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T-DXd関連ILD、日本人の胃がん・乳がん患者で死亡例に多い所見は?

トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)に関連する間質性肺疾患(ILD)/肺臓炎は、治療継続や生命予後に関わる重要な有害事象である。そこで、愛知県がんセンター呼吸器内科の藤原 豊氏らは、日本人の乳がんおよび胃がん患者を対象とした市販後全例調査のデータを用いて、独立したILD判定委員会により判定されたT-DXd関連ILDの臨床的・画像的特徴を検討した。その結果、多くは軽度~中等度で副腎皮質ステロイドに反応した一方、びまん性肺胞傷害(DAD)パターンは死亡例に多くみられた。本研究結果は、The Oncologist誌オンライン版2026年9月7日号に掲載された。本研究は、T-DXd投与を受けた日本人の乳がんおよび胃がん患者を対象とした市販後全例調査の事後解析である。T-DXd関連ILDが疑われた症例を、独立した判定委員会が評価、解析した。評価項目は、患者背景、臨床的特徴、画像所見、発症時期、治療介入、発症から最長12ヵ月まで追跡した転帰などであった。主な結果は以下のとおり。・T-DXdが投与された患者は2,801例で、内訳は乳がん1,731例、胃がん1,070例であった。このうち、T-DXd関連ILD疑いの421例が判定委員会で評価され、381例がT-DXd関連ILDと判定された(乳がん278例、胃がん103例)。・T-DXd関連ILDと判定された381例の年齢中央値は65.0歳、女性が75.1%、喫煙歴を有する患者は28.3%であった。・ILDは観察期間を通じて発症しており、T-DXd開始後12ヵ月以降の死亡例も含まれていた。明確な発症時期の集中はみられず、発症までの期間はCTCAE Grade間で差を認めなかった。・画像パターンは、器質化肺炎が67.7%と最も多く、次いで過敏性肺炎14.2%、DAD 12.6%であった。・最悪時のCTCAE GradeはGrade1/2が78.2%を占め、多くは軽度~中等度であった。・Grade5のILDは30例(7.9%)に発生した。Grade5症例で最も多い画像パターンはDADで、30例中26例に認められた。・全体の回復割合は83.5%であった。副腎皮質ステロイドは54.6%に使用され、そのうち79.3%で効果が認められた。・DADパターンの7例では、高用量副腎皮質ステロイドおよび追加免疫抑制薬による治療が有効ではなかった。本研究結果について著者らは、日本人の乳がんおよび胃がん患者におけるT-DXd関連ILDの多くは軽度~中等度で副腎皮質ステロイドに反応したが、DADパターンは死亡率の高さと関連していた、とまとめた。また、致死的なT-DXd関連ILDを抑制するためには、慎重なモニタリング、早期認識、速やかな副腎皮質ステロイド治療が重要であると述べている。

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クローン病〔CD : Crohn’s disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)は、クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎の両疾患の総称である。CDは原因不明であるが、免疫異常などの関与が考えられる肉芽腫性炎症性疾患である。主として若年者に発症し、小腸・大腸を中心に浮腫や潰瘍を認め、 腸管狭窄や瘻孔など特徴的な病態が生じる。すでに18~19世紀に現在のCDに相当すると考えられる症例報告があり、その後1932年、米国・ニューヨークのMount Sinai HospitalのBurrill B. Crohn氏、Leon Ginzburg氏、Gordon D. Oppenheimer氏の3人が、終末回腸炎14例を“Regional Ileitis:A Pathologic and Clinical Entity”として発表した。現在では口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位に起こりうることが判明している。消化管以外にも種々の合併症(腸管外合併症)を伴うため、全身性疾患としての対応が必要である。■ 疫学もともと白人やユダヤ人種に多いとされていたが、近年わが国をはじめとするアジア地域や南米などで患者が急増しグローバル化してきている。2023年に実施された全国疫学調査による推定患者数(軽症者を含む)はCD9万6,000人、令和5年度特定疾患医療受給者証所持者数は5万2,108人である。わが国および東アジアでは男性患者の割合が多く、欧米では男女差は認められない。発症年齢のピークは10代後半~20代とされている。日本人初発CD患者において小腸に病変を有するのは82.7%、狭窄や瘻孔を有しているのは36.5%、肛門病変を有しているのは48.9%と報告されている。■ 病因炎症性腸疾患の病態はまだ完全には解明されていないが、疾患関連遺伝子に代表される遺伝学的素因を背景に、食事や衛生環境などの環境因子の変化に伴う腸内微生物叢と宿主の免疫機構との間の恒常性維持の破綻により引き起こされる多因子疾患と考えられている。CDの腸管局所ではTNF-α、IL-23、IFN-γといった炎症性サイトカイン・ケモカインの過剰産生が起こっている。■ 症状臨床像は病変の部位や範囲により異なる。下痢や腹痛などの消化管症状と発熱や体重減少・栄養障害などの全身症状を認め、貧血、関節炎、虹彩炎、皮膚病変などの合併症に由来する症状も呈する。小児では成長障害で見つかることもある。病状が進行すれば腸管合併症(狭窄、瘻孔)を生じ、通過障害や皮膚瘻からの排膿などを来すことがある。また、肛門病変を合併すると排便時痛、排膿や圧痛を伴う肛門部の腫脹・発赤・結節を認める。■ 予後外科手術率でみると2000年以前は発症後10年間での手術率は46.5%であったのに対して2000年以後は26.2%と低下している。しかし、依然として手術率の高い疾患である。腸管切除の主たる理由は小腸狭窄である。また、CDによる大腸炎も潰瘍性大腸炎と同様に炎症性発がんのリスクとなる。その他、わが国では肛門管がん、痔瘻がん合併の報告が欧米と比較して多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は難治性炎症性腸管障害に対する調査研究班の診断基準(表)に基づく。CDの診断では鑑別診断として潰瘍性大腸炎、腸管ベーチェット病、感染性腸炎などの疾患を否定する必要がある。縦走潰瘍、敷石像といった特徴的所見を内視鏡検査あるいはX線造影検査で検出する(図1)。生検病理での非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の検出は特異的所見である。また、CT検査、MRI検査、腸管エコーは全層性炎症、瘻孔、腹腔内膿瘍、肛門病変の評価に有用である。表 クローン病診断基準診断の基準(1)主要所見A.縦走潰瘍B.敷石像C.非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(2)副所見a.消化管の広範囲に認める不整形~類円形潰瘍またはアフタb.特徴的な肛門病変c.特徴的な胃・十二指腸病変確診例:[1]主要所見のAまたはBを有するもの。[2]主要所見のCと副所見のaまたはbを有するもの。[3]副所見のa、b、cすべてを有するもの。疑診例:[1]主要所見のCと副所見のcを有するもの。[2]主要所見のAまたはBを有するが潰瘍性大腸炎や腸管型ベーチェット病、単純性潰瘍、虚血性腸病変と鑑別ができないもの。[3]主要所見のCのみを有するもの。[4]副所見のいずれか2つまたは1つのみを有するもの。(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班). 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和7年度 改訂版. 2026;38.を一部改変)図1 クローン病の内視鏡像画像を拡大する3 治療 (治験中のものも含む)CDの治療では腸の炎症を抑えて症状を改善し、再燃や腸の合併症を防ぐことを目指す。栄養療法、薬物療法、手術療法を、病状に応じて組み合わせることが基本となる(図2~4)。発症から1.5年以内の早期に適切な生物学的製剤による疾患コントロールが長期予後改善に重要とされている。図2 令和7年度クローン病治療指針(内科)(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班). 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和7年度 改訂版. 2026;47.より出典)画像を拡大する図3 クローン病治療フローチャート(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班). 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和7年度 改訂版. 2026;48.より出典)画像を拡大する図4 クローン病肛門病変診療フローチャート(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班). 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和7年度 改訂版. 2026;49.より出典)画像を拡大する■栄養療法栄養状態を改善するとともに、腸への負担を軽くする治療。栄養剤を飲む「経腸栄養療法」が中心で、通常の食事と組み合わせる場合もある。病状が安定していれば、過度な食事制限は必要ない。炎症が強いときや腸が狭くなっているときは、脂肪や食物繊維を控えるなど、病状に合わせた調整が必要となる。■薬物療法腸の炎症を抑えるため、以下のような治療薬を使用する。5-ASA製剤副腎皮質ステロイド免疫調節薬生物学的製剤(抗TNF-α抗体、抗α4β7インテグリン抗体、抗IL-12/23p40抗体、抗IL-23p19抗体)JAK阻害薬ステロイドは炎症を速やかに抑えるが、長期使用には適さないため、症状が改善したら減量・中止する。中等症から重症では、生物学的製剤やJAK阻害薬の適応となる。症状の改善だけでなく、内視鏡検査などで腸の炎症を確認し、将来の狭窄や手術を防ぐことが重視されている。■血球成分除去療法(GMA)血液をいったん体外に取り出し、炎症に関係する白血球(顆粒球・単球)を吸着してから体内に戻す治療。他の治療と組み合わせる補助療法として行われることが多い。■手術療法消化管すべての部位が標的となり得るCDでは外科手術は根治治療とはならない。腸閉塞、狭窄、穿孔、膿瘍、瘻孔、大量出血などがある場合や、薬物療法で十分な効果が得られない場合には、手術が必要になることがある。手術は病変のある腸を切除する、狭くなった部分を広げるために行う。手術後も再発する可能性があるため、定期検査と薬物療法・栄養療法を続けることが大切である。■開発中の治療現在、炎症や腸の線維化に関係する「TL1A」を標的とした薬、免疫細胞が腸へ移動するのを抑える内服薬、腸内細菌を利用した治療などの研究が進められている。治験中に参加する場合は、担当医から詳しい説明を受ける必要がある。4 今後の展望近年、分子標的薬をはじめとする薬物療法の進歩により、CDの治療成績は大きく向上し、腸管切除を必要とする患者は減少している。その一方で、狭窄や瘻孔などの合併症がある場合には、適切な時期に手術を行うことが生活の質(QOL)の改善につながる。将来の腸管障害を防ぐためには、早期に正確な診断を行い、必要な治療を適切な時期に開始することが重要である。また、これまで治療が難しかった肛門病変や小腸病変に対しても、新しい治療薬の有効性が示されつつある。今後は、患者ごとに最適な薬を選ぶ「個別化医療」の発展が期待される。さらに、病気そのものの治療だけでなく、就学、就労、妊娠・出産などを支える社会的な支援体制の充実も重要である。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科、肛門科(肛門病変)、小児科(小児発症の場合)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター クローン病(指定難病96) (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)一般社団法人 日本炎症性腸疾患学会(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報NPO法人 IBDネットワーク(患者とその家族および支援者の会) 1) 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班). 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針令和7年度 改訂版. 2026. 2) Tsutsui A, et al. J Gastroenterol. 2025;60):1513-1522. 3) Matsuoka K, et al. J Gastroenterol. 2022;57:867-878. 4) Tsai L, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2021;19:2031-2045. 公開履歴初回2026年9月10日

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第330回 アトピー当事者が語る、ステロイドの保険見直し問題

