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未治療MCLへのイブルチニブを含む1次治療±ASCT、長期解析結果(TRIANGLE)/Lancet

 18~65歳の未治療マントル細胞リンパ腫(MCL)患者において、標準的な免疫化学療法へイブルチニブを追加した治療に、自家造血幹細胞移植(ASCT)を追加する意義を検討した「TRIANGLE試験」の長期追跡評価(55ヵ月)の結果が、ドイツ・LMU University HospitalのMartin Dreyling氏らEuropean Mantle Cell Lymphoma Networkによって報告された。イブルチニブ追加療法群は治療成功生存期間(Failure Free Survival:FFS)のみならず全生存期間(OS)の改善との関連も示された。一方で、イブルチニブ追加療法+ASCT群ではASCT追加のベネフィットは示されず、毒性の増加が認められた。TRIANGLE試験の最初の評価報告(追跡期間中央値31ヵ月)では、標準的な1次免疫化学療法へのイブルチニブ追加はFFSを改善することが示されていたが、さらにASCTを追加すべきかどうかについては議論の余地が残っていた(ジャーナル四天王「未治療MCL、免疫化学療法+イブルチニブ±ASCT(TRIANGLE)/Lancet」)。Lancet誌2026年5月16日号掲載の報告。ASCT+免疫化学療法群、ASCT+免疫化学療法+イブルチニブ群、免疫化学療法+イブルチニブ群に無作為化 TRIANGLE試験は、MCLの治療経験がありASCTが実施可能または実施可能施設と連携する欧州13ヵ国およびイスラエルの165施設(2次または3次医療センター)で実施された第III相の3群無作為化非盲検優越性試験。18~65歳、未治療の病期II~IV期でASCTの適応がある患者を、1対1対1の割合で対照群のA群(ASCT+免疫化学療法群)、試験群のA+I群(ASCT+免疫化学療法+イブルチニブ群)またはI群(免疫化学療法+イブルチニブ群)の3群に無作為に割り付け追跡評価した。無作為化は、コンピュータ生成乱数を用いて行われ、研究グループおよびMCL国際予後指数(Mantle Cell Lymphoma International Prognostic Index:MIPI)リスク分類で層別化された。 A群の治療は、R-CHOP(0日目または1日目にリツキシマブ375mg/m2静脈内投与、1日目にシクロホスファミド750mg/m2、1日目にドキソルビシン50mg/m2、1日目にビンクリスチン1.4mg/m2[最大2mgまで]、1~5日目にprednisone 100mg経口投与)と、R-DHAPまたはR-DHAOx(0日目または1日目にリツキシマブ375mg/m2静脈内投与、1~4日目にデキサメタゾン40mg静脈内または経口投与、2日目に高用量シタラビン2×2g/m2を12時間ごと3時間かけて静脈内投与、これらに加えて1日目に24時間かけてシスプラチン100mg/m2を静脈内投与[R-DHAP]または1日目にオキサリプラチン130mg/m2を静脈内投与[R-DHAOx])を21日間ごと交互に6サイクル行われ、その後にASCTを行った。 A+I群では、経口イブルチニブ(1日560mg)がR-CHOPサイクルの1~19日目(導入療法)に追加され、またASCT後に2年間投与された(維持療法)。 I群では、A+I群同様にイブルチニブが投与された(導入療法と維持療法)が、ASCTは行われなかった。 すべての治療群で国際ガイドラインに従い、リツキシマブ維持療法が許容された。 主要アウトカムはFFSで、3つのペアワイズ片側log-rank検定により統計学的にモニタリングされた。主要解析は、すべての無作為化された患者(プロトコール逸脱の有無は不問)を包含したITTにて行われた。安全性は無作為化され、いずれかの治療フェーズを開始した患者を対象に評価した。4年FFS率、イブルチニブ追加療法へのASCT上乗せ効果は示されず 2016年7月29日~2020年12月28日に870例が無作為化された(A群288例、A+I群292例、I群290例)。無作為化された患者の年齢中央値は57歳(四分位範囲:52~61)、男性が662例(76%)であり、病期IV期の患者が757/869例(87%)、MIPI低リスク504/870例(58%)、中程度236/870例(27%)であった。 追跡期間中央値54.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:54.4~56.0)後、A+I群のI群に対する優越性は示されなかった。4年FFS率はそれぞれ82%(95%CI:78~87)、81%(76~86)であった(ハザード比[HR]:0.86、片側98.33%CI:0.00~1.27、片側p=0.21)。 一方、A群の4年FFS率は70%(95%CI:65~76)であり、A+I群のA群に対する優越性が認められた(HR:0.63、片側98.33%CI:0.00~0.89、片側p=0.0026)。また、初回評価時同様、A群のI群に対する優越性は認められなかった(HR:1.45、片側98.33%CI:0.00~2.02、片側p=0.99)。 4年OS率は、A+I群88%(95%CI:84~92)vs.A群81%(76~85)(HR:0.59、95%CI:0.38~0.92、p=0.0036)、I群90%(87~94)vs.A群81%(76~85)(HR:0.57、95%CI:0.36~0.90、p=0.0019)であり、両イブルチニブ追加療法群ともに、非追加群と有意な差が認められた。イブルチニブを含む導入・維持療法を新たな標準治療とすべき 維持療法または追跡期間中、最も多くみられたGrade3~5の有害事象は血液およびリンパ系障害で、A+I群で127/234例(54%)報告されたのに対して、I群では74/269例(28%)であり、またA群では56/240例(23%)であった。感染症の発現は、A+I群で80/234例(34%)報告されたのに対して、I群では71/269例(26%)、A群では37/240例(15%)であった。 維持療法または追跡期間中、最も多くみられた死亡に至った有害事象は感染症で、A+I群で4/234例(2%)、I群で5/269例(2%)報告された。 これらの結果を踏まえて著者は、「より若いMCL患者に対して、イブルチニブ+R-CHOP+R-DHAP(またはR-DHAOx)による導入療法後、2年間のイブルチニブ維持療法を新たな標準治療として検討すべきである」と述べている。

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大腸がん術後患者の運動プログラム、費用対効果検証でも有益(CHALLENGE)/ASCO2026

 2025年の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)で発表されたCHALLENGE試験は、大腸がん術後患者に対する構造化運動プログラムが生存期間を延長することを示し、NEJM誌に同時掲載されるなど大きな注目を集めた。 CHALLENGE試験では、StageIIIまたは高リスクStageIIの大腸腺がんで切除術を受け、術後補助化学療法を完了した患者を対象に、標準的な経過観察と健康教育資料の提供のみを受ける群、健康教育資料+3年間の構造化運動プログラム(structured exercise program:SEP)を受ける運動群に1対1の割合で割り付けた。主要評価項目である無病生存期間(DFS)は運動群で有意に改善(ハザード比[HR]:0.72)し、全生存期間(OS)も有意に改善(HR:0.63)した。この結果を受け、SEPはNCCNおよびESMOガイドラインに採用された。 今年の米国臨床腫瘍学会(2026 ASCO Annual Meeting)では、本試験の費用対効果解析の結果が報告された。Odette Cancer Centre (カナダ・トロント)のKelvin K. Chan氏による発表において、3年間のSEPは、生存期間を延長するだけでなく医療費削減にもつながり、高い費用対効果を示すことが報告された。今回の解析結果はJournal of Clinical Oncology誌に同時掲載された。 今回の費用対効果解析は、試験開始前から計画されていた副次解析であり、試験参加者全員 (n=889) から前向きに収集されたデータを使用して実施された。カナダの公的医療保険制度の視点から、運動プログラムと対照群を比較し、増分費用、質調整生存年(QALY)、増分費用効用比(ICER)を算出した。主な費用にはSEPの実施費用、再発または新規原発がんの管理費用、薬剤費、入院費が含まれた。不確実性はブートストラップ解析(1,000サンプル)によって評価した。 主な結果は以下のとおり。・3年間のSEP導入に伴う費用は、患者1人当たり2,917カナダドル(約33.5万円、1カナダドル=115円換算)であった。しかし、再発や新規がんに対する治療費および薬剤費の減少によって相殺され、SEP群の総医療費は3万1,957ドル(約367万円)で、対照群よりも1,589ドル(約18万円)低かった。さらにSEP群は生命年(LY)が0.05年、QALYが0.10増加した。すなわちSEPは費用を削減しながら治療効果を高める「dominant strategy(優越戦略)」と評価された。・ブートストラップ解析では、SEPは53%の反復で「費用を削減しながら効果を高める」優越戦略と判定された。また、1QALY当たり5万ドルを費用対効果の閾値とした場合、80%で費用対効果が認められた。・10年間の長期シナリオ解析では、SEP群のコスト削減額は3,938ドル(約45万円)に拡大した。・労働生産性損失を加味した社会的視点からの解析でも、増分費用効用比(ICUR)は1QALY当たり4,405ドル(約51万円)ときわめて良好な値を示した。 発表後のディスカッションにおいて、Alan P. Venook氏(米国・カリフォルニア大学)は、本試験の臨床的意義を強調した。同氏は、CHALLENGE試験が大きな反響を呼んだ背景には、薬剤ではなく運動介入によって生存利益を示した点にあるとし、SEPによる8年OS改善率7.1%は、FOLFOXによる術後補助化学療法を確立したMOSAIC試験における長期OS改善率8.1%に匹敵すると指摘した。また、「患者は診察室で必ず『自分にできることはあるか』と尋ねる。運動はその問いに対するエビデンスに基づいた回答である」とも述べた。 今回の費用対効果解析により、CHALLENGE試験が示した生存利益に加え、運動介入が医療システムにとっても合理的な投資であることが裏付けられた。多くの新規抗がん薬が高額な医療費を伴うなか、SEPは生存延長と医療費削減を同時に実現し得る介入となる。今後は日本においても、運動療法をどのように日常診療へ実装するか、また保険償還の枠組みをどう整備するかが課題となりそうだ。

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6月4日 水虫治療の日【今日は何の日?】

【6月4日 水虫治療の日】〔由来〕「水虫」の「む(6)し(4)」の語呂合わせと、水虫を患う人が急増する入梅の時期であることから、水虫の早期治療の大切さや治療啓発を目的に大源製薬株式会社(兵庫・尼崎市)が制定。関連コンテンツ爪白癬治療薬の推奨度に変化「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」知っておきたい皮膚真菌症の診療とガイドライン【診療よろず相談TV】クレナフィン爪外用液10% 7.12gの査定【斬らレセプト シーズン3】不眠症の爪白癬患者 薬剤師は何を見逃したか?【スーパー服薬指導(1)】「デルマクイック爪白癬」は技術や検査時間も不問で誤診も防ぐ

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日本において軽度うつ病の初回受診時から抗うつ薬が処方される割合は?

