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1.

高齢2型糖尿病、SGLT2阻害薬で死亡・透析リスク低く/統数研・横浜市大ほか

 高齢の糖尿病患者への薬物治療では、DPP-4阻害薬だけでなく、近年ではSGLT2阻害薬も使用されている。その一方で、SGLT2阻害薬の75歳以上の成人におけるエビデンス、とくにDPP-4阻害薬との比較データは限られている。このテーマについて野間 久史氏(統計数理研究所/総合研究大学院大学 教授)、後藤 温氏(横浜市立大学医学部 教授)らの研究グループは、レセプトデータなどを基に標的試験エミュレーションを実施した。その結果、SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬と比較し、全死因死亡および腎臓関連リスクの低下と関連していることが示唆された。Age and Ageing誌2026年8月3日号に掲載。高齢糖尿病患者へのSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の使用で違いはあるか 研究グループは、わが国のレセプトデータと健康診断データを連結し、標的試験エミュレーションを実施。SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬の投与を新たに開始した75歳以上の2型糖尿病患者を対象に、死亡、心血管および腎臓の転帰について、1ヵ月の導入期間を設けたうえで、逆確率重み付け法を用いてITT(治療意図)解析による効果を推定した。 主な結果は以下のとおり。・本研究では8,486例(SGLT2阻害薬群2,204例、DPP-4阻害薬群6,282例)が解析された。・1ヵ月の導入後、SGLT2阻害薬群では全死因死亡リスクの低下(ハザード比[HR]:0.677、95%信頼区間[CI]:0.500~0.916)および末期腎不全または透析導入リスクの低下(HR:0.374、95%CI:0.157~0.890)に関連していた。・ITT解析において、心不全による入院(HR:1.103、95%CI:0.854~1.426)や心筋梗塞(HR:1.015、95%CI:0.768~1.341)については、明確な差は認められなかった。・脳卒中の発生頻度はSGLT2阻害薬群で高かった(HR:1.420、95%CI:1.165~1.828)が、この結果の解釈には慎重な検討が必要である。 以上の結果から研究グループは、「75歳以上の2型糖尿病患者においては、SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬と比較し、全死因死亡および腎臓関連リスクの低下と関連していることが示唆された。観察された脳卒中リスクの上昇については、残存交絡因子、競合する死亡要因、および脆弱な高齢者における異質性がこの傾向に寄与している可能性があるため、慎重な解釈が必要」と結論付けている。

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食事のタイミングと日本人の認知症リスクとの関係~LIFE研究

 食事のタイミングと認知症についてのエビデンスは限られている。九州大学の川口 健悟氏らは、深夜の夕食および朝食抜きと、認知症の発症との関連を検討した。GeroScience誌オンライン版2026年7月28日号の報告。 本研究には、2016年4月~2021年3月の19自治体におけるレセプトデータを含むLIFE研究(Longevity Improvement & Fair Evidence Study)のデータが用いられた。深夜の夕食(就寝前2時間以内の夕食を週3回以上)および朝食抜き(週3回以上)については、健康診断時に評価し、「あり」または「なし」として解析した。すべての原因による認知症の発症は、ICD-10のコードを用いてレセプトデータから特定した。関連性の推定には、死亡を打ち切りとして扱う原因別Cox比例ハザードモデルを用い、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。その際、ベースライン時の人口統計学的因子、生活習慣、併存疾患について事前に規定した調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象者28万3,166例(平均年齢:72.8±5.5歳、女性の割合:58.5%)のうち、深夜の夕食は3万6,609例(12.9%)、朝食抜きは1万7,727例(6.3%)で報告された。・フォローアップ期間中、認知症の発症は1万8,056例、死亡は1万6,390例であった。・深夜の夕食(HR:1.17、95%CI:1.12~1.20)および朝食抜き(HR:1.13、95%CI:1.06~1.20)のいずれも、すべての原因による認知症の発症リスク上昇と関連していた。 著者らは「日本人高齢者を対象とした大規模コホートにおいて、深夜の夕食および朝食抜きは、すべての原因による認知症の発症リスク上昇と関連していた。通常の健康診断で食事のタイミングを評価することは、認知症予防戦略において重要な意味を持つ可能性がある。しかし、これらの因果関係の特定には、さらなる研究が求められる」としている。

3.

Lp(a)測定での4つの重要プロセス、Lp(a)研究の第一人者がアドバイス~Lp(a)の今をインタビュー(後編)

前編では、Lp(a)の第一人者であるDr. Florian Kronenberg氏(オーストリア・インスブルック医科大学遺伝疫学研究所 教授/所長)が治療薬のない状況であっても「Lp(a)測定が重視される」のか、Lp(a)が心血管疾患(CVD)イベントの生涯リスクに及ぼす影響を中心に解説した。後編では、Lp(a)測定が失速した30年前の出来事の振り返り、1次予防への測定意義や日本の医療への期待などについて語った。※前編はこちら(8月18日公開:5人に1人はLp(a)高値、CVD死を見落とさないために)INDEX30年前の出来事と、現代における科学的証明の歴史CVDの1次予防にもLp(a)測定が有用専門家が伝えたい4つの重要プロセス測らない理由なんてあるのか?スクリーニングで世界に先駆ける、日本へ期待すること―30年前の出来事と、現代における科学的証明の歴史なぜ、Lp(a)測定が失速してしまったのか。それは1990年代にアメリカで行われた大規模な研究において、「Lp(a)と心血管アウトカムには関連性がない」という結果が報告されたことが要因でした。しかし後になって、当時の測定法には技術的な問題があり、それがこのような否定的な結果につながったのではないかと考えられるようになりました。この研究結果により、Lp(a)研究は一度完全に死にかけました。私がこの分野に関わり始めた頃も、周囲から「その分野はやめなさい、もう死んだ分野だから」と言われたものです。しかし、私は遺伝子データから「Lp(a)高値の人は遺伝的に心血管リスクが高いはずだ」という確信を持っていたため、研究を続けました。その後、大きな転機が訪れました。デンマークの研究グループが10万人規模の膨大なビッグデータを持って(われわれの研究に)参入してきたのです。彼らのデータを解析した結果、Lp(a)が高い人は将来明らかに心血管イベントを起こしていることが判明しました1)。さらに、彼らが私たちの遺伝子解析手法をその10万人に適用したところ、遺伝子変異とLp(a)高値、そして心血管疾患の間に強固な因果関係があることが完全に証明されたのです。その後、『2022年EAS Lp(a)コンセンサスステートメント』の作成にあたって、イギリスの「UKバイオバンク」が持つ50万人規模のデータを解析したところ、その結果も同様の方向性を示していました。現在では欧米だけではなく、日本を含めた世界中の研究グループが同様の関連性を確認しており、世界基準の事実となっています。―CVDの1次予防にもLp(a)測定が有用2025年にブリュッセルで開催され、『Brussels International Declaration on Lp(a) Testing and Management』2)の策定につながった「Lp(a) Global Summit」において、Lp(a)測定を心血管疾患(CVD)の1次予防として行う費用対効果に関する世界初の解析結果が発表され3)、Lp(a)を広くスクリーニングすることで、多くの心筋梗塞や虚血性脳梗塞を回避し、結果として医療費の大幅な削減につながることが証明されたのです。たとえば、20~30代の若者が自身のLp(a)が高値だと知ったとしたら、「血圧をしっかり下げよう」「禁煙しよう」「糖尿病を予防しよう」という強力なモチベーションにもなります。当然ながら、心筋梗塞や脳梗塞を経験した2次予防の患者さんがLp(a)を知ることもきわめて重要です。現実として、心筋梗塞後の患者の一部で、1年後にコレステロール低下薬の服用を止めてしまっているというデータがあります。しかし、自分が「Lp(a)高値という高リスクを抱えている」と知っていれば、将来の再発を防ぐために“従来のリスク因子に対する治療を継続する”強い動機となり、結果としてアドヒアランスの向上にもつながります。つまり、Lp(a)測定はCVDリスクの1次予防と2次予防の双方に重要と言えるのです。Lp(a) Global Summitでの一枚後方左から2番目がKronenberg氏、前方左から3番目には斯波 真理子氏が写る画像を拡大する繰り返しになりますが(前編参照)、心血管イベントの絶対的な生涯リスクは、Lp(a)が高かったとしてもほかの従来の一般的なリスク因子(高LDL-C、高血圧、糖尿病、過体重、不健康な生活習慣など)を減らすことで低減させることができるため、Lp(a)自体は生活習慣で下げることができなくても、「ほかの従来の一般的なリスク因子を徹底的に管理しようという意識を高める」というアプローチを取ることができます。「Lp(a)は現在の薬で下げられないのに、なぜ測るのか?」という疑問を持つ人が医療者の中にも存在しますが、「Lp(a)が高くて下げられないからこそ、ほかの従来の危険因子を徹底的に管理しようという意識を高めるために、今すぐ測定すべきだ」というのが私の答えです。Lp(a)値を把握せず、従来のリスク因子に対する治療も十分に行わないというのは、まったく意味がありません。―専門家が伝えたい4つの重要プロセスそこで、多くの国際的なガイドラインとも一致する、私が皆さんにお伝えしたい重要なアドバイス4点を紹介しましょう。1.全員、人生で少なくとも一度はLp(a)を測定すべきである2.リスク評価の際は、Lp(a)の値だけでなく、全体のバランス、患者の全体像、そのほかのリスク因子も含めて総合的に判断する3.Lp(a)が高値である場合は、ほかのコントロール可能なリスク因子(高LDL-C、高血圧、糖尿病、喫煙など)を徹底的に治療・管理する4.Lp(a)高値がみつかった場合は、その「家族(親、子、兄弟姉妹)」も機会があれば早めに検査を行う測定タイミングは、初めて脂質プロファイル(健康診断などの血液検査)を取るときが理想的で、早ければ早いほどいいでしょう。Lp(a)は遺伝的要因が非常に強いため、家族歴こそが最大のヒントになります。もしご家族や親戚に若くして心筋梗塞や脳卒中を起こされた方がいる場合は、Lp(a)高値が関連している可能性が疑われます。ぜひ、そのような患者さんにLp(a)測定を強くお勧めします。次にLp(a)の基準値(カットオフ値)の考え方について解説しましょう。Lp(a)のリスクは、ある数値を境に白黒はっきり分かれるようなカットオフ値(閾値)ではなく、数値が高くなるにつれてリスクが上昇していく“連続的なもの”として捉える必要があります4)。たとえば、122nmol/Lだから安全で、127nmol/Lだから危険、という単純な生物学的区切りはありません。測定法や標準化の違いによって105や125という数字のブレは生じますが、本質的なリスクに大差はありません。絶対的な一律の区切りが必要なのではなく、患者個人の全体的なリスク(糖尿病などの有無や既往歴)に応じて、個別に数値を評価し対応する必要があるものです。LDL-Cの基準値も、まったくリスクのない人であれば欧州では「116mg/dL未満」が目安ですが、心筋梗塞の既往があれば「55mg/dL未満」、さらに、同時に末梢動脈疾患(PAD)などを合併していれば「40mg/dL未満」と患者背景やリスク因子の重なりによって目標値が変わるように、Lp(a)も同様に、ほかのリスク因子と合わせて総合的に判断すべきです。―測らない理由なんてあるのか?実際に心イベントを繰り返した患者さんが、「ガイドラインで推奨されていたのに、なぜ何年も前にLp(a)を検査してくれなかったのか」と医師に不満を訴えるような事例は世界で起きています。同様のことを繰り返さないためにも医師への啓発を進め、Lp(a)測定を通常の診療プロセスに組み込む必要があります。さらにポジティブなニュースとして、現在、Lp(a)自体を劇的(80~90%)に低下させる新薬の臨床試験が進んでいます。最終的な試験結果を待つ必要がありますが、これが承認されれば、2次予防の患者さんに対してさらなるイベント再発を防ぐ強力な選択肢を提供できるようになります。―スクリーニングで世界に先駆ける、日本へ期待すること日本のスクリーニングは間違いなく他国の一歩先を行っています。日本には成人健康診査のみならず、小児期という非常に早い時期から検診が行われているケースもあると聞きました。これは国として大変重要な取り組みであり、今後Lp(a)のスクリーニングを導入していく上でも、素晴らしい土台です。これは私にとっても大きな学びとなり、欧州に戻ったらぜひ共有したいと思っています。しかし、「スクリーニングが行われていること」は一側面に過ぎず、「スクリーニング結果を踏まえ、どのように対応(治療・管理)するか」という点においては、まだギャップ(課題)があると感じています。これは日本に限った問題ではなく、世界中で直面している課題でもあります。政策立案者にとっては、常に自国のデータが重要となるため、一般住民を対象とした大規模コホートを構築し、「Lp(a)高値の有病率」「 Lp(a)が日本でもリスク因子である」ことを示す予後データを構築することが望まれます。後者についてはLEAP研究5)をはじめ、質の高い研究によるデータが多ければ多いほど、医療コミュニティでLp(a)が受け入れられる可能性は高くなります。日本には企業健診など、素晴らしいスクリーニングシステムがありますよね。肉体労働者から事務職まで(幅広い職域を)含む代表的な集団を雇用している大企業に研究協力してもらえれば、多数の対象者を迅速かつ低コストで集めることができます。このときに必要なのはLp(a)測定にかかる追加費用のみです。もちろん将来的には、医師がLp(a)測定を行うようになることが重要です。現在、日本動脈硬化学会が主導するLp(a)に関するコンセンサスステートメントが間もなく発刊される予定だと聞いています。これは欧米のガイドラインの「成人は生涯に少なくとも一度は必ずLp(a)を測定すべき」と完全に整合性の取れた内容になるでしょう。また、順天堂大学の三井田 孝氏らが日本国内での測定法の標準化を先導されていますが、国際的にもIFCC(国際臨床化学臨床検査医学連合)が中心となって、Lp(a)測定の標準化を進める取り組みが動いています。これらが整えば、次は実装段階に入っていきます。今後、日本からLEAP研究5)やLp(a)JAPAN study6)のサブ解析結果や心血管リスクに関する大規模な試験などが発信されれば、政策提言や医療者を説得する上でも非常に強力な材料になるでしょう。スクリーニングのさらなる普及を含め、日本における今後の発展に大いに期待しています。 参考 1) Kamstrup PR, et al. Circulation. 2008;117:176-184. 2) Kronenberg F, et al. Atherosclerosis. 2025;406:119218. 3) Morton JI, et al. Atherosclerosis. 2025:409:120447. 4) Kronenberg F, et al. Eur Heart J. 2022;43:3925-3946. 5) Yamada T, et al. J Atheroscler Thromb. 2026;33:1049-1059. 6) Kataoka Y, et al. Eur Heart J. 2026 May 24. [Epub ahead of print]

