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1.

ACC/AHA脂質異常症GLで格上げの石灰化スコア、30分の心臓ドックで評価/CVIC

 心臓画像診断を専門とする医療法人社団CVIC心臓画像クリニック飯田橋(以下、CVIC)は、30分で心血管リスクを可視化する新サービス「スピーディー心臓ドック」の提供を開始した。これは冠動脈石灰化スコア、大動脈石灰化スコア、心血管バイオマーカー検査を組み合わせたもので、非造影CTおよび血液検査によって行われる。この中に含まれる冠動脈石灰化スコアは、近年その重要性が明らかになっており、米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)の合同委員会が関連学会とともに2026年3月に公開した『脂質異常症管理ガイドライン2026年版』1)において、推奨度が引き上げられた。そこで、CVICは2026年5月27日にメディアラウンドテーブルを開催し、CVIC理事長の寺島 正浩氏が、突然死を防げない日本の健診制度の課題、心血管病予防における画像診断の役割について解説した。最初の発作が最後の発作、突然死の半数以上は症状なし 寺島氏がまず指摘したのは、一般的な健康診断だけでは冠動脈疾患のリスクを十分に把握しにくく、心臓突然死を防ぐことが難しいという問題である。日本の健診で広く行われている心電図や胸部X線は、低コストで簡便なスクリーニング検査として有用である一方、冠動脈の狭窄や動脈硬化の進展を直接評価する検査ではない。 米国のフラミンガム研究では、突然死の50%以上はまったく症状がなかったことが報告されている。また、急性心筋梗塞の68%は50%未満の軽度冠動脈狭窄から生じていたという報告もある。寺島氏は、この突然性が心臓病の問題であると述べる。 一方で、心筋梗塞の多くは予防可能でもある。INTERHEART研究に基づき、喫煙、脂質異常、高血圧、糖尿病、内臓脂肪、ストレス、食事、運動、飲酒といった9つの修正可能な危険因子により、心筋梗塞リスクの9割が説明されることを紹介した。寺島氏は、9割予防可能な病気で死亡する人が後を絶たないことを指摘。その背景には「自分は大丈夫と考え、行動変容に至らない人が多いことがある」と述べた。数字は忘れても自分の画像は忘れない そこで重要になるのが、リスクの「可視化」である。寺島氏は、血圧、LDL-C、血糖値といった数値は忘れてしまうが、冠動脈や大動脈に石灰化がある画像を見れば、その画像は忘れないと指摘する。実際に、画像を提示することで、真剣に治療に取り組むようになった症例を多く経験してきたとのことだ。また、2018年のVIPVIZA試験では頸動脈エコーの結果を視覚的なレポートとして提示することで、治療効果が増大することも報告されている。クラス1推奨に引き上げられた冠動脈石灰化スコア ACC/AHAの『脂質異常症管理ガイドライン2026年版』では、動脈硬化性疾患のリスク評価方法が変更され、PREVENT-ASCVD方程式が採用された。また、PREVENT-ASCVD方程式で中等度リスク、ボーダーラインリスクと判定され、脂質低下療法の開始・強度について判断が難しい場合に、冠動脈石灰化スコアを用いてリスクを再分類することがクラス1推奨として位置付けられた。 冠動脈石灰化スコアは、非造影CTで冠動脈壁の石灰化を定量化する指標である。冠動脈石灰化スコアによる石灰化の分類は、0をなし、1~99を軽度、100~299を中等度、300~999を高度、1000~を超高度とする。このスコアが、冠動脈疾患死亡率や心血管病死亡率と強く関連する。 さらにCVICでは、冠動脈だけでなく大動脈の石灰化にも注目する。大動脈石灰化は冠動脈石灰化よりも先に出現する早期の動脈硬化マーカーとされ、冠動脈石灰化スコアが0であっても60%で大動脈石灰化が認められるとのことだ。30分で完了する「スピーディー心臓ドック」 今回発表された「スピーディー心臓ドック」は、こうした心血管リスク評価を短時間で実施するサービスである。所要時間は来院から検査終了まで約30分。検査方法は非造影CTによる冠動脈・大動脈評価と採血で、検査内容は冠動脈石灰化スコア、大動脈石灰化スコア、心血管バイオマーカー検査で構成される。心血管バイオマーカーは、NT-proBNP、高感度心筋トロポニン、apoB、高感度CRPの4項目である。 寺島氏は、通常の健診では測定されないこれらの項目を組み合わせることで、より詳細な心血管リスクを把握できると説明した。CVICでは、以下をすべて満たす場合を「パーフェクトスコア」とし、心血管リスクがきわめて低い状態として示している。冠動脈石灰化スコア0大動脈石灰化スコア0NT-proBNP<55pg/mLapoB<65mg/dL(または70mg/dL)心筋トロポニンT<0.003ng/mL高感度CRP<0.02mg/dL 講演では、実際の症例も紹介された。そのなかで紹介された60歳女性は、LDL-C、HDL-C、TG、総コレステロールは、健康診断の正常値の範囲に収まっていたという。冠動脈石灰化スコアも0であったが、大動脈石灰化スコアをみると約700であり、中等度の石灰化が認められた。また、apoBも106mg/dLと軽度高値であった。寺島氏は「大動脈石灰化スコアをとることで、このような方が見つかることがある。可視化することで、行動変容につながっていくのではないかと期待している」と語った。Q&A――石灰化スコアは不可逆とのことであるがどれくらいの頻度で実施すべきか? 1回測定したらその後は不要とする意見があるなど、議論が分かれているが、一般的には5年ほどの間隔を空けて測定するのがよいのではないかとされている。しかし、CVICとしては、冠動脈石灰化スコアが100以上、ないしは300以上の方は、2~3年に1回は検査を実施したほうがよいと考えている。このような方のなかで、生活習慣を気にしない方は次回の測定でスコアが2倍になっている場合もある。一方で、生活習慣が改善されてスコアの変動がみられないという方もいる。このような経過を追うために、石灰化スコアを活用するのもよいのではないか。 石灰化は不可逆であるからこそ、早めの対策が重要である。9つの修正可能な危険因子を修正することで、動脈硬化の進行を遅らせることができる。 なお、「スピーディー心臓ドック」は自費検査で、CVICは通常価格を8万8,000円としているが、2026年10月末日まで3万3,000円で提供する予定とのことだ。

2.

働き盛り世代の心房細動が腎機能低下の加速と関連/京大

 日本の就労世代を対象とした全国規模のコホート研究において、新規に確認された心房細動(AF)は、eGFR低下の加速およびeGFRが30%以上低下するリスクの増加と関連していたことを、京都大学の森 雄一郎氏らが示した。JAMA Network Open誌2026年5月14日号掲載の報告。 AFは心不全や慢性腎臓病(CKD)の合併症としてよく知られているが、就労世代の成人では単独の所見として健康診断で偶然見つかることもある。若年~中年層のAFは将来的な心不全リスク上昇と関連することが知られている一方、その後の腎機能低下と関連するかどうかは明らかになっていない。そこで研究グループは、就労世代におけるAF確認後の腎機能推移を検討するため、後ろ向きコホート研究を実施した。 研究では、2015年4月1日~2023年3月31日の全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康診断記録(心電図およびeGFR)と保険請求データを用いた。対象は、ベースライン時に洞調律で、AFや心血管疾患、末期腎不全の既往歴のない35~59歳の健康診断受診者であった。その後約1年間の外来受診歴および次回健診時の心電図所見から新たにAFが確認された個人を、確認されなかった個人と1対5で傾向スコアマッチングした。主要アウトカムは線形混合効果モデルを用いて推定したeGFRの年間低下率、副次アウトカムはCox比例ハザードモデルを用いて評価したeGFRの30%以上の低下とした。参加者を、全死因死亡イベント、腎代替療法開始、保険資格喪失、2023年3月31日のうち最も早い時点まで追跡した。 主な結果は以下のとおり。●解析対象は、マッチング後の14万1,060例(新規AF群2万3,510例、非AF群11万7,550例)であった。平均年齢49.8歳、男性81.8%、追跡期間中央値4.73年。●新規AF群では、非AF群と比較してeGFRの年間低下率が有意に大きかった。 ・新規AF群 -1.23mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:-1.26~-1.21) ・非AF群 -0.94mL/分/1.73m2/年(95%CI:-0.95~-0.93) ・群間差 -0.29mL/分/1.73m2/年(95%CI:-0.32~-0.26)(p<0.001)●AF確認前のeGFR低下は両群ともに-0.99mL/分/1.73m2/年であり、AF確認後に腎機能低下が加速した可能性が示唆された。●新規AFは、eGFRが30%以上低下するリスク増加と関連していた(ハザード比:2.91、95%CI:2.72~3.11、p<0.001)。●7年時点でのeGFRの30%以上低下の累積発生率は、新規AF群で11.0%(95%CI:10.2~11.7)、非AF群で4.9%(95%CI:4.7~5.2)であった。●女性および糖尿病患者ではAF確認後のeGFR低下がさらに顕著であった。一方、ベースラインの蛋白尿の有無による有意な交互作用は認められず、蛋白尿の有無にかかわらず同様にeGFRが低下していた。●その後の健康診断でもAFが再確認された群は、洞調律へ復帰していた群と比較してeGFR年間低下率が有意に大きかった(-1.55 vs.-1.15mL/分/1.73m2/年、p<0.001)。 研究グループは「これらの結果は、就労世代のAF管理では腎機能も重要であることを示唆している。AFがCKD進行に及ぼす累積的な影響やAF治療による腎保護効果についてはさらなる研究が必要」としている。

3.

眼底写真を基にした「網膜年齢」が健康状態を知る手がかりに?

 目は心の窓であるだけでなく、その人の健康状態を映し出す窓でもある――そんな研究結果が発表された。この研究によると、網膜の早期老化は、糖尿病や心疾患といった重大な病気の兆候となる可能性があるという。東北大学大学院医学系研究科眼科学分野教授の中澤徹氏らによるこの研究結果は、「Communications Medicine」に4月8日掲載された。 網膜は、眼球の奥にある光を感知する細胞層である。研究グループによると、網膜は血管や神経の状態を非侵襲的に観察できる部位であることから、眼の画像データを解析して全身の健康状態や疾患リスクを読み解く「オキュロミクス」と呼ばれる新たな研究領域が注目を集めている。 今回の研究で中澤氏らは、健康診断で撮影された疾患のない2万7,214人の眼底写真5万595枚を用いて、「網膜年齢」を推定する人工知能(AI)モデルを開発した。モデルは年齢推定に加え、過去2〜3カ月間の平均的な血糖状態を反映するHbA1cを学習させるマルチタスク学習と、5つのAIモデルの予測結果を組み合わせて最終的な予測を行うアンサンブル学習を組み合わせる設計とした。その後、別の疾患のない成人から得られた7,288枚の眼底写真を用いて年齢予測能を検証した(内部検証)。モデルの性能は平均絶対誤差(実年齢と推定網膜年齢の平均誤差)を用いて評価された。 その結果、内部検証での平均絶対誤差は2.78歳であり、独立した135眼の眼底写真を用いた外部検証での平均誤差は3.39歳、海外の外部集団4,992眼の眼底写真を用いた検証での平均誤差は8.63歳であった。また、5つのモデルの予測のばらつきが中央値より小さい場合には、年齢予測の精度が高くなる傾向が認められた。さらに、全身性疾患を有する8,467人のコホートにおいて、網膜年齢ギャップ(推定網膜年齢と実年齢の差)は、糖尿病、心疾患、脳卒中の既往がある人では有意に大きく、これらの疾患のある人では、網膜が実年齢より「老けて見える」可能性が示唆された。 研究グループは、こうした画像のAI解析は、定期健診の中で病気の早期発見に役立つ可能性があるとしている。中澤氏は、「眼底画像は定期的な健康診断の一環として撮影される非侵襲的な検査であり、新たに何かをする必要はほとんどない。このAIモデルは、臨床現場の通常の診療フローにほぼそのまま組み込めるだろう」とニュースリリースで述べている。 中澤氏はさらに、「現在、1万人以上を対象に3年間追跡するコホート研究を計画しており、網膜年齢に関する指標が将来的な心血管疾患やその他の全身疾患の発症と関連するかを検証する予定である」と述べている。

4.

パーキンソン病患者は腎機能低下リスクが約1.9倍/慶應義塾大

 わが国の全国規模の医療保険請求データと健康診断データを用いた疫学コホート研究の結果、パーキンソン病はその後の腎機能低下リスク上昇と関連していることが、慶應義塾大学の満野 竜ノ介氏らによって示された。Nephrology Dialysis Transplantation誌オンライン版2026年4月15日号掲載の報告。 近年、慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全(ESKD)などの腎機能低下がパーキンソン病の発症リスク上昇と独立して関連していることが示されているが、パーキンソン病発症後の腎転帰については十分に検討されていない。そこで研究グループは、大規模集団ベースコホートを用いて、パーキンソン病患者とパーキンソン病のない成人の間で腎機能低下のリスクを比較した。 研究ではDeSCデータベースを用いて、2014年4月~2024年8月に少なくとも1回の健康診断を受けた18歳以上の成人200万793人を特定した。すでにESKD既往歴または腎代替療法導入歴のある患者などを除外した165万9,421人(年齢中央値68歳、男性41.9%)を解析対象とした。 主要評価項目は、ESKDへの進行(追跡時のeGFRが15mL/分/1.73m2未満)、腎代替療法の開始、ベースラインからのeGFRの30%以上低下を含む複合腎アウトカムとした。初回健康診断から複合腎アウトカムの発生、保険制度からの脱退(死亡を含む)、2024年8月のいずれか早い時点まで追跡した。 主な結果は以下のとおり。・コホート全体で1万1,497例(0.7%)がベースライン時点でパーキンソン病を有していた。・中央値1,092日(四分位範囲:631~1,520)の追跡期間中、複合腎アウトカムが発生したのは、パーキンソン病群361例、非パーキンソン病群3万2,974例であった。・Kaplan-Meier解析では、パーキンソン病群は非パーキンソン病群に比べて複合腎アウトカムのリスクが有意に高かった(log-rank検定のp<0.001)。・年齢、性別、高血圧、糖尿病、ベースラインのeGFRなどを調整した多変量Cox比例ハザードモデルでは、パーキンソン病は複合腎アウトカムと独立して関連していた(ハザード比:1.91[95%信頼区間:1.72~2.12])。・女性およびパーキンソン病治療薬投与群では、腎機能低下との関連がより顕著であった。・この関連性は、認知症や起立性低血圧、排尿障害などを除外した複数の感度分析でも一貫していた。 研究グループは、「今回の研究結果は、パーキンソン病が腎機能低下の臨床的に重要なリスク因子である可能性を示唆している。パーキンソン病の長期的な管理の一環として腎機能をモニタリングすることは、リスクの高い患者の特定に役立つ可能性がある」とまとめた。

5.

