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医療従事者におけるベンゾジアゼピン使用が仕事のパフォーマンスに及ぼす影響

 不眠症や不安症の治療によく用いられるベンゾジアゼピン(BZD)は、スペインでの使用が増加しており、濫用や依存のリスクに対する懸念が高まっている。スペイン・Miguel de Cervantes European UniversityのCarlos Roncero氏らは、医療従事者におけるBZDおよびその他の向精神薬の使用状況を調査し、その使用率、関連因子、そしてCOVID-19パンデミック後のメンタルヘルス問題との関連性を評価した。Journal of Clinical Medicine誌オンライン版2025年6月16日号の報告。 Salamanca University Healthcare Complex(CAUSA)の医療従事者1,121人を対象に、2023年3月〜2024年1月に匿名オンライン調査を実施した。完全解答が得られた685人のデータを分析した。不眠症、不安症、うつ病の評価には、不眠症重症度質問票(ISI)および患者健康アンケート(PHQ-4)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・回答者のうち、睡眠薬を使用していると解答した割合は23.8%、そのうち27.8%は処方箋なしと回答した。・さらに、うつ病または不安症の治療薬を使用していた人の割合は14.7%、処方箋なしと回答したのは、わずか0.6%であった。・睡眠薬の使用と関連していた因子は、高齢、不眠症、不安症、うつ病、心理療法または精神科治療、COVID-19の後遺症、睡眠障害の診断であった。・夜勤は、男性では睡眠薬の使用増加と関連が認められたが、女性では認められなかった。・これらの薬剤の使用は、QOL低下や仕事のパフォーマンス低下との関連が認められた。 著者らは「BZDの使用、とくに自己判断での使用は、医療従事者の間で広くみられており、一般集団よりも高かった。これらの結果は、向精神薬の使用に対処し、不眠症に対する他の薬理学的および非薬理学的な代替療法の促進、脆弱集団に対するメンタルヘルス支援の強化などターゲットを明確にした介入の必要性を浮き彫りにしている」と結論付けている。

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血糖値のわずかな上昇が男性の精力に影響

 血糖値のわずかな上昇が、男性の精力に悪影響を与える可能性があるようだ。たとえ糖尿病の基準値を下回る値であっても、血糖値のわずかな上昇は精子の運動能力や勃起機能の低下と関連することが、新たな研究で明らかにされた。ミュンスター大学病院(ドイツ)のMichael Zitzmann氏らによるこの研究結果は、米国内分泌学会議(ENDO 2025、7月12〜14日、米サンフランシスコ)で発表された。Zitzmann氏らは、「この研究結果は、加齢に伴うホルモンレベルの低下よりも、男性の健康状態の小さな変化の方が、男性の生殖能力に影響を及ぼす可能性があることを示している」と話している。 この研究でZitzmann氏らは、2014年に18〜85歳の健康な男性200人を募集し、2020年まで精液とホルモンのプロファイル、勃起機能、BMIや血糖値などの代謝の健康指標の変化を追跡調査した。最終的に117人が調査を完了した。 追跡データからは、時間が経過してもホルモンレベルと精液のプロファイルは概ね正常範囲内にとどまっていたことが示された。ただし血糖値が、HbA1cの血液検査で糖尿病の閾値である6.5%を下回る範囲でわずかに上昇した男性では、精子の運動能力と勃起機能に低下が認められた。さらに、男性ホルモンであるテストステロンレベルは勃起機能に直接影響を及ぼさないものの、男性の性欲には影響を及ぼす可能性も示唆された。 Zitzmann氏は、「長い間、加齢とテストステロンレベルが男性の性的健康の低下を推進する要因と考えられてきたが、われわれの研究は、そのような変化は血糖値のわずかな上昇やその他の代謝の変化とより密接に相関していることを示している。これは、男性がライフスタイルの選択と適切な医療介入によって、生殖に関する健康を維持または回復するための措置を講じることができることを意味する」と学会のニュースリリースで述べている。 さらにZitzmann氏は、「この研究から得られた知見が、医師と患者が、男性の性機能維持のための効果的な計画を策定する上で役立つことを願っている。この研究により、年齢を重ねても、自分の力で性および生殖機能の健康を維持することが可能なことが分かったのだから」と話している。米メイヨー・クリニックは、健康的な食事、定期的な運動、余分な体重を減らすことは、血糖値をコントロールするのに役立つと助言している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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乳がんT-DXd直後の抗HER2療法、効果が期待できる患者は?(EN-SEMBLE)/ESMO Open

 再発または転移を有するHER2陽性乳がん患者を対象に、日本の実臨床下においてトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の中止直後に実施した治療レジメンの分布、有効性、間質性肺疾患(ILD)の発現率を検討したEN-SEMBLE試験の結果を、名古屋市立大学の能澤 一樹氏がESMO Open誌2025年8月号で報告した。その結果、患者の73%がT-DXd中止直後の治療として別の抗HER2療法をベースとした治療を受けており、有害事象(AE)のためにT-DXdを中止した患者や奏効を得られた患者では抗HER2療法を逐次的に行うことで利益を得られる可能性があることを明らかにした。 対象は、特定使用成績調査に登録し、再発または転移を有するHER2陽性の乳がんに対して、2020年5月25日~2021年11月30日にT-DXdの投与を開始したものの中止し、後治療を開始した患者であった。評価項目は、T-DXd中止直後の治療レジメンの分布、リアルワールドにおける無増悪生存期間(rwPFS)、治療成功期間(rwTTF)、後治療までの期間(rwTTNT)、全生存期間(OS)、ILD発現率などであった。追跡期間中央値は12.0(範囲:0.3~36.2)ヵ月。 主な結果は以下のとおり。・解析には664例の患者が含まれた。・T-DXdによる治療の前に受けた全身治療は、トラスツズマブ(93.4%)、ペルツズマブ(90.5%)、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)(91.3%)などであった。前治療ライン数中央値は3であった。・T-DXdの投与期間中央値は8.1ヵ月であった。T-DXd中止理由は病勢進行が67.5%、ILDが22.0%、その他のAEが5.1%であった。・T-DXd直後の後治療開始時点の患者背景は、年齢中央値60歳、ECOG PS 0/1が86.9%、内臓転移ありが79.8%、脳転移ありが23.0%であった。・T-DXd直後の後治療として、抗HER2療法を受けたのは73.2%であり、内訳は抗HER2抗体が54.4%、HER2チロシンキナーゼ阻害薬(HER2-TKI)が17.0%、T-DM1が1.8%であった。・後治療としての(1)全体、(2)抗HER2抗体、(3)HER2-TKI、(4)T-DM1の主な結果は以下のとおり。 【rwPFS中央値】(1)4.1ヵ月、(2)4.1ヵ月、(3)4.3ヵ月、(4)2.6ヵ月 【rwTTF中央値】(1)3.8ヵ月、(2)3.9ヵ月、(3)4.2ヵ月、(4)2.0ヵ月 【rwTTNT中央値】(1)5.0ヵ月、(2)5.1ヵ月、(3)5.3ヵ月、(4)3.0ヵ月 【OS中央値】(1)16.2ヵ月、(2)17.2ヵ月、(3)16.3ヵ月、(4)9.3ヵ月 ・抗HER2抗体vs.HER2-TKIのrwPFSとOSの結果に有意差は認められなかった。・全体集団におけるT-DXdの中止理由別の転帰は、ILDを含むAEによりT-DXdを中止した患者は、病勢進行によりT-DXdを中止した患者よりも良好であった。 【病勢進行による中止】rwPFS中央値:3.5ヵ月、OS中央値:12.0ヵ月 【全AEによる中止】rwPFS中央値:7.3ヵ月、OS中央値:32.4ヵ月 【ILDによる中止】rwPFS中央値:7.2ヵ月、OS中央値:32.4ヵ月 【ILD以外のAEによる中止】rwPFS:10.2ヵ月、OS中央値:未到達・T-DXd直後の後治療でILDは664例中10例(1.5%)に発現した。T-DXd治療中にILDが発現し、後治療でILDが再発/増悪したのは155例中5例(3.2%)であった。

