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抗PS抗体bavituximabは免疫チェックポイント阻害薬の活性を増強するか:SUNRISE試験サブグループの結果/WCLC2017

 phosphatidylserin(PS)は、がん微小環境にある細胞の表面に広範に発現し、腫瘍特異的T細胞の誘導を抑制し、高い免疫抑制作用を発現する。bavituximabは、PSを標的とするキメラIgG1モノクローナル抗体であり、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞を活性化し、免疫寛容を抑制して、抗腫瘍効果を発揮することが期待されている SUNRISE試験は、既治療の進行非扁平上皮肺がんの治療において、ドセタキセル・bavituximab併用(D+B群)とドセタキセル単独(D+P群)を比較した第III相試験である。最近発表された主要評価項目のITT解析による全生存期間(OS)では、D+B群、D+P群とも差がみられなかった(HR:1.06)。ほとんどのサブグループ解析で同等であったが、唯一免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の後治療を受けたグループのみ差がついていた。そこでこの集団のデータを収集し、分析した結果を、横浜で開催された第18回世界肺癌学会(WCLC)において、オーストラリア・Sydney Cancer CenterのMichael Boyer氏が発表した。 SUNRISE試験597例の無作為化患者のうち93例(16%)がICIの後治療を受けていた。ベースライン特性は、治療群間でバランスが取れ、ITT集団と一致した。無作為化からのOSは、D+B群(n=47)では未到達(15.2~NA)、D+P群(n=46)では12.6ヵ月(10.4~17.8)であった(HR:0.46、95%CI:0.26~0.81、p=0.006)。ICI投与開始時からのOSは、D+B群では未到達(10.2~NA)、D+P群では6.2ヵ月(3.9~8.7)であり(HR:0.42、95%CI:0.23~0.74、p=0.002)、いずれもD+B群で有意に優れていた。 限られたサブグループ分析であるが、ドセタキセル・bavituximab併用療法後にICIで治療された患者ではOSの改善が観察された。bavituximabは免疫関連の毒性と関連しないことから、ICIとの有益な併用薬となる可能性があると、Boyer氏は述べた。■参考SUNRISE試験(Clinical Trials.gov)

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がん治療の末梢神経障害、皮膚障害に指針/日本がんサポーティブケア学会

 Supportive care。日本では支持療法と訳されることが多い。しかし、本来のSupportive careは、心身の異常、症状の把握、がん治療に伴う副作用の予防、診断治療、それらのシステムの確立といった広い意味であり、支持療法より、むしろ支持医療が日本語における適切な表現である。2017年10月に行われた「第2回日本がんサポーティブケア学会学術集会」のプレスカンファレンスにおいて、日本がんサポーティブケア学会(JASCC)理事長 田村和夫氏はそう述べた。『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き』発刊 JASCC神経障害部門部会長である東札幌病院 血液腫瘍科 平山泰生氏が『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き』発刊について紹介した。 がん薬物療法の進化によるがんの治療成績向上と共に、抗がん剤による副作用も対処可能なものが増えてきている。しかし、本邦における4,000例以上のがん患者の追跡調査では、化学療法終了後1ヵ月以内の神経障害の発生頻度は7割、6ヵ月以降でも3割であった。神経障害はいまだに患者を苦しめているのが現状である。 この神経障害に対する有効な薬物は明らかではない。JASCCが行った調査では、がん専門医の神経障害に対する処方は、抗けいれん薬(97%)、ビタミンB12(78%)、漢方薬(61%)、その他抗うつ薬、消炎鎮痛薬、麻薬など、さまざまな薬剤を用いており、薬剤の有効性かわからない中、医療現場の混乱を示唆する結果となった。 一方、米国では2004年にASCOによる「化学療法による末梢神経障害の予防と治療ガイドライン」が発行されている。しかし、ビタミンB12、消炎鎮痛薬などの記載がないなど日本の状況とは合致していない。そのため、本邦の現状を反映した臨床指針が望まれていた。 Mindsの作成法に準じて作られた『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き』では、この分野のエビデンスが少ないため、ガイドラインとは銘打たず"手引き"としている。同書には薬物の有効性に関するクリニカルクエスチョンも掲載されており、ビタミンB12、漢方、消炎鎮痛薬、麻薬など、日本でしか使われていないような薬剤についても記載がある。「がん薬物用法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント」出版を目指す JASCC皮膚障害部門部会長である国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科の山崎直也氏が「がん薬物用法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント」の出版について紹介した。 がん治療の外来への移行、抗がん剤開始時期の早期化、生存期間の延び、長期間にわたり社会と触れ合いながら治療を受けるがん患者が増えている。一方で、分子標的薬をはじめ、皮膚有害事象を発現する薬剤も増えている。このような社会で生きるがん患者にとって、アピアランスケアは非常に重要な問題である。 皮膚障害の治療に対するエビデンスは少なく、世界中が医療者の経験値で対応しているのが現状である。そのような中、昨年(2016年)がん患者の外見支援に関するガイドラインの構築に向けた研究班により「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」が作成された。さらに、目で見てすぐわかる多職種の医療者に伝わるようなものをという考えから、JASCC皮膚障害部門を中心に「がん薬物用法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント」を作成している。 その中では、最近の分子標的薬の皮膚障害を中心に取り上げているが、治療進歩の速さを鑑み、免疫チェックポイント阻害薬についても収載。総論、発現薬剤といった基本的事項に加え、重要な重症度評価およびそれに対する診断・治療のポイントを、症状ごとに症例写真付きで具体的に説明している。年内には発売できる見込みだという。

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治癒切除不能な進行胃がんや再発胃がんに対するニボルマブの有用性(解説:上村直実氏)-758

 話題となっている画期的な免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、2014年に悪性黒色腫に対する保険適用を取得し、その後、非小細胞肺がん・腎細胞がん・ホジキンリンパ腫・頭頸部がんおよびこの9月には胃がんに対する適応を取得した。さらに、食道がん・小細胞肺がん・肝細胞がん・子宮がん・卵巣がんなどに対して臨床治験中であり、多くの切除不能がん患者に対して福音を与えてくれる薬剤である。 本論文は、オプジーボの胃がんに対する有用性を示した報告である。標準治療が不応または不耐の切除不能な進行または再発胃がん患者(日本人・韓国人・台湾人)を対象とした国際共同第III相臨床試験において、平均生存期間がプラセボ投与群4.14ヵ月と比較してオプジーボ群5.26ヵ月で平均1.12ヵ月長く生存することができ、1年後の生存率もオプジーボ群26.2%がプラセボ群10.9%より有意に高値であった。 結果は予想どおりであるが、対象の主な包含基準が、20歳以上、2つ以上の化学療法が奏効しなかった切除不能な進行または再発の胃がん症例であり、かつECOG PS:0~1、すなわち通常の事務作業などが可能な元気な患者群を対象とした臨床試験である。登録された601名のうち最終的に被験者として適合したのは53歳から69歳の493名(82%)であった。したがって、本研究結果は「50歳から60歳代の切除不能ないしは再発胃がんで2つ以上のレジメンが奏効しなかった患者でかつPS1以下の元気な患者を対象とした研究においてオプジーボの有用性が示された」とされるものである。 わが国のがん診療の現場で遭遇する切除不能胃がん患者は「70歳以上で合併症を有し、かつPSが2以上の状態になっている患者」が多く、本研究の対象となっている患者群は少数派かもしれない。実際、検証精度の高さが求められる抗がん剤の臨床治験の対象は、年齢(75歳以下)やPS(0ないしは1)の適合基準および厳格な除外基準に適合する必要があるが、保険適用後の診療現場で使用される患者の多くは治験では除外基準に抵触するものが多い。RCTなどの研究デザインによりエビデンス・レベルの高さが決定される昨今であるが、患者に向き合う臨床医は、臨床研究の対象と実臨床の現場で遭遇する患者との乖離を理解した対応が必要である。

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化学療法抵抗性膀胱がんへのラムシルマブは有用か?/Lancet

