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抗結核薬耐性の最大リスク因子は「2次抗結核薬の投与歴」

 超多剤耐性結核(XDR-TB)を含む抗結核薬耐性の最大のリスク因子は、「2次抗結核薬の投与歴」であることが、米国疾病対策予防センター(CDC)のTracy Dalton氏らの調査(Global PETTS)で示された。多剤耐性結核(MDR-TB)は、Mycobacterium tuberculosisを原因菌とし、少なくともイソニアジドとリファンピシンに対する耐性を獲得した結核で、XDR-TBはこれら2つの1次抗結核薬に加え、2次抗結核薬であるフルオロキノロン系抗菌薬および注射薬の各1剤以上に耐性となった結核と定義される。XDR-TBの世界的発生は実質的に治療不能な結核の到来を告げるものとされ、MDR-TBに対する2次抗結核薬の使用拡大によりXDR-TBの有病率が増大しつつあるという。Lancet誌2012年10月20日号(オンライン版2012年8月30日号)掲載の報告。2次抗結核薬の耐性を前向きコホート試験で評価Global PETTS(Preserving Effective TB Treatment Study)の研究グループは、8ヵ国における2次抗結核薬に対する耐性の発現状況を評価するプロスペクティブなコホート試験を実施した。2005年1月1日~2008年12月31日までに、エストニア、ラトビア、ペルー、フィリピン、ロシア、南アフリカ、韓国、タイにおいて、MDR-TBが確認され、2次抗結核薬治療を開始した成人患者を登録した。CDCの中央検査室で、以下の11種の抗結核薬の薬剤感受性試験を行った。1次抗結核薬であるエタンブトール、ストレプトマイシン、イソニアジド、リファンピシン、2次抗結核薬としてのフルオロキノロン系経口薬(オフロキサシン、シプロフロキサシン)、注射薬(カナマイシン、カプレオマイシン、アミカシン)、その他の経口薬(アミノサリチル酸、エチオナミド)。2次抗結核薬に対する耐性のリスク因子およびXDR-TBを同定するために、得られた結果を臨床データや疫学データと比較した。2次抗結核薬耐性率43.7%、XDR-TB感染率6.7%解析の対象となった1,278例のうち、1つ以上の2次抗結核薬に耐性を示したのは43.7%(559例)であった。20.0%(255例)が1つ以上の注射薬に、12.9%(165例)は1つ以上のフルオロキノロン系経口抗結核薬に耐性を示した。XDR-TBの感染率は6.7%(86例)だった。これらの薬剤に対する耐性発現の最大のリスク因子は「2次抗結核薬の投与歴」で、XDR-TB感染のリスクが4倍以上に増大した(フルオロキノロン系経口薬:リスク比4.21、p<0.0001、注射薬:4.75、p<0.0001、その他の経口薬:4.05、p<0.0001)。フルオロキノロン系抗菌薬耐性(p<0.0072)およびXDR-TB感染(p<0.0002)は男性よりも女性で高頻度であった。2次抗結核注射薬に対する耐性は、失業、アルコール依存、喫煙との間に関連を認めた。その他のリスク因子については、各薬剤間、各国間でばらつきがみられた。著者は、「XDR-TBを含む抗結核薬耐性の一貫性のある最大のリスク因子は、2次抗結核薬の投与歴であった」と結論し、「今回の特定の国における調査結果は、検査体制に関する国内的な施策や、MDR-TBの効果的な治療に関する勧告の策定の参考として他国にも外挿が可能と考えられる」と考察している。

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CKD患者の血圧管理:ARBで降圧不十分な場合、増量か?併用か?

 CKD患者の血圧管理においてARB単剤で降圧目標130/80mmHg未満に到達することは難しい。今回、熊本大学の光山氏らは、日本人対象の無作為化比較試験のサブ解析の結果、ARB単剤で降圧不十分時にARBを増量するより、Ca拮抗薬を併用したほうが心血管系イベントや死亡といったリスクを回避しやすいことを示唆した(Kidney International誌オンライン版10月10日号掲載報告)。 ARBを低用量から開始し、通常用量まで増量しても降圧目標に達しないケースでは次にどのような一手を打つべきか? さらに増量する方法のほか、Ca拮抗薬など他の降圧薬の追加も選択肢となる(『CKD治療ガイド2012』では尿蛋白を伴わず、糖尿病を合併していない場合は「降圧薬の種類を問わない」とされている)。 サブ解析は、無作為化オープン試験OlmeSartan and Calcium Antagonists Randomized(OSCAR)試験について行われた。OSCAR試験では心血管疾患もしくは2型糖尿病を1つ以上有する日本人の高齢者(65~85歳)高血圧患者1,164例を対象とし、ARB増量群(オルメサルタン40mg/日)あるいはARB+Ca拮抗薬併用群(オルメサルタン20mg/日+Ca拮抗薬)に無作為化された。今回のサブグループ解析の対象は、事前に設定されていたCKD患者(eGFR 60 mL/min/1.73 m2 未満)である。 主要評価項目は「心血管系イベント」および「非心血管疾患死」。心血管系イベントは「脳血管障害」「冠動脈疾患」「心不全」「その他動脈硬化性疾患」「糖尿病性合併症」「腎機能の悪化」と定義された。なお、本試験については、すでに2009年に小川氏(熊本大学)らによって主要結果が発表されている(Hypertens Res. 2009;32:575-580.)。 主な結果は下記のとおり。・血圧は併用群で増量群に比べ、有意に低下。・主要評価項目の発生率は併用群(16例)で増量群(30例)より少なかった(ハザード比 2.25)。・脳血管障害および心不全イベントが増量群でより多く発生した。

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ある製薬メーカーのケースからを考える「研究者の業務効率化」とは?

9月8日(土)東京大学・本郷キャンパスにおいて山本雄士氏(株式会社ミナケア 代表取締役)主催による第5回の「山本雄士ゼミ」が開催された。今回は、ケーススタディとして「ワイス・ファーマシューティカルズ」(Wyeth Pharmaceuticals: Spurring Scientific Creativity with Metrics)を取り上げ、製薬メーカーにおける経営マネジメントなどについてディスカッションした。山本雄士ゼミは、ハーバード・ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得した山本氏をファシリテーターに迎え、ケーススタディを題材に医療の問題点や今後の取組みをディスカッションによって学んでいく毎月1回開催のゼミである。イントロダクション冒頭、山本氏よりケーススタディ企業の概要が説明され、「研究部門長の改革で優れている点は何か?」と「研究開発の目標数を増やすメリット・デメリット」の2つのテーマの提起のあと、ディスカッションに入った。ワイス社は、1860年代にアメリカで創業された企業で何度かの合併・買収を繰り返しながら大きくなっていった製薬メーカ(現在ワイス社は買収されて存在しない)。2005年時点で売上高は約180億ドル、世界的な主力製品の関節リウマチ治療薬や乳幼児向け肺炎球菌ワクチンなど、バイオ医薬品とワクチンなどに強い会社である。企業の研究部門改革の成功例をみる同社が低迷する新開発商品の倍増を目指し、テコ入れを行った「新たな働き方(NWW)」の経緯が今回のケースの内容である。2001~2002年にかけて創薬の初期段階である新規化合物が伸びたこと、試験への進展率が上がったことなどケースから読み取れる事例の報告後、山本氏より「数字で管理するメリットは何か?」との問題提起をうけて、ディスカッションが始まった。参加者からは、「経営戦略がたてやすい」、「研究・開発の管理が容易になる」、「報酬増の目安が表示される」などの意見が出された。次に「NWWが成功したポイントは?」という問いに「モチベーションの見える化」や「報酬の連帯性=組織の強化」、「作業プロセスの効率化」、「スピード感の向上」などの意見が出された。製薬メーカーの本質とは何か山本氏より問題提起として「創薬研究はアートといえるかどうか?」という問題が投げかけられ参加者は、「アートである」と「研究の成果である」の2つに分かれ、ディスカッションが行われた。かたや「薬のターゲットを決めることが創造的作用である」から、かたや「偶然に左右される産物をどのように管理するのか」など双方からさまざまな意見が寄せられた。次に山本氏から「製薬企業の強みとは何か?」という質問に参加者からは、「needs(需要)とseeds(供給)の調整ができる」や「サポートの充実、安定供給ができる」、「患者への責任を持っている」など企業の本質に関わる話題まで多くの回答が寄せられた。これらの内容を踏まえて、企業のサプライチェーン(供給連鎖)の話題や最近の創薬研究の動き(研究の外注化やベンチャーの買収)などがミニレクチャーされた。研究が主体の企業の在り方ケーススタディに戻り、ワイス社がNWWでターゲットの開発目標数を12から15個に増やしたことの賛否について山本氏が質問。これに対し、参加者からは「高めの目標設定は理解できる」や「難しい目標設定ではない」などの賛成意見と「収益の改善に効果がない」や「質が低下する」などの反対意見が出され、ディスカッションが行われた。そして、同社がNWWのおかげで急激な開発速度で目標が達成された経緯を検討、研究者の働き方に関する議論へと進展した。ディスカッションでは、企業統治について本社主導の「統制型」か部門ごとの「分権型」かに分かれて行われた。統制型では、管理しやすく、遂行型業務には適しており、全体最適化がしやすい反面、調整が難しかったり、目標が高くなるきらいがあるなどの意見がでた。一方で、分権型では、部門の自律性が図れると同時に権限が強くなり、フレキシブルな対応ができる反面、目標が低くなり、責任の所在が曖昧になる、全体最適化が難しいなどの意見が出された。結論として、こうした分類は簡単に割り切れるわけではなく、規模や業務内容に応じて選択する必要があること、基準化された正解はないことを確認した。最後にまとめとして、山本氏が「研究・開発に関して、知識の部分というのは管理化・プロトコル化できるが、暗黙知の部分は手順化が難しい。しかし、社内や学内研修や知識の共有化を通じてツール化することは可能であり、今後、この暗黙知の部分も会社なり、大学なり研究組織は、ツール化して組織内にどんどん導入する時にきている」と示唆を述べ、今回のゼミを終えた。

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複数部位筋骨格痛の鑑別は主要な痛点をベースに

 複数部位の筋骨格痛を訴えるケースは多いが、南デンマーク大学のHartvigsen J氏らはそれらの特異的パターンの定義を行った。その結果、「特異的パターンは、主要な痛点をベースに判定することが可能である。疼痛の主訴が脊椎にある人のほうが四肢にある人と比べて複数のパターンがみられる」ことを報告した。複数部位に起こる疼痛はネガティブな予後を予感させるが、これまで特異的な疼痛パターンに関する情報は十分ではなかった。 主要な筋骨格疼痛部位の近くで起きている、複数部位の筋骨格痛の特異的パターンを定義することを目的とし、デンマークの全国健康インタビュー調査のデータに基づく潜在クラス分析を行った。 調査は1991年に、デンマーク全域からサンプル抽出して行われた4,817例の成人を対象としたものである。 主な結果は以下のとおり。・2週間の調査期間中40%が、疼痛があることを報告した。・最も頻度が高かったのは背下部、頸部、肩部、膝で、40%が1ヵ所以上の疼痛があることを訴えた。・2つの潜在的なクラスでは、それぞれ背下部を除く9ヵ所の主要な痛点がみつかった。・最大クラスは局所の特異的な疼痛のみを有していたが、最小クラスはからだ全体に及ぶびまん性の疼痛を有していた。・主な疼痛が脊椎にあった被験者は、複数疼痛は脊椎のその他の部位で起きている可能性が最も高かった。・主な疼痛が四肢である場合は、概して隣接域で複数疼痛が起きていた。・唯一、際立った例外が、膝痛を主訴とする場合で、複数疼痛が頸部や背下部のようにより離れた部位で認められた。

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抗てんかん薬の処方、小児神経科医はどう使っている?

