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多発性硬化症の再発を抑制する新規経口薬「ブメリティカプセル231mg」【最新!DI情報】第68回

多発性硬化症の再発を抑制する新規経口薬「ブメリティカプセル231mg」今回は、多発性硬化症治療薬「ジロキシメルフマラート(商品名:ブメリティカプセル231mg、製造販売元:バイオジェン・ジャパン)」を紹介します。本剤は、既存薬の消化器系副作用を回避するためにアミノエチルエステル化したプロドラッグであり、多発性硬化症の新たな治療選択肢として期待されています。<効能・効果>再発寛解型多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制の適応で、2026年6月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはジロキシメルフマラートとして1回231mg 1日2回から投与を開始し、1週間後に1回462mg 1日2回に増量します。なお、潮紅、消化器系副作用などが認められた場合には、患者の状態を慎重に観察しながら1ヵ月程度の期間1回231mg 1日2回投与に減量することができます。1回462mg 1日2回投与への再増量に対して忍容性が認められない場合は、本剤の投与を中止します。<安全性>重大な副作用として、リンパ球減少症(10.5%)、白血球減少症(2.6%)、進行性多巣性白質脳症(PML)、感染症、急性腎障害、肝機能障害、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)があります。その他の副作用として、潮紅(31.9%)、下痢(10%以上)、上咽頭炎、上気道感染、尿路感染、好中球減少症、灼熱感、浮動性めまい、頭痛、錯感覚、ほてり、腹部不快感、腹痛、下腹部痛、上腹部痛、便秘、消化不良、鼓腸、胃食道逆流性疾患、悪心、嘔吐(いずれも1~10%未満)、胃腸炎、鼻漏、呼吸困難、胃炎、胃腸障害(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、再発寛解型多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制に使用します。体内でフマル酸モノメチルに変換され、細胞の抗酸化に関わるNrf2と呼ばれる経路を活性化することにより免疫の働きを調節し、神経の炎症を抑えます。2.体調が良くなったと自己判断して使用を中止したり、量を加減したりすると病気が悪化することがあります。指示どおりに飲み続けることが重要です。3.この薬の使用中は定期的にリンパ球を含む血液検査、肝機能検査および腎機能検査が行われます。4.吐き気や嘔吐、下痢が現れた場合は、脱水となって腎臓の働きが悪くなることがあるので、できるだけ早く医師に連絡してください。5.この薬の使用初期に顔のほてりや赤みが現れることがあります。気になる場合は医師または薬剤師に相談してください。6.妊娠する可能性がある人は、この薬を使用している間は適切な避妊を行ってください。【ここがポイント!】多発性硬化症(MS)は、免疫系の異常により神経細胞の軸索を覆うミエリン鞘が脱髄する自己免疫疾患であり、指定難病に指定されています。病変は中枢神経系の広範囲にわたり、脱髄部位に応じて、感覚障害、運動・歩行障害、視力障害、排尿・排便障害などの症状を呈します。MSの病型は、急性増悪(再発)と寛解を繰り返す再発寛解型(RRMS)、当初はRRMSの経過をたどるもののその後は再発の有無にかかわらず身体的障害が進行する二次性進行型(SPMS)、発症時から再発を伴わず機能障害が進行する一次性進行型(PPMS)に分類されます。MS患者の80~90%はRRMSとして発症し、そのうち約半数が発症15~20年でSPMSに移行するとされています。一方、PPMSでMSを発症するのは約5%にとどまります。MSの急性増悪期の治療には、第1選択として高用量のメチルプレドニゾロン静注療法(ステロイドパルス療法)が用いられ、十分な改善が得られない場合は血液浄化療法が考慮されることもあります。再発予防および進行抑制には、疾患修飾薬(DMD)が使用され、インターフェロンβ製剤、グラチラマー酢酸塩、フィンゴリモド、フマル酸ジメチル(DMF)などが代表的な薬剤として挙げられます。とくにDMFはRRMSに対する経口治療薬として広く使用されていますが、10%以上の頻度で消化器症状(下痢、腹痛、嘔気)が副作用として現れ、治療継続が困難となる場合があります。本剤は、有効成分としてジロキシメルフマラートを含むRRMSに対する経口DMDです。本剤は、DMFの主要活性代謝物であるフマル酸モノメチル(MMF)をアミノエチルエステル化した薬剤であり、経口投与後、全身循環に移行する前にエステラーゼ酵素系により速やかに加水分解されてMMFを生成します。MMFの作用機序は十分に解明されていませんが、細胞の抗酸化応答を制御するマスター転写因子であるnuclear factor erythroid-derived 2-like 2(Nrf2)転写経路を活性化することで免疫系を調節し、炎症性メディエーターの発現を抑制し、炎症性傷害に対する細胞保護作用を示すものと考えられています。臨床用量において、本剤から生成されるMMFの曝露量はDMFと同程度となります。RRMS患者を対象とした海外第III相臨床試験(ALK8700-A301試験)において、探索的評価項目である投与96週時までのMS再発患者割合は、全体集団では17.57%、デノボ被験者(本剤またはDMFが初めて投与された患者:サブグループ解析)では17.66%であり、ARRはそれぞれ0.13および0.14でした。また、日本を含む国際共同第III相臨床試験(272MS303試験)において、全体集団では、ベースラインから投与24週時までの調整したARRが0.26(95%信頼区間[CI]:0.14~0.47)、投与24週~48週時の調整したARRが0.09(95%CI:0.03~0.26)、ベースラインから投与48週時までの調整したARRが0.19(95%CI:0.11~0.33)でした(負の二項回帰モデル)。日本人集団(サブグループ解析)では、ベースラインから投与24週時までの調整したARRが0.28(95%CI:0.13~0.60)、投与24週~48週時の調整したARRが0.09(95%CI:0.02~0.39)、ベースラインから投与48週時までの調整したARRが0.18(95%CI:0.09~0.38)でした(負の二項回帰モデル)。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィー〔DMD:Duchenne muscular dystrophy〕

1 疾患概要■ 定義デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)は、機能的ジストロフィンの欠損により、進行性の筋力低下および筋萎縮を来すX染色体潜性遺伝疾患である。小児期に発症する筋ジストロフィーの中で最も頻度が高く、重症型に位置付けられる。■ 疫学男児出生約3,500~5,000人に1人の割合で発症する。人種による発症頻度の明らかな差はない。女性保因者も骨格筋症状や心筋症を呈することがあり、定期的な評価が推奨される。■ 病因X染色体短腕(Xp21.2)に位置し、筋細胞膜直下に存在する細胞骨格タンパク質であるジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子)の変異(欠失、重複、微小変異など)が原因である。ジストロフィンは細胞骨格と細胞外基質を連結し、筋収縮時の機械的ストレスから細胞膜を保護する役割を担う。機能的ジストロフィンが欠損することで筋細胞膜の安定性が失われ、筋線維の壊死と再生が繰り返され、最終的に筋組織が脂肪組織や結合組織に置換される。■ 症状乳幼児期から運動発達の遅れ(定頸や歩行開始の遅延など)として認識されることが多い。幼児期には転びやすい、走れない、階段昇降が困難といった症状が顕在化する。床から立ち上がる際に、自身の膝や大腿に手をついて立ち上がる登攀性起立(ガワーズ徴候)や、腓腹筋の仮性肥大が高頻度に見られる。また、認知機能や発達特性(知的障害、注意欠如・多動症、自閉スペクトラム症など)を合併することがある。筋力低下は体幹および近位筋から始まり、次第に遠位筋へと進行する。従来は10歳前後で歩行を喪失することが多かったが、現在ではステロイド療法などにより歩行可能期間は延長している。歩行喪失後は車椅子の使用が必要となる。病状の進行に伴い、脊柱変形(側弯症)、呼吸筋力低下による呼吸機能障害、および拡張型心筋症に類似した心筋障害を合併する。嚥下機能障害や消化管の蠕動運動低下も生じうる。さらに、長期経過では骨粗鬆症や骨折、肥満なども重要な合併症となる。■ 分類ジストロフィン遺伝子変異に起因する疾患群は「ジストロフィノパチー」と総称される。DMDはジストロフィンがほぼ完全に欠損する重症型である。その一方で、遺伝子変異があるものの、異常なジストロフィンタンパク質が一部産生され、臨床症状がより軽度で歩行機能が長期に維持されるタイプを「ベッカー型筋ジストロフィー」(BMD)と分類する。■ 予後かつては20歳前後で呼吸不全や心不全により死亡することが多かった。しかし、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)などの呼吸管理の進歩、心筋保護薬の早期導入、ステロイド治療の普及、さらに多職種による集学的ケアの確立により、歩行可能期間および生命予後は大きく改善しており、40~50代以上まで生存する患者も増えている。2 診断 (検査、鑑別診断を含む)初めに診断のフローチャートを示す(図)。図 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の診断フローチャート画像を拡大する血液検査では、筋崩壊を反映してクレアチンキナーゼ(CK)値が著明に上昇する(数千~数万IU/L)。とくに発症初期や無症状の乳幼児期においても異常高値を示すため、スクリーニングとしてきわめて有用である。偶発的な肝酵素(AST、ALT)の上昇を契機に発見されることも多く、肝疾患との鑑別においてCK値の確認が必須である。確定診断には遺伝子検査が行われる。まず、MLPA法などによりDMD遺伝子の欠失・重複変異を検索する。これで変異が同定されない場合は、次世代シークエンサー(NGS)などを用いて点変異や微小欠失・挿入などの塩基配列解析を行う。遺伝子診断で確定できない特殊例では筋生検を考慮する。鑑別診断としては、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、肢帯型筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症(SMA)、先天性ミオパチー、多発性筋炎などが挙げられる。診断確定後は遺伝カウンセリングを行い、保因者診断や家族への遺伝学的情報提供についても検討する。3 治療現在、疾患を完全に治癒させる根治療法は確立していないが、病状の進行遅延を目的とした薬物療法と、合併症に対する対症療法・集学的ケアが行われる。薬物療法の基本はステロイド薬プレドニゾロンなど)の投与である。これにより筋力低下の進行を遅らせ、歩行可能期間の延長、呼吸・心機能の低下抑制、側弯の進行防止などの効果が得られる。また、近年、特定の遺伝子変異を対象としたエクソンスキップ療法が実用化されている。これはアンチセンス核酸を用いてmRNAの成熟過程で特定のエクソンを読み飛ばし、機能は不完全ながらも一部機能するジストロフィンタンパク質を産生させる治療である。国内ではエクソン53スキッピング薬であるビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)が承認されている。対症療法として、関節可動域(ROM)維持、装具療法、立位保持、呼吸リハビリテーションを継続的に実施することが重要である。呼吸機能障害に対しては、早期からの呼吸機能評価とNPPVの導入、機械的咳介助が行われる。心筋障害に対しては、ACE阻害薬の早期からの投与が推奨されている。病状の進行や変化に応じて、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(エプレレノンなど)の併用などが検討される。4 今後の展望(治験中、研究中の診断法や治療薬剤など)今後の有望な治療法の1つが遺伝子治療である。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて、全身投与により骨格筋および心筋へのマイクロジストロフィン遺伝子の導入を図る治療法(デランジストロゲン モキセパルボベク、商品名:エレビジス点滴静注)は、国内でも2026年2月に承認された。本来のジストロフィン遺伝子は巨大でありAAVベクターに全長を搭載できないため、マイクロジストロフィンは筋細胞膜の安定化に不可欠な最重要機能ドメイン(領域)のみを残し、全長の約3分の1に小型化した人工遺伝子である。導入後の長期的な有効性評価に加え、安全性課題として急性肝障害、血小板減少、心筋障害、および重篤な免疫性筋炎への注意とモニタリングが今後の重要な課題となっている。また、筋肉の成長を阻害するミオスタチンを標的とした抗体薬や、炎症・線維化を抑える新たな低分子化合物などの臨床試験が進行しており、病態や進行段階に応じた治療の選択肢がさらに広がることが期待される。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)小児神経科、脳神経内科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、循環器内科、呼吸器内科、臨床遺伝科など※本疾患は進行に伴い全身性の合併症や認知・発達特性を伴うため、スクリーニングで疑われた段階、あるいは確定診断後は、神経筋疾患を専門とする医療機関において、リハビリテーション、循環器、呼吸器、整形外科、栄養、心理、遺伝カウンセリングなど多職種連携による集学的治療が可能な体制へ紹介することが望ましい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考となるサイト(公的助成情報、患者会情報、主要な研究グループ、その他参考となるサイト)診療、研究に関する情報NMDポータルサイト(神経筋疾患ポータルサイト):デュシェンヌ型筋ジストロフィー(国内の神経筋疾患に関する情報を集約した総合サイト。最新の診療ガイドラインやケア、研究動向に関するリソースが網羅的に提供されている)難病情報センター 筋ジストロフィー(指定難病113)(医療費助成の対象疾患であり、公的制度の概要や申請手続きに関する基礎情報が得られる)Remudy(神経筋疾患患者登録システム)(国立精神・神経医療研究センター[NCNP]が運営する患者レジストリ。疫学データと市販後調査を区別して収集・管理しており、適切な情報提供や臨床試験の強力な基盤として機能している)MDクリニカルステーション(筋ジストロフィーの臨床研究班による、医療従事者および患者・家族向けの診療ガイドラインやケアマニュアル等の情報提供サイト)患者会情報一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会(JMDA)(患者や家族への支援、情報提供、交流活動を行う代表的な患者会組織) 1) 日本神経学会ほか監修. デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014. 南江堂:2014. 2) Komaki H, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2020;7:2393-2408. 3) Mendell JR, et al. N Engl J Med. 2023;388:2368-2371. 4) Nakamura H, et al. Orphanet J Rare Dis. 2013;8:60. 5) 難病情報センター. 筋ジストロフィー(指定難病113). 公開履歴初回2026年7月24日