INDEXステロイド外用薬で思い出す、苦い過去外用剤といえども…共同声明の発表当事者でないとわからない感覚ステロイド外用薬で思い出す、苦い過去前回、OTC類似薬の一部保険外療養の負担に関して「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」の中間とりまとめに関する中央社会保険医療協議会総会への報告・説明、それに伴う議論を取り上げた。実はこの中間とりまとめについては、私個人もある点で驚きを隠せなかった。それはステロイド外用薬に関して「慢性・再発性疾患に使用される場合があるが、急性増悪時の短期使用が中心であり、別途負担の対象として整理する」という記述だ。これを読んだ時は一瞬、目が点になり、「嘘だろう」と思った。かくいう私は過去に本連載でも触れたが、アトピー性皮膚炎を持病として抱えている。これまでの人生を振り返ると、成人してからはほぼ問題なく過ごしてきたものの、およそ10数年周期で急性増悪を経験してきた。最悪だったのは今から30年以上前、上京して間もない大学1年生だった頃だ。当時は今のようなTARC*を測定しながらのプロアクティブ療法(急性増悪時にステロイド外用薬で一気に炎症の抑え込みにかかり、その後はステロイド外用薬の強さをレベルダウンさせながら、間欠使用に移行し、最終的に保湿剤での維持を続ける)は一般的ではなかった。むしろ記憶する限り、皮膚科クリニックを受診しても「これ塗っといてね」とステロイド外用薬のチューブを処方され、切り替えも塗布中止時期も何も説明されず、漫然と処方され続けたものだ。*アトピー性皮膚炎の重症度評価に用いられる検査当時は医療知識もなく、私自身いわゆる「脱ステロイド」に走った。その結果、全身真っ赤な象皮状態となり、一部からはリンパ液が流れ出し、朝起きるとTシャツの一部が真っ黄色になるほど。そんな生活を10ヵ月弱経験し、日本東洋医学会などでは必ずと言っていいほど名前が挙がる、ある自由診療の漢方治療診療所にたどり着いた。そこで煎じ薬である方剤を処方されたが、ほとんど効果は実感できなかった。2回目の受診の際、そのことを医師に告げると方剤は別のものに変わった。しかし、やはり結果は同じ。その後はこの2種類の方剤が何度も入れ替わる日々が4ヵ月ほど続いた。当時は大学1年生で経済的には親に依存していたが、それでも自由診療の漢方薬の代金は重荷で、ある時は窓口で薬代を払ったら、210円しか残っていなかった。今でも覚えているが、その日は金曜日の夕方。今のように土日にも銀行ATMが開いている時代ではない。携帯電話もない時代のため、同居していた姉にも連絡は取れない。自宅まで210円で帰れる駅を目指して、寒空の下を10kmほどとぼとぼ歩いた。しかも、体は象皮状態。日常動作でも皮膚が切れて出血する状態だったので正直歩くのもつらかった。歩きに歩いて、ようやく電車に乗り、自宅に着いた時は真っ暗。姉はまだ帰宅しておらず、自分の部屋でベッドに腰を掛け、泣き続けていた。その後、私は保険診療でエキス製剤を使って漢方治療をする診療所のことを知り、そこを訪ねた。診察をした医師は丁寧に腹脈をとって事細かに問診をし、自由診療の漢方診療所では単剤で交互に使用していた方剤を2剤併用する旨を告げた。それからわずか2週間ほどで、私の全身の皮膚は半ば忘れかけていた元の状態を取り戻した。外用剤といえども…さて、現在の私の急性増悪に話を戻そう。2026年4月末の診察時、医師には簡潔に過去のことを伝えた。すると、「今はステロイドに拒否感はあります?」と尋ねられた。それはない旨を告げると、「プロアクティブ療法をやっていくうえで、ステロイドは勿論だが、これを使うと上手くいきやすいんですよ。ちょっとお高いけど」と言われ、ジファミラスト(商品名:モイゼルト軟膏、PDE4阻害薬)とデルゴシチニブ(同:コレクチム軟膏、JAK阻害薬)を勧められた。私は一瞬ギョッとしてしまった。非ステロイド性の免疫抑制系外用薬を使わねばならないのかと。これは経口薬で治療を続けてきた2型糖尿病患者がインスリンを勧められた時に受けがちなショックと似た感覚かもしれない。とりあえずこれらは一旦辞退し、ステロイド外用薬のみの治療を開始した。2週間後に思い直してジファミラストを追加することになったが、この際、主治医に最初の提案に私が抱いた感覚を伝えたところ、「ああ、何かわかりますよ」と笑われた。現在は体幹と四肢はほぼ4日おきの外用ステロイド薬・ジファミラストの混合、間にはジファミラスト・ヘパリン類似物質の混合を塗布している。顔も当初は塗布間隔が体幹同様にまで延びたが、日差しが強いと日焼け止めを使っていても炎症が強くなり、今は暫定的に外用ステロイド薬・ジファミラストの混合とジファミラスト・ヘパリン類似物質の混合を1日おきに塗り分けている。一旦は急性増悪を抑え込めても、おそらく保湿剤のみに切り替えることができるまでには相当の時間を要するだろうと覚悟はしている。そんなこんなで今回の中間とりまとめで、私はOTC類似薬の一部保険外療養の負担の半ば当事者になってしまったのである。共同声明の発表さすがにアトピー性皮膚炎患者や皮膚科専門医もこの状態を黙認することはないだろうと思っていたが、実は前回は触れなかったが中医協総会でもアトピー性皮膚炎に関しては問題となった。9月3日に開催された社会保障審議会(医療保険部会)での患者団体へのヒアリングで、認定NPO法人・日本アレルギー友の会(理事長:武川 篤之氏)が患者団体としてこの件に関して強い反対を表明した。その論旨は以下のようなものだ。長くなるが引用する。「アトピー性皮膚炎は寛解と増悪を繰り返す慢性・再発性の疾患であり、急性増悪時だけを治療する病気ではありません。診療ガイドラインでは、抗炎症外用薬によって速やかに寛解を導入したうえで、毎日の保湿と再燃部位への間欠的な外用(プロアクティブ療法)によって再燃を防ぐ長期管理が標準とされています。ステロイド外用薬は、この長期管理を日常的に支える薬剤です。ステロイド外用薬は効果の強さによって5段階に分類され、症状の重症度、部位、年齢に応じて医師が選択し、量や範囲を細かく調整する必要があります。OTC医薬品は軽度の症状を対象としており、医療用のステロイド外用薬とは効能・効果が一致せず、医学的に代替性は成立しません。薬局で購入する場合には、強さを認識しないまま使用して副作用が生じたり、逆に症状に対して十分な効果を得ることができず炎症が持続したり重症化するおそれもあります。追加負担によって毎日の維持治療が細れば、結果として高額な生物学的製剤への移行や入院治療の増加につながりかねません」まったくの同感である。友の会は同日、日本皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会と共同で『OTC類似薬の保険給付見直し案に関する共同声明』1)も発表した。詳細は声明を参照してほしいが、「3.医学的誤認に基づく制度設計」は、前出のようなガイドラインなどを踏まえないもので私も一番驚いた点である。しかも、プロアクティブ療法で、保湿剤によるスキンケアに移行する直前は、(中間とりまとめの中で一部負担対象とされた)比較的効果が弱めのOTC類似薬のステロイド外用薬が長期にわたって使用される。そして声明の「5.歴史的教訓と現在の誤情報」もまさにその通りである。負担が過度に増えることになれば、エビデンスの乏しい民間療法(自然由来ハーブ・オイル療法、温泉療法など)に患者が走る恐れが高まる。さらに「7.患者・家族の生活実態」にある「外用薬は『生きるための薬』であり、寛解維持のための計画的外用が不可欠である」もまさにその通りだ。これに関連して中医協総会では日本医師会副会長の茂松 茂人氏が次のように語っている。「がん患者さん、難病患者さん、指定難病でなくとも重症で就職などができないといった患者さんもおられます。とくに成人のアトピー性皮膚炎では、正規雇用になれない非正規雇用の患者さんが多いとも聞いておりますので、その辺はヒアリングをしっかり聞いていただいて、対応を考えていただければと思います」当事者でないとわからない感覚自分も経験者だからわかるのだが、アトピー性皮膚炎は自分では隠し切れない皮膚に病変が出てしまうため、患者は劣等感を抱きがちだ。とくに顔の症状が強く、治療によるコントロールが十分得られなければ、患者は外出すら避けるようになる。そうなればなかなか正規雇用で働こうとは思わないことは、私自身は容易に想像がつく。再度、自分語りで恐縮だが、茂松氏の発言を聞いて思い出したことがある。まさに30数年前の急性増悪時、本当は外出したくなかったのだが、やむを得ない事情で外出した際のことだ。総武線の各駅停車に乗車中、席がなく顔が真っ赤で盛大に粉を吹いていたこともあり、私は車両の隅に隠れるよう立っていた。その時、着席していた中年女性が私を見るなり、こちらに向かって歩いてきて「お席代わりましょうか?」と申し出てきた。私は丁重に断ったが、明らかに親切心からの申し出にもかかわらず、「自分はよっぽどひどい病人に見えるのだろうな」と落ち込んだ覚えがある。幸いにして今回のOTC類似薬のステロイド外用薬の扱いについては、厚生労働省保険局が患者団体のヒアリングが行われた前述の社会保障審議会(医療保険部会)に提出された『OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について』2)の「実施に向けた論点について」において、「ステロイド外用薬は急性増悪時の短期使用が中心である一方で、アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬のプロアクティブ療法は、診療ガイドラインに位置づけられた計画的な間欠使用であることを踏まえ、長期使用等の例外としてどのように整理するか」と記載され、中間とりまとめに修正が加えられる方向となった。私自身は以前から言っているように、OTC類似薬の保険給付のあり方そのものを見直すことに異論はなく、たとえ自分がその対象になっても医学的・合理的理由があればやむなしとして受け入れるつもりである。しかし、今回のこの1件は医学的な観点から大いに疑問を感じた次第だ。ちなみにこの件に関連して同業の知人からは「国会終了直後、しかも来年施行という短過ぎる時間制約もあったので事務局を責めるのは酷すぎる」と言われた。知人の指摘はわからなくもない。ただ、アトピー性皮膚炎の総患者数は厚生労働省「令和5年(2023年)患者調査」3)では約125万3,000人とされるほど巨大な層である。しかも、患者調査の数字の算出方法を知っている人ならば百も承知だろうが、この数字はある意味最低ラインなのである。なんとかセルフスキンケアだけで凌いでいる人も含めれば、相当な患者数になるはずだ。当初の中間とりまとめの内容に驚いたアトピー性皮膚炎患者は少なくないだろう。そしてそのことで疎外感を抱いた患者もわりといたはずだ。ちなみに私は今も30数年前にコートのポケットの中で210円を握りしめながら歩いた経路を歩くのは、その一部であってもなるべく避けようとしてしまう。患者とはそこまで敏感な存在なのである。125万3,000分の1の「蟷螂の斧」として申し上げておきたい。参考1)日本皮膚科学会:OTC類似薬の保険給付見直し案に関する共同声明2)厚生労働省:OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について3)厚生労働省:令和5年(2023)患者調査の概況

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1996年から30年の日本における多発性骨髄腫の診断・治療の変遷【温故知新30年】

講師紹介多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)は、形質細胞の腫瘍性増殖を特徴とする造血器悪性腫瘍である。1990年代までは「治癒困難な疾患」であり、生存期間の中央値は約3~4年にすぎなかった。しかし、この30年間で診断技術、支持療法、新規薬剤、免疫療法の著しい進歩により、現在では長期生存が期待できる慢性疾患へと変貌したといえる。日本における多発性骨髄腫診療の発展は、国際的な研究成果を取り入れながら、日本骨髄腫研究会・日本骨髄腫学会や日本血液学会が中心となって診療指針を整備し、新規治療を迅速に臨床へ導入してきた歴史でもある。1996~2005年:MP療法から自家移植・新規薬剤登場前夜1996年ごろの標準治療薬はメルファランを中心とした抗がん剤であり、高齢者ではメルファラン・プレドニゾロン(MP療法)、若年者ではビンクリスチン・アドリアマイシン・デキサメタゾン(VAD療法)による寛解導入後に大量メルファラン療法と自家造血幹細胞移植(ASCT)が行われ始めていた。当時の診断の中心は血清・尿M蛋白、骨髄穿刺、単純X線検査であり、病期分類にはDurie-Salmon分類が広く用いられていた。支持療法も限定的であり、腎障害、感染症、骨病変への対応が治療成績を大きく左右していた。1998年以降、欧米ではサリドマイドの有効性が報告され、日本でもその有効性が認識されるようになった。サリドマイドは骨髄腫に対する最初の免疫調節薬(IMiD)であり、再発・難治例の治療を大きく変えた。当初、個人輸入で用いられたが、その後、サリドマイド製剤等安全管理手順(TERMS®)などが整備され、日本でも保険承認された(2008年)。2000年代前半には診断基準の標準化が進んだ。2003年にInternational Myeloma Working Group(IMWG)が診断基準を提唱し、日本でもこれが採用された。また2005年にはInternational Staging System(ISS)が導入され、血清β2ミクログロブリンとアルブミンによる簡便かつ再現性の高い病期分類が広く普及した。このISSの策定には日本の研究者も大きく貢献している。2006~2017年:プロテアソーム阻害薬・IMiD時代2006年は日本の骨髄腫診療における大きな転換点である。プロテアソーム阻害薬ボルテゾミブが承認され、新規薬剤時代が始まった。ボルテゾミブは再発例で高い奏効率を示し、その後、初回治療にも導入された。2000年代後半にはボルテゾミブを中心とした導入療法がASCT前治療として定着し、完全奏効(CR)率や生存率は大きく改善した。2010年にはレナリドミド、2015年にはポマリドミドが承認され、IMiD治療は新たな時代を迎えた。レナリドミドはサリドマイドより有効性と忍容性に優れ、再発例のみならず、初回治療や維持療法へも適応が拡大された。また2016年には第2世代プロテアソーム阻害薬カルフィルゾミブ、2017年には経口プロテアソーム阻害薬イキサゾミブが承認され、これらの薬剤の登場によって、再発治療の選択肢が急速に増加した。2008~2012年ごろには日本骨髄腫学会による「多発性骨髄腫の診療指針」が整備され、診断・治療アルゴリズムが標準化された。さらに血清遊離軽鎖(free light chain:FLC)測定が日常診療へ導入され、軽鎖型骨髄腫やALアミロイドーシスの診断精度が向上した。2014年のIMWG診断基準改訂はきわめて重要であった。症候性骨髄腫の診断に「Myeloma-defining events」が導入され、従来のCRAB(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変)症状に加え、2年以内に80%以上の頻度で臓器症状が出現する患者を抽出するバイオマーカー(myeloma-defining biomarkers)として、骨髄形質細胞60%以上、FLC比100以上、MRIによる骨病変2ヵ所以上の3項目(SLiMと呼ぶ)が含まれた。これによって、臓器障害が出現する前に治療を開始できるようになり、不可逆的な骨障害や腎障害の予防が可能となった。また、FISHによる染色体異常解析が普及し、2015年にはdel(17p)、t(4;14)、t(14;16)などの高リスク遺伝子異常が改訂国際病期分類(R-ISS)に組み込まれ、新規薬剤時代の予後予測ツールとして利用されるようになった。2016~2021年:抗CD38抗体と3剤併用療法の時代2016年以降、モノクローナル抗体の時代が始まった。2016年には抗SLAMF7抗体エロツズマブ、2017年には抗CD38抗体ダラツムマブが承認され、従来の2剤併用療法に抗体薬を組み合わせた3剤併用療法が標準となった。とくにダラツムマブは移植適応・非適応の双方で生存期間の延長を示し、骨髄腫の初回治療を大きく変えた。さらに2020年には抗CD38抗体イサツキシマブも加わり、抗CD38抗体は骨髄腫治療の中心となった。2022年以降:CAR-T・二重特異性抗体2022年、プロテアソーム阻害薬・IMiD・抗CD38抗体を用いた複数治療後の再発・難治性骨髄腫(トリプルクラス抵抗性)に対し、BCMA CAR-Tのイデカブタゲン ビクルユーセル(Ide-cel)とシルタカブタゲン オートルユーセル(Cilta-cel)が承認され、2024年にはBCMA/CD3二重特異性抗体のエルラナタマブ、2025年にはBCMA/CD3二重特異性抗体のテクリスタマブ、GPRC5D/CD3二重特異性抗体のトアルクエタマブが相次いで承認された。多剤治療抵抗性骨髄腫において、これらのT細胞を活用した免疫療法が新たな治療の柱となった。今後5年間の多発性骨髄腫診療の進歩への期待現在、抗CD38抗体を含む4剤併用療法が初回治療の標準となりつつあるが、今後はBCMAやGPRC5Dを標的とした二重特異性抗体やCAR-T細胞療法が、初回治療や早期再発例へも適応が拡大され、より深い奏効と長期寛解が得られる可能性がある。また、CELMoD(cereblon E3 ligase modulator)など新たな作用機序を有する薬剤も実臨床に導入され、薬剤耐性例に対する治療選択肢はさらに広がると考えられる。診断技術の面では、次世代フローサイトメトリーや次世代シークエンスを用いた微小残存病変(MRD)評価が日常診療にさらに広く普及し、治療効果判定だけでなく、治療期間や維持療法の継続・中止を判断する指標として活用されることが期待される。さらに、循環腫瘍DNA(ctDNA)や質量分析法によるM蛋白測定などの低侵襲なバイオマーカーの実用化により、骨髄穿刺に依存しない病勢評価も現実味を帯びてきている。一方、高齢患者の増加に伴い、フレイル評価や患者報告アウトカム(PRO)を取り入れた治療選択がさらに重要となる。高齢者においても治療効果だけでなく、QOLや社会生活の維持を重視した固定期間治療や外来中心の治療戦略が普及すると考えられる。また、感染症予防や支持療法の充実により、免疫療法をより安全に長期間継続できる体制も整備されると思われる。今後5年間の多発性骨髄腫診療は、「免疫療法の最適化」と「個別化医療」の進展により、さらなる治療成績の向上が期待される。

