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納豆が心房細動リスクを下げる?~日本人前向き研究

 大豆食品の摂取量が多いと心血管疾患を予防する可能性があることが報告されているが、心房細動予防においては解明されていない。今回、国立循環器病研究センターのParamita Khairan氏らが、都市部の日本人一般集団を対象とした前向きコホート研究で、大豆食品およびその栄養素(イソフラボン、ビタミンK)における心房細動発症率との関連を調査したところ、女性でのみ、納豆およびビタミンKの摂取量が多いと心房細動リスクが低いことが示された。The Journal of Nutrition誌2026年1月号に掲載。 本研究はベースライン調査時に食物摂取頻度質問票を回答した30~90歳の男女5,278人が対象で、心房細動は12誘導心電図検査、健康診断、医療記録、死亡診断書を用いて診断した。多変量調整Cox回帰分析を用いて、大豆食品(納豆、味噌、豆腐)、大豆、イソフラボン、ビタミンKの残差法によるエネルギー調整摂取量の三分位群における心房細動発症率のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・6万6,487人年(平均12.6年)の追跡期間中、心房細動発症が222例であった。・女性では、納豆摂取量が最も少ない群(T1)と比べ、最も多い群(T3)で心房細動リスクが低かった(HR:0.44、95%CI:0.24~0.80)が、男性では関連は認められなかった(T1に対するT3のHR:0.97、95%CI:0.65~1.43)。・味噌については、男性でのみ中程度の摂取量と低い心房細動リスクが関連していた。・ビタミンK摂取量が最も多い三分位群の女性は、最も少ない三分位群と比較して、心房細動リスクが67%減少した(HR:0.33、95%CI:0.15~0.71)。・男女とも、大豆食品全体、豆腐、大豆、イソフラボンの摂取量と心房細動リスクとの関連は認められなかった。

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産業保健は本当に機能しているのか―自分が見て見ぬふりをしてきたこと【実践!産業医のしごと】

皆さま、あけましておめでとうございます。年末に昨年の手帳を見返していました。面談を何件担当し、衛生委員会に何回出席し、職場巡視を何回行ったのか……。手帳を見ると、確かに数字は積み上がっています。それでも、ふと思ったんです。これで本当に、誰かの健康を守れたんだろうか、と。反省点1:実施率で「やったふり」をしていた「ストレスチェック実施率100%、健康診断受診率98%、衛生委員会出席率100%……」。報告書の数字は目標を十二分に達成しており、経営層も安心してくれます。でも、この数字はあくまで「プロセス」であって、「社員の健康を守り、組織を変える」という、目指す「結果」そのものではありません。そこに私は目をつぶっていました。面接指導の後、あの従業員の労働時間は本当に減ったんだろうか。上長は業務配分を変えたんだろうか。私はそれを確認できていません。残っているのは「面接を実施した」という記録だけです。反省点2:データで「やった気」になっていた「高ストレス者の割合が○%です」「プレゼンティーイズム(健康問題が理由で従業員の生産性が低下している状態)による損失は、年間数千万円と推計されます」。役員会で報告すれば、うなずいてもらえます。質問もとくに出ません。それで終わりになって、「次に何をするか」までを詰めきれていませんでした。データを見せることで、何かをやった気になっていた。でも、「誰が・何を・いつまでにやるのか」が決まらなければ、現場は動きません。当たり前のことなのに、私はそこまで詰めきれていませんでした。「課題は共有できました」と自分に言い訳していたのです。反省点3:「お墨付き」が仕事になっていた「復職可否の判断」「就業制限の意見書」……。人事からそうした書類の記入依頼が来て、記入して、返送する…。この流れ作業に慣れてしまっていました。本当は、本人の回復と職場の受け入れ態勢の両方を見て、バランスを取るのが産業医の役割のはずです。でも気付けば、会社が「適切に対応した」ことを示すための書類作成に、ただ協力しているだけになっていました。今年変えたい! 3つのことそんな昨年の振り返りを通して、今年の目標を立てました。1. 「できない理由」で思考停止しない「経営陣の理解がない」「人事が動かない」「予算がない」……。口にした瞬間、できない理由ができてラクになります。でも、「伝え方を変える」「データをそろえる」「小さく試す」……。何かやれることはあるはずです。2. 成果につながりにくい活動を減らす目的が曖昧な会議、意思決定につながりにくい報告書、テーマのない巡視。こうした時間は優先順位をつくって削れるものは削り、空いた時間を従業員への支援と職場の具体的な調整に回します。3. 全部自分でやろうとしない保健師、人事、管理職……。それぞれに役割があります。自分は産業医の立場で判断の軸を示す。細かいフォローは保健師に、業務調整は人事や上長に。そうやってチームで回すほうが結果的に多くの人を守ることができると、ようやく気付きました。そして、「今年やること」今年は、「言いっぱなし」「書きっぱなし」で終わらせず、「変化が起きたか」までを確かめます。具体的には、面談後1ヵ月で残業や勤務に変化が出ているか確認する、復職後3ヵ月/6ヵ月時点で定着できているかを確認する、職場への助言はその1ヵ月後を目安に実施して状況を確認する、これらのことを心掛けます。毎月1回、保健師・人事と振り返りを行い、止まっている案件を見える化して、次の手を決める。確認はチェックのためではなく、職場を動かすための合図にします。産業医は、会社の「保険」ではありません。働く人の健康を守る専門職です。今年は、昨年の自分よりも、一歩成長した産業医になりたいと思います。本年もよろしくお願いいたします。

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健康診断の新視点、筋肉量指標で高血圧リスクを見える化

 従来のBMIでは筋肉量と脂肪量の違いを反映できないという問題がある。今回、男性の除脂肪体重指数(LBMI)を用い、低LBMIが高血圧リスクの増加と関連するという研究結果が報告された。BMIだけでは捉えられないリスク評価の重要性を提示している。研究は、慶應義塾大学医学部内科学教室の畔上達彦氏、東京大学医学部附属病院循環器内科先進循環器病学講座の金子英弘氏らによるもので、詳細は11月10日付で「Hypertension Research」に掲載された。 高血圧は心血管疾患や慢性腎臓病の主要リスク因子であり、世界的に重要な公衆衛生課題となっている。肥満は高血圧リスクの主要因子とされるが、BMIでは脂肪量と除脂肪体重(筋肉量)を区別できず、正確なリスク評価には限界がある。除脂肪体重を正確に測定するには高コストの画像検査が必要だが、近年、身長・体重・ウエストなどから推定できる簡易LBMIが開発され、日常の健康診断データでも評価が可能になった。しかし、この簡易LBMIを用いた高血圧リスク評価はこれまで行われていない。本研究では、健康診断や医療請求データを用いて、男性のLBMIと高血圧発症リスクの関連を後ろ向きに解析した。 本研究では、国民の行政保険請求データおよび年次健康診断記録を含むDeSCヘルスケア株式会社のデータベース(2014年4月~2022年11月)を用い、健康診断データが利用可能な男性98万5,521人を対象とした。主要評価項目である高血圧の発症は、診療報酬請求データに基づきICD-10コード(I10-I15)で同定した。リスク評価にはCox回帰モデルおよびスプラインモデルを用い、年齢や既往歴などの交絡因子で調整した。さらに、結果の頑健性を確認するため、層別解析および感度解析も実施した。 最終的な解析対象は、38万4,551人(年齢中央値51歳)であり、中央値1,393日の追跡期間中に4万312人(10.5%)が高血圧イベントを経験した。 まず、参加者のLBMIを四分位(Q1~Q4)に分類し、各群間で比較を行った。年齢、収縮期血圧および拡張期血圧、BMI、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、身体活動を交絡因子として調整した多変量Cox回帰を用いて、LBMIと高血圧発症リスクの関連を評価した。その結果、LBMIが低い四分位に属するほど高血圧発症リスクが高く(ハザード比〔95%信頼区間〕:Q1, 1.20〔1.15~1.26〕;Q2, 1.06〔1.02~1.10〕;Q3, 1.03〔0.99~1.06〕;Q4, 1〔基準値〕)、制限付き三次スプライン回帰モデルでも、LBMIの低下に伴い高血圧リスクが上昇する傾向が確認された。 次に、年齢別(65歳未満または65歳以上)および非肥満者で層別化したサブグループ解析を行った。いずれの層別群においても、多変量Cox回帰の結果、LBMIが低いほど高血圧発症リスクが上昇する傾向が確認された。 さらに、主要解析結果の頑健性を確認する感度解析として、連鎖方程式による多重代入法で欠測値を補完し、50万5,696人を対象に解析を行った。この解析においても、LBMIが低い四分位(Q1)は高血圧発症の有意なリスク因子であった(同1.19〔1.14~1.24〕)。加えて、死亡を競合事象とした競合リスク解析においても、LBMIが低い四分位(Q1)で高血圧発症リスクの上昇が認められた(同1.23〔1.15~1.32〕)。 これらの層別解析および感度解析により、LBMIと高血圧発症リスクとの関連は解析手法や欠測値の扱いにかかわらず一貫して確認された。 本研究について著者らは、「男性においてLBMIが低いことは高血圧リスクの上昇と関連しており、除脂肪体重を指標とした管理の重要性が示唆された。今後は、その増加や維持がリスク低減につながるかどうかの検討が必要である」と述べている。

