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1.

アトピー性皮膚炎治療薬のネモリズマブがかゆみを迅速に軽減

 最近承認された注射型のアトピー性皮膚炎(AD)治療薬ネモリズマブ(商品名Nemluvio)が、悩ましいこの疾患に苦しむ患者に迅速なかゆみの緩和をもたらすことが、新たな研究で示された。スイスの製薬会社であるガルデルマ社の研究者らの報告によると、治療開始からわずか2日でかゆみが軽減した患者の割合は、ネモリズマブを投与された群でプラセボを投与された群の3倍以上に上ることが示された。さらに、ネモリズマブ群では睡眠も改善した。ガルデルマ社治療用皮膚科学プログラム責任者であるChristophe Piketty氏らによるこの研究結果は、「Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology」に12月16日掲載された。 Piketty氏は、「今回の結果は、ネモリズマブがかゆみを迅速に軽減し、結果としてADや結節性痒疹(PN)患者の睡眠改善にもつながるという理解を強化するものだ」とニュースリリースで述べている。ガルデルマ社はネモリズマブの開発企業であり、本研究への資金提供も行っている。 米食品医薬品局(FDA)は2024年に、中等症〜重症のADおよびPNの治療薬としてネモリズマブを承認した。ADは、免疫系の異常によりアレルゲンや刺激物に対する皮膚の防御機能が低下することで発症する。モノクローナル抗体であるネモリズマブは、かゆみやその他のADの症状の原因となるサイトカインのIL-31が受容体に結合するのを阻害し、かゆみのシグナル伝達を遮断する。 この研究では、FDAが承認の根拠とした4件の臨床試験のデータの事後解析を実施し、投与初期(最初の14日間)のかゆみの改善について評価した。解析対象は、AD患者1,728人(ARCADIA1、2試験)とPN患者560人(OLYMPIA1、2試験)であった。対象者は毎日かゆみと睡眠障害の強さを自己報告した。かゆみはpeak pruritus numerical rating scale(PP-NRS)で、睡眠はsleep disturbance numerical rating scale(SD-NRS)で評価し、スコアがベースラインから4点以上低下した場合を改善と見なした。 その結果、投与2日目にPP-NRSに改善が認められたAD患者の割合は、ネモリズマブ群で10.7%であったのに対し、プラセボ群では2.9%にとどまっていた。同様に、投与2日目に改善が認められたPN患者の割合はそれぞれ17.2%と3.7%であった。SD-NRSに改善が認められた割合についても、AD患者ではネモリズマブ群9.9%、プラセボ群4.6%、PN患者ではそれぞれ13.4%と4.3%であり、ネモリズマブ群で有意な改善が見られた。さらに、投与14日目にPP-NRSに改善が認められたAD患者の割合は、ネモリズマブ群で25.5%、プラセボ群で8.9%、PN患者の割合は37.0%と10.2%であり、群間差は投与14日目まで拡大していた。 研究グループは、「かゆみは中等症〜重症のADおよびPN患者が最も苦痛に感じる症状であり、かゆみの迅速な改善は重要な治療目標だ」と指摘している。また、「かゆみを迅速に軽減し、疾患の重症度や患者の生活の質(QOL)に臨床的に有意な改善をもたらす治療法は、ADおよびPNの現在の治療選択肢において重要だ」と述べている。

2.

炭酸脱水酵素阻害薬は睡眠時無呼吸症候群を改善(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

本邦における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の疫学と治療の現状 本邦における閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA:Obstructive Sleep Apnea)の人口当たりの発症頻度は男性で3~7%(40~60代に多発)、女性で2~5%(閉経後に多発)と報告されており、男女合わせて500万例以上、総人口の約4%にOSA患者が存在すると考えられている。本邦における成人OSAに対する有効な治療法としては経鼻/経口の持続陽圧呼吸(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)が中心的位置を占める。CPAP不適あるいは不認容の非肥満(BMI<30kg/m2)患者に対する植込み型舌下神経(XII神経)電気刺激も有効な方法である。その他、比較的軽症のOSA患者に対するマウスピースや特殊な原因に対する耳鼻科的・口腔外科的手術/処置が有効な場合もある。いずれにしろ、OSA患者に施行されている治療はCPAPに代表される機械的治療が中心であり、現在のところ、有効性が確認され、かつ、保険適用を受けた薬物治療は存在しない。 本邦におけるOSA患者に対するCPAPの導入率はCPAP必要患者の15%前後と低く、米国の70%を大きく下回っている。その意味で、本邦におけるOSA患者に対する治療は不十分であり、OSAを“扇の要”として関連する種々の疾患(病的肥満、糖尿病、治療抵抗性高血圧、冠動脈疾患、心房細動、心不全、脳卒中、大動脈解離、認知症など)の管理に少なからず影響を与えている(OSAを頂点とするMetabolic Domino現象)。さらに、OSA患者では明確な機序不明であるがメラノーマ、腎臓がん、膵臓がんなどの悪性腫瘍の発生率が高いことも注意すべき事項の1つである。以上の諸点を鑑みると、今回論評の対象としたRanderath氏らの論文で明らかにされた内服の炭酸脱水酵素(CA:Carbonic Anhydrase)阻害薬のOSA抑制効果は近未来のOSAに対する治療を質的に変化させる可能性がある。抗糖尿病薬GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(商品名:マンジャロ)もOSAを改善することが報告されている(Malhotra A, et al. N Engl J Med. 2024;391:1193-1205.)。しかしながら、チルゼパチドは、あくまでも肥満の軽減を介して2次的に無呼吸頻度を低下させるものであり、OSA自体を1次的に改善させるものではない。それ故、チルゼパチドは今回の論評には含めない。 睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)には中枢性のもの(CSA:Central Sleep Apnea)も存在するが、その頻度はOSAに比べ有意に低いこと(SAS全体の10%以下)、発症機序に不明な点が多いことなどから本論評においては詳細な評価を割愛した。炭酸脱水酵素(CA)と睡眠時無呼吸の関係 CAは生体細胞に広く分布し、細胞内代謝の結果として産生されるCO2とH2Oとの反応を触媒しH2CO3を産生する。H2CO3はH+とHCO3ーに自然解離し、HCO3ーはクロライド・シフトを介して細胞外に排出、H+は細胞内の蛋白に吸着され細胞内pHは一定に維持される(生理的pH下ではγ-グロブリン以外の蛋白は陰イオンとして存在しH+と結合)。生体には臓器特異的に15~16種類に及ぶCAのアイソザイムが存在することが報告されており、各臓器において細胞内pHの恒常性維持に寄与している。このような細胞内環境下でCAの活性を阻害すると、細胞内でのCO2処理が遅延し細胞内CO2濃度が上昇、細胞内アシドーシスが招来される。その結果として、脳幹部(延髄、橋)に局在する呼吸中枢神経群(延髄表層に存在するCO2感受性の中枢化学受容体を含む)のCO2感受性が亢進し、換気応答が活性化される。さらに、細胞内アシドーシスは咽頭/喉頭に存在する上気道筋群の筋緊張を維持する。以上の機序を介して、CAの阻害は睡眠時の閉塞性無呼吸の発生を1次的に抑制するとされているが、これ以外の未知の機序が関係する可能性も指摘されている。CA阻害薬の分類と臨床 臨床的に使用可能なCA阻害薬には点眼薬と内服薬の2種類が存在する。点眼薬(商品名:ドルゾラミド、ブリンゾラミドなど)は主として眼圧低下と緑内障治療薬として使用される。内服薬のうち1954年に緑内障治療薬としてFDAに承認された歴史的薬剤であるアセタゾラミド(商品名:ダイアモックス)は静注薬としても使用可能であり、緑内障以外にてんかん、メニエール病、急性高山病、尿路結石症の発作予防など幅広い保険適用を獲得している。最近認可された内服CA阻害薬として本論評の対象としたスルチアム(商品名:オスポロット)が存在するが、スルチアムは、本邦においては精神運動発作(てんかん)のみに使用が限定されている。CA阻害薬のOSAに対する治療効果-大規模研究の結果 SAS(OSA、CSA)発症にかかわる重要な因子としてCAが関与する化学反応が長年注目されてきたが確証が得られるには至らなかった。しかしながら、2020年、Christopher氏らはアセタゾラミド内服薬のSAS抑制効果に関して28研究(OSA:13研究、CSA:15研究)を基にメタ解析を施行した(Schmickl CN, et al. Chest. 2020;158:2632-2645.)。彼らの解析結果によると、アセタゾラミド内服(36~1,000mg/日)によってSAS患者の無呼吸/低呼吸指数(AHI:Apnea-Hypopnea Index)が37.7%(絶対値として13.8/時)低下すること、さらには、AHIの低下はOSA患者とCSA患者でほぼ同等であることが示された。アセタゾラミドによる無呼吸抑制効果は投与量依存性を示し、薬剤量が高いほど顕著であった。Christopher氏らの解析結果は、アセタゾラミドの内服がOSAのみならずCSAの治療にも有効である可能性を示している。 本論評の対象としたRanderath氏らの論文は、OSAに対するCA阻害薬スルチアムの効果を解析した第II相二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定試験(FLOW試験)の結果を報告した(欧州5ヵ国、28病院における治験)。対象は未治療、中等症以上のOSA患者298例で、プラセボ群(75例)、スルチアム100mg群(74例)、同200mg群(74例)、同300mg群(75例)の4群に振り分けられた。観察期間は、薬物投与量が一定になってから12週間(薬剤投与開始から15週間)と設定された。スルチアムの1日1回就寝前投与は、AHI、夜間低酸素血症、日中の傾眠傾向(Epworth Sleepiness Scaleによる評価)などOSAに付随する重要な症状を用量依存的に改善した。スルチアム投与によって重篤な有害事象は認められなかったが、知覚異常を中心とする中等症以下の多彩な有害事象が発生した。“治療効果と副反応”の比はスルチアム200mgの連日投与で最も高く、この用量がOSA治療に最も適していると結論された。 以上のように、OSA治療におけるCA阻害薬の有効性が実証されつつあり、本邦においてもCPAPにかわる新たな治療法としてCA阻害薬の内服治療の有効性を検証する臨床治験が早急に実施されることを期待するものである。この問題に関連して、2025年4月、本邦の塩野義製薬は米国Apnimed社と合弁会社を設立し(Shionogi-Apnimed Sleep Science)、睡眠時無呼吸症候群に対するスルチアムを含めた新たな薬物治療戦略を世界レベルで開始しており、今後の動向が注目される。