 スウェーデン ウプサラ大学のMattsson氏らは、てんかん児の社会人口統計学的背景(居住地など)と抗てんかん薬処方との関連について調査した。その結果、年齢や居住地による専門医療アクセスの不平等さや、小児神経科医とその他の専門医とでは抗てんかん薬の処方に違いがあることが明らかとなった。著者は「広範な医療圏がてんかん児の医療機関へのアクセスを妨げていることを示す重要な報告となった。小児神経科医の充実が専門的医療サービスへのアクセスにとって重要であるかどうかについて、データの獲得はできなかったものの、傾向を把握することができた」と指摘している。Epilepsia誌オンライン版2012年10月12日号の報告。 スウェーデンのてんかん児において、社会人口統計学的な違いが専門医療サービスへのアクセスや抗てんかん薬処方と関連しているかを調べた。てんかんの罹患、抗てんかん薬の処方箋、社会人口統計学的因子について複数の全国レジスターからデータを入手し、小児神経科医へのアクセスや抗てんかん薬の処方について、性、年齢、親の教育レベル、居住地、出生地、世帯収入により異なるかを検討した。また、抗てんかん薬の処方が小児神経科医とその他の専門医で異なるかについても評価した。主な結果は以下のとおり。・2006年末時点でスウェーデンに住んでいた1~17歳(178万8,382人)において、てんかんの診断を受けたのは9,935例(0.56%)であった。・抗てんかん薬治療を受けていたのは、3,631例(スウェーデン全1~17歳児の0.24%)であった。・そのうち小児神経科医から処方を受けていたのは、2,301例(63.4%)であった。・1~5歳児は、より年長の小児と比べ、小児神経科医による治療を受けていた。また大都市に住んでいる小児および青年のほうが、小都市や農村地域に住んでいる小児と比べて、小児神経科医による治療を受けていた。・大都市に住んでいる小児は農村地域に住んでいる小児と比べて、より顕著に多くオキシカルバゼピン治療を受けていた。・レベチラセタムの処方を受けていた小児は、両親の収入が高い小児ほど、より多かった。・最も処方頻度が高かった5剤の抗てんかん薬の中で、ラモトリギン、オキシカルバゼピン、レベチラセタムの3剤の処方は、他の専門医よりも小児神経科医でより多かった。カルバマゼピンの処方はより少なかった。関連医療ニュース ・てんかん治療の術前評価/切除が標準化、一方で困難な患者が増大 ・てんかん発作には乳幼児早期からの積極的な症状コントロールが重要 ・小児におけるレベチラセタム静注の有効性と安全性を確認

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BRCA1/2突然変異キャリアの30歳以前の放射線検査は乳がんリスクを倍増

 BRCA1/2突然変異を有する女性の30歳前の放射線検査は、乳がんリスクを増大することが示された。オランダ・がん研究所のAnouk Pijpe氏らが、1,993例を対象とした後ろ向きコホート研究「GENE-RAD-RISK」の結果、報告した。リスクの増大は照射線量依存的で、その他の放射線曝露コホートで増大が認められた人よりも少ない照射線量でリスクの増大がみられたという。BMJ誌2012年10月13日号(オンライン版2012年9月6日号)掲載報告より。放射線検査と乳がんリスクとの関連を推定「GENE-RAD-RISK」は、BRCA1/2突然変異キャリアにおける放射線検査と乳がんリスクとの関連を推定することを目的とした後ろ向きコホート研究。2006~2009年にフランス、英国、オランダで行われた3つの試験「GENEPSO」「EMBRACE」「HEBON」に参加した女性計1,993例を対象とした。主要評価項目は、加重Cox比例ハザードモデルで推定した乳がんリスクで、個々の乳がん発生までの時間による推定、公表値に基づく推定照射線量による推定、自己報告に基づく放射線検査の回数に基づいて算出した。照射線量によりリスクは1.63~3.84倍結果、30歳前に放射線検査を受けたBRCA1/2突然変異キャリアは、乳がんリスクが1.9倍増大した[ハザード比(HR):1.90、95%信頼区間:1.20~3.00]。リスク増大は、照射線量依存パターンがみられ、推定累積照射線量が<0.0020 Gy群が1.63(0.96~2.77)、≧0.0020~0.0065Gy群が1.78(0.88~3.58)、≧0.0066~0.0173Gy群が1.75(0.72~4.25)、≧0.0174Gy群が3.84(1.67~8.79)であった。異なる放射線検査法についての解析では、20歳以前および30歳以前でX線受診を受けた回数が多い人で非受診群と比べてリスクが増大するというパターンが示された。30歳以前のマンモグラフィ既往も、乳がんリスク増大と関連していた(HR:1.43、0.85~2.40)。感度解析により、この知見は家族歴適応による交絡に起因しないことを示した。結果を踏まえて著者は、「この結果は、BRCA1/2突然変異キャリアの若い女性では、評価のための主要なツールとして、非電離放射線画像診断技術(たとえばMRI)の使用を支持するものである」と結論している。

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検証!デュロキセチンvs.他の抗うつ薬:システマティックレビュー

 大うつ病の急性治療について、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるデュロキセチンとその他の抗うつ薬との有効性、受容性、忍容性を比較するシステマティックレビューを、イタリア・ベロナ大学のCipriani氏らが行った。Cochrane Database Syst Rev2012年10月17日号の報告。 MEDLINE(1966~2012年)、EMBASE(1974~2012年)、CENTRAL(コクラン比較臨床試験登録)などをソースとして、2012年3月までに発表された試験論文および参照リストを検索した。デュロキセチンのメーカーのマーケティング部門、その他専門家からも補足データの提供を受けた。試験論文は言語を問わず、デュロキセチンとその他あらゆる抗うつ薬とについて検討した大うつ病患者を対象とする無作為化試験を適格とした。計16の無作為化試験(参加者合計5,735例)が、レビューに組み込まれた。主な結果は以下のとおり。・16試験中3試験は未発表のものであった。「デュロキセチンvs. 1つのSSRI」を検討したものが11試験(参加者計3,304例、対パロキセチン6試験、対エスシタロプラム3試験、対フルオキセチン2試験)、「デュロキセチンvs. 新規抗うつ薬」が4試験(同1,978例、対ベンラファキシン3試験、対デスベンラファキシン1試験)、「デュロキセチンvs.抗精神病薬」が1試験(同453例)で、三環系抗うつ薬と比較した試験はなかった。・プール解析の信頼区間(CI)は大きすぎて、デュロキセチンを他の抗うつ薬と比較した有効性についての統計学的有意差は認められなかった。・エスシタロプラムまたはベンラファキシンとの比較において、デュロキセチン群に無作為化された患者は何らかの原因によりドロップアウトした割合が高率であった[各群比較とのオッズ比(OR):1.62、95%CI:1.01~2.62、OR:1.56、95%CI:1.14~2.15]。・デュロキセチン服用患者がパロキセチン服用患者よりも有害イベントを経験したことが示されたが、エビデンスは弱かった(OR:1.24、95%CI: 0.99~1.55)。・比較試験はわずかで、臨床的に意義ある差を見いだすことは困難だった。また経済効果を報告するまでには至らなかった。関連医療ニュース ・うつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」 ・他SSRI切替、どの程度の効果?北海道大学の報告 ・統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か?

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わが国の医療関連無過失補償制度を概観する~その運用と問題点について~