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加熱式タバコの使用が職場における転倒発生と関連か

 運動習慣や長時間座っていること、睡眠の質などの生活習慣は、職場での転倒リスクに関係するとされているが、今回、新たに「加熱式タバコ」の使用が職場における転倒発生と関連しているとする研究結果が報告された。研究は産業医科大学高年齢労働者産業保健センターの津島沙輝氏、渡辺一彦氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に6月6日掲載された。 転倒は世界的に重大な公衆衛生上の懸念事項である。労働力の高齢化の進む日本では、高齢労働者における職場での転倒の増加が深刻な安全上の問題となっている。この喫緊の課題に対し、政府は転倒防止のための環境整備や、労働者への安全研修の実施などの対策を講じてきた。しかし、労働者一人ひとりの生活習慣の改善といった行動リスクに着目した戦略は、これまで十分に実施されてこなかった。また、運動習慣や睡眠などの生活習慣が職場での転倒リスクと関連することは、複数の報告から示されている。一方で、紙巻タバコや加熱式タバコなどの喫煙習慣と転倒リスクとの関連については、全年齢層を対象とした十分な検討がなされていないのが現状である。このような背景を踏まえ、著者らは加熱式タバコの使用と職業上の転倒との関連を明らかにすることを目的として、大規模データを用いた全国規模の横断研究を実施した。 本研究では、「日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題および社会全般に関する健康格差評価研究(JACSIS Study)」のデータを用いた。主要評価項目は過去1年間の職場における転倒、副次評価項目は転倒関連骨折とした。発生率と95%信頼区間(CI)は、ロバスト分散を用いた2階層のマルチレベル・ポアソン回帰モデルにより推定された。 本研究の解析対象は18,440人(平均年齢43.2歳)であり、女性は43.9%含まれた。全体のうち、7.3%が過去1年間に職場における転倒を経験し、2.8%で転倒関連骨折を報告していた。年齢や性別などの交絡因子、喫煙状況、飲酒習慣、睡眠といった行動因子を調整した結果、職場における転倒発生率は、現在喫煙している人の方が、非喫煙者より高かった(IR 1.36、95%CI 1.20~1.54、P<0.05)。この傾向は、加熱式タバコのみ使用している人(IR 1.78、95%CI 1.53~2.07、P<0.05)、紙巻きたばこと加熱式タバコの両方を使用している人(IR 1.64、95%CI 1.40~1.93、P<0.05)で顕著だった。転倒関連骨折においても同様の傾向が示された。その他の生活習慣では、極端な睡眠時間(0~5時間または10時間以上)、併存疾患(高血圧、脂質異常症、糖尿病)、睡眠薬または抗不安薬の常用、などが転倒発生率の上昇と関連していた。年齢別にみると、喫煙と転倒および転倒関連骨折との関連は若年労働者(20~39歳)で顕著だった。特に加熱式タバコを使用している若年層でこの傾向がより強くみられた。 本研究について責任著者である財津將嘉氏は、「本研究では、若年労働者においても加熱式タバコを含む喫煙が職場での転倒や関連骨折と関連していることが明らかとなった。実際に観察された転倒の半数以上は若年層で発生しており、従来高齢者に焦点が当てられてきた転倒予防策を、若年層にも広げる必要性が示唆された。若年労働者は転倒リスクの高い職場に配属されやすく、年齢や職場環境の影響を考慮することが重要である。また、禁煙を促すナッジ戦略も有効と考えられる」と述べている。

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冠動脈疾患と心房細動の合併例への薬物療法【日常診療アップグレード】第35回

冠動脈疾患と心房細動の合併例への薬物療法問題78歳女性。定期検査のため来院した。無症状である。既往歴に高血圧症と脂質異常症があり、冠動脈疾患のため3年前にステントを留置している。アスピリン、カルベジロール、ロサルタン、アトルバスタチンを内服している。心拍の不整を除きバイタルサインに異常を認めない。その他の所見は特記すべきものはない。腎機能は正常である。心電図で心房細動を認めた。アスピリンを中止し、アピキサバンを開始した。

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第277回 グルテンや小麦に過敏という人の多くは実際のところそれらが平気かもしれない

グルテンや小麦に過敏という人の多くは実際のところそれらが平気かもしれない過敏性腸症候群(IBS)患者28例が完遂したカナダでのクロスオーバー無作為化試験の結果によると1-3)、グルテンや小麦に過敏と自覚している人の多くは実際のところそれらを食べても平気かもしれません。小麦は数多の食品を作るのに使われており、言わずもがな魅惑のスイーツの数々をあつらえるのに必要とされる材料の1つです。多くの人にとって小麦がもたらす食の楽しみは大きいに違いなく、小麦を食べられるならそうするにこしたことはなさそうです。それに未精製の全粒小麦を使った食品は炭水化物、食物繊維、タンパク質、ビタミン、ミネラル、その他の植物に特有な成分(ファイトケミカル)の重要な供給源であり、世界の人々の日々のエネルギー摂取や食事を健康的にするのに大いに貢献しています。小麦などの全粒穀物の摂取が健康に有益なことも示されており、たとえば肥満、2型糖尿病、心血管疾患、がん、死亡を減らすことが疫学試験で裏付けられています。一方、食品がたいていそうであるように小麦にも負の側面があり、セリアック病や小麦アレルギーなどの有害な免疫反応をもたらしうることが示されています。小麦の摂取で具合が悪くなるとのことで、セリアック病や小麦アレルギーでなくとも小麦摂取を減らすか避けるグルテンフリー食を選ぶ人も多いようです。そういう不調は非セリアック・グルテン過敏症(NCGS)と呼ばれ、小麦のタンパク質成分のグルテンがしばしばその誘引成分とみなされます。NCGSの人はもっぱら腹部の痛みや違和感、膨満感、排便周期の変化などの胃腸の症状を訴えます。より少ないながら、疲労や頭痛などの消化管以外の症状が生じることもあります。NCGSの生理指標はなく、その診断にはしばらくのグルテンフリー食の後にグルテンをあえて摂取してもらう検査を必要とします。普段の診療で決まってできる類いのものではありません。これまでの報告に基づくNCGSの有病率は自己申告が頼りゆえか相当まちまちで0.5~13%ほどです4,5)。NCGS患者はIBS様の症状を呈して受診することが多く、IBSも患うNCGS患者は多いようです。たとえば英国の成人1千人ほどを調べた試験では、NCGS患者がほとんど(93%)を占めるグルテン過敏症患者の5人に1人はIBSの診断基準を満たしました6)。他の試験結果も考慮すると、IBSとNCGSはかなり重複するようであり、IBS患者の多くがグルテンや小麦がその症状の引き金であると信じています。そこでカナダのマクマスター大学のPremysl Bercik氏らは、単なる思い込みではなく実際にそれらがIBS症状を誘発するかどうかを調べるべく試験を実施しました。試験ではグルテンフリー食で病状が良くなった経験を有するIBS患者を募りました。集まった被験者はまずグルテンフリー食を3週間続け、点数が大きいほど重症なことを意味する0~500点のIBS重症度尺度(IBS-SSS)でIBS症状がどれほどかが測定されました。その平均値は183でした。続いて全粒小麦入り、グルテン入り、そのどちらも非含有の3種類の固形食品(シリアルバー)のどれかをどれも2週間の間を挟んで1週間食べてもらいました。被験者にはそれらを食べることで症状が悪化する恐れがあると伝えました。ただし、シリアルバーに何が入っているかは知らせませんでした。症状が悪化するかもしれないと告げられているだけに、食べたのが小麦もグルテンも含まないシリアルバーであっても28例中8例(29%)がIBS-SSS点数の50点以上の悪化を示しました。小麦入りやグルテン入りのシリアルバーを食した後の悪化患者の割合はさぞ高かろうと思いきやそうはならず、小麦もグルテンも含まないシリアルバーを食した後と有意差がなく、それぞれ39%(11/28例)と36%(10/28例)でした。グルテンや小麦が正真正銘のIBS症状の引き金となることはあるでしょうが、悪化するという思い込みが実際にそうさせるノセボ効果の関与もあるようです2,3)。NCGS患者を募った欧州での最近の無作為化試験でも同様に胃腸症状へのノセボ効果の寄与が示唆されています7)。今回の試験の被験者の便を調べたところ、何人かはシリアルバーを指示どおりに食べておらず、グルテンや小麦がIBS病状に影響するほどそれらを摂取していなかったかもしれません3)。また、試験の種明かしをしたところで被験者のほとんどは考えや食事を変えはしませんでした2)。IBS患者のいくらかは心理的支援も含む手当てが必要かもしれない、と試験を指揮したPremysl Bercik氏は言っています2)。 参考 1) Seiler CL, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2025 Jul 1. [Epub ahead of print] 2) Despite self-perceived sensitivities, study finds gluten and wheat safe for many people with IBS / McMaster University 3) Gluten may not actually trigger many irritable bowel syndrome cases / NewScientist 4) Cabrera-Chavez G, et al. Gastroenterol Res Pract. 2016;2016:4704309. 5) Molina-Infante J, et al. Aliment Pharmacol Ther. 2015;41:807-820. 6) Aziz I, et al. Eur J Gastroenterol Hepatol. 2014;26:33-39. 7) de Graaf MCG, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2024;9:110-123.

