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C-PTPとDダイマーで、肺塞栓症リスクの同定が可能/NEJM

 肺塞栓症で経過観察中の患者では、臨床的検査前確率(C-PTP)が低く、Dダイマー値<1,000ng/mLの場合、肺塞栓症リスクは低いことが、カナダ・マクマスター大学のClive Kearon氏らが行った前向き試験「PEGeD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年11月28日号に掲載された。いくつかの後ろ向き解析により、肺塞栓症は、C-PTPが低い患者ではDダイマー値<1,000ng/mL、C-PTPが中等度の患者ではDダイマー値<500ng/mLで除外されることが示唆されている。C-PTPとDダイマー値で肺塞栓症が除外されるとの仮説を検証 研究グループは、C-PTPが低くDダイマー値<1,000ng/mLであるか、C-PTPが中等度でDダイマー値<500ng/mLの患者は、それ以上の検査を行わなくても肺塞栓症が除外されるとの仮説を検証した(カナダ国立保健研究所[CIHR]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、肺塞栓症の症状がみられるか、その徴候が示唆される外来および入院患者であった。被験者は、Wellsスコア(0~12.5点、点数が高いほど肺塞栓症の可能性が高い)に基づき、低C-PTP(0~4.0点)、中等度C-PTP(4.5~6.0点)、高C-PTP(6.5点以上)に分けられた。 低C-PTP/Dダイマー値<1,000ng/mLまたは中等度C-PTP/Dダイマー値<500ng/mL以外のすべての患者は、胸部画像検査(通常、CT肺血管造影)を施行された。肺塞栓症と診断されなかった患者は、抗凝固療法を受けなかった。静脈血栓塞栓症を検出するために、全患者を3ヵ月間追跡調査した。C-PTPとDダイマー値で肺塞栓症が除外される戦略で胸部画像検査を減少 2015年12月~2018年5月の期間に、肺塞栓症で経過観察中の患者2,017例(平均年齢52±18歳、女性66.2%)が登録され、評価が行われた。低C-PTPが86.9%、中等度C-PTPが10.8%、高C-PTPは2.3%であった。診断の初回検査で7.4%(149例)に肺塞栓症が認められた。 低C-PTPの1,752例中1,285例、中等度C-PTPの218例中40例で、Dダイマー値が陰性(それぞれ<1,000ng/mL、<500ng/mL)であった。このDダイマー値陰性の1,325例(67.3%)には抗凝固療法を行わなかったが、追跡期間中に静脈血栓塞栓症が認められた患者はいなかった(95%信頼区間[CI]:0.00~0.29%)。 初回検査で肺塞栓症と診断されず、抗凝固療法を受けなかった1,863例のうち、1例(0.05%、95%CI:0.01~0.30、低C-PTP/Dダイマー値陽性[1,200ng/mL])で静脈血栓塞栓症がみられた。 低C-PTP/Dダイマー値陰性(<1,000ng/mL)で抗凝固療法を受けなかった1,285例では、追跡期間中に静脈血栓塞栓症は認められなかった。このうち315例は、低C-PTPでDダイマー値が500~999ng/mLであった(95%CI:0.00~1.20%)。また、中等度C-PTP/Dダイマー値陰性(<500ng/mL)で、抗凝固薬を受けなかった40例では、追跡期間中に静脈血栓塞栓症はみられなかった(95%CI:0.00~8.76%)。 追跡期間中に、大出血エピソードが7件、小出血エピソードが23件認められた。34例が死亡したが、中央判定で肺塞栓症による死亡とされた患者はいなかった。 この研究のPEGeD診断戦略では、患者の34.3%が胸部画像検査を受けた。これに対し、低C-PTPでDダイマー値が<500ng/mLの場合は、肺塞栓症は除外されるとする戦略であれば、胸部画像検査を受ける患者の割合は51.9%となった(差:-17.6ポイント、95%CI:-19.2~-15.9)。 著者は、「PEGeDアルゴリズムは、肺塞栓症が疑われる患者における胸部画像検査の件数を実質的に減少させることが示された」としている。

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ガリレオもびっくり!(解説:後藤信哉氏)-1149

 大動脈弁狭窄症の標準治療としてTAVIが普及している。TAVIも人工弁なので、抗血小板薬併用療法よりも抗凝固薬療法のほうが適しているのではないかと思っていた。しかし、GALILEO試験の結果は予測を覆した。1,644例のTAVI症例を対象としたオープンラベルではあるが、ランダム化比較試験である。試験に参加した医師たちも私と同様抗凝固薬群の予後が良いと予想したのではないだろうか? 死亡・血栓イベントは抗血小板薬併用療法群よりもリバーロキサバン10mg群で多かった。重篤な出血には差はなかった。 年齢、心不全の合併には差はなかった。死亡率がリバーロキサバン群にて倍に近かったのは偶然かもしれない。しかし、脳卒中も心筋梗塞も同じ方向性であった。 心房細動の脳卒中予防試験をなんとかくぐり抜けたものの、NOACは他の症例群では振るわない。直接的な凝固因子阻害薬ではよい出血・抗凝固バランスがアチーブできないというのが特許切れ後の常識になるかもしれない。

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TAVR後の弁尖可動性低下、抗血栓療法は有効か/NEJM

