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電気痙攣療法によるうつ病患者の脳体積への影響に関するメタ解析

 デンマーク・Mental Health Centre GlostrupのK. Gbyl氏らは、脳構造に対する電気痙攣療法(ECT)の影響に関する文献レビューを行った。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2018年4月29日号の報告。 MRIを用いたECTで治療されたうつ病患者の縦断研究のシステマティック文献レビューおよび海馬体積の対するECTの影響に関するメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・32研究より、患者群467例、対照群285例が抽出された。・MRI研究では、ECTと脳のダメージとの関連を示すエビデンスは見つからなかった。・新しいMRIによる体積測定試験の1つを除き、特定の脳領域(多くの場合、海馬)におけるECT誘発性体積増加は、認められなかった。・海馬体積に対するECTの影響に関するメタ解析では、プールされた効果量は、右海馬でg=0.39(95%CI:0.18~0.61)、左海馬でg=0.31(95%CI:0.09~0.53)であった。・DTI研究では、前頭葉および側頭葉における白質経路の完全性におけるECT誘発性増加が示唆された。・体積増加と治療効果との間の相関結果は、一貫していなかった。 著者らは「MRI研究では、ECTが脳のダメージを引き起こすとの仮説を支持せず、むしろ治療により、前辺縁領域の体積増加を誘発する。今後、これらの体積増加、治療効果、認知的副作用との関連を研究すべきである」としている。■関連記事うつ病患者に対する継続ECTの新たな戦略精神疾患患者に対するECT後の転帰を予測することは可能かうつ病治療に対する、電気けいれん療法 vs 磁気けいれん療法

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統合失調症におけるアドヒアランス不良と医療費との関係

 統合失調症治療における服薬アドヒアランス不良は、重大な問題となっている。アドヒアランス不良が医療費に及ぼす影響を理解することは、治療アドヒアランスが懸念される際に行われる介入の費用対効果を評価するうえで重要である。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMark Pennington氏らは、統合失調症治療における抗精神病薬のアドヒアランス不良が医療費へ与える影響に関して、利用可能な文献による包括的なレビューを行った。PharmacoEconomics誌オンライン版2018年4月26日号の報告。 2018年2月までに報告された、統合失調症患者の抗精神病薬のアドヒアランスと医療費との関連を調査した研究について、複数のデータベース(MEDLINE、Embase、PsycINFO、Health Management Information Consortium)を用いて検索を行った。対象とした研究には、行動介入試験は含まれたが、異なる薬理学的介入の比較試験は除外された。また、対象患者の1/3以上が統合失調症患者であり、医療費が報告された研究についてレビューした。 主な結果は以下のとおり。・28研究、34件の文献が包括基準を満たした。・20研究は、行政データベース(主にメディケイド)の分析を報告していた。・医療費の調査結果は混在していたが、アドヒアランス不良患者における薬剤費の低下は、入院費(薬価が比較的高い)の増加を上回る可能性があることが示唆された。・いくつかの研究において、プロスペクティブコホートデータの分析や、主に欧州におけるアドヒアランスに影響を及ぼす行動介入試験について発表されていた。・調査結果は再び混在していたが、アドヒアランスの向上は、医療費の低下に関連しないことが示唆された。 著者らは「行政データの分析からの推論は、選択バイアスのリスクにより制限される。また、試験からの推論は、小さいサンプルサイズにより制限される。これらの文献から、アドヒアランス不良が医療費を増加させるとの仮説は、一貫して支持されるものではない」としている。■関連記事統合失調症、服薬アドヒアランス研究の課題とは抗精神病薬の種類や剤形はアドヒアランスに影響するのか統合失調症、双極性障害に対する持効性注射剤使用と関連コスト

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統合失調症の超長期的アウトカム

 統合失調症および統合失調症スペクトラム障害の超長期的アウトカムに関する最近のデータについて、チェコ・カレル大学のJan Volavka氏らが検討を行い、治療介入を含むアウトカムに影響を及ぼす要因について調査した。International journal of clinical practice誌オンライン版2018年4月24日号の報告。 2008~17年に発表された、統合失調症または統合失調症スペクトラム障害を対象とし、5年以上のフォローアップ期間を設け、適切なアウトカムの情報を有するプロスペクティブコホート研究を、PubMedおよびScopusデータベースより検索した。参考文献リストおよび著者の参照ライブラリを追加文献に含んだ。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ時に症状寛解を有する患者の割合は、抗精神病薬による計画的な治療の患者で37.5%、未治療患者で16.4%であった。・フォローアップ時の良好なアウトカムは、低用量の抗精神病薬で治療を行っていた患者および薬物治療開始時に薬理学的な治療を行っていなかった患者において観察された。・初回エピソード時の早期発見および集中的な治療とともに、継続的な心理社会的治療、その後の継続的なサポートが、より良いアウトカムと関連していた。 著者らは「統合失調症の長期的アウトカムは、メンタルヘルスケアへのアクセス、精神症状の早期発見、薬理学的治療により、非常に多様であった。最近のデータは、一部の患者における長期的な低用量の抗精神病薬による治療の有効性を裏付けるものであった。初回エピソードの統合失調症患者のうち20%程度は、長期的な抗精神病薬の維持治療を必要としないと考えられる。その割合は、統合失調症スペクトラム障害において、より高い可能性がある。しかし、これらの患者が長期的な治療を必要としない理由は明白ではない。このサブグループを予測する方法は、個々の患者において臨床応用するには、まだ不十分である」としている。■関連記事初回エピソード統合失調症患者における抗精神病薬中止後の長期的な影響統合失調症の維持治療に対するブレクスピプラゾールの長期安全性評価研究安定期統合失調症、抗精神病薬は中止したほうが良いのか

