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1.

HER2+局所進行/転移乳がんへの二重HER2阻害療法と併用の1次化学療法、エリブリンvs.タキサンの最終OS解析(JBCRG-M06/EMERALD)/ESMO Open

 HER2陽性(HER2+)局所進行/転移乳がんに対して、二重HER2阻害療法(トラスツズマブ+ペルツズマブ)と併用する1次化学療法として、エリブリンと医師選択のタキサンを比較した第III相JBCRG-M06/EMERALD試験の最終解析の結果、全生存期間(OS)中央値が6年を超え、2群間に有意差は認められなかったことが示された。福島県立医科大学の佐治 重衡氏らがESMO Open誌8月号に報告した。本試験ではすでに、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)においてエリブリンがタキサンに非劣性を示したことが報告されている。 本試験では、HER2+局所進行/転移乳がん患者をエリブリン群または医師選択のタキサン(ドセタキセルまたはパクリタキセル)群に無作為に1:1の割合で割り付け、1次化学療法としてトラスツズマブ+ペルツズマブと併用した。PFSは2023年6月30日まで、OSは2024年12月31日まで評価した。生存アウトカムは、エリブリン群とタキサン群で比較し、循環腫瘍DNA(ctDNA)によるPIK3CA変異(E542K、E545K、H1047R、N345Kの単一ヌクレオチド変異)またはHER2増幅(ERBB2コピー数>2.5)の検出状況に応じて比較した。 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は、エリブリン群が78.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:64.3~未到達)、タキサン群が未到達で、ハザード比は1.25(95%CI:0.92~1.71、p=0.19)であった。・60ヵ月OS率は、エリブリン群が59.7%、タキサン群が65.2%であった。・患者全体および治療群ごとのいずれにおいても、ctDNA PIK3CA変異陽性例ではOS中央値および60ヵ月OS率が数値的に低く、ctDNA HER2増幅陽性例では高かった。・治療群とctDNA PIK3CA変異またはctDNA HER2増幅の状態との間に統計学的に有意な相互作用は認められなかった。・PFSについても同様の傾向が観察された。

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進行卵巣がんにおけるカルボプラチン腹腔内投与の位置付け/日本婦人科腫瘍学会

 2025年12月に卵巣がんの1次化学療法としてカルボプラチンの腹腔内(IP)投与が保険収載された。本年(2026年)7月に開催された第68回日本婦人科腫瘍学会学術講演会では、同がんにおけるIPカルボプラチンの可能性について、岡山大学の長尾 昌二氏が最新の臨床知見を基に紹介した。大規模試験が示した卵巣がんにおけるIP化学療法の可能性 PARP阻害薬や抗体薬物複合体(ADC)の登場により急速に変化する卵巣がん治療においてIP化学療法はどのような役割を担えるのか。長尾氏が研究代表者を務めたiPocc試験は、カルボプラチン腹腔内投与の有効性を前向き無作為化比較試験で証明し、世界的にも高く評価されている。その成果はNEJM Evidence誌に掲載され、日本におけるIPカルボプラチンを保険収載に導いた。 IP化学療法の目的は、腹腔内に播種したがん組織に対して高濃度の抗がん薬を直接曝露させることで、局所治療としての効果を最大化することである。先駆けとなったのはGynecologic Oncology Group(GOG)が実施した3つの大規模無作為化比較試験である。シスプラチンの静注(IV)とIPを比較したGOG104試験、パクリタキセルのIVとシスプラチンのIPを比較したGOG114試験、パクリタキセルのIVとIPを比較したGOG172試験。いずれの試験でもIP投与の生存メリットが示された。その後のメタアナリシスではIV療法に比べIP療法が死亡リスクを約20%低下(ハザード比[HR]:0.79)させるという結果を出している。 これらの結果を受けて、米国国立がん研究所(NCI)は卵巣がんに対してIP化学療法を推奨するアナウンスメントを出した。しかし、IP療法は実臨床に広く普及することはなかった。試験デザイン上の問題、標準治療の変化、シスプラチンの毒性、カテーテルトラブルの頻度などが普及を阻んだ大きな要因だと長尾氏は指摘する。IPカルボプラチンの有効性を立証した日本発のiPocc試験 IP化学療法の課題を乗り越えるべく、使用薬剤とその薬理学的特性の再検討が世界的に行われた。その結果、IP投与は薬剤によってまったく異なる薬理学的傾向を持つことが明確になる。 プラチナ製剤は分子量が比較的小さく水溶性であるため、IP投与後急速に吸収される。IP投与により腹腔内濃度は血漿中の20倍程度に達したのち、速やかに血中に移行し、IVと同等の血中濃度が維持される。一方、パクリタキセルは分子量が大きく脂溶性であるため、腹膜からの吸収は緩徐で腹腔内に長時間とどまる。そのため腹腔内のAUCは血漿中の1,000倍近くとなる。腹膜から吸収されやすいプラチナ製剤などによるIP投与は全身治療としての特性も有しているのではないかと長尾氏は述べる。 こうした知見を背景に、IPカルボプラチンの有用性を検証する複数の国際試験が行われた。しかし、北米や欧州で行われた試験では良好な結果は出なかった。そのような状況のなかで、日本発のiPocc試験が注目を集める結果を示す。 iPocc試験は、新たに診断されたFIGO StageII~IVの上皮性卵巣がんを対象として行われた。この試験では幅広い患者群に対し、dose dense TC(パクリタキセル+カルボプラチン)のIV投与(以下、ddTC IV)とカルボプラチンをIP投与としたdose dense TC(以下ddTC IP)を比較した。その結果、OSでは有差が得られなかったものの、PFSのHRは0.83(95%信頼区間[CI]:0.69〜0.99)とddTC IP群で有意な改善を示した(p=0.04)。 サブグループ解析では残存腫瘍の大きさにかかわらず、ddTC IP群で良好な傾向が示されている。IP投与で懸念されていたカテーテル感染症および腹痛の発現は、9.5%と34.1%であった。IPカルボプラチンの実臨床での活用方法──岡山大学のアルゴリズム PARP阻害薬やADCが標準化された現在の卵巣がん治療において、IP療法をどのように位置付けるかは、卵巣がん治療における重要な戦略的課題の1つと言える。 岡山大学では独自の治療アルゴリズムによりIPカルボプラチンが運用されている。診察時腹腔鏡でプラチナ感受性が期待できる漿膜性や類内膜型の組織型を選択する。腹膜切除をせずに初回腫瘍縮小手術(PDS)でR0(肉眼的残存なし)切除が達成できた症例にはIPポートを留置し、ddTC IP療法を実施する。また、術前化学療法(NAC)から中間的腫瘍減量術(IDS)と進む症例では術前と術後にddTC IPを実施する。 IPカルボプラチンは単なる薬剤投与方法の追加にとどまらず、進行卵巣がん全身治療の有望な選択肢として大きな意味を持つと考えられる。また、iPocc試験の検体を用いた、さらなる研究も行われており、IPカルボプラチンは卵巣がん治療において今後も選択の幅を広げていくと長尾氏は結んだ。

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高齢者DLBCL診療における治療強度の考え方【高齢者がん治療 虎の巻】第11回

講師紹介<今回のPoint>高齢者DLBCLでは暦年齢のみで判断せず、G8などのスクリーニングと高齢者機能評価(GA)でfit/unfit/frailを評価し、治療強度を検討する。層別化に応じて、fitには治癒を目指す標準治療、unfitにはR-miniCHOPなどの減量レジメンを検討する。frailでは治療目標を再確認し、低強度治療または緩和的治療を含めて個別に判断する。Pola-R-CHP療法は初発DLBCLの標準治療の一つであるが、80歳を超える患者では臨床試験のエビデンスが限られる。心機能、併存症、本人の希望を確認し、減量投与を含めて慎重に検討する。<症例>82歳、男性。2ヵ月前から頸部リンパ節腫大と食欲低下、体重減少を認め、近医から紹介された。頸部リンパ節生検の結果、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)と診断され、免疫染色の結果、Non-GCB型(Hans分類)に分類された。PET-CTを撮影したところ、腹腔内リンパ節にも病変を認め、臨床病期はLugano分類でStage III、LDH高値、ECOG Performance Status(PS)1で、国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)はhigh-intermediate riskだった。併存症は高血圧症、持続性心房細動、慢性心不全、2型糖尿病で、抗凝固薬、利尿薬、経口血糖降下薬を内服していた。退職後は自宅近くの畑仕事を日課としており、発症前のADLは自立、買い物や通院も自力で可能だった。最近は倦怠感のため畑に出る頻度が減っているが、身の回りのことは自立している。G8は11点、Charlson Comorbidity Index(CCI)は慢性心不全1点、糖尿病1点の計2点であった。本人は「また畑に出られるようになりたい。治る可能性があるなら、できる治療は受けたい」と話している。一方、家族は「年齢も心臓も心配なので、強い治療は避けたほうが良いのではないか」と不安を示している。高齢者DLBCLの治療方針悪性リンパ腫は高齢者に好発する代表的な造血器腫瘍であり、本邦では年間約3万6,000人が新たに診断され、その多くを70代から80代の患者が占めます1)。組織型としてはDLBCLが最も多く、高齢DLBCL患者を診療する機会は年々増加しています。DLBCLは高齢者であっても、薬物療法によって治癒が目指せる疾患ですが、若年者に比べて予後が不良であることが多く、その背景には生物学的要因や臨床的要因が複雑に絡み合っていると考えられています。『造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)』には、高齢者DLBCLに対する標準治療として、80歳未満に対しては若年者と同様の治療法が、80歳以上の高齢者に対しては、用量あるいはコース数を減らしたR-CHOP療法が妥当な治療選択肢の一つであると記載されています2)。高齢者機能評価(GA)に基づく治療強度の決定高齢者DLBCLでは、暦年齢のみで治療強度を決定するのではなく、患者個々の予備能を評価したうえで治療方針を定めることが重要です。『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』でも、初発高齢者DLBCLの治療方針の判断にGAを行うことが弱く推奨されています3)。GAは、身体機能(ADL・IADL)、併存症、認知機能、栄養状態、社会的サポートなどを多面的に評価する手法であり、これにより患者をfit(標準治療に忍容性がある)、unfit(標準治療は困難だが減量治療は可能)、frail(緩和的対応が中心)に層別化します。簡便なスクリーニングには本症例でも用いられているG8などが、より包括的な評価には総合的なGAが活用されます。fitと判断される患者には、若年者と同様に治癒を目指した標準治療が推奨されます。一方、unfitやfrailと判断される患者では、毒性を軽減しつつ一定の有効性を確保する目的で減量レジメンが選択され、なかでもR-miniCHOP療法が代表的な選択肢です。Peyradeらによる第II相試験では、80歳以上のDLBCL患者に対し、標準量の約半量に減量したR-miniCHOP療法が、忍容性良好でありながら治癒も期待できることが示され、高齢者に対する標準的選択肢の一つとして位置付けられています4)。Pola-R-CHP療法という新たな選択肢近年、初発DLBCLに対する治療は大きく変化しました。第III相POLARIX試験では、R-CHOP療法のビンクリスチンを抗体薬物複合体であるポラツズマブ ベドチン(商品名:ポライビー)に置き換えたPola-R-CHP療法が、従来のR-CHOP療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、本邦でも初発DLBCLに対する標準治療の一つとして位置付けられるようになりました5)。サブグループ解析では、60歳以上の高齢者やIPI高リスク群、Non-GCB(ABC)型などでPola-R-CHP療法の相対的な有用性が示唆されています。本症例のような高齢・Non-GCB型のDLBCLは、Pola-R-CHP療法の効果が期待される集団と考えられます。ただし、POLARIX試験の対象は18〜80歳であり、80歳を超える高齢者は含まれていません。したがって、本症例のような80歳を超える患者にどこまで適応を広げてよいかは、現時点で明確なエビデンスがありません。近年は80歳以上を含む実臨床でのデータ(リアルワールドデータ)が少しずつ報告されつつあり6)、ポラツズマブ ベドチンに併用するCHPを適切に減量することで、80歳以上でもPola-R-CHP療法を安全に実施しうる可能性が示されています。一方で、心機能低下例などアントラサイクリンの使用が難しい症例も少なくなく、適応は個々の予備能と併存症を踏まえて慎重に判断する必要があります。本症例への治療方針本症例を改めて整理すると、82歳と高齢であり、PS 1、ADLは自立していますが、G8 11点、CCI 2点で、機能的にはおおむねunfitに近い状態と評価できます。本人は治癒を目指した治療を希望していますが、持続性心房細動や慢性心不全といった心疾患を有し、ドキソルビシンによる心毒性のリスクには十分な注意が必要です。また、組織型はNon-GCB型であり、Pola-R-CHP療法の上乗せ効果が期待しやすい点は、治療選択の後押しとなります。以上を踏まえると、治療開始前に心エコーなどで心機能を評価し、ドキソルビシンの使用が許容される場合には、CHPを適切に減量したPola-R-CHP療法も選択肢となります。ただし、80歳を超える患者はPOLARIX試験の対象外であることから、現時点では実臨床データに基づく慎重な判断が必要です。もし心機能低下が明らかな場合には、ドキソルビシンを含まないレジメンも検討する必要があります。いずれの場合も、本人・家族の意向と予備能を共有しながら、治療強度を個別に最適化していく姿勢が重要です。G-POWER研究:日本の高齢DLBCLに合ったGAを目指して高齢DLBCLに対するGAの活用は国際的に進んでいますが、海外のデータをそのまま日本の実臨床に当てはめることには限界があります。生活環境、家族支援、医療アクセス、入院・外来治療の体制、介護保険を含む社会制度は国によって異なるためです。現在、国内において70歳以上の高齢DLBCL患者を対象に、GAの意義を明らかにする多施設前向き観察研究(G-POWER研究)が進められています7)。本研究では、G8、ADL、IADL、認知機能、うつ状態、併存症、Clinical Frailty Scaleなどを評価し、初回治療の内容、有害事象、治療完遂、予後との関連を検討します。日本の高齢DLBCL患者において、どのGA項目が治療選択や有害事象予測に本当に役立つのかを明らかにすることは、今後の実臨床に直結する課題です。GAを「評価して終わり」にせず、治療を支える具体的な介入につなげるためにも、本邦独自のエビデンス構築が期待されます。 1) がん情報サービス:全国がん登録 2) 日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版 2024年版. 金原出版. 2024. 3) 日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会編. 高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版. 南江堂. 2026. 4) Peyrade F, et al. Lancet Oncol. 2011;12:460-468. 5) Tilly H, et al. N Engl J Med. 2022;386:351-363. 6) Yamada T, et al. Ann Hematol. 2025;104:5191-5200. 7) UMIN-CTR:臨床登録試験情報(G-POWER研究)