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食物繊維の豊富な食事は動脈硬化リスクを抑制する

 野菜、穀物、豆類、その他の高繊維食品を多く摂取することが、腸だけでなく心臓の健康にも役立つことが、新たな研究で明らかになった。食物繊維の少ない食事を摂取している人では、プラークの蓄積によって動脈が狭くなる可能性の高いことが示されたという。ルンド大学(スウェーデン)心臓病学教授のIsabel Goncalves氏らによるこの研究結果は、「Cardiovascular Research」に6月16日掲載された。 Goncalves氏は、「人々の冠動脈CT血管造影法(冠動脈CTA)の画像と食事パターンを照合したところ、食事パターンは冠動脈プラークの存在だけでなく、高リスクとされるプラークの特徴にも関連していることが明らかになった」と同大学のニュースリリースで述べている。 米国心臓協会(AHA)によると、コレステロールと脂肪はプラークの形成に寄与し、プラークが原因で血流が減少したり途絶えたりするアテローム性動脈硬化症(以下、動脈硬化)につながる。今回の研究では、スウェーデンの心臓と呼吸器に関する大規模研究であるSwedish CArdioPulmonary BioImage Study(SCAPIS)に参加した50〜64歳の2万4,079人のデータを用いて、食事パターンと動脈硬化との関連が検討された。参加者は、2013年から2018年の間にこの研究に登録されており、登録時点で心臓の健康問題を抱えている者はいなかった。参加者の摂取食品に関する調査結果に基づき、抗炎症作用があるとされる食事パターンに基づいた食事指標である食事指数(DI)を算出し、DIが最も高い群(健康的な食事パターン)から最も低い群(不健康な食事パターン)の3群に分類した。また、冠動脈CTAにより冠動脈プラークの評価を行い、動脈硬化の有無や冠動脈カルシウムスコア、狭窄率など冠動脈疾患に関連する6つの指標が評価された。 解析の結果、動脈プラークが認められた割合は、DIが最も低い群で44.3%であったのに対し、DIが最も高い群では36.3%であることが明らかになった。また、50%以上の狭窄が認められた割合は、DIが最も低い群で6.0%、最も高い群で3.7%、石灰化を伴わず(非石灰化)かつ50%以上の狭窄を伴う高リスクプラークが認められたのは、それぞれ1.5%と0.9%であった。 こうした結果を受けてGoncalves氏は、「われわれの研究結果は、食物繊維の少ない不健康な食事パターンが体と代謝に変化をもたらし、それがプラークの形成につながる可能性があることを示唆している」と述べている。 研究グループは、食物繊維は健康的な食生活に大きな役割を果たすものの、心臓の健康を高めるためには、食事の他の要素も考慮する必要があると話す。論文の筆頭著者であるヨーテボリ大学(スウェーデン)のIngrid Larsson氏は、「健康を決定付けるのは、単一の食品ではなく全体的な食事パターンだ。野菜、果物、全粒穀物、食物繊維が豊富な食品、ナッツ類、低脂肪乳製品、オリーブ油などを多く摂取し、赤肉、加工肉、ポテトチップスなどのスナック菓子、甘い飲み物を控えた食生活は、高リスクプラークの少なさと関連している」とニュースリリースの中で述べている。

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マッチング直前!採用者が本当に求める○○ない人【研修医ケンスケのM6カレンダー】第4回

マッチング直前!採用者が本当に求める○○ない人さて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1回配信しています。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、皆さんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。この原稿を書いているただいまは2025年7月中旬で、久しぶりの雨の数日間を経て、ようやく晴れの日が戻ってきました。余談ですがやはり雨が続くと救急外来のWalk-Inは減りますね。皆さまいかがお過ごしでしょうか。連載がスタートして4本目。何となく私の言葉やリズム感に慣れてきた読者の方がいらっしゃると嬉しいです。改めて、この連載では当時を懐かしみながら、あの時の自分へ何を話しかけるのか、皆さんの6年生としての1年間が少しでも良い思い出になる、そんなお力添えができるように頑張って参りますので、ぜひ引き続き応援のほどよろしくお願い申し上げます。(雨上がりのじめっとした夏の日には、やっぱりジェラートでしょ!)7月にやること:採用者視点に必ず立つさて、7月は先月の予告通りマッチング、とくに面接試験について徹底攻略したいと思います。卒業資格を得て医師国家試験に合格すれば医師免許を取得できる。しかし、研修医として働くには社会人・労働者として臨床研修指定病院に雇ってもらわなければならない。当然の話ですが、この前提がマッチング攻略の基本中の基本で、大切な考え方です。毎月準備すべきことをお伝えしていますが、面接を控える方への7月のメッセージはたった1つです。「自分が選ぶ」という視点だけでなく、「選ばれる側である」という視点を忘れないこの視点で面接準備を進めてほしいです。初期臨床研修マッチングの仕組みまず、皆さんが挑むマッチング制度についておさらいから。学生は全国の臨床研修指定病院を第1〜第n希望まで登録する。病院側も「採用したい学生の順番」を提出し、Gale-Shapleyという安定マッチングのアルゴリズムを用いて、コンピューターが相互希望順位に基づいて組み合わせを決定します。これにより「お互いに最も納得できる組み合せ」が成立する仕組みです。ここからが本題です。仕組みから考えると、(とくに人気病院の)マッチングで勝つには、「応募者がどんな人か」以上に「応募者が病院にフィットするか」 が重視されることが推察されます。そこから逆算して、採用する側の視点を盛り込むことが対策には欠かせません。人を雇うリスク(みなさんは土用の丑の日に鰻に並びますか?)マッチングの仕組みをおさらいしましたが、少し脱線します。世間一般的な話として終身雇用が厳しい、と言われているのは周知の事実と思います。実際に人を雇ったことがないので綺麗な一次情報ではないのですが、株式投資をしていると学ぶことがあります。株式を保有するということはその企業のオーナーの1 人になるということです。そして簡潔に話すと、その保有した株の価格は企業の利益に応じて上下することがほとんどです。利益=売上-経費とすると、高い売上に、低い経費、という状況が最も利益が上がる時です。経費が低ければ利益は増える方に傾きますし、固定費を下げれば増える利益は安定化しやすいのは算数ですね。せっかく保有した株価が増えてほしいと思うなら、算数として固定費は下げてほしいはず。では株式会社とは誰のものでしょうか。社長?理事長?いいえ、株主のものです。話が深くなるので簡単に説明しますが、経費の中には人件費が含まれます。皆さんが研修医として働いた場合に給料を貰いますが、その給料こそが病院にとっての人件費の一部です。周りくどくなりましたが、病院にとって皆さんを採用することはリスクとも言えます。ここが学生と研修医で大きく異なるところで、マッチングにおいて重要なことです。つい昨日まで現場を知らない学生だった研修医は当然教育コストもかかり、そのための指導医の時間も必要です。なのに「せっかく採用したのに、すぐ辞めた」「まったくチームに馴染まなかった」──そんな事態は避けたい。だからこそ、病院は「辞めない人」「組織にフィットする人」を選びたいのです。「この人なら、うちでやっていけそうだ」と思ってもらうことが、面接突破には欠かせません。自分の将来像と病院の研修方針をリンクさせるこの視点を持っていると、自ずと病院の理念や研修方針を見直して面接準備をすることにつながるはずです。受験する病院ごとに必ず確認・見直しましょう。しかし、今更ではありますが病院ごとにすべてを迎合する必要はありません。医師キャリア・人生において大切な初期臨床研修の2年間なのですから、面接突破のためだけに自らの価値観や理念を我慢することはありません。きっとこれまで多くの病院を見比べたり、実習に臨む中で「手にした医師免許をどのように活用するのか/社会に役立てるか」「どんな医師になりたいのか」を考える機会があったはずです。そのプロセスとして「初期研修で何を学びたいのか」を言語化することが重要です。どの病院を受験する時も、自分の今現在として主張しましょう。その上で、それぞれの病院の方針が、自分の初期研修での目標や医師として目指すキャリアにどう当てはまりそうと期待しているのか、逆に自らは病院に対してどのような貢献ができるのかを述べるとかなり筋が通ります。表現の仕方は工夫が必要ですが、何を感じ考えているのか、は皆さんのオリジナリティで正解不正解はありません。どんな目標でも構いませんし、まだ決まっていない悩んでいる状況なら、それを主張すれば良いのです。見た目が9割!?(先日の外科学会にて。スーツはネイビー、と決めています)ここまで何を考え、主張すべきか、について述べましたが、最後にもう1つ。とくに男性の皆さん、見た目に気を配りましょう。面接時間はせいぜい15分程度。入室した瞬間の第一印象は非常に重要です。内容がどれほど充実していても、第一印象でマイナスとなれば聞いてもらえる耳を失いかねません。フェア会場や見学時、実際の面接会場でもそうでしたが、男子学生の方の身嗜みで気になってしまうことが多々ありました。面接なので当然ネクタイを締めたスーツスタイルですが、こんな方が少なくなかったのが今でも衝撃的です。そもそもネクタイをしていない/ネクタイがきちんと締まっていない着ているシャツがヨレヨレ/パンツからはみ出ているパンツが黒デニム革靴ではなくスニーカー靴下がスポーツ用/左右で色が反対髪の毛がボサボサ/唇がガサガサ猫背で声がハッキリと聞こえない同じ就職活動でも、他学部の方ほど厳しくはないのがマッチング/医学部界隈であるのはそうですが、上記は流石にあんまりです。皆さん、面接へ行くときには必ず鏡をチェック、内容+見た目の両輪を意識しましょう。今月のまとめいかがだったでしょうか。緊張することと思いますが、しっかり準備していれば大丈夫です。面接では無理に迎合する必要はないとお伝えしましたが、むしろ働き始めてからこそ、自分らしさと職場との相性が問われる重要な時期です。迎合して面接を突破したとしても結局馴染めなかった、なんて悲し過ぎます。合格したい、しなければという焦る気持ちはよくよくわかりますが、主張した方針が病院と合致しないことや、その年の受験生のキャラクターのバランスなどで、どうしても合格に至らないことだってあります。当日はまず朝きちんと起きて、遅刻なく会場に到着し、入室時にはノックを忘れず、「失礼します!」と言い忘れず、指示される前に着席しなければヨシ、としましょう。あとは天命に任せて。みなさんのご健闘をお祈り申し上げます!!