特定健診の「2cm2kg減」は適切? 3万人の代謝指標との関連を検討

 日本の特定健診・特定保健指導では、生活習慣改善の目安として「腹囲2cm・体重2kgの減少(2cm2kg)」が推奨されている。しかし、この目標達成が実際に代謝指標の改善と結びついているか検討した研究は乏しい。そこで、笠原 健矢氏(京都府立医科大学)らの研究グループは、健診コホートデータを用いて2cm2kg目標の妥当性を検討した。その結果、2cm2kg達成は、血糖、血圧、脂質、肝機能といった代謝指標の改善と有意に関連し、実務上の目安としておおむね妥当であることが示唆された。本研究結果は、Obesity誌オンライン版2026年4月4日に掲載された。 研究グループは、2020年にパナソニック社の健康診断を受けた40歳以上のうち、特定保健指導の対象基準に該当する3万240人を解析対象として観察研究を実施した。ベースラインを2020年の健康診断時、評価時点を1年後とし「腹囲が2cm以上減少し、かつ体重が2kg以上減少すること」を「2cm2kg達成」と定義した。2cm2kg達成群と未達成群における代謝指標(血糖、HbA1c、収縮期血圧、拡張期血圧、TG、HDL-C、LDL-C、AST、ALT、γ-GTP)の変化量を比較した。さらに、腹囲・体重の減少量に応じた用量反応関係や、代謝改善を予測する最適カットオフ値についても検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象者のうち、男性の割合は89.6%であった。ベースライン時の平均年齢は52.1歳、平均BMIは27.1kg/m2、平均腹囲は93.3cm。・2cm2kg達成群は5,243人、未達成群は2万4,997人であった。なお、達成群における実際の平均変化量は腹囲-5.19cm、体重-4.93kgであり「2cm2kg」より大きく減少していた。・2cm2kg達成群は未達成群と比較して、以下の代謝指標について1年後の変化量が有意に良好であった(いずれもp<0.0001)。達成群の代謝指標の変化量は以下のとおり。 血糖:-3.77mg/dL HbA1c:-0.15% 収縮期血圧:-4.71mmHg 拡張期血圧:-3.42mmHg TG:-40.14mg/dL HDL-C:+3.19mg/dL LDL-C:-7.62mg/dL AST:-6.54U/L ALT:-13.98U/L γ-GTP:-18.81U/L・腹囲および体重について、1cm1kg、2cm2kg、3cm3kgと減少量が大きくなるにつれて、各代謝指標の改善幅が大きくなるという用量反応関係が認められた。血糖変化はそれぞれ-2.85mg/dL、-3.77mg/dL、-5.26mg/dLであった。・腹囲・体重の減少量が大きいほど、血糖、血圧、TG、HDL-Cの改善達成のオッズも上昇した。体重が3kg超減少した集団では、ほぼ不変の集団と比較して血糖改善(オッズ比[OR]:1.91、95%CI:1.70~2.16)、血圧改善(同:2.24、2.00~2.51)、TG改善(同:2.75、2.46~3.07)、HDL-C改善(同:2.62、2.11~3.25)のオッズが高かった。・ROC解析の結果、代謝改善を予測する最適なカットオフ値はおおむね腹囲-2.1~-0.7cm、体重-1.7~-0.8kgに収まり、2cm2kgという目標設定を支持する結果であった。ただし、AUCは0.58~0.63であり、予測能としては高くなかった。 本研究結果について著者らは、日本の特定健診・特定保健指導における2cm2kgという目標は代謝改善と関連しており、日本の保健指導において2cm2kgの目標を設定することの妥当性を支持するものであったと結論付けた。一方で、本研究は単一企業の就労者コホートを対象とした観察研究であり男性が占める割合が多いこと、保健指導の因果を示したものではないこと、2cm2kg達成群の実際の減少量が目標値より大きかったことなどの限界も指摘している。

6.

加熱式タバコは2型糖尿病罹患と関係するか/JIHS

 近年、紙巻タバコに代わり加熱式タバコ(HTP)での喫煙が増えている。HTPの健康への影響のエビデンスはまだ少ないが、糖尿病罹患との関連はあるのだろうか。このテーマについて、国立健康危機管理研究機構(JIHS)の胡 歓氏らの研究グループは職域多施設研究(J-ECOHスタディ)から約3万人を追跡調査した。その結果、HTPのみで喫煙している人は、紙巻タバコのみで喫煙している場合と比較し、2型糖尿病発症のリスク低下と関連していなかったことがわかった。American Journal of Preventive Medicine誌オンライン版4月7日号に掲載。喫煙者の糖尿病罹患リスクは非喫煙者と比べ高い 研究グループは、J-ECOHスタディのベースライン時(2018年4月~2019年3月)に2型糖尿病を有していなかった参加者2万9,584人(男性82.5%、平均年齢45.9歳[標準偏差9.9])を対象に調査を行った。参加者は、自己申告によるタバコの喫煙状況に基づき、非喫煙者、元喫煙者、紙巻タバコのみで喫煙する者、HTPのみで喫煙する者、および紙巻タバコとHTPの両方で喫煙する者の5群に分類した。2型糖尿病の新規発症は、2019~25年に実施された健康診断で特定された。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定はCox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・14万797人年の追跡期間中、2,141人が2型糖尿病を発症した(1,000人年当たり15.2)。・喫煙する群(1,000人年当たり18.5~21.7)では、喫煙歴のない群(1,000人年当たり11.3)と比較し、糖尿病の罹患率が高かった。・喫煙歴のない群と比較して、HTPのみで喫煙する群(HR:1.61、95%CI:1.39~1.86)、紙巻タバコとHTPの両方で喫煙する者(HR:1.76、95%CI:1.48~2.09)、および紙巻タバコのみで喫煙する者(HR:1.53、95%CI:1.34~1.74)は、糖尿病罹患のリスクが高かった。・喫煙歴のある人の中で、HTPのみで喫煙する人の糖尿病リスクは、紙巻タバコのみで喫煙する人とほぼ同等だった(HR:1.01、95%CI:0.86~1.18)。これは、追跡期間中にリスクの有意な低下が認められなかったことを示唆している。・すべてのタバコ喫煙グループで、1日当たりのタバコ製品の喫煙量と糖尿病リスクとの間に用量反応関係が認められた。 研究グループは、この結果から「HTPのみで喫煙している人(そのほとんどが過去に紙巻タバコの喫煙経験あり)において、追跡期間中、HTPのみでの喫煙は紙巻タバコのみでの喫煙と比較して、2型糖尿病のリスク低下とは関連していなかった。本研究の結果では、リスクの上昇がHTP使用の独立した影響によるものか、あるいは過去の紙巻タバコ曝露の残留効果によるものかを区別できないため、HTP使用者と紙巻タバコ喫煙者との間で糖尿病リスクが時間経過とともに異なるかどうかを評価するには、より長期の追跡調査が必要である」と結論付けている。

7.

がんサバイバーの運動習慣、死亡だけでなく要介護化リスクとも関連

 がん医療の進歩により、がんサバイバーは増加しているが、その後の生活機能や自立の維持は重要な課題となっている。今回、日本の大規模データを用いた研究で、がんサバイバーにおける日常的な身体活動が、死亡だけでなく新規の要介護認定リスクとも関連する可能性が示された。研究は、国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部の中塚清将氏、国立長寿医療研究センター老年社会科学研究部の小野玲氏、九州大学大学院医学研究院の福田治久氏らによるもので、詳細は2月16日付で「BMJ Open」に掲載された。 がんサバイバーに対する身体活動は、死亡や再発リスクの低下、QOL改善と関連することが報告され、ガイドラインでも推奨されている。しかし、複数のがん種を対象に、1年以上の習慣的身体活動と長期的な機能的アウトカムとの関連を大規模データで検討した研究は限られている。特に、要介護化のような社会的・制度的指標を用いた検討は十分ではない。そこで本研究は、日本の介護保険(LTCI)データを活用し、がんサバイバーにおける1年間の習慣的身体活動が死亡および要介護認定に与える影響を検証することを目的とした。 本研究は、日本の13自治体が参加する大規模データベース「Longevity Improvement & Fair Evidence study(LIFE Study)」に登録された2014年4月から2022年3月までのレセプトおよび健診データを用いた後ろ向きコホート研究である。健康診断を受けた47万1,511人のうち、健診受診までの1年間にがんの診断があるなどの条件を満たした3万9,435人のがんサバイバーを解析対象とした。各参加者は最大約5年間追跡された。主要評価項目は、新規の要介護認定または全死亡の複合アウトカムとした。要介護認定は、自治体の担当職員が心身の状態を調査し、コンピュータ判定と専門職チームの審査を経て決定される制度上の指標で、日常生活動作(ADL)の低下を示す。全死亡はレセプトデータに基づいて把握した。身体活動は健診の項目より、「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施」と「日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施」の、「はい・いいえ」の回答から運動とウォーキングの有無を把握した。解析では、年齢や生活習慣などの要因を調整した生存時間解析を行い、身体活動と死亡および要介護認定との関連を検討した。さらに、年齢層別や主要ながん種別の解析も実施した。 身体活動は「運動とウォーキングの両方を行っている群」1万3,536人(34.3%)、「運動またはウォーキングのいずれかを行っている群」1万1,609人(29.4%)、「身体活動なし群」1万4,290人(36.2%)の3群に分類された。 65~74歳のがんサバイバーでは、「身体活動なし群」は「運動とウォーキングの両方を行っている群」と比べ、全死亡または新規の要介護認定リスクが有意に高かった(調整後ハザード比〔HR〕1.72、95%信頼区間〔CI〕1.52~1.94)。 75歳以上でも同様の傾向がみられ、「運動またはウォーキングのみ」の群(HR 1.51、95%CI 1.29~1.85)および「身体活動なし群」(HR 1.66、95%CI 1.43~1.92)は、いずれも「運動とウォーキングの両方を行っている群」と比べ、全死亡または要介護認定リスクが高かった。 全死亡および要介護認定を個別に解析した補足解析でも、「身体活動なし群」は「運動とウォーキングの両方を行っている群」と比べてリスク上昇が認められた。全死亡のHRは1.87(95%CI 1.65~2.12)、要介護認定のHRは1.33(95%CI 1.14~1.54)であった。 さらに、身体活動の影響はがん種によって異なる可能性が示された。 著者らは、がんサバイバーにおける日常的な身体活動が死亡および要介護認定の予防につながる可能性を示したと結論づけた。とくに高齢者で効果が大きい可能性があり、日常生活での継続的な身体活動の重要性を強調している。 本研究の限界として、治療状況が一様でない可能性や、身体活動を自己申告で評価している点、認知・心理状態など未測定因子の影響などを挙げている。

8.

肝線維症、40歳以上の有病率と主な要因/Lancet

 欧州の40歳以上の一般集団において、診断されていない肝線維症(肝硬度測定[LSM]8kPa以上)が4.6%に認められ、その主な要因は代謝因子とアルコール摂取であることが示唆された。スペイン・Hospital Clinic of BarcelonaのIsabel Graupera氏らLiverScreen Consortium Investigatorsが、9ヵ国(スペイン、デンマーク、イタリア、スロバキア、クロアチア、英国、フランス、オランダ、ドイツ)の35施設(3次医療機関16施設を含む)で実施した大規模前向きコホート研究「LiverScreen project」の結果を報告した。小規模な単一国の研究では、未診断の肝線維症が一般集団で広くみられることが示唆されているが、実際の有病率やリスク因子はわかっていなかった。著者は、「肝硬変や合併症への進行を予防するための個別化された介入には、早期発見がきわめて重要となる」とまとめている。Lancet誌2026年4月11日号掲載の報告。40歳以上の一般住民を対象にスクリーニング検査を実施 研究グループは、未診断の肝線維症の有病率と代謝因子およびアルコール摂取との関連性を評価する目的で、40歳以上の一般住民を募集し登録した。募集方法は、定期健康診断または経過観察の1次医療施設受診者からの無作為抽出(スペイン、クロアチア、フランス、ドイツ)、社会保障番号または郵便番号の無作為抽出後オンラインまたは電話で招待(デンマーク、スペイン、イタリア、英国、オランダ)、既存の集団スクリーニングプログラムまたは職業健康診断に参加した個人(スペイン、ドイツ、スロバキア、フランス)であった。 肝線維化は、FibroScan装置を用いたVibration-controlled Transient Elastography(VCTE)でLSMを推算し、スクリーニング検査でLSMが8kPa以上、またはアラニンアミノトランスフェラーゼが正常上限値の1.5倍以上のいずれかまたは両方を満たす場合を陽性と定義した。 参加者はスクリーニング検査を受診し、陽性の場合は慢性肝疾患の診断確定のため肝臓専門医による診察を受けた。主要アウトカムは、LSMが8kPa以上の参加者の割合であった。未診断の肝線維化の有病率は4.6%、線維化を伴う慢性肝疾患の推定有病率は1.6% 2018年5月2日~2024年12月19日に6万7,074例が招待され、3万909例が参加に同意した。このうち3万541例がスクリーニング受診を完了し、除外基準を満たしていた参加者などを除く3万199例が解析対象となった。 解析対象集団の背景は、平均年齢58歳、女性が57%、白人が89%で、70%が1つ以上の代謝リスク因子を有し、59%が飲酒を報告し、6.1%は有害な飲酒を報告した。 スクリーニング検査が陽性であった参加者は3万199例中2,075例(6.9%)であり、主要アウトカムであるLSMが8kPa以上の参加者は1,376例(4.6%)であった。LSMの上昇は、肥満、2型糖尿病、および有害な飲酒と強い相関が認められた。 スクリーニング陽性の2,075例のほか、VCTE信頼性不良または実施不能例342例および見落とし40例を含む計2,457例が肝臓専門医の紹介受診となり、1,491例(61%)が追跡調査を完了した。1,491例中477例(32%)が線維化を伴う慢性肝疾患と診断され、全体の推定有病率は1.6%(477/3万199例)であった。線維化を伴う慢性肝疾患症例では脂肪性肝疾患が93%(443/477例)を占めた。

