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カナグリフロジンによる心血管・腎イベントの抑制と下肢切断、骨折の増加(解説:吉岡 成人 氏)-694

SGLT2阻害薬による心血管イベント抑制 SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンが、心血管イベントの既往がある2型糖尿病患者において心血管死、総死亡、さらに腎イベント(顕性腎症の発症、血清クレアチニン値の倍増、腎代替療法の導入、腎疾患による死亡)を抑制するとEMPA-REG OUTCOME試験およびそのサブ解析で示されて以降、カナダ糖尿病学会、米国糖尿病学会の提唱するガイドラインでは、心血管リスクの高い患者におけるSGLT2阻害薬の使用を推奨している。 心血管イベント、腎イベントの抑制の機序に関しては、SGLT2阻害薬の利尿作用、腎における腎尿細管糸球体フィードバック機構への影響のみならず、血中ケトン体が増加することによる心筋や腎におけるエネルギー代謝の変化、ヘマトクリットの増加による腎への酸素供給の増加などの、一般の臨床医が想像しなかったようなメカニズムが提唱されている。このような背景をもとに、エンパグリフロジン以外のSGLT2阻害薬でも同様な臨床効果が期待されるのかどうか、カナグリフロジンを用いたCANVAS(Canagliflozin Cardiovascular Assessment Study)プログラムの結果に大きな興味が持たれていた。CANVASプログラムとCANVAS試験、CANVAS-R試験 CANVASプログラムはカナグリフロジンの第III相試験として2009年に開始されたCANVAS試験と、米国でのカナグリフロジン発売後に開始されたCANVAS-R試験によって構成されている。CANVAS試験のみでは心血管安全性を評価するための追跡人・年が不足するためにCANVAS-Rが追加試験として2014年に開始され、アルブミン尿の進展抑制を主要評価項目とし、心血管安全性を副次評価項目としている。 今回の心血管安全性の評価では、CANVASとCANVAS-Rを統合して解析がなされている。対象は心血管疾患リスクが高い2型糖尿病10,142例。標準的な薬物療法にカナグリフロジンないしはプラセボを追加する無作為化二重盲検試験で、追跡期間は平均3.6年であった。主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合イベントの発生率であり、カナグリフロジン投与によりこれらの心血管リスクが有意に低下(カナグリフロジン群:26.9/1,000人年、プラセボ群:31.5/1,000人年、ハザード比:0.86、95%信頼区間:0.75~0.97、p=0.02)しており、非劣性のみならず優越性が示された。さらに、カナグリフロジン群ではアルブミン尿の進展が27%抑制され、腎複合エンドポイント(eGFR低下、腎代替療法の開始、腎疾患による死亡)において40%の抑制が認められた。下肢切断と骨折のリスク 心血管イベントや腎リスクの低下は確認されたものの、カナグリフロジン群で下肢切断のリスクが約2倍に増加していた(カナグリフロジン群:6.30/1,000人年、プラセボ群:3.37/1,000人年、ハザード比:1.97、95%信頼区間:1.41~2.75)。足趾、中足骨レベルでの切断のみならず、足関節、膝下、膝上のレベルでの切断の総計も2.03倍増加している(カナグリフロジン群:1.82/1,000人年、プラセボ群:0.93/1,000人年、ハザード比:2.03、95%信頼区間:1.08~3.82)。さらに、骨折についても転倒骨折の頻度がCANVAS試験単独で1.56倍(カナグリフロジン群:12.98/1,000人年、プラセボ群:8.31/1,000人年、ハザード比:1.56、95%信頼区間:1.18~2.06)増加しており、全骨折の頻度もCANVAS試験単独で1.55倍、CANVASプログラムとして1.26倍に増加している。 平均年齢63.3歳、女性比率35.5%という対象において、下肢切断の頻度、骨折の頻度は日本人よりもはるかに高い。足病変の進展については体内の水分量の減少に伴う下肢末梢における血圧や血液循環の低下、骨折については、Ca利尿の増加、血中リン濃度やPTHの上昇による骨塩量の減少などが原因として推定されるが結論は得られていない。米国保健局(FDA)からは、2015年9月、2016年5月にカナグリフロジンと骨折、下肢切断に関する安全性情報がすでに報告されており、今回さらにリスクが強調される結果となった。カナグリフロジンの投与量と国内における情報提供 CANVASプログラムはカナグリフロジン100mg、300mg、プラセボ群がそれぞれ1:1:1の割合で、CANVAS-Rでは、100mgから開始され300mgまで増量が可能な群とプラセボ群が1:1の割合で構成されている。日本国内におけるカナグリフロジンの投与量は100mgであり、国内で認められている用量を超えた試験であるため、CANVASプログラムについて製薬メーカーが国内でプロモーションを行うことが規制されている。「ディオバン事件」の影響かと思われるものの、事実を歪曲した広告は厳に慎むべきではあるが、過剰とも思われる規制もいかがなものであろうか。

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急性脳卒中後の体位、仰臥位vs.頭部挙上/NEJM

 急性脳卒中後の治療24時間における患者の体位を、仰臥位とした場合と、30度以上の頭部挙上とした場合について、障害のアウトカムに差は認められなかった。オーストラリア・George Institute for Global HealthのCraig S. Anderson氏らが、急性虚血性脳卒中患者のアウトカムが、脳灌流を増加させる仰臥位にすることで改善するかどうかを検討したHead Positioning in Acute Stroke Trial(HeadPoST試験)の結果、報告した。急性脳卒中後の体位について、仰臥位は脳血流の改善に寄与するが、一方で誤嚥性肺炎のリスクがある。また、ガイドラインはあいまいで、臨床現場ではさまざまな体位がとられている。NEJM誌2017年6月22日号掲載の報告。9ヵ国の急性脳卒中患者約1万1,000例を対象に検討 HeadPoST試験は、9ヵ国(英国、オーストラリア、中国、台湾、インド、スリランカ、チリ、ブラジル、コロンビア)で実施された実用的クラスター無作為化クロスオーバー試験。18歳以上の脳内出血(クモ膜下出血を除く)を含む急性脳卒中患者1万1,093例(85%が虚血性脳卒中)を登録し、仰臥位(背部は水平で顔は上向き)で治療を行う群(仰臥位群)と、頭部を30度以上挙上し上体を起こした姿勢で治療を行う群(頭部挙上群)のいずれかに、入院施設単位で無作為に割り付けた。指定された体位は、入院直後に開始し24時間続けられた。 主要アウトカムは90日後の障害の程度で、修正Rankinスケール(スコアの範囲:0~6、スコアが高いほど障害の程度が大きく、6は死亡)を用いて評価した。体位の違いで、機能障害のアウトカムや有害事象に有意差はない 脳卒中発症から割り付け指定の体位を開始するまでの時間の中央値は、14時間であった(四分位範囲:5~35時間)。仰臥位群は、頭部挙上群より24時間体位維持率が有意に低かった(87% vs.95%、p<0.001)。一方で、酸素飽和度や血圧、他の治療管理面について、両群間に有意差は確認されなかった。 比例オッズモデルによる検討で、両群の90日後の修正Rankinスケールスコアの分布は同等であった(仰臥位群の頭部挙上群に対する修正Rankinスケールスコア分布差の未補正オッズ比:1.01、95%信頼区間:0.92~1.10、p=0.84)。90日以内の死亡率は、仰臥位群7.3%、頭部挙上群7.4%であった(p=0.83)。重篤な有害事象の発現率も、それぞれ14.3%、13.5%、肺炎は3.1%、3.4%で、両群間で有意差は認められなかった。 なお、著者は、本研究で肺炎の発現率が低かったことについて、挿管中などのハイリスク患者が除外されたことや、嚥下障害のスクリーニングプロトコルが使用されたことなどを挙げている。

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蜂窩織炎の初期治療にMRSAカバーは必要か?(解説:小金丸 博 氏)-691

 蜂窩織炎の原因微生物を特定することは一般的に困難であるが、膿瘍形成のない蜂窩織炎の原因菌で最も多いのはA群溶連菌などのβ溶血性レンサ球菌と考えられている。そのため米国感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、貫通性の外傷や注射薬物使用者などでない場合、レンサ球菌をターゲットに初期抗菌薬を選択することを推奨している。しかしながら、近年、市中感染型MRSAの増加が問題となっており、蜂窩織炎の初期治療でMRSAをカバーできる抗菌薬を使用すべきか議論になっていた。 本研究は、12歳以上を対象に、単純性蜂窩織炎に対するST合剤併用の有効性を検討した二重盲検ランダム化比較試験である。第一世代セフェム系抗菌薬であるセファレキシンに抗MRSA活性を有するST合剤を併用した群と、セファレキシンにプラセボを併用した群に分け、臨床的治癒率を比較した。すべての被験者で軟部組織エコーを実施し、膿瘍形成がある患者は除外された。Per-protocol集団における14~21日時点での臨床的治癒率は、セファレキシン+ST合剤投与群で83.5%、セファレキシン+プラセボ投与群で85.5%であり、両群間で有意差は認めなかった(群間差:-2.0%、95%信頼区間:-9.7~5.7、p=0.50)。 本研究では、治療開始時に38度以上の発熱を呈していた患者の割合は1%程度と低率であり、経口抗菌薬で外来加療できるレベルの軽症患者が対象となっている。全身状態がそれほど悪くなく、明らかな膿瘍形成がなさそうであれば、蜂窩織炎の初期治療における抗MRSA活性を有する抗菌薬の有用性は高くないと考える。これは、現在の本邦における実臨床の感覚とも一致するものである。 治療失敗例をみてみると、どちらの抗菌薬投与群でも経過中に膿瘍形成した例を多数認めており、抗MRSA活性を有する薬を選択したかどうかは大きな問題ではなさそうである。蜂窩織炎の治療経過が思わしくない場合は膿瘍合併を疑い、ドレナージなど適切な処置を施すことが重要である。 本研究は2009~12年にかけて米国の施設で実施されたものである。市中感染型MRSAの検出率が今後も増加するのであれば、抗菌薬の選択に影響を与えるのは間違いない。本邦の発生動向についても注視していく必要がある。