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潰瘍性大腸炎の粘膜治癒、歯みがき頻度と関連

 潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸粘膜に慢性的な炎症が生じる炎症性腸疾患(IBD)の一つである。今回、日本人のUC患者275人を対象とした研究で、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒(内視鏡で大腸粘膜の炎症が認められない状態)の達成と関連することが示された。一方、残存歯数との関連は認められなかった。研究は、済生会今治病院内科の八木専氏、愛媛大学総合健康センターの古川慎哉氏らによるもので、詳細は5月28日付の「Digestive Diseases and Sciences」に掲載された。 近年、口腔内細菌叢と腸内細菌叢が相互に影響し合う「口腔-腸軸(oral-gut axis)」への関心が高まっており、口腔環境とIBDとの関連を示す報告が増えている。歯周病やう蝕(虫歯)、歯の喪失はUCやクローン病との関連が報告されているほか、歯みがきは口腔内の細菌量や炎症を減らし、腸内環境や全身の炎症反応にも影響を及ぼす可能性があると考えられている。一方で、口腔ケアとUCの病勢との関連については十分に検討されていない。また、UCでは粘膜治癒が長期寛解や良好な予後につながる重要な治療目標とされている。こうした背景から著者らは、UC患者における残存歯数および歯みがき頻度と、粘膜治癒との関連を検討した。 著者らは、2015~2019年に愛媛県内の医療機関で診療を受けたUC患者275人を対象に横断解析を行った。質問票を用いて生活習慣や口腔の健康状態を調査し、残存歯数は20本以下、21~27本、28本の3群、歯みがき頻度は1日1回以下、2回、3回以上の3群に分類した。粘膜治癒はMayo内視鏡スコア(MES)0と定義し、ロジスティック回帰分析を用いて関連を検討した。多変量解析では年齢、性別、BMI、喫煙、飲酒、プレドニゾロンステロイド薬)使用の有無、罹病期間、病変範囲などで調整した。 対象患者の年齢中央値は50.7歳で、58.2%が男性だった。粘膜治癒(MES 0)を達成していた患者は24.7%だった。 残存歯数と粘膜治癒との間に有意な関連は認められなかった。一方、歯みがき頻度別にみると、粘膜治癒率は1日1回以下の群で15.4%、1日2回の群で24.8%、1日3回以上の群で32.1%と、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒率は上昇する傾向を示した。 年齢や性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、プレドニゾロン使用、罹病期間、病変範囲などを調整したロジスティック回帰分析でも、歯みがき頻度は粘膜治癒と独立して関連していた(調整オッズ比 2.87、95%信頼区間 1.19~7.29、傾向性のP値=0.021)。 本研究では、日本人UC患者を対象に、歯みがき習慣と粘膜治癒との関連が検討された。その結果、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒と関連する一方、残存歯数との関連は認められなかった。著者らは、残存歯数は過去の口腔状態を反映する指標であり、現在の炎症活動とは一致しない一方、歯みがき頻度は口腔内環境を介して腸に影響する「口腔-腸軸」に関与する可能性があると考察している。また、UCでは症状と内視鏡所見が必ずしも一致しないことから、口腔衛生は主に粘膜炎症に関与している可能性が示唆される。 著者らは、「本研究は横断研究であり因果関係を示すものではないが、歯みがきは患者自身が日常的に実践できる簡便な生活習慣である。今後、前向き研究や介入研究で関連が確認されれば、口腔ケアがUC患者の病勢コントロールを支援する新たなアプローチとなる可能性がある」と述べている。今回の結果については、消化器疾患の管理における口腔環境の重要性を示唆するものと強調した。 なお、本研究では、歯みがき習慣や残存歯数が自己申告であることから情報バイアスの可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療薬への期待/中外

 中外製薬は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する国内初の再生医療等製品として、デランジストロゲン モキセパルボベク(商品名:エレビジス点滴静注)を2026年2月20日に発売した。この発売によせて、本剤の概要や治療における臨床的位置付けなどについて、発売後の適正使用推進体制の説明と合わせてメディアセミナーを開催した。 DMDは、筋肉に関わるタンパク質のジストロフィン産生に影響を及ぼすDMD遺伝子の突然変異が原因で発症する希少遺伝性疾患。幼少期に発症し、徐々に筋力が低下していくことで日常生活に大きな影響を及ぼすため、早期からの適切な治療介入が求められる。未治療だと呼吸不全などを起こし、生命予後に影響する。 デランジストロゲン モキセパルボベクは、短縮型ジストロフィンの発現を介してDMDの原因に働きかけるようデザインされた薬剤である。2025年5月13日に条件及び期限付承認を取得し、2026年2月20日に薬価収載・販売された。筋機能を改善し、筋力の低下を防ぐ治療薬 はじめに同社からデランジストロゲン モキセパルボベクの製品説明が行われた。本薬剤の構造は、機能的な短縮型ジストロフィンであるデランジストロゲン モキセパルボベク マイクロジストロフィン(以下「マイクロジストロフィン」)をコードする遺伝子を含む非複製型の遺伝子組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであり、骨格筋および心筋での発現を最適化するα-ミオシン重鎖クレアチンキナーゼ7(MHCK7)プロモーター/エンハンサーにより制御する。 本薬剤の作用機序としては、搭載されたマイクロジストロフィン遺伝子が骨格筋および心筋で発現すると考えられる。また、マイクロジストロフィンが筋細胞で発現することで、筋機能を改善し、筋力の低下を防ぐと考えられている。本薬剤はすでに薬価収載・販売されているものの、条件及び期限付承認であり、第III相試験が現在行われている。生命予後が40歳に届くのが難しい希少疾病 「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の疾患と治療、遺伝子治療の診療体制、適正使用と臨床的位置づけについて」をテーマに小牧 宏文氏(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター センター長)が疾患概要について、講演を行った。 DMDは、ジストロフィンの欠損などにより筋肉が壊れやすく、かつ不可逆的な変性により、筋肉の再生ができない疾患。2~4歳ごろに症状が現れ始め、自然歴では5歳ごろをピークに運動能力が低下、ガワーズ徴候などがみられ、10歳前後に歩行能喪失となり車椅子が必要になる。未治療では呼吸器筋や心筋に影響があり、生命予後は10代とされる。現在でも、患者の生命予後はいまだ30歳前後を超える程度であり、根本治療が求められている。ただ、近年では、専門の医療施設で30代後半まで生命予後が延長しており、最近は大学生も多くなったほか、就労している患者もいる。 治療は、プロアクティブかつ包括的な多職種連携の診療が集学的治療(ベース治療)として確立され、患者の社会参加や就労・就学の実現に向けて治療が行われている。具体的には、呼吸管理として非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の適切な導入と定期的モニタリング、呼吸リハビリテーションがなされ、身体機能管理として関節可動域訓練、姿勢管理、拘縮などの予防が行われている。薬物療法としてはステロイド投与による歩行可能期間の延長、全身管理としてACE阻害薬などを用いた心機能ケア、栄養指導、嚥下機能評価などが行われている。 とくに薬物治療について、2026年6月現在でステロイド、ビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)、そして、デランジストロゲン モキセパルボベクを用いることができる。デランジストロゲン モキセパルボベクのような遺伝子治療が求められる医学的背景として、病状管理の継続を前提としつつ、「根本原因(ジストロフィン欠損)へと直接アプローチする次世代治療の導入が臨床現場における長年の課題であった」と小牧氏は説明した。投与前、投与後でも適切なフォローが必要なデランジストロゲン モキセパルボベク デランジストロゲン モキセパルボベクによる治療の流れとしては、投与前のスクリーニングにおいて、抗AAVrh74抗体が陰性であることの確認に加え、禁忌となる特定の遺伝子変異(エクソン8および/または9の欠失)の除外が行われる。さらに、免疫抑制および有害事象予防を目的に、本薬剤の投与前よりプレドニゾロンの投与が開始される。投与後は免疫介在性筋炎などのモニタリングのために、投与後3ヵ月は継続的な血液検査が行われる。投与後は免疫抑制作用があるので基本は自宅療養となる。 本薬剤の承認のために国際共同第III相臨床試験EMBARK試験パート1が行われた。遺伝子変異が確認された4~7歳の歩行可能な男児125例を対象に、安全性と有効性を評価した国際共同第III相ランダム化二重盲検クロスオーバープラセボ対照試験。主要評価項目はノース・スター歩行能力評価(NSAA)総スコアのベースラインから52週までの変化量、主な運動機能に関連する副次評価項目は、床からの立ち上がり時間(TTR)、10m歩行/走行(10MWR)を評価した。 その結果、高いほど良好を示すNSAAによる総スコアについて、52週時点でデランジストロゲン モキセパルボベク群は2.57ポイントの向上だったのに対し、プラセボ群は1.92ポイントの向上だった(群間差:0.65、p=0.24)。また、副次評価項目であるTTR時間のベースラインから52週までの変化量では、デランジストロゲン モキセパルボベク群が-0.27秒、プラセボ群が0.37秒、群間差は-0.64秒だった(p=0.0025[名目上のp値])。 本剤では厳格な適格性確認とモニタリングが求められる継続的な管理が必要とされる。とくに投与後約90日間は肝酵素、心筋逸脱酵素、血小板などを週1回程度測定し、異常検知時はBRIDGE-NMD(神経筋疾患遺伝子治療安全性最適化ネットワーク)と即時連携がされる。その理由として、米国で非歩行患者への投与で急性肝不全が発生し、その後死亡した症例の報告があったためとされる。 わが国では、安全対策の強化として全国の患者、全国の医師と日本小児神経学会などに所属する医師をつなぎ、専門的な助言や情報提供・相談、患者への適正な治療の提供ができる体制を「Eコンサルテーション」として構築している。 今後は、レジストリを活用した長期的なエビデンス構築とともに、免疫介在性反応、海外の重篤な有害事象を集め、施設要件と適応の厳格化、BRIDGE-NMDによる全例事前評価、投与後の集中モニタリングなどを通じて、安全性リスクに対して構造的に対応する。 最後に小牧氏は、「固有のリスクを客観的に評価し、個人の経験則ではなく、国レベルの構造的なインフラによって安全性を管理する体制が稼働している。非常に今回良かった点としては、産官学連携がうまくいっていることであり、今後もしっかり安全性を重視しながら、この体制を維持していきたい」と抱負を述べ、講演を終えた。

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高齢でフレイルの再発・難治性多発性骨髄腫患者、ダラツムマブ+イキサゾミブが許容可能