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薬局に「傷病名」が共有される時代がすぐそこに!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第162回

薬局を含む電子カルテの共有サービスが1年後に始まる予定です。いよいよ薬局に「傷病名」が共有される時代になりそうです。厚生労働省は2025年12月10日に開催した「第26回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ」で、電子カルテ情報共有サービスについて、2026年度の冬ごろをめどに全国での運用開始を目指す方針を示した。進行中のモデル事業で複数の課題が明らかになり、それに対応する期間を想定してのスケジュールだ。(2025年12月15日付 日経メディカル)2022年5月に、自由民主党政務調査会より提言された「医療DX令和ビジョン2030」の中の三本の柱の1つとして電子カルテ情報共有サービスが掲げられました。政府は、日本の医療分野のデジタル化を推進する取り組みとして電子カルテ情報共有サービスを構築し、医療の効率化と情報共有の改善を目指しています。電子カルテ情報共有サービスは、全国の医療機関や薬局などで患者の電子カルテ情報を共有するための仕組みで、提供するサービスは次の4点です。1.診療情報提供書を電子で共有できるサービス(退院時サマリーについては診療情報提供書に添付)2.各種健診結果を医療保険者及び全国の医療機関等や本人等が閲覧できるサービス3.患者の6情報を全国の医療機関等や本人等が閲覧できるサービス4.患者サマリーを本人等が閲覧できるサービス具体的には、「3文書6情報」と呼ばれる情報の標準化が進められています。「診療情報提供文書」「退院時サマリー」「健康診断結果報告書」の3文書(文書情報)と、「傷病名」「感染症情報」「薬剤アレルギー等」「その他アレルギー等」「検査」「処方」の6情報です。これらの情報が患者の同意のもと、スムーズに共有されることで、医療の質の向上や継続性の確保が期待されています。電子カルテ情報共有サービスは、2025年度中の本格運用を目標に、一部の地区ではすでに試験運用が始まっています。この試験運用によって得られた課題をクリアした後の2026年の冬ごろに全国で運用を開始するとのことです。現在、薬局でも医療機関でも、DX加算が設けられており、DX化は加速しています。薬局においては、今も手計算で調剤報酬を計算している薬局はほぼないでしょう。一方、厚生労働省の令和5年(2023年)の調査によると、一般病院全体での電子カルテシステムの普及率は65.6%ですが、一般診療所では55.0%にとどまっています。さらに、2024年に日本医師会が実施した「診療所における医療DXに係る緊急調査」では、電子処方箋の導入率は14.5%と低迷しています。電子処方箋の導入率の低さを考慮すると、全国で展開されるのはもう少しあとになるのでは…という気もします。この電子カルテ情報共有サービスで「傷病名」が共有されるという情報に小躍りしそうになるのは私だけでしょうか。処方から病名を推察するというのが薬局薬剤師のある種の技術だったところもありますが、新しい時代が来るという予感がしますね! 検査結果などが共有されるというのは、医薬品の安全使用にとってはうれしい限りです。共有された後の薬局業務が楽しみです。

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第41回 「採血だけでがんが見つかる」は本当か? 「リキッドバイオプシー」の現在地

痛い検査なしで、採血一本でがんを早期発見したい。 これは多くの人にとっての願いであり、医療界が追い続けてきた夢でもあります。近年、日本でも自由診療のクリニックなどで「血液でわかるがん検査」を目にする機会が増えました。しかし、最新の科学はどこまでその「夢」に近づいているのでしょうか。医学雑誌Nature Medicine誌に掲載された最新の論文1)を基に、この技術の「期待」と「現実」を解説していきます。そもそも「リキッドバイオプシー」とは何か?まずは言葉の意味を確認しておきましょう。私たちが健康診断で行う血液検査とは異なり、がん細胞から血液中に漏れ出した微量なDNAなどを検出する技術を「リキッドバイオプシー」と呼びます。がん細胞は通常の細胞と同じように死滅し、その際に自分自身のDNAの断片を血液中に放出します。この「がんの破片」を高度な遺伝子解析技術で見つけ出し、がんの有無や性質、薬が効くかどうかを調べようというのが、このリキッドバイオプシーです。従来のがんの診断法である組織生検(体に針を刺したり手術で組織を切り取ったりする検査でこれが従来からバイオプシーと呼ばれるもの)に比べて、体への負担が圧倒的に少ないのが最大の特徴です。「がん検診」としての実力は?現在、最も関心が高いのは「健康な人が採血だけでがんを見つけられるか(スクリーニング)」という点でしょう。しかし、結論から言えば、「技術は進歩しているが、早期発見ツールとしてはまだ課題が多い」というのが現状です。実際、論文の中でも、一度に50種類以上のがんを検出できるとされる「Galleri」という検査の臨床試験データが紹介されています。この検査は、StageIV(進行がん)であれば93%という高い感度でがんを見つけることができました。しかし、私たちが検診に求めるStage I(早期がん)の検出率は、わずか18%にとどまりました。つまり、症状が出る前の「治りやすい段階」のがんを見つけることは、現在の技術でもまだ難しい場合があるのです。さらに問題となるのが「偽陽性(本当はがんではないのに陽性と出る)」です。ある追跡調査では、検査で「陽性」と出た人のうち、本当にがんだったのは半数以下(陽性の61%が偽陽性)でした。健康な人がこの検査を受け、「陽性」と言われれば、大きな不安を抱えながらCTやMRIなどの精密検査を受けることになります。結果的に何もなかったとしても、CTやMRIも早期のがんを見つけるのに優れたものとはいえず、その精神的負担やさらなる追加検査のリスクは無視できません。すでに「当たり前」になりつつある分野も一方で、リキッドバイオプシーがすでに医療現場で不可欠なツールとなっている領域もあります。それは、「すでにがんと診断された患者さんの治療方針決定」です。とくに進行がんの患者さんにおいて、どの抗がん剤や分子標的薬を使うべきかを決めるための遺伝子検査として、米国食品医薬品局(FDA)も複数の検査を承認しています。たとえば肺がんにおいて、組織を採取するのが難しい場合でも、血液検査で特定の遺伝子変異(EGFR変異など)が見つかれば、それに合った薬をすぐに使い始めることができます。これにより、治療開始までの時間を短縮できるというメリットも確認されています。また、手術後の「再発リスク」の予測にも大きな期待が寄せられています。手術でがんを取り切ったように見えても、目に見えない微細ながん(MRD:微小残存病変)が残っていることがあります。手術後の血液検査でこの痕跡が見つかった場合、再発のリスクが高いと判断でき、抗がん剤治療を追加するかどうかの重要な判断材料になりつつあります。自由診療での検査を受ける前に知っておくべきこと冒頭で述べたように、日本国内でも、がんの早期発見をうたった高額な血液検査が自由診療として提供されていることがあります。しかし、今回の論文が指摘するように、多くの検査法(マルチキャンサー検査など)は、まだ「検査を受けることで生存率を改善する(命を救う)」という明確な証拠が確立されているわけではありません。論文では、現在の技術的な限界として、血液中のがんDNAがあまりに微量であることや、加齢に伴って正常な血液細胞に生じる遺伝子変異をがんと見間違えてしまうリスクなどが挙げられています。もし、あなたが「安心」のためにこうした検査を検討しているのであれば、以下の点を理解しておく必要があります。 「陰性」でも安心はできない 早期がんの多くを見逃す可能性があります(Stage Iの検出率はまだ低い)。 「陽性」が本当とは限らない がんではないのに陽性と出る可能性があり、その後の精密検査の負担が生じます。 従来の検診の代わりにはならない 現時点では、確立されたがん検診(便潜血検査やマンモグラフィなど)を置き換えるものではありません。 未来への展望:AIと新技術の融合とはいえ、未来は決して暗くもないと思います。現在進行形で、DNAの断片化パターンや、DNAへの目印など、複数の情報をAIで統合的に解析する新しい手法を開発しています。これにより、早期がんの検出率を上げ、偽陽性を減らし、さらには「どこの臓器にがんがあるか」まで正確に予測できるようになると期待されているからです。リキッドバイオプシーは、間違いなく医療の未来を変えうる技術です。しかし、それが「魔法の杖」として誰もが手軽に使えるようになるまでには、もう少し時間がかかりそうです。今は過度な期待を持たず、しかしその進歩に注目し続ける、そんな冷静な視点が必要とされていると思います。 参考文献・参考サイト 1) Landon BV, et al. Liquid biopsies across the cancer care continuum. Nat Med. 2025 Dec 10. [Epub ahead of print]

