サイト内検索|page:36

検索結果 合計:786件 表示位置:701 - 720

701.

小児肥満でBMI値は重視しなくてもよいのか?

小児期のBMIと心血管リスク因子との関連を示す横断的研究はあるが、前向き研究はほとんど行われていない。BMIは、特に小児肥満(全身性肥満症、中心性肥満症)の尺度としては不十分であるとされるが、英国ブリストル大学MRC CAiTEセンターのDebbie A Lawlor氏ら研究グループは、その認識が小児肥満がもたらす真の有害性の過小評価につながっている可能性があるとして、肥満症の3つの測定指標であるBMI、腹囲、体脂肪量の、心血管リスク因子との関連の強さを比較し、BMIが他の2つより劣るのか検討した。BMJ誌2010年12月4日号(オンライン版2010年11月25日号)掲載より。15~16歳時の心血管リスク因子との関連の強さを検討研究グループが検討したのは、小児期(9~12歳)のBMI、腹囲、体脂肪量測定値と、15~16歳時点での心血管リスク因子(収縮期および拡張期血圧、空腹時血糖値等)との関連。「両親と子どもを対象とするAvon追跡研究」の参加者で、研究スタート時に9~12歳だった小児5,235例を対象とした。BMI、腹囲、体脂肪量は9~12歳時と15~16歳時に二重エネルギーX線吸収測定法を用いて測定された。主要評価項目は、15~16歳時に測定した収縮期および拡張期血圧値、空腹時の血糖、インスリン、中性脂肪、LDL-C、HDL-Cの濃度とした。BMI、腹囲、体脂肪量とも、心血管リスク因子との関連の強さは同等結果、女児については、9~12歳時のBMIが1SD増すごとの関連オッズ比は、高収縮期血圧(≧130mmHg)は1.23、高LDL-C(≧2.79mmol/L)は1.19、高中性脂肪(≧1.7mmol/L)は1.43、低HDL-C(<1.03mmol/L)は1.25、高インスリン(≧16.95 IU/l)は1.45だった。一方、男児は、高収縮期血圧は1.24、高LDL-Cは1.30、高中性脂肪は1.96、低HDL-Cは1.39、高インスリンは1.84だった。BMIと高空腹時血糖(≧5.6mmol/L)との関連は、男児のみで認められ、オッズ比は1.18(95%信頼区間:1.03~1.36)だった。上記の高低でみた2値アウトカムの結果では、BMIは空腹時の血糖(P=0.03)、インスリン(P0.2)。BMIモデルに、腹囲もしくは体脂肪量を加味しても、BMIと交絡因子のみで説明済みの心血管リスク因子の変数は増大しなかった。女児は青年期までに痩せれば心血管リスクは正常体重者並みに、しかし男児は……また、肥満の変化との関連についてみた場合、女児の場合は、9~12歳で過体重/肥満であっても15~16歳で正常体重となった群は、両年齢期とも正常体重の群とリスク因子の有害レベルのオッズが同等だった。しかし男児の場合は、高収縮期血圧、高中性脂肪、高インスリン、低HDL-Cのオッズ比が、両年齢期とも正常体重の群と比べ高かった。両年齢期とも過体重/肥満群よりは低くはなっていた。これらから研究グループは、「小児期に測定された腹囲または体脂肪量が、BMIより強く青年期の心血管リスク因子と関連することはない」と結論するとともに、「小児期から青年期に過体重を改善できた女児は、概して、一貫して正常体重であった群と同様の心血管リスクプロファイルを示すが、男児の場合は、小児期、青年期とも正常体重であった群と、小児期、青年期とも過体重であった群との、中間のリスク因子プロファイルを示す」とまとめている。

702.

米国40歳以上糖尿病患者のうち網膜症罹患率は28.5%

米国の40歳以上糖尿病患者のうち、糖尿病性網膜症の罹患率推定値は、28.5%と高率であることが明らかになった。特に非ヒスパニック系黒人で高く、4割近くにみられたという。米国疾病対策予防センター(CDC)のXinzhi Zhang氏らが、1,000人超の糖尿病患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月11日号で発表した。糖尿病性網膜症の罹患率、重症度に関して、全米人口をベースとした最近の動向は存在しなかったという。糖尿病1,006人について蛍光眼底撮影を実施同研究グループは、全米の断面調査「National Health and Nutrition Examination Survey」2005~2008年を基に分析を行った。サンプル数は1,006人だった。糖尿病の定義については、自己申告による糖尿病診断歴あり(妊娠糖尿病除く)、またはHbA1cが6.5%以上とした。両眼について2回の蛍光眼底撮影を行い、その程度についてAirlie House分類スキーム、Early Treatment Diabetic Retinopathy Study重症度スケールにて分類した。サンプルから求めた罹患率を基に、全米の40歳以上に関する罹患率推定値を算出した。40歳以上糖尿病の、男性の31.6%、女性の25.7%が糖尿病性網膜症全米40歳以上糖尿病患者における糖尿病性網膜症の罹患率推定値は、28.5%(95%信頼区間:24.9~32.5)だった。そのうち、治療をせずに放っておくと間もなく失明するほどの重症度の同罹患率推定値は、4.4%(同:3.5~5.7)だった。男女別では、同推定値は、男性が31.6%と、女性の25.7%に比べ有意に高かった(p=0.04)。人種別では、非ヒスパニック系黒人で同推定値が38.8%、また治療をせずに放っておくと間もなく失明する程の重症度の同推定値は9.3%と、非ヒスパニック系白人の各値26.4%、3.2%に比べ、いずれも有意に高かった(p=0.01)。なお、糖尿病性網膜症に関する独立危険因子は、男性(オッズ比:2.07)、HbA1c高値(同:1.45)、長期糖尿病歴(同:1.06)、インスリン使用(同:3.23)、収縮期血圧高値(1mmHg上昇につきオッズ比:1.03)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

703.

血糖センサー付インスリンポンプ、1型糖尿病患者の血糖コントロール有意に改善

近年、1型糖尿病患者向けにインスリン治療器具が様々に開発され、従来の注射療法に代わる、小型携帯型24時間自動注入可能なインスリンポンプ、さらには血糖センサー付インスリンポンプが登場した。本論は、米国ミネアポリスにあるPark Nicollet国際糖尿病センターのRichard M. Bergenstal氏ら「STAR 3」研究グループが、最新の血糖センサー付インスリンポンプについて、従来の注射療法との有効性を比較した1年にわたる多施設共同無作為化試験結果の報告で、小児、成人とも有意に血糖コントロールが改善し、目標血糖値達成割合も高かったという。これまでも、インスリンポンプが注射療法よりも有効であることは明らかにされていたが、小児については結果にバラつきがあった。NEJM誌2010年7月22日号(オンライン版2010年6月29日号)掲載より。成人329例、小児156例を、最新ポンプ療法群と従来注射療法群に無作為化試験は、1型糖尿病で血糖コントロール不良の、成人(19~70歳)329例と小児(7~18歳)156例の計485例を、血糖センサー付インスリンポンプで治療する群(ポンプ療法群、成人166例、小児78例)と、1日複数回の注射療法群(成人163例、小児78例)とに無作為化して行われた。主要エンドポイントは、追跡1年時点の血糖値(HbA1c)の、ベースラインからの変化。患者は、遺伝子組み換え型インスリンアナログ製剤を投与され、専門家医療チームが管理指導にあたった。1年時点の血糖値低下、7%未満達成割合ともにポンプ療法群に軍配ベースラインでの両群の平均HbA1c値はともに、8.3%だった。1年時点で、その値は、ポンプ療法群は7.5%と、注射療法群の8.1%よりも有意に低下していた(P<0.001)。<7%目標達成患者の割合は、注射療法群よりもポンプ療法群で大きかった(27%対10%、P<0.001)。重症低血糖発生は、ポンプ療法群は100人・年につき13.31例、注射療法群は100人・年につき13.48例で、有意差は認められなかった(P=0.58)。また、両群とも体重増加はみられなかった。(医療ライター:武藤まき)

704.