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FFRジャーナルClub 第5回

FFRジャーナルClubでは、FFRをより深く理解するために、最新の論文を読み、その解釈を議論していきます。第5回目の今回は、2017年にupdateされた安定型虚血性心疾患(SIHD:stable ischemic heart disease)の冠血行再建に関するAppropriate Use Criteria(AUC)のポイントを読んでいきたいと思います。第5回 AUC改訂のポイントAUCはさまざまな臨床シナリオを設定し、複数名の専門家がそれぞれの治療適応を判定したものであり、2009年に初めて報告された。2012年に初回のupdateが行われ、今回は2回目のupdateとなる。虚血の評価法としてFFRの重要性が大きく取り上げられた点で、興味深いものである。Patel MR, et al. ACC/AATS/AHA/ASE/ASNC/SCAI/SCCT/STS 2017 Appropriate Use Criteria for Coronary Revascularization in Patients With Stable Ischemic Heart Disease: A Report of the American College of Cardiology Appropriate Use Criteria Task Force, American Association for Thoracic Surgery, American Heart Association, American Society of Echocardiography, American Society of Nuclear Cardiology, Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, Society of Cardiovascular Computed Tomography, and Society of Thoracic Surgeons. J Am Coll Cardiol. 2017;69:2212-2241.Fihn SD, et al. 2014 ACC/AHA/AATS/PCNA/SCAI/STS focused update of the guideline for the diagnosis and management of patients with stable ischemic heart disease: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines, and the American Association for Thoracic Surgery, Preventive Cardiovascular Nurses Association, Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, and Society of Thoracic Surgeons. J Am Coll Cardiol. 2014;64:1929-1949.以前のAUCからの改訂点をまとめると。1.急性冠症候群(ACS)に対するものと、安定虚血性心疾患(SIHD)に対するものを別々にまとめることとなった。これはすでにACC/AHAの冠血行再建に対するガイドラインが、同様に分けて作成されているのでそれに従ったものである。2.臨床シナリオには、自覚症状、非侵襲検査によるリスクレベル、病変の広がり(病変枝数)に、冠血流予備量比(FFR)、糖尿病の有無、SYNTAXスコアが加えられた。3.AUCカテゴリー名称を変更した。Score 7 to 9:Appropriate careScore 4 to 6:May be appropriate careScore 1 to 3:Rarely appropriate care4.腎移植、TAVI前の冠血行再建に関するシナリオが追加・評価された。5.FFRの使用がより多くのシナリオに組み込まれた。AUCのスコアを決定するための因子は1.臨床徴候(虚血症状が惹起される運動レベルなど)2.抗狭心症薬の使用3.非侵襲的虚血検査の結果(虚血の存在および重症度)4.併存症・危険因子の存在(糖尿病など)5.解剖学的な病変の広がり(病変枝数、左主幹部病変の存在、LAD近位部病変の存在の有無)6.CABG既往の有無7.IVUSやFFRの所見(FFR≦0.80を心筋虚血の所見と定義されている)非侵襲的検査におけるリスク評価高リスク(死亡・心筋梗塞のリスク3%以上)1.安静時心エコー:低心機能(LVEF<35%)2.安静時SPECT:心筋灌流異常≧10%(心筋梗塞の既往を除く)3.負荷心電図所見:低負荷にて2mm以上のST低下、または負荷時のST上昇、または負荷時のVT/VF4.負荷誘発性の心機能低下:最大負荷時のLVEF<45%、あるいは負荷時のLVEF低下が10%以上5.負荷SPECT:負荷誘発性の灌流異常が10%以上、あるいは負荷時のスコアが多枝病変を示唆するもの6.負荷SPECT:負荷時左室拡大7.負荷誘発性の壁運動異常が冠動脈走行の2枝以上の領域にわたるもの8.ドブタミン負荷心エコー図:ドブタミン低用量(≦10mg/kg/min)あるいは低心拍数(<120 beats/min)にて壁運動異常が出現するもの9.冠動脈CT:カルシウムスコア(Agatstonスコア)>40010.冠動脈CT:多枝病変(≧70%狭窄が複数枝にわたる)あるいは左主幹部病変(≧50%狭窄)中等度リスク(死亡・心筋梗塞のリスク1~3%)1.安静時心エコー:軽度/中等度心機能低下(LVEF 35~49%)2.安静時SPECT:心筋灌流異常5~9.9%(心筋梗塞の既往を除く)3.労作性の症状出現時ECGにて1mm以上のST低下4.負荷SPECT:負荷誘発性の灌流異常が5~9.9%、あるいは負荷時のスコアが1枝病変を示唆し、負荷時左室拡大を伴わないもの5.負荷誘発性の壁運動異常が狭い範囲(冠動脈走行の1枝領域)に限定6.冠動脈CT:カルシウムスコア(Agatstonスコア)100~3997.冠動脈CT:高度狭窄(≧70%狭窄)を1枝に認める、あるいは中等度狭窄(50~69%狭窄)を2枝以上に認める低リスク(死亡・心筋梗塞のリスク<1%)1.Treadmill心電図:低リスクTreadmill score(≧5)、あるいは最大負荷量に達した時点でST変化・胸部症状の出現なし2.負荷・安静SPECT:安静時灌流異常がなく、負荷時灌流異常が<5%3.負荷心エコー図:負荷時壁運動異常の出現なし、あるいは増悪なし4.冠動脈CT:カルシウムスコア(Agatstonスコア)<1005.冠動脈CT:有意狭窄(>50%)を認めない冠動脈バイパス術(CABG)既往のないSIHD病変枝数(1~3枝)、左主幹部病変によって分けられる。それぞれの病変部位、リスク評価、虚血評価の状況によりシナリオが分けられている。さらに、無症候、有症候、抗狭心症薬投薬の有無、薬剤数(1種類あるいは2種類以上、薬剤としてはβ遮断薬が推奨されている)、治療戦略(PCIあるいはCABG)ごとにAppropriate Use Scoreが記載されている。1枝病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大するAA:抗狭心症薬、BB:β遮断薬Left dominant LCX:RCAがhypoplastyであり、LCXの灌流範囲が2枝相当のもの。非侵襲的検査によりリスク評価を行う。非侵襲的検査が行われていないか、あるいはその結果が診断的でない場合はFFRを計測し、FFR≦0.80を虚血所見とする。LAD proximal、dominant LCXのproximal病変以外の場合は、低リスクであればRarely appropriate careにランクされる。2枝病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大するDMの有無が、とくに血行再建選択(PCI or CABG)において大きな要素となる。負荷試験が行われていない(あるいは結果が診断的でない)場合は、2枝病変の両病変においてFFRが陽性であることが記載されており、機能的2枝病変のみが含まれる。1枝においてFFR陰性であれば、1枝病変におけるシナリオにて判定される。3枝病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大するDMの有無とともに、病変の複雑性が血行再建選択(PCI or CABG)の大きな要素となる。その1つの指標としてSYNTAXスコアが用いられている。左主幹部病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大する孤立性で入口部あるいはLMT中間部のLMT病変において、有症候性の場合は、PCIがAppropriate careにランクされていることは特筆すべきである。解剖学的に複雑となる場合は、CABGがより推奨されるが、多枝病変であってもSYNTAX≦22で、内服下に有症候性であればPCIはMay be appropriate careにランクされる。LMT bifurcation lesionに、その他の部位のbifurcation lesion、diffuse lesionを合併し、SYNTAXスコア>22となるような複雑病変では、PCIはRarely appropriate careにランクされる。解説:今回は、血行再建に対するAUC update版の中で、SIHDに対するもの、その中でもCABG既往のない症例の臨床シナリオを紹介した。すべてのシナリオにおいて、非侵襲的検査によるリスク評価の結果、および抗狭心症薬内服下での虚血症状の有無がその判断に大きな位置を占めていることがわかる。あくまでも安定した狭心症、という前提であるが、術前にしっかりと患者全体像を把握したうえで血行再建の適応を考慮すべき、ということを示している。内服開始後に症状の消失を確認せずにPCIを考慮することも多々あると思われるが、1枝・2枝病変で、かつ低リスクの場合はRarely appropriate careにランクされる。このAUCをそのまま日本の臨床に当てはめることはできないが、非侵襲的なリスク評価が重要である、という点は再認識すべきである。日本の日常臨床を2012年版AUCに当てはめると、ACSでは約80%がappropriate、3%がinappropriateであったのに対し、SIHDではinappropriateが約30%に及んでいた(Inohara T, Kohsaka S, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2014;7:1000-1009.)。その1つの原因として、日本では冠動脈CTは広く普及している一方、負荷心筋シンチグラムや負荷心エコー図は行える施設が限定されている点が挙げられる。しかし最近のFFR guide PCIのエビデンスの蓄積により、本AUCではFFRによる虚血評価を基に、適切な治療方針を立てる戦略が組み込まれた。さらには、冠動脈CT後に引き続きFFR-CTを計測することの有用性についても言及されている。FFRの臨床的有用性が確立されたものと言え、FFR使用を強く後押しするものである。日本版のAUCは、現在CVITが“standardized PCI”として思案されているが、第三者から見て「とても外れたことでない」という標準がどこにあるのかを示し、各々が認識しておくことは重要と思われる。術者側の独り善がりの判断にならないよう、ある一定の基準作りが望まれている。本AUC策定により、米国ではPCI件数が大幅に減少したことが知られている。その背景には、AUCから大きく外れた医師・施設には保険会社から支払いがなされない、という事象が起きたことにもよる。そのような状況を受けてか、本文中にAUCの役割として、「日常臨床のパターンを評価するための基礎を提供するものであり、診療careの質の向上を目指すためのものである。個々の症例の支払いの判断に使われるべきではない」、ということが強調されている。“Appropriate care”にランクされたものは血行再建が必須というものではなく、また“Rarely appropriate care”にランクされたものも血行再建を行うことを完全に否定するものではない、という点が重要である。最終的には個々の症例の全体像を鑑みて、最終的な治療方針が決定されるべきである。