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“早期乳癌”の定義を変更、「乳癌取扱い規約 第19版」臨床編の改訂点/日本乳癌学会

 2025年6月、7年ぶりの改訂版となる「乳癌取扱い規約 第19版」が発行された。第33回日本乳癌学会学術総会では委員会企画として「第19版取扱い規約の改訂点~臨床編・病理編~」と題したセッションが行われ、各領域の改訂点が解説された。本稿では、臨床編について解説した静岡がんセンターの高橋 かおる氏による講演の内容を紹介する。腫瘍占居部位の略号表記、T4所見について再整理 日本の取扱い規約で用いられている腫瘍の局在を示すA~Eの略号について、日本独自の略号のため海外では通じず、不要ではないかという議論が以前から行われてきた。今回の改訂でも議論されたが、日本では長く使われており、簡潔で記載にも便利なことから引き続き規約に掲載することとし、対応する英語表記(UICCのAnatomical Subsites)を明記、ICDコードと齟齬のあったC‘~E‘が修正され、E、E’の区別がわかる記載も追加された(下線部分が変更点):C‘:腋窩尾部(C50.6/Axillary tail)E:中央部(C50.1/Central portion)  乳頭乳輪の下に位置する乳房中央部E‘:乳頭部および乳輪(C50.0/Nipple)  乳頭乳輪部の皮膚 臨床所見については、第18版まではT4の定義について解釈が分かれる記載となっていた。そこで今版では、「T4所見は浮腫、潰瘍、衛星皮膚結節の3つであり、皮膚固定や発赤はT4に入らない」ということがわかるような記載に変更された。またT4所見としての潰瘍について、クレーター形成の有無は問わないという意図で「潰瘍(皮膚が欠損して病変が露出した状態)」と追記された。病理編でPaget病の定義が変更、臨床医も注意が必要 臨床T因子の表について変更はなく、注釈の表現が下記のとおりいくつか整理された。・原発巣の評価方法(注1):T因子の判断材料として、従来の視触診、画像診断に、針生検を追加・Tis(注4):病理編のPaget病の定義が「乳頭・乳輪部および周囲表皮に限局したものをPaget病と主診断、乳房内に連続性に非浸潤癌を伴う場合は非浸潤癌と主診断し、Paget病の存在は所見に記入する」と変更されたことを受け、臨床編の注釈も「Paget病のほとんどはTisに分類される。まれに乳頭・乳輪部の真皮に微小浸潤もしくはそれを越える浸潤を伴うものがあり、その場合は浸潤径に応じたT分類を採用する」と変更された。・T0(注5):「視触診、画像診断で原発巣を確認できない場合。腋窩リンパ節転移で発見され乳房内に原発巣を認めない潜在性乳癌などがこれに相当する」と記載を整理・T4(注7):臨床所見と同様、T4の定義をわかりやすくするために、「真皮への浸潤のみではT4としない、T4b~T4d以外の皮膚のくぼみ、乳頭陥没、その他の皮膚変化は、T1、T2またはT3で発生してもT分類には影響しない」というUICCの注にある内容が追加された。・T4d(注8):第18版までの注釈では冒頭に「炎症性乳癌は通常腫瘤を認めず」とあったことから、腫瘤を認めないことが炎症性乳癌の必須要件のように読めてしまうという指摘があったため、「炎症性乳癌は、皮膚のびまん性発赤、浮腫、硬結を特徴とし、その下に明らかな腫瘤を認めないことが多い」と表現を変更 高橋氏はPaget病の定義の変更について、これまでPaget病と診断していた病変のうち、多くが今後は非浸潤性乳管癌(Paget病変を伴う)と診断されることとなり、Paget病の診断は減るであろうと指摘し、病理編の変更について臨床医も一度は目を通してほしいと話した。 臨床N因子についても表の変更はなく、T因子と同様に、判定材料として、従来の視触診、画像診断に、細胞診や針生検が追加されたほか、内胸リンパ節について第何肋間かを表記する場合の簡略な方法として、「Imの次に()で数字を記載する」こととした。「早期乳癌は切除可能乳癌(Stage 0~IIIA)を指す」と定義 第18版までは「Stage 0・Iを早期乳癌とする」と定義していた。これは、検診等における早期発見の概念には適していたと思われるが、国際的な臨床試験や乳癌診療ガイドラインとの整合性を考慮し、第19版では「早期乳癌は切除可能乳癌(Stage 0~IIIA)を指す」と定義が変更された。高橋氏は私見として「検診が目的とする“早期発見”は、“早期乳癌の発見”ではなく、乳癌を0期やI期などの早い段階で見つけることだと考えればよいのではないか」と話した。ただし、検診成績の評価などの際には、“早期乳癌の比率”といった表現は誤解を招く恐れがあり、今後は“0期・I期の比率”などの表現に変えていく必要があるとした。治療の進歩に合わせて第2章を変更 第2章の治療の記載法については、乳房の術式の1つとして新たに保険適用されたラジオ波焼灼術(RFA)が追加された。 リンパ節の切除範囲の表については、英語表記を追加するなど整備し、新たな項目として腋窩リンパ節サンプリング(AxS)を加えた。また、「Rotterリンパ節は郭清しない場合でもレベルIIまで郭清、Ax(II)としてよい」という注釈が加わり、新たな手法であるTargeted Axillary Dissection(TAD)およびTailored Axillary Surgery(TAS)についても、“付記”という形で追加されている。 再建の術式については、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の用語委員からの助言を受けて、再建方法として腹直筋皮弁(有茎)、腹直筋皮弁(遊離)、深下腹壁動脈穿通枝皮弁、大腿深動脈穿通枝皮弁を加え、英語表記も追加された。 手術以外の治療法では、免疫療法が、薬物療法の一項目として追加された。

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敗血症性ショックは指で評価!末梢灌流の評価が臓器障害を減らす【論文から学ぶ看護の新常識】第24回

