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1901.

抗うつ薬誘発性体重増加のレビュー、その結果は

 うつ病と肥満はどちらも複雑な病因を持ち、公衆衛生に大きな影響を与える不均一な疾患である。疾患管理予防センター(CDC)のデータによると、抗うつ薬の処方は1988年以降、約400%上昇している。同時に、1980年以降の肥満率は、成人で15%から30%に倍増しており、小児では3倍以上増加している。肥満率の上昇は、重大な健康への影響を有し、30以上の重篤な疾患の増加率に影響する。西洋社会において、抗うつ薬の使用と肥満率が同時に上昇しているにもかかわらず、2つの関連付けおよび抗うつ薬誘発性体重増加のメカニズムについてはよくわかっていない。オーストラリア国立大学のS H Lee氏らは、抗うつ薬使用およびうつ病と体重増加との複雑な関係に注目し、レビューを行った。Translational psychiatry誌2016年3月15日号の報告。 主なレビューは以下のとおり。・臨床所見から、肥満がうつ病発症リスクを高め、うつ病が肥満リスクを高める可能性が示唆された。・視床下部-下垂体-副腎中枢(HPA axis)の活性化はストレス状態で誘発される。同時に、HPA axisは肥満やメタボリックシンドロームにより調節不全が生じ、それはうつ病と共通の病態生理学的経路として最もよく理解されている。・多くの研究で、異なるクラスの抗うつ薬が体重に及ぼす影響が示唆されてきた。・前臨床研究では、三環系のアミトリプチリン、ノルトリプチリン、イミプラミン、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬のミルタザピンが体重増加と関連していることが示唆されている。・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の使用は、急性期治療の体重減少と関連しているにもかかわらず、多くの研究において、SSRIが体重増加の長期的リスクと関連していることが示唆されている。しかしながら、臨床研究の高い変動性や複数の交絡因子のため、SSRI治療の長期的効果やSSRI曝露による体重増加は、依然として不明なままである。・最近開発された動物パラダイムでは、ストレスと抗うつ薬の組み合わせに続く長期的な高脂肪食の結果、長期抗うつ薬治療の中止後に、高脂肪食のみが引き起こす量を上回る著しい体重増加が示唆されている。・既存の疫学、臨床、前臨床データに基づき、抗うつ薬使用の増加により、抗うつ薬曝露が高率となった結果が肥満の蔓延に影響する因子であるとの検証可能な仮説が導き出された。関連医療ニュース 非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 オランザピン誘発性体重増加を事前に予測するには:新潟大学

1902.

双極性障害発症のリスク因子を解析

 双極性障害(BD)の発症に対する環境リスク因子については十分にわかっていない。イタリア・Centro Lucio BiniのCiro Marangoni氏らは、長期研究によりBDの有病率、罹病期間、環境曝露の予測値を評価した。Journal of affective disorders誌2016年3月15日号の報告。 著者らは、2015年4月1日までのPubMed、Scopus、PsychINFOのデータベースより、関連キーワード(出生前曝露、母体内曝露、トラウマ、児童虐待、アルコール依存症、大麻、喫煙、コカイン、中枢興奮薬、オピオイド、紫外線、汚染、地球温暖化、ビタミンD、双極性障害)と組み合わせて体系的に検索し、当該研究を抽出した。追加の参照文献は相互参照を介して得た。(1)長期コホート研究または長期デザインの症例対照研究、(2)初期評価時に生涯BDの診断がなく、フォローアップ時に臨床的または構造化評価でBDと診断された患者の研究が含まれた。家族性リスク研究は除外した。研究デザインの詳細、曝露、診断基準の詳細と双極性障害リスクのオッズ比(OR)、相対リスク(RR)またはハザード比(HR)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・2,119件中、22件が選択基準を満たした。・識別されたリスク因子は、3つのクラスタに分類可能であった。(1)神経発達(妊娠中の母体のインフルエンザ;胎児発育の指標)(2)物質(大麻、コカイン、その他の薬;オピオイド薬、精神安定剤、興奮剤、鎮静剤)(3)身体的/心理的ストレス(親との別れ、逆境、虐待、脳損傷)・唯一の予備的エビデンスは、ウイルス感染、物質またはトラウマの曝露がBDの可能性を高めることであった。・利用可能なデータが限られたため、特異性、感度、予測値を計算することができなかった。関連医療ニュース うつ病と双極性障害を見分けるポイントは 双極性障害I型とII型、その違いを分析 双極性障害治療、10年間の変遷は

1903.