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遺伝性血管性浮腫〔HAE:Hereditary angioedema〕

1 疾患概要■ 概念・定義遺伝性血管性浮腫(HAE)は、顔面や四肢、腸管や喉頭など全身のさまざまな部位に突発性、一過性の浮腫を生じる遺伝性疾患である。気道閉塞や激烈な腹痛を生じて重篤になりうるため希少疾患ではあるが見逃してはならない。従来、C1インヒビター(C1-INH)遺伝子異常によるHAE I型、II型が知られていたが、2000年にC1-INH遺伝子に異常を認めないHAE with normal C1-INH(HAEnC1-INHあるいはHAE III型)が報告された。HAEは常染色体優性遺伝形式をとるが、HAE III型では浸透率が低く、しかも発症するのはほとんど女性である。またHAE I/II型では家族歴のない孤発例も25%で認められる。孤発例はde novoの遺伝子異常症である1)。HAEにみられる突発性浮腫の本態は、これらの遺伝子異常の結果、産生が亢進したブラジキニンなどの炎症メディエーターによって血管透過性が亢進することがある。古くから知られた疾患であるがまれな疾患であり、気付かれにくく診断に難渋することが多い。2010年に「遺伝性血管性浮腫ガイドライン2010」が補体研究会(現 一般社団法人 日本補体学会)から発表され2)、2014年に改訂された3)。HAEの診断、鑑別、症状別の治療方針について系統的に記載されたわが国で初めてのガイドラインである。■ 疫学HAE I/II型は人種を問わず5万人に1人とする報告が多い。HAE III型は10万人に1人程度と考えられている。いずれもすべての人種で報告されている。■ 病因HAEはその病因から3つの型に分類される。I型常染色体優性の遺伝形式をとり、C1-INHの活性、タンパク量ともに低下している。HAE全体の約85%を占める。II型常染色体優性の遺伝形式をとり、C1-INHの活性中心のアミノ酸変異による機能異常である。C1-INH活性は低下するが、タンパク量は低下しない。HAEの約15%を占める。III型遺伝性であるがほとんど女性に発症する。病態の詳細は不明であるが、一部の症例に凝固XII因子の変異を認める。C1-INHの活性、タンパク量ともに正常である。HAEのほとんどを占めるI型、II型の原因は、遺伝子変異によるC1-INHの機能低下である。I型、II型ならびにIII型の中で凝固XII因子の変異がある場合は、最終的にブラジキニンの産生が亢進する。その結果、血管透過性が亢進し、血管外に水分が漏出、貯留して浮腫が生じるが、この浮腫は数日で消失する。III型で凝固XII因子の異常を認めない場合の病因は不明である。■ 症状24時間で最大となり数日で自然に消褪する発作を繰り返す。10~20歳代に初発することが多い。I~III型まで報告されているHAEの特徴を、表に示す4)。いずれの病型も発現する症状はほぼ同じである。風邪、外傷、歯科治療、精神的ストレス、疲労などが誘因になりやすいが、何の誘因もない症例も多い。浮腫発作がないときには、健康人と何ら変わりはない。画像を拡大する1)皮膚症状眼瞼、口唇、四肢に発作性に浮腫を生じやすいが、ほかにもあらゆる場所に生じうる。浮腫を起こした皮膚表面は、赤みをごく軽度に帯びることはあっても蕁麻疹などのように明瞭な皮疹は伴わない。発作初期に罹患部がピリピリすることはあるが痛みやかゆみはない。2)消化器症状嘔気、嘔吐、下痢、腹痛などがあるが、なかでも腹痛は激烈である。炎症性疾患とは異なり、筋性防御はなく腹部エコーやCT所見で浮腫を認める。3)喉頭浮腫嚥下困難、喉の詰まり感、嗄声や声が出ないなどの声の変化、息苦しさを呈するが、進行すると呼吸困難、窒息になる。■ 予後喉頭浮腫を生じているにもかかわらず、適切に治療されなかった場合の致死率は30%とされる。その他の症候は予後良好である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 診断基準1)突発性の浮腫2)補体C4の低下、C1-INH活性の低下3)家族歴以上の3つがあればHAE I型あるいはII型(HAE I/II型)と診断できる。C1-INHタンパク質量が低下していればHAE I型、正常または増加していればHAE II型である。1)と3)のみの場合、HAE III型と診断しうる。1)と2)のみの場合HAE I/II型の孤発例か後天性血管性浮腫である。血清C1qタンパク質定量(保険適用外)が低値であれば後天性とされているが、HAEの場合でも低値を示すことがある。4)確定診断のためには遺伝子解析が有用である。確定診断のためにはC1-INH遺伝子(SERPING1)異常の同定が望ましい。HAE III型の一部では凝固XII因子遺伝子異常が報告されているが、わが国での報告はない。HAE III型は今後の研究の進展に伴って疾患概念が変化する可能性がある。5)診断の参考となるアルゴリズムを提示する(図)1)。画像を拡大する■ 検査1)HAEを疑った際にはまず補体C4濃度を測定する。発作時には100%、発作がないときでも98%の検体で基準値を下回る。2)C1-INH活性は発作時であるか否かにかかわらず50%未満となるため診断に最も有用である。保険適用である。3)C1-INHタンパク質定量はHAE I型、II型を区別する場合に施行するが、保険適用ではない。4)HAE I/II型ではSERPING1遺伝子のヘテロ変異を認める。5)HAE III型の一部には凝固XII因子の遺伝子異常を認めるが、それ以外には診断に役立つ検査はない。■ 鑑別診断突発性浮腫を呈するほかの疾患との鑑別が重要である。1)アレルギー性血管性浮腫蕁麻疹を伴い、原因はペニシリンなどの薬剤や卵、小麦などの食物、化学物質に対するIgEを介したアレルギー機序である。2)後天性血管性浮腫思春期発症が多いHAEと異なり40歳以降に初発することが多い。悪性腫瘍、自己免疫によるC1-INHの消費が原因である。3)非アレルギー性薬剤性血管性浮腫アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)では、COX阻害により浮腫を生じる。ACE阻害薬内服患者の0.1~0.5%に生じるとされる。4)物理的刺激による血管性浮腫温熱、寒冷、振動、日光曝露などの物理的刺激で生じる。5)好酸球増多を伴う好酸球性血管性浮腫末梢血の好酸球増多、繰り返す浮腫と発熱、蕁麻疹、体重増加とIgM増加を伴う。まれ。6)特発性浮腫原因不明である。血管性浮腫の半数近くを占め、最も頻度が高い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)発作出現時の治療と発作の予防の2つに分けられる。1)発作時の治療世界的にはC1-INH製剤、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、カリクレイン阻害薬の3系統が存在するが、わが国では2017年6月現在ヒト血漿由来C1-INH製剤である乾燥濃縮人C1インアクチベーター製剤(商品名:ベリナートP静注)のみ保険適用である。顔面、頸部、喉頭、腹部の発作には積極的に投与する。2)短期予防あらかじめ処置や手術がわかっているときの発作予防である。ベリナートPが1990年にわが国で承認されて以来、効能・効果は「遺伝性血管性浮腫の急性発作」のみであった。しかしながら、侵襲を伴う処置に対する発作予防の必要性が認められ、2017年3月ベリナートPの効能・効果に「侵襲を伴う処置による遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制」が追加された。(1)歯科治療(侵襲が小さい場合)C1-INH製剤の準備のうえならば予防投与は必要ない。(2)歯科治療(侵襲が大きい場合)、外科手術などの大ストレス時手術の1時間前にC1-INH製剤の補充を行う。3)長期予防1ヵ月に1回以上あるいは1ヵ月に5日以上の発作がある場合、または喉頭浮腫の既往がある場合には、次の治療を検討する。(1)トラネキサム酸(同:トランサミン)30~50mg/kg/日を1日2~3回に分けて服用する。そのほか、長期の発作予防には抗プラスミン作用を期待してトラネキサム酸が用いられるが、効果は限定的である。(2)ダナゾール(同:ボンゾール)蛋白同化ホルモンであるダナゾールも用いられる。2.5mg/kg/日(最大200mg/日)を1ヵ月、もし無効ならば300mgを1ヵ月、さらに無効ならば400mg/日を1ヵ月投与する。有効であれば、その後1ヵ月ごとに半量に軽減し50mg/日連日か100mg/日隔日まで減量する。副作用として肝障害、高血糖、多毛、男性化には注意が必要である。ただし保険適用はない。(3)C1-INH製剤(C1エステラーゼ阻害剤)欧米ではヒト血漿由来のCinryzeの予防投与(週2回、静注)が認められているが、わが国では未承認である。4 今後の展望HAEの早期発見、早期治療のためには、関連診療科医師へのさらなる啓発活動が重要である。また、HAEのような希少疾患では、1人でも多くの患者情報を正確に収集し、病態の把握や診断基準の作成に役立てる必要がある。欧米では、すでにいくつかの登録システムが稼働しているように、わが国においても患者レジストリーの構築が不可欠である。現在、NPO法人 血管性浮腫情報センターと、一般社団法人 日本補体学会の協力をもとにレジストリーの構築が進められている。薬剤治療法については、従来から存在するヒト血漿由来C1-INH製剤に加えて、最近の10年間で遺伝子組換えヒトC1-INH製剤、ブラジキニンB2受容体拮抗薬、カリクレイン阻害薬が次々と登場してきた。わが国ではヒト血漿由来C1-INH製剤ベリナートPのみがHAEへの保険適用を認められているに過ぎないが、これらの薬剤のHAEへの承認へ向けた臨床試験が進められている。とくに新しい経口のHAE治療薬開発の進展が期待されている。5 主たる診療科内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、小児科、救命救急科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報NPO法人 血管性浮腫情報センター(CREATE)(医療従事者向けのまとまった情報)一般社団法人 日本補体学会HAEサイト(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報HAE患者会「くみーむ」(HAE患者と家族への情報)その他の情報腫れ・腹痛ナビ(医療従事者向け)腫れ・腹痛ナビ(患者さん向け)1)堀内孝彦. 遺伝性血管性浮腫(HAE). In:日本免疫不全症研究会編. 原発性免疫不全症候群 診療の手引き. 診断と治療社; 2017.p.130-135.2)Horiuchi T, et al. Allergol Int. 2012;61:559-562.3)堀内孝彦ほか. 補体. 2014;52:24-30.4)堀内孝彦. 医学のあゆみ. 2016;258:861-866.公開履歴初回2017年6月27日