主任教授 森田峰人先生の答え

子宮内膜症と低用量ピルについて子宮内膜症の治療で低用量ピルを使用することもあるかと思いますが、副作用の発現はどうでしょうか?私自身は内膜症を診るわけではないのですが、患者さんから相談を受けることがあるので、症例数が多いであろう大学病院臨床現場での状況を知りたいです。宜しくお願いします。OC(ピル)はエストロゲン+プロゲストーゲンの配合剤であることはご存じと思います。これらのホルモン依存性に副作用が発生すると考えられます。一般的にエストロゲンとしてエチニルエストラジオールが、プロゲストーゲンとしてノルエチステロン、デソゲストレル、レボノルゲストレルがあり、OCの種類によってこれらの組み合わせや1相性、2相性、3相性が存在します。一般的にエストロゲン依存性の副作用としては、悪心・嘔吐、頭痛、水分貯留、帯下増加などが、プロゲストーゲン依存性の副作用としては、倦怠感、抑うつ感、乳房緊満感などが、アンドロゲン依存性(プロゲストーゲンには男性ホルモン活性があります)の副作用として、体重増加、ニキビ、食欲亢進、性欲亢進、男性化兆候などがあります。これらの副作用発現率は各種プロゲストーゲンの種類により異なるとは思いますが、全体的な副作用発現率として、悪心・嘔吐は1.2~29.2%、頭痛は3.4~15.7%、体重増加は0.8~2.2%、乳房緊満感は0.1~20%等となっており、これらのマイナートラブルは、通常、3か月以内で消失するともいわれています。子宮内膜症患者さんの月経痛改善のための効果ですが、ほとんどの場合効果はあると感じています。しかしながら、OCの各種副作用の発現により、継続しての服用が困難になる場合もあります。そのような場合には、OCの種類を変更することで継続服用が可能になる場合が多々あり、1種類のOCがダメであってもあきらめる必要はありません。子宮頸がんワクチンの効果・副反応について最近、子宮頸がんワクチン接種に関して助成金が出るとか出さないとか、何かと話題になっていますが、そもそもこのワクチン、実際の効果は如何なものなのでしょうか?「日本人には合わない」などおっしゃっている先生もいるようです。また、副反応についても現場の見解を知りたいと思っています。差し支えない範囲で結構ですのでご教授お願いします。現在使われているワクチンはHPVの遺伝子型が16と18に対するものです。日本人の子宮頸がんに関連するHPV遺伝子型が16と18であるものは58.8%(16型44.8%+18型14.0%)と報告されています。海外の報告では16/18が70.7%(16型53.5%+18型17.2%)で、その他31,33,35,51,52,53,56,58,59,68の10の型が31.2%に検出され、その他の型が9.0%であったとなっています。日本人の統計で、このワクチンでHPV16/18型の感染による子宮頸がんの発生を予防できる全体に占める割合は60%弱ということになります。よって、16/18による子宮頸がん発生を100%抑制できるとして、ハイリスクHPV感染者の0.15%ががんになるのを防げる場合の、費用対効果がどうなるのかは現在のところはっきりしていません。さらに大切な事として、日本における子宮頸がん検診率は23%程度であり、この健診率を先進国並みの60~82%に持って行く方法を考える必要があると思います。副反応に関しましては、全てのワクチンに言えることですが、何らかの重篤な合併症が引き起こされる可能性は否定できません。一般的な副反応として、局所の疼痛や発赤は90%程度に認められておりますが、当院での接種に際しては、幸いなことに重篤な副反応には遭遇しておりません。今後、これらの副反応に関しましても日本におけるデータが集積されてくるものと思います。研修について産婦人科医を目指している医学生です。産婦人科医になるにあたり、小児科(NICU)を経験した方が良いと聞きます。また、病院によっては一定期間NICUへ行かせてくれるところもあると聞きます。大森病院さんでも、このように小児科(NICU)のことを勉強したり、経験したりする機会はあるのでしょうか?ホームページを拝見しましたが、その辺の情報がなかったので教えて頂ければと思います。東邦大学医療センター大森病院でも小児科(NICU)のことを勉強したり、経験したりすることになります。産婦人科のホームページで「入局希望の方へ」を見て頂くと「後期研修プログラム」として1年目に「産科・周産期」と記載してありますが、この期間に3か月間、新生児科(NICU/GCU)の研修を行うことになります。また、後期研修期間中に、「腫瘍」「生殖内分泌」を専門医レベルまで習得してもらうために、2年目「腫瘍」、3年目「生殖内分泌」を主な研修期間としてトータルで3年間での研修計画をたてています。その後に、さらに新生児科での研修を希望される場合には、適時相談により、更に高度な新生児科での研修を行うことも可能です。産科婦人科の専門領域について初期研修中の者です。最近、産婦人科医に興味を持つようになりました。産婦人科の専門領域を大きく分けると、周産期、婦人科腫瘍、生殖医学の3つと教わりましたが、どれを専門にするのか?を決めるのは、通常どの位のタイミングなのでしょうか?また、森田先生はいつ頃、どんな理由で今の専門(婦人科腫瘍でしょうか?)に決めたのでしょうか?場違いな質問でしたら申し訳ありません。宜しくお願いします。後期研修として産婦人科に進んだ場合、まず目指していただくのは産婦人科専門医です。当院でもまずはそれを第1目標にしています。通常、後期研修3年間(初期研修2年とあわせて卒後5年)が終了した時点で専門医の受験資格ができます。それまでは、「周産期」「腫瘍」「生殖内分泌」の3本の柱をしっかりと研修し、専門医取得を目指します。通常は、その後に専門性のあるサブスペシャリティの各種指導医や認定医取得、および研究などを行うことになります。自分自身の場合は、卒業が27年前ですので、現在のような初期研修、後期研修制度はなく、卒業して直ちに医局に入局し、2年間の研修医、その後2年間の関連病院での研修の後に、卒後5年目に大学に帰局して研究を始めるとともに、当時、黎明期であった婦人科内視鏡に興味を持ち、臨床では生殖医療や関連する子宮内膜症、子宮筋腫などの診療に携わってきました。自身のおかれている環境によっても、これら専門領域選択に適切な時期や場所が大きく異なる可能性もあります。まずは、興味を持ち、かつ、その領域にすすむ事ができる環境にあるかどうかの見極めは大切なことでないかと思います。また、産婦人科としてのジェネラリストを目指すという道もあります。妊娠糖尿病患者を診るときに気をつけること妊娠糖尿病患者を診るときに気をつけていることがありましたらご教授下さい。特に糖尿病専門医との連携方法で気をつけていることや、こうすると上手く行く!といったノウハウをお聞きしたいと思っております。私の病院には糖尿を診れる医師はいないため、いつも他院の先生方との連携になってしまいます。どのように連携するのが良いのか毎日模索している日々です。ご教授お願いします。ご質問いただきました内容に関して、的確にお応えできる回答を持ち合わせておりませんが、他院の先生と連携をとって妊娠糖尿病患者を診ておられるご苦労は大変かと思います。ご存じの対応であるとは思いますが、妊娠糖尿病患者に対しては、食事指導、運動療法からはじまり、妊娠中の運動療法は比較的制限を受けることから、食事療法のみで血糖コントロールが目標に到達しない場合には、迷うことなくインスリン療法を開始する、ということに尽きると思います。男性産婦人科医が気をつけること産婦人科は、女性医師と違って男性医師は色々と気を遣わないといけない科だと思います。先生が男性産婦人科医として気をつけている点を教えてください。産婦人科の診察対象は女性生殖器であることから、最近は、女性医師の診察を希望する患者さんも増加しています。まず、大切なことは、不安を抱いている患者さんに対して、出来るだけその不安を取り除き、適切な診療ができる環境を作り出すことにあります。一言で言い表すのは難しいですが、常に、そのような気持ちで患者さんと接するよう心がけています。また、男性医師は、診察の場面では必ず女性の看護師を同席させることも忘れてはならない事です。日本の産婦人科領域の臨床研究レベルについて海外に比べた時、日本の産婦人科領域の臨床研究はどの位の位置にいるのでしょうか?また、海外への留学は必要なのでしょうか?僕はまだ医学生なのですが、将来は先生のように研究も臨床もでき、多くの患者さんのライフスタイルにあった治療提案ができるドクターになりたいと思っています。日本の産婦人科領域の臨床研究レベルは決して諸外国に劣っているとは思いません。しかし、日本人であるが故の不利な点があります。世界で研究に対する評価を得るためには英文論文の執筆は不可欠です。しかしながら、日本ではやはり主に日本語による論文執筆が先になり、英文は後回しになる傾向があるように思えます。もちろん、英文の論文を多数輩出している優れた日本人研究者もたくさんいらっしゃいますが、大変な努力が必要であることは事実です。海外への留学に関する事ですが、この留学は研究留学のことと理解してコメントします。留学には、研究留学と臨床留学がありますが、現在、大多数を占めるのは大学医局からの研究留学です。しかし、研究留学は目的意識を高く持たないと得るものは少ないと思われます。必ずしも留学が必要である理由は存在しないと思います。臨床遺伝について大森病院さんのホームページで、臨床遺伝についての記載がありますがもう少し教えて頂けないでしょうか?今大学病院では、具体的にどんな研究や取り組みが行われているのか?どのような成果を上げているのか興味あります。是非宜しくお願いします。近年、疾患に限らず生命現象ほとんどが遺伝子によって制御されていることが解明され、注目を浴びています。臨床遺伝学は、基礎遺伝学(いわゆる遺伝学)と臨床をつなぐ重要な分野として発展してきています。さらに最近では、生活習慣病などの多因子疾患も、遺伝子が関与している事が判明しています。しかし、遺伝学的検査を行うときに、十分な説明がなされず、施行されたり、結果を適切に判断することが出来ず、誤った説明などがなされ、時に、患者、その家族に誤解を招く場合があります。大森病院には、日本人類遺伝学会、遺伝カウンセリング学会認定の、臨床遺伝専門医が2名(いすれも産婦人科医)がおり、専門医研修施設に認定されています。産婦人科領域、生殖遺伝(挙児希望、習慣流産など)、周産期遺伝(出生前診断、高齢妊娠など)を中心に、火曜日午後、遺伝相談外来として対応しています。また、内科、外科など他科の担当医と協力し、横断的に、遺伝学的検査施行時、結果説明時など患者、その家族と話し合う機会を設けています。窓口は、産婦人科外来となっており、電話にて担当医と受診の予約についてお話しいただけます。妊娠を控えている慢性腎臓病実臨床にて妊娠を控えている慢性腎臓病の患者に対してどのような降圧剤を選択するのがベストか、臨床研究などの結果があれば教えていただければ幸いです.まず、慢性腎臓病合併妊婦では早期に妊娠高血圧症候群をおこして、母児共に予後が悪い事はよく知られております。したがいまして、妊娠前に十分に腎機能検査を行い、GFR 50ml/分以下、血清クレアチニン1.5mg/dl以上、血清尿酸値6.0ng/ml以上、降圧剤投与での血圧160/110mmHg以上、あるいは腎生検にて活動性病変のある者には妊娠を許可すべきではありません。これらの条件をクリアして、血圧の管理を行い、拡張期血圧を90~100mmHgの範囲に、収縮期血圧155~160mmHgを超えない事を目標に、妊娠が成立しても継続して投与が可能な薬剤を選択する事が望まれます。第1選択はヒドララジンもしくはメチルドパになります。また、妊婦に対してはACE阻害剤、アンギオテンシン受容体拮抗薬は禁忌であり、妊娠前にこれらの薬剤によりコントロールされている場合には薬剤の変更が必要になります。したがいまして、妊娠を目指して降圧剤を使用する場合にはヒドララジンもしくはメチルドパによる良好なコントロールがその後の管理が行いやすい状況にすると思われます。月経か否か性器出血が主訴の患者さんで性成熟期で子宮がある場合、どれが月経なのか不正性器出血なのか分からないと言われます。まず頚部・内膜の細胞診はとり、経膣エコーを見るかと思いますが、産婦人科として出血が月経かどうかを判断する術はあるでしょうか。産後の不正出血などでも(明らかな遺残ではなく)それが月経なのか何なのか判断に迷うことがあります。お教えいただけないでしょうか。 性器出血の様子だけから判断することは困難です。出血の様子に加え経腟超音波所見は重要で、特に子宮内膜の状態は評価に大きく役立ちます。患者さんのもともとの月経周期や体型なども判断材料になる機会は少なくありません。総合的に評価することとなります。総括たくさんの、また様々な内容のご質問をいただきありがとうございました。産婦人科の3本柱は、「周産期」「腫瘍」「生殖内分泌」であり、まだまだ伝えきれないほどの魅力ある診療および研究分野がたくさんあります。少しでも興味を持って、産婦人科の世界に入ってきてくれる人たちが増えてくれることを願っています。主任教授 森田峰人先生「産科婦人科最先端治療は患者個々への対応が決め手」

705.