統合失調症患者への健康増進介入はやはり難しい

 統合失調症患者における早期死亡の最も一般的な原因は、心血管疾患である。デンマーク・オーフス大学病院のMette Vinther Hansen氏らは、短期試験で有効性が証明されている手法を用いて、非選択的な統合失調症外来患者における心血管リスク因子を減らせるかを検討した。さらに、どのようなベースライン特性が良好なアウトカムと関連しているかも検討した。The International journal of social psychiatry誌オンライン版2016年3月23日号の報告。 2つのデンマークの病院で統合失調症の治療を受けたすべての患者を対象に、1年間の追跡研究を行った。対象患者は、個別およびグループでの健康介入を受けた。体重、腹囲、血糖値、血清脂質、喫煙とアルコールに関する情報を得た。 主な結果は以下のとおり。・平均して、BMI、腹囲のわずかだが有意な増加が観察された一方で、他の心血管リスク因子は有意ではないわずかな改善が認められた。・ベースライン時にBMIの高い患者、2年超の罹病期間を有する患者においては、介入により有意に良好な結果が得られた。 結果を踏まえ、著者らは「ルーチンケアの一部として、統合失調症患者の身体健康状態を改善することは難しいことが示された。患者に対して介入に参加する動機付けがなく、推奨されるメタボリックリスク指標の管理は困難であった。今後の研究は、ルーチンケアに取り入れることのできる健康増進法として、シンプルな戦略に焦点を当てるべきである」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症患者の運動増進、どうしたら上手くいくか 統合失調症患者にはもっと有酸素運動をさせるべき 日本人統合失調症患者のMets有病率を調査:新潟大学

1904.

抗精神病薬の過量投与、昔と比べてどう変化しているか

 薬物過量投与による罹患率や死亡率は、この30年間減少している。これは、より安全性の高い薬剤が開発されたことで、過量投与のアウトカムが改善したことが背景にある。オーストラリア・Calvary Mater NewcastleのIngrid Berling氏らは、26年間における抗精神病薬の処方変更と過量投与の変化との関連を検討した。British journal of clinical pharmacology誌オンライン版2016年3月6日号の報告。 1987~2012年のすべての抗精神病薬中毒に関する発表を検討した。人口統計、摂取情報、臨床効果、合併症、治療のデータをプロスペクティブに収集した。オーストラリアにおける抗精神病薬の使用率は、1990~2011年の政府からの出版物から抽出し、ポストコードから過量投与情報とリンクした。 主な結果は以下のとおり。・過量投与は抗精神病薬3,180件、第1世代抗精神病薬1,235件、第2世代抗精神病薬1,695件、リチウム250件であった。・26年間で抗精神病薬の過量投与は1.8倍に増加し、第1世代抗精神病薬はピーク時の5分の1に減少したが(80件/年~/16件/年)、第2世代抗精神病薬は倍増しており(160件/年)、そのうちオランザピンとクエチアピンが78%を構成していた。・すべての抗精神病薬過量投与は、ICU平均在室時間18.6時間、ICU入院15.7%、人工呼吸10.4%、院内死亡0.13%であった。これは、第2世代抗精神病薬と比較し、第1世代抗精神病薬でも同様であった。・同期間において、抗精神病薬の処方は2.3倍増加していた。第1世代抗精神病薬の処方が減少している一方で、第2世代抗精神病薬は急激に上昇していた。主にオランザピン、クエチアピン、リスペリドン(79%)が上昇していた。 結果を踏まえ、著者らは「26年間にわたり、抗精神病薬処方の増加は抗精神病薬の過量投与の増加と関連していた。抗精神病薬の種類は変化しているが、罹患率や死亡率に変化はなく、抗精神病薬の過量投与による入院の割合は増加していた」とまとめている。関連医療ニュース 抗精神病薬のアジア実態調査:高用量投与は36% 統合失調症、維持期では用量調節すべきか:慶應義塾大 抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大

1905.

慢性腰痛、うつ病合併で痛み増大

 神経障害性の腰痛にうつ病を合併している患者は、うつ病を合併していない患者よりも疼痛レベルが有意に高く、疼痛による障害の度合いが大きく、QOLも低いことが、東海大学の檜山 明彦氏らによる研究で明らかになった。これは、自己評価式抑うつ性尺度(SDS-Zung)およびPainDETECT日本語版(PDQ-J)を用いて、神経障害性の腰痛患者の抑うつ症状とQOLへの影響を評価した最初の研究である。European spine journal誌オンライン版2016年2月13日号の報告。 本研究の目的は、腰痛にうつ病を合併する患者、腰痛が神経障害性である患者の割合を調査し、彼らのQOLに与える影響を検討することであった。 2012年6月と13年12月の間に東海大学医学部付属病院を訪れた慢性腰痛患者650例のうち、腰痛とQOLについてのアンケートに回答した309例を対象に断面レトロスペクティブ研究を行った。アンケートには、SDS-Zung、PDQ-J、痛みの評価スケール(NRS)、QOL評価が用いられた。対象患者をSDS-Zungスコアに応じて2群に分け(スコア40未満:非うつ病群、スコア50以上:うつ病群)、両群を比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病群が63例(20.4%)、非うつ病群が125例(40.5%)であった。・平均PDQ-Jスコアは、非うつ病群よりも、うつ病群で高かった。・神経障害性疼痛は、うつ病群の17例(27%)、非うつ病群の11例(9%)で認められ、うつ病群で多かった。・腰痛患者のSDS-ZungスコアとPDQ-Jスコアは、有意に相関していた(r=0.261、p<0.001)。・NRSスコアは、非うつ病群よりもうつ病群で高かった。・QOLスコアは、非うつ病群よりもうつ病群で低かった。 抑うつ症状を合併する神経障害性の腰痛は、早期に発見し、早期から治療を行うことで、治療効果の改善が期待できる。しかし、多くの腰痛患者の痛みは複合しているため(神経障害性疼痛・侵害受容性疼痛・心因性疼痛)、数種類の薬剤を使う必要があり、マネジメントは複雑となる。さらに研究を重ねることで、痛みや機能障害の原因、痛みと抑うつ症状の合併例に対する治療の有効性を明らかにし、腰痛患者のQOL向上につなげることが大切であると考えられる。

1906.