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食事速度は将来の体型に影響するか/藤田医科大

 「早食いは肥満や糖尿病のリスク」ということはよく知られている。食事の速度は体重の推移とどのように関連するのであろうか。このテーマについて藤田医科大学医学部臨床栄養学 主任教授の飯塚 勝美氏は、約56万例の健康診断データを解析し、食事速度と長期的な体重推移との関連を検討した。その結果、食事速度が長期的な体重推移の区分に関連する行動特性である可能性が示唆された。Nutrients誌オンライン版2026年7月24日号に掲載。長期間でみると早食いは肥満、遅食いは低体重と関連 飯塚氏は、後ろ向きコホート研究として、56万4,198例の日本人参加者の健康診断データを使用し、20代のBMI履歴に基づき、BMI<18.5を1回以上認めた「低体重歴あり」、BMI≧25.0を1回以上認めた「肥満歴あり」、20代の全健診で正常体重だった「正常体重のみ」の各グループに分類した。全観察期間中に測定されたBMIのうち、それぞれの体重状態(低体重または肥満)を示した測定値の割合(0~25%、25~50%、50~75%、75~100%)に応じてさらに細分化した。体重推移グループ間の経時的な差異を特徴付けるため、反復測定されたBMIデータについて線形混合効果モデルを用い解析した。自己申告による食事速度とこれらのグループとの関連は、性別で層別化した多変量ロジスティック回帰モデルを用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・BMIは男女ともに体重推移グループ間で明確な差が認められた。・自己申告による食事速度は、体重推移グループと用量反応的かつ双方向の関連を示した。・女性では、肥満の割合が高くなるにつれて「早食い」のオッズが段階的に上昇し、肥満の割合が75~100%のグループでは調整オッズ比(OR)が1.47(95%信頼区間[CI]:1.40~1.53)に達した。男性では、同グループにおけるORは2.40(95%CI:2.35~2.45)だった。・その一方で、低体重の割合が高くなるにつれて「遅食い」のオッズが上昇し、低体重の割合が75~100%のグループでは、ORは女性で1.89(95%CI:1.82~1.96)、男性で2.45(95%CI:2.35~2.56)に達した。・追加解析では、自己申告による食事速度も追跡期間を通じて一貫性を示した。具体的には、肥満の割合が75~100%の群では、ベースライン時に食事速度が「早い」と回答した参加者で、追跡時も「早い」と回答した割合の平均は女性72.33%、男性79.90%であった。 飯塚氏はこの結果から「自己申告による食事速度は、男女ともに長期的な体重推移の区分と一貫した双方向の関連を示し、追跡期間を通じて比較的安定していた。これらの知見は、自己申告による食事速度が、長期的な体重推移の区分に関連する行動特性である可能性を示唆している」と結論付けている。

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多内分泌代謝性卵巣症候群は心筋梗塞や脳卒中のリスクと関連

 若年女性に見られる卵巣関連の内分泌・代謝疾患である多内分泌代謝性卵巣症候群(polyendocrine metabolic ovarian syndrome;PMOS)は、心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇と関連している可能性がある。新たな大規模研究で、PMOSの女性では、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)イベントの発生リスクが、PMOSではない女性と比べて4倍以上高いことが明らかになった。米ペンシルベニア大学病院産婦人科のAnuja Dokras氏らによるこの研究結果は、7月20日付で「The Lancet Obstetrics, Gynaecology, & Women's Health」に掲載された。 Dokras氏は、「この研究結果は、臨床医がPMOS患者の心血管の状態を綿密に追跡・評価することの重要性を示している。また、PMOS患者自身が心血管の健康維持を心がけるとともに、喫煙、運動不足、肥満、高LDLコレステロール(LDL-C)値、糖尿病、高血圧といったリスク因子を管理することも重要である」と述べている。 PMOSでは多くの場合、卵巣内に発育途中の小卵胞が複数見られる。また、アンドロゲンの過剰産生により排卵障害や月経異常、不妊症のほか、代謝異常や心血管疾患のリスクが高まる。研究グループによると、PMOSは妊娠可能年齢の女性の約10~13%に認められるが、そのうちの最大70%は自分がPMOSに罹患していることに気付いていないという。 今回の研究では、Optum社の匿名化医療保険請求データベース(Clinformatics Data Mart Database)を用いて、ASCVDの既往がない18~50歳の女性を対象に、PMOSとASCVDイベントとの関連を検討した。対象者のうち、41万3,450人(平均年齢31.1歳)がPMOSと診断されていた。定期健康診断のICDコードを有し、年齢およびPMOS診断月をPMOS群の女性と一致させた女性206万7,250人を対照群とした。ASCVDは、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患と定義した。 その結果、ASCVDイベント全体の発生のハザード比(HR)はPMOS群で対照群よりも高く、年齢などの交絡因子で調整後もHRは4.40だった。疾患別に解析すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクは約2.5倍、脳卒中発症の前兆となる一過性脳虚血発作(TIA)のリスクは約3.4倍、末梢動脈疾患のリスクは約4倍であることも示された。媒介分析では、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、肥満などの心血管疾患リスク因子だけでは、PMOSとASCVDとの関連の約3分の1しか説明できないことが示唆された。 PMOSは、もともとは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と呼ばれていたが、2026年5月、国際的なコンセンサスプロセスを経て、PCOSはPMOSへ名称変更された。Dokras氏は、「『多嚢胞性』という言葉は、この疾患の実態を正確に表していなかった。今回の研究で示したように、PMOSの影響は婦人科領域にとどまらない。新しい名称は、内分泌系の複数のホルモンが関与する疾患であることを示している。この名称変更により、臨床医がより包括的な医療を提供できるようになることを期待している」と述べている。

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【GET!ザ・トレンド】チーム医療で心臓も家族も診る、ジストロフィン異常症の最前線(後編)