 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR)の成功後に、長期的な抗凝固療法の適応がない大動脈弁狭窄症患者では、無症候性の弁尖の動きの異常の予防において、リバーロキサバンベースの抗血栓治療戦略は、抗血小板薬ベースの治療戦略に比べ高い有効性を示すものの、死亡/血栓塞栓性イベントや大出血のリスクが高いことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のOle De Backer氏らが行ったGALILEO-4D試験で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号に掲載された。4次元CTにより、TAVR後の人工生体弁における無症候性の弁尖肥厚および弁尖の可動性の低下が示されている。一方、これらの現象の改善に、抗凝固療法が有効かは知られていないという。GALILEO試験の、4次元CTを用いたサブスタディ GALILEO-4D試験は、TAVRで生体弁を留置された大動脈弁狭窄症患者の弁尖肥厚および弁尖の動きの異常の予防における、リバーロキサバンベースの抗血栓治療と抗血小板薬ベースの治療の有用性を比較したGALILEO試験の参加者のうち、4次元CTによる評価を受けた患者を対象としたサブスタディである(Bayerの助成による)。 被験者は、リバーロキサバンベースの抗血栓治療(リバーロキサバン[10mg]+アスピリン[75~100mg]を1日1回、3ヵ月投与後、リバーロキサバン[10mg]単剤を1日1回投与)、または抗血小板薬ベースの治療(クロピドグレル[75mg]+アスピリン[75~100mg]を1日1回、3ヵ月投与後、アスピリン単剤を投与)を受ける群に無作為に割り付けられた。無作為割り付けから平均90(SD 15)日の時点で、4次元CTによる評価が行われた。 主要エンドポイントは、人工生体弁の1つ以上の弁尖が、Grade3以上(弁尖の>50%)の動きの低下を来した患者の割合とした。副次エンドポイントは、Grade3以上の動きの低下を来した弁尖の割合、1つ以上の弁尖が肥厚を来した患者の割合、肥厚した弁尖の割合などであった。主要エンドポイント:2.1% vs.10.9% 231例が解析の対象となり、115例がリバーロキサバン群(平均年齢79.7±7.3歳、男性64.3%)、116例は抗血小板薬群(80.5±6.2歳、63.8%)に割り付けられた。 1つ以上の弁尖がGrade3以上の動きの低下を来した患者の割合は、リバーロキサバン群が2.1%(2/97例)と、抗血小板薬群の10.9%(11/101例)に比べ有意に低かった(群間差:-8.8ポイント、95%信頼区間[CI]:-16.5~-1.9、p=0.01)。 1つ以上の弁尖が肥厚した患者の割合は、リバーロキサバン群では12.4%(12/97例)であり、抗血小板薬群の32.4%(33/102例)に比し低値であった(群間差:-20.0ポイント、95%CI:-30.9~-8.5)。 また、Grade3以上の動きの低下を来した弁尖の割合(リバーロキサバン群1.0%[3/291個]vs.抗血小板薬群4.6%[14/303個]、群間差:-3.6ポイント[95%CI:-6.7~-0.9])および肥厚した弁尖の割合(5.5%[16/291個]vs.17.3%(53/306個)、-11.8、-16.9~-6.8)も、リバーロキサバン群で低かった。 一方、このような4次元CT画像所見上の抗凝固療法の有益な効果にもかかわらず、GALILEO試験では、リバーロキサバンベースの抗血栓治療は抗血小板薬ベースの治療に比べ、死亡または血栓塞栓性イベントのリスクが高く(ハザード比[HR]:1.35、p=0.04)、生命を脅かす/後遺障害を伴う出血や大出血のリスクも高い傾向がみられた(HR:1.50、p=0.08)。 著者は、「GALILEO試験におけるリバーロキサバンの不良な臨床アウトカムを考慮すると、弁尖の動きの異常の予防を目的に、TAVR後に弁尖の動きの低下を検出するためのルーチンの画像検査や、抗凝固療法のルーチンの使用は推奨されない」としている。

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TAVR後、抗凝固療法不適患者へのリバーロキサバンは?/NEJM

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)に成功した経口投与による抗凝固療法の適応のない患者に対し、直接作用型第Xa因子阻害経口抗凝固薬リバーロキサバン(10mg/日)を含む治療戦略は、アスピリンをベースとした抗血小板薬の治療戦略に比べ、死亡または血栓塞栓症の複合リスクが有意に高く、出血リスクも高いことが明らかにされた。米国・マウントサイナイ医科大学のGeorge D. Dangas氏らが、1,644例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号で発表した。リバーロキサバンがTAVR後の血栓塞栓症イベントを予防可能かどうかは明らかにされていなかった。リバーロキサバンとアスピリンをそれぞれ投与 研究グループは、経口投与による抗凝固療法の適応のないTAVRに成功した患者1,644例を無作為に2群に分け、一方にはリバーロキサバン10mg/日(当初3ヵ月はアスピリン75~100mg/日と併用)(リバーロキサバン群)を、もう一方にはアスピリン75~100mg/日(当初3ヵ月はクロピドグレル75mg/日と併用)(抗血小板薬群)を投与した。 有効性の主要アウトカムは、死亡または血栓塞栓症イベントの複合。安全性の主要アウトカムは、多量で活動や動作障害を引き起こす出血または命に関わる出血だった。死亡・血栓塞栓症の発生率、リバーロキサバン群9.8/100人年 中央値17ヵ月後において、死亡または初回血栓塞栓症イベントの発生(intention-to-treat解析)は、リバーロキサバン群105例、抗血小板薬群78例で認められた(発生率はそれぞれ9.8/100人年、7.2/100人年)。リバーロキサバン群の同発生リスクは抗血小板薬群の1.35倍だった(ハザード比[HR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.01~1.81、p=0.04)。 多量で活動や動作障害を引き起こす/命に関わる出血の発生は、リバーロキサバン群46例、抗血小板薬群31例で認められた(発生率はそれぞれ4.3/100人年、2.8/100人年、HR:1.50、95%CI:0.95~2.37、p=0.08)。 なお死亡は、リバーロキサバン群で64例、抗血小板薬群38例だった(発生率はそれぞれ5.8/100人年、3.4/100人年、HR:1.69、95%CI:1.13~2.53)。 今回の試験は、安全性への懸念から予定より早期に中止されている。

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点滴誤投与と不適切な蘇生処置による患者死亡を公表/京大病院