統合失調症患者の再発リスクを低下させるためには

 統合失調症患者でも抗精神病薬の効果が続く長時間作用型治療(LAT)による治療を行っているにもかかわらず、再発することが少なくない。米国・セントルイス大学のLarry Alphs氏らは、LATによりアドヒアランスが確保されているにもかかわらず再発する要因を検討した。International clinical psychopharmacology誌オンライン版2016年3月11日号の報告。 著者らは、安定期統合失調症または統合失調感情障害患者323例に対し、リスペリドン長時間作用型注射剤を1年間使用した研究の事後分析を行った。対象患者は、抗精神病薬の経口剤を中止し、52週間のリスペリドン長時間作用型注射剤50mg(163例)または25mg(161例)の隔週投与に割り付けられた。再発の要因の推定にはCox比例ハザード回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・323例中59例(18.3%)は、持続的なLATにもかかわらず12ヵ月間で再発が認められた。・再発リスクと関連した要因は、罹病期間(年6%増加、p=0.0003)と調査国(カナダ対米国で4.7倍リスク増加、p=0.0008)であった。・罹病期間を、5年以下、6~10年、10年超で分類した場合、10年超対5年以下で再発リスクが最も高かった(4.4倍リスク増加、p=0.0181)。 著者らは「罹病期間が長い慢性化した患者では、アドヒアランスを維持したにもかかわらず再発リスクが高いため、早期の介入が必要である」としている。関連医療ニュース 統合失調症の再発予防プログラムを日本人で検証:千葉大学 統合失調症“再発”の危険因子は 統合失調症再発予防、遠隔医療に改善の余地あり

1907.

維持期統合失調症治療、抗精神病薬の中止は可能か

 南アフリカ共和国・ステレンボッシュ大学のRobin Emsley氏らは、抗精神病薬による維持療法の長所と短所に関する最近の文献をレビューし、推奨事項をまとめた。Current opinion in psychiatry誌2016年5月号の報告。 最近の主な知見は以下のとおり。・単一エピソード後でさえ、抗精神病薬治療を中止した場合の再発率はきわめて高い。再発の確実な予測因子はなく、再発は重篤な心理社会的および生物学的結果に結び付く。・一方で、よく認識されている抗精神病薬の副作用の負担に加えて、最近の文献では、抗精神病薬治療の曝露の多さと長期転帰の不良との関連性が示唆されている。・抗精神病薬を中止した患者と比較し、維持した患者のほうが有効であるというエビデンスの報告は多い。・統合失調症単一エピソード後の維持療法に関して確実な回答を得るために、より多くの、より良い研究が緊急に必要である。・現状では、臨床医はとくに初期段階では、抗精神病薬治療の継続するよう促すことで、再発防止を優先する必要がある。そのうえで、可能な限り低用量かつ最も適した忍容性の高い抗精神病薬を選択することで、副作用を回避する必要がある。関連医療ニュース 統合失調症に対し抗精神病薬を中止することは可能か ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は 統合失調症患者の抗コリン薬中止、その影響は

1908.

SSRIはむしろ心血管リスクを低下させる?/BMJ

 プライマリケア受診のうつ病患者約24万例のデータを用いたコホート研究で、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、心血管リスクの増加と関連しないことが示された。英国・ノッティンガム大学のCarol Coupland氏らによる検討で、BMJ誌オンライン版2016年3月22日号で発表された。先行研究で指摘されていたシタロプラムの不整脈リスク増加のエビデンスも認められなかった。分析の結果、むしろSSRIに心筋梗塞リスクを低下する効能がある可能性が示され、とくにfluoxetineで有意な低下がみられたという。リスク増加が示されたのは、三環系抗うつ薬のロフェプラミンであったと報告している。プライマリケア受診のうつ病患者23万8,963例のデータを分析 検討は、英国一般医が関与するQReseachプライマリケアデータベースを用いて行われた。2000年1月1日~11年7月31日の間に、初発のうつ病と診断された20~64歳、23万8,963例のデータを包含し、処方された抗うつ薬の種類(三環系抗うつ薬、SSRI、その他抗うつ薬)、用量、投与期間、また各薬剤の別に、3つの心血管アウトカム(心筋梗塞、脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)、不整脈)との関連について分析した。 主要評価項目は、追跡期間5年間の心筋梗塞、脳卒中/TIA、不整脈の初発の診断とした。Cox比例ハザードモデルを用いて、潜在的交絡因子を補正後、ハザード比(HR)を推算し評価した。不整脈・心筋梗塞・脳卒中/TIAのリスク増加と関連するエビデンス見つからず 5年間の初発診断例は、心筋梗塞772例、脳卒中/TIAは1,106例、不整脈は1,452例であった。 5年の追跡期間中、抗うつ薬の種類ベースで、心筋梗塞との有意な関連はみられなかった。 追跡1年目において、SSRI治療患者で抗うつ薬未治療患者と比較して、心筋梗塞リスクの有意な低下がみられた(補正後HR:0.58、95%信頼区間[CI]:0.42~0.79)。薬剤別にみると、同リスクの低下が顕著であったのはfluoxetineであり(同:0.44、0.27~0.72)、一方でロフェプラミンのリスク増大が顕著であった(同:3.07、1.50~6.26)。 脳卒中/TIAとの有意な関連は、抗うつ薬の種類ベースおよび薬剤別においてみられなかった。 不整脈との有意な関連は、5年の追跡期間中、抗うつ薬の種類ベースではみられなかった。ただし、三環系抗うつ薬について治療開始28日間における同リスクの有意な増加がみられた(補正後HR:1.99、95%CI:1.27~3.13)。fluoxetineは5年の間、不整脈リスク低下との有意な関連がみられた(同:0.74、0.59~0.92)。シタロプラムは、高用量の投与であっても不整脈リスクの有意な増加は認められなかった(用量40mg/日以上での補正後HR:1.11、95%CI:0.72~1.71)。 以上を踏まえて著者は、「今回の大規模観察研究で、うつ病と診断された20~64歳の集団において、SSRIが不整脈・心筋梗塞・脳卒中/TIAのリスク増加と関連するというエビデンスは見つからなかった。むしろ心筋梗塞や不整脈リスクを低下する関連が、とくにfluoxetineで示された。シタロプラムが不整脈リスクを増加するとのエビデンスは、CI値は広域にわたっていたが、高用量の場合でも見つからなかった」と述べ、「今回の結果は、最近のSSRIの安全性に関する懸念を払拭するものである」とまとめている。