前編では、大規模コホートからみえた各臓器症状の「乖離」や、微小変異における重症化リスクのリアルをお伝えした。後編となる今回は、「なぜ特定の筋肉が選択的に障害されるのか」という分子メカニズムの深層に、われわれのベッカー型筋ジストロフィー(BMD)モデルマウス研究から得られた最新の知見を交えて迫りたい。さらに、血清CK値に代わる注目の次世代バイオマーカー「尿中タイチン」の可能性、そしてわれわれ医療コミュニティが今こそ認識を改めるべき、患者を支える家族を含めた「包括的な診療アプローチ」の重要性について解説する。3. 分子病態へのアプローチ:なぜ特定の筋肉が選択的に萎縮するのか?日常診療でBMDを診ていると、「なぜ全身の筋肉が一様ではなく、大腿四頭筋など特定の筋肉から選択的に萎縮・障害されるのか(=骨格筋内における障害の選択性)」という大きな疑問が浮かぶ。われわれの研究グループは、この臨床の問いに対し、異なるエクソン領域を欠失させた3種のBMDモデルマウス(exon 45-47欠失、exon 45-48欠失、exon 45-49欠失)を樹立し、その分子メカニズムの一端を解き明かした4)。幼少期から老年期まで時間を追ってこれら3種のマウスを解析した結果、いずれも「イン・フレーム欠失」でありながら、欠失部位の違いによって病態の重症度に「d45-49>d45-47>d45-48」という序列(進行速度の差)があることが実証された。このマウスで観察された進行速度の序列は、実際のヒトの臨床における「exon 45-49欠失(早期進行型)」、「exon 45-47欠失(時に重症化)」、「exon 45-48欠失(比較的軽症)」という表現型の傾向(重症度グラデーション)に矛盾しない。このグラデーションを生み出す背景には、筋組織の破綻へと至る、以下の一連の病態機序が存在すると考えられる。まず、遺伝子欠失によるジストロフィン結合部のミスマッチ(不安定化)の度合いに応じて、筋形質膜に存在する、血管拡張酵素である神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)の発現が低下する。この発現低下が、結果として筋線維の周囲を取り囲む毛細血管の減少(Capillary change)を招き、筋肉に慢性的な局所血流障害をもたらす。骨格筋傷害は、運動時の機械的ストレスのみならず、この血流障害も重なって引き起こされる。その複合的な病態機序を下図にまとめた。画像を拡大するこの虚血ストレスは重症度の高いd45-49やd45-47のモデルにおいてきわめて顕著であり、主要な好気的代謝を行う「タイプIIa筋線維(速筋)」の選択的な減少・減衰(Decay)と変性・萎縮を誘発していたのである。すなわち本研究は、遺伝子の欠失パターンの違いが毛細血管の維持・減少に関与し、重症度を決定づける要因の1つであることを科学的に裏付けた形だ。そして、この骨格筋の解析から得られた「毛細血管の減少と局所血流障害」という病態グラデーションは、骨格筋症状とは独立して心筋症が重症化していく臨床像を説明する重要なエビデンスにもなる。以前のインタビュー(『【GET!ザ・トレンド】 循環器内科医が救う、筋ジストロフィー患者の予後』)でも指摘したとおり、BMDは「原因不明の心筋症として治療される中で、ジストロフィン異常症という背景が見落とされやすい」という課題がある。24時間休むことなく拍動し、全身で最も高密度の毛細血管網(血流供給)を必要とする心筋は、この毛細血管の減少に伴う慢性的な虚血ストレスに対して、骨格筋よりも脆弱である。そのため、運動制限などによって見た目の骨格筋症状が「軽症」に保たれていても、血流障害が生じている心臓は耐えきれずに重症化すると考えられる。この知見は、未来のBMD治療において、従来の「筋細胞そのものの保護」だけでなく、遺伝子型に応じた「血管や局所血流をターゲットにした包括的なアプローチ(血管標的療法)」を組み合わせる多角的な戦略が、有効な一手になる可能性を示唆している(下図)。現在、根本的な治療法がないBMD患者に対し、こうした多角的なアプローチが次なる展開につながることを期待している。画像を拡大する4. 診断と評価のアップデート:CKに代わる「尿中タイチン」という次世代バイオマーカー骨格筋の保護薬の開発が進む中で、日常診療において病勢をどう評価するかという問題もアップデートが必要だ。長年使われてきた血清CK値は、患者の運動量によって激しく変動し、筋容量が減少した進行期にはむしろ低下してしまうため、筋疾患における正確な病勢の指標になりにくいという欠点があった。ここで臨床現場への導入が期待されるのが、筋構造タンパク質タイチンの代謝産物である。近年、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)において「尿中タイチン(タイチンN末端断片)」が高感度なバイオマーカーとして注目されているが、これがBMD患者123例の大規模コホートにおいても、臨床重症度を反映することが日本の共同研究チームによって示された5)。タイチンは心筋や骨格筋の収縮を支える巨大タンパク質であり、その崩壊に伴って尿中に排泄される断片量は、いわば筋崩壊の活動性(病勢)をリアルタイムに反映する指標となる。本研究により、尿中タイチン値は、BMD患者の歩行能力の維持状態や筋力低下、ならびに心筋傷害マーカーである高感度心筋トロポニンT(hs-cTnT)や心不全マーカーの数値と有意に相関し、迅速な対応が求められる心筋のダメージ総量を反映していることが明らかとなった。「採尿」という非侵襲的な検査で、心筋症の進行リスクや骨格筋の変性度をタイムリーに追えるメリットは、患者の負担を減らし、BMDの疾患マネジメントのあり方を大きく変える可能性を秘めている。ただし、日常診療へ組み込むためには、まだいくつかの課題が残されている。最大のハードルは、検査として一般に利用可能となるための「保険適用」だ。現状、尿中タイチンの測定は一部の高度専門医療・研究機関での研究や自費診療の枠組みを中心に行われており、ルーティン検査としてオーダーできるようになるには、もう一段階の制度的・技術的なブレイクスルーが必要とされている。5. 家族を診る:女性ジストロフィン変異保有者(患者の母親・姉妹)に潜む心筋症リスク新薬開発への期待が高まる裏で、われわれ医療コミュニティは「患者を支える家族」の健康リスクにも目を向ける必要がある。当センターを含む共同研究チームが行ったクロスセクショナル研究は、DMD/BMD患者の主介護者36人(平均55.7歳、その83.3%に当たる30人が母親)を対象に、介護負担度(Zarit介護負担尺度:ZBI)と身体症状を調査した6)。調査の結果、主介護者全体の平均ZBI合計スコアは20.9点であった。主介護者のうちキャリア(変異保有)確定は52.8%(19人)、未確定は38.9%(14人)だが、両者の負担感には明確な差がみられた。ZBIで「中程度の介護負担」の基準となる25点以上の割合は、未確定の介護者に比べ、キャリア確定者において有意に高かったのである(p=0.04)。以前のインタビュー(『【GET!ザ・トレンド】 循環器内科医が救う、筋ジストロフィー患者の予後』)でも触れたとおり、母親らは「わが子に遺伝させてしまった」という深い心理的葛藤に加え、患者が学習障害や発達障害などを伴うケースでは、そこから生じる社会的困難も一人で抱え込みがちだ。これら精神的・社会的負担に加え、今回の研究では、遺伝学的な確定状況にかかわらず、彼女たち自身の35人中19人がすでに何らかの骨格筋または心臓の症状を有し、25人中21人で血清CK値の上昇が確認された。つまり、彼女たち自身も「ジストロフィノパチーの身体的リスクの当事者」であるという看過できない現実が示されている。そのようなリスクを抱えながらも、自身の健康管理のために定期的な健康診断を受けているのは半数(50.0%)にとどまり、残る半数は健診の機会を持てていない。また、健診を受けている半数についても、一般的な健診メニューだけでは潜在する心筋症リスクの完全な把握や、健診項目に含まれないCK値の評価は難しく、確実なリスク管理には循環器内科などでの専門的なフォローアップが不可欠となる。主介護者である母親は、患者であるわが子の付き添いで通院していることが多いが、主治医(小児科や脳神経内科)の視線は患者本人に集中し、隣に座る母親のリスクは見落とされがちだ。われわれはこの認識を改め、家族に対しても適切な遺伝カウンセリングや循環器内科への受診を主体的に促す「家族をも視野に入れた包括的な診療アプローチ」を実践していく必要がある。DMD/BMDの診療は、女性変異保有者の心機能チェックまでをシームレスにつなぐ多職種連携を構築して初めて、真の実効性を持つと考える。結語:明日からの診療に活かしたいポイント前編の冒頭に記載のある、グローバル製薬企業における筋ジストロフィー事業買収に象徴されるように、この領域への関心は確実に高まっている。だからこそ、現場の医師には「BMDはDMDに比べて軽症」という言葉に惑わされない先見的かつ包括的なアプローチが求められる。循環器内科との他科連携:遺伝子型から予測される骨格筋や呼吸機能の予後にかかわらず、全例において循環器内科との緊密な連携による定期的な心機能評価を徹底し、必要に応じた早期の心保護薬による介入を進める。中枢神経症状への早期対応と専門機関への橋渡し:骨格筋症状が軽微であっても、発達遅滞や学習障害などの高次脳機能障害に注意を払い、小児科、脳神経内科、精神科、療育などの専門医療機関へ早期につなぐゲートキーパーとしての役割も担う必要がある。遺伝学的評価における微小変異の確認:代表的なエクソン欠失がない症例であっても、C末端側の微小変異を見逃さない遺伝学的評価の重要性を認識し、正確なリスク評価につなげていく。家族(母親・姉妹)への目配りと多職種による包括ケア:目の前の患者本人だけでなく、それを支える母親などの女性変異保有者の潜在的な心筋症・骨格筋リスクに注視する。認定遺伝カウンセラーやソーシャルワーカーらとも協働し、家族に対しても自ら循環器内科などへの受診勧奨や適切な遺伝カウンセリングを行う「チーム医療」を実践する。新たな治療の選択肢が現実味を帯びてくる今だからこそ、集積されたエビデンスをいち早く日常臨床に還元する姿勢が、われわれすべての医師に求められている。(聞き手:ケアネット 三浦 愛子)<<前編に戻る 参考 1) Servierプレスリリース(2026年6月1日公開) 2) Nakamura A, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2023;10:2360-2372. 3) Nakamura A, et al. Neurol Genet. 2025;11:e200215. 4) Miyazaki D, et al. eLife. 2025;13:RP100665. 5) Awano H, et al. Clin Chim Acta. 2025;566:120053. 6) Ishizaki M, et al. Intern Med. 2024;63:365-372.