9月29日(土)、帝京大学医学部(板橋キャンパス)において第3回医療法学シンポジウムが開催された。当日は全国より医師、医療従事者をはじめ約60名が参加した。今回はテーマに「医療関連無過失補償制度」を掲げ、医師、弁護士が制度の概要、現状、問題点をレクチャー、最後にパネルディスカッションを行った。※「無過失補償制度」とは、医療事故で障害を負った場合、医師に過失がなくても、患者に補償金が支払われる制度のことである。現在、わが国に存在する医療関連無過失補償制度は、1)予防接種健康被害救済制度、2)臨床研究、治験薬に係る補償制度、3)医薬品副作用被害救済制度、4)産科無過失補償制度の4つがある。シンポジウムでは、各制度が作られる原因となった訴訟等背景の事情から制度概要とその問題点についてまとめ、今後の医療紛争処理制度のあるべき姿を検討した。医療関連無過失補償制度の5つの概要はじめに「総論 わが国の医療提供体制と医療紛争処理制度」をテーマに山田奈美恵氏(東京大学医学部附属病院総合研修センター特任助教:医師)が、医療紛争処理制度の全体像を説明するとともに、諸外国の処理制度との比較を解説した。わが国で医療紛争が発生する要因として、多くは患者と患者家族の心理状況が、大きな影響を与えていること、それは患者と医療者が向き合う場が圧倒的に不足している中で起こるものであることが説明された。また、世界的な流れとして北欧を中心に「無過失補償制度」が導入されていることなどが紹介された。次に「予防接種健康被害救済制度」をテーマに神田知江美氏(帝京大学医療情報システム研究センター客員講師、かすが法律事務所:医師、弁護士)が、わが国の予防接種事情と問題が起った場合の救済制度について説明した。日本の予防接種の本格導入は、戦後からのスタートであり、世界標準から見るとわが国は「ワクチン後進国」である現状を指摘。過去に起こった予防接種に起因するさまざまな訴訟例を通じて、医療者に課される注意義務や救済制度の成り立ちなどを詳説した。続いて「臨床研究、治験薬に係る補償制度」をテーマに大磯義一郎氏(浜松医科大学医学部教授(医療法学)、帝京大学医療情報システム研究センター客員教授、加治・木村法律事務所:医師、弁護士)が、「臨床研究、治験薬」段階での補償制度について、制度の内容等を説明した。現在、薬事法で副作用報告は法定化されている。しかし、「副作用」や「有害事象」といった用語の意味が、一般市民の理解と異なっていることは問題であること。そして、治験薬の補償については「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令)」で規定されており、この省令が拠り所となっていること。一方、臨床研究に係る補償制度は、法律ではなく倫理指針で規定されていること、まだ試行錯誤している最中であることを指摘した。次に「医薬品情報と副作用被害救済制度」として渡邊清高氏(国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報提供研究部医療情報コンテンツ研究室長:医師)が、主に抗がん剤の副作用が副作用被害救済の対象となるかという視点から解説を行った。「スモン事件」などの過去の薬害事件とその救済事例を述べるとともに、薬害では製薬メーカーの拠出金で救済されるのに対し、抗がん剤では「重篤な副作用発現頻度」「適正使用の未確立」「因果関係証明の困難」などの理由により、救済対象となっていないと指摘。現在、厚生労働省の審議会で議論が行われているが、制度化にはいたっていないと報告した。最後に「産科医療補償制度」として山崎祥光氏(井上法律事務所:弁護士、医師)が、同制度の内容や運用の実際を報告した。同制度は、産科に関係する民事事件の多発と産科の訴訟リスク、産科医の急激な減少から2009年に制度発足したものであり、各医療機関が民間保険会社と協力し、被害に応じて被害者等が医療機関から補償を受けるものである(運営:日本医療機能評価機構)。たとえば脳性麻痺など、民事訴訟であれば立証の段階で時間がかかる疾患もこの制度であれば、患者と家族に速やかな補償ができるなど恩恵は計り知れない。また、日本医療機能評価機構が審査を行うことで医療機関、患者・家族に異論を差しはさむ余地のない原因分析も行われている。現在2014年の制度見直しに向けて、掛金額、補償対象の範囲など見直しが進められている。「今後、こうした制度が他の疾患分野にも普及することを望む」と述べ、レクチャーを終了した。パネルディスカッション後半では、会場とのパネルディスカッションを開催。大磯義一郎氏をファシリテーターに、渡邊清高氏、山崎祥光氏が再登壇するとともに新たに小島崇宏氏(北浜法律事務所:弁護士、医師)を加え、会場から寄せられる質問に丁寧に回答をしていた。国民の生命・健康を具体的に守る基本法がないために、現在のような医療崩壊や医師の不足を招いたと思う。医療環境の整備をしないうちに、医師などの監督強化をしても逆効果だと考える。こうした現状をどのように思うか、考えをお聞かせ願いたい。大磯過去の経緯を俯瞰すると医師側で発言の機会を逸した結果、司法の側で制度設計をされてしまった感がある。本質的には医師の側から、患者救済は積極的にアピールしていかなくてはいけないと考えている。山崎たとえば産科医療補償制度では、医師の側の意見が、制度の準備段階できちんと入らなかったことに問題がある。制度設計の段階で主張すべきところはすべきと思う。渡邊医師が社会とコミュニケーションをしていないのが問題だと考える。医療に関する言葉の定義がされてこなかったこともあり、今後は患者側にわかってもらう医療を目指す必要がある。小島重篤な合併症でも医療側からの公表データが少ないように思う。医療側の情報の開示をもとに補償をきちんとすることが必要。山崎氏の講演であった産科医療補償制度の「現物支給」について聞かせて欲しい。また、明日からすぐできる患者救済方法が、あるかどうかも回答いただきたい。山崎「現物支給」とは医療費が無料ということ。申請しないと支給されない点が問題。医療側でそうした患者補助のリストなどを患者側に提供できたらいいと思う。渡邊通常、医師個人と患者個人で話をする機会が多いと思う。経済的な視点だけでは解決しないので、全体的なサポートの仕組みを作ることが重要。地域で救済のパッケージを渡す仕組みを自治体等が作っておくことが大事。大磯個別・具体的な地域のリソースを、優良な情報として必要としている個々の患者に提供することが患者救済に役立つ。刑事責任とのリンクについて大磯諸外国と比較して日本だけ、突出して医療の領域に司法が介入しているのは問題。山崎刑事責任とリンクすると制度設計としての「無過失責任補償」からも遠くなる。小島完全に刑事責任は免責とするのではなく、個々のケースによって判断・運用されるべき。大磯医療側がきちんと患者側にインフォームド・コンセントを行い、コンセンサスをとっておくことが大切。産科医療補償制度の改正の主眼は何か?山崎再設計では保険者との関係の見直し、掛金の配分の見直し(とくに介護費用の増額、できれば損害賠償と後遺障害事例の補償額の取り決め)、掛金は社会で担保するものであるから増やすためにコンセンサスが必要。小島補償範囲の拡大については、マンパワーの問題で難しい。医療側からの政策提言の必要性最後に古川俊治氏(慶應義塾大学法務研究科教授・医学部外科教授:弁護士、医師、参議院議員)が、「医療は政策で誘導され、決定される。そのため、政策提言をたくさん医療の側からも出してほしい。無過失責任制度が実現できれば素晴らしいが、国の逼迫した財政の中でどう財源を確保するかが重要。メリハリをつけて支出するために、対象疾患の絞り込みなどが必要となる。こうしたシンポジウムで、今後の医療の在り方や医師、医療従事者が輝ける医療を考えていきたい」と閉会の挨拶を述べ、シンポジウムは終了した。医療法学に関係するセミナー、シンポジウム等はこちら。11月10日・11日 現場からの医療改革推進協議会12月2日 医療事故調シンポジウム~真相究明と責任追及(懲罰、刑事罰)は両立するのか~〔主催:一般社団 全国医師連盟〕

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ボラパクサール、心筋梗塞既往例で上乗せ効果、出血リスクは増大

 心筋梗塞の既往歴のある患者の2次予防において、標準的な抗血栓療法にボラパクサール(国内未承認)を追加する治療アプローチは、心血管死や虚血性イベントのリスクを抑制する一方で、中等度~重度の出血のリスクを増大させることが、米国・ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院のBenjamin M Scirica氏らが行ったTRA 2°P-TIMI 50試験のサブグループ解析で示された。プロテアーゼ活性化受容体1(PAR-1)拮抗薬であるボラパクサールは、トロンビンによって誘導されるヒト血小板表面上のPAR-1の活性化に対し拮抗作用を発揮することで、血小板の活性化を阻害する新規の抗血小板薬。心筋梗塞の既往歴を有する安定期の患者の長期的な2次予防におけるボラパクサールの上乗せ効果は不明だという。Lancet誌2012年10月13日号(オンライン版2012年8月26日号)掲載の報告。標準治療への上乗せ効果をプラセボ対照無作為化試験で評価TRA 2°P-TIMI 50(Thrombin Receptor Antagonist in Secondary Prevention of Atherothrombotic Ischemic Events)試験は、アテローム血栓症(心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈疾患)の既往歴のある患者における標準治療へのボラパクサールの上乗せ効果を検討する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験。今回は、あらかじめ規定されたサブグループとして、心筋梗塞の既往歴(登録前2週~12ヵ月に発症)のある患者の解析を行った。2007年9月~2009年11月まで患者の登録を行い、標準治療(アスピリン、チエノピリジン系薬剤)に加えボラパクサール 2.5mg/日を投与する群またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。患者、治療医と医療スタッフ、アウトカムの評価者、解析担当者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発現とし、intention-to-treat解析を行った。イベントの発生状況はKaplan-Meier法で解析し、群間の比較にはCox比例ハザードモデルを用いた。心血管死、心筋梗塞、脳卒中の推定3年発生率:8.1% vs 9.7%全登録患者2万6,449例のうち心筋梗塞の既往歴を有する患者は1万7,779例で、ボラパクサール群に8,898例(年齢中央値59歳、75歳以上8%、女性21%、アスピリン98%、チエノピリジン系薬剤78%)、プラセボ群には8,881例(同:59歳、8%、20%、98%、78%)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は2.5年だった。心血管死、心筋梗塞、脳卒中を発症した患者はボラパクサール群が610例で、Kaplan-Meier法による推定3年発生率は8.1%と、プラセボ群の750例、推定3年発生率9.7%に比べ有意に低頻度であった[ハザード比(HR):0.80、95%信頼区間(CI):0.72~0.89、p<0.0001]。中等度~重度の出血をきたした患者は、ボラパクサール群が241例で、Kaplan-Meier法による推定3年発生率は3.4%と、プラセボ群の151例、2.1%よりも有意に頻度が高かった(HR:1.61、95%CI:1.31~1.97、p<0.0001)。頭蓋内出血は、ボラパクサール群では43例にみられ、推定3年発生率は0.6%、プラセボ群は28例、0.4%で、両群間に有意な差はなかった(p=0.076)。その他の重篤な有害事象の発現状況は両群間で同等だった。著者は、「心筋梗塞の既往歴のある患者において、アスピリンを含む標準的な抗血栓療法にボラパクサールを追加する治療アプローチは、心血管死や虚血性イベントのリスクを抑制するが、中等度~重度の出血のリスクを増大させる」と結論し、「総合的な臨床ベネフィットはボラパクサール群が良好であり、とくに出血リスクの背景因子の少ない患者ではより良好な予後の改善が達成された」と指摘している。

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地域とともに歩むドクターの魅力。“Generalist”という選択肢を学ぶ!