 高齢の再発・難治性多発性骨髄腫患者では、身体機能のばらつきや高い有害事象発現率および治療中止率により予後が悪化する。フランス・Poitiers University HospitalのArthur Bobin氏らは、高齢でフレイルの再発・難治性多発性骨髄腫患者に対してデキサメタゾンを含まないダラツムマブとイキサゾミブの併用療法(I-Dara)を評価したIntergroupe Francophone du Myelome(IFM)2018-02試験において、I-Daraが許容可能な安全性プロファイルを示したことを報告した。また、対象集団を考慮すると奏効率および生存率は許容範囲内であったという。British Journal of Haematology誌2026年7月号に掲載。 本試験は前向き第II相試験で14のIFM加盟施設で実施された。対象は65歳以上、国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)のフレイルスコアが2以上かつECOG PS 0~2の初回または2回目の再発患者で、ダラツムマブ16mg/kg、イキサゾミブ4mg(28日サイクルで1、8、15日目に週1回投与)、メチルプレドニゾロンを投与した。主要評価項目はVGPR(very good partial response)以上の奏効率。 主な結果は以下のとおり。・登録された55例の年齢中央値は82歳であり、90%が75歳以上であった。・VGPR以上の奏効率は32%であった。・追跡期間中央値は35.3ヵ月で、無増悪生存期間中央値は19.5ヵ月であった。全生存期間中央値は未到達であったが、33.6ヵ月時点での生存率は75%であった。・Grade3以上の有害事象は36例(67%)に認められ、うち18例が血球減少症、8例が感染症(うち6例は肺炎)であった。

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ASCO2026 レポート 老年腫瘍(前編)

レポーター紹介ここ数年、ASCO Annual Meetingでは、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)や、GAで明らかになった脆弱性に対するサポートの有用性を検証する研究が発表され、老年腫瘍学の領域を大いに盛り上げてきた。ASCO2026では、日常診療を大きく変えるような重要な試験(pivotal study)は多くなかったものの、高齢患者をどのように評価して治療選択に結びつけるか、GAを忙しい日常診療の中でどう使える形にするか、さらに、がんを患う高齢者(以下、高齢がん患者)に多い老年症候群にどのように介入するか、という観点から興味深い研究が報告されていた。その中から、筆者が興味深いと感じた研究を抜粋して紹介する。高齢がん患者をどう評価するか - 「fitかどうか」ではなく「どこが脆弱か」をみる高齢がん患者の診療で最も悩ましいのは、「この患者さんに標準的ながん治療を行ってよいのか」という問いである。暦年齢だけで判断すべきではないことは、すでに多くの医療者が理解している。しかし、では何をもって積極的治療に適していると判断し、何をもって慎重な治療選択が必要と考えるべきなのか。この問いに答えるのは、日常診療でも臨床試験でも、いまだに簡単ではない。この問いに答えるために、欧州の老年腫瘍学では、GAを用いて高齢がん患者を、fit、vulnerable、frailと分類することがある。しかし、もともとfitやfrailは老年医学の用語であり、腫瘍学の用語ではない。老年医学では、『自立度』を軸として、「健常(fit)」、「要介護状態(disability)」、その中間を「フレイル(frailty)」と分類することが多い(注:老年医学の領域でも定義は定まっていない)。一方、腫瘍学では、『がん治療の適応』を軸として、「若年者と同じ標準治療ができる(fit)」、「非常に弱い治療や緩和・支持療法ならできる(frail)」、その中間を「用量などを調整した弱い治療ならできる(vulnerable)」と分類することが多い(図)。図 日常診療における高齢者の分類方法画像を拡大する脆弱な高齢者に対するエプコリタマブ+R-mini CVP(#7002)この問題を考えるうえで、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する脆弱な高齢者を対象としたエプコリタマブ+R-miniCVPに関する試験は興味深かった1)。脆弱な高齢者を対象として、アントラサイクリンを抜いたR-miniCVP(リツキシマブ+減量シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン)に抗CD3/CD20二重特異性抗体であるエプコリタマブを併用する治療の有用性を評価した第II相試験が実施された。特筆すべきは、脆弱な高齢者を定義する際に、simplified Geriatric Assessment(sGA)というツールを用いたところである。sGAでは、年齢(閾値:80歳)、日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)、併存症(CIRS-Gを使用)を組み合わせて、患者をfit、unfit、frailに分類する。DLBCL患者に用いられてきた簡便なツールであり、予後と関連することが示されている2)。本試験の中間解析において、この集団におけるエプコリタマブ+R-miniCVPの有望な結果が示されたが、老年腫瘍学的には、高齢者機能評価の一種であるsGAを用いて対象集団を定義したという点が興味深い。すなわち、この試験におけるunfit/frailとは、漠然と「高齢で弱っている患者」を指す言葉ではなく、標準的なアントラサイクリンを含んだレジメンに適しているかどうかを高齢者機能評価で規定したという点で興味深いのである。一方で、sGAは実用的である反面、分類は大まかであると言える。たとえば80歳以上であれば、ADL、IADL、併存症に大きな問題がなくてもfitには分類されない。より多面的に高齢がん患者を評価する試みも必要である。高齢がん患者をより多面的に分類するツール(FI-CGA-10)の検討(#1656)このような問題意識に対して、日本から高齢がん患者をより多面的に分類するツールの有用性を評価する研究が報告された3)。治療方針決定前にGAを実施された高齢者1,630例を対象として、日本の研究グループが開発したツール「FI-CGA-10」が、予後を予測するかを評価した前向きコホート研究である。FI-CGA-10は、認知機能、気分、コミュニケーション能力(視力+聴力)、移動能力、転倒、栄養、ADL、IADL、社会支援の有無、併存症の10領域から構成される。その合計点数に基づき、患者をfit、pre-frail、frailに分類する4)。本研究の結果、fit群をreferenceとすると、pre-frail群の死亡ハザード比は2.26、frail群では5.06であった。また、年齢、性別、がん種、病期を含むモデルにFI-CGA-10を加えることで、1年全生存率の予測精度を示す指標(C-index)は、0.70から0.76に改善した。ここまでは単なる予後因子解析にみえるが、重要なのは、FI-CGA-10が「どのような患者が脆弱なのか」を、単一の指標ではなく複数の領域から評価している点である。高齢患者の評価では、Performance Statusや年齢だけでは不十分であり、身体機能、日常生活機能、栄養状態、認知・心理面、社会的背景などを含めて総合的に捉える必要があることは以前から指摘されてきた。FI-CGA-10は、そのようなGAの考え方を、実際に予後予測に利用できる形に整理した試みといえる。すなわち、「どのような評価を用いれば高齢患者を分類できるのか」という問いに対して、本研究はGAを基盤とした多面的評価が有力な選択肢であることを示している。前編まとめこのようにASCO2026では、高齢患者をどのように分類し、治療判断に結びつけるか検討する演題が複数報告されていた。ただし、ここで重要なのは、「予後が悪い患者」と「治療から利益が得られない患者」は同じではないという点である。FI-CGA-10でfrailと分類されたからといって、必ずしも治療強度を下げるべきとは言えず、G8低値だからといって、特定の治療を控えるべきとも限らない。高齢がん患者の評価は、治療の可否を機械的に決めるための「線引き」ではなく、患者の医学的・機能的状況を整理し、奏効率や生存期間中央値だけでは捉えきれない治療の利益と負担を共有するための「対話の土台」と捉えるべきである。治療によって何を得たいのか、どの程度の有害事象や通院負担を許容できるのか、残された時間をどのように過ごしたいのかによって、適切な選択は大きく異なる。どの高齢患者が積極的治療に適しているのか。その問いに対する明快な答えはまだない。しかし、ASCO2026で報告された一連の研究は、fit、unfit、frailなどの分類で単純に線を引くのではなく、患者の脆弱性を多面的に評価し、その人にとって意味のある治療選択を考えるShared Decision Makingにつなげることの重要性を示していたと言える。後編に続く1)Chihara D, et al. Phase 2 trial of epcoritamab in combination with rituximab-mini CVP for older unfit/frail or anthracycline-ineligible adult patients with newly diagnosed diffuse large B-cell lymphoma: Interim futility analysis.2)Merli F, et al. Simplified Geriatric Assessment in Older Patients With Diffuse Large B-Cell Lymphoma: The Prospective Elderly Project of the Fondazione Italiana Linfomi. J Clin Oncol. 2021;39:1214-1222.3)Nishijima TF, et al. Validation of a 10-item frailty index based on a comprehensive geriatric assessment (FI-CGA-10) for predicting survival in older adults with cancer.4)Nishijima TF, et al. A 10-Item Frailty Index Based on a Comprehensive Geriatric Assessment (FI-CGA-10) in Older Adults with Cancer: Development and Construct Validation. Oncologist. 2021;26:e1751-e1760.

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病名や薬物治療手順を一部変更、「蕁麻疹診療ガイドライン」改訂/日本皮膚科学会

 国際ガイドラインの改訂や病態解明の進展、新たな生物学的製剤の登場などを背景に、8年ぶりの改訂版となる「蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版)」が2026年4月に公開された。病型分類および病名の一部変更や治療アルゴリズムのアップデートが行われた今回の改訂について、ガイドライン策定委員会の委員長を務めた福永 淳氏(大阪医科薬科大学)が第125回日本皮膚科学会総会で講演した。慢性蕁麻疹→慢性特発性蕁麻疹、アスピリン蕁麻疹→NSAID誘発蕁麻疹へ 蕁麻疹の病型について、特発性の蕁麻疹、刺激誘発型の蕁麻疹、血管性浮腫、蕁麻疹関連疾患という4つの大分類に変更はないが、その下の分類や病名がいくつか変更された。まず、特発性の蕁麻疹は「急性特発性蕁麻疹(発症後6週間以内)」と「慢性特発性蕁麻疹(発症後6週間超)」に、“特発性”という言葉を加える形に病名が変更された。 刺激誘発型の蕁麻疹は、食物依存性運動誘発アナフィラキシーがアレルギー性蕁麻疹の一部であるという考え方に基づき、別分類されていた2018年版から、アレルギー性の蕁麻疹(食物依存性運動誘発アナフィラキシーを含む)という表記に変更された。またアスピリン蕁麻疹は、アスピリンでのみ生じるという誤解を生む可能性があることから、NSAID誘発蕁麻疹と改めた。 血管性浮腫に関しては、「マスト細胞起因性」および「非マスト細胞起因性」という中分類を新たに設け、非マスト細胞起因性の病型の1つとして「メディエーター不明の血管性浮腫」が追加された。 さらに、病態に関する記述も最新の知見をもとに大きくアップデートされた。その中で最大の特徴といえるのが、すべての文言において「肥満細胞」という名称を削除し、「マスト細胞」に統一した点である。「脂肪細胞(肥満に関わる細胞)」と混同することを避けるための配慮であり、疾患の正しい理解を促進する狙いがあるという。日本独自の疫学データを追加、慢性特発性蕁麻疹患者のボリュームゾーンは40〜50代 これまでの日本のガイドラインでは、蕁麻疹に関する詳細な疫学データが不足していたが、今回の改訂では新たに医療情報データベースなどを用いた研究結果が追加された。日本人の慢性特発性蕁麻疹の推定有病率は1.2〜1.6%であり、全国でおよそ200万人の患者が存在すると推測される。新規発症率はおよそ0.7〜0.8%である。 福永氏は、「慢性特発性蕁麻疹の有病率はヨーロッパ諸国と比較して、東アジアでより高い傾向がある。年齢分布を見ると、実は0〜9歳の小児期に新規発症の大きなピークが存在する。しかし、この年代の多くは自然治癒に向かうため、実際に医療機関で継続的な治療を要する患者のボリュームゾーンは40~50代となる。また、男女比は2対3で女性に多いことも明らかになった」と語った。網羅的検査の実施は推奨されない 検査に関しては、2018年版から「原因検索のための網羅的な検査」を推奨しない方向性であることに変更はないが、今回その姿勢をより明確に打ち出している。I型アレルギーの検査実施については、1型アレルギーが疑われる詳細な問診・病歴がある場合にのみ、疑わしい抗原に対して個別の検査を選択的に行うべきとされた(CQ1)。急性特発性蕁麻疹(CQ2)および慢性特発性蕁麻疹(CQ3)に対する検査についても、全例でルーチンに実施する必要はないとしたうえで、推奨文では以下のように記載された。急性特発性蕁麻疹:発熱などの全身症状を伴い,細菌やウイルスの感染が疑われる場合には血算・血清・生化学検査などの一般的な検査を行ってもよい慢性特発性蕁麻疹:非定型的な症例、難治性の症例などで、背景因子、合併症の存在が疑われる場合は抗ヒスタミン薬やオマリズマブの反応性を予測できる可能性があり、それらに応じた検査(血清総IgE値,甲状腺自己抗体,CRPの測定)を行ってもよいPROMs活用を推奨し、治療の第1目標を変更 今回のガイドライン策定委員会で全員一致で推奨に強い合意が得られたのが、UAS7(Urticaria Activity Score over 7 days)や、UCT(Urticaria Control Test)などの患者報告アウトカム尺度(PROMs:Patient-Reported Outcomes Measures)を用いた疾患コントロール状態の客観的評価である。治療の第1目標は、2018年版での「治療により症状が現れない状態」から「治療により生活に支障がない状態」と変更された。またその目安をUCTのスコアで表しており、第1目標(治療により生活に支障がない状態)がUCT12点以上、第2目標(治療により症状が現れない状態)がUCT16点と明記された。福永氏は、「日常診療のアセスメントの際には、ぜひUCTを活用して客観的な評価を行っていただきたい」と呼びかけた。薬物治療はStep 2にオマリズマブまたはデュピルマブ、ステロイドは「急性増悪時のみ」 治療手順については、急性と慢性でアルゴリズムが明確に分けられた。急性は主に救急外来などでの短期間の対応を想定している。薬物治療手順は、慢性特発性蕁麻疹について以下が示された。Step 1:第2世代抗ヒスタミン薬Step 2:Step1に追加してオマリズマブまたはデュピルマブStep 3:Step1に追加してシクロスポリンまたは試行的治療 2018年版でStep 2とされていたH2-拮抗薬、抗ロイコトリエン薬、トラネキサム酸については、国際ガイドラインやエビデンスレベルの低さなどを背景に、Step1の補助的治療としての位置付けに変更された。 また、Step 3に含まれていた副腎皮質ステロイドに関しては、「急性増悪時のみ」とされて、プレドニゾロン換算量0.2mg/kg/日未満で2週間以内の使用に限定することが明記された。