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第328回 「骨太の方針2026」の注目ポイント(後編) 地域医療構想ガイドライン公表を受け医療提供体制への言及多数、「攻めの予防医療」は総花的で斬新さなし

「注釈」で「有床診療所も含めて医療機関の役割分担の明確化を図ることを含む」と有床診の役割見直しを示唆こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、5月に内側側副靱帯損傷で傷めた左ひざの最終リハビリ目的で、山梨県の茅ヶ岳(「日本百名山」の著者・深田 久弥が登山中に急逝した山)に登ってきました。3ヵ月ぶりの登山でしたが、左足はほぼ完調で、急な上り下りが特徴の山でしたが、ストックを使うこともなく無事山行を終えました。が、下山してみると今度は右足の裏、土踏まずのあたりに痛みが発生し、次第に強くなりました。足底腱膜炎の症状です。登山中、知らず知らずのうちに左足をかばっていたツケと思われます。左足を受傷して3ヵ月、歩行のシンメトリー(対称性)の重要性に改めて気づかされた登山でした。ちなみに、茅ヶ岳の麓にある深田記念公園には、深田直筆の「百の頂に百の喜びあり」の言葉が刻まれた記念碑があります。実に深い言葉です。しかし、今の私には「百の頂に百の苦しみあり」と読めました。さて、今回も前回に引き続き、7月21日にようやく閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026 『責任ある積極財政』元年 ~日本の挑戦を起動する!」(骨太の方針2026)の注目ポイントについて書いてみたいと思います。「骨太の方針2026」では前回書いた社会保障改革関連の記述以外では、新たな地域医療構想のガイドラインが公表されたことを受け、次のように医療提供体制への言及が多くありました。「2040年に向けて、病床数の適正化を着実に実施した上で、2027年度以降の地域医療構想を踏まえた医療機関の連携・再編・集約化を促進するとともに、地域包括ケアシステムの深化を図り、地域の実情に応じた質の高い効率的な医療・介護サービス提供体制を構築する」。なお、本文中の「医療機関の連携・再編・集約化」の文言には、「有床診療所も含めて医療機関の役割分担の明確化を図ることを含む」とする「注釈」が付きました。有床診療所の施設数・病床数は減少傾向にあり、人材不足、経営悪化、後継者不足などによりその存続が危ぶまれています。一方で、2040年に向けて、高齢者救急、在宅医療、看取り、介護施設との連携の需要は高まると考えられ、既存の有床診療所をそうした機能を提供するインフラとしてどう活用していくかが大きな課題となっています。この「注釈」から、有床診療所の役割の明確化と再評価が行われるだろうということが予想できます。救急医療体制の確保、人生の最終段階における医療・ケア、医師偏在対策、医学部定員削減も盛り込むその他の医療提供体制関連では、「妊娠・出産の経済的負担軽減と安心・安全な小児・周産期医療提供体制の両立、救急医療体制の確保、ドクターヘリの安全で持続可能な運航の確保、看取りなど人生の最終段階における患者中心の適切な医療・ケア、精神医療に関する地域医療構想を踏まえた取組、訪問看護の適切な実施、中山間・人口減少地域での柔軟な介護・障害福祉サービスの提供」などが挙げられていました。加えて、「かかりつけ医機能の発揮や医師の地域・診療科偏在の更なる是正策、大学病院等からの医師派遣の推進を含めた総合的な医師偏在対策、地域の実情を考慮した2028年度以降の医学部定員の削減に取り組む」と、医師偏在対策、医学部定員削減も盛り込まれました。また、「医療分野においては、新たな地域医療構想の下、将来需要を踏まえ、老朽化・災害対策を含む地域に不可欠な施設・設備の計画的な整備への必要な支援の在り方を検討する。介護・福祉分野においても、老朽化・災害対策を含む施設・設備の計画的な整備を支援する」と、地域医療構想を前提としながらも、施設・設備の整備についても記述されました。建設費や設備費の高騰で病院の建て替えや新設が滞っている地域は少なくありませんが、補助金等による国による何らかの対応が行われそうです。薬剤処方の適正化、効率化に関する検討項目が多数列挙医療保険制度関連では、前回詳しく書いた70歳以上の高齢者の医療費窓口負担割合に関する記述のほかは、「長期処方やリフィル処方箋の活用、地域フォーミュラリの全国展開、休薬・減薬などの効果的・効率的な治療の促進等により、給付の効率化や適正化を図りつつ、質の高いサービスを提供する。セルフメディケーション推進の観点からの更なる医薬品・検査薬のスイッチOTC化に向けた実効的な方策を検討し、必要な措置を行う」など、薬剤処方の適正化、効率化に関する検討項目が多数列挙されました。一見目新しい「攻めの予防医療と疾病対策」今回の「骨太の方針2026」で一見目新しいのは、高市 早苗首相が過去の記者会見でも強調していた「攻めの予防医療と疾病対策」の項目です。「国民のWell-beingの向上と健康寿命の延伸を図り、誰もが社会の担い手として活躍できる日本を実現する」として、「攻めの予防医療」を推進するとしています。具体的には、「健康増進、肥満症を含む疾病予防、早期発見、早期介入及び行動変容に関係機関が連携して取り組む。栄養・食生活を含む健康リテラシーの向上、地域住民の健康増進に資する薬局機能及び薬剤師の果たす役割の強化、学齢期の健康診断の在り方の見直し、予防接種、HIVや性感染症の予防、下水サーベイランス等の感染症対策、がん検診や精密検査の受診率向上、循環器病・糖尿病を含む生活習慣病等の予防、いわゆる国民皆歯科健診の具体化、口腔と全身の健康の関係に基づく歯科疾患対策・口腔健康管理、認知症の早期診断・早期対応、予防・医療・介護を通じた切れ目のないリハビリテーション、PHRの利活用と情報連携を推進する」としています。さらに、「更年期世代の女性への医療の推進や女性の健康総合センターの機能強化、『プレコンセプションケア推進5か年計画』の工程表の策定と実行、企業と保険者のコラボヘルス、睡眠対策を含む健康経営の推進等、予防・健康づくりを支えるヘルスケア産業の育成等を図る。 がん、脳卒中・心臓病その他の循環器病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、慢性疼痛、難病、アレルギー、依存症、難聴、睡眠障害等の疾病対策や移植医療対策を推進する」ともしています。新しさに欠ける「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療 厚生労働省関係施策~」よく読んでみると、予防医療と疾病対策の項目が総花的に羅列してあるだけで、どこが「攻め」なのかよくわかりません。「責任ある積極財政」と同じように、実態は二の次に、見た目(読んだ感じ)が一見カッコいいキャッチコピーにしたのでしょう。7月27日付のミクスオンライン等の報道によれば、上野 賢一郎厚生労働大臣は7月24日の閣議後会見で、「骨太方針2026」に盛り込んだ「攻めの予防医療」について、「健康寿命の更なる延伸や社会保障を支える基盤の維持・強化に向けて、取り組みを速やかに実施していく」と述べたとのことです。なお、具体化に向けて厚労省は「骨太の方針2026」が閣議決定された2日後の7月23日、「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~」を公表しています。「U.E.N.O.」は厚労大臣の名前から取ったキャッチコピーで、「Understand, Exercise, Nourish and Optimize for Better Health」の略だそうです。ちょっと強引なコピーですね。同プランは「栄養・食生活」「がん・循環器病等」「歯科保健」「認知症」「リハビリテーション」「性差に由来するヘルスケア」の6領域を「直ちに取り組むべき第一弾の重点領域」として位置づけ、「攻め」の取り組みを具体化するため施策を盛り込んだものとのことです。ただ、その内容を見てみると、「栄養・食生活」は「食事ガイドを作成する」、「がん・循環器病等」は「がん検診の受診率60%、精密検査受診率90%の達成」、「認知症」は「新たな検査技術を活用し、早期診断・早期対応等を推進」というように、「攻め」という割には、従来施策の踏襲で、それほど斬新な取り組みが並んでいるわけではありません。というわけで、高市政権のさまざまな政策においても指摘されている、「華々しくぶち上げていること」と「実際にやっていること」の乖離を感じた今年の「骨太の方針」でした。

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高血圧の日本人、大腸がん発症率が高い

 高血圧と大腸がん発症率の関連については依然として議論されている。今回、静岡社会健康医学大学院大学の水野 仁美氏らが、日本の大規模コホートデータを用いて、高血圧と大腸がん発症率の関連を検討したところ、降圧薬非服用者では男性において高血圧と大腸がん発症率が関連し、降圧薬服用者では女性において高血圧と大腸がん発症率が関連していた。一方、血圧に関する多遺伝子リスクスコアと大腸がん発症率には関連はみられなかった。Hypertension Research誌オンライン版2026年7月28日号に掲載。 本研究は、2012~22年に収集された静岡地域の保険請求データと健康診断データを含む静岡県国保データベースを用いた集団ベースの後ろ向きコホート研究である。プロペンシティスコアマッチングを用いて、正常血圧群と高血圧群の大腸がん発症率を比較し、死亡を競合リスクとしてGray検定を行い累積発症率を分析した。また、日本多施設共同コホート研究(J-MICC STUDY)のデータを用いて、血圧に関する多遺伝子リスクスコアを解析し、遺伝学的に決定された高血圧感受性が大腸がん発症率に影響するかどうかを評価した。 主な結果は以下のとおり。・降圧薬非服用者において、正常血圧群が11万3,724人、高血圧群が8万5,399人であった。追跡期間(中央値:4.38年)中に、正常血圧群では1,130人、高血圧群では850人に大腸がんが発症した。プロペンシティスコアマッチングを行った結果、高血圧群における大腸がん発症率が有意に高く、ハザード比は1.15(95%信頼区間:1.02~1.30)であった。男女別に解析すると男性のみでこの関連が認められた。・降圧薬服用者では、女性において大腸がんリスクが高かった。・血圧に関する多遺伝子リスクスコアと大腸がん発症率との間に関連は認められなかった。 著者らは、「疫学的結果と遺伝学的解析との不一致に関して、これまで認識されていなかった大腸がんと高血圧の共通環境要因の可能性を含め、慎重な解釈が必要」としている。