「医師のキャリアパスを考える医学生の会」主催(代表:秋葉春菜氏〔東京女子医科大学医学部4年〕)の第18回勉強会が、2012年9月23日(日)、東京大学・本郷キャンパスにおいて開催された。当日は医師、医学生、社会人を中心に約50名超が参加した。今回は、家庭医として診療に携わる一方で、地域コミュニティ「みんくるカフェ」の主宰として、また東京大学医学教育センターの講師として活躍されている孫 大輔氏を講師に迎え、「家庭医・総合医がなぜ今注目される? 社会が求める医療の変化」と題し、講演を行った。なぜ家庭医・総合医になったのか?はじめに講師の孫氏が、自身の自己紹介もかねて「なぜ、家庭医・総合医の道を選んだのか」を述べた。孫氏は、東京大学医学部を卒業後に、医師としてのキャリアを腎臓内科からスタートした。当時は、医局講座制の臨床研修制度の中で次第に自分が「『医師なのか』、『研究医なのか』わからなくなり、自分の理想とする医師像とのギャップに悩む時期があった」と当時を述懐した。そんな時に出会ったのが、「家庭医・総合医」であり、患者の疾患を診るだけでなく、患者のバックグランドも見なくてはいけない役割に魅力を感じ、家庭医の臨床プログラムを経て、資格を取得。現在地域の家庭医として「充実した毎日を過ごしている」と述べた。次に家庭医の魅力として、「さまざまな疾患を診療できること」と語り、ある1日の外来記録を資料として示しながら「下は0歳の幼児から上は99歳の高齢者まで診療し、その疾患の種類も胃痛、うつ、喘息、健診と非常に多岐にわたっている」と説明した。もちろん訪問診療もしばしばで、「患者家族とのコミュニケーションにより、疾患のバックグラウンドを探りながらの診療は興味深い」と述べるとともに、「家庭医は守備範囲が広く大変だが、臨床医としてやりがいはある。とくに地域住民を家族ぐるみで、患者の生活の場で診療することは新鮮であり、かつて診療したことがなかった小児科や婦人科の診療をすることは新たな発見の連続」と家庭医の魅力を伝えた。いまなぜ家庭医・総合医なのか?孫氏が「わが国では、患者は軽症でも大きな病院へ最初に行く傾向にあり、その結果、不適切診療やたらい回しなどの弊害も発生している」と現行の問題点を指摘するとともに、「超高齢化社会が進む2030年には、自宅で最期を迎える人も大勢でてくる(看取り難民47万人という試算もある)。その受け皿はどこにあるのか、これは病院だけでは難しい。こうした事態に対応するのが家庭医・総合医だと考える」と今後の役割の重要性を述べた。さらに、従来わが国の医学教育課程では、こうした家庭医・総合医を専門とする医師を養成するカリキュラムやプログラムがなかったことを指摘し、「社会にも存在意義を働きかけてこなかったために、日本は先進国の中でも家庭医・総合医の後進国になってしまった」と説明した(例:欧州では医師の3~4割が家庭医・総合医)。そして、「今、家庭医・総合医に興味を持ってもらったり、家庭医・総合医を増やすために3つの取り組みを行っている」とその内容を説明した。具体的には、(1)市民参加型のイベントの実施 → 「みんくるカフェ」(2010年~)(2)若手家庭医・総合医の育成  → 一般社団法人Medical Studio (2012年~)(3)全国的な議論の場作り    → Generalist Japan 2012(2012年~)の3つであり、(1)では市民と医師の距離を縮めることで市民の医療への参加を促し、(2)では若手の医師に家庭医・総合医の魅力をWebのレクチャーを通じて伝え、(3)では全国の家庭医・総合医の連帯、情報交換の場作りとして活動していると説明した。「みんくるカフェ」とは?次に孫氏は、市民と医師の距離を縮める活動として行っている「みんくるカフェ」の活動を説明した。元々この活動を始めた動機は、「患者の気持ちが汲めないドクター」と「医師に本音がいえない患者」との溝を埋めることが目的であり、誰もがフラットに対話できる場として2010年から始めたものである。「みんくるカフェ」は、「ワールドカフェ※」という手法を使い、テーマに「医療と健康に関すること」を選択。月1回のペースで過去32回開催され、延べ700名以上が参加している。現在では、市民講座的な「みんくる大学」や学生に限定した「みんくる学生部会」などの活動もあり、その動きはFacebookなどSNSを通じて、全国に拡大している。「みんくるカフェ」の一例として、2012年6月に松本市(長野県)で開催された会では、テーマに「悲嘆学(グリーフケア)」を取り上げ、「医師や市民だけでなく宗教家(僧侶)も参加し、さまざまな意見交換が活発に行われた」と説明した。「みんくるカフェ」を通して、「患者にヘルスリテラシーの変容が起き、より賢く自分自身や家族の健康のために受診行動ができるようになればよい。今後もっと医療コミュニケーションのインフラができ、『みんくるカフェ』のファリシテーターができるもっと多くの医療人を育てていきたい」と抱負を述べ、レクチャーを終えた。質疑応答次のような質問が、孫氏に寄せられ、一つ一つの質問に丁寧に回答された。家庭医・総合医が修得しておかなくてはならない診療範囲はどのくらいか?代表疾患100くらいに対応できるようになれば家庭医になれる。いわるコモンディジーズの疾患家庭医・総合医になるための流れについて全国で158ある日本プライマリ・ケア連合学会認定の後期研修プログラムに入ると専門医の受験資格が得られる。プログラムは基本3~4年間。以降は生涯教育で補う外科の知識・能力はどのくらい必要か?全身麻酔での手術までは必要とされないが、縫合や切開、爪のケア程度の治療レベルは必要まれな疾患の診療も家庭医・総合医が行う必要があるか?まれな疾患は、家庭医・総合医ではなく、病院の総合診療医が得意であり、治療は専門医にお渡しする。病院総合医のプログラムも存在する地域を巻き込むコツについてその地域のNPOや中心となる人物を巻き込むと展開しやすい。テーマも、ポジティブなテーマ(例「医療過誤を減らすためには」ではなく「上手な病院の受診のしかた」など)で興味を持たれそうなものを選択する家庭医・総合医になって注意することは?のめりこみすぎて燃え尽きる場合が多いので、グループ診療でローテートするなどの工夫が必要。イギリスの家庭医はそのように連携しているこの後、実際に「ワールドカフェ体験」ということで、「家庭医・総合医を10年後までに10万人増やすためには?」をテーマに、グループ毎に分かれ、孫氏をファシリテーターとして遅くまでディスカッションが行われた。※ワールドカフェとは、カフェのようなリラックスした雰囲気の中で、テーマに集中した会話を行う「対話法」。5~6人単位で1つのテーマを一定時間話し合い、終わったらメンバーを取り替えて、また同一テーマで話し合うことを繰り返すことで、参加者全員で話し合っているような効果が得られる。講演者略歴関連リンクみんくるプロデュース(HP)みんくるカフェ(ブログ)みんくるカフェ(Facebook)みんくるカフェ(Twiitter)医師のキャリアパスを考える医学生の会※スタッフ募集中です。興味のある方はご連絡ください!

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「認知症」診療に関するアンケート第3弾~身近な疾患としての認知症~

対象ケアネット会員の内科医師501名方法インターネット調査実施期間2012年10月11日~10月18日Q1.認知症の予防のため、先生ご自身が心がけていることや、患者さんに勧めていることはありますか?(複数回答可)Q2.もし、先生のご家族に認知症を疑った時、治療はどのようにしますか?(回答は1つ)先生がこれまでに診療に関わった認知症患者さんやそのご家族に関して、記憶に強く残っているエピソードがございましたらお教えください(自由記入、一部抜粋)<診断・治療に関して>55歳の若そうな、きれいで無口な女性が夫と共に来院。自宅での生活を聞くと、何も家事ができないという。外来の応対はあまり不自由がないが、長谷川式検査ではチェックできた。人は見かけではわからない。(勤務医・内科・70歳代)90歳を超えた男性。もともと認知症はあったが最近さらに増悪してきたと、長男が付き添い来院。当初、増悪進行と考えられたが、慢性硬膜下血腫の合併と診断した。 本人はもちろん、家族も転倒などには気付いておらず、脳神経外科で手術を受け、元来の病態ないし軽快となった。 認知症だからと決めつけてしまうのでは、本人はもとより、家族にまで不利益が生じてしまうことを留意して診療にあたらなくてはならないと思われた。(勤務医・内科・60歳代)ご主人が認知症だと毎回訴えてきた老夫婦が、実は2人とも認知症だった。(勤務医・内科・50歳代)やたら興奮するおばあさんだったが、精神科が処方していた薬剤を中止すると、つきものが落ちたようにおとなしくなった。(開業医・内科・40歳代)糖尿病による脳血管性認知症の患者さんが、糖尿病のコントロールが良好になったら、認知症の症状も軽減した。(開業医・内科・50歳代)2人暮らしの老夫婦が共に認知症で、診療をどうしようか悩むことが増えてきている。(勤務医・内科・50歳代)認知症じゃないかと疑っていた家族の方が認知症だった。(勤務医・内科・40歳代)夫が認知症のためアパシーの状態となっている。認知症の新薬を処方したところ効果があり、患者の方から妻に「ありがとう」と言葉かけがあり、「とてもうれしく感謝の念に堪えない」と妻から報告があった。臨床医として、患者の役に立てて非常に満足感を感じた。(勤務医・内科・60歳代)<介護に関して>介護の方々のスキルが上がって、不穏で困る方が減っているように感じる。(勤務医・内科・50歳代)「ショートステイにいくと調子が悪くなるのよね~」と、明るく介護していたお嫁さん。でも、肩肘張らずに上手にショートステイを使い、誤嚥性肺炎では時々入院も使い、 ご本人もニコニコとしているご家族がいた。 自分の家族が認知症になっても、絶対にできないなぁと思った。(勤務医・内科・50歳代)レビー小体病の女性と主介護者のご主人。 非常に熱心だったが、やはり男性高齢者に排泄の世話は難しく、結局うまくいかずに行き詰まり、救急車を要請して3次救急病院を受診してしまった。(勤務医・内科・40歳代)妻の認知症を受け入れているご主人(86歳)が、「妻は探し物のため家の中を動き回っている。しかし、これを止めると動かずに寝たきりになるかも知れない。外出するわけではないので、勝手にさせている」という言葉が印象的だった。(開業医・内科・50歳代)施設に入所した認知症患者に対し、毎日のように家族が訪問することで認知症の改善を認めたケースがあった。(開業医・内科・50歳代)睡眠障害があり、薬を山のように飲まされていたが、グループホームに入所し規則的な生活をされるようになって、薬もなく睡眠ができるようになった。(開業医・内科・60歳代)認知症患者との関わり方を患者家族に十分説明することにより、患者に対する家族の接し方が変わり、薬以上に認知症の進行を止めることが多い気がする。(勤務医・内科・50歳代)優しい態度、言葉遣いで接することによって不安が和らぎ、随伴症状が軽減することを日常診療で実感させられる。(勤務医・内科・60歳代)連れ合いが亡くなり1人暮らしとなって半年で認知症になったが、息子が引き取り、好きな趣味をさせるようになったら改善した。(勤務医・内科・70歳代)<その他>施設入所を嫌がる患者をどう納得させるか?にいつも苦労する。あるモダンなおばあちゃんの家族に対して、洒落たフランス料理店で話を切り出すことを勧めて成功した。(開業医・内科・60歳代)田舎の病院では、「よくこの状態で独居できていたなー」と感心するくらい認知症が進んだ人が入院することがある。(開業医・内科・50歳代)5年以上前、初めて当院で認知症と診断した患者さんは、当時、自ら認知症だと思うと受診された。読書が好きだったが、読書ができなくなってきたとのことであった。薬物治療を開始したが、デイケアなど介護サービスがあまり充実していなかったこともあり、少しずつ少しずつ認知機能が低下、昨年からグループホームに入られた。昨今話題の「できることをさせ、昔話をしてもらい、生き生きと暮らさせることで周辺症状なしに認知症のまま日常生活を送らせる」には、診療所の診療のみでは到底不可能であると思う。どのような連携が可能であるか、と外来の合間に思う。(開業医・内科・50歳代)認知症の夫を看ていた妻が急死し、成人後見制度を利用するに際し、後見人が得られず困ったことがある。(勤務医・内科・70歳代)「微笑をもう一度見られたら、と願うばかりです」と娘様が言ったことを忘れません。(開業医・内科・50歳代)徘徊が始まり、ある日突然消息不明となり探し回ったが見つからず、もちろん警察にも届けたが行方がわからず、1週間目にひょっこりと帰ってきた。外傷はなく、身なりも乱れていなかった。どなたか親切な方に世話になっていただろう、とのことであった。(開業医・内科・70歳代)

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スマホ、タブレット…医師の半数以上が、一台以上スマートデバイスを所有している!