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認知症の薬はいったいいつできるのか? バプティスト史観から(解説:岡村毅氏)-855

本論文はメルク社の研究チームからの直球の論文である。アルツハイマー型認知症の病理の中核にアミロイドがあるが、それをつくる酵素(BACE)の阻害薬を軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の方に投与したが、効果はみられなかったというものだ。21世紀に入りアルツハイマー型認知症に関して、多くの薬がパイプラインに乗ったという報告がなされた。近い将来(つまり2018年の今ごろ?)根本治療薬が開発されるのではと思った方も多かったのでは。しかしここ数年、失敗の報告が相次いでいる。ファイザー社は中枢神経系の開発自体を諦めてしまった。いったいいつできるのか? あるいは、できないのか? 21世紀の前半を生きる私たちの立ち位置を改めて眺めてみよう。(1)アルツハイマー型認知症に関して現在ある薬は、アミロイドの病理とはまったく関係なく、アセチルコリン系を賦活して脳の働きを活発にする対症療法薬である。アミロイド自体に介入する薬は失敗が続いている。(2)しかし国際的な大規模縦断観察研究(ADNI)が明らかにしたように、症状が出た時点ではアミロイドはすでに蓄積している。診断されてからアミロイドに介入しても無意味なのかもしれない。(3)現在、症状はないが、脳内にアミロイドがたまっているプレクリニカル期で研究が行われている。ここでBACE阻害薬やAβ抗体が効果を示す可能性は十分にある。以上はアミロイド中心主義(ベータアミロイド[β-amyloid]からバプティスト[Baptists]などと言われる)史観ともいえるだろう。私は根本治療薬の開発を支持するが、さらに広い視野で眺めてみよう。(A)先進国ではアルツハイマー型認知症の発症率は低下しており、教育年数との関連が示されている。また糖尿病がアルツハイマー型認知症の発症の危険因子であることもわかってきた。公衆衛生的アプローチは効果的だ。(B)レビー小体病、前頭側頭葉変性症の根本治療薬に関しては、まったくめどが立っていない。(C)予防薬の開発も重要だが、それのみが強調されると、すでに認知症と診断された人には救いがない。診断後支援やケアラー支援の重要性がようやく認められつつある。Living well with dementiaは知っておくべき言い回しだろう。(D)認知症を持つ人も、当たり前だが、私たちと同じ人間であり、同じ権利を持つのだから、彼ら自身の選択を尊重しようという考え方もようやく共有されてきた。当事者の発信も増えている。障害の領域でのNothing about us without usに対応。(E)脱施設の流れは加速するが、地縁血縁の弱体化、長寿化(と格差の拡大)、家族形態の変化および独居の増加、プライバシーの保護などは、むしろ地域ケアへの挑戦かもしれない。一方でITやロボットなどが急激に実用化に向かいつつある。21世紀の半ばにはわが国の人口の10%程度が認知症を有する可能性もある。今後数十年、認知症の専門家は嵐のような日々であろう。今回は現在の私たちの立ち位置を備忘録的に記した。知っておいて損はないと思う。

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高齢者の処方見直しで諸リスク低減へ

 2018年5月11日、日本老年医学会は、「高齢者とポリファーマシー」に関するメディアセミナーを都内で開催した。本学会が策定した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を踏まえ、医療現場でポリファーマシー対策に取り組む3人の演者が講演を行った。ポリファーマシーが老年症候群に拍車をかける? はじめに、秋下 雅弘氏(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学 教授)が、ポリファーマシー対策の動向について語った。わが国では6剤以上がポリファーマシーと定義され、薬剤性老年症候群などの原因として懸念されている。老年症候群は、転倒、記憶障害、意欲低下や排泄機能障害など、加齢・疾患によるものも含まれるが、その症状がポリファーマシーにより助長されている可能性を秋下氏は指摘した。 同氏は、「ポリファーマシーは、例えればさまざまなお酒を一度に飲むと悪酔いするようなもので、多剤服用のみを指すのではない。薬を減らす際には生活習慣の是正など、非薬物療法がより重要になる。医師・薬剤師を中心に、医療スタッフが連携する必要がある」と語った。3剤以上の見直しでリスク低減の可能性 次に、溝神 文博氏(国立長寿医療研究センター 薬剤部)が、院内でポリファーマシーを提案する「高齢者薬物療法適正化チーム」の活動について紹介した。チームは、内科・循環器内科の医師、薬剤師を中心に構成され、週1回カンファレンスを実施している。 チーム介入症例の解析では、薬物有害事象などが疑われる58症例に対し、平均4剤の見直し提案を行った。対象薬は降圧薬が最も多く、次いで消化器薬、糖尿病薬、スタチン系が多かった。結果、3剤以上削減した群で薬物有害事象の発生頻度が53%から9%と7日間で有意に減少し、60日後まで維持されていた。一方で、3剤未満の削減だと有意差がなく、60日後には再燃する傾向がみられた。 溝神氏は、「チーム結成によって意識変化が起こり、慎重に処方を行う医師が増加した。しかし、服薬環境も適正化されないと十分ではない。患者・家族への説明でポリファーマシーへの正しい理解を促し、地域レベルで対策する必要がある」と語った。短時間の睡眠が不眠症とは限らない? 最後に、水上 勝義氏(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授)が、向精神薬の適正使用について説明した。回復可能な認知症の原因として、1位がうつ病、2位が薬剤性という報告1)を挙げ、原則として非薬物療法を優先し、向精神薬は慎重に使用するよう呼びかけた。 高齢者が訴える不眠症に対し、水上氏は、「高齢になると深睡眠が減る傾向にある。しかし、日中の生活に支障がなければ、睡眠時間が短くても不眠症にならない」と指摘した。また、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)などに使用される抗精神病薬には、新規投与後6ヵ月まで死亡リスクが上昇するという報告2)があるという。同氏は、漢方薬の過剰投与にも言及し、「十分な治療効果が認められた患者では減量・中止を検討すべきだ」と語った。 さらに、スルピリドによる錐体外路症状、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によるアパシーの発現などの副作用を例に挙げ、「頻用される薬でも、高齢者には注意が必要。薬剤によって諸症状が出ている可能性も考慮すべき」と締めた。 本学会は、エビデンスが少ない高齢者医療における課題などに対し、具体的にどのような対応をするのか明確にするため、「健康長寿達成を支える老年医学推進5か年計画」を策定した。2018年6月、学術集会で発表予定。■参考文献1)Weytingh MD, et al. J Neurol. 1995;242:466-471.2)Arai H, et al. Alzheimers Dement. 2016;12:823-830.■参考一般社団法人 日本老年医学会第60回日本老年医学会学術集会■関連記事身体能力低下の悪循環を断つ診療