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ピロリ除菌後の胃がん、喫煙が独立したリスク因子

 Helicobacter pylori(H. pylori)除菌に成功した後も胃がんが発症するリスクは残存し、喫煙が独立したリスク因子であることが、日本の全国規模コホート研究で示された。現在喫煙者における毎日の飲酒は、非喫煙・非飲酒者と比較して胃がんリスクのさらなる上昇と関連していた。朝日生命成人病研究所 附属病院の新井 絢也氏らによる本研究はHelicobacter誌2026年5・6月号に掲載された。 研究グループは、2014~23年の日本の医療保険請求データおよび健康診断データを用いて、後ろ向きコホート研究を実施した。H. pylori除菌に成功した患者を対象に、除菌開始から1年後を追跡開始時点として、最終保険記録日、胃がん発症、死亡のいずれか早い時点まで追跡した。主要評価項目は、除菌成功から1年以上経過後に発症した胃がんとした。対象は5万9,274例(平均年齢64.9歳、男性44.6%)で、平均追跡期間は3.66年であった。胃がん発症およびリスク因子の評価には、Kaplan-Meier法および年齢・性別で調整したCox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に649例(1.44%)が胃がんを発症し、5年累積発症率は1.47%であった。男性および除菌時の高齢は胃がん発症率の有意な上昇と関連していた(p<0.001)。・さまざまな生活習慣因子を検討した結果、喫煙のみが胃がんリスクの上昇と独立して関連しており、調整ハザード比(aHR)は1.37(95%信頼区間[CI]:1.05~1.78)であった。さらに、現在喫煙者における毎日の飲酒は、非喫煙・非飲酒者と比較して胃がんリスクのさらなる上昇と関連し、aHRは1.80(95%CI:1.22~2.66)であった。 著者らは「本研究の結果から、H. pylori除菌成功後も胃がんリスクは残存し、喫煙は除菌後の胃がんリスク上昇と関連していることが示された。禁煙がこの集団におけるリスク低減に寄与する可能性がある。本結果は、年齢、性別といった特性とともに、喫煙、飲酒といった生活習慣因子を考慮することが、リスク層別化に基づいた検診戦略の設計に有用である可能性を示唆している。ただし、本研究は後ろ向き観察研究であるという制限があり、因果関係の確立には今後のさらなる検証が必要である」とした。

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CKM症候群の初期進行でも死亡リスク上昇と関連

 心血管・腎・代謝(CKM)症候群のステージの変化と将来の死亡リスクとの関連を調査した観察研究の結果、ステージ0(CKM関連リスクがない状態)から1(過剰な脂肪蓄積/機能不全の脂肪組織が出現)という初期の進行であっても死亡リスクの上昇と関連し、ステージがより進行するにつれて段階的にリスクが上昇することを、韓国・ソウル大学病院のSehoon Park氏らが示した。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2026年6月12日号掲載の報告。 CKM症候群は、心血管疾患、慢性腎臓病、代謝機能障害が相互に関連しながら進行し、死亡率の上昇につながる恐れのある病態である。CKMステージを評価することで高リスク者を特定し、初期段階から介入することで早期死亡や多臓器不全、医療費増加などを抑制できる可能性がある。そこで研究チームは、韓国の全国規模の住民コホートにおいて、CKM症候群のステージの変化がその後の全死因死亡率とどのように関連するかを調査した。 対象は、4年間隔で2回の健康診断を受けた20歳以上の成人281万2,170人であった。CKMステージの変化を「改善」「維持」「進行(悪化)」に分類し、その後6.4年間追跡して全死因死亡との関連を調査した。評価には、臨床背景因子を調整した多変量解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・CKMステージが進行したのは24%(67万4,465例)、維持したのは64%(180万2,489例)、改善したのは12%(33万5,216例)であった。・CKMステージが進行した群では全死因死亡リスクの有意な上昇が認められた(調整ハザード比[aHR]:1.38、95%信頼区間[CI]:1.36~1.41)。一方、改善した群ではリスクの低下が認められた(aHR:0.93、95%CI:0.90~0.95)。・ステージ0からステージ1という初期段階の進行であっても、死亡リスクの上昇と関連しており(aHR:1.08、95%CI:1.01~1.15)、CKMステージが進行するにつれて段階的にリスクが上昇した。・CKMステージ進行による死亡リスクの上昇は、とくに高齢者で顕著であった。 研究グループは、「これらの結果は、長期的な死亡リスクを低減するために、CKMステージの全段階にわたってモニタリングと介入を行うことの重要性を裏付けている」とまとめた。

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統合失調症患者に多い血液型は?

 中国・Wuxi Taihu UniversityのKangying Yu氏らは、統合失調症患者と健康対照者におけるABO式血液型の分布を調査した。Medicine誌2026年5月15日号の報告。 中国・無錫市の精神疾患患者6,772例(2003〜25年)の臨床データを対象に、レトロスペクティブ解析を行った。同時期に定期健康診断を受けた健康対照者871人を対照群とし、両群間のABO式血液型分布の違いを分析した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者における血液型の分布は、A型2,599例、AB型574例、B型1,646例、O型1,953例であった。・それぞれの血液型の割合は、A型38.4%、AB型8.5%、B型24.3%、O型28.8%であった。・対照群における血液型の分布は、A型277人、AB型85人、B型252人、O型257人であり、それぞれの割合は31.8%、9.8%、28.9%、29.5%であった。・年齢、性別、婚姻状況などの因子を調整した後、Firthロジスティック回帰分析では、統合失調症患者と対照群の間でABO式血液型分布に統計的に有意な差が認められた。・統合失調症群では対照群と比較し、A型の割合が高く、B型の割合が低いことが明らかになった。 著者らは「統合失調症患者においてA型の割合は一般集団よりも高く、B型の割合は一般集団よりも低いことが示された」としている。

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日本初のMASH治療薬、MASLD/MASH診療は新たな局面に/ノボ

 代謝機能障害関連脂肪肝疾患(MASLD)および代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の診療は、近年病名変更や非侵襲的診断法(NIT)の進歩によって様変わりした。一方で、肝線維化の進展を抑制する薬物療法は長らく存在せず、生活習慣改善が治療の中心であった。そのような中、2026年6月、すでに肥満症治療薬として広く用いられているGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名:ウゴービ)が、日本で初めてMASHを適応症とする追加承認を取得し、国内のMASLD/MASH診療は新たな局面を迎えた。 ノボ ノルディスク ファーマは6月30日にプレスセミナーを開催し、国際医療福祉大学 消化器内科統括教授の中島 淳氏が「日本初MASH治療薬がもたらす未来」をテーマに講演を行った。同氏は「これまでMASH患者が肝硬変や肝細胞がんへ進展していくのをみているしかなかったが、ようやく治療薬を手にすることができた」と述べた。「脂肪量」ではなく「線維化」が予後を決める MASLDは、かつてNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と呼ばれていた疾患概念で、2023年に国際的なコンセンサスを得て名称が変更された。現在では代謝異常を背景とする脂肪性肝疾患として位置付けられ、その中で肝炎を伴う病態がMASHと定義されている。 日本ではMASLD患者は約2,500万例に達すると推定され、MASH患者も100万例規模に上ると考えられている。健康診断データでは脂肪肝の有病率は25.8%と4人に1人を超え、さらに進行線維化が疑われる症例も約1%存在するなど、肝疾患の中で患者数が最も多い疾患となっている。 MASLDは自覚症状に乏しい「サイレントキラー」である。線維化はF0からF4(肝硬変)へと数十年かけて進行するが、その速度は線維化の進展とともに加速する。F0~F1から肝硬変までは30年以上を要する一方、F2では約20年、F3では約6年で肝硬変に至るとされる。さらに肝硬変へ進展すると肝細胞がんや非代償性肝硬変のリスクが急激に高まる。 中島氏は、「疾患が悪化するかは脂肪肝であること自体ではなく、線維化がどこまで進んでいるかによるところが大きい」と説明した。実際、約9,700例を20年間追跡した解析では、脂肪量や炎症よりも線維化の有無が無イベント生存期間を最も強く規定する因子であることが示されている。 また、日本人MASLD患者を対象としたCLIONE試験では、線維化ステージの進展に伴い全死亡、肝関連イベント、肝細胞がんの発症率が段階的に上昇することも報告されている。死亡原因は肝疾患だけでなく、心血管疾患や他臓器がんも多く認められ、MASLDが全身性疾患であることも改めて示されている。診療のカギはF2以上のハイリスク患者をいかに拾い上げるか 一方で、近年は診断法も大きく進歩した。従来の肝生検に代わり、FIB-4 indexやM2BPGi、ELFスコアなどの血液バイオマーカーに加え、VCTE(FibroScan)やMRエラストグラフィなど非侵襲的検査が普及している。 2026年4月に改訂された「MASLD診療ガイドライン」では、FIB-4 indexを用いた1次リスク評価を起点とし、中間・高リスク例ではエラストグラフィや線維化マーカーを組み合わせて評価する診療アルゴリズムが推奨された。中島氏は、「最も重要なのはF2以上の患者を早期に見つけることであり、かかりつけ医と肝臓専門医との連携が不可欠になる」と述べた。 さらに同氏は、近年の肝細胞がんの原因も大きく変化していると指摘した。C型肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬の普及によりC型肝炎由来の肝細胞がんは減少した一方、MASLD/MASH由来の肝細胞がんは増加を続けている。「都市部では肝切除症例の大部分がMASLD由来となっている」と述べ、今後の肝臓診療ではMASLD対策が重要課題になるとの認識を示した。ESSENCE試験で2つの主要評価項目を達成 今回の適応追加の根拠となったのは、F2またはF3線維化を有するMASH患者800例(日本人116例を含む)を対象とした国際共同第III相ESSENCE試験である。 被験者は標準治療+セマグルチド2.4mgまたはプラセボに2対1で無作為化され、72週時点で肝生検による組織学的評価が行われた。主要評価項目は、「線維化悪化を伴わないMASH消失」と「MASH悪化を伴わない線維化改善」の2項目であった。 その結果、「線維化悪化を伴わないMASH消失」はセマグルチド群62.9%、プラセボ群34.3%で達成され、「MASH悪化を伴わない線維化改善」もそれぞれ36.8%、22.4%となり、いずれも統計学的有意差を示した。 また、副次評価項目ではALT、AST、γ-GTPの改善に加え、CAPによる肝脂肪量、VCTEによる肝硬度、線維化関連バイオマーカーの改善も確認された。組織学的にも脂肪化や炎症、肝細胞風船様変性の改善が認められ、線維化改善を示唆する結果となった。 安全性については、新たな重大な懸念は認められなかったものの、悪心、下痢、便秘などGLP-1受容体作動薬に特徴的な消化器症状はプラセボ群より高頻度で認められた。実臨床では漸増投与や副作用マネジメントが重要となる。早期診断・早期介入の時代へ 中島氏は、「これまでは薬がなかったため、糖尿病医やかかりつけ医から専門医へ紹介されない患者も多く、腹水や巨大肝がんを契機に初めて紹介されるケースも少なくなかった」と振り返る。その上で、「今後はF2~F3の段階で患者を拾い上げ、治療介入することで、肝硬変や肝細胞がんへの進展を防げる可能性がある」と述べ、今回の適応追加を「MASLD/MASH診療におけるゲームチェンジャー」と位置付けた。 薬物療法の選択肢が加わったことで、MASLD診療は「経過観察」から「積極的治療」へと大きく転換しつつある。今後はFIB-4 indexをはじめとする非侵襲的評価を活用したハイリスク患者の早期抽出と、適切な専門医紹介、薬物療法を含めた包括的な管理体制の構築が、国内のMASH診療における重要な課題となりそうだ。【最適使用推進ガイドライン抜粋】・適応:「肝硬変を伴わないMASH。ただし、中等度又は高度の線維化を有する場合に限る」→肝線維化ステージがF2又はF3に線維化が進行した患者であることを、生検によって確認すること。なお、「肝生検ガイダンス」(日本肝臓学会編)19の禁忌の項を参考に、生検の実施が適切ではないと判断された場合には、非侵襲的検査(NIT)に基づき判定すること。・用法及び用量:成人には0.25mgから投与を開始し、週1回皮下注射。その後は4週間の間隔で、週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射。なお、患者の状態に応じて適宜減量する。・施設要件:消化器内科、肝臓内科、内科のいずれかを標榜している保険医療機関・医師要件: MASH又はNASHの診療を5年以上行っていること

