サイト内検索|page:2

検索結果 合計:70件 表示位置:21 - 40

21.

関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」【下平博士のDIノート】第30回

関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「ペフィシチニブ臭化水素酸塩(商品名:スマイラフ錠50mg/100mg)」を紹介します。本剤は、1日1回の服用でJAKファミリーの各酵素(JAK1/2/3、チロシンキナーゼ2[TYK2])を阻害し、関節リウマチによる関節の炎症や破壊を抑制します。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年7月10日より発売されています。なお、過去の治療において、メトトレキサート(MTX)をはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬などによる適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与します。<用法・用量>通常、成人はペフィシチニブとして150mg(状態に応じて100mg)を1日1回食後に投与します。なお、中等度の肝機能障害がある場合は、50mg/日を投与します。<副作用>後期第II相試験、第III相臨床試験2件および継続投与試験の4試験における安全性併合解析において、本剤が投与された患者1,052例中810例(77.0%)に副作用が認められました。主な副作用は、上咽頭炎296例(28.1%)、帯状疱疹136例(12.9%)、血中CK増加98例(9.3%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、帯状疱疹(12.9%)、肺炎(ニューモシスチス肺炎などを含む)(4.7%)、敗血症(0.2%)などの重篤な感染症、好中球減少症(0.5%)、リンパ球減少症(5.9%)、ヘモグロビン減少(2.7%)、消化管穿孔(0.3%)、AST(0.6%)・ALT(0.8%)の上昇などを伴う肝機能障害、黄疸(5.0%)、間質性肺炎(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ヤヌスキナーゼという酵素を阻害することにより、関節の炎症や腫れ、痛みなどの関節リウマチによる症状を軽減します。2.持続する発熱やのどの痛み、息切れ、咳、倦怠感などの症状が現れた場合はすぐにご連絡ください。3.痛みを伴う発疹や皮膚の違和感、局所の激しい痛み、神経痛などが現れた場合は速やかに受診してください。4.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合には主治医に相談してください。5.(妊娠可能年齢の女性の場合)この薬を服用中および服用終了後少なくとも1月経周期は、適切な避妊を行ってください。6.本剤を服用中の授乳は避けてください。<Shimo's eyes>関節リウマチの薬物療法は近年大きく進展しています。関節破壊の進行抑制を含めた病態コントロールのため、発症初期にはMTXをはじめとする従来型疾患修飾性抗リウマチ薬(cDMARDs)が使用されます。MTXなどを十分量で用いても効果不十分な場合には、生物学的製剤であるTNF阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど)やIL-6阻害薬(トシリズマブなど)、T細胞活性抑制薬(アバタセプト)、もしくは低分子標的薬であるJAK阻害薬(トファシチニブ、バリシチニブ)が使用されます。本剤は、関節リウマチに用いる3剤目のJAK阻害薬で、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2を阻害し、関節の炎症や破壊を抑制します。生物学的製剤は点滴または皮下注射での投与となりますが、しばしば発疹などの投与時反応や注射部位疼痛が問題となることがあります。JAK阻害薬は経口投与のため、非侵襲性の治療を望む患者さんや自己注射が困難な患者さんであっても、好みや生活環境に合わせた治療を選択することができると期待されています。また、本剤は相互作用も少なく、1日1回投与であるため、高齢者でも使用しやすいと考えられます。留意点としては、中等度の肝機能障害を有する患者については投与量の制限があることが挙げられます。また、本剤は免疫反応に関与するJAK経路の阻害により、結核、肺炎、敗血症などの感染症リスクが増大する懸念があることから、既存のJAK阻害薬2剤と同様に、生物学的製剤や他のJAK阻害薬などの免疫を抑制する薬剤との併用はできません。承認時の臨床試験では、副作用として12.9%で帯状疱疹が報告されているので、とくに高齢の患者さんでは、使用前に帯状疱疹ワクチン接種の有無などについて確認し、服用後に帯状疱疹が現れる可能性について注意喚起をしておく必要があるでしょう。

22.

難治性RA、filgotinibで短期アウトカムが改善/JAMA

 1種類以上の生物学的製剤の疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)による治療が効果不十分または忍容性がない、中等度~重度の活動期関節リウマチ(RA)患者において、filgotinib(100mg/日または200mg/日)がプラセボとの比較において、12週時の臨床的アウトカムを有意に改善したことが示された。米国・スタンフォード大学のMark C. Genovese氏らによる、約450例を対象に行った第III相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、JAMA誌2019年7月23日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、長期の有効性・安全性を評価する必要がある」と述べている。filgotinibは、経口JAK1選択的阻害薬で、第II相治験で中等度~重度の活動期RAに対して、単独およびメトトレキサートとの併用の両療法において臨床的有効性が確認されていた。100mg/日または200mg/日、プラセボを投与しACR20達成率を比較 研究グループは2016年7月~2018年6月にかけて、世界114ヵ所の医療機関を通じて、1種類以上のbDMARDに効果不十分/忍容性のない中等度~重度の活動期RA患者449例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に3群に分け、filgotinibを200mg(148例)、filgotinibを100mg(153例)、プラセボ(148例)を、それぞれ1日1回、24週間投与した。被験者は、これまで服用していた従来の合成DMARD(csDMARD)も継続して服用した。 主要エンドポイントは、12週時の米国リウマチ学会基準で20%の改善(ACR20)の達成率だった。副次評価アウトカムは、12週時の低疾患活動性(疾患活動性スコア[DAS28-CRP]が3.2以下)、健康評価質問票による機能障害指数(HAQ-DI)、身体的側面のSF-36、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Fatigue(FACIT-Fatigue)スコアの変化、および24週時の寛解(DAS28-CRPが2.6未満で定義)達成患者割合、有害事象などだった。ACR20達成率、200mg群66%、100mg群58% 被験者のうち448例が実際に試験薬の投与を受けた。平均年齢56歳(SD 12)、女性が360例(80.4%)、平均DAS28-CRPスコアは5.9(SD 0.96)、3種類以上のbDMARDs服用歴がある被験者は105例(23.4%)だった。試験は381例(85%)が完了した。 12週時のACR20達成率は、プラセボ群31.1%に対し、filgotinib 200mg群が66.0%、100mg群が57.5%と、両filgotinib群が有意に高率だった(対プラセボ群の群間差は200mg群:34.9%[95%信頼区間[CI]:23.5~46.3]、100mg群:26.4%[15.0~37.9]、いずれもp<0.001)。 3種類以上のbDMARDs服用歴がある被験者についても、ACR20達成率はプラセボ群が17.6%に対し、filgotinib 200mg群が70.3%、100mg群が58.8%と有意に高率だった(対プラセボ群の群間差は200mg群:52.6%[95%CI:30.3~75.0]、100mg群:41.2%[17.3~65.0]、いずれもp<0.001)。 最も発生頻度が高かった有害事象は、filgotinib 200mg群が鼻咽頭炎(10.2%)、filgotinib100mg群が頭痛、鼻咽頭炎、上気道感染症(それぞれ5.9%)、プラセボ群がRA(6.1%)だった。日和見感染症、活動性結核、悪性腫瘍、胃腸穿孔、死亡の報告例はなかった。

23.

JAK1阻害薬の単剤療法、MTX不応RAのアウトカム改善/Lancet

 メトトレキサート(MTX)の効果が不十分な関節リウマチ(RA)患者の治療において、選択的ヤヌスキナーゼ(JAK)1阻害薬upadacitinibの単剤療法はMTXの継続投与に比べ、臨床的および機能的アウトカムを改善することが、オーストリア・ウィーン医科大学のJosef S. Smolen氏らが行ったSELECT-MONOTHERAPY試験で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年5月23日号に掲載された。upadacitinibは、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)への反応が不十分なRA患者の治療において、従来型合成DMARD(csDMARD)との併用による有効性が報告されている。2つの用量とMTX継続を比較する無作為化試験 本研究は、日本を含む24ヵ国138施設で実施された二重盲検ダブルダミープラセボ対照無作為化第III相試験であり、2016年2月~2017年5月に患者登録が行われた(AbbVieの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)のRAの分類基準(2010年版)を満たし、MTXによる治療を行っても活動性RAが認められる患者であった。被験者は、MTXからJAK1阻害薬upadacitinib 15mgまたは30mg(1日1回)に切り替える群、あるいは試験開始前と同一用量のMTXを継続投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、14週時のACR基準で20%の改善(ACR20)および低疾患活動性(DAS28[CRP]≦3.2)の達成割合とした。JAK1阻害薬の単剤療法は疾患コントロールを可能にする治療選択肢となりうる 648例が登録され、JAK1阻害薬upadacitinib 15mg群に217例、同30mg群に215例、MTX継続群には216例が割り付けられた。598例(92%)が試験を完遂した。 患者の約8割が女性で、平均年齢は54.3(SD 12.1)歳、RA診断からの期間は平均6.6(7.6)年であり、79%がリウマトイド因子(RF)または抗シトルリン化ペプチド(CCP)抗体が陽性であった。患者は、平均3年以上のMTX療法にもかかわらず高い疾患活動性を示し、ベースラインのMTXの平均用量は16.7(4.4)mg/週だった。 14週時のACR20達成率は、15mg群が68%(147/217例)、30mg群は71%(153/215例)であり、MTX継続群の41%(89/216例)に比べ有意に良好であった(2つの用量群とMTX継続群の比較:p<0.0001)。 DAS28(CRP)≦3.2の達成率は、15mg群が45%(97/217例)、30mg群は53%(114/215例)と、MTX継続群の19%(42/216例)よりも有意に優れた(2つの用量群とMTX継続群の比較:p<0.0001)。 14週時のDAS28(CRP)≦2.6、CDAI≦10(低疾患活動性)、CDAI≦2.8(寛解)、SDAI≦11(低疾患活動性)、SDAI≦3.3(寛解)のいずれの達成率も、upadacitinibの2つの用量群のほうが優れた。また、健康評価質問票による機能評価(HAQ-DI)もupadacitinib群で良好だった。 有害事象の報告は、15mg群が47%(103例)、30mg群が49%(105例)、MTX継続群は47%(102例)であった。帯状疱疹が、それぞれ3例、6例、1例に認められた。 また、悪性腫瘍が3例(15mg群2例[非ホジキンリンパ腫、乳がん]、MTX継続群1例[基底細胞がん])、主要有害心血管イベント(MACE)が3例(15mg群1例[動脈瘤破裂による出血性脳卒中で死亡]、30mg群2例[心筋梗塞、脳卒中]、いずれも試験薬との関連はないと判定)、肺塞栓症が1例(15mg群、試験薬との関連はないと判定)、死亡が1例(15mg群、動脈瘤破裂による出血性脳卒中)であった。 著者は、「MTXの効果が不十分だが、さまざまな理由で併用治療が困難な患者において、JAK1阻害薬の単剤療法は、疾患コントロールを可能にする治療選択肢となりうる」としている。

24.