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受診ごとのBMI変動、とくに女性で認知症リスクと関連

 これまでの研究では、認知症リスクを検討する際に、BMIのスロープや変動を別の概念として区別することは一般的ではなかった。東北医科薬科大学の佐藤 倫広氏らは、スロープ調整済み受診ごとのBMI変動と認知症リスクとの関連性を評価した。International Journal of Obesity誌オンライン版2026年3月13日号の報告。 5年間の年次健康診断を受けた50~74歳を対象に、日本の国民健康保険データ(2015~23年)を用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。BMI変動は、経時的な傾向を考慮するため、スロープ調整済み標準偏差(SD)を用いて評価した。抗認知症薬の投与開始を認知症の代理指標とし、死亡を競合リスクとして考慮したFine-Gray競合リスクモデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・参加者30万3,042例(平均年齢:66.6歳、男性の割合:38.6%)を平均2.17±1.19年間フォローアップした結果、665例に抗認知症薬(主にドネペジル:67.4%)の投与が開始され、2,394例に死亡が認められた。・ベースライン時のBMIおよび年間BMI変化量を含む共変量を調整した後、スロープ調整済みBMI-SDの最高三分位群(0.50kg/m2以上)は、最低三分位群(0.31kg/m2以下)と比較して、認知症リスクの増加と有意な関連が認められた。・年間BMI変化量は、認知症リスクとU字型の関連を示し、とくに第1三分位群(BMI減少率が-0.31%以下)で顕著な上昇が認められた(ハザード比:1.60、95%信頼区間:1.32~1.93)。・ベースライン時のBMIを除くベースライン共変量を含む基本モデルでは、ベースライン時のBMIを追加した場合とスロープ調整済みBMI-SDを追加した場合で、C統計量の改善に有意な差は認められなかった(+0.0147 vs.+0.0146)。一方、BMI低下-0.31%以下を追加した場合、C統計量の改善が最大であった。・スロープ調整済みBMI-SDの最高三分位群と認知症リスクとの関連は、男性よりも女性のほうが強かった(p for interaction=0.0039)。 著者らは「スロープ調整済みBMIの変動は、とくに女性において認知症リスクと独立して関連しており、BMI低下パターンは認知症の強力なリスク因子であることが示唆された。ルーチンの認知症スクリーニングに、受診ごとのBMI変動の縦断的モニタリングを組み込むことは有益な可能性がある」と結論付けている。

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BMIでは見えない死亡リスク?新体型指標の可能性~日本人大規模コホート

 体格評価に広く用いられるBMI(体格指数)だが、その限界も指摘されている。近年、体型の丸みや腹囲を反映する指標であるBody Roundness Index(BRI)や、体型形状を考慮したA Body Shape Index(ABSI)が提案されている。今回、日本人約78万人を対象とした大規模研究で、これらの指標が死亡リスク評価に新たな視点をもたらす可能性が示された。研究は、東京大学大学院医学系研究科ヘルスサービスリサーチ講座の木村悠哉氏らによるもので、詳細は1月31日付で「Journal of Obesity」に掲載された。 BMIは体脂肪の指標として広く用いられているが、脂肪と筋肉を区別できない点や脂肪分布を反映しない点が課題とされている。同じBMIでも体組成や死亡リスクが異なる可能性があり、近年は腹囲や内臓脂肪を反映した新たな体型指標であるBRIやABSIが提案されている。欧米や糖尿病患者を対象とした研究では、これらの指標がBMIより死亡リスク評価に優れる可能性が示唆されているが、アジア人の一般集団でのエビデンスは限られている。本研究では、日本人を含むアジア集団において、BMI・BRI・ABSIと全死亡との関連を比較し、BMIカテゴリ内でのより詳細なリスク層別化が可能かを検証することを目的とした。 本研究では、全国を代表する日本のレセプトデータベース(2014~2022年)を用いた後ろ向きコホート研究として、健康診断を受診した77万8,812人を解析対象とした。主要評価項目は全死亡とした。3つの身体計測指標は、制限付き三次スプライン曲線から算出したカットオフ値に基づき5群(Q1~Q5)に分類した。人口統計学的因子、生活習慣および併存疾患で調整した多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、これらのカテゴリ変数と全死亡との関連を評価した。 参加者の平均(標準偏差)年齢は62.8(9.6)歳で、女性は44万5,250人(57.2%)であった。死亡例ではABSIが生存者より高値であった一方、BMIおよびBRIには明確な差はみられなかった。また、BRIはBMIと強い相関を示したのに対し、ABSIはBMIとほとんど相関が認められなかった。 追跡期間中央値(四分位範囲)4.53(3.28~6.23)年の間に、1万4,690件の死亡が確認された。BMIおよびBRIでは、値が低すぎても高すぎても死亡リスクが上昇する「U字型」の関連がみられた。一方、ABSIでは低値域ではリスク上昇が比較的緩やかで、高値になるほど急激にリスクが増加する「J字型」の関係が示された。 基準カテゴリ(Q3)と比較した死亡リスクの有意差は、BMIではQ1・Q2・Q5の3カテゴリに認められたのに対し、BRIおよびABSIでは基準カテゴリ(Q3)以外のすべて(Q1・Q2・Q4・Q5)で認められた。 著者らは、「本研究はアジア人集団における死亡リスク評価において新たな身体計測指標を考慮することの有用性を示唆している。また、これらの知見は、体組成評価や肥満管理におけるより包括的なアプローチの発展に寄与する可能性がある」と述べている。 なお、本研究の限界として、民族差を検討できない点、死因別死亡が解析できない点、観察期間が比較的短い点、選択バイアスや社会経済的要因を調整できないことによる残余交絡の可能性がある点などを挙げている。

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第52回 たった一度の注射で、コレステロールの悩みから一生解放される日が来るかもしれない

これまで「コレステロール治療」といえば、食事を切りつめて、薬を毎日飲んで、それでも健康診断のたびにドキドキして…そんなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。とくに遺伝的にコレステロールが高い方にとって、治療は文字どおり一生の付き合いです。しかしこのたび、そんな常識が根本から変わるかもしれない研究成果1)が報告されました。家族性高コレステロール血症という病気があります。遺伝的にLDL(悪玉)コレステロールが高くなる体質で、実は約300人に1人が該当するといわれています。決してまれではないのです。この病気の方は若いうちから動脈硬化が進みやすく、50歳前に心筋梗塞を起こすリスクが高いことも知られています。現在の治療には、スタチンやエゼチミブといった飲み薬に加え、PCSK9阻害薬という注射剤があります。このPCSK9というのは、肝臓でLDL受容体(悪玉の受け皿)を分解するタンパク質で、これを抑えると体が自力で悪玉コレステロールを処理する力を取り戻せます。しかし、これらはすべて生涯続けなければならないので大変です。実際、PCSK9阻害薬の処方を受けた患者さんの約4割が1年以内に治療を中断することが知られています。費用や注射への抵抗感など理由はさまざまですが、「一生続ける」ハードルは想像以上に高いのです。「修正液」で遺伝子を1文字だけ書き換えるそんな中、Nature Medicine誌に画期的な論文が掲載されました。「YOLT-101」という遺伝子編集治療の、初めてのヒト臨床試験の中間報告です。脂質ナノ粒子という微小カプセルに「塩基編集ツール」を詰めこんで、静脈注射で一度だけ投与して、肝臓の細胞内でPCSK9遺伝子をスイッチオフにするという代物です。この塩基編集というのは、DNAの特定の1文字だけをピンポイントで書き換える技術です。従来用いられてきた遺伝子治療の技術がDNAを「ハサミで切る」のに対し、塩基編集は「修正液で1文字だけ直す」ようなもの。切断しないぶん、意図しない変異が起きにくいとされています。この研究では、家族性高コレステロール血症の患者が6人参加し、「塩基編集ツール」の投与を1回だけ受けています。その後24週間でPCSK9の血中濃度が平均74%低下し、LDLコレステロールは最大52%減少しました。既存の注射薬と同等の効果を、たった一度の治療で得られたのです。「一度きり」だからこその慎重さただし、手放しでは喜べません。まず6人中5人に発熱や筋肉痛などの副反応が見られました。カプセル成分に対する免疫反応と推測されていますが、詳細はこれからです。また、PCSK9の抑制が74%にとどまった点も課題です。まだまだ改善の余地があります。編集が均一に行き届かない可能性や、編集されていない幹細胞から新たな肝臓の細胞が生まれてくる可能性が指摘されています。さらに重要なのが、24週間という追跡期間の短さです。肝臓の細胞は通常ゆっくり入れ替わりますが、長期的には効果が薄れる可能性も否定できません。そして塩基編集はRNA治療と違い、一度書き換えたDNAを元に戻せません。想定外の長期的副作用が生じた場合に「やり直し」がきかないという点は、患者さんへの説明においてきわめて重要です。それでも、この研究には大きな希望を感じます。毎日の服薬、定期的な注射。そうした負担から解放される未来が、少しずつ現実味を帯びてきました。もちろん塩基編集が既存の治療をすべて置き換えるわけではないでしょう。PCSK9を抑えるだけでは、重症の患者さんが目標値に到達できないケースも多いからです。しかし、コレステロール対策が「食事と薬を一生続ける」から「一度の治療で遺伝子から変える」へ。その転換点に、私たちは今、立ち会おうとしているのかもしれません。 1)Wan P, et al. In vivo base editing gene therapy for heterozygous familial hypercholesterolemia: a phase 1 trial. Nat Med. 2026 Mar 3. [Epub ahead of print]

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CKDの早期診断・早期介入の重要性と「協力医」への期待/ベーリンガーインゲルハイム

 腎臓病の早期発見と治療の重要性を啓発することを目的として、毎年3月の第2木曜日は「世界腎臓デー(World Kidney Day)」に制定されている。3月12日の本年の世界腎臓デーに先立ち、日本ベーリンガーインゲルハイムは3月5日に慢性腎臓病(CKD)の啓発を目的としたプレスセミナーを開催した。柏原 直樹氏(川崎医科大学 高齢者医療センター/日本腎臓病協会 理事長)が登壇し、CKDの早期診断・早期介入の意義について解説した。血清クレアチニン検査が健康診断の必須項目に わが国には約2,000万例のCKD患者がいると推定されており、新たな国民病ともいわれている。腎機能が低下しても自覚症状が乏しいため、多くの患者は気付かないまま生活している。しかし、病状が進行すると透析などの腎代替療法が必要となる。さらに、心不全・心筋梗塞・脳梗塞などの心血管疾患の発症リスクも高く、寝たきりの原因にもなることから、早期診断・早期介入が非常に重要である。 CKDは、(1)蛋白尿やアルブミン尿などの尿異常、画像診断や病理所見などで腎障害が認められる状態、(2)血清クレアチニン値から算出した推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満の状態のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続することで診断される。柏原氏は、「企業などの健康診断で尿検査は実施されているものの、労働安全衛生法に基づく定期健康診断の必須項目に血清クレアチニン検査は含まれていない。クレアチニンを測定するか尿検査を行わなければCKDは発見できないため、これは大きな問題であった」と、これまでの早期診断の障壁を指摘した。そのうえで、「厚生労働省へ腎臓病のスクリーニングには尿検査と血清クレアチニン検査の両方が必要であることを説明・協議した結果、血清クレアチニン検査を来年度から必須項目にする方向で検討が進められている」と述べ、今後は早期診断の機会がより増えることに期待を寄せた。慢性透析患者数は減少傾向 CKDを早期に発見して適切に介入することで、透析導入を遅らせたり回避したりできる可能性があり、国の経済負担の軽減にもつながる。こうした背景のもと、2018年に厚生労働省に腎疾患対策検討会が設置され、日本の保険医療体制を維持するため、2018年以降の新規透析患者数を10%減らすという目標が掲げられた。目標達成のための活動が功を奏し、これまで増加を続けてきた慢性透析患者数は近年では減少傾向に転じている。 これは腎臓病の重症化が抑制でき、透析患者が減り始めているという世界でも珍しい例であり、柏原氏は「普及啓発や医療提供体制の整備などを草の根的に全国で続けてきたことに加え、腎臓病の進行を抑制する薬剤が登場してきたことなど多くの要因が相まって、当初は不可能だと思った新規透析患者の10%減という目標が2028年までに達成可能になってきた。これが日本の医療の力だと思っている」と早期診断・早期介入の成果と重要性を強調した。今後のCKD診療はかかりつけ医と協力医が中心 柏原氏は最後に、現在の腎臓病診療に関する課題について言及した。とくに問題となっているのが腎臓専門医の地域偏在で、腎臓専門医は6,578人(2025年6月30日時点)いるものの、CKD患者1万例当たりの腎臓専門医数は最も多い東京都と最も少ない県で4倍以上の差があるという。 こうした状況を踏まえ、日本腎臓病協会ではCKDの普及啓発や医療提供体制の整備を進めるとともに、専門医とかかりつけ医をつなぐ「協力医」を新たに設ける方針であり、すでに先行して始まっている地域もある。協力医はセミナーなどを受講することで、かかりつけ医以上の知識を習得することが求められる。現在では腎臓の難病の治療薬が増え、一部の腎疾患では治療薬の進歩により寛解が期待できるようになってきたことから、柏原氏は「CKD患者の多くをかかりつけ医と協力医が診ることにより、腎臓専門医は腎臓難病の診療に集中することができる」と今後の腎臓病診療の発展に期待を寄せ、講演を終えた。患者の立場からの早期介入の重要性 本プレスセミナーでは、CKD患者であり全国腎臓病協議会専務理事も務める宮本 陽子氏が登壇し、自身の経験やCKD患者の抱える困難について紹介した。透析導入に当たり、患者は違う世界に放り出されたような孤独感に陥ることに加え、仕事や生活への不安から現実から逃避してしまうことがあるという。宮本氏は、正しい知識を得ることの重要性とともに、早い段階で合併症の話をするなど専門医・かかりつけ医との連携の重要性を強調した。

