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腰痛へのアセトアミノフェンの効果に疑問/Lancet

 常用量および頓用量のアセトアミノフェン(オーストラリアでの一般名は「パラセタモール」、日本とは投与量が異なる)は腰痛の回復までの期間の短縮には効果がないことが、オーストラリア・シドニー大学のChristopher M Williams氏らが行ったPACE試験で示された。急性腰痛のガイドラインでは、第一選択の鎮痛薬としてアセトアミノフェンが広く推奨されているが、他の薬剤との比較では効果に差はないとされており、この推奨を直接的に支持する質の高いエビデンスはないという。Lancet誌オンライン版2014年7月24日号掲載の報告。疼痛改善効果をプラセボ対照無作為化試験で評価 PACE試験は、腰痛患者における常用量および頓用量のアセトアミノフェンの疼痛発現から回復までの期間の改善効果を検討する多施設共同二重盲検ダブルダミー・プラセボ対照無作為化試験。対象は、発症から6週間以内、疼痛が中等度~高度の初発の急性腰痛患者であった。 参加者は、アセトアミノフェン常用量群(3,990mg 分3/日)、頓用量群(疼痛緩和の必要に応じて最大4,000mg/日)またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、最長で4週間の治療が行われた。患者は最良のエビデンスに基づく助言を受け、3ヵ月間のフォローアップが実施された。 主要評価項目は、腰痛発症から回復までの期間とした。回復は、疼痛スコア(0~10)が0~1の期間が7日継続した場合と定義した。回復までの期間は16~17日、適切な助言が重要 2009年11月11日~2013年3月5日までに、シドニー市の235人のプライマリ・ケア医療従事者(医師181人、薬剤師50人、理学療法士4人)から1,652例が登録された。平均年齢は45歳で男性が53%であった。このうち適格基準を満たさなかった9例を除く1,643例(常用量群:550例、頓用量群:546例、プラセボ群:547例)が解析の対象となった。 12週時の持続的な回復の達成率は、常用量群が85%、頓用量群は83%、プラセボ群は84%であり、全体の有意差検定では群間に差を認めなかった(補正後p=0.79)。 回復までの期間中央値は、常用量群が17日、頓用量群も17日、プラセボ群は16日であった。常用量群とプラセボ群間のハザード比(HR)は0.99(95%信頼区間[CI]:0.87~1.14)、頓用量群とプラセボ群間のHRは1.05(同:0.92~1.19)、常用量群と頓用量群間のHRは1.05(同:0.92~1.20)であり、いずれも有意な差を認めなかった。 アドヒアランスに関する質問票で、推奨用量の70%以上を服薬したと答えた患者は、常用量群が51%、頓用量群も51%、プラセボ群は47%であった。治療2週までにレスキュー治療として非ステロイド性抗炎症薬ナプロキセンを服用した患者は、それぞれ<1%、1%、1%で、フォローアップ期間を通じて他の薬剤を使用した患者は20%、23%、23%であった。 有害事象の発現率は常用量群が18.5%、頓服量群は18.7%、プラセボ群は18.5%であった。治療に満足と答えた患者は、それぞれ76%、72%、73%であった。 疼痛の重症度、身体機能障害、全般的な症状、睡眠の質の低下、QOL(SF-12)などの副次評価項目も3群間に大きな差はみられなかった。 著者は、「常用量および頓用量のアセトアミノフェンは腰痛の回復期間を改善しなかった」とまとめ、「ガイドラインの本薬の推奨は再考を要する。他のコホートに比べると、本試験のすべての評価項目が改善していることから、腰痛の急性発作では薬物療法よりも、むしろ患者への適切な助言や不安を取り除いて安心感を与えることが重要と考えられる」と指摘している。

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変性脊椎すべり症の腰痛にPRF法が有効

 変性脊椎すべり症は、椎間関節由来の腰痛症の原因としてよく知られている。イラン・Shahid Beheshti University of Medical SciencesのMasoud Hashemi氏らは、変性脊椎すべり症患者における椎間関節性腰痛に対し、C神経線維への疼痛伝達を遮断するパルス高周波法(PRF)が、ステロイド+局所麻酔薬注射より腰痛軽減と機能改善に優れる可能性があることを示した。European Spine Journal誌オンライン版2014年7月6日号の掲載報告。 対象は、椎間関節性腰痛を有する変性脊椎すべり症患者80例で、PRF群およびステロイド群(トリアムシノロン+ブピバカイン)に無作為に割付けた。 治療開始3、6および12ヵ月後に、腰痛(数値的評価スケール〔NRS〕による)、Oswestry Disability Index(ODI)、満足度および鎮痛薬摂取量を評価した。 主な結果は以下のとおり。・PRF群では、ステロイド群と比較して6ヵ月後の腰痛が有意に軽度であった。・PRF群におけるODIは、治療前75.6±14.3%、6ヵ月後19.3±9.5%であった(p=0.001)。・ODIは、12週後および6ヵ月後においてPRF群がステロイド群より有意に低かったが(各評価時点でp=0.022およびp=0.03)、6週後は有意差を認めなかった(p=0.31)。・鎮痛薬を必要としなかった患者の割合は、PRF群で有意に高かった(log-rank検定によるp=0.001)。

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炎症性腸疾患患者における抗TNF-α薬と発がんリスクとの関連(解説:上村 直実 氏)-227

炎症性腸疾患(IBD)に対して、成分栄養を含む食事療法、サラゾピリン・メサラジン、ステロイド、免疫抑制薬、血球成分除去、外科的腸切除術など種々の治療が行われているが、最近では高い有用性が報告されている分子標的薬の抗TNF-α薬が頻用されている。抗TNF-α薬は発がんリスクを増大する可能性を指摘する報告もあったが、今回、デンマークにおけるIBD、ならびに、がん患者の全国レジストリを用いて施行された大規模コホート研究の結果、抗TNF-α薬投与は発がんリスクの増大と関連しないことがJAMAに報告された。 本研究の解析対象は1999~2012年のレジストリからIBDと特定された15歳以上の5万6,146例であり、抗TNF-α薬使用群は4,553例(8.1%)でクローン病54%、潰瘍性大腸炎46%、診断時年齢は33.7歳であった。主要評価項目は使用群と非使用群を比較したがん発症率比(RR)で、年齢、暦年、罹患期間、Propensity score、他のIBD薬使用に関する補正後に評価された結果、中央値3.7年の追跡期間で、使用群の非使用群に対する補正後RRは1.07(95%CI:0.85~1.36)であり、すべての部位における発がんリスクは抗TNF-α薬の使用期間や投与量とも関連を認めなかった。以上より、IBDに対する抗TNF-α薬の使用は発がんリスクを増加することはないと結論されている。 しかし、慢性関節リウマチ患者を対象としたRCTの結果では、抗TNF-α薬により発がんリスクが増大したとの報告がある。一方、本研究の結果では免疫抑制薬Azathioprineの併用群はがんのリスクが増大する可能性が示唆されている。したがって、抗TNF-α薬とAzathioprineを併用する患者に対してはがんの発症を念頭においた診療が必要であり、抗TNF-α薬と発がんリスクに関する結論は、今後、観察期間をさらに延長した研究結果が重要と思われる。

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睡眠時持続性棘徐波への対処は

 現在のところ睡眠時持続性棘徐波(CSWS)の治療に関して、エビデンスに基づくアプローチは文献で明らかにされていない。米国ハーバード・メディカル・スクールのIvan Sanchez Fernandez氏らは、CSWSの治療選択について、アメリカてんかん学会(AES)の会員を対象にアンケート調査を実施した。その結果、約8割が「顕著な睡眠-増強てんかん様活動に対して治療を行うべき」と回答し、第1選択薬として最も多く挙げられたのは高用量ベンゾジアゼピン(47%)で、次いでバルプロ酸(26%)、コルチコステロイド(15%)であったという。Epilepsia誌オンライン版2014年6月10日号の掲載報告。 本研究の目的は、北米のCSWS患者のケアにおける臨床医の治療選択を明らかにすることであった。CSWSに対する治療選択に関する24の質問からなる調査票をAESの会員に配布。調査票には臨床例を提示し、それに対する治療選択を問いかけた。自己記入方式を用いた、ウェブサイトによるオンライン調査とした。 主な結果は以下のとおり。・232例が質問票に全回答した。・顕著な波睡眠-増強に対し、「治療は妥当である」と回答したのは81%であった。・波睡眠-増強に対する有効な治療中に認知機能改善を認めた患者の割合について、「>75%」と回答した者が16%、「25~75%」が52%、「25%未満」が20%、そして「認知機能の変化なしまたは不明」とした者が12%であった。・睡眠-増強てんかん様活動の軽減に対する第1選択薬として挙げられたのは、高用量ベンゾジアゼピン(47%)、バルプロ酸(26%)、コルチコステロイド (15%)であった。・第2選択薬は、バルプロ酸(26%)、高用量ベンゾジアゼピン (24%)、コルチコステロイド(23%)であった。・高用量ベンゾジアゼピンとしての選択が多かったのは、ジアゼパム1mg/kg夜1回、以降0.5mg/kg/日であった。・バルプロ酸の用量で選択が多かったのは、30~49mg/kg/日であった。・同じくコルチコステロイドは、経口プレドニゾン2mg/kg/日であった。・最も一般的な有効性のエンドポイントは、多い順に、脳波(EEG)におけるてんかん様活動の反応性、認知機能、発作の減少であった。・回答者らの習熟度および臨床経験はさまざまであったが、本研究で得られた結果には一貫性がみられた。・神経科医の中でも扱う患者が小児または成人かで、方針および治療アプローチに相違がみられた。・大半の臨床医が、顕著な睡眠-増強てんかん様活動は治療すべきだと考えていた。最良の治療について見解の一致は得られていないが、高用量ベンゾジアゼピン、バルプロ酸、レベチラセタムおよびコルチコステロイドなどは有望な候補となることが示された。関連医療ニュース 難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か てんかんにVNSは有効、長期発作抑制効果も てんかん患者の50%以上が不眠症を合併  担当者へのご意見箱はこちら