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非分節型白斑、ウパダシチニブの有効性・安全性を確認/Lancet

 12歳以上の非分節型白斑患者において、ウパダシチニブ15mgの1日1回経口投与によりプラセボと比較し、顔面および全身の臨床的に意味のある色素再沈着が認められ、新たな安全性に関する懸念は確認されなかった。フランス・コート・ダジュール大学のThierry Passeron氏らが、アジア、欧州、北米および南米の18ヵ国138施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Viti-Up試験」の48週時の主要解析結果を報告した。非分節型白斑は、皮膚の色素脱失を引き起こす自己免疫疾患で、全身療法として承認されたものはなく、新たな治療選択肢が求められていた。Lancet誌2026年8月15日号掲載の報告。主要評価項目は48週時のT-VASI 50達成率およびF-VASI 75達成率 Viti-Up試験は、Viti-Up-1およびViti-Up-2で構成される。いずれの試験も、対象は、顔面および体幹に非分節型白斑を認め、Facial Vitiligo Area Scoring Index(F-VASI)が0.5以上、Total Vitiligo Area Scoring Index(T-VASI)が5以上50未満の12歳以上の患者とした。T-VASIが5以上10未満の場合は、1種類以上の副腎皮質ステロイド外用薬および/または1種類以上のカルシニューリン阻害外用薬による治療に失敗した、または活動性白斑の兆候が認められた患者を対象とした。 研究グループは、適格患者をウパダシチニブ群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、15mgを1日1回経口投与した。 両試験の主要評価項目は、48週時のT-VASI 50達成率(T-VASIのベースラインからの50%以上低下を達成した患者の割合)、およびF-VASI 75達成率(F-VASIのベースラインからの75%以上低下を達成した患者の割合)であった。 安全性は、無作為化され48週間の二重盲検期間中に1回以上試験薬を投与されたすべての患者を対象に評価した。両試験とも2つの主要評価項目を達成 2023年12月19日~2024年10月14日に、スクリーニングされた750例のうち614例が登録され、Viti-Up-1試験で308例(ウパダシチニブ群206例vs.プラセボ群102例、女性156例[51%]、男性152例[49%])、Viti-Up-2試験で306例(ウパダシチニブ群205例vs.プラセボ群101例、女性151例[49%]、男性155例[51%])が無作為化された。 48週時のT-VASI 50達成率は、ウパダシチニブ群がプラセボ群より有意に高値であった(Viti-Up-1試験:19%vs.6%、Viti-Up-2試験:21%vs.6%、いずれもp<0.001)。また、48週時のF-VASI 75達成率も、ウパダシチニブ群がプラセボ群より有意に高値であった(Viti-Up-1試験:25%vs.6%、Viti-Up-2試験:23%vs.7%、いずれもp<0.001)。 安全性については、両試験とも、主要心血管有害事象、静脈血栓塞栓症、消化管穿孔、活動性結核、リンパ腫、非黒色腫皮膚がん、帯状疱疹以外の日和見感染症の報告はなく、ウパダシチニブ群の安全性プロファイルは既報と一致していた。

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ドンペリドン、葛根湯などに重大な副作用追加/厚労省

 2026年8月25日、厚生労働省は添付文書の改訂指示を発出し、ドンペリドンおよびメトクロプラミド、葛根湯、一部の免疫チェックポイント阻害薬などにおいて「重大な副作用」が追記された。ドンペリドン、メトクロプラミドに「重篤な不整脈」 ドンペリドン(商品名:ナウゼリン錠ほか)、メトクロプラミド(同:プリンペラン錠ほか)および塩酸メトクロプラミド(同:プリンペラン注射液)に対し、国内外の疫学調査において致死性不整脈および心突然死のリスク増加が示唆されたことから、「重大な副作用」に「重篤な不整脈」が追加された。また、「重要な基本的注意」には「心室頻拍、心室細動等の重篤な不整脈があらわれることがあるため、必要最小限の使用にとどめ、長期にわたり漫然と投与しないこと、関連する症状が認められた場合には速やかに受診するよう患者を指導すること、心電図検査等を行うこと」が追加された。葛根湯に「多形紅斑」 医療用の葛根湯において、「重大な副作用」の項に「多形紅斑」が追加された。多形紅斑症例を評価した結果、本剤との因果関係が否定できない症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。国内では6例が集積し、このうち4例は医薬品と事象との因果関係が否定できない症例で、死亡例はなかった。 なお、一般用医薬品の葛根湯含有製剤では、「相談すること」の項に追加され、葛根湯エキスにジリュウエキスまたはビタミン類を配合した製剤や一般用漢方製剤についても同様の改訂がなされた。抗PD-L1/抗CTLA-4抗体薬に「ぶどう膜炎」 「重大な副作用」の項に「ぶどう膜炎」が追加された。また、「重要な基本的注意」にぶどう膜炎があらわれることがある旨を追記し、眼の異常の有無を定期的に確認すること、眼の異常が認められた場合には速やかに医療機関を受診するよう患者を指導することとした。<対象医薬品>・アベルマブ(同:バベンチオ)・アテゾリズマブ(同:テセントリク)・デュルバルマブ(同:イミフィンジ)・トレメリムマブ(同:イジュド)抗PD-1/抗PD-L1/抗CTLA-4抗体薬*に「血球貪食性リンパ組織球症」 国内症例を評価した結果、抗PD-1/抗PD-L1/抗CTLA-4抗体薬との因果関係が否定できない症例が集積したことから、「重大な副作用」に「血球貪食性リンパ組織球症」が追加された。*:ニボルマブ、ぺムブロリズマブ、アテゾリズマブ、セミプリマブを除く<対象医薬品>・チスレリズマブ(同:テビムブラ)・レチファンリマブ(同:ジニイズ)・アベルマブ(同:バベンチオ)・デュルバルマブ(同:イミフィンジ)・イピリムマブ(同:ヤーボイ)・トレメリムマブ(同:イジュド) さらに、イピリムマブとニボルマブ(オプジーボ)では、上記以外の重大な副作用として、「重度の食道炎」が追加されている。免疫反応に起因すると考えられる重度の食道炎があらわれるためで、異常が認められた場合には副腎皮質ホルモン剤の投与などの適切な処置を行う旨が追記された。 このほか、複数の医薬品で「使用上の注意」が改訂されている。◯アパルタミド「重大な副作用」に無顆粒球症、好中球減少症、白血球減少症を追加し、投与中は定期的に血液検査を実施するなど十分に観察することとした。◯オランザピン(経口剤)抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐に対して使用する場合には、糖尿病またはその既往がある患者への投与について禁忌が解除され、「警告」が新設された。血糖値の頻回なモニタリングや、必要最小限の投与量・投与期間とすることなどを記載した。◯アセトアミノフェンおよびアセトアミノフェン含有製剤重篤な腎障害、肝障害、敗血症、栄養障害などによるピログルタミン酸蓄積の素因がある患者について、アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスが発現するおそれを「特定の背景を有する患者に関する注意」に追記。対象にはアセトアミノフェン単剤のほか、複数の配合剤が含まれる。◯タラポルフィンナトリウム「重大な副作用」に食道狭窄、食道穿孔を追加。化学放射線療法または放射線療法後の局所遺残再発食道がんに対する治療におけるレーザー光照射後の注意事項が改訂された。 このほか抗HIV薬において、併用禁忌に関する記載が改訂された。

7.

ビレーズトリ14.4、気管支喘息の適応で承認/AZ

アストラゼネカは2026年8月24日、ビレーズトリ14.4エアロスフィア56吸入/120吸入(一般名:ブデソニド[BUD]/グリコピロニウム臭化物[GLY]/ホルモテロールフマル酸塩[FOR]160/14.4/4.8μg)について、成人および12歳以上の小児における気管支喘息の治療薬として、製造販売承認を取得したと発表した。同剤は、吸入ステロイド薬、長時間作用性吸入抗コリン薬、長時間作用性β2刺激薬の3剤を単一吸入器に配合した固定用量配合剤である。本承認は、コントロール不良の喘息患者を対象とした国際共同第III相試験「KALOS試験」および「LOGOS試験」の結果に基づくもの。KALOS試験とLOGOS試験は、同一デザインで実施された試験で、4,311例が組み入れられた。日本の施設も参加したKALOS試験において、BUD/GLY/FOR 160/14.4/4.8μg群はBUD/FOR(MDI製剤)群と比較し、主要評価項目である投与12~24週時のトラフ1秒量(FEV1)のベースラインからの変化量が有意に42mL改善した(95%信頼区間[CI]:10~74、p=0.011)。また、主要な副次評価項目である12~24週のFEV1 AUC0-3のベースラインからの変化量についても、有意に65mL改善した(95%CI:30~101、p<0.001)。KALOS試験における有害事象の発現割合は、BUD/GLY/FOR 160/14.4/4.8μg群51.5%(306/594例)、同160/7.2/4.8μg群58.8%(201/342例)、BUD/FOR(MDI製剤)群51.2%(310/606例)、BUD/FOR(pMDI製剤)群57.5%(346/602例)であり、各治療群間で同程度だった。両試験において、BUD/GLY/FOR 160/14.4/4.8μgに関する安全性または忍容性に関する新たなシグナルは認められなかった。なお、現在ビレーズトリは「ビレーズトリエアロスフィア」として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の適応で販売されている。今回の「ビレーズトリ14.4エアロスフィア」の製造販売承認に伴い、「ビレーズトリエアロスフィア」は「ビレーズトリ7.2エアロスフィア」へ販売名を変更し、流通開始後に「ビレーズトリエアロスフィア」は販売を終了する予定としている。

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多発性硬化症の再発を抑制する新規経口薬「ブメリティカプセル231mg」【最新!DI情報】第68回

多発性硬化症の再発を抑制する新規経口薬「ブメリティカプセル231mg」今回は、多発性硬化症治療薬「ジロキシメルフマラート(商品名:ブメリティカプセル231mg、製造販売元:バイオジェン・ジャパン)」を紹介します。本剤は、既存薬の消化器系副作用を回避するためにアミノエチルエステル化したプロドラッグであり、多発性硬化症の新たな治療選択肢として期待されています。<効能・効果>再発寛解型多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制の適応で、2026年6月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはジロキシメルフマラートとして1回231mg 1日2回から投与を開始し、1週間後に1回462mg 1日2回に増量します。なお、潮紅、消化器系副作用などが認められた場合には、患者の状態を慎重に観察しながら1ヵ月程度の期間1回231mg 1日2回投与に減量することができます。1回462mg 1日2回投与への再増量に対して忍容性が認められない場合は、本剤の投与を中止します。<安全性>重大な副作用として、リンパ球減少症(10.5%)、白血球減少症(2.6%)、進行性多巣性白質脳症(PML)、感染症、急性腎障害、肝機能障害、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)があります。その他の副作用として、潮紅(31.9%)、下痢(10%以上)、上咽頭炎、上気道感染、尿路感染、好中球減少症、灼熱感、浮動性めまい、頭痛、錯感覚、ほてり、腹部不快感、腹痛、下腹部痛、上腹部痛、便秘、消化不良、鼓腸、胃食道逆流性疾患、悪心、嘔吐(いずれも1~10%未満)、胃腸炎、鼻漏、呼吸困難、胃炎、胃腸障害(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、再発寛解型多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制に使用します。体内でフマル酸モノメチルに変換され、細胞の抗酸化に関わるNrf2と呼ばれる経路を活性化することにより免疫の働きを調節し、神経の炎症を抑えます。2.体調が良くなったと自己判断して使用を中止したり、量を加減したりすると病気が悪化することがあります。指示どおりに飲み続けることが重要です。3.この薬の使用中は定期的にリンパ球を含む血液検査、肝機能検査および腎機能検査が行われます。4.吐き気や嘔吐、下痢が現れた場合は、脱水となって腎臓の働きが悪くなることがあるので、できるだけ早く医師に連絡してください。5.この薬の使用初期に顔のほてりや赤みが現れることがあります。気になる場合は医師または薬剤師に相談してください。6.妊娠する可能性がある人は、この薬を使用している間は適切な避妊を行ってください。【ここがポイント!】多発性硬化症(MS)は、免疫系の異常により神経細胞の軸索を覆うミエリン鞘が脱髄する自己免疫疾患であり、指定難病に指定されています。病変は中枢神経系の広範囲にわたり、脱髄部位に応じて、感覚障害、運動・歩行障害、視力障害、排尿・排便障害などの症状を呈します。MSの病型は、急性増悪(再発)と寛解を繰り返す再発寛解型(RRMS)、当初はRRMSの経過をたどるもののその後は再発の有無にかかわらず身体的障害が進行する二次性進行型(SPMS)、発症時から再発を伴わず機能障害が進行する一次性進行型(PPMS)に分類されます。MS患者の80~90%はRRMSとして発症し、そのうち約半数が発症15~20年でSPMSに移行するとされています。一方、PPMSでMSを発症するのは約5%にとどまります。MSの急性増悪期の治療には、第1選択として高用量のメチルプレドニゾロン静注療法(ステロイドパルス療法)が用いられ、十分な改善が得られない場合は血液浄化療法が考慮されることもあります。再発予防および進行抑制には、疾患修飾薬(DMD)が使用され、インターフェロンβ製剤、グラチラマー酢酸塩、フィンゴリモド、フマル酸ジメチル(DMF)などが代表的な薬剤として挙げられます。とくにDMFはRRMSに対する経口治療薬として広く使用されていますが、10%以上の頻度で消化器症状(下痢、腹痛、嘔気)が副作用として現れ、治療継続が困難となる場合があります。本剤は、有効成分としてジロキシメルフマラートを含むRRMSに対する経口DMDです。本剤は、DMFの主要活性代謝物であるフマル酸モノメチル(MMF)をアミノエチルエステル化した薬剤であり、経口投与後、全身循環に移行する前にエステラーゼ酵素系により速やかに加水分解されてMMFを生成します。MMFの作用機序は十分に解明されていませんが、細胞の抗酸化応答を制御するマスター転写因子であるnuclear factor erythroid-derived 2-like 2(Nrf2)転写経路を活性化することで免疫系を調節し、炎症性メディエーターの発現を抑制し、炎症性傷害に対する細胞保護作用を示すものと考えられています。臨床用量において、本剤から生成されるMMFの曝露量はDMFと同程度となります。RRMS患者を対象とした海外第III相臨床試験(ALK8700-A301試験)において、探索的評価項目である投与96週時までのMS再発患者割合は、全体集団では17.57%、デノボ被験者(本剤またはDMFが初めて投与された患者:サブグループ解析)では17.66%であり、ARRはそれぞれ0.13および0.14でした。また、日本を含む国際共同第III相臨床試験(272MS303試験)において、全体集団では、ベースラインから投与24週時までの調整したARRが0.26(95%信頼区間[CI]:0.14~0.47)、投与24週~48週時の調整したARRが0.09(95%CI:0.03~0.26)、ベースラインから投与48週時までの調整したARRが0.19(95%CI:0.11~0.33)でした(負の二項回帰モデル)。日本人集団(サブグループ解析)では、ベースラインから投与24週時までの調整したARRが0.28(95%CI:0.13~0.60)、投与24週~48週時の調整したARRが0.09(95%CI:0.02~0.39)、ベースラインから投与48週時までの調整したARRが0.18(95%CI:0.09~0.38)でした(負の二項回帰モデル)。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィー〔DMD:Duchenne muscular dystrophy〕