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プラチナ抵抗性または不応性卵巣がんにchiauranib+パクリタキセルがPFSを延長(CHIPRO)/ASCO2026

 プラチナ抵抗性または難治性卵巣がんに対し、Aurora Bキナーゼなどを標的とするマルチキナーゼ阻害薬chiauranibとweeklyパクリタキセルの併用が、無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に延長した。全生存期間(OS)全体では有意差はみられなかったものの、後治療を受けなかった患者などで良好な生存ベネフィットが示されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Xiaohua Wu氏(中国・復旦大学 上海がんセンター)が発表した。 中国における卵巣がんは年間6万例以上が新たに診断され、3万例以上が死亡している。初期治療の15%がプラチナ抵抗性であり、初期治療後3年以内に70%が再発する。chiauranibは、腫瘍細胞の増殖に関わるAurora B阻害、腫瘍抑制性免疫微小環境の再プログラム化、血管新生阻害という3つの経路を標的として抗腫瘍効果を発揮するように設計されたチロシンキナーゼ阻害薬である。第II相試験でプラチナ抵抗性卵巣がんに有望な結果が得られたことから第III相試験CHIPRO試験が実施された。・試験デザイン:第III相無作為化比較試験・対象:プラチナ抵抗性または不応性で既治療(前ライン数1~5)の上皮性卵巣がん、卵管がん、または原発性腹膜がん・試験群:chiauranib(連日投与)+ weeklyパクリタキセル(1サイクル3週で最大6サイクル)→chiauranibによる維持療法(CP群、228例)・対照群:プラセボ+weeklyパクリタキセル(同上)→プラセボによる維持療法(PP群、231例)・評価項目:[主要評価項目]独立審査委員会(IRC)判定によるPFS、OS[副次評価項目]治験医師判定によるPFS、奏効率(ORR)、疾患コントロール率、奏効期間、QOL、安全性 主な結果は以下のとおり。・対象患者には高悪性度漿液性卵巣がんが多数(CP群78.9%、PP群81.8%)含まれた。化学療法のライン数3以上はCP群とPP群でそれぞれ27.6%と27.7%、PARP阻害薬治療歴は51.3%と58.4%、VEGF/VEGFR阻害薬治療歴は70.2%と71.0%であった。・IRC判定のPFS中央値は、PP群の2.69ヵ月に対し、CP群では4.57ヵ月であり、CP群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.427、95%信頼区間[CI]:0.34~0.54、p<0.001)。・CP群のベネフィットはすべてのサブグループで一貫して認められた。・OS中央値は、CP群12.09ヵ月、PP群12.12ヵ月であり、両群間に統計学的有意差は認められなかった(HR:0.932、95%CI:0.73〜1.20、p=0.583)。・試験後に後治療を受けなかった集団のOS中央値をみると、PP群の4.70ヵ月に対し、CP群では7.39ヵ月と、CP群で有意な改善が認められた(HR:0.599、95%CI:0.39~0.91、p=0.016)。・IRC判定によるORRは、PP群の14.3%に対し、CP群では32.0%とCP群で有意に高かった(p<0.001)。・Grade3以上の有害事象はCP群では90.4%、PP群では54.3%に発現した。CP群で頻度の高い試験治療下における有害事象は白血球減少症、好中球減少症、貧血などの血液毒性であった。血管新生阻害薬でみられる蛋白尿、高血圧による治療中断はなかった。

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プラチナ抵抗性卵巣がんに対するrelacorilant+nab-パクリタキセル、タキサン既治療例でも良好な結果(ROSELLA試験)/ASCO2026

 プラチナ抵抗性再発卵巣がん(Platinum-Resistant Ovarian Cancer、以下PROC )に対するグルココルチコイド受容体拮抗薬relacorilantとnab-パクリタキセルの併用は、全集団およびタキサン既治療群において生存ベネフィットを示した。relacorilantの第III相試験であるROSELLA試験についてLucy Gilbert氏(カナダ・McGill University)が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。 コルチゾールがグルココルチコイド受容体(GR)を介して伝えるシグナルは、腫瘍細胞の化学療法に対する感受性を低下させることが明らかとなっている1)。グルココルチコイド受容体拮抗薬であるrelacorilantは、がん細胞の化学療法への感受性を回復させる作用が期待されている。同試験では、PROC患者を対象に、標準治療の1つであり、事前の支持療法にステロイドを必要としないnab-パクリタキセルへのrelacorilantの上乗せ効果が検証された。・試験デザイン:国際共同第III相試験・対象:PROC患者(プラチナ最終投与から6ヵ月以内に進行)・試験群:nab-パクリタキセル 80mg/m2(28日サイクルの1・8・15日目)+relacorilant 150mg(nab-パクリタキセル投与の前日・当日・翌日[サイクル1の前日投与はなし]) 188例・対照群:nab-パクリタキセル 100mg/m2(28日サイクルの1・8・15日目) 193例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]治験担当医によるPFS、奏効率、奏効期間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・前治療ライン数3の患者が4割超、2以上の患者は9割を超えていた。・relacorilant+nab-パクリタキセル群は、BICR判定によるPFS、OS共に有意な改善を示した(PFSのハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.54~0.91、p=0.0076、OSのHR:0.65、95%CI:0.51~0.83、p=0.0004)。・OSのサブグループ解析において、タキサン既治療群では、relacorilant+nab-パクリタキセル群が対照群よりも良好な傾向を示した。タキサン既治療全集団のOSのHRは0.65(95%CI:0.51~0.83)、タキサンなし期間6ヵ月以下集団では0.6(同:0.31~1.15)、タキサンなし期間6ヵ月超集団では0.66(同:0.51~0.86)であった。・relacorilant+nab-パクリタキセル群の新たな安全性プロファイルは確認されなかった。同群で発現頻度の高い有害事象は好中球減少、貧血、倦怠感、悪心など化学療法由来のものが中心であった。 Gilbert氏は、今回の結果から、予後不良なPROC患者にとって、relacorilantはバイオマーカーによる患者選択を必要としない新たな治療選択肢となり得ると結論づけた。

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初発または再発の進行dMMR/MSI-H子宮体がんにdostarlimab+化学療法は長期PFSベネフィットを維持(RUBY)/ASCO2026

 ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)または高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する初発または再発の進行子宮体がん患者に対し、dostarlimabと化学療法の併用療法は、長期にわたる無増悪生存(PFS)ベネフィットを維持した。また、混合治癒モデル(mixture cure model[MCM解析])による推定治癒割合は50%を超えることが示された。 この結果はENGOT-EN6-NSGO/GOG-3031/RUBY試験の4年長期追跡および治癒モデリングに関する事後解析によるもの。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Matthew A. Powell氏(米国・ワシントン大学)が発表した。 同疾患に対するdostarlimabと化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル[CP])の併用は、RUBY試験において全生存期間(OS)およびPFSの有意な改善を示したが1,2)、長期の結果や治癒可能性については明らかにされていなかった。・試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検多施設共同第III相試験・対象:未治療または再発進行子宮体がん・試験群:dostarlimab+カルボプラチン+パクリタキセル 3週ごと6サイクル→dostarlimab 6週ごと3年以内(dostarlimab+CP群、245例)・対照群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル 3週ごと6サイクル→プラセボ 6週ごと3年以内(プラセボ+CP群、249例)・評価項目[主要評価項目]治験担当医評価のPFS、OS[副次評価項目]BICR評価のPFS、PFS2、全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値55.6ヵ月となるdMMR/MSI-H集団の追加追跡の結果、プラセボ+CP群のPFS中央値7.7ヵ月に対し、dostarlimab+CP群は依然として未到達であることが示された(ハザード比[HR]:0.30、95%CI:0.17~0.52)。・48ヵ月PFS割合はプラセボ+CP群の15.7%に対し、dostarlimab+CP群は57.9%であった。・条件付きPFS解析の結果、1年間進行がなかった患者における1~4年の3年PFS割合は88.6%、2年間進行がなかった患者における2~4年の2年PFS割合は91.7%であった。・条件付きOS解析の結果、1年間生存した患者における1~4年の3年OS割合は84.0%、2年間生存患者における2~4年の2年OS割合は88.0%であった。・混合治癒モデルを用いて4年時点の長期生存患者の割合(cure rate)を解析したところ、プラセボ+CP群では14%、dostarlimab+CP群では54%と推定された。・dostarlimab+CP群の主な試験治療下における有害事象(TEAE)は、脱毛(50.0%)、疲労(46.2%)、悪心(46.2%)、末梢神経障害(42.3%)、関節痛(36.5%)などであり、同群でもっとも頻度の高い免疫関連有害事象(irAE)は甲状腺機能低下症で15.4%であった。 本試験結果はGynecologic Oncology誌2026年5月29日オンライン版に同時掲載されている。

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転移TN乳がん1次治療におけるDato-DXd、TROPION-Breast02の日本人サブ解析/日本乳癌学会

 免疫療法が適応とならない未治療の局所再発・切除不能/転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象に、ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)の1次治療としての有効性と安全性を治験責任医師選択の化学療法(ICC)と比較した国際第III相TROPION-Breast02試験における日本で登録された38例での解析結果を、福島県立医科大学の佐治 重衡氏が第34回日本乳癌学会学術総会で報告した。 本試験では、ITT集団において全生存期間(OS)および盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)が、Dato-DXd群で有意な改善が認められたことがESMO2025で報告されている。・対象:免疫療法が適応とならない未治療の局所再発・切除不能/転移TNBC・試験群:Dato-DXd(3週ごと6mg/kg点滴静注)・対照群:ICC(パクリタキセル、nab-パクリタキセル、カペシタビン、エリブリン、カルボプラチンから選択)・評価項目:[主要評価項目]OS、BICRによるPFS[副次評価項目]治験担当医師評価によるPFS、BICRによる奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・ITT集団644例のうち日本で登録された患者は38例(Dato-DXd群:17例、ICC群:21例)であった。・患者背景について、日本の集団ではICC群の選択薬剤がITT集団と比べてnab-パクリタキセルが少なく、多くの医師がパクリタキセルを選択していた。・BICRによるPFS中央値は、Dato-DXd群が15.0ヵ月とICC群の7.0ヵ月より改善し(ハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.19~1.01)、ITT集団と同様であった。・OS中央値は、Dato-DXd群24.0ヵ月、ICC群18.5ヵ月でITT集団とほぼ同様であった(HR:0.55、95%CI:0.22~1.30)。・BICRによるORRは、少数例ではあるもののDato-DXd群64.7%、ICC群23.8%であった。DoR中央値は順に、20.3ヵ月(95%CI:4.6~NR)と5.8ヵ月(同:4.2~NR)であった。・毒性について、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止例はDato-DXd群が12%、ICC群が16%とICC群のほうが多かった。TRAEは、Dato-DXd群では脱毛、悪心、口内炎、角膜炎など眼症状が多く発現し、脱毛は全体集団に比べて日本の集団で多かった。 佐治氏は、「例数は少ないが、日本サブセットでもDato-DXdは効果および安全性ともITT集団と同様のデータが示された」とまとめ、「日本の患者においてもITT集団のデータを基に説明したり、投与することが可能」と述べた。

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進行・再発子宮体がん、ペムブロリズマブ+化学療法の長期OS結果(NRG-GY018)/ASCO2026

 進行または再発の子宮体がんに対し、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法はミスマッチ修復機能欠損(dMMR)およびミスマッチ修復機能正常(pMMR)のいずれのコホートにおいても、標準的な化学療法単独と比較して長期的な全生存期間(OS)の改善効果を維持した。 第III相無作為化比較試験NRG-GY018の長期追跡によるOSおよび後治療に関する解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Ramez N. Eskander氏(米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校)が発表した。 ペムブロリズマブと化学療法の併用は、MMRステータスに関わらず無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善することが同試験で示されている1)。今回の発表ではdMMRおよびpMMRコホートにおけるOSアップデートと後治療による影響に関する検証結果が報告された。・試験デザイン:第III相無作為化比較試験・対象:StageIII/IVまたは測定可能病変の有無を問わないStageIVB、あるいは再発病変を有する子宮体がん(術後補助化学療法歴がある場合は試験開始12ヵ月以上前に完了していること)・試験群:ペムブロリズマブ(200mg)+パクリタキセル(175mg/m2)+カルボプラチン(AUC 5)を3週ごと6サイクル投与後、維持療法としてペムブロリズマブ(400mg)を6週ごと最大14サイクル投与(ペムブロリズマブ群)・対照群:プラセボ+パクリタキセル(175mg/m2)+カルボプラチン(AUC 5)を3週ごと6サイクル投与後、維持療法としてプラセボを6週ごと最大14サイクル投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]治験医師判定によるPFS[副次評価項目]dMMRおよびpMMRコホートにおけるOS、試験治療後のICI治療状況など 主な結果は以下のとおり。[dMMRコホート]・割り付けは222例、追跡期間中央値は49ヵ月であった。・OS中央値は両群ともに未到達であったが、プラセボ群と比較してペムブロリズマブ群は有意な改善を示した(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.34~0.92、p=0.0124)。48ヵ月OS割合はペムブロリズマブ群78.6%に対し、プラセボ群は60.4%であった。・進行後にICIによる治療を受けた割合はプラセボ群の93.2%に対し、ペムブロリズマブ群では34.1%であった。[pMMRコホート]・割り付けは588例、追跡期間中央値は44ヵ月であった。・OS中央値はプラセボ群の35.1ヵ月に対し、ペムブロリズマブ群は44.4ヵ月で、ペムブロリズマブ群で良好な傾向が維持されていた(HR:0.86、95%CI:0.69~1.08、p=0.1072)。・進⾏後にICI治療による後治療を受けた割合は、プラセボ群81.1%に対しペムブロリズマブ群では42.9%であった。 今回の長期追跡データにより、進行・再発子宮体がんにおけるペムブロリズマブ+化学療法のOSベネフィットが裏付けられた。プラセボ群において高頻度でICIによる後治療が行われたにもかかわらず、ペムブロリズマブの上乗せが持続的な⽣存改善をもたらすことが⽰されたとEskander氏は結んだ。