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IgA腎症〔IgA nephropathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義IgA腎症は、糸球体性血尿や蛋白尿などの検尿異常が持続し、腎生検で腎糸球体メサンギウム領域を中心としたIgA優位の免疫グロブリン沈着を認め、全身性疾患や慢性疾患など明らかな原因疾患を伴わない原発性糸球体腎炎である。確定診断には腎生検が必須である。■ 疫学IgA腎症は、世界で最も頻度の高い原発性糸球体腎炎であり、わが国を含む東アジアでとくに多いとされる。わが国では学校検尿や健康診断が普及しているため、無症候性血尿・蛋白尿を契機に若年~中年で診断される例が多い。一方、欧米では症候性の症例や腎機能障害を伴って初めて診断される例が多いとされる。■ 病因病因としては、「粘膜免疫異常により過剰産生された糖鎖異常IgA1が、自己抗体や補体と免疫複合体を形成し、糸球体メサンギウムに沈着して炎症と線維化を惹起する」というマルチヒット仮説が提唱されている。遺伝的素因も関与しており、HLA領域や粘膜免疫関連遺伝子の関連が報告されている。■ 症状多くは自覚症状に乏しく、持続する顕微鏡的血尿・軽度蛋白尿のみである。上気道感染や消化管感染の数日後に肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)を来す例が典型的である。進行例では浮腫、高血圧、倦怠感など慢性腎臓病(CKD)としての症状が出現する。■ 分類組織学的には腎糸球体メサンギウム増多所見が主体であるが、半月体形成、分節性硬化、全節性硬化など多彩な像をとる。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する。■ 予後かつての長期追跡では、診断後20年で約4割が慢性腎不全に至ると報告され、決して良性の腎炎ではないことが明らかとなった。近年では、早期発見・レニンアンギオテンシン(RA)系阻害薬の普及などにより予後は改善しつつあるが、蛋白尿が持続する例や腎機能障害を伴う例では依然としてCKD進行のリスクが高い。国際IgA腎症予測ツール(International IgAN Prediction Tool)により、臨床所見とMEST-Cスコアを組み合わせた予後予測も行われている。2 診断■ 検査1)尿検査持続する顕微鏡的血尿(尿定性検査に加え、尿沈査分析が必要。しばしば赤血球円柱がみられる)程度の異なる蛋白尿(しばしば0.3~1g/日程度から始まり得る)急性上気道炎や消化管感染後の一過性肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)2)血液検査血清クレアチニン、推算糸球体ろ過量(eGFR)で腎機能を評価する。血清IgA値はしばしば高値だが、診断的特異性は高くない。補体価は通常正常であり、低補体血症では他疾患を考慮する。3)腎生検IgA腎症の確定診断には腎生検が必要である。腎生検は、確定診断のみならず予後や治療反応性を予測する上でも重要である。光顕でメサンギウム増殖性糸球体腎炎を示し、免疫蛍光法でメサンギウム優位のIgA沈着(しばしばC3が共に沈着)を認める(図1、2)。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する(表)。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、IgA腎症が疑われる成人で蛋白尿0.5g/日以上が持続する場合、腎生検を考慮することが推奨されている。図1 IgA腎症の代表的な光顕所見画像を拡大する画像を拡大するa:メサンギウム細胞増多(↑)とメサンギウム基質増生(*)b:メサンギウムへの半球状沈着物(↑)c:管内細胞増多を示す糸球体糸球体毛細血管内の細胞数が増加し、管腔が狭小化している(↑)d:係蹄壊死この糸球体では毛細血管基底膜が断裂し(↑)、フィブリンの析出(*)がみられるe:細胞性半月体この糸球体の半月体は、ほとんどが細胞成分で占められているf:線維細胞性半月体この半月体は細胞成分10%以上50%未満で、細胞外基質は90%未満であるg:線維性半月体この半月体は細胞成分10%未満で、細胞外基質が90%以上を占めているh:分節性硬化点線で囲まれた部分に硬化がみられ、硬化はすべての係蹄には及んでいない(参考文献1、2より引用)図2 蛍光抗体法(IgA)画像を拡大する主にメサンギウム領域にIgAが高度に沈着している(参考文献1より引用)表 IgA腎症Oxford分類画像を拡大する■ 鑑別診断IgA腎症と類似する状態として、以下の疾患などと鑑別する必要がある。菲薄基底膜病、アルポート症候群など遺伝性血尿疾患IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病):紫斑、腹痛、関節痛など全身症状を伴う。感染関連糸球体腎炎(とくにMRSA感染に伴うIgA優位の感染関連糸球体腎炎)ループス腎炎など他の自己免疫性腎炎慢性肝疾患に伴う二次性IgA沈着症家族歴を含む臨床背景、血清学的検査、腎生検での所見を総合して診断する。3 治療■ 治療の基本方針治療の第1目標は、蛋白尿をできるだけ低く抑え(目標0.5g/日未満、理想的には0.3g/日未満)、腎機能低下速度を生理的なレベル(年間eGFR低下1mL/分/年未満)に近付けることである。■ 腎保護療法すべての患者に以下の腎保護療法が基本となる。生活習慣介入:減塩(食塩<6g/日が目安)、適正体重の維持、禁煙、適度な運動。血圧管理:目標<130/80mmHg(蛋白尿が多い例ではさらに厳格に)。RA系阻害薬:ACE阻害薬またはARBは蛋白尿減少と腎保護効果のエビデンスがあり、IgA腎症でも第1選択である。SGLT2阻害薬:糖尿病の有無にかかわらずCKD進行抑制効果が示されており、蛋白尿を伴うIgA腎症では追加投与が推奨されている。■ 免疫抑制療法腎保護療法を十分に行っても蛋白尿が持続し、腎機能低下が進行する例では免疫抑制療法を検討する。副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド):わが国のガイドラインでは、中等度以上の蛋白尿や組織学的重症例で、一定期間のステロイド療法が推奨されている。ただし、糖尿病、肥満、感染など副作用リスクが高い症例では慎重な適応判断が必要である。扁摘+ステロイドパルス療法:わが国では、口蓋扁桃摘出術とステロイドパルス療法の併用が長年行われており、蛋白尿の寛解や長期予後改善を示す国内データが蓄積している。その他の免疫抑制薬:シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)などについては一定の効果報告もあるが、エビデンスは限定的であり、難治例や特別な状況に限って専門医のもとで検討されるべきである。■ 高リスク例・特殊病型急速進行性糸球体腎炎像(半月体多数、急激なeGFR低下)を示す例では、ステロイド大量療法にシクロホスファミドなどを併用する血管炎に類似した治療が行われるが、エビデンスは限られている。ネフローゼ症候群を呈する微小変化病合併IgA腎症などでは、ステロイド単独でも反応性が良い場合が多い。4 今後の展望■ 新たな診断・予後マーカー血中の糖鎖異常IgA1(galactose-deficient IgA1)やそれに対する自己抗体、補体関連マーカーなどがIgA腎症に特異的なバイオマーカー候補として研究されているが、現時点では診断や治療選択に用いる標準検査としては確立していない。国際IgAN予測ツールや病理MEST-Cスコアを活用したリスク層別化が進み、今後は個々の患者に応じた治療強度の決定に応用されることが期待される。■ 新規治療薬近年、IgA腎症の病態(粘膜免疫・補体・腎保護)を標的とした新規薬剤の開発が急速に進んでいる。標的放出型ブデソニド(Nefecon):回腸末端の腸管関連リンパ組織に到達するよう設計された経口ステロイドで、病的IgA1産生の抑制を目的とする。海外第III相試験では蛋白尿減少とeGFR低下抑制が示され、欧米などで承認されているが、わが国ではまだ使用できない。デュアルET-A/AT1受容体拮抗薬(sparsentan):ARB作用に加えエンドセリン受容体拮抗作用を併せ持ち、蛋白尿減少とeGFRスロープ改善を示している。補体阻害薬:経口補体因子B阻害薬iptacopanをはじめ、C5、C3、レクチン経路などを標的とした薬剤がIgA腎症で検証されており、一部は海外で承認されつつある。B細胞/BAFF・APRIL経路阻害薬:自己抗体産生抑制を目的としたataciceptや他の抗BAFF/APRIL抗体が臨床試験段階にある。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、「病的IgA産生と免疫複合体形成を抑える治療」と「すでに生じたネフロン喪失に伴うCKDの進行を抑える治療」を並行して行う2本立ての治療戦略が提案されている。わが国でも、支持療法にSGLT2阻害薬などを組み合わせつつ、新規薬剤が順次導入されれば、より早期から蛋白尿を強力に抑え、長期腎予後のさらなる改善が期待される。5 主たる診療科腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター IgA腎症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難病治験ウェブ(難病に関する治験情報を簡単検索、医療従事者向けのまとまった情報)1)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性腎障害に関する調査研究班 編集. エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン 2020. 2020:東京医学社.2)厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業:進行性腎障害に関する調査研究班報告 IgA腎症分科会 IgA診療指針-第3版-補追 IgA腎症組織アトラス.日腎会誌. 2011;53:655-666.3)KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Management of Immunoglobulin A Nephropathy (IgAN) and Immunoglobulin A Vasculitis (IgAV).公開履歴初回2026年2月27日

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肝機能の「長期的な変化」が糖尿病リスクを予測か──日立コホート研究

 2型糖尿病は、発症前の段階でいかにリスクを捉えるかが重要となる。健康診断では肝機能検査が毎年行われているが、その数値は多くの場合、一過性の変動として単年ごとに評価されるにとどまってきた。日立コホート研究による約2万人・13年超の追跡解析から、若年期に一時的な肝機能高値を示し、その後数値が改善している人においても、将来の2型糖尿病リスクが高い傾向にあることが示された。肝機能の「一時点の値」ではなく長期的な変化のパターンに着目する重要性が浮き彫りになった。研究は、東海大学医学部基盤診療学系の深井航太氏らによるもので、詳細は12月14日付で「Scientific Reports」に掲載された。 肝機能障害と2型糖尿病との関連は、インスリン抵抗性や脂肪肝を介した双方向の関係が示唆されている。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、γ‐グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)などの肝酵素は日常診療で広く測定されている指標であるが、これまでの研究の多くは単一時点の測定値に基づいており、肝機能の長期的変化を十分に捉えられていなかった。本研究では、年次健診データを有する日立コホート研究を用い、肝酵素の推移パターンを分類し、2型糖尿病発症との関連および基準値超過の頻度が与える影響を検討することを目的とした。 日立コホート研究は、茨城県日立市の準都市工業地帯にある日立健康管理センタの従業員に提供される企業の年次健康診断に基づいている。本研究では、日立コホート研究において、ベースライン時に2型糖尿病を有さない30~64歳の2万4,380人を対象とし、計29万6,171件の健康診断データを解析した。肝機能酵素として、ALT、AST、GGTを年1回測定した。肝酵素の長期推移をトラジェクトリ解析(group-based trajectory modeling;GBTM)により分類し、各軌跡群と2型糖尿病発症との関連をロジスティック回帰で検討した。年齢・性別、代謝指標、生活習慣因子を調整した。 ベースライン時の平均年齢は42.9歳だった。平均12.8年の追跡期間中に、3,840人(15.8%)が2型糖尿病を発症した。トラジェクトリ解析により、ALTは6群、ASTは3群、GGTは4群の推移パターンが同定された。 ALTが持続的に高値を示す群や、若年成人期に上昇を示す推移群では、2型糖尿病発症リスクが有意に高かった。ALTが一貫して高値で推移した群(群6)のオッズ比は7.97(95%信頼区間〔CI〕 7.40~8.57)、若年成人期に高値を示した群(群5)では4.23(95%CI 4.00~4.48)であり、いずれも一貫して低値の群(群1)と比べて高リスクであった(傾向P値、P<0.01)。 さらに、ALTおよびASTが基準値を繰り返し超過するほど2型糖尿病リスクは上昇し、閾値が高いほど、また超過頻度が多いほど関連は強かった。GGTについては、ALTほど強い関連ではなかったものの、基準値を2回以上超過した場合、2型糖尿病リスクが2倍以上に上昇していた。 著者らは、「ALTの高値が持続している人はもちろん、『以前高かった』人でも糖尿病発症リスクは約4倍に上昇していた。健康診断の結果は単年値ではなく経時的な推移を重視すべきであり、若年期からリスクの兆候を捉えることが、将来的な予防につながる可能性がある」と述べている。 なお、本研究の限界として、特定コホートに基づくため一般化が制限されること、薬物治療や生活習慣の変化などの影響が考慮されていない点などを挙げている。(HealthDay News 2026年2月2日)

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更年期症状のほてりや動悸、心血管リスクのアラートに/日本循環器協会