1909.

うつ病患者にみられる認知機能の変化は

 うつ病の青年には、実行機能、注意、記憶の欠損が見られる。神経認知機能の変化は寛解期ではなく急性期に見られるものもあるという事実にもかかわらず、縦断的研究も不足している。米国・ニューヨーク市立大学クイーンズ校のAl Amira Safa Shehab氏らは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)による急性期治療中のうつ病青年の神経認知機能の変化を調査した。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年3月14日号の報告。うつ病青年を治療する際に認知症状についてもチェックする必要 うつ病青年24人と健康対照者24人を対象に、ベースライン時および6、12週にケンブリッジ神経心理学テスト(CANTAB)のサブテストおよび臨床スケールを評価した。うつ病青年には、ベースライン評価後、fluoxetineを投与した。 うつ病青年の神経認知機能の変化を調査した主な結果は以下のとおり。・うつ病青年では、抑うつ症状の著しい改善にもかかわらず、健康対照者と比較して、視覚的記憶の継続的な欠損が認められた(p=0.001)。・持続的な注意および抑制の課題は、健康対照者では12週までより良い状態であったが、うつ病青年では持続的注意欠損が残存していた。・実行機能(計画)課題は、健康対照者では課題を学習し、12週にわたり改善したにもかかわらず、うつ病青年のパフォーマンスでは有意な変化がみられなかった(p=0.04)。 結果を踏まえ、著者らは「うつ病青年を治療する際に、臨床医は気分症状の改善後にみられる認知症状についてもチェックする必要がある」としている。

1910.

難民の精神病リスク~そしてわが祖国(解説:岡村 毅 氏)-507

 非常に今日的な論文で刺激を受けた。現在起きている中東、北アフリカ、中央アジアの危機は第2次世界大戦以降、最も多くの難民を生み出しているという。そして大量の難民がヨーロッパに押し寄せ、統合を脅かしている。なかでも、人口比で最も多くの難民を受け入れているスウェーデンからこの報告がなされたことは必然である。 本研究では、連結された巨大な公的データベースを用いて、難民、移民、自国民の両親から生まれた自国民において、精神病(ここでは統合失調症や統合失調感情障害を指す)のリスクを比較している。そして、精神病リスクが難民では高いことが示された。 本研究では、地域別のリスクが示されている。男性では、女性に比べて地域差が大きいので男性について記載すると、ハザード比は東ヨーロッパ2.88(95%信頼区間:1.22~6.82)、アジア2.20(同:1.13~4.25)、中東・北アフリカ1.55(同:1.01~2.36)となっており、東ヨーロッパが高く中東はそうでもない。 難民のデータがきちんとあるのは1998年以降とのことで、本研究は1998年から2011年までのデータを解析している。1998年の難民の出身国・地域は、世界銀行のHPを見ると、多いところからアフガニスタン、イラク、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ソマリア、ブルンジの順である。シリア難民が激増を始めるのは2012年からだ(2011年は約2万人、2012年は約73万人、2014年は287万人)。したがって、本研究で東ヨーロッパが高いのはボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を反映しているのかもしれない(あくまで素人の分析と思ってください)。 将来、2015年以降の欧州難民危機をデータに反映した研究が報告されるとき、中東はリスクが上昇しているのであろうか? 以下はあくまで個人的な見解であるが…これは遠い国の出来事なのだろうか? いうまでもなく、難民が生まれる前には戦争や内戦が起きている。そして、その前には、不正義、格差、信頼の欠如が起きていることだろう。私たちの社会は安泰だろうか? わが国は、激しい高齢化を経験しているが、高齢化は格差の拡大と関連するともいわれる。私たちの社会(まだ安全で平和であるが)に忍び寄る危険を少しでも小さくすることが、未来の若者たちに対する私たちの使命である。 東京大学からそう遠くない場所にも生活困窮者が簡易宿泊所などに暮らす街があり、この街にもまた高齢化が押し寄せ、支援はいっそう困難になっている。貧困や高齢化は、私たちの社会にとって今後の大きな課題であり、精神医学にとっても大きな挑戦である。この論文を読んで、飛躍かもしれないが、自分の研究をしっかりやろうと思った次第である。 この論文は、多くの心ある人にとって魂を揺さぶるものであろう…。社会を良くしたい、難民をなくしたい、そう考えたとき(政治家ではない)医学者にできることは何だろう? 難民を生み出すことは精神保健においても避けねばならない強い証拠を示すことだ、そういう情熱を感じた。

1911.

