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ネシーナほか2剤、米国FDAより販売許可を取得

 武田薬品工業と同武田ファーマシューティカルズUSA Inc.は26日、2型糖尿病治療剤NESINA(一般名:アログリプチン)、OSENI(アログリプチンとピオグリタゾン塩酸塩の合剤)、KAZANO(アログリプチンとメトホルミン塩酸塩の合剤)について、米国食品医薬品局(FDA)から、食事療法・運動療法で効果不十分な成人2型糖尿病の治療薬として販売許可を取得したと発表した。 NESINAは、選択的ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬であり、血糖調節において重要な役割を担うインクレチンホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)の不活化を遅延させる2型糖尿病治療薬。OSENIは、米国において初めて承認されたDPP-4阻害薬とチアゾリジン系薬剤であるピオグリタゾン塩酸塩の合剤で、KAZANOは、2型糖尿病の治療薬として広く使用されているメトホルミン塩酸塩とNESINAの合剤である。  NESINAおよびOSENIは、日本ではぞれぞれ2010年4月および2011年7月に厚生労働省から承認されており、「ネシーナ錠」および「リオベル配合錠」として販売されている。

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日本BD、独自の技術で痛みを軽減するペン型インスリン注入器用注射針を開発

 2013年1月25日(金)、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社(以下、BD社)の新製品に関する記者発表会が開催された。 まず、永寿総合病院糖尿病臨床研究センター長の渥美義仁氏より、糖尿病インスリン治療における注射針開発の課題について語られた。また、BD社ダイアベティーズケア事業部長の南湖 淳氏からは、新規のペン型注入器用注射針である「BDマイクロファインプラスTM32G×4mm」(本年1月末頃発売)の臨床上の意義について語られた。  渥美氏は「注射針に求められることは、医師にとって治療上重要な有効性・安全性だけではない。痛みの軽減、注入のしやすさなど、患者目線での使いやすさも重要である」と強調した。注射針の問題点 インスリン注入器用注射針の問題点としては、注射時の痛み、針が細くなったことによる注入のしにくさ、折れやすさ、曲がりやすさなどが挙げられる。また、通常、インスリン製剤は針を皮膚のすぐ下の皮下組織に挿入するため、その下にある筋肉内に入らないように、軽く皮膚をつまみあげて注射する。しかし、皮膚をつまみあげられる部位は限られており、同じ部位に注射を続けると皮下組織が硬結し、薬液が血中に到達せず低血糖を起こす原因となる。医師と患者、要望のずれ BD社のWEB調査によると、患者が注射針に最も期待することは、「注射の痛みが少なくなること」であり、患者にとってインスリン治療は注射の痛みに関連するイメージが強いことがうかがえる。 しかし、医師がインスリン治療に求めることは、2011年の糖尿病治療に関するアンケート調査(BD社調べ)によると、どの治療段階においても「血糖コントロールの改善や維持」が最重要であり、患者の要望とのずれが生じている。患者目線も含めた開発 新製品「BDマイクロファインプラスTM32G×4mm」は、従来からの問題点、ならびに医師と患者両方の要望を取り入れて開発された。 ストレート構造にすることで針先まで内腔が確保でき、薬液がスムーズに流れるため、注入しやすくなった。Micro-Bondingコーティング技術で穿刺・挿入が滑らかになり、先端を5面カットにすることで、従来品と比べ穿刺抵抗を23%軽減することに成功した。  また、4mm針にし、皮膚をつまみあげない手技を可能にしたことで、サイトローテーション(穿刺部位の移動)の範囲が広がり、同じ部位に何度も注射をする必要がなくなった。そのため、皮膚組織の硬結を防止し、低血糖を低減することが可能となり、注射手技の指導も楽になると考えられる。痛み、使用感の評価 臨床研究において、注射時の痛みを市販されている製品Aと比較したところ、32G×4mm針の方が痛みが弱いと感じる人が有意に多かったという。また、使用感評価においても、32G×4mm針は、製品Aよりも有意差を持って優れていたとの結果が報告されている(Miwa T,et al.Diabetes Technology & Therapeutics.2012;14:1084-1090.)。まとめ 「BDマイクロファインプラスTM32G×4mm」は、従来からの問題点に加え、「痛みを軽減したい」という患者の要望も取り入れて開発された。本製品の登場により、インスリン治療がより手軽なものになり、良好な血糖コントロールの維持が可能となるのではないだろうか。

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うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」

 うつ病では悲哀感、希望喪失、易刺激性、身体機能障害などの特徴がみられ、数週間にわたり重症の症状を呈する。また、気分変調症は軽度の抑うつ気分が漫然と続いた状態である。うつ病の治療には、精神療法、薬物療法、光線療法などがあるが、これまでの臨床的および経験的エビデンスから、適切な食事が抑うつ症状を軽減しうることが示唆されている。オランダ領アンティル・Saint James School of MedicineのFaisal Shabbir氏らは、食事が抑うつに及ぼす影響について考察した。神経伝達物質であるセロトニンの低下はうつ病の一因であるが、セロトニンの前駆体であるトリプトファンを多く含む食事の摂取が抑うつ症状の軽減に有用であることを示唆した。Neurochemistry international誌オンライン版2013年1月7日号の報告。トリプトファンの含有量が少ない食事を摂取しているとうつに陥る可能性 トリプトファンを多く含む食事が抑うつ症状の軽減に有用であることを示唆した主な知見は以下のとおり。・脳内で合成される神経伝達物質のセロトニン(5-HT)は、気分緩和、満足感、睡眠の調節などに重要な役割を果たしている。5-HTを多く含む果物や野菜があるが、血液脳関門の存在により5-HTは中枢神経系に容易に到達できない。しかしながら、5-HTの前駆体であるトリプトファンは容易に血液脳関門を通過できる。・トリプトファンは、ビタミンB6誘導体であるピリドキサールリン酸存在下で、トリプトファンハイドロキシダーゼおよび5-HTPデカルボキシラーゼにより5-HTに変換される。・タンパク質の多い食品であっても、必須アミノ酸は体内でつくることができないため、トリプトファンの含有量が少ない食事を摂取しているとうつに陥る可能性がある。・たとえば月経前後の女性、心的外傷後ストレス障害、慢性疼痛、がん、てんかん、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、薬物依存など、うつに陥りやすい状況にある患者ではトリプトファンを多く含む食事の摂取が重要である。・中枢神経におけるトリプトファンのバイオアベイラビリティは炭水化物の欲求に関連するが、炭水化物を多く含む食事はインスリン反応の引き金となりトリプトファンのバイオアベイラビリティを高める。・セロトニン再取り込み阻害薬は(SSRI)は、抑うつ症状を呈する肥満患者に処方されるが、これらの患者ではセロトニン濃度が厳格に調節されず、モノアミンオキシダーゼ阻害薬と併用した際には生命を脅かす有害事象が発現する可能性がある。しかし、トリプトファンを多く含む適切な食事を摂取することでセロトニン合成が調節されうる。・以上より、さまざまな神経変性疾患で観察される抑うつ症状に対し、セロトニン神経伝達を助ける上でトリプトファンを多く含む食事とビタミンB6は臨床的に重要と言える。ただし、うつに対するセロトニン神経伝達を修飾する薬理学的介入は、従来と変わらず臨床的に重要な事項である。また、うつの病態にはその他にもいくつかの分子メカニズムが関わっている可能性がある。関連医療ニュース ・うつ病予防に「脂肪酸」摂取が有効? ・うつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」 ・認知症の進行予防に有効か?「ビタミンE」

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双極性障害患者の長期健康状態の独立予測因子は肥満!

