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第304回 総合診療は「ブルーオーシャン」か?~「ほかに選択肢がなかったから」ではなく、キャリア戦略としての総合診療を考える~

先日、高校の同級生で、開業医や病院の経営コンサルタントを長年やっている公認会計士と久しぶりに飲みました。そのとき、彼がポロっと漏らした言葉が妙にリアルでした。「最近さ、勤務医の先生から『新しく開業したいから手伝って』って頼まれても、正直『はい、喜んで!』とは引き受けづらいんだよね。これからの医療情勢を考えると、経営が軌道に乗るまで相当大変だからね」この言葉、今の医療界の空気を実によく表していると思いませんか?過日、「病院の急性期ベッド数、全国で40年に4割減 厚生労働省が必要数を試算」(日経新聞)の報道にもあったように、勤務医にとって高齢者救急の患者数が増えているのに「病床削減」という内容に驚きを持たれた方も多いと思います。そんな中、2025年12月に成立した改正医療法による外来医師過多区域での新規開業の要件追加(いわゆる開業規制の開始)が盛り込まれるなど、開業を巡る状況もだんだん厳しくなっており、若い先生方は頭を悩ませているのではないでしょうか。かといって、一時期勝ち組のように話題になっていた自由診療(美容クリニックなど)への転身もその実態の裏側が徐々に明らかになっており、全員が成功するわけではないという現実が見えてきました。従来型のキャリアパスだけでは、どこも黄色信号が灯りつつあるのが現状です。そんな中、国がいま「イチ押し」しているのが「総合診療」です。かつて総合診療(総診)といえば、「なんでも薄く広く診る先生」「専門が決まらなかった人の行き先」などと、誤解されることもありました。しかし今、時代は大きく変わっています。医師の偏在、高齢者救急患者の増大、在宅医療へのシフト、そして相次ぐ病院再編による専門医の充足…。気が付けば総診は、「これから最も社会的ニーズが高まる基本領域」として、国の医療政策の根幹に据えられ始めています。厚労省が都道府県に6月末に発出した最新の「医師確保計画策定ガイドライン」でも、その本気度が伝わってきます。これまでのように医師不足なら「各診療科の医師数を増やせば解決」というフェーズはとうに終わり、これからは医師不足に対しては経済的インセンティブや勤務環境の改善、リカレント教育を総動員した集中的な対策が始まろうとしています。では、なぜ今、総診が「ブルーオーシャン」になりえるのか。臨床現場目線でひも解いてみましょう。私たちが向き合う「患者像」の地殻変動最大の理由はシンプルです。目の前にやってくる患者さんの姿が変わったからです。これからの地域医療では、「単一疾患をその専門医だけが診ていればOK」という患者さんは減っていきます。代わりに増えるのが、高齢で、複数の持病があり、認知症やフレイルを抱え、社会的・経済的な背景も複雑…という、いわゆる「マルモ(Multiple morbidity:多疾患併存)」の患者さんです。厚労省のデータでも2020年から2040年にかけて、85歳以上の救急搬送は75%増、在宅医療の需要は62%増という凄まじい予測が出ています。その一方で、多くの診療科で予定手術の件数は大幅に減少に転じる見込みです。つまり、医療のニーズそのものが「高度急性期・臓器別」から、「高齢者救急・在宅・慢性期・地域包括ケア」へと、完全に重心を移しつつあります。これは何も「地方」や「へき地医療」に限った話ではありません。大都市でも、救急外来や施設、在宅でこうした複雑な患者さんは溢れています。急性期病院の高齢患者さんを担当する医師は、救急部門、一般急性期病床、地域包括ケア病床、診療所、どこに身を置くとしても、「総合診療的な視点とスキル」がなければ現場が回らない時代が来ています。その証拠に、去年(2025年)の日本内科学会雑誌12月号は「内科医が『かかりつけ医』になるとき-変化する医療と内科医の責任」として総合診療医による特集号で、ネットでも非常に反響がありました。従来の各臓器別の専門診療では、かかりつけ医を求める患者のニーズに合致しくなっていることが明らかになっています。国の政策も「総診推し」へ本腰先日公開の政府行政事業レビューによると2025年度目標であった全都道府県での「大学医学部附属病院に総合診療医センター設置」について、その実績は12にとどまり、計画未達であることが明らかになりました。「なんだ、全然進んでないじゃないか」と思うかもしれません。しかし、裏を返せば、「国がこれから目標達成に向けて強化に動く領域」だということです。有識者からも「インセンティブの強化や待遇改善を幅広く検討せよ」と強い提言が出ています。2018年度に始まった総合診療専門医制度ですが、2025年4月時点での総数は937人。これからの爆発的な高齢者救急や在宅ニーズを考えると、ハッキリ言って圧倒的に専門医が足りていません。だからこそ、今、総診を選ぶ若手医師には、国の制度整備、教育の拠点、地域からの求人、あらゆる行政支援が集中する「先行者利益」があると言えます。医学生・若手医師にとっての「リアルなキャリア戦略」「地域医療に貢献する」という高潔な理念も素敵ですが、もっと現実的な「キャリアの強み」として総診を捉えてみましょう。メリットは大きく3つあります。(1)とにかく「出口(働く場所)」が広い病院であれば「総合内科、救急、地域包括医療・ケア病棟」、開業すれば在宅医療、診療所、へき地、さらには行政や医学教育まで、キャリアの選択肢がとにかく多彩です。ライフステージに合わせたシフトがしやすいのも魅力です。(2)強烈な「政策の追い風」がある厚労省が指定する「重点医師偏在対策支援区域」では、診療所の承継・開業支援だけでなく、「土日の代替医師の確保支援」まで検討されています。「総診で地域に出ると休みが取れない」という常識を、国が予算をつけて変えようとしています。(3)セカンドキャリアとしての親和性ガイドラインでは、中堅・シニアの臓器別専門医が総診的スキルを学ぶための「リカレント教育(学び直し)」も始まっています。「若手だけの道」ではなく、内科、外科、小児科、救急などを極めた先生が、将来的に在宅や老年医療へスイッチするための強力な武器になります。ただし、甘い話ばかりではない(便利屋リスクへの警戒)ここまで良い面を挙げましたが、リアルな課題もあります。大学のセンター設置が進まないのは、指導医不足や「結局、総診って何をしてくれるの?」というキャリアパスの見えにくさがあるからです。現場の理解が追いついていない病院では、残念ながら「人手不足を埋めるための便利屋」として使われてしまうリスクが依然としてあります。だからこそ、若手の先生方に伝えたいのは、「総診は素晴らしいから直感で選べ」ではなく、「だからこそ、教育体制と指導医の質をシビアに見極めて選んでほしい」ということです。救急、内科、小児科、診断推論、さらには病院運営や地域連携まで体系的に学べる「きちんとした支援体制」があるプログラムを選ぶこと。ただの人手不足の穴埋めにしかならない環境とは、ここで大きな差がつきます。医学生・若手医師へのメッセージ総診は、もはや「専門がない医師の行き先」ではありません。これからの日本医療の最大の主戦場である「複雑な患者を丸ごと診て、医療と介護と生活をつなぐ」という、極めて高度な専門性が必要な診療科となります。臓器別専門医として1つの領域をディープに極める道も、当然リスペクトされるべき素晴らしいキャリアです。ただ、これからの医療現場で「引く手あまた」になるのは、専門臓器の知識に加えて、「患者全体を診る力」「地域で支えるシステムを知る力」を掛け合わせられる医師です。最初から総診を志すのも良し、他科を経てから総診のマインドを取り入れるのも良しというキャリアもあるかと思います。「需要は最大、政策の追い風もあり、そして、ライバルはまだ少ない」「総合診療は、これからの時代を生き抜く医師にとって、極めて合理的な『ブルーオーシャン(成長領域)』である」と断言していいと私は思っています。 参考 1) 医師確保計画策定ガイドライン~第8次(後期)~(厚労省) 2) 政府の行政事業レビュー(内閣府) 3) 病院の急性期ベッド数、全国で40年に4割減 厚労省が必要数を試算(日経新聞) 4) 【2026年度開始】医師の開業規制とは? 知っておきたい規制地域や対策(ドクタービジョン)

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診療科別2026年上半期注目論文5選(糖尿病・代謝・内分泌内科編)

Orforglipron for maintenance of body weight reduction: the double-blind, randomized phase 3b ATTAIN-MAINTAIN trialArrone LJ, et al. Nat Med. 2026 May 13. [Epub ahead of print]<ATTAIN-MAINTAIN>:orforglipronは、チルゼパチド・セマグルチドによる減量維持に有用SURMOUNT-5研究(糖尿病のない肥満症者対象)でチルゼパチド・セマグルチドにより5%以上減量した人を対象に、注射薬から経口GLP-1受容体作動薬orforglipronへ切り替えたところ、52週後の減量維持率はプラセボ群より有意に高く、体重リバウンド予防への有用性が示されました。一方で消化器系副作用の多さが今後の課題です。Tirzepatide for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and ObesityMalhotra A, et al. N Engl J Med 2024;391:1193-205.<SURMOUNT-OSA>:チルゼパチドは閉塞性睡眠時無呼吸を改善する肥満(BMI≧27)を伴う中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸患者において、52週間のチルゼパチド投与により体重が最大約20%減少しAHIが最大約29回/時間減少しました。2026年5月にチルゼパチドが本邦でも閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療薬としても承認されました。本論文は2024年発行ですが、保険適用に伴い改めて取り上げました。処方条件については最適使用推進ガイドラインを確認しましょう。Finerenone in Type 1 Diabetes and Chronic Kidney DiseaseHeerspink HJL, et al. N Engl J Med 2026;394:947-57.<FINE-ONE>:フィネレノンは1型糖尿病の腎症進展抑制に有用1型糖尿病で微量~顕性アルブミン尿期の腎症を合併している患者において、フィネレノンは6ヵ月間で尿中アルブミン/クレアチニン比を顕著に減少させました。ただし、短期間の介入であること、代用エンドポイントを指標としていることから長期的な臨床効果や安全性(とくに高カリウム血症のリスク)の評価は今後の課題です。Intensive LDL Cholesterol Targeting in Atherosclerotic Cardiovascular DiseaseLee YJ, et al. N Engl J Med 2026;394:1365-75.<Ez-PAVE>:心血管疾患合併者では、LDL-Cの超厳格管理により心血管リスクが低減する心血管疾患を有する韓国人では、LDL-Cの目標値を55mg/dL未満に設定すると、70mg/dL未満を目標とした場合よりもイベントリスクがさらに低下しました。ただし、非盲検試験であるため効果が過大評価されている可能性がある点と、低リスク者における有効性は未確立である点に注意が必要です。Histological efficacy of anti-diabetic agents in MASH and the mediating role of weight loss: A network meta-analysisBanerjee M, et al. Diabetes Obes Metab. 2026;28:287-295.<ネットワークメタアナリシス>:SGLT2阻害薬とインクレチン関連薬はMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)を改善するSGLT2阻害薬およびインクレチン関連薬は生検で確定診断されたMASHにおいて線維化を改善することが示されました。その効果には体重減少が大きく寄与していることが示唆されましたが、それ以外の直接的な作用の可能性も想定されています。2026年6月にセマグルチドが日本初のMASH治療薬として承認されました。処方条件については最適使用推進ガイドラインを確認しましょう。

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テストステロン処方前、ガイドラインに沿った診断は12%

 テストステロン製剤を処方された男性の多くが、事前に必要な検査を受けていない可能性があることが、新たな研究で示された。テストステロン製剤の処方前に、ガイドラインに沿った診断検査を受けていたのは12%にとどまっていたという。米ミシガン大学アナーバー校内科学分野のMaria Papaleontiou氏らによるこの研究結果は、米国内分泌学会年次学術集会(ENDO 2026、6月13~16日、米シカゴ)で発表された。 Papaleontiou氏はニュースリリースで、「本研究結果は、患者ケアを改善し、不適切なテストステロン製剤の処方を削減できる機会があることを示している。長期的には、これらの知見が診療の質改善の取り組みや臨床意思決定支援ツールの開発につながり、ガイドラインに沿った一貫性のあるテストステロン製剤処方の促進に寄与する可能性がある」と述べている。 研究チームは、2020~2025年にミシガン大学医療センターで性腺機能低下症と診断され、テストステロンを処方された男性200人(平均年齢52.5歳)をランダムに抽出し、診療記録を分析した。男性での性腺機能低下症は、精巣の機能低下に伴い十分な量のテストステロンを産生できなくなる状態をいう。 対象者に多く認められた併存疾患は、肥満(63%)、高血圧(52%)、うつ病(40%)、糖尿病(28%)、関節炎(28%)であった。テストステロン製剤を処方された患者のうち、午前5~10時の検査で2回、低テストステロン値(総テストステロン値300ng/dL未満、遊離テストステロン70pg/mL未満、または生物学的利用可能テストステロン値の低値)が確認され、LH(黄体形成ホルモン)および/またはFSH(卵胞刺激ホルモン)の測定が行われ、テストステロン療法の禁忌がないことが確認されていた患者は12%にとどまっていた。 また、初回のテストステロン製剤処方前の1年以内に前立腺特異抗原(PSA)検査を受けていた患者は62%、全血球計算(CBC)を受けていた患者は77%であった。さらに、テストステロン製剤処方前の併存疾患として、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が55%、前立腺がんが4%に認められ、1.5%ではPSA値が4ng/mLを超えていた。テストステロン製剤を処方した医師の内訳は、プライマリケア医が45%、泌尿器科医が35.5%、内分泌科医が18%、その他の診療科医が1.5%であった。処方されたテストステロン製剤では、クリームやジェルなどの外用剤(68.5%)が最も多かった。 Papaleontiou氏らは、「テストステロン製剤の処方をガイドラインに沿ったものに改善することで、臨床的にテストステロン療法を必要としない可能性がある患者における回避可能なリスクを防ぐことができる」との見方を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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英語学習の目的を明確にする【タイパ時代のAI英語革命】第16回