3.

診療科別2025年下半期注目論文5選(循環器内科編)

Transcatheter or Surgical Aortic-Valve Replacement in Low-Risk Patients at 7 YearsLeon MB, et al. N Engl J Med. 2025 Oct 27. [Epub ahead of print]<PARTNER 3試験>:TAVI vs.外科的弁置換、低手術リスクの大動脈弁狭窄症の7年追跡結果重症の大動脈弁狭窄症を持つ低手術リスク患者に対して、従来の外科手術とカテーテルを使ったTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)を比較した研究。TAVIは手術と同等の安全性と有効性を示し、回復が早く入院期間も短いことが確認されました。長期的にも弁の機能や耐久性に差はなく、低リスク患者においてTAVIが有力な選択肢となることを示しました。TAVIの適応拡大が加速するものと思われます。Antithrombotic Therapy after Successful Catheter Ablation for Atrial FibrillationVerma A, et al. N Engl J Med. 2025 Nov 8. [Epub ahead of print]<OCEAN試験>:アブレーション後の抗血栓薬は減弱化するか心房細動カテーテルアブレーションの成功から1年以上経過し、再発なしの患者を対象に、DOACであるリバーロキサバンと低用量アスピリンを比較しています。3年間の追跡の結果、脳梗塞や無症候性の新規虚血性病変の発生率は両群で同等で、リバーロキサバン群は出血リスクが高い傾向でした。アブレーション成功例では術後に抗凝固薬から抗血小板薬へ切り替える選択肢の妥当性を示し、現行ガイドラインの見直しにつながる可能性があります。Aficamten or Metoprolol Monotherapy for Obstructive Hypertrophic CardiomyopathyGarcia-Pavia P, et al. N Engl J Med. 2025;393:949-960.<MAPLE-HCM試験>:症候性の閉塞性肥大型心筋症に新薬aficamten登場有症候の閉塞性肥大型心筋症患者を対象に、aficamten(心筋ミオシン阻害薬)とβ遮断薬メトプロロールとを比較しています。aficamten群では、運動能力や息切れなど生活の質が改善し、心臓の負担も軽減されました。重篤な有害事象の発現に差はなく、安全性も良好でした。臨床的には1次治療として使用する新たな戦略の可能性を示し、今後ガイドラインへの影響も予想されます。Evolocumab in Patients without a Previous Myocardial Infarction or StrokeBohula EA, et al. N Engl J Med. 2025 Nov 8. [Epub ahead of print]<VESALIUS-CV試験>:PCSK9阻害薬エボロクマブによる1次予防の可能性心筋梗塞や脳卒中の既往がない動脈硬化や糖尿病のある患者を対象に、標準的な脂質治療に加えてPCSK9阻害薬であるエボロクマブとプラセボを比較。エボロクマブは重篤な心血管イベントの発生を統計学的有意に減少させました。一方、安全性に関しては懸念される問題はとくにありませんでした。これまで2次予防を対象としていたPCSK9阻害薬が、1次予防への選択拡大の可能性という臨床的意義を持ちます。Nationwide Trends in Coronary Revascularization in Japan, 2017 to 2023: From Decline to PlateauKohsaka S, et al. J Am Coll Cardiol. 2025;86:2391-2394.<J-PCIレジストリ・JCVSDデータ解析>:日本のPCI・CABG数の動向、エビデンスが必ずしも迅速に実臨床へ反映されず2017~23年の日本における安定冠動脈疾患に対する冠血行再建(PCI・CABG)の全国的動向をJ-PCIおよびJCVSDデータから解析。2017年以降減少傾向でしたが、2020年第3四半期から減少傾向が頭打ちに。この転換点は、エビデンスに基づく医療への移行よりも、臨床的慣性とCOVID-19後の診療回復が作用したと考えられます。エビデンス(ISCHEMIA試験)やガイドライン改訂が必ずしも迅速に実臨床へ反映されないことを示唆しています。

4.

規則正しい就寝習慣が血圧に驚くべき効果

 毎晩、同じ時刻に就寝することで血圧を改善できる可能性のあることが、新たな研究で示された。就寝時間が不規則な人が、毎晩同じ時間に就寝することを2週間続けただけで、運動量の増加や塩分摂取量の削減と同等の降圧効果を得ることができたという。米オレゴン健康科学大学(OHSU)産業保健学准教授のSaurabh Thosar氏らによるこの研究結果は、「Sleep Advances」に11月17日掲載された。研究グループは、「これは、多くの高血圧患者の血圧をコントロールするための、単純だがリスクの低い補助的な戦略になるかもしれない」と述べている。 この研究では、高血圧を有する11人の成人(男性4人、平均年齢53歳)を対象に、まずベースラインとして、1週間にわたり活動量計で就寝時間や睡眠パターンを記録するとともに、24時間の自由行動下血圧を測定した。次に、試験参加者には2週間にわたり同じ時刻に就寝してもらい、その後、再度、24時間自由行動下血圧を測定した。その上で、就寝時間や入眠時間のばらつき(標準偏差)を計算し、血圧の「最小可検変化量(MDC95)」を使って個人レベルで血圧がどのくらい変化したかを確認した。 その結果、就寝時間のばらつきは介入前の32.4(±17)分から介入後には7(±10)分へ(P=0.001)、入眠時間のばらつきも30(±17)分から7(±8)分へ(P=0.011)有意に減少した。また、24時間自由行動下血圧も、収縮期血圧で−4(±4)mmHg、拡張期血圧で−3(±3)mmHgの低下が見られた。特に夜間の血圧は低下の幅が大きく、収縮期血圧は−5(±7)mmHg、拡張期血圧は−4(±5)mmHg低下した(全てP<0.05)。さらに、参加者の半数以上が24時間自由行動下血圧でMDC95以上の低下を示した。 研究グループは、収縮期血圧が5mmHg低下するだけで心血管疾患のリスクが10%低下することは、すでに専門家の間で周知の事実だと指摘している。一方、毎日の就寝時間が不規則であることは心臓の健康状態の悪化につながり得ることも、以前から知られているという。実際、ある先行研究では、不規則な就寝時間は高血圧のリスクを30%高める可能性があることが示されている。研究グループによると、不規則な就寝時間が血圧に影響を及ぼすのは、体内リズム(概日リズム)の乱れによるものと考えられる。通常、睡眠中は血圧が自然に少し低下するが、体内時計の乱れがその反応を弱める可能性があるという。 ただし、今回の研究はわずか11人を対象としたものであったことから、研究グループは、「この研究結果がより大規模な前向き試験で再現されれば、人々に規則正しい就寝時間を守ってもらう取り組みは、心臓血管疾患のリスクを減らすための低コストで拡張性の高い介入になる可能性がある」と述べている。

5.