 京都大学医学部附属病院は19日、腎機能障害のある入院男性(年齢非公表)に対し、造影CT検査の前処置として点滴投与を行う際、本来投与すべき薬剤の高濃度の同一成分製剤を誤って投与したうえ、男性が心停止を来した際に行った蘇生処置にもミスが重なったことにより、6日後に死亡させたと発表した。病院側は、医薬品取り違え対策としてシステム改修を実施するなどの再発防止策を講じたという。宮本 享病院長らが19日に記者会見を開き、「薬剤の誤った処方による死亡という、期待を裏切るような結果になり、誠に申し訳なく、心よりお詫び申し上げる」と謝罪した。 京大病院によると、男性患者は造影剤による急性腎不全リスクがあり、入院患者の場合は腎保護用の生理食塩水を検査の6時間前に点滴投与する必要があったが、本件ではオーダーから検査までに十分な時間がなかったため、外来患者が造影CT検査を受ける際に使用する炭酸水素ナトリウムが投与されることとなった。その際、炭酸水素Na静注1.26%バッグ「フソー」を選択すべきところ、本来投与すべき薬剤の6.7倍濃度の同一成分製剤(商品名:メイロン静注8.4%)が処方された。 点滴開始直後から、男性患者は血管痛や顔面のほてり、頸部の痺れ、頸部や手足がつるなどの異変や、医師を呼んでほしい旨をたびたび訴えたにもかかわらず、点滴は続行された。 男性患者は、検査前後で計4時間にわたって高濃度の点滴が誤投与され、その後、病棟内で心停止の状態で発見された。すぐに蘇生処置が開始されたが、心臓マッサージを行った際、肺損傷が原因とみられる多量の出血が認められた。この段階で、処置に当たった医療チームのメンバーは、男性患者が抗凝固薬を服用していることを把握しておらず、中和薬投与のタイミングが遅れたという。男性患者は出血傾向が止まらず、6日後に死亡した。 本件を受けて京大病院は、外部委員を含む調査委員会で一連の経緯について検証を進めるとともに、医薬品のオーダリングシステムを改修し、電子カルテ内の薬剤名を変更したり、多量の処方時には警告が表示されたりするなどの再発防止策を講じた。 宮本病院長は本件について、「治療でよくなることを望んでおられた患者さんご本人とご家族には、薬剤の誤った処方による死亡という期待を裏切るような結果になり、誠に申し訳なく、心よりお詫び申し上げます。関係者のみならず病院職員の一人ひとりが自分たちのこととして受け止め、再発防止に努めてまいります」とのコメントを発表した。

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AFIRE試験を複数形で祝福しよう!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第17回

第17回 AFIRE試験を複数形で祝福しよう!この日がやってきました。夢ではなく現実の出来事として、夢のような吉報がもたらされました。世界中の医学雑誌の中でも頂点に位置するNEJM誌に、日本からの臨床研究が紹介されたのです。その名も「AFIRE試験」です。2019年9月2日、フランスのパリで開催されたヨーロッパ心臓病学会(ESC)の満員のHot Line Session会場で、国立循環器病研究センター病院の安田 聡先生により発表され、同時にエンバーゴが解除されてNEJM誌掲載となりました(N Engl J Med 2019; 381:1103-1113)。エンバーゴの意味を知りたい方は、「第3回 エンバーゴ・ポリシーで言えませんと言ってみたい!」を参考にしてください。心房細動を合併した安定冠動脈疾患では、これまでは複数の抗血栓薬が必要と考えられてきました。この研究は、むしろ薬剤を減らして単剤とする治療のほうが、心血管イベントの発生を増加させることなく、出血性イベントを有意に減らすことを明らかにしました。病態に応じて複数の薬剤を組み合わせることで濃厚な治療になりがちな中で、"薬剤を減らす"という選択肢の意義を証明したのです。数多くの医療機関によるAll Japan体制の結果として成果が得られたことも、特筆すべきことです。発表会場では、満場の拍手が贈られました。私自身も、パリの会場で快挙の場に立ち会った瞬間の高揚感と、日本人としての誇らしい気持ちを忘れることができません。座長の先生の第一声は「Congratulations!」で、その後のディスカッションでも「Congratulations!」が飛び交っておりました。ここで注意すべきは、Congratulationは複数形であることです。「コングラッチュレーション!」と叫びたくなりますが、コングラッチュレーション”ズ”が正解です。単数形では単に「祝い」という意味になり、複数形にすることではじめて、「おめでとう!」と祝福の気持ちを伝える言葉になるそうです。正しい英語を使いたいものです。さらには、「Congratulations!」は、同じ「おめでとう!」でも、努力の対価として得られた成果を祝福する際に用いる言葉で、大学受験合格・就職・昇進などの場面で使うのが適切な言葉です。この「AFIRE試験」は、研究の立案から遂行、そしてNEJM誌編集部の厳しい査読、これらすべての難題を克服した成果ですから、まさに「Congratulations!」が相応しいといえます。「新年おめでとう!」「誕生日おめでとう!」などは季節が巡れば自然とやってくる事象ですから、「Congratulations」は使わないようです。この場合は「Happy」が使われます。「Happy New Year!」、「Happy Birthday!」です。この世で、最も努力や苦労という言葉とは無縁の世界にいるのが、ノウノウと暮らす家猫です。猫は気まぐれで気難しく、風来坊で横着です。我が家の愛すべき猫様も勤勉とは無縁の生き物です。「びよーん」と尻尾を伸ばしたまま、日当たりの良い場所で寝て過ごします。野生ネコのように身体に尻尾を巻き付ける緊張感はありません。思わず尻尾を踏みつけそうになります。一度だけ思い切り踏んでしまったことがあるのですが、悲鳴を上げて1m以上も猫が飛び上がった姿は忘れられません。「足元に注意」です。これは「Watch your step.」です。日本人的にはなぜstepがstepsではないのか気になるところです。本当に英語は難しいですね。最後に改めて「AFIRE試験」に関与した皆様に心から祝福と敬意を表します。「Congratulations!」

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脳梗塞・心筋梗塞既往歴のない患者でのアスピリン中止提案 【うまくいく!処方提案プラクティス】第8回

