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第47回 要申請、市町村へアドレナリン製剤の無償提供/マイラン

<先週の動き>1.【要申請】市町村へアドレナリン製剤の無償提供/マイラン2.緊急事態宣言の解除後、感染対策に「5つの柱」3.勤務医の働き方改革など、医療法改正法案が審議入り4.高齢者ワクチン、医師確保が間に合わない自治体2割5.ワクチン優先接種、精神疾患などの患者も対象に6.科学的介護情報システム「LIFE」を訪問・居宅支援に活用へ1.要申請、市町村へアドレナリン製剤の無償提供/マイラン厚生労働省は、4月12日から開始される高齢者の新型コロナワクチン接種に必要となる予診票などの情報提供を開始している。抗血小板薬や抗凝固薬を内服している患者については、接種前の休薬は必要なく、接種後は2分間以上しっかり押さえるようにと具体的な記載がされている。また、ワクチン接種の際にアナフィラキシーショックなどを発現した場合に必要となるアドレナリン製剤(商品名:エピペン注射液0.3mg)については、製造販売元であるマイランEPD合同会社より無償提供について、各市町村(特別区を含む)へ告知されるなど準備が進んでいる。なお、無償提供を希望する市町村は、専用のWEBサイト(https://med.epipen.jp/free/)を通じて申請を行うこと。受付は、18日より開始されている。(参考)新型コロナワクチンの予診票・説明書・情報提供資材(厚労省)予防接種会場での救急対応に用いるアドレナリン製剤の供給等について(その2)(同)マイランEPD 自治体向け「エピペン」無償提供の受付開始 コロナワクチン接種後のアナフィラキシー対応で(ミクスオンライン)2.緊急事態宣言の解除後、感染対策に「5つの柱」菅総理大臣は18日夜、東京都を含む1都3県の緊急事態宣言について、21日をもって解除することを明らかにした。1都3県の新規感染者数は、1月7日の4,277人と比較して、3月17日は725人と8割以上減少しており、東京では、解除の目安としていた1日当たり500人を40日連続で下回っていた。宣言解除に当たり、感染の再拡大を防ぐための5本の柱からなる総合的な対策を決定し、国と自治体が連携して、これらを着実に実施することを発表した。第1の柱「飲食の感染防止」大人数の会食は控えて第2の柱「変異ウイルス対応」第3の柱「戦略的な検査の実施」第4の柱「安全 迅速なワクチン接種」第5の柱「次の感染拡大に備えた医療体制の強化」また、ワクチンについては、今年6月までに少なくとも1億回分が確保できる見通しを示し、医療従事者と高齢者に行きわたらせるには十分な量だと述べた。(参考)新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見(首相官邸)【菅首相会見詳報】“宣言”解除へ 再拡大防ぐ「5つの柱」示す(NHK)3.勤務医の働き方改革など、医療法改正法案が審議入り長時間労働が問題となっている勤務医などの働き方改革を目指し、2024年度から、一般の勤務医は年間960時間、救急医療を担う医師は年間1,860時間までとする時間外労働規制を盛り込んだ医療法の改正案が、18日に衆議院本会議で審議入りした。今回の法案には、各都道府県が策定する医療計画の重点事項に「新興感染症等の感染拡大時における医療」が追加された。このほか、医師養成課程の見直しであるStudent Doctorの法的位置付けや地域医療構想の実現に向けた医療機関の再編支援、外来医療の機能の明確化・連携といった2025年問題と、今後の地域医療の提供体制にも大きな影響が出ると考えられる。(参考)勤務医などの働き方改革を推進へ 医療法改正案 衆院で審議入り(NHK)地域医療の感染症対策を強化、医療法改正案を閣議決定(読売新聞)資料 良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案(厚労省)4.高齢者ワクチン、医師確保が間に合わない自治体2割4月12日から開始される65歳以上の高齢者対象の新型コロナウイルスワクチン接種について、厚労省が全国1,741の自治体を対象に行った調査の結果、約2割の自治体が接種を担う医師を確保できていないことが明らかになった。調査は3月5日時点の各自治体の状況についてたずね、各接種会場で1人以上の医師を確保できているとする自治体は1,382(79.3%)だが、残り約2割の自治体では「0人」だった。地元医師の調整に時間がかかっている自治体や医師不足のため近隣自治体と調整中の自治体もあるため、体制の確立には時間を要するとみられる。また、各自治体より高齢者分の接種券の配送時期については4月23日が最も多く、次いで4月12日とする自治体が多かった。(参考)医師確保「0人」が2割 高齢者ワクチン接種(産経新聞)資料 予防接種実施計画の作成等の状況(厚労省)5.ワクチン優先接種、精神疾患などの患者も対象に厚労省は、18日に第44回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を開催し、新型コロナウイルスワクチン接種の接種順位、対象者の範囲・規模について議論した。接種の対象については、接種実施日に16歳以上とし、一定の順位を決めて接種を進める。4月12日から高齢者への接種を始め、基礎疾患のある人などに優先して接種を行う。(1)医療従事者等(2)高齢者(2021年度中に65歳に達する、1957年4月1日以前に生まれた方)(3)高齢者以外で基礎疾患を有する方や高齢者施設等で従事されている方(4)それ以外この会議において、優先接種に「重い精神疾患」や「知的障害」がある人も加えることになった。具体的には精神疾患で入院中の患者のほか、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を持っている人などが対象で、合わせておよそ210万人と見積もられている。(参考)資料 接種順位の考え方(2021年3月18日時点)(厚労省)6.科学的介護情報システム「LIFE」を訪問・居宅支援に活用へ厚労省は、2021年の介護報酬改定により、科学的介護情報システム「LIFE」の運用を始め、科学的なエビデンスに基づいた自立支援・重度化防止の取り組みを評価する方向性を打ち出した。今回の介護報酬改定で新設される「科学的介護推進体制加算」をはじめ、LIFEの取り組みには多くの加算が連携しており、対応を図る介護事業者にとってはデータ提出などが必須だ。さらに、改定では「訪問看護」にも大きなメスが入った。訪問看護ステーションの中には、スタッフの大半がリハビリ専門職で「軽度者のみ、日中のみの対応しか行わない」施設が一部あり、問題視されていたが、今回の改定ではリハビリ専門職による訪問看護の単位数を引き下げる、他職種と連携のために書類記載を求めるなど対策が行われている。(参考)2021年度介護報酬改定踏まえ「介護医療院の実態」「LIFEデータベース利活用状況」など調査―介護給付費分科会・研究委員会(Gem Med)リハビリ専門職による訪問看護、計画書や報告書などに「利用者の状態や訪問看護の内容」などの詳細記載を―厚労省(同)介護報酬の“LIFE加算”、計画の策定・更新が必須 PDCA要件の概要判明(JOINT)資料 訪問看護計画書及び訪問看護報告書等の取扱いについて(厚労省)

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脳卒中データバンク2021

「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立、ますます活用が期待されるデータブック1999年に始まった日本脳卒中データバンクの登録患者数は、2019年ついに20万例を突破!大規模データからしか得られない興味深い解析結果を満載した、大好評のデータブックの最新版。『脳卒中データバンク2015』では2012年までの登録データ約10万例を集計したが、今回は、急性期脳卒中17万例(脳梗塞12.6万例・脳出血3.3万例・くも膜下出血1.1万例)、一過性脳虚血発作1.2万例など、2018年末までに登録された19万9,599例の情報を基に執筆された。脳卒中・循環器病対策基本法が成立し、今後ますます活用が期待される。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    脳卒中データバンク2021定価5,000円 + 税判型AB判頁数200頁 2色刷発行2021年3月編集国循脳卒中データバンク2021編集委員会

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薬物依存リハビリセンターにおける日本人男性の薬物依存と性交との関連

 性行為と薬物使用を組み合わせて行うことは、薬物使用と性交の認知された相互依存(perceived interdependence of drug use and sexual intercourse:PIDS)を形成する可能性がある。また、薬物使用の重症度は、PIDSに有意な影響を及ぼす可能性があるが、この関連はよくわかっていない。国立精神・神経医療研究センターの山田 理沙氏らは、日本の薬物依存リハビリテーションセンター(DARC)の成人男性における薬物使用の重症度とPIDSとの関連について、調査を行った。Substance Abuse Treatment, Prevention, and Policy誌2021年1月7日号の報告。 国立精神・神経医療研究センターが2016年に実施した「日本におけるDARCフォローアップ調査」の2次分析として実施した。データの収集には、46施設より自己申告質問票を用いた。薬物依存症男性患者440例を対象に、人口統計学的特徴、性感染症診断歴、薬物使用関連情報(主な薬物使用やPIDSなど)を収集し、分析した。薬物乱用スクリーニングテスト20日本語版(DAST-20)を用いて、薬物使用の重症度を測定した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は、42歳であった。・DAST-20スコアの中央値は14.0であり、主な薬物使用はメタンフェタミン(61.4%)、新規精神活性物質(NPS、13.6%)であった。・多変量解析では、PIDSとの関連が認められた因子は以下のとおりであった。 ●無防護性交(主にコンドームの未使用、調整オッズ比[AOR]:4.410) ●メタンフェタミンの使用(AOR:3.220) ●NPSの使用(AOR:2.744) ●DAST-20スコア(AOR:1.093) 著者らは「薬物、メタンフェタミン、NPSの使用下における無防護性交の頻度は、PIDSとの強い関連が示唆された。また、薬物使用の重症度とPIDSとの有意な関連も認められた。重度のPIDSを経験した患者に対する、ニーズに適合した適切な治療プログラムの開発が望まれる」としている。