SGLT2阻害薬の投与により自己免疫性リウマチ性疾患の発症が抑制される?(解説:住谷哲氏)

 糖尿病合併症に慢性炎症が深く関与していることはよく知られている。そこで、慢性炎症を抑制する作用のある血糖降下薬があれば、それを選択するのが合併症予防のためには有用と考えられる。SGLT2阻害薬が糖尿病合併症である腎症や心不全の予後を改善することは現在ではほぼ確立しているが、その想定されているメカニズムの1つにSGLT2阻害薬の抗炎症作用がある1)。慢性炎症の持続が自己免疫性リウマチ性疾患の発症につながるのかは不明であるが、著者らはSGLT2阻害薬の抗炎症作用に着目して、SGLT2阻害薬の投与が自己免疫性リウマチ性疾患の発症抑制と関連するか否かをSU薬を対照として検討した。 韓国の医療データベースを用いた後方視的コホート研究であり、ICD-10のコーディングで自己免疫性リウマチ性疾患に含まれたのは、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、乾癬性関節炎(psoriatic arthritis)、脊椎関節炎(spondyloarthritis)、SLE、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、全身性硬化症(systemic sclerosis)、リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica)、混合性結合組織病(mixed connective tissue disease)、皮膚筋炎/多発筋炎(dermatomyositis/polymyositis)、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa)である。結果は、SGLT2阻害薬の投与はSU薬の投与と比較して自己免疫性リウマチ性疾患発症の減少と関連しており、そのハザード比は0.89(95%信頼区間:0.81~0.98)であった。有意な減少ではあるが、絶対数でみると100,000人・年当たりの発症がSU薬58.41人からSGLT2阻害薬51.90人と6.50人の減少である。 自己免疫性リウマチ性疾患の発症率そのものが低いので、結果は有意な減少であるが臨床的に意味のある数字とは思われない。したがって、血糖降下薬を選択する際に自己免疫性リウマチ性疾患の発症を抑制する目的で、SU薬ではなくSGLT2阻害薬を選択する正当性はないだろう。むしろ著者らがDiscussionで述べているように、自己免疫性リウマチ性疾患を合併する2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の免疫調節作用の有用性を検討する方向の研究が進むことを期待したい。

6.

全身型重症筋無力症と多発根神経炎患者の自己注射が容易に/アルジェニクス

 アルジェニクスジャパンは、2025年12月15日、全身型重症筋無力症(gMG)と慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)を適応疾患とする抗FcRn抗体フラグメント・ヒアルロン酸分解酵素配合製剤「ヒフデュラ配合皮下注シリンジ」を発売した。本製剤は、エフガルチギモド アルファ[遺伝子組換え]・ボルヒアルロニダーゼ アルファ[遺伝子組換え](商品名:ヒフデュラ)を含有したプレフィルドシリンジ製剤。 gMGは、IgG自己抗体が神経と筋肉の間の伝達を妨害することで、消耗性で生命を脅かす可能性のある筋力低下を引き起こすまれな慢性自己免疫疾患。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、とくに眼瞼下垂、複視などの眼の症状を起こしやすい。重症化すると呼吸筋の麻痺を来し、呼吸困難になることもある。 CIDPは、四肢筋力低下と感覚障害を主な特徴とする免疫介在性脱髄性末梢神経障害。発症・病態機序は、まだ十分解明されていない。長期間にわたり再発と寛解を繰り返し、患者の運動機能や日常生活動作に支障を来し、QOLの低下や就業への影響などさまざまな負担をもたらす。 本剤では薬液があらかじめシリンジに充填されていることで、患者の利便性の向上や医療従事者および介護者の負担が軽減されることが期待されている。<製品概要>一般名:エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)製品名:ヒフデュラ配合皮下注シリンジ効能または効果:・全身型重症筋無力症(ステロイド剤またはステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)・慢性炎症性脱髄性多発根神経炎用法および用量:〔全身型重症筋無力症〕 通常、成人には本剤1回5.0mL(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,000mgおよびボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として10,000単位)を1週間間隔で4回皮下投与する。これを1サイクルとして、投与を繰り返す。〔慢性炎症性脱髄性多発根神経炎〕 通常、成人には本剤1回5.0mL(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,000mgおよびボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として10,000単位)を週1回皮下投与する。製造販売承認取得日:2025年9月19日薬価収載日:2025年11月12日発売日:2025年12月15日薬価:66万5,026円(5.0mL 1筒)製造販売元:アルジェニクスジャパン株式会社

7.

胃食道逆流症が耳疾患と関連か

 胃食道逆流症(GERD)は、耳鳴り、メニエール病、前庭機能障害、感音難聴のリスク上昇と関連する可能性があるという研究結果が、「Journal of Multidisciplinary Healthcare」に8月20日掲載された。 河北中医薬大学(中国)のWen Zhao氏らは、ヨーロッパ系集団のゲノムワイド関連解析データを用いて、GERDおよびバレット食道(BE)と耳疾患との関連を検討した。3つのメンデルランダム化法を適用し、因果推定は逆分散加重法を用いて算出した。 解析の結果、遺伝学的に予測されたGERDが耳疾患に影響を及ぼす可能性が示された。GERDは、メニエール病(オッズ比1.334)、感音難聴(同1.127)、前庭機能障害(同1.178)、持続性の耳鳴り(同1.019)、ほとんど常時ある耳鳴り(同1.007)、時折ある耳鳴り(同1.014)と関連していた。GERDの程度が高い場合、これらの耳疾患リスクが上昇した。耳鳴りを経験したことのない人では、GERDの程度が高いほど、耳鳴りを全く経験しない可能性が低下した(同0.939)。一方、GERDと中耳炎との間には因果的関連は認められなかった。また、BEと耳疾患リスクとの間にも因果的関連は認められなかった。 著者らは、「メンデルランダム化解析により、GERDがメニエール病、感音難聴、前庭機能障害、耳鳴りのリスクを上昇させる可能性があることが示された。本研究結果は、これらの疾患の予防に貴重な知見を提供し得る」と述べている。

8.

成人期発症の再発型ネフローゼ症候群に対する抗CD20抗体の治療効果(解説:浦信行氏)

 成人におけるネフローゼ症候群の頻度は膜性腎症(MN)が多いが、微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)や巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)も少なくない。これらはステロイド療法に効果を示す一方で、頻回再発型ネフローゼ症候群(FRNS)やステロイド減量で再燃するステロイド依存性ネフローゼ症候群(SDNS)を呈することが多い。その結果、ステロイド使用期間が長期化し、骨脆弱性や感染症などの合併症を来しやすい。 CD20はB細胞の表面に存在するタンパク質で、B細胞の活性化や増殖に関与する細胞表面マーカーである。この病態に対する治療的アプローチとして、タイプI抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブ(RTX)の治療効果が検討されるようになった。現在まで活動性ループス腎炎(LN)やMNで有効性が検討されている。活動性LNは全身性エリテマトーデス(SLE)の中でも重症病態の1つであり、LN患者の約20%が15年以内に末期腎不全に至る。しかし、LNの臨床試験においてその評価は無効・有効とする報告が相半ばする。MNに関してはシクロスポリンとの比較試験(MENTOR試験)が報告されており、RTXは有意に寛解率が高値であったが、それでも部分寛解も含めて60%にとどまる。 このたびは、成人におけるFRNSとSDNSを対象とした、わが国での多施設共同研究の結果がJAMA誌オンライン版として2025年11月5日号に掲載され、その概要が11月21日配信のジャーナル四天王に掲載された。RTX群36例と対照群36例の小規模試験で、投与のタイミングは1、2、25週の3回である。解析対象は66例にとどまり、組織診断では両群のMCNS+FSGSが各々93%と94%と多数を占めたが、49週での無再発率はRTX群で87.4%と良好な結果を示した。副作用は開始後30~120分の輸液反応が主体で、RTXによる直接の作用とは考え難いが、劇症肝炎や無顆粒球症などの重篤な副作用の報告があり、慎重な経過観察が望まれる。今後必要な検討はより多数例で長期の試験であるが、望ましい投与のタイミングや投与量の検討も治療効果を高めるため必須である。

9.