新規SGLT2阻害薬dapagliflozin、血糖コントロールが不良な2型糖尿病に有効

メトホルミンだけでは十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者に対し、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)の選択的阻害薬であるdapagliflozinを追加投与すると、ヘモグロビンA1c(HbA1c)が有意に改善することが、英国Aston大学のClifford J Bailey氏らが行った無作為化試験で示された。高血糖の是正や糖毒性の発現予防は2型糖尿病の管理における重要な目標とされる。dapagliflozinは、SGLT2を選択的に阻害することで、インスリン非依存性に腎臓でのグルコースの再吸収を抑制するという。Lancet誌2010年6月26日号掲載の報告。dapagliflozinの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照第III相試験研究グループは、メトホルミンだけでは血糖コントロールが不十分な患者においてdapagliflozinの有効性と安全性を評価する多施設共同二重盲検プラセボ対照第III相試験を実施した。メトホルミン≧1,500mg/日で十分な血糖コントロールが達成されない2型糖尿病患者546例が、3つの用量のdapagliflozin(2.5mg群:137例、5mg群:137例、10mg群:135例)あるいはプラセボ群(137例)に無作為に割り付けられた(いずれも1日1回経口投与)。メトホルミンは、試験開始前と同一の用量を継続投与した。主要評価項目は、24週におけるHbA1cのベースラインからの変化とした。二重盲検下で1回以上の投薬を受け、ベースラインとその後に少なくとも1回の検査を受けた全症例が解析の対象となった。用量依存性にHbA1cが有意に低下、ウエスト周囲長の短縮を伴う体重減少効果も主要評価項目の解析は、534例(dapagliflozin 2.5mg群:135例、5mg群:133例、10mg群:132例、プラセボ群:134例)で行われた。24週の時点で、プラセボ群の平均HbA1cが0.30%低下したのに対し、dapagliflozin 2.5mg群は0.67%(p=0.0002)、5mg群は0.70%(p<0.0001)、10mg群は0.84%(p<0.0001)と用量依存性に低下しており、いずれも有意差を認めた。dapagliflozin群では治療早期から体重減少を認め、この効果は治療期間を通じて持続した。24週には、プラセボ群の体重が平均0.9kg低下したのに対し、2.5mg群が2.2kg、5mg群が3.0kg、10mg群は2.9kg減少した(いずれも、p<0.0001)。ウエスト周囲長も、プラセボ群が平均1.3cm短縮したのに対し、2.5mg群が1.7cm、5mg群が2.7cm、10mg群は2.5cm減少していた。低血糖症状の発現率は、dapagliflozin群が2~4%、プラセボ群は3%と同等であった。性器感染を示唆する徴候、症状などの報告は、プラセボ群の5%(7例)に比べ、dapagliflozin 2.5mg群が8%(11例)、5mg群が13%(18例)、10mg群は9%(12例)と頻度が高い傾向がみられた。重篤な有害事象は17例(dapagliflozinの各用量群が4例ずつ、プラセボ群が5例)に認められた。著者は、「メトホルミン単剤では血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者の治療において、メトホルミンへのdapagliflozin追加療法は新たな選択肢となる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

706.

教授 白井厚治先生「「CAVI」千葉県・佐倉から世界へ 抗動脈硬化の治療戦略」

東邦大学医療センター佐倉病院内科学講座の教授で、前院長。医局のモットーは総合力と専門性を両方備えた医師育成。一人でも多くを救うこと。加えて先端医療の開発をモットーにしている。最近では、血管機能検査CAVIの開発に参画し、国内から海外にも発信。肥満症治療については脂肪細胞、脂質代謝の基礎研究から心理学まで動員して新しい治療システムを構築中。動脈硬化の分野で新しい治療体制の扉を開く動脈硬化は、地味な分野ですが、ご存知のとおり、脳梗塞、心不全、さらには腎不全をもたらし大きく個人のQOLを低下させ、また社会的損失も大きい疾患です。これに対し、病変動脈、静脈の直接的治療を循環器グループが担う一方、「動脈」が水道管でなく、生きた機能を持った臓器とし見、それに細胞生物学と代謝学を応用して治療・予防法を打ち立てるというのが夢でした。実は、癌は最近の治療学の進歩は著しいのを目の当たりあたりにしますが、30年前には不治の印象が強く、生命現象そのものの解明が必要で、とても自分の能力では歯が立たないと思い避けたのも事実です。動脈硬化なら多少とも代謝学的側面から治療できるのではないかと思ったりもしました。これまで、副院長6年、院長3年と病院の経営面にも携わりましたが、医療現場は人間が担うものであり、かつ科学性を保って運営されるべきもので、根本原則は、病気を見ることと変わらないと思いました。みんなして誠意を尽くし、精一杯がんばれば、経営のほうが、なんだかんだといっても人の作った制度の運用ですから、患者さんがいる限り、道は開けると思います。しかし、対疾病への取り組みは、神が創った摂理と破綻への挑戦ですから、数段難しいと思います。でも、全身全霊、日々、改革、改良に向けやり続けるのが、医師の誠意だと思います。それには、効率よくみんなが取り組めるセンター方式が必要と、糖尿病・内分泌・代謝センターを9年前に立ち上げました。場所、人の問題で、思い立って3年ほどかかりましたが、皆さんの協力でできました。そのころから、病棟と外来が一体となった継続看護治療システムも導入され、看護師も病棟での看護結果が外来でどのように効果が出ているのか確認しあい、フィードバックをかけるシステムが導入、大きかったのは、患者さん全員に、「ヘルスケアファイル」という手書きのファイルをお渡しし、代謝要因の変化と日常生活管理がどのように結びつくかをグラフで表すシステムを導入したことです。患者と医師のみでなく、家族にも分り、医療スタッフも採血者、受付、看護師、栄養士も一目瞭然に個々の病態が把握でき、互いにコミュニケーションが取れやすくなったのがよかったです。若い研修医にとっても数年の治療経過を見れば、病態がわかり最大の教科書にもなっています。診療体制を分りやすく、すっきり整えることは、生活習慣病と呼ばれる一連の疾患にとても有用と思います。若い医師も情熱を持った人たちが幸運にも集まり、地に足をつけ、真に役立つ研究を進めてくれたのも、推進力になってくれました。動脈硬化発生機序の解明とCAVIの開発研究学会のマニュアル、ガイドラインは大切ですが、大学病院の使命はその先を見つめることにあります。その眼は、字づらで覚えたことではなく、自然との対話、すなわち研究の基盤なくして開かれないと思います。ささやかながら病理、細胞培養実験から、動脈硬化とコレステロールの関係は直接ではなく、コレステロール自身が酸化され、オキシステロールになると強力な組織障害性をもち、慢性炎症が引きおこすとしました。これに基づき、強力な抗酸化作用を持つ脂質低下剤プロブコール投与による糖尿病性腎症の抑制効果を見いだしました。結局、末期腎硬化症は動脈硬化と同じような機序で起こると考えたからです。また、動脈硬化の臨床研究には、簡便で経時的に測定できる指標が必要ですが、これまで必ずしも十分なものがなかったわけです。これに対して、血管弾性を直接反映するCAVIという検査法の開発に携わったところ、これまで見えなかった部分がどんどん見えるようになりました。これは、内科の循環器、代謝チーム、それに生理機能検査部が一体となり、精力的に仕事をしてきた結果です。循環動態を把握するうえで、血管抵抗を反映することがわかり、これは血圧計に匹敵する意味を持つわけで、まだまだその妥当性をさまざまな角度から検証する必要がありましたが、循環器、代謝領域の疾患や、薬物治療成績が英文論文となり、世界に向けて発信し始めたところです。今後、日常診療の中から、動脈硬化治療が見出される可能性もあり、楽しみです。肥満・メタボリックシンドロームへの低糖質食、フォーミュラー食の応用を中心に、チーム医療体制を確立動脈硬化診療は診断に加え、予防と治療が究極目標ですが、動脈硬化の主な原因として肥満の意味は大きく、糖尿病、高血圧、脂質異常を伴い、所謂メタボリックシンドロームを引き起こします。すでに当院では15年前から肥満への取り組みをチームで始めており、治療として低糖質食、その極みとして安全で効果のあるフォーミュラー食を実施しています。今、欧米では低糖質がよいとの論文が出始めましたが、当院では、入院時にも低糖質食を用いています。またフォーミュラー食は必須アミノ酸を含むたんぱく質とビタミン、ミネラルをパウダーにしたものを水で溶かして、飲んでもらうものです。それによる減量効果特に、内臓脂肪の減少度が高く、それに伴い代謝改善度も一般通常食より効果があり、そのメカニズムは、動物実験でも検証中です。脂肪細胞自身のインスリン感受性関連分子の発現が上がっていることが確認されました。研究面では脂肪細胞から分泌されるサイトカイン、分子、酵素、さらに脂肪細胞分化に加えて、「人」の行動様式にも興味を持ち、毎月、オベシテイカンファランスを開き、内科医、栄養士、看護師は無論のこと、精神科医、臨床心理士も加わり、症例への総合的アプローチを試みています。肥満が解消できない理由に、ハイラムダー型と呼ばれるパーソナリテイを持つ人が肥満患者さんに多いことも見出されました。また、入院中に、何らかの振り返りができ、周囲との関係も客観化できるようになると、長期予後がよいことも見出しており、メンタルサポートは必須と思われます。このような成功例に遭遇すると、チーム全体が活気づくのも不思議です。これから、これらチームのバックアップで肥満外科治療も始まります。患者さんデータを集約したヘルスケアファイルで真の地域連携の夢を糖尿病を中心とした生活習慣病は、結局、本人の自己努力に大きく依存します。人は決して命令で動くものでなく、自分で納得、わかって初めて真の治療が始まります。その際、さまざまな情報を錯綜させないために、1冊のノートをつくり、なるべくグラフ化、マンガで示す方式で、病態理解をはかっています。これをヘルスケアファイルと呼んでいます。きちんとしたデータの推移をみて、各種職域の人が適切なアドバイスができます。また、もっと重要なことは、患者本人が自分の経過を一覧すると、そこから、自分の特性が分かるというものです。医療者自身にも勉強になり、多職種の方々がのぞきこむことによって、患者さん個々の蓄積データに基づき、最適なアドバイスができるというメリットがあります。これは、病院内の代謝科、循環器、神経内科などにとどまらず、眼科とも共通に使えますが、さらに、これで院外の施設とも、真に患者さん中心の医療ができます。できれば、全国国民全員が持つべきで、これで、医療費削減、効率化、医学教育もでき、これを如何に全国的に広めてゆくか楽しみ考えているところです。若い医師へのメッセージ:自分の医学を打ちたてる現在、各種疾患は、学会がガイドラインなどを決め、医療の標準化が進み、それはそれで、一定のレベルにまであげることでは意味があるでしょう。現場に立てば、ほとんどがそれを基礎に幾つかのバリアンスがあり、物足りないはずです。確かに一杯本もあり、インターネットでも知識はふんだんに得られます。でも、結局医師は、自分の医学を自分で打ち立てるのが原則でしょう。決して独断に走れというのではなく、ささやかでも、自分のデータをまとめ、自分として言えるファイルを作ることです。それは、先輩の先生から呟きとしておそわりました、教えてくれるのを待っていたって本当のところは教えられないし、頭を下げても教えてもらえることは少なく、自分で、縦軸、横軸を引き、そこにプロットさせ因果関係を探れといわれましたが、その通りです。ささやかでも、自分の経験症例をまとめておき、そこから何が発信できるか日夜思考錯誤してください。それが、許される余裕と良き指導者がいるところで、研修はすべきでしょうし、後期研修もそんな環境で自己研鑽することが大切でしょう。専門分野の選考は、社会的にニーズが高いところに向かうべきで、無論雰囲気も大切ですが、はやり、楽というよりは、皆が困っているところに入り込こむ勇気が大切でしょう。そこで、頑張れば、面白く楽しく医師生活をやって行けるでしょう。今後も、佐倉病院でなければ、できないことに向けて頑張ってまいります。お待ちしています。質問と回答を公開中!