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ASCO2026 レポート 老年腫瘍(前編)

レポーター紹介ここ数年、ASCO Annual Meetingでは、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)や、GAで明らかになった脆弱性に対するサポートの有用性を検証する研究が発表され、老年腫瘍学の領域を大いに盛り上げてきた。ASCO2026では、日常診療を大きく変えるような重要な試験(pivotal study)は多くなかったものの、高齢患者をどのように評価して治療選択に結びつけるか、GAを忙しい日常診療の中でどう使える形にするか、さらに、がんを患う高齢者(以下、高齢がん患者)に多い老年症候群にどのように介入するか、という観点から興味深い研究が報告されていた。その中から、筆者が興味深いと感じた研究を抜粋して紹介する。高齢がん患者をどう評価するか - 「fitかどうか」ではなく「どこが脆弱か」をみる高齢がん患者の診療で最も悩ましいのは、「この患者さんに標準的ながん治療を行ってよいのか」という問いである。暦年齢だけで判断すべきではないことは、すでに多くの医療者が理解している。しかし、では何をもって積極的治療に適していると判断し、何をもって慎重な治療選択が必要と考えるべきなのか。この問いに答えるのは、日常診療でも臨床試験でも、いまだに簡単ではない。この問いに答えるために、欧州の老年腫瘍学では、GAを用いて高齢がん患者を、fit、vulnerable、frailと分類することがある。しかし、もともとfitやfrailは老年医学の用語であり、腫瘍学の用語ではない。老年医学では、『自立度』を軸として、「健常(fit)」、「要介護状態(disability)」、その中間を「フレイル(frailty)」と分類することが多い(注:老年医学の領域でも定義は定まっていない)。一方、腫瘍学では、『がん治療の適応』を軸として、「若年者と同じ標準治療ができる(fit)」、「非常に弱い治療や緩和・支持療法ならできる(frail)」、その中間を「用量などを調整した弱い治療ならできる(vulnerable)」と分類することが多い(図)。図 日常診療における高齢者の分類方法画像を拡大する脆弱な高齢者に対するエプコリタマブ+R-mini CVP(#7002)この問題を考えるうえで、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する脆弱な高齢者を対象としたエプコリタマブ+R-miniCVPに関する試験は興味深かった1)。脆弱な高齢者を対象として、アントラサイクリンを抜いたR-miniCVP(リツキシマブ+減量シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン)に抗CD3/CD20二重特異性抗体であるエプコリタマブを併用する治療の有用性を評価した第II相試験が実施された。特筆すべきは、脆弱な高齢者を定義する際に、simplified Geriatric Assessment(sGA)というツールを用いたところである。sGAでは、年齢(閾値:80歳)、日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)、併存症(CIRS-Gを使用)を組み合わせて、患者をfit、unfit、frailに分類する。DLBCL患者に用いられてきた簡便なツールであり、予後と関連することが示されている2)。本試験の中間解析において、この集団におけるエプコリタマブ+R-miniCVPの有望な結果が示されたが、老年腫瘍学的には、高齢者機能評価の一種であるsGAを用いて対象集団を定義したという点が興味深い。すなわち、この試験におけるunfit/frailとは、漠然と「高齢で弱っている患者」を指す言葉ではなく、標準的なアントラサイクリンを含んだレジメンに適しているかどうかを高齢者機能評価で規定したという点で興味深いのである。一方で、sGAは実用的である反面、分類は大まかであると言える。たとえば80歳以上であれば、ADL、IADL、併存症に大きな問題がなくてもfitには分類されない。より多面的に高齢がん患者を評価する試みも必要である。高齢がん患者をより多面的に分類するツール(FI-CGA-10)の検討(#1656)このような問題意識に対して、日本から高齢がん患者をより多面的に分類するツールの有用性を評価する研究が報告された3)。治療方針決定前にGAを実施された高齢者1,630例を対象として、日本の研究グループが開発したツール「FI-CGA-10」が、予後を予測するかを評価した前向きコホート研究である。FI-CGA-10は、認知機能、気分、コミュニケーション能力(視力+聴力)、移動能力、転倒、栄養、ADL、IADL、社会支援の有無、併存症の10領域から構成される。その合計点数に基づき、患者をfit、pre-frail、frailに分類する4)。本研究の結果、fit群をreferenceとすると、pre-frail群の死亡ハザード比は2.26、frail群では5.06であった。また、年齢、性別、がん種、病期を含むモデルにFI-CGA-10を加えることで、1年全生存率の予測精度を示す指標(C-index)は、0.70から0.76に改善した。ここまでは単なる予後因子解析にみえるが、重要なのは、FI-CGA-10が「どのような患者が脆弱なのか」を、単一の指標ではなく複数の領域から評価している点である。高齢患者の評価では、Performance Statusや年齢だけでは不十分であり、身体機能、日常生活機能、栄養状態、認知・心理面、社会的背景などを含めて総合的に捉える必要があることは以前から指摘されてきた。FI-CGA-10は、そのようなGAの考え方を、実際に予後予測に利用できる形に整理した試みといえる。すなわち、「どのような評価を用いれば高齢患者を分類できるのか」という問いに対して、本研究はGAを基盤とした多面的評価が有力な選択肢であることを示している。前編まとめこのようにASCO2026では、高齢患者をどのように分類し、治療判断に結びつけるか検討する演題が複数報告されていた。ただし、ここで重要なのは、「予後が悪い患者」と「治療から利益が得られない患者」は同じではないという点である。FI-CGA-10でfrailと分類されたからといって、必ずしも治療強度を下げるべきとは言えず、G8低値だからといって、特定の治療を控えるべきとも限らない。高齢がん患者の評価は、治療の可否を機械的に決めるための「線引き」ではなく、患者の医学的・機能的状況を整理し、奏効率や生存期間中央値だけでは捉えきれない治療の利益と負担を共有するための「対話の土台」と捉えるべきである。治療によって何を得たいのか、どの程度の有害事象や通院負担を許容できるのか、残された時間をどのように過ごしたいのかによって、適切な選択は大きく異なる。どの高齢患者が積極的治療に適しているのか。その問いに対する明快な答えはまだない。しかし、ASCO2026で報告された一連の研究は、fit、unfit、frailなどの分類で単純に線を引くのではなく、患者の脆弱性を多面的に評価し、その人にとって意味のある治療選択を考えるShared Decision Makingにつなげることの重要性を示していたと言える。後編に続く1)Chihara D, et al. Phase 2 trial of epcoritamab in combination with rituximab-mini CVP for older unfit/frail or anthracycline-ineligible adult patients with newly diagnosed diffuse large B-cell lymphoma: Interim futility analysis.2)Merli F, et al. Simplified Geriatric Assessment in Older Patients With Diffuse Large B-Cell Lymphoma: The Prospective Elderly Project of the Fondazione Italiana Linfomi. J Clin Oncol. 2021;39:1214-1222.3)Nishijima TF, et al. Validation of a 10-item frailty index based on a comprehensive geriatric assessment (FI-CGA-10) for predicting survival in older adults with cancer.4)Nishijima TF, et al. A 10-Item Frailty Index Based on a Comprehensive Geriatric Assessment (FI-CGA-10) in Older Adults with Cancer: Development and Construct Validation. Oncologist. 2021;26:e1751-e1760.

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プラチナ感受性再発卵巣がんに対するmirvetuximab soravtansine+カルボプラチンの結果(MIROVA/AGO-OVAR 2.34)/ASCO2026

 プラチナ感受性進行再発卵巣がんに対し、新たな抗体薬物複合体(ADC)であるmirvetuximab soravtansine(MIRV)とカルボプラチンの併用療法が高い抗腫瘍効果を示した。しかし、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の延長は示されなかった。 プラチナ感受性進行再発卵巣がんに対し、カルボプラチン・MIRV併用療法の実行可能性(feasibility)と有効性を評価する国際共同無作為化第II相試験の初回解析結果が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表された。発表者はPhilipp Harter氏(ドイツ・Ev. Kliniken Essen-Mitte)。 MIRVは卵巣がんに高発現している葉酸受容体α(FRα)を標的としたADCである。同剤はプラチナ抵抗性のFRα高発現高悪性度漿液性卵巣がんにおいて、PFSおよび全生存期間(OS)の有意な改善を示している1)。 その一方で、プラチナ感受性卵巣がんにおけるカルボプラチンとの併用や維持療法としての役割、高悪性度漿液性以外の組織型における治療効果は十分に確立されていない。今回発表されたのは、FRα高発現のプラチナ感受性再発卵巣がんコホートにおける初回解析結果である。・試験デザイン:国際共同無作為化第II相試験・対象:既治療のFRα高発現進行再発卵巣がん、卵管がん、または腹膜がん(FRαパターンスコア2+、プラチナ最終治療から再発までの期間[TFIp]>3ヵ月)・試験群:カルボプラチン(AUC5)+MIRV 6mg/kg(調整理想体重)投与後にMIRVによる維持療法(MIRV併用群75例)・対照群:カルボプラチン+PLD、またはカルボプラチン+ゲムシタビン、カルボプラチン+パクリタキセル(1:1にランダム化)後に経過観察またはPARP阻害薬による維持療法(標準化学療法群70例)・評価項目:[主要評価項目]治験担当医師判定によるPFS[副次評価項目]安全性、客観的奏効率(ORR)、OS、QOLなど 主な結果は以下のとおり。・患者の組織型は高悪性度漿液性卵巣がんが標準化学療法群とMIRV併用群でそれぞれ85.7%と81.3%、BRCA野生型が87.1%と84.0%、前治療ライン数が1が54.3%と48.0%、ベバシズマブ既治療が75.7%と78.7%、PARP阻害薬既治療が70.0%と64.0%、TFIp>12ヵ月が67.1%と66.7%であった。・標準化学療法群では維持治療として42.9%にPARP阻害薬が投与されていた。・主要評価項目であるPFS中央値は、標準化学療法群で9.79ヵ月、MIRV併用群で9.53ヵ月で、両群に差は示されなかった(ハザード比[HR]: 1.0、95%信頼区間:0.68~1.46、p=0.996)。・ORRは標準化学療法群32.8%(CR 4.3%、PR 24.3%)に対し、MIRV併用群では66.2%(CR 4.0%、PR 58.7%)とMIRV併用群で高かった。・サブグループ解析を見ると、前治療ライン数1(HR:0.64)、同1~2(HR:0.76)、BRCA変異陽性(HR:0.45)集団でMIRV併用群に良好な傾向がみられたが、前治療ライン数2超の集団では標準化学療法群が良好であった(HR:5.73)。・全般的なQOL評価では両群に差は認められなかったが、サブグループを見ると悪心・嘔吐、食欲不振、末梢神経障害ではMIRV併用群が不良であった。・MIRV群で頻度の高い有害事象(AE)は、神経障害(53%)、霧視(49%)、血小板減少症(47%)、悪心(41%)などであった。・MIRV併用群における毒性による治療中止は22.7%であった。 MIROVA試験において、高いORRを示したが、主要評価項目であるPFSの延長には反映されなかった。末梢神経障害から、維持療法のMIRV用量(6mg/kg)が最適か否かを検証するFLORENZA試験が進行中である。さらに、患者集団背景を均一にした国際共同臨床試験(GOG-3078/ENGOT-ov76/GLORIOSA試験)も現在進行中である。