1 疾患概要■ 定義デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)は、機能的ジストロフィンの欠損により、進行性の筋力低下および筋萎縮を来すX染色体潜性遺伝疾患である。小児期に発症する筋ジストロフィーの中で最も頻度が高く、重症型に位置付けられる。■ 疫学男児出生約3,500~5,000人に1人の割合で発症する。人種による発症頻度の明らかな差はない。女性保因者も骨格筋症状や心筋症を呈することがあり、定期的な評価が推奨される。■ 病因X染色体短腕(Xp21.2)に位置し、筋細胞膜直下に存在する細胞骨格タンパク質であるジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子)の変異(欠失、重複、微小変異など)が原因である。ジストロフィンは細胞骨格と細胞外基質を連結し、筋収縮時の機械的ストレスから細胞膜を保護する役割を担う。機能的ジストロフィンが欠損することで筋細胞膜の安定性が失われ、筋線維の壊死と再生が繰り返され、最終的に筋組織が脂肪組織や結合組織に置換される。■ 症状乳幼児期から運動発達の遅れ(定頸や歩行開始の遅延など)として認識されることが多い。幼児期には転びやすい、走れない、階段昇降が困難といった症状が顕在化する。床から立ち上がる際に、自身の膝や大腿に手をついて立ち上がる登攀性起立(ガワーズ徴候)や、腓腹筋の仮性肥大が高頻度に見られる。また、認知機能や発達特性(知的障害、注意欠如・多動症、自閉スペクトラム症など)を合併することがある。筋力低下は体幹および近位筋から始まり、次第に遠位筋へと進行する。従来は10歳前後で歩行を喪失することが多かったが、現在ではステロイド療法などにより歩行可能期間は延長している。歩行喪失後は車椅子の使用が必要となる。病状の進行に伴い、脊柱変形(側弯症)、呼吸筋力低下による呼吸機能障害、および拡張型心筋症に類似した心筋障害を合併する。嚥下機能障害や消化管の蠕動運動低下も生じうる。さらに、長期経過では骨粗鬆症や骨折、肥満なども重要な合併症となる。■ 分類ジストロフィン遺伝子変異に起因する疾患群は「ジストロフィノパチー」と総称される。DMDはジストロフィンがほぼ完全に欠損する重症型である。その一方で、遺伝子変異があるものの、異常なジストロフィンタンパク質が一部産生され、臨床症状がより軽度で歩行機能が長期に維持されるタイプを「ベッカー型筋ジストロフィー」(BMD)と分類する。■ 予後かつては20歳前後で呼吸不全や心不全により死亡することが多かった。しかし、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)などの呼吸管理の進歩、心筋保護薬の早期導入、ステロイド治療の普及、さらに多職種による集学的ケアの確立により、歩行可能期間および生命予後は大きく改善しており、40~50代以上まで生存する患者も増えている。2 診断 (検査、鑑別診断を含む)初めに診断のフローチャートを示す(図)。図 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の診断フローチャート画像を拡大する血液検査では、筋崩壊を反映してクレアチンキナーゼ(CK)値が著明に上昇する(数千~数万IU/L)。とくに発症初期や無症状の乳幼児期においても異常高値を示すため、スクリーニングとしてきわめて有用である。偶発的な肝酵素(AST、ALT)の上昇を契機に発見されることも多く、肝疾患との鑑別においてCK値の確認が必須である。確定診断には遺伝子検査が行われる。まず、MLPA法などによりDMD遺伝子の欠失・重複変異を検索する。これで変異が同定されない場合は、次世代シークエンサー(NGS)などを用いて点変異や微小欠失・挿入などの塩基配列解析を行う。遺伝子診断で確定できない特殊例では筋生検を考慮する。鑑別診断としては、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、肢帯型筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症(SMA)、先天性ミオパチー、多発性筋炎などが挙げられる。診断確定後は遺伝カウンセリングを行い、保因者診断や家族への遺伝学的情報提供についても検討する。3 治療現在、疾患を完全に治癒させる根治療法は確立していないが、病状の進行遅延を目的とした薬物療法と、合併症に対する対症療法・集学的ケアが行われる。薬物療法の基本はステロイド薬プレドニゾロンなど)の投与である。これにより筋力低下の進行を遅らせ、歩行可能期間の延長、呼吸・心機能の低下抑制、側弯の進行防止などの効果が得られる。また、近年、特定の遺伝子変異を対象としたエクソンスキップ療法が実用化されている。これはアンチセンス核酸を用いてmRNAの成熟過程で特定のエクソンを読み飛ばし、機能は不完全ながらも一部機能するジストロフィンタンパク質を産生させる治療である。国内ではエクソン53スキッピング薬であるビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)が承認されている。対症療法として、関節可動域(ROM)維持、装具療法、立位保持、呼吸リハビリテーションを継続的に実施することが重要である。呼吸機能障害に対しては、早期からの呼吸機能評価とNPPVの導入、機械的咳介助が行われる。心筋障害に対しては、ACE阻害薬の早期からの投与が推奨されている。病状の進行や変化に応じて、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(エプレレノンなど)の併用などが検討される。4 今後の展望(治験中、研究中の診断法や治療薬剤など)今後の有望な治療法の1つが遺伝子治療である。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて、全身投与により骨格筋および心筋へのマイクロジストロフィン遺伝子の導入を図る治療法(デランジストロゲン モキセパルボベク、商品名:エレビジス点滴静注)は、国内でも2026年2月に承認された。本来のジストロフィン遺伝子は巨大でありAAVベクターに全長を搭載できないため、マイクロジストロフィンは筋細胞膜の安定化に不可欠な最重要機能ドメイン(領域)のみを残し、全長の約3分の1に小型化した人工遺伝子である。導入後の長期的な有効性評価に加え、安全性課題として急性肝障害、血小板減少、心筋障害、および重篤な免疫性筋炎への注意とモニタリングが今後の重要な課題となっている。また、筋肉の成長を阻害するミオスタチンを標的とした抗体薬や、炎症・線維化を抑える新たな低分子化合物などの臨床試験が進行しており、病態や進行段階に応じた治療の選択肢がさらに広がることが期待される。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)小児神経科、脳神経内科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、循環器内科、呼吸器内科、臨床遺伝科など※本疾患は進行に伴い全身性の合併症や認知・発達特性を伴うため、スクリーニングで疑われた段階、あるいは確定診断後は、神経筋疾患を専門とする医療機関において、リハビリテーション、循環器、呼吸器、整形外科、栄養、心理、遺伝カウンセリングなど多職種連携による集学的治療が可能な体制へ紹介することが望ましい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考となるサイト(公的助成情報、患者会情報、主要な研究グループ、その他参考となるサイト)診療、研究に関する情報NMDポータルサイト(神経筋疾患ポータルサイト):デュシェンヌ型筋ジストロフィー(国内の神経筋疾患に関する情報を集約した総合サイト。最新の診療ガイドラインやケア、研究動向に関するリソースが網羅的に提供されている)難病情報センター 筋ジストロフィー(指定難病113)(医療費助成の対象疾患であり、公的制度の概要や申請手続きに関する基礎情報が得られる)Remudy(神経筋疾患患者登録システム)(国立精神・神経医療研究センター[NCNP]が運営する患者レジストリ。疫学データと市販後調査を区別して収集・管理しており、適切な情報提供や臨床試験の強力な基盤として機能している)MDクリニカルステーション(筋ジストロフィーの臨床研究班による、医療従事者および患者・家族向けの診療ガイドラインやケアマニュアル等の情報提供サイト)患者会情報一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会(JMDA)(患者や家族への支援、情報提供、交流活動を行う代表的な患者会組織) 1) 日本神経学会ほか監修. デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014. 南江堂:2014. 2) Komaki H, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2020;7:2393-2408. 3) Mendell JR, et al. N Engl J Med. 2023;388:2368-2371. 4) Nakamura H, et al. Orphanet J Rare Dis. 2013;8:60. 5) 難病情報センター. 筋ジストロフィー(指定難病113). 公開履歴初回2026年7月24日

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潰瘍性大腸炎の粘膜治癒、歯みがき頻度と関連

 潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸粘膜に慢性的な炎症が生じる炎症性腸疾患(IBD)の一つである。今回、日本人のUC患者275人を対象とした研究で、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒(内視鏡で大腸粘膜の炎症が認められない状態)の達成と関連することが示された。一方、残存歯数との関連は認められなかった。研究は、済生会今治病院内科の八木専氏、愛媛大学総合健康センターの古川慎哉氏らによるもので、詳細は5月28日付の「Digestive Diseases and Sciences」に掲載された。 近年、口腔内細菌叢と腸内細菌叢が相互に影響し合う「口腔-腸軸(oral-gut axis)」への関心が高まっており、口腔環境とIBDとの関連を示す報告が増えている。歯周病やう蝕(虫歯)、歯の喪失はUCやクローン病との関連が報告されているほか、歯みがきは口腔内の細菌量や炎症を減らし、腸内環境や全身の炎症反応にも影響を及ぼす可能性があると考えられている。一方で、口腔ケアとUCの病勢との関連については十分に検討されていない。また、UCでは粘膜治癒が長期寛解や良好な予後につながる重要な治療目標とされている。こうした背景から著者らは、UC患者における残存歯数および歯みがき頻度と、粘膜治癒との関連を検討した。 著者らは、2015~2019年に愛媛県内の医療機関で診療を受けたUC患者275人を対象に横断解析を行った。質問票を用いて生活習慣や口腔の健康状態を調査し、残存歯数は20本以下、21~27本、28本の3群、歯みがき頻度は1日1回以下、2回、3回以上の3群に分類した。粘膜治癒はMayo内視鏡スコア(MES)0と定義し、ロジスティック回帰分析を用いて関連を検討した。多変量解析では年齢、性別、BMI、喫煙、飲酒、プレドニゾロンステロイド薬)使用の有無、罹病期間、病変範囲などで調整した。 対象患者の年齢中央値は50.7歳で、58.2%が男性だった。粘膜治癒(MES 0)を達成していた患者は24.7%だった。 残存歯数と粘膜治癒との間に有意な関連は認められなかった。一方、歯みがき頻度別にみると、粘膜治癒率は1日1回以下の群で15.4%、1日2回の群で24.8%、1日3回以上の群で32.1%と、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒率は上昇する傾向を示した。 年齢や性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、プレドニゾロン使用、罹病期間、病変範囲などを調整したロジスティック回帰分析でも、歯みがき頻度は粘膜治癒と独立して関連していた(調整オッズ比 2.87、95%信頼区間 1.19~7.29、傾向性のP値=0.021)。 本研究では、日本人UC患者を対象に、歯みがき習慣と粘膜治癒との関連が検討された。その結果、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒と関連する一方、残存歯数との関連は認められなかった。著者らは、残存歯数は過去の口腔状態を反映する指標であり、現在の炎症活動とは一致しない一方、歯みがき頻度は口腔内環境を介して腸に影響する「口腔-腸軸」に関与する可能性があると考察している。また、UCでは症状と内視鏡所見が必ずしも一致しないことから、口腔衛生は主に粘膜炎症に関与している可能性が示唆される。 著者らは、「本研究は横断研究であり因果関係を示すものではないが、歯みがきは患者自身が日常的に実践できる簡便な生活習慣である。今後、前向き研究や介入研究で関連が確認されれば、口腔ケアがUC患者の病勢コントロールを支援する新たなアプローチとなる可能性がある」と述べている。今回の結果については、消化器疾患の管理における口腔環境の重要性を示唆するものと強調した。 なお、本研究では、歯みがき習慣や残存歯数が自己申告であることから情報バイアスの可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療薬への期待/中外