707.

教授 白井厚治先生の答え

最近のゼロカロリージュースについて0キロカロリーのコーラなどが最近は多く売られてますが、代謝内分泌学的には糖尿病の方に自信を持って勧められているのでしょうか?あくまで噂に過ぎないのですが、ああいうゼロカロリー飲料そのものには確かにカロリーがなくても、一緒に他の食事を摂った時に他の糖質の吸収を促進する作用があると聞きました。。。。PS:そもそも、人工甘味料のアスパルテームが身体に良いかどうかわかりませんし、炭酸飲料は身体に悪いのかもしれませんが。。。実際に、カロリーゼロ表示の飲料物を飲んでもらい、30分から120分まで、採血したところ、血糖の増加はほとんど見られないものもありましたが、なかにはあがるものもあり、原因は、カロリーゼロ表示は、糖質0.5%以下で使っているとのことでした。ですから、成分表示で、糖分ゼロと明記しているものは大丈夫でしょうが、それ以外のものは、大量飲めば、血糖は上がる可能性があります。アスパルテームについては、アミノ酸摂取として評価してよいと思われます。極端に、多用しなければ問題ないと思います。高感度CRPについて高感度CRPは動脈硬化の一つのいい指標でしょうが、上気道炎、歯肉炎などの炎症にても上昇すると理解しています。そうすると、風邪の流行している季節などでは動脈硬化の判定ができずらくなるということはないでしょうか?その通りで、CRPは体内でほかに目立った炎症がない場合にのみ、動脈硬化(炎症性反応としての)の指標として意味がありますが、特異性は、高感度CRPを用いてもありません。大規模スタデイで、ある治療の効果などをみるにはよいでしょう。しかし、日常診療で、個々の例に当てはめ、それのみで、あなたは動脈硬化があります、ありませんとの判定に用いるのは、困難と思います。逆に、動脈硬化のためと決め込んで、ほかの炎症、癌などの初期を見逃す可能性もあります。個人には参考にする程度でよいのではないでしょうか。破壊性甲状腺炎の診断動悸、全身倦怠、微熱、軽い咽頭痛の症状で他院受診。FT3 10.4,FT4 4.6 TSH感度以下、 抗体陰性(TPO、TG、TRAb,TSAb)でCRP 1前後、血沈正常からやや亢進、甲状腺エコーでまだら様low echo部位のある患者さんが当院紹介となりました。ヨードuptake 1%以下で破壊性甲状腺炎と診断しましたが、一貫して頸部痛はありません。頸部痛のない亜急性甲状腺炎と判断するのか、咽頭炎併発の無痛性甲状腺炎と迷いました。これでTPO抗体やTG抗体が陽性であればさらに橋本病の急性増悪とも迷うところです。頸部痛のない亜急性甲状腺炎という病態はあると考えて宜しいのでしょうか。また今回のケースではありませんが橋本病の抗体が陽性の場合、無痛性甲状腺炎と橋本病の急性増悪との鑑別についてもご教授いただければ幸いです。甲状腺機能亢進でTSAb、TRAb陰性、さらにヨードuptakeの低下という所見は破壊性甲状腺炎に矛盾しません。破壊性甲状腺炎には、亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎があります。亜急性甲状腺炎は炎症反応があり、low echo部位を認めるととも頸部痛はほぼ必発です。本例では頸部痛なしなので、亜急性甲状腺炎とは言えないでしょう。従って、無痛性甲状腺炎の可能性が強くなります。無痛性甲状腺炎は、多くは橋本病を基盤とした疾患とされており、本例がTPO、TGの抗体が陰性であることから、合致しません。まだ特定されていませんが何らかのウィルスによる甲状腺炎かもしれません。実際、本症例をどうするかですが、私なら経過観察が重要と考えます。ホルモン値を追跡し、下がればそれでよく、もし、炎症反応が強くなったり、頸部痛が出現してきたりすれば、亜急性甲状腺炎と考えて、ステロイド投与も考慮していくべきでしょう (当面はNSAIDでも十分)。甲状腺機能亢進症が長引くようであれば、甲状腺中毒症状に応じて、メルカゾールを適量処方、経過観察します。術前術後の糖尿病コントロール経口糖尿病薬は手術前後は禁忌となっています。手術前後とはどれくらいの期間をいうのでしょうか。その間はインシュリンでコントロールすることになりますが基本的なやりかたをご教示ください。手術の種類、術後の食事摂取の状況からも、ことなり、一律にはいえないと思います。一般に消化管手術は、吸収が不安定なこともあり、最低前1日、後7日間くらいは、血糖測定下でのインスリン治療が望まれます。SU剤を中止してのインスリン量の決定は、個々異なり、試行錯誤ですが、グリペングラマイド(2.5mg)3T/日では、およそ、インスリン必要量は、8-12単位くらいではないでしょうか。当院では、毎食前血糖測定後、血糖(mg/dl)100-120、  120-150、150-200、200-250、250-300 それぞれ、インスリン(レギュラー)2-4、4-6、6-8、8-10、10-12単位打つことを目安にしています。大学病院に足りないもの先生が大学病院の経営のみならず、臨床の現場でもご活躍されている様子、記事で拝見しました。大学病院の上から下までご存知の先生にお聞きしたいことがあります。「今、大学病院に足りないもの」を一つ挙げるとしたら、なんでしょうか?今や大学病院も収入につながる診療に振り回され、臨床研究の機会がどんどん減っているような感があります。周りの若手を見ても、診療に疲れて、「大学病院でバリバリ研究するぞ!」という気概を感じることができません。魅力ある大学病院を作るために何が必要なのか?何が足りないのか、日々悩んでいる状況です。ご教授頂けると幸いです。こんな時代の今こそなぜ、大学病院にいるのか、どのような姿勢をとるのか、原点が問われていると思います。それというのも、いろいろ言われていますが、医療の原点である患者さんの満足度(医療レベルもふくめ)を中心に、医師をきちんと配備し、グループ、科の壁を乗り越え、互いに手を出し合ってゆけば、大学病院は採算的にやってゆけるというのが実感でした。ただそこには、多くの若い医師たちがいるということ、即ち、採算的にみると、薄給でがんばってくれている若手医師がいるからこと成り立つことを忘れてはなりません。それに対して、彼らが大学病院にいる存在意義を見出すには、スタッフが魅力的な医療技能を提示でき、全身全霊をかけて患者さんを診ているすばらしい姿をみせること。若手医師は今の医療を学ぶのみでなく、医療を開拓していくメンバーの1人として、テーマを持ち未解決なものを解決する術を身につけることの充実感とそれによる自信が必要と思います。従って、大学スタッフの責任は重大で(それだけやりがいがあるという意味です)、面白い研究テーマを見つけ、その解決を目指してあらゆる手段を用い(基礎、臨床研究)、しかもそれを楽しみながらやっている姿勢を見せ続けることです。そして、病院の業務に追われ疲れているように見えた時こそ、それらを吹き飛ばす面白い研究テーマを突きつけるべきです。マンネリと疲労から脱出させる最良の方法となります。先生のようなやる気のある上級医師は、遠慮せず、怖がらず若手医師に語りかける続けることでしょう。今の医学教育は研究の面白さ楽しさを感じ取るレセプターを育成していませんから、苦労しますが、でも、わかってくれる日が必ず来ると思います。CAVIの開発についてCAVIにはいつもお世話になっています。お恥ずかしい話、先生が開発に携わっていたこと、知りませんでした。このような新しい技術や検査機械の開発はどのように始まり、進行していくものなのでしょうか?また、このように周りを上手く巻き込んでいく時のポイント、秘訣などありましたらご教授頂きたいです。宜しくお願いします。CAVIは、今次々と新しい事実が見出されています。大切なことは、若い先生方に興味を持ってもらえ、いったん途絶えていた血管機能学が代謝学と連携して再度面白くなり始めたことです。CAVIと巡り合ったいきさつですが、たまたま、開発初期に相談をうけたわけで、私が発想し持ち込んだわけではありません。ただ、血管機能については興味をもち30年前から大動脈脈波速度(長谷川法=血圧補正法)を毎年透析患者さんで10数年にわたり測定していました。そこでPWVの限界と可能性を私なりに理解していたつもりです。今回CAVIの初期のデータとりをする中で、計算式決定まで多少紆余曲折がありましたが、バイオメカニクスの科学と臨床成績から現在の式が最終決定され、以後広い臨床評価が始まりました。そこには、長年血管機能解析に興味を持ち続け誠実にデータを蓄積分析してくれていた施設と人がいたこと、会社も、科学性と臨床データ両面を尊重し互いに納得のいくまで検討できたこと、また脈波感知と分析に高度の技術を発揮した優秀なスタッフがいたことが幸運だったと思います。加えて、全国の大御所というよりは若手研究者の方がCAVIに素直に興味をもってくれ、いわゆる大学の研究室よりは、一般病院で、素養のある先生方が先行して出された研究が多く、現場で開拓心旺盛な医師の存在が大きく浮かび上がりました。新しい世界を開くのは情熱ある若手医師とつくづく思いました。無理に誰かを巻き込もうとしたこともなく、CAVIそのものの原理と測定の安定性が最大の牽引力であったと思います。でもまだまだ、これから多くを検証する必要があります。佐倉病院でないとできないこととある病院で研修医やっている者です。先生の記事を興味深く読ませて頂きました。文末にある「佐倉病院でないとできないことに向けて頑張っていく」という言葉が印象的です。記事を読んでいると、佐倉病院さんはとてもチームワークが良く、ドクターもコメディカルも同じ目標に向かって猛進しているような印象を受けました。(先生のところだけかもしれませんが...。)「佐倉病院にしかできないこと」というのは、そのように「チームワークが良い病院でしかできないこと」なのでしょうか?それともまた何か他とは違う特徴が佐倉病院さんにはあるのでしょうか?基礎も臨床もしっかり行い、しかも全て患者さんのためになっている様子に感銘を受けました。ご回答宜しくお願いします。どこの場にいても、そこを、地球上で一番すばらしいところにしてやろうという気持ちが大切です。恵まれてすべてが整っているところほど、これからの人にとってつまらない場所はないと思います。とにかく、その場での問題点を探し、皆が一番困っているところを見つけ出し、その解決に向けて、できるとところを一歩一歩解決してゆく姿勢を評価、支援しあえる環境が佐倉病院にはあるということです。内科も、外科医に負けないような患者さんに感謝される治療学を確立しようと、研究テーマの根幹は、酸化、再生、免疫制御、栄養の4本柱で、おのおの磨いているところです。たとえば、呼吸器は抗酸化療法で間質性肺炎に挑戦、代謝は、肥満治療を分子から栄養、こころの問題と多面的に捉える治療、特に肥満外科治療が開始されましたがその術前術後のフォロー、フォーミュラー食(低エネルギー低糖質、高たんぱく食)の応用と基礎、糖尿病腎症に対するプロブコールを用いた抗酸化療法で透析療法移行抑制試験、循環器は、インターベンションに加えて、これから、難治性心不全に対する鹿児島大鄭教授の開発した和温療法実施と評価、睡眠時無呼吸と不安定狭心症の関係をみつけその治療システムの確立、消化器は、炎症性腸疾患のメッカとして、顆粒球除去療法、レミケード療法、神経内科は、排尿障害を中心に、パーキンソン病の深部脳刺激治療のバックアップ、再生医療も狙っています。研究は、各グループ専門を超えて互いに連携しています。原則として、できれば自然の法則性を体感するため、医師は基礎研究もする機会を経験してもらいたいものです。研究開発部の協力のもとに細胞培養、酵素学、遺伝子実験をできる体制を敷いています。要するに、病気を多面的にいくつかの独自の視点をもって診、医療を開拓してゆける人の育成がもっとも大切と考え、それには、チーム医療、他コメヂィカルとも力を合わせ、初めてできることと考えています。理想の地域連携とは先生がお考えになる「理想の地域連携」の姿とはどんなものでしょうか?また、その理想の姿になれない、理想の姿になるのを阻んでいる障害はなんでしょうか?(実現されていたら申し訳ないです。)現在、私も地域連携について勉強はしているものの、なかなか思うような形にできません。障害が多すぎて、「理想的」どころが「現実的」な連携フローにもなっていません。宜しくお願いします。地域となるとさまざまな価値観の人がおり、同じ言葉でも受け取り方が違ったり、利益配分に問題が出たりで、そう簡単に理想的な地域連携ができるわけではありません。しかし、今の医療は、個々の医療人が隔離状態で医療行為を行えるほど甘くなく、互いに、助け合って連携せざるをえないと思います。でも問題は、ただ患者さんを送りあえば医療連携になるかといえばそうでもなく、問題は患者さんも含めて、互いにわかりあい納得できることが大切で、それには情報の整理集約が必須です。私どもは、生活習慣病を中心としたヘルスケアファイルと呼ばれるノートを患者さん全員にお渡ししています。そこには、動脈硬化リスク因子、標準体重、BMI、臓器障害の有無、程度、さらに主要な検査値はグラフで提示するシステムを用いています。これで、関わる医師は無論、クラークさん、看護師さんも経過が一目瞭然。するとアドバイスも適切。また家族もわかり、応援しやすくなります。これを地域に広げたいというのが私どもの夢です。ただこのファイルは、血圧、糖尿、脂質、尿酸、体重、一般検査を含んでおり、全部網羅していると思います。わがままかもしれませんが、これ一冊にしていただきたいのです。一般には、00手帳が3つも5つももっておられる方もいますね。でもなんだかわからないというのが実情です。大人版、母子手帳を作るべきだと思います。チームワーク先生、チームをまとめ上げるために必要なものはなんでしょうか?チームワークというと「みんな仲良く」というイメージがありますが、決してそうではないと思います。きっと先生は、今までのご苦労の中から「これが大事!」というもの発見されていると思います。それを教えてください。宜しくお願いします。リーダーは、今自分らの分野で何が問題で、それを解決するために、どう力を互いに出し解決するかを提言し続けること。 即ち、小さなグループミーチングでも、プロジェクトを提示し、その成果がささやかでも出たら皆で確認し、面白がること。プロジェクトは、参加者全員が順に一つずつ持つように絶えず心がけていると、みんなに参加意識と存在感さらい自信が生まれます。すると、とたんに楽しく動き始めます。低糖質食私も低糖質食でメタボを脱却したものですが、抵糖質食の心血管病変に対してrisk reductionあるのでしょうか?食事の内容によっても大きく変化するのでしょうか?低糖質、高蛋白食が減量に効果があるとともに、血圧、血糖、脂質異常などの冠動脈リスク因子を減らすことは、海外のスタデイでも、ほぼ一致して報告されています。インスリン抵抗性解除作用と思います。ただし長期(1年)になると元に戻るとの報告もあり、それを鵜呑みに意味がないという人もいます。しかしその食事調査結果をみると、実際の摂取成分がもとに戻っており、実はそう長くは自己調整を続けられなかたというのが実態で、低糖質、高蛋白食は長期になると効果がなくなるというものではないわけです。御質問の「では実際、心血管イベントを減らせたか」はもっとも重要な点ですが、上述のごとく、通常食で成分調整を長年にわたり継続すること自体がほとんど不可能なため、年余にわたる低糖質、高蛋白食の冠動脈疾患の発生を抑えるかどうかの研究自体ができないのです。本当は、このような基本となる栄養組成の研究こそ、国が、コンプライアンスを保障できる食事の宅配便制度などを利用し、長期にわたる調査を企画運営すべきです。そこにこそ研究費をつぎ込むべきです。薬物のようにメーカー主導のエビデンスベーストメデイシンは、この分野では行われることはないでしょう。現在、ある程度コンプライアンスをよくして低糖質、高蛋白食の効果を見る方法とすれば、フォーミュラ食を一日一回用いるなどの方法が考えられます。また、長期のイベントの発生調査を、より短期に予測しうる方法があれば、即ち、動脈硬化のよいサロゲートマーカーがあれば早期に結論が出せるかもしれません。それには、新しい動脈硬化指標CAVIが使えるかもしれないとの淡い期待を、持っています。教授 白井厚治先生「「CAVI」千葉県・佐倉から世界へ 抗動脈硬化の治療戦略」