 今回は、抗血小板薬の中止提案を行った症例を紹介します。抗血小板薬の目的が動脈硬化性疾患の1次予防なのか2次予防なのかによって治療や提案すべき薬剤が異なってきますので、普段から患者さんの既往歴などの情報を得て、エビデンスを提示しながら提案できるとよいでしょう。患者情報80歳、女性(個人在宅)、体重:53kg、Scr:0.8基礎疾患:アルツハイマー型認知症、心不全、僧帽弁閉鎖不全症、骨粗鬆症、腰部脊柱管狭窄症、症候性てんかん、心房細動、高血圧症、脂質異常症血  圧:130/70台服薬管理:同居の長男夫婦がカレンダーにセットされた薬で管理、投薬。長男夫婦の在宅時間に合わせて用法を朝夕・就寝前に設定。往  診:月2回処方内容1.アルファカルシドール錠0.5μg 1錠 分1 朝食後2.アゾセミド錠30mg 1錠 分1 朝食後3.ウルソデオキシコール酸錠100mg 3錠 分1 朝食後4.L-アスパラギン酸カルシウム錠200mg 2錠 分2 朝夕食後5.バルプロ酸ナトリウム徐放錠200mg 2錠 分2 朝夕食後6.プラバスタチン錠10mg 1錠 分1 夕食後7.センノシド錠12mg 2錠 分1 就寝前8.アレンドロン酸錠35mg 1錠 分1 起床時 毎週木曜日9.アスピリン腸溶錠100mg 1錠 分1 朝食後(新規追加)本症例のポイントこの患者さんは、もともと循環器系の複合的な疾患がありますが、主治医からの診療情報提供書やケアマネジャーからのフェイスシートによると、脳梗塞や心筋梗塞の既往はありませんでした。ところが今回、心房細動と診断され、アスピリン腸溶錠が開始になったため大変驚きました。脳梗塞・心筋梗塞後などの再発予防目的(2次予防)としての抗血小板薬服用は臨床的使用意義が大きいことが確認されています。しかし、発症を未然に防ぐ目的(1次予防)の抗血小板薬の服用は、臨床効果よりも有害事象が上回ることが指摘されています。【JPAD試験1)】対象:動脈硬化性疾患の既往歴のない30〜85歳の2型糖尿病患者2,539例方法:アスピリン(81mgまたは100mg)投与群と非投与群に1:1に無作為に割り付けた(追跡中央値4.37年)評価項目:動脈硬化性疾患結果:動脈硬化性疾患の発現はアスピリン投与群で13.6件/1,000人年、非投与群で17.0件/1,000人年とアスピリン群で20%低い傾向にあるものの、統計学的有意差はなかった。【JPPP試験2)】対象:高血圧、脂質異常症、糖尿病を有する60〜85歳の日本人1万4,464例方法:既存の薬物療法+アスピリン(81mgまたは100mg)併用群と既存の薬物療法のみの群に無作為に1:1に割り付けた(追跡中央値5.02年)評価項目:心血管死亡、非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞の複合アウトカム結果:複合的アウトカムの発現率はアスピリン投与群で2.77%、アスピリン非投与群で2.96%とほぼ同等であったが、胃部不快感、消化管出血、さらに重篤な頭蓋外出血の有害事象はアスピリン投与群で有意に多かった。処方医は私が普段から訪問同行していない医療機関の医師でしたので、治療方針や処方意図は十分に把握できていないものの、上記の低用量アスピリンの1次予防のエビデンスから今回のアスピリン腸溶錠の中止および代替案の提示が必要と考えました。処方提案と経過医師にトレーシングレポートを用いて、JPAD試験とJPPP試験のデータを紹介し、1次予防のアスピリン腸溶錠の臨床的意義は低く、むしろ消化管出血などの有害事象のリスクがあるため、他剤への変更を提案しました。代替案については、心房細動における1次予防には直接経口抗凝固薬(DOAC)が適応と考え、腎機能・体重に合わせた補正用量であるエドキサバン30mg/日を提示しました。その後、トレーシングレポートを読んだ医師より電話連絡があり、提案のとおりにアスピリンを中止してエドキサバン30mgに変更する承認を得ることができました。速やかに処方変更の対応を行い、患者さんは胃部不快感や胃痛もなく経過しています。またエドキサバン変更後の皮下出血や鼻出血などの出血兆候もなく、副作用モニタリングは現在も継続中です。今回の症例のように1次予防の抗血小板薬については、基礎疾患や現病歴から適応の判断を検討し、医師とディスカッションを行うことで変更が可能かもしれません。1)Ogawa H, et al. JAMA. 2008;300:2134-2141.2)Ikeda Y, et al. JAMA. 2014;312:2510-2520.

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露骨に不利な条件でもワルファリンが負けなかった訳は?(解説:後藤信哉氏)-1129

 NEJMのEditorであったマーシャ・エンジェル博士は、製薬企業による情報操作の実態を著書『ビッグ・ファーマ 製薬企業の真実』に描いた。個別医師の経験よりもランダム化比較試験の結果を重視するEBMの世界は、ランダム化比較試験が「作為なく」施行されていることが前提になっている。エンジェル博士の著書にも紹介されているが、純粋に科学的な仮説検証研究とは言えないランダム化比較試験が、製薬会社主導にて多数施行されている実態がある。本論文も製薬企業が主導したことを明記したランダム化比較試験であるが、試験プロトコールはfairに設計されたとは言えない。 PCIを施行された症例では抗血小板薬が標準治療として確立されている。脳卒中リスクを有する非弁膜症性心房細動では抗凝固薬が標準治療である。しかし、脳卒中リスクを有する非弁膜症性心房細動症例がPCIを受けたら、抗凝固薬と抗血小板薬が必要となるわけではない。両薬とも重篤な出血イベントを増加させるので、個別症例のリスク評価に応じた治療選択が必須である。本研究では、非弁膜症性心房細動症例かつPCIを受けた症例をワルファリンとエドキサバンにランダムに振り分けた。速やかに安定した薬効を発現するエドキサバンとワルファリンの直接比較はワルファリンに不利である。開始初期には薬効も揺らぐ。それでもエドキサバンはワルファリンへの有効性、安全性の優越性を示せなかった。さらに、エドキサバンの抗血小板薬はP2Y12阻害薬のみ、ワルファリン群ではアスピリンとP2Y12阻害薬にて3剤併用となった。ここまでワルファリンを不利にしてもエドキサバンが勝てない理由は何なのか。非弁膜症性心房細動を合併したPCI症例では、もはや出血、血栓イベントは重要な臨床イベントではないのかもしれない。 各種疾病が合併した複雑な症例の標準治療をランダム化試験で決めるとの方法も行き詰まっている。次世代の個別最適化治療の論理の確立が待たれる。