第21回 関節リウマチとMTXにまつわるお役立ちエビデンス集【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 関節リウマチの罹患率は人口の1%とも言われ、とくに女性の患者は男性の2~3倍と多く、いずれの年代でも発症しうる疾患です1)。関節リウマチ治療の第1選択薬は言わずと知れたメトトレキサート(MTX)で、関節破壊の進行を抑制するために重要かつ有名な薬剤です。今回はそのMTXに関連するエビデンスをあらためて紹介します。有効性についてMTXの有効性については、関節リウマチ患者732例においてMTX単独投与の効果をプラセボと比較したコクランのシステマティックレビュー2)など、すでに十分なエビデンスがあります。これは1997年に発表されたレビューの2014年改訂版で、レビューに含まれているのは1980〜90年代の試験です。以前の治療や併用薬としてNSAIDsや他の抗リウマチ薬を使用している場合もありますが、有効性については、ほとんどの主要評価項目で有意な改善を認めています。ACR50(圧痛関節数、膨張関節数、患者による疼痛評価、患者による全般活動性評価、などの評価で必須項目を含む50%以上の改善)を達成したのは100人当たりプラセボ8例、MTX23例で、健康関連QOLのNNT(Number Needed to Treat:必要治療数)=9、X線写真における関節破壊の進行評価のNNT=13と、MTXの有意な効果が示されています。一方で、3~12ヵ月の評価では、プラセボと比較して100人当たり9例に、多くの有害事象による中止が報告されています。葉酸との併用について葉酸またはフォリン酸(ロイコボリン)を摂取することで、MTXによる悪心、腹痛、肝機能異常などが低減し、口内炎も減る傾向にあることが示唆されています3)。こちらもコクランに掲載された、MTXと葉酸またはプラセボ併用を比較した6つの二重盲検ランダム化比較試験、計624例を含むシステマティックレビューです。葉酸またはフォリン酸併用群では、24~52週のフォローアップで、消化器系の副作用(悪心、嘔吐、腹痛)の絶対リスク減少率-9.0%、相対リスク減少率-26.0%、NNT=11と、プラセボ群よりも有意に減少しています。同じ期間の口内炎の発生については、絶対リスク減少率-6.2%、相対リスク減少率-27.8%で、統計的有意差はないものの減少傾向にありました。また、肝毒性(トランスアミナーゼ上昇)の発生率は、8〜52週間のフォローアップ期間において、絶対リスク減少率-16.0%、相対リスク減少率-76.9%、NNT=6と、葉酸を併用する多くのメリットが示されています。なお、葉酸併用によるMTXの効果の有意な減弱はありませんでした。関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン 2016年改訂版においても、MTXを継続している患者では、必要に応じて葉酸を併用することが推奨されています4)。投与間隔については、MTX服用の24~48時間後が一般的です。同ガイドラインによれば、そのベストな投与間隔について明確なエビデンスはないとされていますが、少なくともその時間を空ければMTXの効果に影響はないだろうとのことです。なお、ロイコボリンレスキュー療法の研究では、MTX服用後42~48時間を過ぎてしまうとMTXの毒性が発現しやすくなることが報告されています5)。感染症リスクについてMTXは免疫抑制作用を有する薬剤ですので、肺炎、発熱、口内炎など感染兆候に注意を払うことも大切です。2015年にLancetに掲載されたネットワークメタ解析で、慢性関節リウマチ患者において、MTX使用時と生物学的製剤使用時の重篤感染症(死亡例、入院例、静脈注射の抗菌薬使用例)発現リスクについて検討されています6)。結果としては、生物学的製剤はDMARDsに比べて重篤感染症リスクが約30%高く、とくにMTX使用歴がある患者および標準〜高用量の生物学的製剤使用患者ではリスクが高いという傾向にありました。年間1,000人当たりの重篤感染症発生人数は、DMARDs服用群で20例、標準量の生物学的製剤使用群で26例、高用量の生物学的薬剤使用群で37例、生物学的製剤との併用群で75例です。MTX使用歴がない患者では、感染症リスクの有意な増加はありませんでした。近年では多くの生物学的製剤が発売されているので、MTXとの併用時や易感染性疾患罹患時の感染兆候モニタリングは意識しておくとよいでしょう。1)MSDマニュアル 関節リウマチ2)Lopez-Olivo MA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014;6:CD000957.3)Shea B, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2013;5:CD000951.4)関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン 2016年改訂版5)Cohen IJ, et al. Pediatr Blood Cancer. 2014;61:7-10.6)Singh JA, et al. Lancet. 2015;386:258-265.

25.

関節リウマチ、3つのnon-TNF型生物学的製剤を比較/BMJ

 関節リウマチの成人患者の日常診療では、リツキシマブ(Bリンパ球枯渇薬)およびトシリズマブ(IL-6受容体阻害薬)が、アバタセプト(T細胞共刺激標的薬)に比べ2年アウトカムが良好であることが、フランス・ストラスブール大学病院のJacques-Eric Gottenberg氏らが実施した前向きコホート研究で示された。これら3つの非腫瘍壊死因子(non-TNF)型生物学的製剤はいずれも関節リウマチに、プラセボに比べ優れた効能を有すると報告されているが、これらを比較した無作為化対照比較試験はなく、今後も直接比較試験が行われる可能性はほとんどないという。BMJ誌2019年1月24日号掲載の報告。3つのレジストリの関節リウマチ患者データを前向きに解析 本研究は、関節リウマチの治療における3つのnon-TNF型生物学的製剤の効果と安全性を比較する目的で、フランス・リウマチ学会と3つのレジストリに参加した研究者の協働で行われた(Bristol-Myers Squibb、Roche、Chugaiの助成による)。 解析には、2005年9月~2013年8月の期間に、フランスの53の大学および54の大学以外の臨床センターが参加するフランス・リウマチ学会の3つの患者レジストリ(AIR、ORA、REGATE)の1つに登録された関節リウマチ患者のデータを用いた。 対象は、年齢>18歳、米国リウマチ学会の診断基準(1987年版)を満たし、重度の心血管疾患や活動性/重度の感染症、重度の免疫不全がなく、24ヵ月以上のフォローアップが行われた患者であった。 主要アウトカムは、治療成功を維持した24ヵ月時の薬剤治療継続とした。治療不成功の定義は、(1)全死因死亡、(2)試験薬の投与中止、(3)新たな生物学的製剤または従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の併用治療の開始、(4)コルチコステロイドの用量が、ベースラインと比較して、連続する2回の受診時に>10mg/日の増量となった場合であった。 治療効果の群間差を定量化するために、治療成功維持生存期間差(life expectancy difference without failure:LEDwf、制限付き平均生存時間[restricted mean survival time:RMST])の差)および治療成功維持生存期間比(life expectancy ratio without failure:LERwf、RMSTの比)を算出した。3つの生物学的製剤の安全性プロファイルには差がない ベースラインの3つの生物学的製剤群の背景因子は、非重み付けコホート(3,162例)では罹患期間、がんの病歴、リウマチ因子陽性、疾患活動性、従来型DMARD併用、コルチコステロイド投与に差がみられたが、重み付けコホート(3,132例)ではバランスがとれていた。 重み付けコホートでは、24ヵ月時の治療成功維持生存率は、リツキシマブ群が68.6%、アバタセプト群が39.3%、トシリズマブ群は63.4%であった。また、治療成功維持生存期間は、それぞれ19.8、15.6、19.1ヵ月だった。 LEDwfは、リツキシマブ群がアバタセプト群に比べ4.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:3.1~5.2)長く、トシリズマブ群はアバタセプト群よりも3.5ヵ月(2.1~5.0)長かった。また、LERwfはそれぞれ1.26(1.18~1.35)および1.22(1.12~1.33)であった。 リツキシマブ群とトシリズマブ群の比較に関する不確かさ(uncertainty)は実質的なものであった(LEDwf:-0.7、95%CI:-1.9~0.5、LERwf:0.97、0.91~1.03)。 重み付けコホートでは、24ヵ月時の1つ以上の重篤な有害事象(感染症、主要有害心血管イベント[MACE]、がん、死亡)の発現率は、リツキシマブ群が14.5%、アバタセプト群が16.2%、トシリズマブ群は11.6%であった。また、重篤な有害事象を伴わない生存率は、それぞれ85.0%、83.4%、86.7%で、重篤な有害事象なしの平均生存期間は22.1、21.8、22.3ヵ月であり、3組の2群間の比較ではいずれも有意な差を認めなかった。 著者は、「リツキシマブおよびトシリズマブの高い薬剤治療継続率は、良好な安全性プロファイルよりも、むしろ高い有効性に関連すると考えられる」とし、「これらの結果は、罹患期間が長く1剤以上の生物学的製剤の投与を受けている難治性の患者に適応され、生物学的製剤未投与で罹患期間が短い患者には適応されない」と指摘している。〔2月13日 記事の一部を修正いたしました〕

26.

選択的JAK1阻害薬、乾癬性関節炎に有効/Lancet

 活動性の乾癬性関節炎の治療に、選択的JAK1阻害薬filgotinibは有効であることが、米国・ワシントン大学のPhilip Mease氏らによる第II相の無作為化プラセボ対照試験「EQUATOR試験」の結果、示された。16週時のACR20達成患者は80%に認められ、新たな安全性シグナルは認められなかった。JAK1経路は、乾癬性関節炎の病因への関わりが示唆されている。研究グループは、JAK1を選択的に阻害するfilgotinibの有効性と安全性を調べた。Lancet誌オンライン版2018年10月22日号掲載の報告。活動性の中等症~重症乾癬性関節炎患者が対象、16週時点のACR20達成を評価 EQUATOR試験は、7ヵ国(ベルギー、ブルガリア、チェコ、エストニア、ポーランド、スペイン、ウクライナ)25施設において成人(18歳以上)の患者を登録して行われた。試験適格は、活動性の中等症~重症乾癬性関節炎(関節の腫脹5つ以上および圧痛関節5つ以上がある場合と定義)で乾癬性関節炎の層別化基準「CASPAR」を満たしており、活動性の慢性尋常性乾癬もしくはその既往の記録があり、1種以上の従来型抗リウマチ薬(csDMARD)による効果が不十分あるいは不耐容の患者とした。対象患者のうち、少なくともスクリーニング前12週間にcsDMARDの投与が1回あり、少なくともベースライン前4週間に安定投与が1回あった場合は、試験期間中も引き続きcsDMARDが投与された。 研究グループは双方向ウェブベースシステムを用いて、対象患者を1対1の割合で、filgotinib 200mgまたはプラセボを1日1回16週間経口投与するよう無作為に割り付けた。csDMARDの現在の投与および抗TNFの既投与による層別化も行った。なお、患者、試験チーム、スポンサーは治療割り付けをマスキングされた。 主要評価項目は、完全解析集団(試験薬を1回以上投与した全患者を包含)における16週時点のACR20達成患者の割合で、Cochran-Mantel-Haenszel検定およびNRI(non-responder imputation)法を用いて両群を比較した。filgotinib群80%、プラセボ群33% 2017年3月9日~9月27日に191例がスクリーニングを受け、131例が無作為化され(filgotinib群65例、プラセボ群66例)、それぞれ60例(92%)、64例(97%)が試験を完了した。filgotinib群では5例(8%)、プラセボ群では2例(3%)が試験治療中断となった。 16週時点のACR20達成率は、filgotinib群80%(52/65例)、プラセボ群33%(22/66例)であった(群間差:47%、95%信頼区間[CI]:30.2~59.6、p<0.0001)。 少なくとも1件以上の治療関連有害事象が認められたのは、filgotinib群37例(57%)、プラセボ群39例(59%)であった。被験者6例でGrade3以上のイベントが認められた。最も頻度が高かったイベントは、鼻咽頭炎と頭痛で、発現頻度は各群で同程度であった。重篤な治療関連有害事象は、各群で1例ずつ認められた(肺炎および転倒後の大腿骨頸部骨折)。肺炎はfilgotinib群で認められ致死的であった。

27.