 軽度うつ病に対する抗うつ薬の有効性については、依然として議論が続いている。ガイドラインでは、まず心理社会的介入を推奨しているが、実際の臨床現場では抗うつ薬が処方されることが少なくない。杏林大学の浦田 実氏らは、軽度うつ病患者の精神科初診時における抗うつ薬の処方パターンを調査し、処方決定に影響を与える症状関連因子を特定することを目的に、レトロスペクティブカルテレビュー研究を実施した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2026年4月8日号の報告。 2020~24年に杏林大学病院でうつ病と診断された外来患者1,508例を対象に、レトロスペクティブカルテレビューを実施した。そのうち、Quick Inventory of Depressive Symptomatology-Self Report(QIDS-S)の合計スコアが6~10点の軽度うつ病の診断基準を満たした患者171例を分析した。抗うつ薬を処方された患者と処方されなかった患者の間で、人口統計学的特性および症状レベルを比較するため、独立t検定とロジスティック回帰分析を行った。 主な内容は以下のとおり。・対象患者171例のうち、初回受診時に抗うつ薬を処方された患者の割合は28.1%であった。・人口統計学的特性および全体的な症状の重症度において、両群間に有意な差は認められなかった。・QIDS-Sの項目である体重増加は、抗うつ薬群で有意に低かった(0.1±0.4 vs.0.3±0.7、p=0.03)。しかし、Benjamini-Hochberg法による偽発見率補正後およびロジスティック回帰分析においては、統計的に有意な差は認められなかった。・単剤療法を受けた患者において、抗うつ薬の種類による有意な差は認められなかった。 著者らは「本調査の結果、軽度うつ病患者の約30%は、初回診察時に抗うつ薬を処方されていることが明らかとなった。どの症状項目についても、抗うつ薬処方との明確かつ確固たる関連性が認められなかったことから、実際の治療選択においては、特定の症状プロファイル以外の要因が、より決定的な影響を及ぼしている可能性が示唆された」としている。

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ACC/AHA脂質異常症GLで格上げの石灰化スコア、30分の心臓ドックで評価/CVIC

 心臓画像診断を専門とする医療法人社団CVIC心臓画像クリニック飯田橋(以下、CVIC)は、30分で心血管リスクを可視化する新サービス「スピーディー心臓ドック」の提供を開始した。これは冠動脈石灰化スコア、大動脈石灰化スコア、心血管バイオマーカー検査を組み合わせたもので、非造影CTおよび血液検査によって行われる。この中に含まれる冠動脈石灰化スコアは、近年その重要性が明らかになっており、米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)の合同委員会が関連学会とともに2026年3月に公開した『脂質異常症管理ガイドライン2026年版』1)において、推奨度が引き上げられた。そこで、CVICは2026年5月27日にメディアラウンドテーブルを開催し、CVIC理事長の寺島 正浩氏が、突然死を防げない日本の健診制度の課題、心血管病予防における画像診断の役割について解説した。最初の発作が最後の発作、突然死の半数以上は症状なし 寺島氏がまず指摘したのは、一般的な健康診断だけでは冠動脈疾患のリスクを十分に把握しにくく、心臓突然死を防ぐことが難しいという問題である。日本の健診で広く行われている心電図や胸部X線は、低コストで簡便なスクリーニング検査として有用である一方、冠動脈の狭窄や動脈硬化の進展を直接評価する検査ではない。 米国のフラミンガム研究では、突然死の50%以上はまったく症状がなかったことが報告されている。また、急性心筋梗塞の68%は50%未満の軽度冠動脈狭窄から生じていたという報告もある。寺島氏は、この突然性が心臓病の問題であると述べる。 一方で、心筋梗塞の多くは予防可能でもある。INTERHEART研究に基づき、喫煙、脂質異常、高血圧、糖尿病、内臓脂肪、ストレス、食事、運動、飲酒といった9つの修正可能な危険因子により、心筋梗塞リスクの9割が説明されることを紹介した。寺島氏は、9割予防可能な病気で死亡する人が後を絶たないことを指摘。その背景には「自分は大丈夫と考え、行動変容に至らない人が多いことがある」と述べた。数字は忘れても自分の画像は忘れない そこで重要になるのが、リスクの「可視化」である。寺島氏は、血圧、LDL-C、血糖値といった数値は忘れてしまうが、冠動脈や大動脈に石灰化がある画像を見れば、その画像は忘れないと指摘する。実際に、画像を提示することで、真剣に治療に取り組むようになった症例を多く経験してきたとのことだ。また、2018年のVIPVIZA試験では頸動脈エコーの結果を視覚的なレポートとして提示することで、治療効果が増大することも報告されている。クラス1推奨に引き上げられた冠動脈石灰化スコア ACC/AHAの『脂質異常症管理ガイドライン2026年版』では、動脈硬化性疾患のリスク評価方法が変更され、PREVENT-ASCVD方程式が採用された。また、PREVENT-ASCVD方程式で中等度リスク、ボーダーラインリスクと判定され、脂質低下療法の開始・強度について判断が難しい場合に、冠動脈石灰化スコアを用いてリスクを再分類することがクラス1推奨として位置付けられた。 冠動脈石灰化スコアは、非造影CTで冠動脈壁の石灰化を定量化する指標である。冠動脈石灰化スコアによる石灰化の分類は、0をなし、1~99を軽度、100~299を中等度、300~999を高度、1000~を超高度とする。このスコアが、冠動脈疾患死亡率や心血管病死亡率と強く関連する。 さらにCVICでは、冠動脈だけでなく大動脈の石灰化にも注目する。大動脈石灰化は冠動脈石灰化よりも先に出現する早期の動脈硬化マーカーとされ、冠動脈石灰化スコアが0であっても60%で大動脈石灰化が認められるとのことだ。30分で完了する「スピーディー心臓ドック」 今回発表された「スピーディー心臓ドック」は、こうした心血管リスク評価を短時間で実施するサービスである。所要時間は来院から検査終了まで約30分。検査方法は非造影CTによる冠動脈・大動脈評価と採血で、検査内容は冠動脈石灰化スコア、大動脈石灰化スコア、心血管バイオマーカー検査で構成される。心血管バイオマーカーは、NT-proBNP、高感度心筋トロポニン、apoB、高感度CRPの4項目である。 寺島氏は、通常の健診では測定されないこれらの項目を組み合わせることで、より詳細な心血管リスクを把握できると説明した。CVICでは、以下をすべて満たす場合を「パーフェクトスコア」とし、心血管リスクがきわめて低い状態として示している。冠動脈石灰化スコア0大動脈石灰化スコア0NT-proBNP<55pg/mLapoB<65mg/dL(または70mg/dL)心筋トロポニンT<0.003ng/mL高感度CRP<0.02mg/dL 講演では、実際の症例も紹介された。そのなかで紹介された60歳女性は、LDL-C、HDL-C、TG、総コレステロールは、健康診断の正常値の範囲に収まっていたという。冠動脈石灰化スコアも0であったが、大動脈石灰化スコアをみると約700であり、中等度の石灰化が認められた。また、apoBも106mg/dLと軽度高値であった。寺島氏は「大動脈石灰化スコアをとることで、このような方が見つかることがある。可視化することで、行動変容につながっていくのではないかと期待している」と語った。Q&A――石灰化スコアは不可逆とのことであるがどれくらいの頻度で実施すべきか? 1回測定したらその後は不要とする意見があるなど、議論が分かれているが、一般的には5年ほどの間隔を空けて測定するのがよいのではないかとされている。しかし、CVICとしては、冠動脈石灰化スコアが100以上、ないしは300以上の方は、2~3年に1回は検査を実施したほうがよいと考えている。このような方のなかで、生活習慣を気にしない方は次回の測定でスコアが2倍になっている場合もある。一方で、生活習慣が改善されてスコアの変動がみられないという方もいる。このような経過を追うために、石灰化スコアを活用するのもよいのではないか。 石灰化は不可逆であるからこそ、早めの対策が重要である。9つの修正可能な危険因子を修正することで、動脈硬化の進行を遅らせることができる。 なお、「スピーディー心臓ドック」は自費検査で、CVICは通常価格を8万8,000円としているが、2026年10月末日まで3万3,000円で提供する予定とのことだ。

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骨折・転倒予防、CaとビタミンDに効果認めず~メタ解析/BMJ

 これまでの系統的レビューでは、カルシウムおよびビタミンDは、単独では骨折の減少をもたらさず、これらを併用しても結果に一貫性はなく、転倒に対するビタミンDの効果にもばらつきがみられる。それにもかかわらず、ガイドラインなどは筋骨格系の健康維持にビタミンD(±カルシウム)の補充を推奨し、2000年代初頭以降、これらの処方量は大幅に増加しているという。カナダ・CIUSSS du Nord-de-l’Ile-de-MontrealのOlivier Masse氏らは、骨折および転倒の予防において、カルシウム、ビタミンD、またはこれらを併用した栄養補充製品の有益性はほとんど、あるいはまったく認められないことを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年5月20日号で報告された。骨折・転倒の予防効果をメタ解析で評価 研究グループは、成人における骨折および転倒に対する、カルシウム、ビタミンD、またはこれらを併用した栄養補充製品の効果を評価する目的で、関連文献の系統的レビューとメタ解析を行った(特定の助成は受けていない)。 対象は、骨粗鬆症の薬物治療を受けていない成人(18歳以上)において、骨折または転倒の予防法として、カルシウム、ビタミンD、またはこれらの併用補充製品を、プラセボまたは無治療と比較した無作為化比較試験とした。全骨折の予防効果はほとんどない 69件の試験(参加者15万3,902例)を解析の対象とした。60試験(87%)は地域在住の高齢者のみ、26試験(38%)は女性のみを対象とし、50試験(72%)の参加者は骨折や転倒のリスクが高いグループには属していなかった。全体の年齢中央値は71.2歳(四分位範囲:63.8~76.9)だった。 主要アウトカムである全骨折に関して、カルシウム補充製品(11試験、参加者9,067例、リスク比:0.91[95%信頼区間[CI]:0.81~1.01]、エビデンスの確実性:中)や、ビタミンD補充製品(36試験、9万2,415例、1.00[95%CI:0.95~1.06]、高)、併用栄養補充製品(15試験、5万1,126例、0.91[95%CI:0.84~0.99]、高)のいずれにおいても、予防効果はほとんど、あるいはまったく認めなかった。 大腿骨近位部骨折、非脊椎骨折、脊椎骨折についても、3つの補充製品とも、ほとんど予防効果はなかった。転倒の予防にも効果はない、他の介入法の可能性を 転倒の予防に関しても、カルシウム補充製品(2試験、参加者2,966例、リスク比:0.91[95%CI:0.78~1.06]、エビデンスの確実性:中)、ビタミンD補充製品(32試験、6万5,234例、1.01[95%CI:0.98~1.04]、高)、併用栄養補充製品(10試験、1万1,068例、0.92[95%CI:0.84~1.00]、中)のすべてで、予防効果はみられなかった。 また、複数のサブグループ解析により、異質性に関して広範な検討を行ったが、上記の知見の頑健性は保持されていた。 一方、高リスク例や在宅看護を要する患者については、カルシウム単独療法および併用補充療法の多くのアウトカムに関して、エビデンスは十分ではなかった。 著者は、「これらの知見は、骨折や転倒の予防を目的とするカルシウム、ビタミンD、これらを併用した栄養補充製品の日常的な摂取を支持しない」としている。また、「本研究の結果は、特定の骨疾患を有する患者、あるいは骨粗鬆症の薬物治療や、長期にわたりコルチコステロイドを使用している患者には一般化できない可能性がある」「今後は、骨折や転倒の予防に、これら以外の介入法の評価が行われる可能性があり、検討が期待される分野として、食事療法、医薬品の再評価、教育や行動変容へのアプローチ、多面的な介入、および転倒予防のためのデジタルツールなどが挙げられる」と指摘している。