708.

2型糖尿病でメトホルミン服用患者、ビタミンB12値の管理が強く勧められる

2型糖尿病患者へのメトホルミン長期投与は、ビタミンB12欠乏症のリスクを増大すると、オランダ・Academic Medical Center眼科部門のJolien de Jager氏らが、無作為化プラセボ対照試験を行い明らかにした。「ビタミン12欠乏症は予防可能で、試験の結果は、ビタミンB12値の定期的な測定が強く考慮されなければならないことを示唆するもの」と結論している。BMJ誌2010年5月29日号(オンライン版2010年5月10日号)掲載より。無作為化プラセボ対照試験で、メトホルミン長期投与の提供を検証Jager氏らは、2型糖尿病でインスリン治療を受けている患者で、メトホルミン(商品名:メトグルコ、メルビンほか)長期投与によるビタミンB12欠乏症(150pmol/L未満)、ビタミンB12不足(150~220pmol/L)の発症率の影響と、血中葉酸濃度、血中ホモシステイン濃度について検討を行った。被験者は、オランダの3つの非大学病院外来クリニックから、390例が集められ、メトホルミン850mgを1日3回服用群と、プラセボ服用群に無作為化され、4.3年治療を受けた。主要評価項目は、基線から4、17、30、43、52ヵ月時点の、ビタミンB12、葉酸、ホモシステインの各変化%値とした。4.3年でビタミンB12は19%低下プラセボ群と比べてメトホルミン治療群は、ビタミンB12、葉酸の低下との関連が認められた。平均低下%値は、ビタミンB12が-19%(95%信頼区間:-24~-14、P

709.

注射針がより短く、細く 極小インスリン用注射針「BD マイクロファインプラス 32G x 4mm Thin Wall」発売

日本ベクトン・ディッキンソン株式会社は、糖尿病患者の自己注射による治療をより快適なものとするために、極小のペン型注入器用注射針、「BD マイクロファインプラス 32G x 4mm Thin Wall」を5月10日に発売した。「BD マイクロファインプラス 32G x 4mm Thin Wall」は、2010年4月現在、針の長さが日本国内既存のペン型注入器用注射針の中で最も短い。針基から針先までの長さはわずか4mmで、ストレート形状の32ゲージ(0.23mm)だ。同社の従来品との比較調査では、さらに痛みが少なく、より快適であった、という結果が得られたという。この注射針は、インスリン注射で望ましいとされる、皮下への効果的なインスリン投与を実現し、臨床的に問題とされる筋肉内注射のリスクを低減する。詳細はプレスリリースへhttp://www.bdj.co.jp/press/2010510.html

710.

新規糖尿病治療薬リラグルチドとシタグリプチン、血糖降下作用はどちらが優れるか?