悪性関節リウマチ〔MRA:malignant rheumatoid arthritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義本疾患は、「既存の関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に、血管炎をはじめとする関節外症状を認め、難治性もしくは重篤な臨床病態を伴う場合」と定義される。本疾患は、わが国独自の概念で、欧米では血管炎を伴ったRAは「リウマチ様血管炎(rheumatoid vasculitis)」として二次性血管炎の1つとして分類されている。悪性関節リウマチ(malignant RA:MRA)は中・小血管炎だけでなく、肺線維症、胸膜炎などの関節外症状を伴った場合など、難治性もしくは重症の臨床病態を認める場合も含んでいる。■ 疫学MRAはRA患者の0.6〜1.0%にみられる。診断時の年齢のピークは60歳代で、男女比は1:2と女性に多い。MRAは厚生労働省特定医療費(指定難病)の対象疾患となっており、平成28年度末の受給者証所持者数は6,067名である。■ 病因現在も病因は不明である。発症に免疫学的機序の関与が推測されている。MRAは、さまざまな関節外症状を呈する疾患であるため、発症因子には、関節リウマチの発症因子、血管炎の発症因子、間質性肺炎の発症因子、その他の関節外症状の発症因子などが混在していると思われる。血管炎を呈したMRAでは、血清のリウマトイド因子高値、低補体血症、血清中免疫複合体高値を認め、免疫複合体の関与する血管炎が生じていると推測される。■ 症状表1に「厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班」によるMRAの診断基準を示す。関節リウマチによる多関節の腫脹・疼痛に加え、中・小型血管炎に基づく諸症状(多発性神経炎、皮膚潰瘍、指趾壊疽、上強膜炎、虹彩炎、心筋炎、腸管・肺などの梗塞など)、間質性肺炎、胸膜炎などが主症状である。一般にMRAを呈するのは、長期罹患のRAで疾患活動性の高い症例である。同様に重症度分類を表2に示す。表1 悪性関節リウマチの診断基準(厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班作成)<診断基準>1.臨床症状(1)多発性神経炎:知覚障害、運動障害いずれを伴ってもよい。(2)皮膚潰瘍または梗塞または指趾壊疽:感染や外傷によるものは含まない。(3)皮下結節:骨突起部、伸側表面または関節近傍にみられる皮下結節。(4)上強膜炎または虹彩炎:眼科的に確認され、他の原因によるものは含まない。(5)滲出性胸膜炎または心嚢炎:感染症など、他の原因によるものは含まない。癒着のみの所見は陽性にとらない。(6)心筋炎:臨床所見、炎症反応、筋原性酵素、心電図、心エコーなどにより診断されたものを陽性とする。(7)間質性肺炎または肺線維症:理学的所見、胸部X線、肺機能検査により確認されたものとし、病変の広がりは問わない。(8)臓器梗塞:血管炎による虚血、壊死に起因した腸管、心筋、肺などの臓器梗塞。(9)リウマトイド因子高値:2回以上の検査で、RAHAないしRAPAテスト2,560倍以上(RF960IU/mL以上)の高値を示すこと。(10)血清低補体価または血中免疫複合体陽性:2回以上の検査で、C3、C4などの血清補体成分の低下もしくはCH50による補体活性化の低下をみること、または2回以上の検査で血中免疫複合体陽性(C1q結合能を基準とする)をみること。2.組織所見皮膚、筋、神経、その他の臓器の生検により小ないし中動脈壊死性血管炎、肉芽腫性血管炎ないしは閉塞性内膜炎を認めること。3.診断のカテゴリー皮膚、筋、神経、その他の臓器の生検により小ないし中動脈壊死性血管炎、肉芽腫性血管炎ないしは閉塞性内膜炎を認めること。ACR/EULARによる関節リウマチの分類基準 2010年(表1)を満たし、上記に掲げる項目の中で、(1)1.臨床症状(1)~(10)のうち3項目以上満たすもの、または(2)1.臨床症状(1)~(10)の項目の1項目以上と2.組織所見の項目があるもの、を悪性関節リウマチ(MRA)と診断する。4.鑑別診断鑑別すべき疾患、病態として、感染症、続発性アミロイドーシス、治療薬剤(薬剤誘発性間質性肺炎、薬剤誘発性血管炎など)の副作用があげられる。アミロイドーシスでは、胃、直腸、皮膚、腎、肝などの生検によりアミロイドの沈着をみる。関節リウマチ(RA)以外の膠原病(全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎など)との重複症候群にも留意する。シェーグレン症候群は、関節リウマチに最も合併しやすく、悪性関節リウマチにおいても約10%の合併をみる。フェルティー症候群も鑑別すべき疾患であるが、この場合、白血球数減少、脾腫、易感染性をみる。画像を拡大する■ 分類定まった分類はないが、血管炎型と間質性肺炎型など血管炎以外の症候を呈する型の2型に大別できる。血管炎型は、さらに全身性動脈炎型(多臓器性)と末梢動脈炎型(四肢末梢および皮膚の血管内膜の線維性増殖を呈する)の2つの型に分けられる。■ 予後血管炎型の中で全身性動脈炎型は、多臓器を侵し、生命予後は不良である。末梢動脈炎型は、生命予後は良好である。血管炎以外の予後不良を来す臓器症状としては、間質性肺炎がある。皮膚潰瘍が難治の場合もある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)長期罹患の関節破壊が進行したRAに、血管炎症状または肺症状(間質性肺炎、胸膜炎)や皮下結節を認めた場合に疑う。診断基準は、表1に示したように臨床症状のみ、または臨床症状と組織所見を組み合わせて診断する。鑑別診断として、RAに合併した感染症、続発性アミロイドーシスおよび治療薬剤による多臓器障害。RAと全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、抗好中球細胞質抗体関連血管炎など他の膠原病との重複(オーバーラップ)例などが挙げられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)関節リウマチに対する治療と関節外症状に対する治療を行う。抗リウマチ薬を含む免疫抑制療法が基本である。皮膚病変や胸膜炎に対しては、主に中等量の副腎皮質ステロイド薬の経口投与(PSL換算0.5mg/kg/日)で治療を開始。全身性血管炎症候に対しては、副腎皮質ステロイド(メチルプレドニゾロン500~1,000mg大量点滴静注療法、3日間連続)、シクロホスファミド点滴静注療法(500~750mg/m2/月)または経口シクロホスファミド(1~2mg/kg/日)治療を行う。4 今後の展望生物学的製剤など関節リウマチに対する治療の進歩により、血管炎を呈したMRAの頻度は減少し、臨床像も変化していると思われる。MRAに関する全国的な調査により、臨床病型や予後を検討する必要があると思われる。5 主たる診療科リウマチ科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班 悪性関節リウマチ/リウマチ性血管炎(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター:悪性関節リウマチ(リウマトイド血管炎)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)松岡康夫. 難治性血管炎の診療マニュアル(難治性血管炎に関する調査研究班 班長 橋本博史)2002;35-40.公開履歴初回2018年10月9日

28.

JAK1阻害薬upadacitinibが関節リウマチ再発例の症状改善/Lancet

 疾患活動性が中等度~重度の関節リウマチ再発例の治療において、選択的JAK1阻害薬upadacitinibの12週、1日1回経口投与により、症状が著明に改善することが、米国・スタンフォード大学のMark C. Genovese氏らが行った「SELECT-BEYOND試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年6月13日号に掲載された。upadacitinibは、他のJAKファミリーのメンバーに比べJAK1に高い選択性を持つように遺伝子改変されたJAK阻害薬であり、第II相試験でメトトレキサートやTNF阻害薬の効果が不十分な患者の関節リウマチ徴候や症状を改善することが報告されている。26ヵ国153施設に499例を登録 SELECT-BEYONDは、26ヵ国153施設が参加した国際的な二重盲検無作為化対照比較試験である(AbbVieの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、活動性の関節リウマチを発症し、生物学的製剤(bDMARD)の効果が不十分または不耐となり、同時に従来型抗リウマチ薬(csDMARD)の投与も受けている患者であった。 被験者は、upadacitinib徐放薬15mgまたは30mgまたはそれぞれのプラセボを12週間、1日1回経口投与した後、同薬15mgまたは30mgをさらに12週間投与する群に2対2対1対1の割合でランダムに割り付けられた。 主要エンドポイントは、以下の2つとした。1)12週時に、米国リウマチ学会(ACR)基準で20%の改善を達成した患者の割合(ACR20)、2)12週時に、C反応性蛋白(CRP)で評価した28関節の疾患活動性スコア(DAS28[CRP])≦3.2点を達成した患者の割合。有効性と安全性の解析は、修正intention-to-treat集団(試験薬の投与を1回以上受けた患者)で行った。 2016年3月15日~2017年1月10日の期間に、499例(upadacitinib 15mg群:165例、同30mg群:165例、プラセボ→同15mg群:85例、プラセボ→同30mg群:84例)が登録され、15mg群の1例が治療開始前に脱落した。12週時ACR20達成率は約2倍、DAS28(CRP)≦3.2点達成率は約3倍に 全体の平均罹患期間は13.2(SD 9.5)年で、bDMARDの投与歴は1剤が47%(235/498例)、2剤が28%(137例)、3剤以上が25%(125例)であり、12週の治療を完遂したのが91%(451例)、24週の治療の完遂例は84%(419例)であった。平均年齢はupadacitinib 15mg群(164例)が56.3(SD 11.3)歳、同30mg群(165例)が57.3(SD 11.6)歳、プラセボ群(169例)は57.6(SD 11.4)歳であり、女性がそれぞれ84%、84%、85%だった。 12週時のACR20達成率は、15mg群が65%(106/164例)、30mg群は56%(93/165例)であり、プラセボ群の28%(48/169例)に比し、いずれの用量群も有意に高かった(いずれもp<0.0001)。DAS28(CRP)≦3.2点の達成率は、15mg群が43%(71/164例)、30mg群は42%(70/165例)と、プラセボ群の14%(24/169例)に比べ、いずれの用量群も有意に優れた(いずれもp<0.0001)。 12週時の有害事象の発生率は、15mg群が55%(91/164例)、プラセボ群は56%(95/169例)と類似したが、これに比べ30mg群は67%(111/165例)と頻度が高かった。最も高頻度の有害事象は、上気道感染症(15mg群:8%[13例]、30mg群:6%[10例]、プラセボ群:8%[13例])、鼻咽頭炎(4%[7例]、5%[9例]、7%[11例])、尿路感染症(9%[15例]、5%[9例]、6%[10例])、関節リウマチの増悪(2%[4例]、4%[6例]、6%[10例])であった。 重篤な有害事象は、15mg群の5%(8例)に比べ30mgは7%(12例)と、多い傾向がみられ、プラセボ群では発現を認めなかった。重篤な感染症、帯状疱疹、治療中止の原因となった有害事象も、15mg群やプラセボ群よりも30mg群で多かった。プラセボ対照期間中に、upadacitinib投与例で肺塞栓症が1例、悪性腫瘍が3例、主要有害心血管イベントが1例、死亡が1例にみられた。 著者は、「これらのデータは、再発例におけるJAK阻害薬治療のエビデンスを拡張し、upadacitinibによる治療は臨床的、機能的なアウトカムや患者報告アウトカムを大幅に、かつ迅速に改善する可能性を示すもの」としている。

29.