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2017年度認定内科医試験、直前対策ダイジェスト(後編)

【第1回】~【第6回】は こちら【第7回 消化器(消化管)】 全9問消化器は、最近ガイドライン改訂が続いているため、新たなガイドラインはチェックしておきたい。また潰瘍性大腸炎とクローン病については毎年出題されているので、両疾患の相違点を確認しておくことも重要である。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)胃食道逆流症(GERD)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)コレシストキニンは下部食道括約筋(LES)収縮作用を持つ(b)シェーグレン症候群の合併症に胃食道逆流症(GERD)がある(c)食道粘膜障害の内視鏡的重症度は、自覚症状の程度と相関する(d)非びらん性胃食道逆流症はびらん性胃食道逆流症と違い、肥満者に多いという特徴を持つ(e)除菌治療によるピロリ菌感染率低下により、今後、患者数は減少すると予想されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第8回 消化器(肝胆膵)】 全8問肝臓については、各々の肝炎ウイルスの特徴と肝細胞がんの新たな治療アルゴリズムを確認しておきたい。膵臓については、膵炎の新たなガイドラインについて出題される可能性があるので、一読の必要がある。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)肝炎について正しいものはどれか?1つ選べ(a)急性肝炎でAST(GOT)>ALT(GPT)は、極期を過ぎて回復期に入ったことを示している(b)de novo B型肝炎は、HBV既往感染者(HBs抗原陰性・HBc抗体陽性・HBs抗体陽性)にステロイドや免疫抑制薬を使用した際にHBV再活性化により肝炎を発症した状態であり、通常のB型肝炎に比べて劇症化や死亡率は低い(c)HBVゲノタイプC感染に伴うB型急性肝炎では、肝炎が遷延もしくは慢性化する可能性がほかのゲノタイプよりも高い(d)B型急性肝炎とキャリアからの急性発症との鑑別にIgM-HBc抗体価が使用される(e)HBs抗原陽性血液に曝露した場合の対応として、 被曝露者がHBs抗原陰性かつHBs抗体陰性であれば十分な水洗いと曝露時のワクチン接種ならびに72時間以内のB型肝炎免疫グロブリン(HBIG)が推奨されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第9回 血液】 全7問血液領域については、何といっても白血病が設問の中心である。認定内科医試験では、治療よりも染色の特徴、検査データ、予防因子についてよく出題される傾向がある。このほか、貧血に関する出題も多いので、しっかりと押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)急性白血病について正しいものはどれか?1つ選べ(a)急性骨髄性白血病(AML)MO・M5b・M7では、MPO染色陰性であるため、注意する必要がある(b)急性前骨髄球性白血病(APL)では、白血病細胞中のアズール顆粒内の組織因子やアネキシンIIにより、播種性血管内凝固症候群(DIC)を高率に合併する(c)AMLのFAB分類M5では、特異的エステラーゼ染色・非特異的エステラーゼ染色とも陽性を示す(d)AMLの予後不良因子は、染色体核型がt(15:17)・t(8:21)・inv(16)である(e)ATRAを用いた治療中にレチノイン酸症候群または分化症候群を発症した場合、治療中断による白血病増悪を考え、ステロイド併用などを行いつつ治療を継続すべきである例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第10回 循環器】 全9問循環器領域については、弁膜症や心筋梗塞など主要疾患の診断確定に必要な身体所見と検査所見をしっかり押さえることが重要である。高血圧や感染性心内膜炎の問題は毎年出題されているので、フォローしておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)弁膜症について正しいものはどれか?1つ選べ(a)僧帽弁狭窄症(MS)は、本邦では高齢化に伴い近年増加傾向である(b)僧帽弁狭窄症(MS)では、拡張期ランブルを聴診器ベル型で聴取する(c)僧帽弁狭窄症(MS)では、心音図でQ-I時間が短いほど、II-OS時間が長いほど重症と判定する(d)僧帽弁狭窄症(MS)の心臓超音波検査では、僧帽弁前尖の拡張期後退速度(DDR)の上昇を認める(e)僧帽弁逸脱症(MVP)は肥満体型の男性に多く認める例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第11回 神経】 全8問神経領域については、今年度も「脳卒中治療ガイドライン2015」と血栓溶解療法の適応に関する出題が予想される。各神経疾患における画像所見、とりわけスペクトとMIBGシンチグラフィは毎年出題されている。アトラス等でしっかりと確認しておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)脳梗塞について正しいものはどれか?1つ選べ(a)心原性脳塞栓症は、階段状増悪の経過をとることが多い(b)一過性脳虚血発作(TIA)で一過性黒内障の症状を認めた場合、椎骨脳底動脈系の閉塞を疑う(c)TIAを疑う場合のABCD2スコアは、A:Age(年齢)、B:BP(血圧)、C:Consciousness level(意識障害の程度)、D:duration(持続時間)とdiabetes(糖尿病の病歴)の5項目をスコアリングし、合計したものである(d)CHADS2スコア1点の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の脳卒中発症予防には、ワルファリンによる抗凝固療法が勧められている(e)血栓溶解療法(アルテプラーゼ静注療法)は、血小板8万/mm3では適応外である例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第12回 総合内科/救急】 全5問総合内科/救急では、「心肺蘇生ガイドライン2015」や、JCS・GCSスコアリング、確率計算の出題が予想される。2016年12月に「日本版敗血症診療ガイドライン2016」が発表されたので、内容を押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)事前確率25%で感度60%・特異度80%の検査が陽性であった場合の正しい事後確率はどれか?1つ選べ(a)15%(b)20%(c)50%(d)60%(e)80%例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【例題の解答】第7回:(b)、第8回:(d)、第9回:(b)、第10回:(b)、第11回:(e)、第12回:(c)【第1回】~【第6回】は こちら

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鶏卵アレルギー予防、生後6ヵ月から微量鶏卵摂取を推奨 日本小児アレルギー学会提言