これまでの連載では、ChatGPTをはじめとする生成AIをどのように英語学習に活用できるかを解説してきました。ただし、英語学習で最も大切なのは「毎日計画を立て、その計画に沿ってコツコツと継続すること」です。働きながら学習を続けるのは大変ですが、この長期的な計画作りにもChatGPTを役立てることができます。本章では、ChatGPTをどのように英語学習の継続に活かせるのかを解説します。英語学習を成功させるためには、次の4つのステップが重要です。1)学習の意義・目的を明確にする2)長期的な目標を立てる3)目的に沿った手段を考える4)短期的な目標を日常に落とし込むなかでも最も大切なのは、1)の学習の「意義・目的」を明確にすることです。「英語を話せるようになりたい」という漠然とした気持ちだけでは、長期的な継続は難しくなります。自分はなぜ英語を学びたいのか、その根源を掘り下げることでモチベーションを維持することができます。学習動機のアイデアを出してもらうとはいえ、「なぜ自分が英語を学びたいのか」が、そもそもはっきりしないという人も多いでしょう。そこで役立つのが生成AIのアイデア出しの力です。ChatGPTを使えば、自分でも気付いていない学習動機を整理し、より具体的で持続可能な学習計画へつなげることができます。プロンプト例私は循環器内科の若手医師です。私が英語学習をする目的について考えたいです。私の立場として英語学習をする意義を5つ提案してください。回答例:1. 最新エビデンスへのアクセス循環器領域のガイドラインや臨床試験(例:AHA/ACC、ESCの発表)は、ほとんどが英語で公開されます。英語を理解できれば一次情報に直接触れることができ、診療にすぐ活かせます。2. 国際学会・研修への参加AHA、ACC、ESCといった国際学会では英語での発表・討論が中心です。英語力があることで自ら質問・発表でき、世界のエキスパートとネットワークを築く機会が広がります。3. 論文執筆・研究発表循環器内科は研究が盛んな分野であり、国際誌への投稿や多施設共同研究に関わる機会も多いです。英語で論文を書けることはキャリア形成に直結します。4. 臨床現場での国際対応循環器領域では救急(ACS、心不全、PEなど)で外国人患者を診る機会もあります。英語ができれば病歴聴取や説明をスムーズに行え、迅速な治療につながります。5. キャリアの選択肢拡大将来、海外留学や国際共同研究、外資系病院・国際医療機関での勤務を考える場合、英語力は必須です。国内にとどまる場合でも「英語を使える循環器専門医」という強みは教育・指導者としても評価されます。このようにアイデアを引き出すことで、「英語を話せるようになった自分がどんな未来を実現したいのか」をイメージしやすくなります。次のステップは、そのアイデアを基にさらに深掘りすることです。皆さんも「誰かと話しているうちに、自分の考えが整理されてきた」という経験をしたことがあるのではないでしょうか。対話を通じて自分の思いを言葉にすることで、内に秘めた動機を明確にできます。ChatGPTはその対話相手として最適です。まるで「コーチングのプロ」のように、質問を投げ掛けてもらうことで、英語学習の意義や目的をよりはっきりと見いだすことができます。以下がプロンプトの例です。プロンプト例#役割あなたは目標達成コーチングのプロです。#命令文対話を通して、私が英語学習をする目的を明確にしてください。#制約条件私は循環器内科の若手医師です。英語学習をキャリアの選択肢拡大に役立てたいと思っています。1回のメッセージにつき質問は1つにしてください。対話を通してまとまった内容は適宜要約してください。回答例:では始めましょう。まず最初にお聞きしますね。あなたが「キャリアの選択肢を広げる」ために英語を学ぶとして、どのような場面を具体的に思い描いていますか? たとえば海外留学、国際学会発表、英文論文執筆、国際的な医療機関での勤務など、どのような未来のイメージが一番近いでしょうか。このようなプロンプトを入力すると、ChatGPTがこちら側に質問をしてくるようになります。この後、10往復ほどやりとりをしたところ、以下のようにまとめてくれました。回答例:まとめ英語学習の大目標:海外留学を通じて成長し、日本の医療に貢献する重点場面:同僚医師とのディスカッション最大の課題:医療英語の専門用語と速い会話スピード最優先で克服したいこと:速い会話スピードへの対応具体的に強化したいスキル:スピーキング(自分の返答を素早く出す力)これで「英語学習の目的」がかなり具体化されましたね。このようなステップを経て、「英語を話せるようになりたい」という漠然とした目標が、詳細に言語化されました。この英語学習の目的に沿って、次のステップではさらに具体的な長期目標を考えていきます。

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薬物治療抵抗性統合失調症に有効な治療は?~ネットワークメタ解析

 抗精神病薬は、統合失調症に対して必ずしも万能な効果を示すわけではないにもかかわらず、抗精神病薬治療抵抗性患者に対する最適な治療戦略は依然として明らかになっていない。ガイドラインでは、薬物療法、心理療法、非侵襲的脳刺激(NIBS)などいくつかの治療法が推奨されているが、どれが最も効果的かは不明であった。ドイツ・ミュンヘン工科大学の古川 由己氏らは、抗精神病薬治療抵抗性統合失調症患者に対する現在のエビデンスをシステマティックにレビューし、ネットワークメタ解析を実施した。EClinicalMedicine誌2026年5月22日号の報告。 Cochrane Schizophrenia Groupレジストリ(2025年1月13日まで)およびPubMed(2026年1月8日まで)を検索し、1回以上の適切な抗精神病薬4週間投与後も症状が持続する抗精神病薬治療抵抗性統合失調症患者を対象としたランダム化比較試験(RCT)を抽出した。評価者は、盲検化したうえで実施した。主要アウトカムは、標準化平均差(SMD)と95%信頼区間(CI)を用いたランダム効果ネットワークメタ解析により分析した、全般症状の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・59件のRCT(参加者:5,409例、平均年齢:39.8歳、男性:3,416例、女性:1,441例)が対象となり、そのうち5,013例を主要解析対象に含めた。・抗精神病薬併用療法(18件、575例、SMD:-0.25、95%CI:-0.46~-0.04、CINeMA:非常に低い)および電気けいれん療法(5件、97例、SMD:-0.51、95%CI:-0.96~-0.06、CINeMA:非常に低い)は、同じ抗精神病薬を継続するよりも効果的である可能性が示唆された。・精神疾患に対する認知行動療法(CBTp)は、同じ抗精神病薬を継続するよりも効果があるという弱いエビデンスが示された(5件、340例、SMD:-0.23、95%CI:-0.58~0.11、CINeMA:非常に低い)。・その他の戦略(キサノメリン・トロスピウム併用療法、用量漸増、経頭蓋磁気刺激療法、クロザピンまたは他の抗精神病薬への切り替え)については、結論が得られなかった。・併用療法では、有害事象の増加がみられた(オッズ比:1.93、95%CI:1.26~3.00)。・クロザピンおよび非クロザピンによる治療抵抗性患者の間で、サブグループ間の差は認められなかった。 著者らは「抗精神病薬治療抵抗性統合失調症患者に対する治療選択肢に関して、結果は非常に不確実であった。これらの疑問を明らかにするためには、さらなる直接比較試験が必要とされる。また、用量漸増やクロザピンへの切り替えを支持するエビデンスは認められなかった。抗精神病薬併用療法と電気けいれん療法の併用療法の有効性を示唆するエビデンスは非常に弱く、検討の余地はあるものの、十分な注意が必要である」と結論付けている。

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敗血症患者に対する30mL/kg以上の初期輸液、30日死亡率低下と関連

 大規模コホート研究で、市中発症敗血症患者に対する初期輸液療法として、来院6時間以内に30mL/kg以上の輸液を実施した場合、30日死亡率の低下と関連することが示された。とくに低灌流例だけでなく、中等度乳酸上昇例でも死亡率低下が認められ、従来は輸液過剰が懸念され十分な輸液が控えられてきた重度心・腎疾患併存例でも有害性を示す結果は得られず、むしろ輸液量の増加に伴い死亡率が低下する可能性が示唆された。Intermountain Medical Center(米国・ユタ州)のElizabeth S. Munroe氏らによる本研究はJAMA Network Open誌2026年6月12日号に掲載された。 敗血症誘発性低灌流では、「Surviving Sepsis Campaign(SSC)」ガイドラインで最初の3時間以内に30mL/kg以上の晶質液投与が推奨されている。一方、心不全や末期腎不全など体液過剰リスクの高い患者では十分な輸液がためらわれることが少なくない。また、乳酸値18~36mg/dLの中等度上昇例についても、積極的な輸液の有用性は十分に確立されていなかった。 本研究では、米国ミシガン州67施設の敗血症レジストリを用い、市中発症敗血症で入院した成人(退院日は2021年12月~2025年1月)4万3,321例を解析した。このうち入院3時間以内に低血圧または乳酸18mg/dL以上を認め、輸液適応がある2万5,481例を対象とした。 対象患者は、1)低灌流・重度併存疾患なし、2)低灌流・重度併存疾患あり、3)中等度乳酸上昇・重度併存疾患なし、4)中等度乳酸上昇・重度併存疾患ありの4群に分類された。主要評価項目は30日死亡率であり、入院6時間以内の総輸液量が30mL/kg以上か未満かで比較した。解析では患者背景を調整した逆確率重み付け法と多変量解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・低灌流・重度併存疾患なし群では、30mL/kg以上の輸液を受けた群の調整後30日死亡率は26.0%で、30mL/kg未満群の30.4%より4.4%ポイント低かった。中等度乳酸上昇・重度併存疾患なし群でも12.0%対13.9%と1.8%ポイントの有意な死亡率低下が認められた。・一方、低灌流・重度併存疾患あり群および中等度乳酸上昇・重度併存疾患あり群では、30mL/kg以上群で死亡率は低い傾向を示したものの、有意差には至らなかった。ただし、輸液量を連続変数として解析したスプラインモデルでは、低灌流・重度併存疾患あり群において輸液量の増加に伴って死亡率が低下する傾向が確認され、積極的輸液による明らかな不利益は示されなかった。中等度乳酸上昇・重度併存疾患あり群では明確な関連は認められなかった。・実体重、理想体重、補正体重を用いる3種類の体重換算方法でも結果は一貫しており、どの計算法でも30mL/kg以上の初期輸液は良好な転帰と関連していた。 著者らは、「敗血症初期輸液30mL/kgは従来考えられていたより幅広い患者集団で有益である可能性がある」と考察している。とくに中等度乳酸上昇例や重度心・腎疾患併存例では、輸液不足が予後悪化につながる可能性があり、輸液制限を一律に適応すべきではないと指摘する。一方、本研究は観察研究であり、残余交絡の可能性は否定できず、極端な心機能低下例などへの適応については今後の前向き試験による検証が必要としている。今回の結果は、敗血症初期蘇生における30mL/kg輸液というSSC推奨を支持するとともに、これまで慎重投与とされてきた患者群にも適応を再考する根拠となる可能性がある。

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HFrEFへの経口グレリン受容体作動薬AC01、安全性と忍容性を確認/Lancet

 AC01は、新規の経口カルシウム感受性強心薬で、グレリン受容体作動薬でもある。本薬は、心筋トロポニンIのリン酸化を低下させるとともに、Ca2+感受性を高めることで心筋の収縮性の向上をもたらすとされる。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のLars H. Lund氏らは「GOAL-HF1試験」で、左室駆出率(LVEF)の低下した心不全(HFrEF)患者の治療において、AC01の28日間の投与は安全で良好な忍容性を示し、重篤な有害事象や明らかな心電図上の異常所見は認められなかったと報告した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年6月24日号に掲載された。欧州4ヵ国の無作為化プラセボ対照第Ib/IIa相試験 GOAL-HF1試験は、欧州4ヵ国(オランダ、英国、スウェーデン、イタリア)の14施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第Ib/IIa相試験である(AnaCardioの助成を受けた)。 2023年2月~2025年8月に、年齢18~80歳、6ヵ月以上持続する慢性HFrEF(NYHA心機能分類IIまたはIII)と診断され、駆出率≦40%、安静時平均心拍数55~90拍/分で、ガイドラインに基づく最大耐用量の薬物療法を受け、1次予防として経静脈植込み型除細動器(過度の徐脈から保護するためのバックアップペーシング機能付き)を装着している患者を登録した。 被験者58例(年齢中央値66.0歳[四分位範囲[IQR]:60.3~72.0]、女性5例[9%])を、第Ib相試験(32例)と第IIa相試験(26例)に無作為に割り付けた。 また、第Ib相試験では、AC01の4つの用量コホート(0.1、0.3、1.0、3.0mg)に6例ずつ、プラセボ群に2例ずつを無作為に割り付けた。AC01を1日2回、7日間、経口投与した。第IIa相試験では、AC01の1.0mg群に9例、3.0mg群(1、2日目は1.0mg、3日目以降は3.0mg)に8例、プラセボ群に9例を無作為に割り付け、1日2回、28日間、経口投与した。 主要アウトカムは、安全性および忍容性であった。AC01関連の重篤な有害事象の発現はない ベースラインにおいてNYHA心機能分類IIが44例(76%)、IIIが14例(24%)であり、全体の平均駆出率は31.4%(SD 6.3)、NT-proBNP濃度中央値は557pg/mL(IQR:291~882)であった。 AC01関連有害事象は、第Ib相試験で12件、第IIa相試験で18件認められた。AC01関連の重篤な有害事象はみられなかった。第Ib相試験において、プラセボ群の1例に、治療関連の重篤な有害事象が1件(高感度心筋トロポニンI濃度の上昇)発生した。 AC01を投与された41例のうち33例(80%)、プラセボを投与された17例のうち12例(71%)で、軽度または中等度の試験薬投与中に発現した有害事象が報告された。試験からの早期の脱落や死亡に至った有害事象は認められなかった。 最も頻度の高い試験薬投与中に発現した有害事象は、低血圧、非持続性心室性頻拍、呼吸困難、高血糖、めまい、頭痛であった。明らかな心電図異常の徴候はない 心電図データには、頻拍、新規発症の頻脈性不整脈、心筋虚血、あるいは形態学的異常や伝導異常の明らかな徴候は認められなかった。また、症候性低血圧の報告はなく、高感度心筋トロポニンIやNT-proBNPに対するAC01の明らかな影響もみられなかった。試験期間中の死亡例はなかった。 著者は、「これらの知見は、HFrEF患者における用量選定、長期的な安全性、臨床的有効性を評価するための、より大規模で十分な検出力を持つ試験において、AC01のさらなる評価を行うことを支持するものである」としている。