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ASCO2026 レポート 乳がん

レポーター紹介[目次]persevERA試験SERENA-6試験JCOG1919E (AMBITION)試験SAKK96/12 REDUSE試験OPTIMA試験PRO-MOTE試験はじめに2026年5月29日~6月2日までシカゴで開催されたASCO年次総会は、「The Science and Practice of Translation: Improving Cancer Outcomes Worldwide」がテーマで、研究成果を臨床に迅速に届け、地域社会や資源の限られた国々へ広げる取り組みが強調された。航空運賃の高騰、円安、米国内のインフレなど学会参加コストの上昇から、日本からの参加者はコロナ前と比べてあまり戻っていない印象だが、それでも多くの研究者と交流できた。また、6月3日に台風チャンミーが日本を直撃し、多くの国際線・国内線が欠航になる中、帰国に影響があった参加者も多かったようである。私は外来日の関係で帰国が1日早かったので、幸い影響を受けなかった。今回は直接日常臨床を変える試験は多くなかったが、将来の開発の方向性を考えるうえで重要だと考えられた6試験を紹介する。目次に戻るpersevERA試験:ESR1で絞り込まない経口SERDの可能性persevERA試験は、ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)転移乳がん(MBC)の1次治療として、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)のgiredestrant+パルボシクリブ療法とレトロゾール+パルボシクリブ療法を比較した第III相試験である。すでにプレスリリースで公開されているようにnegative studyであった。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)は、giredestrant群33.1ヵ月、レトロゾール群28.2ヵ月でハザード比[HR]:0.89(95%信頼区間[CI]:0.76~1.05、p=0.1553)と数値的な延長を示したが、統計学的有意差には至らず、また副次評価項目の全生存期間(OS)は未成熟で明確な差はなかった。奏効率と臨床的ベネフィット率はほぼ同等で、奏効期間は経口SERD群でやや長かった。主な有害事象は好中球減少、貧血などで、両群とも管理可能だった。ESR1変異を有する集団における有効性のデータの多い経口SERDにおいて、本試験ではESR1変異の有無が適格基準となっていない点が特徴である。同様のセッティングで行われる他剤の結果などを含めて、経口SERDの今後の開発の方向性に影響する試験といえるだろう。目次に戻るSERENA-6試験:ctDNAでのESR1変異検出後の早期スイッチSERENA-6試験は、アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬併用療法を受けるHR+HER2-MBC患者で、血中ctDNA検査によりESR1変異が検出され、画像上病勢進行(PD)がない時点でcamizestrantに早期スイッチするか、AIを継続するかをPFSをエンドポイントとして検証したランダム化第III相試験である。主要評価項目の結果は昨年のASCOのplenaryで発表され、AI継続群に比べ、camizestrant+CDK4/6阻害薬群はPFSが7.6ヵ月延長(16.8ヵ月vs.9.2ヵ月)し、HR:0.45(95%CI:0.34~0.59)と統計学的有意差を示した。今回は副次評価項目である2次PFS(PFS2)の結果が報告され、25.7ヵ月vs.19.1ヵ月、HR :0.63(95%CI:0.46~0.86、p=0.00373)と、PFSでの効果がそのままPFS2に持ち越されていた。総ctDNAのクリアランス率は51%vs.2%と差が顕著で、化学療法/ADCフリー生存期間が延長し、患者報告アウトカムも改善した。ESR1変異出現を2〜3ヵ月に1回検査する必要があり、検査費用やモニタリング体制、検査に対する患者の不安が課題となる。臨床増悪時にスイッチする戦略や他の併用との比較は行われておらず、米国食品医薬品局(FDA)での審査においても試験デザインに対する懸念が報告されている(でも、試験開始前にFDAと相談してこのデザインになったのでは?)。日本での承認も見込まれるが、ESR1検査の保険適用や体制の整備が必要であり、今後の適正導入に向けた議論が求められる。目次に戻るJCOG1919E (AMBITION)試験:HR+HER2-乳がんにおける免疫療法日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が実施したJCOG1919E(AMBITION)試験は、HR+HER2-進行乳がん患者281例を対象に、パクリタキセル+ベバシズマブに免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブを上乗せする意義を検討した第III相試験である。JCOG乳がんグループ初の医師主導治験であり、研究事務局の愛知県がんセンター原 文堅先生が発表された。主要評価項目のPFSはアテゾリズマブ併用群12.4ヵ月vs.対照群11.2ヵ月(HR:0.876、95%CI:0.670~1.145、p=0.168)と有意差を示さず、免疫療法追加の恩恵は確認できなかった。OSは39.1ヵ月vs.31.2ヵ月(HR:0.804、p=0.091)と数値的な延長傾向が認められたが統計学的有意差は認められなかった。安全性はおおむね既知のプロファイルに一致し、免疫関連有害事象は追加されたものの管理可能であった。HR+HER2-乳がんは免疫学的に“cold”とされており、VEGF阻害薬+細胞障害性抗がん薬+免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の組み合わせでも効果は限定的であった。HR+HER2-MBCにICIを併用した日本から初めての無作為化第III相試験であり、現在進行中のトランスレーショナルリサーチにより、ICI追加のメリットの得られるサブグループの同定に期待したい。目次に戻るSAKK96/12 REDUSE試験:デノスマブ投与間隔を12週に延長MBCに対する支持療法の試験も紹介する。SAKK96/12 REDUSE試験は、骨転移を有する転移乳がんおよび去勢抵抗性前立腺がん患者1,380例を対象に、デノスマブ120 mgを4週間ごと(従来)と12週間ごとの維持投与にランダム化した非劣性試験である。主要評価項目は初回症候性骨関連事象までの期間であり、12週投与群のハザード比は1.023(90%CI: 0.874~1.197)で非劣性の閾値1.20を下回り、中央値はどちらも約56.5ヵ月と同等であった。副次評価項目では12週群で低カルシウム血症や顎骨壊死が有意に少なく、OSも大きな差はなかった。試算では投与間隔延長により薬剤費が約半減し、スイスでは年間1,500万CHF程度の医療費削減が見込まれる。日本でもデノスマブは骨関連事象予防の標準薬であり、12週投与への変更は患者の通院負担を軽減し、医療資源の効率化につながる。また骨修飾薬には非定型骨折など特徴的な有害事象があり、今後は12週間隔投与が標準となると考えられるが、論文化されたデータを確認して日常臨床に適用していきたい。目次に戻るOPTIMA試験:PAM50を用いた遺伝子検査による化学療法削減OPTIMA試験は、臨床的に高リスクと判断されるHR+HER2-早期乳がん患者約4,400例を対象に、従来の術後化学療法を一律に行う群と、50遺伝子のPAM50(Prosigna)検査結果に基づき化学療法の有無を決める群を比較した国際ランダム化非劣性試験である。対象は40歳以上で最大9個のリンパ節転移を認める症例まで含まれ、約2/3がリスクスコア60以下であった。浸潤乳がん再発または死亡のない生存期間は両群でほぼ同等で、試験群は化学療法群に対して5年時点の差が1.5%以下に収まり非劣性が確認された。低リスク腫瘍では化学療法の恩恵はごくわずかであり、100人中2人程度しか再発予防効果が得られないことが示された。この50遺伝子検査は、卵巣機能抑制下の40歳以上閉経前女性や4〜9個のリンパ節転移を有する症例でも補助化学療法の省略判断に活用できる。日本で用いられる21遺伝子検査(Oncotype DX)はリンパ節転移陰性もしくはリンパ節転移3個までの患者を対象とした臨床試験を有し、日本では保険適用ではないが多くの試験のあるMammaPrintも同様である。リンパ節転移4個以上9個までの、従来再発高リスクと考えられ、基本的に術後化学療法を提案していた患者が含まれている点が本試験の特徴である。一方で、検査費用(これは他のパネルも同様)やフォローアップ期間が63%の患者で5年以下と短いこと、40歳未満の若年者が除外されている点に留意が必要である。目次に戻るPRO-MOTE試験:日本最大規模のePRO試験最後にPRO-MOTE試験を紹介する。本試験は、日本の49施設が参加した進行がん患者501例を対象とする電子的患者報告アウトカム(ePRO)システムの実用性を検証したランダム化試験である。乳がんのみを対象とした試験ではないが、日本から報告された最大規模のePRO試験でありここで紹介する。神戸大学の清田 尚臣先生が発表された。PRO-MOTE試験はスマートフォンアプリによる週1回の症状報告と医師へのアラート送信を行う介入群と、通常診療のみの対照群を比較し、主要評価項目にEORTC QLQ-C30による24週時点のグローバルヘルスステータス(GHS)およびOSを設定した。中間解析ではePRO群のGHSは対照群に対して平均−0.61ポイント(95%CI:−3.03~1.82、p=0.625)と有意差がなく、OSもHR:0.91(95%CI:0.70~1.19、p=0.48)と差がなかった。一方でアンケート回答率は90%前後と高く、機能領域や症状の多くでePRO群に有利な改善がみられた。サブグループ解析では明確な恩恵を示す集団は見出されなかったが、デジタルツールの高い受容性と症状評価の質向上が示された。日本初の大規模ePRO試験として価値は高いものの、OSやGHSを主要エンドポイントとする設計では差が検出されず、今後のePRO研究では何をエンドポイントとして設定すべきか(症状制御や治療継続性など)について問題提起する報告であった。目次に戻る

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デュルバルマブ、切除可能胃がんの周術期治療で承認/AZ

 アストラゼネカは2026年6月19日、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が、「胃がんにおける術前・術後補助療法」の適応で厚生労働省の承認を取得したと発表した。これにより同薬は、日本で初めてかつ唯一の切除可能胃がんに対する周術期免疫療法として使用可能となった。 胃がんは世界で年間約100万人が新たに診断される主要ながんの1つであり、日本でも罹患数第3位、死亡数第4位を占める。切除可能症例では手術と周術期治療が治癒を目指す標準的アプローチであるものの、依然として再発率は高く、さらなる予後改善が課題となっている。 今回承認されたレジメンは、デュルバルマブとFLOT療法(フルオロウラシル、レボホリナート、オキサリプラチン、ドセタキセル)を組み合わせた周術期治療(D-FLOTレジメン)である。用法・用量は、術前および術後にそれぞれ最大2回、4週間間隔でデュルバルマブ1,500mgをFLOT療法と併用投与し、その後デュルバルマブ単剤を4週間間隔で最大10回投与する。 今回の承認は国際第III相MATTERHORN試験の結果に基づくもの。同試験は、切除可能なStageII~IVAの胃がんまたは食道胃接合部がん患者948例を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照国際共同第III相試験である。患者はデュルバルマブ+FLOT群またはプラセボ+FLOT群に割り付けられ、主要評価項目は無イベント生存期間(EFS)とされた。 計画された中間解析では、デュルバルマブ併用群は対照群と比較して病勢進行、再発または死亡のリスクを29%低下させた(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.86、p<0.001)。EFS中央値は対照群の32.8ヵ月に対し、デュルバルマブ群では未到達であった。24ヵ月時点のEFS率は67.4%対58.5%と、デュルバルマブ群で良好な結果が示された。 さらに最終全生存期間(OS)解析では、死亡リスクが22%低下した(HR:0.78、95%CI:0.63~0.96、p=0.021)。3年生存率はデュルバルマブ群69%、対照群62%であり、経時的に生存曲線の乖離が拡大する傾向が認められた。OSベネフィットはPD-L1発現状況にかかわらず確認された。 安全性については既知のプロファイルと概ね一致していた。Grade3以上の有害事象発現率はデュルバルマブ群71.6%、対照群71.2%と同程度であり、手術完遂率にも大きな差はみられなかった。 日本人サブグループ解析では、デュルバルマブ群40例、プラセボ群46例が登録され、有効性および安全性はいずれも全体集団と同様の傾向を示した。 愛知県がんセンターの室 圭氏は、「周術期D-FLOTレジメンは日本の患者にも新たな治療選択肢となり、周術期免疫療法が新たな標準治療となる可能性がある。切除可能胃がん治療における大きなパラダイムシフトである」とコメントした。また、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)胃がんグループ代表の吉川 貴己氏も、「依然として高い再発率を背景に、より強力な周術期治療が求められていた。本承認は切除可能胃がん患者の予後改善に向けた重要な選択肢となる」と期待を示した。 今回の承認により、切除可能胃がんに対する周術期治療戦略は、化学療法単独から免疫療法併用へと移行する可能性がある。【製品概要】(下線部が今回より追加)製品名:イミフィンジ点滴静注120mg、イミフィンジ点滴静注500mg一般名:デュルバルマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:・切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法・切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌・非小細胞肺癌における術前・術後補助療法・進展型小細胞肺癌・限局型小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法・治癒切除不能な胆道癌・進行・再発の子宮体癌・膀胱癌における術前・術後補助療法・胃癌における術前・術後補助療法

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腹膜播種を伴う胃がん、腹腔内パクリタキセル追加でOS延長(DRAGON-01)

 腹膜播種を伴う胃がんは予後不良であり、1次治療として全身化学療法が行われるものの全生存期間(OS)中央値は1年未満にとどまる。中国で実施された第III相ランダム化比較試験DRAGON-01において、腹腔内パクリタキセルを静脈内パクリタキセル+S-1療法に追加することで、OSが有意に延長することが報告された。JAMA Oncology誌オンライン版2026年5月21日号掲載の報告。 パクリタキセルは腹膜腔内で高濃度を長時間維持できることから、腹腔内投与による局所制御向上が期待されてきた。DRAGON-01試験は、中国9施設で実施された多施設共同第III相比較試験であり、対象は胃腺がんかつ腹腔鏡で確認された腹膜転移を有し、腹膜外転移および既治療歴のない成人患者であった。 患者はIP群(パクリタキセル50mg/m2静注+パクリタキセル20mg/m2腹腔内+S-1)とPS群(パクリタキセル70mg/m2静注+S-1)に2対1で割り付けられた。主要評価項目はOS、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、安全性、コンバージョン手術施行率などであった。 主な結果は以下のとおり。・222例(IP群148例、PS群74例)が解析対象となった。年齢中央値は59歳、腹膜播種指数(PCI)中央値は15で、比較的進行した腹膜病変を有する集団であった。・追跡期間中央値72.2ヵ月時点で、OS中央値はIP群19.4ヵ月、PS群13.9ヵ月で、IP群で有意な延長を示した(ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.50~0.90)。・PFS中央値はIP群11.2ヵ月、PS群7.2ヵ月でこちらもIP群で有意な延長を示した(HR:0.72、95%CI:0.54~0.96)。・3年OS率はIP群25.0%、PS群12.2%であり、長期生存割合にも差がみられた。・コンバージョン手術施行率はIP群50.7%に対しPS群35.1%、ベースラインで腹膜細胞診陽性だった患者の陰性化率はIP群83.6%に対しPS群52.6%と、いずれもIP群で高かった。・Grade3/4の有害事象はIP群38.5%、PS群41.9%で発生し、両群に大きな差はなかった。主な重篤有害事象は好中球減少、白血球減少、貧血などであり、治療関連死亡は認められなかった。・IPポート関連合併症は27.0%に認められたが、多くは試験初期に発生しており、施設経験の蓄積による改善が示唆された。 著者らは、「静脈内パクリタキセル+S-1療法への腹腔内パクリタキセル追加は、重篤な毒性を増加させることなく、OSを有意に改善した」と結論付けた。一方で、本試験には現在標準となりつつある免疫チェックポイント阻害薬併用療法が導入されておらず、PD-L1やMSI情報も未取得であった。今後は免疫療法との併用を含めた検証が必要とされる。