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歯周病とMASLDの関連、女性で顕著――閉経前後で差

 歯周病は口腔内の慢性炎症として知られ、全身の代謝異常との関連も指摘されている。今回、健診受診者を対象に歯周病と代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)の関連を検討した結果、女性では両者に有意な関連が認められ、特に閉経前後の年代でその傾向が顕著であることが示された。研究は愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座の齋藤瑞季氏、嶋崎義浩氏らによるもので、詳細は4月8日付で「Clinical and Experimental Dental Research」に掲載された。 脂肪性肝疾患は、一部で肝硬変や肝細胞がんへ進行する可能性があるほか、脳卒中や虚血性心疾患など心血管疾患リスクの上昇とも関連することが知られている。MASLDは従来「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼ばれていたが、近年、代謝異常との関連性をより反映した名称へと改訂された。その診断には肥満や糖尿病、高血圧などの代謝異常の有無が考慮される。生活習慣とMASLDの関連は広く報告されており、MASLDの発症や進展に歯周病が関与する可能性も示唆されている。しかし、近年までは主にNAFLDを対象とした研究が中心であり、MASLDとの関連や性差を含めた検討は十分ではなかった。こうした背景のもと、本研究では健診受診者を対象に、歯周病とMASLDの関連および性差について検討が行われた。 本研究は、愛知県の健康診断受診者を対象とした横断研究である。2014年4月~2015年3月に一般社団法人愛知健康増進財団の健康診断を受けた40~74歳を解析対象とした。肝疾患既往、B型肝炎表面抗原(HBs抗原)陽性、摂取アルコール量が20g/日以上の参加者などは除外した。脂肪肝は腹部超音波で判定し、心代謝リスク因子の基準を満たす例をMASLDと定義した。歯周病は地域歯周疾患指数(CPI)で評価し重症度別に分類した。喫煙や運動習慣などを調整し、MASLDとの関連をロジスティック回帰分析で検討、男女別解析や女性の年齢層別解析、性差の交互作用も評価した。 解析対象は6,184人で、このうち1,431人(23.1%)がMASLDと診断された。女性では、歯周病が中等度および重度の群で、歯周病がない群に比べてMASLDのオッズ比がそれぞれ1.40(95%信頼区間:1.04~1.89)、1.64(同1.04~2.59)と有意に高かった。 一方、男性では歯周病とMASLDの関連は調整後に有意ではなかった。女性では50~59歳でのみ有意な関連が認められ、他の年齢層では認められなかった。さらに、非飲酒者に限定した解析でも同様に女性で有意な関連が確認された。 また、性別と歯周病の影響には乗法的交互作用が認められたが、加法的交互作用は認められなかった。これは、歯周病とMASLDの関連の強さには性差があったが、リスクそのものには明確な差は認められなかったことを示す。 著者らは、こうした性差の背景として女性ホルモンの影響を挙げている。特に50~59歳は閉経移行期に相当し、エストロゲンの低下が代謝機能や炎症反応に影響を及ぼす可能性があるとされ、この時期に関連がより強く認められた可能性が示唆されている。 なお、本研究の限界として、横断研究であるため因果関係を明らかにできないことに加え、歯周病評価の精度や超音波による脂肪肝診断の限界、社会経済因子の未調整、単施設データによる一般化可能性の制約などを挙げている。

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第65回 「禁煙したら電子タバコ?」その選択が肺がんリスクを高めるかもしれない理由

「タバコをやめたいけれど、いきなりは難しい。だったら電子タバコに切り替えれば安心なのでは?」そう考える方は少なくないでしょう。電子タバコは燃焼を伴わないため、紙巻きタバコより害が少ないと宣伝され、一部の国では禁煙補助具としても用いられてきました。しかし、本当に「より安全な選択肢」と言い切れるのでしょうか。今回ご紹介する論文は、韓国の国民健康保険データを用いて約450万人の喫煙経験者を追跡し、禁煙後の電子タバコ使用と肺がんリスクとの関連を検証した、世界最大規模の研究です。450万人を追跡した大規模研究の方法研究は、2018年に韓国の国民健康診断を受け、2012〜14年の記録が残る喫煙経験のある成人約452万人を対象としました。喫煙状況は「現在喫煙者」「短期禁煙者(最近4〜6年以内に禁煙した人)」「長期禁煙者(少なくとも4〜6年以上前から禁煙していた人)」に分類され、電子タバコの「毎日使用」が禁煙後の電子タバコ使用と定義されています。追跡は2023年末まで続き、累計2,418万人・年の観察期間で3万5,887件の肺がん発症と1万2,807件の肺がん死亡が記録されました。年齢・性別・累積喫煙量(パックイヤー)・併存疾患などを調整したうえで、群間のリスクが比較されています。「禁煙したあと電子タバコ」のリスクは想像以上結果は、なかなか衝撃的なものでした。電子タバコも含めて完全に禁煙した群と比較し、禁煙後に電子タバコを使い続けた群では、肺がん発症リスクが56%増加(調整ハザード比[aHR]:1.56、95%信頼区間[CI]:1.24~1.97)、肺がん死亡リスクは2倍に高まっていました(aHR:2.00、95%CI:1.28~3.15)。短期禁煙者でも長期禁煙者でも傾向は一致しており、年齢50〜80歳・喫煙20パックイヤー以上の「肺がん検診対象のハイリスク群」では、肺がん発症が約1.9倍、肺がん死亡も約1.9倍と、より顕著でした。一方で、現在喫煙者と比較すれば、禁煙後の電子タバコ使用者でも総死亡リスクは有意に低下していました(aHR:0.77)。つまり、「紙巻きタバコをやめる」こと自体のメリットは完全には消えませんが、「電子タバコを続けてしまうと、せっかくの禁煙による肺がん予防効果がかなり目減りしてしまう」と読み解けるのです。電子タバコのエアロゾルにはホルムアルデヒドや有害金属が含まれ、動物実験ではDNAメチル化変化や肺腺がん発生も報告されており、生物学的にも筋の通った結果といえます。私たちが受け取るべきメッセージ本研究は観察研究であり、因果関係を断定するものではありません。電子タバコの種類や使用期間の詳細、加熱式タバコとの区別、追跡期間の短さなどの限界も率直に述べられています。それでも、450万人という大規模で、これだけ一貫した傾向が示された意味は重いと感じます。日本でも電子タバコや加熱式タバコの使用が広がっています。「やめる代わりに切り替える」という選択は、短期的には吸い込む有害物質の総量を減らすかもしれませんが、肺がん予防という長期的な観点では、完全な禁煙には及ばない可能性が高そうです。禁煙外来やニコチン置換療法といった、医学的に検証された禁煙手段にしっかりとアクセスさせること。そして、いったん禁煙したら電子タバコにも手を出させないこと。地味ですが、こうした選択を患者さんにしてもらう努力が、肺がんを減らす最も確からしい道だと、本論文は私たちに教えてくれています。 1) Kim YW, et al. Electronic cigarette use after smoking cessation and lung cancer risk. Nat Med. 2026 Jun 8. [Epub ahead of print]

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ACC/AHA脂質異常症GLで格上げの石灰化スコア、30分の心臓ドックで評価/CVIC