日本人不眠症患者におけるレンボレキサント切り替え後のベネフィット評価

 デュアルオレキシン受容体拮抗薬であるレンボレキサントは、成人の不眠症治療薬として日本で承認されている。久留米大学の小曽根 基裕氏らは、多施設共同SOMNUS試験のデータを用いて、日本人不眠症患者における前治療からレンボレキサントへ切り替え後の睡眠日誌に基づく睡眠パラメーター、自己申告による睡眠の質、不眠症の重症度、健康関連の生活の質(QOL)について報告を行った。Sleep Medicine X誌2025年9月25日号の報告。 SOMNUS試験は、プロスペクティブ多施設共同非盲検試験である。本試験のデータより抽出した、Z薬(単剤療法コホート:25例)、スボレキサント(単剤療法コホート:25例、併用コホート:21例)、ラメルテオン(併用コホート:19例)からレンボレキサントに切り替えた4つのコホートにまたがる90例の患者を対象に、最大14週間までのデータを解析した。 主な結果は以下のとおり。・すべての患者において、レンボレキサントへの切り替え後、睡眠日誌に基づく睡眠パラメーター(主観的入眠潜時、主観的入眠後覚醒時間、主観的総睡眠時間、主観的睡眠効率)の有意な改善が認められた。・2週、6週、14週時点において、不眠症重症度指数(Insomnia Severity Index)の合計スコアの有意な低下が認められた(2週目:-2.6±3.81、6週目:-4.4±5.13、14週目:-5.3±4.80、各々:p<0.0001)。・自己申告による睡眠の質と朝の覚醒度も、すべての時点で一貫しており、有意な改善を示した。・Short Form-8の身体項目サマリースコアと精神項目サマリースコアは良好な傾向を示し、試験終了時までにすべての患者において顕著な改善が認められた。・治療関連有害事象(TEAE)の発生率は47.8%であり、そのほとんどは軽度または中等度であった。・重篤なTEAEは発現せず、最も多く認められたTEAEは傾眠であった。 著者らは「これらの知見は、以前の不眠症治療からレンボレキサントへの切り替えが、睡眠パラメーター、不眠症の重症度、健康関連のQOLの改善に有用であり、良好な安全性プロファイルを有することを示唆している」と結論付けている。

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睡眠障害のタイプ別、推奨される不眠症治療薬

 不眠症治療には、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)、ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)、Z薬、メラトニン受容体作動薬などの薬剤が用いられるが、これらの薬剤の有効性と安全性に関する包括的な比較は、依然として十分に行われていない。中国・長春中医薬大学のHui Liu氏らは、不眠症治療薬の有効性と安全性のプロファイルを調査し、特定の交絡因子を調整して得られた「time window」に基づき、不眠症のタイプに応じた臨床アルゴリズムを確立するため、本研究を実施した。Sleep Medicine誌オンライン版2025年10月10日号の報告。 2025年4月15日までに公表された関連するランダム化比較試験(RCT)を、PubMed、Embase、Scopus、Cochrane Library、Web of Science、ClinicalTrials.govより検索した。中途覚醒時間(WASO)、持続睡眠潜時(LPS)、総睡眠時間(TST)、睡眠効率(SE)などの連続変量について、フォローアップ期間と年齢で調整したベイジアンネットワークメタ回帰(NMR)分析によるペアワイズ比較を行い、RStudio 4.4.2を用いて標準平均差(SMD)を算出した。ファーマコビジランス(PV)は米国食品医薬品局の有害事象報告システム(FAERS)データベースを活用して調査し、二値変数および順序変数についてペアワイズ比較を行い、STATA 18.0 MPを用いて、オッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・最終解析には、10種類の治療法を評価した合計15件(2,408例)の研究を含めた。・WASOに関して、プラセボ群と比較して、有意に優れていた薬剤は次のとおりであった。【dimdazenil:2.5mg/日】SMD=-0.388、95%信頼区間(CI):-0.608~-0.166【レンボレキサント:10mg/日】SMD=-0.624、95%CI:-0.894~-0.355【レンボレキサント:5mg/日】SMD=-0.612、95%CI:-0.88~-0.342【ダリドレキサント:25mg/日】SMD=-0.957、95%CI:-1.436~-0.479【メラトニン:6mg/日】SMD=-0.741、95%CI:-1.423~-0.044【ゾルピデム:10mg/日】SMD=-0.348、95%CI:-0.61~-0.068【doxepin:3mg/日】SMD=-0.497、95%CI:-0.713~-0.282・これらの治療法の中で、レンボレキサント10mg/日、レンボレキサント5mg/日、ダリドレキサント25mg/日、メラトニン6mg/日、doxepin 3mg/日は同等の効果を示した。・しかし、dimdazenil 2.5mg/日(SMD=0.568、95%CI:0.046~1.096)およびゾルピデム10mg/日(SMD=0.608、95%CI:0.074~1.171)は、ダリドレキサント25mg/日よりも有意に劣っていた。・フォローアップ期間で調整後においても、メラトニン6mg/日(SMD=-0.727、95%CI:-1.48~0.01)のプラセボに対する有意な優位性が失われたことを除いて、未調整解析の結果と同様であった。・しかし、メラトニン6mg/日は、10~40週目にかけて対照群と比較し、有意な優位性を示す「time window」を示した。・年齢で調整後、dimdazenil 2.5mg/日(SMD=-0.355、95%CI:-0.652~-0.1)、レンボレキサント10mg/日(SMD=-0.508、95%CI:-0.9~-0.114)、ゾルピデム10mg/日(SMD=-0.526、95%CI:-0.84~-0.158)はプラセボに対して有意な優位性を示した。・安全性に関して、神経系障害は、スボレキサント(IC025=0.212、95%CI:1.214~1.334)、レンボレキサント(IC025=0.221、95%CI:1.236~1.567)、ダリドレキサント(IC025=0.205、95%CI:1.21~1.427)、doxepin(IC025=0.066、95%CI:1.091~1.411)で安全性のシグナルが検出された。・呼吸困難については、エスゾピクロン(OR:0.556~0.669)は、ダリドレキサント、メラトニン、ゾルピデムよりも有意に低かった。一方、メラトニン(OR=1.568、95%CI:1.192~2.061、p=0.001)およびゾルピデム(OR=1.302、95%CI:1.026~1.653、p=0.03)は、スボレキサントよりも有意に高かった。・ダリドレキサントによる重度の呼吸困難の患者の割合(OR=0.256、95%CI:0.096~0.678、p=0.006)は、スボレキサントおよびレンボレキサントよりも有意に低かった。・有害事象の転帰については、zaleplon(OR=9.888、95%CI:1.124~86.944、p=0.039)は、ダリドレキサントよりも重度の呼吸困難に対する影響が有意に高かった。 著者らは「不眠症の薬剤選択は、不眠症のタイプと薬剤の安全性に基づいて行うべきである」とし、「総合的に有効性のエフェクトサイズ、time window(フォローアップ期間、年齢、不眠症のタイプ)、PV値、重篤な有害事象の発生率などを考慮すると、中途覚醒および睡眠不足を特徴とする不眠症には、ダリドレキサント25mg/日、入眠障害には、レンボレキサント10mg/日またはゾルピデム10mg/日、全体的な睡眠効率の低下には、レンボレキサントの使用が推奨される」としている。これらの知見を検証するためには、さらなる直接比較臨床試験が必要とされるとまとめている。

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閉塞性睡眠時無呼吸症候群、就寝前スルチアムが有望/Lancet