 プラチナ製剤化学療法で病勢進行が認められた、進行性・転移性尿路上皮がん患者に対し、抗VEGF-R2抗体ラムシルマブ(商品名:サイラムザ)+ドセタキセルの併用療法は、ドセタキセル単独に比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが示された。米国・イェール大学のDaniel P. Petrylak氏らが、530例を対象に行った第III相無作為化二重盲検試験「RANGE」の結果で、Lancet誌オンライン版2017年9月12日号で発表された。結果を踏まえて著者は「ラムシルマブ+ドセタキセルレジメンは、われわれが知る限り、プラチナ療法抵抗性の進行性尿路上皮がん患者において化学療法よりも優れたPFSを示した、第III相試験では初となるレジメンである」と述べ、「今回のデータにより、抗VEGF-R2抗体は、尿路上皮がん患者の新たな治療選択肢となりうることが確認された」と、まとめている。 ラムシルマブ(10mg/kg)をドセタキセルと併用投与 研究グループは2015年7月~2017年4月にかけて、23ヵ国124ヵ所の医療機関を通じて、プラチナ製剤化学療法で治療中または治療後に病勢進行が認められた、進行性・転移性尿路上皮がん患者530例を対象に試験を行った。以前の治療で、1種類の免疫チェックポイント阻害薬を投与していた患者も対象に含まれた。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはドセタキセル(75mg/m2)とラムシルマブ(10mg/kg)を(併用群:263例)、もう一方にはドセタキセルとプラセボを(対照群:267例)、いずれも1日1回静脈投与した。1サイクル21日間とし、病勢進行やその他の治療中止の基準が認められるまで継続した。 主要エンドポイントは、437例が無作為化された時点で評価したPFSだった。PFS中央値、併用群4.07ヵ月 vs.対照群2.76ヵ月 PFSの中央値は、対照群2.76ヵ月(95%信頼区間[CI]:2.60~2.96)に対し、併用群は4.07ヵ月(同:2.96~4.47)と有意に延長した(ハザード比:0.757、95%CI:0.607~0.943、p=0.0118)。盲検化独立中央解析においても同様の結果が示された。 奏効率も、対照群14.0%(95%CI:9.4~18.6、221例中31例)に対し、併用群は24.5%(同:18.8~30.3、216例中53例)と高率だった。 なお、Grade 3以上の有害事象の発現率は、併用群60%(156/258例)、対照群62%(163/265例)と同程度であり、予期していない毒性は認められなかった。治療に関連すると研究者が判断した重篤有害事象は、併用群24%(63/258例)、対照群20%(54/265例)で認められた。 治療中または治療中止後30日以内に死亡した患者の割合は、併用群15%(38/258例)、対照群16%(43/265例)で、そのうち治療が原因と研究者が判断したのはそれぞれ3%(8例)と2%(5例)だった。敗血症は、治療中の死亡で最も共通してみられた有害事象であった(2%[4例] vs.0%[発生なし])。また、併用群で致死的な好中球減少性敗血症1例が報告された。

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既治療の非小細胞肺がんに対するnab-パクリタキセル、単独およびdurvalumabとの併用が有望(abound2L+)/ESMO2017

 既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する2次、3次治療は免疫チェックポイント阻害薬の登場で進化した。しかし、長期間のベネフィットを得られる患者は一部であり、最終的に化学療法を追加することになる患者も少なくない。nab-パクリタキセル(nab-P)はカルボプラチンとの併用で、進行NSCLCの1次治療の認可を得ているが、2次治療における効果も報告されている。またアザシチジン(CC-486)のようなDNAメチル基転移酵素阻害薬は免疫チェックポイント阻害薬と同様に化学療法の効果を上げるとされる。スペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017 Congress)において、nab-Pの単独療法とCC-486、およびPD-L1阻害剤durvalumabとの併用における安全性と有効性を評価したabound2L+試験の結果が、米国Washington University School of MedicineのDavid Morgenszter氏により発表された。 abound2L+試験は2つの無作為化群と1つの非無作為化群の3群で行われている。無作為化群では、化学療法既治療の進行非扁平上皮NSCLC患者161例が、nab-P単独群とnab-P+CC-486群に1:1で割り付けられた。その後、プロトコルを改訂し、無作為化群としてnab-P+durvalumab群を追加した。nab-P+durvalumab群では、扁平上皮がん、免疫チェックポイント阻害薬既治療患者の登録も許容した。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は安全性、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)である。 3群の患者背景は同様であったが、nab-P+durvalumab群においては、扁平上皮がんが29.1%、免疫チェックポイント阻害薬既治療例が11.4%含まれた。 主要評価項目であるPFSは、nab-P+CC-486群の3.2ヵ月に対しnab-P単独群は4.2ヵ月であった(HR:1.3)。副次評価項目のOSは、nab-P+CC-486群の8.4ヵ月に対しnab-P単独群は12.7ヵ月であった(HR:1.4)。ORRは13.6%に対し13.8%(HR:0.99)。nab-PへのCC-486追加によるPFS、OS、ORRの改善は見られなかった。一方、nab-P+durvalumab群の79人の患者の中間解析におけるPFSは免疫チェックポイント阻害薬未治療例では4.4ヶ月、既治療例では6.9ヵ月であった。ORRは26.6%と他の2群より高い結果を示した。OS中央値は未達である。 3群全体(240例)における治療関連有害事象(AE)で頻度の高かったものは、呼吸困難、末梢神経障害、好中球減少、貧血であった。 nab-P単独療法は、既治療の非扁平上皮NSCLCに対し期待できる効果を示した。しかし、同剤へのCC-486の追加は、ベネフィットがみられなかった。また、nab-Pとdurvalumabの併用については、2次、3次治療にける実現可能な治療法であることが示された。

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durvalumabとオシメルチニブは新たな標準治療となりうるか:PACIFIC/FLAURA試験

 欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)では、抗PD-L1抗体durvalumabの第III相PACIFIC試験ならびに第3世代EGFR-TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)の第III相FLAURA試験という、肺がん領域の2つの大きな臨床試験結果が発表された。発表後、PACIFIC試験の主任研究者であるスペイン・Hospital Universitario de OctubreのLuis Paz-Ares氏、FLAURA試験の主任研究者である米国・Winship Cancer Institute of Emory UniversityのSuresh Ramalingam氏がプレスに対して試験結果について解説した。本稿では、開発企業であるアストラゼネカ株式会社メディカル本部オンコロジー領域部部門長の橋上 聖氏および同社Global Medicines Development、Head of Oncology、Senior Vice PresidentのKlaus Edvadsen氏へのインタビュー内容を交え、今回の結果からみえてきた点や今後の展望について紹介する。放射線療法と免疫療法の間に相乗効果か:PACIFIC試験 切除不能局所進行(ステージIII)非小細胞肺がん(NSCLC)は本邦では年間約2万人が新たに罹患する。標準治療である同時化学放射線療法(CCRT)後、約9割の患者が長期的には何らかの形で進行するが、その治療法は定まっていない。「メディカルニーズの高い患者群であること、皮膚がん領域での近年の研究で、放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬の間に相乗効果の可能性が示唆されていたことが、今回の試験につながった」と橋上氏は説明した。 ESMO2017で発表されたPACIFIC試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS、追跡期間14.5ヵ月の中間解析結果)はdurvalumab群16.8ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月で、durvalumab群で有意な延長が認められた(HR:0.52、95%CI:0.42~0.65、p<0.0001)。橋上氏は「3倍近いPFSの延長という結果は予想を上回るもので、抗PD-L1抗体による付加的な効果というよりは、やはり何らかの相乗効果があるのではないかと考えている」と語った。 Paz-Ares氏は、安全性プロファイルについて「全体的にdurvalumab群で有害事象がわずかに増加しているが、重度の事象については両群で同程度といえる」と述べ、「CCRT後のdurvalumabによる治療は、管理可能な安全性プロファイルを持ち、約11ヵ月PFSを延長したことで、ステージIIIのNSCLC 患者に対する治療の新たな選択肢といえる。長期フォローアップにより、全生存率(OS)への影響を見ることが重要だ」と結論付けている。 今後について橋上氏は、「免疫療法を行う時期や期間については、本試験での条件に限らず、検討の余地がある。実臨床で患者にとってのベネフィットが最も大きな組合せ、条件を明らかにしていきたい」と語った。脳転移に対する効果が大きな収穫:FLAURA試験 ESMO2017で発表されたFLAURA試験の主要評価項目であるPFS中央値は、オシメルチニブ群が18.9ヵ月、標準治療群が10.2ヵ月であり、オシメルチニブ群で有意な延長が示された(HR:0.46、95%CI: 0.37~0.57、p<0.0001)。これらの改善効果は、脳転移の有無にかかわらず確認されている。また副次評価項目のうちOSについては、中間解析のハザード比が0.63(95%CI: 0.45~0.88)とオシメルチニブ群における延長傾向がみられたが、現時点では統計学的な有意差は得られていない。Ramalingam氏は、「標準治療と比較して、オシメルチニブの安全性プロファイルはより良好であり、PFS中央値を約11ヵ月延長した。オシメルチニブはEGFR変異陽性の進行NSCLC患者の新たな標準治療となるだろう」と結論付けている。 一方、ESMO2017でディスカッサントを務めた香港・香港中文大学のTony Mok氏は、脳転移例に対する有効性は支持したものの、第1/第2世代TKIとの最適な治療の順番・組合せについては、AURA3試験ならびにFLAURA試験の最終的なOSにより判断すべきと指摘していた。Edvadsen氏は、「もちろん最終的なOSが明らかになるまで確定的なことは言えない。しかし、少なくとも第1世代TKI投与後のオシメルチニブ投与との比較については、ゲフィチニブを1次治療に使った場合に20%以上の患者で脳転移が起こること、20~30%の患者が2次治療前に亡くなってしまうことを考えれば、私は1次治療からオシメルチニブを使っていくべきだと考えている」と述べ、10月に横浜で開催される世界肺がん学会で、FLAURA試験の解析結果について続報を発表予定とした。 また、オシメルチニブを1次治療で使った場合の耐性の獲得についてEdvadsen氏は、「オシメルチニブ耐性となった患者の20~25%に、MET遺伝子変異があることが明らかになっている。この変異に対しては、savolitinibという阻害薬の開発を進めており、将来的にはその他の変異についても阻害薬の開発を進めていく」と語った。 最後に橋上氏は、今後発表されるOSの最終データと、日本人を含むアジア人サブグループ解析の結果を踏まえ、本邦におけるオシメルチニブの1次治療での承認申請に向けて進めていきたいとの考えを示した。■関連記事durvalumab維持療法、Stage III肺がんのPFSを有意に改善(PACIFIC)/ESMO2017肺がんMYSTIC試験、durvalumab・tremelimumab併用の一部結果を発表HR0.46、オシメルチニブが1次治療で標準治療を上回る(FLAURA)/ESMO2017ステージ3切除不能肺がん、durvalumab維持療法が良好な結果:PACIFIC試験durvalumab、切除不能StageIII肺がんのブレークスルー・セラピーに指定オシメルチニブ、肺がんFLAURA試験の主要評価項目を達成オシメルチニブ、CNS転移例にも有効性示す:AURA3試験/ASCO2017