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Implementation Scienceと外傷症例のundertriageの克服(解説:香坂俊氏)

 「Implementation Science」、あえて日本語にすれば「実装科学」という言葉が、医療の中でも徐々に市民権を得てきている。これは、臨床試験やガイドラインによって示された有効な介入を、実際の医療現場にどのように届け、定着させ、患者アウトカムの改善につなげるかを扱う学問領域である。循環器領域でも、Implementation Scienceは第III相試験の後に考える補助的な作業ではなく、治療や介入を設計する段階から組み込むべき方法論として位置付けられている(https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2024.08.068)。 今回の研究は、臨床ガイドラインの「推奨:recommendationを知っている」ことと、「実際に行動できる:implementation」との間にある距離を、正面から扱った試験である。救急の現場における外傷診療、とくに高齢者のtriageは、時間的制約が大きく、診断の不確実性も高い。重症外傷を見逃さず、適切なタイミングで高次医療機関へ転送する判断は容易ではない。実際、重症例を搬送しないundertriageは、とくに高齢者で多いことが知られている。本研究は、その現場の判断を、従来型の講義やマニュアルではなく、serious gameという行動科学に基づいた教育介入によって変えようとした。 試験では、米国の非外傷センターで高齢外傷患者の初期診療を担う救急医800人を対象に、介入群にはtablet上のgame-based trainingが提供された。主要評価項目は、重症外傷患者が高次医療機関へ転送されなかった割合、すなわちundertriageであった。結果として、介入群ではundertriageが49%であったのに対し、通常教育群では57%であり、モデル調整後の差は−7%であった。一方で、軽症患者を過剰に転送するovertriageは有意には増加せず、30日死亡または再入院の複合アウトカムにも明確な差は認められなかった。 この試験の重要性は、介入効果の大きさそのものよりも、臨床判断には修正可能な部分があることを示した点にあると思われる。また、本研究では99%の介入群医師が少なくとも1回gameを使用し、67%が4回すべてのセッションを完了している。これは、教育介入としての受容性が比較的高かったことを示している。さらに探索的解析では、gameの使用回数が多いほど効果が大きく、使用後30日以内に診療した患者で効果が強い傾向が示された。ここには、知識や判断力は一度の講習で固定されるものではなく、反復と近接した経験によって維持されるという、臨床教育の基本に近いメッセージがある。 この研究は「ゲームにすれば医師の判断が変わる」と単純化して読むべきではなく、「医師個人の認知過程に働きかける低負荷の介入が、複雑なシステム内でも一定の行動変容を生みえる」と読むのが妥当であろう。自分の専門である、循環器領域に引き寄せて考えると、現在のimplementationは、スポンサー支援による講演、e-learning、リマインダーに偏りがちである。しかし、実際の臨床判断は、短時間での情報統合、忙しさ、見逃しへの恐れ、過剰診療へのためらいの中で行われる。そこに介入するには、知識の伝達だけでは足りない。上手な判断を反復し、失敗しやすい場面を安全に経験し、フィードバックを受ける仕組みが必要になっている。 Implementation Scienceとは、エビデンスを現場に「説明する」ための学問ではなく、現場の中でエビデンスが実際に使われる条件を設計するための学問なのだと筆者は考えている。外傷診療におけるこのserious gameの試みは、循環器診療においても、私たちが次に考えるべき実装の形を示唆しているものと感じられた。

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第297回 改正健康保険法が成立、出産無償化とOTC類似薬負担増を導入/国会