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膝OAの高強度筋トレ、1年半後のアウトカムは?/JAMA

 変形性膝関節症(膝OA)の患者への介入として、高強度筋力トレーニングは低強度筋力トレーニングや注意制御と比較して、膝痛や膝関節圧縮力の長期的な改善効果をもたらさないことが、米国・ウェイクフォレスト大学のStephen P. Messier氏らが実施した「START試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2021年2月16日号で報告された。大腿筋の筋力低下は、膝の痛みや変形性関節疾患の進行と関連するため、米国の診療ガイドラインは変形性膝関節症患者に筋力トレーニングを推奨している。高強度筋力トレーニングは、関節への圧迫力が大きいため変形性膝関節症の症状を悪化させる可能性があるものの、短期であれば安全で、高齢患者にも十分に忍容可能とされる。一方、長期の高強度の運動による筋力の向上は、変形性膝関節症の臨床アウトカムを改善する可能性も示唆されているという。3群を比較する米国の単施設無作為化試験 本研究は、18ヵ月間(長期)の高強度筋力トレーニングは低強度トレーニングや高度な注意制御と比較して、変形性膝関節症患者の膝痛や膝関節圧縮力を改善するかを評価する無作為化臨床試験であり、2012年7月~2016年2月の期間に米国の単施設(ウェイクフォレスト大学)で患者登録が行われた(米国国立関節炎・骨格筋・皮膚疾患研究所[NIAMS]などの助成による)。 対象は、年齢50歳以上、BMIが20~45で、膝痛がみられ、X線所見で軽症~中等症の変形性膝関節症(Kellgren-Lawrenceスコア:2~3点)と診断された患者であった。被験者は、高強度筋力トレーニング、低強度筋力トレーニング、注意制御(対照)を受ける群に無作為に割り付けられた。 筋力トレーニングは、1回につき5分の準備運動、40分のトレーニング、15分の整理運動から成り、週3回、18ヵ月間行われた。高強度群は、個々の運動の最大反復回数(RM)の75%を3セット、その8回反復を2週間行い、その後は2週ごとに、1RMの80%を3セット/8回反復、同85%/6回反復、同90%/4回反復を行い、9週目は強度を緩和して別の運動を行うとともに、個々の運動の新たな1RMを設定し、この9週の筋力トレーニングを8回(18ヵ月)繰り返した。低強度群は、同様の9週間のパターンで、1RMの30~40%の運動を3セット、15回反復した。対照群は、1回60分の研修(健康教育、社会的交流)を、2週ごとに6ヵ月間受け、以降は1ヵ月ごとに、合計24回受けた。 主要アウトカムは、18ヵ月の時点におけるWestern Ontario McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)膝痛スコア(0[最良]~20[最悪]点、臨床的に意義のある最小変化量[MCID]2点)および膝関節圧縮力(歩行中の脛骨の長軸に沿って生じる脛骨大腿骨の最大圧迫力、MCIDは不明)とした。短期の評価では、低強度群で膝痛の改善が良好 377例(平均年齢65歳、女性151例[40%])が登録され、320例(85%)が試験を完遂した。127例が高強度群、126例が低強度群、124例は対照群に割り付けられた。 18ヵ月時の平均WOMAC膝痛スコアは、高強度群は5.1点であり、対照群の4.9点(補正後群間差:0.2点、95%信頼区間[CI]:-0.6~1.1、p=0.61)、および低強度群の4.4点(0.7、-0.1~1.6、p=0.08)と比較して、いずれも有意な差は認められなかった。 膝関節圧縮力にも、高強度群と対照群(2,453N vs.2,512N、補正後群間差:-58N、95%CI:-282~165、p=0.61)、および高強度群と低強度群(2,453N vs.2,475N、-21N、-235~193、p=0.85)のいずれの比較においても有意差はみられなかった。 6ヵ月(短期)の時点では、低強度群は高強度群に比べ、WOMAC膝痛スコア(高強度群5.6点vs.低強度群4.4点、補正後群間差:1.2点、95%CI:0.5~1.9、p=0.001)およびWOMAC機能障害スコア(20.8点vs.16.1点、4.8点、2.4~7.2、p<0.001)が有意に優れていた。膝関節圧縮力には有意差がなかった。 重篤でない有害事象は87件(高強度群53件、低強度群30件、対照群4件)発生し、このうち29件が試験関連であった(20件、9件、0件)。頻度の高い有害事象として、体の痛みが20件(12件、7件、1件)、転倒が19件(11件、6件、2件)、筋挫傷が10件(8件、2件、0件)報告された。試験に関連しない重篤な有害事象は13件(5件、3件、5件)みられた。 著者は、「これらの知見は、成人の変形性膝関節症患者への高強度筋力トレーニングを支持しない」とまとめ、「高強度群と対照群でアウトカムに差がなかった理由の1つとして、対照群で変形性膝関節症による痛みが33%(既報の試験では1~17%)と大幅に改善されたことが挙げられる」と指摘している。

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HFpEF患者の運動療法、強度別の効果のほどは?/JAMA

 左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF)患者において、高強度インターバルトレーニング(HIT)群と中強度持続的トレーニング群との間で、3ヵ月後の最高酸素摂取量(peak VO2)のベースラインからの変化量に有意差はなく、いずれの群も対照群と比較して事前定義の臨床的に意義のある最小変化量を満たさなかった。ドイツ・ミュンヘン工科大学のStephan Mueller氏らが、欧州の5施設で実施した無作為化臨床試験「Optimizing Exercise Training in Prevention and Treatment of Diastolic Heart Failure(OptimEx-Clin)」の結果を報告した。著者は、「HFpEF患者において、ガイドラインに基づく身体活動と比較し、HITまたは中強度持続的トレーニングのいずれも支持されない」とまとめている。持久運動はHFpEF患者においてpeak VO2の改善に有効であるが、運動法の違いにより効果が異なるかは不明であった。JAMA誌2021年2月9日号掲載の報告。HIT vs.中強度持続的トレーニングの有効性を比較評価 OptimEx-Clin試験は2014年7月〜2018年9月に、ドイツのベルリン、ライプチヒ、ミュンヘン、ベルギーのアントワープ、およびノルウェーのトロンハイムの計5施設で実施された。 532例がスクリーニングを受け、慢性HFpEF患者180例がHIT群(3×38分/週)、中強度持続的トレーニング群(5×40分/週)、および対照群(ガイドラインに基づいた身体活動の指導1回)に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。各群、割り付けられた運動療法を、3ヵ月間は医療機関にて、その後9ヵ月間は遠隔医療による監視下在宅にて行った。割り付けに関して、患者および指導している医療スタッフは盲検化されなかったが、解析は盲検下で行われた。 1次エンドポイントは、3ヵ月後のpeak VO2変化量とし、臨床的に意義のある最小変化量は2.5mL/kg/分と設定した。2次エンドポイントは、3ヵ月後および12ヵ月後の心肺フィットネス、拡張機能およびナトリウム利尿ペプチドの変化などであった。両運動療法ともガイドラインに基づく指導と有意差なし 180例(平均年齢70歳、女性120例[67%])のうち、3ヵ月および12ヵ月後の評価を完遂したのは、それぞれ166例(92%)および154例(86%)であった。 3ヵ月後のpeak VO2変化量は、HIT群vs.対照群が1.1 vs.-0.6mL/kg/分(群間差:1.5、95%信頼区間[CI]:0.4~2.7)、中強度持続的トレーニング群vs.対照群が1.6 vs.-0.6mL/kg/分(群間差:2.0、95%CI:0.9~3.1)、HIT群vs.中強度持続的トレーニング群が1.1 vs.1.6mL/kg/分(群間差:-0.4、95%CI:-1.4~0.6)であった。 12ヵ月後の比較においても統計学的有意差は確認されなかった。また、拡張機能およびナトリウム利尿ペプチドの有意な変化は観察されなかった。 急性冠症候群の発生報告は、HIT群4例(7%)、中強度持続的トレーニング群3例(5%)、対照群5例(8%)であった。

