抗精神病薬によるプロラクチン濃度上昇と関連する鉄欠乏状態

提供元:ケアネット

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公開日:2013/03/27

 

 小児および思春期患者への使用が増加している非定型抗精神病薬は、脳内ドーパミンを修飾する。ドーパミン作動性シグナル伝達において、鉄は重要な役割を果たしている。米国・アイオワ大学のChadi Albert Calarge氏らは、体内の鉄含量が精神症状の重症度、治療反応性、引き続き行われる抗精神病薬療法の忍容性と関連するか否かについて検討を行った。その結果、対象の45%が鉄枯渇、14%が鉄欠乏状態にあること、また鉄欠乏症を認める患者では血清プロラクチン濃度の上昇が強まることを報告した。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌オンライン版2013年3月12日号の掲載報告。

 対象は、2005年11月~2009年8月に、リスペリドンの長期安全性を検討する横断研究に登録された内科的には健康な7~17歳のリスペリドン投与中の患者であった。身体所見により精神症状の重症度および食事摂取量を評価し、また、血清中のフェリチン、トランスフェリン受容体、およびプロラクチン濃度を測定した。多変量線形回帰分析により体内鉄含量と症状の重症度、リスペリドンおよび精神刺激薬の用量、血清プロラクチン濃度との関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・115例(男性87%、平均年齢11.6±2.8歳)を対象とした。
・大半が外在化障害を有しており、リスペリドン服用歴は2.4±1.7年であった。
・体内鉄含量は低く、45%が鉄枯渇、14%が鉄欠乏症であった。
・体内鉄含量とリスペリドン治療中の体重増加、インターロイキン-6濃度との間に負の関係がみられた。
・体内鉄含量と精神症状の重症度、リスペリドンおよび精神刺激薬の1日投与量との間に関連は認められなかった。
・一方、体内鉄含量とプロラクチン濃度との間には負の関係が認められ、鉄欠乏症のグループではプロラクチン濃度が約50%高かった。
・慢性的にリスペリドンによる治療を受けている小児や思春期患者では、鉄枯渇および鉄欠乏症がしばしばみられ、鉄欠乏状態に伴って、抗精神病薬に起因するプロラクチン濃度の上昇が強まることが示された。
・さらなる研究により本知見を確認するとともに、抗精神病薬治療中の患者における鉄補給の潜在的ベネフィットを検討すべきである。

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(ケアネット)