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高リスクDLBCLの初回治療、タファシタマブ+レナリドミド+R-CHOPでPFS延長/Lancet

 未治療の高リスクびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の約40%は、初回治療のR-CHOP療法(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、prednisoneまたはプレドニゾロン)で再発・進行に至る。ドイツ・University Hospital MunsterのGeorg Lenz氏らMIND Study Investigatorsは、DLBCLを含む高リスクB細胞リンパ腫を対象とした検討(frontMIND試験)で、R-CHOP+タファシタマブ(Fc領域を改変した抗CD19モノクローナル抗体)+レナリドミド(tafa-len-R-CHOP)療法がR-CHOP療法と比較し、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことを示した。ただし、追加併用により、治療中に発現し死亡に至った有害事象(TEAE)を含む有害事象の増加が認められた。全生存期間(OS)に関するデータは未成熟で追跡調査が継続されているが、著者らは「循環腫瘍DNA(ctDNA)を含むさらなる解析で、tafa-len-R-CHOP療法で観察されたPFS改善に分子学的奏効がより深く寄与しているかどうか評価できるだろう。tafa-len-R-CHOP療法は、高リスクDLBCLや高悪性度B細胞リンパ腫(HGBL)患者の新たな初回治療となる可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年5月30日号掲載の報告。tafa-len-R-CHOP療法とR-CHOP療法を比較する国際共同試験 MIND試験は北米・南米、欧州および日本を含む環太平洋地域の298施設で行われた第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。対象は、18~80歳で未治療の高中リスクまたは高リスクのDLBCL、もしくはHGBLの患者であった。 研究グループは被験者を、International Prognostic Index(IPI)または年齢補正IPI、試験地で層別化し、標準治療の21日サイクル6回投与のR-CHOP療法群またはtafa-len-R-CHOP療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。R-CHOP療法は、初日にリツキシマブ375mg/m2、シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン1.4mg/m2(最大2mg)を静脈内投与し、prednisoneまたはプレドニゾロン100mg/日を1~5日目に経口投与した。これらに加えてtafa-len-R-CHOP療法群では、タファシタマブ(12mg/kgを1、8、15日目に静脈内投与)とレナリドミド(25mg/日を1~10日目に経口投与)が投与された。 主要評価項目は、試験担当医師の評価によるPFS(無作為化から病勢進行または全死因死亡までと定義)で、ITT集団で評価した。安全性は副次評価項目として、試験薬を少なくとも1回投与された全被験者を対象に評価した。2年PFS率tafa-len-R-CHOP療法群71.1%vs. R-CHOP療法群62.9% 2021年5月11日~2023年3月2日に1,229例がスクリーニングされ、899例が無作為化された(tafa-len-R-CHOP療法群448例[50%]、R-CHOP療法群451例[50%])。両群の人口統計学的および疾患の特性はバランスが取れており、年齢中央値は65歳、IPI 3またはaaIPI 2が503例(56%)、IPI 4~5またはaaIPI 3が388例(43%)、ECOG-PS 2が283例(31%)、485例(54%)が腫瘤性病変(直径7.5cm以上)を有していた。 追跡期間中央値35.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:35.0~35.4)の主要解析時点において、PFSはtafa-len-R-CHOP療法群がR-CHOP療法群より改善し(ハザード比[HR]:0.75、95%CI:0.59~0.96、p=0.0194)、2年PFS率はtafa-len-R-CHOP療法群71.1%(95%CI:66.3~75.4)、R-CHOP療法群62.9%(57.9~67.5)であった。 OSの中間HRは0.85(95%CI:0.63~1.14)で統計学的有意差は認められなかった(p=0.2703)。3年OS率はtafa-len-R-CHOP療法群81.1%(95%CI:77.0~84.6)、R-CHOP療法群77.8%(73.5~81.5)であった。 Grade3以上の全TEAE発現率は、tafa-len-R-CHOP療法群(384/443例[87%])がR-CHOP療法群(340/447例[76%])よりも高率であった。さらに、死亡に至ったTEAEの発現率もtafa-len-R-CHOP療法群(26例[6%])がR-CHOP療法群(17例[4%])よりも高率であった。一方で、試験中のすべての死亡例は、tafa-len-R-CHOP療法群(82例[19%])がR-CHOP療法群(97例[22%])よりも少なかった。 投与データに基づくすべての試験薬の早期中止率は、tafa-len-R-CHOP療法群(71/443例[16%])とR-CHOP療法群(66/447例[15%])で同程度であった。

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第316回 埼玉県立小児医療センターの死亡事故、何があったのか(前編)

INDEXビンクリスチンの誤髄注死亡事故、世界的に報告事故が起こりやすい治療時期ビンクリスチンの誤髄注死亡事故、世界的に報告今年3月上旬、埼玉県立小児医療センターが明らかにした急性リンパ性白血病(ALL)で治療中の患者5例が、髄腔内注射(以下、髄注)の後に重篤な神経症状を発症し、うち1例はこれが原因とみられる状態で死亡に至った事案は記憶に新しい。この件では5例中3例の髄液から髄注には禁忌の抗がん剤ビンクリスチン(商品名:オンコビン)が検出されたことが判明し、重篤な神経症状発症事例の可能性が濃厚と指摘されている。ちなみに、ビンクリスチンは微小管重合阻害薬(ビンカアルカロイド系)であり、紡錘体を形成しているチューブリンに結合して微小管の形成を阻害し、細胞分裂を停止させる作用を持つ。また、ビンクリスチンは胆汁排泄される肝代謝型で、主な代謝酵素は CYP3A4 とCYP3A5 である。ただし、CYP3A5の発現レベルには大きな個人差があり、その度合いによって副作用の出現頻度は異なる。一般的な副作用は末梢神経症状であり、薬剤が末梢神経に到達すると、軸索輸送(タンパク質・小胞の輸送)に必須な軸索内の微小管が障害される。このため、もし髄注でビンクリスチンが脊髄・脳に接触すれば、同部位には代謝機構は存在しないため、直接高濃度で曝露することになり、末梢神経毒性とは比較にならないほど重篤な神経症状が生じる。具体的には軸索の順行性・逆行性輸送が破綻し、神経細胞の変性・壊死が急速に進行する。実際の症状としては、激しい疼痛、下肢麻痺、上行性麻痺、呼吸筋麻痺、意識障害などを発症し、最悪は死に至る。救命のためには早期に大量の脳脊髄液洗浄を行う必要があるが、誤って髄注してしまった場合の救命例は少数といわれている。2006年に米国・ノースウェスタン大学のグループが行った文献レビュー1)では、当時確認されたミスによるビンクリスチンの髄注事例32例中27例(84.3%)が死亡したとされている。なお、オーストラリアの研究者が2019年に発表した論文2)によれば、過去の論文検索や事故報告書などの集計から、これまで全世界で確認されているビンクリスチンの誤った髄注事例は少なくとも135例あるものの、これは氷山の一角とみられている。この件について同センターが医療法の医療事故調査制度に基づいて設置した外部有識者による医療事故調査委員会は、5月27日に第3回の会合を開き、「ビンクリスチン混入の原因特定は困難」との結論に達した。一方で再発防止策については、3回の会合で委員から提示された意見を踏まえ、過失、故意のいずれの可能性でも対応し得る対策がまとめられたとし、これを反映させた報告書の微修正などは委員長に一任された。報告書は同センターに提出され、調査対象となっている5例の家族に内容を説明後、個人情報などに配慮しつつ可能な範囲で公表する予定だ。事故が起こりやすい治療時期しかし、何ともすっきりしない結末である。この事件を改めて振り返り論考してみたい。まず、今回の事案で髄液からビンクリスチンが検出されたのは、髄注時期別にみると、2025年1月に投与された10歳未満の男児、2025年3月と10月にそれぞれ10代男性の3例である。3例とも注射後数日以内に下肢痛や麻痺などの神経症状を発症。2025年10月に髄注を受けた患者は2026年2月に死亡し、残る2例も意識不明や全身麻痺などの重篤な状態となった。実は同センター側では3例目の神経症状発症事例を経験した直後の11月、院内外の委員で構成される調査対策委員会を発足させ、対外的な公表の約1週間前の3月5日まで同委員会が計6回開催されていた。この3例の髄液中のビンクリスチン検出は、同委員会の開催過程で、がん性髄膜炎の評価などほかの神経症状を検索するために採取した髄液を使用した髄液タンデム質量分析の結果、判明したものである。さて、ここで改めて小児でのALLの標準的治療について触れておかねばならないだろう。ALLではおおむねプレフェーズ(導入前治療)→寛解導入療法→強化(地固め)療法→再寛解導入療法→維持療法という流れとなる。プレフェーズは、腫瘍崩壊症候群の防止とステロイドへの反応性の評価を目的として行われるもので、プレドニゾロンまたはデキサメタゾンが通常5~7日程度投与される。今回、焦点となっているのは、寛解導入療法の段階である。この寛解導入療法(約4週間)では、ビンクリスチン、プレドニゾロンまたはデキサメタゾン、L-アスパラギナーゼの3剤(高リスク群ではダウノルビシンなどを加えた4剤)併用療法とメトトレキサートの髄注が行われる。ちなみにこのうちプレドニゾロンは内服、そのほかは基本的に静脈注射である(ただしL-アスパラギナーゼは筋注の場合もあり)。ALLではがん細胞が中枢神経に潜伏しやすく、血液脳関門の存在ゆえにこうした潜伏したがん細胞を制圧するには全身化学療法では不十分であり、メトトレキサート、シタラビン、ヒドロコルチゾンの3剤併用による髄注(トリプルIT)が寛解導入療法の時期から行われる。ただし、ビンクリスチンは一般的に寛解導入療法後の強化療法で使われるケースは少ないものの、再寛解導入療法以降に再び定期的に投与されるようになる。今回の事案については、どの治療段階で起きたかは明らかにされていない。ただ、過失で起きた前提で考えるならば、それが起きやすい環境があるのは寛解導入療法時となる。そして同センターではこの事案が公表された今年3月11日から約1週間後の3月17日にこの3例以外にも髄注を受けた2例のALL患者で神経症状が疑われることを公表している。前出の3例とは異なり、この2例の患者プロファイルは明らかにされていない。前出の3例は早い患者で髄注翌日、遅い患者でも4日以内に症状が出現、急速に進行・重症化した。それに対し、この2例は発症まで約2週間を要し、症状は下肢麻痺などで命に別状はないことなどから、前述の調査対策委員会では「最初の3例と同じ病態であることには否定的」との見解だ。ALLでは、ビンクリスチン静注とトリプルIT髄注を同日に行うことによる取り違えに起因した事故が過去に世界的にも報告されている。このため昨今ではあえて投与日を変えて行うことが一般的と言われる。患者や施設の事情によっては、同日に行われることもあるという。もちろん過去の事故のことは多くの施設で念頭にあることは想像に難くなく、その場合は同日内でも相当時間を空けて行うなど、通常は相当厳重な注意が払われる。今回は小児ALL治療の背景と事件の事実関係について触れた。次回、「なぜ起きたのか?」 故意・過失の双方から今回の事件を独自視点でひもといてみたい。参考1)Basetty P, et al. blood. 2006;108:3327.2)Gilbar P, et al. J Oncol Pharm Pract. 2020;26:263-266.3)日本小児血液・がん学会編. 小児白血病・リンパ腫 診療ガイドライン 2016 年版. 金原出版株式会社. 2016.4)厚生労働省:埼玉県立小児医療センターの報道に関する対応状況について(報告)令和8年3月26日