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変形性関節症の痛みに、SNRIが有効な可能性/BMJ

 セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の疼痛や能力障害(disability)に対する効果は小さく、背部痛への臨床的な意義はないものの、変形性関節症への臨床的に意義のある効果は排除できず、ある程度有効な可能性があることが、オーストラリア・シドニー大学のGiovanni E. Ferreira氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年1月20日号で報告された。抗うつ薬は、背部痛(神経根症状の有無を問わず)や股関節・膝の変形性関節症の治療に広く用いられており、多くの診療ガイドラインがこれを推奨している。一方、背部痛や股関節・膝の変形性関節症への抗うつ薬の使用を支持するエビデンスは十分でないという。疼痛への抗うつ薬の有用性をメタ解析で評価 研究グループは、背部および変形性関節症の疼痛に対する抗うつ薬の安全性と有効性を、プラセボとの比較で評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 医学データベースを検索して、腰痛や頸部痛、坐骨神経痛、股関節または膝の変形性関節症を有する患者を対象に、抗うつ薬とプラセボ(活性または不活性)の有効性と安全性を比較した無作為化対照比較試験を選出した。2人の研究者が別個に、データの抽出を行った。 疼痛と能力障害を主要アウトカムとし、疼痛・能力障害スコアを0(疼痛または能力障害がない)~100(疼痛または能力障害が最も高度)点の尺度に変換した。副次アウトカムは、安全性(各試験の定義によるすべての有害事象、重篤な有害事象、有害事象による投与中止)であった。TCAとSNRIは、坐骨神経痛にも有効な可能性 日本の研究を含む33件の試験(5,318例)が解析の対象となった。 SNRIは、3~13週時の背部痛(平均差:-5.30、95%信頼区間[CI]:-7.31~-3.30)を軽減し(エビデンスの確実性:中)、3~13週時の変形性関節症による疼痛(-9.72、-12.75~-6.69)を軽減した(エビデンスの確実性:低)。また、SNRIは、2週までに坐骨神経痛(-18.60、-31.87~-5.33)を軽減したが、3~13週時(-17.50、-42.90~7.89)では軽減効果は認められなかった(いずれも、エビデンスの確実性:きわめて低)。 背部痛については、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、三環系抗うつ薬(TCA)、ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)、セロトニン遮断再取り込み阻害薬(SARI)、四環系抗うつ薬には、軽減効果は認められなかった(エビデンスの確実性:きわめて低~低)。 TCAは、2週までに坐骨神経痛(平均差:-7.55、95%CI:-18.25~3.15、エビデンスの確実性:きわめて低)を軽減しなかったが、3~13週(-15.95、-31.52~-0.39、エビデンスの確実性:きわめて低)および3~12ヵ月(-27.0、-36.11~-17.89、エビデンスの確実性:低)では軽減効果がみられた。 また、SNRIは、3~13週時の背部痛による能力障害をa改善し(平均差:-3.55、95%CI:-5.22~-1.88、エビデンスの確実性:中)、2週まで(-5.10、-7.31~-2.89、エビデンスの確実性:中)および3~13週時(-6.07、-8.13~-4.02、エビデンスの確実性:低)の変形性関節症による能力障害を改善した。 著者は、「TCAとSNRIは、坐骨神経痛にも有効な可能性はあるが、エビデンスの確実性はきわめて低~低であった」としている。

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事例018 モーラステープの査定【斬らレセプト シーズン2】

解説事例では、湿布薬ケトプロフェン貼付剤(商品名:モーラステープ)がB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)として査定となりました。湿布薬の処方に当たっては、診療報酬点数表の第5投薬の通則5によって、湿布薬の種類にかかわらず、1処方につき70枚が限度とされています。医師がやむを得ず70枚を超えて投薬する場合は、その理由を処方箋と診療報酬明細書に記載することで算定することができます。本事例では、1処方84枚と70枚を超えていました。病名から見て貼付部位が6ヵ所と明確であるため70枚超えの投与は可能であり、コメントは特に必要ではないと考えられていました。しかし、コメント記載がない場合の多くは1回処方量70枚を超える部分が査定となります。なぜ42枚に査定となったのだろうと、もう1度診療報酬明細書を確認してみました。用量コメントに1日2回とありました。湿布薬(モーラステープなど)は「1局所1日1回貼付」が原則です。医学的に1日2回を必要としたコメントは見当たりませんでした。したがって、本来の用量の1日1回分が妥当であると査定となったことが考えられます。総量70枚を超える、または1日1回を超える貼付を必要とする場合には、あらかじめ医学的コメントを記載していただくように改めて医師にお願いしています。最近の事例を紹介します。診療報酬点数表に明記はありませんが、同月内で140枚を超える処方は認められない傾向です。たとえば、同月に28枚×2回、42枚×1回、56枚×1回の計154枚の組み合わせでは、14枚分が査定となっています。毎回の処方では算定要件を満たしますが、同月内合計で140枚を超える場合は見逃しやすいため注意が必要です。さらに、2020年10月診療分から、湿布薬投与の1日用量などや、1処方70枚超えにかかるコメントには、レセプト電算処理システムコードを選択しての入力が必須となりました。該当コードを使用していないコメント入力やコメント内容に不備がある場合は返戻されています。対策としてはレセプトチェックシステムを活用されると良いでしょう。

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第41回 難病患者とのコミュニケーションで重要な2つのこと

前回紹介した、難病患者支援などを行っているNPO法人Smile and Hope(千葉県八千代市)主催の「心のケアシンポジウム〜今こそ生きる意味を問う〜」では、医療・福祉現場のコミュニケーションの在り方もトピックの1つとなった。東京都立神経病院リハビリテーション科の作業療法士である本間 武蔵氏は、「難病コミュニケーション」をテーマに臨床経験から得られた視点を話した。本間氏は、ALSなど神経難病患者の日常生活支援を行うなかで、あらかじめ録音・保存した声をパソコンで再現するソフトウエア「マイボイス」や、意思伝達ソフトウエア「ハーティーラダー」などを活用し、気管切開で声を失った患者の意思伝達のサポートに取り組んでいる。難病コミュニケーションは手段と心本間氏はまず、神経難病のコミュニケーションについて「コミュニケーション手段」と「心のコミュニケーション」を2つの柱として挙げた。ALSは、症状が進行すると運動障害や構音障害、呼吸障害などが現れる。そのため、残存運動機能に合わせたコミュニケーションツールを選択する必要がある。たとえば、パソコンやタブレット、スマートフォンを使ったワンスイッチ操作による文字入力や、視線やまばたきによって透明文字盤を指し示すコミュニケーションなどだ。ただ、本間氏は「日常生活のコミュニケーションは、装置や用具に頼らない手段が重要。複雑な装置や特殊な用具がなくても、コミュニケーションはできる」と述べる。また、装置や用具を使うにしても、できるだけシンプルな仕組みで簡単に使えるものであることに加え、同時に複数の手段を使いこなすことが重要と指摘。究極のコミュニケーション手段として、相手が患者の口の形を読み取る「口文字盤」や、太田氏が開発した、瞳の動きだけで言葉を伝える「Wアイクロストーク」を挙げ、「人の読み取り能力は、高性能なセンサーよりも優れている」と述べた。心のコミュニケーションについては、「周囲が患者さんに声掛けしたり関心を寄せたりすることが重要」とし、具体的には「患者さんからの意思表示が読み取れなかったとしても、やりとりに関心や共感を添えることや、それまでの会話や関わりを基に、推測で理解することもコミュニケーションになる」と述べた。本間氏は、心のコミュニケーションにおける大切なポイントとして、「心をここに置く」「コンディションが良い状態で臨む」の2つを挙げる。前者は、置かれた状況で充分とはいえなくても相手に集中する意識感覚を持つことで、スケジュールのなかの一場面とは全く違った関わりになるという。後者については、患者が示す文字盤を読み取ることだけにとらわれない余裕が生まれ、イメージが湧くなど、自身でも心の会話ができていると感じられるという。コミュニケーション意欲減退は、人生への諦めに前回、ALSを発症した医師の太田 守武氏が、多くの困難を感じた中でも「最大の壁」と称したのが情動制止困難であった。普段は抑えることができる感情が抑えられなくなり、極端な表現により周囲との関係がうまくいかなくなることもあるのが特徴だ。しかしこれも症状の1つであり、本人も苦しんでいるという理解が大切だと本間氏は強調した。また、病初期から進行期において、本人は発した言葉が相手に通じていると思っているのに、実際には聞き取ってもらえていないという齟齬が生じたり、形が崩れた文字が読み取れず、理解してもらえなかったりすることで孤独感が次第に募る。こうなると、コミュニケーションへの意欲だけでなく、この先の人生まで諦めてしまう可能性があり、全経過の中で最大の危機である。一方で、視線透明文字盤や意思伝達装置などに落ち着いて取り組む患者の多くは、胃瘻や気管切開、人工呼吸器により身体や生活が楽になり、安定しているからこそ積極的なコミュニケーションが可能になっているという側面もあるという。ただ、心のコミュニケーションは病初期の段階から必要だと本間氏は指摘する。「コミュニケーション手段が成り立たなくなったから、心でコミュニケーションするというのは間違っている。患者さんは1人ひとり異なるので、パターン化せず、想像力を働かせて患者さんの意思を正しく読み取ることが大切」と指摘。「患者さんは、日常の些細な事をきっかけに『生きていける』と思ったり『死にたい』という気持ちになったりしている。それだけに、心のコミュニケーションは患者さんとの共同作業として向き合っていきたい」と締めくくった。難病患者や重度障がい者を巡っては、悲惨な事件が起きている一方、ALS患者の舩後 靖彦氏が国政史上初の参議院議員となるなど、世間の耳目を集めている。医療者として、一個人として、どのようなコミュニケーションができるだろうか。改めて考えてみたい。