 双極性障害において、肥満が内科的、精神科的負担を増大させるというエビデンスが横断的研究で多く示されている。しかし、双極性障害と肥満の関係を検証する縦断的研究はほとんど行われていなかった。カナダ・トロント大学のBenjamin I Goldstein氏らは、肥満と双極性障害との関連を3年間にわたり検討した。その結果、肥満は双極性障害患者の長期的な健康状態を予測する独立した因子であり、肥満の治療は双極性障害患者の内科的、精神科的負担の軽減につながる可能性が示唆されたことを報告した。Bipolar Disorders誌オンライン版2013年1月3日号の掲載報告。 研究は、アルコールおよび関連障害全国疫学調査(National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions)の第1期および第2期の調査を完了した双極性障害患者1,600例を対象に、3年間にわたる肥満と双極性障害との関連を調べた。第1期の調査データを基に双極性障害と肥満との関連を検討したほか、第1期と第2期の間における双極性障害、精神科合併症、内科合併症の経過を検討した。 主な結果は以下のとおり。・肥満のある双極性障害患者(506例、29.43%)は、肥満のない双極性障害患者(1,094例、70.57%)と比べ、1)大うつ病エピソードの発現、2)うつ病に対するカウンセリング、3)自殺企図の報告、が有意に多かった。・肥満のある双極性障害患者は肥満のない双極性障害患者と比べ、アルコール使用障害の新規発症が有意に少なかった。・ベースラインの患者特性で調整した後、肥満の有無によるこれらの差は有意でなくなった。・新たなエピソードの発症、躁病/軽躁病の治療において有意な差はみられなかった。・患者特性で調整した後でも、内科合併症の新規発症[オッズ比(OR):2.32、95%信頼区間(CI):1.63~3.30]、高血圧の新規発症(OR:1.81、95%CI:1.16~2.82)、関節炎の発症(OR:1.64、95%CI:1.07~2.52)に関しては、肥満患者で有意に多かった。・肥満患者では、糖尿病(OR:6.98、95%CI:4.27~11.40)、脂質異常症(同:2.32、1.63~3.30)(第2期のみにおいて評価)と診断・報告された者が有意に多かった。・統計学的に有意ではなかったが、肥満患者では心臓発作の発生頻度が2倍であった。・肥満と将来的なうつ増加との関連は、ベースラインの患者特性に左右されると考えられた。関連医療ニュース ・抗精神病薬誘発性の体重増加に「NRI+ベタヒスチン」 ・双極性障害の再発予防に対し、認知療法は有効か? ・第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は・・・

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第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は・・・

 第二世代抗精神病薬(SGA)は2型糖尿病リスクを増大する。そのメカニズムは、薬剤による体重増加を中心に、インスリン抵抗性の代謝異常カスケードが始まり、インスリン産生の増大と膵β細胞の機能障害によるものだと考えられている。米国・ザッカーヒルサイド病院のPeter Manu氏らは、SGAであるクロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンについて、インスリン分泌への影響を検討した。Schizophrenia Research誌オンライン版2012年12月8日号の掲載報告。 SGAは2型糖尿病リスクを増大する。そのメカニズムは、薬剤による体重増加を中心に、インスリン抵抗性の代謝異常カスケードが始まり、インスリン産生の増大と膵β細胞の機能障害によるものだと考えられている。SGAのインスリン分泌への独立した影響については、これまで動物モデルの試験においては示唆されていたが、臨床では実証されていなかった。研究グループは、SGA治療中の患者における負荷試験後インスリン分泌について評価することを目的に、単一施設で代謝評価を受けた連続する783例の成人精神疾患入院患者コホートのうち、520例の非糖尿病患者を対象とした試験を行った。インスリン分泌は、75gブドウ糖負荷試験後のベースライン、30分、60分、120分時点での記録を基に作成した曲線下面積[AUC(インスリン)]で評価し、インスリン分泌の独立予測因子について、サンプル全体で、または正常耐糖能(NGT)と糖尿病前症患者に分けて回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者520例の内訳は、クロザピンを服用する群が73例、オランザピン群190例、クエチアピン群91例、リスペリドン群166例であった。・負荷後AUC(インスリン)の独立予測因子は、AUC(グルコース)・腹囲・トリグリセリド値・低年齢(p<0.0001)、非喫煙(p=0.0012)、クロザピン治療(p=0.021)であった。・モデルが示すインスリン分泌バリアンスは、33.5%であった(p<0.0001)。・クロザピンの影響は、NGT群ではみられたが、糖尿病前症患者群では認められなかった。関連医療ニュース ・抗精神病薬誘発性の体重増加に「NRI+ベタヒスチン」 ・統合失調症患者の体重増加、遺伝子との関連を検証! ・「糖尿病+うつ病」に対する抗うつ薬の有効性は“中程度”

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インスリン グラルギンと経口血糖降下薬併用時の24週間低血糖発生率は約1%

 サノフィは3日、ランタス[一般名:インスリン グラルギン(遺伝子組換え)]に関する大規模調査ALOHAスタディのサブ解析において、24週間における低血糖の発生率は約1%(4,219例中44例)であることがわかったと発表した。 この結果は、11月24日~27日に開催された第9回 国際糖尿病連合(IDF)西太平洋地区会議において、ランタスに関する大規模調査ALOHA(Add-on Lantus to Oral Hypoglycemic Agents)スタディの新たな結果として発表されたもの。 ALOHAスタディは、HbA1c(JDS)が7.5%以上12.0%未満の日本人2型糖尿病患者を対象とした、インスリン グラルギンと経口血糖降下薬との併用時の安全性・有効性に関する、24週間の非介入観察調査である。 今回発表された試験結果の1つである「インスリン グラルギンと経口血糖降下薬の併用による低血糖リスクを検討したサブ解析」では、24週間における低血糖の発生率は約1%(4,219例中44例)であった。 さらに、そのうち37例(84.0%)の発現回数は1回であり、高齢や腎機能不全などの危険因子で多少の有意差はみられたが、全患者1人あたりの低血糖発現率は1.0%未満と低いことが明らかとなった。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=99BFC33C-9435-41BD-B1CB-A74F01C2632B.pdf

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超速効 ! 糖尿病診療エクスプレス2010

第1回「糖尿病情報 UP TO DATE 2010」第2回「 '10年代の糖尿病診療指針」第3回「薬剤選択(比較的軽症篇)」第4回「薬剤選択(比較的重症篇/非インスリン)」 第1回「糖尿病情報 UP TO DATE 2010」大好評の「糖尿病診療エクスプレス」がリニューアル !前シリーズからの7年間に新たに加わった重要なエビデンスをはじめ、話題の新薬や、糖尿病関連の最新情報・最新治療を、おなじみ久保田章先生が、思わず膝を打つ明快な論旨でわかりやすく解説します。第1回は、薬剤療法が根底から変わると評判の高い新薬「インクレチン製剤」の話題を筆頭に、つい先ごろ薬事承認を受けたばかりの24時間連続血糖測定が可能な「グルコース持続モニタリングシステム」、糖尿病と癌の関係など、専門医でなくともぜひ知っておきたい重要トピックの数々をぎゅっと凝縮してお届けします。第2回「 '10年代の糖尿病診療指針」第2回は、これまでのエビデンスをふまえた上で、患者に対してどのように診療し、最新のインクレチン製剤を含めた数多くの治療薬をどのような考えに基づきどのような目標値を設定し、どう組み立てて使っていくべきかを考えていきます。新しいデータが続々と出ていることや、画期的な新薬が発売されたことで、糖尿病診療は大きく変わろうとしています。まだ血糖コントロールによって糖尿病合併症が抑制できるのかすら定かでなかった1990 年代、「DCCT」「熊本STUDY」「UKPDS」などの試験は、血糖コントロールにより細小血管合併症が抑制できることを示してきました。一方、大血管障害の抑制をめざして近年実施された「ACCORD STUDY」では、なんと厳格な血糖コントロールをめざした群のほうが22%も死亡率が高いという衝撃的な結果を我々に示しました。これらのデータをどのようにとらえ、どのような診療指針を持って治療に当たるべきなのでしょうか。第3回「薬剤選択(比較的軽症篇)」今回から実践篇に突入します。軽症例(HbA1c 8%未満)への薬剤選択と使用法について解説。肥満例や非肥満例などいくつかの具体的なケースで何に気をつけて使っていくべきかを探っていきます。2009年末より日本でも使えるようになったインクレチン製剤シタグリプチンは、QOLなどの観点から軽症例に対して非常に使いやすいと考えられていますが、はたして実際のところはどうなのでしょうか。 また、α -GIやメトホルミン、グリニド、チアゾリジンなどとどのように使い分けていくべきでしょうか。久保田先生が実際にシタグリプチンを投与(追加、あるいは切り替え)した症例を多数紹介しながら、その使い勝手や手応えなどをリアルな言葉で報告します。また、数多い2型糖尿病治療薬の特徴・使いわけが一目で分かるチャートも紹介。さらには生活習慣改善のアドバイスをどうすればいいのか、そのちょっとしたポイントなど、必ず役立つ最新情報を凝縮しています !第4回「薬剤選択(比較的重症編/非インスリン)」第4回はHbA1c 8%以上の比較的重症な例に対してインスリン以外の薬剤、すなわち経口薬や新登場のアナログ製剤リラグルチドを使った治療法について考えます。確実な血糖降下作用を持つ薬剤といえば、インスリン以外ではSU 薬が筆頭に上げられるでしょう。しかしSU 薬には肥満を助長したり、膵β細胞を酷使するという欠点があり、扱いづらいものでした。新しく登場したリラグルチドや、最近になって認可された高用量のメトホルミンはSU 薬に匹敵する血糖降下作用を持ちながらも、膵β細胞の保護作用があり、体重の増加も認められません。これら最新の薬剤事情を踏まえ、久保田先生はHbA1c が10%程度までのケースであれば、インスリンなしで血糖をコントロールすることは十分可能だと考えます。どんなケースでどのような薬剤の組み合わせを使うのがベストなのか、具体的な症例をもとに分かりやすく解説します。