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「トイレでのスマホ」が痔の悪化の一因に

 米国消化器病学会(AGA)は4月29日、現時点で推奨される痔の診断と治療に関するベストプラクティスを公表した。AGAは、痔の診断・治療は消化器内科医が積極的に担うべきだとした上で、症候性の痔に対する第一治療選択肢は、食生活を見直して便通を整え、スマートフォン(以下、スマホ)を見ながらトイレに長居する習慣を改めることだとしている。 最新の「米国人のための食事ガイドライン」では、毎食でのタンパク質摂取や全脂肪乳製品の摂取が重視されているが、消化器専門医らは、高タンパク食、特に赤肉中心の食事に偏るあまり、食物繊維の摂取がおろそかになる傾向を懸念している。肉には食物繊維が含まれていないため、このような食事では食物繊維が不足して便秘を招き、いきみによって痔の悪化を引き起こす可能性があるためだ。便通を整えるためには、十分な食物繊維の摂取が欠かせない。栄養学の専門家は、男性では1日38g、女性では25gの食物繊維の摂取を推奨している。しかし、多くの米国人は必要量の食物繊維を摂取できていないという。 食事と共に、トイレでの行動も重要である。現在、多くの成人がトイレを、メール確認やソーシャルメディア閲覧のための静かな空間として利用している。しかし、この「トイレスクロール」は痔の大きなリスク因子になるという。便座に長時間座ることで、肛門周囲の血管に圧がかかるためである。ガイドラインの筆頭著者である米ベイラー医科大学のWaqar Qureshi氏は、「トイレに座る時間は5分以内にすべきだ。5分以内に排便できない場合は、座り続けていきむのではなく、一度立ち上がり、後で再度試みるとよい」とNBCニュースに語った。同氏はさらに、足台を使ったり、本を積み重ねて足を高くしたりして、しゃがむ姿勢に近づけることで、いきみの軽減につながる可能性があると述べた。 治療法については、ヒドロコルチゾンなどの外用ステロイド薬や局所麻酔薬、血管作動薬などの外用薬は、症候性の痔の治療用に検討できるが、その有効性を裏付けるデータはほとんどないとされている。また、外用ステロイド薬は、長期間使用すると皮膚が薄くなる可能性があるため、一度に2週間以上使用するべきではないとしている。さらに、症状が持続する痔には、輪ゴムで痔核を縛る「ゴム輪結紮療法」や、熱や光を用いて組織を縮小させる凝固療法が必要になることもある。このほか、温水に座って患部を温める「座浴」も症状緩和法としてガイドラインに記載されているが、その有効性を支持するエビデンスは限定的である。 さらに、クローン病や潰瘍性大腸炎の活動期では、炎症が完全寛解するまで痔治療を延期すべきこと、妊娠中の痔は保存的治療が基本であり、侵襲的治療は原則として産後に検討するべきこと、新規患者では可能な限り肛門鏡検査を実施し、痔と類似症状を示す他疾患を除外した上で正確な診断を行う重要性も強調されている。

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全身性エリテマトーデスの自己注射可能な皮下注薬「サフネロー皮下注120mgオートインジェクター」【最新!DI情報】第63回

全身性エリテマトーデスの自己注射可能な皮下注薬「サフネロー皮下注120mgオートインジェクター」今回は、ヒト抗I型インターフェロン受容体1モノクローナル抗体「アニフロルマブ(遺伝子組換え)(商品名:サフネロー皮下注120mgオートインジェクター、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。これまでの点滴静注製剤に加えて皮下注製剤が登場したことで、全身性エリテマトーデス患者の生活状況や治療ニーズに応じた柔軟な治療が可能になると期待されています。<効能・効果>既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデスの適応で、2026年2月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはアニフロルマブ(遺伝子組換え)として、1回120mgを1週間ごとに皮下注射します。なお、アニフロルマブ(遺伝子組換え)点滴静注製剤から本剤に切り替える場合、点滴静注の最終投与から約2週間後に本剤の投与を開始します。<安全性>重大な副作用として、アナフィラキシー(頻度不明)、重篤な感染症(2.3%)があります。その他の副作用として、注射部位反応(10%以上)、気管支炎(気管支炎、ウイルス性気管支炎、気管気管支炎)、上気道感染(上気道感染、上咽頭炎、咽頭炎)、帯状疱疹、過敏症(いずれも1~10%未満)、気道感染(気道感染、ウイルス性気道感染、細菌性気道感染)(いずれも1%未満)、関節痛(頻度不明)があります。なお、症状を悪化させる恐れがあるため、重篤な感染症の患者および活動性結核の患者には投与できません。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、ヒト抗I型インターフェロン受容体1モノクローナル抗体製剤であり、既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデスに用いられる皮下注射薬です。 2.今までに、ステロイド、ヒドロキシクロロキン、免疫抑制薬などによる全身性エリテマトーデスに対する適切な治療を行っても効果不十分な場合に上乗せして使用されます。 3.医療機関において、適切な在宅自己注射教育を受けた患者さんや家族が自己注射できます。自己判断で中止や減量をしないでください。 4.妊娠または妊娠している可能性がある女性は、使用する前に医師または薬剤師に告げてください。 <ここがポイント!>全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は、免疫系の異常により全身の多臓器に炎症を引き起こす慢性の自己免疫疾患で、厚生労働省の指定難病49に該当します。初期症状として全身倦怠感や発熱が多くみられ、その後、皮膚・粘膜症状、関節症状、腎病変、中枢神経症状などさまざまな症状が現れるため、患者ごとに症状の組み合わせや重症度が大きく異なります。治療の主軸は副腎皮質ステロイドによる免疫抑制および抗炎症であり、重症例ではステロイドパルス療法が選択されます。しかし、ステロイドは長期使用に伴う多くの副作用があり、ヒドロキシクロロキンや免疫抑制薬、生物学的製剤などを併用し、ステロイドの減量を目指す治療が行われます。SLE患者の多くは、I型インターフェロン(IFN)シグナル伝達が持続的に亢進し、IFN誘導性遺伝子の過剰発現が認められます。アニフロルマブは、I型IFNα受容体サブユニット1に結合するヒト免疫グロブリンG1κ(IgG1κ)モノクローナル抗体であり、I型IFN受容体を介したシグナル伝達を遮断することで自己抗体産生を抑制し、SLEの症状緩和および進行抑制に寄与すると考えられています。同成分は2021年11月に点滴静注製剤が発売されていますが、4週間ごとに通院し、30分以上かけて点滴投与を行う必要があります。今回承認された皮下注製剤は、週1回の自己注射薬であり、従来の点滴静注製剤に加わる新たな選択肢として、患者の生活状況や治療ニーズに応じた柔軟な治療を可能にします。また、通院負担の軽減や治療継続率の向上も期待されます。なお、アニフロルマブ点滴静注製剤から皮下注製剤に切り替える場合、点滴静注製剤の最終投与から約2週間後に皮下注製剤の投与を開始する必要があります。標準治療を実施中の中等症~重症の疾患活動性を有する自己抗体陽性のSLE患者を対象とした第III相国際共同試験(TULIP SC試験)において、主要評価項目である投与52週時のBICLA達成例(複合的な疾患活動性低下指標)の割合は、本剤120mg皮下投与群で59.4%、プラセボ皮下投与群で43.9%、割合の群間差は15.5%(96.46%信頼区間:1.4~29.6%)であり、プラセボ投与群に対する本剤投与群の優越性が検証されました(p=0.0211、層別Cochran Mantel Haenszel法)。