メトホルミン単独では血糖値が十分にコントロールされない2型糖尿病患者において、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)は、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬シタグリプチン(同:ジャヌビア、グラクティブ)に比べ糖化ヘモグロビン(HbA1c)の低下作用が優れることが、アメリカVermont大学医学部のRichard E Pratley氏らが実施した無作為化試験で示された。近年、2型糖尿病ではインクレチン系をターゲットとした治療が重要とされ、主なインクレチンホルモンとしてGLP-1とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)が挙げられる。GLP-1受容体作動薬がGLP-1の薬理活性を増強するのに対し、DPP-4阻害薬は内因性のGLP-1とGIPの濃度を上昇させるという。Lancet誌2010年4月24日号掲載の報告。13ヵ国158施設が参加したオープンラベル無作為化試験研究グループは、メトホルミン単独では適切な血糖値が達成されない2型糖尿病患者を対象に、メトホルミンの補助療法としてのリラグルチドとシタグリプチンの効果および安全性を評価するオープンラベル無作為化試験を行った。2008年6月~2009年6月までに、ヨーロッパ11ヵ国、アメリカ、カナダの158施設から、メトホルミン≧1,500mg/日を3ヵ月以上投与してもHbA1c 7.5~10.0%と十分な血糖コントロールが得られない18~80歳の2型糖尿病患者665例が登録された。これらの患者が、リラグルチド1.2mg/日を皮下投与する群(225例)、同1.8mg/日を皮下投与する群(221例)あるいはシタグリプチン100mg/日を経口投与する群(219例)に無作為に割り付けられ、26週間の治療が行われた。主要評価項目はベースラインから26週までのHbA1cの変化とし、両薬剤の有効性の非劣性解析とともに優位性解析を行った。リラグルチド群でHbA1cが有意に低下、低血糖リスクは最小限リラグルチド群のうち7例(1.2mg群4例、1.8mg群3例)が実際には治療を受けなかったため解析から除外された。ベースライン時の平均HbA1cはリラグルチド1.2mg群が8.4%、1.8mg群が8.4%、シタグリプチン群が8.5%であり、全体では8.5%であった。優位性解析では、ベースラインからのHbA1cの低下はシタグリプチン群が0.9%であったのに対し、リラグルチド1.2mg群は1.24%、1.8mg群は1.50%であった。リラグルチド1.2mg群とシタグリプチン群の差は0.34%(p<0.0001)、1.8mg群とシタグリプチン群の差は0.60%(p<0.0001)であり、いずれもリラグルチド群が有意に優れた。2つのリラグルチド群間にも有意差を認めた(p<0.0013)。吐き気が、シタグリプチン群の5%(10例)に比べリラグルチド1.2mg群は21%(46例)、1.8mg群は27%(59例)と多くみられた。いずれの群でも、軽度の低血糖が約5%の患者に認められた。著者は、「リラグルチドはシタグリプチンに比べHbA1cの低下作用が優れ、低血糖のリスクも最小限で良好な耐用性を示した」と結論し、「これらの知見により、リラグルチドはメトホルミンとの併用において有効なGLP-1受容体作動薬として使用できる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

711.

心血管リスクを有する耐糖能異常患者への速効型インスリン分泌促進薬:NAVIGATOR研究

経口糖尿病薬の1つ、速効型インスリン分泌促進薬ナテグリニド(商品名:スターシス、ファスティック)について、心血管疾患あるいは心血管リスクを有する耐糖能異常患者の糖尿病発症や心血管イベントを抑制しないとの報告が、NAVIGATOR研究グループによって発表された。同種の研究はこれまで行われておらず、本報告は追跡期間約5年、9,300名余を対象とした2×2二重盲検無作為化臨床試験により明らかにされた。NEJM誌2010年4月22日号(オンライン版2010年3月14日号)掲載より。9,306例をプラセボとの比較で中央値5.0年追跡NAVIGATOR(Nateglinide and Valsartan in Impaired Glucose Tolerance Outcomes Research)研究グループは、耐糖能異常と心血管疾患または心血管リスク因子を有する9,306例を対象に、2×2二重盲検無作為化臨床試験を行った。被験者は全員、生活習慣改善プログラムを受ける一方、ナテグリニド(最大60mgを1日3回)かプラセボ投与を受け、さらにそれぞれバルサルタン(商品名:ディオバン)またはプラセボの併用投与を受け、糖尿病の発症について、中央値5.0年追跡された。生存については中央値6.5年追跡された。解析ではナテグリニドの効果について、糖尿病の発症、中核の心血管転帰(心血管死,非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院の複合)、広範な心血管転帰(中核の複合心血管転帰の各要素、不安定狭心症による入院、動脈血行再建の複合)の3つの共通主要転帰の発生を評価した。糖尿病発症、心血管転帰発生に有意な低下認められず多重検定補正後、ナテグリニド群(4,645例)はプラセボ群(4,661例)と比べて、3つの共通主要転帰の発生を、いずれも有意に低下しなかった。糖尿病の累積発症率は、ナテグリニド群36%、プラセボ群34%(ハザード比:1.07、95%信頼区間:1.00~1.15、P=0.05)、中核の複合心血管転帰の発生率は7.9%、8.3%(同:0.94、:0.82~1.09、P=0.43)、広範な複合心血管転帰の発生率は14.2%、15.2%(同:0.93、0.83~1.03、P=0.16)だった。一方で、ナテグリニド群では低血糖リスクの増加がみられた。(医療ライター:武藤まき)

712.

DPP-4阻害薬「エクア(一般名:ビルダグリプチン)」今月にも薬価収載へ(1)

 2010年1月20日、国内で2成分目となるDPP-4阻害薬「エクア(一般名:ビルダグリプチン)」が承認された。ここでは、4月13日にアーバンネット大手町ビル(東京都千代田区)にて開催されたエクア記者説明会「これからの2型糖尿病治療の選択~低血糖・体重増加を助長しない、血糖コントロールをめざして~」(演者:東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授 門脇 孝氏)<ノバルティス ファーマ株式会社主催>について報告する。多くの患者が現在服用している薬剤の改善を望んでいる 門脇氏の説明会に先立ち、ノバルティス ファーマ株式会社の青野氏は、自社で行ったインターネット調査から、糖尿病患者の約6割が、現在服用している経口血糖降下薬に対してなんらかの不満を持っており、9割以上が薬剤の改善を希望し、具体的には「良好な血糖コントロールができる」薬剤を望んでいることを発表した。また、「半数以上が実際に低血糖を経験していないにもかかわらず、糖尿病患者の2人に1人が『低血糖が怖いと思っている』ことを報告し、「多くの2型糖尿病患者がアンメットメディカルニーズ(満たされていない治療上の要望)を感じている」と述べた。日本人2型糖尿病はインスリン分泌が不良 わが国の糖尿病患者は激増しており、その原因として考えられるのが、近年の食生活の変化や運動不足である。日本人は、元々インスリン分泌能が低く、欧米型の生活習慣を続けることにより、内臓脂肪が蓄積し、インスリン抵抗性が増大し、容易に糖尿病を発症する。実際に、欧米人はBMI30以上の肥満で糖尿病を発症することが多いが、日本人では、小太り程度で発症することが多い。門脇氏は、日本人は欧米人より内臓脂肪を溜めやすいこと、そして最近解明されてきた遺伝子レベルでの日本人の発症機構について紹介し、「治療を始めるにあたり、まず病態をきちんと把握することが重要である。日本人は欧米人と異なり、インスリン分泌が不良であることを考える必要がある」と述べた。糖尿病と診断された時点で膵β細胞の機能は半分以下に 糖尿病では、発症した時点ですでに膵β細胞の機能は50%以下になっている。門脇氏は、これまで使われてきたどの経口血糖降下薬でも、その進行は食い止めることができないことを明らかにしたADOPT試験やUKPDS試験などの結果を報告し、今後は膵β細胞を守り、できる限り機能を温存させ、機能低下の進行を遅らせる治療が重要になると述べた。早期から、低血糖を起こさずに厳格な血糖コントロールを UKPDS80で早期治療による「Legacy Effect(遺産効果)」が示されたこと、UKPDS、ACCORD、VADTなど、5つの大規模試験のメタ解析でも、厳格な血糖コントロールにより、心血管イベントリスクの減少が示されたことを報告し、門脇氏は「大血管障害の発症・進展を阻止するためには、やはり早期から厳格な血糖コントロールを行うべき」と強調した。そして、強化療法群による死亡率増加のために中止されたACCORD試験に対して、その原因として低血糖が考えられると考察した上で、「できるだけ低血糖を起こさずに、早期から厳格に血糖コントロールすることが重要」と述べた。DPP-4阻害薬は単独で低血糖を起こさず、体重に影響を与えない 食物を摂取すると、消化管からインクレチンというホルモンが分泌される。インクレチンには、主にGIPとGLP-1があり、GLP-1が、膵β細胞のGLP-1受容体に結合して、インスリンを分泌させる働きを持つ。しかしGLP-1は、DPP-4という酵素により不活性化されてしまうため、このGLP-1の不活性化を阻害するために作られたのがDPP-4阻害薬である。DPP-4阻害薬を投与するとGLP-1が増加し、インスリン分泌が促進されるが、GLP-1の分泌は、血中のグルコース濃度に依存するため、DPP-4阻害薬を単独で投与した場合、低血糖を起こしにくい。また、GLP-1は食欲抑制作用や胃の内容物の排出を遅らせる作用があることから、DPP-4阻害薬を投与しても、体重に影響を与えないといわれている。 引き続き、医療ニュース「DPP-4阻害薬「エクア(一般名:ビルダグリプチン)」今月にも薬価収載へ(2)」をご覧ください。

713.

DPP-4阻害薬「エクア(一般名:ビルダグリプチン)」今月にも薬価収載へ(2)