 中外製薬は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する国内初の再生医療等製品として、デランジストロゲン モキセパルボベク(商品名:エレビジス点滴静注)を2026年2月20日に発売した。この発売によせて、本剤の概要や治療における臨床的位置付けなどについて、発売後の適正使用推進体制の説明と合わせてメディアセミナーを開催した。 DMDは、筋肉に関わるタンパク質のジストロフィン産生に影響を及ぼすDMD遺伝子の突然変異が原因で発症する希少遺伝性疾患。幼少期に発症し、徐々に筋力が低下していくことで日常生活に大きな影響を及ぼすため、早期からの適切な治療介入が求められる。未治療だと呼吸不全などを起こし、生命予後に影響する。 デランジストロゲン モキセパルボベクは、短縮型ジストロフィンの発現を介してDMDの原因に働きかけるようデザインされた薬剤である。2025年5月13日に条件及び期限付承認を取得し、2026年2月20日に薬価収載・販売された。筋機能を改善し、筋力の低下を防ぐ治療薬 はじめに同社からデランジストロゲン モキセパルボベクの製品説明が行われた。本薬剤の構造は、機能的な短縮型ジストロフィンであるデランジストロゲン モキセパルボベク マイクロジストロフィン(以下「マイクロジストロフィン」)をコードする遺伝子を含む非複製型の遺伝子組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであり、骨格筋および心筋での発現を最適化するα-ミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7(MHCK7)プロモーター/エンハンサーにより制御する。 本薬剤の作用機序としては、搭載されたマイクロジストロフィン遺伝子が骨格筋および心筋で発現すると考えられる。また、マイクロジストロフィンが筋細胞で発現することで、筋機能を改善し、筋力の低下を防ぐと考えられている。本薬剤はすでに薬価収載・販売されているものの、条件及び期限付承認であり、第III相試験が現在行われている。生命予後が40歳に届くのが難しい希少疾病 「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の疾患と治療、遺伝子治療の診療体制、適正使用と臨床的位置づけについて」をテーマに小牧 宏文氏(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター センター長)が疾患概要について、講演を行った。 DMDは、ジストロフィンの欠損などにより筋肉が壊れやすく、かつ不可逆的な変性により、筋肉の再生ができない疾患。2~4歳ごろに症状が現れ始め、自然歴では5歳ごろをピークに運動能力が低下、ガワーズ徴候などがみられ、10歳前後に歩行能喪失となり車椅子が必要になる。未治療では呼吸器筋や心筋に影響があり、生命予後は10代とされる。現在でも、患者の生命予後はいまだ30歳前後を超える程度であり、根本治療が求められている。ただ、近年では、専門の医療施設で30代後半まで生命予後が延長しており、最近は大学生も多くなったほか、就労している患者もいる。 治療は、プロアクティブかつ包括的な多職種連携の診療が集学的治療(ベース治療)として確立され、患者の社会参加や就労・就学の実現に向けて治療が行われている。具体的には、呼吸管理として非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の適切な導入と定期的モニタリング、呼吸リハビリテーションがなされ、身体機能管理として関節可動域訓練、姿勢管理、拘縮などの予防が行われている。薬物療法としてはステロイド投与による歩行可能期間の延長、全身管理としてACE阻害薬などを用いた心機能ケア、栄養指導、嚥下機能評価などが行われている。 とくに薬物治療について、2026年6月現在でステロイド、ビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)、そして、デランジストロゲン モキセパルボベクを用いることができる。デランジストロゲン モキセパルボベクのような遺伝子治療が求められる医学的背景として、病状管理の継続を前提としつつ、「根本原因(ジストロフィン欠損)へと直接アプローチする次世代治療の導入が臨床現場における長年の課題であった」と小牧氏は説明した。投与前、投与後でも適切なフォローが必要なデランジストロゲン モキセパルボベク デランジストロゲン モキセパルボベクによる治療の流れとしては、投与前のスクリーニングにおいて、抗AAVrh74抗体が陰性であることの確認に加え、禁忌となる特定の遺伝子変異(エクソン8および/または9の欠失)の除外が行われる。さらに、免疫抑制および有害事象予防を目的に、本薬剤の投与前よりプレドニゾロンの投与が開始される。投与後は免疫介在性筋炎などのモニタリングのために、投与後3ヵ月は継続的な血液検査が行われる。投与後は免疫抑制作用があるので基本は自宅療養となる。 本薬剤の承認のために国際共同第III相臨床試験EMBARK試験パート1が行われた。遺伝子変異が確認された4~7歳の歩行可能な男児125例を対象に、安全性と有効性を評価した国際共同第III相ランダム化二重盲検クロスオーバープラセボ対照試験。主要評価項目はノース・スター歩行能力評価(NSAA)総スコアのベースラインから52週までの変化量、主な運動機能に関連する副次評価項目は、床からの立ち上がり時間(TTR)、10m歩行/走行(10MWR)を評価した。 その結果、高いほど良好を示すNSAAによる総スコアについて、52週時点でデランジストロゲン モキセパルボベク群は2.57ポイントの向上だったのに対し、プラセボ群は1.92ポイントの向上だった(群間差:0.65、p=0.24)。また、副次評価項目であるTTR時間のベースラインから52週までの変化量では、デランジストロゲン モキセパルボベク群が-0.27秒、プラセボ群が0.37秒、群間差は-0.64秒だった(p=0.0025[名目上のp値])。 本剤では厳格な適格性確認とモニタリングが求められる継続的な管理が必要とされる。とくに投与後約90日間は肝酵素、心筋逸脱酵素、血小板などを週1回程度測定し、異常検知時はBRIDGE-NMD(神経筋疾患遺伝子治療安全性最適化ネットワーク)と即時連携がされる。その理由として、米国で非歩行患者への投与で急性肝不全が発生し、その後死亡した症例の報告があったためとされる。 わが国では、安全対策の強化として全国の患者、全国の医師と日本小児神経学会などに所属する医師をつなぎ、専門的な助言や情報提供・相談、患者への適正な治療の提供ができる体制を「Eコンサルテーション」として構築している。 今後は、レジストリを活用した長期的なエビデンス構築とともに、免疫介在性反応、海外の重篤な有害事象を集め、施設要件と適応の厳格化、BRIDGE-NMDによる全例事前評価、投与後の集中モニタリングなどを通じて、安全性リスクに対して構造的に対応する。 最後に小牧氏は、「固有のリスクを客観的に評価し、個人の経験則ではなく、国レベルの構造的なインフラによって安全性を管理する体制が稼働している。非常に今回良かった点としては、産官学連携がうまくいっていることであり、今後もしっかり安全性を重視しながら、この体制を維持していきたい」と抱負を述べ、講演を終えた。

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高齢でフレイルの再発・難治性多発性骨髄腫患者、ダラツムマブ+イキサゾミブが許容可能

 高齢の再発・難治性多発性骨髄腫患者では、身体機能のばらつきや高い有害事象発現率および治療中止率により予後が悪化する。フランス・Poitiers University HospitalのArthur Bobin氏らは、高齢でフレイルの再発・難治性多発性骨髄腫患者に対してデキサメタゾンを含まないダラツムマブとイキサゾミブの併用療法(I-Dara)を評価したIntergroupe Francophone du Myelome(IFM)2018-02試験において、I-Daraが許容可能な安全性プロファイルを示したことを報告した。また、対象集団を考慮すると奏効率および生存率は許容範囲内であったという。British Journal of Haematology誌2026年7月号に掲載。 本試験は前向き第II相試験で14のIFM加盟施設で実施された。対象は65歳以上、国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)のフレイルスコアが2以上かつECOG PS 0~2の初回または2回目の再発患者で、ダラツムマブ16mg/kg、イキサゾミブ4mg(28日サイクルで1、8、15日目に週1回投与)、メチルプレドニゾロンを投与した。主要評価項目はVGPR(very good partial response)以上の奏効率。 主な結果は以下のとおり。・登録された55例の年齢中央値は82歳であり、90%が75歳以上であった。・VGPR以上の奏効率は32%であった。・追跡期間中央値は35.3ヵ月で、無増悪生存期間中央値は19.5ヵ月であった。全生存期間中央値は未到達であったが、33.6ヵ月時点での生存率は75%であった。・Grade3以上の有害事象は36例(67%)に認められ、うち18例が血球減少症、8例が感染症(うち6例は肺炎)であった。

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ASCO2026 レポート 老年腫瘍(前編)

レポーター紹介ここ数年、ASCO Annual Meetingでは、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)や、GAで明らかになった脆弱性に対するサポートの有用性を検証する研究が発表され、老年腫瘍学の領域を大いに盛り上げてきた。ASCO2026では、日常診療を大きく変えるような重要な試験(pivotal study)は多くなかったものの、高齢患者をどのように評価して治療選択に結びつけるか、GAを忙しい日常診療の中でどう使える形にするか、さらに、がんを患う高齢者(以下、高齢がん患者)に多い老年症候群にどのように介入するか、という観点から興味深い研究が報告されていた。その中から、筆者が興味深いと感じた研究を抜粋して紹介する。高齢がん患者をどう評価するか - 「fitかどうか」ではなく「どこが脆弱か」をみる高齢がん患者の診療で最も悩ましいのは、「この患者さんに標準的ながん治療を行ってよいのか」という問いである。暦年齢だけで判断すべきではないことは、すでに多くの医療者が理解している。しかし、では何をもって積極的治療に適していると判断し、何をもって慎重な治療選択が必要と考えるべきなのか。この問いに答えるのは、日常診療でも臨床試験でも、いまだに簡単ではない。この問いに答えるために、欧州の老年腫瘍学では、GAを用いて高齢がん患者を、fit、vulnerable、frailと分類することがある。しかし、もともとfitやfrailは老年医学の用語であり、腫瘍学の用語ではない。老年医学では、『自立度』を軸として、「健常(fit)」、「要介護状態(disability)」、その中間を「フレイル(frailty)」と分類することが多い(注:老年医学の領域でも定義は定まっていない)。一方、腫瘍学では、『がん治療の適応』を軸として、「若年者と同じ標準治療ができる(fit)」、「非常に弱い治療や緩和・支持療法ならできる(frail)」、その中間を「用量などを調整した弱い治療ならできる(vulnerable)」と分類することが多い(図)。図 日常診療における高齢者の分類方法画像を拡大する脆弱な高齢者に対するエプコリタマブ+R-mini CVP(#7002)この問題を考えるうえで、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する脆弱な高齢者を対象としたエプコリタマブ+R-miniCVPに関する試験は興味深かった1)。脆弱な高齢者を対象として、アントラサイクリンを抜いたR-miniCVP(リツキシマブ+減量シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン)に抗CD3/CD20二重特異性抗体であるエプコリタマブを併用する治療の有用性を評価した第II相試験が実施された。特筆すべきは、脆弱な高齢者を定義する際に、simplified Geriatric Assessment(sGA)というツールを用いたところである。sGAでは、年齢(閾値:80歳)、日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)、併存症(CIRS-Gを使用)を組み合わせて、患者をfit、unfit、frailに分類する。DLBCL患者に用いられてきた簡便なツールであり、予後と関連することが示されている2)。本試験の中間解析において、この集団におけるエプコリタマブ+R-miniCVPの有望な結果が示されたが、老年腫瘍学的には、高齢者機能評価の一種であるsGAを用いて対象集団を定義したという点が興味深い。すなわち、この試験におけるunfit/frailとは、漠然と「高齢で弱っている患者」を指す言葉ではなく、標準的なアントラサイクリンを含んだレジメンに適しているかどうかを高齢者機能評価で規定したという点で興味深いのである。一方で、sGAは実用的である反面、分類は大まかであると言える。たとえば80歳以上であれば、ADL、IADL、併存症に大きな問題がなくてもfitには分類されない。より多面的に高齢がん患者を評価する試みも必要である。高齢がん患者をより多面的に分類するツール(FI-CGA-10)の検討(#1656)このような問題意識に対して、日本から高齢がん患者をより多面的に分類するツールの有用性を評価する研究が報告された3)。治療方針決定前にGAを実施された高齢者1,630例を対象として、日本の研究グループが開発したツール「FI-CGA-10」が、予後を予測するかを評価した前向きコホート研究である。FI-CGA-10は、認知機能、気分、コミュニケーション能力(視力+聴力)、移動能力、転倒、栄養、ADL、IADL、社会支援の有無、併存症の10領域から構成される。その合計点数に基づき、患者をfit、pre-frail、frailに分類する4)。本研究の結果、fit群をreferenceとすると、pre-frail群の死亡ハザード比は2.26、frail群では5.06であった。また、年齢、性別、がん種、病期を含むモデルにFI-CGA-10を加えることで、1年全生存率の予測精度を示す指標(C-index)は、0.70から0.76に改善した。ここまでは単なる予後因子解析にみえるが、重要なのは、FI-CGA-10が「どのような患者が脆弱なのか」を、単一の指標ではなく複数の領域から評価している点である。高齢患者の評価では、Performance Statusや年齢だけでは不十分であり、身体機能、日常生活機能、栄養状態、認知・心理面、社会的背景などを含めて総合的に捉える必要があることは以前から指摘されてきた。FI-CGA-10は、そのようなGAの考え方を、実際に予後予測に利用できる形に整理した試みといえる。すなわち、「どのような評価を用いれば高齢患者を分類できるのか」という問いに対して、本研究はGAを基盤とした多面的評価が有力な選択肢であることを示している。前編まとめこのようにASCO2026では、高齢患者をどのように分類し、治療判断に結びつけるか検討する演題が複数報告されていた。ただし、ここで重要なのは、「予後が悪い患者」と「治療から利益が得られない患者」は同じではないという点である。FI-CGA-10でfrailと分類されたからといって、必ずしも治療強度を下げるべきとは言えず、G8低値だからといって、特定の治療を控えるべきとも限らない。高齢がん患者の評価は、治療の可否を機械的に決めるための「線引き」ではなく、患者の医学的・機能的状況を整理し、奏効率や生存期間中央値だけでは捉えきれない治療の利益と負担を共有するための「対話の土台」と捉えるべきである。治療によって何を得たいのか、どの程度の有害事象や通院負担を許容できるのか、残された時間をどのように過ごしたいのかによって、適切な選択は大きく異なる。どの高齢患者が積極的治療に適しているのか。その問いに対する明快な答えはまだない。しかし、ASCO2026で報告された一連の研究は、fit、unfit、frailなどの分類で単純に線を引くのではなく、患者の脆弱性を多面的に評価し、その人にとって意味のある治療選択を考えるShared Decision Makingにつなげることの重要性を示していたと言える。後編に続く1)Chihara D, et al. Phase 2 trial of epcoritamab in combination with rituximab-mini CVP for older unfit/frail or anthracycline-ineligible adult patients with newly diagnosed diffuse large B-cell lymphoma: Interim futility analysis.2)Merli F, et al. Simplified Geriatric Assessment in Older Patients With Diffuse Large B-Cell Lymphoma: The Prospective Elderly Project of the Fondazione Italiana Linfomi. J Clin Oncol. 2021;39:1214-1222.3)Nishijima TF, et al. Validation of a 10-item frailty index based on a comprehensive geriatric assessment (FI-CGA-10) for predicting survival in older adults with cancer.4)Nishijima TF, et al. A 10-Item Frailty Index Based on a Comprehensive Geriatric Assessment (FI-CGA-10) in Older Adults with Cancer: Development and Construct Validation. Oncologist. 2021;26:e1751-e1760.