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糖尿病患者の感染症リスクに警鐘

 糖尿病患者における感染症のリスクが過小評価されているとする論文が、「Diabetes」に6月6日掲載された。英ロンドン大学シティ・セント・ジョージ校のJulia Critchley氏らの研究の結果であり、1型糖尿病と2型糖尿病、さらに糖尿病予備群においても感染症のリスク上昇が認められるという。 糖尿病は体のさまざまな部位にダメージを与え、特に心臓や腎臓、目(網膜)などへの影響が大きいことがよく知られている。しかし研究者らは、「糖尿病による重大な健康リスクの一つである感染症が、そのリスクの大きさに見合うほど注目されていない」としている。 新たな研究から、感染症も糖尿病患者の重大な健康リスクであることが明らかになった。Critchley氏は、「感染症は一般的かつ深刻な健康リスクであるが、適切な予防措置によってその多くを予防できる。それにもかかわらず、臨床ガイドラインではほとんど取り上げられていない。糖尿病患者は世界中で急激に増加している。感染症対策を糖尿病治療の中心に位置づけなければ大きな損失につながる。後回しにしてはならない」と語っている。 Critchley氏らは英国内の医療記録を用いて、糖尿病または糖尿病予備群の人80万人以上(1型糖尿病3万3,829人、2型糖尿病52万7,151人、糖尿病予備群27万3,216人)の感染症リスクを、年齢、性別、民族性の一致する100万人超の糖代謝異常のない人と比較した。その結果、糖代謝異常を有する人では、糖代謝異常のない人と比べて、感染症のリスクが大幅に高いことが明らかになった。・1型糖尿病患者では、かかりつけ医による治療を受ける感染症のリスクが1.81倍、感染症で入院するリスクは3.37倍。・2型糖尿病患者では、かかりつけ医による治療を受ける感染症のリスクが1.51倍、感染症で入院するリスクは1.91倍。・糖尿病予備群の人では、かかりつけ医による治療を受ける感染症のリスクが1.35倍、感染症で入院するリスクは1.33倍。 このほか、2型糖尿病患者の死因として、感染症は心臓病とがんに続き3番目に多いことも判明した。また、肺炎を含む下気道感染症は、1型および2型糖尿病患者における入院の原因として、最も一般的な感染症だった。2型糖尿病患者の感染症関連死では、肺炎を含む下気道感染症や敗血症の影響の大きさが浮き彫りになった。特に敗血症は死亡診断書で基礎死因として記載されにくく、実態が過小評価されている可能性が示された。 さらに、血糖コントロールの指標であるHbA1cの平均値の高さや変動が感染リスクの増加と関連していることが示された。1型糖尿病患者の場合、HbA1cが高いほど感染症のリスクが高く、2型糖尿病患者の場合、HbA1cの変動が入院を要する重篤な感染症のリスクと関連していた。 Critchley氏は、「各国のガイドラインにおいて、糖尿病患者における感染症リスクの増大がより重視されるべきだ。ガイドラインを世界規模で刷新することで医療従事者の意識を高め、それが糖尿病患者の感染症の早期発見と迅速な介入を促し、予防可能な入院や死亡を減らすことにつながるだろう」と述べている。

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第303回 働き方改革後も勤務医の7人に1人が残業上限超、対策検討へ/厚労省

<先週の動き> 1.働き方改革後も勤務医の7人に1人が残業上限超、対策検討へ/厚労省 2.高齢者医療費『原則3割』の明記見送り応能負担の見直しを検討/自民・維新 3.医療機関のDX対応、ダッシュボードで進捗公開/デジタル庁 4.地域医療を支える国立系病院、2025年度も経常赤字決算/国立大学病院・国立病院機構 5.医療データのAI活用へ規制緩和 改正個人情報保護法が成立/国会 6.コンタクト患者の「一生再診」は違法、支払基金に勝訴/東京地裁 1.働き方改革後も勤務医の7人に1人が残業上限超、対策検討へ/厚労省病院勤務医の長時間労働がなお深刻であることが明らかとなった。厚生労働省の調査によると、2025年に全国の病院で働く常勤医約1万3,000人のうち、週60時間以上勤務し、時間外労働が通常の上限である年960時間を超えるとみられる医師は15%に上った。2022年の約21%からは減少したものの、医師の働き方改革開始後も、約7人に1人が上限を超えている計算になる。診療科別では外科25.1%、救急科23.7%、産婦人科22.8%、脳神経外科18.7%と、手術、救急、分娩など時間外対応の多い診療科で高率だった。2024年4月に始まった時間外労働規制では、勤務医の上限は原則年960時間とされた一方で、救急医療など地域医療確保のため必要と認められた医師には年1,860時間までの特例が認められている。厚労省はこの特例を2035年度末までに廃止する方針で、2026年7月13日に「令和8年度医師の働き方改革の推進等に関する検討会」を設置し、ICT活用や業務効率化、支援策の拡充などを議論する。上限規制導入から3年を迎える2027年度を前に、改革の実効性が改めて問われている。その一方で、日本医療労働組合連合会と全国医師ユニオンは、救急医療を担う病院の宿日直許可の取り消しや、労働基準監督署による指導強化を上野 賢一郎厚生労働大臣に要請した。具体的には宿日直許可を理由に、夜間・休日の救急対応や入院患者の急変対応を労働時間に算入していない病院があると指摘し、実態として高い負荷を伴う当直を一律に労働時間外と扱うことを問題視している。年1,860時間特例の解消計画、交代制勤務の導入、必要医師数の検討、勤務間インターバルの厳格な運用も求めた。病院側には、単なる自己研鑽扱いや宿日直許可による帳簿上の圧縮ではなく、実労働時間を正確に把握する姿勢が求められる。今後は、タスクシフト、複数主治医制、勤務交代制、ICTによる記録・連絡業務の効率化を進めるとともに、救急・周産期・外科系診療を維持するための医師確保と財政支援を一体で講じる必要がある。 参考 1) 第1回 令和8年度医師の働き方改革の推進等に関する検討会(厚労省) 2) 病院医師の残業、年960時間超が15%…上限規制を超えて依然続く長時間労働(読売新聞) 3) 救急担う病院の宿日直許可「取り消しを」医労連など要請(CB news) 2.高齢者医療費『原則3割』の明記見送り応能負担の見直しを検討/自民・維新自民党と日本維新の会は、社会保障改革の骨子をまとめ、70歳以上の医療費窓口負担について「年齢によらない公平な応能負担の実現に向けて見直す」と明記した。維新は現役世代の保険料負担を軽減するため、高齢者も含めて「原則3割」とする表現を求めたが、自民党内の反発が強く、骨子への明記は見送られた。現行制度では、70~74歳は原則2割、75歳以上は原則1割で、いずれも現役並み所得者は3割負担となっている。政府は、7月中に閣議決定を目指す「骨太の方針」に、現役世代の社会保険料率の上昇を止め、将来的に引き下げる方針を盛り込む見通しである。その具体策として、高齢者医療の自己負担増、介護保険の2割負担対象者の拡大、OTC類似薬への追加負担などが検討される。年末までに改革工程表を作成し、2026年度中に制度設計を具体化する方針だ。あわせて、個人と企業が負担する社会保険料の国民所得に対する割合である「社会保障負担率」について、目標設定の検討も盛り込まれる。その一方で、窓口負担の引き上げのみで現役世代の保険料を大幅に下げることは難しい。民間シンクタンクによる試算では、74歳までを3割、75~79歳を2割とした場合でも、自己負担増は約5,000億円、被用者保険の保険料率低下は労使合計で約0.2%、社会保障負担率の低下は約0.1%にとどまる。受診抑制や治療中断、低所得高齢者の負担増を招き、結果として救急受診や重症化を増やす懸念もある。医療機関にとっては、患者負担増による未受診・服薬中断への対応に加え、保険料抑制が診療報酬や医療提供体制の削減圧力につながる可能性が重要な論点となる。ただ、現時点で「高齢者は原則3割負担」が決定したわけではない。今後の骨太の方針、改革工程表、所得区分、低所得者への配慮、医療アクセスへの影響を注視する必要がある。 参考 1) 高齢者医療費「原則3割」明記せず 自民・維新の社会保障改革骨子まとまる(テレビ朝日) 2) 現役世代の保険料「引き下げ」明記へ 骨太方針、医療介護の負担増も(朝日新聞) 3) 社会保障費の「上限」提起 骨太原案が示す論点(CB news) 3.医療機関のDX対応、ダッシュボードで進捗公開/デジタル庁デジタル庁と厚生労働省は2026年7月7日、医療DX施策の進捗を可視化する「医療DXに関するダッシュボード」を公開した。2023年6月に決定された「医療DXの推進に関する工程表」に基づき、国民や医療関係者が各施策の導入状況、利用実績、効果を一元的に確認できるようにすることが目的である。ダッシュボードは「保険資格確認」「診察」「処方・調剤」「健康管理」の4領域で構成される。保険資格確認では、マイナ保険証の利用率やオンライン資格確認の状況を掲載。処方・調剤では、電子処方箋および電子処方箋管理サービスの全国的な導入率や利用状況を示し、別の詳細画面では地域別、施設別のデータも確認できる。健康管理では、マイナポータルを通じた医療情報の閲覧件数や、PHRサービスに医療保険情報を連携するAPI事業者数などを公開する。自治体と医療機関等を結ぶ情報連携基盤「Public MedicalHub」(PMH)については、医療費助成と母子保健の分野で、導入自治体数や利用実績のある医療機関数などの掲載を開始した。自治体検診、予防接種、介護情報基盤については、今後追加される予定である。その一方で、「診察」領域の中核となる電子カルテの導入状況や電子カルテ情報共有サービスの進捗は、現時点では未掲載である。医療機関にとっては、自施設のマイナ保険証利用率や電子処方箋への対応状況を全国・地域水準と比較し、医療DX推進体制整備加算への対応やシステム投資を検討する際の基礎資料となる。今後は、単なる導入率に加え、実際の利用率、業務負担の軽減、情報共有の迅速化、医療安全への効果まで、どこまで可視化されるかが注目される。 参考 1) 医療DXに関するダッシュボード(デジタル庁) 2) 医療DXダッシュボード公開、デジタル庁と厚労省 電子カルテの導入状況は今後掲載(CB news) 4.地域医療を支える国立系病院、2025年度も経常赤字決算/国立大学病院・国立病院機構国立大学病院と国立病院機構の2025年度決算は、いずれも経常赤字となり、公的医療機関の厳しい経営状況が改めて示された。全国44の国立大学病院の経常損益は総額244億円の赤字で、2024年度の286億円からは改善したものの、31病院が赤字を計上した。医療資材や光熱費の高騰、人件費上昇が経営を圧迫している。国立大学病院長会議は当初、赤字総額が400億円を超え、過去最大となる可能性を見込んでいたが、政府の2025年度補正予算による医療機関支援などにより、赤字幅は想定より縮小した。ただし、補助金を除けば経営環境そのものが大きく改善したとは言いにくい。その一方で、全国140病院などを運営する国立病院機構も、経常損益が75億円の赤字となり、2期連続の経常赤字となった。赤字額は前年度の375億円から大幅に縮小した。入院・外来を合わせた診療収益が409億円、3.8%増加し、コストの伸びを上回ったほか、補助金などの収益が2.6倍の340億円に増えたことが寄与した。国立大学病院は高度医療、教育、研究を担い、国立病院機構は救急、災害、周産期、へき地、新興感染症、精神科など、他の医療機関では担いにくい政策医療を提供している。今回の決算は、診療実績を増やしても物価・賃金上昇を診療報酬だけでは吸収できず、公的支援がなければ安定経営が難しい構造を示している。 参考 1) 国立病院機構、2期連続で経常赤字 25年度損失75億円 マイナス幅は縮小(CB news) 2) 国立大病院、244億円の赤字 2025年度決算、経営厳しく(東京新聞) 5.医療データのAI活用へ規制緩和、改正個人情報保護法が成立/国会AI開発や統計作成を目的とする個人データの利活用を拡大する改正個人情報保護法が、2026年7月10日に与党や国民民主党、日本維新の会などの賛成多数で成立した。また、立憲民主党や公明党などは反対した。改正法は、通常は必要とされる本人同意を、AI学習や統計作成に限って不要とする特例を設ける。病院、薬局、ヘルスケア事業者などが保有するデータも対象となり、病歴、犯罪歴、人種、信条などの機微に触れる「要配慮個人情報」も含まれる。公布後、2028年夏までに施行する見通しとなっており、具体的な対象、目的外利用の防止策、安全管理措置などは今後、個人情報保護委員会の規則やガイドラインで示される。医療分野では、生活習慣と疾患の関連解析、創薬、診断支援AIの精度向上などへの活用が期待される。その一方で、提供元が氏名などを削除せずにデータを渡すことも制度上可能とされ、海外事業者や個人事業主が提供先となる場合も想定される。このため、患者本人が知らないまま情報が外部提供され、漏えい、目的外利用、再識別、プロファイリングなどにつながる懸念がある。AIや統計として処理されれば個人に結び付く機微な情報はサービス上残りにくいと政府は説明するが、複数データの照合による再特定リスクを完全に排除できるかはなお不透明である。改正法では、提供元を欺いてデータを取得し、利益を得た場合、特例で取得したデータを別目的に利用した場合などに、課徴金を科す仕組みを導入する。ただし、対象は被害者が1,000人以上の悪質事案などに限られ、団体訴訟制度も盛り込まれなかった。本人同意を軸とした事前規制を緩める一方で、違反後の事後規制を強める制度設計といえる。医療機関には、法的に同意が不要となる場合でも、京大病院の黒田 知宏教授が「怖くてデータを提供したいとは思わない」と懸念を示したように、現場からは利活用の停滞を危惧する声が出ている。とくに診療情報は信頼関係の基盤であり、形式的な適法性だけでなく、倫理審査や院内ガバナンスを含めた透明な運用が不可欠となる。 参考 1) 個人情報、AI開発へ規制緩和 改正法成立、データ活用促進(時事通信) 2) AI開発への個人情報提供、同意不要に 改正法成立も企業手探り(日経新聞) 3) 改正個人情報保護法が成立 病歴や信条も…本人の同意なく提供可能に(朝日新聞) 6.コンタクト患者の「一生再診」は違法、支払基金に勝訴/東京地裁東京地裁は2026年7月2日、過去にコンタクトレンズ(CL)の処方歴がある患者が、数年後に別の診療目的で来院した際の初診料請求を「再診」扱いとして減額した社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」と略す)の査定を違法と判断した。これにより、こひなた眼科(東京都文京区)の藤巻 拓郎院長への未払い分2,569円の全額支払いを命じる判決を言い渡した。発端となったのは、2018年11月にCL処方を受けた患者が、4年2ヵ月後の2023年1月に視力低下を訴え、眼鏡作製などのため再来院した事例である。眼科側は「初診料」(288点)を算定したが、支払基金はこれを「再診料」(74点)と見なし、屈折検査や角膜曲率半径計測の点数も重複として一律に除外し、減額査定した。東京地裁は、2回目の受診がCL処方目的ではなく、前回受診から4年以上が経過していることから「診療継続中とは評価できない」と指摘。医学的な初診に当たり、初診料を算定できると認定した。藤巻院長らの会見によると、支払基金は厚労相の告示・通知にある「当該検査料を算定した場合は初診料を算定せず再診料等を算定する」との限定文言を無視し、過去に1度でもCLを扱えば、その後も一律に再診とする運用を、東京や大阪など一部地域で10年以上にわたり続けていたという。原告側は、こうした運用は告示・通知を歪曲したものだと主張している。また、原告側は、支払基金が訴訟中に従来の解釈が成り立たないと認めながら、減点理由書に理由を記載しなくなり、裁判では「屈折異常が継続している」と別の理由を提示して、不払いを正当化しようとしたと批判している。本判決は個別事例に対する地裁判断であるが、初診料算定の可否は過去のCL処方歴だけで一律に決めるのではなく、受診間隔、今回の受診目的、傷病の同一性、診療の継続性を個別に判断すべきことを示した点で、実務上重要な判決といえる。 参考 1) 眼科医の初診料請求認める 再診も「該当」、東京地裁(ケアマネジメント・オンライン) 2) 「医者を馬鹿にしている」眼科医が“2569円の支払い”求めた裁判で勝訴…コンタクト作った患者は“一生、再診扱い”との査定を東京地裁が違法認定(弁護士JPニュース) 3) 「過去にコンタクトレンズ」訴訟(原告ホームページ)