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事例017 廃用症候群リハビリテーション料の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説乳がん術後に伴う安静等によって身体能力低下を認めたため廃用症候群と診断してH001-2 廃用症候群リハビリテーション料(以下、「同項目」)を算定したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)で査定となりました。同項目の適用となるのは、同項目の通則1にある「急性疾患等に伴う安静等による廃用症候群の患者であって、一定程度以上の能力低下をきたしているもの」です。具体的には、同項目の算定留意事項(2)に、「急性疾患等(がんの手術を含む外科的手術又は肺炎等)に伴う安静(治療の有無を問わない)による廃用症候群であって、(中略)治療開始時においてFIM(Functional Independence Measure)115 点以下、またはBI(Barthel Index)85 点以下の状態のものをいう」と定義があります。( )内筆者注。レセプトを確認すると、添付もしくは摘要欄に記載しなければならない「廃用症候群に係る評価票(別紙様式22)」の項目のうち、治療開始時のBIが100点と表示されていました。「85点以下でないために適用がない」として査定となったことがわかります。レセプトチェックシステムでは、コメントの数値までチェックされていません。査定対策として、算定担当にはコメント入力時に基準値の確認を行うことを伝え、リハビリテーション部には同項目を実施するときには、FIMとBIの数値が規定以下であることを確認していただくようにお願いしました。

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五十肩は関節内ステロイド注射が短期的に最も有効な治療

 五十肩(肩関節周囲炎)に対するさまざまな治療の有効性について、英国・グラスゴー大学のDimitris Challoumas氏らが65研究のメタ解析を行った結果、関節内ステロイド注射が他の治療(外科的治療を除く)と比べて短期での有用性が高く、その優位性は6ヵ月継続することがわかった。この結果から著者らは、五十肩には最初に関節内ステロイド注射が行われるべきとしている。JAMA Network Open誌2020年12月16日号に掲載。五十肩には関節内ステロイド注射が短期で他の治療より有用 本研究では、五十肩の治療について他の治療法やプラセボ/無治療と比較した無作為化試験を2020年2月にMedline、EMBASE、Scopus、CINHALで検索し、2名が独立して抽出した。主要評価項目は疼痛と機能、副次評価項目は外旋可動域であった。ペアワイズメタ解析の結果は、疼痛と外旋可動域の平均差および機能の標準化平均差として提示した。追跡期間について、短期(12週以下)、中期(12週超12ヵ月以下)、長期(12ヵ月超)に分けた。 五十肩に対するさまざまな治療の有効性について解析した主な結果は以下のとおり。・系統的レビューに含めた65の研究(4,097例)から、34の研究(2,402例)をペアワイズメタ解析に含め、39の研究(2,736例)をネットワークメタ解析に含めた。・ペアワイズメタ解析で統計学的に有意な結果はいくつかあったが、関節内ステロイド注射のみ、疼痛(無治療/プラセボに対する平均差:-1.0 visual analogue scale[VAS]ポイント、95%CI:-1.5〜-0.5VASポイント、p<0.001、理学療法に対する平均差:-1.1VASポイント、95%CI:-1.7〜-0.5VASポイント、p<0.001)および機能(無治療/プラセボに対する標準化平均差:0.6、95%CI:0.3〜0.9、p<0.001、理学療法に対する標準化平均差:0.5、95%CI:0.2〜0.7、p<0.001)において、短期で他の介入に比べ統計学的および臨床的に優位であった。・サブグループ解析とネットワークメタ解析で、関節内ステロイド注射に、簡単な運動・ストレッチ・理学療法(電気療法、モビライゼーション)を伴う自宅運動プログラムを追加することにより、中期でのベネフィットの上乗せがみられた(例 自宅運動を伴う関節内ステロイド注射の無治療/プラセボに対する痛みの平均差:-1.4VASポイント、95%CI:-1.8〜-1.1VASポイント、p<0.001)。 著者らは、「このメタ解析の結果は、1年未満の五十肩患者における早期の関節内ステロイド注射はアウトカムが良いことを示唆している。また、回復の可能性を最大化するために自宅運動プログラムを一緒に行う必要がある」としている。

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「リウマチを悪友」と呼ぶ患者さん/日本イーライリリー

 高血圧、糖尿病などとともに慢性疾患の代表格と言われる「関節リウマチ」。わが国の関節リウマチ患者数は70~80万人と推定され、仕事や家庭を築くライフステージの重要期にある40代の女性が診断されることも多い疾患と言われている。近年では、治療薬の進歩もあり、患者さんのQOLの改善は大きく進展している。その一方で、目に見えない「痛み」、「倦怠感」、「朝のこわばり」という症状は、周囲の理解を得ることが難しく、また、伝えることも容易でないため、社会生活において悩みを抱える患者さんも多いという。 日本イーライリリーと女性の暮らしを応援する「生活情報サイトハルメクWEB」は、関節リウマチ患者さんの周囲に理解されにくい症状・日常生活の困りごとを俳句で詠む「GoodDAY関節リウマチ俳句コンテスト」を共催し、受賞作品を発表した。 コンテストでは、関節リウマチ患者さんや周囲の方を対象に、患者さんが抱える日常生活の困りごとや、医療従事者やご家族の方とのコミュニケーションについて、俳句とその元になったエピソードを募集。当事者ならではの疾患に対するさまざまな想いや、自身の経験をリアルに綴った俳句とエピソードが828句が寄せられた。 選者は、テレビで活躍中の夏井いつき氏を審査員長に、関係する患者団体、医療者の代表が審査し、大賞1句、審査員特別賞3句、部門賞4句が決定した。 日本イーライリリーでは、「本コンテストが、関節リウマチ患者さんのより良い1日(GoodDAY)について、患者さんや患者さんを取り巻く皆様と共に考えるきっかけとなることを願っている」と期待を寄せている。■受賞作品【大賞】 リウマチを悪友と呼び花野ゆく(吉野智子さん/70代/神奈川県)【入賞】 つまめない箸も下着も枝豆も(浜崎真理さん/30代/神奈川県) 決断の空路9時間氷河踏む(鈴木みつよさん/70代/大分県) コオロギの愚痴も拾った聴診器(小松崎有美さん/60代/埼玉県) 木の芽時(このめどき)まずは頑張り誉める医師(瀬川令子さん/50代/三重県)【審査員特別賞】 こわばりや寒月にまた触れたらし(ぐさん/30代/神奈川県) さする手に重ねてさする秋始め(かあたさん/50代/岐阜県) リウマチと告げられし日や雛の日(田中ウカさん/60代/神奈川県)

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第35回 新型コロナワクチン接種、医療従事者は2月下旬から開始か

<先週の動き>1.新型コロナワクチン接種、医療従事者は2月下旬から開始か2.4月から感染予防策を徹底する医療機関の診療報酬を臨時引き上げ3.来年度の薬価引き下げ幅を0.8%緩和、4,300億円削減へ4.介護報酬改定2年連続引き上げ、5つの柱を軸に5.高齢者のポリファーマシー対策強化に向けた取りまとめ1.新型コロナワクチン接種、医療従事者は2月下旬から開始か新型コロナウイルスワクチンについて、来年2月下旬をめどに医療従事者への接種を始められるよう、厚生労働省から自治体に体制整備を指示したことが報道された。18日、ファイザーがビオンテック(ドイツ)と共同開発している新型コロナワクチンの製造販売承認申請を行ったことを受け、来年のワクチン接種スケジュールと優先接種対象者について議論が進んでいる。ファイザーのワクチンは、-70度以下での流通・保管体制が必要となる。政府はワクチン保管用に、-75℃のディープフリーザーを3,000台、-20℃のディープフリーザーを7,500台確保するなど体制を整える方針。新型コロナワクチン接種は、通常の定期接種と同様に、住民票所在地の市町村での接種を原則とし、各市町村は、接種対象者に対し、接種券(クーポン券)を発行する。対象者は接種券を医療機関に持参してワクチンを接種し、医療機関は接種券を市町村への費用請求に用いる。接種後、接種券と一体の接種済証が発行され、接種情報は市町村の予防接種台帳で管理・保存される。25日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会で、ワクチンの接種優先順についてなど、さらに具体的に議論される見込み。(参考)新型コロナワクチン 2月下旬の接種開始準備を指示 厚労省(NHK)新型コロナウイルスワクチンの接種体制・流通体制の構築について(厚労省)ファイザーとBioNTech、日本においてCOVID-19ワクチンの製造販売承認申請を発表(ファイザー)2.4月から感染予防策を徹底する医療機関の診療報酬を臨時引き上げ厚労省は、18日に開催された中央社会保険医療協議会で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を踏まえた診療に係る特例的な対応として、外来や入院を問わず、すべての診療に対して感染予防策の徹底を行った場合、2021年4~9月まで診療報酬を臨時で引き上げることを決めた。この改定により、初診・再診料は1回当たり5点、入院料は1日当たり10点の加算を算定できる。算定条件としては、すべての患者診療において、状況に応じて必要な個人防護具を着用した上で、感染防止に十分配慮して対応を実施する、COVID-19の感染予防策に関する職員研修を行うなどが求められる。(参考)新型コロナウイルス感染症への対応とその影響等を踏まえた診療報酬上の取扱いについて(厚労省)3.来年度の薬価引き下げ幅を0.8%緩和、4,300億円削減へ厚労省は、18日に開催された中央社会保険医療協議会において、来年度の薬価改定について討論した。2021年から毎年実施される薬価改定の品目ならびに改定幅について、乖離率が5%を超える品目(医療用医薬品のうち69%)を対象に、来年度の薬価改定(薬価の引き下げ)を行うこととした。ただし、COVID-19による影響があるのを考慮して、薬価の削減幅を0.8%緩和することを了承。この決定により、患者や保険者の負担は軽くなるが、新薬の開発コストが増加している中で、製薬企業にとっては経営上の打撃となる。日本医師会・中川 俊男会長は、従来から薬価財源は医療費本体に充当するのが基本で、「コロナ禍の現状において、国民の生命を守るために最前線で活動する医療機関支援の原資とするなど、診療報酬上で中間年に加算をし、医療費財源に充てるべき」との意見を16日の定例記者会見で発表している。(参考)全世代型社会保障検討会議の最終報告取りまとめなど最近の政府の動向について(日医)2021(令和3)年度薬価改定の骨子(案)(厚労省)4.介護報酬改定2年連続引き上げ、5つの柱を軸に18日に開催された社会保障審議会介護給付費分科会において、2021年度介護報酬改定に関する審議報告がまとめられた。改定率は、前日の田村 憲久厚生労働相と麻生 太郎財務相による折衝でプラス0.7%と決められ、2回連続のプラス改定となった。今回の改定の5つの柱として、「感染症や災害への対応力の強化」「地域包括ケアシステムの推進」「自立支援・重度化防止に向けた取組の推進」「介護人材の確保・介護現場の革新」「制度の安定性・持続可能性の確保」を挙げ、これらを促進するような改定となる見込み。また、厚労省が廃止期限を設けていた介護療養型医療施設や有床診療所から介護医療院への移行促進なども含まれる。(参考)令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(案)(厚労省)5.高齢者のポリファーマシー対策強化に向けた取りまとめ厚労省は、17日に「高齢者医薬品適正使用検討会」を開催し、病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方をまとめた。ポリファーマシーは、単に服用薬剤数が多いことではなく、それに付随する薬物有害事象リスクの増加や、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態。これに取り組み始める病院が、初期に直面するであろう課題を解決するためのスタートアップツールとしてまとめられた。また、第二部はポリファーマシー対策をある程度進めている病院が、業務手順書を整備し、業務をより効率的に行う参考資料としてまとめられている。この取り組みに揃えておくべき資料としては、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))について」「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」が挙げられており、とくに高齢者の入院治療を行う病院に取り組み開始を求めている。(参考)病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方(案)(厚労省)第12回 高齢者医薬品適正使用検討会 資料(厚労省)