抗精神病薬の併用療法、有害事象を解析

 抗精神病薬の併用療法は、有効性や安全性が確立していないにもかかわらず、一般的に行われている。米国・ザッカーヒルサイド病院のBritta Galling氏らは、抗精神病薬併用療法と単独療法を比較した報告について調査した。Expert opinion on drug safety誌オンライン版2016年3月11日号の報告。 著者らは、言語制限なしで、2015年5月25日までのPubMed、PsycInfo、CJN、WangFan、CBMから、20歳以上の成人における抗精神病薬併用療法と単独療法を比較した無作為化試験のうち、有害事象のメタ解析が可能な報告についてシステマティックサーチを行った。 主な結果は以下のとおり。・67件(4,861例、期間:10.3±5.2週)のメタ分析によると、抗精神病薬併用療法は、不耐性に関連する中止において、単独療法と同様であった(RR:0.84、95%CI:0.53~1.33、p=0.455)。・1つ以上の有害事象の発生率は、抗精神病薬の併用療法で低かった(RR:0.77、95%CI:0.66~0.90、p=0.001)。これらの結果は、もっぱら非盲検で有効性に焦点を当てた試験でみられたものだった。・補助的D2アンタゴニストは、吐き気(RR:0.220、95%CI:0.056~0.865、p=0.030)、不眠(RR:0.26、95%CI:0.08~0.86、p=0.028)の発生率は低かったが、高プロラクチン(SMD:2.20、95%CI:0.43~3.96、p=0.015)は高かった。・アリピプラゾールのような補助的部分D2アゴニストは、心電図異常(RR:0.43、95%CI:0.25~0.73、p=0.002)、便秘(RR:0.45、95%CI:0.25~0.79、p=0.006)、よだれ/唾液分泌過多(RR:0.14、95%CI:0.07~0.29、p<0.001)、プロラクチン(SMD:-1.77、95%CI:-2.38~-1.15、p<0.001)、総コレステロール(SMD:-0.33、95%CI:-0.55~-0.11、p=0.003)、LDLコレステロール(SMD:-0.33、95%CI:-0.54~-0.10、p=0.004)の発生率が低かった。 著者らは「抗精神病薬の併用療法に関連する有害事象の認識を改める二重盲検のエビデンスは見出せなかった。有害事象の報告は、不十分かつ不完全であり、フォローアップ期間が短かった。補助的部分D2アゴニストは、いくつかの有害事象に対し、有効であると考えられる。総合的に有害事象を評価するために、質の高い長期的研究が必要とされる」とまとめている。関連医療ニュース 経口抗精神病薬とLAI併用の実態調査 急性期統合失調症、2剤目は併用か 切り換えか:順天堂大学 難治例へのクロザピン vs 多剤併用

1912.

子供の好き嫌いの多さに影響する親の精神症状

 特定の食品を拒否するなどの子供の好き嫌い行動と親の不安とうつ病との関連を、オランダ・エラスムス大学医療センターのLisanne M de Barse氏らが調査した。Archives of disease in childhood誌オンライン版2016年2月25日号の報告。 本研究は、オランダの胎児期以降の前向きコホート研究Generation Rに組み込まれた。対象は、4,746人の4歳児およびその親。親に内在する不安や抑うつ症状といった問題は、妊娠中と就学前(3歳)の期間にBrief Symptoms Inventoryにて評価した。主要評価の測定は、子供の食行動に関するアンケートによる食品に対する好き嫌いスケールで行った。 主な結果は以下のとおり。・妊娠中および就学前の母親の不安は、子供の食品における好き嫌いの合計スコアの高さと関連していた。・たとえば、交絡因子の調整後、妊娠中の不安スケール1ポイントにつき、子供の好き嫌いスケールの合計スコアは平均1.02点高かった。・同様に、妊娠中および就学前の母親の抑うつ症状は、子供の好き嫌い行動と関連していた。たとえば、出産前のうつ病スケール1ポイントにつき、食品に対する好き嫌いスコアの合計スコアは0.91ポイント高かった(95%CI:0.49~1.33)。・父親に内在する問題と子供の好き嫌いとの間にも、大部分で類似した関連が認められた。しかし、妻の妊娠中における父親の不安との関連は認められなかった。 著者らは「母親や父親に内在する問題は、子供の未就学時期における好き嫌いと関連することが見込まれる。医療従事者は、両親の不安や抑うつの非臨床的な症状が、子供の好き嫌いの危険因子であることを認識する必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 小児ADHD、食事パターンで予防可能か 子供はよく遊ばせておいたほうがよい 9割の成人ADHD、小児期の病歴とは無関係

1913.