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第14回 高齢糖尿病患者の動脈硬化、介入や治療強化のタイミングは?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第14回 高齢糖尿病患者の動脈硬化、介入や治療強化のタイミングは?Q1 ABIだけで十分? それとも他の検査も行うべき?頸動脈エコーや足関節上腕血圧比(ABI)は簡便であり、後述の通り冠動脈スクリーニングの意味もあるので、糖尿病の患者であれば一度は行っておくとよいと思います。頸動脈狭窄やABI低下はいずれも冠動脈疾患とよく合併します1)。頸動脈内膜剥離術(CEA)を行った頸動脈狭窄症例での冠動脈疾患合併は約40%みられるとの報告があります2)。ABI低下がなくても無症候頸動脈狭窄と冠動脈狭窄を呈する症例もあるので、やはり頸動脈エコーは行っておくべきでしょう。また頸動脈エコーを行うとQ2で述べる不安定プラークの有無を知ることができるので有意義です。Q2 頚動脈エコーの結果と治療法選択の判断について教えてくださいIMT肥厚がその後の心血管疾患の発症予測に使えることが知られていますが、軽度のIMT肥厚は糖尿病患者では高頻度で認められるため、これらの患者においては一般的な動脈硬化のリスク因子の介入を行っています。すなわち、禁煙の他、適切な血糖・血圧・脂質のコントロールです。この段階での抗血小板薬の投与は行いません。高度の肥厚があるものについては、冠動脈病変をスクリーニングしています(後述)。無症候頸動脈狭窄の患者への抗血小板薬の投与で、脳梗塞一次予防の介入エビデンスはありません。しかし観察研究では、≧50%あるいは≧70%狭窄のある患者で抗血小板薬投与が同側の脳卒中発症抑制に関連したという報告があり、2015年の脳卒中ガイドラインでも、中等度以上の無症候頸動脈狭窄では他の心血管疾患の併存や出血性合併症のリスクなどを総合的に評価した上で、必要に応じて抗血小板療法を考慮してよいとしています3)。われわれもこれに準じ、通常50%以上(NASCET法)の狭窄例では抗血小板薬を投与していることが多いです。一方、無症候頸動脈狭窄や高度のIMT肥厚は冠動脈疾患を合併していることが多いので、これらの症例では通常の12誘導心電図だけでなく、一度循環器内科を紹介し、心エコーの他、冠動脈CTや心筋シンチグラムなどを考慮しています(高齢者ではトレッドミルテストが困難なことが多いため)。2型糖尿病患者で冠動脈インターベンションやバイパス術を必要とするような、高度な冠動脈病変を伴う患者を検出するために適正なIMT最大値(Max IMT)のカットオフ値としては2.45mmという報告があり、参考になると思います4)。冠動脈病変が疑われれば、抗血小板薬(アスピリンやクロピドグレル)を投与する意義はさらに大きくなります。抗血小板薬による消化管出血リスクは年齢リスクとともに増加し、日本人では海外の報告より高いといわれます。胃十二指腸潰瘍の既往があるものや、NSAIDs投与中の患者ではとくに消化管出血に注意を払わなければなりません。冠動脈疾患をともなわない無症候頸動脈狭窄でとくに出血リスクが高いと考えられる症例には、患者に説明のうえ投与を行わないこともあります。あるいは出血リスクが低いといわれているシロスタゾールに変更することもありますが、頭痛や頻脈などの副作用がありえます。とくに頻脈には注意が必要で、うっ血性心不全患者には禁忌であり、冠動脈狭窄のある患者にも狭心症を起こすリスクがあることから慎重投与となっています。このため必ず冠動脈病変の評価を行ってから投与すべきと考えます。なお、すでに他の疾患で抗凝固薬を投与されているものでは、頸動脈狭窄に対しての抗血小板薬の投与は控えています。なお、無症候性の頸動脈狭窄が認知機能低下5)やフレイル6) に関連するという報告もみられます。これらの患者では認知機能やフレイルの評価を行っておくことが望ましいと考えられます。頚動脈エコー所見で低輝度のプラークは、粥腫に富んだ不安定プラークであり脳梗塞のリスクとなります7)。潰瘍形成や可動性のあるものもリスクが高いプラークです。このような不安定プラークが観察されれば、プラーク安定化作用のあるスタチンを積極的に投与しています。糖尿病治療薬については、頸動脈狭窄症のある患者に対し、とくに有効だというエビデンスをもつものはありません。SGLT2阻害薬は最近心血管イベントリスクを低下させるという報告がありますが、高齢者では脱水をきたすリスクがあるので、明らかな頸動脈狭窄症例には慎重に投与すべきと考えます。Q3 専門医への紹介のタイミングについて教えてください脳卒中ガイドラインでは高度無症候性狭窄の場合、CEAやその代替療法としての頸動脈ステント留置術(CAS)を考慮してよいとされています3)。脳神経外科に紹介し、手術になることは高齢者では少ないように思いますが、内科治療を十分行っていても狭窄が進展したり、不安定プラークが残存したりする症例などはCASを行うことが多くなっています。また、TIAなどの有症状症例で50%以上狭窄の症例では紹介しています。手術は高齢者のCEAやCASに熟練した施設で行うことが望まれます。最近、CEAやCASを行った症例において認知機能の改善が認められたという報告がみられており、エビデンスの蓄積が期待されます8)。末梢動脈疾患では跛行や安静時痛のある患者や、ABIの低下があり下肢造影CTを撮影して狭窄が疑われる場合に血管外科に紹介しています。腎機能が悪い患者については下肢動脈エコーや非造影MRAで代用することが多いですが、エコーは検査者の技量に左右されることが多く、またいずれの検査も造影CTよりは精度が劣ると考えられます。最近炭酸ガスを用い、造影剤を使用しない血管造影がありますが9) 、施行している施設は限られます。このような施設で検査を受けるか、透析導入のリスクを説明のうえ造影剤検査を行うか、しばらく内科治療で様子をみるかは、外科医と患者さんで相談のうえ、決めていただいています。 Q4 頚動脈エコー検査の頻度は? 何歳まで検査を行うべき?頚動脈エコーのフォロー間隔についてのエビデンスはありませんが、われわれは通常1年に1回フォローしています。無症候の頸動脈狭窄や不安定プラークが出現した場合、内科治療の強化や冠動脈のスクリーニングの検討が必要と考えますので、80~90代でも冠動脈インターベンションを行う今日では、このような高齢の方でも評価を行っています。IMTは年齢とともに健常者でも肥厚しますが、平均IMTは90歳代でも1mmを超えないという報告もあり10)、高度の肥厚は異常と考えます。また上述のように、無症候頸動脈狭窄に対して内科治療を十分行っていても病変が進展した際には、外科医に紹介する判断の一助となります。一方、頸動脈狭窄あるいは冠動脈CTで石灰化がある方でも、すでにしっかり内科的治療が行われており、かつ冠動脈検査やインターベンションの希望がない場合は検査の頻度は減らしてもよいかもしれません。 1)Kawarada O. et al. Circ J .2003;67; 1003-1006. 2)Shimada T et al. J Neurosurg. 2005;103: 593-596.3)日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン2015[追補2017対応].pp88-89.協和企画;2017.4)Irie Y, et al. Diabetes Care. 2013;36: 1327-1334.5)Dutra AP. Dement Neuropsychol. 2012;6:127-130.6)Newman AB, et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001;56: M158–166.7)Polak JF, et al. Radiology. 1998;208: 649-654.8)Watanabe J, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2017;26:1297-1305.9)Merz CN, et al. Angiology. 2016;67:875-881.10)Homma S, et al. Stroke. 2001; 32: 830-335, 2001.