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超速効 ! 糖尿病診療エクスプレス2010

第5回「インスリン① BOTの考え方」第6回「インスリン② BOTの実践」第7回「インスリン③ 外来で出来る強化療法」 第5回 「インスリン① BOTの考え方」下巻では3回にわたってインスリンを用いた新しい治療法を解説していきます。近年、インスリン治療の選択肢は飛躍的に増加しています。最近では入院よりも外来でのインスリン導入が主流になってきました。そして外来における画期的な治療戦略として、BOT(Basal supported Oral Therapy)という治療法が注目を集めています。BOT を一言で説明すると、インスリンの基礎分泌部分については一日一回の基礎インスリン注射で補い、食事時の追加分泌部分のみを経口血糖降下薬で対処するという方法です。経口血糖降下薬だけでは血糖の値が十分改善しませんが、膵臓のインスリン分泌能はまだある程度残っており、全面的にインスリン治療に移行するには時期尚早・・・そんなケースでBOT は強い威力を発揮し、「実際やってみると、すごく良く効く」と久保田先生は実感しています。その他、治療の適応などの基礎的な話から、超速効型インスリン、持効型インスリン、近年新しく登場したアイテムの紹介など、豊富な内容です。第6回 「インスリン② BOTの実践」従来、なかなか打開策が見付からなかった症例(例えば、合併症が出始めていて、SU 薬の2次無効という症例)にも、BOT(Basal supported Oral Therapy)は非常に有効な手段だと言えます。今回はBOT治療の具体的な進め方を、実際の症例を挙げて解説します。導入時の持続型インスリン「ランタス」の量はどの位にするべきなのか? その後どれ位の期間でどの位の量を増やすべきなのか? その時に経口薬はどう調整すれば良いのか?…など数々の疑問に久保田先生がきわめて具体的に答えていきます。さらにBOT で行き詰まったときの次の一手も紹介。もちろん強化療法に移行することもそのひとつなのですが、「強化療法の前にやれることがある」と久保田先生。他にランタスの効果的な応用例など、様々なお役立ち情報を紹介します。いずれも久保田先生ご自身の症例による実感のこもった解説ばかり。明日からの診療に是非お役立て下さい!第7回 「インスリン③ 外来で出来る強化療法」シリーズ最終回にふさわしく(?)、今回登場するのはかなり重症の高血糖患者の症例です。空腹時血糖は288mg/dl,HbA1c は14.9% (JDS)、夕食をたっぷり食べることが何よりも楽しみで「その分インスリンを打つから、食べたいだけ食べさせてくれ」と言って久保田先生を悩ませたそうです。そんなケースでも治療を可能にしたのが、「ヒューマログミックス50×3回打ち」。インスリンアナログの超速効型と中間型の混合製剤の登場により健常な人のインスリン動態に近い状態を作ることが出来るようになりました。実際の治療経過を交えて詳しく解説します。また、「ヒューマログミックス50×3回打ち」が行き詰まった時の対応方法についても、実際の外来での症例を紹介しながら解説していきます。「我々は現在、個々の生活習慣に応じた幅広い治療手段を持っているのです」と、外来で出来るインスリン治療の可能性について久保田先生が熱く語ります !