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腰部脊柱管狭窄症へのステロイド併用/NEJM

 腰部脊柱管狭窄症に対し、グルココルチコイド+リドカイン硬膜外注射はリドカイン単独の硬膜外注射と比べて、ほとんどあるいはまったく短期的利益は得られなかったことが明らかにされた。米国・ワシントン大学のJanna L. Friedly氏らが、多施設共同二重盲検無作為化試験の結果、報告した。グルココルチコイド硬膜外注射は、腰部脊柱管狭窄症の治療に広く用いられているが、一方で高齢者の疼痛および障害を引き起こす頻度が高い。しかしその使用に関する有効性、安全性の厳密なデータは十分ではないのが現状であった。NEJM誌2014年7月3日号掲載の報告より。400例を併用群と単独群に無作為化し6週時点で有効性、安全性を評価 試験は2011年4月~2013年6月に、米国内16施設で被験者を募り行われた。2,224例がスクリーニングを受け、中心性腰部脊柱管狭窄症と中等度~重度の下肢疼痛および障害を有する患者400例を、グルココルチコイド+リドカイン硬膜外注射またはリドカイン単独硬膜外注射を受ける群に無作為に割り付け検討した。 患者は、主要アウトカム評価時(無作為化後または初回注射後6週時)までに1または2回の注射を受けた。 主要アウトカムは、Roland–Morris障害質問票スコア(RMDQ、スコア範囲0~24で高スコアほど身体障害が重度)、下肢疼痛強度(尺度0~10で、0は疼痛なし、10は“想定内では最大級の痛み”)であった。有効性、安全性ともに有意差みられず 6週時点で、RMDQスコア、下肢疼痛強度の評価ともに両群間に有意差はみられなかった。RMDQスコアについては、両群の平均治療効果の補正後の差は-0.1ポイント(95%信頼区間[CI]:-2.1~0.1、p=0.07)であり、下肢疼痛強度については、同-0.2ポイント(95%信頼区間[CI]:-0.8~0.4、p=0.48)であった。 同様に事前規定の注射タイプ別(経椎弓間vs. 経椎間孔)で層別化した副次サブグループ解析でも、6週時点の評価で有意差は認められなかった(RMDQスコアの相互作用p=0.73、下肢疼痛強度の相互作用p=0.99)。 1つ以上の有害事象を報告した患者の割合は、併用群21.5%、単独群15.5%だった(p=0.08)。患者当たり平均イベント数は、併用群のほうが多かった(p=0.02)。また注射タイプ別では、経椎間孔群のほうが経椎弓間群よりも高率だった。

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18歳までに発症のネフローゼ症候群、リツキシマブで再発抑制/Lancet

 小児期発症の難治性頻回再発型ネフローゼ症候群(FRNS)、ステロイド依存性ネフローゼ症候群(SDNS)に対する、リツキシマブ(商品名:リツキサン)の有効性および安全性が実証された。神戸大学大学院小児科学分野教授の飯島 一誠氏らが、48例の患者を対象に行った多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果で、リツキシマブ投与により、無再発期間は2倍以上延長したことが報告された。Lancet誌オンライン版2014年6月23日号掲載の報告より。リツキシマブ週1回投与を4週間、1年間追跡 飯島氏らは2008年11月13日~2010年5月19日にかけて、日本国内9病院で、FRNSまたはSDNSの2歳以上の患者を対象に試験を行った。被験者は、当初1~18歳時にネフローゼ症候群との診断を受けており、またスクリーニング時に再発の寛解後であった患者を適格とした。 年齢、治療施設、治療歴、これまでの再発までの3期間について補正後、被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはリツキシマブ(375mg/m2)週1回を4週間、もう一方の群にはプラセボをそれぞれ投与した。患者、保護者、ケア担当者、担当医、アウトカム評価者は割り付けを知らされなかった。 試験開始スクリーニング時点で、被験者全員に、再発の治療として標準的ステロイド治療を行った。試験開始169日後に、免疫抑制薬の投与を中止した。 追跡期間は1年で、主要評価項目は無再発期間だった。安全性のエンドポイントは、有害事象の頻度と重症度で評価した。無再発期間中央値はリツキシマブ群267日、プラセボ群101日 無作為化は52例が受け、48例が割り付けられた治療を受けた(リツキシマブ群24例、プラセボ群24例)。 結果、無再発期間の中央値は、プラセボ群で101日(95%信頼区間:70~155)だったのに対し、リツキシマブ群では267日(同:223~374)と、大幅な延長が認められた(ハザード比:0.27、同:0.14~0.53、p<0.0001)。 1つ以上の重篤な有害事象が認められたのは、リツキシマブ群10例(42%)、プラセボ群6例(25%)で、両群に有意差はみられなかった(p=0.36)。 結果を踏まえて著者は、「リツキシマブは、小児期発症のFRNSまたはSDNSに対して有効かつ安全な治療である」と結論している。

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GABAA受容体修正にアリール・ピラゾール誘導体

 イタリア・チッタデッラ大学のMaria Paola Mascia氏らは、異なる分子構造(柔軟vs.制約的)で特徴づけられ、リモナバントやAM251と化学的結びつきのある複数のアリール・ピラゾール誘導体について、GABAA受容体機能の修正能力を調べた。結果、その構造特性により、GABAA受容体で異なる活性を示すことが明らかにされた。2014年6月15日号(オンライン版2014年4月1日号)の掲載報告。 研究グループはアフリカツメガエルの卵母細胞を用いて、複数のアリール・ピラゾール誘導体の組換え型α1β2γ2LGABAA受容体機能を修正する能力を調べた。2電極電圧クランプ法を用いて、6Bio-R、14Bio-R、NESS 0327、GP1aとGP2a(0.3~30μM)の影響について評価が行われた。 主な結果は以下のとおり。・6Bio-R、14Bio-Rは、GABA誘発Cl-電流を強化した。・NESS 0327、GP1aとGP2aは、GABAA受容体機能に影響を及ぼさなかったが、6Bio-Rに対して拮抗作用を有した。さらにNESS 0327は、リモナバントによって引き起こされるGABAA受容体機能の強化を阻害した。・ベンゾジアゼピン結合部は、これら合成物の活性に関与するように思われた。・たとえば、フルマゼニルは6Bio-Rによって引き起こされるGABAA受容体機能の強化を拮抗させた。NESS 0327はロラゼパム、ゾルピデムの活性を低下させたが、その一方で、“典型的”なGABA作動性修飾物質(プロパノール、麻酔薬、バルビツール、ステロイド)の活性を拮抗させなかった。・α1β2受容体において6Bio-RはGABA作動性機能を強化したが、フルマゼニルは、6Bio-Rにより引き起こされる活性を拮抗することが可能であった。・GABAA受容体でのアリール・ピラゾール誘導体の活性は、それらの分子構造に依存する。これらの合成物は、αβγ結合部位、γサブユニットを伴わないα/β部位の両部位に結合しており、抗けいれん効果を有する可能性がある薬剤構造の提供につながる可能性がある。関連医療ニュース 統合失調症の病因に関連する新たな候補遺伝子を示唆:名古屋大学 抗認知症薬の神経新生促進メカニズムに迫る:大阪大学 統合失調症、双極性障害で新たに注目される「アデノシン作用」  担当者へのご意見箱はこちら

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潰瘍性大腸炎に対する導入療法におけるエトロリズマブの有用性:無作為対照化第Ⅱ相試験(コメンテーター:上村 直実 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(215)より-