 6月16日、日本小児アレルギー学会から「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」が公表された。提言では、鶏卵アレルギー発症予防の方策として、アトピー性皮膚炎の乳児において、医師の管理のもと生後6ヵ月から微量の鶏卵摂取を推奨。鶏卵摂取はアトピー性皮膚炎が寛解した上で進めることが望ましいとしている。この提言は2016年に発刊された「食物アレルギー診療ガイドライン2016」および国立成育医療センターが報告したPETITスタディに基づく。 なお、すでに鶏卵アレルギーの発症が疑われる乳児に鶏卵摂取を促すことは極めて危険として、これに関しては「食物アレルギー診療ガイドライン2016」に準拠した対応を求めている。また、アトピー性皮膚炎に罹患していない乳児の鶏卵摂取については「授乳・離乳の支援ガイド2007」を参照するよう勧めている。

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ここが知りたい!高齢者糖尿病診療ハンドブック

高齢者糖尿病患者を診療するために必要な経験的知識を詰め込みました全患者の約半数を高齢者が占める糖尿病。認知・身体機能が低下した患者に適切な治療を行うには、医師・医療者が高齢者の特徴を踏まえた知識とノウハウを身につける必要があります。学会からEvidenceに基づくガイドラインが公表されるのと軌を一にして、Experienceに根差す実践的な考え方を提示したのが本書です。『ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック』の姉妹書の登場です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    ここが知りたい!高齢者糖尿病診療ハンドブック定価3,200円 + 税判型A5判頁数190頁発行2017年5月監修横手 幸太郎編著栗林 伸一/岩岡 秀明Amazonでご購入の場合はこちら

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2017年度認定内科医試験、直前対策ダイジェスト(前編)

【第1回 膠原病/アレルギー】 全13問膠原病/アレルギー領域は、アップデートが頻繁な分野でキャッチアップしていくのが大変だが、それだけに基本的なところで確実に得点することが重要となってくる。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)これらの疾患とCoombsとGell分類の組み合わせで正しいものはどれか?1つ選べ(a)血清病 ― I型(b)クリオグロブリン血症 ― II型(c)特発性血小板減少性紫斑病 ― III型(d)アレルギー性接触皮膚炎 ― IV型(e)過敏性肺臓炎 ― I+IV型例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第2回 感染症】 全9問感染症領域については、時事問題や感染対策、予防に関する問題がよく出題される傾向がある。代表的な感染症に加え、新興・再興感染症の感染対策についてもしっかり押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)感染症について正しいものは次のうちどれか?1つ選べ(a)中東呼吸器症候群(MERS)は2類感染症であり、致死率は50%を超えるとされている(b)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は4類感染症に指定されており、マダニを媒介としヒト-ヒト感染の報告はない(c)デング熱は4類感染症に指定されており、前回と異なる血清型のデングウイルスに感染した場合、交差免疫により不顕性感染となることが多いと報告されている(d)ジカ熱は4類感染症に指定されており、デングウイルス同様ネッタイシマカやヒトスジシマカを媒介とし、ギラン・バレー症候群のリスクとなる(e)カルバぺネム耐性腸内細菌科細菌は5類全数把握疾患に指定されており、保菌者も届出が必要とされる例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第3回 呼吸器】 全10問呼吸器の分野については、レントゲンやCTなどの画像から診断を回答させる問題が増えている。アトラス等で疾患別の画像所見をしっかりと確認しておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)次の記載で正しいものはどれか?1つ選べ(a)成人の急性上気道炎の原因として最も多いものはRSウイルスである(b)Centor criteriaは次の通りである1)38℃以上の発熱、2)基礎疾患なし、3)圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹、4)白苔を伴う扁桃腫脹で行う溶連菌感染スコアリング(c)Ludwig’s anginaは菌血症による感染性血栓性頸静脈炎のことである(d)レミエール症候群は、Fusobacterium necrophorumなど嫌気性菌によるものが多い(e)初診外来で白苔を認める急性化膿性扁桃腺炎患者にアモキシシリンで治療した例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第4回 腎臓】 全7問腎臓領域については、ネフローゼ症候群に関する出題が多く、細部まで問われる傾向がある。とくにネフローゼ症候群に関してはしっかりと押さえておきたいところである。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)急性腎不全(ARF)と急性腎障害(AKI)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)「急性腎障害のためのKDIGO診療ガイドライン」ではAKIの定義として、24時間以内に血清Cr値が0.3mg/dL以上上昇、尿量<0.5mL/kg/時の状態が12時間以上持続する、という項目がある(b)FENa(Na排泄率)2.0%は腎前性腎不全を考える(c)急性尿細管壊死では、多尿が1~2週間持続し、尿中Naは20mEq/L以下であることが多い(d)急性尿細管壊死は消化管出血を合併することが多く、貧血になりやすい(e)尿中好酸球は、薬剤性急性尿細管間質性腎炎で検出され、その診断に有用なバイオマーカーである例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第5回 内分泌】 全10問内分泌領域については、診断のための検査についての出題が多い。とくに甲状腺と副腎について問われることが多く、知識の整理が必要である。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)グレーブス病(バセドウ病)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)バセドウ病に認めるMerseburg3徴は、甲状腺腫・眼球突出・限局性粘液水腫である(b)アミオダロン、インターフェロン製剤は、誘発因子として報告されている(c)甲状腺眼症を合併している患者の治療の第1選択は131I内用療法である(d)抗甲状腺薬にはチアマゾール(MMI)とプロピルチオウラシル(PTU)があり、妊娠・授乳中の患者はMMIの使用が推奨されている(e)131I内用療法の効果は早く、開始後1週間以内に治療効果を認める例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第6回 代謝】 全10問代謝領域については、治療薬について細部まで聞かれる傾向がある。メタボリックシンドロームとアディポカインは毎年出題されるので、しっかり押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)1型糖尿病について正しいものはどれか?1つ選べ(a)家族歴は2型糖尿病より1型糖尿病に多く認める(b)1型糖尿病の死因で最多は感染症によるものである(c)緩徐進行1型糖尿病は、できるかぎり経口糖尿病薬で治療を行い、インスリン導入を遅らせるべきである(d)劇症1型糖尿病は、膵島関連自己抗体陽性の小児に発症することが多い(e)劇症1型糖尿病は、血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)の上昇を認めることが多い例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【例題の解答】第1回:(d)、第2回:(d)、第3回:(d)、第4回:(d)、第5回:(b)、第6回:(e)

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メトホルミン長期投与が1型糖尿病の心血管リスク削減か: REMOVAL試験

 メトホルミンが1型糖尿病患者においても血糖値を改善し、インスリン必要量を減少させる可能性が報告されているが、心血管系のベネフィットについては明らかになっていない。心血管リスクがある成人1型糖尿病患者を対象に、メトホルミンの心血管障害の軽減作用を評価したREMOVAL試験の結果、ADAのガイドラインで提案されている血糖コントロールに対する効果は持続的なものではなく、むしろLDLコレステロール削減や動脈硬化予防など、心血管系のリスク管理において役割を果たす可能性が明らかとなった。この結果は第77回米国糖尿病学会(ADA)年次集会で報告され、論文がLancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版に6月11日同時掲載された。 REMOVAL試験は、5ヵ国(オーストラリア、カナダ、デンマーク、オランダ、英国)、23の病院または診療所で、5年以上の1型糖尿病罹患歴があり、10の特定の心血管リスク因子(BMI≧27kg/m2、HbA1c値> 8.0%、強いCVDの家族歴等)のうち少なくとも3つを持つ、40歳以上の1型糖尿病患者を対象に行われた二重盲検プラセボ対照試験である。被験者は1日2回経口メトホルミン1,000mg投与群(点滴によるインスリン治療と併用)またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、メトホルミンがアテローム性動脈硬化症を減少させるかどうかについて、頸動脈内膜中膜肥厚(CIMT)の変化によって評価する3年間の追跡調査が行われた。 主要アウトカムは1年ごとの平均Far Wall CIMT値の変化で、反復測定に基づく修正intention-to-treat解析が行われた。副次アウトカムは、HbA1c値、LDLコレステロール、推定糸球体濾過量(eGFR)、体重、インスリン必要量、微量アルブミン尿(報告なし)、網膜症、および内皮機能とされた。 主な結果は以下のとおり。・3ヵ月間のリスク因子と血糖値の最適化期間を経て、428例の患者のうち、219例がメトホルミン投与群、209例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。・平均CIMT値はメトホルミンによる有意な減少はなかったが(約-0.005mm/年、95%信頼区間[CI]:-0.012~0.002、p=0.1664)、最大CIMT値(3次アウトカム)は有意に減少した(-0.013mm/年、95%CI :-0.024~0.003、p=0.0093)。・メトホルミン投与群で、3年後のHbA1c値(ベースラインでのメトホルミン投与群:平均8.1%[SD 0.9]、プラセボ群:8.0%[SD 0.8])は減少していたが(-0.13%、95%CI:-0.22 ~-0.037、p=0.0060)、これは最初の3ヵ月以内の減少によるもので(-0.24%、-0.34~-0.13、p<0.0001)、その後は減少しなかった(p=0.0163 for visit-by-treatment interaction)。・メトホルミン投与群で、3年後の体重(-1.17kg、95%CI:-1.66~-0.69、p<0.0001)およびLDLコレステロール(-0.13mmol/L、95%CI:-0.24~-0.03、p=0.0117)が減少したが、eGFRは増加した(4.0mL/分/1.73m2、95%CI:2.19~5.82、p<0.0001)。またインスリン必要量の低下はみられなかった(体重1kg当たり-0.005単位、95%CI:-0.02~0.012、p=0.545)。・反応性充血指数または網膜症の有無により評価された内皮機能に影響はなかった。・治療中止はメトホルミン投与群59例(27%)、プラセボ投与群26例(12%)であり、主な原因は消化器系副作用の増加によるもので、メトホルミンによる低血糖症の増加はみられなかった(p=0.0002)。・メトホルミン投与群で5例、プラセボ群で2例が死亡したが、主任研究者により、本研究における治療との関連は判断されなかった。■参考ADA2017 Press ReleaseREMOVAL試験(Clinical Trials.gov)