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エキスパートに聞く!「糖尿病」Q&A

CareNet.comでは11月の糖尿病特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より糖尿病診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、糖尿病の専門医である3人の先生にご回答いただきました。本宮哲也(もとみや・てつや)氏(もとみや内科クリニック 院長)http://www.motomiya-clinic.jp/専門医が行っている、DPP-4阻害薬と他剤との併用例を教えてください。また、DPP-4阻害薬間での効果の差異や使い分けの基準などがあれば同じくお願いします。1)シタグリプチンは、SU薬、BG薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、インスリン注射、2)アログリプチンとアナグリプチンは SU薬、BG薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、3)ビルダグリプチンおよびリナグリプチンはSU薬、4)テネリグリプチンはSU薬とチアゾリジン薬との併用が可能で症例に応じて薬剤を選択します(2012年11月時点での適応に基づく)。また、Aroda氏ら1)が行った効果の差異検討では、DDP-4阻害薬の最大維持用量の投与によるHbA1c改善率は、ビルダグリプチン -1.06%、アログリプチン -0.69%、シタグリプチン -0.67% という結果でしたが、分析内容が不十分とされ、再検討待ちです。使い分けについては、シタグリプチンは現時点では腎不全には使用できず、アログリプチンは腎不全の程度に応じて用量の調節が必要です。アナグリプチン、ビルダグリプチン、リナグリプチン、テネリグリプチンは腎不全には慎重投与ですが、用量の制限はありません。1)Aroda.VR et al:Clin Ther.2012;34:1247-1258膵臓疾患のある方へのDPP-4阻害薬の投与時の注意点について、教えてください。膵疾患のある方へのDDP-4阻害薬の投与は、急性膵炎と慢性膵炎を区別して考える必要があります。FDA(アメリカ食品医薬品局)は、2006年10月16日から2009年2月9日におけるDDP-4阻害薬の市販後調査で88例(出血性や壊死性の膵炎2例を含む)に急性膵炎が発症した報告を受け、急性膵炎への投与は禁忌とし、使用中に膵炎の発現が疑われた場合は使用を中止するよう推奨しています。しかし、膵炎の既往がある患者さんへのDDP-4阻害薬の使用については、検討や研究はされていないとしています(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部発行 医薬品安全性情報Vol.7 No.23)。また、飲酒家で慢性膵炎で血糖が上昇してきた患者さんへDDP-4阻害薬を使用した場合に、慢性膵炎が悪化したデータや報告は、今のところないようですが、このような患者さんへの投与は慎重に行い、どうしても投与しなければならない時には、膵炎に関する適切なモニタリングが必要と考えます。経口薬治療はどこまで続けるべきなのでしょうか?また、最大何剤まで増やして治療された経験がありますか?第1に、2型糖尿病では腎症の程度により禁忌となる経口糖尿病薬があり、基本的に透析患者、ならびにCcr30mL/分 以下では一部のDDP-4 阻害薬やα-グルコシダーゼ阻害薬を除き、経口糖尿病薬は原則禁忌となります。第2に、複数の経口糖尿病薬を併用しても血糖コントロールが改善せず、内因性インスリン分泌の低下が著明になった場合には、インスリン注射療法へ変更することになります。2012年の ADA/EASD が発表した推奨される2型糖尿病の血糖降下療法によればメトホルミンで治療を開始し、血糖コントロールの改善度、副作用、体重などを3ヵ月毎に慎重に観察しながら、2剤、3剤と経口糖尿病薬を併用し、目標が達成できない場合にインスリン注射療法の導入を勧めています。私は、DDP-4阻害薬をベースに少量のSU薬やメトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬の追加で3剤まで増やしても良好な血糖コントロールにならない場合、インスリン自己注射が可能で、承諾の得られた患者さんにはインスリン療法を導入しております。梅澤慎一(うめざわ・しんいち)氏(医療法人 うめざわクリニック 院長)http://www5d.biglobe.ne.jp/~umecli/index.htmHbA1c7%前後の軽症例への第1選択薬は、どのような選択肢が考えられるでしょうか?HbA1c7%(NGSP値)前後の軽症例の第1選択薬とは、HbA1c値を0.5%程度(良の中央値)下げられる、できるだけ安価で副作用の少ない薬剤を意味するものと解釈します。したがって注射製剤は今回除くこととします。インタビューフォームに記載されていたほとんどの経口血糖降下薬のHbA1c低下効果は、その治験対象の治療前HbA1c値が高いため(8.0% 前後)、軽症例に投与しても添付文書のようには低下しません。万人に単剤でしっかり0.5%下げられる能力が期待できると私が考える薬は、速効型インスリン分泌促進薬のレパグリニド〔商品名:シュアポスト〕(1.5mg/日)、DPP-4阻害薬のビルダグリプチン〔商品名:エクア〕(100mg/日)、テネリグリプチン〔商品名:テネリア〕(20mg/日)、シタグリプチン〔商品名:グラクティブ〕(100mg/日)、〔商品名:ジャヌビア〕(100mg/日)、 アログリプチン〔商品名:ネシーナ〕(25mg/日)、リナグリプチン〔商品名:トラゼンタ〕(5mg/日)、SU薬のグリメピリド〔商品名:アマリール〕(0.5~1.0mg/日)などが該当します。いずれも初回の規定投与量を遵守し、忍容性を見極めての増量が基本です。臓器合併症がない人に限っては、ピオグリタゾンとメトホルミンなどのBG薬が期待できますが、どちらも効果は個人差が強いといえます。病識のない患者さんへの教育・指導のコツやポイントを教えてください。最も重症な病識欠如は通院中断者であることは間違いないでしょう。定期的に中断者リストを作成して、再診を促すハガキを出すことができれば理想的です。診療所など地域に根差した施設では、家族の受診の付き添いで来院する際や風邪などで再初診する機会にさりげなく「最近、糖尿病の方はどうかな?」と声掛けをすることで通院再開に成功するケースもあると思います。内服・注射アドヒアランスの低下などは処方薬の選択、投与法の工夫など医師の役割部分が大きく、認知症などによる飲み忘れ対策では家族の教育(看護師)、一包化調剤の利用(薬剤師)などの多職種との連携が必要になるでしょう。食事運動療法、節酒・禁煙ができないなどの病識の欠如は、個人的な事情もあるので、万人に有効な処方箋はありません。私は“その人が今できることを探して、具体的な方法を提示し、できたら少しでも賛美し、結果にむすびついたら一緒に喜ぶ”、“合併症がでたら大変という脅しはしない”の2項目を念頭に、辛抱強く向かい合うようにしております。BOT導入に際し、スタッフへの教育をどう進めるべきか教えてください。まずはBOTの概念をスタッフに理解してもらうことが大事です。BOTで使用するインスリングラルギン(商品名:ランタス)やインスリンデテミル(商品名:レベミル)などの持効型インスリンの本来の使用目的は、インスリン強化療法の基礎分泌(basal)部分を担うことにありました。そのため持効型インスリンは、速効または超速効型インスリン食前3回投与と組み合わせた使用が一般的です。その後、経口血糖降下剤で効果不十分な2型糖尿病に少量の持効型インスリンを追加する(basal + oral therapy)ことにより、内因性インスリン分泌が回復し、血糖コントロールが改善する事例報告が多く認められ、新たな治療法の概念となっていったものです。 BOTはすでに今行われている治療法を変更しないで、1日1回のインスリン注射を加えることで実行できるため、患者も医療者側も治療法の変更という大きな心理的不安を緩和することができるのです。注射時刻は各薬剤の添付文書に基づきますが、毎日一定の時間に投与すればよく、SU薬を併用しているケースでは1回抜けたくらいで急性代謝失調に陥ることはないという安心感が維持できます。田中啓司(たなか・けいじ)氏(田中内科クリニック)http://www.tanakanaika-clinic.com/BG薬はどのような患者に使うべきでしょうか?また、副作用のマネジメント(乳酸アシドーシスへの対応等)についても教えてください。BG薬は、肝臓で乳酸からの糖新生の抑制、脂肪や筋肉への糖の吸収促進、腸管での糖の吸収抑制、食欲低下作用などが報告されています。適応患者としては、肥満の2型糖尿病で、ある程度コントロールのよい例をよりよくする目的のほか、SU薬やインスリンを多量に使ってもコントロール不良例での改善、さらにそれら薬剤を減量させる目的などで投与することが多いです。乳酸アシドーシスの重大な副作用症状は、「意識障害、嘔吐、倦怠感、過呼吸、腹痛など」です。日本糖尿病学会の「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」は、乳酸アシドーシスに至った例は、各剤の添付文書において禁忌や慎重投与となっている事項に違反した例がほとんどであると報告しています。「腎機能障害患者(透析患者を含む)、過度のアルコール摂取、シックデイ、脱水などの例、心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者、高齢者」とのことです。乳酸アシドーシスへの対応というよりは、投与してよい例か否かを慎重に検討して、乳酸アシドーシスを起こさないことが重要と考えられます。75歳以上の高齢者のHbA1c管理目標値は、他の年代の方と同様でよいでしょうか?また、食事指導は実施すべきでしょうか?日本糖尿病学会では、高齢者の血糖管理目標値を空腹時血糖140mg/dL、HbA1c 7.4%以下(NGSP値)としています。しかし一方で、患者の状態を詳細に把握して個別的な対応を行うことも重要と呼びかけています。高齢者糖尿病は多様性があることを理解して、高齢者でも、非常に元気な例もあれば、予後の限られた例もある。もちろん肥満例では足腰に負担がかかり、ADL低下に至る可能性もあるので食事療法は必要です。しかし、食が細くなっている高齢者もいますので、本人や家族からの聴き取り調査が必要です。また、高齢者糖尿病例は代謝の低下に伴い、突然低血糖になる例もあります。一方で、風邪をひいて急に高血糖になる例もあります。大血管障害は別として、血糖にこだわり細小血管障害を心配するよりも、低血糖や高血糖性昏睡などの直接命に関わる急性合併症を回避することが大切で、全身を診る医療が最も重要と考えます。最近、話題の「糖質制限食」(メリット/デメリットなど)について教えてください。〔メリット〕減量効果:3度の食事の糖質(主食:ごはん、パンなど)を減らすことにより、摂取カロリーが減ります。例えばごはん、大盛り300g → 並200gに変更することにより100g(160Kcal) × 3回 × 30日 = 14,400Kcalとなり、1ヵ月で約2kgの減量につながります。食後血糖改善効果:糖質は、タンパク質や脂肪に比べて吸収が速く、食後の血糖値が高くなります。ひいては血糖コントロール改善効果があります。〔デメリット〕間食が多くなる:ごはん、パンなどは腹もちがよく、極端に減らすことにより次の食事までの間に空腹感が出て、その結果、間食をしてしまう患者さんが多く、肥満や血糖コントロールの乱れにつながります。心血管・内臓負担:当然のことながら、肉や魚の量が増えてしまいます。そのため、タンパク質や脂肪の摂取過剰になります。タンパク質を多く摂ると腎臓に負担がかかり(腎不全では禁忌)、脂肪を多く摂るとコレステロールが高くなり動脈硬化性疾患である心臓病や脳卒中になりやすい可能性があります。