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健康診断から見える、糖尿病予測の未来

 糖尿病は日本人の主要な生活習慣病である一方、予防可能な側面も大きく、発症リスクの理解と適切な介入の実現が課題である。この課題に対し、静岡県の国民健康保険データベースを用いて、健康診断データから2型糖尿病発症リスクを予測する新たなモデルが開発された。Cox比例ハザードモデルを基礎に構築した予測スコアは、検証データセットで良好な識別能を示したという。研究は静岡県立総合病院消化器内科の佐藤辰宣氏、名古屋市立大学大学院医学研究科の中谷英仁氏、静岡社会健康医学大学院大学の臼井健氏らによるもので、詳細は10月30日付で「Scientific Reports」に掲載された。 日本では13人に1人程度が2型糖尿病と診断されているが、生活習慣改善や早期介入が発症リスクの低減に寄与し得ることが指摘されている。地域コホートや各種健康診断制度によって大規模な一般住民データが得られている一方、既存の予測モデルは病院データや職域健診を基盤とするものが多く、一般住民の健診データを活用したモデルは十分に整備されていない。このような背景を踏まえ、本研究では一般住民の健診データを用い、発症までの期間や打ち切り症例を考慮したCox比例ハザードモデルで2型糖尿病発症を予測するモデルを開発・検証した。 本研究では、登録者数250万人以上を有する静岡国保データベース(SKDB)の2023年度版データ(2012年4月1日~2021年9月30日)を用いて解析を行った。解析対象は、ベースラインの健康診断時点で2型糖尿病(またはHbA1c値6.5%以上)やがんの既往がなく、年1回の健康診断歴を有する40歳以上の成人46万3,248人とした。対象者は2:1の比率で、モデル構築用(30万8,832人)と検証用(15万4,416人)に無作為に分割した。まずモデル構築用コホートにおいて、年齢、性別、BMI、血圧、健診で測定可能な各種血液検査値、喫煙・飲酒・運動習慣などの健康情報を用いてCox比例ハザードモデルにより糖尿病発症に関連する要因を解析し、予測モデルを構築した。続いて、その予測性能を検証コホートにおいてHarrellのc指数を用いて評価した。 モデル構築用データセットでは、中央値5.17年の観察期間中に5万2,152人(16.9%)が2型糖尿病と診断された。このデータセットにおいて、2型糖尿病発症に対する単変量および多変量Cox比例ハザード回帰解析を行った結果、高齢、男性、体格や血圧などの臨床指標、各種血液検査値や肝腎機能の異常、尿蛋白の存在、高血圧・脂質異常症に対する薬物使用、ならびに生活習慣(運動不足や過度の飲酒)が、いずれも発症リスクの上昇と関連していた。次いで、その結果をもとに、2型糖尿病発症を予測するスコアリングモデルを開発した。このモデルではスコアが高いほど発症リスクが高く、モデル構築用データセットではC指数0.652、検証用データセットではC指数0.656と、個人のリスクを良好な識別能をもって判別できることが示された。スコアごとの3年間での累積発症率は、スコア0.5未満で3.0%、スコア2.5以上では32.4%と大きく差があり、健診結果から算出される本スコアを用いることで個人を低リスクから高リスクまで明確に層別化できることが示された。これらの結果は検証用データセットでも同様に確認できた。 著者らは、「今回作成した予測スコアリングモデルは、検証用データセットで良好な識別能を示し、将来的な糖尿病発症リスクの層別化に応用可能である。また、本モデルは日常的に収集される健康診断の変数のみを使用しているため、識別能はやや低下する可能性があるが、実用性は高い」と述べている。さらに今後の展開として、「糖尿病患者では膵臓がんの発症リスクが高いことが報告されている。今後は、糖尿病発症の予防が膵臓がんの発症抑制につながるかといったテーマにも取り組む予定である」としている。 なお本研究の限界については、データベースには静岡県の住民のみが含まれ、一般化には限界があること、参加者を40歳以上に限定しているため若年層への適用が難しいことなどを挙げている。

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膵管拡張は膵臓がんの警告サイン

 膵臓がんは、進行して致命的となるまで症状が現れにくいことから「サイレントキラー」とも呼ばれる。こうした中、新たな研究で、膵臓がんリスクの高い無症状患者では、膵臓と胆管をつなぐ膵管の拡張が、がんの進行リスクを高める独立したリスク因子であることが示された。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部医学・腫瘍学教授のMarcia Irene Canto氏らによるこの研究結果は、「Gastro Hep Advances」に9月12日掲載された。Canto氏は、「この知見によりがんが早期発見されれば、生存率の向上につながる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。 膵臓は消化酵素やインスリンなどを産生することで、消化と血糖値の調節に重要な役割を果たしている。膵臓は体の奥深くに位置するため、定期的な健康診断で腫瘍を早期発見することは難しく、診断時にはすでに進行しているケースが多い。膵臓がんの5年生存率は3〜16%とされている。米国がん協会(ACS)によると、膵臓がんは米国のがん全体の約3%、がんによる死亡全体の8%を占めているという。 この研究では、症状はないが、膵臓がんの家族歴を有するか遺伝的に膵臓がんリスクが高い641人を対象に、膵管拡張が膵管内の高度異形成や膵臓がんへの進行リスクと関連するのかが評価された。膵臓がんの家族歴とは、膵臓がんに罹患した第一度近親者(親、兄弟姉妹、子どもなど遺伝子を50%共有している人)が1人以上存在し、膵臓がんを発症した第一度近親者のペアが1組以上存在する家系に属する人の場合を指す。一方、遺伝的リスクとは、遺伝性膵臓がんに関わるATM(ataxia telangiectasia mutated)、やBRCA1、BRCA2などの遺伝子に変異を持っていることと定義された。膵管は、直径が頭部で4mm以上、体部で3mm以上、尾部で2mm以上の場合を膵管拡張と見なし、軽度(頭部4〜5mm、体部3〜4mm、尾部2〜3mm)、中等度〜重度(頭部6mm以上、体部5mm以上、尾部4mm以上)に分類した。 追跡期間中(中央値3.6年)、97人(15%)に腫瘍を伴わない膵管拡張が認められた。このうちの10人(10.3%)では、膵管拡張が確認されてから中央値で2年以内に高度異形成または膵臓がんへの進行が確認された。解析からは、試験開始時に膵管拡張が認められた対象者が高度異形成または膵臓がんに進行する累積リスクは5年後で16%、10年後で26%と推定された。膵管拡張がある高リスク患者では進行リスクが約2.6倍高く、さらに膵嚢胞が3個以上ある場合にはリスクが約9倍に増加することも示された。 Canto氏は、「われわれは、膵管拡張という警告サインを早期に特定することで、より迅速に介入することができた。介入方法は、手術か、より頻繁な画像検査を行うかのいずれかになる」と話す。同氏はまた、膵管拡張は、腎結石や腹痛など他の健康問題を調べるための画像検査時に発見される可能性があると指摘し、「医療提供者は、膵管拡張が早急に対処すべき問題であることを認識する必要がある」と述べている。 またCanto氏は、本研究の次の段階は、膵臓スキャン画像を分析して、がんリスクをより具体的かつ正確に予測できるようAIを訓練することだと語っている。