敗血症性ショックは指で評価!末梢灌流の評価が臓器障害を減らす敗血症性ショックにおいて、今や重要な指標の1つとなっている「末梢灌流」。その臨床的有用性が注目されたきっかけは、Glenn Hernandez氏らが6年前に行った研究だった。今回は、JAMA誌2019年2月19日号掲載のこの報告を紹介する。末梢灌流状態と血清乳酸値を標的とした蘇生戦略が、敗血症性ショック患者の28日死亡率に与える影響:The ANDROMEDA-SHOCKランダム化比較臨床試験研究チームは、成人の敗血症性ショック時の末梢灌流を標的とした蘇生が、血清乳酸値を標的とする蘇生と比較して、28日死亡率を低下させるかどうかを検証することを目的に、多施設共同、非盲検ランダム化比較臨床試験を実施した。2017年3月から2018年3月にかけて南米5カ国28施設で行われ、最終追跡調査は2018年6月12日に完了した。対象は、敗血症性ショックと診断され、ICUに入室した成人患者424名。8時間の介入期間中に、毛細血管再充満時間(CRT)の正常化を目標とする群(末梢灌流群、212名)と、乳酸値を2時間あたり20%以上の割合で低下または正常化させることを目標とする群(乳酸値群、212名)に無作為に割り付けた。主要評価項目は、28日時点での全死因死亡率とした。副次評価項目は、90日時点での死亡、ランダム化後72時間時点での臓器機能不全(SOFAスコアによる評価)、28日以内の人工呼吸器非装着日数、腎代替療法非実施日数、昇圧薬非使用日数、集中治療室滞在期間および入院期間とした。主な結果は以下の通り。28日目までに、末梢灌流群では74名(34.9%)、乳酸値群では92名(43.4%)が死亡した。ハザード比:0.75(95%信頼区間[CI]:0.55~1.02)、p=0.06、リスク差:−8.5%(95%CI:−18.2%~1.2%)。末梢灌流を標的とした蘇生は、72時間後の臓器障害がより少ないことに関連していた。平均SOFAスコア:5.6 vs.6.6(SD:4.3 vs.4.7)、平均差:−1.00(95%CI:−1.97~−0.02)、p=0.045。末梢灌流群では、最初の8時間以内に投与された蘇生輸液の量がより少なかった。平均差:−408mL(95%CI:−705~−110)、p=0.01。その他の6つの副次評価項目に有意な差はなかった。敗血症性ショック患者において、毛細血管再充満時間の正常化を目標とした蘇生戦略は、血清乳酸値の正常化を目標とした戦略と比較して、28日時点での全死因死亡率を統計的に有意に低下させなかった。院内で誰もが遭遇しうる重篤な敗血症性ショック。その早期治療は極めて重要です。今回ご紹介する2019年発表の論文は、蘇生目標を「毛細血管再充満時間(CRT)の正常化」と「血中乳酸値の正常化」のどちらにおくべきかを比較した、重要な国際ランダム化比較試験です。結果として、主要評価項目である28日死亡率には統計的な有意な差は認めなかったものの、CRTを目標とした群では、72時間時点での臓器障害が有意に少なく、さらに蘇生初期の輸液量も少なかったという、興味深い結果でした。すなわち、特別な検査機器なしにベッドサイドで即座に判断できるCRTが、敗血症性ショック治療における重要な評価指針となる可能性が示されたのです。この研究におけるCRTの測定法は、右手人差し指の指先の腹(指紋側)をスライドガラスで10秒間圧迫し、色が戻るまでに3秒を超えた場合を異常と定義しています。日本で一般的に行われる「爪床を5秒以上圧迫し、色が戻るまでに2秒を超えると異常」とは異なる点には、ご注意を!本論文は2019年と少し古いですが、CRTの臨床的有用性を示唆した画期的な研究です。現在、さらに大規模な後続研究「The ANDROMEDA-SHOCK-2」が進行中であり、その結果が待たれます!論文はこちらHernandez G, et al. JAMA. 2019;321(7):654-664.

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MRがこの1年で3,000人減少、かつての花形の職業は今…【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第156回

皆さんの肌感では、MR(医薬情報担当者)の情報提供活動は増えていますか? 減っていますか? 年に1度のMRの状況について調査した結果がMR認定センターより発表されました。かつての花形の職業に大きな変化が生じています。MR認定センターは7月15日、4月に実施したMRの実態や教育研修に関する調査結果をまとめた25年度版MR白書を公表。24年度のMR数は前年度より3073人減の4万3646人に減り、23年度(同2963人減)に続いて3000人規模の減少となった。要因としては「MRを多数雇用してきた企業での早期希望退職の影響が大きかった」と分析する。MR数は13年度以降、減少傾向が続き、今回の下げ幅は20年度(3572人減)に次ぎ大きかった。調査に回答した199社のうち20%以上MR数を減らした会社は19社に上った。(2025年7月16日 RISFAX)MRはここ10年ほどで役割や働き方がもっとも大きく変化した職業の1つといえるかもしれません。医薬品に添付文書が封入されなくなり、医薬品情報の入手はインターネット経由が主流になりました。過度な接待が注目を浴びて規制が設けられたり、製品説明会のお弁当額に上限が設けられたりもして、医師と気軽に話せる機会が減りました。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行時は医療機関に訪問規制が設けられ、とうとう医師に会うこともままならなくなるなど、さまざまな環境の変化がありました。それに伴い、製薬会社のMRの役割や業務が変化しています。私が薬剤師として社会に出たのはもう20年も前になりますが、その頃のMRは薬学部の学生だけでなく、ほかの学部からも就職希望が殺到する花形の職業でした。今は花形ではないというわけではないのですが、いかんせん新卒採用が減り続けています。昨年度のMR認定試験合格者数は1,137人で、5年前の2分の1、10年前の4分の1程度に減っています。「MR白書」では、MR認定センターが製薬会社約200社にアンケート調査を実施し、MRを取り巻く環境や業務の実情、その変遷が取りまとめられています。この調査は毎年実施されており、「2001年の開始以来、歴史的にも調査規模としても製薬業界全体のMRの実態を示す静態調査」とMR認定センター自らがうたっているように、「MRや医薬品情報提供の今」が垣間見えます。2025年度版MR白書では、以下のようなことが報告されています。昨年に比べ、MR数は3,073名(6.6%)減であった。1,000名以上の大きな会社での早期希望退職の影響があったと考えられる。新卒採用をした会社は34.3%であった。コントラクトMRは横ばい。経験者で即戦力となるMRの役割は大きい。薬剤師資格を有するMRは、MR数と同様に減少傾向が続き、過去最低となった。製薬会社のMRがいなくなることはないでしょうが、これらの結果を見るとこれから先もMRは減少傾向となることは間違いないように思います。医師への食事提供ルールが来春から厳格化されるなど、さらなる自主規制が進められていますが、個人的には、未承認薬の情報提供の規制など、新しい医薬品や既存の医薬品の未承認薬効の情報開示などに関しては、私は今の規制はちょっと厳しすぎるのではないかとも思っています。2026年度には、新しいMR認定試験が開始されます。インターネットによる情報提供が定着してきた今、MRが何を担う職業になるのか、医薬品情報を使用する薬剤師としては少し気になるところです。

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第87回 ベルヌーイ分布とは?【統計のそこが知りたい!】

第87回 ベルヌーイ分布とは?医療統計の分野において、ベルヌーイ分布は、治療の成功や失敗、病気の有無など、2値の結果を伴う臨床試験のデータ分析における基礎的な概念です。今回は、そこから導かれる結果を理解する必要があるベルヌーイ分布を解説します。■ベルヌーイ分布とは?ベルヌーイ分布は、統計学における最も単純な確率分布の1つで、スイスの数学者ヤコブ・ベルヌーイにちなんで名付けられました。この分布は、1回の試行(ベルヌーイ試行と呼ばれる)で「成功(1)」または「失敗(0)」の2つの結果のみを持つ離散分布です。この分布の重要なパラメータは、各試行における成功の確率pで、失敗の確率は1-pです。■ベルヌーイ分布の特徴1)2値の結果正確に2つの結果をモデル化します。臨床研究では、新薬の効果があった(成功)かどうか(失敗)などのシナリオに関連します。2)パラメータp成功の確率を表します。pを知ることで、分布の平均(期待値)と分散を決定できます。ベルヌーイ分布の平均は、(pの文字の上にバーが付きます)と表されます。また、分散はp(1-p)です。3)臨床試験での応用臨床試験では、ベルヌーイ分布を理解し適用することで、研究者と医療専門家はコントロールされた条件下での治療のリスクと効果を評価するのに役立ちます。■ベルヌーイ分布と二項分布ベルヌーイ試行を繰り返し行い、その成功回数の分布が二項分布となります。■臨床設定でのベルヌーイ結果の解釈医療の専門家は、治療の成功率が80%と報告されるような試験結果に遭遇するかもしれません。ベルヌーイ分布を通じてこれを解釈する方法を知ることは、情報に基づいた治療決定を行う上で重要です。これは、任意の患者に対して治療が成功する確率が80%であることを意味します。■制限と考慮事項ベルヌーイ分布は、重要な洞察を提供する一方で、限界もあります。複数のカテゴリーを持つ結果や連続的なデータを扱うことはできませんし、試行間の独立性を仮定していますが、この仮定は臨床設定で常に成立するわけではありません。その単純さにもかかわらず、ベルヌーイ分布は、2値の結果を含む臨床試験データの統計分析において重要な役割を果たします。これにより、治療の成功または失敗の可能性を理解し、臨床決定や患者とのコミュニケーションに役立てることができます。基本的な統計概念を理解することで、臨床研究を適切に評価し、医療実践に研究結果を応用することが可能になります。研究結果の読解と解釈を行う場合、ベルヌーイ分布のような概念の確かな理解が大切になります。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第56回 正規分布とは?第75回 確率分布とは?「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その1)

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早期手術を受けなかったDCIS、同側浸潤性乳がんの8年累積発生率/BMJ