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リファンピシン耐性肺結核、4~5剤併用6ヵ月投与が有用/NEJM

 リファンピシン耐性肺結核の治療では、最近まで最大7種の薬剤を含むレジメンの9~18ヵ月間の投与が行われてきた。2022年、WHOは治療ガイドラインを改訂し、ベダキリンやpretomanidなどの新薬を含むレジメンの6ヵ月間の投与を、推奨される標準治療として追加したが、現在、pretomanidは14歳未満の小児や妊娠中または授乳中の女性には禁忌とされる。南アフリカ共和国・University of the WitwatersrandのFrancesca Conradie氏らは、「BEAT Tuberculosis試験」において、小児や妊娠中・授乳中の女性を含む患者集団の治療では、ベダキリン、リネゾリド、デラマニド、レボフロキサシンまたはクロファジミンを含む新戦略の6ヵ月間投与は同国の標準治療の9ヵ月間投与に対し、有効性に関して非劣性であり、安全性プロファイルは同程度であることを示した。研究の成果は、NEJM誌2026年6月25日号に掲載された。ベダキリン、リネゾリド、デラマニド+レボフロキサシン/+クロファジミン併用投与 BEAT Tuberculosis試験は、南アフリカ共和国の2つの都市部地域で実施した実践的な非盲検無作為化対照比較第III相非劣性試験(米国国際開発庁などの助成を受けた)。2019年8月~2022年10月に、年齢6歳以上、リファンピシン耐性の肺結核で、イソニアジドやフルオロキノロン系抗菌薬への耐性の有無は問わず、妊娠中または授乳中の女性を含む患者を登録した。 被験者403例(年齢中央値35.0歳[四分位範囲[IQR]:28.0~43.0]、女性170例[42.2%]、BMI中央値19.2[IQR:17.1~22.2])を、ベダキリン、リネゾリド、デラマニドと、レボフロキサシンまたはクロファジミン(あるいはこれら両方)の投与を6ヵ月間受ける群(試験戦略群203例)、またはリファンピシン耐性結核に対する南アフリカ共和国の標準治療を9ヵ月間受ける群(対照群200例)に無作為に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは、治療終了時および無作為化から76週の時点における良好なアウトカム(治癒または治療完了)であった。治癒は、適格な治療アドヒアランス(投薬順守率≧80%)を達成し、治療終了前の14日以上の間隔を空けた2回の喀痰検査で陰性であること、治療完了は、適格な治療アドヒアランスを達成し、治療失敗の証拠がないことと定義した。非劣性マージンは10%ポイントとした。良好なアウトカム、試験戦略群86.1%vs.対照群86.0% ベースラインで30例(7.4%)が8~17歳、女性参加者のうち9例(5.3%)が妊婦で、205例(50.9%)がHIV感染者、167例(41.4%)がBMI値<18.5であった。 良好なアウトカムは、試験戦略群で202例中174例(86.1%)、対照群で200例中172例(86.0%)に認められた。両群間の補正後リスク差は-0.2%ポイント(95%信頼区間:-6.9~6.5)であり、対照群に対する試験戦略群の非劣性が確認された(非劣性のp=0.001)。 治療失敗は、試験戦略群で7例(3.5%)、対照群で10例(5.0%)にみられた。治療失敗が確認された時点で、試験戦略群の3例と対照群の5例にベダキリン耐性を認めた。また、14例が再発し、このうち10例(5.0%)は試験戦略群、4例(2.0%)は対照群であった。Grade3以上の有害事象31.2%vs.37.0%、すでにWHOガイドラインに反映 治療期間中に、Grade3以上の有害事象(安全性の主要エンドポイント)が試験戦略群の63例(31.2%)、対照群の74例(37.0%)で発生した。治療期間または追跡期間中に、各群10例(5.0%)が死亡した。すべての安全性エンドポイントに関して、両群間に意義のある差を認めなかった。 治療期間中の重篤な有害事象は、試験戦略群で38例(18.8%)、対照群で44例(22.0%)に発現した。治療期間中および治療後に発生した最も頻度の高い重篤な有害事象は、担当医によってリネゾリドが原因とされた貧血で、それぞれ33例(16.3%)および29例(14.5%)にみられた。これらは、数日の投薬中断と赤血球輸血で管理された。 著者は、「本試験の結果は、すでにWHOの薬剤耐性結核の治療ガイドラインに反映され、2024年6月の改訂で、この4剤または5剤の併用療法が推奨レジメンの1つとされている」としている。また、「得られた知見は、現在pretomanidの使用が禁忌とされる優先対象集団(小児や妊娠中、授乳中の女性など)に対する有効な治療戦略のエビデンスを示しており、リファンピシン耐性結核のすべての患者に対して、新たな治療選択肢を提供するものである」と指摘している。

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卵の早期導入で乳児の卵アレルギーが減少

 乳児期の早い段階に卵を与え始めることで、卵アレルギーの発症を減らせる可能性があることが、新たな研究で示された。この効果は、特に湿疹のある乳児で顕著であったという。クイーンズランド大学(オーストラリア)小児アレルギー学・疫学分野のJennifer Koplin氏らによるこの研究結果は、「JAMA Pediatrics」に6月8日掲載された。 卵アレルギーは、多くの国で幼児に最も多く認められるIgE介在性食物アレルギーである。研究グループによると、2016年に発表されたメタアナリシスでは、複数のランダム化比較試験の統合解析により、生後6カ月までに卵を導入した場合、それ以降に導入した場合と比べて卵アレルギー発症リスクが約44%低いことが示された(リスク比0.56)。この結果を受けて、複数の国・地域のアレルギー予防ガイドラインは生後6カ月頃からの卵の導入を推奨するようになったという。これは、「食物アレルギーの原因となる卵などの食物の摂取は1~3歳頃まで避けるべき」としてきた1990年代~2000年代初頭の考え方とは大きく異なる。 オーストラリアでは2016年にアレルギー予防ガイドラインが改訂され、卵を含む主要なアレルゲンを生後1年以内に導入することが推奨された。今回の研究では、このガイドライン改訂の前後で、卵アレルギーの有病率がどのように変化したのかが検討された。対象は、メルボルンの予防接種センターで12カ月時の予防接種を受けた月齢11~15カ月の乳児で、ガイドライン改訂前(2007~2011年)と改訂後(2018~2019年)に同一の方法で募集された。最終的に、改訂前コホート5,276人(月齢中央値12.4カ月、男児50.8%)と改訂後コホート1,933人(月齢中央値12.5カ月、男児51.8%)を解析対象とした。 卵の導入時期の中央値は、改訂前コホートで生後8カ月、改訂後コホートで生後6カ月であった。既知のアレルギーのリスク因子を調整して解析した結果、卵アレルギーの有病率は、改訂前コホートで9.2%であったのが、改訂後コホートでは7.6%に低下していた(調整絶対差−1.6パーセントポイント、95%信頼区間−3.3~−0.005)。このような有病率の低下は、特に乳児期早期に湿疹を発症した児で顕著であり、卵アレルギーの有病率は34.6%から21.9%へ低下していた(調整絶対差−12.7パーセントポイント、95%信頼区間−20.0~−5.4)。 Koplin氏は、「本研究結果は、卵の早期導入を推奨する乳児栄養ガイドラインの改訂が乳児における卵アレルギー有病率の明確な低下につながったことを示すエビデンスである」と結論付けている。さらに研究チームは、「ランダム化比較試験の結果に基づいて改訂されたガイドラインは、適切に実施されれば、食物アレルギーの有病率低下につながる可能性があることを示唆する結果でもある」との見方も示している。 本研究には関与していない米ノースウェル・ヘルスのアレルギー・免疫学専門医であるGina Coscia氏はニュースリリースの中で、「免疫系に関して分かっていることは、アレルゲンが最初に皮膚を介して体内に入ると、体がアレルギー反応を起こすということだ。一方、食物アレルゲンが最初に口から摂取される場合には、そのアレルゲンに対して保護的な免疫応答が誘導される。これが、アレルギーを起こしやすい固形食品の早期導入が広く推奨されるようになった科学的根拠である。バリア機能が損なわれた皮膚に食物が接触する前に口から食物を摂取すれば、食物アレルギーを予防できる可能性がある」と説明している。 Coscia氏はまた、湿疹のある乳児でより大きな効果が見られたことは、この考え方をさらに裏付けるものだとしている。同氏は、「湿疹のある乳児は皮膚のバリア機能が低下しているため、食物アレルギーに対して特に脆弱であることが分かっている。このような乳児で食物アレルギー有病率の低下がより顕著に認められたことは極めて重要であり、アレルゲンの早期導入の重要性について、保護者への啓発をより強く後押しする根拠となる」と述べている。

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日本初のMASH治療薬、MASLD/MASH診療は新たな局面に/ノボ

 代謝機能障害関連脂肪肝疾患(MASLD)および代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の診療は、近年病名変更や非侵襲的診断法(NIT)の進歩によって様変わりした。一方で、肝線維化の進展を抑制する薬物療法は長らく存在せず、生活習慣改善が治療の中心であった。そのような中、2026年6月、すでに肥満症治療薬として広く用いられているGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名:ウゴービ)が、日本で初めてMASHを適応症とする追加承認を取得し、国内のMASLD/MASH診療は新たな局面を迎えた。 ノボ ノルディスク ファーマは6月30日にプレスセミナーを開催し、国際医療福祉大学 消化器内科統括教授の中島 淳氏が「日本初MASH治療薬がもたらす未来」をテーマに講演を行った。同氏は「これまでMASH患者が肝硬変や肝細胞がんへ進展していくのをみているしかなかったが、ようやく治療薬を手にすることができた」と述べた。「脂肪量」ではなく「線維化」が予後を決める MASLDは、かつてNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と呼ばれていた疾患概念で、2023年に国際的なコンセンサスを得て名称が変更された。現在では代謝異常を背景とする脂肪性肝疾患として位置付けられ、その中で肝炎を伴う病態がMASHと定義されている。 日本ではMASLD患者は約2,500万例に達すると推定され、MASH患者も100万例規模に上ると考えられている。健康診断データでは脂肪肝の有病率は25.8%と4人に1人を超え、さらに進行線維化が疑われる症例も約1%存在するなど、肝疾患の中で患者数が最も多い疾患となっている。 MASLDは自覚症状に乏しい「サイレントキラー」である。線維化はF0からF4(肝硬変)へと数十年かけて進行するが、その速度は線維化の進展とともに加速する。F0~F1から肝硬変までは30年以上を要する一方、F2では約20年、F3では約6年で肝硬変に至るとされる。さらに肝硬変へ進展すると肝細胞がんや非代償性肝硬変のリスクが急激に高まる。 中島氏は、「疾患が悪化するかは脂肪肝であること自体ではなく、線維化がどこまで進んでいるかによるところが大きい」と説明した。実際、約9,700例を20年間追跡した解析では、脂肪量や炎症よりも線維化の有無が無イベント生存期間を最も強く規定する因子であることが示されている。 また、日本人MASLD患者を対象としたCLIONE試験では、線維化ステージの進展に伴い全死亡、肝関連イベント、肝細胞がんの発症率が段階的に上昇することも報告されている。死亡原因は肝疾患だけでなく、心血管疾患や他臓器がんも多く認められ、MASLDが全身性疾患であることも改めて示されている。診療のカギはF2以上のハイリスク患者をいかに拾い上げるか 一方で、近年は診断法も大きく進歩した。従来の肝生検に代わり、FIB-4 indexやM2BPGi、ELFスコアなどの血液バイオマーカーに加え、VCTE(FibroScan)やMRエラストグラフィなど非侵襲的検査が普及している。 2026年4月に改訂された「MASLD診療ガイドライン」では、FIB-4 indexを用いた1次リスク評価を起点とし、中間・高リスク例ではエラストグラフィや線維化マーカーを組み合わせて評価する診療アルゴリズムが推奨された。中島氏は、「最も重要なのはF2以上の患者を早期に見つけることであり、かかりつけ医と肝臓専門医との連携が不可欠になる」と述べた。 さらに同氏は、近年の肝細胞がんの原因も大きく変化していると指摘した。C型肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬の普及によりC型肝炎由来の肝細胞がんは減少した一方、MASLD/MASH由来の肝細胞がんは増加を続けている。「都市部では肝切除症例の大部分がMASLD由来となっている」と述べ、今後の肝臓診療ではMASLD対策が重要課題になるとの認識を示した。ESSENCE試験で2つの主要評価項目を達成 今回の適応追加の根拠となったのは、F2またはF3線維化を有するMASH患者800例(日本人116例を含む)を対象とした国際共同第III相ESSENCE試験である。 被験者は標準治療+セマグルチド2.4mgまたはプラセボに2対1で無作為化され、72週時点で肝生検による組織学的評価が行われた。主要評価項目は、「線維化悪化を伴わないMASH消失」と「MASH悪化を伴わない線維化改善」の2項目であった。 その結果、「線維化悪化を伴わないMASH消失」はセマグルチド群62.9%、プラセボ群34.3%で達成され、「MASH悪化を伴わない線維化改善」もそれぞれ36.8%、22.4%となり、いずれも統計学的有意差を示した。 また、副次評価項目ではALT、AST、γ-GTPの改善に加え、CAPによる肝脂肪量、VCTEによる肝硬度、線維化関連バイオマーカーの改善も確認された。組織学的にも脂肪化や炎症、肝細胞風船様変性の改善が認められ、線維化改善を示唆する結果となった。 安全性については、新たな重大な懸念は認められなかったものの、悪心、下痢、便秘などGLP-1受容体作動薬に特徴的な消化器症状はプラセボ群より高頻度で認められた。実臨床では漸増投与や副作用マネジメントが重要となる。早期診断・早期介入の時代へ 中島氏は、「これまでは薬がなかったため、糖尿病医やかかりつけ医から専門医へ紹介されない患者も多く、腹水や巨大肝がんを契機に初めて紹介されるケースも少なくなかった」と振り返る。その上で、「今後はF2~F3の段階で患者を拾い上げ、治療介入することで、肝硬変や肝細胞がんへの進展を防げる可能性がある」と述べ、今回の適応追加を「MASLD/MASH診療におけるゲームチェンジャー」と位置付けた。 薬物療法の選択肢が加わったことで、MASLD診療は「経過観察」から「積極的治療」へと大きく転換しつつある。今後はFIB-4 indexをはじめとする非侵襲的評価を活用したハイリスク患者の早期抽出と、適切な専門医紹介、薬物療法を含めた包括的な管理体制の構築が、国内のMASH診療における重要な課題となりそうだ。【最適使用推進ガイドライン抜粋】・適応:「肝硬変を伴わないMASH。ただし、中等度又は高度の線維化を有する場合に限る」→肝線維化ステージがF2又はF3に線維化が進行した患者であることを、生検によって確認すること。なお、「肝生検ガイダンス」(日本肝臓学会編)19の禁忌の項を参考に、生検の実施が適切ではないと判断された場合には、非侵襲的検査(NIT)に基づき判定すること。・用法及び用量:成人には0.25mgから投与を開始し、週1回皮下注射。その後は4週間の間隔で、週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射。なお、患者の状態に応じて適宜減量する。・施設要件:消化器内科、肝臓内科、内科のいずれかを標榜している保険医療機関・医師要件: MASH又はNASHの診療を5年以上行っていること