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第33回 日医・中川会長「社会保障のやさしさがない」75歳以上の患者負担、議論保留

<先週の動き>1.日医・中川会長「社会保障のやさしさがない」75歳以上の患者負担、議論保留2.地域医療構想、一人当たり医療費の地域差半減を/経済財政諮問会議3.年末年始に連絡可能な新型コロナ相談窓口の公表などを都道府県に要請/厚労省4.常勤医師の不在、秋田の介護老人保健施設の開設取り消し5.生殖補助医療の民法特例法案が成立、提供卵子でも産んだ母親と親子に6.外来機能報告制度、医療計画の見直しで2022年から開始1.日医・中川会長「社会保障のやさしさがない」75歳以上の患者負担、議論保留12月2日、「第15回 国民医療推進協議会総会」がテレビ会議システムにて開催され、後期高齢者の患者負担割合2割への引き上げについて、「慎重に対応するよう、強く要望する」との決議文が採択された。この日の総会には、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会など41団体が参加した。日医・中川会長は「このような時期に後期高齢者の患者負担割合を1割から倍にするという議論事態が社会保障としてのやさしさをまったく感じられない」と強調した。これにより、12月4日に開催される予定であった全世代型社会保障検討会議が取りやめになった。政府が求める年収170万円以上の人を対象とする方針に対し、公明党は年金生活者である高齢者にとっては負担が大き過ぎるとして、年収240万円以上とするよう求めていた。政府は今週明けに、「全世代型社会保障検討会議」を開いて結論を出す予定だが、来年は引き上げの対象範囲や実施時期などで、さらに議論が重ねられる見込み。(参考)国民医療推進協議会 後期高齢者の患者負担割合で決議「慎重に対応を」(ミクスonline)75歳以上の医療費2割負担 対象範囲めぐり調整難航(NHK)2.地域医療構想、一人当たり医療費の地域差半減を/経済財政諮問会議政府は4日、「経済財政諮問会議」を開催した。社会保障について、経済・財政一体改革の推進により、一人当たり医療・介護費の地域差縮減を求める資料が提示された。地域医療構想の実現には、後発医薬品の使用割合の上昇などを必須目標として医療費適正化計画が盛り込まれ、目標達成のために都道府県へのインセンティブ強化、毎年度の医療費見込みの改訂、保険者協議会の役割強化などを求めている。田村厚生労働大臣からは、2024年度からの第4期医療費適正化計画に向け、都道府県の意見を聞きながら、国と地方が連携し医療費の適正化のために取り組む事項や効果的なPDCA管理ができる新たな仕組みなどについて検討を行い、医療等データの利活用、介護ロボット、ICTなどの活用推進を通して、医療・福祉サービスの生産性向上などを検討することが発表された。2022年度以降の後期高齢者の増加による社会保障費の急増対策として、今後もさまざまな政策立案が進むだろう。(参考)諮問会議 医療費の地域間格差是正はデータの可視化から 医療費適正化計画に後発品使用割合など明示(ミクスonline)令和2年 第18回 経済財政諮問会議 議事次第・資料(内閣府)3.年末年始に連絡可能な新型コロナ相談窓口の公表などを都道府県に要請/厚労省厚生労働省は2日に、新型コロナウイルス感染症対策推進本部などから各都道府県ならびに保健所設置市に対して、年末年始は例年の対応以外に、発熱患者などへの診療・検査を担う医療機関や救急・入院患者の受け入れ医療機関について、十分な医療提供体制を整備できるよう、各地の医療機関や医師会などと事前に調整を行っておくことを求める事務連絡を発出した。年末年始の受診、電話相談、受診調整に対応可能な医療機関を事前に調整のうえ、確保しておくこと。また、発熱患者等が円滑に相談できるよう、年末年始に連絡可能な相談窓口などの公表を行うことを要請している。発熱患者などが医療機関を受診した場合の流れについては、2020年10月16日付けの事務連絡も参考にするように求めている。(参考)年末年始に向けた医療提供体制の確保に関する対応について(令和2年12月2日 事務連絡)(厚労省)次のインフルエンザ流行に備えた発熱患者等が医療機関を受診した場合の流れについて(令和2年10月16日 事務連絡)(同)4.常勤医師の不在、秋田の介護老人保健施設の開設取り消し3日、秋田県は、介護老人保健施設「男鹿の郷」が、2億4,000万円の介護報酬を不正受給していたため、施設の開設許可を取り消した。処分を受けた施設は、介護保険法により老健施設で定められる常勤医師の勤務時間(1週間当たり32時間以上)に従わず、2018年2月から今年6月まで、医師の勤務時間が十数時間と短時間であったにもかかわらず、常勤と偽って請求し、不正受給を受けていた。(参考)介護報酬2億4千万円を不正受給 男鹿の老人保健施設(秋田魁新報)5.生殖補助医療の民法特例法案が成立、提供卵子でも産んだ母親と親子に第三者から精子や卵子の提供を受けて、生殖補助医療によって子供を授かった場合の親子関係を定める民法特例法案が4日、衆院本会議で可決・成立した。生殖補助医療によって、親子関係が不安定にならないよう法律で定めるのが狙いで、議論を重ねてきた。法案成立により、卵子提供では産んだ女性が母、精子提供では夫が父となる。親子関係部分の施行は公布から1年後から。なお、生まれた子が自分の出自を知る権利や、代理母出産をめぐる規制については、今後おおむね2年をめどに必要な法制上の措置を講じるとされた。海外で認められている生殖補助医療の対象の範囲に同性パートナーや独身女性を含むのかなど、今回の法案には含まれなかった論点についてはさらに議論が必要となる。(参考)社説:生殖医療法成立 ルール整備の出発点にしたい(読売新聞)生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案(衆議院)6.外来機能報告制度、医療計画の見直しで2022年から開始3日に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」で、外来機能報告制度について「外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等に関する報告書」が取りまとめられ、2022年度から開始されることが承認された。現在、各医療機関について医療機能情報提供制度もあるが、患者側から見ると、外来医療の機能についての情報が十分に得られにくいこと、再診患者の逆紹介が十分に進んでいないことなどがある。一部の医療機関の外来患者が多くなることによる、患者の待ち時間や勤務医の外来負担などの課題を解消するため、地域での協議で各医療機関が「手上げ」して、「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」を明確化することになった。対象となる医療資源を重点的に活用する外来としては(1)医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来(2)高額等の医療機器・設備を必要とする外来(3)特定の領域に特化した機能を有する外来(紹介患者に対する外来等)が想定されている。病床機能報告と同様に、外来機能報告制度にも診療レセプト情報や特定健診等情報データベース(NDB)を活用して、国から各医療機関に対して、当該医療機関の「医療資源を重点的に活用する外来」に関する実施状況のデータを提供することになっている。今回の報告書は、次回の社会保障審議会医療部会に報告され、医療法等の改正となる見込み。(参考)外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等に関する報告書(厚労省)第24回 医療計画の見直し等に関する検討会(同)