潰瘍性大腸炎(UC)に対する新たな分子標的薬である抗α4β7/αEβ7インテグリン抗体エトロリズマブの有用性と安全性を検討した第Ⅱ相試験の結果である。従来の治療が無効であった中等症から重症のUC患者124例を対象として、プラセボ群とエトロリズマブ100mg群(2、4、8週に投与)および300mg群(0週に420mg、2、4、8週に300mg投与)の3群に無作為に割り付けたRCTの結果、10週時の臨床的寛解率は、プラセボ群が0%であったのに対し、エトロリズマブ100mg群は21%(8/39例、p=0.0040)、300mg群は10%(4/39例、p=0.048)であった。副作用の面では3群間で有意な差は認めていないことから、有用性と安全性から用量的にエトロリズマブ100mgが最適とされ、第Ⅲ相試験が予定されている。 UCは大腸粘膜における異常な免疫応答が特徴的な慢性炎症性疾患であり、現時点では、食事療法、サラゾピリン・メサラジン、ステロイド、免疫抑制薬、血球成分除去、外科的腸切除術など種々の治療を適切に用いて寛解時期をできるだけ長く保つことが重要とされている。高い有用性が報告されている分子標的薬の抗TNFα(インフリキシマブ・アダリムマブ)が頻用されるようになっているが、最近では効果を認めない症例が増加している。 エトロリズマブは接着因子α4β7インテグリンをターゲットとした分子標的薬であり、理論的には大腸粘膜内への炎症細胞導入を阻害することで過剰な免疫応答を抑制する新たなUC治療薬として期待される。 中等症から重症のUC患者に対してエトロリズマブが有用である可能性があり、長期的な有用性と安全性、とくに免疫面に関する副作用を検証する第Ⅲ相試験の結果が待たれる。しかし、高価な分子標的薬については有用性と安全性を担保するのみでなく、コスト・パーフォマンスを考慮した検証も必要と思われる。

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アセチルシステインは特発性肺線維症に“効く”のか?(コメンテーター:倉原 優 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(209)より-

特発性肺線維症に対する治療薬としてピルフェニドンが登場するまで、ステロイド、免疫抑制剤、アセチルシステイン(N-アセチルシステイン:NAC)は世界的に広く用いられていた(現在も汎用されているが)。ただ、これらの薬剤もその効果は限定的であり、現時点で特発性肺線維症に対する使用を強く推奨しているガイドラインは存在しない。ただ、それでもなお「これらの薬剤が少なくとも悪影響は与えることはないだろう」という思いが臨床医の胸の内にあった。ステロイドや免疫抑制剤による日和見感染などの合併症があったとしても、炎症・線維化を抑制する効果はそれを上回るベネフィットがあると考える研究者も少なくなかった。 2011年の秋のことだった。PANTHER-IPF試験の中止が報道された。プレドニゾロン、アザチオプリン、アセチルシステインの3治療併用試験がプラセボと比較して死亡率が多かったため中止されたというのだ1)。アセチルシステイン単独は死亡率超過に寄与したわけではなかったため、PANTHER-IPF試験の後、アセチルシステインとプラセボの2治療群の比較は続けられた。その比較結果を報告したのが今回の論文である。 その結果、残念ながら60週時点におけるアセチルシステインの努力性肺活量、死亡率、急性増悪の頻度に対する効果はプラセボと同等であった。悪影響はなかったものの、プラセボと大きく差がないことが示された。 これらの結果に鑑みると、現時点でステロイド、免疫抑制剤、アセチルシステインの併用だけでなく各々の単独使用にも臨床的な利益がない可能性が高い。世界的に広く用いられているステロイドや免疫抑制剤の使用についてはまだ議論の余地があるだろうが、いずれにしても劇的な効果があるとは考えにくい。 ピルフェニドンやニンテダニブといった新しい薬剤が登場して治療選択肢は広がったが、現場の医師はまだ歯がゆさを感じていることだろう。特発性肺線維症の治療のさらなる発展を願いたい。

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ニンテダニブは福音となりうるか?(コメンテーター:倉原 優 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(208)より-

ご存じのとおり特発性肺線維症は予後不良の進行性疾患であり、年単位、早い患者であれば、月単位で肺の線維化が進行する。これに対してこれまで数々の治療が試みられてきたが、実臨床でその効果を実感できるほどの治療薬が21世紀に入ってもまだ登場していないのが現状である。 この論文は特発性肺線維症に対するニンテダニブの効果を示した報告であり、ピルフェニドン(商品名:ピレスパ)に次いで実臨床にインパクトを与える内容である。 ニンテダニブ(以前のBIBF1120)は血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)を標的とするトリプル・キナーゼ阻害剤で、プラセボと比較して努力性肺活量の年間低下率を抑制できた第II相試験であるTOMORROW試験1)が記憶に新しい。これは432例の患者をニンテダニブ50mg1日1回、50mg1日2回、100mg1日2回、150mg1日2回、プラセボにランダムに割り付けたものである。ニンテダニブ150mg1日2回投与群において、プラセボ投与群と比較してFVC低下を68.4%抑制することができた。 この結果をもって、今回のINPULSIS-1およびINPULSIS-2試験が実施された。今回の論文によれば、プライマリエンドポイントである努力性肺活量の年間低下率はニンテダニブ群で有意に抑制された(INPULSIS-1試験:-114.7 vs.-239.9mL/年、INPULSIS-2試験:-113.6 vs.-207.3mL/年)。  腫瘍学に明るい読者は、当該治療薬が呼吸機能の低下の抑制というエンドポイントのみを達成するだけで全生存期間を改善していないことに、パワー不足を感じられるかもしれない。 しかしながら、特発性肺線維症のような合併症が多い予後不良疾患に対して、慢性的に使用する薬剤が生存期間や死亡率といったアウトカムに有意な効果をもたらすことを証明することはきわめて難しく、そういった第III相試験の実施には多大なコストとサンプルサイズを要する2) 。 現在、実臨床において頻繁に使用されているステロイド、免疫抑制剤といった多くの薬剤は特発性肺線維症の臨床試験においてその効果を証 明することができていない。その中でこういった新しい機序の薬剤は患者にとって希望の光となるかもしれない。

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喘息患者へのビタミンD3、治療失敗や増悪を改善しない/JAMA

 成人喘息患者に対するビタミンD3の投与は、ステップ1の吸入ステロイド薬治療の失敗や増悪を改善しなかったことが、米国・ワシントン大学のMario Castro氏らが行った無作為化試験VIDAの結果、示された。著者は「症候性の喘息患者に対するビタミンD3投与の治療戦略について、裏づけは得られなかった」とまとめている。喘息などの疾患において、ビタミンD不足と有害転帰との関連が示唆されている。しかし、経口ビタミンD3の摂取により、吸入ステロイド薬治療を受けているビタミンD不足の喘息患者のアウトカムが改善するかについては、明らかではなかった。JAMA誌2014年5月28日号掲載の報告より。全米9施設で、プラセボ対照試験 VIDA(Vitamin D Add-on Therapy Enhances Corticosteroid Responsiveness in Asthma)試験は、症候性喘息で、血清25ヒドロキシビタミンD値が30ng/mL未満であった成人患者を対象に、全米9施設[米国国立心肺血液研究所(NHLBI)喘息ネット関連の大学病院]で行われた無作為化二重盲検並行群間プラセボ対照試験。2011年4月から被験者の登録を開始し、吸入ステロイド薬など現行治療に関するrun-in期間後、408例が無作為化を受け、フォローアップは2014年1月に完了した。 無作為化された被験者は、吸入ステロイド薬のシクレソニド(商品名:オルベスコ)(320mg/日)+経口ビタミンD3(10万IUを1回、その後4,000 IU/日を28週間投与、201例)またはプラセボ(207例)の投与を受けた。 試験開始から12週時点で喘息コントロールを達成した患者は、シクレソニドを160mg/日とし8週間、その後もコントロールが維持された場合は80mg/日8週間に漸減した。 主要アウトカムは、喘息治療失敗初発までの期間で、肺機能低下、β2刺激薬や全身性ステロイド薬の投与、救急受診や入院で判定した。また、副次アウトカムには、増悪ほか14のアウトカムが事前に規定されていた。初回治療失敗率のハザード比は0.9、増悪は0.7 結果、28週間のビタミンD3治療は、初回治療失敗率を改善しなかった。ビタミンD3群28%(95%信頼区間[CI]:21~34%)、プラセボ群29%(同:23~35%)で、補正後ハザード比(HR)は0.9(同:0.6~1.3、p=0.54)であった。 副次アウトカムは9つの指標について分析した。そのうち増悪について、有意差はみられなかった(13%vs. 19%、HR:0.7、95%CI:0.4~1.2、p=0.21)。 唯一統計的有意差がみられたのは、コントロール維持のためのシクレソニドの全体投与量についてであり、ビタミンD3群111.3mg/日(95%CI:102.2~120.4mg/日)、プラセボ群126.2mg/日(同:117.2~135.3mg/日)で、両群差は14.9mg/日(同:2.1~27.7mg/日)とわずかであった。