<先週の動き> 1.改正健康保険法が成立、出産無償化とOTC類似薬負担増を導入/国会 2.診療報酬改定目前、キャンセル料を巡る混乱で厚労相が陳謝/厚労省 3.AIの悪用リスク踏まえ病院のサイバー対策強化を/厚労省 4.直近100日の薬剤情報を表示、ワクチン接種歴も/デジタル庁 5.糖尿病薬の個人間取引に警告 X投稿の7割超がマンジャロ/東京都 6.東京女子医大2歳児死亡事故、ICU責任医に有罪判決/東京地裁 1.改正健康保険法が成立、出産無償化とOTC類似薬負担増を導入/国会改正健康保険法など医療保険制度改革の関連法は5月29日の参議院本会議で、与党自民党や日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決、成立した。柱は、正常分娩の実質無償化と、市販薬と成分や効能が似る「OTC類似薬」を処方された患者への追加負担の導入である。政府は給付と負担を見直し、現役世代の社会保険料負担を軽減すると説明しているが、患者団体や野党からは受診控えや家計圧迫への懸念がされている。出産費用については、現在は正常分娩が公的医療保険の対象外で、出産育児一時金50万円の支給で対応している。しかし、都市部を中心に費用が一時金を上回るケースが目立つため、厚生労働省が全国一律の基本単価を設定し、公的保険から医療機関へ全額給付する仕組みに改める。改正法の公布後2年以内、遅くとも2028年夏ごろまでの施行を目指す。すべての妊婦を対象に定額の現金給付も設ける。帝王切開は、従来通り保険診療で原則3割負担となり、正常分娩でも個室料などは自己負担となる。当面は医療機関の判断で出産育児一時金を継続できる経過措置も置き、産科経営や地域の周産期医療体制への影響に配慮する。OTC類似薬では、保湿薬、抗アレルギー薬、解熱鎮痛薬、胃腸薬など77成分、約1,100品目を対象とする案が示されている。薬剤費の4分の1を公的保険の給付対象から外し、患者の1~3割負担に上乗せする。2027年3月の開始を目指す。政府は市販薬を購入する人との公平性や、必要性の低い受診の抑制を狙う。その一方で、がんや難病の患者、子供、低所得者、医師が通年処方を必要と判断する患者などには追加負担を求めない方針であり、具体的な範囲は今後、専門家の意見を踏まえて定めるとしている。改正法には、75歳以上の後期高齢者の保険料や窓口負担の算定に、上場株式の配当など金融所得を反映させる仕組みの強化も盛り込まれた。さらに高額療養費制度について、将来の見直し時に、長期療養者の家計への影響を考慮することも明記した。参院厚生労働委員会は、OTC類似薬の対象を薬剤以外の診療行為に広げないよう検討することや、必要な受診が抑制されないよう影響を検証し、必要に応じて見直すことなど19項目の付帯決議を採択した。立憲民主党、公明党、共産党、れいわ新選組などは反対し、国民皆保険の維持と患者負担増の線引きが今後の焦点となる。 参考 1) 健康保険法等の一部を改正する法律案について(厚労省) 2) 「OTC類似薬」処方された患者に追加負担求める法律が成立(NHK) 3) 改正健康保険法が成立…OTC類似薬の患者追加負担、出産費用の実質無償化など柱(読売新聞) 4) 出産費用を無償に、改正法成立 厚労省が全国一律価格を設定へ(日経新聞) 5) 健保法等改正案 参院厚労委で賛成多数で可決 29日の参院本会議での採決を経て成立へ(ミクスオンライン) 2.診療報酬改定目前、キャンセル料を巡る混乱で厚労相が陳謝/厚労省厚生労働省は6月1日に診療報酬を改定する。物価高と賃上げへの対応が柱で、外来の初診料本体は2,910円に据え置く一方で、物価上昇分20円と職員の基本給引き上げに充てるベースアップ評価料170円が上乗せされ、初診時の患者負担は少なくとも190円引き上げられる。また、2026年3月以前からベースアップ評価料を算定していた医療機関でも、現行60円から230円へ引き上げられ、これらの上乗せは1年後にさらに拡大する予定となっている。薬局でも調剤基本料が立地や規模に応じて10~20円引き上げられ、3ヵ月に1回、物価上昇対応分として10円が加算できる。薬局版のベースアップ評価料も新設され、処方箋1回につき40円が上乗せされる。また、後発医薬品がある先発品を患者が希望する場合に、保険の窓口負担とは別に支払う選定療養費は、先発品と後発品の価格差の4分の1から2分の1へ引き上げられる。その一方で、注目された診察予約のキャンセル料について、厚労省は5月29日、「対象は『予約料』を設定し、選定療養として地方厚生局に届け出ている医療機関に限られる」と通知を訂正した。予約を受け付けていても予約料を徴収していない通常診療では、キャンセル料は取れない。対象は2024年8月時点で全国928施設にとどまる。徴収できるのは、患者都合による診察直前のキャンセルに限られ、窓口やウェブサイトなどで事前に説明し、患者の同意を得る必要がある。3月の通知では対象が選定療養に限られることが明確でなく、すべての医療機関でキャンセル料を取れるとの誤解が広がった。上野 賢一郎厚労相は「現場に混乱を生じさせた」と陳謝した。医療機関には、価格改定や人件費対応の一方で、患者説明と同意、掲示、届出の適正な運用が求められる。 参考 1) 診察予約キャンセル料 一定条件で請求可能に 厚労省が周知へ(NHK) 2) 診察キャンセル料めぐり厚労相謝罪 6月から一部医療機関で徴収可へ(朝日新聞) 3) 診察キャンセル料は一部病院のみ 厚労省が通知訂正、周知不足陳謝(共同通信) 4) 診療報酬、来月1日に改定 キャンセル料徴収可に 初診190円上げ(日経新聞) 3.AIの悪用リスク踏まえ病院のサイバー対策強化を/厚労省厚生労働省は5月27日、都道府県を通じ、医療機関に高性能AIの悪用リスクを踏まえたサイバーセキュリティ対策の再確認を求める事務連絡を発出した。AI技術の急速な進展により、脆弱性探索や攻撃手法の自動化が進み、攻撃のスピードや規模が拡大する恐れがあるための措置。医療分野は国民の生命・健康を支える重要インフラであり、電子カルテや医療機器、院内ネットワークが停止すれば診療継続に重大な支障が生じるとして、厚労省は経営層のリーダーシップによる対策強化を求めている。通知では、米Anthropic社が4月に公表した「Claude Mythos Preview」など、脆弱性の発見・修正能力を高めたフロンティアAIモデルの登場を例示。内閣官房国家サイバー統括室などが5月18日に発出した重要インフラ向け注意喚起を踏まえ、医療情報システムの安全管理ガイドラインを要約し、医療機関が優先的に確認すべき事項を整理した。重点項目では、サイバーセキュリティを経営課題に位置付け、責任者や意思決定体制、連絡系統を明確にすることを求めている。さらに、電子カルテ、医療機器、院内ネットワークなど重要システムの把握とリスク評価、ネットワーク分離やアクセス制御、外部委託・クラウド利用時の責任分担の明確化を要請するほか、機器の棚卸し、セキュリティパッチの迅速な適用、サポート終了機器の見直しも明記した。ランサムウェア対策では、オフラインを含むバックアップの取得・保管と復旧訓練、不審メール対応、感染兆候の早期検知体制を挙げた。インシデント発生時には、初動対応、影響範囲の確認、厚労省やベンダーとの連携、原因分析と再発防止策が必要とした。全職員への定期的な教育、標的型攻撃訓練、医療機器メーカーとの情報共有、調達段階からのセキュリティ要件確認も求めている。厚労省は、サイバー攻撃を想定したBCP(事業継続計画)の策定・見直しや、システム停止時の紙運用など代替手段の確保も促し、チェックリストを用いた点検を呼びかけている。 参考 1) 「高性能AIの悪用リスクを踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化について(医療機関等向け注意喚起)」(厚労省) 2) 最新AI攻撃の対策確認を要請 医療機関に厚労省(毎日新聞) 3) 医療機関は最新AI対策の確認を サイバー攻撃悪用で厚労省(東京新聞) 4.直近100日の薬剤情報を表示、ワクチン接種歴も/デジタル庁デジタル庁は、マイナポータルの「薬」のページをリニューアルし、直近100日以内に受け取った薬の情報を確認できるようにした。従来は診療報酬明細書、いわゆるレセプト情報を基にしていたため、反映は前月分までに限られ、実臨床で使うにはタイムラグが大きかった。今回の改善により、電子処方箋に対応する薬局や医療機関で薬を受け取った場合、原則として当日中に情報が表示される。画面には「最近の薬」「最近の処方箋」が新設され、受け取った日付、薬局名、薬剤名、用法・用量が確認できる。政府によると、現在は薬局の89%が電子処方箋に対応している。その一方で、厚生労働省は6月から、ワクチン接種歴や副反応疑い事例を集約する新たな予防接種データベースの運用を始める。対象は公費助成を受けられる定期接種ワクチンで、接種したワクチンの種類や接種日などを市区町村から収集し、2028年春までに全国民の情報を集める計画である。国民はマイナポータルなどを通じて、自身の接種歴を確認できるようになる。6月以降の情報が中心で、5月以前の接種分の提供は任意となる。新データベースは、接種情報に加えて死亡情報、副反応疑い事例、レセプト情報とも連結される予定であり、2028年度から研究者らがワクチンの有効性や安全性、副反応疑い事例の発生頻度を活用し、分析しやすくする。今後、麻しん、風しんなどの流行時には、本人が接種歴を確認し、未接種であれば接種行動につながることも期待されている。医療者にとっては、問診時の服薬歴・接種歴確認の精度向上が見込まれる。救急外来、入院時、周術期、ポリファーマシー対策、ワクチン接種相談などで活用の余地は大きい。ただし、情報の反映範囲や過去接種歴の欠落、患者本人の閲覧・提示への依存といった限界もある。マイナポータル情報を補助線として使いつつ、従来の問診、お薬手帳、紹介状、薬剤師との連携を組み合わせる運用が求められる。 参考 1) 薬の画面で最近の薬や処方せんの情報を確認できるようになりました(デジタル庁) 2) 100日以内に受け取った薬の情報確認 マイナポータル改善、電子処方箋対応なら当日表示(産経新聞) 3) ワクチン接種歴、マイナポータルなどで確認可能に…新DB6月に運用開始・「効果」「副反応」分析にも活用へ(読売新聞) 5.糖尿病薬の個人間取引に警告 X投稿の7割超がマンジャロ/東京都東京都が2025年度、X(旧ツイッター)上で医薬品の不正販売が疑われる投稿に警告した497件のうち、約75%に当たる375件が、2型糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)など糖尿病薬の取引に関するものだったことがわかった。都は公式アカウント「東京都庁薬務課」から、販売をうたう投稿に対し「医薬品であるマンジャロを許可等なく販売等することは医薬品医療機器等法に違反します。直ちに販売を中止して下さい」とリプライで警告している。マンジャロは2型糖尿病治療薬として承認されている一方で、近年は体重減少効果への関心から、ダイエットや美容目的での使用が広がっている。医療用医薬品を入手するには原則として医師の診察と処方が必要で、個人が許可なく販売する行為は、たとえ1回であっても医薬品医療機器等法に違反する恐れがある。東京都は、フリマサイトやオークションサイト、SNSでの医薬品販売に注意を呼びかけており、改善がない場合はX側に投稿削除を要請している。糖尿病薬をめぐっては、適応外使用や自己判断での使用による健康被害も懸念される。厚生労働省も、添付文書に基づく適切な使用がなされない場合、思わぬ健康被害につながる可能性があるとして注意喚起している。とくにGLP-1受容体作動薬などの使用では、消化器症状、低血糖リスク、既往歴や併用薬への配慮が必要であり、医師の管理を離れた流通は安全性の面で大きな問題となる。都による警告件数は、2023年度は62件、2024年度は78件だったが、2025年度は検索業務を外部委託したことで大幅に増えた。糖尿病薬関連に関して2023・24年度はいずれも2件にとどまっており、今回の急増はマンジャロ人気とSNS上の流通拡大を映している。Xから秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」に誘導するケースも確認されており、都は2026年度からテレグラム上でも警告を始める方針。医療者には、処方時の適正使用説明に加え、患者がSNS経由で医薬品を入手しないよう啓発する役割も求められる。 参考 1) 薬の不正販売疑い投稿、糖尿病薬が7割超 昨年度 都が「X」で確認・警告(日経新聞) 2) 「直ちに販売を中止して下さい」東京都庁薬務課、「マンジャロ」めぐりXで警告 歓迎の声相次ぐ(J-CASTニュース) 6.東京女子医大2歳児死亡事故、ICU責任医に有罪判決/東京地裁東京女子医科大学病院で2014年、手術後の2歳男児に鎮静剤プロポフォールが長時間・高用量で投与され死亡した医療事故を巡り、東京地裁は5月29日、業務上過失致死罪に問われた当時ICUの現場責任者の麻酔科医に禁錮1年6月、執行猶予3年を言い渡した。その一方で、当時後期研修医だった医師については無罪とした。プロポフォールは手術麻酔や鎮静に広く使われるが、添付文書では集中治療における人工呼吸中の小児への投与が禁忌とされている。裁判では、投与と死亡の因果関係、当時の医療水準からみた注意義務違反の有無が争点となった。判決では、医師の裁量で禁忌薬を使用する余地はあり得るとしつつ、本件では「投与量・投与時間が目安を大きく超え、心電図異常も継続していたことから、副作用リスクが高まった段階で投与を中止すべきだった」と認定。「通常の専門医であれば到底行わない高用量、長時間投与」として、責任者の過失を重くみた。その一方で、後期研修医については、当時は専門医資格を持たず、鎮静薬選択を日常的に担う立場ではなかったとして、死亡を具体的に予見できたとは認められないと判断した。判決は、チーム医療において職位、専門性、権限に応じて刑事責任を分けた点でも注目される。医療現場への示唆は大きい。禁忌薬や安全性が十分確認されていない医療行為を行う場合、医学的合理性、家族への説明と同意、リスク監視、投与量・時間の記録、異常時の中止基準を組織として明確化する必要がある。女子医大は事故後、特定機能病院の承認を取り消されており、厚生労働省は2016年、特定機能病院に対し安全性未確立の薬剤使用時の院内審査体制を義務付けた。今回の判決は、個人の裁量に依存せず、病院全体で高リスク医療を管理する体制整備の重要性を改めて示したものといえる。 参考 1) 2歳児死亡、麻酔科医に有罪 元研修医は無罪、東京女子医大(東京新聞) 2) 東京女子医大病院で2歳児死亡 医師1人に無罪判決、もう1人は有罪(朝日新聞) 3) 東京女子医大の2歳児死亡、元准教授に有罪判決 元研修医は無罪(日経新聞) 4) 東京女子医大 鎮静剤投与で2歳児死亡 責任者の医師に有罪判決(NHK)

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過体重・高齢の持続性AFの減量、重症度スコア改善につながらず/JAMA