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は有病率が非常に高いが、承認された薬物治療の選択肢はいまだ確立されていない。ドイツ・ケルン大学のWinfried Randerath氏らFLOW study investigatorsは、炭酸脱水酵素阻害薬スルチアムについて有効性と安全性を評価した第II相の二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定試験「FLOW試験」を実施。スルチアムの1日1回就寝前経口投与は、OSAの重症度を用量依存性に軽減するとともに、夜間低酸素や日中の過度の眠気などの改善をもたらし、有害事象の多くは軽度または中等度であることを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年10月25日号で発表された。3種の用量とプラセボを比較 FLOW試験は欧州5ヵ国の28施設で実施され(Desitin Arzneimittelの助成を受けた)、2021年12月~2023年4月に参加者のスクリーニングを行った。 年齢18~75歳、未治療の中等症または重症のOSAと診断され、無呼吸低呼吸指数(AHI)3a(酸素飽和度の3%以上の低下を伴う低呼吸または覚醒[あるいはこれら双方])の発生が15~50回/時で、BMI値が18.5~35の患者298例(最大の解析対象集団[FAS]:平均年齢56.1歳[SD 10.5]、男性220例[74%]、平均BMI値29.1)を登録した。 被験者を、プラセボ群(75例)、スルチアム100mg群(74例)、同200mg群(74例)、同300mg群(75例)に無作為に割り付けた。1~3週目までに各群の目標値に達するように用量を漸増し、目標値到達後は12週間経口投与(1日1回、就寝前の1時間以内)した。 有効性の主要アウトカムは、AHI3aのベースラインから15週目までの相対的変化量とした。AHI4、ODI、ESS総スコアも良好 FASにおける15週の時点でのプラセボ群と比較したAHI3aの補正後平均変化量は、スルチアム100mg群が-16.4%(95%信頼区間:-31.3~-1.4、p=0.032)、同200mg群が-30.2%(-45.4~-15.1、p<0.0001)、同300mg群が-34.6%(-49.1~-20.0、p<0.0001)といずれの群も有意に優れ、有効性には用量依存性を認めた。 ベースラインから15週までのAHI4(酸素飽和度の4%以上の低下を伴う低呼吸)、酸素飽和度低下指数(ODI)、平均酸素飽和度の変化量は、いずれもプラセボ群に比しスルチアム200mg群(それぞれp=0.0006、p=0.0008、p<0.0001)および同300mg群(p<0.0001、p<0.0001、p<0.0001)で有意に改善した。 ベースラインで主観的な日中の過度の眠気(Epworth sleepiness scale[ESS]総スコア≧11点)を有していた患者(120例)では、15週時のESS総スコアがプラセボ群に比しスルチアム200mg群で有意に改善した(p=0.031)。また、総覚醒指数で評価した睡眠の分断化も、プラセボ群に比べ同200群(p=0.0002)および同300mg群(p<0.0001)で有意に良好だった。知覚異常が用量依存性に発現 試験期間中に発現した有害事象の頻度は、プラセボ群で61%(46/75例)、スルチアム100mg群で73%(54/74例)、同200mg群で84%(62/74例)、同300mg群で91%(68/75例)であり、用量依存的に増加した。いずれかの群において10%超の患者で発現した有害事象として、知覚異常(プラセボ群9%、スルチアム100mg群22%、同200mg群43%、同300mg群57%)、頭痛(8%、7%、16%、15%)、COVID-19(4%、4%、8%、13%)、上咽頭炎(12%、4%、9%、9%)を認めた。全体で知覚異常により15例(5%)が試験薬の投与中止に至ったが、118件の知覚異常イベントのうち98件(83%)は1回のみまたは散発的で、99件(84%)は軽度だった。 有害事象の多くは軽度または中等度であった。重篤な有害事象は11例(プラセボ群2例[3%]、スルチアム100mg群4例[5%]、同200mg群1例[1%]、同300mg群4例[5%])に発現し、このうち3例(100mg群で好中球減少1例および急性骨髄性白血病1例、200mg群で三叉神経障害1例)が治療関連の可能性があると判定された。 著者は、「睡眠中の気道虚脱には複数の病態生理学的機序が関与している可能性があり、OSAは臨床的な表現型の幅が広いため、病態に応じて個別化された治療戦略が求められる」「本研究は、標準治療である持続陽圧呼吸療法(CPAP)が施行できない患者では、スルチアムによる薬物療法が有望な治療選択肢となる可能性を示唆する」「ベネフィット・リスク比は200mg群で最も良好であった。今後、200mgで十分にコントロールできない場合に、300mgを考慮する研究を続ける必要があるだろう」としている。

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リンパ節腫脹の鑑別診断【1分間で学べる感染症】第36回

画像を拡大するTake home messageリンパ節腫脹の原因は「MIAMI」という語呂合わせを活用して5つのカテゴリーに分けて整理しよう。リンパ節腫脹は、内科、外科、小児科、皮膚科など、さまざまな診療科で遭遇する重要なサインです。感染症など一過性で自然軽快するものも多い一方で、悪性疾患や自己免疫疾患、薬剤性、肉芽腫性疾患などが隠れている場合もあります。鑑別診断の挙げ方は多くありますが、網羅的に大まかにカテゴリー化する方法として、「MIAMI」(Malignancies・Infections・Autoimmune・Miscellaneous・Iatrogenic)という語呂合わせが提唱されています。今回は、この5つのカテゴリーに沿って、一緒に整理してみましょう。M:Malignancies(悪性腫瘍)悪性疾患によるリンパ節腫脹は、持続性・進行性・無痛性のことが多く、とくに高齢者や全身症状(発熱、体重減少、寝汗)を伴う場合には常に念頭に置く必要があります。代表的な疾患としては、悪性リンパ腫、白血病、転移性がん、カポジ肉腫、皮膚原発の腫瘍などが挙げられます。固定性で硬く、弾力のない腫脹がみられた場合は、早期の精査が推奨されます。I:Infections(感染症)感染症は最も頻度の高い原因です。細菌性では、皮膚粘膜感染(黄色ブドウ球菌、溶連菌)、猫ひっかき病(Bartonella)、結核、梅毒、ブルセラ症、野兎病などがあり、これらは病歴聴取と局所所見が診断の手掛かりとなります。ウイルス性では、EBウイルス、サイトメガロウイルス、HIV、風疹、アデノウイルス、肝炎ウイルスなどが含まれ、とくに伝染性単核球症では頸部リンパ節腫脹が目立ちます。まれですが、真菌、寄生虫、スピロヘータなども原因となることがあり、ヒストプラズマ症、クリプトコッカス症、リケッチア症、トキソプラズマ症、ライム病などが鑑別に挙がります。A:Autoimmune(自己免疫疾患)関節リウマチ(RA)やSLE(全身性エリテマトーデス)、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、成人スティル病などの自己免疫疾患もリンパ節腫脹を来すことがあります。これらは多くの場合、他の全身症状や検査所見(関節炎、発疹、異常免疫グロブリンなど)と合わせて判断する必要があります。とくに全身性疾患の初期症状としてリンパ節腫脹が出現することもあるため、見逃さないよう注意が必要です。M:Miscellaneous(その他)まれではあるものの、Castleman病(血管濾胞性リンパ節過形成)や組織球症、川崎病、菊池病(壊死性リンパ節炎)、木村病、サルコイドーシスなども鑑別に含まれます。これらは一見すると感染症や自己免疫疾患と似た臨床像を呈することがあるため、病理診断や経過観察を要することがあります。I:Iatrogenic(医原性)薬剤による反応性リンパ節腫脹や血清病様反応なども存在します。とくに抗てんかん薬、抗菌薬、ワクチン、免疫チェックポイント阻害薬などが関与することが知られており、最近の薬剤歴の確認が不可欠です。また、ワクチン接種後の一時的なリンパ節腫脹(とくに腋窩)は、画像上の偽陽性を招くこともあるため注意が必要です。リンパ節腫脹は多彩な疾患のサインであり、その背景を見極めるためには、構造的かつ網羅的なアプローチが求められます。「MIAMI」というフレームワークを活用することで、見逃してはならない悪性疾患や慢性疾患の早期発見につながります。必要な検査や専門科紹介のタイミングを逃さないようにしましょう。1)Gaddey HL, et al. Am Fam Physician. 2016;94:896-903.

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父親の厳しい子育てが子供のメンタルヘルスに影響

 青年期における厳しい子育ては、抑うつ症状のリスクを高める可能性がある。しかし、その影響には個人差があり、リスクを増悪または軽減させる要因を明らかにする必要がある。睡眠の問題は、対処能力を低下させるだけでなく、厳しい子育てを増幅させる可能性もある。米国・ニューメキシコ大学のRyan J. Kelly氏らは、青年期の睡眠を調整因子として、青年期の厳しい子育てとその後の抑うつ症状の関係を調査した。Sleep Health誌オンライン版2025年9月17日号の報告。 9年間にわたる5wave(子供の年齢が16、17、18、23、25歳)研究を実施した。16歳で研究に参加した家族は245組(女性の割合:52%、白人/ヨーロッパ系米国人:67%、黒人/アフリカ系米国人:33%)、5waveすべてに参加した家族は132組であった。母親と父親は、16〜18歳までに子供に行った厳しい子育て(言葉による虐待および身体的な虐待)の頻度について報告した。16〜18歳までの子供の睡眠時間および睡眠の質(睡眠維持効率、長時間覚醒エピソード)の測定には、アクティグラフィーを用いた。抑うつ症状は、5waveのすべてで自己申告により評価した。 主な結果は以下のとおり。・自己回帰効果をコントロールした後、構造方程式モデルを用いて、青年期における父親の厳しい子育てと成人初期の抑うつ症状との関連を悪化させる因子は、青年期における睡眠時間の短縮、睡眠維持効率の低下、長時間覚醒エピソードの増加であることが明らかとなった。【青年期における睡眠時間の短縮】β=-0.16、p<0.03【睡眠維持効率の低下】β=-0.30、p<0.001【長時間覚醒エピソードの増加】β=0.24、p=0.004・母親の厳しい子育ては、青年期の睡眠状況に関わらず、リスク変化に影響しなかった。 著者らは「青年期における父親の厳しい子育てと睡眠障害との相互作用は、成人初期の抑うつ症状を予測する可能性が示された。これらの結果は、父親の厳しい子育てを受けた子供のメンタルヘルスを改善するうえで、睡眠を考慮することの重要性を示唆している」と結論付けている。