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糖​尿病の第一選択薬に関するアンケート

対象ケアネット会員の内科医師 998名方法インターネット調査実施期間2012年9月25日~10月2日Q1.2型糖尿病治療において、食事・運動療法を実施しても血糖コントロールが不十分であった場合に、先生が最も処方することの多い薬剤(第一選択薬)は何ですか?Q2.BG薬を処方する場合、先生が処方することの多い1日処方量はどれくらいですか?Q3.日常の「糖尿病診療」に関して、専門のドクターに聞いてみたい事項についてお聞きしました(自由記入、一部抜粋)75歳を超える高齢者の患者さんにも、他の年代と同様のHbA1cの目標でいいのでしょうか?平均寿命以上の年齢の方には食事の療養指導をしていませんが、食事制限させるべきでしょうか?(開業医・30歳代)HbA1cが7.5以上の状態が3ヵ月継続した場合、インスリンを導入するべきか、いなか?(開業医・40歳代)BG薬で消化器系の副作用が出た場合、次の選択肢としてどの経口血糖降下薬を使用するべきか?(開業医・40歳代)DPP-4阻害薬を長期間使用した場合、その効果が衰えるのはどの薬剤でしょうか?(勤務医・50歳代)HbA1cの数値が(JDS)から(NGSP)に単位が変わりました。HbA1cの目標値が7.4%未満(NGSP)と7.0%未満(JDS)の2つが混在しているように思いますが、現状どちらで患者さんに説明したらいいでしょうか?(開業医・50歳代)インスリン療法から経口血糖降下薬に変更する時の目標HbA1c値とその処方薬剤の選択について。(勤務医・60歳代)BG薬についてメトホルミン(商品名:グリコラン)しか採用していません。同じメトホルミンでもメトグルコ®の方が良いでしょうか?こちらは投与量も多いですが、その注意点について知りたいと思います。また、薬剤の採用時に薬価についてプレッシャーを強く受けています。そのメリット等も知っておきたいです。(開業医・30歳代)外来での栄養指導で栄養士の指導なしに、どうすれば患者に食事療法を守ってもらえるのか、その方法について。(開業医・50歳代)新しい糖尿病治療薬は高価なものが多く、年金生活者が多い当院の患者さんからは、「もっと安い薬にして欲しい」という要望が多く苦労している。そうした要望に、どのように対応したらいいのか?(勤務医・60歳代)体重、HbA1cの値が正常値までいき、コントロールがよくなるとかえって体がもたないという患者がいます。こういう症例では、我慢させた方がよいのか、それともコントロール基準をゆるめた方がよいのか?(勤務医・50歳代)2012年9月~10月ケアネット調べ

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京都で国際的な糖尿病学会が開催、11月24日~

 5日、第9回国際糖尿病連合西太平洋地区会議(会長:清野 裕 氏)と第4回アジア糖尿病学会学術集会(会長:堀田 饒 氏)は、2012年11月24日~27日の4日間、国立京都国際会館にて合同で学術集会を開催することを発表した。この日、演題には学会長である清野氏、堀田氏ほか、事務局長の稲垣 暢也 氏、副会長の門脇 孝 氏、立川 倶子 氏、司会は田嶼 尚子 氏と錚々たる顔ぶれ。 西太平洋地区は人口が集中する地域であり、糖尿病有病者数は米国を凌ぎ、短期間で著しく増加した地域である。また、これらの地域では欧米人に比べインスリン分泌能が低く、著明な肥満に至るまでに糖尿病を発症するという人種的な特性を有することが広く知られている。これまでは欧米諸国にて白人を多く含んだ対象を中心に臨床試験が行われてきたが、今後、世界的な糖尿病治療戦略を考えていく上で、アジアでの糖尿病治療を視野に入れていかなければならない時代となる。 一方、アジア、西太平洋地区と言っても、日本、中国、韓国、インド、東南アジア諸国、オーストラリアと人種も生活習慣も多様であり、インスリン分泌能も同じアジア人でも異なる。このような状況下、アジア人における糖尿病の病態分析、治療成績の集積および情報発信は今後の糖尿病戦略を考えていく上で、その重要性は高まってきている。 今回の合同学会は「西太平洋地区における糖尿病の多様性の探求;科学的根拠に基づく糖尿病の教育とケア」をテーマとして掲げた。国際糖尿病連合西太平洋地区会議は第1回会議が1987年東京で開催されて以来、日本での開催は25年ぶりとなる。アジア糖尿病学会学術集会は2010年の岡山での開催以来となる。 招聘演者は国外218名を含む328名。シンポジウムは44セッション、227演題、ワークショップは2セッション、13演題、一般演題は38ヵ国から829演題に及ぶ。26日(月)にはノーベル医学生理学賞を受賞した山中 伸弥 氏のスペシャル・レクチャーも予定されている。 11月14日は世界糖尿病デーと、わが国でも東京タワーなどブルーライトアップされるが、14日だけでなく、学会会期中は清水寺、東寺、二条城、京都タワー、京都府庁旧本館がブルーライトアップされるとのことで、こちらも見逃せない。

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アンチエイジングHGH療法を利用した50歳夫婦がともにメラノーマを発症

 Handler MZ氏らは、ヒト成長ホルモン(HGH)療法を利用した夫婦がともに使用開始3ヵ月後にメラノーマを発症した例を報告した。これまでにHGHあるいはインスリン様成長因子-1(IGF-1)が、種々のがんの悪性転化や進行を担うことは示されている。また、HGHはメラノーマの病因に結びついていることでも知られ、良性、悪性を問わずメラニン細胞の臨床的増殖を手助けする効果が示唆されている。著者は、「それにもかかわらず、HGH療法を追跡しメラノーマのリスク増大を示した決定的な研究は行われていない。一方で、HGHとその他ホルモン剤の併用あるいは照射を受けた後で、メラノーマを発症した症例報告が現にある」と述べ、「外因性HGHの真のリスクが判定されるまで、その使用のサーベイを強化すべきである」と結んでいる。Arch Dermatol誌2012年10月1日号の掲載報告。アンチエイジング法として外因性HGHの使用が増大 HGHを使用し、ともにメラノーマが診断された夫婦の例を報告した。 主な結果は以下のとおり。・患者は新規の黒色調丘疹を有した49歳白人男性で、メラノーマと診断された。・彼は診断前3ヵ月間、HGHを利用していたことを報告した。・彼の妻(51歳白人女性)も3ヵ月間、外因性HGHを使用しており、2週間前にメラノーマ発症の診断を受けていた。・短期間にメラノーマを発症した非血縁の2人を結びつけることとして、共通の環境要因(HGHあるいはその他の共有曝露)が関与していると仮定するのは妥当なことである。・アンチエイジング法として外因性HGHの使用が増大しているため、このホルモンの成長促進効果を認識することは重要である。・外因性HGHの真のリスクを判定したデータが入手できるまで、そのアンチエイジング剤としての使用についてサーベイを強化する価値がある。

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抗精神病薬と副作用―肥満、糖代謝異常、インスリン分泌に与える影響