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durvalumab維持療法、Stage III肺がんのPFSを有意に改善(PACIFIC)/ESMO2017

 切除不能な局所進行Stage III肺がんに対するdurvalumab維持療法が、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善。抗PD-L1抗体durvalumabの第III相PACIFIC試験の最新の結果を2017年9月9日、スペイン・マドリードで行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)でスペインHospital Universitario de OctubreのLuis Paz-Ares氏が発表した。 PACIFIC試験は、プラチナベース化学療法と放射線の同時併用療法後に進行が認められないStage IIIのNSCLC患者において、抗PD-L1抗体durvalumab維持治療を標準療法と比較する第III相試験である。 NSCLCと診断される患者の3分の1はStage IIIである。PS良好なStage III NSCLCの標準治療は、プラチナ併用療法を用いたCCRTであるが、CCRT開始からのPFS中央値は8~10ヵ月、5年生存率は15%程度で良好な成績とはいえず、新たな治療が望まれていた。 PACIFIC試験では、切除不能な局所進行(Stage III)NSCLCと診断され、2サイクル以上のプラチナ・ベースのCCRT後に病勢進行が認められない患者を対象とし、CCRT後42日間に、durvalumab(10mg/kg、2週ごと最大12ヵ月投与)群とプラセボ群に2:1の割合で無作為に割り付けを行った。患者はPD-L1発現状況にかかわらずに登録された。 主要評価項目は、盲検化独立判定委員会評価のPFSと全生存期間(OS)。副次評価項目は奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性などであった。本試験は、Stage III NSCLC患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果を評価した初めての第III相試験である。 2014年5月~2016年4月に713例が登録され、durvalumab群に473例、プラセボ群に236例が割り付けられた。患者背景には大きな偏りはなかった。PD-L1発現25%未満は、durvalumab群とプラセボ群でそれぞれ、39.3%と44.3%。発現25%以上は24.2%と18.6%、不明は36.6%と37.1%であった。 今回の発表は、追跡期間14.5ヵ月(データカットオフ2017年2月13日)におけるPFSの中間解析の結果である。主要評価項目のPFSは、durvalumab群16.8ヵ月(13.0~18.1)、プラセボ群5.6ヵ月(4.6~7.8)と、durvalumab群で有意なPFSの延長が認められた(HR:0.52、95%CI:0.42~0.65、p<0.0001)。PFSのサブグループ解析では、EGFR変異陽性または不明のサブグループを除き、durvalumab群が一貫して優位であった。また、いずれのPD-L1発現状況(25%未満、25%以上、不明)においても、durvalumab群が優位であることが示された。 副次評価項目であるORRは、durvalumab群28.4%、プラセボ群16.0%と、durvalumab群で有意な改善がみられた(p<0.001)。DORは、durvalumab群では未到達、プラセボ群は13.8ヵ月と、durvalumab群で延長が認められた(HR:0.43、95%CI:0.22~0.84)。遠隔転移または死亡までの期間は、durvalumab群23.2ヵ月(23.2~未到達)、プラセボ群14.6ヵ月(10.6~18.6)と、durvalumab群で有意に延長していた(HR:0.52、95%CI:0.39~0.69、p<0.0001)。なお、OSについては、解析に十分なイベントが発生していなかった。 durvalumab群の安全性プロファイルは、進行NSCLCに対する単剤療法の場合と同様であり、本試験で新たな有害事象(AE)の発現は認められなかった。Grade 3/4のAE発現頻度はdurvalumab群で29.9%、プラセボ群で26.1%であり、AEによる治療中止はdurvalumab群15.4%、プラセボ群9.8%であった。Grade 3/4の肺臓炎または放射線肺臓炎の発現頻度はdurvalumab群で3.4%、プラセボ群で2.6%であり、これらによる死亡は、それぞれ1.1%と1.7%であった。 以上の結果より、「durvalumabはIII期NSCLC患者に対するCCRT後の治療オプションとして有望である」とPaz-Ares氏は述べた。 この結果は、同時にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。■参考ESMO2017プレスリリースAntonia SJ, et al.N Engl J Med. 2017 Sep 8.[Epub ahead of print]PACIFIC試験(Clinical Trials.gov)■関連記事ステージ3切除不能肺がん、durvalumab維持療法が良好な結果:PACIFIC試験

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Dr.大山のがんレク!すべての医療者に捧ぐがん種別薬物療法講義(上巻)

第1回 がん総論 第2回 肺がん 第3回 乳がん 第4回 胃がん 第5回 大腸がん 第6回 副作用&合併症マネジメント がん化学療法が一般的な治療となり、一般内科でもがん患者を診る機会が多くなりました。この番組では、がん種ごとに、基本的知識、ステージ、主な治療法、化学療法とその副作用をコンパクトに解説。上下巻11種のがんのうち、上巻では4つのがんと、がん医療用語などをまとめた総論、副作用&合併症マネジメントを収録。すべての医療者が自信を持ってがん患者と向き合えるための知識を、腫瘍内科 大山優先生がレクチャーします!第1回 がん総論 「2人に1人はがんになる」時代。すべての医療者に捧ぐがん種別薬物療法講義「がんレク!」第1回はその基本中の基本である「がん総論」。がん治療で使用される用語や指標、治療方法とその進め方をコンパクトに解説。さらに、注目を集める免疫療法をはじめ、医療のプロとして今必ず知っておくべきがんにまつわる知識をまとめました。第2回 肺がん 第2回は男性のがん死因1位であり、一般内科医でも遭遇する機会の多い肺がんのレクチャーです。肺がんの予後を劇的に改善した分子標的薬や、ニボルマブが注目を集める免疫チェックポイント阻害薬など、一般内科医でもこれだけは知っておきたい知識がこの番組を見るだけで得られます。肺がんの基本的知識、治療薬、副作用をコンパクトに解説します。第3回 乳がん 今回は女性が最も多く罹患する乳がんについて解説します。患者数が多いため、一般内科医でも診る機会が多いがんの1つです。サブタイプ分類による個別化医療が進んでいることも乳がんの特徴です。ホルモン感受性の有無、HER2の発現状況、増殖のしやすさなどによって選択されるそれぞれの治療法をコンパクトにレクチャーします。期待されるホルモン療法と分子標的薬は是非チェックしてください。第4回 胃がん罹患率が大腸がんに次ぎ第2位の胃がん。内視鏡検査で早期発見されることも多く、外科的切除による治癒率も比較的高いがんです。また、化学療法にも感受性で、さらにHER陽性にはベバシズマブなど分子標的薬による治療が有効です。また免疫チェックポイント阻害薬も開発中であり、さらなる個別化医療が期待されています!一方、胃切除後の合併症等には注意が必要です。がん患者の治療中・治療後のフォローを解説します。第5回 大腸がん 罹患率第1位の大腸がん。一般内科でも診る機会の多い大腸がんは、化学療法感受性で、分子標的薬による治療、サブタイプによる個別化治療も進んでいるがんです。抗がん剤はどのように選択されるのか、患者の全身状態やがんの性質によって処方が異なる、がん化学療法の基本的な考え方をお教えします。第6回 副作用&合併症マネジメント 外来による抗がん剤治療が普及し、一般内科でも抗がん剤を使用中の患者に遭遇する機会が増えました。すなわち、抗がん剤には必発であるさまざまな副作用を、一般内科医も診なければならないということです。第6回では典型的副作用の発現時期や、それらの治療、がんの合併症について解説します。がん患者の容態悪化、Oncologic Emergencyは経過観察ができません。それらに対応できるよう、この機会にぜひ勉強してください。

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抗PD-1/PD-L1抗体治療で白髪もよみがえる?