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血栓回収療法成功後のtirofiban、機能的自立を改善/Lancet

 前方循環系の大血管閉塞による急性虚血性脳卒中を発症し血栓除去術(EVT)による再灌流が成功した患者において、糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬であるtirofibanの投与は、プラセボと比較し機能的自立を改善し、症候性頭蓋内出血の発生割合に有意差はなかったことが示された。中国・Tongji Medical CollegeのHao Huang氏らATTRACTION Investigatorsが、同国82施設で実施した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ATTRACTION試験」の結果を報告した。急性虚血性脳卒中でEVTにより再灌流に成功しても、必ずしも機能的自立が得られるわけではない。tirofibanは、静脈内血栓溶解療法後の急性虚血性脳卒中における補助的な抗血小板療法として検討されているが、EVT後の投与を支持する研究結果が示されていた。Lancet誌オンライン版2026年6月24日号掲載の報告。EVTで再灌流に成功した虚血性脳卒中患者を対象、tirofiban群vs.プラセボ群 研究グループは、18歳以上、最終健常確認時から24時間以内で、前方循環系の大血管閉塞に起因する急性虚血性脳卒中を発症しEVTにより再灌流が成功した患者を、施設で層別化した固定ブロック法を用い、tirofiban群(5μg/kgを動脈内ボーラス投与後0.1μg/kg/分で持続静脈内投与を最長24時間継続)、またはプラセボ群(同様の用量および投与)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 試験薬投与終了後の抗血栓療法およびその他の脳卒中治療は、最新のガイドラインに従って行われた。 有効性の主要アウトカムは、90日時の機能的自立(mRSスコア:0~2点)の患者割合で、無作為化されたすべての患者(ITT集団)を解析対象集団とした。 安全性のアウトカムは、無作為化後48時間以内の症候性頭蓋内出血および画像診断による頭蓋内出血所見、ならびに90日全死亡率などで、試験治療を受け少なくとも1回の安全性評価が行われた患者を解析対象集団とした。90日時の機能的自立、tirofiban群49%vs.プラセボ群43% 2024年4月9日~2025年9月29日に、1,686例がスクリーニングを受け、このうち1,380例がtirofiban群(689例)またはプラセボ群(691例)に無作為に割り付けられた。 患者背景は、年齢中央値71歳(四分位範囲:62~77)、女性が591例(43%)、男性が789例(57%)、漢民族が1,367例(99%)であり、90日時の追跡不能例は認められなかった。 90日時の機能的自立は、tirofiban群で340/689例(49%)、プラセボ群で299/691例(43%)に認められた(絶対リスク群間差:6.1%ポイント[95%信頼区間[CI]:0.8~11.3、p=0.023]、補正後リスク比:1.15[95%CI:1.03~1.27、p=0.0092])。 48時間以内の症候性頭蓋内出血は、tirofiban群で12%(82/687例)、プラセボ群で9%(65/691例)、48時間以内のあらゆる頭蓋内出血はそれぞれ34%(235例)、32%(219例)に認められ、90日死亡率はそれぞれ18%(126例)、19%(131例)であり、いずれも両群間に差はなかった。

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タモキシフェン治療中の乳がん患者のホットフラッシュ、ベンラファキシンが有望(HOFLA-V試験)/日本乳癌学会

 内分泌療法治療中の乳がん患者において、発汗や動悸を伴う血管運動症状である「ホットフラッシュ」は、患者の約50~80%と高頻度に発生する。とくに閉経前患者や、LH-RHアゴニスト併用症例においては、その頻度や重症度が高い。更年期障害に伴うホットフラッシュに対しては、ホルモン補充療法が第一選択となるが、乳がん患者においては再発リスクを増加させる懸念があるため推奨されていない。非ホルモン療法の中では、抗うつ薬ベンラファキシン、抗けいれん薬ガバペンチンについて、NCCNガイドラインでは「preferred」とされ推奨度が高いが、日本人乳がん患者、とくに閉経前患者におけるエビデンスは不足している。こうした背景を踏まえ、日本人乳がん患者における内分泌療法中のホットフラッシュに対するベンラファキシンの有効性および安全性を検討した単施設前向き単群非盲検パイロット試験「HOFLA-V試験」が実施され、結果を筑波大学附属病院の佐藤 璃子氏が第34回日本乳癌学会学術総会で発表した。<HOFLA-V試験>・対象:18歳以上60歳以下、StageI~IIIC期の原発性乳がん患者。術後療法としてタモキシフェンを内服しており(LH-RHアゴニスト併用有無は問わない)、週に14回以上のホットフラッシュを認めるECOG PS 0~1の患者(大うつ病もしくはうつ病と診断されている患者、甲状腺疾患治療中の患者、重度の肝機能障害を有する患者、およびSSRI・SNRI・強力または中程度のCYP2D6阻害薬・CYP3A阻害薬およびCYP3A誘導薬・ガバペンチノイド・MAO阻害薬を使用している患者は除外)。・試験群:ベンラファキシン37.5mg/日を4週間投与。投与2週目の診察時に効果不十分かつ患者自身が希望した場合に限り、75mg/日への増量を可能とした。・評価項目:[主要評価項目]投与開始4週目における投与前からの「ホットフラッシュスコア」変化率(患者が毎日記録する日誌に基づき、日々の症状を軽度[1点]~非常に重度[4点]の4段階で評価し、それぞれの発生回数を乗じた合計値を1日のスコアとした)[副次評価項目]安全性(CTCAE v5.0を用い、投与2週目および4週目に評価)など 主な結果は以下のとおり。・2022年11月~2024年6月に20例が登録された。安全性解析集団は20例全例とし、主要解析集団については、Grade1の有害事象(めまいなど)により投与1週目で中止を希望した2例、および後日不適格が判明した1例を除く17例とした。・主要解析集団17例のベースライン特性は、平均年齢45.5歳、全例がECOG PS 0および閉経前であった。治療法については、LH-RHアゴニスト+タモキシフェン併用が11例(65%)、LH-RHアゴニスト+タモキシフェン+アベマシクリブ併用が2例(12%)、タモキシフェン単独が4例(24%)であり、LH-RHアゴニスト併用例が全体の約76%を占めた。・主要評価項目である投与4週目におけるホットフラッシュスコアの変化率は、平均で49.8%の減少(改善)を示した。個別の症例をみると、17例中16例でスコアの減少が認められた。・ホットフラッシュスコア実測値の推移をみると、ベースライン時の中央値79(範囲:49~125)から、投与4週目には中央値33(範囲:11~75)へと有意に低下した。この改善効果は投与1週目から速やかに発現し、各評価ポイント(1~4週目)のすべてにおいてベースラインと比較して有意な改善(すべてp<0.001)が維持されていた。・安全性に関して、認められた有害事象はすべてGrade1または2にとどまり、Grade3以上の有害事象は発生しなかった。全Gradeで報告された主な有害事象は、頭痛(35.0%)、悪心(35.0%)、不眠症(25.0%)、口内乾燥(20.0%)、浮動性めまい(20.0%)などであった。・内服完遂率および継続状況について、主要解析対象の17例は全例が全4週間の内服を完遂し、服薬遵守率は96.4%であった。2週目の時点で75mg/日への増量を希望したのは5例(29.4%)であった。試験終了時および3ヵ月後において、15例(88%)がベンラファキシンの継続投与を希望した。 佐藤氏は、単施設・単群のパイロット試験であることを研究の限界として挙げたうえで、ベンラファキシン投与によるホットフラッシュの約50%の改善効果は、これまでに海外で報告されている40~60%程度の改善率とおおむね一致していると説明した。特筆すべき点として、投与1週目という早期から症状緩和が得られること、そして、既存データが乏しかった「閉経前かつLH-RHアゴニスト併用例」を多く含む日本人集団において改善効果が示されたことを挙げ、非ホルモン療法の選択肢となりうるとした。

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第302回 骨太方針原案、窓口負担・診療報酬調整を明記/政府