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ナルコレプシー治療にパラダイムシフト、oveporextonが第III相試験の評価項目をすべて改善、先駆的医薬品にも指定/武田

 武田薬品工業の経口オレキシン2受容体(OX2R)選択的作動薬oveporexton(TAK-861)はナルコレプシータイプ1(NT1)に対する第III相試験で有望な結果を示した。その結果は世界睡眠学会で発表された。また、同薬は国内では先駆的医薬品および希少疾病用医薬品に指定された。 NT1は、脳内のオレキシンニューロンが減少することで引き起こされる慢性かつまれな神経疾患であり、日常生活に支障を来すさまざまな症状を引き起こす。oveporextonはオレキシンの欠乏に対処することで、NT1の広範な症状を改善する。現在、NT1の原因となるオレキシン欠乏を標的とする治療薬はなく、認可されればoveporextonがファースト・イン・クラスとなる。世界睡眠学会「World Sleep 2025」での第III相試験結果 2025年9月に行われた世界睡眠学会「World Sleep 2025」では、oveporextonに対する2つの国際共同第III相試験(FirstLightとRadiantLight試験)のデータが発表された。両試験には19ヵ国273例の被験者が登録されている。両試験の主要・副次すべての評価項目で統計学的に有意な改善が認められた。以下が主な項目の結果である。 日中の過度の眠気(EDS):12週時点の覚醒維持検査(MWT)による、平均睡眠潜時およびエプワース眠気尺度(ESS)スコアのベースラインからの変化とも、プラセボ群と比べoveporexton群で統計学的に有意な改善を示した。とくに2mg×2/日投与群においては、被験者の大多数で平均睡眠潜時が正常範囲内(≧20分)まで改善し、健康成人と同程度のESSスコア(≦10)を達成した被験者は85%近くであった。 カタプレキシー(情動脱力発作)発現率:1週間あたりのカタプレキシー発現率(WCR)はプラセボ群に比べ、oveporexton群で12週にわたり有意に低下した(ベースラインからの変化率の中央値は80%超)。oveporexton群におけるカタプレキシーが発現しない日の頻度は、ベースライン時の0日/週から12週時には4〜5日/週に改善した。 症状の重症度:ナルコレプシー重症度尺度(NSS-CT)の総スコアにおいて、プラセボ群に比べ、oveporexton群で統計学的に有意な変化を示した。70%を超える被験者が最低重症度(軽度、スコア0〜14)を示した。 安全性プロファイル:oveporextonの忍容性はおおむね良好であり、安全性プロファイルはこれまでの臨床試験と同様で、治験薬と関連のある重篤な有害事象の報告はなかった。先駆的医薬品および希少疾病用医薬品に指定 oveporexton(TAK-861)は、2025年9月29日、NT1を予定される効能又は効果として厚生労働省より先駆的医薬品および希少疾病用医薬品に指定された。今回の指定は国際共同第IIb相臨床試験(TAK-861-2001試験)の結果に基づくものである。 なお、oveporextonは同国際共同第IIb相臨床試験のデータに基づき、米国食品医薬品局(FDA)および中国国家食品薬品監督管理局からも、NT1患者の日中の過度の眠気に対する治療薬としてブレークスルーセラピーに指定されている。

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災害時に不眠を訴える避難者への対応【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第7回

災害時に不眠を訴える避難者への対応大地震の後、余震が続く避難所において、不眠を訴える高齢の避難者がいます。本人はこれまで睡眠障害を経験したことはないものの、慣れない避難生活により睡眠が十分に取れず、体調を崩すことへの不安を口にしています。こうした状況にどのように対応すればよいでしょうか?災害時の不眠私自身、東日本大震災の医療支援として南三陸町に入った際、小学校の校舎を避難所として使用しました。当時は灯油が不足し、暖房が使えない中、寝袋にくるまっても寒さでまったく眠れなかった経験があります。避難者は、住居の損壊、親族の安否への不安、さまざまな環境要因により、十分な睡眠が得られないことは容易に想像できます。事実、東日本大震災後には、東京において不眠を訴える人が普段の1.5~2倍に増加し、被害の少なかった大阪でも、繰り返される被災映像の影響で急性ストレス障害に似た症状が現れ、不眠が増加したことが報告されています1)。避難所や車中泊は、自宅と比較して、睡眠環境(騒音・寒冷/暑熱・硬い寝具・プライバシー欠如)が悪く、睡眠連続性を悪化させ、自律神経・血糖変動にも影響することが示されました2)。今回は、災害時の睡眠障害について、その対応を概説します。DPATの介入が必要な不眠避難者に対して、まずせん妄や精神病症状の有無を確認することが大切です。強い不眠を訴え、その後、朦朧状態になったり、不穏・興奮状態のほか、手の震えや発汗、動悸などがみられればせん妄を疑います。習慣的に飲酒のある方が震災後に急に断酒した後、せん妄が出現することがあります(振戦せん妄)。また、大切な人を亡くして自殺念慮がある場合もあります。これらの症状がみられた場合には、DPAT(災害派遣精神医療チーム)へ相談が必要です3)。DPATは、被災地域の支援を目的とした専門的な研修・訓練を受けた災害派遣精神医療チームであり、私は何度も一緒に活動したことがありますが、とても親身になり専門的な介入をしてくれます。非薬物療法が原則せん妄や精神症状でない場合には、原則、非薬物療法が最優先されます。「眠れないから薬がほしい」と希望される方もいますが、災害など大きな精神的ストレスがかかった直後の睡眠問題は一般的であり、決して珍しいことではないこと、自然軽快が多いことを説明します。避難所の管理者と相談し、環境を整えるように努めることも大切です。具体的には、マットや毛布など寝具の整備、夜間の騒音・光の低減、就寝スペースの区画、耳栓・アイマスク配布などが推奨されています2)。夜間に消灯して眠る、というのは実は容易ではなく、逆に目がさえることもあり、寝なくてはいけない、という強迫観念も不眠を助長します。そのようなときは、昼寝を取り入れる、夜中起きていられるスペースを作ってあげることも有効です。不眠には、睡眠に対する考え方(認知)が関与しているといわれています。睡眠に対する考え方を指導してくれるCognitive Behavior Therapy for Insomnia(CBT-I)と呼ばれる不眠症に対する認知行動療法があり4)、これもDPATに相談してもいいでしょう。実際の例として、私自身も不眠を感じるときにはYouTubeで漫才を聴くようにしています。すると条件反射のように眠りにつくことができ、漫才を最後まで聴き終えたことはほとんどありません。やむを得ない場合の薬物療法もともと不眠で睡眠薬が処方されている場合、離脱症状が出現する場合があるので継続することが必要です。残量が少ない場合には錠剤を半分に割るといった工夫をするように指導します。どうしてもやむを得ない場合には、短期間のベンゾジアゼピン系の睡眠剤を短期間使用することもありますが、依存性・転倒のリスクもあり、例外的です。小児や思春期には原則処方しないこととされています5)。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の三島 和夫先生が書かれた「震災時の睡眠マニュアル6)」はわかりやすく、とても読みやすいので参考にしていただければ幸いです。また、非専門家や一般の方向けに、被災者や犯罪の被害を受けた方などと関わる時の対応として、「サイコロジカルファーストエイド(心理的応急処置)」を知っておくことが推奨されています7)。WHOが中心となって開発したものが最も広く用いられています。 1) Sugiura H, et al. Prevalence of Insomnia Among Residents of Tokyo and Osaka After the Great East Japan Earthquake: A Prospective Study. Interact J Med Res. 2013;2:e2. 2) Ogata H, et al. Evaluation of Sleep Quality in a Disaster Evacuee Environment. Int J Environ Res Public Health. 2020;17:4252. 3) DPAT(災害派遣精神医療チーム) 4) Edinger JD, et al. Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2021;17:255-262. 5) Sateia MJ, et al. Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Treatment of Chronic Insomnia in Adults: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. J Clin Sleep Med. 2017;13:307-349. 6) 三島和夫. 震災に関連した不眠・睡眠問題への対処について. 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 7) 国立精神・神経医療研究センター ストレス・災害時こころの情報支援センター. WHO版PFAマニュアル