 スペインの研究グループが、抗PD-1/PD-L1抗体による皮膚有害事象の研究中に毛髪再色素化の現象を発見し、JAMA Dermatology誌2017年7月12日号で報告した。免疫チェックポイント阻害薬による発疹、白斑、そう痒症などの皮膚関連事象発生は報告されているが、毛髪再色素化の報告は初めて。また、メラノーマ治療で報告されている皮膚や毛髪の脱色(白斑様)とは相反する作用である。 スペインUniversitari Germans Trias i Pujol病院のNaelia Rivera氏らの報告によれば、抗PD-1/PD-L1抗体の前向き試験に登録された、肺がん患者52例中、14例(男性13例、女性1例、平均年齢64.9歳)で、以前の髪色への再色素化が確認された。この再色素化は、びまん性の色素化、あるいは白髪中への黒斑として現れている。また、同有害事象の発現患者では、14例中13例がPRかSDと、良好な臨床効果を示して治療継続されていることから、同有害事象が良好な反応の指標である可能性も示唆している。14例の免疫チェックポイント阻害薬の内訳は、ニボルマブ12例、ペムブロリズマブ1例、atezolizumab1例である。 しかし、同試験は進行中であり、統計的な分析も行われていない。毛髪再色素化については、患者の古い写真とフォローアップ中に撮った最近の写真を比較することによって観察しているが、ヘアカラーによる髪染めにまつわる適切な質問が行われていない点などを指摘する懐疑的な研究者もいるようである。

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非小細胞肺がん化学放射線同時併用療法(CCRT)のアンメットニーズ 第3回【肺がんインタビュー】

第3回 非小細胞肺がん化学放射線同時併用療法(CCRT)のアンメットニーズStage III非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、化学放射線同時併用療法(CCRT)の適用レジメンについて検討した「TORG1018試験」。この試験に関する記事が、肺がん治療医師の方々からの高い関心を集めている。そこで、NSCLCのCCRTに適用する化学療法、そしてTORG1018試験について、日本医科大学の久保田 馨氏に聞いた。CCRTの適応になる患者さんは、どの程度おられますか?縦郭リンパ節転移があるStage IIIAおよびStage IIIBでは、化学放射線同時併用療法(CCRT)が治療の中心になります。内科的治療対象の3~4割程度になると思います。III期NSCLCにおけるCCRTのアンメットニーズは高いのでしょうか?画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するTORG1018試験のStudyデザインおよび主要結果CCRTに適用するレジメンとして確立したものがなかった、というのが現状だと思います。おそらく皆さん、どのレジメンを用いるか悩んでおられると思います。Stage IIIで根治を期待する場合は、やはりCDDPレジメンが中心になります。2000年代初めまでは、MVPレジメン(MMC+Vindesine+CDDP)を用いていました。1999年以降、プラチナ製剤と第3世代抗がん薬との併用がIV期に対する標準レジメンとなりましたが、第3世代抗がん薬は、毒性のため放射線とのfull doseでの同時併用が困難でした。減量する、weekly投与にする等の工夫がなされましたが、明らかな優位性をもったレジメンは現れませんでした。そのような中、day 1、8に分割したDTX+CDDPは岡山大学の研究で、Stage III切除不能局所進行NSCLCのCCRTにおいて、MVPレジメンとの比較試験を行い、良好な成績を収めていました。また、S-1+CDDPは進行NSCLCに対する標準化学療法レジメンの1つであるとともに、CCRTにおける良好な成績も報告されていました。TORG1018試験の結果は、臨床にどのように反映できると思われますか?TORG1018試験は、ランダム化第II相試験として、CCRT施行患者に対しDTX+CDDPとS-1+CDDP、それぞれの成績を評価しました。GEM、PTX、DTXなどはIV期のfull doseを使えないというのが難点でしたが、本試験でのDTX+CDDPレジメンはfull doseに近く、前述の研究からも高い有効性が期待されます。一方のS-1+CDDPレジメンも同様にfull doseで使用でき、アクティビティが期待できます。試験の結果、主要評価項目である2年OSはS-1+CDDP群79%、DTX+CDDP群が69%でした。数字としては、S-1+CDDP群がDTX+CDDP群を上回っていました。また、肺障害を含めた有害事象もS-1+CDDP群で少ないという結果でした。このように、有効性および安全性の双方ともS-1+CDDPは良好であり、実臨床では、このS-1+CDDPを化学放射線同時併用療法の標準化学療法として日常臨床で用いることができる、と言えるでしょう。今後、S-1+CDDPはCCRTの適用レジメンとして、どのように拡大していくと思われますか?アジアでのトライアルで、S-1+CDDPレジメンを評価することができると思います。また、今後、CCRT後の免疫チェックポイント阻害薬維持療法が、標準治療となることが期待されています。S-1+CDDPレジメンは、比較的副作用が軽度で、免疫チェックポイント阻害薬の効果を、より引き出すことができるかも知れません。免疫チェックポイント薬併用のベースレジメンとしての位置付けも期待できると思います。■関連記事III期NSCLCの化学放射線同時併用療法に適用するレジメンは?本邦のランダム化試験の結果発表/ASCO2017

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肺がん治療ターゲット・セラピー、未来への系譜/アストラゼネカ 第2回【肺がんインタビュー】