 過体重を呈する持続性心房細動(AF)の高齢患者では、低カロリー食と行動支援プログラムを併用した介入は、安全上の懸念なく有意かつ持続的な体重減少をもたらすが、AF症状の重症度・負担や心臓リモデリング、追加のリズムコントロール介入の必要性には影響を及ぼさないことを、英国・オックスフォード大学のMatteo Sclafani氏らが、「LOSE-AF試験」の結果で示した。過体重はAFの強力なリスク因子であり、欧米の診療ガイドラインでは、肥満とAFを併発するすべての患者に対して減量が推奨されている。一方、既存のエビデンスは比較的若年のAF患者(平均年齢約60歳)に基づくものであり、より高齢の患者では、減量はサルコペニアやフレイルを招く恐れがあるため治療的価値が制限される可能性が示唆されていた。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年5月20日号で報告された。英国の研究者主導型無作為化試験 LOSE-AF試験は、英国の2施設で実施した研究者主導型の非盲検無作為化試験(英国国立健康研究所[NIHR]オックスフォード生物医学研究センター[BRC]などの助成を受けた)。2018年11月~2025年4月に、年齢60~85歳、BMI値27以上で、持続性AFと診断され、直流カルディオバージョン(DCCV)が適応の患者118例(平均年齢68[SD 6]歳、女性33%)を登録した。 被験者を、8ヵ月間の低カロリー食と行動支援プログラムを受ける群(介入群、59例)、または通常治療を受ける群(対照群、59例)に無作為に割り付けた。 ベースラインの平均体重は、介入群103.2(SD 16.2)kg、対照群101.9(16.8)kg、BMI値はそれぞれ34.6(SD 4.8)および34.1(5.4)、平均心拍数は78(SD 17)および76(15)拍/分、CHA2DS2VAScスコア中央値は2(四分位範囲[IQR]:2~3)点および2(1~3)点であった。 また、DCCV治療歴のある患者は、介入群47%および対照群27%、AFアブレーション治療歴のある患者はそれぞれ20%および17%であり、AF罹患期間中央値は9.6(IQR:4.2~54)ヵ月および13.1(5~49)ヵ月であった。 心房細動重症度尺度(AF Severity Scale:AFSS)の平均症状重症度スコア(0~35点、高スコアほど症状が重度)は介入群13.8(SD 5.9)点および対照群12.8(5.9)点、AFSSの平均症状負担スコア(3.25~30点、高スコアほどAF症状の全般的な負担が大きい)は24.4(SD 3.7)点および24.2(4.0)点だった。9.7%の減量、症状重症度に差はない 8ヵ月の時点で、ベースライン補正後平均体重は、介入群が92.6(SD 0.85)kgと対照群99.4(0.85)kgに対し有意に低かった(推定群間差:-6.9kg、95%信頼区間[CI]:-9.2~-4.5、 p<0.001)。体重減少率は、介入群が9.7%、対照群は3.1%であった(p<0.001)。 一方、この体重差にもかかわらず、主要アウトカムである8ヵ月時のAFSSの症状重症度スコア(臨床的に意義のある差は4点とした)のベースライン補正後平均値は、介入群が7.9(SE 0.84)点、対照群は8.9(0.84)点であり、両群間に有意差を認めなかった(群間差:-0.9点、95%CI:-3.3~1.4、p=0.43)。減量は有効な治療戦略ではない 8ヵ月時の身体機能検査(PPTスコア[0~36点、高スコアほど身体機能が良好]:介入群32.6[SE 0.44]点vs.対照群32.6[0.44]点、群間差:0点、95%CI:-1.2~1.2、p=0.99)と、AFSS症状負担スコア(15.8[1.08]点vs.15.0[1.08]点、群間差:0.8点、95%CI:-2.2~3.8、p=0.59)に関して両群間に有意な差はなく、心臓MRIパラメーターや血圧、脂質プロファイルの変化に関しても差を認めなかった。 また、追跡期間中のAF再発率(ハザード比[HR]:1.04、95%CI:0.69~1.58、p=0.85)や、再DCCV(HR:0.64、95%CI:0.35~1.16、p=0.14)、再AFアブレーション(HR:1.00、95%CI:0.48~2.10、p>0.99)の施行率も両群で同程度であった。試験への参加に関連した重篤な有害事象は発現しなかった。 著者は、「過体重の持続性AF高齢患者では、食事療法による適度な減量は有効な治療戦略ではなかった」としている。 また、「AFSSスコアは、主に心拍の状態に起因する症状の変化を捉えるよう設計されているため、AFの負担の変化とは関連のない、減量によるより広範な症状の改善効果を検出する感度は限定的であった可能性がある」と指摘している。

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頻回増悪を示すCOPD、astegolimabの有効性・安全性(ALIENTO・ARNASAより)/Lancet

 インターロイキン-33(IL-33)とその受容体ST2は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪時に生じる好中球性および好酸球性の炎症に関与するとされる。イタリア・フェラーラ大学のAlberto Papi氏らALIENTO and ARNASA investigatorsは、2つの臨床試験「ALIENTO試験」「ARNASA試験」において、頻回の増悪歴を有するCOPD患者を対象に、2週ごとのastegolimab(ST2を介するIL-33の活性を阻害するヒト抗ST2 IgG2モノクローナル抗体)投与の有用性を評価し、ALIENTO試験ではプラセボと比較して年間増悪発生率が有意に低下し、ARNASA試験でも効果の大きさは同等であったが統計学的有意性は示されなかったことを報告した。Lancet誌2026年5月23日号掲載の報告。第IIb相と第III相の無作為化プラセボ対照比較試験 研究グループは、COPD治療におけるastegolimabの有効性と安全性の評価を目的に、2つの二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(第IIb相ALIENTO試験[24ヵ国191施設]、第III相ARNASA試験[35ヵ国319施設])を行った(GenentechとF. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。 対象は、ALIENTO試験が年齢40~90歳、ARNASA試験は40~80歳で、COPDと診断され、頻回の増悪歴(中等度または重度の増悪が年2回以上)を有し、試験開始時の診療ガイドラインに基づき最適化された2剤または3剤による吸入維持療法(ICS+LABA、LAMA+LABA、ICS+LAMA+LABA)を受けている患者とした。ベースラインの血中好酸球数は問わなかった。 被験者を、最適化された吸入維持療法に加えて、astegolimab 476mgを2週または4週ごとに皮下投与する群、またはプラセボ群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は52週間であった。 主要エンドポイントは、52週時点の、1回以上の試験薬の投与を受けた患者における中等度または重度の増悪の年換算発生率とした。重度増悪が減少する可能性も ALIENTO試験では、2021年10月~2024年2月に1,301例(年齢中央値67.0歳[四分位範囲[IQR]:41.0~90.0]、女性44.1%、astegolimabの2週ごと投与群433例、4週ごと投与群437例、プラセボ群431例)を、ARNASA試験では、2023年1月~2024年6月に1,375例(67.0歳[IQR:40.0~81.0]、35.6%、459例、459例、457例)を登録した。 プラセボ群との比較における年間増悪発生率の補正後率比(RR)は、ALIENTO試験のastegolimab 2週ごと投与群で0.85(95%信頼区間[CI]:0.72~1.00、p=0.049)と有意に優れたが、4週ごと投与群では0.93(95%CI:0.79~1.10、p=0.38)であり有意ではなかった。 一方、ARNASA試験では、astegolimab 2週ごと投与群のRRは0.85(95%CI:0.72~1.01、p=0.068)とALIENTO試験と同じ値を示したものの統計学的有意差はなく、同4週ごと投与群では0.82(95%CI:0.70~0.98、p=0.024)と有意差を認めた。 また、重度増悪(24時間以上の入院、死亡)の年間発生率の、プラセボ群と比較した補正後RRは、ALIENTO試験のastegolimab 2週ごと投与群で0.71(95%CI:0.49~1.05、p=0.088)、4週ごと投与群で0.78(95%CI:0.53~1.14、p=0.20)であり、ARNASA試験では、それぞれ0.67(95%CI:0.47~0.95、p=0.024)および0.83(95%CI:0.59~1.16、p=0.27)であった。上咽頭炎、上気道感染症が約10%で発現、選択肢が限られた患者で有用か 有害事象の発生率は治療群間で均衡しており、多くの参加者が1つ以上の有害事象を経験した(ALIENTO試験:1,301例中1,093例[84.0%]、ARNASA試験:1,375例中1,176例[85.5%])。試験からの脱落に至った有害事象は、ALIENTO試験で78例(6.0%)、ARNASA試験で59例(4.3%)に発生した。 ALIENTO試験で最も頻度の高かったCOPD以外の有害事象は上咽頭炎(134例[10.3%])であり、ARNASA試験では上気道感染症(146例[10.6%])であった。 死亡は、ALIENTO試験で40例(3.1%)、ARNASA試験で44例(3.2%)に認めた。両試験を通じて、合計3例(0.1%)の死亡が担当医により治療関連と判定された(ALIENTO試験の2週ごと投与群の1例[脳梗塞]、ARNASA試験の2週ごと投与群の2例[COVID-19、COPD])。 著者は、「これら2つの試験の知見を総合すると、症状が重度で臨床的負担が大きく、治療選択肢が限られているCOPD患者では、ST2/IL-33経路を標的とすることが、COPDの増悪の頻度を低減するうえで有用となる可能性が示唆される」としている。 また、「両試験の参加者は合わせて39ヵ国(日本を含む)の2,676例(21%が白人以外の人種)に上り、対象集団が広範にわたることから、さまざまな臨床的、生物学的な特性について検討することで、治療反応を示すサブグループの特定が可能と考えられる」と考察している。

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高齢者における大腸ポリープ切除後サーベイランスの検査間隔は?(解説:上村直実氏)

 大腸内視鏡検査(CS)は全大腸を観察して、大腸がん(CRC)の早期発見とポリープの発見・切除によるCRC予防を主たる目的としているが、検査や鎮静に伴うリスクが増加する高齢者に対する有用性に関しては不明な部分もあり、臨床現場で検査の実施に迷うこともある。今回、米国の65~74歳でCSを受けたことのある75歳以上の高齢退役軍人を対象として10年間の後ろ向きコホート研究を行ったところ『過去のCSで腺腫が認められた75歳以上の成人は、腺腫のなかった成人と比較して、その後のCRC発症率、CRCによる死亡率が有意に高いものの両群の差はわずか0.1%(累積死亡率0.4%vs.0.5%)であり、CRC以外の原因による死亡リスク50%弱のほうがはるかに高率であったことから、患者個々の健康状態を重視した対応が必要』との結果が2026年4月のJAMAに報告された。腺腫を切除した高齢者に対する定期的なCSは慎重に判断すべきとされたわけである。 日本の診療現場では便潜血検査(FIT)陽性や腹部症状などにより必要とされたCSで発見されたポリープ・腺腫が内視鏡的に切除されることが多く、その後の経過観察として年齢にかかわらずCRCの早期発見を目的として頻回なサーベイランスが行われている。2020年のGutに報告されたJapan Polyp Study(JPS)の結果を基にして作成された「大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン」によると、内視鏡的に異常なしとされた『クリーンコロン』が確認された場合には3年ごとのCSが推奨されている。 一方、米国のガイドラインでは、1993年のNEJMに報告された『National Polyp Study』の結果から質の高いCSにより『クリーンコロン』とされた場合は10年に1回のフォローとされているが、最近ではさらに、高齢者に対するCSに関する鎮静のリスクやコストパフォーマンスを考慮した経過観察の必要性やCSの間隔が議論の的になっている。日本でも超高齢者に対するCSによる頻回の経過観察に疑問を持つ担当医も少なくないと思われる。 このような米国と日本の違いは医療保険制度の違いのみでなくスクリーニングに対する考え方の相違に由来している。米国では死亡リスクをアウトカムとするエビデンスが優先するため、CSにより死亡リスクの統計学的な低下を認めた研究結果から臨床現場でも10年に1回のフォローで十分とされているのに対して、日本では内視鏡的切除可能な病変の早期発見を目的とすることが多く、『クリーンコロン』に対して3年後の進行性病変の発見率をアウトカムとしたJPSの研究結果を用いて、実臨床でも切除後は3年後が適切であるとされているのが現状である。しかし、医療費の高騰が問題となりコストパフォーマンスに重点が置かれつつある現在、高齢者の検査間隔は日本でも考慮すべき課題となっている。