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至適INRは?(解説:後藤信哉氏)-1128

 手術時に抗凝固療法を継続するのは勇気がいる。手術による出血を最小限としつつ、静脈血栓を予防するためにはどうすればよいか? 一般に血栓イベントリスクの低い日本人の感覚と欧米人の感覚の大きく異なる領域である。欧米のデータは心房細動の脳卒中予防であっても、本論文の静脈血栓症の予防でもINRの標的を下げることの危険性を示している。私の日常診療ではINR 1.8は、標的としては高いほうである。30年も経験を蓄積しても、日本人を診ているわれわれが血栓イベントを経験することは少ない。しかし、欧米人では標的を2.6とした場合と比較して、静脈血栓症・死亡率が標的INR 1.6では著しく高くなることを本論文は示している。本論文に示された所見はおそらく事実であろう。しかし、本論文の記載が日本人に当てはまるか否かは不明である。地域差の大きな血栓性疾患では、欧米の情報を日本に直接取り込むことは難しい。日本の実態も継続的に英文論文として発表するようなシステムの構築が重要である。

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CABG後のグラフト不全の予防に、抗血小板薬2剤併用が有効/BMJ

 冠動脈バイパス術(CABG)を受けた患者では、アスピリンへのチカグレロルまたはクロピドグレルの追加により、アスピリン単独に比べ術後の大伏在静脈グラフト不全の予防効果が大きく改善されることが、カナダ・ウェスタン大学のKarla Solo氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年10月10日号に掲載された。アスピリンは、CABG後の大伏在静脈グラフト不全の予防に推奨される抗血小板薬である。一方、アスピリンへのP2Y12阻害薬または直接経口抗凝固薬の追加の利点については不確実性が残るという。グラフト不全と出血を評価するネットワークメタ解析 研究グループは、CABGを受けた患者の大伏在静脈グラフト不全の予防における経口抗血栓薬の有用性を評価する目的で、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 2019年1月25日現在、医学関連データベース(Medline、Embase、Web of Science、CINAHL、the Cochrane Library)に登録された文献を検索した。 対象は、CABG後の大伏在静脈グラフト不全の予防として、経口抗血栓薬(抗血小板薬または抗凝固薬)の投与を受けた年齢18歳以上の患者が参加する無作為化対照比較試験であった。 有効性の主要エンドポイントは大伏在静脈グラフト不全、安全性の主要エンドポイントは大出血とされた。副次エンドポイントは、心筋梗塞と死亡であった。2種の抗血小板薬2剤併用で、中等度の確実性を有するエビデンス 1979~2019年に発表された20件の無作為化対照比較試験に関する21編の論文が、ネットワークメタ解析に含まれた(4,803例、9種の介入[8種の実薬とプラセボ])。8種の実薬は、クロピドグレル、アスピリン、ビタミンK拮抗薬、チカグレロル、リバーロキサバン、アスピリン+チカグレロル、アスピリン+リバーロキサバン、アスピリン+クロピドグレルであった。 アスピリン単独と比較して、アスピリン+チカグレロル(オッズ比[OR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.31~0.79、治療必要数[NNT]:10例)、アスピリン+クロピドグレル(0.60、0.42~0.86、19例)の2種の併用療法は、大伏在静脈グラフト不全を有意に抑制することを支持する、中等度の確実性を有するエビデンスが得られた。 大出血、心筋梗塞、および死亡については、アスピリン単独と個々の抗血栓療法の差に関して、強力なエビデンスは認められなかった。 非推移性(intransitivity)の可能性を排除できないものの、試験間の異質性(heterogeneity)と非整合性(incoherence)は、すべての解析で低かった。また、グラフトごとのデータを用いた感度分析では、有効性の推定値に変化はなかった。 著者は「CABG後の抗血小板薬2剤併用療法は、重要な患者アウトカムへの安全性と有効性プロファイルのバランスをみながら、患者に合わせて調整する必要がある」とし、「今後のガイドラインの改訂では、CABGを受けた患者の抗血栓療法による管理を最適化する必要があり、2種の抗血小板薬2剤併用療法は、多くの患者で考慮されるべきであろう」と指摘している。