統合失調症患者では一般と比べて平均寿命が15年短いことが報告されている。その死亡原因として最も多いのは自殺であるが、その他、統合失調症患者では陰性症状や不規則な生活習慣のために、肥満や脂質代謝異常などを有する割合が高く、それに起因した心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の合併率が高いことが知られている。さらに、抗精神病薬の副作用として脂質代謝異常や肥満を来すこともあり、欧米の研究から、抗精神病薬服用中の統合失調症患者ではメタボリックシンドローム(MetS)の合併率が高いことも報告されている(Newcomer JW. Am J Manag Care. 2007; 13: S170-177)。第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会合同年会の「抗精神病薬と代謝異常」のセッションのなかから、統合失調症患者の入院が体重や糖代謝に及ぼす影響、抗精神病薬がインスリン分泌に及ぼす影響、統合失調症患者におけるBMIやウエスト径とGIP遺伝子多型の関連を検討した報告を紹介する。統合失調症患者の精神科病棟入院により肥満や糖脂質代謝が改善されたわが国における横断研究によると、入院加療中の統合失調症患者のMetS有病率は15.8%と健常者と同程度であるが、外来患者ではMetSの有病率は48.1%と高いことが報告されている(Sugawara N, et al. Ann Gen Psychiatry. 2011;10:21)。さらに、わが国では欧米に比べて精神科病床数が多く、慢性期のみならず急性期でも平均在院日数が長期に及ぶという精神科医療の特徴がある。そこで三上剛明氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野)らは、精神科病棟入院により、統合失調症患者の体重や糖脂質代謝に関する検査値がどのように変化するのか検討を行った。研究の対象は、2008年1月~2011年8月に急性期治療のため、新潟大学医歯学総合病院精神科に2週間以上入院した統合失調症患者160例のうち、入院時のBody Mass Index(BMI)が25kg/m2以上の53例である。これらの患者のカルテから、身長、体重、空腹時血糖、総コレステロール、中性脂肪、HDLおよびLDLなどの血液生化学検査値を抽出し、入院時と退院時の値を比較した。患者背景は、平均年齢が34.0±8.4歳、男性が27例、平均BMIが28.7±3.2kg/m2、平均在院日数が114.4±90.0日、34例が措置入院であった。BMIの値は、退院時では26.9±3.3 kg/m2となり、入院時に比べ有意(p<0.001)に減少した。BMIの変化量と入院日数には負の相関が認められた(r=0.597、p<0.001)。空腹時血糖値も入院時99.9±27.3mg/dLから退院時89.1±14.2mg/dLと有意に(p=0.039)減少した。その他、HDL(52.5±14.9mg/dLから45.4±10.4mg/dL、p=0.003)、LDL(121.6±27.4mg/dLから107.9±25.7mg/dL、p=0.027)の値も有意に減少した。肥満(BMI≧30 kg/m2)の患者は入院時の16例から退院時には10例に、過体重(25kg/m2≦BMI<30kg/m2)の患者は37例から26例に減少し、一方、標準体重の患者は入院時0例から退院時には17例に増加した。これら肥満、過体重、標準体重の患者の割合の変化は有意(p<0.001)であった。総コレステロールおよびトリグリセライドの値には有意な変化はみられなかった。これらの結果より、外来で過体重や肥満を呈していた統合失調症患者は、精神科病棟へ入院することによって体重やBMI、空腹時血糖値が改善することが示された。入院で肥満や過体重が改善に向かう理由として、三上氏は、①入院により適切なカロリーとバランスのよい食事が提供されること、②入院により清涼飲料水や間食が制限されること、③精神状態の安定に伴い過食が減ることなどを挙げた。また三上氏は、外来の統合失調症患者の治療では、精神症状の治療だけでなく、積極的な栄養指導や生活習慣の改善が必要であると指摘した。さらに、わが国の医療独特の精神疾患における長期入院は、統合失調症患者の身体的健康を守るという観点からは評価されるべきであり、近年、わが国でも脱施設化が進み、統合失調症の治療は外来治療が主体となるため、外来での患者の健康管理がより重要であるとのコメントを述べた。抗精神病薬治療がインスリン分泌に与える影響統合失調症患者で、とくに第2世代抗精神病薬と糖代謝異常との関連を指摘した報告は多く、Perez-Iglesias氏らは未治療の患者を対象として、抗精神病薬治療開始から1年で糖脂質代謝パラメータが有意に悪化することを報告している(Perez-Iglesias R, et al. Schizophr Res. 2009;107:115-121)。さらに、抗精神病薬で治療されている患者のおよそ10.1%が治療開始後わずか6週間で、糖尿病(WHO基準)を発症することも報告されている(Saddichha S, et al. Acta Psychiatr Scand. 2008; 117: 342-347)。米国糖尿病学会では空腹時血糖異常(IFG:空腹時血糖100~125mg/dL)を前糖尿病段階とし、MetSの診断基準にも採用している。また、75g経口糖負荷試験(OGTT)後の2時間血糖値140~199mg/dLを耐糖能異常(IGT)として、心血管死亡のリスクとも相関する病態として重要視している。また、抗精神病薬服用中の統合失調症患者で空腹時血糖が正常域にあっても、75gOGTT後の2時間血糖値を測定すると、16.2%がIGTであり、3.5%が糖尿病であったとの報告もある(Ono S, et al.投稿中)。須貝拓朗氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野)らは、抗精神病薬を服用中の統合失調症患者に75gOGTTを実施し、血糖値および血中インスリン値の変化を健常者と比較検討した。研究方法は、新潟大学医歯学総合病院とその関連病院に入院中の統合失調症群(159例)と健常者(対照群、90例)に75gOGTTを実施した。統合失調症群では8週間以上同一の抗精神病薬単剤を服用し、少なくとも3週間は用量の変更がなかった。75gOGTTは空腹時および治療薬服用前に行い、血糖値および血中インスリン値の変化を対照群と比較した。また、IFGおよびIGTの患者を除外した集団においても同様の検討を行った。統合失調症群と対照群の患者背景は、平均年齢(34.6±9.2歳 vs. 32.8±7.1歳)、性別(男性の割合54.1% vs. 62.2%)、糖尿病の家族歴(31.4% vs. 28.9%)などに両群で差はなく、ウエスト径(82.2±11.1cm vs. 77.7±9.4cm)、総コレステロール(180.8±36.8mg/dL vs. 200.8±30.1mg/dL)、HDL(51.5±12.7mg/dL vs. 67.5±17.2mg/dL)に差が認められた。75gOGTT後120分までの血糖値と血中インスリン値の推移を比較したところ、血糖値はOGTT後1時間より統合失調症群の患者の方が有意(p=0.006)に高値を推移した。血中インスリン値でも同様にOGTT後30分より統合失調症群が有意(p<0.001)に高値となった。IFGおよびIGTを除外して検討を行っても同様の結果が保たれた。本研究の結果は、オランザピン服用群、リスペリドン服用群、および健常者群で糖負荷試験後の血糖値と血中インスリン値の推移を比較した研究(Yasui-Furukori N, et al. J Clin Psychiatry. 2009; 70: 95-100)における、オランザピンおよびリスペリドン服用群で、血糖値と血中インスリン値が健常群と比べ高値を推移したという結果とも一致していた。以上の結果から、須貝氏は「統合失調症に対する抗精神病薬治療は、インスリン抵抗性につながるインスリン分泌反応に影響している可能性が示唆された」と述べた。また、膵β細胞機能には人種差があり、抗精神病薬が耐糖能異常に及ぼす影響については、今後、同一個体を用い、プロスペクティブに検討する必要があると述べた。抗精神病薬服用中の統合失調症患者におけるBMI、ウエスト周囲径とGIP遺伝子多型との関連統合失調症の治療に用いる非定型抗精神病薬は体重増加や糖代謝異常を来し、とくにオランザピンやクロザピンはそのリスクが高いことが知られている。また、最近の大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)により、糖尿病や肥満と関連した遺伝子が同定され、福井直樹氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野)らはこれらの遺伝子のなかからglucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)遺伝子多型に注目し、抗精神病薬誘発性の糖代謝異常や体重増加との関連について検討している。GIPは消化管ホルモンのひとつで、食物刺激により小腸より分泌され、膵β細胞のGIP受容体(GIPR)を介して血糖依存性にインスリン分泌を促進するほか、脂肪細胞の受容体にも作用し体重増加をもたらすとされている。福井氏らは、オランザピンを服用している統合失調症患者でGIP遺伝子多型があると、糖負荷試験後の血中インスリン値が有意に高くなること(Ono S, et al. Pharmacogenomics J. 2011 July 12 [Epub ahead of print])や、BMIの増加率が大きいことを報告している。こうした背景に基づいて、今回福井氏らは、抗精神病薬服用中の統合失調症患者群と健常者群において、BMIやウエスト径、糖代謝関連因子と、GIP遺伝子のプロモーター領域に位置する-1920G/A多型との関連について検討を行った。抗精神病薬で治療中の統合失調症患者147例と健常者152例を対象とし、GIP遺伝子-1920G/Aの多型を同定し、Gアリルを有するGG+GA群とAアリルを有するAA群の2群に分け、BMIやウエスト径、空腹時血糖値、HbA1c、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)を比較検討した。統合失調症患者群では、102例が単剤を服用しており、主な薬剤はオランザピン(52例)、リスペリドン(41例)、ペロスピロン(16例)、クエチアピン(11例)、アリピプラゾール(10例)であった。統合失調症群においてGG+GA群とAA群を比較したところ、AA群ではBMI(24.2±4.2 vs. 22.2±3.7、p=0.004)およびウエスト径(85.0±12.0 vs. 80.2±10.7、p=0.012)が有意に大きかったが、健常者群では2群間でBMIやウエスト径に有意差はみられなかった。ウエスト径は統合失調症のAA群で最も大きく、次いで統合失調症群のGG+GA群、健常者群であった。福井氏はこれらの結果から、「抗精神病薬を服用中の統合失調症患者において、GIP遺伝子-1920G/A多型のうち、AA遺伝子型を有する患者ではGアリルを有する患者に比べて体重増加を来しやすいことが示唆された」と結論を述べた。健常者ではこのような関連は認められず、肥満という表現型でみた場合、GIP遺伝子多型と抗精神病薬の内服または統合失調症の罹患との間に交互作用がある可能性を指摘した。関連リンク