JAK1阻害薬upadacitinibが難治性リウマチに有効/Lancet

 従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)で効果不十分の中等度~重度活動性関節リウマチ患者において、JAK1阻害薬upadacitinibの15mgまたは30mgの併用投与により、12週時の臨床的改善が認められた。ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のGerd R. Burmester氏らが、35ヵ国150施設で実施された無作為化二重盲検第III相臨床試験「SELECT-NEXT試験」の結果を報告した。upadacitinibは、中等度~重度関節リウマチ患者を対象とした第II相臨床試験において、即放性製剤1日2回投与の有効性が確認され、第III相試験のために1日1回投与の徐放性製剤が開発された。Lancet誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。upadacitinib 15mgおよび30mgの有効性および安全性をプラセボと比較 SELECT-NEXT試験の対象は、csDMARDを3ヵ月以上投与され(試験登録前4週間以上は継続投与)、1種類以上のcsDMARD(メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド)で十分な効果が得られなかった18歳以上の活動性関節リウマチ患者。双方向自動応答技術(interactive response technology:IRT)を用い、upadacitinib 15mg群、30mg群または各プラセボ群に2対2対1対1の割合で無作為に割り付けし、csDMARDと併用して1日1回12週間投与した。患者、研究者、資金提供者は割り付けに関して盲検化された。プラセボ群には、12週以降は事前に定義された割り付けに従いupadacitinib 15mgまたは30mgを投与した。 主要評価項目は、12週時における米国リウマチ学会基準の20%改善(ACR20)を達成した患者の割合、ならびに、C反応性蛋白値に基づく28関節疾患活動性スコア(DAS28-CRP)が3.2以下の患者の割合である。有効性解析対象は、無作為化され少なくとも1回以上治験薬の投与を受けた全患者(full analysis set)とし、主要評価項目についてはnon-responder imputation法(評価が得られなかった症例はノンレスポンダーとして補完)を用いた。upadacitinibは両用量群で主要評価項目を達成 2015年12月17日~2016年12月22日に、1,083例が適格性を評価され、そのうち661例が、upadacitinib 15mg群(221例)、upadacitinib 30mg群(219例)、プラセボ群(221例)に無作為に割り付けられた。全例が1回以上治験薬の投与を受け、618例(93%)が12週間の治療を完遂した。 12週時にACR20を達成した患者は、upadacitinib 15mg群(141例、64%、95%信頼区間[CI]:58~70%)および30mg群(145例、66%、95%CI:60~73%)が、プラセボ群(79例、36%、95%CI:29~42%)より有意に多かった(各用量群とプラセボ群との比較、p<0.0001)。DAS28-CRP 3.2以下の患者も同様に、upadacitinib 15mg群(107例、48%、95%CI:42~55%)および30mg群(105例、48%、95%CI:41~55%)が、プラセボ群(38例、17%、95%CI:12~22%)より有意に多かった(各用量群とプラセボ群との比較、p<0.0001)。 有害事象の発現率は、15mg群57%、30mg群54%、プラセボ群49%で、主な有害事象(いずれかの群で発現率5%以上)は、悪心(15mg群7%、30mg群1%、プラセボ群3%)、鼻咽頭炎(それぞれ5%、6%、4%)、上気道感染(5%、5%、4%)、頭痛(4%、3%、5%)であった。 感染症の発現率は、upadacitinib群がプラセボ群より高かった(15mg群29%、30mg群32%、プラセボ群21%)。帯状疱疹が3例(各群1例)、水痘帯状疱疹ウイルス初感染による肺炎1例(30mg群)、悪性腫瘍2例(ともに30mg群)、主要心血管イベント1例(30mg群)、重症感染症5例(15mg群1例、30mg群3例、プラセボ群1例)が報告された。試験期間中に死亡例の報告はなかった。

30.

経口JAK阻害薬、乾癬性関節炎の症状を改善/NEJM

 経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬トファシチニブは、コントロール不良の乾癬性関節炎患者の症状をプラセボに比べ有意に改善するが、有害事象の頻度は高いことが、米国・ワシントン大学のPhilip Mease氏らが行ったOPAL Broaden試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年10月19日号に掲載された。トファシチニブは、共通γ鎖含有サイトカイン、インターフェロン-γ、インターロイキン(IL)-12などの乾癬性関節炎の発症に関与する多くのサイトカインのシグナル伝達に影響を及ぼす。JAKの阻害により、関節や関節外部位の炎症細胞の活性化や増殖、および乾癬性関節炎患者の関節破壊や乾癬性の皮膚の変化に関連する細胞の活性化や増殖に関与する、複数のシグナル伝達経路の調節が可能とされる。実薬対照、プラセボと比較する無作為化試験 OPAL Broaden試験は、従来の合成疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の効果が不十分であるコントロール不良の乾癬性関節炎患者の治療における、トファシチニブの有用性を評価する二重盲検実薬対照プラセボ対照無作為化第III相試験である(Pfizer社の助成による)。 患者登録は、2014年1月~2015年12月に欧米を中心とする126施設で行われ、422例が登録された(373例が試験を完遂)。被験者は、2対2対2対1対1の割合で、トファシチニブ5mg(1日2回)を経口投与する群(107例)、トファシチニブ10mg(1日2回)を経口投与する群(104例)、アダリムマブ40mg(2週ごと)を皮下投与する群(106例)、プラセボを投与し3ヵ月時に盲検下でトファシチニブ5mgに切り替える群(52例)、プラセボを投与し3ヵ月時に盲検下でトファシチニブ10mgに切り替える群(53例)にランダムに割り付けられ、12ヵ月間の追跡が行われた。3ヵ月時の評価では、2つのプラセボ投与群(合計105例)を統合して解析を行った。 主要エンドポイントは、3ヵ月時に米国リウマチ学会(ACR)基準による20%以上の改善(ACR20)が得られた患者の割合、および3ヵ月時の健康評価質問票の機能障害指数(HAQ-DI)のスコア(0~3点、点数が高いほど障害が重度)のベースラインからの変化であった。 ACR20は、68関節中の圧痛関節と66関節中の腫脹関節の数、および5つのドメイン(患者による関節炎の活動性の総合評価、担当医による関節炎の活動性の総合評価、患者による関節炎痛の総合評価[3項目とも視覚アナログ尺度の0~100mmで評価]、HAQ-DIによる障害度、急性期反応物質の値[高感度C反応性蛋白])のうち3つ以上のベースラインから20%以上の改善と定義した。HAQ-DIスコアは、ベースラインからの0.35点の低下を、乾癬性関節の臨床的に重要な改善の最小値とした。2つの用量とも、2つの主要エンドポイントを達成 ベースラインの4群の平均年齢は46.9±12.4~49.4±12.6歳、女性が47~60%含まれた。乾癬性関節炎の平均罹病期間は5.3±5.3~7.3±8.2年、HAQ-DIスコアは1.1±0.6~1.2±0.6点であった。付着部炎(Leeds Enthesitis Indexスコア)、腫脹関節数、メトトレキサート使用率(いずれもアダリムマブ群で低い)、グルココルチコイド使用率(トファシチニブ10mg群で低い)を除き、治療群間の背景因子はバランスが取れていた。 3ヵ月時のACR20達成率は、トファシチニブ5mg群が50%、トファシチニブ10mg群が61%と、プラセボ群の33%と比較して有意に改善し(5mgとプラセボの比較:p=0.01、10mgとプラセボの比較:p<0.001)、アダリムマブ群は52%であった。3ヵ月時にプラセボをトファシチニブに切り替えたため、12ヵ月時の評価では有意差を認めなかった。 HAQ-DIスコアの平均変化は、トファシチニブ5mg群が-0.35点、トファシチニブ10mg群が-0.40点と、プラセボ群の-0.18点に比べ有意に改善し(5mgとプラセボの比較:p=0.006、10mgとプラセボの比較:p<0.001)、アダリムマブ群は-0.38点であった。12ヵ月時の評価では有意な差はなかった。 3ヵ月時までの有害事象の発現率は、トファシチニブ5mg群が39%、トファシチニブ10mg群が45%、アダリムマブ群が46%、プラセボ群は35%で、12ヵ月時までの発現率は、5mg群が66%、10mg群が71%、アダリムマブ群が72%、プラセボからトファシチニブ5mgに切り替えた群は69%、プラセボからトファシチニブ10mgに切り替えた群は64%であり、プラセボ群のほうが低い傾向がみられた。試験期間中に、トファシチニブ投与例でがんが4件、重篤な感染症が3件、帯状疱疹が4件認められた。 著者は、「長期的な有効性や安全性を評価するために、さらなる検討を要する」としている。

31.