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ロキソプロフェン、トラマドール、PPI…、高齢者疼痛管理の見直しポイント【高齢者処方のデザイン】第1回

以下の症例に対する前医での処方箋には「替えるべきポイント」が3つ隠れています。あなたは見抜けますか?【症例】患者78歳・女性変形性膝関節症と慢性腰痛で整形外科に通院中。既往に胃潰瘍(8年前、ピロリ菌除菌後)、高血圧、脂質異常症、骨粗鬆症があり、直近の血液検査でeGFR 48と腎機能低下を認める。前医では疼痛に対してロキソプロフェンが定期処方され、痛みが強い時にはトラマドールを頓用、加えてランソプラゾールが継続されている。また、併存症に対してロサルタン、ロスバスタチン、アレンドロン酸が処方されている。最近、食欲低下と軽度の倦怠感を訴えて来院した。痛みのコントロールは「まあまあ」とのことだが、便秘とふらつきも自覚しているという。トラマドールは1日平均1~2錠程度内服している。診察上、両膝に軽度の腫脹を認めるが、消化器症状や明らかな浮腫は乏しい。【Before:前医の処方箋】A)ロキソプロフェン 60mg 1日3回 毎食後B)トラマドール 25mg 疼痛時頓用C)ランソプラゾール 15mg 1日1回 朝食後D)ロサルタン 50mg 1日1回 朝食後E)ロスバスタチン 2.5mg 1日1回 朝食後F)アレンドロン酸 35mg 週1回 起床時A)ロキソプロフェン 60mg 1日3回 毎食後B)トラマドール 25mg 疼痛時頓用C)ランソプラゾール 15mg 1日1回 朝食後D)ロサルタン 50mg 1日1回 朝食後E)ロスバスタチン 2.5mg 1日1回 朝食後F)アレンドロン酸 35mg 週1回 起床時 1) Lapi F, et al. BMJ. 2013;346:e8525. 2) Derry S, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017;5:CD008609. 3) Roth SH, et al. J Pain Res. 2011;4:159-167. 4) Chappell AS, et al. Pain. 2009;146:253-260. 5) Chappell AS, et al. Pain Pract. 2011;11:33-41. 6) Kolasinski SL, et al. Arthritis Rheumatol. 2020;72:220-233. 7) 日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会編. 変形性膝関節症診療ガイドライン2023. 南江堂; 2023. 8) 2023 American Geriatrics Society Beers Criteria Update Expert Panel. J Am Geriatr Soc. 2023;71:2052-2081. 講師紹介

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患者に最も好まれる第1選択抗精神病薬は?

 初回エピソードの精神疾患患者に対する抗精神病薬の選択は、臨床医が複数の基準を経験的に評価する必要があるため、非常に困難な課題である。診療記録を用いて開発された精密治療(precision treatment)ルールは、臨床医の治療選択を支援する実用的なアプローチを提供できるが、副作用や患者の嗜好は考慮されていない。イタリア・University of PaviaのKamil Krakowski氏らは、初回エピソードの精神疾患における第1選択抗精神病薬推奨のための、有効性、副作用、患者の嗜好を総合的に考慮した精密治療ルールの開発および検証を行った。Translational Psychiatry誌オンライン版2026年4月11日号の報告。 本研究は、英国・サウスロンドンおよびモーズレイNHSトラストの早期精神病介入サービスから得た電子カルテデータを用い、RECORDおよびTRIPOD + AIガイドラインに準拠して実施された。精密治療ルールは、因果関係に基づく機械学習手法を用いて開発され、臨床的、人口統計学的、症状、物質使用に関する予測因子を用いて、有効性(薬剤変更、入院)および副作用(錐体外路症状、高プロラクチン血症、鎮静、性機能障害、体重増加)を推定した。副作用に関する患者の嗜好は、ランキング法を用いて考慮した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、1,709例(平均年齢:26.7歳、男性の割合:64%)。・アリピプラゾールは、患者の希望に応じて80~98%の患者に推奨された。・観察された治療決定と比較すると、治療ルールに基づく推奨では、高プロラクチン血症が4.7パーセントポイント(pp)、鎮静が15.8pp、性機能障害が4.3pp、体重増加が15.2pp減少すると推定された。・入院と薬剤の効果には変化がなかった。・錐体外路症状は、5.5pp増加すると推定された。 著者らは「本研究は、有効性、副作用、患者の希望を統合した、早期精神疾患に対する初の精密治療ルールを提示するものである。より大規模なデータセット、より多くの予測因子および治療選択肢を用いた、さらなる研究が求められる」としている。

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心血管疾患2次予防、LDL-C 55mg/dL未満の達成後も高Lp(a)は強力な残余リスクに/EAS2026

 欧州心臓病学会(ESC)などのガイドラインでは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の2次予防において、LDL-C 55mg/dL未満への厳格な管理を推奨している1)。しかし、依然として残る心血管リスク因子として、遺伝的要因の強いリポ蛋白(a)[Lp(a)]が注目されている。現在、具体的なLp(a)低下療法が確立されていない中、LDL-Cを徹底的に低下させることでLp(a)によるリスクをどこまで軽減できるか、とくに日本人患者における検証は不十分であった。 ギリシャ・アテネで開催された欧州動脈硬化学会(EAS2026)にて、国立循環器病研究センターの片岡 有氏らの研究グループがこの課題に関する多施設共同研究「Lp(a)-JAPAN study」の成果を発表した。なお、本研究はEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年5月24日号に同時掲載された。 本研究は、2017年1月1日~2022年8月31日の期間に、国内3施設において経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行され、3年以上の臨床フォローアップが可能であった冠動脈疾患(CAD)患者1,581例を対象とした。PCIから2ヵ月後のLDL-CおよびLp(a)測定値を基準として、その後の予後との関連を評価した。主要評価項目はMACE(心臓死、非致死性心筋梗塞、非責任病変への臨床的に誘発された冠血行再建術)の発生率とした。追跡期間の中央値は5.1年であった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象の1,581例の平均年齢は68.3歳、女性23.6%、Lp(a)値の中央値は12.8mg/dLであった。・LDL-C 55mg/dL以上の患者(1,069例)におけるMACE発生率は21.3%であった。そのリスクはLp(a)レベルの上昇に伴って有意に増加した(100人年当たり、Lp(a) 30mg/dL未満で3.9、30〜50mg/dL未満で7.9、50mg/dL以上で11.0、log-rank p<0.001)。・LDL-C 55mg/dL未満を達成した患者(512例)におけるMACE発生率は4.3%と有意に低かった(p<0.001)。しかし、Lp(a)レベルの高値は、MACEの高リスク患者を明確に特定した(100人年当たり、Lp(a) 30mg/dL未満で1.4、30〜50mg/dL未満で4.7、50mg/dL以上で7.5、p<0.001)。・5年標準化MACE発生率では、Lp(a) 30mg/dL未満の群の5.0%に対し、Lp(a) 30〜50mg/dL未満の群では17.0%(調整ハザード比[aHR]:3.80、95%信頼区間[CI]:1.78~8.11、p<0.001)、Lp(a) 50mg/dL以上の群では33.4%(aHR:6.90、95%CI:3.53~13.46、p<0.001)と高値を示した。・ROC曲線分析の結果、将来のMACE発生を予測するLp(a)の閾値(カットオフ値)は28.2mg/dL以上であることが判明した(p<0.001)。 研究グループは、ガイドラインが推奨する厳格なLDL-C低下療法がLp(a)に起因する心血管リスクを部分的に軽減するものの、完全に消失させることはできず、Lp(a)が独立した重大な残余リスク因子であることを実証したと結論付けた。  現在海外で進行中の新規Lp(a)低下薬(RNA薬など)の臨床試験では、登録基準となるLp(a)の閾値が一律で高く設定されている(60~80mg/dLに相当)。しかし、本研究で判明した日本人CAD患者におけるリスク閾値(28.2mg/dL)は欧米人より大幅に低い。そのため、欧米人より低いLp(a)レベルでも脆弱性を持つ集団を対象とした新たな臨床試験を行う必要があると論文内で指摘されている。