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成人喘息増悪予防、ICS/LABA戦略が有効かつ安全/BMJ

 喘息増悪の予防において、低用量吸入ステロイド薬+長時間作動型β2刺激薬(ICS/LABA)治療戦略が最も有効で安全であることが、オランダ・アムステルダム大学のRik J B Loymans氏によるネットワークメタ解析の結果、報告された。解析では若干の不均一性はみられたが、ICS/LABA維持療法+リリーバー、もしくは固定用量/日のICS/LABA療法の2つが同程度に有効かつ安全であることが示された。結果を踏まえて著者は、「低用量吸入ステロイド薬では不十分な場合、これら2つの戦略の選択が好ましく、ステップアップ治療の根拠となりうる」と述べている。BMJ誌オンライン版2014年5月13日号掲載の報告。15の治療戦略とプラセボ介入データをネットワークメタ解析 喘息治療への長時間作動型β2刺激薬の追加は、吸入ステロイド薬を増量するよりも増悪予防において好ましいとされる。これまで、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)や同吸入ステロイド薬との合剤(ICS+LTRA)といった他の戦略と評価したいくつかのメタ解析は行われていたが、研究グループは、ネットワークメタ解析の手法を用いて、現在行われている維持療法戦略の有効性と安全性を比較した。 文献データの検索は、コクランシステマティックレビューにて行い、24週以上の維持療法について無作為化された喘息成人患者が参加しており、全文の中で喘息増悪が報告されていた試験を適格とした。 低用量吸入ステロイド療法を比較群として、主要有効性アウトカムは、重症の増悪発作の発生率とした。副次アウトカムは、中等度~重症の増悪発作率とした。また治療中断率を安全性のアウトカムとして評価した。 文献検索により解析には、15の治療戦略とプラセボを比較・追跡した64試験5万9,622人年のデータを組み込んだ。ICS/LABA以外の組み合わせ戦略は、吸入ステロイド薬に対する優越性示されず 分析の結果、重症増悪発作の予防の有効性は、ICS/LABA維持療法+リリーバーと固定用量/日のICS/LABA療法が同程度に最高位に位置づけられた。 低用量吸入ステロイド薬療法と比較して発生率比は、ICS/LABA維持療法+リリーバーが0.44(95%信頼区間[CI]:0.29~0.66)、固定用量/日のICS/LABA療法は0.51(同:(0.35~0.77)であった。 その他の組み合わせ治療戦略は、吸入ステロイド薬療法に対する優越性は示されず、すべての単剤治療は、低用量吸入ステロイド薬の単独療法に対して劣性であった。 安全性は、従来最善(ガイドラインベース)の診療で、維持療法+リリーバーの組み合わせが最も良好であった。

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腰椎変性疾患に対する内科的治療の真の実力は?

 現在、医療改革では処置や治療の減少が求められているが、腰椎すべり症、腰部脊柱管狭窄症および腰部椎間板ヘルニアに対する内科的治療による包括的管理は本当に有用なのだろうか。米国・ヴァンダービルト大学のScott L. Parker氏らは、単一の集学的な脊椎センターにおいて実臨床の前向き登録調査を行った。その結果、外科的治療の適応となる患者では内科的治療が疼痛、障害およびQOLの改善をもたらすことはなく、高コストであることを示した。著者は、今回の結果について「外科的治療の適応となる患者集団における保存療法の真の価値と有効性を反映している」とまとめている。Journal of Neurosurgery: Spine誌オンライン版2014年5月2日の掲載報告。 対象は、内科的治療を6週間行うも症状が持続し外科的治療の適応と考えられる、腰椎すべり症患者50例、腰部脊柱管狭窄症患者50例および腰部椎間板ヘルニア患者50例であった。登録後2年間、脊椎ステロイド注入、理学療法、筋弛緩薬、抗炎症薬および麻薬性経口薬による包括的管理を行った。 患者報告アウトカム、医療資源の利用および職業労働日数の損失などを前向きに収集し、メディケア診療報酬に基づいた直接および間接的な医療費を計算するとともに、健康状態の改善を評価した。 主な結果は以下のとおり。・椎間板ヘルニア患者の疼痛と障害、ならびに腰椎狭窄症患者の腰痛を除いて、腰痛、下肢痛、障害、QOL、うつおよび全体的健康状態の最大改善に統計学的有意差は認められなかった。・腰椎すべり症患者18例(36%)、腰部脊柱管狭窄症患者11例(22%)、腰部椎間板ヘルニア患者17例(34%)が、手術を必要とした。・すべての評価項目で2年間の改善は最低限臨床的に重要な差を達成できなかった。・2年間の医療費(直接+間接)は、脊椎すべり症患者6,606ドル、腰部脊柱管狭窄症患者7,747ドル、腰部椎間板ヘルニア患者7,097ドルであった。

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胆道閉鎖症への術後ステロイド治療は有益か/JAMA

 新生児の胆道閉鎖症に対する肝門部腸吻合術(葛西法)後に、ステロイド治療を行っても胆汁ドレナージについて有意な改善は得られないことが明らかにされた。米国・シンシナティ小児病院のJorge A. Bezerra氏らが行った多施設共同二重盲検プラセボ対照試験「STRAT」の結果、6ヵ月時点でのドレナージ改善について、若干の臨床的ベネフィットはみられたが統計的な有意差は示されず、ステロイド治療と重大有害事象の早期発生との関連が明らかになったことが報告された。胆汁ドレナージ改善のための術後のステロイド治療が、臨床アウトカムを改善するかについては議論の的となっていた。JAMA誌2014年5月7日号の掲載報告。術後72時間以内にステロイド治療開始vs.プラセボで検討 STRAT(Steroids in Biliary Atresia Randomized Trial)は、米国14施設で2005年9月~2011年2月に、胆道閉鎖症で葛西手術を受けた140例(平均2.3ヵ月齢)の患児が参加して行われた。最終フォローアップは2013年1月だった。 患児は、静注用メチルプレドニゾロン(4mg/kg/日を2週間)と経口プレドニゾロン(2mg/kg/日を2週間)による治療後9週間で漸減するプロトコル群(70例)、もしくはプラセボを投与する群(70例)に無作為に割り付けられた。ステロイド治療は術後72時間以内に開始された。 主要エンドポイントは、術後6ヵ月時点で肝臓に関して未治療であり血清総ビリルビン値が1.5mg/dL未満(治療絶対差25%を検出するための推奨)の患者の割合とした。副次エンドポイントは、24ヵ月時点の未治療生存、重大有害事象などとした。6ヵ月時点の胆汁ドレナージ改善に有意差なし 6ヵ月時点の胆汁ドレナージ改善について、両群間に統計的な有意差はみられなかった。主要エンドポイントを達成した患者の割合は、ステロイド治療群58.6%、プラセボ群48.6%で、補正後相対リスクは1.14(95%信頼区間[CI]:0.83~1.57、p=0.43)だった。補正後絶対リスク差は8.7%(95%CI:-10.4~27.7%)だった。 24ヵ月時点で移植手術を要することなく生存していた患児は、ステロイド治療群58.7%、プラセボ群59.4%だった(補正後ハザード比:1.0、95%CI:0.6~1.8、p=0.99)。 重大有害事象の発生率は、それぞれ81.4%、80.0%だったが(p>0.99)、ステロイド治療群のほうが、初発重大有害事象発生までの期間が有意に短く、術後30日までの同発生率は、37.2% vs. 19.0%だった(p=0.008)。

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肺炎・気管支喘息で入院した乳児が低酸素血症となって死亡したケース