 日本循環器協会が主催するGo Red for Women Japan健康セミナー「赤をまとい女性の心臓病を考えるin東京」が2月7日に一橋大学の一橋講堂で開催された。今回で3回目を迎える本イベントは、循環器疾患の診断・治療における性差などを患者自身が学ぶための機会として、米国心臓協会(AHA)のサポートのもとで行われている。今回、副島 京子氏(杏林大学 循環器内科)と塚田(哲翁)弥生氏(日本医科大学武蔵小杉病院 総合診療科)が心疾患好発年齢の女性らに向け、受診が必要な症状などについて解説した。心房細動の早期発見、健診の30秒に頼るのは限界 現在、日本人において100万人超の患者が存在するとされる心房細動(AF)。医療者にとってはおなじみの疾患であっても、患者への認知度はいまだに低い。AFのリスク因子として、とくに女性では高血圧や弁膜症、男性では冠動脈疾患、心筋梗塞の既往などが挙げられるが、AFに特異的かつ典型的な症状ではないことから、患者側の発見の遅れが医療者側の診断・治療の遅れにもつながるため課題となっている。 今回、患者へのAFの認知度向上のために開催された本セミナーにおいて、副島氏は「女性に多い“見逃し不整脈”-更年期との違い、正しく知る」と題して講演。同氏は女性患者が病院受診をためらう傾向にある点を指摘し、「胸の違和感、息切れ、だるさなど更年期障害の症状と似ていること、男性よりも我慢強いことが影響している可能性がある」と述べ、会場内の女性らに向けて「心房細動と更年期障害の症状は共通することが多いが、当てはまる症状(軽い息切れ、動悸など)がある場合には心房細動を疑ってもよい。女性は脳梗塞を発症しやすい、女性患者へのカテーテルアブレーションの実施率が少ないなどの女性特有のリスクがあるため、症状が悪化する前に受診してほしい」と訴えた。 また、健康診断で心電図を実施していたとしても「健診は1年分の30秒、そこで異常を検知するのは限界があり、無症状でも発作性AFが出現する可能性がある」とし、家庭でできるAF発見法(自己検脈、家庭用心電計やスマートウォッチの活用)の実践を促した。さらに、「自動診断のコメントが表示されたら、スルーせずに受診につなげてほしい」と話し、「CARE(C:併存疾患、リスク因子の治療、A:脳梗塞・血栓予防、R:症状軽減―リズム/レートコントロール、E:再評価)1)を医師のみならず、看護師や薬剤師にも共有するようにしてほしい」と強調した。更年期症状が強かったか否かも重要 続いて、塚田氏が「一人ひとりの違いに寄り添う循環器病のケア」と題し、心血管疾患(CVD)発症リスクが高い女性患者増などを列挙。ほてりや動悸は更年期障害特有の症状とされ一過性のものと判断される傾向にあるが、「このような血管運動神経症状(VMS)はVascular SOS2)であるため、症状を我慢するのではなく“血管のメンテナンスを始める合図”と捉え、症状が強い場合には内科などを受診してほしい」と述べ、「更年期症状は将来の心血管疾患リスクの氷山の一角に過ぎない」と指摘した。<CVDリスクが高いとされる女性患者像>・更年期障害のなかでも、ほてりや動悸が強い・出産時に妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、早産、死産を経験・早発閉経(45歳未満)・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の既往・前兆のある片頭痛・痩せ過ぎ・筋力低下 50歳は女性の“身体の曲がり角”といわれ、とくに日本人女性の場合には、健康寿命と平均寿命の乖離が生じ、12年間の「寝たきり」リスクを伴うとされる。そのため、50歳以降では、「シミ・シワを見るのと同じように、健康診断の検査結果をチェックしてほしい。年のせいで片付けず、自分自身を過信しないでほしい」と強調した。一方で、女性の身体は運動による投資対効果が高い点にも触れ、「女性の場合は少ない運動量で大きな予防効果が得られる。週150分程度の中強度運動で冠動脈疾患リスク低下も昨年に報告されている3)」と説明し、運動が続かない患者でも効果的にリスク低下につながる方法を以下のように紹介した。<CVDリスクの予防方法>・10分まとめ歩き・座り過ぎは「中断」(Break the Sit)・誰かと歩く(フレイル予防)・家事や庭いじり また、運動が続かない理由は決して患者個人のせいだけではなく、生活環境が要因であることが近年の研究から明らかになっている。同氏は「世界的に歩きやすい街づくりが求められている。歩きやすい街に住む人は高血圧や糖尿病、肥満リスクが低い傾向があることが示された4)」とコメントした。Take home messageとして「(CVDの)サインを見逃さない、自分の(検査)数値を知る、プラス10分のウォーキング、筋肉を守る、この4つで、いつまでも赤いドレスの似合う女性を目指してほしい」と締めくくった。Go Red For Womenとは Go Red for Womenは、“心臓病が女性の最大の死因であることを多くの人に知ってもらう”ために、AHAが2004年から始めた女性の循環器疾患の予防・啓発のための活動である。「教育」「疾患啓発」の2本柱を中心に、毎年2月第1週金曜日に赤い何かを身に付けるなどして啓発活動を行っている。この活動が今では世界50ヵ国以上に広がっており、国内では日本循環器協会が中心となり2024年よりこの活動がスタートした。今回は上記2名の医師による講演のほか、パネルディスカッションには元テニスプレーヤーの杉山 愛氏を迎え、一般参加者を盛り上げた。なお、今年も東京会場のほかに大阪・梅田スカイビルでも2月21日に開催が予定されている。

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食事の影響を受けない子宮筋腫治療薬「イセルティ錠100mg」【最新!DI情報】第57回

食事の影響を受けない子宮筋腫治療薬「イセルティ錠100mg」今回はGnRHアンタゴニスト「リンザゴリクスコリン(商品名:イセルティ錠100mg、製造販売元:キッセイ薬品工業)」を紹介します。本剤は、食事の影響を受けることなく経口投与が可能なGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)アンタゴニストであり、子宮筋腫の新たな治療選択肢として期待されています。<効能・効果>子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善の適応で、2025年12月22日に製造販売承認を取得しました。なお、本剤による治療は根治療法ではないことに留意し、手術が適応となる患者の手術までの保存療法並びに閉経前の保存療法としての適用を原則とします。<用法・用量>通常、成人にはリンザゴリクスとして200mgを1日1回経口投与します。なお、初回投与は月経周期1~5日目に行います。<安全性>重大な副作用として、うつ状態(1%未満)があります。その他の副作用として、ほてり(52.4%)、不正出血(38.2%)、多汗症、頭痛、関節痛、手指などのこわばり、生化学的骨代謝マーカー上昇、倦怠感(いずれも5%以上)、閉経期症状、めまい、月経異常、骨密度減少、脱毛症、傾眠、不眠、AST、ALT、γGTPの上昇、肝機能異常、悪心、便秘、血中コレステロール増加、血中トリグリセリド増加、低比重リポ蛋白増加、脂質異常症、動悸、浮腫(いずれも1~5%未満)、乳房不快感、易刺激性、食欲減退(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、過多月経、下腹痛、腰痛、貧血などの子宮筋腫に基づく症状を改善します。2.この薬は、GnRHの働きを抑えることで、黄体形成ホルモンおよび卵胞刺激ホルモンの分泌を阻害し、卵巣からのエストラジオールやプロゲステロンなどの性ホルモン濃度を低下させます。3.症状が良くなったと感じても、自己判断で使用を中止したり、服用量を減らしたりしないでください。4.妊婦または妊娠している可能性のある人はこの薬を使用することはできません。5.エストロゲン低下作用により骨塩量の低下が現れることがあるため、6ヵ月を超える継続使用は原則として行われません。<ここがポイント!>子宮筋腫は、子宮筋層を構成する平滑筋に発生する良性腫瘍であり、幅広い年代の女性に認められる疾患です。多くは無症状で経過し、健康診断などで偶然発見されることも少なくありません。症状の有無や程度は、筋腫の発生部位や大きさによって異なりますが、代表的なものとして過多月経、過長月経、月経痛、貧血などがあります。さらに、筋腫のサイズが大きくなると、頻尿、排尿困難、便秘といった周囲臓器の圧迫症状もみられることがあります。子宮筋腫の発生原因は未だ明らかになっていませんが、エストロゲンおよびプロゲステロンが筋腫の増大に関与していると考えられています。そのため、閉経後にはこれらのホルモン分泌の低下に伴い、筋腫は自然に縮小する傾向があります。無症状で筋腫が小さい場合は治療を必要とせず、定期的な健診による経過観察が選択されます。しかし、筋腫が大きい場合や症状により日常生活に支障を来す場合には、治療を検討します。治療法は大きく手術療法と薬物療法に分けられます。手術療法には、子宮全摘術、子宮筋腫核出術、子宮鏡下子宮筋腫摘出術などがあり、年齢や妊娠希望の有無、筋腫の性状に応じて選択されます。薬物療法は根治を目指すものではありませんが、GnRHアゴニストまたはアンタゴニストを用いた偽閉経療法が行われています。これにより、子宮筋腫による症状の改善、筋腫縮小による手術時のリスクや侵襲性の軽減、あるいは閉経までの症状コントロール(逃げ込み療法)を目的とした治療が可能となります。現在、GnRHアゴニストとしてはリュープロレリン酢酸塩などの皮下注射が、GnRHアンタゴニストとしては経口製剤であるレルゴリクスが使用されています。リンザゴリクスは、GnRHアンタゴニストに分類される薬であり、GnRH受容体においてGnRHと拮抗することで、性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンの分泌を抑制し、卵巣におけるエストロゲン産生を低下させます。本剤はGnRHアゴニスト製剤で認められる治療開始初期のフレアアップ現象(ホルモン分泌の一過性上昇)がなく、速やかに効果が発現する点が特徴です。また、同じ経口GnRHアンタゴニストであるレルゴリクスと異なり、食事の影響を受けることなく経口投与が可能な点も特徴の1つです。過多月経を有する子宮筋腫患者を対象とした国内第III相臨床試験(KLH2301試験)において、主要評価項目である治験薬投与6週後から12週後までのPictorial Blood Loss Assessment Chart(PBAC)スコアの合計点が10点未満である症例の割合は、本剤200mg群で89.9%(95%信頼区間[CI]:83.7~94.4)、リュープロレリン酢酸塩群で90.8%(95%CI:84.7~95.0)で、投与群間差は-0.9%(両側95%CI:-8.6~6.9)であり、両側95%CIの下限が非劣性マージンである-15%以上であることから、本剤のリュープロレリン酢酸塩に対する非劣性が検証されました(非劣性検定、p<0.001)。また、副次評価項目であるPBACスコアの合計点が10点未満となる症例の割合が50%になる期間は6日、75%になる期間は19日でした。

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食事からの重金属摂取は2型糖尿病の発症因子か/国立環境研

 糖尿病の発症には、遺伝、環境、生活習慣因子などさまざまな原因がある。とくに食生活において海産物を多く摂取する日本人は、魚介類からごく微量の重金属も摂取している可能性がある。こうした重金属の摂取が、2型糖尿病の発症のリスク因子となるのであろうか。このテーマに関し、国立健康危機管理研究機構 臨床研究センター 疫学・予防研究部の伊東 葵氏らの研究グループは、健康診断の血液サンプルを用いて、水銀、鉛などと2型糖尿病発症との関連性を検討した。その結果、血清水銀濃度が高いほど2型糖尿病のオッズ比が高いことが判明した。この結果は、Clinical Nutrition誌2026年2月号に掲載された。水銀が2型糖尿病発症のリスク因子になる可能性 研究グループは、血清中の水銀、鉛、カドミウム、ヒ素と2型糖尿病発症との関連性を明らかにすることを目的に、2008~09年に人間ドックを受けた日本人勤労者4,754例を対象としたネステッドケースコントロール研究を行った。研究では、カドミウム、鉛、水銀、ヒ素濃度を誘導結合プラズマ質量分析法で測定した。2型糖尿病の発症は、5年間の追跡期間中に血漿グルコースやHbA1cが基準を満たした場合、または自己申告により判断した。発生密度法を用い、各症例に対し年齢、性別、ドック受診時期を基準に2例の対照群を無作為にマッチングした結果、2型糖尿病を発症した325例と対照群611例が得られた。その後、条件付きロジスティック回帰モデルを用いて、各重金属濃度の四分位群ごとに2型糖尿病のオッズ比と95%信頼区間を推定した。 主な結果は以下のとおり。・職業区分、交代勤務、喫煙、飲酒、余暇の身体活動、糖尿病家族歴、BMI、高血圧、および血清中長鎖ω3脂肪酸、ビタミンD、マグネシウム、セレン、鉛、カドミウム、ヒ素濃度を調整後も、血清水銀濃度が高いほど2型糖尿病のオッズ比は高かった。・血清水銀濃度の最低から最高四分位におけるオッズ比(95%信頼区間)は、それぞれ1(基準値)、1.15(0.70~1.90)、 1.41(0.85~2.36)、1.98(1.13~3.47)だった(P=0.01)。・カドミウム、鉛、ヒ素と2型糖尿病発症との間に関連は認められなかった。 なお、研究グループは、「血中水銀濃度が食事からの摂取量を直接反映するものではなく、水銀曝露あるいは魚摂取と2型糖尿病との関連についてはさらなる研究が必要」と述べている。

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「白湯は健康によい?」「バリウム検査は受けるべき?」…患者によく聞かれる質問に解答