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代謝異常を伴う脂肪肝「MASLD」、慢性腎臓病の独立リスクに

 新しい脂肪肝の概念「MASLD;代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」が、慢性腎臓病(CKD)の独立したリスク因子であることが国内研究で示された。単一施設の約1.6万人の健康診断データを解析したもので、MASLDの早期発見や管理の重要性が改めて示された。研究は京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の大野友倫子氏、濱口真英氏、福井道明氏、朝日大学病院の大洞昭博氏、小島孝雄氏らによるもので、詳細は10月17日付で「PLOS One」に掲載された。 日本では食生活の欧米化に伴い肥満が増加し、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の有病率も上昇している。NAFLDは主に内臓脂肪やインスリン抵抗性と関連し、糖尿病や心血管疾患などの代謝異常を伴うことが多い。2020年には、こうした代謝背景を重視する形でNAFLDはMAFLDとして再定義され、日本の大規模コホート研究ではCKDの独立したリスク因子であることが報告された。さらに2023年、国際的専門家パネル(Delphiコンセンサス)により、より包括的でスティグマの少ない概念としてMASLDへと名称が変更され、少なくとも1つの心血管代謝リスク(BMI、血糖値、HDL-C値など)を伴う脂肪肝と定義された。本研究は、この新しい定義によるMASLDがCKD発症の独立したリスク因子となるかを明らかにすることを目的に、人間ドック受診者を対象とした縦断的コホート解析として実施された。 本研究では、岐阜県の朝日大学病院で実施されているNAFLDの縦断的解析(NAGALA Study)に基づき、1994~2023年の間に人間ドックを受けた1万5,873人を解析対象とした。ベースライン時点で肝疾患を有する者、またはCKD(推算糸球体濾過量〔eGFR〕<60mL/分/1.73m2、もしくはタンパク尿〔+1~+3〕が少なくとも3か月持続)と診断された者は除外した。参加者はアルコール摂取量、心血管代謝リスク、脂肪肝の有無によりグループ1~8までのカテゴリーに分類された。主要評価項目は、5年間の追跡期間中におけるCKDの新規発症率とし、ロジスティック回帰分析によりMASLDとCKD発症との関連を評価した。 解析対象の9,318人(58.7%)が男性で、平均年齢は43.7歳だった。追跡期間中のCKD新規発症率は、アルコール摂取が閾値以下で心血管代謝リスクおよび脂肪肝を認めないグループ1で最も低く(4.7%)、MASLDと診断されたグループ8で最も高かった(9.5%)。 次に、ベースライン時の年齢、性別、eGFR、喫煙習慣、運動習慣で調整した多変量解析を実施した。その結果、グループ1と比較して、MASLDと診断されたグループ8でのみCKD新規発症のオッズ比(OR)が有意に上昇した(OR 1.37、95%信頼区間〔CI〕1.12~1.67、P=0.002)。さらに、年齢(OR 1.04、95%CI 1.03~1.05、P<0.001)およびベースライン時のeGFR(OR 0.88、95%CI 0.87~0.89、P<0.001)も、CKDの有意な予測因子として同定された。 著者らは、「MASLDは、これまでのNAFLDを包含する新しい疾患概念として、CKD発症リスクを独立して高める可能性がある。特に日本に多い『非肥満型MASLD』では、腎機能低下リスクに注意が必要だ。今後は、筋肉量の影響を受けない腎機能指標を用いたリスク評価や、個別化された介入の検討が求められる」と述べている。 なお、本研究の限界点としては、参加者が岐阜県の人間ドック受診者に限られ、選択バイアスの可能性があること、食事内容や食後血糖などのデータが欠如している点などを挙げている。

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夕食時間が蛋白尿に影響、時間帯や患者特性は?

 蛋白尿や微量アルブミン尿は、心血管疾患および全死亡リスク上昇との関連が報告されている。また、いくつかの研究で、夕食時間の遅さと蛋白尿との関連が報告されているが、患者特性などは明らかにされていない。そこで今回、りんくう総合医療センター腎臓内科の村津 淳氏らは、夕食時間の遅さが蛋白尿を来すことを明らかにし、とくに低BMIの男性で強く関連することを示唆した。本研究結果はFront Endocrinol誌2025年11月10日号に掲載された。 研究者らは、夕食時間の遅さと蛋白尿の出現との関連を評価するため、りんくう総合医療センターの健康診断データを用い、推定糸球体濾過量(eGFR)60mL/分/1.73m2以上で腎疾患の既往のない2,127人(男性1,028人、女性1,099人)を対象に横断研究を実施。週3日以上、就寝前2時間以内に夕食を取った参加者を夕食時間が遅い群と定義した。夕食時間による蛋白尿の影響は、臨床的関連因子(年齢、性別、喫煙歴、飲酒歴、既往歴など)を調整したロジスティック回帰モデルを用いて評価した。また、これまでに報告された横断研究では、蛋白尿の有病率はBMI(kg/m2)とJ字型関係を示していることから、今回、男女別でBMIと腹囲を各3群に区分。BMIは、男性では22.3未満、22.3~24.9、24.9以上に分け、女性では20.3未満、20.3~23.0、23.0以上と分けた。腹囲(cm)は、男性は83.0未満、83.0~90.1、90.1以上、女性は75.0未満、75.0~83.5、83.5以上として評価した。 なお、「蛋白尿陽性」は尿試験紙法で蛋白尿±以上と定義した。その理由として、尿蛋白±が微量アルブミン尿に相当し、糸球体障害の早期段階や心血管リスクの上昇を反映することから、早期腎障害も評価に含めるためとしている。 主な結果は以下のとおり。・夕食時間が遅かったのは、男性297人(28.9%)、女性176人(16.0%)であった。・多変量調整後のロジスティック回帰分析の結果、夕食時間の遅さは男性の蛋白尿の出現率に有意に関連し、臨床的関連因子調整後も低BMI(BMI24.9kg/m2未満)の男性で有意であった(調整オッズ比は、それぞれ3.57[1.34~9.48]、3.15[1.22~8.13])。・BMI、腹囲が共に低いほど蛋白尿と有意な関係を認めた。・BMIが24.9kg/m2以上の高BMIではこの関連は認められなかった。

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75歳以上における抗凝固薬と出血性脳卒中の関連~日本の後ろ向きコホート