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インスリン療法のジレンマ」へのアプローチ

 2012年10月18日(木)、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社開催のセミナーにて、東京大学大学院の門脇 孝氏(医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授)が、現状のインスリン治療における課題と、新規の持効型溶解インスリンアナログ製剤「トレシーバ」の臨床上の意義を語った。門脇氏は、「新薬の登場により、低血糖リスクを高めることなく、一歩踏み込んだ糖尿病治療が可能になるのではないか」と講演で述べた。以下、内容を記載する。セミナー前半では、東京都済生会中央病院の渥美 義仁氏(糖尿病臨床研究センター長)から「インスリン治療の臨床上のアンメットニーズ」が語られた。インスリン療法のジレンマ インスリン療法では、「血糖値を正常に近づけると、患者さんは低血糖を不安に思い、逆に血糖値を高めに保とうとする」というジレンマが生じている。実際、インスリン治療中の2型糖尿病患者を対象とした調査「GAPP2」で、日本人患者347例のうち、約70%が低血糖を経験しており、基礎インスリンのみで治療中の患者(81例)の約20%が、低血糖が起きた時「基礎インスリンを打たない」選択をしていると報告されている。夜間低血糖が生産性を低下させる 別のアンケート調査では、回答者の32%は夜間に非重症低血糖が起きたことで、会議を欠席したり、仕事の締め切りを守れなかった経験があると報告されており、夜間低血糖が生産性に影響を及ぼすことも示唆されている。新薬「トレシーバ」への期待 このように血糖を良好にコントロールでき、すべての低血糖・夜間低血糖のリスクの低い基礎インスリン製剤が必要とされる中、2012年9月、新規の持効型溶解インスリンアナログ製剤であるインスリン デグルデク「トレシーバ」が承認となった。インスリン グラルギンとの差は? トレシーバは、BOT療法下でのインスリン グラルギンとの海外比較データで、同程度の血糖コントロールを達成し、夜間低血糖の発現率が36%と有意に少ないことが報告されている。また、有意差はないものの、すべての低血糖発現件数においてトレシーバで低下傾向が認められた。日本人を含むアジア試験でも、グラルギンと同程度の血糖コントロールおよび低血糖発現率が示された。夜間低血糖発現率については、トレシーバで38%低下が認められたものの有意差はなかった。アジア試験で夜間低血糖発現に有意差が認められなかった点について、門脇氏は「あくまで症例数の問題」とコメントした。また、今回の試験自体が、対照薬との血糖降下度の差をみるものではなく、同等のHbA1c値レベルを実現したうえで、低血糖の発現頻度や重症度を評価するというTreat-to-Target試験であることに触れたうえで、有意差は認められなかったものの両剤とも同程度のHbA1c値レベルという条件下において、トレシーバ群ですべての低血糖、夜間低血糖に低下傾向が認められたことは評価できる、とコメントし、講演を締めくくった。 まとめ 低血糖にとくに不安感の強い傾向を示す患者さんには、「インスリン治療について十分教育を受けていない人」「1人暮らしの人」「不安感を感じやすい人」が挙げられるという。新薬の登場により、このような患者さんの不安も軽減されていくのではないだろうか。

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妊娠前の身体活動と母乳育児が、乳児の体重増加・肥満に及ぼす影響

カナダのChu氏らによって、母親の身体活動やスクリーン視聴時間(テレビやPC、ゲームなどで画面に向かう時間)、および乳児栄養の方法が出生児の体重増加と肥満に及ぼす影響について検討が行われた。その結果、母親の妊娠前の身体活動と完全母乳育児期間は、乳児の1年時点での体重増加ならびに肥満と関連がみられた。Int J Endocrinol誌2012年9月26日掲載。246人の母親を対象とした前向きコホート研究。母親は妊娠中に検査を受け、耐糖能とインスリン感受性が評価された。身体測定と身体活動、乳児栄養の方法、スクリーン視聴時間のアンケートが実施された。多重線形回帰分析は、母子の要素が1年時点での乳児の体重増加と身長/体重比 Zスコアに及ぼす影響を評価するために行われた。主な結果は以下のとおり。・母親の妊娠前の運動指数および完全母乳育児期間により、乳児の体重増加は逆相関がみられた。・調整後、母親の妊娠前の運動指数の増加により乳児の体重増加は218.6g(t=2.44、p=0.016)減り、身長/体重比 Zスコアは0.20(t=2.17、p=0.031)減った。・完全母乳育児であった各月において、乳児の体重増加は116.4g(t=3.97、p

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(26)〕 集中治療室(ICU)における入院患者の厳格な血糖管理はいかにあるべきか

集中治療室に入室する重症患者においては、ストレスによる内因性のカテコラミンやコルチゾール、炎症性サイトカインの増加、さらには治療薬剤として用いられる外因性のステロイド薬やカテコラミンなどの影響により、糖尿病の有無にかかわらず、高血糖を示すことが多い。高血糖は、脱水、電解質失調、内皮機能の低下、好中球遊走能の低下をひきおこし、循環動態、創傷治癒機転、感染症の経過に悪影響を及ぼして、IUCにおける死亡率に影響を与える重要な因子の一つとして考えられている。 実際に、きめ細かなインスリン治療によって平均血糖値110mg/dL前後の厳格な血糖管理を行うことが、重症患者の生命予後を改善することを示すという報告が散見される(Van den Berghe G et al. N Engl J Med. 2001. 345; 1359-1367.、 Van den Berghe G et al. N Engl J Med. 2006; 354: 449-461.、 Hermanides J et al. Crit Care Med. 2010; 38: 1430-1434.)。 しかし、2009年に発表されたNICE-SUGAR (Normoglycemia in Intensive Care Evaluation-Survival Using Glucose Algorithm Regulation)研究では、6,104人の患者を対象に、30分から1時間ごとに血糖を測定して適宜インスリンの静脈内投与を行い、厳格な血糖管理をめざす群(血糖値81~108mg/dL)と、通常の管理(180mg/dL以下)の2群に分けて90日以内の生命予後について検討した結果、厳格な血糖管理群における死亡率は27.5%、通常管理群では24.9%、オッズ比1.14(95%信頼区間:1.02~1.28、p=0.02)であり、厳格な血糖管理の有用性に疑問を投げかける成績を示した。 今回の論文は、NICE-SUGAR研究の事後比較分析(post hoc analysis)データについての報告であり、治療経過において中等度の低血糖(41~70mg/dL)、重症低血糖(40mg/dL以下)をひきおこすことが死亡のリスクを高めることを示した成績である。厳格な血糖コントロール群では低血糖をひきおこす頻度は通常群の4.6倍であり、集中治療の現場における厳格な血糖管理をめざすことのリスクを示している。 確かに、厳格な血糖管理により炎症反応や血栓の形成を抑止することができるが、血糖を下げ過ぎることにより低血糖をひきおこすことの弊害が大きいことが、臨床の場での大きな問題となる。米国内科学会および米国糖尿病学会では、集中治療室における血糖管理の基準を140~180(200)mg/dLとしているが、このレベルは妥当なものではないかと考えられる。