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病名や薬物治療手順を一部変更、「蕁麻疹診療ガイドライン」改訂/日本皮膚科学会

 国際ガイドラインの改訂や病態解明の進展、新たな生物学的製剤の登場などを背景に、8年ぶりの改訂版となる「蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)」が2026年4月に公開された。病型分類および病名の一部変更や治療アルゴリズムのアップデートが行われた今回の改訂について、ガイドライン策定委員会の委員長を務めた福永 淳氏(大阪医科薬科大学)が第125回日本皮膚科学会総会で講演した。慢性蕁麻疹→慢性特発性蕁麻疹、アスピリン蕁麻疹→NSAID誘発蕁麻疹へ 蕁麻疹の病型について、特発性の蕁麻疹、刺激誘発型の蕁麻疹、血管性浮腫、蕁麻疹関連疾患という4つの大分類に変更はないが、その下の分類や病名がいくつか変更された。まず、特発性の蕁麻疹は「急性特発性蕁麻疹(発症後6週間以内)」と「慢性特発性蕁麻疹(発症後6週間超)」に、“特発性”という言葉を加える形に病名が変更された。 刺激誘発型の蕁麻疹は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーがアレルギー性蕁麻疹の一部であるという考え方に基づき、別分類されていた2018年版から、アレルギー性の蕁麻疹(食物依存性運動誘発アナフィラキシーを含む)という表記に変更された。またアスピリン蕁麻疹は、アスピリンでのみ生じるという誤解を生む可能性があることから、NSAID誘発蕁麻疹と改めた。 血管性浮腫に関しては、「マスト細胞起因性」および「非マスト細胞起因性」という中分類を新たに設け、非マスト細胞起因性の病型の1つとして「メディエーター不明の血管性浮腫」が追加された。 さらに、病態に関する記述も最新の知見をもとに大きくアップデートされた。その中で最大の特徴といえるのが、すべての文言において「肥満細胞」という名称を削除し、「マスト細胞」に統一した点である。「脂肪細胞(肥満に関わる細胞)」と混同することを避けるための配慮であり、疾患の正しい理解を促進する狙いがあるという。日本独自の疫学データを追加、慢性特発性蕁麻疹患者のボリュームゾーンは40〜50代 これまでの日本のガイドラインでは、蕁麻疹に関する詳細な疫学データが不足していたが、今回の改訂では新たに医療情報データベースなどを用いた研究結果が追加された。日本人の慢性特発性蕁麻疹の推定有病率は1.2〜1.6%であり、全国でおよそ200万人の患者が存在すると推測される。新規発症率はおよそ0.7〜0.8%である。 福永氏は、「慢性特発性蕁麻疹の有病率はヨーロッパ諸国と比較して、東アジアでより高い傾向がある。年齢分布を見ると、実は0〜9歳の小児期に新規発症の大きなピークが存在する。しかし、この年代の多くは自然治癒に向かうため、実際に医療機関で継続的な治療を要する患者のボリュームゾーンは40~50代となる。また、男女比は2対3で女性に多いことも明らかになった」と語った。網羅的検査の実施は推奨されない 検査に関しては、2018年版から「原因検索のための網羅的な検査」を推奨しない方向性であることに変更はないが、今回その姿勢をより明確に打ち出している。I型アレルギーの検査実施については、1型アレルギーが疑われる詳細な問診・病歴がある場合にのみ、疑わしい抗原に対して個別の検査を選択的に行うべきとされた(CQ1)。急性特発性蕁麻疹(CQ2)および慢性特発性蕁麻疹(CQ3)に対する検査についても、全例でルーチンに実施する必要はないとしたうえで、推奨文では以下のように記載された。急性特発性蕁麻疹:発熱などの全身症状を伴い,細菌やウイルスの感染が疑われる場合には血算・血清・生化学検査などの一般的な検査を行ってもよい慢性特発性蕁麻疹:非定型的な症例、難治性の症例などで、背景因子、合併症の存在が疑われる場合は抗ヒスタミン薬やオマリズマブの反応性を予測できる可能性があり、それらに応じた検査(血清総IgE値,甲状腺自己抗体,CRPの測定)を行ってもよいPROMs活用を推奨し、治療の第1目標を変更 今回のガイドライン策定委員会で全員一致で推奨に強い合意が得られたのが、UAS7(Urticaria Activity Score over 7 days)や、UCT(Urticaria Control Test)などの患者報告アウトカム尺度(PROMs:Patient-Reported Outcomes Measures)を用いた疾患コントロール状態の客観的評価である。治療の第1目標は、2018年版での「治療により症状が現れない状態」から「治療により生活に支障がない状態」と変更された。またその目安をUCTのスコアで表しており、第1目標(治療により生活に支障がない状態)がUCT12点以上、第2目標(治療により症状が現れない状態)がUCT16点と明記された。福永氏は、「日常診療のアセスメントの際には、ぜひUCTを活用して客観的な評価を行っていただきたい」と呼びかけた。薬物治療はStep 2にオマリズマブまたはデュピルマブ、ステロイドは「急性増悪時のみ」 治療手順については、急性と慢性でアルゴリズムが明確に分けられた。急性は主に救急外来などでの短期間の対応を想定している。薬物治療手順は、慢性特発性蕁麻疹について以下が示された。Step 1:第2世代抗ヒスタミン薬Step 2:Step1に追加してオマリズマブまたはデュピルマブStep 3:Step1に追加してシクロスポリンまたは試行的治療 2018年版でStep 2とされていたH2-拮抗薬、抗ロイコトリエン薬、トラネキサム酸については、国際ガイドラインやエビデンスレベルの低さなどを背景に、Step1の補助的治療としての位置付けに変更された。 また、Step 3に含まれていた副腎皮質ステロイドに関しては、「急性増悪時のみ」とされて、プレドニゾロン換算量0.2mg/kg/日未満で2週間以内の使用に限定することが明記された。

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高リスクDLBCLの初回治療、タファシタマブ+レナリドミド+R-CHOPでPFS延長/Lancet

 未治療の高リスクびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の約40%は、初回治療のR-CHOP療法(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、prednisoneまたはプレドニゾロン)で再発・進行に至る。ドイツ・University Hospital MunsterのGeorg Lenz氏らMIND Study Investigatorsは、DLBCLを含む高リスクB細胞リンパ腫を対象とした検討(frontMIND試験)で、R-CHOP+タファシタマブ(Fc領域を改変した抗CD19モノクローナル抗体)+レナリドミド(tafa-len-R-CHOP)療法がR-CHOP療法と比較し、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことを示した。ただし、追加併用により、治療中に発現し死亡に至った有害事象(TEAE)を含む有害事象の増加が認められた。全生存期間(OS)に関するデータは未成熟で追跡調査が継続されているが、著者らは「循環腫瘍DNA(ctDNA)を含むさらなる解析で、tafa-len-R-CHOP療法で観察されたPFS改善に分子学的奏効がより深く寄与しているかどうか評価できるだろう。tafa-len-R-CHOP療法は、高リスクDLBCLや高悪性度B細胞リンパ腫(HGBL)患者の新たな初回治療となる可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年5月30日号掲載の報告。tafa-len-R-CHOP療法とR-CHOP療法を比較する国際共同試験 MIND試験は北米・南米、欧州および日本を含む環太平洋地域の298施設で行われた第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。対象は、18~80歳で未治療の高中リスクまたは高リスクのDLBCL、もしくはHGBLの患者であった。 研究グループは被験者を、International Prognostic Index(IPI)または年齢補正IPI、試験地で層別化し、標準治療の21日サイクル6回投与のR-CHOP療法群またはtafa-len-R-CHOP療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。R-CHOP療法は、初日にリツキシマブ375mg/m2、シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン1.4mg/m2(最大2mg)を静脈内投与し、prednisoneまたはプレドニゾロン100mg/日を1~5日目に経口投与した。これらに加えてtafa-len-R-CHOP療法群では、タファシタマブ(12mg/kgを1、8、15日目に静脈内投与)とレナリドミド(25mg/日を1~10日目に経口投与)が投与された。 主要評価項目は、試験担当医師の評価によるPFS(無作為化から病勢進行または全死因死亡までと定義)で、ITT集団で評価した。安全性は副次評価項目として、試験薬を少なくとも1回投与された全被験者を対象に評価した。2年PFS率tafa-len-R-CHOP療法群71.1%vs. R-CHOP療法群62.9% 2021年5月11日~2023年3月2日に1,229例がスクリーニングされ、899例が無作為化された(tafa-len-R-CHOP療法群448例[50%]、R-CHOP療法群451例[50%])。両群の人口統計学的および疾患の特性はバランスが取れており、年齢中央値は65歳、IPI 3またはaaIPI 2が503例(56%)、IPI 4~5またはaaIPI 3が388例(43%)、ECOG-PS 2が283例(31%)、485例(54%)が腫瘤性病変(直径7.5cm以上)を有していた。 追跡期間中央値35.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:35.0~35.4)の主要解析時点において、PFSはtafa-len-R-CHOP療法群がR-CHOP療法群より改善し(ハザード比[HR]:0.75、95%CI:0.59~0.96、p=0.0194)、2年PFS率はtafa-len-R-CHOP療法群71.1%(95%CI:66.3~75.4)、R-CHOP療法群62.9%(57.9~67.5)であった。 OSの中間HRは0.85(95%CI:0.63~1.14)で統計学的有意差は認められなかった(p=0.2703)。3年OS率はtafa-len-R-CHOP療法群81.1%(95%CI:77.0~84.6)、R-CHOP療法群77.8%(73.5~81.5)であった。 Grade3以上の全TEAE発現率は、tafa-len-R-CHOP療法群(384/443例[87%])がR-CHOP療法群(340/447例[76%])よりも高率であった。さらに、死亡に至ったTEAEの発現率もtafa-len-R-CHOP療法群(26例[6%])がR-CHOP療法群(17例[4%])よりも高率であった。一方で、試験中のすべての死亡例は、tafa-len-R-CHOP療法群(82例[19%])がR-CHOP療法群(97例[22%])よりも少なかった。 投与データに基づくすべての試験薬の早期中止率は、tafa-len-R-CHOP療法群(71/443例[16%])とR-CHOP療法群(66/447例[15%])で同程度であった。

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第316回 埼玉県立小児医療センターの死亡事故、何があったのか(前編)

