビン療法に対するFOLFIRINOX療法の優越性を検証する第III相試験が計画された。本試験で用いられているFOLFIRINOX療法は、毒性の点からmodified FOLFIRINOX療法(mFFX、5-FU 2,400mg/m2+ロイコボリン400mg/m2+イリノテカン180mg/m2+オキサリプラチン85mg/m2、2週ごと、12サイクル)が採用された。主要評価項目は無病生存(DFS)期間として、3年DFS率のHRを0.74、両側α=0.05、検出力80%として必要な症例数は490例と算出された。なお、開始後30例でGrade3以上の下痢を20%に認めたため、以降はイリノテカンの用量が150mg/m2に変更されている。2012年4月~2016年10月までに493例が登録され、2018年2月に効果安全評価委員会において早期結果公表が勧告されたため、今回、データが発表された。登録された患者背景では、リンパ管腫瘍塞栓のみ群間差を認めたがその他は両群に有意な差は認めなかった。DFS期間の中央値は、mFFX療法群21.6ヵ月、ゲムシタビン療法群12.8ヵ月、HR 0.58(p<0.0001)であり、mFFXで有意に良好であった。OSの中央値は、mFFX療法群54.4ヵ月、ゲムシタビン療法群35.0ヵ月、HR 0.64(p=0.003)であった。有害事象として、好中球減少、発熱性好中球減少に差はなかったが、mFFX療法群でG-SCF使用の割合が有意に高かった。また、非血液毒性として、下痢、末梢性感覚ニューロパチー、疲労、嘔吐、口内炎がmFFX群で有意に高かった。以上から、演者らは、mFFX療法は、毒性が増すものの、全身状態が良好な患者における欧米における標準治療と結論付けている。本邦で行われたという点においては、JASPAC-01試験の結果から、毒性の点から、S-1療法は本邦における標準治療としての位置付けは揺るがないだろう。しかしながら、JASPAC-01試験、本試験ともに大規模第III相試験から得られた結果という点では、同等のエビデンスとも考えられ、すでに転移性の膵がんにおいては、FOLFIRINOX療法は実地診療で行われている。とくに、本試験のサブグループ解析では、mFFX療法でR1切除、N1切除の成績が良好であったことから、予後不良な症例にはmFFXは期待できるのかもしれない。

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