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1ヵ月のDAPTとその後のP2Y12阻害薬によるSAPTが標準治療となるか?(解説:上田恭敬氏)-1122

 合併症なく成功したPCI症例3,045症例を対象として、アスピリンとクロピドグレルによるDAPTを12ヵ月行う群(12ヵ月DAPT群:1,522症例)とDAPTを1ヵ月施行後にクロピドグレルによるSAPTに変更する群(1ヵ月DAPT群:1,523症例)に無作為に割り付けて、1年間の心臓死、心筋梗塞、脳卒中、ステント血栓症、出血イベントの複合エンドポイントを主要エンドポイントとする、多施設オープンラベル無作為化比較試験であるSTOPDAPT-2試験の結果が報告された。 P2Y12阻害薬はクロピドグレルに限定し、ステントはCoCr-EES(Xience Series、Abbott Vascular)に限定している。また、ほかの抗血栓薬を必要とする症例は除外している。症例の約38%はACS症例であった。 主要エンドポイントの発生頻度は、12ヵ月DAPT群の3.70%に対して1ヵ月DAPT群では2.36%と有意に低くなり、「1ヵ月DAPT」は「12ヵ月DAPT」に比して、非劣性(p<0.001)のみならず優位性(p=0.04)が示された。有意差ではないものの、血行再建術施行頻度が、12ヵ月DAPT群で5.26%に対して、1ヵ月DAPT群で6.77%(p=0.08)とやや増加が見られる点が気になるが、ほかには副次エンドポイントの中で、1ヵ月DAPT群に有意に頻度の増加が認められる項目はなかった。 過去に報告されているDAPT試験の結果を念頭に置いて、本試験の結果を解釈する必要がある。まず、PCIを施行した患者全体を、出血リスクを考慮せずに対象として1年以内のイベントを見ると、虚血性イベントの発生頻度はDAPTの期間によって変わらず、出血性イベントは12ヵ月群で有意に多いことが本試験で示されたため、PCI後1年間については、1ヵ月のDAPTで十分であると思われる。しかし、本試験の結果は、1年以後長期にわたって生じてくる虚血性イベントを抑制するために、DAPTのほうがSAPTより優れている可能性を否定するものではない。 とくに、1年間のDAPTで出血性イベントを起こさなかった患者を対象とした場合には、出血イベントの高リスク患者を除外できるため、その後DAPTを長期間継続することが有用な可能性はDAPT試験の結果から十分に想定される。そのようなDAPTの長期使用が本当に無用あるいは有害なのかどうかについては、早急に結論するのではなく、今後の検討を待つ必要がある。もちろん、P2Y12阻害薬によるSAPTであれば、DAPTと同程度に有効である可能性もあるだろうから、その検証は非常に重要である。 さらに、有効性に個人差が大きいクロピドグレルではなく、有効性に個人差が小さく出血リスクはクロピドグレルと同程度である日本人投与量でのプラスグレルを使った場合には、さらにSAPT群に有利な結果が得られる可能性が想定されるのではないだろうか。いずれにしても、アスピリンではなく、P2Y12阻害薬の単剤投与によるSAPTの効果に対する期待は非常に大きい。

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小脳脳内出血、血腫除去vs.保存的治療/JAMA

 小脳の脳内出血(ICH)を呈した患者において、外科的治療としての血腫除去は保存的治療と比べて、機能的アウトカムを改善しないことが、ドイツ・エアランゲン・ニュルンベルク大学のJoji B. Kuramatsu氏らによるメタ解析の結果、明らかにされた。主要アウトカムとした3ヵ月時点の機能的アウトカムについて、有意差は示されなかった。結果を受けて著者は、「血腫容量で機能的アウトカムとの関連に違いがないかを明らかにする必要はある」と述べている。JAMA誌2019年10月8日号掲載の報告。4つのICH観察研究を統合しIPDメタ解析 研究グループは、小脳ICHに対する血腫除去手術と臨床的アウトカムの関連を明らかにするため、2006~15年にドイツ国内の64病院で治療を受けた6,580例が参加した4つのICH観察研究を統合し、参加患者個々人のデータ(individual participant data:IPD)に基づくメタ解析を行った。 血腫除去手術を受けた患者と保存的治療を受けた患者を比較。主要アウトカムは、修正Rankinスケール(mRS)スコア(範囲:0[機能障害なし]~6[死亡])を用いて3ヵ月時点で評価した機能的障害(良好[mRS:0~3]vs.不良[4~6])。副次アウトカムは、3ヵ月時点および12ヵ月時点の生存率などとした。 解析は、傾向スコア適合および共変数を補正して行い、確率予測を用いて小脳ICHの治療関連カットオフ値を確認した。3ヵ月時点の機能的アウトカム、血腫除去手術群の有意な改善の可能性認められず 小脳ICHを呈した578例のうち、傾向スコア適合解析には、血腫除去手術群152例(平均年齢68.9歳、男性55.9%、経口抗凝固薬使用60.5%、ICH容量中央値20.5cm3)、保存的治療群152例(69.2歳、51.3%、63.8%、18.8cm3)を包含し比較した。 補正後、血腫除去手術群は保存的治療群と比較して、3ヵ月時点で機能的障害が有意により良好となる可能性は認められなかった(30.9% vs.35.5%、補正後オッズ比[AOR]:0.94[95%信頼区間[CI]:0.81~1.09、p=0.43]、補正後リスク差[ARD]:-3.7%[95%CI:-8.7~1.2])。 一方で、副次アウトカムの3ヵ月時点の生存率(78.3% vs.61.2%、AOR:1.25[95%CI:1.07~1.45、p=0.005]、ARD:18.5%[95%CI:13.8~23.2])、12ヵ月時点の生存率(71.7% vs.57.2%、AOR:1.21[95%CI:1.03~1.42、p=0.02]、ARD:17.0%[95%CI:11.5~22.6])は、有意により増大する可能性が認められた。 カットオフ値の容量範囲は12~15cm3であった。これより低容量(≦12cm3)では、血腫除去手術が良好な機能的アウトカムと関連する可能性は低いことが確認された(30.6% vs.62.3%[p=0.003]、ARD:-34.7%[-38.8~-30.6]、交互作用のp=0.01)。高容量(≧15cm3)では、生存率が増大する可能性が認められた(74.5% vs.45.1%[p<0.001]、ARD:28.2%[24.6~31.8]、交互作用のp=0.02)。