先生はスマートフォン、タブレット型端末をお持ちでしょうか。どこでもニュースをチェックできる、いつでもメールに返信できる、重い書籍を持ち歩かずに済む…今やこれがないと仕事にならないという先生も多いかと思います。ケアネットでは2010年以来毎年、先生方のスマートデバイス所有率調査を実施してきましたが、2012年現在、とうとうその所有率が半数を超えました!年代で所有率は違うのか?スマホとタブレット、それぞれの使い方は?活用している先生、利用していない先生それぞれのコメントも必見です。結果概要はこちらコメントはこちら設問詳細スマートフォン・タブレット型端末についてお尋ねします。iPhone5の発売に注目が集まり、20代のスマートフォン所有率は既に半数を超えているといわれています。 また、昨年ケアネットで実施した調査では、医師のスマートフォン所有率は28%という結果でした。そこで先生にお尋ねします。Q1. 先生は現在スマートフォン/タブレット型端末を所有していますか。(両者それぞれに対して回答)※スマートフォンとは、「iPhone」のような、携帯情報端末(PDA)と携帯電話が融合した携帯端末を指します。※タブレット型端末とは、「iPad」のような、スクリーンをタッチして操作する携帯型コンピュータを指します。スマートフォンより大型。所有している(長期貸与も含む)所有していないが、いずれ購入したい購入するつもりはないQ2/3 (Q1で「スマートフォン/タブレット型端末を所有している」を選択した人のみ)先生はスマートフォン/タブレット型端末を、医療の用途においてどのようなことに利用していますか。医学・医療に関する書籍・論文閲覧医薬品・治療法に関する情報収集(書籍・論文以外)医学・医療関連のニュース閲覧臨床に役立つアプリの利用患者とのコミュニケーション医師・医療従事者とのコミュニケーション医療をテーマにしたゲームその他(       )特に利用しているものはないQ4. コメントをお願いいたします(ライフスタイルで変化した点、院内・移動中・プライベートでどのように利用されているか、所有していない方はその理由など、どういったことでも結構です)。アンケート結果Q1. 先生は現在スマートフォン/タブレット型端末を所有していますか。(両者それぞれに対して回答)年代別Q2/3 (Q1で「スマートフォン/タブレット型端末を所有している」を選択した人のみ)先生はスマートフォン/タブレット型端末を、医療の用途においてどのようなことに利用していますか。2012年9月21日(金)実施有効回答数:1,000件調査対象:CareNet.com医師会員結果概要医師の半数以上がスマートデバイスを所有している全体では、スマホ・タブレット両方の所有者が15.7%、いずれかを所有している医師が36.4%、いずれも所有していない医師が47.9%となり、医師の半数以上が一台あるいは複数のスマートデバイスを所有しているという結果となった。医師の約4割がスマートフォンを所有、30代以下では半数以上が利用中スマホ所有者に関しては、2010年の調査開始当初22.4%、2011年では28.0%と年々上がってきたが、2012年の今回は10ポイント以上伸びて38.6%。一般市民の28.2%※と比較すると、10ポイント以上上回る所有率であった。年代別では若い世代の医師ほど利用率が高く、40代で42.5%、30代以下では54.2%と実に半数を超える結果となった。※日経BPコンサルティング「携帯電話・スマートフォン"個人利用"実態調査2012」より。一台あるいは複数所有する回答者タブレット型端末の所有者は2年前に比較して倍増。年代に比例せず60代でも約3割が利用一方タブレット型端末に関しては、初代iPadが発売された2010年時で所有率13.1%と、医師のスマートデバイスに対する関心度の高さが既に見られていた。その後2011年で20.3%と伸び、2012年の今回は29.2%と約3割の医師が所有していることが明らかとなった。またスマホと異なり、年代による偏りがあまり見られず、30代以下で31.3%、60代以上で29.2%となった。60代以上の医師では タブレット型端末の所有者が スマートフォン所有者を上回る30代以下ではスマートフォン所有者は54.2%、タブレットで31.1%と、ほぼ全ての年代においてスマホ所有率がタブレットのそれを上回っているが、60代以上になるとスマホで25.8%、タブレットで29.2%と逆転。『移動中、学会など調べ物にタブレットを使う。スマホの画面では小さく見にくいので』といった声も寄せられた。タブレット型端末のほうが医療面での活用度が高く、所有者の4人に3人が利用中所有者に対し医療での用途を尋ねたところ、スマホで最も高かったのは「医薬品・治療法に関する情報収集(書籍・論文以外)」(37.0%)、同じくタブレットでは「書籍・論文閲覧」(47.6%)。特に違いが見られたのが「患者とのコミュニケーション」で、スマホでは4.1%、タブレットでは14.7%となり『インフォームドコンセントの際、立体的で具体的な説明ができ、患者の理解が深まっている』といった活用法が寄せられた。「特に利用しているものはない」との回答はスマホで35.5%、タブレットで26.7%となった。CareNet.comの会員医師に尋ねてみたいテーマを募集中です。採用させて頂いた方へは300ポイント進呈!応募はこちらコメント抜粋 (一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「業務連絡の一斉連絡に使っていて便利に感じています。」(40代男性,その他)「ipadでカルテを書いたり、レントゲンを見たりする時代がすぐそこまで来ている。」(40代男性,小児科)「Facebookで他の医師からの情報が逐次入るようになり、役に立ったり、煩わしかったりしています。スケジュール管理にはパソコンと連動させると非常に便利。iCloudでプレゼンや文書ファイルのやりとりをしている。」(50代男性,小児科)「日本はアメリカに比べて5年以上遅れています。日本語で提供できる、安いコンテンツの提供が必要」(60代以上男性,内科)「スマートフォンは思うところあって手放した。 手放してみると結構不要だったことに気づいた。」(30代以下男性,腎臓内科)「常時携帯する簡易コンピュータとして利用。日本医薬品集(の内容を収録したアプリ)などが常に手元にあり、いつでも参照できるので、仕事の効率が上がったと思う。」(40代男性,精神・神経科)「携帯が必要な書籍はほぼ全てスマートフォン・タブレットに入っているため、ポケットに本を詰め込むことがなくなった。大変スマート。」(30代以下男性,内科)「院内でも使えるアプリ開発を期待します。 患者IC用のスライドのようなもの」(40代男性,循環器科)「患者へのインフォームドコンセントの際に、より立体的で具体的な説明ができ、患者の理解が深まっている。」(40代男性,循環器科)「所属医師会では、役員全員にiPadを支給しています。 役員就任中は医師会で通信費を負担していただけます。 用途は、主に (1)iPad上の連絡網として使用 (2)ペーパーレス会議とし、役員会資料をすべて電子化してiPadで閲覧・検索とする」(50代男性,内科)「PCやiPadを持っていれば、スマートフォンは必要ない。 iPadは現在、訪問診療患者の基本情報を自宅でも見られるように使っており、画像を訪問時に見せて説明している。医療現場においても使用価値はますます高くなっていくと思う。」(50代男性,内科)「移動中や外出先でも仕事ができるようになった」(30代以下女性,内科)「スマートフォンは病棟に持ち込めないので病棟ではiPodを使用し、医療に役立つアプリを臨床に役立てています。」(40代男性,消化器科)「院内でも情報を以前より早く得られるようになった気がする。」(40代男性,消化器科)「地方都市では車で通勤なので使用しない。自宅や勤務先にはパソコンがネットでつながっており、さらに、スマートフォンに料金を支払う必要はない」(50代男性,内科)「情報収集時にPCを使う頻度が減った。Wi-Fi環境が整っている場合に、ペンを使ってメモを取ったりノートを書くことが減った。」(50代男性,総合診療科)「写真を撮ってiCloudでコンピューターに転送。自動車内で行先の情報を得る。 見知らぬ地でのナビとして。」(50代男性,整形外科)「iPadでプレゼン資料のチェック」(60代以上男性,内科)「院内では電波環境がよくないので使用しづらい」(30代以下男性,その他)「紹介病院など直ぐに患者に情報を提供できる」(40代男性,小児科)「電話は電話機能だけでいいと考えている。 また、出先で様々な機能を使う必要を感じていない。 時代に付き合う気持ちもない。」(60代以上男性,内科)「医学書を持ち歩くのが大変なので、主に電子書籍として利用しています。検索が早いのが利点です。」(40代男性,内科)「ハンドブックをPDF化しての閲覧、電子辞書の検索にとても便利です。」(50代男性,内科)「スマホはもう無ければやっていけないほど。ガラケーとは得られる情報量も違うし。タブレット端末もノートパソコンより小回りがきくので便利。ちょっとしたプレゼンもタブレット端末で済ませています。」(50代男性,内科)「スケジュール管理」(30代以下男性,精神・神経科)「医学雑誌を読むために購入予定。」(50代男性,麻酔科)「タブレット型端末はいつでも身近にある辞書として活用したい スマートフォンは便利すぎて危険に思えるので、普通の携帯で良い 」(60代以上男性,内科)「evernoteにPDFいれてガイドラインなど見ています。」(30代以下男性,アレルギー科)「漢方の本を読んだり、エヴァーノートに医療テキストなどを載せて、読みたいときに自由に読んでいる。」(50代男性,消化器科)「書籍や文献を持ち歩かなくて済む」(50代男性,神経内科)「医薬品情報・学会情報を手軽に入手できるようになった。」(50代男性,循環器科)「通勤時間を利用してニュースの閲覧」(30代以下男性,その他)「医療用サイト、メールマガジンを手軽に閲覧できるので最近の専門以外の情報が得られる」(60代以上男性,循環器科)「移動中の暇つぶしには最適。メールチェックや返信などが楽になった。出張などでも基本PCは不要である。」(40代男性,外科)「パソコンと違って持ち運べるし、常に電源が入っているので、咄嗟の調べ物に強いと思います。」(40代男性,消化器科)「医療現場での医療情報収集が容易になった。」(50代男性,小児科)「カンファレンス等、ガイドラインや文献のない場所でも調べることができる。」(50代男性,その他)「持つまでは不要と考えていたが、実際使用してみると 便利。しかしこれでゲームをしようとは思えない。」(30代以下男性,形成外科)「単にきっかけがないから、購入していないです。災害時など情報入手手段として用意しておきたいと思います。」(50代女性,小児科)「持っているが飛行機の予約や宿の手配、ゴルフのエントリーやショッピングばかり」(50代男性,内科)「旅行先でNaviを使う。レストランを探す。Googleで医薬品や疾患の診断基準を調べる。」(50代男性,内科)「携帯電話で,電話機能以外(メール,imodeなど)を使用することはほとんどありません.したがって,スマートフォンに関しても必要性を感じません.」(40代男性,呼吸器科)「職場では医局のPCでチェックして、移動中に情報をチェックする必要性が低いため。移動中やあちこちに移動する必要がある職場に異動すれば所有を検討するかもしれません。」(40代男性,内科)「電車の中で皆が見ている姿を見ていると寂しくなってきます。会話が減りますね」(30代以下女性,耳鼻咽喉科)