INDEXビンクリスチンの誤髄注死亡事故、世界的に報告事故が起こりやすい治療時期ビンクリスチンの誤髄注死亡事故、世界的に報告今年3月上旬、埼玉県立小児医療センターが明らかにした急性リンパ性白血病(ALL)で治療中の患者5例が、髄腔内注射(以下、髄注)の後に重篤な神経症状を発症し、うち1例はこれが原因とみられる状態で死亡に至った事案は記憶に新しい。この件では5例中3例の髄液から髄注には禁忌の抗がん剤ビンクリスチン(商品名:オンコビン)が検出されたことが判明し、重篤な神経症状発症事例の可能性が濃厚と指摘されている。ちなみに、ビンクリスチンは微小管重合阻害薬(ビンカアルカロイド系)であり、紡錘体を形成しているチューブリンに結合して微小管の形成を阻害し、細胞分裂を停止させる作用を持つ。また、ビンクリスチンは胆汁排泄される肝代謝型で、主な代謝酵素は CYP3A4 とCYP3A5 である。ただし、CYP3A5の発現レベルには大きな個人差があり、その度合いによって副作用の出現頻度は異なる。一般的な副作用は末梢神経症状であり、薬剤が末梢神経に到達すると、軸索輸送(タンパク質・小胞の輸送)に必須な軸索内の微小管が障害される。このため、もし髄注でビンクリスチンが脊髄・脳に接触すれば、同部位には代謝機構は存在しないため、直接高濃度で曝露することになり、末梢神経毒性とは比較にならないほど重篤な神経症状が生じる。具体的には軸索の順行性・逆行性輸送が破綻し、神経細胞の変性・壊死が急速に進行する。実際の症状としては、激しい疼痛、下肢麻痺、上行性麻痺、呼吸筋麻痺、意識障害などを発症し、最悪は死に至る。救命のためには早期に大量の脳脊髄液洗浄を行う必要があるが、誤って髄注してしまった場合の救命例は少数といわれている。2006年に米国・ノースウェスタン大学のグループが行った文献レビュー1)では、当時確認されたミスによるビンクリスチンの髄注事例32例中27例(84.3%)が死亡したとされている。なお、オーストラリアの研究者が2019年に発表した論文2)によれば、過去の論文検索や事故報告書などの集計から、これまで全世界で確認されているビンクリスチンの誤った髄注事例は少なくとも135例あるものの、これは氷山の一角とみられている。この件について同センターが医療法の医療事故調査制度に基づいて設置した外部有識者による医療事故調査委員会は、5月27日に第3回の会合を開き、「ビンクリスチン混入の原因特定は困難」との結論に達した。一方で再発防止策については、3回の会合で委員から提示された意見を踏まえ、過失、故意のいずれの可能性でも対応し得る対策がまとめられたとし、これを反映させた報告書の微修正などは委員長に一任された。報告書は同センターに提出され、調査対象となっている5例の家族に内容を説明後、個人情報などに配慮しつつ可能な範囲で公表する予定だ。事故が起こりやすい治療時期しかし、何ともすっきりしない結末である。この事件を改めて振り返り論考してみたい。まず、今回の事案で髄液からビンクリスチンが検出されたのは、髄注時期別にみると、2025年1月に投与された10歳未満の男児、2025年3月と10月にそれぞれ10代男性の3例である。3例とも注射後数日以内に下肢痛や麻痺などの神経症状を発症。2025年10月に髄注を受けた患者は2026年2月に死亡し、残る2例も意識不明や全身麻痺などの重篤な状態となった。実は同センター側では3例目の神経症状発症事例を経験した直後の11月、院内外の委員で構成される調査対策委員会を発足させ、対外的な公表の約1週間前の3月5日まで同委員会が計6回開催されていた。この3例の髄液中のビンクリスチン検出は、同委員会の開催過程で、がん性髄膜炎の評価などほかの神経症状を検索するために採取した髄液を使用した髄液タンデム質量分析の結果、判明したものである。さて、ここで改めて小児でのALLの標準的治療について触れておかねばならないだろう。ALLではおおむねプレフェーズ(導入前治療)→寛解導入療法→強化(地固め)療法→再寛解導入療法→維持療法という流れとなる。プレフェーズは、腫瘍崩壊症候群の防止とステロイドへの反応性の評価を目的として行われるもので、プレドニゾロンまたはデキサメタゾンが通常5~7日程度投与される。今回、焦点となっているのは、寛解導入療法の段階である。この寛解導入療法(約4週間)では、ビンクリスチン、プレドニゾロンまたはデキサメタゾン、L-アスパラギナーゼの3剤(高リスク群ではダウノルビシンなどを加えた4剤)併用療法とメトトレキサートの髄注が行われる。ちなみにこのうちプレドニゾロンは内服、そのほかは基本的に静脈注射である(ただしL-アスパラギナーゼは筋注の場合もあり)。ALLではがん細胞が中枢神経に潜伏しやすく、血液脳関門の存在ゆえにこうした潜伏したがん細胞を制圧するには全身化学療法では不十分であり、メトトレキサート、シタラビン、ヒドロコルチゾンの3剤併用による髄注(トリプルIT)が寛解導入療法の時期から行われる。ただし、ビンクリスチンは一般的に寛解導入療法後の強化療法で使われるケースは少ないものの、再寛解導入療法以降に再び定期的に投与されるようになる。今回の事案については、どの治療段階で起きたかは明らかにされていない。ただ、過失で起きた前提で考えるならば、それが起きやすい環境があるのは寛解導入療法時となる。そして同センターではこの事案が公表された今年3月11日から約1週間後の3月17日にこの3例以外にも髄注を受けた2例のALL患者で神経症状が疑われることを公表している。前出の3例とは異なり、この2例の患者プロファイルは明らかにされていない。前出の3例は早い患者で髄注翌日、遅い患者でも4日以内に症状が出現、急速に進行・重症化した。それに対し、この2例は発症まで約2週間を要し、症状は下肢麻痺などで命に別状はないことなどから、前述の調査対策委員会では「最初の3例と同じ病態であることには否定的」との見解だ。ALLでは、ビンクリスチン静注とトリプルIT髄注を同日に行うことによる取り違えに起因した事故が過去に世界的にも報告されている。このため昨今ではあえて投与日を変えて行うことが一般的と言われる。患者や施設の事情によっては、同日に行われることもあるという。もちろん過去の事故のことは多くの施設で念頭にあることは想像に難くなく、その場合は同日内でも相当時間を空けて行うなど、通常は相当厳重な注意が払われる。今回は小児ALL治療の背景と事件の事実関係について触れた。次回、「なぜ起きたのか?」 故意・過失の双方から今回の事件を独自視点でひもといてみたい。参考1)Basetty P, et al. blood. 2006;108:3327.2)Gilbar P, et al. J Oncol Pharm Pract. 2020;26:263-266.3)日本小児血液・がん学会編. 小児白血病・リンパ腫 診療ガイドライン 2016 年版. 金原出版株式会社. 2016.4)厚生労働省:埼玉県立小児医療センターの報道に関する対応状況について(報告)令和8年3月26日

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「トイレでのスマホ」が痔の悪化の一因に

 米国消化器病学会(AGA)は4月29日、現時点で推奨される痔の診断と治療に関するベストプラクティスを公表した。AGAは、痔の診断・治療は消化器内科医が積極的に担うべきだとした上で、症候性の痔に対する第一治療選択肢は、食生活を見直して便通を整え、スマートフォン(以下、スマホ)を見ながらトイレに長居する習慣を改めることだとしている。 最新の「米国人のための食事ガイドライン」では、毎食でのタンパク質摂取や全脂肪乳製品の摂取が重視されているが、消化器専門医らは、高タンパク食、特に赤肉中心の食事に偏るあまり、食物繊維の摂取がおろそかになる傾向を懸念している。肉には食物繊維が含まれていないため、このような食事では食物繊維が不足して便秘を招き、いきみによって痔の悪化を引き起こす可能性があるためだ。便通を整えるためには、十分な食物繊維の摂取が欠かせない。栄養学の専門家は、男性では1日38g、女性では25gの食物繊維の摂取を推奨している。しかし、多くの米国人は必要量の食物繊維を摂取できていないという。 食事と共に、トイレでの行動も重要である。現在、多くの成人がトイレを、メール確認やソーシャルメディア閲覧のための静かな空間として利用している。しかし、この「トイレスクロール」は痔の大きなリスク因子になるという。便座に長時間座ることで、肛門周囲の血管に圧がかかるためである。ガイドラインの筆頭著者である米ベイラー医科大学のWaqar Qureshi氏は、「トイレに座る時間は5分以内にすべきだ。5分以内に排便できない場合は、座り続けていきむのではなく、一度立ち上がり、後で再度試みるとよい」とNBCニュースに語った。同氏はさらに、足台を使ったり、本を積み重ねて足を高くしたりして、しゃがむ姿勢に近づけることで、いきみの軽減につながる可能性があると述べた。 治療法については、ヒドロコルチゾンなどの外用ステロイド薬や局所麻酔薬、血管作動薬などの外用薬は、症候性の痔の治療用に検討できるが、その有効性を裏付けるデータはほとんどないとされている。また、外用ステロイド薬は、長期間使用すると皮膚が薄くなる可能性があるため、一度に2週間以上使用するべきではないとしている。さらに、症状が持続する痔には、輪ゴムで痔核を縛る「ゴム輪結紮療法」や、熱や光を用いて組織を縮小させる凝固療法が必要になることもある。このほか、温水に座って患部を温める「座浴」も症状緩和法としてガイドラインに記載されているが、その有効性を支持するエビデンスは限定的である。 さらに、クローン病や潰瘍性大腸炎の活動期では、炎症が完全寛解するまで痔治療を延期すべきこと、妊娠中の痔は保存的治療が基本であり、侵襲的治療は原則として産後に検討するべきこと、新規患者では可能な限り肛門鏡検査を実施し、痔と類似症状を示す他疾患を除外した上で正確な診断を行う重要性も強調されている。

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全身性エリテマトーデスの自己注射可能な皮下注薬「サフネロー皮下注120mgオートインジェクター」【最新!DI情報】第63回

全身性エリテマトーデスの自己注射可能な皮下注薬「サフネロー皮下注120mgオートインジェクター」今回は、ヒト抗I型インターフェロン受容体1モノクローナル抗体「アニフロルマブ(遺伝子組換え)(商品名:サフネロー皮下注120mgオートインジェクター、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。これまでの点滴静注製剤に加えて皮下注製剤が登場したことで、全身性エリテマトーデス患者の生活状況や治療ニーズに応じた柔軟な治療が可能になると期待されています。<効能・効果>既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデスの適応で、2026年2月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはアニフロルマブ(遺伝子組換え)として、1回120mgを1週間ごとに皮下注射します。なお、アニフロルマブ(遺伝子組換え)点滴静注製剤から本剤に切り替える場合、点滴静注の最終投与から約2週間後に本剤の投与を開始します。<安全性>重大な副作用として、アナフィラキシー(頻度不明)、重篤な感染症(2.3%)があります。その他の副作用として、注射部位反応(10%以上)、気管支炎(気管支炎、ウイルス性気管支炎、気管気管支炎)、上気道感染(上気道感染、上咽頭炎、咽頭炎)、帯状疱疹、過敏症(いずれも1~10%未満)、気道感染(気道感染、ウイルス性気道感染、細菌性気道感染)(いずれも1%未満)、関節痛(頻度不明)があります。なお、症状を悪化させる恐れがあるため、重篤な感染症の患者および活動性結核の患者には投与できません。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、ヒト抗I型インターフェロン受容体1モノクローナル抗体製剤であり、既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデスに用いられる皮下注射薬です。 2.今までに、ステロイド、ヒドロキシクロロキン、免疫抑制薬などによる全身性エリテマトーデスに対する適切な治療を行っても効果不十分な場合に上乗せして使用されます。 3.医療機関において、適切な在宅自己注射教育を受けた患者さんや家族が自己注射できます。自己判断で中止や減量をしないでください。 4.妊娠または妊娠している可能性がある女性は、使用する前に医師または薬剤師に告げてください。 <ここがポイント!>全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は、免疫系の異常により全身の多臓器に炎症を引き起こす慢性の自己免疫疾患で、厚生労働省の指定難病49に該当します。初期症状として全身倦怠感や発熱が多くみられ、その後、皮膚・粘膜症状、関節症状、腎病変、中枢神経症状などさまざまな症状が現れるため、患者ごとに症状の組み合わせや重症度が大きく異なります。治療の主軸は副腎皮質ステロイドによる免疫抑制および抗炎症であり、重症例ではステロイドパルス療法が選択されます。しかし、ステロイドは長期使用に伴う多くの副作用があり、ヒドロキシクロロキンや免疫抑制薬、生物学的製剤などを併用し、ステロイドの減量を目指す治療が行われます。SLE患者の多くは、I型インターフェロン(IFN)シグナル伝達が持続的に亢進し、IFN誘導性遺伝子の過剰発現が認められます。アニフロルマブは、I型IFNα受容体サブユニット1に結合するヒト免疫グロブリンG1κ(IgG1κ)モノクローナル抗体であり、I型IFN受容体を介したシグナル伝達を遮断することで自己抗体産生を抑制し、SLEの症状緩和および進行抑制に寄与すると考えられています。同成分は2021年11月に点滴静注製剤が発売されていますが、4週間ごとに通院し、30分以上かけて点滴投与を行う必要があります。今回承認された皮下注製剤は、週1回の自己注射薬であり、従来の点滴静注製剤に加わる新たな選択肢として、患者の生活状況や治療ニーズに応じた柔軟な治療を可能にします。また、通院負担の軽減や治療継続率の向上も期待されます。なお、アニフロルマブ点滴静注製剤から皮下注製剤に切り替える場合、点滴静注製剤の最終投与から約2週間後に皮下注製剤の投与を開始する必要があります。標準治療を実施中の中等症~重症の疾患活動性を有する自己抗体陽性のSLE患者を対象とした第III相国際共同試験(TULIP SC試験)において、主要評価項目である投与52週時のBICLA達成例(複合的な疾患活動性低下指標)の割合は、本剤120mg皮下投与群で59.4%、プラセボ皮下投与群で43.9%、割合の群間差は15.5%(96.46%信頼区間:1.4~29.6%)であり、プラセボ投与群に対する本剤投与群の優越性が検証されました(p=0.0211、層別Cochran Mantel Haenszel法)。