エクアは24時間にわたって90%以上のDPP-4阻害作用を発揮する 2010年1月2日、エクア(一般名:ビルダグリプチン)が承認された。エクアは、食事・運動療法、あるいは食事・運動療法に加え、SU薬を処方しても血糖コントロール不良な2型糖尿病患者に対して、50mgを1日2回、朝夕に処方する。 すでに使用されている他のDPP-4阻害薬は1日1回投与であるが、門脇氏は、エクアは1日2回投与により、24時間以上にわたってDPP-4の活性を阻害していることを示し、それにより、安定してGLP-1の増加を維持していることを報告した。そして、エクア単独投与により、HbA1c値を1.2%改善し(プラセボとの比較)、食後血糖値も有意に改善したと報告した上で、エクアは1日2回投与により、90%以上のDPP-4阻害率を維持した結果、優れた血糖コントロールが得られていると述べた。また、1日1回のDPP-4 阻害薬と比較した臨床試験の成績から、エクアにおいて、食後2時間血糖値およびHbA1c値が低下していたことを報告した。 そして実際には、食事・運動療法を行っても目標値が達成できない場合の第一選択薬になるが、HbA1cが7.5~8.0%を超える患者では、単独投与では難しいため、他剤との併用が必要になると述べた。 また、門脇氏はラットを使った動物実験において、エクアが膵β細胞量を増加させたことを報告し、まだ臨床での成績はないが、エクアを投与することにより、膵β細胞の機能を改善させ、糖尿病の進行を阻止する可能性があると述べた。そして、将来的には、膵β細胞の機能を改善する可能性があるインクレチン関連薬は、発症前の前段階の人に対して、糖尿病発症予防の手段となり得るかを検討する余地があると述べた。SU薬との併用には十分注意を エクアはSU薬との併用が可能となるが、門脇氏は、すでにわが国で使用されているDPP-4阻害薬とSU薬の併用で重症低血糖が10例以上起こっていることを報告し、SU薬と併用する際には、低血糖の発現に十分注意する必要があると述べた。国内で報告されている重症低血糖例については、高用量のSU薬が処方されており、そのほとんどが65歳以上の高齢者であった。併用開始後2~4日後の早い時期に起こり、中には昏睡に至った例も報告されているが、すでに全例回復している。門脇氏は、「SU薬と併用する場合は、低血糖に注意する。生理的機能が低下しており、低血糖症状に気付きにくい高齢者の場合は特に注意する。使用しているSU薬を減量してから併用する(例えばアマリールであれば、2mg/日以下)」と強調した。なお、SU薬とDPP-4阻害薬併用における低血糖については、すでに門脇氏を含む数人の糖尿病専門医により検討が行われており、糖尿病協会および日本医師会を通じてrecommendation/勧告を出しているという。 昨年末から今年初めにかけて、待ち望まれていた全く新しい作用機序の経口血糖降下薬DPP-4阻害薬、そしてGLP-1受容体作動薬がわが国で発売された。エクアが16日付で薬価収載されれば、これで国内2成分目のDPP-4阻害薬となる。 これまでの糖尿病治療薬では、血糖低下作用が強いほど低血糖が発現しやすく、また体重も増加するという課題があった。そのため、DPP-4阻害薬などのインクレチン関連薬は、「(単独投与で)低血糖を起こさず、体重に影響を与えずに、血糖値を下げる」薬剤であることから、発売前から、非常に多くの期待が寄せられていた。また、本記者説明会でも門脇氏が述べているように、インスリン分泌が不良である日本人2型糖尿病ではより効果が得られることから、今後多くの患者に使用されるようになれば、これまでの海外での使用経験の報告では得られなかったより高い有効性の報告も期待できるだろう。 しかし一方で、わが国で多くの患者に使用されているSU薬との併用において、低血糖の発現が報告されている。長期にわたる安全性についても、現在のところ、まだ報告されているものはないが、海外での使用もまだ数年であるため、今後注意していく必要がある。 本説明会の最後に、門脇氏は、「1例1例大事に、安全性に対処しながら育てていきたい」と述べて、説明会を終えた。糖尿病では、個々の患者ごとに病態が異なり、治療法が異なるといっても過言でない。今後、その1例1例が臨床経験として蓄積されていくことで、その薬剤の有意義な使い方が確立されていくと考えられる。

714.

待機的冠動脈造影には、よりすぐれたリスク選別の方法が必要

心臓カテーテル検査適応患者の選別に関して、ガイドラインではリスクアセスメントと非侵襲検査を推奨している。米国デューク大学臨床研究所のManesh R. Patel氏らの研究グループは、実施されている非侵襲検査の種類と、冠動脈疾患が疑われる患者に施行するカテーテル検査の診断精度について、米国の最新サンプルデータを用いて検討を行った。NEJM誌2010年3月11日号掲載より。待機的心カテ検査の精度は3分の1強にとどまる試験は、2004年1月から2008年4月にかけてAmerican College of Cardiology National Cardiovascular Data Registryに参加する663病院で、待機的カテーテル検査を受けた冠動脈疾患の既往のない患者を同定し対象とした。患者の人口統計学的特性、リスクファクター、症状、非侵襲検査の結果について、閉塞性冠動脈疾患との関連性を調査。その際、閉塞性冠動脈疾患は左主幹冠動脈の直径50%以上の狭窄または主要心外膜血管の直径70%以上の狭窄と定義された。この研究では、合計39万8,978例の患者が対象となり、年齢中央値は61歳、男性が52.7%、26.0%に糖尿病が、69.6%に高血圧症がみられた。非侵襲検査は患者の83.9%に実施された。カテーテル検査から37.6%(14万9,739例)に閉塞性冠動脈疾患が認められ、冠動脈疾患なし(狭窄が全血管の20%未満と定義)は39.2%だった。リスク層別化の優れた方策の必要性を強調解析の結果、閉塞性冠動脈疾患の独立予測因子として、「男性」(オッズ比:2.70、95%信頼区間:2.64~2.76)、「高齢」(5歳加齢当たりオッズ比:1.29、95%信頼区間:1.28~1.30)、「インスリン依存性糖尿病を有する」(オッズ比:2.14、95信頼区間:2.07~2.21)、脂質異常症(同:1.62、1.57~1.67)だった。非侵襲検査の結果が陽性の患者は、検査を一つも受けなかった患者と比べ閉塞性冠動脈疾患を有する割合が高かったが、わずかだった(41.0%対35.0%、P

715.

GLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」、いよいよ治療の選択肢に

 2010年1月20日、国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ(一般名:リラグルチド)」が承認された。ここでは、2月16日に大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)にて開催された糖尿病プレスセミナー「国内初のGLP-1受容体作動薬 ビクトーザ承認取得-2型糖尿病治療のパラダイムシフト」(演者:東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授 門脇 孝氏)<ノボ ノルディスクファーマ株式会社主催>について報告する。糖尿病患者は十分コントロールされていない わが国の糖尿病患者は、この50年で38倍も増加しており、その原因として考えられるのが、近年の食生活の変化や運動不足である。糖尿病治療では、血糖、体重、血圧、脂質を総合的にコントロールし、合併症の発症・進展を防ぎ、健康な人と変わらない日常生活の質を維持し、寿命を確保することを目標としている(日本糖尿病学会編. 糖尿病治療ガイド2008-2009)。しかし、実際には、腎症や虚血性心疾患、脳梗塞などにより、糖尿病患者の平均寿命は、男性で約10年、女性で約14年短いことが報告されている。 そして、血糖コントロールの評価として、HbA1c値 6.5%未満、空腹時血糖値139mg/dL未満、大血管障害の独立した危険因子である食後2時間血糖値180mg/dL未満が「良」とされているが、門脇氏は「現状では、十分コントロールされているとはいえない」と述べた。早期から、低血糖を起こさずに厳格な血糖コントロールを UKPDS80で早期治療による「Legacy Effect(遺産効果)」が示されたこと、UKPDS、ACCORD、VADTなど、5つの大規模試験のメタ解析でも、厳格な血糖コントロールにより、心血管イベントリスクの減少が示されたことを報告し、門脇氏は「大血管障害の発症・進展を阻止するためには、やはり早期から厳格な血糖コントロールを行うべき」と強調した。そして、強化療法群による死亡率増加のために中止されたACCORD試験に対して、その原因の一つが低血糖であると考察した上で、「できるだけ低血糖を起こさずに、厳格に血糖コントロールすることが重要」と述べた。 また、自身が中心となって現在進められている「J-DOIT3(2型糖尿病患者を対象とした血管合併症抑制のための強化療法と従来療法のランダム化比較試験)」を紹介し、できるだけ低血糖を起こさず、厳格な血糖コントロールを行うために、チアゾリジン薬をベースにしていると述べた。 さらに、中止されたACCORD試験では、強化療法群で著明な体重増加を認めていることから、体重増加をきたさずに血糖コントロールを行うことも重要であると述べた。国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」 2010年1月20日に承認された国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」は、1日1回投与のGLP-1誘導体。GLP-1は、消化管ホルモンであるインクレチンの1つであり、栄養素が消化吸収されると消化管から分泌され、膵β細胞のGLP-1受容体に結合して、インスリンを分泌させる。しかし、血中で酵素(DPP-4)により分解されてしまうため、分解されないようにしたものがGLP-1誘導体である。GLP-1は、グルコース濃度に依存して分泌されるため、GLP-1誘導体は、単独で低血糖を起こしにくい。 門脇氏は、その血糖降下作用について、HbA1cの目標達成率が高いことを報告、欧米人と異なり、インスリン分泌の少ない日本人の2型糖尿病の病態に適しており、少量で優れた効果が得られることを示した。 また、食欲抑制作用があると述べ、実際に、体重増加がない、あるいは肥満では体重が減少することを報告した。 糖尿病患者の膵β細胞の機能は、発症した時点で、すでに健康な人の半分以下になっている。たとえ治療を行っても、膵β細胞の機能低下を阻止することは困難で、罹病期間が長くなると、インスリン治療を行わなければならない患者が多くなる。GLP-1誘導体は、動物で膵β細胞の機能を改善させることが報告されていることから、門脇氏は、「GLP-1誘導体は、膵β細胞機能の改善により、糖尿病の進行を阻止する可能性がある」と述べた。発症早期からの処方を 門脇氏は、いくつかの臨床試験の結果を紹介した上で、ビクトーザの有用性として、■血糖降下作用に優れる■低血糖が少ない■体重増加がない(時に体重減少)■膵β細胞保護により、糖尿病の進行を阻止する可能性があるなどを挙げ、糖尿病発症早期から適応できるとの見解を示した。そして、具体的には、臨床試験の結果から、HbA1c 7.5%以下であれば単独で、8.0%以下であれば、現在保険適応とされているSU薬との併用で十分な効果が得られるだろうと述べた。 主な副作用として、消化器症状(悪心、腹痛、下痢、嘔吐)があるが、少量から開始し、漸増していくことで、軽減できる。長期的な安全性としては、動物実験で甲状腺腫瘍が見られているが、臨床データでは報告されていないと述べた。また、膵炎については、糖尿病では、非糖尿病に比べて多く認められるが、ビクトーザでの有意な増加の報告はないと述べた。 さらに、これまでの糖尿病治療薬は、使用されるようになってから、作用機序が明らかになっていたが、GLP-1誘導体は、「GLP-1受容体への作用」という作用機序が明確であることから、この点も安全性の観点から重要であると述べた。しかし、長期的な安全性については、今後も検討していく必要があるとした。

716.