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寝不足は事故のもと!不眠による経済損失は他疾患より高い

不眠症と職場での事故(accident)や失敗(error)発生との関連について、Shahly V氏らが米国不眠症サーベイ(AIS)を基に検証した。その結果、他の慢性疾患と比べて不眠症は1.4倍有意に事故や失敗と関連することなどが明らかになった。Arch Gen Psychiatry誌2012年10月1日号の報告。 AISに登録されている労働者を対象に、広範に定義した不眠症[国際疾病分類第10版(ICD-10)、DSM-IV、研究用診断基準(RDC)/睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)の診断基準を満たすなど]と、職場に重大な損害を与えた事故や失敗との関連を、慢性疾患を除外して評価した。3,400万人以上の民間保険プラン加入者データ(診療/医薬品請求データ)が蓄積されたHealthCore Integrated Research Databaseから対象を選び、全米断面的電話サーベイを行った(協力率65%)。 主要評価項目は、電話インタビュー前の直近12ヵ月間における職場に重大な損害を与えた事故あるいは失敗についてであり、事故は「500ドル以上の損害および作業停滞を引き起こしたか」、その他の失敗は「会社に500ドル以上のコストを生じさせたか」との質問に対する回答で評価した。 12ヵ月間の不眠症は、Brief Insomnia Questionnaireで評価した。この評価は、盲検臨床再評価インタビューと比べてROC下領域0.86と検証に優れており、十分な構造的診断インタビュー法であった。慢性疾患についての評価は18項目で可能であり、自己評価スケールでデータを検証した。主な結果は以下のとおり。・不眠症は、その他の慢性疾患と比べて、職場での事故や失敗(両方またはどちらか)との関連が有意であった(オッズ比:1.4)。・オッズ比について、年齢、性別、教育水準、共存症による有意な変化はみられなかった。・不眠症に関連した事故や失敗による平均コスト(3万2,062ドル)は、その他の事故や失敗による同値(2万1,914ドル)よりも有意に高かった。・シミュレーション推計の結果、不眠症は重大な損害を与えた事故や失敗の7.2%を占め、発生した全コストの23.7%を占めた。・米国において年間平均27万4,000件の不眠症関連の事故や失敗が起きており、それによるコストは金額にすると311億ドル相当と予測された。これらは、他のあらゆる慢性疾患よりも高値であった。関連医療ニュース ・長期の睡眠薬服用、依存形成しない?! ・不眠症に対する鍼治療のエビデンスは? ・自殺予防に期待!知っておきたいメンタルヘルスプログラム

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「認知症」診療に関するアンケート第2弾~判断に迷った時~

対象ケアネット会員の内科医師500名方法インターネット調査実施期間2012年10月2日~10月8日Q1.認知症スクリーニング検査は何をお使いですか?(複数選択可)Q2.認知症診療において、判断を迷うことはありますか?(回答は1つ)Q3.認知症診療において、判断を迷った時どうしますか?(複数選択可)先生がこれまでに診療に関わった認知症患者さんやそのご家族に関して、記憶に強く残っているエピソードがございましたらお教えください(自由記入、一部抜粋)<診断に関して>もの忘れ等で受診しても、「年のせい」で片付けられて、診断が遅れている患者さんが多い。かかりつけ医も認知症を勉強して、専門医への紹介などで早期発見、早期治療に結び付ける診療が必要である。(開業医・内科・70歳代)外来診療で認知症だと気付かず、血糖・脂質異常悪化が認知症によるコンプライアンスの低下が原因だったと、入院して初めて気付いた事がある。(開業医・内科・50歳代)数年来、内科外来に通院しておられた独居の女性が、受診時はしっかりされているので誰も認知症を疑わなかった。ある時、急に身なりが乱れて来院し、しばらく後に腰痛で動けなくなって入院となった。その時になって初めて認知機能の低下と在宅での様子を知るに至り、驚くとともに深く反省したことがあった。(勤務医・内科・40歳代)アルツハイマー型認知症と思って加療していたが、他病で頭部MRIを行ったら、前頭側頭型認知症だった。臨床症状だけでなく、器質性変化もチェックが必要だと思った。(開業医・内科・50歳代)認知症としてきた人が甲状腺機能低下症であり、ホルモン剤で良好化した。(勤務医・内科・50歳代)もの忘れ専門外来を紹介したら脳腫瘍であった。 (開業医・内科・50歳代)薬物性甲状腺機能低下症による認知症。他院ではうつと診断されていた。(開業医・内科・40歳代)専門医にてレビー小体型認知症と診断された症例。 問診で何かおかしいが、HDS-Rは満点であった。結局、同居家族に注意深く観察してもらい診断に至った。 限られた時間内での診察では無理がある事を実感した。 (開業医・内科・60歳代)典型的な認知症で受診し、頭部CT検査にて3例が否定、硬膜下血腫2例、メニンギオーマ1例、いずれも手術にて改善し家族に感謝されたことがあります。(開業医・内科・50歳代)老夫婦で奥さんが認知症で来院されたが、実はご主人が認知症だった。(勤務医・内科・50歳代)<治療に関して>アルツハイマー型認知症は、たとえ内服治療等の治療を行っても、進行性に悪化する病気であることの理解が進んでいない。施設に入ったり、入院してしまうと、家族が途端に、無関心になってしまうか、上記の内容を理解せず、病状悪化がクレームにつながるケースも多い。(勤務医・内科・40歳代)「アルツハイマーの薬は進行を止めるだけで認知症が治るものではありません」と説明すると、治療を拒否されることが多い。(開業医・内科・50歳代)85歳の男性。めまいなど不定愁訴で来院。HDS-R13点。妻によると易怒的で攻撃性もあると困っておられた。頭部CTで陳旧性多発性ラクナ梗塞と前頭葉、側頭葉萎縮を認めた。認知症治療薬を開始し穏やかになった。転居のため転院することになり、奥さんに涙を流してお礼を言われた。(勤務医・内科・30歳代)重度の認知症の症状が、栄養代謝療法の施行により、生活意欲、注意など著明な改善を認めた症例の経験。(開業医・内科・50歳代)女性の患者さんで、急に自分の娘の顔がわからなくなり、自分の家にいるにもかかわらず帰ろうとして、娘が困り果て来院した。検査を予約すると同時に、娘からの要望もあり、薬物治療を開始した。治療早期より劇的に改善し、家事を積極的に手伝い、以前と変わらない母親になったと娘から感謝された。(開業医・内科・60歳代)抗認知症薬を投与して2ヵ月ほどして、今までまったく反応のなかった患者が、まともな受け答えをしたこと。(勤務医・内科・50歳代)<その他>夫が認知症になり、困惑して夫を叱ったりしていた妻に、患者に対して笑顔をみせることの重要さを説明し、実行してもらったところ、患者である夫も穏やかになり、夫婦の日常生活が改善されたという事例をいくつか経験している。(開業医・内科・40歳代)ロングスカートにつばの広い帽子で、何時も若々しく着飾ってくるおばあちゃん。お財布をなくしたの、転んだのと、楽しいエピソードをたくさん話してくれます。(開業医・内科・50歳代)危ないからと車を家族に取り上げられたのち、新車の軽自動車を購入し、ちょっと近所のスーパーに買い物に行くつもりだったが、(高速道路の)上り車線と下り車線とを間違えて、岡山から東京まで行き、東京の歩道に乗り上げ、警察に保護された。1日帰ってこないので家族が警察に届けを出していたため、すぐわかった。本人はどうやって行ったのか、まったく覚えておらず、高速道路料金も支払っていたようだし、事故もなかったようである。(開業医・内科・40歳代)動ける認知症の患者さんで、電車を乗り継いで他県で見つかった例があった。(開業医・内科・40歳代)自動車運転を禁止しても勝手に乗り回し、鍵を取り上げた際には配偶者に暴力をふるってどうしても乗ろうとした。(開業医・内科・60歳代)子供さんの親への思い入れがとても強く、お世話をする施設側として、その気持ちに添う事は大変だなと思う事が時としてある。(開業医・内科・60歳代)認知症で長年加療中で安定していた患者を、嫌がっていたデイサービスに行かせたところ、その日のうちに認知症が急速に悪化し、あっという間に奥さんも子どもの顔もすべて忘れてしまった事例。(開業医・内科・40歳代)まだ認知症について説明すればするほど引いてしまう家族は多い。また、初期の認知症患者に「あなたは認知症です」と告げるのがベストなのかは未だ疑問。(開業医・内科・50歳代)

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統合失調症患者におけるフィルター障害のメカニズムを解明

 統合失調症における作業記憶(ワーキングメモリ)障害について、前頭前皮質背外側部(DLPFC)ネットワーク内の機能的接続障害によるものであることが明らかにされた。米国・エール大学医学部のAnticevic A氏らが、いわゆる「フィルター障害」のメカニズムについて検討した結果で、「注意散漫への抵抗性障害は、DLPFCと周辺領域(視床/辺縁系の皮質下と調節領域結合を含む)の断絶を示すという考え方を支持する知見が得られた」と報告した。Schizophr Res誌2012年10月号の掲載報告。 先行研究で著者らは、健常者ではDLPFC活性はワーキングメモリにおける良好な注意散漫回避に結びついているが、統合失調症患者では結びついていないことを示していた。その知見を踏まえて、統合失調症はワーキングメモリ障害におけるDLPFCネットワーク内の機能的接続障害と関連していると仮定し、検証した。 統合失調症患者28例と対照群24例を対象に、遅発性非言語ワーキングメモリタスク(ワーキングメモリ維持期に一過性の視覚的注意を逸らすタスクを含む)を完了した。DLPFC全脳作業ベースの機能的接続(tb-fcMRI)を評価し、とくに維持期の注意散漫の有無について評価した。主な結果は以下のとおり。・患者群は注意散漫症状を呈している間、皮質および皮質下の両領域において、tb-fcMRIが機能しないことが明らかになった。・対照群は注意散漫時に、DLPFCと扁桃体延長領域間のtb-fcMRI低下を示した。・一方で患者群は、扁桃体との結合を示す変化は見られなかった。しかし、背側正中視床との強い接続性を示した。・注意散漫症状の間、対照群はDLPFCとその他の前頭前野皮質領域間との接合がより明確であったが、患者群は、そのような機能を示す変化が見られなかった。関連医療ニュース ・検証「グルタミン酸仮説」統合失調症の病態メカニズム ・統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か? ・グルタミン酸ドパミンD3受容体遮断による統合失調症の新たな創薬の可能性