 心臓画像診断を専門とする医療法人社団CVIC心臓画像クリニック飯田橋(以下、CVIC)は、30分で心血管リスクを可視化する新サービス「スピーディー心臓ドック」の提供を開始した。これは冠動脈石灰化スコア、大動脈石灰化スコア、心血管バイオマーカー検査を組み合わせたもので、非造影CTおよび血液検査によって行われる。この中に含まれる冠動脈石灰化スコアは、近年その重要性が明らかになっており、米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)の合同委員会が関連学会とともに2026年3月に公開した『脂質異常症管理ガイドライン2026年版』1)において、推奨度が引き上げられた。そこで、CVICは2026年5月27日にメディアラウンドテーブルを開催し、CVIC理事長の寺島 正浩氏が、突然死を防げない日本の健診制度の課題、心血管病予防における画像診断の役割について解説した。最初の発作が最後の発作、突然死の半数以上は症状なし 寺島氏がまず指摘したのは、一般的な健康診断だけでは冠動脈疾患のリスクを十分に把握しにくく、心臓突然死を防ぐことが難しいという問題である。日本の健診で広く行われている心電図や胸部X線は、低コストで簡便なスクリーニング検査として有用である一方、冠動脈の狭窄や動脈硬化の進展を直接評価する検査ではない。 米国のフラミンガム研究では、突然死の50%以上はまったく症状がなかったことが報告されている。また、急性心筋梗塞の68%は50%未満の軽度冠動脈狭窄から生じていたという報告もある。寺島氏は、この突然性が心臓病の問題であると述べる。 一方で、心筋梗塞の多くは予防可能でもある。INTERHEART研究に基づき、喫煙、脂質異常、高血圧、糖尿病、内臓脂肪、ストレス、食事、運動、飲酒といった9つの修正可能な危険因子により、心筋梗塞リスクの9割が説明されることを紹介した。寺島氏は、9割予防可能な病気で死亡する人が後を絶たないことを指摘。その背景には「自分は大丈夫と考え、行動変容に至らない人が多いことがある」と述べた。数字は忘れても自分の画像は忘れない そこで重要になるのが、リスクの「可視化」である。寺島氏は、血圧、LDL-C、血糖値といった数値は忘れてしまうが、冠動脈や大動脈に石灰化がある画像を見れば、その画像は忘れないと指摘する。実際に、画像を提示することで、真剣に治療に取り組むようになった症例を多く経験してきたとのことだ。また、2018年のVIPVIZA試験では頸動脈エコーの結果を視覚的なレポートとして提示することで、治療効果が増大することも報告されている。クラス1推奨に引き上げられた冠動脈石灰化スコア ACC/AHAの『脂質異常症管理ガイドライン2026年版』では、動脈硬化性疾患のリスク評価方法が変更され、PREVENT-ASCVD方程式が採用された。また、PREVENT-ASCVD方程式で中等度リスク、ボーダーラインリスクと判定され、脂質低下療法の開始・強度について判断が難しい場合に、冠動脈石灰化スコアを用いてリスクを再分類することがクラス1推奨として位置付けられた。 冠動脈石灰化スコアは、非造影CTで冠動脈壁の石灰化を定量化する指標である。冠動脈石灰化スコアによる石灰化の分類は、0をなし、1~99を軽度、100~299を中等度、300~999を高度、1000~を超高度とする。このスコアが、冠動脈疾患死亡率や心血管病死亡率と強く関連する。 さらにCVICでは、冠動脈だけでなく大動脈の石灰化にも注目する。大動脈石灰化は冠動脈石灰化よりも先に出現する早期の動脈硬化マーカーとされ、冠動脈石灰化スコアが0であっても60%で大動脈石灰化が認められるとのことだ。30分で完了する「スピーディー心臓ドック」 今回発表された「スピーディー心臓ドック」は、こうした心血管リスク評価を短時間で実施するサービスである。所要時間は来院から検査終了まで約30分。検査方法は非造影CTによる冠動脈・大動脈評価と採血で、検査内容は冠動脈石灰化スコア、大動脈石灰化スコア、心血管バイオマーカー検査で構成される。心血管バイオマーカーは、NT-proBNP、高感度心筋トロポニン、apoB、高感度CRPの4項目である。 寺島氏は、通常の健診では測定されないこれらの項目を組み合わせることで、より詳細な心血管リスクを把握できると説明した。CVICでは、以下をすべて満たす場合を「パーフェクトスコア」とし、心血管リスクがきわめて低い状態として示している。冠動脈石灰化スコア0大動脈石灰化スコア0NT-proBNP<55pg/mLapoB<65mg/dL(または70mg/dL)心筋トロポニンT<0.003ng/mL高感度CRP<0.02mg/dL 講演では、実際の症例も紹介された。そのなかで紹介された60歳女性は、LDL-C、HDL-C、TG、総コレステロールは、健康診断の正常値の範囲に収まっていたという。冠動脈石灰化スコアも0であったが、大動脈石灰化スコアをみると約700であり、中等度の石灰化が認められた。また、apoBも106mg/dLと軽度高値であった。寺島氏は「大動脈石灰化スコアをとることで、このような方が見つかることがある。可視化することで、行動変容につながっていくのではないかと期待している」と語った。Q&A――石灰化スコアは不可逆とのことであるがどれくらいの頻度で実施すべきか? 1回測定したらその後は不要とする意見があるなど、議論が分かれているが、一般的には5年ほどの間隔を空けて測定するのがよいのではないかとされている。しかし、CVICとしては、冠動脈石灰化スコアが100以上、ないしは300以上の方は、2~3年に1回は検査を実施したほうがよいと考えている。このような方のなかで、生活習慣を気にしない方は次回の測定でスコアが2倍になっている場合もある。一方で、生活習慣が改善されてスコアの変動がみられないという方もいる。このような経過を追うために、石灰化スコアを活用するのもよいのではないか。 石灰化は不可逆であるからこそ、早めの対策が重要である。9つの修正可能な危険因子を修正することで、動脈硬化の進行を遅らせることができる。 なお、「スピーディー心臓ドック」は自費検査で、CVICは通常価格を8万8,000円としているが、2026年10月末日まで3万3,000円で提供する予定とのことだ。

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働き盛り世代の心房細動が腎機能低下の加速と関連/京大

 日本の就労世代を対象とした全国規模のコホート研究において、新規に確認された心房細動(AF)は、eGFR低下の加速およびeGFRが30%以上低下するリスクの増加と関連していたことを、京都大学の森 雄一郎氏らが示した。JAMA Network Open誌2026年5月14日号掲載の報告。 AFは心不全や慢性腎臓病(CKD)の合併症としてよく知られているが、就労世代の成人では単独の所見として健康診断で偶然見つかることもある。若年~中年層のAFは将来的な心不全リスク上昇と関連することが知られている一方、その後の腎機能低下と関連するかどうかは明らかになっていない。そこで研究グループは、就労世代におけるAF確認後の腎機能推移を検討するため、後ろ向きコホート研究を実施した。 研究では、2015年4月1日~2023年3月31日の全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康診断記録(心電図およびeGFR)と保険請求データを用いた。対象は、ベースライン時に洞調律で、AFや心血管疾患、末期腎不全の既往歴のない35~59歳の健康診断受診者であった。その後約1年間の外来受診歴および次回健診時の心電図所見から新たにAFが確認された個人を、確認されなかった個人と1対5で傾向スコアマッチングした。主要アウトカムは線形混合効果モデルを用いて推定したeGFRの年間低下率、副次アウトカムはCox比例ハザードモデルを用いて評価したeGFRの30%以上の低下とした。参加者を、全死因死亡イベント、腎代替療法開始、保険資格喪失、2023年3月31日のうち最も早い時点まで追跡した。 主な結果は以下のとおり。●解析対象は、マッチング後の14万1,060例(新規AF群2万3,510例、非AF群11万7,550例)であった。平均年齢49.8歳、男性81.8%、追跡期間中央値4.73年。●新規AF群では、非AF群と比較してeGFRの年間低下率が有意に大きかった。 ・新規AF群 -1.23mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:-1.26~-1.21) ・非AF群 -0.94mL/分/1.73m2/年(95%CI:-0.95~-0.93) ・群間差 -0.29mL/分/1.73m2/年(95%CI:-0.32~-0.26)(p<0.001)●AF確認前のeGFR低下は両群ともに-0.99mL/分/1.73m2/年であり、AF確認後に腎機能低下が加速した可能性が示唆された。●新規AFは、eGFRが30%以上低下するリスク増加と関連していた(ハザード比:2.91、95%CI:2.72~3.11、p<0.001)。●7年時点でのeGFRの30%以上低下の累積発生率は、新規AF群で11.0%(95%CI:10.2~11.7)、非AF群で4.9%(95%CI:4.7~5.2)であった。●女性および糖尿病患者ではAF確認後のeGFR低下がさらに顕著であった。一方、ベースラインの蛋白尿の有無による有意な交互作用は認められず、蛋白尿の有無にかかわらず同様にeGFRが低下していた。●その後の健康診断でもAFが再確認された群は、洞調律へ復帰していた群と比較してeGFR年間低下率が有意に大きかった(-1.55 vs.-1.15mL/分/1.73m2/年、p<0.001)。 研究グループは「これらの結果は、就労世代のAF管理では腎機能も重要であることを示唆している。AFがCKD進行に及ぼす累積的な影響やAF治療による腎保護効果についてはさらなる研究が必要」としている。

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眼底写真を基にした「網膜年齢」が健康状態を知る手がかりに?

 目は心の窓であるだけでなく、その人の健康状態を映し出す窓でもある――そんな研究結果が発表された。この研究によると、網膜の早期老化は、糖尿病や心疾患といった重大な病気の兆候となる可能性があるという。東北大学大学院医学系研究科眼科学分野教授の中澤徹氏らによるこの研究結果は、「Communications Medicine」に4月8日掲載された。 網膜は、眼球の奥にある光を感知する細胞層である。研究グループによると、網膜は血管や神経の状態を非侵襲的に観察できる部位であることから、眼の画像データを解析して全身の健康状態や疾患リスクを読み解く「オキュロミクス」と呼ばれる新たな研究領域が注目を集めている。 今回の研究で中澤氏らは、健康診断で撮影された疾患のない2万7,214人の眼底写真5万595枚を用いて、「網膜年齢」を推定する人工知能(AI)モデルを開発した。モデルは年齢推定に加え、過去2〜3カ月間の平均的な血糖状態を反映するHbA1cを学習させるマルチタスク学習と、5つのAIモデルの予測結果を組み合わせて最終的な予測を行うアンサンブル学習を組み合わせる設計とした。その後、別の疾患のない成人から得られた7,288枚の眼底写真を用いて年齢予測能を検証した(内部検証)。モデルの性能は平均絶対誤差(実年齢と推定網膜年齢の平均誤差)を用いて評価された。 その結果、内部検証での平均絶対誤差は2.78歳であり、独立した135眼の眼底写真を用いた外部検証での平均誤差は3.39歳、海外の外部集団4,992眼の眼底写真を用いた検証での平均誤差は8.63歳であった。また、5つのモデルの予測のばらつきが中央値より小さい場合には、年齢予測の精度が高くなる傾向が認められた。さらに、全身性疾患を有する8,467人のコホートにおいて、網膜年齢ギャップ(推定網膜年齢と実年齢の差)は、糖尿病、心疾患、脳卒中の既往がある人では有意に大きく、これらの疾患のある人では、網膜が実年齢より「老けて見える」可能性が示唆された。 研究グループは、こうした画像のAI解析は、定期健診の中で病気の早期発見に役立つ可能性があるとしている。中澤氏は、「眼底画像は定期的な健康診断の一環として撮影される非侵襲的な検査であり、新たに何かをする必要はほとんどない。このAIモデルは、臨床現場の通常の診療フローにほぼそのまま組み込めるだろう」とニュースリリースで述べている。 中澤氏はさらに、「現在、1万人以上を対象に3年間追跡するコホート研究を計画しており、網膜年齢に関する指標が将来的な心血管疾患やその他の全身疾患の発症と関連するかを検証する予定である」と述べている。