小児科最終判決判例時報 1761号107-114頁概要2日前からの高熱、呼吸困難を主訴として近医から紹介された2歳7ヵ月の男児。肺炎および気管支喘息の診断で午前中に小児科入院となった。入院時の医師はネブライザー、輸液、抗菌薬、気管支拡張薬、ステロイドなどの指示を出し、入院後は診察することなく定時に帰宅した。ところが、夜間も呼吸状態は改善せず、翌日早朝に呼吸停止状態で発見された。当直医らによってただちに救急蘇生が行われ、気管支内視鏡で気管分岐部に貯留した鼻くそ様の粘調痰をとりのぞいたが低酸素脳症に陥り、9ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報気管支喘息やアトピーなどアレルギー性疾患の既往のない2歳7ヵ月男児。4歳年上の姉には気管支喘息の既往歴があった経過1995年1月24日38℃の発熱。1月25日発熱は40℃となり、喘鳴も出現したため近医小児科受診して投薬を受ける。1月26日早朝から息苦しさを訴えたため救急車で近医へ搬送。四肢末梢と顔面にチアノーゼを認め、β刺激薬プロカテロール(商品名:メプチン)の吸入を受けたのち総合病院小児科に転送。10:10総合病院(小児科常勤医師4名)に入院時にはチアノーゼ消失、咽頭発赤、陥没気味の呼吸、わずかな喘鳴を認めた。胸部X線写真:右肺門部から右下肺野にかけて浸潤影血液検査:脱水症状、CRP 14.7、喉にブドウ球菌の付着以上の所見から、咽頭炎、肺炎、気管支喘息と診断し、輸液(150mL/hr)、解熱薬アセトアミノフェン(同:アンヒバ坐薬)、メフェナム(同:ポンタールシロップ)、抗菌薬フルモキセフ(同:フルマリン)、アミノフィリン静注、ネブライザーメプチン®、気道分泌促進薬ブロムヘキシン(同:ビソルボン)、内服テレブタリン(同:ブリカニール)、アンブロキソール(同:ムコソルバン)、クロルフェニラミンマレイン(同:ポララミン)を指示した(容態急変まで血液ガス、経皮酸素飽和度は1回も測定せず)。10:30体温39.5℃、陥没気味の呼吸(40回/分)、喘鳴あり。11:15喘鳴強く呼吸苦あり、ステロイドのヒドロコルチゾン(同:サクシゾン)100mg静注。14:00体温36.7℃、肩呼吸(50回/分)、喘鳴あり。16:30担当医師は看護師から「喉頭部から喘鳴が聞こえる」という上申を受けたが、患児を診察することなく17:00に帰宅。19:30喉頭部の喘鳴と肩呼吸(50回/分)、夕食を飲み込めず吐き出し、内服薬も服用できず、吸入も嫌がってできない。22:00体温38.3℃、アンヒバ®坐薬使用。1月17日02:20体温38.1℃、陥没気味の呼吸(52回/分)、喘鳴あり。サクシゾン®100mg静注。06:30体温37.1℃、陥没気味の呼吸、咳あり。07:20ネブライザー吸入を行おうとしたが嫌がり、機器を手ではねつけた直後に全身チアノーゼが出現。07:30患児を処置室に移動し、ただちに酸素吸入を行う。07:40呼吸停止。07:55小児科医師が到着し気管内挿管を試みたが、喉頭部がみえにくくなかなか挿管できず。マスクによる換気を行いつつ麻酔科医師を応援を要請。08:10ようやく気管内挿管完了(呼吸停止後30分)、この時喉頭部には異常を認めなかった。ただちにICUに移動して集中治療が行われたが、低酸素脳症による四肢麻痺、重度意識障害となる。10:00気管支鏡で観察したところ、気管および気管支には粘稠な痰があり、とくに気管分岐部には鼻くそ様の固まりがみられた。10月26日約9ヵ月後に低酸素脳症により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張肺炎、気管支喘息と診断して入院し各種治療が始まった後も、頻呼吸、肩呼吸、陥没呼吸、体動、喘鳴がみられ呼吸障害は増強していたのだから、気管支喘息治療のガイドラインに沿ってイソプレテレノールの持続吸入を追加したり気管内挿管の準備をするべきであったのに、入院時の担当医師は入院後一度も病室を訪れることなく、午後5:00過ぎに帰宅して適切な指示を出さなかった。夜間帯の当直医師、看護師も、適切な病状観察、病態把握、適切な治療を怠ったため、呼吸不全に陥った。病院側(被告)の主張小児科病棟は主治医制ではなく3名の小児科医による輪番制がとられ、入院時の担当医師は肺炎、気管支喘息の患者に対し適切な治療を行って、起坐呼吸やチアノーゼ、呼吸音の減弱や意識障害もないことを確認し、同日の病棟担当医であった医師へきちんと申し送りをして帰宅した。その後も呼吸不全を予測させるような徴候はなかったので、入院翌日の午前7:00過ぎに突発的に呼吸不全に陥ったのはやむを得ない病態であった。裁判所の判断入院時の担当医師は、肺炎、気管支喘息の診断を下してそれに沿った注射・投薬の指示を出しているので、ほかの小児科医師に比べて格段の差をもって病態の把握をしていたことになる。そのため、小児科病棟では主治医制をとらず輪番制であったことを考慮しても、患者の治療について第一に責任を負うものであり、少なくとも夜間の当直医とのあいだで綿密な打ち合わせを行い、午後5:00に帰宅後も治療に遺漏がないようにしておくべきであった。ところが、入院後一度も病室を訪れず、経皮酸素飽和度を測定することもなく、ガイドラインに沿った治療のグレードアップや呼吸停止に至る前の気管内挿管の機会を逸し、容態急変から死亡に至った。患者側1億545万円の請求に対し6,950万円の判決考察1. 呼吸停止の原因について裁判では呼吸停止の原因として、「肺炎や気管支喘息に起因する気道閉塞によって、肺におけるガス交換が不十分となり呼吸不全に陥った」と判断しています。そのため、小児気管支喘息のガイドラインを引用して、「イソプロテレノールの持続吸入をしなかったのはけしからん、気道確保を準備しなかったのは過失だ」という判断へとつながりました。ところが経過をよくみると、容態急変後の気管支鏡検査で「気管および気管支には粘稠な痰があり、とくに気管分岐部には鼻くそ様の固まりがみられた」ため、気管支喘息の重積発作というよりも、粘調痰による気道閉塞がもっとも疑われます。しかも、当直医が気管内挿管に手間取り、麻酔科医をコールして何とか気管内挿管できたのは呼吸停止から30分も経過してからでした。要するに、痰がつまった状態を放置して気道確保が遅れたことが致命的になったのではないかと思われます。裁判ではなぜかこの点を重視しておらず、定時の勤務が終了し午後5:00過ぎに帰宅していた入院時の担当医師が(帰宅後も)適切な指示を出さなかった点をことさら問題としました。2. 主治医制をとるべきか当時この病院では部長医師を含む小児科医4名が常駐し、夜間・休日の当直は部長以外の医師3名で輪番制をとっていたということです。昨今の情勢を考えると、小児医療を取り巻く状況は大変厳しいために、おそらく4名の小児科医でもてんてこ舞いの状況ではなかったかと推測されます。入院時の担当医師は、肺炎、気管支喘息と診断した乳児に対し、血管確保のうえで輸液、抗菌薬、アミノフィリン持続点滴を行い、ネブライザー、各種内服を指示するなど、中~大発作を想定した気管支喘息に対する処置は行っています。それでも呼吸状態が安定しなかったので、ステロイドのワンショット静注を2回くり返しました。通常であれば、その後は回復に向かうはずなのですが、今回の患児は内服薬を嫌がってこぼしたり、ネブライザーの吸入をさせようとしてもうまくできなかったりなど、医師が想定した治療計画の一部は実施されませんでした。そして、当直帯は輪番制をとっていることもあって、入院時にきちんとした指示さえ出しておけば、後は当番の病棟担当医がみてくれるはずだ、という認識であったと思われます。そのため、11:00過ぎの入院から17:00過ぎに帰宅するまで6時間もありながら(当然その間は外来業務を行っていたと思いますが)一度も病室に赴くことなく、看護師から簡単な報告を受けただけで帰宅し、自分の目で治療効果を確かめなかったことになります。もし、帰宅前に患者を診察し、呼吸音を聴診したり経皮酸素飽和度を測るなどの配慮をしていれば、「予想以上に粘調痰がたまっているので危ないぞ」という考えに至ったのかも知れません。ところが、本件では血液ガス検査は行われず、急性呼吸不全の徴候を早期に捉えることができませんでした。そして、裁判でも、「入院時の担当医師はほかの小児科医師に比べて格段の差をもって病態の把握をしていたため、小児科病棟では主治医制をとらず輪番制であったことを考慮しても、患者の治療について第一に責任を負うものであり、少なくとも夜間の当直医とのあいだで綿密な打ち合わせを行い、午後5:00に帰宅後も治療に遺漏がないようにしておくべきであった」という、耳が痛くなるような判決が下りました。ここで問題となるのが、主治医制をとるべきかどうかという点です。今回の総合病院のように、医師個人への負担が大きくならないようにグループで患者をみる施設もありますが、その弊害としてもっとも厄介なのが無責任体制に陥りやすいということです。本件でも、裁判では問題視されなかった輪番の小児科当直医師が容態急変前に患者をみるべきであったのに、申し送りが不十分なこともあってほとんど関心を示さず、いよいよ呼吸停止となってからあわてて駆けつけました。つまり、入院時の担当医師は「5:00以降はやっと業務から解放されるので早く帰宅しよう」と考えていたでしょうし、当直医師は「容態急変するかも知れないなんて一切聞いてない。入院時の医師は何を考えているんだ」と、まるで責任のなすりつけのような状況ではなかったかと思われます。そのことで損をするのは患者に他なりませんから、輪番制をとるにしても主治医を明確にしておくことが望まれます。ましてや、「輪番制であったことを考慮しても、(入院指示を出した医師が)患者の治療について第一に責任を負う」という厳しい判決がおりていますので、間接的ではありますが裁判所から「主治医制をとるべきである」という見解が示されたと同じではないかと思います。小児科

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疼痛解消に、NSAIDsと胃粘膜保護薬の配合剤登場が待たれる?