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ビタミンD服用、上気道感染症の発症・重症度を抑制しない

 健常者が半年間、月1回10万IUのビタミンDを服用し続けても、上気道感染症の発症および重症度を抑制しなかったことが、ニュージーランド・オタゴ大学病理学部門のDavid R. Murdoch氏らによる無作為化比較試験の結果、示された。これまで観察研究で、血中25-ヒドロキシビタミンD(25-OHD)値と上気道感染症発生率との逆相関の関連が報告されていたが、ビタミンDサプリメントによる臨床試験の結果は確定的なものはなかった。JAMA誌2012年10月3日号掲載報告より。健康な成人322例を対象に無作為二重盲検プラセボ対照試験研究グループは、ニュージーランドのクライストチャーチで2010年2月~2011年11月の間、健康な成人322例を対象に無作為二重盲検プラセボ対照試験を行った。被験者は無作為に、月1回10万IUの経口ビタミンD3薬を服用する群(初回量20万IU、その1ヵ月後20万IU、その後は月1回10万IU:161例)と、プラセボで同一レジメンの治療を受ける群(161例)に割り付けられた。治療は合計18ヵ月間行われた。主要エンドポイントは、上気道感染症エピソード数とし、副次エンドポイントは、上気道感染症エピソードの持続期間、同重症度、発症により仕事ができなかった日数だった。血中25-OHDは増大するが、上気道感染症エピソード被験者のベースラインでの平均25-OHD値は29(SD 9)ng/mLであった。ビタミンDサプリメントの服用は血清25-OHD値を増大し、本試験の間48ng/mL超を維持した。上気道感染症エピソードは、ビタミンD群593例、プラセボ群611で、統計的有意差(エピソード数/被験者数)は認められなかった(平均値はビタミンD群3.7/人、プラセボ群3.8/人、リスク比:0.97、95%信頼区間:0.85~1.11)。その他の、上気道感染症発症により仕事ができなかった日数(平均値は両群とも0.76日、リスク比:1.03、95%信頼区間:0.81~1.30)、エピソードごとの症状を呈した期間(平均値は両群とも12日、0.96、0.73~1.25)、上気道感染症エピソードの重症度も統計的有意差はみられなかった。これらの所見は、季節ごとに分析をしても、またベースラインの25-OHD値で分析をしても変化はみられなかった。

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第7回 説明義務 その1:しておかないと困る!患者への説明の内容とその程度

■今回のテーマのポイント1.説明義務の内容は、原則としては、「診療情報の提供等に関する指針」(厚生労働省)に記載されている7項目である2.説明すべき治療方法は、原則として「医療水準として確立したものに限る」。したがって、原則的には、医療水準として未確立のものは、説明する義務はない3.ただし、未確立の新規治療法であっても、医学的に明白な誤りがなく、適切な方法で臨床研究がなされている新規治療法について、患者の求めがあった場合には、特別な事情があるとして、当該未確立の療法についても説明義務を負うこととなる事件の概要患者(X)(43歳女性)は、Y医院にて乳がんと診断されました。当時、乳がんの標準的手術として確立されていたのは、胸筋温存乳房切除術であり、乳房温存療法は、まだ実施している施設も少なく、確立されたエビデンスは存在していませんでした。このような時点において、A医師は、乳房温存を希望するXに対し、乳房温存療法につき十分な説明をすることなく、当時の標準手術である胸筋温存乳房切除術を施行しました。これに対し、原告Xは、A医師に乳房温存療法についての説明義務違反があった等として、約1,200万円の損害賠償請求を行いました。原審では、診療当時、いまだ乳房温存療法の安全性は確立されておらず、危険を犯してまで同療法を勧める状況ではなかったとして、Xの請求を棄却しました。これに対し、最高裁は、医師Aの説明義務違反を認め、下記の通り判示しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過患者(X)(43歳女性)は、平成3年1月中旬ごろ、右乳房右上部分の腋の下近傍に小さなしこりを発見したため、診療科目と並べて「乳腺特殊外来」の看板を掲げているY医院を受診しました。手術生検の結果、Xにあったしこりは、充実腺管がんと診断されました。A医師は、Xに対し、乳がんであり手術する必要があること、手術生検をしたため手術は早くした方がいいこと、乳房を残すと放射線で黒くなることがあり、再発したらまた切らなければならないことを説明しました。Xは、入院後、新聞記事で乳房温存療法の記事を読んだこと、可能ならば乳房を残して欲しいことを手紙にしたため、A医師に手渡しました。しかし、当時、乳がんの標準的手術として確立されていたのは、胸筋温存乳房切除術であり、乳房温存療法は、まだ実施している施設は全国で12.7%でした。また、同手術方法に対する厚生労働省助成による研究班が立ち上がる2年前であり、本件当時わが国においては、乳房温存療法については、確立されたエビデンスは存在していませんでした。そのため、A医師は、当時の標準手術である胸筋温存乳房切除術を施行しました。事件の判決「医師は、患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては、診療契約に基づき、特別の事情のない限り、患者に対し、当該疾患の診断(病名と病状)、実施予定の手術の内容、手術に付随する危険性、他に選択可能な治療方法があれば、その内容と利害得失、予後などについて説明すべき義務があると解される。本件で問題となっている乳がん手術についてみれば、疾患が乳がんであること、その進行程度、乳がんの性質、実施予定の手術内容のほか、もし他に選択可能な治療方法があれば、その内容と利害得失、予後などが説明義務の対象となる。本件においては、実施予定の手術である胸筋温存乳房切除術について被上告人〔A医師〕が説明義務を負うことはいうまでもないが、それと並んで、当時としては未確立な療法(術式)とされていた乳房温存療法についてまで、選択可能な他の療法(術式)として被上告人に説明義務があったか否か、あるとしてどの程度にまで説明することが要求されるのかが問題となっている。〔中略〕・・・・一般的にいうならば、実施予定の療法(術式)は医療水準として確立したものであるが、他の療法(術式)が医療水準として未確立のものである場合には、医師は後者について常に説明義務を負うと解することはできない。とはいえ、このような未確立の療法(術式)ではあっても、医師が説明義務を負うと解される場合があることも否定できない。少なくとも、当該療法(術式)が少なからぬ医療機関において実施されており、相当数の実施例があり、これを実施した医師の間で積極的な評価もされているものについては、患者が当該療法(術式)の適応である可能性があり、かつ、患者が当該療法(術式)の自己への適応の有無、実施可能性について強い関心を有していることを医師が知った場合などにおいては、たとえ医師自身が当該療法(術式)について消極的な評価をしており、自らはそれを実施する意思を有していないときであっても、なお、患者に対して、医師の知っている範囲で、当該療法(術式)の内容、適応可能性やそれを受けた場合の利害得失、当該療法(術式)を実施している医療機関の名称や所在などを説明すべき義務があるというべきである。そして、乳がん手術は、体幹表面にあって女性を象徴する乳房に対する手術であり、手術により乳房を失わせることは、患者に対し、身体的障害を来すのみならず、外観上の変ぼうによる精神面・心理面への著しい影響ももたらすものであって、患者自身の生き方や人生の根幹に関係する生活の質にもかかわるものであるから、胸筋温存乳房切除術を行う場合には、選択可能な他の療法(術式)として乳房温存療法について説明すべき要請は、このような性質を有しない他の一般の手術を行う場合に比し、一層強まるものといわなければならない」(最判平成13年11月27日民集55巻6号1154頁)※〔 〕は編集部挿入ポイント解説今回は説明義務です。「インフォームド・コンセント(説明と同意)」は、アメリカでは、1957年のサルゴ事件判決(大動脈造影検査後に下半身の麻痺が生じたことから、医師が検査の危険性を説明しなかったとして争われた事件)において生まれました。わが国では、およそ半世紀遅れ、1990年代より議論が始まり、現段階では、診療契約上説明義務があることは確立しているものの、具体的な説明の範囲については揺れ動いているという状況です。説明の範囲について、現時点においてベースラインとなるのは、本判決前半部分に記載されている「医師は、患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては、診療契約に基づき、特別の事情のない限り、患者に対し、当該疾患の診断(病名と病状)、実施予定の手術の内容、手術に付随する危険性、他に選択可能な治療方法があれば、その内容と利害得失、予後などについて説明すべき義務があると解される」となります。また、より一般化したものとして、厚生労働省が示す「診療情報の提供等に関する指針」に示されている、(1)現在の症状及び診断病名(2)予後(3)処置及び治療の方針(4)処方する薬剤について、薬剤名、服用方法、効能及び特に注意を要する副作用(5)代替的治療法がある場合にはその内容及び利害得失(患者が負担すべき費用が大きく異なる場合には、それぞれの場合の費用を含む)(6) 手術や侵襲的な検査を行う場合には、その概要(執刀者及び助手の氏名を含む)、危険性、実施しない場合の危険性及び合併症の有無(7) 治療目的以外に、臨床試験や研究などの他の目的も有する場合には、その旨及び目的の内容が参考となります。原則的には、上記内容を説明している場合には、医療機関が説明義務違反を問われる可能性は低いといえます。もし、説明内容に不足があった場合には、説明義務違反がある(=過失がある)ことにはなりますが、医学的に適切な治療が選択されており、十分な説明がなされていれば同じ選択をすることが通常であると言える場合には、たとえ当該治療の結果、患者の身体に損害が生じたとしても、説明義務違反と生命・身体の損害の間に因果関係がないため、医療機関は、当該生命・身体の損害に対して賠償する責任はありません。ただ、その場合においても、わが国においては、患者の治療上の自己決定権自体を人格権の一内容として保護すべき法益とし、たとえ適切な治療により生命・身体に損害がなかったとしても、この権利を侵害した結果、精神的損害を生じたとして低額ではありますが損害賠償責任が認められることとなります(最判平成12年2月29日民集54巻2号582頁)。もう一度、判決文に戻ります。この判決が問題となる点として、〔1〕説明義務の主体は医師でなければならないのか〔2〕客体は患者でなければならないのか〔3〕特別の事情とはどのような場合があるのかがあげられます。〔1〕についてですが、判決は「診療契約に基づき説明義務が生ずる」としているのですから、法的には、診療契約の当事者である医療機関が適切な方法で説明すれば足りるのであり、必ずしも医療機関の一スタッフである医師が一から十まですべてを口頭で説明をしなければならないということにはならないと考えます。もっとも、疾患一般のことについては、文書やビデオ等でも十分な説明ができますが、患者個別具体の病状に応じた部分については、主治医でなければ説明しがたいこともありますので、その点に関しては医師が行う必要があるといえます。この点については、次回に解説したいと思います。〔2〕についてですが、まず、患者に意識がない場合は、法的には一切の説明義務はなくなるのかということです。診療契約は、患者と医療機関の間で締結されていますので、患者の家族は、法律上関係のない第三者ということとなります。したがって、素直に考えると契約関係にない家族に対して説明義務は生じ得ないということになります。また、末期がんで、患者の心因的な事由等により、医学的に告知すべきでない場合も同様でしょうか。この点については、次々回第9回で実際の事例を基に解説したいと思います。そして、今回の判決において問題となったのが、〔3〕特別の事情とは何を指すのかです。本判決が示すように、「一般的にいうならば、実施予定の療法(術式)は医療水準として確立したものであるが、他の療法(術式)が医療水準として未確立のものである場合には、医師は後者について常に説明義務を負うと解することはできない」のであり、未熟児網膜症に関する判決においても、「本症に対する光凝固法は、当時の医療水準としてその治療法としての有効性が確立され、その知見が普及定着してはいなかったし、本症には他に有効な治療法もなかったというのであり、また、治療についての特別な合意をしたとの主張立証もないのであるから、医師には、本症に対する有効な治療法の存在を前提とするち密で真しかつ誠実な医療を尽くすべき注意義務はなかった」(最判平成4年6月8日民集165号11頁)とし、光凝固療法が当時の標準的治療として確立されていなかったことを理由として説明義務及び転医義務違反を否定しています。しかし、本判決によると、「少なくとも、当該療法(術式)が少なからぬ医療機関において実施されており、相当数の実施例があり、これを実施した医師の間で積極的な評価もされているものについては、患者が当該療法(術式)の適応である可能性があり、かつ、患者が当該療法(術式)の自己への適応の有無、実施可能性について強い関心を有していることを医師が知った場合などにおいては、たとえ医師自身が当該療法(術式)について消極的な評価をしており、自らはそれを実施する意思を有していないときであっても、なお、患者に対して、医師の知っている範囲で、当該療法(術式)の内容、適応可能性やそれを受けた場合の利害得失、当該療法(術式)を実施している医療機関の名称や所在などを説明すべき義務があるというべきである」と判示し、これらの事情がすべてそろっている場合においては、特別な事情があるとして未確立の療法についても説明義務を負うとしています。医療は日々進歩しており、次々に新しい治療方法が提唱されています。確かにがんに対する縮小手術は常にがん再発の危険を伴います。一般に再発がんの生命予後は悪く、それに引き換え、縮小手術の利点は、機能温存、入院期間の短縮、苦痛の軽減、合併症の減少等副次的なものであるため、その適用には慎重さが求められます。しかし、少なくとも、1)医学的に明白な誤りがなく、適切な方法で臨床研究がなされている新規治療法について、2)患者の求めがあった場合には、適切な情報提供はなされるべきであるということに異論はないものと思われます。本事例以外に、特別な事情があると考えられる場合としては、美容整形目的の手術や臨床研究の場合があげられます。臨床研究においては、厚生労働省より「臨床研究に関する倫理指針」が出ていますので、臨床研究に携わる場合には、必ず一度は精読してください。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます(出現順)。最判平成13年11月27日民集55巻6号1154頁最判平成12年2月29日民集54巻2号582頁最判平成4年6月8日民集165号11頁