 高齢者における抗凝固薬使用と出血性脳卒中発症の関連を集団ベースで検討した研究は少ない。今回、東京都健康長寿医療センター研究所の光武 誠吾氏らが、傾向スコアマッチング後ろ向きコホート研究で検討した結果、抗凝固薬を処方された患者で出血性脳卒中による入院発生率が高く、ワルファリン処方患者のほうが直接経口抗凝固薬(DOAC)処方患者より発生率が高いことが示唆された。Aging Clinical and Experimental Research誌2025年11月13日号に掲載。 本研究は、北海道のレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究で、2016年4月~2017年3月(ベースライン期間)に治療された75歳以上の高齢者を対象とした。曝露変数はベースライン期間中の抗凝固薬処方、アウトカム変数は2017年4月~2020年3月の出血性脳卒中による入院であった。共変量(年齢、性別、自己負担率、併存疾患、年次健康診断、要介護認定)を調整した1対1マッチングにより、抗凝固薬処方群と非処方群の入院発生率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・71万7,097例中、6万6,916例(9.3%)が抗凝固薬を処方されていた。・傾向スコアマッチング後、抗凝固薬処方群(383.2/100万人月)が非処方群(252.2/100万人月)より出血性脳卒中による入院発生率が高かった(ハザード比[HR]:1.64、95%信頼区間[CI]:1.39~1.93)。・1種類の抗凝固薬を処方された患者(6万1,556例)において、マッチング後、ワルファリン処方群がDOAC処方群より出血性脳卒中による入院発生率が有意に高かった(HR:1.67、95%CI:1.39~2.01)。 著者らは「本研究の結果は、高齢者への抗凝固薬、とくにワルファリンの処方において、出血性脳卒中リスクを最小限にすべく慎重な検討が必要であることを強調している」とまとめている。

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糖尿病、非肥満者は発症前に体重減少の傾向

 東アジア人は白人よりも低い体重で糖尿病を発症することが知られており、その背景には異なる発症メカニズムが存在する可能性がある。日本人の健康診断データを用いた後ろ向き観察縦断コホート研究により、非肥満者では糖尿病発症前に体重減少が先行する一方、肥満者では糖尿病発症前に体重増加がみられることが明らかになった。富山大学・四方 雅隆氏らによるこの研究成果は、Endocrine Journal誌オンライン版2025年9月25日号に発表された。 この研究は、日本人9,260例の健康診断データを用いた後ろ向き観察縦断コホート研究として実施された。対象者の61.4%が男性で、観察期間中に259例が糖尿病を発症した。観察期間開始から3年以内に糖尿病を発症した者は除外した。参加者を肥満群(BMI 25 kg/m2以上)と非肥満群(BMI 25kg/m2未満)の2つのサブタイプに分類し、糖尿病発症に至るまでの体重変化のパターンを評価した。 主な結果は以下のとおり。・肥満群では糖尿病発症前にBMIが増加し、その後減少するパターンが観察された。一方、非肥満群では糖尿病発症前にBMIが減少し、その後安定するという対照的なパターンが示された。・非肥満群では糖尿病発症前に年間BMI変化が-0.15kg/m2以下(体重減少)を示す参加者が、+0.15kg/m2以上(体重増加)を示す参加者よりも有意に多かった(p=0.003)。これらの結果は、非肥満群では体重減少が糖尿病発症に先行することを示している。 研究者らは、「非肥満でありながら血糖値が上昇している人(ただし、糖尿病の診断基準は満たさない)は、糖尿病発症の高リスク群として考慮すべきだ。従来、体重増加が糖尿病リスクとして注目されてきたが、この研究結果は、非肥満者においては体重減少が糖尿病発症の前兆となる可能性を示唆している。これらのハイリスク層を早期に特定し、体重減少に焦点を当てない生活指導を提供することが糖尿病発症予防において重要だ。この知見は、とくに東アジア人における糖尿病の予防戦略に新たな視点をもたらすものである」としている。

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インフルにかかりやすい人の5つの特徴/弘前大学

 インフルエンザ感受性に関連する複数の背景因子とそれらの関連性を明らかにするため、大規模な健康診断データを解析した結果、インフルエンザにかかりやすい人の傾向として、高血糖、肺炎の既往、多忙・睡眠不足、栄養不良、アレルギーの5つの特徴パターンが特定されたことを、弘前大学の寺田 明秀氏らが明らかにした。Scientific Reports誌2025年8月21日号掲載の報告。 インフルエンザ感受性の生物学的および環境的リスク要因は広く研究されているが、これらの要因間の複雑な関係を包括的に分析した研究は存在しないという。そこで研究グループは、複数の要因とその因果関係を明らかにするため、岩木健康増進プロジェクトの健診データ(2019年分)を解析した。 岩木健康増進プロジェクトでは、血液検査、生活習慣、職業、既往歴、体組成など3,000項目以上の健康データを収集しており、今回の研究ではインフルエンザ発症に関連する165項目を抽出して解析した。 ロジスティック回帰分析でインフルエンザ発症に関連する因子を抽出し、ベイジアンネットワーク解析でそれらの因果関係を可視化した。さらに相対的寄与(RC)値に基づくクラスタリングにより、インフルエンザに罹患しやすい参加者の特徴パターンを抽出した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は1,062人(平均年齢52.7±15.3歳、女性59%)であった。121人が過去1年間にインフルエンザに罹患していた。・ロジスティック回帰分析では、肺炎の既往、睡眠不足、生活環境(同居人数や通勤環境など)、栄養状態、糖代謝異常、アレルギーなどがインフルエンザ発症に関連する因子として抽出された。・ベイジアンネットワーク解析では、「既往歴・心肺機能」と「睡眠」がインフルエンザ発症に直接関与する主要因子として抽出された。また、「栄養・食品」から「血液検査」「アレルギー」「生活習慣」などを介して発症に至る間接経路も示された。・全参加者を対象としたクラスタリングでは、肺炎の既往、睡眠障害、高血糖関連指標が高い集団におけるインフルエンザ罹患率のオッズ比は3.6であった。・インフルエンザ罹患者を対象としたクラスタリングでは、高血糖、肺炎の既往、多忙・睡眠不足、栄養不良、アレルギーの組み合わせが、インフルエンザにかかりやすい人の特徴パターンであることが明らかになった。 研究グループは「本研究は、より高度で個別化された疾病予防および治療戦略の構築に貢献する可能性がある」とまとめた。

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どんな量でも飲酒は血圧を高める可能性あり

 量に関係なく、飲酒は血圧を上昇させる可能性があるようだ。新たな研究で、たとえわずかであっても飲酒量の増加は血圧の上昇と関連していることが明らかになった。この研究結果を報告した聖路加国際病院の鈴木隆宏氏らは、「飲酒をやめる、または飲酒量を減らすことで血圧が下がり、脳卒中や心疾患のリスクが低下する可能性がある」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に10月22日掲載された。 これまで、少しの飲酒なら血圧に大きな影響はないと考えられていたが、この研究結果はそうした考えに疑問を投げかけるものだ。鈴木氏は、「血圧に関しては、飲酒量が少なければ少ないほど良好な状態になることが、われわれの研究で示された。そして、飲酒量が多いと血圧は高くなる」と指摘。「これまでは、少量のアルコールであれば問題はないだろうと考えられてきた。しかし、われわれの研究結果は、アルコールは全く摂取しないのがベストであることを示している。つまり、たとえ少量の飲酒であっても、禁酒することが男女を問わず心臓の健康に有益な可能性がある」と米国心臓病学会(ACC)のニュースリリースの中で述べている。 鈴木氏らは今回の研究で、2012年10月から2024年3月までの間に聖路加国際病院で実施された35万9,717件の定期健康診断(以下、健診)のデータを分析した。受診者は健診の中で自身の飲酒量について報告していた。鈴木氏らはその回答に基づき受診者を、初回の健診の時点で飲酒の習慣がある群とない群の2群に分け、飲酒者が禁酒した場合と非飲酒者が飲酒を始めた場合のそれぞれが血圧に与える影響を調べた。鈴木氏は、「われわれの研究は、飲酒習慣のある人が禁酒することは血圧の改善に関連するのか、また飲酒習慣のない人が飲酒を始めた場合に血圧に影響があるのかを明らかにすることを目的としていた」と説明している。 その結果、飲酒量を減らすと血圧が低下することが示された。1日1~2ドリンク(1ドリンク=純アルコール10g)の飲酒をやめた女性では、収縮期血圧が−0.78mmHg、拡張期血圧が−1.14mmHg低下することが示された。また、同量の飲酒をやめた男性では、収縮期血圧が−1.03mmHg、拡張期血圧が−1.62mmHg低下していた。一方、新たに1ドリンクの飲酒を始めた人では血圧の上昇が見られ(収縮期血圧は0.78mmHg増加、拡張期血圧は0.53mmHg増加)、こうした傾向は男女いずれにおいても確認された。飲酒に伴う血圧の上昇は、ビール、ワイン、蒸留酒などアルコール飲料の種類にかかわらず認められ、重要なのは摂取量であることも示された。 今回の研究には関与していない米イェール大学医学部教授のHarlan Krumholz氏は、「この結果は、少量であったとしても飲酒をやめることで高血圧の予防や治療につながる可能性があることを示している」とニュースリリースの中で述べている。同氏はさらに、「このことは血圧の治療目標値が以前よりも低く設定されている現在において特に重要である」と付け加えている。

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高齢者の体重増減、何kg以上が死亡リスクに?