 診断後早期(6ヵ月以内)に手術を受けなかった非浸潤性乳管がん(DCIS)患者のコホートにおいて、同側乳房浸潤がんの8年累積発生率は8~14%の範囲であることが、米国・デューク大学医療センターのMarc D. Ryser氏らによる観察コホート研究の結果で示された。同国のDCISに対する現行ガイドラインのコンコーダントケア(concordant care、患者の意に即したケア)では、診断時に手術を行うことが義務付けられている。一方で、手術を受けなかった場合の長期予後については、ほとんど明らかになっていなかった。今回の検討では、将来の浸潤がんのリスクは、疾患(腫瘍)関連および患者関連の両方の因子と関連していたことも示され、著者は、「手術を受けなかったDCIS患者集団に対する、効果的なリスク層別化ツールと共同意思決定が不可欠である」とまとめている。BMJ誌2025年7月8日号掲載の報告。診断時年齢中央値63歳1,780例を追跡 研究グループは、初期手術を受けなかったDCISの女性患者における同側浸潤性乳がんリスクを明らかにするため、2008~15年に、原発性DCISと診断された患者の医療記録および全米がんレジストリーから直接抽出したデータを用いて、観察コホート研究を行った。 米国外科学会と共同で行われた2018 Commission on Cancer Special Study on DCISの認定施設1,330ヵ所を対象とし、針生検で原発性DCISと診断され、診断後6ヵ月時点で生存しており、浸潤性乳管がんは認められず手術を受けていなかった女性患者1,780例についてデータが収集された。 主要評価項目は同側浸潤性乳がん、副次評価項目は乳がん死であった。 進行中のアクティブモニタリング試験の適格基準に基づくリスク群(低リスク群[画像診断検出時40歳以上、核グレード分類Grade1/2、HR陽性のDCIS]、高リスク群[その他の場合])別によるサブグループ解析も行った。 1,780例の診断時年齢中央値は63歳、追跡期間中央値は53.3ヵ月であった。腫瘍グレードは898/1,533例(59%)が低~中グレードであり、HR陽性は1,342/1,530例(88%)であった。675/1,780例(38%)は6ヵ月以降に少なくとも1回の同側乳がん手術を受けていた。8年累積発生率10.7%、低リスク群は8.5%、高リスク群は13.9% 全1,780例において、同側浸潤性乳がんは115件(6.5%)、乳がん死は29例(1.6%)で発生した。同側浸潤性乳がんの8年累積発生率は10.7%(95%信頼区間[CI]:8.4~12.8)であった。 浸潤性乳がんの発生率は、疾患関連および患者関連の因子によって異なっており、同側浸潤性乳がんの8年累積発生率は、低リスク群の女性(650例)では8.5%(95%CI:4.7~12.1)、高リスク群の女性(833例)では13.9%(10.5~17.2)であった。 8年疾患特異的生存(DSS)率は、全集団では96.4%(95%CI:95.0~97.9)、低リスク群では98.1%(96.7~99.6)であった。

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合格直結!テスレクDigest

先週配信の問題はこちら!テスレクってどんなサービス?最小限の労力で最大限に効果の出る過去問演習を医学生の皆様に提供すべく医師国家試験の過去問から直近5年分2,000問を徹底的に分析しました。この2,000問を無理なく一定ペースで演習するための自学自習用教材と、厳選した480問分についてはテスト演習とレクチャー動画のセットとして配信。更に時期が進むにつれて未知の問題への対応力アップを目指したアレンジ問題も準備。半年使って5年分を3周することも、実習や卒業試験終了後の11〜12月からの駆け込み短期集中で合否を分ける重要テーマを学習することも可能です。「国試の過去問演習はテスレクで十分」正しい演習が合格に直結する、そんなありそうでなかった教材です。2,000問を3ヶ月で1周のペースを基準とした週次の演習リストが提示されるので、ご自身で計画を立てる必要はありませんテストは厳選した問題を1回あたり20問、無理なく力試しのできる分量ですレクチャーはただ問題を解説するだけでなく、必要なコア知識や関連問題までカバー。だから1問でそれ以上の学びがあります演習→テスト→レクチャーというシンプルでありながら垂れず、迷わず、医師国家試験合格に必要な過去問演習をリズムよく終わらせることを、テスレクは可能にします。

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テスレクのお申し込み

先週のテスレクDigest本ページからテスレクのお申し込みを行うことができます。サービス内容をお読みになられた上でページ下部のフォームからお申し込みください。ご不明な点はigakusei-prj@carenet.co.jpまでお問い合わせください。演習→テスト→レクチャー、自然と学習リズムが生まれますテスレクはE-ラーニング形式の国試対策教材です。合格に必要な過去問演習を確実に十分となる質と量の演習を提供します。受講者の方には(1)直近5年分2,000問を演習し尽くしたい人のための『迷わない週次演習リスト』(2)反復演習はこれ、時間が無くてもこれ『厳選480問テスト&レクチャー』(3)浅すぎず深すぎず、国試突破に必要十分『オリジナル解説テキスト』これら3つの教材がE-ラーニングシステム上で配信されます。カード登録や自動課金不要で14日間無料トライアルが可能です。学習効率最大化の秘訣は、過去問2,000問の文字通り徹底分析直近5年分の過去問演習は医師国家試験突破に欠かせない学習ですが、ただ闇雲にこなすだけでは時間効率や学ぶべきポイントの消化の観点で思わぬ落とし穴に遭遇しかねません。テスレクはまず5年分の過去問全問を漏らさず分析し、重点的に反復すべき問題や流して良い問題などに分類。これをベースに、合格に必要な過去問演習の全てを提供。半年かけてじっくり、短期間で全集中…あなたの為の国試対策を実現させます。テスレク受講お申し込みについてテスレクはケアネットが提供する医師国家試験対策のための学習サービスです。CareNet. comに会員登録された医学生の方を対象としております。提供内容テスレクはe-ラーニングシステム上で提供されます申し込みが済んだ方にe-ラーニングシステムのアカウントを発行します遅れて受講を始めても、配信済みのテストとレクチャーを各自のペースで利用することができます5年分の過去問2,000問を一定のペースで演習するための週単位の課題リストが配信されます5年分の過去問の中から重要な480問を厳選し、1回20問のテストとして24セット配信されます各テストに対応し、コア知識や関連問題までカバーするレクチャー動画と解説テキストが配信されますお支払いテスレクの受講料は¥66,000(税込)ですお申し込みから14日間無料で利用可能、自動での課金などはありませんお支払い方法はクレジットカード決済です無料トライアル期間終了後は、受講料をお支払いいただくことで2026年2月末日までテスレクにアクセス可能なアカウントを発行します先週のテスレクDigest

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HR+/HER2-乳がんで術後S-1が本当に必要な再発リスク群は?/日本乳癌学会

 経口フッ化ピリミジン系薬剤S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)は、POTENT試験によって、HR+/HER2-乳がんに対する標準的な術後内分泌療法に1年間併用することで再発抑制効果が高まることが示され、2022年11月に適応が拡大した。しかし、POTENT試験の適格基準はStageI~IIIBと幅広く、再発リスク群によっては追加利益が得られないという報告もあるため、S-1の追加投与が本当に必要な患者に関する検討が求められていた。名古屋大学医学部附属病院の豊田 千裕氏らの研究グループは、S-1適応拡大以前の症例によるPOTENT試験に準じた適格基準別の予後を比較してS-1追加投与の意義について検討し、その結果を第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。 まず、名古屋大学医学部附属病院における、HR+/HER2-乳がんの術後補助療法としてのS-1併用の現状を報告した。S-1併用の現状・2022年9月~2024年9月に根治術を施行した原発性乳がんのうち、ER+/HER2-浸潤性乳がんのPOTENT適格(かつmonarchE不適格)で、術後補助療法として実際にS-1を併用したのは54例であった。・年齢中央値は56歳、観察期間中央値は17ヵ月、周術期化学療法施行が22.2%であった。POTENT試験の適格が79.6%、一部適格(2)が11.1%、一部適格(1)が5.6%、その他3.7%であった。・現在もS-1内服中が48.1%、減量なく完遂が24.1%、一段階減量で完遂が16.7%、中止が11.1%であった。中止理由は薬剤性肺炎または放射線肺臓炎疑い、肝機能異常(Grade2)、皮疹(Grade2)、悪心(Grade1/2)であり、Grade3以上の重篤な有害事象は認めなかった。・現時点で再発症例は認めていない。 小括として、S-1併用療法においてGrade3以上の重篤な副作用は認められなかったことや完遂率の高さについて触れたうえで、後半では名古屋大学医学部附属病院におけるS-1適応拡大前のHR+/HER2-乳がん症例(=S-1非併用症例)のPOTENT試験に準じた適格基準別の予後について報告した。S-1適応拡大前の症例における予後比較・2017年11月~2022年11月に根治術を施行したStageI~IIIBのHR+/HER2-浸潤性乳がんのうち、術後補助療法を施行して追跡可能であったのは520例であった。年齢中央値は54歳、観察期間中央値は53ヵ月であった。・POTENT試験の適格基準に準じて分類した結果、適格群42.3%、一部適格(2)群7.1%、一部適格(1)群3.7%、適格なし群46.7%であった。そのうち周術期に経静脈的化学療法を施行した患者はそれぞれ45.5%、24.3%、0%、0.4%であった。・5年全生存(OS)率は、適格群96.8%、一部適格群92.6%、適格なし群98.1%で有意差は認めなかった。一方、5年無病生存(DFS)率はそれぞれ90.2%、98.2%、98.9%と適格群では適格なし群よりも有意に不良であり(p<0.001)、適格群では再発抑制を目的とした術後補助療法の必要性が示唆された。・全体集団をPOTENT試験の追加解析の複合リスク評価に応じてgroup1(低リスク群)、group2(中間リスク群)、group3(高リスク群)の3群に分類したサブグループ解析では、5年OS率はgroup1が97.8%、group2が96.9%、group3が97.9%で有意差は認めなかった。一方、5年DFS率はそれぞれ98.5%、89.2%、83.8%とgroup3では有意に不良であり、高リスク群では再発抑制を目的とした術後補助療法の必要性が示唆された。・POTENT適格患者からmonarchE適格患者(腋窩リンパ節転移数が多いハイリスク患者)を除いたnon-monarchE群の5年OS率は、group1が97.7%、group2が87.8%、group3が78.8%であり、non-monarchE群でも中間および高リスク群で不良であった。・non-monarchE群を複合リスク別に分類し、術後の点滴静注化学療法の有無で比較した場合のDFS率は、group1では化学療法ありのグループのほうが不良な傾向にあったが(p=0.07)、group2および3では差を認めなかった(p=0.349およびp=0.618)。・non-monarchE群で術後の点滴静注化学療法を行わなかった場合は、group1のDFSが良好であった。 これらの結果より、豊田氏は「本研究は観察期間が短く他病死も多かったことから、今後も長期フォローアップが望まれる」としたうえで、「HR+/HER2-乳がんにおける再発高リスク群では、術後補助療法にS-1を併用することで再発率を有意に低下させる可能性がある。患者背景やリスク評価を踏まえた適応選択が、S-1補助療法の最大の効果を引き出すために重要」とまとめた。※POTENT試験の適格基準:以下の条件を満たすStageI~IIIBの症例