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うつ病評価尺度HAM-D6の有効性は

 世界でうつ病の重症度に関する情報を含む項目を特定するための調査では、ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HAM-D17)に由来した、HAM-D6が使用されるようになり、幅広い研究に用いられてきた。デンマーク・コペンハーゲン大学のN. Timmerby氏らは、HAM-D17およびモントゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)と比較した、HAM-D6の臨床的特性のシステマティックレビューを行った。Psychotherapy and psychosomatics誌86号の報告。 PubMed、PsycInfo、EMBASEのデータベースより、システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目のガイドラインに従ってシステマティックに検索を行った。非精神病性の単極性または双極性うつ病におけるHAM-D6およびHAM-D17またはMADRSの臨床的妥当性に関するデータを報告した研究を抽出した。主な結果は以下のとおり。・検索により681件が特定され、そのうち51件が包含基準を満たした。・文献によると、HAM-D6がHAM-D17およびMADRSよりも優れていた点は以下であった。 ●scalability(各項目は症候群の重症度に関する固有の情報を含む) ●transferability(scalabilityは、時間経過とともに、性別、年齢、抑うつ症状のサブタイプに関係なく一定) ●responsiveness(治療中の重症度の変化に対する感受性) 著者らは「HAM-D6の臨床的特性は、HAM-D17およびMADRSよりも優れていた。HAM-D6の有効性は研究と臨床の両面で実証されているため、スケールをより一貫して使用することにより、ある設定から他の設定への結果の置き換えが容易になる」としている。■関連記事 たった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能 うつ病の再発を予測する3つの残存症状:慶應義塾大 うつ病診断は、DSM-5+リスク因子で精度向上

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夏の行事の前に今から夜尿症を治す

 フェリング・ファーマ株式会社は、5月30日の「世界夜尿症(おねしょ)デー」を前に、夏のお泊まり行事の不安に関する親子アンケートを実施。その結果を発表した。意外と多い夜尿症の悩み 夜尿症(5歳までは「おねしょ」)は、わが国の小中学生の罹病率が6.4%と推察され、アレルギー疾患に次いで頻度の高い慢性小児疾患である。その治療は保険診療の対象となっている。 夜尿症の原因として、第一に、夜間の抗利尿ホルモンの分泌が不十分なため、就寝中に尿の生成が増加し夜間多尿となり、尿量が夜間の機能的膀胱容量を超えてしまうこと、第二に、就寝中の膀胱容量低下によるものが挙げられ、これらのいずれか、または両方、さらに尿意による覚醒ができないことなども原因として指摘されている。 治療では、生活改善、薬物療法、アラーム療法(行動療法)などが行われている。生活改善指導として、規則正しい生活、水分/塩分摂取への配慮、就寝前の排尿といった取り組みを行うことで、1~2割程度の子供の夜尿が消失する。薬物治療は、抗利尿ホルモン製剤であるデスモプレシン(商品名同)などがあり、「夜尿症診療ガイドライン2016」では第1選択薬とされている。アラーム療法は、夜尿をセンサーが察知し、アラームや振動により覚醒を促す機器を用いるものである。前述のガイドラインでは、これらを組み合わせて治療することを記している。子供の3人に1人はおねしょが心配 「おねしょに関する調査」は、2017年4月に全国の小学校1~3年生の子供とその保護者500組1,000名にインターネットアンケートで実施された。 これによると子供(n=500)の27%が「おねしょ」について「とても心配/心配」と回答し、上位となった項目「ひとりで眠れるか」(同29.4%)、「ホームシックにならないか」(同28.4%)と比較しても割合に差がなく、心配の度合いが高いことが示された。そして、「おねしょが心配」と回答した子供の保護者(n=217)に対策の実施状況を聞いたところ、34.1%しか対策を実施していないことがわかった。具体的な対策(n=96)としては、(複数回答で)寝る前の水分の摂取制限(61.5%)が一番多く、おむつの使用(38.5%)、夜間起こしての排尿(25.0%)が挙げられ、病院へ連れていくという回答はわずか7.3%であった。 保護者(n=500)に「小児科で相談・治療できることを知っているか」の質問では、44.6%が「知っている」と答え、「保険診療できることを知っているか」の質問では、32.0%しか「知っている」と回答しなかったことで、医療機関で受診できることが知られていない状況が明らかとなった。「夜尿症」の相談はどこで? 同社では、夜尿症という疾患啓発のためのプロジェクト「おねしょ卒業!プロジェクト」を企画運営し、情報提供WEBサイト「おねしょドットコム」上で正しい知識や対応方法について発信を行っている。 通常、夜尿症は、治療を始めてから効果が表れるまで少なくとも3ヵ月~半年程度かかることから、夏の帰省旅行やキャンプなど子供たちの宿泊を伴う行事が始まる前に、早めに小児科医などに相談を行い、治療が必要なケースかどうかを確認してほしいと期待を寄せている。■参考 おねしょドットコム■関連記事 夜尿症推計78万人のうち受診は4万人

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高齢者糖尿病診療ガイドライン2017発刊

 「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」による「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」(2016年5月)を受け、2017年5月開催の第60回 日本糖尿病学会年次学術集会において、『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』(編・著 日本老年医学会・日本糖尿病学会)が書籍として発刊された。高齢者糖尿病診療ガイドライン2017はCQ方式で15項目に分けて記載 『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』はクリニカルクエスチョン(以下「CQ」)方式でまとめられ、CQ一覧を冒頭に示し、これに対する要約、本文、引用文献(必要により参考資料)のフォーマットで記されている。そして、可能な場合はエビデンスレベル(レベル1+および1~4)、推奨グレード(AおよびB)を付している。 『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』の具体的な内容としては、I.高齢者糖尿病の背景・特徴、II.高齢者糖尿病の診断・病態、III.高齢者糖尿病の総合機能評価、IV.高齢者糖尿病の合併症評価、V.血糖コントロールと認知症、VI.血糖コントロールと身体機能低下、VII.高齢者糖尿病の血糖コントロール目標、VIII.高齢者糖尿病の食事療法、IX.高齢者糖尿病の運動療法、X.高齢者糖尿病の経口血糖降下薬治療とGLP-1受容体作動薬治療、XI.高齢者糖尿病のインスリン療法、XII.高齢者糖尿病の低血糖対策とシックデイ対策、XIII.高齢者糖尿病の高血圧、脂質異常症、XIV.介護施設入所者の糖尿病、XV.高齢者糖尿病の終末期ケア、と大きく15項目に分けて記載されている。時間がないときは高齢者糖尿病診療ガイドラインの要約だけでも通読 高齢者糖尿病患者に特有の身体的特徴などを踏まえて、『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』では次のように示されている。たとえば「低血糖」について、「高齢者糖尿病の低血糖にはどのような特徴があるか?」のCQに対し、要約では「高齢者の低血糖は、自律神経症状である発汗、動悸、手のふるえなどの症状が減弱し、無自覚低血糖や重症低血糖を起こしやすい。低血糖の悪影響が出やすい」と端的に示されている。また、食事療法の「高齢者における食事のナトリウム制限(減塩)は有効か?」では、「高齢者においても減塩は血圧を改善する(推奨グレードA)」と記されており、運動療法の「高齢者糖尿病において運動療法は血糖コントロール、認知機能、ADL、うつやQOLの改善に有効か?」では、「高齢者糖尿病でも定期的な身体活動、歩行などの運動療法は、代謝異常の是正だけでなく、生命予後、ADLの維持、認知機能低下の抑制にも有効である(推奨グレードA)」と記載されている。 今後、さらに増えると予測される高齢者糖尿病患者の診療に、『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2017』をお役立ていただきたい。

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長門流 認定内科医試験BINGO! 総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.3

