小細胞肺がん1次治療の維持療法、タルラタマブ上乗せで1年OS率82%(DeLLphi-303)/WCLC2025

提供元:ケアネット

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公開日:2025/09/16

 

 PS0/1の進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)の標準治療は、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬であり、維持療法ではPD-L1阻害薬単剤の投与を継続する。PD-L1阻害薬+lurbinectedinによる維持療法の有用性を検討した「IMforte試験」では、維持療法開始時からの全生存期間(OS)中央値が併用群13.2ヵ月、PD-L1阻害薬単剤群10.6ヵ月と報告されており1)、アンメットニーズが存在する。そこで、PD-L1阻害薬単剤による維持療法にタルラタマブを上乗せする治療法が検討されている。世界肺がん学会(WCLC2025)において、ED-SCLCの1次治療の維持療法における、PD-L1阻害薬+タルラタマブの安全性・有効性を検討する国際共同第Ib試験「DeLLphi-303試験」の結果を米国・Providence Swedish Cancer InstituteのKelly G. Paulson氏が報告した。本試験において、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は報告されず、維持療法開始後のOS中央値25.3ヵ月、1年OS率82%と良好な治療成績が示された。本結果はLancet Oncology誌オンライン版2025年9月8日号に同時掲載された2)

試験デザイン:国際共同第Ib相試験
対象:1次治療としてプラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬を4~6サイクル実施後に病勢進行がみられず、維持療法への移行が可能であったED-SCLC患者88例
試験群1:タルラタマブ(10mg、2週ごと)+アテゾリズマブ(1,680mg、4週ごと) 48例
試験群2:タルラタマブ(同上)+デュルバルマブ(1,500mg、4週ごと) 40例
評価項目:
[主要評価項目]用量制限毒性、治療中に発現した有害事象(TEAE)、TRAE
[副次評価項目]全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)など
※:PD-L1阻害薬が使用できない場合は未使用も許容

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者の年齢中央値は64歳、男性の割合は63%、PS1の割合は59%であった。ベースライン時に脳転移、肝転移を有していた割合はそれぞれ25%、36%であった。1次治療開始から維持療法開始までの期間中央値は3.6ヵ月(範囲:2.9~5.8)であった。
・追跡期間中央値18.4ヵ月時点において、各薬剤の治療期間中央値は、タルラタマブ35週、アテゾリズマブ28週、デュルバルマブ31週であった。
・タルラタマブに関連するGrade3~4のTRAEの発現割合は27%であった。死亡に至ったTRAEは報告されなかった。
・TEAEとしてのCRSの発現割合は56%であった。そのうちの多くは、投与開始3ヵ月未満に発現した。ICANSの発現割合は6%であった。全例が投与開始3ヵ月未満に発現した。
・解析対象集団全体における維持療法開始時からのOS中央値は25.3ヵ月であり、1年OS率は82%であった。
・同様に、PFS中央値は5.6ヵ月であり、1年PFS率は34%であった。
・維持療法開始時を基準としたORRは24%、DOR中央値は16.6ヵ月であった。DCRは60%、病勢コントロール期間中央値は14.6ヵ月であった。

 本試験結果について、Paulson氏は「ED-SCLCの1次治療の維持療法において、PD-L1阻害薬へのタルラタマブ上乗せは、管理可能な安全性プロファイル、持続的な病勢コントロール、前例のないOSの改善を示した」とまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)