治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのかを検証

 うつ病患者は、適切な第1選択の抗うつ薬治療を受けていなかった場合、誤って治療抵抗性うつ病として分類されることがある。治療レジメンへの第2選択薬の追加は、患者と医療システムの両方における負担を増加させる。米国・D'Youville CollegeのAmany K Hassan氏らは、うつ病患者が第2選択治療を開始する前に、適切な抗うつ薬治療を受けていたかを検討し、単極性 vs.双極性患者における第2選択治療の種類とうつ病重症度との関連も調査した。International journal of clinical pharmacy誌オンライン版2016年3月2日号の報告。治療抵抗性として分類され第2選択治療を受けたうつ病患者を分析 2006~11年のオクラホマ州医療申請データを使用した。対象は、2種類以上の処方を受けた後、第2選択治療を受けた成人うつ病患者。対象患者は第2選択治療の種類により、非定型抗精神病薬群、他の増強薬(リチウム、buspirone、トリヨードサイロニン)治療群、抗うつ薬追加群の3群に分類された。適格とした試験は、米国精神医学会のガイドラインの定義に準じたものとした。治療の種類に関連する要因は、うつ病のタイプ(単極性 vs.双極性)で層別化した多項ロジスティック回帰分析を用い検討した。主要評価項目変数は、適切な抗うつ薬治療(投与期間、アドヒアランス、投与量の妥当性、個々の抗うつ薬治療の数など)が受けられたかを調べるために使用した。 主な結果は以下のとおり。・合計3,910例の患者による分析を行った。・ほとんどの患者で、推奨用量の抗うつ薬が処方されていた。・28%の患者は、抗うつ薬治療期間が4週未満であった。また、第2選択治療を行う前に、2種類以上の抗うつ薬治療レジメンが試みられた患者は60%のみであった。・対象者の約50%は、全群を通じてアドヒアランス不良であった。・重症度と適切な抗うつ薬治療の受療は、第2選択治療の種類を予測するものではなかった。 著者らは「多くの患者は、第2選択薬治療を開始する前に、十分な抗うつ薬治療を受けていなかった。また、第2選択治療の種類は、うつ病の重症度との関連が認められなかった」とし、「第2選択薬治療を追加する前に、第1選択薬の推奨投与量や投与期間を確認する必要がある」としている。■関連記事治療抵抗性うつ病に対する非定型抗精神病薬の比較治療抵抗性うつ病に対し抗精神病薬をどう使う治療抵抗性うつ病患者が望む、次の治療選択はどれ

1914.

統合失調症患者の認知機能、年齢による違いを検証

 統合失調症患者における認知障害の潜在的動態は、その専門分野の文献で議論されている。最近の報告では、初回精神病エピソード後に認知機能障害のレベルが、わずかに変化することが示唆されている。ポーランド・ワルシャワ医科大学のAnna Mosiolek氏らは、患者と対照群における認知機能や臨床像の年齢群間差を検討した。BMC psychiatry誌2016年2月24日号の報告。 18~55歳の統合失調症入院患者128例(女性:64例、男性64例)と対照群64例(女性:32例、男性32例)を調査した。患者の年齢層は、18~25歳、26~35歳、36~45歳、46~55歳に分けた。両群共に、ウィスコンシンカード分類課題(WCST)、レイ聴覚性言語学習検査、レイ複雑図形検査、トレイルメイキングテスト、ストループ課題、言語流暢性検査、ウェクスラー数唱課題を用い調査した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者では、対照群と比較し、測定されたすべての認知機能において有意に低いスコアが示された(Mann-Whitney U検定:p<0.05)。・ほとんどの不足は、すべての年齢層においてみられたが、実行機能(WCST)における統計学的に重大な障害については、高齢群においてのみみられた。 著者らは「統合失調症患者の認知機能は、対照群と比較し、すべての年齢層において不良であった。実行機能に関する障害は、46~55歳群で顕著にみられたが、若年齢群ではみられなかった。また、36~45歳群では、若年齢群と比較し、実行機能の有意な低下が認められた」とし「認知機能レベルは、加齢により緩やかに悪化し、入院治療を伴わない罹病期間と関連する」とまとめている。関連医療ニュース 第1世代と第2世代抗精神病薬、認知機能への影響の違いは グルタミン酸作用、統合失調症の認知機能への影響は認められず 統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs リスペリドン