 CareNet.comの人気連載「NYから木曜日」「使い分け★英単語」をはじめ、多くのメディアで健康・医療情報を発信する米国・マウントサイナイ医科大学 老年医学科の山田 悠史氏。医学専門書はもとより、健康などのテーマで一般向け書籍も多く執筆する山田氏の最新作が『最新科学が覆す 体にいいのはどっち?』(サンクチュアリ出版)だ。 本書は、しばしば話題になる「健康についての疑問」を、健康診断/医療・食事・健康・運動・睡眠などのジャンルごとに100問集め、最新のエビデンスを踏まえたうえで「正しいか・正しくないか」を提示し、解説する構成になっている。 100問の中から、いくつかを紹介する。1)がん検診の胃のバリウム検査は受けたほうがいい?2)コーヒーを適量飲めば、病気のリスクが減るのは本当?3)白湯は本当に健康にいい?4)プロテインは筋トレしてなくても飲んだほうがいい?5)日光浴は睡眠にいい? 書籍内で紹介された解答と解説は以下のとおり。1)×現時点では、無症状の人へのバリウム検査がリスク減少に寄与するというエビデンスは限定的で、検診目的であれば内視鏡検査がより有効とされる。特定の症状がある人の検査目的なら有用。2)○毎年多くの研究結果が報告されるコーヒーと健康の関係について、1日3~5杯の摂取で、病気リスクが低下傾向になることが報告されている。一方で、飲み過ぎは不眠・動悸の原因にもなり、妊娠中なども摂取量に注意が必要。3)×現時点では、「白湯だけ」がもたらす特別な効果は証明されていない。水分摂取で大切なのは温度より「量」と「継続」であり、好きな温度で続ければよい。4)×食事でタンパク質摂取ができていれば、プロテイン摂取は不要。筋トレをしていない人が飲んでも筋力が付くわけではない。プロテインはあくまで補助食品であり、適切な栄養摂取はまず食事の見直しから始めるべき。5)○日光を浴びることで体内時計が整えられる。メラトニンの分泌を促し、睡眠の質を改善する。日光浴の時間は1日5~30分程度でOK。山田氏に今回の執筆の経緯などを聞いた。 ――今回は一般書なので、まずは読者の方に関心を持ってもらおうと、「よくある健康関連の疑問に対し、○×で答えを提示する」という目を引く構成にしました。診察室でも、患者さんから「はっきりとは答えにくい質問」を受けることがよくあります。「テレビで見たんですけど、本当ですか?」「SNSで話題なんですけど、どうなんですか?」といったように。それに対し、「私ならどう答えるか」とシミュレーションする気持ちで執筆しました。 とはいえ、医師の方であればご存じのとおり、医療・健康に関する情報は「完全に正しい=白」でも「完全に間違い=黒」でもなく、その間のグレーゾーンにあることが大半です。でも、「はっきりとはわかっていません」と言い続けるだけでは、強い主張をするSNSなどの誤情報に負けてしまうことがある。なので、現時点におけるエビデンスを調べ尽くしたうえで、「あえて言うならこちら」と解答を提示し、本文でフォローしています。論拠とした論文はすべて巻末に掲載しているので、関心のあるテーマを深掘りしたり、患者さんとの対話の中で役立てたりしていただければと思います。 本書でとくに印象に残っているのは、「健康にいいおやつは、ドライフルーツよりナッツって本当?」という疑問です。当然ながら、両者を直接比較した試験はなく、私自身もこれまで似た質問を受けたとき、「はっきりとはわかっていません」と答えていました。でも、「白黒を付ける」という本書の方針のもと、ドライフルーツとナッツそれぞれの研究結果を踏まえ、「あえて言えば、ナッツのほうが健康によい」と判断して「○」としました。 100の疑問は、編集の方が出してきたものをそのまま採用しています。私が修正や追加したものはなく、完全に一般の方の「生の声」です。「ネギを首に巻くと風邪は治る?」「こんにゃくをお腹にのせると腹痛が治る?」といった、民間療法に類する質問も入れました。私からすれば診察室でもなかなか聞くことのない、「そこを疑問に思うんだ!」と驚くような質問にも出会え、執筆自体が大きな学びとなりました。 今回の書籍のターゲットは、30~40代のビジネスパーソンです。 私の専門は老年医学なので、普段は高齢の患者さんと接することが多い。健康を失った高齢の方と話していると、若い時期にした小さな「選択ミス」が傷口となり、だんだんとその差が広がり、ついに病気になってしまった、と感じるケースが多くあります。高齢では間に合わないことも、中年から改善すれば間に合うのです。自分の30~40年後を見据え、健康を守るために正しい知識を得て、より良い選択を積み重ねてほしいと思います。書籍紹介『最新科学が覆す 体にいいのはどっち?』

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第299回 いよいよ明後日投票日、今回の各党の医療・社会保障政策は?~野党各党編