 胃粘膜保護薬は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)およびアスピリンの長期投与による合併症および死亡率を減少させることが知られているが、英国・オックスフォード大学のRobert Andrew Moore氏らによるレビューの結果、筋骨格系疾患では非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の効果が不十分な患者がいることや、胃粘膜保護薬が必ずしも併用されていないことが示唆された。著者は、NSAIDsと胃粘膜保護薬の配合剤が1つの解決策となる、とまとめている。Pain Practice誌2014年4月号(オンライン版2013年8月13日号)の掲載報告。 研究グループの目的は、NSAIDsおよびNSAIDs起因性消化管傷害に対する保護薬のベネフィットとリスクを評価することであった。 PubMed(2012年12月までの発表論文)およびGoogle Scholarを用い、NSAIDsの有効性、疼痛軽減のベネフィット、胃粘膜保護の治療戦略、胃粘膜保護薬のアドヒアランス、NSAIDsならびに胃粘膜保護薬の重篤な有害事象に関する論文を検索し、関連論文や引用論文も含めて解析した。 主な結果は以下のとおり。・患者が必要としていることは、疼痛強度を半分に軽減することと、疲労・苦痛・QOLの改善であった。・筋骨格系疾患に対するNSAIDsの鎮痛効果は、二峰性の分布を示した。・プロトンポンプ阻害薬(PPI)と高用量ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)の胃粘膜保護効果は類似しており、高用量H2RAよりPPIのほうが有効であるという決定的なエビデンスはなかった。・2005年以降に発表された研究において、NSAIDsと胃粘膜保護薬の併用に関する指針に対するアドヒアランスは、処方者が49%、患者はほぼ100%であった。・長期間にわたる高用量PPIの使用は、骨折などの重篤な有害事象のリスクの増加と関連していた。

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心臓カテーテル検査によって脳血管障害を来し死亡したケース