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難民は精神病リスクが高い/BMJ

 難民は、統合失調症など非感情性精神病性障害(non-affective psychotic disorders)のリスクが高い。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAnna-Clara Hollander氏らが、各種全国レジストリを用いたスウェーデン在住者約135万人の後ろ向きコホート研究で、明らかにした。発病リスクは類似地域からの「移民」と比べ1.7倍、スウェーデン生まれの人と比べ約3倍に上るという。先行研究で、「移民」において統合失調症などの非感情性精神病性障害のリスクが高いことが知られていたが、難民については不明であった。BMJ誌オンライン版2016年3月15日号掲載の報告。約130万人を追跡、うち移民が約10%、難民が約2% 研究グループは、スウェーデンの各種全国レジストリを用い、1984年1月1日以降生まれのスウェーデン在住者134万7,790人について解析した。対象者の内訳は、両親がスウェーデン生まれで自身もスウェーデンで生まれた人(スウェーデン群)119万1,004人(88.4%)、難民発生地域(中東・北アフリカ、サハラ以南のアフリカ、アジア、東ヨーロッパ・ロシア)からの移民13万2,663人(9.8%)、および難民2万4,123人(1.8%)であった。 14歳の誕生日またはスウェーデンへの到着日から、ICD-10のF20~29(統合失調症統合失調症型障害および妄想性障害)に該当する精神病性障害の診断、他国への転居、死亡、または2011年12月31日まで追跡調査した。移民よりもリスクが高く、とくに男性で顕著 890万人年の調査において、統合失調症および他の精神病性障害3,704例が確認された。粗発病率(/10万人年)は、スウェーデン群38.5(95%信頼区間[CI]:37.2~39.9)、移民群80.4(72.7~88.9)、難民群126.4(103.1~154.8)であった。難民群では、交絡因子調整後のハザード比が、対スウェーデン群で2.9(2.3~3.6)、対移民群で1.7(1.3~2.1)であり、精神病のリスクが他群と比べて高かった。 移民群と比較した難民群における増大は、男性において顕著であり(交互作用の尤度比検定χ2 (df=2) z=13.5、p=0.001)、また、サハラ以南のアフリカを除く全地域で示された。サハラ以南のアフリカからの移民と難民はどちらも、スウェーデン群と比較して粗発病率が高かった。 著者は、大規模コホート研究にもかかわらず難民の例数が少ないことや、移住前の情報が利用できないなど研究の限界を挙げたうえで、「難民受け入れ国の臨床医や保健サービス立案者は、難民が経験する精神的身体的健康格差に加え、精神病のリスク増大を知っておくべきである」とまとめている。

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生徒のうつ病に対する教師サポートの影響は

 思春期のうつ病を軽減するための要因は、明らかになっていない。浜松医科大学の水田 明子氏らは、思春期の生徒におけるうつ病に対する教師のサポート効果を評価するため検討を行った。The Journal of school health誌2016年3月号の報告。 著者らは、中学生2,862人およびクラス担任を持つ教師93人に自己評価アンケートを実施した。説明変数は教師のサポートのクラスごとの平均値、目的変数はうつ病とし、バイナリロジスティック回帰モデルで検討を行った。教師のサポートのクラス平均値と社会経済的地位、生徒の性別、満足度のグレードとの交互作用を検討した。 主な結果は以下のとおり。・教師サポートのクラス平均値の高さは、思春期におけるうつ病の有病率の低さと独立した関連が認められた(OR 0.739、95%CI:0.575~0.948)。・教師サポートのクラス平均値と満足度のグレードとの交互作用は、有意であった(p=0.025)。・教師サポートのクラス平均値と社会経済的地位や生徒の性別の交互作用は、有意ではなかった。 著者らは「教師サポートのクラス平均値の高さがうつ病の有病率の低さと関連していたことから、担任教師による介入を強化することで、生徒の健康状態を促進することができる」とまとめている。関連医療ニュース 教師のADHD児サポートプログラム、その評価は 女子学生の摂食障害への有効な対処法 青年期うつは自助予防可能か

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第1世代抗精神病薬はどの薬剤も変わらないのか

 記述的、非体系的レビューによると、薬理学的に同等な仮説を有するさまざまな第1世代抗精神病薬(FGA)間に有効性の差がないことが明らかになっている。オーストリア・ウィーン医科大学のMarkus Dold氏らは、すべてのFGAの有効性が同等であるとの仮説を、メタ解析統計を用いたエビデンスベースの検討を行った。The world journal of biological psychiatry誌オンライン版2016年2月26日号の報告。 統合失調症における経口ハロペリドールと他のFGAとを比較したすべてのRCTを特定するため、システィマティック文献サーベイ(Cochrane Schizophrenia Group trial register)を適用した。主要評価項目は、2群の治療反応とした。副次的評価項目は、尺度によって測定された症状重症度、中止率、特定の有害事象とした。 主な結果は以下のとおり。・1962~99年に公表された79件のRCTより、4,343例が抽出された。・ネモナプリドだけがハロペリドールと間に有意な群間差が認められ、検討されたその他19薬剤では認められなかった。・中止率に有意な差は認められなかった。 結果を踏まえ、著者らは「単一メタ解析比較のほとんどは、検出力不足であると見なすことができ、すべてのFGAは同等の効果であるとの仮説のエビデンスは決定的ではない。したがって、この論点に関する先行研究の記述的、非体系的レビューにおける仮説は、確認も否定もできなかった。また、本調査結果は、個々の比較におけるサンプル数の不足や方法論的な質の低さから限定的である」としている。関連医療ニュース いま一度、ハロペリドールを評価する 第1世代と第2世代抗精神病薬、認知機能への影響の違いは 第1世代 vs 第2世代抗精神病薬、初回エピソード統合失調症患者に対するメタ解析

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パン切りナイフで性器を切断した男性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第63回