INDEX国民民主党日本共産党れいわ新選組減税日本・ゆうこく連合参政党日本保守党社民党チームみらいさて2026年2月8日投開票の衆院選に関連し、前回は与党の自民党、日本維新の会、最大野党の中道改革連合が掲げる医療・社会保障政策を取り上げた。今回は残る野党各党を取り上げる。国民民主党まずは昨今、議席増を続け野党内でも台風の目になりつつある同党は、5つの大きな政策を掲げ、そのもとで中項目(<>内)、さらに小項目(数字項目)を置き、小項目の下にさらにナンバリングした政策各論を提示している。その中身は以下に要約・列挙した。詳細は以下のとおり1.手取りを増やす<1.令和の所得倍増計画>1「消費」の拡大(1)介護職員、看護師、保育士等の給料倍増(介護職員、看護師、保育士等の給料、10年で倍増。処遇改善加算等を対象者に直接給付)(4)社会保険料軽減策の導入(社会保険料還付制度の導入、130万円の壁突破助成金の創設、社会保険料に上乗せされる「子ども・子育て支援金」の廃止)2「中小企業・非正規賃上げ応援10策」1)社会保険料負担軽減(中小・中堅企業の新規正規雇用の増加に伴う社会保険料の事業主負担の半分相当を助成)3.「人づくり」こそ国づくり<5.出産・子育て支援策の拡充と所得制限撤廃>8妊娠・出産に係る公費支援(不妊治療への公的支援やノンメディカルな卵子凍結の助成拡充、小児、若年性がん治療薬の妊孕性温存療法[精子・卵子保存]を保険適用、安全な無痛分娩を受けられる体制整備)9日本型ネウボラの創設(保健師・医師などによる妊娠時から高校卒業までの「伴走型支援」を制度化)<6.子どもの安全と福祉の確保>2子どもの死亡検証(チャイルドデスレビュー)の導入3ヤングケアラー対策(ヤングケアラー支援法の施行状況の検証、実態調査の定期的実施、実態調査に基づく効果的な支援の方法の調査研究)11介護と仕事の両立支援(ビジネスケアラー対策)12ダブルケアラー対策(ダブルケアラー支援法の制定)<10.現役世代と次世代の負担適正化と医療・介護の質向上を両立させる社会保障制度の確立>1年齢ではなく能力に応じた負担(後期高齢者の医療費自己負担の原則2割化、現役並所得者3割。現役並所得の判断基準での金融所得、金融資産等の保有状況を反映)2高齢者医療制度への公費投入増3科学的根拠に基づいた保険給付範囲の見直し(OTC類似薬の医療保険対象見直し、保険外併用療養費制度の弾力化)4ヘルスリテラシー教育の推進5セルフメディケーションの推進(医療用成分のスイッチOTC化推進、検査薬OTC化、リフィル処方箋普及)6中間年薬価改定の廃止(経済成長率を踏まえた新たな薬価改定ルールの策定、中央社会保険医療協議会への医薬品関連業種の代表者の追加)7予防医療・リハビリテーション(認知症・フレイルの予防、リハビリテーションの充実による健康寿命の延伸)8医療提供体制の充実、医療の質と効率の改善(1)医療従事者の負担軽減と働き方改革(医師・看護師・薬剤師等が実施可能な行為や役割の見直し、女性医療従事者の就業継続・再就職支援)(2)地域医療体制の見直しと機能強化(医師の地域偏在や診療科偏在の是正に資する診療報酬評価、かかりつけ医[日本版GP]・かかりつけ薬局[日本版CPCF]制度の導入、人頭払制度、薬剤師の職能活用、地域フォーミュラリー[医薬品の使用指針]の推進)(3)医療DXの推進(オンライン診療、標準型電子カルテ、電子処方箋の普及の推進、「全国医療情報プラットフォーム」の整備を通じた医療情報の共有化)9終末期医療の見直し10介護サービス・認知症対策の充実(訪問介護の基本報酬を引き上げ、全介護職員の賃金を引き上げ、介護福祉士の上位資格「地域包括ケア士(仮称)」の制度化)11介護研修費用の一部補助12介護福祉士国家試験に外国人人材向けの母国語併記13ケアマネジャー研修の負担の軽減(ケアマネジャー研修内容・体制の全国一律化)<12.ジェンダー後進国脱却、多様性社会実現>1生理、更年期障害政策(「生理の貧困」に対応した生理用品の無償配布)4.自分の国は「自分で守る」<1.防災・減災対策強化>4熱中症対策(公共施設、商業施設等の冷房設備を備えた「クーリングシェルター」の指定促進と周知、熱中症警戒アラートのわかりやすい発信と高齢者などへの周知)<3.「総合的な経済安全保障」の強化>1国内調達の拡充(1)国民の命と生活を守る医薬品や医療機器の安定供給確保(革新的新薬へのアクセス確保とドラッグラグ・ドラッグロス改善のため、欧米と比較して相対的に低い新薬収載時の価格算定方式を見直し、特許期間中の薬価維持制度、市場拡大再算定制度の市販後にイノベーションを再評価できる仕組みへ、共連れルール廃止、供給不安に陥っている医薬品について増産支援、不採算に陥ることのない薬価下支え制度、急激な物価高騰に対応できる制度の構築、医薬品メーカーの生産・在庫・出荷状況等を一元管理するデータベース構築)(2)イノベーション創出環境の整備(医薬品や医療機器での「社会課題(公的医療介護費、生産性損失)の解決につながるイノベーション」や「世界に先駆けて生み出されたイノベーション」、「医療の質の向上や医療の効率化に資するイノベーション」を積極的に評価、創薬エコシステム・イノベーション拠点を構築、医薬品や医療機器のイノベーションを促進に向けた各種法規制の国際的調和の推進、質の高い効率的な医療の提供と医薬品や医療機器の研究開発の効率化に向けた「仮名加工医療情報」の二次利用にかかる法整備、臨床試験等に活用しうるデータの標準化と信頼性確保等の推進、フェムテック関連医療機器や医薬部外品の届出、認証の円滑化) 以前から指摘していることだが、同党の医療・社会保障政策は与野党すべてを見回しても、もっとも充実していると言っていい。そして今回の内容は昨年の参院選時のものとまったく同じである。まあ、作り込んでいるがゆえに今さら変更の必要はないということなのだろう。日本共産党現存する日本最古の政党(1922年結党)である同党だが、今回公表された医療・社会保障政策は、かなり数が多い。以下に列挙する(歯科は除く)。詳細は以下のとおり患者負担増や保険料の負担増を起こさないための国費投入・国庫負担の引き上げを行い、診療報酬のさらなる増額・改善を進め、医療従事者の賃上げを実現「地域医療構想」による病床削減、強引な病院統廃合の阻止医師養成数の削減計画を中止し、「臨時増員措置」を継続するなど医師の計画的増員を推進病院の勤務医などの時間外労働上限を引き下げ看護師の計画的な増員を推進OTC類似薬の「特別料金」徴収の阻止70歳以上の窓口負担を一律1割に引き下げ、軽減・無料化を推進1兆円の公費投入増で国保料を協会けんぽの保険料並みへ保険料の「均等割」「平等割」を廃止。「所得割」の保険料率の引き下げ、低所得世帯に重い「資産割」改善生活困窮者の国保料を免除し国庫で補填「国保の都道府県化」による国保料引き上げに反対保険料滞納者への支援なしの10割負担(特別療養費の支給)の中止保険料滞納者の生活相談による収納活動へ転換保険料・窓口負担の軽減障害者、高齢者などの医療費無料化(現物給付)を行う自治体への国保の国庫負担を減額制度の中止国保法第44条の規定にもとづく、生活困窮者の窓口負担(一部負担金)の減免を積極的に推進国保組合が行う独自給付への国庫補助削減を止めて拡充へ18歳までの医療費無料化現役世代の窓口負担の2割への引き下げ高額療養費制度の改善・拡充後期高齢者医療制度の保険料・窓口負担の引き上げを中止。制度を廃止高齢者医療への国庫負担を増額し、現役世代の支援金負担、高齢者の保険料負担を軽減マイナ保険証の強制をやめて健康保険証を存続資格確認書はマイナ保険証の有無に関係なく国民全員に交付不具合続出のマイナカードによるオンライン資格確認の中止・見直し「子ども・子育て納付金」の廃止高額療養費制度の患者負担増案の“復活”を許さず、制度の改善高額療養費制度の負担限度額の上限を引き下げ、「1%」の定率部分を廃止高額療養費限度額の設定を“月ごと”から“治療ごと”に変更世帯の所得区分ごとに年間を通じた高額療養費負担上限額を設定3疾患(血友病、HIV、人工透析の腎臓病)限定の「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」を拡大し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養費給付制度(仮称)」を創設新型コロナ感染症の抗ウイルス薬などに公費補助の仕組みを設定し、患者の自己負担を、インフルエンザのタミフル並みに新型コロナワクチン接種の経済負担軽減の仕組みを創設新型コロナワクチン接種後の有害事象の原因を徹底究明と接種と症状との因果関係の認定に至らなかった事例も含めた幅広い補償・救済コロナ感染者や疑いのある人に対する十分な検査と治療の体制整備(救急・入院の拡充など「コロナ以外」の医療の逼迫が起こらないようにする体制の強化、高齢者・障害者施設、医療機関などにおける検査等の防護措置の実施を国が支援)国の負担で肺・心臓の長期的障害や筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)など、「コロナ後遺症」の治療・研究、患者への生活支援を推進コロナ危機の教訓を踏まえ感染症病床の2倍化、保健所の箇所・職員数の大幅増、集中治療室(ICU)設置を支援する制度の創設ワクチンや治療薬の研究・開発に対する財政支援、水際・検疫体制の抜本的な強化新興・再興感染症の発生・拡大に備える検査・医療体制を拡充し、体制・人員・資器材等を確保教育・保健の連携による性に関わる正しい知識の普及と予防法の周知、検査体制の強化、一般医療機関への情報提供による性感染症の予防・早期発見・治療の実現安全性・有効性が確認されたワクチンの公費接種事業を推進。ワクチン接種後に有害事象が起こった事例の原因の徹底究明と調査、被害者の治療・補償・救済を、国の責任で推進。医療費適正化計画の撤廃混合診療、保険外治療の拡大の阻止差額ベッド料などの自費負担を廃止株式会社による医療経営解禁を阻止協会けんぽへの国庫補助を法定上限の「20%」に引き上げ、労働者・中小企業の負担軽減にむけた、国の支援を強化国民の健診データ・情報の営利企業に引き渡しに反対薬価構造を根本的に見直し新薬などの高薬価是正で得られた財源を医療の充実や医療従事者の処遇改善などへ必須医薬品の安定供給を確保するため、後発品(長期収載品)の薬価を採算のとれる水準にするよう見直し。同時にメーカーに責任を課し、委託生産の規制強化や、原薬の国産化を推進無料低額診療への支援を強化し、薬剤費への制度適用を目指す医薬品・医療機器に偏った報酬評価のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価する診療報酬に改革「包括払い(定額制)」の導入・拡大に反対初・再診料、入院基本料の引き上げ標準算定日数を超えたリハビリを「保険外併用療養」とする制限を廃止人工透析「夜間・休日加算」を患者負担の軽減とともに適切な水準へ引き上げ出産一時金のさらなる増額と出産費用の無償化助産師の養成数を増やし、助産院へ公的支援助産院を地域の周産期医療ネットワークに位置付け、助産師と産科医の連携を国の責任で推進通常分娩の保険適用・窓口無料化の実現時は助産師による出産、妊産婦へのケアや各種指導なども産科医療機関との連携など安全確保を前提に保険適用医療事故の検証を行う調査機関に関する制度の改善産科医療補償制度の抜本的見直しを進めつつ、無過失補償制度を創設患者の権利を明記し、医療行政全般に患者の声を反映する仕組みをつくる「医療基本法」の制定現行の「診療明細書の発行」を見直し国の責任で、がんの専門医の配置や専門医療機関の設置を推進未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進保険診療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税を還付社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置、医療機関の概算控除の特例の継続・存続救急・救命体制への国の補助を2倍化。新しい国の補助制度をつくり、ICU病床(HCUを含む)の2倍化救急隊員の抜本増、ドクターヘリの充実、地域医療の再生とあわせた救急・搬送体制の整備・拡充国の責任で小児救急体制を整備し、新生児特定集中治療室(NICU)の増設はり・きゅうの保険適用の改善・拡充在宅医療・介護における駐車問題の解決 いやはや、今回の同党の政策の多いこと多いこと。ただし、率直に言えば既存政策への「反対」「撤廃」「中止」などの文言が多く、実現の可能性について、私個人は相当疑問符が付く。もっとも、どの政党も提案していない新型コロナワクチンの定期接種に関する接種費用補助は目を引く。この辺は他党に見習ってもらいたいものである。れいわ新選組ご存じ山本 太郎氏を代表とする同党だが、山本氏が「多発性骨髄腫の一歩手前」と公表し議員辞職。そして最近は共同代表の大石 あきこ氏が代わりにメディアに登場している。同党のマニフェストでは5つの大項目を掲げ、その下に具体的な政策を標榜している。以下、要約・列挙する。詳細は以下のとおり03.社会保険料は国のお金で引き下げる後期高齢者医療制度は廃止し、全額国費負担介護保険の国負担割合を50%以上に引き上げ04.生きててよかったと思える国~今すぐできる少子高齢化対策~介護・保育の月給10万円アップ民間事業者が少ない地域で介護士を公務員化し「公務員ヘルパー」を復活介護保険の利用者負担を一律1割。低所得者の利用料免除・減免を制度化要支援1、2のホームヘルプ、デイサービス利用の保険給付復活介護保険サービスを趣味など生活の充実にも利用可能に 上記以外にも「国立病院、公立病院の統廃合、病床の削減(地域医療構想)の中止」「マイナンバーカード廃止」「健康保険証の復活」などがあるが、基本的に同党も2025年の参院選と政策に変更はない。減税日本・ゆうこく連合衆院解散直前の立憲民主党と公明党の新党結成に反発した立憲民主党の原口 一博氏(元総務相)と、日本保守党を離党し、衆院内会派で「減税保守こども」を結成していた河村 たかし氏(元名古屋市長)、竹上 裕子氏、平岩 征樹氏、参政党を離党した鈴木 敦氏が参加して、原口・河村両氏が共同代表で結成した。当初5人の国会議員がいることで、政党要件を満たしたが、最終的には鈴木氏が出馬を見送ったため、現状は4人。今回は4つの大きなスローガンを公約として発表している。その中の1つ「三、日本救世【命・安全・教育】国民の命を利権から守り抜き、次世代へ豊かな国土を引き継ぎます」の項で以下のような公約を掲げている。詳細は以下のとおり命を守る決断:新型コロナワクチン(遺伝子製剤)の接種を直ちに中止し、被害の実態解明と全ての被害者の救済を最優先医療・福祉の最適化:ICTを活用した「かかりつけ医制度」の導入により、過剰医療や医療過誤を是正。難病・障害者基本法の改正により合理的配慮を徹底 2番目はまだしも、1番目ははっきり言っていただけない。ご存じのように共同代表の原口氏は、mRNAワクチンについて、かなり出所不明な情報を発信するワクチン懐疑派。このためmRNAワクチンの製造・販売元の1社であるMeiji Seikaファルマから、名誉棄損による損害賠償請求訴訟を起こされている。参政党さて、前回の参議院選も含め昨今の選挙では、国民民主党とともに議席を伸ばしている同党。以前も取り上げたように、失礼ながらややトンデモ政策が多いのだが、今回はどうだろう?今回は3つの柱と9の政策(<>内)を掲げ、9つの政策の下に詳細な説明も加わっているほか、分野別の詳細政策も掲げている。詳細は以下のとおり1の柱 日本人を豊かにする~経済・産業・移民~<政策1“集めて配る”より、まず減税>消費税減税と社会保険料軽減で国民負担率上限35%実現2の柱 日本人を守り抜く〜食と健康・一次産業〜<政策6 安心医療で健康国家>診療・介護・障害福祉報酬を抜本的に引き上げ、基礎年金の受給額の底上げ医療・介護・福祉従事者の賃金アップと過重労働の改善健康維持・重症化予防に取り組む人へのインセンティブ付与新型コロナ対応を検証し、実効的な感染症対策を再構築以下は「健康・医療」の分野別政策守る医療、正す医療。現場を救い、制度を持続させる仕組みを再構築診療・介護・障害福祉報酬(各サービスの公定価格)を抜本的に引き上げ、医療・介護・福祉従事者の賃金をアップし、過重労働を改善不必要な重複検査や過剰な治療・投薬等については、医学的妥当性を重視し、適正化かかりつけ医機能を重視し、継続的な健康管理や相談に取り組む医療機関を評価する報酬体系を検討OTC医薬品で対応可能な軽症疾患はセルフケアを基本とし、安易な処方を抑制(重症化や合併症のリスクが高い疾病での必要な治療・投薬を妨げるものではない)フリーアクセスで、いつでも何回でもどの医療機関でも受診ができる仕組みを見直す医療DXを活用し、業務効率化や研究開発に繋げる予防医療の推進により、医療費適正化と地域経済活性化を両立科学的根拠が確立した予防医療・重症化予防を段階的に保険対象へ生活習慣病、フレイル、認知症等について、予防・再発防止に取り組んだ医療機関を評価する制度を導入健康診断、重症化予防、生活習慣改善等により、医療費適正化に貢献した方を評価する仕組みを導入。評価に応じて、国内旅行クーポンや地域消費につながるインセンティブ制度を検討。新型コロナ対応とmRNAワクチン施策の検証~次なる感染症に備えるための、責任ある再構築政府で新型コロナ対応およびmRNAワクチン施策全体について、独立性・透明性を確保した検証実施を求め、検証結果を国民に分かりやすく公表mRNAワクチンは短期的な効果だけでなく、中長期的影響を見据えた安全性評価と治験・調査を徹底新型コロナウイルスを含む新興感染症でウイルスの発生経緯・拡大要因・対応について、政府が専門的かつ独立性の高い検証を実施WHOなど国際機関の情報や勧告などは、日本の実情に即して妥当性を科学的に評価し、主体的に判断できる体制を整備。国際機関の判断が日本の状況に適さないと合理的に判断される場合は、国内専門機関の評価を優先できる制度設計高リスク病原体を扱う国内研究施設について、立地、管理、運用に関する安全基準を厳格化し、事故・流出リスクを最小化科学的根拠の明確な提示と、国民一人ひとりの自己決定権を最優先とするワクチン政策ワクチン接種は、年齢・基礎疾患・重症化リスクを踏まえた任意接種を原則効果と副反応などのリスクについて、国民に分かりやすく情報提供接種後の健康影響について、中長期的な追跡調査と結果の公表を実施医師による副反応報告と健康被害救済制度への協力体制を強化がん・難病の“治療と生活”を国の責任でしっかり守る総合支援がん・難病に関し、国の責任で「治療と生活」を守る。診断の遅れ、手続きの壁、医療格差、地域格差をゼロへがん・難病の患者が抱える就労・学業・介護・移動・家族負担を含む「生活困難」に対し、医療にとどまらず、福祉・労働・教育・地域政策を束ねて一体で実装治療法の確立と新薬開発支援を拡充し、実用化までの期間短縮。そのための研究投資とデータ基盤整備を推進有効性が確認されたがん検診の費用補助等により、受診率を全国的に引き上げ老老介護やヤングケアラーを地域全体で支える仕組みを構築介護を社会の基盤へ:地域包括ケア強化と年金改革で老後不安を解消「65歳以上を高齢者」の定義の見直し介護報酬を引き上げ老老介護や介護離職を防ぎ、制度と地域で支える仕組み作り加算の申請手続きなど、行政が現場に要求する過剰な負荷を減らし、DX化も推進介護・医療・住まい等を包括的に捉えて、地域で密に連携する仕組み作りフレイル・認知症予防への積極的取組、地域の居場所・見守りを国が支援本人が望んでいない終末期における過度な延命治療を見直す本人の意思を尊重し、医師の法的リスクを回避するための尊厳死法制を整備人生会議(ACP)、事前指示書、生命維持治療に関する医師の指示書(POLST)の普及と制度的位置づけの明確化緩和ケア、在宅看取り、ホスピス等、尊厳を保持した医療の拡充終末期の延命措置医療費の負担の在り方の見直し さてざっと見まわすと、以前に本連載で批判的に捉えた予防医療のインセンティブ(Go Toトラベル)やすべてのワクチンを任意接種にするなど、まるで米国・保健福祉長官ケネディ氏のような政策が目につく。一方、がん・難病でのデータ基盤整備や介護での加算申請手続きの軽減などは玄人的な政策がある点も目を引く。誰かが入れ知恵したのだろうか?日本保守党移民反対を前面に打ち出す同党の医療・社会保障政策は結党以来、まったく変更はなく以下の2点である。詳細は以下のとおり移民政策の是正―国益を念頭に置いた政策へ健康保険法・年金法改正(外国人の健康保険・年金を別立てに)教育と福祉出産育児一時金の引き上げ(国籍条項をつける) そもそもシングルイシューの政党と言ってもよく、有体に言えば、少なくとも現時点では社会保障政策自体にそれほど強い関心はないのだろう。社民党旧日本社会党を源流とし、社会民主党、社民党と名称を変えてきた同党だが、最盛期の日本社会党時代に衆院で166議席も有していた議席は今やゼロ。参院で2議席のみである。今回は「社民党8つの提言」の中で「最低保障年金制度の樹立で老後の安心を!介護と医療の負担を軽減!」を掲げ、以下のような政策を提唱している。詳細は以下のとおり介護報酬を引き上げ、介護従事者の待遇を改善して人手不足を解消。混合介護と自由診療を規制高額医療費や一般用医薬品(OTC)医薬品の自己負担増に反対マイナ保険証の取得強制に反対し、紙の健康保険証を継続国公立病院の統廃合を認めない 今回唱えている政策は、ほとんどが前回の参院選時に掲げていたもの。唯一異なる点があるとするならば、「混合介護」と表現している介護の保険外サービス利用と自由診療の規制の点である。チームみらいAI研究者だった安野 貴博氏が創設した新党で、昨年の参院選では安野氏自身が比例で1議席を獲得して政党要件を満たした。2024年東京都知事選挙に立候補した時に本連載でも本人に取材し、安野氏の政策はアジャイルな設計で、有権者からの意見を受け付け柔軟に変化することがわかった。そのため、ここに記述したものも投票日までに変更されている可能性がある。政策は大きく3つの大項目で構成され、その下にテーマ(<>内)、さらに個別政策という構成。以下、要約・抜粋する。詳細は以下のとおり(2)「今」の生活をしっかり支援<経済財政・社会保障>現役世代の社会保険料負担を軽減し、フェアな税・社会保障制度を目指す「税収」(1)現役世代の過度な負担を回避し、国民全体で支えられる方法を検討(2)入国税や非居住外国人に対する固定資産税の引上げ、外国人旅行者の消費税免税制度の見直しなど日本の生活者に影響の小さい歳入源の拡充も検討「支出」影響が大きい方への配慮を行いながら、医療費の自己負担割合の一律3割を目指す。 加えて、「医療」パートに示す制度改革に取り組む<医療>1.医療の有効性・重要度に応じたきめ細やかな自己負担へ高額医療費制度の上限の拙速な引き上げを見直し中長期的に診療行為のエビデンス、費用対効果や重症度に基づく自己負担割合の複数段階化を検討電子レセプトに連携し窓口で即時に自己負担額が算出できるAI、システムの開発を支援。医療DXを推進する支援の枠組みも整備2.治療成果に報いる医療アウトカム評価制度の導入「どれだけ診療が行われたか」だけでなく、「どれだけ良くなったか」にも報いる医療制度への転換を目指し、成果連動型の診療報酬制度を導入(治療の効果が高い医療機関に対しての報酬加算、患者に対しての還元を設計し、医療機関・患者の双方に動機づけを行う)診療データを匿名化し、全国医療データベース(NDB)で一元管理。AIを活用した公平で迅速な評価を行う仕組みを整備(電子カルテの標準化、相互運用性の確保を推進。診療記録や検査結果をデータ化して治療成果を判定、成果加算が自動的に反映される仕組みを設計。アウトカム評価指標の提出、確認が行われることで医療機関の負担が増えないよう、民間企業と連携した電子カルテの解析システムの開発を促進)3.オンライン診療/処方受け取り方法を充実し、通院のない受診を実現オンライン診療普及のための診療報酬、インセンティブの設計(オンライン診療を普及促進の診療報酬の加算を検討)安全性を担保するためのガイドライン整備(本人確認、重症化時のバックアップ体制など、オンライン診療を安全に行い、標準的なサービスを担保するための規定を整備)薬の受け取りまでオンラインで完結するための枠組みの整備(自動運転やドローンでの配送物流コストの診療報酬での手当を検討)4.画像診断AIで見逃しリスクと医師不足の解消を同時にシステム導入費の補助による画像解析システムの導入診断AIへの加算を制定し継続利用を促進。AI画像解析の成果について評価を実施人とAIが協働する医療のルール整備<福祉>5.福祉・介護従事者の処遇改善・テクノロジーによる業務負担軽減を推進障害福祉・介護従事者の給与水準を全産業平均に近づける賃上げ方策の検討テクノロジー活用推進、福祉・介護従事者の待遇改善を目的とした基本報酬改定の検討生産性向上推進体制加算の拡充とテクノロジー活用を標準とした新たな報酬類型を創設施設類型を中心に進められている生産性向上推進体制加算の適用を在宅系サービスへ拡大福祉・介護職員等処遇改善加算による賃上げ効果を向上のため、テクノロジー活用と経営改善による利益を福祉・介護職員へ還元する制度の改定 さて比較的AIに懐疑的な人は、これらを見て「テクノロジーで解決できるほど医療は簡単ではない」と言うかもしれない。ただ、ここで提言されている政策をよく読めば、実はテクノロジー一辺倒ではないことがわかるのではないだろうか?たとえば、医療者が嫌うであろう診療報酬のアウトカム評価も何を行ったかの実績評価との併用で語っている。また、ここでは私が要約したが、実はチームみらいのホームページに行くと、それぞれの政策を掲げるテーマの背景まで深く分析している。私見を言えば、既存政党は長らく政治に関わりながら、こうした背景分析をきちんとしているだろうか?ここまで超長文、かつかなり駆け足で各党の政策を紹介した。このように駆け足になったのはひとえに戦後最短の選挙期間というのが最大の理由であるため、ご容赦願いたい。さて8日の投開票結果はいかに?