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乳がん患者と医療スタッフとのコミュニケーションを円滑にするための冊子

 特定非営利法人キャンサーネットジャパン、日本イーライリリー株式会社、株式会社毎日放送、アメリカンホーム保険会社は4日、乳がんに関する基礎知識や、患者が病気を理解するために医師に質問すべきことなどをまとめた冊子『もっと知ってほしい乳がんのこと』を作成したことを発表した。冊子を活用してもらうことで、乳がん患者が納得のいく治療を受けられるようになることを目的としている。 この冊子は、独立行政法人国立病院機構九州がんセンター臨床腫瘍研究部長の大野真司氏監修のもと、乳がんそのものや標準的な治療などについて、患者や家族が知っておきたいことを全20ページにまとめたもの。また、冊子には、毎日放送のニュース番組「VOICE」が展開しているがん検診啓発キャンペーン“Jump over Cancer”の協力のもと、患者や家族の体験談をPatients Voice(患者の声)として掲載している。 冊子は、がん診療連携拠点病院397施設、その他がん患者相談窓口を含む医療機関などに送付するほか、各団体・企業を通じて配布するという。また、がん医療情報サイト「キャンサーチャンネル」(http://www.cancerchannel.jp/)や、上記各社のホームページなどからも入手できる。詳細はプレスリリースへhttps://www.lilly.co.jp/pressrelease/2012/news_2012_134.aspx

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不眠症に対する鍼治療のエビデンスは?

 不眠症に対して、鍼治療のような非薬物療法は多くの人に有効で広く行われているが、いまだエビデンスは不十分であるとされている。中国・香港大学のCheuk DK氏らは、不眠症に対する鍼治療の有効性と安全性を評価するメタ解析を行った。33試験、2,293例を含んだ分析の結果、試験の方法論的な質が不良であったり、不均一性や出版バイアスが高く、鍼治療の支持・不支持を論ずるに足りるエビデンスが十分かつ厳密ではなかった。著者は、「より大規模な質の高い臨床試験が求められる」と述べている。Cochrane Database Syst Rev. 2012年9月12日号の報告。 メタ解析は2011年10月に、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、MEDLINE、EMBASE、PsycINFOなどを検索して行われた。すべての適格報告の参考文献を精査し、試験報告の執筆者とその分野の専門家と面談した。 不眠症に対する鍼治療について評価したすべての無作為化試験を適格とした。評価の対象は、追加療法あり/なしの鍼治療とプラセボ、シャム、無治療、同一追加療法とを比較した試験で、手法の違う鍼治療や他の治療と鍼治療を比較した試験は除外した。2人の独立したレビュワーがデータを抽出しバイアスリスクを評価。検討は、オッズ比(OR)、二者択一アウトカムおよび連続数値アウトカムの平均差を用いて行われた。データは必要に応じてメタ解析に組み込まれた。主な結果は以下のとおり。・解析には、33試験、いくつかの内科的症状(脳卒中、末期腎不全、閉経期、妊娠、精神病)を有する不眠症患者2,293例(15~98歳)が含まれた。鍼治療、電気鍼治療、指圧療法、磁気指圧療法を評価した。・鍼治療は無治療(2試験、280例)あるいはシャム/プラセボ(2試験、112例)と比較して、より多くの患者の睡眠の質を改善した。無治療との比較のORは13.08(95%CI:1.79~95.59)、シャム/プラセボとの比較のORは6.62(同:1.78~24.55)であった。・しかし、感受性解析で中途試験脱落者のアウトカムがより悪かったと仮定した場合、鍼治療の効果は断定できなかった。・その他の単一治療との比較では、鍼治療はその他の治療の補助的治療として、睡眠の質が改善した人の割合を、わずかだが増大する可能性が示された(13試験、883例、OR:3.08、95%CI:1.93~4.90)。・サブグループ解析では、鍼治療のみ有効性が示され、電気鍼治療の有効性は示されなかった。・すべての試験に高いバイアスリスク、不均一性(不眠症定義、患者特性、経穴、レジメン)が認められた。効果サイズは広範囲な信頼区間に対し概して小さく、出版バイアスの可能性があった。また、有害事象はほとんど報告されず、あっても軽度であった。関連医療ニュース ・長期の睡眠薬服用、依存形成しない?! ・日本人の睡眠満足度は低い「より積極的な問診が必要」 ・“ヨガ”で精神症状とQOLが改善

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Cochraneレビューには、対象試験の利益相反情報の記載が少ない

 Cochraneレビューの多くが、解析対象の試験の資金源や、著者と製薬企業の金銭的な関係の情報を記載していない実態が、カナダMcGill大学(モントリオール)のMichelle Roseman氏らの調査で明らかとなった。系統的レビューとメタ解析のガイドラインでは、解析対象試験の利益相反の記載は求められていないという。最近の研究では、強い影響力を持つ生物医学誌に掲載された薬剤の臨床試験に関する29編のメタ解析のうち、対象試験の資金源の記述があったのは2編のみで、著者と製薬企業の金銭的な関係の情報を提供するものは1編もなかった。一方、質の高いエビデンスに基づくレビューの基準を定めるCochraneレビューに、これらの情報がどの程度記載されているかは不明だった。BMJ誌2012年9月14日号(オンライン版2012年8月21日号)掲載の報告。利益相反の情報提供を横断的研究で調査研究グループは、2010年に発表された薬物療法に関するCochraneレビューが、解析の対象となった試験の利益相反の情報をどの程度報告しているかを調査し、報告がある場合はレビュー中のどこにその記載があるかについて検討するために横断的研究を行った。対象は、2010年に「系統的レビューに関するCochraneデータベース(Cochrane Database of Systematic Reviews)」で公表された薬物療法に関する系統的レビューで、2008年以降の最新の内容を扱い、複数の無作為化対照比較試験の結果を含むものとした。資金源情報の記載は3分の1に過ぎない対象となった151編のCochraneレビューのうち、解析対象の試験の資金源の情報を報告していたのは46編(30%、95%信頼区間[CI]:24~38)であった。このうち、全試験の資金源の情報を公開していたのは30編(20%、95%CI:14~27)で、16編(11%、95%CI:7~17)は一部の試験の資金源のみを記載していた。151編のうち、著者と製薬企業の金銭的な関係または雇用関係の情報を提供していたのは16編(11%、95%CI:7~17)のみだった。試験の資金源や、著者と製薬企業の関係の情報の記載場所は、バイアスのリスク評価(本文、図、表)のほか対象試験の背景因子の表など多岐にわたり、一貫性がなかった。抄録中に資金源の記載があったのは1編だけだった。著者は、「2010年に発表されたCochraneレビューの多くが試験の資金源や、著者と製薬企業の金銭的な関係の情報を提供していなかった」とまとめ、「利益相反の情報はレビュー中の特定の場所に記述することとし、バイアスのリスク評価に含めるのが望ましいと考えられる。抄録にも記載すべきだろう」と指摘している。

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