成人スティル病〔ASD: Adult Still's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義「難病の患者に対する医療等に関する法律」(いわゆる難病法)の制定によってわが国の難病制度は大きく変化し、指定難病数は法制化前の56疾患から平成29年4月1日には330疾患へと大幅に増加した。多くの疾患とともに成人スティル病(ASD)も新たに難病として指定された。診療レベルの向上を目指して、厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業における自己免疫疾患に関する調査研究班(代表;住田孝之 筑波大学教授)で、住田氏と筆者が責任者としてエビデンスに基づいた本症の診療ガイドラインを作成した。関連学会にも承認され、現在書籍化を急ピッチで進めている。主症状として「繰り返す高熱(1日中に39℃まで達するが、その後平熱に戻る;弛張熱)」、「関節炎」、「皮疹」を示す原因不明の疾患で、小児慢性炎症性疾患のスティル病(Still's disease;現在の全身型若年性特発性関節炎〔sJIA〕)に、その臨床所見が類似している成人症例を成人発症スティル病(Adult Onset Still's Disease;AOSD)と称する1)。リウマトイド因子陰性で、通常は副腎皮質ステロイドに反応するが、再発・再燃を来すことが多い。広義の自己炎症性疾患に属する。不明熱の代表的疾患で鑑別診断が重要である。上記のとおりに成人発症例をAOSDと呼び、sJIA(16歳以上)になったものも合わせて、「成人スティル病」(Adult Still's Disease;ASD)と定義する。■ 疫学2011年の厚生労働省研究班(研究代表者;住田 孝之)による全国疫学調査では、罹病者は4,760人と推定され、人口10万人当たり3.9人である2)。発症は若年に多いが、高齢発症者もあり、発症平均年齢は 46歳±19、男女比ではやや女性に多い。家族内発症はない。■ 病因病因・原因は不明であるが、ウイルス感染などを契機とした単球・マクロファージの活性化により炎症性サイトカイン(インターロイキン[IL]-1、IL-2、IL-6、IL-18、腫瘍壊死因子[TNF]-α、インターフェロン-γなど)が、持続的かつ過剰に産生・放出されることが本態であると考えられている。自己抗体や自己反応性T細胞は認めず、自己免疫疾患というより、自然免疫系の制御異常による自己炎症性疾患に属すると理解される。■ 症状1)自覚症状発熱は94%にみられ、午前中は平熱で夕方から夜にかけて上昇し、39℃以上まで達する弛張熱となることが多い。関節痛は80%以上の頻度で主に手指、手、膝関節の多発関節炎で骨びらんや骨性強直を認める場合もある。皮疹は60%以上に典型的皮疹(サーモンピンク疹;四肢や体幹の淡いピンク色の平坦な皮疹で、掻痒感はほとんどなく平熱時には消褪する)を認める。ほかに咽頭痛(60%程度)などがある2)。2)他覚症状リンパ節腫脹、肝脾腫などが認められる。20%程度に薬剤アレルギーがあることに注意する。■ 分類臨床経過から病型は、(1)単周期性全身型(30~40%)(2)多周期性全身型(30~40%)(3)慢性関節型(20~30%)の3つに分類される。全身型は高熱など全身症状が強いのが特徴で、そのうち単周期型は自然軽快する場合もある。一方、慢性関節型は末梢関節炎が持続し、関節リウマチのように関節破壊(主に骨性強直)を来す場合がある。■ 予後一般的に重篤な合併症がなければ、予後は比較的良好と考えられるが、合併症によっては予後不良の可能性がある。重篤な合併症には、マクロファージ活性化症候群/反応性血球貪食症候群があり、その頻度は12~14%で通常の膠原病に比して多い。その他、播種性血管内凝固(DIC)や肺障害(急性肺障害、間質性肺炎)、漿膜炎(胸膜炎、心膜炎)、心筋炎などがある。長期間の炎症反応高値持続症例では、アミロイドーシスも合併し得る。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は、国際的にも頻用されている山口らの成人スティル病分類基準3)による(表1)。表1 ASD診断基準●大項目1.39℃以上の発熱が1週間以上持続2.関節痛が2週間以上持続3.定型的皮疹4.80%以上の好中球増加を伴う白血球増加(10,000/mL以上)●小項目1.咽頭痛2.リンパ節腫脹または脾腫3.肝機能異常4.リウマトイド因子陰性および抗核抗体陰性●除外項目I.  感染(とくに敗血症、伝染性単核球症)II. 悪性腫瘍(とくに悪性リンパ腫)III.膠原病(とくに結節性多発動脈炎、悪性関節リウマチ)除外診断に当たらないことを確認したうえで、大項目2つを含む5項目以上でAOSDと診断する。近年は、これに血清フェリチン高値(正常値の5倍以上)を参考値として加える場合がある。検査所見では、白血球増多、血小板増多、CRP高値、赤沈亢進、肝酵素上昇、フェリチン著増が認められる。保険適用外であるが血清IL-18も著増となる。鑑別診断では、除外診断にも挙げられている、感染症、悪性腫瘍および他の膠原病が重要である4)。1)感染症細菌感染症(とくに敗血症や感染性心内膜炎)やウイルス感染(Epstein-Barr[EB]ウイルス、パルボB19ウイルス、サイトメガロウイルスなど)の鑑別が必要。鑑別のポイントは、ウイルスの血清学的検査、ASDにおけるフェリチン異常高値である。2)悪性腫瘍悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫)、白血病が鑑別疾患として挙げられる。悪性疾患の可能性を否定できなければ、ガリウムシンチグラフィー、リンパ節生検、骨髄穿刺などのより高度・専門的な検査も必要となる。3)膠原病全身性エリテマトーデス(CRP陰性、抗核抗体陽性、低補体血症)、関節リウマチ(リウマトイド因子/抗CCP抗体陽性)、血管炎症候群、サルコイドーシス、キャッスルマン病やリウマチ性多発筋痛症などとの鑑別を要する。弛張熱、血清フェリチン著増、白血球高値、皮疹などが鑑別のポイントとなる。その他、自己炎症性疾患では家族歴が参考になる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)発症早期に寛解導入を目的として、主に副腎皮質ステロイド(CS)中等量(プレドニン換算で0.5mg/kg)以上を用いる。初期治療にて、解熱、炎症反応(CRP)陰性化、血清フェリチン値正常化がなければ、CSの増量(プレドニン換算で1mg/kgまで)、CSパルス療法、免疫抑制薬(メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムスなど)または生物学的抗リウマチ薬(トシリズマブ、TNF阻害薬など)の併用が一般的である。なお、海外も含めたエビデンスを基に作成した前記診療ガイドラインでは、表2のようにASD治療薬の推奨度を示している。CSは初期量にて反応があれば、通常の膠原病治療に準じて減量する。CSの減量困難時にも免疫抑制薬の併用が選択される。ただし、免疫抑制薬はASDには保険適用外である。CS不応、免疫抑制薬効果不十分例に関しては、生物学的抗リウマチ薬の使用を考慮する。IL-6刺激阻害薬(トシリズマブ;抗IL-6受容体抗体)の有効性が近年多数報告されている。とくに、sJIA(当初のスティル病)に対して保険適用もあり、セカンドライン治療薬として有効であるトシリズマブは、類似の病態があると想像されるAOSDに対しても有効な可能性がある。しかし、バイアスを排除したエビデンスレベルに基づく診療ガイドラインではIL-6刺激阻害薬はTNF阻害薬とともに弱い推奨度である。トシリズマブをはじめとした生物学的抗リウマチ薬は、ASDには保険適用外であることを理解し、安易な使用は避け、使用に際しては十分な対策が必要である。慢性関節型に対しては、経口抗リウマチ薬が有効である。画像を拡大する4 今後の展望生物学的抗リウマチ薬として、IL-6受容体抗体(TCZ)、およびIL-1受容体阻害薬(アナキンラ、カナキヌマブ)が有望視されていることから、今後保険適用を取得する可能性がある。また、海外では新規IL-1阻害薬やIL-18阻害薬が臨床研究段階にある。その他、自己炎症性疾患という見方をすれば、インフラマソームの制御異常が病態の中心に位置する可能性もあり、将来的にはインフラマソーム制御薬の応用も予想される。5 主たる診療科鑑別診断の複雑さや合併症発症時の重症度および治療難度から考えて、大学病院や総合病院の内科系リウマチ膠原病科に紹介されるべきである。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 成人スチル病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Bywaters EGL. Ann Rheu Dis.1971;30:121-133.2)Asanuma YF, et al. Mod Rheumatol. 2015;25:393-400.3)Yamaguchi M, et al. J Rheumatol.1992;19:424-430.4)Mahroum N, et al. J Autoimmunity.2014;2-3:48-49/34-37.公開履歴初回2015年6月23日更新2017年8月29日

32.

抗IL-6抗体sirukumab、治療抵抗性RAに効果/Lancet

 抗TNF製剤に治療抵抗性または不耐容の活動性関節リウマチ(RA)患者において、ヒト型抗インターロイキン(IL)-6モノクローナル抗体製剤sirukumabの50mg/4週投与または100mg/2週投与は、プラセボと比較していずれも忍容性は良好で、RAの症状を有意に改善することが示された。オーストリア・ウィーン大学のDaniel Aletaha氏らが、RAに対するsirukumabの有効性と安全性を評価した第III相試験の1つSIRROUND-T試験の結果を報告した。sirukumabは、2016年9月に欧州および米国で、10月には本邦でも、抗リウマチ薬として製造承認申請が行われている。Lancet誌オンライン版2017年2月15日号掲載の報告。抗TNF製剤に治療抵抗性RA患者約900例を対象に試験 SIRROUND-T試験は、国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験で、日本を含む20ヵ国の183施設で行われた。対象は、18歳以上の活動性RA患者で、圧痛関節数4ヵ所以上(68関節中)かつ腫脹関節数4ヵ所以上(66関節中)を認め、少なくとも1つの抗TNF製剤による治療に対して効果不十分または忍容性がない患者であった。 2012年7月25日~2016年1月12日に、878例をプラセボ(2週ごと投与)群(294例)、sirukumab 50mg(4週ごと投与)群(292例)、または同100mg(2週ごと投与)群(292例)に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。ベースラインでのメトトレキセート使用(0、0~12.5mg未満/週、12.5mg以上/週)による層別化も行った。 治療期間は52週で、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の併用は可とした。治験薬は皮下注射とし、盲検を維持するため50mg群にはプラセボの2週ごと投与も行った。 18週時点で、プラセボ群のうち早期離脱基準(腫脹または圧痛関節数の改善率が20%未満)を満たした患者を、いずれかのsirukumab群に再度無作為に割り付け、その後24週時点で、残りのプラセボ群患者をいずれかのsirukumab群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、intention-to-treat集団(無作為化された全患者)での16週時点におけるACR20(ベースラインから20%以上改善)を達成した患者の割合とした。16週時のACR20達成率、50mg群40%、100mg群45%、プラセボ群24% 878例中523例(60%)は、非抗TNF製剤を含む2つ以上の生物学的製剤による治療歴があり、166例(19%)はベースラインでDMARD使用歴がなかった。 16週時点におけるACR20達成患者の割合は、プラセボ群24%(71例/294例)に対し、sirukumab 50mg群40%(117/292例)、sirukumab 100mg群45%(132/292例)で、プラセボ群との差はそれぞれ16%(95%信頼区間[CI]:9~23%)、および21%(95%CI:14~29%)であった(いずれもp<0.0001)。 24週間の有害事象発生は、プラセボ群とsirukumab両群で類似していた(発現率:プラセボ群62%[18週での早期離脱患者も含む]、50mg群66%、100mg群71%)。最も頻度が高かった有害事象は、注射部位紅斑であった(プラセボ群1%、50mg群8%、100mg群14%)。52週までに、プラセボ群から再割り付けされた患者も含めsirukumabの投与を受けた全患者において、最も発現率が高かった有害事象は、同様に注射部位紅斑であった(50mg群8%[33/416例]、100mg群16%[66/418例])。

33.