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高リスクDLBCLの初回治療、タファシタマブ+レナリドミド+R-CHOPでPFS延長/Lancet

 未治療の高リスクびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の約40%は、初回治療のR-CHOP療法(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、prednisoneまたはプレドニゾロン)で再発・進行に至る。ドイツ・University Hospital MunsterのGeorg Lenz氏らMIND Study Investigatorsは、DLBCLを含む高リスクB細胞リンパ腫を対象とした検討(frontMIND試験)で、R-CHOP+タファシタマブ(Fc領域を改変した抗CD19モノクローナル抗体)+レナリドミド(tafa-len-R-CHOP)療法がR-CHOP療法と比較し、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことを示した。ただし、追加併用により、治療中に発現し死亡に至った有害事象(TEAE)を含む有害事象の増加が認められた。全生存期間(OS)に関するデータは未成熟で追跡調査が継続されているが、著者らは「循環腫瘍DNA(ctDNA)を含むさらなる解析で、tafa-len-R-CHOP療法で観察されたPFS改善に分子学的奏効がより深く寄与しているかどうか評価できるだろう。tafa-len-R-CHOP療法は、高リスクDLBCLや高悪性度B細胞リンパ腫(HGBL)患者の新たな初回治療となる可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年5月30日号掲載の報告。tafa-len-R-CHOP療法とR-CHOP療法を比較する国際共同試験 MIND試験は北米・南米、欧州および日本を含む環太平洋地域の298施設で行われた第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。対象は、18~80歳で未治療の高中リスクまたは高リスクのDLBCL、もしくはHGBLの患者であった。 研究グループは被験者を、International Prognostic Index(IPI)または年齢補正IPI、試験地で層別化し、標準治療の21日サイクル6回投与のR-CHOP療法群またはtafa-len-R-CHOP療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。R-CHOP療法は、初日にリツキシマブ375mg/m2、シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン1.4mg/m2(最大2mg)を静脈内投与し、prednisoneまたはプレドニゾロン100mg/日を1~5日目に経口投与した。これらに加えてtafa-len-R-CHOP療法群では、タファシタマブ(12mg/kgを1、8、15日目に静脈内投与)とレナリドミド(25mg/日を1~10日目に経口投与)が投与された。 主要評価項目は、試験担当医師の評価によるPFS(無作為化から病勢進行または全死因死亡までと定義)で、ITT集団で評価した。安全性は副次評価項目として、試験薬を少なくとも1回投与された全被験者を対象に評価した。2年PFS率tafa-len-R-CHOP療法群71.1%vs. R-CHOP療法群62.9% 2021年5月11日~2023年3月2日に1,229例がスクリーニングされ、899例が無作為化された(tafa-len-R-CHOP療法群448例[50%]、R-CHOP療法群451例[50%])。両群の人口統計学的および疾患の特性はバランスが取れており、年齢中央値は65歳、IPI 3またはaaIPI 2が503例(56%)、IPI 4~5またはaaIPI 3が388例(43%)、ECOG-PS 2が283例(31%)、485例(54%)が腫瘤性病変(直径7.5cm以上)を有していた。 追跡期間中央値35.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:35.0~35.4)の主要解析時点において、PFSはtafa-len-R-CHOP療法群がR-CHOP療法群より改善し(ハザード比[HR]:0.75、95%CI:0.59~0.96、p=0.0194)、2年PFS率はtafa-len-R-CHOP療法群71.1%(95%CI:66.3~75.4)、R-CHOP療法群62.9%(57.9~67.5)であった。 OSの中間HRは0.85(95%CI:0.63~1.14)で統計学的有意差は認められなかった(p=0.2703)。3年OS率はtafa-len-R-CHOP療法群81.1%(95%CI:77.0~84.6)、R-CHOP療法群77.8%(73.5~81.5)であった。 Grade3以上の全TEAE発現率は、tafa-len-R-CHOP療法群(384/443例[87%])がR-CHOP療法群(340/447例[76%])よりも高率であった。さらに、死亡に至ったTEAEの発現率もtafa-len-R-CHOP療法群(26例[6%])がR-CHOP療法群(17例[4%])よりも高率であった。一方で、試験中のすべての死亡例は、tafa-len-R-CHOP療法群(82例[19%])がR-CHOP療法群(97例[22%])よりも少なかった。 投与データに基づくすべての試験薬の早期中止率は、tafa-len-R-CHOP療法群(71/443例[16%])とR-CHOP療法群(66/447例[15%])で同程度であった。

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ASCO2026 レポート 消化器がん

レポーター紹介[目次]RASolute 302試験FIGHT-302試験BREAKWATER Cohort3試験EPISODE-III/JCOG1503C試験欧州CIRCULATE/日本発GALAXY試験ONO-4578-08試験PANKU-Esophagus01試験膵がんRASolute 302試験:daraxonrasibが膵がん薬物療法の地図を塗り替える可能性RASolute 302は、前治療歴を有する転移のある膵管腺がん(PDAC)を対象に、経口RAS(ON) multi-selective inhibitorであるdaraxonrasibと医師選択化学療法(GnP、mFOLFIRINOX、Nal-IRI+5FU/LV、FOLFOX)を比較した国際共同非盲検第III相試験である。主要評価項目はRAS G12変異例における全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)で、全体集団500例のうち91.8%がRAS G12変異例であった。RAS G12変異例では、OS中央値が13.2ヵ月vs.6.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.40)、PFS中央値が7.3ヵ月vs.3.5ヵ月(HR:0.45)と、daraxonrasib群で有意に改善した。全体集団でもOS中央値13.2ヵ月vs.6.7ヵ月(HR:0.40)、PFS中央値7.2ヵ月vs.3.6ヵ月(HR:0.49)と一貫した効果が示され、RAS G12以外やRAS変異未同定例を含めた広い集団で有効性が確認された。客観的奏効率(ORR)もRAS G12変異例で33.2%vs.11.8%(p<0.0001)、全体集団で31.6%vs.11.2%(p<0.0001)と改善した。QOLも改善し、有害事象は発疹(全Grade:85%、Grade3以上:14%)・口内炎(全Grade:53%、Grade3以上:12%)などが中心である。臨床的インパクトは非常に大きく、主要評価項目であるOSの有意な結果が報告されたタイミングでスタンディングオベーションが起き、発表と同時にNEJM誌にも掲載された1)点も注目される。daraxonrasibはFDAからBreakthrough Therapy designationおよびOrphan Drug designationを受けており、膵がんで長く創薬困難とされてきたRASを、G12C単独ではなくG12D/V/Rを含む広いRAS変異に対して標的化できることを第III相試験で示した意義は大きく、PDACの治療体系を大きく変えると思われる。RAS阻害薬はほかにも多数の薬剤が開発中であり、初回治療例を対象にdaraxonrasib単剤vs.daraxonrasib+GnP vs.GnPを検証するRASolute 303試験をはじめ、術後補助療法におけるエビデンス創出など、今後の拡大が期待される。1)O'Reilly EM, et al. N Engl J Med. 2026 May 31. [Epub ahead of print]目次に戻る胆道がんFIGHT-302試験:FGFR2融合・再構成陽性胆管がんで1次治療FGFR阻害の可能性を検証FGFR2融合・再構成陽性胆管がんでは、既治療例を対象とした第II相FIGHT-202試験でペミガチニブの有効性が示され、最終解析ではORR 37.0%、PFS中央値7.0ヵ月、OS中央値17.5ヵ月、奏効期間(DoR)中央値9.1ヵ月であった2)。これを背景に、ペミガチニブは既治療のFGFR2融合・再構成陽性胆管がんで承認されており、FIGHT-302試験では1次治療への前倒しが検証された。FIGHT-302は、未治療の切除不能・転移FGFR2再構成陽性胆管がんを対象に、ペミガチニブ単剤とゲムシタビン+シスプラチン(GC)を比較した国際共同非盲検第III相試験である。希少な分子サブタイプを対象とするため登録は難航し、4,000例超を事前スクリーニングしたものの、最終的なランダム化例数は167例で、試験は早期終了となった。主要評価項目のPFS中央値は8.3ヵ月vs.6.8ヵ月(HR:0.58、nominal p=0.0078)とペミガチニブ群で延長し、ORRも47.0%vs.15.5%、DoR中央値も14.2ヵ月vs.6.3ヵ月と良好であった。一方、OS中央値は24.4ヵ月vs.25.0ヵ月と同程度であった。化学療法群では進行後に42例がペミガチニブへクロスオーバーしており、OS解釈には注意を要する。本試験は、FGFR2陽性胆管がんで1次治療から標的治療を用いる可能性を示した点で重要であり、同時にJournal of Clinical Oncology誌にも掲載された3)。とくにORRはペミガチニブ群47.0%と、胆道がん全体を対象としたTOPAZ-1/KEYNOTE-966のGC+免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)におけるORRが約27~29%であったことを踏まえると、クロストライアル比較ながら腫瘍縮小を重視するFGFR2再構成陽性例では魅力的に映る。一方で、FIGHT-302の対照群はGC単独であり、現在の1次治療標準であるGC+ICIsとの直接比較ではない。また、OS非改善、早期終了による検出力の限界、クロスオーバーの影響、FGFR阻害薬後の耐性変異を踏まえると、ただちに1次治療を置き換えるというより、診断時からFGFR2検査を行い、FGFR2陽性例における1次治療・2次治療の最適なシーケンスを考えるデータと整理するのが妥当である。2)Abou-Alfa GK, et al. Lancet Oncol. 2020;21:671-684.3)Bekaii-Saab TS, et al. J Clin Oncol. 2026 Jun 1. [Epub ahead of print]目次に戻る大腸がんBREAKWATER Cohort3試験:FOLFIRIバックボーンでも良好な治療効果BRAF V600E変異陽性転移性大腸がんは予後不良な分子サブタイプであり、1次治療からBRAF/EGFR阻害を組み込む治療開発が進められてきた。第III相BREAKWATER試験では、エンコラフェニブ+セツキシマブ(EC)+mFOLFOX6が標準治療に対し、ORR:65.7%vs.37.4%、PFS中央値12.8ヵ月vs.7.1ヵ月、OS中央値30.3ヵ月vs.15.1ヵ月と良好な結果を示した。これを受け、本邦でも2025年11月にエンコラフェニブが1次治療へ適応拡大され、FOLFOX+ECはBRAF V600E変異陽性切除不能進行・再発大腸がんにおける初回治療の標準的選択肢として位置付けられている。一方、ASCO GI 2026では、BREAKWATERの別コホートとして、EC+FOLFIRIをFOLFIRI±BEV(ベバシズマブ)と比較した成績が報告され、BICR評価のORRは64.4%vs.39.2%(片側p=0.0011)と有意に改善していた。今回のASCO 2026ではPFSおよびOS解析が発表され、PFS中央値は15.2ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.44、片側p=0.0002)と有意に延長した。OS中央値も、未到達vs.20.3ヵ月(HR:0.56)であり、OSも良好な傾向を示した。本結果はASCO 2026で発表されるとともに、Annals of Oncology誌に同時掲載された4)。FOLFOX+ECが本邦でも1次治療標準として位置付けられた一方、今回のFOLFIRIコホートは、オキサリプラチン不適例や末梢神経障害を避けたい症例における将来的な代替バックボーンとしての可能性を示した。ただし、EC+FOLFIRIの国内実装には薬事・ガイドライン上の位置付けの整理が必要である。4)Kopetz S, et al. Ann Oncol. 2026 May 31. [Epub ahead of print]目次に戻る大腸がん・日本発EPISODE-III/JCOG1503C試験:アスピリン補助療法は“全例投与”から“分子選択”か?術後大腸がんに対するアスピリン/COX阻害薬は、非選択集団では明確な上乗せ効果に乏しい一方、PI3K経路異常例では有望な可能性が示されている。非選択大腸がんを対象としたASCOLT試験では、アスピリン200mgを3年間投与しても5年DFSは77.0%vs.74.8%(HR:0.91)で主要評価項目は未達であった5)。また、PI3K経路異常を有する局所大腸がんを対象としたALASCCA試験では、アスピリン160mg・3年間によりPIK3CA exon 9/20変異例、その他PI3K経路異常例のいずれでも再発リスク低下が示された6)。COX-2阻害薬セレコキシブについても、CALGB/SWOG 80702試験の解析でPIK3CA gain-of-function変異例におけるDFS/OS改善が報告されている7)。EPISODE-III/JCOG1503Cは、下部直腸がんを除くR0切除後StageIII大腸がん882例を対象に、標準的な術後補助化学療法へ低用量アスピリン100mgを3年間上乗せする意義を検証した、日本発の二重盲検プラセボ対照第III相試験である。ASCO 2026では、国立がん研究センター中央病院の高島 淳生氏により、主要解析結果がLate-Breaking Abstract(LBA3508)として発表された。主要評価項目の3年DFSは、アスピリン群78.8%vs.プラセボ群75.4%と数値上はアスピリン群で良好であったが、HR:0.84、片側p=0.0987で統計学的有意差には至らなかった。RFSも79.5%vs.77.2%(HR:0.87)と同方向の傾向にとどまり、OSは未成熟であった。安全性はおおむね許容範囲であったが、下部消化管出血はアスピリン群でやや多かった(全Grade:2%vs.0.2%)。アスピリンによる再発抑制機序としては、COX-1/COX-2阻害を介したプロスタグランジン産生低下、血小板凝集抑制による循環腫瘍細胞の転移形成阻害、炎症性腫瘍微小環境の抑制などが想定される。JCOG1503Cは、非選択のStageIII大腸がん全例にアスピリンを追加する方針を支持する結果ではなかった。一方で、本試験は当時のエビデンス状況を踏まえた重要な全例対象試験であり、今後のPI3K/PIK3CA解析により、COX阻害薬を分子選択的な術後補助療法として再評価する足掛かりになる可能性がある。5)Chia JWK, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2025;10:198-209.6)Martling A, et al. N Engl J Med. 2025;393:1051-1064.7)Meyerhardt JA, et al. JAMA. 2021;325:1277-1286.目次に戻る大腸がん欧州CIRCULATE/日本発GALAXY試験:本邦におけるMRD元年大腸がん術後のctDNA/MRD検査は、再発リスクを高精度に層別化する手法として期待されており、ASCO 2026ではctDNAを単なる予後予測マーカーにとどめず、術後補助化学療法(ACT)の要否や期間を決める“治療設計ツール”としての可能性が示された。StageII pMMR/MSS結腸がんを対象とした欧州CIRCULATE(AIO-KRK-0217/ABCSG)試験では、tumor-informed型のアカデミックMRDアッセイを用い、術後ctDNA陽性例をACT群と観察群にランダム化した。本試験はドイツ・オーストリアで実施された前向きランダム化第III相試験で、ctDNA陽性例は41例、ITT解析対象はACT群26例、観察群15例であった。主要評価項目の3年DFSは、ACT群61%vs.観察群38%(HR:0.55、p=0.12)で、統計学的有意差には至らなかった。一方、事前規定のper-protocol解析では、ACT群に割り付けられたものの治療を開始しなかった5例を除外し、実際にACTを受けた21例と観察群15例を比較した。その結果、3年DFSは77%vs.38%(HR:0.31、p=0.021)、3年再発率はACT群19%vs.観察群62%(HR:0.23、p=0.009)と、ACT群で良好であった。本試験ではctDNA陽性率が2.9%と低く、早期終了により検出力が限られた点には注意が必要であるが、ctDNA陽性StageII結腸がんにおいて、術後補助化学療法による再発抑制が期待できることを示した前向きランダム化データとして意義は大きい。さらに日本発のCIRCULATE-Japan/GALAXY解析では、SignateraによるACT中のctDNA変化とACT期間との関係について、九州大学の沖 英次氏により報告された。対象は、ACTを受け、術後6ヵ月以内に2回以上ctDNA測定が行われた1,028例であり、ACT期間は90日以上をlong ACT、90日未満をshort ACTとして比較された。ctDNAが一貫して陰性であった症例では、long ACTによる明確なDFS改善は認められなかった(HR:0.71、95%CI:0.46~1.09)。また、ACT治療中にctDNAが陰転化した症例でも、ACT延長の上乗せ効果は明確ではなかった(HR:1.06、95%CI:0.57~1.97)。一方、ctDNAは低下したものの陽性が残るpartial molecular response例では、DFS中央値がlong ACT群5.9ヵ月vs.short ACT群1.7ヵ月と、long ACT群で良好であった(short vs.long:HR:3.64、95%CI:1.33~9.97、p=0.008)。この結果から、ctDNAが残存する一部の症例では、ACT期間の延長が有益となる可能性が示された。ただし、本解析は観察研究であり、現時点ではctDNA動態のみでACT期間を決定する段階ではなく、今後の前向き試験による検証が求められる。CIRCULATE-Japan/GALAXYではNatera社のSignateraが用いられており、術後ctDNAは再発リスクや補助化学療法効果の予測に有用であることがすでに報告されている。2026年5月に本邦でMRD検査の薬事承認が了承された8)ことで、2026年は「MRD実装元年」ともいえる局面を迎えたが、実臨床での普及には、保険適用時期、算定要件、測定タイミング、MRD陽性例に対する介入の整理が今後の課題と考える。8)日経バイオテク(2026年6月3日付)目次に戻る胃がんONO-4578-08試験:EP4阻害でPD-1阻害薬+化学療法の効果を高める新戦略ONO-4578は、PGE2受容体の1つであるEP4を阻害する経口EP4拮抗薬で、腫瘍微小環境における免疫抑制を解除し、PD-1阻害薬の効果を高めることが期待される。ONO-4578-08試験は、HER2陰性の未治療切除不能進行・再発胃がん/食道胃接合部がんを対象に、ONO-4578+ニボルマブ+SOX/CAPOXを、プラセボ+ニボルマブ+SOX/CAPOXと比較した、日本・韓国・台湾の多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化第II相試験であり、ASCO 2026での発表に合わせてJCO誌オンライン版に掲載された9)。主要評価項目である治験担当医評価PFS中央値は9.0ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.67、p=0.040)と、事前規定の統計設定で有意に延長した。OS中央値は未到達vs.12.7ヵ月(HR:0.60)と未成熟ながらONO-4578群で良好であり、ORRも62.0%vs.48.7%と上回った。とくにPD-L1 CPS≧1集団では、PFS中央値9.9ヵ月vs.5.7ヵ月(HR:0.52)、OS HR:0.44、ORR:70.9%vs.50.9%と、より明瞭なベネフィットが示された。一方で、CPS<1/判定不能例では明確な上乗せ効果は示されておらず、今後の患者選択が重要となる。安全性ではGrade3以上の有害事象が79.2%vs.69.3%とONO-4578群で多く、下痢、貧血、低アルブミン血症、消化管潰瘍などには注意を要する。消化管潰瘍の予防目的でPPI投与が推奨され、ONO-4578群内ではPPI使用例で消化管潰瘍が少なかった(3.4%vs.10.0%)。第II相試験であり、ただちに標準治療を変える段階ではないが、PD-1阻害薬+化学療法が標準となったHER2陰性胃がん1次治療に、免疫微小環境制御を上乗せする新しい戦略として重要である。今後は、PD-L1陽性例を中心とした第III相試験での検証が注目される。9)Nakayama I, et al. J Clin Oncol. 2026 Jun 1. [Epub ahead of print]目次に戻る食道扁平上皮がんPANKU-Esophagus01試験:中国発新規EGFR×HER3二重特異性ADCizalontamab brengitecan(iza-bren/BL-B01D1)は、EGFRとHER3を標的とする二重特異性抗体薬物複合体(ADC)である。ASCO 2026では、再発・転移性食道扁平上皮がんを対象とした中国の第III相PANKU-Esophagus01の中間解析結果が報告された。対象は、1次治療のPD-1/PD-L1阻害薬+プラチナ系化学療法後に進行した患者で、iza-bren群249例もしくは医師選択化学療法(イリノテカンパクリタキセルドセタキセル)群248例に割り付けられた。主要評価項目であるOS中央値は9.8ヵ月vs.7.2ヵ月(HR:0.64)、PFS中央値は4.2ヵ月vs.2.0ヵ月(HR:0.50)と、いずれもiza-bren群で有意に改善した。ORRも35.3%vs.13.1%と良好であった。安全性では、Grade3以上の治療関連有害事象は85.1%vs.60.2%とiza-bren群で多く、主に血液毒性が中心であった。一方、治療関連有害事象による中止は2.0%vs.3.3%、治療関連死亡は1.2%vs.1.6%であり、間質性肺疾患の頻度も低かった(全Grade:1.6%vs.0.4%、Grade3以上:0.8%vs.0%)。1次治療で免疫チェックポイント阻害薬+化学療法が標準化した後の食道扁平上皮がんでは、2次治療の選択肢が限られており、iza-brenは新たな標準治療候補として注目される。ただし、中国の試験の結果であり、医師選択化学療法の詳細も未発表である。今後、日本を含むグローバルでの開発・承認動向を見極める必要がある。目次に戻る