循環器最終判決判例タイムズ 824号183-197頁概要胸痛の精査目的で心臓カテーテル検査が行われた61歳男性。検査中に250を超える血圧上昇、意識障害がみられたため、ニトログリセリン、ニフェジピン(商品名:アダラート)などを投与しながら検査を続行した。検査後も意識障害が継続したが頭部CTでは出血なし。脳梗塞を念頭においた治療を行ったが、検査翌日に痙攣重積となり、気管切開、人工呼吸器管理となった。検査後9日目でようやく意識清明となり、検査後2週間で一般病室へ転室したが、その直後に消化管出血を合併。輸血をはじめとするさまざまな処置が講じられたものの、やがて播種性血管内凝固症候群、多臓器不全を併発し、検査から19日後に死亡した。詳細な経過患者情報高血圧、肥満、長期の飲酒歴、喫煙歴、高脂血症、軽度腎障害を指摘されていた61歳男性経過1983年1月12日胸がモヤモヤし少し苦しい感じが出現。1月18日胸が重苦しく圧迫感あり、近医を受診して狭心症と診断され、ニトログリセリンを処方された。1月26日某大学病院を受診、胸痛の訴えがあり狭心症が疑われた。初診時血圧200/92、心電図は正常。2月2日血圧160/105、心電図では左室肥大。3月初診から1ヵ月以上経過しても胸痛が治まらないので心臓カテーテル検査を勧めたが、患者の都合により延期された。9月胸痛の訴えあり。10月同様に胸痛の訴えあり。1983年5月25日左手親指の痺れ、麻痺が出現、運動は正常で感覚のみの麻痺。7月8日脳梗塞を疑って頭部CTスキャン施行、中等度の脳萎縮があるものの、明らかな異常なし。1985年9月血圧190/100、心電図上左軸偏位あり。1986年7月健康診断の結果、肥満(肥満度26%)、心電図上の左軸偏位、心肥大、動脈硬化症などを指摘され、「要精査」と判断された。冠状動脈の狭窄を疑う所見がみられたので、担当医師は心臓カテーテル検査を勧めた。9月17日心臓カテーテル検査目的で某大学病院に入院。9月18日12:30検査前投薬としてヒドロキシジン(同:アタラックス-P)50mg経口投与。検査開始前の血圧158/90、脈拍71。13:30血圧154/96。右肘よりカテーテルを挿入。13:48右心系カテーテル検査開始(肺動脈楔入圧、右肺動脈圧)。13:51心拍出量測定。13:57右心系カテーテル検査終了。この間とくに訴えなく異常なし。14:07左心系カテーテル検査開始、血圧169/9114:13左心室圧測定後間もなく血圧が200以上に上昇。14:21血圧232/117、胸の苦しさ、顔色口唇色が不良となる。ニトログリセリン1錠舌下。14:27血圧181/111と低下したので検査を再開。14:28左冠状動脈造影施行(結果は左冠状動脈に狭窄なし)、血圧は150-170で推移。左冠状動脈造影直後に約5.1秒間の心停止。咳をさせたところ脈は戻ったが、徐脈(45)、傾眠傾向がみられたので硫酸アトロピン0.5mg静注。血圧171/10214:36左心室撮影。血圧17514:40左心室のカテーテルを再び大動脈まで戻したところ、再度血圧上昇。14:45血圧253/130、アダラート®10mg舌下。14:50血圧234/12314:56血圧220程度まで低下したので、右冠状動脈造影再開。14:59血圧183/105。右冠状動脈造影終了(25~50%の狭窄病変あり)、直後に約1.8秒の心停止出現。15:01検査終了後の血管修復中に血圧230/117、ニトログリセリン4錠舌下。15:04カテーテル抜去、血圧224/11715:30検査室退室。血圧150/100、脈拍77、呼びかけに対し返答はするものの、すぐに眠り込む状態。15:40病室に帰室、血圧144/100、うとうとしていて声かけにも今ひとつ返答が得られない傾眠状態が継続。19:00呼名反応やうなずきはあるがすぐに閉眼してしまう状態。検査から3時間半後になってはじめて脳圧亢進による意識障害の可能性を考慮し、脳圧降下薬、ステロイド薬の投与開始。9月19日08:00左上肢屈曲位、傾眠傾向が継続したため頭部CT施行、脳出血は否定された。ところが検査後から意識レベルの低下(呼名反応消失)、左上肢の筋緊張が強くなり、左への共同偏視、左バビンスキー反射陽性がみられた。15:00神経内科医が往診し、脳塞栓がもっとも疑われるとのコメントあり。9月20日全身性の痙攣発作が頻発、意識レベルは昏睡状態となる。気管切開を施行し、人工呼吸器管理。痙攣重積状態に対しチオペンタールナトリウム(同:ラボナール)の持続静注開始。9月24日痙攣発作は消失し、意識レベルやや改善。9月27日ほぼ意識清明な状態にまで回復したが、腎機能の悪化傾向あり。9月30日人工呼吸器より離脱。10月3日09:30状態が改善したためICUから一般病室へ転室となる。13:00顔面紅潮、意識レベルの低下、大量の消化管出血が出現。10月4日上部消化管内視鏡検査施行、明らかな出血源は指摘できず、散在性出血がみられたためAGML(急性胃粘膜病変)と診断された。ところが、その後肝機能、腎機能の悪化、慢性膵炎の急性増悪、腎不全などとともに、血小板数の低下、フィブリノーゲンの著明な減少などからDICと診断。10月8日15:53全身状態の急激な悪化により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.心臓カテーテル検査の適応検査前に狭心症に罹患していたとしても軽度なものであり、心臓カテーテル検査を行う医学的必要性はなかった。また、検査の3年前から脳梗塞の疑いがもたれていたにもかかわらず、脳梗塞の症状がある患者にとってはきわめて危険な心臓カテーテル検査を行った2.異常高血圧にもかかわらず検査を中止しなかった過失250を越える異常な血圧の上昇を来した時点で、事故の発生を未然に防止するために検査を中止すべき注意義務があったのに、検査を強行した3.神経内科の診察を早期に手配しなかった過失検査終了時点で意識障害があり、脳塞栓が疑われる状況であったのに、神経内科専門医の診察を依頼したのは検査後24時間も経過してからであり、適切な処置が遅れた4.死因医学的に必要のない検査を行ったうえに、検査中の脳梗塞発症に気付かず検査を続行し、検査後もただちに専門医の診察を依頼しなかったことが原因で、最終的には胃出血によるDICおよび多臓器不全により死亡に至ったものである病院側(被告)の主張1.心臓カテーテル検査の適応患者には胸痛のほか、高血圧、肥満、長期の飲酒歴、喫煙歴、高脂血症、軽度腎障害などの冠状動脈狭窄を疑わせる所見が揃っており、冠状動脈を精査し、手術なり薬剤投与なりを開始することが治療上不可欠であった。脳梗塞については、検査の3年前に施行した頭部CTスキャンで異常はなく、自覚症状としてみられた左手親指、人差し指の感覚障害は末梢神経または神経根障害と考えられ、改めて脳梗塞を疑うべき症状は認められなかった2.異常高血圧にもかかわらず検査を中止しなかった過失心臓カテーテル検査中に最高血圧が230-250になるのは臨床上起こり得ることであり、血圧上昇時には必要に応じて降圧薬を投与し、経過を観察しながら検査を継続するものである。そして、200以上の血圧上昇がもつ意味は患者によって個体差があり、普段の血圧が170-190くらいであった本件の場合には検査時のストレスによって血圧が200以上になっても特別に異常な反応ではない3.神経内科の診察を早期に手配しなかった過失検査後に意識レベルが低下し、四肢硬直がおきたため脳梗塞、脳幹部循環障害などの可能性を考え、治療を開始するとともに神経内科などに相談しながら、最良の治療を行った4.死因死因は脳病変に基づくものではなく、意識障害が回復した後の消化管出血によるDIC、および多臓器不全に伴った心不全である。この消化管出血にはステロイド薬の使用、ストレスなどが関与したものであるが、抗潰瘍薬の投与などできるだけ予防策は講じていたのであるから、やむを得ないものであった裁判所の判断1. 心臓カテーテル検査の適応患者には検査前から高血圧、肥満、長期の喫煙歴、軽度の腎障害など、虚血性心疾患の危険因子のうちいくつかが明らかに存在し、さらに心電図で左室肥大および左軸偏位が認められ、胸痛という自覚症状もあったので、狭心症を疑って心臓カテーテル検査を行ったことに誤りはない。さらに急性期の脳梗塞患者、発症直後の脳卒中患者には冠状動脈造影を行ってはならないとされているが、本件の場合には検査前に急性期の脳梗塞が疑われるような症状はないので、心臓カテーテル検査を差し控えなければならないとはいえない。2. 異常高血圧にもかかわらず検査を中止しなかった過失250を越える異常な血圧の上昇がみられた時点で、検査のストレスによる血圧上昇だけでは説明できない急激な血圧の上昇であることに気付き、脳出血を主とする脳血管障害発生の可能性を考え、検査を中止するべきであった。さらに検査で用いた76%ウログラフィン®(滲透圧の高い造影剤)のため、脳梗塞によって生じた脳浮腫をさらに増強させる結果になった。3. 神経内科の診察を早期に手配しなかった過失検査終了後は、ただちに専門の神経内科医に相談するなどして合併症の治療を開始するべきであったのに、担当医らが脳血管障害の可能性に気付いたのは、検査終了から3時間半後であり、その間適切な治療を開始するのが遅れた。4. 死因脳梗塞が発症したにもかかわらず、検査を続行したことによって脳浮腫が助長され、意識障害が悪化した。さらに検査終了後もただちに適切な処置が行われなかったことが、胃からの大量出血を惹起し死亡にまで至らしめた大きな原因の一つになっている。原告側合計8,276万円の請求に対し4,528万円の判決考察心臓カテーテル検査に伴う死亡率は、1970年代までは多くの施設で1%を越えていましたが、技術の進歩とヘパリン使用の普及により、現在は0.1~0.3%の低水準に落ち着いています。また、心臓カテーテル検査に伴う脳血管障害の合併についても、0.1~0.2%の低水準であり、「組織だった抗凝固処置」によって大部分の脳血管系の事故が防止できるという考え方が主流になっています。カテーテル検査中に脳塞栓を生じる機序としては、(1)カテーテルによって動脈硬化を起こした血管に形成された壁在血栓が剥離されて飛ばされ、脳の血管に流れた結果脳梗塞を生じる(2)カテーテルの周囲に形成された血栓またはカテーテルのなかに形成された血栓が飛ばされ、脳の血管に移行して脳梗塞を生じる(3)粥状硬化、動脈硬化を起こした血管の粥腫(アテローム)がカテーテルによって剥離されて飛ばされ、脳の血管に流された結果脳梗塞を生じるの3つが想定されています。これに対する処置としては、(1)十分なヘパリン投与を行った患者においても、カテーテルのフラッシュは十分注意しかつ的確に行うこと(2)ガイドワイヤーは使用する前に十分に拭い、血液を付着させないこと(3)ガイドワイヤーを入れたままのカテーテル操作は、1回あたり2分以内にとどめること(2分経過後はガイドワイヤーを必ず抜き出して拭い、再度ガイドワイヤーを用いる時はカテーテルをフラッシュする)(4)リスクの高い患者では不必要にカテーテルやガイドワイヤーを頸動脈や椎骨脳底動脈に進めないなどが教科書的には重要とされていますが、現在心臓カテーテル検査を担当されている先生方にとってはもはや常識的なことではないかと思います。つまり本件では、心臓カテーテル検査中に発症した脳血管障害というまれな合併症に対し、どのように対処するべきであったのか、という点が最大のポイントでした。裁判所の判断では、心臓カテーテル検査中に「血圧が250以上に上昇した時点ですぐに検査を中止せよ」ということでしたが、循環器内科医にとってすぐさまこのような判断をすることは実際的ではないと思います。ここで問題となるのが、(1)コントロールはこれでよかったか(2)障害の可能性を念頭に置いていたかという2点にまとめられると思います。この当時の状況を推測すると、大学病院の循環器内科に入院して治療が行われていましたので、1日に数件の心臓カテーテル検査が予定され、全例を何とか(無事かつ迅速に)こなすことに主眼がおかれていたと思います。そして、検査中にみられた高血圧に対しては、とりあえずニトログリセリン、アダラート®などを適宜使用するのがいわば常識であり、通常のケースであれば何とか検査を終了することができたと思います。にもかかわらず、本件では降圧薬使用後も250を越える高血圧が持続していました。この次の判断として、血圧は高いながらも一見神経症状はなく大丈夫そうなので検査を続行してしまうか、それとも(少々面倒ではありますが)ニトログリセリン(同:ミリスロール)などの降圧薬を持続静注することによって血圧を厳重にコントロールするか、ということになると思います。結果的には前者を選択したために、裁判所からは「異常高血圧を認めた時点で検査中止するのが正しい」と判断されました。日常の心臓カテーテル検査では、時に200を超える血圧上昇をみることがありますが、ほとんどのケースでは無事に検査を終了できると思います。さらに、心臓カテーテル検査中に脳梗塞へ至るのは1,000例ないし500例に1例という頻度ですから、当時の状況からして、急いで微量注入器を準備して降圧薬の持続静注をするとか、血圧が安定するまでしばらく様子をみるなどといった判断はなかなか付きにくいのではないかと思います。しかし、本件のように心臓カテーテル検査中に脳血管障害が発症しますと、あとからどのような抗弁をしようとも、「異常高血圧に対して適切な処置をせず検査を強行するのはけしからん」とされてしまいますので、たとえ時間がかかって面倒に思っても、厳重な血圧管理をしなければあとで後悔することになると思います。次に問題となるのが、心臓カテーテル検査中に生じた「少々ボーっとしている」という軽度の意識障害をどのくらい重要視できたかという点です。後方視的にみれば、誰がみてもこの時の意識障害が脳梗塞に関連したものであったことがわかりますが、当時の担当医は「検査前投薬の影響が残っていて少しボーっとしているのであろう」と考えたため、脳梗塞発症を認識したのは検査から3時間半も経過したあとでした。前述したように、心臓カテーテル検査で脳梗塞を合併するのは1,000例ないし500例に1例という頻度ですから、ある意味では滅多に遭遇することのないリスクともいえます。しかし、日常的にこなしている(安全と思いがちな)検査であっても、どこにジョーカーが潜んでいるのか予測はまったくつかないため、本件のような事例があることを常に認識することによって早めの処置が可能になると思います。本件でも脳梗塞発症の可能性をいち早く念頭においていれば、たとえ最悪の結果に至ってしまっても医事紛争にまでは発展しなかった可能性が十分に考えられると思います。判決文全体を通読してみて、今回この事例を担当された先生方は真摯に医療の取り組まれているという印象が強く、けっして怠慢であるとか、レベルが低いなどという次元の問題ではありません。それだけに、このような医事紛争へ発展してしまうのは大変残念なことですので、少しでも侵襲を伴う医療行為には「最悪の事態」を想定しながら臨むべきではないかと思います。循環器

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10年ぶりの改訂 「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン」のポイントは?