第9回 血液第10回 循環器第11回 神経第12回 総合内科/救急 認定内科医試験に向けた全3巻の実践講座の第3巻です。重要ワードは「頻出」。長年試験問題を分析し続けている長門先生が、実際の試験問題に近い予想問題を作成し、頻出ポイントをテンポよく解説します。もちろん最新のガイドラインのアップデートにも対応。各科目で試験に問われやすいポイントを押さえていますので、認定内科医試験はもちろん、総合内科専門医試験を受ける先生方も確実に得点アップにつながります。年々難しくなっているといわれる内科系試験。このDVDでぜひ合格を勝ち取ってください。第9回 血液血液領域の中心はなんといっても白血病です。染色の特徴や検査データ、予後因子をしっかり確認しておきましょう。また、貧血に関する問題も例年多く出題されています。この番組で頻出ポイントをチェックして、効率よく勉強を進めてください。第10回 循環器循環器の領域では、弁膜症や心筋梗塞などの主要疾患はもちろん、高血圧や感染性心内膜炎の問題も毎年出題されています。長年試験問題を分析し続けている長門先生だからこそわかる頻出ポイントを確認して、得点アップにつなげましょう。第11回 神経神経の領域では、「脳卒中治療ガイドライン2015」からの出題が予想されます。後期高齢者の降圧目標や脳卒中のリスク因子は必ず押さえておきましょう。また、認知症スクリーニング検査の点数で認知症の有無を判定させる問題も毎年出題されています。長門流の予想問題を通して、試験の「出るところ」を確認してください。第12回 総合内科/救急総合内科/救急は出題数は少ないですが、確率統計に関する計算のように毎年出題される問題があるので、確実に点を取れるようにしておきましょう。また「心肺蘇生ガイドライン2015」と「日本版敗血症診療ガイドライン2016」からの出題も予想されます。全13科目の「頻出」「ポイント」「アップデート」のすべてがわかるこの番組で効率的に勉強し、ぜひ合格を勝ち取ってください。

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金子英弘のSHD intervention State of the Art 第11回

左室機能低下を伴う中等度ASの予後は!?今回は、今後の心構造疾患(SHD)interventionの適応を考えるうえでとても重要な中等度大動脈弁狭窄症(AS)の予後に関係する論文を紹介します。1)これまで重症大動脈弁狭窄症(AS)については自然経過が不良であることから2)、症候性の症例に対しては積極的に弁置換術が推奨されてきました3,4)。しかしながら中等度ASについては、その自然経過が明らかでなく、治療指針も明確には確立されていません。2014年に発表されたAHA/ACCガイドラインでも中等度ASについては他の心臓手術を行う際に同時手術を施行することがClass IIaの推奨となっている4)のみで、中等度AS単独への積極的な治療は推奨されていません。Gilsらによって行われた本研究1)では、米国、カナダ、オランダの4施設から得た、左室機能低下(LVEF<50%)を合併した中等度AS(AVA:1.0~1.5cm2)の305症例の予後を、レトロスペクティブに調査しています。登録された305例の平均年齢は73歳、75%が男性で、7割以上の症例が症候性(NYHA心機能分類II以上)の心不全を有し、平均のLVEFは38%でした。4年の観察期間中に主要複合エンドポイント[全死亡・AVR(SAVRおよびTAVI)・心不全による入院の複合]は61%(全死亡は36%)に発生し、その約4割は観察開始から1年以内に発生していました(図1)。主要複合エンドポイントの主な予測因子としては男性、NYHA心機能分類III/IV、最大大動脈弁血流速度などが示されました。(登録時のLVEFは予後とは関連していませんでした。)画像を拡大する図1. 主要複合エンドポイント[全死亡・AVR(SAVRおよびTAVI)・心不全による入院の複合]の発生率本研究によって左室機能低下を合併した中等度ASの予後が明らかになり、予測された結果ではありますが、心不全症状の程度が予後と大きく関連すること(図2)が示されました。画像を拡大する図2. NYHA心機能分類ごとの主要複合エンドポイント発生率今回の対象ではAVR(SAVRおよびTAVI)は24%の症例に施行されていました。本研究から、中等度ASに対するAVRの有効性について結論を出すことはできません。ただ、従来は外科的治療(SAVR)しか存在しなかったASの治療においてTAVIがより安全で低侵襲に、そして十分な有効性をもって行えるようになり、急速に浸透していることを考えれば、中等度のASで左室機能が低下し、心不全症状も合併しているような症例にはより積極的な早期の治療介入(TAVIあるいはSAVR)が患者さんの予後改善につながるのではと期待されます。現在、左室機能低下および心不全を合併した中等度ASに対して至適薬物治療に加えてTAVIを行う群と至適薬物治療群の予後を比較した無作為化比較試験であるTAVR UNLOAD試験(NCT02661451)5)が進行中であり、この結果次第ではさらなるTAVIの適応拡大につながる可能性があります。TAVIに代表される、弁膜症などのSHDに対する低侵襲なカテーテル治療は、これまで有効な治療法が確立されていなかった多くの患者さんの福音になる可能性をまだまだ残しています。今回取り上げた研究のように、対象を明確にして自然予後や予測因子を示すことによって、これまで有効な治療が行われてこなかった可能性のある患者層を明確にすることができます。このような研究を通して、個々の患者さんごとにSHD interventionなどの新規治療を含めた最適な治療方針を見いだしていくことが、これからの循環器学に求められる点だと考えます。1)van Gils L, et al. J Am Coll Cardiol. 2017;69:2383-2392.2)Ross J Jr, et al. Circulation. 1968;38:61-67.3)Vahanian A, et al. Eur Heart J. 2012;33:2451-2496.4)Nishimura RA, et al. J Am Coll Cardiol. 2014;63:2438-2488.5)Spitzer E, et al. Am Heart J. 2016;182:80-88.

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潰瘍性大腸炎の寛解導入と寛解維持におけるトファシチニブの有用性と安全性(解説:上村 直実 氏)-683

 潰瘍性大腸炎(UC)に関しては寛解導入および寛解維持を目的として、5-アミノサリチル酸(5-ASA)、ステロイド、免疫調節薬、抗TNFα薬、血球成分除去療法などによる治療が行われているが、今回、非受容体型チロシンキナーゼでサイトカイン受容体と関連するJanus kinase(JAK)の選択的阻害薬であるトファシチニブに関する検討結果が報告された。 抗TNFなどの抗体製剤の開発が進むなか、経口低分子JAK阻害薬が潰瘍性大腸炎の寛解導入にも寛解維持にもプラセボに比べて有意に有効であったが、安全性には今後の検討が必要との成績であった。1年前のNEJM誌に報告された、スフィンゴシン-1-リン酸受容体のサブタイプ1と5の経口作動薬であるozanimodの8週時点での臨床的寛解率と単純に比較すると、活動性UCの寛解導入における有用性が期待されるが、長期使用を要する寛解維持に用いることはまだ躊躇される研究結果である。 わが国におけるトファシチニブは2013年に慢性関節リウマチ(RA)に対して保険承認されている薬剤で、低分子医薬品であるため生物学的製剤とは異なり経口投与が可能である点が特徴的である。一方、副作用として結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染などの重篤な感染症が報告されており、日本リウマチ学会のガイドラインにも「MTXを投与できない患者は原則として対象としないことが望ましい」と明記されている。今回の研究でもプラセボに比べて感染症や帯状疱疹が明らかに多く出現していることから、UCの寛解維持療法に使用するには長期の安全性確認が必須と思われる。 トファシチニブはUCに対する有用性の高い治療薬として期待されるものの、本研究期間の短さおよび有効率の低さなどから、トファシチニブの臨床的有用性を確認するためには長期間のリスク・ベネフィットを明らかにする臨床試験が必要であると考えられた。

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高齢入院患者で担当医の年齢が上がるほど高い死亡率/BMJ

 内科疾患で緊急入院した65歳以上の患者の30日死亡率は、年間の担当患者数が多い医師を除き、若手医師の治療を受けた患者よりも年長医師の治療を受けた患者で高かった。米国・ハーバード公衆衛生大学院の津川友介氏らが、米国の急性期病院に入院したメディケア受給高齢患者のデータを用い、担当医の年齢で転帰に違いがあるかを検証し、報告した。これまでの研究で、年長医師は若手医師と比べて、医学的知識が乏しく、ガイドラインに準じた標準治療を行わないことが多く、診断・スクリーニング・予防的治療の質も劣ることが示唆されていた。しかし、医師の年齢が死亡率など患者の転帰に及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2017年5月16日号掲載の報告。65歳以上の入院患者約74万人とその担当医約2万人のデータを解析 研究グループは、Medicare Inpatient Carrier and Medicare Beneficiary Summary Files、Doximityにより収集された医師データ、および米国病院協会年次調査の複数のデータベースを用い、2011年1月1日~2014年12月31日に内科疾患で救急病院に入院した、65歳以上のメディケア出来高払い受給者のうち無作為に抽出した73万6,537人、ならびにその患者を治療したホスピタリスト(勤務予定に基づいて割り当てられ診療を行う、入院患者の治療に特化した総合診療医)1万8,854人(年齢中央値41歳)のデータを解析した。 主要評価項目は患者の30日死亡率、退院後30日再入院率、治療費で、それぞれ医師の年齢との関連を調べた。患者特性(年齢、性別、人種、主要診断、併存疾患、世帯収入など)は、医師の全年齢層で類似していた。担当患者数が多い医師を除き、医師の年齢が上がるほど死亡率が上昇 患者特性、医師特性(性別、卒業した医学部)、ならびに病院を固定効果(同一病院内の医師同士を比較)として補正した後の患者の30日死亡率は、治療を行った医師の年齢が40歳未満で10.8%(95%信頼区間[CI]:10.7~10.9)、40~49歳11.1%(95%CI:11.0~11.3、対40歳未満の補正後オッズ比:1.04、p<0.001)、50~59歳11.3%(11.1~11.5、1.07、p<0.001)、60歳以上12.1%(11.6~12.5、1.17、p<0.001)であった。しかし、担当患者数が多い(年間>200例)医師では、医師の年齢と患者の死亡率との間に関連性はなかった。 再入院率は、医師の年齢による違いは認められなかった。一方で、治療費は医師の年齢が上がるにつれわずかに上昇した。 同様の結果は、一般内科医全体や複数の感度解析(緊急病状の患者、予定入院患者、20~64歳の患者など)においても確認された。 なお、著者は研究の限界として、医師の年齢は医師能力の関連要因の1つにすぎないこと、非メディケア集団や、外科医または他の専門医による治療を受けた患者などには一般化できない可能性を挙げている。