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HIV・結核・マラリア対策、1ドル投資で19ドルの健康の利得可能/Lancet

 HIV、結核、マラリア対策への継続的な投資は、健康上の大きな成果と高い投資効果をもたらす可能性があり、これらを実現するには各国の支出の増加を継続し、2025年に予定されている世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の増資を含めた幅広い外部資金の維持が不可欠であると、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのTimothy B. Hallett氏らが、世界規模のモデリング研究の結果を報告した。持続可能な開発目標(SDGs)には、2030年までにHIV、結核、マラリアの流行を終息させることが含まれている。この目標達成まで残り5年となり、グローバルファンドが2027~29年のプログラムへの資金調達を行う予定であることから、継続的な投資によって何が達成できるかを明確にすることが求められていた。Lancet誌オンライン版2025年7月3日号掲載の報告。グローバルファンド支援国のHIV、結核、マラリア対策に必要な財源を推計 研究グループは、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、ストップ結核パートナーシップ(Stop TB Partnership)、および世界保健機関(WHO)によって策定された世界計画に基づき、グローバルファンド支援国におけるHIV、結核、マラリア対策に必要な財源を推定した。 今後数年間に利用可能な財源の推計では、これら3疾患に対する各国の支出が一般的な政府支出の伸びに沿って増加し、グローバルファンドが追加で180億ドルを拠出し、その他の開発援助が2020~22年の平均と実質ベースで同水準になると仮定した。 グローバルファンド支援対象国における影響(総死亡率および罹患率への影響を含む)を定量化するため、3疾患それぞれの疫学モデルと費用モデルを用いて定量化。投資収益率(ROI)は、健康の本質的価値と、罹患および早期死亡のリスク低減による直接的な経済便益の両面を考慮して算出した。 分析は、2023年までの入手可能な最新のデータを使用し2024年末に完了した。予測期間の中心は2027~29年。この期間の具体的な拡大計画や資金調達はまだ確保されておらず、グローバルファンド第8次増資によって調達される資金の大半が使用される期間であった。2030年までに3疾患の死亡率削減の目標は、ほぼ達成可能 2027~29年における3疾患に対する総資源需要は、1,406億ドル(米ドル)と推定された。このうち、79%に当たる1,113億ドルは、国内財源(697億ドル)、グローバルファンド(180億ドル)、その他の外部援助(236億ドル)から賄えると試算された。これらの利用可能な資源を最適に活用することで、2027~29年に2,300万人の命を救い、4億件の症例と新規感染を回避できる可能性がある。 3疾患の合計死亡率の推移は、2030年のSDGs達成目標に近づくと予測された(2030年の目標と2029年末の予測との差は、正規化された総死亡率の1.5~15.5%の間)。各国の平均寿命の格差は2029年までに7%縮小し、2027~29年における入院日数は1億8,900万日、外来受診回数は5億7,200万回減少し、11億ドルの節約となることが示され、1ドルの投資に対して、最大19ドルの健康の本質的価値または3.5ドルの直接的な経済利益が得られる可能性がある。

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フィジシャン・アシスタントによるケアの質への影響は?/BMJ

 英国・ノッティンガム大学のNicola Cooper氏らは、フィジシャン・アシスタント(Physician Assistant:PA)のケアの質への影響を明らかにする目的で、PAによるケアと医師によるケアを定量的に比較した研究についてシステマティックレビューを行い、エビデンスは限られており、診断前の状況でPAが間接的な指導の下で業務を行うことは、安全性または有効性の点で支持されるものではないことを報告した。PAは、特定の専門分野や地域における医療不足に対応するため、米国で導入された。英国では、最初のPAが2007年にパイロットプログラムを卒業したが、とくに「医師の代理」としての役割を果たすことに関してPA制度の導入に懸念が示されていた。著者は、「PAの監督体制と業務範囲に関する国のガイドラインを設けることで、PAの安全かつ効果的な業務を行えるようにすることができる」とまとめている。BMJ誌2025年7月3日号掲載の報告。PAによるケアvs.医師によるケア、定量的に比較した研究をレビュー 研究グループは、主要な医学電子データベースであるMedlineおよびEmbaseを包括的に検索するとともに、Google Scholarを用い検索語を「impact of physician assistants」として最初の200件に限定して検索を行った。 適格基準は、言語が英語で、2005年1月~2025年1月に発表され、先進国においてPAによるケアと研修医を含む医師によるケアを定量的に比較した実証研究であった。アウトカムは、Institute of Medicineによる質の定義に基づくケアの成果(安全性、有効性、患者中心性、適時性、効率性、公平性)とした。 適格基準を満たした研究は、プライマリケア、セカンダリケア、病院におけるPAと研修医の比較、診断/パフォーマンス、費用対効果に分類された。 2人の評価者が独立して、研究デザイン、サンプル、方法および結果に関するデータを抽出するとともに、各研究についてバイアスリスク評価ツールを用いた。 解析対象となった研究には異質性があるため、メタ解析は行わず主要な結果についてナラティブに統合した。各アウトカムに関するエビデンスの信頼性は、関連研究の数と質、および類似する研究間の結果の一貫性に基づいて評価された。PAのケア、直接監督下で診断後の場合は安全かつ効果的 検索により3,636報が特定され、タイトルと抄録による最初のスクリーニングで167件が候補となり、全文スクリーニングの結果、最終的に40件の研究が解析に組み込まれた。 これらの研究の多くは、質の低い後ろ向き観察研究であった。40件中31件が米国、4件がオランダ、4件が英国、1件がアイルランドで実施されたもので、新型コロナウイルス感染症流行以後のデータはなかった。 多くの研究で最も一貫性のある結果が得られたのは、PAが直接の監督の下で診断後のケアに従事している場合に安全かつ効果的に業務を行っているという研究であった。患者満足度については、PAと医師の間に差は認められなかった。 医療チームにPAを加えることはケアへのアクセス向上につながるが、これはPAという職種が持つ役割の固有の貢献というより、医療スタッフ数増加のメリットを反映している可能性が示唆された。 費用対効果に関するエビデンスは限られていた。英国では、社会経済的に恵まれない地域に住んでいる患者ほどPAによる診察を受ける傾向があった。

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第19回 最新研究が警鐘!「いつものあの食べ物」に潜む健康リスクとは