 高齢者において1年間で2kg以上の体重減少または3kg以上の体重増加は、要介護状態の発生および全死因死亡のリスク増加と有意に関連することが、静岡社会健康医学大学院大学の田原 康玄氏らによるしずおか研究(静岡多目的コホート研究事業)で明らかになった。結果は、Journal of the American Medical Directors Association誌2025年10月17日号に発表された。 本研究は、静岡県の健康保険および介護保険データを用いた観察研究で、2年連続で健康診断を受けた65~90歳の日本人高齢者11万7,927例を対象とした。研究チームは、1年間の体重変化と要介護状態の発生および全死因死亡との関連を調査した。ベースラインの臨床特性と1年間の体重変化は健康診断データから、要介護状態の発生と全死因死亡は保険データから取得した。追跡期間の平均は、要介護状態の発生について7.3年、全死因死亡について8.0年であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、要介護状態の発生は2万7,719例、全死因死亡は1万7,002例記録された。・解析の結果、1年間の体重変化と両アウトカムにはU字型の関連が観察され、2kg以上の体重減少、または3kg以上の体重増加が有意なリスク増加と関連していた。この関連性は、若年群(75歳未満)と高齢群の両方で一貫しており、ベースラインのBMIに関わらず認められた。さらに、低体重(BMI<19kg/m2)、肥満(BMI≧30kg/m2)、体重減少(2kg以上)、体重増加(3kg以上)を同じモデルに含めた場合、これらの因子はいずれも両アウトカムと独立して関連していた。 研究者らは、「高齢者において1年間で2kg以上の体重減少または3kg以上の体重増加が、要介護状態の発生および全死因死亡と有意に関連することを明らかにした。この結果は、高齢者の健康管理において、たとえ小さくても、意図しない体重変化に注意を払うことの重要性を示唆している。体重変化は健康状態の変化を反映しており、早期介入の契機となる可能性がある。本研究は、高齢者の健康維持における体重管理の重要性を裏付けるエビデンスを提供しており、臨床現場での高齢者の健康評価において体重変化のモニタリングが有用である可能性を示している」とした。

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日本の中学生のピロリ検査、陽性率1.2%で半数は家族感染

 日本は胃がんの罹患率が高く、胃がんの大きな原因であるヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)の感染率は40%である。成人のH. pylori検査と除菌は一般的になり、近年では若年層を対象とした集団に対する検査が拡大している。日本の義務教育制度での定期健康診断を活用し、中高校生を対象とした包括的な検査が複数の自治体で実施されている。神奈川県横須賀市で実施された、中学生を対象としたH. pylori検査と除菌についての報告が、Journal of Gastroenterology and Hepatology誌2025年10月号に掲載された。 本研究では、2019~21年の3年間に、横須賀市の中学2年生を対象としたH. pylori検査プログラムについて検証した。このプログラムは2段階アプローチを採用しており、まず尿中抗体検査を実施し、続いて尿素呼気試験による確認を行った。感染が確認された生徒は除菌治療を受け、その後のフォローアップ検査で結果を確認した。参加率、治療効果、副作用、家族内感染調査に関するデータが分析された。 主な結果は以下のとおり。・2019~21年に、横須賀市の中学生9,879例がH. pylori検査の対象となり、計6,270例が尿抗体検査を受けた。うち266例(4.2%)がH. pylori抗体陽性であった。その後、231例が確認の尿素呼気試験を完了し、73例(1.2%)が陽性と診断された。・除菌治療の1次治療はアモキシシリン+クラリスロマイシン+エソメプラゾールの3剤併用(PAC療法)、2次治療はアモキシシリン+メトロニダゾール+エソメプラゾールの3剤併用(PAM療法)だった。1次治療後の成功率は52.9%であり、2次治療後に94.7%に上昇した。軽度の有害事象(主に下痢)は、1次治療の27.0%、2次治療の22.0%で報告された。・家族調査では、陽性が確定した生徒の48.5%に少なくとも1人のH. pylori陽性の家族がおり、治療と並行して家族内感染への対策の重要性が示された。 研究者らは「日本の都市部在住の中学生におけるH. pyloriの有病率は1.2%と低く、3年間の検診受診率は63.5%と、国内他都市の報告値よりも低かった。1次治療および2次治療後の除菌率は全体で94.7%であったが、1次治療の除菌成功率が低く、対策の必要性が示唆された。より良い成果を得るためには、検査参加率および追跡調査を強化するためのより体系的なプログラムが必要である」としている。

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日本の大学生の過度な飲酒とうつ病との関連性は

 アルコール摂取とうつ病との関連性は、いまだ明らかになっていない。また、アジアの大学生を対象とした大規模研究で、この関連性の検証は行われていない。筑波大学の斉藤 剛氏らは、日本の大学生を対象に、過度な飲酒とうつ病との関連性を検証するため横断的研究を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年9月号の報告。 2019年4月〜2020年1月に、日本の2つの大学で定期健康診断を受けた20歳以上の学部生および大学院生を対象に調査を実施した。自記式質問票を用いて、飲酒頻度、1日当たりの飲酒量、過去1ヵ月間の過度な飲酒、うつ病自己評価尺度(CES-D)スコア、人口統計学的データの評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は学生4,535例。内訳は、男性2,775例(61.2%)、女性1,760例(38.8%)。・過度な飲酒者は、男性で1,076例(66.3%)、女性で548例(33.7%)であった。・1,474例(32.5%)がうつ病を有しており、そのうち528例(35.8%)は過度な飲酒者であった。・ロジスティック回帰分析では、複数の変数で調整した後でも、うつ病は大量飲酒との逆相関が認められた(オッズ比:0.59、95%信頼区間:0.36〜0.98)。 著者らは「アジアの大学生において、過度な飲酒とうつ病の負の相関が確認された。年齢や人種別に、アルコール摂取とうつ病との関係をより詳細に調査する必要がある」としている。

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国が進める医療DX、診療や臨床研究の何を変える?~日本語医療特化型AI開発へ