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第299回 子供の軽症時、保護者の7割が「まず医療機関」 医療費構造の認知に課題/健保連

<先週の動き> 1.子供の軽症時、保護者の7割が「まず医療機関」 医療費構造の認知に課題/健保連 2.令和5年度病院立入検査、医師・看護師・薬剤師の人員適合率が低下/厚労省 3.高額療養費見直しでパブコメ開始、2026年8月から月額上限引き上げへ/厚労省 4.病院の情報管理に警鐘、研究用PC端末と廃棄媒体から患者データ流出か/九大ほか 5.チルゼパチド製剤の不適切使用に注意喚起、違法流通にも警鐘/リリー 6.髄腔内注射後に死亡、事故調が報告書概要 混入経路は特定できず/埼玉県 1.子供の軽症時、保護者の7割が「まず医療機関」 医療費構造の認知に課題/健保連健康保険組合連合会は6月3日、全国の20~80代3,000人を対象に2026年1月に実施した「医療・介護に関する国民意識調査」の速報版を公表した。医療費・介護費の増加と支え手の減少が進む中、保険料負担を「非常に重い」「やや重い」と感じる人は62.7%に上り、健保連は保険料のさらなる引き上げには限界感があるとみている。医療保険の給付と負担のあり方では、「給付を大幅に絞り込み、負担を軽減」が15.0%、「給付を絞り込み、負担の水準を維持」が25.0%で、給付範囲の見直しを求める回答が計40.0%となった。増加する医療費を賄う方法としては、「自己負担の増加(患者本人の窓口負担)」を選んだ人が30.2%に上り、税金の引き上げまたは新設(12.0%)や保険料の引き上げ(10.8%)を上回った。ただし「わからない」が44.1%と最多で、制度や財源構造への理解不足も示された。世代間負担では、「高齢者の負担増はやむを得ない」が37.1%で、「高齢者負担増は難しく、現役世代の負担増はやむを得ない」の18.1%を大きく上回った。75歳以上でも40.0%が高齢者自身の負担増を容認していた。高齢者医療では、70~74歳の原則2割負担の対象年齢を5歳引き上げる案に賛成35.7%、反対22.5%。将来的に高齢者の窓口負担を原則3割に見直す案も賛成34.2%が反対29.9%を上回ったが、60代以上では慎重姿勢が目立った。その一方で、軽度の体調不良時の受診行動では、大人で「まず医療機関を受診する」は30.6%にとどまるのに対し、18歳未満の子どもでは69.2%に達した。自治体の子供医療費助成について、自己負担が無料でも残りの多くは保険料で賄われることを「知らない」は全体で67.1%、子育て世帯でも54.4%だった。小児の軽症受診には不安軽減という側面がある一方で、時間外受診や小児科・救急外来の負荷にもつながる。健保連は、「無償化の下でも必要性に応じた適切な受診を考えて欲しい」としている。2026年度の健保組合収支は2,890億円の赤字見通しで、約7割の組合が赤字とされる。現役世代の保険料負担、高齢者医療への拠出、子供・子育て支援金の上乗せが重なる中、制度改革には国民への丁寧な説明が欠かせない。医療現場には、単なる受診抑制ではなく、救急性の見極め、家庭での観察、市販薬の活用、適正受診を患者・家族に伝える役割が一段と求められる。 参考 1) 医療・介護に関する国民意識調査-速報版-(健保連) 2) 医療費が増加する中で「患者の窓口負担増で対応すべき」「高齢者の負担増もやむなし」と考える国民が比較的多い-健保連(Gem Med) 3) 体調不良、子ども7割すぐ受診 「無償でも適切利用を」-健保連(時事通信) 4) 健康保険組合 2026年度は「2,890億円赤字」の見通し 加盟組合の約7割が赤字 高齢者医療費への拠出増などで 健保連が集計(TBSテレビ) 2.令和5年度病院立入検査、医師・看護師・薬剤師の人員適合率が低下/厚労省厚生労働省は、2023年度の「医療法第25条に基づく病院に対する立入検査結果」を公表した。対象は全国8,138病院で、7,587病院に検査を実施。実施率は93.2%と前年度から5.4ポイント上昇し、コロナ禍前に近い水準まで回復した。検査は、病院が医療法上の人員、構造設備、管理体制を満たしているかを確認するものだ。その一方で、医療法に基づく医療従事者の標準数への適合率は、主要職種でそろって低下した。医師数は97.9%で前年度比0.4ポイント減、看護師・准看護師数は99.4%で0.1ポイント減、薬剤師数は97.7%で0.4ポイント減だった。医師数では、北海道・東北が94.2%、北陸・甲信越が97.1%と低く、東海99.0%、近畿99.6%との差が目立った。病床規模別では、20~49床の一般病院で医師95.3%、看護師など98.1%、薬剤師93.9%と、小規模病院ほど人材確保の厳しさが示された。医師と看護師などの双方が標準数を満たした病院は全体の97.0%で、前年度の97.5%から低下。医師のみ不足する病院は155施設、看護師などのみ不足する病院は65施設、双方不足は5施設だった。薬剤師は中国地方95.2%、九州96.2%などで低く、病院薬剤師不足の地域差も浮き彫りとなった。管理面では、最も適合率が低かった項目が「サイバーセキュリティの確保」の91.1%だった。次いで職員の健康管理92.1%、医療法許可事項の変更92.7%が低かった。医療情報システムへの攻撃が診療継続を脅かす中、サイバー対策は医療安全上の重要課題として、立入検査でも確認が強まっている。人員不足と情報セキュリティの遅れは、地域医療提供体制と病院運営の持続性に直結する論点となる。人員適合率は医師の働き方改革、地域医療構想、薬剤師確保計画とも重なる課題として、各病院には自院だけでなく地域単位での人材配置と安全管理の再点検が求められる。 参考 1) 医療法第25条に基づく病院に対する立入検査結果について[令和5年度](厚労省) 2) 医療法に基づく人員の適合率、医師、看護職員、薬剤師とも低下-23年度病院立入検査(日本医事新報) 3) 病院の医師配置適合率は97.9%、看護師等は99.4%に低下、サイバーセキュリティ確保が遅れている-2023年度立入検査結果(Gem Med) 3.高額療養費見直しでパブコメ開始、2026年8月から月額上限引き上げへ/厚労省厚生労働省は6月6日、高額療養費制度の見直しに伴う健康保険法施行令等の改正案について、パブリック・コメントの募集を開始した。意見提出の期限は7月6日で、政令案と省令案の双方が対象となる。改正案は、2026年8月から月額負担上限額を1人当たり医療費の伸びに応じて見直し、2027年8月からは応能負担の観点で所得区分を細分化する内容で、公布は2026年7月、施行は同年8月1日を予定している。高額療養費制度は、重い疾病や高額な治療を受ける患者にとって、医療費負担を一定範囲に抑える公的医療保険の中核的なセーフティネットである。今回の見直しでは、低所得者や長期療養者への配慮として、多数回該当の限度額は原則維持し、年収約200万円未満の課税世帯では2027年8月から引き下げる。また、2026年8月から新たに年間上限を設け、長期にわたり継続治療を受ける患者への負担軽減を図るとしている。見直しを巡っては、2025年3月に当時の石破 茂首相がいったん実施見合わせを表明し、その後、社会保障審議会医療保険部会の専門委員会で患者団体、保険者、医療者、有識者へのヒアリングを重ねてきた経緯がある。その一方で、患者団体や保険医協会からは、月額上限の引き上げが治療継続や生活に与える影響を懸念する声が出ている。全国がん患者団体連合会と日本難病・疾病団体協議会の共同声明は、制度の一定の見直し自体には理解を示しつつ、月ごとの限度額については十分に抑制されていないと指摘している。例として、70歳未満で年収約650~770万円の区分では、現行の月額8万100円に医療費超過分の1%を加える水準から、見直し案では11万400円となり、37%増になるとしている。医療現場では、高額薬剤、がん治療、難病治療、透析、免疫疾患治療など、継続的に高額医療を必要とする患者への説明が重要になる。制度変更は、単なる「上限額の引き上げ」にとどまらず、月額負担、多数回該当、年間上限、所得区分の変更を組み合わせて患者ごとの実負担が変わる点に注意が必要となる。受診抑制や治療中断を避けるため、医療機関には、医療ソーシャルワーカーや医事課と連携し、限度額適用認定証、付加給付、自治体制度、分割払い相談などを含めた支援体制の再確認が求められる。 参考 1) 健康保険法施行令等の一部を改正する政令案に関するご意見の募集について(厚労省) 2) 健康保険法施行規則等の一部を改正する省令案に関するご意見の募集について(同) 3) 高額療養費見直し、厚労省が意見募集 7月5日まで(CB news) 4) 今年8月からの高額療養費「値上げ」 厚労省が意見募集開始(保団連) 5) 【募集】高額療養費制度の見直しについてのパブリック・コメント(日本難病・疾病団体協議会) 4.病院の情報管理に警鐘、研究用PC端末と廃棄媒体から患者データ流出か/九大ほか九州大学は6月10日、九州大学病院の患者43人分の氏名と手術動画データが外部に流出した可能性が否定できないと発表した。病院キャンパス内の研究室が管理する研究用端末1台が5月25日に不正アクセスを受け、ランサムウェアに感染したとみられる。教員が端末を起動した際、金銭を求める脅迫文が表示され、大学は直ちにネットワークから遮断した。端末は診療用ネットワークとは分離されており、電子カルテや診療業務への影響は確認されていない。情報の公開や悪用も現時点では確認されておらず、対象患者には個別に連絡し、謝罪している。大学では福岡県警とも連携し、侵入経路や被害範囲を調査する。その一方で、国立病院機構は6月8日、北海道医療センターと北海道がんセンターで廃棄処理を委託したハードディスクがインターネットオークションに転売され、患者や職員の個人情報が流出した可能性があると発表した。回収した90点のうち、31点が北海道医療センター、2点が北海道がんセンターで電子カルテシステムなどに使われていた。少なくとも約18万6,900人分、最大で約51万人分の氏名、住所、疾患名などが含まれる可能性がある。現時点で不正利用は確認されていないが、同機構は処分を受託した石狩市の産業廃棄物処理業者を廃棄物処理法違反の疑いで刑事告発した。2つの事案は、医療情報の漏えいリスクが電子カルテ本体へのサイバー攻撃だけではないことを示す。研究室端末に保存された手術動画、廃棄予定媒体に残った電子カルテ情報のいずれも、診療・研究・教育・廃棄の周辺工程で発生した。医療機関には、端末のアクセス管理、研究データの匿名化、ネットワーク分離、外部記録媒体の暗号化、廃棄時の物理破壊確認、委託先監査まで含めた情報管理体制の再点検が求められる。 参考 1) 九州大学 病院の患者データ 外部流出の可能性否定できない(NHK) 2) 手術動画流出の可能性、九大病院患者43人分 ランサムウェア感染か(朝日新聞) 3) 不正アクセスで手術動画データなど流出か 九州大病院 診療業務は通常通り(CB news) 4) 北海道がんセンターなどの患者情報が流出、最大51万人分…処分予定のHDDがネットオークションに転売(読売新聞) 5.