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薬剤性過敏症症候群〔DIHS:drug-induced hypersensitivity syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)は、発熱と多臓器障害を伴う重症型薬疹の1つである。抗けいれん薬など特定の薬剤を内服開始後、遅発性に発症し、原因薬剤を中止しても症状の再燃や遷延化がみられることが特徴である。多くの場合、発症後3週間前後でヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)に代表されるヘルペスウイルスの再活性化を伴うことから、薬剤アレルギーとヘルペスウイルス感染症が複合して生じる新たな病態として認識されている(図1)。DIHSのもう1つの特徴として、回復期に1型糖尿病や慢性甲状腺炎などの自己免疫疾患を発症することが知られている。なお、欧米を中心にDRESS(drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms)という疾患概念が用いられるが、DRESSの診断基準にはヘルペスウイルスの再活性化については言及されておらず、DIHSよりも広い範囲の薬疹が含まれる。図1 DIHSの病態の仮説■ 疫学2021年の全国調査によれば、年間受療患者数は人口100万人当たり2.82人と推計されている。男女比は1:1で、発症年齢は40~60代(中央値58歳)が最多である。原因薬剤は比較的限定的であり、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾニサミドなどの抗てんかん薬のほか、アロプリノール、ジアフェニルスルホン、サラゾスルファピリジン、メキシレチンなどが代表的である。DIHSの致死率は約10%程度と高く、死因の多くはサイトメガロウイルス(CMV)肺炎やニューモシスチス肺炎などの感染症である。■ 病因本症は、原因薬剤を通常2~6週間(平均1ヵ月)内服した後に発症する。病態は、T細胞を主体とする薬物アレルギー反応とヘルペスウイルスの再活性化が中心である。急性期にはTARC/CCL17の著明な上昇や好酸球増多に象徴されるTh2反応の亢進がみられる。また、急性期には制御性T細胞(Treg)の増加がみられるが、経過中にその機能やバランスが崩れることが、ウイルス再活性化や後遺症としての自己免疫疾患発症に関与すると考えられている。さらに、急性期には末梢血のCD4陽性T細胞表面にHHV-6の受容体であるCD134/OX40の発現が亢進しており、これがウイルスの効率的な感染拡大を許容する一因である可能性が示唆されている。■ 症状初期症状として発熱、頸部リンパ節腫脹、顔面や躯幹の紅斑が生じる。皮疹は播種状紅斑丘疹型や多形紅斑型で始まり、急速に拡大してしばしば紅皮症状態に移行する(図2)。特徴的な顔貌として、顔面の浮腫を伴う紅斑、眼周囲の蒼白、鼻孔・口周囲に鱗屑・痂皮を伴う丘疹や小膿疱がみられる(図3)。肝機能障害や腎機能障害などの内臓病変や、異型リンパ球の出現、好酸球増多、白血球増多などの血液学的異常を伴う。図2 DIHSにおける紅皮症状態画像を拡大する図3 DIHSに特徴的な顔貌■ 予後原因薬剤を中止しても皮疹や臓器障害が遷延し、経過中に再燃を繰り返す。発症3~5週間前後にCMVの再活性化が生じ、肺炎、腸炎、消化管出血、肝障害などの致死的な合併症を引き起こすことがある。また、DIHSの症状が軽快した数ヵ月から数年後に、橋本病、劇症1型糖尿病、円形脱毛症、白斑などの自己免疫疾患を発症することがあり、長期的な経過観察が必要である。2 診断診断は、厚生労働省研究班による診断基準(2005年)(表)に基づいて行う。表 薬剤性過敏症症候群(DIHS)診断基準(2005)■ 概念高熱と臓器障害を伴う薬疹で、薬剤中止後も遷延化する。多くの場合、発症2~3週間後にHHV-6の再活性化を生じる。■ 主要所見1. 限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑、多くの場合紅皮症に移行する。2. 原因薬剤中止後も2週間以上遷延する。3. 38℃以上の発熱4. 肝機能障害5. 血液学的異常:a、b、cのうち1つ以上a. 白血球増多(11,000/mm3以上)b. 異型リンパ球の出現(5%以上)c. 好酸球増多(1,500/mm3以上)6. リンパ節腫脹7. HHV-6の再活性化典型DIHS1~7すべて非典型DIHS1~5すべて、ただし4に関しては、その他の重篤な臓器障害をもって代えることができる。■ 参考所見1. 原因医薬品は、抗けいれん薬、ジアフェニルスルホン、サラゾスルファピリジン、アロプリノール、ミノサイクリン、メキシレチンであることが多く、発症までの内服期間は2~6週間が多い。2. 皮疹は、初期には紅斑丘疹型、多形紅斑型で、後に紅皮症に移行することがある。顔面の浮腫、口囲の紅色丘疹、膿疱、小水疱、鱗屑は特徴的である。粘膜には発赤、点状紫斑、軽度のびらんがみられることがある。3. 臨床症状の再燃がしばしばみられる。4. HHV-6の再活性化は、(1)ペア血清でHHV-6 IgG抗体価が4倍(2管)以上の上昇、(2)血清(血漿)中のHHV-6 DNAの検出、(3)末梢血単核球あるいは全血中の明らかなHHV-6 DNAの増加のいずれかにより判断する。ペア血清は発症後14日以内と28日以降(21日以降で可能な場合も多い)の2点で確認するのが確実である。5. HHV-6以外に、サイトメガロウイルス、HHV-7、EBウイルスの再活性化も認められる。6. 多臓器障害として、腎障害、糖尿病、脳炎、肺炎、甲状腺炎、心筋炎も生じうる。■ 早期診断の補助検査診断基準項目に「中止後2週間以上の症状の遷延」や「発症2~3週間後のHHV-6再活性化」が含まれるため、発症早期の確定診断は困難である。早期にDIHSを疑う指標として、急性期の血清TARC値の測定が有用であり(4,000pg/mL以上で疑う)、2023年に「DIHS/DRESSの診断の補助」としての保険適用が追加された。■ 鑑別診断と原因薬剤の特定通常の薬疹や、麻しん・風しんなどのウイルス性発疹症との鑑別を要する。DIHSを疑う臨床的ポイントとして、原因薬剤が比較的限られていることから、詳細な薬剤内服歴(2~6週間の服用歴)の聴取が不可欠である。また、原因薬剤中止後も皮疹や臓器障害が遷延・悪化することも、他の薬疹との重要な鑑別点となる。特有の顔貌(図3)や、皮疹が急速に紅皮症化する経過(図2)も診断の有力な手掛かりとなる。HHV-6の再活性化は、一般に末梢血液中のHHV-6 DNAの定量(リアルタイムPCR法)によって判断するが、現時点では保険適用外の検査である。被疑薬の特定には、薬剤添加リンパ球刺激試験(DLST)やパッチテストが有用である。ただし、DLSTは発症早期には偽陰性となりやすく、発症後5週目以降の回復期に実施する必要がある。なお、重症化リスクを考慮し、薬剤の再投与試験(誘発試験)は行わない。3 治療■ 治療の実際DIHSを疑った場合は、第一に被疑薬を中止し、原則として入院加療とする。病初期に起こる全身症状と臓器障害の寛解を目指し、副腎皮質ステロイドの全身投与が治療の基本となる。中等~高用量(プレドニゾロン換算0.5~1mg/kg/日)で開始し、症状が十分に改善するまで(通常7~14日間)維持する。その後は、症状をみながら1~2週間ごとに5~10mg/日ずつ緩徐に漸減する。急激なステロイドの減量は、免疫再構築症候群を招きCMV感染症を顕在化させるリスクがあるため避けるべきである。臓器病変を伴わない軽症例に対しては、ステロイド全身投与を行わず、局所ステロイド外用や補液などの支持療法(supportive therapy)で経過観察することもある。ステロイドパルス療法は、CMVの再活性化や自己免疫疾患の発症に関与するとの否定的見解が主流であり、重篤な臓器障害への進展など特殊な状況に限り検討される。■ CMV感染症への対応発症3~5週前後にCMVが再活性化し、ステロイドの減量を契機として突然、肺炎や消化管出血などの致死的合併症を発症することがある。経過中は常にCMVのモニタリングを行い、顕性感染症を認めた場合には、抗ウイルス薬(ガンシクロビル)の投与による積極的な介入を行う。■ 多剤感作への配慮DIHSの経過中は多剤感作を引き起こしやすいため、解熱や感染予防目的での非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗菌薬の新たな投与は可能な限り避けるべきである。4 今後の展望DIHSの病態については、HHV-6やCMV再活性化の病態への関与について多くの知見が得られてきたものの、依然として未解明な点が残されている。とくに、最適なステロイド減量プロトコールの確立は急務であり、大規模な症例レジストリに基づくエビデンスの蓄積と治療指針の更新が期待される。また、回復期に発症する自己免疫疾患などの遅発性合併症は、患者の長期予後を左右する重要な課題である。今後は、これらの合併症を予測するバイオマーカーの同定や、その発症を制御する新たな介入法の開発が望まれる。5 主たる診療科皮膚科(重篤な臓器障害を伴うため、十分な検査と全身管理を行える施設への早期のコンサルテーションが重要である)。6 参考になるサイト診療、研究に関する情報薬剤性過敏症症候群診療ガイドライン 2023(日本皮膚科学会/重症多形滲出性紅斑に関する厚労省調査研究班)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)医薬品副作用被害救済制度(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)  (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2026年5月12日

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添付文書改訂:抗てんかん薬の運転の一律禁止が変更/セリチニブとCYP3A基質薬剤が併用禁忌に ほか【最新!DI情報】第61回

抗てんかん薬<対象薬剤>抗てんかん薬であるカルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、ラコサミド、レベチラセタムを有効成分とする医薬品<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]重要な基本的注意自動車の運転等危険を伴う機械操作の適否は、関連学会の留意事項を十分理解の上、医師が慎重に判断し、危険を伴う機械操作を行う場合には十分な注意が必要であることを適切に患者に指導すること。また、眠気等があらわれた場合には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないよう、患者に指導すること。<ここがポイント!>対象の抗てんかん薬は、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下といった中枢神経系に影響を与える副作用を起こすことがあるため、従来の添付文書では「重要な基本的注意」の項において、薬剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する旨が記載されていました。しかし、道路交通法では、てんかんのある患者の自動車運転を一律に禁止しているわけではありません。運転免許の取得・更新は、一定の条件を満たせば医師の診断書をもとに公安委員会が判断する仕組みとなっており、実際に多くの患者が医師の管理下で安全に運転を継続しています。今回の改訂により、薬剤投与中であっても一律に自動車運転等を禁止するのではなく、医師が関連学会の留意事項※に基づき、個別の患者の病状、服薬順守状況、副作用の有無等を総合的に評価し、自動車運転等の適否を判断できることが添付文書上で明確化されました。これは、患者の社会生活の質(QOL)向上と安全性の確保を両立させるための重要な改訂といえます。なお、対象の抗てんかん薬5剤には欧州および米国の添付文書においても、薬剤服用中の自動車運転等を一律に禁止する記載はなく、今回の改訂は国際的な動向とも合致しています。※抗てんかん発作薬を服用しているてんかんのある人において、自動車運転や危険を伴う機械操作を行う際の留意事項(2026年3月17日)CYP3A基質薬剤<対象薬剤>アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン、アナモレリン塩酸塩、イバブラジン塩酸塩、イブルチニブ、エプレレノン、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、キニジン硫酸塩水和物、シンバスタチン、スボレキサント、タダラフィル(アドシルカ)、チカグレロル、トリアゾラム、バルデナフィル塩酸塩水和物、フィネレノン、ブロナンセリン、マシテンタン・タダラフィル、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ルラシドン塩酸塩、ロミタピドメシル酸塩<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]禁忌(次の患者には投与しないこと)および併用禁忌(併用しないこと)「セリチニブ」を追記<ここがポイント!>セリチニブは強力なCYP3A阻害作用を有するため、CYP3A基質薬剤との併用により、これらの薬剤の血中濃度が上昇し、副作用の発現リスクが増大する可能性があります。今回の改訂は、この相互作用による安全性上の懸念から、セリチニブとCYP3A基質薬剤の併用を禁忌とするものです。対象となる20成分には、降圧薬、抗不整脈薬、睡眠薬、抗精神病薬、脂質異常症治療薬など、日常診療で頻用される薬剤が多く含まれており、処方監査時には十分な注意が必要となります。本改訂による医療現場への影響については、診療上の大きな支障が生じないことを関連学会等の意見聴取で確認されています。なお、セリチニブの「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)および10.1 併用禁忌(併用しないこと)」の項にも同様に上記薬剤が追記されました。これにより、双方向での併用禁忌が明確化され、より安全な薬物治療の実施が期待されます。アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<対象薬剤>アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]禁忌(次の患者には投与しないこと)および併用禁忌(併用しないこと)「クラリスロマイシン」を追記<ここがポイント!>生理学的薬物速度論モデルの解析により、アゼルニジピンとクラリスロマイシン400mgまたは800mgを併用した場合、アゼルニジピンのAUCが約3.4倍または5.4倍に増加することが予測され、副作用の発現が懸念されます。今回の改訂は、この相互作用による安全性上の懸念から、クラリスロマイシンとアゼルニジピンの併用を禁忌とするものです。アゼルニジピンはCYP3A4で代謝される薬剤であり、CYP3A4阻害薬であるクラリスロマイシンとの併用により、血中濃度の上昇が生じ、過度の血圧低下、めまい、ふらつきなどの副作用リスクが高まることが想定されます。本改訂による医療現場への影響については、診療上の大きな支障が生じないことを関連学会等の意見聴取で確認されています。なお、クラリスロマイシン、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン、ラベプラゾールナトリウム・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシンの「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)および10.1併用禁忌(併用しないこと)」の項にも同様にアゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピンが追記されました。とくにヘリコバクター・ピロリ除菌療法においてクラリスロマイシンを含む3剤併用療法を行う際には、患者の降圧薬の確認が重要となります。タクロリムス<対象薬剤>タクロリムス水和物(商品名:プログラフカプセル0.5mg/1mg/5mg、同顆粒0.2mg/1mg、同注射液2mg/5mg、グラセプターカプセル0.5mg/1mg/5mg(アステラス製薬株式会社)等)<改訂年月>2026年3月<改訂項目> [追加]妊婦 海外で実施された、Transplant Pregnancy Registry Internationalのデータベースから利用可能な2,905件の肝移植および腎移植患者の妊娠事例に関するコホート研究において、前向きに調査された症例について以下の結果が報告されている。 大奇形が認められた症例は、本剤曝露群では6/297例(2.0%)、本剤非曝露群注1)では1/53例(1.9%)であった注2)。 小奇形が認められた症例は、本剤曝露群では12/297例(4.0%)、本剤非曝露群では認められなかった注2)。 自然流産が認められた症例は、本剤曝露群では33/335例(9.9%)、本剤非曝露群では3/56例(5.4%)であった注2)。 腎移植患者において、子癇前症が認められた症例は、本剤曝露群では84/226例(37.2%)、本剤非曝露群では7/37例(18.9%)であった。 早産児が認められた症例は、本剤曝露群では156/352例(44.3%)、本剤非曝露群では25/59例(42.4%)であった。 妊娠週数に対して児が正常な出生体重であった症例は、本剤曝露群では289/352例(82.1%)、本剤非曝露群では40/59例(67.8%)であった。 注1 アザチオプリン、シクロスポリン、エベロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾロン、シロリムスのいずれか1つ以上を含むレジメンによる治療を受けた患者 注2 妊娠の6週間前から出産までの間にミコフェノール酸モフェチルに曝露している患者を除外した解析結果 <ここがポイント!>臓器移植後の妊娠レジストリであるTransplant Pregnancy Registry International(TPRI)データを用いた本剤の児および母体への影響に関する海外疫学研究の結果は、臓器移植患者の妊娠という限定された集団に関する大規模な研究データであるため、本研究結果を添付文書に記載することは臨床上有用であると考えられます。このコホート研究では、2,905件という大規模な症例数を解析しており、タクロリムス曝露群と非曝露群での大奇形発生率に有意な差は認められませんでした(2.0%vs.1.9%)。一方で、小奇形、自然流産、子癇前症については本剤曝露群でやや高い傾向が示されています。とくに腎移植患者における子癇前症の発生率は本剤曝露群で37.2%と高く、慎重な周産期管理が必要となることが示唆されます。このことから、今回の改訂で「9.特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.5 妊婦」の項に海外疫学研究の結果を追記することになりました。本データは、移植後妊娠を希望する患者への説明や、妊娠中の管理方針決定において重要な情報となります。

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