 内閣府主導の国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」では、分散したリアルワールドデータの統合とデータに基づく医療システムの制御を目指し、日本語医療LLM(大規模言語モデル)や臨床情報プラットフォームの構築、患者・医療機関支援ソリューションの開発などを行っており、一部はすでに社会実装が始まっている。2025年9月3日、メディア勉強会が開催され、同プログラム全体のディレクターを務める永井 良三氏(自治医科大学)のほか、疾患リスク予測サービスの開発および受診支援・電子カルテ機能補助システムの開発を目指すグループの代表を務める鈴木 亨氏(東京大学医科学研究所)・佐藤 寿彦氏(株式会社プレシジョン)が講演した。厚労省主導の医療DXとの関係、プログラムの全体像 厚生労働省主導の医療DXが、診療行為に必要最低限の3文書(健康診断結果報告書、診療情報提供書、退院時サマリー)6情報(傷病名、感染症、薬剤アレルギーなど、その他アレルギーなど、検査、処方)に絞って広く全国規模で収集・利活用(全国医療情報プラットフォームの創設、電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX)を目指すものであるのに対し、本プログラムではデータ取得対象は限定されるものの電子カルテデータに加えPHR、介護データ、医療レセプトや予後データなど含めたデータを収集し、臨床情報プラットフォーム構築や医療機関支援ソリューションの開発などを行うことを目的としている。2つのプロジェクトは、将来的には相互に連携していくことが期待される。 具体的には、SIPでは大きく以下の5つの課題が設定されており、医療機関・大学・関連企業からそれぞれ研究開発責任者が選任されている1)。課題A:研究開発支援・知識発見ソリューションの開発(臨床情報プラットフォーム構築と拠点形成、PHRによる突然死防止・見守りサービス開発など)課題B:患者・医療機関支援ソリューションの開発(受診支援・電子カルテ機能補助システムの開発、症例報告・病歴要約支援システム開発を通じた臨床現場支援など)課題C:地方自治体・医療介護政策支援ソリューションの開発課題D:先進的医療情報システム基盤の開発(ベンダーやシステムの垣根を超えた医療情報収集、僻地診療支援のためのクラウド型標準電子カルテサービスの開発など)課題E:大容量リアルタイム医療データ解析基盤技術の開発(大規模医療文書・画像の高精度解析基盤技術の開発) 同プログラムは2023年からの5年計画で進められており、可能なものから随時社会実装を進めつつ、今後は医療データプラットフォームの中核的病院への導入などを目指している。医療テキスト800億トークンを学習させた日本語医療LLMを構築 さらに令和5年度補正予算により生成AIの活用プロジェクトが開始され、日本語医療LLMの開発が進み、上記の各プロジェクトにおける応用が始まっている。現在世界中で使われている主なLLMでは、たとえばOpenAIのGPT-3の学習に使われた言語として日本語は0.11%に過ぎず、これらのLLMをベースに医療LLMを構築・利用した場合、・診断を行うLLMにおいて、日本人の症例や日本の疫学ではなく、英語圏の症例や疫学がベースに出力される・治療法を推奨するLLMにおいて、日本の医療/保険制度や法律に合わない出力がされるといった問題が生じうる。また、データ主権の観点からも、現在各国で政府主導の自国語LLM開発が進んでいる背景がある。 国立情報学研究所の相澤 彰子氏らは、さまざまな実臨床での利用に展開するためのベースモデルとして、医療テキスト800億トークンを学習させた日本語医療LLMのプレビュー版をすでに構築、医師国家試験で77~78%のスコア(注釈:尤度ベースと呼ばれる正解の算出方法に基づく)を達成した。開発したモデルは、推論時に利用するパラメータ数が220億と比較的軽量であるにも関わらず、700億クラスの海外モデルに匹敵する性能を示した。 この医療LLMはSIPの各プロジェクトへの組み入れが始まっており、診療現場の会話からカルテを下書きし鑑別疾患を提示するシステムや、感染症発生届の下書き支援システムなどの開発が行われている。また、計算機科学者と医師がタッグを組む形で、循環器用医療LLM、がん病変CT画像用医療LLM、健診支援医療LLMの開発がそれぞれ進められているという。電子カルテを活用した臨床情報プラットフォームや診断困難例サーチシステムがすでに始動 電子カルテには、診療録、検査データ、手術レポートなどの多くの情報が集積しているが、それらを匿名化・統合した状態で臨床研究に活用するには人的・時間的に大きな負担がかかっていた。SIPの課題A1として取り組まれている「臨床情報プラットフォーム構築による知識発見拠点形成」では、CLIDAS研究2)と称して多施設から複数のモダリティの診療データを標準化・収集するシステムを構築。国内11大学・2ナショナルセンターの電子カルテはすでに統一・連携されている。循環器領域では、PCI後のスタチン強度と予後の関係について3)など、CLIDASデータを用いた研究成果がすでに発表、論文化されているものもあり、今後も本データの臨床研究への活発な活用が期待される。 鈴木氏が責任者を務める課題A-3「臨床情報プラットフォームと連携したPHRによるライフレコードデジタルツイン開発」グループでは、NTTグループ約10万人の健診データ・約15年の追跡データを活用し、東京大学医科学研究所のスーパーコンピュータで疾患リスク予測モデルのアルゴリズム構築に着手。健診データを元に将来の疾患リスク(糖尿病・高血圧症・脂質異常症・心房細動)、検査や予防法の推奨などを提示する疾患リスク予測サービスの開発を行っている。将来的には、AIを用いた保健指導への展開も視野に開発中という。 佐藤氏が責任者を務める課題B-2「電子問診票とPHRを用いた受診支援・電子カルテ機能補助システムの開発」グループでは、日本内科学会地方会のデータ化された症例報告(約2万5千例)を基に、鑑別診断の際に参考となる疾患や病態を検索できるシステム(診断困難例ケースサーチ J-CaseMap)をすでに社会実装済で、日本内科学会会員は無料で利用できる。そのほか、電子カルテと連携した知識支援チャットボット(富士通と連携)や、再診時電子問診票、医療特化AI音声認識システムが開発中となっている。

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肥満者の約半数は肥満の相談を医療機関にしたくないと回答/ノボ

 ノボノルディスクファーマは、2021年度より実施している日本人9,400人(20~75歳)を対象とした、「肥満」と「肥満症」に関する意識実態調査の2025年度版を発表した。その結果、肥満症の認知率は13.0%と大きく進展した一方で、自身の肥満について「(医療機関へ)相談したくない」と回答した人は50.5%と、医療機関への相談意向は高くないことが判明した。医療機関に「肥満」を相談した人は1割に満たず【調査概要】調査期間:2025年6月23~26日調査対象:日本全国のBMI25以上の20~75歳の男女調査人数:9,400人調査方法:インターネット調査集計方法:47都道府県男女100ss(サンプルサイズ)となるようにウェイトバック集計を実施【調査結果の主なポイント】・肥満症の認知率は、前年比で4.3ポイント増の13.0%と、今までの推移(2024年度8.7%、23年度8.3%)の中で最も大きく進展した。「肥満症疑いあり」層における認知率は2025年度で13.5%、2024年度で10.8%、2023年度で10.2%と比較的認知率が高い層だったが、本年度は「肥満症疑いなし」層で前年度比5.4ポイント増の12.6%の認知率を獲得したことが全体の認知率を高めた要因と考えられる。・肥満症の「認知」には至らないものの、肥満と肥満症の違いを「聞いたことがある」と回答した人は33.7%と、過去調査(24年度25.6%、23年度25.4%)の中で最も高いスコアと伸び率を記録。・自身の肥満について「医療機関で相談したい」と回答した人は15.2%、「相談したくない」と回答した人は50.5%と、自身の肥満に関して医療機関への相談意向は高くなかった。肥満度別の医療機関への相談意向では、肥満度が1~3度へ高まるほど「かなり相談したい」と回答した人の率が高くなる一方、肥満4度(BMI40以上)では「まったく相談したくない」が31.3%となり、肥満区分の中で最も高いことが判明した。肥満4度の人の傾向として、肥満1~3度の人よりも肥満症の認知率が低く、医療機関に相談をしたくない理由として、肥満1~3度の人と比較して「相談しても無駄だと思ったから」「医療機関に行くとお金がかかるから」を挙げた人が多くみられた。・医療機関への相談意向が高くない原因として、自己責任感や病状の軽視などの心理面に加え、情報不足が相談のバリアになっていると考えられる。医療機関へ自身の肥満に関して相談した経験がない理由として高いスコアを獲得した項目は、「肥満は自己責任だと思うから」が29.1%と最も多く、次いで「医療機関へ行くとお金がかかるから」が23.1%、「相談するほどの肥満だと思っていないから」が20.3%だった。・全体の中で「自身の肥満の悩みを医療機関へ相談したことがある」と回答した人は9.0%で、病院受診・医師への相談のきっかけになったことを聞いたところ、「健康診断で勧められたから」が最も多く45.8%、次いで「肥満に伴う健康障害が心配だったから」が39.3%、次に「専門家の意見を聞きたかったから」が23.5%だった。また、「肥満症を認知している」層に、肥満症治療について調べる際に信頼する情報源を聞いたところ、「かかりつけ医・主治医」が36.4%、「専門家や医療機関のウェブサイト」が22.1%、「身近で肥満症を治療した経験がある人」が11.4%と、治療に関しては医療機関や専門家、または経験者からのアドバイスが重視されていることが判明した。 同社では、今回の調査結果を受けて「肥満症の疾患としての認知をさらに高めるとともに、調査でも明らかになったように、『相談フェーズ』における支援を強化することが求められる。今後も肥満症に取り組む企業として、患者さんが孤立することなく、医療機関とつながりながら適切な支援を受けられる環境の整備を目指していきたい」と語っている。