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大豆製品の摂取と不眠症との関係

 不眠症は、中高年にさまざまな悪影響を及ぼす疾患である。食生活の調整により、不眠症の改善が期待できることが注目を集めている。中国・温州医学大学のLanrong Sun氏らは、中高年における大豆製品の摂取と不眠症の関連性を調査し、炎症性因子の役割を検証するため、横断的研究を実施した。Nature and Science of Sleep誌2025年8月13日号の報告。 対象は、台州市温嶺病院の心臓内科を受診または入院した45歳以上の中高年877例(女性の割合:35.01%)。大豆製品の摂取量は、食品摂取頻度質問票(FFQ)を用いて評価した。睡眠状態は、不眠症重症度指数(ISI)を用いて定量化した。大豆製品の摂取量の中央値(IQR)は週1回以下(週1回以下、週2~6回)であり、不眠症スコアの平均値は、5.43±5.13であった。 主な結果は以下のとおり。・中国の中高年成人において、大豆製品の摂取量は不眠症(|r|s≧0.117、ps<0.001)と負の相関を示した。・また、C反応性タンパク質(CRP、調整済みβ:-0.139、95%信頼区間[CI]:-0.265~-0.012)、腫瘍壊死因子α(TNF-α、調整済みβ:-0.049、95%CI:-0.091~-0.006)、トリグリセライド(TG、調整済みβ:-0.043、95%CI:-0.085~-0.000)との負の相関を示した。・大豆製品の摂取量と白血球数、好中球絶対数、血小板数、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキン-6、ヘモグロビン、赤血球数、低密度リポタンパク質コレステロール、高密度リポタンパク質コレステロール、総コレステロールとの間に有意な相関は認められなかった。 著者らは「中高年において、大豆製品の摂取量が少ないと不眠症の発生率が高くなることが示された。さらに、大豆製品の摂取量は、末梢血のCRP、TNF-α、TGレベルと負の相関関係にあることも明らかとなった。バランスの取れた食事を通じて中高年の睡眠を改善するための新たな臨床的視点を提示するものであり、睡眠には炎症や脂質が重要な役割を果たす可能性があることが示唆された」と結論付けている。

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経口抗凝固療法中の慢性冠症候群患者、アスピリン併用は?/NEJM

 経口抗凝固薬を服用中のアテローム血栓症リスクが高い慢性冠症候群患者において、アスピリンの追加投与はプラセボと比較し、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、全身性塞栓症、冠動脈血行再建術または急性下肢虚血の複合アウトカムのリスクを増加させ、さらに全死因死亡および大出血のリスクも高める。フランス・リール大学のGilles Lemesle氏らが、同国の51施設で実施された二重盲検プラセボ対照無作為化試験「Assessment of Quitting versus Using Aspirin Therapy in Patients with Stabilized Coronary Artery Disease after Stenting Who Require Long-Term Oral Anticoagulation trial:AQUATIC試験」の結果を報告した。長期経口抗凝固療法中の高リスク慢性冠症候群患者に対する適切な抗血栓療法のレジメンは依然として明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2025年8月31日号掲載の報告。ステント留置後6ヵ月以上経過した経口抗凝固療法中の慢性冠症候群患者が対象 研究グループは、登録の6ヵ月以上前に冠動脈ステント留置術を受け、アテローム血栓症リスクが高く長期にわたり経口抗凝固療法を受けている慢性冠症候群成人患者を対象とし、アスピリン群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、経口抗凝固療法継続下でそれぞれ100mgを1日1回投与した。 継続する抗凝固療法が経口抗凝固薬と1種類の抗血小板薬であった場合、その1種類の抗血小板薬がアスピリンであればアスピリン継続投与群または中止群に無作為に割り付け、経口抗凝固薬単独であった場合は、アスピリン開始群または非開始群に無作為に割り付けた。 有効性の主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、全身性塞栓症、冠動脈血行再建術、急性下肢虚血の複合であった。安全性の主要アウトカムは大出血(国際血栓止血学会[ISTH]の定義による)とした。アスピリン追加で全死因死亡率が増加 2020年5月~2024年4月に計872例が無作為化され、アスピリン群433例、プラセボ群439例に割り付けられた。 なお、本試験は追跡期間中央値2.2年後、アスピリン群における全死因死亡率の増加が認められため、独立データ安全性モニタリング委員会(IDSMB)の勧告に基づき、2024年4月16日に患者登録が中止された(最終追跡調査日2025年5月16日)。 有効性の主要アウトカムのイベントは、アスピリン群で73例(16.9%)、プラセボ群で53例(12.1%)に発生した(補正後ハザード比[HR]:1.53、95%信頼区間[CI]:1.07~2.18、p=0.02)。全死因死亡の発生は、それぞれ58例(13.4%)、37例(8.4%)であった(補正後HR:1.72、95%CI:1.14~2.58、p=0.01)。 大出血は、アスピリン群で44例(10.2%)、プラセボ群で15例(3.4%)に認められた(補正後HR:3.35、95%CI:1.87~6.00、p<0.001)。アスピリン群およびプラセボ群で、それぞれ201例467件、192例395件の重篤な有害事象が報告された。

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RSウイルスワクチンの1回接種は高齢者を2シーズン連続で守る

 米国では、60歳以上の人に対するRSウイルス感染症を予防するワクチン(RSウイルスワクチン)が2023年より接種可能となった。米疾病対策センター(CDC)は、75歳以上の全ての人と、RSウイルス感染症の重症化リスクがある60〜74歳の人は1回接種を推奨している。このほど新たな研究で、高齢者はRSウイルスワクチンの1回接種により2シーズン連続でRSウイルス関連の入院を予防できる可能性のあることが示された。米ヴァンダービルト大学医療センターのWesley Self氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に8月30日掲載された。 Self氏は、「これらの結果は、RSウイルスワクチンにより高齢者のRSウイルス感染による入院や重症化を予防できることを明確に示している。この新しいワクチン接種プログラムが公衆衛生に有益であることを目の当たりにするのは本当に喜ばしいことだ」と話している。 研究グループによると、RSウイルス感染症は秋から冬にかけて60歳以上の高齢者に深刻な影響を及ぼし、毎年15万人が入院、8,000人が死亡しているという。Self氏らは今回、2023年10月1日~2024年3月31日、または2024年10月1日~2025年4月30日のRSウイルス流行期に急性呼吸器疾患により米国20州の26病院に入院した60歳以上の人6,958人(年齢中央値72歳、女性50.8%)を対象に、RSウイルス関連の入院に対するワクチンの有効性を検討した。対象者のうち、821人(11.8%)はRSウイルス感染症症例(症例群)、6,137人が対照群とされた。また、1,829人(26.3%)は免疫抑制状態にあった。 RSウイルスワクチンを接種していたのは、症例群で63人(7.7%)、対照群で966人(15.7%)だった。2シーズンを合わせたワクチンの有効性は58%と推定された。また、RSウイルス感染症の発症と同じシーズンに接種した場合のワクチンの有効性は69%、前シーズンに接種した場合の有効性は48%であったが、この差は統計学的に有意ではなかった(P=0.06)。さらに、2シーズンを合わせたワクチンの有効性は、免疫抑制状態にない群で67%であったのに対し、免疫抑制状態にある群では30%と有意に低かった。同様に、非心血管疾患患者でのワクチン有効性は80%であったのに対し、心血管疾患を有する群では56%と有意に低かった。 Self氏は、「われわれのデータは、RSウイルスワクチンの有益な効果は時間の経過とともに弱まる傾向があることを示している」とヴァンダービルド大学のニュースリリースで述べている。 CDCのウェブサイトには、「すでに1回接種を受けた人(昨年を含む)はワクチン接種を完了と見なされ、現時点で追加の接種を受ける必要はない」と記載されている。Self氏は、「本研究結果は、ガイドラインの見直しが必要である可能性があることを示している。初回接種後、一定の間隔を置いてワクチンを再接種することは、より長期間にわたりRSウイルスに対する予防効果を維持するための戦略となり得る」と述べている。その上で同氏は、「単回接種後の効果の持続期間や再接種の必要性について理解するために、ワクチンの有効性を今後も綿密にモニタリングしていくことが重要だろう」との見方を示している。

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ほら貝を吹くと、睡眠時無呼吸の症状が改善【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第290回