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うつ病に関する理解とスティグマの調査

 うつ病による負荷は、世論、スティグマ、そしてその結果として生じる行動から影響を受ける。うつ病患者やその周囲に関する知識の欠如、誤解、スティグマは、彼らのメンタルヘルスを改善するうえで障壁となっている。筑波大学の横谷 省治氏らは、うつ病に関する世論、とくに認知、治療法、スティグマについて調査を行った。Journal of clinical medicine research誌2018年3月号の報告。 年1回の健康診断の受診者を対象に、自己管理アンケートを配布し、次の4つの短い設問への合致を調査した。(1)「明るく行動する人では、うつ病を心配する必要はない」(うつ病患者の行動に関する誤解)、(2)「うつ病の治療に休息は重要である」(休息の必要性に関する理解)、(3)「うつ病治療に医療は有効である」(薬物療法の有効性に関する理解)、(4)「弱い人格がうつ病を引き起こす」(うつ病の原因に関するスティグマ)。そして、これらの考えと、健康リテラシー、外来診療への定期的な通院、うつ病歴、人口統計的変数などの因子との関連についても分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・回答者は1,085例、回答率は75.0%であった。・各設問に対し、適切な回答を行った割合は、(1)54.5%、(2)75.6%、(3)58.9%、(4)70.8%であった。・うつ病の原因に関するスティグマについて、弱い人格がうつ病を引き起こすと回答した割合は30.7%であった。・女性および若者は、適切な回答と関連が認められた。・健康リテラシーは、薬物療法の有効性に関する適切な理解とのみ、関連が認められた。 著者らは「本調査では、実に30%が、弱い人格がうつ病を引き起こすと考えていた。また、うつ病の薬物療法の有効性については、58.9%しか認識されていなかった。70%超は休息の必要性を理解しており、明るく行動する人でもうつ病になる可能性があることを認知していた。一般的な健康リテラシーだけでは、うつ病に関する知識や理解が深まるとは限らない。うつ病へのスティグマの減少と、うつ病治療に関する知識の向上のための、教育的介入またはキャンペーンが必要である」としている。■関連記事うつ病患者とかかりつけ医、認識のギャップが浮き彫りに統合失調症への偏見は軽減されたのか:東京大学呼称変更により統合失調症患者へのスティグマは減少したのか:日本医科大学

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抗コリン作用は認知症リスクを高める…となると現場は大変だ!(解説:岡村毅氏)-854

 言うまでもなく、さまざまな薬に抗コリン作用がある。とりわけ腹痛、鼻汁、頻尿などを止める効果があるので、風邪薬などの非常に身近な薬にも多く含まれるのである。 一方で抗コリン作用を持つ薬と認知症の関係が長年いわれている。アセチルコリン系は脳内の覚醒に関わるので、抗コリン作用を持つ薬剤を内服している間は認知機能が低下するといわれる。加えて、抗コリン作用を持つ薬を長年飲み続けると認知症発症のリスクが上がるともいわれている。それを検証したのが今回の論文である。 しかし、真の因果関係を検証するのは難しい。たとえば多くの抗うつ薬には抗コリン作用がある。そして、老年期のうつは認知症の危険因子あるいは初期症状でもある。したがって認知症になる前に内服していた薬を調べて、抗うつ薬などの抗コリン作用の強い薬剤を内服していた人が多いからといって、すぐに抗コリン作用が悪さをしたとも言い切れない。認知症の初期症状としてのうつ症状であったかもしれないからだ。 この論文は調整因子を幅広く取り、当該薬の(1)抗コリン作用の程度、(2)量、(3)薬効、(4)曝露時期で分けて詳細に検討しているので、臨床的価値が大きい。多くの薬剤が持つ抗コリン作用と認知症発症が関係するなら、多剤併用を避ける大きな根拠にもなろう。 多剤併用の弊害が広く知られるようになった。以前は「先生、これとこれとあれの症状もあるので、薬ください」などと大量の薬の処方を求められたものである。もちろん、いちいち諭すわけだが、こわもての患者さんに「症状があると言ってんだよ!」とか「言われたとおり処方しろよ!」などと悪態をつかれたことは皆さんもあることだろう。こういう経験を重ねると、プライマリケアの現場では、心折れて何も考えずに処方することになってしまう方もいるだろうなと思う。最近は「ダマされるな! 医者に出されても飲み続けてはいけない薬」(週刊現代2016年6月11日号)などといった記事のためか、受診はしたものの、かたくなに処方を拒絶する患者さんもいる。 人生の黄昏時には、体は思うようにならないものである。治らない症状を持つ人も多いことだろう。意味のない多剤併用は論外だが、命が有限であり、体は衰えていくものだということがわからずに焦燥に駆られた患者さんや家族に、一応症状はあり、何とか薬をくださいなどと言われては、こちらも困ってしまう。人間の弱さも引き受けた診療をするしかない、と言うと怒られてしまうだろうか。 さて、あらためて本論文を見てみよう。・まず単純な解析では、抗コリン作用が強いもの(ACB score of 3)では確かに認知症発症と関連している。・しかし認知症発症の15年以上前の曝露では、ほとんどの薬では関連は消え、三環系抗うつ薬等と泌尿器薬でははっきり残る。これらの薬が危険ともいえるし、たとえ15年以上前であっても、うつや頻尿は認知症の微細な初期症状なのかもしれない。・さらに、15年以上前の解析で、抗うつ薬の中でも抗コリン作用が弱いSSRIなど(ACB score of 1)では因果関係は明らかではなく、抗コリン作用が強い三環系抗うつ薬(ACB score of 3)では関係がある。となるとやはり抗コリン作用が悪さをしている可能性は大である。・とはいえ「強い抗うつ薬」を使う病態と「弱い抗うつ薬」を使う病態は明らかに異なる。前者のみが認知症発症と関連する可能性も、やや苦しいが、まだある。・抗パーキンソン薬は、直近の使用のみが関連している。認知症発症は、抗パーキンソン薬の影響ではなく、脳内の神経変性の進行を反映しているかもしれない。 まとめるとこうなる。抗コリン作用と認知症発症は、まだ解明されたとはいえない。ざっくり見れば関連はある。専門的に眺めると、事態はまだ複雑だ。三環系抗うつ薬や泌尿器系薬は、可能性は高い。とはいえ「臨床現場で処方ができない」とパニックになる必要はまったくない。同時に、なるべく少ない処方でマネジメントすることは常に心掛けねばならない。