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薬剤性過敏症症候群〔DIHS:drug-induced hypersensitivity syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)は、発熱と多臓器障害を伴う重症型薬疹の1つである。抗けいれん薬など特定の薬剤を内服開始後、遅発性に発症し、原因薬剤を中止しても症状の再燃や遷延化がみられることが特徴である。多くの場合、発症後3週間前後でヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)に代表されるヘルペスウイルスの再活性化を伴うことから、薬剤アレルギーとヘルペスウイルス感染症が複合して生じる新たな病態として認識されている(図1)。DIHSのもう1つの特徴として、回復期に1型糖尿病や慢性甲状腺炎などの自己免疫疾患を発症することが知られている。なお、欧米を中心にDRESS(drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms)という疾患概念が用いられるが、DRESSの診断基準にはヘルペスウイルスの再活性化については言及されておらず、DIHSよりも広い範囲の薬疹が含まれる。図1 DIHSの病態の仮説■ 疫学2021年の全国調査によれば、年間受療患者数は人口100万人当たり2.82人と推計されている。男女比は1:1で、発症年齢は40~60代(中央値58歳)が最多である。原因薬剤は比較的限定的であり、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾニサミドなどの抗てんかん薬のほか、アロプリノール、ジアフェニルスルホン、サラゾスルファピリジン、メキシレチンなどが代表的である。DIHSの致死率は約10%程度と高く、死因の多くはサイトメガロウイルス(CMV)肺炎やニューモシスチス肺炎などの感染症である。■ 病因本症は、原因薬剤を通常2~6週間(平均1ヵ月)内服した後に発症する。病態は、T細胞を主体とする薬物アレルギー反応とヘルペスウイルスの再活性化が中心である。急性期にはTARC/CCL17の著明な上昇や好酸球増多に象徴されるTh2反応の亢進がみられる。また、急性期には制御性T細胞(Treg)の増加がみられるが、経過中にその機能やバランスが崩れることが、ウイルス再活性化や後遺症としての自己免疫疾患発症に関与すると考えられている。さらに、急性期には末梢血のCD4陽性T細胞表面にHHV-6の受容体であるCD134/OX40の発現が亢進しており、これがウイルスの効率的な感染拡大を許容する一因である可能性が示唆されている。■ 症状初期症状として発熱、頸部リンパ節腫脹、顔面や躯幹の紅斑が生じる。皮疹は播種状紅斑丘疹型や多形紅斑型で始まり、急速に拡大してしばしば紅皮症状態に移行する(図2)。特徴的な顔貌として、顔面の浮腫を伴う紅斑、眼周囲の蒼白、鼻孔・口周囲に鱗屑・痂皮を伴う丘疹や小膿疱がみられる(図3)。肝機能障害や腎機能障害などの内臓病変や、異型リンパ球の出現、好酸球増多、白血球増多などの血液学的異常を伴う。図2 DIHSにおける紅皮症状態画像を拡大する図3 DIHSに特徴的な顔貌■ 予後原因薬剤を中止しても皮疹や臓器障害が遷延し、経過中に再燃を繰り返す。発症3~5週間前後にCMVの再活性化が生じ、肺炎、腸炎、消化管出血、肝障害などの致死的な合併症を引き起こすことがある。また、DIHSの症状が軽快した数ヵ月から数年後に、橋本病、劇症1型糖尿病、円形脱毛症、白斑などの自己免疫疾患を発症することがあり、長期的な経過観察が必要である。2 診断診断は、厚生労働省研究班による診断基準(2005年)(表)に基づいて行う。表 薬剤性過敏症症候群(DIHS)診断基準(2005)■ 概念高熱と臓器障害を伴う薬疹で、薬剤中止後も遷延化する。多くの場合、発症2~3週間後にHHV-6の再活性化を生じる。■ 主要所見1. 限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑、多くの場合紅皮症に移行する。2. 原因薬剤中止後も2週間以上遷延する。3. 38℃以上の発熱4. 肝機能障害5. 血液学的異常:a、b、cのうち1つ以上a. 白血球増多(11,000/mm3以上)b. 異型リンパ球の出現(5%以上)c. 好酸球増多(1,500/mm3以上)6. リンパ節腫脹7. HHV-6の再活性化典型DIHS1~7すべて非典型DIHS1~5すべて、ただし4に関しては、その他の重篤な臓器障害をもって代えることができる。■ 参考所見1. 原因医薬品は、抗けいれん薬、ジアフェニルスルホン、サラゾスルファピリジン、アロプリノール、ミノサイクリン、メキシレチンであることが多く、発症までの内服期間は2~6週間が多い。2. 皮疹は、初期には紅斑丘疹型、多形紅斑型で、後に紅皮症に移行することがある。顔面の浮腫、口囲の紅色丘疹、膿疱、小水疱、鱗屑は特徴的である。粘膜には発赤、点状紫斑、軽度のびらんがみられることがある。3. 臨床症状の再燃がしばしばみられる。4. HHV-6の再活性化は、(1)ペア血清でHHV-6 IgG抗体価が4倍(2管)以上の上昇、(2)血清(血漿)中のHHV-6 DNAの検出、(3)末梢血単核球あるいは全血中の明らかなHHV-6 DNAの増加のいずれかにより判断する。ペア血清は発症後14日以内と28日以降(21日以降で可能な場合も多い)の2点で確認するのが確実である。5. HHV-6以外に、サイトメガロウイルス、HHV-7、EBウイルスの再活性化も認められる。6. 多臓器障害として、腎障害、糖尿病、脳炎、肺炎、甲状腺炎、心筋炎も生じうる。■ 早期診断の補助検査診断基準項目に「中止後2週間以上の症状の遷延」や「発症2~3週間後のHHV-6再活性化」が含まれるため、発症早期の確定診断は困難である。早期にDIHSを疑う指標として、急性期の血清TARC値の測定が有用であり(4,000pg/mL以上で疑う)、2023年に「DIHS/DRESSの診断の補助」としての保険適用が追加された。■ 鑑別診断と原因薬剤の特定通常の薬疹や、麻しん・風しんなどのウイルス性発疹症との鑑別を要する。DIHSを疑う臨床的ポイントとして、原因薬剤が比較的限られていることから、詳細な薬剤内服歴(2~6週間の服用歴)の聴取が不可欠である。また、原因薬剤中止後も皮疹や臓器障害が遷延・悪化することも、他の薬疹との重要な鑑別点となる。特有の顔貌(図3)や、皮疹が急速に紅皮症化する経過(図2)も診断の有力な手掛かりとなる。HHV-6の再活性化は、一般に末梢血液中のHHV-6 DNAの定量(リアルタイムPCR法)によって判断するが、現時点では保険適用外の検査である。被疑薬の特定には、薬剤添加リンパ球刺激試験(DLST)やパッチテストが有用である。ただし、DLSTは発症早期には偽陰性となりやすく、発症後5週目以降の回復期に実施する必要がある。なお、重症化リスクを考慮し、薬剤の再投与試験(誘発試験)は行わない。3 治療■ 治療の実際DIHSを疑った場合は、第一に被疑薬を中止し、原則として入院加療とする。病初期に起こる全身症状と臓器障害の寛解を目指し、副腎皮質ステロイドの全身投与が治療の基本となる。中等~高用量(プレドニゾロン換算0.5~1mg/kg/日)で開始し、症状が十分に改善するまで(通常7~14日間)維持する。その後は、症状をみながら1~2週間ごとに5~10mg/日ずつ緩徐に漸減する。急激なステロイドの減量は、免疫再構築症候群を招きCMV感染症を顕在化させるリスクがあるため避けるべきである。臓器病変を伴わない軽症例に対しては、ステロイド全身投与を行わず、局所ステロイド外用や補液などの支持療法(supportive therapy)で経過観察することもある。ステロイドパルス療法は、CMVの再活性化や自己免疫疾患の発症に関与するとの否定的見解が主流であり、重篤な臓器障害への進展など特殊な状況に限り検討される。■ CMV感染症への対応発症3~5週前後にCMVが再活性化し、ステロイドの減量を契機として突然、肺炎や消化管出血などの致死的合併症を発症することがある。経過中は常にCMVのモニタリングを行い、顕性感染症を認めた場合には、抗ウイルス薬(ガンシクロビル)の投与による積極的な介入を行う。■ 多剤感作への配慮DIHSの経過中は多剤感作を引き起こしやすいため、解熱や感染予防目的での非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗菌薬の新たな投与は可能な限り避けるべきである。4 今後の展望DIHSの病態については、HHV-6やCMV再活性化の病態への関与について多くの知見が得られてきたものの、依然として未解明な点が残されている。とくに、最適なステロイド減量プロトコールの確立は急務であり、大規模な症例レジストリに基づくエビデンスの蓄積と治療指針の更新が期待される。また、回復期に発症する自己免疫疾患などの遅発性合併症は、患者の長期予後を左右する重要な課題である。今後は、これらの合併症を予測するバイオマーカーの同定や、その発症を制御する新たな介入法の開発が望まれる。5 主たる診療科皮膚科(重篤な臓器障害を伴うため、十分な検査と全身管理を行える施設への早期のコンサルテーションが重要である)。6 参考になるサイト診療、研究に関する情報薬剤性過敏症症候群診療ガイドライン 2023(日本皮膚科学会/重症多形滲出性紅斑に関する厚労省調査研究班)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)医薬品副作用被害救済制度(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)  (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2026年5月12日

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添付文書改訂:抗てんかん薬の運転の一律禁止が変更/セリチニブとCYP3A基質薬剤が併用禁忌に ほか【最新!DI情報】第61回

抗てんかん薬<対象薬剤>抗てんかん薬であるカルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、ラコサミド、レベチラセタムを有効成分とする医薬品<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]重要な基本的注意自動車の運転等危険を伴う機械操作の適否は、関連学会の留意事項を十分理解の上、医師が慎重に判断し、危険を伴う機械操作を行う場合には十分な注意が必要であることを適切に患者に指導すること。また、眠気等があらわれた場合には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないよう、患者に指導すること。<ここがポイント!>対象の抗てんかん薬は、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下といった中枢神経系に影響を与える副作用を起こすことがあるため、従来の添付文書では「重要な基本的注意」の項において、薬剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する旨が記載されていました。しかし、道路交通法では、てんかんのある患者の自動車運転を一律に禁止しているわけではありません。運転免許の取得・更新は、一定の条件を満たせば医師の診断書をもとに公安委員会が判断する仕組みとなっており、実際に多くの患者が医師の管理下で安全に運転を継続しています。今回の改訂により、薬剤投与中であっても一律に自動車運転等を禁止するのではなく、医師が関連学会の留意事項※に基づき、個別の患者の病状、服薬順守状況、副作用の有無等を総合的に評価し、自動車運転等の適否を判断できることが添付文書上で明確化されました。これは、患者の社会生活の質(QOL)向上と安全性の確保を両立させるための重要な改訂といえます。なお、対象の抗てんかん薬5剤には欧州および米国の添付文書においても、薬剤服用中の自動車運転等を一律に禁止する記載はなく、今回の改訂は国際的な動向とも合致しています。※抗てんかん発作薬を服用しているてんかんのある人において、自動車運転や危険を伴う機械操作を行う際の留意事項(2026年3月17日)CYP3A基質薬剤<対象薬剤>アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン、アナモレリン塩酸塩、イバブラジン塩酸塩、イブルチニブ、エプレレノン、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、キニジン硫酸塩水和物、シンバスタチン、スボレキサント、タダラフィル(アドシルカ)、チカグレロル、トリアゾラム、バルデナフィル塩酸塩水和物、フィネレノン、ブロナンセリン、マシテンタン・タダラフィル、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ルラシドン塩酸塩、ロミタピドメシル酸塩<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]禁忌(次の患者には投与しないこと)および併用禁忌(併用しないこと)「セリチニブ」を追記<ここがポイント!>セリチニブは強力なCYP3A阻害作用を有するため、CYP3A基質薬剤との併用により、これらの薬剤の血中濃度が上昇し、副作用の発現リスクが増大する可能性があります。今回の改訂は、この相互作用による安全性上の懸念から、セリチニブとCYP3A基質薬剤の併用を禁忌とするものです。対象となる20成分には、降圧薬、抗不整脈薬、睡眠薬、抗精神病薬、脂質異常症治療薬など、日常診療で頻用される薬剤が多く含まれており、処方監査時には十分な注意が必要となります。本改訂による医療現場への影響については、診療上の大きな支障が生じないことを関連学会等の意見聴取で確認されています。なお、セリチニブの「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)および10.1 併用禁忌(併用しないこと)」の項にも同様に上記薬剤が追記されました。これにより、双方向での併用禁忌が明確化され、より安全な薬物治療の実施が期待されます。アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<対象薬剤>アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]禁忌(次の患者には投与しないこと)および併用禁忌(併用しないこと)「クラリスロマイシン」を追記<ここがポイント!>生理学的薬物速度論モデルの解析により、アゼルニジピンとクラリスロマイシン400mgまたは800mgを併用した場合、アゼルニジピンのAUCが約3.4倍または5.4倍に増加することが予測され、副作用の発現が懸念されます。今回の改訂は、この相互作用による安全性上の懸念から、クラリスロマイシンとアゼルニジピンの併用を禁忌とするものです。アゼルニジピンはCYP3A4で代謝される薬剤であり、CYP3A4阻害薬であるクラリスロマイシンとの併用により、血中濃度の上昇が生じ、過度の血圧低下、めまい、ふらつきなどの副作用リスクが高まることが想定されます。本改訂による医療現場への影響については、診療上の大きな支障が生じないことを関連学会等の意見聴取で確認されています。なお、クラリスロマイシン、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン、ラベプラゾールナトリウム・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシンの「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)および10.1併用禁忌(併用しないこと)」の項にも同様にアゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピンが追記されました。とくにヘリコバクター・ピロリ除菌療法においてクラリスロマイシンを含む3剤併用療法を行う際には、患者の降圧薬の確認が重要となります。タクロリムス<対象薬剤>タクロリムス水和物(商品名:プログラフカプセル0.5mg/1mg/5mg、同顆粒0.2mg/1mg、同注射液2mg/5mg、グラセプターカプセル0.5mg/1mg/5mg(アステラス製薬株式会社)等)<改訂年月>2026年3月<改訂項目> [追加]妊婦 海外で実施された、Transplant Pregnancy Registry Internationalのデータベースから利用可能な2,905件の肝移植および腎移植患者の妊娠事例に関するコホート研究において、前向きに調査された症例について以下の結果が報告されている。 大奇形が認められた症例は、本剤曝露群では6/297例(2.0%)、本剤非曝露群注1)では1/53例(1.9%)であった注2)。 小奇形が認められた症例は、本剤曝露群では12/297例(4.0%)、本剤非曝露群では認められなかった注2)。 自然流産が認められた症例は、本剤曝露群では33/335例(9.9%)、本剤非曝露群では3/56例(5.4%)であった注2)。 腎移植患者において、子癇前症が認められた症例は、本剤曝露群では84/226例(37.2%)、本剤非曝露群では7/37例(18.9%)であった。 早産児が認められた症例は、本剤曝露群では156/352例(44.3%)、本剤非曝露群では25/59例(42.4%)であった。 妊娠週数に対して児が正常な出生体重であった症例は、本剤曝露群では289/352例(82.1%)、本剤非曝露群では40/59例(67.8%)であった。 注1 アザチオプリン、シクロスポリン、エベロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾロン、シロリムスのいずれか1つ以上を含むレジメンによる治療を受けた患者 注2 妊娠の6週間前から出産までの間にミコフェノール酸モフェチルに曝露している患者を除外した解析結果 <ここがポイント!>臓器移植後の妊娠レジストリであるTransplant Pregnancy Registry International(TPRI)データを用いた本剤の児および母体への影響に関する海外疫学研究の結果は、臓器移植患者の妊娠という限定された集団に関する大規模な研究データであるため、本研究結果を添付文書に記載することは臨床上有用であると考えられます。このコホート研究では、2,905件という大規模な症例数を解析しており、タクロリムス曝露群と非曝露群での大奇形発生率に有意な差は認められませんでした(2.0%vs.1.9%)。一方で、小奇形、自然流産、子癇前症については本剤曝露群でやや高い傾向が示されています。とくに腎移植患者における子癇前症の発生率は本剤曝露群で37.2%と高く、慎重な周産期管理が必要となることが示唆されます。このことから、今回の改訂で「9.特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.5 妊婦」の項に海外疫学研究の結果を追記することになりました。本データは、移植後妊娠を希望する患者への説明や、妊娠中の管理方針決定において重要な情報となります。