ほら貝を吹くと、睡眠時無呼吸の症状が改善「睡眠時無呼吸の治療に“ほら貝”?」——そんな一見ユニークな研究が、ERJ Open Research誌に掲載されました。インドの研究チームが挑んだのは、ほら貝を吹くことによる閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)への効果検証です。Sharma KK, et al. Efficacy of blowing shankh on moderate sleep apnea: a randomised control trial. ERJ Open Res. 2025 Aug 10. [Epub ahead of print]OSAは気道の閉塞により夜間低酸素や睡眠分断を繰り返し、日中の眠気や生活の質低下をもたらす疾患です。ゴールドスタンダードはCPAP(持続陽圧呼吸療法)ですが、実臨床では「使い続けられない」という問題にしばしば直面します。とくに中等症の患者では「症状はあるけれど、CPAPをすぐ導入するほどではない」というケースも多く、より取り組みやすい代替療法が模索されてきました。ほら貝の演奏は、強い呼気を伴うため、口腔・咽頭・胸郭の筋肉を鍛え、気道の虚脱を減らすのではないかと考えられています。研究者の一部は、臨床経験として「ほら貝吹奏習慣のあるOSA患者が症状改善を示した」と報告しており、それを科学的に検証したのが今回の試験です。対象となったのは、平均年齢約50歳、BMIが29前後の中等症OSA患者30例です。ランダムに2つの群に分けられ、一方はほら貝を吹き、もう一方は深呼吸運動(sham群)を行いました。いずれも1日15分、週5日、半年間続けるという条件でした。主要評価項目には日中の眠気を測定するエプワース睡眠スケール(ESS)が用いられ、副次的に睡眠の質(PSQI)や無呼吸低呼吸指数(AHI)も調べられました。結果は興味深いものでした。ほら貝を吹いた群ではESSが平均で5点低下し、34%という改善がみられました。この変化は深呼吸運動を行ったsham群と比較しても有意であり、PSQIも有意に改善し、AHIは平均で毎時4回以上減少しました。とくにREM睡眠期の無呼吸は20%以上減少しており、sham群ではむしろ増加がみられたのに対して、臨床的に意義のある差と評価できるものでした。さらに頸囲の縮小や夜間最低SpO2の改善も観察され、全体として「気道が保たれやすくなった」ことを示唆する所見が揃いました。「日中の眠気がよくならない」と相談されたら、「ほら貝、やってみますか?」なんてアドバイスをする日が来るかも?

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レビー小体型認知症のMCI期の特徴は?【外来で役立つ!認知症Topics】第33回

レビー小体型認知症のMCI期の特徴は?認知症には70以上もの原因疾患があるが、レビー小体型知症(DLB)はアルツハイマー病(AD)、血管性認知症に次ぎ3番目に多い。ADのMCI(軽度認知障害)の特徴はわかっていても、「MCIレベルのDLBの特徴は?」と問われると、筆者は最近まで「はて?」という状態であった。DLB研究の元祖である小阪 憲治先生の名言に「DLBを知れば知るほど、その幅広さがわかってくる」というものがある。臨床の場でこの病気の患者さんを診ていると、一言でDLBといっても、見られる症候は実にさまざまであり、この言葉はまさに至言である。また、この病気の大脳病理について経験豊かな友人が次のように教えてくれた。「レビー小体病といっても、さまざまな病変分布や病理の程度にグラデーションがあって、検査前の見込みと検査結果はしょっちゅう乖離する。ADのほうがずっと簡単」と。DLBの診断では、激しい寝ぼけ(レム睡眠行動障害)、幻視、パーキンソン症候、そして認知機能などの変動が大きいことが軸である。DLBの権威であるIan G. McKeith氏らによれば、MCIレベルのDLBには3つの表現型がある。まず「精神症状初発型」、次に「せん妄初発型」、さらに認知機能障害パターンから分類される「MCI-LB」タイプである。今回は、この3つについてまとめてみたい。1)精神症状初発型他の認知症性疾患と比べたとき、DLBの初発症状として、老年期になって初発する大うつ病や精神病は、とても際立っている。代表的な症状としては、人の姿が見えるといった幻視、家族を偽物だと思い込むような妄想や誤認がある。また、アパシー(無気力)、不安がある。こうした症状で初発する認知症性疾患は他にまずないため、これらの症状はDLBを疑う大きなヒントになる。レム睡眠行動障害(RBD)も有用な着眼点になるが、抗うつ薬を使うことによってRBDが生じることもあるので、ここは要注意である。また、DLB を疑ううえで、パーキンソン症状の中で、動作緩慢よりも振戦や筋硬直のほうが、より有用である。なお、精神病発症型のDLB発症時では、パーキンソン症候、認知機能の変動、幻視、RBDという典型症候がみられたのは、わずか3.8%にすぎなかったという報告がある1)。この数字が語るのは、目の前の患者さんは「精神疾患に間違いない、まさかDLBとは!」と誰もが思ってしまう落とし穴だろう。2)せん妄初発型認知機能の変動、意識の清明度・覚醒度の変化は、DLBの中核症状である。そのため、せん妄で初発する人も多い。これまで認知機能障害がなかった人で、いきなりせん妄が生じるのはなぜだろうか? まずDLBという病態はせん妄を来しやすい素地を持っているのかもしれないし、あるいは曇りを伴う重篤な意識の変動をせん妄とみている可能性もある。さらにはこれら両者なのかもしれないが、答えはわからない。ところで、せん妄初発のDLBの存在に留意することには別の意義もある。というのは、一般的なせん妄に対する第1選択薬は抗精神病薬とされるが、もしこの型のDLBにこうした薬剤を投与したら、症状が悪化する可能性が高いからである。なお、せん妄や意識変動はDLB患者の介護者の43%が報告するほど多く、4人に1人のDLB患者がせん妄を繰り返し、累積の回数はAD患者のそれの約4倍といわれる。また、DLBが診断される前にみられるせん妄は、ADに比べて6倍近く高い。高齢患者においてせん妄が長引く場合、実は背後にDLBが隠れていると考えるべきとされる。つまり、「病歴にせん妄が多ければDLBを想起!」である。3)MCI-LBMCIの概念は、1990年代のRonald C. Petersen氏による提唱で有名になったが、それは「アルツハイマー病前駆状態では、他の認知機能は保たれているのに記憶のみが障害される」というものであった。このオリジナルの概念に改変がなされ、現在では「記憶障害」対「非記憶の認知機能障害」、障害される認知領域が「単数」対「複数」という基準で4つのMCI亜型に分類されるようになった。Petersen氏の提唱したオリジナルMCIは、ADの予備軍における「記憶障害」+「単数」である。しかし、レビー小体型認知症の前駆状態であるMCI-LBは、「非記憶障害」が基本で、障害領域は「単数」も「複数」もある。とくに最初期には、本人も介護者も記憶障害を訴えないことが珍しくない。つまり記憶障害は比較的軽い一方で、主に注意や遂行機能障害といった前頭葉の機能障害がみられる。また錯視など、視覚認知に障害を認める例もある。いずれにせよ、記憶障害単独型MCIのADコンバートに対して、「非記憶型」のMCI-LBがADになることはまれで、その10倍もDLBになりやすい。4)その他の留意点DLBにおけるRBDの意味RBD(レム睡眠行動障害)はDLB診断において重要である。ある12年間の追跡調査では、RBDを持つ人の73.5%が、 DLBなど神経変性疾患にコンバートしたという報告もある2)。悪夢は周囲の人によって気付かれ、RBD診断の手がかりになるが、鑑別すべきものに睡眠時無呼吸症候群、睡眠中のてんかん発作などがある。確実な診断には、ポリソムノグラフィによる測定が望まれる。どんなタイプのMCIであれ、RBDを伴うときはDLBを想起すべきである。自律神経症状などDLB患者で、初診時に自律神経障害を認めることもまれではない。便秘、立ちくらみ、尿失禁、勃起障害、発汗増加、唾液増加などのどれか1つ以上が、25~50%の患者で見つかる3)。しかし、こうした症状は他のさまざまな疾患でも見られるため、それらがあるからといって必ずしもDLBだと思う必要もない。なお、無嗅覚症もDLBのMCI期によくみられるが、その原因は数多あるため(たとえば新型コロナウイルス感染症など)、診断的価値がとくに高いわけではない。1)Gunawardana CW, et al. The clinical phenotype of psychiatric-onset prodromal dementia with Lewy bodies: a scoping review. J Neurol. 2024;271:606-617.2)Postuma RB, et al. Risk and predictors of dementia and parkinsonism in idiopathic REM sleep behaviour disorder: a multicentre study. 2019;142:744-759.3)McKeith IG, et al. Research criteria for the diagnosis of prodromal dementia with Lewy bodies. 2020;94:743-755.

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