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高齢者の転倒・骨折予防、スクリーニング+介入は有効か/NEJM

 高齢者の転倒による骨折の予防において、郵送での情報提供に加え、転倒リスクのスクリーニングで対象を高リスク集団に限定した運動介入または多因子介入を行うアプローチは、郵送による情報提供のみと比較して骨折を減少させないことが、英国・エクセター大学のSarah E. Lamb氏らが行った無作為化試験「Prevention of Fall Injury Trial」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2020年11月5日号で報告された。高齢者における転倒の発生は、地域スクリーニングとその結果を考慮した予防戦略によって抑制される可能性があるが、英国ではこれらの対策が骨折の発生、医療資源の活用、健康関連QOLに及ぼす効果は知られていないという。イングランドの63施設が参加した実践的クラスター無作為化試験 本研究は、イングランドの7つの地方と都市部の63の総合診療施設が参加した実践的な3群クラスター無作為化対照比較試験であり、2010年9月~2014年6月の期間に参加施設と参加者の募集が行われた(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 各地域の保健区域にある3つの総合診療施設が、3つの介入のいずれかに無作為に割り付けられた。参加施設は、自施設の患者登録データを用いて70歳以上の地域居住者に試験への参加を募った。運動介入または多因子転倒予防介入を行う群に割り付けられた施設は、参加者に転倒リスクに関する簡略なスクリーニング質問票を送付した。 郵送による情報提供、転倒リスクのスクリーニング、対象を限定した介入(転倒リスクが高い集団への運動介入または多因子転倒予防介入)を行った群の効果を、郵送による情報提供のみを行った群と比較した。 運動介入にはOtago運動プログラム(筋力、バランス、歩行)などが用いられた。多因子転倒予防介入では、看護師、総合診療医、老年病専門医が、転倒と病歴、歩行とバランス、投薬状況、視力、足と履き物などを評価し、家庭環境に関する聞き取りを実施して、服薬の見直し、運動(運動介入群と同じ)、専門医への紹介などが行われた。 主要アウトカムは、18ヵ月後の100人年当たりの骨折発生率とした。副次アウトカムは、転倒、健康関連QOL、フレイル、経済評価などであった。100人年当たりの骨折発生率:2.76件vs.3.06件vs.3.50件 63施設から70歳以上の9,803例(平均年齢78歳、女性5,150例[53%])が無作為に選出された。このうち3,223例が郵送による情報提供のみを行う群(21施設)、3,279例が郵送による情報提供に加え、転倒リスクのスクリーニングと対象を限定した運動介入を行う群(21施設)、3,301例は郵送による情報提供に加え、転倒リスクのスクリーニングと対象を限定した多因子転倒予防介入を行う群(21施設)に割り付けられた。 転倒リスクスクリーニング質問票は、運動群の3,279例中2,925例(89%)と、多因子転倒予防群の3,301例中2,854例(87%)から回答が返送された。これら質問票を返送した5,779例のうち、2,153例(37%)が「転倒リスクが高い」と判定され、介入を受けることが勧められた。 骨折データは9,803例中9,802例で得られた。18ヵ月の時点で、骨折は郵送による情報提供群で133件、運動群で152件、多因子転倒予防群で173件発生し、100人年当たりの発生率はそれぞれ2.76件、3.06件、3.50件であった。運動群の郵送による情報提供群に対する骨折発生の率比は1.20(95%信頼区間[CI]:0.91~1.59、p=0.19)、多因子転倒予防群の郵送による情報提供群に対する骨折発生の率比は1.30(0.99~1.71、p=0.06)であり、スクリーニングと対象を限定した介入は骨折発生率を抑制しなかった。 転倒、SF-12で評価した健康関連QOL、Strawbridge Frailty Indexスコアで評価したフレイルにも有意な差は認められなかった。また、2万ポンド(2万5,800米ドル)を閾値とした場合、運動介入で費用対効果が優れる確率は70%だった。 試験期間中に、3件の有害事象(狭心症エピソード1件、多因子転倒予防の評価中の転倒1件、大腿骨近位部骨折1件)が発現した。 著者は、「最近のCochraneレビューでは、転倒への多因子介入の効果は限定的でばらつきが大きいと報告されており、骨折については信頼できるエビデンスはないとされる。また、今回の試験では、既報の研究に比べ運動の転倒への効果が低かったが、どの研究よりも追跡期間が長かった」としている。

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第29回 厚労白書、今後20年間の見通しにつきまとう新型コロナの影響

<先週の動き>1.厚労白書、今後20年間の見通しにつきまとう新型コロナの影響2.オンライン診療、初診は「かかりつけ医」限定に3.医療計画の中間見直し、病院の入院機能だけでなく外来機能も再編へ4.特定行為看護師、外国人患者のサポート体制も広告可能に5.今年5月以降、介護事業所の経営状況は依然として悪いまま1.厚労白書、今後20年間の見通しにつきまとう新型コロナの影響10月23日の閣議において、田村厚労大臣は、令和2年度の厚生労働白書を報告した。第1部のテーマは「令和時代の社会保障と働き方を考える」と題され、平成の30年間を振り返りつつ、高齢化がピークを迎える2040年頃を見据えて、「人生100年時代」「担い手不足・人口減少」「新たなつながり・支え合い」「生活を支える社会保障制度の維持・発展」という4つの方向性に沿った対応の必要性を提示した内容となっている。2019年現在の人口1億2,617万人は、今後2040年には1億1,092万人へと減少し、働き手や支え手が不足する中、85才以上の高齢者が592万人から1,024万人に急増する見通しのため、社会保障費の増大は避けられない。今後の対応について、医療介護分野ではイノベーションの推進や、国民が安心できる持続可能な医療・介護の実現などが求められる。(参考)令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-〔概要〕(厚労省)令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-〔本文〕(同)2.オンライン診療、初診は「かかりつけ医」限定に政府が進めているオンライン診療の恒久化について、10月30日の閣議後記者会見で、かかりつけ医については、初診のオンライン診療を認める方針が明らかになった。これまで、菅内閣発足直後から田村厚労相、河野太郎規制改革担当相、平井卓也デジタル改革担当相で協議を重ね、オンライン診療の初診解禁について合意がなされていた一方で、日本医師会はこれまで診療履歴のない新規の患者の診察についてはオンライン診療を認めないよう求めていた。今後、かかりつけ医の具体的な要件や対象疾患などを有識者会議で議論し、年内には一定の方向性を示すとしている。(参考)オンライン初診「かかりつけ医」限定 田村厚労相、恒久化へ向け方針(毎日新聞)田村厚生労働大臣記者会見概要 令和2年10月30日(厚労省)3.医療計画の中間見直し、病院の入院機能だけでなく外来機能も再編へ厚労省は、10月30日に「第22回医療計画の見直し等に関する検討会」をオンライン開催し、外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等について討議を行った。地域医療計画は従来5年ごとに策定だったが、2014年の地域医療介護総合確保法(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律)により6年おきに策定となり、2018年の診療報酬・介護報酬のダブル改定に合わせて、第7次医療計画がスタートした。2020年は中間見直しの年であり、現在のコロナウイルス感染拡大により局所的な病床不足の発生や感染症対応も含めた医療機関の役割分担・連携体制の構築が必要になるなど、地域医療計画の見直しを求める声が上がっている。各地で人口減少や高齢化等により「担い手の減少」と「需要の変化」が進み、外来医療の高度化等も進んでいく中で、入院医療だけでなく、外来医療についても再編の議論が必要となっている。今後、「医療資源を重点的に活用する外来」の定義をした上で、「外来機能報告」(仮称)の対象となる医療機関の範囲についてさらに議論を進め、年内には医療部会に取りまとめた検討結果を報告する見込み。地域によってはコロナウイルス感染により医療機関への受診抑制もあり、医療機関の再編が来年度以降大きく動き出す可能性がある。(参考)第22回 医療計画の見直し等に関する検討会(オンライン会議)(厚労省)4.特定行為看護師、外国人患者のサポート体制も広告可能に厚労省は「第16回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」を10月29日に開催し、医療機関が広告可能な事項として、特定行為研修を修了した看護師に医師の業務を移管していることも広告可能とする方針が了承された。また、2021年のオリンピック開催に合わせて、外国人患者についても対応できる外国語の種類や翻訳器など、サポート体制も医療機能情報提供制度を通して告示可能となる。(参考)第16回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会資料(厚労省)5.今年5月以降、介護事業所の経営状況は依然として悪いまま10月30日に厚労省が公開した「経営実態調査」で、コロナウイルス感染拡大により、介護事業者の経営状態が依然として悪いことが明らかとなった。新型コロナウイルス感染症の流行前と比較して「悪くなった」と回答した事業所の割合は5月で47.5%、感染が落ち着いた10月で32.7%となり改善したものの、通所リハビリテーションなど通所系のサービス事業者がとくに影響を受けていた。元々、介護事業者にとって人材確保が課題であり、人件費が増加(平成30年度から+0.4%)したが、コロナの影響で保健衛生費(マスク、手袋などの購入費)が増えるなど、経費が増加しており、さらにサービス利用者の減少なども影響していると見られる。(参考)介護事業所 経営悪化5割に 通所系で顕著 厚労省調査(日本農業新聞)第190回 社会保障審議会介護給付費分科会資料(厚労省)第31回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会(同)