チルゼパチド製剤の不適切使用に注意喚起、違法流通にも警鐘/リリー日本イーライリリーは6月10日、2型糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)の不適切使用に関する声明を公表した。SNSや広告で、美容・痩身・ダイエット目的の使用を推奨していると受け取れる情報が拡散し、さらに許可なく同薬を売買した疑いで男女3人が書類送検されたことを受けた対応。上野 賢一郎厚生労働大臣も、個人間売買は違法であり、適応外使用では思わぬ副作用につながる可能性があるとして、適正使用を呼びかけている。同社は、「国内で承認されているチルゼパチドの効能・効果は『2型糖尿病』のみであり、医師の診断、管理、指導のもと、電子添付文書に則って使用される処方箋医薬品だ」と強調した。2型糖尿病以外の人が美容目的などで使用した場合の有効性・安全性は医学的に確認されていない。また、医薬品を許可なく個人間で売買・転売する行為は薬機法違反であり、管理されていない流通経路で入手した製品は品質や安全性が担保されず、本来の効果が得られないだけでなく、重篤な健康被害を招くリスクがあると警告した。その一方で、同一成分のチルゼパチド製剤には、肥満症治療薬「ゼップバウンド」もある。ただし、対象は高血圧、脂質異常症、耐糖能障害などを伴い、食事療法・運動療法で十分な効果が得られない肥満症患者などに限られ、単なる美容目的の減量とは異なる。医師による客観的診断と適切な処方プロセスが前提となる。報道では、使用済み注射針の不適切廃棄も問題化している。公共トイレなどへの投棄は清掃員らの針刺し事故や血液媒介感染のリスクにつながる。医療機関には、適応、禁忌、副作用説明に加え、入手経路や廃棄方法まで含めた患者教育が求められる。GIP/GLP-1受容体作動薬の需要が急拡大する中、適正使用、違法流通対策、供給管理は、糖尿病診療と肥満症治療の信頼性を守る医療安全上の課題となっている。 参考 1) 当社製品の適正使用に関する取り組み(日本イーライリリー) 2) 美容目的「マンジャロ」使用、製造元日本法人が警告 不適切使用や違法売買「容認できず」(J-CASTニュース) 3) 2型糖尿病治療薬「マンジャロ」の適正使用を推進 日本イーライリリーが不適切使用や違法転売に注意喚起(糖尿病ネットワーク) 4) 「マンジャロ注射針」不法投棄が横行で感染リスクへの懸念も…東京メトロが明かした“針刺し事故”の実例(女性自身) 6.髄腔内注射後に死亡、事故調が報告書概要 混入経路は特定できず/埼玉県埼玉県立小児医療センターは6月12日、白血病患者が抗がん剤の髄腔内注射後に神経症状を発症し、1人が死亡、2人が重体となった問題で、医療事故調査委員会の報告書概要を公表した。センターでは2025年1~10月、髄腔内化学療法を受けた患者5人に発熱、四肢疼痛、意識障害、呼吸障害などの神経症状が出現。死亡した10代男性を含む一部症例の保存髄液から、髄腔内に投与されるはずのない抗がん剤ビンクリスチンが検出された。委員会は、ビンクリスチンが通常の静脈内投与で中枢神経系へ移行する可能性は限定的であることなどから、「髄注薬に混入した状態で投与された可能性が極めて高い」と判断した。その一方で、混入経路を直接示す客観的証拠は確認されず、具体的な工程の特定には至らなかった。搬送、病棟保管、投与の各工程では、専用接続部品が注射筒に装着されていたことなどから、混入は極めて考えにくいと評価した。焦点となったのは無菌調製室での薬剤調製工程だ。報告書は、髄注薬とビンクリスチンが同じ空間に存在し得る運用で、空間的・時間的分離が十分とは言えなかったと指摘。調製完了時刻を客観的に確認できる記録や映像記録がなく、複数名によるリアルタイムの相互確認体制も整備されていなかったため、「調製時に混入した可能性を否定できない」と結論付けた。再発防止策として、髄注薬とビンカアルカロイド系抗がん剤の空間的・時間的分離、薬剤師2人によるダブルチェック、在庫・廃棄管理の強化、監視カメラ設置、マニュアル改定、投与前確認や廃棄工程の標準化、シリンジ払い出し廃止とミニバッグ化、定期監査、継続的な安全教育の9項目を提言した。センターは現在、髄腔内化学療法を中止しており、岡 明病院長は「まずは再発防止策を徹底して安全確保を図る」と述べ、再開時期は県や保健所と協議して検討する考えを示している。 参考 1) 使われるはずない薬「調製時混入の可能性」 埼玉・小児医療センター(朝日新聞) 2) 劇薬管理強化へ9項目 事故調報告書 小児医療センター(毎日新聞) 3) 埼玉の病院の医療死亡事故、調査報告「調剤時の混入否定できず」(日経新聞)

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第317回 埼玉県立小児医療センターの死亡事故、何があったのか(後編)

INDEX故意の仮説をする場合過失の仮説をする場合小児ALL治療の背景と事件の事実関係について触れた前回を踏まえ、今回は「なぜこうした事故が起こってしまったのか?」を深掘りしてみたい。ちなみに病院側の調査では、調剤記録、投与記録、手順書、ダブルチェック体制などを確認したものの、明確な違反は見つからなかったとしている。事故調査委員会が特定できなかったものを不謹慎と言われるのを承知で、可能性のある原因を私個人として考えてみた。前提として、故意か過失かによって大きく変わってくる。故意の仮説をする場合まず、故意という仮説である。この場合に一般的に考えられる可能性は、(1)髄腔内注射(以下、髄注)薬への意図的混入(2)シリンジすり替え(3)調製工程への介入(4)特定患者やその担当医を標的とした行為、となる。いずれも悪意がある前提となり、そもそも常識的な思考(少なくとも私自身もその範疇の人間である前提)では、もはや理解不能である。このうちまず(4)については、ビンクリスチンが検出された3例は、事案の発生時期が異なる患者であり、特定の患者を標的として行われたとは考えにくい。これら3例の担当医が同一人物かそれとも異なるかは情報がない。もし、同一担当医でその個人に恨みを持っていた人物が意図的に混入したとしても、結果の重大性は予測しえたわけで、「そこまでするのか?」というレベルである。ただ、繰り返しになるが故意でこうした重大な結果を招くようなことをする人物がいたとしたら、およそ常識で測れない思考をしている可能性はあるので、可能性がゼロとは言えない。また、(1)、(2)は(4)と関連するもので、あくまで理論上は可能かもしれないが、率直に言ってこの可能性を考え出したら安全対策は際限のないものになる。(3)も(1)と(2)と同様であり、また通常、注射製剤や髄注の調製を行う無菌室は入退室記録や監査記録が存在するため、1人での実行は容易ではない。実際、同センターでは注射製剤などの調製はセキュリティーカードを3回使って入退室する薬剤部の1室で行われ、「ビンクリスチンなどはこの部屋の鍵付き保管庫で保管されていた」と報じられていることなども考えると、調剤室で悪意を持って行うことはかなり難易度が高いと言わざるを得ない。繰り返しになるが、故意の可能性を前提とした場合、もはやどの段階でも完璧な対策はないと言える。その意味では前述の医療事故調査委員会が「故意の可能性でも対応し得る再発防止対策を立てた」との主張は、個人的にはややピンと来ない。過失の仮説をする場合一方、過失との仮説はどうか? 私個人のない頭で考えた場合、(1)調剤時の取り違え(2)ラベル貼付ミス(3)投与時の取り違え(4)シリンジへの微量混入(5)システム的欠陥、などが思い浮かぶ。(1)はメトトレキサート髄注用シリンジ、ビンクリスチン静注用シリンジが同時に準備され、医師、看護師、薬剤師が誤って入れ替えるケースで最も古典的なビンクリスチン髄注事故の事例である。世界では数多く報告されているビンクリスチン髄注事故の原因と1つ言われている。(2)は静注と髄注のシリンジのラベルを誤って逆に貼り付けたなどのケースであり、(3)は正しく調剤・ラベル貼りが正しくても実際の処置室で静注と髄注が同じトレイ上に存在し、医師がそれを取り違えて投与するケースである。(3)も(1)と同様に過去の事故では多い原因である。もっとも過去に何度も髄注事故が明らかになっているビンクリスチンの場合、現在はミニ点滴バッグに充填するのが一般的と言われる。これまで同センターの記者会見で記者の質問に対し、「髄注用シリンジはいわゆる静注シリンジとは別のもので、コネクターも違い、通常ではコネクトもできない状態になっているので、混入するということは通常ではなかなか考えにくい」と答えている。ただ、髄注、静注ともシリンジを利用していたとしても(1)~(3)のいずれも個人的には今回の原因と考えるのは難しい。というのも、どれも単純な偶発ミスといえ、同一施設で約9ヵ月間に3回も発生するようなものとは考えにくいからである。とくに(3)については、前述の通り、このような事故を防ぐために静注と髄注の実施日を変えることが現在では当たり前に行われているからである。(4)については、同じ作業台や器具を使用した場合、交差汚染が起こる可能性があり、個人的には過失の中でも最も有力視している原因である。同センター側はビンクリスチンとそのほか薬剤の調製は同じ安全キャビネットを使用し、調製時間をずらす形にしており、手順書上の問題はなかったとしている。一方で、同センター側内での関係者の聞き取り調査では「通常の手順と違ったことがあったか?」とダイレクトに聞いているだけであり、調製現場に監視カメラはないため、確実に手順書通りだったかは確認するすべがない。たとえばビンクリスチンを採取したシリンジを本来は廃棄すべきにもかかわらず、そのまま使って髄腔用の薬剤を調製した場合などには発生する可能性がある。ただ、この場合、今回の3例以外にも同センターでは過去にほかの髄注も行っているはずであり、薬剤部として手順書の順守が形骸化していたというよりは、特定の薬剤師個人の中で形骸化していたならばあり得ることだ。(5)は、静注薬と髄注薬を同日に調製、保管場所が近接、ダブルチェックの形骸化など、単一工程ではなく複数工程で問題が常態化していたならば、今回のように短期間で複数回の事故発生の可能性はある。もっとも2025年という特定時期に事故が集中的に発生している現実を考えれば、相当程度の属人性の考慮が必要である。いずれにせよこの件に関しては非常に理解しがたいことを前提に考えねばならない。事故調査委員会が原因と特定しきれないのも、率直に言ってしまえば、当たり前ではないことを前提に調査を進めなければならない点が大きな障害になっていると考えられる。この件については、すでに埼玉県立病院機構は3月段階で大宮警察署に今回の事案を届け出ており、最終的にはこの捜査結果も待たねばならない。それでも原因が特定できないとなると、謎は深まるばかりである。参考1)厚生労働省:埼玉県立小児医療センターの報道に関する対応状況について(報告)令和8年3月26日