<先週の動き> 1.骨太方針原案、窓口負担・診療報酬調整を明記/政府 2.医師確保計画GL通知、重点医師偏在区域を明示/厚労省 3.200床以上病院の電子カルテ導入、2028年度100%へ2年前倒し/政府 4.2040年の地域医療構想、急性期病床4割減・包括期は拡大/厚労省 5.協会けんぽ黒字拡大、医療費と後期高齢者支援金も増加/協会けんぽ 6.京都大を国際卓越研究大学に認定へ、初年度200億円支援/文科省 1.骨太方針原案、窓口負担・診療報酬調整を明記/政府政府は6月30日に経済財政諮問会議を開き、「骨太の方針2026」原案を示した。2027年度予算編成を見据え、医療・介護提供体制と社会保障負担の見直しが大きな論点となった。医療保険制度では、高齢者の受診行動や所得状況を踏まえた窓口負担の見直しについて、2027(令和9)年度予算編成過程で結論を得る方針が盛り込まれた。ただし、この記載には調整中を示す「P」マークが付いており、今後の与党調整や閣議決定までに文言が変わる可能性がある。高齢者の窓口負担をめぐっては、財政制度等審議会が「70歳以上の患者負担を原則3割とする方向を提言する」という一方で、上野 賢一郎厚労相は一律3割負担には慎重な姿勢を示しており、年末の予算編成に向けて政府・与党内で調整が続く見通し。医療現場にとっては、自己負担増大による受診抑制、慢性疾患の管理、救急受診、未治療や重症化リスクへの影響も含め、制度設計の行方を注視する必要がある。診療報酬については、経済・物価動向が2026年度改定時の見通しから大きく変動し、医療機関などの経営状況に支障が生じた場合、2027(令和9)年度予算編成過程で診療報酬上の加減算を含む追加調整を行うと明記された。物価高、人件費上昇、委託費・材料費増が病院経営を圧迫するなか、2026年度改定後も経営実態を踏まえた対応が検討対象となっている点は重要である。その一方で、医療提供体制については、2040年に向けて必要病床数を上回っているとされている一般病床と療養病床で約5万6,000床、基準病床数を超えている精神病床約5万3,000床を対象に病床数の適正化を進め、2027年度以降の地域医療構想を踏まえた医療機関の連携・再編・集約化を促進するとした。地域包括ケアシステムの深化、高齢者救急、在宅医療、中山間・人口減少地域での柔軟なサービス提供も課題に挙げられている。さらに、医師偏在対策を進め、地域の実情を考慮した2028年度以降の医学部定員削減にも取り組む方針が示された。介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定では、物価変動に対応しつつ、他職種と遜色のない処遇改善を図るとしており、医療・介護人材確保も引き続き重要課題となる。 参考 1) 経済財政運営と改革の基本方針 2026 原案 (経済財政諮問会議) 2) 高齢者窓口負担見直し、年末の予算編成で結論出す方針-骨太方針2026原案(医事新報) 3) 「骨太の方針」が大幅なスリム化も、医療政策の記載数は増えた?(日経メディカル) 4) 2027年度介護報酬改定では「他職種と遜色のない処遇改善の実現を図る」骨太の方針原案、病床数適正化や医学部定員削減を明記(同) 2.医師確保計画GL通知、重点医師偏在区域を明示/厚労省厚生労働省は、都道府県が2027年度から運用する第8次後期の医師確保計画策定ガイドラインを通知し、重点医師偏在対策支援区域を対象とする「医師偏在是正プラン」の考え方を示した。医師偏在は、地域間・診療科間で長年の課題とされ、地域枠を中心に医師数を増やしてきたものの、ミクロの医師不足解消には十分つながっていない。ガイドラインでは、経済的インセンティブ、地域医療機関の支え合い、医師養成過程を通じた取組みを組み合わせ、医師の勤務・生活環境や柔軟な働き方に配慮しながら、中堅・シニアを含む全世代の医師にアプローチする方針を掲げた。重点区域は、一定の定住人口が見込まれる一方で、必要な医師を確保できず、人口減少より医療機関の減少速度が速い地域などに設定し、優先的・重点的に対策を進める区域とされた。都道府県は厚労省が示す候補区域を参考に、医師偏在指標、可住地面積当たり医師数、へき地尺度、医療機関へのアクセス、診療所医師の高齢化率、住民の受診行動、人口動態などを踏まえ、地域医療対策協議会と保険者協議会で協議した上で、真に重点的な医師確保が必要な区域に限って設定する。支援対象とする医療機関については、重点区域内の全医療機関を一律に対象とするのではなく、とくに支援が必要な医療機関を選定する。選定に当たっては、設立母体にかかわらず、今後策定される新たな地域医療構想や地理的条件を踏まえ、地域医療対策協議会・保険者協議会で合意を得る必要がある。必要医師数は、候補区域を重点区域に設定する場合、原則として候補区域の要件を脱するために必要な人数を基準とする。施策面では、重点区域で診療所を承継・開業する場合の施設・設備整備や一定期間の地域定着支援、中核病院などから重点区域内の医療機関へ医師を派遣する際の費用支援、勤務医の離職防止や新規勤務医確保に向けた土日の代替医師確保支援などが示された。 参考 1) 医師確保計画策定ガイドライン~第8次(後期)~(厚労省) 2) 医師偏在是正プランの考え方を明示 確保計画策定GLで 厚労省通知(CB news) 3.200床以上病院の電子カルテ導入、2028年度100%へ2年前倒し/政府6月30日に内閣府は日本成長戦略会議を開き、取りまとめた「日本成長戦略」について公開した。この中で、医療DX基盤の整備を成長投資の重点分野に位置付け、電子カルテ導入目標を一部前倒しした。電子カルテ未導入の200床以上の病院については、療養病床などが中心の病院を除き、2028年度までに普及率100%を目指す。従来は2030年までにおおむね全医療機関への導入を目指す方針だったが、200床以上の未導入病院では期限が2年前倒しされる形となる。背景には、医療情報の共有、診療の効率化、医療の質向上に加え、創薬・医療機器開発に必要なデータ基盤の整備がある。成長戦略では、クラウドネイティブに最適化された医療DX基盤について、「大量のデータを必要とする創薬・医療機器の開発の基盤」であり、医療提供体制の効率化・質向上、サイバー攻撃への強靱性確保に不可欠と位置付けている。政府は、従来の院内サーバー管理を中心とするオンプレミス型の医療機関情報システムを、クラウドネイティブ型へ刷新する方針を示した。これにより、サイバーセキュリティ対策の強化と、全国的なデータ連携基盤の構築を図るとしている。2030年までには、電子カルテ普及率を約100%、地域の拠点病院のサイバーセキュリティ対策を100%とし、大病院向けクラウドネイティブ型製品の提供も目指す。具体策として、厚労省などが認証したクラウドネイティブ型電子カルテ製品の普及を促進し、大病院向け製品については一体的・集中的な開発と普及を支援する。また、ネットワークの外部接続点の監視、サーバー等の管理強化など、サイバーセキュリティ対策も強化する。さらに、全国医療情報プラットフォームの拡充やデータ連携基盤の整備、病院DXの推進も盛り込まれた。厚労省の調査では、2023年10月時点の電子カルテ導入率は、400床以上で93.7%、200~399床で79.2%まで進んでいる一方で、200床未満では59.0%にとどまる。今後、200床以上の未導入病院は、電子カルテ導入だけでなく、クラウド移行、標準化、サイバー対策、地域医療情報連携への対応を同時に迫られる。医療機関にとって電子カルテは、単なる院内システムではなく、診療情報共有、医療安全、経営効率化、研究・創薬基盤、BCP対策を支える基幹インフラとして再定義されつつある。 参考 1) 日本成長戦略(内閣府) 2) 電子カルテ導入 200床以上は「28年度100%」2年前倒し 政府目標(CB news) 4.2040年の地域医療構想、急性期病床4割減・包括期は拡大/厚労省厚生労働省は7月3日、2040年を見据えた新たな地域医療構想策定ガイドラインと、全国の必要病床数の機械的試算を公表した。この中で、2040年の必要病床数は、2025年度比で約10万床少ない106.9万床とされ、人口減少と医療需要の質的変化が病床再編を迫る構図が明確になった。とりわけ急性期病床は66万床から37.4万床へ約4割減少とされる一方で、高齢者救急、退院支援、早期リハビリ、在宅復帰を担う「包括期病床」は41.6万床と大きく位置付けられた。慢性期は28.0万床でおおむね維持される見通しである。背景にあるのは、85歳以上高齢者の増加と生産年齢人口の減少である。ガイドラインでは、2040年に向けて高齢者救急や在宅医療の需要が増える一方で、急性期需要は多くの地域で減少し、医師・看護職員の確保は一層困難になると整理している。従来の地域医療構想は病床機能の分化・連携が中心だったが、今回は入院に加えて外来、在宅、介護連携、人材確保までを含む「地域全体の医療提供体制」の再設計に踏み込む点が大きい。都道府県は2026年度から2027年度前半にかけて医療需要や提供体制をデータ分析し、構想区域の点検・見直しを行う。2028年度までに、急性期拠点機能を担う具体的医療機関名、各病院が2040年に担う医療機関機能、必要病床数、入院・外来・在宅・介護連携・人材確保の取組を地域医療構想として策定する。急性期拠点は人口20~30万人に1施設を目安とし、手術、救急搬送、医師確保、施設老朽化など実績と持続可能性を踏まえて協議される。病院にとっては、今後の議論が「自院の病床数」だけでなく、「地域で何を担う病院か」を問うものとなる。厚労省によると医療機関機能は、高齢者救急・地域急性期、急性期拠点、在宅医療等連携、専門等機能、大学病院本院の医育・広域診療機能に整理される。各医療機関は現在の機能、2040年に担う機能、診療実績を各都道府県に報告し、地域医療構想調整会議での協議を経て、遅くとも2028年度までに2040年の医療機関機能を決定する。高齢者救急では、誤嚥性肺炎や心不全などを受け入れ、早期からリハビリ、栄養、口腔、退院調整を行い、介護施設や在宅とつなぐ力が問われる。ガイドラインも、高齢者救急では入院早期からリハビリテーション、栄養管理、口腔管理を行い、在宅医療や介護との連携を包括的に進める必要性を示している。さらに明記すべきは、地域医療構想と医療計画の関係が変わる点である。これまで地域医療構想は医療計画の記載事項の一つだったが、新たな地域医療構想は医療計画の上位概念として位置付けられ、第9次医療計画はその具体的な実行計画となる。2次医療圏も、見直された構想区域と原則一致させる方向であり、今後の診療報酬、医師確保、救急、在宅、介護連携の議論は、この構想と連動して進む。各病院は、地域医療構想調整会議での実績データに基づく協議に備え、自院の救急受入、手術、退院支援、在宅・介護連携、人材確保の実績を可視化し、地域内での役割を早急に整理する必要がある。 参考 1) 地域医療構想策定ガイドライン(厚労省) 2) 地域医療構想でガイドライン公表 40年見据え、都道府県が策定-厚労省(時事通信) 3) 急性期の病床、40年の必要数4割減 厚労省試算(日経新聞) 4) 令和8年度都道府県医師会地域医療構想策定等ガイドライン説明会(日本医師会) 5) 1つの病院が「急性期拠点機能」と「高齢者救急・地域急性期機能」とを同時に持つことは認めない-新地域医療構想GL(1)(Gem Med) 5.協会けんぽ黒字拡大、医療費と後期高齢者支援金も増加/協会けんぽ全国健康保険協会(協会けんぽ)は、2025年度の医療分決算見込みを公表した。協会会計と国の特別会計を合わせた合算ベースで、収入は12兆3,406億円、支出は11兆6,611億円となり、単年度収支差は6,795億円の黒字となった。黒字は前年度より209億円増加し、協会けんぽ発足後でも高水準の決算となる。収入増の主因は保険料収入の伸びであり、保険料収入は11兆546億円、前年度比4,057億円増となった。背景には、賃上げによる標準報酬月額の上昇と、被保険者数の増加がある。2025年度の被保険者数は2,604.4万人で前年度比1.8%増、平均標準報酬月額は31.5万円で同1.8%増となった。その一方で、支出も増加している。保険給付費は7兆5,369億円で前年度比2,818億円増、拠出金などは3兆7,829億円で同1,634億円増となった。とくに加入者1人当たり保険給付費は3.5%増加しており、医療の高度化や受診動向の変化が影響している。また、後期高齢者支援金は2兆4,891億円に増加し、団塊の世代がすべて75歳以上となったことによる概算納付額の増加や精算負担の増加が主因とされる。今回の黒字は、賃金上昇と被保険者数増による保険料収入の増加が、医療費や高齢者医療への拠出増を上回った結果である。ただし、支出の伸び率4.2%は収入の伸び率4.1%を上回っており、財政構造が安定化したとみるのは早い。協会けんぽ自身も、2026年度診療報酬改定で本体改定率が3.09%と高い伸びとなり、2026年6月以降の医療費に反映されること、さらに平均保険料率が2026年度から10.0%から9.9%へ引き下げられることを指摘している。医療機関にとっては、協会けんぽの黒字を単純な「財政余力」と捉えるより、保険料収入の伸びに支えられながらも、医療費、後期高齢者支援金、診療報酬改定の影響が重なり、今後の保険者財政が再び厳しくなる可能性を意識すべき局面である。準備金残高は6兆5,457億円、保険給付費などの7.2ヵ月分に相当するが、加入者の平均年齢上昇、医療の高度化、後期高齢者支援金の高止まりには引き続き留意が必要である。 参考 1) 2025(令和7)年度協会けんぽの決算見込みについて(協会けんぽ) 2) 協会けんぽ、昨年度6,795億円の黒字 賃上げで保険料収入増(日経新聞) 3) 協会けんぽ 昨年度決算 6,795億円黒字 賃上げで保険料収入増加(NHK) 6.京都大を国際卓越研究大学に認定へ、初年度200億円支援/文科省文部科学省は7月3日、世界トップレベルの研究力を目指す「国際卓越研究大学」に京都大学を認定する方針を発表した。政府の総合科学技術・イノベーション会議などへの諮問を経て、今夏にも正式認定される見通しで、東北大学、東京科学大学に続く3校目となる。初年度となる2026年度の助成額は約200億円が見込まれている。国際卓越研究大学制度は、政府が設置した10兆円規模の大学ファンドの運用益を活用し、最長25年間にわたって年数百億円規模の支援を行う仕組みである。わが国の研究力が国際的に相対的低下を続けるなか、大学の研究環境や若手研究者の育成、国際競争力の強化を図ることが目的とされる。京都大学が高く評価されたのは、従来の「小講座制」から「デパートメント制」への大規模な組織改革である。教授を頂点とする約1,000の小講座・研究室単位の体制は、専門性を深める一方で、閉鎖性や若手研究者の独立性の確保が課題とされてきた。京大はこれを廃止し、学術領域ごとに約20のデパートメントへ再編する計画を示した。2029年4月までの完全移行を目指し、若手・中堅研究者が独立して研究できる環境作り、分野横断型研究の推進、研究支援体制の強化による研究時間の確保を進める。また、京大は研究成果に基づく資金配分の仕組みや、大学院教育の強化も掲げている。今後25年間で年間の博士号取得者を現在の約690~700人から約3倍の2,100人規模に増やすほか、引用回数が上位10%に入る「トップ10%論文」の割合を現状の約2倍に引き上げる目標も盛り込んだ。同大の湊長 博総長は、「世界水準の研究大学を確立し、社会課題の解決やイノベーション創出につなげたい」と考えを示している。その一方で、同じく2回目の公募に申請していた東京大学は、医学部をめぐる不祥事やガバナンス上の課題などを理由に継続審査となった。今回の京大への認定は、単なる大型助成ではなく、大学組織の統治、研究者の自立性、国際競争力を問う改革の一環といえる。医師・医学研究者にとっても、医学部・大学病院を含む研究体制や若手育成のあり方に影響する動きとして注目される。 参考 1) 国際卓越研究大学の認定等に関する有識者会議(アドバイザリーボード)における審査の結果について(概要) 2) 京大を卓越大に認定へ 200億円支援、小講座制を廃止し組織再編(朝日新聞) 3) 世界トップレベル目指す「国際卓越大」に京都大を認定へ、東北大・東京科学大に続く3校目…今年度200億円助成見通し(読売新聞) 4) 京大を「国際卓越研究大学」に認定へ 今年度200億円助成見込み(NHK)

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制限輸液/早期昇圧薬は、敗血症性ショックの生存を改善するか/NEJM

 Surviving Sepsis Campaignなどの国際的なガイドラインでは、敗血症による低血圧が確認されてから3時間以内の体重1kg当たり少なくとも30mLの静脈内輸液を弱く推奨しているが、昇圧薬投与の開始時期については具体的な推奨を行っていないという。オーストラリア・モナシュ大学のSandra L. Peake氏らは「ARISE FLUIDS試験」において、敗血症性ショックで救急診療部を受診した成人患者では、輸液量を制限し早期に昇圧薬を投与するアプローチは、輸液量を多くし昇圧薬の投与を遅らせるアプローチと比較して、90日時点での非入院生存日数の増加にはつながらないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年6月11日号で報告された。3ヵ国の研究者主導型無作為化試験 ARISE FLUIDS試験は、3ヵ国51施設で実施した研究者主導型の非盲検無作為化試験(Australian National Health and Medical Council Medical Research Future Fundなどの助成を受けた)。2021年10月~2025年11月に、敗血症性ショックで救急診療部に搬送され、臨床的に感染症が疑われ、少なくとも1,000mLの輸液のボーラス投与を行っても収縮期血圧90mmHg未満または平均動脈圧65mmHg未満の成人患者を登録した。 被験者963例を、輸液量を制限し早期に昇圧薬投与を行う群(昇圧薬群481例:年齢中央値68歳、男性58.4%)、または多量の輸液を行い昇圧薬投与を遅らせて開始する群(輸液群482例:69歳、62.7%)に無作為に割り付けた。これらの介入は、救急診療部またはICUで最短6時間、最長24時間行った。 主要アウトカムは、無作為化から90日目の追跡調査までの非入院生存日数とし、初回入院期間中、またはその後の再入院期間中に、患者が急性期病院に入院していなかった日数と定義した。無作為化から90日以内に死亡した患者は、非入院生存日数を0日とした。無作為化前の輸液量は同程度 無作為化前の輸液量中央値は、昇圧薬群で1,500mL(四分位範囲[IQR]:1,000~1,750)、輸液群で1,500mL(IQR:1,000~1,850)であった。昇圧薬群の57例(11.9%)と輸液群の41例(8.5%)で、無作為化前に昇圧薬の投与を開始していた。主な感染部位は両群とも気道および尿路だった。輸液群の3例が主要アウトカムの追跡から脱落した。 無作為化から24時間以内に昇圧薬の投与を受けた患者の割合は、輸液群が67.6%であったのに対し、昇圧薬群は86.5%と、より高率であった(群間差:18.9%ポイント、95%信頼区間[CI]:13.3~24.5)。昇圧薬投与開始までの時間中央値は、輸液群の1.4時間に比べ昇圧薬群は0.4時間と短かった(群間差:-1.0時間、95%CI:-1.2~-0.9)。 また、無作為化から24時間後までの静脈内輸液量は、輸液群が2,248mL(IQR:1,500~3,332)であったのに対し、昇圧薬群は1,140mL(IQR:500~2,120)と少なかった(群間差:-1,108mL、95%CI:-1,395~-850)。非入院生存日数は両群とも76日 90日時点の非入院生存日数は、昇圧薬群76日(IQR:55~83)、輸液群76日(IQR:55~82)と、両群で同程度であった(群間差:0.0日、95%CI:-2.7~2.7、p=1.00)。90日以内に死亡した患者の非入院生存日数を-1日に設定しても、結果は同様だった。 また、90日時点の死亡率も両群で同程度だった(昇圧薬群16.4%vs.輸液群14.4%、相対リスク:1.14[95%CI:0.85~1.54]、ハザード比:1.17[95%CI:0.85~1.62])。 介入に関連した合併症はほとんど認められなかったが、例外として肺水腫がみられた(昇圧薬群3例[0.6%]vs.輸液群24例[5.0%]、相対リスク:0.12[95%CI:0.03~0.39]、p<0.001)。昇圧薬群の1例に、無症候性高血圧に関連した有害事象が発現した。 著者は、「輸液群の肺水腫は、部分的に、報告バイアスによって引き起こされた可能性がある」としている。