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日本人男性のCVDリスク、最適な予測指標はBMIではなかった

 日本人男性の将来の心血管疾患(CVD)リスクの評価において、従来広く用いられてきたBMIよりも腹囲身長比(waist-to-height ratio)や体の丸み指数(body roundness index)のほうが有用で、欧米での報告と同様に日本人男性でも腹囲が身長の約半分に達するとCVD発症リスクが上昇することが、京都府立医科大学の市川 貴博氏らによって明らかになった。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2025年8月23日号掲載の報告。 肥満は世界的に重要な公衆衛生上の課題であり、とくに中心性肥満はさまざまな代謝疾患の発症に関連することが報告されている。日本では主にBMIを用いて肥満を判定しているが、BMIでは内臓脂肪の蓄積を正確に反映することができないという限界がある。そこで研究グループは、大規模な日本人集団のデータをもとに、5つの異なる体格指標が肥満の重大な合併症であるCVDの発症にどのように関連するのかを13年間にわたって比較・検証した。 対象は、2008~21年にパナソニック健康保険組合が実施した健康診断を受診した16万656人(男性11万9,510人、女性4万1,146人)であった。身体測定、血液検査、問診結果を縦断的に収集し、BMI、腹囲、体型指数(a body shape index)、体の丸み指数、腹囲身長比の5つの体格指標のCVD発症予測能を比較した。主要評価項目は、心血管死、非致死性冠動脈疾患、非致死性脳卒中の主要心血管イベント(MACE)の発症率であった。Cox比例ハザードモデルを用いて5つの体格指標とMACE発症リスクとの関連を性別ごとに評価し、time-dependent ROC解析により各指標の予測能を比較した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は44.5±8.3歳であった。13年間の追跡期間中、男性では4,027例(3.4%)、女性では372例(0.9%)がMACEを発症した。・多変量解析の結果、男性では5つすべての体格指標がMACE発症と関連していた。1SD増加ごとのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -BMI HR:1.15(95%CI:1.11~1.18) -腹囲 HR:1.15(95%CI:1.12~1.19) -体型指数 HR:1.06(95%CI:1.02~1.09) -体の丸み指数 HR:1.16(95%CI:1.13~1.20) -腹囲身長比 HR:1.17(95%CI:1.13~1.21)・女性では、いずれの体格指標もMACE発症と有意な関連は認められなかった。・男性における各指標の予測精度を比較したところ、腹囲身長比と体の丸み指数のAUC値は他の3つの体格指標よりも高く、より高い予測能を持つことが明らかになった。 -BMI AUC値:0.586(95%CI:0.576~0.596) -腹囲 AUC値:0.598(95%CI:0.588~0.608) -体型指数 AUC値:0.563(95%CI:0.552~0.573) -体の丸み指数 AUC値:0.608(95%CI:0.598~0.618) -腹囲身長比 AUC値:0.608(95%CI:0.598~0.618)・CVD発症の予測のための最適なカットオフ値は、腹囲身長比が0.494、体の丸み指数が3.250であった。 これらの結果より、研究グループは「13年以上の追跡調査を受けた日本人男性において、体の丸み指数と腹囲身長比はBMI、腹囲、体型指数よりもCVD発症のより重要な予測因子であった。特定されたカットオフ値は、リスク層別化の改善とCVDリスク低減のための早期予防介入に役立つ可能性がある」とまとめた。

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20歳以降の体重10kg増加が脂肪肝リスクを2倍に/京都医療センター

 20歳以降に体重が10kg以上増えた人は、ベースライン時のBMIにかかわらず5年以内に脂肪肝を発症するリスクが約2倍に上昇し、体重変動を問う質問票は脂肪肝のリスクが高い人を即時に特定するための実用的かつ効果的なスクリーニング方法となり得る可能性があることを、京都医療センターの岩佐 真代氏らが明らかにした。Nutrients誌2025年8月6日号掲載の報告。 脂肪性肝疾患は、心血管疾患や代謝性疾患、慢性腎臓病のリスク増大と関連しており、予防と管理のための効果的な戦略の開発が求められている。脂肪肝に関連する質問票項目を特定することで、脂肪性肝疾患の高リスク者の早期発見につながる可能性があることから、研究グループは一般集団の健康診断データベースから収集した生活習慣情報を縦断的に分析し、脂肪肝リスクの高い個人を特定する質問票の有用性を検討した。 対象は、2011~15年にかけて、武田病院健診センターの健康診断受診者のうち、ベースライン時には脂肪肝は認められず、糖尿病や高血圧、脂質異常症、肝疾患などの既往歴もない20歳以上の1万5,063人であった。ベースライン時のBMIに基づいて、BMI値22未満群、22〜25未満群、25以上群の3つのグループに分類した。食習慣と生活習慣に関する質問票項目は、厚生労働省が特定健康診査事業のために提供している標準質問票に基づいて作成され、(1)食習慣・行動、(2)喫煙・飲酒習慣、(3)運動習慣、(4)体重変動、(5)睡眠の23項目で構成されていた。Cox比例ハザードモデルを用いて、ベースライン時の質問票データと5年間の追跡期間における脂肪肝発症率との関連性について、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・1万5,063人のうち、女性は8,294人(55.1%)、平均年齢は47.1歳、平均BMIは21.4であった。・追跡期間中央値4.2年で、1,889例(12.5%)が脂肪肝を発症した。脂肪肝の発症率は、ベースライン時のBMI値が高いほど有意に高かった(傾向のp<0.001)。 -BMI値22未満群 551/9,270例(5.9%) -BMI値22〜25未満群 898/4,519例(19.9%) -BMI値25以上群 440/1,274例(34.5%)・年齢、性別、代謝性疾患および肝障害に関連する因子を調整した後、脂肪肝発症の最も強い危険因子は20歳以降の10kg以上の体重増加であり、とくにBMI値22未満群で顕著であった。 -全体集団 調整HR:2.11、95%CI:1.90~2.34、p<0.001 -BMI値22未満群 調整HR:2.33、95%CI:1.86~2.91、p<0.001 -BMI値22〜25未満群 調整HR:1.43、95%CI:1.25~1.63、p<0.001 -BMI値25以上群 調整HR:1.41、95%CI:1.12~1.77、p=0.003・すべてのBMI群に共通する脂肪肝リスクの低減に関連する質問票項目は特定されなかったが、22未満群では牛乳および乳製品の日常摂取(調整HR:0.75、p=0.001)、22〜25未満群では海藻およびきのこの日常摂取(調整HR:0.63、p=0.006)、25以上群では睡眠満足度(調整HR:0.80、p=0.039)がそれぞれ脂肪肝リスクの低減と最も強く関連していた。 これらの結果より、研究グループは「本研究は、脂肪肝発症のリスクを同定し、低減させるための質問票の潜在的な有用性を強調するものである。質問票に基づいて健診当日にリスクを伝え、生活習慣改善につなげる即日フィードバックのアプローチは、脂肪肝発症のリスクを低減させ、脂肪性肝疾患の予防に貢献する可能性がある」とまとめた。

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