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自殺リスク患者に対するesketamine鼻腔内投与の有効性、安全性に関する二重盲検ランダム化比較試験

 自殺リスク患者において、標準治療にesketamine鼻腔内投与を追加した際の、抑うつ症状の急速軽減効果について、米国・ヤンセン・リサーチ&ディベロップメントのCarla M. Canuso氏らが、検討を行った。併せて、自殺リスクについても検討を行った。The American journal of psychiatry誌オンライン版2018年4月16日号の報告。 本研究は、患者68例を対象とし、包括的な標準治療にesketamine(84mg)鼻腔内投与またはプラセボの週2回追加投与を4週間実施した、二重盲検多施設ランダム化概念実証研究として行われた。主要有効性エンドポイントは、ベースラインから初回投与後4時間までのMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコアの変化量とした。臨床医による自殺リスクの全体的な評価は、自殺念慮と行動評価ツールを用いて実施した。副次的エンドポイントは、24時間および二重盲検試験終了時の25日目でのこれら測定値とした。 主な結果は以下のとおり。・esketamine群は、プラセボ群と比較し、投与4時間後のMADRSスコアの有意な改善が認められた(最小二乗平均差:-5.3、SE:2.10、エフェクトサイズ:0.61)。また、24時間以内においても同様に、有意な改善が認められたが(最小二乗平均差:-7.2、SE:2.85、エフェクトサイズ:0.65)、25日目では認められなかった(最小二乗平均差:-4.5、SE:3.14、エフェクトサイズ:0.35)。・esketamine群は、投与4時間後のMADRS自殺念慮項目スコアの有意な改善が認められたが(エフェクトサイズ:0.67)、24時間(エフェクトサイズ:0.35)、25日目(エフェクトサイズ:0.29)では認められなかった。・両群間の臨床医による自殺リスクの全体的な評価スコアの減少は、どの時点においても統計学的に有意な変化が認められなかった。・esketamine群における最も一般的な有害事象は、悪心、めまい、解離、味覚異常、頭痛であった。 著者らは「これらの予備的所見は、自殺リスクを有するうつ病患者に対し、包括的な標準治療にesketamine鼻腔内投与を追加することで、プラセボと比較し、自殺念慮を含む有意な抑うつ症状の急速改善が可能であることを示す」としている。■関連記事うつ病成人の自殺傾向に対するSSRIの影響うつ病と双極性障害、自殺企図リスクが高いのはケタミンは難治性うつ病に使えるのか

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双極性障害と統合失調症患者の興奮症状の特徴

 興奮症状は、内的な緊張や不安から暴力、攻撃性に至るまでの症状を含む、双極性障害や統合失調症にみられる共通の症状である。これまでの文献の多くは、急性の興奮症状に焦点を当てており、患者の体験に関しては不十分であった。英国・Adelphi Real WorldのJenna Roberts氏らは、コミュニティに焦点を当て、患者視点の興奮症状の特徴とそのマネジメントに関して調査を行った。BMC psychiatry誌2018年4月16日号の報告。 対象患者は、ドイツ、スペイン、英国における興奮エピソードを経験した統合失調症または双極性障害の住民583例。患者募集は、医師または患者支援グループを通じて行った。本調査では、人口統計、疾患の特徴、興奮エピソードの頻度、軽度から重度までの事前に定義した重症度レベル、エピソード中に経験した症状、興奮の自覚、患者自身による対処法に関する情報を収集し、記述統計を用いてデータの性質を調べた。 主な結果は以下のとおり。・興奮エピソード中に最も一般的に報告された症状は、不安(373例、64%)、不穏(368例、63%)、緊張(368例、63%)であった。・過去12年間に患者が経験した平均エピソード回数は、軽度22.4回(SD:57.2)、中等度15.4回(SD:61.2)、重度2.9回(SD:24.4)であり、通院が必要であった回数は、平均2.7回(SD:6.8)であった。・興奮症状のため通院が必要であった患者は、約半数(313例)であった。・全体として、興奮症状を常にまたは時々経験していると認識していた患者は、71%(412例)、そのきっかけを認識していた患者は、61%(347例)であった。・大部分の患者(329例、56%)は、時々興奮症状をコントロールできると報告していたが、患者の16%(94例)は、通常何もできないと報告していた。・エピソードに対処するため処方薬を服用していると報告した患者は、統合失調症患者の55%(125例)、双極性障害患者の66%(234例)であった。 著者らは「コニュニティベースの統合失調症および双極性障害の患者は、不安、不穏、緊張のような、最も一般的に定義される興奮エピソードを頻繁に経験していると報告している。さまざまな対処法が報告されているが、必ずしもうまくいっているとは限らず、このような患者にとって重要なアンメットニーズである」としている。■関連記事精神疾患患者の激越症状に対する新旧治療戦略統合失調症、双極性障害の急性期興奮状態に対する治療:アリピプラゾール筋注に関するコンセンサス・ステートメント(英国)認知症患者の興奮症状に対し、抗精神病薬をどう使う