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「トイレでのスマホ」が痔の悪化の一因に

 米国消化器病学会(AGA)は4月29日、現時点で推奨される痔の診断と治療に関するベストプラクティスを公表した。AGAは、痔の診断・治療は消化器内科医が積極的に担うべきだとした上で、症候性の痔に対する第一治療選択肢は、食生活を見直して便通を整え、スマートフォン(以下、スマホ)を見ながらトイレに長居する習慣を改めることだとしている。 最新の「米国人のための食事ガイドライン」では、毎食でのタンパク質摂取や全脂肪乳製品の摂取が重視されているが、消化器専門医らは、高タンパク食、特に赤肉中心の食事に偏るあまり、食物繊維の摂取がおろそかになる傾向を懸念している。肉には食物繊維が含まれていないため、このような食事では食物繊維が不足して便秘を招き、いきみによって痔の悪化を引き起こす可能性があるためだ。便通を整えるためには、十分な食物繊維の摂取が欠かせない。栄養学の専門家は、男性では1日38g、女性では25gの食物繊維の摂取を推奨している。しかし、多くの米国人は必要量の食物繊維を摂取できていないという。 食事と共に、トイレでの行動も重要である。現在、多くの成人がトイレを、メール確認やソーシャルメディア閲覧のための静かな空間として利用している。しかし、この「トイレスクロール」は痔の大きなリスク因子になるという。便座に長時間座ることで、肛門周囲の血管に圧がかかるためである。ガイドラインの筆頭著者である米ベイラー医科大学のWaqar Qureshi氏は、「トイレに座る時間は5分以内にすべきだ。5分以内に排便できない場合は、座り続けていきむのではなく、一度立ち上がり、後で再度試みるとよい」とNBCニュースに語った。同氏はさらに、足台を使ったり、本を積み重ねて足を高くしたりして、しゃがむ姿勢に近づけることで、いきみの軽減につながる可能性があると述べた。 治療法については、ヒドロコルチゾンなどの外用ステロイド薬や局所麻酔薬、血管作動薬などの外用薬は、症候性の痔の治療用に検討できるが、その有効性を裏付けるデータはほとんどないとされている。また、外用ステロイド薬は、長期間使用すると皮膚が薄くなる可能性があるため、一度に2週間以上使用するべきではないとしている。さらに、症状が持続する痔には、輪ゴムで痔核を縛る「ゴム輪結紮療法」や、熱や光を用いて組織を縮小させる凝固療法が必要になることもある。このほか、温水に座って患部を温める「座浴」も症状緩和法としてガイドラインに記載されているが、その有効性を支持するエビデンスは限定的である。 さらに、クローン病や潰瘍性大腸炎の活動期では、炎症が完全寛解するまで痔治療を延期すべきこと、妊娠中の痔は保存的治療が基本であり、侵襲的治療は原則として産後に検討するべきこと、新規患者では可能な限り肛門鏡検査を実施し、痔と類似症状を示す他疾患を除外した上で正確な診断を行う重要性も強調されている。

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1次予防における脂質低下療法の指標としてapoBは費用対効果に優れる(解説:佐田政隆氏)

 高コレステロール血症、高血圧、喫煙、糖尿病、肥満などが心臓病の危険因子であることは現代では当たり前となっているが、1948年に米国で開始されたフラミンガム研究によって初めて明らかにされた。 コレステロールや中性脂肪といった脂質は疎水性であり、アポ蛋白と結合して「リポ蛋白」と呼ばれる球状の複合体粒子として血液中を運搬される。 リポ蛋白粒子の中で、LDLは末梢にコレステロールを供給する動脈硬化惹起性の「悪玉」、HDLは末梢からコレステロールを引き抜く「善玉」として知られている。LDL中のコレステロール値や、総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いたnon-HDLコレステロール値が、冠動脈疾患のリスク評価や脂質低下療法の指標として現在広く用いられている。 最近の研究では、LDLの中でも粒子サイズが大きいものは動脈硬化惹起性が低い一方、粒子が小さいものは血管壁の隙間に入り込みやすく動脈硬化のリスクを大幅に高めることがわかってきた。大型LDL粒子が多い場合、LDLコレステロール値としては高く検出される一方、小型LDL粒子が多い場合、動脈硬化惹起性が高いにもかかわらずLDLコレステロール値としては低く検出されることが問題視されてきた。 apoBはLDLを形成するアポ蛋白であるが、個々のLDL粒子に1個存在するために、apoB値を測定すればLDL粒子数を評価することができる。メタボリックシンドロームなど代謝的に不健康な状態ではLDLコレステロール値とapoB値が乖離しており、リスクの予測や脂質低下療法の指針として、LDLコレステロールやnon-HDLコレステロールより、apoBのほうが優れていることが報告されてきた。最近発表された2026年版AHA/ACC脂質異常症管理ガイドラインでも、apoB測定がIIa(脂質低下療法中)もしくはIIb(脂質低下療法をしていない場合)として推奨されている(エビデンスレベルB-NR)。日本においても、apoB測定は「脂質異常症(高脂血症)」の診療で保険が適用される。しかし、apoB測定に関する費用対効果に関する評価はまだなされておらず、実臨床ではほとんど用いられていないのが現状である。 そこで本研究では、1次予防としてスタチン治療が適格な米国成人25万人を対象としてシミュレーションモデルを行い、LDLコレステロール値、non-HDLコレステロール値、apoB値を目標とした場合の脂質低下療法の費用対効果を比較検討した。 目標値としてLDLコレステロール値(100mg/dL未満)を用いる場合と比較してnon-HDLコレステロール値(118mg/dL未満)を用いるほうが、質調整生存年が965QALY改善し、費用が210万ドル削減された。 apoB値(78.7mg/dL未満)を目標にすると、non-HDLコレステロール値を目標とする場合と比較して質調整生存年が1,324QALY増加し、費用が4,020万ドル増加した。増分費用効果比(ICER)は、約3万ドル/1QALYであり、米国や日本で、費用対効果が良いと判断される基準を下回っていた。 現在、冠動脈疾患のリスク評価と脂質低下療法の戦略決定にはLDLコレステロール値が圧倒的に主流として使われている。「急性冠症候群などハイリスク症例ではLDLコレステロールを55mg/dLや40mg/dLを目標にした積極的な脂質低下療法が必要だ」と、PCSK9阻害薬の講演会で何度も強調されている。しかし、LDLコレステロール値を大きく低下させても冠動脈疾患を引き起こす患者がいるのも事実である。今後、各種の前向き研究が行われて、LDLコレステロール値ばかりでなく、apoBや最近注目されているLp(a)、高感度CRP値を指標にして、有効な冠動脈疾患の予防法が開発されていくことが望まれる。その場合、費用対効果も考慮する必要がある。

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HFmrEF/HFrEFの心血管死・心不全増悪、ジギタリスが有効/JAMA

 左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)または左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者において、ジギタリス配糖体による治療は心血管死または初回心不全増悪イベントの複合アウトカムのリスク低下と関連しており、これは主に心不全増悪イベントのリスク低下が寄与していることを、オランダ・フローニンゲン大学のKevin Damman氏らが3件の大規模臨床試験のメタ解析の結果で示した。著者は、「心不全の治療の程度やジギタリス配糖体の種類など、重要な研究特性に関して統計学的に有意な交互作用は認められず、今回の結果は、HFmrEFまたはHFrEF患者における心不全増悪イベントを減少させるために、追加の薬物療法としてジギタリス配糖体が有用な選択肢であることを示唆している」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年5月10日号掲載の報告。DIG試験、DIGIT-HF試験およびDECISION試験のメタ解析 研究グループは、PubMedにて創刊から2026年3月1日までに公表された論文について、ジギタリス配糖体(ジゴキシンまたはジギトキシン)および心不全に関連するMeSH(Medical Subject Headings)およびキーワードを用いて検索し、慢性HFmrEFまたはHFrEF患者1,000例超を対象にジギタリス配糖体治療とプラセボを比較した無作為化臨床試験で、英語で発表された論文を特定した。 PRISMAガイドラインに従い2人の研究者がデータを抽出し、Cochrane Risk of Bias 2ツールを用いてバイアスリスクを評価した。 主要エンドポイントは、心血管死または初回心不全増悪イベント発生の複合で、副次エンドポイントは、主要エンドポイントの個々の構成要素および全死因死亡であった。固定効果モデルを用い、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 選択基準を満たした研究はDIG試験、DIGIT-HF試験およびDECISION試験の計3件(HFmrEFまたはHFrEF患者9,013例、加重平均年齢64.5歳[加重SD 11.2]、女性22%、男性78%)で、これら3件がメタ解析に組み入れられた。心血管死・心不全増悪リスクを15%、心不全増悪リスクを25%低減 心血管死または初回心不全増悪イベントの複合アウトカムは、ジギタリス配糖体群で4,510例中1,852例(41%)に発生し、プラセボ群では4,503例中2,037例(45%)であった(HR:0.85、95%CI:0.80~0.90、p<0.001)。 初回心不全増悪イベントは、ジギタリス配糖体群で1,183例(26%)、プラセボ群で1,474例(33%)に発生し(HR:0.75、95%CI:0.69~0.81、p<0.001)、心血管死は両群とも1,224例(27%)に認められた(HR:0.99、95%CI:0.92~1.07、p=0.81)。全死因死亡はそれぞれ1,466例(32%)、1,497例(33%)であった(HR:0.97、95%CI:0.90~1.04、p=0.41)。 3件の試験間、ジギタリス配糖体の種類、または背景となる心不全治療の程度で、統計学的に有意な異質性は認められなかった。

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ピロリ菌検査・除菌、普及の成果と残された課題/日本消化器病学会