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パーキンソン病患者は腎機能低下リスクが約1.9倍/慶應義塾大

 わが国の全国規模の医療保険請求データと健康診断データを用いた疫学コホート研究の結果、パーキンソン病はその後の腎機能低下リスク上昇と関連していることが、慶應義塾大学の満野 竜ノ介氏らによって示された。Nephrology Dialysis Transplantation誌オンライン版2026年4月15日号掲載の報告。 近年、慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全(ESKD)などの腎機能低下がパーキンソン病の発症リスク上昇と独立して関連していることが示されているが、パーキンソン病発症後の腎転帰については十分に検討されていない。そこで研究グループは、大規模集団ベースコホートを用いて、パーキンソン病患者とパーキンソン病のない成人の間で腎機能低下のリスクを比較した。 研究ではDeSCデータベースを用いて、2014年4月~2024年8月に少なくとも1回の健康診断を受けた18歳以上の成人200万793人を特定した。すでにESKD既往歴または腎代替療法導入歴のある患者などを除外した165万9,421人(年齢中央値68歳、男性41.9%)を解析対象とした。 主要評価項目は、ESKDへの進行(追跡時のeGFRが15mL/分/1.73m2未満)、腎代替療法の開始、ベースラインからのeGFRの30%以上低下を含む複合腎アウトカムとした。初回健康診断から複合腎アウトカムの発生、保険制度からの脱退(死亡を含む)、2024年8月のいずれか早い時点まで追跡した。 主な結果は以下のとおり。・コホート全体で1万1,497例(0.7%)がベースライン時点でパーキンソン病を有していた。・中央値1,092日(四分位範囲:631~1,520)の追跡期間中、複合腎アウトカムが発生したのは、パーキンソン病群361例、非パーキンソン病群3万2,974例であった。・Kaplan-Meier解析では、パーキンソン病群は非パーキンソン病群に比べて複合腎アウトカムのリスクが有意に高かった(log-rank検定のp<0.001)。・年齢、性別、高血圧、糖尿病、ベースラインのeGFRなどを調整した多変量Cox比例ハザードモデルでは、パーキンソン病は複合腎アウトカムと独立して関連していた(ハザード比:1.91[95%信頼区間:1.72~2.12])。・女性およびパーキンソン病治療薬投与群では、腎機能低下との関連がより顕著であった。・この関連性は、認知症や起立性低血圧、排尿障害などを除外した複数の感度分析でも一貫していた。 研究グループは、「今回の研究結果は、パーキンソン病が腎機能低下の臨床的に重要なリスク因子である可能性を示唆している。パーキンソン病の長期的な管理の一環として腎機能をモニタリングすることは、リスクの高い患者の特定に役立つ可能性がある」とまとめた。

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特定健診の「2cm2kg減」は適切? 3万人の代謝指標との関連を検討

 日本の特定健診・特定保健指導では、生活習慣改善の目安として「腹囲2cm・体重2kgの減少(2cm2kg)」が推奨されている。しかし、この目標達成が実際に代謝指標の改善と結びついているか検討した研究は乏しい。そこで、笠原 健矢氏(京都府立医科大学)らの研究グループは、健診コホートデータを用いて2cm2kg目標の妥当性を検討した。その結果、2cm2kg達成は、血糖、血圧、脂質、肝機能といった代謝指標の改善と有意に関連し、実務上の目安としておおむね妥当であることが示唆された。本研究結果は、Obesity誌オンライン版2026年4月4日に掲載された。 研究グループは、2020年にパナソニック社の健康診断を受けた40歳以上のうち、特定保健指導の対象基準に該当する3万240人を解析対象として観察研究を実施した。ベースラインを2020年の健康診断時、評価時点を1年後とし「腹囲が2cm以上減少し、かつ体重が2kg以上減少すること」を「2cm2kg達成」と定義した。2cm2kg達成群と未達成群における代謝指標(血糖、HbA1c、収縮期血圧、拡張期血圧、TG、HDL-C、LDL-C、AST、ALT、γ-GTP)の変化量を比較した。さらに、腹囲・体重の減少量に応じた用量反応関係や、代謝改善を予測する最適カットオフ値についても検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象者のうち、男性の割合は89.6%であった。ベースライン時の平均年齢は52.1歳、平均BMIは27.1kg/m2、平均腹囲は93.3cm。・2cm2kg達成群は5,243人、未達成群は2万4,997人であった。なお、達成群における実際の平均変化量は腹囲-5.19cm、体重-4.93kgであり「2cm2kg」より大きく減少していた。・2cm2kg達成群は未達成群と比較して、以下の代謝指標について1年後の変化量が有意に良好であった(いずれもp<0.0001)。達成群の代謝指標の変化量は以下のとおり。 血糖:-3.77mg/dL HbA1c:-0.15% 収縮期血圧:-4.71mmHg 拡張期血圧:-3.42mmHg TG:-40.14mg/dL HDL-C:+3.19mg/dL LDL-C:-7.62mg/dL AST:-6.54U/L ALT:-13.98U/L γ-GTP:-18.81U/L・腹囲および体重について、1cm1kg、2cm2kg、3cm3kgと減少量が大きくなるにつれて、各代謝指標の改善幅が大きくなるという用量反応関係が認められた。血糖変化はそれぞれ-2.85mg/dL、-3.77mg/dL、-5.26mg/dLであった。・腹囲・体重の減少量が大きいほど、血糖、血圧、TG、HDL-Cの改善達成のオッズも上昇した。体重が3kg超減少した集団では、ほぼ不変の集団と比較して血糖改善(オッズ比[OR]:1.91、95%CI:1.70~2.16)、血圧改善(同:2.24、2.00~2.51)、TG改善(同:2.75、2.46~3.07)、HDL-C改善(同:2.62、2.11~3.25)のオッズが高かった。・ROC解析の結果、代謝改善を予測する最適なカットオフ値はおおむね腹囲-2.1~-0.7cm、体重-1.7~-0.8kgに収まり、2cm2kgという目標設定を支持する結果であった。ただし、AUCは0.58~0.63であり、予測能としては高くなかった。 本研究結果について著者らは、日本の特定健診・特定保健指導における2cm2kgという目標は代謝改善と関連しており、日本の保健指導において2cm2kgの目標を設定することの妥当性を支持するものであったと結論付けた。一方で、本研究は単一企業の就労者コホートを対象とした観察研究であり男性が占める割合が多いこと、保健指導の因果を示したものではないこと、2cm2kg達成群の実際の減少量が目標値より大きかったことなどの限界も指摘している。

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加熱式タバコは2型糖尿病罹患と関係するか/JIHS

 近年、紙巻タバコに代わり加熱式タバコ(HTP)での喫煙が増えている。HTPの健康への影響のエビデンスはまだ少ないが、糖尿病罹患との関連はあるのだろうか。このテーマについて、国立健康危機管理研究機構(JIHS)の胡 歓氏らの研究グループは職域多施設研究(J-ECOHスタディ)から約3万人を追跡調査した。その結果、HTPのみで喫煙している人は、紙巻タバコのみで喫煙している場合と比較し、2型糖尿病発症のリスク低下と関連していなかったことがわかった。American Journal of Preventive Medicine誌オンライン版4月7日号に掲載。喫煙者の糖尿病罹患リスクは非喫煙者と比べ高い 研究グループは、J-ECOHスタディのベースライン時(2018年4月~2019年3月)に2型糖尿病を有していなかった参加者2万9,584人(男性82.5%、平均年齢45.9歳[標準偏差9.9])を対象に調査を行った。参加者は、自己申告によるタバコの喫煙状況に基づき、非喫煙者、元喫煙者、紙巻タバコのみで喫煙する者、HTPのみで喫煙する者、および紙巻タバコとHTPの両方で喫煙する者の5群に分類した。2型糖尿病の新規発症は、2019~25年に実施された健康診断で特定された。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定はCox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・14万797人年の追跡期間中、2,141人が2型糖尿病を発症した(1,000人年当たり15.2)。・喫煙する群(1,000人年当たり18.5~21.7)では、喫煙歴のない群(1,000人年当たり11.3)と比較し、糖尿病の罹患率が高かった。・喫煙歴のない群と比較して、HTPのみで喫煙する群(HR:1.61、95%CI:1.39~1.86)、紙巻タバコとHTPの両方で喫煙する者(HR:1.76、95%CI:1.48~2.09)、および紙巻タバコのみで喫煙する者(HR:1.53、95%CI:1.34~1.74)は、糖尿病罹患のリスクが高かった。・喫煙歴のある人の中で、HTPのみで喫煙する人の糖尿病リスクは、紙巻タバコのみで喫煙する人とほぼ同等だった(HR:1.01、95%CI:0.86~1.18)。これは、追跡期間中にリスクの有意な低下が認められなかったことを示唆している。・すべてのタバコ喫煙グループで、1日当たりのタバコ製品の喫煙量と糖尿病リスクとの間に用量反応関係が認められた。 研究グループは、この結果から「HTPのみで喫煙している人(そのほとんどが過去に紙巻タバコの喫煙経験あり)において、追跡期間中、HTPのみでの喫煙は紙巻タバコのみでの喫煙と比較して、2型糖尿病のリスク低下とは関連していなかった。本研究の結果では、リスクの上昇がHTP使用の独立した影響によるものか、あるいは過去の紙巻タバコ曝露の残留効果によるものかを区別できないため、HTP使用者と紙巻タバコ喫煙者との間で糖尿病リスクが時間経過とともに異なるかどうかを評価するには、より長期の追跡調査が必要である」と結論付けている。

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