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日本における統合失調症治療、最新の推奨事項〜エキスパートコンセンサス

 従来の統合失調症薬物治療ガイドラインは、日常診療における臨床的に重要な問題すべてに対して十分に対応できていなかった。関西医科大学の嶽北 佳輝氏らは、現在の臨床状況を反映させるため、日本臨床精神神経薬理学会(JSCNP)の2021年専門家コンセンサスを改訂することを目的とし、本研究を実施した。Schizophrenia誌オンライン版2026年6月2日号の報告。 JSCNPおよび日本神経精神薬理学会(JSNP)に所属する精神科専門医154人が、臨床的に関連性の高い21の状況における治療選択肢を9段階リッカート尺度(1=「強く反対」、9=「強く賛成」)を用いて評価した。 主な内容は以下のとおり。・回答率は44%であった。・主な症状別の推奨される第1選択薬は以下のとおりであった。【陽性症状】リスペリドン、ブレクスピプラゾール、オランザピン、パリペリドン、ブロナンセリン【陰性症状および認知機能低下】アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール【うつおよび不安】アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、ルラシドン、オランザピン、クエチアピン【滅裂思考】ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール、オランザピン【興奮および攻撃性】オランザピン、リスペリドン【社会的統合】アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、ルラシドン【錐体外路系副作用または糖尿病の高リスク】ブレクスピプラゾール、クエチアピン、アリピプラゾール・遅発性ジスキネジアに対しては減量または薬剤変更を検討する。・再発を繰り返し、患者の要望、アドヒアランス不良の場合には、長時間作用型注射(LAI)抗精神病薬の導入適応となりうる。・治療抵抗性統合失調症に対してはクロザピンへの切り替えが第1選択となる。・副作用対策として、抗精神病薬の減量および単剤療法への簡略化の両方が最も重要な要因として挙げられた。・第2世代抗精神病薬は、ほとんどの場合第1選択薬または第2選択薬として評価された。一方、第1世代抗精神病薬は、おおむね第3選択薬として評価された。 著者らは「これらの推奨事項は、既存のエビデンスだけでは十分に対応できない臨床的に困難な状況における治療選択と共同意思決定(SDM)のための実践的な指針となる」としている。

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ピボキシル基を有する小児用抗菌薬、低カルニチン血症に伴う重篤な低血糖を「重要な基本的注意」に追記/厚労省

 2026年6月30日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、ピボキシル基を有する小児用抗菌薬4成分に対し、「重要な基本的注意」の項に低カルニチン血症に伴う重篤な低血糖に関する注意事項が追記された。対象となる一般名および主な販売名は以下のとおり。<対象医薬品>・セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物(商品名:フロモックス小児用細粒100mgほか)・セフジトレン ピボキシル(商品名:メイアクトMS小児用細粒10%ほか)・セフテラム ピボキシル(商品名:トミロン細粒小児用20%)・テビペネム ピボキシル(商品名:オラペネム小児用細粒10%)改訂後の内容「重要な基本的注意」の項が新設され、主に以下の内容が追記された。・小児(とくに乳幼児)において、本剤を含むピボキシル基を有する抗生物質の投与後に、低カルニチン血症に伴う重篤な低血糖、痙攣、脳症等を起こすおそれがある。・本剤の必要性を含む薬剤の選択や投与期間等については、最新のガイドライン等を参考にすること。・痙攣、意識障害等の低血糖症状が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう家族等に指導すること。 これまでも、ピボキシル基を有する小児用抗菌薬による低カルニチン血症に伴う低血糖については、すでに「使用上の注意」の「重大な副作用」および「小児等」の項において注意喚起がなされていた。しかしながら、近年においても当該薬剤との因果関係を否定できない症例が報告されており、直近の報告では死亡に至った症例も認められたことから、追加の安全対策措置の要否について検討が行われた。 低カルニチン血症に伴う低血糖は主に乳幼児で報告されており、症状が急速に進行し重篤化するおそれがある。専門委員の意見も聴取した結果、投与の必要性や期間について最新のガイドライン等を参照し適切に判断すること、また低血糖症状発現時の速やかな受診につなげる観点から、医療従事者より家族等へ適切な指導を促すことが適正使用に不可欠と判断され、今回の改訂に至った。

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高齢の糖尿病を有する人の薬物治療の限界はどこか/日本糖尿病学会

 第69回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:下村 伊一郎氏[大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学 教授])が、5月21~23日の日程で、大阪国際会議場、リーガロイヤルホテル大阪をメイン会場に開催された。 今回の学術集会は「IMAGINE いのち輝く 糖尿病の医療・医学を共に目指して」をテーマに、41のシンポジウム、143の口演、ポスターセッション、会長特別企画による講演、特別企画「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。 高齢の糖尿病を有する人では、糖尿病本態だけでなく、心血管障害や認知障害、運動器障害などさまざまな疾患を併存しているケースが多く、治療薬の選択やアドヒアランスのフォローなど考慮することが多岐にわたる。実臨床ではどのように診療を進めるべきであろうか。そこで本稿では、シンポジウム34「超高齢時代のダイアベティス治療はいかにあるべきか」(日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同シンポジウム)より清野 祐介氏(藤田医科大学医学部内分泌・代謝・糖尿病内科学/関西電力医学研究所糖尿病研究センター)の「超高齢2型糖尿病の至適な薬物治療の限界」の講演概要をお届けする。治療薬の工夫が重要な高齢の糖尿病を有する人 高齢の糖尿病を有する人では、糖尿病は高血糖、低血糖、フレイル、サルコペニア、認知機能低下の危険因子となる。また、加齢による肝機能、腎機能の低下がみられることから治療薬の選択では、バランス調整が必要になる。『糖尿病治療ガイド2024』(編集:日本糖尿病学会)では、高齢の糖尿病を有する人の治療の留意点を示しており、「低血糖を避けながら、高血糖をおだやかに是正することが必要」としている。また、糖尿病合併症や他の疾患との併存が多く、服薬数が多くなるのも特徴である。 このような多剤併用はアドヒアランスの低下を来し、高血糖や重症低血糖など致死的なリスクが高くなる。そのために服薬回数の減少や服薬タイミングの統一、一包化、配合薬の選択などが行われているが、緊急時の対応への準備も必要となる。日本糖尿病学会と日本老年医学会が共同制作した『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』(編集:日本老年医学会)では、「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」が示されており、3つのカテゴリー別と重症低血糖が危惧される薬剤(インスリンやスルホニル尿素薬[SU薬]など)の使用の有無で、HbA1cの目標値と下限値が示されている。現段階で、超高齢の糖尿病を有する人にこのHbA1cの目標値があてはまるかどうかは不明である。よく理解しておきたい糖尿病治療薬の高齢の患者への影響 糖尿病の治療において、体重を減らすことは、インスリン感受性や糖代謝を改善するのに効果的とされているが、高齢の糖尿病を有する人では、筋肉量や骨量の低下があり、配慮する必要があるとされる。また、高齢の糖尿病を有する人に糖尿病治療薬を使用する際の懸念点としては、たとえばα-グルコシダーゼ阻害薬では服用回数が多い、SGLT2阻害薬では体重減少、チアゾリジン薬では心不全の増悪や女性では骨折リスクの増加、ビグアナイド薬では腎機能低下時に乳酸アシドーシスのリスクの出現、GLP-1受容体作動薬では体重減少、SU薬やグリニド薬では単独で低血糖のリスクが高くなるなどが挙げられる。そのほか、高齢の糖尿病を有する人に頻用されているDPP-4阻害薬では、演者の経験としては便秘など消化器症状の頻度も高く、重症例では腸閉塞を来す例もみられたという。とくに高齢の糖尿病を有する人は、在宅で診療をされている患者が多く、主治医が適切なタイミングでこうしたリスクを防ぐことができるか課題であると指摘する。高齢の糖尿病を有する人にはSU薬とDPP-4阻害薬の使用が多い 糖尿病治療薬の使用などについて、清野氏らが行った多施設共同研究の一端に触れた。この研究では、65歳以上の糖尿病、慢性腎疾患、そのいずれかまたは両方の疾患の患者を対象としたもので、参加施設は糖尿病、腎臓病の専門医を中心とした多職種連携が行われている施設。参加者は1,355例で、65~74歳は767例、75~84歳が523例、85歳以上が65例。これらの参加者のBMI、骨格筋量(SMI)、HbA1c、eGFRなどの数値を計測した。 その結果、85歳を区切りとしてみると、85歳以上では握力、筋力が65~84歳群との比較で顕著に低下していた。使用されている治療薬について85歳以上では体重減少に働くようなSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の使用頻度が低くなっていた。また、乳酸アシドーシスのリスクからビグアナイド薬、心不全のリスクからチアゾリジン薬の使用頻度も低い一方で、SU薬とDPP-4阻害薬は高頻度で使用されていた。また、予想に反してグリニド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬の使用が多く、その理由として「参加者の自己管理能力が高かったことが推定される」と述べた。 本研究では、糖尿病診療支援が整った医療施設で食事療法も薬物療法もしっかりでき、通院や歩行にも問題がない参加者を対象としていることから、このような結果につながったと推察している。しかし、実臨床の現場では、通院ができずに糖尿病非専門医による在宅医療を受けているケースが多く、治療薬剤の選択、血糖マネジメントの目標をどこにおくのかなど糖尿病学会の推奨があまり知られていないこと、あるいは超高齢の糖尿病を有する人の治療に関するガイドラインがないことが現状の問題点となっていると述べた。さらに90歳以上の2型糖尿病を有する人を対象とした大規模臨床試験は皆無であり、複雑な背景をもつ症例への的確なアプローチをいかに構築するかが課題であると指摘した。高齢の糖尿病を有する人の治療最適化には多職種・在宅医療連携が重要 高齢の糖尿病を有する人の症例を1つ挙げ、介護施設などでの診療の難しさを説明した。症例は施設入所している91歳女性(要介護3)で認知症があり、車いすを使用、BMIは15.7でやせ型。インフルエンザで突然の意識障害があり、救急搬送された。来院時の血糖値は35mg/dLで急性低血糖にてブドウ糖静脈投与で意識回復をした。普段は、DPP-4阻害薬と少量のSU薬を服用している。腎機能は保たれているがHbA1cは5.4%であり、高齢者にとっては過度な管理で、低血糖のリスクが予想される症例だったという。日常から糖尿病をきちんと診療できる環境ではないことが予想され、治療目標、とくに下限目標の情報が診療する人、介護する人にきちんと行き届いていないのではないかと警鐘を鳴らす。また、在宅医療など超高齢糖尿病を有する人の診療現場では糖尿病専門医が予想していないような治療上の悩みも多々見受けられる。そこで、日本糖尿病協会(JADEC)では、「JADEC在宅医療・介護支援Q&A集」を作成するとともに、在宅・介護の診療現場からの質問を募っている。清野氏は、今後、こうした診療現場の情報を集積し、在宅・介護の診療現場用のJADECカードシステムによる糖尿病支援ツールセットを作成していく必要があると提言を行った。 高齢の糖尿病を有する人の治療では、『高齢者糖尿病診療ガイドライン』があるものの、90歳以上の超高齢者を対象としたエビデンスは乏しい。実臨床では認知機能、ADL、介護力が治療を規定するが、高齢者では厳格な血糖管理より低血糖回避と何よりも患者の生活維持が重要だと考える。 おわりに清野氏は、「今後の高齢の糖尿病を有する人の診療では、患者の体重や握力測定など定期的な確認も大切であり、治療の最適化には多職種・在宅医療連携が重要になる」と語り、講演を終えた。

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第301回 高齢者のポリファーマシー対策、医療従事者向け資材を公表/厚労省