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タルラタマブのCRS関連発熱を解析、発熱が奏効と関連か/日本臨床腫瘍学会

 小細胞肺がん(SCLC)治療薬タルラタマブは、2026年3月27日に添付文書が改訂され、2次治療から使用可能となった。本剤は高い効果が期待されているが、免疫活性化に伴うサイトカイン放出症候群(CRS)による発熱の頻度が高く、適切な管理方法と予測マーカーの確立が急務となっている。そこで、山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)らの研究グループは、タルラタマブによる治療を受けたSCLC患者を対象とした後ろ向き研究を実施し、発熱のタイミングや持続時間などと奏効との関連を解析した。その結果、投与1回目と2回目の両方で発熱がみられた患者は、奏効割合(ORR)が高かった。また、発熱の早期からステロイドを用いることで安全に投与を継続できることも示された。本結果は、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表された。 研究グループは、埼玉医科大学国際医療センターにおいてタルラタマブ治療を受けた、再発または進行SCLC患者25例を対象として後ろ向き研究を実施した。本研究では、37.5℃以上を発熱と評価し、発熱患者にはヒドロコルチゾン100mgを投与した。また、発熱が6時間以上持続または再度発熱した場合はデキサメタゾン9.9mgを投与した。データカットオフ日は2026年2月28日であった。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は72歳(範囲:50~82歳)、男性の割合は84.0%であった。・タルラタマブ治療開始時に何らかのグルココルチコイドが処方されていた患者は36.0%であった。・37.5℃以上の発熱を認めた割合は、投与1回目(サイクル1の1日目[C1D1])は64.0%、投与2回目(C1D8)は87.0%であった。・発熱のタイミングについて、投与から発熱までの時間の中央値は、C1D1では13.7時間であったのに対し、C1D8は25.2時間であり発熱までの時間が有意に長かった(p=0.005)。・発熱の持続時間(37.5℃以上になってから37.0℃未満に低下するまでの期間)中央値は、C1D1では40.5時間であったのに対し、C1D8は27.3時間であり発熱の持続時間が有意に短かった(p=0.019)。・発熱に対する治療の内訳は、ヒドロコルチゾンのみがC1D1 37.5%、C1D8 35.0%であり、ヒドロコルチゾンのみでは解熱に至らずデキサメタゾンの追加投与が必要となった患者がそれぞれ62.5%、55.0%であった。C1D1、C1D8ともにトシリズマブを用いた患者はいなかった。ステロイド投与量の中央値(プレドニゾロン換算)は、C1D1、C1D8共に91mgであった。・C1D1とC1D8の両方で発熱を認めたdouble-fever群は、認めなかった群と比較して、ORRが有意に高かった(p=0.011)。 本結果について、山口氏は「少数例の検討ではあるが、double-feverパターンを示した患者では、ORRが高くなる傾向があることがわかった。また、発熱の早期からステロイド介入を行う統一されたプロトコールを用いることで、安全に治療を行うことができた」とまとめた。また、本発表の後に実施されたプレスリリースセッションにおいて「タルラタマブ投与後の慎重な観察期間を投与後72時間とすることを提言する。安全な入院管理を行うとともに外来治療への円滑な移行体制が確立されることで、多くのSCLC患者にこの有望な治療を届けることができると期待している」と述べた。

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体内CAR-T細胞生成による多発性骨髄腫治療、ESO-T01の第I相試験結果/Nat Med

 体内でのCAR-T細胞の生成は、体外培養やリンパ球除去を省略できるため、細胞療法へのアクセスを簡素化・迅速化する可能性がある。今回、再発・難治性多発性骨髄腫の成人患者を対象に、体内でCAR-T細胞を生成するレンチウイルスベクターであるESO-T01の安全性と忍容性を評価した第I相試験の結果を、中国・Huazhong University of Science and TechnologyのNing An氏らがNature Medicine誌オンライン版2026年3月25日号に報告した。 ESO-T01は、ナノボディ指向性の免疫遮蔽レンチウイルスベクターで、ヒト化抗B細胞成熟抗原(BCMA)CARをコードしている。本試験では、白血球アフェレーシス、体外培養、リンパ球除去化学療法を実施せずに、0.2×109形質導入単位を静脈内に単回投与した。前治療歴の多い男性患者5例(治療ライン中央値:3)が連続して登録され、追跡期間中央値は6.0ヵ月であった。主要評価項目は安全性、忍容性、副次評価項目は有効性、薬物動態、薬力学などであった。 主な結果は以下のとおり。・全例でGrade3以上の有害事象が認められた。・サイトカイン放出症候群が4例(Grade3が3例、Geade2が1例)に認められ、副腎皮質ステロイド、トシリズマブ、支持療法で管理された。・最も多かった毒性は一過性の血球減少および可逆的な肝酵素値の上昇で、Grade2の感染症が3例に認められた。・Grade1の免疫エフェクター細胞関連神経毒性が1例に認められ、骨髄外病変に関連する脊髄圧迫により死亡した。・5例中4例で奏効が得られ、うち3例は厳格な完全寛解であった。・評価可能な奏効例(4例)すべてで、60日目までに微小残存病変陰性(10-5)が確認された。

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デュピルマブ、水疱性類天疱瘡の適応追加/サノフィ

 サノフィは2026年3月23日、水疱性類天疱瘡に対するデュピルマブ(商品名:デュピクセント)の製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。水疱性類天疱瘡は、自己免疫性の表皮下水疱を生じるまれな疾患で、本邦では指定難病とされている。全身に強い痒みや水疱、紅斑、びらん、痛みを伴い、再発を繰り返すため、日常生活に深刻な影響を及ぼす。主に高齢者に発症し、標準治療にはステロイド薬や免疫抑制薬が使用されるが、長期使用による合併症や副作用への影響が指摘されている。 今回の承認は、中等症~重症の成人水疱性類天疱瘡患者106例を対象とした第II/III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(ADEPT試験)の結果に基づいている。被験者はプラセボ群とデュピルマブ群に1:1で割り付けられ、治療開始時より経口ステロイド薬(OCS)を基礎治療として投与された。治療期間中は、すべての被験者について治験実施計画書で定義したOCS減量レジメンに従い、デュピクセント投与開始後6~16週にかけて疾患活動性が2週間コントロールされていればOCSの漸減を進めた。 主要評価項目である36週時に寛解持続を達成した患者の割合は、デュピルマブ群は18.2%、プラセボ群は4.0%であった(p=0.0250)。寛解持続の達成は、16週までに完全寛解かつOCS漸減を完了し、36週までの投与期間中に再燃が生じることなく、レスキュー療法を必要としないことと定義された。安全性データは、これまでデュピルマブで確立されている安全性プロファイルと同様であった。なお、水疱性類天疱瘡の適応症について、2025年3月にデュピルマブは希少疾病用医薬品に指定されている。<製品概要> ※下線は変更箇所商品名:デュピクセント皮下注300mgペン/同300mgシリンジ、デュピクセント皮下注200mgペン/同200mgシリンジ一般名:デュピルマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:<300mgペン、300mgシリンジ>既存治療で効果不十分な下記皮膚疾患・アトピー性皮膚炎注)・結節性痒疹・特発性の慢性蕁麻疹・中等症から重症の水疱性類天疱瘡・気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)注)・慢性閉塞性肺疾患(既存治療で効果不十分な患者に限る)注)・鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)注)<200mgペン、200mgシリンジ>既存治療で効果不十分な下記皮膚疾患・アトピー性皮膚炎注)・特発性の慢性蕁麻疹・気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)注)注)適使用推進ガイドライン対象用法及び用量(抜粋):〈水疱性類天疱瘡〉通常、成人にはデュピルマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する。

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濾胞性リンパ腫、R-CHOP療法の15年PFS(SWOG S0016)/JAMA Oncol

 濾胞性リンパ腫(FL)に対する、CHOP(シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン/ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン/プレドニゾロン)ベースの化学免疫療法後の長期寛解および治癒の可能性を評価したSWOG S0016試験の15年間の追跡データを、米国・Fred Hutch Cancer CenterのMazyar Shadman氏らが報告した。この2次解析の結果、進行期FL患者の一部がリツキシマブ+CHOP(R-CHOP)により治癒を達成可能であり、再発率が時間経過とともに低下することが示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2026年2月26日号に掲載。 本試験は、全米の大学病院および地域医療機関で実施された多施設共同試験で、未治療の進行期FL患者が登録された。治癒モデリング(治癒した患者の割合を推定するモデル化)は、S0016試験期間中のFL治癒率を推定するため背景死亡率を組み込んで実施した。患者登録は2001年5月~2008年10月、追跡期間中央値は15.5年(四分位範囲:13.6~16.9)、2025年6月に解析した。患者をリツキシマブ+CHOP(R-CHOP)群またはCHOP後に放射免疫療法(RIT)を追加するCHOP-RIT群に無作為に割り付けた。主要評価項目は15年無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)、副次評価項目は治癒モデリングなど。 主な結果は以下のとおり。・最終解析には適格患者531例(女性46%、年齢中央値53歳)が組み入れられ、R-CHOP群267例、CHOP-RIT群264例であった。・15年OSは70%で両群間に有意差はなく、15年PFSは40%(95%信頼区間:36.0~44.7)であった。・15年PFSはCHOP-RIT群が47%でR-CHOP群の34%と比較して優越性を示した(p=0.004)。・治癒モデルでは全体治癒率が42%と推定され、FL国際予後指標スコアが低く、β2ミクログロブリン値が正常な症例で最も高い治癒率が観察された。・再発率は、最初の5年間では6.8%、15~20年では0.6%と、時間経過とともに大幅に減少した。 著者らは、「この知見はFLの理解と治療アプローチにおけるパラダイムシフトを表し、患者との初回相談や将来の研究戦略に影響を与えるもの」としている。