新薬と医療経済―PCSK9は安いか?高いか?(解説:平山 篤志 氏)-582

 スタチンに併用することで、LDLコレステロールをさらに低下させるPCSK9阻害薬が発売され、次の点から注目されている。 1つは、スタチン使用下で70%以上LDL-コレステロールを低下させるという驚異的な効果、次に、PCSK9阻害薬(レパーサ皮下注140mgシリンジ)の薬価が 2万2,948円(1ヵ月4万5,896円、年間約55万円)と高価なことである。 コレステロール低下薬であるが、効果としては心血管事故の予防目的であることから、直接的な治療薬でなく、かつ長期間使用される薬剤であるため、これまでの抗がん剤や抗リウマチ薬とは違う意味を持つ生物製剤である。そのため、薬価としては高いのか?安いのか?が医療経済の面から評価される必要があった。 本論文では、米国で発売されている抗PCSK9抗体薬の価格が年間1万4,350ドルで、35歳から74歳までの家族性高コレステロール血症(FH:familial hypercholesterolemia)のヘテロ接合体患者(hFH)と、ハイリスクの心血管疾患患者(ASCVD:atherosclerotic cardiovascular disease)すべてに投与した場合、心血管イベントを予防する効果とそれに伴って節約できる価格を比較している。 hFHでは、1クエリ50万3,000ドル、ASCVDでは41万4,000ドルで、通常米国で受け入れられる1クエリ10万ドルをはるかに超えることになる。さらに、hFHでLDLコレステロール値の高値の患者、あるいは急性冠症候群発症患者のみに限定してもコストには見合わないとし、少なくとも3分の2以上の価格の低減が必要であると結論している。 わが国で発売された本剤は、ちょうど本論文の提示する価格ではある。ただ、わが国のイベント発生頻度を考慮すると、やはり現状では経済効果があるとは考えにくい。この薬剤を活かすには、よりハイリスクの患者を見出す工夫が必要であろう。ただ、この論文で記載されているように、抗PCSK9抗体の効果については、まだ十分なデータが出ているわけではない。今後発表されるFOURIER試験やODESSAY outcomes試験の結果での有効性、さらに長期的な安全性が示されることが必須である。今後明らかにされるCRTの結果で、真にこの薬剤のベネフィットのある患者さんを選別することができるかどうかで、薬価の結論を導き出せるかもしれない。

34.

U-Act-Early試験:従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬ナイーブの早期関節リウマチへのトシリズマブ導入効果の検討(解説:金子 開知 氏)-570

 トシリズマブ(tocilizumab:TCZ)は、世界に先駆けてわが国で発売されたIL-6受容体に対するモノクローナル抗体である。TCZは、多くの臨床試験により関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)患者の臨床症状の改善、骨破壊抑制効果や身体機能改善効果が証明されている。TCZは、本邦の「関節リウマチ診療ガイドライン2014」において、以前から推奨されていたTNF阻害薬と並んで第1選択の生物学的製剤として推奨されている。 今回、Bijlsma氏らは、早期RA患者へのTCZの単独またはメトトレキサート(methotrexate:MTX)との併用療法の有効性と安全性を、MTX単独療法と比較するU-Act-Early試験を行った。オランダのリウマチ科外来の21施設で2年間の多施設共同無作為化二重盲検比較試験が行われた。1年以内にRAと診断され、抗リウマチ薬治療歴がなく、疾患活動性スコアであるDAS28が2.6以上の18歳以上の患者を対象とした。TCZとMTX併用群、TCZ単独群、MTX群に1:1:1の割合で無作為に割り付けられた。TCZは4週ごとに8mg/kg静脈投与(最大800mg)、MTXは10mg/週経口投与より開始し、4週ごとに5mgずつ増量し、寛解または用量依存性の毒性が現れるまで最大30mg/週まで増量した。主要評価項目は、初期治療で6ヵ月以上持続する寛解維持(腫脹疼痛関節数4以下かつDAS28<2.6)を得られた患者の割合とした。 発症早期RA患者317例が登録された(併用群106例、TCZ群103例、MTX群108例)。最初に割り付けられた治療での寛解維持達成は、併用群91例(86%)、TCZ群86例(84%)、MTX群48例(44%)で得られ、相対危険度はMTX群に比し併用群が2.00、TCZ群が1.86と有意に増加した。割り付けた治療で寛解に達成しない場合は、ヒドロキシクロロキンを追加し、さらにプラセボは実薬にし、TCZはTNF阻害薬併用に順次変更した。また、全治療群における寛解維持達成は、併用群91例(86%)、TCZ群91例(88%)、MTX群83例(77%)であった。治療群全体で最も発現頻度の高い有害事象は鼻咽頭炎で、115例(36%)に認めた。重篤な有害事象の発症に治療群間で差はなかった。試験期間に死亡例の報告はなかった。 本研究では、無治療の早期RA患者において、持続的寛解を目指す治療として、現在の標準治療であるMTX単独開始群と比べ、TCZの単独またはTCZとMTXとの併用開始群が約2倍の寛解率を得ることが示され、安全性は同等であった。今後、長期のデータや費用対効果を考慮していく必要がある。

35.

関節リウマチに対してリツキシマブはTNF阻害薬と効果は同等(非劣性)で費用対効果はむしろ高い(解説:金子 開知 氏)-554

 リツキシマブは、CD20(成熟B細胞の表面抗原)を標的としたキメラ型モノクローナル抗体であり、TNF(tumor necrosis factor)阻害薬やIL-6阻害薬とは異なる作用点を有する生物学的製剤である。リツキシマブの投与により自己抗体産生が低下し、自己免疫性疾患の治療効果が期待されている。わが国では、関節リウマチ(RA)に対するリツキシマブの保険適用はないが、欧米ではTNF阻害薬に抵抗性のRAに対して認可されている。これまでRA治療の生物学的製剤導入療法として、リツキシマブとTNF阻害薬の有効性、安全性、費用対効果などを直接比較した臨床研究はなかった。 今回、Porter氏らは、血清反応陽性で、従来型抗リウマチ薬が効果不十分の高疾患活動性のRA患者を対象に、リツキシマブとTNF阻害薬の非盲検無作為化対照非劣性試験を行った。患者をリツキシマブまたはTNF阻害薬を投与する群に1:1に無作為に割り付けた。リツキシマブ群はリツキシマブ1gの点滴静注を2回(1日目と15日目)投与し、26週後にDAS(disease activity score)28-ESRスコア>3.2の場合に再投与した。また、前投与としてリツキシマブ投与30分前にメチルプレドニゾロン100mgが投与された。TNF阻害薬群は、アダリムマブ隔週1回40mg皮下注またはエタネルセプト週1回50mg皮下注を、患者またはリウマチ専門医の選択によって投与した。治療による副作用や治療効果が乏しい場合は、治療を切り替えることを可能とした。主要評価項目は、per-protocol集団(割り付け後1年時点まで観察できた患者)におけるDAS28-ESRスコアのベースラインから12ヵ月時点までの変化とした。安全性の評価は、試験薬を少なくとも1回投与した全患者を対象とした。各治療薬の費用対効果も評価した。非劣性マージンはDAS28-ESR0.6とした。 295例の患者が無作為に割り付けられ、リツキシマブ(n=144)またはTNF阻害薬(n=151)の投与を受けた。12ヵ月後のDAS28-ESRスコアの変化はリツキシマブ群が-2.6(SD1.4)、TNF阻害薬群が-2.4(SD1.5)であり、両群差は事前規定非劣性マージン内であった。健康関連費用(薬剤費、診療費、血液検査、画像検査費用)は、リツキシマブ群はTNF阻害薬群より有意に低かった(リツキシマブ群9,405ポンドに対して、TNF阻害薬群1万1,523ポンド)。リツキシマブ群は23例がTNF阻害薬に、TNF阻害薬群は49例がリツキシマブに変更された。有害事象報告はリツキシマブ群では下痢が多く、TNF阻害薬群では注射部位反応が多かった。重篤な薬剤関連による有害事象の、発症頻度は両群に有意な差は認めなかった。死亡例は、各群1例ずつであった。 本研究では、血清反応陽性のRA患者における生物学的製剤の初期治療としての効果は、リツキシマブがTNF阻害薬に非劣性であり、12ヵ月間の費用対効果はリツキシマブが高いことを示した。しかし、さらに長期的なデータが必要であり、リツキシマブは反復投与期間が不明確であること、リツキシマブ前治療として高用量ステロイドが必要なこと、血清反応陰性のRA患者における有用性などの問題点を今後解明していく必要がある。

36.

早期リウマチへのトシリズマブ、単独・MTX併用でも寛解維持2倍/Lancet

 新たに関節リウマチ(RA)と診断された患者において、メトトレキサート(商品名:リウマトレックスほか、MTX)併用の有無を問わず、ただちにトシリズマブ(商品名:アクテムラ)の投与を開始し寛解維持を目指す治療戦略は、より効果的であることが示された。安全性プロファイルは現在の標準治療であるMTXと類似していた。オランダ・ユトレヒト大学メディカルセンターのJohannes W J Bijilsma氏らが、トシリズマブの単独またはMTXとの併用療法の有効性と安全性を、MTX単独療法と比較したU-Act-Early試験の結果、報告した。早期RA患者にとって、治療の目標は速やかな持続的寛解を得ることだが、目標達成に向けた治療戦略の検討はされていなかった。Lancet誌オンライン版2016年6月7日号掲載の報告。トシリズマブの単独またはMTX併用療法とMTX単独療法の寛解維持達成を比較 U-Act-Early試験は、MTXとの併用または単独でのトシリズマブの有効性と安全性を、MTX単独療法と比較する、2年間の多施設共同無作為化二重盲検比較試験。オランダのリウマチ外来21施設で実施された。 対象は、1年以内にRAと診断され、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の治療歴がなく、疾患活動性スコア(DAS28)が最低2.6の18歳以上の患者であった。 被験者は、トシリズマブ+MTX(併用)群、トシリズマブ+プラセボ(トシリズマブ)群、プラセボ+MTX(MTX)群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。トシリズマブは4週ごとに8mg/kg(最大800mg)静脈投与、MTXは10mg/週経口投与より開始し、4週ごとに5mgずつ、最大30mg/週まで増量し、寛解または用量制限毒性が現れるまで継続した。割り付けた治療で寛解に至らない場合は、プラセボは実薬に、併用群は標準治療(MTX+TNF阻害薬併用)に変更した。 主要評価項目は、寛解維持(腫脹関節数≦4かつDAS28<2.6が最低24週持続)を得られた患者の割合であった。寛解維持達成はトシリズマブ単独84%、併用86%、MTX単独44% 2010年1月13日~2012年7月30日に適格とされた患者317例が登録された(併用群106例、トシリズマブ群103例、MTX群108例)。試験を完了した患者の割合は72~78%で、3群間で類似していた。中途脱落理由で最も多かったのは、有害事象または他疾患を併発27例(34%)、効果不十分26例(33%)であった。 最初の割り付け治療での寛解維持達成は、併用群91例(86%)、トシリズマブ群86例(84%)、MTX群48例(44%)で得られた。相対リスクは、併用群 vs.MTX群が2.00(95%信頼区間[CI]:1.59~2.51、p<0.0001)、トシリズマブ群 vs.MTX群1.86(同:1.48~2.32、p<0.0001)であった。 また、全治療における寛解維持達成は、併用群91例(86%)、トシリズマブ群91例(88%)、MTX群83例(77%)であった。相対リスクは、併用群 vs.MTX群1.13(95%CI:1.00~1.29、p=0.06)、トシリズマブ群 vs.MTX群1.14(同:1.01~1.29、p=0.356)、併用群 vs.トシリズマブ群p=0.59であった。 全体で最も発現頻度の高い有害事象は鼻咽頭炎で、併用群38例(36%)、トシリズマブ群40例(39%)、MTX群37例(34%)であった。重篤な有害事象の発症に治療群間で差はなく(併用群17例[16%] vs.トシリズマブ群19例[18%]、MTX群13例[12%])、試験期間中に死亡例の報告はなかった。

37.

Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q33

Q33 関節リウマチで生物学的製剤を導入予定の患者さんがESBL産生菌を保菌しているので除菌したいのですが、どうすればいいですか? 生物学的製剤でESBL産生菌による感染症のリスクは若干増える可能性はありますが、有効な除菌の方法が確立されていないので、安易な除菌はお勧めできません。 この問いに答えるには、問題を2つに分解して考えるとよいと思います。すなわち、(1)生物学的製剤でESBL産生菌による感染症のリスクが高くなるのか? 高くなるとしたらどれくらいか?(2)ESBL産生菌の除菌は可能か? 可能だとして、除菌すると患者にとって何かよいことがあるか?です。 まず(1)についてですが、インフリキシマブをはじめとする生物学的製剤は細胞性免疫を低下させ結核などの肉芽腫性感染症のリスクになることが有名です1)。「免疫不全」と聞くとそれだけで思考停止してしまう人がいますが、免疫不全の種類(表)により、問題になる微生物の種類はある程度決まっています。表:免疫不全の種類好中球減少症細胞性免疫障害液性免疫障害物理的バリア(皮膚、粘膜)の障害細胞性免疫障害の場合、細菌では抗酸菌やリステリア、サルモネラのような細胞内寄生菌が問題になることが多いので、直感的にはESBL産生腸内細菌科細菌による感染症のリスクはあまり上げないのではないかと思いますが、具体的にどれくらいのリスクになるかを調べてみました。2006年に発表された系統的レビューによると、抗TNF抗体薬による治療はプラセボと比較して、重篤な感染症(抗菌薬治療または入院が必要な感染症と定義)のリスクがDMARDs(疾患修飾性抗リウマチ薬)やプラセボと比べて、オッズ比2.0(95%信頼区間:1.3~3.1)と約2倍に上昇したと報告されています。絶対リスクで表すと、3~12ヵ月間の治療で、重篤な感染症を起こすnumber needed to harm(NNH: 何人治療すると1件の有害事象を起こすかを表す指標)は59(95%信頼区間:39~125)でした2)。抗TNF治療による重篤な感染症は肉芽腫性感染症の増加によるものと考えられていましたが、この系統的レビューによると、126例の重篤な感染症のうち肉芽腫性感染症は12例(結核が10例、ヒストプラズマ症が1例、コクシジオイデス症が1例)で、これらを除いた重篤な感染症のリスクはオッズ比1.9(95%信頼区間:1.2~2.9)でした2)。その他の重篤な感染症の内訳はわかりませんが、仮にすべてが腸内細菌科細菌によるものだとしても、リスクの上昇は高くても2倍程度ということになります。また、最近のネットワークメタアナリシスを用いた系統的レビューでは、重篤な感染症のリスクはDMARDsと比べて、標準量の生物学的製剤でオッズ比1.31(95%信用区間:1.09~1.58)、高用量の生物学的製剤でオッズ比1.90(95%信用区間:1.50~2.39)と報告されています3)。ここでの重篤な感染症は研究ごとに定義され、大部分が死亡、入院、静注抗菌薬使用と関連した感染症と定義されていましたので、細菌感染症以外も含まれていると思います。ESBL産生菌によるものと限定すると、おそらくもっと小さいでしょう。絶対リスクから考えても、それほど大きいリスクとは考えられません。「免疫不全」の人を診療するのは難しいです。しかし、「免疫不全でESBL産生菌が心配だから、とりあえずカルバペネムを使っとこう」では、結核やニューモシスチス肺炎といった真のリスクから目をそらしているにすぎません。難しいからこそ、「具体的にどういうリスクがあるのか?」を切り分けていき、一つひとつに対処していく必要があります。さて、次に(2)のESBL産生菌の除菌は可能か? について考えてみたいと思います。多剤耐性腸内細菌科細菌の除菌の有効性について検証したランダム化比較試験(RCT)は、2件見つかりました。Huttner氏らはESBL産生腸内細菌科細菌の保菌者を対象に、コリスチンとネオマイシン10日間内服(+尿路に定着している患者にはニトロフラントイン5日間内服)群とプラセボ群を比較しました。治療中6日目と治療後1日目では、内服群のほうが除菌群よりも耐性菌が検出される割合は有意に低かったのですが、治療後7日目には有意差はなくなり、プライマリアウトカムである治療後28日目の除菌割合は内服群57%、プラセボ群37%と有意差はありませんでした4)。Saidel-Odes氏らのRCTでは、カルバペネム耐性Klebsiella pneumoniae(CPKP)の保菌者を対象に、SDD(選択的消化管除菌:コリスチンとゲンタマイシン含有のゲルを口腔咽頭に塗布+ゲンタマイシン、ポリミキシンEを内服)群とプラセボ群を比較しました。2週間後の時点では直腸スワブ培養でCPKPが検出されなかったのは、SDD群が16%、プラセボ群が61%でSDD群が有意に低かったのですが、6週間後のフォローアップでは、SDD群が33%、プラセボ群が59%で有意差はなくなっていました5)。どちらも小規模なRCTですので、検出力不足の可能性はありますが、短期的には培養から検出されなくなったとしても、4週間以上たつとリバウンドして元に戻ってしまうようで、除菌の効果はあまり高くないようです。ちなみに、なぜ除菌に内服の非吸収性抗菌薬が用いられるか疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これらの腸内細菌科細菌は消化管に定着していることが多いからです(保菌の有無は直腸スワブ培養で確認し、除菌の成功の判定には、直腸スワブ、尿、鼠径部などの培養で確認されることが多いようです)。尿培養からESBL産生菌が検出されていた人が抗菌薬治療により一時的に尿培養から検出されなくなっても、消化管内で保菌が続いていることは少なくありません(通常の抗菌薬治療では、消化管内の濃度がそれほど高くならないせいかもしれません)。尿路に保菌している人は消化管にも保菌していると考えておいたほうがよいので、尿培養から検出されなくなったから安心、というわけにはいきません。本来は、単に培養が陰性になるだけではなく、実際に症候性の感染症を減らしたかどうか、入院を減らしたかどうか、死亡を減らしたかどうか? など、患者にとって切実なアウトカムまで改善して、ようやく除菌することの妥当性が担保されますが、そこまでのメリットは期待しにくいようです。積極的な除菌の効果は乏しいので、現時点では自然に消えてくれるのを待つよりほかありません。とはいえ、ESBL産生腸内細菌科細菌が消えるまでの期間は中央値で98日間(14~182日間)6)、6.6ヵ月 7)、132日間(65~228日間)8)、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌では平均387日間(95%信頼区間:312~463日間)9)と、かなり長期間保菌状態が続きます。なんとかならないものかと思いますが、これら多剤耐性菌を保菌した患者では、抗菌薬による選択圧を減らすために、なるべく抗菌薬を使わずにじっと我慢していくしかないのだろうと思います(もちろん、実際に感染症を起こしたら治療のために使わないといけませんが、安易な除菌や予防的投与は事態を改善させるどころか悪化させる可能性もあります)。さて、最後に新しい話題を少しご紹介します。近年、外国では難治性のClostridium difficile感染症に対する治療として、糞便移植(fecal transplantation)の研究が盛んになっています。この治療の副産物として、消化管に定着していた多剤耐性腸内細菌科細菌が糞便移植後に消えた(減った)という症例報告や学会報告が散見されるようになりました10)11)。まさに消化管除菌とは真逆の発想です。使いやすい製剤が利用できるようになるまで、日本国内ではまだまだ時間がかかるでしょうが、将来に期待したいところです。 1)Salvana EM, et al. Clin Microbiol Rev. 2009;22:274-290.2)Bongartz T, et al. JAMA. 2006;295:2275-2285.3)Singh JA, et al. Lancet. 2015;386:258-265.4)Huttner B, et al. J Antimicrob Chemother. 2013;68:2375-2382.5)Saidel-Odes L, et al. Infect Control Hosp Epidemiol. 2012 ;33:14-19.6)Apisarnthanarak A, et al. Clin Infect Dis. 2008;46:1322-1323.7)Birgand G, et al. Am J Infect Control. 2013;41:443-447.8)Zahar JR, et al. J Hosp Infect. 2010;75:76-78.9)Zimmerman FS, et al. Am J Infect Control. 2013;41:190-194.10)Crum-Cianflone NF, et al. J Clin Microbiol. 2015;53:1986-1989.11)Freedman A, et al. Open Forum Infect Dis. 2014;1:S1.

38.