パン切りナイフで性器を切断した男性 >FREEIMAGESより使用 紹介する論文のタイトルがもうダメ、という人もいるんじゃないでしょうか。「Genital self-mutilation:性器自己切断」。ああ、想像したくない…。でも、あえてこのコーナーでは紹介します。 Stunell H, et al. Genital self-mutilation. Int J Urol. 2006;13:1358-1360. この2006年の症例報告は、救急部に運び込まれた53歳の男性が主人公です。なんと、朝食なんかで使うパン切りナイフを使って性器を切断したというのです。えっ、アレってそんなに切れ味よかったっけ?彼は既往に妄想型統合失調症があり、どうやら内服アドヒアランスはあまり良くなかった様子です。搬送された当初、きわめて興奮状態にあったと記録されています。パン切りナイフで陰嚢と陰茎を切り取ったため、陰部からは搬送時にすでに1リットルを超える出血があり、来院時にはショックバイタルに近い状態でした。ひえー!論文はフリーで閲覧できるので、勇気のある方はみてもらえるとよいのですが、再建はほぼ不可能なくらい陰茎と陰嚢がめちゃくちゃになっています…。もちろん、救命優先で治療が行われました。デブリドマンも行われました。手術後、彼は一命は取り留めたようです。不幸中の幸いですね、よかった。この論文の考察にも書かれていますが、精神疾患の患者さんでは時に思いもよらぬ外傷を自分で起こすことがあり、とくに宗教的に偏った価値観があるケースでは注意が必要です。こういった特殊な事例をKlingsor症候群と呼びます1)、2)。参考文献1)Schweitzer I. Aust N Z J Psychiatry. 1990;24:566-569. 2) El Harrech Y, et al. Urol Ann. 2013 ;5:305-308. インデックスページへ戻る

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オランザピン誘発性体重増加を事前に予測するには:新潟大学

 オランザピン(OLZ)による治療は、体重増加の高リスクと関連しており、糖脂質代謝異常を引き起こす可能性もある。そのため、OLZ関連の体重増加の機序を解明する必要があるが、まだ十分にわかっていない。近年、レプチンやアディポネクチンなどのアディポサイトカインや、エネルギー恒常性に重要な役割を果たす腫瘍壊死因子(TNF)-αが、体重増加のバイオマーカーとして考えられている。新潟大学の常山 暢人氏らは、レプチン、アディポネクチン、TNF-αのベースライン血漿中濃度がOLZ治療による体重増加を予測するかを検討した。PLoS One誌2016年3月1日号の報告。 対象は、薬物療法未実施または他の抗精神病薬で単剤治療をしていた外来統合失調症患者31例(男性12例、女性19例、28.8±10.2歳)。BMIとレプチン、アディポネクチン、TNF-αの血漿中濃度を調べた。すべての患者には、最大1年間のOLZ単剤治療を開始または切り替えにて実施した。エンドポイントとしてBMIを測定した。 主な結果は以下のとおり。・OLZ治療後の、BMIの平均変化量は2.1±2.7であった。・BMIは、ベースラインからエンドポイントまでのBMI変化量は、女性患者におけるベースラインのレプチン濃度と負の相関が認められた(r=-0.514、p=0.024)。しかし、男性患者では認められなかった。・ベースラインのアディポネクチン、TNF-α濃度は、BMI変化との相関は認められなかった。 著者らは「ベースラインの血漿レプチン濃度は、女性統合失調症患者におけるOLZ治療後の体重増加に影響を及ぼす」とまとめている。関連医療ニュース オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学 オランザピンの代謝異常、アリピプラゾール切替で改善されるのか 抗精神病薬誘発性の体重増加に関連するオレキシン受容体

1920.

クロザピン誘発性副作用のリスク遺伝子同定:藤田保健衛生大学

 クロザピン誘発性無顆粒球症・顆粒球減少症(CIA・CIG;CIAG)は、クロザピン治療を受ける統合失調症患者の生命に影響を与える問題である。藤田保健衛生大学の齊藤 竹生氏らは、CIAGの遺伝的要因を調査するため、日本人のCIAG患者50人と正常対照者2,905人について、全ゲノム関連解析を行った。Biological psychiatry誌オンライン版2016年2月11日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・ヒト白血球抗原(HLA)領域との有意な関連を同定した。そのため、HLA遺伝子の型ごとに検討を行った。・CIAGとHLA-B*59:01型との有意な関連が認められた(p=3.81×10-8、OR:10.7)。そして、独立したクロザピン耐性対照群との比較により、この関連が確認された(n=380、p=2.97×10-5、OR:6.3)。・クロザピン誘発性無顆粒球症のOR(9.3~15.8)は、顆粒球減少症(OR:4.4~7.4)の約2倍であったことから、顆粒球減少症患者群は、潜在的な無顆粒球症患者群と非無顆粒球症患者群からなる混合集団であるというモデルを想定した。・この仮説よりに、顆粒球減少症患者の中に、どの程度、非無顆粒球症患者が存在するかを推計でき、その非リスク対立遺伝子の陽性予測値を推定することができる。・この仮説モデルの結果から、(1)顆粒球減少症患者の約50%が非無顆粒球症患者である、(2)HLA-B*59:01型を保有しない顆粒球減少症患者の約60%が非無顆粒球症患者であり、無顆粒球症に進展しないということが推定された。 著者らは、「日本人において、HLA-B*59:01型はクロザピン誘発性無顆粒球症・顆粒球減少症の危険因子であるとこが示唆された」とし、「このモデルが正しいならば、顆粒球減少症患者群においても、一部の患者に対しては、クロザピンの再投与が絶対的な禁忌ではないことが示唆された」とまとめている。関連医療ニュース 治療抵抗性統合失調症は、クロザピンに期待するしかないのか クロザピン誘発性好中球減少症、アデニン併用で減少:桶狭間病院 難治例へのクロザピン vs 多剤併用

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