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事例013 腰部または胸部固定帯固定の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説「C109 在宅寝たきり患者処置指導料」(以下「同指導料」)を算定している寝たきり患者の肋骨骨折疑いに対して、胸部固定帯を使用して保存的な治療が行われました。非観血整復術ではないため、「J119-2 腰部または胸部固定帯固定」(以下「同固定」)にて算定したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)として査定となりました。査定理由を調べてみました。同指導料を算定している同月に、同固定の算定があるため、D事由にて査定となったものでした。同指導料の留意事項には、算定している患者には同固定は算定できないとあります。同一日との記載はありません。「算定している」との解釈は、同じ月内を示します。同固定帯の2回目の算定は同月内のため、算定要件に合致していないことがわかります。原因は、同指導料を算定した同一日における同固定は算定不可と医事会計画面に表示されたため入力されなかったものの、翌週2回目の訪問診療算定時には、同日でなければ同固定を算定できると強制入力されていたのでした。さらにレセプトチェックシステムのエラーを見落として、そのまま提出してしまったようです。防止策として、請求ルールの共有とエラーを見落さないように勉強会開催を提言しました。なお、事例では、使用した固定帯の費用は、「J200腰部、胸部または頸部固定帯加算」として算定できます。体内留置を原則とする医療材料ではないとの理由からの加算設定です。同固定の算定ができる期間内に、破損や機能が合わないなどの医学的理由により固定帯を給付する都度に算定できます。ただし、短期間に複数回の給付が行われる場合には、レセプトにその医学的理由の記載がないと査定の対象となります。

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植物由来VLPワクチン、インフル予防に有効な可能性/Lancet

 開発中の植物由来4価ウイルス様粒子(QVLP)インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスに起因する呼吸器疾患およびインフルエンザ様疾患を、実質的に予防する可能性があり忍容性も良好であることが、カナダ・MedicagoのBrian J. Ward氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年10月13日号に掲載された。季節性インフルエンザは、予防策として孵化鶏卵由来のワクチンなどが使用されているが、依然として公衆衛生上の大きな脅威となっている。植物をベースとするワクチン製造法は、生産性の向上や製造過程の迅速化など、現在のワクチンの限界のいくつかを解決する可能性があるという。18~64歳と、65歳以上が対象の2つの無作為化試験 研究グループは、植物から製造された遺伝子組み換えQVLPインフルエンザワクチンに関して、2017~2018年(18-64試験)と2018~2019年(65-plus試験)のインフルエンザ流行期に、北半球においてこれら2つの多施設共同無作為化臨床試験を行った(Medicagoの助成による)。 18-64試験には、アジア、欧州、北米の73施設が、65-plus試験には同地域の104施設が参加した。18-64試験は、スクリーニング時にBMI<40、年齢18~64歳で、健康状態が良好な集団を、65-plus試験は、スクリーニング時にBMI≦35、年齢65歳以上で、リハビリテーション施設や介護施設に入居しておらず、急性期または進行中の医学的な問題のない集団を対象とした。 18-64試験の参加者は、QVLPワクチン(ウイルス株当たり30μgのヘマグルチニン)またはプラセボを接種する群に、65-plus試験の参加者は、QVLPワクチン(ウイルス株当たり30μgのヘマグルチニン)または4価不活化ワクチン(QIV、ウイルス株当たり15μgのヘマグルチニン)を接種する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、18-64試験では、抗原性でマッチさせたインフルエンザウイルス株に起因する呼吸器疾患(検査で確定)の予防におけるワクチンの絶対効果(absolute vaccine efficacy)とし、達成率70%以上(95%信頼区間[CI]下限値が40%超)を目標とした。65-plus試験の主要アウトカムは、インフルエンザウイルス株に起因するインフルエンザ様疾患(検査で確定)の予防におけるワクチンの相対効果(relative vaccine efficacy)とし、非劣性(95%CI下限値が-20%超)の検証を行った。主解析はper-protocol集団で行い、安全性は治療を受けたすべての参加者で評価した。潜在的な利点がどの程度実現されるかは、承認後の研究で 18-64試験では、2017年8月30日~2018年1月15日の期間に1万160例が、QVLP群(5,077例)またはプラセボ群(5,083例)に割り付けられた。実際に治療を受けた1万136例の平均年齢は44.6(SD 13.7)歳であった。per-protocol集団は、QVLP群が4,814例、プラセボ群は4,812例だった。 抗原性でマッチさせたウイルス株に起因する呼吸器疾患の予防におけるQVLPワクチンの絶対効果は35.1%(95%CI:17.9~48.7)であり、70%以上という目標は達成されなかった。事後解析では、インフルエンザウイルスの感染力は19週間持続したが、QVLPワクチンの有効性は最長180日間持続しており、3つの期間(14~60日、61~120日、121~180日)で効果の差は認められなかった。 重篤な有害事象は、QVLP群が5,064例中55例(1.1%)で、プラセボ群は5,072例中51例(1.0%)で認められた。また、試験治療下で発現した重度の治療関連有害事象は、それぞれ4例(0.1%)および6例(0.1%)でみられた。 一方、65-plus試験では、2018年9月18日~2019年2月22日の期間に1万2,794例が、QVLP群(6,396例)またはQIV群(6,398例)に割り付けられた。実際に治療を受けた1万2,738例の平均年齢は72.2(SD 5.7)歳であった。per-protocol集団は、QVLP群が5,996例、QIV群は6,026例だった。 すべてのウイルス株に起因するインフルエンザ様疾患の予防におけるQVLPワクチンの相対効果は8.8%(95%CI:-16.7~28.7)であり、主要非劣性エンドポイントを満たした。75歳以上では、全体と比較して、相対効果が良好な傾向がみられ、インフルエンザ様疾患で38.3%(-5.2~63.9、p=0.102)、呼吸器疾患は33.4%(-3.3~57.1、p=0.241)であった。 重篤な有害事象は、QVLP群が6,352例中263例(4.1%)で、QIV群は6,366例中266例(4.2%)でみられた。このうち治療関連と判定されたのはそれぞれ1例(<0.1%)および2例(<0.1%)であった。試験治療下で発現した重度の治療関連有害事象は、1例(<0.1%)および3例(<0.1%)であった。 著者は、「これら2つの効果に関する重要な試験のデータは有望であるが、植物由来のウイルス様粒子ワクチンの潜在的な利点がどの程度実現されるかは、ヒトでの使用が承認された後に、何度かの流行期を経て広く使用されて初めて明らかになるだろう」としている。

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第30回 経口液剤AMX0035でALS患者の生存も改善

世界保健機関(WHO)主催の世界30ヵ国以上での無作為化試験(Solidarity)の査読前報告が先週木曜日15日にmedRxivに掲載され1,2)、残念ながらギリアド社のベクルリー(Remdesivir、レムデシビル)やその他3つの抗ウイルス薬・ヒドロキシクロロキン、カレトラ(lopinavir/ritonavir)、インターフェロン(Interferon-β1a)はどれもCOVID-19入院患者の死亡を減らしませんでした。たとえばレムデシビル投与群の28日間の死亡率は非投与対照群の11.2%(303/2,708人)とほとんど同じ11%(301/2,743人)であり1,3)、その差は有意ではありませんでした(p=0.50)。そんなSolidarity試験とは対照的に、その発表の翌16日、脳や脊髄の運動神経が死ぬことで生じる難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬候補の良いニュースがありました4-6)。先月9月初めにNEJM誌に掲載されたプラセボ対照第II相試験(CENTAUR)でALS進行を有意に抑制した神経死抑制剤AMX0035がその試験と一続きの非盲検継続(OLE)試験で今度は有意な生存延長をもたらしたのです。米国マサチューセッツ州ケンブリッジ拠点のAmylyx社が開発しているAMX0035は昔からある成分2つが溶けた経口の液剤です。成分の1つはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬・フェニル酪酸ナトリウム(sodium phenylbutyrate)、もう1つは胆汁酸・タウルソジオール(Taurursodiol)です7)。今回発表されたOLE試験に先立つCENTAUR試験にはALS患者137人が参加し、それらのうち3人に1人はプラセボ、あとの3人に2人はAMX0035を6ヵ月間服用しました。NEJM誌報告によると6ヵ月間のAMX0035服用群の体の不自由さの進行はプラセボに比べてよりゆっくりでした7)。また、AMX0035服用は腕の筋力低下も抑制しました。今回のOLE試験にはCENTAUR試験から継続して90人が参加し、全員がAMX0035を服用し、CENTAUR試験の始まりから数えて最大約3年間(35ヵ月間)追跡されました。その結果、生存期間中央値はAMX0035を最初から服用し続けた患者(56人)では25ヵ月、当初プラセボを服用した患者では18.5ヵ月であり(p=0.023)、最初からのAMX0035服用患者は当初プラセボを服用した患者に比べて有意に半年以上(6.5ヵ月)生存が延長されました8)。細胞内小器官・小胞体(ER)へのストレスや機能障害、それにミトコンドリアの機能や構造の欠損がALSの発病要因と目されており、AMX0035に含まれるフェニル酪酸ナトリウムはERがストレスを受けて誘発する毒性を緩和し、もう1つの成分タウルソジオールはミトコンドリアを助けて細胞を死に難くします7)。米国ワシントン D.C.の隣街アーリントンを本拠とするALS患者の会・ALS Association等はAMX0035をALS患者ができるだけ早く使えるようにする請願活動を先月初めに開始しており、16日のニュースによると5万人近く(4万7,000人以上)が請願に署名しています4)。参考1)Repurposed antiviral drugs for COVID-19; interim WHO SOLIDARITY trial results. medRxiv. October 15, 2020.2)Solidarity Therapeutics Trial produces conclusive evidence on the effectiveness of repurposed drugs for COVID-19 in record time / WHO 3)Remdesivir and interferon fall flat in WHO’s megastudy of COVID-19 treatments / Science4)AMX0035 Survivability Data Adds to Urgency to Make Drug Available / ALS Association5)Amylyx Pharmaceuticals Announces Publication of CENTAUR Survival Data Demonstrating Statistically Significant Survival Benefit of AMX0035 for People with ALS / BUSINESS WIRE6)Investigational ALS drug prolongs patient survival in clinical trial / Eurekalert7)Paganoni S,et al. N Engl J Med. 2020 Sep 3;383:919-930.8)Paganoni S,et al. Muscle & Nerve. 16 October 2020. [Epub ahead of print]