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IgA腎症〔IgA nephropathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義IgA腎症は、糸球体性血尿や蛋白尿などの検尿異常が持続し、腎生検で腎糸球体メサンギウム領域を中心としたIgA優位の免疫グロブリン沈着を認め、全身性疾患や慢性疾患など明らかな原因疾患を伴わない原発性糸球体腎炎である。確定診断には腎生検が必須である。■ 疫学IgA腎症は、世界で最も頻度の高い原発性糸球体腎炎であり、わが国を含む東アジアでとくに多いとされる。わが国では学校検尿や健康診断が普及しているため、無症候性血尿・蛋白尿を契機に若年~中年で診断される例が多い。一方、欧米では症候性の症例や腎機能障害を伴って初めて診断される例が多いとされる。■ 病因病因としては、「粘膜免疫異常により過剰産生された糖鎖異常IgA1が、自己抗体や補体と免疫複合体を形成し、糸球体メサンギウムに沈着して炎症と線維化を惹起する」というマルチヒット仮説が提唱されている。遺伝的素因も関与しており、HLA領域や粘膜免疫関連遺伝子の関連が報告されている。■ 症状多くは自覚症状に乏しく、持続する顕微鏡的血尿・軽度蛋白尿のみである。上気道感染や消化管感染の数日後に肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)を来す例が典型的である。進行例では浮腫、高血圧、倦怠感など慢性腎臓病(CKD)としての症状が出現する。■ 分類組織学的には腎糸球体メサンギウム増多所見が主体であるが、半月体形成、分節性硬化、全節性硬化など多彩な像をとる。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する。■ 予後かつての長期追跡では、診断後20年で約4割が慢性腎不全に至ると報告され、決して良性の腎炎ではないことが明らかとなった。近年では、早期発見・レニンアンギオテンシン(RA)系阻害薬の普及などにより予後は改善しつつあるが、蛋白尿が持続する例や腎機能障害を伴う例では依然としてCKD進行のリスクが高い。国際IgA腎症予測ツール(International IgAN Prediction Tool)により、臨床所見とMEST-Cスコアを組み合わせた予後予測も行われている。2 診断■ 検査1)尿検査持続する顕微鏡的血尿(尿定性検査に加え、尿沈査分析が必要。しばしば赤血球円柱がみられる)程度の異なる蛋白尿(しばしば0.3~1g/日程度から始まり得る)急性上気道炎や消化管感染後の一過性肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)2)血液検査血清クレアチニン、推算糸球体ろ過量(eGFR)で腎機能を評価する。血清IgA値はしばしば高値だが、診断的特異性は高くない。補体価は通常正常であり、低補体血症では他疾患を考慮する。3)腎生検IgA腎症の確定診断には腎生検が必要である。腎生検は、確定診断のみならず予後や治療反応性を予測する上でも重要である。光顕でメサンギウム増殖性糸球体腎炎を示し、免疫蛍光法でメサンギウム優位のIgA沈着(しばしばC3が共に沈着)を認める(図1、2)。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する(表)。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、IgA腎症が疑われる成人で蛋白尿0.5g/日以上が持続する場合、腎生検を考慮することが推奨されている。図1 IgA腎症の代表的な光顕所見画像を拡大する画像を拡大するa:メサンギウム細胞増多(↑)とメサンギウム基質増生(*)b:メサンギウムへの半球状沈着物(↑)c:管内細胞増多を示す糸球体糸球体毛細血管内の細胞数が増加し、管腔が狭小化している(↑)d:係蹄壊死この糸球体では毛細血管基底膜が断裂し(↑)、フィブリンの析出(*)がみられるe:細胞性半月体この糸球体の半月体は、ほとんどが細胞成分で占められているf:線維細胞性半月体この半月体は細胞成分10%以上50%未満で、細胞外基質は90%未満であるg:線維性半月体この半月体は細胞成分10%未満で、細胞外基質が90%以上を占めているh:分節性硬化点線で囲まれた部分に硬化がみられ、硬化はすべての係蹄には及んでいない(参考文献1、2より引用)図2 蛍光抗体法(IgA)画像を拡大する主にメサンギウム領域にIgAが高度に沈着している(参考文献1より引用)表 IgA腎症Oxford分類画像を拡大する■ 鑑別診断IgA腎症と類似する状態として、以下の疾患などと鑑別する必要がある。菲薄基底膜病、アルポート症候群など遺伝性血尿疾患IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病):紫斑、腹痛、関節痛など全身症状を伴う。感染関連糸球体腎炎(とくにMRSA感染に伴うIgA優位の感染関連糸球体腎炎)ループス腎炎など他の自己免疫性腎炎慢性肝疾患に伴う二次性IgA沈着症家族歴を含む臨床背景、血清学的検査、腎生検での所見を総合して診断する。3 治療■ 治療の基本方針治療の第1目標は、蛋白尿をできるだけ低く抑え(目標0.5g/日未満、理想的には0.3g/日未満)、腎機能低下速度を生理的なレベル(年間eGFR低下1mL/分/年未満)に近付けることである。■ 腎保護療法すべての患者に以下の腎保護療法が基本となる。生活習慣介入:減塩(食塩<6g/日が目安)、適正体重の維持、禁煙、適度な運動。血圧管理:目標<130/80mmHg(蛋白尿が多い例ではさらに厳格に)。RA系阻害薬:ACE阻害薬またはARBは蛋白尿減少と腎保護効果のエビデンスがあり、IgA腎症でも第1選択である。SGLT2阻害薬:糖尿病の有無にかかわらずCKD進行抑制効果が示されており、蛋白尿を伴うIgA腎症では追加投与が推奨されている。■ 免疫抑制療法腎保護療法を十分に行っても蛋白尿が持続し、腎機能低下が進行する例では免疫抑制療法を検討する。副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド):わが国のガイドラインでは、中等度以上の蛋白尿や組織学的重症例で、一定期間のステロイド療法が推奨されている。ただし、糖尿病、肥満、感染など副作用リスクが高い症例では慎重な適応判断が必要である。扁摘+ステロイドパルス療法:わが国では、口蓋扁桃摘出術とステロイドパルス療法の併用が長年行われており、蛋白尿の寛解や長期予後改善を示す国内データが蓄積している。その他の免疫抑制薬:シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)などについては一定の効果報告もあるが、エビデンスは限定的であり、難治例や特別な状況に限って専門医のもとで検討されるべきである。■ 高リスク例・特殊病型急速進行性糸球体腎炎像(半月体多数、急激なeGFR低下)を示す例では、ステロイド大量療法にシクロホスファミドなどを併用する血管炎に類似した治療が行われるが、エビデンスは限られている。ネフローゼ症候群を呈する微小変化病合併IgA腎症などでは、ステロイド単独でも反応性が良い場合が多い。4 今後の展望■ 新たな診断・予後マーカー血中の糖鎖異常IgA1(galactose-deficient IgA1)やそれに対する自己抗体、補体関連マーカーなどがIgA腎症に特異的なバイオマーカー候補として研究されているが、現時点では診断や治療選択に用いる標準検査としては確立していない。国際IgAN予測ツールや病理MEST-Cスコアを活用したリスク層別化が進み、今後は個々の患者に応じた治療強度の決定に応用されることが期待される。■ 新規治療薬近年、IgA腎症の病態(粘膜免疫・補体・腎保護)を標的とした新規薬剤の開発が急速に進んでいる。標的放出型ブデソニド(Nefecon):回腸末端の腸管関連リンパ組織に到達するよう設計された経口ステロイドで、病的IgA1産生の抑制を目的とする。海外第III相試験では蛋白尿減少とeGFR低下抑制が示され、欧米などで承認されているが、わが国ではまだ使用できない。デュアルET-A/AT1受容体拮抗薬(sparsentan):ARB作用に加えエンドセリン受容体拮抗作用を併せ持ち、蛋白尿減少とeGFRスロープ改善を示している。補体阻害薬:経口補体因子B阻害薬iptacopanをはじめ、C5、C3、レクチン経路などを標的とした薬剤がIgA腎症で検証されており、一部は海外で承認されつつある。B細胞/BAFF・APRIL経路阻害薬:自己抗体産生抑制を目的としたataciceptや他の抗BAFF/APRIL抗体が臨床試験段階にある。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、「病的IgA産生と免疫複合体形成を抑える治療」と「すでに生じたネフロン喪失に伴うCKDの進行を抑える治療」を並行して行う2本立ての治療戦略が提案されている。わが国でも、支持療法にSGLT2阻害薬などを組み合わせつつ、新規薬剤が順次導入されれば、より早期から蛋白尿を強力に抑え、長期腎予後のさらなる改善が期待される。5 主たる診療科腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター IgA腎症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難病治験ウェブ(難病に関する治験情報を簡単検索、医療従事者向けのまとまった情報)1)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性腎障害に関する調査研究班 編集. エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン 2020. 2020:東京医学社.2)厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業:進行性腎障害に関する調査研究班報告 IgA腎症分科会 IgA診療指針-第3版-補追 IgA腎症組織アトラス.日腎会誌. 2011;53:655-666.3)KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Management of Immunoglobulin A Nephropathy (IgAN) and Immunoglobulin A Vasculitis (IgAV).公開履歴初回2026年2月27日

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テゼペルマブ、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の適応追加/AZ

 アストラゼネカは2026年2月19日、テゼペルマブ(商品名:テゼスパイア)について「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)」に対する適応追加の承認を取得したことを発表した。 本承認は、既存治療で効果不十分な18歳以上の鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「WAYPOINT試験」の結果に基づくものである。WAYPOINT試験では、共主要評価項目の鼻茸スコア(NPS)と鼻閉重症度スコア(NCS)が、いずれも有意に改善したことが報告されている。なお、NPSは投与4週時、NCSは投与2週時から改善が認められ、投与52週時まで改善が維持された。 電子化された添付文書の「効能又は効果」「効能又は効果に関連する注意」「用法及び用量」「用法及び用量に関連する注意」「重要な基本的注意」の改訂箇所の記載は、以下のとおり(下線部が追記または変更箇所)。4. 効能又は効果○気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)○鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)5. 効能又は効果に関連する注意〈気管支喘息〉5.1 最新のガイドライン等を参考に、中用量又は高用量の吸入ステロイド薬とその他の長期管理薬を併用しても、全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪をきたす患者に本剤を追加して投与すること。5.2 本剤は既に起きている気管支喘息の発作や症状を速やかに軽減する薬剤ではないため、急性の発作に対しては使用しないこと。〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉5.3 本剤は全身性ステロイド薬、手術等ではコントロールが不十分な患者に用いること。6. 用法及び用量〈気管支喘息〉通常、成人及び12歳以上の小児にはテゼペルマブ(遺伝子組換え)として1回210mgを4週間隔で皮下に注射する。〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉通常、成人にはテゼペルマブ(遺伝子組換え)として1回210mgを4週間隔で皮下に注射する。7. 用法及び用量に関連する注意〈鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎〉本剤による治療反応は、通常投与開始から24週までには得られる。24週までに治療反応が得られない場合は、漫然と投与を続けないよう注意すること。8. 重要な基本的注意〈効能共通〉8.1 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。8.2 本剤の投与によって合併する他のアレルギー疾患の症状が変化する可能性があり、当該アレルギー疾患に対する適切な治療を怠った場合、症状が急激に悪化し、喘息等では死亡に至るおそれもある。本剤の投与中止後の疾患管理も含めて、本剤投与中から、合併するアレルギー疾患を担当する医師と適切に連携すること。患者に対して、医師の指示なく、それらの疾患に対する治療内容を変更しないよう指導すること。8.3 本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督のもとで投与を行うこと。自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施した後、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。自己投与の適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させ、医師の管理のもとで慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。また、本剤投与後に副作用の発現が疑われる場合は、医療施設へ連絡するよう患者に指導を行うこと。使用済みの注射器を再使用しないように患者に注意を促し、すべての器具の安全な廃棄方法に関する指導を行うと同時に、使用済みの注射器を廃棄する容器を提供すること。〈気管支喘息〉8.4 本剤の投与開始後に喘息症状がコントロール不良であったり、悪化した場合には、医師の診療を受けるように患者に指導すること。

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リツキサン、自己免疫性溶血性貧血の適応追加/全薬工業・中外

 全薬工業および中外製薬は、共同販売を行っている抗CD20モノクローナル抗体のリツキサン点滴静注100mg/同500mg(一般名:リツキシマブ(遺伝子組換え))について、2026年2月19日、「自己免疫性溶血性貧血」の適応追加の承認を取得したことを発表した。 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)に対する適応追加は、日本血液学会および日本小児血液・がん学会より開発要望が提出され、2025年7月4日の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議の評価を経て、同年7月31日の薬事審議会医薬品第一部会で公知申請を行って差し支えないと正式に決定された。これを受け、全薬工業が同年8月29日に公知申請を行い、今回の承認取得に至った。なお、第一部会で決定された7月31日付けで薬事承認を待たずに保険適用となっている。 AIHAは、自己抗体が体温(37℃)近くで反応する温式AIHAと、体温以下の低温条件で反応する冷式AIHA(寒冷凝集素症および発作性寒冷ヘモグロビン尿症)に大別される。温式AIHAでは約80%で副腎皮質ステロイド薬で改善がみられるが、再発が多く、長期投与が必要であり、再発・難治例では脾臓摘出術が行われている。また、寒冷凝集素症では保温が最も基本的な治療法だが、貧血症状、輸血依存、末梢循環障害などの重篤な症状を伴う場合もある。これらの患者に対する治療選択肢の1つとして、国内外の診療ガイドラインではリツキシマブによる治療が推奨されている。 リツキシマブは、造血幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するCD20抗原に特異的に結合する抗CD20モノクローナル抗体で、標的となるB細胞を免疫系を用いて攻撃し細胞を傷害する。AIHAでの自己反応性B細胞の活性化や自己抗体の出現に至る病因は十分に解明されていないが、温式AIHAおよび冷式AIHAのいずれも自己抗体の出現が共通して認められることから、リツキシマブによるB細胞除去を介した治療効果が期待されるという。

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