第2回 肺がん治療ターゲット・セラピー、未来への系譜/アストラゼネカ肺がん治療に大きな変化をもたらしたEGFR-TKIゲフィチニブ。さらに、2016年には第1・第2世代の耐性をも克服した第3世代EGFR-TKIオシメルチニブを発売したアストラゼネカ。ターゲット・セラピーを通し、肺がん治療の発展に貢献し続ける同社だが、その道のりは平坦ではなかった。同社オンコロジー事業本部マーケティング統括部長 森田慎一郎氏に、肺がん治療と共に進んできた道のりと今後の展開を聞いた。ケアネットの調査で、すべてのがん種を通し、ドクターが最もインパクトが大きいと評価した薬剤はゲフィチニブでした。ゲフィチニブは、発売前から非常に高い期待を背負っていましたが、その後の有害事象の発現で事態が大きく変わったかと思います。その当時の状況はいかがでしたかアストラゼネカ株式会社 オンコロジー事業本部マーケティング統括部長 森田 慎一郎氏メディア報道の影響が大きいのですが、ゲフィチニブは発売前から夢の新薬として扱われました。実際に、助からない患者さんがゲフィチニブにより短期間で劇的に改善するといった、従来の抗がん剤では経験したことのない効果を治験ドクターが体験しており、それも前評判を高めた要因だと思います。しかし、発売後に間質性肺炎の有害事象が発現し、一気にネガティブな報道に変わってしまいました。報道の影響は非常に大きく、患者さんがゲフィチニブによる治療を拒否するという事態が起きました。せっかくゲフィチニブが使える可能性があっても使えないという、歯がゆい思いを、臨床現場のドクターもわれわれも経験しました。有害事象発現の後に3,000例以上を対象とした特別調査と、間質性肺炎のリスク特定のためのケースコントロール試験も実施しました。このような状況の中でも、ドクターは臨床でゲフィチニブが一定の患者さんには確実に効果があるという実感を得ていました。この薬剤は絶対に必要な薬だ、とドクターが確信されていたこともあり、全面的な協力をいただき、短期間でデータを収集できました。逆風の中にはありましたが、ドクターからは訪問するたびに、良い話を聞かせてもらえるので、弊社としても勇気づけられ、逆風に倒れることなく、活動していたことを覚えています。そのような経過を経て、EGFR-TKIの位置付けが、明らかになっていくわけですね前述のとおり、どのような患者さんに効果があり、どういう患者さんに副作用が起こるのか、早い段階で日本のドクターは掴んでおられました。そこで、奏効が期待できる臨床的背景(腺がん、非喫煙者[あるいは過去少量喫煙者]、アジア人)の患者さんを対象に、IPASS試験を実施しました。予想どおり、この患者集団では著明な効果を証明しました。その後、EGFR遺伝子変異におけるEGFR-TKIの有効性が明らかになり、以前からのドクターの勘どころが、ターゲット・セラピーとして科学的に証明されました。ゲフィチニブはグローバルな薬剤ですが、日本のドクターの熱意が育ててくれた薬剤であるといえます。画像を拡大する画像を拡大する臨床背景で選択した患者で有意なPFS延長を示し、EGFR変異によるサブグループ解析では、さらなる著明な効果を示したIPASS試験EGFR-TKIの位置付けが確立していきますが、今度は耐性の問題が浮上します。そこで、耐性を克服した第3世代EGFR-TKIオシメルチニブを臨床現場に登場させますが、その経緯について教えていただけますかEGFR-TKI耐性メカニズムにT790M遺伝子が関与することは、かなり以前から明らかになっていました。臨床現場からも耐性を克服する薬剤の開発について強い要望をいただいており、多くの製品が、耐性克服に挑戦しましたが、T790Mを抑制するまで薬剤濃度を上げると、野生型EGFRチロシンキナーゼも阻害してしまい、有害事象が強くなってしまいます。画像を拡大するT790M変異症例でオシメルチニブが著明かつ有意なPFS延長を示したAURA3試験そのような中、オシメルチニブは最新テクノロジーを活用し、野生型EGFR チロシンキナーゼへの活性を抑え、T790Mを強力に阻害するようデザインされました。従来の薬剤と根本的に異なる方法で開発されたのです。実際にAURA試験などの臨床試験で、T790M変異症例に対する著明な効果を証明しています。オシメルチニブはまた、T790Mのみならず、Exon19、21といったEGFR遺伝子変異にも良好な効果を示します。現在、T790M変異から拡大し、EGFR変異の非小細胞肺がんに対する1次治療の第III相試験FLAURA試験も進行中です。その後、オシメルチニブが承認されるわけですが、承認から薬価収載までの間、同剤の無償提供をされました。その状況について教えていただけますかT790M変異の患者さんは、治療選択肢がきわめて限られています。オシメルチニブを1日も早くに使うべき患者さんが大勢おられ、臨床現場からの強い要望がありました。そういった要望にお応えするために、薬価収載前の薬剤提供を検討しました。実際に困っている患者さんに使えるよう、さまざまな方法を検討した結果、厚生労働省の定める「保険外併用療養費制度」のもと、本剤の無償提供に踏み切りました。ただし、有害事象などの問題もありますので、提供先は、治験実施施設のうち、承認された適応、用法・用量に従ってのみ使用する、弊社が実施する市販直後調査・全例調査や適正使用推進等の各種安全対策に協力いただける、といった条件に合意いただけた施設に限定しました。オシメルチニブの使用には再生検によるT790Mの確認が必要となります。とはいえ、再生検をしてもらうというのは容易ではないと思いますが画像を拡大する第3世代EGFR-TKIオシメルチニブオシメルチニブが登場するまでは、T790Mへの治療手段がなかったため、再生検という概念はなかったわけです。いわゆるゼロからのスタートですが、EGFR-TKI耐性となった患者さんに一人でも多く、治療機会を見つけていただくため、講演会などを開催し、再生検の重要性と共に、再生検の実際について広める活動を行っています。呼吸器科の先生方は気管支鏡の専門家ですが、再生検は新たなチャレンジです。そこで、スペシャリストを招いて、組織へのアプローチ、採取のテクニックなどを紹介いただきました。また、気管支鏡メーカーとタイアップして、機械を現場に持ち込んだハンズオンセミナーを開催し、実際の手技を体験いただいています。さらに、肺外、肝臓、骨、脳といった、呼吸器科がアクセスできない部位の対策として、消化器内科、整形外科、脳外科、放射線科といった他科連携のノウハウも講演会でオピニオンリーダーから共有していただきました。このような再生検の普及活動をしていますが、オシメルチニブ上市時、40%程度だった再生検実施施設が、現在では90%を超えています。海外では50%程度ですので、日本がいかに高いかわかります。この数字は、日本の先生方が、患者さんのために非常に熱心に再生検に取り組んでいることを表しているものです。われわれも何らかの形で、ここに貢献できたのではないかと思っています。組織再生検不能な患者さんのためにリキッドバイオプシーの手段があります。リキッドバイオプシーについても、保険点数が付くまで検査結果の倫理提供をなさっていましたね再生検実施率は海外とは比較にならないほど高くなりました。とはいえ、組織生検できる症例は60%で、残りの40%は患者さんの病状や腫瘍の形状など何らかの理由で生検できないというのが現状です。治療できるかもしれない患者さんが、目の前にいるのに何もできない、というジレンマが臨床現場にもわれわれにもありました。しかし、検査の保険適用には時間がかかります。その間にT790M変異検査ができないまま、状態が悪くなっていく患者さんが大勢いらっしゃいます。そのような患者さんの緊急治療を支援する観点から、保険適用前に何かできることはないか、社内で検討し、関係各省との調整を行いました。そして、オシメルチニブのコンパニオン診断薬コバスEGFR変異検出キットv2.0(ロシュ・ダイアグノスティックス)を用いたT790M血漿検査結果の倫理提供の実施に至りました。T790M検査の結果を弊社が購入、無償提供することになるのですが、再生検不能な患者さんにアクセスしてもらう環境を作りたい、という強い思いから実現できたのだと思います。今後はどのような製品で肺がん治療に貢献する予定ですか? パイプラインについて教えていただけますかこれまでEGFR-TKIを通して肺がん医療に貢献してきました。しかし、EGFR変異は非小細胞肺がん患者さんの35%程度です。残りの65%の患者さんにも貢献したいと考えています。免疫チェックポイント阻害薬は、その目標を実現する1つの候補です。われわれは、抗PD-L1抗体durvalumabを有しており、この製品を肺がん領域でも開発しています。durvalumabでは、他の免疫チェックポイント阻害薬とは異なるアプローチをしています。代表的なものの1つとして、非小細胞肺がんStageIII患者さんの化学放射線治療後の維持療法として効果を検討した、PACIFIC試験があります。Unmet Medicalニーズの高い患者集団ですが、すでにポジティブな結果が出ており、今秋の国際学会で詳細を発表する予定です。durvalumabについては、StageIVの1次治療という、より多くの患者さんを対象とした臨床試験MYSTIC試験も進行しています。この試験では、durvalumabと弊社の抗CTLA-4抗体であるtremelimumabを併用しています。PD-L1が50%未満の症例では、PD-1阻害薬の効果はどうしても低下してしまいますが、たとえば、この患者集団に対して免疫チェックポイント薬の併用がベネフィットをもたらすことができるか、といった免疫チェックポイント阻害薬の新たな可能性を検証します。この研究も今後の国際学会で発表の予定です。そのほか、私どもには多くの作用機序の異なる肺がん治療薬のパイプラインがあり、自社品の中で併用試験を組むことも容易です。今後も、さまざまな薬剤の組み合わせにもチャレンジし、肺がん治療の研究を進めていければと思っています。

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【JSMO2017見どころ】プレナリーセッション、免疫・細胞療法

 2017年7月27日(木)から3日間にわたって、第15回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、プレナリーセッションをはじめ、「免疫・細胞療法」「Precision medicine」「AYA世代のがん治療」「緩和・支持療法」の4つのテーマにおける注目トピックが紹介された。 はじめに、本学術集会会長の谷本 光音氏(岡山大学大学院 血液・腫瘍・呼吸器内科学講座)より、未発表の結果が発表されるプレナリーセッション3題の紹介がなされた。プレナリーセッション日時:7月28日(金)15:30~17:00場所:Room1(ポートピアホール)※Room 10(神戸際会議場メインホール)にて中継(1)「切除不能大腸癌に対するmFOLFOX6/CapeOX+BmabとS-1/CPT-11+Bmabとの第3相試験:TRICOLORE試験」蒲生 真紀夫(大崎市民病院 腫瘍内科)(2)「全身化学療法治療歴のない切除不能な肝細胞がん患者を対象としたレンバチニブの臨床第Ⅲ相試験の日本人部分集団解析」池田 公史(国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科)(3)「PD-L1高発現の未治療非小細胞肺癌に対するペムブロリズマブの国際共同ランダム化第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024)の日本人集団解析」里内 美弥子(兵庫県立がんセンター 呼吸器内科) 続いて、「免疫・細胞療法」分野の最新動向・注目演題について前田 嘉信氏(岡山大学病院 血液・腫瘍内科 講師)が登壇した。以下、前田氏のコメントと注目演題を紹介する。【前田 嘉信氏コメント】 免疫・細胞療法は、手術療法、放射線療法、化学(薬物)療法に続く第4の治療法として近年大きな注目を集めている。とくに免疫チェックポイント阻害薬は、2014年に進行悪性黒色腫に対して抗PD-1抗体が国内承認を得て臨床応用されて以来、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、大腸がんなどに次々に応用されている。 最も広く用いられている肺がんに関しては、インターナショナルシンポジウムをはじめ、免疫療法に関する一般口演の大半を占めるほど多くの発表が予定されている。免疫チェックポイント阻害薬に関する最新情報は教育講演で、また、免疫チェックポイント療法を最適化するための大きなテーマとして、副作用の対策がシンポジウムで取り上げられている。ここでは、各分野からの副作用対策が提案され、議論される。さらに、最適化のために効果を予測するバイオマーカーの研究や免疫チェックポイントの基礎的研究がインターナショナルシンポジウムで討論される予定となっている。 免疫チェックポイント療法を超えて免疫・細胞療法の今後の展開を考えるうえで、「免疫制御とがん治療」と題した特別講演と、インターナショナルシンポジウム「Cancer Immunotherapy -What's the next?」が予定されている。【注目演題】シンポジウム「免疫チェックポイント阻害薬の副作用とその対策」日時:7月27日(木)9:00~11:00場所:Room1(神戸ポートピアホテル南館1F ポートピアホール)International Symposium「Immunotherapy for head and neck cancer: Future direction」日時:7月27日(木)14:30~16:30場所:Room 11(神戸国際会議場3F 国際会議室)「Emerging evidence of immunocheckpoint inhibitors in non-small cell lung cancer」日時:7月28日(金)8:20~10:20場所:Room 2(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール南)「The future of immune checkpoint therapy」日時:7月28日(金)17:00~19:00場所:Room 2(神戸国際展示場2号館1F コンベンションホール南)「Cancer Immunotherapy -What's the next?」日時:7月29日(土)8:20~10:30場所:Room 1(神戸ポートピアホテル南館1F ポートピアホール)一般口演「免疫療法 1」日時:7月28日(金)8:20~9:20 場所:Room 11(神戸国際会議場3F 国際会議室)「免疫療法 2(非小細胞肺がん)」日時:7月28日(金)9:20~10:20 場所:Room 11(神戸国際会議場3F 国際会議室)「免疫療法 3(有害事象)」日時:7月28日(金)10:20~11:20 場所:Room 11(神戸国際会議場3F 国際会議室)「呼吸器 4(免疫療法)」日時:7月29日(土)8:20~9:20場所:Room 5(神戸国際展示場1 号館2F Hall B)教育講演「免疫チェックポイント阻害剤最新情報」日時:7月29日(土)16:30~17:00場所:Room 1(神戸ポートピアホテル南館1F ポートピアホール)特別講演「免疫制御とがん治療」日時:7月29日(土)15:00~16:00場所:Room 1(神戸ポートピアホテル南館1F ポートピアホール)【第15回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2017年7月27日(木)~29日(土)■会場:神戸コンベンションセンター、Junko Fukutake Hall(岡山大学鹿田キャンパス)■会長:谷本 光音氏(岡山大学大学院 血液・腫瘍・呼吸器内科学講座)■テーマ:最適のがん医療— いつでも、何処でも、誰にでも —第15回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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ネガティブスタディだが効果予測指標はPD-L1ではない!?(解説:倉原 優 氏)-696