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うつ病に対するアリピプラゾールとセルトラリン併用療法の二重盲検ランダム化比較試験

 昭和大学の上島 国利氏らは、セルトラリン100mg/日で効果不十分なうつ病患者を対象に、アリピプラゾール併用またはプラセボ併用による有効性および安全性の比較検討を行った。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2018年4月16日号の報告。 本研究は、スクリーニング期間、8週間のセルトラリン治療期間(単盲検、25~100mg/日)、6週間のアリピプラゾールまたはプラセボ併用期間(二重盲検)で構成された。対象は、DSM-5で定義されたうつ病診断患者。セルトラリン治療後の非治療反応患者は、アリピプラゾール併用群(アリピプラゾール3~12mg/日とセルトラリン100mg/日)またはプラセボ併用群(プラセボとセルトラリン100mg/日)にランダムに割り付けられた。主要有効性エンドポイントは、ベースラインから6週までのMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)総スコアの平均変化量とした。 主な結果は以下のとおり。・合計412例の患者が、アリピプラゾール併用群(209例)またはプラセボ併用群(203例)にランダムに割り付けられた。・MADRS総スコアの平均変化量は、プラセボ併用群(-7.2)と比較し、アリピプラゾール併用群(-9.2)で有意に大きかった(p=0.0070)。・アリピプラゾール併用群およびプラセボ併用群において、10%以上で発現した治療上の有害事象は、鼻咽頭炎(各々、13.4%、11.3%)およびアカシジア(各々、12.9%、3.4%)であった。・アリピプラゾール併用群で発現した治療上の有害事象は、すべて軽度~中等度であった。・治療上の有害事象による治療中断は、アリピプラゾール併用群で1.9%、プラセボ併用群で1.5%と、いずれも低値であった。・安全性評価において、アリピプラゾール併用群は、プラセボ併用群と比較し、顕著な問題は認められなかった。 著者らは「セルトラリン100mg/日での治療で効果不十分なうつ病患者では、アリピプラゾール併用療法は有用であり、忍容性も良好であった」としている。■関連記事SSRI治療抵抗性うつ病に対する増強療法の比較治療抵抗性うつ病に対する非定型抗精神病薬の比較アリピプラゾール増強が有効な治療抵抗性うつ病患者の3つの特徴

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オランザピンおよびリスペリドンの体重増加に関するメタ解析

 体重増加が抗精神病薬の投与と関連していることは、メタ解析と同様に、単一研究から報告された多くのデータにより示されている。しかし、抗精神病薬誘発性の体重増加に、潜在的な性差が認められるかについては、検討されていない。スイス・ベルン大学精神医学病院のG. Schoretsanitis氏らは、女性患者の場合、有害な薬物反応に対する感受性が高いため、男性と比較し、体重が増加しやすいのではないかとの仮説について検討を行った。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2018年3月30日号の報告。 抗精神病薬による臨床試験の中で、体重変化について男女別に報告している研究を対象に、メタ解析を実施した。抗精神病薬の使用期間により、6週間未満、6~16週間、16~38週間、38週超の4つのカテゴリに分類した。男女別にフォレストプロットを作成し、抗精神病薬の使用期間で層別化を行った。性差は、メタ回帰を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・本検討の分析には、26件の研究より、オランザピン、リスペリドン、未治療群の利用可能なデータを使用した。・オランザピンあるいはリスペリドンへの切り替えまたは使用開始の後に、男女とも著しい体重増加を来したが、メタ回帰分析においては性差が認められなかった。 著者らは「抗精神病薬誘発性の体重増加における性差に関して、現在のメタ解析では、性別の特異的なパターンの検出が妨げられている。慢性期患者に対する、短期または中期的な治療でのオランザピンまたはリスペリドンへの切り替えでは、男女ともに体重増加が認められたが、有意な性差は報告されなかった」としている。■関連記事オランザピン誘発性体重増加のメカニズム抗精神病薬の体重増加リスクランキング非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か

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双極性障害患者のパニック症の有病率と治療に関するメタ解析