 2013年にHelicobacter pylori(H. pylori)感染胃炎への除菌治療が保険適用となってから10年以上が経過し、感染検査と除菌治療は一般化した。H. pylori感染者は急速に減少傾向にあるが、新たな課題も生じているという。2026年4月16~18日に開催された第112回日本消化器病学会総会では、「ヘリコバクター・ピロリ診療の課題と将来展望」と題したパネルディスカッションが行われ、2024年刊行の「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン(改訂版ガイドライン)」作成委員会委員長の下山 克氏(青森県総合健診センター所長)が基調講演を行った。1)P-CABの普及――除菌率向上の一方で、検査結果への影響に注意 近年のH. pylori除菌では、ボノプラザンに代表されるP-CABが中心的役割を担っている。P-CABは従来のPPIと比べ強力かつ安定した酸分泌抑制作用を持ち、除菌率改善に大きく寄与した。改訂版ガイドラインでも、1次除菌レジメンとして、P-CAB+アモキシシリン+クラリスロマイシンの7日間投与を推奨している。 一方、PPI/P-CAB使用下では菌のウレアーゼ活性が低下し、実際には菌が残っていても尿素呼気試験(UBT)、迅速ウレアーゼ検査(RUT)は検査上陰性(偽陰性)となる可能性がある。血清ペプシノゲン(PG)濃度もPPI/P-CABに影響されるため、これらの検査については「PPI/P-CABは2週間の休薬期間を設けた上で検査を行うこと」を推奨している。これ以外の検査法は影響を受けにくく、休薬なしでも実施可能だ。またPPIは便中抗原測定法、核酸増幅法の検査結果に影響を与えにくいとされているものの、P-CABの影響についてはエビデンスがなく、キットごとの検証が必要となる。2)検査キットの問題――ラテックス法の陰性高値に注意 改訂版ガイドラインでは「血清抗H. pylori抗体検査の陽性結果からH. pylori除菌治療を開始できるか?」というクリニカルクエスチョン(CQ)に対し、「血清抗体陽性はH. pylori現感染のみを反映するものではないため、その結果のみで除菌治療を行わないことを推奨する」としている。UBT、便中抗原検査、PCR検査は、現在胃内に菌がいるかどうかを見る“現感染検査”である一方、血清抗H. pylori抗体検査は、患者の免疫反応を見る検査であり、過去の感染歴も反映する。そのため抗体陽性=現感染ではなく、偽陽性が生じやすい。 さらに問題となるのが、血清抗H. pylori抗体検査の中でのEIA法とラテックス法の違いである。従来から用いられてきたEIA法では、感染者と未感染者の分布が比較的明瞭に分かれる。一方、簡便で近年健診領域で広く使われているラテックス法は、EIA法と抗体価の分布が異なるので、EIAと同様の「陰性高値」を設定してはならない。「ラテックス法ではカットオフ以上でも現感染なしのケースが多い」との報告もあり、EIA法と同じ感覚でカットオフを扱うのは危険であることは周知されたい。改訂版ガイドラインでも、検査法ごとの特性を理解し、偽陽性または偽陰性が疑われる場合には、ほかの検査を組み合わせることが必要である、としている。3)薬剤感受性の問題――「Smart Gene」への期待 除菌治療では、クラリスロマイシン(CAM)耐性率の上昇が大きな問題となっている。改訂版ガイドラインでは、1次除菌としてP-CAB+アモキシシリン+CAMによる7日間3剤療法を第一選択としている。しかし、CAM耐性例では除菌失敗率が高い。CQでは除菌治療開始前に薬剤感受性検査を行い、CAM耐性であればメトロニダゾールなどの使用を推奨している。薬剤感受性検査は保険適用であるとされているものの、社会保険診療報酬支払基金の各支部の判断で査定される場合があり、普及を妨げる一因となっていた。しかし、2026年2月に厚労省から「P-CAB+アモキシシリン+メトロニダゾール」を「CAM耐性ヘリコバクター・ピロリ菌の一次除菌を目的に」処方した場合、当該使用事例を審査上認めるとの通達が出ており、この点はクリアされた。 さらに注目されているのが、PCRベース迅速診断機器「Smart Gene」である。Smart GeneではH. pylori感染診断、CAM耐性遺伝子検出を同時に行うことができ、Smart Geneを用いた感受性別除菌により、高い除菌成功率が得られたとの報告が増加している。さらに便検体を用いたSmart Geneも近く発売予定であり、小児や健診領域での応用が期待される。4)ペニシリンアレルギー例――依然エビデンス不足の領域 通常の1次除菌ではアモキシシリンを使用するが、ペニシリンアレルギー症例では使用できない。そのため、P-CAB+CAM+メトロニダゾールなど複数の代替レジメンが試みられている。しかし、まだエビデンスが不足しており、改訂版ガイドラインでもレジメン例は提示したものの、「現時点での推奨提示は困難である」としている。とくに感受性別の除菌データが少なく、今後の前向きランダム化臨床試験が必要だ。5)胃がん検診・人間ドック時――「胃がんなし」でもリスク説明が重要 胃がん検診や人間ドックにおける内視鏡画像・胃X線画像もH. pylori感染の診断に有用である。日本ヘリコバクター学会が会員に対して行ったアンケート(n=258)では、94%の医師が胃がん検診受診者や上部消化管内視鏡受検者に対してH. pylori感染診断を行っており、同時検査が浸透していることが確認できた。 さらに、内視鏡施行医へのアンケート(n=309)では、背景胃粘膜診断の重要性が改めて確認された。回答者の72%が「背景胃粘膜診断を記録する項目が必要」、21%が「胃炎の京都分類まで記載すべき」と、あわせて9割以上がH. pylori関連胃炎診断の重要性を認知していた。また95%が「患者には、胃がんの有無だけでなく、H. pylori関連胃炎の有無について伝えるべき」だと回答した。患者側に多い誤解が「H. pylori感染なし、あるいは除菌済みであれば、胃がんリスクはなくなる」というものだ。実際には、萎縮性胃炎や腸上皮化生を伴う胃粘膜を有する症例を中心に胃がんリスクは残存しており、患者にこの点を周知し、定期的な検診受診を促す必要がある。6)胃がん検診見直し――若年者一律検診は再考の時代 現在、日本における胃がん検診の対象年齢は「50歳以上(当面は40歳以上でも可)」となっている。しかし、H. pylori除菌の普及や感染率の低下とあわせ、日本人の胃がん罹患率は急激に低下している。とくに40歳未満の若年層における胃がん罹患率は10万人当たり0.3~0.4と「万に一つもない」レベルに達している。結果として、職域健診などで行われている若年未感染者への一律バリウム検診は、放射線被曝、偽陽性、不必要な内視鏡精査と費用などの不利益が利益を大きく上回りつつある。今後は、とくに若年世代において、画像検診よりもH. pylori感染診断と除菌へ重点を移すべきだろう。7)英語版ガイドラインへの期待――日本型H. pylori戦略を世界へ 改訂版ガイドラインは英語版も刊行された。H. pylori感染者全員を原則除菌対象とし、若年段階での検査・除菌を推奨する日本独自の胃がん予防戦略は、世界でも有用と考えられる。耐性菌が少ない国・地域や、低・中所得国における除菌治療、胃がん予防を目的とした除菌普及に役立つものとして、英語版ガイドラインの普及に期待したい。 このほか今後の課題としては、偽陽性が疑われるときのもう1つの検査実施の保険適用、3次除菌のレジメン、ボノプラザン+アモキシシリン療法、H. pylori以外の感染菌(Non-Helicobacter pylori Helicobacter[NHPH])胃炎の検討などがある。H. pylori未感染者が増加する現在、胃がん対策は「全員一律」から、「感染歴・背景胃炎・耐性菌を踏まえた個別化医療」へ移行しつつある。改訂版ガイドラインは、その方向性をより明確に示したものであり、今後のさらなるエビデンス蓄積に期待したい。

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チルゼパチドが中等症以上のOSASに適応拡大

 厚生労働省薬事審議会・医薬品第一部会は4月24日、日本イーライリリーの肥満症治療薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド皮下注)について、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対する適応拡大および肥満症に関する効能又は効果の一部変更の承認を了承。5月18日の承認に伴い、チルゼパチドの添付文書が改訂された。本剤の使用に当たっては、最適使用推進ガイドラインを参照されたい。チルゼパチド、肥満症についての一部変更点とOSASへの適応拡大 主な改訂点は以下のとおり。[効能又は効果](下線部分を改訂)◯肥満症ただし、高血圧、脂質異常症又は耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する・BMIが35kg/m2以上◯中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群ただし、BMIが27kg/m2以上に該当する場合に限る。※各効能又は効果に関連する注意は添付文書を参照[用法及び用量]◯肥満症通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgまで減量、又は4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量できる。◯中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回15mgを皮下注射する。なお、忍容性が認められない場合には、週1回10~15mgの範囲で投与量を調整することができる。

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半月板部分切除術、長期的改善は認められず

 世界的に広く実施されている膝の手術の一つである半月板部分切除術は、患者の症状改善に寄与しないばかりか、症状悪化につながる可能性がある----そんな研究結果を、ヘルシンキ大学(フィンランド)外科分野教授のTeppo Jarvinen氏らが報告した。半月板損傷は、膝関節内にある半月板が損傷することで、痛みや腫れ、関節可動域の制限などを引き起こす疾患で、半月板部分切除術は、その損傷部分を切除する手術だ。Jarvinen氏らの研究では、この手術は長期的には膝の痛みや機能を改善せず、むしろ関節炎の進行を促進する可能性が示された。詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に4月29日掲載された。Jarvinen氏は、「今回の結果は、広く行われている治療法に効果がないばかりか、有害でさえあることが判明する“医療の逆転”の一例である可能性がある」とニュースリリースで述べている。 この研究では、フィンランドで半月板損傷患者146人を対象に実施されたランダム化比較試験の10年間の追跡結果が解析された。患者の約半数(70人)には半月板部分切除術が実施され、残り半数(76人)にはシャム(偽)手術が行われていた。研究グループは、10年間にわたり、X線検査による変形性膝関節症の進行評価に加え、再手術の有無や追加の膝治療などを追跡した。また、3種類の患者報告アウトカム尺度を用いて、半月板損傷に伴う症状、膝機能、運動後の膝痛などについても繰り返し評価した。 患者のうち、いずれの群も91%(半月板部分切除術群64人、シャム手術群69人)が10年間の追跡調査を完了した。解析の結果、半月板部分切除術は、患者の症状改善にほとんど役立たなかったことが示された。具体的には、半月板損傷に伴う症状や日常生活機能障害を評価するウエスタンオンタリオ半月板評価ツール(WOMET)スコアの両群間の平均差は−9.4点で、半月板部分切除術群の結果の方が不良であった。また、膝機能を評価するLysholmスコアも−5.1点と、半月板部分切除術群で機能低下傾向が認められた。さらに、運動後の膝痛スコアは0.86点高く、半月板部分切除術群の方が痛みが強い傾向が示された。 加えて、X線画像で変形性膝関節症の進行が確認された割合は、半月板部分切除術群で81%、シャム手術群で70%であり、人工膝関節置換術または高位脛骨骨切り術を受けた患者の割合はそれぞれ12%、4%であり、いずれも半月板部分切除術群の方が高かった。 共著者の1人であるPihlajalinna Kelloportti Hospital(フィンランド)のRaine Sihvonen氏は、「この手術は、膝の内側の痛みが内側の半月板損傷によって引き起こされており、そうした損傷部位を外科的に治療できるという前提に基づいている。このような生物学的妥当性に基づく推論は、いまだ医学界で広く見られる。しかし今回の場合、その前提は厳密な検証によって支持されなかった」とニュースリリースで述べている。 論文の筆頭著者であるヘルシンキ大学整形外科・外傷学分野のRoope Kalske氏によれば、今回の結果は、半月板部分切除術の有効性が乏しいことを示した過去のランダム化比較試験の結果とも一致しているという。 Jarvinen氏は、「過去10年近くにわたり、多くの整形外科領域以外の独立した診療ガイドライン作成団体が、この手術の中止を推奨してきた。それにもかかわらず、米国整形外科学会(AAOS)や英国膝関節外科学会(BASK)などは、依然としてこの手術を推奨し続けている。これは、効果の乏しい治療法をやめることがいかに難しいかを如実に示している」と述べている。 なお、米ハーバード大学医学大学院は、半月板損傷に対する非外科的治療として、理学療法、膝を休ませること、膝の冷却および挙上、膝装具(ブレース)の使用、市販の鎮痛薬の服用などを推奨している。

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