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第29回 PPIの胃酸分泌抑制作用はどのくらい差があるのか【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬(PPI)などの胃酸分泌抑制薬にはさまざまな製品がありますが、なかでもPPIのボノプラザンはとりわけ強力な胃酸分泌抑制作用を有していることで知られています。インタビューフォームには、既存のPPIよりも塩基性が高く胃壁細胞に高濃度に長時間残存して酵素活性を阻害すること、作用発現が早いこと、代謝酵素の遺伝子多型に影響されないことなどの特徴が記載されています1)。ピロリ菌の除菌率の高さからも処方頻度が増えていますので、今回はそのボノプラザンの効果の程度と注意点について紹介します。効果については、エソメプラゾール、ラベプラゾールと胃酸分泌抑制作用を比較した研究があります2)。CYP2C19に遺伝子変異のない成人男性ボランティア20名における胃酸分泌抑制作用を評価したオープンラベルのクロスオーバーランダム化比較試験で、比較1としてボノプラザン20mgとエソメプラゾール20mg、比較2としてボノプラザン20mgとラベプラゾール10mgをそれぞれ1日1回7日間服用してpH holding time ratio(pH HTR:酸分泌抑制作用の指標となる胃内pHを一定以上に保つ時間の割合)や胃内平均pHの上昇を検討しています。胃酸分泌抑制作用は1日目と7日目の両時点ともにボノプラザンが有意に優れており、とくに7日目のpH4 HTRは比較1ではボノプラザン群85.8%に対してエソメプラゾール群61.2%と24.6%の差で、比較2ではボノプラザン群93.8%に対してラベプラゾール群65.1%と28.8%の差がありました。1~7日目の24時間pH4 HTRは、ボノプラザン群>0.8、ラベプラゾール群0.393、エソメプラゾール群0.370で、大ざっぱに捉えると胃酸分泌抑制作用はボノプラザン>ラベプラゾール≒エソメプラゾールなのかなという印象です。論文には胃内pHの変動グラフが掲載されていますが、ボノプラザンでは胃内pHが塩基性領域に入っている時間帯すらあり、胃酸分泌抑制作用の強さには目を見張ります。忍容性はいずれの薬剤も良好で、ボノプラザン群では発疹による中止が1例ありましたが中止後に回復しています。ただし、潰瘍や出血の予防といった臨床的なエンドポイントを設定した研究ではないことは念のため付言しておきます。pH上昇により併用薬の吸収や溶解性が低下する場合も注意点としては、ボノプラザンに限った話ではありませんが、胃内pHを変動させる薬剤はしばしば添付文書にはない間接的な相互作用を招く恐れがあること。薬剤師として留意しておきたい点です。まして、pHの変動幅が大きい薬剤であればなおさらです。胃内pH上昇によって、分子型・イオン型の比率の変化や薬の溶解性・胃内容排出速度の変化が生じることがあります。前者の例としては、胃内pHが上昇することでイオン型が多くなる弱酸性薬剤の溶解性が低下し、消化管吸収が落ちるとする報告があります3)。具体的には、バルビツール酸類、フェニトイン、プロプラノロール、プロベネシド、ワルファリン、レボドパ、カルビドパなどが該当します。ちなみに、パーキンソン病患者にレボドパを投与する際にレモン汁によって酸を補充して胃内pHを低下させることで、血中レボドパ濃度の改善が認められたという報告もあります4)。後者の例としては、胃内pH上昇により溶解性が低下するイトラコナゾール5)、チロシンキナーゼ阻害薬(ゲフィチニブ、エルロチニブなど)が該当します6)。ボノプラザンなどの作用時間の長いPPIは、日内で服用タイミングをずらしても相互作用を回避できるものではありません。抗がん剤使用時は胃酸分泌抑制薬が必須となるケースもあるため、相互作用を許容して併用するケースもありますが、こうした可能性を踏まえて効果の程度を類推できるとよいと思います。服用タイミングをずらした場合の影響などは患者さんからの頻出質問だと思いますので、メカニズムを理解して説明できるようにしておきたいものです。1)ボノプラザンフマル酸塩錠インタビューフォーム2)Sakurai Y, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2015;42:719-730.3)Mitra A, et al. Mol Pharm. 2013;10:3970-3979.4)Yazawa I, et al. Rinsho Shinkeigaku. 1994;34:264-266.5)Jaruratanasirikul S, et al. Eur J Clin Pharmacol. 1998;54:159-161.6)Zenke Y, et al. Clin Lung Cancer. 2016;17:412-418.

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