 最近のデータによれば、不安症は、単極性うつ病と同様に双極性障害(BD)と頻繁に合併する。イタリア・カリアリ大学のAntonio Preti氏らは、BDに合併するパニック症(PD)に関する文献のシステマティックレビュー、メタ解析を行った。Evidence-based mental health誌オンライン版2018年4月10日号の報告。 システマティックレビューとメタ解析による優先報告項目について、文献調査や利用可能なエビデンスの選択と報告を徹底的にフォローした。メタ解析には、分散安定化Freeman-Tukey二重逆正弦変換を用いて、推定有病率を計算した。すべての研究における統合効果を推定するため、固定効果モデルとランダム効果モデルを使用し、逆分散法を行った。不均一性の測定と評価には、CochranのQ検定、I2統計量を用いた。 主な結果は以下のとおり。・プールされた推定値の算出には、横断的な有病率に関する研究15報(3,391例)および独立した生涯研究25報(8,226例)を用いた。・潜在的な異常値の研究を除いた後、BD患者におけるPDの全体的なランダム効果の時点有病率は13.0%(95%CI:7.0~20.3%)であり、全体的なランダム効果の生涯有病率は15.5%(95%CI:11.6~19.9%)であった。・双極I型障害と双極II型障害との間に差は認められなかった。・両推定値の有意な不均一性が報告された(I2>95%)。 著者らは「公表された研究から導き出された推定値では、BD患者のPD有病率は、一般集団で報告された値よりも高いことが示唆された。PDの合併は、自殺行為リスクの増加やBDのより重度な経過と関連している。しかし、PDを合併したBD患者に対する治療は明確になっていない。本メタ解析により、BDにPDは高頻度に合併しており、このPDは、慢性的な経過をたどる可能性がある」としている。■関連記事双極性障害と全般性不安障害は高頻度に合併パニック症に対し第2世代抗精神病薬は有用か双極性障害と強迫症、併存率が高い患者の特徴

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抗コリン薬、認知症発症と強く関連/BMJ

 英国・イースト・アングリア大学のKathryn Richardson氏らによる症例対照研究の結果、うつ病、泌尿器系およびパーキンソン病の治療に用いられる抗コリン薬の使用が、将来的な認知症発症と強く関連していることが明らかとなった。この関連は、認知症と診断される15~20年前の曝露でさえ観察されたという。ただし、消化器および心血管系の抗コリン薬では認知症との明らかな関連は認められなかった。これまで、抗コリン作用のある薬剤の使用が、短期的な認知障害と関連があることは知られていた。しかし、報告されている抗コリン薬の使用と将来的な認知機能低下や認知症発症との関連が、抗コリン作用に起因するかどうかは不明であった。BMJ誌2018年4月25日号掲載の報告。認知症患者約4万例と対照約28万例で抗コリン薬の曝露認知症リスクを評価 研究グループは、さまざまなクラスの抗コリン薬の曝露期間および曝露量と、その後の認知症発症との関連を評価する目的で、症例対照研究を行った。英国プライマリケア医の電子カルテを含むデータベース(Clinical Practice Research Datalink:CPRD)を用い、2006年4月~2015年7月に認知症と診断された65~99歳の患者4万770例と、認知症と診断されていない対照28万3,933例を特定し、Anticholinergic Cognitive Burden(ACB)スケールで分類された抗コリン薬の1日投与量について、曝露期間中全体およびサブクラス別に比較した。認知症と診断される4~20年前の抗コリン薬の処方が含まれた。 主要評価項目は、患者背景等の共変量について調整した認知症発症のオッズ比とし、多変量条件付きロジスティック回帰分析を用いて解析した。うつ病、泌尿器系、パーキンソン病治療の抗コリン薬で認知症リスクが増大 曝露期間中、ACBスコア3(明らかな抗コリン作用)に分類される抗コリン薬を1つ以上処方されていたのは、認知症患者1万4,453例(35%)、対照8万6,403例(30%)で、ACBスコア3の抗コリン薬の調整オッズ比は1.11(95%信頼区間[CI]:1.08~1.14)であった。認知症は、ACBスコアの平均値の増加と関連していた。 薬剤のクラス別では、ACBスコア3および1の消化器系薬や、ACBスコア1の心血管系薬の使用においては、認知症との明確な関連はみられなかった。 一方、ACBスコア3に分類される抗うつ薬・泌尿器系治療薬・抗パーキンソン病薬は、曝露が大きいほど認知症のリスクの増大がみられ、その関連性は認知症発症の15~20年前の抗コリン薬の曝露でも認められた。

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高齢者うつ病に対する薬物療法の進歩

 最近の高齢者うつ病に対する薬物療法の研究を、単剤療法や増強療法に関する最新情報に焦点を当て、米国・デューク大学のJohn L. Beyer氏らがレビューを行った。また、臨床反応のモデレーターに関する新たな研究や有効性の改善に関する情報をどのように用いるかについてもレビューを行った。Current psychiatry reports誌2018年4月7日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・最近のレビューでは、高齢者のうつ病治療に対し、セルトラリン、パロキセチン、デュロキセチンが、プラセボよりも優れていることが示唆されている。・パロキセチンは、高齢者に対し抗コリン作動性による有害なアウトカムの発現が懸念されているが、研究においては、死亡率、認知症リスク、認知機能尺度の変化が認められていない。・より新規の抗うつ薬の中では、vortioxetineが高齢者うつ病に有効であることが証明されている。また、クエチアピンは、とくに睡眠障害を有する患者に有効性が示されており、アリピプラゾール増強療法は、治療抵抗性高齢者うつ病に対し、安全かつ有効であることがわかっている。・研究者らは、治療に導くことが可能な高齢者うつ病のモデレーターを特定している。・また、研究者らは、モデレーター、神経解剖学モデル、抗うつ反応をどうすれば関連付けられるかを学んでいる。 著者らは「現時点においても、高齢者うつ病の第1選択薬は、SSRIやSNRIである。また、アリピプラゾールは、治療抵抗性高齢者うつ病に対し、効果的かつ安全な増強治療薬である。研究においては、治療反応を高めることのできる実行可能なモデレーターを特定している」としている。■関連記事うつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤は高齢者の遅発性うつ病に影響する要因とは:東大なぜ高齢期うつ病は寛解率が低いのか

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初回エピソード統合失調症患者における抗精神病薬治療中止に関する20年間のフォローアップ研究