 CheckMate026試験は、腫瘍細胞の1%以上がPD-L1を発現している、未治療のIV期非小細胞肺がん患者に対して、初回治療としてのニボルマブ(商品名:オプジーボ)単剤治療とプラチナ併用療法を比較するランダム化比較試験である。ニボルマブは現時点では2次治療で一定の地位を確立している。それにしても、CheckMateと名の付く臨床試験が多いため、一臨床医にはなかなか覚えにくい。 CheckMate026試験では、無増悪生存期間および全生存期間のいずれにおいても、両群に有意差は観察されなかった。いわゆる、ネガティブスタディだった。なんだニボルマブは初回治療には使えないのか、という声が出てきそうだが、実はそう簡単な帰結にはならないと考えている。この論文の最後には、探索的研究の興味深い結果がコメントされている。 多くの医師はご存じかもしれないが、PD-L1ではなくTumor Mutation Burden(TMB)※1が効果を推定する規定因子として注目を集めている1)。事実、このCheckMate026試験の後解析2)が米国がん研究会議(AACR 2017)で発表されており、TMBが高い場合※2、ニボルマブ群で無増悪生存期間が延長し(ハザード比:0.62、95%信頼区間:0.38~1.00)、奏効率も良好だった(ニボルマブ群46.8% vs.プラチナ併用療法群28.3%)と報告されている。全生存期間は後治療のクロスオーバーの影響もあって、有意差はついていない。※1 腫瘍組織中の遺伝子変異量を示す指標のこと。※2 TMBレベルを低TMB(0~99)、中TMB(100~242)、高TMB(243以上)に分けて解析。 当然ながら、副作用が患者に与える影響は免疫チェックポイント阻害薬のほうが軽度である(注意しなければならない副作用は特殊なものが多いが)。たとえ後解析でTMB高低によって差があったとしても、腫瘍細胞にPD-L1の発現が多ければ、今後はプラチナ併用療法を優先的に使う機会は少なくなるのではないだろうか。■参考1)Rizvi NA, et al. Science. 2015;348:124-128.2)AACR 2017 abstract

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ニボルマブ、進行肝細胞がんへの挑戦/ASCO2017

 進行肝細胞がん(HCC)における1次治療薬の選択肢はソラフェニブ(商品名:ネクサバール)だけである。本年(2017年)レゴラフェニブ(商品名:スチバーガ)が2次治療薬として米国食品医薬品局(FDA)に承認されたが、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブはこれらの患者集団における新たな選択肢となるのだろうか。 Checkmate040試験は進行HCC患者に対するニボルマブ(製品名:オプジーボ)の第I/II相試験。シカゴにて開催された米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)で、米国Providence Cancer CenterのTodd S. Crocenzi氏らが発表した。 Checkmate040試験ではニボルマブ投与患者を、ソラフェニブ非治療群とソラフェニブ治療群に分け、さらに各群を用量漸増アーム(ニボルマブ投与量0.1~10mg/kg)と拡大アーム(ニボルマブ投与量3mg/kg)に分けて効果と安全性を評価している。今学会ではソラフェニブ非治療群と治療群の生存と効果の持続性の成績が発表された。主要評価項目は用量漸増アームでは安全性と忍容性、拡大アームでは奏効率(ORR)。副次的評価項目はORR(用量漸増アームのみ)、病勢コントロール率(DCR)、初回奏効までの期間、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)であった。 合計264例の患者が登録された。Child-Pughスコアは全例が5以上。多くの患者が重度の治療を受け、肝外転移を有していた。 盲検下独立中央判定(BICR)によるORRは、ソラフェニブ非治療群で20%、ソラフェニブ治療群の漸増アームで19%、同群の拡大アームでは14%であった。DCRは、ソラフェニブ非治療群で54%、ソラフェニブ治療群で55%であった。効果の発現は早く、客観的奏効を達成した患者のうち、ソラフェニブ非治療群の56%、ソラフェニブ治療群の64%が3ヵ月以内に奏効した。DORはソラフェニブ非治療群で17ヵ月、ソラフェニブ治療群では19ヵ月。OSはソラフェニブ非治療群で28.6ヵ月、ソラフェニブ治療群漸増アームでは15.0ヵ月、拡大アームでは15.6ヵ月であった。ニボルマブの効果は、ソラフェニブ治療経験の有無、HCCの病因またはPD-L1発現の有無とは無関係であった。また、ニボルマブの安全性プロファイルは、いずれの群でも既知のものであった。 現在、1次治療でのニボルマブとソラフェニブの第III相比較試験CheckMate459試験が進行中である。■参考 ASCO2017 Abstract Checkmate040試験(Clinical Trials.gov)■関連記事肝細胞がんに対するニボルマブの優先審査を受理:FDA

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頭頸部がん領域で求められる体制整備

 2017年4月27日、都内にて“頭頸部がん治療とがん免疫療法薬「オプジーボ」”と題するセミナーが開かれた(主催:小野薬品工業株式会社/ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社)。演者である田原 信氏 (国立がん研究センター東病院 頭頸部内科長)は、「今後、免疫療法は頭頸部がん治療に新たな展望をもたらすだろう」と期待を述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。頭頸部がんにおける治療課題 頭頸部がんは、口腔、咽頭、喉頭、甲状腺など、頭頸部領域に発生するがんの総称である。本邦の年間推計患者数(甲状腺がんを除く)は4万7,000人。Stage III、IV期の進行がんが約6割で、その半数は再発に至る。再発後は化学放射線療法などが施行されるが、頭頸部が対象のため、「ご飯が飲み込めない」「皮膚がただれる」といった急性毒性で苦しむ患者も多い。 さらに、晩期毒性による死亡リスクの増大も問題であった。頭頸部がんへの新たな標準治療オプション 新たな治療手段が求められるなか、2017年3月24日、抗PD-1抗体「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」が、「再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん」に対する適応を取得した。 オプジーボは、プラチナ抵抗性の再発・転移頭頸部がん患者361例を対象としたCheckMate-141試験で、全生存期間7.49ヵ月(95%CI:5.49~9.10)と、対照群の5.06ヵ月(95%CI:4.04~6.05)に対して有意な延長を示した(HR:0.70、97.73%CI:0.51~0.96、p=0.01011 [層別 log-rank検定])。安全性プロファイルは、これまでの臨床試験の結果と一貫しており、プラチナ抵抗性の再発・転移頭頸部がんへの新たな標準治療オプションになると予想される。頭頸部がんは免疫抑制腫瘍 とくに、頭頸部がんの微小環境内では、さまざまな段階で免疫調節が生じているとの報告もある。オプジーボのような免疫チェックポイント阻害薬は、免疫抑制腫瘍である頭頸部がんに高い抗腫瘍効果をもたらすと期待される。実際、頭頸部がんを対象に複数の免疫チェックポイント阻害薬が開発段階にある。今後も免疫療法は、頭頸部がん治療に新たな展望をもたらすだろう。他科連携、診療連携プログラムの構築で緊密な連携を目指す その一方で、副作用管理、バイオマーカー探索などの課題も存在する。とくに、頭頸部がんはがん全体からみればマイナーながん種ということもあり、頭頸部がんに精通した医師自体が少なく、これまで集学的治療が実践されてこなかった。頭頸部がんの専門医は主に、耳鼻咽喉科・頭頸部外科を中心とする「頭頸部外科専門医」、口腔外科が中心の「口腔外科専門医」、腫瘍内科医が中心の「がん薬物療法専門医」と、複数の診療科にまたがっている。今後は医科歯科連携、頭頸部がん薬物療法診療連携プログラムの構築といった、緊密な連携による対策が求められるだろう。 また、肺がんでの「SCRUM-Japan」のような無償での検索体制構築はなく、Precision Medicineに向けた課題は存在する。今後、頭頸部がん領域でも体制整備が進み、さらなる治療成績向上が実現することを期待したい。