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肥満が子どもの心血管疾患リスクを増強

 学齢児童では、体格指数(BMI)が標準値より高いと心血管疾患リスクのパラメータが有意に増悪することが、英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア保健科学科のClaire Friedemann氏らの検討で示された。体重増加は血圧や脂質プロフィールの異常のリスクを増大させ、子どもの心血管疾患リスクのパラメータの変動に影響を及ぼす可能性がある。子どもの体重とこれらのリスク・パラメータがどの程度関連するかを、BMIのカテゴリー別に系統的に評価した研究はこれまでなかったという。BMJ誌2012年9月29日号(オンライン版2012年9月25日号)掲載の報告。BMIと心血管疾患リスク・パラメータの関連をメタ解析で評価研究グループは、高度先進国の学齢児童におけるBMIカテゴリー(低体重:<17、標準体重:≧17~<25、過体重:≧25~<30、肥満≧30kg/m2)と心血管疾患リスクのパラメータの関連およびその強度を評価するために、系統的レビューとメタ解析を行った。データベースなどを用いて2000年1月~2011年12月までに公表された論文を選出した。対象は、1990年以降に学校、外来、地域で実施されたプロスペクティブまたはレトロスペクティブなコホート試験、横断的研究、症例対照研究、無作為化試験に登録された高度先進国の5~15歳の健常児とした。解析に含める試験は、客観的な体重測定および事前に規定された1項目以上の心血管疾患リスクのパラメータについて報告しているものとした。過体重、肥満により、血圧、脂質値、インスリン抵抗性、左室重量が増悪23ヵ国で実施された63試験(4万9,220人)が解析の対象となった。このうち39試験は記述分析の対象とし、メタ解析の対象となったのは24試験だった。42試験は横断的研究、19試験は無作為化対照比較試験で、コホート試験と症例対照研究が1試験ずつだった。標準体重児に比べ、過体重児は収縮期血圧が4.54mmHg(99%信頼区間[CI]:2.44~6.64、p<0.001、1万2,169人、8試験)高く、肥満児では7.49mmHg(同:3.36~11.62、p<0.001、8,074人、15試験)高かった。収縮期血圧は、過体重児、肥満児ともに男児よりも女児で上昇していた(p<0.001)。同様に、拡張期血圧は過体重児で2.57mmHg(99%CI:1.55~3.58、p<0.001、1万1,529人、7試験)、肥満児で4.06mmHg(同:2.05~6.08、p<0.001、8,140人、16試験)上昇しており、男児よりも女児で有意に高かった(p<0.001)。肥満はすべての血中脂質値に有害な影響を及ぼしていた。すなわち、標準体重児に比べ肥満児では総コレステロール値が0.15mmol/L(≒5.8mg/dL)(99%CI:0.04~0.25、5,072人、9試験)上昇し、肥満女児では0.31mmol/L(≒12mg/dL)(同:0.08~0.54、p<0.001、2,213人、3試験)高かったが、過体重児では有意な差は認めなかった。LDLコレステロール値は肥満児で0.18mmol/L(≒7mg/dL)(同:0.09~0.26、p<0.001、4,773人)高かった。HDLコレステロール値は過体重児で0.17mmol/L(≒6.6mg/dL)(−0.34~−0.24、p=0.001、5,752人、5試験)、肥満児では0.22mmol/L(≒8.5mg/dL)(−0.39~−0.06、p=0.001、4,915人、8試験)低かった。トリグリセライド値はそれぞれ0.21mmol/L(≒18.6mg/dL)(0.14~0.27、p<0.001、6,515人、5試験)、0.26mmol/L(≒23mg/dL)(同:0.13~0.39、p<0.001、5,138人、10試験)増加していた。空腹時血糖、インスリンインスリン抵抗性は肥満児で有意に高度であったが、過体重児では有意差は認めなかった。肥満児は、標準体重児よりも左室重量が19.12g(99%CI:12.66~25.59、p<0.001、223人、3試験)有意に重かった。著者は、「学齢児童では、BMIが標準値以上になると、心血管疾患リスクのパラメータが有意に増悪することがわかった」と結論し、「このような影響は過体重児ではすでに確認されていたが、肥満児でもリスクが増強しており、しかもこれまでに考えられていたよりも大きい可能性がある。体重を考慮しないパラメータのカットオフ値は現代の子どものリスク評価において妥当か、またこれらの試験で使用された方法を標準化すべきかどうかにつき検証する必要がある」と指摘している。

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小児心臓手術後の血糖コントロール、厳格群vs.標準群のアウトカム

 小児心臓手術後の血糖コントロールについて厳格群と標準群とを比較した結果、厳格群のほうが低血糖の発生率は低くコントロール達成可能だった。しかし感染率、死亡率、心臓ICU入室期間、臓器不全については、有意な変化はみられないことが報告された。米国・ボストン小児病院のMichael S.D. Agus氏らが行った前向き無作為化試験の結果で、NEJM誌2012年9月27日号(オンライン版2012年9月7日号)で発表した。これまでいくつかの成人を対象とした試験では、心臓手術後の厳格血糖コントロールがアウトカムを改善することが示されていたが、小児に関しては非常に重篤な高インスリン性の低血糖症のリスクがあり、ベネフィットは明らかではなかった。小児心臓手術後の厳格血糖コントロールは合併症発生を低下するのか検証研究グループは、小児心臓手術後の厳格な血糖コントロールは合併症発生率を低下すると仮定し、検証試験を行った。人工心肺を要する心臓手術を受けた小児980例(0~36ヵ月齢)を2施設から登録した。被験児は心臓ICUにて無作為に2群に割り付けられ、一方は厳格な血糖コントロール[血糖値目標80~110mg/dLとするインスリン投与アルゴリズムを使用、490例]、もう一方は標準コントロール(490例)を受けた。持続血糖モニタリングを用いて、血糖値測定頻度のガイドとし、発症間近の低血糖の検出に活用した。主要アウトカムは、心臓ICUにおける医療ケア関連感染症の割合だった。副次アウトカムは、死亡率、入院期間、臓器不全と低血糖などだった。厳格群、正常血糖の達成は有意に早いが、合併症発生について標準群との差は認められず厳格血糖コントロール群では91%(440/490例)がインスリン投与を受けた。標準血糖コントロール群では2%(9/490例)だった。正常血糖の達成は、厳格群のほうが標準群よりも有意に早かった(6時間vs.16時間、p<0.001)。また、重症期間中に達成した割合も厳格群のほうが有意に大きかった(50%vs.33%、p<0.001)が、厳格群の医療ケア関連感染症の有意な減少は認められなかった(1,000患者・日当たり8.6vs.9.9、p=0.67)。副次アウトカムについて両群間の差はみられず、高リスクのサブグループでも厳格群のベネフィットは認められなかった。一方、厳格群では重度低血糖(血糖値<40mg/dL)の発症は、3%にとどまった。

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重症患者における低血糖、死亡リスクを1.4~2.1倍に増大

 重症患者において、低血糖は死亡リスクを1.4~2.1倍増大することが明らかにされた。死亡リスクは中等症低血糖よりも重症低血糖のほうがさらに増大し、血液分布異常性ショックによる死亡との関連が最も強かった。オーストラリア・シドニー大学のSimon Finfer氏らにより行われたNormoglycemia in Intensive Care Evaluation-Survival Using Glucose Algorithm Regulation(NICE-SUGAR)試験の結果で、これまで重症患者における低血糖が死亡に結びつくのかどうかは明らかではなかった。なお、同関連の因果関係については、この試験では明らかにはならなかった。NEJM誌2012年9月20日号掲載より。強化血糖コントロール群の8割が、中程度以上の低血糖研究グループは、集中治療室(ICU)で治療を受けていた6,026例を無作為に2群に分け、一方には強化血糖コントロールを、もう一方には標準血糖コントロールを行った。被験者のうち、中等症低血糖(41~70mg/dL)と重症低血糖(40mg/dL以下)を発症した人について、それぞれ死亡リスクを調べ、低血糖を発症しなかった人と比較した。その結果、中等症低血糖が認められたのは被験者の45%にあたる2,714例で、そのうち2,237例(82.4%)が強化血糖コントロール群(同群全体の74.2%)であり、477例が標準血糖コントロール群(同群全体の15.8%)だった。被験者のうち重症低血糖だったのは、3.7%にあたる223例で、そのうち208例(93.3%)が強化血糖コントロール群(同群全体の6.9%)、15例が標準血糖コントロール群(同群全体の0.5%)だった。死亡リスク、中等症低血糖で1.4倍、重症低血糖で2.1倍に低血糖が認められなかった3,089例のうち、死亡したのは726例(23.5%)だった。一方で、中等症低血糖を有した死亡は774例(28.5%)、重症低血糖を有した死亡は79例(35.4%)だった。中等症または重症低血糖の認められた人の低血糖が認められなかった人に対する死亡に関するハザード比は、それぞれ1.41(95%信頼区間:1.21~1.62、p<0.001)、2.10(同:1.59~2.77、p<0.001)だった。なかでも、中等症低血糖が1日超認められた人は、1日の人に比べ、死亡リスクは有意に高くなる関連がみられた(p=0.01)。また、インスリン非投与で重症低血糖の認められた人の死亡リスクも高く、低血糖の認められなかった人に対する死亡に関するハザード比は3.84(同:2.37~6.23、p

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