普段、私たちが何気なく口にしているハムやソーセージ、甘いジュースや菓子パン。手軽で美味しいこれらの食品が、実は私たちの健康に静かな影響を及ぼし続けている…。2025年6月に医学雑誌Nature Medicine誌に発表された論文1)は、加工肉、砂糖入り飲料、トランス脂肪酸といった「超加工食品」の成分が、さまざまな病気のリスクを高めることを改めて浮き彫りにしています。今回は、この研究の結果を、私たちの生活に身近な例を交えながら解説していきます。「少しだけ」でも危ない? 加工肉・甘い飲み物・トランス脂肪酸の新常識この研究がとくに注目されるのは、非常に慎重な分析手法を用いている点です。多くの研究結果を統合し、あえて控えめに見積もってもなお、健康への悪影響が確認された点に大きな意義があります。ここからは、この研究で分析された、加工肉、甘い飲み物、トランス脂肪酸、それぞれのリスクについてみていきましょう。(1)加工肉のリスクまず研究では、ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉を日常的に食べることが、2型糖尿病や大腸がんのリスクを高めると結論付けています。具体的には、毎日わずかな量(0.6〜57g)を食べるだけでも、2型糖尿病のリスクが平均で11%以上、大腸がんのリスクが平均で7%以上高まることが示されました。さらに衝撃的なのは、そのリスクの増え方かもしれません。摂取量が増えるほどリスクは上がり続けますが、とくに「0から1のところ」でリスクが最も急激に上昇することがわかりました。これは、「少しなら安全」という考えが通用しない可能性を示唆しています。たとえば、平均的に約50gの加工肉を毎日食べる人は、2型糖尿病のリスクは約30%、大腸がんのリスクは約26%増加すると試算されています。これは、標準的なサイズのホットドッグ1本、ソーセージ2〜3本、ベーコン(スライス)2枚程度に当たります。アメリカに住む私には耳の痛い話で、日本でもこのぐらいの量はさまざまな食事を通して登場しているかもしれません。(2)砂糖入り飲料のリスク炭酸飲料やスポーツドリンク、甘い缶コーヒーやジュースといった砂糖入り飲料も同様です。これらの飲料を日常的に飲むことで、2型糖尿病や心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクが高まるという結果が報告されています。こちらも比較的少量の摂取からリスクは上昇し、1日当たり250g(大きめのコップ1杯強)の摂取で、2型糖尿病のリスクは約20%増加すると報告されています。喉が渇いたときに、水やお茶の代わりに甘い飲み物を選ぶ習慣がある方は、注意が必要かもしれません。(3)トランス脂肪酸のリスクまた、今回の研究では、「食べるプラスチック」とも呼ばれるトランス脂肪酸についても分析されました。マーガリンやショートニング、それらを使ったパン、ケーキ、ドーナツ、揚げ物などに含まれることのある成分です。結果は、トランス脂肪酸の摂取が虚血性心疾患のリスクを明確に高めることを裏付けています。摂取エネルギーのわずか0.25〜2.56%をトランス脂肪酸から摂るだけで、リスクは平均3%以上高まりました。現在はWHOもそのリスクを訴え、世界中で使用を制限する動きが広がっています。この研究結果は、その動きの正しさを改めて後押しするものといえるでしょう。なぜ体に悪いのか、その仕組みとは?では、なぜこれらの食品は体に良くないのでしょうか。論文では、いくつかのメカニズムが指摘されています。たとえば加工肉は、塩分や飽和脂肪酸が多いだけでなく、保存のために使われる亜硝酸ナトリウムなどの添加物が、体内で有害物質に変化する可能性が指摘されています。また、砂糖入り飲料の過剰な糖分は、体内の炎症を引き起こしたり、内臓脂肪を増やしたりします。さらに、これらの超加工食品は、共通して腸内環境のバランスを崩し、悪玉菌を増やしてしまう可能性なども指摘されています。少しの気配りで未来の健康を守る今回の研究結果は、加工肉、砂糖入り飲料、トランス脂肪酸の摂取を控えるべきだという、これまでの食事ガイドラインを科学的に強く支持するものとなっています。これらの食品が広く消費され、関連する病気が多いことを考えると、決して軽視はできません。もちろん、この研究にも限界はあります。食生活の自己申告に基づく観察研究であること、他の生活習慣の影響を完全に排除できないことなどです。しかし、私たちの健康を守るための重要なヒントを与えてくれているとも思います。日々の食事の選択が、10年後、20年後の自分の健康がどうあるかを左右します。普段の買い物や食事の際に、砂糖入り飲料を水やお茶に変えてみたり、加工食品を新鮮な食材に置き換えてみたりと、日々の食生活を少し見直してみてもいいかもしれません。その小さな一歩が、未来の健康への大きな投資となるのかもしれません。参考文献・参考サイト1)Haile D, et al. Health effects associated with consumption of processed meat, sugar-sweetened beverages and trans fatty acids: a Burden of Proof study. Nat Med. 2025 Jun 30. [Epub ahead of print]

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看護師の不眠に解決策!? シフト勤務に特化したデジタル認知行動療法の効果【論文から学ぶ看護の新常識】第23回

看護師の不眠に解決策!? シフト勤務に特化したデジタル認知行動療法の効果交代勤務の看護師が抱える不眠に対し、デジタル認知行動療法(CBT-I)「SleepCare」が有効であることが、Hanna A. Bruckner氏らの研究結果から示された。International Journal of Nursing Studies誌オンライン版2025年5月7日号に掲載された。交代勤務睡眠障害のある看護師の不眠症に対するデジタル認知行動療法の有効性:ランダム化比較試験研究チームは、交代勤務睡眠障害に罹患している看護師に対し、不眠症を軽減するためのデジタル認知行動療法プログラム「SleepCare」の有効性を調査することを目的にランダム化比較試験を行った。交代勤務睡眠障害に罹患している看護師74名を、「SleepCare」介入群と、ドイツ睡眠学会が公開している交代勤務に特化した心理教育群に割り当て、効果を比較した。主要評価項目は、ランダム化前のベースライン時、8週間後、および3ヵ月後の不眠症の重症度(不眠症重症度指数[Insomnia Severity Index]で測定)とした。副次評価項目として、メンタルヘルス指標、および長期的な毛髪中コルチゾール濃度を評価した。主な結果は以下の通り。Intention to treat(治療意図)に基づく共分散分析により、介入群は心理教育群と比較して、介入直後(d=1.11、95%信頼区間[CI]:0.7~1.6)および追跡調査時(d=0.97、95%CI:0.5~1.4)の両方で、より大きな不眠症重症度の軽減を示した。この結果は、不眠症重症度指数において、それぞれ5.0ポイントおよび5.3ポイントの群間差に相当する。参加者の56%が、6セッションのうち5セッション以上を完了し、これらの介入完了者においては、それぞれd=1.49およびd=1.28と、より大きな効果が示された。統計的に有意な効果は、睡眠関連の指標では認められたが、ストレスや抑うつといった他のメンタルヘルス指標では認められなかった。「SleepCare」群では、介入後に毛髪中コルチゾール濃度の低下が認められた(V=82、p=0.008、Δ=−1.8 pg/mg、ベースラインから44%減少)。「SleepCare」は、不眠症の症状を臨床的に意味のあるレベルまで軽減する上で有効であった。また、看護師の交代勤務に対するニーズに応えるための特定のエクササイズを取り入れ、不眠症のための認知行動療法を応用した、最初のデジタル配信プログラムの一つでもある。介入完了者においては、大幅に大きな効果が認められたことから、治療アドヒアランス(治療の継続・遵守)を促進するための効果的な戦略の開発が必要である。交代勤務に従事する看護師の方々にとって、交代勤務睡眠障害は深刻な問題ですが、多忙かつ不規則なスケジュールから従来の対面式の認知行動療法(CBT-I)は利用しにくいという課題がありました。本研究で検証されたデジタルCBT-I「SleepCare」は、この状況に対する画期的なアプローチと言えます。交代勤務特有のニーズに合わせて調整され、時間や場所を選ばずに利用できるこのプログラムは、実際に不眠重症度を臨床的に有意に改善しました。とくに、介入完了者でより高い効果が認められたこと、そして客観的なストレス指標である毛髪コルチゾール濃度が改善したことは注目に値します。一方で、ストレスや抑うつといった睡眠関連以外の精神的健康課題への直接的な効果は認められず、治療アドヒアランスの向上が重要であるという点は、今後の課題です。これらは近年のデジタル系の研究全体でよく述べられている限界点です。この研究で示されたアプローチは、私たちの日常にもヒントを与えてくれます。例えば、夜勤明けはサングラスをかけて帰宅する、夜勤の勤務後半にはカフェインなどの刺激物を避ける、といった工夫が睡眠障害の予防につながるでしょう。本研究は困難な勤務環境にある私たち看護師の睡眠問題に対し、実用的かつ効果的なデジタルヘルスソリューションの可能性を力強く示した点で、非常に価値が高いと言えます。論文はこちらBruckner HA, et al. Int J Nurs Stud. 2025 May 7. [Epub ahead of print]

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