敗血症ヒドロコルチゾン療法患者への強化インスリン療法、フルドロコルチゾン

敗血症性ショックを起こした患者に行われるヒドロコルチゾン投与(コルチコステロイド療法)に関して、強化インスリン療法を行っても従来インスリン療法の場合と比べて、院内死亡率に有意差はないことが明らかになった。また、フルドロコルチゾン(商品名:フロリネフ)を追加投与しても、同死亡率に有意差はなかった。フランスVersailles大学のDjillali AnnaneらCOIITSS(Corticosteroids and Intensive Insulin Therapy for Septic Shock)研究グループが、約500人の敗血症患者を対象に、無作為化試験によって明らかにしたもので、JAMA誌2010年1月27日号で発表している。敗血症性ショック患者へのコルチコステロイド療法は、高血糖を誘発する可能性が指摘されており、また同療法でフルドロコルチゾンを追加投与するベネフィットは明らかになっていなかった。SOFAスコア8以上の敗血症患者509人を無作為化研究グループは、2006年1月~2009年1月にかけて、フランス11ヵ所の集中治療室(ICU)で、敗血症患者509人について多施設共同2×2無作為化試験を行った。被験者は、重症度評価基準のSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアで8以上だった。被験者は、(1)ヒドロコルチゾン投与+強化インスリン療法群、(2)ヒドロコルチゾン投与+強化インスリン療法群+フルドロコルチゾン投与群、(3)ヒドロコルチゾン投与+従来インスリン療法群、(4)ヒドロコルチゾン投与+従来インスリン療法群+フルドロコルチゾン投与群に割り付けられた。ヒドロコルチゾンは50mgを6時間毎にボーラス投与にて、フルドロコルチゾンは1日1回50μg経口投与にて、それぞれ7日間行われた。インスリン療法の違い、フルドロコルチゾンの有無いずれも、死亡率に有意差なし院内死亡率は、強化インスリン群が45.9%、従来インスリン群が42.9%だった(相対リスク:1.07、95%信頼区間:0.88~1.30、p=0.50)。重度低血糖(40mg/dL未満)がみられたのは、強化インスリン群の方が従来インスリン群より有意に多く、患者1人当たり平均頻度の差は0.15(95%信頼区間:0.02~0.28、p=0.003)だった。また、フルドロコルチゾン投与群の退院時死亡率は42.9%、同非投与群は45.8%で、有意差はみられなかった(相対リスク:0.94、同:0.77~1.14、p=0.50)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

717.

CRP濃度は、種々の血管疾患、非血管疾患の指標である

循環血中のC反応性蛋白(CRP)濃度は、確立された従来のリスク因子や炎症マーカーと関連するとともに、様々な血管疾患、非血管疾患とも相関を示すことが、イギリス・ケンブリッジ大学のStephen Kaptoge氏らEmerging Risk Factors Collaboration(ERFC)が実施したメタ解析で明らかとなった。肝臓で合成される血漿蛋白であるCRPは、高い感受性を示す全身性の炎症マーカーであり、重篤な感染に対する急性反応や組織損傷時に血中濃度が1万倍にまで上昇するという。また、LDLと結合して動脈硬化性プラーク中に発現するため冠動脈心疾患の原因とも考えられており、22のプロスペクティブ試験のメタ解析ではCRP高値の場合は冠動脈心疾患の相対リスクが高いことが示されている。Lancet誌2010年1月9日号(オンライン版2009年12月22日号)掲載の報告。54試験16万例の個々の患者記録のメタ解析ERFCの研究グループは、さまざまな状況におけるCRPと血管疾患もしくは非血管疾患のリスクの関連を評価するメタ解析を行った。54の長期的なプロスペクティブ試験に登録された血管疾患の既往歴のない16万309例(131万人・年に相当)の個々の患者記録に基づいてメタ解析を行った。リスク因子の程度による個人内の変動は試験ごとの回帰分析で補正した。CRP濃度と虚血性脳卒中の関連には従来リスク因子の関与が大きいLog(e) CRP濃度はいくつかの従来のリスク因子(収縮期血圧、BMI、非HDLコレステロールなど)や炎症マーカー(フィブリノーゲン、インターロイキン-6)と直線的に関連し、虚血性血管疾患や非血管疾患とほぼ対数線形的な相関を示した。Log(e) CRP濃度の1SD上昇(3倍の高値に相当)ごとの冠動脈心疾患のリスク比は、年齢と性別のみによる初回補正時が1.63、さらに従来のリスク因子で補正した場合は1.37であった。同様に補正した場合のリスク比は、虚血性脳卒中がそれぞれ1.44、1.27と従来リスク因子の影響が最も大きく、血管死はそれぞれ1.71、1.55、非血管死の場合は1.55、1.54であった。喫煙者や初回フォローアップ患者を除外すると、補正によるリスク比の変化はほとんど見られなくなった。フィブリノーゲンで補正後のリスク比は、冠動脈心疾患が1.23、虚血性脳卒中が1.32、血管死が1.34、非血管死も1.34であった。著者は、「CRP濃度は、冠動脈心疾患、虚血性脳卒中、血管死、非血管死(数種のがん腫および肺疾患による死亡)のリスクと持続的な関連性が認められた。虚血性脳卒中とCRP濃度の関連は、従来のリスク因子や炎症マーカーへの依存度が大きかった」と結論している。また、「インターロイキン-6、CRP、フィブリノーゲンなどの炎症マーカーや、リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2などの易破綻性プラークのマーカーとともに、その遺伝学的因子やライフスタイル要因を同時に評価する大規模な試験を行う必要があり、また軽度の炎症が外的なトリガー(社会経済的地位や感染など)、インスリン抵抗性、遺伝的素因、これらの因子の組み合わせを反映するものなのかを検討することも重要」と考察する。(菅野守:医学ライター)

718.

速効型インスリン分泌促進薬「グルファスト」中国において承認取得

キッセイ薬品工業株式会社は25日、同社が創製し、2008年1月に中国における承認申請を行った速効型インスリン分泌促進薬「グルファスト」(一般名:ミチグリニドカルシウム水和物)について、承認を取得したと発表した。「グルファスト」の中国での販売については、2007年9月に同社とエーザイ株式会社がライセンス契約を締結していて、今後は、エーザイが中国における販売を担当するとのこと。「グルファスト」は、日本では2004年5月から同社と武田薬品工業株式会社が共同販売している速効型インスリン分泌促進薬。同剤は、服用後速やかに 効果を発現することから、インスリン分泌を自然なパターンに近づけて食後高血糖を改善するとともに、作用持続時間が短いため空腹時の低血糖を起こしにくい特長があるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.kissei.co.jp/news/press2009/seg091125.html

719.

糖尿病は、食事/運動療法により長期にわたり予防しうる:DPPアウトカム試験

食事/運動療法による生活習慣の改善やメトホルミン(商品名:メルビン、グリコランなど)投与による糖尿病の予防効果は、10年が経過しても維持されることが、「糖尿病予防プログラム(DPP)(http://www.bsc.gwu.edu/dpp/index.htmlvdoc)」の長期フォローアップ(DPPアウトカム試験;DPPOS)の結果から明らかとなった。DPP無作為化試験の2.8年のデータでは、糖尿病発症リスクの高い成人において、強化ライフスタイル介入(7%の減量と週150分以上の中等度~高度の身体活動の達成とその維持)により糖尿病発症リスクがプラセボに比べ58%低下し、メトホルミンの投与では31%低下することが報告されている。Lancet誌2009年11月14日号(オンライン版2009年10月29日号)掲載の報告。追加フォローアップ期間5.7年における長期データの解析DPPOSの研究グループは、DPP無作為化試験(1996~1999年)の終了後もフォローアップを続け、今回、10年の調査結果を報告した。なお、DPP無作為化試験は二重盲検試験だが、強化ライフスタイル介入とメトホルミンの有効性が確認された2001年以降はオープンラベルとなっている。DPPへの積極的な参加者はいずれもフォローアップ継続の適格例とした。3,150人中2,766人(88%)が中央値5.7年の追加フォローアップを受けた。そのうち、ライフスタイル介入群が910人、メトホルミン群が924人、プラセボ群は932人であった。DPPの強化ライフスタイル介入の成果に基づいて、3群の全参加者にグループで行うライフスタイル介入が提供された。メトホルミン群はそれまでの治療法(850mg×2回/日が耐用可能)を継続し、参加者には割り付け情報が知らされた。強化ライフスタイル介入群には、新たなライフスタイル支援が追加された。主要評価項目は、アメリカ糖尿病学会(ADA)の判定基準による糖尿病の発症とした。10年糖尿病発症リスク低下率:強化ライフスタイル介入群34%、メトホルミン群18%DPPへの無作為割り付け後10年のフォローアップ期間中に、開始時のライフスタイル介入群は解消され、体重が元に戻った参加者もいた。メトホルミン群では軽度の体重減少が維持されていた。DPP試験期間中の糖尿病発症率は、強化ライフスタイル介入群が100人・年当たり4.8例であり、メトホルミン群が7.8例/100人・年、プラセボ群は11.0例/100人・年であった。これに対し、今回の追加フォローアップ期間における糖尿病発症率は、それぞれ5.9例、4.9例、5.6例/100人・年であった。DPPへの無作為割り付け後10年間における、プラセボ群との比較による糖尿病発症リスクの低下率は、強化ライフスタイル介入群が34%、メトホルミン群は18%であった。研究グループは、「DPP試験後のフォローアップ期間中に、プラセボ群とメトホルミン群の糖尿病発症率は強化ライフスタイル介入群と同程度にまで低下したが、10年間の累積発症率は依然として強化ライフスタイル介入群が最も優れていた。強化ライフスタイル介入およびメトホルミンによる糖尿病発症の予防あるいは遅延効果は、少なくとも10年間は持続することが示された」と結論している。また、「今後は、さらなるフォローアップにより長期の死亡率などの重要データを提供する予定」としたうえで、「DPPOSの次の試験では、細小血管-神経障害に関連した複合アウトカム(糖尿病性網膜症、神経障害、足の表在触覚障害)を主要評価項目とし、副次評価項目には心血管疾患、血糖やインスリンの測定、健康関連QOL、医療経済評価などが含まれる」としている。(菅野守:医学ライター)

720.

糖尿病食後過血糖改善剤「セイブル錠」に、ビグアナイド系薬剤との併用療法効能追加

株式会社三和化学研究所は9日、糖尿病食後過血糖改善剤「セイブル錠(一般名:ミグリトール)」に、11月6日付で、ビグアナイド系薬剤との併用療法の効能追加が承認されたと発表した。セイブル錠は、α-グルコシダーゼ阻害薬に分類される糖尿病食後過血糖改善剤で、食後1時間までに生じる早期の急峻な血糖上昇(グルコーススパイク)を強力に抑制し、1日の血糖変動をなだらかにさせる薬剤。さらに食後のインスリン分泌を節約するため、膵β細胞の負担を和らげることが期待されているという。一方、ビグアナイド系薬剤は主に肝臓における糖新生を抑制することで空腹時高血糖を強力に抑える特性を有し、世界各国のガイドラインでファーストチョイスに推奨されている薬剤である。これらの異なる作用機序を持つ二剤の併用療法の有効性と安全性を確認することを目的とした臨床試験の結果より、ビグアナイド系薬剤にセイブル錠を追加する併用療法によりグルコーススパイクが改善されることが明らかになったという。また、低血糖リスクを増加させることなく、体重減少を伴って血糖コントロールの指標であるHbA1cが長期にわたって改善することが示されたとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.skk-net.com/new/data/news091109.pdf

検索結果 合計:786件 表示位置:701 - 720