 統合失調症の初回エピソード後に症状が安定した患者では、経時的に再発リスクが減少すると考えられている。多くの治療ガイドラインにおいて、抗精神病薬は、症状安定後1~5年間治療を継続し、その後の長期使用は避けるべきであることが推奨されている。しかし、この見解を証明するための公表されたエビデンスは存在しない。フィンランド・東フィンランド大学のJari Tiihonen氏らは、フィンランド全国データベースを用いて、この問題を調査した。The American journal of psychiatry誌オンライン版2018年4月6日号の報告。 抗精神病薬治療中止後の治療不良リスク(精神症状による再入院または死亡)について、前向き研究で集められた全国登録データを用いて調査した。1996~2014年に初めて統合失調症と診断されたすべての入院患者8,738例のアウトカムを、多変量Cox回帰を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・再入院または死亡リスクが最も低かった患者は、抗精神病薬治療を継続的に行った患者であった(調整ハザード比[HR]:1.00)。次いで、初回入院治療から退院直後に抗精神病薬を中止した患者(HR:1.63、95%CI:1.52~1.75)、1年以内に中止した患者(HR:1.88、95%CI:1.57~2.24)、1~2年以内に中止した患者(HR:2.12、95%CI:1.43~3.14)、2~5年以内に中止した患者(HR:3.26、95%CI:2.07~5.13)、5年以上(中央値:7.9年)で中止した患者(HR:7.28、95%CI:2.78~19.05)であった。・抗精神病薬の未使用患者および早期中止患者は、抗精神病薬治療を16.4年間継続した患者と比較し、死亡リスクが174~214%高かった。 著者らは「根底にあるメカニズムは不明であるが、これらの結果は、一般的な考えと相違があった。抗精神病薬治療中止後の治療不良および再発リスクは、統合失調症発症後、最初の8年間で時間とともに減少しておらず、長期抗精神病薬使用は、生存率の向上と関連が認められた」としている。■関連記事安定期統合失調症、抗精神病薬は中止したほうが良いのか初回エピソード統合失調症患者における抗精神病薬中止後の長期的な影響維持期統合失調症治療、抗精神病薬の中止は可能か

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米国の生殖可能年齢の女性におけるうつ病有病率

 妊娠可能年齢の非妊娠女性における抗うつ薬の使用および大うつ病性障害、小うつ病性障害の予測因子について、米国・スタンフォード大学のNan Guo氏らが検討を行った。Obstetrics and gynecology誌オンライン版2018年4月号の報告。 妊娠可能年齢の非妊娠女性3,705例を対象に、2007~14年の米国国民健康栄養調査のデータを用いて、横断研究を行った。主要アウトカムは、大うつ病性障害の有病率とし、副次的アウトカムは、小うつ病性障害の有病率、抗うつ薬の使用率、大うつ病性障害および小うつ病性障害の予測因子とした。大うつ病性障害と小うつ病性障害は、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いて分類した。大うつ病性障害と小うつ病性障害の単変量および多変量の関連性は、多項ロジスティック回帰を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・大うつ病性障害の有病率は4.8%(95%CI:4.0~5.7%)、小うつ病性障害の有病率は4.3%(95%CI:3.5~5.2%)であった。・抗うつ薬使用率は、大うつ病性障害女性で32.4%(95%CI:25.3~40.4%)、小うつ病性障害女性で20.0%(95%CI:12.9~29.7%)であった。・大うつ病性障害と最も関連する要因は、米国国営保険(調整相対リスク比[RR]:2.49、95%CI:1.56~3.96)、高血圧(調整RR:2.09、95%CI:1.25~3.50)であった。小うつ病性障害と最も関連する要因は、高校未満の教育(調整RR:4.34、95%CI:2.09~9.01)、高等教育(調整RR:2.92、95%CI:1.35~6.31)であった。 著者らは「本分析では、妊娠可能年齢の非妊娠女性において、20人に1人は大うつ病性障害を経験していた。抗うつ薬の使用は、大うつ病性障害患者の1/3、小うつ病性障害患者の1/5であった」としている。■関連記事妊娠中の抗うつ薬治療、注意すべきはうつ病、男女間で異なる特徴とは妊娠初期のうつ・不安へどう対処する

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高齢ドライバーの認知症診断と自動車運転事故リスク

 米国では、高齢者のドライバーが増加している。米国・ワシントン大学のLaura A. Fraade-Blanar氏らは、認知症と診断された高齢ドライバーの自動車運転事故リスクを、認知症でない高齢者と比較し、検討を行った。Accident誌2018年4月号の報告。 ワシントン州の医療保険機関であるGroup Health(GH)のデータを用い、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象者は、1999~2009年にワシントン州に居住していた65~79歳のGH加入者。対象者の健康記録は、警察より報告された事故と免許証記録と関連付けた。認知症と診断された高齢ドライバーの事故リスクを、認知症でない高齢ドライバーと比較するため、再発事故を考慮し、ロバスト標準誤差を有するCox比例ハザードモデルを用いて検討を行った。多変量モデルは、年齢、性別、アルコール乱用歴、うつ病歴、併存疾患、薬物療法について調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・免許証を有し、運転を行っていた高齢ドライバーは、2万9,730例であった。・試験開始前または試験期間中に、認知症と診断されたのは約6%であった。・警察の報告によると、事故率は、千人年当たり14.7件であった。・認知症と診断された高齢ドライバーにおける事故の調整ハザード比は、認知症でない高齢ドライバーと比較し、0.56(95%CI:0.33~0.95)であった。・オンロードおよびシミュレータを用いた調査では、認知症の高齢者は、ドライビング技術と能力が低下していることが論証された。 著者らは「認知症と診断された高齢者の自動車運転を制限する保護的な措置を行うことにより、自動車運転事故リスクを低下させる可能性がある。今後の研究では、認知症診断時での運転リスク低減の戦略推進と、事故リスク低減へのそれらの影響について検討すべきである」としている。■関連記事認知症ドライバーの運転停止を促すためには認知症ドライバーの運転能力、どう判断すべきか認知症者の自動車運転を停止するためのワークショップ