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ニボルマブによるNSCLCの5年全生存率が明らかに

 ニボルマブ(商品名:オプジーボ)の非小細胞肺がん(NSCLC)の5年全生存率(5年OS)が、ジョンズ・ホプキンスBloomberg–Kimmel Institute for Cancer ImmunotherapyのJulie Brahmer氏らにより、米国がん学会年次総会(AACR2017)で明らかになった。この研究はニボルマブの第Ib相臨床試験CA209-003のコホートデータを解析したものであり、免疫チェックポイント阻害薬による転移性NSCLCの長期生存率に関する初めての報告である。5年OSは16%。3年目以降はプラトーに CA209-003試験では、高度な前治療歴のある進行NSCLC患者が、PD-L1状態に関係なく登録された。ニボルマブが有望な有効性を示し、その後の米国食品医薬品局(FDA)による進行NSCLCの2次治療の承認につながっている。 5年(最低期間58.25ヵ月)のフォローアップの結果、全体の5年OSは16%であった。組織別にみると、扁平上皮がんでは16%、非扁平上皮がんでは15%であった。経時的にみると、1年42%、2年24%、3年18%、5年16%と、3年目以降は横ばい傾向であった。 5年以上生存した16例の患者における、PRは12例、SD、PDは各2例であった。この16例中12例では、さらなる治療を必要としなかった(8例は副作用なしに2年間治療、4例は副作用のため早期に中止)。 PD-L1発現状況と5年OSの関連をみると、PD-L1発現1%未満では20%、1%以上50%未満23%、50%以上43%と、発現が高くなると共に生存率が上昇する傾向にあった。しかし、対象患者の47%にあたる61例はPD-L1測定不能であった。従来の数倍の5年OSだが、予測にはさらなる研究が必要 米国国立がん研究所(NCI)のSEERデータによると、転移性NSCLC患者の5年OSは4.9%。この研究での5年OSは標準治療を受けている患者集団の数倍となる。しかし、5年以上の生存を予測する一貫したパターンは明らかにならなかった。効果の持続性は証明されたものの、免疫システムが、がんを完全に排除して治療が不要になったのか?治療が持続的に免疫記憶を呼び覚ましているのか?さらなる研究が必要である、とBrahmer氏は述べている。(ケアネット 細田 雅之)参考AACRニュースリリースブリストル・マイヤーズ スクイブ(グローバル)プレスリリース

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2016年世界肺癌学会の動画レポートを公開:肺がん医療向上委員会

 特定非営利活動法人 日本肺癌学会「肺がん医療向上委員会」は、昨年(2016年)12月にオーストリアのウィーンで開催された第17回世界肺癌会議(WCLC/IASLC 2016)を取材し、全16本の動画レポートを制作し、公開した。 IASLC の「ペイシェント・アドボカシーアワード(Patient Advocacy Awards)」を受賞し、WCLC/IASLC 2016 に招待された「日本肺がん患者連絡会」代表の長谷川 一男氏の協力を得て、アドボカシーの視点から世界肺癌学会を取材し、最先端の学術的発表、世界各国のアドボカシー活動の現状などをまとめたもの。 第3世代TKI、免疫チェックポイント阻害薬、新ステージ分類など最新の発表の模様と、日本肺癌学会理事長の光冨徹哉氏の解説も収録されている。(ケアネット 細田 雅之)参考日本肺癌学会ニュースリリース(PDF)世界肺癌学会レポート:アドボカシーの視点から(動画サイト)

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ペムブロリズマブ、進行性尿路上皮がんの2次治療でOS延長/NEJM

 進行性尿路上皮がんの2次治療において、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)は化学療法に比べ全生存(OS)期間を延長し、治療関連有害事象も少ないことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJoaquim Bellmunt氏らが実施したKEYNOTE-045試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年2月17日号に掲載された。本症の標準的1次治療はプラチナ製剤ベースの化学療法であるが、国際的に承認された標準的な2次治療はなく、2次治療のOS期間中央値は6~7ヵ月にすぎない。ペムブロリズマブはPD-1のヒト型モノクローナルIgG4κアイソタイプ抗体であり、第Ib相試験(KEYNOTE-012試験)および第II相試験(KEYNOTE-052試験)で本症への腫瘍縮小効果が確認されている。542例を対象とする国際的な無作為化試験 KEYNOTE-045試験は、進行性尿路上皮がんの2次治療におけるペムブロリズマブの有用性を評価する国際的な非盲検無作為化第III相試験(Merck社の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、腎盂・尿管・膀胱・尿道の尿路上皮がんと診断され、進行病変に対するプラチナ製剤ベースの化学療法施行後の進行例、または筋層浸潤性局所病変に対する術前あるいは術後のプラチナ製剤ベースの化学療法施行後の再発例で、全身状態(ECOG PS)が0~2の患者であった。 被験者は、ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を投与する群または担当医の選択による化学療法(パクリタキセル、ドセタキセル、ビンフルニンのいずれか)を施行する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、全患者および腫瘍のPD-L1発現率(腫瘍に占める、PD-L1を発現している腫瘍細胞と腫瘍浸潤免疫細胞の割合)が10%以上の患者におけるOSおよび無増悪生存(PFS)の複合エンドポイントとした。 2014年11月5日~2015年11月13日に、29ヵ国120施設で患者登録が行われた。542例が登録され、ペムブロリズマブ群に270例、化学療法群には272例が割り付けられた。実際に治療を受けたのはそれぞれ266例、255例(パクリタキセル84例、ドセタキセル84例、ビンフルニン87例)だった。OS期間が約3ヵ月延長 ベースラインの年齢中央値は、ペムブロリズマブ群が67歳(範囲:29~88歳)、化学療法群は65歳(同:26~84歳)、男性がそれぞれ74.1%、74.3%を占めた。PD-L1発現率≧10%の患者の割合は、28.5%、33.8%だった。 全患者のOS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が10.3ヵ月と、化学療法群の7.4ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.59~0.91、p=0.002)。また、PD-L1発現率≧10%の患者のOS期間中央値も、ペムブロリズマブ群が8.0ヵ月と、化学療法群の5.2ヵ月に比し有意に長かった(0.57、0.37~0.88、p=0.005)。 PFS期間中央値は、全患者(ペムブロリズマブ群:2.1ヵ月 vs.化学療法群:3.3ヵ月、HR:0.98、95%CI:0.81~1.19、p=0.42)およびPD-L1発現率≧10%の患者(0.89、0.61~1.28、p=0.24)とも、両群に差を認めなかった。 全患者の客観的奏効率はペムブロリズマブ群が有意に高く(21.1% vs.11.4%、p=0.001)、奏効までの期間中央値は両群とも2.1ヵ月であった。奏効期間中央値は、ペムブロリズマブ群が未到達、化学療法群は4.3ヵ月だった。奏効期間が12ヵ月以上の患者の推定割合は、それぞれ68%、35%だった。PD-L1発現率≧10%の患者でも、ほぼ同様の結果であった。 治療関連有害事象の発現率は、全Grade(60.9% vs.90.2%)およびGrade 3~5(15.0% vs.49.4%)とも、ペムブロリズマブ群が少なく、治療関連の治療中止(5.6% vs.11.0%)も少なかった。治療関連死は、ペムブロリズマブ群が1例(肺臓炎)、化学療法群は4例(敗血症2例、敗血症性ショック1例、その他1例)に認められた。 ペムブロリズマブ群で頻度の高い全Gradeの治療関連有害事象として、そう痒(19.5%)、疲労(13.9%)、悪心(10.9%)がみられたが、Grade 3~5の有害事象で発現率が5%を超えるものはなかった。2例以上に発現したGrade 3~5のとくに注目すべき有害事象は、肺臓炎(2.3%)、腸炎(1.1%)、腎炎(0.8%)であり、Grade 5は1例(肺臓炎)に認められた。 著者は、「ペムブロリズマブのベネフィットは、腫瘍および腫瘍浸潤免疫細胞のPD-L1発現にかかわらず認められた。バイオマーカーとしてのPD-L1の役割は、現在進行中のより早期の治療ラインの無作為化試験で明らかとなる可能性がある」としている。