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検査における腫瘍の見落とし【医療訴訟の争点】第18回

症例検査を行った際、“精査を目的としていた部位以外の部位に腫瘍が映り込んでいる”ということもありうるところ、本稿では、胸部陰影の精査目的で撮影された画像に写っていた胃の病変が指摘されなかったことが「見落とし」として責任原因となるかが争われた東京地裁令和6年9月26日判決を紹介する。<登場人物>患者女性(当時80歳)原告患者の相続人(子)被告1放射線科クリニック被告2PET-CT検査を実施した医療法人被告3大学附属病院被告医師ら上記各医療機関に所属する医師事案の概要は以下の通りである。平成25年10月患者は健康診断で左上肺野に異常陰影を指摘された。10月28日精査目的で、被告放射線科クリニックにおいて胸部CT検査(本件CT検査1)が実施された。担当医師(被告医師1)は肺病変の有無を中心に読影を行い、両肺上葉に腫瘤などを認めたのでこれを指摘して被告大学病院を紹介したが、胃の病変について特段の指摘を行わなかった。なお、当該検査画像には、後方視的にみれば胃壁に径約2.5cm程度の腫瘍性病変(後に消化管間質腫瘍[Gastrointestinal Stromal Tumor:GIST]と診断される本件腫瘍)が描出されていたとされるものであった。10月30日本件患者は被告大学病院を受診し、被告大学病院の医師は、肺がんの病期診断を目的として、頭頸部から大腿基部までを対象としたPET-CT検査を行うため、被告医療法人を紹介した。11月18日被告医療法人が開設する診療所において、PET-CT検査が実施された。同診療所の医師(被告医師2)は、同検査結果を踏まえた診断を行い、左肺がん(疑い)について転移を疑う明らかな異常所見は認められないと診断した。なお、同診療所の医師(被告医師2)は、胃に存在する本件腫瘍について診断を行うことも、放射線読影医に相談することもなかった。12月4日被告大学病院の担当医(被告医師3)は、同日までに実施した頭部MRI検査、気管支鏡検査(経気管支的腫瘍生検)、本件PET-CT検査などの各検査結果を踏まえて、本件患者につき、肺がんの遠隔転移はみられないとして、左上葉肺腺がん(cT1bN0M0、Stage1B)と診断。肺がんについて、本件患者は外科手術を希望しなかったため、放射線治療が行われることとなった。12月18日放射線治療における照射範囲の特定のため、被告大学病院において胸部CT検査(本件CT検査2)が実施。平成26年1月本件患者に対し、放射線治療が行われた。平成29年11月16日吐血12月2日吐血平成30年1月4日被告病院の消化器内科において、上部消化管内視鏡検査を実施し、胃に粘膜下腫瘍(本件腫瘍)を指摘される。1月25日本件患者は、被告病院消化器内科にて、上記、胃粘膜下腫瘍の精査目的で、腹部CT検査を受けたところ、胃の小弯側に径約5.6cmの腫瘤性病変(本件腫瘍)が認められた。2月他院にて、胃のGISTと診断された。その後、治療が開始された。令和5年12月29日本件腫瘍により死亡。実際の裁判結果患者側は、これら一連の画像検査において本件腫瘍が見落とされたことが、診断および治療開始の遅れにつながったとして、各医療機関および医師に対し損害賠償を求めて本件訴訟を提起した。裁判所は、各検査が実施された目的や経緯、当時の医療水準、画像所見の性質などを踏まえ、医師に課される注意義務につき、以下のとおり判断した。1)被告1(被告放射線科クリニック)の医師(被告医師1)の注意義務違反について原告は、被告医師1が、平成25年10月28日当時、本件CT検査1の結果の読影を踏まえて、その胃に本件腫瘍があると診断し、あるいは、追加の造影CT検査などを実施する注意義務があったにもかかわらず、これらの診断などを怠った過失がある旨を主張した。これに対し、裁判所は、本件患者が本件CT検査1を受けるに至った経緯および目的が、健康診断のレントゲン検査によりその左上肺野に陰影が認められたことからその精査目的であったことを指摘し、「被告医師1が同検査結果を読影する際に課せられる注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」とした。その上で、以下の点を指摘し、「同検査結果に本件腫瘍が撮像されていたとしても、被告医師1においてこれを読影により捕捉する注意義務があると認めることはできない」として被告医師1の注意義務違反を否定した。本件患者が、本件CT検査1の実施に先立って、被告医師1に対し、消化管出血、腹痛などのGISTの存在を疑わせる症状やその腹部や消化管に関する異常や違和感を申告していないことGISTの発症に関与する既往歴などを申告したという事情もないこと本件CT検査1の対象であった胸部(肺・呼吸器)と本件腫瘍の存在した腹部(胃・消化器)についてはその部位や器官の性質も異なることGISTが発症頻度の低い疾患であること2)被告2(PET-CT検査を実施した医療機関)の医師(被告医師2)の注意義務違反について原告は、被告医師2が、平成25年11月18日当時、本件CT検査1および本件PET-CT検査の各結果の読影を踏まえて、その胃に本件腫瘍があると診断し、あるいは、放射線読影医に相談する注意義務があったにもかかわらず、これらの診断などを怠った過失がある旨を主張した。これに対し、裁判所は、被告1の場合と同様、本件患者が本件PET-CT検査を受けるに至った経緯および目的が、肺がんの病期診断(肺がんの進行度及び遠隔転移の有無の診断)であったことを指摘し、「本件PET-CT検査の結果を読影する際に課せられる注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」とした。その上で、以下の点を指摘し、「本件PET-CT検査結果に本件腫瘍が撮像されていたとしても、被告医師2においてこれを読影により捕捉する注意義務があると認めることはできない」として被告医師2の注意義務違反を否定した。本件患者が、検査の実施に先立って、被告医師2に対し、GISTの存在を疑わせる症状やその腹部や消化管に関する症状を申告していないことGISTの発症に関与する既往歴などを申告したという事情もないこと肺がんについて胃に遠隔転移する蓋然性があることを示す医学的知見は示されていないことGISTが発症頻度の低い疾患であること3)被告3(大学病院)の医師(被告医師3)の注意義務違反について原告は、被告医師3が、平成25年12月18日当時、本件CT検査2の結果の読影を踏まえて、その胃に本件腫瘍があると診断し、あるいは、放射線読影医に相談する注意義務があったにもかかわらず、これらの診断などを怠った過失がある旨を主張した。これに対し、裁判所は、被告1、2の場合と同様、本件患者が本件CT検査2を受けるに至った経緯および目的が、本件患者の希望も踏まえて本件放射線治療を実施することとして、その放射線照射部位を特定することを目的としていたことを指摘し、「かかる検査の経緯、目的などに照らせば、被告医師3が同検査結果を読影する際に課せられる注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」とした。その上で、以下の点を指摘し、「同検査結果に本件腫瘍と推測される腫瘤像が描出されていたとしても、被告医師3においてこれを読影により捕捉する注意義務があったと認めることはできない」として被告医師3の注意義務違反を否定した。本件患者が、検査の実施に先立って、被告医師3に対し、GISTの存在を疑わせる症状やその腹部や消化管に関する症状を申告していないことGISTの発症に関与する既往歴等を申告したという事情もないこと本件CT検査2の対象である胸部と本件腫瘍のあった胃とではその部位や器官の性質も異なることGISTが発症頻度の低い疾患であること注意ポイント解説本件は、画像検査における「腫瘍の見落とし」が問題となった事案である。ほかの診療科領域の疾患が画像に写っていたにもかかわらず、それを正しく指摘できなかったことが注意義務違反とされるかが問題となった点で、第14回(「症例報告の類似事例の誤診・見落とし?」)で取り上げた東京高裁令和2年1月30日判決と共通する部分がある。本件において裁判所は、単に画像上に腫瘍が写っていたか否かではなく、当該検査を行うに至った経緯、当該検査の目的を踏まえ、「注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」と判断している点が特徴的である。また、本件において原告は「放射線読影専門医は、画像診断を専門とする以上、その画像検査の目的の範囲外の部位であっても、患者の生存ないし健康に大きな影響を及ぼす病変を示す異常所見が偶発的に撮像された場合には、読影の際にその偶発所見を発見し、指摘するのが当時の臨床医学の実践としての医療水準であった」と主張した。これに対し裁判所は、以下のとおり判示し、不可能を課すものではない旨を明示し原告の主張を排斥している。「画像技術の進歩により、高解像度、大容量の画像が取得されるようになったことにより、偶発所見が発見されることも増えてはいるものの、画像の処理、識別、判断を医師において行う以上、その処理には当然限界があり、検査の目的とは直接関係のない偶発所見を発見すべき注意義務を医師に課すことは不可能を強いることに他ならない」上記の判示のとおり、裁判所は医師に不可能な義務を課すものではないものの、他方で、本件では、GISTが比較的稀な疾患であり、原告が見落としを指摘する画像上も、腫瘍が小さく、コントラストも薄く、胃壁の蠕動との識別が困難であったことに留意する必要がある。すなわち「そもそも全身を精査する目的での画像検査が行われた場合」や「特定の部位の検査を目的としていても、画像上、その部位以外の箇所に著明な疾患を示唆する所見がはっきりと写っている場合」などには、その所見の指摘・精査(他科へのコンサルトを含む)をしないことが注意義務違反とされる可能性があることに留意する必要がある。また、「読影レポートを作成する放射線科専門医が、検査対象部位以外の部位の病変をレポートしている場合」には、その所見の指摘・精査(他科へのコンサルトを含む)をしないことが注意義務違反とされる可能性がある。そして、近時はAIを用いた画像読影補助システムも導入されているところ、そのようなシステムが検査対象部位以外の部位の病変をレポートした場合などにも同様の問題が生じうる。この意味で、本裁判所の判断は当然に一般化できるとは限らないことに留意して診療にあたる必要がある。医療者の視点本判決は、画像検査における「目的外の偶発的所見」の見落としについて、医師の法的責任を限定する判断を示しました。裁判所は、高解像度の画像から得られる膨大な情報すべてを精査することは不可能であり、特段の事情(関連症状の訴えなど)がない限り、注意義務の範囲は「検査目的に関連のある範囲」に限られるとしました。これは、多忙を極める臨床現場の実情や、人間の認知能力の限界を考慮した現実的な判断であると評価できます。実臨床では、たとえ肺がん疑いの胸部CTであっても、撮像範囲に含まれる胃や肝臓などに明らかな異常がないか、可能な限り確認しようとする医師が多いでしょう。しかし、これを法的な「義務」として課されてしまえば、現場は萎縮し、過度な防衛医療を招きかねません。法的に義務が限定されたからといって、臨床的に「目的外は見なくてよい」と割り切ることはできませんが、本判決は、結果責任を問われる際の「合理的な境界線」を引いたという点で、実臨床を行う医師にとって非常に意義深いものと考えます。Take home message後方視的に異常と評価できる所見が存在していても、それだけで直ちに過失が認定されるわけではない特定箇所の精査目的の画像検査において偶発的に写り込んだ所見について、患者からその所見と結びつく症状がなく、その申告がなされていない場合には、医師に課される注意義務の範囲は、検査目的や臨床状況により限定される検査目的や患者の症状次第では、偶発所見への対応が問題となりうるため、判断の根拠や検討過程を記録しておくことが重要キーワード肺がん、GIST(消化管間質腫瘍)、精密検査、画像所見、他科領域の知見、見落とし、医療水準

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