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思春期の少年少女における自殺念慮の予測

 近年、思春期や若者の自殺率が高まっており、これらの年齢層は、リスクの高い集団であると認識されている。スペイン・ロビラ・イ・ビルジリ大学のFabia Morales-Vives氏らは、自殺念慮が将来の自殺行動の可能性を示す最初の兆候であることを考慮し、思春期の自殺念慮を予測するうえで、精神的な成熟、人格、うつ病、生活満足度の相対的な重要性について検討を行った。The Spanish journal of psychology誌2018年4月10日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・うつ症状は、自殺念慮を最も予測する因子であり、精神的な成熟、生活満足度、感情的安定性も予測因子であった(R2=0.51、p<0.001)。・しかし、Multigroup Structural Equation Models分析では、感情的安定性は、うつ症状、生活満足度、自己同一性との関係を通じて、自殺念慮と間接的な関連があることが示唆された。・2つの多群構造方程式モデルにより、男女におけるこれらの因子の関連性がより理解された。・自立の変数を含むモデルは、少女よりも少年でより適していた(カイ二乗、少女:8.175、少年:1.978)。これは、他のモデルとは異なっていた(カイ二乗、少女:0.288、少年:1.650)。 著者らは「これらの結果は、精神的な成熟のサブスケールである自立が、少年の自殺念慮に影響を及ぼすが、少女においては影響しないことを示唆している。自殺の予測因子としての精神的な成熟の影響については、これまであまり研究されていなかったが、思春期の自殺念慮の予測において考慮すべき特徴であると考えられる」としている。■関連記事自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か自殺予防の介入効果はどの程度あるのかうつ病および自殺に関連する遺伝学的治療標的

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術後せん妄を経験した大腿骨頚部骨折患者の認知症発症リスク

 術後せん妄が、股関節部の骨折患者の認知症発症率にどの程度影響を及ぼすかは不明であり、せん妄や認知症の検出方法については検証が必要とされている。スウェーデン・ウメオ大学のB. Olofsson氏らは、大腿骨頚部骨折手術後3年以内の認知症発症について、潜在的な予測因子として術後せん妄に焦点を当て、調査を行った。International journal of geriatric psychiatry誌2018年4月号の報告。 認知症、うつ病、心理的ウェルビーイング、栄養状態について、入院中および手術後4、12、36ヵ月後に評価を行った。術後せん妄および認知症発症に関連する因子は、ロジスティック回帰モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・研究対象は、認知症の既往歴のない患者135例。そのうち、せん妄を発症したのは術前で20例(14.8%)、術後で75例(55.5%)であった。・術後3年時で、43例(31.8%)が認知症と診断された。・術後せん妄が認められた75例には、認知症を発症しなかった患者(92例中36例、39.1%)よりも発症した患者(43例中39例、90.6%)の方が、多く含まれていた。・ロジスティック回帰モデルでは、共変量(年齢、性別、糖尿病、術前および術後せん妄、過活動性せん妄、せん妄の日数、尿路感染症、簡易栄養状態評価表スコア)で調整した後、術後せん妄は、術後3年以内の新規認知症発症の独立したリスク因子であることが示唆された(オッズ比:15.6、95%CI:2.6~91.6)。 著者らは「本結果より、術後せん妄が認められる老年性股関節部の骨折患者では、認知症の発症を注意深く観察する必要がある」としている。■関連記事せん妄はアルツハイマー病悪化の危険因子高齢者へのZ薬と転倒・骨折リスクに関するメタ解析せん妄に対する薬物治療、日本の専門家はどう考えているか

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日本の初年度レジデント、長時間労働とうつ病との関連

 日本のレジデントは、メンタルヘルスの問題を抱えている人が少なくない。これまでの研究では、長時間労働がうつ病などのストレス反応の原因である可能性が報告されている。また、労働時間が80時間/週以上と80時間/週未満のレジデントを比較した研究も報告されている。しかし、多くのレジデントは、臨床研修、トレーニング、自己学習などのため、実質的には100時間/週以上の超長時間労働に至っている。このような超長時間労働に関する報告は、これまでほとんど行われていなかった。筑波大学の小川 良子氏らは、初年度レジデントの労働環境とストレスの程度を評価し、とくに超長時間労働群における長時間労働とうつ病との関連を調査した。BMC medical education誌2018年3月27日号の報告。 対象は、2011年に研修病院250施設に採用された初年度レジデント1,241例。レジデント開始時および3ヵ月時に、人口統計、うつ症状、研修状況(労働時間、睡眠、自由時間、夜勤シフトなど)に関するデータを収集するため、自己報告アンケートを用いた。うつ症状は、うつ病自己評価尺度(CES-D:Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・平均労働時間は、79.4時間/週であり、労働時間が100時間/週以上であったのは97例(7.8%)であった。・3ヵ月時において、臨床的に有意なうつ症状が報告されたのは、100時間/週以上労働していたレジデントの45.5%であった。この割合は、労働時間が60時間/週未満のレジデントよりも有意に高かった(p<0.001)。・多変量ロジスティック回帰分析では、うつ症状発症リスクは、労働時間が60時間/週未満のレジデントと比較し、80~99.9時間/週で2.83倍、100時間/週以上で6.96倍高かった。 著者らは「過度な長時間労働は、うつ症状発症と有意な関連が認められた。レジデントの労働時間を適切に管理することは、身体的および精神的な健康を維持し、レジデントによるケアの質を向上させるために重要である」としている。■関連記事長時間労働やシフト作業は認知症発症に影響するかうつになったら、休むべきか働き続けるべきか職場ストレイン、うつ病発症と本当に関連しているのか

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