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悪性黒色腫〔malignant melanoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義悪性黒色腫(メラノーマ:malignant melanoma)は、メラノサイト(メラニン色素産生細胞)ががん化して生じる悪性腫瘍である。表皮基底層部のメラノサイトが、がん化して皮膚に生じることが多いが、粘膜(口腔、鼻腔、肛門部など)や眼内(脈絡膜など)に生じることもある。■ 疫学人種によって発生頻度が大きく異なる。日本人では1~2/10万人年と見積もられている。白人では15~30/10万人年、黒人では0.5/10万人年程度の発生率である。■ 分類表皮に沿った悪性黒色腫細胞の組織学的増殖様式の特徴によって、以下の4型に分けるClark分類が用いられている(図1)1)。(1)表在拡大型: 白人の悪性黒色腫の70~80%を占める病型で、男性の背部や女性の下肢などに好発する(図1a)。日本人では全悪性黒色腫の20%程度を占め、近年増加している。(2)末端黒子型: 掌蹠や爪部を侵す病型であって(図1b)、日本人の悪性黒色腫の最多病型で50%程度を占める。(3)悪性黒子型: 高齢者の顔面に好発する病型で(図1c)、日本人、白人のいずれでも10%程度を占める。(4)結節型: 病変周囲に色素斑を伴わない病型で(図1d)、全身各所に生じうる。日本人の悪性黒色腫の15~20%を占める。なお最近、Bastianらによる新たな分類法が提案され、遺伝子変異を反映する分類として注目されている2)。■ 病因日光からの紫外線が主要発がん因子であり、表在拡大型は強い紫外線への間欠的曝露が、悪性黒子型は長年月にわたる慢性的な紫外線曝露が発生に関与するとされている。ただし、末端黒子型の発生には紫外線は関与せず、機械的刺激の関与が推定されている。■ 症状腫瘍細胞によるメラニン色素産生のために黒褐色調の病変としてみられることが多い1)。臨床的には濃淡不整な不規則形状の黒褐色斑として生じてくる。その後、一部に隆起性結節が生じ、さらに進行すれば潰瘍化を来す。■ 予後Tumor thickness(表皮顆粒層から最深部の悪性黒色腫細胞までの垂直距離をmm単位で表すもの)が最も重要な予後因子であり、T分類もこれによって規定される。AJCC(American Joint Committee on Cancer)の病期別の5年生存率は(同一病期でも亜病期によってかなり大きな差があるが)、病期Iが90%以上、病期IIが50~80%、病期IIIが25~60%程度、病期IVが10%程度である3)。後掲の表に各病期の概要を示した。なお、AJCCの予後予測ツールがネット上に公開されているので参考にされたい(http://www.melanomaprognosis.net/)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断悪性黒色腫の原発巣は、臨床的には大型で不整形状の黒褐色病変としてみられ、多くは色調に無秩序な濃淡差が認められる(図2a)。黒褐色調を呈する皮膚病変は悪性黒色腫以外にも多数存在するので、慎重に鑑別しなければならない1)。主要な鑑別診断と鑑別のポイントは、以下のとおりである。(1)色素細胞母斑: 径7mm程度までの小型の病変で、形状・色調に不規則、不整は目立たない(図2b)。ただし、先天性母斑は大きなことがある。(2)脂漏性角化症: 境界きわめて明瞭な隆起性結節としてみられ、表面が角化性で規則的な顆粒状凹凸を示すことが多い(図2c)。(3)基底細胞がん: 高齢者の頭頸部に好発し、青黒色調の局面、結節としてみられ、潰瘍化することも多い。周囲に色素斑を伴わないこと、病変表面が平滑で、透明感を呈することが特徴である(図2d)。■ ダーモスコピー診断近年、皮膚科診療に導入された診断法であり、乱反射を防止したうえで病変部に白色光を照射しながら10~20倍の拡大像を観察する。肉眼的に認識できないさまざまな所見を明瞭に観察することができ、とくに色素性皮膚病変の診断に有用である。その詳細は成書に譲るが4)、一点だけ日本人に多い掌蹠の悪性黒色腫の診断への有用性を記載する。掌蹠の悪性黒色腫は、ダーモスコピーにて早期段階から皮野(指紋)の隆起部(皮丘)に一致する色素沈着(parallel ridge pattern)を呈するのに対し、良性の母斑は皮野の溝(皮溝)に一致する色素沈着(parallel furrow pattern)を呈する(図3)。この所見の差異は両者の鑑別にきわめて有用であり、掌蹠の悪性黒色腫の早期検出と診断確定に役立つ4、5)。■ 病理組織診断臨床所見やダーモスコピー所見にて診断が確定できない場合は、生検して病理組織学的に診断を確定する。生検は可能ならば全摘生検が望ましい。生検することにより、もっとも重要な予後因子であるtumor thicknessを計測することもできる。悪性黒色腫は病理組織診断も難しいことが知られている。悪性黒色腫早期病変と良性のClark母斑の鑑別、結節型などの悪性黒色腫とSpitz母斑(良性の母斑の一種で、増殖するメラノサイトが顕著な核異型を示す)との鑑別がしばしば問題になる。疑わしい症例は、この方面のエキスパートにコンサルテーションすることが望ましい。■ 画像検査と病期の確定悪性黒色腫と診断されたら、AJCCの病期を決定する。原発巣のtumor thicknessを評価するとともに、理学的に所属リンパ節やその他の部位・臓器への転移がないかを検討する。必要に応じてCTやMRIなどの画像検査も施行する。PETも悪性黒色腫の転移の検出に、きわめて有用である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)AJCCの病期に対応して表のような治療を施行することが推奨されている。病期I、IIの段階ならば、原発巣の外科的切除を施行する。切除マージンはtumor thicknessによって規定されるが、早期病変は0.5~1cmのマージン、進行病変は2~3cmのマージンが推奨されている。症例によってはセンチネルリンパ節生検の実施を考慮する。病期IIIには原発巣の切除に加えて、所属リンパ節の郭清術を施行する。メラノーマは化学療法に抵抗性で、標準薬とされてきたダカルバジン(商品名:同)でも奏効率は15%程度に過ぎない。近年、分子標的薬が病期IVあるいは外科的根治術不能な病期IIICのメラノーマ患者に有効なことが明らかにされ、治療方針が激変した。病期IVにはMAPK経路の阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬が選択される6)。現在、わが国で保険適用となっているのは、MAPK阻害薬では変異BRAF阻害薬のベムラフェニブ(同:ゼルボラフ)、ダブラフェニブ(同:タフィンラー)とMEK阻害薬のトラメチニブ(同:メキニスト)である。免疫チェックポイント阻害薬ではニボルマブ(抗PD-1抗体、同:オプジーボ)、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体、同:キイトルーダ)とイピリムマブ(抗CTLA-4抗体、同:ヤーボイ)である。いずれの薬剤も特有の強い有害反応を有するので、施設内で治療チームを設けて対応することが望ましい。薬剤の選択順位は、確定的な推奨ではないが、増殖スピードの速いメラノーマにはまずベムラフェニブ単独またはベムラフェニブとトラメチニブの併用療法を考える。増殖スピードの遅いメラノーマには当初から抗PD-1抗体(ニボルマブまたはペムブロリズマブ)あるいはイピリムマブを用いる。抗PD-1抗体はイピリムマブよりも奏効率、有害反応の点から臨床的意義が高い可能性がある。ただし、腫瘍細胞がPD-L1陰性の場合はイピリムマブを選択する。これらの治療に抵抗性となった高度進行例には、適切な緩和療法を施行する。4 今後の展望ニボルマブとイピリムマブの併用療法の治験が進んでいる。また、上記以外の分子標的薬も続々と開発され、わが国においても臨床治験が進められている。術後補助療法としてニボルマブとイピリムマブの有用性の比較やペムブロリズマブの有用性も治験が実施されている。5 主たる診療科皮膚科が主たる診療科であり、診断から治療まで一貫した対応ができる。病理組織診断には病理科が、切除後の外科的再建などには形成外科が対応することもある。分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の使用にあたっては施設内に多職種診療チームを発足させることが望ましい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本皮膚悪性腫瘍学会が作成した日本皮膚科学会皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン(ほぼ同じものがMindsと日本がん治療学会のホームページにも掲載されている)(医療従事者向けのまとまった情報)米国NCCNの診療ガイドライン(リスト中“Melanoma”の項を参照)(医療従事者向けの英文のまとまった情報)国立がん研究センターがん情報サービス:「悪性黒色腫」患者用解説冊子(一般利用者向けのまとまった情報)1)斎田俊明ほか編. 1冊でわかる皮膚がん. 文光堂;2011.p.220-237.2)Curtin JA, et al. N Engl J Med. 2005;353:2135-2147.3)Balch CM, et al. J Clin Oncol. 2009;27:6199-6206.4)斎田俊明編. ダーモスコピーのすべて 皮膚科の新しい診断法.南江堂;2012.5)Saida T, et al. J Dermatol. 2011;38:25-34.6)宇原 久. 癌と化学療法. 2016;43:404-407.公開履歴初回2014年02月27日更新2017年02月21日

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