難治性リウマチに新規JAK阻害薬は有効か/NEJM

 生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)に効果不十分の難治性関節リウマチ(RA)患者に対し、新規経口薬の選択的ヤヌスキナーゼ(JAK)1および2阻害薬baricitinibの1日1回4mg投与で、12週時点の臨床的改善が認められたことが報告された。米国・スタンフォード大学医療センターのMark C. Genovese氏らが、24週間の第III相臨床試験の結果、報告した。baricitinibは第II相試験で、生物学的DMARDs投与歴のないRA患者の疾患活動性を低下したことが確認されていた。NEJM誌2016年3月31日号掲載の報告。527例を対象に、baricitinib1日1回2mg vs.同4mg vs.プラセボ 試験は2013年1月~14年9月に、24ヵ国178施設で527例を対象に行われた。被験者は、1種類以上のTNF阻害薬、他の生物学的DMARDsの治療歴があり、十分な効果が得られなかったか、忍容できない副作用のために治療中断となった、18歳以上の中等度~重度の活動性RA患者であった。 研究グループは被験者を、baricitinib1日1回2mg投与、同4mg投与、プラセボ投与の3群に1対1対1の割合で無作為に割り付け24週間投与した。 主要エンドポイントは、米国リウマチ学会基準の20%改善(ACR20)を認めた患者の割合であった。キー副次エンドポイントとして、健康評価質問票機能障害指数(HAQ-DI)、C反応性蛋白値に基づく28関節疾患活動性スコア(DAS28-CRP)、簡易疾患活動性指標(SDAI)スコア3.3以下(尺度0.1~86.0で、スコア3.3以下が寛解を示す)を評価。分析は、12週時点の主要およびキー副次エンドポイントのタイプIエラーを調整するため、ステップワイズ階層的仮定検定法を用いて行い、最初にACR20を評価、次いでHAQ-DIスコアとDAS28-CRPのベースラインからの変化を、最後にSDAIスコア3.3以下を評価した。また、すべての評価は、最初にbaricitinib 4mg群 vs.プラセボ群を、次に、baricitinib 2mg群 vs.プラセボ群の順で行った。12週時のACR20、4mg群 vs.プラセボ群で有意差 既治療について、生物学的DMARDsの投与が1種類であった患者は221例(42%)、2種類が160例(30%)、3種類以上が142例(27%)であった。また、それら生物学的DMARDs既治療患者のうち、TNF阻害薬による治療歴のない患者は約38%であった。 結果、主要エンドポイントの12週時点のACR20を達成した患者は、baricitinib 4mg群がプラセボ群よりも有意に多かった(55% vs.27%、p<0.001)。HAQ-DIスコア、DAS28-CRPについても、baricitinib 4mgとプラセボ群で有意差が認められたが(いずれもp<0.001)、SDAIスコア3.3以下に関しては有意差はみられなかった(p=0.14)。 24週間の有害事象の発現率は、プラセボ群(64%)よりもbaricitinib 2mg群(71%)および同4mg群(77%)で高率であった。感染症(31% vs.44%および40%)などが報告されている。 重篤有害事象の発現率は、プラセボ群7% vs. baricitinib 2mg群4%および4mg群10%であった。いずれも4mg群で、非メラノーマ皮膚がんが2例、主要有害心血管イベント(MACE)2例(うち1例は致死的脳卒中)が報告されている。 また、安全性評価の臨床検査データから、baricitinibは、好中球のわずかな減少、血清クレアチニンの増加、LDLコレステロールの増加と関連することが示唆された。 これらの結果を踏まえて著者は「さらなる試験を行い、長期の安全性と効果の持続性を評価する必要がある」とまとめている。

39.

ウィルソン病〔Wilson disease〕

1 疾患概要■ 定義肝臓およびさまざまな臓器に銅が蓄積し、臓器障害を来す常染色体劣性遺伝性の先天性銅代謝異常症である。■ 疫学わが国での発症頻度は約3万5千人に1人、保因者は約120人に1人とされている。■ 病因・病態本症は、銅輸送ATPase(ATP7B)の遺伝子異常症で、ATP7Bが機能しないために発症する。ATP7B遺伝子の変異は症例によりさまざまで、300以上の変異が報告されている。正常では、ATP7Bは肝細胞から血液および胆汁への銅分泌を司どっており、血液中への銅分泌のほとんどは、セルロプラスミンとして分泌されている。ATP7Bが機能しない本症では、肝臓に銅が蓄積し、肝障害を来す。同時に血清セルロプラスミンおよび血清銅値が低下する。さらに肝臓に蓄積した銅は、オーバーフローし、血液中に出てセルロプラスミン非結合銅(アルブミンやアミノ酸に結合しており、一般に「フリー銅」といわれている)として増加し、増加したフリー銅が脳、腎臓などに蓄積し、臓器障害を来すとされている(図1)。画像を拡大する■ 症状・分類5歳以上のすべての年齢で発症する。40~50歳で発症する例もある。神経型は肝型に比較して、発症年齢は遅く、発症は8歳以上である。ウィルソン病は、症状・所見により、肝型(肝障害のみ)、肝神経型(肝機能異常と神経障害)、神経型(肝機能は異常がなく、神経・精神症状のみ)、溶血発作型、その他に分類される。本症での肝障害は非常に多彩で、たまたま行った検査で血清トランスアミナーゼ(ALT、AST)高値により発見される例(発症前)から、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変などで発症する例がある。神経症状の特徴はパーキンソン病様である。神経型でも肝臓に銅は蓄積しているが、一般肝機能検査値としては異常がみられないだけである。肝機能異常が認められなくても、表1の神経・精神症状の患者では、本症の鑑別のために血清セルロプラスミンと銅を調べるべきである。画像を拡大する神経・精神症状は多彩で、しばしば診断が遅れる。本症患者で当初はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などと誤診されていた例が報告されている。表1の「その他の症状」が初発症状を示す患者もいる。したがって、表1の症状・所見の患者で原因不明の場合は、本症を鑑別する必要がある。■ 予後本症に対する治療を行わないと、病状は進行する。肝型では、肝硬変、肝不全になり致命的になる。肝細胞がんを発症することもある。神経型では病状が進行してから治療を開始した場合、治療効果は非常に悪く、神経症状の改善がみられない場合もある。また、改善も非常に緩慢であることが多い。劇症型肝炎や溶血発作型では、迅速に対応しなければ致命的になる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断に有効な検査を表2に示す。また、診断のフローチャートを図2に示す。表2の補足に示すように、診断が困難な場合がある。現在、遺伝子診断はオーファンネットジャパンに相談すれば実施してくれる。画像を拡大する症状から本症を鑑別する場合、まずは血清セルロプラスミンと銅を測定する。さらに尿中銅排泄量およびペニシラミン負荷試験で診断基準を満たせば、本症と診断できる。遺伝子変異が同定されれば確定診断できるが、臨床症状・検査所見で本症と診断できる患者でも変異が同定されない場合がある。確定診断に最も有効な検査は肝銅濃度高値である。しかし、劇症肝不全で肝細胞が著しく壊死している場合は、銅濃度は高くならないことがある。患者が診断されたら、家族検索を行い、発症前の患者を診断することも必要である。鑑別診断としては、肝型では、慢性肝炎、急性肝炎、劇症型肝炎、肝硬変、自己免疫性肝炎などが挙げられる。神経型はパーキンソン病、うつ病、総合失調症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、パラノイア症候群(偏執病)などである。また、関節症状では関節リウマチ、心筋肥大では心筋症、血尿が初発症状では腎炎との鑑別が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症の治療薬として、キレート薬(トリエンチン、ペニシラミン)、亜鉛製剤がある(表3)。また、治療の時期により初期治療と維持治療に分けて考える。初期治療は、治療開始後数ヵ月で体内に蓄積した銅を排泄する時期でキレート薬を使用し、その後は維持治療として銅が蓄積しないように行う治療で、亜鉛製剤のみでよいとされている。画像を拡大する肝型では、トリエンチンまたはペニシラミンで開始する。神経型では、キレート薬、とくにペニシラミンは使用初期に神経症状を悪化させる率が高い。したがって神経型では、亜鉛製剤またはトリエンチンで治療を行うのが望ましい。ウィルソン病は、早期に診断し治療を開始することが重要である。とくに神経型では、症状が進行すると予後は不良である。早期に治療を開始すれば、症状は消失し、通常生活が可能である。しかし、怠薬し、急激な症状悪化を来す例が問題になっている。治療中は怠薬しないように支援することも大切である。劇症型肝炎、溶血発作型では、肝移植が適応になる。2010年現在、わが国での本症患者の肝移植数は累計で109例である。肝移植後は、本症の治療は不要である。発症前患者でも治療を行う。患者が妊娠した場合も治療は継続する。亜鉛製剤で治療を行っている場合は、妊娠前と同量または75mg/日にする。キレート薬の場合は、妊娠後期には、妊娠前の50~75%に減量する。4 今後の展望1)本症は症状が多彩であるために、しばしば誤診されていたり、診断までに年月がかかる例がある。発症前にマススクリーニングで、スクリーニングされる方法の開発と体制が構築されることが望まれる。2)神経型では、キレート薬治療で治療初期に症状が悪化する例が多い。神経型本症患者の神経症状の悪化を来さないテトラチオモリブデートが、米国で治験をされているが、まだ承認されていない。3)欧米では、本症の診断治療ガイドラインが発表されている。わが国では、2015年に「ウィルソン病診療指針」が発表された。5 主たる診療科小児科、神経内科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報ウィルソン病友の会1)Roberts EA, et al. Hepatology. 2008; 47: 2089-2111.2)Kodama H, et al. Brain & Development.2011; 33: 243-251.3)European Association for the Study of the Liver. J Hepatology. 2012; 56: 671-685.4)Kodama H, et al. Current Drug Metabolism.2012; 13: 237-250.5)日本小児栄養消化器肝臓学会、他. 小児の栄養消化器肝臓病診療ガイドライン・指針.診断と治療社;2015.p.122-180.公開履歴初回2013年05月30日更新2016年02月02日

40.

想像以上に難しいRAの「バイオフリー」

 現在、生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARDs)は多くの関節リウマチ(RA)患者で使用されているが、寛解時にbDMARDsの使用を中止しても疾患コントロールができる患者はどれくらいの割合で存在するのだろうか。ハーバード大学の吉田 和樹氏らは、日常診療における寛解時にbDMARDsを中止した場合の影響について調査を行ったところ、bDMARDsフリーによるclinical disease activity index(CDAI)寛解は高確率で失敗に終わることがわかった。この結果は、一度寛解に至った後も疾患コントロールを行うことが難しいことを示している。ただし、寛解を維持した患者の中には非生物学的製剤治療の変更を行った者もいた。bDMARDsの費用が高額であることを考慮すれば、bDMARDsの中止後に疾患コントロールを行う治療戦略は重要な選択肢である可能性がある。Rheumatology誌オンライン版2015年9月8日号の掲載報告。 調査では、わが国におけるRA患者の多施設登録データベース「Ninja」のデータを用いた。bDMARDsを使用しており、かつbDMARDs中止前のCDAI 2.8以下の寛解が1回以上ある患者を対象とした。bDMARDsフリーによる疾患コントロールの失敗は「bDMARDsの再使用」「non-bDMARDs・経口ステロイドの増量」「CDAI寛解の喪失」により定義された。 主な結果は以下のとおり。・bDMARDsで寛解を達成した1,037例のうち、46例でbDMARDsを中止した。・46例のうち41例(89.1%)が女性であり、罹病期間の中央値は6年で、31例(70.5%)でレントゲン上にびらんが観察された。・46例のうち27例(58.7%)がメトトレキサートを用いており、19例(41.3%)が経口ステロイドを用いていた。・bDMARDsフリーの寛解喪失率は1年で67.4%、2年で78.3%と推定された。・多くみられたbDMARDsフリーによる疾患コントロール失敗の理由は、CDAI寛解喪失とbDMARDs再使用であった。・寛解中のCDAIの値が低いほど、疾患コントロール失敗も少なかった。

検索結果 合計:70件 表示位置:21 - 40