<先週の動き> 1.高齢者のポリファーマシー対策、医療従事者向け資材を公表/厚労省 2.OTC類似薬の追加負担、対象外患者を定め2027年3月施行へ/厚労省 3.小児がん拠点病院を集約化、症例集積で医療の質確保へ/厚労省 4.高齢者の窓口負担3割化を提言、包括払い・病院再編も/財政審 5.ドクターヘリ運休相次ぐ、安定運航へ検討会設置/厚労省 6.長崎大病院など3病院、不急の救急搬送に選定療養費7,700円を徴収/長崎市 1.高齢者のポリファーマシー対策、医療従事者向け資材を公表/厚労省厚生労働省は6月24日に開いた「高齢者医薬品適正使用検討会」で、高齢者のポリファーマシー対策を進めるため、医療従事者向けの普及啓発資材を公表した。多剤服用に伴う薬物有害事象、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などを防ぐため、「高齢者の医薬品適正使用の指針」や病院・地域での業務手順書の内容を分かりやすく整理したもの。主な対象は医師、歯科医師、薬剤師だが、看護師や介護職など多職種での活用も想定している。資材は指針の総論編、各論編のほか、病院向け、地域向けの計4種類。これまで本格的に取り組んでいなかった医療機関でも導入しやすいよう、イラストを多用し、文字量を抑えた構成としている。資材では、「ポリファーマシーとは、単に薬剤数が多い状態(多剤服用)ではなく、多剤服用に関連して有害事象や服薬困難などの問題が生じている状態を指す」としている。高齢者では、加齢に伴う腎機能低下や薬物動態の変化、複数医療機関の受診、処方カスケードなどにより形成されやすい。病院向け資材では、対策開始時の留意点として、剤数だけに着目せず、安全性や治療効果、患者の生活状況を踏まえて処方内容を適正化する必要性を強調した。対象患者を優先順位付けし、小規模から始めること、担当者を明確にして情報を一元化すること、多職種の役割分担を整理することが実践の鍵となる。薬剤服用後の体調不良が疑われる外来患者には受診や相談を促す。実務上は、「お薬手帳」を活用した処方・調剤情報の一元管理に加え、患者の日常生活動作や認知機能、栄養状態、生活環境、服薬管理能力などを総合的に評価することが重要となる。併せて、腎機能や薬物相互作用、同効薬の重複、一般用医薬品やサプリメントの使用状況も確認する。ふらつき、転倒、せん妄、食欲低下、便秘、排尿障害などが出現した場合は、薬剤起因性も疑う。薬剤を見直すときは、中止・減量・変更後の病状悪化や代替薬による有害事象にも注意が必要となる。2026年度の診療報酬改定では、病棟薬剤業務実施加算の見直しにより、ポリファーマシー対策や退院時薬剤情報連携が一層重視されている。薬剤総合評価調整加算などの実績向上にもつながる可能性があり、薬剤部門だけでなく、入退院支援、病棟看護、地域薬局、かかりつけ医を含めた組織的な取り組みが求められる。資材では、剤数だけに着目せず、安全性確保などを踏まえた処方内容の適正化が必要であると強調されている。 参考 1) 第22回 高齢者医薬品適正使用検討会 資料(厚労省) 2) 高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)(同) 3) 高齢者の医薬品適正使用の指針 総論編の概要 普及啓発資材(同) 4) ポリファーマシー対策 普及啓発資材を公表 適正使用指針などの説明で活用 厚労省(CB news) 5) ポリファーマシー対策の始め方と進め方の普及啓発ツールが公表。薬剤総合評価調整加算等の実績向上が期待される(HCナレッジ) 2.OTC類似薬の追加負担、対象外患者を定め2027年3月施行へ/厚労省厚生労働省は6月25日、市販薬と成分や効能が似る「OTC類似薬」について、患者に薬剤費の一部追加負担を求める新制度の具体化に向けた有識者検討会の初会合を開いた。新制度は2027年3月の施行を想定し、対象薬剤の薬剤費の4分の1を保険給付から外し、「特別の料金」として通常の1~3割負担に上乗せする。対象は、ロキソニン錠やアレグラ錠、保湿剤、湿布などを含む77成分、1,066品目を機械的に選定した案が示されており、今後効能・効果を踏まえて整理される。制度の目的は、OTC医薬品で対応している患者との公平性を確保し、現役世代を中心とする保険料負担の上昇を抑えることにある。ただし、必要な受診を妨げないよう、追加負担を求めない患者や療養の範囲が大きな論点となる。厚労省案では、高校生年代までの子供、低所得者、入院患者、がん患者や指定難病患者など配慮が必要な慢性疾患患者は対象外とする方向。入院中の処方は退院時処方を含めて追加負担を求めない。がんについては、治療中または治療開始に向け継続診療中の患者や、副作用対策に用いる薬は除外する一方で、治療終了後の経過観察のみの場合や、がんと直接関係しない症状への処方は追加負担を求める方向である。長期使用が医療上必要なケースも除外候補で、内服薬は年間処方日数がおおむね50週以上、外用薬は、塗布剤・貼付剤・点眼剤・点鼻剤・吸入剤などについて、医師が毎日の塗布や貼付など日常的使用を指示している場合を目安とする。厚労省は今後、77成分ごとに医療用医薬品とOTC医薬品の効能・効果の違いを整理し、代替性の有無を検討する。検討会は8月ごろに中間整理を行い、医療保険部会や中医協での議論、患者団体ヒアリングを経て、秋ごろの取りまとめを目指す。医療現場では、対象外となる医学的必要性をどのように判断・記録するかが実務上の焦点となる。 参考 1) 一部保険外療養の施行に向けて(厚労省) 2) 負担対象OTC類似薬議論 除外条件も、厚労省(東京新聞) 3) OTC類似薬の追加負担、がん・通年処方は対象外 厚労省が案提示(日経新聞) 4) 日常使用の湿布は負担対象外 OTC類似薬の新制度-厚労省会議(時事通信) 3.小児がん拠点病院を集約化、症例集積で医療の質確保へ/厚労省厚生労働省は6月23日に開かれた「小児がん拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」で、小児がん診療提供体制の見直し案を示し、大筋で了承を得た。少子化に伴い小児がん患者数の減少が見込まれる中、高難度医療、希少がん診療、再発・難治例への集学的治療、国際共同治験などを担う施設に症例を集積し、医療の質を維持・向上させる狙い。現在全国15ヵ所の「小児がん拠点病院」は、10ヵ所程度に集約化する方針で、8月上旬までに整備指針を改定する。新たな小児がん拠点病院は、高度専門医療に加え、ドラッグ・ラグ/ロスの解消や新規治療開発への貢献も求められる。診療実績要件は、再発時の紹介を含む年間新規症例数30例以上に加え、年間手術数10例程度を新設する。放射線療法については、自施設で提供できない場合も他施設と連携して提供できる体制を要件化する。医師以外のスタッフの配置も見直し、細胞診断業務に携わる人員について「1人以上必要な数」の配置を求める方向。国立成育医療研究センターと国立がん研究センターは、引き続き小児がん中央機関として、中央診断体制や国際共同治験、医療技術開発を牽引する。その一方で、集約化による患者・家族の医療アクセス低下を防ぐため、新たに「都道府県小児がん拠点病院」を各都道府県に原則1ヵ所整備する。小児がん拠点病院と連携しながら標準的治療を提供し、標準治療が確立していないがんや再発・難治例では診療情報を共有し、必要に応じて専門施設へ紹介する。専門治療後や病状安定後には、地域医療機関へ円滑に逆紹介する体制も求められる。指定要件は、年間新規症例数20例以上、または都道府県内の小児がん年間新規症例の原則半数以上を診療していることとする。現行の小児がん連携病院145ヵ所は「小児がん連携医療機関」に見直され、病院だけでなく診療所も参加可能となる。標準的治療、特定がん種への対応、長期フォローアップ、移行期医療、在宅医療などを担う体制を整える。今後、全国小児がん拠点病院等連絡協議会と都道府県小児がん診療連携協議会を設け、広域・地域双方の課題を協議する。新たな指定類型は2027年4月から適用される見通し。 参考 1) 第5回 小児がん拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ(厚労省) 2) 小児がん拠点病院を集約化して医療の質を確保し、患者・家族の医療アクセス確保にも配慮する-小児がん拠点病院指定要件WG(Gem Med) 3) 小児がん拠点病院 10ヵ所程度に集約化へ 8月上旬までに整備指針改定 厚労省(CB news) 4) 「小児がん拠点病院」集約化へ 患者減見据え10ヵ所程度に(MEDIFAX) 4.高齢者の窓口負担3割化を提言、包括払い・病院再編も/財政審財務省の財政制度等審議会は6月26日、「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」と題する建議を片山 さつき財務相に提出した。建議は、日本経済がデフレ型から供給制約型へ移りつつあるとし、「強い経済」には未来投資と実質賃金上昇による投資と賃上げの好循環が不可欠とした。その一方で、金利上昇局面では財政資源も制約下にあり、補正予算依存から脱却し、恒常的施策は当初予算で措置する改革の実効性と財政規律の両立を求めた。高市政権が掲げる「責任ある積極財政」や、債務残高対GDP比の安定的低下を中核目標とする方針についても、成長頼みでは市場の信任を損ないかねないとして、利払い費を含む財政収支の管理を促した。医療・介護分野では、現役世代の保険料負担を抑えるため、社会保障負担率に数値目標と年限を設け、改革工程表を作成すべきだと提言した。医療では「患者アクセスの保障」と「負担抑制」のバランスを掲げ、70歳以上の患者自己負担を可及的速やかに原則3割へ引き上げることを求めた。70~74歳を一律に高齢者扱いする現行の線引きの見直し、75歳以上への経過措置、外来特例の廃止、特定疾病制度の検証・見直しも論点とした。さらに、建議では、医療機関を受診する際の窓口業務のコスト(保険証確認や会計など)について、診療行為そのものではなく、初・再診料で評価する必然性は乏しいとして、保険給付外サービスとして患者に請求できる仕組みの検討を求めた。医療の提供体制については、小規模分散型の病院・診療所では人材不足下の効率化に限界があるとして、病院の集約・再編、地域医療連携推進法人の活用、外来機能の統合・大規模化、かかりつけ医機能強化を提起した。診療報酬についても、入院・外来診療ともに、出来高払い中心からアウトカム評価と包括払い中心へ移行し、医療DXで少ない人員でも質を保つ体制を後押しすべきだとした。あわせて、医療法人の経営情報の見える化、医療機関の職員の職種別給与・人数の提出義務化、医療法人の業務範囲拡大、2027年度薬価改定の完全実施、後期高齢者医療制度の都道府県化や金融所得を含む応能負担の徹底も盛り込んだ。医療界にとっては、患者負担増だけでなく、報酬体系、病院再編、経営情報開示まで含む包括的な制度転換の予告と受け止める必要がある。 参考 1) 人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営(財務省) 2) 「強い経済」へ投資と賃上げ循環 予算編成改革、実効性確保を-財政審建議(時事通信) 3) 70歳以上の医療費窓口支払い「速やかに3割負担を」財制審が意見書(日経新聞) 4) “高齢者も病院窓口負担を原則3割に” “大学は現在の半分程度まで縮減を” 財政制度等審議会が片山さつき財務大臣に意見書(TBS) 5) 診療報酬をアウトカム評価中心の包括払いに 財政審、入院・外来共に(CB news) 5.ドクターヘリ運休相次ぐ、安定運航へ検討会設置/厚労省厚生労働省は、東京や関西などでドクターヘリの運休が相次いでいることを受け、安定的な運航体制の確保に向けた検討会を7月中に立ち上げる。上野 賢一郎厚生労働相が6月26日の閣議後記者会見で明らかにした。検討会には医療関係者、航空関係者、自治体担当者、有識者などが参加し、救急医療搬送体制の在り方や国の関与、財政支援、人材確保策について議論する。ドクターヘリは、救急医療機器を搭載し、専門医と看護師が搭乗して現場に向かうことで、重症患者への早期医療介入と迅速搬送を担う。上野厚労相は「全国各地の救急医療体制を確保する上で極めて重要な役割を果たしている」と述べ、持続可能な運航体制の構築が急務との認識を示した。運休の背景には、運航事業者における整備士不足がある。東京や兵庫などでは昨年以降、整備士を確保できないことによる運航停止が発生しており、自治体からも国の対応を求める声が上がっている。加えて、公共ヘリの操縦には高度な技量と経験が必要で、操縦士の高齢化も課題となっている。ドクターヘリの操縦士は50歳以上が7割超を占め、2030年以降には毎年10人以上が不足するとの見通しもある。国土交通省も航空大学校を活用した若手操縦士の養成や、シミュレーター活用による飛行経験要件の見直し、養成費支援を進める方針。検討会では、医療現場と航空運航の双方の実情を踏まえ、財政支援、人材育成、整備士・操縦士の確保を含めた具体策を検討する。 参考 1) ドクターヘリ検討会設置へ 運休受け、安定運航議論(共同通信) 2) 整備士不足で運休相次ぐ「ドクターヘリ」 安定運航へ厚労省が検討会を立ち上げ(テレビ朝日) 3) 関西などドクターヘリ運休 7月中にも検討会立ち上げ 厚労省(NHK) 4) ドクター・防災ヘリ念頭…国交省、航空大で操縦士養成の背景(ニュースイッチ) 6.長崎大病院など3病院、不急の救急搬送に選定療養費7,700円を徴収/長崎市長崎市内の3病院は7月1日から、緊急性が認められない症状で救急搬送された患者に対し、選定療養費7,700円を徴収する。対象は長崎みなとメディカルセンター、長崎大学病院、日赤長崎原爆病院で、いずれも200床以上の急性期病院として脳卒中、心筋梗塞、重症外傷などに対応する役割を担う。これまで救急搬送では紹介状なし受診に伴う選定療養費の徴収対象外としていたが、救急車要請時の緊急性が医師により認められない場合に負担を求める運用へ改める。背景には、救急搬送件数の増加と大病院への軽症患者集中がある。長崎市消防局管内では、2022年度以降の救急搬送が2万5,000件超で高止まりし、医療機関の応需率は2019年度の80.7%から、近年は60%台前半まで低下している。長崎みなとメディカルセンターでは2023年度の救急搬送3,987人のうち36%が軽症だった。市消防局が病院へ11~20回問い合わせた搬送事例も、2019年度の2件から2024年度には109件へと急増しており、搬送先選定の長期化が問題となっている。同センター救命救急センターは年間約4,200台の救急車と約4,500人のウォークイン患者を受け入れる。輪番日の夜間は救急医1人、研修医4人、看護師5人で対応する体制だが、午後5~7時ごろに搬送が集中し、初療室5床が短時間で埋まることもある。早川 航一センター長は、安易な救急車利用の抑制により、真に緊急性の高い患者の治療時間と病床を確保する必要性を強調している。その一方で、制度運用には課題も残る。第三者が救急車を呼んだ場合や観光客でも、緊急性がないと判断されれば徴収対象となる一方で、警察など公的機関からの要請は原則対象外とされる。徴収判断は医師がガイドラインに基づき行うが、病院間で判断に差が出れば不公平感につながりかねない。救急車の有料化ではなく、救急医療資源を守る施策として位置付けつつ、個別事例の検証や市民への周知が不可欠となる。救急車を呼ぶか迷う場合は、救急安心センター「#7119」の活用も促されている。 参考 1) 救急搬送における選定療養費について(長崎市) 2) 不急の救急搬送に長崎市内の3病院が7月から特別料金、救急車の適正利用が狙い…「緊急性」線引きに課題も(読売新聞) 3) 「これ以上は危うい…」長崎県内最多の救急搬送患者を受け入れる救命救急センター、切迫する最前線の現状(長崎新聞) 4) 「とりあえず救急車」の前に…7月1日~長崎市の3病院で「救急搬送における選定療養費徴収」スタート 迷ったときは?(長崎放送)

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