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五十肩の手術治療、理学療法に対する優越性示せず/Lancet

 凍結肩(frozen shoulder[五十肩]=adhesive capsulitis[癒着性関節包炎])の治療において、麻酔下肩関節授動術(manipulation under anaesthesia:MUA)、鏡視下関節包切離術(arthroscopic capsular release:ACR)および早期構造化理学療法(early structured physiotherapy:ESP)はいずれも、1年後の患者報告による肩の痛みや機能を大きく改善するが、これら3つの治療法に、臨床的に明確な優越性を示す差はないことが、英国・ヨーク大学のAmar Rangan氏らが実施した「UK FROST試験」で明らかとなった。研究の詳細は、Lancet誌2020年10月3日号に掲載された。MUAおよびACRによる外科的介入は、高価で侵襲的な治療であるが、その実臨床における効果は明確でないという。また、ESPは、英国のガイドラインの推奨や肩専門理学療法士によるエビデンスに基づいて、本研究のために開発された関節内ステロイド注射を含む非外科的介入で、外科的介入よりも迅速に施行可能であることからこの名で呼ばれる。3群を比較する実践的無作為化試験 研究グループは、英国のセカンダリケアでの原発性凍結肩の治療において、2つの外科的介入と、非外科的介入としてのステロイド注射を含むESPの有効性を比較する目的で、実践的な無作為化優越性試験を行った(英国国立健康研究所医療技術評価計画の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、患側の肩の他動的外旋が健側肩の50%未満に制限されることで特徴付けられる片側性凍結肩の臨床診断を受けた患者であった。被験者は、MUA、ACR、ESPのいずれかを受ける群に、2対2対1の割合で無作為に割り付けられた。 MUAでは、全身麻酔下に外科医が拘縮した関節包を伸張・切離し、術中に関節内ステロイド注射が行われた。ACRでは、全身麻酔下に外科医が腱板疎部(rotator interval)で、拘縮した前方関節包を分離したのち、麻酔下にマニピュレーションを行って最適な関節包切離を実施し、外科医の裁量で随意的にステロイド注射が施行された。これら2つの外科的介入後には、術後理学療法が行われた。また、ESPでは、理学療法開始前の最も早い時期に、参加施設の通常治療に基づき関節内ステロイド注射(画像ガイドの有無は問わない)が行われ、疼痛管理法、モビライゼーション手技、段階的な自宅での運動プログラムが実施された。ESPの理学療法と術後理学療法は、最長12週間で12回行われた。 主要アウトカムは、割り付けから12ヵ月後のオックスフォード肩スコア(OSS、12項目の患者報告アウトカム、0~48点、点数が高いほど肩の疼痛と機能が良好)とした。2つの外科的治療とESPでOSSの5点の差(臨床的に意義のある最小差)、または2つの外科的治療間の4点の差を目標に検討を行った。有意差はあるが、臨床的に意義のある最小差は達成できず 2015年4月~2017年12月の期間に、英国の35病院で参加者の募集が行われ、503例が登録された。MUA群に201例(年齢中央値54歳[IQR:54~60]、女性64%)、ACR群に203例(54歳[54~59]、62%)、ESP群には99例(53歳[53~60]、65%)が割り付けられた。 12ヵ月の時点で、多くの患者でほぼ完全に肩の機能が改善し、全体のOSS中央値はベースラインの20点から43点に上昇した。 12ヵ月の時点で、OSSのデータはMUA群が189例(94%)、ACR群が191例(94%)、ESP群は93例(94%)で得られた。平均OSS推定値は、MUA群が38.3点(95%信頼区間[CI]:36.9~39.7)、ACR群が40.3点(38.9~41.7)、ESP群は37.2点(35.3~39.2)であった。 ACR群は、MUA群(平均群間差:2.01点、95%CI:0.10~3.91、p=0.039)およびESP群(3.06点、0.71~5.41、p=0.011)と比較して、OSSが有意に高かった。また、MUA群はESP群よりもOSSが高かった(1.05点、-1.28~3.39、p=0.38)。臨床的に意義のある最小差(4~5点)は達成されなかった。 一方、3ヵ月の時点での平均OSS値は、ACR群がMUA群(26.9点vs.30.2点、平均群間差:-3.36点、95%CI:-5.27~-1.45、p=0.0006)およびESP群(26.9点vs.31.6点、-4.72点、-7.06~-2.39、p<0.0001)よりも不良であった。同様のパターンが、上肢障害評価票(Quick DASH)や疼痛評価尺度(Numeric Rating Scale)でも認められ、ACR群は3ヵ月の時点ではMUA群やESP群よりも劣っていたが、12ヵ月後には有意に良好であった。 重篤な有害事象が9例で10件(2%、ACR群8件、MUA群2件)、重篤でない有害事象は31例で33件(ACR群13件、MUA群15件、ESP群5件)報告された。また、1質調整生存年(QALY)当たりの支払い意思額(willingness-to-pay)の閾値を2万ポンドとした場合に、費用対効果が最も優れる確率はMUA群が0.8632と、ESP群の0.1366およびACR群の0.0002に比べて高かった。 著者は、「これらの知見は、臨床医にとって、共同意思決定(shared decision making)において患者と治療選択肢について話し合う際に有用と考えられる。また、外科医には、より安価で侵襲性の低い介入が失敗した場合に、関節包切離術を行うことが推奨される」としている。

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ロコモに新しくロコモ度3を設定/日本整形外科学会

 日本整形外科学会(理事長:松本 守雄氏[慶應義塾大学医学部整形外科学教室 教授])は、ロコモティブシンドローム(ロコモ)の段階を判定するための臨床判断値に新たに「ロコモ度3」を設定したことを公表し、記者説明会を開催した。「ロコモ度3」を新しい臨床判断値として制定 「ロコモティブシンドローム」とは運動器の障害のため、移動機能が低下した状態を指す。運動器の障害は高齢者が要介護になる原因の1位であり、40代以上の日本人の4,590万人が該当するという。ロコモが重症化すると要介護状態となるが、その過程で運動器が原因の「身体的フレイル」を経ることがわかり、「身体的フレイル」に相当するロコモのレベルを知り、対策をとることが重要となっている。 整形外科学会では全年代におけるロコモ判定を目的として2013年に「ロコモ度テスト」を発表、2015年にロコモ度テストに「ロコモ度1」「ロコモ度2」からなる「臨床判断値」を制定した。その後、ロコモがどの程度進行すれば投薬や手術などの医療が必要となり、医療によってロコモがどのように改善するかの検証を行ってきた。そして、ロコモとフレイルの関係性を研究した成果をもとに、新しい臨床判断値として今回「ロコモ度3」を制定した。ロコモ度3は社会参加に支障を来している段階 松本氏は、現在の運動器障害の疫学として、ロコモ度1以上の人は4,590万人、ロコモ度2の人は1,380万人、運動器疾患が原因の要介護者は152万人が推定されると説明した。また、現在ロコモ度1と判定されれば運動の習慣付けと食事療法が、ロコモ度2と判定されれば整形外科医受診の勧奨がなされる。 今回設定された「ロコモ度3」は、移動機能の低下が進行し、社会参加に支障を来している段階。その判定として、「立ち上がりテスト」では両脚で30cmの台から立つことができない、「2ステップテスト」の値は0.9未満、「ロコモ25」の得点は24点以上とされ、年齢に関わらずこれら3項目のうち、1つでも該当する場合を「ロコモ度3」と判定する。「ロコモ度3」では、自立した生活ができなくなるリスクが非常に高く、何らかの運動器疾患の治療が必要になっている可能性があるので、整形外科専門医による診療を勧めるとしている。 今回のロコモ度3設定の背景として、腰部脊柱管狭窄症や変形性関節症に対する手術を受けた患者の多くが術前にはロコモ度3に該当し、術後には多くがこの基準により改善すること、機能的にみて運動器が原因の身体的フレイルの基準に相当すること、運動器不安定症のレベルに近いことなどが挙げられるという。 松本氏は「ロコモの医療対策の根拠や高齢者検診から医療への橋渡しが期待される」と展望を語り、ロコモ度3の説明会を終えた。

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