 2014年4月17日(木)、東京都千代田区で、日本骨代謝学会により10年ぶりの改訂となる「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン」に関するプレスセミナーが開催された。 はじめに、日本骨代謝学会の理事長である田中 良哉氏(産業医科大学医学部第1内科学講座)が、2004年度版の課題として、骨密度測定とレントゲンが必要であったため、その遵守率が20%程度にとどまっていたことを挙げた。そのうえで、今回の改訂について、骨密度測定やレントゲンを行わない場合でも、ある程度の骨折リスクを評価できるようになった点が大きな特徴である、とした。『ステロイド性骨粗鬆症について、なぜ管理が必要か』 次に、近畿大学医学部奈良病院 整形外科・リウマチ科の宗圓 聰氏が講演した。冒頭で、宗圓氏により、ステロイド性骨粗鬆症は続発性骨粗鬆症のなかでも頻度が高く、骨折リスクがきわめて高い疾患であるとことが述べられた。 骨は常に「吸収」と「形成」が繰り返されている。閉経後骨粗鬆症においては、骨吸収と骨形成が同時に促進する高代謝回転という状態にあるが、ステロイド性骨粗鬆症では、骨を形成する速さよりも骨が吸収される速さが上回っている状態であるため、原発性骨粗鬆症よりも悪影響が大きいという。 ステロイド性骨粗鬆症は、(1)若年、(2)骨密度が高い、(3)既存の骨折がない、(4)男性のようなケースであっても骨折リスクが高まる点に注意が必要である。 ステロイドによる骨折リスクはその投与量に依存的に増加する。プレドニゾロン換算で1日7.5mg以上投与すると、椎体骨折率は5倍を超えるとされているが、1日投与量が2.5mg未満であっても、椎体骨折のリスクは1.55倍になるという1)。このことから、ステロイド投与量に安全域はなく、ステロイドを投与する際には低用量でも骨粗鬆化を念頭に置く必要があるとした。 さらに、ステロイド性骨粗鬆症では、その進行の速さも特徴である。実際、ステロイドの投与初期から骨折リスクが上がり、投与後3~6ヵ月でピークに達すると報告されている2)。投与中止により骨密度は回復するが、骨折リスクは数年間、回復しないことも指摘されている。このようなことから、ステロイドの投与と同時に骨粗鬆症の治療に介入する必要があるといえる。 骨折、とくに大腿骨近位部骨折や椎体骨折は死亡率が高いため、ステロイド投与例においては骨折を起こさないよう、確実に骨折を予防できる手を打つことが何より重要である、と述べた。『2014年版ガイドライン改訂のポイント』 次いで、東海大学医学部 内科学系リウマチ内科学の鈴木 康夫氏により、本ガイドラインの変遷や改訂に至った背景、改訂ポイントなどが公表された。 今回の改訂は、海外ではなく、あくまでわが国のステロイド性骨粗鬆症のコホート解析により独自の骨折危険因子を抽出し、その結果をもとに薬物療法開始の基準判定に初めてスコア法を導入している点が特徴だという。さらに、このスコア法は、種々の基礎疾患、低用量から高用量のステロイド治療、1次予防と2次予防のいずれの場合でも対応できる点がポイントである。 とくに、「既存骨折あり」、「年齢65歳以上」、「ステロイド投与量7.5mg/日以上」、「腰椎骨密度70%未満」である場合、これらは単一でも高い危険因子であるため、どれか1つでも満たされる場合を治療開始の目安とする。低骨密度以外の因子がある場合は、骨密度測定値がなくても治療開始の判断ができる。さらに、複数の危険因子のスコアの合計で評価することにより、単一因子では評価できない複合的なリスクも評価できるようになっている。 薬物療法の推奨は、国内で骨粗鬆症治療薬として承認されている薬剤の中から、骨密度減少と骨折抑制の効果があり、かつ1次予防と2次予防の両方において有効性が確認されている薬剤が優先されている。具体的には、アレンドロネートおよびリセドロネートが推奨度Aで第1選択薬として推奨されており、これらが使用できないときの代替薬として、イバンドロネート、アルファカルシドール、カルシトリオール、遺伝子組み換えテリパラチドが推奨度Bで推奨されている。 セミナーの最後に、田中氏は「ステロイド骨粗鬆症は医師が自らの手で処方したステロイドで骨粗鬆症が起こる可能性がある。だからこそ、処方した医師がしっかりと管理と治療をする必要がある」と述べ、「さまざまな診療科の、より多くの医師にこのガイドラインを活用してほしい」と締めくくった。 なお、本ガイドラインの和文概略版は近日、日本骨代謝学会のホームページで公開される予定である。1) Van Staa TP, et al. J Bone Miner Res. 2000; 15: 993-1000. 2) Cohen D, et al. J Steroid Biochem Mol Biol. 2004; 88: 337-349.

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重症アトピー性皮膚炎にステロイド外用剤ウェットラップ療法は有効な選択肢

 重症アトピー性皮膚炎(AD)に対して、少なくとも4週間にわたる、ステロイド外用剤を塗布後にラップで覆う「ウェットラップ療法(WWT)」は有効な治療選択肢であることが明らかにされた。オランダ・エラスムス大学医療センターのSherief R. Janmohamed氏らが、前向き無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。WWTは、小児の重症ADに対する有効な治療となることが支持され、しばしばADの緊急処置として用いられるようになっていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2014年3月31日号の掲載報告。 研究グループは、ステロイド外用剤WWT(治療期間4週間で塗布量を徐々に減量)について評価する無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。被験者は、6ヵ月齢~10歳までの小児で、重症AD(SCORADスコア40±5以上)であった。 被験者をステロイド外用剤WWT群(1:3モメタゾンフランカルボン酸0.1%軟膏、顔面については1:19モメタゾンフランカルボン酸0.1%軟膏)、または皮膚軟化薬WWT群(ワセリン20%入りクリーム)に無作為に割り付けて評価した。 主要アウトカムは、SCORADの改善。副次アウトカムは、Patient-Oriented Eczema Measure評価やQOL指数などであった。 主な結果は以下のとおり。・ステロイド外用剤WWT群は、皮膚軟化薬WWT群よりも急速かつより有効であった。・最善の結果は、6~9歳群と0~3歳群で得られた。・SCORADで評価した有効性についての差は、すべての測定ポイントで有意差が認められた。・また、QOL指数も同様であった。・本検討は比較数が少なく限定的である。

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特発性肺線維症(IPF)への挑戦

 2014年4月3日(木)都内にて、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社主催のメディアセミナー「呼吸器領域における難病への挑戦~特発性肺線維症(IPF)~」が開催された。当日は、自治医科大学呼吸器内科 教授 杉山幸比古氏、東邦大学医学部呼吸器内科学分野 教授 本間 栄氏が、特発性肺線維症(以下IPF)について、それぞれ疫学・病態、治療の進歩に関して講演した。 杉山氏は、IPFの疫学と病態について紹介した。IPFは特発性間質性肺炎に属するが、その中でも症例数が最も多く、また予後が不良な病態である。本邦におけるIPFの発症率はおおよそ10万人対2人、有病率は10万人対10人であり、全国で1万3,000人以上の患者がいるとされる。杉山氏は実際には、それ以上の患者がいるとも考えられると述べた。 IPFの生存中央値は鑑別診断後35ヵ月であり、予後不良のがんと大きな差はない。とはいえ、進行パターンはさまざまで、緩除に進行するものもあれば急速に進行するケースもある。主な症状は労作時呼吸困難、乾性咳嗽であるが、初期には年齢のせいとされることも少なくないという。IPFの死亡原因は慢性呼吸不全、急性増悪、肺がんが多くを占めるが、重要な問題として挙げられるのが、急性増悪と肺がんの合併といえる。急性増悪では、緩除に進行していたケースが急激に死に至ることも少なくなく、IPF患者では通常の喫煙者に比べ数十倍肺がんを発生しやすいという。 本間氏はIPFの治療について紹介した。IPFは特発性間質性肺炎の中でも最も治療反応性が低く、ほかの病型とは異なった治療戦略がとられる。IPFの治療ゴールは、生存期間の延長、呼吸機能の維持・低下の抑制、急性増悪の予防である。 治療法としては、酸素療法、呼吸リハビリテーション、薬物療法が主なものである。呼吸リハビリテーションについては近年、運動耐容能、症状、健康関連QOLの改善など、その有効性が明らかになってきている。 薬物療法については、従来ステロイドパルス療法が中心であったが、近年N-アセチルシステイン(NAC)、ピルフェニドンの有効性が明らかになってきている。さらに、本年5月に開催されるATS(米国胸部学会)では、INPULSIS試験(チロシンキナーゼ阻害薬)、ASCEND試験(ピルフェニドン)、PANTHER試験(NAC単独療法)などの臨床試験も発表予定であり、IPFの薬物療法に関するエビデンスが一気に充実してくると期待される。

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