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認知症のBPSD、かかりつけ医は抗精神病薬を控えて

 2017年5月17日、日本老年精神医学会は、名古屋市で6月14~15日に開催される第32回日本老年精神医学会を前に、都内においてプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、新井平伊氏(順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学 教授/同学会 理事長)が、同学会の主な活動として、2016年に発表した「かかりつけ医のためのBPSDに対する向精神薬使用ガイドライン第2版」について、患者家族が最も苦慮する症状の1つである興奮性BPSDに対する薬物療法に焦点を絞り、その要点を紹介した。興奮性BPSDに、かかりつけ医が用いるべき薬剤は 抗精神病薬は、数多くの臨床試験によって有効性が実証されており、主に専門医を対象とした「認知症疾患治療ガイドライン2010」では、エビデンスレベルの高い選択肢として推奨されている。一方、実臨床で用いられるメマンチンやバルプロ酸や抑肝散などは、臨床試験数が少ないためエビデンスレベルが低く、場合によっては削除されることもある。加えて、認知症に対する抗精神病薬の使用は、死亡リスクを高めるとして、FDAおよび厚労省から警告が発出されている。このように研究と臨床の間にはギャップがあり、認知症を専門としないかかりつけ医においては、医療安全を最優先に考えた薬剤選択が必要であるとし、下記の選択基準を挙げた。(1)抗精神病薬を第1選択としない(警告が発出されている薬剤を第1選択としない)(2)初めに認知症に適応を有するメマンチンあるいはコリンエステラーゼ阻害薬が、次いでバルプロ酸、抑肝散が推奨される(3)上記の薬剤でコントロールが難しい場合は、専門医との連携を推奨する バルプロ酸や抑肝散については、臨床試験の数が少ないが、実臨床では有効であったとの報告を踏まえ、抗精神病薬を用いる前の選択肢として挙げている。また、メマンチンとコリンエステラーゼ阻害薬は、両剤ともに興奮性BPSDを発症・増悪させる可能性に留意する必要があると付け加えた。薬剤によるBPSDではないか、まず確認を メマンチンやコリンエステラーゼ阻害薬のほかにも、興奮性BPSDの症状を引き起こす薬剤が複数あるため、今回の改訂では治療アルゴリズムにおける“薬剤性の除外”を強調した。BPSD治療アルゴリズムでは、非薬物的介入を最優先で行うこととし、薬物療法を開始する際の確認要件に以下の4項目を挙げている。(1)ほかに身体的原因はない(とくに感染症、脱水、各種の痛み、視覚・聴覚障害など)(2)ほかの薬物の作用と関係ない(3)服薬順守に問題ない(4)家族との間で適応外使用に関するインフォームドコンセントが得られている BPSD様の症状を引き起こす可能性のある薬剤には、上記の認知症治療薬以外にもH2ブロッカーや第1世代抗ヒスタミン薬などが挙げられている。該当する薬剤の詳細は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」(日本老年医学会)の参照を勧めている。抗精神病薬を使用する場合は、10週間程度に BPSDに対する抗精神病薬の使用に慎重になるべき理由として、死亡リスクの増加がある。新井氏らが2016年に発表した1万症例のアルツハイマー病患者を対象とした前向きコホート研究において、新規に抗精神病薬を服用した患者では10週以降に死亡率が上昇したと報告している1)。この点から、やむを得ず新規に抗精神病薬を投与する場合は、10週間ほどに留め、常に減量・中止を考慮するのが望ましいとした。また、6ヵ月以上服用中の症例は比較的安全であるが、リスクベネフィットの観点からの判断が求められる。 最後に新井氏は、「認知症患者に対する抗精神病薬の使用による死亡リスクについては、FDAおよび厚労省の警告発出以来ほぼ11年が経過しているが、現在も十分な配慮が必要であり、非薬物療法および抗精神病薬以外の選択肢を優先すべきだ」と改めて強調した。関連サイト日本老年精神医学会厚生労働省 かかりつけ医のためのBPSDに対する向精神薬使用ガイドライン第2版参考文献1)Heii Arai, et al. Alzheimers Dement. 2016;12:823-830.

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長門流 認定内科医試験BINGO! 総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.2

第5回 内分泌 第6回 代謝 第7回 消化器(消化管)第8回 消化器(肝胆膵) 認定内科医試験に向けた全3巻の実践講座の第2巻です。重要ワードは「頻出」。長年試験問題を分析し続けている長門先生が、実際の試験問題に近い予想問題を作成し、頻出ポイントをテンポよく解説します。もちろん最新のガイドラインのアップデートにも対応。各科目で試験に問われやすいポイントを押さえていますので、認定内科医試験はもちろん、総合内科専門医試験を受ける先生方も確実に得点アップにつながります。年々難しくなっているといわれる内科系試験。このDVDでぜひ合格を勝ち取ってください。第5回 内分泌 内分泌の領域では、検査をどの順に進めて診断確定を行うかまで、細かく問われる傾向があります。とくに、甲状腺と副腎について出題が多いので、知識を整理しておきましょう。妊婦や授乳婦への禁忌項目も要チェックです。第6回 代謝代謝領域では、メタボリックシンドロームとアデポカインは近年、毎年出題されています。また、インスリンを含む糖尿病治療薬については細かく問われる傾向があります。薬剤の作用・適応・副作用・特徴をしっかり整理しておきましょう。第7回 消化器(消化管)消化管の領域では、潰瘍性大腸炎とクローン病ついて、毎年出題されています。両疾患の違いもポイントになるので、試験の「出るところ」をしっかり確認して確実に得点をとれるようにしましょう。長門流の予想問題では、新しいガイドラインの改訂にも対応しています。ぜひチェックしてください!第8回 消化器(肝胆膵)肝胆膵の領域では、肝炎ウイルスの特徴、肝細胞がんの新しい治療アルゴリズムについての出題が多い傾向があります。また、2015年に改訂があった「急性膵炎診療ガイドライン」からの出題も予想されます。この番組で頻出ポイントをしっかり押さえて、試験勉強を効率的に行ってください。

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CDC「手術部位感染予防のためのガイドライン」18年ぶりの改訂

 米国疾病管理予防センター(CDC)は、「手術部位感染予防のためのガイドライン」を1999年以来18年ぶりに改訂し、エビデンスに基づく勧告を発表した。手術部位感染治療のための人的および財政的負担の増加を背景に、専門家の意見を基に作成された1999年版から、エビデンスベースの新たなガイドラインに改訂された。著者らは「これらの勧告に基づく手術戦略を用いることで、手術部位感染のおよそ半分が予防可能と推定される」と記している。手術部位感染予防のためのガイドラインはコアセクションと人工関節置換術セクションで構成 CDCの医療感染管理諮問委員会(HICPAC)は、1998年から2014年4月の間に発表された論文を対象にシステマティックレビューを実施し、5,000超の関連論文を特定。さらにスクリーニングを行った結果、170の論文を抽出し、エビデンスを評価・分類した。 新しい手術部位感染予防のためのガイドラインは、外科手術全般の手術部位感染予防のための勧告(30件)を含む「コアセクション」と人工関節置換術に適用される勧告(12件)を含む「人工関節置換術セクション」によって構成されている。 改訂された手術部位感染予防のためのガイドラインで更新された勧告の中で主なものは以下のとおり。・手術前、少なくとも手術前夜には、患者は石けん(抗菌性もしくは非抗菌性)または消毒薬を用いたシャワーや入浴(全身)をすべきである。・予防抗菌薬は、公開されている臨床実践ガイドラインに基づいた適用のときのみに投与する。そして、切開が行われるときに、血清および組織における抗菌薬の殺菌濃度が確保されるタイミングで投与する。・帝王切開においては、皮膚切開の前に適切な予防抗菌薬を投与する。・術前の皮膚処置は、禁忌の場合を除き、アルコール系消毒薬を使用して行う。・清潔および準清潔手術では、手術室内で閉創した後はドレーンが留置されていても、予防抗菌薬を追加投与しない。・手術部位感染予防のために、外科切開部に抗菌薬の局所的な適用は行わない。・周術期の血糖コントロールを実施し、すべての患者で血糖の目標レベルを200mg/dL未満として、正常体温を維持する。・全身麻酔を受けており気管内挿管がある正常な肺機能を有する患者では、手術中および手術直後の抜管後に、吸入酸素濃度を増加させる。・手術部位感染予防のために、手術患者への必要な血液製剤の輸血を控える必要はない。 新しい手術部位感染予防のためのガイドラインはJAMA surgeryオンライン版2017年5月3日号に掲載された。

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