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ivonescimab、進行扁平上皮NSCLCの1次治療でOSも延長(HARMONi-6)/Lancet

 未治療の進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、ivonescimab+化学療法はチスレリズマブ+化学療法と比較して全生存期間(OS)を有意に延長したことが、中国・上海交通大学のShun Lu氏らが同国の50施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「HARMONi-6試験」の事前規定の中間解析の結果で示された。HARMONi-6試験に関してはこれまでに、ivonescimab+化学療法がチスレリズマブ+化学療法と比較し、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが報告されていた(ジャーナル四天王「進行扁平上皮NSCLCの1次治療、ivonescimab併用がICI併用と比較しPFS改善(HARMONi-6)/Lancet」)。Lancet誌オンライン版2026年5月31日号掲載の報告。ivonescimab vs.チスレリズマブで、OSの中間解析を実施 HARMONi-6試験の対象は、年齢18~75歳、病理学的に確認された切除不能なStageIIIB/IIICまたはStageIVの扁平上皮NSCLCで、全身療法の治療歴がなく、ECOG PSが0または1の患者である。 研究グループは適格患者を、ivonescimab+化学療法群(ivonescimab群)またはチスレリズマブ+化学療法群(チスレリズマブ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化の層別因子は、臨床病期(StageIIIB/IIIC期vs.IV期)およびPD-L1発現(TPS≧1%vs.<1%)であった。 ivonescimab群ではivonescimab 20mg/kg、チスレリズマブ群ではチスレリズマブ200mgに加えて、いずれもカルボプラチン(AUC 5mg/mL/分)およびパクリタキセル(175mg/m2)を3週ごとに4サイクル静脈内投与し、その後維持療法として同用量のivonescimabまたはチスレリズマブを3週ごとに投与した。治療期間は最長24ヵ月、または試験責任医師の判断による臨床効果の消失、許容できない毒性の発現のいずれか早い時点までとした。 主要評価項目は、独立画像判定委員会(IRRC)の評価によるRECIST ver.1.1に基づくPFSであり、重要な副次評価項目がOSであった。有効性の解析対象集団は無作為化されたすべての患者、安全性の解析対象集団は無作為化され試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者とした。 重要な副次評価項目であるOSについては、中間解析1回および最終解析を行うこととされ、中間解析はOSイベントが約225件観察された時点で計画されていたが、規制当局の期限に合わせ204件に達した時点で実施された。したがって、中間解析の有意水準は片側0.0049であった。OS中央値はivonescimab群27.9ヵ月、チスレリズマブ群23.7ヵ月 2023年8月17日~2025年1月21日に761例がスクリーニングされ、適格基準を満たした532例が無作為化された(各群266例)。患者背景は、年齢中央値64歳(四分位範囲[IQR]:59~69)、男性494例(93%)、女性38例(7%)であった。 データカットオフ日の2026年2月27日時点(追跡期間中央値21.4ヵ月、95%信頼区間[CI]:20.27~21.91)で、204例の死亡が確認された。ivonescimab群が84例(32%)、チスレリズマブ群が120例(45%)であった。 OS中央値は、ivonescimab群27.9ヵ月(95%CI:27.89~評価不能[NE])、チスレリズマブ群23.7ヵ月(95%CI:20.11~NE)であり、死亡のハザード比は0.66(95%CI:0.50~0.87、片側p=0.0017)で、事前に規定された有意水準を満たした。 ivonescimab群のOS延長効果は、事前に規定されたサブグループ解析でもほぼ一貫していた。 Grade3以上の治療関連有害事象は、ivonescimab群で266例中184例(69%)、チスレリズマブ群で265例中156例(59%)に発現した。Grade3以上の治療関連出血は、それぞれ7例(3%)および2例(1%)に認められた。

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PD-L1陽性転移TN乳がん1次治療のSG+ペムブロリズマブ、PFS2と後治療までの期間を改善(ASCENT-04)/ASCO2026

 ASCENT-04試験において、PD-L1陽性の転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療で、サシツズマブ ゴビテカン(SG)+ペムブロリズマブが化学療法+ペムブロリズマブより無増悪生存期間(PFS)を改善したことがすでに報告されている。今回、PFS2と後治療について解析した結果、化学療法+ペムブロリズマブ群からSG単剤療法へのクロスオーバー率が高かったにもかかわらず、PFS2はSG+ペムブロリズマブ群で長く、長期的なベネフィットが持続することが示唆された。また、最初と2番目の後治療までの期間はどちらもSG+ペムブロリズマブ群で長かった。米国・Winship Cancer Institute of Emory UniversityのKevin Kalinsky氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:PD-L1陽性(CPS≧10)で未治療(根治治療の完了から6ヵ月以上経過)の局所進行切除不能/転移TNBC患者・試験群:SG(21日サイクルの1、8日目に10mg/kg点滴静注)+ペムブロリズマブ(21日サイクルの1日目に200mg)221例・対照群:化学療法(パクリタキセルもしくはnab-パクリタキセルもしくはゲムシタビン+カルボプラチン)+ペムブロリズマブ 222例、病勢進行後SG単剤への変更を許容・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]全生存期間、BICRによる奏効率・奏効期間、安全性、QOL[探索的評価項目]PFS2、最初の後治療までの期間(TFST)、2番目の後治療までの期間(TSST)など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2025年3月3日)時点で追跡期間中央値は14.0ヵ月であり、SG+ペムブロリズマブ群では43%、化学療法+ペムブロリズマブ群では23%が試験治療を継続していた。・治療中止例のうち何らかの後治療を受けたのは、SG+ペムブロリズマブ群が55%、化学療法+ペムブロリズマブ群が70%であった。SG+ペムブロリズマブ群では19%がADC(うち3例がSG)、化学療法+ペムブロリズマブ群では82%がADCの投与を受け、ほとんどがSGであった。両群共に3次治療を受けたのは14%と17%だった。・PFS2は、化学療法+ペムブロリズマブ群のクロスオーバー率が高いにもかかわらずSG+ペムブロリズマブ群で長く、PFS2中央値は、SG+ペムブロリズマブ群では未到達、化学療法+ペムブロリズマブ群で21.0ヵ月であり、層別ハザード比(HR)は0.67(95%信頼区間[CI]:0.48~0.95)であった。・TFST中央値はSG+ペムブロリズマブ群17.3ヵ月、化学療法+ペムブロリズマブ群9.8ヵ月であり、層別HRは0.59(95%CI:0.46~0.76)、TSST中央値はSG+ペムブロリズマブ群は未到達、化学療法+ペムブロリズマブ群21.0ヵ月であり、層別HRは0.82(95%CI:0.59~1.14)であった。 Kalinsky氏は、「これらの結果は、PD-L1陽性の転移TNBC患者の1次治療としてSG+ペムブロリズマブの併用投与をさらに支持するものである」と結んだ。

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HR+/HER2-進行乳がんに対するパクリタキセル+ベバシズマブへのアテゾリズマブ追加、PFSの改善みられず(JCOG1919E/AMBITION)/ASCO2026

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんは免疫学的に「cold」な腫瘍とされ、免疫チェックポイント阻害薬の臨床的有用性は限定的と位置付けられる。一方、VEGFを介した血管新生は免疫抑制的な腫瘍微小環境を促進するため、VEGF阻害により免疫抑制状態を解除し、免疫療法への応答を増強できると考えられる。こうした背景のもと、パクリタキセルおよびベバシズマブへのアテゾリズマブの上乗せ効果を検証する第III相JCOG1919E(AMBITION)試験が国内24施設で実施された。その主要解析結果を、愛知県がんセンターの原 文堅氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO 2026)で報告した。・対象:切除不能な局所進行・再発またはStageIVのHR+/HER2-乳がん患者(≧20歳、ECOG PS 0~2、内分泌療法抵抗性または生命を脅かす内臓転移あり[有症状の転移があり早急な腫瘍縮小により症状緩和が必要な状態]、進行がんに対する化学療法歴なし)・試験群(アテゾリズマブ追加群):28日サイクルでパクリタキセル(90mg/m2、1・8・15日目)+ベバシズマブ(10mg/kg、1・15日目)+アテゾリズマブ(840mg、1・15日目)投与 141例・対照群:28日サイクルでパクリタキセル+ベバシズマブ投与 140例・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性・データカットオフ:2025年9月15日 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はアテゾリズマブ追加群56.0歳vs.対照群57.0歳、PD-L1陽性(IC 1-3)は15.6%vs.16.4%、de novo症例が31.9%vs.34.3%、肝転移が67.4%vs.68.6%、CDK4/6阻害薬併用の内分泌療法歴ありが64.5%vs.62.1%、周術期の化学療法歴ありが42.6%vs.52.1%であった。・主要評価項目である治験責任医師評価によるPFS中央値は、アテゾリズマブ追加群12.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.3~15.2)、対照群が11.2ヵ月(95%CI:9.6~13.5)で、統計学的な有意差は認められなかった(層別ハザード比[HR]:0.876、95%CI:0.670~1.145、p=0.168)。・PD-L1発現状況別にみた治験責任医師評価によるPFS中央値は、IC 0ではアテゾリズマブ追加群13.6ヵ月vs.対照群11.3ヵ月(層別HR:0.826、95%CI:0.619~1.101)、IC 1-3では9.7ヵ月vs.8.4ヵ月(層別HR:1.018、95%CI:0.537~1.931)。・BICR評価によるPFS中央値は、アテゾリズマブ追加群16.7ヵ月vs.対照群13.8ヵ月であった(層別HR:0.919、95%CI:0.678~1.246、p=0.294)。・治験責任医師評価によるPFS中央値のサブグループ解析の結果、de novo症例、転移がんへのCDK4/6阻害薬歴なし、周術期化学療法歴なしの患者において、アテゾリズマブ追加群で良好な傾向がみられた。・OS中央値は、アテゾリズマブ追加群が39.1ヵ月、対照群が31.2ヵ月で、アテゾリズマブ追加群で数値上の改善傾向がみられたものの、統計学的な有意差は示されなかった(層別HR:0.804、95%CI:0.584~1.108、p=0.091)。12ヵ月OS率は85.8%vs.84.8%、24ヵ月OS率は71.6%vs.58.5%、36ヵ月OS率は51.2%vs.41.5%であった。・治験責任医師評価によるORRはアテゾリズマブ追加群73.0%vs.対照群71.9%、DOR中央値は12.0ヵ月vs.9.5ヵ月であった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はアテゾリズマブ追加群84.9%vs.対照群78.6%で発現した。アテゾリズマブ追加群では、皮疹(36.0%)、副腎機能不全(11.5%)、甲状腺機能低下症(10.8%)などの免疫関連有害事象が多くみられたが、多くは管理可能であり、既知の安全性プロファイルと一致していた。 原氏は今回の結果について、「HR+/HER2-進行乳がんに対するパクリタキセル+ベバシズマブへのアテゾリズマブの追加はPFSの統計学的に有意な改善を示さなかった。OSでの数値上の改善傾向はみられたものの、アテゾリズマブのルーチンな追加を支持する結果ではない」と結論付けている。なお、バイオマーカー探索のためのトランスレーショナル研究が予定されている。

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